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特表2023-542782条件付きアクセスモジュールのソフトウェアアップデート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】条件付きアクセスモジュールのソフトウェアアップデート
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/418 20110101AFI20231004BHJP
   H04N 21/436 20110101ALI20231004BHJP
   G06F 8/65 20180101ALI20231004BHJP
   G06F 21/57 20130101ALI20231004BHJP
【FI】
H04N21/418
H04N21/436
G06F8/65
G06F21/57 320
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505362
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2020071125
(87)【国際公開番号】W WO2022022803
(87)【国際公開日】2022-02-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】セティネイ ゼイネップ ヒラル
(72)【発明者】
【氏名】エティク ハカン
【テーマコード(参考)】
5B376
5C164
【Fターム(参考)】
5B376CA05
5C164FA04
5C164MA08S
5C164UA11P
5C164UB71P
5C164YA20
(57)【要約】
条件付きアクセスモジュール(CAM)(20)はホストデバイス(10)と通信する。ホストデバイス(10)は、ホストデバイスまたはCAMにおいて放送される無線信号として受信されることなく、CAM(20)上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する。ホストデバイス(10)は、ソフトウェアのコピーをCAM(20)に送信する。CAM(20)は、CAM(20)の動作中に、CAM(20)によって使用するためにソフトウェアのコピーをCAM(20)の不揮発性メモリ内に保存する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)上のソフトウェアをアップデートする方法であって、
前記ホストデバイスが、前記ホストデバイスまたは前記CAMにおいて放送無線信号として受信することなく、前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
前記ホストデバイスが、前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信し、
前記CAMが、前記CAMの動作中に、前記CAMによる使用のために前記ソフトウェアのコピーを前記CAMの不揮発性メモリ内に保存することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ホストデバイスはデジタルテレビ(DTV)受信機であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、前記ホストデバイスが前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する前に、
前記ホストが、前記CAMと通信して前記CAM上の前記ソフトウェアの現行バージョンを決定し、
前記ホストが前記CAM用の前記ソフトウェアのアップデートバージョンが利用可能かをチェックし、利用可能である場合、前記ホストが前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法であって、前記ホストデバイスが前記CAMに前記ソフトウェアのコピーを送信する前に、
前記ホストが前記CAMに前記ソフトウェアのアップデートバージョンのサイズを報知し、
前記CAMが、少なくとも前記ソフトウェアのアップデートバージョンのサイズに基づき、前記CAM上で前記ソフトウェアがアップデート可能かをチェックし、
前記ソフトウェアが前記CAM上でアップデート可能である場合、前記CAMが前記ホストデバイスに前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信するよう要求することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法であって、前記ホストデバイスと前記CAMとは、EN 50221-1997規格に準拠するコモンインターフェース装置であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記ホストデバイスと前記CAMとは、アップデートプロセスのためにCI Plus仕様の特定アプリケーションサポートに準拠したメッセージを用いて互いに通信することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法であって、前記ホストデバイスは前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを、前記ホストデバイスに直接接続される有体の装置から、有線ネットワーク接続を介して前記ホストデバイスに接続される別の装置から、または無線でのダウンロードにより取得することを特徴とする方法。
【請求項8】
ホストデバイスと、ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)であって、前記ホストデバイスとCAMとは、前記CAM上のソフトウェアを、
