(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(54)【発明の名称】複雑適応系の創発特性を測定、学習、及び使用するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20231003BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023538877
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021048053
(87)【国際公開番号】W WO2022047228
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523071994
【氏名又は名称】エマージャ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EMERJA CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,アーサー イー.
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
例えば生物学的系などの複雑適応系の状態を定量する一連の物理的及び生理学的測定値を測定、記録、送信、アクセス、及び使用するためのシステムについて記載し、状態を、健康能力と呼ばれるメトリックに反映する。該測定値は、生物学的系における疾患状態の発症前検出及び阻止に使用され得る。一態様において、システムは、生物学的系における複数の部位で、時間の関数として、一連の水関連メトリックを実質的に同時に測定するように構成されたウェアラブルデバイスを含み得る。システムは、スケーラブルな技術プラットフォームを使用して、複数のシステムにわたる一連のデータから、訓練データセットと比較し、機械可読指示を利用して、生物学的系の健康能力を含む健康状態を特定、決定及び/又は予測することと、生物学的系の健康を向上させるために、変更、又は栄養、睡眠、物理的若しくは精神的インプットを含む推奨を生成することとをさらに含み得る。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的系の健康能力を定量するためのシステムであって、
前記生物学的系の創発要因を測定して、前記創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサから前記測定したデータを受信して、前記測定したデータに基づいて前記生物学的系の前記健康能力を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、機械可読指示に従って前記生物学的系の前記健康能力を最大化するための解決策を算出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生物学的系は生物体を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記生物学的系は、動物、植物、及び単細胞生物体から選択される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記生物学的系は、産業用生物学システム又は合成生物学システムである、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記生物体はヒトである、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理システムと通信し、前記測定したデータを保存するための記憶部品をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定したデータは、前記生物学的系のエネルギー収支である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
処理システムは、前記少なくとも1つのセンサ及び報告される前記創発要因の特性に対して最適化されたデータストリームとして前記測定したデータを送信するように構成された複数の送信器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、機械可読指示に従って健康メトリックに基づいて前記生物学的系の疾患状態の発症前検出を行う、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、複数の他の物体から報告された健康メトリックの集合と共に機械可読指示に従って教師あり学習アルゴリズムを使用して前記生物学的系の前記疾患状態の発症前検出を行う、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記疾患状態は、老化、敗血症、心血管疾患、及び感染疾患から選択される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記疾患状態は、感染疾患である、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記感染疾患は、ウイルス感染によって引き起こされる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ウイルス感染は、呼吸器感染、消化管感染、肝臓感染、神経系感染、及び皮膚感染から選択される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ウイルス感染は、コロナウイルスである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ウイルス疾患は、COVID-19である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのセンサは、熱力学センサ、電気化学センサ、構造センサ、引張センサ、運動センサ、又はそれらの組合せである、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのセンサは、熱流束データ、熱量測定データ、浸透圧測定データ、及び生理機能測定データの少なくとも1つを含むデータを感知するための複数のウェアラブルデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのセンサは、インプラントデバイスである、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記インターフェースは、無線通信を介して前記測定したデータを送信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記処理システムは、前記測定したデータの記憶、前記測定したデータへのアクセス、セキュリティ構成、ユーザ入力、及び任意の結果の出力を制御するアプリケーションプログラムインターフェースをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
生物学的系の健康能力を定量するためのシステムであって、
複数の測定デバイスを含み、少なくとも1つの測定デバイスは、前記生物学的系の熱力学特性を測定する、システム。
【請求項24】
前記出力は、疾患状態を阻止するための解決策を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
生物学的系の健康能力を定量するための方法であって、
前記生物学的系の少なくとも1つの創発要因を感知するステップと、
前記少なくとも1つの創発要因に関して測定したデータを生成するステップと、
前記測定したデータに基づいて、前記生物学的系の前記健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を決定するステップとを含む、方法。
【請求項26】
前記生物学的系の前記健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を変更することによって前記健康能力を最大化するための解決策を生成するステップであって、前記刺激は、睡眠パターン、睡眠持続時間、栄養摂取、及び運動療法から選択されるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
非生物学的系のエネルギー特徴を決定するためのシステムであって、
前記系の創発要因を測定して、前記創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサから前記測定したデータを受信して、前記測定したデータに基づいて前記非生物学的系のエネルギー収支を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む、システム。
【請求項28】
少なくとも1つの熱力学センサ及び少なくとも1つの運動センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの熱力学センサは、経時において前記生物学的系の表面温度を感知するための複数のウェアラブルデバイスを含み、前記少なくとも1つの運動センサは、経時において前記生物学的系の身体活動を感知するための少なくとも1つの加速度計を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記測定したデータは、経時における前記生物学的系の表面温度及び身体活動を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
表面温度差に基づいて経時における前記生物学的系の熱除去を推定するステップと、
身体活動に基づいて経時における前記生物学的系の熱産生を推定するステップと、
熱除去及び熱産生の時間的アライメントに基づいて、前記生物学的系の基礎代謝状態を推定するステップとをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記測定されたデータに基づいて前記生物学的系の準周期性リズムを得るステップであって、前記準周期性リズムが、秒のタイムスケール、分のタイムスケール、超日、概日、概月、又は年のタイムスケールであるステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
所定の時間にわたる前記準周期性リズムの変動を得るステップと、
前記準周期性リズムの前記変動に基づいて前記健康能力を決定するステップとをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
表面温度差に基づいて経時における前記生物学的系の熱除去を推定するステップと、
身体活動に基づいて経時における前記生物学的系の熱産生を推定するステップと、
熱除去及び熱産生の時間的アライメントに基づいて、前記生物学的系の基礎代謝状態を推定するステップと、
推定した前記基礎代謝状態に時間依存関数を適用することによって前記健康能力を決定するステップであって、前記時間依存関数は前記生物学的系の前記準周期性リズムから導出されるステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記処理システムは、前記測定されたデータに基づいて前記生物学的系の準周期性リズム及び活動レベルを分析するようにさらに構成され、前記準周期性リズムが、秒のタイムスケール、分のタイムスケール、超日、概日、概月、又は年のタイムスケールである、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
前記処理システムは、前記生物学的系の分析した前記準周期性リズム及び前記活動レベルに基づいて前記センサを作動させるようにさらに構成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記測定したデータは、前記生物学的系の排ストリームを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記排ストリームは、熱、1つ以上の低エネルギー化学種、又は任意のそれらの組合せを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記測定したデータは、リアルタイムの前記生物学的系の全エネルギー消費を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記測定したデータに基づいて前記生物学的系における温度調節の機能的態様を分析するステップさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記生物学的系の1つ以上の機能を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を生成及び出力するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記指標は、前記生物学的系の体重、血圧、概日リズム、睡眠の質、睡眠持続時間、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記生物学的系の排ストリームを測定するように構成された少なくとも1つの熱センサ及び少なくとも1つの化学センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項44】
前記排ストリームは、熱、1つ以上の低エネルギー化学種、又は任意のそれらの組合せを含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記センサは、リアルタイムで前記生物学的系の全エネルギー消費を直接的に測定するように構成される、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記処理システムは、前記測定したデータに基づいて前記生物学的系における温度調節の機能的態様を分析するように構成される、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
前記処理システムは、入力訓練セットに基づいて構成され、前記生物学的系の1つ以上の機能を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を生成及び出力するようにさらに構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記指標は、前記生物学的系の体重、血圧、概日リズム、睡眠の質、睡眠持続時間、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
少なくとも1つの指標は、脱共役剤、酸化的リン酸化経路の調節剤、膜貫通イオン勾配の調節剤、又は任意のそれらの組合せの1つ以上の適切な量を自動的に投与することを示唆する、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
少なくとも1つの指標は、前記生物学的系の温度調節機能又は温度調節に関する生理学的要素に影響を与えるように外部環境の調節を示唆する、請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
前記生物学的系の温度調節機能又は温度調節に関する生理学的要素は、心血管パラメータ、概日パラメータ、認知パラメータ、感情パラメータ、又は任意のそれらの組合せを含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記外部環境の調節は、内部気温、圧力、湿度、又は任意のそれらの組合せの調整を含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項53】
前記外部環境の自動調節は、聴覚刺激、嗅覚刺激、視覚刺激、又は任意のそれらの組合せの提供を含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項54】
少なくとも1つの指標は、所定の行動をとることを前記生物学的系に示唆する、請求項47に記載のシステム。
【請求項55】
前記生物学的系はヒトであり、前記所定の行動は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、水を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記生物学的系の排ストリームを測定するように構成された少なくとも1つの熱センサ及び少なくとも1つの化学センサを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項57】
前記排ストリームは、熱、1つ以上の低エネルギー化学種、又は任意のそれらの組合せを含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記センサは、リアルタイムで前記生物学的系の全エネルギー消費を直接的に測定するように構成される、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記処理システムは、前記測定したデータに基づいて前記生物学的系における温度調節の創発特性を自動的に分析するように構成される、請求項56に記載のシステム。
【請求項60】
前記処理システムは、前記生物学的系の1つ以上の創発特性を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を自動的に生成及び出力するようにさらに構成される、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記指標は、前記生物学的系の体重、圧力、リズム、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記測定したデータは、熱流束データを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態であり、
少なくとも1つの創発要因は熱産生及び熱除去の時間的アライメントである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記時間的アライメントは前記生物学的系における少なくとも1つの準周期性リズムに関連する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの準周期性リズムは概日リズムである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を生成及び出力するステップをさらに含むステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項67】
前記指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うことを、前記生物学的系に示唆する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記生物学的系の熱産生及び熱除去の前記時間的アライメントを向上させる又は調節するために少なくとも1つの所定の行動を推奨するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記行動は概日リズムを管理する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記測定したデータは、熱流束データを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項71】
少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態であり、
少なくとも1つの創発要因は前記生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントである、請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記時間的アライメントは前記生物学的系における少なくとも1つの準周期性リズムに関連する、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記準周期性リズムは概日リズムである、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記処理システムは、前記生物学的系の熱産生及び熱除去の前記時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を生成及び出力するようにさらに構成される、請求項71に記載のシステム。
【請求項75】
前記指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うことを、前記生物学的系に示唆する、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記少なくとも1つの指標は、脱共役剤、酸化的リン酸化経路の調節剤、膜貫通イオン勾配の調節剤、又は任意のそれらの組合せの1つ以上の適切な量を自動的に投与することを示唆する、請求項72に記載のシステム。
【請求項77】
前記指標は概日リズムを管理するために使用される、請求項74に記載のシステム。
【請求項78】
ヒトの代謝状態を定量及び向上させるためのシステムであって、
少なくとも1つのウェアラブル熱力学センサと、プロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含み、
前記少なくとも1つのウェアラブル熱力学センサは、
前記ヒトの創発要因を測定し、前記創発要因は前記ヒトの熱産生及び熱除去の時間的アライメントであり、前記時間的アライメントは前記ヒトの概日リズムに関し、
前記創発要因に基づいて、経時における熱流束データを含む測定したデータを生成するように構成され、
前記処理システムは、
前記少なくとも1つのウェアラブル熱力学センサから前記測定したデータを受信し、
前記測定したデータに基づいて、前記熱産生及び熱除去に関する前記ヒトの代謝状態を定量し、
前記測定したデータに基づいて、前記ヒトの前記代謝状態に影響を与える1つ以上の刺激を決定し、
前記ヒトの前記代謝状態を最大化するための解決策を算出し、
前記ヒトの前記熱産生及び熱除去を調節することによって前記ヒトの前記代謝状態を向上させるための少なくとも1つの指標を生成及び出力するように構成される、システム。
【請求項79】
ヒトの代謝状態を定量及び向上させるための方法であって、
前記ヒトの少なくとも1つの創発要因を感知するステップであって、前記創発要因は前記ヒトの熱産生及び熱除去の時間的アライメントであり、前記時間的アライメントは前記ヒトの概日リズムに関する、ステップと、
前記少なくとも1つの創発要因に関して測定したデータを生成するステップであって、前記測定したデータは経時における熱流束データを含む、ステップと、
前記測定したデータに基づいて、前記熱産生及び熱除去に関する前記ヒトの代謝状態を定量するステップと、
前記測定したデータに基づいて、前記ヒトの前記代謝状態に影響を与える1つ以上の刺激を決定するステップと、
前記ヒトの前記代謝状態を最大化するための解決策を算出するステップと、
前記ヒトの前記熱産生及び熱除去を調節することによって前記ヒトの前記代謝状態を向上させるための少なくとも1つの指標を生成及び出力するステップとを含む、方法。
【請求項80】
前記ヒトの代謝状態を定量することは、少なくとも1つの概日サイクルにわたる前記熱産生及び/又は前記熱除去の平均値、分散、最小値及び/又は最大値を決定することに基づく、請求項78に記載のシステム。
【請求項81】
前記ヒトの代謝状態を定量することは、少なくとも1つの概日サイクルにわたる前記熱産生及び/又は前記熱除去の日間安定性及び/又は日内変動を決定することに基づく、請求項78に記載のシステム。
【請求項82】
ヒトの代謝状態を定量することは、特定の概日サイクルにわたる前記熱産生及び/又は前記熱除去の平均値、分散、最小値及び/又は最大値を、前記ヒトの記録値と比較することに基づく、請求項78に記載のシステム。
【請求項83】
前記ヒトの代謝状態を定量することは、特定の概日サイクルにわたる前記熱産生及び/又は前記熱除去の日間安定性及び/又は日内変動を、前記ヒトの記録値と比較することに基づく、請求項78に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下において、2021年4月29日に出願された「複雑適応系の創発特性を測定、学習、及び使用するためのシステム及び方法」という発明の名称の米国仮特許出願第63/181,913号、2020年10月12日に出願された「複雑適応系の創発特性を測定、学習、及び使用するためのシステム及び方法」という発明の名称の米国仮特許出願第63/090,610号、2020年8月28日に出願された「複雑適応系の創発特性を測定、学習、及び使用するためのシステム及び方法」という発明の名称の米国仮特許出願第63/071,989号、及び、2020年8月28日に出願された「複雑適応系の創発特性を測定、学習、及び使用するためのシステム及び方法」という発明の名称の米国仮特許出願第63/071,982号の優先権の利益を主張する。これらの先願のそれぞれの開示は、本明細書に言及することによってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
[開示の技術の分野]
開示する技術は、一般に、複雑適応系、例えば生物学的系、生物体、若しくは例えばヒト、又は非生物学的系、例えば原始細胞などの創発特性の測定値を得るためのシステム、デバイス、及び方法に関する。また、開示する技術は、一般に、例えば、生物学的系、例えばヒトなどの生物体などの1つ以上の疾患状態、例えば病原体(例えばウイルス性、細菌性)感染を、発症前診断することを含む特定若しくは診断することなど、又は、例えば、産業用製造に使用される原始細胞を測定、評価、及び調節することのため、生物学的系又は非生物学的系の状態又は特性を定量するそうした測定値を使用することに関する。開示するデバイス、システム、及び方法は、一般に、「健康能力」と呼ばれる特性を含む、生物学的系又は非生物学的系の状態又は特性の測定、評価、学習、及び使用、並びに疾患状態の阻止、処置、あるいは対処を含む、そうした状態又は特性に対する行動を可能にする。また、開示する技術は、一般に、測定値を得るためのウェアラブルな、インプラントされた、埋め込まれた、あるいは連結されたデバイス、並びに、生物学的系、例えばヒトなどの生物体などの状態又は特性を予測するために、1つ以上のデバイスからの測定値を集約、保存、分配、分析、及び使用するような機能を含む、データを操作するためのスケーラブルな技術プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
生物科学における問題解決に対する現在の手法は、多くの場合「プレシジョンバイオロジー」と呼ばれるボトムアップ型の手法である。プレシジョンバイオロジーは、その最も一般化した形態では、機能が部分に起因するように、生物学的部分の詳細な測定と機械学習を連結している(「オーミクス」)。また、この手法は、特に医療上の解決策の発見、開発、及び送達に適用されるとき、多くの場合「プレシジョンメディシン」とも呼ばれる。
【0004】
プレシジョンバイオロジーは、知識のギャップが「部分」の理解不足によるものであり、詳細な測定及び分析がこれらの知識のギャップを埋めるであろうという概念に基づく。例えば、現代の生物科学の基本ツールは、炭素含有分子、及び、他の主要な原子と結合した炭素の研究である有機化学である。これは、少なくとも部分的に、生体系の遺伝子、シグナリング、及び構造上の分子が大部分は炭素原子からなるためである。したがって、プレシジョンバイオロジーの方法論では、これらの有機化学的な特質をさらに詳細に定量することによって、機能及び機能の予測をしようとしている。しかしながら、当該技術では、一般に、生物学的系の多くの特徴がプレシジョンバイオロジーの方法論に適していないことを認識していない。プレシジョンバイオロジーの方法論が十分でない場合のそうした一例は、複雑適応(生物学的)系の創発特性の測定及び予測にある。創発特性は、部分には見受けられない、又は系内に含まれる部分の詳細な一覧や分析から容易に推定できない系の特性である。今日では方法論のレベルまで高まっているプレシジョンバイオロジーの手法には、創発特性に関する盲点があり、この盲点が生物学及び医学の分野における進歩を実質的に制限している。
【0005】
生物学的系、及びどのようにそれらをモニタリングし、健康を維持又は改善するかについての、過去と現在とのすべての理解が、現在の技術のシステム、方法、及び使用を予測させるものでも自明とするものでもなく、歴史的な観点により、現在の技術の多様な利点が解明されている。
【0006】
ヒトの生物学的系の機能を理解するためのヒトの生物学的系の測定は、はるか紀元前約450年のヒポクラテスにまでさかのぼり得る。ヒポクラテスは、ヒトの生物学的系において医学を宗教から切り離すことで、疾患を測定及び診断するとともに予後判定を発展させるための物理的基礎を確立したと認められている。ヒトの生物学は、宗教ではなく、物理科学の見地によって理解され得るという見解は、その後の約2400年を経て、産業革命の始まりまで進展した。
【0007】
19世紀後半から20世紀初めの生物学者及び化学者は、産業の進歩を受けて、物理学、工学、及び産業上で良好に使用されるものと類似する手法及び技術を採用し始めた。20世紀前半にわたって、これらの手法は、食物由来の酵素補因子であるビタミンの良好な特定、ウイルス及び細菌感染の生物学的基礎及びそれを阻止する手段、つまりワクチン及び抗生物質、並びに、遺伝物質であるDNA、及びどのように遺伝子情報がタンパク質をコードしているかの良好な特定に拡大された。これらの進歩は、生物科学及び医学の理解の目ざましい向上に寄与した。
【0008】
最も一般的な意味において、産業化を推進したツール及び推論が、生物学的な問題を解決するため、当時使用され、現在もまだ使用されている。その推論の核心となるのは、「どの部分がどの機能に起因するか」の一般化した仮説で科学的方法において例示される、還元主義の一形態である。
【0009】
学習に対する精密な手法は、部分とその機能との間に単純かつ秩序立った関係が存在するとき、最も予測され得る。そうした例は、非生物学的系においては、自転車のタイヤを含み得、又は生物学的系においては、エネルギー合成及び生命自体に重要な遺伝子及びタンパク質を含み得る。これらの場合、タイヤ又は遺伝子の測定は、系の機能に相関すると予想され得る。プレシジョンバイオロジーの手法では、ヒトが設計及び操作した非生物学的系において、これらの系が定義上は部分と機能との間の1:1の関係に従うので、その最も正の予測値を有する。また、プレシジョンバイオロジーの手法では、部分と機能との間に仮定されて測定可能な関係が存在する生物学的系において値を有する。しかしながら、プレシジョンバイオロジーの手法では、部分とその機能との間に1:1の関係が存在しないとき、生物学的系においてその正の予測値を失うこととなる。部分とその機能との間に認識可能な関係が存在しない場合とは、部分、又は2つ以上の部分が、部分又は複数の部分だけから容易に予測できない又は認識できない新しい構造を形成する又は新しい機能を行う場合である。1つ以上の部分が、その部分だけには存在しない構造を形成する又は機能を行う能力であるこの特性は、その「創発構造又は機能」及びまとめてその「創発特性」である。
【0010】
生物学的系及び複雑な非生物学的系の機能の理解に対する現在のプレシジョンバイオロジーの手法は、それらの創発特性に基づいて複雑適応性の生物学的系及び非生物学的系を測定、定量、予測、調節、最大化、設計、及び操作できないことによって制限されている。これらの制限は、生物圏自体を含む生物学的系のおおよそすべての階層において認められる。
【0011】
プレシジョンバイオロジーの手法は、生物学的機能及びヒトの機能の理解において制限がある。部分に基づく手法は、そこから機能が整理されて計算される自己完結型の部分の集合として生物学的系又はヒトを潜在的に考える。これは、ビタミン前の方法論を具現化するものであり、今日では、機能の要因となる部分の一覧が不十分であることによって皮肉にも制限される。比較的近年まで、ヒトにおけるプレシジョンバイオロジーの手法は、ヒトのマイクロバイオームを形成する約1~10兆個の細菌を除外していた。また、プレシジョンバイオロジーの手法は、他の部分及びそれらが存在するコンテキストの全体を軽視又は除外している。例として食物を含み得る。ヒトの食事には、植物栄養素と呼ばれる、30,000を超えると推定される植物由来の低分子が存在するが、それらの植物栄養素であるビタミンのわずか0.1%未満の機能が理解されている。さらに、プレシジョンバイオロジーの手法は、特定の分類の酵素の重要性及び重大性を軽視しており、それらの研究の優先度を下げている。これには、外部環境に由来する物質と相互作用する代謝におけるもの、例えば酸化還元酵素を含み得るが、これらに限定されない。プレシジョンバイオロジーの方法論は、医学に適用されるとき、生物学的系の複雑性を過度に単純化する。これは、理解しようとする機能が本質的に創発性であるときに疾患を診断及び疾患の処置を発展できることにおいて極めて制限がある。
【0012】
また、プレシジョンバイオロジーの手法は、種又は種及び資源の集合の健康の理解において制限がある。プレシジョンバイオロジーの手法は、疾患排除のプロセスによって得た疾患がない場合又は疾患の欠如として健康を考える。今日では、ヒトの健康は現実ではなく概念である。これは多くの非還元主義者の文化では常に当てはまる/当てはまったとは限らないことに留意する必要がある。疾患とは無関係の、本質的に創発特性であるエネルギー状態としての健康の概念は、多くの東洋文化及び宗教に共通しており、チャクラ、レイキ、プラーナ、気は紀元前400年まで、より近年では1900年代に西洋でエランヴィタルとして、さかのぼることができる。健康は、本質的に生物学的系の機能のベースラインであり、また、恒常性とも呼ばれ得る。しかし、恒常性は、プレシジョンバイオロジーの手法には存在しない又はプレシジョンバイオロジーの手法によって認識されない相互変換可能な形態又は機能を生成する多くの部分の複雑な相互作用である、創発特性である。プレシジョンバイオロジーの手法は、実質的に、内部環境及び外部環境の複雑な相互作用に依存する開放系、例えば恒常性(健康)において著しく失敗する。結果として、疾患の尺度は、健康の欠如を定めるために使用される。疾患の尺度は、実質的に、いくつかの中核機能を持続する又は得る能力によって主に表される系の回復力(適応力)である健康又は「健康能力」の変化に遅れをとるので、健康の欠如に対してまったく十分でない代替となる。
【0013】
また、プレシジョンバイオロジーの手法は、「遺伝子工学」及び産業生物学において制限がある。遺伝子の変化と意図した結果との間に1:1の関係がないことにより、意図した新しい(合成)機能又は生存度とは相反する非恒常性(不健康)状態が頻繁に生じる。
【0014】
また、プレシジョンバイオロジーの手法はその実施においても制限がある。これは、測定に極めて特殊かつ高価な機器を必要とする。プレシジョンバイオロジーの手法は学習率においても制限がある。これにより、対応できない数の偽(陽性)発見が生じ、予想しない結果、つまり「意図しない結果」の可能性が軽視される。学習の費用、リスク、及び時間は極めて高い、増加しているイールームの法則となる。プレシジョンバイオロジーの手法はその侵襲性及び倫理性によって制限される。創発的な特性は、多くの場合、外部から定量可能であるが、プレシジョンバイオロジーの手法は、典型的に、非倫理的、傷害的、又は致死的となり得る侵襲的な試験又は実験上の安楽死に関与し、これらはすべて、頻繁かつ十分な測定値を得ることの実用性を低下させる。大きな試料サイズ及び実際のヒトの試験データなしでは、良い仮説を悪い仮説から区別するために必要な検出力を得ることは極めて困難である。これにより、偽発見の問題が悪化し、一般に、生物科学の学習率をさらに下げる。プレシジョンバイオロジーの手法は、生物学的機能におけるその人間中心の影響に対して無言であることよって制限される。これは、DNAが関連する生物学的情報のすべてを含むこと及び機能が段階的に直ちに生じることと多かれ少なかれみなす。これは、そのすべてがこれまでの100年の「人新世」において著しい変化を受けた、温度、種間/種内の依存性、重力、磁場、海流、個体数である、他の物理的又は生物学的情報系を考慮していない。また、プレシジョンバイオロジーの手法は、それとは反対の証拠があるにもかかわらず、「真実」としての、「DNAは生命の本である」という「方法論」の推察によって制限される。プレシジョンバイオロジーの手法/方法論にはこれらの明らかな制限があるにもかかわらず、一連の「オーミクス」革命としてこの手法が独善的に継続している。部分には無数の組の分類が存在し得るので、部分に基づく手法は本質的に尽きることがなく、したがって反証不可能である。プレシジョンバイオロジーの方法論がそれ自体間違っていることを証明できる手段は存在しない。この反証不可能性が、現代の機械学習ツールによってさらに悪化している。プレシジョンバイオロジーの手法における知識のギャップは、手法ではなく、部分を理解するための分析方法の不十分さにあることが現在推察されている。機械学習ツールは、プレシジョンバイオロジーの手法によって解決可能な問題には確かに有用であろうが、さらなる分析やデータ収集が、隠れていたものを見えるようにする新しい測定値の必要性に取って代わることはない。プレシジョンバイオロジーの手法は、単に、生命の本質を定める生物学的系の創発特性を測定又は認識しないだけである。
【0015】
したがって、必要であることは、複雑適応系の機能を理解するため生物学的系及び非生物学的系の創発特性を測定及び定量して、生物学的系及び非生物学的系の予測、最適化、設計、及び操作を可能にする、新しい方法である。この方法は、すべての生物学的及び非生物学的部分及び系並びにそれらの内の創発特性の全体を考慮する「知識の統合(consilience)の手法」の一部として考える必要がある。
【0016】
2019年のSARS-CoV-2の世界的流行は、医学に適用したときのプレシジョンバイオロジーの手法の欠陥と、新しい手法の必要性とを明らかにしている。現在のプレシジョンメディシンの手法では、世界の、つまり感染した個体の疾患状態、及び免疫を得ているかどうかを正確に理解しようとしている。これは、共に実用的でなく、遅く、費用がかかる。必要とされていることは、疾患ではなく健康の変化を測定して、病原体の無症状拡散を阻止して、封じ込める効果的な方法である。健康のベースライン、つまり恒常性は創発特性であるので、健康の測定は、現在のプレシジョンバイオロジー/プレシジョンメディシンの手法では見過ごされ、得られていない。
【0017】
米国心臓協会は、心肺適応能(CRF)が健康の重要なマーカーであること、及びCRFが健康を評価するために臨床上重要である全体的なメトリックとなり得ることを表明している。例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照されたい。CRFは、身体活動時に必要なエネルギー生産のために骨格筋ミトコンドリアに酸素を供給する循環器系及び呼吸器系の能力を指す。CRFは、例えば最大の運動試験時に開回路スパイロメトリーを介して測定される最大の酸素取り込みとして推定され得る。しかしながら、CRFは、いくつかの点で望ましくないメトリックである。例えば、CRFを測定するための装置はウェアラブルではなく、CRF測定及び分析は遅延時間に影響を受け、CRFモニタリングは継続的ではない。さらに、CRFを評価する費用は高くなり得、CRFは代謝の健康を間接的に(必ずしも正確でなく)測定するものであり、CRFの測定手順には熟練した人材及び医療従事者が必要であり得る。したがって、CRF測定は不正確であり、スケーラブルでないことがある。結果として、CRFは、実行可能で簡単に利用可能な健康指標としての使用に不適切であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Ross、Robert等、Importance of assessing cardiorespiratory fitness in clinical practice: a case for fitness as a clinical vital sign: a scientific statement from the American Heart Association、Circulation、134.24、2016)、e653-e699
【非特許文献2】Raghuveer、Geetha等、Cardiorespiratory fitness in youth: an important marker of health: a scientific statement from the American Heart Association、Circulation、142.7、2020、e101-e118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
複雑適応系の機能を、より正確に、より利用しやすく、よりスケーラブルに、より容易に理解するため、新しいシステム及び方法が必要とされている。そうしたシステムは、理想的には、生物学的系及びさらに非生物学的系の予測、最適化、設計、及び操作を可能にし得、すべての生物学的及び非生物学的な部分及び系全体を考慮し得る。
【課題を解決するための手段】
【0020】
部分のそれ自体の合計ではなく、「創発的全体」の特質の測定値を使用して生物学的系の「創発特性」を取得する生物学的系の測定及び特性評価に対する新しい手法を開示する。新しい手法は、疾患の測定は、実質的に、持続する又はいくつかの中核機能を得ることができる能力によって主に表される系の回復力(適応力)を指す「健康能力」の測定に関する。
【0021】
また、生物学的系の健康能力に関するデータの新しい生成、分析、及び使用も開示する。生物学的系の健康能力に関連するデータを取得するための新しいセンサ、及びセンサの組合せをさらに開示する。
【0022】
有機化学又は炭素化学の役割は、生物学的系において、特にその選択的化学作用について探求されているが、生物学的系における水素、酸素、及び水素結合の役割は探求されていない。水素、酸素、及び水素結合は、生物学的エネルギー及びエントロピーの大部分、従って適応の大部分を説明する生物学的系に多く存在するが、機能する生物学的系に対する、水素、酸素、水素-酸素共有結合、酸素-酸素共有結合、水素結合、並びに水素及び/又は酸素に関与する他の相互作用の特性、機能、変動、刺激に対する応答、及び他の活性の役割及び影響は、適切に対処されていない。
【0023】
本明細書に例示及び記載するような、水及び/又は水性系の特性は、生物学的系の機能及び特性の理解を高めることにおける、健康、代謝、恒常性、ストレス、前炎症、炎症、種々の器官の特定の特性、種々の全身性特性、感染、及び/又は疾患状態のモニタリング、評価、研究、維持、及び調節を含む、生物学的系のモニタリング、評価、及び調節における手法を一般に支えるために利用され得る。開示する技術は、水及び水性系が、特に生物学的系の成分として、本明細書に詳述するものを含む種々の特性を示すという見解に少なくとも部分的に基づくとともに、その見解の有用な応用に関与する。そうした特性は、生物学的系の1つ以上の状態に、直接的又は間接的のいずれかで、関連し得る。
【0024】
開示する技術の一部の態様において、測定デバイス又は測定デバイスのアレイ、及び学習エンジンを提供する。これらのデバイス及びデバイスのアレイは、データを生成し、次に生物学的系の健康能力を定量するために使用し得るように、設計及び/又は適応され得る。特定の好ましい実施形態において、健康能力は、水における1つ以上の特有の特性又は創発特性に基づき、及び/又はその関数であり、生物学的系の機能若しくは疾患状態を予測するために、並びに/又は生物学的若しくは合成生物学的系を最適化、設計、及び操作するために使用され得る。そうした測定デバイス又は測定デバイスのアレイ、及び学習エンジンの利点の一例は、水が生体系に存在して、生体系が環境ストレスに適応するためのモードを構成することである。水は、自己組織化する、熱を消散する、及び速く複雑な伝達ネットワークを築くことができる能力を含む、特定の物理及び化学特性を有するので、生体系が適応できる能力に寄与する。
【0025】
