(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】新規乳酸菌およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20231002BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20231002BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231002BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231002BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231002BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231002BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231002BHJP
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A61P 11/00 20060101ALI20231002BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231002BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20231002BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20231002BHJP
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A61P 27/06 20060101ALI20231002BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231002BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20231002BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231002BHJP
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A61P 1/18 20060101ALI20231002BHJP
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A61K 35/747 20150101ALI20231002BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20231002BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61P27/02
A61P29/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/30
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A61P25/16
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
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A61P3/04
A61P13/02
A61P13/10
A61P13/12
A61P27/04
A61P27/06
A61P19/02
A61P27/10
A61P9/10 101
A61P31/04
A61P1/18
A61P1/02
A61K35/747
A61K35/745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518932
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 KR2021012888
(87)【国際公開番号】W WO2022065848
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123129
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523105336
【氏名又は名称】ピービーエルバイオラブ
【氏名又は名称原語表記】PBLBIOLAB
(71)【出願人】
【識別番号】523105347
【氏名又は名称】エヌブイピー、ヘルスケア、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NVP HEALTHCARE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム、トン、ヒョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018MD87
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4B018MF14
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4C087AA01
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4C087ZA81
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB35
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、新規なラクトバチルスプランタルム、ビフィドバクテリウムビフィダム、ビフィドバクテリウムロンガムまたはその混合物とこれらの用途に関する。本発明による菌株またはその混合物は、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の発現抑制および抗炎症効果に優れ、目からの涙の分泌量を増加させ、角膜および/または網膜での炎症を抑制し、角膜および/または網膜において優れた抗酸化効果および炎症抑制効果を示しており、人体内の疲労物質の含有量を減少させ、神経炎症因子の抑制、BDNFの発現増大および認知障害、精神障害改善などの効果を示す。これにより、眼疾患、疲労、炎症性疾患、認知機能障害、精神障害などの治療、改善および予防に有用に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P
【請求項2】
前記ラクトバチルスプランタルムNK151は、配列番号1の16S rDNA塩基配列を含むものである、請求項1に記載のラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P。
【請求項3】
ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、配列番号2の16S rDNA塩基配列を含むものである、請求項2に記載のビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P。
【請求項5】
ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046P
【請求項6】
前記ビフィドバクテリウムロンガムNK173は、配列番号3の16S rDNA塩基配列を含むものである、請求項5に記載のビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046P。
【請求項7】
ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、または精神障害の予防または治療用医薬組成物。
【請求項8】
眼疾患は、目の疲れ、網膜症、角膜炎、黄斑変性、ドライアイ、色素性網膜症、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、増殖網膜症、虚血性網膜症、脈絡膜新生血管、血管新生緑内障、虚血性視神経症、糖尿病性黄斑変性、紅色症、近視、シェーグレン(Sjogren)症候群からなる群から選択されるいずれかである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
炎症性疾患は、炎症性腸疾患、関節炎、痛風、肝炎、肥満、胃炎、腎炎、糖尿病、結核、気管支炎、胸膜炎、腹膜炎、脊椎炎、膵炎、尿道炎、膀胱炎、膣炎、動脈硬化症、敗血症および歯周炎を含む群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎、ベーチェット病および不確定の大腸炎からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
認知機能障害は、アルツハイマー病、ハンチントン病、血管性認知症、ピック(pick)病、パーキンソン病、クロイツフェルト-ヤコフ病および認知症からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
精神障害は、不安抑うつ障害、気分障害、不眠症、妄想性障害、強迫性障害、片頭痛、ストレス、記憶障害、自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、パニック発作および注意力障害からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、または精神障害の予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を含む、疲労改善用食品組成物。
【請求項15】
ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を含む、眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防または治療方法。
【請求項16】
眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物。
【請求項17】
眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な乳酸菌であるラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium longum)またはその混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢、疲労などに関連する眼疾患の多数の場合が、突然ではなく人の年齢または疲労といった他の外的要因などによって徐々に発症する傾向がある。総合的な眼科検診を行った場合に検出され、治療可能であると認められる疾患としては、例えば、黄斑変性、白内障、緑内障、および糖尿病網膜症などが挙げられる。高齢者人口の比率が増加し、目の疲れを起こし得る視覚的刺激を多く受けざるを得ない状況で、前述のような眼疾患の有病率や影響もまた増加している。
【0003】
このような眼疾患の場合、通常は酸化ストレスによる過剰な活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の産生によって網膜色素上皮細胞の主成分を酸化させ、ミトコンドリアの機能低下およびDNA損傷に関連する内因性アポトーシス(intrinsic apoptosis)経路を活性化することが、疾患の主な問題として知られている。そこで、ROSに関連する様々なシグナル経路上の標的を目的として疾患を治療しようとする様々な研究開発が進められている。また、新生血管に伴う炎症反応に対する抑制も血管壁を安定化させ、血漿漏出、網膜浮腫を改善させ、治療効果を増大させることができるため、これに対する改善が共に求められている。また、最近では、このような眼疾患と腸内細菌群集の不均衡との関連性について様々な文献を通じて確認されており、これを微生物を通じて解消しようとする取り組みが一部確認されている。
