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特表2023-542766負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20231004BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231004BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231004BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573370
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2022095693
(87)【国際公開番号】W WO2023024625
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110983444.1
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】肖 称茂
(72)【発明者】
【氏名】何 鵬
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA12
5H050FA11
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】
本願は負極材料の分野に関し、負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池を提供し、負極材料は、活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料中の導電率向上剤の分散度Nが1以上である。負極材料粒子のSEM切断面を複数の面積A×B(A及びBは両方共に1μm以下である。)の領域に分割し、単一の負極材料粒子の全ての領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。本願による負極材料は、負極材料の体積膨張を効果的に抑え、電池のサイクル特性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、
前記導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、前記負極材料中の前記導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
前記分散度Nは、下記の測定方法により得られることを特徴とする、負極材料。
<分散度Nの測定方法>
前記負極材料粒子のSEM切断面を面積A×B(ここで、A及びBは両方ともに1μm以下である。)の領域に分割し、単一の前記負極材料粒子の全ての前記領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔がいずれも10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の前記負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【請求項2】
前記凝集体は金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
以下の特徴(1)~(5)のうちの1つを有する、請求項1又は2に記載の負極材料。
(1)前記導電率向上剤は前記活物質に分布しており、前記活物質と前記導電率向上剤との間に前記炭素材料が充填されている;
(2)前記炭素材料と前記導電率向上剤との間に空孔を有し、前記空孔に前記活物質が充填されている;
(3)前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記活物質のメディアン径が1nm~500nmである;
(5)前記炭素材料は非晶質炭素、結晶性炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン及びメソカーボンミクロスフェアのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項4】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の負極材料。
(1)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含み、前記導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー及び黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記活物質、前記炭素材料及び前記導電率向上剤の質量比が(20~70):(10~70):(3~20)である;
(4)前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である;
(5)前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である;
(6)前記導電率向上剤の導電率が102S/mを超える。
【請求項5】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを有する、請求項2に記載の負極材料。
(1)前記金属酸化物の一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である;
(2)前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である;
(3)前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい;
(4)前記活物質に対する前記金属酸化物の質量比が(1~20):100である。
【請求項6】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含む;
(2)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の材料は非晶質炭素を含む;
(3)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の厚さが10nm~1500nmである;
(4)前記負極材料のメディアン径が0.5μm~30μmである;
(5)前記負極材料の比表面積が10m2/g以下である;
(6)前記負極材料の空孔率が10%以下であり、前記負極材料の押込み硬さが50MPa以上である;
(7)負極材料の測定密度をρ1とし、負極材料の平均密度(即ち、負極材料中の各成分の、負極材料に対する含有量(質量%)×各成分の理論密度で得られた値の総和)をρ2とすると、(ρ1-ρ2)/ρ2≦5%の関係を満たす。
【請求項7】
第1溶媒に引張強度が500MPa以上の導電率向上剤を加えて、分散させて分散液を得るステップと、
活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップと、
前記前駆体を600℃~1200℃での一次熱処理に供して、凝集体を得るステップと、を含むことを特徴とする、負極材料の製造方法。
【請求項8】
以下の特徴(1)~(15)のうちの少なくとも1つを有する、請求項7に記載の製造方法。
(1)前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記第1炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、アスファルトのうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含み、前記導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む;
(5)前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である;
(6)前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である;
(7)前記導電率向上剤の導電率が102S/mよりも大きい;
(8)前記活物質、前記導電率向上剤及び前記第1炭素源の質量比が(15~120):(1~20):(10~50)である;
(9)前記第1溶媒は有機溶媒、無機溶媒、及び有機溶媒と無機溶媒を混合した混合溶媒のうちの少なくとも1種である;
(10)前記第2溶媒は有機溶媒を含む;
(11)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加する;
(12)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加し、前記添加剤は界面活性剤及びカップリング剤のうちの少なくとも1種を含む;
(13)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加し、前記添加剤に対する前記活物質の質量比は(15~120):(1~10)である;
(14)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合する前記ステップにおいては、金属酸化物をさらに添加する;
(15)前記前駆体を製造するステップにおいては、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合したものを分散処理及び乾燥処理のうちの少なくとも1種に供することをさらに含む。
【請求項9】
以下の特徴(1)~(10)のうちの少なくとも1つを有する、請求項8に記載の製造方法。
(1)前記有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコールのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記無機溶媒は水、液体二酸化炭素、液体アンモニア、液体二酸化硫黄、塩化チオニル、塩化スルフリル、酢酸鉛、シアン化水素、ヒドラジン水和物、塩化フッ化スルフリル、銅アンモニア溶液、硫酸、硝酸、フッ化水素、ポリリン酸、及び超酸のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記界面活性剤はn-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコシン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ウンデカン酸、臭化セチルトリメチルアミン及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記カップリング剤はシランカップリング剤を含み、前記シランカップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び/又はγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含む;
(5)前記金属酸化物の一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である;
(6)前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である;
(7)前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい;
(8)前記活物質に対する前記金属酸化物の質量比が(1~20):100である;
(9)前記分散処理は機械的撹拌、超音波分散及び研磨分散のうちの少なくとも1種を含む;
(10)前記乾燥処理の温度は30℃~400℃、乾燥処理の時間は1h~15hである。
【請求項10】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記前駆体を一次熱処理に供する前に、前記前駆体を緻密化して、前記凝集体の空孔率を10%以下、前記凝集体の押込み硬さを50MPa以上にすることをさらに含む;
(2)前記前駆体を一次熱処理に供する前に、前記前駆体を緻密化して、前記凝集体の空孔率を10%以下、前記凝集体の押込み硬さを50MPa以上にすることをさらに含み、前記緻密化処理は融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理、及び浸漬処理のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記一次熱処理の時間は1h~10hである;
(4)前記一次熱処理において保護ガスを導入する。
【請求項11】
以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを有する、請求項10のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記融合処理はメカノフュージョンである;
(2)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンに使用される融合機の回転数が300r/min~3000r/minである;
(3)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmであること;
(4)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンの時間は少なくとも0.5hである;
(5)前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項12】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを含む、請求項7~11のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記方法は前記凝集体に炭素被覆処理を行うステップをさらに含む;
(2)前記方法は前記凝集体に炭素被覆処理を行うステップをさらに含み、前記炭素被覆処理のステップは前駆体を第2炭素源と混合して、二次熱処理を行うことを含む。
【請求項13】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを含む、請求項12のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記第2炭素源に対する前記前駆体の質量比が(20~100):(10~80)である;
(2)前記第2炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記第2炭素源に対する前記凝集体の質量比が(15~100):(10~70)である;
(4)前記二次熱処理の温度は600℃~1200℃であり、前記二次熱処理の時間は1h~10hである;
(5)前記二次熱処理において保護ガスを導入する;
(6)前記二次熱処理において保護ガスを導入し、前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の負極材料、又は請求項7~13のいずれか1項に記載の製造方法で製造した負極材料を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年08月25日に中国特許庁に提出された、出願番号が2021109834441、出願の名称が「負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は負極材料の技術分野に関し、具体的には、負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
電動化された新エネルギー車は自動車市場の将来の発展方向であり、そのコア部品はリチウムイオン電池である。市場の発展に伴い、高容量密度の電池に対する需要はますます高まっており、新規な高比容量正負極材料を採用することは電池のエネルギー密度を高める重要な方法の一つである。
【0004】
電池のエネルギー密度を高める様々な方法を検討するために、ますます多くの金属、酸化物、金属合金などの新材料が活性材料として負極材料に応用される。シリコン系負極材料を例に挙げると、シリコン系負極材料は上記活性材料の一つであり、一般的に次世代の負極材料として注目されており、超高理論比容量(4200mAh/g)と低脱リチウム電位(<0.5V)を有し、しかも、シリコンの電圧プラットフォームが黒鉛よりもわずかに高く、充電時にリチウムの表面析出が起こりにくく、安全性に優れているなどの利点により好まれている。しかし、シリコン系負極材料は充放電の過程で膨張収縮を繰り返す効果があり、体積変化率が高く、表面に形成されたSEI膜も膨張収縮の過程で破裂し、新たな界面が露出し、新たな界面に新たなSEI膜が形成され続け、外層のSEIが厚くなるため、電池のサイクル特性が悪くなる。負極材料に一般的に存在する体積膨張の問題は、これらの材料のさらなる応用を制限する。
【0005】
そのため、いかに負極材料の体積膨張を抑制し、サイクル安定性を向上させるかは、現在、早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に鑑み、負極材料の体積膨張を効果的に抑え、電池のサイクル特性を向上させることのできる負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池を提供することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様では、本願は、
活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、
前記導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、前記負極材料中の前記導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
前記分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
前記負極材料粒子のSEM切断面を面積A×B(ここで、A及びBは両方ともに1μm以下である。)の領域に分割し、単一の前記負極材料粒子の全ての前記領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔がいずれも10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の前記負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【0008】
上記態様では、負極材料は、活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料中の導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させる。引張強度が500MPa以上の導電性材料は導電率向上剤として使用され、導電率向上剤は優れた機械的特性を有し、また、導電率向上剤の分散度Nを1以上にすることにより導電率向上剤を負極材料に均一に分布させることにより、導電率向上剤は構造の支持体として機能し、負極材料の安定性を向上させ、導電率向上剤の間に活物質が充填され、活性材料の膨張による応力変化が低減し、凝集体の構造強度が向上する。検証した結果、上記負極材料は膨張率が低く、サイクル安定性に優れる。
【0009】
一実施形態では、前記導電率向上剤は前記活物質中に分布しており、前記活物質と前記導電率向上剤との間に前記炭素材料が充填されている。
【0010】
一実施形態では、前記炭素材料と前記導電率向上剤との間に空孔を有し、前記空孔に前記活物質が充填されている。
【0011】
一実施形態では、前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
一実施形態では、前記導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0013】
一実施形態では、前記活物質、前記炭素材料及び前記導電率向上剤の質量比が(20~70):(10~70):(3~20)である。
【0014】
一実施形態では、前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状であり、前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である。
【0015】
