(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】音響吸収充填剤及び関連する音響物品
(51)【国際特許分類】
G10K 11/165 20060101AFI20231003BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20231003BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G10K11/165
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
G10K11/168
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516091
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2021058214
(87)【国際公開番号】W WO2022053977
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】モック,ミシェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペトコヴィッチ,ニコル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】バーリガン,マイケル アール.
【テーマコード(参考)】
4F070
5D061
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AC04
4F070AC75
4F070AE27
4F070DB04
4F070DC02
4F070DC03
4F070DC07
5D061AA02
5D061AA07
5D061AA09
5D061AA11
5D061AA13
5D061AA23
5D061AA25
5D061BB21
5D061BB24
5D061DD11
(57)【要約】
音響吸収充填剤であって、ポリマーを含むコア粒子と、コア粒子上にコーティングされた外層であって、ミクロ細孔微粒子を含む、外層と、を含み、音響吸収充填剤が、100マイクロメートル~700マイクロメートルのメジアン粒径と、10m2/g~400m2/gの比表面積とを有し、音響吸収充填剤が、20mmの充填床で測定される場合、300Hzにおいて0.15以上の垂直入射音響吸収を有する、音響吸収充填剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響吸収充填剤であって、
ポリマーを含むコア粒子と、
前記コア粒子上にコーティングされた外層であって、ミクロ細孔微粒子を含む、外層と、を含み、
前記音響吸収充填剤が、100マイクロメートル~700マイクロメートルのメジアン粒径と、10m
2/g~400m
2/gの比表面積とを有し、
前記音響吸収充填剤が、300Hzにおいて0.15以上の垂直入射音響吸収を有する、音響吸収充填剤。
【請求項2】
前記コア粒子が、50m
2/g未満の比表面積を有する、請求項1に記載の音響吸収充填剤。
【請求項3】
前記コア粒子が、ミクロ細孔材料ではない、請求項1又は2に記載の音響吸収充填剤。
【請求項4】
前記ミクロ細孔微粒子が、多孔質炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響吸収充填剤。
【請求項5】
前記多孔質炭素が、活性炭、バーミフォーム(vermiform)炭素、炭化バイオマス、石炭又はそれらの混合物を含む、請求項4に記載の音響吸収充填剤。
【請求項6】
前記コア粒子が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエステル、ナイロン、アクリレート、エチレンアクリレート、アクリル、エポキシ、フェノール-ホルムアルデヒド、メラミン-ホルムアルデヒド、ポリブチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックコポリアミドエラストマー、スチレンブロックコポリマーエラストマー、ポリブチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アイオノマー、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマー組成物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の音響吸収充填剤。
【請求項7】
音響物品であって、
多孔質層と、
前記多孔質層に少なくとも部分的に捕捉された請求項1~6のいずれか一項に記載の音響吸収充填剤と、を含み、
前記音響物品が、1000MKS Rayls~10,000MKS Raylsの流動抵抗を有する、音響物品。
【請求項8】
前記多孔質層が、複数の繊維を有する不織布繊維層を含み、前記音響吸収充填剤が、前記複数の繊維内に少なくとも部分的に捕捉されている、請求項7に記載の音響物品。
【請求項9】
前記多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径を備えた複数の開口を有する有孔フィルムを含み、前記音響吸収が、前記有孔フィルムにわたって層内に延びている、請求項7又は8に記載の音響物品。
【請求項10】
音響物品の製造方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の音響吸収充填剤を多孔質層に部分的に捕捉させることを含み、前記音響吸収充填剤が、1000Hz未満の音周波数に対する前記物品の音響吸収を増加させるために、10m
2/g~400m
2/gの比表面積を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歴史的に、自動車及び航空宇宙技術における開発は、より速く、より安全で、より静かで、より広々としたビークル(vehicle)を求める消費者の要求によって推進されてきた。これらの属性は、燃費に対する欲求に対して釣り合いを取る必要がある。理由としては、これらの消費者によって推進される属性を強化すると、一般に、ビークルの重量も増加するからである。
【0002】
ビークルの重量を10%削減することで、燃料効率を約8%向上させることができるため、自動車及び航空宇宙用製造業者は、既存の性能目標を達成しながらビークル重量を削減する大きなインセンティブを得る。また、ビークルの構造がより軽量になると、ノイズがますます問題となり得る。一部のノイズは構造振動から発生し、構造振動により、空気に伝播して伝達する音エネルギーが生じ、空中伝播ノイズが発生する。構造振動は、従来的には、重い粘性材料で作られた減衰材料を使用して制御される。空中伝播ノイズは、従来的には、音エネルギーを吸収することができる、繊維又は発泡体などの柔らかくしなやかな材料を使用して制御される。
【発明の概要】
【0003】
したがって、一態様では、本開示は、音響吸収充填剤であって、ポリマーを含むコア粒子と、コア粒子上にコーティングされた外層であって、ミクロ細孔微粒子を含む、外層と、を含み、音響吸収充填剤が、100マイクロメートル~700マイクロメートルのメジアン粒径と、10m2/g~400m2/gの比表面積とを有し、音響吸収充填剤が、300Hzにおいて0.15以上の垂直入射音響吸収を有する、音響吸収充填剤を提供する。
【0004】
別の態様では、本開示は、音響物品であって、多孔質層と、多孔質層に少なくとも部分的に捕捉された本開示の音響吸収充填剤と、を含み、音響物品が、1000MKS Rayls~10,000MKS Raylsの流動抵抗を有する、音響物品を提供する。
【0005】
別の態様では、本開示は、音響物品の製造方法であって、本開示の音響吸収充填剤を多孔質層に部分的に捕捉させることを含み、音響吸収充填剤が、1000Hz未満の音周波数に対する物品の音響吸収を増加させるために、10m2/g~400m2/gの比表面積を有する、方法を提供する。
【0006】
本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点がまとめられている。上記の概要は、本開示の例示された各々の実施形態又はあらゆる実施を記載することを意図するものではない。更なる特徴及び利点は、以下の実施形態で開示される。図面及び以下の詳細な説明は、本明細書に開示された原理を使用する特定の実施形態を更に具体的に例示する。
【0007】
定義
以降で定義される用語について、これらの定義は、次の定義中の使用用語の変更への具体的な言及に基づいて特許請求の範囲又は本明細書中の他の場所に別の定義が提示されている場合を除き、特許請求の範囲を含む本明細書全体に適用されるものとする。
【0008】
数値又は形状への言及に関する用語「約」又は「およそ」は、数値又は特性若しくは特徴の+/-5パーセントを意味するが、明示的に、数値又は特性若しくは特徴の+/-5パーセント以内の任意の狭い範囲及び正確な数値もまた含む。例えば、「約」100℃の温度は、95℃~105℃の温度を指すが、明示的に、任意のより狭い温度範囲又は更には、例えばちょうど100℃の温度といったその範囲内の単一の温度もまた含む。例えば、「約」1Pa・secの粘度は、0.95~1.05Pa・secの粘度を指すが、明示的に、ちょうど1Pa・secの粘度もまた含む。同様に、「実質的に正方形」の外辺部は、4つの横方向縁部を有し、各横方向縁部が、他のいずれかの横方向縁部の長さの95%~105%の長さを有する幾何形状を説明することを意図するが、これはまた、各横方向縁部が正確に同じ長さを有する幾何形状を含む。
【0009】
用語「a]、「an」及び「the」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」を含有する材料への言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。
【0010】
「平均」とは、別段の指定がない限り、数平均を意味する。
【0011】
「米坪量(basis weight)」とは、10cm×10cmのウェブサンプルの重量に100を掛けて計算され、グラム毎平方メートル(gsm)単位で表される。
【0012】
「コポリマー」とは、2つ以上の異なるポリマーの繰り返し単位から作られるポリマーを指し、ランダム若しくは統計コポリマー、勾配コポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、及び星型(例えば、樹状)コポリマー、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0013】
「寸法安定性」とは、重力の補助がなくても、その形状を実質的に保持する(すなわち、垂れ下がらない)構造を指す。
【0014】