【0004】
一方、前述のような疾患よりもやや一般的でありふれた疾患としては、目の疲れやドライアイが挙げられる。目の疲れまたはドライアイは、目のかすみ、目のチカチカ、目の異物感、激しい目の乾き、目のヒリヒリ感、目がしみるような痛み、目のツッパリ、目の痛みなどの症状が発現する疾患である。近年、汚染された黄砂、長時間のテレビ視聴、コンピュータやスマートフォンなどの使い過ぎといった外的要因により眼疾患患者が急増している。
【0005】
前述の黄斑変性症、緑内障、目の疲れ、ドライアイなどを含む眼疾患のほとんどは、前で述べた発症機序の外にも、炎症との関連性も非常に高いことを考慮すべきであることが知られている。眼疾患患者の涙液には、健常人よりもTNF-α、IL-1βなどの炎症関連サイトカインとIL-8などの炎症関連のケモカインが過剰発現していることが報告されており、眼疾患を伴うシェーグレン症候群を持つNOD.B10.H2bマウスからはIL-10の発現が低く、糞便の腸内細菌群集では正常群とは異なる状態に相当することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような眼疾患の治療や目の疲れを改善するための方法としては、涙に近い成分の人工涙液/点眼薬を使用することが一般的であり、ひどい場合には、涙点を涙点プラグで塞ぐ涙道閉塞治療が利用されている。また、一般的に使用される治療薬は、シクロスポリンA(Cyclosporin A)、フルオロメトロン(Fluorometholone)などの免疫抑制剤として知られている薬物に該当する。前記のような疾患の治療方法は一時的に疾患を軽減させることができるが、根本的に疾患を治療するには限界があり、これに対する新たな治療法のニーズが多数存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、免疫調節、認知機能障害、精神障害、炎症性疾患に対する改善効果に加えて、眼における抗酸化制御、血管新生制御、炎症制御、涙量制御などの機能を通じて眼疾患の改善に効果のある新規な菌株を確認し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783Pを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784Pを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pを提供することである。
【0011】
本発明のまた別の目的は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む眼疾患、疲労、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか1つ以上の疾患の予防、改善または治療用途を提供する。
【0012】
前記目的を遂行するための様態として、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2020.09.10.受託番号:KCCM12783P)を提供する。
【0013】
本発明のラクトバチルスプランタルムNK151 KCCM12783Pは、健康な人の腸内細菌群集(糞便から分離)から分離および同定された乳酸菌であることを特徴とする。
【0014】
本発明のラクトバチルスプランタルムNK151の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号1の通りである。したがって、本発明のラクトバチルスプランタルムNK151は、配列番号1の16S rDNAを含むことができる。
【0015】
前記配列番号1の16S rDNA塩基配列の分析の結果、公知のラクトバチルスプランタルム菌株と99%の相同性を示し、分子系統計学的にラクトバチルスプランタルムと最も高い類縁関係を示した。したがって、前記乳酸菌をラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)と同定し、ラクトバチルスプランタルムNK151と命名し、韓国微生物保存センターに2020.09.10日付で寄託した(KCCM12783P)。
【0016】
本発明のラクトバチルスプランタルムNK151は、グラム陽性菌であり、細胞の形態は、桿菌である。より具体的なラクトバチルスプランタルムNK151の生理学的特性は、当該技術分野の通常の方法に従って分析することができ、その結果は、下記表4に示す通りである。具体的に、ラクトバチルスプランタルムNK151は、グリセロール、L-アラビノース、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、α-メチル-D-マンノシド、N-アセチル-グルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオス、マルトース、ラクトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、ゲンチオビオース、D-ツラノースおよびグルコネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上を炭素源として用いることができる。
【0017】
前記目的を遂行するためのもう一つの様態として、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2020.09.10.受託番号:KCCM12784P)を提供する。
【0018】
本発明のビフィドバクテリウムビフィダムNK175 KCCM12784Pは、健常人の腸内細菌群集(糞便から分離)から分離および同定された乳酸菌であることを特徴とする。
【0019】
本発明のビフィドバクテリウムビフィダムNK175 KCCM12784Pの同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号2の通りである。したがって、本発明のビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、配列番号2の16S rDNAを含むことができる。
【0020】
前記配列番号2の16S rDNA塩基配列の分析の結果、公知のビフィドバクテリウムビフィダム菌株と99%の相同性を示し、分子系統計学的にビフィドバクテリウムビフィダムと最も高い類縁関係を示した。したがって、前記乳酸菌をビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)と同定し、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175と命名し、韓国微生物保存センターに2020.09.10日付で寄託した(KCCM12784P)。
【0021】
前記ビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、グラム陽性菌であり、細胞の形態は、桿菌である。より具体的なビフィドバクテリウムビフィダムNK175の生理学的特性は、当該技術分野の通常の方法に従って分析することができ、その結果は、下記表5に示す通りである。具体的に、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、D-グルコース、D-ラクトース、D-マルトース、D-ジャイロス、エスクリン、D-セロビオース、D-マンノースおよびD-ラフィノースからなる群から選択されるいずれか1つ以上を炭素源として用いることができる。
【0022】
前記目的を遂行するためのもう一つの様態として、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2021.09.06.受託番号:KCCM13046P)に関する。
【0023】
本発明のビフィドバクテリウムロンガムNK173 KCCM13046Pは、健常人の腸内細菌群集(糞便から分離)から分離及び同定された乳酸菌であることを特徴とする。
【0024】
本発明のビフィドバクテリウムロンガムNK173の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号3の通りである。したがって、本発明のビフィドバクテリウムロンガムNK173は、配列番号3の16S rDNAを含むことができる。
【0025】
前記配列番号3の16S rDNA塩基配列の分析の結果、公知のビフィドバクテリウムロンガム菌株と99%の相同性を示し、分子系統計学的にビフィドバクテリウムロンガムと最も高い類縁関係を示した。したがって、前記乳酸菌をビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium longum)と同定し、ビフィドバクテリウムロンガムNK173と命名した。
【0026】
本発明のビフィドバクテリウムロンガムNK173は、グラム陽性菌であり、細胞の形態は、桿菌である。より具体的なビフィドバクテリウムロンガムNK173の生理学的特性は、当該技術分野の通常の方法に従って分析することができ、その結果は、下記表6に示す通りである。具体的に、ビフィドバクテリウムロンガムNK173は、D-グルコース、D-マンニトール、D-マルトース、D-ジャイロス、L-アラビノース、ゼラチン、エスクリンおよびD-マンノースからなる群から選択されるいずれか一つ以上を炭素源として用いることができる。
【0027】
本発明にて述べる、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046P、またはこれらの混合物は、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の発現を抑制する効果に優れ、炎症性サイトカインの発現(例えば、TNF-αなど)を抑制し、抗炎症性サイトカインの発現(例えば、IL-10など)を増進させる特徴を示す。また、目からの涙の分泌量を増加させ、角膜および/または網膜での炎症を抑制し、角膜および/または網膜において優れた抗酸化効果および炎症抑制効果を示し、人体内の疲労物質(例えば、血中のクレアチニン、乳酸)の含有量を減少させ、コルチコステロンのレベルを減少させる。すなわち、目から発症する炎症を改善させ、細胞内酸化窒素の水準を効果的に阻害し、角膜の損傷を最小限に抑えることができ、網膜の酸化損傷などを防ぐことにより、目の健康を改善させることができる。また、大腸炎を含んで炎症性疾患の改善に効果を示しており、神経炎症因子の抑制、BDNFの発現増大、認知機能障害、精神障害の改善などに効果を示す。
【0028】
前記目的を遂行するためのもう一つの様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む医薬組成物を提供する。本発明において、前記医薬組成物は、上述の乳酸菌のうちのいずれか1種、2種または3種を含む医薬組成物であってもよい。
【0029】
前記目的を遂行するためのもう一つの様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物;および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
前記目的を遂行するためのもう一つの様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、または精神障害の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0031】
