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特表2023-542612ベータプロピオラクトン及び官能化ベータプロピオラクトンベースのポリマー系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ベータプロピオラクトン及び官能化ベータプロピオラクトンベースのポリマー系
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/08 20060101AFI20231003BHJP
   C08G 63/66 20060101ALI20231003BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20231003BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08G63/08
C08G63/66
C09D201/02
B32B27/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023511941
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021045912
(87)【国際公開番号】W WO2022040040
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,451
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,ジェフリー・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ウーリグ,ジェフリー・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】スタウテンブルグ,エリック
【テーマコード(参考)】
4F100
4J029
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK41A
4F100AL01A
4F100AL04A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH46
4J029AA02
4J029AB01
4J029AC01
4J029AC02
4J029AC03
4J029AC05
4J029AE03
4J029AE11
4J029AE18
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA08
4J029BF09
4J029EG02
4J029GA51
4J029JB232
4J029JB242
4J029JC302
4J029JE032
4J029JE162
4J029JE182
4J029JE202
4J038GA02
(57)【要約】
本明細書において、生分解性であることができ、ポリマー系のリサイクル性を高めることができ、所望の機能性をポリマー中に導入するように機能化することができ、及び/又は任意選択的に再生可能原材料から調製され得る、ポリプロピオラクトンベースのポリマー、コポリマー及びポリマー系が開示される。新規の官能化ベータプロピオラクトンが開示される。新規の官能化ベータプロピオラクトンの一部は、ラクトンの環構造に結合した官能基を有し、該官能基は改善されたポリマー系をもたらす。官能化ベータプロピオラクトンの新規のホモポリマーが開示される。官能化ベータプロピオラクトンをベースとし、ベータプロピオラクトン、又は官能化ベータプロピオラクトンと共重合する他のモノマーを伴う、新規のコポリマーが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】
(式中、存在毎に独立に、R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分であり、該ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分は、任意選択的に、少なくとも1種のヘテロ原子又は少なくとも1種の置換基を含んでいてもよく、少なくとも1つのR、R、R、Rは、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在する)
を有する1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項2】
少なくとも1つのR、R、R、Rが、コーティング又は薄膜において有用な、ポリマー鎖中に組み込まれた前記官能化ベータ-プロピオラクトンの機能を高める、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
少なくとも1つのR、R、R、Rが、不飽和基、求電子基、求核基、アニオン基、カチオン基、双性イオン、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性剤特性を有するポリマー、及び重合開始剤のうちの1種以上を含む、ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基である、請求項1又は2に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項4】
、R、R、Rが、存在毎に別々に、水素、フルオロカルビル、アリール、置換アリール、脂環式、置換脂環式、脂肪族又は置換脂肪族の部分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項5】
、R、R、Rが、存在毎に別々に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール若しくはアルキルヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレンであり、又は、R、R、R、Rのうちの2つが、5~20員の環状環若しくは複素環を形成してもよく、又は、R、R、R、Rが、存在毎に別々に、C~C15アルキル、C~C15アルケニル、C~Cシクロアルキル、C~C20ヘテロシクリル、C~C20アルキルヘテロシクリル、C~C18アリール、C~C25アルカリール、C~C25アラルキル、C~C18ヘテロアリール若しくはC~C25アルキルヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレン、又は基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)であってもよい、請求項1~4のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項6】
前記置換基が、ハロ、ポリテトラフルオロアルケン、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、エステル、ポリアルキレンオキシド、不飽和基、天然鉱物、合成鉱物又は炭素ベース構造である、請求項1~5のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項7】
、R、R、Rのうちの1つ以上が、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基、アルキルスルホネートアルキルオキシ基、アルキルエーテル置換アルキル基、ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基、アルケニルオキシ置換アルキル基、アリールエステル置換アルキル基、アルケニル基、シアノ置換アルキル基、アルケニルエステル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有シクロアルケニルアルキルエーテル置換アルキル基、ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基、アリール置換アルキル基、ハロアリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基、アルキルエーテル置換アルカリール基、ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基であり、R又はR及びR又はRのうちの2つが、環状環を形成し、該環状環が、1種以上の不飽和基、任意選択的に1つ以上のエーテル基及び/若しくは1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよいベータプロピオラクトン基で置換されたアルキル基、グリシジルエーテル基、又は任意選択的に1つ以上のエーテル基と任意選択的に基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)とで置換されたベンゾシクロブテン置換アルキル基を任意選択的に含んでいてもよい、請求項1~6のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項8】
が、重合可能である複素環、例えばオキサゾリン、又は式:
【化2】
(式中、m及びnは、独立に1以上の整数であり、ただし、m、n又は両方は1よりも大きく、括弧内の単位は任意の方法で配置されることができ;
は、水素又はアルキル基であり;
Lは連結基である)
のうちの1つに対応する、請求項1~7のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の官能化ベータプロピオラクトンのうちの1種から調製されたホモポリマー。
