IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アークトゥラス・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-大型RNAの脂質ナノ粒子封入 図1
  • 特表-大型RNAの脂質ナノ粒子封入 図2
  • 特表-大型RNAの脂質ナノ粒子封入 図3
  • 特表-大型RNAの脂質ナノ粒子封入 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】大型RNAの脂質ナノ粒子封入
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231003BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231003BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20231003BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20231003BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20231003BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20231003BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20231003BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/18
A61K31/7088
A61K47/02
B01F23/50
B01F25/30
B01F25/10
B01F35/71
B82Y5/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516083
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021050120
(87)【国際公開番号】W WO2022056413
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,648
(32)【優先日】2020-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513269893
【氏名又は名称】アークトゥラス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Arcturus Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バオ,ヤンジエ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンテ,ブレンダ
(72)【発明者】
【氏名】カルマリ,プリヤ プラカシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC29
4C076DD23
4C076DD49H
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF65
4C076GG06
4C076GG43
4C076GG45
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA44
4C086NA03
4G035AB44
4G035AC22
4G035AC44
4G035AE13
4G037AA01
4G037AA02
4G037EA01
(57)【要約】
脂質封入RNAナノ粒子の作製方法は、第1の内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流すことであって、RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、流すことと;第1の管を通る水溶液に対して約0.2~約1倍の流速で、第2の内径(ID)を有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流すことであって、脂質がカチオン性脂質を含む、流すことと;エタノール溶液を水溶液と混合することであって、第1のID及び第2のID、ならびに、第1の管及び第2の管を通る流速が、RNAの一体性を保護するのに十分低い剪断力を生み出すように選択される、混合することと;を含み、混合することは、約エタノールの間で、RNA及び脂質の乱流を含む第1の管を流れる出力溶液を生成し、脂質封入RNAナノ粒子は二重層構造を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 約0.01インチ~約0.08インチの内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、前記水溶液のpHが、最大約300mMの任意選択的なNaCl濃度を有して、約3.0~約4.5の範囲であり、
前記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、前記工程と、
b) 前記第1の管を通る前記水溶液の流速の、約0.2~約1倍の流速で、約0.01インチ~約0.04インチのIDを有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、前記脂質がカチオン性脂質を含む、前記工程と、
c) 前記エタノール溶液を前記水溶液と混合する工程であって、
前記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、前記RNA及び前記脂質の乱流を含む前記第1の管を流れる出力溶液を生成し、
脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、前記工程と、
を含む、前記脂質封入RNAナノ粒子の作製方法。
【請求項2】
a) 第1の内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、
前記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、前記工程と、
b) 前記第1の管を通る前記水溶液の流速の約0.2~約1倍の流速で、第2の内径(ID)を有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、前記脂質がカチオン性脂質を含む、前記工程と、
c) 前記エタノール溶液を前記水溶液と混合する工程であって、
前記第1のID及び前記第2のID、ならびに、前記第1の管及び前記第2の管を通る流速が、前記RNAの一体性を保護するのに十分低い剪断力を生み出すように選択され、
前記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、前記RNA及び前記脂質の乱流を含む前記第1の管を流れる出力溶液を生成し、
脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、前記工程と、
を含む、前記脂質封入RNAナノ粒子の作製方法。
【請求項3】
前記混合することが、前記エタノール溶液と前記水溶液を、前記第1の管に垂直に結合した前記第2の管からなる混合モジュールに流すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合することが、前記エタノール溶液及び前記水溶液を、複数の入口を持つボルテックスミキサーに流すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液中のRNAの濃度が、約85マイクログラム/mL~約2100マイクログラム/mLの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エタノール溶液中の脂質の濃度が、約5.0mg/mL~約125mg/mLの範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液が、約200psi以下の背圧で、第1のポンプにより前記第1の管を通ってポンプで送られ、前記エタノール溶液が、第2のポンプにより前記第2の管を通ってポンプで送られる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の管が、約0.02インチ~約0.03インチの範囲のIDを有し、前記第2の管が、約0.01インチ~約0.02インチの範囲のIDを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の管が、約0.02インチのIDを有し、前記第2の管が、約0.01インチのIDを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の管が、約0.03インチのIDを有し、前記第2の管が、約0.01インチのIDを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の管が、約0.01インチ~約0.08インチの範囲のIDを有し、前記第2の管が、約0.01インチ~約0.04インチの範囲のIDを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の管が、約0.02インチ~約0.03インチの範囲のIDを有し、前記第2の管が、約0.01インチ~約0.02インチの範囲のIDを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液が、約40mL/分~約375mL/分の範囲の流速で、ポンプで送られる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記エタノール溶液が、約10mL/分~約75mL/分の範囲の流速で、ポンプで送られる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記出力溶液が、約120mL/分~約300mL/分の範囲の総流速を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液、前記エタノール溶液、及び前記出力溶液が、約10℃~約25℃の範囲の温度で維持される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第1の希釈緩衝液をポンプで送ることと、前記希釈緩衝液を前記出力溶液に導入することにより、前記希釈緩衝液を前記出力溶液と混合して、第1の希釈出力溶液を作製することをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第2の希釈緩衝液を、前記第1の希釈出力溶液にポンプで送ることにより、最終の希釈出力溶液を形成することをさらに含み、前記第1の希釈緩衝液をポンプで送ることと、前記第2の希釈緩衝液をポンプで送ることとの間には、遅延が存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遅延が、約0.1~約30秒であり、前記遅延が、管材の長さにより生み出される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の希釈緩衝液が、
a) 約5.5~約7.0のpHを有する緩衝剤と、
b) 任意選択的に、最大約100mMの塩化ナトリウム濃度と、
を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の希釈緩衝液が、
a) 約7.4~8.0のpHを有する緩衝剤と、
b) 任意選択的に、最大約100mMの塩化ナトリウム濃度と、
を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の緩衝液が、最大15%w/vのスクロースを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の緩衝液が、最大約0.5%w/vの酸化防止剤を含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の緩衝液が、最大20mMのキレート剤を含む、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の希釈出力溶液が、約1.0%~約10.0%のエタノールを含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の希釈緩衝液が、約80mL/分~約900mL/分の流速でポンプで送られる、請求項17~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の希釈緩衝液が、約240mL/分~約5400mL/分の流速でポンプで送られる、請求項18~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記カチオン性脂質が、式Iの構造、
【化1】

または、薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
[式中、
及びRは各々独立して、直鎖または分枝C-C31アルキル、C-C31アルケニル、またはC-C31アルキニル、及びコレステリルからなる群から選択され、
及びLは各々独立して、直鎖C-C20アルキル及びC-C20アルケニルからなる群から選択され、
は、-C(O)O-または-OC(O)-であり、
は、-C(O)O-または-OC(O)-であり、
は、SまたはOであり、
は、存在しないかまたは低級アルキルであり、
は、直鎖または分枝C-Cアルキルであり、かつ
及びRは各々独立して、水素及び直鎖または分枝C-Cアルキルからなる群から選択される。]
【請求項29】
前記脂質封入RNAナノ粒子が、約50nm~約120nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記脂質封入RNAナノ粒子が、約70nm~約90nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記多分散度脂質封入RNAナノ粒子が、約0.2を超えない、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分が、ヘルパー脂質、コレステロール、及びPEG脂質複合体からなる群から選択される1種以上の薬剤をさらに含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記RNAが自己複製RNAである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記最終希釈出力溶液を凍結乾燥させることをさらに含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
脂質は、非経口投与の際に、標的細胞への送達のためにRNAを封入する脂質ナノ粒子を形成する能力に因り、リボ核酸(RNA)用の材料として使用される。(Zimmermann,2006,Nature,doi:10.1038/nature04688)。
【0002】
脂質封入RNAナノ粒子の、様々な製造方法が知られている。例えば、WO2001/005373は、乱流環境をもたらすスタティックミキサーを用い、その後、小胞形成物が治療用分子と組み合わせられる、エタノール注入型プロセスを用いる、脂質封入RNAナノ粒子の調製技術について開示している。US2004/0142025は、非乱流混合と、一連の連続段階希釈と、を用いる、脂質封入RNAナノ粒子の形成技術について開示している。US6,843,942は、オリフィスを通して、有機溶液パイプ内で脂質を、当該オリフィスを通って流れる水溶液中で核酸に吹き付けることによる、粒子を形成する、非乱流混合法について開示している。US9,005,654は、乱流混合を用いて脂質ナノ粒子(LNP)にsiRNAを封入することにより、反対向きに流れている脂質及びRNAが、ほぼ同じ速度で反対側のアームからT型混合チャンバーに入り、小胞を含む45~60%のエタノール溶液を作製し、当該溶液を収集した後、さらに希釈すること(直接希釈法)について開示している。US9,404,127は、直接希釈法により作製されたLNPの大部分が、ノンラメラのモルホロジーを有する、即ち、非二重層構造を有することについて開示している。
【0003】
従来の方法を適用して、大型RNAから脂質封入RNAナノ粒子を形成することの挑戦には、困難が生じている。例えば、このような問題の1つは、LNP形成の間にRNAで生じる、RNAの損なわれた構造的完全性を引き起こす力により生じる。したがって、大型RNA配列の文脈で、脂質封入RNAナノ粒子を製剤化するためのプロセス及び装置を改善することが必要とされている。このような方法は、所望の粒径及び多分散度を目標としながら、スケールアップにも適していなければならない。本明細書の実施形態は、当業者により認識されるこれらの問題、及び他の課題の1つ以上に対応する。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様では、本明細書の実施形態は、a)約0.01インチ~約0.08インチの内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、上記水溶液のpHが、最大約300mMの任意選択的なNaCl濃度を有して、約3.0~約4.5の範囲であり、上記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、上記工程と、b)上記第1の管を通る上記水溶液の流速の、約0.2~約1倍の流速で、約0.01インチ~約0.04インチのIDを有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、上記脂質がカチオン性脂質を含む、上記工程と、c)上記エタノール溶液を上記水溶液と混合する工程であって、上記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、上記RNA及び上記脂質の乱流を含む上記第1の管を流れる出力溶液を生成し、上記脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、上記工程と、を含む、脂質封入RNAナノ粒子の製造方法を提供する。
【0005】
いくつかの態様では、本明細書の実施形態は、a)第1の内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、上記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、上記工程と、b)上記第1の管を通る上記水溶液の流速の約0.2~約1倍の流速で、第2の内径(ID)を有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、上記脂質がカチオン性脂質を含む、上記工程と、c)上記エタノール溶液を上記水溶液と混合する工程であって、上記第1のID及び第2のID、ならびに、上記第1の管及び第2の管を通る流速が、上記RNAの一体性を保護するのに十分低い剪断力を生み出すように選択され、上記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、上記RNA及び上記脂質の乱流を含む上記第1の管を流れる出力溶液を生成し、上記脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、上記工程を含む、脂質封入RNAナノ粒子の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】脂質ナノ粒子を製造するプロセスの一実施形態に対する、フローチャート図を示す。脂質はエタノールに溶解し、RNAは酸性水溶液(例えば、クエン酸塩緩衝液)に溶解し、これらが共に、濾過滅菌される。溶液は、本明細書に記載するプロセスにより混合されて粒子を形成し、PDI及び粒径(PS)を分析する。粒子は濃縮されてタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)により精製され、エタノール及び未結合のRNAを除去し、PDI及びPSを再び監視する。次に、粒子の濃度を、測定したRNAの総濃度に従って調節する。粒子を濾過滅菌し、充填し、仕上げをして凍結する。