一部の実施形態において、測定デバイスは、生物学的系の健康能力を定量するように、直接的又は間接的に水の物理及び化学特性を測定する。一部の実施形態において、測定デバイスは、水の熱力学、電気化学、及び構造の特性を測定する。一部の実施形態において、測定デバイスは、少数のイオン、分子、及び成分で水の創発特性を測定する。一部の実施形態において、測定は非侵襲的である。一部の実施形態において、測定は継続的である。一部の実施形態において、学習エンジンは、生物学的系のベースライン機能、又は恒常性又は生理学的貯蔵を定量することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、ベースライン機能の変化を検出することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、機能を最大化することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、生物学的系及び非生物学的化学系を設計及び操作することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、疾患の標準の臨床上の指標を検出し得る前に、健康能力における負の屈曲又は虚弱性を検出することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、健康上の介入、例えば食物、運動、睡眠、又は生活習慣の変化などを適用したとき、健康能力における正の屈曲、又は適応度を検出することができる。一部の実施形態において、学習エンジンは、生物学的系の設計及び操作に有用である情報を生成することができる。
【0026】
システムは、生物学的系の健康能力を定量する、及び/又は「健康能力ルール」を学習するために提供され、生物学的系の創発要因を測定して、創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサから測定したデータを受信して、測定したデータに基づいて生物学的系の健康能力を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む。プロセッサは、好ましくは1つ以上の機械可読指示に従って、生物学的系の健康能力を最大化するための解決策を算出するように構成され得る。生物学的系は、生物体、例えばヒトなどであり得る。システムは、処理システムと通信するとともに、測定したデータを保存するための記憶部品をさらに含み得る。測定したデータは、生物学的系の健康メトリックとなり得る。処理システムは、少なくとも1つのセンサ及び報告される創発要因の特性に対して最適化されたデータストリームとして、測定したデータを送信するように構成された複数の送信器を含み得る。プロセッサは、発症前であるときの疾患状態を検出するように構成され得る。プロセッサは、好ましくは1つ以上の機械可読指示に従って、複数の他の物体から報告された健康メトリックの集合と共に教師あり学習アルゴリズムを使用して生物学的系の疾患状態の発症前検出を行うように構成される。疾患状態は、例えば、老化、敗血症、心血管疾患、糖尿病、栄養障害、がん、肺疾患、卒中、アルツハイマー病、腎臓疾患、及び感染疾患から選択され、感染疾患は、細菌感染又はウイルス感染、例えば、呼吸器感染、消化管感染、肝臓感染、神経系感染、及び皮膚感染など、又はコロナウイルス、例えばコロナウイルス疾患2019若しくはCOVID-19として知られる疾患病態を引き起こすSARS-CoV-2などによって引き起こされ得る。少なくとも1つのセンサは、温度又は熱流束センサ、気圧センサ、相対湿度センサ、光センサ、及び、生物学的仕事を定量するその他のもの、例えば酸化還元センサ、電気化学センサ、構造センサ、引張センサ、運動センサ、若しくはそれらの組合せなどとし得る。センサは、複数のウェアラブルデバイス又はインプラントデバイスとし得る。インターフェースは、無線通信を介して測定したデータを送信し得る。システムは、特定の実施形態において、疾患状態を阻止するための解決策を含む出力を生成し、その解決策の実施を含み得る。システムは、測定したデータの記憶、測定したデータへのアクセス、セキュリティ構成、ユーザ入力、及び任意の結果の出力を制御するアプリケーションプログラムインターフェースコントローラをさらに含み得る。例えば、
図17は、「デジタル健康市場」を構築するため、どのようにアプリケーションプログラムインターフェースを使用することができるかを示す実施形態を示す。測定デバイスの少なくとも1つは、生物学的系の、又は生物学的系が存在する、熱特性、仕事特性、又は環境特性を測定する。
【0027】
特定のシステムは、入力訓練セットに基づいて、熱流束データを含む測定したデータを生成するように構成され得る。特定のシステムにおいて、少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態とし得、少なくとも1つの創発要因は生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントである。特定のシステムにおいて、時間的アライメントは生物学的系における少なくとも1つの準周期性リズムに関連し、該準周期性リズムは概日リズムである。特定のシステムにおいて、処理システムは、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を自動的に生成及び出力するように構成され得、該指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うことを示唆し得、少なくとも1つの指標は、脱共役剤(「アンカップラ」若しくは「除共役剤」と呼ばれることがある)、酸化的リン酸化経路の調節剤、膜貫通イオン勾配の調節剤、又は任意の組合せの1つ以上の適切な量を自動的に投与することを示唆し得、指標は概日リズムを管理するために使用される。脱共役剤は、原核生物及びミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を阻害する、又は葉緑体及びシアノバクテリアにおける光リン酸化を阻害する分子である。そうした分子は、ミトコンドリア及び脂質膜を通ってフォトンを輸送することができる。
【0028】
また、方法は、生物学的系の健康能力を定量するために提供され、生物学的系の少なくとも1つの創発要因を感知するステップと、少なくとも1つの創発要因に関して測定したデータを生成するステップと、測定したデータに基づいて、生物学的系の健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を決定するステップとを含む。また、これらの方法は、好ましくは1つ以上の機械可読指示に従って、生物学的系の健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を変更することによって健康能力を最大化するための解決策を生成すること、及び生物学的系の健康能力を増大させるように刺激を変更することによって解決策を実施することを含み得る。刺激は、例えば、睡眠パターン、睡眠持続時間、栄養摂取、運動療法、又は疾患の存在、例えば感染、例えばウイルス感染、例えばコロナウイルス疾患2019若しくはCOVID-19として知られる疾患病態を引き起こすSARS-CoV-2による感染、から選択される。
【0029】
特定の方法において、少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態であり、少なくとも1つの創発要因は熱産生及び熱除去の時間的アライメントである。時間的アライメントは生物学的系の少なくとも1つの準周期性リズム、例えば概日リズムであり得る。特定の方法は、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を生成及び出力するステップをさらに含む。指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、若しくは、任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うこと、又は、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる若しくは調節するために少なくとも1つの所定の行動を推奨することを示唆し得、行動は概日リズムを管理し得る。
【0030】
他の実施形態において、システムは、非生物学的系のエネルギー特徴を決定し、並びに、系の創発要因を測定するとともに、創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサから測定したデータを受信して、測定したデータに基づいて非生物学的系のエネルギー収支を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む。非生物学的系は、例えば、モデル化した生物学的系の実世界の対応物への介入を試験し、変更を操作するように構成され得る、生物学的系のモデルとし得る。非生物学的系は、例えば、合成システム又は産業システムとし得、そうした合成システム又は産業システムは、合成システム又は産業システムへの介入を試験し、変更を操作するように構成され得る。また、非生物学的系は、暗号化システム、及び生態系、及び保険料設定システム、サイバネティックシステム、ゲームシステム、及びバイオミメティクシステムとし得、それらのそれぞれが、非生物学的系の動作を最適化するように少なくとも1つのエネルギー特徴を使用するように構成され得る。システムは、特定の実施形態において、疾患状態を阻止するための解決策を含む出力を生成し、その解決策の実施を含み得る。特定の実施形態において、システムは、非生物学的系の動作を最適化するように少なくとも1つのエネルギー特徴を使用するように構成され、また、そうした最適化を実施するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図2は、症状が健康喪失の後期指標であることをグラフで示す。
【
図3】
図3は、エネルギーの測定値が健康喪失の早期指標であることをグラフで示す。
【
図4】
図4は、健康能力のルールを学習するため、エネルギーの測定及びアノテーションを使用する学習方針を記載する実施形態を模式的に示す。
【
図5】
図5は、エネルギー収支のモデルの実施形態をサンキー図において示す。
【
図6】
図6は、エネルギーを測定するためのデバイスの実施形態の例を示す。
【
図7】
図7は、エネルギーを測定するためのデバイスの電子装置の例を模式図として示す。
【
図8】
図8は、エネルギーを測定するためのデバイスの図を断面図において示す。
【
図9】
図9は、エネルギーを測定するためのデバイスのホルダーの図を平面図において示す。
【
図10】
図10は、データ及び情報を保存、処理、通信、分析、及び表示するシステム内で、エネルギーを測定するためのデバイスがどのように向けられる又は位置し得るかの例を模式的に示す。
【
図11】
図11は、30日間にわたってヒトにおいて測定したときの、この例では、エネルギー、つまり「エネルギー特徴」を測定するデバイスからの、出力の実施形態の例を、ΔT対時間の図にグラフプロットとして示す。
【
図12】
図12は、1日間にわたってヒトにおいて(下部の)分解図にて測定したときの、この例では、エネルギー、つまり「エネルギー特徴」を測定するデバイスからの、出力の実施形態の例を、ΔT対時間のグラフプロットとして示し、30日間ヒトにおいて測定したこの出力のそうした例の実施形態を(上部の)縮小図において示す。
【
図13】
図13は、「代謝を定量する」ための「代謝タスク」による「エネルギー特徴」のアノテーションを、エネルギー消費対時間のグラフプロットとして示す。
【
図14】
図14は、学習方針がどのように見解に基づいて実施形態をもたらすかの例を模式的に示す。
【
図15】
図15A及び
図15Bは、学習及び価値が生成される特定の実施形態を、模式的に、グラフで、及び絵入りで示す。
図15Aは、特に、ヒトの健康における学習と及び価値生成を示し、
図15Bは、特に、ヒトの疾患における学習及び価値生成を示す。
【
図16】
図16は、学習方法の概要及び学習方法の一般化した応用を模式的に示す。
【
図17】
図17は、「デジタル健康市場」を構築するため、どのようにアプリケーションプログラムインターフェースを使用することができるかを示す実施形態を模式的に示す。
【
図18】
図18は、熱センサ信号を補正して安静時代謝状態を得るために仕事センサ信号をどのように使用するかを記載する実施形態を模式的に示す。
【
図19】
図19は、本明細書において一般に「熱的適応」と呼ばれる、概日リズムサイクルでの熱生成及び熱除去の追跡において測定したデータの例を示す。
【
図20】
図20は、概日リズムの詳細には多様性が存在するものの、すべての健康な人は、仕事と熱除去との間に全面的なアライメントを示すことを示し、また、疾患、傷害、及び老化によって身体が熱を除去する能力が低下し、その結果、熱のバックログが1日にわたって蓄積し得るようになること、及び熱アライメントと呼ばれるメトリックがアライメント/バックログを定量し、健康の変化に極めて感度が高いことを示す。
【
図21】
図21は、不健康な対象における熱バックログによる熱の誤アライメントを示し、これを健康な対象の熱アライメントと比較したものである。
【
図22】
図22は、処置の効果を示し、不健康な対象における熱バックログ、及び熱の再アライメントを得るための処置の効果を示す。
【
図23】
図23は、「熱的適応」を参照して、活動の向上に対する処置の相関を示す。
【
図24】
図24は、「熱的適応」がエネルギー代謝の新しいスケーラブルなバイタルサインであることを示す。
【
図25】
図25は、健康な対象対不健康な対象の「熱的適応」を示す。
【
図26】
図26は、「熱的適応」指標が発症前診断及び適時の処置のためにどのように使用できるかを示す。
【
図27】
図27は、健康な人における熱特徴の例を示し、48時間にわたって記録されたデータを示す。
【
図28】
図28は、
図18に示すような、熱センサ信号を補正して安静時代謝状態を得るため仕事センサ信号を用いる実施形態によって利用することができる決定支援システムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述のように、現代の生物科学の基本ツールは、炭素、及び他の主要な原子とのその結合の研究である有機化学である。これは、少なくとも部分的に、生体系の遺伝子、シグナリング、及び構造上の分子が大部分は炭素原子からなるためである。しかしながら、炭素原子は、ヒトの身体において存在量が約12%と、3番目であるのみである。炭素結合は非常に多様であるにもかかわらず、炭素結合は身体で最も多いわけでもなく、生物学における大部分のエネルギー移動プロセスに関与しているわけでもない。一方で、生物学的系において最も多く存在する成分は水素及び酸素である。水素原子及び酸素原子は、水、並びに他の主要な分子(例えば、水酸化物、水素イオン、スーパーオキシド、ヒドロニウムイオン、過酸化水素、トリオキシダン等)を構成する。そうした水素及び酸素含有分子は、絶えず変動する水素結合の広大なネットワークを形成し、これは、生物学的系を通過するすべてのエネルギーを吸収、保持、伝達、平衡保持、節制、及び再放出する。これらの水素原子及び酸素原子が共に、85%を超えるヒトの身体を構成し、そのプロセスのすべてに関与する。
【0033】
開示する技術は、特定の実施形態において、水単独、又は、他の水分子と組み合わせた水、又は、酸素若しくは水素及び酸素のイオン若しくはラジカル形態、及びこれらと炭素若しくは非炭素物質、例えば元素、イオン、分子、補因子、鉱物、塩、多形体、若しくは混合物との組合せについて、固有又は創発の、由来に関係ない、一時的な又は永続的な、熱力学、電気化学、音響、構造、化学的又は生物学的特性の、直接的又は間接的な測定を提供する。単独又は組合せの、水、及び水に関連する上述の実体のいずれかを呼ぶために、「水*」及び「水星印」という用語を使用する。
【0034】
開示する技術は、水*が特に生物学的系の成分として、他の溶媒系と対照的に、生物学的系の1つ以上の状態又は機能に直接的又は間接的に関連し得る少なくとも以下の物理特性を示すという見解に基づくとともに、その見解の有用な応用に関与する。水は、すべての規模(例えば、全身、細胞、組織、器官等)においてすべての生物学的系のあらゆる化学又は物理プロセスの機能の中心であり、関連する水*の十分な利用可能性は、したがって生物学的系の機能に重要であるため、生物学的系の少なくとも以下の動作特性を定量及び学習するために、水*の特性を直接的及び/又は間接的に測定するセンサを選択して利用することが有用である。
1.高熱容量:水及び水性系の比較的高い熱容量により、生物学的系の内部環境に熱安定性を与える。一方で、他の典型的な又は多く存在する溶媒は、実質的に水の熱容量の半分未満の熱容量を有する。
2.非圧縮性:水及び水性系の相対的非圧縮性により、生物学的系の構造安定性の物理的基礎を与える。一方で、他の典型的な又は多く存在する溶媒は、実質的により圧縮性であるので、構造的損傷を受けやすい。
3.高熱拡散率:水及び水性系は、固体の熱拡散率と比べて異常に高い熱拡散率を有する。これにより、活性小器官周りの有害な内部温度変動を最小にすることができる。一方で、他の典型的な又は多く存在する溶媒は、実質的にエネルギーの分配においてあまり効率的でなく、代謝の中心周りでより大きい温度勾配を有し得、構造的劣化をもたらす可能性がある。
4.高赤外吸収バンド:代謝は、有機構造を構築するために特異的な方法で炭素結合を作製及び切断する。これらのプロセスからの廃熱は、水の広範な赤外吸収バンドによって効率的に補足される。一方で、他の典型的な又は多く存在する溶媒は、実質的に熱の補足にあまり効率的でない。また、効率的な熱の捕捉は、酵素の速い動態に不可欠である。
【0035】
当業者によって理解されるように、上述の水*の特性と異なる又は関連する場合でも、生物学的系の1つ以上の状態に直接的又は間接的に関連し得る他の水*の特性が存在する。これらの他の水*の特性のいくつかを本明細書に記載する。
【0036】
「健康能力」は、本明細書において使用するように、生物学的系、例えば生物体を含む創発系の特有の特性を指す。例えば、
図2及び
図3には、どのように「健康能力」が創発系の特有の特性として想定され得るかを示す。生物学の脈絡では、健康能力は、例えば、生体系又は生物体の持続又は機能又は健康を可能にする、生体系又は生物体に含まれるエネルギー及び情報であると考えられ得る。健康能力が高いと、系は、例えば、適応している、又はより具体的には健康である、又はさらにより具体的には疾患がない若しくは感染がないとして定められ得る。健康能力が低いと、系は、虚弱、又はより具体的には疾患若しくは感染若しくは傷害になりやすい、又はさらにより具体的には感染若しくは疾患であるとして定められ得る。疾患は、健康能力の低下によって引き起こされ得、又は、それ自体、機能喪失によって、健康能力の低下を引き起こし得る。
【0037】
開示する技術の脈絡内で、水*と創発特性との間の関係を定量的に理解するため、熱と仕事とを合計して「エネルギー収支」を得るように、熱力学第一法則を適用し得る。「エネルギー消費」が健康能力を裏付ける「代謝タスク」を支援する一方、生物学におけるエネルギーの表出は、大部分が水*において具現化されている。具体的に、水*、創発性、及び健康能力の間のつながりは、式1に例示されるように、水*が仕事をするために物理化学勾配を維持及び活用できる能力にある。
式1:水*+勾配=仕事=代謝タスク→健康能力
【0038】
したがって、健康能力は、代謝タスクを行う、ゆえにエネルギー消費を必要とする仕事に関与するとして理解され得る。エネルギー消費の平衡を保持するため、自由エネルギーの安定した供給源が必要とされる。生物学的系は、物理及び化学勾配の形態で自由エネルギーを貯蔵する。利用可能なエネルギーの大きさは、勾配のスケール、及び勾配の緩和を制御するプロセスの動態に比例する。水溶液は、大きく多様な勾配型(熱、pH、浸透、酸化還元等)を支援する特有の能力を有し、水の輸送特性により、エネルギー放出の動態を調整することができる。水溶液における勾配は、多くの場合、生物学的構造、細胞及び小器官の膜、組織及び器官境界、並び皮膚周りで安定化されている。実際に、生物学における構造的モチーフ(細胞及びフラクタル化した導管)により、勾配は一体的で外部にあるのではなく、遍在性で内部にあることができる。したがって、有機化学の機能は、水溶液における組織化された勾配の健康能力を利用かつ最適化し、生物学的系にわたって最適に分布させることとみられ得る。それにもかかわらず、健康能力は、物理化学勾配に貯蔵されたエネルギーを水溶液が保持及び放出するという特有の特性から生じる、有機物以前の現象であり、又あり得る。健康能力とつながる生物学的系における勾配の例は、血管拡張によって調節可能な皮膚表面の温度勾配が代謝柔軟性及び恒温性を可能にすること、真核生物細胞の主要な動力源としてのミトコンドリア膜のプロトン勾配、栄養素及び水の分配の主要な要因としての静水圧/膠質浸透圧バランス、及び、循環器/呼吸器系における容量増加因子としてのボーア効果及びホールデン効果を含む。
【0039】
健康能力は、生体系において、一般に熱伝達(特に熱除去)、及び熱伝達(特に熱除去)の周期性において、水が果たす相互に関連した役割によって理解され得る。本開示に開示する技術は、1つ以上の生体系、又は生体系の個体群の特有の特徴、及びしたがって、そうした生体系の健康能力に関する見解を可能にする。上述の技術により、例えば、絶対値又は周期値のいずれか又は両方として測定される、熱除去の創発特性の測定が可能になる。熱除去の絶対値は、エネルギー消費を示し得る又は反映し得る。熱除去の絶対値は、代謝率の見解を示し得る又は反映し得る。熱除去の周期性は、健康能力に関するさらなる見解を与え得る。熱除去の周期性は、概日周期性(すなわち、約23時間のサイクルから約25時間のサイクル)のものであり得、概日周期性よりも短いサイクル(例えば、約12、約14、約16、約18、若しくは約20時間のサイクル)のものであり得、又は、概日性よりも長く(例えば、2、3、4、5、若しくは6日毎、毎週、若しくは、およそ毎月若しくは28日、太陰、若しくは年サイクル)なり得る。任意のそうした熱除去の周期性は、標準の許容される健康能力を有する生体系の特有の特徴として機能し得る又は反映し得る。熱容量におけるその標準の許容される周期性からの逸脱は、標準以下又は許容されない健康能力を示し得る、あるいは反映し得る。
【0040】
健康能力に関して、「発症前疾患」は、本明細書において使用するように、環境ストレスを補償しているいくらかの代謝タスクによって健康能力が枯渇し、その最終結果が疾患及び機能喪失であるプロセスを指す。この低下した健康能力は、補償に関連した異常なエネルギー消費として、又はいくらかより一般的な異常なエネルギー特徴として検出可能である。そうした低い又は低下した健康能力の状態は、一般に機能喪失の高いリスクに、初期ストレスによるだけでなく又はより具体的には、一般に疾患若しくは感染になりやすい状態に、個体をさらしている。さらに、「症候性疾患」は、本明細書において使用するように、機能障害の状態、又はより具体的には疾患状態、又は生物体が例えばウイルス病原体に感染した状態を指す。プレシジョンメディシンの方法論によって例示される現在の方法論は、症状を病気の指標として使用する(
図1及び
図2に示す)。ここで開示する技術は、健康能力の評価及び増加を可能にするとともに、健康能力の発症前の変化を特定して疾患又はより具体的には例えば感染の早期検出を可能にするように、静的又は動的な測定としての「健康能力」の測定及び評価によって例示される健康のより包括的な利点を定量するためのシステム、デバイス、及び方法を提供する(例えば、
図2及び
図3に示す)。健康能力のルールを学習するためにエネルギーの測定及びアノテーションを使用する学習方針を記載する実施形態を
図4に示す。
【0041】
一実施形態において、健康は、生物学的系又は生物体が著しく機能喪失することなく種々の変化に適切に適応できる能力に関連する。生理学者は、例えば、生理学的貯蔵と呼ばれるある形態の貯蔵エネルギーの充足として、つまりヒトがストレスに積極的に応答できる能力として、健康を記述し得る。他の例として、物理学者は、持続するためのエネルギーを取り込み、変換し、及び散逸させる能力として、健康を記述し得る。他の例として、細胞生物学者は、恒常性のベースライン状態として、つまり細胞又は組織が自己調節できる能力として、健康を記述し得る。他の例として、生化学者は、生物学的機能に重要な代謝ネットワークにおける同化及び異化反応の調節として、健康を記述し得る。
【0042】
これらの上述の健康についての観点又は理解のそれぞれは、生理学者、物理学者、細胞生物学者、又は生化学者の観点として、その脈絡において適切であり、開示する技術の応用に寄与する。より具体的には、開示する技術は、上述の観点及び理解を調和させ、疾患がないことと同時に高い健康能力を有することとして、すなわち機能的である及び適応していることとして、健康の新しい概念化を行う。一実施形態において、健康能力は、
図1に示すように、恒常性の物理特性を測定することによってどのように健康が定量され得るかを示す。すなわち、健康は、生物学的系の健康能力として定量される。開示する技術の他の態様は、例えば生物学的系の健康を含む、生物学的系の状態の一連のメトリックを正確に測定する技術の開発に関する。これらの技術は、十分に高い分解能で、作用可能な時間スケールにおいて情報を取得及び処理する。
【0043】
開示する技術の他の態様は、生物学的系の創発特性を定量すること、生活を向上させるように生物学的系の創発特性の新しい尺度及びメトリックを自動化すること、健康を得る、維持する、及び促進するように行動計画を行うこと、新しく正確な健康データストリームから複雑な生物学のより速い学習を可能にすること、対象における健康の円滑な収集、分析、及び決定支援を可能にすること、疾患による妨害に対するスケーラブルな解決策を開発すること、診断における偽陽性を低減すること、並びに、疾患の原因を見つけることを含む。開示する技術の一部の実施形態において、生体系の特性及びその物理化学的特性が測定される。これらの特性は、生体系の創発的特性をとらえる。他の実施形態において、開示する技術は、物理的系と生物学的系との間の境界を生じさせる創発特性に焦点を置く。したがって、開示する技術は、合成生物学及び人工生物学的系、例えば原始細胞又は産業用生物学的系に適用可能である。
【0044】
他の態様において、開示する技術は、対象から一連の健康メトリックを測定するための方法に関する。一部の実施形態において、方法は、物のインターネット(IoT)のアーキテクチャ及びインフラストラクチャに組み込まれる。一部の実施形態において、方法は、細胞のスケールで代謝の特徴を測定する。これらの測定は、断続的、定期的、又は継続的であり得る。一部の実施形態において、方法は、一連のそうしたメトリックをクラウドにストリーミングすること、「代謝の定量」に機械学習を適用すること、及び疾患の症状が起こる前に変化を検出することをさらに含む。一部の実施形態において、方法は、リアルタイムで細胞の生理学及び恒常性を測定する分解能及び周波数で生物学的系の個別の物理的パラメータを非侵襲的に測定する。一部の実施形態において、方法は、測定した対象の物理特性、エネルギー、及び情報に基づいて、対象の恒常性の回復力に関連する対象の健康能力として知られる量を定める及び定量する。
【0045】
開示する技術は、生物学的系における健康能力の向上を可能にする作用可能な情報を提供する。好ましい実施形態において、個体は、これまでアクセス可能でなかった、その自身の健康のメトリックへのアクセスを得る。そうした作用可能性により、特定の生物学的系における特定の刺激に対する応答を観察することを可能にし、今後の刺激の交替又は影響を可能にする。例えば、個体又は医療従事者は、生物学的系、例えば患者又は個体自身の健康を変化させるため、開示する技術を使用し得る。また、これは、健康に最も影響を与える決定要因、例えば睡眠パターン及び持続時間、栄養(食事、サプリメント、薬物等を含む)、運動(神経筋インプット、種類、持続時間、周期等)、並びに健康に影響を与えるその他の生活習慣の決定又は阻害要因(公害等)などをより良好に理解することを可能とする。好ましい実施形態において、開示する技術により、個体がその自身の健康の効果的なエージェントとなることを可能にする。
【0046】
開示する技術は、自動化された及び自動化可能な方法を提供することで、医療の非効率性の主な原因である手作業による試験及び解釈に対処する。現在の医療試験は一般に集約化されており、そうした試験の解釈は一般に医療従事者によって手作業で行われている。これらのタスクの両方において費用がかかり、非効率である。開示する技術は、健康能力と関連した健康データのデジタル化を可能にする。そうしたデジタル化により、現存のIoTエコシステム及びクラウドコンピューティングのすべての恩恵を適用できる能力をもたらす。
【0047】
開示する技術は、科学者及び医療従事者に、健康能力を向上させることで健康を最適化するためのシステム及び方法を提供する。本技術は、健康を理解しづらい概念として捉えるのではなく、定量化、具体化、又はモジュール化された測定可能なタスク又は標的を含むシステムとして捉えることを可能にする。
【0048】
開示する技術により、健康能力として捉えられる健康の定量、及び、概日性又は他の周期性成分の大きさ又は周波数の変化を含むその経時の変化の検出を可能にする。開示する技術は、健康の欠如を症候性疾患があることとして捉える現在の方法論ではなく、症候性疾患の発症前に、健康の実質的に継続的な測定、その低下の定量、及びその変化の検出を提供する。したがって、開示する技術により、個体、公衆衛生及び/又は医療の専門家は、疾患の発症を未然に防ぎ、疾病率を低下させ、死亡率を低下させ、医療費を低下させるため、より正確で信頼性の高い情報を用いて、是正行動をとることが可能である。
【0049】
また、開示する技術は、エネルギー使用の単純で、基礎的で、及び変換可能なメトリック、つまり「エネルギー特徴」を使用することによって、発見の偽陽性率を低下させることで、現在利用可能なプレシジョンメディシンツールの効率を高め、それによってイールームの法則による非効率の傾向を逆転させることができる。
【0050】
一部の態様において、開示する技術は、複雑適応の生物学的系及び非生物学的系を定量、予測、調節、最大化、設計、及び操作するため、生物学的系及び非生物学的系の両方の創発特性の物理的、化学的、及び生物学的測定値を取得する方法、並びに、創発特性測定データを処理、保存、送信、分析、集約、配布、及び表示するシステム又は技術プラットフォームに関する。
【0051】
一部の実施形態において、生物学的系は、真核生物、原核生物、又は古細菌生物、例えば細菌など、配偶子、又は赤血球、白血球、組織若しくは器官に由来する細胞、例えば筋細胞など、又は単純若しくは複雑な多細胞生物体、例えばリンゴ若しくはヒトなど、又は操作した細胞、及び/又は非生物学的な必須化学物質若しくはエネルギー源と組み合わせた相互作用するエコシステムを形成するそれらの集合であり得る。
【0052】
一部の実施形態において、非生物学的系は、生物学的系に類似するが遺伝物質を欠いている、操作した非生体系、つまり原始細胞、又は任意の他の操作した若しくは生物模倣に基づいて設計したシステム、又は半合成システムであり得る。
【0053】
一部の実施形態において、開示する技術は、生物学的系及び非生物学的系において、それらの存在の状態、並びにそれらが持続できる能力を評価するためのそうした尺度の使用にさらに関する。生物学的系又は非生物学的系が存在又は存続できる能力は、系の「健康能力」に関する。
【0054】
開示する技術の利点は、持続する又はいくらかの中核機能能力を得ることができる能力によって主に示される回復力(適応力)の特性に関する物理的、化学的、及び生物学的パラメータの測定に基づいて、生物学的系又は非生物学的系を定量、予測、調節、最大化、操作、及び設計できる能力を含む。
【0055】
一部の実施形態において、開示する技術は、物理的、化学的、及び生物学的パラメータを得るための技術プラットフォーム及び方法にさらに関し、ウェアラブルな、インプラントした、埋め込まれた、又はあるいは連結されたデバイスを含む。そうした測定を実施すると、それらは、生物学的系を定量、予測、調節、最大化、操作、及び設計するために、保存、定量、分析、集約、配布、及び表示することができる。また、健康能力の尺度は、測定技術及び学習プラットフォームが生物学的系又は非生物学的系を定量、予測、調節、最大化、操作、及び設計できる能力を改良するために、創発特性のものではない他の尺度と組み合わせて分析することもできる。
【0056】
単細胞の真核生物又は原核生物又は古細菌生物の例において、開示の技術は、機能の定量、予測、及び最大化を可能にし得る。例えば、配偶子の場合、開示する技術は、生体内受精又は体外受精のために受精能を最大化するように健康能力の定量を可能にし得る。細菌、酵母、又はヒト細胞において、開示する技術は、産業又は合成生物学の場合、分子合成の健康能力の定量に使用され得る。非病原性腸内細菌の場合、開示する技術は、マイクロバイオーム機能を最大化するように使用され得る。
【0057】
多細胞の真核生物の例において、開示の技術は、機能の定量、予測、及び最大化を可能にし得る。例えば、ヒトにおいて、開示する技術は、健康の測定及び最大化、並びに疾患の診断及び/又は発症前診断、並びに疾患処置又は阻止のための方法の設計を可能にし得、疾患は感染性、がん、毒性、医原性、又は代謝性であり得、健康の決定要因は、食物/栄養、睡眠、運動、神経筋の活性化、及び生活習慣の変化、例えば喫煙、不活動、中毒などである。
【0058】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、非ヒト多細胞真核生物におけるその応用をさらに含むことができる。例えば、農業システム、例えば植物及び動物の営農におけるものである。これらの生物学的系において、開示する技術は、食物物質生産の最大化、及び/又は非生物的若しくは生物的ストレスの軽減を可能にし得る。
【0059】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、種及び化学資源の単純なエコシステムにおけるその応用をさらに含むことができる。例えば、2つ以上の種及び1つ以上の資源の生物学的系において、開示する技術は、機能的相互依存におけるそれらの互いの最大化を可能にし得る。例えば、種の1つがヒトであった場合、技術は、ヒトの機能的パラメータ、例えば睡眠、活動、身体又は認知パフォーマンス、及び疾患予防の最大化を可能にし得る。
【0060】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、複雑なエコシステムにおけるその応用をさらに含むことができる。例えば、多くの種及び多くの資源の生物学的系において、開示する技術は、機能的相互依存におけるそれらの互いの最大化を可能にし得る。複雑な系が農場であった場合、開示する技術は、エコシステムの機能、例えば持続可能性の最大化を可能にし得る。
【0061】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、合成生物学、例えば真核生物細胞及び原核生物細胞におけるその応用をさらに含むことができる。これらの生物学的系において、開示する技術は、機能、例えば、タンパク質、脂質、若しくは低分子の合成、又は非生物的若しくは生物的ストレスの条件下において生存率を維持する能力、を最大化するような設計及び操作を可能にし得る。
【0062】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、生体測定学におけるその応用をさらに含むことができる。例えば、開示する技術は、遺伝物質とは無関係に又は遺伝物質と組み合わせて生物学的系の識別を可能にし得る。
【0063】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、非生物学的系におけるその応用をさらに含むことができる。例えば、開示する技術は、生物学的系に類似するが遺伝物質を欠いている非生体系、つまり「原始細胞」の設計及び操作を可能にし得る。そうした原始細胞は、仕事を学習及び/又は行うために使用され得、仕事は、単に熱産生ではない任意の出力を意味すると理解され得る。
【0064】
特定の実施形態において、開示する技術の利点は、生物学的時間、つまり「寿命」を定量するための生物学的系におけるその応用をさらに含むことができる。例えば、開示する技術は、生物学的系の理論上及び実際の寿命を計算するために使用され得、機能又は寿命を最大化するように上述の用途と組み合わせて使用され得る。
【0065】
他の態様において、開示する技術は、健康メトリックを記録するセンサのアレイを含むウェアラブルデバイスに関する。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、対象の健康における選択した「エネルギー特徴」(例えば
図11及び
図12に示す)メトリック又は指標を継続的に記録する。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、細胞生理学のスケールにおいて創発性に由来する複雑性をとらえる。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは低費用及び低電力のみを必要とし、利用しやすさ及びリアルタイムの継続的なデータ取得を可能にする。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、恒常性及び細胞生理学を反映する電気化学、機械、構造、熱、及び/又はエネルギー特性を測定するマルチモダリティセンサシステムを含む。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、約4個のセンサから約12個のセンサを含む。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、約5、6、7、8、9、10、又は11個のセンサを含む。
【0066】
一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、時間の関数として対象における配列状の位置にわたって皮膚及び周囲温度を測定する。既定の時間間隔、例えば1時間、12時間、24時間、48時間などにおける温度の変化は、熱伝達を定量するので、例えば、固有の代謝率又はそうした比率の変化を反映し得る。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、時間の関数として対象の関連する位置において相対湿度及び気圧を測定し、湿度及び気圧の変化は熱伝達及びその定量に影響を与え得る。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、時間の関数として対象における配列状の位置にわたってインピーダンスなどの電気化学特性を測定し、電気化学特性の変化は電解質を定量し得、水分流動を反映し得る。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、時間の関数として対象における配列状の位置にわたって細胞力学を測定し、細胞構造の変化は、例えば、構造動態を反映する運動を定量し得る。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、少なくとも2、3、4、5、6、又はそれ以上のそうしたメトリックを同時に測定する。
【0067】
他の態様において、開示する技術は、他のデータストリーム又は「代謝タスク」のアノテーションを含む、複数の対象からのエネルギー特徴データストリームの定期的、断続的、又は継続的な収集及び解釈を自動化するスケーラブルな技術プラットフォームに関する。一部の実施形態において、データ収集及び解釈は、少なくとも2、3、4、5、6、又はそれ以上の上述のメトリックに同時に基づくものである。一部の実施形態において、データは圧縮及び/又は暗号化される。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、アプリケーションプログラムインターフェース(API)をさらに含む。一部の実施形態において、データは圧縮及び/又は暗号化され、クラウドに保存される。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、対象の健康の最適化、及び慢性疾患の管理のためのツールをさらに提供する。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、該技術プラットフォームを反復的に向上させるように使用される、一揃いの機械学習処理をさらに含む。スケーラブルな技術プラットフォームの利点は、健康を定量し、その最適化のために客観的ツールを開発し、疾患を発症前に検出し、及び病気を阻止できる能力を含む。
【0068】
一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、対象の健康を客観的に定量するためのツールをさらに提供する。上述のプラットフォームは、食物、栄養、運動、活動、睡眠、生活習慣、ゲノム、老化、共同体、及び/又は胎児-母体の幸福の1つ以上が健康に与える影響を相関又は予測し得る。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、老化の結果としての身体能力及び回復力の一般的な減少に関する、対象又は高齢者個体群の虚弱指標を定めて定量する。一部の実施形態において、虚弱指標は、筋消耗、筋肉パフォーマンスの左右非対称性、慢性疾患に関連する炎症、心血管不全、及び精神能力の低下に関する。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、感染、敗血症、リハビリテーション、及び/又は慣性疾患に関する事象を発症前に検出、追跡、及び阻止するためのツールをさらに提供する。
【0069】
一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、発症前又は疾患の早期段階における自動的に生成された処置オプション、例えば、抗生物質及び支持療法のより早期の開始をさらに提供する。一部の実施形態において、スケーラブルな技術プラットフォームは、対象の健康状態を向上させるため、自動的に生成された推奨事項をさらに提供する。
【0070】
生物学的系の健康能力を定量するためのシステムを本明細書において開示し、該システムは、生物学的系の創発要因を測定するとともに、創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサから測定したデータを受信して、測定したデータに基づいて生物学的系の健康能力を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む。システムにおいて、プロセッサは、機械可読指示に従って生物学的系の健康能力を最大化するための解決策を算出し得る。生物学的系は生物体であり得る。生物学的系は、動物、植物、及び単細胞生物体から選択され得る。生物学的系は、産業用生物学システム又は合成生物学システムであり得る。好ましい実施形態において、生物体はヒトである。システムは、処理システムと通信するとともに、測定したデータを保存するための記憶部品をさらに含み得る。測定したデータは、生物学的系のエネルギー収支とし得る。システムは、少なくとも1つのセンサ及び報告される創発要因の特性に対して最適化されたデータストリームとして、測定したデータを送信するように構成された複数の送信器を処理システムが含むように構成され得る。好ましい実施形態において、プロセッサは、機械可読指示に従って健康メトリックに基づいて生物学的系の疾患状態の発症前検出を行う。プロセッサは、あるいは、複数の他の物体から報告された健康メトリックの集合と共に機械可読指示に従って教師あり学習アルゴリズムを使用して生物学的系疾患状態の発症前検出を行い得る。疾患状態は、特定の実施形態において、老化、敗血症、心血管疾患、及び感染疾患から選択され得る。疾患状態が感染疾患である場合、感染疾患はウイルス感染によって引き起こされ得、ウイルス感染は、呼吸器感染、消化管感染、肝臓感染、神経系感染、及び皮膚感染、又はコロナウイルス、例えばCOVID-19から選択され得る。システムの少なくとも1つのセンサは、好ましくは熱力学センサであるが、電気化学センサ、構造センサ、引張センサ、運動センサ、他の既知のセンサ、又はそれらの組合せでもあり得る。システムの少なくとも1つのセンサは、特定の実施形態において、熱流束データ、熱量測定データ、浸透圧測定データ、及び生理機能測定データの少なくとも1つを含むデータを感知するための複数のウェアラブルデバイスを含み、ウェアラブルデバイス又はインプラントデバイスであり得る。インターフェースは、無線通信を介して測定したデータを送信するように構成され得る。処理システムは、特定の実施形態において、測定したデータの記憶、測定したデータへのアクセス、セキュリティ構成、ユーザ入力、及び任意の結果の出力を制御するアプリケーションプログラムインターフェースをさらに含み得る。
