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特表2023-542758人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
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  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20231004BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231004BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20231004BHJP
【FI】
C01B32/205
H01M4/587
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550972
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2021114219
(87)【国際公開番号】W WO2023023926
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】董▲曉▼斌
(72)【発明者】
【氏名】王家政
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC19A
4G146AC19B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AD19
4G146AD25
4G146BA27
4G146BB06
4G146BB17
4G146BC04
4G146BC32A
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC36A
4G146BC36B
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を開示した。前記人造黒鉛の粒径Dv50が≦16μmであり、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃であり、ここで、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析によって得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す。本願は、二次電池が良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径Dv50が≦16μmであり、且つ空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛であって、
前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析を行って得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す、
人造黒鉛。
【請求項2】
前記人造黒鉛の粒径Dv50が13μm~16μmであり、オプションとして13μm~15.5μmである、
請求項1に記載の人造黒鉛。
【請求項3】
前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが830℃~840℃であり、オプションとして831℃~838℃である、
請求項1又は2に記載の人造黒鉛。
【請求項4】
前記人造黒鉛の表面には無定形炭素被覆層を有しない、
請求項1~3のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項5】
前記人造黒鉛は、下記(1)~(7)のうちの1つ又は複数を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
(1)前記人造黒鉛の粒径Dv10が≧5μmであり、オプションとして5μm~9μmである。
(2)前記人造黒鉛の比表面積が0.8m/g~1.1m/gであり、オプションとして0.95m/g~1.05m/gである。
(3)前記人造黒鉛のタップ密度が≧1g/cmであり、オプションとして1.10g/cm~1.30g/cmである。
(4)前記人造黒鉛の20000N作用力での粉末圧縮密度が≧1.6g/cmであり、オプションとして1.6g/cm~1.85g/cmである。
(5)前記人造黒鉛の50000N作用力での粉末圧縮密度≧1.7g/cmであり、オプションとして1.7g/cm~2.0g/cmである。
(6)前記人造黒鉛のグラム容量が≧353mAh/gであり、オプションとして353mAh/g~360mAh/gである。
(7)前記人造黒鉛の1回目のクーロン効率が≧95%であり、オプションとして≧95.3%である。
【請求項6】
人造黒鉛を製造する方法であって、
揮発成分を含有する生コークス粉末を提供するステップS10と、
生コークス粉末に対して熱蒸着処理を行い、生コークス粉末のうちの少なくとも一部の揮発成分を生コークス粉末の表面に蒸着させるステップS20と、
熱蒸着処理を経た生コークス粉末に対して黒鉛化処理を行うステップS30と、
降温して排出し、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛を得るステップS40と、を含み、
前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析を行って得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す、
方法。
【請求項7】
ステップS10において、提供された生コークス粉末に含有される揮発成分の質量含有量が≧8.5%であり、オプションとして9%~10.5%である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップS10において、提供された生コークス粉末の粒径Dv10が≧3.0μmである、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ステップS10において、提供された生コークス粉末の粒径Dv50が≦16μmである、
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末を提供する方法は、
生コークス原料をコークス化処理して生コークスを得て、得られた生コークスを粉砕処理して生コークス粉末を得るステップを含み、
オプションとして、粉砕処理が機械的粉砕設備を使用する、
請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
生コークス原料をコークス化処理する温度が≦550℃であり、オプションとして450℃~550℃であり、及び/又は、
生コークス原料をコークス化処理する予熱処理時間が≧5hである、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末、又は揮発成分を含有する生コークス粉末とピッチ粉末との混合物を提供する、
請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップS20において、熱蒸着の温度が250℃~700℃であり、オプションとして500℃~700℃である、
請求項6~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップS30において、黒鉛化処理の温度が2800℃~3000℃である、
請求項6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップS40において、排出温度が≦350℃である、
請求項6~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか1項に記載の人造黒鉛、請求項6~15のいずれか1項に記載の方法により得られた人造黒鉛のうちの一つを含む、負極電極シート。
【請求項17】
請求項16に記載の負極電極シートを含む、二次電池。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項19】
請求項17に記載の二次電池、請求項18に記載の電池モジュールのうちの一つを含む、電池パック。
【請求項20】
請求項17に記載の二次電池、請求項18に記載の電池モジュール、請求項19に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、具体的には、人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、活性イオンが正極と負極との間で往復して挿入・脱離することによって充電と放電され、エネルギー密度が高く、循環寿命が長く、汚染がなく、記憶効果がないなどの優れた特徴を有する。従って、二次電池はクリーンエネルギーとして、環境やエネルギーの持続可能な開発戦略に適応するために、電子製品から電気自動車などの大型装置分野に徐々に普及されている。しかしながら、従来の燃料車の高速でタイムリーな給油と比較すると、電気自動車は一般的に小さい倍率で充電され、常に長い充電時間がかかるため、消費者が走行距離に対して不安になり、電気自動車の急速な普及を制限している。
【発明の概要】
【0003】
本願は、人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供して、活性イオンの不可逆的な消費を低減し、二次電池が良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率及びより長い循環寿命を有することを目的とする。
【0004】
本願の第1の態様は、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛であって、ここで、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析によって得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す、人造黒鉛を提供する。
【0005】
人造黒鉛の粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度がTpeak≧830℃である場合、人造黒鉛の表面の電気化学的活性位置の個数は適切であり、活性も適切であり、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が低く、二次電池が良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率及びより長い循環寿命を有することができる。
【0006】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の粒径Dv50は13μm~16μmである。オプションとして、人造黒鉛の粒径Dv50は13μm~15.5μmである。
【0007】
人造黒鉛の粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、人造黒鉛は高い活性イオンと電子輸送性能及びより優れた急速充電性能を有することができると同時に、人造黒鉛はさらに高い粉末圧縮密度を有することができる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは830℃~840℃である。オプションとして、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは831℃~838℃である。
【0009】