図2】脂質封入RNAナノ粒子を製造するための装置を示す。RNAを含む水溶液は、管材を通ってHPLCポンプにより輸送され、脂質を含む有機溶液は、個別の管材を通ってHPLCポンプにより輸送される。有機溶液は、混合領域内で90度の角度で、水溶液にポンプで入れることができる。出口管材は、ポリプロピレン管材で出口に繋がった混合脂質-RNAを輸送し、これは、希釈領域で、希釈緩衝液と45度の角度で合流する。希釈領域で希釈緩衝液と45度の角度で合流する管材は、連続で希釈され、希釈プロセス用の、それぞれが45度の角度で、1、2、3、または4つの、管材の希釈領域を含むことができる。希釈プロセスの後、希釈された粒子は、15~20℃で維持されるステンレス鋼被覆容器内で収集することができる。粒子は、蠕動、隔壁、または遠心ポンプを用いて、タンジェンシャルフローフィルトレーションによりさらに処理される。
図3】より詳細な、混合モジュールを示す。緩衝液中の核酸は、第1のステンレス鋼管の入力アームを通って輸送される。エタノール(または、他の好適な有機溶媒/溶媒混合液)内の脂質は、上記第1の管に垂直に取り付けられた第2のステンレス鋼管を通って輸送される。第1の管の壁の中にある孔により、液体の、第2の管から第1の管の内側への輸送が可能となる。混合により得られる脂質封入RNAナノ粒子は、第1の管の出力アームを通って外に出る。
図4】実施例13に記載する、マウスへの脂質ナノ粒子投与に応答して生じた、抗COVID19スパイクタンパク質の抗体量に対応する、様々な用量レベルの脂質ナノ粒子製剤に対する、調節された平均蛍光強度(MFI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
主題技術の様々な構成が、本開示から当業者には速やかに明らかとなるものと理解され、主題技術の様々な構成は、実例として図示及び説明されている。理解されるように、主題技術は、他の及び異なる構成が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべてが主題技術の範囲から逸脱することなく、種々の他の点において変更が可能である。したがって、要約、図面、及び詳細な説明は、本質的に実例と見なされるべきであり、限定として見なされるべきではない。
【0008】
本明細書の実施形態は、脂質ナノ粒子に大型RNA(例えば、自己複製RNA)を封入するプロセスを提供する。例えば、大型mRNAは、6,000~約15,000個のヌクレオチドのオーダーのサイズを有し得る。本明細書で開示するように、これらの大型ヌクレオチドは、通常のLNP形成プロセスと相溶性がないことが発見された。mRNA-LNP組成物を作製するために通常使用されるLNPプロセスを使用して、自己複製RNAが封入されたLNPの作製を試みた。以下の手順は、約1,000~約5,000個のヌクレオチドを含有するRNAに対して一般的である。バルク製剤は、以下に概略を示すように、脂質のエタノール性溶液を、RNA原薬または他の小型mRNAの水溶液と混合することにより製造される:
・脂質賦形剤(カチオン性脂質、リン脂質、コレステロール(Chol)、及びPEG-脂質複合体がエタノールに溶解され、0.2μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通って濾過される。
・mRNAの水溶液を、クエン酸塩緩衝液(pH4.0)で調製した後、0.2μmのPESフィルターを通して濾過する。
・次に、mRNA溶液を、ステンレス鋼混合モジュールにより、エタノール性溶液と混合する。このようにして形成したナノ粒子を、ホスフェート緩衝液(pH6.0)、続いて、HEPES緩衝液(pH8.0)による連続希釈で安定化した。
・次に、ナノ粒子製剤の限外濾過及びダイアフィルトレーション(UF/DF)を、修飾PES中空繊維膜(100kDa MWCO(分子量カットオフ))、及びHEPES緩衝液(pH8.0)を使用するタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)により行った。UF/DF後、製剤を0.2μm PESフィルターを通して濾過し、充填するまで2~8℃で保管した。
・次に、プロセス中のmRNA濃度分析を行った。製剤の濃度を、最終目標mRNA濃度(0.2mg/mL)に調節した後、0.2μmのPES、滅菌グレードフィルターを通して濾過した。
・滅菌濾過後、バルク生成物をガラス瓶に無菌充填し、栓を閉めて蓋をし、-70±10℃で凍結した。
【0009】
本プロセスを使用すると、得られる、より大型のRNA(約6,000個を超えるヌクレオチド)を含むLNPは、不十分なサイズ、分散、及びカプセル化効率を有した。さらに、これらのより大型のRNA構造のかなりの部分が、製剤化プロセス中に劣化することが発見され、このことは、本方法で使用した特定のプロセス圧力及び流速により生じる剪断力に因るという仮説が立てられた。このような剪断力は、流速と管のサイズを変えることで制御可能であると仮定された。しかし、混合条件及び動作圧力のみは、必ず必須のLNPラップRNAをもたらす唯一の変数とはみなされなかった。剪断力を下げて混合条件を調節することにより、条件が、LNP製剤化に十分ではない場合とある可能性があった。したがって、他のパラメーターが、緩衝液及び塩濃度、RNA及び脂質濃度、系内のpH及び全体の背圧を含むがこれらに限定されない、LNPラップ大型RNAの製剤化の成功をもたらす因子であると考えられたため、大型RNAにより呈される課題は複雑であると考えられた。
【0010】
本明細書の実施形態は、LNP封入大型RNAを形成するための、機能する解決策をもたらす。本明細書で開示する方法の利点の中でも、(1)リン脂質/ヘルパー脂質濃度の範囲、カチオン性脂質濃度及びコレステロール、ならびにRNAサイズといった、異なる脂質成分により許容される、組成物の大きな変動性;(2)小規模、中規模、及び大規模での製造のための、異なる拡張性を有するモジュール間での伝達性;ならびに、(3)バッチ体積の減少を維持しながら製造の規模拡大をする能力というものがある。
【0011】
実施形態では、a)約0.01インチ~約0.08インチの内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、上記水溶液のpHが、最大約300mMの任意選択的なNaCl濃度を有して、約3.0~約4.5の範囲であり、上記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、上記工程と、b)上記第1の管を通る上記水溶液の流速の、約0.2~約1倍の流速で、約0.01インチ~約0.04インチのIDを有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、上記脂質がカチオン性脂質を含む、上記工程と、c)上記エタノール溶液を上記水溶液と混合する工程であって、上記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、上記RNA及び上記脂質の乱流を含む上記第1の管を流れる出力溶液を生成し、上記脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、上記工程と、を含む、脂質封入RNAナノ粒子の製造方法を提供する。
【0012】
実施形態では、a)第1の内径(ID)を有する第1の管に、RNAを含む水溶液を流す工程であって、上記RNAが、約6,000~約13,000個のヌクレオチドを含む、上記工程と、b)上記第1の管を通る上記水溶液の流速の約0.2~約1倍の流速で、第2の内径(ID)を有する第2の管に、脂質を含むエタノール溶液を流す工程であって、上記脂質がカチオン性脂質を含む、上記工程と、c)上記エタノール溶液を上記水溶液と混合する工程であって、上記第1のID及び第2のID、ならびに、上記第1の管及び第2の管を通る流速が、上記RNAの一体性を保護するのに十分低い剪断力を生み出すように選択され、上記混合することが、約10%~75%エタノール(v/v)で、上記RNA及び上記脂質の乱流を含む上記第1の管を流れる出力溶液を生成し、上記脂質封入RNAナノ粒子が二重層構造を有する、上記工程を含む、脂質封入RNAナノ粒子の製造方法を提供する。
【0013】
実施形態では、混合することは、エタノール溶液と水溶液を、第1の管に垂直に結合した第2の管からなる混合モジュールに流すことを含む。
【0014】
実施形態では、混合することは、エタノール溶液及び水溶液を、複数の入口を持つボルテックスミキサーに流すことを含む。
【0015】
実施形態では、水溶液中のRNAの濃度は、約85マイクログラム/mL~約2100マイクログラム/mLの範囲である。実施形態では、範囲は、約85~約200マイクログラム/mL、または約200~約500、または約500~約800、または約800~約1000、または約1000~約1500、または約1500~約2100マイクログラム/mLであり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0016】
実施形態では、エタノール溶液中の脂質の濃度は、約5.0mg/mL~約125mg/mLの範囲である。実施形態では、範囲は、約5.0~約30mg/mL、または約30~約60、または約60~約90、または約90~約125mg/mLであり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0017】
実施形態では、水溶液は、約200psi以下の背圧で、第1のポンプにより第1の管を通ってポンプで送られ、エタノール溶液は、第2のポンプにより第2の管を通ってポンプで送られる。いくつかの実施形態では、背圧は約195psi以下、または約190psi以下、または約180psi以下である。
【0018】
実施形態では、第1の管は、約0.01インチ~約0.08インチの範囲のIDを有し、第2の管は、約0.01インチ~約0.04インチの範囲のIDを有する。実施形態では、第1の管は、約0.02インチ~約0.03インチの範囲のIDを有し、第2の管は、約0.01インチ~約0.02インチの範囲のIDを有する。実施形態では、第1の管は、約0.02インチのIDを有し、第2の管は、約0.01インチのIDを有する。実施形態では、第1の管は、約0.03インチのIDを有し、第2の管は、約0.01インチのIDを有する。このような測定値は、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0019】
実施形態では、水溶液は、約40mL/分~約375mL/分の範囲の流速で、ポンプで送られる。実施形態では、流速は、約40~約80mL/mL、または約80~約120、または約120~約160、または約160~約200、または約200~約240、または約240~約280、または約280~約320、または約320~約375mL/分の範囲であり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0020】
実施形態では、エタノール溶液は、約10mL/分~約75mL/分の範囲の流速で、ポンプで送られる。いくつかの実施形態では、流速は、約10~約30mL/分、または約30~約50、または約50~約75mL/分の範囲であり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0021】
実施形態では、水溶液、エタノール溶液、及び出力溶液は、約10℃~約25℃の範囲の温度で維持される。
【0022】
実施形態では、方法は、第1の希釈緩衝液をポンプで送ることと、希釈緩衝液を出力溶液に導入することにより、希釈緩衝液を出力溶液と混合して、第1の希釈出力溶液を作製することと、をさらに含んでよい。
【0023】
実施形態では、方法は、第2の希釈緩衝液を、第1の希釈出力溶液にポンプで送ることにより、最終の希釈出力溶液を形成することをさらに含んでよく、第1の希釈緩衝液をポンプで送ることと、第2の希釈緩衝液をポンプで送ることとの間には、遅延が存在する。
【0024】
実施形態では、遅延は約0.1~約30秒であり、遅延は、管材の長さにより生み出される。いくつかの実施形態では、遅延は存在しない。いくつかの実施形態では、遅延は、0.1~約5秒、または約5~約10秒、または約10~約15秒、または約15~約20秒、または約20秒~約30秒であり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0025】
実施形態では、第1の希釈緩衝液は、約5.5~約7.0のpHを有する緩衝剤と、及び任意選択的に、最大約100mMの塩化ナトリウム濃度を含む。例えば、第1の希釈緩衝液は、最大約20mMのトリス緩衝液、または40mM~90mMのリン酸緩衝液、または20mM~50mMのHEPES緩衝液、または45mMのpH6.5リン酸緩衝液を含んでよい。
【0026】
実施形態では、第1の希釈緩衝液は、最大約50mMの塩化ナトリウム濃度を任意選択的に含んでよい。
【0027】
実施形態では、第2の希釈緩衝液は、約7.4~8.0のpHを有する緩衝剤と、及び任意選択的に、最大約100mMの塩化ナトリウム濃度を含んでよい。
【0028】
実施形態では、第2の希釈緩衝液は、任意選択的に、最大約50mMの塩化ナトリウム濃度を含んでよい。
【0029】
実施形態では、第2の緩衝液は、最大約15%w/vのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、スクロースは、約12%w/v、または最大約10%、または最大約8%、または最大約5%、または最大約1%で存在する。いくつかの実施形態では、スクロースは存在しない。
【0030】
実施形態では、第2の緩衝液は、最大約0.5%w/vの酸化防止剤を含む。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は存在しない。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は最大約0.4%w/v、または約0.3%、または約0.2%、または約0.1%w/vで存在する。
【0031】
実施形態では、第2の緩衝液は、最大20mMのキレート剤を含む。
【0032】
実施形態では、第1の希釈出力溶液は、約1.0%~約10.0%のエタノールを含む。いくつかの実施形態では、第1の希釈約は、約2%~約8%のエタノール、または約3~約7%のエタノールを含み、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0033】
実施形態では、第1の希釈緩衝液は、約80mL/分~約900mL/分の流速でポンプで送られる。いくつかの実施形態では、流速は約80mL/分~約150mL/分、または約150~約200、または約200~約250、または約250~約300、または約300~約400、または約400~約500、または約500~約600、または約600~約700、または約700~約900mL/分であり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0034】
実施形態では、第2の希釈緩衝液は、約240mL/分~約5400mL/分の流速でポンプで送られる。いくつかの実施形態では、流速は約240~約500mL/分、または約500~約1000、または約1000~約1500、または約1500~約2000、または約2000~約2500、または約2500~約3000、または約3000~約3500、または約3500~約4000、または約4000~約4500、または約4500~約5000、または約5000~約5500mL/分であり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0035】
実施形態では、出力溶液は、約120mL/分~約300mL/分の範囲の総流速を有する。
【0036】
実施形態では、カチオン性脂質は式Iの構造を有する:
【化1】

または、薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物であり、式中、
及びRは各々独立して、直鎖または分枝C-C31アルキル、C-C31アルケニル、またはC-C31アルキニル、及びコレステリルからなる群から選択され、
及びLは各々独立して、直鎖C-C20アルキル及びC-C20アルケニルからなる群から選択され、
は、-C(O)O-または-OC(O)-であり、
は、-C(O)O-または-OC(O)-であり、
は、SまたはOであり、
は、存在しないかまたは低級アルキルであり、
は、直鎖または分枝C-Cアルキルであり、かつ
及びRは各々独立して、水素及び直鎖または分枝C-Cアルキルからなる群から選択される。
【0037】
実施形態では、脂質封入RNAナノ粒子は、約50nm~約120nmの範囲の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、平均粒径は、約60~約120nm、約70~約120nm、または、約70~90nmであり、これらの部分範囲、及びそれらの端数を含む。
【0038】
実施形態では、多分散度脂質封入RNAナノ粒子は、約0.2を超えない。
【0039】
実施形態では、脂質封入RNAナノ粒子の脂質部分は、ヘルパー脂質、コレステロール、及びPEG脂質複合体からなる群から選択される1種以上の薬剤をさらに含む。
【0040】
実施形態では、RNAは自己複製RNAである。
【0041】
実施形態では、方法は、最終希釈出力溶液を凍結乾燥させることをさらに含んでよい。
【0042】
上述の実施形態は任意の組み合わせで組み合わされ、例示的実施形態を示す。本明細書中以下において、及び、それに続く実施形態においてさらに、これらの実施形態がより完全に理解される。
【0043】
脂質ベース製剤
核酸を標的細胞に細胞内送達することをベースにする治療法は、細胞外及び細胞内障壁の両方に直面する。実際、裸の核酸材料は、その毒性、血清中での安定性の低さ、急速な腎クリアランス、標的細胞による取り込みの低下、食細胞の取り込み、及び、免疫応答を活性化する能力(臨床開発をできないようにする全ての要件)が原因で、容易に全身投与をすることができない。外来性核酸材料(例えば、mRNA)がヒトの生物学的系に入ると、細網内皮細胞系(RES)により外来病原体として認識され、血管系の中、または外で、標的細胞と出くわす機会を有する前に、血液循環からクリアランスされてしまう。血流中の、裸の核酸の半減期は、約数分であることが報告されている(Kawabata K,Takakura Y,Hashida MPharm Res.1995 Jun;12(6):825-30)。化学修飾及び適切な送達法により、RESによる取り込みを減少させ、ユビキタスヌクレアーゼによる分解から核酸を守ることができ、これにより、核酸ベースの治療法の安定性及び有効性が増加する。加えて、RNAまたはDNAは、細胞による取り込みが好ましくないアニオン性親水性ポリマーであり、これらは、表面でもアニオン性である。それ故、核酸ベースの治療法の成功は、遺伝物質を効率的かつ効果的に標的細胞に送達し、最小限の毒性で、インビボでの十分な発現レベルを得ることができる、ビヒクルまたはベクターの開発に大幅に左右される。
