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特表2023-542597ガソリンエンジン排気ガス処理用の改善された触媒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ガソリンエンジン排気ガス処理用の改善された触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20231003BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231003BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231003BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231003BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231003BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301L
B01J35/10 301F
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503494
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 GB2021052443
(87)【国際公開番号】W WO2022069870
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/198,150
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】角野 健史
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA01
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GA17
3G091GB04W
3G091GB06W
3G091GB10W
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4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
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4G169BA05B
4G169BA06A
4G169BA13B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC13B
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4G169BC42A
4G169BC42B
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4G169BC43B
4G169BC44A
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4G169BC51B
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4G169BC71B
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4G169BC72B
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4G169CA09
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4G169EA25
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4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169EC06X
4G169EC07X
4G169EC08X
4G169EC15X
4G169EC27
4G169EC28
4G169EE09
(57)【要約】
三元触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の酸素吸蔵能(OSC)材料を含む第1の触媒領域であって、第1の触媒領域が50%未満のウォッシュコート多孔率を有し、第1のOSC材料が少なくとも0.4mL/gの細孔容積を有する、第1の触媒領域とを含む、触媒物品に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の酸素吸蔵能(OSC)材料を含む第1の触媒領域であって、前記第1の触媒領域が50%未満のウォッシュコート多孔率を有し、前記第1のOSC材料が少なくとも0.4mL/gの細孔容積を有する、第1の触媒領域とを含む、触媒物品。
【請求項2】
前記第1のOSC材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第1の触媒領域が、第1の無機酸化物を更に含む、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項3に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第1のOSC材料が、少なくとも20nmの平均孔径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記第1のOSC材料が1000℃で20時間エージングされた後に、前記第1のOSC材料が15nmを超える平均孔径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第1のOSC材料が、少なくとも50m/gの初期比表面積(SSA)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第1のOSC材料が1000℃で20時間エージングされた後に、前記第1のOSC材料が少なくとも45m/gのSSAを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第1のOSC材料が1000℃で20時間エージングされた後に、前記第1のOSC材料が0.2mL/gを超える細孔容積を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1の触媒領域が、40%未満のウォッシュコート多孔率を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第1のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
第2の触媒領域を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第2の触媒領域が、第2の白金族金属(PGM)成分を含む、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第2の触媒領域が、第2のOSC材料及び/又は第2の無機酸化物を更に含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接、担持/堆積されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項12~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項18】
三元触媒(TWC)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び窒素酸化物(nitrogen oxide、「NO」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(three way catalyst)(三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOの還元を行う。
【0003】
TWC技術の進歩にもかかわらず、特に、排出物の大部分が車両動作中に現れるコールドスタート及び高速段階における性能を改善する、特定のエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータが依然として必要とされている。本発明は、TWC生成物中の多孔率の向上によってこの問題を解決する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の酸素吸蔵能(OSC)材料を含む第1の触媒領域であって、第1の触媒領域が50%未満のウォッシュコート多孔率を有し、第1のOSC材料が少なくとも0.4mL/gの細孔容積を有する、第1の触媒領域とを含む、触媒物品に関する。
【0005】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0006】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基材の軸方向長さLに対して100%の長さを有する第1の触媒領域(単一層)を含有する、本発明による一実施形態を示す。