人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakを適切な範囲内にすることで、二次電池は良好な急速充電性能、より高い1回目のクーロン効率及びより長い循環寿命を兼ね備えることができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の表面は無定形炭素被覆層を有しない。
【0011】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の粒径Dv10は≧5μmである。オプションとして、人造黒鉛の粒径Dv10は5μm~9μmである。
【0012】
人造黒鉛の粒径Dv10を適切な範囲内にすることで、人造黒鉛は、活性イオンの不可逆的な消費をより低くするために、より適切な比表面積を有する。
【0013】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の比表面積は0.8m/g~1.1m/gである。オプションとして、人造黒鉛の比表面積は0.95m/g~1.05m/gである。
【0014】
人造黒鉛が適切な比表面積を有することで、人造黒鉛の表面での電解液の副反応を減少させ、二次電池内のガス生成量を低減し、二次電池の循環過程における体積膨張を低減し、さらに負極電極シートと二次電池に高い動力学的性能を持たせることができる。
【0015】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛のタップ密度は≧1g/cmである。オプションとして、人造黒鉛のタップ密度は1.10g/cm~1.30g/cmである。
【0016】
上記実施形態のタップ密度の人造黒鉛を用いることによって、負極電極シートはより適切な細孔率を有することができ、負極電極シートがより優れた電解液浸潤性能を有することを確保し、それにより二次電池はより長い循環寿命とより高いエネルギー密度を有する。
【0017】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の20000N作用力での粉末圧縮密度は≧1.6g/cmである。オプションとして、人造黒鉛の20000N作用力での粉末圧縮密度は1.6g/cm~1.85g/cmである。
【0018】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の50000N作用力での粉末圧縮密度≧1.7g/cmである。オプションとして、人造黒鉛の50000N作用力での粉末圧縮密度は1.7g/cm~2.0g/cmである。
【0019】
上記実施形態の粉末圧縮密度を用いることによって、人造黒鉛はより高いグラム容量を有することができる。当該人造黒鉛を用いた負極電極シートもより高い圧縮密度を有し、二次電池もより高いエネルギー密度を有する。
【0020】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛のグラム容量は≧353mAh/gである。オプションとして、人造黒鉛のグラム容量は353mAh/g~360mAh/gである。
【0021】
本願の任意の実施形態において、人造黒鉛の1回目のクーロン効率は≧95%である。オプションとして、人造黒鉛の1回目のクーロン効率は≧95.3%である。
【0022】
本願の第2の態様は、人工黒鉛を製造する方法であって、S10において、揮発成分を含有する生コークス粉末を提供するステップと、S20において、生コークス粉末に対して熱蒸着処理を行い、生コークス粉末のうちの少なくとも一部の揮発成分を生コークス粉末の表面に蒸着させるステップと、S30において、熱蒸着処理を経た生コークス粉末に対して黒鉛化処理を行うステップと、S40において、降温及び排出し、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛を得るステップと、を含み、ここで、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして、且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析によって得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す、人造黒鉛を製造する方法を提供する。
【0023】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末が含有する揮発成分の質量含有量は≧8.5%である。オプションとして、提供される生コークス粉末が含有する揮発成分の質量含有量は9%~10.5%である。
【0024】
生コークス粉末に高い含有量の揮発成分を含有する時、揮発成分は、製造された人造黒鉛の表面に完全な保護層を蒸着して形成することができ、保護層は人造黒鉛の表面の欠陥位置を十分に修飾し、人造黒鉛の比表面積を低減し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を向上させることができる。
【0025】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末の粒径Dv10は≧3.0μmである。
【0026】
生コークス粉末の粒径Dv10を適切な範囲内にすることで、生コークス粉末内の微粉部分の含有量を低減し、製造された人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費を低減することができる。
【0027】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末の粒径Dv50は≦16μmである。
【0028】
生コークス粉末の粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、製造された人造黒鉛が良好な急速充電性能を有することを確保することができる。
【0029】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末を提供する方法は、生コークス原料をコークス化処理して生コークスを得て、得られた生コークスを粉砕処理して生コークス粉末を得るステップを含む。
【0030】
オプションとして、生コークス原料がコークス化処理される温度は≦550℃である。さらに、コークス原料がコークス化処理される温度は450℃~550℃である。適切なコークス化処理温度を選択することで、揮発成分の含有量が高い生コークスを得ることに有利である。
【0031】
オプションとして、生コークス原料がコークス化処理される予熱処理時間≧5hである。適切な予熱処理時間を選択することで、得られた生コークスのバルク構造の欠陥を改善することができる。
【0032】
オプションとして、粉砕処理時に機械的粉砕設備を使用する。
【0033】
機械的粉砕設備は、衝突によってブロック状の生コークスを破砕して生コークス粉末を得て、衝突時に不規則な形状の生コークス粉末粒子を研磨することができるので、生コークス粉末粒子は不規則な形状から球形形状に変化し、人造黒鉛の表面欠陥位置を減少し、活性イオンの不可逆的な消費を低減することができる。
【0034】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末、又は、揮発成分を含有する生コークス粉末とピッチ粉末との混合物を提供する。
【0035】
ピッチ粉末は、生コークス粉末に含有される揮発成分蒸着して人造黒鉛の表面に完全な保護層を形成するこに役立ち、人造黒鉛粒子の凝集を防ぐことができる。
【0036】
本願の任意の実施形態において、ステップS20において、熱蒸着の温度は250℃~700℃である。オプションとして、熱蒸着の温度は500℃~700℃である。
【0037】
熱蒸着処理の目的は、生コークス粉末内の揮発成分を人造黒鉛の表面の保護層に変換して人造黒鉛の表面の欠陥位置を修飾し、人造黒鉛の比表面積を低減し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を向上させることである。
【0038】
本願の任意の実施形態において、ステップS30において、黒鉛化処理の温度は2800℃~3000℃である。
【0039】
黒鉛化処理は、人造黒鉛のバルク構造欠陥を効果的に除去し、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率及び循環寿命を向上させることができる。
【0040】
本願の任意の実施形態において、ステップS40において、排出温度は≦350℃である。
【0041】
適切な排出温度を選択することで、人造黒鉛の表面活性基の個数を低減し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、人造黒鉛はより高い1回目のクーロン効率を有し、さらに二次電池がより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができる。
【0042】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に記載の人造黒鉛、本願の第2の態様に記載の方法によって製造された人造黒鉛のうちの1種を含む負極電極シートを提供する。
【0043】
本願の第4の態様は、本願の第1の態様に記載の人造黒鉛、本願の第2の態様に記載の方法によって製造された人造黒鉛、本願の第3の態様に記載の負極電極シートのうちの少なくとも1種を含む二次電池を提供する。
【0044】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0045】
本願の第6の態様は、本願の第4の態様の二次電池、本願の第5の態様の電池モジュールのうちの1種を含む電池パックを提供する。
【0046】
本願の第7の態様は、本願の第4の態様の二次電池、本願の第5の態様の電池モジュール、本願の第6の態様の電池パックのうちの少なくとも1種を含む装置を提供する。
【0047】
本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は、本願が提供する二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本願の実施例の技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下に本願の実施例に対して必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下に記載されている図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎない。当業者であれば、創造的労力を要することなく、添付される図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本願の二次電池の一実施形態の概略図である。
図2】本願の二次電池の一実施形態の分解概略図である。
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の概略図である。
図4】本願の電池パックの一実施形態の概略図である。
図5図4の分解図である。
図6】本願の二次電池用が電源として使用される電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本願の人造黒鉛及びその製造方法、負極電極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態については、図面を参照して説明する。しかし、不要な詳細説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細説明又は実際の同じ構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを回避し、当業者による理解を容易にするためである。また、図面と以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されており、特許請求の範囲に記載されている主題を限定することを意図するものではない。