【0044】
さらに、標的細胞への内部化の際に、核酸送達ベクターは、細胞内バリアにより、エンドソームの閉じ込め、リソソーム分解、ベクターからの核酸取り出し、(DNAに対する)核メンブレンにまたがる転座、及び(RNAに対する)細胞質での放出を含む困難に面する。したがって、核酸ベースの治療法の成功は、ベクターが、核酸を細胞の内側の標的部位に送達し、遺伝子の発現といった、十分なレベルの所望の活性を入手する能力に左右される。
【0045】
いくつかの遺伝子治療法は、ウイルス性送達ベクター(例えば、AAV)を上手く利用することができているが、脂質ベース製剤は、その生体適合性、及び、大規模製造の容易さによって、RNA及び他の核酸化合物に対する、最も有望なデリバリーシステムの1つとしての認知が増加している。脂質ベース核酸治療法における、最も著しい進歩の1つは、パチシラン(ALN-TTR02)が、米国食品医薬品局(FDA)及び欧州委員会(EC)の両方により認可された、最初のsiRNA治療薬となった2018年8月に起こった。ALN-TTR02は、いわゆる、安定核酸脂質粒子(SNALP)トランスフェクト技術に基づくsiRNA製剤である。パチシランが成功したにもかかわらず、脂質製剤による、mRNAを含む核酸治療薬の送達は依然として、開発途上にある。
【0046】
様々な実施形態に従った、核酸治療薬に対する、当該技術分野において認識されている、いくつかの脂質製剤送達ビヒクルとしては、ポリマーベースキャリア、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、リピドイド含有製剤、脂質ナノ粒子及びリポソーム、ナノリソソーム、セラミド含有ナノリソソーム、多胞体リポソーム、プロテオリソソーム、天然及び合成送達エクソソームの両方、天然、合成、及び半合成ラメラ体、ナノ粒子、ミセル、ならびにエマルションが挙げられる。
【0047】
これらの脂質製剤は、その構造及び組成が変化し、急速に進化する分野で予想することができるように、いくつかの異なる用語が、1種類の送達ビヒクルを説明するために、当該技術分野において使用されている。同時に、脂質製剤という用語は、科学文献を通じて、頻繁に融合されており、この一貫していない使用により、脂質製剤のいくつかの用語の正確な意味の混乱が生じている。いくつかの可能性ある脂質製剤の中でも、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子が、本開示の目的のために、本明細書で特に詳細に説明され、定義されている。
【0048】
リポソーム
従来のリポソームは、少なくとも1つの二重層、及び、内部の水区画からなる小胞である。リポソームの二重層は通常、空間的に分離された親水性及び疎水性ドメインを含む、合成または天然由来の脂質といった、両親媒性分子により形成される(Lasic,Trends Biotechnol.,16:307-321,1998)。リポソームの二重層は、両親媒性ポリマー及び界面活性剤(例えば、ポリマーソーム、ニオソームなど)によってもまた形成することができる。これらは一般に、球状小胞として存在し、20nm~数ミクロンサイズの範囲であることができる。リポソーム製剤はコロイド状分散体として調製することができるか、または、凍結乾燥して安定性リスクを低下させる、及び、リポソームベース薬剤に対する貯蔵寿命を改善することができる。リポソーム組成物の調製方法は当技術分野において既知であり、当業者の範囲内である。
【0049】
1つの二重層のみを有するリポソームは、ユニラメラであると呼ばれ、2つ以上の二重層を有するリポソームは、マルチラメラと呼ばれる。最も一般的なタイプのリポソームは、小型ユニラメラベシクル(SUV)、大型ユニラメラベシクル(LUV)、及びマルチラメラベシクル(MLV)である。リポソームとは対照的に、リソソーム、ミセル、及び逆ミセルは、脂質の単一層で構成される。一般的に、リポソームは単一内部区画を有するものと考えられるが、製剤の中には、多胞体リポソーム(MVL)であることができるものもあり、これらは、共通の中心を持たないいくつかの脂質二重層により分離されている、多数の不連続な内部水性区画で構成される。
【0050】
リポソームは基本的に、生物膜の類似体であることを考慮すると、その優れた生体適合性により、リポソームは長く、薬物送達ビヒクルとして認知されており、天然及び合成リン脂質の両方から調製することができる(Int J Nanomedicine.2014;9:1833-1843)。薬物送達ビヒクルとしての使用において、リポソームコアに溶解した親水性溶質はすぐに二重層の疎水性膜を通過することができず、疎水性化合物は二重層と会合する。したがって、リポソームは疎水性及び/または親水性分子でロードすることができる。リポソームを使用して、RNAなどの核酸を運搬する場合、核酸を、水相中のリポソーム区画の中に含める。
【0051】
カチオン性リポソーム
リポソームはカチオン性、アニオン性、及び/または中性脂質で構成されることができる。リポソームの重要なサブクラスとして、カチオン性リポソームは、正に帯電した脂質から全体的に、もしくは部分的に作製されるリポソーム、または、より具体的には、カチオン性基及び親油性部分の両方を含む脂質である。リポソームに関して上で概略した一般的な特徴に加えて、カチオン性リポソームで使用される、カチオン性脂質の正に帯電した部分は、いくつかの利点、及び、いくつかの固有の構造的形質をもたらす。例えば、カチオン性脂質の親油性部分は疎水性であるが故に、リポソームの水性内部から、親油性部分そのものが離れ、他の無極性及び疎水性部分と会合する。逆に、カチオン性部分は水性媒体と会合し、より重要なことには、カチオン性リポソームの水性内部において複合体を形成可能な、極性分子及び種と会合する。これらの理由のために、カチオン性リポソームは、静電相互作用による、負に帯電した核酸への指向性により、遺伝子両方で使用するためにますます調査がされており、生体適合性、低毒性、及び、インビボ臨床用途で必要な大規模作製の可能性をもたらす複合体が得られる。カチオン性リポソームで使用するのに適当なカチオン性脂質を、本明細書で以下に列挙する。
【0052】
脂質ナノ粒子
リポソーム及びカチオン性リポソームとは対照的に、脂質ナノ粒子(LNP)は、固相に化合物を封入する、1つの単一層または二分子層の脂質を含む構造を有する。したがって、リポソームとは異なり、脂質ナノ粒子は、その内部に水相または他の液相を有しないが、二分子層または単一層シェル由来の脂質は直接、内部化合物と複合体化されることで、その中に固体コアを封入する。脂質ナノ粒子は通常、形状及びサイズが比較的均一な分散体を有する、球状小胞である。科学文献は、どのサイズがナノ粒子状物質として脂質粒子を認めるかによって変化するものの、脂質ナノ粒子は10nm~1000nmの範囲の直径を有することができるという点においてはある程度一致するものがある。しかし、より一般的には、120nm、またはさらに、100nm未満であると考えられる。
【0053】
脂質ナノ粒子核酸デリバリーシステムに関して、脂質シェルを製剤化して、核酸コアの負に帯電した主鎖と複合体化し、これと会合可能な、イオン化可能なカチオン性脂質を含めることができる。見かけのpKa値が約7を下回る、イオン化可能なカチオン性脂質は、カチオン性脂質の、核酸の負に帯電した主鎖との複合体化をもたらし、正に帯電した場合に、イオン化可能な脂質のpKaを下回るpH値にて、脂質ナノ粒子にロードするという利点を有する。次に、生理的pH値において、脂質ナノ粒子は、比較的中性の外側を採用して、静脈内投与後の、粒子の循環半減期の著しい増加を可能にする。核酸送達の文脈において、脂質ナノ粒子は、高い核酸の封入効率、強力なトランスフェクション、組織まで貫通して治療薬を送達することの改善、ならびに、低レベルの細胞毒性及び免疫原性を含む、他の脂質ベース核酸デリバリーシステムよりも多くの利点をもたらす。
【0054】
核酸用の脂質ナノ粒子デリバリーシステムの開発に先立ち、カチオン性脂質は、核酸薬剤を送達するための合成材料として、幅広く研究されていた。これらの初期の努力においては、生理的pHにて互いに混合した後、核酸をカチオン性脂質により縮合して、リポプレックスとして知られている脂質核酸複合体を形成した。しかし、リポプレックスは不安定であることが分かり、サブミクロンスケールから数ミクロンの範囲の広範なサイズ分布を特徴とした。Lipofectamine(登録商標)試薬などのリポプレックスは,インビトロトランスフェクションに合理的な実用性が見出されている。しかし、これらの第一世代リポプレックスは、インビボでは有用であることが証明されていない。大きな粒径及び正電荷(カチオン性脂質により付与される)は、急速な血漿クリアランス、溶血性及び他の毒性、加えて、免疫系の活性化をもたらす。
【0055】
脂質mRNA製剤
本明細書で開示するmRNA、またはその薬学的に許容される塩を、脂質製剤(即ち、脂質ベースの送達ビヒクル)に組み込むことができる。
【0056】
本開示の文脈では、脂質ベースの送達ビヒクルは通常、所望のmRNAを標的細胞または組織に送達する役割を果たす。脂質ベースの送達ビヒクルは、当該技術分野において既知の、任意の適当な脂質ベースの送達ビヒクルであることができる。いくつかの実施形態では、脂質ベースの送達ビヒクルは、リポソーム、カチオン性リポソーム、または、本開示のmRNAを含有する脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、脂質ベースの送達ビヒクルは、ナノ粒子、または脂質分子の二重層、及び、本開示のmRNAを含む。いくつかの実施形態では、脂質二重層は、中性脂質またはポリマーをさらに含むのが好ましい。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、液体媒質を含むのが好ましい。いくつかの実施形態では、製剤は、核酸をさらに封入するのが好ましい。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、核酸、及び中性脂質またはポリマーをさらに含むのが好ましい。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、核酸を封入するのが好ましい。
【0057】
本明細書は、脂質製剤に封入される、1つ以上の治療用mRNA分子を含む脂質製剤を提供する。いくつかの実施形態では、脂質製剤はリポソームを含む。いくつかの実施形態では、脂質製剤はカチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態では、脂質製剤は、脂質ナノ粒子を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、mRNAは、脂質製剤中のmRNAが、水溶液中でヌクレアーゼ分解に耐性を有するように、脂質製剤の脂質部分内に完全に封入されている。他の実施形態では、本明細書に記載する脂質製剤は、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に無毒である。
【0059】
本開示の脂質製剤は通常、約1:1~約100:1、約1:1~約50:1、約2:1~約45:1、約3:1~約40:1、約5:1~約38:1、または約6:1~約40:1、または約7:1~約35:1、または約8:1~約30:1;または約10:1~約25:1、または約8:1~約12:1;または約13:1~約17:1;または約18:1~約24:1;または約20:1~約30:1の、全脂質:RNA非(質量/質量比)を有する。いくつかの好ましい実施形態では、全脂質:RNA比(質量/質量比)は、約10:1~約25:1である。比率は、端点を含む、列挙した範囲内の任意の値または部分値であってよい。
【0060】
本開示の脂質製剤は通常、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、もしくは約150nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。直径は、端点を含む、列挙した範囲内の任意の値または部分値であってよい。加えて、核酸は、本開示の脂質ナノ粒子中に存在する場合、ヌクレアーゼによる分解に対して水溶液中で耐性である。
【0061】
好ましい実施形態では、脂質製剤は、mRNA、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載する1種以上のカチオン性脂質またはその塩)、リン脂質、及び、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、1種以上のPEG-脂質複合体)を含む。脂質製剤は、コレステロールもまた含むことができる。
【0062】
核酸脂質製剤中では、mRNAは、製剤の脂質部分に完全に封入されることができ、これにより、核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。好ましい実施形態では、mRNAを含む脂質製剤は、脂質製剤の脂質部分に完全に封入され、これにより核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。特定の場合において、脂質製剤中のmRNAは、37℃において、粒子をヌクレアーゼに曝露した後、少なくとも20、30、45、または60分間、実質的に分解しない。特定の他の場合において、脂質製剤中のmRNAは、37℃において、血清中で製剤をインキュベートした後、少なくとも30、45、もしくは60分間、または、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、もしくは36時間、実質的に分解しない。他の実施形態では、mRNAは、製剤の脂質部分と複合体化される。
【0063】
核酸の文脈において、完全封入は、膜不透過性蛍光色素排除アッセイを実施することによって決定され得、これは、核酸と会合したときに増強した蛍光を有する色素を使用する。封入は、色素を脂質製剤に添加し、得られた蛍光を測定し、それを少量の非イオン性洗剤の添加時に観察される蛍光と比較することによって決定される。脂質層の洗剤媒介性破壊は、封入された核酸を放出し、それが膜不透過性色素と相互作用することを可能にする。核酸封入は、E=(I-I)/Iとして計算することができ、式中、I及びIは、洗剤の添加前及び添加後の蛍光強度を指す。
【0064】
他の実施形態では、本開示は、複数の核酸-リポソーム、核酸-カチオン性リポソーム、または核酸-脂質ナノ粒子を含む、核酸-脂質組成物を提供する。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-リポソームを含む。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-カチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態では、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-脂質ナノ粒子を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、粒子の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、または少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%(もしくは任意のそれらの部分もしくはそれらの中の範囲)が、中にmRNAを封入するように、製剤の脂質部分に完全に封入されたmRNAを含む。量は、端点を含む、列挙した範囲内の任意の値または部分値であってよい。
【0066】
脂質製剤の使用目的に応じて、構成成分の割合は変化してよく、特定の製剤の送達効率は、当該技術分野において既知のアッセイを使用して測定することができる。
【0067】
いくつかの実施形態に従うと、本明細書に記載する、発現可能なポリヌクレオチド及びmRNAコンストラクトは、脂質製剤化されている。脂質製剤は、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子から選択されるのが好ましいが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、脂質製剤は、
(a)本開示のmRNA、
(b)カチオン性脂質、
(c)凝集低下剤(ポリエチレングリコール(PEG)脂質またはPEG修飾脂質)、
(d)場合により非カチオン性脂質(中性脂質など)、及び
(e)場合によりステロールを含むカチオン性リポソームまたは脂質ナノ粒子(LNP)である。
【0068】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質はイオン化可能なカチオン性脂質である。一実施形態では、脂質ナノ粒子製剤は、約20%~約40%のイオン化可能なカチオン性脂質:約25~約45%のヘルパー脂質:約25%~約45%のステロール;約0.5~5%のPEG脂質のモル比で、(i)少なくとも1種のカチオン性脂質;(ii)ヘルパー脂質;(iii)ステロール(例えば、コレステロール);及び(iv)PEG脂質からなる。例示的なカチオン性脂質(イオン化可能なカチオン性脂質を含む)、ヘルパー脂質(例えば、中性脂質)、ステロール、及び、リガンド含有脂質(例えば、PEG脂質)は、本明細書で以下に記載する。
【0069】
特定の脂質、及び、それらの相対的な組成物の割合の選択は、所望の治療効果、意図するインビボ送達標的、ならびに、計画される投与レジメン及び頻度を含むいくつかの因子に左右される。一般に、高い能力(即ち、ノックダウン活性または翻訳効率などの治療効果)、及び、迅速な組織クリアランスをもたらす生分解性に対応する脂質が最も好ましい。しかし、生分解性は、対象内で1または2回のみの投与が意図される製剤に対しては、さほど重要でない場合がある。さらに、脂質組成物は、インビボ投与中、及び、意図する標的への移動中に、脂質製剤がそのモルホロジーを保存しながらも、続いて、標的細胞への取り込み時に活性剤を放出可能となるように、注意深い改変が必要となり得る。したがって、最も可能性のある、脂質と活性成分のモル比、加えて、最も可能性のある、全脂質と活性成分の比率において、最も可能性のある脂質の組み合わせを発見するために、いくつかの製剤を通常、評価する必要がある。
【0070】
脂質ナノ粒子を製造するのに好適な脂質成分及び方法は当該技術分野において周知であり、例えば、PCT/US2020/023442、U.S.8,058,069、U.S.8,822,668、U.S.9,738,593、U.S.9,139,554、PCT/US2014/066242、PCT/US2015/030218、PCT/2017/015886、及びPCT/US2017/067756に記載されており、それらの内容全体が参照により組み込まれている。
【0071】
カチオン性脂質
