(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】単一ケーブルを撚り合わせるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/02 20060101AFI20231003BHJP
B21F 7/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01B13/02 Z
B21F7/00 D
B21F7/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580064
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2020068162
(87)【国際公開番号】W WO2021259504
(87)【国際公開日】2021-12-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506058451
【氏名又は名称】コマックス ホルディング アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KOMAX HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】シュトラッセル、 カッシアン
(72)【発明者】
【氏名】ストーブリ、 ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマター、 ジャン
【テーマコード(参考)】
4E070
5G325
【Fターム(参考)】
4E070AA04
4E070AB14
4E070AC02
4E070AD03
4E070BD06
4E070BE01
4E070EA02
5G325BB01
(57)【要約】
本発明は、ツイスト軸を中心に単一ケーブルを撚り合わせるための方法及び装置に関する。単一ケーブルはそれぞれのケーブル軸に沿って並んでおり、ストランドのツイスト方向に撚り合わされてストランドを形成するワイヤと、第1のケーブル端及び第2のケーブル端とを有する。第1のケーブル端は単一の回転ユニットで個別に保持される。第2のケーブル端はツイストユニットで保持される。第2のケーブル端は、ストランドのツイスト方向と反対の方向にツイスト軸を中心に共に回転されてツイストケーブル束を生成する。共に回転させている間、単一ケーブルのそれぞれのケーブル軸を中心に第1のケーブル端を、共に回転させている方向と同じ方向に、個別に回転させる。これにより、単一ケーブルのねじれが緩和される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツイスト軸(V)を中心に単一ケーブル(11、12)を撚り合わせるための方法であって、
前記単一ケーブル(11、12)は、それぞれのケーブル軸(v1、v2)に沿って並んでおり、ストランドのツイスト方向(S、Z)に撚り合わされてストランドを形成するワイヤ(11a、12a)と、第1のケーブル端(15、16)及び第2のケーブル端(17、18)とを有し、
前記第1のケーブル端(15、16)を個別に保持し、前記第2のケーブル端(17、18)を保持し、
規定されたまたは規定可能なレイ数及び/または規定されたまたは規定可能なレイ長を有するツイストケーブル束(10)を作成するために、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)と反対の方向にツイスト軸(V)を中心に前記第2のケーブル端(17、18)を共に回転させ、
前記共に回転させている間、それぞれの前記単一ケーブルの張力を緩和するために、前記単一ケーブル(11、12)のそれぞれの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心に、前記第1のケーブル端(15、16)を、前記共に回転させている方向と同じ方向に、個別に回転させる、方法。
【請求項2】
前記共に回転させる前に、予備ねじりのために、前記単一ケーブルの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心に前記第1のケーブル端(15、16)を個別に回転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備ねじりのために前記個別に回転させることは、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予備ねじりのために前記個別に回転させることは、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)と反対の方向に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記予備ねじりのために前記第1のケーブル端(15、16)を個別に回転させることは、ツイストレイ数に到達するために必要な回転角度である、前記第2のケーブル端(17、18)の総回転角度の最大で10%の回転角度で実行される、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記単一ケーブル(11、12)のうちの少なくとも1つのねじれモーメントまたはねじり力に関連する変数を繰り返し決定することをさらに有し、