前記ホストデバイスが、前記ホストデバイスまたは前記CAMにおいて放送無線信号として受信することなく、前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
前記ホストデバイスが、前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信し、
前記CAMが、前記CAMの動作中に、前記CAMによる使用のために前記ソフトウェアのコピーを前記CAMの不揮発性メモリ内に保存することによりアップデートするよう構築および構成されることを特徴とするホストデバイスとCAM。
【請求項9】
請求項8に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスはデジタルテレビ(DTV)受信機であることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスが前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する前に、
前記ホストが、前記CAMと通信して前記CAM上の前記ソフトウェアの現行バージョンを決定し、
前記ホストが前記CAM用の前記ソフトウェアのアップデートバージョンが利用可能かをチェックし、利用可能である場合、前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得するよう構築および構成されることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスが前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信する前に、
前記ホストが前記CAMに前記ソフトウェアのアップデートバージョンのサイズを報知し、
前記CAMが、少なくとも前記ソフトウェアのアップデートバージョンのサイズに基づき、前記CAM上で前記ソフトウェアがアップデート可能かをチェックし、
前記ソフトウェアが前記CAM上でアップデート可能である場合、前記CAMが前記ホストデバイスに前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信するよう要求するよう構築および構成されることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスと前記CAMとは、EN 50221-1997規格に準拠するコモンインターフェース装置であることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項13】
請求項12に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスと前記CAMとは、アップデートプロセスのためにCI Plus仕様規格の特定アプリケーションサポートに準拠したメッセージを用いて互いに通信するよう構成されることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載のホストデバイスおよびCAMであって、前記ホストデバイスは前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを、使用時に前記ホストデバイスに直接接続される有体の装置から、使用時に有線ネットワーク接続を介して前記ホストデバイスに接続される別の装置から、または無線でのダウンロードの少なくともいずれかにより取得するよう構成されることを特徴とするホストデバイスおよびCAM。
【請求項15】
ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)上のソフトウェアをアップデートするコンピュータプログラムであって、
前記ホストデバイスが、前記ホストデバイスまたは前記CAMにおいて放送無線信号として受信されることなく、前記CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
前記ホストデバイスが、前記ソフトウェアのコピーを前記CAMに送信し、
前記CAMが、前記CAMの動作中に、前記CAMによって使用するため前記ソフトウェアのコピーを前記CAMの不揮発性メモリ内に保存する指示を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、条件付きアクセスモジュール上のソフトウェアをアップデートするための方法、装置、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオブロードキャストコモンインターフェース(Digital Video Broadcast Common Interface:DVB-CI)仕様には、条件付きアクセスモジュール(Conditional Access Module:CAM)とホスト(通常、テレビセット、セットトップボックスなど)との間のインターフェースが記載されている。全ての条件付きアクセス機能がCAMによって提供される一方、ホストは必要なチューニング機能を提供し、音声および映像を提示する。CAM上で実行されているソフトウェアは、時々アップデートする必要がある。一般には、このようなアップデートは、CAMに現場で(すなわち、エンドユーザの使用中に)、放送「無線」信号として提供される。しかし、これは常に上手くいく、または便宜であるとは限らない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示される第一の態様によれば、ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)上のソフトウェアをアップデートする方法であって、
