(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】セラミック吹込器の流路を有する交換可能な被冷却ノーズ
(51)【国際特許分類】
C21B 7/00 20060101AFI20231002BHJP
C21B 7/10 20060101ALI20231002BHJP
F27D 3/16 20060101ALI20231002BHJP
F27D 1/12 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C21B7/00 307
C21B7/10 302
F27D3/16 Z
F27D1/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519387
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2021076014
(87)【国際公開番号】W WO2022063805
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マジオリ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】キンゼル,クラウス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カス,ジレス
【テーマコード(参考)】
4K015
4K051
4K055
【Fターム(参考)】
4K015AC00
4K015CA04
4K051AA01
4K051HA03
4K055AA01
4K055MA03
(57)【要約】
本発明は、炉壁(12)及び冷却板(18)を備えた高炉又はシャフト炉又は冶金炉用のガス吹込システムに関し、このガス吹込システムは、ガス分配管(14)と、ノズルを有する1つ又は複数の吹込器(16)とを備え、ノズルがセラミック挿入部(52)を備え、冷却要素(18)が炉壁(12)に面さない高温側を有し、突出部(54)が冷却板の高温側に取り付けられており、セラミック挿入部(52)が炉壁及び冷却板及び冷却板上の突出部を横切り、セラミック挿入部(52)が炉内に突出するか、又は冷却板(18)の高温面と同一平面となるか、又は冷却板(18)の高温面からわずかに後退した状態となるように適合可能な長さを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁(12)及び冷却板(18)を備えた炉又はシャフト炉又は冶金炉用ガス吹込システムであって、
ガス分配管(14)と、
ノズルを有する1つ又は複数の吹込器(16)と、を備え、
前記ノズルがセラミック挿入部(52)を備えることを特徴とし、
前記冷却要素(18)が、前記炉壁(12)に面さない高温側を有し、突出部(54)が該冷却板の高温側に取り付けられており、
前記セラミック挿入部(52)が、前記炉壁及び前記冷却板及び冷却板上の前記突出部を横切り、
前記セラミック挿入部(52)が、前記炉内に突出するか、又は前記冷却板(18)の高温面と同一平面となるか、又は前記冷却板(18)の高温面からわずかに後退した状態となるように適合可能な長さを有する、炉用ガス吹込システム。
【請求項2】
前記突出部(54)が能動的に冷却される、請求項1に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項3】
前記突出部(54)が、それ自体の冷却システムによって、又は前記冷却要素を冷却するために用いられる冷却システムを介して冷却される、請求項2に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項4】
前記突出部(54)が受動的に冷却される、請求項1に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項5】
前記システムが、各々が挿入部(52)を含むノズルを有する多数の吹込器(16)を備え、前記挿入部(52)は様々な直径及び材料を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項6】
各セラミック挿入部(52)が、前記炉壁(12)上の接続口(58)を介して到達可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項7】
前記吹込器(16)が、前記炉壁に対して垂直又は接線方向に向けられ、前記突出部下面の上部中央を端とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項8】
前記ガス分配管が20~100の吹込器を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項9】