【請求項10】
ベータプロピオラクトンと請求項1~9のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータプロピオラクトンとのコポリマー。
【請求項11】
1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は請求項9又は10に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層に配置されたポリマー層を含む組成物。
【請求項12】
前記1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基のうちの1種以上が、ポリマー種と共有結合若しくはイオン結合を形成する、又は、ラクトンの開環で、開環構造とポリマー種との間の結合を形成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータプロピオラクトンと該1種以上の官能化ベータプロピオラクトンと反応性である1種以上のモノマーとのコポリマーを含む、組成物。
【請求項14】
1種以上の前記ベータ-プロピオラクトンから誘導された複数の単位と、1種以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1種以上の二官能性ポリエステル、環状ラクトン、環状無水物又はポリエーテルのうちの複数とを含む、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
前記コポリマーが、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであり、又は、1つ以上の分子鎖が、ポリマー骨格にグラフトされている、請求項13又は14に記載のコポリマー。
【請求項16】
1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンに結合したペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基を有するポリマー、又は、ペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基を有し、該ペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基によってポリマーに結合した、請求項1~8のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーを含む組成物。
【請求項17】
1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は請求項1~8のいずれか一項に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層であって、前記官能化ベータ-プロピオラクトンが、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシス、双性イオンによって重合可能である1種以上のペンダント基を有する層と、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、付加重合によって重合するポリマーの層とを含む組成物であって、前記1種以上のペンダント基が、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシスによって重合する前記ポリマーと重合し、2つの層を互いに共有結合する、組成物。
【請求項18】
骨格からのペンダントを有する請求項1~8のいずれか一項に記載のベータ-プロピオラクトンの1種以上から誘導された複数の単位、そこにさらに結合した官能基、1種以上の顔料、光開始重合が可能である基、1種以上の鉱物、放射線を吸収可能である基又はポリマーの硬度を改善する1種以上の材料から調製されたポリマー。
【請求項19】
請求項1~18に記載された組成物のいずれか1つから調製されたコーティング。
【請求項20】
請求項1~18に記載の組成物のいずれか1つから調製された薄膜。
【請求項21】
ベータプロピオラクトン、官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含む2種の非相溶性のポリマー、又は、層の間に配置された、ベータ-プロピオラクトン及び請求項1~8のいずれか一項に記載の官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの別個の層を含む、多層ポリマー構造。
【請求項22】
基材、該基材に配置された、ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層、又は請求項1~8のいずれか一項に記載のベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層を含む、組成物。
【請求項23】
前記1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基の1種以上が、前記基材の表面と共有結合又はイオン結合を形成する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
異なるベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層の上に配置されるのが、異なるポリマーの層である、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
官能化ベータ-プロピオラクトン又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーが、共有結合、イオン結合を形成して異なるポリマーと重合する、又は異なるポリマーの重合を開始するペンダント基を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ポリマー層でコーティングされた基材を含み、該ポリマー層が、該ポリマー層の上に配置された請求項9~18のいずれか一項に記載のポリマーを有する、組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの外層上に請求項9~18のいずれか一項に記載のポリマーを有する1種以上のポリマー層から調製された、多層薄膜。
【請求項28】
異なるポリマーの2種以上の層を含む組成物であって、該層のそれぞれの間に請求項9~18のいずれか一項に記載の層を有する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化ベータプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマー系並びにそのような系を調製する方法に関連する。該ポリマー系には、そのようなポリマーから調製された架橋ポリマー系並びにコーティング及び薄膜を含める。
【背景技術】
【0002】
プラスチックと称されるポリマーを含めた、ポリマー材料は、いくつかの用途において、ポリマーから加工された構造の加工、設計のフレキシビリティ、強度に関連する特性を調整する能力、柔軟性、バリア特性、及び質量を減らすことを含めた、有利な特性をもたらす。ポリマーは、代替材料よりもより軽く、一部の代替材料よりもより少ない必要なエネルギーで加工され得る。構造の特性及び機能を、使用者が必要とするもの、例えば多層薄膜及びコーティングに合うように調節するために、構造は異なる種類のポリマーから調製され得る。多くのポリマーは、ある特定の方面においては懸念のある化石燃料から調製される。また、その耐用年数の後、ポリマー材料を廃棄する方法についての懸念も存在する。一部のポリマー材料は容易に分解しない。ポリマーを利用した、ある特定の製品、とりわけ、多くの種類のポリマーを利用した製品は、リサイクルすることが難しいことがある。
【0003】
ポリプロピオラクトンは、ベータプロピオラクトンから調製されたポリマーであり、この点については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0094100号を参照されたい。ポリプロピオラクトンを、熱分解(thermolyze)すると、高度に純粋なアクリル酸を形成することができる。ポリプロピオラクトンは、生分解性であり、二酸化炭素及び水になる。ポリプロピオラクトンは、任意選択的に再生可能資源から調製され得るベータプロピオラクトンから調製され、この点については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10669373号明細書を参照されたい。ポリプロピオラクトンは、その特性を最大限に高めるために、高度に純粋な形態で調製され得る。ある特定の使用に合わせた機能性を有し得るポリマー系への需要がある。
【0004】
要望されることは、改善された生分解性及びリサイクル性を有するポリマー系である。要望されることは、使用者の要望を満たす、ある特定の所望の特性を有し得るポリマー系である。要望されることは、任意選択的に再生可能資源から、高純度で調製され得るポリマー系である。要望されることは、そのような系を調製するモノマーである。要望されることは、そのような要望を満たす、ベータプロピオラクトン及びそのポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0094100号明細書