前記単一ケーブル(11、12)のそれぞれの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心とする前記第1のケーブル端部(15、16)の個別の回転は、前記決定した変数が、予め決定されたまたは予め決定可能な閾値を下回るまで実行される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ケーブル束(10)は2つの単一ケーブル(11、12)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記単一ケーブルをトリミングし、及び/または
前記単一ケーブル(11、12)の前記第1のケーブル端(15、16)及び前記第2のケーブル端(17、18)の少なくとも一方に、1つまたは複数のコンタクト部品(13a、13b;14a、14b)を取り付けることをさらに有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記単一ケーブル(11、12)及び/または前記ケーブル束(10)を伸長するために、前記ツイスト軸(V)に沿って張力を加えることをさらに有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケーブル束(10)のツイストに関連する短縮を補償するために、前記第1及び第2のケーブル端(15、16;17、18)を互いの方へ移動させることをさらに有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ツイスト軸(V)を中心に単一ケーブル(11、12)を撚り合わせるための装置(400)であって、
前記単一ケーブル(11、12)は、それぞれのケーブル軸(v1、v2)に沿って並んでおり、ストランドのツイスト方向(S、Z)に撚り合わされてストランドを形成するワイヤ(11a、12a)と、第1のケーブル端(15、16)及び第2のケーブル端(17、18)とを有し、
前記第1のケーブル端(15、16)のそれぞれを個別に保持するための単一の回転ユニット(41、42)と、
前記第2のケーブル端(17、18)を保持するためのツイストユニット(30)と、を有し、
前記単一の回転ユニット(41、42)及びツイストユニット(30)は、前記単一ケーブル(11、12)をツイスト軸(V)と平行に保持するように配置され、
前記装置(400)は、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された、装置(400)。
【請求項12】
前記ツイストユニット(30)は、前記ツイスト軸(V)を中心に回転駆動が可能である、請求項11に記載の装置(400)。
【請求項13】
前記ツイストユニット(V)もしくは全ての前記単一の回転ユニット(41、42)のいずれか、または前記ツイストユニット(30)及び全ての前記単一の回転ユニット(41)の両方が、前記ツイスト軸(V)と平行に移動可能に配置され、前記装置(400)は、ツイストに関連する短縮を補償するために、前記第1及び第2のケーブル端(11、12)を互いの方へ移動させるように構成される、請求項11または12に記載の装置(400)。
【請求項14】
前記ツイストユニット(30)もしくは全ての前記単一の回転ユニット(41、42)のいずれか、または前記ツイストユニット(30)及び全ての前記単一の回転ユニット(41)の両方が、前記ツイスト軸(V)に沿って移動可能に配置され、前記装置は、前記単一ケーブル(11、12)及び/または前記ケーブル束(10)を伸長するために、前記ツイスト軸(V)に沿って張力を加えるように構成された、請求項11から13のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項15】
前記単一の回転ユニット(41、42)と前記ツイストユニット(30)との間に配置されたガイド手段(35)をさらに有し、前記ガイド手段(35)は、少なくともいくつかの領域で前記単一ケーブル(11、12)を離すように構成された、請求項11から14のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項16】