【0071】
また、生物学的系の健康能力を定量するためのシステムを開示し、該システムは複数の測定デバイスを含み、少なくとも1つの測定デバイスは、生物学的系の熱力学特性を測定する。一部の実施形態において、システムは疾患状態を阻止するための解決策を含む。
【0072】
また、生物学的系の健康能力を定量するための方法を開示し、該方法は、生物学的系の少なくとも1つの創発要因を感知するステップと、少なくとも1つの創発要因に関して測定したデータを生成するステップと、測定したデータに基づいて、生物学的系の健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を決定するステップとを含む。方法は、特定の実施形態において、生物学的系の健康能力に影響を与える1つ以上の刺激を変更することによって健康能力を最大化するための解決策を生成することであって、刺激は、睡眠パターン、睡眠持続時間、栄養摂取、及び運動療法から選択されることをさらに含み得る。特定の実施形態において、測定したデータは、経時における生物学的系の表面温度及び身体活動を含み得る。方法は、表面温度差に基づいて経時における生物学的系の熱除去を推定すること、身体活動に基づいて経時における生物学的系の熱産生を推定すること、及び、熱除去及び熱産生の時間的アライメントに基づいて、生物学的系の基礎代謝状態を推定することをさらに含み得る。方法は、測定されたデータに基づいて生物学的系の準周期性リズムを得ることであって、準周期性リズムが、秒のタイムスケール、分のタイムスケール、超日、概日、概月、又は年のタイムスケールであることをさらに含み得る。特定の実施形態において、方法は、所定の時間にわたる準周期性リズムの変動を得ること、及び準周期性リズムの変動に基づいて健康能力を決定することをさらに含み得る。方法は、表面温度差に基づいて経時における生物学的系の熱除去を推定すること、身体活動に基づいて経時における生物学的系の熱産生を推定すること、熱除去及び熱産生の時間的アライメントに基づいて、生物学的系の基礎代謝状態を推定すること、及び、推定した基礎代謝状態に時間依存関数を適用することによって健康能力を決定することであって、時間依存関数は生物学的系の準周期性リズムから導出されることをさらに含み得る。
【0073】
また、非生物学的系のエネルギー特徴を決定するためのシステムを開示し、該システムは、系の創発要因を測定するとともに、創発要因に基づいて測定したデータを生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサから測定したデータを受信して、測定したデータに基づいて非生物学的系のエネルギー収支を定量する1つ以上の要因を決定するためのプロセッサ及びインターフェースを含む処理システムとを含む。特定の実施形態において、このシステムは、少なくとも1つの熱力学センサ及び少なくとも1つの運動センサを含み得る。少なくとも1つの熱力学センサは、経時において生物学的系の表面温度を感知するための複数のウェアラブルデバイスを含み得、少なくとも1つの運動センサは、経時において生物学的系の身体活動を感知するための少なくとも1つの加速度計を含む。
【0074】
システムにおいて、処理システムは、測定されたデータに基づいて生物学的系の準周期性リズム及び活動レベルを分析するようにさらに構成され得、準周期性リズムが、秒のタイムスケール、分のタイムスケール、超日、概日、概月、又は年のタイムスケールである。また、処理システムは、生物学的系の分析した準周期性リズム及び活動レベルに基づいてセンサを作動させるようにさらに構成され得る。本方法の特定の実施形態において、測定したデータは、生物学的系の排ストリームを含み得る。特定の実施形態において、排ストリームは、熱、1つ以上の低エネルギー化学種、又は任意のそれらの組合せを含み得る。特定の実施形態において、測定したデータは、リアルタイムの生物学的系の全エネルギー消費を含み得る。特定の実施形態において、方法は、測定したデータに基づいて生物学的系における温度調節の機能的態様を分析することさらに含む。特定の実施形態において、本方法は、生物学的系の1つ以上の機能を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を生成及び出力することをさらに含む。本方法の特定の実施形態において、指標は、生物学的系の体重、血圧、概日リズム、睡眠の質、睡眠持続時間、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される。
【0075】
本システムの特定の実施形態において、システムは、生物学的系の排ストリームを測定するように構成された少なくとも1つの熱センサ及び少なくとも1つの化学センサを含む。排ストリームは、熱、1つ以上の低エネルギー化学種、又は任意のそれらの組合せを含み得る。センサは、特定の実施形態において、リアルタイムで生物学的系の全エネルギー消費を直接的に測定するように構成される。特定の実施形態において、処理システムは、測定したデータに基づいて生物学的系における温度調節の機能的態様を自動的に分析するように構成される。特定の実施形態において、処理システムは、生物学的系の1つ以上の機能を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を自動的に生成及び出力するようにさらに構成される。特定の実施形態において、指標は、生物学的系の体重、血圧、概日リズム、睡眠の質、睡眠持続時間、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される。特定の実施形態において、少なくとも1つの指標は、脱共役剤、酸化的リン酸化経路の調節剤、膜貫通イオン勾配の調節剤、又は任意のそれらの組合せの1つ以上の適切な量を自動的に投与することを示唆する。特定の実施形態において、少なくとも1つの指標は、生物学的系の温度調節機能又は温度調節に関する生理学的要素に影響を与えるように外部環境の自動的な調節を示唆する。
【0076】
本システムの特定の実施形態において、生物学的系の温度調節機能又は温度調節に関する生理学的要素は、心血管パラメータ、概日パラメータ、認知パラメータ、感情パラメータ、又は任意のそれらの組合せを含む。特定の実施形態において、外部環境の自動調節は、内部気温、圧力、湿度、又は任意のそれらの組合せの調整を含む。特定の実施形態において、外部環境の自動調節は、聴覚刺激、嗅覚刺激、視覚刺激、又は任意のそれらの組合せの提供を含む。
【0077】
本システムの特定の実施形態において、少なくとも1つの指標は、所定の行動をとるように生物学的系に自動推奨を行う。特定の実施形態において、生物学的系はヒトであり、所定の行動は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、水を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む。特定の実施形態において、センサは、リアルタイムで生物学的系の全エネルギー消費を直接的に測定するように構成される。特定の実施形態において、処理システムは、測定したデータに基づいて生物学的系における温度調節の創発特性を自動的に分析するように構成される。
【0078】
特定の実施形態において、処理システムは、生物学的系の1つ以上の創発特性を理解する、向上させる、調節する、再利用する、又は任意のそれらの組合せのための指標を生成及び出力するようにさらに構成され得る。特定の実施形態において、指標は、生物学的系の体重、血圧、概日リズム、又は任意のそれらの組合せを管理するために使用される。特定の実施形態において、測定したデータは熱流束データを含む。
【0079】
特定の実施形態において、少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態であり、少なくとも1つの創発要因は熱産生及び熱除去の時間的アライメントである。特定の実施形態において、時間的アライメントは生物学的系における少なくとも1つの準周期性リズムに関連する。少なくとも1つの準周期性リズムは概日リズムであり得る。特定の実施形態において、方法は、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を生成及び出力するステップをさらに含む。特定の実施形態において、指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うことを、生物学的系に示唆する。特定の実施形態において、方法は、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するために少なくとも1つの所定の行動を推奨するステップをさらに含む。上述の行動は概日リズムを管理し得る。
【0080】
特定の実施形態において、測定したデータは熱流束データを含み、少なくとも1つの健康能力は基礎代謝状態であり、少なくとも1つの創発要因は生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントである。時間的アライメントは生物学的系における少なくとも1つの準周期性リズムに関連する。準周期性リズムは概日リズムである。特定の実施形態において、処理システムは、生物学的系の熱産生及び熱除去の時間的アライメントを向上させる又は調節するための少なくとも1つの指標を生成及び出力するようにさらに構成される。特定の実施形態において、指標は、着替える、屋内に入る、屋外に出る、特定の食物を食べる、特定の飲料を飲む、特定の運動を行う、寝る、又は任意のそれらの組合せを含む行動の群から選択される少なくとも1つの所定の行動を行うことを、生物学的系に示唆する。特定の実施形態において、少なくとも1つの指標は、脱共役剤、酸化的リン酸化経路の調節剤、膜貫通イオン勾配の調節剤、又は任意のそれらの組合せの1つ以上の適切な量を投与することを示唆する。
【0081】
また、ヒトの代謝状態を定量及び向上させるためのシステムを開示し、該システムは、ヒトの創発要因を測定するように構成され、創発要因はヒトの熱産生及び熱除去の時間的アライメントであり、時間的アライメントはヒトの概日リズムに関し、創発要因に基づいて、経時において熱流束データを含む測定したデータを生成するように構成された、少なくとも1つのウェアラブル熱力学センサと、プロセッサ及びインターフェースを含む処理システムであって、少なくとも1つのウェアラブル熱力学センサから測定したデータを受信し、測定したデータに基づいて、熱産生及び熱除去に関するヒトの代謝状態を定量し、測定したデータに基づいて、ヒトの代謝状態に影響を与える1つ以上の刺激を決定し、ヒトの代謝状態を最大化するための解決策を算出し、並びに、ヒトの熱産生及び熱除去を調節することによってヒトの代謝状態を向上させるための少なくとも1つの指標を生成及び出力するように構成される処理システムとを含む。
【0082】
また、ヒトの代謝状態を定量及び向上させるための方法を開示し、該方法は、ヒトの少なくとも1つの創発要因を感知するステップであって、創発要因はヒトの熱産生及び熱除去の時間的アライメントであり、時間的アライメントはヒトの概日リズムに関する、ステップと、少なくとも1つの創発要因に関して測定したデータを生成するステップであって、該測定したデータは経時における熱流束データを含む、ステップと、測定したデータに基づいて、熱産生及び熱除去に関するヒトの代謝状態を定量するステップと、測定したデータに基づいて、ヒトの代謝状態に影響を与える1つ以上の刺激を決定するステップと、ヒトの代謝状態を最大化するための解決策を算出するステップと、ヒトの熱産生及び熱除去を調節することによってヒトの代謝状態を向上させるための少なくとも1つの指標を生成及び出力するステップとを含む。
【0083】
システムの実施形態において、ヒトの代謝状態を定量することは、少なくとも1つの概日サイクルにわたる熱産生及び/又は熱除去の平均値、分散、最小値及び/又は最大値を決定することに基づく。実施形態において、ヒトの代謝状態を定量することは、少なくとも1つの概日サイクルにわたる熱産生及び/又は熱除去の日間安定性及び/又は日内変動を決定することに基づく。実施形態において、ヒトの代謝状態を定量することは、特定の概日サイクルにわたる熱産生及び/又は熱除去の平均値、分散、最小値及び/又は最大値を、ヒトの記録値と比較することに基づく。実施形態において、ヒトの代謝状態を定量することは、特定の概日サイクルにわたる熱産生及び/又は熱除去の日間安定性及び/又は日内変動を、ヒトの記録値と比較することに基づく。
【0084】
(定義)
「適応」は、本明細書において使用するように、生物学的系がその環境に応じて経時で変化できる能力を指す。この能力は進化のプロセスに重要であり、生物体の場合、遺伝、食事、及び外部要因によって決定され得る。適応は創発特性であり、種々の生物学的要素及びそれらの機能、例えば脳の学習、DNA及びタンパク質の構造及び機能、小器官の機能と恒常性との連携、転写及び翻訳ネットワークのフィードバック調節、分子の相互作用、並びに生物圏の平衡などに関与している。また、適応は進化可能であり、種々の形態を取り得る。例えば、原始細胞において、適応できる能力は、系の物理及び化学特性が複数の機能的形態の間で相互変換するために比較的低い速度障壁で自己組織化し、熱を除去し、並びに、内部化学作用及び外部ストレスの特性速度におよそ等しい速度で通信できることを必要とする。
【0085】
「アプリケーションプログラムインターフェース」(API)は、本明細書において使用するように、一般にソフトウェアアプリケーションの構築に使用するために設計された一式のルーチン、プロトコル、又はツールを指す。一例において、APIは、指定したソフトウェア部品が相互作用するかを特定し得る。一実施形態において、APIは、システムのプログラム部品が健康能力を決定、変更、又は最大化するときに使用される。APIは、センサを変更する、あるいは、センサによって提供されるデータに基づいて健康能力を決定するためのソフトウェア及び/又は指示を作成及び実施するために使用されるソフトウェアツールのセットであり得る。
【0086】
「生物学的系」は、本明細書において使用するように、生物学的に関連する要素の任意のネットワークを指す。その最も幅広い態様において、生物学的系は、それ自体の仕組みによって持続する非平衡構成として存在する化学反応の任意のネットワークである。生物学的系は、様々なスケールを包含して様々なスケールにわたり、生物学的系の性質に応じて様々な構造に基づいて決定される。大きなスケールの生物学的系の例は、例えば、微小な生物体の個体群、互いに近接して生存する同様の生物体の均質な個体群(例えば、細胞培養又はヒトの共同体)、単一のエコシステムに生存する生物体の不均質な個体群、生物学的ネットワークを含む。より小さいスケールの生物学的系の例は、個々の生物体、例えば単一の哺乳動物、例えばヒトなど、そうした生物体内の器官又は組織系、細胞小器官系、人工生命系を含む。
【0087】
「熱量計」は、本明細書において使用するように、化学反応又は物理変化の熱並びに熱容量を測定する処理である熱量測定に使用されるデバイス又はシステムを指す。示差走査熱量計、等温マイクロ熱量計、滴定熱量計、及び加速速度熱量計は、なかでも最も一般的な種類の熱量計である。単純な熱量計は、燃焼室の上に吊るし、水を含む金属容器に取り付けた温度計からなり得る。
【0088】
「熱量測定」は、本明細書において使用するように、例えば特定の制約のもとにおける化学反応、物理変化、又は相転移による、生物学的系の状態の変化に関連する熱伝達を導き出すために、生物学的系の状態変数の変化を測定することを指す。間接熱量測定は、二酸化炭素及び窒素廃棄物(一般的に水生生物体のアンモニア、又は陸生生物体の尿素)の産生、又は酸素の消費のいずれかを測定することによって、生物学的系が産生する熱を計算するための処理又はシステムである。また、生物学的系によって生成される熱は、生物体全体又は配列状の生物体を測定のために熱量計内に配置する、直接熱量測定によっても測定され得る。広く使われている熱量計の一例が示差走査熱量計であり、これにより、少量の物質において熱データを得ることができる。これは、制御された比率で試料を加熱し、検体内へ又は検体からのいずれかの熱流を記録することに関与する。
【0089】
「脱共役剤」は、本明細書において使用するように、原核生物及びミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を阻害する、又は葉緑体及びシアノバクテリアにおける光リン酸化を阻害する、「アンカップラ」又は「除共役剤」と呼ばれることがある分子を指す。そうした分子は、ミトコンドリア及び脂質膜を通ってフォトンを輸送することができる。従来の脱共役剤は、(1)呼吸調節の解除、(2)アンカップラによって媒介される環状プロトン輸送による、すべての結合プロセス(ATP合成、トランス水素化、逆の電子流、陽イオンの能動輸送等)の置換であって、ミトコンドリア膜又は原核生物膜を隔てて生じるプロトン及び陽イオン勾配を排除すること、(3)これらの作用において1つの結合部位と別の部位との間が区別ないこと、(4)電子輸送によって駆動される結合プロセス間の区別がないこと、(5)ATP加水分解によって駆動される結合プロセス間の区別がないこと、の5つの特性を有する。擬似脱共役剤はこれらの特性の1つ以上を示すが、すべてを示すわけではないため、十分な脱共役を得るために、1つ以上の他の擬似アンカップラと組み合わせる必要がある。脱共役剤の例は、2,4-ジニトロフェノール(DNP)と、2,5-ジニトロフェノールと、1799(α,α’-ビス(ヘキサフルオロアセトニル)-アセトン)と、BAM15、N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6ジアミンと、2-tert-ブチル-4,6-ジニトロフェノール(ジノテルブ)と、6-sec-ブチル-2,4-ジニトロフェノール(ジノセブ)と、C4R1(ローダミン19の短鎖アルキル誘導体)と、カルボニルシアニドフェニルヒドラゾン(CCP)と、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)と、カルボニルシアニドp-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)と、CDE(4β-シナモイルオキシ,1β,3α-ヒドロキシオイデスマ-7,8-エン)と、CZ5と、デスアスピジンと、ジクマロールと、ジニトロ-オルト-クレゾール(DNOC)と、エリプチシンと、エンドシジン9(ES9)と、フルフェナム酸と、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)と、ppc-1(polysphondylium pseudocandidumによって産生される二次代謝物)と、ペンタクロロフェノール(PCP)と、パーフルオロトリエチルカルビノールと、S-13(5-クロロ-3-t-ブチル-2’-クロロ-4’-ニトロサリチルアニリド)と、SF6847(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル)と、TTFB(4,5,6,7-テトラクロロ-2-トリフルオロメチルベンズイミダゾール)と、チロホスチンA9(SF-6847)(AG17)と、(+)-ウスニン酸と、XCT-790と、mitoFluo(10-[2-(3-ヒドロキシ-6-オキソ-キサンテン-9-イル)ベンゾイル]オキシデシル-トリフェニル-ホスホニウムブロミド)と、トリクロサン(トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル)と、ピロロマイシンCとを含むがこれらに限定されない。化合物のアジドと、ビグアナイドと、ブピバカインと、カルシマイシン(A23187)と、ドデシルトリフェニルホスホニウム(C12TPP)と、ラサロシド(X537A)と、例えばリノール酸を含む長鎖脂肪酸と、mitoQ10と、ニゲリシンと、ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)と、テトラフェニルホウ酸ナトリウム及び他の塩形態と、SR4(1,3-ビス(ジクロロフェニル)-尿素13)と、テトラフェニルホスホニウムクロリドと、バリノマイシンと、アルセナートとは、擬似脱共役剤として知られている例であり、この開示の趣旨内の脱共役剤とみなされる。
【0090】
「疾患」は、本明細書において使用するように、罹患したヒトに痛み、機能障害、苦痛、又は死をもたらす任意の病態を広範に指す。したがって、疾患は、1つ以上の傷害、能力障害、障害、症候群、感染、孤立性症状、異常な挙動、並びに構造及び機能の非定型の変化を含み得る。疾患は、身体的だけではなく精神的にも生物学的生物体に影響を与え得る。したがって、疾患に罹患したヒトの場合、疾患に罹患して生きることは、罹患したヒトの生命に対する観点を変え得るものである。疾患の例は、世界保健機関の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」の第10回改訂版(ICD-10)において特定及び分類されたものを含む。ヒトに影響を与え得るそうした疾患は、感染症及び寄生虫症、新生物、血液及び造血器官の疾患、免疫機構に関与する障害、内分泌疾患、栄養疾患、代謝疾患、精神障害及び行動障害、神経系の疾患、眼及び付属器の疾患、耳及び乳様突起の疾患、循環器系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、泌尿生殖器系の疾患、妊娠、出産、及び産褥に関連する疾患、周産期に由来する疾患、先天性奇形、変形、及び染色体異常、並びに傷害、中毒、外因による結果を含む。
【0091】
「データストリーム」は、本明細書において使用するように、送信されるプロセスにある情報を送信又は受信するために使用されるデジタル符号化されたコヒーレント信号のシーケンス(データのパケット又はデータパケット)を指す。データストリームは、データ提供者からの一式の抽出された情報であり、(様々な信号成分を表す)要素の順序付けられたリストのシーケンス、及び関連するタイムスタンプのシーケンスを含む。
【0092】
「エネルギー収支」は、本明細書において使用するように、一般にエネルギー消費に対するエネルギー摂取のバランスシートを指す。また、「エネルギー収支」は、エネルギー消費について生物学的系のその状況に対する応答を決定する、遺伝子の、エピジェネティックの、又は他の情報を包含する構造にコードされた論理を指す。エネルギー収支は、その最も一般的な意味において、生物学的系の状態を、その系における熱又は仕事を反映するパラメータに基づいて特性評価又は定量することである。また、エネルギー収支はエネルギー配分の論理である。エネルギー収支は、1つの形態から別の形態へのエネルギーの移動及び変換の研究を扱うエネルギー学の分野における研究の主題である。カロリーは、エネルギー測定の基本単位の例である。生物学的生物体は、一例として、特に実験室での実験において、生化学化合物の熱、仕事、及び内部エネルギーという少なくとも3つの方法でその周囲とエネルギーを交換する、開放熱力学的系である。エネルギー収支の配分は内温動物及び外温動物において変化し得る。外温動物は熱源としての環境に頼っている一方、内温動物は代謝プロセスの調節によってそれらの体温を維持している。代謝プロセスに関連して産生される熱は、内温動物の活発な生活習慣、及び食物を求めて種々の温度にわたって遠距離を移動できることをしやすくする。外温動物は、それらの周りの環境の周囲温度によって制限されるが、実質的な代謝熱産生がないことは、エネルギー的にコストが低い代謝率の理由となる。外温動物のエネルギー需要は、一般に内温動物に必要とされるものの10分の1である。
【0093】
「エネルギー消費」は、本明細書において使用するように、その最も一般的な意味において、生物学的系の熱又は仕事を反映するパラメータの測定を指す。また、「エネルギー消費」は、生物学的系内の適応タスクに動力を供給する自由エネルギーのエントロピー生成(不可逆的)支出を指す。エネルギー消費は、大部分が不可逆的(エントロピー生成)であるので、他のタスクのために回収できないエネルギーを表す。「エネルギー恒常性」又は「エネルギーバランスの恒常的調節」は、本明細書において使用するように、食物摂取(エネルギー流入)及びエネルギー消費(エネルギー流出)の協調した恒常的調節に関与する生物学的プロセスを指す。
【0094】
「エネルギー特徴」は、本明細書において使用するように、状況による一式の内部及び外部ストレスに対する生物学的系のエネルギー収支の応答から生じる生物学的系におけるエネルギー消費の集約パターンを指す。エネルギー特徴は、「代謝を定量する」エネルギー収支を計算するため、単独の又は「代謝タスク」のアノテーションと組み合わせた機械学習のためのデータストリームとして使用され得る。
【0095】
「創発要因」又は「創発特性」は、本明細書において使用するように、水、水*、又は水性系、又は生物学的系、又は複合適応系の特性であって、系の健康能力に関連し得る又は系の健康能力を評価するための基礎を形成し得るものを指す。また、創発要因又は創発特性は、系のいくつかの測定可能なパラメータにおける事象、標準からの逸脱、又はその他の時間依存性パターンを指し得る。創発特性は直接的又は間接的に観察され得る。創発特性の例は、両性、導電性、溶媒和容量、イオン移動性、酸化還元電位、リガンド会合性、水和性、電気分解性、熱伝導性、熱容量、熱吸収性、付着性、粘着性、透過性、濁度、非圧縮性、極性、双極性、双極子モーメント、反磁性、液相の電圧範囲、液相の温度範囲、豊富性、及び種分化や、エネルギー、運動量、粒子、又は他の物質の流速を含む。また、創発要因は、熱除去の静的絶対値又は周期的な関数のいずれかとしての熱除去、例えば熱除去の概日周期性を含む。
【0096】
「虚弱指標」は、本明細書において使用するように、健康能力における負の傾向又は屈曲を指す。
【0097】
「成長」は、本明細書において使用するように、異化作用よりも高い比率の同化作用の維持を指す。成長する生物体は、単純に物質を蓄積するのではなく、その部分のすべてにおいてサイズが大きくなる。
【0098】
「健康」は、本明細書において使用するように、適応している及び疾患がないという両方の状態を指す。健康は、疾患がないことによって十分な機能を可能とし、これが高い健康能力(適応度)につながる、自立した状態である。高い健康能力は、その結果として疾患に対して防御的である。高い健康能力及び健康は寿命を長くする。
【0099】
「健康能力」は、本明細書において使用するように、持続する又はいくつかの中核機能を得ることができる能力によって主に表される系の回復力(適応力)である。高い又は低い健康能力に関連する形容詞は、それぞれ「適応した」及び「虚弱な」である。低い健康能力、つまり「虚弱性」は、疾患又は傷害(外部ストレス)のリスクを高める。疾患は機能を衰退させて、健康能力が結果として衰退し得るようになる。したがって、虚弱性及び疾患は負の結果に向かう正のフィードバックを生成し得る。高い健康能力、つまり「適応度」は、傷害のリスクを減らして行動能力を高める。疾患の早期阻止によって健康能力を保全及び維持でき、健康能力の慎重な管理によって疾患を予防できる。最大の健康は、適応している及び疾患がないという両方の安定状態である。健康能力は、生物学的系が持続できる能力を定める生物学的系の機能との、状態又はエネルギー収支の相関とみなされ得る。健康能力はいくつかの量を含み得、これらは同じ方法で比較する又は単一のスコアまで減らすことが必ずしもできないことがある。データ分析は、未処理の測定値と抽象的な健康能力スコアとの関係を発見するために使用され得る。次元削減又は機械学習方法は、未処理の測定時系列に基づく健康能力スコアを学習し、適応及び健康の結果を予測するために使用され得る。
【0100】
「健康能力ルール」は、本明細書において使用するように、「健康能力」を与えるために必要とされる「エネルギー収支」の最小セットの特質を指す。
【0101】
「恒常性」は、本明細書において使用するように、一般に状態の変動を制限し及び/又は状態の実状を維持するように、生物学的系の内部環境を調節するためのプロセス及び機構を指す。生物体レベルにおける恒常性の例は、温度を下げるように機能する発汗である。生化学及び細胞レベルにおける恒常性の例は、酸化還元調節及びその代謝の調節である。
【0102】
「感染」は、本明細書において使用するように、一般には生物学的系に関連しない1つ以上の媒介体(又は病原体)による、生物学的系、典型的には生物体における侵入を指す。媒介体は、多くの場合、疾患発症性の媒介体である。また、感染は、媒介体の伝播及び増殖、並びに宿主の生物学的系又は生物体の反応を含む。また、感染は、媒介体による又は媒介体の近因としての毒素の生成を含む。感染疾患は、「伝染疾患」又は「伝達疾患」と呼ばれることがあり、感染からもたらされる疾患状態である。病原体は、ウイルス及び関連媒介体、例えばウイロイド及びプリオンなど、細菌、例えば子嚢菌としてさらに分類され得る真菌(酵母、例えばカンジダなど、糸状菌、例えばアスペルギルスなど、ニューモシスチス種、及び皮膚糸状菌を含む)、担子菌(ヒト病原性のクリプトコッカス属を含む)、例えば単細胞生物体としてさらに分類され得る寄生体(例えばマラリア、トキソプラズマ、バベシアを含む)、マクロ寄生体(寄生虫又は蠕虫を含む)、例えば線虫、例えば寄生虫である回虫及び蟯虫など、サナダムシ(条虫)、及びフルーク(吸虫、例えば住血吸虫症など)などを含むがこれらに限定されず、節足動物、例えばマダニ、コダニ、ノミ、及びシラミなども、概念的には感染と同様である、ヒト疾患を引き起こし得る。また、マクロ寄生体による動物の身体、例えばヒトの身体などにおける侵入は侵襲とも称され得るが、本明細書において使用するように、感染の一形態とみなされる。
【0103】
炎症は、本明細書において使用するように、刺激、例えば病原体、損傷細胞、又は刺激物質に対する身体組織における特定の一般的な生物学的応答の集合を指す。炎症(及び関連病態、前炎症)は、少なくとも部分的に、細胞傷害の初期原因を排除し、最初の侵襲で損傷した壊死組織を除去し、組織の修復を開始するように機能する、免疫細胞、血管、及び分子媒介物に関与する応答である。炎症の兆候は、熱の増大、痛み、発赤、膨潤、及び機能低下を含む。炎症は、特定の病原体に特異的であり得る適応免疫と比較して自然免疫の機構とみなされ得る。炎症は急性又は慢性として分類され得る。急性炎症は、刺激に対する初期の身体の応答であり、血液から傷害組織への血漿及び白血球(特に顆粒球)の移動の増加によって起こり得る。一連の生化学的事象は、局所血管系、免疫系、及び傷害組織内の種々の細胞に関与して、炎症応答を伝播及び成熟させる。慢性炎症は、多くの場合長期炎症と称され、単核細胞などの炎症部位に存在する細胞の型を徐々に変化させ得、組織を同時に破壊及び治癒することによって特徴づけられる。
【0104】
「代謝タスク」は、本明細書において使用するように、典型的にエネルギー変換の非効率性による熱の放出を伴う、物理的、化学的、又は電気化学的な仕事、つまり構造の維持及び修復、廃棄物の処理、機能の実行を行うために貯蔵エネルギーを消費する生物体における事象又はプロセスを指す。
【0105】
「代謝生態学」は、本明細書において使用するように、エネルギー消費、エネルギー収支、及び健康能力に基づく、生物学の系統立った方法論の1つ以上を指す。代謝生態学は、資源依存及び配分に関する種間及び種内の変動及び相互作用を定める。代謝生態学は、ほぼすべての生命プロセスを理解するために重要であるとして代謝機構の制約を理解することを目的とした生態学の下位分野とみなされ得、主な焦点は個体の代謝、出現する種内及び種間特異的パターン、並びに進化的観点に置かれている。個体の代謝モデルは、エネルギーの摂取及び配分を追跡し、エネルギー輸送の機構及び制約(輸送モデル)、又は貯蔵代謝物の動的使用(エネルギー収支モデル)に焦点を置くことができる。現在の技術が根拠とし得るが必ずしも前提とするわけではなく、また必ずしも依拠するわけではなく、個体に基づく代謝生態学の理解を裏付け得る、2つの主な代謝理論は、コーイマンの動的エネルギー収支(DEB)理論及びウェスト、ブラウン、及びエンキスト(WBE)の生態学理論である。
【0106】
「代謝」は、本明細書において使用するように、化学物質及びエネルギーを細胞成分に変換(同化作用)、及び有機物質を分解(異化作用)することによる、エネルギーの変換を指す。生体は、内部機構(恒常性)を維持し、生命に関連する他の現象を生じさせるために、エネルギーを必要とする。
【0107】
「マイクロ生理機能測定」は、本明細書において使用するように、生命又は生物学的系(器官、組織、又は細胞など)の機能及び活性、並びに小さい(マイクロメートル以下)スケールにおいて関与する物理及び化学現象の試験管内(in vitro)の測定を指す。マイクロ生理機能測定において評価される主要なパラメータは、pH、並びに溶存酸素、グルコース、及び乳酸の濃度(最初の2つが重視される)を含む。そうしたパラメータを、例えば細胞培養維持のための流体システム、及び薬剤又は毒素の所定の適用と組み合わせて実験的に測定することで、代謝状況を特徴づけるため、定量的な出力パラメータの細胞外酸性化率、酸素消費率、及びグルコース消費率又は乳酸放出率を提供する。
【0108】
「発がん」は、本明細書において使用するように、正常な細胞ががん細胞に変化するがんの形成を指し、「腫瘍形成」又は「がん発生」とも称される。このプロセスは、細胞レベル、遺伝子レベル、及びエピジェネティックレベルでの変化、並びに異常な細胞分裂によって特徴づけられる。DNAの突然変異及びエピ突然変異は、増殖とプログラム細胞死との間の正常なバランスのプログラミング及び調節に関与するプロセスを崩壊させる。
【0109】
「機構(organization)」は、本明細書において使用するように、1つ以上の細胞、つまり生命の基本単位から構造的に構成されている状態を指す。
【0110】
「浸透圧計」とは、本明細書において使用するように、溶液、コロイド、又は化合物の浸透圧強度を測定するためのシステム、デバイス、又は処理を指す。浸透圧計は、血液若しくは尿試料中の溶存塩及び糖の全濃度を測定、又は未知の化合物及びポリマーの分子量を測定することに使用され得る。例えば、蒸気圧浸透圧計は、溶液の蒸気圧を下げる浸透活性粒子の濃度を測定し、膜浸透圧計は、半透膜によって純溶媒から分離した溶液の浸透圧を測定し、凝固点降下浸透圧計は、浸透活性化合物が溶液の凝固点を降下させるため、溶液の浸透圧強度を測定し得る。
【0111】
「前炎症」は、本明細書において使用するように、標準的な検出方法によって測定されるような「炎症」の臨床における定義に進む生物学的段階を指す。
【0112】
「処理」は、本明細書において使用するように、観察者によって検出可能な任意の方法で、有意義な情報又は情報の変化を生成するための、データの項目の収集及び操作を指す。データの処理は、データの選別、総括、集約、分析(収集、整理、解釈、及び提示)、報告、又は分類を含み得る。
【0113】
「処理システム」は、本明細書において使用するように、1つの形態の情報(列挙された記号又は状態のシーケンス)を取り、アルゴリズム処理によってそれを別の形態、例えば統計に処理(変換)するシステム(電気、機械、又は生物の場合)を指す。処理システムは、一般に入力、プロセッサ、記憶部、及び出力を含む。
【0114】
「生殖」は、本明細書において使用するように、単一の親生物体から無性的に、又は2つの親生物体から性的に、のいずれかで新しい個々の生物体を作り出せることを指す。
【0115】
「(刺激に対する)応答」は、本明細書において使用するように、外部刺激からもたらされる生物学的系における作用又は変更を指す。応答はいくつかの形態のいずれかを取り得る。例えば、単細胞生物体の場合、環境中の化学物質の存在への曝露からもたらされる収縮であり得る。他の例として、応答は、多細胞生物体のすべての感覚に関与する複雑な一式の反応であり得る。応答は、多くの場合、運動、例えば植物の葉が太陽の方に向きを変えること(光屈性)及び走化性によって表される。
【0116】
「記憶部」は、本明細書において使用するように、記憶媒体、例えばDNA及びRNA、手書きされたもの、音声記録、磁気テープ、光ディスク、及び半導体メモリにおける、情報又はデータの記録又は保存を指す。コンピュータにおいて、データ記憶部は、一般に、半導体に基づく集積回路(IC)チップ、例えば揮発性ダイナミック半導体ランダムアクセスメモリ(RAM)、特にダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)などからなる。
【0117】
「ストレス」は、本明細書において使用するように、最も一般には生物学的系が外部の要求を受けている状態を指す。この要求は、いくらかのエネルギー消費によって補償する必要があり、健康能力の低下という結果になる。ストレスは、典型的に1つ以上の外部刺激に対する応答である。ストレスは、生物学的系又は生物学的系の一部(例えば、サブシステム、器官、組織等)の、名目的で典型的な恒常性作用の変更又は調節不全によって現れ得る。ストレスの例は、不安、睡眠パターンの乱れ、前炎症、炎症、心拍数の上昇、血圧の上昇、及び慢性の痛みを含む。
【0118】
「温度計」は、本明細書において使用するように、温度又は温度勾配を測定するデバイスを指す。このデバイスは、温度が変化するといくらかの変化が起こる温度センサと、この変化を数値に変換する何らかの手段とを含む。温度計は、物質の種々の相における熱膨張の特性を利用し、液体の蒸気圧を測定し、その温度に比例する液体の密度変化を検出し、サーモクロミズム(すなわち、いくつかの物質が温度の変化のため色を変化させる特性)を利用し、半導体材料のバンドギャップの温度依存性を利用し(すなわち、バンドエッジ温度測定)、黒体放射を検出し(例えば、高温計、赤外線温度計、及びサーモグラフィー)、温度によって変化するリン光物質によって放出される発光を利用し、又は、物質の光吸収スペクトル、電気抵抗、ゼーベック効果、核磁気共鳴、若しくは磁化率の温度依存性を利用し得る。
【0119】
「温度測定」は、本明細書において使用するように、熱エネルギーの相対的な存在又は非存在を定量的に表す物質の物理特性である、現在の局所の温度を測定するためのシステム又は処理を指す。生物学的系が局所の熱力学的均衡状態にあるとき(すなわち、外観的な化学反応又は物質若しくはエネルギーの流れがない)、系の温度は系における分子の平均運動エネルギーに関連する。現実世界の多くの系は熱力学的平衡ではなく、均質でもないが、適切な空間スケール及び時間スケールで局所の熱力学的平衡を仮定することができる。
【0120】
「ウイルス感染」は、本明細書において使用するように、ウイルスによる生物学的系の感染を指す。ウイルス感染は、例えば、(i)感冒、インフルエンザ、肺炎、コロナウイルス疾患2019若しくはCOVID-19として知られる疾患病態を引き起こすSARS-CoV-2による感染、クループ(多くの場合喉頭気管気管支炎と呼ばれる、上気道及び下気道の炎症)など、鼻、喉、上気道、及び肺、又は下気道(多くの場合、細気管支炎と呼ばれる)のウイルス感染である呼吸器感染、(ii)胃腸炎などの消化管のウイルス感染であり、ノロウイルス及びロタウイルスなどのウイルスによって一般的に引き起こされる消化管感染、(iii)肝炎をもたらし得る肝臓感染、(iv)脳に感染して脳炎を引き起こし得る狂犬病ウイルス及びウエストナイルウイルスなどの神経系感染、(v)髄膜炎又はポリオを引き起こし得る、髄膜などの脳及び脊髄を覆う組織の感染、(vi)皮膚だけでなく皮下組織に影響を与え得、いぼ、発疹、又は水疱若しくは帯状疱疹などの他の斑紋をもたらし得る皮膚感染、(vii)妊娠している女性の胎盤及び胎児に感染し得る、ジカウイルス、風疹ウイルス、及びサイトメガロウイルスなどの胎盤及び胎児感染、並びに、(viii)例えばエンテロウイルス(コクサッキーウイルス及びエコーウイルスなど)及びサイトメガロウイルスを含む種々の系に影響を与え得るウイルス、を含む。
【0121】
「水*」は、本明細書において使用するように、その最も幅広い態様において、水性系を含む、水を含む又は含有する系を指す。より具体的には、1つ以上の可溶化成分、例えばイオン、又は懸濁成分、例えば脂質の溶媒又は媒体として水が機能する系を指す。水性系における水の量は、5重量%若しくは10重量%程度と低い、又は70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%程度と多い、99重量%より多いものであり得る。水*は、他の水分子、酸素又は水素及び酸素のイオン又はラジカル形態、並びにこれらと炭素又は非炭素物質、例えば元素、イオン、分子、補因子、鉱物、塩、多形体、若しくは混合物との組合せを含むがこれらに限定されない、そうした系の水に関連する化学種を含む。系は、系において存在する水の画分によってではなく、水が果たす役割によって、水性として定められる。
【0122】
(創発要因を特定及び選択するための一般条件)
創発要因又は創発特性は、種々の条件に基づいて測定に対し特定及び選択される。一般的に、直接的に測定され得る創発要因が、間接的に測定され得るのみである創発要因よりも好ましい。測定に使用される、あまり侵襲的でない技術(直接的又は間接的)が、より侵襲的である技術よりも好ましい。複数の創発要因ではなく、信頼性が高く、単一の創発要因に関連する測定が好ましい。
【0123】
(測定されるデータを特定及び選択するための一般条件)
表1は、水*の物理特性の種々の例を列挙しており、これらの特性は、記載するようにモニタリングされ得、生物学的系の創発特性に関し得る。特定した各特性について、特性の特有の化学的性質、特性の関連する原生化学的性質、特性に関する関連する酵素委員会番号(EC#)、並びに、特性に関するデータが導き出され得る直接的及び/又は間接的測定の例を記載する。これらの測定の又はこれらの測定に関するデータストリームは、一連の測定を発展させるように学習エンジンに供給され得る。そうした一連の測定により、生物学的系、例えば原始細胞又は生物体の機能を理解することが可能になり、生物学的系の健康能力の定量が可能になる。
【0124】
学習エンジンの学習済みモデルは、生物学的系、例えば原始細胞又は生物体の機能を予測及び/又は最適化し、並びに生物学的系、例えば原始細胞又は生物体を改変及び又は設計及び操作し、並びに「健康能力のルール」及びどのように恒常性が調節されるかの理解を深めるために使用され得る。
【0125】
記載する酵素委員会番号(EC#)は、酵素が触媒する生化学反応の分類を表し得る。例えば、EC1はオキシドレダクターゼ、EC2はトランスフェラーゼ、EC3はヒドロラーゼ、EC4はリアーゼ、EC5はイソメラーゼ、EC6はリガーゼ、EC7はトランスロカーゼを意味する。
【表1】
【0126】
(センサの選択及び設計のための一般条件)
センサの設計及び選択、並びにそうしたセンサによって行われる測定の選択のための条件は、エネルギー特徴の構築を可能にするための経時における熱及び仕事の検出及び定量に基づく。エネルギー特徴は、代謝タスクによってアノテーションされるとき、エネルギー収支を与え、エネルギー収支により、健康能力を定量し、健康を最大化し、疾患を阻止し、健康能力ルール及び恒常性のルールを学習することができる。
【0127】
熱力学第一法則は、エネルギーが生成も破壊もされないが、多様な様式で形態を変化させ得ることを述べている。この法則は、系がより複雑になったときにも弱まらない。エネルギーが生物学的系を通って移動するときのエネルギーの保存により、典型的にアクセスできないと考えられているエネルギー消費、例えば、細胞内で行われる代謝タスクや化学的仕事のエネルギーを定量する機会が提示されることが認められている。これらの代謝タスクは2つの様式でエネルギーを消費する。第1のものは熱の産生である。代謝活性によって放出される熱は、急速に身体から出る(1分未満内)。第2のものは仕事のパフォーマンスである。仕事は、多くの場合、熱及び/又はさらなる仕事としてその後に放出可能な種々の物理又は化学形態でエネルギーを貯蔵することをもたらす。
【0128】