ホストデバイスが、ホストデバイスまたはCAMにおいて放送無線信号として受信することなく、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
ホストデバイスが、ソフトウェアのコピーをCAMに送信し、
CAMが、CAMの動作中に、CAMによる使用のためにソフトウェアのコピーをCAMの不揮発性メモリ内に保存する方法が提供される。
【0004】
本明細書で用いられる「ソフトウェア」との用語は、文脈上他の形で解釈される場合を除き、広くファームウェア並びに「従来型の」ソフトウェアを含む。「ファームウェア」とは、特定の種類のコンピュータソフトウェアであって、例えば装置の特定のハードウェア用の低レベル制御を提供するものである。ファームウェアは、通常、例えばROM、EPROM、およびフラッシュメモリを含む不揮発性メモリ装置内に保存される。
【0005】
このソフトウェアのコピーは、ホストデバイスにより、放送「無線」信号としては受信されない。むしろ、このソフトウェアのコピーはホストによるオンデマンドで、および/またはアップデート版のソフトウェアのコピーが保存されている装置との物理的接続を介してホストデバイスにより受信される。さらに、ある例においては、CAMについてソフトウェアアップデートが利用可能かを確認するのはホストデバイスである。これは、CAMが、放送されCAM用のソフトウェアアップデートが利用可能であることをCAMに報知するトリガーを受信する従来の構成とは対照的である。
【0006】
このホストデバイスによって取得され、その後CAMに伝送されるソフトウェアのコピーは、CAM用のISO(International Organization for Standardization)イメージ等の形式であってもよい。
【0007】
一例では、ホストデバイスはデジタルテレビ(DTV)受信機である。
【0008】
DTV受信機は、通常何らかの形のチューナーと、デモジュレータと、デマルチプレクサと、メディアデコーダとを含む。DTV受信機は、例えばデジタルテレビセットまたはセットトップボックスであってもよい。
【0009】
CAMは、通常、条件付きアクセスシステムを用いて暗号化されている条件付きアクセスコンテンツを視聴するための適切なハードウェア機能を有する一体型デジタルテレビセットまたはセットトップボックス等を備える電子機器である。CAMは、通常、DVB-CI仕様に準拠することから「コモンインターフェース条件付きアクセスモジュール(Common Interface conditional access module)」(CICAM)とも呼称される。CAMは、通常、直接放送衛星(DBS)サービスと共に、またデジタル地上波有料テレビサービス用に用いられる。
【0010】
CAMは、ホストと別個の装置であってもよく、またはホスト内に組み込まれ、または内蔵されてもよい。ホストに組み込まれる場合、CAMは、それ自体が物理的な装置としてではなく、ソフトウェアに実装されてもよい。
【0011】
一例において、この方法では、ホストデバイスが、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する前に、
ホストが、CAMと通信してCAM上のソフトウェアの現行バージョンを決定し、
ホストがCAM用のソフトウェアのアップデートバージョンが利用可能かをチェックし、利用可能である場合、ホストデバイスがCAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する。
【0012】
一例において、この方法では、ホストデバイスがソフトウェアのコピーをCAMに送信する前に、
ホストがCAMにソフトウェアのアップデートバージョンのサイズを報知し、
CAMが、少なくともソフトウェアのアップデートバージョンのサイズに基づき、CAM上でソフトウェアがアップデート可能かをチェックし、
ソフトウェアがCAM上でアップデート可能である場合、CAMがホストデバイスにソフトウェアのコピーをCAMに送信するよう要求する。
【0013】
ホストは、ソフトウェアのアップデートバージョンに関する他の情報をCAMに報知してもよく、CAMはこの情報をソフトウェアがCAM上でアップデート可能かをチェックするのに用いてもよい。
【0014】
一例において、ホストデバイスとCAMとは、EN 50221-1997規格に準拠するコモンインターフェース装置である。
【0015】
一例において、ホストデバイスとCAMとは、アップデートプロセスのためにCI Plus規格の特定アプリケーションサポートに準拠したメッセージを用いて互いに通信する。
【0016】
このCI Plus仕様は、例えばCI Plus仕様v1.3以上であってもよい。
【0017】
一例において、この方法では、ホストデバイスがCAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを、ホストデバイスに直接接続される有体の装置から、有線ネットワーク接続を介してホストデバイスに接続される別の装置から、または無線でのダウンロードにより取得する。
【0018】
このような物理的な装置は、例えば、USBやその他のインターフェースを介して接続可能なフラッシュメモリ装置であってもよい。このような有線ネットワーク接続は、イーサネット(登録商標)等のローカルエリアネットワークであってもよい。無線ダウンロードは、放送信号ではなく、逆に、通常オンデマンドで実行されるものである。
【0019】
本明細書に開示される第二の態様によれば、ホストデバイスと、ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)であって、ホストデバイスとCAMとは、
ホストデバイスが、ホストデバイスまたはCAMにおいて放送無線信号として受信することなく、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
