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特表2023-542523抗CD73及び抗PD-L1抗体並びに化学療法を使用する治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】抗CD73及び抗PD-L1抗体並びに化学療法を使用する治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231002BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/04
A61P1/18
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/337
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518177
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2021058662
(87)【国際公開番号】W WO2022064399
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/082,162
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/084,900
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラケシュ
(72)【発明者】
【氏名】エングラート,ジャドソン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,フィリップ ロイド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、ヒト患者の癌(例えば、転移性膵管腺癌(PD AC))を治療する方法であって、抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を投与することを含む方法に関する。本開示は、腫瘍の治療の方法であって、抗CD73抗体又はその抗原結合断片をPD-L1抗体又はその抗原結合断片及び化学療法と組み合わせて投与することを含む方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法であって、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を前記対象に投与することを含み、前記対象から得られた腫瘍試料は、CD73を発現する、方法。
【請求項2】
対象におけるPDAC腫瘍の成長を阻害する方法であって、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を前記対象に投与することを含み、前記対象から得られた腫瘍試料は、CD73を発現する、方法。
【請求項3】
前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、750mgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、1500mgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、2250mgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、3000mgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記用量のオレクルマブ又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法は、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲムシタビンは、1000mg/mの用量で投与され、及び前記nab-パクリタキセルは、125mg/mの用量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化学療法は、28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記化学療法は、mFOLFOXを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記mFOLFOXは、約85mg/mの用量で投与されるオキサリプラチン、約400mg/mの用量で投与されるロイコボリン及び約400mg/mのボーラスで投与される5-FUを含み、続いて約2400mg/mの第2の用量の5-FUが投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法は、28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で投与され、前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で投与され、前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で投与され、前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で投与され、前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~8又は12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で投与され、前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で投与され、前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記オレクルマブ又は抗原結合断片及び前記化学療法は、同時に又は逐次的に投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、1500mgの用量で投与される、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記用量のデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに投与される、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記オレクルマブ又はその抗原結合断片、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片及び前記化学療法は、同時に又は逐次的に投与される、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記投与は、非経口である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与は、皮下である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記投与は、静脈内注入を介したものである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象は、ヒトである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト対象は、組織学的又は細胞学的に確認された膵臓腺癌を有する18歳以上の成人である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は、以前に治療されていないファーストライン転移性PDAC(1L転移性PDAC)を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象は、以前に治療されていないセカンドライン転移性PDAC(2L転移性PDAC)を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象から得られた腫瘍試料の前記CD73発現は、免疫組織化学(IHC)法によって評価される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記IHC法は、自動化IHC法である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象から得られた腫瘍試料は、高レベルのCD73を発現する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
IHC法は、IHCスコアリングを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記IHCスコアリングは、前記腫瘍試料内のCD73を発現する細胞の染色強度を値0、1、2又は3でスコアリングすることによって定義される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記IHCスコアリングは、前記腫瘍試料内のCD73を発現する細胞の染色強度を値1、2又は3でスコアリングすることによって定義される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍試料中の各値でCD73を発現する細胞のパーセンテージが計算される、請求項36~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する細胞を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%の細胞を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する細胞を含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%又は約70%の細胞を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象から得られた腫瘍試料中の前記細胞の少なくとも約70%は、少なくとも1の染色強度スコアを有する、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象から得られた腫瘍試料中の前記細胞の少なくとも約50%は、少なくとも2の染色強度スコアを有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含むオレクルマブを含み、前記重鎖可変ドメインは、配列番号3~5のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記軽鎖可変ドメインは、配列番号6~8のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記オレクルマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含むデュルバルマブを含み、前記重鎖可変ドメインは、配列番号11~13のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記軽鎖可変ドメインは、配列番号14~16のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項24~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記デュルバルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、前記化学療法は、前記28日間のサイクルの治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、前記化学療法は、前記28日間のサイクルの治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに投与され、前記化学療法は、前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、請求項24~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する、請求項36~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%は、少なくとも2の染色強度を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項61】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項62】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項63】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ前記28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項64】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項65】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項66】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項67】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法であって、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を前記対象に投与することを含み、前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、
前記オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で前記対象に投与され、前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、前記治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で前記対象に投与され、及び前記化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ前記28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、前記サイクルは、4週間ごとに繰り返される、方法。
【請求項68】
前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する、請求項60~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%は、少なくとも2の染色強度を有する、請求項60~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記腫瘍は、ファーストライン転移性膵管腺癌である、請求項60~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記腫瘍は、セカンドライン転移性膵管腺癌である、請求項60~69のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本国際出願は、2020年9月23日に出願された米国仮出願出願第63/082,162号明細書及び2020年9月29日に出願された米国仮出願出願第63/084,900号明細書の優先権の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.電子的に提出された配列表の参照
本願と共に提出されるASCIIテキストファイル(名称:CD73_211_PCT_Seqlisting_ST25.txt;サイズ:7,109バイト;及び作成日:2021年9月20日)中の電子的に提出された配列表の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、癌、例えば転移性膵管腺癌(PDAC)の治療のために抗CD73及び抗PD-L1抗体並びにそれらの抗原結合断片を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
膵管腺癌(PDAC)は、疾患の全病期に対して約18%の1年生存率及び4%未満の推定5年生存率によって例示されるように、極めて予後不良の悪性腫瘍である(非特許文献1)。2020年には、推定新規症例数は、57,600例であり、全新規癌症例の3.2%であった。多くのPDAC患者は、転移性疾患を有し、大部分は、切除不能な局所進行性疾患を有する(非特許文献2)。
【0005】
免疫チェックポイント阻害剤は、有意な抗腫瘍活性を示しており、複数の腫瘍型の標準治療となっている。化学療法と組み合わせた免疫療法は、複数の腫瘍型にわたる臨床応答に対する相加効果又は相乗効果の可能性を示している。
【0006】
CD73又はエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(5’-NT)は、いくつかの組織において遍在的に発現される。このタンパク質は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合を介して細胞膜にアンカリングされており、外酵素活性を有し、且つシグナル伝達において役割を果たす。CD73の主な機能は、概して細胞不浸透性である細胞外ヌクレオチド(例えば、5’-AMP)を、その対応するヌクレオシド(例えば、アデノシン)に変換することであり、これは、ほとんどの細胞に容易に入り得る。AMP脱リン酸化によるアデノシンのCD73生成は、多くの組織においてアデノシン受容体連結を調節することが示されており、アデノシンは、細胞保護、細胞増殖、血管新生及び免疫抑制において機能すると共に、腫瘍発生でも役割を果たすことを示している。
【0007】
