(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】メディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B02C 17/00 20060101AFI20231002BHJP
B02C 23/06 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B02C17/00 A
B02C23/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518147
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021071462
(87)【国際公開番号】W WO2022061340
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523098223
【氏名又は名称】ユー.エス.シリカ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】U.S. SILICA COMPANY
【住所又は居所原語表記】24275 KATY FREEWAY, SUITE 600, KATY, TEXAS 77494, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ピチュマニ,ラマナン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,ジュニア,デイヴィッド・アール
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063FF12
4D063FF14
4D063FF35
4D063GC17
4D063GC36
4D063GD04
4D063GD27
4D067EE17
4D067EE42
(57)【要約】
ここで開示するのは、メディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置である。ナノメートルスケール粒子を生成するための方法は、供給基材懸濁液をメディアミルに加えるステップを含む。前記供給基材懸濁液は、液体キャリア媒体および供給基材粒子を含む。前記方法はさらに、前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に静電立体的分散剤を加えるステップを含む。前記静電立体的分散剤は高分子電解質を含む。その上さらに、前記方法は、前記メディアミルを所定時間作動して前記供給基材粒子を細分化し、それによって約1マイクロメートル未満の(D90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップと、前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノメートルスケール粒子を生成するための方法であって、
メディアミルに供給基材懸濁液を加えるステップであって、該供給基材懸濁液が液体キャリア媒体および供給基材粒子を含む、ステップと、
前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に静電立体的分散剤を加えるステップであって、該静電立体的分散剤が高分子電解質を含む、ステップと、
前記メディアミルを所定時間作動させて前記供給基材粒子を細分化し、それによって約1マイクロメートル未満の(D
90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップと、
前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記液体キャリア媒体が水または有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給基材粒子が、有機または無機固体、ガラス、グラフェン、金属、鉱物、鉱石、シリカ、珪藻土、粘土、有機および無機顔料、製薬材料、またはカーボンブラックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記供給基材粒子が、前記供給基材懸濁液の約5重量%から約70重量%の量で前記供給基材懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給基材粒子が、前記供給基材懸濁液の約5重量%から約40重量%の量で前記供給基材懸濁液中に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高分子電解質が、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所定時間が約10分間から約6,000分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノメートルスケール粒子が約500nm未満の(D
90)粒度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記メディアミルがミリングメディアを含み、前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップが、さらに前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップの後に、前記ナノメートルスケール粒子を乾燥させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップの後に、前記ナノメートルスケール粒子から前記静電立体的分散剤を分離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に消泡剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記静電立体的分散剤が、前記供給基材粒子の約2重量%から約20重量%の量で加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記メディアミルが作動している前記所定時間中に追加の静電立体的分散剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ミリング室と、