【特許文献2】米国特許第10669373号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、生分解性であることができ、ポリマー系のリサイクル性を高めることができ、任意選択的に再生可能原材料から調製され得る、ポリプロピオラクトンベースのポリマー、コポリマー及びポリマー系が開示される。新規の官能化ベータプロピオラクトンが開示される。新規の官能化ベータプロピオラクトンの一部は、ラクトンの環構造に結合した官能基を有し、該官能基は改善されたポリマー系をもたらす。ポリプロピオラクトンをベースとする及び/又は新規の官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマー系が開示される。官能化ベータプロピオラクトンの新規ホモポリマー及び新規コポリマーが開示される。これらのコポリマーは、官能化ベータプロピオラクトンを、ベータプロピオラクトン、又は官能化ベータプロピオラクトンと共重合する他のモノマーと共に含むことができる。
【0007】
官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンを含む、いくつかの新規ポリマー系が開示される。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンは、ポリマー層の間で、密着層として使用することができ、ポリマー層は、同じポリマーをベースとしてもよく又は異なるポリマーに基づいてもよい。異なるポリマーは、互いに非相溶性であってもよい。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンは、ポリマー構造を互いに結合するための又は他の基材に結合するための接着層として使用され得る。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、コーティング若しくは自立型薄膜として又は多層コーティング若しくは多層薄膜において使用され得る。官能基は、他のモノマー系と反応して、ポリマー層間の架橋を形成することができ、又は重合して、他のコポリマーで形成された層にすることができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンは、基材への薄膜又はコーティングの結合を改善する官能基を有することができる。
【0008】
官能化ベータプロピオラクトンからの官能基は、官能化ベータプロピオラクトンから調製されたポリマー及びコポリマーに機能性をもたらすことができる。官能基は、重合開始剤として機能することができ、ある特定の基材又はポリマー系へのポリマーの接着を改善することができ、疎水性特性又は親水性特性を改善することができ、硬度又は耐擦傷性、重合触媒などを改善することができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、そのような薄膜を含めた異なるポリマーの層を有する多層薄膜において、中間層として機能することができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、ある特定の条件下で分解し、リサイクルでの再利用のために、他の層を容易に分離することができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、他のポリマーのコーティングと基材との間の中間層として機能することができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、ある特定の条件下で分解し、リサイクルでの再利用のために、他のコーティング層から基材を容易に分離することができる。官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、分解され得る外側の薄膜層又はコーティング層として使用することができ、又はそのような外側の層は、機能化されて、構造に所望の特性セットをもたらすことができる。
【0009】
一般式:
【0010】
【化1】
(式中、R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分であり、該ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分は、任意選択的に、少なくとも1種のヘテロ原子又は少なくとも1種の置換基を含んでいてもよく、少なくとも1つのR、R、R、Rは、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在する)
を有する官能化ベータ-プロピオラクトンが開示される。少なくとも1つのR、R、R、Rは、コーティング又は薄膜において有用な、ポリマー鎖中に組み込まれた前記官能化ベータ-プロピオラクトンの機能を高める、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在することができる。ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基である、少なくとも1つのR、R、R、Rは、不飽和基、求電子基、求核基、アニオン基、カチオン基、双性イオン含有基、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性剤特性を有するポリマー、及び重合開始環又は反応性複素環のうちの1種以上を含むことができる。官能基は、基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)によって、環に連結され得る。例示的な連結基は、ヒドロカルビレン基、フルオロカルビレン基、エーテル、チオエーテル、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンエーテル)であってもよい。R、R、R、Rのうちの1つ以上は、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基、アルキルスルホネートアルキルオキシ基、アルキルエーテル置換アルキル基、ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基、アルケニルオキシ置換アルキル基、アリールエステル置換アルキル基、アルケニル基、シアノ置換アルキル基、アルケニルエステル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有シクロアルケニル基、アルキルエーテル置換アルキル基、ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基、アリール置換アルキル基、ハロアリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基、アルキルエーテル置換アルカリール基、ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基、ヘテロ原子含有アリール置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基であってもよく、R又はR及びR又はRのうちの2つは、環状環を形成してもよく、環状環は、1種以上の不飽和基、任意選択的に1つ以上のエーテル基及び/若しくは1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよい、ベータプロピオラクトン基で置換されたアルキル基;グリシジルエーテル基、又は任意選択的に、1つ以上のエーテル基で置換されたベンゾシクロブテン置換アルキル基を任意選択的に含むことができる。ベータプロピオラクトンは、R、R、R及びRの全てが水素である式に対応する。
【0011】
記載された1種以上の官能化ベータプロピオラクトンから調製されたホモポリマーが開示される。ベータプロピオラクトン及び1種以上の官能化ベータプロピオラクトンのコポリマーが開示される。開示された1種以上の官能化ベータプロピオラクトン、及び1種以上の官能化ベータプロピオラクトンと反応性である1種以上のモノマーのコポリマーを含む、組成物が開示される。そのようなコポリマーには、1種以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1種以上の二官能性ポリエステル、環状ラクトン、環状無水物又はポリエーテルのうちの複数が含められる。これらのコポリマーは、ベータプロピオラクトンから誘導された単位を含むことができる。開示されたコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであってもよく、又は1つ以上の分子鎖をポリマー骨格にグラフトすることができる。
【0012】
1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層に配置されたポリマー層を含む組成物が開示される。1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基のうちの1種以上は、ポリマー種と共有結合若しくはイオン結合を形成することができ、又は、ラクトンの開環で、開環構造とポリマー種との間の結合が形成される。
【0013】