【0050】
本願で開示される「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、所定の範囲は一つの下限と一つの上限を選択することによって限定され、選択された下限と上限は特定の範囲の境界を限定する。このように限定された範囲は、端値が包括的又は排他的であり、任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲が列挙されている場合、60~110と80~120の範囲も予測されると理解されるべきである。また、最小範囲値1と2が列挙され、最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5という範囲は全て予測できる。本願において、特に明記しない限り、数値範囲「a~b」はaとbとの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を表し、ここで、aとbは両方とも実数であり。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書に「0~5」の間の全ての実数が列挙され、「0~5」がこれらの数値の組み合わせの省略表現に過ぎないことを表す。また、あるパラメータが≧2の整数として表される場合、当該パラメータが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることを開示すると同等である。
【0051】
特別な説明がない限り、本願の全ての実施形態及びオプションとする実施形態を互いに組み合わせて、新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0052】
特別な説明がない限り、本願の全ての技術的特徴及びオプションとする技術的特徴を互いに組み合わせて、新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0053】
特別な説明がない限り、本願の全てのステップを順番で実行することができ、ランダムに実行することもでき、好ましくは順番で実行することである。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)を含むことは、前記方法が順番で実行されるステップ(a)と(b)を含むことができ、順番で実行されるステップ(b)と(a)を含むこともできることを表す。例えば、上記方法がステップ(c)を含むこともできることは、ステップ(c)を任意の順序で前記方法にさらに追加できることを表す。例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含むことができ、ステップ(a)、(c)及び(b)を含むこともでき、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含むこともできることを表す。
【0054】
特別な説明がない限り、本願で言及される「含む」、「有する」及び「備える」はオープンエンド又はクローズエンドを表すことができる。例えば、前記「含む」、「有する」及び「備える」は、列挙されていない他の成分を含むことができ、列挙されている成分のみを含むこともできる。
【0055】
特別な説明がない限り、本願において、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という用語は「A、B、又はAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(又は存在)且つBが偽(又は存在しない)であること、Aが偽(又は存在しない)Bが真(又は存在)であること、又はAとBの両方が真(又は存在)であることは、いずれも「A又はB」という条件を満たす。
人造黒鉛
【0056】
二次電池の急速充電能力を向上させる重要なポイントは、負極電極シートと負極活物質の性能を向上することである。高いグラム容量と急速充電能力を有する黒鉛を製造するために、従来技術は、一般的に粒径を低減し又は黒鉛の表面に炭素を被覆するプロセスを使用している。通常、黒鉛の粒径が小さくなるほど、黒鉛の急速充電性能がより優れる。しかし、従来技術では、小さい粒径(例えばDv50≦16μm)を有する黒鉛を得るために常に粉砕処理時の強度を高めるため、黒鉛の表面に欠陥位置が多く発生し、活性イオンの不可逆的な消費を増加させる。黒鉛の表面に被覆された炭素は、一般的に軟質炭素又は硬質炭素などの無定形炭素である。このような無定形炭素は、熱安定性が低く、分解しやすく、且つ表面の活性基の個数が多い。従って、従来のプロセスによって得られた黒鉛表面の電気化学的活性位置が多く、活性が強く、それにより二次電池の使用過程における活性イオンの不可逆的な消費が増加し、二次電池がより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができない。
【0057】
通常、黒鉛の粒径が小さくなるほど、黒鉛の比表面積が大きくなり、黒鉛表面の電気化学的活性位置が多くなり、活性イオンの不可逆的な消費が多くなり、二次電池の1回目のクーロン効率が小さくなり、循環寿命が短くなる。発明者は、小さい粒径の黒鉛表面の電気化学的活性位置又は活性基の個数を合理的に制御することで、二次電池が良好な急速充電性能を前提として、より高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができることを予期せずに発見した。
【0058】
本願の実施形態の第1の態様は、二次電池により高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有させ、表面に無定形炭素被覆層を有せず且つ急速充電能力を有する人造黒鉛を提供する。前記人造黒鉛の粒径Dv50は≦16μmであり、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは≧830℃である。ここで、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして、且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析によって得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す。
【0059】
発明者は、大量の研究により、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが人造黒鉛の表面の電気化学的活性位置又は活性基の個数に緊密に関連し、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakの数値の大きさが人造黒鉛の表面の電気化学的活性位置又は活性基の数を直接且つ正確に反映することができ、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが高いほど、人造黒鉛の表面の電気化学的活性位置又は活性基の個数が少さくなることを予期せずに発見した。発明者は、従来の粒径Dv50が≦16μmである人造黒鉛などの小さい粒径の人造黒鉛の比表面積が通常に大きく、表面の電気化学的活性位置又は活性基の個数が多く、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakがいずれも小さく、二次電池の使用過程において、従来の人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が高いため、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命をさらに向上させにくいことを発見した。
【0060】
発明者は、さらに研究により、人造黒鉛の粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃であると、人造黒鉛の表面の電気化学的活性位置の個数が適切であり且つその活性も適切であり、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が低くなり、二次電池が良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができることを発見した。
【0061】
人造黒鉛は、粒径Dv50が≦16μmである場合、良好な急速充電能力を有する。同時に、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃であること場合は、人造黒鉛の表面電気化学的活性位置と活性基の個数がいずれも少さくなり、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が低くなり、二次電池がより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を兼ね備えることができることを表す。
【0062】
人造黒鉛の表面は無定形炭素被覆層を有しないため、人造黒鉛の熱安定性がより高い。
【0063】
発明者は、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが<830℃である場合、二次電池の循環寿命が人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費に強く関連し、人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である場合、二次電池の循環寿命の長さが人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費に弱く関連することをさらに予期せずに発見した。この場合は、二次電池性能をさらに改善することは、主に正極電極シート、セパレータ、電解質などの改善に依存する。
【0064】
本願の人造黒鉛の優位性は、負極活物質の1回目のクーロン効率が正極活物質の1回目のクーロン効率より低い電池システム、負極活物質の活性イオンに対する不可逆的な消費が循環寿命を支配する電池システムにおいて、より良く表現されることができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、≧830℃、≧831℃、≧832℃、≧833℃、≧834℃、≧835℃、≧836℃、≧837℃、≧838℃、≧839℃、又は≧840℃であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、830℃~840℃、831℃~840℃、832℃~840℃、833℃~840℃、834℃~840℃、835℃~840℃、836℃~840℃、830℃~839℃、831℃~839℃、832℃~839℃、833℃~839℃、834℃~839℃、835℃~839℃、836℃~839℃、830℃~838℃、831℃~838℃、832℃~838℃、833℃~838℃、834℃~838℃、835℃~838℃、830℃~837℃、831℃~837℃、832℃~837℃、833℃~837℃、834℃~837℃、830℃~836℃、831℃~836℃、832℃~836℃、又は833℃~836℃であってもよい。
【0067】