図2a】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図2b】基材の軸方向長さLの100%の長さを有する第1の触媒領域を上部層として含み、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図3a】第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第1の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第1の触媒領域は、第2の触媒領域の上方にある。
図3b】第1の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域は、第1の触媒領域の上方にある。
図4a】比較触媒Aの走査型電子顕微鏡(SEM)画像の断面画像を示す。
図4b】触媒BのSEM画像の断面画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒組成物、触媒物品、及びシステムを対象とする。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理に関する。本発明は、最適化されたTWC配合を通じて、将来予想されるより厳しい排出規制を満たす可能性を有する。
【0009】
本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の酸素吸蔵能(OSC)材料を含む第1の触媒領域であって、第1の触媒領域が50%未満のウォッシュコート多孔率を有し、第1のOSC材料が少なくとも0.4mL/gの細孔容積を有する、第1の触媒領域とを含む、触媒物品に関する。
【0010】
第1の触媒領域
第1のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。他の実施形態では、第1のPGM成分は、白金であり得る。更に他の実施形態では、第1のPGM成分は、白金及びロジウム;パラジウム及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムであり得る。更なる実施形態では、第1のPGM成分は、白金及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムであり得る。特定の実施形態では、第1のPGM成分は、Rhであり得る。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pdであり得る。
【0011】
第1のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、などのドーパントを更に含むことができる。第1のOSC材料は、第1のPGM成分のための担体材料として機能し得る。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0012】
好ましくは、第1のOSC材料は、少なくとも0.5mL/g、より好ましくは、少なくとも0.6mL/gの細孔容積を有する。あるいは、いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、0.4~1.0mL/g、0.5~0.9mL/g、0.5~0.8mL/g、又は0.6~0.8mL/gの細孔容積を有することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、40%未満、30%未満、又は20%未満のウォッシュコート多孔率を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、5%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%のウォッシュコート多孔率を有することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、伝統的なBJH処理の基本的前提に従って、少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。平均孔径は、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0015】
特定の実施形態では、第1のOSC材料は、少なくとも50m/gの初期比表面積(SSA)を有することができる。更なる実施形態では、第1のOSC材料は、少なくとも60m/g、又は少なくとも70m/gのSSAを有することができる。SSAは、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0016】
特定の実施形態では、第1のOSC材料は、少なくとも5μmの、好ましくは、少なくとも10μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、少なくとも15μmの、好ましくは、少なくとも20μmの粒径d90を有することができる。あるいは、特定の実施形態では、第1のOSC材料は、5~20μmの好ましくは、7~15μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は15~40μmの、好ましくは、20~30μmの粒径d90を有することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、触媒物品が1000℃で20時間エージングされた後に、その材料の細孔構造(例えば、SSA、平均孔径、及び/又は細孔容積)の大部分を維持することができる(例えば、静的オーブン内で;表Bを参照されたい)。特定の実施形態では、第1のOSC材料は、エージング後に15nm超の平均孔径を有することができる。好ましくは、エージング後に少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。特定の実施形態では、第1のOSC材料は、エージング後に少なくとも45m/gのSSAを有することができる;好ましくは、エージング後に少なくとも50m/gのSSAを有することができる。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、エージング後に0.2mL/g超の細孔容積を有することができる。好ましくは、少なくとも0.25mL/g又は少なくとも0.3mL/gの細孔体積差を有することができる。
【0018】
第1の触媒領域は、第1の無機酸化物を更に含むことができる。
【0019】
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第1の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0020】
第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0021】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、2:1以下の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0023】
第1の触媒領域は、第1のアルカリ又はアルカリ性土類金属を更に含んでもよい。
【0024】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で充填されている。
【0025】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0026】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。代替的に、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0027】
第1の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図1図2a、及び図2bを参照されたい)。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さLの20~99%、30~90%、又は40~80%にわたって延在することができる(例えば、図3a及び3bを参照されたい)。
【0028】
第2の触媒領域
第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素吸蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含むことができる。
【0029】
第2のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。特定の実施形態では、第2のPGM成分は、Pdであり得る。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、Rhであり得る。
【0030】
第2のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。加えて、第2のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのようなドーパントのうちの1つ以上を更に含み得る。更に、第2のOSC材料は、第2のPGM成分に対する担体材料としての機能を有し得る。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0031】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、70:30超のジルコニア対セリアの重量比を有することができる。あるいは、セリア-ジルコニア混合酸化物はまた、50:50未満、好ましくは、40:60未満、より好ましくは、30:70未満のセリア対ジルコニアの重量比を有することができる。
