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特表2023-542583慢性呼吸器疾患治療における患者参与の維持のための接続型酸素治療システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】慢性呼吸器疾患治療における患者参与の維持のための接続型酸素治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
A61M16/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577428
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2021055707
(87)【国際公開番号】W WO2021260652
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/044,172
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522412471
【氏名又は名称】レズメド アジア プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレス、アレクシア、ジュディス、クローディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】チュア、フェ、ソン
(72)【発明者】
【氏名】マウン、キーイ、トゥ
(72)【発明者】
【氏名】ロウ、キーン、ワァ
(72)【発明者】
【氏名】スミトロ、ティルザ
(72)【発明者】
【氏名】オーイ、ワイ、ローン
(72)【発明者】
【氏名】リム、キアン、ブーン
(72)【発明者】
【氏名】タン、テック、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ホア、チュン
(72)【発明者】
【氏名】チア、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】リ、シン、チン
(72)【発明者】
【氏名】ロー、ユ、ファン
(57)【要約】
ユーザの呼吸器疾病の管理のためのシステムおよび方法が開示される。システムは、ユーザへ送達するための酸素富化空気を生成するように構成された圧縮システムを有する酸素濃縮器を含む。生理学的センサは、ユーザの生理学的データを収集するように構成される。生理学的データは、1つ以上のデータ形式を有する。動作センサは、酸素濃縮器の動作時において酸素濃縮器の動作データを収集するように構成される。動作データは、1つ以上のデータ形式を有する。プロセッサは、収集された生理学的データおよび動作データを受信し、各データ形式の値についてサマリーパラメータを計算するように構成される。また、プロセッサは、サマリーパラメータ値から健康スコアを計算するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃縮器のユーザについて健康スコアを計算する方法であって、
前記ユーザの生理学的データを収集することであって、前記生理学的データは、1つ以上のデータ形式を有する、こと、
前記酸素濃縮器の動作時において前記酸素濃縮器の動作データを収集することであって、前記動作データは、1つ以上のデータ形式を有する、こと、
各データ形式の複数の値についてサマリーパラメータを計算すること、および
前記サマリーパラメータの値から前記健康スコアを計算すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記健康スコアを計算することは、
各サマリーパラメータについての貢献を計算すること、および
前記貢献から前記健康スコアを計算すること、を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記サマリーパラメータについての貢献を計算することにおいて、前記サマリーパラメータに対応するデータ形式と関連付けられたベースラインが用いられ、前記ベースラインは、ウェルビーイングにとって有益なデータ形式の値を示す、請求項2の方法。
【請求項4】
前記ベースラインは、前記データ形式のウェルビーイング分布を示す、請求項3の方法。
【請求項5】
前記ベースラインは、前記ユーザを含む1つのクラスのユーザにとって特有である、請求項3または請求項4の方法。
【請求項6】
前記健康スコアを計算することは、各貢献について重み付けを適用することを含む、請求項2~請求項5のうちいずれか一項の方法。
【請求項7】
前記重み付けは、前記ユーザを含む1つのクラスのユーザにとって特有である、請求項6の方法。
【請求項8】
前記データ形式は、前記ユーザを含む1つのクラスのユーザにとって特有となるように選択される、請求項1~請求項7のうちいずれか一項の方法。
【請求項9】
前記健康スコアをコンピューティングデバイスのディスプレイ上に表示することをさらに含む、請求項1~請求項8のうちいずれか一項の方法。
【請求項10】
前記計算された健康スコアに基づいて前記酸素濃縮器の酸素出力を調節することをさらに含む、請求項1~請求項9のうちいずれか一項の方法。
【請求項11】
ユーザの呼吸器疾病を管理するためのシステムであって、
酸素濃縮器であって、
前記ユーザへ送達するための酸素富化空気を生成するように構成された圧縮システム;
前記ユーザの生理学的データを収集するように構成された生理学的センサであって、前記生理学的データは、1つ以上のデータ形式を有する、生理学的センサ;
前記酸素濃縮器の動作時において前記酸素濃縮器の動作データを収集するように構成された動作センサであって、前記動作データは、1つ以上のデータ形式を有する、動作センサ;を含む、酸素濃縮器、
プロセッサであって、
前記収集された生理学的データおよび前記動作データを受信すること、
各データ形式の値についてサマリーパラメータを計算すること、および
前記サマリーパラメータの値から健康スコアを計算すること、を行うように構成されたプロセッサ、を含む、システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記酸素濃縮器のコントローラの一部である、請求項11のシステム。
【請求項13】
前記酸素濃縮器と通信するように構成されたポータブルコンピューティングデバイスをさらに含み、前記プロセッサは、前記ポータブルコンピューティングデバイスのプロセッサである、請求項11のシステム。
【請求項14】
ディスプレイをさらに含み、前記プロセッサは、前記健康スコアを前記ディスプレイ上に表示するようにさらに構成される、請求項11~13のうちいずれか一項のシステム。
【請求項15】
前記ディスプレイは、前記酸素濃縮器のディスプレイである、請求項14のシステム。
【請求項16】
前記酸素濃縮器と通信するように構成されたポータブルコンピューティングデバイスをさらに含み、前記ディスプレイは、前記ポータブルコンピューティングデバイスのディスプレイである、請求項14のシステム。
【請求項17】
前記酸素濃縮器は、遠隔コンピューティングデバイスと通信するように構成されたモジュールをさらに含む、請求項11~請求項16のうちいずれか一項のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記遠隔コンピューティングデバイスから受信された結果に基づいて前記健康スコアを計算するように構成される、請求項17のシステム。
【請求項19】
前記結果は、前記ユーザを含むユーザのクラスに特有である、請求項18のシステム。
【請求項20】
前記酸素濃度は、コントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記健康スコアを受信し、前記圧縮システムを制御して、前記受信された健康スコアに基づいて、前記ユーザへ送達するための、異なるレベルの酸素富化空気を生成する、請求項18のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポータブル酸素濃縮器(POC)に主に関し、より詳細には、慢性呼吸器疾患の長期酸素治療における患者参与の維持のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
補充酸素を長期酸素治療(LTOT)の一環として必要とするユーザ(患者)が、多数存在する。現在、LTOTを受けているほとんどのユーザは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という一般的カテゴリ下において診断される。このような一般的診断に含まれる一般的疾患の例として、慢性気管支炎、肺気腫および関連する肺疾病がある。補充酸素は、他のユーザからも必要とされている(例えば、高い活動レベルの維持を必要とする肥満者、嚢胞性繊維症のユーザまたは気管支肺異形成症の幼児)。
【0003】
医師は、これらのユーザのために、酸素濃縮器または医療用酸素のポータブルタンクを処方し得る。一般的には、特定の連続的酸素流量が処方される(例えば、1リットル/分(LPM)、2LPM、3LPMなど)。この分野における専門家によれば、これらのユーザが運動を行うと、疾患進行の抑制、生活の質の向上およびユーザ寿命の延びという長期的恩恵が得られることも判明している。しかし、トレッドミルおよび定置式自転車などの定置型の運動は、これらのユーザにとって激し過ぎる。そのため、移動性の必要性が、長く認識されている。最近まで、この移動性は、ドリーホイールを備えたカート上に取り付けられた小型圧縮酸素タンクまたはシリンダーの使用によって促進されている。これらのタンクの不利点として、酸素容量が限られており、取り付け時の重量も、約50ポンドと高重量である。
【0004】
酸素濃縮器は、呼吸治療用の酸素供給のために、約50年間使用されている。酸素濃縮器は、周期的なプロセス(例えば、真空スイング吸着(VSA)、圧力スイング吸着(PSA)または真空圧力スイング吸着(VPSA))を実行し得る。例えば、酸素濃縮器(例えば、POC)は、スイング吸着プロセス(例えば、真空スイング吸着、圧力スイング吸着または真空圧力スイング吸着(本明細書中、これらをそれぞれ、「スイング吸着プロセス」と呼ぶ))において、減圧(例えば、真空動作)および/または加圧(例えば、コンプレッサ動作)に基づいて機能し得る。圧力スイング吸着においては、1つ以上のコンプレッサの使用により、ガス分離吸着剤の粒子を含む1つ以上のキャニスタの内部のガス圧力を増加させることが必要になり得る。このようなキャニスタが大規模なガス分離吸着剤(例えば、ガス分離吸着剤の層)を含む場合、シーブベッドとして機能し得る。圧力増加と共に、ガス中の特定の分子が、ガス分離吸着剤上に吸着され得る。加圧条件下においてキャニスタ中のガスの一部が除去されると、吸着されなかった分子が吸着された分子から分離される。その後、吸着された分子は、シーブベッドの通気によって脱着され得る。酸素濃縮器についてのさらなる詳細について、例えば米国公開特許出願第2009-0065007号(公開日:2009年3月12日、タイトル「Oxygen Concentrator Apparatus and Method」)に記載がある。本明細書中、同文献を参考のため援用する。
【0005】
周囲空気は、およそ78%の窒素および21%の酸素を一般的に含み、そのバランスの内訳は、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気および他の微量ガスである。酸素よりも窒素をより吸着するガス分離吸着剤を含むキャニスタ内を例えば空気などのガス混合物を圧力下において通過させると、窒素の一部または全体はキャニスタ中に残留し、キャニスタから退出したガスは、酸素を豊富に含むようになる。シーブベッドの窒素の吸着能力が終端に到達した場合、吸着された窒素は、通気によって脱着され得る。その後、シーブベッドは、別の酸素富化空気生成の「サイクル」に対して準備ができる。2キャニスタシステム中のキャニスタの加圧を交互に行うことにより、一方のキャニスタにより酸素の分離が行われ得る間、他方のキャニスタが通気され得(その結果、空気からの酸素分離がほぼ連続的に行われる)。このようにして、ユーザへの補充酸素の提供などの多様な用途のために、酸素富化空気が、例えば保存コンテナあるいは(キャニスタへ連結された)他の加圧可能なベッセルまたは導管中に蓄積され得る。
【0006】
真空スイング吸着(VSA)により、別のガス分離技術が得られる。VSAの場合、典型的には真空(例えば、シーブベッド内に真空を発生させるように構成されたコンプレッサ)を用いたシーブベッドの分離プロセスを通じてガス引き込みを行う。真空圧力スイング吸着(VPSA)は、真空および加圧技術の組み合わせを用いたハイブリッドシステムとして理解され得る。例えば、VPSAシステムは、分離プロセスのためにシーブベッドを加圧し得、シーブベッドの減圧のために真空も付加し得る。
【0007】
従来の酸素濃縮器の場合、嵩高かつ高重量であるため、酸素濃縮器を装着しながら通常の歩行活動を行うことは、困難かつ非実際的である。最近、大型の定置型酸素濃縮器の製造会社は、ポータブル酸素濃縮器(POC)の開発を開始している。POCの利点として、理論的には酸素をエンドレスに供給でき、患者に移動性を提供できる点がある。これらのデバイスを移動性のために小型にするために、酸素富化空気生成に必要な多様なシステムが高密度化されている。重量、サイズおよび消費電力を最小限にするためには、POCは、生成された酸素の使用をできるたけ効率化する必要が有る。いくつかの実装形態において、これは、酸素を一連のパルスとして送達させることによって達成され得、各パルスまたは「ボーラス」は、吸息開始と同時発生するようにタイミングがとられる。この治療モードは、定置型酸素濃縮器により適している従来の連続流送達と対照的に、パルス型酸素送達(POD)またはデマンドモードとして公知である。PODモードは、保存部と共に実行され得る。この保存部は、本質的にはセンサ付きの活性弁であり、吸息開始を決定するために用いられる。
【0008】
長期酸素治療などの任意の形態の長期治療を受けている患者の場合、治療をやり通すための励みを必要とすることがある。そのような励み無しには、治療の利用の低減またはさらには停止に繋がり得、患者にとっての恩恵が全て奪われることになる。よって、POCを利用している患者の参与を保持し、患者が自身のPOCを用いて自身の必要性に合わせて個別化された様態で長期酸素治療を得るためのシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、慢性呼吸器疾患の管理のための接続型酸素治療システムに関する。
【0010】
1つの開示の例は、酸素濃縮器のユーザについて健康スコアを計算する方法である。ユーザの1つ以上のデータ形式を有する生理学的データが、収集される。酸素濃縮器の1つ以上のデータ形式の動作データが、酸素濃縮器の動作時において収集される。各データ形式の複数の値について、サマリーパラメータが計算される。サマリーパラメータ値から、健康スコアが計算される。
【0011】
この例示的方法のさらなる実装形態としての実施形態において、健康スコアを計算することは、各サマリーパラメータについての貢献を計算することと、貢献から健康スコアを計算することとを含む。別の実装形態では、サマリーパラメータについての貢献を計算することにおいて、サマリーパラメータに対応するデータ形式と関連付けられたベースラインが用いられる。ベースラインは、ウェルビーイングにとって有益なデータ形式の値を示す。別の実装形態において、ベースラインは、データ形式のウェルビーイング分布を示す。別の実装形態において、ベースラインは、ユーザを含む1つのクラスのユーザに特有である。別の実装形態において、健康スコアを計算することは、各貢献について重み付けを適用することを含む。別の実装形態において、重み付けは、ユーザを含む1つのクラスのユーザにとって特有である。別の実装形態において、データ形式は、ユーザを含む1つのクラスのユーザにとって特有となるように選択される。別の実装形態において、方法は、健康スコアをコンピューティングデバイスのディスプレイ上に表示することを含む。
【0012】
別の開示の例は、患者の呼吸器疾病を管理するためのシステムである。システムは、ユーザへ送達するための酸素富化空気を生成するように構成された圧縮システムを有する酸素濃縮器を含む。生理学的センサは、ユーザの生理学的データを収集するように構成される。生理学的データは、1つ以上のデータ形式を有する。動作センサは、酸素濃縮器の動作時において酸素濃縮器の動作データを収集するように構成される。動作データは、1つ以上のデータ形式を有する。プロセッサは、収集された生理学的データおよび動作データを受信し、各データ形式の値についてサマリーパラメータを計算するように構成される。また、プロセッサは、サマリーパラメータ値から健康スコアを計算するように構成される。
【0013】
例示的システムのさらなる実装形態としての実施形態において、プロセッサは、酸素濃縮器のコントローラの一部である。別の実装形態において、システムは、酸素濃縮器と通信するように構成されたポータブルコンピューティングデバイスを含む。この実装形態において、プロセッサは、ポータブルコンピューティングデバイスのプロセッサである。別の実装形態において、システムは、ディスプレイを含む。プロセッサは、健康スコアをディスプレイ上に表示する。別の実装形態において、ディスプレイは、酸素濃縮器のディスプレイである。別の実装形態において、システムは、酸素濃縮器と通信するように構成されたポータブルコンピューティングデバイスを含む。ディスプレイは、ポータブルコンピューティングデバイスのディスプレイである。別の実装形態において、酸素濃縮器は、遠隔コンピューティングデバイスと通信するように構成されたモジュールをさらに含む。別の実装形態において、プロセッサは、遠隔コンピューティングデバイスから受信された結果に基づいて健康スコアを計算する。別の実装形態において、結果は、ユーザを含む1つのクラスのユーザに特有である。
【0014】
上記サマリーは、本開示の各実施形態または各態様を示すことを意図していない。すなわち、上記のサマリーによって提供されるのは、本明細書中に記載される新規の態様および特徴の一部の例に過ぎない。上記の特徴および利点と、本開示の他の特徴および利点とが、本発明の実施のための代表的な実施形態およびモードの以下の詳細な記載が添付図面および添付の特許請求の範囲と共に鑑みられれば、そのような記載から容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本技術の一形態による酸素濃縮器を示す。
