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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】コポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20231003BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/199
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519113
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2021010685
(87)【国際公開番号】W WO2022065686
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0124994
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ギュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ソン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ウォン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ミ・ユン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB05
4J029AC02
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA03
4J029BD07A
4J029CB06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JA063
4J029JA091
4J029JA093
4J029JB131
4J029JB163
4J029JC143
4J029JC373
4J029JC443
4J029JC543
4J029JC573
4J029JF143
4J029JF321
4J029JF573
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、コポリエステルの製造方法に関する。より詳細には、特定の熱安定剤を利用してコバルト系呈色剤の使用を減らしながらも黄変現象が最小化されたコポリエステルの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系触媒の存在下で、テレフタル酸(terephthalic acid)、エチレングリコール(ethyleneglycol)、およびシクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)をエステル化反応させる段階;および
リン系熱安定剤の存在下でエステル化反応の反応物を重縮合する段階を含み、
前記リン系熱安定剤は、カルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])またはトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)である、コポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記チタン系触媒は、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、およびチタンジオキシドからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記チタン系触媒の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して前記チタン系触媒に含まれているチタンの含有量が5ppm以上200ppm以下である、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記テレフタル酸、エチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールをエステル化反応させる段階は、200~270℃の温度で1~10時間行う、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記リン系化合物としてカルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])を使用する時、前記リン系化合物の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、前記リン系化合物に含まれているリン元素含有量が50ppm以上1,000ppm以下である、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記リン系化合物としてトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を使用する時、前記リン系化合物の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、前記リン系化合物に含まれているリン元素含有量が5ppm以上100ppm以下である、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記重縮合する段階で、コバルト系呈色剤をさらに含む、
請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記コバルト系呈色剤は、コバルトアセテート(Cobalt acetate)、コバルトアセチルアセトネート(Cobalt acetylacetonate)、コバルトベンゾイルアセトネート(Cobalt benzoylacetonate)、コバルトヒドロキシド(Cobalt hydroxide)、コバルトブロミド(Cobalt bromide)、コバルトクロリド(Cobalt chloride)、コバルトヨージド(Cobalt iodide)、コバルトフルオリド(Cobalt fluoride)、コバルトシアニド(Cobalt cyanide)、コバルトニトレート(Cobalt nitrate)、コバルトスルフェート(Cobalt sulfate)、コバルトセレニド(Cobalt selenide)、コバルトホスフェート(Cobalt phosphate)、コバルトオキシド(Cobalt oxide)、コバルトチオシアネート(Cobalt thiocyanate)およびコバルトプロピオネート(Cobalt propionate)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項7に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記コバルト系呈色剤の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、前記コバルト系呈色剤に含まれているコバルト元素含有量が3ppm以上100ppm以下である、請求項7に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項10】