人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakを適切な範囲内にすることで、二次電池が良好な急速充電性能、より高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命をより良く兼ね備えることができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の粒径Dv50は、≦16μm、≦15.7μm、≦15.5μm、≦15.2μm、≦15μm、≦14.7μm、≦14.5μm、≦14.2μm、≦14μm、≦13.7μm、又は≦13.5μmであってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の粒径Dv50は、13μm~16μmであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の粒径Dv50は、13μm~15.5μmであってもよい。さらに、前記人造黒鉛の粒径Dv50は、13.5μm~15.5μmであってもよい。
【0070】
人造黒鉛の粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、人造黒鉛は高い活性イオンと電子伝導性能及びより優れた急速充電性能を有することができると同時に、高い粉末圧縮密度をさらに有することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の粒径Dv10は≧5μmであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の粒径Dv10は5μm~9μmであってもよい。さらに、前記人造黒鉛の粒径Dv10は7μm~9μmであってもよい。
【0072】
人造黒鉛の粒径Dv10を適切な範囲内にすることで、人造黒鉛は、活性イオンの不可逆的な消費をより低くするために、より適切な比表面積を有することができる。
【0073】
人造黒鉛のDv10、Dv50は当該分野に公知の意味であり、当該分野に公知の機器や方法によって測定することができる。例えば、GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒子サイズアナライザー(例えば、Mastersizer 3000)を使用して測定することができる。ここで、Dv10は材料の累積体積分布百分率が10%に達する時に対応する粒径を示し、Dv50は材料の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径を示す。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の比表面積は0.8m/g~1.1m/gであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の比表面積は0.95m/g~1.05m/gであってもよい。
【0075】
人造黒鉛が適切な比表面積を有することで、人造黒鉛の表面での電解液の副反応を減少させ、二次電池内のガスの発生量を低減し、二次電池の循環過程における体積膨張を低減することができる。人造黒鉛が適切な比表面積を有することで、それが適切な電気化学的反応活性をさらに有させ、それにより負極電極シートと二次電池が高いダイナミック性能を有する。また、人造黒鉛が適切な比表面積を有することで、人造黒鉛と接着剤との間に強い結合力が有し、負極電極シートの凝集力と接着力を向上させ、負極電極シートの循環過程における体積膨張を低減することもできる。
【0076】
人造黒鉛の比表面積は当該分野に公知の意味であり、当該分野に公知の機器や方法によって測定することができる。例えば、GB/T 19587-2017を参照し、窒素ガス吸着法による比表面積分析試験方法を使用してテストし、BET(BrunauerEmmett Teller)方法によって算出することができる。ここで、窒素ガス吸着法による比表面積分析試験は米国Micromeritics社のTri-Star 3020型の比表面積孔径分析試験機で実施することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛のタップ密度は≧1g/cmであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛のタップ密度は1.10g/cm~1.30g/cmであってもよい。
【0078】
上記実施形態のタップ密度を有する人造黒鉛を用いることで、負極電極シートは、より適切な細孔率を有することができ、負極電極シートがより優れた電解液浸潤性能を有することを確保し、それにより二次電池がより長い循環寿命を有する。また、人造黒鉛の上記タップ密度は、より高いグラム容量を取得して二次電池のエネルギー密度を向上させることに有利である。
【0079】
人造黒鉛のタップ密度は当該分野に公知の意味であり、当該分野に公知の機器や方法によって測定することができる。例えば、GB/T 5162-2006を参照し、粉末タップ密度試験機(例えば、丹東百特BT-301)を使用してテストすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の20000N作用力での粉末圧縮密度は≧1.6g/cmであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の20000N作用力での粉末圧縮密度は1.6g/cm~1.85g/cmであってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の50000N作用力での粉末圧縮密度は≧1.7g/cmであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の50000N作用力での粉末圧縮密度は1.7g/cm~2.0g/cmであってもよい。
【0082】
上記実施形態の粉末圧縮密度を用いることで、人造黒鉛がより高いグラム容量を有することができる。当該人造黒鉛を用いた負極電極シートもより高い圧縮密度を有し、二次電池もより高いエネルギー密度を有する。
【0083】
人造黒鉛の粉末圧縮密度は当該分野に公知の意味であり、当該分野に公知の機器や方法によって測定することができる。例えば、GB/T 25 24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えば、UTM7305)を使用してテストすることができる。例えば、一定量の粉末を圧縮専用型に配置し、様々な圧力を設定し、機器から様々な圧力での粉末の厚さを読み取り、様々な圧力での圧縮密度を計算して得ることができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛のグラム容量は≧353mAh/gであってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛のグラム容量は353mAh/g~360mAh/gであってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記人造黒鉛の1回目のクーロン効率は≧95%であってもよい。オプションとして、前記人造黒鉛の1回目のクーロン効率は≧95.3%であってもよい。
人造黒鉛の製造方法
【0086】
本願の実施形態の第2の態様は、人造黒鉛を製造する方法であって、S10において、揮発成分を含有する生コークス粉末を提供するステップと、S20において、生コークス粉末に対して熱蒸着処理を行い、生コークス粉末のうちの少なくとも一部の揮発成分を生コークス粉末の表面に蒸着させるステップと、S30において、熱蒸着処理を経た生コークス粉末に対して黒鉛化処理を行うステップと、S40において、降温して排出し、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛を得るステップと、を含み、ここで、前記人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは、前記人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして、且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析によって得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークのピーク温度を指す、人造黒鉛を製造する方法を提供する。
【0087】
本願の人造黒鉛の製造方法は、表面の活性イオンの不可逆的な消費が低く、表面が無定形炭素被覆層を有せず、且つ急速充電能力を有する人造黒鉛を得ることができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末に含有する揮発成分の質量含有量は≧8.5%であってもよい。オプションとして、提供される生コークス粉末に含有する揮発成分の質量含有量は9%~10.5%であってもよい。生コークス粉末が高い含有量の揮発成分を含む場合、揮発成分は、製造された人造黒鉛の表面に完全な保護層を蒸着して形成することができ、保護層は人造黒鉛の表面の欠陥位置を修飾し、人造黒鉛の比表面積を低減し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を向上させることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末の粒径Dv10は≧3.0μmであってもよい。生コークス粉末の粒径Dv10を適切な範囲内にすることで、生コークス粉末内の微粉部分の含有量を低減し、製造された人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費を低減することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、提供される生コークス粉末の粒径Dv50は≦16μmであってもよい。生コークス粉末の粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、製造された人造黒鉛が良好な急速充電性能を有することを確保できる。
【0091】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、Dv10が≧3.0μmであり、Dv50が≦16μmである生コークス粉末を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末を提供する方法は、生コークス原料をコークス化処理して生コークスを得て、得られた生コークスを粉砕処理して生コークス粉末を得るステップを含む。
【0093】
「生コークス原料」とは、処理を経て「生コークス」を得ることができる成分を指し、即ち生コークスを製造する原料である。オプションとして、前記生コークス原料は、石油系原料、石炭系原料のうちから選択される1つ又は複数であってもよい。例として、石油系原料は、重油、残油、真空残油のうちから選択される1つ又は複数であり、石炭系原料は主に石炭ピッチから選択される。ここで、重油、残油、真空残油は通常に石油精製プロセスで製造され、石炭ピッチは通常に石炭乾留プロセスで製造される。「生コークス」とは、生コークス原料がコークス化処理により得られたブロック状の生成物を指す。「生コークス」と「生コークス粉末」は、構成が完全に同じであり、その揮発成分の含有量も同じであり、粒子のサイズのみが異なる。「生コークス」は、粉砕処理により「生コークス粉末」になる。
【0094】
オプションとして、生コークス原料のコークス化処理は遅延コークス化装置内で行われる。遅延コークス化装置は、加熱炉とコークス塔を含む。遅延コークス化プロセスとは、まず生コークス原料を加熱炉内で必要なコークス化処理温度まで急速に加熱し、次にコークス塔に入れて、コークス塔内で予熱、コークス消火などのプロセスによって生コークスを生成することを指す。
【0095】
オプションとして、生コークス原料がコークス化処理される温度は≦550℃であってもよい。さらに、生コークス原料がコークス化処理される温度は450℃~550℃であってもよい。適切なコークス化処理温度を選択することで、揮発成分の含有量が高い生コークスを得ることに有利である。また、コークス化処理温度が高くなりすぎると、生コークスの脆性が増加し、粉砕処理により生コークス粉末を製造する時に、微粉を生成しやすくなる。
