(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231004BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20231004BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501829
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2021114579
(87)【国際公開番号】W WO2023023984
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼斌溢
(72)【発明者】
【氏名】王家政
(72)【発明者】
【氏名】▲嚴▼青▲偉▼
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050FA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
本願は、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供し、前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極膜層であって、前記負極膜層が第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第2の負極膜層が前記負極集電体と前記第1の負極膜層の間に位置し、前記第2の負極膜層が金属元素Mを含み、且つMの原子半径r
M及びLiの原子半径r
Liは
を満たす負極膜層とを含む。本願は、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を顕著に改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体に設けられる負極膜層であって、前記負極膜層が第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第2の負極膜層が前記負極集電体(11)と前記第1の負極膜層の間に位置し、前記第2の負極膜層が金属元素Mを含み、且つMの原子半径r
MとLiの原子半径r
Liは
を満たし、選択的に、
である負極膜層とを含む、負極シート。
【請求項2】
Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Al、Sc、Mo、W、Pt、Pd、In、Re、Ir、Ga、Os、V、Zn、Ru、Rhのうちの1種又は複数種から選択され、選択的に、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Alのうちの1種又は複数種から選択される、請求項1に記載の負極シート。
【請求項3】
Mは、少なくとも第2の負極膜層の本体部に位置する、請求項1~2の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項4】
前記第2の負極膜層は、その自体の厚さ方向に沿って、対向する第1の表面及び第2の表面を含み、第1の表面は、前記負極集電体に背向して設けられ、第2の表面は、前記負極集電体に向かって設けられ、
Mは、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面及び/又は第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面に位置する、請求項1~3の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項5】
第2の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、3%~7%であり、選択的に3%~5%である、請求項1~4の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項6】
第1の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、0.5%以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項7】
第1の負極膜層は、金属元素Mを含まない、請求項1~6の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項8】
第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比は、0.3~1.2であり、選択的に0.5~0.8である、請求項1~7の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項9】
第2の負極膜層は、金属粒子を含み、金属粒子は、Mの単体粒子、Mの合金粒子の1種又は複数種から選択される、請求項1~8の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項10】
Mの合金は、Mのうちの2種以上の元素で形成される合金、及びMのうちの1種又は複数種の元素と別の金属元素M
1のうちの1種又は複数種の元素とで形成される合金を含み、選択的にM
1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む、請求項9に記載の負極シート。
【請求項11】
金属粒子の体積平均粒径Dv50は、5μm以下であり、選択的に1μm以下である、請求項9~10の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項12】
第2の負極膜層は、Li-M合金粒子、Li-M-M
1合金粒子のうちの1種又は複数種を含み、M
1は、金属元素を示し、且つM
1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む、請求項1~11の何れか1項に記載の負極シート。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の負極シートを含む、二次電池。
【請求項14】
請求項13に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項15】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュールのうちの1種を含む、電池パック。
【請求項16】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュール、請求項15に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、具体的には負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子製品及び新エネルギー自動車などの産業における二次電池の適用及び普及に伴い、そのエネルギー密度は、益々注目されているが、二次電池の高レート充電中に、負極シートの表面にはリチウム析出現象を不可避的に生じる。なお、二次電池の過充電時に、負極シートの表面にもリチウム析出現象を生じる。
【発明の概要】
【0003】
本願は、二次電池が高レート充電及び過充電条件で発生するリチウム析出問題を解決し、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を顕著に改善するために、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することを目的とする。
【0004】
本願の第1の態様は、負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極膜層とを含む負極シートを提供する。前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第2の負極膜層が前記負極集電体と前記第1の負極膜層の間に位置する。前記第2の負極膜層が金属元素Mを含み、且つMの原子半径r
M及びLiの原子半径r
Liは
を満たす。
【0005】
本願の負極膜層は多層構造を有し、第2の負極膜層は金属元素Mを含み、M及びLiの原子半径の差が小さく、格子ミスフィットが小さく、このように、Liは、Mの表面に固溶することがより容易である。二次電池が高レート充電、過充電にある場合、Mの表面は、リチウム金属の優先的な核形成部位として、第2の負極膜層のMの表面におけるリチウム金属の析出を誘導し、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を向上させることができる。M及びLiの原子半径の差が小さい場合、M格子構造がLiの格子構造により適合し、LiがMの表面に核形成をより容易に誘導するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制するより高い効果を有することができる。本願の負極シートは、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができ、そのため、二次電池は、良好な動力学的特性を有するだけでなく、更に顕著に改善されたサイクル寿命を有する。
【0006】
本願の任意の実施形態において、Mの原子半径r
M及びLiの原子半径r
Liは、
を満たす。
【0007】
M及びLiの原子半径の差が適切な範囲に制御されることにより、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出をより効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を更に向上させることができる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Al、Sc、Mo、W、Pt、Pd、In、Re、Ir、Ga、Os、V、Zn、Ru、Rhのうちの1種又は複数種から選択される。選択的に、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Alの1種又は複数種から選択される。
【0009】
Mが上記金属元素から選択される場合、その格子構造がLiの格子構造により適合し、LiがMの表面に核形成をより容易に誘導するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制するより高い効果を有し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を更に向上させる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、Mは、少なくとも負極膜層の本体部に位置する。
