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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電池インピーダンス測定回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20231004BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R27/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558454
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2021106829
(87)【国際公開番号】W WO2022062599
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011021904.4
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522378340
【氏名又は名称】ダタン・エヌエックスピー・セミコンダクターズ・(シュージョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Datang NXP Semiconductors (Xuzhou) Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ファン ランメレン,イェー ペー エム
【テーマコード(参考)】
2G028
2G036
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BE04
2G028CG08
2G028GL07
2G036AA03
2G036BB08
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの電池セルに接続され、前記電池セルごとに駆動電流を入力する信号発生器と、前記電池セルの両端に接続され、前記電池セルのアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するアナログ-デジタル変換器と、前記信号発生器及び前記アナログ-デジタル変換器に接続され、前記電池セルのインピーダンス特性に関連するインピーダンス信号を抽出するインピーダンス抽出モジュールと、前記インピーダンス抽出モジュールから前記インピーダンス信号を受信し、複数の周波数に減衰ノッチを有し、前記インピーダンス信号におけるクロストーク信号をフィルタリングするデジタルフィルタを備える電池インピーダンス測定回路に関する。本発明は、電池インピーダンス信号におけるクロストーク信号を効果的に除去することができ、且つ、簡単に実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電池セルに接続され、前記電池セルごとに駆動電流を入力する信号発生器と、
前記電池セルの両端に接続され、前記電池セルのアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するアナログ-デジタル変換器と、
前記信号発生器及び前記アナログ-デジタル変換器に接続され、前記電池セルのインピーダンス特性に関連するインピーダンス信号を抽出するインピーダンス抽出モジュールと、
前記インピーダンス抽出モジュールから前記インピーダンス信号を受信し、複数の周波数に減衰ノッチを有し、前記インピーダンス信号におけるクロストーク信号をフィルタリングするデジタルフィルタを備える
ことを特徴とする電池インピーダンス測定回路。
【請求項2】
前記信号発生器が前記電池セルごとに入力する駆動電流の周波数は等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項3】
前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔は等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項4】
前記信号発生器が前記電池セルごとに入力する駆動電流の周波数間の周波数間隔は、前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔と等しい
ことを特徴とする請求項3に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項5】
前記デジタルフィルタは、前記インピーダンス信号における直流成分を通過させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項6】
