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特表2023-542461単回用量の香り付与のための香料組成物を含むカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】単回用量の香り付与のための香料組成物を含むカプセル
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/08 20060101AFI20231002BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20231002BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B01J13/08
A61K8/11
A61Q13/00 102
C11B9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504204
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051346
(87)【国際公開番号】W WO2022018372
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2007630
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507038674
【氏名又は名称】ヴェ. マヌ フィル
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】タルデュー オードリー
(72)【発明者】
【氏名】ハネテル ジャン-ミッシェル
【テーマコード(参考)】
4C083
4G005
4H059
【Fターム(参考)】
4C083DD14
4C083KK03
4G005AA01
4G005AB14
4G005BB05
4G005BB08
4G005DB06Z
4G005DB08Z
4G005DB12Z
4G005DB16Z
4G005DB17Z
4G005DC32X
4G005DD47X
4G005EA03
4G005EA05
4H059BC10
4H059CA54
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
本発明は、シェルが少なくとも1つの親水コロイドを含み、コアが少なくとも1つの香り付与剤及び少なくとも1つの親油性溶媒を含み、シェルが易崩壊性であること、並びにコアがコアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤及びコアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、前記溶媒がエタノールと混和性であり、25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;0.82~0.99の比重;及び850mm/10分を超える拡散値を有することを特徴とする、使用者に香り付与するためのコア-シェル型のシームレスカプセルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に香り付与するためのコア-シェル型のシームレスカプセルであって、
前記シェルが、少なくとも1つの親水コロイドを含み;
前記コアが、少なくとも1つの香り付与剤及び少なくとも1つの親油性溶媒を含み;
前記シェルが、易崩壊性であり、前記コアが、前記コアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤と、前記コアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒とを含み、
前記溶媒が、エタノールと混和性であり、かつ
25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
0.82~0.99の比重;及び
850mm/10分を超える拡散値;
を有することを特徴とする、前記カプセル。
【請求項2】
溶媒が、イソアジペート、ココカプリレート、ミリスチン酸イソプロピル、又はジメチコン1cStの中から選択される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
溶媒が、カプセルコアの重量に対して70~80重量%を占める、請求項1又は2に記載のカプセル。
【請求項4】
0.5~2.5kgの硬度を有する、請求項1~3のいずれかに記載のカプセル。
【請求項5】
シェルが、ジェランガム、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、カラギーナン、アガー-アガー、キトサン及びその誘導体、ペクチン、アラビアガム、ガティガム、プルランガム、マンナンガム、又は加工デンプンの中から選択される少なくとも1つの親水コロイドを含む、請求項1~4のいずれかに記載のカプセル。
【請求項6】
親水コロイドがジェランガムである、請求項5に記載のカプセル。
【請求項7】
親水コロイドがカラギーナンから選択される、請求項5に記載のカプセル。
【請求項8】
2~10mmの直径を有する、請求項1~7のいずれかに記載のカプセル。
【請求項9】
カプセルシェルの厚さが10~500μmである、請求項1~8のいずれかに記載のカプセル。
【請求項10】
カプセルが崩壊したときに、芳香組成物が皮膚への塗布後にべたつき感を残さない、請求項1~9のいずれかに記載のカプセル。
【請求項11】
使用者に香り付与するための、シェル及びコアを含む易崩壊性カプセルを製造する方法であって、
(A)親水性の外側液相及び親油性の内側液相を共押出するステップであって、前記外側液相が前記外側相の乾燥重量に対して4~95重量%の親水コロイドを含み、前記内側液相がコアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤、前記コアの全重量に対して0~10重量%のエタノール、及び前記コアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、
前記溶媒が、エタノールと混和性であり、かつ、
25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
0.82~0.99の比重;及び
850mm/10分を超える拡散値;
を有する、ステップと、
(B)1℃~20℃の温度の冷浴中に浸漬することにより、このようにして得られたカプセルの表面を固化及び/又はゲル化させるステップと、
(C)カプセルを乾燥させるステップと、
(D)カプセルを収集するステップと
を含む、前記方法。
【請求項12】
使用者に香り付与するための、請求項1~10のいずれかに記載のカプセルの使用。
【請求項13】
カプセルが崩壊し芳香組成物が皮膚に塗布されたとき、べたつき感を皮膚に残さない、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