腫瘍細胞上でのCD73の発現は、数種の癌、例えば結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、神経膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌及び乳癌において報告されている。CD73の発現の増大は、腫瘍侵入、転移及び患者生存期間の短縮にも関連している。CD73は、アデノシンレベルの増大によって特徴付けられる免疫抑制環境を作り出し、これが癌の発生及び進行を促進する。特に、CD73発現は、メラノーマ及び乳癌における前転移性表現型と関連している。
【0008】
B7H1としても知られているプログラム死リガンド1(PD-L1)は、40kDaの膜貫通タンパク質であり、これは、抗癌免疫における主要な障害である。プログラム死受容体(PD-1)に結合するPD-L1は、T細胞を不活化し、腫瘍細胞を保護し、且つ免疫系の検出を抑制して、癌細胞の未確認の増殖を可能とする。PD-L1は、共刺激分子であるCD80にも結合する。抗原提示細胞、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞及び非造血細胞が挙げられる、広範囲な腫瘍形成性の且つ活性化された免疫細胞型がPD-L1を自然に発現する。更に、炎症性サイトカインがPD-L1発現を誘導する(インターフェロンガンマ(IFNγ)が挙げられる)。活性化T細胞は、PD-L1の最も強力な誘導因子であるIFNγを産生する。IFNγは、次に、PD-L1発現を誘導して、腫瘍保護を促進する。これは、適応性のある免疫耐性として知られている機構である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hidalgo M.et al.,Pancreatology,15(1):8-18n(2015)
【非特許文献2】Gillen S.et al.,PLOS Medicine,7(4):e1000267(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
免疫チェックポイント阻害剤は、癌治療薬として非常に有望であることが示されているが、免疫チェックポイント阻害からの臨床的利益は、わずかであった。したがって、腫瘍媒介性免疫抑制を低減させるための方法の向上が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法であって、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、CD73を発現する、方法が本明細書で提供される。
【0012】
対象におけるPDAC腫瘍の成長を阻害する方法であって、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、CD73を発現する、方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を含む。
【0013】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、750mgの用量で投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、1500mgの用量で投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、2250mgの用量で投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、3000mgの用量で投与される。
【0014】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片の用量は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与される。
【0015】
いくつかの態様において、化学療法は、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルを含む。いくつかの態様において、ゲムシタビンは、1000mg/mの用量で投与され、及びnab-パクリタキセルは、125mg/mの用量で投与される。いくつかの態様では、化学療法は、28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0016】
いくつかの態様では、化学療法は、mFOLFOXを含む。いくつかの態様では、mFOLFOXは、約85mg/mの用量で投与されるオキサリプラチン、約400mg/mの用量で投与されるロイコボリン及び約400mg/mのボーラスで投与される5-FUを含み、続いて約2400mg/mの第2の用量の5-FUが投与される。いくつかの態様では、化学療法は、28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0017】
本明細書に提供される方法のいくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で投与され、化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0018】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0019】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で投与され、化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0020】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で投与され、化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0021】
本明細書に提供される方法のいくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で投与され、化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いでサイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0022】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0023】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で投与され、化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0024】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で投与され、化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0025】
いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0026】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを更に含む。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を含む。
【0027】
いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、1500mgの用量で投与される。いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の用量は、4週間ごとに投与される。いくつかの態様において、化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0028】
いくつかの態様では、投与は、非経口である。いくつかの態様では、投与は、静脈内である。いくつかの態様では、投与は、静脈内注入を介したものである。
【0029】
いくつかの態様では、対象は、ヒトである。いくつかの態様では、ヒト対象は、組織学的又は細胞学的に確認された膵臓腺癌を有する18歳以上の成人である。いくつかの態様では、対象は、以前に治療されていないファーストライン転移性PDAC(1L転移性PDAC)を有する。いくつかの態様では、対象は、以前に治療されていないセカンドライン転移性PDAC(2L転移性PDAC)を有する。
【0030】
いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍試料のCD73発現は、免疫組織化学(IHC)法によって評価される。いくつかの態様では、IHC法は、自動化されたIHC法である。
【0031】
いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍試料は、高レベルのCD73を発現する。
【0032】
いくつかの態様において、IHC法は、IHCスコアリングを含む。いくつかの態様では、IHCスコアリングは、腫瘍試料内のCD73を発現する細胞の染色強度を値0、1、2又は3でスコアリングすることによって定義される。いくつかの態様では、IHCスコアリングは、腫瘍試料内のCD73を発現する細胞の染色強度を値1、2又は3でスコアリングすることによって定義される。
【0033】
いくつかの態様では、腫瘍試料中の各値でCD73を発現する細胞のパーセンテージが計算される。いくつかの態様では、腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する細胞を含む。いくつかの態様では、腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。いくつかの態様では、腫瘍試料は、1、2及び3の染色強度を有する少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%の細胞を含む。
【0034】
いくつかの態様では、腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する細胞を含む。いくつかの態様では、腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。いくつかの態様では、腫瘍試料は、2及び3の染色強度を有する少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%又は約70%の細胞を含む。
【0035】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約70%は、少なくとも1の染色強度スコアを有する。
【0036】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%は、少なくとも2の染色強度スコアを有する。
【0037】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含むオレクルマブを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号3~5のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号6~8のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0038】
いくつかの態様では、オレクルマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む。
【0039】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含むデュルバルマブを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号11~13のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号14~16のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0040】
いくつかの態様では、デュルバルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0041】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、化学療法は、28日間のサイクルの治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0042】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに投与され、化学療法は、28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0043】
(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法も本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0044】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0045】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0046】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0047】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0048】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0049】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに2250mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0050】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%は、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに3000mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、治療サイクルにおいて4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0051】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0052】
いくつかの態様では、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0053】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、腫瘍は、ファーストライン転移性膵管腺癌である。いくつかの態様では、腫瘍は、セカンドライン転移性膵管腺癌である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】転移性膵管腺癌を有する対象における化学療法と組み合わせた、デュルバルマブを伴う又は伴わないMEDI9447の安全性、薬物動態及び臨床活性を評価するための第1b/2相試験の試験設計を示す。
図2A】第1b/2相試験の用量漸増パート(パート1)の治療レジメンを示す。
図2B】第1b/2相試験の用量拡大パート(パート2)におけるコホートA(群A1、A2及びA3)の治療レジメンを示す。
図2C】第1b/2相試験の用量拡大パート(パート2)におけるコホートB(群B1、B2B3)の治療レジメンを示す。
図3】低CD73及び高CD73を有する患者の経時的な(月単位の)CD73レベルによる無増悪生存期間並びに各コホート及び試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。
図4】経時的な試験群ごとの全生存期間(月数)及び各試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。オレクルマブ+デュルバルマブ及び化学療法の追加は、CD73高集団において全生存利益をもたらす。
図5A】低CD73及び高CD73を有する患者の経時的な(月単位の)CD73レベルによる無増悪生存期間並びに各コホート及び試験群の患者数を示す群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。
図5B】低CD73及び高CD73を有する患者の経時的な(月単位の)CD73レベルによる全生存期間に各コホート及び試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。
図6A】CD73レベルに関係なく、経時的な試験群ごとの全生存期間(月数)及び各試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。
図6B】CD73高サブグループに属する患者における、経時的な試験群ごとの全生存期間(月数)及び各試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。オレクルマブ+デュルバルマブ及び化学療法の追加は、CD73高集団において全生存利益をもたらす。
図7A】CD73レベルに関係なく、経時的な試験群ごとの無増悪生存期間(月数)及び各試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。