前記ミリング室内に延出するアジテータと、
前記ミリング室内に配置されたミリングメディアと、
液体キャリア媒体および供給基材粒子を含み、前記ミリング室内に配置され、前記ミリングメディアが散在している供給基材懸濁液と、
前記供給基材懸濁液内に混合した高分子電解質を含む静電立体的分散剤と、を含む、ナノメートルスケール粒子を生成するように構成されたメディアミル装置であって、
前記アジテータが、前記ミリングメディアに機械的作用を所定時間加え、それによって前記ミリングメディアに前記供給基材粒子を細分化させて、約1マイクロメートル未満の(D
90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するように構成される、メディアミル装置。
【請求項16】
前記ミリング室がさらにスクリーンを含み、該スクリーンが、前記ナノメートルスケール粒子の通過は許容するが前記ミリングメディアの通過は許容しないサイズである、請求項15に記載のメディアミル装置。
【請求項17】
前記ミリングメディアが、砂、鋼、炭化ケイ素、セラミック、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化イットリウム、ガラス、アルミナ、チタン、架橋ポリスチレン、およびメタクリル酸メチルのうちの一つまたは複数を含む、請求項15に記載のメディアミル装置。
【請求項18】
前記ミリングメディアが、ボール、ビーズ、および円柱のうちの一つまたは複数の形状で提供される、請求項15に記載のメディアミル装置。
【請求項19】
前記高分子電解質が、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーまたはコポリマーを含む、請求項15に記載のメディアミル装置。
【請求項20】
ミリングメディアを含むメディアミル内でナノメートルスケール粒子を生成するための方法であって、
前記メディアミルに供給基材懸濁液を加えるステップであって、前記供給基材懸濁液が、水または有機溶媒を含む液体キャリア媒体と、有機または無機固体、ガラス、グラフェン、金属、鉱物、鉱石、シリカ、珪藻土、粘土、有機および無機顔料、製薬材料、またはカーボンブラックを含む供給基材粒子と、を含み、該供給基材粒子が、前記供給基材懸濁液の約5重量%から約70重量%の量で前記供給基材懸濁液中に存在する、ステップと、
前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に静電立体的分散剤を加えるステップであって、該静電立体的分散剤が高分子電解質を含み、該高分子電解質が、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーまたはコポリマーを含み、前記静電立体的分散剤が、前記供給基材粒子の約2重量%から約20重量%の量で加えられる、ステップと、
前記メディアミルを約10分間から約6,000分間の時間作動させて前記供給基材粒子を細分化し、それによって約1マイクロメートル未満の(D
90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップと、
前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環し、前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離するステップと、
前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離するステップの後に前記ナノメートルスケール粒子を乾燥させるステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、様々な産業および商業目的の超微粒子を生成するための方法および装置に関する。より具体的には、本開示は、ボールミル、遊星ミル、コニカルミル、および攪拌メディアミルなどのメディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メディアミリングとは、概して、相対的に大きなサイズのメディアの粒子を機械的作用の適用を通して相対的に小さなサイズに破砕する工程を指す。
【0003】
従来のミリング方法としては、乾式ミリングおよび湿式ミリングが挙げられる。
【0004】
乾式ミリングでは、前記機械的作用を粒子に加えながら、空気(または不活性ガス)を使用して前記粒子を懸濁状態に維持する。しかしながら、粒度が減少するにつれ、微粒子はファンデルワールス力に応じて凝集する傾向があり、これが乾式ミリングの能力を制限する。
【0005】
対照的に、湿式ミリングは、水やアルコール類、アルデヒド類、およびケトン類などの有機溶媒などの液体を使用して微粒子の再凝集を制御する。したがって、典型的には、サブミクロンサイズの粒子の細分化には湿式ミリングが使用される。
【0006】
サブミクロン粒子を作る別の工程はジェットミリングである。これは、超音速空気または超音速流を使用する乾式工程である。しかしながら、ジェットミリングは高エネルギー集約型なので非常にコストがかかる。
【0007】
従来の慣習では、湿式ミルは、典型的に、攪拌またはアジテーションなどの機械的作用を受けたときに、液状媒体中に懸濁した粒子を砕くのに十分な力を付与するミリングメディアを含む。
【0008】
ミリングデバイスは、前記メディアに前記機械的作用を与えるために使用される方法によって分類される。湿式ミル内で与えられる前記作用としては、とりわけ、攪拌、転動、振動運動、遊星運動、アジテーション、および超音波ミリングを挙げることができる。