開示する技術の分析的な見解は、熱は外部で測定できるため、仕事よりもはるかに定量しやすく、また、熱は仕事としてこれまでに消費されたエネルギーを含むということである。したがって、熱、又は熱流の変化の非侵襲的測定は、以前の仕事の消費へと熱を正確にマッピングし戻せることを仮定して、細胞の仕事の定量を可能にする。このため、種々の代謝タスクの仕事を、該タスクのタイムスタンプ付きのアノテーションを熱のエネルギー特徴記録と関連させることによって定量することとなる。さらに、補助センサ(例えば、加速度計)及びモバイルアプリケーションは、種々の特質、例えばサイズ、持続時間、強度、品質、種類などについて代謝タスクを特徴づけるため、データ及びメタデータを収集するであろう。その後、エネルギー特徴の予測モデルを作成するため、AI/MLを使用して、詳細な原型となる熱特徴を、詳細な特性評価に影響しやすい各代謝タスクに関連させることについて学習させることができる。このモデルにより、ユーザは代謝タスクに関連する仕事をリアルタイムに定量し、それらのエネルギー収支に対する意味を理解することができることとなる。
【0129】
代謝タスクを特徴づける唯一の最適な方法は存在しないが、生物学的系における熱及び仕事の優勢な形態を特徴付ける最適な方法が存在する。これにより、実現性の懸念に加え、初期プロトタイプのセンサの選択に対する情報が与えられる。
【0130】
今後のバージョンは、エネルギー保存の実証的分析によって決定されることとなる。推測した収支がギャップを有すると認められる期間を発見することとなる。収支ギャップを活動、代謝タスク、又は周囲条件と相関させ得る。欠落した熱又は仕事をさらに正確に検出する及び特徴づけるため、新しい受動センサを提供することとなる。このようにガイドとしてエネルギー収支を使用することによって、必然的に健康能力の定量につながり得る、生物学におけるすべてのエネルギー消費プロセスを特定及び定量することとなる。
【0131】
(センサ及び測定したデータ、並びに適応能力の態様を定量するための使用の例)
(センサの例#1:温度及び熱流束)
センサの例#1の一実施形態において、本明細書に記載するシステムは、皮膚温度及び周囲温度を測定するためのセンサモジュールを含むセンサを含む。例えば、
図6、
図7、及び
図8に示すように、センサデバイスは、皮膚温度及び周囲温度を測定するとともに、そうした測定を反映したデータを生成するためのセンサモジュールを含み得る。生物学的系の温度又は深部温度についての情報は、そうした測定から推測され得る。他の実施形態において、
図6、
図7、
図8、及び
図9に示すように、システムは、少なくとも、(i)皮膚温度、好ましくは0.1℃の正確性まで、(ii)周囲温度、及び(iii)三次元の運動の特性を同時に又は実質的に同時に測定するためのセンサモジュールを含み得る。システム及びセンサは、好ましくは、アナログ又はデジタル形態の変換器入力を測定するとともに、関連するデータを生成するように設計される。システム及びセンサは、生物体、例えばヒトにとってウェアラブルであり得、腕、胸、脚、腹部、又は身体のいずれかに取り付けられ得る。デバイスは、1か月を超えて測定データを保存するメモリ部品を含み得る。
【0132】
他の例において、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10に示すように、デバイスは、データを送信してスマートフォン又はタブレットに表示させるための無線送信モジュールを含み得る。デバイスは、30秒間隔で無線信号を送信する条件で動作させるとき、約6か月間持続可能な電池を含み得る。デバイスは、電池寿命の残量ゲージ表示器を含み得る。デバイスは、電池寿命に関する情報を送信してスマートフォン又はタブレットに表示させ得る。デバイスは、スマートフォン又はタブレットを介して制御され得る。例えば、信号送信間隔を調整し得る。デバイスは、通信若しくは動作の状態、又は警告及びエラーを示すLEDを含み得る。デバイスは耐水性であり得る。
【0133】
センサの例#1の他の実施形態において、本明細書に記載するシステムは、熱流又は熱流速の測定を可能にするように皮膚温度及び周囲温度を測定するためのセンサモジュールを含むセンサを含む。今日では、熱流測定の最新の至適基準は熱量測定である。直接熱量測定は、熱流測定の信頼性が高い標準となっている。生物学において、直接熱量測定は、代謝の副生成物として生成される熱の流動を定量するために利用される(発熱性)。ヒトにおける直接熱量測定は、対象を「室内熱量計」に隔離する必要があるので極めて非実用的である。
【0134】
間接熱量測定は、熱流を定量するために代替の尺度を使用することによって直接熱量測定の不都合を克服している。間接呼吸熱量測定の一手段は、酸素消費及び二酸化炭素産生物の測定である。この方法は臨床における至適基準とみなされている。間接熱量測定は、熱生成の大部分が酸化的リン酸化-炭素酸化(CO2産生)及び酸素還元(酸素消費)に由来するという仮定に基づいている。臨床における間接熱量測定は、個々の対象における高価な集約的試験を必要とする。
【0135】
便宜上センサの例#1と称される、開示する技術の熱量測定センサの例は、生物学的系、例えば生物体、例えばヒトの熱流を直接的に測定するために近似的な直接熱量測定を利用する。一部の実施形態において、センサの例#1は小型化熱量測定センサである。一部の実施形態において、センサの例#1は、皮膚温度及び皮膚温度測定点に近接する空気の周囲温度を同時に測定する、予め較正した少なくとも2つのソリッドステートデジタル温度センサを含む。センサの例#1は、周囲温度と皮膚温度との局所的な差を継続的に測定することで、皮膚を介した熱流(損失)、つまりヒトのエネルギー損失の主なモードを定量する。
【0136】
センサの例#1は、一実施形態において、臨床における直接熱量測定又は間接熱量測定ほど正確でも精密でもないが、センサの例#1は、そうした方法に対して、少なくとも、継続的に十分なスケールで代謝率を測定するという利点を有する。これにより、特定の実施形態において、センサの例#1は、長期間、つまり数日にわたる代謝率のわずかな変化でも検出でき、個体及び個体群の両方において自動機械学習を利用することができる。例えば、以下の表2を参照されたい。
【0137】
温度測定、サーモグラフィー、及び熱量測定の3つの概念は組み合わせられることが多いが、温度測定、サーモグラフィー、及び熱量測定の間の違いが存在する。温度測定及びサーモグラフィー、つまり温度計又は熱撮像装置の使用は、物体の相対的な温度を測定するデバイス及び処理である。熱量測定は、物体からの絶対的な熱流を測定するシステム又は処理である。温度計及び熱撮像装置は、熱流ではなく、発熱を測定するための深部温度の代替として使用される。一方、特定の実施形態において、センサの例#1は、発熱の測定ではなく熱流速の測定のためにソリッドステート温度センサを使用するように構成される。現在臨床において利用可能な皮膚「体温計」はすべて、熱流速ではなく、深部体温、つまり発熱の代理として皮膚温度を測定する。それらは、周囲温度を定量せず、したがって放射熱伝達を計算できないので、センサの例#1で得られる熱流及び代謝率の精密又は正確な変化を検出できない(又は検出できると主張できない)。
【0138】
図18に示されるセンサの例#1の具体的な一実施形態において、システムは、任意の種類の仕事センサと熱センサとの組合せを含む。システムは、基礎代謝状態又は安静時代謝状態をリアルタイムで評価するためのウェアラブルデバイスとして実施され得る。
【0139】
温度調節は、熱産生及び熱除去の2つの主要な構成要素からなる。健康な恒常性はこの2つの間のバランスを必要とする。この2つの構成要素が、大きな範囲のエネルギー需要及び変化率を介しておよそ等しく保たれる、動的なバランスが存在する。この2つの構成要素を継続的に測定し、それらの時間的アライメントを分析することによって、システムは、一方又は他方のみを測定した場合よりも、はるかにより詳細に健康を評価することができる。
【0140】
図18に示される実施形態において、熱センサは配列状の温度計を含み得、熱除去は生物学的系の皮膚表面における温度差として推定することができる。皮膚表面における温度差は、点ごとの熱と定量的に等しくはないが、リアルタイムの熱除去との相関を有する。熱産生の推定を得るため、身体活動を検出して生物学的系が行った仕事を推測するように、加速度計を仕事センサとして使用することができる。
【0141】
図18は、仕事センサ信号ストリーム(例えば、経時の加速度計測定)と熱センサ信号ストリーム(例えば、経時の温度差)とのピーク間の時間的アライメントを示す。身体運動時、熱除去信号は2つの成分、つまり安静時成分及び活動時成分を有するとして解釈され得る。言い換えると、全エネルギー消費は、安静時エネルギー消費と身体活動時エネルギー消費との加算によって近似することができる。したがって、仕事センサ信号ストリームを熱センサ信号ストリームから減算して仕事補正熱特徴データストリームを得ることができ、仕事補正熱特徴データストリームは、基礎代謝率又は安静時代謝率を推測するために決定支援システムに供給されることができる。
【0142】
一部の実施形態において、決定支援システムは時間の関数として信号を処理し得、該処理は、第1のベクトルを生成するステップであって、上述の第1のベクトルは上述の信号から抽出された特徴を含み、上述の特徴は、平均ピーク(P)振幅、ピーク(P)平均振幅、振幅のピーク(P)標準偏差、スルー(T)振幅、谷(T)平均振幅、振幅の谷(T)標準偏差、ピーク間の間隔、ピーク間の高周波(P-P HF)電力、及びそれらの任意の組合せを含むステップ、上述の第1のベクトルを第2のベクトルに変換するステップであって、上述の変換は正規化を含むステップ、並びに、上述の第2のベクトルを分類するように適合された分類アルゴリズムを適用するステップであって、上述の分類アルゴリズムは分類及び回帰木の集合を含むステップ、によってなされる。
【0143】
一部の実施形態において、決定支援システムは、信号を分析するため、機械学習分類器、例えばサポートベクターマシン(SVM)分類器、ナイーブベイズ分類器(NBC)、及び人工ニューラルネットワーク(ANN)分類器などを使用し得る。一部の実施形態において、決定支援システムは、信号の時間的動態を考慮する隠れマルコフモデル(HMM)アルゴリズム処理を使用し得る。一部の実施形態において、決定支援システムは、各時間区分の特徴ベクトルを生成することによって、信号から複数の特徴を抽出する。一部の実施形態において、決定支援システムは、複数の信号のそれぞれを、ずらされた重複時間区分ウィンドウに分割することによって、複数の信号から複数の特徴を抽出する。重複時間区分ウィンドウのずれにより、分析される複数のエポックがもたらされる。複数のエポックの各エポックについて、複数の信号の様々な関連する態様を特徴づける複数の特徴(例えば、平均値、標準偏差、周波数領域の特徴、エントロピー等)を計算する。特徴ベクトルが複数のエポックの各エポックに対して生成され、特徴ベクトルは複数の特徴からなる。特徴ベクトルは、各エポックを自動的に分類するために機械学習分類器に入力される。
【0144】
また、独立成分分析(ICA)及び/又は主成分分析(PCA)も、任意の隠れた信号を見つけるために適用することができる。その後、時間的特徴を、この(場合によって向上される)信号表現から計算し得る。時間的特徴については、所望の信号特性を高めるため、種々のノンパラメトリックフィルタリング方式、ローパスフィルタリング、バンドパスフィルタリング、ハイパスフィルタリングを適用し得る。
【0145】
パラメトリックモデル、例えばAR、移動平均(MA)、又はARMA(自己回帰及び移動平均)モデルなどを使用し得、そうしたモデルのパラメータは、自己相関及び/若しくは部分自己相関、又はLPA、LMS、RLS、又はカルマンフィルタを介して求められ得る。推定した係数の全体又は一部を特徴として使用し得る。
【0146】
一部の実施形態において、決定支援システムは、3つのレベルの熱特徴メトリックを適応させ又は利用し得、例えば、これらのメトリックを記録、処理、表示、あるいは実施するための機械可読指示を使用し得る。
(レベル0のメトリック):熱特徴は、極めて基本のメトリック、例えば平均値、分散、最小値、及び/又は最大値等について、有用に定量され得る。これらのメトリック/統計は、健康状態又はその変化の指標として直接的に使用され得る。
(レベル1のメトリック):熱特徴のより高度なメトリックは、生物学的機構及び概日の健康の1つ以上の原理又は概念を組み込んでいる。例えば、原理は、概日リズムの文献から、概日構造のノンパラメトリック統計である日間安定性(IS)及び/又は日内変動(IV)の概念を含み得る。概日分析に対する他のパラメトリック手法は、コサイナーフィッティングに関与する。これは、周期成分を有する任意の信号に適用することができる。このカテゴリのメトリックは、多くのパラメータのフィッティングに関与する複雑なものであり得、それぞれのパラメータは、単純なレベル0の統計よりも情報価値がある、健康能力の独立したメトリックとなり得る。また、このレベルは、自動学習、例えば人工知能(AI)/機械学習(ML)などを含み得る。
(レベル2のメトリック):レベル1のメトリックは極めて情報価値があり得るが、必ずしも個体間で解釈又は移行可能であるわけでなはない。レベル2のメトリックは、メトリックを単一の個体の過去のベースラインと比較することによって、これらの制限に対処している。数週又は数か月の期間にわたって熱特徴を継続的に収集するようにウェアラブルデバイスを設計することによって、詳細なベースラインを構築することができる。これらのベースラインにより、熱特徴のメトリックの変化に高い信頼性/有意性を持たせることができる。
【0147】
例として、
図27は健康なヒトの熱及び仕事の時系列データを示す。
図27は、2つの完全な睡眠/覚醒サイクルを含む、確率的及び擬似周期的な特徴を示す、48時間の熱特徴を示す図である。灰色の六角形の背景は、前の月に同じ個体について収集した熱特徴の値を示すヒストグラムである。熱特徴(曲線)を灰色の背景と比較することによって、ベースラインに対して熱の高い又は低い期間が長くなっていることを特定できる。このように視覚的に並置することにより、ユーザ又は医療の専門家が「レベル2」のような情報を見ることができる。睡眠-覚醒サイクル及び活動と一致する熱除去における予測可能な24時間の変動が存在する。
【0148】
一部の実施形態では、分析ソフトウェアは、機械可読指示を利用して、メトリックの過去のベースラインに対する関連する健康メトリックのパーセンタイルスコアを算出し得る。臨床又は消費者の場合において、警告を、レベル又は注意又は懸念に応じてパーセンタイルしきい値で設定し得(例えば、95パーセンタイル)、重大な事象の阻止又は最適以下の健康の迅速な是正が可能である。この種類の熱特徴の表示とともに、メトリックとメトリックのレベル2のコンテキスト化とをさらに並置したユーザインターフェースにより、ユーザはその熱特徴の重要な特徴について見解及び直観を深めることができるであろう。熱特徴の確率的な性質は当初は解釈が難しいので、このフィードバックは重要である。一部の実施形態において、ユーザインターフェースはレベル2の分析を組み込み得る。
【0149】
図28は、
図18に示すような、熱センサ信号を補正して安静時代謝状態を得るため仕事センサ信号を用いる実施形態によって利用することができる決定支援システムの例を示す。一部の実施形態において、決定支援システムは、(1)情報のデータストリーム、及び(2)データストリームに基づいて行われる決定に影響を与え得るパラメータの2つの高レベルの要素に基づき得る。この2つの要素は、決定出力を生成するとき、組み合わせて利用され得る。
【0150】
情報のデータストリームは、好ましくは、重要な決定の事項に関連し、大きな不確実性を受け得る。データストリームは、好ましくは、一部の場合において臨床医学と同様の決定処理に特有の不確実性を最小化することができるように構築され得る。例えば、
図28に示すように、データストリームは、「ウェアラブル健康モニターデータ」であり得る。
【0151】
好ましい実施形態において、決定支援のためのシステムは、上述の2つの高レベルの要素に関連する2つの構成要素に関与する。つまり、(1)データを中央リポジトリにストリーミングし、各個体の有用な記録を構築するハードウェア及びソフトウェアであって、例えば、
図28に示すように、「健康メトリック」を抽出するように、「ウェアラブル健康モニターデータ」を「分析エンジン」に供給し得るもの、並びに、(2)アプリケーションインターフェース又はデジタルポータルであって、例えば、
図28に示す「個人健康ポータル」のように、システムが何らかのメトリックの許容範囲を評価し、しきい値を超えたときに警告を作動させることができるものに関与する。例えば、分析エンジンは、追跡すべき関連する健康メトリックを特定するため、標準的な入力に基づき又は収集したデータに基づき、人工知能を使用し得、健康又は健康能力の評価において、各メトリックの適切な範囲及び/又は不適切な範囲を特定し得る。さらなる例として、許容範囲は
図28に示す「健康メトリック決定しきい値」であり得る。一部の実施形態において、個人健康ポータルは個別化され得る。好ましい実施形態において、個人健康ポータルは、個体、又は家族若しくは医療従事者のような代理人によって、例えば「健康緊急度設定に関連するUI(ユーザインターフェース)」を介して動作し得る。
図28に示す実施形態において、その後、システムは、「自動健康決定出力」を生成するように、「健康メトリック」及び「健康メトリック決定しきい値」を組み合わせる。好ましい実施形態において、自動健康決定出力は、医療及び/若しくは消費者用健康介入のための推奨、又はさらなる臨床試験のための示唆を含み得る。
【0152】
医療用途に関する一例において、医療用決定支援システムは、好ましくは、2つの主要なインターフェースから入力を受け入れ、(1)患者からの生理学的データ、及び(2)各データストリームに関連する決定しきい値を決定することができる医師/患者によって設定されたリスク/感受性に関するパラメータを得ることができる。一部の場合において、ウェアラブルデバイスの主要な目的は、デバイスからのデータストリームを、患者又はその医療提供者が設定した懸念のレベルに対して比較することであり得る。一部の実施形態について、決定支援は、入ってくるデータを、同じ個体についてこれまでに取得された過去のデータの分布と比較することによって可能になる。
【0153】
一部の実施形態において、決定支援システムは処理回路に実装され得る。処理回路は、環境要因と、コンテキストデータ及びユーザに対応する測定した信号を相関させる相関エンジンを含み得、環境要因、コンテキストデータは、動作時に、システムに通信可能に連結された1つ以上のセンサによって収集される。処理回路は、一式の相関させたデータを分析する推奨エンジンをさらに含み得る。処理回路は、ユーザ又はユーザの環境若しくは挙動に関連するセンサ又は知覚的な読み取り値に関連するコンテキスト分類を推論によって特定するコンテキスト推論エンジンをさらに含み得、コンテキスト分類が相関エンジンによって使用され、一式の相関させたデータを提供する。処理回路は、測定した信号から少なくとも1つのスペクトル分析信号を生成するように構成されたスペクトル分析ユニットをさらに含み得る。スペクトル分析は、フーリエに基づく方法、ウェーブレットに基づく方法、又はマルチフラクタルスペクトルの方法の少なくとも1つを使用することを包含し得る。スペクトル分析は離散的又は連続的とし得る。
【0154】
測定した信号の分析は、全面的にウェアラブルデバイス上で、部分的にウェアラブルデバイス上で及び部分的に他の場所で、又は全面的に他の場所で行われ得る。部分的でも完全にでも、ウェアラブルデバイス上で分析を行う場合、ウェアラブルデバイスはまた、記載する方法を完全又は部分的に行うマイクロプロセッサを含む。特定の他の実施形態は、本明細書に記載する方法を行うために、マイクロプロセッサ以外のコンピュータシステムを利用することができる。例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)は、記載する方法の一部又はすべてを行うために使用することができる。
【0155】
一態様において、仕事センサは1~3軸の加速度計を含む。1つの例示的な構成において、少なくとも1つの加速度計は、ユーザの前額面に対して垂直な方向と定められる正面方向の加速度を測定するように構成される。仕事センサは、特に加速度、速度、位置、又は向きを含む身体運動の測定を可能にする任意の感知素子を含み得る。そうしたものは、マイクロ電子機械システム(MEMS)技術に基づくセンサ(例えば、ピエゾ抵抗、若しくは電磁気センサ)、又は光学センサ(例えば、カメラに基づくシステム、レーザーセンサ等)、又は任意の他の種類の運動追跡センサを含み得る。仕事センサは、x、y、z、ピッチ、ロール、ヨー、又はそれらの任意の組合せを含む、単一から複数の自由度を測定するものを含み得る。
【0156】
一部の実施形態において、加速度計は、運動、例えば歩行又はランニング中に行った歩みなどを測定し、使用したカロリーの量を推定することができる。一部の実施形態において、加速度計は、所定の期間にわたってユーザが燃焼したエネルギー量、例えばカロリーを検出するように構成される。一部の実施形態において、加速度計は省電力機能を含む。具体的には、電力を節約するため、加速度計は、特定のしきい値レベルのユーザ活動が検出されるまであまり動作しない、電力を減らした状態にされる。ユーザ活動のしきい値レベルが検出されると、波形の短い部分が分析されて、加速度計信号の分析を続けるべきかどうかを決定する。加速度計を起動させるためのしきい値は、加速度計信号の履歴、並びに、他のセンサ、例えば周囲光センサ及び皮膚温度センサなどからの入力の関数とすることができる。さらに、推定をユーザに合わせるため、ユーザ特異的な情報、例えば年齢、性別、身長、及び体重などを使用することができる。
【0157】
一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、手首、ベルト、若しくは腕に装着することができ、又はポケット内で運ぶことができる。ウェアラブルデバイスは、所定のワークアウト期間時、又は一般的な終日の独立した生活モニターとして装着することができ、ユーザは、特定の時間に特定の運動を行う一方、他の時間に、例えば座る、立つ、及び寝ることを含むその日常活動を行い得る。一部の実施形態において、ウェアラブルデバイスは、ユーザが何をしているか、例えば、寝ているか、起きているか、運動しているか等を決定し、ユーザから関連する活動データを収集するようにアクティブモードを使用すべきか、又は省電力の電力を減らしたモードを継続するかの知的な決定を行うことができる。このモニタリングは、終日活動モニターのコンテキストにおいて行うことができる。
【0158】
センサの例#1の特定の一実施形態は、個体の累積的な生理学的状態を特定及び報告するためのウェアラブルデバイスの一部であり、該ウェアラブルデバイスの一部は、センサ出力の形態で電子出力を生成するための少なくとも1つのウェアラブル生理学的センサと、上述のセンサ出力から上述の個体における特定の累積的な生理学的状態を特定するための保存された数学的アルゴリズムを含むメモリ回路であって、上述の特定の累積的な生理学的状態は、疲労、ケトーシス、急性脱水、眠気、浮腫、高血圧、ショック、眠気、排卵、発熱、貧血、及び低体温からなる群より選択され、上述の個体における上述の特定の累積的な生理学的状態を特定するための上述の数学的アルゴリズムは、上述の特定の累積的な生理学的状態が上述の個体に存在することが知られていた期間中に集約されたこれまでのセンサ出力から導出される、メモリ回路と、上述のセンサ及び上述のメモリ回路と電子的に通信するプロセッサであって、該プロセッサは上述の特定の累積的な生理学的状態の存在を特定する出力を生成するように、上述のセンサ出力を使用して上述の保存された数学的アルゴリズムを実行し、上述の特定の累積的な生理学的状態は疲労であり、上述の疲労は、保存された数学的アルゴリズムの2つの関数を使用して特定され、該2つの関数は、全エネルギー消費(TEE)を測定するための第1の関数及び第2の関数を含み、第1の関数は、食物の熱効果(TEF)を測定できることによって第2の関数と異なり、TEEは、エネルギー消費の合計を含み、TEE=BMR+AE+TEF+ATであり、式中、BMRは基礎代謝率、つまり安静時に身体によって消費されるエネルギー量であり、AEは活動エネルギー消費、つまり身体活動時に消費されるエネルギー量であり、TEFは食物の熱効果、つまり食べた食物の消化及び処理の間に消費されるエネルギー量であり、ATは適応熱発生である、プロセッサと、上述の特定を出力する上述のプロセッサと電子的に通信するディスプレイとを含む。ウェアラブルデバイスは、上述のプロセッサから遠隔にある上述のディスプレイに、上述の特定の生理学的状態の上述の存在を送信するための、上述のプロセッサと電子的に通信する送受信回路をさらに含み得る。数学的アルゴリズムは、上述のプロセッサが上述のセンサ出力信号を受信している期間中の上述の特定の累積的な生理学的状態の継続的予測、及び/又は、一式のセンサ出力信号が上述の個体における上述の特定の累積的な生理学的状態の存在を示す確率を重み付けするためのコンテキスト検出器を含み得る。
【0159】
センサの例#1の特定の一実施形態は、パーソナルコンピューティングデバイスを使用して、運動センサによって捕捉された三次元(3D)身体運動データの統計分析を行うために使用することができる。パーソナルコンピューティングデバイスの個人運動分析アプリケーションは、加速度計及びジャイロスコープから取得した3D運動データを収集し、そうしたデータの統計分析を行うように構成される。また、デバイスは、運動関連情報及びユーザの生理学的情報をディスプレイに提示するように構成される。また、開示する技術は、正確かつ効率的な学習を促進するため、ユーザが行った運動を比較する分析方法を組み込む。
【0160】
センサの例#1の特定の一実施形態は、処理デバイスと指示及びデータを保存する非一時的なコンピュータ可読媒体とを含むシステムの一部であり得る。処理デバイスは、一連の機能を行うために指示を実行し得る。処理デバイスは、生理学的データ及び環境データを含むセンサデータを受信し得る。処理デバイスは、第1の生理学的パラメータと第2の生理学的パラメータとの間の第1の相関、及び環境パラメータと第2の生理学的パラメータとの間の第2の相関を決定するため、過去の生理学的データ及び環境データをさらに分析し得る。その後、処理デバイスは、第1の相関及び第2の相関に基づいて生理学的データを受信した特定の人の第2の生理学的パラメータのレベルにおける変化を予測し得る。
【0161】
生体の生理学的パラメータは、典型的に、時間帯、生体が曝露される環境条件、生体の活動レベル、及び種々の他の生理学的パラメータの1つ以上の関数である。一部のパラメータは関連し得る。例えば、パラメータの平均値及びパラメータの変動は、概日サイクルに基づいて時間帯で変化し得る。生理学的パラメータは、通常の概日リズムに一致して、時間帯に依存した規則的なスケジュールで1日にわたって変化し得る。さらに、これらのパラメータは、対象の身体活動又は代謝率に基づいて変化し得る。生理学的パラメータの時間的パターンは、準周期性、又は特定の特殊な場合において完全な周期性であり得る。準周期性リズムは、秒のタイムスケール、分のタイムスケール、超日、概日、概月、又は年のタイムスケールであり得る。
【0162】
対象の温度、熱産生、熱除去のリズムは準周期性であり得る。例えば、変化の振幅及び周波数は、自然の概日リズムを模倣して、1日に上昇及び下降し得る。特に、対象の温度は、特定の温度ではなく、しきい値間ゾーン内に維持され得る。このゾーンは、個体間で変動し得、特定の個体内で概日サイクルを有し得る。対象の温度がしきい値間ゾーンより低く逸脱すると、とりわけ表面血管収縮、ふるえ、及び代謝熱発生を含む一連の協調反応が起こる。身体の深部体温がしきい値間ゾーンより高く逸脱すると、とりわけ表面血管拡張、及び発汗を含む一連の協調反応が起こる。また、しきい値間ゾーンからの逸脱は、環境熱を得ようとする又は避けるなどの挙動パターンと関連する。
【0163】
したがって、対象の基礎代謝状態又は安静時代謝状態を評価するため、対象の温度、熱産生、及び熱除去の見かけの測定値を、対象の身体活動、環境要因、並びに対象の準周期性リズムに対して補正する必要があり得る。大きいデータセットの周期性成分を特定するため、信号対雑音に基づくフーリエ分解、フィッシャーのg-検定、及び自己相関など、多くの計算方法が使用され得る。正弦波モデルの仮定に加え、根底にある動態を決定する際に重要な手がかりを提供し得る波形の形状及び複数の周期性の存在を定量するため、他のアルゴリズムを使用し得る。例えば、雑音のあるデータセット及び他のハイスループット分析のために、アルゴリズムは、複数の有効な周波数から雑音除去された波形を生成するフーリエに基づく測定を組み込み得る。その後、この波形は、波形メトリック及び複数の期間を含む振動統計を提供するために、未処理の振動データと相関され得る。
【0164】
センサの例#1の特定の一実施形態は、対象の準周期性リズムを分析し、現在の状態並びに準周期性リズムに基づいて対象の安静時状態パラメータを推定するシステムの一部であり得る。安静時状態パラメータを推定することは、安静時状態と現在の状態との関係、及び現在の状態と安静時状態との動的に変化する関係に基づき得る。システムは、測定したデータの送信及びデータ処理を行うように構成され得る。
【0165】
一部の実施形態において、システムにおける測定したデータの送信は、変調方式、符号化、及びエラーコードの態様を利用し得る。送信の態様は、例えば、アナログ、デジタル、スペクトル拡散、組合せ、及び競合回避を含む。アナログ送信の態様は、例えば、振幅変調、単側波帯変調、周波数変調、位相変調、直交振幅変調、及び空間変調の方法等を含む。デジタル送信の態様は、オン/オフキーイング、周波数シフトキーイング、振幅シフトキーイング、位相シフトキーイング、例えば、二位相シフトキーイング、直交位相シフトキーイング、高次及び差動符号化直交振幅変調、最小シフトキーイング、連続位相変調、パルス位置変調、トレリス符号化変調、並びに直交周波数分割多重化を含む。スペクトル拡散送信の態様は、例えば、周波数ホッピングスペクトル拡散、及び直接シークエンススペクトル拡散を含む。組合せ送信の態様は、例えば、搬送波周波数変調による二位相シフトキーイングを含む。競合回避送信の態様は、例えば、デューティサイクル変調及び搬送波周波数変調を含む。符号化の態様は、例えば、ウェイクアップ方式、プリアンブル方式、データパケット方式、及び誤り符号方式を含む。ウェイクアップ方式は、例えば、マルチトーン方式及びチャープ方式を含む。プリアンブル方式は、例えば、パケット開始方式のための固有の識別子を含む。データパケット方式は、例えば、ピルの種類、ピルの有効期限、製造者、ロット番号、量、処方医師、薬局等に関連するデータを含む。誤り符号方式は、例えば、繰り返し方式、パリティ方式、チェックサム、巡回冗長検査、ハミング距離方式、及び前方誤り訂正方式、例えば、リードソロモン符号、二元ゴレイ符号、畳み込み符号、ターボ符号等を含む。
【0166】
一部の実施形態において、システムにおけるデータ処理は、予測情報を導き出すため、データを集約し、集約したデータの分析を促す予測モジュールによって実施され得る。一部の実施形態において、複数の対象の個体群データは、種々の統計、結論、予測等を導き出すために処理され得る。種々の技術、例えば、多変量データ融合技術に基づく状態特性評価は、種々の出力、例えば、分析、メトリック、予測情報等を生成するために使用され得る。
【0167】
一部の実施形態において、システムにおけるデータ処理は、測定したデータを時間正規化及び内挿すること、種々のメトリック、例えば平均日周パターン、日間の標準偏差、及び全体の変動などを生成すること、並びに予測情報を生成することを含み得る。一部の実施形態において、システムにおけるデータ処理は、対象の概日(日周)パターンの規則性及び安定性を評価することを含み得る。
【0168】
一部の実施形態において、システムにおけるデータ処理は、概日(日周)パターンを可視化する及び特徴づけるためにアルゴリズムを1つ以上のデータソースに適用することを含み得る。メトリック計算の前に、時系列の特徴を強調するために、種々のフィルタ又は変換を適用し得る。日常パターンの変動に関連するメトリックは、日間で計算される標準偏差、データ系列の有意な主成分の数として計算される固有の次元、平均パターンにおける日毎の偏差、又は他の時系列記述統計を含む。
【0169】
(センサの例#2:インピーダンス/電気/磁気)
他の実施形態において、本明細書に記載するシステムは、例えばインピーダンス、電位、及び磁化率又は磁束を含む1つ以上の電気特性を測定するためのセンサモジュールを含むセンサを含む。
【0170】
一部の実施形態において、センサは、例えば、四肢の体積を測定するための生体インピーダンスセンサであり得る。生体インピーダンスセンサは、例えば、電気化学電極、金属プランジプローブ、及び四極インピーダンスセンサシステムから選択され得る。生体インピーダンスセンサは、四極インピーダンスセンサシステムであり得る。四肢の体積のためのセンサは、曲率半径を測定するためのセンサであり得る。四肢の体積のためのセンサは、1つ以上の周方向歪みゲージ、例えば対象の四肢における複数の領域に設けられた複数の歪ゲージを含み得る。本明細書のシステムは、本明細書に記載されるような複数の無線フレキシブルデバイスをさらに含み得る。例えば、システムは、少なくとも4つの無線フレキシブルデバイスを含み得、第1のデバイスは交流を提供し、第2のデバイスは接地であり、さらなるデバイスは電圧の差を測定できる生体インピーダンス検知電極である。第1のデバイスは、上述の第2のデバイスよりも患者の心臓に近接して配置され得、さらなる生体インピーダンス検知装置は、上述の第1のデバイスと上述の第2のデバイスとの間に配置される。システムは、4つの無線フレキシブルデバイスをさらに含み得、各デバイスは、交流信号、接地、及び電圧の差を測定できる2つの生体インピーダンス検知電極を独立して有する。
【0171】
例えば、センサデバイスは、例えばインピーダンス、電位、及び磁化率又は磁束を含む1つ以上の電気特性を測定するためのセンサモジュール又は複数のセンサモジュールを含み、そうした測定を反映するデータを生成し得る。生物学的系の電気特性についての情報は、そうした測定から推測され得る。他の実施形態において、システムは、三次元の(i)インピーダンス、(ii)電位、(iii)磁束、又は(iv)常磁束の特性の少なくとも1つを、同時に又は実質的に同時に測定するためのセンサモジュールを含み得る。システム及びセンサは、好ましくは、アナログ又はデジタル形態の変換器入力を測定するとともに、関連するデータを生成するように設計される。システム及びセンサは、生物体、例えばヒトにとってウェアラブルであり得、腕、胸、脚、腹部、又は身体のいずれかに取り付けられ得る。デバイスは、1か月を超えて測定データを保存するメモリを含み得る。
【0172】
他の例において、
図10に示すように、デバイスは、データを送信してスマートフォン又はタブレットに表示させるための無線送信モジュールを含み得る。デバイスは、30秒間隔で無線信号を送信する条件で動作させるとき、約6か月間持続可能な電池を含み得る。デバイスは、電池寿命を示す充電表示器を含み得る。デバイスは、電池寿命に関する情報を送信してスマートフォン又はタブレットに表示させ得る。デバイスは、スマートフォン又はタブレットを介して制御され得る。例えば、信号送信間隔を調整し得る。デバイスは、通信若しくは動作の状態、又は警告及びエラーを示すLEDを含み得る。デバイスは耐水性であり得る。
【0173】
(センサの例#3:構造/張力/機械)
一実施形態において、本明細書に記載するシステムは、引張強度を測定するためのセンサモジュールを含むセンサを含む。システム及びセンサは、好ましくは、アナログ又はデジタル形態の変換器入力を測定するとともに、関連するデータを生成するように設計される。システム及びセンサは、生物体、例えばヒトにとってウェアラブルであり得、腕、胸、脚、腹部、又は身体のいずれかに取り付けられ得る。デバイスは、1か月を超えて測定データを保存するメモリを含み得る。
【0174】
(センサの例#4:生理機能測定)
開示する技術の生理機能測定センサの例は、便宜上センサの例#4と称され、pH、溶存酸素濃度、グルコース濃度、乳酸濃度、毒素濃度である、生物学的系、例えばヒトなどの生物体の溶液又は懸濁液の創発要因の少なくとも1つを測定するため、少なくとも1つのフィジオメータを使用する。一部の実施形態において、センサの例#4は小型化生理機能測定センサである。一部の実施形態において、センサの例#4は、代謝状況を特徴づけるため、細胞外酸性化率、酸素消費率、及びグルコース消費率又は乳酸放出率を測定し、それらを反映するデータを生成するように構成されるセンサを含む。これらのパラメータを継続的に測定することによって、センサの例#4は健康メトリックを定量する。
【0175】
(センサの例#5:酸化還元/電気化学)
一実施形態において、本明細書に記載するシステムは、酸化/還元電位又は他の電気化学特性を測定するためのセンサモジュールを含むセンサを含む。システム及びセンサは、好ましくは、アナログ又はデジタル形態の変換器入力を測定するとともに、関連するデータを生成するように設計される。システム及びセンサは、生物体、例えばヒトにとってウェアラブルであり得、腕、胸、脚、腹部、又は身体のいずれかに取り付けられ得る。デバイスは、1か月を超えて測定データを保存するメモリ部品を含み得る。
【0176】
(リアルタイムでの健康能力の測定)
現在の疾患医療システムと並行して、容易に組み込まれ、データに基づき、継続的かつ正確に健康を測定するだけでなく、その変化を検出し、疾患又は感染を発症前に示す、直ちに展開できる先取的な健康測定システムの必要性が存在する。これは、適応能力が枯渇し得、治療の幅を狭めて、それによって人間的及び経済的な結果を悪化させる、急速に進行する疾患において特に該当する。
【0177】
デバイス#1は、開示するシステムの想定される商業的に展開可能な実施形態の例であり、自動ウェアラブル健康精度測定システム及び学習プラットフォームを指す。一実施形態において、これは、人によって装着されて、健康能力-健康をリアルタイムで定量し、その最適化、並びに疾患の検出及び阻止を可能にする。その人は、免疫抑制療法によって不明瞭となった感染を有する患者、又は、2019年のSARS-CoV-2の世界的流行などの感染疾患の発症前/無症状キャリアであり得る。その人は、睡眠、栄養、運動、個別の神経筋インプット、及び/又は生活習慣の変化を使用して、健康又はパフォーマンスを最大化しようとする健康な個体であり得る。
【0178】
デバイス#1は、健康管理又は疾患の検出若しくは阻止のいずれかを可能にするために迅速な学習ループを提供するように構成され得る。1つ以上のセンサ(群)を使用することによって、デバイス#1は生物学的系の創発特性を測定及び定量することとなる。
【0179】
一実施形態において、デバイス#1は、実質的に継続的に、例えば、5秒、4秒、3秒、1秒、又は1秒未満の間隔で、熱又は仕事の変化を感知する。デバイス#1は、生体系が持続するために代謝的に「適応」できる能力を反映するような、本明細書において「健康能力」と称される機能を一意的に反映する値をリアルタイムで自動的に計算するように構成される。
【0180】
健康能力を裏付ける任意の単一のパラメータは一見不正確であるが、それらのパラメータは、集合的には、所定の時点における機能の極めて正確な予測因子となる。
【0181】
デバイス#1は、スケーラブルな自動健康測定及び予測の解決策として設計され、構成可能である。世界規模でリアルタイムな個体及び個体群に基づく分析を可能にするために、常時オンで非充電式であることが要件となり得る。これを達成するため、予め設定されたしきい値又はベースラインの変化に基づいてサンプリングレート及び周波数を自動的に調整するファームウェアのアルゴリズムによって制御される低電力要件のセンサによる検出(直接的又は間接的に)に適するパラメータが選択される。
【0182】
デバイス#1は健康の変化をより早く測定し、疾患の予測及び阻止を可能にする。
【0183】
デバイス#1は、熱又は仕事の変化を低遅延で実質的に継続的に測定するように構成され得る。これは、データ分析と組み合わせて、恒常性状態、その変化を即時に計算可能にし、それによって疾患の発症前検出及び阻止を可能にする。
【0184】
熱流の変化は、1秒間隔で熱流速を定量する、2つの超高感度ソリッドステートモノリシックCMOS ICデジタル温度センサによって感知される。これにより、代謝率の変化が定量可能になる。
【0185】
仕事の変化は、オスモル濃度を介して感知され、これは、1秒間隔で1kHzから1MHzのインピーダンスを定量することによって、4点接触システムにより電位差測定で感知され得る。これにより、イオン/流速の変化が定量可能になる。
【0186】
また、仕事の変化は、細胞の力学及び/又は部分構造の非侵襲的な測定を介して感知され、これは、1秒間隔で感知され得る。これにより、組織、細胞、及び小器官の動態の変化が定量可能になる。
【0187】
デバイス#1は、単純、手頃で、かつ自動化されている。デバイス#1は動作させるために特殊な技能を必要としない。これにより、分散型の健康測定システムの広い展開を可能にする。デバイス#1は、例えば100日、200日、300日、又は400日程の長い電池寿命を有するように構成されており、使い捨てで、標準的な電池、例えば50mAhの全容量の3ボルト(ピーク充電)リチウムコインセル電池によって内部で電力が供給される。これにより、長期間にわたって健康の傾向を継続的に測定可能になる。デバイス#1は安価であり、幅広い展開に対する経済的なハードルを低くする。
【0188】
デバイス#1は、実質的に継続的に健康のパラメータを測定し、既存のIoTアーキテクチャとのインターフェースとなるように構成される。これにより、疾患の症状前の変化を早期に検出することが可能になり、個体群に基づく健康の脅威の際に検出及び学習するためのビッグデータセットを生成することが可能となる。
【0189】
デバイス#1は、過酷な環境及び/又は過酷な条件において高信頼性で動作するように設計され得る。これにより、多様な一般市民、ファーストレスポンダー、及び戦争従事者における展開が可能になる。デバイス#1はHIPPAに準拠するように構成され得る。デバイス#1と標準的なスマートフォンとの間の通信は、暗号化されたブルートゥース(登録商標)ローエナジーリンク、特に「LESC」によってなされ得る。ユーザについてのいかなる本人情報も、手首センサに保存される、又はブルートゥース(登録商標)によって暗号化されずに送信されるといったことはない。アプリとクラウド記憶サーバとの間の接続はセキュアである。各段階において、データは静止時(デバイス又はクラウドにおいて)及び送信時に暗号化される。
【0190】
保護健康情報(PHI)のセキュアな管理:PHIは、デバイス#1の装着者の同意を得たときにのみ、収集されてセキュアなクラウドに移動されることとなる。分析の進展のためにクラウドのデータにアクセスすると、形式的に匿名化されたデータのみを示すこととなる。
【0191】
デバイス#1は、FDAクラス2デバイスのFDA要件を超えるように構成され得る。センサモジュールは安全であり、非電気伝導性表面材料のみを露出させるように単離ポリマー(デルリン)封入部内に含まれる電池駆動式センサ群を適用し、外部皮膚表面に取り付けられるように構成され得る。内部電気回路と肌との間に電気的接触は存在しない。
【0192】
(プラットフォーム)
ウェアラブルデバイスは、FDA承認の高精度で低電力のマイクロエレクトロニクスによって実現され、セキュアなBLE接続によってセンサデータをストリーミングできる。デフォルトで熱力学的及び活動感知機能とともに実現される。
【0193】
(モバイルアプリケーション)
セキュアなソフトウェアインターフェースレイヤーは、クラウドに基づくデータ収集、記憶、及び分析を管理するiOS又はAndroidのオペレーティングシステムにおいて利用可能である。生のセンサのデータストリームを、作用可能な健康状態の警告に変換可能にする。
【0194】
(センサアップグレードに適応可能)
熱又は仕事の変化を測定するように構成された複数の新しいセンサを展開し得る。デバイス#1のシステムの開発における構成要素は以下を含む。
1.基本的な原理の観察及び報告。
2.技術のコンセプト及び/又はアプリケーションの策定。
3.分析的及び実験的な重要機能及び/又は特有のコンセプト実証。
4.実験室内環境における部品及び/又はブレッドボードの検証。
5.関連する環境における部品及び/又はブレッドボードの検証。
6.関連する環境におけるシステム/サブシステムモデル又はプロトタイプの実証。
7.動作環境におけるシステムプロトタイプの実証。
8.実際のシステムが完成し、試験及び実証によって「飛行認定」がされること。
9.実際のシステムは特務の運用が結果を示すことによって「飛行証明済」であること。
【0195】