使用者に香り付与する方法であって、
使用者の2本の指の間で請求項1~10のいずれかに記載のカプセルをつかむステップと、
圧力の作用により前記カプセルを破裂させ、前記カプセルが前記2本の指の間で崩壊するようにするステップと、
前記カプセル内に含まれている油性芳香組成物を皮膚及び/又は衣服に塗布するステップと
を含むことを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体香料コアを含む乾燥した易崩壊性のカプセルに関し、前記カプセルは香り付与、すなわち芳香性分子の拡散を意図している。崩壊後、前記カプセルは使用者が外出先で非従来的なやり方で自身に香り付与すること、又は使用時にべたつき感を伴わずに芳香性分子を塗布することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
現在、伝統的な香料類では、アルコール系スプレー香料のための様々な種類の従来の配合が存在する:
- 4%~6%の濃縮香料を含有する「オーデコロン」(EdC);
- 7~12%の濃縮香料を含有する「オードトワレ」(EdT);
- より高価であり、12~20%の濃縮香料の濃度に達する、「オードパルファム」(EdP);
- 特に高級香料の場合に香料濃度が40%に達することがある、「パフューム」又は「エクストラクト」。
【0003】
消費者が香料ボトルを1回又は2回以上押す(それにより50~200μlの香料を送り出す)ことにより香料をスプレーすることが一般的であり、これは、皮膚、髪、又は衣服への塗布のために数ミクロンある微細液滴の形態で香料溶液を霧状にすることを可能にする。
【0004】
しかし、香料産業及び化粧品産業はこれらの消費者の要望をさらに満たすために常に革新しなければならない。実際に、仏国及び米国の女性に関して出願人により2019年2月に行われた調査は、消費者の80%がアルコール系スプレー以外の製品で自身に香り付与する用意があると述べていると結論づけた。
【0005】
したがって、消費者を満足させるために、新しい香り付与の塗布スタイルを開発しなければならない。
【0006】
しかし、新しい香り付与の慣習におけるこれらの革新の必要性において、2つの本質的な点を考慮に入れなければならない。第一に、香料をつけている時間、その芳香の演出、及び最適な感覚などの技術的な問題が存在する。実際、オードトワレ又はオードパルファムの配合を別の媒体に置き換えることは決して容易ではない。多くの場合は再調整を行うことが必要であり、各々の選択肢により利点及び欠点が提起される。他方で、消費者は天然のアプローチ及び皮膚に対するリスクのない組成物をますます探し求めている。消費者がオイル、クリームの形態であるか、又は水溶液の形態でさえある香料へますます関心を向けているのはこの理由のためである。実際、芳香族化合物を可溶化させるための主な溶媒であるエタノールは、皮膚の敏感化、乾燥、及び皮膚への刺激性の効果などの欠点を有する。
【0007】
様々な既存の剤形の中でも、カプセル化は液体物質をカプセル中に封入することからなる。カプセル化は、カプセル内に含有される物質を外部環境との相互作用から保護すること、及び目的の物質を所望の時間に放出されることになる場所へ輸送することを可能にする。
【0008】
現在、特に香料を組み込む組成物を含む、「カプセル」又は関連するタイプのデバイスが存在する。
【0009】
例えば、仏国特許出願第3042690号明細書は、香料試料を封入するためのデバイス、並びにそのようなデバイスを製造する方法を記載している。香料試料を封入するための前記デバイスは、「カプセル」が収納される空洞を含み、典型的には流体密封手段により閉じられた管状体で構成される、可撓性かつ流体密封性の材料でてきている外側コア-シェルを含む。好ましくは、管状体はガラスでできており、栓により密封され、香料試料が入っている。特にアルコールを含有しない、他の液体に関しては、カプセルの管状体は代替として、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)フィルムにより閉じられ、PMMA(ポリメチルメタクリレート)でできていてもよい。香料試料の入った前記カプセルの管状体が崩壊すると、香料がコア-シェルの外側に放出され、デバイスの内部空洞内に放出された香料の芳香がデバイスの外側に拡散することを可能にする。しかし、このデバイスは従来のカプセル化技術により得られる「カプセル」を記載していない。さらに、記載されるような、擬似「カプセル」を含むデバイスは実施するのが容易ではなく、複雑な化学物質を含む。最後に、香料をつける手段としてではなく、単に香料をサンプリングするためのデバイスとしての用途がある。
【0010】
国際公開第2012/089819号パンフレットに関しては、
- 水中油型のエマルション、香り付与剤を含む油性組成物、及び前記油性相の液滴を完全に封入する連続水性相で形成される、内側相と;
- 前記内側相をその外周部で完全に封入する、ゲル化状態である少なくとも1つの高分子電解質を含む、ゲル化外側相と
を含む、香料カプセルを記載している。
【0011】
外側相は、カプセル化プロセスの際に複数の液滴の形成及びゲル化を改善する界面活性剤も含む。国際公開第2012/089819号パンフレットによるカプセルは、実際には水中油型エマルションの液滴を封入するカプセルであることに注意するべきである。さらに、界面活性剤の存在は前記カプセルを塗布した場合に皮膚に対して刺激性となる場合がある。最後に、この文献にしたがって得られるカプセルは、皮膚科学的に許容可能な媒体の存在下で化粧用組成物中に組み込まれることを意図しており、したがってそのままの状態で使用者によって使用されることを意図していない。
【0012】
現在まで、外出時に使用できるカプセル化芳香デバイスは市場に存在しなかった。実際、上記のものなどのデバイスは、多湿環境中で保存しなければならないためにボトルに組み込まれているか若しくは化粧用組成物に組み込まれている、カプセル若しくはマイクロカプセルに関するか、又はスプレー形態で購入する前に香料の匂いをかいで評価するためのカード若しくは小袋などの媒体に組み込まれているために香料として実際に塗布することを可能としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許出願第3042690号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/089819号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、液体香料コアを封入するシェルを含む、乾燥した、シームレスの、易崩壊性のカプセルに関し、前記カプセルは、芳香性分子を拡散させて、自身に、特に皮膚に香り付与することを可能にすることを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明の第1の目的は、
- シェルが少なくとも1つの親水コロイドを含み;