【0009】
上記のミルタイプのうち、前記攪拌メディアミルは、そのミリングメディアとして様々なサイズのボールを利用し、その機械的作用を付与するための方法として攪拌を利用するものであるが、高エネルギー効率、高い固体ハンドリング性、狭いサイズ分布での生成物の生成、および均質なスラリーを生成する能力を含む、粒子細分化にとってのいくつかの利点を有する。
【0010】
攪拌メディアミルを使用する際に考慮される可能性のある可変要素としては、例えば、アジテータ速度、懸濁液流量、滞留時間、スラリー粘度および濃度、供給する粒子の固体サイズ、ミリングメディア(すなわち、ボール)のサイズ、メディア充填率(すなわち、ミル室内のビーズの量)、および所望の生成物サイズが挙げられる。
【0011】
しかしながら、これらの利点にもかかわらず、攪拌メディアミルには、所望の生成物粒度が約1マイクロメートルを下回ったとき、特に約500ナノメートルを下回ったときにいくつかの欠点がある。例えば、サブミクロン粒度の範囲では、生成物懸濁液(スラリー)の挙動が粒子間相互作用にますます影響されるようになる。これらの相互作用により、粒子の自然凝集が起きる場合があり、前記生成物懸濁液の粘度が増大する。生成物の粒度が約1マイクロメートルを下回るとき、これらの相互作用は、凝集と脱凝集と細分化との間での平衡状態になり、エネルギー入力を増加してもこれ以上細分化が進行しない場合がある。さらに、粒子凝集は、前記生成物懸濁液の粘度の増大とともに、モータミルの負荷が高くなるため必要な電力消費を増大させるが、メディアミルスクリーンを閉塞させ前記懸濁液がこれ以上流れなくなり、前記ミルから粒子が生成物として排出されるのを妨げる場合がある。
【0012】
これらの再凝集効果を抑制するために様々な方法が試みられている。
例えば、ミリング中の粒子分離を維持するために静電的安定化方法が使用されている。
図1に示すように、静電的安定化は、コロイド粒子が互いに反発し合うように前記粒子の表面に同様の電荷を作り出し、それによって前記粒子の懸濁液を分散させる。
【0013】
静電的安定化方法は、生成物懸濁液のpHを調整することによって行うことができる。pHの調整は、弱酸および強酸ならびに弱塩基および強塩基を含む、酸または塩基のいずれかの添加によって制御することができる。あるいは、静電的安定化方法は、前記生成物懸濁液にアニオン性またはカチオン性の分散剤を添加することによって行うこともできる。これらの分散剤は、該分散剤が前記粒子の前記表面に吸着されたときに前記粒子に正電荷または負電荷を付加することによって、前記生成物懸濁液を静電的に安定化する。
【0014】
しかしながら、これらの静電的方法にはいくつかの欠点があり、産業規模の製造では実施が困難になっている。特に、静電的方法を使用する場合、粒度が減少するにつれてそれらの表面積が増大し、添加されたいずれの酸/塩基または分散剤も効果が弱くなることから、前記工程の常時監視および調整が必要である。前記粒子の前記表面積が指数関数的に増大し、前記粒度が減少するにつれ、ますます大量の酸、アルカリ、または分散剤が必要になり、またその量が必要量から僅かであっても逸脱した場合、懸濁液全体がフロックを形成しやすくなり、粘度の急増および前記ミルスクリーンの閉塞によりこれ以上のミリングができなくなる。
【0015】
他の例では、ミリング中の粒子分離を維持するために立体的安定化方法が使用されている。立体的安定化方法は、非イオン系または電気的中性の分散剤を利用して懸濁液中での前記粒子を分離する。
図2に示すように、立体的安定化は、相対的に長鎖のポリマー化合物を前記粒子の前記表面に吸着させることを伴う。前記ポリマーの一部は粒子の前記表面に強く付着するが、前記ポリマーの残りは、前記懸濁液の液状媒体中で自由にたなびくことができる。前記液状媒体が前記ポリマーにとって良好な溶媒である場合、ポリマー鎖の相互貫入、すなわち、分離した粒子上のポリマー同士の相互作用はエネルギー的には都合が良くない。その結果として、個別の粒子が互いに反発し合い(粒子間反発)、それにより前記懸濁液が分散する。
【0016】
しかしながら、前記静電的方法と同様に、これらの立体的方法にはいくつかの欠点があり、産業規模の製造では実施が困難になっている。例えば、立体的に安定化する分散剤には、ますます小さな粒度が生成されるにつれて大量の分散剤が必要になるという不利益がある。ミリング中、前記粒子の前記表面積は指数関数的に増大し、前記粒子の前記表面上でのこれらの分散剤の吸着が低減し、前記ミリング工程の制御が困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、湿式ミリング工程を用いてサブミクロン範囲の粒子を生成するための改善された方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記湿式ミリング工程は、粒度が1マイクロメートルを下回るときに粒子分離を有益に維持して、凝集およびミルスクリーン閉塞を回避するものである。さらに、前記湿式ミリング工程は、生成物懸濁液のフロック形成または粘度の急増を防止するためにいかなる添加物の極めて厳しい管理も必要になることはないという点で、産業規模の製造に有益に適している。
【0019】
さらに、防振装置組立体の他の望ましい特徴および特性は、添付の図面および前述の背景と併せて理解される後述の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【0020】
ここで開示するのは、メディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置である。
【0021】
一実施形態に従って、ナノメートルスケール粒子を生成するための方法は、供給基材懸濁液をメディアミルに加えるステップを含む。
【0022】
前記供給基材懸濁液は、液体キャリア媒体および供給基材粒子を含む。
【0023】