具体的に、本発明のラクトバチルスプランタルムNK151は、眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、および精神障害からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防、治療または改善効果を奏することができる。また、具体的に、本発明のビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、および精神障害からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防、治療または改善効果を奏することができる。また、具体的に、本発明のビフィドバクテリウムロンガムNK173は、眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、および精神障害からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防、治療または改善効果を奏することができる。また、上述の菌株の任意の混合形態の混合物は、眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、および精神障害からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防、治療または改善効果を有することができる。
【0032】
前記目的を遂行するための具体的な様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む眼疾患の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0033】
前記目的を遂行するための具体的な様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む炎症性疾患の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0034】
前記目的を遂行するための具体的な様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む認知機能障害の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0035】
前記目的を遂行するための具体的な様態として、本発明は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)KCCM12783P、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)KCCM12784P、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)KCCM13046Pまたはこれらの任意の混合物を含む精神障害の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0036】
本発明において、「眼疾患」とは、眼に生じる疾患であって、眼の前側を覆う構造物である結膜と角膜の異常、眼球の前方及び虹彩や水晶体を含む前方の構造物に生じる異常を含み、眼の構造物で発生する疾患を包括する。
【0037】
このような眼疾患の例示としては、例えば、目の疲れ、網膜症、角膜炎、黄斑変性(乾性および/または湿性含む)、ドライアイ、色素性網膜症、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、増殖網膜症、虚血性網膜症、脈絡膜新生血管、血管新生緑内障、虚血性視神経症、糖尿病性黄斑変性、紅色症、近視、シェーグレン(Sjogren)症候群などを含み、これらに制限されるものではない。好ましくは、眼疾患は、目の疲れ、黄斑変性、ドライアイ、網膜症および角膜炎からなる群から選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0038】
「目の疲れ」は、近距離での作業時、老眼による調節力の低下により、毛様体筋に過負荷がかかった場合、乾燥した環境によって眼球が乾燥した場合、過度の光露出があった場合などにより発生する目の疲労感を意味する。かすみ、涙、充血、まぶしさ、ツッパリ、異物感などの症状が現れ、ひどい場合には痛みや頭痛が起こることもある。こうした目の疲れは、例えば、涙液膜が維持されず、目の表面が乾き、その結果、角膜や結膜に傷ができ、目の疲労感を引き起こす可能性があり、過度な光刺激によって網膜色素上皮細胞にフリーラジカル(free radical)が生成され、眼球内の網膜細胞および水晶体に直接損傷を与える可能性がある。
【0039】
「黄斑変性」は、網膜の中心部の近くにあって、精細な視覚を担う黄斑の進行性損傷を意味する。網膜にドルーゼン(黄斑に老廃物が溜まっていく状態)や網膜色素上皮の萎縮などの病変が生じた場合のような乾性黄斑変性症、網膜の下に脈絡膜新生血管が増殖して生じる湿性黄斑変性症などがある。
【0040】
「ドライアイ」は、涙が不足したり、涙が過剰に蒸発して生じるドライアイによって発生する目のかすみ、目のチカチカ、目の異物感、重度の目の乾き、目のヒリヒリ感、目がしみるような痛み、目のツッパリ、目の痛み、目の充血およびドライアイによる頭痛、角膜神経の感覚低下、および各種炎症などを含む。
【0041】
「網膜症」とは、目の網膜に持続的または極度の損傷を引き起こす場合をいい、網膜の末梢血管に循環不全が発生したり、それに沈殿物などが溜まったりすることにより生じる疾患を包括する。糖尿病性網膜症、高血圧網膜症、未熟児網膜症、放射線網膜症などが含まれる。
【0042】
「結膜炎」とは、結膜の炎症により結膜が充血し、目やに、まぶたの内側に毛包ができ、かゆみや異物感を感じる眼疾患を意味する。
【0043】
本発明において、炎症性疾患とは、炎症を主病変とする疾患を総称する意味であって、炎症性腸疾患、関節炎、痛風、肝炎、肥満、胃炎、腎炎、糖尿病、結核、気管支炎、胸膜炎、腹膜炎、脊椎炎、膵炎、尿道炎、膀胱炎、膣炎、動脈硬化症、敗血症および歯周炎を含む群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0044】
炎症性腸疾患(IBD)という用語は、結腸および消化管の炎症状態の1つのクラスを指す。IBDの主な類型は、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病である。UCとクローン病の主な違いは、炎症性変化の位置と特性である。クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる部分に影響を与える可能性があるのに対し、UCは結腸と直腸に制限される。発現(presentation)の特異性により、クローン病またはUCの確定診断が得られない。このような場合、不確定な大腸炎の診断を下すことができる。他の形態のIBDは、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎、ベーチェット病および不確定の大腸炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
すなわち、本発明による炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎、ベーチェット病および不確定の大腸炎からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0046】
本発明における認知機能障害とは、認知損傷および行動変化を示す障害をいい、記憶力、空間知覚力、判断力、実行機能、言語能力などの機能の低下に起因する疾患を指す。前記認知機能障害は、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、血管性認知症、ピック(pick)病、パーキンソン病、クロイツフェルト-ヤコフ病および認知症からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよいが、これらに限定されない。また、認知機能障害は、前記のような症状に起因する記憶力障害、認知症の症状などを含む。
【0047】
本発明において「精神障害」とは、精神疾患または精神病とも呼ばれ、個人的、社会的機能において問題を引き起こす行動-精神的な異常を指し、これによる身体的症状まで含むことができる。原因としては、先天的な脳の問題があり、深刻なストレス的要因などが含まれ得る。精神障害の種類には、不安抑うつ障害、気分障害、不眠症、妄想性障害、強迫性障害、片頭痛、ストレス、記憶障害、自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、パニック発作および注意力障害からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0048】
本発明における「神経炎症(neuroinflammation)」とは、脳に生じる炎症を意味し、認知機能障害、精神障害関連疾患を引き起こす重要な要因である。脳内の炎症細胞が過剰に活性化すると、炎症誘発性サイトカインの分泌が増加し、このような脳の炎症反応が過剰に活性することにより、脳細胞の損傷によって認知機能障害または精神障害が誘発されることが知られている。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が、マクロファージのTNF-α、IL-1βの発現は抑制する反面、IL-10の発現は誘導し、優れた抗炎症効果を示すことを確認した。
【0050】
また、本発明の一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173がプロテオバクテリア門(Proteobacteria)の増殖活性を阻害することによって腸内マイクロバイオータの正常化を達成する効果を示すことを確認した。
【0051】
また、本発明の一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が眼疾患の動物モデルにおいて、涙の分泌量を回復させ、角膜の炎症を抑制し、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの発現水準を調節し、網膜のMDA(マロンジアルデヒド)、GSH(グルタチオン)およびNO(ニトリックオキサイド)水準を調節し、血液中の疲労物質(特に、目の疲れと関連性が高い)である乳酸、乳酸脱水素酵素、クレアチニンとコルチコステロンの水準を減少させる結果を確認した。
【0052】
また、本発明の一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が大腸炎動物モデルにおいて、大腸の長さの減少を抑制し、MPO活性を減少させ、大腸での炎症性サイトカインの発現を減少させ、抗炎症性サイトカインの発現水準を増加させる結果を確認した。
【0053】
また、本発明の一実施態様によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が認知症、不安およびうつ病を有する動物モデルにおいて、胃疾患によって誘発される行動学的問題を改善(自発的交替行動の改善)し、炎症性サイトカインの発現を減少させ、神経炎症を調節し、BDNFの発現を増加させ、不安/うつ症状の改善(尾懸垂状態の不動時間の減少)により疾患に対する改善および治療効果を示すことを確認した。
【0054】