【0011】
本願の任意の実施形態において、第2の負極膜層は、その自体の厚さ方向に沿って、対向する第1の表面及び第2の表面を含み、第1の表面は、前記負極集電体に背向して設けられ、第2の表面は、前記負極集電体に向かって設けられ、Mは、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面及び/又は第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面に位置する。
【0012】
本願の任意の実施形態において、第2の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、3%~7%である。選択的に、Mの質量百分率含有量は、3%~5%である。
【0013】
Mの質量百分率含有量が適切な範囲にあるため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制すると共に、二次電池のサイクル寿命の短縮を効果的に抑制することができる。
【0014】
本願の任意の実施形態において、第1の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、0.5%以下である。
【0015】
本願の任意の実施形態において、第1の負極膜層は、金属元素Mを含まない。
【0016】
第1の負極膜層が金属元素Mを含まないか、又は実質的に含まない場合、リチウム金属が第2の負極膜層のMの表面に優先的に析出することを効果的に確保し、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を更に抑制することができる。また、リチウム金属が第2の負極膜層のMの表面に優先的に析出するため、第2の負極膜層の表面における第1の負極膜層は、更にリチウムデンドライトの速やかな成長を抑制する効果を達成することができ、二次電池のサイクル寿命を更に延長する。
【0017】
本願の任意の実施形態において、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比は、0.3~1.2である。選択的に、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比は、0.5~0.8である。
【0018】
第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比が適切な範囲にあるため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制できるだけでなく、リチウムデンドライトが負極シートの表面に到達することを効果的に抑制することができる。
【0019】
本願の任意の実施形態において、第2の負極膜層は、金属粒子を含み、金属粒子は、Mの単体粒子、Mの合金粒子のうちの1種又は複数種から選択される。
【0020】
本願の任意の実施形態において、Mの合金は、Mのうちの2種以上の元素で形成される合金、及びMのうちの1種又は複数の元素と別の金属元素M1のうちの1種又は複数の元素とで形成される合金を含む。
【0021】
本願の任意の実施形態において、M1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む。
【0022】
本願の任意の実施形態において、金属粒子の体積平均粒径Dv50は、5μm以下である。選択的に、金属粒子の体積平均粒径Dv50は、1μm以下である。
【0023】
金属粒子の体積平均粒径Dv50が適切な範囲に制御されることにより、第2の負極膜層に十分な数の核形成部位を形成し、更に負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができる。
【0024】
本願の任意の実施形態において、第2の負極膜層は、Li-M合金粒子、Li-M-M1合金粒子のうちの1種又は複数種を含み、M1は、金属元素を示し、且つM1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む。
【0025】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様の負極シートを含む二次電池を提供する。
【0026】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0027】
本願の第4の態様は、本願の第2の態様の二次電池、第3の態様の電池モジュールのうちの1種を含む電池パックを提供する。
【0028】
本願の第5の態様は、本願の第2の態様の二次電池、第3の態様の電池モジュール、第4の態様の電池パックのうちの1種を含む電力消費装置を提供する。
【0029】
本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は、本願により提供される二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本願の実施例の技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下、本願の実施例に使用される図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明される図面は、本願の幾つかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をしない前提で、更に図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】
図1は、本願による負極シートの一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、本願による二次電池の一実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本願による二次電池の一実施形態の分解概略図である。
【
図4】
図4は、本願による電池モジュールの一実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、本願による電池パックの一実施形態の概略図である。
【
図7】
図7は、本願による二次電池が電源として使用される電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【
図8】
図8は、実施例1の負極シートの断面の走査電子顕微鏡図である。
【符号の説明】
【0031】
図面において、図面は、必ずしも実際の縮尺通りに描かれない。そのうち、図面の符号は、以下のように説明される。
1 電池パック
2 上部ボックス
3 下部ボックス
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極組立体
53 蓋板
10 負極シート
11 負極集電体
121 第1の負極膜層
122 第2の負極膜層
1221 第1の表面
1222 第2の表面
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面の簡単な説明を適宜参照しながら本願の負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置の実施形態を具体的に開示するが、不要な詳細説明が省略される場合がある。例えば、周知の事項への詳細説明、実質的に同一の構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、当業者の理解を容易にするために、以下の説明が不必要に冗長になるのを回避するためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供され、特許請求の範囲に記載の主旨を限定することを意図しない。
【0033】
本願で開示された「範囲」は、下限及び上限の形態で限定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選択することで限定され、選択された下限及び上限によって所定範囲の境界を限定する。このように限定された範囲は、両端値を含んでもよく、又は両端値を含まなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、即ち、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲が列挙されると、60~110及び80~120の範囲も予想されるものと理解される。なお、最小範囲値1と2、及び最大範囲値3、4と5が列挙されると、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲は、全て予想することができる。本願において、特に記載のない限り、数値範囲「a~b」は、aとbの間の実数の任意の組み合わせの省略形を示し、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本文に「0~5」の間の全ての実数が列挙されることを意味し、「0~5」は、単にこれらの数値の組み合わせの省略形である。なお、あるパラメータが2以上の整数であることを説明すると、当該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示することに相当する。
【0034】
特に説明しない限り、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0035】
特に説明しない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0036】
特に説明しない限り、本願の全てのステップは、順に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは順に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順に行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順に行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを意味する。例えば、言及された前記方法は、ステップ(c)を更に含んでもよく、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加できることを意味し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0037】