前記装置(400)は、前記ガイド手段(35)が、前記ツイストユニット(30)の回転に関連する変数に同期して方向(x)に移動するように構成された、請求項15に記載の装置(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、単一ケーブルを撚り合わせるための方法及び装置に関し、特に単一ケーブルのペアを撚り合わせてケーブル束を形成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単一ケーブルを撚り合わせて得られるケーブル束(以降、ツイストしたケーブル束)は、様々な産業分野で必要とされている。単一ケーブルはそれぞれストランドを有し、このストランドは撚り合わされたワイヤ(以降、ツイストされたストランド)で構成されている。絶縁体は、単一ケーブルのそれぞれのストランドを囲んでいる。単一ケーブルは、通常、ケーブル束を撚り合わせる前に所定の長さに切断、すなわちトリミングされ、必要に応じて組み立てられる、すなわちコンタクト部品等が設けられる。
【0003】
欧州特許第1032095号は、3つの導体ペアを同時に処理するためのツイスト装置を開示している。導体ペア、つまり単一ケーブルのペアは、保持ユニットとツイストヘッドとの間でクランプされる。ツイストヘッドがツイスト軸を中心に回転することで、ツイスト工程が実行される。結果として生じる導体ペアの短縮は、ツイストヘッドをツイスト軸と平行に移動させることで補償される。欧州特許第1032095号で開示されたツイスト装置は、ケーブルを組み立てる目的だけではなく、ケーブルをツイストする目的にも役に立つ(以下、自動生産と称す)。知られている変形例において、ツイスト装置はツイストのみに使用され、ケーブルの組み立てには使用されない(以下、半自動生産と称す)。変形例による装置の場合、導体ペアのツイストに関連する短縮の補償は、例えば、ツイスト軸と平行な保持ユニットの移動によって行われる。
【0004】
国際公開第2013/068990号は、欧州特許第1032095号で開示されたツイスト装置と同様のツイスト装置を開示し、これにより反対の方向に回転する2つのツイストヘッドが提供される。
【0005】
国際公開第98/06155号は、欧州特許第1032095号で開示されたツイスト装置と同様のツイスト装置を開示している。この装置では、保持ユニットの代わりに、ツイスト工程中にツイストヘッドと同じ回転方向に回転する各ケーブル端にそれぞれ撚り戻しユニットが設けられている。
解決すべき課題
ケーブル束のツイストで得られるケーブル束が有するべき規定された特性は、例えば、所望のレイ長またはツイストレイ長、並びに所望のレイ数またはツイストレイ数を含む。一般に、レイ長は、平面に投影したときの単一ケーブルの2つの隣接する交差点の距離または平均距離であると理解されている。レイ数は、これらの交差点の合計である。
【0006】
ケーブル束のツイストで得られるケーブル束は、常にツイスト軸を中心に一定の弾性を有している。欧州特許第1032095号及び国際公開第2013/068990号によるケーブル束のツイストで得られるケーブル束の場合、ケーブル束(ここではケーブルペア)は、ツイスト工程の終了後に、撚り合わされた状態とは逆にツイストを解こうとする傾向があり、少なくとも部分的にツイストの解けが生ずる。したがって、レイ数及び/またはレイ長は、許容できない状態まで変化するか、規定された値から逸脱する可能性がある。所望のレイ長及び/またはレイ数のために必要以上にツイスト工程を継続することで、この現象を弱めることが知られている(「過度のツイスト」)。また、反対方向の回転運動を行うことも可能であり(「逆ツイスト」)、ケーブル束の弾性変形がそれぞれ抑制または減少する。過度のツイストにより、特にストランド断面が小さいケーブルの場合、それぞれ望ましくない、または許容できない大きなねじり力が発生する可能性がある。
【0007】
国際公開第98/06155号では、ツイスト工程中に撚り戻しユニットがねじれ補償を実行するという点で、過度に高いねじり力を回避する試みがなされている。ケーブル端がツイストヘッドに対して回転が固定された状態で撚り戻しユニットにクランプされないという事実により、レイ長を特定するためにドリルシャトルの形態のガイドユニットが設けられている。ガイドユニットは、ピンによって2本のケーブルを離し、ツイスト工程中にツイストヘッドから撚り戻しユニットに向かって移動する。
【0008】
しかしながら、国際公開第98/06155号で得られるケーブル束の場合、レイ長が許容できないタイプで散らばる。すなわち、2つの同様のケーブル束間のレイ長の偏差だけでなく、同一ケーブル束内のレイ長の偏差も、許容できないほど大きくなる可能性がある。国際公開第98/06155号による技術で得られるケーブル束の場合、場合によっては交差点間の大きすぎる距離が単一ケーブル間に形成され(いわゆる大きいアイ)、得られるケーブル束の品質を低下させる。
【0009】
上記の問題を考慮して、本目的は、単一ケーブルをツイストしてケーブル束を形成するための改善されたオプションを明示することである。
【発明の概要】
【0010】