前記突出部(54)が材料層(60)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項10】
前記ガス分配管(14)が、前記炉の周囲に配置されたいくつかの部分に分割され、各部分は個々の高温還元ガス供給ラインによって供給される、請求項1~9のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項11】
突出カバー(100)が前記吹込器の上方に配置され、前記炉内へ突出した前記ノズル本体前部を、降下する装入材料から保護するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の炉用ガス吹込システム。
【請求項12】
炉と、請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのガス吹込システムとを備えた、鉄製品生産用の冶金プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に鉄冶金の分野に関する。本発明は、より具体的には、高炉、シャフト炉又は冶金炉の既存のシャフトの、シャフト部又はスタック部又はベリー部上方の範囲に取り付けられる、ガス分配用吹込器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パリ協定及び排出物対策の必要性に関するほぼ世界的な合意により、各産業部門は、エネルギー効率の改善及びCO2排出量の削減に向けた解決策の開発を検討することが不可欠となっている。
【0003】
製鋼における二酸化炭素排出量を減少させるために開発された1つの技術は、いわゆる「シャフト吹込」であり、この技術では、高温ガス(主にCO及びH2)が高炉の上部の、冷却板(冷却要素)又はステーブ又はプレート冷却器又は耐火ライニングによってその内部が一般に保護されている部分に吹き込まれる。
【0004】
この、高炉又はシャフト炉内のシャフト段階での高温ガスの吹込(シャフト吹込)は、多くの刊行物及び発明で言及されているが、商業用高炉に対する産業上の利用はまだ実施されていない。
【0005】
特許文献1は、電気アーク炉(2)の冷却パネル(4)に燃焼器(6)を取り付けるための装置(8)を開示しており、装置(8)は、燃焼器開口部(12)と、冷却水多岐管(16)と、冷却パネル(4)の相補的な開口部に密接に嵌合するように適合された円錐台状の外面(50)とを有する鋳造銅体を含む。装置の凸状上面(38)は、くず鉄が冷却パネル(4)の内面を、装置から横方向に離れ、かつ炉内部10に向かって内側へ落下するように流すよう機能する。装置(8)及び冷却パネル(4)間の先細りの嵌合によって、漏れが最小限となり、分離が容易になる。
【0006】
特許文献2には、高炉内の羽口構造が記載されており、ガス漏れを防ぎ、炉体と燃焼管との熱変形の差を吸収しながら羽口端部の位置を炉体内の所定の位置に維持する。高炉の羽口構造(20)は、炉殻(21)に固定された吹管(31)と、吹管(31)の端部に固定された羽口(32)と、吹管31を羽口ストック(33)に接続する可撓性接続部(34)とを含む。炉殻(21)の内側の羽口(32)の周囲には羽口ステーブ冷却器(23)が設けられ、高炉の内面を形成する。
【0007】
1つの課題は、積極的なガス雰囲気、非常に高温な固体材料の流れによる摩耗条件、及びダストの多い環境において動作する吹込器の耐久性及び汎用性を高めることである。
【0008】
本発明の目的は、これらの非常に高い温度に耐え、高炉又はシャフト炉又は冶金炉の冷却板に後付けすることができるガス吹込器を提供することである。
【0009】
本発明は、既存の鋳鉄又は銅の冷却板又はステーブに容易に後付けすることができる吹込点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載のシステムによって達成される。
【0011】
本発明は、炉壁及び冷却板を備えた高炉又はシャフト炉又は冶金炉用のガス吹込システムに関し、このガス吹込システムは、
ガス分配管と、
ノズルを有する1つ又は複数の吹込器と
を備え、
ノズルがセラミック挿入部を備えることを特徴とし、
冷却板又は冷却要素が炉壁に面さない高温側を有し、突出部がこの冷却板の高温側に取り付けられており、
ノズルが炉壁及び冷却板及び冷却板上の突出部を横切り、
セラミック挿入部が炉内に突出するか、又は冷却板の高温面と同一平面となるか、又は冷却板の高温面からわずかに後退した状態となるように適合可能な長さを有する。
【0012】
本発明は、生産性を更に高め、運転費用を低減し、高炉プロセスにおけるコークス消費及びCO2排出を削減するために、炉内の冷却板段階でCO及びH2を含む混合物を吹き込む、ガス吹込システムを提供する。
【0013】