特に説明しない限り、本願で言及された「包含」及び「含む」は、オープンエンドを示し、クローズドエンドであってもよい。例えば、前記「包含」及び「含む」は、列挙されていない他の成分を更に包含してもよいか又は含んでもよく、列挙された成分のみを包含してもよいか又は含んでもよいことを示すことができる。
【0038】
特に説明しない限り、本願において、「又は」という用語は、包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びB両者」を意味する。より具体的には、以下の何れかの条件は、いずれも条件「A又はB」を満たす。Aが真(又は存在)で且つBが偽(又は不存在)であり、Aが偽(又は不存在)でBが真(又は存在)であり、又はA及びBがいずれも真(又は存在)である。
【0039】
[二次電池]
【0040】
二次電池は、充電式電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池の放電後に充電可能な方法によって活物質を活性化させて使用を続ける電池を指す。
【0041】
通常、二次電池は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質を含む。二次電池の充放電中に、活性イオン(例えばリチウムイオン)は、正極シートと負極シートの間で往復に挿入したり脱離したりする。セパレータは、正極シートと負極シートの間に設けられ、主として正負極の短絡を防止する役割を果たすと共に、活性イオンを通過させることができる。電解質は、正極シートと負極シートの間に位置し、主として活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0042】
[負極シート]
【0043】
二次電池の充電時、リチウムイオンは、正極から脱離して負極に挿入するが、二次電池は、高レート充電、過充電にある場合、負極挿入空間が不足し、リチウムイオンが正極からあまりにも速く脱離するが負極に等量で挿入できないことなどを生じやすく、負極にタイムリーに挿入できないリチウムイオンは、負極シートの表面で電子を得るしかないと共にリチウム金属に還元され、これは、リチウム析出現象である。また、二次電池が高レート充電、過充電にある場合、負極が大きく分極し、負極シートの表面電位が持続的に低下してLi/Li+参照電極電位よりも低い時、リチウムイオンは、負極シートの表面で電子を得ると共にリチウム金属に還元される。リチウム析出により、例えば、サイクル寿命を大幅に短縮させるなど、二次電池の性能を低下させるだけでなく、リチウム析出現象が連続的に発生した後、リチウム金属が枝のような構造、即ちリチウムデンドライトに成長することになる。リチウムデンドライトの成長は、負極活物質の表面の固体電解質界面(SEI)皮膜を破壊し、活性イオンの不可逆的消費につながり、リチウムデンドライトの成長は、更にセパレータを刺通して内部短絡を引き起こし、燃焼、爆発などの安全上のリスクを引き起こす可能性がある。発明者により、リチウム析出は、主に負極活物質が一般的にリチウム挿入型材料であることに起因され、これらのリチウム挿入型材料のリチウム挿入速度が低く、二次電池の高レート充電の需要を満たすことが困難であり、なお、二次電池の過充電時、これらのリチウム挿入型材料もリチウム金属が負極シートの表面に生成することを阻止にしくく、二次電池の安全上のリスクが高くなることを発見した。
【0044】
二次電池が高レート充電及び過充電条件で発生したリチウム析出問題及びそれによる二次電池のサイクル寿命の短縮、安全上のリスクの上昇などの問題を解決するために、発明者は、更に沢山の検討を行ったところ、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を顕著に改善し、特に高レート充電及び過充電条件における二次電池のサイクル特性及び安全性を改善することができる負極シートを提供する。
【0045】
本願の負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極膜層とを含み、負極膜層が第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、第2の負極膜層が負極集電体と第1の負極膜層の間に位置し、第2の負極膜層が金属元素Mを含み、且つMの原子半径r
MとLiの原子半径r
Liは
を満たす。
【0046】
本願の負極膜層は、多層構造を有し、第2の負極膜層は、金属元素Mを含み、M及びLiの原子半径の差が小さく、格子ミスフィットが小さく、このように、Liは、Mの表面により容易に固溶する。発明者は、LiがMの表面に固溶した後、形成された固溶体の結晶構造がLiの結晶構造に類似するため、Mの表面におけるLiの核形成の界面エネルギーが低いことを発見した。界面エネルギーは、核形成抵抗の供給源であり、Mの表面の核形成抵抗がより低くなる場合、Mの表面は、リチウム金属の優先的な核形成部位として、リチウム金属が負極シートの表面に析出するのではなくMの表面に析出するように誘導することができる。
【0047】
二次電池が高レート充電、過充電にある場合、負極が大きく分極し、負極シートの表面電位がリチウム析出の過電位まで低下しようとすると、第2の負極膜層に含まれるMの表面の核形成抵抗がより低いため、その表面のリチウム析出の過電位は、負極シートの表面電位よりも低く、そのため、リチウム金属の優先的な核形成部位として、リチウム金属が第2の負極膜層のMの表面に析出するように誘導し、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を向上させることができる。
【0048】
M及びLiの原子半径の差が小さい場合、Mの格子構造がLiの格子構造により適合し、LiがMの表面に核形成をより容易に誘導するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制するより高い効果を有することができる。M及びLiの原子半径の差が大きく、例えば12%よりも大きく、M及びLiの格子ミスフィットが大きく、Mの表面は、リチウム金属の優先的な核形成部位とすることができず、第2の負極膜層におけるMの表面にリチウム金属の優先的な核形成を誘導する効果を達成することができない。二次電池が高レート充電、過充電にある場合、リチウム金属は、依然として負極シートの表面に析出し、二次電池の安全性が効果的に保証されない。
【0049】
本願の負極シートは、高レート充電及び過充電条件における従来の負極活物質の安全な使用を実現することができ、本願の負極シートは、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができ、従って、二次電池は、良好な動力学的特性を有するだけでなく、更に顕著に改善されたサイクル寿命を有する。
【0050】
本願において、金属元素M及びLiの原子半径は、《ランゲ化学ハンドブック》(Lange’s handbook of chemistry)を参照することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、Mの原子半径r
M及びLiの原子半径r
Liは、
を満たす。
【0052】
M及びLiの原子半径の差が適切な範囲に制御されることにより、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出をより効果的に抑制し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を更に向上させることができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、第1の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、0.5%以下である。選択的に、第1の負極膜層は、金属元素Mを含まない。
【0054】
第1の負極膜層が金属元素Mを含まないか、又は実質的に含まない場合、リチウム金属が第2の負極膜層のMの表面に優先的に析出することを効果的に確保し、更に負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制することができる。また、リチウム金属が第2の負極膜層のMの表面に優先的に析出するため、第2の負極膜層の表面における第1の負極膜層は、更にリチウムデンドライトの速やかな成長を抑制する効果を達成することができ、二次電池のサイクル寿命を更に延長する。
【0055】
幾つかの実施形態において、第2の負極膜層の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、1%~10%である。選択的に、Mの質量百分率含有量は、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、2%~9%、2%~8%、2%~7%、2%~6%、2%~5%、2%~4%、3%~9%、3%~8%、3%~7%、3%~6%、3%~5%、3%~4%、3.5%~9%、3.5%~8%、3.5%~7%、3.5%~6%、3.5%~5%、又は3.5%~4.5%である。
【0056】
Mの質量百分率含有量が低い場合、第2の負極膜層が有する核形成部位の数が少なく、二次電池が高レート充電、過充電にある場合、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制する第2の負極膜層の役割が明らかではない。Mの質量百分率含有量が高い場合、電解液に対する消費も増加し、且つLiがMの表面に固溶した後にMの体積が膨張するため、第2の負極膜層及び負極シートの体積が膨張して大きくなり、二次電池のサイクル寿命がある程度に短縮される。Mの質量百分率含有量が適切な範囲にある場合、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制すると共に、二次電池のサイクル寿命の短縮を効果的に抑制することができる。
【0057】
幾つかの実施形態において、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Al、Sc、Mo、W、Pt、Pd、In、Re、Ir、Ga、Os、V、Zn、Ru、Rhのうちの1種又は複数種から選択される。選択的に、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Alのうちの1種又は複数種から選択される。更に選択的に、Mは、Nb、Au、Ag、Al、Mg、Ti、Cd、Zrのうちの1種又は複数種から選択される。
【0058】