ホストデバイスが、ソフトウェアのコピーをCAMに送信し、
CAMが、CAMの動作中に、CAMによる使用のためにソフトウェアのコピーをCAMの不揮発性メモリ内に保存することによりアップデートするよう構築および構成されるものが提供される。
【0020】
本明細書に開示される第三の態様によれば、ホストデバイスと通信する条件付きアクセスモジュール(CAM)上のソフトウェアをアップデートするコンピュータプログラムであって、
ホストデバイスが、ホストデバイスまたはCAMにおいて放送無線信号として受信することなく、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得し、
ホストデバイスが、ソフトウェアのコピーをCAMに送信し、
CAMが、CAMの動作中に、CAMによる使用のためにソフトウェアのコピーをCAMの不揮発性メモリ内に保存する指示を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0021】
上述のコンピュータプログラムを保存する、一つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶メディアが設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願開示の理解を促進し、実施形態がどのように実施されるかを示すため、例示的に添付図面が参照される。
【0023】
図1】テレビ信号受信機の一例を模式的に示す。
図2】本願開示にかかる方法の一例を模式的に示す。
図3】CI Plus仕様に規定される特定アプリケーションサポート(Specific Application Support:SAS)プロトコルを示す。
図4】本願開示にかかるテレビ信号受信機とCAMとの間で伝送されるメッセージの例を示す。
図5】本願開示にかかる方法の一例の詳細を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述のように、デジタルビデオブロードキャストコモンインターフェース(Digital Video Broadcast Common Interface:DVB-CI)仕様には、条件付きアクセスモジュール(Conditional Access Module:CAM)とホスト(通常、テレビセット、セットトップボックスなど)との間のインターフェースが記載されている。このコモンインターフェースは、EN 50221-1997規格に記載されている。このコモンインターフェースは、有料テレビチャンネルの復号を可能とする技術である。一般に、有料テレビ局は、テレビチャンネルを送信するのにどの暗号化方法を用いるかについて自身で決定することを望む。このコモンインターフェースにより、テレビセットとセットトップボックスの製造業者が、様々な暗号化スキーム用に交換可能な条件付きアクセスモジュール(CAM)を接続可能となることで、数多くの異なる有料テレビ局をサポート可能となっている。このコモンインターフェースにより、(テレビセットまたはセットトップボックス内の)テレビチューナーと、テレビ信号を復号するCAMとの間が接続される。これに対し、CAMには、アクセスキーと、ユーザが有料チャンネルにアクセスするための許可情報とを含むユーザの有料視聴契約者カードが挿入される。簡単に言うと、テレビセットまたはセットトップボックスは、有料テレビチャンネルへのチューニングおよび受信信号の復調機能を担う一方、CAMは条件付きアクセススクランブル解除機能を担う。
【0025】
このコモンインターフェースは、一般にテレビ信号受信機に設けられる。例えば、ヨーロッパにおいては、DVB-CIが全てのiDTV(integrated Digital Television)テレビセットに必須である。このコモンインターフェースはPCMCIAコネクタを用い、このようなテレビ信号受信機が数ミリセカンド間隔でデータ暗号化標準(Data Encryption Standard:DES)キーを受信し、これらを特定のアルゴリズムにしたがってプライベートチャンネルを復号するのに使用可能でなくてはならないことを規定する基準であるコモンスクランブリングアルゴリズム(Common Scrambling Algorithm:CSA)に準拠する。
【0026】
このコモンインターフェースは、例えばCI Plus仕様に準拠してもよい。CI Plus仕様に準拠した条件付きアクセスモジュールは、一般にCICAMとして知られている。にもかかわらず、本明細書中では、文脈上別の形で解釈する必要がある場合を除き、「CAM」という用語は、オリジナルのCI仕様に準拠したCAMとCI Plus仕様に準拠したCICAMとを含むものとして用いられる。このCI Plus仕様は、オリジナルのCI仕様と比較して、セキュリティの向上と、その他の新たな特徴とを提供する。例えば、CI Plus仕様によれば、CICAMとテレビ受信機との間に信頼済みチャンネルが形成され、この信頼済みチャンネルの両端において公知であるキーを用いて、コンテンツがCICAMから受信機に送られる前に復号化されたコンテンツを再度暗号化することが可能となる。現時点での現行CI Plus仕様はv1.4.3である。
【0027】
CAMは、歴史的に、アクセスキーと有料テレビ操作者/契約者の許可情報とを含むスマートカードを用いている。より近時では、コンテンツとCAM上のソフトウェアそれ自体との双方を保護するのに十分安全であることが示されていることから、カードレスソリューションが用いられている。さらに、CAMは、歴史的にテレビ受信機と別個でありかつ通信可能な独立の装置として設けられている。しかし、より近時では、カードレスCAMがテレビ受信機内に組み込まれ、これによりエンドユーザが別個の外部モジュールを購入したり、この別個のモジュールをテレビ受信機近傍のどこかに配置したりすることを不要としている。