- コアが少なくとも1つの香り付与剤及び少なくとも1つの親油性溶媒を含み;
前記シェルが易崩壊性であること、並びにコアがコアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤及びコアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、前記溶媒がエタノールと混和性であり
- 25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
- 0.82~0.99の比重;及び
- 850mm/10分を超える拡散値(spreading value)
を有することを特徴とする、使用者に香り付与するためのコア-シェル型のシームレスカプセルに関する。
【0016】
この出願の第2の目的は、
(A)親水性の外側液相及び親油性の内側液相を共押出するステップであって、外側液相が前記外側相の乾燥重量に対して少なくとも4~95重量%の親水コロイドを含み、内側液相がコアの全重量に対して少なくとも15~40重量%の香り付与剤、コアの全重量に対して0~10重量%のエタノール、及びコアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、前記溶媒がエタノールと混和性であり、
- 25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
- 0.82~0.99の比重;及び
- 850mm/10分を超える拡散値
を有する、ステップと、
(B)1℃~20℃の温度の冷浴中に浸漬することにより、このようにして得られたカプセルの表面を固化及び/又はゲル化させるステップと;
(C)カプセルを乾燥させるステップと;
(D)カプセルを収集するステップと
を含む、シェル及びコアを含む易崩壊性カプセルを製造する方法に関する。
【0017】
この出願の第3の目的は、使用者に香り付与するための本発明によるカプセルの使用に関する。
【0018】
この出願の第4の目的は、本発明によるカプセルを使用して使用者に香り付与する方法に関し、この方法は
- 2本の使用者の指の間で本発明によるカプセルをつかむステップと;
- 圧力の作用により前記カプセルを破裂させ、前記カプセルが2本の指の間で崩壊するようにするステップと;
- カプセル内に入っている油性芳香組成物を皮膚に塗布するステップと
を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
下記の詳細な説明を読み、添付の図面を分析すると、他の特徴、詳細、及び利点が明らかとなる。
図1】エタノールのレオロジープロファイルと比較した、純粋油の25℃におけるレオロジープロファイルの図である。
図2】エタノールを含む混合物と比較した、15/85 w/wの香料+油の混合物の25℃におけるレオロジープロファイルの図である。
図3】25℃で10s-1のせん断速度における粘度の比較の図である。
図4】親油性溶媒のあらゆる系統:(a)エステル、(b)シリコーン、(c)鉱油、及び(d)植物油についての、粘度の関数としての拡散値の展開の図である(25℃で測定される)。
図5】エタノール中15%の標準的アルコール系香料の蒸発プロファイルの図である。
図6】純粋な油及び純粋な香料の蒸発プロファイルの図である。
図7】小さい値について拡大された純粋な油及び純粋な香料の蒸発プロファイルの図である。
図8】エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%及び40%の香料Aの蒸発プロファイルの図である。
図9】小さい値について拡大された、エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%又は40%の香料Aの蒸発プロファイルの図である。
図10】エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Aの蒸発プロファイルの図である。
図11】小さい値について拡大された、エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Aの蒸発プロファイルの図である。
図12】エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Bの蒸発プロファイルの図である。
図13】小さい値について拡大された、エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Bの蒸発プロファイルの図である。
図14】エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Cの蒸発プロファイルの図である。
図15】小さい値について拡大された、エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Cの蒸発プロファイルの図である。
図16】エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Dの蒸発プロファイルの図である。
図17】小さい値について拡大された、エタノールを使用した香料と比較した様々な油中の15%の香料Dの蒸発プロファイルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、カプセルはシームレスのコア-シェル型のものであり、香り付与を意図しており、
- シェルが少なくとも1つの親水コロイドを含み;
- コアが少なくとも1つの香り付与剤及び少なくとも1つの親油性溶媒を含み;
前記シェルが易崩壊性であること、並びにコアがコアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤及びコアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、前記溶媒がエタノールと混和性であり
- 25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
- 0.82~0.99の比重;及び
- 850mm/10分を超える拡散値
を有することを特徴とする。
【0021】
本発明は、外出時に新規で非従来的なやり方で自身に香り付与する方法を提供するという利点を有する。使用者は、例えば、本発明によるカプセルの一式を含むピルボックスからいつでもカプセルを取り出し、自分の指の間で崩壊することができる。崩壊後、香料組成物を含む親油性コアが放出され、皮膚に好都合に塗布することができる。残りのシェルはピルボックスに戻すか又はゴミ箱へ直接捨てることができる。カプセルは、全体的に食物材料、天然又は生物由来ポリマーで作製することができ、完全に生分解性又は堆肥化可能であるという利点をもたらす。
【0022】