Mが上記金属元素から選択される場合、その格子構造がLiの格子構造により適合し、LiがMの表面に核形成をより容易に誘導するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制するより良い効果を有し、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を更に向上させる。
【0059】
幾つかの実施形態において、第2の負極膜層は、本体部、及びその自体の厚さ方向に沿って対向する第1の表面及び第2の表面を含み、第1の表面は、負極集電体に背向して設けられ、第2の表面は、負極集電体に向かって設けられる。Mは、第2の負極膜層の本体部に位置し、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面、第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面のうちの1つ又は複数の位置に位置する。例えば、(1)Mは、負極膜層の本体部のみに位置し、(2)Mは、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面のみに位置し、(3)Mは、第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面のみに位置し、(4)Mは、負極膜層の本体部、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面の2つの位置に同時に位置し、(5)Mは、負極膜層の本体部、第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面の2つの位置に同時に位置し、(6)Mは、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面、第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面の2つの位置に同時に位置し、(7)Mは、負極膜層の本体部、第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面、第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面の3つの位置に同時に位置する。
【0060】
幾つかの実施形態において、Mは、少なくとも第2の負極膜層の本体部に位置する。
【0061】
幾つかの実施形態において、Mが第2の負極膜層の負極集電体に背向する第1の表面に位置する場合、Mは、第2の負極膜層の第1の表面に層状構造を形成することができる。選択的に、層状構造が連続していない。例えば、Mは、第2の負極膜層の第1の表面に間隔を置いて分布し、又はアレイ状に分布する。この場合、電解液が第2の負極膜層を十分に浸潤することに有利であり、一方、二次電池の充電時に正極からのリチウムイオンが第2の負極膜層にスムーズに挿入し、二次電池の放電時に第2の負極膜層に挿入されたリチウムイオンが十分に脱落すると共に正極にスムーズに移動することに有利である。
【0062】
幾つかの実施形態において、Mが第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面に位置する場合、Mは、第2の負極膜層の第2の表面に層状構造を形成することができる。選択的に、層状構造が連続していない。例えば、Mは、第2の負極膜層の第2の表面に間隔を置いて分布し、又はアレイ状に分布する。この場合、第2の負極膜層と負極集電体が高い接着強度を保持し、粉落ちを防止することに有利であり、一方、電子の伝導に有利である。
【0063】
幾つかの実施形態において、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比は、0.3~1.2である。選択的に、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比は、0.3~1、0.4~1、0.5~1、0.3~0.8、0.4~0.8、0.5~0.8、0.3~0.7、0.4~0.7、0.5~0.7、0.3~0.6、0.4~0.6、又は0.5~0.6である。
【0064】
第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比が比較的に大きい場合、第2の負極膜層の核形成部位が比較的に少なく、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制する効果が明らかではない。第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比が比較的に小さい場合、第1の負極膜層の厚さが比較的に小さく、第2の負極膜層に形成されたリチウムデンドライトが第1の負極膜層をより容易に通過して負極シートの表面に到達し、電池内短絡のリスクが増加する。第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比が適切な範囲にあると、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制できるだけでなく、更にリチウムデンドライトが負極シートの表面に到達することを効果的に抑制できる。
【0065】
幾つかの実施形態において、第2の負極膜層は、金属粒子を含んでもよく、金属粒子は、Mの単体粒子、Mの合金粒子のうちの1種又は複数種から選択される。
【0066】
幾つかの実施形態において、Mの合金は、Mのうちの2種以上の元素で形成される合金、及びMのうちの1種又は複数種の元素と別の金属元素M1のうちの1種又は複数種の元素とで形成される合金を含む。選択的に、M的合金は、Mのうちの2種以上の元素で形成される合金を含む。
【0067】
幾つかの実施形態において、M1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、金属粒子の体積平均粒径Dv50は、5μm以下である。選択的に、金属粒子の体積平均粒径Dv50は、1μm以下である。より具体的には、金属粒子の体積平均粒径Dv50は、0.5μm以下である。
【0069】
金属粒子の体積平均粒径Dv50が適切な範囲に制御されることにより、第2の負極膜層に十分な数の核形成部位を形成し、更に負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができる。
【0070】
本願において、材料の体積平均粒径Dv50は、当該分野で公知の意味であり、当該分野で既知の方法及び機器によって測定することができる。例えば、GB/T19077-2016粒度分布レーザー回析法を参照し、レーザー粒度分析計(例えば、英国マルバーンMastersizer2000E)によって測定することができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、第2の負極膜層は、Li-M合金粒子、Li-M-M1合金粒子のうちの1種又は複数種を含んでもよく、M1は、金属元素を示し、且つM1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む。Li-M合金は、Liと金属元素Mのうちの1種又は複数種で形成される合金を示し、Li-M-M1合金は、Liと金属元素Mのうちの1種又は複数種と、及び金属元素M1のうちの1種又は複数種とで形成される合金を示す。
【0072】
例として、Li-M合金は、Li-Sn、Li-Bi、Li-Cd、Li-Ti、Li-Nb、Li-Ta、Li-Sb、Li-Hf、Li-Mg、Li-Zr、Li-Ag、Li-Au、Li-Al、Li-Sc、Li-Mo、Li-W、Li-Pt、Li-Pd、Li-In、Li-Re、Li-Ir、Li-Ga、Li-Os、Li-V、Li-Zn、Li-Ru、Li-Rh、Li-Mg-Al、Li-Mg-Zr、Li-Mg-Zn、Li-Ag-Al、Li-Ag-Zn、Li-Ag-Mg、Li-Ti-Alのうちの1種又は複数種である。
【0073】
例として、Li-M-M1合金は、Li-Mg-Mn、Li-Al-Mn、Li-Al-Fe、Li-Al-Cu、Li-Ti-Ni、Li-Ti-Crのうちの1種又は複数種から選択される。
【0074】
幾つかの実施形態において、第2の負極膜層は、上記金属粒子、Li-M合金粒子、Li-M-M1合金粒子のうちの1種又は複数種以外、第2の負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び他の任意選択の助剤を更に含んでもよい。
【0075】
幾つかの実施形態において、第1の負極膜層は、第1の負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び他の任意選択の助剤を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、第1の負極活物質及び第2の負極活物質の種類は特に限定されず、二次電池に使用される当該分野で公知の負極活物質を採用することができる。第1の負極活物質及び第2の負極活物質の種類は、同じであってもよく、異なってもよい。例として、第1の負極活物質及び第2の負極活物質は、それぞれ独立して黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの1種又は複数種を含む。シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池の負極活物質として使用できる他の従来の公知の材料を更に使用してもよい。これらの負極活物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
幾つかの実施形態において、導電剤及び接着剤の種類及び含有量は特に限定されず、実際の需要に応じて選択することができる。第1の負極膜層及び第2の負極膜層の導電剤の種類は、同じであってもよく、異なってもよく、例として、導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含んでもよい。第1の負極膜層及び第2の負極膜層の接着剤の種類は、同じであってもよく、異なってもよく、例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビュルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種を含んでもよい。第1の負極膜層及び第2の負極膜層の他の任意選択の助剤の種類は、同じであってもよく、異なってもよく、例として、他の選択可能な助剤は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。
【0078】