前記方法はさらに、前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に静電立体的分散剤を加えるステップを含む。
【0024】
前記静電立体的分散剤は高分子電解質を含み、その様々な例は下記により詳細に列挙する。
【0025】
その上さらに、前記方法は、前記メディアミルを所定時間作動して前記供給基材粒子を細分化し、それによって約1マイクロメートル未満の(D90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップと、前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップとを含む。
【0026】
別の実施形態に従って、ナノメートルスケール粒子を生成するように構成されたメディアミル装置が、ミリング室と、該ミリング室内に延出するアジテータと、前記ミリング室内に配置されたミリングメディアと、液体キャリア媒体および供給基材粒子を含み、前記ミリング室内に配置され、前記ミリングメディアが散在している供給基材懸濁液とを含む。
【0027】
前記メディアミル装置はさらに、前記供給基材懸濁液内に混合された高分子電解質を含む静電立体的分散剤を含む。
【0028】
前記アジテータは、前記ミリングメディアに機械的作用を所定時間加え、それによって前記ミリングメディアに前記供給基材粒子を細分化させて、約1マイクロメートル未満の(D90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するように構成される。
【0029】
さらに別の実施形態に従って、ミリングメディアを含むメディアミル内でナノメートルスケール粒子を形成するための方法が提供され、該方法は、前記メディアミルに供給基材懸濁液を加えるステップを含む。
【0030】
前記供給基材懸濁液は、水または有機溶媒を含む液体キャリア媒体と、ガラス、グラフェン、金属、鉱物、鉱石、シリカ、珪藻土、粘土、有機および無機顔料、製薬材料、またはカーボンブラックなどの有機または無機固体など、小さなサイズに粉砕する必要がある任意の固体材料を含む供給基材粒子とを含む。
【0031】
前記供給基材粒子は、前記供給基材懸濁液の約5重量%から約70重量%、または約5重量%から約40重量%の量で前記供給基材懸濁液中に存在する。
【0032】
前記方法はさらに、前記メディアミル内の前記供給基材懸濁液に静電立体的分散剤を加えるステップを含む。
【0033】
前記静電立体的分散剤は高分子電解質を含む。前記高分子電解質は、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーまたはコポリマーを含む。
【0034】
前記静電立体的分散剤は、前記供給基材粒子の約2重量%から約20重量%の量で加えられる。
【0035】
前記方法はさらに、前記メディアミルを約10分間から約6,000分間の時間作動させて前記供給基材粒子を細分化し、それによって約1マイクロメートル未満の(D90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップと、前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環し、前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離するステップとを含む。
【0036】
その上さらに、前記方法は、前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離するステップの後に前記ナノメートルスケール粒子を乾燥させるステップを含む。
【0037】
この概要は、詳細な説明において以下にさらに説明する概念の選択を、単純化した形で紹介するために提供している。この概要は、特許請求する主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することは意図しておらず、また特許請求する主題の範囲を決定する際の補助として使用されることも意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】先行技術で実施される静電的方法を利用した生成物懸濁液の粒子分離を示す概念図である。
【
図2】先行技術で実施される立体的方法を利用した生成物懸濁液の粒子分離を示す概念図である。
【
図3A】本開示の一部の実施形態に従って構成された例示的な縦型湿式メディアミルの概略図である。
【
図3B】本開示の一部の実施形態に従って構成された横型湿式メディアミルの概略図である。
【
図4】本開示の一部の実施形態に従って静電立体的方法を利用した生成物懸濁液の粒子分離を示す概念図である。
【
図5】本開示の一部の実施形態に従って湿式メディアミリングのための方法を示すフローチャートである。
【
図6A】本開示の一部の実施例(実施例1)に従って生成した粒子に関する平均粒子径を示すグラフである。
【
図6B】本開示の一部の実施例(実施例2)に従って生成した粒子に関する平均粒子径を示すグラフである。
【
図6C】本開示の一部の実施例(実施例3)に従って生成した粒子に関する平均粒子径を示すグラフである。
【
図6D】本開示の一部の実施例(実施例4)に従って生成した粒子に関する平均粒子径を示すグラフである。
【
図6E】本開示の一部の実施例(実施例5)に従って生成した粒子に関する平均粒子径を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次の詳細な説明は本質的に例示に過ぎず、本発明または本発明の適用および使用を制限することを意図しない。
【0040】
ここで使用する場合、「例示」という用語は「一例、実例、または例証として役立つこと」を意味する。したがって、「例示」としてここで説明するいかなる実施形態も、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されないものとする。
【0041】