1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーに結合したペンダントの求電子基、求核基又はイオン基を有するポリマーを含む組成物であって、1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーが、ペンダントの求電子基、求核基又はイオン基によってポリマーに結合した、組成物が開示される。本明細書で開示された1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層であって、前記官能化ベータ-プロピオラクトンが、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシス、双性イオンとの接触によって重合可能である1種以上のペンダント基を有する層と、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、付加重合、開環構造との接触又は双性イオンとの接触によって重合するポリマーの層とを含む組成物であって、前記1種以上のペンダント基が、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシスによって、双性イオンとの接触によって重合する前記ポリマーと重合し、2つの層を互いに共有結合する、組成物が開示される。骨格からのペンダントを有する本明細書で開示されたベータ-プロピオラクトンの1種以上から誘導された複数の単位、そこにさらに結合した官能基、1種以上の顔料、光開始重合が可能である基、1種以上の鉱物、放射線を吸収可能である基又はポリマーの硬度を改善する1種以上の材料、から調製されたポリマーが開示される。
【0014】
基材、前記基材に配置された、ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層、又はベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層を含む、組成物が開示される。1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基の1種以上が、前記基材の表面と共有結合又はイオン結合を形成する、組成物が開示される。ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層に配置されるのが、異なるポリマーの層であってもよい。官能化ベータ-プロピオラクトン又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーは、共有結合、イオン結合を形成して、異なるポリマーと重合する、又は異なるポリマーの重合を開始するペンダント基を有することができる。
【0015】
本明細書において、開示された組成物から調製されたコーティング及び薄膜が開示される。基材、基材に配置された、ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上又はベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層を含む、組成物が開示される。ポリマー層でコーティングされた基材を含み、ポリマー層は、ポリマー層の上に配置された1種以上のベータプロピオラクトン含むポリマー、官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーを有する、組成物が開示される。多層薄膜は、少なくとも1つの外層上に、1種以上のベータプロピオラクトンを含むポリマー、官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーを有する、1種以上のポリマー層から調製される。層のそれぞれの間に、1種以上のベータプロピオラクトンを含むポリマー、官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層を有する、異なるポリマーの2種以上の層を含む、組成物が開示される。
【0016】
ベータプロピオラクトン、官能化ベータ-プロピオラクトン、又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーを含む、ポリマー系及び多層構造は、廃棄性及びリサイクル性を高めることができる生分解性材料の使用、形成された構造の機能を高めるための層の機能化、並びに任意選択的に再生可能資源からの原材料の有意な量を使用することを含めた、いくつかの有意な利点を呈示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で開示されたポリマー又は構造を調製するために使用される原料又は反応物についての残留分は、本明細書で開示された方法の結果としての含有物の後に、ポリマー又は構造において残る原料のその部分を意味する。実質的には、本明細書で用いられる全ては、参照されるパラメーター、組成物、構造又は化合物の90パーセントよりも多くが、定められた基準を満たし、参照されるパラメーター、組成物又は化合物の95パーセントよりも多くが、定められた基準を満たし、参照されるパラメーター、組成物又は化合物の99パーセントよりも多くが、定められた基準を満たし、参照されるパラメーター、組成物又は化合物の99.5パーセントよりも多くが、定められた基準を満たすことを意味する。本明細書で用いられる、1種以上は、列挙された成分の少なくとも1種又は2種以上が、開示されたように使用され得ることを意味する。ヘテロ原子は、炭素又は水素ではなく、例えば、窒素、酸素、硫黄、ハロゲン、ケイ素及びリンである原子を指す。ヒドロカルビルは、1つ以上の炭素原子鎖及び水素原子を含む基を意味し、任意選択的に、1種以上のヘテロ原子を含むことができる。フルオロカルビルは、1つ以上の炭素原子鎖及びフッ素原子を含む基を意味し、任意選択的に、1種以上のヘテロ原子を含むことができる。ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基が、ヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、当業者に周知の1種以上の官能基を形成することができる。炭素鎖並びに水素原子及びフッ素原子の両方を含む基は、その部位が、ハロゲン、例えばフッ素であってもよい、ヘテロ原子を含有したヒドロカルビル基と称され得る。ヒドロカルビル基は、脂環式、脂肪族、芳香族又はそのようなセグメントの任意の組み合わせを含むことができる。脂肪族セグメントは、直鎖状又は分岐であってもよい。脂肪族セグメント及び脂環式セグメントは、1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を含めることができる。ヒドロカルビル基に含められるのは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルカリール基及びアラルキル基である。脂環式基は、環状部位及び非環状部位の両方を含んでいてもよい。ヒドロカルビレンは、ヒドロカルビル基又は二価以上を有する記載のサブセットのいずれか、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アルカリーレン及びアラルキレンを意味する。本明細書で用いられるアルキルは、直鎖及び分岐鎖のアルキル基を指す。重量パーセント又は重量部は、別段の指示がなければ、記載の化合物若しくは組成物の重量を指し、又はそれに基づく。フルオロカルビレンは、フルオロカルビル基又は二価以上を有する記載のサブセットのいずれかを意味する。別段の指示がなければ、重量部は、組成物の100重量部に基づく。
【0018】
本明細書で用いられる用語イソシアネート反応性化合物又は基は、名目上2種以上又は少なくとも2種のイソシアネート反応性部分を有する、任意の有機化合物又は有機基を含める。活性水素含有部分は、Wohlerによって、the Journal of the American Chemical Society、49巻、3181頁(1927)に記載されたZerewitinoff測定によって、分子のその位置ゆえに有意な活性を表す、水素原子を含む部分を指す。そのようなイソシアネート反応性部分、例えば、活性水素部分の例示は、-COOH、-OH、-NH、-NH-、-CONH、-SH及び-CONH-である。開始剤は、反応を開始する及び重合に関連して重合反応を開始する、基又は化合物を意味する。アニオン重合は、アニオン開始剤が、不飽和モノマー、例えばビニルモノマーに電荷を移し、次いでビニルモノマーが反応性になる、連鎖成長重合の種類である。それぞれの反応性モノマーは、他のモノマーと反応して、直鎖状ポリマーを形成することができる。重合条件下のアニオン開始剤は、基を求核性にする、少なくとも1つの、余分な電子を有する基であるアニオンを形成する。アニオン重合は、反応するための求核剤が存在する限り、又はクエンチ剤(quenching agent)を添加して、存在するアニオン基と反応するまで、重合が継続するゆえに、しばしば、リビング重合と称される。ラジカル重合は、炭素ラジカルの開始によって、開始され、伝搬した重合を意味する。カチオン開始剤は、求電子剤、正電荷を帯びた種に変換することができる化合物である。カチオン重合は、カチオン開始剤が、プロトンをモノマーに移し、次いでモノマーが、連鎖成長に対して反応性になる、連鎖成長重合の種類である。開環メタセシス重合は、歪んだ環(strained ring)及び不飽和を有する化合物又は基が、アルキリデン触媒と接触して開環し、さらに重合する不飽和基を生じる、重合反応である。
【0019】