一実施形態では、前記導電率向上剤の導電率が102S/mを超える。
【0016】
一実施形態では、前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である。
【0017】
一実施形態では、前記凝集体は金属酸化物をさらに含む。
【0018】
一実施形態では、前記金属酸化物の化学一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、ここで、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である。
【0019】
一実施形態では、前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状であり、前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい。
【0020】
一実施形態では、前記金属酸化物と活物質との質量比が(1~20):100である。
【0021】
一実施形態では、前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
一実施形態では、前記活物質のメディアン径が1nm~500nmである。
【0023】
一実施形態では、前記炭素材料は非晶質炭素、結晶性炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン及びメソカーボンミクロスフェアのうちの少なくとも1種を含む。
【0024】
一実施形態では、前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含む。
【0025】
一実施形態では、前記炭素層の材料は非晶質炭素を含む。
【0026】
一実施形態では、前記炭素層の厚さが10nm~1500nmである。
【0027】
一実施形態では、前記負極材料のメディアン径が0.5μm~30μmである。
【0028】
一実施形態では、前記負極材料の比表面積が10m2/g以下である。
【0029】
一実施形態では、前記負極材料の空孔率が10%以下であり、前記負極材料の押込み硬さが50MPa以上である。
【0030】
一実施形態では、負極材料の測定密度をρ1とし、凝集体の平均密度をρ2とすると、前記負極材料の密度は、(ρ1-ρ2)/ρ2≦5%の関係を満たす。前記ρ2は、負極材料中の各成分の負極材料に対する含有量(質量%)×各成分の理論密度で得られた値の総和である。
【0031】
第2態様では、本願は、
第1溶媒に引張強度が500MPa以上の導電率向上剤を加えて、分散させて分散液を得るステップと、
活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップと、
前記前駆体を600℃~1200℃での一次熱処理に供して、凝集体を得るステップと、を含む負極材料の製造方法を提供する。
【0032】
本願による製造方法では、まず、第1溶媒に導電率向上剤を分散させて、分散溶液を得て、次に、分散溶液を活物質、第1炭素源及び第2溶媒とさまざまな配合比で混合し、前駆体を得ることによって、前駆体内部の導電率向上剤を均一に分散させ、導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させることができる。引張強度が500MPa以上の導電性材料は導電率向上剤として使用され、導電率向上剤は構造の支持体として機能し、負極材料の安定性を向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、負極材料の膨張率抑制に有利であり、しかも、製造過程が簡単で制御可能である。
【0033】
一実施形態では、前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0034】
一実施形態では、前記第1炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、アスファルトのうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
一実施形態では、前記導電率向上剤は合金材料、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0036】
一実施形態では、前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状であり、前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である。
【0037】
一実施形態では、前記導電率向上剤の引張強度が500MPa以上である。
【0038】
一実施形態では、前記導電率向上剤の導電率が102S/mを超える。
【0039】
一実施形態では、前記活物質、前記導電率向上剤及び前記第1炭素源の質量比が(15~120):(1~20):(10~50)である。
【0040】
一実施形態では、前記第1溶媒は有機溶媒、無機溶媒、有機溶媒と無機溶媒を混合した混合溶媒のうちの少なくとも1種を含む。
【0041】
一実施形態では、前記第2溶媒は有機溶媒を含む。
【0042】
一実施形態では、前記有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコールのうちの少なくとも1種を含む。
【0043】
一実施形態では、前記無機溶媒は水、液体二酸化炭素、液体アンモニア、液体二酸化硫黄、塩化チオニル、塩化スルフリル、酢酸鉛、シアン化水素、ヒドラジン水和物、塩化フッ化スルフリル、銅アンモニア溶液、硫酸、硝酸、フッ化水素、ポリリン酸、超酸のうちの少なくとも1種を含む。
【0044】
一実施形態では、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては添加剤をさらに添加する。
【0045】
一実施形態では、前記添加剤は界面活性剤、カップリング剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0046】
一実施形態では、前記界面活性剤はn-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコシン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ウンデカン酸、臭化セチルトリメチルアミン及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1種を含む。
【0047】
一実施形態では、前記カップリング剤はシランカップリング剤、前記シランカップリング剤包括γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含む。
【0048】
一実施形態では、前記導電率向上剤と前記添加剤との質量比が(1~20):(1~10)である。
【0049】
一実施形態では、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合する前記ステップにおいては金属酸化物をさらに添加する。
【0050】
一実施形態では、前記金属酸化物の化学一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、ここで、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である。
【0051】
一実施形態では、前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状であり、前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい。
【0052】
一実施形態では、前記金属酸化物と前記活物質との質量比が(1~20):100である。
【0053】
一実施形態では、製造前記前駆体は活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合したものを分散処理、乾燥処理のうちの少なくとも1種に供することをさらに含む。
【0054】
一実施形態では、前記分散処理は機械的撹拌、超音波分散及び研磨分散のうちの少なくとも1種を含む。
【0055】
一実施形態では、前記乾燥処理の温度は30℃~400℃であり、乾燥処理の時間は1h~15hである。
【0056】
一実施形態では、前記前駆体を熱処理に供する前に、前記前駆体を緻密化して、前記凝集体の空孔率を10%以下、前記凝集体の押込み硬さを50MPa以上にすることをさらに含む。
【0057】
一実施形態では、前記緻密化処理は融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理、及び浸漬処理のうちの少なくとも1種を含む。
【0058】
一実施形態では、前記融合処理はメカノフュージョンである。
【0059】
一実施形態では、前記メカノフュージョンに使用される融合機の回転数が300r/min~3000r/minである。
【0060】
一実施形態では、前記メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmである。
【0061】
一実施形態では、前記メカノフュージョンの時間は少なくとも0.5hである。
【0062】
一実施形態では、前記一次熱処理の時間は1h~10hである。
【0063】
一実施形態では、前記一次熱処理において保護ガスを導入しており、前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0064】
一実施形態では、前記方法は前記凝集体に炭素被覆処理を行うステップをさらに含む。
【0065】
一実施形態では、前記炭素被覆処理のステップは、前駆体を第2炭素源と混合して、二次熱処理を行うことを含む。
【0066】
一実施形態では、前記前駆体と前記第2炭素源との質量比が(20~100):(10~80)である。
【0067】
一実施形態では、前記炭素被覆処理のステップは、前記凝集体を第2炭素源と混合して、二次熱処理を行うことを含む。
【0068】
一実施形態では、前記第2炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1種を含む。
【0069】
一実施形態では、前記凝集体と前記第2炭素源との質量比が(15~100):(10~70)である。
【0070】
一実施形態では、前記二次熱処理の温度は600℃~1200℃であり、前記二次熱処理の時間は1h~10hである。
【0071】
一実施形態では、前記二次熱処理において保護ガスを導入する。
【0072】
一実施形態では、前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0073】
第3態様では、本願は、第1態様に記載の負極材料又は第2態様に記載の製造方法で製造される負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0074】
本願の技術的解決手段は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0075】
本願による負極材料は、活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料中の導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させる。引張強度が500MPa以上の導電性材料は導電率向上剤として使用され、導電率向上剤は優れた機械的特性を有し、また、導電率向上剤の分散度Nを1以上にすることにより導電率向上剤を負極材料に均一に分布させることにより、導電率向上剤は構造の支持体として機能し、負極材料の安定性を向上させ、導電率向上剤の間に活物質が充填され、活性材料の膨張による応力変化が低減し、凝集体の構造強度が向上する。検証した結果、上記負極材料は膨張率が低く、サイクル安定性に優れる。
【0076】
本願による製造方法では、まず、第1溶媒に導電率向上剤を分散させて、分散溶液を得て、次に、分散溶液を活物質、第1炭素源及び第2溶媒とさまざまな配合比で混合し、前駆体を得ることによって、前駆体内部の導電率向上剤の分散度Nを1以上にし、導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させる。引張強度が500MPa以上の導電性材料は導電率向上剤として使用され、導電率向上剤は構造の支持体として機能し、負極材料の安定性を向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、負極材料の膨張率抑制に有利であり、しかも、製造過程が簡単で制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本願の実施例による負極材料の製造方法の流れの概略図である。
図2】本願の実施例1で製造される負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】本願の実施例1で製造される負極材料のXRDパターンである。
図4】本願の実施例1で製造される負極材料の初回充放電曲線である。
図5】本願の実施例1で製造される負極材料のサイクル特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下は本願の実施例の好ましい実施形態を説明するが、なお、当業者であれば、本願の実施例の原理を逸脱することなく、複数の改良や修飾を行うことができ、これらの改良や修飾も本願の実施例の特許範囲とみなすべきである。
【0079】
一実施形態の負極材料は、活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料中の導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
負極材料粒子のSEM切断面を面積A×B(ここで、A及びBは両方共に1μm以下である。)の領域に分割し、単一の負極材料粒子の全ての領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔がいずれも10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【0080】
導電率向上剤の形状に関わらず、本願では、前記導電率向上剤の間の間隔は導電率向上剤の間の最小距離である。
【0081】
導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を高め、しかも、導電率向上剤は凝集体の構造安定性を効果的に向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、これによって、材料のサイクル安定性を向上させ、膨張率を低下させる。導電率向上剤の引張強度を500MPa以上の範囲にすることによって、導電率向上剤は優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を向上させることができ、導電率向上剤の間の最小間隔を制御することによって、導電率向上剤の間への活物質の充填が可能になり、導電率向上剤は構造の支持体として材料の安定性を向上させ、これによって、活物質の体積膨張の変化を緩和して、サイクル特性を向上させることができる。
【0082】
ここでは、導電率向上剤の引張強度は500MPa、800MPa、1GPa、5GPa、10GPa、25GPa、30GPa、45GPa又は50GPaなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0083】
導電率向上剤は凝集体の内部及び/又は表面に分布している。
【0084】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤は活物質に分布しており、活物質と導電率向上剤との間に炭素材料が充填されている。理解できるものとして、導電率向上剤が活物質に分布することにより、活物質の導電性を向上させ、キャリアの活物質内での伝達を改善できる。
【0085】
いくつかの実施形態では、炭素材料と導電率向上剤との間に空孔を有し、空孔に活物質が充填されている。理解できるものとして、炭素材料と導電率向上剤により空孔構造が形成されることによって、活物質の空孔内で凝集体の構造強度が高まり、この空孔構造は活物質の膨張による応力変化に対応し、凝集体の構造安定性を維持することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムの挿入脱離を行うことのできる物質である。活物質は金属単体、金属酸化物及び金属合金のうちの少なくとも1種を含む。さらに、金属はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、活物質は上記金属単体であってもよく、具体的には、Si、Sn、Ge、Alであってもよい。別のいくつかの実施形態では、活物質は少なくとも2種の上記金属で形成される合金、例えばシリコンリチウム合金、シリコンマグネシウム合金などであってもよい。別のいくつかの実施例では、活物質は上記金属の酸化物、例えば一酸化ケイ素であってもよい。なお、場合によっては、活物質は金属単体、金属合金及び金属酸化物のうちの少なくとも2種を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、活物質はメディアン径1nm~500nmの粒子である。具体的には、メディアン径は1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nmなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、ナノスケールの活物質は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集が起こりやすく、粒子の構造性が高く、活性粒子の体積膨張が抑えられる。その反面、ナノスケール活性粒子の大きな表面エネルギーにより、充放電中に凝集が起こりやすい。活物質の粒径が小さすぎ、生産プロセスのコストが高くなる。活物質のメディアン径は好ましくは1nm~200nm、より好ましくは1nm~100nmである。
【0090】
いくつかの実施形態では、炭素材料は非晶質炭素、結晶性炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン及びメソカーボンミクロスフェアのうちの少なくとも1種を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む。なお、引張強度が500MPa以上の導電性材料であれば、いずれも導電率向上剤とすることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、合金材料は、導電率が102S/mを超え、引張強度が500MPa以上の合金である。
【0094】
いくつかの実施形態では、合金材料はシリコン合金、アルミニウム合金、銅合金、アルミニウム合金及びリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む。さらに、シリコン合金はニッケルシリコン合金、鉄シリコン合金、銅シリコン合金、シリコンマンガン合金及びアルミニウムシリコン合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤の導電率は102S/mを超える。具体的には、導電率向上剤の導電率は100S/m、103S/m、104S/m、105S/m、108S/mなどであってもよい。導電率がこの範囲内である導電率向上剤はキャリアの凝集体内部での伝達を改善し、凝集体の導電性を高めることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である。