前記デジタルフィルタは、前記複数の周波数に減衰ノッチを有する櫛型フィルタを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項7】
前記デジタルフィルタは、ローパスフィルタをさらに含む
ことを特徴とする請求項6に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項8】
前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔は、測定周期の逆数に等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【請求項9】
前記デジタルフィルタは、加算器とレジスタとを含む積分器を備え、
前記インピーダンス抽出モジュールは、前記加算器の一方の入力端に接続され、
前記レジスタの出力端は、前記加算器の他方の入力端にフィードバックされる
ことを特徴とする請求項1に記載の電池インピーダンス測定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路の技術分野に関し、具体的には、電池インピーダンス測定回路に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエレクトロニクスにとって、電池セルの状態を正確に測定することは非常に重要であり、結果が正確でない場合には走行の安全性に問題が生じてしまう。電池セルの状態を得るための有効な手段は、電池セルのインピーダンスを測定することである。しかし、自動車のバッテリのインピーダンスを正確に測定することは困難であり、自動車のバッテリは、電源ラインや複数の独立した電池セルなどの多数の異なる素子を含む比較的大型のバッテリパックであることが多いため、これらの素子に電流が流れるときに発生する磁界がインピーダンス測定回路における測定ラインに余分な干渉を与え、複数の電池セルの間でクロストーク(Crosstalk)が発生する場合がある。自動車の電池セルのインピーダンスが非常に低くて、通常は1m未満であるため、インピーダンス測定回路における測定信号がμVレベルであり、測定電流によって発生される磁界によりインピーダンス測定回路に発生するクロストーク電圧と同じレベルであるので、このクロストーク電圧はインピーダンス測定に用いる電圧信号に深刻な干渉を与え、インピーダンス測定結果の不正確性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術課題は、簡単かつ正確にクロストークを除去することができる電池インピーダンス測定回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術課題を解決するために本発明が採用した技術案は、少なくとも1つの電池セルに接続され、前記電池セルごとに駆動電流を入力する信号発生器と、前記電池セルの両端に接続され、前記電池セルのアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するアナログ-デジタル変換器と、前記信号発生器及び前記アナログ-デジタル変換器に接続され、前記電池セルのインピーダンス特性に関連するインピーダンス信号を抽出するインピーダンス抽出モジュールと、前記インピーダンス抽出モジュールから前記インピーダンス信号を受信し、複数の周波数に減衰ノッチを有し、前記インピーダンス信号におけるクロストーク信号をフィルタリングするデジタルフィルタを備えることを特徴とする電池インピーダンス測定回路である。
【0005】
本発明の一実施形態では、前記信号発生器が前記電池セルごとに入力する駆動電流の周波数は等しい。
【0006】
本発明の一実施形態では、前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔は等しい。
【0007】
本発明の一実施形態では、前記信号発生器が前記電池セルごとに入力する駆動電流の周波数間の周波数間隔は、前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔と等しい。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記デジタルフィルタは、前記インピーダンス信号にける直流成分を通過させる。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記デジタルフィルタは、前記複数の周波数に減衰ノッチを有する櫛型フィルタを含む。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記デジタルフィルタは、ローパスフィルタをさらに含む。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記減衰ノッチに対応する前記複数の周波数間の周波数間隔は、測定周期の逆数に等しい。