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特表2023-542489格納式針と圧力印加面が凹状である変形プランジャーハンドルとを備えた医療用注射器
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  • 特表-格納式針と圧力印加面が凹状である変形プランジャーハンドルとを備えた医療用注射器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】格納式針と圧力印加面が凹状である変形プランジャーハンドルとを備えた医療用注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
A61M5/32 510H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514715
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 US2021048534
(87)【国際公開番号】W WO2022051301
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】17/011,713
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513066638
【氏名又は名称】リトラクタブル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Retractable Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】511 Lobo Lane Little Elm, TX 75068, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】508328486
【氏名又は名称】ショー,トーマス ジェイ.
【氏名又は名称原語表記】SHAW,Thomas J.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェイ.ショー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ モニーク マイアーズ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH12
4C066LL26
4C066NN07
(57)【要約】
【解決手段】医療用注射器は、使用後に選択的に格納可能な前方に突出する針を有し、協働して凹状圧力印加面(「CPAS」)を形成する特別に構成されたプランジャーハンドル及び親指キャップを更に有する。プランジャーハンドル後部の凹状圧力印加面により、本医療用注射器は、従来技術の装置を使用した場合には得られない、関連する治療上の利益をもたらす機能上の利点を達成できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルと、前記バレルの内壁に摺動可能に係合するプランジャーと、使用後に選択的に格納可能である前方に突出する針とを有する医療用注射器において、親指キャップとエンドプラグが協働して、使用者が前向きの親指力を加える後向き凹状圧力印加面(CPAS)を形成するプランジャーハンドルを更に備える医療用注射器。
【請求項2】
前記エンドプラグは、前記親指キャップの協働的に湾曲した内向き凹状面に並置されて、協働的に揃えられて接する凹状近位端面を有する、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項3】
前記親指キャップの協働的に湾曲した内向き凹状面は、前記エンドプラグの外縁から前記親指キャップの周方向に延びる後縁まで後方に延びる、請求項2に記載の医療用注射器。
【請求項4】
前記CPASは、前記プランジャーハンドルと同軸状に揃えられており、約0.06乃至約0.085の範囲の深さ対直径比を有する、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項5】
前記CPASは、前記プランジャーハンドルと同軸状に揃えられており、約0.078の深さ対直径比を有する、請求項4に記載の医療用注射器。
【請求項6】
前記プランジャーハンドルと前記親指キャップとは熱可塑性樹脂で一体成形されている、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項7】
前記エンドプラグは熱可塑性樹脂から成形されており、前記親指キャップの後向きアパーチャに摩擦係合する、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項8】