図1B図1Aの酸素濃縮器の構成要素の概略図である。
図1C図1Aの酸素濃縮器の主要構成要素の側面図である。
図1D図1Aの酸素濃縮器の圧縮システムの斜視側面図である。
図1E】熱交換導管を含む圧縮システムの側面図である。
図1F図1Aの酸素濃縮器の例示的出口構成要素の概略図である。
図1G図1Aの酸素濃縮器の出口導管を示す。
図1H図1Aの酸素濃縮器の別の出口導管を示す。
図1I図1Aの酸素濃縮器の分解されたキャニスタシステムの斜視図である。
図1J図1Iのキャニスタシステムの端面図である。
図1K図1Jに示すキャニスタシステム端部の組立図である。
図1L】(図1Jおよび図1Kに示すものに対する)図1Iのキャニスタシステムの対向端の図である。
図1M図1Lに示すキャニスタシステム端部の組立図である。
図1N図1Aの酸素濃縮器と通信し得る例示的デバイスの通信配置構成のブロック図である。
図1O図1Aの酸素濃縮器の例示的コントロールパネルを示す。
図2】POCからのデータ収集および当該データの分析を可能にする接続型酸素治療システムのブロック図である。
図3】本技術の1つの実装形態による、図2の接続型酸素治療システムにおける酸素治療を受けているユーザの現在の健康の状態を示す健康スコア/ウェルビーイングを計算する方法を示すフローチャートである。
図4A図3の方法の実行後に図2のポータブルコンピューティングデバイスとして機能するスマートフォンの例示的画面を含む。
図4B図3の方法の実行後に図2のポータブルコンピューティングデバイスとして機能するスマートフォンの例示的画面を含む。
図5】本技術の1つの実装形態による、図2の接続型酸素治療システム中の機械学習アルゴリズムの役割を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、例示的実施形態の以下の記載および添付図面から、より深く理解される。
【0017】
本開示は、多様な改変および別の形態が可能である。いくつかの代表的な実施形態が、例示目的のために図中に示され、本明細書中において詳細に説明される。しかし、本発明は、開示の特定の形態に制限されることを意図していないことが理解されるべきである。すなわち、本開示は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の意図および範囲内に収まる改変物、相当物および代替物を全て網羅する。
【0018】
本発明は、多数の異なる形態において具現化され得る。代表的な実施形態が図面中に示され、これらの実施形態について、本明細書中詳述する。本開示は、本開示の原理の例または例示であり、例示の実施形態の開示の広範な態様を制限することを意図していない。この範囲まで、要素および制限が、例えば要約書、概要および詳細な説明のセクション中に開示されるが、特許請求の範囲中には明示的に記載されない。これらの要素および制限は、単独であっても集合としてであっても特許請求の範囲中に(暗示的に、推定的にまたは他の様態で)含まれるべきではない。以下の詳細な説明の目的のため、他に明記無き限り、単数形の場合は、複数形が含まれ、またその逆も成立する。「含む」という言葉は、「非限定的に含む」という意味である。さらに、「約」、「ほとんど」、「実質的に」、「およそ」などの近似の用語は、例えば、「~である」、「~に近い」または「ほとんど~である」または「3~5%内である」または「受容可能な製造公差内である」あるいはこれらの任意の論理的組み合わせを意味するものとして用いられ得る。
【0019】
本開示は、複数の酸素濃縮器デバイスによって収集された動作データを活用して、患者の健康状態の分析をクラウドベースのエンジン中に提供するシステムに関連する。システムにより、接続型のケアサービス値がヘルスケア(および特に統合型ケア)市場において提供され、これにより、通信技術および機械学習技術によってサポートされた酸素濃縮器のデバイスおよびサービスにおける感知技術の採用により、ケアの負担が低減される。
【0020】
ポータブル酸素濃縮器(POC)などの例示的酸素濃縮器デバイスは、動作データ(例えば、酸素投与量)および生理学的データ(例えば、呼吸速度および吸気時間)の監視および収集を行い得る。この例示的POCは、接続された身体用パッチ上のさらなるセンサまたは電気感知または光学感知を用いた健康監視デバイス(例えば、スマートウォッチ、ブレスレットまたはリング)から生理学的データも収集し得る。データは、他の治療デバイス(例えば、患者によって用いられるスマート吸入器)からも統合され得る。例示的POCから、収集されたデータがネットワークを介して遠隔コンピューティングデバイス(例えば、サーバ)へ送信され得る。
【0021】
本開示は、サーバ上において実行される健康データ分析エンジンにも関連する。健康データ分析エンジンは、酸素濃縮器から送信されたデータを収集することと、多様な形式のデータおよびユーザ母集団から集められた他のデータについてベースラインを計算することとを行うように構成される。ベースラインは、ユーザと関連付けられたパーソナルコンピューティングデバイス上において実行されるアプリケーションによって受信され得、このアプリケーションは、現在のデータ値をベースラインと比較して、ユーザの健康スコアを計算する。この健康スコアがパーソナルコンピューティングデバイスのユーザインターフェース上に表示されることで、ユーザ自身の治療が良い方向に作用しているという安心感がユーザに提供され得る。よって、記載の健康スコアの決定のためのシステムおよび方法により、ユーザが(POCの使用に関連する疾患または健康について)自身の経時的進捗を確認することが可能になる。この健康スコアは、モチベーションツール(例えば、POCを含む治療が有益または有効である旨を示す媒体)と組み合わせられ得る。治療の視覚化により、患者の参与の増進に繋がり得、おそらくはPOCの使用継続の励みの増進にもなり得るため、治療コンプライアンス向上に繋がる(例えば、患者によるPOCの使用時間数の増加)。コンプライアンスが向上すると、健康増進に繋がり得る(患者の健康増進またはCOPDの遅滞が支援される)。この健康スコアは、患者への酸素出力の調節を特定の健康スコアまたは健康スコアの変化に基づいて行う際にPOCのコントローラによっても用いられ得る。システムは、介護者に対して(自動化された診断の提供または診断の支援に際して)健康スコアの変化または特定の健康スコアについて警告も行い得、これにより、当該介護者がPOCユーザに対してより良い治療を提供することが可能になる。
【0022】
図1A図1Nは、酸素濃縮器100の実装形態を示す。本明細書中に記載のように、酸素濃縮器100は、酸素富化空気の生成のために周期的な圧力スイング吸着(PSA)プロセスを用いる。しかし、他の実施形態において、酸素濃縮器100は、酸素富化空気の生成のために周期的な真空スイング吸着(VSA)プロセスまたは周期的な真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセスを用いるように変更され得る。本技術の例は、以下の構造および動作のうちいずれかと共に実行され得る。
【0023】
図1Aは、酸素濃縮器100の外側ハウジング170の実装形態を示す。いくつかの実装形態において、外側ハウジング170は、軽量プラスチックを含み得る。外側ハウジング170は、圧縮システム入口105と、冷却システム受動的入口101と、外側ハウジング170の各端部における出口173と、出口ポート174と、コントロールパネル600とを含む。入口101および出口173により、冷却空気がハウジングに進入し、ハウジングを通過し、ハウジング170内から退出して、酸素濃縮器100の冷却を支援することができる。圧縮システム入口105により、圧縮システム内への空気進入が可能になる。出口ポート174は、酸素濃縮器100によって生成された酸素富化空気をユーザへ提供するための導管を取り付けるために用いられる。
【0024】
図1Bは、図1A中の例示的酸素濃縮器100の構成要素の概略図である。酸素濃縮器100は、空気ストリーム中の酸素を濃縮することにより、酸素富化空気をユーザへ提供し得る。本明細書中用いられるように、「酸素富化空気」は、少なくとも約50%の酸素、少なくとも約60%の酸素、少なくとも約70%の酸素、少なくとも約80%の酸素、少なくとも約90%の酸素、少なくとも約95%の酸素、少なくとも約98%の酸素、または少なくとも約99%で構成されるガス混合物である。最小範囲の一例として、ポータブル酸素濃縮器の場合の86~87%の酸素がある。
【0025】
酸素濃縮器100は、ポータブル酸素濃縮器であり得る。例えば、酸素濃縮器100の重量およびサイズは、酸素濃縮器100を手で持ち運びできかつ/またはキャリーケースに入れて持ち運びできるような重量およびサイズになり得る。1つの実装形態において、酸素濃縮器100の重量は、約20ポンド(9.07kg)未満、約15ポンド(6.80kg)未満、約10ポンド(4.54kg)未満または約5ポンド(2.27kg)未満である。実装形態において、酸素濃縮器100の体積は、約1000立方インチ(0.0164立方メートル)未満、約750立方インチ(0.0123立方メートル)未満、約500立方インチ(0.0082立方メートル)未満、約250立方インチ(0.0041立方メートル)未満、または約200立方インチ(0.0033立方メートル)未満である。
【0026】
酸素富化空気は、ガス分離吸着剤を含むキャニスタ302および304の形態をとるシーブベッド中の周囲空気の加圧により、周囲空気から生成され得る。酸素濃縮器中において有用に用いられるガス分離吸着剤は、少なくとも窒素を空気ストリームから分離して、酸素富化空気を生成することができる。ガス分離吸着剤の例を挙げると、空気ストリームからの窒素分離が可能な分子篩がある。酸素濃縮器内において用いられ得る吸着剤の例を非限定的に挙げると、高圧下における空気ストリームからの窒素分離を行うゼオライト(天然)または合成結晶質アルミノ珪酸塩がある。利用可能な合成結晶質アルミノ珪酸塩の例を非限定的に以下に挙げる:OXYSIV吸着剤(入手元:UOPLLC、デスプレーンズ、IL);SYLOBEAD吸着剤(入手元:W.R.Grace&Co、コロンビア、MD);SILIPORITE吸着剤(入手元:CECAS.A.、パリ、フランス);ZEOCHEM吸着剤(入手元:ZeochemAG、ウエーティコン、スイス);およびAgLiLSX吸着剤(入手元:Air Products and Chemicals、Inc.、アレンタウン、PA)。
【0027】
図1Bに示すように、空気は、空気入口105を通じて酸素濃縮器100へ進入し得る。空気は、圧縮システム200により空気入口105中へ引き込まれ得る。圧縮システム200は、酸素濃縮器の周囲から空気を引き込み、この空気を圧縮し得、これにより、圧縮空気をキャニスタ302および304の一方または双方の内部へ強制移動させ得る。一実装形態において、入口マフラー108は、圧縮システム200によって空気が酸素濃縮器中へ引き込まれる際に発生する音を低減するように、空気入口105へ連結され得る。実装形態において、入口マフラー108は、水分および音の低減のために用いられ得る。例えば、水分吸着材(例えば、ポリマー吸水材またはゼオライト材料)は、入来空気からの水分(すなわち、水)の吸着と、空気入口105中へ進入する空気音の低減とをどちらとも行うために用いられ得る。
【0028】
圧縮システム200は、空気を圧縮するように構成された1つ以上のコンプレッサを含み得る。圧縮システム200によって生成された加圧空気は、キャニスタ302および304の一方または双方の内部へ供給され得る。いくつかの実装形態において、周囲空気は、キャニスタ中においておよそ13~20ポンド/平方インチ(psi)(89.6~137.9kPa)のゲージ圧(psig)の範囲の圧力まで加圧され得る。キャニスタ内に配置されるガス分離吸着剤の種類に応じて、他の圧力を用いてもよい。
【0029】
各キャニスタ302および304に対して、入口弁122および124ならびに出口弁132および134が連結される。図1Bに示すように、入口弁122はキャニスタ302へ連結され、入口弁124はキャニスタ304へ連結される。出口弁132はキャニスタ302へ連結され、出口弁134はキャニスタ304へ連結される。入口弁122および124は、圧縮システム200から各キャニスタへの空気の通過の制御するために用いられる。出口弁132および134は、通気プロセス時において各キャニスタ302および304からのガスの放出のために用いられる。いくつかの実装形態において、入口弁122および124ならびに出口弁132および134は、シリコンプランジャーソレノイド弁であり得る。しかし、他の種類の弁を用いてもよい。プランジャー弁の場合、静音性があり、かつずれが小さい点において、他の種類の弁よりも有利である。
【0030】
いくつかの実装形態において、入口弁122および124ならびに出口弁132および134の制御のために、2ステップの弁作動電圧が生成され得る。例えば、入口弁を開口させるために、高電圧(例えば、24V)が入口弁へ付加され得る。次に、電圧を(例えば7V)へ低下させると、入口弁の開口状態が維持される。弁開口状態を維持するための電圧が低いほど、使用電力も低くなり得る。このように電圧が低下すると、発熱および消費電力が最小化され、電力供給部180(以下に述べる)からのランタイムが延びる。弁への電力が断ち切られると、弁はバネ作用によって閉鎖する。いくつかの実装形態において、電圧は、必ずしも段階的応答ではない時間の関数として付加され得る(例えば、初期24V~最終7Vの曲線状の下方電圧)。
【0031】
一実装形態において、コントローラ400は、弁122、124、132および134へ電気的に連結される。コントローラ400は、メモリ420中に保存されたプログラム命令を実行することが可能なプロセッサ410を1つ以上含む。これらのプログラム命令は、本明細書中により詳細に記載の方法のような、酸素濃縮器の動作に用いられる多様な事前規定された方法をコントローラ400が行うように構成される。プログラム命令は、入口弁122および124を相互に逆位相で動作させる(すなわち、入口弁122または124のうち一方が開口しているとき、他方の弁が閉鎖している(例えば、電気機械的弁(単数または複数)が使用される場合))ためのプログラム命令を含み得る。キャニスタ302の加圧時において、出口弁132は閉鎖され、出口弁134は開口される。入口弁と同様に、出口弁132および134は、相互に逆位相に動作される。いくつかの実装形態において、電圧、ならびに入力弁および出力弁の開口に用いられる電圧の持続時間は、コントローラ400によって制御され得る。
【0032】
チェック弁142および144は、それぞれキャニスタ302および304へ連結される。チェック弁142および144は、キャニスタの加圧および通気時に発生する圧力差によって受動的に動作する一方向弁であるか、または活性弁であってもよい。チェック弁142および144は、キャニスタの加圧時に生成された酸素富化空気が各キャニスタから流動することおよび酸素富化空気または他の任意のガスのキャニスタ中への逆流を抑止することを行うように、キャニスタへ連結される。このようにして、チェック弁142および144は、加圧時において各キャニスタからの酸素富化空気の退出を可能にする一方向弁として機能する。
【0033】
本明細書中用いられるように、「チェック弁」という用語は、流体(ガスまたは液体)の一方向への流動を可能にしかつ流体の逆流を抑止する弁を指す。利用に適したチェック弁の例を以下に非限定的に挙げる:ボールチェック弁;ダイヤフラムチェック弁;バタフライチェック弁;スイングチェック弁;ダックビル弁;アンブレラ弁;およびリフトチェック弁。圧力下において、加圧周囲空気中の窒素分子は、加圧されたキャニスタ中のガス分離吸着剤によって吸着される。圧力増加と共に、キャニスタ中のガスに含まれる酸素が多くなるまで、より多くの窒素が吸着される。吸着されなかったガス分子(主に酸素)は、圧力がキャニスタへ連結されたチェック弁の抵抗を充分圧倒するくらいの点に到達するまで、加圧されたキャニスタから流動する。一実装形態において、前方方向におけるチェック弁の圧力低下は、1psi(6.9kPa)未満である。逆方向における破壊圧力は、100psi(689.5kPa)を超える。しかし、1つ以上の構成要素の変更により、これらの弁の動作パラメータも変化することが理解されるべきである。前方流れ圧力が増加すると、酸素富化空気生成が一般的に低下する。逆流のための破壊圧力が低下した場合または低すぎる値に設定された場合、酸素富化空気圧力も概して低下する。
【0034】
例示的実装形態において、キャニスタ302は、圧縮システム200中において生成されてキャニスタ302中に送られた圧縮空気によって加圧される。キャニスタ302の加圧時において、入口弁122は開口され、出口弁132は閉鎖され、入口弁124は閉鎖され、出口弁134は開口される。出口弁132が閉鎖されると、出口弁134が開口され、これにより、キャニスタ302の加圧時におけるキャニスタ304の雰囲気への実質的な同時通気が可能になる。
【0035】
一定期間後、キャニスタ302中の圧力は、チェック弁142を開口させるのに充分になる。キャニスタ302中に生成された酸素富化空気は、チェック弁142を通じて、一実装形態において、アキュムレータ106中において収集される。
【0036】
さらに一定期間後、キャニスタ302中のガス分離吸着剤は窒素で飽和することになり、有意な量の窒素を入来空気から分離することができない。このポイントは、所定の時間の酸素富化空気生成後に到達することが多い。上記した実装形態において、キャニスタ302中のガス分離吸着剤がこの飽和点に到達すると、圧縮空気の流入が停止され、キャニスタ302が通気されて、窒素が脱着される。キャニスタ302の通気時において、入口弁122は閉鎖され、出口弁132は開口される。キャニスタ302の通気時において、キャニスタ304への加圧により、酸素富化空気の生成を上記した方法と同じ方法で行う。キャニスタ304の加圧は、出口弁134および開口部入口弁124の閉鎖によって達成される。一定時間の後、酸素富化空気は、チェック弁144を通じてキャニスタ304から退出する。
【0037】