前記のような結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が炎症性疾患、眼疾患、認知機能障害、および/または精神障害の予防、治療または改善に優れた効能があることを示す。
【0055】
また、前記医薬組成物は、変化した腸内微生物を正常化させると同時に、 腸免疫を正常化させることによって眼疾患、認知機能障害、精神障害、炎症性疾患およびこれによる合併症の調節、予防、改善および治療に優れた効果を示すことができる。
【0056】
本発明による菌株の形態は、生菌体、死菌体、培養物、破砕物または抽出物の形態のように多様な形態で用いられることができる。本発明による菌株は、菌株を含む条件の下、任意の形態を有しても上述した効果の側面で同等水準以上(特に生菌を中心に考慮し)の結果を示す
【0057】
生菌体はそのまま生きている菌を意味し、死菌体は一定の条件で生菌等を培養後に加熱乾燥、加圧、薬剤処理などの方法で有効成分を分離抽出したことを意味する。
【0058】
培養物は、乳酸菌を公知の液体培地または固体培地で培養して得たものを意味し、本発明による菌株を含む概念である。前記産物は、乳酸菌を含むことができる。前記培地は、公知の液体培地または固体培地から選択することができ、例えば、MRS液体培地、GAM液体培地、MRS寒天培地、GAM寒天培地、BL寒天培地であってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
破砕物は、生菌体、死菌体、またはそれらの培養物を機械的、化学的方法により分離加工し、破砕された形態を有することを意味する。例えば、ビーズミル(bead mills)、プレス(Presses)、ソニケーター(Sonicator)またはマイクロフルイダイザー(Microfluidizer)、酵素処理などによって破砕形態を製造することができる。
【0060】
抽出物とは、生菌体、死菌体及び/又は破砕物を通常公知の抽出方式(公知の抽出溶媒(例えば、水、C1~C4のアルコール(メタノール、エタノール等)で抽出して得られる)ことを意味する。
【0061】
本発明では、菌株を混合した混合物において相乗効果を奏することを確認したところ、その任意の混合物の利用形態を含む。
【0062】
併用形態または混合物の利用形態は、例えば、
1)ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175
2)ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムロンガムNK173;または
3)ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175、およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の形態を含むものであってもよい。
【0063】
すなわち、本発明によるラクトバチルスプランタルムNK151に対してビフィドバクテリウム属菌株を混合することにより、優れた相乗効果を示すことができる。
【0064】
ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175は、例えば、菌の数(CFU)に基づいて10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であってもよい。好ましくは、9:1~1:1、より好ましくは、4:1~1:1、さらに好ましくは、4:1として用いることができる。
【0065】
ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムロンガムNK173は、例えば、菌の数(CFU)に基づいて10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であってもよい。好ましくは、菌の数(CFU)に基づいて9:1~1:1、より好ましくは、4:1~1:1、さらに好ましくは、4:1として用いることができる。
【0066】
ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175、およびビフィドバクテリウムロンガムNK173は、ラクトバチルスプランタルムNK151に対してビフィドバクテリウム属菌株2種の和を基に菌の数を考慮することができる。例えば、菌の数(CFU)に基づいて10(ラクトバチルスプランタルムNK151):1(ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173)、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であってもよい。9:1~1:1、より好ましくは、4:1~1:1、さらに好ましくは、4:1として用いることができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、前記菌株の混合物、すなわち、併用形態は、眼疾患動物モデルにおいて、涙の分泌量が増加し、角膜損傷が改善され、炎症性サイトカイン、ケモカインの発現を調節することに優れた相乗効果を示しており、また、網膜での抗酸化調節および目の疲れ調節においても優れた効果を示した。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、前記菌株の混合物は、また、炎症性疾患(特に、炎症性腸疾患)、認知機能障害、および精神障害についても菌株混合による優れた相乗効果を通じて疾患の治療および改善に優れた効果を示した。
【0069】
特に、腸内マイクロバイオータの正常化の側面で、前記の菌株の混合は、単独菌株に比べて腸内健康維持の側面でより優れた効果を示すことができる。
【0070】
本発明による医薬組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供することができるように当業界で周知の方法を使用して医薬剤形として製造することができる。剤形の製造において、本発明による医薬組成物は、本発明の化合物の活性を阻害しない範囲内でさらに薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0071】
前記薬学的に許容される担体は、通常用いられるもの、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油などを含むが、これらに限定されない。また、本発明の医薬組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤、その他の薬学的に許容される添加剤を含むことができる。
【0072】
本発明による医薬組成物の投与は、薬学的に有効な量を投与することができる。「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスクの比率で疾患を予防または治療するのに十分な量を意味する。有効用量レベルは、製剤化方法、患者の状態および体重、患者の性別、年齢、疾患の程度、薬物形態、投与経路および期間、排泄速度、反応感受性などの要因に応じて、当業者によって多様に選択することができる。有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用、および他の薬剤と共に使用することができる可能性に応じて変わり得る。しかしながら、好ましい効果のために、経口投与剤の場合、一般に大人1日に体重1kg当たり本発明の組成物を1日0.0001~100mg/kg、好ましくは0.001~100mg/kgで投与することができるが、前記の投与量は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
本発明の医薬組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路を介して投与することができる。具体的には、本発明の医薬組成物は、経口または非経口投与(例えば、塗布または静脈内、皮下、腹腔内注射)することができるが、経口投与が好ましい。経口投与のための固形製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤などを含むことができる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内服液剤、乳剤、シロップ剤、エアロゾルなどが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤としては、それぞれ通常の方法により滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁剤、エマルジョン、点眼剤、眼軟膏剤、シロップ、坐剤、エアロゾルなどの外用剤及び滅菌注射剤の形態で製剤化して使用することができ、好ましくは、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、眼軟膏剤、点眼剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤の医薬組成物を調製して使用することができるが、これらに限定されるものではない。局所投与のための製剤は、臨床的処方に従って無水型または水性型であってもよい。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propyleneglycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオラートなどの注射用エステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。
【0074】
前記目的を達成するための本発明のもう一つの態様によれば、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を含む、眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防または治療方法に関する。
【0075】
前記「ラクトバチルスプランタルムNK151」、「ビフィドバクテリウムビフィダムNK175」、「ビフィドバクテリウムロンガムNK173」、「眼疾患」、「認知機能障害」、「精神障害」、および「炎症性疾患」は、前述した通りである。
【0076】
本発明の医薬組成物は、個々の治療剤として投与することができる、または他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤と順次または同時に投与することができる。また、本発明の医薬組成物は、単回または複数回投与することができる。前記要素を全部考慮し、副作用のない最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者であれば容易に決定することができる。
【0077】
本発明の用語「対象体」は、発明による医薬組成物の投与によって症状が改善し得る動物またはヒトを含む。本発明による治療用組成物を個体に投与することにより、眼疾患、認知機能障害、精神障害または炎症性疾患を効果的に予防および治療することができる。
【0078】
本発明における用語「投与」とは、任意の適切な方法でヒトまたは動物に所定の物質を導入することを意味し、本発明による治療用組成物の投与経路は、標的組織に到達できる限り、任意の一般的な経路を介して経口または非経口投与することができる。また、本発明による治療用組成物は、有効成分が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与することができる。
【0079】
本発明による医薬組成物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択することができる。
