(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】感光性の被覆層を露光する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231003BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B26/08 E
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022576896
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020068996
(87)【国際公開番号】W WO2022008031
(87)【国際公開日】2022-01-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート タルナー
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ポヴァザイ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ツェンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウーアマン
【テーマコード(参考)】
2H141
2H197
【Fターム(参考)】
2H141MA14
2H141MB24
2H141ME09
2H141ME25
2H141MG08
2H197AA28
2H197AA29
2H197AB16
2H197BA02
2H197BA05
2H197BA09
2H197BA11
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA13
2H197CD12
2H197DB03
2H197HA03
2H197HA06
(57)【要約】
本発明は、感光性の被覆層を露光するための方法および装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの感光性の第1の領域(3a)と感光性の第2の領域(3b)とを有する感光性の被覆層(3)を露光する方法であって、前記第1の領域(3a)は、第1の波長の光子に反応し、前記第2の領域(3b)は、第2の波長の光子に反応し、前記第1の波長は、前記第2の波長と異なっており、前記方法は、
- 前記被覆層(3)を前記第1の波長の前記光子で露光し、
- 前記被覆層(3)を前記第2の波長の前記光子で露光する
ステップ、特にシーケンスを有する、方法。
【請求項2】
前記被覆層(3)を、動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニット(7)によって露光する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被覆層(3)を少なくとも1つのマスク(15a,15b)を通して露光する、請求項1から2までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項4】
前記第1の波長の前記光子での前記被覆層(3)の露光によって、前記第1の領域(3a)でのみ光化学的な反応を発生させ、前記第2の波長の前記光子での前記被覆層(3)の露光によって、前記第2の領域(3b)でのみ光化学的な反応を発生させる、請求項1から3までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
前記被覆層(3)を空間分解式にかつ/または点状に、特に光線束を用いて露光する、請求項1から4までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
前記被覆層(3)を、個別に制御可能な光子源(5)によって露光し、前記光子の前記波長および/または線量を調整する、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記被覆層(3)を、広帯域の光子源(5)の前方に設けられたフィルタ(6a,6b)の調整によって露光し、前記波長および/または線量を調整する、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記被覆層(3)のそれぞれ異なる深さ範囲を相次いで反応させる、請求項1から7までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
前記被覆層(3)は、該被覆層(3)の厚さにわたって変化する、同一の波長の光子に対する感度を有する、請求項1から8までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の領域(3a)を第1の層として形成し、前記第2の領域(3b)を前記第1の層上に第2の層として形成する、請求項1から9までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの感光性の第1の領域(3a)と感光性の第2の領域(3b)とを有する感光性の被覆層(3)を露光する装置であって、前記感光性の第1の領域(3a)は、第1の波長の光子に反応し、前記感光性の第2の領域(3b)は、第2の波長の光子に反応し、前記第1の波長は、前記第2の波長と異なっており、前記被覆層(3)を前記第1の波長の前記光子で露光しかつ前記被覆層(3)を前記第2の波長の前記光子で露光するための放射線装置(5)を有する、装置。
【請求項12】
前記被覆層(3)を露光する動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニット(7)を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記被覆層(3)を露光する少なくとも1つのマスク(15a,15b)を有する、請求項11から12までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項14】
前記被覆層(3)を前記放射線装置(5)に対して移動させる可動の保持体を有する、請求項11から13までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項15】
請求項1から10までの少なくとも1項記載の方法および/または請求項11から14までの少なくとも1項記載の装置により製作された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性の被覆層を露光する方法および装置に関する。
【0002】
フォトリソグラフィは、半導体産業において、材料をパターニングする最も重要な方法のうちの1つである。フォトリソグラフィは、先行技術では主にマスクを用いて実施される。
【0003】
しかしながら、マスク製作は、マスクベースのフォトリソグラフィの最大の問題でもある。マスクは、極めて高価で手間のかかる製作法によって形成されなければならない。この場合、電子ビームリソグラフィが利用される。さらに、複雑で機能的な構成部材を製作するためには、複数のマスクが製作されなければならない。この場合、ただ1つのマイクロチップ用の全てのマスクを製作するためのコストが数百万ユーロの規模にあることは珍しいことではない。