「ダイ」とは、メルトブローを含むがこれに限定されないポリマー溶融加工及び繊維押出加工に使用するための、少なくとも1つのオリフィスを含む加工用アセンブリを意味する。
【0015】
「捕捉されている」とは、粒子がウェブの繊維又は構造内に分散されて物理的に及び/又は接着的に保持されていることを意味する。
【0016】
ポリマーの「ガラス転移温度(又はTg)」とは、非晶質ポリマー(又は半結晶性ポリマーの非晶質領域)において、温度が上昇するにつれて、硬く比較的脆い「ガラス状」の状態から粘性、ゴム状(弾性)、又は粘弾性状態になる可逆的転移が生じる温度を指す。
【0017】
不織布繊維層の繊維の「メジアン繊維径」とは、例えば走査型電子顕微鏡を使用して、繊維構造の1枚以上の画像を作製し、当該1枚以上の画像で明確に見える繊維の横方向の寸法を測定して、総数の繊維径を求め、総数の繊維径に基づいて、メジアン繊維径を計算することにより決定される。
【0018】
「不織布繊維層」とは、個々の繊維又はフィラメントが相互に重なり合っているが、編布又は織布におけるような識別可能な状態ではない構造を呈するシート又はマットを形成する、繊維の絡み合い又は点結合を特徴とする複数の繊維を意味する。
【0019】
「配向されている」とは、繊維に関して使用される場合、例えば、繊維の流れがダイから出る際の延伸(又は伸長)加工又は細径化装置の使用によって、繊維内のポリマー分子のうちの少なくとも一部が、繊維の長手方向軸に合わせて整列されていることを意味する。
【0020】
「粒子」又は「微粒子」とは、微細化形状の材料の離散した小片又は個々の部分を指す。粒子は、微細化形状の個々の粒子が共に結合又は集積した総体を含んでもよい。したがって、本開示の特定の例示的な実施形態で使用される個々の微粒子は、集塊、物理的噛み合い、静電結合、又は他の結合により集積又は凝集した微粒子を形成してもよい。特定の場合では、米国特許第5,332,426号(Tangら)に記載されているように、個々の微粒子の凝集体の形態の微粒子が形成されてもよい。
【0021】
「ポリマー」とは、少なくとも2,000g/molの分子量又は100を超える繰り返し単位を有する、比較的大きい分子量の材料を意味する。
【0022】
「多孔質」とは、空気透過性であることを意味する。
【0023】
「収縮」とは、米国特許出願公開第2016/0298266号(Zilligら)に記載の試験方法に基づいて、150℃まで7日間加熱した後の繊維不織布層の寸法の減少を意味する。
【0024】
「サイズ」とは、所与の物体又は表面の最長寸法を指す。
【0025】
「実質的に」とは、少なくとも50%、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99、若しくは99.999%の量といった大部分若しくはほとんど、又は100%を意味する。
【0026】
「表面積」とは、別段の記載がない限り、比表面積を指す。材料に関するこの分量は、単位質量によって正規化された表面積である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【
図1】ある実施形態による音響物品の側面断面図である。
【
図2A】比較例C1及び実施例1のSEM写真である。
【
図2B】比較例C1及び実施例1のSEM写真である。
【
図2C】比較例C1及び実施例1のSEM写真である。
【
図3A】比較例C3及び実施例3のSEM写真である。
【
図3B】比較例C3及び実施例3のSEM写真である。
【
図3C】比較例C3及び実施例3のSEM写真である。
【
図4】実施例1~3及び比較例C1~C3の周波数の関数としての垂直入射吸収係数である。
【0028】
正確な縮尺で描かれていない場合がある、上記で特定されている図面は、本開示の様々な実施形態を記載するものであるが、「発明を実施するための形態」で注記されるように、他の実施形態もまた企図される。いかなる場合でも、本開示は、明示された制限によってではなく、例示的な実施形態の表示によって、本開示の発明を説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示のいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本発明が、その適用において、以下の記載で示される、使用、構築物、及び構成要素の配列の詳細に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ、本開示を読み取る際に当業者にとって明らかになる様々な方法において、実施されること又は実行されることが可能である。また、本明細書で使用される専門用語及び用語は、説明目的のためであり、限定するものとみなされるべきではないことが理解される。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの均等物、並びに追加的な項目を包含することを意味する。他の実施形態が利用されてもよく、かつ、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的又は論理的な変更がなされてもよいことが理解される。
【0030】
本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数が含まれる(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5などを含む)。
【0031】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される分量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されることを理解されたい。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストに記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求される記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0032】
本開示は、音響吸収体、振動減衰材、並びに/又は防音材及び断熱材として機能する音響吸収充填剤、音響物品、アセンブリ、及びその方法を対象とする。音響物品及びアセンブリは一般に、1つ以上の多孔質層と、1つ以上の多孔質層と接触している1つ以上の音響吸収充填剤と、を含む。任意に、提供される音響物品及びアセンブリは、1つ以上の非多孔質バリア層及び/又は1つ以上の多孔質層に隣接する空気間隙を含む。これらの構成要素のそれぞれの構造的及び機能的特徴を、以下のサブセクションに記載する。
【0033】
音響吸収充填剤
音響吸収充填剤は、ポリマーを含むコア粒子と、コア粒子上にコーティングされた外層とを含む凝集体を含む。少なくとも1つの実施形態では、外層は、ミクロ細孔微粒子(2ナノメートル未満の幅を有する細孔を有する)を含むことができる。
【0034】
コーティング層は、粒子間相互作用を介してコア粒子に保持され得る。このような相互作用は、分散力若しくは静電気力などの分子間力によって、又はある程度の共有結合特性を有する分子内結合によって媒介され得る。いくつかの実施形態では、コーティング層を、コア粒子を軟化させるわずかな圧力及び/又は加熱下でコア粒子に付着させて、冷却時にコーティング層微粒子をコア粒子に融合させて、コーティングされた構造体を形成する。熱は、蒸気、高周波放射、赤外線放射又は加熱空気を含めた、任意の公知の方法を使用して提供され得る。いくつかの実施形態では、コーティング層は、バインダー又は接着剤層を介してコア粒子に保持され得る。いくつかの実施形態では、コア粒子は、熱、光若しくは紫外線電磁放射線、又は誘導化学反応によって活性化され得る接着特性を有し得る。
【0035】
音響吸収充填剤は、規則的な形状であっても、不規則な形状であってもよい。好ましくは、意図する使用において凝結体同士は一緒になっており(機械的に安定又は堅牢であり)、コーティングはコアから実質的に層間剥離(delaminate)しない。
【0036】
ナノスケールの直径を有する開孔を有する多孔質微粒子としては、ゼオライト、コロイド又は分子縮合ゾル-ゲル材料(例えば、キセロゲル又はエアロゲル)、アルミノホスフェート、多孔質アルミナ、マイカ、パーライト、粒状ポリウレタン発泡体粒子、軟質及び硬質鋳型材料、固有ミクロ多孔質のポリマー、イオン交換樹脂、層状化合物、デンドリマー、金属有機構造体(MOF)、層状ケイ酸塩、層状複水酸化物、酸化グラファイト、無機ナノチューブ、多孔質ジビニルベンゼンコポリマー、エッチングブロックコポリマー、多くの種類のバイオマス、並びに多孔質炭素材料が挙げられる。
【0037】
活性炭は、主に炭素原子で構成された複合構造を有する高多孔質炭素質材料である。活性化プロセスは、約1000℃の高温で蒸気及び/又はCO2を使用して(物理的活性化と呼ばれるプロセス)、あるいは場合によっては、より低い温度でリン酸又は水酸化カリウム若しくは亜鉛系化合物のような他の化合物を使用して(化学的活性化と呼ばれるプロセス)実行することができる。活性炭中の細孔のネットワークは、既存のチャネル及び無秩序なSP3炭素と並んで結合しているSP2のナノスケール(グラファイト様)領域を有する炭素のネットワーク内で酸化された新しいチャネルに由来する。これにより、固体炭素フレームワークネットワーク内に多数のピット及び亀裂によって生じた非常に多孔質の構造が作り出される。
【0038】
活性炭の顕著な特徴の1つは、ガス分子の相当量を吸着するその能力である。これは、大部分が、材料内の細孔の表面積が大きいことで生じ、これは、典型的には、10グラム未満の材料に対して、サッカー場の面積(7140m2)程度である。ラウドスピーカーのキャビティなどの囲まれた空間内の多孔質炭素の挙動は、全体的な音響応答を変える周囲空気分子の吸着と一致している。多孔質炭素が限られた空間内で空気分子を吸着する場合、有効空気体積は、多孔質炭素を含まない同じ空間内の空気体積の2倍より大きくなることがある。音響キャビティ内の有効空気体積を膨張させることにより、多孔質炭素は、音響共振をより低い周波数にシフトする傾向がある(低音シフトと呼ばれることが多い現象)。当該技術分野において、活性炭の高い吸着能を伴う類似の現象は、非閉じ込め音響吸収物品において有効であると考えられている(Venegas,The Journal of the Acoustical Society of America 140,755(2016))。これは、吸収の開始における周波数シフトを引き起こし、この周波数シフトは、音響吸収における4分の1波長の短縮(又は音響媒体内の音の速度の減速)として解釈することができ、したがって、従来の吸収体と比較すると、増強された低周波数音響性能を提供する。
【0039】