【0080】
本発明は、眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を提供する。
【0081】
本発明は、炎症性疾患の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を提供する。
【0082】
本発明は、眼疾患の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を提供する。
【0083】
本発明は、認知機能障害の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を提供する。
【0084】
本発明は、精神障害の予防または治療に用いるためのラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を提供する。
【0085】
本発明は、眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途を提供する。
【0086】
本発明は、炎症性疾患の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途を提供する。
【0087】
本発明は、眼疾患の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途を提供する。
【0088】
本発明は、認知機能障害の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途を提供する。
【0089】
本発明は、精神障害の治療のための薬剤の製造において、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物の用途を提供する。
【0090】
本発明のもう一つの側面は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)およびこれらの任意の混合物を含む、眼疾患、認知機能障害、精神障害および炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上の疾患に対する予防または改善用食品組成物に関する。
【0091】
本発明のもう一つの側面は、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)またはこれらの任意の混合物を含む、疲労改善用食品組成物に関する。
【0092】
本発明による食品組成物は、人体内ストレスまたは疲労物質の水準を減少させることによって疲労改善に優れた効果を示す。具体的に、乳酸、乳酸脱水素酵素、クレアチニンの水準とコルチコステロンの水準を減少させ、抗酸化効果を増進させることによって疲労に対する改善に優れた効果を示すことができる。
【0093】
前記「ラクトバチルスプランタルムNK151」、「ビフィドバクテリウムビフィダムNK175」、「ビフィドバクテリウムロンガムNK173」、「眼疾患」、「認知機能障害」、「精神障害」および「炎症性疾患」は、前述した通りである。
【0094】
具体的に、本発明の食品組成物に含まれる乳酸菌は、その生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物であってもよいが、認知機能障害、眼疾患、精神障害または炎症性疾患障害の予防または改善効果を達成することができる乳酸菌の形態であれば、制限なく使用することができる。
【0095】
前記食品の種類には、特別な制限がない。前記乳酸菌を添加することができる食品は、ソーセージ、肉類、パン、チョコレート類、スナック類、キャンディー類、菓子類、ラーメン、ピザ、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがある。飲料水に製剤化する場合、新規な乳酸菌以外に添加される液体成分としては、これらに限定されないが、通常の飲料のように種々の香味剤又は天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。前記の天然炭水化物は、単糖類(例えば、グルコース、フルクトースなど)、二糖類(例えば、マルトース、スクロースなど)および多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの従来の糖)、並びにキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。
【0096】
前記食品の種類は、具体的に健康機能食品であってもよい。前記健康機能 食品は、各種栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤等の風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定剤、保存剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。これらの成分は単独でまたは組み合わせて使用することができ、これらの添加剤の比率は、通常、組成物の全重量当たり0.001~50重量部の範囲から選択される。
【0097】
前記健康機能食品とは、食品の生体調節機能を強化した食品であって、物理的、生化学的、生物工学的な方法を用いて特定の目的に作用及び発現するように付加価値を付与した食品である。これらの健康機能食品の成分は、生体防御と身体リズムの調節、疾患の防止および回復に関わる身体調節機能を生体に対して十分に発揮するように設計し加工され、食品として許容可能な食品補助添加剤、甘味料または機能性原料を含有することができる。
【0098】
本発明のラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を健康機能食品(または健康機能飲料添加物)として用いる場合、前記ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173をそのまま添加したり、他の食品または食品成分とともに使用し、通常的な方法に従って適宜に使用することができる。前記ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173の混合量は、その使用目的(予防、健康または改善、治療的措置)によって適合に決定することができる。
【0099】
[発明の効果]
本発明の新規な乳酸菌およびこれらの任意の混合物は、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の発現抑制効果に優れ、炎症性サイトカインの発現(例えば、TNF-αなど)を抑制し、抗炎症性サイトカインの発現(例えば、IL-10など)を増進させる特徴を示す。また、目からの涙の分泌量を増加させ、角膜および/または網膜での炎症を抑制し、角膜および/または網膜において優れた抗酸化効果および炎症抑制効果を示しており、人体内の疲労物質(例えば、血中のクレアチニン、乳酸など)の含有量を減少させ、コルチコステロンの水準を減少させる。また、大腸炎を含んで炎症性疾患の改善に効果を示しており、神経炎症因子の抑制、BDNFの発現増大および認知障害、精神障害の改善などの効果を示す。これにより、眼疾患、炎症性疾患、認知機能障害、精神障害などの治療、改善および予防に有用に用いることができる。
【0100】
本発明の効果は、前記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成より推論可能なあらゆる効果を含むものと理解されるべきである。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明が下記実施例により限定されるものではない。
【0102】
実施例1.ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)乳酸菌の分離および同定
1-1.ヒト糞便から乳酸菌の分離
健常人の腸内細菌群衆から新規菌株を確保するために、ヒト糞便をGAM液体培地(GAM broth;Nissui Pharmaceutical、Japan)に入れて懸濁した。その後、上澄み液を採取し、GAM寒天培地(general anaerobic medium;Nissui Pharmaceutical、Japan)およびBL寒天培地(BL agar medium;Nissui Pharmaceutical、Japan)に移植し、37℃で約48時間培養した後、コロニー(colony)を形成したラクトバチルス属菌株(Lactobacillus sp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)菌株を分離した。
【0103】
1-2.単離した乳酸菌の同定
ヒト糞便から単離した菌株の生理学的特性および選別した菌株の系統分類学的位置を確認するために、16S rDNAの塩基配列を分析し、菌株の種を確定し、菌株名を付与した。
【0104】
前記の手順を経て、分離された菌株を以下の表1に示した。
【表1】
【0105】
実施例2.菌株の特性の解析
2-1.マクロファージのIL-10およびTNF-αの発現量の測定
C57BL/6雄マウス6週齢(20~23g)の腹腔に滅菌された4%のチオグリコール酸(thioglycolate)2mlを投与し、96時間が経過した後にマウスを麻酔させ、マウス腹腔にRPMI 1640培地8mlを投与し、5~10分後にマウス腹腔内のRPMI培地(マクロファージ)を引き抜き、1000gで10分間遠心分離し、再びRPMI 1640培地で2回洗浄した。マクロファージを各ウェル当たり0.5×106の数で24-ウェルプレートに敷き、前記実施例1で同定された乳酸菌のみを処理するか、乳酸菌と炎症反応誘導物質であるLPSを一緒に24時間処理した後、上澄み液でTNF-α、IL-10サイトカイン発現量をELISA kit(Pierce Biotechology、Inc.、Rockford、IL、USA)によって測定した。
【0106】
まず、上澄み液50μlをTNF-α抗体、IL-10抗体がそれぞれコートされた96ウェルプレートに入れ、常温で2時間反応させた後、リン酸緩衝生理食塩水-ツイン(phosphate buffered saline-Tween、PBS-Tween)で洗浄し、発色剤を入れ、20分間発色させ、450nm波長で吸光度を測定し、計算した。
【0107】
2-2.プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の増殖阻害活性
プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の増殖阻害活性を測定した。ヒトの糞便希釈液1×106CFU/mLと前記実施例1で分離した乳酸菌培養希釈液1×106CFU/mLをGAM培地10mlにそれぞれ0.1mlずつ移植し、24時間嫌気培養し、集菌し、QIAamp DNAstool mini kit(Qiagen、Germany)でDNAを抽出し、qPCRを行った。PCR反応は、まず、95℃で30秒処理し、次いで95℃で5秒、72℃で30秒を42回繰り返し反応させた。
【0108】
qPCRプライマーは、下記表2に示した。
【表2】
【0109】
2-3.特性解析結果の確認
表3に示すように、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の増殖抑制活性と、マクロファージでの炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの発現変化を確認した。
【0110】
【表3-1】
【表3-2】
*乳酸菌の処理最終濃度:1×10
