(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】JAK阻害剤の結晶多形フォームA及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20231002BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231002BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231002BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20231002BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231002BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
A61P17/00
A61P27/02
A61P37/00
A61P43/00 105
A61K31/4545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518983
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021052063
(87)【国際公開番号】W WO2022067106
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518293228
【氏名又は名称】アクラリス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】デクレシェンツォ ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】スプリンガー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ローソン ジョン ピー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH08
4C065JJ07
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP13
4C065QQ04
4C065QQ07
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC20
(57)【要約】
本出願は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物1)の新規結晶フォームに関する。本出願は、化合物1の調製方法及び化合物1の結晶多形フォームAの調製方法にも関する。本出願の追加の態様は、結晶フォーム又は化合物1の結晶フォームから形成された化合物1を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10.50°の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターンによって特徴付けられる化合物1(エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート)の結晶多形フォームA。
【請求項2】
前記PXRDパターンが、約18.86°の2θ角に特徴的なピークをさらに含む、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項3】
前記PXRDパターンが、約9.69°、約14.01°、及び約25.85°の2θ角に特徴的なピークをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の結晶多形。
【請求項4】
前記PXRDパターンが、約4.67°、約9.33°、約9.55°、及び約27.46°の2θ角に特徴的なピークをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項5】
約1499.7cm
-1の特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴付けられる、化合物1(エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート)の結晶多形フォームA。
【請求項6】
前記FT-ラマンスペクトルが、約31.867cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項5に記載の結晶多形。
【請求項7】
前記FT-ラマンスペクトルが、約28.008cm
-1、約27.729cm
-1、約20.742cm
-1、及び約19.862cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項5又は請求項6に記載の結晶多形。
【請求項8】
前記FT-ラマンスペクトルが、約17.799cm
-1、約17.727cm
-1、約17.47cm
-1、及び約16.713cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項9】
約10.50°の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターンによって特徴付けられ、及び1499.7cm
-1に特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴付けられる、化合物1(エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート)の結晶多形フォームA。
【請求項10】
前記PXRDパターンが、約18.86°の2θ角に特徴的なピークをさらに含み、及び前記FT-ラマンスペクトルが、約31.867cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項9に記載の結晶多形。
【請求項11】
前記PXRDパターンが、約9.69°、約14.01°、及び約25.85°の2θ角に特徴的なピークをさらに含み、並びに前記FT-ラマンスペクトルが、約28.008cm
-1、約27.729cm
-1、約20.742cm
-1、及び約19.862cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項9又は請求項10に記載の結晶多形。
【請求項12】
前記PXRDパターンが、約4.67°、約9.33°、約9.55°、及び約27.46°の2θ角に特徴的なピークをさらに含み、並びに前記FT-ラマンスペクトルが、約17.799cm
-1、約17.727cm
-1、約17.47cm
-1、及び約16.713cm
-1に特徴的なピークをさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項13】
実質的に
図2又は
図3に示されるようなPXRDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項14】
約196.8℃に吸熱を示すDSCサーモグラムによってさらに特徴付けられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項15】
約0.7%の熱重量分析により測定された水分損失によってさらに特徴付けられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項16】
実質的に
図6に示されるようなFT-ラマンスペクトルによってさらに特徴付けられる、請求項1~15のいずれか1項に記載の結晶多形。
【請求項17】
化合物1(エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート)及びアルコールを混合し、反応混合物を形成する工程、
前記反応混合物を、透明溶液を形成するのに十分な温度まで加熱する工程、及び
前記透明溶液を約10℃~約15℃の温度まで冷却し、化合物1の結晶多形フォームAを固体沈殿物として生成する工程、
を含む、化合物1の結晶多形フォームAの調製方法。
【請求項18】
前記加熱が、約70℃~約75℃の温度まで前記反応混合物を加熱することを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記アルコールが、エタノールである、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
透明溶液を約10℃~約15℃の温度にする前記冷却が、
前記反応混合物を、約3時間~約4時間の期間にわたって、約40℃~約45℃の温度にする第1の冷却、
前記反応混合物を、約3時間~約4時間の期間にわたって、約25℃~約30℃の温度にする第2の冷却、及び
前記反応混合物を、約2時間~約3時間の期間にわたって、約10℃~約15℃の温度にする第3の冷却、
を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物を約25℃~約30℃の温度まで冷却する前に、前記反応混合物を、40℃~約45℃の温度で約6時間~約7時間、維持する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応混合物を約10℃~約15℃の温度まで冷却する前に、前記反応混合物を、約25℃~約30℃の温度で約12時間~約14時間、維持する、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応混合物を、約10℃~約15℃の温度で約4時間~約6時間、維持し、化合物1の結晶多形フォームAを固体沈殿物として生成する、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記透明溶液を約10℃~約15℃の温度に冷却する前に、前記透明溶液に活性炭を追加する工程、
前記活性炭を含む前記透明溶液を混合する工程、及び
活性炭を含む前記透明溶液をろ過し、前記活性炭を除去する工程、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記固体沈殿物を真空中、約50℃~約55℃の温度で乾燥することをさらに含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
(a)化合物:
【化1】
を、塩基の存在下で、化合物:
【化2】
と接触させ、化合物:
【化3】
を形成する工程、及び
(b)STG-01を化合物1に変換する工程、
を含む、以下の構造を有する化合物1:
【化4】
を調製するためのプロセス。
【請求項27】
前記化合物SM-02が、トリイソプロピルシリルクロライドである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記塩基がNaHである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記接触が、THF中で実施される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
化合物STG-01を、塩基の存在下でクロロギ酸エチルと接触させ、化合物:
【化5】
を形成することをさらに含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項31】
前記塩基が、sec-ブチルリチウムである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記接触を、THF、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメトキシエタン(DME)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒中で実施する、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記化合物STG-02を、塩酸エタノール溶液と接触させ、化合物:
【化6】
を形成することをさらに含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項34】
前記化合物STG-02を、塩酸アルコール溶液と接触させ、化合物:
【化7】
を形成することをさらに含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項35】
前記塩酸アルコール溶液が、塩酸エタノール溶液である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
化合物STG-03を、アミン塩基存在下で、
【化8】
と接触させ、化合物:
【化9】
を形成することをさらに含む、請求項33又は請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記アミン塩基が、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記接触を、エタノール、水、トルエン、キシレン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、DME、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒中で実施する、請求項36に記載のプロセス。
【請求項39】
前記接触を、エタノール中で実施する、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記接触を、オートクレーブ中、高圧で実施する、請求項36に記載のプロセス。
【請求項41】
前記接触を、約120℃の温度で実施する、請求項36に記載のプロセス。
【請求項42】
前記接触を、約24時間~約48時間で実施する、請求項36に記載のプロセス。
【請求項43】
前記化合物STG-04を、塩酸アルコール溶液と接触し、化合物:
【化10】
を形成することをさらに含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項44】
前記塩酸アルコール溶液が、塩酸エタノール溶液である、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記化合物STG-05を、ジクロロメタン中、カップリング試薬及びアミン塩基存在下で、
【化11】
と接触すること、並びにそれによって化合物1を形成することをさらに含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
前記カップリング試薬が、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩である、請求項43に記載のプロセス。