キャニスタ302の通気時において、出口弁132を開口させて、排気ガス(主に窒素)を濃縮器出口130を通じてキャニスタ302から雰囲気へ退出させる。一実装形態において、通気された排気ガスをマフラー133を通じて方向付けることにより、キャニスタからの加圧ガスの放出に起因して発生するノイズを低減することができる。排気ガスがキャニスタ302から通気されると、キャニスタ302中の圧力が低下するため、窒素がガス分離吸着剤から脱着される。窒素の脱着により、キャニスタ302は、空気ストリームからの窒素分離が新た可能となった状態にリセットされる。マフラー133は、酸素濃縮器100から退出したガスの音を消音するための連続気泡発泡体(または別の材料)を含み得る。いくつかの実装形態において、空気入力および酸素富化空気出力のための消音構成要素/技術の組み合わせにより、酸素濃縮器を50デシベルを下回る音レベルにおいて動作させることが可能になり得る。
【0038】
キャニスタ302および304の通気時において、窒素のうち少なくとも大部分が有利に除去される。一実装形態において、キャニスタが再利用されて空気からの窒素を分離する前に、キャニスタ中の窒素のうち少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または実質的に全てが除去される。
【0039】
いくつかの実装形態において、窒素除去が、他方のキャニスタまたは保存された酸素富化空気からキャニスタ内へ導入された酸素富化空気ストリームによって支援され得る。例示的実装形態において、キャニスタ304から排気ガスが通気されると、酸素富化空気の一部がキャニスタ302からキャニスタ304へ移送され得る。キャニスタ304の通気時において酸素富化空気をキャニスタ302からキャニスタ304への移送することにより、(吸着剤に隣接する窒素の部分的圧力の低下による)吸着剤からの窒素脱着が支援される。酸素富化空気の流れにより、脱着された窒素(および他のガス)のキャニスタからのパージも支援される。一実装形態において、酸素富化空気は、2つのキャニスタ302および304間の流れ制限器151、153および155を通じて移動し得る。流れ制限器151は、トリクル流れ制限器であり得る。流れ制限器151は、例えば0.009D流れ制限器であり得る(例えば、流れ制限器の半径0.009”(0.022cm)は、内部の管の直径未満である)。流れ制限器153および155は、0.013D流れ制限器であり得る。他の種類およびサイズの流れ制限器も企図され、キャニスタの連結に用いられる特定の構成および配管に応じて用いられ得る。いくつかの実装形態において、流れ制限器は、圧入流れ制限器であり得、各導管中の直径を狭くすることにより、空気流を制限する。いくつかの実装形態において、圧入流れ制限器は、サファイア、金属またはプラスチック製であり得る(他の材料も企図される)。
【0040】
キャニスタの間の酸素富化空気の流れは、弁152および弁154の利用によっても制御され得る。弁152および154は、通気プロセス時において短い持続時間にわたって開口され得(および他の場合に閉鎖され得)、これにより、パージされているキャニスタからの過度の酸素損失を防止する。他の持続時間も、企図される。例示的な実装形態において、キャニスタ302は通気され、キャニスタ304中において生成された酸素富化空気の一部をキャニスタ302中に送ることにより、キャニスタ302をパージすることが望ましい。酸素富化空気の一部は、キャニスタ304が加圧されると、キャニスタ302の通気時において流れ制限器151を通じてキャニスタ302中へ移動する。さらなる酸素富化空気が、キャニスタ304から弁154および流れ制限器155を通じてキャニスタ302中へ送られる。弁152は、移送プロセス中において閉鎖させたままでもよいし、あるいは、さらなる酸素富化空気が必要な場合は開口させたままでもよい。適切な流れ制限器151および155の選択と、弁154の開口部の制御とにより、制御された量の酸素富化空気をキャニスタ304からキャニスタ302へ送ることが可能になる。一実装形態において、制御された量の酸素富化空気とは、キャニスタ302をパージするためおよびキャニスタ302の通気弁132を通じた酸素富化空気の損失を最小化するために充分な量である。一実装形態において、キャニスタ302の通気に述べているが、同じプロセスを流れ制限器151、弁152および流れ制限器153を用いたキャニスタ304の通気のために用いることが可能であることが理解されるべきである。
【0041】
一対の均圧/通気弁152および154が流れ制限器153および155と協働することにより、これら2つのキャニスタ302および304間のガス流バランスが最適化される。その結果、キャニスタ302および304のうち他方からの酸素富化空気によるキャニスタのうち1つのパージのための制御の向上が可能になる。また、これら2つのキャニスタ302および304間の流れ方向も向上する。流れ弁152および154は、2方向弁として動作し得るが、このような弁を通じた流量は、弁を通過する流体の方向によって異なる。例えば、キャニスタ304から弁152を通じてキャニスタ302へ流動する酸素富化空気の流量は、キャニスタ302から弁152を通じてキャニスタ304へ流動する酸素富化空気の流量よりも高い。単一の弁が用いられた場合、キャニスタ間において送られる酸素富化空気は最終的に過度に多くなるかまたは少なくなり、時間と共にキャニスタからは異なる量の酸素富化空気が経時的に生成され始める。対向する弁および流れ制限器を平行な空気経路上において用いると、2つのキャニスタ間の酸素富化空気の流れパターンが均等化され得る。このような流れの均等化により、一定量の酸素富化空気を複数のサイクルにわたってユーザへ利用可能にすることが可能になり得、また、他方のキャニスタをパージするための酸素富化空気の体積の予測も可能になり得る。いくつかの実装形態において、空気経路に絞り弁を設けなくてもよいが、あるいは、弁に内蔵抵抗を設けるかまたは空気経路そのものの半径を小さくして抵抗を提供するようにしてもよい。
【0042】
場合によっては、酸素濃縮器100を一定期間にわたって停止してもよい。酸素濃縮器を停止した場合、圧縮システムからの断熱が失われるため、キャニスタの内部温度が低下し得る。温度が低下すると、キャニスタ内を閉めるガス体積が低下する。キャニスタ302および304が低温になると、キャニスタ302および304中が負圧になり得る。キャニスタに繋がる弁およびキャニスタ302および304から延びる弁(例えば、弁122、124、132および134)は、気密的にシールされるのではなく、動的にシールされる。そのため、停止後、圧力差に対応する際に外部空気がキャニスタ302および304に進入し得る。外部空気がキャニスタ302および304に進入すると、外部空気からの水分は、ガス分離吸着剤によって吸着され得る。キャニスタ302および304中の水が吸着すると、ガス分離吸着剤が徐々に劣化し得、ガス分離吸着剤の酸素富化空気生成能力が徐々に低下する。
【0043】
一実装形態において、双方のキャニスタ302および304を停止前に加圧することにより、酸素濃縮器100の停止後に外部空気がキャニスタ302および304に進入する事態を回避することができる。キャニスタ302および304を陽圧下において保存することにより、キャニスタ302および304中の空気の内部圧力により、弁を気密的に閉鎖された位置へ強制移動させることができる。一実装形態において、停止時におけるキャニスタ302および304中の圧力は、少なくとも周囲圧力よりも高くすべきである。本明細書中用いられるように、「周囲圧力」という用語は、酸素濃縮器100が配置されている周囲の圧力を指す(例えば、室内の圧力、室外の圧力、飛行機内の圧力)。実装形態において、停止時におけるキャニスタ302および304中の圧力は、少なくとも標準的雰囲気圧力よりも高い(すなわち、760mmHg(Torr)、1atm、101,325Paよりも高い)。一実装形態において、停止時におけるキャニスタ302および304中の圧力は、少なくとも周囲圧力の約1.1倍であり、少なくとも周囲圧力の約1.5であるか、または少なくとも周囲圧力の約2倍である。
【0044】
一実装形態において、加圧空気を圧縮システムから各キャニスタ302および304中へ方向付けて全ての弁を閉鎖させて、加圧空気をキャニスタ中に閉じ込めることにより、キャニスタ302および304の加圧を達成することができる。例示的実装形態において、停止シーケンスが開始されると、入口弁122および124が開口され、出口弁132および134は閉鎖される。入口弁122および124は、共通導管によって接合されるため、キャニスタ302および304双方を空気として加圧することができ、かつ/または1つのキャニスタからの酸素富化空気を他方のキャニスタへ移送することができる。この状況は、圧縮システムと2つの入口弁との間の経路においてこのような移送が行われた場合に発生し得る。酸素濃縮器100は、交互の加圧/通気モードにおいて動作するため、キャニスタ302および304のうち少なくとも1つを任意の所与の時期において加圧状態にする必要がある。別の実装形態において、圧力は、圧縮システム200の動作によって各キャニスタ302および304中において増加され得る。入口弁122および124が開口されると、キャニスタ302および304間の圧力が均等化されるが、いずれかのキャニスタ中の均等化された圧力は、停止時に空気がキャニスタに進入する事態を抑止するのには不十分であり得る。キャニスタへの空気進入を確実に抑止するために、双方のキャニスタ中の圧力を少なくとも周囲圧力を超えるレベルまで増加させるだけの充分な時間にわたって圧縮システム200を動作させることができる。キャニスタの加圧方法に関わらず、キャニスタが加圧された後、入口弁122および124は閉鎖されるため、加圧空気はキャニスタ中に閉じ込められ、その結果、停止期間時においてキャニスタへの空気進入が抑止される。
【0045】
図1Cを参照して、酸素濃縮器100の実装形態が図示される。この例において、酸素濃縮器100は、圧縮システム200と、キャニスタシステム300と、外側ハウジング170内に配置された電力供給部180とを含む。入口101を外側ハウジング170内に設けることにより、環境からの空気が酸素濃縮器100に進入することが可能になる。入口101により、区画内への空気流入が可能になるため、区画内の構成要素の冷却が支援される。電力供給部180により、酸素濃縮器100の電力源が得られる。圧縮システム200により、入口105およびマフラー108を通じて空気が引き込まれる。マフラー108により、圧縮システムによって引き込まれる空気のノイズが低減され得、入来空気から水分(すなわち、水)を除去するための乾燥剤材料も含み得る。酸素濃縮器100は、出口173を介した酸素濃縮器からの空気および他のガスの通気に用いられるファン172をさらに含み得る。
【0046】
いくつかの実装形態において、圧縮システム200は、1つ以上のコンプレッサを含む。別の実装形態において、圧縮システム200は、キャニスタシステム300の全キャニスタへ連結された単一のコンプレッサを含む。図1Dおよび図1Eに戻って、コンプレッサ210およびモータ220を含む圧縮システム200が図示されている。モータ220は、コンプレッサ210へ連結され、圧縮機構の動作のための動作力をコンプレッサ210へ提供する。例えば、モータ220は、回転構成要素を提供するモータであり得る。この回転構成要素により、空気を圧縮させるコンプレッサ210の構成要素の周期的運動が発生する。コンプレッサ210がピストン型コンプレッサである場合、モータ220により、コンプレッサ210のピストンの往復運動を発生させる動作力が得られる。ピストンの往復運動により、圧縮空気がコンプレッサ210によって生成される。圧縮空気の圧力は、コンプレッサの動作圧力(例えば、ピストンの往復運動速度)によって部分的に推定され得る。そのため、モータ220は、可変速モータであり得、コンプレッサ210によって生成される空気の圧力を動的に制御するために、多様な速度において動作することができる。
【0047】
一実装形態において、コンプレッサ210は、ピストンを有する単一のヒートウォブル型コンプレッサを含む。他の種類のコンプレッサも用いられ得る(例えば、ダイヤフラムコンプレッサおよび他の種類のピストンコンプレッサ)。モータ220は、DCまたはACモータであり得、コンプレッサ210の圧縮構成要素へ動作力を提供する。モータ220は、一実装形態において、ブラシレスDCモータであり得る。モータ220は、可変速モータであり得、コンプレッサ210の圧縮構成要素を可変速において動作させるように構成される。図1Bに示すように、モータ220は、コントローラ400へ連結され得る。コントローラ400は、モータ動作の制御のために、動作信号をモータへ送る。例えば、コントローラ400は、モータをオンにすること、モータをオフにすること、およびモータの動作速度を設定することを行うための信号をモータ220へ送り得る。よって、図1Bに示すように、圧縮システム200は、速度センサ201を含み得る。速度センサ201は、モータ220の回転速度および/または圧縮システム200の別の往復動作の頻度の決定に用いられるモータ速度変換器であり得る。例えば、モータ速度変換器からのモータ速度信号は、コントローラ400へ提供され得る。速度センサまたはモータ速度変換器は、例えばホール効果センサであり得る。コントローラ400は、速度信号および/または酸素濃縮器の他の任意のセンサ信号(例えば、圧力センサ(例えば、アキュムレータ圧力センサ107))に基づいて、圧縮システムをモータ220を介して動作させ得る。図1Bに示すように、コントローラ400は、センサ信号(例えば、速度センサ201からの速度信号およびアキュムレータ圧力センサ107からのアキュムレータ圧力信号)を受信する。このような信号(単数または複数)により、コントローラは、圧縮システムの動作のために、センサ信号(例えば、アキュムレータ圧力および/または本明細書中により詳細に述べるようなモータ速度)に基づいて1つ以上の制御ループ(例えば、フィードバック制御)を実行し得る。
【0048】
圧縮システム200は、実質的な熱を本質的に生成する。熱は、モータ220による電力消費および動力から機械運動への変換によって発生する。コンプレッサ210は、空気圧縮によるコンプレッサ構成要素の動ききに対する抵抗増加に起因して熱を発生させる。コンプレッサ210による空気の断熱圧縮によっても、熱が本質的に発生される。そのため、空気の連続的加圧により、封入容器中に熱が発生する。さらに、電力供給部180は、圧縮システム200への給電時において熱を生成し得る。さらに、酸素濃縮器のユーザは、屋内よりも高温であり得る外気温において条件付きではない環境(例えば、屋外)においてデバイスを動作させ得るため、入来空気は既に加熱状態になる。
【0049】
酸素濃縮器100内において熱が発生すると、問題になり得る。リチウムイオン電池は、長寿命および軽量であるため、主に酸素濃縮器の電力供給部として用いられる。しかし、リチウムイオン電池パックの場合、高温において危険であり、危険な高温の電力供給部が検出された場合にシステムを停止させるための安全制御が酸素濃縮器100内において用いられる。さらに、酸素濃縮器100の内部温度の上昇と共に、濃縮器によって発生される酸素量が低下し得る。その部分的原因として、高温における所与の体積の空気中の酸素が低下する点がある。酸素生成量が所定量を下回ると、酸素濃縮器100は自動停止し得る。
【0050】
酸素濃縮器はコンパクトであるため、放熱は困難であり得る。典型的な解決方法を挙げると、1つ以上のファンの使用により封入容器中に冷却空気の流れを発生させる方法がある。しかし、このような解決方法の場合、電力供給部180からさらに電力が必要になるため、酸素濃縮器100のポータブル利用時間が短くなる。一実装形態において、受動的冷却システムは、モータ220によって生成される機械的動力を利用するために用いられ得る。図1Dおよび図1Eを参照して、圧縮システム200のモータ220は、外部回転可能電機子230を有する。詳細には、モータ220(例えば、DCモータ)の電機子230は、電機子230を駆動する定常場の周囲を包囲する。モータ220は、システム全体への熱に大きく貢献するため、モータから熱を移送し、封入容器から掃き出すと有用である。外部高速回転に起因して、モータ220の主要構成要素の相対速度およびその周囲の空気が高くなる。電機子の表面積は、内部に取り付けられた場合よりも、外部に取り付けられた場合に大きくなる。熱交換速度は表面積および速度の二乗に比例するため、外部に取り付けられたより大型の表面積電機子を用いた場合、モータ220からの放熱能力が増加する。電機子230を外部に取り付けられたときの冷却効率の利得により、1つ以上の冷却ファンを無くすことができるため、酸素濃縮器の内部を適切な温度範囲内に維持しつつ、重量および消費電力が低減する。さらに、外部に取り付けられた電機子230が回転すると、モータの近隣の空気が動くため、さらなる冷却が生成される。
【0051】
その上、外部回転電機子によりモータ効率が支援され得、熱の発生が低減する。外部電機子を有するモータは、内燃機関中において機能するフライホイールと同様に動作する。モータがコンプレッサを駆動させる際、回転に対する抵抗は、低圧力において低くなる。圧縮空気の圧力が高くなると、モータ回転に対する抵抗が高くなる。その結果、モータは、一貫した理想的な回転安定性を維持できなくなり、コンプレッサの圧力要求に応じてサージおよび低速化が発生する。このようなモータのサージおよびその後の低速化の傾向は、非効率であり、そのため熱の原因となる。外部電機子を用いた場合、モータの角運動量が大きくなるため、モータの可変抵抗の補償が支援される。モータの仕事量が大きくなくてすむため、モータから発生する熱が低下し得る。
【0052】
一実装形態において、空気移送デバイス240を外部回転電機子230へ連結することにより、冷却効率がさらに増加し得る。一実装形態において、空気移送デバイス240を外部電機子230へ連結する際には、外部電機子230の回転により空気移送デバイス240が空気流を発生させて、この空気流がモータの少なくとも一部へ移動するように、連結が行われる。実装形態において、空気移送デバイス240は、外部電機子230へ連結された1つ以上のファンブレードを含む。一実装形態において、空気移送デバイス240が外部回転電機子230の運動により回転するインペラとして機能するように、複数のファンブレードが環状リング内に配置され得る。図1Dおよび図1Eに示すように、空気移送デバイス240は、モータ220と整列した様態で外部電機子230の外面へ取り付けられ得る。空気移送デバイス240を電機子230に取り付けることにより、空気流を外部回転電機子230の主要部分へ方向付けることが可能になり、これにより、使用時における冷却効果が可能になる。一実装形態において、空気移送デバイス240により、外部回転電機子230の大部分が空気流路中に配置されるように、空気流が方向付けられる。
【0053】