一態様によれば、ツイスト軸を中心に単一ケーブルを撚り合わせるための方法が提供される。単一ケーブルは、それぞれのケーブル軸に沿って並んでいる。各単一ケーブルは、複数のワイヤを有し、これらのワイヤは撚り合わされてストランドを形成する、すなわちストランドのツイスト方向に撚り合わされている。さらに、各単一ケーブルは、第1のケーブル端と第2のケーブル端とを有する。本方法は、第1のケーブル端を個別に保持し、第2のケーブル端を保持してストランドのツイスト方向とは反対の方向にツイスト軸を中心に共に回転させて、規定されたまたは規定可能なレイ数、及び/または規定されたまたは規定可能なツイストレイ長を備えた、ツイストケーブル束を作成することを有する。共に回転させている間、第1のケーブル端は、それぞれの単一ケーブルのケーブル端を中心に、すなわち共に回転させている方向と同じ方向にそれぞれ回転させ、それぞれの単一ケーブルの張力を緩和させる。
【0011】
さらなる態様によれば、本明細書に記載の方法を実行するように構成された装置が提供される。本装置は、単一のまたは個別の回転ユニットとツイストユニットとを有する。単一の回転ユニットは、第1のケーブル端のそれぞれ1つを個別に保持するように構成される。ツイストユニットは、第2のケーブル端を保持するように構成される。単一の回転ユニット及びツイストユニットは、基本的にツイスト軸と平行に単一ケーブルを保持するように配置される。
【0012】
さらなる態様、特徴、利点及び効果は、図面を参照して以下に説明する実施形態に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本願で用いる用語を説明するための、ケーブル束の領域の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、ツイストユニット及び保持ユニットを有するツイスト装置の概略を示す図である。
【
図3】
図3は、互いに向かい合って配置された2つのツイストユニットを有するツイスト装置の概略を示す図である。
【
図4】
図4は、ツイストユニット、並びに各単一ケーブル用の単一回転ユニットをそれぞれ有するツイスト装置の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、ワイヤのツイスト方向とケーブルのツイスト方向を説明するための、単一ケーブルを含むケーブル束の概略を示す図である。
【
図6】
図6は、代替例の「ラング撚りのツイスト」のためのケーブル束の製造の領域を示す図である。
【
図7】
図7は、代替例の「反対方向の撚りのツイスト」のためのケーブル束の製造の領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、全体として符号10で示されるケーブル束の領域の概略を示す図である。ケーブル束は、ケーブルペアとして、単一ケーブル11及び単一ケーブル12を含む。2本の単一ケーブル11、12の数は例示的で非限定的であり、本明細書に記載の態様及び特徴は、同一または類似の効果が得られる、3本以上の単一ケーブル11、12を有するケーブル束にも完全にまたは部分的に適用できることに留意されたい。そうは言うものの、本実施形態では、2つの単一ケーブル11、12を1つのケーブル束10に使用できる。
【0015】
図1において、単一ケーブル11の第1のケーブル端15と単一ケーブル12の第1のケーブル端16とは同じ側に位置している。一例として、第1のケーブル端15、16には、第1のケーブル端15にコンタクト13a及びグロメット13bが取り付けられ、第2のケーブル端16にコンタクト14a及びグロメット14bが取り付けられる形態で既に処理されている。単一ケーブル11、12は、それぞれストランドを有し、ストランドは撚り合わされたワイヤから形成され、
図5を参照して以下でより詳細に説明される。
図1におけるBで示された破線の右側の領域では、単一ケーブル11、12が撚り合わされており、その結果として、単一ケーブル11、12は投影平面、例えば
図1の面内で交差する複数のポイントが存在する。投影面と垂直な方向において2つの交差点にて単一ケーブルの同じ配列がある場合、投影面において同様の交差点が存在する。2つの隣接する同様の交差点間の距離は、ツイストレイ長または略して単にレイ長と呼ばれ、aで示される。高品質なケーブル束10のために可能な限り小さくあるべき2つのアイ19は、投影平面における2つの隣接する同様の交差点間に生じる。
【0016】
図1からの用語は、後述する各段落でも使用し、再度説明しない。
【0017】
図2は、2本の単一ケーブル11、12がクランプされたケーブル束10を含む一般的なツイスト装置200の概略を示す図である。単一ケーブル11の第2のケーブル端17は、単一ケーブル11の第1のケーブル端15の反対側に位置する。単一ケーブル12の第2のケーブル端18は、単一ケーブル12の第1のケーブル端16の反対側に位置する。第2のケーブル端17及び18は、ツイストユニット30で共にクランプされる。第1のケーブル端15は、第1の保持ユニット21でクランプされる。第1のケーブル端16は、第2の保持ユニット22でクランプされる。ツイストユニット30は、ツイスト方向Pのツイスト工程を行うツイスト軸Vを中心に回転可能に構成されている。ツイスト工程中に互いに撚り合わされる単一ケーブル11、12の短縮を補償するため、ツイストユニット30は、基本的にツイスト軸Vと平行な方向uに移動させることができる。本願において、ツイスト軸Vと平行な方向には、ツイスト軸V自体の方向も含まれる。