【0028】
上述のように、CAM上で実行されているソフトウェアは、時々アップデートする必要がある。このようなソフトウェアは、実質上CAMのオペレーティングシステムとCAMに求められる具体的な機能とを提供する。一般には、このようなアップデートは、CAMに現場で(すなわち、エンドユーザの使用中に)、放送「無線」信号として提供される。しかし、これは常に上手くいく、または便宜であるとは限らない。例えば、このようなアップデートは放送業者に利用可能な帯域の使用を最小限とするため、限られた時間のみ放送されるのが一般であり、これはCAMによりアップデートされない可能性があることを意味する。
【0029】
本願開示の例においては、(実際の例においては、通常テレビセットまたはセットトップボックス等の)ホストデバイスが、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する。ホストデバイスは、このソフトウェアのコピーをCAMに送信する。次いで、CAMは、CAMの動作中に、CAMによる使用のためにこのソフトウェアのコピーをCAMの不揮発性メモリ内に保存する。
【0030】
ホストデバイスは、CAM上でアップデートされるソフトウェアのコピーを、広く任意のソースから取得可能である。例えば、このソフトウェアのコピーは、アップデートを実行する際に、ホストデバイスによって、ホストデバイスに物理的に接続されたUSBフラッシュメモリ装置から取得されてもよく、あるいは、有線ネットワーク接続(これは、例えばイーサネット(登録商標)接続等のローカルエリアネットワーク用の有線ネットワーク接続であってよい)を介してホストデバイスに接続される別の装置から取得されてもよく、無線ダウンロードとして取得されてよい。アップデートされるソフトウェアは、ホストデバイスまたはCAMに放送無線信号として提供されるわけではないことに注意すべきである。
【0031】
図1を参照すると、これは条件付きアクセスモジュール(Conditional Access Module:CAM)20が接続されるホストデバイスの例を模式的に示す。本例では、ホストデバイス10はテレビ信号受信機10である。図示される例においては、テレビ信号受信機10は、一体型のテレビ信号受信機またはチューナーを有するテレビセットであるか、そのようなテレビセットに内蔵されている。別の例においては、テレビ信号受信機10は、テレビ信号受信機またはチューナーを有し、使用時にテレビセットまたはその他の表示装置に接続されるセットトップボックス等であってもよいし、そのようなセットトップボックス等に内蔵されていてもよい。テレビ信号受信機10は、テレビ信号受信機一般に設けられるように、プロセッサ12と、ワーキングメモリ14と、データ記憶装置16とを備える。
【0032】
また、テレビ信号受信機10は、テレビ信号受信機10と通信できるようCAM20が接続可能である接続部またはポート18を備える。このポート18は、原理的にはポート18用の他の規格を使用してもよいが、DVB-CI仕様で要件とされるPCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)コネクタ18である。CAM20はアクセスキーと有料テレビ操作者/契約者の許可情報とを含むスマートカードを必要としてもよく、あるいは物理的なスマートカードを必要としないカードレス型のものであってもよい。さらに、図1では別個の装置として示されているものの、これに代えて(カード型またはカードレス型のいずれであっても)CAM20は、テレビ信号受信機10に組み込まれてもよく、また完全にソフトウェアとして実装されたり、部分的にソフトウェアかつ部分的にハードウェアとして実装されてもよい。テレビ信号受信機10とCAM20とは、EN 50221-1997規格に記載されるコモンインターフェースに準拠して互いに通信する。
【0033】
従来、CAM用のアップデート版ソフトウェアが利用可能になると、現行のCI Plus仕様v1.3にしたがって、このアップデートのトリガーが放送信号で放送される。放送されたトリガーを受信すると、CAMはテレビ信号受信機にアップデート版ソフトウェアが利用可能になったことを報知する。テレビ信号受信機は、CAMに送信されるアップデート版ソフトウェアを取得するために、適切な放送チャンネルにチューニングする。その後、CAMはこの新たなソフトウェアで自身をアップデートする。
【0034】
これに対し、本願開示にしたがい、かつ図2を参照すると、40において、本例ではテレビ信号受信機10であるホストデバイス10は、CAM20上でアップデートされるソフトウェアのコピーを取得する。42において、ホストデバイス10は、このソフトウェアのコピーをCAM20に送信する。44において、CAM20は、CAM20の動作中に、CAM20によって使用するためこのソフトウェアのコピーをCAM20の不揮発性メモリ内に保存する。このソフトウェアのコピーは、ホストデバイス10により、放送「無線」信号として受信されるわけではない。むしろ、後述するように、このソフトウェアのコピーはホストによるオンデマンドで、および/またはアップデート版のソフトウェアのコピーが保存されている装置に物理的に接続することによりホストデバイスにより受信される。さらに、ある例においては、CAM20についてソフトウェアアップデートが利用可能かを確認するのはホストデバイス10である。これは、上述のように、CAMが、放送されCAM用のソフトウェアアップデートが利用可能であることを報知するトリガーを受信する従来の構成とは対照的である。(なお、従来通り、放送されたトリガーがテレビ信号受信機によって受信・処理される従来の構成は、ソフトウェアアップデートにおいて引き続き用いられてもよい。本願開示の実施形態は、例えばテレビ信号受信機が実行できなかったアップデートおよび/または、例えば放送されないアップデートなどの他のアップデートについて用いられてもよい。)