【0097】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である。なお、導電率向上剤が短冊状である場合、アスペクト比は、具体的には、粒子の長さと粒子の粒径との比であり、ここでの粒径は短冊状導電率向上剤の長手方向に垂直な断面の縁上の2つの点間の最大直線距離であり、導電率向上剤がフレーク状である場合、アスペクト比は、具体的には、フレーク状導電率向上剤の長さと幅との比である。具体的には、導電率向上剤のアスペクト比は2、30、46、150、360、670、800、900、1500、2000又は3000などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、アスペクト比がこの範囲内の導電率向上剤は、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を向上させることができ、これによって、活物質の体積膨張の変化を緩和して、サイクル特性を向上させることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、活物質、炭素材料及び導電率向上剤の質量比は(20~70):(10~70):(3~20)である。具体的には、20:10:3、50:70:10、30:70:15、25:50:12、20:60:10、25:70:8、70:10:10、70:50:20、70:25:15、50:50:10などであってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態では、凝集体は金属酸化物をさらに含み、金属酸化物が活物質と複合することにより、活物質の膨張が低減し、長期間サイクル特性が向上し、しかも、凝集体はより高い押込み硬さがある。
【0100】
いくつかの実施形態では、凝集体において、金属酸化物と導電率向上剤は活物質に分布しており、活物質と金属酸化物との間、活物質と導電率向上剤との間に炭素材料が充填されている。
【0101】
具体的には、活物質と金属酸化物との間、活物質と導電率向上剤との間に空孔を有し、空孔に炭素材料が充填されている。理解できるものとして、活物質と金属酸化物で形成される空孔構造により、炭素材料は空孔内に充填され、これにより、凝集体の構造安定性が向上し、所定の体積膨張応力に対応でき、膨張を低下させる。
【0102】
いくつかの実施形態では、金属酸化物の化学一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、ここで、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca又はZnのうちの少なくとも1種を含む。)であり、具体的には、金属酸化物はSiO、GeO2、SnO2、ZnO、TiO2、Fe34、MgO、SiO2、CuOなどであってもよい。使用される金属酸化物はリチウム挿入過程における体積膨張の変化率が活物質のこれよりも低く、このため、金属酸化物が活物質と複合することにより、活物質の膨張が低減され、長期間サイクル特性が向上する。
【0103】
いくつかの実施形態では、金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である。
【0104】
いくつかの実施形態では、金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい。なお、当金属酸化物が短冊状である場合、アスペクト比は、具体的には、粒子の長さと粒子の粒径との比であり、ここでの粒径は短冊状金属酸化物の長手方向に垂直な断面の縁部上の2つの点間の最大直線距離であり、金属酸化物がフレーク状である場合、アスペクト比は、具体的には、フレーク状金属酸化物の長さと幅との比である。具体的には、金属酸化物のアスペクト比は2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、12、15、17、18、22などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい場合、金属酸化物と活物質との物理的結合力を向上させ、活物質の体積膨張の変化をより緩和して、サイクル特性を向上させることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、金属酸化物と活物質との質量比は(1~20):100である。具体的には、金属酸化物と活物質との質量比は1:100、1.5:100、2:100、3:100、4.5:100、5:100、6:100、7:100、8:100、9:100などであってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。金属酸化物の含有量が高すぎると、材料の初回効率が低下し、金属酸化物の含有量が低すぎると、凝集体構造に対する金属酸化物の剛性が低下し、粒子のサイクル安定性が低下する。
【0106】
いくつかの実施形態では、負極材料の空孔率が10%以下であり、負極材料の押込み硬さが50MPa以上である。
【0107】
このとき、負極材料の空孔率が低い、即ちその緻密度が高い場合、材料のエネルギー密度向上に有利である一方、高緻密度の材料は表層が破壊されていても、電解液が凝集体内部に浸透しにくく、内部の活物質粒子を保護し、電解液と活物質との接触の確立を低下させるのに有利であり、安定な固体電解質膜を形成するのに寄与し、また、高緻密化した負極材料は高押込み硬さを有し、膨張による応力効果に対応し、負極材料の構造安定性を向上させ、負極材料の体積膨張を効果的に抑え、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、負極材料の空孔率は10%以下であり、負極材料の空孔率は、具体的には、10%、9%、9.5%、8%、8.5%、7.5%、7%、6.5%、6%又は5%などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。理解できるものとして、負極材料の空孔率が低い、即ちその緻密度が高いと、安定な固体電解質膜を形成し、電解液と活物質との接触を減らすのに有利である。好ましくは、前記負極材料の空孔率は5%以下、より好ましくは、3%以下である。
【0109】
負極材料の押込み硬さは50MPa以上であり、負極材料の押込み硬さは、具体的には、50MPa、250MPa、300MPa、450MPa、500MPa、750MPa、900MPa、1150MPa、11200MPa又は1250MPaなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。負極材料が高い剛性を有するので、粒子は構造安定性が高く、所定の体積膨張応力に対応でき、膨張を低減させ、電池のサイクル安定性を向上させる。好ましくは、負極材料の押込み硬さは100MPa以上、より好ましくは、200MPa以上である。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記負極材料の密度は、負極材料の測定密度と負極材料の平均密度との差が5%以下であるという関係を満たす。負極材料の測定密度が平均密度に近く、両方の差が小さいほど、粒子は内部の空孔が少なく、緻密なものであり、安定な固体電解質膜を形成し、電解液と活物質との接触を減らすのに有利である。
【0111】
具体的には、負極材料の密度は、関係式:(ρ1-ρ2)/ρ2≦5%(ここで、ρ1は負極材料の測定密度、ρ2は負極材料の平均密度である。)を満たす。
【0112】
ここでは、ρ2は負極材料中の各成分の負極材料中の含有量(質量%)×各成分の理論密度で得られた値の総和である。
【0113】
具体例では、負極材料が活物質、導電率向上剤及び炭素材料を含む凝集体を含む場合、ρ2=活物質の負極材料中の含有量(質量%)×活物質の理論密度+導電率向上剤の負極材料中の含有量(質量%)×導電率向上剤の理論密度+炭素材料の負極材料中の含有量(質量%)×炭素材料の理論密度である。
【0114】
負極材料が活物質、金属酸化物、導電率向上剤及び炭素材料を含む凝集体を含む場合、ρ2=活物質の負極材料中の含有量(質量%)×活物質の理論密度+金属酸化物の負極材料中の含有量(質量%)×金属酸化物の理論密度+導電率向上剤の負極材料中の含有量(質量%)×導電率向上剤の理論密度+炭素材料の負極材料中の含有量(質量%)×炭素材料の理論密度である。
【0115】
さらに、負極材料は凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含む。好ましくは、炭素層は凝集体の表面に分布している。
【0116】
いくつかの実施形態では、炭素層の材料は非晶質炭素を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、炭素層の厚さは10nm~1500nmである。理解できるものとして、前記凝集体の表面に被覆された炭素層は活物質と電解液との接触を減らし、パシベーション膜の形成を減らし、電池の可逆容量を向上させることができる。
【0118】
具体的には、炭素層の厚さは10nm、50nm、180nm、200nm、350nm、400nm、550nm、700nm、850nm、900nm、1050nm、1200nm又は1500nmなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。炭素層が厚すぎ、炭素の割合が高すぎると、高比容量の複合材料を得るのに不利であり、炭素層が薄すぎると、負極材料の導電性向上に不利であり、また、材料の体積膨張に対する抑制性が悪く、その結果、長期間サイクル特性が劣る。好ましくは、炭素層の厚さは50nm~800nm、より好ましくは、100nm~500nmである。
【0119】
なお、いくつかの実施例では、凝集体の表面に炭素層が被覆された負極材料は空孔率10%以下、押込み硬さ50MPa以上である。負極材料は全体として空孔率と押込み硬さをこのような範囲に維持すると、負極材料の性能がさらに向上する。
【0120】
いくつかの実施形態では、負極材料のメディアン径は0.5μm~30μmである。具体的には、0.5μm、1μm、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、25μm又は30μmなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。理解できるものとして、負極材料のメディアン径を上記範囲にすることによって、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0121】
いくつかの実施形態では、負極材料の比表面積は10m2/g以下である。具体的には、10m2/g、8m2/g、7m2/g、5m2/g、3m2/g、2m2/g、1m2/g又は0.5m2/gなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。理解できるものとして、負極材料の比表面積を上記範囲にすることによって、体積膨張の抑制に有利であり、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0122】
なお、上記各実施形態に係る負極材料は、互いに矛盾しない限り、任意に組み合わせられてもよく、例えば凝集体の押込み硬さ、空孔率や密度について組み合わせて限定などする。
【0123】
別の実施形態の負極材料の製造方法は、図1に示すように、
第1溶媒に引張強度が500MPa以上の導電率向上剤を加えて、分散させて分散液を得るステップS10と、
活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップS20と、
前記前駆体を600℃~1200℃での一次熱処理に供して、凝集体を得るステップS30と、
凝集体に炭素被覆処理を行って、負極材料を得るステップS40と、を含む。
【0124】
該実施形態の製造方法で製造される負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素被覆層と、を含み、凝集体は活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、導電率向上剤の粒子中の分散度が1以上である。
【0125】
該実施形態の製造方法では、まず、第1溶媒に導電率向上剤を分散させて、分散溶液を得て、次に、分散溶液を活物質、第1炭素源及び第2溶媒とさまざまな配合比で混合し、前駆体を得て、前駆体内部の導電率向上剤を均一に分散させる。導電率向上剤を均一に分散させることにより、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させる。引張強度が500MPa以上の導電性材料は導電率向上剤として使用され、導電率向上剤は構造の支持体として機能し、負極材料の安定性を向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、負極材料の膨張率抑制に有利であり、しかも、製造過程が簡単で制御可能である。
【0126】
以下、実施例を参照して本願の製造方法について詳細に説明する。
【0127】
ステップS10、第1溶媒に引張強度が500MPa以上の導電率向上剤を加えて、分散させて分散液を得る。
【0128】
導電率向上剤の引張強度が500MPa以上である。ただし、導電率向上剤の引張強度が低すぎると、導電率向上剤は活物質の膨張による応力変化に対応できず、凝集体の構造安定性を維持しにくく、材料のサイクル特性の向上に不利である。具体的には、導電率向上剤の引張強度は500MPa、800MPa、1GPa、6GPa、10GPa、15GPa、30GPa、35GPa又は80GPaなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、導電率向上剤の引張強度を上記範囲にすることによって、導電率向上剤は優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を向上させることができ、これによって、活物質の体積膨張の変化を緩和して、サイクル特性を向上させることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、第1溶媒は無機溶媒、有機溶媒、又は有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒を含む。有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコールのうちの少なくとも1種を含み、無機溶媒は水、液体二酸化炭素、液体アンモニア、液体二酸化硫黄、二塩化酸化硫黄(塩化チオニル)、塩化スルフリル(スルフリルクロライド)、酢酸鉛(鉛糖)、シアン化水素、ヒドラジン水和物、塩化フッ化スルフリル、銅アンモニア溶液、硫酸、硝酸、フッ化水素、ポリリン酸、超酸などを含み、超酸はHSO3Cl、HSO3F、HSO3CF3、HSO3F-SbF5、SbF5、AsF5、AuF5、TaF5及びNbF5のうちの少なくとも1種を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、分散処理は機械的撹拌、超音波分散及び研磨分散のうちの少なくとも1種を含む。研磨分散が好ましく、十分にミーリングすることにより成分がより均一に混合され得る。まず、第1溶媒に導電率向上剤を加えて分散させ、導電率向上剤の凝集を避けるために、第1溶媒に導電率向上剤をできる限り均一に分散させる。いくつかの実施形態では、分散時間は0.5h~10hとしてもよい。
【0131】
ステップS20、活物質、分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合し、前駆体を製造する。
【0132】
いくつかの実施形態では、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムの挿入脱離を行うことのできる物質である。活物質は金属単体、金属酸化物及び金属合金のうちの少なくとも1種を含む。さらに、金属はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、活物質は上記金属単体であってもよく、さらに、活物質は、具体的には、Si、Sn、Ge、Alであってもよい。別のいくつかの実施形態では、活物質は少なくとも2種の上記金属で形成される合金、例えばシリコンリチウム合金、シリコンマグネシウム合金などであってもよい。別のいくつかの実施例では、活物質は上記金属の酸化物、例えば一酸化ケイ素であってもよい。なお、場合によっては、活物質は金属単体、金属合金及び金属酸化物のうちの少なくとも2種を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、活物質は、メディアン径1nm~500nmの粒子である。具体的には、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nmなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、ナノスケールの活物質は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集が起こりやすく、粒子の構造性が高く、活性粒子の体積膨張が抑えられる。その反面、ナノスケール活性粒子の大きな表面エネルギーにより、充放電中に凝集が起こりやすい。活物質の粒径が小さすぎ、生産プロセスのコストが高くなる。好ましくは、活物質のメディアン径は1nm~200nm、より好ましくは1nm~100nmである。
【0136】
いくつかの実施形態では、第1炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、アスファルトのうちの少なくとも1種を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、第2溶媒は有機溶媒を含む。有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコールのうちの少なくとも1種を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤の導電率は102S/mを超え、具体的には、100S/m、103S/m、104S/m、105S/m、108S/mなどであってもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である。
【0142】
いくつかの実施形態では、導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である。なお、導電率向上剤が短冊状である場合、アスペクト比は、具体的には、粒子の長さと粒子の粒径との比であり、導電率向上剤がフレーク状である場合、アスペクト比は、具体的には、フレーク状導電率向上剤の長さと幅との比である。具体的には、導電率向上剤のアスペクト比は2、30、46、150、360、670、800、900、1500、2000又は3000などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。試験を繰り返した結果、アスペクト比がこの範囲内の導電率向上剤は、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を向上させることができ、これによって、活物質の体積膨張の変化を緩和して、サイクル特性を向上させることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、活物質、導電率向上剤及び第1炭素源の質量比は(15~120):(1~20):(10~50)である。具体的には、20:10:20、50:10:10、100:20:15、100:20:10、80:10:10、80:1:10、80:5:50、50:20:20、120:20:50、120:20:10などであってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップにおいては添加剤をさらに添加する。ここで、添加剤は活物質と第1炭素源との接続安定性を効果的に向上させ、強固な系を形成し、極板の膨張率を低下させることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、活物質と添加剤との質量比は(15~120):(1~10)であり、具体的には、15:1、15:5、15:10、50:1、55:2、65:10、70:2、80:5、90:8、100:1、100:10、120:5などであってもよく、ここでは限定されない。
【0146】
いくつかの実施形態では、添加剤は界面活性剤及びカップリング剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0147】
界面活性剤はn-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコシン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ウンデカン酸、臭化セチルトリメチルアミン及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1種を含む。
【0148】