【0004】
したがって、近年では、先行技術において代替的な方法が開発されている。この代替的な方法では、基板が、全面にわたって露光されるのではなく、デジタル式にコントロールされる走査、例えばミラーから成る切換可能なアレイによって部分的にのみ露光される。ミラーアレイである、いわゆるデジタルマイクロミラーユニット(英語:digital micromirror device,DMD)のミラーは、個々に、特に高周波でプログラミングすることができ、これによって、露光すべき区分への、正確なスポットで任意に応答可能なパターニング照射を可能にする。同時に、基板と、DMDを含む光学系との間の相対移動が実施される。これによって、基板表面全体の露光が可能となる。先行技術は、国際公開第2018113917号、国際公開第2018113918号および国際公開第2019242840号に基づき公知である。
【0005】
DMDを使用することによって、フォトリソグラフィ層を所定のパターン、いわゆるレイアウトで露光することができる。良好に規定された波長の光子によって衝撃が与えられた層のあらゆる箇所において、フォトリソグラフィ層の間接的または直接的な化学反応が行われる。後続の方法ステップ、特に現像ステップによって、いわゆるレイアウトは強化される。
【0006】
本開示では、一例として常にDMDについて言及する。しかしながら、DMDの代わりに、一般的な、特に透過性のパターニング用の要素が使用されてもよい。透過性の光学要素は、特にステッパに対して重要となる。透過性の光学要素では、DMDと異なり、空間分解式のパターニングが、ミラーによってではなく、特に切換可能な開口によって実現される。このような要素の正確な実施の形態については、本明細書では詳しく説明しない。その代わりに、プログラミング可能な空間分解式の露光のための例示的な光学要素としてのDMDを説明する。
【0007】
上述した方法によって、すでに今日では、種々異なる2Dパターン、つまり、一平面の範囲内のパターンまたは高さを変化させる個々の層におけるパターンを、例えば、種々異なるトポグラフィ(2.5D)を有するパターンにおける一番上側の層として形成することができる。
【0008】
特に光線方向で可変の複雑な幾何学形状、特に上側で覆われた凹状の中空室を有する2.5Dまたは3Dパターンの構造は、先行技術の装置および方法では、単に1回の露光プロセスで製作することはできない。
【0009】
公知の方法を繰り返し使用することによって2.5Dおよび3Dパターンを製作することが極めて良好に可能となる。したがって、基板に第1の層を被着し、この第1の層を画像の位置決め後に露光し、その後、現像し、このとき、レジストの露光および極性に応じて基板を化学的に強化または溶解し、基板を新たに後続の層によって被覆し、再度露光し、現像することも可能である。これらのステップは、所望の層ひいては積層されたレイアウトの相応の数に対して、任意の頻度で繰り返されてよい。
【0010】
各々の層の現像のために、上述した全ての方法ステップを実施しなければならないことは明らかである。このことは、極めて大きな手間ひいては高いコストに繋がってしまう。さらに、各々の付加的な方法ステップによって、考えられるあらゆる種類の欠陥に対する欠陥確率が高まってしまう。特に、露光中の適正な横方向の位置は、欠陥に敏感なステップである。このステップによって、品質損失が積み上げられてしまう。
【0011】
したがって、本発明の課題は、先行技術の欠点を排除するかまたは大幅に減じることである。特に、本発明は、露光をより迅速かつより簡単に実施し、あらゆる種類の欠陥を減じることを目的としている。
【0012】
この課題は、各々の独立請求項の対象によって解決される。本発明の有利な改良形態は従属請求項に記載してある。本発明の範囲には、明細書、特許請求の範囲および/または図面に記載した複数の特徴のうちの少なくとも2つの特徴から成る全ての組合せも含まれる。記載した数値範囲では、記載した限界の範囲内にある数値も限界値として開示したものと見なし、任意に組み合わせて請求可能であるものとする。
【0013】
本発明は、感光性の被覆層を露光する方法であって、被覆層は、少なくとも1つの感光性の第1の領域と感光性の第2の領域とを有し、第1の領域は、第1の波長の光子に反応し、第2の、特に第1の領域に重畳した領域は、第2の波長の光子に反応し、第1の波長は、第2の波長と異なっており、方法は、
- 被覆層を第1の波長の光子で露光し、
- 被覆層を第2の波長の光子で露光する
ステップ、特にシーケンスを有する、方法に関する。
【0014】
以下の文面では、感光性の領域をもはや領域としか呼ばないこともある。
【0015】
本発明は、さらに、感光性の被覆層を露光する装置であって、被覆層は、少なくとも1つの感光性の第1の領域と感光性の第2の領域とを有し、感光性の第1の領域は、第1の波長の光子に反応し、感光性の第2の領域は、第2の波長の光子に反応し、第1の波長は、第2の波長と異なっており、被覆層を第1の波長の光子で露光しかつ被覆層を第2の波長の光子で露光する放射線装置を有する、装置に関する。
【0016】
本発明は、さらに、本発明に係る方法および/または本発明に係る装置により製作された物品に関する。
【0017】
本発明の本質は、特に、個々の感光性の領域への光子の個別の合焦が不要となることにある。なぜならば、両方の領域が、典型的には、互いに極めて近接した肉薄の層にて投影の被写界深度の範囲内で被着されているからである。各々の波長の光子は、有利には、感光性の被覆層を透過することができるものの、相応の波長の光子に材料が反応する領域でのみ光化学的な反応を発生させる。
【0018】
好適には、被覆層が、動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニットによって露光されるか、もしくは装置が、被覆層を露光するための動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニットを有することが特定されている。
【0019】
好適には、さらに、被覆層が、少なくとも1つのマスクを通して露光されるか、もしくは装置が、被覆層を露光するための少なくとも1つのマスクを有することが特定されている。
【0020】
好適には、さらに、第1の波長の光子での被覆層の露光が、第1の領域でのみ光化学的な反応を発生させ、第2の波長の光子での被覆層の露光が、第2の領域でのみ光化学的な反応を発生させることが特定されている。
【0021】
好適には、さらに、被覆層が、空間分解式にかつ/または点状に、特に光線束を用いて露光されるかもしくは露光可能であることが特定されている。
【0022】
好適には、さらに、被覆層が、個別に制御可能な光子源によって露光され、光子の波長および/または線量が調整されるかもしくは調整可能であることが特定されている。
【0023】
好適には、さらに、被覆層が、広帯域の光子源の前方に設けられたフィルタの調整によって露光され、光子の波長および/または線量が調整されるかもしくは調整可能であることが特定されている。
【0024】
好適には、さらに、被覆層のそれぞれ異なる深さ範囲が相次いで反応することが特定されている。