さらに、図1Dおよび図1Eを参照して、コンプレッサ210によって加圧された空気は、コンプレッサ出口212においてコンプレッサ210から退出する。コンプレッサ出口導管250は、圧縮空気をキャニスタシステム300へ移送するように、コンプレッサ出口212へ連結される。上記したように、空気が圧縮されると、空気の温度が上昇する。このような温度上昇は、酸素濃縮器の効率にとって有害であり得る。加圧空気の温度を低下させるために、コンプレッサ出口導管250が、空気移送デバイス240によって生成される空気流路中に配置される。コンプレッサ出口導管250の少なくとも一部は、モータ220の近隣に配置され得る。そのため、空気移送デバイスによって生成された空気流が、モータ220およびコンプレッサ出口導管250と接触し得る。一実装形態において、コンプレッサ出口導管250の大部分が、モータ220の近隣に配置される。一実装形態において、図1Eに示すように、コンプレッサ出口導管250は、モータ220の周囲に渦巻き状にされる。
【0054】
一実装形態において、コンプレッサ出口導管250は、熱交換金属によって構成される。熱交換金属の例を非限定的に挙げると、アルミニウム、炭素鋼、ステンレススチール、チタン、銅、銅ニッケル合金またはこれらの金属の組み合わせから形成される他の合金がある。よって、コンプレッサ出口導管250は、空気圧縮に本質的に起因する熱を除去する熱交換器として機能し得る。圧縮空気からの熱除去により、所与の圧力における所与の体積の分離の数が増加する。その結果、各PSAサイクル時において各キャニスタが発生することが可能な酸素富化空気量が増加し得る。
【0055】
本明細書中に記載の放熱機構は、受動的なものであるか、または、酸素濃縮器100に必要な要素を利用する。よって、例えば、さらなる電力を必要とするシステムを用いること無く、放熱の増加が可能になり得る。さらなる電力が不要になるため、電池パックのランタイム増加が可能になり得、酸素濃縮器のサイズおよび重量の最小化が可能になり得る。同様に、さらなるボックスファンまたは冷却ユニットの利用も不要になり得る。このようなさらなる特徴を無くすことにより、酸素濃縮器の重量および消費電力が低下する。
【0056】
上記したように、空気の断熱圧縮に起因して、空気温度が上昇する。キャニスタシステム300中のキャニスタの通気時において、キャニスタから通気される排気ガスの圧力が低下する。キャニスタ中のガスの断熱減圧に起因して、通気と共にガス温度が低下する。実装形態においてキャニスタシステム300から通気された冷却された排気ガス327は、電力供給部180および圧縮システム200へ方向付けられる。一実装形態において、キャニスタシステム300のベース315は、排気ガス327をキャニスタから受容する。排気ガス327は、ベース315を通じてベースの出口325および電力供給部180へ方向付けられる。排気ガスは、上記したようにガス減圧によって冷却されるため、電力供給部へ冷却を受動的に提供する。圧縮システムが作動すると、空気移送デバイスは、冷却された排気ガスを集め、排気ガス327を圧縮システム200のモータ220へ方向付ける。ファン172は、圧縮システム200上の排気ガス327をハウジング170から方向付けることも支援し得る。このようにして、電池からのさらなる電力要求を全く必要とすること無く、さらなる冷却を得ることが可能になり得る。
【0057】
酸素濃縮器100は、少なくとも2つのキャニスタを含み得、各キャニスタは、ガス分離吸着剤を含む。酸素濃縮器100のキャニスタは、成形ハウジングから形成されてもよい。実装形態において、従来技術のキャニスタシステム300(シーブベッドとしても知られている)は、図1Iに示すように、2つのハウジング構成要素310および510を含む。多様な実装形態において、酸素濃縮器100のハウジング構成要素310および510により、2つの部分からなる成形プラスチックフレームが形成され得、2つのキャニスタ302および304ならびにアキュムレータ106が規定される。
【0058】
ハウジング構成要素310および510は、別個に形成された後、共に連結され得る。いくつかの実装形態において、ハウジング構成要素310および510は、射出成形または圧縮成形され得る。ハウジング構成要素310および510は、熱可塑性ポリマーから構成され得る(例えば、ポリカーボネート、メチレンカーバイド、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニル)。別の実装形態において、ハウジング構成要素310および510は、熱硬化プラスチックまたは金属によって構成され得る(例えば、ステンレススチールまたは軽量アルミニウム合金)。酸素濃縮器100の重量低減のため、軽量材料が用いられ得る。いくつかの実装形態において、2つのハウジング310および510の締結は、ねじまたはボルトによって行われ得る。あるいは、ハウジング構成要素310および510は、共に溶剤溶接され得る。
【0059】
示すように、弁座322、324、332および334と、導管330および346とは、ハウジング構成要素310と一体化され得るため、酸素濃縮器100の空気流全体において必要な密封接続数の低減に繋がり得る。
【0060】
ハウジング構成要素310および510内の異なるセクション間の空気経路/配管は、成形導管の形態をとり得る。空気経路のための成形チャネルの形態をとる導管は、ハウジング構成要素310および510中の複数の面を占有し得る。例えば、成形された空気導管は、ハウジング構成要素310および510内の異なる位置において異なる深さで形成され得る。いくつかの実装形態において、導管の大部分または実質的に全体をハウジング構成要素310および510と一体化すると、漏洩の可能性のあるポイントが低下し得る。
【0061】
いくつかの実装形態において、ハウジング構成要素310および510の連結前にOリングをハウジング構成要素310および510の多様な点間に配置することにより、ハウジング構成要素の適切な密封が確保され得る。いくつかの実装形態において、構成要素は、ハウジング構成要素310および510と一体化され得かつ/またはハウジング構成要素310および510へ別個に連結され得る。例えば、配管、流れ制限器(例えば、圧入流れ制限器)、酸素センサ、ガス分離吸着剤、チェック弁、栓、プロセッサ、電力供給部などのハウジング構成要素310および510への連結は、これらのハウジング構成要素の連結前かつ/または後に行われ得る。
【0062】
いくつかの実装形態において、ハウジング構成要素310および510の外部に繋がるアパチャ337は、流れ制限器などのデバイスの挿入の際に用いられ得る。アパチャは、成形性向上のためにも用いられ得る。これらのアパチャのうち1つ以上は、成形後に(例えばプラスチック栓によって)栓され得る。いくつかの実装形態において、流れ制限器を通路内に挿入した後、栓を挿入して通路が密閉され得る。圧入流れ制限器の直径は、圧入流れ制限器とそれぞれのアパチャとの間の摩擦嵌めが可能となるような直径であり得る。いくつかの実装形態において、接着剤を圧入流れ制限器の外部へ付加することにより、圧入流れ制限器が挿入後に所定位置に保持され得る。いくつかの実装形態において、これらの栓は、各管と摩擦嵌めを有し得る(か、または外面へ接着剤を付加してもよい)。圧入流れ制限器および/または他の構成要素は、幅狭の先端ツールまたはロッド(例えば、直径が各アパチャの直径未満のもの)により各アパチャへ挿入または圧入され得る。いくつかの実装形態において、圧入流れ制限器は、管中のフィーチャに隣接して挿入が停止するまで、各管へ挿入され得る。例えば、フィーチャは、半径の低減を含み得る。他のフィーチャも企図される(例えば、配管の側部の隆起部、ねじ山など)。いくつかの実装形態において、圧入流れ制限器は、(例えば、幅狭の管部位として)ハウジング構成要素内に成形され得る。
【0063】
いくつかの実装形態において、ばねバッフル139は、ハウジング構成要素310および510の部分を受容する各キャニスタ内へ配置され得バッフル139のばね側は、キャニスタの出口に対向する。ばねバッフル139は、ガス分離吸着剤をキャニスタ内へ移動させる力を付加し得る一方、ガス分離吸着剤が出口アパチャへ進入する事態を回避する。ばねバッフル139の使用により、ガス分離吸着剤がコンパクトに維持され得る一方、膨張(例えば、熱膨張)が可能になる。ガス分離吸着剤をコンパクトに保持することにより、酸素濃縮器100の移動時においてガス分離吸着剤が破壊される事態が回避され得る。
【0064】
いくつかの実装形態において、フィルタ129は、各キャニスタの入口に対向するハウジング構成要素310および510の部分を受容する各キャニスタ内に配置され得る。フィルタ129は、キャニスタへ進入する供給ガスストリームから粒子を除去する。
【0065】
いくつかの実装形態において、圧縮システム200からの加圧空気は、空気入口306へ進入し得る。空気入口306は、入口導管330へ連結される。空気は、入口306を通じてハウジング構成要素310へ進入し、入口導管330を通じて移動した後、弁座322および324へ移動する。図1Jおよび図1Kは、ハウジング310の端面図を示す。図1Jは、ハウジング構成要素310へ弁を取り付ける前のハウジング310の端面図である。図1Kは、弁がハウジング構成要素310へ取り付けられたハウジング310の端面図である。弁座322および324は、入口弁122および124それぞれを受容するように構成される。入口弁122はキャニスタ302へ連結され、入口弁124はキャニスタ304へ連結される。ハウジング構成要素310は、出口弁132および134それぞれを受容するように構成された弁座332および334も含む。出口弁132はキャニスタ302へ連結され、出口弁134はキャニスタ304へ連結される。入口弁122および124は、入口導管330から各キャニスタへの空気の通過の制御するために用いられる。
【0066】
一実装形態において、加圧空気は、キャニスタ302または304のうち1つの内部へ送られ、他方のキャニスタは通気される。弁座322は、ハウジング構成要素310を通じてキャニスタ302内へ延びる開口部323を含む。同様に、弁座324は、ハウジング構成要素310を通じてキャニスタ304内へ延びる開口部375を含む。各弁122および124が開口されると、入口導管330からの空気は、開口部323または375を通じて移動し、それぞれのキャニスタ302および304へ進入する。
【0067】
チェック弁142および144(図1Iを参照)は、それぞれキャニスタ302および304へ連結される。チェック弁142および144は一方向弁であり、キャニスタの加圧および通気時に発生する圧力差によって受動的に動作する。キャニスタ302および304中において生成された酸素富化空気は、キャニスタからハウジング構成要素510の開口部542および544内へ移動する。通路(図示せず)により、開口部542および544は導管342および344へそれぞれリンクされる。キャニスタ302中において生成された酸素富化空気は、キャニスタ302内の圧力がチェック弁142を開口させるくらいに十分になると、キャニスタ302から開口部542を通じて導管342内へ移動する。チェック弁142が開口すると、酸素富化空気は、導管342を通じてハウジング構成要素310の端部へ流動する。同様に、キャニスタ304中において生成された酸素富化空気は、キャニスタ304内の圧力がチェック弁144を開口させるくらいに十分になると、キャニスタ304から開口部544を通じて導管344内へ移動する。チェック弁144が開口すると、酸素富化空気は、導管344を通じてハウジング構成要素310の端部へ流動する。
【0068】
キャニスタ302または304からの酸素富化空気は、導管342または344を通じて移動し、ハウジング構成要素310内に形成された導管346に進入する。導管346は、導管を導管342、導管344およびアキュムレータ106へ連結させる開口部を含む。よって、キャニスタ302または304内において生成された酸素富化空気は、導管346へ移動し、アキュムレータ106内へ送られる。図1Bに示すように、アキュムレータ106内のガス圧力の測定は、センサによって(例えば、アキュムレータ圧力センサ107によって)行われ得る。(図1Fも参照されたい。)よって、アキュムレータ圧力センサ107により、蓄積した酸素富化空気の圧力を示す信号が発生する。適切な圧力変換器の一例として、HONEYWELL ASDXシリーズからのセンサがある。別の適切な圧力変換器として、GENERAL ELECTRICからのNPAシリーズからのセンサがある。いくつかのバージョンにおいて、圧力センサ107は、例えばアキュムレータ106と、(ユーザへ送達するための酸素富化空気のボーラス状放出を制御する)弁(例えば、供給弁160)との間の出力経路と同様に、アキュムレータ106の外部のガスの圧力を測定してもよい。
【0069】
キャニスタ302の通気は、入口弁122の閉鎖および出口弁132の開口によって行われる。出口弁132は、キャニスタ302から排気ガスをハウジング構成要素310の端部によって規定された体積内へ放出する。発泡材料によりハウジング構成要素310の端部を被覆すると、キャニスタからのガス放出に起因する音が低減され得る。同様に、キャニスタ304の通気は、入口弁124の閉鎖および出口弁134の開口によって行われる。出口弁134は、キャニスタ304から排気ガスをハウジング構成要素310の端部によって規定された体積内へ放出する。
【0070】
3本の導管がハウジング構成要素510内に形成され、キャニスタ302および304間の酸素富化空気の移送のために用いられる。図1Lに示すように、導管530により、キャニスタ302はキャニスタ304へ連結される。流れ制限器151(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管530内に配置されて、使用時において酸素富化空気の流れを制限する。導管532により、キャニスタ302もキャニスタ304へ連結される。図1Mに示すように、導管532は、弁152を受容する弁座552へ連結される。流れ制限器153(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管532内に配置される。導管534も、キャニスタ302をキャニスタ304へ連結させる。図1Mに示すように、導管534は、弁154を受容する弁座554へ連結される。流れ制限器155(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管534内に配置される。一対の均圧/通気弁152/154が流れ制限器153および155と協働することにより、これら2つのキャニスタ302および304間の空気流バランスが最適化される。
【0071】
アキュムレータ106中の酸素富化空気は、ハウジング構成要素510内に形成された膨張チャンバ162内へ供給弁160を通じて移動する。ハウジング構成要素510内の開口部(図示せず)により、アキュムレータ106が供給弁160へ連結される。実装形態において、膨張チャンバ162は、膨張チャンバ162を通過するガスの酸素濃度を推定するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。
【0072】
キャニスタのうち1つ以上へ連結された出口システムは、酸素富化空気をユーザへ提供するために1つ以上の導管を含む。一実装形態において、キャニスタ302および304のいずれかの内部において生成された酸素富化空気は、図1Bに概略的に示すように、チェック弁142および144それぞれを通じてアキュムレータ106中に収集される。キャニスタ302および304から退出した酸素富化空気は、酸素アキュムレータ106中に収集された後、ユーザへ提供され得る。いくつかの実装形態において、導管にアキュムレータ106を連結することにより、酸素富化空気をユーザへ提供することができる。酸素富化空気は、酸素富化空気をユーザの口および/または鼻へ移送する気道送達デバイス(例えば、患者インターフェース)を通じてユーザへ提供され得る。一実装形態において、送達デバイスは、酸素をユーザの鼻および/または口へ方向付ける管を含み得る。この管は、ユーザの鼻へ直接連結されていない場合がある。
【0073】
図1Fを参照して、酸素濃縮器のための出口システムの実装形態の概略図が図示されている。アキュムレータ106からユーザへの酸素富化空気の放出を制御するように、供給弁160が導管へ連結され得る。一実装形態において、供給弁160は、電磁駆動プランジャー弁である。ユーザへの酸素富化空気送達を制御するように、コントローラ400により供給弁160が作動される。供給弁160の作動は、圧力スイング吸着法プロセスとタイミングを合わせられるかまたは同期されない。その代わりに、作動は、以下に述べるようにユーザの呼吸と同期される。いくつかの実装形態において、供給弁160は、酸素富化空気の提供のために臨床的に有効な振幅プロファイルを確立させるための連続値作動を有し得る。
【0074】
アキュムレータ106中の酸素富化空気は、図1Fに示すように、供給弁160を通じて膨張チャンバ162中へ移動する。実装形態において、膨張チャンバ162は、膨張チャンバ162内を通過するガスの酸素濃度を推定するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。膨張チャンバ162中の酸素富化空気は、供給弁160によるアキュムレータ106からのガス放出を通じて短時間で蓄積した後、小型オリフィス流れ制限器175を通じて流量センサ185へと流動し、その後微粒子フィルタ187へと流動する。流れ制限器175は、0.025D流れ制限器であり得る。他の種類およびサイズの流れ制限器が用いられ得る。いくつかの実装形態において、ハウジング中の空気経路の直径は、ガス流制限のために限定され得る。流量センサ185は、導管内を流動するガスの流量を示す信号を生成するように構成された任意のセンサであり得る。微粒子フィルタ187は、ユーザへの酸素富化空気送達の前の細菌、埃、細粒微粒子などのフィルタリングのために用いられ得る。酸素富化空気は、フィルタ187を通過して、コネクタ190へ移動する。コネクタ190は、酸素富化空気を送達導管192を介してユーザへ送り、圧力センサ194へ送る。
【0075】
出口経路の流体力学を供給弁160のプログラム型作動と組み合わせることにより、酸素のボーラスの供給を正確なタイミングで行うことが可能になり得、また、ユーザの肺中への高速送達を、過度な無駄無しに確保することが可能な振幅プロファイルも得られる。
【0076】