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記デジタルフィルタは積分器であり、前記積分器は、加算器とレジスタとを含み、前記インピーダンス抽出モジュールは、前記加算器の一方の入力端に接続され、前記レジスタの出力端は、前記加算器の他方の入力端にフィードバックされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池インピーダンス測定回路は、複数の周波数に減衰ノッチを有するデジタルフィルタ、特にローパスフィルタと組み合わせた櫛型フィルタを採用することにより、電池インピーダンス信号におけるクロストーク信号を効果的に除去することができ、且つ、実現する方法が簡単であり、正確な電池インピーダンス測定結果を得ることに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上述した目的、特徴および利点をより明確に分かりやすくするために、本発明の具体的な実施形態を添付図面に関連して以下で詳細に説明する。
図1図1は、電池インピーダンス測定回路の模式図である。
図2図2は、電池インピーダンス測定装置を用いて電池セルのインピーダンスを測定する原理模式図である。
図3A図3Aは、電池インピーダンス測定装置の電磁結合によるクロストーク現象の模式図である。
図3B図3Bは、電池インピーダンス測定装置の電磁結合によるクロストーク現象の模式図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る電池インピーダンス測定回路の模式図である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるデジタルフィルタの振幅周波数特性曲線の模式図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る電池インピーダンス測定回路の振幅周波数特性曲線の模式図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るデジタルフィルタの回路模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の上述した目的、特徴及び利点をより明らかに分かりやすくするために、本発明の具体的な実施形態について添付図面に関連して詳細に説明する。
【0016】
以下の説明では、本発明を十分に理解しやすくするために多くの具体的な詳細が説明されているが、本発明は、本明細書で説明されているものとは異なる他の方法で実施されてもよいので、本発明は以下に開示される具体的な実施形態に限定されない。
【0017】
本出願および特許請求の範囲に示されているように、「1」、「1つの」、「一種」および/または「この」などの用語は、文脈が例外的な状況を明示的に示す場合を除き、特に単数を意味するものではなく、複数を含むこともできる。一般に、「備える」および「含む」という用語は、排他的な羅列を構成せずに、明示的に識別されたステップおよび要素を含むことを示唆するだけであり、方法または装置は、他のステップまたは要素を含むこともできる。
【0018】
本出願の明細書では、理解すべきなのは、「前、後、上、下、左、右」、「横方向、縦方向、垂直、水平」、「頂、底」などの方位用語によって示される方位又は位置関係は、通常、図面に示される方位又は位置関係に基づいたものであり、単に、本願の説明を容易にし、かつ、説明を簡単にするために使われ、逆の説明がない限り、これらの方位用語は、装置又は構成要素が特定の方位を有し、又は特定の方位で構成され、動作されなければならないことを示し、暗示するものではないので、本願の保護範囲を限定するものとは解釈できず、方位用語である「内、外」は、各部品自体の輪郭に対する内外を意味する。
【0019】
また、「第一」、「第二」等の語句を使用して部品を限定するのは、単に対応する部品を区別しやすくするためであり、別途声明がなければ、上記の語句は特別な意味を持たないので、本出願の保護範囲に対する制限だと理解することができないことを説明しなければならない。さらに、本出願において使用される用語は公知の用語から選択されているものであるが、本出願の明細書に記載されている用語の中には、出願人の判断により選択されたものもあり、その詳細な意味は本明細書の関連部分に記載されている。また、使用される実際の用語だけではなく、各用語に含まれる意味によっても本出願を理解することが要求される。
【0020】