【0025】
好適には、さらに、被覆層が、この被覆層の厚さにわたって変化する、同一の波長の光子に対する感度を有することが特定されている。
【0026】
好適には、さらに、被覆層が単一の層であることが特定されている。それぞれ異なる領域は、それぞれ異なる強さのそれぞれ異なる波長またはそれぞれ等しい波長に対して、それぞれ異なる強さの感光度を有するそれぞれ異なる成膜層である。また、それぞれ異なる成膜層が、波長に対して敏感に反応するのではなく、照射強さ、つまり、強度に敏感に反応することも可能である。
【0027】
しかしながら、より好適には、第1の領域が、第1の層として形成され、第2の領域が、第1の層上に第2の層として形成されることが特定されている。当然ながら、好適には1回の共通の露光および現像ステップで一緒に加工される任意に多数の更なる領域を形成する任意に多数の更なる層が被着されてよい。
【0028】
好適には、さらに、被覆層が、放射線装置に対して移動させられる/可動であることが特定されている。特に、被覆層を放射線装置に対して移動させるための可動の保持体が設けられている。被覆層は基板上に位置していてよい。そして、この基板は基板ホルダ上に位置している。好適には、この基板ホルダは、被覆層を備えた基板を放射線装置に対して移動させるために可動に形成されている。
【0029】
本発明は、特に、互いに重畳する少なくとも2つの感光性の層またはそれぞれ異なる深さに位置する少なくとも2つの感光性の層を有する被覆層もしくは層列を、特にマスクレスで2.5Dまたは3D露光する方法および装置を説明している。以下の文面では、この2.5Dまたは3Dの露光を、2D、つまり、一平面内での露光と区別するために、空間露光とも呼ぶ。特に、空間露光とは、2.5Dもしくは3Dパターンを単に1回の露光プロセスで直接形成することができる露光を意味している。露光プロセスとは、装置に対する基板のローディングと基板のアンローディングとの間の全ての方法ステップの集合を意味している。
【0030】
本発明に係る装置および本発明に係る方法は、先行技術と異なり、複数の利点を有している。
【0031】
先行技術に対する1つの利点は、複数回の位置調整および中間加工ステップの省略に基づき、空間露光を極めて高い速度と同時に高い精度で実施することが可能となることにある。特に、各々の露光ステップ前にアライメントされなければならない個別マスクによる複数回の露光と、複数回の被覆と、複数回の現像とを不要にすることができる。この本発明による利点によって、特にスループットの向上が達成される。
【0032】
更なる利点は、個々の層におけるレイアウトの精度が大幅に向上することにある。なぜならば、マスクアライメントに基づく複数回の個別露光の実施時に生じるアライメント誤差が無くなるからである。
【0033】
更なる利点は、パターニング深さが、被写界深度およびレジストの化学的な特性を介して増加せられることにある。パターニング深さとは、被覆層のうちの、光子衝撃によって化学的な反応が行われる領域を意味している。
【0034】
先行技術では、露光のための光学要素は、露光のために使用される光子が焦点面に合焦させられるかまたはシャドーイング原理(Schattenwurfprinzip)において感光性の領域の位置決めがマスクの近接場で行われるように構想されていなければならない。
【0035】
本発明によれば、有利には、個々の感光性の領域への光の合焦を、不要にするかもしくは投影の被写界深度の範囲内で同時に行うかまたは機器において固定に設定された、波長に応じた焦点面の距離によって行うことができる。各々の波長の光子は、有利には、感光性の被覆層を透過することができるものの、相応の波長の光子に材料が反応する領域でのみ光化学的な反応を発生させる。
【0036】
更なる利点は、単に1回の作業ステップで除去可能な支持材料に基づき、オーバハングパターンを形成することにある。支持材料とは、オーバハングパターン、特に形成すべきカバーと、基板との間に位置する材料を意味している。
【0037】
更なる利点は、鉛直方向、つまり、被覆層の厚さの方向での高精度のパターニング可能性が付与されることにある。先行技術における方法および装置が、所定の焦点面への光子の合焦を調整しかつコントロールしなければならないのに対して、本発明では、被覆層の直接的な透過を空間分解式に、点状に、特に光線束によって行うことができる。被写界深度にも焦点面にも特に注意を払う必要はない。
【0038】
さらに、本発明によって、有利には、空間パターンの高さが、例えば、露光が深さに関して照射線量を介してコントロールされるグレイスケールリソグラフィよりも精密にコントロール可能となる。これによって、より高くて形状がより正確な無支持のルーフパターンの製作、特に大きな中空室が下側に位置するダイヤフラムの製作が可能となる。
【0039】
更なる利点は、高められた方位分解能にある。なぜならば、先行した方法ステップがもはや実施されないからである。もはや1回の連続した露光プロセスしか存在しないので、先行して作成されたパターンの散乱中心および/または反射中心によって露光にもはやマイナスの影響は与えられなくなる。
【0040】
更なる利点は、個々に制御可能な光子源によって、かつ/または広帯域の光子源の前方に設けられたフィルタの調整によって、波長および/または線量を目標に合わせて極めて簡単に調整する可能性にある。したがって、本発明に係る方法は、本発明に係る装置によって極めて簡単に実現することができる。
【0041】
更なる利点は、各々の領域の種々異なるパターンが、それぞれ所定の波長の光子によって記述されるものの、選択的に複数回の露光により異なってパターニングされてもよいことにある。
【0042】
DMDを備えた本発明に係る装置に対する更なる利点は、特に、各々の個々の層に対する加熱および現像ステップが、露光の終了時の単に1回の加熱および現像ステップに置き換えられることにある。したがって、n個(n>1)の領域を備えた被覆層において、n-1回の加熱および現像ステップが省略される。これによって、プロセスのスループットが大幅に向上させられる。
【0043】
感光性の被覆層
本発明による実施の形態は、特に、多色の光子源によって、互いに重なり合った露光すべきレイアウトが同時にかつ特に累積的に露光されないことに基づいている。
【0044】
特に、互いに重なり合ったn個のレイアウトは、被覆層のi番目の領域におけるi番目のレイアウトが、DMDのi+j*n番目の列のミラーによって露光されるように露光されてよい。この場合、0<=j<=m、m=N/nおよびNはDMDミラー列の個数であることが当てはまる。
【0045】
特に、レイアウト同士の間で時間的に切り換えられることによって、互いに重なり合ったレイアウトを露光することも可能となる。したがって、時間単位あたり、DMDは、少なくとも2つのレイアウト、より正確に言うなら、レイアウトの部分区分を被覆層に投影する。
【0046】
このような露光を実施することができるようにするために、特に、それぞれ異なる波長を有する光子が、それぞれ異なる深さ範囲を、互いに隣接する深さ範囲に作用することなしに露光する感光性の被覆層が設けられる。
【0047】