【請求項47】
前記アミン塩基が、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である、請求項43に記載のプロセス。
【請求項48】
前記接触を、ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で実施する、請求項43に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月25日に出願された米国仮特許出願第63/083,663号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、本開示は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートの新規な結晶フォーム(crystalline form)を提供し(化合物1):
本明細書において、化合物1の結晶多形フォームA(Crystalline polymorph form A)として記載され、及び同定される。化合物1の結晶多形フォームAは、約10.50°の2θ角の特徴的なピークを含むPXRDパターンによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAのPXRDパターンは、さらに、約18.86°の2θ角の特徴的なピークを含み得る。化合物1の結晶多形フォームAのPXRDパターンは、さらに、約9.69°、約14.01°、及び約25.85°の2θ角の特徴的なピークを含み得る。またさらに、化合物1の結晶多形フォームAのPXRDパターンは、約4.67°、約9.33°、約9.55°、及び約27.46°の2θ角の特徴的なピークをさらに含み得る。
【0003】
前記PXRDパターンに代えて、又は加えて、化合物1の結晶多形フォームAは、約1499.7cm-1の特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAのFT-ラマンスペクトルは、さらに、約31.867cm-1の特徴的なピークを含み得る。化合物1の結晶多形フォームAのFT-ラマンスペクトルは、さらに、約28.008cm-1、約27.729cm-1、約20.742cm-1、及び19.862cm-1の特徴的なピークを含み得る。化合物1の結晶多形フォームAのFT-ラマンスペクトルは、さらに、約17.799cm-1、約17.727cm-1、約17.47cm-1、及び16.713cm-1の特徴的なピークを含み得る。
【0004】
化合物1の結晶多形フォームAは、約10.50°の2θ角の特徴的なピークを含むPXRDパターンによって特徴づけられ、及び1499.7cm-1の特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約18.86°の2θ角の特徴的なピークをさらに含むPXRDパターンによって特徴づけられ、及び31.867cm-1の特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約9.69°、約14.01°、及び約25.85°の2θ角の特徴的なピークをさらに含むPXRDパターンによって特徴づけられ、並びに28.008cm-1、約27.729cm-1、約20.742cm-1、及び約19.862cm-1の特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約4.67°、約9.33°、約9.55°、及び約27.46°の2θ角の特徴的なピークをさらに含むPXRDパターンによって特徴づけられ、並びに17.799cm-1、約17.727cm-1、約17.47cm-1、及び約16.713cm-1の特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。
【0005】
様々な実施態様において、化合物1の結晶多形フォームAは、実質的に
図2又は
図3に示すようなPXRDパターンによってさらに特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、1)約196.8℃の吸熱を示すDSCサーモグラム、2)約0.7%の熱重量分析によって測定される水の消費、及び3)実質的に
図6に示すようなFT-ラマンスペクトルの1つ又は2つ以上によっても特徴づけられ得る。
【0006】
さらに別の態様において、本開示は、化合物1の結晶多形フォームAを調製する方法を提供する。この方法は、化合物1及びアルコールを混合し、反応混合物を形成すること、当該反応混合物が透明溶液を形成するのに十分な温度に過熱すること、及び当該透明溶液を約10℃~約15℃の温度に冷却し、化合物1の結晶多形フォームAを結晶沈殿物として生成することを含む。様々な実施態様において、前記反応混合物を、約70℃~約75℃の温度に加熱し得る。様々な実施態様において、前記アルコールはエタノールである。前記透明溶液を約10℃~約15℃に冷却することを、段階的に実施することができ、例えば約3時間~約4時間の期間にわたって約40℃~約45℃の温度に前記反応混合物の第1の冷却をし、約3時間~約4時間の期間にわたって約25℃~約30℃の温度に前記反応混合物の第2の冷却をし、及び最後に、約2時間~約3時間の期間に渡って約10℃~約15℃の温度に前記反応混合物の第3の冷却をすることによって実施し得る。
【0007】
上述の各工程の終わりに、前記反応混合物を終了温度で維持し得る。例えば、前記反応混合物を約25℃~約30℃の温度に冷却する前に、前記反応混合物を、40℃~約45℃の温度で、約6時間~約7時間で維持し得る。加えて又は代わりに、前記反応混合物を約10℃~約15℃の温度に冷却する前に、前記反応混合物を、約25℃~約30℃の温度で、約12時間~約14時間維持し得る。加えて又は代わりに、前記反応混合物を、約10℃~約15℃で、約4時間~約6時間維持することができ、固体沈殿物として化合物1の結晶多形フォームAを生成し得る。
【0008】
任意に、活性炭を、前記透明溶液を約10℃~約15℃の温度に冷却する前に、前記透明溶液に追加し得る。前記溶液を混合し、次いでろ過し、活性炭を除去し得る。任意に、結晶多形フォームAを固体として単離した後に、前記固体を、例えば真空中、約50℃~約55℃の温度で乾燥することによって、さらに処理し得る。
【0009】
さらに別の態様において、本開示は、以下の構造:
を有する化合物1を調製する方法を提供し、化合物1は、以下の工程、
(a)化合物:
を塩基存在下において、化合物:
と接触させて、化合物:
を形成すること、及び(b)STG-01を化合物1へ変換する工程を含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、化合物1の結晶多形フォームAから調製した化合物1の治療上有効量を含有する医薬組成物、又は化合物1の結晶多形フォームA、医薬的に許容できるその塩、若しくはその組み合わせ、及び医薬的に許容できる担体を提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、前記化合物1の結晶多形フォームA、若しくは化合物1の結晶多形フォームA、又はその組み合わせから調製した化合物1の治療上有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるJAK1及び/又はJAK3媒介性疾患を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の性質及び利点のより完全な理解のために、添付の図面と関連して取り込まれた以下の詳細な説明を参照されたい、その中に:
【
図1】
図1Aは、光学顕微鏡下での結晶性化合物1の画像を提供する。
図1B及び
図1Cは、化合物1のPXRDパターンをシミュレーションするために使用される単結晶測定に使用された単結晶の画像を提供する。
【
図2】
図2は、化合物1の多形フォームAのサンプルから得られた代表的なPXRDパターンを表す。
【
図3】
図3は、化合物1の多形フォームAの単結晶の測定からシミュレーションされたPXRDパターンである。
【
図4】
図4は、化合物1の熱重量分析(TGA)曲線及び示差走査熱量測定(DSC)曲線である。
【
図5】
図5は、化合物1の動的水蒸気吸着(DVS)等温線である。
【
図6】
図6は、化合物1のFT-ラマンスペクトルである。(詳細な説明)
【0013】
本発明の組成物及び方法を説明する前に、本発明の範囲は、これらが変化し得るため、これらの特定の説明された工程、組成物、又は方法に限定されないことを理解される。本明細書で使用される用語は、特定の種類又は実施態様を説明する目的のみであり、及び添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解される。別段の定義をしない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同様の意味を有する。本明細書に記載されるそれらと同様の又は同等の任意の方法及び物質を、本発明の実施態様の実践又は試験に使用するが、好ましい方法、装置、及び物質を今説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、それが記載しているとして特定される態様に関して、参照により組み込まれる。
本明細書は、本発明が先行発明の効力によるそのような開示に先行する権利を与えられない、と承認すると解釈されるものではない。
【0014】
アトピー性皮膚炎(AD)は、複雑な遺伝、免疫、及び環境の相互作用によって引き起こされる一般的な慢性皮膚疾患である。ADは、決定的な検査所見又は組織学的所見を有さないが、この状態の顕著な特徴は、再発性皮膚炎症による皮膚バリア機能の障害であり、乾燥肌、掻痒症、及びIgE媒介性アレルゲン感作につながる。ADは、子どもと家族との生活の質を著しく悪くする。ADの治療は、エモリエント剤の使用及び個人的な誘発する要因の回避を通じて、継続的な皮膚バリアの修復を目的とするが、ヤヌスキナーゼの標的阻害剤の使用は、近年、従来の治療法の有効な代案として浮上している。
【0015】
以下の開示及び説明は、ヤヌスキナーゼ1(JAK1)及びヤヌスキナーゼ3(JAK3)の阻害剤であるエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(ここでは“化合物1”)含む組成物の治療上有効量の皮膚への局所適用が、様々な皮膚の状態及び障害、例えばアトピー性皮膚炎、白斑、及び円形脱毛症の治療に有効であるという少なくとも部分的な臨床観察に基づいて提供される。
【0016】
式1として以下に示す化合物1は、米国特許出願公開第2019/0135808号(実施例117)に開示されており、化合物1の開示及び化合物1の合成方法についての参照によりここに組み込まれる。フリーベース形態(freebase form)の化合物1は、C
18H
21N
5O
3の化学式及び355.40g/molの分子量を有する。
【0017】
本明細書で使用される場合、“化合物1”は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートを意味する。
【0018】
(定義)
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形“a”、“an”、及び“the”は、文脈が明らかに示さない限り、複数形の意味を含むことに注意しなければならない。従って、例えば“JAK阻害剤”への言及は、1つ以上のJAK阻害剤及び当業者などに知られているそれらの等価物への言及である。
【0019】
明細書で使用される場合、用語“約(about)”は、使用されている数値のプラス又はマイナス10%を意味する。従って、約50%は、45~55%の範囲内を意味する。温度について記載するために使用される場合、“約(about)”は、特定された温度のプラス又はマイナス5℃を意味する。PXRDピークを記載するために使用される場合、用語“約(about)”は、特定される2θピークのプラス又はマイナス0.2°を意味する。
【0020】
任意の実施態様において、明細書で開示される前記方法及び組成物は、記載された工程及び構成要素を含み得る。ここで使用されるように、“含む(comprise)”は、記載された方法又は組成物に含まれる工程又は構成要素を記載するために使用されるオープンランゲージであるが、他の要素が明確に記載されていなくても、前記要素を含み得ることを示す。任意の実施態様において、本明細書に開示される前記方法及び組成物は、記載された工程及び組成物から実質的になり得る。ここで使用されるように、“から実質的になる(consist essentially of)”は、記載された方法又は組成物に含まれる工程又は構成要素を記載するため、及び他の要素も含むことができるが、前記他の要素は、前記組成物の特性又は前記方法の結果に著しく影響を与えないことを示すために使用される。任意の実施態様において、本明細書に開示される前記方法及び組成物は、記載された工程及び構成要素からなり得る。ここで使用されるように“からなる(consist of)”は、記載された方法又は組成物に含まれる工程及び構成要素を記載するために使用されるクローズドランゲージであり、及び明確に記載された以外の要素を含まない。含む(comprise)又は含有する(comprising)という用語の使用を、“から実質的になる(consisting essentially of)”又は“からなる(consisting of)”に置き換えることができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、一方が他方と異なるものであると定義されるとき、2つのは、“相互排他的(mutually exclusive)”である。例えば、2つの基が結合し、シクロアルキルを形成する実施態様は、一方の基がエチルであり、他方の基が水素である実施態様と相互排他的である。同様に、一方の基がCH2である実施態様は、同じ基がNHである実施態様と相互排他的ある。
【0022】
本明細書で使用される場合、“医薬的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salt)”は、患者への投与が許容される酸から調製される塩を意味する。前記“医薬的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salts)”という用語は、アルカリ金属塩を形成するため、及び遊離酸から付加塩を形成するために一般に使用される塩を含む。そのような塩は、医薬的に許容される無機酸又は有機酸に由来し得る。
【0023】