【0096】
オプションとして、生コークス原料をコークス化処理する予熱処理時間は≧5hであってもよい。適切な予熱処理時間を選択することで、得られた生コークスのバルク構造欠陥を低減することができる。予熱処理時間が短くなりすぎると、得られた生コークスのバルク構造欠陥が多くなり、且つ生コークスを粉砕処理する時、製造された生コークス粉末が破裂しやすくなり、より多くの欠陥を引き起こす。同時に、予熱処理時間が短くなりすぎると、生コークス粉末粒子内の活性イオンが不可逆的な挿入・脱離する位置の個数が多くなり、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費を増加させ、二次電池の1回目のクーロン効率及び循環寿命を低下させる。
【0097】
オプションとして、生コークス原料のコークス化処理において、コークス消火の時間は≧5hであってもよい。
【0098】
オプションとして、粉砕処理時に機械的粉砕設備を使用する。さらに、粉砕処理時にインパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用する。通常、粒子粉砕処理時にロール圧延粉砕処理設備又は機械的粉砕設備を使用することができる。ここで、ロール圧延粉砕処理設備は、押圧によってブロック状生コークスを粉砕して生コークス粉末を得るものである。しかし、押圧によって得られた生コークス粉末の表面に欠陥位置が多く、同時に押圧後の生コークス粉末粒子の内部が破裂しやすく、さらに生コークス粉末のバルク構造欠陥も多くなる。また、押圧によって得られた生コークス粉末に微粉の含有量が多く、微粉の表面に大量の欠陥位置が存在するため、活性イオンに対する不可逆的な消費を増加させる。機械的粉砕設備は衝突によってブロック状の生コークスを粉砕して生コークス粉末を得て、衝突時に不規則な形状の生コークス粉末粒子を研削することができ、生コークス粉末粒子が不規則な形状から球形形状へ変化し、人造黒鉛の表面の欠陥位置を減少し、活性イオンの不可逆的な消費を低減する。
【0099】
いくつかの実施形態において、ステップS10において、揮発成分を含有する生コークス粉末、又は、揮発成分を含有する生コークス粉末とピッチ粉末との混合物を提供することができる。ピッチ粉末は、生コークス粉末に含有する揮発成分が蒸着して人造黒鉛の表面に完全な保護層を形成することに役立ち、人造黒鉛粒子の弱い凝集を回避することができる。人造黒鉛粒子が弱い凝集が発生した後、負極電極シートの冷間圧延プロセスにおいて弱い凝集である人造黒鉛粒子は圧力の作用下で解けるため、このプロセスによって人造黒鉛の表面電気化学的活性位置の個数が増加して活性イオンの消耗も増加し、それにより二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を低減する。
【0100】
オプションとして、前記ピッチ粉末の粒径Dv50は前記生コークス粉末の粒径Dv50より小さい。この時、各生コークス粉末に平均して複数のピッチ粉末が存在することができ、且つピッチ粉末と生コークス粉末との接触面積が小さく、ピッチ粉末が受熱されて軟化した後に生コークス粉末との接着作用が弱くなり、生コークス粉末での揮発成分の揮発及び生コークス粉末粒子表面での蒸着に影響を与えない。ピッチ粉末の粒径が大きくなると、複数の生コークス粉末が1つのピッチ粉末を共有し、ピッチ粉末が受熱されて軟化した後に生コークス粉末との接触面積が大きく、接着作用が強くなり、生コークス粉末での揮発成分の揮発と生コークス粉末表面での蒸着に影響を与える。
【0101】
オプションとして、前記生コークス粉末の質量に基づいて、前記ピッチ粉末の質量百分含有量は≦5%であってもよい。さらに、前記ピッチ粉末の質量百分含有量は≦2%であってもよい。
【0102】
オプションとして、前記ピッチ粉末の軟化点は≦250℃であってもよい。さらに、前記ピッチ粉末の軟化点は≦200℃であってもよい。ピッチの軟化点は、受熱されて軟化して垂れた時の温度であり、一定の程度でピッチの温度安定性を示す。適切な軟化点を有するピッチ粉末を選択することで、生コークス粉末の粘着又は凝集を防止することができる。
【0103】
GB/T 4507-2014を参照してピッチ粉末の軟化点をテストすることができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、ステップS20において、前記熱蒸着の温度は250℃~700℃であってもよい。オプションとして、前記熱蒸着の温度は500℃~700℃であってもよい。
【0105】
熱蒸着処理の目的は、生コークス粉末内の揮発成分を人造黒鉛の表面の保護層に変換して人造黒鉛の表面の欠陥位置を修飾し、人造黒鉛の比表面積を減少し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を向上させることである。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記熱蒸着処理プロセスは段階的に行うことができる。例えば、まずある低い温度(例えば、250℃~450℃、オプションとして350℃~450℃)までに昇温して一定の時間熱蒸着し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、次にある高い温度(例えば、500℃~700℃)までに引き続き昇温し、生コークス粉末内の熱蒸着されていない揮発成分を完全に揮発させ、製造された人造黒鉛の弱い凝集又は接着を防止する。
【0107】
いくつかの実施形態において、ステップS20において、前記熱蒸着時間は≧1hであってもよい。オプションとして、前記熱蒸着時間は1h~3hであってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、ステップS20において、前記熱蒸着処理は、縦型撹拌釜、横型撹拌釜、横型ドラム炉で行うことができる。前記熱蒸着処理は、加熱しながら撹拌する条件下で行うことができ、生コークス粉末内の揮発成分が十分に蒸着されることに有利である。
【0109】
いくつかの実施形態において、ステップS30において、前記黒鉛化処理の温度は2800℃~3000℃であってもよい。黒鉛化処理は、人造黒鉛のバルク構造欠陥を効果的に除去し、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、二次電池の1回目のクーロン効率と循環寿命を向上させることができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、ステップS30において、前記黒鉛化処理の時間は6h~8hであってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、ステップS30において、前記黒鉛化処理はアチソン黒鉛化設備内で行うことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、ステップS40において、前記排出温度は≦350℃であってもよい。排出温度が高くなりすぎると、人造黒鉛の表面は空気の酸化作用下で大量の活性基(例えば、ダングリングボンド)が生成され、人造黒鉛と二次電池の1回目のクーロン効率を低減する。従って、適切な排出温度を選択することで、人造黒鉛の表面活性基の数を減少し、活性イオンに対する不可逆的な消費を低減し、人造黒鉛がより高い1回目のクーロン効率を有し、二次電池がより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、ステップS10により提供される生コークス粉末の粒径Dv50対ステップS40で得られた人造黒鉛の粒径Dv50の比は≧0.85であってもよく、オプションとして、ステップS10により提供される生コークス粉末の粒径Dv50対ステップS40で得られた人造黒鉛の粒径Dv50の比は0.85~0.95であってもよい。この時、製造された人造黒鉛には明らかな接着又は凝集が発生しないことを確保することができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、ステップS10により提供される生コークス粉末の比表面積対ステップS40で得られた人造黒鉛の比表面積の比は≧1.5であってもよい。オプションとして、ステップS10により提供される生コークス粉末の比表面積対ステップS40で得られた人造黒鉛の比表面積の比は≧1.76であってもよい。この時、生コークス粉末内の揮発成分が十分に蒸着されて人造黒鉛の表面の欠陥位置を修飾することを確保することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、人造黒鉛を製造する方法は、揮発成分の質量含有量が≧8.5%であり、オプションとして揮発成分の質量含有量が9%~10.5%である生コークス粉末を提供するステップと、250℃~700℃で、オプションとして500℃~700℃下で生コークス粉末を熱蒸着処理して生コークス粉末のうちの少なくとも一部の揮発成分を生コークス粉末の表面に蒸着させるステップと、2800℃~3000℃下で熱蒸着処理された生コークス粉末を黒鉛化処理するステップと、温度が≦350℃までに降温して排出し、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛を得るステップと、を含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、人造黒鉛を製造する方法は、揮発成分の質量含有量が≧8.5%であり、Dv10が≧3.0μmであり、Dv50が≦16μmである生コークス粉末を提供するステップと、250℃~700℃で、オプションとして500℃~700℃下で生コークス粉末を熱蒸着処理して生コークス粉末のうちの少なくとも一部の揮発成分を生コークス粉末の表面に蒸着させるステップと、2800℃~3000℃下で熱蒸着処理された生コークス粉末を黒鉛化処理するステップと、温度が≦350℃になるまでに降温して排出し、粒径Dv50が≦16μmであり、空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃である人造黒鉛を得るステップと、を含むことができる。
二次電池
【0117】
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池を放電した後に充電によって活物質を活性化して引き続き使用可能な電池を指す。
【0118】
通常、二次電池は、正極電極シート、負極電極シート、セパレータ及び電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極電極シートと負極電極シートとの間に往復して挿入・脱離する。セパレータは正極電極シートと負極電極シートとの間に設置され、主に正極と負極との短絡を防止する役割を果たし、同時に活性イオンを通過させる。電解質は正極電極シートと和負極電極シートとの間に活性イオンを伝送する役割を果たす。
[負極電極シート]
【0119】
本願の二次電池において、負極電極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも1つの表面に設置された負極膜層を含む。例えば、負極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のうちのいずれか1つ又は2つに設置されている。
【0120】
本願の二次電池において、負極膜層は通常、負極活物質、オプションとする接着剤、オプションとする導電剤及び他のオプションとする助剤を含む。負極膜層は通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間圧延により形成される。負極スラリーは通常、負極活物質、オプションとする導電剤、オプションとする接着剤、他のオプションとする助剤を溶媒に分散して均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。