前記エステル化反応の反応物を重縮合する段階は、250~300℃の温度および760~0.01mmHgの減圧条件で30分~6時間行う、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項11】
前記コポリエステルは、固有粘度(IV)が0.65~0.74dl/gである時、color bの値が-3.5以上0以下である、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項12】
前記コポリエステルは、固有粘度(IV)が0.75~0.80dl/gである時、color bの値が-8.0以上5以下である、請求項1に記載のコポリエステルの製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、コポリエステル。
【請求項14】
前記コポリエステルは、化粧品、飲料、食品関連容器、収縮フィルム、またはシートに使用される、請求項13に記載のコポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2020年9月25日付韓国特許出願第10-2020-0124994号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、コポリエステルの製造方法に関する。より詳細には、特定の熱安定剤を利用してコバルト系呈色剤の使用を減らしながらも黄変現象が最小化されたコポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエステル樹脂(polyester resin)は、機械的特性および化学的特性に優れて多用途に応用、例えば従来から飲用水容器および医療用、食品包装材、食品容器、シート(sheet)、フィルム(film)、自動車成形品などの分野に応用されている。
【0004】
代表的なポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(terephthalic acid)と、グリコール成分としてエチレングリコール(ethyleneglycol)を使用して重合したポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)をその例に挙げられ、優れた物理的および化学的特性と寸法安定性などにより広範囲に使用されている。
【0005】
しかし、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶性樹脂で透明性が低いため、透明性を要求するシート(sheet)、フィルム、食品包装紙、および化粧品容器など製品の適用には限界性を有している。
【0006】
一方、テレフタル酸(terephthalic acid)と、エチレングリコール(ethyleneglycol)に加えて、グリコール成分の共単量体としてCHDM(1,4-cyclohexanedimethanol)を添加して共重合したコポリエステル樹脂をグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate、PETG)というが、PETG樹脂は非結晶性樹脂で、既存のPET樹脂では製造し難い、透明で厚いフィルムや容器を製造することができるという長所がある。PETG樹脂は、結晶化による白化現象なしに成形可能な全ての厚さの透明な製品を生産することができ、その他にも明るい色と優れた光沢を有して印刷性、耐衝撃性、耐薬品性に優れ、2次加工性が容易であるという長所を有している樹脂である。
【0007】
しかし、PETG樹脂は、重合過程で触媒の高い活性により副反応による黄変生成の問題があり、これを解決するための研究が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、特定の熱安定剤を利用してコバルト系呈色剤の使用を減らしながらも黄変現象が最小化されて優れた色と透明性を有するコポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、
チタン系触媒の存在下で、テレフタル酸(terephthalic acid)、エチレングリコール(ethyleneglycol)、およびシクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)をエステル化反応させる段階;および
リン系熱安定剤の存在下でエステル化反応の反応物を重縮合する段階を含み、
前記リン系熱安定剤は、カルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])またはトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)である、コポリエステルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によると、特定の熱安定剤を利用してコバルト系呈色剤の使用を減らしながらも黄変現象が最小化されて優れた色と透明性を有するコポリエステル樹脂を製造することができる。
【0011】
したがって、本発明のコポリエステルの製造方法により得られたコポリエステル樹脂は、透明度、色などの物性に優れており、これに制限されるのではないが、特に透明性を要する化粧品、飲料、食品関連容器などと収縮フィルム、シートおよび各種成形品などに有用に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されるものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
また本発明において、各構成要素が各構成要素の「上に」形成されると言及される場合には、各構成要素が直接各構成要素の上に形成されることを意味するか、または他の構成要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0014】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施形態を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0015】
以下、本発明のコポリエステル製造方法をより詳細に説明する。
【0016】