【0032】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、30~60重量%であり得る。
【0033】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、2g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in、1.2g/in、1g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、少なくとも0.4mL/g、好ましくは、少なくとも0.5mL/g、より好ましくは、少なくとも0.6mL/gの細孔容積を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、0.4~1.0mL/g、0.5~0.9mL/g、0.5~0.8mL/g、又は0.6~0.8mL/gの細孔容積を有することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2の触媒領域は、50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満のウォッシュコート多孔率を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第2の触媒領域は、5%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%のウォッシュコート多孔率を有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、伝統的なBJH処理の基本的前提に従って、少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。平均孔径は、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0037】
特定の実施形態では、第2のOSC材料は、少なくとも50m/gの初期比表面積(SSA)を有することができる。更なる実施形態では、第2のOSC材料は、少なくとも60m/g、又は少なくとも70m/gのSSAを有することができる。SSAは、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0038】
特定の実施形態では、第2のOSC材料は、少なくとも5μm、好ましくは、少なくとも10μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、少なくとも15μm、好ましくは、少なくとも20μmの粒径d90を有することができる。あるいは、特定の実施形態では、第2のOSC材料は、5~20μm、好ましくは、7~15μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は15~40μm、好ましくは、20~30μmの粒径d90を有することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、触媒物品が1000℃で20時間エージングされた後に、その材料の細孔構造(例えば、SSA、平均孔径、及び/又は細孔容積)の大部分を維持することができる(例えば、静的オーブン内で)。特定の実施形態では、第2のOSC材料は、エージング後に15nm超の平均孔径を有することができる。好ましくは、エージング後に少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。特定の実施形態では、第2のOSC材料は、エージング後に少なくとも45m/gのSSAを有することができる。好ましくは、エージング後に少なくとも50m/gのSSAを有することができる。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、エージング後に0.2mL/g超の細孔容積を有することができる。好ましくは、少なくとも0.25mL/g又は少なくとも0.3mL/gの細孔体積差を有することができる。
【0040】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0041】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0042】
また、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0043】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0044】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0045】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0046】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、2:1以上の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、10:1以上の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0048】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。代替的に、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0049】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図2a及び図2bを参照されたい)。
【0050】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの10~95パーセント、好ましくは、軸方向長さLの20~90パーセント、より好ましくは30~80パーセントにわたって延在することができる(例えば、図3a及び図3bを参照されたい)。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る(例えば、図2a及び図3bを参照されたい)。特定の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る(例えば、図2b及び図3aを参照されたい)。
【0052】
第3の触媒領域
触媒物品は、第3の触媒領域を更に含むことができる。
【0053】
第3の触媒領域は、第3のPGM成分、第3の酸素吸蔵能(OSC)材料、第3のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含むことができる。
【0054】
第3のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第3のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。
【0055】
第3のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。加えて、第3のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのようなドーパントのうちの1つ以上を更に含み得る。更に、第3のOSC材料は、第3のPGM成分に対する担体材料としての機能を有し得る。いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0056】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、75:25超のジルコニア対セリアの重量比を有することができる。あるいは、セリア-ジルコニア混合酸化物はまた、50:50未満、好ましくは、40:60未満、より好ましくは、25:75未満のセリア対ジルコニアの重量比を有することができる。
【0057】
第3のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、30~60重量%であり得る。
【0058】
第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.5g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.2g/in、1.0g/in、0.9g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0059】
第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in、2.5g/in、又は2g/inであり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、少なくとも0.4mL/g、好ましくは、少なくとも0.5mL/g、より好ましくは、少なくとも0.6mL/gの細孔容積を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、0.4~1.0mL/g、0.5~0.9mL/g、0.5~0.8mL/g、又は0.6~0.8mL/gの細孔容積を有することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、第3の触媒領域は、50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満のウォッシュコート多孔率を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第3の触媒領域は、5%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%のウォッシュコート多孔率を有することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、伝統的なBJH処理の基本的前提に従って、少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。平均孔径は、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0063】