構成要素が「他の構成要素の上にある」、「他の構成要素に接続されている」、「他の構成要素に結合されている」、または「他の構成要素に接触している」と呼ばれる場合、構成要素は、他の構成要素の上に直接配置されていてもよく、他の構成要素に接続されていてもよく、他の構成要素に結合されていてもよく、または他の構成要素に接触していてもよく、または挿入部品が存在していてもよいことを理解すべきである。これに対して、ある部品が「他の部品に直接設置されている」、「直接接続されている」、「直接結合されている」、または「直接接触されている」と呼ばれる場合には、挿入部品は存在しない。同様に、第1の構成要素が第2の構成要素に「電気的接触されている」または「電気的結合されている」と呼ばれる場合、第1の構成要素と第2の構成要素との間に電流を流すための電気経路が存在する。電気経路は、導電性部品との直接接触がなくても、コンデンサ、結合されたインダクタ、および/または電流を流すための他の構成要素を含むことができる。
【0021】
図1は、電池インピーダンス測定回路の模式図である。図1を参照して、この測定回路100は、電池101のインピーダンスを測定するためのものである。この測定回路100において、信号発生器110は、駆動電流を発生し、この電流を電池101に流させる。信号発生器110は、一種の正弦波/余弦波発生器であってもよく、1つの信号が正弦波であり、もう1つの信号が余弦波である2つの信号を出力してもよい。アナログ-デジタル変換器120は、電池101からのアナログ電圧信号Vをデジタル電圧信号Vに変換する。このデジタル電圧信号Vは、乗算器131、132により信号発生器110の出力信号にそれぞれ乗算され、2つの出力信号S1、S2が得られる。出力信号S1はローパスフィルタ141を介してこの電池101のインピーダンス値実部realを出力し、出力信号S2はローパスフィルタ142を介してこの電池101のインピーダンス値虚部imaginaryを出力する。図1に示す測定回路100は、帯域通過フィルタとしての役割を実現する同期復調器と呼ばれてもよい。この測定回路100は、電池のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置に内蔵されていてもよい。
【0022】
図2は、インピーダンス測定装置を用いて電池セルのインピーダンスを測定する原理模式図である。図2に示すように、電池セル210は、正極211と負極212とを備えている。電池セル210のインピーダンスを測定するために、インピーダンス測定装置220が電池セル210に接続される。図2に示すように、4点測定方法を採用し、即ち、インピーダンス測定装置220は、2本の駆動線221a、221bを介して電池セル210の正極211および負極212にそれぞれ接続され、この電池セル210に駆動電流が入力される。また、インピーダンス測定装置220は、2本のセンス線222a、222bを介して電池セル210の正極211及び負極212にそれぞれ接続され、この電池セル210が駆動電流に応じて発生する電圧を測定する。いくつかの例では、駆動線221a、221bは、インピーダンス測定装置220に電流を供給するためにも使用される。図2に示すインピーダンス測定装置220および4点測定方法によれば、電池セル210のインピーダンスを測定する際に、追加の測定装置のインピーダンスを導入することを避けることができる。
【0023】
図2に示すように、インピーダンス測定装置220と電池セル210との相対位置を制限するものではない。いくつかの例では、電池セル210は、正極211と負極212とが同じ水平線上にある状態で平らに置かれていても、図2に示す位置に対して90度回転してもよい。
【0024】
なお、図2に示す電池セル210は、1つの電池セル210に限定されるものではなく、複数の電池セル210を組み合わせたものであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、同じインピーダンス測定装置を用いて複数の電池セルを同時に測定することができる。また、電池セルごとに独立したインピーダンス測定装置を配置することもできる。その測定原理は、図2およびその説明内容を参考することができる。
【0026】
本明細書では、図2に示すものを例として示されている。図2に示す実施形態では、電池セル210の負極212はインピーダンス測定装置220から近く、正極211はインピーダンス測定装置220から遠い。これにより、インピーダンス測定装置220のうち、負極212に接続される駆動線221aおよびセンス線222aは共に比較的短く、正極211に接続される駆動線221bおよびセンス線222bは比較的長い。
【0027】
図2に示す4点測定法で電池インピーダンス測定を行うと、駆動線とセンス線に流れる電流により磁界が発生する。駆動線221aおよびセンス線222aが短いので、磁界による駆動線221aおよびセンス線222aへの影響が少なく、測定結果への影響は無視できる。しかし、磁界により、長い駆動線221bとセンス線222bに結合インダクタンスを発生させ、さらにセンス線222bに誘導電圧を発生させ、さらに電池セルのインピーダンス測定結果に影響を与える。