本明細書に記載のノズルを有するガス吹込器は、これらの非常に高い温度に容易に耐えることができ、高炉又はシャフト炉又は冶金炉の冷却板に後付けすることができる。
【0014】
本明細書に記載のノズルを有するガス吹込器は、高い気密性を得ることを可能にし、この気密性は、高温ガスがCO及びH2を含み、外部に漏れたときに自発的に発火する可能性があり、又は空気と混合されたときに爆発性雰囲気を形成する可能性があることから、本出願において特に重要である。
【0015】
冷却要素の高温側に取り付けられた突出部は、冷却板が炉内により長く留まることができるように、吹き込まれた高温ガスから冷却板を保護する。
【0016】
突出部は、冷却要素と同じ幅を有し、全ての冷却要素が設置される場合に周囲に連続性をもたらすことができる。
【0017】
関係する冷却要素上の位置及び冷却要素の列に応じて、突出部は冷却要素の上縁まで延在して、冷却要素の上列との遷移を行うことができる。好ましい事例は、高炉(BF)の外形に段差が既に存在し得る場合に、銅及び鋳鉄製ステーブとの間を遷移させる列である。
【0018】
冷却要素の高温側に取り付けられた突出部は、吹込ガスによって摂動する装入物降下から冷却要素を保護する。
【0019】
突出部高温面は、冷却要素と平行であってもよいが、必ずしもそうである必要はなく、突出部の上側は、停滞区画を支持するために水平であってもよく、又は滑らかに遷移させるように傾斜していてもよい。突出部の下側は、水平であってもよく、又は装入物に空隙を形成してガスの浸透を容易にするための凹部を有してもよく、又は滑らかに遷移させるように傾斜していてもよい。
【0020】
有利には、突出部は、1つ又は複数の冷却流路(パイプ又はチャネルのいずれか)によって能動的に冷却される。
【0021】
突出部は、それ自体の冷却システムによって、又はそれが設置される場所で冷却要素の冷却に用いられる冷却システムを介して冷却されてもよい。
【0022】
一方、突出部は、冷却要素と接触する伝導性材料を用いることによって、冷却板との接触を通じて受動的に冷却されてもよい。
【0023】
一実施形態では、ノズルはセラミック挿入部からなる。
【0024】
一実施形態では、システムは、各々がセラミック挿入部を含むノズルを有する多数の吹込器を備え、セラミック挿入部は様々な直径を有する。
【0025】
一実施形態では、各セラミック挿入部は、炉壁上のフランジ接続口を介して到達可能であり、容易な保守及び検査が可能となる。
【0026】
吹込器は、炉壁に対して垂直又は接線方向に向けられてもよい。好ましくは、吹込器の角度は90°(垂直)から60°(接線方向)の間である。より好ましくは、吹込器の角度は90°(垂直)から60°(接線方向)の間である。
【0027】
セラミック吹込器の代わりに、突出部に形成された穴と一致する、円筒形又は円錐形のいずれかの被冷却吹込器を使用することができる。
【0028】
ガス分配管は、20~100、好ましくは20~50の吹込器を備えることができる。
【0029】
吹込器、セラミック挿入部はそれぞれ、炉内に突出するか、又は冷却板の高温面と同一平面になるか、又は冷却板の高温面からわずかに後退するような長さを有する。
【0030】
吹込器は、炉壁に対して垂直又は接線方向に向けられてもよい。
【0031】
吹込みは、吹込器先端が突出部の下側に来るように冷却要素と共に傾斜させてもよい。
【0032】
本発明はまた、高炉、シャフト炉又は冶金炉と、本明細書に記載の少なくとも1つのガス吹込システムとを含む、鉄製品を製造するための冶金プラントに関する。
【0033】
本発明の文脈におけるセラミック挿入部は、アルミナ、ベリリア、セリア、ジルコニアなどの酸化物、又は炭化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物などの非酸化物、又は粒子強化材、繊維強化材のような複合材料、上記の酸化物と非酸化物との組み合わせで作製され得るか、それらからなり得るか、又はそれらを含み得る。
【0034】
本発明は、冶金分野において周知の既存の設備を用いて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の更なる詳細及び利点は、添付の図面を参照し、非限定的な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】第1の好ましい実施形態を有する冷却組立体及びガス吹込システムの断面図である。
【
図2】第2の好ましい実施形態を有する冷却組立体及びガス吹込システムの断面図である。
【
図3】第2の好ましい実施形態を有するガス吹込システム冷却組立体の図である。
【
図4】第2の好ましい実施形態を有する冷却組立体の断面図である。
【
図5A】吹込器の保護カバーを側面から見た原理図である。
【