カップリング剤はシランカップリング剤を含む。シランカップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップにおいては金属酸化物をさらに添加する。
【0150】
いくつかの実施形態では、金属酸化物の化学一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、ここで、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である。
【0152】
いくつかの実施形態では、金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい。
【0153】
いくつかの実施形態では、金属酸化物と活物質との質量比は(1~20):100である。具体的には、金属酸化物と活物質との質量比は1:100、1.5:100、2:100、3:100、4.5:100、5:100、6:100、7:100、8:100、9:100などであってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。金属酸化物の含有量が高すぎると、材料の初回効率が低下し、金属酸化物の含有量が低すぎると、凝集体構造に対する金属酸化物の剛性が低下し、粒子のサイクル安定性が低下する。
【0154】
いくつかの実施形態では、前記前駆体を製造するステップは、活物質、導電率向上剤、第1炭素源、溶媒を混合したものを分散処理することをさらに含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、分散処理は機械的撹拌、超音波分散及び研磨分散のうちの少なくとも1種を含み、研磨分散が好ましく、活物質を分散させ、活物質の凝集を回避し、また、活物質を小さなナノ粒子として分散させることができる。好ましくは、湿式ボールミーリングが使用され、湿式ボールミーリングの分散時間は0.5h~10hとしてもよく、十分にミーリングすることにより、成分をより均一に混合し、活物質粒子の粒径を1nm~500nmにすることができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、前駆体を熱処理する前に、前駆体を乾燥処理するステップをさらに含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、乾燥の温度は30℃~400℃であり、具体的には、30℃、40℃、50℃、80℃、100℃、120℃、150℃、180℃、200℃、250℃、280℃、300℃又は400℃などであってもよく、乾燥処理の時間は1h~15hであり、具体的には、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15hなどであってもよく、乾燥処理方式は、例えば炉内ベーク、凍結乾燥、撹拌蒸発乾燥、噴霧乾燥などであってもよく、本実施例では、乾燥処理は前駆体溶液中の溶媒をできるだけ除去することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、前駆体を熱処理する前に、前駆体を緻密化処理するステップをさらに含む。緻密化処理により、得られた凝集体の空孔率が10%以下、凝集体の押込み硬さが50MPa以上になる。
【0159】
いくつかの実施形態では、緻密化処理は融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理及び浸漬処理のうちの少なくとも1種を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、融合処理はメカノフュージョンである。前駆体を融合処理することによって、負極材料の押込み硬さを向上させ、さらに一次熱処理を行うことによって、粒子構造の安定性を向上させるとともに、活物質と第1炭素源との間の接続安定性を向上させ、空孔率を下げる。もちろん、他の実施形態では、他の方法、例えばプレス、静水圧プレス、浸漬などのプロセスによって緻密化処理を行ってもよく、凝集体の空孔率を10%以下、押込み硬さを50MPa以上にすればよい。
【0161】
いくつかの実施形態では、融合に際しては、融合機の回転数は300r/min~3000r/minであり、具体的には、300r/min、1000r/min、1500r/min、2000r/min、2500r/min又は3000r/minなどであってもよく、融合機のブレードギャップ幅は0.01cm~0.9cmであり、具体的には、0.01cm、0.05cm、0.1cm、0.15cm、0.2cm、0.25cm、0.3cm、0.5cm、0.9cmなどであってもよく、融合時間は少なくとも0.5hであり、具体的には、0.5h、0.8h、0.9h、1.0h、1.5h又は2hなどであってもよく、ここでは限定されない。
【0162】
ステップS30、前駆体を600℃~1200℃での一次熱処理に供して、凝集体を得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、一次熱処理方式は、例えば真空焼結、ホットプレス焼結又は常圧焼結であってもよい。
【0164】
いくつかの実施形態では、一次熱処理温度は600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃などであってもよい。好ましくは、一次熱処理温度は600℃~1000℃である。
【0165】
いくつかの実施形態では、一次熱処理時間は1h~10hであり、例えば1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10hなどであってもよい。
【0166】
熱処理における昇温速度は1℃/min~30℃/minであり、具体的には、1℃/min、5℃/min、10℃/min、15℃/min、20℃/min、25℃/min又は30℃/minなどであってもよい。例えば、好ましくは、熱処理における昇温速度は1℃/min~15℃/minであってもよい。
【0167】
熱処理において保護ガスを導入しており、保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0168】
ステップS40、凝集体に炭素被覆処理を行って、負極材料を得る。
【0169】
なお、本実施形態の負極材料は炭素被覆を行われなくてもよく、この場合、ステップS30は省略されてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、炭素被覆処理のステップは、前駆体を第2炭素源と混合して、二次熱処理を行うことを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、第2炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1種を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、前駆体の粒径は0.5μm~20μmであり、具体的には、0.5μm、1μm、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm又は20μmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。理解できるものとして、負極材料の平均粒径を上記範囲にすることによって、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0173】
いくつかの実施形態では、前駆体と第2炭素源との質量比は(20~100):(10~80)である。具体的には、前駆体と第2炭素源との質量比は100:25、100:35、100:45、100:55、100:65などであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0174】
いくつかの実施形態では、二次熱処理の温度は600℃~1200℃であり、
いくつかの実施形態では、二次熱処理の時間は1h~10hである。
【0175】
いくつかの実施形態では、二次熱処理における昇温速度は1℃/min~30℃/minである。
【0176】
いくつかの実施形態では、二次熱処理において保護ガスを導入しており、保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、混合方式は磁気撹拌、機械的撹拌、超音波分散、研磨分散などを含んでもよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、凝集体の炭素被覆には他の方式も利用可能であり、具体的には、炭素被覆処理のステップは、凝集体を第2炭素源と混合し、二次熱処理を行って、凝集体の表面に炭素層を形成することを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、凝集体と第2炭素源との質量比は(15~100):(10~70)であり、具体的には、前駆体と第2炭素源との質量比は100:25、100:35、100:45、100:55、100:65などであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0180】
いくつかの実施形態では、二次熱処理の温度は600℃~1200℃であり、例えば600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃などであってもよい。好ましくは、二次熱処理の温度は600℃~1000℃である。
【0181】
いくつかの実施形態では、二次熱処理の時間は1h~10hであり、例えば、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10hなどであってもよい。
【0182】
いくつかの実施形態では、二次熱処理における昇温速度は1℃/min~30℃/minであり、具体的には、1℃/min、5℃/min、10℃/min、15℃/min、20℃/min、25℃/min又は30℃/minなどであってもよい。例えば、好ましくは、熱処理における昇温速度は1℃/min~15℃/minであってもよい。
【0183】
いくつかの実施形態では、二次熱処理において保護ガスを導入しており、保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0184】
なお、本実施形態の負極材料は上記2種の炭素被覆方法に限定されるものではない。
【0185】
いくつかの実施形態では、二次熱処理後、粉砕、篩分け及び消磁のうちの少なくとも1種をさらに行い、好ましくは、二次熱処理後、粉砕、篩分け及び消磁をさらに順次行う。
【0186】
いくつかの実施形態では、粉砕手段は機械式粉砕機、ジェット粉砕機、低温粉砕機のうちのいずれか1つである。
【0187】
いくつかの実施形態では、篩分け手段は固定篩、トロンメル、共振篩、ローラスクリーン、振動篩、チェーンスクリーンのうちのいずれか1つであり、篩分けのメッシュは500メッシュ以上であり、具体的には、篩分けのメッシュは500メッシュ、600メッシュ、700メッシュ、800目などであってもよく、負極材料の粒径を上記範囲にすることによって、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0188】
いくつかの実施形態では、消磁装置は永久磁石ドラム磁選機、電磁除鉄機、脈動高勾配磁選機のうちのいずれか1つであり、消磁は負極材料の最終的な磁性物質含有量を制御し、リチウムイオン電池の放電効果及び電池の使用中の安全性への磁性物質の影響を回避するためである。
【0189】
本願はまた、上記負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0190】
本願では、前記メディアン径とは平均粒径であり、物理的には粒子の累積粒度分布百分率が50%に達するときの粒径であり、マルバーン粒度計によって測定される。マルバーン粒度計は粒子の光に対する散乱を利用して、散乱光エネルギーの分布から測定対象粒子の粒径分布を総合的に換算する。
【0191】
当業者にとって明らかなように、以上で説明されたリチウムイオン電池の製造方法は実施例に過ぎない。本願で開示された内容に基づいて、本分野で公知の他の方法を使用してもよい。
【実施例
【0192】
以下、複数の実施例によって本願の実施例をさらに説明する。ただし、本願の実施例は以下の具体的な実施例に限定されるものではない。主請求項の範囲を変更せずに、適宜変更してもよい。
【0193】
以下の実施例及び比較例では、導電率向上剤の分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
製造した負極材料についてSEM切断面を形成し、単一の負極材料粒子のSEM切断面を面積1μm×1μmの領域に分割し、単一の負極材料粒子の全ての領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の間隔が全て10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【0194】
実施例1
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径100nmのナノシリコン、分散液、ポリアクリル酸及びフェノール樹脂を40:3.9:1.6:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が450r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9.5である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは231MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.2%である。
図2は本願の実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図3は本願の実施例1で製造された負極材料のXRDパターンであり、図3に示すように、負極材料においては、シリコンピークのピーク位置が存在する。
【0195】
実施例2
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比100、引張強度1.5GPa、導電率1.2×105S/mの黒鉛繊維3質量%を無水エタノールに加え、10hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径30nmのナノシリコン、分散液、油酸及びスクロースを30:1.9:5.6:25.9の質量比でエタノール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて7h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度150℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が650r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.4cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を3hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を980℃の条件で熱処理し、2h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を70:55の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、840℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、黒鉛繊維及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、黒鉛繊維及び炭素材料の質量比は55.6:6.2:38.2であり、黒鉛繊維は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12.8μm、比表面積4.7m2/g、炭素層厚さ320nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(黒鉛繊維)の分散度Nは14である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは128MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.9%である。
【0196】
実施例3
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比2000、引張強度129GPa、導電率3×106S/mの単層カーボンナノチューブ2質量%を水とエタノールの混合溶液(水:エタノール質量比=1:1)に加え、10hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径60nmのナノシリコン、分散液、カプリン酸及びフルクトースを40:2.9:3.6:36.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、70min超音波処理し、次に、ボールミルにて5h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度200℃で噴霧乾燥処理を1.5h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が300r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.5cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を700℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:47の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、920℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は43.9:2.1:54.0であり、単層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径9.8μm、比表面積5.3m2/g、炭素層厚さ600nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤単層カーボンナノチューブの分散度Nは20である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは201MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は1.9%である。
【0197】
実施例4
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比55、引張強度502MPa、導電率2.2×102S/mのニッケルシリコン合金5質量%を無水エタノールに加え、6hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノシリコン、分散液、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びグルコースを50:2.9:3.6:44.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて6h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度140℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.45cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を790℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:37の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、960℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、ニッケルシリコン合金及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、ニッケルシリコン合金及び炭素材料の質量比は46.9:2.8:50.3である。ニッケルシリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12μm、比表面積4.3m2/g、炭素層厚さ580nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(ニッケルシリコン合金)の分散度Nは11である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は5.2%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは109MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.2%である。