(生物学的系又は非生物学的系の特性を向上させるためのシステム及び方法の使用)
本明細書に記載するシステム及び方法は、生物学的系又は非生物学的系の種々の特性を向上させるために有用である。システムの健康能力を測定及び定量することによって、その効率及び機能を向上させることができる。例えば、バイオリアクター内の微生物の健康能力を測定及び定量し、パフォーマンスを最適化又は調節するために情報を使用する。さらなる例は、農業用途、例えば、人工的な条件によって植物又は植物システムの生存度及び持続可能性を変え得る、工業型農業又は屋内農業などを含み得る。さらなる例は、仕事をするように設計及び操作された原始細胞を含み得る。この例において、健康能力を測定及び定量することによって、より効率的な仕事の生産を可能にし得る。
【0196】
(ヒトの健康を定量及び調節及び向上させるためのシステム及び方法の使用)
自動化され、リアルタイムで測定し、本明細書においてデバイス#1と呼ばれるウェアラブルデバイスは、代謝を定量するためにエネルギー収支を推測するようにヒト対象の1つ以上の創発特性を定量し、したがって健康の調節又は最適化を可能にするように構成される(
図11、
図12、
図13、
図14、
図15、及び
図16に示されるように)。
【0197】
現在、合意されている健康の尺度は存在しない。健康は、疾患(症状)がないことと定められる。疾患メトリックは、健康を損なっていることの遅行指標であるので、健康を反映しておらず、それ自体、結果の疾患ではなく実際の健康に対して最適化できない。疾患の理解の進歩により、炎症の初期の変化が疾患の予測因子となり得ることが示されているが、炎症もまた発病の遅発性の徴候である。
【0198】
炎症は、身体のあらゆる器官系に影響を与え得る一般的経路である。炎症反応は、運動及びトレーニングに対する正常な反応から、現在では発がん及び神経変性に関連づけられる機序までの範囲の、一連の刺激又はストレスによって誘発され得る。炎症の臨床徴候は、従来より、熱の上昇、痛み、発赤、膨潤、及び機能喪失(ラテン語で、calor、dolor、rubor、tumor、及びfunctio laesa)の5つとして定められており、現在、初期の炎症、つまりいわゆる前炎症は疾患の危険因子である。創発パラメータである水*の変化と例えば温度及び膨潤などの炎症との関連に留意されたい。
【0199】
(式#3)
健康→代謝→恒常性→ストレス→前炎症→炎症→器官特異的→全身性→疾患
【0200】
デバイス#1は、健康の定量、最適化、及び調節を可能にするために、炎症、前炎症、又は疾患の前に起こる、健康能力の根底にある創発的特性であるエネルギー収支の変化を測定する。健康は健康能力において年齢に依存する喪失又は状態における喪失が存在する状態において定めることができることに留意している。デバイス#1は、(急激に疾患をもたらす)一見小さな健康能力の変化、つまりいわゆる「虚弱」を測定することができる。
【0201】
(疾患を検出及び阻止するためのシステム及び方法の使用)
自動化され、リアルタイムで測定し、本明細書においてデバイス#1と呼ばれるウェアラブルデバイスは、エネルギー収支を推測する、つまり代謝を定量するためにヒト対象の1つ以上の創発特性を定量し、疾患の早期の検出及び阻止を可能にするように構成される。
【0202】
現在、疾患は遅れて検出される。2020年現在、米国の年間医療予算の70%は慢性疾患の管理に費やされている。現在の標準は、病気を選別する方法として疾患症状を使用することである。疾患症状は、疾患の遅発性の指標であり、根底にある正確な傷害の大きさを不明瞭にしている。結果として、それらが検出されたときには大きな傷害が起こっており、これにより、正確な原因の理解を難しくし、診断費用がかさみ、最適点の処置-治療の幅が狭くなり、経済的及び人間的にも結果を悪化させる。これらの非効率性は一般的だが、現在の2019年におけるSARS-CoV-2の世界的流行によって明らかになっている。感染が検出されず、個体の予後が悪化し、拡散が拡大し、封じ込めが悪化する。
【0203】
デバイス#1は、健康喪失の定量、虚弱の定量、疾患の早期検出及び阻止を可能にするために、炎症、前炎症、又は疾患の前に起こる、健康能力の根底にある創発的特性であるエネルギー収支の変化を測定する。
【表2】
【表3】
【0204】
(データ及び学習エンジン)
一態様において、開示する技術は、創発複雑適応系について測定及び学習するための新しい方法に関する。
図13、
図14、
図15、及び
図16に示すような一部の実施形態において、開示する方法は、全体として系における挙動の創発パターンを特定するために実験又は観察を使用する。その後、方法は、何が物体、個体、又はグループ間の最も重要なつながり又は相互作用かを決定する。さらに、方法は、代謝タスクを含むこれらのつながりを、観察される創発的挙動を説明し得る系統立った概念に組み込んだ、単純なモデルを構築及び解明する。その際、他の系又は分野における創発的挙動を説明することがこれまでに示されているモデルに使用される系統立った概念を考慮することが、多くの場合有用である。さらに、方法は、結果及び予測を実験又は観察と比較する。
【0205】
一部の実施形態において、方法は、新しい測定ツールを形成するために、新しいセンサを開発し、新しいパラメータを導出することに関与する。一部の実施形態において、方法は、新しいパラメータを測定するために既存のセンサを使用することに関与する。一部の実施形態において、方法は、代謝タスクによって測定をアノテーションするなど、既知のパラメータを測定するために新しいセンサを使用することに関与する。
【0206】
一部の実施形態において、方法は、物理学の第一原理から開始し、測定及び学習エンジンを発展させるため、熱力学第一法則を使用する。非平衡物質は、自己組織化する特有の特性、すなわち「健康な」生物学的系に例示される適応能力又は健康能力を有することに留意する。非平衡の熱力学が物理学の未完の領域であることを考えると、生物学的系おける健康能力の起源及び性質は不可解なままである。それでも、学習エンジンは、任意の非平衡系のエネルギー収支を理解するために、エネルギー保存のような一般法則、並びに熱及び仕事のような一般的なエネルギー消費を適用し得る。一部の実施形態において、センサによって十分なスケールで熱及び仕事を継続的に測定することによって、学習エンジンは消去法で生物学的系の熱力学を解読し始め、反復的に一段と詳細なエネルギー収支を示すことができる。このエネルギー収支の対象間変動が健康の結果と相関する場合、学習エンジンは健康能力について学習することができる。学習エンジンは、種々のスケールにおける健康能力ルール又は恒常性のルールを記述する、生物圏にわたる広範囲のエネルギー収支の対象内及び対象間変動をさらに学習することができる。
【0207】
一部の実施形態において、データ分析(例えば、
図15A及び
図15Bに示されるもの、又は学習エンジンによって行われるデータ分析方法)は、3つのレベルの熱特徴メトリックを適応又は利用し得る。
(レベル0):例えば、熱特徴は、極めて基本のメトリック、つまり平均値、分散、最小値、及び最大値等について、有用に定量され得る。これらのメトリック/統計は、健康状態又はその変化の指標として直接的に使用され得る。
・例#1:この熱特徴の平均値は2.3である。
・例#2:これまでの24時間にわたるこの熱特徴の最小値は-0.2である。
(レベル1):例えば、熱特徴のより高度なメトリックは、生物学的機構及び概日の健康の理解を組み込んで、構築される。例えば、概日リズムのメトリック、例えば日間安定性(IS)、及び日内変動(IV)、概日構造のノンパラメトリック統計など。概日分析に対する他のパラメトリック手法は、コサイナーフィッティングに関与する。これは、周期成分を有する任意の信号に適用することができる。このカテゴリのメトリックは、多くのパラメータのフィッティングに関与して、極めて複雑となり得、それぞれのパラメータは、単純なレベル0の統計よりも情報価値がある、健康能力の独立したメトリックであり得る。また、このレベルは、例えば、ヒトの入力及び/若しくはヒトの訓練の構成要素、並びに/又は自動学習、例えば人工知能(AI)/機械学習(ML)などを含み得る。
・例#1:この熱特徴の日間安定性は0.42である。
・例#2:直近で訓練した長・短期記憶(LSTM)ネットワークの時系列予測において、インデックス#4.45.2のパラメータが-2.56の値を有する。
(レベル2):レベル1のメトリックは極めて情報価値があり得るが、必ずしも個体間で解釈又は移行可能であるわけでなはない。レベル2のメトリックは、メトリックを単一の個体の過去のベースラインと比較することによって、これらの制限に対処している。数週又は数か月の期間にわたって熱特徴を継続的に収集するようにウェアラブルデバイスを設計することによって、詳細なベースラインを構築することができる。これらのベースラインにより、熱特徴のメトリックの変化に高い信頼性/有意性を持たせることができる。
・例#1:この熱特徴の日間安定性は0.42、又は前月の典型値に対して78パーセンタイルである。
・例#2:熱特徴の時間分解パーセンタイルスコアのローリング平均値が9.2であり、末梢灌流の著しい低下を示唆する。
【0208】
(健康の機械学習及び予測モデリング)
一態様において、開示する技術は、機械可読指示に従って、生物学的系の健康能力を最大化する、又は対象の疾患を予測及び阻止することによって、生活を向上させる、又は個体がその健康を効率的に管理/調節することを可能にするための健康の新しい尺度及びメトリックを自動化する新しい方法に関する。
図11、
図12、
図13、及び
図14に示すような一部の実施形態において、新しい尺度は、水
*の特有の物理及び化学特性に基づき、直接的又は間接的であり得る。学習エンジンは、測定した水の特有の特性のそれぞれに、推定される生化学的機能を割り当てることができる。機械学習アルゴリズムは、健康能力を定量し、測定した生物学的系の健康能力ルール又は恒常性のルールを学習し得る。機械学習アルゴリズムは、さらに、生命がどのように現れたか又は始まったかを学習する、あるいは生命がどのように現れたか又は始まったかの見解を提供し得る。あるいは、機械学習アルゴリズムは、生物学的及び医療技術における発見及び発展を可能にするように、尺度から抽出して、現代の生化学を支配するルールを学習し得る。さらに、機械学習アルゴリズムは、原始細胞の設計及び操作を可能にする、測定値を抽出し、見解を示し、及び/又はルールを学習するように構成かつ設計されている。
【0209】
一部の実施形態において、機械学習アルゴリズムは、熱力学第一法則に基づいてエネルギー収支を分析する。例えば、アルゴリズムは、熱(発熱性)、電気特性(イオン移動)、及び構造(マイクロ生理機能測定)、あるいは他の形態の細胞の仕事の変化をリアルタイムで計算し得る。
【0210】
一部の実施形態において、機械学習アルゴリズムは、生物学的系の測定したエネルギー消費に基づいて、生物学的系のエネルギー収支を計算する。一部の実施形態において、機械学習アルゴリズムは、生物学的系の恒常性のルールを学習し得る。
【0211】
開示する技術の一態様は、複数の生理学的及び/又はコンテキストセンサから受信したデータからの種々の変数に関連する情報を生成するための広範囲のアルゴリズムを作成するための高度なアルゴリズム開発プロセスに関する。そうした変数には、安静時、活動時、及び全値を含むエネルギー消費、1日のカロリー摂取、ベッドに入ること、睡眠開始、睡眠中断、起床、及びベッドから出ることを含む睡眠状態、並びに運動、着座、自動車での移動、及び横臥を含む活動状態を限定することなく含み得、そうした変数の値を生成するためのアルゴリズムは、例えば2軸加速度計、熱流速センサ、GSRセンサ、皮膚温度センサ、身体近傍周囲温度センサ、及び心拍数センサからのデータに基づき得る。
【0212】
算出可能ないくつかの種類のアルゴリズムが存在する。例えば、限定しないが、これらは、ユーザの特徴、連続的な測定、持続的なコンテキスト、瞬間の事象、及び累積的な状態を予測するためのアルゴリズムを含む。ユーザ特徴は、体重、身長、及び着用者の本人情報などの態様を含む、着用者の永続的及び半永続的なパラメータを含む。連続的な測定の例はエネルギー消費であり、これは、着用者が消費したエネルギーのカロリー数を、例えば1分毎で常に測定する。持続的なコンテキストは、睡眠、車の運転、又はジョギングなど、いくらかの期間持続する挙動である。瞬間の事象は、心臓発作又は転倒など、一定の時間区分又は極めて短い時間区分に起こるものである。累積的な状態は、その人の状態がこれまでのいくらかの期間の挙動から推定できるものである。例えば、人が36時間寝ておらず、10時間食べていない場合、疲労していると考えられる。
【0213】
開示する技術は、着用者の生理学的及びコンテキスト的な状態の自動ジャーナルを行うための方法に利用され得る。システムは、ユーザがどのような活動に関わっていたか、どのような事象が起こったか、ユーザの生理学的状態が経時でどのように変化したか、及びユーザがいつ特定の状態を経験したか、又は経験する可能性があったかのジャーナルを自動的に生成することができる。例えば、システムは、いつユーザが運動したか、車を運転したか、眠ったか、熱ストレスの危険があったか、又は食べたかの記録の生成に加えて、1日におけるユーザの水分補給レベル、エネルギー消費レベル、睡眠レベル、及び覚醒レベルの記録を生成することができる。
【0214】
一部の実施形態において、複数のセンサからのデータを所望の変数にマッピングする線形又は非線形の数学モデル又はアルゴリズムが構築される。この処理はいくつかのステップからなる。まず、ウェアラブルデバイスを装着した対象が、できるだけ実世界の状況に近い状況に置かれ(測定されるパラメータに関して)、対象に危険が及ばないようにし、提案されるアルゴリズムが予測する変数を、極めて正確な医療グレードの実験室機器を使用して高信頼性で同時に測定できるようにして、該対象によってデータを収集する。この第1のステップは、その後にアルゴリズム開発プロセスの入力として使用される以下の2つのセットのデータである、(i)ウェアラブルデバイスからの生データ、及び(ii)より正確な実験室機器で測定した至適基準標識からなるデータを提供する。提案されるアルゴリズムが予測する変数がコンテキスト検出、例えば自動車での移動などに関する場合、至適基準データは、ウェアラブルデバイス、PCに手動で入力する情報、あるいは手動で記録する情報によって等、対象自身によって提供される。収集されたデータ、すなわち生データ及び対応する至適基準標識データの両方は、その後データベースに編成され、訓練セット及び試験セットに分割される。
【0215】
次に、訓練セットのデータを使用して、生データを対応する至適基準標識データと関連させる数学的モデルを構築する。具体的には、種々の機械学習技術を使用して、2種類のアルゴリズム、つまり、1)実験室で測定したレベル(例えば、代謝カート、ダグラスバッグ、又は二重標識水からのVO2レベル情報)と極めて相関する結果を生成する特徴検出器として知られるアルゴリズム、及び、2)アルゴリズム全体に有用な種々のコンテキスト(例えば、走る、運動する、横になる、寝る、運転する)を予測するコンテキスト検出器として知られるアルゴリズムを生成する。このステップにおいて、人工ニューラルネット、決定木、メモリベース法、ブースティング、交差検証による属性選択、並びに確率的探索方法、例えば疑似アニーリング及び進化的計算などを含む、多くの機械学習技術を使用し得る。特徴検出器及びコンテキスト検出器の適切なセットが見つかった後、いくつかの機械学習方法が、訓練データを使用してモデルを交差検証し、データのモデルの品質を高めるために使用される。この段階において使用される技術は、多重線形回帰、局所加重回帰、決定木、人工ニューラルネットワーク、確率的探索方法、サポートベクターマシン、及びモデル木を含むが、これらに限定されない。
【0216】
この段階では、モデルは例えば1分毎に予測を行う。次に、1分毎の予測を組み込んだ全体モデルを作成することによって、分間の影響を考慮する。このステップにおいて、データの時間的継続性を利用するために、ウィンドウイング及びしきい値最適化ツールを使用し得る。最後に、アルゴリズムの作成にまだ使われていない試験セットにおいて、モデルのパフォーマンスを評価することができる。したがって、試験セットにおけるモデルのパフォーマンスは、他の未見のデータにおけるアルゴリズムの予想されるパフォーマンスを良好に推定する。最後に、アルゴリズムは、さらに検証するために新しいデータで実際の試験を受け得る。
【0217】
開示する技術において使用され得る非線形関数及び/又は機械学習方法の種類のさらなる例は、条件付け、事例ステートメント、論理処理、確率的又は論理的推論、ニューラルネットワーク処理、カーネルに基づく方法、メモリに基づくルックアップ(kNN、SOM)、決定リスト、決定木予測、サポートベクターマシン予測、クラスタリング、ブーステッド方法、カスケード相関、ボルツマン分類器、回帰木、事例ベース推論、ガウス、ベイズネット、動的ベイジアンネットワーク、HMM、カルマンフィルタ、ガウス過程、アルゴリズム予測器(例えば、進化的計算又は他のプログラム合成ツールによって学習したもの)を含む。
【0218】
(デジタル処理デバイス)
一部の実施形態において、本明細書に記載するプラットフォーム、媒体、方法、及びアプリケーションは、デジタル処理デバイス、プロセッサ、又はそれらの使用を含む。さらなる実施形態において、デジタル処理デバイスは、デバイスの機能を行う1つ以上のハードウェア中央処理装置(CPU)を含む。またさらなる実施形態において、デジタル処理デバイスは、実行可能な指示を行うように構成されたオペレーティングシステムをさらに含む。一部の実施形態において、デジタル処理デバイスは、任意でコンピュータネットワークに接続される。さらなる実施形態において、デジタル処理デバイスは、任意でインターネットに接続され、ワールドワイドウェブにアクセスするようにされる。またさらなる実施形態において、デジタル処理デバイスは、任意でクラウドコンピューティングインフラストラクチャに接続される。他の実施形態において、デジタル処理デバイスは、任意でイントラネットに接続される。他の実施形態において、デジタル処理デバイスは、任意でデータ記憶デバイスに接続される。
【0219】
本明細書の記載に従って、適切なデジタル処理デバイスは、非限定的な例として、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、サブノートブックコンピュータ、ネットブックコンピュータ、ネットパッドコンピュータ、セットトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、インターネット機器、モバイルスマートフォン、タブレットコンピュータ、携帯情報端末、ビデオゲーム機、及び車両を含む。当業者は、多くのスマートフォンが本明細書に記載するシステムにおける使用に適していることを認識するであろう。また、当業者は、任意のコンピュータネットワーク接続を有する選択的なテレビ、ビデオプレーヤー、及びデジタル音楽プレーヤーが、本明細書に記載するシステムにおける使用に適していることを認識するであろう。適切なタブレットコンピュータは、当業者に既知のブックレット型、スレート型、コンバーチブル型構成を有するものを含む。
【0220】
一部の実施形態において、デジタル処理デバイスは、実行可能な指示を行うように構成されたオペレーティングシステムを含む。オペレーティングシステムは、例えば、デバイスのハードウェアを管理し、アプリケーションを実行するためのサービスを提供する、プログラム及びデータを含むソフトウェアである。当業者は、適切なサーバオペレーティングシステムが、非限定的な例として、FreeBSD、OpenBSD、NetBSD(登録商標)、Linux、Apple(登録商標)MacOSX Server(登録商標)、Oracle(登録商標)Solaris(登録商標)、Windows Server(登録商標)、及びNovell(登録商標)NetWare(登録商標)を含むことを認識するであろう。当業者は、適切なパーソナルコンピュータオペレーティングシステムが、非限定的な例として、Microsoft(登録商標)Windows(登録商標)、Apple(登録商標)MacOSX(登録商標)、UNIX(登録商標)、及びUNIX様オペレーティングシステム、例えばGNU/Linux(登録商標)を含むことを認識するであろう。一部の実施形態において、オペレーティングシステムは、クラウドコンピューティングによって提供される。また、当業者は、適切なモバイルスマートフォンのオペレーティングシステムは、非限定的な例として、Nokia(登録商標)Symbian(登録商標)OS、Apple(登録商標)iOS(登録商標)、Research In Motion(登録商標)BlackBerry OS(登録商標)、Google(登録商標)Android(登録商標)、Microsoft(登録商標)Windows Phone(登録商標)OS、Microsoft(登録商標)Windows Mobile(登録商標)OS、Linux(登録商標)、及びPalm(登録商標)WebOS(登録商標)を含むことを認識するであろう。
【0221】
一部の実施形態において、デバイスは、記憶部及び/又はメモリデバイスを含む。記憶部及び/又はメモリデバイスは、一時的又は永続的にデータ又はプログラムを保存するために使用される1つ以上の物理的装置である。一部の実施形態において、デバイスは揮発性メモリであり、保存した情報を維持するために電力を必要とする。一部の実施形態において、デバイスは不揮発性メモリであり、デジタル処理デバイスに電力が供給されていないとき、保存情報を保持する。さらなる実施形態において、不揮発性メモリはフラッシュメモリを含む。一部の実施形態において、不揮発性メモリはダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含む。一部の実施形態において、不揮発性メモリは強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM(登録商標))を含む。一部の実施形態において、不揮発性メモリは相変化ランダムアクセスメモリ(PRAM)を含む。一部の実施形態において、不揮発性メモリは磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)を含む。他の実施形態において、デバイスは、非限定的な例として、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光学ディスクドライブ、及びクラウドコンピューティングに基づく記憶部を含む記憶デバイスである。さらなる実施形態において、記憶部及び/又はメモリデバイスは、本明細書に開示するものなどのデバイスの組合せである。
【0222】
一部の実施形態において、デジタル処理デバイスは、視覚情報をユーザに送信するためのディスプレイを含む。一部の実施形態において、ディスプレイは陰極線管(CRT)である。一部の実施形態において、ディスプレイは液晶ディスプレイ(LCD)である。さらなる実施形態において、ディスプレイは薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)である。一部の実施形態において、ディスプレイは有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。種々のさらなる実施形態において、OLEDディスプレイは、パッシブマトリクスOLED(PMOLED)又はアクティブマトリクスOLED(AMOLED)ディスプレイである。一部の実施形態において、ディスプレイはプラズマディスプレイである。一部の実施形態において、ディスプレイはE-ペーパー又はE inkである。他の実施形態において、ディスプレイはビデオプロジェクタである。またさらなる実施形態において、ディスプレイは、本明細書に開示するものなどのデバイスの組合せである。
【0223】
一部の実施形態において、デジタル処理デバイスは、ユーザから情報を受信するための入力デバイスを含む。一部の実施形態において、入力デバイスはキーボードである。一部の実施形態において、入力デバイスは、非限定的な例として、マウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティック、ゲームコントローラ、又はスタイラスを含むポインティングデバイスである。一部の実施形態において、入力デバイスはタッチスクリーン又はマルチタッチスクリーンである。他の実施形態において、入力デバイスは、音声又は他の音の入力をとらえるためのマイクロフォンである。他の実施形態において、入力デバイスは、運動又は視覚的入力をとらえるためのビデオカメラ又は他のセンサである。さらなる実施形態において、入力デバイスは、Kinect、Leap Motion等である。またさらなる実施形態において、入力デバイスは、本明細書に開示するものなどのデバイスの組合せである。
【0224】
(非一時的なコンピュータ可読記憶媒体)
一部の実施形態において、本明細書に記載するプラットフォーム、媒体、方法、及びアプリケーションは、任意でネットワーク化されたデジタル処理デバイスのオペレーティングシステムによって実行可能な指示を含むプログラムを符号化した1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む。さらなる実施形態において、コンピュータ可読記憶媒体は、デジタル処理デバイスの有形構成要素である。またさらなる実施形態において、コンピュータ可読記憶媒体は、任意でデジタル処理デバイスから取り外し可能である。一部の実施形態において、コンピュータ可読記憶媒体は、非限定的な例として、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートメモリ、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光学ディスクドライブ、並びにクラウドコンピューティングシステム及びサービス等を含む。一部の場合において、プログラム及び指示は、媒体に永続的に、実質的に永続的に、半永続的に、又は非一時的に符号化される。
【0225】
(コンピュータプログラム)
一部の実施形態において、本明細書に記載するプラットフォーム、媒体、方法、及びアプリケーションは、少なくとも1つのコンピュータプログラム、又はその使用を含む。コンピュータプログラムは、デジタル処理デバイスのCPUで実行可能な、特定のタスクを行うために書かれた指示のシーケンスを含む。コンピュータ可読指示は、特定のタスクを行う、又は特定の抽象データ型を実施するプログラムモジュール、例えば関数、オブジェクト、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)、及びデータ構造等として実施され得る。本明細書において提供する開示を考慮すると、当業者は、コンピュータプログラムが種々の言語の種々のバージョンで書かれ得ることを認識するであろう。
【0226】
コンピュータ可読指示の機能は、種々の環境において所望に応じて組み合わされ又は分散され得る。一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、1つの指示のシーケンスを含む。一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、複数の指示のシーケンスを含む。一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、1つの場所から提供される。他の実施形態において、コンピュータプログラムは、複数の場所から提供される。種々な実施形態において、コンピュータプログラムは、1つ以上のソフトウェアモジュールを含む。様々な実施形態において、コンピュータプログラムは、部分的又は全体的に、1つ以上のウェブアプリケーション、1つ以上のモバイルアプリケーション、1つ以上のスタンドアローンアプリケーション、1つ以上のウェブブラウザプラグイン拡張機能、アドイン、若しくはアドオン、又はそれらの組合せを含む。
【0227】
(ウェブアプリケーション)
一部の実施形態において、コンピュータプログラムはウェブアプリケーションを含む。本明細書において提供する開示を考慮すると、当業者は、ウェブアプリケーションが種々の実施形態において1つ以上のソフトウェアフレームワーク及び1つ以上のデータベースシステムを利用することを認識するであろう。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、ソフトウェアフレームワーク、例えばMicrosoft(登録商標).NET又はRuby on Rails(RoR)などの上で作成される。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、非限定的な例として、リレーショナル、非リレーショナル、オブジェクト指向、連想、及びXMLデータベースシステムを含む1つ以上のデータベースシステムを利用する。さらなる実施形態において、適切なリレーショナルデータベースシステムは、非限定的な例として、Microsoft(登録商標)SQLサーバ、mySQL(商標)、及びOracle(登録商標)を含む。また、当業者は、ウェブアプリケーションが種々の実施形態において1つ以上の言語の1つ以上のバージョンで書かれることを認識するであろう。ウェブアプリケーションは、1つ以上のマークアップ言語、プレゼンテーション定義言語、クライアントサイドスクリプト言語、サーバサイドコーディング言語、データベース問い合わせ言語、又はそれらの組み合わせで書かれ得る。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、マークアップ言語、例えばハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、拡張可能ハイパーテキストマークアップ言語(XHTML)、又は拡張可能マークアップ言語(XML)などである程度書かれている。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、プレゼンテーション定義言語、例えばカスケーディングスタイルシート(CSS)などである程度書かれている。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、クライアントサイドスクリプト言語、例えば非同期Javascript及びXML(AJAX)、Flash(登録商標)ActionScript、JavaScript、又はSilverlight(登録商標)などである程度書かれている。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、サーバサイドコーディング言語、例えばActive Server Pages(ASP)、ColdFusion(登録商標)、Perl、Java(商標)、JavaServer Pages(JSP)、Hypertext Preprocessor(PHP)、Python(商標)、Ruby、Tcl、Smalltalk、WebDNA(登録商標)、又はGroovyなどである程度書かれている。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、データベース問い合わせ言語、例えば構造化問い合わせ言語(SQR)などである程度書かれている。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションは、企業向けサーバ製品、例えばIBM(登録商標)Lotus Domino(登録商標)などを組み込む。一部の実施形態において、ウェブアプリケーションはメディアプレーヤー要素を含む。種々のさらなる実施形態において、メディアプレーヤー要素は、非限定的な例として、Adobe(登録商標)Flash(登録商標)、HTML5、Apple(登録商標)QuickTime(登録商標)、Microsoft(登録商標)Silverlight(登録商標)、Java(商標)、及びUnity(登録商標)を含む多くの適切なマルチメディア技術の1つ以上を利用する。
【0228】
(モバイルアプリケーション)
一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、モバイルデジタル処理デバイスに提供されるモバイルアプリケーションを含む。一部の実施形態において、モバイルアプリケーションは、モバイルデジタル処理デバイスに、それを製造するときに提供される。他の実施形態において、モバイルアプリケーションは、本明細書において記載するコンピュータネットワークを介してモバイルデジタル処理デバイスに提供される。
【0229】
本明細書において提供する開示を考慮すると、モバイルアプリケーションは、当技術において既知のハードウェア、言語、及び開発環境を使用して、当業者に既知の技術によって作成される。当業者は、モバイルアプリケーションがいくつかの言語で書かれることを認識するであろう。適切なプログラミング言語は、非限定的な例として、C、C++、C#、Objective-C、Java(商標)、Javascript、Pascal、Object Pascal、Python(商標)、Ruby、VB.NET、WML、及びCSSあり若しくはなしのXHTML/HTML、又はそれらの組合せを含む。
【0230】
適切なモバイルアプリケーションの開発環境は、いくつかの供給源から入手可能である。市販の開発環境は、非限定的な例として、AirplaySDK、alcheMo、Appcelerator(登録商標)、Celsius、Bedrock、Flash Lite、.NET Compact Framework、Rhomobile、及びWorkLight Mobile Platformを含む。他の開発環境は、費用なしで利用可能であり、非限定的な例として、Lazarus、MobiFlex、MoSync、及びPhonegapを含む。また、モバイルデバイスの製造者は、非限定的な例として、iPhone及びiPad(iOS)SDK、Android(商標)SDK、BlackBerry(登録商標)SDK、BREW SDK、Palm(登録商標)OS SDK、SymbianSDK、webOS SDK、Windows(登録商標)MobileSDKを含む、ソフトウェア開発キットを配布している。
【0231】
当業者は、非限定的な例として、Apple(登録商標)App Store、Android(商標)Market、BlackBerry(登録商標)App World、Palmデバイス用のApp Store、webOS用のApp Catalog、モバイル用のWindows(登録商標)Marketplace、Nokia(登録商標)デバイス用のOvi Store、Samsung(登録商標)Apps、及びNintendo(登録商標)DSi Shopを含む、いくつかの商用フォーラムがモバイルアプリケーションの配布に利用可能であることを認識するであろう。
【0232】
(スタンドアローンアプリケーション)
一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、既存の処理に対するアドオンではなく、例えばプラグインではなく、独立したコンピュータ処理として実行されるプログラムであるスタンドアローンアプリケーションを含む。当業者は、スタンドアローンアプリケーションが多くの場合コンパイルされることを認識するであろう。コンパイラとは、プログラミング言語で書かれたソースコードを、アセンブリ言語又は機械コードなどのバイナリオブジェクトコードに変換するコンピュータプログラムである。コンパイルされた適切なプログラミング言語は、非限定的な例として、C、C++、Objective-C、COBOL、Delphi、Eiffel、Java(商標)、Lisp、Python(商標)、Visual Basic、及びVB.NET、又はこれらの組合せを含む。コンパイルは、多くの場合、少なくとも部分的に実行可能なプログラムを作成するように行われる。一部の実施形態において、コンピュータプログラムは、1つ以上のコンパイルされた実行可能なアプリケーションを含む。
【0233】
(ソフトウェアモジュール)
一部の実施形態において、本明細書に記載するプラットフォーム、媒体、方法、及びアプリケーションは、ソフトウェア、サーバ、及び/若しくはデータベースモジュール、又はそれらの使用を含む。本明細書において提供する開示を考慮すると、ソフトウェアモジュールは、当技術において既知の機械、ソフトウェア、及び言語を使用して当業者に既知の技術によって作成される。本明細書に開示するソフトウェアモジュールは、多数の方法で実施される。様々な実施形態において、ソフトウェアモジュールは、ファイル、コードの一部、プログラミングオブジェクト、プログラミング構造、又はこれらの組合せを含む。さらに種々の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、複数のファイル、コードの複数の部分、複数のプログラミングオブジェクト、複数のプログラミング構造、又はこれらの組合せを含む。様々な実施形態において、1つ以上のソフトウェアモジュールは、非限定的な例として、ウェブアプリケーション、モバイルアプリケーション、及びスタンドアローンアプリケーションを含む。一部の実施形態において、ソフトウェアモジュールは1つのコンピュータプログラム又はアプリケーション内にある。他の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、1つを超えるコンピュータプログラム又はアプリケーション内にある。一部の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、1つの機械において提供される。他の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、1つを超える機械において提供される。さらなる実施形態において、ソフトウェアモジュールは、クラウドコンピューティングプラットフォームにおいて提供される。一部の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、1つの場所の1つ以上の機械において提供される。他の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、2つを超える場所の1つ以上の機械において提供される。
【0234】
(データベース)
一部の実施形態において、本明細書に記載するプラットフォーム、システム、媒体、及び方法は、1つ以上のデータベース、又はその使用を含む。本明細書において提供する開示を考慮すると、当業者は、多くのデータベースがバーコード、ルート、パーセル、ユーザ、又はネットワーク情報の記憶及び検索に適切であることを認識するであろう。種々の実施形態において、適切なデータベースは、非限定的な例として、リレーショナルデータベース、非リレーショナルデータベース、オブジェクト指向データベース、オブジェクトデータベース、エンティティ関係モデルデータベース、連想データベース、及びXMLデータベースを含む。一部の実施形態において、データベースはインターネットベースである。さらなる実施形態において、データベースはウェブベースである。またさらなる実施形態において、データベースはクラウドコンピューティングベースである。他の実施形態において、データベースは、1つ以上のローカルコンピュータ記憶デバイスに基づく。
【0235】
開示する技術の好ましい実施形態が本明細書に示されて説明されているが、そうした実施形態が例示としてのみ提供されることは、当業者に明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を当業者が今や思いつくであろう。本明細書において記載する本発明の実施形態に対する種々の変形が、本発明を実践する上で使用され得ることを理解する必要がある。
【0236】
(ウェブブラウザプラグイン)
一部の実施形態において、コンピュータプログラムはウェブブラウザプラグインを含む。コンピューティングにおいて、プラグインは、より大きなソフトウェアアプリケーションに特定の機能を加える1つ以上のソフトウェア構成要素である。ソフトウェアアプリケーションのメーカーは、第三者の開発者がアプリケーションを拡張する能力を生み出せるように、新たな特徴を容易に追加するのをサポートするように、かつアプリケーションのサイズを縮小するように、プラグインをサポートする。プラグインは、サポートされる時、ソフトウェアアプリケーションの機能のカスタマイズを可能にする。例えば、プラグインは、一般に、ビデオを再生し、相互作用を生み出し、ウイルスをスキャンし、特定のファイルの種類を表示するために、ウェブブラウザで使用される。当業者は、Adobe(登録商標)Flash(登録商標)Player、Microsoft(登録商標)Silverlight(登録商標)、及びApple(登録商標)QuickTime(登録商標)を含むいくつかのウェブブラウザプラグインに熟知しているであろう。一部の実施形態において、ツールバーは、1つ以上のウェブブラウザ拡張機能、アドイン、又はアドオンを含む。一部の実施形態において、ツールバーは、1つ以上のエクスプローラバー、ツールバンド、又はデスクバンドを含む。
【0237】
本明細書において提供する開示を考慮すると、当業者は、非限定的な例として、C++、Delphi、Java(商標)、PHP、Python(商標)、及びVB.NET、又はそれらの組合せを含む種々のプログラミング言語でプラグインの開発が可能であるいくつかのプラグインフレームワークが利用可能であることを認識するであろう。
【0238】
ウェブブラウザ(インターネットブラウザとも呼ばれる)は、ワールドワイドウェブにおいて情報資源を検索し、提示し、かつ渡り歩くために、ネットワーク接続されたデジタル処理デバイスによって使用するために設計されたソフトウェアアプリケーションである。適切なウェブブラウザは、非限定的な例として、Microsoft(登録商標)Internet Explorer(登録商標)、Mozilla(登録商標)Firefox(登録商標)、Google(登録商標)Chrome、Apple(登録商標)Safari(登録商標)、Opera Software(登録商標)Opera(登録商標)、及びKDE Konquerorを含む。一部の実施形態において、ウェブブラウザはモバイルウェブブラウザである。モバイルウェブブラウザ(マイクロブラウザ、ミニブラウザ、及び無線ブラウザとも呼ばれる)は、非限定的な例として、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、ネットブックコンピュータ、サブノートコンピュータ、スマートフォン、音楽プレーヤー、携帯情報端末(PDA)、ハンドヘルドビデオゲームシステムを含むモバイルデジタル処理デバイスにおいて使用するために設計されている。適切なモバイルウェブブラウザには、非限定的な例として、Google(登録商標)Android(登録商標)ブラウザ、RIM BlackBerry(登録商標)ブラウザ、Apple(登録商標)Safari(登録商標)、Palm(登録商標)Blazer、Palm(登録商標)WebOS(登録商標)ブラウザ、モバイル用のMozilla(登録商標)Firefox(登録商標)、Microsoft(登録商標)Internet Explorer(登録商標)Mobile、Amazon(登録商標)Kindle(登録商標)Basic Web、Nokia(登録商標)ブラウザ、Opera Software(登録商標)Opera(登録商標)Mobile、及びSony(登録商標)PSP(商標)ブラウザを含む。
【0239】
(センサ組込み/信号処理)
開示するシステムは、対応する生理学的データ又は環境データを計算するために、2つ以上のセンサからのデータを使用し得る(例えば、組み合わせて使用される2つ以上のセンサからのデータ)。
【0240】
一実施形態において、開示するシステムはまた、他のデバイス、例えば携帯電話などへの近接を検出するための近距離無線通信(NFC)受信器/送信器を含む。デバイスが第2のデバイスに近接又は検出可能に近接すると、第2のデバイスの新しい機能の開始(例えば、携帯電話の「アプリ」の起動、及びデバイスから第2のデバイスへの生理学的データの無線同期)を作動させ得る。
【0241】
別の実施形態において、開示するシステムは、GPS又は位置関連データ及び心拍数関連データをそれぞれ生成するために位置センサ(例えば、GPS回路)及び心拍数センサ(例えば、フォトプレチスモグラフィー回路)を含む。その後、開示するシステムは、例えば、生理学的データ(例えば、心拍数、ストレス、活動レベル、睡眠量、及び/又はカロリー摂取)に従って地理的領域を決定、相関、及び/又は「マッピング」するために、これら2つのセンサ/回路からのデータを融合、処理、及び/又は組み合わせ得る。このようにして、開示するシステムは、心拍数、ストレス、活動、レベル、睡眠量、及び/又はカロリー摂取量を含むがこれらに限定されない測定可能なユーザメトリックを増加又は減少させる地理的領域を特定し得る。