値の範囲が開示され、及び“n1…からn2まで(from n1 … to n2)”又は“n1と…n2との間(between n1 … and n2)”という表記が使用され、n1及びn2が数字の場合、特に指定しない限り、この表記はそれらの数字自体及びそれらの間の範囲を含むことを意図する。この範囲は、最終値の間及び最終値を含む整数又は連続であり得る。一例として、“炭素数2~6”の範囲は、炭素数は整数単位であるので、炭素数2、3、4、5、及び6を含むことを意図する。一例として、“1~3μM(マイクロモル)”の範囲を比較して、これは、1μM、3μM、及び有効数字の任意な数の間のすべてを含むことを意図する(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語“ハロ(halo)”又は“ハロゲン(halogen)”は、単独又は組み合わせで、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語“実質的に含まない(substantially free)”は、単独又は組み合わせで、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)、又は液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を含む任意の方法で測定した場合、検出限界内で他の全ての化合物を含まない化合物を意味する。
【0026】
立体異性中心は、本明細書で開示されるいくつかの化合物に存在する。これらの中心は、記号“R”又は“S”によって表され、立体異性中心の周りの置換基の立体配置に依存する。本発明は、ジアステレオマー型、エナンチオマー型、アトロプ異性型、ラセミ型、及びエピマー型、並びにd-異性体及びs-異性体、及びそれらの混合物を含む全ての立体化学異性体を含むことを理解されたい。化合物の個々の立体異性体は、固定された不正中心を含む市販の出発物質から合成的に調製することができ、又は生成物のラセミ混合物の調製後、ジアステレオマーの混合物に変換した後に分離又は再結晶するなどのエナンチオマー分離、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラムでのエナンチオマーの直接分離、又は任意の他の適切な当技術分野で既知の方法によって調製される。さらに、本明細書に記載された化合物は、幾何異性体として存在し得る。本発明は、全てのシス(cis)、トランス(trans)、シン(syn)、アンチ(anti)、エントゲーゲン(entgegen)(E)、及びツサンメン(zusammen)(Z)異性体、並びに適切なそれらの混合物を含む。その上、化合物は互変異性体として存在することができ、全ての互変異性体がこの研究によって提供される。加えて、本明細書で開示される化合物は、水、エタノールなどの医薬的に許容される溶媒による溶媒和型だけでなく非溶媒和型でも存在し得る。一般に、前記溶媒和型は、非溶媒和型と同等と考えられる。
【0027】
本明細書で使用される用語“疾患(disease)”は、一般的に用語“障害(disorder)”、“症候群(syndrome)”、及び“状態(condition)”(医学的状態における)と同義であり、並びに互換的に使用されることを意図しており、全てが、人間若しくは動物の身体の異常な状態、又は正常な機能を損なう人間若しくは動物の身体の一部分の異常な状態を反映しており、典型的には、区別できる兆候及び症状によって明らかになり、並びに人間若しくは動物に寿命若しくは生活の質の低下を引き起こす。
【0028】
“併用療法(combination therapy)”は、2つ以上の治療剤の投与を意味し、本開示に記載される治療状態又は障害を処置する。そのような投与は、例えば、有効成分の固定比率を有する単一の局所用組成物、又は各有効成分について複数の別個の局所用組成物などを実質的に同時の方法でこれら治療剤の同時投与を含む。さらに、そのような投与は、逐次的方法でのそれぞれのタイプの治療剤の使用も含む。いずれの場合も、前記治療計画は、本明細書に記載される状態又は障害の治療において、薬の組み合わせの有益な効果を提供する。
【0029】
“JAK1及び/又はJAK3阻害剤”は、本明細書において一般的に記載されるJAK1及びJAK3酵素測定において測定される場合、約100μM以下、より典型的には50μM以下のJAK1及び/又はJAK3活性に関するIC50を示す化合物を意味するために使用される。いくつかの態様において、前記化合物は、約1μM~約50μMのJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示す。IC50は、酵素(例えば、JAK1及び/又はJAK3)の活性を最大の半分のレベルに低下させる阻害剤の濃度である。本明細書で開示した特定の化合物は、JAK1及び/又はJAK3に対する阻害を示すことが発見されている。いくつかの実施態様において、前記化合物は、約300nM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示す。いくつかの実施態様において、前記化合物は、約1nM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示す。本明細書で開示されるJAK1及び/又はJAK3分析で測定した場合、特定実施態様において、化合物は、約50μM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示し、さらなる実施態様では、化合物は、約10μM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示し、またさらなる実施態様においては、化合物は、約5μM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示し、またさらに実施態様においては、化合物は、約1μM以下のJAK1及び/又はJAK3に関するIC50を示す。
【0030】
“治療上有効な(therapeutically effective)”という言い回しは、疾患若しくは障害の治療、又は臨床エンドポイントの効果に使用される有効成分の量を適格とすることを意図する。
本明細書で使用される場合、用語“治療上(therapeutic)”は、患者の望ましくない状態又は疾患を治療、戦い、回復、予防、又は改善するために利用される薬剤を意味する。部分的には、本発明の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3が介在する疾患の治療を対象とする。
用語“治療上許容される(therapeutically acceptable)”は、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応なしに患者の組織と接触して使用するのに適しており、適度な利益/リスク比率に相応し、及びそれらの意図する使用に有効である化合物を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、患者の“治療(treatment)”への言及は、予防を含むことを意図する。治療は、本質的に予防であってもよく、すなわち、疾患の予防も含み得る。疾患の予防は、例えば病原体への感染症の予防の場合のように、疾患からの完全な保護を含むことができ、又は疾患の進行の防止を含み得る。例えば、疾患の予防は、あらゆるレベルでの疾患に関連するあらゆる効果の完全な差し押さえを意味するのではなく、その代わりに、疾患の症状を臨床上重要な又は探知できるレベルまで予防することを意味してもよい。疾患の予防は、疾患の後期への進行の防止も意味し得る。
【0032】
治療薬と共に使用される場合の“投与(administering)”は、治療薬を標的組織内又は標的組織上に直接投与すること、又は治療薬が標的とされる細胞に好影響を与えるように患者に治療薬を投与することを意味する。従って、本明細書で使用される場合、用語“投与(administering)”は、本明細書の実施態様の化合物と共に使用されるとき、化合物を標的組織上に提供すること、化合物を、例えば局部投与又は局所投与によって患者に非全身的に提供し、治療薬は標的細胞に到達することを含み得るが、これに限定されない。組成物を“投与すること(administering)”を、皮膚、眼、又は他の標的領域に組成物を局部的又は局所的に適用することによって達成し得る。
【0033】
用語“患者(patient)”は、一般的に用語“被験者(subject)”と同義であり、及び人間を含む全ての哺乳類を含む。患者の例としては、人間、牛、ヤギ、羊、豚、及びウサギなどの家畜、及び犬、猫、ウサギ、馬などのコンパニオンアニマルを含む。好ましくは、前記患者は人間である。
【0034】
用語“治療上許容される塩(therapeutically acceptable salt)”は、本明細書で使用される場合、水溶性又は油溶性又は分散性であり、及び本明細書で定義されるように治療上許容される、本明細書で開示される化合物の塩を表す。前記塩を、化合物の最終的な単離及び精製の間に、又は別に遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって調製し得る。代表な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、パラ-トルエンスルホン酸塩(p-トシラート)、及びウンデカン酸塩を含む。治療上許容される付加酸塩を形成するために採用され得る酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸などの有機酸を含む。
【0035】
JAK1及び/又はJAK3キナーゼを阻害することが見出された特定の新規化合物及び医薬組成物は、化合物の合成方法及び使用方法と併せて発見され、前記化合物を局所投与することによる患者における、JAK1及び/又はJAK3が介在する疾患の治療方法を含むが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明の化合物は、様々な方法でJAK1及び/又はJAK3アイソフォームの中で選択的であり得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、JAK2及びTyk-2などの他のアイソフォームよりもJAK1及び/又はJAK3に選択的であり、全てのアイソフォームのpan-阻害剤であり、又は1つのアイソフォームのみに選択的でもある。特定の実施態様において、本発明の化合物は、他のアイソフォームよりもJAK1及び/又はJAK3に選択的である。いくつかの実施態様において、本明細書で開示された前記化合物は、JAK2及びTyk-2よりもJAK1及び/又はJAK3に選択的である。選択性を、酵素測定、細胞測定、又はその両方を使用して決定する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示される化合物は、JAK2受容体よりもJAK1及び/又はJAK3受容体に対して少なくとも約10倍選択的である。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記化合物は、Tyk-2受容体よりもJAK1及び/又はJAK3受容体に対して少なくとも約10倍選択的である。
【0037】
(化合物1の調製)
エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート又は本明細書1に記載の“化合物1”は、以下に詳述する合成スキーム及び実験手順に示される方法を使用して調製され得る。本発明の化合物を調製するために使用される出発物質は、市販されているか、又は当技術分野で周知のありきたりな方法を使用して調製され得る。本発明の化合物を調製する代表的な手順を、以下のスキーム1-2に概要を説明する。合成調製が以下に記載されていない溶媒及び試薬は、Sigma-Aldrich又はFisher Scientificで購入することができる。
スキーム1:式(I’)のピロロピリジン類縁体の一般的な合成
【0038】
本出願の一実施態様は、上記スキーム1に描かれた工程による、構造(化合物1):
を有する式(I’)の化合物を調製する方法に関連する。
この方法は以下の工程を含む:(a)化合物:
を塩基存在下で、化合物:
と接触させて、化合物:
を形成し、及び(b)化合物STG-01を化合物1に変換する。
【0039】
いくつかの実施態様において、前記化合物SM-02トリイソプロシリルクロリドである。
任意の適切な塩基は、上記工程(a)を実施するために使用され得る。一実施態様として、前記塩基はNaHである。
前記化合物SM-01を前記化合物SM-02と接触させる工程を、任意の適切な溶媒中で実施し得る。適切な溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)を含むが、これらに限定されるものではない。一実施態様として、前記化合物SM-01を前記化合物SM-02と接触させる工程を、THF中で実施し得る。
【0040】
本発明によると、前記プロセスは、塩基存在下で前記化合物STG-01をクロロギ酸エチルと接触させて、前記化合物:
を形成する工程をさらに含む。
【0041】
STG-01とクロロギ酸エチルとの接触を、任意の適切な溶媒の存在下で実施することができる。例えば、適切な塩基は、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、又はsec-ブチルリチウムを含むが、これらに限定されるものではない。一実施態様として、前記塩基は、sec-ブチルリチウムである。いくつかの実施態様において、STG-01をクロロギ酸エチルと接触させることは、任意に炭酸ジエチルを含み得る。いくつかの実施態様において、STG-01をクロロギ酸エチルと接触させることは、任意にN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を含み得る。
【0042】
前記化合物STG-01を塩基の存在下でクロロギ酸エチルと接触させる工程を、-約-55℃~約-90℃の温度、約30分~約3時間で実施する。いくつかの実施態様において、前記接触を、約-60℃~約-90℃の温度、約30分~約3時間で実施し得る。いくつかの実施態様において、前記接触を、約-60℃の温度、約30分~約3時間で実施し得る。いくつかの実施態様において、前記接触を、約-90℃の温度、約30分~約3時間で実施し得る。
【0043】
一実施態様として、化合物STG-01を接触させる工程は、STG-01を塩基と-50℃~約-95℃の温度で約30分~約1.5時間、接触させること、及び次いでSTG-01-塩基混合物をクロロギ酸エチルと-50℃~約-95℃の温度で約30分~約1.5時間、接触させることを含む。一実施態様として、化合物STG-01と接触する工程は、STG-01をsec-ブチルリチウムと-80℃~約-95℃の温度で約30分~約1.5時間、接触すること、及び次いでSTG-01-sec-ブチルリチウム混合物をクロロギ酸エチルと-80℃~約-95℃の温度で約30分~約1.5時間、接触させることを含む。