【0198】
実施例5
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比35、引張強度560MPa、導電率6.2×102S/mの鉄シリコン合金1.5質量%をプロパノールに加え、8hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノシリコン、分散液、ポリソルベート-80及びクエン酸を49:3.9:4.6:34.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて6h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度120℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が300r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.6cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:44の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、920℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、鉄シリコン合金及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、鉄シリコン合金及び炭素材料の質量比は50.4:3.8:45.8である。鉄シリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径15μm、比表面積3m2/g、炭素層厚さ430nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(鉄シリコン合金)の分散度Nは33である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は2.6%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは188MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.1%である。
【0199】
実施例6
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比45、引張強度679MPa、導電率4.2×103S/mの銅シリコン合金2.5質量%をプロパノールに加え、4hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのGe粒子、分散液、ポリソルベート-20及びクエン酸を78:2.9:3.6:44.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、90min超音波処理し、次に、ボールミルにて3h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度180℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.5cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:34の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノGe粉末、銅シリコン合金及び炭素材料を含み、ナノGe粉末、銅シリコン合金及び炭素材料の質量比は67.4:4.8:26.8である。銅シリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径14.8μm、比表面積3.9m2/g、炭素層厚さ206nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(銅シリコン合金)の分散度Nは13である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は5.6%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは345MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.8%である。
【0200】
実施例7
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比350、引張強度4.2GPa、導電率5.6S/mのカーボンファイバー3質量%をブタノールに加え、6hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径120nmのSn粒子、分散液、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びスクロースを90:6.9:2.6:26.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、100min超音波処理し、次に、ボールミルにて4h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度150℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.7cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、2h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を100:45の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSn粉末、カーボンファイバー及び炭素材料を含み、ナノSn粉末、カーボンファイバー及び炭素材料の質量比は69.5:4.5:26.0である。カーボンファイバーは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12.8μm、比表面積5.9m2/g、炭素層厚さ160nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(カーボンファイバー)の分散度Nは24である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.1%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは289MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は1.5%である。
【0201】
実施例8
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比900、引張強度55GPa、導電率5.2×106S/mのカーボンナノチューブ2.3質量%をブタノールに加え、12hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径80nmのSi粒子、分散液、アスペクト比18のSiO、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びスクロースを50:3.9:3.0:6.6:33.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、120min超音波処理し、次に、ボールミルにて研磨分散8h前駆体溶液を得た後、乾燥温度140℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が1000r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、2h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を100:55の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、8h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSi粉末、カーボンナノチューブ、SiO及び炭素材料を含み、ナノSi粉末、カーボンナノチューブ、SiO及び炭素材料の質量比は46.2:2.5:6.5:44.8である。カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径9.8μm、比表面積4.3m2/g、炭素層厚さ460nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(カーボンナノチューブ)の分散度Nは25である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは142MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.2%である。
【0202】
実施例9
添加剤(ポリアクリル酸)を添加していない以外、実施例1と同様な方法によって負極材料を製造した。ステップ(1)では、メディアン径100nmのナノシリコン、アスペクト比500、引張強度65GPaの多層カーボンナノチューブとフェノール樹脂を40:3.9:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは7.4である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は6.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは205MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.1%である。
【0203】
実施例10
本実施例は、ステップ(2)では、具体的には、窒素ガス保護下、前駆体を890℃で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは10である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は10.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは45MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.2%である。
【0204】
実施例11
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、メディアン径100nmのナノシリコン、多層カーボンナノチューブ及びフェノール樹脂を40:3.9:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)窒素ガス保護下、前駆体を890℃の条件で4h熱処理し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は11.4%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは26MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は4.4%である。
【0205】
実施例12
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径100nmのナノシリコン、分散液、アスペクト比17のTiO2粒子及びフェノール樹脂を40:3.9:0.5:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)窒素ガス保護下、前駆体を890℃で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ、TiO2粒子及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ、TiO2粒子及び炭素材料の質量比は(47.6):(2.6):(2.0):(46.8)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(12)μm、比表面積(6.8)m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは8.8である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は9.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは55MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.9%である。
【0206】
実施例13
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノSi、分散液及びフェノール樹脂を15:1:10の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が800r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を1000℃の条件で熱処理し、3h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを15:10の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、1000℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は(58.2):(2.1):(39.7)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(14.3)μm、比表面積(2.8)m2/g、炭素層厚さ(380)nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは1.4である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は2.7%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは164MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.0%である。
【0207】
実施例14
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比1000、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ1.0質量%を液体アンモニアと水(体積比1:1)の混合溶媒に加え、8hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノSn、分散液及びフェノール樹脂を120:2:50の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が800r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を890℃の条件で熱処理し、3h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:50の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、800℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSn粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノSn粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は(69.5):(1.1):(29.4)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(16)μm、比表面積(3.7)m2/g、炭素層厚さ(144)nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは45である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.7%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは199MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は1.5%である。
【0208】
実施例15
炭素被覆を行っておらず、ステップ(3)を含まない以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9.8である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は9.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは67MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.7%である。
【0209】
実施例16
導電率向上剤のアスペクト比が1.9である以外、実施例1と同様な方法によって負極材料を製造した。
炭素被覆を行っておらず、ステップ(3)を含まない以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは11である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは89MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.9%である。
【0210】
比較例1
引張強度253MPaのニッケルシリコン材料を採用する以外、実施例4と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、ニッケルシリコン材料及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、ニッケルシリコン材料及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、ニッケルシリコン材料は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(ニッケルシリコン材料)の分散度Nは7.9である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は7.2%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは48MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.7%である。
【0211】
比較例2
導電率向上剤を添加していない以外、実施例1と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.3%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは102MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は2.5%である。
【0212】
比較例3