図7B】CD73高サブグループに属する患者における、経時的な試験群ごとの無増悪生存期間(月数)及び各試験群の患者数を示す。群A1は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A2は、オレクルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルであり、群A3は、オレクルマブ、デュルバルマブ及びゲムシタビン/nab-パクリタキセルである。オレクルマブ+デュルバルマブ及び化学療法の追加は、6ヶ月でCD73高集団において無増悪生存利益をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本開示がより容易に理解され得るようにするために、特定の用語が最初に定義される。本願で使用される場合、本明細書中で他に明らかに提供される場合を除き、以下の各用語は、以下で示す意味を有するものとする。本願全体を通じて更なる定義が示される。
【0056】
7.1 定義
「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDRs)と称される超可変性領域に更に細分化され得、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域がその中に散在する。各VH及びVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の補体第1成分(C1q)を含む宿主組織又は宿主因子に免疫グロブリンが結合するのを媒介することができる。重鎖は、C末端リジンを有していても又はいなくてもよい。本明細書において別段の指定がない限り、可変領域中のアミノ酸は、Kabatナンバリングシステムを使用してナンバリングされ、定常領域中のアミノ酸は、EUシステムを使用してナンバリングされる。一実施形態では、抗体は、完全長抗体である。
【0057】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgG及びIgMを含むがこれらに限定されない一般的に知られているアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスも当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むがこれらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス又はサブクラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。「抗体」という用語は、例として、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体;キメラ抗体及びヒト化抗体;ヒト抗体又は非ヒト抗体;完全合成抗体;並びに一本鎖抗体を含む。ヒトにおけるその免疫原性を低下させるために、非ヒト抗体を組換え法によってヒト化することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「IgG抗体」は、天然に存在するIgG抗体の構造を有し、すなわち同じサブクラスの天然に存在するIgG抗体と同じ数の重鎖及び軽鎖並びにジスルフィド結合を有する。例えば、抗CD73 IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体は、2つの重鎖(HCs)及び2つの軽鎖(LCs)からなり、2つの重鎖及び軽鎖は、それぞれネイティブIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体で生じるジスルフィド架橋の同じ数及び位置によって連結されている(抗体がジスルフィド結合を修飾するように変異していない限り)。
【0059】
「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CD73に特異的に結合する単離抗体は、CD73に特異的に結合しない抗体を実質的に含まない)。しかしながら、CD73に特異的に結合する単離抗体は、異なる種由来のCD73分子などの他の抗原に対して交差反応性を有し得る。更に、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0060】
抗体は、変化した抗体(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーション)であり得る。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能特性)を変化させる(天然に存在する抗体と比較して)1つ又は複数の変異体アミノ酸を含み得る。例えば、半減期、エフェクター機能及び/又は患者における抗体に対する免疫応答などに影響を及ぼす多数のそのような変化が当技術分野で公知である。抗体という用語は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工ポリペプチド構築物も含む。
【0061】
「モノクローナル抗体」(「mAb」)という用語は、単一分子組成の抗体分子、すなわち一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物を指す。mAbは、単離された抗体の一例である。MAbは、ハイブリドーマ、組換え、トランスジェニック又は当業者に公知の他の技術によって産生され得る。
【0062】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。更に、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、生体外でのランダム若しくは部位特異的変異誘発又は生体内での体細胞変異によって導入された変異)。しかし、本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むように意図されていない。「ヒト」抗体及び「完全ヒト」抗体という用語は同義的に使用される。
【0063】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の一部、ほとんど又は全部が、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体を指す。抗体のヒト化形態の一実施形態では、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、ほとんど又は全てがヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、1つ又は複数のCDR領域内の一部、ほとんど又は全てのアミノ酸は変化していない。特定の抗原に結合する抗体の能力を無効にしない限り、アミノ酸の小さい付加、欠失、挿入、置換又は修飾は、許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。
【0064】
「キメラ抗体」は、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0065】
「抗-抗原」抗体は、抗原に特異的に結合する抗体を指す。例えば、抗CD73抗体は、CD73に特異的に結合する。
【0066】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合断片」とも呼ばれる)は、抗体全体が結合する抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片又は一部分によって遂行され得ることが示されている。抗体、例えば本明細書に記載の抗CD73抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例には、以下が含まれる。
(1)Fab断片(パパイン切断由来の断片)又はVL、VH、LC及びCH1ドメインからなる同様の一価断片;
(2)F(ab’)2断片(ペプシン切断由来の断片)又はヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む同様の二価断片;
(3)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;
(4)抗体の単一群のVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、
(5)VHドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-46);
(6)ヒンジによって連結された2つのVHドメインからなるバイ-シングルドメイン抗体(二重親和性再標的化抗体(DART));
(7)二重可変ドメイン免疫グロブリン;
(8)単離された相補性決定領域(CDR);及び
(9)任意選択的に合成リンカーによって連結され得る、2つ以上の単離されたCDRの組合わせ。
更に、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、VL及びVH領域が対合し、一価分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照のこと)を形成するような単一のタンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーにより、組換え方法を用いて連結され得る。そのような一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」という用語に包含されることも意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、断片は非損傷抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断により産生することができる。いくつかの実施形態において、抗体は抗原結合断片である。
【0067】
本明細書中で用いられる用語「オレクルマブ」及び「MEDI9447」は、米国特許第9,938,356号明細書(この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、CD73に選択的に結合して、CD73のエクトヌクレオチダーゼ活性を阻害するヒト免疫グロブリンG1ラムダ(IgG1λ)mAbを指す。三重変異、L234F/L235E/P331S(欧州連合のナンバリング規則に従う)は、IgGエフェクター機能をかなり弱めるように重鎖定常領域内にコードされている。オレクルマブは、CD73によるアデノシン及び有機ホスファートへのAMPの触媒作用を阻害する。細胞外アデノシンは、とりわけ、MDSC及びTregの両方の免疫抑制作用を媒介する。
【0068】
特定の実施形態において、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態において、オレクルマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態において、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号3~5のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号6~8のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を含む。
【0069】
本明細書中で用いられる用語「デュルバルマブ」は、米国特許第9,493,565号明細書(この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、PD-L1に選択的に結合して、PD-L1がPD-1受容体及びCD80受容体に結合することをブロックする抗体を指す。デュルバルマブの断片結晶性(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメイン内に、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)の媒介を担う補体成分C1q及びFcγ受容体への結合を減少させる三重変異を含有する。
【0070】
特定の実施形態において、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態において、デュルバルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態において、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号11~13のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号14~16のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を含む。
【0071】
本明細書で使用される「患者」は、癌(例えば、肝細胞癌)に罹患している任意の患者を含む。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書で同義的に使用される。
【0072】
「投与すること」は、当業者に公知の様々な方法及び送達系のいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入を指す。本明細書に開示される製剤の投与経路には、例えば注射又は注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路が含まれる。本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入並びにインビボ電気穿孔を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、製剤は、非経口経路を介して、いくつかの実施形態では経口投与される。他の非経口経路としては、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸、舌下又は局所が挙げられる。投与は、例えば、1回、複数回及び/又は1回以上の長期間にわたって実施することもできる。
【0073】
対象の「治療」又は「療法」は、疾患に関連する症状、合併症若しくは状態又は生化学的徴候の逆転、緩和、改善、阻害、進行、発症、重症度若しくは再発の遅延を目的として、対象に対して行われる任意の種類の介入若しくはプロセス又は対象への活性薬剤の投与を指す。Response Evaluation Criteria In Solid Tumors(RECIST)は、治療有効性の尺度であり、治療中に腫瘍が応答、安定化又は進行する時期を定義する確立された規則である。RECIST 1.1は、成人及び小児癌臨床試験で使用するための腫瘍サイズの変化の客観的評価のための固形腫瘍測定及び定義に対する現在のガイドラインである。Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Statusは、試験で研究される患者の集団を定義するために使用されるナンバリングスケールであり、その結果、患者を登録する医師の間で均一に再現することができる。小児患者において、Lansky Performance Scaleは、小児における機能状態を記述するための方法である。治療に対する応答及び全体的な状態を評価するために、癌を有する小児においてそれを誘導し、内部検証した。
【0074】
本明細書で使用される場合、「有効な治療」は、有益な効果、例えば疾患又は障害の少なくとも1つの症状の改善をもたらす治療を指す。有益な効果は、ベースラインを超える改善、すなわち本方法による治療の開始前に行われた測定又は観察を超える改善の形態をとることができる。有益な効果は、固形腫瘍のマーカの有害な進行の停止、遅延、阻止又は安定化の形態もとることができる。有効な治療は、固形腫瘍の少なくとも1つの症状の緩和を指し得る。そのような効果的な治療は、例えば、患者の痛みを軽減し、病変のサイズ及び/若しくは数を減少させ、腫瘍の転移を軽減若しくは防止し、且つ/又は腫瘍の成長を遅らせることができる。
【0075】
「有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の1つ若しくは複数の低減、改善、緩和、減少、遅延及び/若しくは軽減又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。固形腫瘍に関して、有効量は、腫瘍を縮小させ、且つ/若しくは腫瘍の成長速度を低下させる(例えば、腫瘍成長を抑制する)か、又は他の望ましくない細胞増殖を遅延させるのに十分な量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍再発を予防又は遅延させるのに十分な量である。有効量を1回以上の投与で投与することができる。薬物又は組成物の有効量は、(i)癌細胞の数を減少させ;(ii)腫瘍サイズを縮小させ;(iii)末梢器官への癌細胞浸潤を阻害し、遅延させ、ある程度遅くし、停止させ得;(iv)腫瘍転移を阻害し(すなわちある程度遅くさせ、腫瘍転移を停止させ得);(v)腫瘍成長を阻害し;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を予防又は遅延させ;且つ/又は(vii)癌に関連する症状の1つ若しくは複数をある程度軽減する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「組み合わせて」又は「組み合わせて投与される」という用語は、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片を1つ又は複数の追加の治療薬と共に投与することができることを意味する。いくつかの態様において、抗体又はその抗原結合断片は、1つ又は複数の更なる治療剤と共に同時に又は逐次的に投与され得る。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体又はその抗原結合断片は、同じ組成物又は異なる組成物において1つ又は複数の更なる治療剤と共に投与され得る。
【0077】
本明細書で言及される「体重に基づく用量」という用語は、患者に投与される用量が患者の体重に基づいて計算されることを意味する。
【0078】
本明細書で使用される場合、PFSと略記することができる「無増悪生存期間」という用語は、固形腫瘍(すなわち肝細胞癌)の治療中及び治療後の、患者が疾患を伴って生存するが悪化しない時間の長さを指す。