【0242】
それに加えて、又はその代わりに、開示するシステムは、例えば、(GPSによって測定される、及び/又はGPS関連データから決定されるような)ユーザの加速度、速度、位置、及び/又は移動した距離によって決定されるような活動レベルに従ってユーザの心拍数を決定又は相関させるように、GPS関連データ及びフォトプレチスモグラフィー関連データ(とりわけ、それぞれがデータストリームと見なされ得る)を使用し得る。ここで、一実施形態において、速度の関数としての心拍数がユーザに対して「プロット」され得る、又はそのデータは、睡眠、安静、セデンタリー、中程度の活発、活発、及び極めて活発を含むがこれらに限定されない様々なレベルに分類され得る。
【0243】
実際に、生体測定モニタリングデバイスはまた、GPS関連データを、一式の所定の状態に対して活動を関連させた所定の地理的位置のデータベースと相関させ得る。例えば、活動決定及び対応する生理学的分類(例えば、心拍数分類)は、運動器具、ヘルスクラブ、及び/又はジムの位置に対応するユーザのGPS座標と生理学的データとの相関を含み得る。これらの状況において、例えばジムでのワークアウト中のユーザの心拍数を自動的に測定及び表示し得る。とりわけ、多くの生理学的分類は、位置、加速度、高度、距離、及び/又は速度を含むGPS関連データに基づき得る。地理的データ及び生理学的データを含むこうしたデータベースは、生体測定モニタリングデバイス及び/又は外部コンピューティングデバイスにおいて集約、構築、保存され得る。実際に、一実施形態において、ユーザは、その活動をより良く分類するために、自分の位置データベースを作成し得、又は位置データベースに追加若しくは変更し得る。
【0244】
他の実施形態において、ユーザは複数のデバイスを同時に装着し得る。デバイスは、例えば、脈伝播時間などの他の方法では計算することが困難又は不正確であり得る生体測定又は生理学的な質又は量を計算するために、有線又は無線回路を使用して互いに又は遠隔デバイスと通信し得る。また、複数のセンサを使用することで、単一のセンサの正確性及び/又は精密性よりも生体測定の正確性及び/又は精密性を向上させ得る。例えば、腰、手首、及び足首にデバイスを有することによって、それらの位置の1つのみにおける単一のデバイスよりも、ユーザが歩くことの検出を向上させ得る。信号処理は、単一のデバイスのものよりも測定を向上させるために、分散又は集約した方法で複数のデバイスで行われ得る。また、この信号処理は遠隔で行われ、処理後にデバイスに通信して返され得る。
【0245】
(処理タスク付与)
開示するシステムは、1つ以上のプロセッサを含み得る。例えば、独立したアプリケーションプロセッサは、1つ以上のセンサプロセッサ(生理学的、環境、及び/又は活動センサからのデータを処理するプロセッサ)によって取得及び処理されたセンサデータを利用するアプリケーションを保存及び実行するために使用され得る。また、複数のセンサが存在する場合、複数のセンサプロセッサも存在し得る。アプリケーションプロセッサは、それに直接的に接続されたセンサも有し得る。センサプロセッサ及びアプリケーションプロセッサは、別個の個別チップとして存在し得、又は同じパッケージチップ(マルチコア)内に存在し得る。デバイスは、単一のアプリケーションプロセッサ、又はアプリケーションプロセッサ及びセンサプロセッサ、又は複数のアプリケーションプロセッサ及びセンサプロセッサを有し得る。
【0246】
一実施形態において、センサパッケージは、すべてアナログ構成要素からなるドーターボードに配置され得る。このボードは、トランスインピーダンスアンプ、フィルタ回路、レベルシフタ、サンプルホールド回路、及びマイクロコントローラユニットなどだがこれらに限定されない、典型的に主PCBに見受けられる電子装置の一部を有し得る。こうした構成により、ドーターボードは、任意の必要な電源及び接地接続に加えて、アナログではなくデジタル接続の使用によって主PCBに接続されることができ得る。デジタル接続は、アナログのドーターから主PCBへの接続よりも、雑音の低減及び必要なケーブルの数の削減を含むがこれらに限定されない、種々の利点を有し得る。ドーターボードは、フレックスケーブル又は一式のワイヤの使用によってメインボードに接続され得る。
【0247】
複数のアプリケーションは、アプリケーションプロセッサに保存することができる。アプリケーションは、アプリケーション用の実行可能なコード及びデータからなるが、これらに限定されない。データは、アプリケーションの実行に必要な図形若しくは他の情報からなり得、又はアプリケーションによって生成された情報出力であり得る。アプリケーション用の実行可能なコード及びデータの両方がアプリケーションプロセッサに存在し得る、又はアプリケーション用のデータが外部メモリに保存及びそこから取得され得る。外部メモリは、NANDフラッシュ、NORフラッシュ、他のプロセッサのフラッシュ、他のソリッドステート記憶部、機械又は光学ディスク、RAMを含み得るが、これらに限定されない。
【0248】
アプリケーション用の実行可能なコードは、外部メモリに保存され得る。アプリケーションが実行されるように要求されると、アプリケーションプロセッサは、外部記憶部から実行可能なコード及び/又はデータを取得し、それを実行する。実行可能なコードは、アプリケーションプロセッサのメモリ又は記憶部に一時的又は永続的に保存され得る。これにより、次の実行要求では、検索するステップがなくなるので、アプリケーションをより速く実行することができる。アプリケーションが実行されるように要求されると、アプリケーションプロセッサは、アプリケーションの実行可能なコードのすべて、又は実行可能なコードの一部を取得し得る。後者の場合、その時に必要とされる実行可能なコードの一部のみを取得する。これにより、アプリケーションプロセッサのメモリ又は記憶部よりも大きいアプリケーションを実行することができる。
【0249】
また、アプリケーションプロセッサは、アプリケーションが他のアプリケーション、センサシステム、アプリケーションプロセッサ、又はシステムの他の構成要素を上書き、破損、割り込み、ブロック、あるいは妨害するのを防ぐためのメモリ保護機能を有し得る。
【0250】
アプリケーションは、USB(登録商標)、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)ローエナジー、NFC、RFID、Zigbeeを含むがこれらに限定されない、種々の有線、無線、光学、静電容量機構を介してアプリケーションプロセッサ及び任意の外部記憶部にロードされ得る。
【0251】
アプリケーションは、電子署名で暗号化署名を付けられ得る。アプリケーションプロセッサは、正しい署名を有するアプリケーションにその実行を制限し得る。
【0252】
(デバイスを装着する方法)
開示するシステムは、デバイスをユーザに連結したときにユーザの活動に測定できるほど又は明らかに影響を与えないところにおいて、通常の動作時のユーザの身体にデバイスを固定しやすくするサイズ及び形状を有する筐体を含み得る。デバイスに組み込まれた特定のセンサパッケージ、及びユーザが取得したいデータに応じて、デバイスを様々な方法で着用し得る。
【0253】
ユーザは、可撓性であって、それによりユーザに容易に適合するバンドを使用して、開示するシステムの1つ以上をその手首又は足首(又は腕又は脚)に装着し得る。バンドは、調整可能な周囲の長さを有し得、したがってユーザに適合させることができる。バンドは、熱に曝されると収縮する材料から構成され得、したがってユーザがカスタムフィットを作り出すことができる。バンドは、生体測定モニタリングデバイスの「電子装置」部分から取り外され得、必要に応じて交換可能であり得る。
【0254】
実施形態において、生体測定モニタリングデバイスは、2つの主な構成要素、つまり本体(「電子装置」を含む)及びバンド(デバイスをユーザに取り付けやすくする)からなる。本体は、筐体(例えば、プラスチック又はプラスチック状材料から作製される)、及び本体から突出する延出タブ(例えば、金属又は金属状材料から作製される)を含み得る。バンド(例えば、熱可塑性ウレタンから作製される)は、機械的に又は粘着して身体に取り付け可能である。バンドは、ユーザの手首周囲の数分の1に延在し得る。ウレタンバンドの遠位端部は、ベルクロ、一方側でDリングの周りに輪を作りそれからそれ自体に戻って取り付けられるフック及び/又はループの弾性布帛バンドで接続され得る。この実施形態において、クロージャー機構によって、ユーザがバンドを無限に長さ調整できるようになる(インデックス孔及び機械式留め金クロージャーとは異なる)。ベルクロ又は布帛は、(例えば、デバイスの耐用寿命又は寿命の前に、摩耗している、あるいは装着が望ましくない場合)それを交換できるような方法でバンドに取り付けられ得る。一実施形態において、ベルクロ又は布帛は、ネジ又はリベット、及び/又は接着剤、粘着剤及び/又は留め金でバンドに取り付けられ得る。
【0255】
また、開示するシステムは、ネックレス、胸部バンド、ブラジャー、パッチ、眼鏡、イヤリング、又は足指バンドに組み込んで装着され得る。デバイスは、生体測定モニタリングデバイスのセンサパッケージ/部分が取り外し可能な方法で構築され得、上述のものを含むがそれらに限定されない任意の数の方法で装着され得る。
【0256】
他の実施形態において、開示するシステムは、衣服の物品に留めて装着するか、衣服(例えば、ポケット)又は服飾品(例えば、ハンドバッグ、バックパック、財布)に入れることができる。生体測定モニタリングデバイスはユーザの皮膚の近傍にない場合があるため、心拍数測定を含む実施形態において、測定値は、ユーザが手動でデバイスを特定のモードにする(例えば、ボタンを押下する、場合によってはボタン/センサに心拍数センサを埋め込んだ、静電容量式タッチセンサを覆う等)「オンデマンド」コンテキストで、又はユーザがデバイスを皮膚に配置する(例えば、指を光学心拍数センサに当てる)と自動的に、個別に得られ得る。
【0257】
(デバイスとのユーザインターフェース)
開示するシステムは、ローカル又は遠隔のいずれかでデバイスと相互作用する1つ以上の方法を含み得る。
【0258】
一実施形態において、開示するシステムは、デジタルディスプレイによってデータを視覚的に伝え得る。このディスプレイの物理的な実施形態は、LED、LCD、AMOLED、E-Ink、Sharpのディスプレイ技術、グラフィックディスプレイ、並びに他のディスプレイ技術、例えばTN、HTN、STN、FSTN、TFT、IPS、及びOLETなどの1つ以上を含むがそれらに限定されない任意の1つ又は複数のディスプレイ技術を使用し得る。このディスプレイは、デバイスにローカルで取得又は保存されたデータを示し得る、又は、他のデバイス若しくはインターネットサービスから遠隔で取得したデータを表示し得る。デバイスは、スクリーンのバックライトを制御又は調整するためにセンサ(例えば、周囲光センサ、「ALS」)を使用し得る。例えば、暗い照明状況において、電池寿命を節約するためにディスプレイを薄暗くし得る一方、明るい照明状況において、ユーザがより読みやすいように、ディスプレイはその輝度を上げ得る。
【0259】
他の実施形態において、デバイスは、デバイスの状態を示すために単色又は多色のLEDを使用し得る。デバイスが示す状態は、生体測定の状態、例えば心拍数など、又はアプリケーションの状態、例えば着信メッセージが届いた、目標を達成したことなどを含み得るが、これらに限定されない。これらの状態は、LEDの色、オン、オフ、中間の強度、パルス(及び/若しくはその速度)、並びに/又は完全にオフから最高輝度までの光強度のパターンによって示され得る。一実施形態において、LEDは、ユーザの心拍数の位相及び周波数によってその強度及び/又は色を変化させ得る。
【0260】
実施形態において、E-Inkディスプレイの使用によって、非反射型ディスプレイの電池消耗を伴わずにディスプレイをオンに保ち得る。この「常時オン」機能により、例えば、ユーザが時間を見るためにデバイスを単に一瞥し得る時計の用途の場合に、快適なユーザ体験を提供し得る。E-Inkディスプレイは、デバイスの電池寿命を構成することなく常にコンテンツを表示し、ユーザは従来の時計において見るように時間を見ることができる。
【0261】
デバイスは、放出される光の振幅をユーザの心拍数の周波数で変調することによってユーザの心拍数を表示するために光、例えばLEDなどを使用し得る。デバイスは、LEDの色(例えば、緑色、赤色)又は心拍数の変化に従って点灯するLEDのシーケンス(例えば、プログレスバー)によって心拍数ゾーン(例えば、好気性、嫌気性)を示し得る。デバイスは、他のデバイス若しくは構造、例えば眼鏡若しくはゴーグルに組み込まれる又は取り込まれ得、又はこの情報をユーザに表示するために眼鏡若しくはゴーグルと通信し得る。また、開示するシステムは、デバイスの物理的な運動によって、ユーザに情報を伝え得る。こうした物理的にデバイスを動かすための方法の一実施形態は、振動を誘導するモータの使用である。デバイスは、この方法を単独で使用し得、又は複数の運動誘導技術と組み合わせて使用し得る。また、デバイスは音声によってユーザに情報を伝え得る。スピーカは、音声トーン、音声、歌、又は他の音の使用によって情報を伝え得る。
【0262】
開示するシステムは、二次デバイスにデータをリアルタイムで表示するために、無線及び/又は有線の通信回路を備え得る。例えば、開示するシステムは、心拍数、心拍数変動、及び/又はストレスのリアルタイムのフィードバックをユーザに与えるために、ブルートゥース(登録商標)ローエナジーを介して携帯電話と通信することができ得る。開示するシステムは、ストレスを軽減する特定の方法で呼吸するように、ユーザに指導し得又はユーザに「ポイント」を付与し得る。ストレスは、心拍数、心拍数変動、皮膚温度、運動活動データの変化、及び/又は皮膚電気反応によって定量又は評価され得る。
【0263】
開示するシステムは、1つ以上のローカル又は遠隔の入力方法によって、ユーザから入力を受信し得る。こうしたローカルのユーザ入力の一実施形態は、ユーザの運動をデバイスへの命令に変換するようにセンサ又は一式のセンサを使用し得る。こうした運動は、タップする、手首を回す、1つ以上の筋肉を曲げる、及び揺らすことを含み得るが、これらに限定されない。他のユーザ入力方法は、静電容量式タッチボタン、静電容量式スクリーン、及び機械式ボタンの種類に限定されないが、所定の種類のボタンの使用によってなされ得る。一実施形態において、ユーザインターフェースボタンは金属から作製され得る。また、スクリーンが静電容量式タッチ検出を使用する場合、物理的なボタンを押すなどの介入事象なしで、任意の身振り又は入力を常にサンプリングしており、容易に応答し得る。また、デバイスは音声命令の使用によって入力を取り得る。これらの入力方法のすべては、ローカルでデバイスに組み込まれ得る、又は有線若しくは無線のいずれかの接続によってデバイスと通信可能な遠隔デバイスに組み込まれ得る。さらに、ユーザが遠隔デバイスを介してデバイスを操作でき得る。一実施形態において、この遠隔デバイスはインターネット接続を有し得る。
【0264】
一実施形態において、開示するシステムは、ユーザを睡眠から静かに覚醒させるための、手首に装着された振動アラームとして機能し得る。生体測定モニタリングデバイスは、心拍数、心拍数変動、皮膚電気反応、運動感知(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計)、及び皮膚温度の1つ又は組合せによって、ユーザの睡眠の質、覚醒期間、睡眠潜時、睡眠効率、睡眠段階(例えば、熟睡対レム)、及び/又は他の睡眠関連メトリックを追跡し得る。ユーザは所望のアラーム時間を特定し得、本発明はユーザを覚醒させる最適な時間を決定するために1つ以上の睡眠メトリックを使用し得る。一実施形態において、振動アラームが有効であるとき、ユーザは、デバイスを叩く又はタップすることによって(これは、例えば、デバイスの運動センサ、圧力/力センサ、及び/又は静電容量式タッチセンサを介して検出される)、休止させる又はオフにするようにし得る。一実施形態において、デバイスは、アラーム設定前の特定のユーザの睡眠段階又は時間に小さな振動を開始することによって、睡眠サイクルの最適な時点でユーザを起こすように試み得る。ユーザが覚醒に向かって又はアラーム設定に向かって進むにつれて、それは振動の強度又は認識性を漸進的に高め得る。
【0265】
他の態様において、開示するシステムは、オンボードの光学センサ、例えば光学心拍数モニターの構成要素などを使用して構成され又は通信し得る。
【0266】
(無線接続及びデータ送信)
開示するシステムは、インターネット及び/又は他のデバイスから情報を送信及び受信するために無線通信手段を含み得る。無線通信は、ブルートゥース(登録商標)、ANT、WLAN、電力線ネットワーク、及び携帯電話ネットワークなどの1つ以上の手段からなり得る。これらは例として提供されるものであり、現存する、又はまだ発明されていない他の無線通信方法を除外するものではない。
【0267】
無線接続は双方向である。デバイスは、そのデータを他の周辺デバイス及び/又はインターネットに送信、通信、及び/又はプッシュし得る。また、デバイスは、そのデータを他の周辺デバイス及び/又はインターネットから受信、要求、及び/又はプルし得る。
【0268】
開示するシステムは、他のデバイスのための通信を互いに又はインターネットに提供するための中継器として機能し得る。例えば、デバイスはWLANを介してインターネットに接続し得るが、ANT無線も備え得る。ANTデバイスは、デバイスのWLANを介してインターネットにそのデータを送信するために、デバイスと通信し得る(逆もまた同様)。他の例として、デバイスは、ブルートゥース(登録商標)を備え得る。ブルートゥース(登録商標)対応のスマートフォンがデバイスの影響範囲内にある場合、デバイスはスマートフォンの携帯電話ネットワークを介してインターネットにデータを送信し得、又はインターネットからデータを受信し得る。また、他のデバイスからのデータをデバイスに送信して保存し得(及び逆もまた同様)、又は後に送信し得る。
【0269】
また、開示するシステムは、生体測定モニタリングデバイスに表示するためのウェブコンテンツをストリーミング又は送信することを含み得る。
【0270】
コンテンツは、様々なコンテキストに従って、開示するシステムに配信され得る。例えば、ニュース及び天気予報を、朝に、ユーザの前夜の睡眠データとともに表示し得る。夕方には、1日の活動の日次のまとめを表示し得る。
【0271】
また、開示するシステムは、他のデバイスの機能を開始するために使用され得るNFC、RFID、又は他の近距離無線通信回路を含み得る。例えば、開示するシステムは、ユーザがそれを携帯電話に近接させるとき、携帯電話においてアプリが自動的に起動するようにNFCアンテナを備え得る。
【0272】
(充電及びデータ送信)
開示するシステムは、内部充電式電池を充電する及び/又はノートパソコン又は携帯電話などのホストデバイスにデータを送信するために、有線接続を使用し得る一実施形態において、デバイスは、ユーザがデバイスをドック又はケーブルにアライメントするのを促すために、磁石を使用し得る。デバイスを自己アライメントさせ、デバイスをドック又はケーブルに保持する力を提供するように、ドック又はケーブルにおける磁石の磁界とデバイス自体の磁石とを目的にかなうように向けることができる。また、磁石は充電又はデータ送信のための導電性コンタクトとして使用され得る。他の実施形態において、永久磁石がドック又はケーブル側にのみ使用され、デバイス自体には使用されない。これにより、デバイスが磁力計を使用している生体測定モニタリングデバイスのパフォーマンスを向上させ得る。デバイスの磁石があると、近くの永久磁石の強い磁界によって、磁力計が正確に地球の磁場を測定することの難しさが増し得る。
【0273】
他の実施形態において、デバイスは、デバイス本体に1つ以上の電磁石を含み得る。また、充電及びデータ送信のための充電器又はドックは、電磁石及び/又は永久磁石を含み得る。デバイスは、充電器又はドックに近接したときのみその電磁石をオンにし得る。これは、磁力計を使用して充電器又はドックの永久磁石の磁界特性を探すことによって、ドックへの近接を検出し得る。あるいは、これは、充電器又はドックからの無線信号の受信信号強度表示又は(RSSI)を測定することによって、充電器への接近を検出し得る。電磁石を逆にして、デバイスが充電、同期を必要としないとき、又は同期又は充電が完了したときのいずれかに、デバイスを充電ケーブル又はドックから引き離す力を発生させることができる。
【0274】
(構成可能なアプリ機能)
一部の実施形態において、開示するシステムは、時計状のフォームファクター及び/又はブレスレット、アームレット、若しくはアンクレットのフォームファクターを含み得、特定の機能を起動する、及び/又は特定の情報を表示する「アプリ」でプログラムされ得る。アプリは、ボタンを押す、静電容量式タッチセンサを使用する、加速度計によって検出される身振りを行う、GPS若しくは運動センサによって検出される場所に移動する、デバイス本体を加圧することによってデバイス内部に圧力信号を発生させて高度計によって検出する、又はアプリ若しくは一式のアプリに関連させたNFCタグにデバイスを近接させることを含むがこれらに限定されない種々の手段によって起動又は終了され得る。また、アプリは、高い心拍数、濡れセンサを使用した水の検出(例えば水泳アプリの起動のため)、特定の時間帯(例えば夜の睡眠追跡アプリケーションの起動のため)、「飛行機」モードアプリの起動及び終了のための離陸又は着陸する飛行機の気圧及び運動特徴の変化を含むがこれらに限定されない、特定の環境又は生理学的状態によって起動又は終了するように自動的に作動され得る。また、アプリは、複数の条件を同時に満たすことによって起動又は終了され得る。例えば、加速度計がユーザのランニングを検出し、ユーザがボタンを押した場合、これは、歩数計アプリケーション、高度計データ収集アプリケーション、及び/又はディスプレイを起動し得る。加速度計が水泳を検出し、ユーザが同じボタンを押した他の場合において、これは、ラップカウントアプリケーションを起動し得る。
【0275】
一実施形態において、デバイスは、水泳アプリを開始することによって起動され得る水泳追跡モードを有し得る。このモードにおいて、デバイスの運動センサ及び/又は磁力計は、水泳ストロークを検出し、水泳ストロークの種類を分類し、水泳ラップ、並びにストローク効率、ラップタイム、速度、距離、及びカロリー燃焼などの他の関連メトリックを検出するために使用され得る。磁力計が示す方向の変化は、多様なラップターン方法を検出するために使用され得る。好ましい実施形態において、運動センサ及び/又は圧力センサからのデータは、ストロークを検出するために使用され得る。
【0276】
他の実施形態において、自転車アプリは、自転車に、自転車の支持具に、又は自転車ラック若しくは自転車保管設備を含むがこれらに限定されない自転車に関連する場所に位置するNFC又はRFIDタグの近接内にデバイスを移動することによって起動され得る。起動したアプリは、燃焼したカロリー、移動した距離、及び増した高度を含むがこれらに限定されないメトリックを決定するために通常使用されるのとは異なるアルゴリズムを使用し得る。また、アプリは、車輪速センサ、GPS、ケイデンスセンサ、又はパワーメータを含むがこれらに限定されない、無線自転車センサが検出されたときに起動され得る。その後、デバイスは、無線自転車センサ又は自転車センサからのデータを表示及び/又は記録し得る。
【0277】
さらなるアプリは、プログラム可能又はカスタマイズ可能な時計の文字盤、ストップウォッチ、音楽プレーヤーのコントローラ(例えば、MP3プレーヤーのリモートコントロール)、テキストメッセージ及び/又はEメールの表示又は通知、ナビゲーションコンパス、自転車コンピュータディスプレイ(別個の又は組み込んだGPSデバイス、車輪速センサ、又はパワーメータと通信するとき)、ウェイトリフティングトラッカ、腹筋反復トラッカ、懸垂反復トラッカ、レジスタンストレーニングフォーム/ワークアウトトラッカ、ゴルフスイングアナライザ、テニス(又は他のラケットスポーツ)スイング/サーブアナライザ、テニス試合スイング検出器、野球スイングアナライザ、投球アナライザ(例えば、フットボール、野球)、団体スポーツ活動強度トラッカ(例えば、フットボール、野球、バスケットボール、バレーボール、サッカー)、円盤投げアナライザ、食物の咬合の検出器、タイピングアナライザ、傾斜センサ、睡眠の品質トラッカ、目覚まし時計、ストレスメータ、ストレス/リラクゼーションバイオフィードバックゲーム(例えば、リラクゼーションエクササイズでユーザの呼吸を訓練するために聴覚的及び/又は視覚的合図を提供する携帯電話との組合せの可能性あり)、歯磨きトラッカ、食事速度トラッカ(例えば、食物を摂取するために用具を口に運ぶ速度及び持続時間を数える又は追跡する)、酔い又は自動車運転適性の表示(例えば、心拍数、心拍数変動、皮膚電気反応、歩容分析、及びバズル解答等によって)、アレルギートラッカ(例えば、皮膚電気反応、心拍数、皮膚温度、及び花粉感知等を使用し、場合によっては、例えばインターネットからの外部季節アレルゲン追跡と組み合わせる、場合によっては、特定の形態のアレルゲン(例えば、木の花粉)に対するユーザの応答を決定し、そうしたアレルゲンの存在をユーザに警告する(例えば、季節情報、花粉追跡データベース、又はデバイスにおける若しくはユーザが使用する局所の環境センサから))、発熱トラッカ(例えば、発熱、感冒、又は他の病気のリスク、発症、又は進行を測定し、場合によっては季節データ、疾患データベース、ユーザの位置、及び/又はユーザが提供するフィードバックと組み合わせて、ユーザに関する特定の疾患(例えば、インフルエンザ)の拡散を評価し、場合によってはそれに対応して仕事又は活動の抑制を指示又は提案する)、電子ゲーム、カフェイン作用トラッカ(例えば、コーヒー、茶、エネルギー飲料、及び/又は他のカフェイン添加飲料の摂取又は抑制に対する短期又は長期のいずれかの応答における生理学的応答、例えば、心拍数、心拍数変動、皮膚電気反応、皮膚温度、血圧、ストレス、睡眠、及び/又は活動などをモニターする)、薬物作用トラッカ(例えば、先に言及したカフェイントラッカに類似しているが、医療用薬剤であってもアルコール、タバコ等の生活習慣上の薬物であっても他の介入物に関する)、耐久スポーツ指導(例えば、マラソン、トライアスロンなどのユーザが特定した目標、又は例えば過去の運動活動(例えば、走った距離、ペース)、心拍数、心拍数変動、健康状態/疾患/ストレス/発熱状態からのデータを利用するカスタム目標に従って、ランニング/自転車/水泳のワークアウトの強度、持続時間、若しくはプロファイルを推奨若しくは指示する、又はワークアウトの抑制若しくは遅延を提案する)、体重及び/又は身体組成、血圧、血糖、食物摂取又はカロリーバランストラッカ(例えば、体重を維持又は達成するためにどのくらいのカロリーを消費し得るかをユーザに通知する)、歩数計、並びに爪噛み検知器を含むがこれらに限定されない。一部の場合において、アプリは本発明の処理パワー及びセンサのみに依存し得る。他の場合において、アプリは、心拍数ストラップ、GPS距離トラッカ、身体組成スケール、血圧モニター、血糖モニター、時計、スマートウォッチ、スマートフォン若しくはタブレットなどのモバイル通信デバイス、又はサーバを含むがこれらに限定されない外部デバイス又は一式の外部デバイスからの情報を融合し得又は単に表示し得る。
【0278】
一実施形態において、デバイスは、二次デバイスの音楽プレーヤーを制御し得る。制御され得る音楽プレーヤーの態様は、音量、曲及び/又はプレイリストの選択、次にスキップ又は戻る、曲の早送り又は巻き戻し、曲のテンポ、並びに音楽プレーヤーのイコライザーを含むがこれらに限定されない。音楽プレーヤーの制御は、ユーザ入力を介する、又は生理学的、環境的、若しくはコンテキストデータに基づいて自動である。例えば、ユーザは、デバイスにおけるユーザインターフェースを介して曲を選択することによってそのスマートフォンにおいて曲を選択及び再生することができ得る。他の例において、デバイスは、ユーザの活動レベル(活動レベルはデバイスのセンサデータから計算される)に基づいて、適切な曲を自動的に選択し得る。これは、特定の活動レベルを維持するようにユーザの動機付けを促すために使用され得る。例えば、ユーザがランニングをしに出掛け、その心拍数を特定の範囲に保ちたい場合、デバイスは、その心拍数が目標とする範囲より低い場合に明るい又はテンポの速い曲を再生し得る。
【0279】
(位置/コンテキスト感知及びアプリケーション)
開示するシステムは、ユーザの位置及び又はコンテキスト(例えば、バス内、自宅、車内)を決定又は推定することができるセンサを有し得る。専用の位置センサ、例えばGPS、GLONASS、又は他のGNSS(全地球航法衛星システム)センサなどを使用し得る。あるいは、あまり精度の高くないセンサを使用して、位置を推測、推定、又は推量し得る。ユーザの位置を知ることが困難である一部の実施形態において、ユーザ入力が、その位置及び又はコンテキストの決定を支援し得る。例えば、センサデータにおいて、ユーザが車又はバス内にいたかどうかの決定が難しくなる場合、生体測定モニタリングデバイス又は生体測定モニタリングデバイスと通信する携帯型通信デバイス又は生体測定モニタリングデバイスと通信するクラウドサーバは、「今日、バスに乗ったか、又は車に乗ったか」と尋ねる問い合わせをユーザに提示し得る。同様の問い合わせが車両のコンテキスト以外の位置に対して発生し得る。例えば、ユーザが活発なワークアウトを完了したことをセンサデータが示すが、ユーザがジムに行ったことを示す位置データが存在しない場合、ユーザに今日ジムに行ったかどうかを尋ね得る。
【実施例】
【0280】
本明細書において記載するデバイス、システム、及び方法の特定の材料又は構成要素は、既知の材料若しくは方法によって作製され得る、又は市販され得る。また、この技術における当業者にそれ自体知られているが、さらに詳細には言及されていない変形を使用することも可能である。文献及び本開示を与えられた当業者は、ハードウェア、ソフトウェア、学習、又はそれらの組合せのいずれかを使用して本願の処方を調製するのに十分な素養がある。
【0281】
(実施例の構成)
実施例は、生物学及び合成生物学のすべての態様に関与する。4つの例の事例/実施例は、ヒト、非ヒト、それらの合成及びモデルに関する。開示する技術は、健康能力を測定する新しい方法、健康について学習するためにこれらの方法を使用する新しい方法を提供し、そうした学習は、以下を含む健康を向上させる新しいモードを可能にする。
1.(事例1、ヒト):開示する技術は、ヒトにおいて、診断のために測定/定量し、診断の結果を処置に使用するものである。開示する技術は疾患を診断し、健康の欠如を検出するものである。「処置」は、本明細書において使用するように、予防から回復までを含むように広範に定められ、健康の最適化(最大化)及び/又は疾患の阻止を含むものである。ヒトへの使用は、「処置」のためにヒトに由来するすべての組織、細胞、及び器官等を含むこととなる。
2.(事例2、非ヒト):非ヒトへの適用の場合、これは非ヒトである生物学の全体を含む。他の動物、植物、単細胞生物体。非ヒトにとって、観察される系は、単に診断及び/又は処置されるだけでなく、むしろ「測定」及び「調節」され得る。この脈絡において、測定はエネルギー収支の任意の表現を定量することができる。
3.(事例3、産業/合成生物学):産業生物学又は合成生物学のための遺伝子工学の場合、観察される系は設計及び操作される。エネルギー収支又はその収支の表現の知識により、観察される系の「設計」を可能にし、そうした設計によって、自然(野生型)の種に存在しなかった生化学的な変換(仕事)をもたらす。そうした設計から得られる1つの利益は、開示する技術によって、観察される系の「操作」が可能になることである。操作は、設計意図を生じさせるための任意の方法を指す。
4.(事例4、ヒト、非ヒト、合成/産業のモデル):モデルの場合、ヒト、非ヒト、又は合成/産業システムから導かれるエネルギー収支の知識は、実験室又はその他の疑似的設定又はコンピュータ(in silico)において、システム又はその一部、構成要素、モジュールのインスタンスを設計及び構築するために使用され、このインスタンスにより、実世界の対応物の処置(阻止)、最適化、又は操作の方法を学習及び検証する目的で介入シーケンスを試験することができる。
5.(事例5、その他):任意の系のエネルギー収支の知識は、エネルギー特徴情報又は任意のエネルギー特徴に基づく表現を使用することによって、暗号化を向上させるために使用され得る。これは、特に炭素クレジット取引の状況で、生態学を向上させるために使用され得る。これは、特にリアルタイムのリスク配分及び料金設定の実施に関して保険産業の状況で使用され得る。これは、サイバネティックの分野、特にヒューマン/マシンインターフェースの状況で使用され得る。これは、特にエネルギー特徴の表現に関して芸術の分野において使用され得る。これは、特に、エネルギー収支のルールに基づいたバイオミメティクスを使用し得るので、ゲーム産業で使用され得る。
【0282】
(実施例1)
(ヒトの健康の定量及び最適化、並びに疾患の早期診断、検出、及び処置及び阻止)
(デバイスの特徴)
開示する技術は、一実施形態において、健康の指標を定量し、疾患の発症前の検出及び阻止を可能にする症状前の健康の変化のパターンを検出するように構成された、低遅延で自動化されたウェアラブル測定装置及びプラットフォームを提供する。この実施形態は、好ましくは、使用が簡単で、自動化され、安全、精密、及び正確である。電池の長寿命により、連続的で中断のない測定を可能にすることとなる。電池は、世界規模でリアルタイムに個体及び個体群に基づく分析を提供するために、100日を超える、200日を超える、300日を超える、好ましくは約360日の常時オンで非充電式の要件を備えるように構成される。これを達成するため、予め設定されたしきい値又はベースラインの変化に基づいてサンプリングレート及び周波数を自動的に調整するファームウェアのアルゴリズムによって制御される低電力要件のセンサによって検出できるパラメータが選択される。
【0283】
好ましい実施形態において、デバイスは、20秒間隔で熱流束を測定し、その後のデバイスにおいて、熱流束の決定の精度及び正確性を向上させるためにさらなるセンサが搭載され、その後のバージョンにおいて仕事を定量するためにセンサが追加されることとなる。
【0284】
好ましい実施形態において、デバイス#1は、細胞の熱及び仕事の変化を感知し、付随するソフトウェアプラットフォームは、個体のため及び十分なスケールでこのデータを分析することとなる。細胞がエネルギーを使用する方法は無限に近い(数百万)にもかかわらず、細胞がエネルギーを消費する方法は単に有限の数である。特に、細胞のエネルギー使用量のすべての変化は、熱(ΔQ)及び仕事(ΔW)の変化である2つのパラメータにおいて/によって取得される。
【0285】
一部の実施形態において、プラットフォームは、細胞の熱及び仕事の変化を感知するハードウェアを含み、このデータを、熱及び種々の種類の仕事の間でエネルギーがどのように配分されているか、つまり「エネルギー収支」をリアルタイムで保存、分析、及び表示するソフトウェアにストリーミングする。エネルギー特徴の配分、周波数、振幅、又は変化率などの変化は、標準的なバイタルサインに先行し、情報が豊富であり、それらの学習の価値が高まる。
【0286】
開示する技術において使用される手法は、クリニック及び実験室においてヒトの熱及び仕事についてなされる至適基準の測定を考慮する。臨床において、そうした測定は直接熱量測定又は間接熱量測定を使用して行われる。これらの方法の両方が極めて正確かつ精密であるが、携帯性によって制限される。同様に、実験室において類似する測定が行われるが、それらも高度な集約的機器を必要とする。こうした測定上の制限を克服するため、細胞のエネルギーをパラメータ化する一群の小型化センサによって、どのような熱及び仕事の測定を行うことができ、また、疾患の発症前検出及び阻止を可能にするとともに十分なスケールで学習する学習エンジンに容易にかつ継続的に長期間(>180日)ストリーミングすることができるか、と問題を見直した。
【0287】
センサの選択は、ヒトのエネルギー消費の既知の値を、細胞レベルへのその配分に対して考慮する。細胞エネルギーの大部分が、熱の産生並びにイオン及び水の能動輸送に消費されるので、一部の実施形態は、デバイス#1の基礎としてこれらの特性の感知及びパラメータ化に焦点を置いている。一部の実施形態において、デバイス#1のセンサはまた、相対湿度、気圧、及び光のセンサを含む。
【0288】
一部の実施形態において、センサは、エネルギー収支の以下の推定に基づいて選択される。(1)生理学的スケールでは、全エネルギー消費は、安静時エネルギー、食事エネルギー、及び身体エネルギーの合計であり、全エネルギー消費(EE)=安静時EE+身体活動時EE+食事EEである。これが生理学的エネルギー収支である。(2)安静時エネルギー消費(REE)は、全エネルギー消費のおよそ80%である。REEは約80%EE。(3)ヒトは、エネルギーの約60%を熱として喪失し、40%のみを仕事としてとらえることから、非効率な機械である。EEは約60%ΔQ+40%ΔW。(4)細胞内で行われる仕事は、大部分が水及びイオンの移動、タンパク質及び生化学物質(中間代謝)の合成の仕事である。したがって、ΔWは、イオン移動25%、構造25%、生化学50%と推定される。(5)細胞内で産生される熱は、器官によって産生される熱と同じであり、皮膚を通して身体から出るとして検出される熱と同じである。したがって、ΔQは同じである。(6)理想的には、デバイスは、すべてのなされた仕事を定量し得るが、V1.0のデバイスは、大部分が市販であったセンサに焦点を置いている。(7)水に関連する熱流及び仕事を定量可能な市販のセンサが存在するので、デバイス#1の正確性は、全ΔE又はエネルギー消費の約85%であると推定される。この正確性は、健康を定量及び最適化し、疾患を発症前に検出及び阻止するために、エネルギー収支を定量し、水*に関与してなされた仕事をとらえるのに十分である。
【0289】
この実施例のデバイスの特質は以下を含む。
1.(電池寿命):デバイスの電池寿命は少なくとも180日であり、電池は使い捨てで、標準的な、50mAhの全容量の3ボルト(ピーク充電)リチウムコインセル電池によって内部で電力が供給される。これにより、長期間にわたって継続的な測定が可能になる。
2.(有用性):デバイスは、堅牢、安価、かつ使用が簡単であり、これにより、病院、支援的医療、及び外来医療の場における広い展開が可能になる。
3.(ソフトウェア):デバイスは、容易に、データ記録及び分析の自動化を可能にするIoT(クラウド/機械学習)とのインターフェースとなる。
4.(簡単):デバイスは、動作させるために特殊な技能を必要としない。これにより、分散型の健康測定システムの広い展開を可能にする。
5.(安価):市販の費用として、<100.00ドルを想定している。これにより、幅広い展開に対する経済的なハードルを低くする。
6.(自動化):デバイスは健康を継続的に測定し、これにより、疾患の症状前の変化を早期に検出することが可能になり、個体群に基づく健康の脅威の際に検出及び学習するためのビッグデータセットを生成することが可能となる。
7.(堅牢な設計基準):デバイスは、過酷な環境及び/又は過酷な条件において高信頼性で動作するように設計される。これにより、多様な一般市民、ファーストレスポンダー、及び戦争従事者における展開が可能になる。
8.(セキュア):デバイスとスマートフォンとの間のすべての通信は、暗号化されたブルートゥース(登録商標)ローエナジーリンク、特に「LESC」によってなされる。ユーザについてのいかなる本人情報も手首センサに保存される、又はブルートゥース(登録商標)によって暗号化されずに送信されるといったことはない。アプリとクラウド記憶サーバとの間の接続はセキュアである。各段階において、データは静止時(デバイス又はクラウドにおいて)及び送信時に暗号化される。保護健康情報は、デバイスの装着者の同意を得たときにのみ、収集されてセキュアなクラウドに移動されることとなる。分析の進展のためにクラウドのデータにアクセスすると、形式的に匿名化されたデータのみを示すこととなる。
9.(安全):センサモジュールは、非電気伝導性表面材料のみを露出させるように、単離ポリマー(デルリン)封入部内に含まれる、外部皮膚表面に適用する電池駆動式センサ群である。内部電気回路と肌との間に電気的接触は存在しない。
【0290】
(デバイスハードウェア)
デバイスは、好ましい実施形態において、ブルートゥース(登録商標)ローエナジー(BLE)を介してスマートフォン(アプリ)を有する個体又は医療提供者に警告を提供可能にする双方向通信を伴う、ノルディック社のNRF52マイクロコントローラ、チップアンテナを使用するFCC承認BMD-350SoC(システムオンチップ)に基づく組込み小型化無線センサ群である。BLE接続は、ブルートゥース(登録商標)コア仕様v4.2(以降)において定義されるようなLESC(「低エネルギーセキュア通信」)を使用して暗号化されている。デバイスへの通信は、サンプリングレートの変更、及びファームウェアのアップデートなど、デバイスの保守に使用される。表面実装(SMT)回路は、SoC、マイクロコントローラに報告する2つのデジタル温度センサ及びデジタル加速度計、標準支援回路SMT部品、例えば抵抗及びフィルタコンデンサを有するEPPROM、並びに2つのチップLEDを含む。電力は、全容量が50mAhである非充電式のレナータ社コインセルリチウム電池CR1616によって供給される。PCBの内部材料は、標準的なFR4の剛性ポリイミドフレックス回路であり、はんだは鉛フリーであり、2つの小さなステンレス鋼000サイズ(眼鏡のサイズのような)のねじがPCBを封入部内の所定の位置に保持する。封入部及び露出材料は、機械加工されたデルリン(封入部、0.53平方インチ)、黒色陽極酸化アルミニウム(サーマルディスク、0.06平方インチ)、金めっきアルミニウム(熱交換リング)、及びコーニング社のゴリラガラスの小さいのぞき窓(iPhoneスクリーンに使用されているものと同じ)である。データは、センサに搭載されたファームウェア内で前処理された後、電話機に送信される。電話機のアプリは、センサから送信されたデータを表示及び保存する。デバイスからの無線出力は、タイムスタンプ、空気(周囲)温度、皮膚温度、加速度データ、エラー状態(ある場合)、及びデバイスの電池電圧であり、これらはすべてがBLEを介して電話機に送信される。デバイスを有する患者又は個体にデータが提供されることはない。現在設計されているように、すべてのデータは、スマートフォンアプリへのアクセスを介して医療スタッフのみに利用可能となることとなる。
【0291】
センサシステム#1は、熱流束に関するデータを継続的かつ正確に測定する及び取得するウェアラブルなセンサ包含システムである。これは、既存の承認された代替物と比較して、入院の必要性を低減する又はなくす、患者のクオリティオブライフを向上させる、患者が自身の医療を(自己管理型個人サポートなどによって)管理し又は長期的に確立できることを促す可能性を含む、既存の代替物よりも大きな利点を提供する。
【0292】
センサシステム#1は、特定の実施形態において、感染の発症前検出を可能にするために、1秒間隔で300日間にわたって代謝率を継続的に測定する小型化間接熱量計である。
【0293】
病原体は宿主の異化亢進応答を引き起こし、発熱をもたらす。[深部体温が1℃変化する毎に、エネルギー消費は約13%程度変化する。]熱産生をもたらす代謝率の変化は深部温度の変化(「発熱」)に先行するので、センサアルファは、従来の温度測定の前に感染を検出することによって作用する。
【0294】
代謝率のリアルタイムでの間接熱量測定による感染症の検出により、阻止が可能になる。
【0295】
センサシステム#1は、少なくとも以下の条件によって、既知のセンサに基づくシステムと区別される。
ハードウェア設計:センサシステム#1は、特定の実施形態において、熱流及び代謝率の正確なリアルタイムの定量に不可欠な周囲温度及び皮膚温度の両方を同時に測定するように構成される。
【0296】