ステップ(1)において原材料を研磨分散にかけない以外、実施例1と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは0.2である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は6.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは114MPaである。負極材料の測定密度とシリコン粉末及び炭素材料の平均密度との差は3.3%である。
【0213】
測定方法
(1)ボタン型電池の測定
以下の方法で電気化学的サイクル特性を測定した。製造したシリコンカーボン複合負極材料、導電剤及びバインダを94:1:5の質量比で溶媒に溶解して混合し、固形分を50%にして、銅箔集電体上に塗布し、真空ベークを行って、負極極板を製造した。次に、従来の成熟したプロセスによって製造された三元正極極板、1mol/LのLiPF6/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+メチルエチルカーボネート(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、ケースを用いて、一般的な生産プロセスによって、リチウムイオン電池を得た。マイクロメータを利用して、リチウムイオン電池の極板の初期厚さH0を測定し、リチウムイオン電池の充放電測定として、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池測定システムにおいて、常温条件、0.2Cで定電流充放電を行い、充放電電圧を2.75~4.2Vに制限し、初回可逆容量、初回サイクル充電容量及び初回サイクル放電容量を得た。初回クーロン効率=初回サイクル放電容量/初回サイクル充電容量。
50週間サイクル後、マイクロメータを用いてリチウムイオン電池のこのときの極板の厚さH1を測定し、50サイクル後の膨張率=(H1-H0)/H0×100%とした。
100週間サイクル後、放電容量をリチウムイオン電池の残量として記録し、容量維持=残量/初期容量×100%とした。
(2)導電率向上剤及び金属酸化物のアスペクト比:AFMを用いて導電率向上剤及び金属酸化物のアスペクト比を測定した。導電率向上剤及び金属酸化物を超音波分散した後、スライドグラスに滴下してサンプルを作製し、乾燥後AFMにて測定した。100個以上の導電率向上剤及び金属酸化物の長さL、幅W又は粒径Yを測定し、単一のもののアスペクト比D=L/W又はD=L/Yとして、100個の平均値を算出し、サンプルのアスペクト比を得た。
(3)負極材料の測定密度:
空き瓶の質量mを量り、空き瓶を蒸留水で満たし、このときの質量m1とし、次に、瓶を洗浄して乾燥し、所定量の負極材料を比重瓶に投入し、このときの全質量m2を記録し、次に、比重瓶を蒸留水で満たし、このときの質量m3を量り、比重瓶の体積v1=(m1-m)/ρ1、負極材料の体積v2=(m2-m3)/ρ1、負極材料の測定密度ρ2=(m3-m)/(V-V1)とし、ρ1は蒸留水の密度である。
(4)導電率向上剤の引張強度:
引張試験機を用いて導電率向上剤の引張強度を測定した。
上記特性の測定結果を表1に示す。
【0214】
【表1】
【0215】
図4は本願の実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線であり、図4に示すように、実施例1で製造された負極材料は、初回充放電容量が高く、初回効率も高く、これは、負極材料中の導電率向上剤がキャリアの凝集体内部での伝達を改善し、凝集体の導電性を高め、負極材料に優れた電気化学的特性を持たせるからである。
【0216】
図5は本願の実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線であり、図5に示すように、該負極材料は、優れたサイクル特性を有し、100週間サイクル後の容量維持率が93.1%であり、これは、導電率向上剤により凝集体の構造安定性を効果的に向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、これによって、材料のサイクル安定性を向上させ、膨張率を低下させるからである。
【0217】
表1に示すように、実施例1~8で製造された負極材料は活物質、導電率向上剤及び炭素材料を含む凝集体を含み、前記導電率向上剤は前記凝集体内に分布しており、キャリアの凝集体内部での伝達を効果的に改善し、凝集体の導電性を高め、しかも、導電率向上剤は凝集体の構造安定性を効果的に向上させ、凝集体の構造強度を高めることができ、活物質の膨張効果による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持し、これによって、材料のサイクル安定性を向上させ、膨張率を低下させる。
【0218】
このうち、実施例9の負極材料の製造過程では、添加剤が添加されておらず、活性粒子と炭素材料、導電率向上剤との間の接続が緊密ではなく、このため、得られた凝集体の構造安定性が低下し、膨張に対する緩衝・抑制作用が低くなる。
【0219】
このうち、比較例3の負極材料の製造過程では、ステップ(1)において、導電率向上剤を研磨分散に供しておらず、活物質、導電率向上剤及び炭素材料の混合均一性が低下し、導電率向上剤の原材料中での分散が不十分であり、その結果、負極材料の凝集体では、導電率向上剤間の最小間隔が明らかに低下し、導電率向上剤と炭素材料との間の網目構造の形成に不利であり、凝集体の構造強度が低下し、活物質の膨張効果による応力変化に対応しにくくなり、膨張率が高くなる。
【0220】
このうち、比較例1の負極材料の製造過程では、ステップ(1)における導電率向上剤の引張強度が48MPaであるので、導電率向上剤の引張強度が低すぎ、導電率向上剤は活物質の膨張による応力変化に対応できず、凝集体の構造安定性を維持しにくく、材料のサイクル特性向上に不利であり、電池膨張率が向上する。
【0221】
比較例2の負極材料の製造過程では、導電率向上剤が添加されておらず、凝集体は活物質と炭素材料だけを含み、凝集体の導電性が低下し、キャリアの凝集体内部での伝達効率が低下し、活物質の膨張による応力により凝集体の構造が破壊されやすく、集体の構造安定性を維持するのが困難になり、材料のサイクル特性の向上に不利であり、電池膨張率が向上する。
【0222】
比較例3の負極材料の製造過程では、ステップ(1)において、研磨分散が行われておらず、導電率向上剤の分散度は0.2だけであり、極板膨張率は高い。
【0223】
実施例16の負極材料の製造過程では、導電率向上剤のアスペクト比が1.9であり、導電率向上剤と活物質との結合が強固ではなく、全体構造は緩む傾向にあり、凝集体の構造強度が低下し、活物質の膨張効果による応力変化に対応しにくく、膨張率が向上する。
【0224】
本願は好適な実施例を以上で開示したが、これらは請求項を制限するものではなく、当業者が本願の構想を逸脱することなく複数の可能な変動や修正を行ってもよく、このため、本願の特許範囲は本願の特許請求の範囲により定められる範囲に準じるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、
前記導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、前記負極材料中の前記導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
前記分散度Nは、下記の測定方法により得られることを特徴とする、負極材料。
<分散度Nの測定方法>
前記負極材料粒子のSEM切断面を複数の面積A×B(ここで、A及びBは両方ともに1μm以下である。)の領域に分割し、単一の前記負極材料粒子の全ての前記領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の前記負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【請求項2】
前記凝集体は金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
以下の特徴(1)~(5)のうちの1つを有する、請求項1に記載の負極材料。
(1)前記導電率向上剤は前記活物質に分布しており、前記活物質と前記導電率向上剤との間に前記炭素材料が充填されている;
(2)前記炭素材料と前記導電率向上剤との間に空孔を有し、前記空孔に前記活物質が充填されている;
(3)前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記活物質のメディアン径が1nm~500nmである;
(5)前記炭素材料は非晶質炭素、結晶性炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン及びメソカーボンミクロスフェアのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項4】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の負極材料。
(1)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含み、前記導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー及び黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記活物質、前記炭素材料及び前記導電率向上剤の質量比が(20~70):(10~70):(3~20)である;
(4)前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である;
(5)前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である;
(6)前記導電率向上剤の導電率が102S/mを超える。
【請求項5】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを有する、請求項2に記載の負極材料。
(1)前記金属酸化物の一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である;
(2)前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である;
(3)前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい;
(4)前記活物質に対する前記金属酸化物の質量比が(1~20):100である。
【請求項6】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含む;
(2)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の材料は非晶質炭素を含む;
(3)前記負極材料は前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の厚さが10nm~1500nmである;
(4)前記負極材料のメディアン径が0.5μm~30μmである;
(5)前記負極材料の比表面積が10m2/g以下である;
(6)前記負極材料の空孔率が10%以下であり、前記負極材料の押込み硬さが50MPa以上である;
(7)負極材料の測定密度をρ1とし、負極材料の理論密度(即ち、負極材料中の各成分の、負極材料に対する含有量(質量%)×各成分の理論密度で得られた値の総和)をρ2とすると、(ρ-ρ)/ρ2≦5%の関係を満たす。
【請求項7】
第1溶媒に引張強度が500MPa以上の導電率向上剤を加えて、分散させて分散液を得るステップと、
活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造するステップと、
前記前駆体を600℃~1200℃での一次熱処理に供して、凝集体を得るステップと、を含むことを特徴とする、負極材料の製造方法。
【請求項8】
以下の特徴(1)~(15)のうちの少なくとも1つを有する、請求項7に記載の製造方法。
(1)前記活物質はLi、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記第1炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、アスファルトのうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記導電率向上剤は合金材料及び導電性炭素のうちの少なくとも1種を含み、前記導電性炭素はカーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛繊維のうちの少なくとも1種を含む;
(5)前記導電率向上剤はフレーク状及び/又は短冊状である;
(6)前記導電率向上剤のアスペクト比が2~3000である;
(7)前記導電率向上剤の導電率が102S/mよりも大きい;
(8)前記活物質、前記導電率向上剤及び前記第1炭素源の質量比が(15~120):(1~20):(10~50)である;
(9)前記第1溶媒は有機溶媒、無機溶媒、及び有機溶媒と無機溶媒を混合した混合溶媒のうちの少なくとも1種である;
(10)前記第2溶媒は有機溶媒を含む;
(11)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加する;
(12)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加し、前記添加剤は界面活性剤及びカップリング剤のうちの少なくとも1種を含む;
(13)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合して、前駆体を製造する前記ステップにおいては、添加剤をさらに添加し、前記添加剤に対する前記活物質の質量比は(15~120):(1~10)である;
(14)活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合する前記ステップにおいては、金属酸化物をさらに添加する;
(15)前記前駆体を製造するステップにおいては、活物質、前記分散液、第1炭素源及び第2溶媒を混合したものを分散処理及び乾燥処理のうちの少なくとも1種に供することをさらに含む。
【請求項9】
以下の特徴(1)~(10)のうちの少なくとも1つを有する、請求項8に記載の製造方法。
(1)前記有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコールのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記無機溶媒は水、液体二酸化炭素、液体アンモニア、液体二酸化硫黄、塩化チオニル、塩化スルフリル、酢酸鉛、シアン化水素、ヒドラジン水和物、塩化フッ化スルフリル、銅アンモニア溶液、硫酸、硝酸、フッ化水素、ポリリン酸、及び超酸のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記界面活性剤はn-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコシン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ウンデカン酸、臭化セチルトリメチルアミン及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記カップリング剤はシランカップリング剤を含み、前記シランカップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び/又はγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含む;
(5)前記金属酸化物の一般式はMxy(0.2≦y/x≦3、MはSn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnのうちの少なくとも1種を含む。)である;
(6)前記金属酸化物はフレーク状及び/又は短冊状である;
(7)前記金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きい;
(8)前記活物質に対する前記金属酸化物の質量比が(1~20):100である;
(9)前記分散処理は機械的撹拌、超音波分散及び研磨分散のうちの少なくとも1種を含む;
(10)前記乾燥処理の温度は30℃~400℃、乾燥処理の時間は1h~15hである。
【請求項10】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の製造方法。
(1)前記前駆体を一次熱処理に供する前に、前記前駆体を緻密化して、前記凝集体の空孔率を10%以下、前記凝集体の押込み硬さを50MPa以上にすることをさらに含む;
(2)前記前駆体を一次熱処理に供する前に、前記前駆体を緻密化して、前記凝集体の空孔率を10%以下、前記凝集体の押込み硬さを50MPa以上にすることをさらに含み、前記緻密化処理は融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理、及び浸漬処理のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記一次熱処理の時間は1h~10hである;
(4)前記一次熱処理において保護ガスを導入する。
【請求項11】
以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを有する、請求項10に記載の製造方法。
(1)前記融合処理はメカノフュージョンである;
(2)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンに使用される融合機の回転数が300r/min~3000r/minである;
(3)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmであること;
(4)前記融合処理はメカノフュージョンであり、前記メカノフュージョンの時間は少なくとも0.5hである;
(5)前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項12】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の製造方法。
(1)前記方法は前記凝集体に炭素被覆処理を行うステップをさらに含む;
(2)前記方法は前記凝集体に炭素被覆処理を行うステップをさらに含み、前記炭素被覆処理のステップは前駆体を第2炭素源と混合して、二次熱処理を行うことを含む。
【請求項13】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の製造方法。
(1)前記第2炭素源に対する前記前駆体の質量比が(20~100):(10~80)である;
(2)前記第2炭素源はスクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記第2炭素源に対する前記凝集体の質量比が(15~100):(10~70)である;
(4)前記二次熱処理の温度は600℃~1200℃であり、前記二次熱処理の時間は1h~10hである;
(5)前記二次熱処理において保護ガスを導入する;
(6)前記二次熱処理において保護ガスを導入し、前記保護ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の負極材料、又は請求項7~13のいずれか1項に記載の製造方法で製造した負極材料を含むリチウムイオン電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
第1態様では、本願は、
活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、
前記導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、前記負極材料中の前記導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
前記分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
前記負極材料粒子のSEM切断面を複数の面積A×B(ここで、A及びBは両方ともに1μm以下である。)の領域に分割し、単一の前記負極材料粒子の全ての前記領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の前記負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