さらに、ここで使用する場合、第一、第二、および第三の構成要素などの「第一」、「第二」、「第三」などの序数は、添付の特許請求の範囲における記載によって特に定められていない限り、複数のものの異なる単体を示しているに過ぎない。
【0042】
ここで説明する実施形態および実装形態は全て、当業者が本発明を作るまたは使用することができるように提供するのであって、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲を限定するために提供するのではない例示的な実施形態である。さらに、前述の技術分野、背景、概要、または次の詳細な説明に提示するいかなる明示的または黙示的な理論によっても拘束される意図はない。
【0043】
ここで開示するのは、メディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置の実施形態である。
【0044】
開示する前記実施形態は、静電立体的分散剤を用いて湿式ミリング工程において超微(サブミクロン)粒子の静電立体的(静電的かつ立体的)安定化を利用する。
【0045】
静電立体的分散剤は、生成物粒子懸濁液を静電的かつ立体的に安定化することができるポリマーである。静電立体的分散剤を用いれば、該分散剤の使用が減少し、使用する分散剤の量が厳しい基準に制御される必要があり、前記粒子の凝集が効率的に回避される。
【0046】
これにより、前記懸濁液の粘度が低く維持されるので、ミリング効率の向上および前記湿式ミリング工程のためのエネルギー消費の低減が可能になり、さらに、凝集の確率が低下するのでミルスクリーン閉塞の確率が低下する。
【0047】
本開示に従う前記ナノメートルスケール粒子は、様々な産業で有用な様々な物質を示すことができる。例えば、ここで説明するようにミリングすることができる粒子としては、無機および有機固体、鉱物、鉱石、シリカ、珪藻土、粘土、有機および無機顔料、製薬材料、カーボンブラック、塗料添加剤、顔料、写真材料、化粧品、化学薬品、触媒または支持体として有用な金属粉末、化学化合物の分析および分取クロマトグラフ分離に有用な固定相粒子、粉末トナー、治療用または診断用造影剤、医薬活性剤、薬剤、植物およびハーブ抽出物、医薬品、プロドラッグ、製剤などを挙げることができる。
【0048】
本開示の前記方法に従って、1マイクロメートルを下回る、例えば800ナノメートル(nm)を下回る、または500nmを下回る(D90)平均粒度を有するナノスケール粒子が実証されている。下記の実施例で述べるように、約5マイクロメートルのD90平均粒度を有する入力粒子を使用した場合、約100nmから約200nmのD10平均粒度、約150nmから約250nmのD50平均粒度、および約250nmから約350nmのD90平均粒度を有する生成物粒子が調製されている。
【0049】
上記サイズ範囲内の粒子、または上記サイズ範囲と約100マイクロメートル以下(約50マイクロメートル以下、または約30マイクロメートル以下、または約10マイクロメートル以下など)の(D90)の入力サイズとの間のどこかの粒子は、現在実施されている殆どの産業的または商業的用途でも適用することができると期待されている。
【0050】
前記湿式メディアミリング工程に関して、さらなる詳細は、該ミリング工程で使用する前記静電立体的分散剤とともに以下に提供する。特に、ミルの二つの実施形態を
図3A(縦型湿式メディアミル)および
図3B(横型メディアミル)に関連して以下に開示する。
【0051】
(湿式メディアミリング)
湿式ミリング工程では、ミリングされる固体粒子材料、すなわち、被ミリング基材とミリングメディアの衝突が繰り返されることで、前記基材の破壊が繰り返され、付随的に基材粒度が低下する。湿式メディアミリング工程を使用して前記基材の粒子のサイズを低下させるとき、前記工程は、大抵、ミリングメディアを含有するミリング室と、ミリング対象の前記固体材料または基材と、前記メディアおよび基材が懸濁している液体キャリアとを含むミル内で行われる。前記ミリング室の内容物は、機械的作用およびエネルギーを前記ミリングメディアに伝達するアジテータによって攪拌またはアジテーションされる。
【0052】
加速した前記ミリングメディアは、破砕、剥離、破壊、またはその他の基材粒度を低下させるエネルギー的な衝突で基材と衝突し、基材粒度の全体的な低下および基材平均(averageまたはmean)粒度分布の全体的な低下を引き起こす。
【0053】
適当な湿式ミリングシステムの例としては、ボールミル、遊星ボールミル、循環型攪拌メディアミル、バスケット型攪拌メディアミル、超音波式メディアミルなどが挙げられる。
【0054】
ミリングメディアは、概して、砂、鋼、炭化ケイ素、セラミック、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化イットリウム(例えば、イットリア安定化ジルコニア)、ガラス、アルミナ、チタン、および架橋ポリスチレンおよびメタクリル酸メチルなどの特定のポリマーなどの、様々な緻密かつ硬質の材料から選択される。
【0055】
メディア形状は用途に応じて変わり得るが、球状のボール形状または円柱形ビーズが一般的に使用されている。一部の実施形態では、ミリングメディアは、大きなミリングメディア粒子およびより小さなミリングメディア粒子を含む様々なサイズおよびサイズ分布のものとすることができる。
【0056】
前記ミリングメディアおよび基材に適した液体キャリアとしては、水、塩水溶液、緩衝水溶液、有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、ヘキサン、炭化水素、ケロシン、PEG含有水、グリコール、トルエン、石油系溶媒、キシレンとトルエンなどの芳香族溶媒の混合物、ヘプタンなどが挙げられる。典型的には、前記溶媒は、前記基材(生成物)粒子を基に選択されることになる。
【0057】
固体基材の粒度を低下させるのに有用な湿式メディアミルは、バッチ式モードまたは連続または半連続モードで作動することができる。