本発明の重要な技術的利点は、慎重に選択された親油性(すなわち油性)溶媒を使用して香料組成物のカプセル化を可能にするということであり、これは一方では易崩壊性かつ安定なコア-シェルカプセルを得ることを可能にし、他方では香料の非常に良好な蒸発及び非常に良好な持続性を得ることを可能にする。実際には、従来の香料組成物において、香料分子のキャリアとして作用することにより香料の蒸発を可能にし、それにより芳香効果を有効にするのは、多量のエタノールの存在であるということが、香料製造の分野の業者に知られている。しかし、エタノールは親水性でありカプセルコアとそのシェルとの間の界面を不安定化させるので、特に香料組成物などの多量のエタノールを含む組成物のカプセル化を共押出により行うことは不可能である。また、グリセリン植物油又は中鎖トリグリセリド(MCT)などの、共押出で使用される従来の親油性溶媒によってエタノールを置き換えることは、コア-シェルカプセルを得ることを確かに可能にはするが、香料の良好な蒸発を妨げることになり、なぜなら油、及びMCTなどの他の親油性溶媒は香料分子の拡散を大きく制限し、これら香料分子が親油性油の存在により留められる(「重みで押さえつけられる」)ことが知られているためである。MCTの使用の別の注目すべき欠点は、例えば、塗布後の皮膚の持続的なべたつき感、及びさらに衣服上の油汚れの出現である。
【0023】
本発明にしたがって定義される非グリセリド親油性溶媒は、香料組成物の良好な蒸発、皮膚へ塗布した際の持続的なべたつき感又は油っぽい膜がない、及び安定なコア-シェルカプセルが得られる、という利点を有する。さらに、本発明による溶媒が香料原料とだけでなくエタノールとも混和性であり、香料組成物の香りと干渉するいかなる匂いも有してはならないことが必須である。「混和性」とは、本発明による溶媒が香料材料と、及びエタノールと混合されて均質の混合物を形成することができることを意味すると理解される。実際に、香料原料に加えて、本発明による溶媒は、カプセルの形成を可能にする共押出プロセスの際の界面促進の問題に対処するためにエタノールと混和性でなければならない。カプセルを得るのに0~10%のエタノールを使用する必要があり、このエタノールはカプセルの乾燥中に蒸発する。
【0024】
エタノール中15%の従来の香料組成物の塗布後、70℃で210秒後に蒸発は香料組成物の少なくとも85%のレベルに到達することが観察された。香料分子を運ぶエタノールの存在に起因して蒸発が可能となる。したがって、香料組成物がより多くのエタノールを含有するほど、蒸発はより良好になる。逆に、エタノール中の40%のオードパルファムなど、組成物がより高い香料濃度を有する場合、エタノールの割合はより低く、これは香料の不十分な蒸発を引き起こす。これは香料が決して純粋な状態で使用されない理由の1つであり、なぜならそれらは良好な蒸発を実現しないためである。本発明によれば、香料/親油性溶媒混合物が210秒、70℃で2%を超える蒸発率に到達する場合に、「蒸発が良好である」と考えられる。この率は低いように見えるとしても、親油性溶媒並びに香料分子が極めて低い蒸発率(210秒、70℃で2%未満)を有することを考慮すると、実際にはかなり許容可能であると考えられる。
【0025】
生じた技術的問題を解決することを可能にする、本発明にしたがって定義されるようなエタノールに混和性である親油性溶媒は、一方では非グリセリドであり、他方では、
- 25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
- 0.82~0.99の比重;及び
- 850mm/10分を超える拡散値
を有する。
【0026】
上記のパラメーターを満たす溶媒は、有利なことに本発明によるカプセルを実施することを可能にする。上記で定義される粘度及び拡散値は、香料の良好な蒸発を確実にしながら、膜の出現又はべたつき感を実質的に伴うことなく、皮膚上での親油性香料組成物の最適な広がりを可能にする。比重値の範囲は共押出プロセスが最適に行われることを可能にする。
【0027】
カプセルコアは主として非グリセリド親油性溶媒を含む。実際に、グリセリドタイプの溶媒の使用は皮膚上の持続的な油っぽい膜の形成につながり、これは使用者にとって不快である場合があり、望ましくない。有利には、前記コアは5重量%未満のグリセリド溶媒を含有する。さらにより好ましくは、コアは本質的にグリセリド溶媒を含まない。
【0028】
好ましくは、非グリセリド親油性溶媒はカプセルコアの重量に対して70~80重量%を占める。
【0029】
本発明による非グリセリド溶媒は、エステル、シリコーン、並びに植物油及び鉱油の中から選択される。好ましくは、可能な限り最も生物由来のカプセル、したがって好ましくは生分解性のカプセルを得るために、植物油が使用されることになる。
【0030】
好ましくは、親油性溶媒は、イソアジペート、ココカプリレート、ミリスチン酸イソプロピル、及びジメチコン 1cStの中から選択される。
【0031】
非グリセリド親油性溶媒の比重は0.82~0.89である。定義により、20℃での比重は、4℃での水の密度に対する20℃での前記組成物又は溶媒の密度の比に相当する。
【0032】
この比重範囲の選択は、共押出と呼ばれるプロセスによるカプセルの製造の際に良好な共押出を確実にする。有利には、コアの組成物全体の(すなわちエタノール、香り付与剤、及び親油性溶媒の)比重は0.82~0.99である。
【0033】
本発明による非グリセリド溶媒は850mm/10分を超える拡散値を有していなければならない。物質の拡散値は前記物質が10分で表面を覆う能力として定義される。香料/親油性溶媒組成物が可能な限り非油性であり塗布後の皮膚上に最低限の微量の油しか残さないように、このパラメーターは香料/親油性溶媒組成物を特徴づけることを可能にする。有利には、親油性溶媒(エステル、シリコーン、並びに植物油及び鉱油の中から選択される)の拡散値は、M. Douguet et al.(Spreading properties of cosmetic emollients: Use of synthetic skin surface to elucidate structural effects - Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 154 (2017) 307-314)による公開物などの文献に示される式を使用して計算することができる。実際に、部分最小二乗回帰による統計分析後、下記のような対数回帰にしたがって、25℃で測定される粘度(x)は親油性溶媒の性質の関数としての拡散値(y)を予測するための最も信頼性のある変数であることが分かった。
エステルについて(発明者らの調査ではIPM、イソアジペート、及びココカプリレート):
[数式1]
y=-225×log(x)+1315
シリコーンについて(発明者らの調査ではオクタメチルトリシロキサン及びポリジメチルシロキサンジメチコン):
[数式2]
y=-222×log(x)+1670
植物油について(発明者らの調査ではMCT及びブドウ種子油):
[数式3]
y=-101×log(x)+748
鉱油について:
[数式4]
y=-140×log(x)+975
【0034】