【0028】
図3A及び図3Bは、電池インピーダンス測定装置の電磁結合によるクロストーク現象の模式図である。図3Aに示すように、1つの電池セルについてインピーダンス測定を行う場合を示している。実際には、電池セル、駆動線およびセンス線は、磁界によって結合されることによってクロストーク電圧の発生が誘起される。しかし、本発明は主に電池インピーダンスの測定に関するものであるので、主にセンス線が受けるクロストークに注目しており、これには電池セルによるセンス線、駆動線によるセンス線へのクロストークが含まれている。
【0029】
図3Aに示すように、電池セル310は、図2に示す電池セル210に相当する。図3Aでは、この電池セル310は、1つの電池セルを示している。インピーダンス測定装置320は、この電池セル310のインピーダンスを測定するために用いられる。インピーダンス測定装置320は、2本の駆動線321a、321bを介してそれぞれ電池セル310の正極および負極に接続され、この電池セル310に測定電流が入力される。また、インピーダンス測定装置320は、2本のセンス線322a、322bを介してそれぞれ電池セル310の正極および負極に接続され、この電池セル310の電圧を測定する。図3Aに示すように、電池インダクタンスLは、電池セル310の磁界結合時のインダクタンスを表し、駆動線インダクタンスLは、駆動線321bの磁界結合時のインダクタンスを表し、センス線インダクタンスLは、センス線322bの磁界結合時のインダクタンスを表す。結合パラメータKは、電池セル310がセンス線322bへ発生する電磁結合を表し、結合パラメータKは、駆動線321bがセンス線322bへ発生する電磁結合を表す。
【0030】
図3Aに示すように、センス線322bに発生するクロストーク電圧vindは以下のようになる。
【数1】
【0031】
ここで、iは電池セル310に流れる電流であり、iは駆動線321bに流れる電流である。通常、図3Aに示すように、iとiは、大きさが等しく、方向が逆であり、すなわち、i=-iである。従って、上記式(1)は以下のように簡略化できる。
【数2】
【0032】
式(2)により、クロストーク電圧は、インピーダンス測定結果におけるインピーダンス値虚部にのみ影響を与えることが分かる。実際には、クロストーク電圧は、インピーダンス測定結果におけるインピーダンス値実部にも影響を及ぼすが、インピーダンス値虚部に与える影響ほど顕著ではない。
【0033】
図3Aは、1つの電池セル310のみに対してのインピーダンス測定を示しているが、実際の測定では、この電池セル310に隣接または近接している他の電池セルにも、インピーダンス測定装置320によって生成された磁界の影響を受け、相互作用的なクロストークを生成する。複数の電池セルが隣接または近接していることは、これらの複数の電池セル同士が電気的に接続されていてもよいし、電気的に接続されていなくてもよいことを意味する。
【0034】
図3Bに示すように、電池セル331は、電池セル332に隣接または近接しており、インピーダンス測定装置340は、電池セル331のインピーダンスを測定するために使用され、インピーダンス測定装置350は、電池セル332のインピーダンスを測定するために使用される。
【0035】
図3Bに示すように、インピーダンス測定装置340が電池セル331のインピーダンス測定を行うと、電池セル331の磁界結合時のインダクタンスがLC1であり、駆動線341bの磁界結合時のインダクタンスがLF1であり、センス線342bの磁界結合時のインダクタンスがLS1である。インピーダンス測定装置350が電池セル332のインピーダンス測定を行うと、電池セル332の磁界結合時のインダクタンスがLC2であり、駆動線351bの磁界結合時のインダクタンスがLF2であり、センス線352bの磁界結合時のインダクタンスがLS2である。
【0036】
図3Bに示すように、電池セル331にとって、インピーダンス測定装置340におけるセンス線342bは、自身の測定回路内の電池セル331の電磁結合パラメータKC11および駆動線341bの電磁結合パラメータKF11に加えて、隣接する測定回路内の電池セル332の電磁結合パラメータKC21および駆動線351bの電磁結合パラメータKF21を受ける。電池セル332にとって、インピーダンス測定装置350におけるセンス線352bは、自身の測定回路内の電池セル332の電磁結合パラメータKC22および駆動線351bの電磁結合パラメータKF22に加えて、隣接する測定回路内の電池セル331からの電磁結合パラメータKC12および駆動線341bの電磁結合パラメータKF12を受ける。
【0037】
より多くの電池セルおよびそれに対応するインピーダンス測定装置では、測定回路同士の間でより複雑な相互クロストークを発生させる可能性がある。このクロストークは、インピーダンス測定結果に深刻な影響を与える。