【0018】
図3は、
図2のツイスト装置200に準じたツイスト装置300を示している。ツイスト装置200とは対照的に、ツイスト装置300では、保持ユニット21、22が存在しない。代わりに、別のツイストユニット31が設けられている。前端15、16は、別のツイストユニット31で共にクランプされる。ツイストユニット30は、ツイスト方向Pにおけるツイスト工程を実行しながらツイスト軸Vを中心に回転できるように構成されているのに対して、別のツイストユニット31は、反対の方向Qにおけるツイスト工程を実行しながらツイスト軸を中心に回転できるように構成されている。
【0019】
図2及び
図3で示したツイスト装置200、300において、単一ケーブル11、12に十分な機械的な予備張力が加えられた場合、ケーブル束の十分に広い領域にわたって、基本的に均一なレイ長aが得られる。レイ長は、単一ケーブル11、12の材料の特性、並びにツイスト工程中のツイストユニット30の回転数、あるいは別のツイストユニット31の回転数に大きく依存する。特に、より小さいストランド断面の場合、単一ケーブル11、12のねじれ、すなわち単一ケーブルの高い機械的な予備張力は望ましくない。
【0020】
図4は、一実施形態による、本願で開示する方法を実行するために使用できる、
図2及び
図3と同様のツイスト装置400を示している。ツイスト装置400は、
図1のツイスト装置100とは異なる。すなわち、単一ケーブル11の第1のケーブル端15をクランプするための単一の回転ユニット(個別の回転ユニット)41が設けられ、単一ケーブル12の第1のケーブル端16をクランプするための単一の回転ユニット42が設けられている。単一の回転ユニット41は、クランプされた単一ケーブル11の第1のケーブル端15をそのケーブル軸v1に沿って第1のケーブル端15で保持するように配置される。単一の回転ユニット42は、クランプされた単一ケーブル12の第1のケーブル端16をそのケーブル軸v2に沿って第1のケーブル端16で保持するように配置される。両方の単一の回転ユニット41、42は、基本的に、それぞれの第1のケーブル端15、16でツイスト軸Vと平行に単一ケーブル11、12を保持するように配置される。
【0021】
図4において、ツイスト装置400は、単一ケーブル11、12を少なくとも部分的に離すためのガイド手段35をさらに有する。ガイド手段35は、基本的にツイスト軸Vと平行なx方向に移動できる。ツイスト工程中のガイド手段35の案内または制御された移動によって、レイ長aは、必要に応じて一定に保つことができる、または変更できる。
【0022】
図2及び
図3によるツイスト装置200、300の場合と同様に、
図4のツイスト装置400におけるツイストユニット30は、少なくともツイスト方向Pにおいて、ツイスト軸Vを中心に回転駆動が可能である。単一の回転ユニット41は、オプションとして、ケーブル軸v1を中心に前後方向に回転できる。これは、
図4の両矢印Q1によって示唆されている。単一の回転ユニット42は、オプションとして、ケーブル軸v2を中心に前後方向に回転できる。これは、
図4の両矢印Q2によって示唆されている。
【0023】
本願で開示する方法は、第1のケーブル端15、16が、例えば、
図4の装置400の単一の回転ユニット41、42によって個別に保持されることを提供する。この保持は、例えば、単一ケーブル11、12が装置400内でクランプされるときのツイスト工程の開始前の状態を特徴付ける。すなわち、ツイスト工程はこの保持の後に行われる。
【0024】
ツイスト工程の間、第2のケーブル端17、18は、ツイスト軸Vを中心に共に回転し、その結果、規定されたまたは規定可能な数のツイストレイを含む、及び/または規定されたまたは規定可能なツイストレイ長aを含むツイストケーブル束10が形成される。
【0025】
従来の技術として知られている方法とは対照的に、ツイスト軸Vを中心に、この共に回転することは、ストランドのツイスト方向とは反対に行われる。これについては、
図5を参照して以下でさらに説明する。
【0026】
従来の技術として知られている方法とは対照的に、第1のケーブル端15、16の各々は、この共に回転している間に、それぞれのケーブル軸v1、v2を中心に、すなわちこの共に回転する方向と同じ方向に個別に回転される。これは、例えば、対応する単一の回転ユニット41、42を、回転方向Q1またはQ2と一致する方向にそれぞれ駆動することで行われる。これにより、それぞれの単一ケーブル11、12のねじれが緩和される。
【0027】
本願で用いるねじれの緩和は、例えば、各単一ケーブル11、12が共に回転することで生成される、ねじり力またはねじれモーメントを減少する、または除去することを含む。本明細書に記載の利点を達成するために、ねじれの緩和またはねじれの解消は、必ずしも完全に行われなければならないわけではない。これは、ツイスト工程の時間の経過と共に、ツイストユニット30の(総)回転角度が、単一の回転ユニット41、42の(総)回転角度よりも小さくなり得ることを意味する。