皮膚温度は、2つの熱的寄与、すなわち外部(周囲)と内部(代謝)との組合せによって決定される。これは、T_皮膚=T_周囲+T_代謝という式によって表すことができ、式中、T_代謝は身体の代謝熱がもたらす皮膚温度への寄与である。ニュートンの冷却の法則によって、身体の代謝率MRは、MR=k(T_皮膚-T_周囲)=kT_代謝という比例関係に追従することとなる。そのため、皮膚温度と隣接する周囲温度との差を測定することによって、近似的な直接熱量測定を行うことができる。この関係に対して周囲温度を定数として扱う近似又は何らかの他の単純なモデルを試み得る。しかしながら、皮膚温度と気温とは、対向流交換プロセスのため、短い時間スケールで極めて相関している。周囲温度の局所的な測定なしに熱流束の推定を試みる任意のモデルは、極めて不正確となる。言い換えると、周囲温度の変動は、典型的に皮膚と空気との温度差の変動よりもはるかに大きい。経験的に、周囲温度のゆらぎスケールは、穏やかな気候でもT_代謝のスケールよりもおよそ3倍大きいと分かっている。周囲温度による変動を慎重に取り除かないと、代謝プロセスによる変動を全面的に不明瞭にしてしまう。したがって、皮膚温度と周囲温度とを同時に測定することが、この種の熱量測定のパフォーマンスにとって重要である。
【表5】
【0297】
(プラットフォームソフトウェア:学習エンジン)
(健康能力のルール学習)
生物学的系における健康能力の創発性を支配するルールは、好ましい実施形態において、訓練セットに基づいて得られ、機械可読指示によって実施され得る。例えば、訓練セットは、特定のメトリック間の相関に分類され、経時で評価され、評価される個体の独立した健康評価と比較される。特定のメトリックと健康評価との高い相関が強化される一方、特定のメトリックと健康評価との十分でない相関にはあまり重みを与えない。メトリックの相互強化及び再重み付けは、相関性を生成するために使用され、それらの相関性は、今後のメトリックを評価するための機械可読指示に還元される。健康能力は直接的に測定可能ではない場合があり、それについてのルールもそうでない場合がある。しかしながら、生物学的エネルギー消費の継続的測定に基づいて、好ましい実施形態において、健康能力の理解とその定量とを得ることができる。特に、生物学的系の機能と密に関連する健康能力又はその派生物の種々の表現を定量することによって、生物学的系における健康能力の創発性を支配するルールを得ることができる。そうした表現は、エネルギー収支及び特徴を含む。
【0298】
(健康能力の表現としてのエネルギー特徴/収支)
熱を生成する生物学的プロセスは、エネルギー収支の論理に従ってそのように行われる。そのエネルギー収支は、何らかの健康能力を提供する。エネルギー特徴は、進行中のストレス及び状況に対応した健康能力の効果を表す。前もってエネルギー特徴を予測することによって、本明細書において開示するシステム及び方法は、正確で健康能力と相関する内部プロセスのモデルを提供する。これらのシステム及び方法は、疾患及び病気の結果及び持続性を予測することが可能である。エネルギー特徴は、過去のエネルギー特徴又はエネルギー収支から予測可能であるので、それぞれが健康能力の表現として有用である。
【0299】
(アノテーション、代謝タスク、及び主要な健康決定要因)
睡眠、食事、運動、及び生活習慣は、主要な健康決定要因(KDoH)と認められる。これらの決定要因のそれぞれは、いくつかの重複する代謝タスクに関与し得る。KDoHとの正の関与は、ヒトのエネルギー収支に比例する代謝タスクの組合せに関与する必要がある。一方で、KDoHとの十分でない関与は、ヒトのエネルギー収支に比例しない一式の代謝タスクをもたらす。したがって、アノテーションの戦略を、ヒトの調節が存在するKDoHの分解能に集中させた。アノテーションは、主にKDoHのレベルで行われることとなる。個々の代謝タスク及び根底にある機序のレベルにおけるより高い分解能のアノテーションが、学習を高めるために使用され得る。
【0300】
(プラットフォームソフトウェア:学習エンジン)
技術プラットフォームは、生物学的系に関する記述、予測、及び推論を目的として、独自のセンサハードウェアから継続的にデータを取り込むことが可能な、学習エンジン、モバイルアプリケーションソフトウェア、クラウドインフラストラクチャを備える。取り込まれるデータは、エネルギー消費及び特徴の定量を支援するために、代謝タスク及び他の生物学的プロセスを特徴づけることを意図した、エネルギー測定及び補助センサデータ(生物学的又は環境的)を含むこととなる。学習エンジンは、以下の機能を実行することとなる。
-エネルギー特徴を定量化する。
-エネルギー特徴と機能、疾患、結果とを相関させる。
-アノテーションとエネルギー特徴との関係によってエネルギー収支のルールを推測する。
-エネルギー収支と機能、疾患、結果とを相関させる。
-アプリに基づく推奨及びフィードバックを介してエネルギー収支の定量を改良及び試験する。
-持続確率によって示されるような、種々なストレス下におけるエネルギー収支に関連する健康能力を推測する。
-健康能力の必要かつ十分な条件であるエネルギー収支内の重要な規則性、つまり健康能力のルールを特定する。
-さらなるアノテーション又はセンサの必要性の証拠として、「エネルギーギャップ」を特定する。
【0301】
(ソフトウェア学習方針)
この技術的課題は、複雑な連続エネルギー特徴から単純なエネルギー収支ルールを抽出することである。そのために、2つの要素で学習方針を発展させた。まず、タイムスタンプ付きのアノテーションをKDoHに関連させて、エネルギー消費を重要な代謝タスクと関連付けた。これらの時間的関係におけるパターンを学習することによって、エネルギー特徴の主な成分を記述するエネルギー収支を推測することができる。次に、これらの主要な成分をアノテーション及び定量することで、持続的かつ継続的なモニタリングを使用して、これまで検出及び説明されなかったエネルギー特徴の未見の異常を検出することができる。新しいアノテーション及びセンサに関与する連続的な近似の処理によって、エネルギー特徴は、完全性及び正確性を高めながら記述及び予測されるようになる。エネルギー収支モデルが一段と正確になり、データセットが増えると、健康能力が低い又はゼロのエネルギー収支空間又は区域の不安定な領域を特定できるようになる。有限の健康能力の領域の境界は、健康能力のルールによって決定されることとなる。境界に沿って存在する種、個体、疾患状態を調査/分析して、それらの主要な弱点を決定することで、健康能力のルールを推測し得る。
【0302】
(エネルギー収支の概念化及び可視化)
多くの生物学的プロセスは直接的に測定可能でない仕事を行うが、その仕事はまた、後に廃熱として現れ得る。エネルギー変換の複数の段階に関与する循環器系の場合を例として考える。慎重なエネルギー監査は以下のステップを含み得る。(ステップ1)心臓組織においてATPを作るために化学結合を切断する(仕事及び熱)、(ステップ2)心筋を収縮させるためにATPを使う(仕事)、(ステップ3)血液を粘性/摩擦に対して脈管構造を通って押し出す(熱)、及び(ステップ4)酸素が末梢に届いてミトコンドリアで酸化的リン酸化を行うことが可能になる(熱及び仕事)。ステップ2及びステップ3は、ステップ1において既に計数したエネルギーに関与する。エネルギーは、起源(グルコース代謝)、中間形態(血液の運動エネルギー)、及び最終形態(排熱)を有する。ステップ2及びステップ3は、エネルギー変換効率が常に100%未満であるので、ステップ1に対してある程度低下することとなる。ステップ4は、ステップ1、ステップ2、及びステップ3の結果として生じるが、別個の燃料源に関与するエネルギー収支における別個の消費である。それでも、ステップ4で生成されるエネルギーは供給される酸素に比例することとなるので、利用される有用な相関が存在し得る。
【0303】
エネルギーを二重に計数することなく、エネルギー収支を適切に区分することは、この取り組みの主要な技術的課題である。二重計数の問題の最も一般的な記載は、エネルギーが流れの種々の地点で測定され得、関係の誤アライメントが二重計数をもたらし得ることである。エネルギーの様々な成分を半重複の測定によって三角形状にすることで、エネルギー流のサンキー型のマップを構築することが可能となる。
【0304】
特に、
図5(及びまた
図11及び
図12)は、エネルギーの流れを機能的に図式化することによって、開示する技術では、二重計数の回避及びエネルギー関係の構造の学習が同時にできることを示す。したがって、サンキー図を多様に横断するセンサ及びメタデータ収集を選択することができる。測定値を追加するごとに、フローマップに分解能が追加される。
【0305】
(一般化健康学習ループ)
一部の実施形態において、開示する技術は、一般化健康学習のために低遅延で自動化されたウェアラブル測定デバイスを使用する。デバイスは、ベースラインのエネルギー特徴を測定し、アノテーションに関連するベースラインの分散を継続的に定量し得る。一部の実施形態において、開示する技術は、健康の指標を定量し、定量した健康介入(例えば、対象のエネルギー消費を変化させるための種々の食物の有効性)の個人的知識ベースを構築するために、一般化健康学習プラットフォームをさらに使用する。一部の実施形態において、プラットフォームは、現在のエネルギー特徴、個人のエネルギー収支、及び目録化した介入の知識ベースに基づいて、リアルタイムの推奨を行う。
【0306】
一般化健康学習のためのデバイス及びプラットフォームは、好ましくは、使用が簡単で、自動化され、安全、精密、及び正確である。デバイスに関連する電池の長寿命により、連続的で中断のない測定を可能にすることとなる。電池は、世界規模でリアルタイムに個体及び個体群に基づく分析を提供するために、100日を超える、200日を超える、300日を超える、好ましくは約360日の常時オンで非充電式の要件を備えるように構成される。これを達成するため、予め設定されたしきい値又はベースラインの変化に基づいてサンプリングレート及び周波数を自動的に調整するファームウェアのアルゴリズムによって制御される低電力要件のセンサによって検出できるパラメータが選択される。好ましい実施形態において、デバイスは、20秒間隔で熱流束を測定することとなり、その後のデバイスにおいて、熱流束の決定の精度及び正確性を向上させるためにさらなるセンサが追加され得、その後のバージョンにおいて仕事を定量するためにセンサが追加され得る。好ましい実施形態において、デバイスは、細胞の熱及び仕事の変化を感知し、付随するソフトウェアプラットフォームは、個体のため及び十分なスケールでこのデータを分析することとなる。細胞のエネルギー使用量の変化は、熱(ΔQ)及び仕事(ΔW)の変化である2つのパラメータにおいて/によって取得される。
【0307】
一部の実施形態において、一般化健康学習のためのデバイスは、細胞の熱及び仕事の変化を感知するハードウェアを含み、このデータを、熱及び種々の種類の仕事の間でエネルギーがどのように配分されているか、つまり「エネルギー収支」をリアルタイムで保存、分析、及び表示するソフトウェアにストリーミングする。エネルギー特徴の配分、周波数、振幅、又は変化率などの変化は、標準的なバイタルサインに先行し、情報が豊富であり、それらの学習の価値が高まる。
【0308】
一部の実施形態において、一般化健康学習のためのデバイスは、細胞のエネルギーをパラメータ化する一群の小型化センサを含み、また、定量した健康介入の個人的知識ベースを構築するとともに、現在のエネルギー特徴、個人のエネルギー収支、及び目録化した介入の知識ベースに基づいて、リアルタイムの推奨を行うことを可能にする学習エンジンに容易にかつ継続的に長期間(>180日)ストリーミングする。一部の実施形態において、センサは、相対湿度、気圧、及び光のセンサを含み得る。一部の実施形態において、センサは、ヒトのエネルギー消費の既知の値を、細胞レベルへのその配分に対して、並びに、細胞エネルギーがどのように熱の産生及びイオン及び水の能動輸送に消費されるかを、考慮し得る。
【0309】
一部の実施形態において、一般化健康学習デバイスのセンサは、エネルギー収支の以下の推定に基づいて選択される。(1)生理学的スケールでは、全エネルギー消費は、安静時エネルギー、食事エネルギー、及び身体エネルギーの合計であり、全エネルギー消費(EE)=安静時EE+身体活動時EE+食事EEである。これが生理学的エネルギー収支である。(2)安静時エネルギー消費(REE)は、全エネルギー消費のおよそ80%である。REEは約80%EE。(3)ヒトは、エネルギーの約60%を熱として喪失し、40%のみを仕事としてとらえることから、非効率な機械である。EEは約60%ΔQ+40%ΔW。(4)細胞内で行われる仕事は、大部分が水及びイオンの移動、タンパク質及び生化学物質(中間代謝)の合成の仕事である。したがって、ΔWは、イオン移動25%、構造25%、生化学50%と推定される。(5)細胞内で産生される熱は、器官によって産生される熱と同じであり、皮膚を通して身体から出るとして検出される熱と同じである。したがって、ΔQは同じである。(6)理想的には、デバイスは、すべてのなされた仕事を定量し得るが、V1.0のデバイスは、大部分が市販であったセンサに焦点を置いている。(7)水に関連する熱流及び仕事を定量可能な市販のセンサが存在するので、デバイス#1の正確性は、全ΔE又はエネルギー消費の約85%であると推定される。この正確性は、健康を定量及び最適化し、疾患を発症前に検出及び阻止するために、エネルギー収支を定量し、水*に関与して行った仕事をとらえるのに十分である。
【0310】
一部の実施形態において、一般化健康学習のためのデバイスの特質は、以下を含み得る。
1.(電池寿命):デバイスの電池寿命は少なくとも180日であり、電池は使い捨てで、標準的な、50mAhの全容量の3ボルト(ピーク充電)リチウムコインセル電池によって内部で電力が供給される。これにより、長期間にわたって継続的な測定が可能になる。
2.(有用性):デバイスは、堅牢、安価、かつ使用が簡単であり、これにより、病院、支援的医療、及び外来医療の場における広い展開が可能になる。
3.(ソフトウェア):デバイスは、容易に、データ記録及び分析の自動化を可能にするIoT(クラウド/機械学習)とのインターフェースとなる。
4.(簡単):デバイスは、動作させるために特殊な技能を必要としない。これにより、分散型の健康測定システムの広い展開を可能にする。
5.(安価):市販の費用として、<100.00ドルを想定している。これにより、幅広い展開に対する経済的なハードルを低くする。
6.(自動化):デバイスは健康を継続的に測定し、これにより、疾患の症状前の変化を早期に検出することが可能になり、個体群に基づく健康の脅威の際に検出及び学習するためのビッグデータセットを生成することが可能となる。
7.(堅牢な設計基準):デバイスは、過酷な環境及び/又は過酷な条件において高信頼性で動作するように設計される。これにより、多様な一般市民、ファーストレスポンダー、及び戦争従事者の場合における展開が可能になる。
8.(セキュア):デバイスとスマートフォンとの間のすべての通信は、暗号化されたブルートゥース(登録商標)ローエナジーリンク、特に「LESC」によってなされる。ユーザについてのいかなる本人情報も手首センサに保存される、又はブルートゥース(登録商標)によって暗号化されずに送信されるといったことはない。アプリとクラウド記憶サーバとの間の接続はセキュアである。各段階において、データは静止時(デバイス又はクラウドにおいて)及び送信時に暗号化される。保護健康情報は、デバイスの装着者の同意を得たときにのみ、収集されてセキュアなクラウドに移動されることとなる。分析の進展のためにクラウドのデータにアクセスすると、形式的に匿名化されたデータのみを示すこととなる。
9.(安全):センサモジュールは、非電気伝導性表面材料のみを露出させるように、単離ポリマー(デルリン)封入部内に含まれる、外部皮膚表面に適用する電池駆動式センサ群である。内部電気回路と肌との間に電気的接触は存在しない。
【0311】
一部の実施形態において、一般化健康学習のためのプラットフォームは、健康に関する記述、予測、及び推論を目的として、独自のセンサハードウェアから継続的にデータを取り込むことが可能な、学習エンジン、モバイルアプリケーションソフトウェア、クラウドインフラストラクチャを備える。取り込まれるデータは、エネルギー消費及び特徴の定量を支援するために、代謝タスク及び他の生物学的プロセスを特徴づけることを意図した、エネルギー測定及び補助センサデータ(生物学的又は環境的)を含むこととなる。学習エンジンは、以下の機能を実行することとなる。
-エネルギー特徴を定量化する。
-エネルギー特徴と機能、健康、結果とを相関させる。
-アノテーションとエネルギー特徴との関係によってエネルギー収支のルールを推測する。
-エネルギー収支と機能、健康、結果とを相関させる。
-アプリに基づく推奨及びフィードバックを介してエネルギー収支の定量を改良及び試験する。
-持続確率によって示されるような、種々なストレス下におけるエネルギー収支に関連する健康能力を推測する。
-健康能力の必要かつ十分な条件であるエネルギー収支内の重要な規則性、つまり健康能力のルールを特定する。
-さらなるアノテーション又はセンサの必要性の証拠として、「エネルギーギャップ」を特定する。
【0312】
(一般化疾患学習ループ)
一部の実施形態において、開示する技術は、一般化疾患学習のために低遅延で自動化されたウェアラブル測定デバイスを使用する。一部の実施形態において、デバイスは、ベースラインエネルギー特徴の測定を行い得る。一部の実施形態において、開示する技術は、健康の指標を定量し、疾患の発症前の検出及び阻止を可能にする症状前の健康の変化のパターンを検出する、一般化疾患学習プラットフォームをさらに含む。一般化疾患学習プラットフォームは、リアルタイムで異常を検出するための健康特徴の継続的分析、疾患異常の知識ベース(例えば、特徴異常を有する病原体若しくは疾患、及び関連するコンテキストの危険因子)の構築、個人の異常特徴と異常の知識ベースとのリアルタイムの相互参照、並びに/又は疾患介入ガイダンス(例えば、精密試験)に従うためのリアルタイムに近い警告を行うことがある。
【0313】
一般化疾患学習のためのデバイス及びプラットフォームは、好ましくは、使用が簡単で、自動化され、安全、精密、及び正確である。デバイスに関連する電池の長寿命により、連続的で中断のない測定を可能にすることとなる。電池は、世界規模でリアルタイムに個体及び個体群に基づく分析を提供するために、100日を超える、200日を超える、300日を超える、好ましくは約360日の常時オンで非充電式の要件を備えるように構成される。これを達成するため、予め設定されたしきい値又はベースラインの変化に基づいてサンプリングレート及び周波数を自動的に調整するファームウェアのアルゴリズムによって制御される低電力要件のセンサによって検出できるパラメータが選択される。
【0314】
好ましい実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスは、20秒間隔で熱流束を測定し、その後のデバイスにおいて、熱流束の決定の精度及び正確性を向上させるためにさらなるセンサが追加され、その後のバージョンにおいて仕事を定量するためにセンサが追加されることとなる。好ましい実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスは、細胞の熱及び仕事の変化を感知し、付随するソフトウェアプラットフォームは、個体のため及び十分なスケールでこのデータを分析することとなる。一部の実施形態において、細胞のエネルギー使用量の変化は、熱(ΔQ)及び仕事(ΔW)の変化である2つのパラメータにおいて/によって取得される。
【0315】
一部の実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスは、細胞の熱及び仕事の変化を感知するハードウェアを含み、このデータを、熱及び種々の種類の仕事の間でエネルギーがどのように配分されているか、つまり「エネルギー収支」をリアルタイムで保存、分析、及び表示するソフトウェアにストリーミングする。エネルギー特徴の配分、周波数、振幅、又は変化率などの変化は、標準的なバイタルサインに先行し、情報が豊富であり、それらの学習の価値が高まる。
【0316】
好ましい実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスは、細胞のエネルギーをパラメータ化する一群の小型化センサによって行われ、また、疾患の発症前検出及び阻止を可能にするとともに十分なスケールで学習する学習エンジンに容易にかつ継続的に長期間(>180日)ストリーミングされ得る、熱及び仕事の測定を行い得る。
【0317】
一部の実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスのセンサは、相対湿度、気圧、及び光のセンサを含み得る。一部の実施形態において、センサは、ヒトのエネルギー消費の既知の値を、細胞レベルへのその配分に対して、並びに、細胞エネルギーがどのように熱の産生及びイオン及び水の能動輸送に消費されるかを、考慮し得る。
【0318】
一部の実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスのセンサは、エネルギー収支の以下の推定に基づいて選択される。(1)生理学的スケールでは、全エネルギー消費は、安静時エネルギー、食事エネルギー、及び身体エネルギーの合計であり、全エネルギー消費(EE)=安静時EE+身体活動時EE+食事EEである。これが生理学的エネルギー収支である。(2)安静時エネルギー消費(REE)は、全エネルギー消費のおよそ80%である。REEは約80%EE。(3)ヒトは、エネルギーの約60%を熱として喪失し、40%のみを仕事としてとらえることから、非効率な機械である。EEは約60%ΔQ+40%ΔW。(4)細胞内で行われる仕事は、大部分が水及びイオンの移動、タンパク質及び生化学物質(中間代謝)の合成の仕事である。したがって、ΔWは、イオン移動25%、構造25%、生化学50%と推定される。(5)細胞内で産生される熱は、器官によって産生される熱と同じであり、皮膚を通して身体から出るとして検出される熱と同じである。したがって、ΔQは同じである。(6)理想的には、デバイスは、すべてのなされた仕事を定量し得るが、V1.0のデバイスは、大部分が市販であったセンサに焦点を置いている。(7)水に関連する熱流及び仕事を定量可能な市販のセンサが存在するので、デバイス#1の正確性は、全ΔE又はエネルギー消費の約85%であると推定される。この正確性は、健康を定量及び最適化し、疾患を発症前に検出及び阻止するために、エネルギー収支を定量し、水*に関与してなされた仕事をとらえるのに十分である。
【0319】
一部の実施形態において、一般化疾患学習のためのデバイスの特質は、以下を含む。
1.(電池寿命):デバイスの電池寿命は少なくとも180日であり、電池は使い捨てで、標準的な、50mAhの全容量の3ボルト(ピーク充電)リチウムコインセル電池によって内部で電力が供給される。これにより、長期間にわたって継続的な測定が可能になる。
2.(有用性):デバイスは、堅牢、安価、かつ使用が簡単であり、これにより、病院、支援的医療、及び外来医療の場における広い展開が可能になる。
3.(ソフトウェア):デバイスは、容易に、データ記録及び分析の自動化を可能にするIoT(クラウド/機械学習)とのインターフェースとなる。
4.(簡単):デバイスは、動作させるために特殊な技能を必要としない。これにより、分散型の健康測定システムの広い展開を可能にする。
5.(安価):市販の費用として、<100.00ドルを想定している。これにより、幅広い展開に対する経済的なハードルを低くする。
6.(自動化):デバイスは健康を継続的に測定し、これにより、疾患の症状前の変化を早期に検出することが可能になり、個体群に基づく健康の脅威の際に検出及び学習するためのビッグデータセットを生成することが可能となる。
7.(堅牢な設計基準):デバイスは、過酷な環境及び/又は過酷な条件において高信頼性で動作するように設計される。これにより、多様な一般市民、ファーストレスポンダー、及び戦争従事者の場合における展開が可能になる。
8.(セキュア):デバイスとスマートフォンとの間のすべての通信は、暗号化されたブルートゥース(登録商標)ローエナジーリンク、特に「LESC」によってなされる。ユーザについての本人情報が、手首センサに保存される、又はブルートゥース(登録商標)によって暗号化されずに送信されることはない。アプリとクラウド記憶サーバとの間の接続はセキュアである。各段階において、データは静止時(デバイス又はクラウドにおいて)及び送信時に暗号化される。保護健康情報は、デバイスの装着者の同意を得たときにのみ、収集されてセキュアなクラウドに移動されることとなる。分析の進展のためにクラウドのデータにアクセスすると、形式的に匿名化されたデータのみを示すこととなる。
9.(安全):センサモジュールは、非電気伝導性表面材料のみを露出させるように、単離ポリマー(デルリン)封入部内に含まれる、外部皮膚表面に適用する電池駆動式センサ群である。内部電気回路と肌との間に電気的接触は存在しない。
【0320】
一部の実施形態において、一般化疾患学習のためのプラットフォームは、疾患に関する記述、予測、及び推論を目的として、独自のセンサハードウェアから継続的にデータを取り込むことが可能な、学習エンジン、モバイルアプリケーションソフトウェア、クラウドインフラストラクチャを備える。取り込まれるデータは、エネルギー消費及び特徴の定量を支援するために、代謝タスク及び他の生物学的プロセスを特徴づけることを意図した、エネルギー測定及び補助センサデータ(生物学的又は環境的)を含むこととなる。学習エンジンは、以下の機能を実行することとなる。
-エネルギー特徴を定量化する。
-エネルギー特徴と機能、疾患、結果とを相関させる。
-アノテーションとエネルギー特徴との関係によってエネルギー収支のルールを推測する。
-エネルギー収支と機能、疾患、結果とを相関させる。
-アプリに基づく推奨及びフィードバックを介してエネルギー収支の定量を改良及び試験する。
-持続確率によって示されるような、種々なストレス下におけるエネルギー収支に関連する健康能力を推測する。
-健康能力の必要かつ十分な条件であるエネルギー収支内の重要な規則性、つまり健康能力のルールを特定する。
-さらなるアノテーション又はセンサの必要性の証拠として、「エネルギーギャップ」を特定する。
【0321】
(実施例2)
(温度調節、代謝、又は体重等の特性の閉ループ制御のためのシステム)
(特性の閉ループ制御のためのシステムの動作原理)
一態様において、開示する技術は、生物体における閉ループ制御システムに通知するように、熱及び生理学的排信号を使用する。閉ループ制御又はフィードバック制御において、コントローラからの制御動作は、処理変数の値の形態において処理からのフィードバックに依存する。
【0322】
生物体(生物学的又は合成)の内部エネルギー管理は、その機能の継続に重要である。このエネルギー制約(熱力学第一法則、つまりエネルギー保存と結びついている)は、種々の種及び系において多様に展開されるが、常に存在しており中心となる。生物体によって調節及び消費されるエネルギーは、必然的に排出物、つまり、生体に動力を供給する燃料より低いギブズ自由エネルギー密度を有する物質排出として再出現する。燃料と排出物との間の自由エネルギーの差は、生物体によって内部又は外部で行われる仕事によって正確に厳密に説明することができる。
【0323】
あらゆる組織化された系において、排ストリーム(熱及び物質の両方)は2つの成分を有する。第1の成分は、「非効率」から生じるとして口語的に理解される。機械は、ある意味でそれらが行う仕事に関連する廃熱を生成する。また、不具合、最適でない状況、及び固有の制限により、燃料エネルギーを有用な仕事に完全に変換することが制限され得る。したがって、行われる単位毎の仕事について、廃エネルギーの跡を仕事出力と大きく類似する時間パターンによって検出することができる。排出物の第2の成分は、仕事のパフォーマンスに関連する非効率性ではなく、機能的に具体化される残りのものの有限かつ継続的なコストから生じる。この排出物の成分は、あまり理解されておらず、口語的な用語もない。生物学的系において、これは基礎代謝率と呼ばれる。
【0324】
排出物の2つの成分の間の区別はわずかな差で曖昧である。それでも、これらの2つの間を別個に表現するように取り組むための実際的な理由が存在する。例えば、極めて燃料効率が高い、例えば移動中に75mphであると報告されているが、アイドリング中は非常に効率が低く、燃焼が汚れている車を考える。両方の特質を理解することが、そうした車両の起こり得る機能を理解するために不可欠であり、つまり、それは、郵便を配達することよりも高速道路の長距離移動により良く適している。さらに、この区別は、車を改善し得る最も価値のある方法を理解するのに有用である。そうした車両を郵便配達に使った場合、アイドリングの効率におけるいずれの小さな最適化も、移動中の燃料効率の向上よりもはるかに高い影響を与えるだろう。
【0325】
生物学において、「脱共役」という用語は、エネルギー消費と仕事との分離を記述するために多くの場合使用される。この用語は、典型的に、除共役タンパク質と呼ばれる、ミトコンドリア内膜に存在する一式の5つのトランスポーター酵素を具体的に指すとして理解されている。これらの酵素は、ミトコンドリア内膜のプロトン勾配をATPの合成から除共役する。しかしながら、生物学には他の除共役系が存在する。例えば、ATPは、身体におけるイオン勾配の維持に動力を供給し、これは、自身の調節及び仕事からの脱共役を有する。こうした脱共役の厳密な機序に縛られることなく、熱が生成され、これらの機能が調節される。こうした勾配は、筋肉において、及び神経系にわたって起こる。さらに、生成した熱は体温調節に使われるので、単なる「非効率」と呼ぶのは適切ではない。これらの重要な組織及び生物体全体の機能を理解するために、活動状態及び/又は非活動状態におけるそれらの総エネルギー消費を学習アルゴリズムに通知するように使用し得る。
【0326】
代謝調節周りの脱共役タンパク質及びシグナリングの中心となる重要性は、生物体の健康における情報の重要性を示唆している。このことは、個体がその健康についてより良い決定を行えるように、個体に情報及び分析をフィードバックするとしているデジタル健康ウェアラブルの開発において外面的に総括されている。しかしながら、現在のウェアラブル市場は、典型的に、歩み、活動、心拍数の上昇である、仕事の代理物を測定する。これらの測定は価値があるが、基礎的な構成要素を無視しているので、エネルギー消費の全体像を取得していない。これにより、健康、疾患、及びパフォーマンスに関連する種々のユースケースにおけるその有用性が制限される。
【0327】
一部の実施形態において、開示する技術は、存在する生物体の機能を理解する、向上させる、調節する、又は再利用することを目的として、主に熱として具体化されるが、他の低エネルギー化学形態を含む排出物を測定するシステムに関する。ヒトの健康の場合、熱センサを含む一実施形態では、活動及び仕事の測定並びに典型的な周縁的エネルギー消費の推定ではなく、リアルタイムにおける全エネルギー消費の直接的な測定をとおして、個体がその健康を管理することが可能となる。こうしたシステムは、体重、血圧、及び概日リズムの管理において特に価値があり得、そのすべてが体温調節と機能的に大きく交わる。
【0328】
調節システムは、測定した排ストリーム(生物体の創発特性である)から情報を取り、排情報ストリームにおいて自動分析を行い、その後、3つの異なるチャンネル、つまり(1)(脱)共役剤による直接的な自動処置、(2)外部環境の自動調節、(3)何らかの行動を取るように個体に自動推奨すること、によって生物体に影響を与え得る。
【0329】
((1)(脱)共役剤による自動処置)
インスリンポンプは、グルコースを測定して適切なインスリン用量を決定し、それを自動で投与することで、血糖についての閉ループ制御システムを可能にする。同様に、この第1の動作モードは、熱又は排出物を測定して、酸化的リン酸化又は他のイオン勾配構造の脱共役剤又は他のモジュレーターの投薬及び投与を自動化し、貯蔵された電気化学エネルギーが、何らかの生理学的仕事又は機能を実行する経路から脱共役され得る。
【0330】
((2)外部環境の自動調節)
このモードにおいて、内部温度、圧力、又は湿度などの外部物理パラメータが、温度調節機能、又は心血管パラメータ、概日パラメータ、認知及び感情パラメータを含む温度調節に関連する他の生理学に影響を与えるように使用され得る。典型的に「クライメート調節」と呼ばれる物理的周囲条件だけでなく、音楽、よく知っている香り、視覚芸術、又は他の刺激などの極めて特異的な情報密度の高い体験を含む多様な一式の外部パラメータが個体にとって効果的であり得る。ここでも、熱又は他の排出物のフィードバック変数が、これらの外部処置を与えるように使用されることとなる。
【0331】
((3)何らかの行動を取るように個体に自動推奨すること)
このモードは、ループにおけるヒトの随意の活動に関与するので自動化できない相互作用のカテゴリを記載する。熱特徴の分析によって、着替える、屋内に入る/屋外に出る、特定の食物を食べる、水を飲む、何らかの運動を行うこと等を個体に提案し得る。この種類の調節システムは、処置を完全に自動化することができないため、完全な閉鎖型ではない。その代わりに、自動推奨又は「行動喚起」メッセージが、適時の変更を行い得るように送信されることとなる(例えば、モバイルSMS又は他のメッセージ)。閉ループ制御は、ループにおけるヒトの相互作用及び協力によって完全なものとなる。
【0332】
(フィードバック制御)
制御理論は、起こり得る様々な動作モードの中から現在の動作モードをシステムが選択するように制御し、その後選択した動作モードを生成するように被制御システムを駆動する制御出力を提供するように、システム制御設計の原理を伝え、柔軟性及び知能を有するコントローラを作製するように使用され得る。単純な閉ループフィードバックコントローラから、複雑な適応的状態空間型の微分方程式に基づくプロセッサ制御された制御システムまで、多様な種類のコントローラが多様な応用領域で一般に使用されている。一部の実施形態において、コントローラは、制御モデル及びシステムからのセンサフィードバックに基づいて、システムの種々の動的構成要素に制御信号を出力するように設計されている。一部の実施形態において、システムは、所定の挙動又は動作モードを示すように設計され、したがって、そうしたシステムの制御構成要素は、設計及び最適化技術によって、所定のシステム挙動が通常の動作条件で起こることを保証するように設計されている。特定の場合において、システムの多様な動作モードが存在し得、したがって、システムの制御構成要素は、システムの現在の動作モードを選択し、選択した動作モードに適合するようにシステムを制御する必要がある。
【0333】
一部の実施形態において、開示する技術は、知的コントローラによって制御されるとともに、多様な種類のデバイス、機械、システム、及び機構に適用し、それら内に組み込むことができる多様な特定の種類の知的コントローラを含む1つ以上のシステムによって影響を受ける1つ以上の区域、体積、又は環境内の1つ以上の種類の要素の存在及び非存在を決定する、一般的なクラスの知的コントローラを使用する。知的コントローラは、1つ以上の区域、体積、又は環境内の種々のパラメータのいずれかに影響を与えるように結果として動作するデバイス、機械、システム、及び機構の動作を制御する。本願が対象とする一般的なクラスの知的コントローラは、該知的コントローラが、1つ以上のセンサからの1つ以上の出力を使用して1つ以上の要素の存在及び/又は非存在を直接的に感知すること、センサに基づく決定、及び種々の種類の電子的に保存されたデータ、ルール、及びパラメータから区域、領域、体積内における、又は区域、領域、及び体積内の地点における1つ以上の要素の存在及び/又は非存在を推測すること、並びに、区域、領域、及び体積内の1つ以上の要素の存在又は非存在に関連する推測に基づいて制御スケジュールを適応させることを可能にする構成要素を含む。
【0334】
一部の実施形態において、開示する技術は、スマートデバイスであって、1つ以上の様々な種類のセンサ、1つ以上のコントローラ及び/又はアクチュエータ、並びに該スマートデバイスを、ローカルスマート環境内の他のスマートデバイス、ルータ、ブリッジ、及びハブ、多様な種類のローカルコンピュータシステム、及びスマートデバイスがクラウドコンピューティングサーバ及び他の遠隔コンピューティングシステムと通信し得るインターネットに接続する1つ以上の通信インターフェースを含む、スマートデバイスを使用する。データ通信は、Wi-Fi、ZigBee、6LoWPANなどの無線プロトコル、CAT6イーサネット(登録商標)、HomePlug、及び他のそうした有線プロトコルを含む種々の種類の有線プロトコル、並びに、種々の他の種類の通信プロトコル及び技術を含む、多様な異なる種類の通信媒体及びプロトコルのいずれかを使用して行われ得る。スマートデバイスは、それ自体が他のスマートデバイスのための中間通信デバイス、例えば中継器などとして動作し得る。
【0335】
スマート環境内のスマートデバイスは、3G/4G無線通信を介したインターネットによって、ハブ型ネットワークによって、又は他の通信インターフェース及びプロトコルによって通信することができる。多様な種類のデータを、クラウドに基づく遠隔システムを含む遠隔システムに保存し得、及びそこから取得し得る。遠隔システムは、データ処理とスマート環境に関連するさらなる情報及びルールの導出とのために、種々の種類の統計、推論、及びインデックスエンジンを含み得る。保存されたデータは、1つ以上の通信媒体及びプロトコルを介して、部分的又は全体的に、種々の遠隔システム及び機構に公開することができる。外部要素は、スマート環境内のスマートデバイスによって収集された情報を収集、処理、及び公開し得、他の遠隔要素に伝達され、共有され得る種々の種類の導出結果を生成するために、情報を処理し得、スマート環境内のスマートデバイスのモニタリング及び制御、並びにスマート環境のモニタリング及び制御に関与し得る。一部の実施形態において、スマート環境内から遠隔要素への情報のエクスポートは、スマートマネージャ及び/又は遠隔データ処理システムによって機密とみなされる情報が、さらなる外部コンピューティング設備、要素、機構、及び個体に意図的に又は意図せずに利用可能にならないことを保証するように、暗号化、アクセス権利、認証、及び他の技術を使用して、厳密に制御及び制限され得る。
【0336】
外部データ処理システム内の種々の処理エンジンは、管理サービス、種々の種類の広告及びコミュニケーション、ソーシャルネットワークのやりとり及び他の電子的社会コミュニケーションの提供を含む多様な目的に関する、並びに種々の種類のモニタリング及びルール生成機能のための、データを処理することができる。種々の処理エンジンは、データ消費者(「DC」)、データ提供者(「DS」)、サービス消費者(「SC」)、及びサービス提供者(「SS」)の特徴をそれぞれが有し得るスマートデバイスと直接的又は間接的に通信する。さらに、処理エンジンは、インターネット、種々の遠隔情報源、並びにさらに遠隔のセンサ、音声、及びビデオフィード及びビデオソースによって得られる情報を含む、種々の他の種類の外部情報にアクセスし得る。
【0337】
一部の実施形態において、知的コントローラは、多様な種類の出力制御信号のいずれかを介してデバイス、機械、システム、又は機構を制御し、制御される実体、知的コントローラ内、又は環境内に埋め込まれたセンサから知的コントローラが受信するセンサ出力から、制御される実体及び環境についての情報を受信する。知的コントローラは、ケーブル又はファイバに基づく通信媒体を介して、制御される実体に接続され得る。あるいは、知的コントローラは、無線通信を含む代替の種類の通信媒体及び通信プロトコルによって、制御される実体と相互接続され得る。一部の実施形態において、知的コントローラ及び制御される実体は、知的コントローラ及び知的コントローラによって制御される機械、デバイス、システム、又は機構の両方を含む単一のシステムとして共に実施及びパッケージ化され得る。制御される実体は、複数のデバイス、機械、システム、又は機構を含み得、知的コントローラは、それ自体が複数の構成要素並びに個別のデバイス及びシステムの間で分散され得る。制御される実体に制御信号を出力し、センサ入力を受信することに加えて、知的コントローラはまた、ヒトのユーザが知的コントローラに即時制御入力を入力し、種々の種類の制御スケジュールを作成及び変更できるユーザインターフェースを提供し、即時制御及びスケジュールインターフェースを、ユーザ操作の処理デバイス又は遠隔自動制御システムを含む遠隔要素に提供することもし得る。一部の実施形態において、知的コントローラは、制御スケジュールを表示するとともに、制御される実体を制御するための知的コントローラへの即時制御指令の入力並びに1つ以上の制御スケジュールの表示、制御スケジュールの作成、及び制御スケジュールの変更を制御するスケジュールインターフェース命令の入力のためのユーザインターフェースを提供する1つ以上の入力構成要素を含む、グラフィックディスプレイ構成要素を提供する。
【0338】
他の実施形態において、知的コントローラは、センサ入力を受信し、1つ以上の制御される実体に制御信号を出力し、ユーザが、知的コントローラによる出力制御信号への変換のために即時制御命令入力を知的コントローラに入力すること、並びに1つ以上の時間区分にわたって望ましい制御される実体の動作挙動を特定する1つ以上の制御スケジュールを作成及び変更することを可能にするユーザインターフェースを提供し得る。ユーザインターフェースは、入力デバイス及びディスプレイデバイスとして知的コントローラ内に含まれ得、携帯電話を含む遠隔デバイスによって提供され得、又は、コントローラ常駐構成要素及び遠隔デバイスの両方によって提供され得る。一般的なクラスの知的コントローラにおけるこれらの基本的な機能及び特徴は、本アプリケーションが対象とする自動制御スケジュール学習を実施できる基礎を提供する。
【0339】
一部の実施形態において、知的コントローラは、1つ以上のプロセッサ、電子メモリ、及び、種々の種類のマイクロコントローラを使用して実施され、該種々の種類のマイクロコントローラは、知的コントローラによって制御される1つ以上の実体、他の知的コントローラ、及びクラウドコンピューティングサーバを介するクラウドコンピューティング設備を含む種々の遠隔コンピューティング設備と知的コントローラがデータ及び命令を交換できるようにする通信ポートと共に実施するマイクロコントローラ及び送受信器を含む。一部の実施形態において、知的コントローラは、様々な種類の通信媒体を介して多様なプロトコルによって通信するための複数の様々な通信ポート及びインターフェースを含む。一部の実施形態において、知的コントローラは、環境内の他の無線対応知的コントローラ、及びモバイル通信キャリアと通信するために無線通信を使用し、また種々の有線通信プロトコル及び媒体のいずれかを使用する。特定の場合において、知的コントローラは、特に制御される実体と共に単一のシステムとしてパッケージ化されるとき、単一の種類の通信プロトコルのみを使用し得る。知的コントローラ内の電子メモリは、揮発性メモリと不揮発性メモリとの両方を含み得、低遅延の高速揮発性メモリは、1つ以上のプロセッサによる制御ルーチンの実行を容易にし、より低速の不揮発性メモリは電源オン/電源オフサイクルに耐える必要がある制御ルーチン及びデータを保存する。特定の種類の知的コントローラは、さらに大容量記憶デバイスを含み得る。
【0340】
一部の実施形態において、知的コントローラは、種々の種類の電子メモリ及び/又は大容量記憶デバイスを含む物理的データ記憶構成要素に保存されたコンピュータ指示によって制御される電子回路及びプロセッサに基づく計算構成要素として実施されるコントローラロジックを含む。物理的データ記憶デバイスに保存され、プロセッサ内で実行されるコンピュータ指示は、現代の多種多様なデバイス、機械、及びシステムの制御構成要素を含み、デバイス、機械、又はシステムの任意の他の構成要素と同様に有形、物理的、及び現実的である。コントローラロジックは、1つ以上の制御される実体の動作挙動を制御する出力制御信号を生成するために、多様な種類の保存された情報及び入力にアクセスしてそれを使用する。コントローラロジックが使用する情報は、1つ以上の保存された制御スケジュール、1つ以上のセンサから受信した出力、即時制御インターフェースを介して受信した即時制御入力、並びにクラウドに基づくデータ処理システムを含む遠隔データ処理システムから受信したデータ、命令、及び他の情報を含み得る。一部の実施形態において、制御出力を生成することに加えて、コントローラロジックは、ユーザが制御スケジュールを作成及び変更することを可能にするインターフェースを提供し、また、情報出力インターフェースを介して、遠隔要素、他の知的コントローラ、及びユーザにデータ及び情報を出力し得る。