開示されたポリマー系及び構造は、官能化ベータプロピオラクトン及び任意選択的にプロピオラクトンを含むことができる。官能化ベータプロピオラクトンの一部は、新規のものであってもよい。官能化ベータプロピオラクトンは、官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーの、ポリマーベースの構造、薄膜及びコーティング用途における機能を高める官能基を有することができる。官能基は、1種以上のヒドロカルビル部分及び/又はフルオロカルビル部分であってもよく;それらは、少なくとも1種のヘテロ原子又は少なくとも1種の置換基を含むことができる。官能基は、不飽和基、求電子基、求核基、アニオン基、カチオン基、双性イオン、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性剤特性を有するポリマー、及び重合開始剤のうちの1種以上を含有する、ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基の1種以上であってもよい。官能基は、フルオロカルビル、アリール、置換アリール、脂環式、置換脂環式、脂肪族又は置換脂肪族の部分のうちの1種以上であってもよい。官能基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アルキルヘテロシクリル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、ヘテロアリール基若しくはアルキルヘテロアリール基若しくはポリオキシアルキレン基、又はベータプロピオラクトン環に縮合した5~20員の環状環若しくは複素環のうちの1種以上であってもよい。官能基は、C~C15アルキル基、C~C15アルケニル基、C~Cシクロアルキル基、C~C20ヘテロシクリル基、C~C20アルキルヘテロシクリル基、C~C18アリール基、C~C25アルカリール基、C~C25アラルキル基、C~C18ヘテロアリール基若しくはC~C25アルキルヘテロアリール基、又はポリオキシアルキレン基のうちの1種以上であってもよい。官能基は、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基、アルキルスルホネートアルキルオキシ基、アルキルエーテル置換アルキル基、ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基、アルケニルオキシ置換アルキル基、アリールエステル置換アルキル基、アルケニル基、シアノ置換アルキル基、アルケニルエステル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルキル基;アリール基、ヘテロ原子含有シクロアルケニルアルキルエーテル置換アルキル基、ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基、アリール置換アルキル基、ハロアリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基、アルキルエーテル置換アルカリール基、ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基、又は、1種以上の不飽和基、任意選択的に1つ以上のエーテル基及び/若しくは1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよい、ベータプロピオラクトン基で置換されたアルキル基、グリシジルエーテル基、又は任意選択的に1つ以上のエーテル基で置換されたベンゾシクロブテン置換アルキル基を、任意選択的に含むことができる縮合環状環、のうちの1種以上であってもよい。官能基は、それ自体が置換基を有することができる。置換基は、ハロ、ポリテトラフルオロアルケン、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、エステル、ポリアルキレンオキシド、不飽和基、天然鉱物、合成鉱物又は炭素ベース構造であってもよい。官能基は、基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)によって、環に連結され得る。例示的な連結基は、ヒドロカルビレン基、フルオロカルビレン基、エーテル、チオエーテル及びポリエーテル(例えばポリアルキレンエーテル)であってもよい。
【0020】
官能化ベータ-プロピオラクトンは、式1に対応することができる:
【0021】
【化2】
式中、R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分であり、該ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分は、任意選択的に、少なくとも1種のヘテロ原子又は少なくとも1種の置換基を含んでいてもよく、少なくとも1つのR、R、R、Rは、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在する。少なくとも1つのR、R、R、Rは、コーティング又は薄膜において有用な、ポリマー鎖中に組み込まれた前記官能化ベータ-プロピオラクトンの機能を高める、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在することができる。少なくとも1つのR、R、R、Rは、不飽和基、求電子基、求核基、アニオン基、カチオン基、双性イオン、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性剤特性を有するポリマー及び重合開始剤のうちの1種以上を含有する、ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基であってもよい。R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、フルオロカルビル、アリール、置換アリール、脂環式、置換脂環式、脂肪族又は置換脂肪族の部分であってもよい。R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール若しくはアルキルヘテロアリール若しくはポリオキシアルキレンであってもよく、又は、R、R、R、Rのうちの2つは、5~20員の環状環若しくは複素環を形成してもよい。R、R、R、Rは、存在毎に別々に、C~C15アルキル、C~C15アルケニル、C~Cシクロアルキル、C~C20ヘテロシクリル、C~C20アルキルヘテロシクリル、C~C18アリール、C~C25アルカリール、C~C25アラルキル、C~C18ヘテロアリール若しくはC~C25アルキルヘテロアリール又はポリオキシアルキレンであってもよい。R、R、R、Rは、存在毎に別々に、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基、アルキルスルホネートアルキルオキシ基、アルキルエーテル置換アルキル基、ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基、アルケニルオキシ置換アルキル基、アリールエステル置換アルキル基、アルケニル基、シアノ置換アルキル基、アルケニルエステル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有シクロアルケニルアルキルエーテル置換アルキル基、ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基、アリール置換アルキル基、ハロアリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基、アルキルエーテル置換アルカリール基、ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基であってもよく、R又はR及びR又はRのうちの2つは、環状環を形成し、環状環は、1種以上の不飽和基、任意選択的に1つ以上のエーテル基及び/若しくは1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよい、ベータプロピオラクトン基で置換されたアルキル基、グリシジルエーテル基、又は任意選択的に1つ以上のエーテル基で置換されたベンゾシクロブテン置換アルキル基を、任意選択的に含むことができる。Rは、重合可能である複素環、例えばオキサゾリンであってもよい。R、R、R、Rは、存在毎に別々に、連結基Lによって環状環に連結された、開示された官能基のうちの1つであってもよい。官能化ベータ-プロピオラクトンは、式2~式6のうちの1つである一般式に対応することができる;
【0022】
【化3】
式中、m及びnは、独立に1以上の整数であり、ただし、m、n又は両方は1よりも大きく、Lは、存在毎に独立に連結基である。連結基は、プロピオラクトン基を連結することが可能な任意の二価基であってもよい。Lは、存在毎に別々に、ヒドロカルビレン基であってもよく、任意選択的に、本出願で開示された置換基で置換される。Lは、アルキレン基又はポリオキシアルキレン基であってもよい。Rは、存在毎に別々に、水素、又はアルキル基、例えばC1~4アルキル基又はメチルである。括弧内の単位は、任意の方法で配置されることができる。ベータ-プロピオラクトンは、R、R、R及びRの全てが水素である式1に対応する。
【0023】
いくつかの官能化ベータプロピオラクトンが開示されており、この点については、参照により本明細書に組み込まれる、共有されたPCT出願/米国特許出願公開第2020/020317号、22~31頁を参照されたい。前述の出願で開示されたように、そのような化合物は、所望の官能基で置換されたエポキシドを一酸化炭素と反応させることによって調製され得る。反応は、温度約0℃以上、約25℃以上、又は約50℃以上から約150℃以下までで実行され得る。代替的に、公知の有機合成法に従って、公知のベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンのうちの1種を、所望の化合物に変換することができる。コポリマーにおいて、官能化ベータプロピオラクトンのベータプロピオラクトンに対する比は、本明細書に記載された形成されたコポリマーにおいて、所望の機能性をもたらすように選択される。