コア粒子は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエステル、ナイロン、アクリレート、エチレンアクリレート、アクリル、エポキシ、フェノール-ホルムアルデヒド、メラミン-ホルムアルデヒド、ポリブチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックコポリアミドエラストマー、スチレンブロックコポリマーエラストマー、ポリブチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アイオノマー、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマー組成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、コア粒子は、ミクロ細孔材料を含まない。いくつかの実施形態では、コア粒子は、50m2/g未満の比表面積を有する。
【0040】
音響吸収充填剤は、100マイクロメートル~2000マイクロメートル、100マイクロメートル~1000マイクロメートル、100マイクロメートル~900マイクロメートル、若しくは100マイクロメートル~700マイクロメートルのメジアン篩い分け粒径を有し、又はいくつかの実施形態では、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500、1700、若しくは2000マイクロメートルという値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きいメジアン篩い分け粒径を有する。
【0041】
その多孔質の性質により、音響吸収充填剤は、大きな表面積を有し、その結果、吸着能を有することが可能である。大きな表面積を有することは、細孔構造の高度な複雑さと蛇行性とを反映している場合があり、これによって、より大きな内部反射と摩擦損失を通じた固体構造へのエネルギー伝達とをもたらす。これは、空中伝播ノイズの吸収として現れる。音響吸収充填剤の比表面積は、0.1m2/g~600m2/g、0.5m2/g~500m2/g、1m2/g~500m2/g、10m2/g~400m2/gであってもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1m2/g、0.2、0.5、0.7、1、2、5、10、20、50、100、120、150、200、250、300、350、400、450、500、若しくは600m2/gという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、若しくはこれらより大きくてもよい。
【0042】
表面積は、所与の材料の表面上への様々な純粋ガス(二原子窒素ガス又は二酸化炭素など)の収着に基づいて測定することができる。これらの測定は、ガス収着分析器として知られる装置を使用して行うことができる。この測定では、サンプルにガスを投与することによって、等温線(単位質量当たり、標準温度かつ圧力において吸着されたガスの体積対相対圧力)を生成することができる。Brunauer-Emmett-Teller(BET)式として知られるラングミュア式の修正形態を、等温線に適用することによって、表面積を計算することができる。この値は、BET(比)表面積として、又は式中に等温線の複数の点が使用される場合は、多点BET表面積(MBET表面積)として知られている。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される表面積は、BET表面積である。
【0043】
更に、収着のエネルギー論が既知であり、細孔構造の一般的なモデルが存在する場合、熱力学系全体のグランドポテンシャルについての所与の平衡状態(すなわち、グローバルミニマム)に対する固相上の流体の吸着をモデル化することができる。密度汎関数理論(DFT)は、この分析を行うために頻繁に使用され、単純化されたBET式よりも正確な結果を提供する。クエンチ状態DFT(QSDFT)モデルは、固体-固体相互作用のエネルギー論を説明する2成分であるため、利用可能である場合には使用されることが好ましい。これらのDFTモデルは、所与の範囲(又は区間)の細孔直径に対して提供される表面積の量の分析を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される表面積は、特定の範囲の細孔直径についてのQSDFT表面積である。これらの分析から、材料が主にミクロ細孔、メソ細孔、マクロ細孔(50nmより大きい直径を有する細孔)、又は階層的多孔質(小さい細孔がより大きい細孔内に入れ子になっている)を含有するかどうかを決定することもできる。
【0044】
音響吸収充填剤は、0.05cm3/g~2cm3/gの総細孔容積を有し得る。いくつかの実施形態では、総細孔容積は、0.05cm3/g、0.07、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、1.2、1.4、1.6、1.8、又は2cm3/gという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、又はこれらより大きくてもよい。この値は、DFT分析を使用して、又は飽和点(Po)に近い圧力(P)で、典型的には0.995の相対圧力(P/Po)で吸着されたガスの体積の分析によって決定することができる。上述したものと同様に、DFTは、所与の範囲(又は区間)の孔径に対して提供される比細孔容積の量を分析するために使用することもできる。
【0045】
20mm厚の充填床として試験した場合、音響吸収充填剤は、いくつかの実施形態では、低周波数で1つ以上の共鳴ピークを示さないシステムについて、300Hzにおいて0.60、0.50、0.40、0.30、0.20若しくは0.15アルファの、又は300Hzにおいて0.15、0.20、0.30、0.40、若しくは0.50アルファ超の垂直入射音響吸収を有する。
【0046】
音響吸収充填剤は、多孔質層に対して様々な構成で存在してもよい。例えば、多孔質層が不織布繊維層、連続気泡発泡体、又は微粒子床である場合、音響吸収充填剤は、不織布繊維層、連続気泡発泡体、又は微粒子床に埋め込まれてもよい。多孔質層が有孔フィルムを含む場合、音響吸収充填剤は、少なくとも部分的には、複数の開口内に存在し、有孔フィルムを貫通して延びていてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質層に接触している音響吸収充填剤の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、複数の開口内に存在する。あるいは、音響吸収充填剤は、多孔質層に隣接する個別の層として存在してもよい。
【0047】
本開示の音響吸収充填剤は、多孔質微粒子、例えば、純粋なミル粉砕されていない活性炭のみを含む充填剤よりも低い比表面積及び細孔容積を有するが、充填床構成において、又は音響物品に組み込まれた場合に、同等又は改善された音響性能を有することができる。本開示の音響吸収充填剤は、その非ミクロ細孔コアのために、より低い比表面積を有するが、当技術分野において既知であるものとは対照的に、はるかに大きな表面積を有する粒子の性能に匹敵することができる。
【0048】
多孔質層
提供される音響物品は、1つ以上の多孔質層を含む。有用な多孔質層としては、不織布繊維層、有孔フィルム、微粒子床、連続気泡発泡体、ネット、織布、構造化フィルム、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
微細繊維を含有する設計された不織布繊維層は、航空宇宙用途、自動車用途、輸送用途、及び建築用途において有効な吸音材であり得る。複数の微細繊維を有する不織布材料は、構造の表面積が、音エネルギーの粘性消散を促進するレジームである高い音周波数で特に効果的であり得る。不織布層は、ガラス繊維、玄武岩、ケイ酸塩化合物、アルミナ、及びアルミノケイ酸塩などの無機材料から作製されてもよい。ポリマー不織布層は、例えば、メルトブロー又は溶融紡糸によって作製することができる。
【0050】
メルトブローでは、1つ以上の熱可塑性ポリマー流は、緊密に配列されたオリフィスを含むダイを通って押し出され、高速で熱風の収束流によって減衰され、微細繊維を形成する。これらの微細繊維を表面に捕集して、メルトブロー不織布繊維層を提供することができる。選択された操作パラメータ、例えば溶融状態からの固化の度合いに応じて、捕集された繊維は半連続的又は本質的に不連続であり得る。特定の例示的な実施形態では、本開示のメルトブロー繊維は、分子レベルで配向されていてもよい。繊維は、溶融物中の欠陥、形成されたフィラメントの交差、繊維の細径化に使用される乱流による過剰な剪断、又は形成プロセスで生じる他の事象によって中断され得る。これらは、一般に、半連続的であるか、又は繊維の絡み合い間の距離よりもはるかに長い長さを有することが分かっており、そのため個々の繊維を端から端までそのままの状態で繊維塊から除去できない。
【0051】
溶融紡糸では、不織布繊維は、一組のオリフィスからフィラメントとして押し出され、冷却及び固化されて繊維を形成する。フィラメントを、移動する空気流が含まれ得る空気空間に通し、フィラメントを冷却し、細径化(つまり、延伸)ユニットを通過させ、フィラメントを少なくとも部分的に延伸するのを支援する。溶融紡糸法で作製された繊維は「スパンボンド」することができ、それにより、一組の溶融紡糸繊維を含むウェブが繊維ウェブとして捕集され、任意に、繊維を互いに融着させるための1つ以上の結合操作に供される。溶融紡糸繊維は一般に、メルトブロー繊維よりも直径が大きい。
【0052】
繊維は、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、又はそれらのコポリマー若しくはブレンドから選択されるポリマーから、複数の繊維の全重量を基準にして、少なくとも35重量%の量で作製することができる。好適な繊維材料としては、エラストマーポリマーも挙げられる。
【0053】
脂肪族ポリエステル繊維に基づく不織布層は、高温用途での分解(degradation:劣化)又は収縮に抗するのに特に有利であり得る。有用な脂肪族ポリエステルの分子量は、15,000g/mol~6,000,000g/mol、20,000g/mol~2,000,000g/mol、40,000g/mol~1,000,000g/molの範囲であってもよく、又はいくつかの実施形態では、15,000g/mol;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;100,000;200,000;500,000;700,000;1,000,000;2,000,000;3,000,000;4,000,000;5,000,000;若しくは6,000,000g/molという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、若しくはこれらより大きくてもよい。
【0054】