【0121】
本願の二次電池において、負極活物質は、本願の実施形態の第1の態様の人造黒鉛、本願の実施形態の第2の態様の方法によって製造された人造黒鉛のうちの1種を含むことができる。
【0122】
本願の二次電池において、負極活物質は、当該分野に公知の二次電池用の他の負極活物質をさらに含むことができる。例として、他の負極活物質は、天然黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの1つ又は複数を含むことができる。ケイ素系材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素、ケイ素-炭素複合物、ケイ素-窒素複合物及びケイ素合金材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。スズ系材料は、スズ単体、酸化スズ及びスズ合金材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池用の負極活性物質として使用できる従来の既知の他の材料も使用することができる。これらの他の負極活物質は、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0123】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数を含むことができる。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1つ又は複数を含むことができる。他のオプションとする助剤は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含むことができる。
【0124】
本願の二次電池において、負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の例として、銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層を含むことができる。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちから選択する1つ又は複数であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択することができる。
[正極電極シート]
【0125】
本願の二次電池において、正極電極シートは、正極集電体と正極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、且つ正極活物質を含む正極膜層を含む。例えば、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、正極膜層は正極集電体の対向する2つの表面のうちのいずれか1つ又は2つに設置されている。
【0126】
本願の二次電池において、正極活物質は、当該分野に公知の二次電池用の正極活物質を用いることができる。例えば、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、ペリドット構造のリチウム含有リン酸塩及びそれらの各自の改質化合物のうちの1つ又は複数を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びそれらの改質化合物のうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されない。ペリドット構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びそれらのそれぞれの改質化合物のうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池用の正極活物質として使用できる従来の既知の他の材料も使用することができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、二次電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活物質は、式1に示されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0128】
LiNiCo 式1
【0129】
式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1、MはMn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちから選択される1つ又は複数、AはN、F、S及びClのうちから選択される1つ又は複数。
【0130】
本願において、上記各材料の改質化合物は、正極活物質をドーピング改質し又は表面コーティング改質するものであってもよい。
【0131】
本願の二次電池において、正極膜層は通常、正極活物質、オプションとする接着剤及びオプションとする導電剤を含む。正極膜層は通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間圧延によって形成される。正極スラリーは通常、正極活物質、オプションとする導電剤、オプションとする接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散し、均一に撹拌して形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。例として、正極膜層として使用される接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンターポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンターポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0132】
本願の二次電池において、正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の例として、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層を含むことができる。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちから選択する1つ又は複数であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択することができる。
[電解質]
【0133】
本願には、二次電池の電解質の種類に対して、具体的に限定されず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質と液体電解質(即ち電解液)のうちから選択する少なくとも1種であってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、電解質は、電解質塩と溶媒を含む電解液を使用する。
【0135】
本願には、電解質塩の種類に対して、具体的に限定されず、必要に応じて選択することができる。いくつかの実施形態において、例として、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート)のうちから選択する1つ又は複数であってもよい。
【0136】
本願には、溶媒の種類に対して、具体的に限定されず、必要に応じて選択することができる。いくつかの実施形態において、例として、溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸ブチレン(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちから選択する1つ又は複数であってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、電解液にさらに、オプションとして添加剤を含むことができる。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤など、電池の特定の性能を改善することができる添加剤を含んでもよい。
[セパレータ]
【0138】
電解液を使用する二次電池、及び固体電解質を使用する一部の二次電池には、セパレータも含まれる。セパレータは正極電極シートと負極電極シートとの間に設置され、分離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類を特に限定せず、任意の公知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを用いることができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちから選択する1つ又は複数であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータは多層複合フィルムの場合、各層の材料は同じ又は異なっている。
【0139】
いくつかの実施形態において、正極電極シート、セパレータ及び負極電極シートは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリと電解質のパッケージ化に用いることができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装は、ポーチ型ソフトパッケージなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材料は、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのプラスチックの1つ又は複数であってもよい。
【0142】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、正方形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、例とする正方形構造の二次電池5である。
【0143】
いくつかの実施形態において、図2を参照し、外装はケース51とカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は底板と底板に接続された側板を含むことができ、底板と側板が取り囲んで収容チャンバーを形成する。ケース51は、収容チャンバーに連通する開口部を有し、カバープレート53は、前記収容チャンバーを密閉するために、前記開口部をカバーする。正極電極シート、負極電極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容チャンバーにパッケージ化される。電解液は電極アセンブリ52に浸潤されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は、必要に応じて調整することができ、1つ又は複数であってもよい。
【0144】
いくつかの実施形態において、二次電池を電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、複数であってもよいが、具体的な個数は電池モジュールの応用と容量に応じて調整することができる。
【0145】
図3は、例とする電池モジュール4である。図3を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置されることができる。当然ながら、他の任意の方法で配置されることもできる。さらに、締付部材で複数の二次電池5を固定することができる。
【0146】