【0079】
本明細書で使用される「投与間隔」は、対象に投与されている本明細書に開示される製剤の複数回投与間に経過する時間を意味する。したがって、投与間隔は範囲として示すことができる。
【0080】
本明細書で使用される「投与頻度」という用語は、所与の時間に本明細書に開示される製剤の用量を投与する頻度を指す。投与頻度は、所与の時間当たりの投与回数、例えば、1週間に1回又は2週間に1回などとして示すことができる。
【0081】
本明細書で使用される「1週間に約1回」、「約1週間に1回」、「約2週間に1回」という用語又は任意の他の同様の投与間隔の用語は、おおよその数を意味し、「1週間に約1回」又は「約1週間に1回」は、7日±2日ごと、すなわち5日ごとから9日ごとを含むことができる。したがって、「週に1回」の投与頻度は、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと又は9日ごとであり得る。「約4週間に1回」は、28日±3日ごと、すなわち25日ごとから31日ごとを含むことができる。同様の近似は、例えば、約3週間ごとに1回、約4週間ごとに1回、約5週間ごとに1回、約6週間ごとに1回及び約12週間ごとに1回に適用される。いくつかの実施形態では、約4週間に1回の投与間隔は、最初の用量を第1週の任意の日に投与することができ、次いで次の用量を第4週の任意の日に投与することができることを意味する。他の実施形態では、約4週間に1回の投与間隔は、それぞれ第1の用量が第1の週の特定の日(例えば、月曜日)に投与され、及び次いで次の用量が第4の週の同じ日(すなわち月曜日)に投与されることを意味する。
【0082】
「癌」は、体内の異常細胞の制御されない増殖を特徴とする様々な疾患の広範な群を指す。調節されない細胞分裂及び増殖は、隣接組織に侵入し、リンパ系又は血流を介して身体の遠位部分に転移することもある悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含み得る。
【0083】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、前癌性病変を含む、良性(非癌性)又は悪性(癌性)のいずれかの過剰な細胞成長又は増殖に起因する組織の任意の塊を指す。
【0084】
「免疫応答」は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞及び好中球)及びこれらの細胞又は肝臓のいずれかによって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用であって、侵入している病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織の選択的標的化、結合、損傷、破壊及び/又は脊椎動物の体からの排除をもたらす作用を指す。
【0085】
「腫瘍浸潤炎症細胞」又は「腫瘍関連炎症細胞」は、対象において典型的に炎症応答に関与し、腫瘍組織に浸潤する任意の種類の細胞である。そのような細胞には、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、単球、好酸球、組織球及び樹状細胞が含まれる。
【0086】
代替形態(例えば、「又は」)の使用は、代替形態のいずれか、両方又はそれらの任意の組合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は、挙げられた又は列挙された構成要素の「1つ又は複数」を指すと理解されるべきである。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は成分の各々を他方と共に又は他方なしで具体的に開示するものとして理解すべきである。したがって本明細書において、「A及び/又はB」等の語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むことが意図されている。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B及び/又はC」等の語句で用いられるとき、以下の態様:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0088】
「含む」という語と共に態様が本明細書中に記載されるときは如何なる場合も、「からなる」及び/又は「基本的にからなる」という用語で記載される類似の態様も提供されることを理解されたい。
【0089】
「約」又は「本質的に含む」という用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成について許容可能な誤差範囲内にある値又は組成を指し、これは、値又は組成がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「本質的に~を含む」は、当技術分野の慣例に従って1標準偏差以内又は1標準偏差を超えることを意味することができる。代わりに、「約」又は「本質的に含む」は、最大10%又は20%(すなわち±10%又は±20%)の範囲を意味することができる。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mg(10%について)又は2.4mg~3.6mg(20%について)の任意の数を含み得る。更に、特に生物学的な系又はプロセスに関して、これらの用語は、1桁又は5倍までの値を意味し得る。特定の値又は組成が本願及び特許請求の範囲に提供される場合、特に明記しない限り、「約」又は「本質的に含む」の意味は、その特定の値又は組成について許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0090】
本明細書に記載されているように、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲又は整数範囲は、特に明記しない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値及び適切な場合にはその分数(整数の1/10及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0091】
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は全て、本開示が関連する当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,5th ed.,2013,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,2006,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0092】
単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI)承認形態で示される。数値範囲には、その範囲を定義する数が含まれる。本明細書中で提供される見出しは、全体として本明細書を参照することによって得ることのできる本開示の様々な態様を限定するものではない。したがって、直下に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより詳細に定義される。
【0093】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションで更に詳細に説明される。
【0094】
7.2 本発明の方法
いくつかの態様では、本開示は、転移性膵管腺癌(PDAC)の治療を必要とする対象において、転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法に関する。抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む療法は、罹患した対象にとってより良好な治療転帰(例えば、客観的奏効率及び疾患制御率)をもたらす。
【0095】
一態様では、本開示は、腫瘍試料中のCD73発現レベルを決定することを含む、免疫療法のためのヒト患者のPDAC腫瘍を選択する方法を含む。いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍試料はCD73を発現する。
【0096】
いくつかの態様では、本開示は、対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法を提供し、方法は、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含む。一態様では、本発明は、対象のPDAC腫瘍の増殖を阻害する方法を提供し、方法は、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、オレクルマブ、すなわちMEDI9447である。オレクルマブは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,938,356号明細書に開示されているように、CD73のエクトヌクレオチダーゼ活性に選択的に結合して阻害するヒト免疫グロブリンG1ラムダ(IgG1λ)mAbである。三重変異、L234F/L235E/P331S(欧州連合のナンバリング規則に従う)は、IgGエフェクター機能をかなり弱めるように重鎖定常領域内にコードされている。
【0097】
いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、オレクルマブ)を対象に投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2200mg、約2250mg、約2500mg、約2750mg又は約3500mgを投与することを含む。
【0098】
いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を処置する方法は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を約750mgの用量で投与することを含む。いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を処置する方法は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を約1500mgの用量で投与することを含む。いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を処置する方法は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を約2250mgの用量で投与することを含む。いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を処置する方法は、オレクルマブ又はその抗原結合断片を約3000mgの用量で投与することを含む。
【0099】
いくつかの態様では、対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、治療サイクル当たり1回、用量のオレクルマブ又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む。いくつかの態様において、治療サイクルは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間又は6週間である。いくつかの態様において、治療サイクルは2週間である。いくつかの態様において、治療サイクルは、4週間である。いくつかの態様では、治療サイクルは、28日である。いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片、例えばオレクルマブ又はその抗原結合断片の用量は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与される。いくつかの態様では、化学療法は、28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。
【0100】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、14~28日ごとに対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、14日ごとに対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、21日ごとに対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、28日ごとに対象に投与される。
【0101】
いくつかの態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、ある用量のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0102】
いくつかの態様において、化学療法剤はゲムシタビンを含む。いくつかの態様において、化学療法剤はnab-パクリタキセルを含む。いくつかの態様において、化学療法は、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルとの組合わせを含む。
【0103】
いくつかの態様において、ゲムシタビンは約1000mg/mの用量で投与される。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは、約125mg/mの用量で投与される。いくつかの態様において、ゲムシタビンは1000mg/mの用量で投与される。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは125mg/mの用量で投与される。
【0104】
いくつかの態様では、化学療法剤は、オキサリプラチン、ロイコボリン及び5-フルオロウラシル(5-FU)を含む修飾FOLFOXレジメン(本明細書ではmFOLFOXと呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、mFOLFOXは、約85mg/mの用量で投与されるオキサリプラチン、約400mg/mの用量で投与されるロイコボリン及び約400mg/mの用量で投与される5-FUを含み、続いて約2400mg/mの第2の用量の5-FUが投与される。いくつかの態様では、mFOLFOXは以下のように投与される。約85mg/mの用量のオキサリプラチンの静脈内投与、約400mg/mの用量のロイコボリンの静脈内投与、約400mg/mの用量の5-FUのボーラスの静脈内投与、続いて46~48時間にわたって投与される約2400mg/mの用量の5-FUの連続静脈内注入。mFOLFOXレジメンは、28日間の治療サイクルの第1及び15日目に投与され、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0105】
いくつかの態様では、化学療法剤はFOLFOX-4を含む。いくつかの態様では、FOLFOX-4は以下のレジメンを含む:1日目:オキサリプラチン85mg/m及びロイコボリン200mg/m、引き続いて5-FU 400mg/mのIVボーラス、引き続いて5-FU 600mg/mのIV注入。2日目:ロイコボリン200mg/m、引き続いて5-FU 400mg/mのIVボーラス、引き続いて5-FU 600mg/mのIV注入。
【0106】
いくつかの態様では、化学療法剤はFOLFOX-6を含む。いくつかの態様では、FOLFOX-6は以下のレジメンを含む:1~2日目:オキサリプラチン100mg/m、ロイコボリン400mg/m(又はレボロイコボリン200mg/m)との併用、引き続いてフルオロウラシル5-FU 400mg/mのIVボーラス、引き続いてフルオロウラシル5-FU注入(最初の2サイクルでは2400mg/m、最初の2サイクルの間にグレード1の毒性がない場合には3000mg/mに増加)。3~14日目:休日。レジメンは、5-HT3受容体アンタゴニストによる制吐薬予防を更に含む。
【0107】
いくつかの態様では、化学療法剤は、修飾FOLFOX-6(mFOLFOX-6)を含む。いくつかの態様では、修飾FOLFOX-6は以下のレジメンを含む:1日目:85mg/mのオキサリプラチン、400mg/mの5-フルオロウラシル及び200mg/mのロイコボリンを静脈内注入によって隔週投与し、続いて2400mg/mの5-フルオロウラシルを連続注入によって投与する。
【0108】
いくつかの態様では、化学療法剤はFOLFOX-7を含む。いくつかの態様では、FOLFOX-7は以下のレジメンを含む:l-ロイコボリン200mg/m又はdl-ロイコボリン400mg/mとそれに続く2週間ごとの2,400mg/mのフルオロウラシル注入及び1日目の2時間注入としてのオキサリプラチン130mg/m
【0109】
いくつかの態様では、化学療法剤はFOLFIRINOXレジメンを含む。FOLFIRINOXは、オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン及び5-FUを含む。FOLFIRINOXは、1日目に、オキサリプラチン(85mg/m、2時間かけて投与)、引き続いてロイコボリン(400mg/m、2時間かけて投与)を含み、イリノテカン(180mg/m、90分かけて投与)の30分後、引き続いて5-FU(400mg/m)を静脈内ボーラスによって添加する。その後、5-FU(2400mg/m2)の持続静脈内注入を1日目に46時間かけて投与する。いくつかの態様では、mFOLFIRINOXレジメンを2週間の治療サイクルの1日目に投与し、2週間ごとに繰り返す。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0110】
いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法を逐次的に投与される。
【0111】