本発明による第1の実施の形態では、被覆層が単一の層から成っている。この層は、特に深さにわたって変化する物理的かつ/または化学的な特性、特に、所定の波長の光子に対するそれぞれ異なる感度を有している。第1の実施の形態では、種々異なる物理的かつ/または化学的な特性の間の移行が、深さの関数として段階関数によって数学的に記述されてよい。
【0048】
代替的には、化学的かつ/または物理的な特性が、深さの関数として連続的に変化する。この場合には、化学的かつ/または物理的な特性が、連続微分可能な関数によって記述可能となる。簡素化を実施するために、化学的かつ/または物理的な特性のこのような全ての変化を深さの関数として勾配と呼ぶ。
【0049】
特に、被覆層の化学的かつ物理的な特性が均一であり、局所的に変化する感光度が、波長および厚さに関連した吸収に起因することもあり得る。所定の波長の光子から成る光子流の強度は、侵入深さの関数として連続的に減少する。したがって、強度の減少によって感光度も変化する。つまり、深さ選択性は飽和メカニズム、すなわち、退色によって達成される。1つには、放射線が露光を生じさせ、もう1つには、これによって、露光された領域が透明になる。したがって、放射線によって「侵食」される前面が生じ、これによって、2.5次元の地形を形成することができる。
【0050】
本発明による第2の実施の形態では、被覆層が、複数、つまり、少なくとも2つの層から成っている。この実施の形態は特に有利である。なぜならば、被覆法、特にスピンコーティング法によって、複数の層を製作することが特に簡単であるからである。これらの層のうち、各々の個々の層は、固有の波長の光子に関して良好に規定された物理的かつ/または化学的な特性を有している。特に、材料選択時にすでに、本発明に係る方法を実施することができるようにするために必要となる化学的かつ/または物理的な特性を正確に有する、それぞれ異なる製造元の種々異なる材料を利用することができる。
【0051】
本発明による第3の実施の形態では、被覆層が、最初の両方の実施の形態から成る組合せであってよい。つまり、被覆層が複数の層から成っており、これらの層のうちの少なくとも1つの層自体が、第1の実施の形態による勾配を有していることも可能である。
【0052】
本発明による特別な実施の形態では、それぞれ異なる層の溶媒および/または光開始剤が、層境界を越えて反応しない。このような不利な反応は、本発明による露光が、被覆層の被着後に可能な限り迅速に行われることによって最小限に減じることができる。
【0053】
本発明による特別な形態では、感光性の層同士の間にストップ層が挿入される。このストップ層は、層同士の間での、いわゆる「化学的に強化された」光反応の伝播を中断する。このことは、個々の波長による、照射線量に関連した段階的な露光を達成するために利用されてもよい。
【0054】
本発明による特殊な実施の形態では、層内での感光度の横方向感度が、それぞれ異なる強さに形成されている。横方向感度とは、照射方向に対して法線方向での被覆層の感光度を意味している。横方向感度が高いほど、被覆層の点を鮮明に露光しかつ/または現像することができなくなる。例えば、平行に入射する光子の光線が、第1の層を第2の層よりも強く横方向、つまり、水平方向で露光することが可能である。
【0055】
感光性の被覆層は、あらゆる種類の感光性の材料から製作することができるものの、好ましくは、レジスト、特にフォトレジストが使用される。
【0056】
全く特に好適な実施の形態では、以下の材料、つまり、
・ TOK PMER P-LA900PM
・ TOK CR4000
・ AZ nLOF2000 Serie
・ Allresist Atlas 46
・ Allresist Atlas 46R
・ JSR IX335H
・ JSR WPR5100
・ JSR THB
のうちの少なくとも1つが使用される。
【0057】
装置
本発明に係る装置は、好ましくは、多色の光子源だけ拡張された少なくとも1つのマイクロミラーユニット(DMD)を備えたマスクレス露光装置である。
【0058】
本発明による全く特殊な実施の形態では、本発明に係る装置が、被覆層の複数の位置を同時に露光することができる複数のDMDを有していてよい。特に、各々の波長に対して個々のDMDが使用されてよいかまたはDMDが、それぞれ異なる波長が照射される複数の領域に分割されてよい。この場合、開示内容を各々のDMDに個々に同様に適用することができる。
【0059】
代替的な本発明に係る装置は、相応の多色の光子源によって拡張されたマスクベースの露光装置である。これによって、マスクベースの露光装置に対しても本発明に係る方法の適用が可能となる。
【0060】
全ての本発明に係る装置は、特に少なくとも多色の光子源を有している。この光子源は、一般的に極めて多くの光学要素から成る光学系の一部である。この光学系を以下の文面において詳しく説明する。
【0061】
光子源
光子源とは、以下の文面において、少なくとも1つの固有の波長を有する光子を放出することができる構成部材または構成部材群を意味している。特殊な実施の形態では、個々の光子源が多色であってよい。
【0062】
本発明による第1の実施の形態では、光子源が、多色のスペクトルを有する光子を放出する装置、特に水銀ランプである。水銀は、UV範囲内の多色のスペクトルを有している。例えば、光子源に、必要となる波長の光子しか通過させないフィルタが設けられてもよい。このフィルタの切換によって、それぞれ異なる波長の間で切換を行うことができる。
【0063】
本発明による第2の実施の形態では、光子源が、個々の単色の光子源の集合である。
【0064】
本発明による第2の実施の形態の特殊な実施の形態では、個々の単色の光子源の各々が、発光ダイオード(英語:LED)もしくは発光ダイオードアレイ(英語:LED-array)である。各々のLEDもしくは各々のLEDアレイは、常にただ1つの単色の放射線しか放出することができないので、それぞれ異なる波長を有する複数の相応の構成部材が使用されなければならない。それぞれ異なるLEDまたはLEDアレイを、特に電子的に切り換えることができる可能性によって、有利には、特に機械的なフィルタの使用を不要にすることができる。
【0065】
しかしながら、万全を期すために、個々の単色の光子源を個々にも電子的に切り換えることができる可能性のほか、別の機構により波長を変化させることができる光源も同じく「フィルタ」と呼ぶ。したがって、本明細書において、このような単一の単色の光子源のフィルタリングについて言及する場合、この1つの、この1つだけの単色の光子源が光子を放出するのに対して、別の全ての単色の光子源は光子を放出しないことを意味している。
【0066】
例示的な構造では、記載した単色の光子源が、それぞれ異なるスペクトル分布を有する多色の光子源として実現されていて、単純に単色と呼ばれているかもしくはそれぞれ異なる波長と呼ばれているにすぎない。
【0067】
光学系
本発明に係る装置の光学系は、光学要素および/または機械要素および/または電気要素の集合である。光学系は、少なくとも1つの光子源を有している。
【0068】
別の要素、つまり、
・ DMD
・ ミラー
・ レンズ
・ プリズム
・ 開口
・ マスク