前記プランジャーハンドルは、前記針が格納される場合に前記親指キャップと前記エンドプラグの間の加圧空気を逃すように通気する、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項9】
前記親指キャップは、前記針が格納されると、前記バレルの後向き開口内に入れ子式に配置される、請求項1に記載の医療用注射器。
【請求項10】
使用者と患者の負担を軽減し、よりスムーズに注射を行う方法であって、バレルと、前記バレルの内壁に摺動可能に係合するプランジャーと、使用後に選択的に格納可能である前方に突出する針とを有しており、親指キャップとエンドプラグが協働して、使用者が前向きの親指力を加える後向き凹状圧力印加面(CPAS)を形成するプランジャーハンドルを更に備えている医療用注射器を選択して用意することと、その後、注射を行いながらCPASに前向きの親指力を加えることとを含む方法。
【請求項11】
高粘度を有することを特徴とする流体の注射を投与する間に、前記親指力がCPASに加えられる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用注射器に関している。より詳細には、本発明は、針格納キャビティ及び凹状圧力印加面を備える変形プランジャーハンドルを有する注射器であって、凹状圧力印加面は、使用者がより容易に、より快適に、且つより安全に注射を行い、注射後に針格納キャビティへの針の格納を開始することを可能にする注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
バレルと、バレルの内壁に摺動可能に係合する可撓性シールを有する管状プランジャーハンドルと、バレルのノーズ部の内側に配置されて前方に突出する針とを備える注射器は、以前から知られている。このような注射器の幾つかでは、前方に突出する針と針ホルダーとは、圧縮されたばねによって後方に付勢されると共に、針ホルダーとバレルの内壁セクションとの間に配置された弾性摩擦リングによって付勢力に抗して拘束される。このような注射器の幾つかでは、針は使用後に、同軸状に揃えられておりプランジャーハンドルの内側に配置された針格納キャビティ内に選択的に引き込み可能である。プランジャーハンドルの親指キャップを継続的に押し下げる一方で、バレルの指フランジに逆向きの圧力を維持することによって患者に注射を行うと、針ホルダーの頭部がプランジャーハンドルの前側開口の内側に配置されたプランジャープラグに接触してそのプランジャープラグを後方に押すのと同時に、プランジャーの先端が摩擦リングに接触して針ホルダーの頭部から摩擦リングを前方に押し出す。摩擦リングが針ホルダーから外れてプランジャープラグが除かれると、後方に付勢された針と針ホルダーとは、同軸状に揃えられた針格納キャビティ内の保護位置へと後方に駆動される。望ましくは、摩擦リングによる針ホルダーの解放後に圧縮ばねが伸びると、前方に向いた針先は、異なる構成の注射器では起こり得る偶発的な針刺しの危険無しで、患者から引き抜かれて注射器内の保護位置に配置される。針が格納されると、針先が少なくともバレル12の前部の内側に引き込まれているので、異なる注射器製品で起こり得るタイプの偶発的な針刺し負傷は防止される。上述したタイプの注射器は、例えば、米国特許第5,632,733号、第5,810,775号、第5,997,512号、第6,015,438号、第6,090,077号、第6,572,584号、及び第7,351,224号に開示されている。
【0003】
上記の特許に開示されているような従来技術の医療用注射器では、プランジャーハンドルの近位端部は、通常、平らな又は凸状の「親指キャップ」を備えている。親指キャップは、ハンドルの管状セクションの後向き開口の周りで径方向外向きに広がっており、外径を有する外縁部を有しており、当該外縁部は、注射器バレルの側壁の近位端部に接するように、又は、バレルの近位端部に配置された環状の凹部の内側に配置される又は「入れ子」になるように設計されており、プランジャーハンドルが針の格納に続いて注射器のバレルから軸方向に引き抜かれる可能性が低減されている。プランジャーハンドルの親指キャップ部はまた、典型的には、内径を有する内向きアパーチャを備えている。当該アパーチャは、テーパー状になっており、針格納キャビティの内部への後からのアクセスを遮断するために、注射器の組立て中にプランジャーハンドルの親指キャップに挿入されるエンドプラグ(場合によっては着色される)を受け入れる。エンドプラグは、典型的には、親指キャップのアパーチャと摩擦係合可能であり、また、例えば、米国6,572,584号の図1図3に示すように、凸状の近位端面を有している。
【発明の概要】
【0004】