【0035】
このプロセス中、アップデート処理に関するメッセージを送信するために、テレビ信号受信機10とCAM20とは互いに通信する必要がある。この点に関し、CI Plus仕様では、特定アプリケーションサポート(Specific Application Support:SAS)リソースが提供され、これによりテレビ信号受信機10上のアプリケーションがCAM20の機能にアクセス可能とされることに注目すべきである。本明細書の例では、SASは、テレビ信号受信機10およびCAM20上で実行されて現状のCAM20用のソフトウェアアップデートプロセスを実行可能とするコマンドセットの基礎として用いられる。特に、テレビ信号受信機10とCAM20との間のメッセージは、CI Plus仕様のSASに準拠したフォーマットを備える。SASプロトコルは、図3に示されるようにCI Plus仕様に規定される。
【0036】
本願開示の例では、CAM20用の現状のソフトウェアアップデートプロセスに特有の、かつCI Plus仕様に準拠して設けられるSASメッセージング機構に基づくタグメッセージが用いられる。タグメッセージの例が図4に示され、詳細が後述される。
【0037】
詳細な例中、図5を参照すると、50において、CAM20は、CAM20上のソフトウェアの現行バージョンに関する情報をテレビ信号受信機10に提供する。これは、例えば、テレビ信号受信機10がオフまたは待機状態から起動されたときに、装置初期化の一部として行われてもよい。一例において、これは図4に示されるcas_notify_device_sw_infoカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。
【0038】
次に、52において、テレビ信号受信機10は、CAM20用の、またはCAM20に適合するアップデート版ソフトウェアが利用可能かをチェックする。このテレビ信号受信機10によるアップデート版ソフトウェアのチェックは自動的に行われてもよい。例えば、これは、テレビ信号受信機10がCAM20からCAM20上のソフトウェアの現行バージョンに関する情報を受信するのに応じて、自動的にテレビ信号受信機10によって行われてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、自動アップデートプロセスを行うことを許容するか否かについてのオプションがテレビ信号受信機10によりユーザに与えられてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、手動のアップデートを強制するオプションがテレビ信号受信機10によりユーザに与えられてもよい。
【0039】
テレビ信号受信機10は、CAM20上でアップデートされるソフトウェアのコピーがあるかをチェックし、このソフトウェアのコピーを広く任意のソースから取得可能である。例えば、このソフトウェアのコピーは、アップデートが行われる際に、ユーザまたは保守技術員等によってテレビ信号受信機10に物理的に接続されるUSBフラッシュメモリ装置からテレビ信号受信機10により取得されてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、このソフトウェアのコピーは、ホストデバイスにイーサネット(登録商標)接続等の有線ネットワーク接続を介して接続される別の装置から、テレビ信号受信機10によって取得されてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、このソフトウェアのコピーは無線ダウンロードとしてテレビ信号受信機10によって取得されてもよい。他のオプションが利用可能とされてもよい。アップデート版ソフトウェアが利用可能である場合、テレビ信号受信機10はソフトウェアのコピーを取得して、RAMなどの揮発性メモリであってもよいメモリに保存する。このソフトウェアのコピーは、ISO(International Organization for Standardization)イメージ等の形式で取得されてもよい。
【0040】
テレビ信号受信機10がCAM20用のソフトウェアのアップデートバージョンを見つけた場合、54においてテレビ信号受信機10はその旨をCAM20に報知する。一例において、これは図4に示されるhost_notify_sas_update_startカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。
【0041】
ついで、56において、CAM20は、アップデート版ソフトウェアのサイズに関する情報をテレビ信号受信機10から要求する。また、CAM20は、任意でソフトウェアのアップデートバージョンに関する他の情報もテレビ信号受信機10から要求してもよい。このような他の情報は、例えばテレビ信号受信機の異なるブランドの、および/または異なるモデルのアップデートイメージ間を区別するために必要とされてもよい。一例において、これは図4に示されるcas_notify_sas_update_get_sw_image_sizeカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。
【0042】
58において、テレビ信号受信機10は、CAM20にソフトウェアのアップデートバージョンのサイズを報知する。また、テレビ信号受信機10は、要求され、情報が利用可能な場合、ソフトウェアのアップデートバージョンに関する他の情報をCAM20に伝送してもよい。一例において、これは図4に示されるhost_notify_sas_update_sw_image_sizeカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。