一態様において、対象における転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、オレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法を投与する工程を含み、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、化学療法は、28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、その後、4週間ごとに投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与され得る。
【0112】
いくつかの態様では、本開示は、対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法を提供し、方法は、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片、例えばオレクルマブ及び化学療法を対象に投与することを含み、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを更に含む。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を含む。
【0113】
いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、約1500mgの用量で投与される。いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、1500mgの用量で投与される。いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の用量は、4週間ごとに投与される。
【0114】
いくつかの態様では、本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、約750mg~約3000mgのオレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含み、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で投与され、化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、化学療法は、28日間のサイクルの第1、8及び15日目、次いで4週間ごとに投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片、デュルバルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与され得る。
【0115】
いくつかの態様では、本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、約750mg~約3000mgのオレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含み、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で投与され、化学療法は、mFOLFOXを含み、化学療法は、28日間のサイクルの第1及び15日目、次いで4週間ごとに投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片、デュルバルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与され得る。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0116】
いくつかの態様では、本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、約750mg~約3000mgのオレクルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法を対象に投与することを含み、オレクルマブ又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに1500mgの用量で投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で投与され、化学療法は、FOLFIRINOXを含み、化学療法は、14日間のサイクルの第1日目、次いで2週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、オレクルマブ又はその抗原結合断片、デュルバルマブ又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与され得る。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0117】
いくつかの態様では、本明細書に開示される転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、本明細書に記載される抗体又はその抗原断片の非経口投与を含む。いくつかの態様では、投与は、静脈内である。いくつかの態様では、投与は、静脈内注入を介したものである。
【0118】
7.3 免疫組織化学(IHC)検出方法
いくつかの態様では、本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法は、免疫組織化学(IHC)検出方法を使用してCD73の発現を検出することを含む。いくつかの態様では、IHC検出方法は自動化されたIHC法である。本明細書に記載のIHC検出方法のいくつかの態様では、染色強度は、0、1+、2+及び3+の強度として定義され、0は染色の欠如を示し、3は強い染色を示す。IHC法は、本明細書の他の箇所に更に記載されている。
【0119】
本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法のいくつかの態様では、CD73は、投与前の対象からの腫瘍試料中の細胞の少なくとも約70%で検出されている。
【0120】
本明細書に開示される対象の転移性膵管腺癌(PDAC)を治療する方法のいくつかの態様では、方法は、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、例えばオレクルマブ又はその抗原結合断片の投与前に、対象からの腫瘍試料中の細胞の少なくとも約70%においてCD73を検出することを更に含む。
【0121】
いくつかの態様では、腫瘍試料中のCD73発現を免疫組織化学によって評価することができる。
【0122】
一態様では、細胞表面CD73染色強度が評価され、染色強度に基づいて0、1、2又は3としてスコア付けされる。
【0123】
別の態様では、細胞表面CD73染色は、腫瘍試料中の細胞に対する腫瘍試料中の1、2又は3の細胞としてスコア付けされた細胞の割合を計算することによって評価される。いくつかの態様では、パーセンテージはPスコアとして報告される。Pスコアは、1、2又は3+の強度での染色を実証する腫瘍細胞のパーセンテージの合計である。Pスコア=(1の%)+(2の%)+(3の%)。
【0124】
別の態様では、細胞表面CD73染色は、腫瘍試料内の2又は3の細胞としてスコア付けされた細胞の百分率を評価することによって評価される。2+3+Pスコアは2又は3+の強度で染色する腫瘍細胞の割合の合計である。2+3+Pスコア=(2の%)+(3の%)。
【0125】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のいずれかで使用するために対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも約50%~約90%の範囲のPスコアを有する。いくつかの態様では、腫瘍試料は、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%又は約90%のPスコアを有する。いくつかの態様では、腫瘍試料は、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%又は約90%のPスコアを有する。
【0126】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の方法で使用するためにヒト患者から得られた腫瘍試料は、少なくとも約30%~約70%の範囲の2+3+Pスコアを有する。いくつかの態様では、腫瘍試料は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%の2+3+Pスコアを有する。いくつかの態様では、腫瘍試料は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%の2+3+Pスコアを有する。
【0127】
高いCD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、少なくとも約50%~約90%の範囲のPスコアを有する。高いCD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、少なくとも約30%~約70%の範囲の2+3+Pスコアを有する。
【0128】
7.4 抗CD73抗体及びその抗原結合断片
対象(例えば、ヒト対象)の癌を治療する方法であって、CD73(例えば、ヒトCD73)に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体)及びその抗原結合断片を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、本明細書で提供される方法で使用することができるCD73(例えば、ヒトCD73)抗体及びその抗原結合断片には、CD73のエクトヌクレオチダーゼ活性に選択的に結合して阻害するヒト免疫グロブリンG1ラムダ(IgG1λ)mAbである、本明細書でオレクルマブと呼ばれるMEDI9447が含まれる。MEDI9447のFcドメインは、Fc媒介免疫エフェクター機能を低下させるように設計された三重変異L234F/L235E/P331S(欧州連合番号表記法による)を有する。オレクルマブは、CD73によるアデノシン及び有機ホスファートへのAMPの触媒作用を阻害する。細胞外アデノシンは、とりわけ、MDSC及びTregの両方の免疫抑制作用を媒介する。
【0129】
MEDI9447、すなわちオレクルマブは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,938,356号明細書に開示されている。
【0130】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、方法は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を対象(すなわちヒト対象)に投与することを更に含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される方法で使用することができるPD-L1(例えば、ヒトPD-L1)抗体及びその抗原結合断片は、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を含む。デュルバルマブは、PD-L1に選択的に結合し、PD-L1のPD-1及びCD80受容体への結合を遮断する抗体である。デュルバルマブの断片結晶性(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメイン内に、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)の媒介を担う補体成分C1q及びFcγ受容体への結合を減少させる三重変異を含有する。
【0131】
デュルバルマブは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,493,565号明細書に開示されている。
【0132】
本開示のいくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための抗体又はその抗原結合断片は、ヒトCD73(例えば、オレクルマブ)又はPD-L1(例えば、デュルバルマブ)に特異的に結合し、表1に提供されるオレクルマブ抗体及びデュルバルマブ抗体の6つのCDRを含む。
【0133】
【表1】
【0134】
本開示のいくつかの態様では、本明細書に記載される方法で使用するための抗体又はその抗原結合断片は、ヒトCD73(例えば、オレクルマブ)又はPD-L1(例えば、デュルバルマブ)に特異的に結合し、表2に示されるように、オレクルマブ抗体及びデュルバルマブ抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)配列を含む。
【0135】
【表2】
【0136】
本開示のいくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、オレクルマブを含み、オレクルマブは、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号3~5のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号6~8のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0137】
本開示のいくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、オレクルマブを含み、オレクルマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、を含む。
【0138】
本開示のいくつかの態様において、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片はデュルバルマブを含み、デュルバルマブは重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含み、重鎖可変ドメインは配列番号11~13のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号14~16のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0139】
本開示のいくつかの態様において、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片はデュルバルマブを含み、デュルバルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む。
【0140】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)1000mg/m2の用量で投与されるゲムシタビン及び125mg/mの用量で投与されるnab-パクリタキセルである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する約50%~約90%の細胞を含む。
【0141】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)1000mg/mの用量で投与されるゲムシタビン及び125mg/mの用量で投与されるnab-パクリタキセルである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。
【0142】
本明細書中に提供される方法のいくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、化学療法は、28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、その後、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0143】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)1000mg/mの用量で投与されるゲムシタビン及び125mg/mの用量で投与されるnab-パクリタキセルである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。
【0144】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)1000mg/mの用量で投与されるゲムシタビン及び125mg/mの用量で投与されるnab-パクリタキセルである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。
【0145】
いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、4週間ごとに投与され、及び化学療法は、28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、その後、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0146】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)mFOLFOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0147】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)mFOLFOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0148】