【0044】
前記化合物STG-01をクロロギ酸エチル(ethyl chloro format)と接触させる工程を、任意の適切な溶媒で実施し得る。適切な溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。一実施態様として、前記反応を、THF、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメトキシエタン(DME)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる溶媒中で実施し得る。
【0045】
本発明によると、前記プロセスは、化合物STG-02を塩酸エタノール溶液と接触させて、化合物:
を形成することをさらに含み得る。
【0046】
加えて又は代わりに、前記プロセスは、化合物STG-02を塩酸アルコール溶液と接触させて、化合物:
を形成することをさらに含み得る。
【0047】
STG-02を接触させ、STG-03を形成することを、任意の適切な塩酸アルコール溶液と実施し得る。典型的な塩酸アルコール溶液は、塩酸エタノール溶液を含むが、これに限定されるものではない。
【0048】
本開示によると、前記プロセスは、化合物STG-03をアミン塩基の存在下で、
と接触させ、化合物:
を形成することをさらに含み得る。
【0049】
STG-03とINT-01との接触を、任意の適切な塩基の存在下で実施し得る。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン、モルホリン、ピペリジン、Na2CO3、又はKFを含むが、これらに限定されない適切なアミン塩基を、塩基として使用し得る。一実施態様として、前記アミン塩基はジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。一実施態様として、STG-03とINT-01との接触を、Pd(OAc)2、キサントホス、及びK3PO4の存在下で実施し得る。
【0050】
前記化合物STG-03をINT-01と接触させる工程を、任意の適切な溶媒中で実施し得る。適切な溶媒は、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMS)、ジメチルホルムアミド(DMF)、水、トルエン、キシレン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、DME、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。一実施態様として、前記反応をエタノール中で実施する。
【0051】
いくつかの実施態様において、前記化合物STG-03とINT-01との接触を、オートクレーブ内、高圧で実施し得る。
【0052】
いくつかの実施態様において、前記化合物STG-03とINT-01との接触を、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、又は約150℃からなる群から選択される温度で実施し得る。一実施態様として、化合物STG-03とINT-01との接触を、約120℃の温度で実施する。
【0053】
いくつかの実施態様において、前記化合物STG-03とINT-01との接触を、約10時間~約90時間、約12時間~約24時間、約24時間~約48時間、又は約48時間~約72時間で実施し得る。一実施態様において、前記接触を、約24時間~約48時間で実施し得る。
【0054】
本発明によると、前記プロセスは、化合物STG-04を塩酸アルコール溶液と接触し、化合物:
を形成することをさらに含み得る。
【0055】
STG-04を接触させ、STG-05を形成することを、任意の適切な塩酸アルコール溶液で実施し得る。典型的な塩酸アルコール溶液は、塩酸エタノール溶液を含むが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明によると、前記プロセスは、カップリング試薬及びアミン塩基の存在下、化合物STG-05をジクロロメタン中で、
と接触させ、その結果、化合物1を形成することをさらに含み得る。
【0057】
STG-05をジクロロメタン中でINT-02と接触させることを、任意の1つ以上の適切なカップリング試薬存在下で実施し得る。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、又はN,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミドを含むが、これらに限定されない適切なカップリング試薬を、使用し得る。一実施態様として、前記カップリング試薬は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩である。
【0058】
STG-05をジクロロメタン中でINT-02と接触させることを、任意の1つ以上の適切なアミン塩基の存在下で実施することができる。適切なアミン塩基は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン、モルホリン、又はピペリジンを含むが、これらに限定されない。一実施態様として、前記アミン塩基はジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。
【0059】
いくつかの実施態様において、STG-05をジクロロメタン中でINT-02と接触させることを、ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で行う。
【0060】
スキーム2は、化合物1の合成を示す。市販のエチル4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(CAS#55052-28-3)(SM-01)を、DMF又はTHFなどの溶媒中で水素化ナトリウムなどの塩基を用いる標準反応条件下でTIPS-Clを使用して保護し、続いてTIPS-Clを添加し得る。化合物(STG-01)を、s-BuLiを用いて5位を選択的にリチウム化し、及びクロロギ酸エチルと反応し、化合物(STG-02)を製造し得る。塩酸エタノール溶液を用いた脱保護後に中和することにより、化合物(STG-03)を製造し得る。市販のアミン(INT-01)を、エタノールなどの溶媒中、オートクレーブで高圧下、加熱することにより、芳香族求核置換反応を介して化合物(STG-03)の塩化物に置換するために使用し得る。結果、Boc保護されたアミン(STG-04)を、塩酸エタノール溶液で脱保護し得る。一度脱保護されたアミン(STG-05)を、カルボン酸(INT-02)とカップリングし、化合物1を形成し得る。
スキーム2:化合物1の合成
【0061】
(化合物1の結晶多形フォームAの調製)
多形性とは、結晶格子中に構成要素の異なる配置又は構造を有する2つ以上の結晶フォームが存在する固体物質の能力である。多形性及びシュードモルフィズム(pseudomorphism)は、薬の間では非常に一般的であり、及び多くの特性の違いの要因となっている。慣例では、化学的安定性のため、製剤への混合のため最もエネルギーの低い多形の選択を決定するが、所望の化学的安定性及び物理的安定性、並びに有効性を達成するために、製剤中の賦形剤に配慮しなければならない。本明細書では、AD、白斑、及び円形脱毛症の治療のための局所製剤を調製又は組み込むために使用することができる、多形フォームAと名付けられた、化合物1の特に有用な形態を開示する。
【0062】
従って、1つの側面において、本開示は、化合物1の結晶多形フォームAを提供する。化合物1の結晶多形フォームAは、非溶解性の無色の菱形双角錐(rhombic-dipyramidal)の結晶固体である。前記結晶の画像を
図1a、
図1b及び
図1cに示す。化合物1の結晶多形フォームAは、粉末X線回析(PXRD)より、分析から得られるパターンが、特徴的な2θ角に特徴的なピークが含まれている場合、そのように特徴付けられ得る。フォームAは、例えば約10.50°2θにある特徴的なピークによって特徴づけられ得る。化合物1のフォームAのPXRDパターンは、約18.86°2θの特徴的なピークをさらに持ち得る。化合物1のフォームAのPXRDパターンは、約9.69°2θ、約14.01°2θ、及び約25.85°2θのうち約1つ以上の特徴的なピークをさらに持ち得る。またさらに、化合物1のフォームAのPXRDパターンは、約4.67°2θ、約9.33°2θ、約9.55°2θ、及び約27.46°2θのうち1つ以上の特徴的なピークをさらに持ち得る。PXRDによって化合物1を分析するために使用するパラメータは、以下の特性評価方法部分で理解し得る。
【0063】
上記のように、化合物1の結晶フォームAは、化合物1の非溶解性結晶フォームである。PXRDによる特性評価に加えて、化合物1の結晶フォームAは、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、及びフーリエ変換ラマン(FT-Raman)の1つ以上によっても特徴づけられる。化合物1の結晶フォームAの特定のバッチのために収集したTGAサーモグラム、DSC曲線、及びFT-ラマンスペクトルは、実施例に記載される。しかしながら、一般に、化合物1の結晶フォームAは、TGAで分析した場合、約1wt%未満の水損失によって特徴づけられ得る。DSCによって分析した場合、化合物1の結晶フォームAは、約196℃~約197℃で相転移(DSCでの吸熱によって証明される)を起こし得る。
【0064】
化合物1の結晶多形フォームAは、約1499.7cm-1に特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1のフォームAのFT-ラマンスペクトルは、約31.867cm-1に特徴的なピークをさらに持ち得る。化合物1のフォームAのFT-ラマンスペクトルは、約28.008cm-1、約27.729cm-1、約20.742cm-1、及び約19.862cm-1のうち1つ以上の特徴的なピークをさらに持ち得る。化合物1のフォームAのFT-ラマンスペクトルは、約17.799cm-1、約17.727cm-1、約17.47cm-1、及び約16.713cm-1のうち1つ以上の特徴的なピークをさらに持ち得る。
【0065】
化合物1の結晶多形フォームAは、約10.50°の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターンによって特徴付けられ、及び約1499.7cm-1に特徴的なピークを含むFT-ラマンスペクトルによって特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約18.86°の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターン、及び約31.867cm-1に特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによってさらに特徴づけられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約9.69°、約14.01°、約25.85°のうち1つ以上の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターン、及び約28.008cm-1、27.729cm-1、20.742cm-1、及び19.862cm-1に特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによって、さらに特徴付けられ得る。化合物1の結晶多形フォームAは、約9.33°、約9.55°、及び約27.46°のうち1つ以上の2θ角に特徴的なピークを含むPXRDパターン、並びに約17.799cm-1、17.727cm-1、17.47cm-1、及び16.713cm-1に特徴的なピークをさらに含むFT-ラマンスペクトルによって、さらに特徴付けられ得る。
【0066】
化合物1の結晶フォームAを、低級アルコール(例えば、エタノール)中で不活性雰囲気(例えば、窒素)下、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートを混合することによって調製し得る。前記出発物質エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートは、反応混合物を形成する任意の形態(例えば、結晶、アモルファス、溶媒和)であり得る。前記反応混合物を、過熱及び撹拌し、透明溶液を得ることができる。加熱を、溶解が完了するまで、例えば2~3時間行い得る。前記反応混合物を、容易に溶解するために、例えば約70℃~約75℃に加熱し得る。任意に、活性炭を、約70℃~約75℃の高温を維持しながら、加熱された反応混合物に添加してもよい。前記反応混合物は、例えば約1時間~約2時間、撹拌し続けることができる。
【0067】
任意に、1~2時間後、前記反応混合物を70~約75℃でろ過し、活性炭を除去し得る。ろ過を、当技術分野で既知の任意な方法によって実施し得る。前記反応混合物を、約70℃~約75℃の高温を維持しながら、0.2-ミクロンフィルターにさらに通過し得る。撹拌は、前記反応混合物を70℃~約75℃の温度に維持しながら、最大約1時間~約2時間、継続し得る。
【0068】
次いで、前記反応混合物を、約10℃~約15℃の温度に冷却し、多形フォームAの結晶フォームの化合物1を生成する。任意に、化合物1の結晶多形フォームAの種結晶を加え、前記反応混合物中の標的多形の発生を促進し得る。
【0069】
前記冷却を、最大2日間(48時間)の期間に渡って、段階的に実施し得る。例えば、任意に活性炭で処理、及びろ過した70℃~約75℃の前記透明溶液を、約1時間~約2時間の混合後、約40℃~約45℃の温度までゆっくりと冷却し得る。前記冷却は、一定の期間、例えば約3時間~4時間にわたって行い得る。前記反応混合物を、この温度で長期間、例えば約6時間~約7時間、維持し得る。
【0070】
第2の冷却工程において、前記反応混合物を、約25℃~約30℃にさらにゆっくりと、例えば約3時間~約4時間の期間にわたって冷却し得る。前記反応混合物を、この温度で長期間、例えば約12時間~約14時間、維持することができ、その間に前記反応混合物を撹拌し得る。
【0071】
第3の冷却工程において、次いで、前記反応混合物を、約10℃~約15℃にさらにゆっくりと、例えば約2時間~約3時間の期間にわたって冷却し得る。前記反応混合物を、この温度で長期間、例えば約4時間~約6時間、維持することができ、その間に前記反応混合物を撹拌し得る。