不織布繊維層のメルトブロー繊維又は溶融紡糸繊維は、任意の好適な直径を有することができる。繊維は、0.1マイクロメートル~10マイクロメートル、0.3マイクロメートル~6マイクロメートル、0.3マイクロメートル~3マイクロメートルのメジアン径を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1マイクロメートル、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、若しくは50マイクロメートルという値について、これら未満の、これらと等しい、若しくはこれらより大きいメジアン径を有してもよい。
【0055】
任意に、不織布繊維層における複数の繊維のうちの少なくとも一部は、互いに又は音響吸収充填剤に、物理的に結合される。点結合法によって、又は平滑なカレンダーロールによって適用された熱及び圧力を使用する従来の結合手法を使用することができるが、このような方法は、繊維の望ましくない変形又はウェブの圧縮を引き起こす場合がある。任意に、繊維同士の間、又は繊維と音響吸収充填剤との間の付着を、不織布繊維層にバインダーを組み込むことによって達成してもよい。いくつかの実施形態では、バインダーは、液体又は固体粉末によって提供される。いくつかの実施形態では、バインダーは、メルトブロープロセス中にポリマー流に注入され得る、バインダー短繊維によって提供される。バインダー繊維は、残りの構造繊維の溶融温度よりも有意に低い溶融温度を有し、繊維同士を互いに固定するように作用する。繊維を結合するための他の手法は、例えば、米国特許出願公開第2008/0038976号(Berriganら)及び米国特許第7,279,440号(Berriganら)に教示されている。手法の1つは、捕集された繊維のウェブを、制御された加熱及び急冷操作に供することを伴い、この操作には、ウェブに、繊維を軟化させるのに十分な温度まで加熱された気体流を強制的に十分に通過させて、繊維の交差点で繊維を共に結合させることが含まれ、ここで、加熱された流れは適用される期間が短すぎるため繊維を完全には溶融しておらず、次いで、ウェブに、加熱された流れよりも少なくとも50℃低い温度の気体流を直ちに強制的に通過させて、繊維を急冷することが含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態では、2つの異なる種類の分子相が繊維内に存在する。例えば、主に半結晶の相は、主に非晶質の相と共存してもよい。別の例として、主に半結晶の相は、結晶秩序がより低いドメイン(例えば、ポリマーが鎖延長されていないもの)、及び結晶化度に対して全体的な秩序度が不十分である非晶質のドメインを含有する相と共存してもよい。このような繊維は、上記のように加熱下で加工して、不織布繊維層を形成することもできる。
【0057】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層の繊維は、結合操作中に繊維構造を実質的に溶融又は喪失しないが、それらの元の繊維寸法を有する個別の繊維として残る。
【0058】
いくつかの実施形態では、繊維ポリマーは、高いガラス転移温度を呈し、これは高温用途での使用に望ましい場合がある。特定の不織布繊維層は、断熱材料としての使用など、後続の加工又は使用において、中程度の温度までであっても加熱された場合に著しく収縮する。このような収縮は、メルトブロー繊維が熱可塑性ポリエステル又はそのコポリマー、特に本質的に半結晶性のものを含む場合に問題となることが示されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、提供される不織布繊維層は、高密度化されていない層に隣接する少なくとも1つの高密度化層を有する。高密度化層及び非高密度化層のいずれか又は両方に、音響吸収充填剤を充填してもよい。高密度化層及び隣接する非高密度化層を、一様な密度を有する不織布繊維層の一体層から調製することは費用効果が高くなり得る。
【0060】
提供される方法は、所望であれば、層全体にわたるポリマー繊維の一様な分布を有する高密度化層を提供することができる。あるいは、ポリマー繊維の分布は、不織布繊維層の主表面にわたって意図的に非一様にすることができ、このことにより、主表面に沿ったその位置に基づいて、音響応答を調整することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層の高密度化部分及び非高密度化部分のメジアン繊維径は、実質的に同じである。これは、例えば、繊維を著しく溶融させることなく、高密度化領域内で繊維を互いに融着させることができる方法によって実現することができる。繊維の溶融を回避することにより、不織布繊維層の高密度化層内でもたらされた表面積に由来する音響効果を維持することができる。
【0062】
設計された不織布繊維層は、多数の利点を呈すことができ、そのうちのいくつかは予想外のものである。これらの材料は、従来の断熱材が熱劣化又は破損し得る高温での断熱用途及び防音用途に使用することができる。特に要求が厳しいのは、自動車及び航空宇宙のビークル用途であり、断熱材は、ノイズが大きいのみではなく、極端な温度に達する可能性がある環境で機能する。
【0063】
提供される不織布層は、自動車及び航空宇宙用途において遭遇する可能性がある150℃以上の温度での収縮に抗することができる。収縮は、熱曝露又は加工中の結晶化から生じ得るものであり、音響性能を低下させ、製品の構造一体性に影響を与える可能性があるため、一般に望ましくない。提供される不織布繊維層は、米国特許出願公開第2016/0298266号(Zilligら)に記載の収縮試験方法を用いて測定した場合、150℃まで7日間加熱した後、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の収縮を示し得る。このような収縮値は、機械方向及び横断方向の両方に沿って適用することができる。いくつかの実施形態では、音響吸収充填剤を不織布層の隙間に配置することにより、高温での収縮度を更に低減することができる。
【0064】
更なる利点として、高密度化層により、不織布繊維層が熱的に成形され、寸法安定性のある三次元構造となることができる。このような構造に基づく物品及びアセンブリは、カスタマイズされた三次元形状を有する基材に適合するように形作ることができる。特定の用途向けに物品又はアセンブリの形状をカスタマイズすることにより、空間の使用が最適化され、例えば自動車又は航空宇宙の構成要素への取り付けが簡素化される。これらの形作られた構造は寸法安定性があるため、これらの物品及びアセンブリはまた、元の平面構成に戻る傾向がある従来の防音及び断熱製品と比較して層間剥離(de-lamination)のリスクを低減する。
【0065】
更に別の利点は、高温で機能し、かつ寸法安定性があるだけでなく、ウェブの高密度化部分及び非高密度化部分の両方の内でそれらの全体の表面積も維持する不織布繊維層を作製できることに関連する。繊維(特に狭い直径を有するもの)の表面によって提供される表面積の保持は、音響吸収充填剤と組み合わせて、材料が、物品の構造における熱誘導不安定性による性能の低下を被らないことを可能にする。不織布繊維層のノイズ消散性は、音圧波の運動エネルギーが熱に変換される繊維表面での粘性消散に基づいているため、外部表面積、すなわち内部多孔質に含まれていないものは関連がある。
【0066】
単一層から不織布繊維ウェブを製造する場合、複数の層を含む物品を製造するために使用される方法と比較して、加工及びウェブ処理工程を減らす必要がある。その性能特性を維持しながら、最終製品中の層の数を低減することにより、製造を簡素化し、関連するコストを削減する。
【0067】
音響物品に使用され得る他の不織布繊維層としては、ショディと呼ばれることもある、再生織物繊維が挙げられる。再生織物繊維、短繊維、無機繊維、及び天然繊維は、ドラム内側に負圧を有する有孔捕集ドラム上に、空気の壁が繊維を吹き付ける、エアレイドプロセスを使用して不織布構造に形成することができる。空気はドラムを通して引かれ、繊維はドラムの外側に捕集され、ウェブとして除去される。空気の乱流のため、繊維はいずれの秩序配向でもなく、したがって、全ての方向で比較的一様な強度特性を発揮することができる。
【0068】
音響物品に使用され得る他の不織布繊維層としては、ウェットレイドプロセス(wet laid process)を使用して作製されたものが挙げられる。ウェット堆積プロセス又は「ウェットレイド」プロセスは、(a)少なくとも1種の分散液(好ましくは水)中に1種類以上の繊維、任意にポリマーバインダー、及び任意に粒子充填剤を含む分散体を形成することと、(b)分散体から分散液を除去することと、を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の繊維集団が不織布繊維層に組み込まれる。繊維集団間の差異は、例えば、組成、メジアン繊維径、メジアン繊維長、及び/又は繊維形状に基づき得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層は、10マイクロメートル未満のメジアン径を有する複数の第1の繊維と、少なくとも10マイクロメートルのメジアン径を有する複数の第2の繊維と、を含むことができる。様々な理由から、異なる直径の繊維を有することが有利であり得る。より太い第2の繊維を含むことによって、不織布繊維層の弾力性、破砕抵抗を改善することができ、ウェブの全体的な嵩高性を保つのに役立つ。第2の繊維は、第1の繊維に関して前述したポリマー材料のいずれかから作製することができ、メルトブロープロセス又は溶融紡糸プロセスから作製されてもよい。
【0071】
不織布層の繊維は、望ましい機械的特性、音響特性、及び/又は熱特性を提供するために、任意の好適な繊維径を有することができる。例えば、第1及び第2の繊維のいずれか又は両方は、少なくとも10マイクロメートル、10マイクロメートル~60マイクロメートル、20マイクロメートル~40マイクロメートルのメジアン繊維径を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、10マイクロメートル、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、32、35、37、40、45、50、55、若しくは60マイクロメートルという値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きいメジアン繊維径を有してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、第2の繊維は、第1の複数の繊維と混ざった短繊維である。短繊維は、バインダー繊維及び/又は構造繊維を含むことができる。バインダー繊維としては、上述のポリマー繊維のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。好適な構造繊維としては、上述のポリマー繊維のいずれか、その他にセラミック繊維、ガラス繊維、及び金属繊維などの無機繊維;並びにセルロース繊維などの生物学的に誘導された繊維を挙げることができるが、これらに限定されない。不織布層への短繊維のブレンドは、カーディングと呼ばれることもある。