【0058】
連続モードで作動する湿式メディアミルは、ミリングされている前記基材のより小さな粒子、すなわち、生成物基材粒子が再循環モードまたは不連続パスモードのいずれかで前記ミリング室から排出されるようにしながら、前記ミルの前記ミリングゾーンまたはミリング室内に、ミリングされている前記固体基材の相対的に大きな粒子とともにミリングメディアを保持するためのセパレータまたはスクリーンを組み込むことができる。
【0059】
再循環は、例えばポンプを用いて、前記ミリング室から保持容器へ移動し、そこから前記ミリング室へ戻る流体キャリア相に懸濁した前記基材のスラリー、懸濁液、分散液、またはコロイドの形であることができる。
【0060】
セパレータまたはスクリーンは、前記ミリング室の出口に配置することができ、例えば、回転ギャップセパレータ、スクリーン、シーブ、遠心力で支援されるスクリーン、および前記ミルからのミリングメディアの通過を物理的に規制する類似のデバイスを含む。ミリングメディアの寸法は、サイズが減少した前記基材粒子が通過できる開口の寸法よりも大きいので、前記ミリングメディアは保持される。
【0061】
図3Aは、本開示の一部の実施形態に従って使用されるように構成された例示的な縦型湿式メディアミル15を表したものである。
【0062】
ここで、前記例示的な湿式メディアミル15を、その通常の動作に従い説明する。
【0063】
一実施形態では、ミリングメディア(図示せず)、および静電立体的分散剤を含有した流体キャリアを入口12からメディアミル15のミリング室16に加えることができる。(前記静電立体的分散剤は後でより詳細に説明する。)
【0064】
前記メディアミル15のこの充填中、アジテータ14は任意選択的に動作中とすることができ、出口20は、流体キャリアが前記メディアミル15から出ることができるように開放していてもよいし、前記流体キャリアを封じ込めるように閉鎖していてもよい。任意選択的に、前記ミリングメディアが通過できる開口を含む二次的な、より大きなスクリーン17を前記メディアミル15内に設けることができる。
【0065】
その後、前記ミリング室16には、ミリング対象の前記固体基材および任意選択的に追加の流体キャリア(任意選択的に追加の静電立体的分散剤を含む)を充填することができる。
【0066】
また、前記ミリング室16にはさらに、技術的に既知のように、前記ミリング工程中の気泡形成を防止する消泡剤を充填することができる。
【0067】
実施形態では、前記流体キャリアおよび前記基材が全て加えられた時点で、前記スラリーが、約10wt%から約40wt%、または約15wt%から約40wt%、または約20wt%から約40wt%などの、約5wt%から約40wt%の固体含有量を有することができる。
【0068】
その後、前記ミリング室16の前記出口20は閉鎖することができ、前記メディアミル15は高さ13まで充填されることができる。
【0069】
流体キャリアは、配管系35を用いてポンプ34により取入口31を介して保持タンク32に移動させることができる。前記流体キャリアは、配管系33を介して前記保持タンク32から圧送されて前記メディアミル15の入口12に戻ることができる。
【0070】
前記メディアミル15の内容物は、好ましくは高速で、または高加速および高減速しながら、モータ10によって駆動されかつシャフト11に結合されたアジテータ14によってアジテーションまたは攪拌される。
【0071】
本開示に従って生成物を生成するアジテーション時間は、例えば、約10分間から約3,000分間、または約10分間から約1,000分間などの、約10分間から約6,000分間またはそれ以上の範囲とすることができる。
【0072】
流体キャリアは、前記ミリング室16から保持タンク32まで連続的に再循環される。
この再循環は、最小のまたは所望の基材粒度、例えば上述の平均粒度範囲内の基材粒度が得られるまで続けることができる。この工程中、追加の静電立体的分散剤を必要に応じて加えることができる。
【0073】
前記工程の終わりに、前記メディアに残るミリングされた固体基材の残留生成物粒子は、任意選択的に前記ミリング室16から圧力下でまたはポンプ24によって、前記流体キャリア中の分散物として前記保持タンク32に移動させることができる。
【0074】
本質的に全てのミリングメディアは前記ミリング室16内に残り、前記生成物基材粒子は、前記流体キャリア中の分散物として実質的にミリングメディアを含まずに単離される。
【0075】
本開示に従って生成された前記生成物基材粒子は、約800nm未満または約500nm未満などの約1マイクロメートル未満の(D90)粒度を有することができる。
【0076】
前記流体キャリアは、技術的に既知であるように、乾燥またはベーキングによって取り除くことができる。前記静電立体的分散剤は、一部の実施形態では乾燥後に前記ミリングされた生成物とともに残ってもよいし、他の実施形態では、前記静電立体的分散剤は、例えば窯でのベーキングによって取り除いてもよい。前記静電立体的分散剤の除去は、最終生成物の要件および意図する用途によって決まることになる。
【0077】
図3Bは、攪拌メディアミルの代替的な一実施形態、すなわち横型メディアミルを示している。
図3Bの前記実施形態の物理的構成要素の多くは
図3Aの前記実施形態と類似しているが、これは両実施形態が同じ機能を果たすからである。
【0078】
しかしながら、
図3Bでは、図示の機能(A)から(E)を参照して、前記ミルの各領域で生じる特定の機能に注目する。
【0079】
図示されるように、機能(A)では、シャフトを通して前記ミルに入力されたエネルギーが懸濁液内で散逸される。
機能(B)では、室壁の近くにアジテータがある懸濁液中で摩擦が生じる。
機能(C)では、二つ以上の粉砕メディアが互いに近づく間に前記懸濁液内で変位が生じる。
機能(D)では、前記粉砕メディアが、前記懸濁粒子に対して応力を引き起こすことなく互いに接触する。