【0024】
1種以上の官能化ベータプロピオラクトン又はベータプロピオラクトンから調製されたホモポリマー並びにベータプロピオラクトン及び1種以上の官能化ベータプロピオラクトンのコポリマーは、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0094100号において開示された方法によって調製され得る。ホモポリマー及びコポリマーは、1種以上の官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンを、固体カルボキシレート触媒又はアクリル酸触媒と接触させることによって調製され得る。反応は、気相において又は液相において、少なくとも部分的に実行され得る。
【0025】
1種以上の官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンと、1種以上の官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンと反応性の1種以上のモノマーとのコポリマーが開示される。1種以上の官能化ベータプロピオラクトン及び/又はベータプロピオラクトンと反応性の1種以上のモノマーは、1種以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1種以上の二官能性ポリエステル、環状ラクトン、環状無水物又はポリエーテルを含める。コモノマーは、1種以上のラクトン及び/又は無水物であってもよい。コモノマーは、環状無水物、例えば無水コハク酸又は無水マレイン酸であってもよい。これらのコポリマーにおいて使用され得る例示的な官能性ベータプロピオラクトンは、ベータ-ブチロラクトン、ベータ-バレロラクトン、ベータ-ヘプタノラクトン、ベータ-トリデカノラクトン、cis-3,4-ジメチルオキセタン-2-オン、4-(ブトキシメチル)-2-オキセタノン、4-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]-2-オキセタノン、4-[(2-プロペン-1-イルオキシ)メチル]-2-オキセタノン又は4-((ベンゾイルオキシ)メチル)-2-オキセタノンであってもよい。これらのコポリマーは、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、共有された米国特許第10669373号に開示された方法に従って調製され得る。
【0026】
ベータ-ラクトン及び環状無水物の共重合は、重合開始剤の存在下で実施され得る。重合開始剤は、ベータ-ラクトン及び環状無水物の開環重合を開始して、コポリマーを生成する。広範囲の重合触媒を開環重合の開始のために使用することができる。重合開始剤は、イオン性開始剤であってもよい。イオン性開始剤は、一般式M’’X(式中、M’’はカチオンであり、Xはアニオンである)を有することができる。M’’は、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+及びAl3+からなる群から選択され得る。M’’は、Na+であってもよい。M’’は、有機カチオンであってもよい。有機カチオンは、第四級アンモニウム、イミダゾリウム及びビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムであってもよい。第四級アンモニウムカチオンは、テトラアルキルアンモニウムであってもよい。Xは、求核性アニオン、例えば、少なくとも1つのカルボキシレート基、少なくとも1つのアルコキシド基、少なくとも1つのフェノキシド基、及び任意のそれらの組み合わせを含む化合物であってもよい。求核性アニオンは、1種以上のハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド、カルボキシレート、及び任意のそれらの組み合わせであってもよい。イオン性開始剤は、アクリル酸ナトリウム又はテトラブチルアンモニウムアクリレートであってもよい。重合は、1種以上の溶媒の存在下で実施され得る。環状無水物モノマーとの重合用の例示的な溶媒には、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム及び二塩基エステルが挙げられる。
【0027】
コポリマーは、ベータ-プロピオラクトン及び/又は1種以上の官能化ベータプロピオラクトンを、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むアルコールと反応させることによって生成され得る。出願人は、そのようなコポリマーを調製する方法に関して、いずれの理論にも束縛されないが、ベータ-プロピオラクトン及び/又は1種以上の官能化ベータプロピオラクトンは、アルコールと反応して、少なくとも2つのカルボン酸基を含むカルボン酸を形成することができる。少なくとも2つのカルボン酸基を有する、形成されたカルボン酸は、縮合重合によって、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコールとさらに反応して、コポリマーを生成することができる。例示的なジオールには、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ビス(ヒドロキシメチル)オクタデカノール及び1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。方法は、1種以上の溶媒、例えば、トルエン、キシレン及びメシチレンの存在下で実施され得る。
【0028】
ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンのコポリマーベースの構造及びポリマー系が開示される。構造は、その薄膜を含むことができる。薄膜は、ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン並びにベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むコポリマーの、1種以上の層を含むことができる。多層構造は、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの層をさらに含むことができる。多層構造は、任意の層の配置で配置され得る、それぞれのポリマーの1種以上を有することができる。例示的な熱可塑性層には、ポリオレフィン、ポリアクリレート、スチレン系ポリマー及びスチレン系コポリマー、メチレンマロネート、ポリアミド、ポリエステル並びに熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。例示的な熱硬化性層には、ポリウレタン及びポリエポキシドが挙げられる。ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むコポリマーの、1つ以上の層のうちの層は、他のポリマーの2つ以上の層の間に配置され得る。ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むコポリマーの、1つ以上の層のうちの層が、分解され、生分解を起こすことができ、他の層が互いに分離して、再利用又はリサイクルを容易にすることができるので、この構造は、他のポリマー層が、異なるポリマーである場合が有利であり得る。
【0029】
基材に塗布されたコーティングを含む構造であって、コーティングの少なくとも一部分が、ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンのコポリマー、並びにベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトン並びにベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンと共重合する他のモノマーのコポリマーの層うちの1つ以上に由来し得る、構造が開示される。コーティングは、1つ以上の層が他のポリマー系から調製される、多層を有することができる。ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトン並びに任意選択的にベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンと共重合する他のモノマーのコポリマーを含む層は、ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン並びにベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むコポリマーの層に塗布された他のポリマーの層を有する基材に、直接塗布され得る。ポリプロピオラクトン、官能化ポリプロピオラクトン、ベータプロピオラクトン及び/又は官能化ベータプロピオラクトンを含むコポリマーの層は、分解され、生分解を起こすことができ、他の層が基材から分離して、基材の再利用又はリサイクルを容易にすることができる。ポリプロピオラクトンのホモポリマー、官能化ポリプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトン及び/若しくはベータプロピオラクトンを含む1種以上のコポリマーの層は、コーティングの外部表面に又は多層薄膜の外層として配置され、官能化ベータプロピオラクトンの官能基の結果として表面を機能化することができる。表面は、親水性性質、疎水性性質、硬度、耐擦傷性、抗菌性、他の成分への接着などを調節することを含めた、任意の所望の目的で機能化され得る。
【0030】