膨張チャンバ162は、1つ以上の酸素センサを含み得る。これらの酸素センサは、上記チャンバを通過するガスの酸素濃度を決定するように適合される。一実装形態において、膨張チャンバ162を通過するガスの酸素濃度は、酸素センサ165を用いて推定される。酸素センサは、ガス中の酸素濃度を測定するように構成されたデバイスである。酸素センサの例を非限定的に挙げると、超音波酸素センサ、電気酸素センサ、化学酸素センサ、および光学式酸素センサがある。一実装形態態において、酸素センサ165は、超音波酸素センサであり、超音波放出体166および超音波受信器168を含む。いくつかの実装形態において、超音波放出体166は、複数の超音波放出体を含み得、超音波受信器168は、複数の超音波受信器を含み得る。複数の放出体/受信器を有する実装形態において、複数の超音波放出体および複数の超音波受信器は、軸方向に(例えば、軸整列に対して垂直であり得るガス流路にわたって)整列され得る。
【0077】
使用時において、(放出体166からの)超音波をチャンバ162中に配置された酸素富化空気を通じて受信器168へ方向付ける。超音波酸素センサ165は、酸素富化空気を通過する音の速度を検出して当該酸素富化空気の組成を決定するように構成され得る。音速は、窒素と酸素との中で異なり、2つのガスの混合物において、混合物を有する通過する音速は、混合物中の各ガスの相対的量に比例する中間値であり得る。使用時において、受信器168における音は、放出体166から送られる音と若干逆位相をとる。この位相変化は、ガス媒体の音の速度がワイヤを通じた電子パルスの高速に比べて相対的に低速であることに起因する。次に、この位相変化は、放出体166と受信器168との間の距離に比例し、膨張チャンバ162を通過する音の速度に反比例する。このチャンバ162中のガスの密度に起因して、この膨張チャンバ162を通過する音の速度が影響を受け、密度は、膨張チャンバ162中の酸素対窒素の比に比例する。そのため、位相変化を用いて、膨張チャンバ162中の酸素濃度を測定することができる。このようにして、アキュムレータ106中の酸素の相対的濃度を、アキュムレータ106を通過する検出された音波の1つ以上の特性の関数として推定することができる。
【0078】
いくつかの実装形態において、複数の放出体166および受信器168が用いられ得る。放出体166および受信器168からの読み取り値の平均化により、乱流系に固有であり得る誤差を減少させることができる。いくつかの実装形態において、通過時間を測定することおよび測定された通過時間を他のガスおよび/またはガス混合物の所定の通過時間と比較することにより、他のガスの存在の検出も可能であり得る。
【0079】
例えば放出体166と受信器168との間に数個の音波サイクルが可能になるように放出体166と受信器168との間の距離を増加させることにより、超音波酸素センサシステムの感度の増加が可能になり得る。いくつかの実装形態において、少なくとも2つの音サイクルが存在する場合、2つの時点における固定基準に相対する位相変化の測定により、変換器の構造的変化による影響を低減させることができる。早期の位相変化を後期の位相変化から減算すると、膨張チャンバ162の熱膨張に起因する変化を低減またはキャンセルすることができる。放出体166と受信器168との間の距離の変化に起因する変化は、測定インタバルとほぼ同じであり得る一方、酸素濃度の変化に起因する変化は累積的であり得る。いくつかの実装形態において、後期において測定された変化測定に介在サイクル数が乗算され得、2つの隣接するサイクル間の変化と比較され得る。膨張チャンバ中の酸素の感知についてのさらなる詳細について、例えば2009年3月12日に米国公開第2009/0065007 A1として公開された米国特許出願第12/163,549号(タイトル:「Oxygen Concentrator Apparatus and Method」)に記載がある。本明細書中、同文献を参考のため援用する。
【0080】
流量センサ185は、出口システム中を流動するガスの流量の決定に用いられ得る。利用可能な流量センサの例を以下に非限定的に挙げる:ダイヤフラム/ベローズ流量計;ロータリ-流量計(例えば、ホール効果流量計);タービン流量計;オリフィス流量計;および超音波流量計。流量センサ185は、コントローラ400へ連結され得る。出口システム中を流動するガスのレートは、ユーザの呼吸体積の示度であり得る。出口システム中を流動するガスの流量の変化を用いて、ユーザの呼吸速度を決定することも可能であり得る。コントローラ400は、供給弁160の作動を制御するための制御信号またはトリガ信号を生成し得る。供給弁のこのような作動制御は、流量センサ185によって推定されるようなユーザの呼吸速度および/または呼吸体積に基づき得る。
【0081】
いくつかの実装形態において、超音波センサ165および例えば流量センサ185により、提供される酸素の実際の測定量が得られ得る。例えば、流量センサ185は、提供されるガス体積を(流量に基づいて)測定することができ、超音波センサ165は、提供されるガス量の酸素濃度を提供し得る。コントローラ400は、これらの2つの測定を共に用いて、ユーザへ提供される実際の酸素量の概算を決定することができる。
【0082】
酸素富化空気は、流量センサ185を通じてフィルタ187へ移動する。フィルタ187により、細菌、埃、細粒微粒子などが除去された後、酸素富化空気がユーザへ提供される。フィルタリングされた酸素富化空気は、フィルタ187を通じて、コネクタ190へ移動する。コネクタ190は、フィルタ187の出口を圧力センサ194および送達導管192へ連結する「Y字型」コネクタであり得る。圧力センサ194は、導管192を通じてユーザへ移動するガスの圧力を監視するように用いられ得る。いくつかの実装形態において、圧力センサ194は、感知面へ付加される正圧または負圧の量に比例する信号を生成するように構成され得る。圧力センサ194によって感知される圧力の変化は、以下に述べるように、ユーザの呼吸速度および吸息開始(トリガ瞬間とも呼ばれる)を決定するために使用され得る。コントローラ400は、呼吸速度および/またはユーザの吸息の開始に基づいて、供給弁160の作動を制御し得る。一実装形態において、コントローラ400は、流量センサ185と圧力センサ194とのいずれか、もしくは両方ともから提供される情報に基づいて、供給弁160の作動を制御し得る。コントローラ400は、時間供給弁160の作動時間の制御により、各ボーラスの体積を調節し得る。コントローラ400は、超音波センサ165および流量センサ185からのデータの読み取りによって提供されている酸素の実際の体積(投与量)の測定を提供することにより、作動時間およびボーラス体積の較正を行い得る。
【0083】
酸素富化空気は、送達導管192を通じてユーザへ提供され得る。一実装形態において、送達導管192は、シリコーン管であり得る。送達導管192は、図1Gおよび図1Hに示すように、気道送達デバイス196によってユーザへ連結され得る。気道送達デバイス196は、酸素富化空気を鼻腔または口腔へ提供することが可能な任意のデバイスであり得る。気道送達デバイスの例を以下に非限定的に挙げる:鼻マスク、鼻枕、鼻プロング、鼻カニューレ、およびマウスピース。鼻カニューレ気道送達デバイス196を図1Gに示す。鼻カニューレ気道送達デバイス196は、ユーザが周囲からの空気を呼吸することを可能にしつつユーザへの酸素富化空気送達を可能にするように、ユーザの気道の近隣(例えば、ユーザの口および鼻の近隣)に配置される。
【0084】
別の実装形態において、酸素富化空気をユーザへ提供するために、マウスピースが用いられ得る。図1Hに示すように、マウスピース198が、酸素濃縮器100へ連結され得る。マウスピース198を酸素富化空気のユーザへの提供のために用いられる唯一のデバイスにしてもよいし、あるいは、マウスピースを鼻送達デバイス196(例えば、鼻カニューレ)と組み合わせて用いてもよい。図1Hに示すように、酸素富化空気が鼻気道送達デバイス196およびマウスピース198双方を通じてユーザへ提供され得る。
【0085】
マウスピース198を、ユーザの口内に取り外し可能に配置することができる。一実装形態において、マウスピース198を、ユーザの口中の1本以上の歯へ取り外し可能に連結することができる。使用時に、酸素富化空気は、ユーザの口中へマウスピースを介して方向付けられる。マウスピース198は、ユーザの歯に適合するように成型されたナイトガードマウスピースであり得る。あるいは、マウスピースは、下顎骨位置変更デバイスであり得る。一実装形態において、少なくともマウスピースの大部分は、使用時においてユーザの口中に配置される。
【0086】
使用時に、マウスピースの近隣において圧力変化が検出されると、酸素富化空気がマウスピース198へ方向付けられ得る。一実装形態において、マウスピース198は、圧力センサ194へ連結され得る。ユーザがユーザの口を通じて空気を吸息すると、圧力センサ194は、マウスピースの近隣の圧力低下を検出し得る。吸息の開始時に、酸素濃縮器100のコントローラ400は、ユーザへの酸素富化空気のボーラスの放出を制御し得る。
【0087】
個人の典型的な呼吸時において、吸息は、鼻を通じて、口を通じてあるいは鼻および口双方を通じて行われ得る。さらに、呼吸は、多様な要素に応じて、1つの通路から別の通路へ変化し得る。例えば、より活発な活動時において、ユーザは、鼻を通じた呼吸を口を通じた呼吸(あるいは口および鼻を通じた呼吸)へ切り換え得る。単一の送達モード(鼻または口)に依存するシステムの場合、監視された経路を通じた呼吸が停止した場合に適切に機能できなくなり得る。例えば、ユーザへの酸素富化空気提供のために鼻カニューレが用いられる場合、吸息開始を決定するために、吸息センサ(例えば、圧力センサまたは流量センサ)が鼻カニューレへ連結される。ユーザが鼻を通じた呼吸を停止し、口を通じた呼吸に切り換えると、鼻カニューレからのフィードバックが無いため、酸素濃縮器100は、いつ酸素富化空気を提供すればよいのかわからなくなり得る。このような状況下において、酸素濃縮器100は、吸息センサがユーザの吸息を検出するまで、流量を増加し得かつ/または酸素富化空気の提供頻度を増加させ得る。ユーザが呼吸モードの切り換えを頻繁に行うと、デフォルトの酸素富化空気提供モードに起因して、酸素濃縮器100の作動頻度が高くなり、その結果、システムのポータブル利用時間が制限される。
【0088】
一実装形態において、ユーザへの酸素富化空気提供に用いられる鼻カニューレ気道送達デバイス196と共に用いられるマウスピース198が、図1Hに示される。マウスピース198および鼻気道送達デバイス196はどちらとも、吸息センサへ連結される。一実装形態において、マウスピース198および鼻気道送達デバイス196は、同一の吸息センサへ連結される。別の実装形態において、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達デバイス196は、異なる吸息センサへ連結される。いずれかの実装形態において、吸息センサ(単数または複数)は、吸息開始を口または鼻から検出し得る。酸素濃縮器100は、近隣において吸息開始が検出された送達デバイス(すなわち、マウスピース198または鼻カニューレ気道送達デバイス196)へ酸素富化空気を提供するように構成され得る。あるいは、いずれかの送達デバイスの近隣において吸息開始が検出された場合、酸素富化空気をマウスピース198および鼻気道送達デバイス196双方へ提供してもよい。例えば図1Hに示すような2重送達システムを用いると、睡眠中のユーザにとって特に有用であり得、鼻呼吸/口呼吸間の切り換えを意識的努力無く遂行し得る。
【0089】
酸素濃縮器100の動作は、本明細書中に記載のような酸素濃縮器100の多様な構成要素へ連結された内部コントローラ400を用いて自動的に行われ得る。コントローラ400は、1つ以上のプロセッサ410、内部メモリ420、モジュール430およびGPS受信器434を図1Bに示すように含み得る。酸素濃縮器100の動作および監視に用いられる方法は、内部メモリ420中に保存されたプログラム命令またはコントローラ400へ連結された外部メモリ媒体によって具現され得、1つ以上のプロセッサ410によって実行され得る。メモリ媒体は、多様な種類のメモリデバイスまたはストレージデバイスのうちいずれかを含み得る。「メモリ媒体」という用語は、インストール媒体を含むことを意図する(例えば、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、フロッピー(登録商標)ディスク、またはテープデバイス;コンピュータシステムメモリまたはランダムアクセスメモリ(例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、ダブルデータレートランダムアクセスメモリ(DDRRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、拡張データアウトランダムアクセスメモリ(EDORAM)、ランダムアクセスメモリ(RAM));または不揮発性メモリ(例えば、磁気媒体(例えば、ハードドライブまたは光学記憶装置)))。メモリ媒体は、他の種類のメモリまたはその組み合わせも含み得る。加えて、メモリ媒体は、プログラムを実行する主体であるコントローラ400の近隣に配置され得るか、または、後述のネットワークを介してコントローラ400へ接続する外部コンピューティングデバイス内に配置され得る。後者の場合、外部コンピューティングデバイスは、プログラム命令を実行対象としてコントローラ400へ提供し得る。「メモリ媒体」という用語は、異なる場所(例えば、ネットワークを介して接続された異なるコンピューティングデバイス中)に常駐し得る2つ以上のメモリ媒体を含み得る。
【0090】
いくつかの実装形態において、コントローラ400は、プロセッサ410を含む。プロセッサ410は、例えば、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、酸素濃縮器100中に配置された回路基板上に設けられたマイクロコントローラなどを含む。プロセッサ410は、メモリ420中に保存されたプログラミング命令を実行するように構成される。いくつかの実装形態において、プログラミング命令は、プロセッサ410の外部のメモリに別個にアクセスできない(すなわち、メモリ420は、プロセッサ410の内部に設けられ得る)ように、プロセッサ410中に構築され得る。
【0091】
プロセッサ410は、酸素濃縮器100の多様な構成要素へ連結され得る(例を非限定的に挙げると、圧縮システム200、システム内を通じて流れる流体の制御に用いられる弁のうち1つ以上(例えば、弁122、弁124、弁132、弁134、弁152、弁154、弁160)、酸素センサ165、圧力センサ194、流量センサ185、温度センサ(図示せず)、ファン172、モータ速度センサ201、および電気制御が可能な他の任意の構成要素)。いくつかの実装形態において、別個のプロセッサ(および/またはメモリ)が、これらの構成要素のうち1つ以上へ連結され得る。
【0092】
コントローラ400は、酸素濃縮器100を動作させるように構成され(例えば、プログラム命令によってプログラムされ)、故障状態について酸素濃縮器100を監視するようにさらに構成される。例えば、一実装形態において、コントローラ400は、システムが動作しておりかつ所定の期間にわたってユーザにより呼吸が検出されない場合にアラームをトリガするように、プログラムされる。例えば、コントローラ400が75秒間の期間にわたって呼吸を検出しない場合、アラームLEDが点灯されかつ/または可聴アラームが発生し得る。例えば睡眠時無呼吸エピソード時にユーザの呼吸が本当に止まった場合、このアラームはユーザを覚醒させるのに充分であり得、これにより、ユーザの呼吸を再開させる。この呼吸活動は、コントローラ400がこのアラーム機能をリセットするのに充分であり得る。あるいは、送達導管192がユーザから取り外されたときにシステムがオンのまま放置されてしまう場合、このアラームは、ユーザに酸素濃縮器100をオフにするよう促すためのリマインダとして機能し得る。
【0093】
コントローラ400は、酸素センサ165へさらに連結され得、膨張チャンバ162を通過する酸素富化空気の酸素濃度の連続的または定期的監視のためにプログラムされ得る。最小酸素濃度閾値は、ユーザに対し酸素濃度低下について警告するためのLED視覚アラームおよび/または可聴アラームをコントローラ400が点灯するように、コントローラ400内にプログラムされ得る。
【0094】
コントローラ400は、内部電力供給部180にも連結され、内部電力供給部の充電レベルを監視するように構成され得る。最小電圧および/または現在の閾値コントローラ400内にプログラムすることにより、コントローラ400がユーザに対して電力低下状態について警告するためのLED視覚アラームおよび/または可聴アラームを点灯することができる。これらのアラームの活性化は、間欠的に行ってもよいし、あるいは、電池の利用可能な充電がゼロに近づくにつれて頻度を上げて行ってもよい。
【0095】
コントローラ400は、接続型酸素治療システムを構成するために、1つ以上の外部デバイスへ通信可能に連結され得る。これらの1つ以上の外部デバイスは、遠隔外部デバイスであり得る。1つ以上の外部デバイスは、外部コンピューティングデバイスであり得る。1つ以上の外部デバイスは、生理学的データを収集するセンサも含み得る。
【0096】
図1Nに示す接続型酸素治療システム450の1つの実装形態において、コントローラ400に含まれ得るセルラー無線モジュール(CWM)430または他の無線通信モジュールは、コントローラ400が無線通信プロトコル(例えば、汎ヨーロッパデジタル移動通信システム(GSM(登録商標))または他のプロトコル(例えば、WiFi))を用いて遠隔コンピューティングデバイス460と(例えばネットワークを介して)通信することを可能にするように構成される。遠隔コンピューティングデバイス460(または遠隔外部デバイス464)(例えば、クラウドベースのサーバ)は、コントローラ400とデータ交換を行い得る。遠隔外部デバイスは、遠隔コンピューティングデバイスであり得る(例えば、ポータブルコンピューティングデバイス)。例えば、コントローラ400は、コントローラ400が短範囲無線通信プロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標))を用いてポータブル(モバイル)コンピューティングデバイス466(例えば、スマートフォン)と通信することを可能にするように構成された短範囲無線モジュール(SRWM)440も含み得る。ポータブルコンピューティングデバイス466は、図1A中のPOC100のユーザと関連付けられ得る。2つ以上の外部デバイスが2つ以上存在する場合、各外部デバイスは、同一であってもよいし、異なってもよい。例えば、2つ以上の外部デバイスが2つ以上存在する場合において各外部デバイスが同一である場合、サーバ460が2つ設けられ得る。あるいは、2つ以上の外部デバイスが2つ以上存在する場合において各外部デバイスが異なる場合、サーバ460およびポータブルコンピューティングデバイス466が設けられ得る。