カプセルコアがいくつかの香り付与剤を含む場合、香り付与剤の混合物の全量はカプセルコアの全重量に対して15~40重量%である。
【0035】
本発明によるカプセル中に封入することができる香り付与剤は、抽出物、「ジャングルエッセンス」抽出物、精油、アブソリュート、レジノイド、樹脂、コンクリートなどの天然物であってもよいが、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、酸、エステル、アセタール、ニトリルなど、特に飽和若しくは不飽和の、脂肪族、複素環、又は炭素環化合物などの合成物(専属着臭剤とも呼ばれる)であってもよい。そのような着臭剤物質は、例えば、S. Arctander、“Perfume and Flavor Chemicals” (Montclair, N.J., 1969)において、又は“Common Fragrance and Flavor Materials”, Wiley-VCH, Weinheim, 2006において述べられている。
【0036】
香り付与剤及び非グリセリド溶媒に加えて、カプセルコアは有利には定着剤を含んでいてもよい。「定着剤」は、皮膚上の香料の持続を引き延ばすことを可能にする、香りのついた又はついていない成分を意味すると理解される。より具体的には、定着剤は、香油中の原料の蒸気圧(したがって揮発性)を均等にしてその持続性を高めることができる化合物である。香り付与剤及び本発明による溶媒と共に封入することができる定着剤は、以下の非網羅的なリスト:アブソリュート、コンクリート、樹脂及びオレオレジン、ワックス、グルコースの誘導体、スクロースの誘導体、ソルビトールの誘導体、クエン酸及びサリチル酸の誘導体、セルロース(特にエチルセルロース)、海藻抽出物、トリグリセリド、油、例えばヒマシ油及びその誘導体など、皮膚軟化剤、例えば特定のエステル、例えばエチルヘキシルグリセリンなど、ポリマー及びそれらの混合物、ポリウレタン、ポリアミド、特定のシリコーン、液体パラフィン、グリコール、ヒュームドシリカ、並びに第4級アンモニウム塩から選択することができる。
【0037】
本発明において、「カプセル」という用語は組成物の膜カプセル化の系を示し、前記カプセルはコア-シェル構造を有し、カプセル化組成物はコーティング材料からなるシェル(又はコア-シェル)内に封入されている「コア」を含む。
【0038】
本発明によるカプセルは、組成物が材料の連続マトリックス中に分散しており一般に「ミクロスフィア」という用語で呼ばれるマトリックス系とは異なる。
【0039】
カプセルがシームレスであるという事実は、「ソフトゲル」カプセルと同様に、カプセルを形成する2つの半シェルの間の封に位置する破断点の存在を回避することを可能にする。したがって、シームレスカプセルは継ぎ目の崩壊に関連する漏出を回避するという利点をもたらす。
【0040】
「易崩壊性カプセル」という用語は、カプセルが指の間で握られるか又は皮膚に押し付けられた場合にカプセルの外表面に加えられる圧力によってシェルが崩壊してシェル内に入っているコアを放出することができる、上記で定義されるようなカプセルを指す。
【0041】
本発明によるカプセルは好ましくは0.5~2.5kgの硬度を有する。耐崩壊性(又は硬度)は、カプセルを崩壊するために与えられることになる押しつぶす力によって、及び圧力が加えられた際のカプセルの変形(したがって弾性)によって測定される。より好ましくは、カプセルは0.8~2kgの硬度を有する。カプセルの硬度は、TA.XT Plusテクスチャーアナライザーにより20個のカプセルについて0.50mm/sのスピードのP0.5ピストンで測定され、硬度はkgで表され、弾性は破断点における変形パーセンテージ(%)として表される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による易崩壊性カプセルのコアは、前記カプセルの50~95重量%、好ましくは80~92%、より好ましくは85~92%を占める。
【0043】
有利には、カプセルコア-シェルの厚さは10~500ミクロン、好ましくは30~150ミクロン、より好ましくは50~80ミクロンであり、カプセルの外径は2~10mm、好ましくは3~5mm、より好ましくは3.4~4.8mm、さらにより好ましくは3.5~4.5mmであり、カプセル直径対シェル厚さの比は10~100、好ましくは50~70の範囲内である。
【0044】
本発明によるカプセルコア-シェルは有利には少なくとも1つの親水コロイドを含む。好ましくは、本発明による親水コロイドは生物由来のポリマーである。生物由来のポリマーは、バイオマス誘導体から部分的に(一般には>20%)又は全体的に得られる合成ポリマーを意味すると理解される。ポリマーの生物由来の性質は、ASTM D6866規格にしたがって特にそのC14含量から決定することができる。
【0045】
カプセルのコア-シェルを構成する親水コロイドは、単独で又は混合物として使用される、ジェランガム、ゼラチン(動物由来又はバイオテクノロジー由来の)、コラーゲン、アルギン酸塩、カラギーナン、アガー-アガー、キトサン及びその誘導体、ペクチン、アラビアガム、ガティガム、プルランガム、マンナンガム、デンプン及びデンプン誘導体、植物タンパク質、又は変性セルロースの中から選択される。コア-シェル中に存在する前記親水コロイドの量は、コア-シェルエンベロープの全乾燥重量に対して1.5~95重量%、好ましくは4%~75重量%、さらにより好ましくは20%~50重量%である。好ましい実施形態において、選択される親水コロイドは、単独で又はゼラチンと組み合わせて使用されるジェランガムである。別の好ましい実施形態において、親水コロイドはカラギーナンから選択される。
【0046】
一実施形態によれば、コア-シェルの乾燥重量は、カプセルの全乾燥重量に対して8~50%、好ましくは8~20%、より好ましくは8~15%重量である。
【0047】
本発明の別の実施形態において、カプセルは水分バリアコーティングを含む。この実施形態において、カプセルコア-シェルは、有機溶媒中又は水溶液若しくは懸濁液中に分散した少なくとも1つの水分バリア剤を含む、少なくとも1つの水分バリア層でコーティングされている。この実施形態において、シェルは、単独で、又はゼラチンを含む若しくは含まない混合物中で使用されるいかなる親水コロイドからなっていてもよい。ゼラチンはまた、シェルの唯一のゲル化剤を構成してもよい。しかし、好ましくは、疎水性コーティングの存在下であっても、シェルは湿度に対してある程度の耐性を示すのに十分な、一定量のジェランガム、又は寒天、又はカラギーナン若しくはアルギン酸塩、又はアラビアガム、又はペクチン、又はプルランガム、又はマンナンガムも含む。この場合、シェルは、シェルの全乾燥重量に対して1.5~95重量%、好ましくは4%~75重量%、さらにより好ましくは20%~50重量%の、ジェランガム、寒天、カラギーナン、及びプルランガムからなる群から選択される少なくとも1つの親水コロイドを含んでいてもよい。本発明の別の実施形態によれば、コーティングされたカプセルのコア-シェルは、ジェランガム、又はアラビアガム、又はペクチン、又は寒天、又はアルギン酸塩、又はカラギーナン、又はガティガム、又はプルランガム、又はマンナンガム、又はそれらの混合物を含むが、ゼラチンを含まない。