本願の負極シートにおいて、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体が採用されてもよい。金属箔シートの例として、銅箔が採用されても良い。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成される金属材料層を含むことができる。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0079】
幾つかの実施形態において、負極膜層は、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる。例えば、負極集電体は、その自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれかの一方又は両方に設けられる。
【0080】
図1は、本願による負極シート10の一実施形態の概略図を示す。負極シート10は、負極集電体11、負極集電体11の両側にそれぞれ設けられる第2の負極膜層122、及び第2の負極膜層122に設けられる第1の負極膜層121で構成されてもよく、第2の負極膜層122は、負極集電体11と第1の負極膜層121の間に位置する。第2の負極膜層122は、その自体の厚さ方向に沿って、対向する第1の表面1221及び第2の表面1222を含み、第1の表面1221は、負極集電体11に背向して設けられ、第2の表面1222は、負極集電体11に向かって設けられる。
【0081】
当然のことながら、本願の負極シート10は、他の実施形態を有してもよく、例えば、負極シート10は、負極集電体11、負極集電体のうちの一側に設けられる第2の負極膜層122、及び第2の負極膜層122に設けられる第1の負極膜層121で構成される。
【0082】
なお、本願の負極シートは、負極膜層以外の他の追加の機能層を排除するのではない。例えば、幾つかの実施形態において、本願の負極シートは、負極集電体と第2の負極膜層の間に設けられる導電プライマ層(例えば、導電剤及び接着剤で構成される)を更に含んでもよい。他の幾つかの実施形態において、本願の負極シートは、第1の負極膜層の表面に被覆される保護層を更に含んでもよい。
【0083】
幾つかの実施形態において、本願の負極シートの製造方法は、負極集電体の少なくとも一方の側に第2の負極膜層を形成するステップであって、第2の負極膜層が金属粒子を含み、金属粒子がMの単体粒子、M的合金粒子のうちの1種又は複数種から選択されるステップと、第2の負極膜層の表面に第1の負極膜層を形成するステップとを含むことができる。
【0084】
負極膜層は、一般的に負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスを経た後に形成される。負極スラリーは、一般的に負極活物質及び選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、他の選択可能な助剤などを溶剤に分散させると共に均一に撹拌して形成される。溶剤は、N-メチルピロリジノン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、第1の負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、他の選択可能な助剤を溶剤に分散させると共に均一に撹拌して第1の負極スラリーを形成し、第2の負極活物質、金属粒子、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、他の選択可能な助剤を溶剤に分散させると共に均一に撹拌して第2の負極スラリーを形成する。
【0085】
負極シートの製造方法において、第1の負極スラリー及び第2の負極スラリーは、1回で同時に塗布されても、2回に分けて塗布されてもよい。
【0086】
幾つかの実施形態において、第1の負極スラリー及び第2の負極スラリーは、1回で同時に塗布される。1回で同時に塗布されることで第1の負極膜層と第2の負極膜層の接着性をより良好にすることができ、負極膜層全体の界面抵抗の低下に有利であり、電池のサイクル特性を更に改善する。
【0087】
幾つかの実施形態において、負極シートの製造方法は、負極集電体の少なくとも一方側に第2の負極膜層を形成し、第2の負極膜層の表面に1層の金属Mを形成した後、第1の負極膜層の形成を続け、冷間プレス後、Mが第2の負極膜層の負極集電体の背向する第1の表面に位置するステップを含んでもよい。選択的に、金属Mの層状構造は、不連続形態であり、例えば、間隔分布状態又はアレイ分布状態である。第2の負極膜層の表面に金属Mを形成する方法は、塗布、ショットブラスト、噴霧、気相堆積などを含むが、これらに限定されない。例えば、気相堆積法によって金属Mを第2の負極膜層の表面に堆積させる。気相堆積法は、原子層堆積法、化学気相堆積法及び物理気相堆積法のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0088】
幾つかの実施形態において、負極シートの製造方法は、負極集電体の少なくとも一方側に1層の金属Mを形成した後、負極集電体の表面に第2の負極膜層を形成し、更に第2の負極膜層の表面に第1の負極膜層を形成し、冷間プレス後、Mが第2の負極膜層の負極集電体に向かう第2の表面に位置するステップを含んでもよい。選択的に、金属Mの層状構造は、不連続形態であり、例えば、間隔分布状態又はアレイ分布状態である。負極集電体の表面に金属Mを形成する方法は、塗布、気相堆積、グラビア法などを含むが、これらに限定されない。例えば、気相堆積法によって金属Mを負極集電体の表面に堆積させる。気相堆積法は、原子層堆積法、化学気相堆積法及び物理気相堆積法のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0089】
第2の負極膜層におけるMの質量百分率含有量試験は、下記方法によって得られる。
【0090】
走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma300)を使用することで第1の負極膜層及び第2の負極膜層の各々の厚さを得る。まず、負極シートを所定寸法の測定される試料(例えば2cm×2cm)に裁断し、パラフィンによって負極シートを試料台に固定する。その後、試料台を試料ホルダに入れてロックして固定し、クロスセクションポリッシャ(例えば、IB-19500CP)の電源をオンにして真空引きし(例えば10-4Pa)、アルゴン流量(例えば0.15MPa)、電圧(例えば8KV)及び研磨時間(例えば2時間)を設置し、試料台を揺動モードに調整して研磨を開始する。試料試験は、JY/T010-1996を参照することができる。試験結果の正確性を確保するために、測定される試料から複数の(例えば5つ)異なる領域を選択して走査試験を行うと共に、所定倍率(例えば500倍)で、特定試験領域における第1の負極膜層及び第2の負極膜層の各々の厚さを読み取ることができ、複数の試験領域の平均値を読み取って試験結果とする。
【0091】
第2の負極膜層における金属元素Mの含有量が低く、第2の負極膜層の密度に対する影響が低いため、第1の負極膜層が第2の負極膜層の密度と一致すると考えられ、更に第1の負極膜層と第2の負極膜層の厚さ比により、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比を得ることができる。
【0092】
片面が塗布された冷間プレス後の負極シート(両面が塗布された負極シートであると、そのうちの一方面の負極膜層を先に拭き取ってもよい)を所定寸法の測定される試料(例えば2cm×2cm)に裁断した後、粉末を掻き取り、得られた全ての粉末を誘導結合プラズマ-発光分光計(inductively coupled plasma-Optical Emission spectrometers,ICP-OES)によって試験し、負極膜層における金属元素Mの質量濃度を得て、第1の負極膜層と第2の負極膜層の塗布重量比に基づいて計算して第2の負極膜層における金属元素Mの質量百分率含有量を得る。試験結果の正確性を確保するために、負極シートを所定寸法を有する複数の測定される試料(例えば5つ)に裁断し、複数の試験試料の平均値を試験結果とする。
【0093】
[正極シート]
【0094】
二次電池は、正極シートを含み、正極シートは、通常、正極集電体、及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、且つ正極活物質を含む正極膜層を含む。例えば、正極集電体は、その自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれかの一方又は両方に設けられる。
【0095】
本願の正極シートにおいて、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体が採用されてもよい。金属箔シートの例として、正極集電体は、アルミニウム箔が採用されてもよい。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成される金属材料層を含むことができる。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0096】
本願の正極シートにおいて、正極膜層は、正極活物質を含み、正極活物質は、二次電池に用いられる当該分野で公知の正極活物質が採用されてもよい。例として、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型構造のリチウム含有リン酸塩及びその各々の変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよいが、これらに限定されない。オリビン型構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその各々の変性化合物のうちの1種又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池の正極活物質として使用できる他の従来の公知の材料を更に使用してもよい。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
本願の正極シートにおいて、上記各正極活物質の変性化合物は、正極活物質にドーピング変性、表面被覆変性、又はドーピング及び表面被覆による変性を行ってもよい。
【0098】