図5B】吹込器の保護カバーを正面から見た原理図である。
【0036】
図面では、別段の指示がない限り、同じ又は類似の要素は同じ参照符号で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、第1の実施形態による、高炉又はシャフト炉又は冶金炉の冷却板の高さでの断面図である。
【0038】
図1において、高炉又はシャフト炉又は冶金炉の壁12又は炉殻は、一方の側(炉の外部、低温側)に、吹込器16を有するガス分配管14を備える。
【0039】
炉壁12の他方の側(内部、高温側)には、鋳鉄、銅又は銅合金で作製された冷却板18又はステーブを含む冷却組立体がある。冷却板18は、炉の炉壁12の内側に配置されている。冷却板18の一方の(炉の高温側を向いた)表面は、表面積を増加させるための複数のリブ20及び溝22を備える。また、簡素化のためここでは図示されない耐火ライニングを設けることもできる。冷却板18には、複数の冷媒経路(図示せず)が設けられている。
【0040】
冷却組立体はまた、複数の冷却管24を備え、その各々は、冷却経路(図示せず)に接続された管路(図示せず)を有する。冷却管24は、冷却板18と同じ材料で作製することができる。各冷却管24は、炉壁12の壁開口部26を通る。それぞれの壁開口部26の断面は、それぞれの冷却管24の断面よりも大きくなるように選択され、冷却管24が炉壁12に対していくらか動けるようになっている。そのような動きは、特に、冷却管24が取り付けられている冷却板18の熱誘起変形の結果生じ得る。
【0041】
補償器28を炉壁12に接続して、壁開口部26を覆ってもよい。被覆28は、冷却管24が通る被覆開口部30を有する。被覆28は、複数の壁開口部を覆ってもよい。そのような被覆は、各冷却管24に1つずつ、複数の被覆開口部を備える。被覆28の外側では、冷却管24が補償器に囲まれており、この補償器は被覆28に溶接されて、被覆開口部30に接続される。補償器の構造は、被覆28に溶接接続された筒状部分を含む。筒状部分には、伸縮継手が輪状部分によって接続されている。環状スリーブ部分は、一方は伸縮継手に接続され、他方は冷却管の外側に接続される。冷却管24への接続は、環状の第1溶接を介して確立される。補償器の重要な特徴は、スリーブ部分の内径が炉壁に向かって増加すること、すなわち外端部から内端部に向かって増加することである。すなわち、スリーブ部分の内面は、円筒状ではなく、円錐状である。これにより、冷却管24に対するスリーブ部分の角度方向を変えることが可能になる一方、第1溶接が適用された外端部でのスリーブ部分と冷却管24との距離は依然として最小となる。
【0042】
図1はまた、ガス分配管14及び1つ又は複数の吹込器16を備える好ましいガス吹込システムを示す。しかしながら、従来の燃焼管システム及び羽口ストックを用いることが可能であり、それらは別の利益を提示する。
【0043】
ガス分配管14は、鋼殻32と、断熱性があり高密度の耐火材料の1つ又は複数の層で作製された断熱層34とを備える。耐火ライニングは、高温及びガス分配管14の中空部36内を循環するガスの組成に耐えるように設計されている。耐火ライニングはまた、中空空間36内を循環する高温ガスから鋼殻32を断熱し、ガス分配管14の鋼殻32を高温から保護する。耐火ライニングの断熱効果により、熱損失を低減することができる。
【0044】
吹込に使用されるガスは、主にCO及びH2を含む。典型的には、ガスは、20~35%v/v CO、35~55%v/v H2、5~25%v/v N2、2~5%v/v CO2の組成を有する。
【0045】
図1のガス分配管14は、D形状の断面を有し、D形状の断面の平坦面38は、炉壁12に面する。炉壁に面する平坦面が存在する限り、他の形状(長方形、三角形、六角形など)を用いることも可能である。吹込器16は、炉壁12の平坦面38に一体化され、一方の側はガス分配管14の鋼殻32及び断熱層34を横切り、他方の側は炉壁12及び冷却板18を横切る。
【0046】
吹込器16はガス分配管14に一体化され、ガス分配管14を、炉壁12及び冷却板18を介して炉内に接続する。吹込器16は、ガス分配管14を炉に流体接続する唯一の要素である。
【0047】
ガス分配管14と吹込器16との間に複数の接続部が存在しないことによって、接続部及び遷移部が少なくなり、ガス漏れの潜在的な発生源も減少する。実際、本システムでは、吹込器16は、追加の接続部又は中間部品なしにガス分配管14に直接接続されている。高温ガスがCO及びH2を含み、それらは外部に漏れると自然に発火する可能性があり、又は空気と混合されると爆発性雰囲気を形成する可能性があるため、気密性はこの用途において特に重要である。
【0048】