さらに、機能(E)では、前記粉砕メディアは前記接触後に一時的に変形する場合がある。
【0080】
(静電立体的分散剤)
ここで、本開示の前記湿式メディアミリング工程で利用する前記静電立体的分散剤に関して、さらなる詳細を提供する。
【0081】
前記静電立体的分散剤は、前記生成物粒子に静電立体的安定化をもたらす。静電立体的安定化は、静電的安定化と立体的安定化の組み合わせである。
図4を参照すると、静電立体的安定化は、前記コロイド状生成物粒子の表面に荷電ポリマー(高分子電解質)を吸着させることを伴う。
【0082】
粒子の表面は、典型的には、負電荷の部位および正電荷の部位によって構成される。例えば、このような荷電部位は、とりわけ、OH-、H+、O2
-、およびO-を含むがそれらに限定されない官能基を含む場合があることができる。各電荷の相対的な濃度は、粒子の性質、前記粒子の酸化状態、および系のpHを含むいくつかの要因によって決まる。
【0083】
高分子電解質は、それらと全体的な電気的特性(すなわち、正電荷または負電荷)を関連付けている。高分子電解質は、粒子の表面上の逆荷電部位に付着することによって粒子の表面に強く吸着する。
【0084】
しかしながら、各高分子電解質上のイオン部位の全てが前記吸着過程で使用されるわけではない。一部の前記イオン部位は、前記粒子の前記表面に前記高分子電解質を吸着させるために使用されるが、他の前記イオン部位は、前記液状媒体中で自由にたなびく前記ポリマーの部分にある。前記粒子表面および溶液中のポリマー鎖に関連する同じ電荷の組み合わせにより、各粒子には、粒子‐ポリマー組成物に対する全体的な負または正の電荷が与えられる。
【0085】
各ポリマーコーティングされた粒子は、他のポリマーコーティングされた粒子に関連する前記同じ電荷と反発するが、これはこのような粒子が電子反発を生じるからである。
この電子反発は、前記ポリマーの立体効果と組み合わせて、前記生成物懸濁液を分散させる。
【0086】
さらに、静電的分離と立体的分離の両方が得られるため、静電的分離または立体的分離のいずれかのみよりも粒子分離が大幅に強力になり、必要な分散剤が少なくなり、前記ミリング工程で使用される分散剤の量に対する厳しい制御要件が緩和される。
【0087】
静電立体的分散剤として本開示に従って使用するのに適した高分子電解質としては、少なくとも約500g/mol、例えば、少なくとも約2,000g/molなどの少なくとも約1,000g/molの数平均分子量を有する機能性ポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、前記機能性ポリマーは、約5,000,000g/molという高い数平均分子量、または50,000,000g/molという高い数平均分子量さえ有することができる。しかしながら、典型的には、前記数平均分子量は、約100,000g/mol未満、または約50,000g/mol未満、または約25,000g/mol未満などの、約500,000g/mol未満になる。
【0088】
特に、前記高分子電解質分散剤は、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーおよびコポリマー、ポリマーおよびコポリマーのアルキルアンモニウム塩、酸性基を有するポリマーおよびコポリマー、官能基を持たせた櫛形コポリマーおよびブロックコポリマー、修飾アクリレートブロックコポリマー、修飾ポリウレタン、修飾および/または塩化ポリアミン、リン酸ポリエステル、ポリエトキシレート、脂肪酸ラジカルを有するポリマーおよびコポリマー、エステル交換ポリアクリレートなどの修飾ポリアクリレート、酸性官能基を持つポリエステルなどの修飾ポリエステル、ポリリン酸塩、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0089】
適した静電立体的分散剤は、非限定的な例として、Disperbyk‐199およびDisperbyk‐2010(BYK GmbH、ヴェーゼル、ドイツ)ならびにFlexisperse 225およびFlexisperse 300(ICT、カータースヴィル、ジョージア州、アメリカ)という商品名で販売されている。
【0090】
実施形態では、前記湿式メディアミル内の前記生成物懸濁液は、前記固体粒子の重量を基準として、約2wt%から約15wt%または約5wt%から約15wt%などの、約2wt%から約20wt%の静電立体的分散剤含有量を有することができる。
【0091】
(ミリング方法)
図5を参照すると、図示されているのはナノメートルスケール粒子を生成するための方法500についてのフローチャートである。
【0092】
前記方法500は、供給基材懸濁液が別のタンクで分散剤と予め混合されるステップである、予混合ステップ502を含む。
【0093】
前記供給基材懸濁液は、液体キャリア媒体および供給基材粒子を含む。前記液体キャリア媒体は、水または有機溶媒を含むことができる。
【0094】
前記供給基材粒子は、有機または無機固体、ガラス、グラフェン、金属、鉱物、鉱石、シリカ、珪藻土、粘土、有機および無機顔料、製薬材料、またはカーボンブラックを含むことができる。
【0095】
前記供給基材粒子は、前記供給基材懸濁液の約5重量%から約70重量%、または約5重量%から約40重量%の量で前記供給基材懸濁液中に存在することができる。
【0096】
前記静電立体的分散剤は、前記供給基材粒子の約2重量%から約20重量%の量で加えることができる。前記静電立体的分散剤は高分子電解質を含む。前記高分子電解質は、荷電官能基または無機親和性基を有するポリマーまたはコポリマーを含むことができる。
【0097】
前記方法500は、さらに、ミルにミリング/粉砕メディアを加えるステップ504を含み、すなわち、前記ミルに適量のミリング/粉砕メディアが充填される。
【0098】