オプションとして、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含むことができ、複数の二次電池5は当該収容空間に収容されている。
【0147】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックにさらに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの応用と容量に応じて調整することができる。
【0148】
図4図5は、例とする電池パック1である。図4図5を参照し、電池パック1には電池箱と電池箱内に設置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池箱は上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3をカバーして電池モジュール4を収容する密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池箱内に配置されることができる。
【0149】
本願の二次電池の製造方法は公知である。いくつかの実施形態において、正極電極シート、セパレータ、負極電極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極電極シート、セパレータ、負極電極シートは巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに形成され、電極アセンブリは外装に配置され、乾燥後に電解液を注入し、真空パッケージ、静置、化成、成形などのプロセスによって、二次電池が得られる。
電力消費装置
【0150】
本願の実施形態は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種を含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用することができ、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用することもできる。前記電力消費装置は、モバイルデバイス(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船、衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0151】
前記電力消費装置は、必要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0152】
図6は、例とする電力消費装置である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車又はプラグインハイブリッド電気自動車である。当該電力消費装置の高パワーと高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0153】
別の例とする電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。当該電力消費装置は通常、軽質化及び薄型化が求められるため、二次電池を電源として使用することができる。
実施例
【0154】
下記実施例は、本願により開示される内容をより具体的に説明する。本願により開示される内容の範囲内で様々な修正及び変更することは、当業者にとって明らかであるため、これらの実施例は詳細を説明するために用いられる。特に明記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、百分率、及び比値は全て重量基準のものであり、実施例で使用される全ての試薬は、商業的に入手し、又は従来の方法に従って合成して得ることができ、また、さらに処理することなくて直接使用することができ、実施例で使用される機器は全て、商業的に入手できる。
実施例1
(1)人造黒鉛の製造
【0155】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を3.0μm、粒径Dv50を13.0μm、比表面積を1.93m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温して、排出して人造黒鉛を得る。
(2)負極電極シートの製造
【0156】
上記製造された人造黒鉛を負極活物質として、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とともに96:1:1:1の質量比で混合し、次に溶媒である脱イオン水を加え、当該分野に公知の方法に従って負極スラリーに十分に撹拌し、負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、乾燥後に負極膜層を得て、次に冷間圧延プロセスを経て、負極電極シートを得る。
(3)正極電極シートの製造
【0157】
正極活物質であるリン酸鉄リチウム、接着剤であるポリフッ化ビニリデン、導電剤であるアセチレンブラックを97:2:1の質量比で混合し、次に溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を加えて粘度を調整し、当該分野に公知の方法に従って正極スラリーに十分に撹拌し、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥後に正極膜層を得て、次に冷間圧延プロセスを経て、正極電極シートを得る。
(4)電解液の調製
【0158】
水分含有量が<10ppmであるアルゴンガス雰囲気グローブボックスにおいて、等体積のエチレンカーボネート(EC)と炭酸プロピレン(PC)を均一に混合し、有機溶媒を得て、次に1mol/LのLiPFを上記有機溶媒に均一に溶解させ、電解液を得る。
(5)セパレータの製造
【0159】
セパレータとしてポリエチレン(PE)膜を使用する。
(6)二次電池の製造
【0160】
正極電極シート、セパレータ、負極電極シートを順に積層して巻回し、電極アセンブリを得て、電極アセンブリを外装のアルミプラスチックフィルムに加え、乾燥後に電解液を注入し、パッケージ、静置、化成、老化、二次パッケージ、容量などのプロセスを経て、二次電池を得る。
実施例2
【0161】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0162】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を3.2μm、粒径Dv50を13.2μm、比表面積を1.83m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
実施例3
【0163】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0164】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を3.2μm、粒径Dv50を13.2μm、比表面積を1.83m/gにするように制御し、2%の石炭ピッチ粉末(軟化点が250℃、粒径Dv50が3μm)を上記生コークス粉末に加え、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
実施例4
【0165】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0166】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで7h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が9.4%である石油針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を3.1μm、粒径Dv50を14.3μm、比表面積を1.97m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
比較例1
【0167】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0168】
石油系原料を600℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで4.5h予熱処理し、3hコークス消火し、揮発成分の含有量が7.8%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を2.6μm、粒径Dv50を14.3μm、比表面積を1.32m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
比較例2
【0169】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0170】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を2.4μm、粒径Dv50を9.8μm、比表面積を2.73m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
比較例3
【0171】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0172】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕し、生コークス粉末の粒径Dv10を3.2μm、粒径Dv50を13.2μm、比表面積を1.83m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。人造黒鉛とピッチを100:3の質量比で混合し、混合後の材料を炭化炉に移し、窒素ガスの保護下で1150℃の条件下で炭化処理し、無定形炭素に被覆された人造黒鉛を得る。
比較例4
【0173】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0174】
石油系原料を500℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで6h予熱処理し、6hコークス消火し、揮発成分の含有量が10.2%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して生コークス粉末の粒径Dv10を3.2μm、粒径Dv50を13.2μm、比表面積を1.83m/gにするように制御し、生コークス粉末を横型撹拌釜に入れて650℃に加熱して1h維持し、生コークス粉末内の揮発成分を蒸着させ、蒸着した生コークス粉末を黒鉛坩堝に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が400℃になるまで自然に降温して排出し、人造黒鉛を得る。
比較例5
【0175】
二次電池の製造方法は実施例1と類似し、差異は、人造黒鉛の製造プロセス(ステップ1)である。具体的には、以下のステップを含む。
【0176】
石油系原料を600℃の条件下で遅延コークス化処理し、ここで4.5h予熱処理し、3hコークス消火し、揮発成分の含有量が7.8%である石油非針状コークスの生コークスを得て、インパクトハンマーミルを備える機械的粉砕設備を使用してブロック状の生コークスを生コークス粉末に粉砕して制御生コークス粉末の粒径Dv10を7.9μm、粒径Dv50を19.3μm、比表面積を0.98m/gにするように制御し、上記生コークス粉末を黒鉛坩堝内に入れ、次に黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に入れ、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、通電して電流が抵抗材料を通って熱エネルギーを生成し、黒鉛坩堝内の温度が2800℃に達して8h維持し、生コークス粉末を黒鉛化し、黒鉛坩堝の表面温度が300℃未満まで自然に降温し、排出して人造黒鉛を得る。