【0028】
本明細書に記載の方法では、反対方向の撚りにおける撚り合わせが行われる。それにより、反対方向の撚りは、(回転する)ケーブルのツイスト方向と(回転する)ストランドのツイスト方向との間の逆方向の回転を意味する。
【0029】
図5は、例えば、2つの単一ケーブル11、12のケーブル束10と、2つの代替例におけるストランドとを概略的に示している。代替例A(
図5の左側)では、ケーブル端から見て、ストランドのツイスト方向は時計回り(ストランドのツイスト方向S)である。そのため、代替例Aのストランドを形成するツイストワイヤ11a、12aは、図示の投影面において左上から右下に向かっている。したがって、代替例Aのツイストケーブル束10を形成する単一ケーブル11、12は、図示の投影面において左下から右上(ケーブルツイスト方向Z)に向かっている。代替例(
図5の右側)は、ケーブル端から見て、ストランドのツイスト方向は反時計回り(ストランドのツイスト方向Z)である。そのため、代替例Bのストランドを形成するツイストワイヤ11a、12aは、図示の投影面において左下から右上に向かっている。したがって、したがって、代替例Bのツイストケーブル束10を形成する単一ケーブル11、12は、図示の投影面において左上から右下(ケーブルのツイスト方向S)に向かっている。
【0030】
レイ長及びレイ数の変動または偏差はそれぞれ非常に小さく、アイが非常に小さいツイストケーブル束10が、本明細書に記載の方法によって得られることが示された。同時に、各単一ケーブル11、12は、本明細書に記載の方法によるアプローチでわずかに撚り合わされるだけである。得られたケーブル束10は、ツイストが解ける傾向が全く無いか、または最小限でしかない。
【0031】
図6は、ツイストレイ長a(ケーブルレイ長)がストランドレイ長bと比較して定性的にプロットされた、すなわち従来の技術によるラング撚り(等しい撚り)におけるツイストを示す図である。
図7は、ツイストレイ長a(ケーブルストローク長)がストランドレイ長と比較して定性的にプロットされた、すなわち本明細書に記載の方法のように、反対方向の撚り(反転撚り)におけるツイストを示す図である。ケーブル束が良好な品質特性を示す領域は、それぞれのケースにおいて符号50で規定されている。ケーブル束がもはや最適な品質特性を示さない領域は、それぞれのケースにおいて符号60で規定されている。ケーブル束をもはや製造できない領域は、それぞれ符号70で示されている。本明細書に記載の方法による反対方向の撚りにおけるアプローチは、有意な工程の改善をもたらすことが示されている。
【0032】
上記でより詳細に説明した図面を併せて参照して、さらなる代替例及び実施形態を以下で説明する。
【0033】
一実施形態によれば、本方法は、共に回転する前に、それぞれの単一ケーブルの予備ねじりのためにケーブル軸v1、v2を中心に第1のケーブル端15、16のそれぞれを個別に回転させることをさらに有する。本願で使用する予備ねじりは、ツイスト工程の前に、単一ケーブルにねじれをそれぞれ規則正しく適用することを有する。予備ねじりは、単一ケーブルに対するねじれに関連した損傷がそれぞれ回避されるように行われる。予備ねじりは、先行技術を参照して上述した過度のツイストとその後の逆ツイストに匹敵する効果を有する。但し、ストランドの歪みは少ないことが示されている。予備ねじりによって拡張された本方法では、単一ケーブル11、12が、予備ツイストされたケーブル束10においてより密に互いに当接し、予備張力を増加させることなく、アイサイズが低減することがさらに示されている。ツイストケーブル束10は、寸法の安定性もより高いままである。撚り合わされていないケーブル端15、16、17、18の自動的な撚り戻しの傾向がさらに低減される。
【0034】
1つの代替案において、予備ねじりのための個別の回転は、それぞれのケースにおいて、ストランドのツイスト方向S、Zで実行される。この代替案では、ツイストケーブル束10の螺旋の形状を各単一ケーブルxで補償することが可能であり、それによってツイストケーブル束10のねじれが減少する、または完全に無くすことさえある。
【0035】
別の代替案において、予備ねじりのための個別の回転は、それぞれのケースにおいて、ストランドのツイスト方向S、Zとは逆方向で実行される。この代替案では、大きなアイの形成をさらに低減できる。さらに、この代替案では、撚り合わされていないケーブル端15、16、17、18の自動的な撚り戻しの傾向がさらに低減される。
【0036】
一実施形態によれば、第1のケーブル端15、16のそれぞれの予備ねじりのための個別の回転は、ツイストレイ数に到達するのに必要な、第2のケーブル端17、18の全回転角度の最大で10%の回転角度ほどで実行される。本明細書に記載の効果及び利点を達成するためには、そのようなレイ数の最大10%の予備ねじれで十分であることが示されている。