ミリングメディアは、概して、砂、鋼、炭化ケイ素、セラミック、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化イットリウム(例えば、イットリア安定化ジルコニア)、ガラス、アルミナ、チタン、および架橋ポリスチレンおよびメタクリル酸メチルなどの特定のポリマーなどの、様々な緻密かつ硬質の材料から選択される。メディア形状は用途に応じて変わり得るが、球状のボール形状または円柱形ビーズが一般的に使用されている。一部の実施形態では、ミリングメディアは、大きなミリングメディア粒子およびより小さなミリングメディア粒子を含む様々なサイズおよびサイズ分布のものとすることができる。
【0099】
前記方法500はさらに、ステップ502からの前記予め混合された供給基材懸濁液をメディアミルに加えるステップ506を含む。前記供給懸濁液は、バッチまたは連続工程で加えることができる。任意選択的に消泡剤も加えることができる。
【0100】
その上さらに、前記方法500は、前記メディアミルを所定時間作動させて前記供給基材粒子を細分化し、それによって、約1マイクロメートル未満、または約800nm未満、または約500nm未満、または約400nm未満の(D90)粒度を有するナノメートルスケール粒子を形成するステップ508を含む。
【0101】
前記所定時間は、約10分間から約6,000分間、または約10分間から約3,000分間、または約10分間から約1,000分間とすることができる。前記メディアミルが動作している前記所定時間中に追加の静電立体的分散剤を加えることができる。
【0102】
また、前記方法500は、前記メディアミルからの前記ナノメートルスケール粒子をさらに粉砕するために再循環するステップ510を含む。このステップの一部はさらに、前記メディアミルから前記ナノメートルスケール粒子を取り除くステップを含むことができ、該ステップは、前記ミリングメディアから前記ナノメートルスケール粒子を分離することを含むことができる。
【0103】
任意選択的に、前記方法500は、前記メディアミルから前記ナノメートルスケール粒子を取り除くステップの後で前記ナノメートルスケール粒子を乾燥させるステップ512を含むことができる。
【0104】
任意選択的に、前記方法500は、前記メディアミルから前記ナノメートルスケール粒子を取り除くステップの後で、窯を用いて、前記ナノメートルスケール粒子から前記静電立体的分散剤を分離し、有機物を全て取り除くステップ514を含むことができる。
【0105】
方法500における様々なステップは、該方法の作動中に一回または複数回繰り返すことができると理解されたい。
【0106】
(実施例)
ここで、次の非限定的な実施例によって本開示を説明する。次の実施例および工程には、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更および修正を適用することができることに留意されたい。したがって、次の実施例は、単に説明に役立つものとして解釈すべきであって、決して限定的なものとして解釈すべきではないことに留意されたい。
【0107】
水(前記液状媒体として)、結晶シリカ/石英粒子または珪藻土粒子(前記固体基材として)、消泡剤、および様々な種類および量の高分子電解質(前記静電立体的分散剤として)を含む五つの異なる実施例の粒子懸濁液を調製した。
【0108】
各実施例のスラリーの組成を下記の表1に提示する。
【0109】
【0110】
前記実施例の粒子懸濁液の各々を、前記粉砕メディアとしてイットリア安定ジルコニア(YSZ)ビーズも含んだ循環型攪拌メディアミル(VMA‐GETZMANN GmbH(ライヒスホーフ、ドイツ)から入手できるVMA Dispermat SL12)に入れた。
【0111】
各実施例に対して、約150分間から約1,000分間に及ぶ時間、前記攪拌メディアミルで湿式メディアミリングを行った。
【0112】
前記ミリングが完了した後、ナノ粒子アナライザ(Anton‐Paar Litesizer 500(オーストリアのグラーツにあるAnton Paar GmbHから入手できる))を用いてD10、D50、およびD90平均粒度について生成物粒子を測定した。
【0113】
各実施例1から5について、ミリング時間との関係として前記平均粒度を
図6Aから
図6Eにそれぞれ提示している。
【0114】
これらの図に示すように、本開示に従う方法は、約100nmから約200nmのD10平均粒度、約150nmから約250nmのD50平均粒度、および約250nmから約350nmのD90平均粒度を容易に達成することができる。
【0115】
このように、本開示は、メディアミル内で静電立体的に安定化したスラリーを利用してナノメートルスケール粒子を生成するための方法および装置の実施形態を提供した。
【0116】
前記方法および装置は、粒度が約1マイクロメートルを下回るときに粒子分離を有利に維持して、凝集およびミルスクリーン閉塞を回避する。さらに、前記方法および装置は、生成物懸濁液のフロック形成または粘度の急増を防止するためにいかなる添加剤の厳しい制御も必要としないという点で、産業規模の製造に有益に適している。
【0117】
上述の詳細な説明では少なくとも一つの例示的実施形態を提示したが、膨大な数の変形が存在すると理解されたい。前記例示的実施形態は一例に過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成を限定することは決して意図していないことも理解されたい。むしろ、上述の詳細な説明は、本発明の方法および装置の例示的な一実施形態を実施するのに便利な手引きを当業者に提供することになる。例示的な一実施形態で説明した要素の機能および配置には、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されている。
【符号の説明】
【0118】
10 モータ
11 シャフト
12 入口
13 充填高さ
14 アジテータ
15 メディアミル
16 ミリング室
17 二次的スクリーン
19 出口スクリーン
20 出口
31 取入口
32 保持タンク
33 配管系
34 ポンプ
35 配管系
【国際調査報告】