【0097】
サーバ460は、ポータブルコンピューティングデバイス466との無線通信も無線通信プロトコル(例えば、GSM(登録商標))を用いて行い得る。ポータブルコンピューティングデバイス466のプロセッサは、ポータブルコンピューティングデバイス466とPOC100、ユーザおよび/またはサーバ460との間の対話を制御するアプリケーションプログラム(「app」として知られる)を実行し得る。
【0098】
サーバ460は、パーソナルコンピューティングデバイス464とも、広域ネットワーク470(例えば、インターネットまたはクラウド)あるいはローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット(登録商標))への有線接続または無線接続を介して通信し得る。パーソナルコンピューティングデバイス464のプロセッサは、パーソナルコンピューティングデバイス464のサーバ460との対話の制御のために、「クライアント」プログラムを実行し得る。クライアントプログラムの一例として、ブラウザがある。
【0099】
コントローラ400を用いてまたはコントローラ400によって実行され得るさらなる機能について、本開示の他のセクションにおいて記載する。コントローラ400は、POC100中の本明細書中に記述される内部センサから生理学的データを受信し得る。あるいは、コントローラ400は、GPS受信器434、外部血液酸素化センサ436、および(スタンロアローンセンサまたは健康監視デバイス上のセンサであり得る)他の外部センサ438から生理学的データまたは関連データを収集し得る。収集された生理学的データは、サーバ460またはポータブルコンピューティングデバイス466によって分析され得、さらなる制御命令が、コントローラ400中の内部レジスタへ提供され得る。
【0100】
POC100は、動作データを収集し、収集された動作データを遠隔健康データ分析エンジン472へ送信する。遠隔健康データ分析エンジン472は、サーバ460上において実行され得る。健康データ分析エンジン472は、収集された動作データおよび生理学的データをPOC100から受信し、収集されたデータを分析する。健康データ分析エンジン472は、外部データベース(例えば、患者情報データベース)からの他の関連データも受信および分析し得る。他の外部データベースからも、さらなるデータを健康データ分析エンジンへ提供され得る。例えば、データベースにより、他のPOCおよび対応する患者からの「ビッグデータ」が提供され得る。データベースは、他のソースからの関連外部データも保存し得る(例えば、環境データ、科学データおよび人口統計データ)。データベースからのデータおよび患者データは、以下に述べるように機械学習エンジン480によってさらに相関付けられ得る。ヘルスケアプロバイダからのアクセスが可能な外部デバイス(例えば、パーソナルコンピューティングデバイス464)は、以下に述べるように健康データ分析エンジン472へ接続され得る。
【0101】
生理学的データおよび他のデータは、さらなる外部センサ(例えば、図1N中の外部センサ438)から収集され得る。本例において、外部センサ438は、身体取付型の健康監視デバイスであり得る。このようなデバイスは、患者からのデータキャプチャを低負荷かつ連続的な様態で行うためのスマートウェアラブル衣類、スマートウォッチ、または他のスマートデバイスであり得る。例えば、健康監視デバイスは、以下を含み得る:1つ以上のセンサ(例えば、音声センサ、心拍数センサ)、呼吸センサ(例えば、(肺活量測定のための)肺活量計)、ECGセンサ、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサ、赤外線センサ、光音響呼息二酸化炭素センサ、活性センサ、無線周波数センサ、SONARセンサ、光学センサ、ドップラレーダーモーションセンサ、温度計またはインピーダンス型センサ、圧電型センサ、光電子型センサまたは歪みゲージ型センサ。このデータは、その日に収集された他のデータソースまたは特定の期間において収集されたデータ(例えば、POC100からの動作データ)とフューズされ得る。さらなる外部センサ438は、気道送達デバイス(例えば、鼻カニューレ送達デバイス196)上にも取り付けられ得る。さらなるセンサからのデータは、POC100と通信し得るモバイルコンピューティングデバイス466へ送られ得る。あるいは、健康監視デバイス上のさらなる外部センサ438からのデータは、POC100へ直接送られ得る。健康監視デバイス上の外部センサ438、POC100またはモバイルコンピューティングデバイス466からのデータは、ネットワーク470へ送信され得る。
【0102】
本例において、POC100に含まれ得る電子構成要素は、患者の近隣の他のセンサとのデータ転送と、健康データ分析エンジン472による遠隔処理対象としての収集されたデータの転送との管理を行う通信ハブとして機能する。このようなデータは、POC100による酸素送達が活性化されていない場合であっても、外部センサ(例えば、健康監視デバイス上の外部センサ438)からPOC100によって収集され得る。あるいは、モバイルコンピューティングデバイス466は、外部センサ438、POC100および他のデータソースからのデータ収集を行い得るため、健康データ分析エンジン472へのデータ転送を管理する通信ハブとして機能し得る。POC100と通信し得るホームデジタルアシスタントなどの他のデバイスも、通信ハブとして機能し得る。
【0103】
特有の患者の音の検出のために、任意選択の内部音声センサが、POC100内に埋設され得る。さらなる音声データの収集のために、マイクロフォンなどの任意選択の外部音声センサがPOC100の外部に配置され得る。さらなるセンサ(例えば、室温センサ、接触型または非接触型の体温センサ、室内湿度センサ、近接センサ、ジェスチャーセンサ、タッチセンサ、ガスセンサ、空気質センサ、微粒子センサ、加速度計、ジャイロスコープ、傾斜センサ、音響センサ(例えば、受動型または活性SONAR)、超音波センサ、無線周波数センサ、加速度計、光強度センサ、LIDARセンサ、赤外線センサ(受動型、透過型または反射型)、二酸化炭素センサ、一酸化炭素センサまたは化学センサ)が、外部ポートを介してコントローラ400へ接続され得る。このようなさらなるセンサからのデータも、コントローラ400によって収集され得る。さらなるセンサからのデータは、中央コントローラ400によって定期的に収集され得る。このようなデータは、POC100の動作状態またはその動作環境に主に関連する。
【0104】
コントロールパネル600は、ユーザとコントローラ400との間のインターフェースとして機能して、ユーザが酸素濃縮器100の所定の動作モードを開始することおよびシステムの状態を監視することを可能にする。図1Oは、コントロールパネル600の実装形態を示す。内部電力供給部180の充電のための充電入力ポート605が、コントロールパネル600内に配置され得る。
【0105】
いくつかの実装形態において、コントロールパネル600は、酸素濃縮器100のための多様な動作モードを活性化するためのボタンを含み得る。例えば、コントロールパネル600は、電源ボタン610、流量設定ボタン620~626、活性モードボタン630、スリープモードボタン635、高度ボタン640、および電池チェックボタン650を含み得る。いくつかの実装形態において、これらのボタンのうち1つ以上は、各LEDを有し得る。このLEDは、各ボタンが押圧されたときに発光し得、各ボタンが再度押圧されたときに電源オフにされ得る。電源ボタン610は、システムの電力をオンまたはオフにさせ得る。システムをオフにするために電源ボタン610が活性化されると、コントローラ400は、システムを停止状態にさせるための停止シーケンスを開始し得る(例えば、双方のキャニスタが加圧された状態)。流量設定ボタン620、622、624および626により、酸素富化空気の処方連続流量の選択が可能になる(例えば、ボタン620によって0.2LPM、ボタン622によって0.4LPM、ボタン624によって0.6LPM、ボタン626によって0.8LPM)。他の実装形態において、流量設定の数は、増減され得る。流量設定の選択後、酸素濃縮器100は、酸素富化空気の生成を選択された流量設定に従って達成するように動作を制御する。ユーザが通常時に酸素濃縮器100を用いる場所よりも高い場所にユーザが行く場合、高度ボタン640が活性化され得る。
【0106】
電池チェックボタン650が電池チェックルーチンを酸素濃縮器100内において開始すると、相対的な残留電池電力LED655がコントロールパネル600上において発光される。
【0107】
検出された呼吸速度または深さを閾値に比較することにより推定されるようにユーザの活動が比較的低い場合(例えば、熟睡時、座位時)において、ユーザの呼吸速度または深さが低くなるときがある。ユーザの活動が比較的高い場合(例えば、歩行時、運動時)において、ユーザの呼吸速度または深さが高くなるときがある。活性/スリープモードは、呼吸速度または深さから自動的に推定され得、かつ/または活性モードの場合はボタン630を、またはスリープモードの場合はボタン635を押圧することにより、ユーザが活性モードまたはスリープモードを手動で指示することができる。
【0108】
以下に述べるPOC100の操作および監視の方法は、1つ以上のプロセッサ(例えば、コントローラ400の1つ以上のプロセッサ410)によって実行され得る。これらのプロセッサ410は、プログラム命令によって構成される。これらのプログラム命令の例を挙げると、上記したように、1つ以上の機能および/または(メモリ(例えば、POC100のメモリ420)中に保存された)当該機能に対応する関連データがある。あるいは、記載の方法のステップの一部または全てを、上記したように接続型酸素治療システム450の一部を形成する外部コンピューティングデバイス(例えば、サーバ460)の1つ以上のプロセッサによって同様に実行してもよい。後者の実装形態において、プロセッサ410は、外部コンピューティングデバイスにおいて行われるべきステップの性能に必要な測定およびパラメータを外部コンピューティングデバイスへ送信させるように、POC100のメモリ420中に保存されたプログラム命令によって構成され得る。
【0109】
酸素濃縮器100の主な用途として、ユーザへ補充酸素を提供することがある。1つ以上の流量設定が、酸素濃縮器100のコントロールパネル600上において選択され得、これにより、上記選択された流量設定に従って酸素富化空気の生成が達成されるように動作が制御される。いくつかのバージョンにおいて、複数の流量設定が実行され得る(例えば、6個の流量設定)。本明細書中により詳細に述べるように、コントローラ400は、POD(パルス型酸素送達)またはデマンド動作モードを実行し得る。コントローラ400は、酸素富化空気の送達を選択された流量設定に従って達成するように、1つ以上の放出されるパルスまたはボーラスのサイズ調節を行い得る。
【0110】
送達される酸素富化空気による効果の最大化のために、コントローラ400は、酸素富化空気の各ボーラス放出とユーザの吸息とを同期させるようにさらにプログラムされ得る。ユーザの吸息時にユーザへの酸素富化空気のボーラスの放出を行うことにより、例えばユーザの呼息時において酸素放出が控えられるため、酸素の無駄が回避され得る。コントロールパネル600上の流量設定は、微量の送達される酸素(ボーラス体積を毎分あたりの呼吸速度で乗算した値)に対応し得る(例えば、0.2LPM、0.4LPM、0.6LPM、0.8LPM、1LPM、1.1LPM)。
【0111】
酸素濃縮器100によって生成された酸素富化空気は、酸素アキュムレータ106中に保存され、POD動作モードにおいて、ユーザの吸息時においてユーザへ放出される。酸素濃縮器100によって提供される酸素富化空気量は、供給弁160によって部分的に制御される。一実装形態において、供給弁160の開口は、コントローラ400によって推定されたような適切な量の酸素富化空気をユーザに提供することができるだけの充分な量の時間の間行われる。酸素の無駄を最小限にするために、ユーザの吸息開始の検出直後に、酸素富化空気がボーラスとして提供され得る。例えば、酸素富化空気のボーラスは、ユーザ吸息の最初の数ミリ秒において提供され得る。
【0112】
一実装形態において、センサ(例えば、圧力センサ194)は、ユーザの吸息開始を決定するように、用いられ得る。例えば、ユーザの吸息は、圧力センサ194の利用によって検出され得る。使用時において、酸素富化空気を提供するための送達導管192が、鼻気道送達デバイス196および/またはマウスピース198を通じてユーザの鼻および/または口へ連結される。よって、送達導管192中の圧力は、ユーザの気道圧力を示し、したがって、ユーザ呼吸を示す。吸息開始時において、ユーザは、鼻および/または口を通じて空気を体内へ引き込むことを開始する。空気が引き込まれる際、送達導管192の端部において引き込まれる空気のベンチュリ作用に部分的に起因して、送達導管192の端部において負圧が発生する。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、圧力の低下を検出し、吸息開始を示す。吸息開始が検出されると、供給弁160が開口されて、酸素富化空気のボーラスがアキュムレータ106から放出される。
【0113】
送達導管192内の圧力が正方向に変化または上昇した場合、ユーザによる呼息を示す。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、圧力の上昇を検出し得、呼息開始を示す。1つの実装形態において、正の圧力変化が感知されると、次の吸息開始が検出されるまで、供給弁160は閉鎖される。あるいは、ボーラス持続時間として知られる所定インタバル後、供給弁160は、閉鎖され得る。
【0114】
隣接する吸息開始間のインタバルを測定することにより、ユーザの呼吸速度が推定され得る。吸息開始時と後続の呼息開始時との間のインタバルを測定することにより、ユーザの吸気時間が推定され得る。
【0115】
他の実装形態において、圧力センサ194は、感知導管内に配置され得る。感知導管は、ユーザの気道と空気圧連通するが、送達導管192から別個に設けられる。よって、このような実装形態において、圧力センサ194からの圧力信号も、ユーザの気道圧力を示す。
【0116】
いくつかの実装形態において、圧力センサ194の感度は、特に圧力センサ194が酸素濃縮器100内に配置されかつ酸素濃縮器100をユーザへ連結する送達導管192を通じて圧力差が検出された場合、圧力センサ194のユーザからの物理的距離によって影響を受け得る。いくつかの実装形態において、圧力センサ194は、酸素富化空気のユーザへの提供に用いられる気道送達デバイス196内に配置され得る。圧力センサ194からの信号は、酸素濃縮器100中のコントローラ400へ有線的にまたはテレメトリを通じて(例えば、Bluetooth(登録商標)または他の無線技術を通じて)電子的に提供され得る。
【0117】
いくつかの実装形態において、POC100が非活性モードであり、吸息開始が所定のインタバル(例えば、8秒)にわたって検出されなかった場合、POC100は、スリープモードに変化する。次に、吸息開始がさらなる所定のインタバル(例えば、8秒)にわたって検出されなかった場合、POC100は「自動パルス」モードになる。自動パルスモードにおいて、コントローラ400は、ボーラス送達が定期的な所定のインタバル(例えば、4秒)で行われるように供給弁160の作動を制御する。吸息開始がトリガプロセスによって検出された後またはPOC100がオフにされた後、POC100は、自動パルスモードを終了する。
【0118】
いくつかの実装形態において、ユーザの現在活動レベル(例えば、検出されたユーザの現在の呼吸速度を用いて推定されたもの)が所定の閾値を超える場合、コントローラ400は、酸素濃縮器100の送達能力を超えている旨をユーザに警告するためのアラーム(例えば、視覚および/または可聴)が実装され得る。例えば、閾値は、1分あたり40回(BPM)の呼吸に設定され得る。
【0119】
上記したように、図1N中のセンサ436などのデバイスは、血液酸素化データをPOC100のユーザから収集するために用いられ得る。例えば、血液酸素化センサ436は、身体装着型の血液酸素化モニター(例えば、手首モニターまたは腰取付型モニター)データ。このようなモニターは、血液酸素化の測定をフォトプレチスモグラフィによって行う。身体装着型のモニターに含まれ得る送信器は、外部デバイス(例えば、POC100)と(CWM430を通じて)またはポータブルコンピューティングデバイス466と通信する。
【0120】
別の代替的な外部血液酸素化センサとして、血液酸素化レベルを測定する指クリップデバイスがあり得る。このようなデバイスは、フォトプレチスモグラフィによる血液酸素化の測定も行い得る。本例において、指クリップデバイス(例えば、Onyx、WristOx2、またはNoninConnectデバイス(製造元:Nonin))は、外部デバイスと無線通信し得る。別の例として、3078耳センサ(製造元:Turner Medical)を備えた耳取付型デバイス(例えば、BCI3301ハンドヘルドパルスオキシメータ)があり得る。あるいは、ユーザまたはヘルスケア専門家は、血液酸素化測定を受け得、この測定をポータブルコンピューティングデバイス466上において実行されるアプリケーションに入力し得る。
【0121】
別の代替例として、血液酸素化センサ436は、POC100内に取り付けられ得る。このようなセンサは、指クリップデバイスであり得、ユーザが指を入れるための物理的アパチャがPOC100のハウジング内に設けられる。センサは、測定された血液酸素化データを直接コントローラ400へ通信する。他の実装形態を挙げると、既存の身体装着型のセンサの適合がある(例えば、手首装着型デバイス(例えば、Fitbit)、Loop(Spry Health)、BORAband(Biosency)またはアップルウォッチ)。センサ436は、埋め込みセンサであり得、データ通信を無線受信器を通じて行う。埋め込みセンサの例を挙げると、皮膚取付型パッチまたはワンタイムナノボットインプラントがある。