【0073】
第1及び第2の繊維の組み合わせに関連する追加の選択肢及び利点は、例えば、米国特許第8,906,815号(Mooreら)に記載されている。
【0074】
多孔質層は、本質的に繊維質のものである必要はない。例えば、1つ以上の多孔質層は、有孔フィルムを使用する。有孔フィルムは、貫通して延びている多数の穿孔、すなわち貫通孔を有するフィルム又は壁から構成される。穿孔により、フィルム又は壁の一方の側から反対側への圧力波の伝播が可能になる。
【0075】
穿孔内に封入されているのは、共振システム内の質量構成要素として作用する空気のプラグである。これらの質量構成要素は、穿孔内で振動し、空気のプラグと穿孔の壁との間の摩擦によって音エネルギーを散逸させる。有孔フィルムが空気キャビティに隣接して配置される場合、音エネルギーの散逸はまた、穿孔の入口において、反対方向から反射されて穿孔に向かって戻る任意の音波による、弱め合う干渉を通じても起こり得る。音エネルギーの吸収は、音響物品を通る流体の正味の流れが本質的にゼロの場合に生じ得る。
【0076】
穿孔は、所与の周波数範囲にわたって所望の音響性能を得るのに好適な寸法(例えば、穿孔直径、形状、及び長さ)を備えることができる。音響性能は、例えば、有孔フィルムから音を反射させ、対照サンプルの結果と比較した近距離減衰の結果として音響強度の低下を特徴付けることにより、測定することができる。
【0077】
穿孔は、有孔フィルムの表面全体にわたって配置され得る。あるいは、壁は、部分的にのみ穿孔されていても、すなわち、一部の領域では穿孔されているが、他の領域では穿孔されていなくてもよい。特定の例では、壁の有孔領域は、長手方向に沿って延び、1つ以上の非有孔領域に隣接していてもよい。例えば、壁は、1つ又は2つの有孔側面のみを有する矩形の断面チューブを有し得る。
【0078】
穿孔は、広範な形状及びサイズを有することができ、多様な成形、カッティング又は打ち抜き操作のいずれかによって生成することができる。穿孔の断面は、例えば、円形、正方形又は六角形であり得る。いくつかの実施形態では、穿孔は細長いスリットのアレイによって表される。穿孔は、それらの長さに沿って一様である直径を有してもよいが、円錐台の形状を有するか、そうでなければ、少なくとも一部の長さに沿ってテーパ状になった側壁を有する穿孔を使用することが可能である。穿孔の側壁をテーパ状にすることは、後述するように、音響吸収充填剤が穿孔内に受容されることを可能にするのに有利であり得る。様々な穿孔構成及びそれを作製する方法は、米国特許第6,617,002号(Wood)に記載されている。
【0079】
任意に、穿孔は互いに対して、概ね一様な間隔を有する。その場合、穿孔は、二次元格子パターン又は互い違いのパターンで配列されてもよい。穿孔はまた、隣接する穿孔間の正確な間隔が一様ではないが、それでもなお穿孔が肉眼で見えるスケールで壁にわたって均等に分布しているランダム化構成で壁に配置され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、穿孔は、壁全体にわたって本質的に一様な直径のものである。あるいは、穿孔は、直径のいくらかの分布を有し得る。いずれの場合でも、穿孔の平均最小直径は、10マイクロメートル、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、150、170、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又は5000マイクロメートルという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、又はこれらより大きくてもよい。明確にするために記すと、非円形の孔の直径は、本明細書では、平面図で非円形の孔と同等の面積を有する円の直径として定義される。
【0081】
他の多孔質層と比較して、有孔フィルムは、音響吸収特性を保持しながら比較的薄くすることができる。有孔フィルムは、1マイクロメートル~2ミリメートル、30マイクロメートル~1.5ミリメートル、50マイクロメートル~1ミリメートルの全厚を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、5、10、20、30、40、50、100、200、500、700マイクロメートル、1ミリメートル、1.1、1.2、1.5、1.7、若しくは2ミリメートルという値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きい全厚を有してもよい。いくつかの実施形態では、有孔フィルムの代わりに有孔スラブが使用され、有孔スラブは、最大3ミリメートル、5、10、30、50、100、又は更には200ミリメートルの厚さを有する。有孔フィルムの多孔率は、フィルムが占めていない所与の体積の割合を表す無次元の数量である。簡略化された表現では、穿孔は円筒形であるとみなすことができ、その場合、多孔率は、平面図において穿孔によって置き換えられた壁の表面積の百分率によってよく近似される。例示的な実施形態では、壁は、0.1%~10%、0.5%~10%、又は0.5%~5%の多孔率を有し得る。いくつかの実施形態では、壁は、0.1%、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%という値について、これら未満の、これらに等しい、又はこれらより大きい多孔率を有する。
【0082】
フィルム材料は、関連する周波数を有する入射音波に応答して振動するように好適に調整された弾性率(例えば、曲げ弾性率)を有することができる。穿孔内の空気プラグの振動と共に、壁自体の局所的な振動が音エネルギーを散逸させ、音響物品を通じた伝達損失を増強することができる。壁の曲げ弾性率は、剛性を反映して、その音響伝達インピーダンスにも直接影響する。
【0083】
いくつかの実施形態では、フィルムは、0.2GPa~10GPa、0.2GPa~7GPa、0.2GPa~4GPaの曲げ弾性率を有する材料を含み、又はいくつかの実施形態では、0.2GPa、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、若しくは210GPaという値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きい曲げ弾性率を有する材料を含む。
【0084】
好適な熱可塑性ポリマーは、典型的には、0.2GPa~5GPaの範囲の曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、繊維又は他の充填剤の添加により、これらの材料の曲げ弾性率を20GPaまで高めることができる。熱硬化性ポリマーは一般に、5GPa~40GPaの範囲の曲げ弾性率を有する。有用なポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタン及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0085】
可撓性フィルム内に配置された複数の穿孔に起因し得る音響性能特徴は、例えば、米国特許第6,617,002号(Wood)、同第6,977,109号(Wood)、及び同第7,731,878号(Wood)に記載されている。音響吸収特性を含むフィルムの全体的な特性を向上させるために、フィルムの穿孔に音響充填剤粒子を充填することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、多孔質層は微粒子床を含む。粒子床は、ミル粉砕されたポリマー顆粒、ガラスビーズ、若しくはセラミック材料などの非多孔質材料、又はクレイ、パーライト、若しくはバイオマスの顆粒などの多孔質材料を含有してもよい。微粒子床の粒子のうち、音響的に活性である音響吸収充填剤がなくてもよく、一部又は全てが音響的に活性である音響吸収充填剤であってもよい。微粒子床の多孔率は、部分的には、粒子のサイズ分布に基づいて調節することができる。粒子は、100マイクロメートル~2000マイクロメートル、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、10マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲であってもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1マイクロメートル、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50、70、100、200、300、400、500、700、1000、1500、若しくは2000マイクロメートルという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、若しくはこれらより大きくてもよい。
【0087】
多孔質層は一般に、比音響インピーダンス、すなわち、周波数空間における層の両側の圧力差と層表面に接近する実効速度との比によって特徴付けることができる。穿孔を有する剛性フィルムに基づく理論モデルでは、例えば、速度は、孔の中及び外に移動する空気から導出される。フィルムが可撓性である場合、壁の動きは音響インピーダンスの計算に寄与する可能性がある。比音響インピーダンスは一般に、周波数の関数として変化し、かつ複素数であり、これは、圧力及び速度の波が互いに位相を外れ得るという事実を反映している。
【0088】
本明細書で使用する場合、比音響インピーダンスはMKS Raylsで測定され、ここで、1MKS Raylは1パスカル秒/メートル(Pa・s・m-1)に等しいか、又は同等に1ニュートン秒/立方メートル(N・s・m-3)、あるいは1kg・s-1・m-2である。
【0089】
多孔質層は、その伝達インピーダンスによって特徴付けることもできる。有孔フィルムについては、伝達インピーダンスは、多孔質層の入射側の音響インピーダンスと、有孔フィルムが存在しない場合に観測される音響インピーダンス、すなわち、空気キャビティのみの音響インピーダンスとの間の差である。
【0090】
流動抵抗は、伝達インピーダンスの低周波数限界である。実験的に、これは、多孔質層に既知の低速の空気を吹き込み、それに関連する圧力低下を測定することによって推定することができる。流動抵抗は、測定された圧力低下を速度で除算して決定することができる。
【0091】