次いで、化合物1の結晶多形フォームAを、単離することができ、例えば反応混合物をろ過し、形成した固体を単離し得る。前記固体を、例えば真空下、約50℃~約55℃で約22時間~約24時間、乾燥し、多形フォームAの結晶フォームの化合物1を得ることができる。
【0072】
(特性評価方法)
X線データ収集:
図1a、
図1b、及び
図1cのような、単一のロッド状結晶(0.050x0.0932x0.38mm)を、MiTeGen
TMクライオループに取り付けた。予備回析及びデータ収集を、200Kの温度でIμS Cuソース及びOxford Crystalstream
TM低温装置を備えたBruker APEX II DUO
TM回析計で銅Kα線(1.54184Å)を使用し、実施した。
【0073】
X線構造決定:データフォームX線データ収集(上記)を、斜方晶系ユニットセルを用いて統合した。前記構造を、Bruker SHELXTLソフトウェアパッケージを用い、空間群P212121、Z=4、組成式C18H21N5O3を使用し、決定及び精製した。
【0074】
PXRDシミュレーション:プログラムMercury4.0を、使用し、構造座標を解析した。コマンド“計算粉末パターン(calculate powder pattern)”を、使用し、代表的なPXRDパターンを作成した。h、k、l、及び2θ角を、前記ソフトウェアを使用し、及び実験データと比較し、特定した。d-spacingの値を、Apex3v.2019.1ソフトウェアを使用し、生成した。
【0075】
粉末X線回析:フォームAの化合物1の~50mgの試料を、メノウ乳鉢と乳棒で均一な粉末に挽き、及びサンプルホルダーに注意して詰めた。前記PXRD測定を、室温でPANalytical X’Pert Pro MPD回析計を使用し、実施した。PXRD測定を、2θ=4°~42°の角度範囲及び0.02°のステップサイズにわたって1.54Åの波長を有するNi-フィルター銅CuKα線を使用して、実施した。
【0076】
示差走査熱量測定(DSC):DSCを、オートサンプラー及び冷蔵冷却システムを備えたTA instruments Q100又はQ2000示差走査熱量測定を用い、30mL/分の窒素パージ下で実施した。試料のDSCサーモグラムを、10℃/分で圧着したAlパン中で得た。
【0077】
熱重量分析:TGAサーモグラムを、TA Instruments Q50熱重量分析器を用い、40mL/分で窒素パージ下、Pt又はAlパン中で得た。試料のTGAサーモグラムを、10℃/分で圧着したAlパン中で得た。IRオフガス検出付きTGA分析(TGA-IR)を、ガスフローセル及びDTGS検出器付きの外付けのTGA-IRモジュールを備えたNicolet 6700 FT-IR分光計と連動したTA Instruments Q5000熱重量分析で実施した。TGAを、60mL/分のN2フロー及び15℃/分の過熱速度でPt又はAlパン中で行った。IRスペクトルを、各時点で4cm-1の分解能及び32スキャン収集した。
【0078】
FT-ラマン分光法:ラマンスペクトルを、1064nm Nd:YVO4励起レーザー、InGaAs及び液体窒素冷却Ge検出器、及びマイクロステージを備えたNicolet NXR9650又はNXR960分光計で収集した。全てのスペクトルは、4cm-1の分解能、64-128スキャンでHapp-Genzelアプリケーション機能及び2-レベルゼロフィリング(2-level zero-filling)を使用し、取得された。
【0079】
(化合物)
本明細書の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3キナーゼを阻害することを見出されたエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物1)の結晶フォームと共にこの結晶フォームの合成方法及び使用方法を対象とする。いくつかの実施態様は、本明細書に記載の化合物1の結晶フォーム、又は化合物1の結晶多形フォームAから調製された医薬組成物を局所投与することによる、患者における疾患の治療の方法を含む。
【0080】
本明細書に開示された化合物1の結晶フォーム又は化合物1の結晶多形フォームAから調製された医薬組成物は、有用なJAK1及び/又はJAK3阻害活性を有し、並びにJAK1及び/又はJAK3が活性な役割を果たしている疾患又は状態の治療又は予防に使用され得る。従って、実施態様は、本明細書に開示された前記結晶フォームを含むか、又は医薬的に許容される担体と共に本明細書で開示された前記結晶フォームから調製された医薬組成物も対象とし、並びに結晶フォーム及び前記と同じものを含む組成物を製造及び使用する方法も対象とする。特定の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3を阻害するための方法を対象とする。他の実施態様は、そのような治療を必要とする患者において、JAK1及び/又はJAK3媒介性障害を治療するための方法であり、治療上有効な量の前記結晶フォーム又は本発明による本明細書に開示された結晶フォームから調製された組成物を前記患者に投与することを含む方法を対象とする。また、JAK1及び/又はJAK3の前記阻害によって改善した病気又は状態の治療のための薬の製造における、本明細書に開示される結晶フォームの使用も提供される。
【0081】
また、本明細書の任意の実施態様を、特に明記しない限り、任意の1つ以上の他の実施態様と組み合わすことができ、及び当該組み合わせが相互排他的でないという条件で実施態様を提供する。
【0082】
本明細書の実施態様の前記結晶フォームは、その塩、そのエステル、その遊離酸の形態、その遊離塩基の形態、その溶媒和物、その重水素化誘導体、その水和物、そのN-酸化物、そのクラスレート、そのプロドラッグ、その多形体、その立体異性体、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、そのラセミ体、その立体異性体の混合物、その互変異性体、その互変異性体の混合物、又は本明細書の実施態様の化合物の前述の組み合わせを意味する。
【0083】
本明細書に記載された化合物1の結晶フォームは、立体中心を含むことができ、及びキラルであることもでき、及びこのようにエナンチオマーとしても存在し得る。本明細書の実施態様による前記化合物は、2つ以上の立体中心を有する場合、それらは、さらにジアステレオマーとして存在し得る。本明細書の実施態様は、実質的に純粋な分割されたエナンチオマー、そのラセミ混合物、及びジアステレオマー混合物のように全ての可能な立体異性体を含む。いくつかの実施態様において、前記化学式を、特定の位置で決定的な立体化学を持たないで示す。本明細書の実施態様は、そのような化学式の全ての立体異性体及びそれらの医薬的に許容される塩を含む。ジアステレオマーを、例えば、適切な溶媒からの分別結晶によって分離することができ、及びこのようにして得られた対のエナンチオマーを、従来の手段、例えば、分割剤として光学活性な酸又は塩基の使用、又はキラルHPLCカラム上で個々の立体異性体に分離し得る。さらに、前記結晶フォームの任意のエナンチオマー又はジアステレオマーを、光学的にピュアな又はエナンチオエンリッチな出発物質又は構造既知の試薬を使用した立体特異的又は立体選択的な合成により得る。記載及び主張される本明細書の実施態様の範囲は、化合物のラセミ体、並びに前記個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、及び立体異性体が豊富な混合物を含む。
【0084】
本明細書の結晶フォームの適切な医薬的に許容される酸付加塩を、無機酸又は有機酸から調製し得る。これら塩の全てを、本明細書の実施態様の対応する化合物から、例えば化合物を適切な酸又は塩基で処理することによる、従来の手段により調製し得る。
【0085】
医薬的に許容される酸は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸及び二リン酸、並びに有機酸、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルコール酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキ酪酸、マロン酸、ガラクチン酸(galactic)、ガラクツロン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、ムチン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、パントテン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、キシナホ酸(1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、ナパジル酸(1,5-ナフタレンジスルホン酸)等の両方を含む。
【0086】
本明細書の前記結晶フォームは、非溶媒和型及び溶媒和型の両方で存在し得る。溶媒和(solvate)という用語を、本明細書の結晶フォーム及び1つ以上の医薬的に許容される量の溶媒分子を含む分子複合体を表すために本明細書で使用する。水和物(hydrate)という用語は、前記溶媒が水である場合に使用される。溶媒和型の例は、水、アセトン、ジクロロメタン、2-プロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、又はこれらの組み合わせと関連した本明細書で開示された結晶フォームを含むが、これらに限定されない。本明細書の実施態様において、水和物などの1つの溶媒分子が、本明細書に開示された前記結晶フォームの1つの分子と会合し得ることを、明確に考えられる。
【0087】
さらに、本明細書の実施態様において、二水和物などの複数の溶媒分子が、前記結晶フォームの1つの分子と会合し得ることを、明確に考えられる。さらに、本明細書の実施態様において、半水和物などの1つ未満の溶媒分子が、本明細書の実施態様の結晶フォームの1つの分子と会合し得ることを、明確に考えられる。さらに、本明細書の実施態様の溶媒和物は、化合物の非溶媒和型の生物学的な有効性を維持する本明細書の実施態様の化合物の溶媒和物として考えられる。
【0088】
本明細書に開示された前記化合物は、重水素化合物などの同位体形態だけでなく、あらゆる割合において、全ての立体異性体、配座異性体及びそれらの混合物として存在し、並びに従ってそれらを含む。
【0089】
本明細書に開示される化合物は、医薬的に許容される塩として存在し得る。本発明は、酸化付加塩を含む円の形態で上記に記載される化合物を含む。適切な塩は、有機酸及び無機酸の両方と形成されるものを含む。そのような酸化付加塩は、通常、医薬的に許容される。しかしながら、医薬的に許容されない塩の塩は、問題の前記化合物の調製及び精製において有用であり得る。塩基性付加塩も、形成され、及び医薬的に許容であり得る。塩の調製及び選択のより完全な議論については、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (Stahl, P. Heinrich. Wiley-VCHA, Zurich, Switzerland, 2002)を参照する。
【0090】
(医薬組成物)
本明細書のいくつかの実施態様は、化合物1の結晶フォームを含む医薬組成物又は化合物1の結晶多形フォームA及び医薬的に許容される担体又は希釈剤から調製された医薬組成物を対象とする。
【0091】
また、本明細書に開示される化合物1の結晶フォームを含む医薬組成物又は本明細書に開示される化合物1の結晶多形フォームAから調製される医薬組成物を、非水性製剤中で医薬的に許容される担体と共に提供する。
【0092】
いくつかの実施態様において、本明細書の実施態様に従って使用するための医薬組成物を、1つ以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用する従来の方法で処方し得る。
【0093】
前記製剤は、局所投与(例えば、皮膚、頬、舌下及び眼内を含む)に適したものを含むが、最も適した経路は、例えば受容者の状態及び障害に依存し得る。前記製剤を、便利なことに単位剤形で与えることができ、及び薬学の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製し得る。典型的に、これらの方法は、本明細書に開示される前記結晶フォーム(“有効成分”)を、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、前記製剤は、有効成分を液体担体若しくは細かく分割された固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、並びにその後、必要に応じて生成物を所望の製剤に成形することにより調製される。
【0094】
本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物を、局所的に、すなわち非全身投与によって投与し得る。これは、本明細書に開示される結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物の外部から表皮又は口腔への適用、及びそのような結晶フォームの耳、眼及び鼻への滴下を含む。
【0095】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物を、眼科的に投与し得る。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物を、眼科用組成物として投与し得る。本明細書の実施態様の前記結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物を、例えば局所投与のための目薬、スプレー、又は点眼薬を含む液体製剤として投与し得る。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物を、例えばクリーム、ローション、ゲル、軟膏、又はペーストなどのまぶたに適用する半固形剤として投与し得る。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される結晶フォームから調製される医薬組成物を、固体剤形として投与することができ、例えば、粉末などの放出調節を生じるような眼の表面に適用し得る。いくつかの実施態様において、本明細書の実施態様の前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物を、外科的移植、非経口製品(例えば、角膜内製品又は硝子体内製品)、灌漑のための液体などのためにデバイスを通じて投与する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォームを含む、又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される前記化合物は、無菌であり、及び粒子状物質を含まない。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物を、眼球内注射、眼窩内注射、又は硝子体内注射により投与し得る。いくつかの実施態様において、前記眼球内注射は、前眼房、後眼房、又はそれらの組み合わせであってもよい。例えば、本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物を、眼の後眼窩内領域に投与し得る。