【0048】
有利には、カプセルコア-シェルは、好ましくはワックス、特にカルナウバワックス、キャンデリラワックス若しくは蜜ろう、家禽用ワックス、シェラック(アルコール溶液中若しくは水溶液中)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラテックス組成物、ポリビニルアルコール、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、医薬品又は化粧品に適しているものの中から選択される少なくとも1つの疎水性剤である、少なくとも1つの水分バリア剤によって覆われていてもよい。より好ましくは、少なくとも1つの水分バリア剤は、エチルセルロース、又はエチルセルロース及びシェラックの混合物である。本発明の別の実施形態によれば、疎水性水分バリア剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、可塑剤、セルロース、及び微結晶顔料の組み合わせであってもよい。本発明の別の実施形態によれば、疎水性水分バリア剤は、膜形成性ゲル化剤、好ましくはジェランガム自体である。
【0049】
コア-シェルは、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、トリアセチン、又はポリエチレングリコール、又は可塑化特性を有する別のポリアルコール、及び場合により一塩基酸、二塩基酸、又は三塩基酸タイプの酸、特にクエン酸、フマル酸、リンゴ酸などであってもよい、少なくとも1つの可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤の量は、コア-シェルの全乾燥重量の1%~30重量%、好ましくは2%~15重量%、さらにより好ましくは3~10重量%の範囲である。
【0050】
コア-シェルは有利には、芳香組成物を含むカプセルをより魅力的にすることができる着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、好ましくは食品由来又は化粧品由来の染料及び顔料から選択される。着色剤は、コア-シェルの本体中にあるか又はさらなるコーティングプロセスにより塗布されてもよい。
【0051】
増量剤もまたコア-シェルの組成物中に含まれていてもよい。増量剤は、外側液相中の乾燥物質のパーセンテージ、したがって共押出後、得られるカプセルシェルにおけるパーセンテージを高めることができる、任意の適切な材料を意味すると理解される。カプセルシェル中の乾燥物質の量の増加は、前記シェルを固化させ物理的により耐性のあるものにするという結果になる。好ましくは、増量剤は、デンプン誘導体、例えばデキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、又はガンマ)など、又はセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)など、ポリビニルアルコール、ポリオール、又はそれらの混合物を含む群から選択される。デキストリンは好ましい増量剤である。コア-シェル中の増量剤の量は、コア-シェルの全乾燥重量の、最大で98.5重量%、好ましくは25~95重量%、より好ましくは40~80重量%、さらにより好ましくは50~60重量%である。
【0052】
有利には、本発明によるカプセルが崩壊し、芳香組成物が皮膚に塗布される場合、皮膚上にべたつき感を残さない。
【0053】
本発明の第2の目的は、
(A)親水性の外側液相及び親油性の内側液相を共押出するステップであって、
- 外側液相が前記外側相の乾燥重量に対して4~95重量%の親水コロイドを含み、
- 内側液相が、コアの全重量に対して15~40重量%の香り付与剤、コアの全重量に対して0~10重量%のエタノール、及びコアの全重量に対して60~85重量%の非グリセリド親油性溶媒を含み、前記溶媒がエタノールと混和性であり、
- 25℃の温度及び10s-1のせん断速度で測定される、10mPa・s未満の粘度;
- 0.82~0.99の比重;及び
- 850mm/10分を超える拡散値
を有する、ステップと、
(B)1℃~20℃の温度の冷浴中に浸漬することにより、このようにして得られたカプセルの表面を固化及び/又はゲル化させるステップと;
(C)カプセルを洗浄及び乾燥させるステップと;
(D)カプセルを収集するステップと
を含む、使用者に香り付与するためのシェル及びコアを含む易崩壊性カプセルを製造する方法に関する。
【0054】
共押出プロセスは、親水性の外側液相及び親油性の内側液相の2つの液体の同時押出である。共押出プロセスは、液滴形成、シェルの固化、及びカプセルの収集という3つの主なステップからなる。本発明のカプセルは、任意の適切な共押出プロセスによって製造することができる。好ましくはカプセルは欧州特許第513603号明細書に記載されるデバイス及び方法により製造される。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、共押出ステップの後、例えば冷浴と接触させて置くことにより、シェルの良好なゲル化を確実にするためにカプセルを低温で維持しながら、固化ステップが行われる。冷浴は好ましくは低温油である。本発明の意味の範囲内の低温とは、1~20℃、好ましくは2~10℃、より好ましくは4~6℃の温度を意味すると理解される。次いでカプセルを遠心分離して過剰な油を除去し、やはり過剰な油を除去するために場合により有機溶媒で洗浄し、乾燥させることができる。本発明の一実施形態によれば、共押出ステップ、及び場合により固化ステップの後、カプセルを遠心分離する。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、カプセルを共押出しし、遠心分離し、場合により、カプセルのシェルの硬化を可能にする薬剤又は硬化剤を含有する、溶液又はエマルション中に浸漬する。
【0057】
硬化剤はまた、0~25℃、より詳細には10~20℃の温度で維持された、エタノール又はいかなる他の無水有機溶媒であってもよい。
【0058】
硬化剤はまた、カルシウムイオン浴、例えば塩化カルシウム、リン酸二カルシウム、若しくは硫酸カルシウムなど、又はpHが5未満、好ましくは3~4である、カルシウムイオンを含有する酸浴であってもよい。例となる酸は、アジピン酸、フマル酸、グルコン酸、又はグルコノデルタラクトンであってもよい。カルシウムイオン浴又は酸浴は好ましくは、0~25℃、好ましくは10~20℃の温度である。
【0059】
浸漬ステップは、カプセルの周囲の残留する油を洗い流し、特に脱水及び浸透圧バランスによって、コア-シェルを徐々に強化する効果を有する。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、浸漬後、カプセルを制御された温度及び湿度において気流中で又は空気中で乾燥させる。乾燥用空気の相対湿度は20%~60%、好ましくは30~50%であり、乾燥用空気の温度は15~60℃、好ましくは35~45℃である。必要に応じて、0.1~5%、好ましくは0.1~2%で乾燥中に添加されるデンプンなどの吸着剤を使用して表面の油を取り除くことができる。