官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、他のポリマーと結合するために、他のポリマー系の官能基と反応する官能基を有することができ、官能基は、モノマーの重合を開始して、他のポリマーのポリマー層を形成し、他のモノマーと反応する反応性基を有することができ、他のポリマー層の一部になることができる。
【0031】
官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、ポリウレタン又はポリ尿素ベースのプレポリマーの未反応イソシアネート基と架橋することができる、1つ以上の活性水素原子を含む官能基を有することができる。代替的に、そのような活性水素含有官能基は、第三級アミン及び/又はスズII若しくはスズIV、カルボキシレートの触媒の存在下で、高温で、2つ以上の活性水素含有基を有するポリイソシアネート及び化合物と反応して、ポリ尿素又はポリウレタンの層を形成することができる。
【0032】
官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、1つ以上の二重結合又は三重結合を含む官能基を有することができ、そのような二重結合又は三重結合は、炭素鎖の末端にあってもよい。二重結合又は三重結合は、不飽和を有する他のモノマーと反応して、付加ポリマーを形成することができる。二重結合又は三重結合は、他のモノマーの性質に応じて、アニオン重合、カチオン重合又はラジカル重合によって、他のモノマーと反応することができる。モノマーが、求核性である不飽和基、例えば、シアノアクリレート又はメチレンマロネートを有する場合、アニオン重合が利用され得る。アニオン重合は、モノマーを塩基、例えばテトラメチルグアニジンと接触させることによって開始され得る。反応性モノマーが、求核性二重結合を含む場合、塩基触媒は、アニオン重合を開始する。他の不飽和化合物は、アニオン重合によって重合され得るが、条件は、積極的な開始剤、例えばsec-ブチルリチウム、及びおよそ-80℃の極めて低い反応温度を必要とする。スチレン系ジエン及び共役ジエンは、これらの条件下でアニオン重合する。
【0033】
不飽和化合物が、オレフィン、スチレン系、(メタ)アクリレート、不飽和ニトリル、共役1,3ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど);アルファ-不飽和一塩基酸又はベータ-不飽和一塩基酸及びその誘導体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など);ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル、臭化ビニルなど;塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなど;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど;エチレン性不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及び誘導体、例えば、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキル又はフマル酸ジアルキル、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、対応するフマル酸塩、N-フェニルマレイミド(N-PMI)などである場合、官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、ラジカル重合によって、そのような化合物と反応して、ポリマー層を形成することができる、1つ以上の二重結合又は三重結合を含む官能基を有することができる。ラジカル重合が進行し得るような条件下で、モノマーを、ラジカル開始剤、例えば、過酸化物又はアゾ化合物と接触させる。
【0034】
官能化ベータプロピオラクトン又はそのポリマーの不飽和基は、カチオン重合によって、ある種の不飽和化合物と共重合することができる。例えば、ビニル基を、電子放出基、例えば、アルコキシ基、フェニル基又はアルキル基と共に有するコモノマーは、カチオン重合によって重合し、例は、スチレン及び置換スチレンである。カチオン重合は、ルイス塩基、例えば、水、アルコール又は酢酸の存在下で、ルイス酸、例えばトリフルオロボラン、又は強プロトン酸、例えば硫酸、リン酸及び塩酸の使用を要求する。触媒は、モノマーを誘導して、不飽和基に付加する求電子剤として機能し、かつ別の求電子剤を形成する、カチオン種を形成する。これは、モノマーの大部分がポリマー鎖に付加されるまで、又は反応が停止されるまで継続する。
【0035】
官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーが、歪んだ環及び不飽和基を有する官能基を含む場合、そのような基は、アルキリデン触媒により触媒作用を及ぼされる開環メタセシスによって、不飽和化合物と重合することができる。
【0036】
官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、そのポリマー鎖から吊り下がった求電子基を有するポリマーと反応し、そのそれぞれの層の間に架橋を形成する、求核性である官能基を有し得る。官能化ベータプロピオラクトン又は官能化ベータプロピオラクトンを含むポリマーは、そのポリマー鎖から吊り下がった求核基を有するポリマーと反応し、そのそれぞれの層の間に架橋を形成する、求電子性である官能基を有し得る。例示的な求核基には、ヒドロキシル、カルボン酸、アミン、安息香酸、スルホネート及び硫酸塩などが挙げられる。酸は、少なくとも部分的に中和される場合、求核性になる。したがって、酸は、完全に中和される又は脱プロトン化される場合、求核性である。求電子基は、エポキシド基、無水物基、イミド基、エステル基、ハロゲン化アシル基、アシルニトリル基、アルデヒド基、ケトン基、イソシアネート基及びイソチオシアネート基又はその混合物のうちの1種以上であってもよい。求電子基は、エポキシド基であってもよい。
【0037】
実施形態
1.一般式:
【0038】
【化4】
(式中、存在毎に独立に、R、R、R、Rは、存在毎に別々に、水素、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分であり、該ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分は、任意選択的に、少なくとも1種のヘテロ原子又は少なくとも1種の置換基を含んでいてもよく、少なくとも1つのR、R、R、Rが、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル(flourocarbyl)部分として存在する)
を有する1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0039】
2.少なくとも1つのR、R、R、Rが、コーティング又は薄膜において有用な、コポリマー鎖中に組み込まれた前記官能化ベータ-プロピオラクトンの機能を高める、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分として存在する、実施形態1のポリマー。
【0040】
3.少なくとも1つのR、R、R、Rが、不飽和基、求電子基、求核基、アニオン基、カチオン基、双性イオン、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性剤特性を有するポリマー、及び重合開始剤のうちの1種以上を含有する、ヒドロカルビル基又はフルオロカルビル基である、実施形態1又は2に記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0041】
4.R、R、R、Rが、存在毎に別々に、水素、フルオロカルビル、アリール、置換アリール、脂環式、置換脂環式、脂肪族又は置換脂肪族の部分である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0042】
5.R、R、R、Rが、存在毎に別々に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール若しくはアルキルヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレンであり、又は、R、R、R、Rのうちの2つが、5~20員の環状環若しくは複素環を形成してもよく:又はR、R、R、Rが、存在毎に別々に、C~C15アルキル、C~C15アルケニル、C~Cシクロアルキル、C~C20ヘテロシクリル、C~C20アルキルヘテロシクリル、C~C18アリール、C~C25アルカリール、C~C25アラルキル、C~C18ヘテロアリール若しくはC~C25アルキルヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレン、又は基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)であってもよい、先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0043】
6.前記置換基が、ハロ、ポリテトラフルオロアルケン、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、エステル、ポリアルキレンオキシド、不飽和基、天然鉱物、合成鉱物又は炭素ベース構造である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0044】