5CFU/ml*+++、>80%;++、>40-80%;+、>1-40%;-、<0--40%;--、<-40%.
【0111】
前記表3に示すように、ラクトバチルスプランタルムNK151(Lactobacillus plantarum NK151)およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175(Bifidobacterium bifidum NK175)が、TNF-α発現に比べてIL-10発現誘導活性が優れていることが示された。また、ビフィドバクテリウムロンガムNK173(Bifidobacterium longum NK173)も優れたTNF-α発現に比べてIL-10発現誘導活性が確認された。このような結果から前記菌株が優れた抗炎症活性を示すことを確認した。
【0112】
また、腸内マイクロバイオータの正常化の可能性を考慮するために、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の増殖阻害活性を確認した結果からも、上述の菌株は、優れたプロテオバクテリア門の増殖阻害活性を示した。
【0113】
実施例3.菌株寄託および生理学的特性の確認
3-1.新規菌株の確認および16s rDNAの確認
ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の分離菌株は、いずれもグラム陽性菌であり、桿菌であることを確認した。
【0114】
16S rDNAを確認した結果、ラクトバチルスプランタルムNK151の16S rDNAは、配列番号1の塩基配列を有することが示された。ラクトバチルスプランタルムNK151の16S rDNAを遺伝子バンクのBLASTプログラムを用いて相同性を解析した結果、公知のラクトバチルスプランタルム菌株は、検索されず、公知のラクトバチルスプランタルム菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示した。前記新規な菌株をラクトバチルスプランタルムNK151で命名しており、2020年9月10日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(住所:大韓民国ソウル西大門区洪済内2丁目45ユリムビル)に特許寄託し、KCCM12783Pの受託番号が付与された。
【0115】
ビフィドバクテリウムビフィダムNK175の16S rDNAは、配列番号2の塩基配列を有することが示された。ビフィドバクテリウムビフィダムNK175の16S rDNAを遺伝子バンクのBLASTプログラムを用いて相同性を解析した結果、公知のビフィドバクテリウムビフィダム菌株は、検索されず、公知のビフィドバクテリウムビフィダム菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示した。前記新規な菌株をビフィドバクテリウムビフィダムNK175と命名しており、2020年9月10日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(住所:大韓民国ソウル西大門区洪済内2丁目45ユリムビル)に特許寄託し、KCCM12784Pの受託番号が付与された。
【0116】
また、ビフィドバクテリウムロンガムNK173の16S rDNAは、配列番号3の塩基配列を有することが示された。ビフィドバクテリウムロンガムNK173の16S rDNAを遺伝子バンクのBLASTプログラムを用いて相同性を解析した結果、公知のビフィドバクテリウムロンガム菌株は、検索されず、公知のビフィドバクテリウムロンガム菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示した。前記新規な菌株をビフィドバクテリウムビフィダムNK175と命名しており、2021年9月6日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(住所:大韓民国ソウル西大門区洪済内2丁目45ユリムビル)に特許寄託し、KCCM13046Pの受託番号が付与された。
3-2.APIキットを用いた生化学的同定
ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の生理学的特性中、炭素源を用いて、それぞれAPI 50CH KitおよびAPI 20A Kit(製造社:BioMerieux’s、USA)による糖発酵試験により解析し、その結果を下記表4~6にそれぞれ示した。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
前記表4~6において、「+」は炭素源利用性が陽性である場合を示し、「-」は、炭素源利用性が陰性の場合を示す。前記表4~6に示すように、それぞれ菌株の生化学的特性は、相異しており、同一でないことを確認した。
【0121】
実施例4:死菌体、破砕物の製造
実施例4-1.死菌体の製造
ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175、およびビフィドバクテリウムロンガムNK173を熱処理条件で90℃で10分間3回熱処理を行い、死菌体を製造した。
【0122】
実施例4-2.破砕物(可溶物および不溶物)の製造
ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175、およびビフィドバクテリウムロンガムNK173を遠心分離して得た生菌を1×106CFU/mLとなるように、滅菌蒸留に懸濁し、4℃で超音波処理し(1分間処理し、1分間休憩を5回繰り返す)、遠心分離(10,000g、4℃、15分)し、上澄み液(可溶物)と沈殿物(不溶物)を得た。これを凍結乾燥し、用いた。
【0123】
実施例5.死菌体および破砕物活性の確認
前記実施例4にて製造された死菌体および破砕物を用いて実施例2と同様に、マクロファージにおける抗炎症活性を確認した。
【0124】
その結果、熱処理(90℃、10分、3回処理)を通じて製造された死菌体および超音波処理(1分、10回)し、破砕された破砕物全部TNF-α発現に比べて、IL-10の発現誘導活性が生菌を処理したときと同様に示されることが確認された。
【0125】
実施例6.眼疾患モデルにおける治療および改善効果の確認
6-1.眼疾患実験動物の作製
8週齢BALB/cマウス(samtako、韓国)で購入し、順応1週間後、涙腺を除去するため、2%のイソフルラン(isoflurane)で麻酔させ、1%のイソフルランで維持しながらマウスの眼球と耳の間の真ん中の毛を除毛し、手術部位を消毒した後、皮膚を1cm程切開した。切開部位から眼窩外涙腺(exorbital lacrimalgland)を摘出した後、皮膚を縫合し、5日間硫酸アトロピン(atropine sulfate)を角膜に処理した。翌日、フェノールレッドthread涙液量検査紙(FCI Opthalmics Zone Quick、Japan)をまぶたの外側の端部の眼球表面に接触させた後、30秒後、涙によって検査紙の色の変化の長さを測定し、正常対照群(sham)に比べて有意に涙液分泌量が減少したマウスを実験に用いた。一群当たりのマウスは、8匹だった。
【0126】
1)正常群(NC)、
2)手術のみで、涙腺を除去していないsham群(sham)、
3)涙腺を除去し、生理食塩水を投与した群(DE)、
4)涙腺を除去し、ラクトバチルスプランタルムNK151を投与した群(LP)、
5)涙腺を除去し、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175を投与した群(BB)、
6)涙腺を除去し、ビフィドバクテリウムロンガムNK173を投与した群(BL)、
7)涙腺を除去し、ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175 1:1で混合し、投与した群(LB1)、
8)涙腺を除去し、ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムビフィダムNK175 4:1で混合し、投与した群(LB2)、
9)ラクトバチルスプランタルムNK151およびビフィドバクテリウムロンガムNK173 4:1で混合し、投与した群(LB3)に分けた。
【0127】
6-2.涙の分泌量の測定
涙の分泌量は、正常群、sham群、DE群にはビヒクル(1%のマルトース液)を、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群には、乳酸菌を、個々の実験セットでそれぞれ5×108CFU/マウス(mouse)/日(day)で0日間投与した(混合投与の場合、上述の投与量を前記CFUベースの比率に合わせて混合し、投与する)。
【0128】
涙の分泌量は、フェノールレッドthread涙液量検査紙(FCI Opthalmics Zone Quick、Japan)をまぶた外側の端部の眼球表面に接触させた後、30秒後、涙によって検査紙の色の変化の長さを測定した。
【0129】
その結果を表7に示した。
【0130】
下記表7には、5×10
8CFU/マウス(mouse)/日(day)で10日間投与した結果を示した。
【表7】
【0131】
前記表7から確認されるように、ビヒクル液を投与した正常群、sham群、DE群における涙の分泌量は、それぞれ4.8、4.9、1.2mmであり、眼疾患を誘発したマウスは、10日後に正常群に比べて涙の分泌量が著しく減少した。ラクトバチルスプランタルムNK151を投与したLP群、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175を投与したBB群、1:1の混合菌を投与したLB1群、4:1の混合菌を投与したLB2群およびLB3群では、いずれも乳酸菌の投与により有意に涙の分泌量が増加した。
【0132】
このような結果は、1×108CFU/マウス(mouse)/日(day)で投与したマウスにおいても涙の分泌量が増加した。
【0133】
前記涙の増加は、菌株の併用時により高く示されることが確認され、特にビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の場合、単独で投与した時よりもラクトバチルスプランタルムNK151と混合したLB1~LB3群において、涙の分泌量が著しく増加したことが確認された。
【0134】
前記のような結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175、およびビフィドバクテリウムロンガムNK173またはこれらの任意の混合物が涙の分泌量を増加させることによって眼疾患の改善に効果があることを示す。
【0135】
6-3.角膜フルオレセイン染色(Corneal fluorescein staining)の確認
前記6-1のマウスを麻酔させた後、蛍光染料(Flurescein sodium salt)を用いて角膜の損傷程度を観察した。具体的に2.5%のフルオレセイン溶液を実験動物の眼球に落とした後、コバルトブルーライト下で生体顕微鏡(biomicroscope)で撮影し、角膜を上、中、下に分けて、それぞれの領域下で角膜炎が最も重度の場合を3点と評価した。
【0136】
【0137】
前記表8に示すように、涙腺を除去し、アトロピン(atropine)を施したDE群では、正常群に比べて有意に角膜が損傷したが、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を施したLP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、角膜損傷が有意に改善された。
【0138】
6-4.角膜のサイトカイン発現量の測定