【0061】
別の実施形態によれば、本発明による方法は、コーティングステップをさらに含み、その間に外側水分バリア層がカプセルに塗布される。好ましくは、前記コーティングステップは、カプセルをコーティング溶液中に浸漬することにより、又はコーティング溶液をカプセルに噴霧することにより行われる。前記コーティングステップは、好ましくは乾燥ステップの後に行われる。
【0062】
本発明の方法により作製されるカプセルは、本質的に又は完璧に球状であり、サイズが非常に均一である。
【0063】
出願の第3の目的は、使用者に香り付与するための、本発明によるカプセルの使用に関する。カプセルが崩壊したときに、香料組成物は皮膚への塗布後にべたつき感を皮膚に残さない。
【0064】
出願の第4の及び最後の目的は、
- 2本の使用者の指の間で本発明によるカプセルをつかむステップと;
- 圧力の作用により前記カプセルを破裂させ、前記カプセルが2本の指の間で崩壊するようにするステップと;
- カプセル内に入っている油性芳香組成物を皮膚に塗布するステップと
を含むことを特徴とする、使用者に香り付与する方法に関する。
【0065】
本発明は、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないが図を参照して読むべきである、以下の実施例により下記で例証される。
[実施例]
【0066】
いくつかの油を調べる。香料とのそれらの混和性、共押出プロセスとのそれらの適合性、及びそれらの油っぽい外観を比較する。これらを下記に挙げる:
- MCT:C8~C10タイプの中鎖トリグリセリド油(387.5g/molに相当する分子量を有する);
- IPM:ミリスチン酸イソプロピル、合成油(ミリスチン酸及びイソプロパノールのエステル);
- ココカプリレート:天然由来の皮膚軟化剤;
- イソアジペート:合成により作られるイソプロピルアルコール及びアジピン酸のジエステル;
- ブドウ種子油:天然油;
- オクタメチルトリシロキサン:粘度が1cSt(又は10-6/s)である、236.53g/molの分子量を有するジメチコン;
- ポリジメチルシロキサン(ポリマー):10cSt(又は10-5/s)の粘度を有するジメチコン。
【0067】
この調査において、これらの油の物理化学的特性を、高級香料類で使用される溶媒であるエタノールの特性と比較する。
【0068】
4種の異なる香料が試験され、以下、香料A、香料B、香料C、及び香料Dと呼ぶ。これらの香料は高級香料類での用途のために作製される。
【0069】
各香料の蒸発に対する様々な油の影響を調べるために、それぞれオードトワレ及び香料の組成物(すなわちそれぞれ油中の15%及び40%の香料)を模倣する、2種類の異なる香料濃度を作る。さらに、これらの2種の組成物は5%のエタノールを含む(表2を参照)。各々の最終混合物は均質でなければならず、比重は0.82~0.99でなければならない。
【0070】
比重
様々な油を共押出操作で使用できるかどうかを明らかにするために、温度制御を備えたAnton Paar比重計を使用して、様々な香料/油/エタノールの混合物の比重を測定する(表2)。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
結果は、親油性溶媒としての10cStのジメチコン(ポリジメチルシロキサン)は香料及びエタノールとの均質の混合物の実現を可能にしないことを示し、これは2相となるためである。他方で、すべての他の混合物は均質であり、したがって調査された他の親油性溶媒は共押出操作に適している。
【0074】
粘度
レオロジー的挙動をHaake MARS IIIレオメーターにより調べる。単独の(図1)又は15/85の香料/油質量比で香料と混合された(図2)様々な油の粘度を測定する目的で、mPa・sで表される粘度(η)をs-1で表されるせん断速度の関数として表すために、25℃にて2度の角度の5mmコーンを使用して、回転させながら測定を行う。検討される値は10s-1のせん断速度についての値である。
【0075】
観測される違いを検証するために70℃での調査もいくつかの油について行った(表3)。粘度は著しく低下する。しかし昇順は維持される。
【0076】
【表3】
【0077】
図3は、10s-1のせん断速度における25℃での粘度値を、皮膚のべたつきと共に示す(毒性学的な理由のため香料単独は試験しなかった)。他の油又はエタノールの粘度と比較して、それぞれ21.4及び45.0mPa・sであるMCTの粘度及びブドウ種子油の粘度との間に明確な差がある。10mPa・sの閾値が、油っぽすぎる油と、快適又はさらさらした仕上がりとさえ認識される油とを分ける。結論として、MCT並びにブドウ種子油は適切ではない。
【0078】
拡散
M. Douguet et al.による公開(Spreading properties of cosmetic emollients: Use of synthetic skin surface to elucidate structural effects - Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 154 (2017) 307-314)などの文献に示される対数回帰式を使用して、拡散性データを計算する(図4を参照)。この公開において、53種の皮膚軟化剤(エステル、シリコーン、並びに植物油及び鉱油の中から)が特性決定され、拡散値に対する3つの物理化学的パラメーター(粘度、表面張力、及び比重)の影響を調べた。部分最小二乗回帰による統計分析後、25℃(x)で測定される粘度が、下記の対数回帰にしたがって皮膚軟化剤の性質の関数として拡散性(y)を予測するための最も信頼性のある変数であることが分かった。
エステルについて(発明者らの調査ではIPM、イソアジペート、及びココカプリレート):
[数式5]
y=-225×log(x)+1315
シリコーンについて(発明者らの調査ではオクタメチルトリシロキサン及びポリジメチルシロキサンジメチコン):
[数式6]
y=-222×log(x)+1670
植物油について(発明者らの調査ではMCT及びブドウ種子油):
[数式7]
y=-101×log(x)+748。
【0079】
測定され上記の表3にまとめられた粘度値を使用して、上記の式を使用して拡散値を計算する(表4)。植物油は発明者らの調査において「中程度」(500~850mm/10分)と分類される拡散値を有するが、一方で本発明による好ましい油は「高い」(850mm/10分を超える)と分類される拡散値を有する。
【0080】
蒸発
熱処理中の試料の質量の評価にしたがって、エタノール又は油との混合物中の香料の蒸発を分析する。この調査はMettler Toledo - HX204 Halogen Moisture Analyzer天秤を使用して行われる。