【0096】
いくつかの実施態様において、局所投与に適した製剤は、眼、耳、又は鼻への投与に適した溶液、粉末、流体エマルジョン、流体懸濁液、半固体、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル、ゼリー、泡、塗布薬、ローション、及び点滴薬のような炎症部位への皮膚の浸透に適した液体又は半液体製剤を含む。局所投与のための前記有効成分は、例えば前記製剤の0.001~10質量%(質量による)含み得る。特定の実施態様において、前記有効成分は、10質量%もの量を含み得る。他の実施態様において、それは、5質量%未満を含み得る。特定の実施態様において、前記有効成分は、2~5質量%含み得る。他の実施態様において、それは、前記製剤の0.1~1質量%含み得る。
【0097】
いくつかの実施態様において、局所投与に適した前記製剤は、非水溶液、懸濁液、又はエマルジョンである。
【0098】
局所投与又は経皮投与のためのゲルは、一般的に、揮発性溶媒、不揮発性溶媒、及び水の混合物を含み得る。特定の実施態様において、緩衝溶媒系の前記揮発性溶媒成分は、低級アルキルアルコール(C1~C6)、低級アルキルグリコール及び低級グリコールポリマーを含み得る。さらなる実施態様おいて、前記揮発性溶媒は、エタノールである。前記揮発性溶媒成分は、蒸発するときに、皮膚を冷却する効果も引き起こしながら、浸透促進剤として作用すると考えられる。緩衝溶媒系の前記不揮発性溶媒部分を、低級アルキレングリコール及び低級グリコールポリマーから選択する。特定の実施態様において、プロピレングリコールを、使用する。前記不揮発性溶媒は、前記揮発性溶媒の蒸発を遅らせ、及び緩衝溶媒系の蒸気圧を低下させる。この不揮発性溶媒成分の量を、揮発性溶媒と同様に、使用される医薬化合物又は薬剤により、決定する。系中の不揮発性溶媒の量が少なすぎる場合、前記医薬化合物が、揮発性溶媒の蒸発により結晶化する可能性があり、一方で、過剰だと、混合溶媒からの薬剤の弱い放出によりバイオアベイラビリティを損なう結果になり得る。前記緩衝溶媒系の緩衝成分を、当技術分野で一般に使用される任意の緩衝液から選択することができ、特定の実施態様において、水を使用する。成分の一般的な比率は、約20%の不揮発性溶媒、約40%の揮発性溶媒、及び40%の水である。局所用組成物に添加することができるいくつかの任意成分がある。これらには、キレート剤及びゲル化剤が含まれるが、これらに限定されない。適切なゲル化剤は、半合成セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)及び合成ポリマー、及び化粧料を含むが、これらに限定されない。
【0099】
ローションは、皮膚又は眼に適用するのに適したものを含む。目薬は、殺菌剤を任意に含有する無菌水溶液を含むことができ、及び点滴薬の製剤と同様の方法で調製し得る。皮膚に適用するためのローション又は塗布薬は、アルコール又はアセトンのような乾燥を早める、及び肌を冷却する薬剤、及び/又はグリセロール又はヒマシ油若しくはラッカセイ油などの油のような保湿剤も含み得る。
【0100】
クリーム、軟膏又はペーストは、外用のための有効成分の半固体製剤である。これらを、微細化した又は粉末状の有効成分を、単独又は水性若しくは非水性流体の溶液中若しくは懸濁液中で、適切な機械の補助を用い、脂肪性又は非脂肪性基剤と混合することにより調製し得る。前記基剤は、硬質、軟質若しくは液体パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸、粘液、アーモンド、コーン、ラッカセイ属、キャスター若しくはオリーブオイルなどの天然由来の油、羊毛油若しくはその誘導体、又はステアリン酸又はオレイン酸などの脂肪酸をプロピレングリコールなどのアルコール若しくはマクロゲル(macrogel)と一緒に含み得る。前記製剤は、ソルビタンエステル又はそのポリオキシエチレン誘導体といったアニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤などの任意の適した表面活性剤を組み込み得る。天然ガム、セルロース誘導体、又はシリカ系シリカ(silicaceous silicas)などの懸濁剤、及びラノリンなどの他の成分を、含み得る。
【0101】
点滴薬は、無菌水溶液又は油性溶液又は懸濁液を含み、並びに殺菌剤及び/又は抗菌剤及び/又は任意の他の保存剤の適切な水溶液に有効成分を溶解することによって調製することができ、並びに特定の実施態様において、界面活性剤を含み得る。前記得られた溶液を、次いで、ろ過によって澄まし、適切な容器に移し、その後、密封及びオートクレーブ又は98~100℃で30分間維持することによって殺菌し得る。あるいは、前記溶液を、点滴薬に含めるのに適した抗菌剤である硝酸フェニル水銀又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及びクロルヘキシジン二酢酸(0.01%)によって殺菌し得る。油性溶液の調製に適した溶媒は、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールを含む。
【0102】
好ましい単位投与製剤は、本明細書の以下に記載するように、有効成分の有効量又はその適切な割合を含むものである。
【0103】
上記で特に言及した成分に加えて、上記の製剤は、当該製剤のタイプに関して当技術分野で慣用されている他の物質を含むことを理解されたい。
【0104】
本明細書に開示される前記結晶フォーム又は前記結晶フォームから調製される医薬化合物を、一日にあたり0.1~500mg/kgの投与量で投与し得る。成人した人間への前記投与量の範囲は、一般的に5mg~2g/日である。
【0105】
担体物質と混合して単一の剤形を製造する有効成分の量は、処置されるホスト及び特定の投与の様式に応じて異なる。
【0106】
医薬として採用する場合、前記結晶フォームを、医薬組成物の形態で投与し得る。これらの組成物を、製薬技術において周知の方法で調製することができ、かつ、局所療法を望むかどうか、及び治療される領域に依拠する様々な経路により投与し得る。前記開示される結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物の投与は、局所的(皮膚、頬、舌下及び眼内を含む)であり得る。局所投与のための医薬組成物は、泡、経皮貼布、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、溶液、流体エマルジョン、流体懸濁液、半固体、ペースト、点滴薬、座薬、スプレー、液体及び粉末を含み得る。従来の医薬の担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤などが必要又は望ましいとなり得る。被覆したコンドーム、手袋等も有用であり得る。いくつかの実施態様において、前記結晶フォームを、医薬的に許容される希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル(hydrophobic vehicles)、水溶性ビヒクル(water soluble vehicles)、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、防腐剤などと共に、そのような製剤に含まれ得る。当業者は、案内のために様々な薬理学的文献を参照し得る。例えば、Modern Pharmaceutics、第5版、Banker&Rhodes、CRC Press(2009)、及びGoodman&Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、第13版、McGraw Hill New York(2018)を参照し得る。
【0107】
いくつかの実施態様において、前記医薬組成物は溶液である。
いくつかの実施態様において、実施態様の医薬組成物を投与するJAK1及び/又はJAK3媒介性疾患を治療する方法は、本明細書に開示する。いくつかの実施態様において、前記結晶フォームは、治療上有効な量である。いくつかの実施態様において、前記治療上有効な量は、本明細書に開示される量である。
【0108】
本明細書に開示されるいくつかの実施態様は、有効成分として、1つ以上の医薬的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて本明細書に開示される結晶フォームを含有する医薬組成物も含む。
【0109】
いくつかの実施態様において、医薬組成物の製造方法は、有効成分を賦形剤と混合すること、賦形剤を使用して希釈すること、又は有効成分を担体内に、例えばカプセル、小袋、紙、又は他の容器の形態に封入することを含む。前記賦形剤が、希釈剤として機能する場合、それは、固体、半固体、又は液体物質であることができ、有効成分のためのビヒクル、担体又は媒体として機能する。従って、前記組成物は、粉末、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアゾール(固体として又は液体媒介中)、例えば最大10質量%の前記結晶フォームを含む軟膏、及び無菌包装された粉末の形態であり得る。
【0110】
適した賦形剤のいくつかの例は、共晶溶媒、共晶ベースのイオン液体、又はイオン液体を含む、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、でんぷん、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースを含む。前記製剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味剤、及び香料をさらに含み得る。前記組成物を、当技術分野で知られている手順を使用することにより、患者への投与後に有効成分の迅速、持続的又は遅延放出を提供するように処方し得る。
【0111】
前記組成物を、単位剤形で投与し得る。前記用語“単位剤形(unit dosage forms)”は、被験者及び他の哺乳類のための単位用量として適した物理的に離れた単位を意味し、各単位は、適切な医薬品賦形剤と共に、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含む。
【0112】
前記結晶フォーム又は前記結晶フォームから調製される医薬組成物は、広い投与範囲にわたって有効であり、及び一般的に、治療上有効な量で投与し得る。しかしながら、実際に投与される前記結晶フォーム又は前記前記結晶フォームから調製される医薬組成物の量は、通常、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の前記結晶フォーム又は前記結晶フォームから調製される医薬組成物、個々の患者の年齢、体重、及び反応、患者の症状の重症度などを含む関連状況に応じて、医師により決定されることが理解されよう。
【0113】
いくつかの実施態様において、前記医薬組成物は、約0.01%~約50%の本明細書に開示される前記結晶フォームを含み得る。いくつかの実施態様において、前記結晶フォームは、約0.01%~約50%、約0.01%~約45%、約0.01%~約40%、約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約5%、約0.05%~約50%、約0.05%~約45%、約0.05%~約40%、約0.05%~約30%、約0.05%~約20%、約0.05%~約10%、約0.1%~50約%、約0.1%~約45%、約0.1%~約40%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約0.5%~約50%、約0.5%~約45%、約0.5%~約40%、約0.5%~約30%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、約0.5%~約5%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~5約%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約5%~約10%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、又はこれらの範囲のうちの1つにある値である。特定の実施例は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含み得る。前述は全て、組成物の質量%を表す。いくつかの実施態様において、前記化合物は、局所投与に適している。いくつかの実施態様において、前記組成物は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、髄腔内、硬膜内、経粘膜、経皮、直腸、鼻腔内、局所、(皮膚、頬、舌下及び眼内を含む)、硝子体内、又は膣内投与に適する。
【0114】
いくつかの実施態様において、前記結晶フォームは、治療上有効な量である。いくつかの実施態様において、治療上有効な量は、約1mg~約1000mg、約1mg~約900mg、約1mg~約800mg、約1mg~約700mg、約1mg~約600mg、約1mg~約500mg、約1mg~約400mg、約1mg~約300mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約100mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約10mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約10mg~約300mg、約50mg~約300mg、約100mg~約300mg、約10mg~約150mg、約50mg~約150mg、約60mg~約120mg、約50mg~約120mg又はこれらの値のいずれか2つの間の範囲であり得る。特定の実施態様は、例えば、約1000mg、約900mg、約800mg、約700mg、約750mg、約600mg、約500mg、約400mg、約450mg、約300mg、約250mg、約200mg、約175mg、約150mg、約125mg、約120mg、約110mg、約100mg、約90mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約30mg、約20mg、又は上記開示範囲の間の任意の値を含む。