図1に示す場合において、吹込器は、ガス分配管14の鋼殻32及び炉壁12に接続された鋼管42の短い部分を通る。この鋼管42は、ガス分配管14と炉壁12との接続の安定性を高め、吹込器16を保護する。そしてガス分配管14は、炉壁12から特定の距離となる。この距離は、好ましくは10~50cmである。
【0049】
吹込器16は、セラミック材料、好ましくは酸化物セラミック材料又はシリコン含浸炭化ケイ素材料又は窒化物系セラミック材料などの好適な耐熱材料で作られることが好ましい。そのような材料は、ダストを含む高温ガスに起因する摩耗及び高温還元ガスによる腐食に耐えるように選択される。吹込器16には水冷を行ってもよい。
【0050】
吹込器16は、好ましくは、吹込器16の軸線46に対して垂直に延在する輪状構造44を用いて、ガス分配管14の断熱層34内に固定される。輪状構造は、ガス分配管14の断熱層34の内側と同一平面である。
【0051】
吹込器16の反対側、すなわちD断面の丸みを帯びた側面40の、吹込器の軸線には、保守点検口48が一体化されている。これにより、各吹込器16を容易に分解することができ、摩耗又は損傷した場合に吹込器16を容易に交換することができる。吹込器16を容易に分解できることは、炉のメンテナンス停止中に行う炉内の吹込領域の定期点検にも有利である。吹込器16を取り外すと、点検及び場合によっては吹込口50の周囲の足場の洗浄又は除去のためのアクセスが容易になる。
【0052】
吹込器16は、炉の中心へ向けられ得るか、又は接線方向に向けられ得る(図示せず)。接線方向に向けることは、炉内に旋回流を生成させるのに役立ち、これはガスの分配や、羽口段階からの上昇ガスとの混合を増加させることに役立ち、そして炉内のガスの滞留時間を長くしてガス利用を増やす。
【0053】
主ガス分配器及び吹込器間の、従来の面倒でかさばる複数の接続が回避されるため、多数の、典型的には20~80、好ましくは最大100、更には最大150の吹込器16が想定できる。炉の外側領域の関連部分の密集が原因で、そのような多数の吹込器16を設置することは従来のシステムでは不可能であった。多数の吹込器16は、炉内の高温ガスの良好な分配に有益であり、このことは炉プロセスにおけるガスの効率的な利用のために重要である。
【0054】
多数の吹込器を設置する場合、個々の吹込器及び対応するノズル(図示せず)の直径はかなり小さくすることができる。典型的には、内径は3~20cm、好ましくは5~10cmの範囲であり、外径は5~25cm、好ましくは8~15cmの範囲である。これにより、炉壁及び冷却板18の開口部を小さく保つことができ、冷却板を変更することなく既存の炉にこの解決策を容易に後付けすることが可能となる。
【0055】
吹込器の長さは適合可能であり、それらは炉内に突出するか(典型的には5~10cm)、板の高温面と同一平面になるか、又は冷却板の高温面からわずかに(典型的には2~10cm)後退した状態となり得る。
【0056】
また、ガス分配管14は、従来の燃焼管のような、閉鎖された周辺捕集器である必要はないことに留意することも重要である。所与の炉環境において利用できる空間が無い場合、ガス分配14を分断してもよく、炉周囲の一部にはガス分配管及び吹込器が無くてもよい。ガス分配管14は、炉の周囲に配置されるいくつかの部分(例えば4つの象限)に分割することができ、各部分は個々の高温還元ガス供給ライン(図示せず)によって供給される。
【0057】
図2は、ガス吹込システムの好ましい実施形態の断面図を示す。
【0058】
この特定の実施形態では、吹込器は、炉壁12及び冷却要素18を介した流通を確実にするために使用される特定のノズルを有する。ノズルは、セラミック先端挿入部52を備え、高温ガスを炉壁12の外側から冷却板18の高温側へ確実に流通させる。セラミック先端挿入部52は、炉内に吹き込まれる高温ガスから炉壁12及び冷却板18を保護できる断熱効果を有するものであることが好ましい。しかしながら、それは冷却要素であってもよい。
【0059】
セラミック挿入部52は、ガス吹込システム10を所与のプロセス条件に適合させられるように様々な直径を採用できるため、ガス吹込システム10に特定の適合性を与えることができる。セラミック挿入部52の直径が小さくなると、ガス速度、したがって炉内のガスの侵入深度が増加する。
【0060】
突出部又は「ノーズ」54は、既存の冷却板18の高温面に容易に後付けすることができ、セラミックノズル52及び高温ガス56を確実に流通させるために様々な位置に穿孔されている。
【0061】
突出部54の寸法は、炉内の正確な位置及びそれが収容するセラミック挿入部の数に応じて変化し得る。一般的に言えば、突出部は、長さ1cm~40cm、幅10cm~120cm、高さ10cm~100cmであり得る。
【0062】
吹込口50又は「出口」は、炉内を向いた面の、突出部54の上面又は下面にあり、高炉内の装入物が高い空隙率を有し、したがって高温ガス56の侵入が最大になる領域に高温ガス56を当てられるようにする。