本願の正極シートにおいて、正極膜層は、通常、正極活物質、及び選択可能な接着剤と選択可能な導電剤を含む。正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、干燥、冷間プレスを経て形成される。正極スラリーは、通常、正極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び他の選択可能な成分を溶剤に分散させると共に均一に撹拌して形成される。溶剤は、N-メチルピロリジノン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。例として、正極膜層に用いられる接着剤は、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-四フッ化エチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン-四フッ化エチレン三元共重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの1種又は複数種を含んでもよい。例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含んでもよい。なお、本願により提供された各正極膜層の構成又はパラメータは、いずれも正極集電体の片面膜層の構成又はパラメータの範囲を指す。正極膜層が正極集電体の対向する2つの表面に設けられる場合、そのうちのいずれか一方の表面における正極膜層の構成又はパラメータは、本願を満たし、本願の請求範囲に含まれると考えられる。
【0099】
[電解質]
【0100】
電解液は、正極シートと負極シートの間で活性イオンを伝導する役割を果たす。本願の二次電池は、電解質の種類に特に制限はなく、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも1種から選択されてもよい。
【0101】
幾つかの実施形態において、電解質は、電解液を採用する。電解液は、電解質塩及び溶剤を含む。
【0102】
幾つかの実施形態において、電解質塩の種類に特に制限はなく、実際の需要に応じて選択することができる。例として、電解質塩は、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF4(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(六フッ化ヒ素リチウム)、LiFSI(ビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiTFS(リチウムトリフルオロメタンスルホネート)、LiDFOB(リチウムジフルオロオキサラトボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボレート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロオキサレートホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラトホスファナイト)のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態において、溶剤の種類に特に制限はなく、実際の需要に応じて選択することができる。例として、溶剤は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジェチノレカーボネート(DEC)、ジェチノレカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、ブタン酸メチル(MB)、ブタン酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。
【0104】
幾つかの実施形態において、選択的に、溶剤は、非水溶剤である。
【0105】
幾つかの実施形態において、選択的に、電解液に添加剤が更に含まれる。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよく、正極成膜用添加剤を含んでもよく、電池の幾つかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性を改善できる添加剤、電池の高温性を改善できる添加剤、及び電池の低温性を改善できる添加剤などを含んでもよい。
【0106】
[セパレータ]
【0107】
電解液が採用される二次電池、及び固体電解質が採用される幾つかの二次電池において、セパレータを更に含む。セパレータは、正極シートと負極シートの間に設けられ、分離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類に特に制限はなく、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔構造セパレータが選択されもよい。幾つかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンジフルオリドのうちの1種又は複数種から選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同じであってもよく、異なってもよい。
【0108】
幾つかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻き取りプロセス又は積層プロセスによって電極組立体を製造することができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、二次電池は、外装体を含んでもよい。当該外装体は、上記電極組立体及び電解質を封入するために使用することができる。
【0110】
幾つかの実施形態において、二次電池の外装体は、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウム製ケース、鋼製ケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は、例えば袋式ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチック、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンスクシネート(PBS)なのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0111】
本願は、二次電池の形状に特に制限はなく、円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図2は、一例としての方形構造を有する二次電池5である。
【0112】
幾つかの実施形態において、
図3を参照し、外装体は、ケース51及び蓋板53を含むことができる。そのうち、ケース51は、底板、底板に接続される側板、及び底板と側板で囲まれて形成される収容室を含むことができる。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は前記開口を覆うために用いられ、それにより、前記収容室を密閉する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻き取りプロセス又は積層プロセスによって電極組立体52を形成することができる。電極組立体52は、前記収容室に封入される。電解液は、電極組立体52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は、1つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0113】
幾つかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールを組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの適用及び容量に応じて調節することができる。
【0114】
図4は、一例としての電池モジュール4である。
図4を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に配列して設置することができる。当然のことながら、他の任意の方法に基づいて配列することができる。更に、締結部材によって当該複数の二次電池5を固定することができる。
【0115】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するケースを更に含んでもよく、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0116】
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックを更に組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの適用及び容量に応じて調節することができる。
【0117】
図5及び
図6は、一例としての電池パック1である。
図5及び
図6を参照し、電池パック1に電池ボックス及び電池ボックスに設けられる複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス2及び下部ボックス3を含み、上部ボックス2は、下部ボックス3を覆い、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方法に基づいて電池ボックスに配列することができる。
【0118】
[電力消費装置]
【0119】
本願の実施形態は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を更に提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートブックコンピュータなど)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0120】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0121】
図7は、一例としての電力消費装置である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。高出力及び高エネルギー密度に対する当該電力消費装置の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0122】
別の一例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータなどであってもよい。当該電力消費装置は、薄型化が一般的に求められ、二次電池を電源として採用することができる。
【0123】
実施例
【0124】