【0115】
いくつかの実施態様において、前記治療上有効な量は、例えば、治療がなされる特定の使用、前記結晶又は前記結晶フォームから調製される医薬組成物の投与の方法、患者の健康及び状態、並びに処方医師の判断に従って変化し得る。医薬組成物中の結晶フォームの割合又は濃度は、投与、化学的特性(例えば、疎水性)、及び前記投与経路を含む多くの要因によって変化し得る。例えば、前記結晶フォームを、非経口投与のために、約0.1w/v%~約10w/v%の前記結晶フォームを含む水性生理的緩衝溶液に提供し得る。前記結晶フォームのいくつかの典型的な投与範囲は、1日当たり、体重の約1μg/kg~約1g/kgである。いくつかの実施態様において、前記投与範囲は、1日当たり、体重の約0.01mg/kg~約100mg/kgである。前記投与は、前記疾患又は障害の種類及び進行の範囲、特定の患者の全体的な健康状態、選択された前記結晶フォームの相対的な生物学的な効果、賦形剤の製剤、及びその投与経路のような変数に依存する可能性がある。有効量を、試験管内又は動物モデル試験系から得られる用量反応曲線から推定し得る。
【0116】
患者に投与される結晶フォーム又は前記結晶フォームから調製される組成物の量は、投与されるもの、予防又は治療などの投与の目的、患者の状態、投与の方法などによって変化する。治療の適用において、組成物を、疾患及びその合併症の症状を治療又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、疾患にすでに苦しむ患者に投与し得る。
【0117】
固体組成物を調製するために、前記主要な活性成分を、医薬賦形剤と混合し、本明細書に開示される前記結晶フォームの均質の混合物を含む固体予備製剤(pre-formulation)組成物を形成し得る。これらの予備製剤組成物を均質と呼ぶ場合、前記活性成分は、前記組成物を均等な治療上有効な単位剤形に容易に細分化できるように、通常、組成物の全体に均一に分散している。次いで、この固形予備製剤を、例えば、約0.1mg~約1000mgの活性成分を含む上述の種類の単位剤形に細分化する。
【0118】
いくつかの実施態様において、患者に投与される前記組成物を、上述の医薬組成物の形態であり得る。いくつかの実施態様において、これらの組成物を、従来の殺菌技術により殺菌することができ、又は殺菌ろ過をし得る。水溶液を、そのまま使用するために包装することができ、又は凍結乾燥することができ、前記凍結乾燥標品は、投与前に殺菌水性担体と組み合わされる。いくつかの実施態様において、前記結晶フォーム製剤のpHは、約3~約11、約5~約9、約5.5~約6.5、又は約5.5~約7.5である。前述の賦形剤、担体、又は安定剤の特定の使用は、医薬塩の形成という結果になることを理解されよう。
【0119】
(使用方法)
本発明は、本明細書に開示される化合物1の前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物の治療上有効な量の局所投与又は局部投与を含む対象における、JAK1及び/又はJAK3媒介機能を調節する方法に関する。
【0120】
また、本明細書は、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼状態を治療する方法であり、前記方法は、治療上有効な量の本明細書に開示される前記結晶フォーム又は本明細書に開示される前記結晶フォームから調製される医薬組成物を、それを必要としている患者に局部投与することを含む。特定の実施態様において、本明細書に記載されるような治療上有効な量の前記結晶フォームは、医薬組成物の形態であり得る。実施態様において、前記医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤を含み得る。
【0121】
結晶フォーム又は本発明の前記結晶フォームから調製される医薬組成物によって治療されるJAK1キナーゼ及び/又はJAK3キナーゼに関連する疾患又は障害には、自己免疫性皮膚疾患及び自己免疫性眼症状、慢性炎症皮膚及び慢性炎症眼症状、急性炎症皮膚及び急性炎症眼症状、並びに自己炎症性皮膚及び自己炎症性眼症状を含む。従って、いくつかの実施態様において、本発明は、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼症状を治療するための方法を、それを必要とする患者に提供し、前記方法は、提供される結晶フォーム又は前記結晶フォームから調製される組成物の治療上有効な量を前記患者に局所的に又は眼に投与することを含む。そのようなJAK1及び/又はJAK3媒介性疾患又は障害は、本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0122】
いくつかの実施態様において、前記JAK1及び/又はJAK3媒介性疾患又は障害は、そう痒症、脱毛症、慢性又は急性炎症性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患、感染性皮膚疾患(例えば、細菌性又はウイルス性皮膚感染)、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎/湿疹、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、光線皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鬱滞性皮膚炎、急性熱性好中球性皮膚症(スイート症候群)、脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE症候群)、乾癬、ざ瘡、皮膚感作、皮膚刺激、皮膚発疹、皮膚アレルギー、アレルギー性接触感作、白斑(例えば、分節型白斑、非分節型白斑、顔面中央型白斑(centrofacial vitiligo)、粘膜型白斑、コンフェッティ型白斑(confetti vitiligo)、三色白斑(trichrome vitiligo)、辺縁炎症性白斑(marginal inflammatory vitiligo)、四色性白斑(quadrichrome vitiligo)、青白斑、ケブネル現象、尋常性白斑、汎発型白斑、全身型白斑、混合型白斑、限局型白斑、孤立性粘膜型白斑)、及び脱毛症(例えば、円形脱毛症、斑状円形脱毛症、全頭脱毛症、全身脱毛症、蛇行型円形脱毛症、sisaihpoパターン円形脱毛症、男性型脱毛症、休止期脱毛症、頭部白癬、頭頂部遠心性瘢痕性脱毛症、又は頭頂部繊維化性脱毛症)から選択される皮膚疾患又は皮膚病である。
【0123】
また、本明細書は、医薬品として使用するための本明細書に開示される化合物1の前記結晶フォームを提供される。
【0124】
また、本明細書は、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼症状の治療のための医薬品としての使用に関して、本明細書で開示される化合物1の前記結晶フォームも提供される。
【0125】
また、医薬品としての本明細書で開示される化合物1の前記結晶の使用も提供される。
【0126】
また、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼症状の治療のための医薬品としての本明細書で開示されるような化合物1の前記結晶の使用も提供される。
【0127】
また、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼症状の治療のための医薬品の製造における使用に関して、本明細書で開示されるような前記結晶フォームの化合物1も提供される。
【0128】
また、JAK1及び/又はJAK3を介する皮膚又は眼症状の治療のための、本明細書で開示されるような前記結晶フォームの化合物1の使用も提供される。
【0129】
また、本明細書は、本明細書で開示されるような前記結晶フォームを投与することを含むJAK1及び/又はJAK3の阻害の方法も提供される。任意の実施態様において、前記投与を、局部的に、局所的に、又は眼球的に実施する。
【0130】
従って、別の態様において、特定の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3媒介性障害を治療する必要な人間又は動物において、そのような治療をするための方法を提供し、前記被験者において、前記障害を軽減又は予防するのに有効な本明細書に開示される結晶フォームの量を前記被験者に投与すること、当技術分野において周知な前記障害の治療のために少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせることを含む。関連する態様において、特定の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3媒介性障害の治療のために1つ以上の追加の薬剤と組み合わせた、本明細書に開示される少なくとも1つの結晶フォームを含む治療組成物を提供する。
【0131】
特定の実施態様において、本明細書に記載の前記局所投与されるJAK1及び/又はJAK3阻害剤/拮抗薬を、円形脱毛症(例えば、斑状円形脱毛症、全頭脱毛症、全身脱毛症)の治療のために単独、又は局所若しくは病巣内コルチコステロイド、局所ミノキシジル、経口フィナステリド、経口デュタステリド、スクアリン酸ジブチル、ジニトロクロロベンゼン、ジフェンシプロン、局所若しくは経口メトキサレン及び紫外線(PUVA)などの接触感作治療、局所アントラリン、毛髪移植処置、若しくは前記状態に有益な効果をもたらすことが知られている他の治療と組み合わせて使用し得る。
【0132】
特定の実施形態において、本明細書に開示され前記局所投与されるJAK1及び/又はJAK3阻害剤/拮抗薬を、男性型脱毛症又は女性型脱毛症(アンドロゲン性脱毛症)の治療のために単独、又は局所ミノキシジル、経口フィナステリド(男性において)、経口デュタステリド(男性において)、局所抗アンドロゲン、毛髪移植処置、若しくは前記状態に有益な効果をもたらすことが知られている他の治療と組み合わせて使用し得る。
【0133】
特定の実施態様において、前記結晶フォームを、白斑(限局性白斑、限局型白斑、汎発型白斑分節型白斑、末端型白斑、顔面型白斑、指跡顔面型白斑、粘膜型白斑、コンフェティ白斑、三色白斑、辺縁炎症性白斑、四色白斑、青白斑、ケブネル現象、尋常性白斑、指跡顔面型白斑及び尋常性白斑の混合、又は全身型白斑)の単独又は局所コルチコステロイド、局所タクロリムス、局所ピメクロリムス、UVB、ナローバンドUVB、経口若しくは局所ソラレンプラス紫外線A(PUVA)、カルシポトリエン若しくは他の局所ビタミンD類似体を用いた紫外線療法などの光線療法、エキシマーレーザー光線療法、全身性免疫抑制剤、皮膚ミニグラフト、自己表皮性サスペンションの移植などの外科治療、メイクアップ若しくはジヒドロキシアセトンなどによるカモフラージュ、又は前記状態に有益な効果をもたらすことが知られている他の治療法と組み合わせる治療のために使用し得る。
【0134】
人間の治療に有用である他に、本明細書に開示される特定の結晶フォーム及び製剤は、哺乳類、げっ歯類などを含むコンパニオンアニマル、外来動物及び家畜の獣医治療に有用であり得る。より好ましい動物は、馬、犬及び猫を含む。
【0135】
本発明の前記実施態様のより理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施態様の以下の例を、示す。決して、以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するために読まれるべきではない。
【実施例】
【0136】
【0137】
(実施例1)4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル塩酸塩(STG-02HCl塩)の調製
【0138】
THF(55.0L、10.0vol.)中のNaH(2.01kg、60%湯分散、1.4当量)の懸濁液に、25±5℃でゆっくりとTHF(110.0L、20.0vol.)中の4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(SM-01、5.5kg、1.0当量)が加えられた。反応物を、5±5℃に冷却し、及びトリイソプロピルシリルクロライド(8.33kg、1.2当量)を、同じ温度で加えた。前記反応物の温度を、25±5℃に上げ、及び1~2時間撹拌し、反応の進行を、TLCにより監視した。反応物を-87.5±7.5℃に冷却し、Sec-BuLi(23.79kg、シクロヘキサン溶液中1.4M、1.2当量)を窒素雰囲気下、-87.5±7.5℃でゆっくりと加えた。前記反応物を、-87.5±7.5℃で1時間±15分間、窒素雰囲気下で撹拌した。THF(5.5L、1.0vol.)中のクロロギ酸エチル(5.88kg、1.5当量)を、ゆっくりと前記反応物に-87.5±7.5℃(添加は発熱である)、窒素雰囲気下で加えた。前記反応混合物を、-87.5±7.5℃、窒素雰囲気下で1時間±15分間撹拌した。反応を、HPLCにより監視した(HPLCによる上限NMT5.0%)。反応終了後、塩化アンモニウム水溶液(8.0vol.)を、-87.5℃~-40℃、窒素雰囲気下でゆっくりと加えた。反応物の温度を25±5℃に上げ、及びそれを、MTBE(2x6.0vol.)を用い、30±5℃で抽出した。前記有機層を、純水(5.0vol.)で30±5℃で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液(10%、5.0vol.)で洗浄した。有機層を、減圧下で蒸発させ、クルード(16.5kg)を得た。エタノール(2.0vol.)を、25±5℃で粗製化合物に加えた。EtOH.HCl(27.5L、5M、20%、5.0vol.)を、25±5℃でゆっくり加え、及び1~2時間撹拌した。前記得られた固体を、ろ過、エタノール(1~2vol.)で洗浄、及び真空下、45±5℃で乾燥させ、前記4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル塩酸塩をオフホワイト色固体(7.25kg、77%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3), δppm: 13.48 (bs, 1H), 11.60 (bs, 1H), 9.02 (s, 1H), 7.76-7.75 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.52-4.47 (q, J = 7.2,7.2,7.2 Hz, 2H), 1.48-1.44 (t, 7.2, 7.2 Hz, 3H). MS(ES) m/z = 225.42 [M+H] +.