【0122】
別の代替例において、POC100そのものがウェアラブルデバイスであり得、血液酸素化センサ436は、着用時にユーザの皮膚と接触するようにPOC100中に取り付けられ得る。この実装形態において、外部センサ438は、健康監視デバイス上ではなくPOC100上に取り付けられ得る。
【0123】
接続型酸素治療システム450において、例示的POC100は、住居環境における接続型ハブとして機能する。POC100は、そのハブ内において、本例において健康状態(例えば、COPD、喘息、肺気腫、および慢性気管支炎)の管理のために外部健康データ分析エンジン472と協働する。この管理は、統合された支払者に対するサービスとして提供され得る。POC100および関連付けられた外部センサ438(例えば、健康監視デバイス上に取り付けられたもの)は、患者が被り得る呼吸器疾病の多数の態様を監視することができる。
【0124】
収集されたデータは、健康状態の変化(例えば、通常の呼吸速度よりも早い/頻呼吸)の追跡のための呼吸変化の決定のために用いられ得る。呼吸データの経時的収集により、基本呼吸速度の経時的進展の様態が決定され得る。このような疾患分析は、健康状態の悪化の追跡を含み得る。例えば、収集されたデータの分析により、喘息の悪化、花粉症、風邪または気道感染が検出され得る。
【0125】
音声データが、健康データ分析の確認または向上のために用いられ得る。例えば、内部音声センサからの患者の呼吸音を、外部音声センサによって検出された外部音と共に用いて、音声データが決定され得る。
【0126】
音声データは、残存いびき、喘ぎ呼吸、咳嗽、喘鳴、咳き込みおよび心拍音のレベルを含み得る。これらの音は、呼吸器疾患および他の健康状態の監視のために用いられ得る。例えば、喘鳴の音の強度およびタイミング(吸気または呼気)は、呼吸器疾病、障害または病気の症状であり得る。加えて、音の欠如(例えば、呼吸音減弱)は、他のバイタルサイン(例えば、心拍数および呼吸速度の上昇)と組み合わさった場合、重症の喘息を示し得る。
【0127】
収集された動作データおよび生理学的データは、他のソースからのデータから導出され得る患者特有の疾病の文脈において分析され得る。このようなデータは、モバイルコンピューティングデバイス466上において実行されるアプリケーションを通じて患者が報告した結果またはデータベース上の電子健康記録からの入力を含み得る。よって、患者特有のデータを挙げると、併存疾患、人口統計学的詳細(肥満度指数(BMI)、年齢、性別)、地理的詳細(花粉数に起因するアレルゲンの危険性、外部温度に起因する熱中症、高度に起因する空気質および酸素量)、および患者と関連付けられた薬物治療がある。
【0128】
患者報告アウトカム(PRO)を挙げると、患者の感じ方(ウェルビーイング)についての主観的フィードバック、患者が疲労感を感じているか、および患者の眠たさのレベルがある。
【0129】
POC100上のセンサは、患者からのガス(呼吸)の感知を例えば交差反応性センサのアレイおよびパターン認識/深層学習を用いて行って、疾患進捗に起因する特定の揮発性有機化合物(VOC)の特性変化を特定し得る。さらなるセンサが、POC100が配置された室内環境内および患者の呼息ガス中のガス、煙霧、煙または微粒子を検出し得る(例えば、測定される量がPM2.5であるもの(直径が概して2.5マイクロメータル以下である吸入可能な粒子)およびPM10(直径が10マイクロメータル以下である粒子)。このようなデータは、細菌、ウイルスウイルスおよび他の汚染物質が(例えば(ほとんどのかび、白かび、およびウイルスを含む)0.3ミクロン以下の粒子を除去するHEPAフィルタを介して)適切にフィルタリングされたかの決定のために用いられ得る。
【0130】
POC100によって収集され得る一種の動作データとして、「自動パルス」によって送達されたボーラスと、治療セッション時に送達されたボーラス数の合計との間の比がある。比が大きいほど、検出されなった吸息が多く(よって呼吸がより浅い/より不規則である)ことを示す。
【0131】
図2に示す接続型酸素治療システム450Aの別の実装形態において、POC100のコントローラ400は、図1NのようなCWM430を含む。CWM430は、コントローラ400が無線通信プロトコル(例えば、汎ヨーロッパデジタル移動通信システム(GSM(登録商標))または他のプロトコル(例えば、WiFi))を用いて遠隔外部デバイス(または遠隔コンピューティングデバイス)(例えば、クラウドベースのサーバ460)との通信をネットワーク470を介して行うことを可能にするように、構成される。ネットワーク470は、広域ネットワーク(例えば、インターネットまたはクラウド)あるいはローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット(登録商標))であり得る。代替的にまたは追加的に、遠隔外部デバイスは、遠隔コンピューティングデバイス(例えば、ポータブルコンピューティングデバイス466)であり得る。例えば、コントローラ400は、短範囲無線モジュール440も含み得る。短範囲無線モジュール440は、コントローラ400が短範囲無線通信プロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標))を用いてポータブルコンピューティングデバイス466(例えば、スマートフォン)と通信することを可能にするように構成される。ポータブルコンピューティングデバイス466は、POC100のユーザ1000と関連付けられ得る。
【0132】
サーバ460は、ポータブルコンピューティングデバイス466との無線通信も無線通信プロトコル(例えば、GSM(登録商標))を用いて行い得る。ポータブルコンピューティングデバイス466のプロセッサは、スマートフォンとPOC100、ユーザ1000および/またはサーバ460との間の対話を制御する患者参与app482を実行し得る。患者参与app482に含まれ得る入力インターフェースを用いて、ユーザ1000は、(ネットワークされた血液酸素化センサ(例えば、図1N中のセンサ436)が利用できない場合に)外部センサからのSpO2読み取り値などのデータを入力する。
【0133】
サーバ460に含まれる分析エンジン472は、ユーザ特有のベースラインの決定アルゴリズムなどの動作を実行し得る。サーバ460は、他のデバイス(例えば、パーソナルコンピューティングデバイス464)とも、ネットワーク470を介した有線接続または無線接続を介して通信し得る。サーバ460は、データベース484へのアクセスを有する。データベース484は、接続型酸素治療システム450によって管理されるPOCおよびユーザについての動作データおよび生理学的データを保存する。データベース484は、個々のデータベースにセグメント化され得る(例えば、POCのユーザについての生理学的データと、POCの使用と関連付けられた動作データとを有するユーザデータベース)。サーバ460は、ネットワーク470を介して他の関連データベース(例えば、さらなるデータを提供し得る環境データベース486)とも通信し得る。
【0134】
POC100のユーザ1000およびポータブルコンピューティングデバイス466は、POCユーザシステム490として組織され得る。接続型酸素治療システム450Aに含まれ得る複数のPOCユーザシステム490、492、494および496はそれぞれ、POCユーザと、POC(例えば、POC100)と、ポータブルコンピューティングデバイス(例えば、ポータブルコンピューティングデバイス466)とを含む。その他のPOCユーザシステム492、494および496はそれぞれ、サーバ460との通信を直接的にまたはPOCの各ユーザと関連付けられた各ポータブルコンピューティングデバイスを介して行う。システム492、494および496のPOCそれぞれにおけるコントローラ400に対応するコントローラおよびCWM430に対応するトランシーバは、図1Nに関連して上記しデータの収集および送信を行う。パーソナルコンピューティングデバイス464は、健康管理エンティティ(HME)と関連付けられ得る。健康管理エンティティ(HME)は、POCのフリートのユーザの母集団の治療を担当する。
【0135】
データベース484からのデータ、健康データ分析エンジン472からの分析結果および個々のPOCユーザシステム(例えば、ユーザシステム490)からのデータが、機械学習エンジン480によってさらに相関付けられ得る。機械学習エンジン480は、機械学習構造を実行し得る(例えば、ニューラルネットワーク、デシジョンツリーアンサンブル、サポートベクタマシン、ベイジアンネットワークまたは勾配ブースティングマシン)。このような構造は、異なる健康状態の監視のための線形予測モデルまたは非線形予測モデルを実行するように構成され得る。例えば、例えば患者の健康状態の現状を決定するためのデータ処理が、以下のうち任意の1つ以上によって実行され得る:教師あり機械学習、深層学習、畳み込みニューラルネットワークおよび再帰型ニューラルネットワーク。ハンドクラフト特徴量を用いた記述的かつ予測的な教師あり機械学習に加えて、深層学習を機械学習エンジン480上において実行することが可能である。これは、典型的には、通常の状態および異常な状態についてのより大量のスコア付けされた(ラベル付けされた)データ(例えば、異なるPOCデバイスからの数百個のデータ点)に依存する。このアプローチにおいては、ニューロンの相互接続層を多数実行することにより(単純なニューラルネットワークよりも「深い」)ニューラルネットワークを形成して、より複雑な特徴が各層によって「学習」されるようにする。機械学習においては、ハンドクラフト特徴量または単純なディシジョンツリーよりも多数の変数用いられ得る。
【0136】
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、情報推定のための(例えば、顔認識のための)音声および画像処理において広範に用いられており、音声スペクトログラムにまたはさらには画像として表された収集されたデータから生成された母集団スケールのゲノムデータセットにも適用され得る。画像処理またはスペクトログラム処理の実行時において、システムは、時間特性および周波数特性をデジタル化画像またはスペクトログラムデータの強度、スペクトル、および統計推定から認識的に「学習する」。
【0137】
CNNと対照的に、全ての問題が固定長さの入力および出力を用いて表すことが可能であるわけではない。例えば、処理呼吸音または心臓音は、スピーチ認識および時系列予測と類似性を有する。よって、音分析は、文脈情報の保存および利用を行うシステムから恩恵を受け得る(例えば、前回の出力または隠蔽された状態を入力としてとり得る再帰型ニューラルネットワーク(RNN))。換言すると、リカレントニューラルネットワーク(RNN)は、情報を文脈ノード中に保存し得る多層ニューラルネットワークであり得る。RNNにより、時間ステップにわたる状態情報の維持によって可変長の入力および出力の処理が可能になる。RNNは、LSTM(長・短期記憶(「ニューロン」の種類であり、RNNにおける(一方向または双方向であり得る)制御の向上を可能にする))を含み得、これにより、勾配消失問題の管理および/または勾配クリッピングの利用が可能になる。
【0138】
機械学習エンジン480は、入力データの分析の支援のために、既知のデータ入力からの既知の患者の現状の教師あり学習のために訓練され得る。機械学習エンジン480は、入力データと患者現状との間の未知の相関の決定のために教師無し学習のためにも訓練され得、これにより、健康データ分析エンジン472の分析範囲の増大に繋がる。
【0139】
POCユーザシステム(例えば、ユーザシステム492、494および496)のフリートのユーザの母集団からのデータ収集により、より高精度の健康データ分析を提供する目的のために、大規模な母集団健康データの収集が可能になる。上記したように、収集されたデータは、さらなる分析対象として機械学習エンジン480へ供給され得る。健康データ分析エンジン472および/または機械学習エンジン480からの分析の利用により、個々のユーザのうちの任意のユーザ(例えば、ユーザ1000)の健康データ分析が提供され得る。
健康スコア
【0140】
図3は、本技術の1つの実装形態による、接続型酸素治療システム450Aにおいて酸素治療を受けているユーザ1000について健康の現在の状態を示す健康スコア/ウェルビーイングを計算する方法3000を示すフローチャートである。方法3000は、ポータブルコンピューティングデバイス466のプロセッサによって実施されてもよく、患者参与app482の一部を形成するプログラム命令によってそれを実施するように構成される。あるいは、方法3000は、酸素濃縮器100のコントローラ400プロセッサ410によって実施されてもよく、メモリ420中に保存されたプログラム命令によってそれを実施するように構成されている。
【0141】
方法3000においては、N個のデータ形式が利用される。所定の時間窓(例えば、1日)にわたる各データ形式の値は、健康スコアに貢献する。健康スコアは、N個のデータ形式の貢献の組み合わせであり、ユーザ1000の所定の時間窓にわたる健康/ウェルビーイングの状態を示す。
【0142】
方法3000は、ステップ3010から開始する。ステップ3010において、以下により詳細に記載される機械学習エンジン480によって実行された機械学習(ML)アルゴリズムからの結果が取り出される。これらの結果は、データサーバ460からポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400へ前もって提供されている場合がある。その場合、取り出しは、ポータブルコンピューティングデバイス466の内部メモリまたはメモリ420から行われる。あるいは、これらの結果の取り出しは、リアルタイムでポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400によってデータサーバ460から行われ得る。以下により詳細に記載される機械学習(ML)アルゴリズムの結果を以下に挙げる:
● 健康スコアに貢献するN個のデータ形式の識別情報。いくつかの実装形態において、各貢献するデータ形式に付随するフラグは、健康スコアの計算においてデータ形式が必須であるか否かを示す。
● 各貢献するデータ形式のベースライン。
● 各貢献するデータ形式の重み付け。
【0143】
その後のステップが、N個の貢献するデータ形式に対して実施される。
【0144】
ステップ3020-iおよび3030-iは、健康スコアに貢献する各データ形式i1~Nについて実施される2つのステップの順序付きシーケンスを表す。N個の2ステップシーケンスが、並行してまたは逐次的に実行され得る。
【0145】
ステップ3020-iは、貢献するデータ形式の値のサマリーパラメータの計算を所定の時間窓にわたって行う。サマリーパラメータは、窓にわたるデータ値のサマリーを示す(例えば、平均、媒体n値、またはデータ値の中心的傾向の他の測定)。
【0146】
次に、ステップ3030-iは、貢献するデータ形式の貢献Cの計算を、ステップ3010において取り出された機械学習結果からのベースラインとステップ3020-iにおいて計算されたサマリーパラメータとを用いて行う。ステップ3030-iにおいて計算された貢献Cは、貢献するデータ形式全てに対して共通する数字目盛りの値であり、tステップ3020-iにおいて計算されたサマリーパラメータ値を含むデータ形式がユーザウェルビーイングに貢献する度合いを示す。
【0147】
次に、ステップ3040において、ステップ3030-1~3030-Nにおいて計算されたN個の貢献Cから健康スコアを計算する。いくつかの実装形態において、各貢献Cは、ステップ3040における健康スコアの計算において、対応する重み付けwを受け取る。上記したように、重み付けwは、ステップ3010において取り出された機械学習結果の一部を形成し得る。このような実装形態において、ステップ3040は、健康スコアSの計算を重み付けwを用いて以下のように行い得る:
【数1】
【0148】
等式(1)によって計算される健康スコアSは、貢献Cと共通する数字目盛り上にある。
【0149】
方法3000のいくつかの実行において、例えば対応するセンサがオフラインである場合に、貢献するデータ形式のデータが利用不可能である場合がある。そのような場合、そのデータ形式のためのステップ3020-iおよび3030-iは、省略され得る。この欠落しているデータ形式が必須データ形式としてフラグ付けされている場合、ステップ3040および3050も省略され得るため、そのような場合、健康スコアの計算または表示は行われない。欠落しているデータ形式が必須ではない場合も、ステップ3040および3050は実行され得るが、重み付けwはゼロに設定される。
【0150】
次に、最終ステップ3050において、以下により詳細に述べるように、計算された健康スコアが表示される。
【0151】
健康スコアへの貢献のために方法3000によって用いられるデータ形式は、以下のものであり得る:
1.生理学的データ:生理学的データは、ユーザからの生理学的データであり、上記したように(POC100内に内蔵されているかまたは外部においてPOC100またはポータブルコンピューティングデバイス466と通信している)センサからPOC100のコントローラ400および/またはポータブルコンピューティングデバイス466によって収集され得る。収集された生理学的データは、生理学的パラメータ(例えば、呼吸速度、吸気時間、咳嗽速度、酸素飽和、活動レベル、肺活量、および呼気終末二酸化炭素濃度、心拍数、睡眠の質、無呼吸/低呼吸指数)の生成のために分析され得る。
2.動作データ:動作データは、POCの動作についてのデータであり、上記したように内部センサからPOC100によって収集され得る。収集された動作データは、動作パラメータ(例えば、各流量設定における使用時間、治療セッション時における「自動パルス」ボーラス送達の比率)の生成のために分析され得る。
【0152】
健康スコアに貢献するデータ形式は、ユーザによって異なり得、特定のユーザにおいてユーザの疾患の病態の変化と共に経時的に変化し得る。貢献するデータ形式は、POC100および/またはポータブルコンピューティングデバイス466によって収集された全ての形式のデータから、特定のユーザについて特定の時間において機械学習エンジン480によって決定され得る。いくつかの実装形態において、機械学習エンジン480は、以下により詳細に述べるように、ユーザおよび時間に対して貢献するデータ形式を(ユーザ1000と同じクラス中のユーザのウェルビーイングにおいて最も有意であるデータ形式となるように)選択する。本文脈において、「クラス」とは、1つ以上のクラス定義詳細(例えば、年齢、性別、BMI、呼吸器疾患の病態、併存疾患および呼吸器疾患の進捗)に基づいたユーザ母集団の一部を指す。ML結果を決定する際の計算効率は、患者母集団のCOPD状態の低下または向上を最良に示すデータセット(例えば、SPO2、脈拍数、睡眠の質、呼吸速度、日中の眠気、年齢、性別、BMI、併存疾患、呼吸障害)の選択を通じて向上し得る。特定の形式のデータのみを選択することにより、対応する重量を含む各形式のデータと比較して、健康スコアの計算効率の向上が可能になる。