特定の実施形態では、第3のOSC材料は、少なくとも50m/gの初期比表面積(SSA)を有することができる。更なる実施形態では、第3のOSC材料は、少なくとも60m/g、又は少なくとも70m/gのSSAを有することができる。SSAは、76Kでの窒素吸着/脱着等温線によって測定することができる。吸着実験の前にサンプルを350℃で2時間脱気する。
【0064】
特定の実施形態では、第3のOSC材料は、少なくとも5μm、好ましくは、少なくとも10μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、少なくとも15μm、好ましくは、少なくとも20μmの粒径d90を有することができる。あるいは、特定の実施形態では、第3のOSC材料は、5~20μm、好ましくは、7~15μmの粒径d50を有することができる。いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は15~40μm、好ましくは、20~30μmの粒径d90を有することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、触媒物品が1000℃で20時間エージングされた後に、その材料の細孔構造(例えば、SSA、平均孔径、及び/又は細孔容積)の大部分を維持することができる(例えば、静的オーブン内で)。特定の実施形態では、第3のOSC材料は、エージング後に15nm超の平均孔径を有することができる。好ましくは、エージング後に少なくとも20nmの平均孔径を有することができる。ある実施形態では、第3のOSC材料は、エージング後に少なくとも45m/gのSSAを有することができる。好ましくは、エージング後に少なくとも50m/gのSSAを有することができる。いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、エージング後に0.2mL/g超の細孔容積を有することができる;好ましくは、少なくとも0.25mL/g又は少なくとも0.3mL/gの細孔体積差を有することができる。
【0066】
第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0067】
第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、ストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第3の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0068】
また、第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0069】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0070】
第3の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第3の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第3の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第3の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0071】
第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0072】
あるいは、第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、2:1以上の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、10:1以上の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0074】
第3の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる。あるいは、第3の触媒領域は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの60%、50%、40%、又は30%以下であることができる(例えば図3a及び図3bを参照されたい)。
【0075】
以下の実施例に明示されるように、この態様における触媒物品は、ガソリンエンジンによって生成された排気ガスを処理するためのTWC触媒として適用することができる。
【0076】
基材
好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。あるいは、基材は、ウォールフローフィルタであり得る。
【0077】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面と、を有し、それらの間に長手方向を画定する。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延在する、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延在し、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0078】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0079】
チャネルは、一定の幅のものであり得、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有し得る。
【0080】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり300~900のチャネル、好ましくは400~800のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネルと閉じている第2のチャネルとの密度は、1平方インチ当たり600~700チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有することができる。
【0081】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0082】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって、形成され得る。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において周知である。
【0083】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0084】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0085】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法を対象とする。この方法に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWC(同じPGM担持量を有する)と比較して改善された触媒特性を示し、また高速段階で特に改善された性能、及びより良好なNOスリップ削減性能も示す(例えば、実施例3並びに表3a及び表3bを参照されたい)。
【0086】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管とともに本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【0087】
定義
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上のエリアを指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上のエリア又は配置は、概して、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0088】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えて逸脱(例えば、最大長と最小長との差)しない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えて逸脱しない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない長さを指す。