【0139】
(実施例2)エチル4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-03)の調製
【0140】
DCM(280.0L、40.0vol.)中の4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル塩酸塩(実施例1、STG-01、7.0kg、1.0当量)の溶液に、25±5℃で、及び10~15分間撹拌した。前記反応物を、15±5℃に冷却し、次いで炭酸水素ナトリウム水溶液(1.5T、(水中18.75vol.、4.6当量))で塩基化した。前記反応物の温度を、25±5℃に上げ、及び20~30分間撹拌した。前記層を、分離し、及び水層をDCM(35.0L、5.0vol.)で抽出した。前記合わせた有機層を、減圧下で蒸発させ、及び45±5℃で最大2~3vol.のエタノールで共蒸留した。エタノール(84.0L、12.0vol.)を添加した後、70~80℃に加熱し、及び25±5℃で30分間撹拌した。それを、最大2~3vol.まで濃縮し、及び25±5℃に冷却した。そこで4~6時間撹拌した後、合成した固体を、ろ過し、真空下、45℃±5℃で乾燥し、エチル4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-03)を薄茶色固体(4.49kg、75%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO), δ ppm: 12.38 (s, 1H), 8.70 (s, 1H), 7.71-7.70 (t, J = 2.8, 3.2 Hz, 1H), 6.66-6.64 (q, J = 2.0, 1.2, 2.0 Hz, 1H), 4.38-4.33 (q, J = 7.2, 7.2, 6.8 Hz, 2H), 1.37-1.34 (t, J = 7.2, 6.8 Hz, 3H). MS(ES) m/z = 225.43 [M+H]+.
【0141】
(実施例3)エチル(R)-4-((1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-04)の調製
【0142】
エタノール(4.0vol.)中の4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(実施例2、STG-03、1.25kg、1.0当量)の撹拌した懸濁液に、DIPEA(2.15kg、3.0当量)、及び(R)-アミノピペリジン-1-カルボキシレート(INT-01、1.81kg、1.625当量)を30±5℃で加え、次いで、オートクレーブ内で塊を120℃まで加熱し、及び同じ温度で24~48時間維持した。反応終了後(HPLCによる監視)、30±5℃に冷却し、塊を取り出し、及びエタノール(5.0L、4.0vol.)を加える。前記得られた塊を、60±5℃に加熱し、水(25.0L、20.0vol.)を、同じ温度でゆっくりと加えた。次いで、30±5℃に冷却し、得られた固体を1~2時間撹拌し、及びろ過し、真空下で乾燥し、前記エチル(R)-4-((1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-04)をオフホワイト固体(1.91kg、90%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO), δ ppm: 11.69 (s, 1H), 8.96-8.94 (d, 7.6 Hz, 1H), 8.56 (s, 1H), 7.21-7.20 (q, J = 2.8, 0.4, 2.8 Hz, 1H), 6.63 (bs, 1H), 4.28-4.24 (m, 2H), 4.25-4.16 (m, 1H), 3.8-3.2 (m, 4H), 2.02-1.96 (m, 1H), 1.71-1.69 (bs, 2H), 1.55 (bs, 1H), 1.50 - 1.32 (m, 3 H), 1.30 - 1.26 (t, J = 7.2, 7.2 Hz, 3 H), 1.25 - 1.16 (m, 6H). MS(ES) m/z = 389.82 [M+H]+.
【0143】
(実施例4)(R)-4-(ピペリジン-3-イルアミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル二塩酸塩(STG-05)の調製
【0144】
エタノール(9.5L、5.0vol.)中のエチル(R)-4-((1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(実施例3、STG-04、1.9kg、1.0当量)の撹拌した懸濁液に、EtOH.HCl(9.5L、5.0M、(20%)、5.0vol.)を15℃±5℃でゆっくりと加えた。前記反応混合物を、30±5℃で12~16時間、撹拌した。反応の進行を、HPLCにより監視し、MTBE(9.5L、5.0vol.)で希釈し、及び4~6時間撹拌した。前記得られた固体を、ろ過し、MTBE(3.8L、2.0vol.)で洗浄し、及び真空下で乾燥し、前記(R)-4-(ピペリジン-3-イルアミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル二塩酸塩をオフホワイト固体(1.64kg、93.0%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO), δ ppm: 12.85 (s, 1H), 10.12-10.10 (m, 1H), 9.48-9.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.45-7.44 (q, J = 1.6, 1.6, 1.6 Hz, 1H), 7.37-7.36 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.69-4.64 (m,1H), 4.38-4.33 (q, J = 7.2, 6.8, 7.2 Hz, 2H),3.45-3.41 (m, 1H), 3.27-3.24 (m, 1H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.88-2.86 (m, 1H), 2.19-2.17 (m, 1H), 2.03-1.93 (m, 2H), 1.90-1.76 (m, 1H), 1.38-1.34 (t, J = 7.2, 7.2 Hz, 3H). MS(ES) m/z = 289.53 [M+H]+.
【0145】
(実施例5)エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-06)の調製
【0146】
DCM(21.0L、15.0vol.)中のシアノ酢酸(0.829kg、2.5当量)及び(R)-4-(ピペリジン-3-イルアミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸エチル二塩酸塩(実施例4、1.4kg、1.0当量)の撹拌した溶液に、DIPEA(1.75kg、3.5当量)をゆっくりと加え、次いでHOBt(1.31kg、2.5当量)を加え、及び最後にEDC.HCl(1.86kg、2.5当量)を10±5℃で加えた。前記得られた反応物を、同じ温度で30~45分間撹拌した。反応の進行を、HPLCにより監視した。水(7.0L、5.0vol.)を、反応物に加え、及び10~15分間撹拌した。前記層を、分離した。前記水層を、DCM(3x8.0vol.)で抽出し、及び前記有機層を混合した。前記有機層を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(3x5.0vol.)で洗浄し、続いて、10%塩化ナトリウム水溶液(7.0L、5.0vol.)で洗浄した。前記有機層を、DCM(14.0L、10.0vol.)で希釈した。SC-40炭素(0.28kg、0.2T)及びシリカゲル(0.28kg、0.2T)を、有機層に加えた。前記得られた溶液を、1時間撹拌し、及びろ過した。前記ろ液を、減圧下で最大3.0vol.まで蒸発させ、エタノール(3x5.0vol.)で共蒸留し、及び最大3.0vol.まで濃縮した。エタノール(2.8L、2.0vol.)を、前記得られた塊に加え、及び4~5時間撹拌した。前記沈殿した生成物を、ろ過し、前記エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートをクルード(A、~507g)として得た。前記得られた固体を、THF(Ax17.6vol.)及びエタノール(Ax4.4vol.)の混合液に25±5℃で加え、及び10~15分間撹拌した。前記得られた懸濁液を、60±5℃に加熱した。炭(Eno-Pc、Ax0.2T)を、同じ温度で加え、及び1時間撹拌した。反応物を、55±5℃に冷却し、ハイフローベッド(Ax0.1T)でろ過し、前記ベッドを高温(55±5℃)のTHF(Ax8.8vol.)及びエタノール(Ax2.2vol.)の混合物で洗浄し、並びに前記ベッドを吸引乾燥した。前記ろ液を、減圧下で最大3.0vol.まで蒸発させ、エタノール(3x5.0vol.)で共蒸留し、及び最大3.0vol.まで濃縮した。エタノール(Ax2.0vol.)を、前記得られた固体に加え、及び4~6時間、30±5℃で撹拌した。前記得られた塊を、ろ過し、減圧下で乾燥し、前記エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-06)を薄茶色固体(750.0g、54.3%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO), δ ppm: 11.72 (bs, 1H), 8.89-8.82 (dd, J = 8.4, 9.2, 8.0 Hz, 1H), 8.57-8.56 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.23-7.22 (t, J = 3.2, 2.8 Hz, 1H), 6.71 - 6.69 (q, J = 2.0, 2.0, 1.6 Hz, 1H), 4.35-4.15 (q, J = 7.2,7.2, 6.8, Hz, 3H), 4.11-3.47 (m, 4H), 3.40-3.12 (m, 2H), 2.18-2.02 (m, 1H), 1.82-1.50 (m, 3H), 1.34-1.30 (t, J = 7.2, 7.2 Hz, 3H). MS(ES) m/z = 356.70 [M+H]+.
【0147】
(実施例6)エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物1)の調製
【0148】
エタノール水溶液(9.1L、20%、14.0vol.)中のエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(実施例5、STG-06、650.0g、1.0当量)の懸濁液を、70~75℃で1~2時間撹拌した(透明な溶液が観察された)。前記得られた反応物を、0.2ミクロンでろ過し、エタノール水溶液(1.3L、20%、2.0vol.)で洗浄し、並びにろ液を、25±5℃に冷却し、再びそれを10±5℃に冷却し、及び4~6時間撹拌した。前記得られた固体を、ろ過し、エタノール(0.65L、1.0vol.)で洗浄し、及び減圧下で乾燥し、前記エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(STG-07)を純粋な生成物(570.0g、87.69%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO), δ ppm: 11.72 (bs, 1H), 8.89-8.82 (dd, J = 8.4, 9.2, 8.0 Hz, 1H), 8.57-8.56 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.23-7.22 (t, J = 3.2, 2.8 Hz, 1H), 6.71 - 6.69 (q, J = 2.0, 2.0, 1.6 Hz, 1H), 4.35-4.15 (q, J = 7.2,7.2, 6.8, Hz, 3H), 4.11-3.47 (m, 4H), 3.40-3.12 (m, 2H), 2.18-2.02 (m, 1H), 1.82-1.50 (m, 3H), 1.34-1.30 (t, J = 7.2, 7.2 Hz, 3H). MS(ES) m/z = 356.70 [M+H]+.
【0149】
(実施例7)X線構造解析及びPXRD分析
化合物1の単結晶から収集したデータを統合すると、合計54,767の反射に71.09°の最大θ角が得られ、そのうち3,222は、独立しており、及び3,213は、2σ(F2)を超えていた。1774.7Å3の体を持つ積a=5.0232Å、b=9.3308Å、及びc=37.863Åの最終セル定数は、20σ(I)を超える反射のxyz-重心の精密化に基づく。計算された密度は、1.330g/cm3であった。
【0150】
以下の表1は、実験データ及び単結晶の測定から計算されたシミュレーションデータの両方に、特徴的であると検出されたこれらのピークと対応するd-spacingを提供する。
【表1】
【0151】
以下の表2は、FT-ラマンスペクトルのその及びそれらの強度を提供する。
【表2】
【0152】
図2及び
図3は、化合物1のバルクサンプルから収集した実験データの代表的なPXRDパターン及び単一の化合物1結晶からの測定値を使用して計算したシミュレーションPXRDパターンを提供する。
図4は、化合物1の代表的なTGA-IR及びDSC曲線を提供し、35~225℃の0.7質量%の水の損失及び196.8℃で開始するシャープな吸熱をそれぞれ例示する。
図5は、化合物1のバッチにおけるDVS分析の結果を提供し、バルク物質が、弱い吸湿性を有することが明らかになった。
図6は、化合物1の代表的なFT-ラマンスペクトルを提供する。
【0153】
本発明を、その特定の好ましい実施態様に関してかなり詳細に説明してきたが、他の種類も可能である。従って、添付の特許請求の範囲の要旨及び範囲は、本明細書に含まれる説明及び好ましい種類に限定されるべきものではない。
【国際調査報告】