本明細書中に提供される方法のいくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、化学療法は、28日間のサイクルの第1及び15日目に投与され、その後、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0149】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)mFOLFOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0150】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)mFOLFOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0151】
いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、4週間ごとに投与され、及び化学療法は、28日間のサイクルの第1及び15日目に投与され、その後、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0152】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)FOLFIRINOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0153】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)FOLFIRINOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0154】
本明細書中に提供される方法のいくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、化学療法は、14日間のサイクルの第1日目に投与され、その後、2週間ごとに繰り返される。いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0155】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)FOLFIRINOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、1、2又は3のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約50%~約90%の細胞を含む。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0156】
いくつかの態様では、対象の転移性PDACを治療する方法が本明細書で提供され、方法は、対象に、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約750mg~約3000mgの抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、(2)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインとを含む、約1500mgの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と、(3)FOLFIRINOXである化学療法と、を投与することを含み、対象から得られた腫瘍試料は、少なくとも2のIHC染色強度スコアを有する少なくとも約30%~約70%の細胞を含む。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0157】
いくつかの態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに投与され、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、4週間ごとに投与され、及び化学療法は、14日間のサイクルの第1日目に投与され、その後、2週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片及び化学療法は、同時に又は逐次的に投与される。
【0158】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、及び(ii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。
【0159】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0160】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、1000mg/mのゲムシタビン及び125mg/mのnab-パクリタキセルを含み、且つ28日間のサイクルの第1、8及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。
【0161】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0162】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、及び(ii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間のサイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0163】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0164】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、mFOLFOXを含み、且つ28日間のサイクルの第1及び15日目に投与され、及び次いで、サイクルは、4週間ごとに繰り返される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、mFOLFOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0165】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0166】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、及び(ii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、FOLFIRINOXを含み、14日間のサイクルの第1日目に投与され、及び次いで2週間ごとに投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0167】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0168】
いくつかの態様では、(i)オレクルマブ又はその抗原結合断片、(ii)デュルバルマブ又はその抗原結合断片、及び(iii)化学療法を対象に投与することを含む、ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法が本明細書で提供され、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有し、オレクルマブ又は抗原結合断片は、4用量にわたって2週間ごとに及び次いで4週間ごとに750mg~3000mgの用量で対象に投与され、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、4週間ごとに1500mgの用量で対象に投与され、及び化学療法は、FOLFIRINOXを含み、14日間のサイクルの第1日目に投与され、及び次いで2週間ごとに投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、750mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、1500mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、2250mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、オレクルマブ又は抗原結合断片は、3000mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様では、FOLFIRINOXを受けている対象は、以前に治療されていないか、又はゲムシタビン系化学療法後に進行している。いくつかの態様では、対象は5-FU、カペシタビン又はオキサリプラチンに曝露されていない。
【0169】
ヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、(i)本明細書に記載のオレクルマブ又はその抗原結合断片を投与することを含み、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約30%~約70%は、少なくとも2の染色強度を有する。
【0170】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、腫瘍はファーストライン転移性膵管腺癌である。本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、腫瘍はセカンドライン転移性膵管腺癌である。
【0171】
本明細書に開示されるヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、2+のCD73 IHC発現スコアが、対象からの腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%に割り当てられている。本明細書に開示されるヒト対象における腫瘍の成長を阻害する方法のいくつかの態様では、3+のCD73 IHC発現スコアが、対象からの腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%に割り当てられている。
【0172】
CD73 IHC発現スコアは、本明細書の他の箇所に記載されるIHC法によって検出されている。
【0173】
いくつかの態様では、本発明は、転移性膵管腺癌(PDAC)に罹患しているヒト患者の全生存期間を延長する方法を含み、患者に本明細書に開示される免疫療法を投与することを含み、患者は12ヶ月にわたって無増悪生存期間を示す。いくつかの態様では、患者の無増悪生存期間は、投与後、標準治療と比較して約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年又は約10年を超えて延長することができる。
【0174】
いくつかの態様において、本発明は、標準治療と比較して少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%又はそれを超える全奏効率(ORR)を延長するための方法を含む。
【0175】
いくつかの態様において、本発明は、標準治療と比較して少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%又はそれを超える全生存期間を延長するための方法を含む。いくつかの態様では、本発明の方法で治療された患者の全生存期間は、少なくとも約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24ヶ月又はそれを超える。
【0176】
更に他の態様では、本発明は、転移性膵管腺癌(PDAC)に罹患しているヒト患者において腫瘍サイズを少なくとも10%減少させる方法を含み、本明細書に開示される免疫療法を投与することを含み、投与は、投与前の腫瘍サイズと比較して、腫瘍サイズを少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は100%減少させる。いくつかの態様では、方法は、投与前にCD73陽性腫瘍を有するとして患者を同定することを含む。
【0177】
いくつかの態様において、本発明は、患者集団において客観的奏効率を15%より高くするための方法を含む。いくつかの態様において、客観的奏効率は、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超又はそれを超える。いくつかの態様では、方法は、投与前にCD73陽性腫瘍を有するとして患者を同定することを含む。
【0178】
いくつかの態様において、方法における各患者は、(i)12ヶ月を超える全生存期間、(ii)投与前の腫瘍サイズと比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%若しくは約50%の腫瘍サイズの縮小、又は(iii)その両方を経験する。
【0179】
本発明の方法は、本明細書中に開示される免疫療法の投与の結果として、転移性膵管腺癌(PDAC)を治療すること、腫瘍サイズを縮小させること、腫瘍の成長を阻害すること、患者から腫瘍を排除すること、腫瘍の再発を防止すること、患者において寛解を誘導すること又はそれらの任意の組み合わせが可能である。特定の態様では、本明細書に開示される免疫療法の投与は完全奏効を誘導する。他の態様では、本明細書に開示される免疫療法の投与は部分奏効を誘導する。
【0180】
いくつかの態様では、CD73陽性腫瘍は、CD73を発現する少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約7%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は100%の細胞を含む。
【0181】
いくつかの態様では、CD73発現は、CD73発現を決定することができるアッセイの結果を受け取ることによって決定される。
【0182】
いくつかの態様では、本発明の方法は、活性化/増殖及びエフェクターT細胞の頻度を変化させる。いくつかの態様において、T細胞は、フローサイトメトリーに基づくアッセイ又は免疫組織化学によって測定される。
【0183】
いくつかの態様では、本発明の方法は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CD8及びIFN-γなどのバイオマーカのタンパク質又は遺伝子発現を変化させる。
【0184】
遺伝子又はタンパク質の発現(例えば、CD73)を評価するために、一態様では、治療を必要とする患者から試験組織試料を得る。いくつかの局面では、試験組織試料は、腫瘍生検、コア生検組織試料、細針吸引物又は血液、血漿、血清、リンパ、腹水、嚢胞液若しくは尿などの体液の試料などの任意の臨床的に関連する組織試料を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、試験組織試料は原発腫瘍由来である。いくつかの態様において、試験組織試料は転移に由来する。いくつかの態様では、試験組織試料は、例えば、治療前、治療中及び/又は治療後の複数の時点で対象から採取される。いくつかの態様において、試験組織試料は、対象における異なる位置から採取され、例えば、原発性腫瘍からの試料及び遠隔位置における転移からの試料が採取される。
【0185】
いくつかの態様では、試験組織試料はパラフィン包埋固定組織試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は新鮮組織(例えば、腫瘍)試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は凍結組織試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は新鮮凍結(FF)組織(例えば、腫瘍)試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は、流体から単離された細胞である。いくつかの態様では、試験組織試料は循環腫瘍細胞(CTC)を含む。いくつかの態様では、試験組織試料は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む。いくつかの態様では、試験組織試料は、腫瘍細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む。いくつかの態様では、試験組織試料は循環リンパ球を含む。いくつかの態様では、試験組織試料は保管組織試料である。いくつかの態様では、試験組織試料は、既知の診断、治療及び/又は転帰履歴を有する保管組織試料である。いくつかの態様では、試料は組織のブロックである。いくつかの態様では、試験組織試料は分散細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは、約1細胞~約1×10細胞以上である。いくつかの態様では、試料サイズは約1細胞~約1×10細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは約1細胞~約10,000細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは約1細胞~約1,000細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは約1細胞~約100細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは約1細胞~約10細胞である。いくつかの態様では、試料サイズは単一細胞である。
【0186】
別の態様では、発現の評価は、試験組織試料を得ることなく達成することができる。いくつかの態様において、好適な患者を選択することは、(i)必要に応じて、組織の癌を有する患者から得られる試験組織試料を提供する工程であって、試験組織試料は、腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤性炎症細胞を含む、工程と、(ii)試験組織試料中の細胞の割合が、所定の閾値レベルより高いという評価に基づいて、目的の遺伝子/タンパク質を発現する試験組織試料中の細胞の割合を評価する工程と、を含む。
【0187】
7.5 患者集団