【0038】
上記のクロストークを除去するために、電池セルを複数のグループに分け、各グループ内の1つの電池セルのみを一度に測定することができる。例えば、測定対象となる電池セルに隣接する2つの電池セルによるクロストークを考慮すると、M=3となる。複数の電池セルに順番に番号を付け、3個ずつの電池セルをグループとし、各電池セルのグループ内の1番目の電池セル、即ち番号1、4、7、…などの電池セルを先に測定してから、各電池セルのグループの2番目の電池セル、即ち番号2、5、8、…などの電池セルを測定し、このようにして引き続いて測定する。この方法ではクロストークを除去できるが、時間がかかり、各電池セルから取り出されたデータの2/3が失われてしまった。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態に係る電池インピーダンス測定回路の模式図である。図4を参照して示すように、電池インピーダンス測定回路400は、電池セル401に接続され、この電池セル401のインピーダンスを測定するための回路である。図4には、1つの電池セル401が示されている。他の実施形態では、電池インピーダンス測定回路400は、複数の電池セルのインピーダンスを測定するために複数の電池セルに接続されてもよい。
【0040】
図4に示すように、この電池インピーダンス測定回路400は、信号発生器410と、アナログ-デジタル変換器420と、インピーダンス抽出モジュール430と、デジタルフィルタ440とを含む。ここで、信号発生器410は、少なくとも1つの電池セルに接続され、電池セルごとに複数の駆動電流Iが入力される。図4に示す電池セル401は、1つの電池セルを表すために使用されてもよく、複数の電池セルの組み合わせを表すために使用されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、信号発生器410は正の余弦波発生器であってもよく、この信号発生器410の具体的な実施形態は本発明に限定されない。信号発生器410から電池セル401に入力される駆動電流Iは、正弦信号または余弦信号のいずれかであってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、信号発生器410から電池セルごとに入力される駆動電流の周波数は等しい。本発明では、駆動電流の周波数値に制限を設けない。駆動電流の周波数範囲が8kHz~8mHzであることは好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、信号発生器410が電池セルごとに入力される駆動電流の周波数は、異なってもよい。実際には、電池セルごとに入力される駆動電流の周波数に差が生じることがある。
【0044】
図4に示すように、この電池インピーダンス測定回路400には、電池セル401と並列に接続されるスイッチ411とブリード抵抗412が設けられている。ここで、信号発生器410は、電池セル401とブリード抵抗412との間の接続をオンまたはオフするためのスイッチ411に接続されている。ブリーダ抵抗412は分流器として機能する。いくつかの実施形態では、信号発生器410には、パルス密度変調器などの変調器も含まれていてもよく、信号発生器410によって生成された正弦/余弦信号は、変調器によって変調され、その後に電池セルに注入され、且つ、変調信号によってスイッチ411を制御してブリーダ抵抗器412との間の接続をオンまたはオフにすることができる。
【0045】
アナログ-デジタル変換器(ADC)420は、電池セル401の両端に接続され、電池セル401のアナログ電圧信号Vをデジタル電圧信号Vに変換する。図4に示すように、この電池セル401の正極および負極はそれぞれ、アナログ-デジタル変換器420の2つの入力端に接続されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、アナログ電圧信号V中のノイズをフィルタリングするように、アナログ-デジタル変換器420と電池セル401との間にアナログフィルタ回路(図示せず)がさらに含まれてもよい。
【0047】
図4に示すように、インピーダンス抽出モジュール430は、信号発生器410およびアナログ-デジタル変換器420に接続されている。信号発生器410は、インピーダンス抽出モジュール430の入力端に駆動電流信号を出力する。アナログ-デジタル変換器420は、インピーダンス抽出モジュール430の入力端にデジタル電圧信号Vを出力する。インピーダンス抽出モジュール430は、入力された駆動電流信号とデジタル電圧信号Vとに基づいて、電池セル401のインピーダンス特性に関連するインピーダンス信号を抽出することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、インピーダンス抽出モジュール430は、第1の乗算器431および第2の乗算器432を含む。第1乗算器431の入力端には、信号生成器410が生成した駆動電流信号Iが入力され、第2乗算器432の入力端には、信号生成器410が生成した駆動電流信号Iが入力される。ここで、IおよびIはそれぞれ正弦信号および余弦信号であり、すなわち、Iが正弦信号であれば、Iは対応する余弦信号であり、Iが余弦信号であれば、Iは対応する正弦信号である。