脂質製剤は、カチオン性リポソームまたは脂質ナノ粒子を形成するのに適当なカチオン性脂質を含むのが好ましい。カチオン性脂質は、負に帯電した膜に結合して、取り込みを誘発することができるため、核酸送達用に広く研究されている。一般に、カチオン性脂質は、正の親水性頭部基、2つ(またはそれ以上)の親油性尾部、またはステロイド部分、及びこれらの2つのドメイン間の連結子を含有する両親媒性物質である。好ましくは、カチオン性脂質は、およそ生理学的pHで正味の正電荷を担持する。カチオン性リポソームは、伝統的には、オリゴヌクレオチドのための最も一般的に使用される非ウイルス送達系であり、例えば、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴ、及びsiRNA/小ヘアピンRNA-shRNAが挙げられる。カチオン性脂質、例えば、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びDOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルフェート)は、静電相互作用によって、負に帯電した核酸との複合体またはリポプレックスを形成し、高いインビトロトランスフェクション効率を提供することができる。
【0072】
本開示の脂質製剤では、カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド及び1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩としても知られる)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはそれらの類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン(MC4エーテル)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。他のカチオン性脂質としては、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(XTC)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、例えば、リポフェクチン(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMA及びDOPEを含む)、及びリポフェクトアミン(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPA及びDOPEを含む)などの、カチオン性脂質の市販の調製物を使用することができる。
【0073】
他の適当なカチオン性脂質は、国際公開第WO09/086558号、同第WO09/127060号、同第WO10/048536号、同第WO10/054406号、同第WO10/088537号、同第WO10/129709号、及び同第WO2011/153493号;米国特許公開第2011/0256175号、同第2012/0128760号、及び同第2012/0027803号;米国特許第8,158,601号;及びLove et al.,PNAS,107(5)、1864-69,2010に開示されており、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
他の適当なカチオン性脂質としては、代替脂肪酸基及び他のジアルキルアミノ基を有するもの、例えば、アルキル置換基が異なる(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-、及びN-プロピル-N-エチルアミノ-)ものが挙げられる。これらの脂質は、アミノ脂質と呼ばれるカチオン性脂質のサブカテゴリーの一部である。本明細書に記載の脂質製剤のいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。一般的に、飽和度の低いアシル鎖を有するアミノ脂質は、大きさを揃えやすい。とりわけ、濾過滅菌のために複合体を約0.3ミクロン以下の大きさとしなければならない場合には、特に大きさを揃えやすい。炭素鎖長がC14~C22である不飽和脂肪酸を含有しているアミノ脂質を使用し得る。他の足場を使用して、アミノ脂質のアミノ基と、脂肪酸または脂肪アルキルの部分とを分離し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、特許出願第PCT/EP2017/064066号による式Iのカチオン性脂質を含む。この文脈では、PCT/EP2017/064066の開示も参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示のアミノ脂質またはカチオン性脂質は、イオン化可能であり、プロトン化可能または脱プロトン化可能な基の少なくとも1つを有している。その結果、脂質は、生理学的pH(例えば、pH7.4)以下のpHにおいて正の電荷を有しており、第2のpH(好ましくは、生理学的pH以上)において中性である。もちろん、pHの機能としてのプロトンの添加または除去は、平衡プロセスであり、荷電脂質または中性脂質と言うときは、主要な種の性質を指しており、全ての脂質が、荷電形態または中性形態で存在することを必要としないことが理解される。プロトン化可能または脱プロトン化可能な基の2つ以上を有している脂質、または、両性イオンである脂質は、本開示における使用から除外されない。ある特定の実施形態では、プロトン化可能脂質は、約4~約11の範囲においてプロトン化可能基のpKaを有する。いくつかの実施形態では、イオン化可能カチオン性脂質は、約5~約7のpKaを有する。いくつかの実施形態では、イオン化可能カチオン性脂質のpKaは、約6~約7である。
【0077】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、式Iのイオン化可能なカチオン性脂質
【化2】

または、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、式中、R及びRは各々独立して、直鎖または分枝C-C31アルキル、C-C31アルケニル、またはC-C31アルキニル、及びコレステリルからなる群から選択され;L及びLは各々独立して、直鎖C-C20アルキル及びC-C20アルケニルからなる群から選択され;Xは-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成されるか、または、-OC(O)-であり、これにより-OC(O)-Rが形成され;Xは、-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成されるか、または、-OC(O)-であり、これにより-OC(O)-Rが形成され;Xは、SまたはOであり;Lは、存在しないかまたは低級アルキルであり;Rは、直鎖または分枝C-Cアルキルであり;R及びRは各々独立して、水素及び直鎖または分枝C-Cアルキルからなる群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、Xは、Sである。
【0079】
いくつかの実施形態では、Xは、-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成され、Xは、-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成される。
【0080】
いくつかの実施形態では、R及びRは各々独立して、メチル、エチル、及びイソプロピルからなる群から選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、L及びLは各々独立して、C-C10アルキルである。いくつかの実施形態では、Lは、C-Cアルキルであり、Lは、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Lは、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、L及びLは各々、直鎖Cアルキルである。いくつかの実施形態では、L及びLは各々、直鎖Cアルキルである。
【0082】
いくつかの実施形態では、R及びRは各々独立して、アルケニルである。いくつかの実施形態では、Rは、アルケニルである。いくつかの実施形態では、Rは、C-Cアルケニルである。いくつかの実施形態では、アルケニルは、単一の二重結合を含む。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、分枝アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々独立して、Cアルキル、Cアルケニル、及びCアルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R及びRは各々独立して、C11アルキル、C11アルケニル、及びC11アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R及びRは各々独立して、Cアルキル、Cアルケニル、及びCアルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、-CH((CHCHまたは-CH((CHCH)((CHp-1CH)[式中、pは4~8である。]である。いくつかの実施形態では、pは、5であり、Lは、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、pは、6であり、Lは、Cである。いくつかの実施形態では、pは、7である。いくつかの実施形態では、pは、8であり、LはC-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、-CH((CHCH)((CHp-1CH)[式中、pは7または8である。]である。
【0083】
いくつかの実施形態では、Rは、エチレンまたはプロピレンである。いくつかの実施形態では、Rは、n-プロピレンまたはイソブチレンである。
【0084】
いくつかの実施形態では、Lは、不在であり、Rは、エチレンであり、Xは、Sであり、R及びRは各々、メチルである。いくつかの実施形態では、Lは、不在であり、Rは、n-プロピレンであり、Xは、Sであり、R及びRは各々、メチルである。いくつかの実施形態では、Lは、不在であり、Rは、エチレンであり、Xは、Sであり、R及びRは各々、エチルである。
【0085】
いくつかの実施形態では、Xは、Sであり、Xは、-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成され、Xは、-C(O)O-であり、これにより-C(O)O-Rが形成され、L及びLは各々独立して、直鎖C-Cアルキルであり、Lは、不在であり、Rは、-CH((CHCHであり、Rは、C-C12アルケニルである。いくつかのさらなる実施形態では、pは、6であり、Rは、Cアルケニルである。
【0086】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、
【化3-1】

【化3-2】

【化3-3】

【化3-4】

【化3-5】

【化3-6】

【化3-7】

【化3-8】

からなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書で列挙する任意の1種以上の脂質を、明示的に除外することができる。
【0088】
ヘルパー脂質及びステロール
本開示のmRNA脂質製剤は、ヘルパー脂質を含むことができ、これは、中性脂質、中性ヘルパー脂質、非カチオン性脂質、非カチオン性ヘルパー脂質、アニオン性脂質、アニオン性ヘルパー脂質、または双性イオン脂質とも呼ぶことができる。脂質製剤、特にカチオン性リポソーム及び脂質ナノ粒子は、ヘルパー脂質が製剤中に存在する場合、細胞取り込みが増加することが発見されている。(Curr.Drug Metab.2014;15(9):882-92)。例えば、いくつかの研究では、カチオン性脂質よりも膜融合性である(即ち、融合を容易にする)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジ-オレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)などの、中性及び双性イオン脂質が、脂質-核酸複合体の多型の形質に影響を及ぼすことができ、ラメラの六方晶相への転移を促進し、故に、融合、及び細胞膜の破壊を誘発することが示されている。(Nanomedicine(Lond).2014 Jan;9(1):105-20)。加えて、ヘルパー脂質を使用することで、毒性及び免疫原性といった、多くの効果的なカチオン性脂質を用いることによる任意の潜在的な有害作用を減らすのに役立つことができる。
【0089】
本開示の脂質製剤に好適な非カチオン性脂質の非限定例としては、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチド酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びこれらの混合物などのリン脂質が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンのリン脂質も使用することができる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10-C24炭素鎖を有する脂肪酸、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレイルに由来するアシル基である。
【0090】
非カチオン性脂質のさらなる例としては、コレステロールなどのステロール、及びその誘導体が挙げられる。ある研究では、ヘルパー脂質として、コレステロールは、核酸と相互作用する脂質層の帯電の間隔を広げ、電荷分布が、核酸の電荷分布とより密接に一致するようにすると結論づけられている。(J.R.Soc.Interface.2012 Mar 7;9(68):548-561)。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、5α-コレスタノール、5α-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノールなどの極性類似体;5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5α-コレスタノン、及びコレステリルデカノエートなどの非極性類似体;ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテルなどの極性類似体である。
【0091】
いくつかの実施形態では、脂質製剤に存在するヘルパー脂質は、1種以上のリン脂質と、コレステロールまたはその誘導体との混合物を含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、脂質製剤に存在するヘルパー脂質は、1種以上のリン脂質と、コレステロールまたはその誘導体との混合物を含むか、またはこれからなる。さらに他の実施形態では、脂質製剤に存在するヘルパー脂質は、コレステロールまたはその誘導体、例えば、リン脂質非含有脂質製剤を含むか、またはこれからなる。
【0092】
ヘルパー脂質の他の例としては、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリル系ポリマー、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキル-アリール硫酸ポリエチルオキシ化脂肪酸アミド、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、セラミド、及びスフィンゴミエリンなどの脂質を含有する無リンが挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、脂質製剤に存在する全脂質の、約20mol%~約50mol%、約22mol%~約48mol%、約24mol%~約46mol%、約25mol%~約44mol%、約26mol%~約42mol%、約27mol%~約41mol%、約28mol%~約40mol%、または、約29mol%、約30mol%、約31mol%、約32mol%、約33mol%、約34mol%、約35mol%、約36mol%、約37mol%、約38mol%、もしくは約39mol%(またはこれらの任意の端数もしくはこれらの中の範囲)を占める。
【0094】
いくつかの実施形態では、製剤中のヘルパー脂質は、2種類以上のヘルパー脂質を含み、ヘルパー脂質の総量は、脂質製剤に存在する全脂質の、約20mol%~約50mol%、約22mol%~約48mol%、約24mol%~約46mol%、約25mol%~約44mol%、約26mol%~約42mol%、約27mol%~約41mol%、約28mol%~約40mol%、または、約29mol%、約30mol%、約31mol%、約32mol%、約33mol%、約34mol%、約35mol%、約36mol%、約37mol%、約38mol%、もしくは約39mol%(またはこれらの任意の端数もしくはこれらの中の範囲)を占める。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、DSPCとDOTAPの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、DSPCとDOTMAの組み合わせである。
【0095】
脂質製剤中のコレステロールまたはコレステロール誘導体は、脂質製剤に存在する全脂質の、最大約40mol%、約45mol%、約50mol%、約55mol%、または約60mol%を占め得る。いくつかの実施形態では、コレステロールまたはコレステロール誘導体は、脂質製剤に存在する全脂質の、約15mol%~約45mol%、約20mol%~約40mol%、約30mol%~約40mol%、または約35mol%、約36mol%、約37mol、約38mol、約39mol、または約40molを占める。
【0096】
脂質製剤中に存在するヘルパー脂質の割合は目標量であり、製剤中に存在するヘルパー脂質の実際の量は、例えば、±5mol%変化し得る。
【0097】
カチオン性脂質化合物またはイオン化可能なカチオン性脂質化合物を含有する脂質製剤は、モル基準で、約20~40%のカチオン性脂質化合物、約25~40%のコレステロール、約25~50%のヘルパー脂質、及び、約0.5~5%のポリエチレングリコール(PEG)脂質であり得、割合は、製剤中に存在する全脂質に対するものである。いくつかの実施形態では、組成物は、約22~30%のカチオン性脂質化合物、約30~40%のコレステロール、約30~40%のヘルパー脂質、及び、約0.5~3%のPEG脂質で構成され、割合は、製剤中に存在する全脂質に対するものである。
【0098】
脂質複合体
本明細書に記載する脂質製剤は、脂質複合体をさらに含むことができる。複合脂質は、粒子の凝集を防ぐのに有用である。好適な複合脂質としては、PEG-脂質複合体、カチオン性ポリマー-脂質複合体、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、脂質送達ビヒクルを、リガンド(例えば、抗体、ペプチド、及び炭水化物)を、その表面、または、結合したPEG鎖の末端に結合させることによる特異的標的化に使用することができる(Front Pharmacol.2015 Dec 1;6:286)。
【0099】