【0063】
突出部54は、それが取り付けられた冷却板18の伝導によって受動的に冷却される。これは、吹込点の領域内の冷却板18を確実に保護し、ガス温度850~950℃の高温ガス52の吹込みによる局所的な高温に対する冷却板18の曝露を制限する。
【0064】
実施の領域に応じて、突出部54は、それ自体の冷却システムによって冷却することができる。
【0065】
各セラミック挿入部52は、炉壁12の外側の接続口58を介して到達可能であり、容易な保守及び点検が可能である。セラミックノズル52は、摩耗又は損傷した場合に分解して容易に交換することができる。セラミックノズル52の容易な分解はまた、高炉のメンテナンス停止中に行われる炉内の吹込領域の定期点検にも有利である。セラミックノズル52を取り外すことで、点検及び場合によっては吹込口50の周囲の足場の洗浄又は除去のための到達が容易になる。
【0066】
別の利点は、冷却板によって冷却される炉において、吹込点又はセラミックノズルを様々な構成で数段階に配置できることである。
・ 2つ又はそれ以上の段階への、突出部の連続的な帯状配置
・ 突出部を互い違いに配置するように段壁状にした、2つ又はそれ以上の段階への断続的配置。
【0067】
多数の吹込器を設置する場合、個々の吹込器の直径はかなり小さくすることができる。これにより、炉壁及び冷却板の開口部を小さく保つことができ、冷却要素を変更することなく既存の高炉、シャフト炉及び冶金炉にこの解決策を容易に後付けすることが可能となる。
【0068】
ノズルの長さ及び直径は適合可能であり、それらは炉内に突出するか、冷却板の高温面と同一平面になるか、又はわずかに後退した状態となり得る。
【0069】
図3は、突出部54をより詳細に示す。この実施形態は、冷却水を循環させるための導管58を有する、能動的に冷却される突出部54を示す。冷却水は、冷却板へ供給する冷却水回路(図示せず)から取り出すことができ、容易に利用可能である。あるいは、独立した冷却水回路を使用してもよい。
【0070】
図4は、突出部54をより詳細に示す。この実施形態は、冷却板18の高温側に取り付けられた、能動的に冷却される突出部54を示す。参照番号52で示すセラミック吹込器は、炉壁12及び冷却板18を横切る。
【0071】
突出部54の頂部には、吹き込まれた高温ガスから冷却板18及び突出部54を更に保護する材料層60がある。
【0072】
本出願では、「高炉」及び「シャフト炉」及び「冶金炉」という用語は置き換え可能である。
【0073】
このD型燃焼管は、垂直に設置して1列又は複数列の吹込器の供給を行うことが可能であり、また、ステーブの数に一致するように炉の周囲に配置することが可能であり、それにより冷却要素の固定又は装置化(instrumentation)を防ぐ/妨げることができる。複数の垂直D型燃焼管は、供給燃焼主管と連結される。
【0074】
実施形態では、突出カバーを吹込器の上方に配置して、炉内へ突出するノズル本体前部を、降下する装入材料から保護するように構成してもよい。降下する装入材料(焼結体/ペレット及びコークス)による摩耗に対する吹込器ノズル本体のそのような保護は、例えば、滑らかな又は波形の鋼殻によって達成することができる。
図5にこの突出カバー100の原理が示されており、吹込器の長手方向Lに延在する一種の蓋を形成する。これは、吹込器の突出長を覆う(破線で示す)。見て分かるように、カバー100は湾曲した鋼断面であり、より具体的には、反転し、丸みを帯びたV字形状を有する。Vの頂点100.1は吹込器16の上方にあり、2つの分岐部100.2は吹込器50の両側に延在し、選択的に吹込器の下方にも延在する。カバー100は、直接的又は間接的に液体冷却することができる。冷媒経路は、例えば、殻の下側に配置することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 吹込器/ガス吹込システム
12 炉壁
14 ガス分配管
16 吹込器
18 冷却要素
20 リブ
22 溝
24 冷却管
26 壁開口部
28 被覆/補償器
30 被覆開口部(図示せず)
32 ガス分配管の鋼殻
34 断熱層
36 中空空間
38 平坦面
40 丸みを帯びた側面
42 鋼管
44 輪状構造
46 吹込器の軸線
48 保守点検口
50 吹込口
52 セラミック挿入部
54 ノーズ-突出部
56 高温ガス
58 導通/接続口
60 材料層
100 カバー
100.1 頂点
100.2 2つの分岐部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0639750号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2848705号明細書
【国際調査報告】