【0049】
デジタル電圧信号Vと駆動電流信号Iとを乗算した結果Mは、デジタルフィルタ440に入力され、このデジタルフィルタ440を経て電池セル401のインピーダンス値実部Zrealを出力することができる。デジタル電圧信号Vと駆動電流信号Iとを乗算した結果Mはデジタルフィルタ440に入力され、このデジタルフィルタ440を経て電池セル401のインピーダンス値虚部Zimagを出力することができる。結果M、Mは共に電池セル401のインピーダンス特性に関連するインピーダンス信号である。
【0050】
図4を参照して示すように、デジタルフィルタ440がインピーダンス抽出モジュール430に接続され、該デジタルフィルタ440がインピーダンス信号中のクロストーク信号を除去するために、複数の周波数に減衰ノッチを有する。ここでのクロストーク信号は、前述したようなインピーダンス測定装置のセンス線上のクロストーク信号であり、電池セルのインピーダンス測定結果に不正確な結果が生じる可能性がある。複数の周波数における減衰ノッチは、これらの複数の周波数の信号をフィルタリングする役割を果たす。
【0051】
図4に示す実施形態では、1つのデジタルフィルタ440がインピーダンス抽出モジュール430に接続されている。他の実施形態では、複数のデジタルフィルタ440、例えば、2つのデジタルフィルタ440を含むことができ、1つのデジタルフィルタ440が第1の乗算器431の出力端に接続され、且つ電池セル401のインピーダンス値実部Zrealを出力するためのものであり、もう1つのデジタルフィルタ440が第2の乗算器432の出力端に接続され、電池セル401のインピーダンス値虚部Zimagを出力するためのものである。
【0052】
いくつかの実施形態では、デジタルフィルタ440は、インピーダンス信号における直流成分を通過させる。インピーダンス信号の直流成分には、電池セル401のインピーダンス情報が含まれている。
【0053】
いくつかの実施形態では、デジタルフィルタ440は、特定の周波数信号のフィルタリングとして機能するように、複数の周波数に減衰ノッチを有する櫛型フィルタを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、デジタルフィルタ440は、櫛型フィルタおよびローパスフィルタを含む。ローパスフィルタは、インピーダンス信号における直流成分を通過させるために使用されることができ、インピーダンス信号における高周波ノイズを全体として低減することができる。この高周波ノイズは、電池インピーダンス測定回路以外で生じる可能性がある。本発明の電池インピーダンス測定回路を自動車の電池セルのインピーダンス測定に用いる場合、本発明のデジタルフィルタ440におけるローパスフィルタは、自動車の他の要素、例えばモータ等からの高周波ノイズを除去するためにも用いられる。
【0055】
図5は、本発明の一実施形態に係るデジタルフィルタの振幅周波数特性曲線の模式図である。ここで、横軸は周波数であり、単位は指数座標で表されるヘルツ(Hz)である。縦軸は信号の振幅強度であり、単位はデシベル(dB)である。図5に櫛型フィルタと1次ローパスフィルタを組み合わせたデジタルフィルタの振幅周波数特性曲線を示している。図5を参照すると、この振幅周波数特性曲線は、直流成分を通過させるローパスフィルタであって、複数の周波数に減衰ノッチを有するデジタルフィルタであることを示している。例えば、1Hzにおいて第1の減衰ノッチ511を有し、2Hzにおいて第2の減衰ノッチ512を有し、3Hzにおいて第3の減衰ノッチ513を有し、以下同様である。この複数の減衰ノッチが位置する周波数は、クロストーク信号の周波数に対応しており、このデジタルフィルタによって、電池セルのインピーダンス信号におけるクロストーク信号を正確にフィルタリングすることができる。
【0056】