好ましい実施形態では、脂質複合体はPEG脂質である。PEG化と呼ばれる技術である、コーティングまたは表面リガンドとして、脂質製剤にポリエチレングリコール(PEG)を含めることにより、ナノ粒子を免疫系から保護し、RESの取り込みから逃れるのに役立つ(Nanomedicine(Lond).2011 Jun;6(4):715-28)。PEG化は、脂質製剤及びそのペイロードを、物理的、化学的、及び生物学的メカニズムにより安定化させるために、幅広く使用されている。洗剤のようなPEG脂質(例えば、PEG-DSPE)は、脂質製剤の中に入って、表面に水和層及び立体バリアを形成することができる。PEG化の程度に基づき、表面層は一般に、2つの種類、即ち、ブラシ様の層と、マッシュルーム様の層に分けることができる。PEG-DSPE安定化製剤に関して、PEGは、低度のPEG化(通常、5mol%未満)で、マッシュルームコンフォメーションを取り、PEG-DSPEの含有量が、一定レベルを超えて増加するにつれ、ブラシコンフォメーションに移る(J.Nanomaterials.2011;2011:12)。PEG化の増加により、脂質製剤の循環半減期の著しい増加がもたらされることが示されている(Annu.Rev.Biomed.Eng.2011 Aug 15;13():507-30;J.Control Release.2010 Aug 3;145(3):178-81)。
【0100】
PEG脂質の適当な例としては、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミンなどリン脂質に結合したPEG(PEG-PE)、セラミドに複合されたPEG、コレステロールに複合されたPEG、またはその誘導体、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンPEG反復単位の直鎖水溶性ポリマーである。PEGは、それらの分子量によって分類され、以下を含む:モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシネート(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルスクシネート(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、モノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)、ならびに末端メトキシ基の代わりに末端ヒドロキシル基を含有する化合物(例えば、HO-PEG-S、HO-PEG-S-NHS、HO-PEG-NH)。
【0102】
本明細書に記載するPEG-脂質複合体のPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含んでよい。特定の場合には、PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン)の平均分子量を有する。好ましい実施形態では、PEG部分は約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。平均分子量は、端点を含む、列挙した範囲内の任意の値または部分値であってよい。
【0103】
特定の場合には、PEGモノマーは、所望により、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基によって置換され得る。PEGは、脂質に直接複合され得るか、またはリンカー部分を介して脂質に連結され得る。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEGを脂質に結合するのに好適な任意のリンカー部分を使用することができる。好ましい実施形態では、リンカー部分は、非エステル含有リンカー部分である。好適な非エステル含有リンカー部分としては、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCHCHC(O)-)、スクシンアミジル(-NHC(O)CHCHC(O)NH-)、エーテル、ならびにこれらの組み合わせ(カルバメートリンカー部分及びアミドリンカー部分の両方を含有するリンカーなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カルバメートリンカーを使用してPEGを脂質に結合する。
【0104】
他の実施形態では、エステル含有リンカー部分は、PEGを脂質に結合するために使用される。好適なエステル含有リンカー部分としては、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、スクシノイル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
様々な鎖長及び飽和度の様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGに複合させて、脂質複合体を形成することができる。そのようなホスファチジルエタノールアミンは市販されているか、または当業者に既知の従来の技術を使用して単離または合成することができる。C10~C20の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノ-またはジ-不飽和脂肪酸を有するホスファチジルエタノールアミン、ならびに飽和及び不飽和脂肪酸の混合物も使用することができる。好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、及びジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態では、PEG-DAA複合体は、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)複合体、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)複合体、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)複合体、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)複合体、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)複合体である。これらの実施形態では、PEGは、好ましくは、約750~約2,000ダルトンの平均分子量を有する。特定の実施形態では、PEGの末端ヒドロキシル基は、メチル基で置換される。
【0107】
前述に加えて、PEGの代わりに他の親水性ポリマーを使用することができる。PEGの代わりに使用することができる好適なポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド及びポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態では、脂質複合体(例えば、PEG脂質)は、脂質製剤に存在する全脂質の、約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約0.9mol%~約1.6mol%、約0.9mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.7mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、または約1.4mol%~約1.6mol%(またはこれらの任意の端数もしくはこれらの中の範囲)を占める。他の実施形態では、脂質複合体(例えば、PEG脂質)は、脂質製剤に存在する全脂質の、約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、または5%(またはこれらの任意の端数もしくはこれらの中の範囲)を占める。量は、端点を含む、列挙した範囲内の任意の値または部分値であってよい。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態では、PEG脂質はPEG550-PEである。いくつかの好ましい実施形態では、PEG脂質はPEG750-PEである。いくつかの好ましい実施形態では、PEG脂質はPEG2000-DMGである。
【0110】
本開示の脂質製剤中に存在する脂質複合体(例えば、PEG脂質)の割合は目標量であり、製剤中に存在する脂質複合体の実際の量は、例えば±0.5mol%変化してよい。用いる脂質複合体に応じ、かつ脂質製剤が膜融合性に変化する速度に応じて、脂質複合体の濃度は変化し得ることを当業者は理解するであろう。
【0111】
脂質製剤の細胞取り込みの作用機序
核酸、特にリポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子の細胞内送達のための脂質製剤は、標的細胞のエンドサイトーシスメカニズムを利用する標的細胞の浸透による細胞取り込みのために設計され、一定量の脂質送達ビヒクルが、標的細胞の細胞質基質に送達される。(Nucleic Acid Therapeutics,28(3):146-157,2018)。具体的には、本明細書に記載する肝細胞を標的にするmRNA脂質製剤の場合、mRNA脂質製剤は、受容体が媒介するエンドサイトーシスにより、肝細胞に入り込む。エンドサイトーシスの前に、脂質送達ビヒクルの表面において、PEG脂質などの官能性リガンドが表面から脱落し、これにより、標的細胞への内部化が引き起こされる。エンドサイトーシスの間に、細胞の原形質膜のいくつかの部分がベクターを取り囲み、ベクターを小胞内に取り込み、その後、細胞膜から取り出され、細胞質基質に入り、最終的に、エンドリソソーム経路を通過する。イオン化可能なカチオン性脂質を含有する送達ビヒクルに関して、エンドソームが進むにつれて酸性度が増加することにより、表面に強力な正電荷を有するビヒクルが得られる。次に、送達ビヒクルとエンドソーム膜との相互作用により、ペイロードのサイトゾル送達をもたらす、膜機能事象がもたらされる。mRNAペイロードに関して、細胞自身の内部翻訳プロセスが次いで、mRNAを、コードされたタンパク質に翻訳する。コードされたタンパク質は次に、細胞内での標的化細胞器官または位置への運搬を含む、翻訳後処理をさらに受けることができる。
【0112】
脂質複合体の組成及び濃度を制御することで、脂質複合体が脂質製剤から交換される速度、及び、結果的に、脂質製剤が膜融合性となる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、またはイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質製剤が膜融合性となる速度を変化させる、及び/または制御することができる。脂質製剤が膜融合性となる速度を制御することができる他の方法は、本開示を読むことで当業者に明らかとなろう。また、脂質複合体の組成及び濃度を制御することで、リポソームまたは脂質粒径を制御することができる。
【0113】
脂質製剤の製造
核酸を含む脂質製剤の、多くの異なる調製方法が存在する。(Curr.DrugMetabol.2014,15,882-892;Chem.Phys.Lipids2014,177,8-18;Int.J.Pharm.Stud.Res.2012,3,14-20)。薄膜水和、二重エマルション、逆相蒸発、マイクロ流体調製、二重非対称遠心分離、エタノール注入、洗剤透析、エタノール希釈による自発的小胞形成、及び、予形成されたリポソームへの封入の技術を、本明細書で簡潔に記載する。
【0114】
薄膜水和
薄膜水和(TFH)またはBangham法では、脂質を有機溶媒に溶解した後、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させ、薄い脂質層を形成する。ロードされる化合物を含有する水性緩衝液溶液による層水和の後、マルチラメラベシクル(MLV)が形成され、膜を通す押出成形、または、開始MLVの超音波処理により、サイズを小さくして、小型または大型ユニラメラベシクル(LUV及びSUV)を作製することができる。
【0115】
二重エマルション
二重エマルション技術によってもまた脂質製剤を形成可能であり、これには、水/有機溶媒混合物中での、脂質の溶解が伴う。水滴を含有する有機溶液を過剰の水性媒体と混合して、水中油中水型(W/O/W)二重エマルションが形成される。激しい機械的振盪の後、水滴の一部が崩壊し、大型ユニラメラベシクル(LUV)が得られる。
【0116】
逆相蒸発
逆相蒸発(REV)法によってもまた、核酸と共にロードされるLUVの実現が可能となる。本技術では、リン脂質を、有機溶媒及び水性緩衝液に溶解することで、2相系を形成する。次に、得られた懸濁液を、混合物が透明な1相分散体となるまで、簡便に超音波処理する。減圧下にて有機溶媒を蒸発させた後で、脂質製剤が得られる。本方法は、核酸を含む異なる大型及び小型親水性分子を封入するために使用されている。
【0117】
マイクロ流体の調製
他のバルク技術とは異なり、マイクロ流体法は、脂質水和プロセス制御の可能性をもたらす。本方法は、流れを操作する方法に従って、連続流マイクロ流体型及び液滴ベースマイクロ流体型に分類することができる。連続流モードで操作を行う、マイクロ流体流体力学フォーカス(MHF)法では、脂質はイソプロピルアルコールに溶解され、本方法では、2つの水性緩衝液の流れのマイクロチャネル交差接合部に、流体力学的に焦点を当てる。小胞サイズは流速を制御することで、故に、脂質溶液/緩衝液希釈プロセスを制御することで制御することができる。3つの入口と、1つの出口とで構成されるマイクロ流体デバイスを使用することにより、オリゴヌクレオチド(ON)脂質製剤の作製方法を使用することができる。
【0118】
二重非対称遠心分離
二重非対称遠心分離(DAC)は、自身の縦軸を中心にしたさらなる回転を利用するため、より一般的な遠心分離とは異なる。効率的な均質化が、2つの重なり合った移動が生み出されることで実現される。試料は、通常の遠心分離器と同じように外に押し出された後、さらなる回転により、バイアルの中心に向かって押される。脂質とNaCl溶液を混合することで、粘稠な小胞リン脂質ゲル(VPC)が得られ、これを次に希釈して、脂質製剤分散体を得る。脂質製剤のサイズは、DACの速度、脂質濃度、及び均質化時間を最適化することにより制御することができる。
【0119】
エタノール注入
エタノール注入(EI)法は、核酸封入に使用することができる。本方法は、エタノール性溶液の急速な注入をもたらし、脂質を、封入される核酸を含有する水性媒体に、針を使用することで溶解させる。小胞は、リン脂質が媒体全体に分散したときに、自然発生的に形成される。
【0120】
洗剤透析
洗剤透析法を使用して、核酸を封入することができる。簡潔に述べると、脂質及びプラスミドを、適切なイオン強度の洗剤溶液に溶解し、透析により洗剤を取り除いた後で、安定した脂質製剤が形成される。次に、封入されていない核酸をイオン交換クロマトグラフィーにより取り除き、空の小胞をスクロース密度勾配遠心分離により取り除く。本技術は、カチオン性脂質の含有量、及び、透析緩衝液の塩濃度に非常に感度が高く、本方法はまた、規模を大きくするのも困難である。
【0121】
エタノール希釈による自発的小胞形成
安定した脂質製剤は、段階的な、または滴下によるエタノール希釈が、エタノールに溶解した脂質を、核酸を含有する急速混合水性緩衝液に、制御しながら添加することにより、核酸がロードされた小胞の瞬間的な形成をもたらす、エタノール希釈法による自発的な小胞形成によってもまた作製することができる。
【0122】
予形成されたリポソームへの封入
核酸の閉じ込めは、2つの異なる方法:(1)カチオン性リポソームを核酸と単純に混合して、「リポプレックス」と呼ばれる静電複合体を得ること(これらを上手く使用することで、細胞培養物をトランスフェクトすることができるが、低い封入効率及びインビボでの不十分な性能を特徴とする)、ならびに、(2)最大40%の濃度まで、カチオン性小胞の懸濁液に無水エタノールをゆっくり添加した後、核酸を滴加して、ロードされた小胞を実現する、リポソーム脱安定化(しかし、封入プロセスを特徴とする、2つの主たるステップは感度が高すぎて、粒子のサイズが低下してしまう)により、予形成されたリポソームから始めることでもまた行うことができる。
【0123】
脂質封入RNAナノ粒子の形成
図1は、本明細書に記載する、一般的な脂質封入RNAナノ粒子の製造方法の例示的なフローチャートの一例を示す。
【0124】
混合層の形状は、本明細書に記載する内径を有する、水溶液を輸送するための第1の管と、本明細書に記載するIDからなる、エタノール(有機)溶液を輸送するための第2の管と、からなり、本明細書に記載するミクシニブモジュールを使用する場合、第2の(有機)管は、垂直の角度、またはほぼ垂直の角度で、第1の(水)管と交差する。
【0125】
本明細書に記載する方法は、例えば、グッドマニュファクチャリングプラクティス(GMP)の下で作製され、緩衝液、例えばシトレートを含む水溶液中で可溶化された、治療用大型RNAを含むRNA水溶液を提供する。本発明の方法は、脂質を水混和性有機溶媒に可溶化させることで作製される、1種以上の脂質、例えば、GMPの下で合成された臨床グレードの脂質を含む有機溶液もまた提供する。本明細書に記載する方法において、水混和性有機溶媒は、好ましくは、低級アルカノール、例えばエタノールである。好ましくは、両溶液は滅菌濾過され、それらの濃度が調節される。
【0126】
有機脂質溶液を、核酸を含む水溶液と混合し、ラメラモルホロジーを有する、例えば、脂質二重層を含む脂質封入RNAナノ粒子を形成する。一態様では、核酸は、ラメラ構造が形成された脂質封入RNAナノ粒子に封入される。
【0127】
本明細書に記載する方法は、脂質溶液を、混合環境内で水溶液に、好ましくは、混合モジュール内で垂直に導入することに関する。混合することにより、脂質溶液を水溶液で、10%~75%v/vエタノール、12%~70%v/vエタノール、14~65%v/vエタノール、16%~60v/vエタノール、18%~50%v/vエタノール、20%~45%v/vエタノール、または22%~30%v/vエタノールまで希釈し、乱流内で脂質封入RNAナノ粒子の形成を引き起こす。
【0128】
脂質封入RNAナノ粒子の形成後に、混合物を緩衝液により連続して、約1~約10%v/vエタノール、または、7.5%、10%、または15%、好ましくは12.5%未満エタノールまで希釈し、これにより、脂質封入RNAナノ粒子がさらに安定し、核酸の封入が増加する。
【0129】
脂質封入RNAナノ粒子は、タンジェンシャルフローフィルトレーションにより、好ましくは、中空繊維フィルターにより濃縮される。濃縮された脂質封入RNAナノ粒子は、限外濾過工程に供され、アルカノールを除去し、緩衝液を交換する。核酸濃縮は希釈により調節される。得られた配合物を滅菌濾過し、バイアル瓶に充填する。本プロセスはここで、図1で説明する工程を使用して、本明細書中以下においてより詳細に論じられる。
【0130】
脂質の可溶化及びRNAの溶解
一実施形態では、本明細書に記載する方法により作製される脂質封入RNAナノ粒子は、RNA及び脂質の多分子集合体の形態であり、RNAは、カチオン性脂質とのイオン対形成により、少なくとも部分的に封入されている。
【0131】
ある種の態様では、本明細書で説明する脂質ナノ粒子は、4種類の脂質成分:ヘルパー脂質;コレステロール;PEG脂質;及びカチオン性脂質を含む。好ましくは、ヘルパー脂質はDSPCであり、PEG脂質はPEG-DMGであり、カチオン性脂質はイオン化可能なカチオン性脂質である。特定の実施形態では、脂質が可溶化する有機溶媒濃度は、約45%v/v~約90%v/vである。特定の好ましい態様では、有機溶媒は低級アルカノールである。好適な低級アルカノールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、これらの異性体類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶媒は好ましくは、約50~90%v/vの濃度を有するエタノールである。脂質は、約1mL/g~約5mL/gの体積、またはそうでない場合、以下の実施例に記載する体積を占め得る。