本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される任意の方法、例えば、単剤として投与されるか、又は任意選択的に1つ若しくは複数の化学療法剤と組み合わせて投与される、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、例えば、オレクルマブ又はその抗原結合断片、すなわち(例えば、MEDI9447)又はその抗原結合断片を使用して、ヒト患者の癌(例えば、転移性膵管腺癌(PDAC))を治療するための臨床方法である。
【0188】
いくつかの態様では、対象はヒトである。いくつかの態様では、ヒト対象は、組織学的又は細胞学的に確認された膵臓腺癌を有する18歳以上の成人である。いくつかの態様では、対象は以前に治療されていない転移性PDAC(1L転移性PDAC)を有する。
【0189】
いくつかの態様では、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞はCD73を発現する。いくつかの態様では、ヒト対象から得られた腫瘍試料は高いCD73発現を発現する。高いCD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、少なくとも約50%~約90%の範囲のPスコアを有する。高いCD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、少なくとも約30%~約70%の範囲の2+3+Pスコアを有する。
【0190】
いくつかの態様では、ヒト対象から得られた腫瘍試料中の細胞の少なくとも約50%~約90%が、IHCによって決定される場合、1、2又は3の染色強度を有する。
【0191】
いくつかの態様において、ヒト対象から得られた腫瘍試料における細胞の少なくとも約30%~約70%が、少なくとも2の染色強度を有する。
【0192】
いくつかの態様において、ヒト対象から得られた腫瘍試料における細胞の少なくとも約30%~約70%が、少なくとも3の染色強度を有する。
【0193】
7.6 結果
本明細書に開示される方法に従って治療された患者は、好ましくは、癌の少なくとも1つの徴候の改善を経験する。いくつかの態様では、改善は、可溶性CD73及び可溶性CD73酵素活性などの可溶性因子の血漿及び血清レベルの評価によって測定される。いくつかの態様では、改善は、抗腫瘍免疫応答の免疫メディエーターの評価によって測定され、その測定は、治療及び臨床転帰との関連を調べるために使用することができる。いくつかの態様では、改善は、疾患応答に関連するCD73発現、マイクロサテライト安定性(MSS)状態及び腫瘍突然変異負荷などのPDACの予後マーカの調査によって測定される。いくつかの態様では、抗CD73抗体又はその抗原結合断片の投与に対する腫瘍応答は、腫瘍評価の治験責任医師レビューによって決定され、RECIST v1.1ガイドラインによって定義され得る。追加の腫瘍測定は、治験責任医師の裁量で又は施設の慣例に従って行うことができる。
【0194】
いくつかの態様において、改善は、突然変異負荷についての腫瘍試料の評価によって測定される。いくつかの態様では、改善はCD73タンパク質発現レベルによって測定される。いくつかの態様では、改善は、免疫抑制バイオマーカPD-L1タンパク質の評価によって測定される。いくつかの態様において、改善は、1L及び2LのPDACにおけるベースライン発現を評価するためのIHC分析によるPD-1、CD3、CD4、CD8、フォークヘッドボックスP3及びグランザイムBを含み得るがこれらに限定されない、免疫マーカの評価によって測定される。
【0195】
CD73の発現を、College of American Pathologists(CAP)/Clinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA)実験室において、検証された完全に自動化されたIHCアッセイを使用して決定する。
【0196】
いくつかの態様において、主要有効性エンドポイントはORであり、これは、RECISTバージョン1.1による確認された完全奏効(CR)又は確認された部分奏効(PR)の最良総合効果として定義される。最良総合効果は、治療開始からPDの客観的記録までに記録された全奏効の最良効果(CR(完全奏効)、PR、(安定疾患)SD、進行性疾患(PD)及びNE(評価不能)の順)又は後続の抗癌療法の開始前のPDの非存在下での最後の評価可能な疾患評価若しくは試験の終了のいずれか早い方として定義される。CR又はPRの最良総合効果を確認しなければならず、これは、CR/PRの応答が訪問時に記録され、最初とCR/PR確認訪問との間に進行の証拠がなく応答が最初に観察されたとき、訪問後28日(4週間)以上の反復撮像によって確認されることを意味する。客観的奏効率(ORR)は、ORの割合によって推定することができ、その95%信頼区間(CI)は、正確な二項分布を使用して推定される。ORRについての群の比較は、Cochran-Mantel-Haenszel検定から得られる。
【0197】
別の態様では、治療された患者は、腫瘍の縮小及び/又は成長速度の低下、すなわち腫瘍成長の抑制を経験する。いくつかの態様では、望ましくない細胞増殖が低減又は阻害される。いくつかの態様では、以下の1つ又は複数が起こり得る。癌細胞の数を減少させることができる;腫瘍サイズを小さくすることができる;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害、阻止、遅延又は停止することができる;腫瘍転移を遅延又は阻害することができる;腫瘍成長を阻害することができる;腫瘍の再発を防止又は遅延することができる;癌に関連する症状の1つ又は複数をある程度緩和することができる。
【0198】
他の態様では、本明細書で提供される方法のいずれかによる抗体又はその抗原結合断片の投与は、腫瘍のサイズの縮小、経時的に現れる転移性病変の数の減少、完全寛解、部分寛解又は安定疾患からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす。
【0199】
いくつかの態様において、1つ又は複数の腫瘍評価が、本明細書中に提供される方法のいずれかに従って抗CD73抗体又はその抗原結合断片の投与に対する腫瘍応答を決定するために使用され得る。腫瘍評価には、以下の評価が含まれ得る。胸部、腹部、骨盤及び脳のCT又は磁気共鳴撮像法(MRI)スキャンを使用した断面撮像。胸部、腹部及び骨盤のCT又はMRIスキャンは、全ての対象の各疾患評価で実施される。更に、脳のCT又はMRIスキャンは、脳転移の臨床的懸念を有する全ての対象のスクリーニング時に実施される。スクリーニング時に脳転移を有する対象又は撮像を必要とする神経学的症状若しくは他の臨床症状を発症する対象はいずれも、各疾患評価で脳撮像を行わなければならない。疾患評価の好ましい方法は、造影剤を用いたCTであり、造影剤を伴うCTが禁忌である場合、造影剤を伴わないCTがMRIよりも好ましい。CNS撮像のための好ましい方法はMRIであり、CTスキャンが実行される場合、造影剤を伴うCTが必要とされる。同じ方法が、その後の全ての腫瘍評価に好ましい。
【0200】
いくつかの態様では、試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。いくつかの態様では、試料は新鮮な試料である。腫瘍試料(例えば、生検)を使用して、免疫及び腫瘍微小環境に関連する予測的及び/又は薬力学的バイオマーカを同定することができる。そのようなバイオマーカは、IHC、腫瘍突然変異分析、RNA分析及びプロテオーム分析を含むアッセイから決定することができる。特定の態様では、腫瘍バイオマーカの発現は、RT-PCR、インサイチューハイブリダイゼーション、RNase保護、RT-PCRベースのアッセイ、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着アッセイ、インビボ撮像又はフローサイトメトリーによって検出される。特定の態様では、腫瘍バイオマーカの発現は、本明細書の他の箇所に記載されるCD73免疫組織化学(IHC)アッセイによって検出される。
【0201】
7.7 医薬組成物
ヒト患者への投与に適した医薬組成物は、典型的には、例えば液体担体中での非経口投与のために製剤化されるか、又は静脈内投与のための液体溶液若しくは懸濁液への再構成に適している。
【0202】
一般に、そのような組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、特にヒトでの使用について、政府規制機関によって承認されていること又は米国薬局方若しくは別の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液体、例えば水及び油、例えば石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、グリセロールポリエチレングリコールリシノレエートなどを含む。水又は水溶液の生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液を、特に注射用溶液のための担体として使用することができる。非経口投与用の液体組成物は、注射又は持続注入による投与のために製剤化することができる。注射又は注入による投与経路には、静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内及び皮下が含まれる。
【0203】
以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提供される。
【実施例
【0204】
この節(すなわち第6節)の例は、限定ではなく例示として提供される。
【0205】
8.1 実施例1:転移性膵管腺癌を有する対象における、化学療法と組み合わせた、デュルバルマブのあり又はなしによるオレクルマブ処置
この研究は、転移性PDACを有する対象に投与される化学療法と組み合わせた、デュルバルマブのあり又はなしによるオレクルマブの安全性、予備的抗腫瘍活性、免疫原性及びPKを評価するための、フェーズ1b/2、多施設、非盲検、用量漸増及び用量拡大研究である。以前に治療されていない転移性PDAC(1L転移性PDAC)を有する対象をコホートAに登録した(図1)。試験は、2部、用量漸増(パート1)及び用量拡大(パート2)を含む。試験の対象集団は、組織学的又は細胞学的に膵腺癌と診断された18歳以上の対象である。以前に治療されていない転移性PDAC(1L転移性PDAC)を有する対象をコホートAに登録した。
【0206】
治療群及びレジメン
最大約339人の対象がこの試験に登録され、約24人の対象がパート1(用量漸増)に登録され、約315人の対象がパート2(用量拡大)に登録される。両方のコホートにおける全ての対象は、疾患進行(及び進行性疾患の状況における処置基準が満たされない)、忍容できない毒性、対象の同意の撤回又は別の中止基準が満たされるまで治療される。
【0207】
パート1(用量漸増)
最大24人の対象をパート1(用量漸増)に登録した(図2A)。1L転移性PDACを有する9~約12人の対象がコホートAに登録される。2L転移性PDACを有する9~約12人の対象がコホートBに登録される。以下に詳述するように、デュルバルマブ及び化学療法(コホートAのためのゲムシタビン/nab-パクリタキセル;コホートBのmFOLOX)の単回用量レベルは、オレクルマブと組み合わせて使用される。
・3つの用量レベルの1つでのオレクルマブ:
○用量レベル-1(3~6人の対象):4用量にわたって2週間ごとに(Q2W)、次いで4週間毎(Q4W)で、750mgのIV;開始用量レベル(用量レベル1)でMTDを超えた場合
・用量レベル-1(3~6人の対象):1500mg IV Q2Wで4用量、次いでQ4W(開始用量レベル)
○用量レベル-2(6人の対象):3000mg IV Q2Wで4用量、次いでQ4W(最高計画用量レベル)
・デュルバルマブ1500mg IV Q4W
・コホートA:1、8及び15日目のゲムシタビン1000mg/m2 IV及びnab-パクリタキセル125mg/m2 IV、その後、Q4Wスケジュールでの繰返し。
・コホートB:1及び15日目のmFOLFOX、その後、Q4Wスケジュールでの繰返し:オキサリプラチン85mg/m2 IV;ロイコボリン400mg/m2 IV;5-FU400mg/m2 IVボーラスに続く5-FU2400mg/m2を46~48時間にわたる連続IV注入によって投与。
【0208】
パート2(用量拡大)
最大約315人の対象がパート2(用量拡大)に登録され、最大約210人の対象がコホートAに登録される。対象をCD73発現レベルによって層別化し、コホート当たり3つの治療群の1つに1:1:1で無作為化する(コホートAの治療群当たり約70人の対象)。発現レベルは以下のように定義される。CD73高=50%以上の腫瘍細胞において2+又は3+のCD73発現強度を有する腫瘍試料。CD73低=腫瘍細胞におけるCD73発現のない腫瘍試料又は50%未満の2+若しくは3+の強度を有する腫瘍細胞。パート1(用量漸増)中のオレクルマブについての用量レベルを判定する。デュルバルマブ及び化学療法の用量及び治療レジメンは、用量漸増と同じである。コホートA及びコホートBの治療群を以下及び図2B及び2Cに詳述する。
コホートA
群A1
・1、8及び15日目のゲムシタビン1000mg/m2 IV及びnab-パクリタキセル125mg/m IV、その後、Q4Wスケジュールでの繰返し。
群A2
・4回の用量についてオレクルマブIV Q2W、その後、Q4W、及び
・1、8及び15日目のゲムシタビン1000mg/m2 IV及びnab-パクリタキセル125mg/m2 IV、その後、Q4Wスケジュールでの繰返し。
・群A3
・4回の用量についてオレクルマブIV Q2W、その後、Q4W、及び
・デュルバルマブ1500mg IV Q4W、及び
・1、8及び15日目のゲムシタビン1000mg/m2 IV及びnab-パクリタキセル125mg/m IV、その後、Q4Wスケジュールでの繰返し。
コホートB
・群B1(35人の対象):mFOLFOX
・群B2(35人の対象):オレクルマブ及びmFOLFOX、及び
・群B3(35人の対象):オレクルマブ、デュルバルマブ及びmFOLFOX
【0209】
有効性
抗腫瘍活性の有効性分析は、治療意図(ITT)集団(無作為化され、任意の量の治験薬を投与され、無作為化された治療割当てに従って分析される全ての対象として定義される)に基づく。RECIST v1.1に基づくOR及びDCの割合は、正確な二項分布に基づく95%信頼区間で要約される。生存時間エンドポイント(DoR、PFS及びOS)を、Kaplan-Meier法を使用して分析する。
【0210】
免疫原性及び薬物動態
少なくとも1回の用量のオレクルマブ及び/又はデュルバルマブを投与され、少なくとも1つの治療後試料を提供した対象のみが評価される。
【0211】
各コホートについて、検出可能な抗薬物抗体(ADA)を発症する対象の数及び割合を要約することにより、組合わせの免疫原性の可能性を評価する。個々のオレクルマブ及びデュルバルマブ濃度は、記述統計学と共に用量コホートによって集計される。ノンコンパートメントPKデータ分析を、データが許す場合、スケジュールされたPK試料採取を伴う各用量コホートから行う。ノンコンパートメントPKパラメータの関連する記述統計学には、以下のものが含まれ得る。濃度-時間曲線下面積、最大観察濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間、クリアランス、分布容積及び最終半減期。
【0212】
オレクルマブの薬力学は、全血中の遺伝子発現の変化並びにコホートによって集計された可溶性CD73、サイトカイン及びctDNAを含むがこれらに限定されない可溶性因子によって評価される。記述統計学は、対象及びコホートに特異的な変化を記載するために使用される。スクリーニング手順の一部として得られた組織及び治療終了時に得られた任意の生検を、IHCによるCD73発現を確立するために評価する。組織の利用可能性に基づいて、腫瘍浸潤リンパ球又は腫瘍細胞上に発現される追加の免疫関連マーカのパネルを評価する。遺伝子発現方法(例えば、限定されないが、CXCL9、CXCL10及びIFN-γ自体などのインターフェロン-ガンマ[IFN-γ]シグナル伝達遺伝子の検出のために)及び/又は体細胞突然変異検出方法論を含む他の組織ベースのアプローチが追求されている。
【0213】
目的及び試験エンドポイント
一次目的及びエンドポイント
パート1(用量漸増)
・転移性PDACを有する対象に投与された化学療法と組み合わせたオレクルマブ+デュルバルマブの安全性及び忍容性を評価すること
・用量制限毒性(DLT)、有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)の発生率並びに臨床検査パラメータ、バイタルサイン及び心電図(ECG)結果におけるベースラインからの臨床的に意味のある変化
パート2(用量拡大)
・ファーストライン(1L)転移性PDACを有する対象に投与されたゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと比較した、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと組み合わせたデュルバルマブを伴う又は伴わないオレクルマブの予備的抗腫瘍活性を評価すること
・Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)version 1.1(v1.1)による客観的奏効(OR)
・RECIST v1.1によるセカンドライン(2L)転移性PDAC ORを有する対象における化学療法と組み合わせたデュルバルマブを伴う又は伴わないオレクルマブの予備的抗腫瘍活性を評価すること
【0214】
二次目的及びエンドポイント
パート1(用量漸増)
・RECIST v1.1に従って1Lの転移性PDAC ORを有する対象及び疾患対照(DC)に投与されたゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと組み合わせたオレクルマブ+デュルバルマブの予備的抗腫瘍活性を評価すること