図5に示す実施形態では、減衰ノッチを有する複数の周波数間の周波数間隔は等しく、該周波数間隔は1Hzである。図5に示すのは一例にすぎず、他の実施形態では、該周波数間隔は他の値であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、信号発生器410が電池セルごとに入力する駆動電流の周波数間の周波数間隔は、減衰ノッチに対応する複数の周波数間の周波数間隔に等しい。図5に示すように、減衰ノッチに対応する複数の周波数間の周波数間隔を1Hzとすると、信号発生器410が電池セルごとに入力する駆動電流の周波数間の周波数間隔を1Hzとしてもよい。例えば、3つの電池セルを含む電池パックについて、1つの電池セルに対してインピーダンス測定を行うと、3つの電池セルに入力される駆動電流の周波数は、それぞれ999Hz、1000Hz、1001Hzであってもよい。即ち、駆動電流の周波数間の周波数間隔が1Hzである。
【0058】
本発明によれば、デジタルフィルタにおけるローパスフィルタの次数やカットオフ周波数等に制限を設けず、必要に応じて適切なローパスフィルタを設置することができ、該ローパスフィルタと櫛型フィルタとを組み合わせることによって、インピーダンス信号におけるクロストーク信号を正確に除去することができる。例えば、ローパスフィルタの次数は4であり、カットオフ周波数は0.3Hzである。カットオフ周波数が低いほど、フィルタの次数が高くなり、信号の減衰が著しくなり、発生する遅延が大きくなり、フィルタのコストが高くなることが理解されてもよい。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態に係る電池インピーダンス測定回路の振幅周波数特性曲線の模式図である。ここで、横軸は周波数であり、単位は指数座標で表されるヘルツ(Hz)である。縦軸は信号の振幅強度であり、単位はデシベル(dB)である。図4を組み合わせると、図6は電池インピーダンス測定回路400全体の振幅周波数特性曲線の模式図である。図6を参考すると、この振幅周波数特性曲線は、インピーダンスを測定しようとする電池セルの測定周波数、すなわち信号発生器が電池セルに入力する駆動電流の周波数を中心周波数fとしたバンドパスフィルタの振幅周波数特性として表される。該中心周波数fの両側には、複数の周波数にそれぞれ減衰ノッチ620を有し、該複数の減衰ノッチ620の周波数間隔は等しく、図5に示されたものと同じであり、何れも1Hzである。図6に示すのは一例にすぎず、他の実施形態では、該周波数間隔は他の値であってもよい。
【0060】
図6に示す実施形態によれば、該電池インピーダンス測定回路は、インピーダンス信号におけるクロストーク信号を効果的に除去することができ、正確なインピーダンス値を得ることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、複数の減衰ノッチに対応する複数の周波数間の周波数間隔は、測定周期の逆数に等しい。測定周期とは、本発明の電池インピーダンス測定回路を用いて電池セルのインピーダンス測定を行う周期である。図5および図6に示す実施形態では、測定周期が1秒である場合、複数の周波数の周波数間隔は1Hzである。他の実施形態では、測定期間が0.5秒である場合、複数の周波数の周波数間隔は2Hzである。
【0062】
図7は、本発明の一実施形態に係るデジタルフィルタの回路模式図である。該デジタルフィルタ700は、図4に示す電池インピーダンス測定回路400におけるデジタルフィルタ440であってもよい。図7を参照して示すように、該デジタルフィルタ700は、一つの加算器710と一つのレジスタ720とを含み、両者は一つの積分器を構成する。図4を組み合わせて示すように、インピーダンス抽出モジュール430によって出力された結果Mおよび/またはMは、加算器710の入力端に入力され、加算器710の出力端は、レジスタ720の入力端に接続され、レジスタ720の出力端は、加算器710にフィードバックされ、加算器710の入力項目の1つとして機能することによって、積分器として機能することができる。各測定周期が終了する時に、レジスタ720のreset端を介してレジスタ720がリセットされる。
【0063】
図7に示されるデジタルフィルタ700の振幅周波数特性は、図5に示される振幅周波数特性曲線図で表されてもよい。すなわち、図7に示すデジタルフィルタ700は、櫛型フィルタと1次ローパスフィルタとを組み合わせたデジタルフィルタである。
【0064】
本発明に係る電池インピーダンス測定回路は、複数の電池セル間のクロストークを除去することができ、複数の電池セルのインピーダンスを同時に測定することができ、且つ、簡単に実現することができる。
【0065】
本発明は、現在の特定の実施形態を参照して説明したが、本技術分野における通常の当業者にとって、上記の実施形態は単に本発明を説明するために使用されているだけであり、本発明の精神から逸脱することなく、様々な同等の変更または代替を行うことができるので、本発明の本質的精神の範囲内である限り、上記の実施形態の変更、変形は、すべて本出願の特許請求の範囲内に含まれることを認識しなければならない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】