【0132】
脂質は、好適な温度で、例えばオーバーヘッド撹拌機を使用して可溶化される。特定の好ましい態様では、RNAは水溶液(例えば、緩衝液)に含まれ、終濃度まで希釈される。
【0133】
脂質封入RNAナノ粒子の形成工程
有機溶液及び水溶液の調製後、これらを、以下に詳述する装置を使用して、互いに混合することができる。簡潔に述べると、装置は、RNA水溶液を輸送するための第1の管と、有機脂質溶液を輸送するために第2の管と、からなり、第2の管は、第1の管と、混合モジュール内で垂直に交差する。2つの溶液は、個別のHPLCポンプにより、対応する管を通ってポンプで送られ、混合モジュール内で垂直の、第1の管の領域で混合される。RNA水溶液は、有機脂質溶液の0.2~1倍の速度でポンプで送られる。混合領域で2つの溶液を混合すると、脂質封入RNAナノ粒子が形成される。
【0134】
混合モジュールの領域内の、第1の管のポンプ速度及びサイズが、乱流を伴う混合プロセスをもたらす。流体力学においては、撹流または乱流とは、圧力及び流速の無秩序な変化を特徴とする、流体の動きである。これは、並行した層において流体が流れる際に生じる、これらの層間で妨害が存在しない層流とは対照的である。乱流は常に、非常に不規則であり、乱流において、速やかに利用可能なエネルギーが供給されると、流体混合物の均質化(混合)が加速する傾向にある。流れの中での、混合の向上、ならびに、塊、モーメント、及びエネルギー移動の速度増加を担う特徴は、「拡散係数」と呼ばれる。乱流の他の特徴としては、乱流が、渦伸長として知られている、強力な3次元の渦生成メカニズムを有する「旋回性」、及び、運動エネルギーが粘稠な剪断応力により内部エネルギーに変換されるときに、撹流が速やかに散逸する「散逸」が挙げられる。乱流混合は、流体内で、区域をより近い、または遠い関係にもたらし、これらをより微細に分割及び混合し得る、当該区域の小規模(親流れと比較して)でランダムな移動により決定される。脂質溶液及び水溶液を混合するための、本明細書に記載するプロセスは、95%を超える封入効率で、脂質ナノ粒子の形成と同時に形成される、脂質ナノ粒子へのRNAの封入をもたらす。
【0135】
本明細書に記載する連続プロセスは、完全に拡張性がある。一態様では、膜押出成形、音波処理、または顕微溶液化などの、機械エネルギープロセスを伴わずに、約90nm未満の中央直径を有する脂質封入RNAナノ粒子が形成される。
【0136】
脂質封入RNAナノ粒子
本明細書で開示する脂質封入RNAナノ粒子は、ナノ粒子、または脂質分子の二重層を含む。カチオン性脂質(例えば、イオン化可能なカチオン性脂質)に加えて、脂質封入RNAナノ粒子は、中性脂質またはポリマーを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、RNAは、脂質封入RNAナノ粒子内のRNAが、水溶液中でヌクレアーゼ分解に耐性を有するように、脂質ナノ粒子の脂質部分に完全に封入される。他の実施形態では、本明細書に記載される脂質封入RNAナノ粒子は、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に無毒である。脂質封入RNAナノ粒子は通常、30nm~150nm、40nm~150nm、50nm~150nm、60nm~130nm、70nm~110nm、または70~90nmの中央直径を有する。本明細書に記載する脂質封入RNAナノ粒子は通常、1:1~100:1、1:1~50:1、5:1~45:1、10:1~40:1、12:1~38:1、または15:1~45:1、または25:1~40:1、または30:1~40:1の、脂質:RNA比(質量/質量比)もまた有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約50:1~10:1の、全脂質:RNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約40:1~20:1の、全脂質:RNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約45:1~30:1の、全脂質:RNA重量比を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約38:1~30:1の、全脂質:RNA重量比を有する。
【0138】
好ましい実施形態では、脂質粒子は、RNA、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載する1種以上のカチオン性脂質またはその塩)、リン脂質、及び、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、1種以上のPEG-脂質複合体)を含む。脂質封入RNAナノ粒子は、コレステロールもまた含むことができる。脂質封入RNAナノ粒子は、1種以上のポリペプチドを発現する、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種類、またはそれ以上の異なるRNAを含むことができる。
【0139】
脂質封入RNAナノ粒子中では、RNAは、粒子の脂質部分に完全に封入されることができ、これにより、RNAをヌクレアーゼ分解から保護される。好ましい実施形態では、脂質封入RNAナノ粒子は、粒子の脂質部分に完全に封入されるRNAを含み、これにより、RNAがヌクレアーゼ分解から保護される。特定の場合には、脂質粒子内のRNAは、少なくとも20、30、45、または60分間、37℃でヌクレアーゼに粒子を曝露させた後で、実質的に分解されない。特定の他の場合において、脂質粒子中のRNAは、37℃において、血清中で粒子をインキュベートした後、少なくとも30、45、もしくは60分間、または、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、もしくは36時間、実質的に分解しない。他の実施形態では、RNAは、脂質封入RNAナノ粒子のカチオン性脂質と複合体化される。本開示の製剤の利点の1つは、脂質封入RNAナノ粒子が、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に無毒であるということである。
【0140】
脂質粒子は、粒子の、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、90%~100%、30%~95%、40%~95%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、85%~95%、90%~95%、30%~90%、40%~90%、50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%、または少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(またはこれらの任意の端数もしくはこれらの中の範囲)が、その中に封入されたRNAを有するように、粒子の脂質部分に完全に封入されたRNAを含む。
【0141】
脂質封入RNAナノ粒子の使用目的に応じて、構成成分の割合は変化してよく、特定の製剤の送達効率は、当該技術分野において既知のアッセイを使用して測定することができる。
【0142】
脂質封入RNAナノ粒子の希釈
有機脂質溶液をRNA水溶液に混合した後、遊離RNAを除去する前に、脂質封入RNAナノ粒子の懸濁液をさらに希釈する場合、RNA封入の度合いを向上させることができる。これは、1種以上の緩衝液希釈により、例えば、出力ラインに流れる1つ以上のYコネクターを介して行うことができる。1つ以上のYコネクターに流れる緩衝剤は、同じである必要はない。
【0143】
次に、希釈した脂質封入RNAナノ粒子を任意に、15~20℃に維持した容器で収集し、さらなる希釈工程または濃縮工程の前に、数分~2時間、インキュベートさせることができる。
【0144】
試料濃縮
希釈した脂質封入RNAナノ粒子は、例えば、中空繊維膜(mPES Kros membranes,Spectrum Laboratories,Inc.,Rancho Dominguez,California)を用いるタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)により、任意選択的に、(磁気浮上の原理に基づく)蠕動ポンプまたは4ピストンダイアフラムポンプまたは遠心ポンプにより、濃縮することができる。このような濃縮技術のための方法は、当該技術分野において既知であり、当業者には速やかに明らかとなろう。
【0145】
遊離RNAの除去、及び緩衝液の交換
7~10体積の10mMのトリス、50mMのNaCl、9%スクロース(pH7.5)に対するダイアフィルトレーションに続けて濃縮を行い、有機溶媒及び未結合のRNAを除去することができる。好ましくは、ダイアフィルトレーション緩衝液を、生成物の温度を15~20℃に維持するように、熱交換器を通して添加する。製剤をさらに濃縮して、3mg/mLを超える、総製剤化RNA濃度を標的にすることができる。
【0146】
滅菌濾過及び充填
次に、脂質封入RNAナノ粒子の製剤中でのRNA濃度を、IPRP-HPLC(Ion Pair Reverse Phase-High Performance Liquid Chromatography)により測定し、任意に、製剤中のグリセロールの終濃度が5%となるようにグリセロールを含有する、後述する緩衝液により希釈することにより約2mg/mL(1.85~2.3mg/mL)に調節することができる。ダイアフィルトレーションした脂質封入RNAナノ粒子を、0.2μmの滅菌グレードフィルター(PES)を通して滅菌濾過する。濾過した製剤を次に、ガラス瓶に無菌で充填し、栓を閉めて蓋をし、-20、または-70±5℃で配置した。
【0147】
装置
本明細書の説明は、上述したプロセスを実施するための装置を提供する。図2は、本明細書の記載の一実施形態に従った装置の、例示的な概略図の一例を示す。
【0148】
RNAを含む水溶液は、管材を通ってHPLCポンプにより輸送される。脂質を含む有機溶液は、個別の管材を通ってHPLCポンプにより輸送される。有機溶液は、混合モジュール内で90度の角度で、水溶液にポンプで入れられる。脂質を含む有機溶液は、水溶液の流れに対して垂直な流れで、水溶液に導入される。正しい角度の流れ方向での、この導入は図3に示すもののような混合モジュールで生じ、RNAの脂質ナノ粒子封入が、粒径、分散体、及びカプセル化効率に関して許容される様式で形成されるように注意深く調節された条件下で、乱流混合をもたらす。次に、混合脂質-RNAを含有する管材は、例えば、希釈領域で希釈緩衝液と45度の角度で合流するポリプロピレン管材により、脂質封入RNAナノ粒子を第2の混合領域に輸送し、希釈された脂質封入RNAナノ粒子は、15~20℃で維持されるステンレス鋼被覆容器内で収集される。粒子は、例えば、隔壁または遠心ポンプを用いて、タンジェンシャルフローフィルトレーションによりさらに処理される。
【0149】
一実施形態では、混合領域は、有機脂質溶液が、好ましくは約90°の角度でRNA水溶液の流れに送達される、混合モジュールである。RNA水溶液を輸送する第1のステンレス鋼管は、その両端の間の壁中間部に穴を有する。第2の管は、液体の、第2の管からの、第1の管の内部への輸送を可能にする、第1の管の壁の中の穴を通る充填物により、垂直に固定される(図3を参照されたい)。好ましい態様では、剪断力を減らし、大型RNAの一体性を保持可能にする、RNA水溶液の流速を使用して、脂質封入RNAナノ粒子の十分に画定された形状及び再現可能なサイズが調製される。十分に画定された形状、及び再現可能なサイズを有する小胞は、流体ラインの流速を変更して、例えば、場合によっては十分な混合を確実にすることによってもまた調製される。
【0150】
図3は、一実施形態に従った、混合モジュール及び関連する流れ力学を示す。
【0151】
本明細書の説明は、中空繊維膜(mPES Kros membranes,Spectrum Laboratories,Inc.,Rancho Dominguez,California)、及び4ピストンダイアフラムポンプまたは遠心ポンプを有する装置を提供する。
【0152】
定義
用語「アニオン性脂質」とは、生理的pHにて負に帯電した脂質を意味する。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質と結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
用語「カチオン性脂質」とは、正の親水性先端基;1、2、3個、またはそれ以上の疎水性脂肪酸または脂肪族アルキル鎖;及び、これらの2つのドメイン間に接続子を有する両親媒性脂質及びその塩を意味する。イオン化可能な、またはプロトン化可能なカチオン性脂質は通常、そのpKを下回るpHでプロトン化され(即ち、正電荷を帯び)、pKを上回るpHでは実質的に中性である。好ましいイオン化可能なカチオン性脂質は、通常は約7.4である生理的pHを下回るpKaを有するものである。本開示のカチオン性脂質はまた、滴定可能なカチオン性脂質と称される場合もある。カチオン性脂質は、プロトン化可能な3級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭基を有する「アミノ脂質」であることができる。いくつかのアミノ例示的なアミノ脂質は、C18アルキル鎖を含むことが可能であり、各アルキル鎖は独立して、0~3(例えば、0、1、2、または3)個の二重結合;及び、先端基とアルキル鎖との間に、エーテル、エステル、またはケタール結合を有する。そのようなカチオン性脂質としては、DSDMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、γ-DLenDMA、DLin-K-DMA、DLin-K-C2-DMA(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られている)、DLin-K-C3-DM A、DLin-K-C4-DMA、DLen-C2K-DMA、y-DLen-C2K-DMA、DLin-M-C2-DMA(MC2としても知られている)、DLin-M-C3-DMA(MC3としても知られている)、ならびに、(DLin-MP-DMA)(1-Bl 1としても知られている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
用語「相補性ヌクレオチド塩基」とは、互いに水素結合を形成する、一対のヌクレオチド塩基を意味する。アデニン(A)はチミン(T)と、RNAではウラシル(U)と対形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と対形成する。核酸の相補性セグメントまたは相補鎖は、互いにハイブリダイズする(即ち、水素結合により結合する)。「相補性」とは、核酸が、従来のワトソン・クリック、または、他の非従来的な結合様式のいずれかにより、別の核酸配列と水素結合(複数可)を形成することができることを意味する。
【0155】
用語「完全に封入されている」とは、遊離RNAを著しく分解する血清またはヌクレアーゼアッセイに曝露した後、核酸-脂質粒子内の核酸(例えば、mRNA)が著しく分解されないことを意味する。完全に封入された場合、通常は遊離核酸の100%を分解する処理において、粒子内の核酸の好ましくは25%未満が分解され、より好ましくは粒子内の核酸の10%未満、及び最も好ましくは5%未満が分解される。「完全に封入された」とは、核酸-脂質粒子が、インビボ投与の際に、その構成成分部分に速やかに分解しないことも意味する。
【0156】
用語「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、及び、一本鎖または二本鎖形態の、これらのポリマーを意味する。この用語には、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは連結を含む核酸であって、合成、天然、及び非天然のものであり、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される核酸が包含される。そのような類似体の例としては、限定するものではないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。
【0157】
用語「送達」とは、化合物、物質、要素、部分、カーゴ、またはペイロードを送達する行為または様式を意味する。
【0158】
用語「送達剤」とは、少なくとも部分的には、ポリヌクレオチドの、標的化細胞へのインビボ送達を容易にする、任意の物質を意味する。
【0159】
用語「組み換えられた」とは、開始時点、野生型、または自然分子とは異なる、構造的または化学的であるかにかかわらない、形質は性質を有するように設計された分子を意味する。
【0160】
核酸配列の「発現」とは、以下の事象の1つ以上を意味する:(1)(例えば、転写による)DNA配列からのRNA鋳型の作製、(2)(例えば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる)RNA転写産物のプロセシング、(3)RNAの、ポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後改変。
【0161】
用語「疎水性脂質」は非限定的に、飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素基を含むが、これらに限定されない無極性基を有する化合物を意味し、そのような基は、1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基(複数可)により置換されていてもよい。好適な例としては、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び、1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
用語「脂質」とは、脂肪酸のエステルを含む有機化合物を意味し、水には不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする。脂質は通常、以下の少なくとも三つのクラスに分類される:(1)脂肪、油及びロウが含まれる「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質が含まれる「複合脂質」;ならびに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0163】
用語「脂質送達ビヒクル」とは、治療用核酸(例えば、mRNA)を目的の標的部位(例えば細胞、組織、臓器など)に送達するために使用可能な脂質製剤を意味する。脂質送達ビヒクルは核酸-脂質粒子であることができ、これは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、粒子の凝集を防ぐ複合脂質(例えば、PEG脂質)、及び場合によりコレステロールから形成することができる。通常、治療用核酸(例えば、mRNA)は粒子の脂質部分に封入することで、酵素分解から保護することができる。
【0164】
用語「脂質封入された」とは、例えばmRNAが完全に封入された、部分的に封入された、またはこれら両方の治療用核酸を提供する脂質粒子を意味する。好ましい実施形態では核酸(例えば、mRNA)は、脂質粒子に完全に封入されている。
【0165】