【0081】
アルミニウム皿にある紙フィルター上に1gの試料を1滴ずつのせる。70℃で分析を行う。
【0082】
1回目の分析は2時間かけて行われ、目的は蒸発の「プラトー」領域、すなわち最大の蒸発に到達するのに要する時間を決定することである。
【0083】
標準的な香料/エタノール混合物
試験結果は、標準的な香料/エタノール混合物(15/85の質量比)の蒸発の少なくとも85%が210秒後又は3.5分後に得られ(図5を参照)であることを示し、香料A、B、C、及びDについてそれぞれ86.5%、87.6%、87.2%、及び85.8%である。したがって、その後の熱処理による分析は下記で30分のみで行われることになる(2時間ではない)。
【0084】
純粋な油又は純水な香料
210秒において、すべての油は、MCT、IPM、イソアジペート、ココカプリレート、及びブドウ種子油についてそれぞれ1.7%、1.7%、4.0%、0.7%、及び1.4%に相当する、エタノール(100%)よりもはるかに低い蒸発能力を有する。例外は82.5%の蒸発能力を有するジメチコン1cStである。この蒸発能力は、香料A、香料B、香料C、及び香料Dについてそれぞれ5.1%、7.5%、7.5%、及び7.5%の蒸発能力を有する純粋な香料の蒸発能力よりもやはり低い(図6及び図7を参照)。
【0085】
香料/エタノール混合物対本発明による香料/油混合物
重量で40%の香料Aの濃度を有する試料を、様々な油を使用して作った。香料は油よりも高い蒸発能力を有するので、分析は香料濃度が高いほど蒸発がより良好であることを裏付ける(図8及び図9)。
【0086】
重量で40%の香料の濃度を有する試料について、210秒での分析の結果は、MCTが香料A、B、C、又はDのいずれでも2%を超える蒸発を可能にしないことを示す。ブドウ種子油は香料C又はDにおいて2%を超える蒸発を可能にしない。他方で、他の油はすべて、香料に関係なく2%を超える蒸発を可能にする(図10~17を参照)。
【0087】
結論
様々な性質の油(エステル、植物油、及びシリコーン)の物理化学的特性決定は、高級香料類の香料の従来のアルコール系混合物と比較した、高級香料類の香料との混合物における押出操作との適合性、及び期待される感覚の仕上がりとの両立性を調べることを可能にする。下記の表4はデータをまとめている。
【0088】
【表4】
【0089】
油/香料/エタノール混合物はすべて、共押出を可能にする比重を有するが、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン10cSt)で作られた混合物は均質ではない。このジメチコン10cStはしたがって本発明の溶媒とは示されず、これはエタノール/香料混合物と混和性ではないためである。
【0090】
試験された油の25℃でのレオロジープロファイル(10s-1のせん断速度における)は、10mPa・sの粘度において集団の分離を示す。そのため、この調査のMCT及びブドウ種子油はこの限度を超える粘度を有する。さらに、MCT及びブドウ種子油は「中程度」の範囲内の拡散値を有し、これは皮膚のそれらの油っぽさを説明する。最後に、これらの2つの油は70℃で210秒において最低の蒸発を示す。
【0091】
これらの様々な試験後、押出操作と適合性があり十分な嗅覚上の性能をもたらし皮膚のべたつきがない最良の親油性溶媒は、このように、エステル、例えばIPM、ココカプリレート、イソアジペートなど、及び低粘度ジメチコン、例えばオクタメチルトリシロキサンなどである。様々な香料を使用した共押出において下記で試験されるのはこれらのエステルである。様々な香料濃度による試験も行われる。
【0092】
本発明によるカプセル
カプセルは、欧州特許第513603号明細書に記載される共押出操作により製造される。カプセルを調製するための一般的手順は下記で説明される。一組の浸漬同軸ノズルを通してゲル化可能な混合物の外側水性相及びコアの内側油相を個々に送り出して同心状の複合材流を形成させ、これは加えられる振動エネルギーの効果のもとで別々の同心状の液滴に分離する。一組の同軸ノズルからの放出物は、ゲル化可能な混合物のゲル化温度未満の温度であるキャリア流体(例えばMCT)に浸漬される。ゲル化可能な混合物はこのようにして冷却されカプセルの含水コア-シェル部を形成する。このようにして形成されたカプセルを次いで収集及び遠心分離して残留MCTの大部分を取り除く。遠心分離したカプセル及び可能な割合の乾燥剤(例えばデンプン)を混合し、次いで40℃の回転乾燥機において風乾する。乾燥カプセルを収集しふるい分けする。本発明の実施形態にしたがって調製された、乾燥易崩壊性カプセルは、均質で滑らかな外観を有し、球状又は実質的に球状である(マイクロカプセルの幅と長さの平均的な比により測定される)。一実施形態において、乾燥易崩壊性カプセルはまた、2本の指の間でこれらのカプセルを壊すことを可能にするテクスチャープロファイルも有する。
【0093】
カプセルシェル(ゲル化可能な混合物)の組成(質量パーセント)を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
カプセルの各々の試料について、様々な親油性混合物中の親油性コアの組成(質量パーセント)を表6に詳細に示す。20%の香料Aを使用して試験された油は、MCT、IPM、イソアジペート、及びココカプリレートである。より高濃度(40%)の香料Aを使用した押出はココカプリレートを使用して試験される。最後に、20%の香料Bを使用した押出はココカプリレートを使用して行われる。
【0096】
すべてのカプセルを作ることができた。付随するカプセルのサイズ(mm)、硬度(kg)、及び弾性(%)値も表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
結論として、比重0.82~0.99の比重を有する、高級香料類の香料及びエタノールの混合物との油の混和性によって、サイズが3.5~4.5mmであり、硬度が0.5kg~2.5kgであり、弾性(破断点での変形パーセンテージとして表される)が30%~50%である芳香カプセルを作ることが可能になる。しかし、良好な蒸発及び高い拡散値を得るためには、エステル(IPM、イソアジペート、及びココカプリレートなど)、並びにシリコーン(オクタメチルトリシロキサンなど)が好ましいことになる。
【0099】
下記の表7により、カプセルが崩壊する際にカプセルにより供給される香料(プラス溶媒)の体積の比較ができる。従来のアルコール系香料の1回の噴出は平均で50~120μlを供給することが知られているが、90%まで充填された1個の5mmカプセルは60μlの香料を供給できることが示され、これは有利である。
【0100】
【表7】
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図10
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図17
【国際調査報告】