一実施形態では、負極材料の測定密度をρ1とし、凝集体の理論密度をρ2とすると、前記負極材料の密度は、(ρ-ρ)/ρ2≦5%の関係を満たす。前記ρ2は、負極材料中の各成分の負極材料に対する含有量(質量%)×各成分の理論密度で得られた値の総和である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
一実施形態の負極材料は、活物質、炭素材料及び導電率向上剤を含む凝集体を含み、導電率向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料中の導電率向上剤の分散度Nが1以上であり、
分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
負極材料粒子のSEM切断面を複数の面積A×B(ここで、A及びBは両方共に1μm以下である。)の領域に分割し、単一の負極材料粒子の全ての領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの前記負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
いくつかの実施形態では、前記負極材料の密度は、負極材料の測定密度と負極材料の理論密度との差が5%以下であるという関係を満たす。負極材料の測定密度が理論密度に近く、両方の差が小さいほど、粒子は内部の空孔が少なく、緻密なものであり、安定な固体電解質膜を形成し、電解液と活物質との接触を減らすのに有利である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
具体的には、負極材料の密度は、関係式:(ρ-ρ)/ρ2≦5%(ここで、ρ1は負極材料の測定密度、ρ2は負極材料の理論密度である。)を満たす。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0179
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0179】
いくつかの実施形態では、凝集体と第2炭素源との質量比は(15~100):(10~70)であり、具体的には、凝集体と第2炭素源との質量比は100:25、100:35、100:45、100:55、100:65などであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0193
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0193】
以下の実施例及び比較例では、導電率向上剤の分散度Nは、下記の測定方法により得られる。
<分散度Nの測定方法>
製造した負極材料についてSEM切断面を形成し、単一の負極材料粒子のSEM切断面を複数の面積1μm×1μmの領域に分割し、単一の負極材料粒子の全ての領域内の導電率向上剤の分布を統計し、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm未満の領域の数をNa、含まれる導電率向上剤同士の間の最小間隔が10nm以上の領域の数をNbとすると、単一の負極材料粒子中の導電率向上剤の分散度CをC=Nb/Naとして定義して、Nを任意の5つの負極材料粒子のC値の算術平均値とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0194
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0194】
実施例1
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径100nmのナノシリコン、分散液、ポリアクリル酸及びフェノール樹脂を40:3.9:1.6:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が450r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9.5である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは231MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.2%である。
図2は本願の実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図3は本願の実施例1で製造された負極材料のXRDパターンであり、図3に示すように、負極材料においては、シリコンピークのピーク位置が存在する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0195】
実施例2
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比100、引張強度1.5GPa、導電率1.2×105S/mの黒鉛繊維3質量%を無水エタノールに加え、10hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径30nmのナノシリコン、分散液、油酸及びスクロースを30:1.9:5.6:25.9の質量比でエタノール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて7h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度150℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が650r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.4cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を3hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を980℃の条件で熱処理し、2h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を70:55の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、840℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、黒鉛繊維及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、黒鉛繊維及び炭素材料の質量比は55.6:6.2:38.2であり、黒鉛繊維は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12.8μm、比表面積4.7m2/g、炭素層厚さ320nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(黒鉛繊維)の分散度Nは14である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは128MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.9%である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0196
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0196】
実施例3
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比2000、引張強度129GPa、導電率3×106S/mの単層カーボンナノチューブ2質量%を水とエタノールの混合溶液(水:エタノール質量比=1:1)に加え、10hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径60nmのナノシリコン、分散液、カプリン酸及びフルクトースを40:2.9:3.6:36.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、70min超音波処理し、次に、ボールミルにて5h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度200℃で噴霧乾燥処理を1.5h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が300r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.5cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を700℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:47の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、920℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は43.9:2.1:54.0であり、単層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径9.8μm、比表面積5.3m2/g、炭素層厚さ600nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤単層カーボンナノチューブの分散度Nは20である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは201MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は1.9%である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0197
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0197】
実施例4
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比55、引張強度502MPa、導電率2.2×102S/mのニッケルシリコン合金5質量%を無水エタノールに加え、6hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノシリコン、分散液、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びグルコースを50:2.9:3.6:44.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて6h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度140℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.45cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を790℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:37の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、960℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、ニッケルシリコン合金及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、ニッケルシリコン合金及び炭素材料の質量比は46.9:2.8:50.3である。ニッケルシリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12μm、比表面積4.3m2/g、炭素層厚さ580nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(ニッケルシリコン合金)の分散度Nは11である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は5.2%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは109MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.2%である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0198
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0198】
実施例5
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比35、引張強度560MPa、導電率6.2×102S/mの鉄シリコン合金1.5質量%をプロパノールに加え、8hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノシリコン、分散液、ポリソルベート-80及びクエン酸を49:3.9:4.6:34.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、50min超音波処理し、次に、ボールミルにて6h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度120℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が300r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.6cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:44の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、920℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、鉄シリコン合金及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、鉄シリコン合金及び炭素材料の質量比は50.4:3.8:45.8である。鉄シリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径15μm、比表面積3m2/g、炭素層厚さ430nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(鉄シリコン合金)の分散度Nは33である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は2.6%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは188MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.1%である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0199
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0199】
実施例6
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比45、引張強度679MPa、導電率4.2×103S/mの銅シリコン合金2.5質量%をプロパノールに加え、4hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのGe粒子、分散液、ポリソルベート-20及びクエン酸を78:2.9:3.6:44.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、90min超音波処理し、次に、ボールミルにて3h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度180℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.5cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:34の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノGe粉末、銅シリコン合金及び炭素材料を含み、ナノGe粉末、銅シリコン合金及び炭素材料の質量比は67.4:4.8:26.8である。銅シリコン合金は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径14.8μm、比表面積3.9m2/g、炭素層厚さ206nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(銅シリコン合金)の分散度Nは13である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は5.6%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは345MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.8%である。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0200
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0200】
実施例7
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比350、引張強度4.2GPa、導電率5.6S/mのカーボンファイバー3質量%をブタノールに加え、6hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径120nmのSn粒子、分散液、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びスクロースを90:6.9:2.6:26.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、100min超音波処理し、次に、ボールミルにて4h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度150℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が600r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.7cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、2h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を100:45の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、3h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSn粉末、カーボンファイバー及び炭素材料を含み、ナノSn粉末、カーボンファイバー及び炭素材料の質量比は69.5:4.5:26.0である。カーボンファイバーは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径12.8μm、比表面積5.9m2/g、炭素層厚さ160nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(カーボンファイバー)の分散度Nは24である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.1%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは289MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は1.5%である。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0201
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0201】
実施例8