従来技術に開示されている注射器とは異なり、本明細書に開示される装置は、使用後に選択的に格納できる前方に突出した針と、凹状圧力印加面(「CPAS」)を形成するように協働するように特別に構成された親指キャップ及びエンドプラグを有するプランジャーハンドルとを有する医療用注射器である。プランジャーハンドル後部の凹状圧力印加面により、本医療用注射器は、従来技術の装置を使用した場合には得られない、各々が関連する治療上の利益をもたらす3つの機能上の利点を達成できる。
【0005】
本発明の凹状圧力印加面が設けられたプランジャーハンドルを有する注射器で注射を行う場合に達成される第1の機能上の利点は、プランジャーハンドルの親指キャップ及びエンドプラグに対して使用者の親指によって手動で印加された前向き圧力(「親指力」)の大部分が集まって、プランジャーハンドルの縦軸に向かって内向きに集中する。これにより、注射器バレル及び針を介して注射を受ける患者に流体を押し込むためにプランジャーハンドル、プランジャーシール、及び遠位に配置されたプランジャープラグを通じて印加される親指力の利用が改善される。これに関連する治療上の利点は、使用者が他の注射可能な液体又は薬と比較して高粘度を有する液体を比較的大量に注射する場合に、特に顕著又は重要となり得る。また、プランジャーハンドルの親指キャップと近位のエンドプラグとにおける協働配置された近位端部によって形成される凹状圧力印加面の提供及び使用は、注射中にプランジャーハンドルが注射器バレル内をスムーズ且つ連続的に進むことに大きく寄与すると考えられる。
【0006】
付随して、本発明の凹状圧力印加面を備えたプランジャーハンドルを有する注射器の使用によって達成される第2の機能上の利点は、注射中に使用者が印加する親指力の大部分が減少したり、誤った方向に向けられたり、誤って印加されたりしないことである。これらは、圧力印加面が凹状ではなく平ら又は凸状である場合に、使用者の親指が利用可能な表面領域の側方に滑り落ちたり、利用可能な表面領域と十分に係合していない場合に起こり得る。これに関連する治療上の利点も実現される。何故ならば、プランジャーハンドルの近位端部に圧力を印加している間に使用者の親指が滑ることによって引き起こされる横方向の動き又は痙動(jerking)は、患者内で針先の更に大きな動きを生み出す可能性があることから、注射中に患者が経験する不快感が強まるからである。
【0007】
凹状圧力印加面が設けられたプランジャーハンドルを有する注射器を使用することによって達成される第3の機能上の利点は、CPASがより快適に使用者の親指に適合することである。対照的に、使用者がプランジャーハンドルの凸状近位端部に対して親指力を加え、反対向きの抵抗圧力が注射中にプランジャーバレルの指フランジに対して加えられる場合には、使用者は、プランジャーハンドルの近位端部によって「突かれる(poked)」ために不快感を感じる可能性が高く、関連する不快感に反応して、プランジャーハンドルの近位端部に加えられる親指力の大きさが減少する可能性がある。印加される親指力のこのような減少は、注射を長引かせて、使用者と患者の両方に不快感を与える期間を長くする可能性がある。
【0008】
添付の図面は一定の縮尺で描かれていないが、図3乃至6を参照して詳細な説明を読むことで、注射器の縦軸に沿って測定されたCPASの深さと、プランジャーハンドルの親指キャップの後方に延びる縁部を横切って測定されたCPASの直径とは、注射器の公称サイズ(3mLのように容量のmLで表される)とプランジャーハンドルの直径によって異なり得ることは、当業者に理解されるはずである。出願人は現在、CPASの最も広い部分における親指キャップの内側アパーチャの直径に対する、協働的に構成されて組み立てられた(エンドプラグが親指キャップ内に設置されている)プランジャーハンドルの凹部の最大深さの比が約0.06乃至約0.085である場合に本発明の利益が満足に達成でき、好ましい比は約0.078であると考える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のシステム及び方法は、以下の図面に関連して更に記載及び説明される。
図1図1は、従来技術の医療用注射器を示す背面図である。当該注射器は本発明と共通する幾つかの構造的要素を具現化しているが、本発明の構造的改良を具現化していない従来の親指キャップを備えたプランジャーハンドルを有している。
図2図2は、図1の線2-2に沿って破断した図1の従来技術の注射器の側断面図である。
図3図3は、本発明の医療用注射器の好ましい実施形態を示す背面図である。
図4図4は、図3の線4-4に沿って破断した図3の医療用注射器の断面図である。
図5図5は、部分的に破断された、図4から取った拡大詳細図である。