用語「脂質複合体」は、脂質粒子の凝集を阻害する複合脂質を意味する。このような脂質複合体としては、例えば、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(例えば、PEG-DAA複合体)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(例えば、PEG-DAG複合体)、コレステロールに結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG、及び、セラミド、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質複合体、ポリアミドオリゴマーと複合したPEGなどのPEG-脂質複合体、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。PEGまたはPOZは、脂質に直接複合しても、またはリンカー部位を介して脂質に連結してもよい。例えばエステル非含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含有する、PEGまたはPOZを脂質に結合させるのに適した任意のリンカー部分を使用することができる。特定の好ましい実施形態では、アミドまたはカルバメートなどの非エステル含有リンカー部分を使用する。
【0166】
用語「両親媒性脂質(amphipathic lipid)」または「両親媒性脂質(amphiphilic lipid)」とは、脂質材料の疎水性部分が疎水性相を向いている一方で、親水性部分が水相を向いている材料を意味する。親水性の特徴は、炭水化物、リン酸、カルボキシル、スルファト、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシル及び他の同等の基などの極性基または荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖の飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基(複数可)により置換された、そのような基を含むがこれらに限定されない、無極性基を包含することにより付与することができる。両親媒性化合物の例としては、リン脂質、アミノ脂質、及びスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)とは、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードし、翻訳されて、インビトロ、インビボ、in situ、またはエクスビボで、コードされた目的のタンパク質またはポリペプチドを産生可能な任意のポリヌクレオチドを意味する。
【0168】
「修飾された」とは、本開示の分子の状態または構造の変化を意味する。分子は、化学的方法、構造的方法、及び機能的方法を含む多くの方法で修飾することができる。一実施形態では、本開示のmRNA分子は、例えば、天然リボヌクレオチドA、U、G、及びCに関係するため、非天然ヌクレオシド及び/またはヌクレオチドの導入により修飾される。キャップ構造などの、非標準ヌクレオチドは、A、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造とは異なり得るものの、「修飾された」とはみなされない。
【0169】
用語「ヌクレオチド」とは、当該技術分野において周知な天然塩基(標準)及び修飾塩基を意味する。そのような塩基は通常、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは通常、塩基、糖、及びリン酸基を含む。ヌクレオチドは未修飾であるか、または、糖、リン酸、及び/または塩基部分で修飾されることができる(ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチド、及び他のものにも同じように言及される;例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、Usman and McSwiggen(上述);Eckstein,et al.国際PCT公開第WO92/07065号;Usman,et al.国際PCT公開第WO 93/15187号;Uhlman & Peyman(上述)を参照されたい)。Limbach,et al,Nucleic Acids Res.22:2183,1994にまとめられているように、当該技術分野において既知の修飾核酸塩基のいくつかの例が存在する。核酸分子に組み込み可能な塩基修飾の非限定例のいくつかとしては、イノシン、プリン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば、5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えば、リボチミジン、5-ハロウリジン(例えば、5-ブロモウリジン)、または、6-アザピリミジンもしくは6-アルキルピリミジン(例えば、6-メチルウリジン)、プロピン、及び他のもの(Burgin,et al.,Biochemistry 35:14090,1996;Uhlman & Peyman,上述)が挙げられる。本態様において、「修飾塩基」とは、1’位における、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル以外のヌクレオチド塩基、またはこれらの等価物を意味する。
【0170】
目的のポリペプチドをコード可能な核酸配列(DNAまたはRNA)に対する用語「オープンリーディングフレーム」または「ORF」。ORFは多くの場合、開始コドンであるATGから開始し、ナンセンスコドンまたは終止コドンまたはシグナルで終了する。
【0171】
用語「RNA」とは、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボ-フラノース部分の2’位でヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換えにより作製されたRNA、加えて、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/または変化により、自然に生じるRNAとは異なる、変化RNAを含む。このような変化としては、干渉RNAの末端(複数可)などへの、または内部、例えば、RNAの1つ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド材料の付加を挙げることができる。本開示のRNA分子中のヌクレオチドは、天然に生じないヌクレオチド、または、化学合成したヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドといった、非標準的なヌクレオチドもまた含むことができる。これらの変化RNAは、類似体、または、天然に生じるRNAの類似体と呼ぶことができる。本明細書で使用する場合、用語「リボ核酸」及び「RNA」とは、siRNA、アンチセンスRNA、一本鎖RNA、マイクロRNA、mRNA、非コードRNA、及び多価RNAを含む、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含有する分子を意味する。
【0172】
用語「標的化細胞」とは、目的の任意の1つ以上の細胞を意味する。細胞はインビトロ、インビボ、in situで見出され得る、または生命体の組織もしくは臓器で見出され得る。生命体は動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト、そして最も好ましくは患者であることができる。
【0173】
用語「治療剤」とは、対象に投与される際に、治療、診断、及び/または予防効果を有し、及び/または、所望の生物学的効果及び/または薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を意味する。
【0174】
用語「モノマー」とは、同一または異なる別の分子と結合しオリゴマーを形成可能な、単一のユニット、例えば単一の核酸を意味する。いくつかの実施形態では、モノマーはアンロック核酸、即ち、UNAモノマーであることができる。
【0175】
用語「中性脂質」とは、選択されたpHにおいて非荷電の、または中性の双性イオン形態のいずれかで存在する脂質種を意味する。生理的pHにおいて、そのような脂質としては例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが挙げられる。
【0176】
用語「非カチオン性脂質」とは、両親媒性脂質または中性脂質またはアニオン性脂質を意味し、本明細書に記載される。
【0177】
用語「オリゴマー」とは、「ポリヌクレオチド」と同じ意味で用いることができ、少なくとも2種類のモノマーを含む分子を意味し、DNA及びRNAなどのオリゴヌクレオチドを含む。RNAモノマー、及び/またはアンロック核酸(UNA)モノマーを含有するオリゴマーの場合、本開示のオリゴマーは、コード配列(CDS)に加えて配列を含有することができる。これらの追加の配列は、未翻訳配列、即ち、宿主細胞によりタンパク質に転換されていない配列であることができる。これらの未翻訳配列は、5’キャップ、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、及びテール領域、例えば、ポリAテール領域を含むことができる。本明細書でさらに詳細に説明するように、これらの未翻訳配列のいずれかは、1つ以上のUNAモノマーを含有することができる-これらのUNAモノマーは、宿主細胞の機構により翻訳されることができない。本開示の文脈において、「mRNA配列」、「mRNA配列」、「翻訳可能なポリヌクレオチド」、または「翻訳可能な化合物」とは、タンパク質またはその断片に転換可能である領域、例えば、RNAのコード領域を含む配列を意味する。
【0178】
用語「翻訳可能な」とは、用語「発現可能な」と同じ意味で用いられることができ、ポリヌクレオチドまたはその一部が、宿主細胞によりポリペプチドに転換されることができる能力を意味する。当該技術分野において理解されるように、翻訳は、細胞の細胞質中のリボソームがポリペプチドを作製するプロセスである。翻訳においては、メッセンジャーRNA(mRNA)が、リボソーム複合体中でtRNAにより解読され、特定のアミノ酸鎖、またはポリペプチドを作製する。さらに、用語「翻訳可能な」とは、オリゴマーを参照して本明細書中で使用する場合、オリゴマーの少なくとも一部分(例えば、オリゴマー配列のコード領域(コード配列またはCDSとしても知られている))が、タンパク質またはそのフラグメントに転換可能であることを意味する。
【0179】
用語「翻訳効率」とは、インビトロまたはインビボでのmRNA配列の翻訳による、タンパク質またはポリペプチドの産生の尺度を意味する。本開示は、1種以上のUNAモノマーと、多数の核酸モノマーとを含有することができる、一定範囲のmRNA配列分子を提供し、mRNA配列は、発現してポリペプチドまたはタンパク質を提供することができる。
【0180】
治療上有効なアウトカム:本明細書で使用する場合、用語「治療上有効なアウトカム」とは、感染、疾病、疾患、及び/または状態を患う、または感染しやすい対象において、その感染、疾病、疾患、及び/または状態の治療、症状の改善、診断、予防、及び/または開始の遅延を行うのに十分なアウトカムを意味する。
【実施例
【0181】
本開示の追加の実施形態は以下の実施例にてさらに詳細に説明されており、これらは、特許請求の範囲をいかなる方法によっても限定することを意図するものではない。
【0182】
実施例1:大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造
RNA及び脂質賦形剤の溶解
本実施例は、LNP封入大型RNAの作製に使用する、いくつかの一般的条件について概略する。脂質賦形剤(イオン化可能なカチオン性脂質/カチオン性脂質:ホスフェート脂質:コレステロール:PEG脂質)を秤量し、200プルーフのアルコールに(50:X:48.5~X:1.5、X=7、10、または13のモル比で)、溶解が完了するまで40℃で溶解し、溶解時間は4時間を超えないようにした。溶解が目視できるようになった後、溶液の温度を室温まで平衡させ、その後、0.2μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通して、溶液をジャケット付きガラスまたはステンレス鋼容器に濾過した。この段階での公称脂質濃度は、5~125mg/mLである。
【0183】
RNAは、0~300mMのNaClを含有する、5mMのクエン酸塩(pH4.0)緩衝液に希釈した。次に、溶液を0.2μm PESに通して濾過した。この段階での大型RNAの濃度は、約0.096~0.765mg/mLである。
【0184】
T型のステンレス鋼混合モジュールによるナノ粒子形成
大型RNA封入脂質ナノ粒子を、T型ステンレス鋼混合モジュール(「Tモジュール」)により、制御された速度で、脂質のエタノール溶液をRNAの水溶液と混合することにより形成した。混合することは、エタノール溶液と水溶液を、第1の管に垂直に結合した第2の管からなる混合モジュールに流すことを含む。2種類の溶液の混合物を含む出力溶液は、元のRNAの流れの向きに流れて作製される。
【0185】
全脂質とmRNAの重量比は、約35.88:1となるように設定するが、この重量比は、使用する大型RNAの厳密なサイズ、及び、所望される脂質組成物に応じて変化する可能性がある。本明細書に記載するプロセスを、RNAに対して、任意の好適なモル比及び重量比で、脂質の任意の好適な組み合わせを含む脂質組成物に適用可能であることを、当業者は理解するであろう。高圧ピストンポンプ(Knauer)を使用して、各溶液に対する添加速度を制御し、脂質及びmRNA溶液はそれぞれ、30~75、及び90~225mL/分の流速で添加される。2つの流れは、120~300mL/分の、合計の流速にて、ステンレス鋼混合モジュール内でまとまる。ピーク管材を高圧ピストンポンプに対して使用し、RNA流れに対しては0.03~0.08インチのID、及び、脂質流れに対しては0.01~0.03インチのIDとする。
【0186】
複数入口ボルテックスミキサーによるナノ粒子の形成
大型RNA封入脂質ナノ粒子を、複数入口ボルテックスミキサー(MIVM,Holland)により、制御された速度で、脂質のエタノール溶液をRNAの水溶液と混合することにより形成した。
【0187】
全脂質とmRNAの重量比は、35.88:1である。HPLCポンプを使用して、各溶液に対する添加速度を制御し、脂質及びmRNA溶液はそれぞれ、流れに対して、20~50mL/分の流速で添加される。4つの流れは、80~200mL/分の、合計の流速にて、ステンレス鋼混合モジュール内でまとまる。ピーク管材を高圧ピストンポンプに対して使用し、RNA流れに対しては0.02~0.8インチのID、及び、脂質流れに対しては0.01~0.03インチのIDとする。
【0188】
段階的な希釈によるナノ粒子の安定化
このようにして形成したナノ粒子を、緩衝液を用いて、連続インライン希釈により安定化させる:まずは、80~600mL/分の流速で供給される、45mMのホスフェート(pH6.5)緩衝液で、続いて、240~2700mL/分の流速で供給される、50mM HEPESまたはトリス、50mM NaCl、9%(w/v)スクロース(pH8.0)で。
【0189】
濃縮及び緩衝液交換
上述のとおりに入手した、希釈ナノ粒子製剤を濃縮し、100kDaのMWCOを有する修飾PES中空繊維膜を使用して、タンジェンシャルフローフィルトレーションにより、50mM HEPES/20mMトリス、50mM NaCl、9%(w/v)スクロース(pH8.0)緩衝液に対してダイアフィルトレーションする。このプロセス工程により、エタノール除去及び緩衝液交換が確実になされる。濃度及びダイアフィルトレーション中の製剤の温度は、16~25℃に維持する。Alco-Screen Alcohol Test Stripsによりエタノールの除去が確認されたら、濃縮溶液を、0.2μmのPESフィルターを通してガラス瓶に濾過し、潜在的な大型微粒子及び微生物汚染物質を除去する。この濾過したバルク生成物の試料を、インプロセスRNA濃度分析のために収集する。バルク生成物は、濃度を調節するまで、2~8℃で保管する。
【0190】
濃度調節、充填、及び凍結
50mM HEPES/20mMトリス、50mM NaCl、グリセロールを含有する9%(w/v)スクロース(pH)緩衝液(pH8.0)を添加して、緩衝液中のグリセロールの終濃度を6.3%(w/v)とすることにより、製剤のRNAの濃度を、0.2mg/mLの目標濃度に調節する。
【0191】
濃度調節の後、調節したバルク生成物を0.2μmのPES滅菌グレードフィルターに通して濾過し、滅菌収集容器に入れる。
【0192】
生成物は、2mLのI型ボロシリケートガラス瓶の中に、1mLの充填体積(0.2mL入れすぎている)で無菌で充填し、栓をして蓋を閉める。瓶は全て、0.5℃/分の制御された速度で、フリーザードライヤーを使用して≦-55℃まで凍結する、または、直接-70℃で凍結する。バイアル瓶は、-70℃±10℃で維持した冷凍庫内で保管する。
【0193】
濃度調節、LYO賦形剤の添加、充填、及び凍結乾燥
50mM HEPES/20mMトリス、50mM NaCl、適切なLYO賦形剤を含有する9%(w/v)スクロース(pH8.0)緩衝液を添加することにより、製剤のRNAの濃度を、0.1~0.2mg/mLの目標濃度に調節した後、凍結乾燥プロセスの前、または直接凍結乾燥する前に、2~8℃、-20℃、または-70±10℃で保管することができる。
【0194】
動的光散乱法
実施例で使用した脂質ナノ粒子製剤の平均粒径(z)及び多分散指数(PDI)は、Malvern Zetasizer Nano ZS(United Kingdom)での動的光散乱法により測定した。
【0195】
RiboGreenアッセイ
脂質ナノ粒子製剤の封入効率は、RiboGreen蛍光定量アッセイを使用して特徴付けた。RiboGreenは、RNA及びDNAの両方を含む、核酸の検出及び定量化で使用する、専売の蛍光染料(現在は、Thermo Fisher Scientific of Eugene, Oregon, United Statesの一部であるLife Technologiesの一部門である、Molecular Probes/Invitrogen)である。遊離形態において、RiboGreenはほぼ蛍光を示さず、無視できる吸光度シグネチャーを有する。核酸に結合すると、染料は、未結合形態よりも数桁大きい強度で蛍光する。次に、蛍光はセンサー(蛍光計)により検出可能であり、核酸を定量化することができる。
【0196】
許容されるLNP物理化学的特性
以下の実施例で記載のとおりにさらなる実験を行い、LNP封入大型RNA製剤の品質における、様々な試薬、プロセスパラメーター、及び、装置構成の影響を評価した。製剤の、許容される粒径(ZまたはZ平均)、多分散度(PDI)、及び封入効率(%Encap)を評価することにより、これらの製剤の品質を評価した。試験した様々な組成物を、許容される粒径(150nm未満、ただし、120nm未満が最も好ましい)、PDI(<0.2)、及び、高い封入効率(>85%)を含む性質の閾値を満たしたか否かについてスクリーニングした。
【0197】
実施例2:大型RNAを含むLNP-初期研究