有孔フィルムを含む実施形態では、有孔フィルムのみを通る流動抵抗(音響吸収充填剤がない)は、50MKS Rayls~8000MKS Rayls、100MKS Rayls~4000MKS Rayls、又は400MKS Rayls~3000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、有孔フィルムを通る流動抵抗は、50MKS Rayls、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000MKS Raylsという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、又はこれらより大きくてもよい。
【0092】
不織布繊維層を含む実施形態では、不織布繊維層のみを通る流動抵抗(音響吸収充填剤がない)は、50MKS Rayls~8000MKS Rayls、100MKS Rayls~4000MKS Rayls、又は400MKS Rayls~3000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、不織布繊維層を通る流動抵抗は、50MKS Rayls、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000MKS Raylsという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、又はこれらより大きくてもよい。
【0093】
音響物品全体を通る流動抵抗は、1000MKS Rayls~10,000MKS Rayls、又は2500MKS Rayls~7000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、音響物品全体を通る流動抵抗は、1000MKS Rayls、1100、1200、1500、1700、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、9000、又は10,000MKS Raylsという値について、これら未満であるか、これらに等しいか、又はこれらより大きい。
【0094】
音響物品
1つの例示的な実施形態による音響物品が
図1に示され、以降はそれぞれの番号100によって参照される。
図1では、該当する場合、入射音波と反射音波の方向が棒線の矢印で表される。
【0095】
物品100は、3つの主要層から構成される。層は、以下の順序で、第1の多孔質層102、第2の多孔質層104、及び第3の多孔質層106を含む。任意に、及び示されるように、多孔質層102、104、及び多孔質層104、106は、互いに直接接触している。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の層がこれらの層の間に配置されてもよく、又は多孔質層102、106の外部に面する主表面に沿って延びてもよい。あるいは、多孔質層102、106の一方又は両方を除外することができる。
【0096】
物品100では、多孔質層102、104、106は繊維不織布層として図示されているが、上記の「多孔質層」と題するサブセクションで詳細に説明されるように、他の種類の多孔質層(例えば、連続気泡発泡体、微粒子床、有孔フィルム)を代わりに使用してもよいことを理解されたい。
図1に示されるように、第2の多孔質層104は音響吸収充填剤108を含み、多孔質層102、106は、音響吸収充填剤を実質的に欠いている。
【0097】
多孔質微粒子などの望ましい音響特性を有する音響吸収充填剤は、第2の多孔質層104内の複数の繊維内に捕捉されている。音響吸収充填剤は、第2の多孔質層104及び第2の多孔質層104に接触している音響吸収充填剤の全重量に対して、1重量%~99重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%の量で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、1重量%、2、3、4、5、7、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、若しくは99重量%という値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きい量で存在してもよい。
【0098】
任意に、示されていないが、音響吸収充填剤は、第2の多孔質層104に部分的にのみ捕捉され、一部の音響吸収充填剤が第2の多孔質層104の外側に存在してもよい。
【0099】
有利には、多孔質微粒子から構成される音響吸収充填剤の添加により、50Hz~1000Hzの音周波数などの低音周波数での音響物品の音響的吸収を実質的に増加させることができる。更に、活性炭から構成される音響吸収充填剤の添加により、2000~10000Hzの周波数でのランダム入射音響測定(例えば、アルファキャビン試験)においてアルファが0.7を超えるように、中~高周波数(1000Hz~10,000Hz)での音響物品の音響的吸収を増加させることができる。いくつかの実施形態では、音響吸収充填剤の添加により、50Hz、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、400、500、700、1000、2000、3000、4000、5000、7000、又は10,000Hzという値について、これら未満の、これらに等しい、又はこれらより大きい音周波数にわたって音響物品の音響的吸収を実質的に増加させることができる。
【0100】
図示されている実施形態では、第3の多孔質層106は、第1の多孔質層102の厚さよりも著しく大きい厚さを有する。
【0101】
これらの構築物では、一方の多孔質層は、他方の多孔質層の厚さの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%という値について、これら未満の、これらに等しい、又はこれらより大きい厚さを有し得る。
【0102】
提供される音響物品は、好ましくは、当面の用途における空間的制約内で所望の音響性能を達成する全厚を有する。個々の多孔質層は、1マイクロメートル~10センチメートル、30マイクロメートル~1センチメートル、50マイクロメートル~5000ミリメートルの全厚を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、5、10、20、30、40、50、100、200、500マイクロメートル、1ミリメートル、2、3、4、5、7、10、20、50、70、若しくは100ミリメートルという値について、これら未満の、これらに等しい、若しくはこれらより大きい全厚を有してもよい。
【0103】
多孔質層106は、全音響構造の低周波数性能を改善する抵抗材料として機能することができる。多孔質層106はまた、粒子充填多孔質層104に到達すると音波の反射を誘発する傾向がある音響粒子速度(すなわち、流体相中の空気分子の)を低減することができる。このシナリオでは、音響インピーダンス(圧力/速度)は速度がゼロに近づくにつれ非常に高くなるため、反射が発生しやすくなる。しかしながら、音響粒子の存在は、前述のように空気分子の可逆的吸着/脱着によって、又は細孔ネットワーク内への空気分子の拡散輸送などの他の機構によって誘発される圧力低減層として作用することができる。圧力を下げると、音響インピーダンスも低下し、音の一部が透過することができ、かつ音響物品100内のより多くの音エネルギーの捕捉が助長され、ひいては音響性能が改善される。
【0104】
この実施形態では、音響吸収充填剤は、互いに及び任意の多孔質層から実質的に分断されている。すなわち、音響吸収充填剤の粒子は、互いに物理的に付着せず、周囲の構造から独立して少なくとも限定された移動又は揺動が可能である。これらの例では、捕捉されている粒子は、繊維自体とはほとんど独立して、不織布材料の繊維内で移動及び振動することができる。
【0105】
あるいは、音響吸収充填剤の少なくとも一部は、音響吸収充填剤が配置される多孔質層に、物理的に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、これらの物理的結合は、熱を適用すると粘着性となって、充填剤粒子に接着することができるバインダー(例えばバインダー繊維)を、多孔質層に組み込むことによって生じる。音響吸収充填剤の音響特性を維持するためには、一般に、バインダーが充填剤粒子の細孔に、有意に流入しないことが好ましい。
【0106】
基材としては、自動車又は航空機の部品、及び建築用基材などの構造部品が挙げられる。構造例としては、成形パネル(例えば、ドアパネル)、航空機フレーム、壁内断熱材及び一体型ダクトが挙げられる。基材としては、カーペット、トランクライナー、フェンダーライナー、ダッシュボードの全面、床組、壁パネル及びダクト断熱材などの、これらの構造例に隣接する部品も挙げることができる。場合によっては、フードライナー、ヘッドライナー、航空機パネル、ドレープ及び天井タイルでは、基材を音響物品から離し、間隔をあけることもできる。これらの材料の更なる用途としては、濾過媒体、外科用ドレープ及び拭き取り用品、液体及び気体用フィルタ、衣類、ブランケット、家具、輸送機関(例えば、航空機、回転翼機、列車、及び自動車のビークル用)、農業用途用の車輪付き又は無限軌道ビークル(例えば、トラクター、コンバイン)、工業用途用の車輪付き又は無限軌道ビークル(例えば、掘削機、ブルドーザ、移動掘削機器)、電子機器(例えば、テレビ、コンピュータ、サーバ、データ記憶装置、及び電力供給用)、空気量調整ハンドルシステム、内張り並びに個人保護具が挙げられる。
【0107】
製造方法
提供される音響物品は、複数の好適な製造方法のいずれかを使用して組み立てることができる。
【0108】
音響吸収充填剤は、様々なコーティング処理によって、例えば、多孔質微粒子(及び任意選択のバインダー)をコアポリマー粒子にスプレーコーティングすることによって形成することができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、コア粒子は、吸収性充填剤の付着を可能にするために接着剤で予めコーティングされ得る。他の実施形態では、これは必須ではない。
【0109】
いくつかの実施形態では、コア粒子は、流動化させ、バインダーと、溶媒と、多孔質微粒子との混合物を噴霧することができる。この処理の一例は、流動床コーティングであり得る。コーティングされた粒子は、任意に、加熱又は種々の形態の電磁放射線への曝露によって後処理され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、コア粒子を容器内で撹拌することができ、多孔質粒子と流体及び/又はバインダーとの混合物を導入することができる。ドラムコーティングなどの低剪断処理を利用することができるか、又は高剪断方法を使用することができる。一度コーティングが完了した後で、コーティングされた粒子を更に処理することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、コア粒子を多孔質微粒子の床に入れ、適用圧力下又は非適用圧力下のいずれかで加熱することができる。次いで、これらのコーティングされた粒子を、更なる処理のために回収することができる。