があってよい。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つの光学要素が、DMDと被覆層との間の二次的な経路内、つまり、光路内にも存在している。
【0070】
より好適には、光学要素が、結像用の光学要素である。
【0071】
本発明による全く好適な実施の形態では、光学要素が、DMDのアクティブな構造体を数学的な変換、特にアフィン変換によって被覆層内の画像に結像することができるような光学要素である。特に剪断およびスケーリング変換が好適となる。このような光学系は、すでに国際公開第2018113918号に述べられている。
【0072】
相対移動
本発明に係る装置は、好ましくは、感光性の被覆層により被覆される基板が載置されている基板ホルダをアクティブに移動させることができるのに対して、光学系は静止しているように構想されている。代替的には、光学系が移動させられるのに対して、基板ホルダは静止しているように、または光学系および/または基板ホルダを移動させることができるように、もしくは側方への移動用の偏向装置が行われるように装置を構想することが可能である。露光領域が小さいかもしくは露光要素が大きい場合には、側方への移動が省略されてもよい。
【0073】
したがって、基板ホルダと光学系との間の相対移動が可能となると好適である。
【0074】
基板ホルダに基板を固定することによって、基板と光学系との間の正確な相対移動が可能となる。
【0075】
方法
本発明に係る方法は、特に、MEMSおよびマイクロフルイディクス領域における側壁およびカバーを単に1回の露光ステップでパターニングすることによってキャビティを成形することを可能にする。
【0076】
本発明に係る方法は、特に、先端パッケージングにおいて使用されるような再配線層(英語:redistribution layer)および層間接続部の同時の露光を可能にする。
【0077】
本発明に係る方法は、有利には、
- マスクレス露光装置、特にマスクレスレーザ露光装置、
- 特にレーザスキャナを含む別のマスクレスシステム、
- マスクベースの露光装置、特にマスクアライナ、特に交換可能または変位可能なマスクを備えたステッパおよびスキャナ
に使用されてよい。
【0078】
特別な実施の形態では、本発明に係る方法は、マスクベースの露光装置に使用されてもよい。
【0079】
本発明に係る方法は、好ましくは、マスクレス露光装置、特にマスクレスレーザ露光装置に使用される。第1の実施の形態による好適な本発明に係る方法を以下に詳しく説明する。
【0080】
第1の本発明に係る方法の第1の方法ステップでは、基板が、少なくとも1つの第1の感光性の層によって被覆される。このためには、基板が、好ましくは、被覆用に固有に設けられた被覆装置内にローディングされ、そこで被覆される。
【0081】
被覆は、好ましくはスピンコーティングによって行われる。仮に感光性の被覆層が第1の実施の形態の被覆層である、つまり、ただ1つの層を有する被覆層である場合には、後続の層の被覆の次の第2の方法ステップを飛ばすことができる。
【0082】
これには、単一の被覆層が少なくとも2つの領域を有しているという前提があり、これによって、露光すべき種々異なるレイアウトを十分正確に分解することができる。
【0083】
第1の本発明に係る方法の第2の方法ステップでは、基板が、少なくとも1つの第2の感光性の層によって被覆される。好ましくは、この第2の感光性の層の被覆は、同一の被覆装置内で行われる。したがって、この被覆装置は、好ましくは、それぞれ異なる感光性のレジストの混ざり合いを阻止するために、少なくとも2つの完全な被覆手段、特にホースまたはノズルを備えている。本発明によれば、方法は、この第2の感光性の層に限定されていない。本発明に係る装置が、光学的に互いに分離可能なn個の波長を有する光子を放出することができる光子源を有している場合には、本発明によれば、互いに独立して露光可能なn個の感光性の層を重ね合わせて形成することが有意となることもある。以下では、本発明に係る方法を大抵2つの層に基づき説明する。n個の層への拡張も類似して当てはまる。
【0084】
本発明による特殊な実施の形態では、堆積させられた第1の層の波長感度が位置の関数として厚さ方向で変化する限り、第2の方法ステップは不要となる。
【0085】
第1の本発明に係る方法の第3の方法ステップでは、被覆された基板が、本発明に係る装置内にローディングされ、第1の位置への基板と光学系との間の相対移動が行われる。
【0086】
第1の本発明に係る方法の第4の方法ステップでは、第1の位置において、DMDのミラーが第1の構成に切り換えられる。特にプロセス加速のために、第1の構成へのDMDのミラーの切換は、すでに第3の方法ステップによる相対移動中に行われていてもよい。
【0087】
第1の本発明に係る方法の第5の方法ステップでは、第1の位置において、第1の構成にあるDMDのミラーに光子源によって第1の波長の光子が照射される。次いで、DMDにより形成すべき第1のレイアウトが、感光性の第1の領域に投影される。焦点の調整は、有利には不要である。
【0088】
第1の波長を有する光子は、有利には、存在する全ての領域を透過する。しかしながら、本発明によれば、被覆層の領域のうちの幾つかの領域だけ、特にただ1つの領域が、第1の波長の光子に対して感光性であるため、被覆層の領域のうちの幾つかの領域だけ、特にただ1つの領域が光化学的に変化もさせられる。
【0089】
第1の本発明に係る方法の第6の方法ステップでは、第1の位置において、DMDのミラーが第2の構成に切り換えられる。
【0090】
第1の本発明に係る方法の第7の方法ステップでは、第1の位置において、第2の構成にあるDMDのミラーに光子源によって第2の波長の光子が照射される。次いで、DMDにより形成すべき第2のレイアウトが、第2の領域に投影される。
【0091】
有利には、第2の領域への焦点の調整は不要である。第2の波長を有する光子は、存在する全ての領域を透過する。しかしながら、幾つかの領域だけ、特にただ1つの領域が、第2の波長の光子に対して感光性であるため、幾つかの領域だけ、特にただ1つの領域が光化学的に変化もさせられる。
【0092】
2つよりも多くの感光性の領域が存在する場合には、第6~第7の方法ステップが、DMDのミラーに対する別の構成と、別の波長とによって相応に繰り返されなければならない。
【0093】
第1の本発明に係る方法の第8の方法ステップでは、第2の位置への基板と光学系との間の相対移動が行われる。
【0094】
次いで、加工すべき全ての面が露光されるまで、第4~第8の方法ステップが繰り返される。
【0095】
第1の本発明に係る方法の第9の方法ステップでは、基板のアンローディングと、基板上の被覆層の現像とが行われる。現像は、有利には1回だけ実施されさえすればよい。
【0096】
記載した方法ステップは、必ずしも全てこの順序で行われる必要はない。好ましくは、記載した方法ステップのうちの幾つかが同時に実施される。特に、相対移動と、露光と、DMDの切換とが同時に行われるかまたは少なくとも方法ステップを互いに切り離して考えることがもはや不要であるかもしくは不可能であるほど迅速に行われる。
【0097】
特にこの同時性によって、スループットが相応に高くなり、経済性が高くなる。幾つかの方法ステップ同士の間の移行は少なくとも滑らかである。