7.R、R、R、Rのうちの1つ以上が、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基、アルキルスルホネートアルキルオキシ基、アルキルエーテル置換アルキル基、ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基、アルケニルオキシ置換アルキル基、アリールエステル置換アルキル基、アルケニル基、シアノ置換アルキル基、アルケニルエステル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有シクロアルケニルアルキルエーテル置換アルキル基、ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基、アリール置換アルキル基、ハロアリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基、アルキルエーテル置換アルカリール基、ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基であり、R又はR及びR又はRのうちの2つが、環状環を形成し、該環状環が、1種以上の不飽和基、任意選択的に1つ以上のエーテル基及び/若しくは1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよい、ベータプロピオラクトン基で置換されたアルキル基、グリシジルエーテル基、又は任意選択的に1つ以上のエーテル基と任意選択的に基の官能性部位を環状環に連結するように機能する連結基(L)とで置換されたベンゾシクロブテン置換アルキル基、を任意選択的に含んでいてもよい、先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0045】
8.Rが、重合可能である複素環、例えばオキサゾリン、又は以下の式:
【0046】
【化5】
(式中、m及びnは、独立に1以上の整数であり、ただし、m、n又は両方は1よりも大きく、括弧内の単位は任意の方法で配置されることができ;
は、水素又はアルキル基であり;
Lは連結基である)
のうちの1つに対応する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマー。
【0047】
9.先行する実施形態のいずれか1つに記載の官能化ベータプロピオラクトンのうちの1種以上から調製されたホモポリマー。
【0048】
10.ベータプロピオラクトンと先行する実施形態のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータプロピオラクトンとのコポリマー。
【0049】
11.1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン実施形態9又は10の又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層に配置されたポリマー層を含む組成物。
【0050】
12.前記1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基のうちの1種以上が、ポリマー種と共有結合若しくはイオン結合を形成する、又は、ラクトンの開環で、開環構造とポリマー種との間の結合を形成する、実施形態11に記載の組成物。
【0051】
13.実施形態1~8のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータプロピオラクトンと、該1種以上の官能化ベータプロピオラクトンと反応性である1種以上のモノマーとのコポリマーを含む、組成物。
【0052】
14.1種以上の前記ベータ-プロピオラクトンから誘導された複数の単位と、1種以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1種以上の二官能性ポリエステル、環状ラクトン、環状無水物又はポリエーテルのうちの複数を含む、実施形態13に記載のコポリマー。
【0053】
15.前記コポリマーが、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであり、又は、1つ以上の分子鎖が、ポリマー骨格にグラフトされている、実施形態13又は14に記載のコポリマー。
【0054】
16.1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンに結合したペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基を有するポリマー、又は、ペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基を有し、該ペンダントの求電子基、求核基若しくはイオン基によってポリマーに結合した、実施形態1~8のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーを含む組成物。
【0055】
17.1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は実施形態1~8のいずれか1つに記載の1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの層であって、前記官能化ベータ-プロピオラクトンが、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシス、双性イオンによって重合可能である1種以上のペンダント基を有する層と、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、付加重合によって重合するポリマーの層とをを含む組成物であって、前記1種以上のペンダント基が、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合、ラジカル重合、開環メタセシスによって重合する前記ポリマーと重合し、2つの層を互いに共有結合する、組成物。
【0056】
18.骨格からのペンダントを有する実施形態1~8のいずれか1つに記載のベータ-プロピオラクトンの1種以上から誘導された複数の単位、そこにさらに結合した官能基、1種以上の顔料、光開始重合が可能である基、1種以上の鉱物、放射線を吸収可能である基又はポリマーの硬度を改善する1種以上の材料から調製されたポリマー。
【0057】
19.実施形態1~18に記載された組成物のいずれか1つから調製されたコーティング。
【0058】
20.実施形態1~18に記載の組成物のいずれか1つから調製された薄膜。
【0059】
21.ベータ-プロピオラクトン、官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を有する2種の非相溶性のポリマー、又は、層の間に配置された、ベータプロピオラクトン及び実施形態1~8のいずれか1つに記載の官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの別個の層を含む、多層ポリマー構造。
【0060】
22.基材、該基材に配置された、ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層、又は先行する実施形態のいずれか1つに記載のベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層を含む、組成物。
【0061】
23.前記1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又は1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンを含むポリマーの官能基の1種以上が、前記基材の表面と共有結合又はイオン結合を形成する、実施形態22に記載の組成物。
【0062】
24.ベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上の層又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーの層の上に配置されるのが、異なるポリマーの層である、実施形態22又は23に記載の組成物。
【0063】
25.官能化ベータ-プロピオラクトン又はベータ-プロピオラクトン及び/若しくは官能化ベータ-プロピオラクトンの1種以上を含むポリマーが、共有結合、イオン結合を形成して異なるポリマーと重合する、又は異なるポリマーの重合を開始するペンダント基を有する、実施形態24に記載の組成物。
【0064】
26.ポリマー層でコーティングされた基材を含み、該ポリマー層が、該ポリマー層の上に配置された実施形態9~18のいずれか1つに記載のポリマーを有する、組成物。
【0065】
27.少なくとも1つの外層上に実施形態9~18のいずれか1つに記載のポリマーを有する1種以上のポリマー層から調製された、多層薄膜。
【0066】
28.異なるポリマーの2種以上の層を含む組成物であって、該層のそれぞれの間に実施形態9~18のいずれか1つに記載のの層を有する、組成物。
【0067】
本開示は、ある特定の実施形態に関連付けて説明してきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内に含められる様々な改変及び均等な取り合わせに及ぶものであると理解されたく、その範囲は、法の下で許容される、全てのそのような改変及び均等な構造を包含するように、最も広範な説明が認められるものである。
【国際調査報告】