【0112】
音響吸収充填剤はまた、特定のパラメータを調節することによって、高剪断混合又は低剪断混合のために設計された機器において形成され得る。この機器では、コア粒子上に好適なコーティングが存在するようになるまで、コア粒子、多孔質微粒子、及びバインダー溶液を混合することができる。次いで、これらのコーティングされた粒子を後処理することができる。
【0113】
多孔質層が不織布繊維ウェブである実施形態では、音響吸収充填剤は、繊維の直接形成中又はその後のいずれかに、構成体繊維に組み込むことができる。不織布繊維ウェブがメルトブロープロセスを使用して作製される場合、例えば、音響吸収充填剤を回転捕集ドラムに吹き付けながら、音響吸収充填剤を搬送して溶融ポリマーの流れと共混合してもよい。音響吸収充填剤は、メルトブロー繊維を細径化するために使用される熱風と収束する、加熱空気のフローに同伴させてもよい。例示的なプロセスは、米国特許第3,971,373号(Braun)に記載されている。同様に、音響吸収充填剤の粒子を、再生織物繊維(すなわちショディ)から作製された多孔質層を製造するためのプロセスの使用など、エアレイドプロセス中に搬送することもできる。
【0114】
音響吸収充填剤は、不織布繊維層が作製された後に添加することもできる。例えば、不織布繊維層の多孔性によって、音響吸収充填剤を水などの液体媒体中に均一に分散させた後、この粒子充填媒体を不織布多孔質層上にロールコーティング又はスラリーコーティングすることで、音響吸収充填剤は隙間空間に浸透することができる。液体媒体を使用する代わりに、音響吸収充填剤を空気流などの気体流に同伴させ、次いで、この流れを不織布層に誘導して充填することができる。
【0115】
あるいは、撹拌によって、音響吸収充填剤を多孔質層に捕捉することもできる。この方法の一実施形態では、不織布繊維層を平坦な表面の上に置き、コーティング領域を画定するための円筒形導管をその上に置く。次いで、音響吸収充填剤の粒子を導管に注ぎ込み、開孔を通じて粒子が不織布構造体に十分に移動するまで、アセンブリを撹拌することができる。連続気泡発泡体から構成される多孔質層には、同様の方法が使用され得る。
【0116】
多層音響物品の構築及び基材への付着には、1つ以上の積層(lamination)工程を含めることができる。積層は、接着結合を使用して達成され得る。好ましくは、使用する接着剤層はいずれも、吸収層への音の透過を妨げない。代わりに又は組み合わせて、繊維同士の物理的な絡み合いを使用して、層間接着を改善することができる。例えば、締結具を使用した機械的結合も可能である。
【0117】
音響物品はまた、粒子の脱出を防止するために、縁部封止されることもある。このような封じ込めは、縁部を高密度化すること、縁部に樹脂を充填すること、音響物品をキルト加工すること、又は音響物品をスリーブ内に完全に包み込むことで、粒子の移動又は脱出を防止することによって達成することができる。縁部封止は、製品寿命、耐久性を改善し、取り扱い及び取り付けを容易にするために望ましい場合がある。縁部封止はまた、審美的理由のために行われることもある。
【0118】
更に別の実施形態では、不織布繊維層は接着剤を、次いで充填剤粒子を、順次噴霧され得る。いくつかの例では、接着剤は、ホットメルト繊維の形態で提供され得る。
【0119】
以下の実施例は、本開示の例示を目的としたものであって限定的なものではない。
【実施例】
【0120】
【0121】
試験手順
走査型電子顕微鏡撮像
撮像の前に、サンプルを薄いパラジウム-金合金又は金層でスパッタコーティングした。撮像のために、2つの走査型電子顕微鏡(SEM)のうちの1つを交換可能に使用した。第1のSEMは、Hitachi High-Technologies America,Inc.,Schaumburg,ILから「TM-3000」の商品名で入手し、プローブ電流/加速電圧について分析モードに設定した。第2のSEMは、「FEI PHENOM」(同等であると考えられるモデルは、現在、NanoScience Instruments,Phoenix,AZから「PHENOM G1」の商品名で入手可能である)であり、5kVの加速電圧で使用した。
【0122】
垂直入射吸音
キット(Bruel&Kjaer.Naerum,Denmarkから「IMPEDANCE TUBE KIT(50HZ-6.4KHZ)TYPE 4206」の商品名で得られる)を使用した。垂直入射吸音は、以下に指定した変更を加えて、ASTM E1050-12「Standard Test Method for Impedance and Absorption of Acoustical Materials Using a Tube,Two Microphones and a Digital Frequency Analysis System」に従って試験した。インピーダンス管は直径63ミリメートル(mm)で垂直に配向され、マイクロフォンはサンプルチャンバの上にあった。粒子サンプルについては、粒子を管のサンプルチャンバに注ぎ、床の厚さは20mmであった。充填不織布サンプルについては、63mmのパンチを使用してディスクを打ち抜き、サンプルチャンバを媒体の厚さに等しい深さに設定した。充填フィルムサンプルについては、サンプルを68mmのディスクとして試験し、20mmの間隙高さに設定した、サンプルチャンバのリップに載置した68mmの金属スクリーンの上に直接置いた。垂直入射吸収係数は、省略形「α」を使用して、1/3オクターブバンド周波数に関して報告した。
【0123】
嵩密度
嵩密度を、メスシリンダーにその容量の30パーセント以上まで測定試料を充填したことを除いて、ASTM D2854-09に従って測定した。
【0124】
骨格密度
骨格密度を、ASTM D5550-14に従って測定したが、以下の違いがあった。10.2に記載された粉砕工程は、粒子が既に砂と同様のサイズであったため省略した。ピクノメトリーのために、ヘリウムガスピクノメータ(Micromeritics,Norcross,GAから「ACCUPYC II 1340 TEC」の商品名で得られる)を使用した。測定値を得る前に、指定の追跡可能な体積の金属球を使用して、測定する体積について装置を較正した。測定には3.5ccカップを使用し、周囲温度で測定値を取得した。
【0125】
ガス収着
材料は、二ステーションガス収着分析器(Anton Paar QuantaTec Inc.,Boynton Beach,FLから「AUTOSORB IQ2-MP」の商品名で得られる)を使用して分析した。試料を直径9mmのサンプル管に充填し、75℃で少なくとも12時間、100mTorr(13.3Pa)未満まで脱気した。KOWA及びGW-Hサンプルを200℃で12時間脱気した。ヘリウムを空隙体積の決定に使用し、これは測定中に定期的に行った。77Kの窒素ガスを用いて等温線を測定し、吸着剤として炭素、吸着質として77Kの窒素、及びスリット状細孔形状を有するカーネルを用いて、クエンチ状態密度汎関数理論(QSDFT)分析を行った。炭素含有サンプルについては0.02~0.1P/Po、他のサンプルについては0.05~0.35P/Poの吸着ブランチに対する点を使用して、多点Brunauer-Emmett-Teller(MBET)式の適用を行った。総細孔容積は、およそ0.995P/Poで取得された吸着ブランチ上の点を用いて計算した。
【0126】
熱重量分析
TG/DTA Simultaneous Measuring Instrument(株式会社島津製作所、京都、日本から「DTG-60AH」の商品名で得られる)を使用して、熱重量分析(TGA)を行った。酸化アルミニウム坩堝を、参照パン及びサンプルパンの両方に使用した。分析は、空気のフロー(20mL/分)下、5℃/分の速度で300℃まで、その温度で1時間の保持時間、及び5℃/分の速度で1000℃までの追加の傾斜で実行した。
【0127】
不織布サンプル厚さ測定
直径5.25インチ(13.34cm)のディスクのサンプル厚さを、5cm×12.5cmの寸法の試験器フット部を有する厚さ試験ゲージを使用して、150Paの適用圧力において測定した。
【0128】
通気抵抗試験
通気抵抗(AFR)試験は、ASTM C-522-03(2009年再承認)、「Standard Test Method for Airflow Resistance of Acoustical Materials」に従って、静的通気抵抗計(「SIGMA」の商品名で得られ、「SIGMA-X」ソフトウェアを実行する、両方ともMecanum,Sherbrooke,Canada製)を使用し、44.44mmのホルダーにおいて47mmのディスクを用いて実施した。結果をMKS Rayls単位で記録した。
【0129】
有効繊維直径測定
「有効繊維直径」又は「EFD」という用語は、1気圧(0.1MPa)及び室温での空気を、指定された厚さ及び面速度(典型的には5.3cm/秒)でウェブサンプルに通し、対応する圧力低下を測定する空気透過試験に基づく、繊維ウェブ中の繊維の見かけの直径である。測定された圧力低下に基づいて、有効繊維直径を、C.N.Davies,「The Separation of Airborne Dust and Particulates」,Institution of Mechanical Engineers,London Proceedings,IB(1952)に記載されるように計算する。
【0130】
実施例
調製例PE1-Kowa活性炭(AC)コーティング材料
Kowa ACを、直径60インチ(152cm)の円形振動分離機(SWECO,Florence,KYから「SWECO HX」の商品名で得られる)において、90ミクロンの開口部を有するワイヤメッシュスクリーンを使用して分粒した。分離機における材料のスクリーニング速度を、運動発生器シャフト上の偏心重りを使用して、1lb/分(0.45kg/分)に調節した。90ミクロン未満の粒子のカットを、コーティング材料として使用するために保持した。以下、これをPE1と称する。
【0131】
比較例C1-100~300ミクロンの多孔質ポリプロピレン粒子
Accurel MP 1000を、100ミクロン及び300ミクロンの開口部を有する直径8インチ(20.3cm)の円形ワイヤメッシュスクリーン(Retsch GmbH,Haan,Germanyから得られる)を使用して、材料及びスクリーンを振動篩振盪機(Retsch GmbH,Haan,Germanyから「AS 200」の商品名で得られる)に入れることによって分粒し、1mmの振幅設定で10分間撹拌した。以下、粒子の100~300ミクロンカットを「Accurel 100~300ミクロン」と称し、比較例C1として使用するために保持した。
【0132】