【0098】
DMDを備えたマスクレス露光装置への本発明に係る方法の使用の可能性のほかに、第2の実施の形態による方法をマスク露光装置に使用することもできる。
【0099】
第2の本発明に係る方法の最初の3つの方法ステップは、第1の本発明に係る方法の最初の3つの方法ステップと同じである。
【0100】
第2の本発明に係る方法の第4の方法ステップでは、基板が、マスク露光装置内で第1のマスクに対して相対的にアライメントされる。好ましくは、基板が終端位置にもたらされ、固定される。その後、第1のマスクが基板に対して相対的に移動させられる。この場合、アライメントは、好ましくは、第1のマスクと基板との間でアライメントマークに基づき行われる。
【0101】
第2の本発明に係る方法の第5の方法ステップでは、第1のマスクを通して被覆層を第1の波長の光子によって全面にわたって露光することが行われる。
【0102】
第2の本発明に係る方法の第6の方法ステップでは、第1のマスクが第2のマスクと交換される。
【0103】
第2の本発明に係る方法の第7の方法ステップでは、基板が、マスク露光装置内で第2のマスクに対して相対的にアライメントされる。好ましくは、基板はその固定された終端位置にとどまっている。その後、好ましくは、第2のマスクが基板に対して相対的に移動させられる。この場合、アライメントは、好ましくは、第2のマスクと基板との間でアライメントマークに基づき行われる。
【0104】
第2の本発明に係る方法の第8の方法ステップでは、第2のマスクを通して被覆層を第2の波長の光子によって全面にわたって露光することが行われる。
【0105】
被覆層が更なる露光のために設計されている限り、次いで、第6~第8の方法ステップが、別のマスクおよび波長に対して繰り返されてよい。
【0106】
第2の本発明に係る方法の第9の方法ステップでは、基板のアンローディングが行われる。
【0107】
第2の本発明に係る方法の第10の方法ステップでは、基板上の被覆層の現像が行われる。現像は、有利には1回だけ実施されさえすればよい。
【0108】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、以下の好適な実施例の説明ならびに図面に基づき明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1a】第1の本発明に係る方法の第1の方法ステップを示す図である。
【
図1b】第1の本発明に係る方法の第2の方法ステップを示す図である。
【
図1c】第1の本発明に係る方法の第3の方法ステップを示す図である。
【
図1d】第1の本発明に係る方法の第4および第5の方法ステップを示す図である。
【
図1e】第1の本発明に係る方法の第6および第7の方法ステップを示す図である。
【
図1f】第1の本発明に係る方法の第8の方法ステップを示す図である。
【
図2a】第2の本発明に係る方法の第3および第4の方法ステップを示す図である。
【
図2b】第2の本発明に係る方法の第5の方法ステップを示す図である。
【
図2c】第2の本発明に係る方法の第6、第7および第8の方法ステップを示す図である。
【0110】
図中、同一の構成部材または同一の機能を有する構成部材には、同一の符号が付してある。
【0111】
図面は正確な縮尺になっていない。特に、基板1と比較して、感光性の層3a,3bと光学系4の全ての要素とを正確な縮尺で図示していない。
【0112】
本発明による原理は、例えば、各々の領域を個々の被着された層として図示することによって、最も簡単にかつ最も効率よく示してある。したがって、以下の
図1a~
図1fにおいて、本発明に係る方法を被覆層3に基づき説明する。この被覆層3は2つの感光性の層3a,3bから成っている。これら両方の感光性の層3a,3bは、それぞれ異なる波長の光子にそれぞれ異なる強さで反応する領域を成している。当業者が認めているように、両方の層3a,3bは、より一般的には、例えば、いずれ被覆層と等しくなる単一の層の一部である領域と見なすこともできる。この場合には、
図1a~
図1bにおける2つの層の被着を単一の層の被着に置き換えて考える必要がある。
【0113】
図1aには、第1の本発明に係る方法の第1の方法ステップが示してある。この第1の方法ステップでは、基板1が、被覆システム2の第1の単一の被覆要素2a、好ましくはホースまたはノズルを介して第1の感光性の層3aによって被覆される。つまり、第1の方法ステップでは、感光性の層3aが被覆層の第1の領域に相当している。被覆は、好ましくはスピンコータによって行われる。この場合、感光性の層3aは、
図1に示したように、中心の軸線を中心とした基板1の回転によって基板1の基板表面にわたって分配される。感光性の層3aを基板1に被着するためには、別のあらゆる形態の被覆プロセスが使用されてよい。感光性の層3aは、第1の波長を有する第1の種類の光子に対して感応性である。
【0114】
図1bには、第1の本発明に係る方法の第2の方法ステップが示してある。この第2の方法ステップでは、基板1が、被覆システム2の第2の単一の被覆要素2a、好ましくはホースまたはノズルを介して第2の感光性の層3bによって被覆される。つまり、第2の方法ステップでは、感光性の層3bが被覆層の第2の領域に相当している。被覆は、好ましくはスピンコータによって行われる。この場合、感光性の層3bは、
図1bに示したように、中心の軸線を中心とした基板1の回転によって第1の感光性の層3aの表面にわたって分配される。感光性の層3aを感光性の層3aの表面に被着するためには、別のあらゆる形態の被覆プロセスが使用されてよい。感光性の層3bは、第2の波長を有する第2の種類の光子に対して感応性である。両方の感光性の層3a,3bは被覆層3を形成している。被覆層3に更なる感光性の層を追加することが可能である。しかしながら、図面を可能な限り簡単に保つために、本発明に係る方法を、2つの感光性の層3a,3bを備えた層列3に基づいてのみ説明することにする。
【0115】
感光性の層3a,3bは、特に、入射する光子の波長に対する感度に関して、それぞれ異なる物理的かつ/または化学的な特性を有しているので、感光性の層3a,3bを形成する材料を互いに別個の2つの個々の被覆要素2a,2bを介して堆積させることが特に有利である。また、被覆システム2が、ただ1つの被覆要素しか有していないことも可能である。
【0116】