【0341】
一部の実施形態において、知的コントローラは、ユーザ又は他の要素から制御入力を受信し、1つ以上の制御される実体の動作を制御する出力制御信号を生成するように、保存された制御スケジュール及び他の情報とともに制御入力を使用する。制御される実体の動作は、センサが埋め込まれた環境を変化させ得る。センサは、センサ出力、又はフィードバックを知的コントローラに返す。このフィードバックに基づいて、知的コントローラは、制御されたシステム動作の特定の目的を達成するために、出力制御信号を変更する。実質的に、知的コントローラは、2つの異なるフィードバックループに従って出力制御信号を変更する。第1の最も直接的なフィードバックループは、制御されたシステム動作の望ましい目的を達成するために、コントローラがその後の出力制御信号又は制御出力変更を決定するために使用できる、センサからの出力を含む。一部の場合において、第2のフィードバックループは、結果として知的コントローラへのその後のユーザの制御及びスケジュール入力を引き出す、ユーザへの環境的な又は他のフィードバックに関与する。言い換えると、ユーザは、生のセンサの出力ではなく、即時制御指令及び制御スケジュールの変更を出力する他の種類のセンサと捉えられ得、又は、より高いレベルのフィードバックループの構成要素と捉えられ得る。
【0342】
一部の実施形態において、知的コントローラは、イベントハンドラ又はイベントループのコンテキスト内で継続的に動作する。始めに、知的コントローラは次の制御イベントに対して待機している。次の制御イベントが起こると、知的コントローラは、一連の条件文において、イベントの種類を決定し、対応する制御ルーチンを呼び出す。即時制御イベントの場合、知的コントローラは、制御信号を発出すること、制御スケジュールを調整すること、及び/又は中間制御インターフェースを介してユーザが特定した他の動作を行うことを知的コントローラに指示する1つ以上の即時制御入力を受信するユーザ相互作用における知的コントローラの部分を行うために、即時制御ルーチンを呼ぶ。制御イベントが予定された制御イベントである場合、例えば、現在の時間が制御スケジュールによって行うべき制御動作を特定した時間に対応するとき、予定された制御イベントを行うために、スケジュール制御ルーチンが呼ばれる。制御イベントがスケジュールインターフェースイベントである場合、知的コントローラは、スケジュールインターフェースを介してユーザとのスケジュール入力又はスケジュール変更の対話における知的コントローラの部分を行うためにスケジュール相互作用ルーチンを呼び出す。制御イベントがセンサイベントの場合、センサイベントを処理するために、知的コントローラによってセンサルーチンが呼ばれる。センサイベントは、センサ出力の変化の結果としてセンサによって生じる割り込み、次に予定されたセンサデータ処理間隔のセンサデータを処理するために知的コントローラを呼び起こすように設定されたタイマーの失効、及び他のそうした種類のイベントを含み得る。イベントが存在イベントであるとき、知的コントローラは存在ルーチンを呼ぶ。存在イベントは、一般に、タイマーの失効、割り込み、又は、次の最新の確率存在スカラー値を決定する、若しくは次の最新の確率存在マップを構築する時間であることを知的コントローラに通知する他のそうしたイベントである。種々の種類のエラーイベント、通信イベント、電源オン及び電源オフイベント、並びに知的コントローラの内部セット構成要素によって生成される種々のイベントを含む、多くのさらなる種類の制御イベントが起こり得、知的コントローラによって処理され得る。多様な知的コントローラが、ヒトの存在及び/又は非存在の検知にどのように応答するかを記述する多様なモデルが存在する。上述したように、知的コントローラの動作時に、知的コントローラは、多種多様な異なる種類の電子的に保存されたデータ及び入力データを継続的に評価して、知的コントローラによって制御される環境内の1つ以上の領域のそれぞれにおけるヒトの存在の確率についての保存された表示を更新する。1つのモデルにおいて、知的コントローラは、主に以下の2つの異なる状態に関して動作する。(1)知的コントローラによる、1つ以上の領域内に1人以上のヒトが存在するとの決定からもたらされる存在状態、及び(2)知的コントローラが、1つ以上の領域内にヒトが存在しないと決定した不在状態、である。
【0343】
予定された制御イベントにおいて、知的コントローラは、知的コントローラによって行われると考えられ得る予定された制御の指示を受信する。予定された制御は、予定された設定点であり得るか、又は、環境パラメータが予定された設定点の時点で所望の値に達するように、知的コントローラが環境パラメータを能動的に調整し始め得る、予定された設定点の前の事前調整時点であり得る。知的コントローラが長期不在状態にあるとき、予定された設定点及び事前調整点は長期不在状態では無視されるので、「予定された制御」のルーチンはもとに戻る。知的コントローラが不在状態にあるとき、知的コントローラは、「予定された制御に対応する設定点を評価する」のルーチンを呼び、設定点を実行するか否かを決定する。ルーチンが真値を返すと、知的コントローラは一時的存在仮定状態に移行し、予定された制御が行われる。そうでない場合、ルーチンが偽値を返すと、「予定された制御」のルーチンが行われる。知的コントローラが存在状態のときに予定された制御が行われることに留意されたい。
【0344】
他の実施形態において、制御された環境において実体が検出されない期間中に予定された制御動作を選択的に行う知的コントローラを多様に実施することは、知的コントローラハードウェア、知的コントローラにおいて使用されるオペレーティングシステム及び他の制御プログラム、並びにプログラミング言語、モジュール構成、データ構造、制御構造、及び他のそうしたパラメータを含むコントローラ機能のための種々の実施パラメータを含む、多様な設計及び実施パラメータのいずれかを変えることによって得ることができる。実体の非存在が不在状態又は長期不在状態への移行をもたらし得る時間の範囲を決定するために、多様な考察が適用され得る。時間の範囲は、例えば、累積センサデータ及び/又は存在確率データから決定され得る。同様に、エネルギー効率の高い設定に戻して不在状態に移行させる前に、一時的な存在仮定状態において次の予定された制御を行うのを待機するための可変しきい値時間量を決定するために、多様なモデル及び計算を使用し得る。さらに、実体、例えば人間などが制御された環境に存在するとみなされない時間に、予定された制御の動作を評価するために、多様な種類の方法及び考察が使用され得る。
【0345】
一部の実施形態において、開示する技術は、閉ループ制御下で動作する処理からのデータに基づいて処理モデルパラメータが同定される技術である閉ループ同定を組み込む。閉ループのデータに基づいて処理モデルを更新又は置換できることが多くの場合望ましく、これは、開ループのデータを生成するために自動制御をオフにして処理を外乱する必要がなくなるためである。しかしながら、閉ループ同定の1つの問題は、標準的な同定技術(例えば、開ループのデータの分析に適したもの)を使用すると、特に真の処理及び雑音モデル構造についていずれの知識もなく直接同定方法を用いるときに、偏った又は不正確なモデルパラメータ推定をもたらし得ることである。処理モデルパラメータの同定において、開示するシステムは、同定されたモデルパラメータの偏りを低減又は回避しながら、閉ループ処理データを使用し得る。これらの技術により、閉ループ処理モデルの自動更新をモデルに基づくコントローラに使用することが可能になる。これらの種類の技術は、実施に応じて種々の利益をもたらし得る。例えば、提案する技術により、閉ループ同定を行うときに偏りを克服し、より正確な処理モデルを生成することができる。さらに、閉ループ処理モデルの自動更新により、プラント実験のためにモデルに基づく制御をオフラインにする必要なくこれらの制御を最高レベルで行うように維持することができ得る。さらに、これらの手法により、処理モデルの更新に必要な時間及び作業を削減することができる。その上、全体的な制御を常時高いレベルで機能させ続けることができ、不十分な品質の生産による損失を低減することができる。
【0346】
1つの手法において、モデルに基づく処理コントローラに関連する閉ループのデータが取得される。これは、例えば、処理デバイスが処理コントローラによる制御ロジックの実行時にデータを収集することを含み得る。収集されたデータは、処理コントローラがその制御ロジックを実行し、少なくとも1つの産業的処理(又はその一部)を制御しようとする際に生成されるルーチン動作データ、例えば、制御された変数の測定値及び操作された変数の調整値などを含み得る。その後、閉ループのデータを分析して、少なくとも1つの外乱モデルを同定する。これは、例えば、処理デバイスがデータを使用してモデル同定アルゴリズムを行うことを含み得る。特定の実施形態において、処理デバイスは、真の雑音モデルについての情報の必要なく雑音モデルの動態を十分にとらえることができる外生項を有する高次自己回帰(ARX)モデル同定アルゴリズムを実施する。高次ARXモデル同定アルゴリズムの一部は、産業的処理に関連する雑音に関連する雑音モデルの同定を含むことができる。その後、外乱モデルの逆数を使用して閉ループのデータをフィルタ処理する。これは、例えば、処理デバイスが閉ループのデータをフィルタ処理するためにこれまでに同定した外乱モデルの逆数を使用することを含み得る。その後、フィルタ処理された閉ループのデータを使用して、処理モデルのモデルパラメータ推定値を推定する。これは、例えば、処理デバイスがフィルタ処理したデータを使用してモデル同定アルゴリズム、例えば、出力誤差(OE)モデル同定アルゴリズム又は他のモデル同定アルゴリズムなどを行うことを含み得る。モデルパラメータは何らかの方法で使用される。これは、例えば、処理デバイスが、新しい処理モデルを生成して、又は、既存の処理モデルを更新して、新しい又は更新された処理モデルを処理コントローラに提供することを含み得る。これはさらに、処理デバイスが処理コントローラの制御ロジックによって使用される処理モデルを更新することを含み得る。
【0347】
(実施例3)
(健康を向上させるために「熱的適応」モデルを適用する)
一部の態様において、生物体の健康、つまり適応できる能力及び持続できる能力は、単に事後の方法(例えば、「表現型Aの生存頻度は表現型Bよりも高い」)ではなく、生物体の直接的な物理的尺度として定量できる、創発特性である。この物理的測定は、生存を含む機能的又は健康的な結果を予測し得、正の結果の可能性を向上させる介入を可能にし、正当化するために使用することができる。
【0348】
(「熱的適応」に基づくモデルの概要)
一部の実施形態において、開示する技術は、健康及び健康の結果を向上させるために「熱的適応」モデルを適用する。一部の実施形態において、開示する技術は、概日リズムの関数として生物学的系の表面熱流束を測定及び学習し、生物学的系の健康状態の指標を推測又は導出するために、そうした測定及び学習を使用し得る。開示する技術は、さらに、指標に基づいて生物学的系の健康、又は健康の結果を向上させるために取るべき行動を推奨し得る。
【0349】
「熱的適応」モデルの特定の前提は以下を含む。
1.概日リズムは予測的システムであり得る。
2.身体感覚器官が概日リズムの予想に合致しないとき、アドレナリン作動性緊張が高まり得る。
3.アドレナリン作動性緊張の高まりは、短時間に集中、学習、又は他の適応的な技術を支援し得る。
4.一部の場合において、生物学的系、例えば人がより長く生きるほど、より多くの経験をし、概日リズムの予想が相互に満たされることのできない可能性が高くなる。
5.一部の場合において、生物学的系が、一式の相互に満たされることのできない予想を有する場合、アドレナリン作動性緊張が慢性的に上昇し得る。
6.アドレナリン作動性緊張の慢性的な上昇は、炎症性障害及び/又は虚弱と関連し得る。
【0350】
「t」モデルから導出される特定の予測は以下を含む。
1.一部の場合において、夜型の健康リスクは、人が成人期に後から夜型になった場合のみ存在する。一部の場合において、生涯の夜型状態が、概日リズムの混乱又は健康リスクを生じさせるわけではない。
2.一部の場合において、満たされることのできない概日の予想を戻すように代謝の経験を「忘れる」あるいは「捨て去る」ことが可能であり得る。
a.一部の場合において、概日記憶は、動的時計システムに記憶され得る。
b.忘れる機序は、蔵本モデルの相転移によって記述される数学に関与し得る。
c.色彩光療法によるエントレインメントは、時計システムからの予想を「消去」することができ得る。
3.一部の場合において、長寿のブルーゾーンの人は、断片化が少なく、とりわけ最も安定した概日リズムを有し得る。
4.満たされることのできない予想による概日の混乱は、うつ病の主要な原因であり得る。
5.概日時計は、24時間より長くなるようにずれた自然な速度を有し得る。
【0351】
(「熱的適応」モデル適用に関連する背景)
知られるように、すべての生命は化学に依存している。相互に関連し、まとめて「代謝」と呼ぶ一連の化学反応が行われる。化学反応には、物質を分解するもの、つまり異化作用と、物質を構築するもの、つまり同化作用がある。これらの化学反応の大部分は、生物学的触媒、例えば酵素の機序によって行われ得る。これらの反応が、当初、補欠分子族、金属、又は他の反応中心によって行われたかどうかにかかわらず、化学反応の比率はアレニウス式によって定義されるように温度依存性を有し得る。一部の場合において、生じた生命にとって、内部温度を調節する「方法」を発展させる必要があったと考えられ、これは、もしそうでなければ、化学反応(代謝)の比率が大きく変化して、持続的で再現性のある機能を実現することができなかっただろうからである。したがって、温度の調節は生命から切り離せないものであり得る。生物体は温度をどのように管理するかが機能に大きく関わるので、これは、部分的に、生物体が従来外温性と内温性とに分けられてきた理由となる。植物相及び動物相にはこれを行う数千の方法があり得るが、それらはすべて本質的に同じ結果、つまり、持続性及び適応性を可能にする生物体の化学反応を行うための再現可能な温度を得る。特に、最初の単細胞生物体又は原始細胞から始める場合に当てはまる。したがって、生命が生じ、存続し、及び適応するために、生物学的系は温度を「調節」する必要があったかもしれない。
【0352】
生物学的系はどのように温度を調節しているのか?生物体内の温度に影響を与える変数は多く存在し得るが、優勢であり得るもの、つまり外気温が存在する。周囲温度を「感知」して応答できるものと、そうでない他のものとの2つの生物体の間において、前者の方が生存する可能性が高いだろう。温度は、代謝率(及び生命のプロセスの化学反応)に影響を与え得る包括的なパラメータであるので、周囲温度を最もよく感知して応答できる生物体が勝つことになり得る。また、一部の場合において、生物体は、特有の温度管理方策/器官を使用して、温度を創発的に管理及び/又は調節することができるようになった。一部の場合において、いわゆる概日リズムは、一式の外部条件下で機能かつ適応/持続するために適切な温度を得るように熱を管理するために生物体が使用し得る少なくとも1つの方法である。一部の場合において、最適な概日リズムは、最適な健康能力、つまり、適応及び持続するために温度に大きく依存する所定の比率で代謝を行えること、をもたらすものである。したがって、その代謝の運命を最適化するように調節された方法で熱を取り除くために環境を予測して同調する能力を持つ生物体が勝ち得る。この予測及び同調は、スペンサーがダーウィンの概念に基づき「適応」と呼んだものであり、資源、つまりなかでも重要な周囲温度への局所的かつ即時のアクセスであり得る。一部の場合において、代謝熱の大部分を導く単一分子が水であるので、水が「適応度」の(大部分の)要因となり得る。一部の実施形態において、開示する技術の態様は、水の熱伝達特性を測定する。これにより、(1)「適応度」の分子的基礎、(2)生命、(3)不全(疾患)の発症に先立つ適応度の変化、疾患の早期検出、及び(4)機能向上の前兆となる熱除去の使用、すなわち健康の第1の測定パラメータ、つまり「熱的適応」を追跡し、解読することができ得る。
【0353】
熱的適応は縄跳びに似ている。例えば、縄跳びをしていると、身体のリズム、つまり力、身長、及びエネルギーに合致する、跳ぶために用いる周波数及び大きさがある。しかしながら、人は、縄を単独で跳ぶのではなく、例えば、勾配、速度、あるいは着地マットの変形を変えることができるトレッドミルにおいて、「実世界」において跳んでいる。人は、外部条件に応じて、それら自体の周波数を有する外力と調和するように、つまり、おそらく下り坂では加速し、上り坂では減速し、砂若しくは他の緩い表面では強く押し、又はコンクリート若しくは他の固い表面では弱く押すように、跳ぶ技術を変える必要がある。
【0354】
一部の態様において、開示する技術は以下の概念に関する。
1.創発性
2.遺伝子型+環境=表現型
3.ダーウィン/スペンサーの適応
4.温度
5.熱
6.熱的適応
7.概日リズム
8.恒常性
9.異常検出/予測
10.健康能力
【0355】
一部の実施形態において、これらの概念はベン図を構築するため使用することができる。一部の実施形態において、このベン図の中央の重複が、開示する技術を示している。
【0356】
(「熱的適応」モデルのさらなる他の詳細)
一部の実施形態において、開示する技術は以下の態様に関する。
1.生存生物体は複雑な化学系であり、その機能は内部温度に大きく依存している。
2.ヒトの機能は、遺伝子型+環境=表現型によって記述され得る。
3.生物体とその環境とのこの一般的な相互関係は、「適応」、つまり「局所的かつ直接的な環境」から資源を効率的に抽出できる能力として、ダーウィン/スペンサーによって記述され得る。
4.本明細書において使用するように、「熱的適応」は、「適応」が熱的である、つまり、生物体の内部温度と環境の温度との差は熱の流れをもたらす、という特に重要な一態様に関する。
5.「適応」は多面的な概念であり、一般に包括的に記述することは困難であり得るが、熱的適応は、大部分が解釈可能、測定可能、及び定量可能な既知の熱物理学に関与し得る。
6.主要な熱サイクルは、すべての生命が自身を適応させる必要があり、周囲温度の重大な変化を生じる昼夜のサイクルであり得る。一部の場合において、時計(概日)タンパク質の主な役割又は初期の役割は、機能を持続するために、日周の温度サイクルにわたって生物体の熱的適応を最適化することである。具体的には、「適切な熱生成パターンを適切な周囲温度パターンに」合致させることである。その際、深部温度の好ましくないゆらぎ(深部代謝の化学反応の比率に大きな影響を与える)を避け、化学/代謝の効率(機能)を高め、適応及び持続を可能にする。
7.熱的適応の見地を通すと、ダーウィン説における生体系の原動力は、環境から最も効率的に自由エネルギーを抽出すること、生物体量の機能的成長(成熟又は生殖)を最大化できるように熱喪失を最小限にしながらこれを行うこと、並びに、健康及び機能の両方に有害な深部温度の好ましくないゆらぎを最小限にするようにこれを行うことであり得る。
8.健康な生物体の代謝の安定性、つまりベースライン/正常な恒常性は、進化上の選択のプロセスから生じた熱的適応の結果であり得る。
9.一部の場合において、熱的適応が生物学の主要な系統立った原理(自然/養育、ゲノム/環境の結節点に確かに位置する)であり、概日リズムは、概日リズムが熱的適応であるという見地を通して経時でその表れを記述し得る。
10.開示する技術は、生物体からの熱の流れを測定することによって、その(特有の)概日リズムを直接表現し得る。
11.開示する技術は、熱流パターンの変化を分析することによって、異常、例えば疾患を検出することができる。
12.開示する技術は、すべてが熱生成又は熱除去の主要な変数である食事、睡眠、及び運動の関数として熱流パターンの変化を分析することによって、熱的適応及び健康を向上させることができる。
13.開示する技術は、熱的適応と機能との関係を学習することによって、恒常性のルールを学習することができる。
14.すべての生体系において代謝を構成し恒常性を支援する化学反応が、昼/夜サイクルに見受けられる範囲にわたって温度に対して極めて感受性が高いものであり得るので、生命が克服しなければならないかもしれない「最初のハードル」は、その体内温度の管理であった。したがって、温度の調節と機能とは切り離せないつながりがある。温度を最も良好に調節するこれらの生物体が、より効率的にエネルギーを使用しながら、最も適応し、適合し、持続し得る。そうでなく、十分に許容されない大きなゆらぎを経験するものは、適応できず、消滅し得る。
【0357】
一部の実施形態において、開示する技術は以下の態様にさらに関する。
1.生物学的系は部分的に創発的な系であり、操作されたものではない。どんなに探しても、単一の化学物質から生命又はその機能を見出すことはできない。
2.化学反応の比率は、一部の場合において温度に比例し得る。
3.最も適応するものの生存は、ジムに行くことではないのかもしれない。
4.自然対養育。
5.地球は回転し、その温度は変化する。
6.物理学の第一法則及び第二法則が部分的に生物学に適用される。
7.熱除去の変化によって病気を予測する。
【0358】
例として、身体は、トレッドミルの傾斜及び速度を検出する感覚機能を有する。しかし、常に感覚に依存していると、常に警戒している状態、つまり慢性的にアドレナリン作動性緊張となり得る。その代わり、身体がトレッドミルの日周パターンを学習して、その後、人には何が予想されるかがほとんど分かる。人は、リラックスすることができ、内部時計がトレッドミルの速度における1日の変化を予測して導くことが可能になる。これにより、生物学的系は、常時の感知に必要とされるよりも、ストレスが少ないモードで動作することが可能になる。仕事のパターンを認識し、それに対応できるように準備することで、ストレスが少なくなる。
【0359】
一部の場合において、1日のパターンと合致しないトレッドミルの速度の急激な変化があった場合、身体は、予想からのずれを特定し、感覚の鋭敏さ、アドレナリン作動性緊張等を高めることによって応答する機序を有し得る。これは、低ストレスパターン追従の挙動で人生の予測可能な部分を乗り切ることを可能にするが、予測不可能なものすべてに迅速に応答する能力を有することをなお可能にする重要なシステムである。また、一部の場合において、これは、まれな危険事象についての学習を促す。この適応性の二重システムは、自身の人生経験に対応するものである。一部の場合において、これは、概日時計遺伝子によって細胞レベルで機能する。
【0360】
一部の実施形態において、開示する技術は、混乱及び満たされることのできないことに対処する。例として、身体の時計が矛盾する2つの状態を一度に予想した場合、例えば、身体がトレッドミルの高速と低速との両方を同時に予想した場合、何が起こるか。この2つの予想の少なくとも1つは常に間違っていることとなる。一部の場合において、生物学的系は健康のように見える可能性があり、感覚によってトレッドミルを身体的になお操縦できるが、重要な生理学的機能を失っていることがある。例えば、概日リズムによってその歩みを誘導することができる、のんびりした状態にもはやなることができない。一部の場合において、2つの予想が相互に満たされることのできないということは、生物学的系が慢性的なストレス下にあり、アドレナリン作動性緊張状態で生活し、不完全で疲労時に誤りを起こしやすい感覚によって導かれていることを意味する。一部の場合において、相互に満たされることのできない予想が経時で蓄積することにより、慢性的なストレス、及び最終的に虚弱をもたらす。一部の場合において、これは、新しい治療につながり得る新しい老化の理論をなす。
【0361】
一部の実施形態において、開示する技術はデータのマイニングに関する。一部の実施形態において、技術モデルは、複雑なものと何らかの価値結果との間の高次元の関係を探すことになる。一部の実施形態において、この複雑性は、適切な予測モデルを記述するために必要なパラメータの数に関する。一部の実施形態において、開示する技術は、数百万又は数十億のパラメータを有する深層学習システムに関する。一部の実施形態において、十億のパラメータを有するモデルを訓練することは、数十億の訓練例を必要とすることとなる。
【0362】
一部の実施形態において、開示する技術は、概日リズムの崩壊を予期する。学習曲線を効果的に短くする2つの要素が存在し得る。第1に、低次元である。健康な生理学は安定した概日リズムを包含し、これは単に6つのパラメータによって(十分に)記述することができる。開示するデバイスによって測定したごく少数の個体で、これらのパラメータの差を決定することができる。例えば、20人程の少ない参加者を必要とし得る。第2に、開示する技術は、身体的な推論から開始して、これらの6つのパラメータが多くの場合にどのように変化するかを強く予想し得る。したがって、開示する技術は、単純な統計によって仮説を試験する必要があるだけであり得る。
【0363】
例えば、純粋に身体的な条件に基づくと、うっ血性心不全の急性期に差し掛かった患者は、6つの概日パラメータの以下のような変化を有し得る。
1.熱ゆらぎのパワースペクトルの下降変化
2.振幅の減少
3.相対振幅の減少
4.概日期の遅延
5.日間安定性の減少
6.日内変動の増加
【0364】
一部の場合において、視床下部による中枢調節下にある体温調節の主要な態様は、末梢の微小血管の血管収縮又は拡張であり、それらは、多くの場合、生理学的熱喪失の最大かつ最も調節可能な構成要素を説明する。一方、躯幹熱喪失は、あまり迅速でない調節システムであり、その幾何学形状に固有の表面対体積比、及び生物学的系の表面近傍の血流を制限する解剖学的構造によって制限される。
【0365】
(「熱的適応」モデルを適用及び/又は利用する例のデバイス)
一部の場合において、躯幹に隣接する関節が熱喪失の第3の選択肢となる。これらの領域(首、脇の下、鼠径部)の血流は、熱喪失の部位として有用となるいくつかの態様を有する、つまり表面に近い、量が多い、血流が一定である。末梢の血管床は大きく調節されており、血流を大部分遮断できる一方、躯幹に隣接する関節は、視床下部が末梢の血管収縮を行ったときでも比較的流れが一定である、中程度のサイズの血液の導管を有する。したがって、これらの部位は、外部調節に理想的な特性を示し得る。実際に、これらは、特定の血管収縮ストレス状況下では、二次的な熱喪失部位として既に使用されている。例えば、ランナーは短距離走後に血管収縮を起こし、腕をあげて脇の下から熱喪失させる、又はしゃがんで鼠径部からの熱喪失を始め得る。
【0366】
一部の実施形態において、開示する技術は、躯幹に隣接する関節に無線制御の温熱要素を配置することによって、体温調節の受動的又は能動的調節を支援するスマート衣服の使用に関する。具体的な実施形態は、設計可能な材料の種類に大きく依存し得る。これらの位置のそれぞれにおいて運動を妨げないことが要求されるので、かさばる熱電ユニットは、部位に直接的に配置される場合に実用的ではないことがある。
【0367】
一部の実施形態において、開示する測定及びヒーリングデバイスは以下の態様を含み得る又は以下の態様に関し得る。
1.躯幹に隣接する関節(首、脇の下、鼠径部)における絡み合った動脈と静脈とを主に冷却するが、また治療的に加熱する。
2.一部の場合において、温熱要素は運動を妨げないことがある。しかしながら、ユーザが(例えば麻痺で)運動不能である場合は、これはあまり重要ではないことがあり得る。
3.能動素子(例えばペルティエ効果冷却器)を小型化し、可撓性にして、関節の部位に埋め込む、又は関節から離して(背中に)配置し、衣服に組み込まれた導管によって関節領域に冷却剤(空気又は流体)を供給し得る。
4.冷却/加熱の比率は、衣服上のハードウェア、モバイルアプリ、又はクラウドにあり得る中央制御ユニットによって制御され、情報はモバイルデバイスを介して中継されて衣服に戻され得る。
5.衣服は、効果的な制御を可能にする関節に温度感受性要素を含み得る。
6.補助センサ、例えば「エネルギーバンド(Enerji band)」などは、加熱冷却効果のグラウンドトゥルースの尺度として末梢の熱流束を検出し得、これは、より精巧な調節を可能にし得る。
7.一部の場合において、調節のタイムスケールは、分、秒、又はミリ秒のスケールであるので、接続は継続的でデジタルであり得、手動で調節されない。
【0368】
(「熱的適応」モデルを適用する例のデバイスの例のユースケース)
一部の場合において、開示するデバイスは、糖尿病患者における調節に使用され得る。糖尿病患者は、種々の方法で熱を失う能力が制限されている。このグループにとって、能動的な冷却効果は有用であり、賢明であり得る。したがって、この場合の調節ロジックは、ユーザにとって快適な程度の冷却を行うことであり得る。例えば、学習したモデルの計算に基づいて、デバイスは、糖尿病患者が週あたり特定の時間冷却衣服を着用した場合、1日あたり特定のkCalだけ糖尿病患者のエネルギーバランスを変化させることができる。
【0369】
一部の場合において、開示するデバイスは、健康な個体における温度調節の増強に使用され得る。健康な個体における体温調節は複雑かつ適応的である。例えば、生理学的な体温調節を有効に増強し得るとき、つまり、(1)激しい運動時の熱喪失の支援、並びに(2)揺れ及び震えがタスクを行うには好ましくないこと(又は危険)になり得る寒い気候における熱生成の支援、がある。
【0370】
一部の場合において、開示するデバイスは、能動治療に使用され得る。例えば、特定の病態に罹患する患者は、低体温/高体温になりやすいとされ得る。治療用衣服は、症状の軽減又は回復の向上のための手段として使用され得る。
【0371】
(健康の独立的尺度としての、経時及び/又は概日サイクルにおける熱除去信号及び活動信号のアライメント)
中核の健康メトリックとして熱的適応を利用するとき、健康は熱生成(概日)リズムと熱除去(概日)リズムとの正の相関として見ることができる。熱の除去は、仕事/活動(熱生成)と熱除去との同等性を維持することで、熱調節を維持するために、必要とされ得る。健康でない(不健康)とは、例えば夜間の熱除去において変動の程度が大きいことによって示され得る。一部の実施形態において、「熱的適応」の追跡によって特定できる疾患/障害の種類は、感染、腫瘍(がん)、代謝障害(例えば、糖尿病、代謝症候群)、外傷性疾患、又は中毒を含む。
【0372】
中核の健康メトリックとして「熱的適応」を利用する一例において、概日リズムサイクル又は複数の概日リズムサイクルにおいて熱生成及び熱除去を追跡することによって実験を行った。熱生成は、活動を測定することで追跡した。
図19は、こうした実験から測定したデータを示す。
【0373】
特に、実験において、測定デバイスを人の手首又は足首に装着した。測定デバイスをブルートゥース(登録商標)ローエナジーによって携帯電話とペアリングした。携帯電話を、数週間にわたってデバイスからのデータを中継及び集約するために使用した。一部の場合において、測定デバイスは、すべてのデータを後で取得することができるクラウド記憶部に自動中継することを含むアプリケーションを使用した。測定デバイスは、加速度計及び温度センサを含む。測定間隔はデバイスのファームウェアによって予定され(例えば、30秒のサンプリングレート)、センサの測定値は正規化された形態でデバイスのメモリに記録された。
【0374】
具体的には、2つの温度、つまり皮膚温度及び気温を、約0.1℃の誤差で測定した。温度差の量を、dT=T皮膚-T空気として算出し、熱除去の代理として解釈した。さらに、アクティグラフィー信号により、30Hzのサンプリングレートで加速度を測定した。測定された加速度を、30秒ごとに単一の値、つまり最も高い絶対値の加速度にダウンサンプリングした。
【0375】
分析に関して、温度差及び活動を5分の分解能における平均値として再度ダウンサンプリングした、すなわち各5分間の全データポイントを共に平均化した。活動信号を、温度差とおよそ同じスケールになるように16で乗算した。この再スケールは、2つの信号の相関に影響を与えない。
【0376】
熱的適応データの非限定的な例である
図19において、すべてのデータポイントが時間帯に対してプロットされている(これは、各データポイントの日付情報を取り除いた日時だけである)。パターンを視覚的により明らかにするために、概日パターンの2つのサイクルを示す(二重プロットのアクトグラム参照)。
図19において、例えば、活動をミントグリーン色で示し、温度差を灰色で示す。
【0377】
図19のデータを、同じプロトコルを使用して以下のように生成した。
データセットを2回示し、2日分のパターンを示す。概日リズムに関連するデータを表示するこの方法は従来からあるもので、1日がどのように次の日へと流れるかをより明確に示す。この点を反映し、新しいラインを赤色で追加した新しいバージョンを以下に含む。
デバイスを手首又は足首に装着する。
デバイスは、加速度計及び温度センサを含む。
測定間隔はデバイスのファームウェアによって予定され(30秒のサンプリングレート)、センサの測定値は正規化された形態でデバイスのメモリに記録される。
2つの温度(皮膚及び空気)は誤差約0.1℃である。
温度差を、dT=T_皮膚-T_空気として算出し、熱除去の代理として解釈する。
アクティグラフィー信号により、30Hzのサンプリングで加速度を測定し、30秒ごとに単一の値(最も高い絶対値の加速度)にダウンサンプリングする。
デバイスをBLEによって携帯電話とペアリングする。
携帯電話を、数週にわたってデバイスからのデータを中継及び集約するために使用する。
当初は自動化されておらず、手作業でデータを送信及び連結した。
さらに最近のアプリのバージョンは、すべてのデータを後で取得することができるAWSクラウド記憶部に自動中継することを含む。
分析を開始するため、温度差及び活動を5分の分解能における平均値として再度ダウンサンプリングし、各5分間の全データポイントを共に平均化する。
活動信号を、温度差とおよそ同じスケールになるように16で乗算する(この再スケールは、2つの信号の相関に影響を与えない)。
すべてのデータポイントを時間帯に対してプロットする(これは、各データポイントの日付情報を取り除いた日時だけである)。
パターンを視覚的により明らかにするために、概日パターンの2つのサイクルを、概日リズム界では典型的であるように示す(二重プロットのアクトグラム参照)。
活動をミントグリーン色で示し、温度差は灰色で示す。
相関スコアを、ダウンサンプリングしたデータセット全体にわたってスピアマンR係数として算出する。
外れ値を除かない。
これまでに記載したダウンサンプリング操作は、単にポイント数を減らして図をより読みやすくすることを意図したものであり、それ以外のデータクリーニングは行われていない。
プロットは5つの個体から生成され、合計で6つのパネルとなるように、1つの個体が2回(足首及び手首の測定で各1回)現れている。
最初の5つのパネルは代謝において健康な個体から導出される一方、最後のパネルは腎不全である不安定型糖尿病患者を示す。
【0378】
図19において、プロットは5つの個体のそれぞれに対して生成され、合計で6つのパネルとなるように、1つの個体が2回(足首及び手首の測定で各1回)現れている。最初の5つのパネルは代謝において健康な個体から導出される一方、最後のパネルは腎不全である不安定型糖尿病患者を示す。
【0379】
さらに、
図19の相関スコアを、ダウンサンプリングしたデータセット全体にわたってスピアマンR係数として算出した。外れ値は除かれず、上述のダウンサンプリング操作は、単にポイント数を減らして図をより読みやすくするものであり、それ以外のデータクリーニングは行われなかった。
【0380】
例として、
図19は、熱特徴から活動の影響を減算する方法である活動補正熱特徴を示す。一部の場合において、熱と活動とが大きくアライメントすることが多く、活動のピークが熱を生じさせ、したがって同時に熱除去のピークも生じさせ得る。しかしながら、身体は熱を貯蔵することができるので、熱のピークと活動のピークとが完全にアライメントしない場合がある。例えば、活動によって熱を生じ、それを貯蔵して後で放出し得る。これは、様々な状況において、健康又は不健康となり得る。
【0381】
熱生成と熱除去とのアライメントの程度は、熱的適応の主要な特徴とみなされ得る。例えば、
図19は、温度差を活動信号と比較するものである。最後のパネルを除いて、温度差と活性信号とは概ね「アライメントされている」又は高い相関性を有している。最後のパネルは糖尿病の対象のデータを示し、データは温度差と活動との間にいくらかの大きな不一致を示す。
【0382】
図19の最後のパネルは、トリアージ又は診断を目的とした人工知能(AI)学習の必要性が限定的であり得るほど、著しい不一致を有するデータを示す。理論に縛られることなく、これは、糖尿病が毛細血管系に異常をきたすこと、及び、皮膚の広範で複雑な毛細血管網が、皮膚を介した熱除去を調節する要因となっていることに留意することによって、説明することができる。AIは必要ないかもしれないが、AIは、熱的適応パターンの特定のニュアンスを追跡し、それらのパターンを特定の疾患/障害と相関させることに有用であると証明し得る。
【0383】
一部の実施形態において、1つが熱生成に関連し、1つが熱除去に関連する2つのメトリックの時間的形状を比較するメトリックとして使用するために、測定デバイスから得られる加速度計特徴と温度差との間のピアソン及びスピアマン相関を算出することができる。他の実施形態において、活動特徴のz変換(又はその特別な場合、フーリエ変換及びラプラス変換)は、2つの信号の周波数及び位相応答の種々の態様を比較することができるように、熱除去のz変換と比較される。さらなる実施形態において、自動符号化畳み込みニューラルネットワークを、熱生成及び熱除去に関するデータの大きなコーパスで訓練して、これらの生理学的時系列の低ランク表現を学習させることができる。無限級数(例えば、z変換又は他のパラメトリック積分変換)として簡潔に表現できない方法で演じられる、熱生成、熱貯蔵、及び熱除去についての別個の時間的特性を示す、一式の直交する「アライメントクラス」に対応しているネットワーク内の畳み込みカーネルが特定され得る。これらの「アライメントカーネル」の活性化を、その後、臨床において又は実験室で検証された健康/疾患の状態に対してマッピングし得る一式の有限の「アライメントクラス」におけるメンバーシップを示すスコアとして、リアルタイムで算出する。
【0384】
図20は、概日リズムの詳細には多様性が存在するものの、すべての健康な人は、仕事と熱除去との間に全面的なアライメントを示すことを示し、また、疾患、傷害、及び老化によって身体が熱を除去する能力が低下し、その結果、熱のバックログが1日にわたって蓄積し得るようになること、及び熱アライメントと呼ばれるメトリックがアライメント/バックログを定量し、健康の変化に極めて感度が高いことを示している。
【0385】
図21は、不健康な対象における熱バックログによる熱の誤アライメントを示し、これを健康な対象の熱アライメントと比較する。
【0386】
図22は、処置の効果を示し、不健康な対象における熱バックログ、及び熱の再アライメントを得るための処置の効果を示す。
【0387】
図23は、「熱的適応」を参照して、活動の向上に対する処置の相関を示す。
【0388】
図24は、「熱的適応」がエネルギー代謝のスケーラブルなバイタルサインであることを示す。生理学的な仕事と熱除去とは、酸素消費と定量的に関連する。ウェアラブルデバイスは、熱及び仕事を継続的に測定するように使用され得、したがって、VO2ストレス試験/CRFのスケーラビリティにおける制限に対処し、克服する。さらに、健康の新たなメトリック、つまり熱的適応をウェアラブルデバイスによって測定し得る。熱的適応は、熱アライメントの尺度、つまり、健康を維持するために深部温度を安定させる熱除去と仕事との数学的関係である。
【0389】
図25は、健康な対象対不健康な対象の「熱的適応」を示す。正常な熱的適応を有する健康な対象において、仕事が行われる日中(白色)に熱が除去される。異常な熱的適応を有する不健康な対象において、仕事が行われていない夜間(灰色)に熱が除去される。
【0390】
図26は、「熱的適応」指標が発症前診断及び適時の処置のためにどのように使用できるかを示す。慢性心不全は、620万人の米国人が罹患し、30日の再入院率が約25%と、米国の医療支出の主要な原因となっている。熱的適応を継続的に定量することによって、心不全の悪化の早期検出と適時の処置とが可能となって、入院を予防することとなり、生命及びお金の節約になる。
【0391】
事例1:(ヒト)
一部の実施形態において、開示する技術は、ヒトの健康を診断するために使用され得る。ヒトにおいて、健康能力を高める要因は、睡眠、身体運動、栄養、生活習慣、又はすべての感覚を介した脳へのインプット(エンリッチメント)であり得る。開示する技術は、健康の向上、適応度の増加、虚弱の軽減、疾患の軽減(予防又は阻止)、寿命の延長、生殖能力の向上、身体能力の向上、胎児/母体の健康(妊娠)の向上、脳/CNSの能力向上、又は外観の変化のために、健康能力を高める要因を調整することに関する推奨を行い得る。
【0392】
一部の実施形態において、開示する技術は、ヒトの疾患を診断するために使用され得る。ヒトにおいて、健康能力が、感染、外傷、医原性、がん、代謝異常、遺伝子異常、不活動、離脱、老化、炎症、栄養障害、栄養過剰、飢餓、中毒、脱エンリッチメント(エンリッチメントの反対)などの要因によって低下し得る。開示する技術は、ヒトの健康能力の向上、及び、適応度の増加、虚弱の軽減、疾患の軽減(予防、阻止)、寿命の延長、生殖能力の向上、身体能力の向上、胎児/母体の健康(妊娠)の向上、脳/CNSの能力向上、又は外観の変化のために、推奨を行い得る。
【0393】
事例2:(非ヒト)
一部の実施形態において、開示する技術は、伴侶動物の健康を診断するために使用され得る。伴侶動物において、健康能力を高める要因は、睡眠、身体運動、栄養、生活習慣、又はすべての感覚を介した脳へのインプット(エンリッチメント)であり得る。開示する技術は、健康の向上、適応度の増加、虚弱の軽減、疾患の軽減(予防又は阻止)、寿命の延長、生殖能力の向上、身体能力の向上、胎児/母体の健康(妊娠)の向上、脳/CNSの能力向上、又は外観の変化のために、伴侶動物における健康能力を高める要因を調整することに関する推奨を行い得る。
【0394】
一部の実施形態において、開示する技術は、伴侶動物の疾患を診断するために使用され得る。伴侶動物において、健康能力が、感染、外傷、医原性、がん、代謝異常、遺伝子異常、不活動、離脱、老化、炎症、栄養障害、栄養過剰、飢餓、中毒、脱エンリッチメント(エンリッチメントの反対)などの要因によって低下し得る。開示する技術は、伴侶動物の健康能力の向上、及び、適応度の増加、虚弱の軽減、疾患の軽減(予防、阻止)、寿命の延長、生殖能力の向上、身体能力の向上、胎児/母体の健康(妊娠)の向上、脳/CNSの能力向上、又は外観の変化のために、推奨を行い得る。
【0395】
一部の実施形態において、開示する技術は、農場の動物の生産、損傷、追跡に使用し得る。
【0396】
一部の実施形態において、開示する技術は、農場の植物の生産、損傷、追跡、又は植物の生産量若しくは品質の変更に使用し得る。
【0397】
事例3:(産業生物学又は合成生物学)
一部の実施形態において、開示する技術は、化学物質、細胞、器官、触媒バイオレメディエーション、又は仮死状態を作製するために使用され得る。
【0398】
事例4:(ヒト、非ヒト、合成/産業のモデル)
一部の実施形態において、開示する技術は、ヒトの健康及び、例えば、栄養的、環境的、物理的ストレスを含む種々の刺激に対するヒトの応答のモデル化を改善するために使用され得る。また、開示する技術は、例えば、入力制限、流出制限、製造要求、及びエネルギー消費制限を含む種々のストレスに対するシステムの応答を含む、合成システム又は産業システムのモデル化を改善するために使用され得る。
【0399】
事例5:(開示する技術の他の実施)
一部の実施形態において、開示する技術の態様は、エネルギー特徴情報又は任意のエネルギー特徴に基づく表現を使用することによって、暗号化を向上させるように適用され得る。開示する技術の態様は、特に炭素クレジット取引の状況で、生態学を向上させるように適用され得る。開示する技術の態様は、特にリアルタイムのリスク配分及び料金設定の実施に関して保険産業の状況で使用されるように適用され得る。開示する技術の態様は、サイバネティックの分野、特にヒューマン/マシンインターフェースの状況で使用されるように適用され得る。開示する技術の態様は、特にエネルギー特徴の表現に関して芸術の分野において使用されるように適用され得る。開示する技術の態様は、特に、エネルギー収支のルールに基づいたバイオミメティクスを使用し得るので、ゲーム産業で使用されるように適用され得る。
【国際調査報告】