実施例1-コーティングされた多孔質PP粒子
PE1(30.0g)及びAccurel 100~300ミクロン(15.0g)材料を、密封プラスチック「ZIPLOCK」バッグ中で手動にて混合及び振盪することによって合わせた。混合物をアルミニウムパンに注ぎ、パンを周囲圧力で157℃にて1時間加熱して、PE1をAccurel 100~300ミクロンの表面に結合させた。サンプルを周囲条件で冷却し、150ミクロンの開口部を有するワイヤメッシュスクリーンを使用して、「AS 200」振動篩振盪機を使用してあらゆる未結合PE1を除去し、150ミクロンより大きいサイズの材料を実施例1として保持した。
【0133】
実施例1及びC1を、TM3000 SEMを使用して撮像した。比較例C1のコーティングされていない粒子を、
図2Aに示す。これらの粒子は、50~300umのマクロ細孔スポンジ様構造として現れ、構造全体にわたる細孔は、サイズが数十~数百ミクロンの範囲である。PE1の存在下での加熱後の、実施例1のコーティングされた粒子を、
図2B及び2Cに示す。この画像において、粒子の元のマクロ細孔構造は不明瞭であるか又は崩壊しているが、粒子は活性炭微粉のコーティング層を獲得しており、微粉は0.1~20ミクロンのサイズに見える。
【0134】
実施例2及び3並びに比較例C2及びC3-コーティングされた及びコーティングされていないUHMWPE粒子
PE1(30.0g)及び2122-5又は4122-5 UHMWPE粒子(15.0g)を、密封プラスチック「ZIPLOCK」バッグ中で手動にて混合及び振盪することによって合わせた。混合物をアルミニウムパンに注ぎ、パンを真空下で150℃にて1時間加熱して、PE1をUHMWPE粒子表面に結合させた。サンプルを真空下で室温までオーブン中で冷却した。150ミクロンの開口部を有するワイヤメッシュスクリーンを使用して、「AS 200」振動篩振盪機を使用してあらゆる未結合PE1微粉を除去した。150ミクロンより大きいサイズの材料を、2122-5のコーティングされた材料については実施例2として、4122-5のコーティングされた材料については実施例3として保持した。コーティングされていない2122-5又は4122-5 UHMWPE粒子は、比較例C2及び比較例C3として機能した。
【0135】
実施例3及び比較例C3の粒子を、「TM3000 SEM」又は「FEI PHENOM SEM」のいずれかを使用して撮像した。コーティングされていない粒子C3を
図3Aに示す。C3粒子は、スフェロイドの200ミクロンクラスターとして現れ、個々のスフェロイドは直径が数十ミクロンである。PE1の存在下で加熱後の、コーティングされた粒子(実施例3)を
図3B及び3Cに示す。この画像において、粒子の元のスフェロイド構造は失われているが、粒子は活性炭微粉のコーティング層を獲得しており、微粉は0.1~20ミクロンのサイズに見える。
【0136】
実施例4-媒体への組み込みのためのUHMWPEの大バッチコーティング
NP1(2.4kg)及び2122-5 UHMWPE粒子(800g)を、それらを手動で混合することによって合わせた。この混合物をアルミニウムパンに注ぎ、パンを真空下で150℃にて1時間加熱した。パンを真空下で室温までオーブン中で冷却した。150ミクロンの開口部を有するワイヤメッシュスクリーンを使用して、100~200mLバッチで「AS 200」振動篩振盪機を使用してあらゆる未結合NP1を除去した。サイズが150ミクロンより大きい材料を実施例4として保持した。
【0137】
粒子の密度、ガス収着及び熱重量分析
比較例C1~C4(Kowa活性炭が比較例C4である)及び実施例1~4の嵩密度及び骨格密度を測定し、表2に報告する。
【0138】
ガス収着を使用して、粒子サンプル並びに表面積、ミクロ細孔表面積及び総細孔容積を分析した。結果を表2に報告する。比較例C2及びC3は、窒素収着を使用して正確に分析されるには不十分な表面積を有し、これは、1m2/g未満の比表面積を示唆する。活性炭(AC)でコーティングされた材料は、粒子表面上のACの存在に対応して、ほとんどがミクロ多孔質によって、はるかに大きな表面積を有する。
【0139】
実施例における活性炭の推定重量%は、ミクロ細孔(直径2nm以下)のQSDFT表面積を使用し、これらの値とKowa(C4)のミクロ細孔表面積との比を決定して計算した。全てのコア粒子(C1~C3)はミクロ細孔を欠き、この計算では表面積が0であるとみなされる。結果を表2に報告する。全体として、ACの量は19~25%と推定される。
【0140】
TGA分析は実施例1についてのみ実行し、燃焼によるポリプロピレンと活性炭との相対量を決定したところ、粒子中のACの量は31重量%であると見出された。この結果は、収着によって計算された結果との妥当な相関を与え、不一致はおそらくTGAにおける炭素酸化事象とポリマー燃焼事象との間の重複によるものであった。UHMWPE及び活性炭に関する酸化事象の重複がはるかに大きいため、実施例2~4は、この様式で分析することができなかった。
【0141】
【0142】
実施例5及び6並びに比較例C5及びC6-粒子を充填した不織布ウェブ
ドリルダイを使用して繊維を生成したことを除いて、Industrial Engineering Chemistry,Vol.48,pages 1342 et seq.(1956)におけるWente,Van A.,「Superfine Thermoplastic Fibers」に記載されているものと同様のプロセスによって、不織布メルトブローウェブを調製した。
【0143】
ポリプロピレン樹脂(「MF650Y」)を、ダイを通して高速の加熱空気流に押し出し、この加熱流がポリプロピレンブローマイクロ繊維(BMF)を延伸し、細径化させた後、樹脂を固化させ、捕集した。粒子(実施例4)は、米国特許第3,971,373号(Braun)の実施例1~8の方法に従って、ポリプロピレンブローマイクロ繊維の流れに供給した。ポリプロピレンブローマイクロ繊維と粒子とのブレンドを、金属ドラム上でランダムに捕集して、粒子を充填したポリプロピレンBMFウェブ層を得た。次いで、ウェブをドラムから取り外して、最終物品を提供した。作製したサンプル構築物を表5に詳説する。粒子を含まないベースPPウェブも、比較例C5及び比較例C6として捕集した。
【0144】
サンプルの米坪量、厚さ及び通気抵抗を測定し、表3に報告した。ベースBMFについては、有効繊維直径も測定した。
【0145】
【0146】
比較例C7及びC8-マイクロ有孔フィルム
米国特許第6,617,002号(Wood)に記載されているように、マイクロ有孔フィルムを調製した。C7については、フィルムグレードポリプロピレン樹脂PP-1を、ポリプロピレンフィルム(厚さ1.5mm)の押出成形に使用し、PP3019マスターバッチを3重量%添加した。C8については、フィルムグレードポリプロピレン樹脂PP-1を、ポリプロピレンフィルム(厚さ0.52mm)の押出成形に使用し、S-57495マスターバッチを添加した。フィルムをエンボス加工し、エンボス部が、2つの主寸法がHt及びWtで示される上面から、並びに2つの主寸法がHb及びWbで示される底面から見たときに、異なるサイズの長方形の開口部を有する開口を生じるように熱処理した。開口の長手方向及び短手方向から見た断面は台形であった。平均値(マイクロメートル(μm))として記録した開口の寸法を、表4に列挙する。
【0147】
【0148】
実施例7及び8-粒子を充填したマイクロ有孔フィルム
実施例4の特定サイズカット(150~200ミクロン、300~400ミクロン)を使用して、フィルム穿孔サイズに対する過大及び過小粒子を最小限にした。実施例4の一部(100mL未満)を、300ミクロン及び400ミクロンの開口部、又は150ミクロン及び200ミクロン開口部のいずれかを有する直径8インチ(20.3cm)の円形ワイヤメッシュスクリーン(Retsch GmbH,Haan,Germanyから得られる)を使用して、材料及びスクリーンを振動篩振盪機(Retsch GmbH,Haan,Germanyから「AS 200」の商品名で得られる)に入れることによって分粒し、1mmの振幅設定で10分間撹拌した。所望の画分を、撹拌後の更なる使用のために保持した。
【0149】
直径68mmのパンチを用いて、C7及びC8のサンプルディスクを打ち抜いた。各ディスクについて、開口を充填することを試み、開口が大きい側に特定サイズカットの粒子を手で塗り広げた。対照サンプルについて、サンプル構築物及び通気抵抗(AFR)試験の結果を表5に示す。AFR測定は、実施例4の粒子を用いては行わなかったが、それは、それらの質量がフィルムから取り除かれるほど十分に小さく、測定を妨害したからである。代わりに、以下の表に示すように、同様の大きさであるが、より高密度の球状TORAYCERAMジルコニアビーズを用いてAFR試験を実施した。
【0150】
【0151】
粒子サンプルの音響試験
実施例1~4及び比較例C1~C4を、粒子充填床としての垂直入射吸音性能に従って試験し、周波数の関数としての垂直入射吸収係数を表6及び
図4に報告する。吸収開始及び傾きを、開始曲線の線形フィットを用いて決定し、0.04のαに外挿し、表7に報告した。コーティング処理の後、吸収曲線の全体的な形状は全ての場合について保持されたが、上昇の傾きは増加し、開始はより低い周波数にシフトした。PE1コーティングされたUHMWPE粒子サンプルのうちの2つ(実施例2及び3)については、全ての周波数における吸収が、コーティングされていない場合(C2及びC3)に対して増強された。
【0152】
【0153】
【0154】
充填不織布ウェブの音響試験
実施例5及び6並びに比較例C5及びC6は、充填された不織布サンプルに適用されるような垂直入射吸音を使用する音響試験を受けた。結果を表8に報告する。
【0155】
【0156】
粒子充填フィルムの音響試験
実施例7及び8並びに比較例C7及びC8は、充填フィルムに適用されるような垂直入射吸音を受けた。結果を表9に報告する。
【0157】
【0158】
本明細書において引用された全ての参考文献及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本開示に明示的に組み込まれる。本発明の例示的な実施形態を検討し、本発明の範囲内で可能な変形例を参照した。例えば、1つの例示的な実施形態との関連において記載される特徴が、本発明の他の実施形態との関連において使用され得る。本発明におけるこれら及び他の変形及び改変は本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかであり、本発明が本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されないことは理解されるべきである。したがって、本発明は、以下に提供されている特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】