図1cには、第1の本発明に係る方法の第3の方法ステップが示してある。この第3の方法ステップでは、基板1が、光学系4の下方で第1の位置に位置決めされる。基板1と光学系4との間の相対移動は、後続の図面において、基板1が、静止していると見なされる光学系4に対して相対的に移動させられるように示してある。光学系4は、特に、少なくとも2つの個々の光子源5a,5bから成る光子源5を有している。それぞれ異なる波長を有する光子の起点に対するグラフィック表示が、個々の光子源5a,5bである。これらの個々の光子源5a,5bは、必ずしも2つの異なる構成部材または構成部材群である必要はない。例えば、光子源5が水銀放射線源であることも可能である。水銀は、それぞれ異なる波長を有する光子を放出することができるので、水銀放射線源は、複数の、特に少なくとも2つの個々の光子源5a,5bから成っていてもよい。本発明による光子源5もしくは光学系6は、フィルタ6a,6bを有している。このフィルタ6a,6bによって、個々の光子源5a,5bのどちらの光子を露光のために使用するのかを決定することができる。フィルタを必ずしも単一の構成部材または構成部材群と解釈する必要はない。LEDまたはLEDアレイから構成された個々の光子源5a,5bの使用時には、機械的、電気的または光学的なフィルタは不要である。なぜならば、LEDのスイッチのオンもしくはオフによって、相応の個々の光子源5a,5bの光子流を直接制御することができるからである。これに関連して、個々の光子源5a,5bの光子のフィルタリングとは、光子源5a,5bのスイッチのオフを意味している。フィルタ6a,6bは、好ましくは固有の構成部材もしくは構成部材群として形成され、根底を成す光子源5が、全く切り換えることができないもしくは十分迅速には切り換えることができないまたは自発的に多色である少なくとも1つの個々の光子源5a,5bを有している場合には、電子的かつ/または光学的かつ/または機械的に切り換えられる。したがって、多色の水銀スペクトルの2つの放出ラインを互いに正確に分離することができるようにするために、水銀放射線源から成る光子源5は、フィルタ6a,6bを有していなければならない。
【0117】
後続の両図において、露光の原理をレイアウト10a,10bに基づき詳しく説明する。個々の感光性の層5a,5bに対してポジ型レジストおよび/またはネガ型レジストが使用されてよい。本例は、ネガ型レジスト、つまり、光子が衝突した感光性の層3a,3bの材料がその箇所で架橋され、相応の加熱ステップおよび/または現像ステップ後に残されるレジストに基づき説明することにする。該当箇所は黒色の領域として図示してある。
【0118】
図1dには、第1の本発明に係る方法の第4および第5の方法ステップが示してある。この第4および第5の方法ステップでは、DMD7のミラーが第1の構成に切り換えられる。さらに、フィルタ6aが開放され、フィルタ6bが閉鎖される。第1の単一の光子源5aの第1の波長の光子だけをDMD7に投影することができる。その後、このDMD7がその個々のミラーによって光子流の空間分解式のフィルタリングを実施し、所望のレイアウト区分10aを二次光線8aとして被覆層3に投影する。したがって、第1の種類の光子の波長によって、専ら第1の感光性の層3aにのみ、つまり、深さ範囲9a内にだけ、光子と分子との化学的もしくは物理的な反応が生じる。先行技術と異なり、本発明に係る方法によって、第1の感光性の層3aの第1の深さ範囲9aへの光子流の合焦が実施される必要はない。第1の波長の光子は、第2の感光性の層3bを通過する。その際、この第2の感光性の層3bでは、第2の深さ範囲9bの露光を生じさせる化学的かつ/または物理的な反応は発生させられない。
【0119】
拡大図には、DMD7により感光性の層3aに投影されたレイアウト区分10aが示してある。DMD7の個々のミラーは、DMDの外周側のミラー、つまり、側方のミラーだけが光子を感光性の層3aに露光するように切り換えられている。これによって、のちにキャビティ11の壁を形成することになる縁部状の領域が露光されている。
【0120】
図1eには、第1の本発明に係る方法の第6および第7の方法ステップが示してある。この第6および第7の方法ステップでは、DMD7のミラーが第2の構成に切り換えられる。さらに、フィルタ6bが開放され、フィルタ6aが閉鎖される。第2の単一の光子源5bの第2の波長の光子だけをDMD7に投影することができる。その後、このDMD7がその個々のミラーによって光子流の空間分解式のフィルタリングを実施し、全般的に
図4に示したレイアウト区分と異なる所望のレイアウト区分10bを二次光線8bとして被覆層3に投影する。したがって、第1の種類の光子の波長によって、専ら第2の感光性の層3bにのみ、つまり、深さ範囲9b内にだけ、光子と分子との化学的もしくは物理的な反応が生じる。先行技術と異なり、本発明に係る方法によって、第2の感光性の層3bの第2の深さ範囲9bへの光子流の合焦が実施される必要はない。第2の波長の光子は、一般的に第1の感光性の層3aにも達する。その際、この第1の感光性の層3aでは、第2の深さ範囲9aの露光を生じさせる化学的かつ/または物理的な反応は発生させられない。
【0121】
拡大図には、DMD7により感光性の層3bに投影されたレイアウト区分10bが示してある。DMD7の個々のミラーは、ほぼ全てのミラーが、第2の波長を有する光子を感光性の層3bに投影するように切り換えられている。左上もしくは右下の領域で露光を実施することができる幾つかのミラーだけが、光子を感光性の層3bに投影しないように切り換えられている。これによって、のちの加熱ステップおよび/または現像ステップ後にカバー12に出入り口13を形成する本発明による領域を形成し、外界をキャビティ11(
図1d参照)に接続することができる。
【0122】
図1fには、第1の本発明に係る方法の第8の方法ステップが示してある。この第8の方法ステップでは、第2の位置への基板1と光学系4との間の相対移動が生じる。なお、
図1d~
図1fに示した方法ステップは任意に多数の位置に対して繰り返されてよい。
【0123】
これらの方法ステップ後、後続のプロセスステップ、特に被覆層列3の現像が行われる。有利には、単に1回の現像ステップしか必要とならない。
【0124】
図面によって、本発明に係る方法が、キャビティ11と、カバー13と、出入り口12とから成る少なくとも1つの3次元のパターンを基板1上の層列3における1つ以上の箇所に形成すべきステップアンドリピートプロセスであるという印象を生じさせることができるはずである。本発明に係る方法は、光学系4を基板1に対して相対的に第1の位置に位置決めして、この第1の位置にこのような3次元のパターンを形成し、その後、複数の別の位置への複数回の更なる相対移動を実施して、更なる3次元のパターンを形成するために極めて良好に適しているにもかかわらず、これによって、それ以上のことをもたらすことができる。
【0125】
特に、形成したい3次元のパターンが、DMD7自体の露光パターンよりも大きい場合には、3次元のパターンが、光学系4と基板1との間の相対移動中にDMDのミラーの連続的なプログラミングによって相対移動中に露光されなければならない。光子源5と層列3との使用は、特に、このような連続的な相対移動およびDMD7のミラーの連続的な切換プロセスの観点で考慮されなければならない。
【0126】
以下に、マスク技術に基づく代替的な本発明に係る方法を説明する。
【0127】
図1a~1bは、第2の本発明に係る方法にも同様に使用することができ、改めて示さないことにする。
【0128】
図2aには、第2の本発明に係る方法の第3および第4の方法ステップが示してある。この第3および第4の方法ステップでは、被覆層3を備えた基板1がマスク露光装置内にローディングされる。このマスク露光装置もやはり、面露光のために設計された光学系4’を有している。特に、光子を基板1の方向に反射させる光学要素、例えばミラー、好ましくはコールドミラー14が設けられていてよい。この装置は、少なくとも2つの個々の光子源5a,5bを備えた光子源5と、フィルタ6a,6bとを有している。前述した文面部分に基づく個々の光子源5a,5bおよびフィルタ6a,6bに対する言及が類似に当てはまる。