【0037】
一実施形態によれば、本方法は、単一ケーブルのうちの少なくとも1つのねじれモーメントまたはねじり力に関連する変数を繰り返し決定することをさらに有する。各単一ケーブルのケーブル軸を中心とする第1のケーブル端の個別の回転は、決定された変数が予め決定されたまたは予め決定可能な閾値を下回るまで実行される。
【0038】
一実施形態によれば、本方法は、単一ケーブルのトリミングをさらに有する。代替的または追加的に、本方法は、1つまたはいくつかのコンタクト部品13a、13b、14a、14bを、第1のケーブル端15、16及び第2のケーブル端17、18のうちの少なくとも1つに取り付けることをさらに有する。
【0039】
一実施形態によれば、本方法は、第1及び第2のケーブル端を互いの方へ移動させることをさらに有する。それによって、ケーブル束のツイストに関連する短縮を補償できる。例えば、この目的のために、ツイストユニット30は、ツイスト軸Vと平行に移動可能に配置される。代替的または追加的に、全ての単一の回転ユニット41、42は、この目的のためにツイスト軸Vと平行に移動可能に配置される。この目的のために、装置400は、ツイストに関連するケーブル束の短縮を補償するために、例えば、移動可能に配置されたツイストユニット30及び/または単一の回転ユニット41、42によって、第1及び第2のケーブル端11、12を互いの方へ移動させるように構成される。。
【0040】
装置400に関する一実施形態によれば、ツイストユニット30は、ツイスト軸Vと平行に移動可能に配置される。代替的または追加的として、全ての単一の回転ユニット41、42は、ツイスト軸Vと平行に移動可能に配置される。装置400は、単一ケーブル11、12及び/またはケーブル束10を伸長するために、基本的にツイスト軸Vと平行な張力を加えるように構成される。伸長は、ツイスト前及び/またはツイストする間に行うことができる。これにより、ツイストケーブル束10、特にレイ長aの均一性をさらに改善できる。
【0041】
装置400に関する一実施形態によれば、後者は、単一ケーブル11、12を少なくとも部分的に離すためのガイド手段35を備える。ガイド手段35は、基本的にツイスト軸Vと平行なx方向に移動できる。装置400は、ガイド手段35が、第1のケーブル端15、16の方向xにおいて、基本的にツイストユニット30の回転に関連する変数に同期して移動するように構成される。これにより、ツイストケーブル束10、特にレイ長aの均一性をさらに改善することができる。
【0042】
本明細書に記載の態様、特徴及び実施形態は、当業者の行動のコンテキストにおいて必要に応じて組み合わせることができる、及び/または個々の特徴を変更または省略できることに留意されたい。記載された実施形態は例示であり、その特徴は、特許請求の範囲で特定される本開示の範囲から逸脱することなく、修正する、または適合させる、並びに適切に組み合わせる及び/または省略することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツイスト軸(V)を中心に単一ケーブル(11、12)を撚り合わせるための方法であって、
前記単一ケーブル(11、12)は、それぞれのケーブル軸(v1、v2)に沿って並んでおり、ストランドのツイスト方向(S、Z)に撚り合わされてストランドを形成するワイヤ(11a、12a)と、第1のケーブル端(15、16)及び第2のケーブル端(17、18)とを有し、
前記第1のケーブル端(15、16)を個別に保持し、前記第2のケーブル端(17、18)を保持し、
規定されたまたは規定可能なレイ数及び/または規定されたまたは規定可能なレイ長を有するツイストケーブル束(10)を作成するために、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)と反対の方向にツイスト軸(V)を中心に前記第2のケーブル端(17、18)を共に回転させ、
前記共に回転させている間、それぞれの前記単一ケーブルの張力を緩和するために、前記単一ケーブル(11、12)のそれぞれの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心に、前記第1のケーブル端(15、16)を、前記共に回転させている方向と同じ方向に、個別に回転させる、方法。
【請求項2】
前記共に回転させる前に、予備ねじりのために、前記単一ケーブルの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心に前記第1のケーブル端(15、16)を個別に回転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備ねじりのために前記個別に回転させることは、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予備ねじりのために前記個別に回転させることは、前記ストランドのツイスト方向(S、Z)と反対の方向に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記予備ねじりのために前記第1のケーブル端(15、16)を個別に回転させることは、ツイストレイ数に到達するために必要な回転角度である、前記第2のケーブル端(17、18)の総回転角度の最大で10%の回転角度で実行される、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記単一ケーブル(11、12)のうちの少なくとも1つのねじれモーメントまたはねじり力に関連する変数を繰り返し決定することをさらに有し、