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比900、引張強度55GPa、導電率5.2×106S/mのカーボンナノチューブ2.3質量%をブタノールに加え、12hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径80nmのSi粒子、分散液、アスペクト比18のSiO、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びスクロースを50:3.9:3.0:6.6:33.1の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、120min超音波処理し、次に、ボールミルにて研磨分散8h前駆体溶液を得た後、乾燥温度140℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が1000r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョン時間を2hとし、アルゴンガス保護下、融合後の材料を890℃の条件で熱処理し、2h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とフェノール樹脂を100:55の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、950℃の条件下で炭素被覆処理を行い、8h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSi粉末、カーボンナノチューブ、SiO及び炭素材料を含み、ナノSi粉末、カーボンナノチューブ、SiO及び炭素材料の質量比は46.2:2.5:6.5:44.8である。カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径9.8μm、比表面積4.3m2/g、炭素層厚さ460nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(カーボンナノチューブ)の分散度Nは25である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは142MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.2%である。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0202
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0202】
実施例9
添加剤(ポリアクリル酸)を添加していない以外、実施例1と同様な方法によって負極材料を製造した。ステップ(1)では、メディアン径100nmのナノシリコン、アスペクト比500、引張強度65GPaの多層カーボンナノチューブとフェノール樹脂を40:3.9:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは7.4である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は6.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは205MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.1%である。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0203
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0203】
実施例10
本実施例は、ステップ(2)では、具体的には、窒素ガス保護下、前駆体を890℃で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは10である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は10.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは45MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.2%である。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0204
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0204】
実施例11
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、メディアン径100nmのナノシリコン、多層カーボンナノチューブ及びフェノール樹脂を40:3.9:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)窒素ガス保護下、前駆体を890℃の条件で4h熱処理し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は11.4%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは26MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は4.4%である。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0205
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0205】
実施例12
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径100nmのナノシリコン、分散液、アスペクト比17のTiO2粒子及びフェノール樹脂を40:3.9:0.5:15.9の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)窒素ガス保護下、前駆体を890℃で熱処理し、4h保温して、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:49の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、820℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ、TiO2粒子及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ、TiO2粒子及び炭素材料の質量比は(47.6):(2.6):(2.0):(46.8)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(12)μm、比表面積(6.8)m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは8.8である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は9.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは55MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.9%である。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0206
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0206】
実施例13
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比500、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ5質量%を無水エタノールに加え、5hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノSi、分散液及びフェノール樹脂を15:1:10の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が800r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を1000℃の条件で熱処理し、3h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを15:10の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、1000℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は(58.2):(2.1):(39.7)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(14.3)μm、比表面積(2.8)m2/g、炭素層厚さ(380)nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは1.4である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は2.7%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは164MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.0%である。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0207
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0207】
実施例14
本実施例の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)アスペクト比1000、引張強度65GPa、導電率1.5×106S/mの多層カーボンナノチューブ1.0質量%を液体アンモニアと水(体積比1:1)の混合溶媒に加え、8hミーリングして分散させ、分散液を得た後、メディアン径50nmのナノSn、分散液及びフェノール樹脂を120:2:50の質量比でエチレングリコール溶液に加えて、60min超音波処理し、次に、ボールミルにて9h研磨分散し、前駆体溶液を得た後、乾燥温度190℃で噴霧乾燥処理を3h行い、前駆体を得た。
(2)融合機の回転数が800r/min、メカノフュージョンに使用される融合機のブレードギャップ幅が0.8cmの融合機に前駆体を投入し、メカノフュージョンの時間を1hとし、窒素ガス保護下、融合済みの材料を890℃の条件で熱処理し、3h保温し、凝集体を得た。
(3)凝集体とアスファルトを100:50の質量比で混合し、その後、高温バッチ炉に混合後の材料を投入して、窒素ガスを導入し、800℃の条件下で炭素被覆処理を行い、4h保温した後、粉砕して、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得た。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層と、を含み、凝集体はナノSn粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノSn粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は(69.5):(1.1):(29.4)であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径(16)μm、比表面積(3.7)m2/g、炭素層厚さ(144)nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは45である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.7%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは199MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は1.5%である。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0208
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0208】
実施例15
炭素被覆を行っておらず、ステップ(3)を含まない以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは9.8である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は9.8%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは67MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.7%である。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0209
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0209】
実施例16
導電率向上剤のアスペクト比が1.9である以外、実施例1と同様な方法によって負極材料を製造した。
炭素被覆を行っておらず、ステップ(3)を含まない以外、実施例1と同様であった。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは11である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は3.5%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは89MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.9%である。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0210
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0210】
比較例1
引張強度253MPaのニッケルシリコン材料を採用する以外、実施例4と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、ニッケルシリコン材料及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、ニッケルシリコン材料及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、ニッケルシリコン材料は前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(ニッケルシリコン材料)の分散度Nは7.9である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は7.2%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは48MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.7%である。
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0211
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0211】
比較例2
導電率向上剤を添加していない以外、実施例1と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は4.3%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは102MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は2.5%である。
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0212
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0212】
比較例3
ステップ(1)において原材料を研磨分散にかけない以外、実施例1と同様な方法で負極材料を製造した。
本実施例で製造された負極材料は凝集体を含み、凝集体はナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、ナノシリコン粉末、多層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は49.6:2.6:47.8であり、多層カーボンナノチューブは前記凝集体内に分布している。
負極材料は、メディアン径13.2μm、比表面積3.3m2/g、炭素層厚さ450nmである。
上記導電率向上剤の分散度Nの測定方法によって測定したところ、導電率向上剤(多層カーボンナノチューブ)の分散度Nは0.2である。
負極材料について水銀圧入法により測定したところ、負極材料の空孔率は6.9%である。
負極材料についてナノインデンターにより測定したところ、得られた負極材料の平均押込み硬さは114MPaである。負極材料の測定密度と理論密度との差は3.3%である。
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0213
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0213】
測定方法
(1)ボタン型電池の測定
以下の方法で電気化学的サイクル特性を測定した。製造したシリコンカーボン複合負極材料、導電剤及びバインダを94:1:5の質量比で溶媒に溶解して混合し、固形分を50%にして、銅箔集電体上に塗布し、真空ベークを行って、負極極板を製造した。次に、従来の成熟したプロセスによって製造された三元正極極板、1mol/LのLiPF6/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+メチルエチルカーボネート(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、ケースを用いて、一般的な生産プロセスによって、リチウムイオン電池を得た。マイクロメータを利用して、リチウムイオン電池の極板の初期厚さH0を測定し、リチウムイオン電池の充放電測定として、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池測定システムにおいて、常温条件、0.2Cで定電流充放電を行い、充放電電圧を2.75~4.2Vに制限し、初回可逆容量、初回サイクル充電容量及び初回サイクル放電容量を得た。初回クーロン効率=初回サイクル放電容量/初回サイクル充電容量。
50週間サイクル後、マイクロメータを用いてリチウムイオン電池のこのときの極板の厚さH1を測定し、50サイクル後の膨張率=(H1-H0)/H0×100%とした。
100週間サイクル後、放電容量をリチウムイオン電池の残量として記録し、容量維持=残量/初期容量×100%とした。
(2)導電率向上剤及び金属酸化物のアスペクト比:AFMを用いて導電率向上剤及び金属酸化物のアスペクト比を測定した。導電率向上剤及び金属酸化物を超音波分散した後、スライドグラスに滴下してサンプルを作製し、乾燥後AFMにて測定した。100個以上の導電率向上剤及び金属酸化物の長さL、幅W又は粒径Yを測定し、単一のもののアスペクト比D=L/W又はD=L/Yとして、100個の平均値を算出し、サンプルのアスペクト比を得た。
(3)負極材料の測定密度:
空き瓶の質量mを量り、空き瓶を蒸留水で満たし、このときの質量m1とし、次に、瓶を洗浄して乾燥し、所定量の負極材料を比重瓶に投入し、このときの全質量m2を記録し、次に、比重瓶を蒸留水で満たし、このときの質量m3を量り、比重瓶の体積v1=(m1-m)/ρ 、負極材料の体積v2=v1-(m-m)/ρ 、負極材料の測定密度ρ=(m-m)/v2とし、ρ は蒸留水の密度である。
(4)導電率向上剤の引張強度:
引張試験機を用いて導電率向上剤の引張強度を測定した。
上記特性の測定結果を表1に示す。
【国際調査報告】