図6図6は、部分的に破断された、図5から取った拡大詳細図である。 図3乃至6は、本発明の構造的要素を例示するが、縮尺通りには描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明の医療用注射器40と共通する幾つかの要素を有する従来技術の医療用注射器10を図示しており、これらの要素は、図3乃至図6に関連して以下で更に説明される。図1及び図2を参照すると、医療用注射器10は、内径が異なる複数のセクションを有する円筒状のバレル12を備えている。針キャップ22は、注射器バレル12の外向き表面セクションに摩擦係合するカラー部分23を有する近位端部を含む。針ホルダー11と遠位方向に突出する針20とを備える格納式針アセンブリ24は、円筒形バレル12の前部の内側に配置される。針ホルダー11及び針20は、コイルばね13によって後方に付勢される。コイルばね13は、針ホルダー11とバレル12の内壁セクションとの間に配置された摩擦リング15又は同様な効果を有する他の保持部材によって注射前及び注射中において圧縮状態に保持される。細長の管状プランジャーハンドル14は中央に配置された針格納キャビティ18を含んでおり、互いに逆向きに径方向に延在するバレル12の指フランジ26,28の後ろに配置された後向き開口を介して円筒形バレル12に挿入される。
【0011】
プランジャーハンドル14の遠位部は、環状の弾性プランジャーシール16を更に備えている。プランジャーシール16は、円筒状バレル12の内壁と摺動可能に係合し、プランジャーハンドル18の遠位端でプランジャープラグ25と協働して、格納式針アセンブリ24とプランジャーハンドル14との間でバレル12内にて可変容積流体チャンバ-21を画定する。
【0012】
従来技術の医療用注射器10の使用中、針キャップ22の取り外し後、注射薬は通常、格納式針アセンブリ24とプランジャーハンドル14との間でバレル12内に位置している可変容積流体チャンバー21内に吸引される。針20が患者に挿入された後、プランジャーハンドル14をバレル12内で前進させ、プランジャープラグ25が格納式針アセンブリ24の針ホルダー11に接触して注射が完了するまで、注射が行われる。通常、注射中においては、プランジャーハンドル14の親指キャップ30の凸状端面32に対して親指の圧力を前方に加え、それと同時に、バレル12の互いに逆向きに外側に突出する指フランジ26,28の遠位に向いた面に反対向きの指の圧力を後向きに加えることによって、プランジャーハンドル14がバレル12内で遠位方向に進む。注射が完了すると、プランジャーハンドル14の親指キャップ30の凸状端面32に対して使用者が親指の圧力を及ぼし続けることによって、プランジャープラグ25が針ホルダー11の近位端部に接触し、それによってプランジャーハンドル14の遠位に向いた開口からプランジャープラグ25が外れる。同時に、プランジャーハンドル14の遠位端は、摩擦リング15を針ホルダー11の外面から環状空間17に前方に押し出し、圧縮ばね13が伸びることで針ホルダー11及びプランジャープラグ25を針格納チャンバー18内へと後方に駆動することを可能にする。針ホルダー11が伸びる圧縮ばねの付勢力によって後方に駆動されると、針20は同時に患者の注射部位から引き抜かれて、針ホルダー11によって後方に運ばれる。針が格納されると、針先が少なくともバレル12の前部の内側に引き込まれるので、異なる注射器製品で起こり得るタイプの偶発的な針刺し負傷が防止される。
【0013】
さて、出願人は、プランジャーハンドルを改変して上記に開示したタイプの医療用注射器を更に改善して機能を強化することで、注射と針の格納とに関するより大きな快適さと制御を使用者に与えて、注射中の薬剤のよりスムーズな送達と注射に続くよりスムーズな針の格納とを提供できることを見出した。本発明に従って改変されたプランジャーハンドルを有する医療用注射器はまた、粘性が高い薬剤を使用する場合に特に有効である。
【0014】
図3乃至図6を参照すると、本発明の医療用注射器40は、バレル42と、バレル42の内壁に摺動可能に係合する細長い管状のプランジャーハンドル44と、弾性プランジャーシール46と、バレル42の前部の内部に配置される格納式針アセンブリ54とを備えている。針50は、針ホルダー41に取り付けられて、針ホルダー41から前方に突出している。針50は、使用前には、着脱可能な針キャップ52によって覆われており、針キャップ52は、バレル42の前部付近の外向きの壁部に摩擦係合するカラー53を近位端部に有する。針ホルダー41及び針50は、コイルばね43によって後方に付勢される。コイルばね43は、ホルダー41とバレル42の内壁セクションとの間に配置された摩擦リング45によって注射中に圧縮状態に保持される。
【0015】