【0129】
図2bには、第2の本発明に係る方法の第5の方法ステップが示してある。この第5の方法ステップでは、第1の開口16aを有する第1のマスク15aが、光学系4’と基板1との間に挿入される。第1のマスク15aは、特に基板1に対して相対的に、好ましくはアライメントマーク(図示せず)によってアライメントされる。フィルタ6a(図示せず)が開放もしくは除去されるかまたは第2のフィルタ6bが閉鎖された状態に保たれる。これによって、第1の波長を有する光子が、第1の単一の光子源5aから出射し、第1のマスク15aの開口16aを通って被覆層3に投影される。層列3の第1の感光性の層3aだけが、第1の単一の光子源5aの第1の波長の光子に対して感応性であるので、この光子が第2の感光性の層3bも貫通しているにもかかわらず、露光された第1の深さ範囲9aでのみ化学的かつ/または物理的な反応が行われる。
【0130】
図2cには、第2の本発明に係る方法の第6、第7および第8の方法ステップが示してある。この第6、第7および第8の方法ステップでは、まず、第1のマスク15a(図示せず)が第2のマスク15bと交換されている。この第2のマスク15bは第2の開口16bを有している。第2のマスク15bは、特に基板1に対して相対的に、好ましくはアライメントマーク(図示せず)によってアライメントされる。本発明によれば、フィルタ6b(図示せず)が開放もしくは除去されるかまたは第2のフィルタ6aが閉鎖された状態に保たれる。これによって、第2の波長を有する光子が、第2の単一の光子源5bから出射し、第2のマスク15bの開口16bを通って被覆層3に投影される。層列3の第2の感光性の層3bだけが、第2の単一の光子源5bの第2の波長の光子に対して感応性であるので、この光子が第1の感光性の層3aにも達しているにもかかわらず、露光された第2の深さ範囲9bでのみ化学的かつ/または物理的な反応が行われる。
【0131】
これらの方法ステップ後、後続のプロセスステップ、特に被覆層列3の現像が行われる。有利には、単に1回の現像ステップしか必要とならない。
【符号の説明】
【0132】
1 基板
2 被覆システム
2a,2b 個々の被覆要素
3 被覆層
3a,3b 領域/感光性の層
4,4’ 光学系
5 放射線装置、光子源
5a,5b 個々の光子源
6a,6b フィルタ
7 デジタルマイクロミラーユニット、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)
8a,8b 二次光線
9a,9b 露光された深さ範囲
10a,10b レイアウト区分
11 キャビティ
12 カバー
13 出入り口
14 ミラー
15a,15b マスク
16a,16b 開口
【手続補正書】
【提出日】2022-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの感光性の第1の領域(3a)と感光性の第2の領域(3b)とを有する感光性の被覆層(3)を露光する方法であって、前記第1の領域(3a)は、第1の波長の光子に反応し、前記第2の領域(3b)は、第2の波長の光子に反応し、前記第1の波長は、前記第2の波長と異なっており、前記方法は、
- 前記被覆層(3)を前記第1の波長の前記光子で露光し、
- 前記被覆層(3)を前記第2の波長の前記光子で露光する
ステップ、特にシーケンスを有
し、
前記感光性の領域(3a,3b)への前記光子の合焦を行わない、方法。
【請求項2】
前記被覆層(3)を、動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニット(7)によって露光する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被覆層(3)を少なくとも1つのマスク(15a,15b)を通して露光する、請求項1から2までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項4】
前記第1の波長の前記光子での前記被覆層(3)の露光によって、前記第1の領域(3a)でのみ光化学的な反応を発生させ、前記第2の波長の前記光子での前記被覆層(3)の露光によって、前記第2の領域(3b)でのみ光化学的な反応を発生させる、請求項1から3までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
前記被覆層(3)を空間分解式にかつ/または点状に、特に光線束を用いて露光する、請求項1から4までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
前記被覆層(3)を、個別に制御可能な光子源(5)によって露光し、前記光子の前記波長および/または線量を調整する、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記被覆層(3)を、広帯域の光子源(5)の前方に設けられたフィルタ(6a,6b)の調整によって露光し、前記波長および/または線量を調整する、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記被覆層(3)のそれぞれ異なる深さ範囲を相次いで反応させる、請求項1から7までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
前記被覆層(3)は、該被覆層(3)の厚さにわたって変化する、同一の波長の光子に対する感度を有する、請求項1から8までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の領域(3a)を第1の層として形成し、前記第2の領域(3b)を前記第1の層上に第2の層として形成する、請求項1から9までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの感光性の第1の領域(3a)と感光性の第2の領域(3b)とを有する感光性の被覆層(3)を露光する装置であって、前記感光性の第1の領域(3a)は、第1の波長の光子に反応し、前記感光性の第2の領域(3b)は、第2の波長の光子に反応し、前記第1の波長は、前記第2の波長と異なっており、前記被覆層(3)を前記第1の波長の前記光子で露光しかつ前記被覆層(3)を前記第2の波長の前記光子で露光するための放射線装置(5)を有
し、
前記感光性の領域(3a,3b)への前記光子の合焦が行われない、装置。
【請求項12】
前記被覆層(3)を露光する動的に制御可能な装置、特にデジタルマイクロミラーユニット(7)を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記被覆層(3)を露光する少なくとも1つのマスク(15a,15b)を有する、請求項11から12までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項14】
前記被覆層(3)を前記放射線装置(5)に対して移動させる可動の保持体を有する、請求項11から13までの少なくとも1項記載の装置。
【国際調査報告】