前記単一ケーブル(11、12)のそれぞれの前記ケーブル軸(v1、v2)を中心とする前記第1のケーブル端部(15、16)の個別の回転は、前記決定した変数が、予め決定されたまたは予め決定可能な閾値を下回るまで実行される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ケーブル束(10)は2つの単一ケーブル(11、12)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記単一ケーブルをトリミングし、及び/または
前記単一ケーブル(11、12)の前記第1のケーブル端(15、16)及び前記第2のケーブル端(17、18)の少なくとも一方に、1つまたは複数のコンタクト部品(13a、13b;14a、14b)を取り付けることをさらに有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記共に回転させる前に、前記単一ケーブル(11、12)及び/または前記ケーブル束(10)を伸長するために、前記ツイスト軸(V)に沿って張力を加えることをさらに有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケーブル束(10)のツイストに関連する短縮を補償するために、前記第1及び第2のケーブル端(15、16;17、18)を互いの方へ移動させることをさらに有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ツイスト軸(V)を中心に単一ケーブル(11、12)を撚り合わせるための装置(400)であって、
前記単一ケーブル(11、12)は、それぞれのケーブル軸(v1、v2)に沿って並んでおり、ストランドのツイスト方向(S、Z)に撚り合わされてストランドを形成するワイヤ(11a、12a)と、第1のケーブル端(15、16)及び第2のケーブル端(17、18)とを有し、
前記第1のケーブル端(15、16)のそれぞれを個別に保持するための単一の回転ユニット(41、42)と、
前記第2のケーブル端(17、18)を保持するためのツイストユニット(30)と、を有し、
前記単一の回転ユニット(41、42)及びツイストユニット(30)は、前記単一ケーブル(11、12)をツイスト軸(V)と平行に保持するように配置され、
前記装置(400)は、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された、装置(400)。
【請求項12】
前記ツイストユニット(30)は、前記ツイスト軸(V)を中心に回転駆動が可能である、請求項11に記載の装置(400)。
【請求項13】
前記ツイストユニット(V)もしくは全ての前記単一の回転ユニット(41、42)のいずれか、または前記ツイストユニット(30)及び全ての前記単一の回転ユニット(41)の両方が、前記ツイスト軸(V)と平行に移動可能に配置され、前記装置(400)は、ツイストに関連する短縮を補償するために、前記第1及び第2のケーブル端(11、12)を互いの方へ移動させるように構成される、請求項11または12に記載の装置(400)。
【請求項14】
前記ツイストユニット(30)もしくは全ての前記単一の回転ユニット(41、42)のいずれか、または前記ツイストユニット(30)及び全ての前記単一の回転ユニット(41)の両方が、前記ツイスト軸(V)に沿って移動可能に配置され、前記装置は、
前記共に回転させる前に、前記単一ケーブル(11、12)及び/または前記ケーブル束(10)を伸長するために、前記ツイスト軸(V)に沿って張力を加えるように構成された、請求項11から13のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項15】
前記単一の回転ユニット(41、42)と前記ツイストユニット(30)との間に配置されたガイド手段(35)をさらに有し、前記ガイド手段(35)は、少なくともいくつかの領域で前記単一ケーブル(11、12)を離すように構成された、請求項11から14のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項16】
前記装置(400)は、前記ガイド手段(35)が、前記ツイストユニット(30)の回転に関連する変数に同期して方向(x)に移動するように構成された、請求項15に記載の装置(400)。
【国際調査報告】