細長い管状のプランジャーハンドル44は、環状の凹部88を有する後向き開口を通して円筒形のバレル42に挿入されるのが望ましい。プランジャーハンドル44がバレル42の内部に完全に進んで針50が注射後に格納されると、親指キャップ60の最も外側の部分86を凹部88の内側に入れ子状に係合させるのに十分な内径及び深さを、環状の凹部88は有する。このような入れ子式係合は、安全上の理由から注射器の再使用の可能性を抑止し、また、針の格納後にバレル42からプランジャーハンドル44を取り外すことを阻止して、偶発的な針刺し又は血液若しくは他の体液との接触による不注意による病原体汚染の可能性を減らすために望ましい。プランジャーハンドル44の遠位部は、環状弾性プランジャーシール46を更に含む。プランジャーシール46は、円筒形バレル42の内壁に摺動可能に係合し、プランジャーハンドル44の遠位端でプランジャープラグ55と協働して格納式針アセンブリ54とプランジャーハンドル44との間でバレル42内に可変容積流体チャンバー49を画定する。細長い管状のプランジャーハンドル44を除く医療用注射器40の前述の各部分は、従来技術の医療用注射器10の同様の部分に関して上述したものと実質的に同じように構成されて動作する。
【0016】
ここで、図3乃至図6に見られるように、バレル42のフランジ要素56,58の後方に配置されたプランジャーハンドル44の部分を参照すると、後向きの凹状圧力印加面(CPAS)が、協働的に構成された親指キャップ60と摩擦係合エンドプラグ62を組み合せて揃えることによって、プランジャーハンドル44の後向き端部に形成されている。注射器40のバレル42、プランジャーハンドル44、親指キャップ60、及びエンドプラグ62は全て、成形可能な熱可塑性材料で作られていることが望ましい。
【0017】
より詳細には図6を参照すると、エンドプラグ62の後向き端面は凹状であり、中心点70は凹状端面の最も前方に延びた点を示しており、周方向に延びる外縁72は、エンドプラグ62の凹状端面の最も後方に延びた部分を示している。重要なことには、エンドプラグ62の凹状近位端面は、親指キャップ60の協働的に湾曲した内向き凹状面76と並置されて、これと協働的に揃えられて接している。内向き凹状面76は、エンドプラグ62の外縁72から親指キャップ60の周方向に延びた後縁74まで後方に延びている。エンドプラグ62及び親指キャップ60の協働的に構成されて揃えられた部分は、それによって、エンドプラグ62の最下点70の長手方向距離を表す深さ「d」と、親指キャップ60の周方向に延びる後縁74の直径と等しい直径「OD」とを有するCPASを形成する。
【0018】
前述のように、当業者は、図3乃至図6を参照して本開示を読むことで、注射器40の長手方向軸に沿って測定されたCPASの深さと親指キャップ60の周方向に延びる後縁74を横切って測定されたCPASのODとは、注射器の公称サイズ(例えば3mLのように容量のmLで表される)とプランジャーハンドルの直径とに従って変化し得ることを理解するであろう。出願人は現在、CPASの最も広い部分における親指キャップの内側アパーチャの直径「OD」に対する、協働的に構成されて組み立てられた(エンドプラグ62が親指キャップ60内に設置されている)プランジャーハンドル44の凹部の最大深さ「d」の比が約0.06~約0.085である場合に本発明の利益が満足に達成でき、好ましい比は約0.078であると考える。この寸法比は、凹状圧力印加面を提供し、当該凹状圧力印加面は、親指キャップ60上での親指の横滑りを、さもなければ起こり得る使用者又は患者に不快感をもたらす重大なリスクなしに、注射中に使用者によってプランジャーハンドル44の後部に加えられる親指力を十分且つ快適に集中させる。更に、協働的に構成されて揃えられた親指キャップ60及びエンドプラグ62が形成する凹状圧力印加面(CPAS)を備えた注射器40の使用は、使用者及び患者に与える不快感を軽減する一方で、高粘度の薬剤又はその他の流体の注入を容易にする。
【0019】
エンドプラグ62は、内向きにテーパー状にされており、前方に延びるスカート部65を更に含んでいることが望ましく、そのスカート部は、プランジャーハンドル44の管状ボアを画定する段付き内壁の少なくとも一部に挿入され、また、当該段付き内壁の少なくとも一部と摩擦係合可能な大きさにされている。エンドプラグ62のスカート部65の外側にあって外向きに突出する環状突起78,82は、協働的に揃えられた凹部80,84と緩く係合しており、注射後の針格納中に管状ボアの内側からエンドプラグ62の周りの空気を排出可能にする。図3乃至図6を再度参照すると、チャネル64,66が注射器40の親指キャップ60に設けられており、位置合わせされた凹部80,84と協働して、このような通気を、親指の圧力がプランジャーハンドル44のCPASに依然として加えられている場合でも容易にする。
【0020】
本明細書に開示された装置に対する他の変更及び改変は、添付の図面との関連で本明細書を読むことで、当業者には明らかになるであろう。本明細書に開示された発明の範囲は、発明者らが法的に権利を有する添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】