角膜50mgをプロテアーゼ阻害剤カクテル(protease inhibitor cocktail)が含有された150μlのRIPA緩衝液を添加し、均質化した。その後、4℃および10,000gの条件で15分間遠心分離し、上澄み液を得て、この上澄み液を50μlを96-ウェルに入れ、ELISA plate kits(Pierce Biotechology、Inc.、Rockford、IL、USA)を用いて、TNF-α、IL-1β、IL-10発現量を測定した。
【0139】
まず、上澄み液50μlを、TNF-α抗体、IL-1β抗体およびIL-10抗体がそれぞれコートされた96ウェルプレートに入れ、常温で2時間反応させた後、リン酸緩衝生理食塩水-ツイン(phosphate buffered saline-Tween、PBS-Tween)で洗浄し、発色剤を入れ、20分間発色させ、450nm波長で吸光度を測定し、計算した。
【0140】
【0141】
前記表9に示すように、涙腺を除去し、アトロピン(atropine)を処理したDE群では、正常群に比べて有意に炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1βの発現量が増加し、抗炎症性サイトカインであるIL-10発現量は減少した。一方、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を処理したLP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、いずれも角膜損傷を有意に軽減させるだけでなく、IL-10発現量は増加させ、炎症誘発サイトカインTNF-αおよびIL-1βの発現量を減少させた。特に、LP群、LB2群およびLB3群において、炎症性および抗炎症性サイトカインの発現調節効果に優れていることが確認されているところ、前記の結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、それにビフィドバクテリウムビフィダムNK175、またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を混合した菌株が眼疾患の改善、特に内側での炎症改善に効果的な乳酸菌であることを示唆する。
【0142】
6-5.網膜のマロンジアルデヒド(MDA)、グルタチオン(GSH)、および一酸化窒素(NO)量の測定
眼疾患において重要と考えられる抗酸化関連因子およびNOを測定し、網膜における炎症レベルの変化を確認するために、以下の実験を行った。
【0143】
細いハサミで摘出した眼球から網膜を分離した。摘出した網膜(1mg)を0.2mLの冷PBSに入れ、低温室でホモゲナイザーで均質化した。
【0144】
MDA測定:50μlの網膜均質液に1%のリン酸0.6mlと0.6%のチオバルビツール酸0.2mlを入れた後、95℃で45分間沸かして冷ました後、0.8mlのn-ブタノールを入れた後、3,000gで20分間遠心分離した。遠心分離した後、上澄み液を取り、535nmで吸光度を測定した。MDA標準曲線(Standard curve)は、1,1,3,3-テトラエトキシプロパン(マロンジアルデヒド、MDA)を使用して535nm吸光度を測定した。
【0145】
NO測定:50μlの網膜均質液にNitrate/Nitrite Colormetricアッセイキッド(Caymanchem、780001)を用いて測定した。
【0146】
GSH測定:50μlの網膜均質液にGSH determination kitにある試薬であるsolution R3 600μl、solution R1 50μl、solution R2 50μlを順次混合し、ボルテックスをした後、25℃の暗いところで10分間反応させ、405nm吸光度を測定した。
【0147】
TNF-α測定:ELISA plate kits(Pierce Biotechology、Inc.、Rockford、IL、USA)を用いて測定した。
【0148】
【0149】
前記表10に示すように、涙腺を除去し、アトロピン(atropine)を施したDE群では、正常群に比べて網膜のマロンジアルデヒド(MDA)、グルタチオン(GSH)、一酸化窒素、およびTNF-α濃度を増加した。
【0150】
一方、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を施したLP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、いずれも網膜において、マロンジアルデヒド(MDA)、グルタチオン(GSH)、一酸化窒素およびTNF-α濃度を低下させた。特に、LP群、LB2群およびLB3群では、黄斑変性誘発であるラジカル生成指標であるマロンジアルデヒド(MDA)、グルタチオン(GSH)、および一酸化窒素の生成抑制調節効果が優れていることを確認した。
【0151】
前記の結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、これにビフィドバクテリウムビフィダムNK175、またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を混合した菌株が眼球の黄斑変性発生抑制および改善に効果的な乳酸菌であることを示唆する。
【0152】
6-6.血液中のコルチコステロン、クレアチニン、乳酸濃度および乳酸デヒドロゲナーゼ活性の測定
目の疲れを含んで、人体に疲労がたまる場合、疲労関連物質(例えば、乳酸、クレアチニンなど)が多く蓄積し、ストレスと関連性の高いホルモン(例えば、コルチコステロンなど)が多く蓄積する。これによって、前記因子らの発現変化を確認し、疲労現像に対する改善効果を確認した。
【0153】
前記6-1のマウスモデルで採血を行い、試験管にEDTAと一緒に入れ、3000rpm、4℃で15分間EDTA処理し、血漿を分離した。血漿で乳酸(lactate)、クレアチニンの濃度および乳酸デヒドロゲナーゼの活性をAbcam(Cambrige、MA、U.S.A.)の乳酸、クレアチニン、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイキッドを用いて測定した。また、血漿でのコルチコステロンの濃度は、Elabscience(Hebei、China)のELISAアッセイキッドを使用して測定した。
【0154】
【0155】
前記表11に示すように、涙腺を除去し、アトロピン(atropine)を処理したDE群では、正常群に比べて血漿の乳酸、クレアチニン、コルチコステロン濃度およびLDH活性を増加した。一方、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムビフィダムNK173を施したLP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、いずれも血漿で乳酸、クレアチニン、コルチコステロン濃度およびLDH活性を低下させた。特に、LP群、LB2群およびLB3群において、疲労により生じる指標である乳酸、クレアチニン、コルチコステロン濃度およびLDH活性を抑制調節効果に優れていることが確認されているところ、前記の結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、これにビフィドバクテリウムビフィダムNK175、またはビフィドバクテリウムロンガムNK173を混合した菌株がドライアイ、手術、ストレスによる疲労を抑制および改善に効果的な乳酸菌であることを示唆する。
【0156】
実施例7.うつ病、不安、疲労、大腸炎疾患モデルの製造と治療効能の確認
7-1.拘束ストレス動物モデルの製造
うつ病およびストレスなどの精神障害を誘導するために、拘束ストレス動物モデルを作製した。まず、C57BL/6雄マウス(5週齢19~21g)を一群に8匹つずとし、1週間実験室に適応させた。一群は、正常群とし、残りの群は、実験群とした。実験群は、3×10cmの円筒型の拘束ストレス機構にマウスを動けないように固定させた。具体的に、2日に1回ずつ頭が上に行くように2時間ずつ立たせる方法で、拘束ストレス(IS)を5回繰り返し、最後の拘束ストレス24時間後から毎日1回ずつ5日間乳酸菌およびその複合物ら(5×108CFU/マウス(mouse)/日(day)で投与し、前の菌株の比率と同様に使用する)を投与した。正常群(NC)には、生理食塩水を投与した。
【0157】
分離した乳酸菌のうつ病/不安および疲労改善効能を確認するための行動実験としては、高架式十字迷路実験、尾懸垂実験、強制水泳実験行い、海馬においけるIL-6、BDNFをELISA kitで測定し、血中のコルチコステロン、IL-6をELISA kitまたは解析キットで測定し、大腸におけるIL-1β、IL-6、IL-10、MPOをELISA kitによって測定した。
【0158】
7-2.うつ病/認知障害/腸炎疾患モデルの製造
うつ病/認知障害/腸炎に起因する精神障害を誘導するために、糞便移植動物モデルを作製した。まず、C57BL/6雄マウス(5週齢19~21g)を一群に8匹ずつとし、1週間実験室に適応させた。一群は、正常群とし、残りの群は、実験群とした。実験群は、うつ病/認知障害/腸炎のある患者(60代女性)の糞便(2グラム)を生理食塩水(18ml)に懸濁し、500gで5分間遠心分離し、上澄み液を分離した。この上澄み液(0.1ml)を毎日1回ずつ5日間マウスに糞便移植した。最後に糞便移植(FMT)24時間後から毎日1回ずつ5日間乳酸菌およびその複合物(5×108CFU/マウス(mouse)/日(day)で投与し、前の菌株の比率と同様に使用する)を投与した。正常群(NC)には、生理食塩水を投与した。
【0159】
分離した乳酸菌のうつ病/不安および疲労改善効能を確認するための行動実験としては、高架式十字迷路実験、尾懸垂実験、強制水泳実験を行い、海馬におけるIL-6、BDNFをELISA kitで測定し、血中のコルチコステロン、IL-6、クレアチニン、乳酸濃度をELISA kitまたは解析キットで測定し、大腸におけるIL-1β、IL-6、IL-10、MPOをELISA kitで測定した。
【0160】
7-3.大腸炎およびこれによる認知症、不安およびうつ病改善効果の確認
C57BL/6雄マウス6週齢(samtako、韓国)を購入し、動物実験室(湿度50±10%、温度25±2℃、照明12時間毎反復、空気HEPA濾過)で一週間順応させて用いた。飼料は、標準実験用飼料(Samyang、Korea)を用いており、飲用水は、自由に摂取するようにした。実験動物を軽くエーテルで麻酔し、先が丸い1ml注射器でTNBS2.5mg/5%のEtOHを肛門を通じて大腸内に0.1mlを投与し、垂直に持って30秒間維持した。反面、正常群には、生理食塩水0.1mlを経口投与した。一群を6匹とした。
【0161】
試料(5×108CFU/マウス(mouse)/日(day)で投与し、前の菌株比率と同様に使用する。)を翌日から毎日1回ずつ3日間試料を生理食塩水に溶解し、予め決めた用量通りに経口投与し、試料投与が終了した次の日に実験動物を二酸化炭素で窒息死させ、大腸部位の盲腸から肛門直前部位までの大腸を摘出した。一方、大腸の長さ、MPO活性、大腸のサイトカイン発現量、BDNF(brain-derived neurotrophic factor)発現量、Y字型迷路実験、尾懸垂実験などを行い、結果を確保した。
【0162】
7-4.Y字型迷路実験(Y-maze task)
前記動物モデルに対してY字型迷路実験を通じて記憶力の改善に効果があることを確認した。
【0163】