パート2(用量拡大)
・転移性PDACを有する対象に投与された化学療法と組み合わせたデュルバルマブを伴うか又は伴わないオレクルマブの安全性及び忍容性を評価すること
・AE及びSAEの発生率並びに臨床検査パラメータ、バイタルサイン及びECG結果におけるベースラインからの臨床的に意味のある変化
・1L転移性PDACを有する対象に投与されたゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと比較した、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと組み合わせたデュルバルマブを伴う又は伴わないオレクルマブの予備的抗腫瘍活性を評価すること
○全生存期間(OS);無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)及びRECIST v1.1によるDC
・CD73発現によって定義される集団において化学療法単独と比較して、化学療法と組み合わせたデュルバルマブを伴う又は伴わないオレクルマブの予備抗腫瘍活性を評価すること
○OS;ベースラインでのCD73発現によるRECIST v1.1に従うOR及びPFS
【0215】
パート1(用量漸増)及びパート2(用量拡大)
・転移性PDACを有する対象に投与された化学療法と組み合わせたオレクルマブ及びデュルバルマブの免疫原性を評価すること
・オレクルマブ及びデュルバルマブ後の検出可能な抗薬物抗体(ADA)の開発
・転移性PDACを有する対象に投与された化学療法と組み合わせたオレクルマブ及びデュルバルマブの薬物動態(PK)プロフィールを決定すること
・オレクルマブ、デュルバルマブ並びに選択された化学療法及び/又はそれらの代謝産物のPKの概要
【0216】
用量制限毒性(DLT)
DLTをパート1(用量漸増)の間に評価する。DLT評価の期間は、全ての試験処置の初回用量から28日目までである。DLT評価期間を完了していないか、又はDLT以外の理由でこの期間中に全ての計画された用量のオレクルマブ、デュルバルマブ又は化学療法を受けなかった対象は、DLT評価のために評価不可能であると考えられ、同じ用量レベルで別の対象と置き換えられるが、このコホートから毒性を検討する際には依然として考慮される。DLTの等級付けは、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE version 4.03)に従う。DLTは、任意のグレード3以上の毒性又はDLT評価期間中に起こる以下に列挙される事象のいずれかとして定義される。原発性疾患、化学療法単独又は別の病因に明確且つ直接的に関連する毒性は、DLTとはみなされない。以下はDLTである。
免疫介在性有害事象(imAE)
・任意のグレード4のimAE(無症候性リパーゼ及び/又はアミラーゼ上昇を除く)
・任意のグレード3以上の大腸炎
・グレード3以上の悪心、嘔吐又は下痢であり、最大支持療法の開始後3日以内にグレード2以下に回復しないもの
・グレード3以上の間質性肺炎又はILD
・最大限の支持療法の開始後7日以内に総体症状が解決しないグレード2の間質性肺炎又はILD
貧血
・任意の期間のグレード4貧血
・臨床的続発症に関連する場合又は2単位を超える赤血球の輸血を必要とする場合のグレード3の貧血
血小板減少症
・グレード4の血小板減少症≧7日
・グレード3又は4の血小板減少症、持続期間にかかわらず、グレード3以上の出血に関連する
好中球減少症及び/又は発熱性好中球減少症
・任意の期間のグレード4発熱性好中球減少症
・最大支持療法を受けている間に5日間以上持続するグレード3の発熱性好中球減少症
・7日超持続するグレード4の好中球減少症
肝機能検査
・全身コルチコステロイドを含む最適な医学的管理を伴って、発症後14日以内にグレード1以下に低下しない、単離されたグレード3の肝臓トランスアミナーゼ上昇又は単離されたグレード3の総ビリルビン(TBL)。
・期間にかかわらず、単離されたグレード4の肝臓トランスアミナーゼ上昇又はTBL。
・胆汁うっ滞の証拠又は代替の説明なしに、AST又はALTが正常値の上限(ULN)の3倍を超えて増加し、TBLがULNの2倍を超えて同時に増加する(例えば、ウイルス性肝炎、肝臓における疾患の進行)
又は、ベースラインにおける毒性よりも大きく、臨床的に有意であり、且つ/又は許容できず、DECによってDLTであると判断される任意の他の毒性
DLTは以下を除外する。
・全身コルチコステロイド療法及び/又はホルモン補充療法あり又はなしで管理されるグレード3の内分泌障害(甲状腺、下垂体及び/又は副腎機能不全)
・グレード3の炎症反応は、局所抗腫瘍応答(例えば、転移性疾患、リンパ節などの部位における炎症反応)に起因し、30日以内にグレード1以下に消散した
・任意のAEグレードの同時発生的白斑又は脱毛症
・臨床的続発症又は臨床的有意性のない任意のグレードの単離された実験室変化
上記のDLTとして定義されていないもの
免疫媒介性AEは、明確な代替的病因がない免疫性のAE(すなわち炎症性)として定義される。臨床的異常がない場合、DLTとして指定される前に重要な臨床検査所見を確認するために、反復臨床検査が行われる。
組入れ基準
1.スクリーニング時年齢が18歳以上又は法律上の同意年齢。
2.スクリーニング評価を含む任意のプロトコル関連手順を実施する前に、書面によるインフォームドコンセント及び対象から得られる任意の局所的に必要な許可(例えば、データプライバシー)。
3.0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステイタス。
4.体重≧35kg。
5.組織学的又は細胞学的に確認された膵臓腺癌と診断された対象:
コホートAの場合:対象は、転移性膵臓腺癌のための全身療法を受けたことがあってはならない。対象が事前のネオアジュバント化学療法又はアジュバント化学療法を受け、最後の投与から6ヶ月以内に進行した場合、これは全身療法の事前選択とみなすべきである。
6.対象は、RECISTバージョン1.1に従って少なくとも1つの測定可能な病変を有さなければならない。
(a)以前に照射された病変は、病変が十分に定義され、RECISTによって測定可能であり、明らかに進行している場合、標的病変とみなすことができる。
(b)対象は、治験責任医師によって判断された場合、許容可能なリスクで生検することができる非標的病変を有していなければならず(登録のために生検が必要な場合)、又は他の病変が生検に適していない場合、生検に使用されるRECIST標的病変は、長径が2cm以上でなければならない。
7.全ての対象は、腫瘍組織が利用可能である場合、相関バイオマーカ研究及び層別化のためのCD73発現試験のための保管腫瘍標本(コア生検又はより大きい切除、細針吸引試料なし)を提供することに同意しなければならない。保管検体(12ヶ月以内)が入手できない場合、対象は新鮮な生検に同意しなければならない。
8.表5(4.1.2-1)に定義されるような適切な臓器及び骨髄機能。
除外基準
1.試験治療の予定された最初の用量の前に、21日以内に任意の従来の又は治験中の抗癌療法又は14日以内に緩和的放射線療法を受けること。
2.治療的抗癌ワクチンを除く、他の抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1抗体及びCD73、CD39又はアデノシン受容体を標的とする薬剤を含むがこれらに限定されない任意の免疫媒介療法を事前に受けること。
3.別の治療臨床試験への同時登録。観察研究への登録は許可される。
4.事前の標準治療からの任意の毒性(脱毛症を除く)が、同意時にベースラインまで完全には解消されていない。安定又は不可逆的であると考えられるNCI CTCAEバージョン4.03グレード1又は2の毒性を有する対象は、事前の相談及び医療モニターとの同意を得て、症例ごとに登録することができる。
5.試験治療の予定された最初の用量の前の過去3ヶ月以内に静脈血栓症の病歴を有する対象。注:偶発的に発見され、無症候性であり、治療を必要としない腫瘍による機械的閉塞による血栓症を有する対象は、治験責任医師の裁量で登録され得、綿密にモニタリングされるべきである。
6.試験治療の予定された最初の用量の前の過去3ヶ月以内に心筋梗塞、一過性脳虚血発作又は脳卒中の既往歴を有する対象。
7.試験治療の予定された最初の用量の前の過去3年以内の活動性又は以前に記録された自己免疫障害。以下は、この基準の例外である。
(a)白斑又は脱毛症を有する対象。
(b)全身治療を必要としないホルモン補充又は乾癬に対して安定な甲状腺機能低下症(例えば、橋本症候群後)を有する対象。
(c)全身療法を必要としない任意の慢性皮膚状態。
(d)食事のみによって制御されるセリアック病を有する対象。
8.ヒト免疫不全ウイルス(ウイルス量が検出不能であっても)、慢性若しくは活動性のB型若しくはC型肝炎又は活動性のA型肝炎が確認された対象。
9.原発性免疫不全、固形臓器移植又は活動性結核の病歴。結核の臨床的又は放射線学的所見がある状況では、登録前に活動性疾患を除外しなければならない。
10.2年以内の他の浸潤性悪性腫瘍。非侵襲性悪性腫瘍(すなわち子宮頸上皮内癌、上皮内前立腺癌、皮膚の非黒色腫癌、外科的に治癒した乳房の上皮内乳管癌)は、この定義から除外される。
11.治験薬製剤に対する既知のアレルギー又は過敏症。
12.限定されないが、抗生物質療法を必要とする進行中又は活動性感染、制御されない高血圧、出血性疾患又は研究要件の遵守を制限する、AEを発症するリスクを実質的に増加させるか、又は対象が書面によるインフォームドコンセントを与える能力を損なう精神医学的疾患/社会的状況を含む、制御されない併発疾患。
13.軟髄膜疾患又は脊髄圧迫の病歴。
14.未処置CNS転移性疾患。注:少なくとも28日間X線撮影的及び神経学的に安定であり、試験治療の予定された最初の用量の前の少なくとも14日間のCNS対症療法のために(任意の用量の)コルチコステロイドを必要としないCNS転移について以前に治療された対象が適格である。
15.試験治療の予定された最初の用量の14日前以内の免疫抑制薬の現在又は以前の使用。以下は、この基準の例外である。
(a)鼻腔内、局所、吸入コルチコステロイド又は局所ステロイド注射(例えば、関節内注射)。
(b)10mg/日のプレドニゾン又はそれに相当する量を超えない生理学的用量の全身コルチコステロイド。
(c)過敏反応のための前投薬としてのステロイド(例えば、コンピュータ断層撮影[CT]スキャン前投薬)。
16.試験治療の予定された最初の用量の28日前以内に生弱毒化ワクチンを受けること(注意:登録されている場合、対象は、試験中及び試験治療の最後の用量の180日後に生ワクチンを投与されるべきではない)。不活化ワクチンによるワクチン接種はいつでも可能である。
17.試験治療の最初の予定投与前28日以内又は以前の手術から依然として回復中の大手術(治験責任医師によって定義されたもの)。局所処置(例えば、全身ポートの配置、コア針生検及び前立腺生検)は、試験治療の最初の用量の投与の少なくとも24時間前に完了していれば許容される。
18.妊娠しているか、授乳しているか又は研究への参加中に妊娠を望む女性。
19.意図せずに拘束されているか、又は積極的に同意を与えることができないか、又はプロトコル手順を遵守することができない対象。
20.治験責任医師の意見において、治験薬の安全な投与若しくは評価又は対象の安全性若しくは研究結果の解釈を妨げると考えられるあらゆる状態。
21.ゲムシタビン、nab-パクリタキセル、オキサリプラチン、ロイコボリン又は5-FUに対する既知のアレルギー又は過敏症。
【0217】
8.2 実施例2:CD73免疫組織化学アッセイ及びスコアリング基準
腫瘍試料におけるCD73発現を免疫組織化学によって評価した。簡潔には、キシレン中でのワックス除去及び段階的な一連のアルコール、Target Retrieval Solution、pH6(Dako,cat.no.K8005)による再水和の後、Dako PTリンク中のCD73抗原/エピトープを97℃で20分間回収するために使用する。一次抗体(Abcam/#ab124725(クローンEPR6115))及び全ての必要なアイソタイプコントロール抗体を、Antibody Diluent(Dako,cat.no.S0809)を使用して各実行のために新鮮に調製した。FFPE切片におけるCD73の標的認識は、Dako Rabbit Envision+キット(cat.no.K4011)からのシグナル増幅/検出試薬を使用する。全ての試料をヘマトキシリン(Dako,cat.no.S3301)を用いて対比染色する。全ての市販の試薬の保存及び取扱いは、製造業者の指示に従っている。CAP/CLIA試験施設でのCD73 IHCプロトコルを、Dako Autostainer Link48を用いて自動化した。
【0218】
試験全体を通して、2つのスコアリング方法を使用した。両方の方法は、0、1、2及び3の強度で染色する腫瘍細胞の割合の直接推定を使用し、0は染色の欠如を示し、3は強い染色を示した。
【0219】
腫瘍膜染色のみを考慮した。管腔染色を、管腔が位置する細胞巣の表現としてスコア付けした。第1の方法では、Hスコア、特定の強度で染色された腫瘍細胞の割合にその強度係数を掛け、4つの強度レベルでの各積を合計する。
Hスコア=[(1未満の%)*0]+[(1の%)*1]+[(2の%)*2]+[(3の%)*3]。
【0220】
使用した第2のスコアリング方法はPスコアであった。
【0221】
病理学者は、細胞表面CD73染色強度を0、1、2及び3の強度でカウントした。各試料内の1、2及び3で染色された細胞の割合並びに2及び3で染色された細胞の割合を考慮した。2つの異なるPスコアの1つを使用してCD73発現を評価した:(1)Pスコア、及び(2)2+3+Pスコア。各スコアの式を以下に示す。
【0222】
Pスコア=(1の%)+(2の%)+(3の%)。Pスコアは、1、2又は3の強度で染色する腫瘍細胞の割合の合計である。
【0223】
2+3+P-スコア=(2の%)+(3の%)。2+3+Pスコアは2又は3の強度で染色する腫瘍細胞の割合の合計である。
【0224】
高CD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、約70%のPスコア閾値を有していた。
【0225】
高CD73発現を有すると考えられる患者由来の腫瘍試料は、少なくとも約50%の2+3+Pスコア閾値を有していた。
【0226】
患者をCD73 2+3+Pスコアによって層別化し、1:1:1を3つの治療群の1つに無作為化した。
【0227】
8.3 実施例3:第1b/2相試験の結果
CD73高患者についての標準治療(化学療法のみ)を伴う月単位の全生存期間中央値(mOS)は7.9ヶ月である。これは、全患者の10.6ヶ月のmOSよりも悪く、これは、高CD73が予後不良マーカであることを示唆している。オレクルマブ、デュルバルマブ及び化学療法による全生存期間の中央値は12.1ヶ月である。
【0228】
上記のように、この第1b/2相試験では、患者をCD73 2+3+Pスコアによって層別化し、高群では50%以上の腫瘍細胞2+3+Pスコアの患者、低群では50%未満の腫瘍細胞2+3+の患者をコホートごとに3つの治療群の1つに1:1:1無作為化した。
【0229】
高CD73発現サブグループは、化学療法(ゲムシタビン/アブラキサン(nab-パクリタキセル))に対するより低い応答に関連していた。しかしながら、化学療法(ゲムシタビン/nab-パクリタキセル)へのオレクルマブ+/-デュルバルマブの追加は、CD73高サブグループにおいて全奏効率の増加を示した。高CD73発現亜群は、化学療法(ゲムシタビン/nab-パクリタキセル)へのオレクルマブ+/-デュルバルマブの追加にかかわらず、低CD73亜群よりも短い無増悪生存期間に関連していた(表3及び図3及び図4)。
【0230】
【表3】
【0231】
示されるように、全奏効率は、群A1と比較して群A3において最低16週間の追跡調査でCD73高群の患者においてより高かった。CR及びPRは、以下のパーセンテージでCD73高患者において明白であった。21.1%(群A1)、32.0%(群A2)及び40.9%(群A3)。これは、化学療法(ゲムシタビン/nab-パクリタキセル)に加えてオレクルマブ及びデュルバルマブによるCD73高患者の治療が、化学療法単独と比較してより良好な奏効率をもたらし得ることを実証している。
【0232】
この実施例は、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルへのオレクルマブ+デュルバルマブの追加が、図6Bに示されるように、CD73高患者群において全生存利益をもたらしたことを実証する。
【0233】
化学療法(ゲムシタビン/nab-パクリタキセル)へのオレクルマブ+/-デュルバルマブの追加が、CD73高サブグループにおいて全奏効率の増加を示し、化学療法(ゲムシタビン/nab-パクリタキセル)へのオレクルマブ+/-デュルバルマブの添加にかかわらず、高CD73発現サブグループが低CD73サブグループよりも短い無増悪生存期間に関連したことを示した確認的証拠を図5A図5B図6A図6B図7A図7B及び表4に示す。
【0234】
【表4】
【0235】
本開示は、本明細書に記載の特定の態様によって範囲が限定されるものではない。実際、記載されたものだけではなく、本発明の様々な変更形態が前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。このような変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0236】
本明細書で引用される全ての参考文献(例えば、公報又は特許若しくは特許出願)は、それぞれの個々の参考文献(例えば、公報又は特許若しくは特許出願)があらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれると具体的且つ個別に示されるのと同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
2023542523000001.app
【国際調査報告】