下記実施例は、本願に開示の内容をより具体的に説明し、これらの実施例は、本願に開示の内容の範囲で行われた種々の修正及び変化が当業者にとって明らかであるため、例示的に説明するために過ぎない。特段の断りがない限り、下記実施例に説明される全ての部、百分率及び比率は、いずれも重量に基づくものであり、且つ実施例で使用される全ての試薬は、商業的に入手可能であり、又は従来の方法に基づいて合成して得られ、更なる処理を必要とすることなく直接使用することができ、また、実施例で使用される機器は、商業的に入手可能である。
【0125】
実施例1
【0126】
正極シートの製造
【0127】
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤としてのアセチレンブラック、接着剤としてのポリビニリデンフロライド(PVDF)を質量比96:2:2で混合し、溶剤N-メチルピロリジノン(NMP)を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、正極スラリーを得て、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、室温で風乾させた後にオーブンに移して乾燥を続けた後、冷間プレス、分断により、正極シートを得る。
【0128】
負極シートの製造
【0129】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第1の負極スラリーを得る。
【0130】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、Ag単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比98:2で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。
【0131】
第1の負極スラリー、第2の負極スラリーを1回で同時に負極集電体の銅箔の2つの表面に均一に塗布し、室温で風乾させた後にオーブンに移して乾燥を続け、その後、冷間プレス、分断により、負極シートを得る。第2の負極膜層が負極集電体と第1の負極膜層の間に位置し、第1の負極膜層の塗布重量が4.3mg/cm2であり、第2の負極膜層の塗布重量が6.7mg/cm2である。第2の負極膜層におけるAg単体粒子の質量比が2%である。
【0132】
電解液の製造
【0133】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジェチノレカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶剤を得て、続いて、十分に乾燥したリチウム塩LiPF6を上記有機溶剤に溶解し、LiPF6の濃度が1mol/Lの電解液を製造する。
【0134】
セパレータの製造
【0135】
ポリエチレンフィルムをセパレータとして使用する。
【0136】
二次電池の製造
【0137】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、セパレータを正極シートと負極シートの間に位置させて分離の役割を果たし、その後、巻き取って電極組立体を得て、電極組立体を外装体に配置し、乾燥後に電解液を注入し、真空封入、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得る。
【0138】
実施例2
【0139】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである。負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比97:3で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層にけるAg単体粒子の質量比が3%である。
【0140】
実施例3
【0141】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである。負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるAg単体粒子の質量比が5%である。
【0142】
実施例4
【0143】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである:負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比90:10で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるAg単体粒子の質量比が10%である。
【0144】
実施例5
【0145】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである。負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAl単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるAl単体粒子の質量比が5%。
【0146】
実施例6
【0147】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである:負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にMg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるMg単体粒子の質量比が5%である。
【0148】
実施例7
【0149】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである。負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にNb単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるNb単体粒子の質量比が5%である。
【0150】
比較例1
【0151】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、負極シートの製造過程であり、具体的には以下のステップを含む。
【0152】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、負極スラリーを得て、負極スラリーを2部に分け、それぞれ第1の負極スラリー及び第2の負極スラリーとする。第1の負極スラリー、第2の負極スラリーを1回で同時に負極集電体の銅箔の2つの表面に均一に塗布し、室温で風乾させた後にオーブンに移して乾燥を続けた後、冷間プレス、分断により、負極シートを得る。第2の負極膜層が負極集電体と第1の負極膜層の間に位置し、第1の負極膜層の塗布重量が4.3mg/cm2であり、第2の負極膜層の塗布重量が6.7mg/cm2である。
【0153】
比較例2
【0154】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、負極シートの製造過程であり、具体的には以下のステップを含む。
【0155】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、負極スラリーを得る。負極スラリーを負極集電体の銅箔の2つの表面に均一に塗布し、室温で風乾させた後にオーブンに移して乾燥を続けた後、冷間プレス、分断により、負極シートを得る。負極膜層の塗布重量が11.0mg/cm2である。
【0156】
比較例3
【0157】
二次電池的製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、負極シートの製造過程であり、具体的には以下のステップを含む。
【0158】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にAg単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第1の負極スラリーを得る。
【0159】
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。
【0160】
第1の負極スラリー、第2の負極スラリーを1回で同時に負極集電体の銅箔の2つの表面に均一に塗布し、室温で風乾させた後にオーブンに移して乾燥を続けた後、冷間プレス、分断により、負極シートを得る。第2の負極膜層が負極集電体と第1の負極膜層の間に位置し、第1の負極膜層の塗布重量が4.3mg/cm2であり、第2の負極膜層の塗布重量が6.7mg/cm2である。第1の負極膜層におけるAg単体粒子の質量比が5%である。
【0161】
比較例4
【0162】
二次電池の製造方法は、実施例1に類似し、相違点は、以下の通りである。負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.4:1:1.2:1.4で混合した後、更にNi単体粒子(体積平均粒径Dv50が0.05μmである)と質量比95:5で混合し、溶剤としての脱イオン水を加え、真空ミキサーによって反応系が均一になるまで撹拌し、第2の負極スラリーを得る。第2の負極膜層におけるNb単体粒子の質量比が5%である。
【0163】
試験部分
【0164】
(1)二次電池の最大充電レート試験
【0165】
25℃で、二次電池を1Cのレートで2.8Vまで定電流放電した後、1Cのレートで4.2Vまで定電流充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧充電を続け、この時の二次電池が満充電状態である。満充電した二次電池を5min静置した後、1Cのレートで2.8Vまで定電流放電し、この時の放電容量が1Cのレートにおける二次電池の実容量であり、C0とする。二次電池をxC0のレート(勾配充電レートを表し、1C0、1.1C0、1.2C0、1.3C0、1.4C0...)で4.2Vまで定電流充電し、更に電流が0.05C0になるまで定電圧充電を続け、5min静置し、二次電池を解体して負極シートの表面におけるリチウム析出状況を観察する。負極シートの表面にリチウムが析出していない場合、負極シートの表面にリチウムが析出するまで、充電レートを大きくして更に試験する。負極シートの表面にリチウムが析出していない最大充電レートを記録する。
【0166】
(2)二次電池の過充電性能試験
【0167】