具体的に、Y字型迷路測定装置は、3つの通路(arm)を伸びてアルファベットY字状をしており、各枝は長さ25cm、高さ14cm、幅5cmで同じ角度に位置した。Y字型迷路の一通路の端に実験動物の頭部が向かうように置き、8分間自在に通路を動き回るようにした。動物の動きを記録し、動物の後肢まで通路に入ったときを通過したもの(arm entry)と見た。動物の動きは交替回数(alternation)で表されるが、交替回数とは動物が連続して3つの通路を通過したときに一度交替したと定義される。自発的な交替行動量は、実際の交替回数と最大可能な交替回数(すなわち、総交替回数から2を引いた値)の百分率で表示した。
【0164】
7-5.高架式十字迷路(elevated plus maze、EPM)試験
前記動物モデルに対して実験を行った。20ルクスの明るさで、上にビデオカメラを取り付けた部屋に、高架式十字迷路実験装置[二つのオープンアーム(Open arm、30×7cm)と、20cm高さの壁を有する2つのクローズアーム(Enclosed arm、30×7cm)が床面より50cmほど高く、中央プラットフォームから高さ7cmずつ伸びている黒いフレキシガラス装置]にマウスを中央に頭がくるようにオープンアームに向かわせ、5分間、オープンアームとクローズアームで過ごした時間と回数を測定した。全実験時間のうち、オープンアームで過ごした時間(Time spent in open arms、OT)は、「オープンアームで過ごした時間/(オープンアームで過ごした時間+クローズアームで過ごした時間)」×100として算出した。
【0165】
7-6.尾部懸垂実験(Tail Suspension Test、TST)
前記動物モデルに対して実験を行った。直径35cmおよび高さ50cmの容器にマウス尻尾の先端1cm程のどころに固定装置を取り付けた後、地面から50cm離れた位置に吊り下げた。合計6分間実験動物の不動時間(immobility)を測定した。
【0166】
7-7.強制水泳試験(Forced Swimming Test、FST)
前記動物モデルに対して実験を行った。高さ40cm、直径20cmの水槽に温度25±1℃の水を30cm高さまで満たした。前記実験例5にて製作した疾患モデルマウスを一匹ずつ水槽に入れ、計6分間のうち最初の2分間は順応時間として測定せず、最後の4分間、実験動物の不動時間(immobility)を測定した(百分率で表示)。不動状態は、頭だけを水から出すための最小限の動きだけをしながら、直立して動かずに浮いている状態を意味する。
【0167】
7-8.大腸の長さの測定
腹部を解剖して大腸を分離し、腸の長さを測定した。
【0168】
7-9.ミエロペルオキシダーゼ(Myeloperoxidase、MPO)活性測定
大腸組織100mgに0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyl trimethyl ammonium bromide)含有10mMリン酸カルシウム緩衝液(potassium phosphate buffer、pH7.0)200μlを入れ、均質化(homogenization)した。次いで、4℃および10,000gの条件で10分間遠心分離し、上澄み液を得た。これを粗酵素液として使用した。粗酵素液50μlを0.95μlの反応液(1.6mMテトラメチルベンジジン(tetramethyl benzidin)と0.1mM H2O2含有)に入れ、37℃で反応させながら650nmで経時的に吸光度を測定した。前記ミエロペルオキシダーゼの活性は、反応物として生じたH2O2の1μmol/mlを1ユニット(unit)で計算した。
【0169】
7-10.大腸のサイトカイン発現量の測定
大腸組織100mgにプロテアーゼ阻害剤カクテルが含有された250μlのRIPA緩衝液を添加し、均質化した。次いで、4℃および10,000gの条件で15分間遠心分離し、上澄み液を得て、この上澄み液を50μlを96-ウェルに入れ、ELISA plate kits(Pierce Biotechology、Inc.、Rockford、IL、USA)を用いてTNF-α、IL-1β、IL-6の発現量を測定した。
【0170】
まず、上澄み液50μlをTNF-α抗体、IL-1β抗体およびIL-6抗体がそれぞれコートされた96ウェルプレートに入れ、常温で2時間反応させた後、リン酸緩衝生理食塩水-ツイン(phosphate buffered saline-Tween、PBS-Tween)で洗浄し、発色剤を入れ、20分間発色させ、450nm波長で吸光度を測定し、計算した。
【0171】
7-11.拘束ストレスモデルでの効果確認
【0172】
【0173】
拘束ストレス(IS)を処理した群では、正常群に比べて有意に、EPM、TST、FSTにおいて不安およびうつ病行動が増加したが、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、拘束ストレスによって増加した不安うつ病行動が有意に抑制されたことを確認した。すなわち、拘束ストレスにより示された不安、うつ病行動は、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の投与群の全部において著しく改善されたことが確認され、併用投与によっても改善効果が確認された。
【0174】
【0175】
拘束ストレス(IS)を処理した群では、正常群に比べて有意に、海馬のIL-6、血中のコルチコステロンとIL-6、大腸のMPO、IL-1βが増加したが、海馬におけるBDNFと大腸におけるIL-10は減少した。しかし、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173は、全部ストレスなどによって、増加していた海馬のIL-6、血中のコルチコステロンとIL-6、大腸のMPO、IL-1βが減少しており、反面、海馬で減少していたBDNFと大腸のIL-10は増加した。また、併用投与によっても改善効果が優れていることが分かった。
【0176】
7-12.糞便移植マウスにおける効果の確認
【表14】
【0177】
糞便移植(FMT)を行った群では、正常群に比べて有意に、EPM、TST、FSTにおいて不安および抑うつ行動が増加し、Y-mazeにおいて認知能が損なわれた行動を示したが、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、FMTにより増加した不安うつ行動が有意に抑制され、損傷した認知能が有意に改善されることを確認した。すなわち、糞便移植に示す不安、うつ病行動は、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173の投与群の全部において、著しく改善されたことが確認され、併用投与によっても改善効果が確認された。
【0178】
【0179】
糞便移植を行った群では、正常群に比べて有意に、海馬のIL-6、血中のコルチコステロン、IL-6、クレアチニンと乳酸、大腸のMPO、IL-1βが増加したが、海馬におけるBDNFと大腸におけるIL-10は減少した。しかし、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175およびビフィドバクテリウムロンガムNK173を投与した群では、このような疾患関連因子らの発現水準が調節された。特に、併用投与によっても改善効果が優れていることが確認された。
【0180】
7-13.TNBS誘導うつ病および認知機能損傷マウスモデルでの治療効果の確認
優先的に、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、いずれもTNBS処理により短くなった大腸の長さが有意に回復されたことを確認した。また、MPO活性が有意に改善されたことを確認し、TNF-α、IL-1β、IL-6発現量が有意に抑制され、一方、TNBSにより減少したIL-10の発現量は、誘導された。
【0181】
さらに、Y字型迷路実験を通じて記憶力の改善に効果があることを確認し、尾懸垂試験実験(TST)を通じて不安/うつ病の改善に効果があることが確認された。
【0182】
【0183】
前記表16に示すように、TNBSを処理した群では、正常群に比べて交替回数が減少したが、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLP3群では、TNBSにより減少した交替回数が増加され、その中でもLP群、BL群、LB2群およびLB3群において、交替回数の増加率が特に優れていることが示された。このような結果は、ラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173の認知機能改善、不安およびうつ病の症状の改善に対する優れた効果があることを示す。また、海馬のTNF-αおよびBDNF(brain-derived neurotrophic factor)発現量測定の結果を表17に示した。
【0184】
【0185】
前記表17に示すように、TNBSを処理した群では、正常群に比べて有意にTNF-α発現量が増加したが、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群においてTNBSによって増加したTNF-α発現量を有意に抑制されたことを確認した。一方、TNBSにより減少したBDNF発現量は、誘導され、その中にLP群、LB2群およびLB3群のTNF-α発現抑制およびBDNF発現誘導効果に優れていることが示された。また、尾部懸垂試験実験(Tail Suspension Test、TST)測定結果を表18に示した。
【0186】
【0187】
前記表18に示すように、TNBSを処理した群では、正常群に比べて不動状態が有意に増加したが、LP群、BB群、BL群、LB1群、LB2群およびLB3群では、TNBSにより増加した不動行動が有意に抑制されたことを確認した。このような結果は、本発明のラクトバチルスプランタルムNK151、ビフィドバクテリウムビフィダムNK175および/またはビフィドバクテリウムロンガムNK173が炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの発現を調節し、炎症性疾患に対する治療効果が示されることがみられた。また、眼疾患において治療効果を示される抗酸化作用、NO生成抑制などの作用、認知機能において、改善効果、神経炎症の改善などの効果を通じて、炎症性疾患、眼疾患、疲労、認知機能障害、精神障害の予防、改善および治療にも卓越した効果あることが確認された。これにより、本発明の菌株は、プロバイオティクス製品だけでなく、食品、医薬品などで多様な活用が可能であることを確認した。
【0188】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解される。したがって、上述した実施例はすべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散して説明されている構成要素も組み合わされた形態で実施されてもよい。
【0189】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、並びにその均等概念から導き出されるすべての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【0190】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12783P
受託日付:20200910
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12784P
受託日付:20200910
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM13046P
受託日付:20210906
【0191】
【0192】
【0193】
【配列表】
【国際調査報告】