本発明の一実施形態によるコポリエステルの製造方法は、チタン系触媒の存在下で、テレフタル酸(terephthalic acid)、エチレングリコール(ethyleneglycol)、およびシクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)をエステル化反応させる段階;およびリン系熱安定剤の存在下でエステル化反応の反応物を重縮合する段階を含み、前記リン系熱安定剤は、カルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])またはトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)であることを特徴とする。
【0017】
より具体的に、先にテレフタル酸(terephthalic acid)、エチレングリコール(ethyleneglycol)、およびシクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)をエステル化反応させる。
【0018】
一般的に、ポリエステル樹脂(polyester resin)は、ジカルボン酸成分およびグリコール成分を単量体にしてエステル化反応および重縮合反応を通じて合成される高分子である。このようなポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(terephthalic acid)と、グリコール成分としてエチレングリコール(ethyleneglycol)を使用して重合した樹脂であって、従来汎用で生産されている代表的な結晶性樹脂である。
【0019】
しかし、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶性樹脂で透明性が低いため、透明性を要求するシート(sheet)、フィルム、食品包装紙、および化粧品容器など製品の適用には限界性を有している。
【0020】
一方、テレフタル酸とエチレングリコールに加えてグリコール成分の共単量体としてCHDM(1,4-cyclohexanedimethanol)を添加して共重合したコポリエステル樹脂をグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate、PETG)というが、PETG樹脂は、非結晶性樹脂であり、既存のPET樹脂では製造し難い、透明で厚いフィルムや容器を製造することができるという長所がある。PETG樹脂は、結晶化による白化現象なしに成形可能な全ての厚さの透明な製品を生産することができ、その他にも明るい色と優れた光沢を有して印刷性、耐衝撃性、耐薬品性に優れ、2次加工性が容易であるという長所を有している樹脂である。
【0021】
本発明の製造方法は、コポリエステル樹脂であり、より具体的にテレフタル酸とエチレングリコールに加えてグリコール成分の共単量体としてシクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)を使用して重合したグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate、PETG)を製造するためのものである。
【0022】
本発明の一実施形態によると、ジカルボン酸成分として前記テレフタル酸以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で他のジカルボン酸を追加的に使用することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記グリコール成分として、例えば、前記エチレングリコールおよびシクロヘキサンジメタノール以外に本発明の目的を阻害しない範囲で他のグリコールを使用することができる。
【0024】
前記テレフタル酸を含むジカルボン酸成分と、前記エチレングリコールおよびシクロヘキサンジメタノールを含むグリコール成分とのモル比は、約1:1~約1:2であり得る。理論的にエステル化反応は、ジカルボン酸成分とグリコール成分が1:1のモル比で反応するものであるが、ジカルボキシル酸成分およびグリコール成分が前記のようなモル比を有する時、より効率的なエステル化反応が起こることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、全体グリコール成分100モル%に対してシクロヘキサンジメタノールは、約10モル%以上、または約20モル%以上、または約30モル%以上であり、90モル%以下、または約80モル%以下、または約70モル%以下、または約50モル%以下で含まれ得る。前記シクロヘキサンジメタノールが占めるモル比が過度に少ない場合、重合したグリコール変性PET樹脂の特性がよく現れず、前記シクロヘキサンジメタノールが過度に多く含まれる場合、重合物の結晶化が発生することがあるという問題点がある。このような観点で前記シクロヘキサンジメタノールは前述した範囲で含まれることが好ましい。
【0026】
本発明のコポリエステルの製造方法において、前記テレフタル酸、エチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールをエステル化反応させる段階は、チタン系触媒の存在下で行われる。前記チタン系触媒は、例えば、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトエステルチタネート、イソステアリルチタネート、またはチタンジオキシドなどであり得るが、本発明がこれに限定されるのではない。
【0027】
前記チタン系触媒の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して前記チタン系触媒に含まれているチタンの総含有量が約5ppm以上、または約10ppm以上、または約15ppm以上であり、約200ppm以下、または約150ppm以下、または約100ppm以下になるように投入することができる。前記チタンの総含有量が過度に少なければ、十分な触媒活性を示し難いため、重合時間が長くなる問題点があり、反対に過度に多い場合、副反応による黄変現象を招き、触媒価格が高くなる問題点がある。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記テレフタル酸、エチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールをエステル化反応させる段階は、約220~約270℃、好ましくは約240~約260℃の温度で約1~約10時間、好ましくは約2~約5時間行うことができる。前記エステル化反応時に温度を220℃未満で行う場合、反応時間が長くなり、長い反応時間により製造されるポリエステル樹脂が黄変(yellowing)になる可能性が高くなり得る。反対に、エステル化反応時に温度を270℃超過で行う時、高い反応温度による黄変の問題があり得る。
【0029】
前記エステル化反応は、バッチ式または連続式で行うことができ、前記テレフタル酸、エチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールは、それぞれ別途にまたは混合して投入することができる。
【0030】
次に、リン系熱安定剤の存在下でエステル化反応の反応物を重縮合する段階を行う。