初期の実施において、Precision Nano Assembler(A benchtop formulation system,Precision Nanosystems,Inc.,Vancouver,BC,Canadaを使用してLNPを生成した。組成物は、カチオン性脂質:DSPC:コレステロール:PEG脂質を、50:7:41.5:1.5のモル比で含んだ。mRNAを、5mM(pH4.0)のクエン酸塩緩衝液に希釈した。全脂質:RNAの重量比は35.2であり、両方の流れの流速の合計は12mL/分であり、1:3の、EtOH:水の比であった。希釈、精製、及び濃縮工程は、実施例1に記載のとおりであり、第1の希釈比は1:2であり、第2の希釈比は1:3であった。通常の小型及び大型ヌクレオチド配列を比較する初期の結果を、表1にて以下に示す。
【表1】
【0198】
表1で確認されるように、同じプロセスを使用すると、大きなRNAが封入されるほど大きな粒径が得られ、多分散度(PDI)は高く、及び、封入効率(%encap)の割合は低くなった。
【0199】
実施例3:塩の添加の効果
本実施例では、クエン酸塩緩衝液でNaClを使用することで、大型RNA封入脂質ナノ粒子の品質改善が観察された。組成物、製剤モジュール、及びmRNAは、実施例2に記載するものと同じであった。結果を下表2にまとめる。
【0200】
下表において、「[脂質IP]mM」とは、希釈を行わずに2つの流れを混合した後の、2種類の脂質インプロセス濃度である。
【表2】
【0201】
これらのプロセス改善により、10mM NaClを含むpH4.0のクエン酸緩衝液を、さらなる開発のために選択した。理由は、pH4.0の緩衝液は、良好なmRNA純度及び一体性もまた維持したからである。
【0202】
クエン酸塩緩衝液に塩を添加する効果は、製剤組成物、及び、異なる大型自己複製RNAにまたがって作用した。この緩衝液組成物は、多数入口ボルテックスミキサーの使用を含む、中規模スケール製剤システムに移動させるのが容易であったこともまた発見された。しかし、緩衝液組成物は、T型混合モジュールを使用するものなどの、大規模製剤システムに対応することはできなかった。これらのさらなる結果を、表3~5にまとめる。
【0203】
本実施例で多数入口ボルテックスミキサーを使用する製剤に関しては、ステンレス鋼混合モジュール内で、実施例1に記載のとおり、120mL/分の合計の流速で、4つの流れがまとまり、脂質:RNAの流速比は1:3であった。ピーク管材を高圧ピストンポンプに対して使用し、RNA流れに対しては0.03インチのID、及び、脂質流れに対しては0.01インチのIDとした。希釈比は1:2及び1:3であり、精製及び濃縮工程は、実施例1に記載したとおりであった。
【0204】
本実施例で、スケール可能なTモジュールを使用する製剤に関しては、ステンレス鋼混合モジュール内で、実施例1に記載のとおり、300mL/分の合計の流速で、2つの流れがまとまり、脂質:RNAの流速比は1:3であった。ピーク管材を高圧ピストンポンプに対して使用し、RNA流れに対しては0.03インチのID、及び、脂質流れに対しては0.01インチのIDとした。精製及び濃縮工程は、実施例1に記載のとおりに実施した。
【表3】
【表4】
【表5】
【0205】
実施例4:塩の添加の効果、及び、第1の希釈緩衝液のpH
プロセスを改善するために、塩の添加、及び、第1の希釈緩衝液(45mMリン酸緩衝液)のpHの評価を行った。製剤組成物及びプロセスは、Precision Nano Assemblerを使用して実施例2に記載するとおりであった。
【0206】
表6に示すように、リン酸緩衝液にNaClを添加することでは、LNPの品質はさらには改善されず、大きな粒径がもたらされ、多分散度(PDI)は高く、封入効率(%encap)の割合は低くなった。
【表6】
【0207】
リン酸緩衝液のpHの変化を含む、さらなる評価を行った。本製剤では、イオン化可能なカチオン性脂質のpKa(約6.4)に基づき、6.5のpHを選択した。表7に示すように、この変化により、脂質ナノ粒子の封入効率が劇的に改善された。イオン化可能なカチオン性脂質:DSPC:CHOL:PEG-DMG2000のモル比が50:13:35.5:1.5の組成物を、本製剤で使用した。
【表7】
【0208】
実施例5:MIVM及びTモジュールシステムにおける流速の影響
イオン化可能なカチオン性脂質:DSPC:CHOL:PEG-DMG2000のモル比が50:10:38.5:1.5であり、全脂質:RNAの重量比が、約35.78:1の組成物を、本実施例で使用した。ルシフェラーゼ自己複製RNA(コンストラクト番号pARM2807、9693nt)を使用した。MIVMシステム、及びTモジュールシステムに対する製剤プロセスは、それぞれ、実施例3に記載したとおりであった。
【0209】
驚くべきことに、MIVMシステム及び製剤モジュールシステムの両方において、流速が低いほど、大型RNA封入製剤に良好に作用した。流速が低くなればなるほど、粒径(Z-ave)及びPDIは小さくなり、%encapは大きくなった。(表8及び表9に示す)。許容される製造速度、及び許容されるLNPの品質の両方を得るために、さらなる開発のため、MIVMシステムに対しては100mL/分、及び、Tモジュールシステムに対しては160mL/分を選択した。
【表8】
【表9】
【0210】
本実施例での知見は、表1に示す、小型RNA封入脂質ナノ粒子製剤で観察されたこととは反対であった。流速が速ければ速いほど、小型RNA封入脂質ナノ粒子に対しては、小さな粒径、及び低いPDIがもたらされた。表10における、小型RNA封入LNPに対する結果を有するプロセスに関しては、23nt長を有するsiRNAを使用した。
【表10】
【0211】
実施例6:スケール可能なMIVM及び製剤モジュールシステムにおける、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造
実施例2~5で言及した改善全てにおいて、スケール可能な製剤システム(MIVM及びTモジュール)にまたがり、LNP封入大型RNA(ルシフェラーゼ自己複製RNA、pARM2807、9693nt;及び、別の自己複製RNA、11,665nt)を開発した。これは、異なる組成物にも適用可能である(表11)。別途明記しない限り、本実施例における製剤化条件及びプロセスは、以前の実施例で記載したとおりであった。
【表11】
【0212】
製造要件を満たすために、連続製造のための、全インラインセットアップの可能性を試験した。第1の希釈と第2の希釈との間に長い管材を使用して、両方の希釈の間の保持時間を延ばした。これは、以前の実施例での教示に基づいた。表12に示すように、大型RNA封入LNPの品質は、全インラインセットアップによっては影響を受けなかった。
【表12】
【0213】
実施例7:MIVM及びTモジュール製剤システムによる、大型RNA封入脂質ナノ粒子製造プロセスのスケールアップ
実施例6に記載する製剤プロセスは、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造に対して十分機能することが示されたが、バッチ体積及び製造速度は、さらなる改善を必要とすることが示された。本実施例の実施形態では、複数のアプローチを採り、この目標を達成した。
【0214】
本実施例における全ての製剤組成物、条件、及びプロセスは、別途明記しない、実施例6と同じであった。
【0215】
クエン酸塩緩衝液中での、NaCl添加によるプロセス中の濃度の増加
本実施形態では、インプロセス濃度を、スケールアップのために増加させ、クエン酸塩緩衝液中の、インプロセス濃度とNaCl濃度との関係が発見された(表13及び表14に示す)。この知見は、異なる製造モジュールにまたがるものである。インプロセス濃度製剤を増加させるには、クエン酸塩緩衝液中でのNaCl濃度を高める必要があり、これは、小さな粒径、PDI、及び、高い%encapをもたらした。しかし、閾値に達すると、高いNaCl濃度がそれ以上増加する必要はなかった。クエン酸塩緩衝液中での適切なNaCl濃度は、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造のために必要であり、これは、連続した大規模製造の可能性を考慮すると、全てのインラインセットアップと適合性があった。
【表13】
【表14】
【0216】
スケールアップのための、希釈比の低下
バッチ体積をさらに減らすために、希釈比の低下を評価した。実施例1に記載するとおり、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスには、2段階希釈が必要であった。以前の実施例では全て、45mMのリン酸緩衝液による1:2の希釈、ならびに、50mM NaCl及び9%スクロースを含有する50mM HEPES緩衝液(pH8.0)による1:3の希釈を行った。本実施形態では、希釈製剤中で、適切なエタノール濃度及びpHを維持する範囲で、より低い希釈比を試験した。精製プロセス(TFF)の前の8時間の保持時間もまた試験し、大規模製造精製プロセスの間に、製剤が安定するようにした(表15)。
【0217】
表15に示すように、製剤の物理化学的性質は、本プロセスの希釈比の低下による影響を受けなかった。8時間の保持の後、製剤の物理化学的性質もまた維持された。本実施例では、mRNAの純度及び一体性もまた、フラグメントアナライザーにより試験紙、mRNAの能力を製造中に維持することができるようにした。mRNAの純度及び一体性を、封入前のmRNAの純度及び一体性と比較して報告する。
【0218】
5mMのクエン酸塩緩衝液(pH4.0)中の50mM NaClを含む、12mMの脂質[IP](1:1.5のリン酸希釈、続いて1:2.5のHEPES緩衝液希釈)において、LNPは、良好な品質を有し、精製プロセス(TFF)を開始する前の少なくとも8時間にわたり、物理化学的性質及びmRNA純度が安定していた。これにより、製造プロセス中にLNPが安定した。
【表15】
【0219】
実施例8:大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造のための管材構成及び背圧
より小さなRNA封入脂質ナノ粒子の製造に関しては、モジュールで使用する高圧ピストンポンプ用の背圧をもたらすために、多くの場合、より小さな管材(0.01、0.02インチID)を使用した。RNAの流れの振動を回避するために、ピーク管材と混合モジュールとを接続する、管材上のクランプを、多くの場合使用した。本実施例は、実施例7で開発した製造プロセスを用いるが、RNAの流れに対して0.02インチIDのピーク管材を、及び、ピーク管材とTモジュールとの間の、管材上のクランプを用いる場合に、欠陥点を示した。その後、管材構成及び背圧の影響の評価を行った(表16)。本実施例では、全ての製剤組成物、条件、及びプロセスは、別途言及しない限り、実施例7と同じであった。
【表16】
【0220】
表16に示すように、RNAの流れに対しては0.02インチのピーク管材を使用し、製造中の脂質の流れに対しては0.01インチの管材を使用する場合、粒径及びPDIは驚くほど大きかったが、%encapは驚くほど小さかった。どのラインが差をもたらしたかを理解するために、調査セットアップ:RNA 0.03(50cm);脂質:0.01(30cm)を使用し、品質の良いLNPを作製した。これら3つのセットアップを比較すると、RNAの流れの管材は、LNPの品質に重要な影響を及ぼすことを、結果ははっきりと示した。しかし、管材ID、高圧、またはこれらの両方が原因であったかどうかは、分からなかった。
【0221】
したがって、異なるRNAの流れの管材長及びサイズによる、一連の試験を実施した(表17)。極端に短い長さに対しても、0.02インチの管材を使用する際には、LNPの品質は影響を受けたことを、結果は示した。
【表17】
【0222】
さらなる調査を行い、結果は表18に示す。製剤化のためには、クランプを取り外すのが良かった。しかし、RNAライン(90cm)での、ライン及び長い管材の両方に対して、0.03インチIDの管材を使用して振動を回避する場合、結果は好ましくなかった。中間の長さの管(48cm)を使用したとき、脂質の流れに対する、より小さな管材(0.01インチID)と組み合わせて混合しながら、混合モジュールを通るRNAライン内で、クランプを用いて背圧を維持することが、製剤化のために良好であった。約70psiの圧力は、製剤化に対して安全であった。
【表18】
【0223】
実施例9:実施例1~8の知見における、可能性のあるメカニズム
上記知見を全て踏まえ、本実施例では、可能性のあるメカニズムを論ずる。これらの知見は全て、大型RNA(約6000~13000nt)にのみ適用されたため、大型RNA封入脂質ナノ粒子の品質は、クエン酸塩緩衝液中のRNA濃度、クエン酸塩緩衝液中のNaCl濃度、RNA+クエン酸塩流れの管材サイズ、及び、RNA流れの流速により影響を受けた。仮説は、大型RNA(約6000~13000nt)は、剪断応力及び剪断速度に対してより感度が高いということである。
【0224】
このような知見は、以下の式を用いて説明することができる:
【0225】
剪断速度:
【数1】
【0226】
体積流量Q;内部パイプの半径r。
【0227】
剪断応力:ニュートン流体壁に関して、
【数2】
により、剪断応力(Τ)を剪断速度と関連付けることができ、式中、μは、流体の動的粘度である。したがて、剪断速度または動的粘度のいずれかが増加すると、剪断応力が増加する。故に、剪断速度は、内部パイプ半径に反比例するが、動的粘度は緩衝液、及び、流体状態、加えてRNAサイズにより影響を受ける。
【0228】
当業者により理解されるように、さらなる流体の動的粘度及び計算を評価することができる。
【0229】
実施例10:大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスの、さらなる改善及びスケールアップ
特に言及されない限り、本実施例では、全ての製剤条件及びプロセスは実施例7と同じであり、本実施例では、RNA流れのピーク管材サイズのIDは0.04インチであった。
【0230】
実施例1~9の教示から、さらなる改善が、設計により実現された。この実現において、バッチ体積は劇的に低下し、製造速度は大幅に改善され、大型RNA封入脂質ナノ粒子の品質が改善した。合計の流速が十分速く(300mL/分)なったときに、RNAの流れのみにクランプを提供して、振動を回避することができる。約80psiにおけるRNAの流れでの圧力は、安全条件であることが示されたが、100psiを超えると、脂質ナノ粒子の品質に悪影響を及ぼす。
【0231】
表19及び表20は、実施例1~9の教示に基づく設計による、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスの著しい改善を示した。流速、クエン酸塩緩衝液中でのNaCl濃度、及び、RNAの流れの管材IDの増加の組み合わせにより、LNPの品質は十分維持され、バッチ体積は劇的に低下した。合計の流速として300mL/分を用いると、RNAの流れにクランプは必要なかった。
【表19】




















【表20】
【0232】
実施例11:別の緩衝液系における、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスのさらなる改善及びスケールアップ
凍結乾燥したRNA封入LNPの作製は、特定の環境において、薬剤生成物に安定性を付与するために重要である。凍結乾燥プロセスの一部には、適切なマトリックスでLNPの懸濁液を調製することを伴う。米国出願第17/402,077号は、脂質ナノ粒子封入RNAの凍結乾燥方法について記載しており、これは、参照により本明細書に組み込まれている。凍結乾燥した大型RNA封入脂質ナノ粒子の薬剤生成物を開発するために、トリス緩衝液系での大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスを、実施例1~10の教示に基づき開発した。全インラインセットアップを15秒~25秒の保持時間にして、製剤化条件及びプロセスセットアップは、実施例10と同じであった。第2の希釈緩衝液は、50mM NaCl及び9%スクロースを含有する50mMトリス(pH8.0)であり、ダイアフィルトレーション緩衝液は、50mM NaCl及び9%スクロースを含有する20mMトリス(pH8.0)である、という点のみが異なっていた(表21)。
【0233】
実施例1~10の教示は全て、トリス緩衝液系での製剤化に適用可能であった。
【表21】
【0234】
実施例12:大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスの、希釈及び最終確認中でのEDTA添加
本実施例では、別途明記される場合を除いて、全ての製剤条件及びプロセスセットアップは実施例11と同じであった。第2の希釈の間でのEDTA添加、及び、ダイアフィルトレーション中の除去の効果を本実施例で試験し、最終の非常にスケールアップされた製造プロセスは、第1の希釈と第2の希釈の間の保持時間を20秒とし、希釈比を1:15、1:2とし、EDTA添加の有りまたは無しの状態で、28mMの脂質IP濃度であると確認され、高品質の大型RNA封入脂質ナノ粒子を作製した(表22)。
【表22】
【0235】
実施例13:インビボ有効性における、大型RNA封入脂質ナノ粒子の製造プロセスの改善の効果
本実施形態では、図4は、大型RNA封入脂質ナノ粒子の物理化学的性質は、本明細書に記載するスケールアップしたプロセスを使用することで十分維持及び改善されただけでなく、インビボ有効性もまた維持及び改善されたことを示した。表23は、表23に記載するもの以外の、これら2つのプロセスの製造の差、全ての製剤条件、及び他のプロセスセットアップが、実施例7と同じであることを示した。
【0236】
本実施形態では、COVIDスパイクタンパク質をコードするRNAを含む、50μLの大型RNA封入脂質ナノ粒子を、Balb/cマウスの両脚に筋肉内注射し、図4に示す用量を与えた。1群当たり、マウスは5匹であった。40日後、血清を収集し、Luminexアッセイ-マイクロプレートフォーマットの、ビーズベースの多重化イムノアッセイシステムを使用して試験を行い、COVIDスパイクタンパク質抗体の発現レベルを確認した。
【表23】
【0237】
さらなる考察
前述の説明が提供されることで、本明細書に記載する様々な構成を当業者が実施することが可能となる。主題技術を実装する他の多くの方法が存在し得る。本明細書に記載する様々な機能及び要素は、主題技術の範囲から逸脱することなく、これら示されるものとは異なって分けることができる。これらの構成に対する様々な変更は、当業者に速やかに明らかとなり、本明細書で定義する一般的な定義は、他の構成に適用可能である。したがって、主題技術の範囲を逸脱することなく、当業者によって、多くの変化及び変更を主題技術に加えることができる。
【0238】
詳細の説明は多くの具体例を含有するものの、これらは、主題技術の範囲を限定するものとして解釈されてはならず、主題技術の異なる実施例及び態様を単に示すものとして解釈されなければならない。主題技術の範囲は、上で詳しく論じていない他の実施形態を含むことが理解されなければならない。本開示の範囲を逸脱することなく、様々な他の変更、変化、及び変動を、本明細書で開示する主題技術の方法及び装置の配置、操作、及び詳細においてなすことができる。加えて、装置または方法は、本開示の範囲に包含されるために、本開示の異なる実施形態により解決可能な(または、実現可能な全ての利点を有する)全ての課題を解決する必要はない。本明細書において「することができる(can)」、及びその派生形は、断定的な可能性とは反対で、「場合により」、または「任意に」という意味で理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】