実施例5
【0177】
二次電池の製造方法は実施例2と類似し、差異は、正極電極シートの製造プロセスにおいて、正極活物質がLiNi0.6Co0.2Mn0.2であることである。
比較例6
【0178】
二次電池の製造方法は比較例1と類似し、差異は、正極電極シートの製造プロセスにおいて、正極活物質がLiNi0.6Co0.2Mn0.2であることである。
【0179】
実施例6と比較例7は、下記方法に従って製造される。
(1)負極電極シートの製造
【0180】
負極活物質として実施例2及び比較例2により製造された人造黒鉛をそれぞれ95:5の質量比でSiO(Dv50が6μm)と混合して得られた混合物を使用し、次に導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と96:1:1:1の質量比で混合し、次に溶媒である脱イオン水を加え、当該分野に公知の方法に従って負極スラリーに十分に撹拌し、負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、乾燥後に負極膜層を得て、次に冷間圧延プロセスを経て、負極電極シートを得る。
(2)正極電極シートの製造
【0181】
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1、接着剤であるポリフッ化ビニリデン、導電剤であるアセチレンブラックを97:2:1の質量比で混合し、次に溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を加えて粘度を調整し、当該分野に公知の方法に従って正極スラリーに十分に撹拌し、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥後に正極膜層を得て、次に冷間圧延プロセスを経て、正極電極シートを得る。
(3)電解液の調製
【0182】
水分含有量が<10ppmであるアルゴンガス雰囲気グローブボックスにおいて、エチレンカーボネート(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)を30:40:3の体積比で均一に混合し、有機溶媒を得て、質量分率が1%である炭酸ビニレン(VC)を加え、次に1mol/LのLiPFを上記有機溶媒に均一に溶解させ、電解液を得る。
(4)セパレータの製造
【0183】
セパレータとしてポリエチレン(PE)膜を使用する。
(5)二次電池の製造
【0184】
正極電極シート、セパレータ、負極電極シートを順に積層して巻回して、電極アセンブリを得て、電極アセンブリを外装のアルミプラスチックフィルムに加え、乾燥後に電解液を注入し、パッケージ、静置、化成、老化、二次パッケージ、容量などのプロセスを経て、二次電池を得る。
性能テスト
【0185】
人造黒鉛のDv10、Dv50、比表面積、タップ密度、粉末圧縮密度のテストは、明細書に上記記載されている方法に従ってテストする。
(1)人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakのテスト
【0186】
人造黒鉛を秤量質量10±0.05mg、空気をパージガスとして、且つ気流速度60mL/min、昇温速度5℃/min、テスト温度範囲40℃~950℃の条件下で熱重量分析して得られた示差熱重量分析曲線の最大ピークを、人造黒鉛の空気酸化ピークとし、最大ピークのピーク温度はTpeakである。
【0187】
具体的には、ドイツNETZSCH STA 449 F3同時熱分析装置でテストする。まず、平底Al坩堝に10±0.05mgの人造黒鉛試料を秤量し、蓋を覆わず、機器のパラメータを設定する。空気をパージガスとして且つ気流速度を60mL/minに設定し、窒素ガスを保護ガスとして且つ気流速度を20mL/minに設定し、昇温速度を5℃/min、テスト温度範囲を40℃~950℃に設定した。ここで、温度が500℃未満である場合、この段階では特性ピークがないため、急速な昇温が可能になり、例えば、昇温速度を10℃/minに設定する。
(2)急速充電性能テスト
【0188】
二次電池は、25℃下で0.33C(ここで、1Cは1h内に完全に放電された二次電池の理論容量に対応する電流値を表す)の電流で1回目の充電と放電された。具体的なステップとしては、二次電池を0.33Cの定電流で上限のカットオフ電圧まで充電し、次に定電圧で電流が≦0.05Cになるまで充電し、二次電池を5min静置し、0.33Cの定電流で下限のカットオフ電圧まで放電し、二次電池の実際の放電容量Cを記録した。
【0189】
二次電池をそれぞれ0.5C、0.8C、1.2C、1.5C、2.0C、2.5C、3.0C、4.0C、5.0Cという異なる充電倍率で、定電流で上限のカットオフ電圧又は負極電位が0Vに低減した(先に達する者を基準とする)まで充電し、毎回の充電が完了した後に0.33Cで下限のカットオフ電圧まで放電する必要がある。二次電池を異なる充電倍率で10%SOC、20%SOC、30%SOC、40%SOC、50%SOC、60%SOC、70%SOC、80%SOC(SOCが二次電池の荷電状態State of Chargeを表す)に充電した時に対応する負極電位を記録した。
【0190】
異なる荷電状態での充電倍率-負極電位の曲線を描き、線形フィッティングによって異なる荷電状態での負極電位が0Vの場合に対応する充電倍率を得た。当該充電倍率は当該荷電状態での充電タイミングである。異なる荷電状態での充電タイミングはそれぞれ、C10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記された。
【0191】
式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%によって、二次電池が10%SOCから80%SOCまで充電された充電時間Tを計算して得られた。充電時間が短いほど、二次電池の急速充電性能がより優れることを表した。
(3)循環性能テスト
【0192】
二次電池を、25℃下で1C倍率の定電流で上限のカットオフ電圧に充電し、次に定電圧で電流が≦0.05Cになるまで充電し、この時の充電容量を1回目の充電容量として記録した。二次電池を、1Cの定電流で下限のカットオフ電圧に放電し、次に5min静置した。これは1つの循環充放電過程とし、この時の放電容量を1回目の放電容量として記録した。
【0193】
二次電池は、上記方法に従って循環充放電テストを実施し、二次電池の放電容量が1回目の放電容量の80%になるまで、毎サイクルの循環後の放電容量を記録した。この時の循環サイクル数で二次電池の循環性能を特徴付けた。
【0194】
二次電池の1回目のクーロン効率=1回目の放電容量/1回目の充電容量×100%。
【0195】
実施例1~4と比較例1~5の二次電池の充放電電圧範囲は、2.5V~3.65Vである。実施例5と比較例6の二次電池の充放電電圧範囲は、2.8V~4.35Vである。実施例6と比較例7の二次電池の充放電電圧範囲は、2.5V~4.25Vである。
【0196】
表1は、実施例1~4と比較例1~5の人造黒鉛のテスト結果を示した。表2は、実施例1~4と比較例1~5の二次電池の性能テストの結果を示した。表3は、実施例5と比較例6の二次電池の性能テストの結果を示した。表4は、実施例6と比較例7の二次電池の性能テストの結果を示した。
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
【0199】
【表3】
【0200】
【表4】
【0201】
表2のデータから分かるように、比較例1~5と比較して、実施例1~4の二次電池は、より高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有する。これは主に、実施例1~4の人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃であることによるものであり、人造黒鉛の表面電気化学的活性位置と活性基の個数が少さくなり、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が低いため、二次電池は、良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有する。
【0202】
比較例1~4の人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが<830℃であることは、製造された人造黒鉛の表面電気化学的活性位置と活性基の個数が多いことを表すため、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が高くなり、二次電池は良好な急速充電性能を前提としてより高い1回目のクーロン効率とより長い循環寿命を有することができない。比較例1の生コークス原料のコークス化処理温度が高いため、生コークス粉末の揮発成分の含有量が低くなりすぎ、揮発成分は、十分に蒸着して人造黒鉛の表面に完全な保護層を形成することができず、人造黒鉛の表面の欠陥位置を十分に修飾することができないため、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費が高くなった。比較例2の生コークス粉末内の微粉部分の含有量が高く、微粉の表面に大量の欠陥位置が存在するため、人造黒鉛の活性イオンに対する不可逆的な消費も高くなった。比較例3は無定形炭素に被覆された人造黒鉛であり、且つ人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakは799℃のみである。その主な原因として、人造黒鉛の表面に被覆された炭素は軟質炭素であり、軟質炭素は熱安定性が低く、酸化分解しやすく、且つ軟質炭素表面の活性基の個数が多いため、活性イオンに対する不可逆的な消費が高くなる。比較例4は、人造黒鉛を製造した時に高い排出温度が選択されるため、人造黒鉛の表面は、空気酸化作用下で大量の活性基が生成され、活性イオンに対する不可逆的な消費が増加した。
【0203】
比較例5の人造黒鉛の空気酸化ピークのピーク温度Tpeakが≧830℃であるが、人造黒鉛のDv50が>16μmであるため、二次電池は、良好な急速充電性能、より高い1回目のクーロン効率及びより長い循環寿命を兼ね備えることができない。
【0204】
表3のデータから分かるように、比較例6と比較して、実施例5は、二次電池の1回目のクーロン効率が約0.6%向上し、循環寿命が約10%向上する。表4のデータから分かるように、比較例7と比較して、実施例6は、二次電池の1回目のクーロン効率が約1.1%向上し、循環寿命が約20%向上する。
【0205】
また、表2~表4のデータから分かるように、本願の人造黒鉛の優位性は、負極活物質の1回目のクーロン効率が正極活物質の1回目のクーロン効率より小さい電池システム、負極活物質の活性イオンに対する不可逆的な消費が循環寿命を支配する電池システムにおいて、より良く表現される。
【0206】
説明すべきこととして、本願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示的なものに過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内に技術思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用と効果を奏する実施形態はいずれも、本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の主旨から逸脱することなく、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を加え又は実施形態の一部の構成要素を組み合わせて構成された他の形態も本願の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】