【0031】
本発明の製造方法によると、コポリエステルの熱分解を減少させるためにリン系熱安定剤を前記重縮合反応段階に投入し、前記リン系熱安定剤としてカルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])またはトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を使用することを特徴とする。
【0032】
熱安定剤は、エステル化交換反応と重縮合反応で熱により発生される、着色剤(Colorbody)の生成を抑制したり、触媒の活性を調節して意図しない付加反応を抑制し、時間固相重合で熱分解防止効果を示して最終形成されるポリエステルの黄変を抑制することで、色が透明で無色に近くする役割を果たす。
【0033】
本発明の製造方法によると、コポリエステル樹脂を製造するにあたり、特定構造のリン系熱安定剤を使用することによって変色に脆弱なチタン系触媒の短所を補完することで、最終形成されるコポリエステルの黄変を抑制して色および透明性を向上させることができる。
【0034】
従来はリン系熱安定剤としてトリエチルホスフェート(triethyl phosphate、TEP)が主に使用されているが、グリコール変性PET樹脂の製造時にトリエチルホスフェートを熱安定剤として使用する場合、色特性を十分に向上させることができない。
【0035】
そこで、本発明では、リン系熱安定剤の中でもカルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])またはトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を使用した場合、グリコール変性PET樹脂の製造時に非常に優れた色特性を示すことができることを確認して本発明に至るようになった。
【0036】
前記リン系化合物としてカルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート](calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate])を使用する時、前記リン系化合物の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、前記カルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート]に含まれているリン元素含有量が約50ppm以上、または約100ppm以上、または約300ppm以上であり、約1,000ppm以下、または約900ppm以下、または約850ppm以下になるように投入することができる。前記範囲でカルシウムビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)ホスホネート]を添加することがポリエステル重合で粘度上昇および熱分解を防止する観点で好ましい。
【0037】
また、前記リン系化合物としてトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を使用する時、前記リン系化合物の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、前記トリエチルホスホノアセテートに含まれているリン元素含有量が約5ppm以上、または約10ppm以上、または約15ppm以上であり、約100ppm以下、または約80ppm以下、または約50ppm以下になるように投入することができる。前記範囲でトリエチルホスホノアセテートを添加することがポリエステル重合で粘度上昇および熱分解を防止する観点で好ましい。
【0038】
また、本発明の一実施形態によると、色を向上させるためにコバルト系呈色剤を追加的に添加することができる。前記コバルト系呈色剤の例としては、コバルトアセテート(Cobalt acetate)、コバルトアセチルアセトネート(Cobalt acetylacetonate)、コバルトベンゾイルアセトネート(Cobalt benzoylacetonate)、コバルトヒドロキシド(Cobalt hydroxide)、コバルトブロミド(Cobalt bromide)、コバルトクロリド(Cobalt chloride)、コバルトヨージド(Cobalt iodide)、コバルトフルオリド(Cobalt fluoride)、コバルトシアニド(Cobalt cyanide)、コバルトニトレート(Cobalt nitrate)、コバルトスルフェート(Cobalt sulfate)、コバルトセレニド(Cobalt selenide)、コバルトホスフェート(Cobalt phosphate)、コバルトオキシド(Cobalt oxide)、コバルトチオシアネート(Cobalt thiocyanate)またはコバルトプロピオネート(Cobalt propionate)などのコバルト系化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0039】
前記コバルト系呈色剤の含有量は、最終的に生産されるコポリエステルの重量に対して、コバルト元素含有量が約3ppm以上、または約5ppm以上、または約7ppm以上であり、約100ppm以下、または約90ppm以下、または約70ppm以下になるように投入することができる。コバルト化合物を前記範囲で添加する時、コポリエステルの明るさや熱安定性の低下を起こすことなしに着色を阻害することができる。
【0040】
また本発明におけるコバルト化合物の添加段階は、重合反応中のエステル化反応段階または前記エステル化反応の反応物を重縮合する段階中に限定されず、如何なる段階でも投与可能である。
【0041】
前記エステル化反応の反応物を重縮合する段階は、約250~約300℃、好ましくは約260~約290℃の温度で約30分~約6時間、好ましくは約1~約4時間行うことができる。前記重縮合反応時に温度を250℃未満で行う場合、反応時間が長くなり、低分子を形成したコポリエステルが作られ、長い反応時間により製造されるポリエステル樹脂が黄変(yellowing)になる可能性が高くなり得、温度が300℃を超えて行われる場合、高い反応温度による黄変の問題があり得る。
【0042】
また、前記エステル化反応の反応物を重縮合する段階は、約760~約1mmHg、好ましくは約760~約0.01mmHgの減圧条件で反応させることによって行うことができる。前記のような減圧条件で重縮合反応を行う時、重縮合反応中に生成される副産物を十分に反応系外に除去することができる。
【0043】
本発明の製造方法により得られるコポリエステル樹脂は、固有粘度(IV)が約0.5~約1.0dl/gの範囲を示すことができる。
【0044】
本発明の製造方法により得られたコポリエステルは、固有粘度(IV)が0.65~0.74dl/gである時、color bの値が0以下であって、例えば0以下、または-0.3以下、または-0.5以下であり、-3.5以上、または-3.2以上、または-3以上であり得る。