25℃で、二次電池を1Cのレートで2.8Vまで定電流放電した後、1Cのレートで定電流充電し、勾配の充電時間1h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h...を設計する。1回充電当たりの二次電池を解体し、負極シートの表面におけるリチウム析出状況を観察し、負極シートの表面にリチウムが析出したばかり時の充電時間t(h)を記録する。(充電時間t/満充電が必要とする時間)×100%でリチウム析出を開始するまで二次電池が過充電されるSOC状態を示す。
【0168】
(3)二次電池のサイクル特性試験
【0169】
25℃で、二次電池を1Cのレートで2.8Vまで定電流放電した後、二次電池を1Cのレートで4.2Vまで定電流充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧充電を続け、この時の二次電池が満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、即ち最初の1サイクルの充電容量であり、二次電池を5min静置した後に1Cのレートで2.8Vまで定電流放電し、これは、1サイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、即ち、最初の1サイクルの放電容量である。上記方法に基づいて二次電池にサイクル充放電試験を行い、1サイクル当たりの放電容量を記録し、二次電池の放電容量が最初の1サイクルの放電容量の80%に低下するまで、この時のサイクル数で1Cのレートにおける二次電池のサイクル特性を特徴付ける。二次電池のサイクル数が高いほど、サイクル特性がより良好である。
【0170】
25℃で、二次電池を1Cのレートで2.8Vまで定電流放電した後、二次電池を3Cのレートで4.2Vまで定電流充電し、電流が0.05Cになるまで定電圧充電を続け、この時の二次電池が満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、即ち、最初の1サイクルの充電容量であり、二次電池を5min静置した後に3Cのレートで2.8Vまで定電流放電し、これは、1サイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、即ち、最初の1サイクルの放電容量である。上記方法に基づいて二次電池にサイクル充放電試験を行い、1サイクル当たりの放電容量を記録し、二次電池の放電容量が最初の1サイクルの放電容量の80%に低下するまで、この時のサイクル数で3Cのレートにおける二次電池のサイクル特性を特徴付ける。二次電池のサイクル数が高いほど、サイクル特性がより良好である。
【0171】
実施例1~7及び比較例1~4の具体的なパラメータの詳細については表1を参照し、試験結果の詳細については表2を参照する。
【0172】
【0173】
【0174】
表2のデータから分かるように、本願の二次電池の最大充電レートがより高く、過充電性能がより良好であり、二次電池が高レート充電及び過充電条件で発生したリチウム析出問題を効果的に解決すると共に、二次電池の動力学的特性、サイクル特性及び安全性を顕著に改善することができる。
図8は、実施例1で製造された負極シートの断面の走査電子顕微鏡図であり、
図8から分かるように、Ag単体粒子が第2の負極膜層の本体部に均一に分布し、Agの表面がリチウム金属の優先的な核形成部位とすることにより、第2の負極膜層中のAgの表面におけるリチウム金属の核形成を誘導する効果を達成し、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができ、従って、二次電池は、高レート充電及過充電条件で依然として良好な動力学的特性及び安全性を有し、また、二次電池のサイクル特性もより良好である。
【0175】
比較例1の負極膜層に金属粒子を添加せず、負極膜層に核形成部位が含まれないため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができず、高レート充電及び過充電条件における二次電池の動力学的特性及びサイクル特性はいずれも低い。
【0176】
比較例2の負極膜層が単層であり、且つ負極膜層にAg単体粒子が添加されるため、Agの表面をリチウム金属の優先的な核形成部位とすることができるが、Ag単体粒子が負極膜層に均一に分布するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制する役割を果たすことができず、従って、高レート充電及び過充電条件における二次電池の動力学的特性及びサイクル特性はいずれも低い。比較例3の第2の負極膜層に金属粒子が添加されず、第1の負極膜層にAg単体粒子が添加されるため、Agの表面をリチウム金属の優先的な核形成部位とすることができるが、Ag単体粒子が第1の負極膜層に均一に分布するため、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を抑制する役割を果たすことができず、従って、高レート充電及び過充電条件における二次電池の動力学的特性及びサイクル特性はいずれも低い。
【0177】
比較例4では第2の負極膜層に添加された金属粒子がNi単体粒子であり、Ni及びLiの原子半径の差が大き過ぎるため、Niの表面をLiの優先的な核形成部位とすることができず、第2の負極膜層中のNiの表面におけるLi核形成を誘導する効果を達成することができず、負極シートの表面におけるリチウム金属の析出を効果的に抑制することができず、高レート充電及び過充電条件における二次電池の動力学的特性が非常に低く、また、二次電池は、より長いサイクル寿命を有することも困難である。
【0178】
以上は、単に本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲は、これに限定されず、当業者は、本願で開示された技術範囲で、種々の等価の修正又は置換を容易に想到することができ、これらの修正又は置換は、いずれも本願の請求範囲に含まれるべきである。従って、本願の保護範囲は、特許請求の範囲を基準とするべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体
(11)と、
前記負極集電体
(11)に設けられる負極膜層であって、前記負極膜層が第1の負極膜層
(121)及び第2の負極膜層
(122)を含み、前記第2の負極膜層
(122)が前記負極集電体
(11)と前記第1の負極膜層
(121)の間に位置し、前記第2の負極膜層
(122)が金属元素Mを含み、且つMの原子半径r
MとLiの原子半径r
Liは
を満たし、選択的に、
である負極膜層とを含む、負極シート
(10)。
【請求項2】
Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Al、Sc、Mo、W、Pt、Pd、In、Re、Ir、Ga、Os、V、Zn、Ru、Rhのうちの1種又は複数種から選択され、選択的に、Mは、Sn、Bi、Cd、Ti、Nb、Ta、Sb、Hf、Mg、Zr、Ag、Au、Alのうちの1種又は複数種から選択される、請求項1に記載の負極シート
(10)。
【請求項3】
Mは、少なくとも第2の負極膜層(122)の本体部に位置する、請求項1~2の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項4】
前記第2の負極膜層
(122)は、その自体の厚さ方向に沿って、対向する第1の表面
(1221)及び第2の表面(
1222)を含み、第1の表面
(1221)は、前記負極集電体に背向して設けられ、第2の表面
(1222)は、前記負極集電体
(11)に向かって設けられ、
Mは、第2の負極膜層
(122)の負極集電体
(11)に背向する第1の表面
(1221)及び/又は第2の負極膜層
(122)の負極集電体
(11)に向かう第2の表面
(1222)に位置する、請求項1~3の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項5】
第2の負極膜層
(122)の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、3%~7%であり、選択的に3%~5%である、請求項1~4の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項6】
第1の負極膜層
(121)の総質量に基づき、Mの質量百分率含有量は、0.5%以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項7】
第1の負極膜層
(121)は、金属元素Mを含まない、請求項1~6の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項8】
第1の負極膜層
(121)と第2の負極膜層
(122)の塗布重量比は、0.3~1.2であり、選択的に0.5~0.8である、請求項1~7の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項9】
第2の負極膜層
(122)は、金属粒子を含み、金属粒子は、Mの単体粒子、Mの合金粒子の1種又は複数種から選択される、請求項1~8の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項10】
Mの合金は、Mのうちの2種以上の元素で形成される合金、及びMのうちの1種又は複数種の元素と別の金属元素M
1のうちの1種又は複数種の元素とで形成される合金を含み、選択的にM
1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む、請求項9に記載の負極シート
(10)。
【請求項11】
金属粒子の体積平均粒径Dv50は、5μm以下であり、選択的に1μm以下である、請求項9~10の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項12】
第2の負極膜層
(122)は、Li-M合金粒子、Li-M-M
1合金粒子のうちの1種又は複数種を含み、M
1は、金属元素を示し、且つM
1は、Fe、Cu、Ni、Cr、Mnのうちの1種又は複数種を含む、請求項1~11の何れか1項に記載の負極シート
(10)。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の負極シート
(10)を含む、二次電池
(5)。
【請求項14】
請求項13に記載の二次電池
(5)を含む、電池モジュール
(4)。
【請求項15】
請求項13に記載の二次電池
(5)、請求項14に記載の電池モジュール
(4)のうちの1種を含む、電池パック
(1)。
【請求項16】
請求項13に記載の二次電池
(5)、請求項14に記載の電池モジュール
(4)、請求項15に記載の電池パック
(1)のうちの少なくとも1種を含む、電力消費装置。
【国際調査報告】