【0089】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成物とは、領域のある部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が、5%以下、通常は2.5%以下、最も一般的には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば、5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0091】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0092】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い。
【0093】
基材がウォールフローフィルタである場合、概して、「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が、入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0094】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が、入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が、出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0095】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が、出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0096】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が、出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が、入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0097】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタのウォールに存在する(すなわち、ゾーンがウォール内のものである)場合、ゾーンは、(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0098】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において周知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、頭字語「PGM、platinum group metal」は、「白金族金属」を指す。「白金族金属」という用語は、概して、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。概して、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば、微量不純物などの、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない、任意の他の材料又は工程を含むように、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0102】
本明細書で使用される場合、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対するいかなる言及も、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0103】
本明細書で使用する場合、「担持量」という用語は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0104】
本明細書にて「a」又は「an」に言及する場合、これは、単数形及び複数形を包含する。
【0105】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【実施例
【0106】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0107】
比較触媒A:
比較触媒Aは、部分二重層ゾーン構造を有する開発された三元(Pd-Rh)触媒である。
【0108】
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、第1のCeZr混合酸化物(OSC 1)及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.7g/inであり、Rh担持量は4.2g/ftであった。
【0109】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの70%を目標コーティング深さとして、上記第2の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させた。
【0110】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.7g/inであり、Pd担持量は21g/ftであった。
【0111】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの70%を目標コーティング深さとして、セラミック基材(600cpsi、壁厚2.5mil)の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0112】
第3の触媒領域:
第3の触媒領域は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPd及びRhからなる。第3の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.5g/inであり、Pd担持量は144g/ftであり、Rh担持量は4.2g/ftであった。
【0113】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの30%を目標コーティング深さとして、上記第1及び第2の触媒領域を含むセラミック基材の入口面から、第3のウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分焼成した。
【0114】
コーティング順序は、第2の領域、第1の領域、及び第3の領域であった。(例えば、図3a参照)。
【0115】
触媒B:
触媒Bは、第1のOSC及びそのウォッシュコート多孔率を第1の触媒領域(OSC 2)における高い多孔率に変更したことを除いて、触媒Aと同様の手順に従って調製した。(例えば、図3a参照)。
【0116】
以下の表Aに、比較触媒A及び触媒Bの各触媒領域におけるセリア担持量をまとめる。
【0117】
【表1】
【0118】
以下の表Bに、比較触媒A及び触媒B:OSC 1及びOSC 2の第1の触媒領域におけるOSC仕様をまとめる。
【0119】
【表2】
エージング:OSCを静的オーブン中、1000℃で20時間エージングした。
【0120】
実施例1:背圧性能
比較触媒A及び触媒B背圧(Back Pressure、BP)性能は、ガスフローメーター機器にわたって試験した。表1に示すように、本発明の触媒Bは、比較触媒Aと比較して、同等のBPを示す。
【0121】
【表3】
【0122】
実施例2:ウォッシュコート多孔率の影響
比較触媒A及び触媒Bのウォッシュコート(WC)多孔率を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した。図4a及び図4bは、ガス入口からの触媒レンガ100mmの触媒構造の断面画像を示し、これにより比較触媒A(図4a)と比較して、触媒B(図4b)における上層(第1の触媒領域)の多孔質構造が示された。
【0123】
以下の表2に、図4a及び図4bにおけるSEM分析の二値画像による第1の触媒領域の多孔率をまとめる。二値画像はWinROOFを用いて計算した。図4a及び図4bにおける緑色面積は、以下の式で計算される非ウォッシュコート面積である。
ウォッシュコート多孔率[%]=非ウォッシュコート面積/(非ウォッシュコート面積+ウォッシュコート面積)×100
触媒Bの多孔率は、比較触媒Aの多孔率よりも約4倍高かった。
【0124】
【表4】
【0125】
実施例3:車両試験の手順及び結果
比較触媒A及び触媒Bを、触媒のピーク床温度が1000℃、4モードのエージングサイクルで、同じ50時間運転の4.3Lの機関下にて、ベンチエージングした。
【0126】
次いで、比較触媒A及び触媒Bのベンチエージングした試料を1.0リットル機関の車両で、3バッグ世界統一ライトデューティ運転試験サイクル(worldwide harmonized light duty driving test cycles、WLTC)によって別々に試験した。
【0127】
テールパイプからのバッグデータを表3a及び表3bに示す(バッグ3:高速段階)。表3aに示すように、本発明の触媒Bは、比較触媒Aと比較した場合、20%を超えるNO還元性能の改善を示した。
【0128】
【表5】
より顕著には、高速段階(相対的なバッグ3NO排出量)において、本発明の触媒Bは、比較触媒Aと比較して、79%を超えるNO排出量削減の改善を示した。
【0129】
【表6】
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
【国際調査報告】