【0045】
また本発明の製造方法により得られたコポリエステルは、固有粘度(IV)が0.75~0.80dl/gである時、color bの値が5以下であって、例えば5以下、または4.5以下、または0以下であり、-8.0以上、または-7.5以上、または-7.0以上であり得る。
【0046】
このように本発明の製造方法により得られたコポリエステルは、黄変現象が抑制され、製品に好まれる青色変色程度が高い特性を示す。
【0047】
L、a、およびb色システムは、ポリエステルの色評価のための基準として国際的に活用している。このような色数値は、色測定を標準化するための色システムの一つであり、認識可能な色および色差を記述するものである。このシステムで、Lは明度因子であり、aおよびbは色測定数である。一般的に、黄色/青色の均衡を示すb値が飲用水容器および食品包装材の製造で重要な数値である。正のb値は黄色変色を意味し、負の値は青色変色を意味する。そして正のa値は赤い変色を意味し、負の値は緑色変色を意味する。またL値は明るさを示す数値因子を意味し、飲用水容器および食品包装材の製造でb値のように非常に重要な数値である。
【0048】
本発明の製造方法により製造されたコポリエステルは、用途が特に制限されないが、特に優れた透明度、明るさ、色条件が要求される食品包装材、瓶、フィルムまたは繊維性プラスチックに幅広く使用することができる。より具体的に、透明性を要する化粧品、飲料、食品関連容器などと収縮フィルム、シートおよび各種成形品に使用することができる。
【0049】
以下、本発明による実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これにより発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例
【0050】
<実施例>
実施例1
テレフタル酸1162g、エチレングリコール412g、1,4-シクロヘキサンジメタノール302g、チタン系触媒を反応器に入れて反応器を窒素雰囲気に変えた後、攪拌加熱して250℃まで徐々に昇温して1bargで2時間反応させた。
【0051】
反応過程でカラム上部の温度は125℃以下に維持され、水の排出がそれ以上進行されない時点で徐々に減圧して反応器内部の生成された水を全て系外に流出させた。
【0052】
その後、Irganox 1425(最終のコポリエステルを基準として830ppm)とコバルトアセテート(最終のコポリエステルを基準として20ppm)を反応器に投入した。
【0053】
追加的に30分間攪拌した後、加熱システム、攪拌器、減圧が可能な反応器に移送後、攪拌しながら反応器内部を760mmHgから5mmHgまで80分にかけて徐々に減圧し、最終重合水の温度が267℃になるまで徐々に昇温しながら反応させた。
【0054】
その後、真空容量を最大に高めて最終的に0.5mmHgまで到達させ、反応温度は270℃まで上げて反応を進行させた。その後、目標とする粘度に到達した時に反応を終了した。得られたコポリエステル重合物を吐出して冷却および切断してペレット形態で製造後、粘度、色、分子量などを分析した。
【0055】
実施例1で、コバルトアセテートの含有量、リン系熱安定剤の種類および含有量、重合時間、粘度などを異にして実施例2~4および比較例1~2を行った。
【0056】
前記実施例1~4および比較例1~2の工程条件を整理して下記表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
1)表1で、チタン系触媒、コバルトアセテート、リン系熱安定剤の含有量は、全て最終生成されるコポリエステルを基準とした各元素(Ti、Co、P)の含有量を意味する。
2)Irganox 1425は、calcium bis[monoethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxylbenzyl)phosphonate]、TEPは、triethyl phosphate、TEPaは、triethyl phosphonoacetateを意味する。
3)重合時間は0.5mmHg以下であるFull真空での重縮合反応時間を意味する。
【0059】
<実験例>
測定方法
1)固有粘度(Intrinsic Viscosity、I.V)
フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタノールを6:4の重量比で混合した試薬100mLに測定対象になる樹脂0.4gを入れ、90分間溶解した後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計に移して入れて30℃恒温槽で10分間維持させ、粘度計と吸引装置(Aspirator)を利用して溶液の落下秒数を求めることができる。溶媒の落下秒数も同様な方法で求めた後、下記計算式1および2によりR.V値およびI.V値を計算した。下記計算式で、Cは試料の濃度を示す。
【0060】
[計算式1]
R.V=試料の落下秒数/溶媒の落下秒数
[計算式2]
I.V = 1/4(R.V-1)/C+3/4(ln R.V/C)
【0061】
2)樹脂色(Color=L、a、b)
測定対象になる樹脂50gを空気中で水分を除去した後、カラリメトリ(Colorimeter)モデルSA-2000に入れて色を10回測定して平均値を得た。
【0062】
3)重量平均分子量(Mn)および数平均分子量(Mn)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を利用して重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ測定した。
【0063】
実施例1~4および比較例1~2で得られたコポリエステル樹脂の固有粘度、Color値(L、b)、重量平均分子量(Mn)および数平均分子量(Mn)を測定して下記表2に記載した。
【0064】
【表2】
【0065】
前記表1および2を参照すると、本発明の製造方法により特定のリン系熱安定剤を使用して製造した実施例のコポリエステル樹脂の場合、従来の方法によりトリエチルホスフェートを熱安定剤として使用した比較例より同一の粘度範囲で優れた色特性を示した。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
3)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を利用して重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ測定した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
実施例1~4および比較例1~2で得られたコポリエステル樹脂の固有粘度、Color値(L、b)、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定して下記表2に記載した。
【国際調査報告】