【0043】
60において、CAM20は、少なくともソフトウェアのアップデートバージョンのサイズに基づき、CAM20上でソフトウェアがアップデート可能かをチェックする。また、ソフトウェアのアップデートバージョンに関する他の情報がテレビ信号受信機10によりCAM20に提供される場合、CAM20はこの他の情報に基づき、CAM20上でソフトウェアがアップデート可能であるかをチェックしてもよい。
【0044】
CAM20が、少なくともCAM20に関する限りにおいて、CAM20がソフトウェアをアップデートするために全てが整ったと判断した場合、62において、CAM20はテレビ信号受信機10がアップデート版ソフトウェアをCAM20に送信するよう要求する。一例において、これは図4に示されるcas_notify_sas_update_get_sw_imageカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。
【0045】
64において、テレビ信号受信機10は、アップデート版ソフトウェアをCAM20に送信する。一例において、これは図4に示されるhost_notify_sas_update_sw_imageカスタムSASメッセージタグを用いて行われる。この一部として、SASを用いて送信可能なメッセージの大きさに制限があることから、テレビ信号受信機10はソフトウェアイメージファイルを部分(partitions)に分割し、その上で当該部分をCAM20に送信してもよい。テレビ信号受信機10からアップデート版ソフトウェアを受信すると、CAM20は、CAM20の動作中に、CAM20によって使用するようアップデート版ソフトウェアを不揮発性メモリに保存可能となる。
【0046】
CAM20は、テレビ信号受信機10が必要なアクションをとれるよう、このプロセスを通じてテレビ信号受信機10にソフトウェアアップデートの状態について報知するよう構成される。例えば、ソフトウェアの一部をCAM20が正確に受け取っていない場合、テレビ信号受信機10は当該部分を再びCAM20に送信可能である。
【0047】
本明細書に記載される例により、アップデート版ソフトウェアを放送信号として送信する必要なしにCAM上のソフトウェアをアップデート可能となる。CAM用のアップデート版ソフトウェアは、例えば自動プロセスの一部として、またはユーザによって手動で行われることにより「オンデマンド」で取得可能である。
【0048】
なお、本明細書中に記載されるプロセッサまたは処理システムもしくは回路は、実際には、単一のチップもしくは集積回路、または複数のチップまたは集積回路によって設けられてもよく、チップセット、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、画像処理装置(GPU)などによって設けられてもよい。チップまたは複数のチップは、一つ以上のデータプロセッサ、一つ以上のデジタル・シグナル・プロセッサ、ベースバンド回路および無線周波数回路の少なくとも一つを実装するための回路(ならびに場合によりファームウェア)を備え、これらは実施形態にしたがって動作するよう構成可能である。この点、例示的実施形態は、少なくとも部分的に、(不揮発性)メモリに記憶されプロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、またはハードウェアによって、または有形的に記憶されたソフトウェアおよびハードウェア(および場合により有形的に記憶されたファームウェア)の組み合わせによって実装されてもよい。
【0049】
本明細書には、データ記憶用のデータ記憶装置が記載される。これは、単一の装置または複数の装置によって設けられてよい。適切な装置としては、例えばハードディスクおよび(例えばソリッドステートドライブ(SSD)などの)不揮発性半導体メモリが挙げられる。
【0050】
図面を参照して本明細書に記載された実施形態の少なくともいくつかの態様は、処理システムまたはプロセッサにおいて実行されるコンピュータプロセスを含むが、本発明は、本発明を実施可能なコンピュータプログラム、特にキャリア上または内のコンピュータプログラムにも及ぶ。このプログラムの形式は、非一時的なソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形式の中間ソースコードとオブジェクトコード、またはその他任意の本発明にしたがった処理の実施に使用するのに適切な非一時的形式であってよい。キャリアは、プログラムを搬送可能な任意の実体または装置であってよい。例えば、キャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)または他の半導体ベースのRAM、例えばCD-ROMまたは半導体ROMなどのROM、例えばフロッピーディスクまたはハードディスクなどの磁気記録媒体、光学メモリ装置一般などの記憶媒体を含んでもよい。
【0051】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明的事例として理解されるべきである。別の実施形態および事例も想定される。一つの例または実施形態に関連して記載された任意の要素は、単独で、または他の要素と組み合わせて使用してもよい。さらに、任意の一例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、他の例または実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせて、または他の例または実施形態と組み合わせて利用してもよい。さらに、本明細書に記載されない等価物および変形例も、請求項に定義される本発明の範囲内で利用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】