【0153】
上記したように、ステップ3010において取り出された機械学習結果は、各貢献するデータ形式に対してベースラインを含み得る。このような実装形態において、ベースラインは、各データ形式の貢献の計算のために、ステップ3030-iにおいて用いられる。これらのベースラインは、ウェルビーイングにとって有益である貢献するデータ形式の値を主に示す。これらのベースラインは、ユーザによってかつ経時的に異なり得、特定のユーザについて特定の時間において機械学習エンジン480によって決定され得る。いくつかの実装形態において、以下により詳細に述べるように、機械学習エンジン480は、特定のユーザおよび時間について各貢献するデータ形式のためにベースラインを決定し、当該ユーザについて貢献するデータ形式を選択する。
【0154】
1つの実装形態において、ベースラインは、貢献するデータ形式のサマリーパラメータ値の「ウェルビーイング分布」を示す。サマリーパラメータ値におけるウェルビーイング分布の値は、当該値におけるサマリーパラメータがユーザウェルビーイングに貢献する度合いによって設定される。このような分布の一例として、平均および標準偏差によって特徴付けられ得る通常の分布がある。この平均は、サマリーパラメータの最も有益値であり得、標準偏差は、サマリーパラメータがウェルビーイングに対して有意な貢献をする平均のいずれかの側の範囲を示し得る。次に、所与のサマリーパラメータ値の貢献は、サマリーパラメータ値におけるウェルビーイング分布の値として単純に計算され、1~10の値などの共通する数字目盛りへマップされる。例えば、ウェルビーイング分布が通常の分布であり、サマリーパラメータ値が通常の分布の平均と等しい場合、貢献は、0.4を標準偏差によって除算した(1を上限とする)値であり、共通する数字目盛りへマップされる。
【0155】
貢献するデータ形式およびベースラインと同様に、ステップ3040において用いられる重み付けwは、ユーザおよび時間に特有であり得、特定のユーザおよび時間について機械学習エンジン480によって決定され得る。いくつかの実装形態において、以下により詳細に述べるように、機械学習エンジン480は、特定のユーザおよび時間について各貢献するデータ形式に対する重み付けを決定し、ユーザに対して貢献するデータ形式を選択し、これらの貢献するデータ形式に対するベースラインを決定する。
【0156】
上記したように、いくつかの実装形態において、機械学習エンジン480は、ユーザに対して貢献するデータ形式を選択し得、貢献するデータ形式に対するベースラインを決定し、貢献するデータ形式の重み付けを健康スコアの計算において用いられるものとして決定する。機械学習エンジンは、接続型酸素治療システム450Aに属するPOCユーザシステムの母集団からの生理学的および動作データの分析と、データベース484中に保存されたデータ分析エンジン472からの健康データ分析結果とに基づいて、これらのタスクを行い得る。機械学習エンジン480は、自身にとって利用可能なデータ形式全てを分析して、各データ形式および各所定の時間窓についてサマリーパラメータ値を決定し得る。次に、機械学習エンジン480は、機械学習アルゴリズムを実行して、高ウェルビーイング(例えば、上記したようにポータブルコンピューティングデバイス466を通じて得られたウェルビーイングについてPROによって測定されたもの)と相関するサマリーパラメータを学習し得る。次に、選択されたサマリーパラメータの重み付けは、これらのサマリーパラメータと患者から報告された高ウェルビーイングの結果との相関の相対的サイズに対応し得る。選択されたサマリーパラメータのベースラインは、選択されたサマリーパラメータのうち患者から報告された高ウェルビーイングとの相関が最も高い値(単数または複数)と、サマリーパラメータがこれらの値周辺において変化する際の当該相関の変化の度合いとに対応し得る。上記したように、選択されたサマリーパラメータのベースラインは、当該サマリーパラメータのウェルビーイング分布であり得る。機械学習エンジン480から、分析結果がサーバ460へ送信される。
【0157】
このような機械学習アルゴリズムは、ウェルビーイングの決定において異なるデータ形式間の相互依存がほとんど無い(すなわち、異なるデータ形式によるウェルビーイングへの貢献が相互に独立している)実装形態に適している。しかし、いくつかの実装形態において、ウェルビーイングに対する貢献において、異なるデータ形式間の相互依存が有意である場合がある。例えば、流量設定が最高であるときに使用時間が通常よりも長い場合、ウェルビーイングの低下を単独で示し得る。しかし、このような使用が通常よりも高いレベルの活性と同時に発生した場合、このような使用は、ウェルビーイング向上を示し得る。異なるデータ形式のウェルビーイング貢献間の有意の相互依存が、より高度な機械学習アルゴリズムによって学習され得る。一例において、機械学習アルゴリズムは、患者から報告されたウェルビーイング結果に基づいてニューラルネットワークを訓練するように構成され得る。ニューラルネットワークは、出力決定の際におけるこのような入力間の相互依存の特定およびキャプチャに適している。本例において、機械学習結果は、訓練されたニューラルネットワークの特性である:すなわち、ウェルビーイングに対して有意に貢献するデータ形式、各ノードにおける活性化機能、およびノード間接続の重み付け。このような実装形態において、ポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400は、方法3000のステップ3040におけるサマリーパラメータからの健康スコアの計算において活性化機能および重み付けを直接適用するため、ステップ3030-iにおいて個々の貢献を計算する必要は無い。
【0158】
いくつかの実装形態において、機械学習分析および結果は、全てのクラスのユーザにわたって均一であり得る。いくつかの実装形態において、機械学習分析は、異なるクラスのユーザにセグメント化され得、これにより、結果が異なるクラスのユーザに特有のものとなる。
【0159】
いくつかの実装形態において、機械学習結果は、永久に静的であり得る。このような場合、機械学習結果は、ポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400による(例えばapp482またはPOC100の登録における)保存対象として、サーバ460によって1回だけ送信され得る。結果が異なるクラスのユーザにセグメント化される実装形態において、サーバ460は、ポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400からのユーザのクラス定義詳細の受信に応答して、適切なクラスのユーザと、送信対象としての対応する機械学習結果とを選択し得る。
【0160】
他の実装形態において、機械学習結果は、データベース484によるデータ蓄積が増大すると共に経時的に変化し得る。このような場合、機械学習結果は、方法3000のステップ3010においてサーバ460からポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400へリアルタイムで送信され得る。結果が異なるクラスのユーザにセグメント化される実装形態において、サーバ460は、ポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400からのユーザの現在のクラス定義詳細の受信に応答して、適切なクラスのユーザおよび対応する機械学習結果を今回は送信対象として選択し得る。
【0161】
図5は、機械学習アルゴリズム5000の役割を示すブロック図である。図5において、機械学習アルゴリズム5000は、特定のユーザ1000を含むクラスのユーザから多様な形式の入力データとしてとる。機械学習アルゴリズム5000は、図2の接続型酸素治療システム450A中の機械学習エンジン480によって実行され得る。基準入力として、機械学習アルゴリズム5000は、クラスからのPROをウェルビーイングのインジケータとして用いる。次に、機械学習アルゴリズムから生成された結果は、ユーザの健康スコアおよびユーザ1000と関連付けられたデータ形式の計算のために健康スコア計算アルゴリズム5010によって用いられる。1つの実装形態において、健康スコア計算アルゴリズムは、方法3000である。アルゴリズム5010は、ユーザ1000のPROも健康スコアの計算に用いられる入力データ形式として用い得る。
【0162】
健康スコアは、ステップ3050においてユーザに対して、ポータブルコンピューティングデバイス466のディスプレイ上において実行される患者参与app482のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の一部として表示され得る。図4Aおよび図4Bは、ステップ3050の実行後にポータブルコンピューティングデバイス466として機能するスマートフォンの2つの例示的画面4000および4050を含む。画面4000は、POC100についての一定の動作情報を上側セクション4010内に含む(例えば、残りの電池寿命(1時間4分)および現在の流量設定(設定3))。中間セクション4020は、健康スコアの値のカレンダー表示を含み、これらの値はそれぞれ、単一の日を(1週間として表示されている)最近の期間にわたって示す。下側セクション4030は、単一の日の健康スコアの数値表示(現在は火曜日のものとして表示されている)と、表示されている最近の期間にわたる平均健康スコアとを含む。ユーザは、下側セクション4030内の選択された日上の健康スコアを視認するために、最近の期間カレンダー表示から異なる日の選択を(例えば、タッチスクリーンに触れることによって)行い得る。画面4050は、上側領域4060において現在の健康スコア(画面4050内において33%)を環状のグラフィカル表示として現在の健康スコアの数値表示と共に表示している点を除いて、画面4000に類似する。
【0163】
異なる時間分解能の計算および表示が企図される。例えば、健康スコアの各値は、1~2週間分のデータを示し得、健康スコアが表示される最近の期間は、数ヶ月であり得る。
【0164】
あるいは、健康スコアは、ステップ3050において酸素濃縮器100のコントロールパネル600上のディスプレイ(図示せず)上にユーザへ表示され得る。
【0165】
健康スコアは、任意選択的にポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400からネットワーク470を介して(健康管理エンティティまたはヘルスケアプロバイダと関連付けられた)パーソナルコンピューティングデバイス464へ送信してもよい。これにより、このようなエンティティが現在の現状および多数のユーザの履歴をクライアントプログラム(例えば、パーソナルコンピューティングデバイス464上において実行されるブラウザ)を通じてひと目で簡便に確認することが可能になる。健康スコアを、任意選択的にポータブルコンピューティングデバイス466またはコントローラ400からネットワーク470を介して介護者またはユーザの愛する人のパーソナルコンピューティングデバイス(例えば、スマートフォン)上において実行されるappへ送信してもよい。よって、健康スコアの表示は、POCユーザおよび/またはユーザの介護者がユーザの健康の状態と、POC100の使用によりユーザの感じ方が向上しておりかつユーザのウェルビーイングが向上しているかとについて理解するための単純なビューを提供することである。
【0166】
個々の健康スコアは、特定のユーザについての健康スコアの期間にわたる向上の提供のための、酸素出力を調節するためにPOCのコントローラ400によって実行されるアルゴリズムへの入力でもあり得る。このようなアルゴリズムにより、特定の健康スコアまたは健康スコアの経時的変化に基づいて、酸素出力の異なる調節が決定され得る。例えば、個人の健康スコアの経時的進展に基づいて、コントローラ400がO2の低下が特定した場合、アルゴリズムは、POCのコントローラ400により酸素送達を増加させて、個人の健康スコアを増加させ得る。
【0167】
さらに、臨床医などの介護者に対し、健康スコアに基づいた診断が提供され得る。例えば、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎、肺気腫、および関連肺疾病)が、特定の健康スコアと相関付けられ得る。その結果、自動化された診断に繋がり得る。あるいは、介護者に対し、疾患診断の支援のために健康スコアおよび相関が提供され得る。
【0168】
本明細書中において用いられる用語は、特定の実施形態のみを記述する目的のためのものであり、本発明を制限することを意図していない。本明細書中において用いられるように、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含む。さらに、「含む(including、includes)」、「有する(having、has、with)」という用語またはこれらの変化形が詳細な説明および/または特許請求の範囲において用いられる範囲内において、これらの用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の意味を含むことが意図される。
【0169】
他に定義無き限り、本明細書中において用いられる全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当業者が共通して理解する用語と同じ意味を有する。さらに、共通して使用されている辞書などに定義されている用語は、関連分野の文脈中の意味と一貫する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書中に明示されていない限り、理想化されたかまたは過度に形式的な意味のものとして解釈されない。
【0170】
本発明の多様な実施形態について上述してきたが、これらの実施形態はひとえに例示目的のために提示したものであり、制限的なものではないことが理解されるべきである。本発明について1つ以上の実装形態について例示および記載してきたが、当業者であれば、本明細書および添付図面を読んで理解すれば、相当する変更例および改変例を想起する。加えて、本発明の特定の特徴がいくつかの実装形態のうち1つのみについて開示した場合があるが、このような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途において所望されかつ有利であり得るものとして、その他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わされ得る。よって、本発明の広さおよび範囲は、上記記載の実施形態のうちいずれかによって制限されるべきではない。すなわち、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその相当物に従って規定されるべきである。
【符号の説明】
【0171】
酸素濃縮器 100
入口 101
入口 105
アキュムレータ 106
アキュムレータ圧力センサ 107
入口マフラー 108
入口弁 122
弁 124
フィルタ 129
出口 130
出口弁 132
マフラー 133
出口弁 134
ばねバッフル 139
チェック弁 142
チェック弁 144
流れ制限器 151
弁 152
流れ制限器 153
弁 154
流れ制限器 155
供給弁 160
膨張チャンバ 162
超音波センサ 165
放出体 166
受信器 168
ハウジング 170
ファン 172
出口 173
出口ポート 174
流れ制限器 175
電力供給部 180
流量センサ 185
フィルタ 187
コネクタ 190
送達導管 192
圧力センサ 194
鼻カニューレ気道送達デバイス 196
マウスピース 198
圧縮システム 200
速度センサ 201
コンプレッサ 210
コンプレッサ出口 212
モータ 220
外部回転電機子 230
空気移送デバイス 240
コンプレッサ出口導管 250
キャニスタシステム 300
キャニスタ 302
キャニスタ 304
空気入口 306
ハウジング構成要素 310
ベース 315
弁座 322
開口部 323
弁座 324
出口 325
排気ガス 327
入口導管 330
弁座 332
アパチャ 337
導管 342
導管 344
導管 346
開口部 375
コントローラ 400
プロセッサ 410
メモリ 420
セルラー無線モジュール 430
GPS受信器 434
センサ 436
外部センサ 438
短範囲無線モジュール 440
酸素治療システム 450
酸素治療システム 450A
サーバ 460
パーソナルコンピューティングデバイス 464
モバイルコンピューティングデバイス 466
ネットワーク 470
健康データ分析エンジン 472
機械学習エンジン 480
患者参与app 482
データベース 484
環境データベース 486
ユーザシステム 490
ユーザシステム 492
ユーザシステム 494
ハウジング構成要素 510
導管 530
導管 532
導管 534
開口部 542
開口部 544
弁座 552
弁座 554
コントロールパネル 600
入力ポート 605
電源ボタン 610
流量設定ボタン 620
流量設定ボタン 622
ボタン 624
ボタン 626
ボタン 630
ボタン 635
高度ボタン 640
電池チェックボタン 650
LED 655
ユーザ 1000
方法 3000
ステップ 3010
ステップ 3020-i
ステップ 3030-i
ステップ 3040
ステップ 3050
画面 4000
上側セクション 4010
中間セクション 4020
セクション 4030
画面 4050
上側領域 4060
機械学習アルゴリズム 5000
健康スコア計算アルゴリズム 5010
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図1N
図1O
図2
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】