(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】過熱することなく電流を最大化するために腫瘍治療電場(TTField)における個々の電極要素における金属化範囲を変化させること
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20231004BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20231004BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/32
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505428
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 IB2021058514
(87)【国際公開番号】W WO2022064339
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨラム・ワッサーマン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB04
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ21
4C053JJ40
4C053LL07
(57)【要約】
腫瘍治療電場(TTField)を適用するための従来のトランスデューサアレイは個々の電極要素のセットを含み、より周辺に位置させられた電極要素(例えば、トランスデューサアレイの角または縁における電極要素)が、より中央に位置させられた電極要素より高温になる傾向がある。この状況は、より周辺に位置させられた電極要素の静電容量を低減することで改善され得る。それらの要素の静電容量を低減することは、(任意の所与の電圧において)それらの要素を通る電流を低下させ、これは、それらの要素の温度を低下させる。より周辺に位置させられた電極要素の静電容量が低減されると、より大きな電圧が、過熱することなく使用できる。これは全体の電流の増加をもたらし、これによりTTField治療の有効性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電場を生体被験者に適用するための装置であって、
前面およびそれぞれの範囲を各々が有する複数の導電性領域と、
(i)それぞれの前面、および(ii)前記導電性領域のそれぞれ1つの前記前面に対向して配置されるそれぞれの後面を各々が有する誘電性材料の複数の領域と、
誘電性材料の前記複数の領域の前記前面を前記被験者の身体上または身体内で保持し、前記複数の導電性領域を、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において支持するように構成される基材と、
前記複数の導電性領域と電気接触して配置される少なくとも1つの導電体と
を備え、前記複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と複数の第2の導電性領域とを含み、前記第2の導電性領域の各々は、前記少なくとも1つの第1の導電性領域より前記重心に対してより周辺に位置付けられ、前記第2の導電性領域の各々の前記範囲は、前記第1の導電性領域の各々の前記範囲より少なくとも10%は小さい、装置。
【請求項2】
前記誘電性材料の前記領域の各々はセラミック円板を備え、前記複数の導電性領域の各々は、前記セラミック円板のそれぞれ1つの前記後面に配置される金属の層を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記誘電性材料の前記領域の各々は平坦なセラミック材料を備え、前記複数の導電性領域の各々は、前記セラミック材料のそれぞれ1つの前記後面に配置される金属の層を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の導電性領域の各々は印刷回路のパッドを備え、前記誘電性材料の前記領域の各々はポリマ膜を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の導電性領域の各々は印刷回路のパッドを備え、前記誘電性材料の前記領域の各々は、単一の連続したポリマ膜の異なる区域を使用して実施される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の導電性領域の各々は金属箔の層を備え、前記誘電性材料の前記領域の各々はポリマ膜を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の導電性領域の各々は金属箔の層を備え、前記誘電性材料の前記領域の各々は、単一の連続したポリマ膜の異なる区域を使用して実施される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
誘電性材料の前記複数の領域の前記前面が前記被験者の身体に向くように、前記基材を人の皮膚に当てて保持するように構成される接着層をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と、複数の第2の導電性領域と、複数の第3の導電性領域とを備え、前記第3の導電性領域の各々は、前記複数の第2の導電性領域より前記重心に対してより周辺に位置付けられ、前記第3の導電性領域の各々の前記範囲は、前記第2の導電性領域の各々の前記範囲より少なくとも10%は小さく、前記第2の導電性領域の各々は、前記少なくとも1つの第1の導電性領域より前記重心に対してより周辺に位置付けられ、前記第2の導電性領域の各々の前記範囲は、前記第1の導電性領域の各々の前記範囲より少なくとも10%は小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
交流電場を生体被験者に適用するための装置であって、
前面およびそれぞれの範囲を各々が有する複数の導電性領域と、
(i)それぞれの前面、および(ii)前記導電性領域のそれぞれ1つの前記前面に対向して配置されるそれぞれの後面を各々が有する誘電性材料の複数の領域と、
誘電性材料の前記複数の領域の前記前面を前記被験者の身体上または身体内で保持し、前記複数の導電性領域を、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において支持するように構成される基材と、
前記誘電性材料のそれぞれの領域と熱接触して各々が配置される複数の温度センサと、
前記複数の導電性領域と電気接触して配置される少なくとも1つの導電体と
を備え、前記複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と複数の第2の導電性領域とを含み、前記第2の導電性領域の各々は、前記少なくとも1つの第1の導電性領域より前記重心に対してより周辺に位置付けられ、前記第2の導電性領域の各々と関連付けられる静電容量が、前記第1の導電性領域の各々と関連付けられる静電容量より少なくとも10%は小さい、装置。
【請求項11】
前記第2の導電性領域の各々は、前記第1の導電性領域の各々より少なくとも10%は小さい範囲を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の導電性領域の各々の前記前面に対向して配置される前記誘電性材料の前記領域は、前記第1の導電性領域の各々の前記前面に対向して配置される前記誘電性材料の前記領域より少なくとも10%は厚い、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の導電性領域の各々の前記前面に対向して配置される前記誘電性材料の前記領域は、前記第1の導電性領域の各々の前記前面に対向して配置される前記誘電性材料の前記領域より少なくとも10%は小さい誘電率を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
交流電場を生体被験者に適用するための装置であって、
フレックス回路であって、(a)前記フレックス回路の前側に位置付けられ、第1の範囲を各々が有する少なくとも1つの第1の導電性パッド、(b)前記少なくとも1つの第1の導電性パッドに対して周辺にある場所において、前記フレックス回路の前記前側に位置付けられ、前記第1の範囲より少なくとも10%は小さいそれぞれの範囲を各々が有する複数の第2の導電性パッド、ならびに、(c)前記少なくとも1つの第1の導電性パッドおよび前記複数の第2の導電性パッドと電気接触して配置される少なくとも1つの導電性トレースを備え、前記少なくとも1つの導電性トレースは、前記第1の導電性パッドの各々および前記第2の導電性パッドの各々が電気信号によって駆動され得るように配置される、フレックス回路と、
各々が前面を有し、前記フレックス回路の前記前側において前記少なくとも1つの第1の導電性パッドのそれぞれ1つの上に、その前に各々が配置される少なくとも1つの第1の可撓性ポリマ領域と、
各々が前面を有し、前記フレックス回路の前記前側において前記第2の導電性パッドのそれぞれ1つの上に、その前に各々が配置される複数の第2の可撓性ポリマ領域と
を備え、100kHzから500kHzの間の少なくとも1つの周波数において、前記ポリマ領域の各々が少なくとも20の誘電率を有し、
前記ポリマ領域の各々は、その前面に対して垂直な方向において20μm未満の厚さを有する、装置。
【請求項15】
前記フレックス回路の後側に位置付けられる複数のサーミスタをさらに備え、前記複数のサーミスタの各々は前記複数の第2の導電性パッドのそれぞれ1つと熱接触して配置され、
前記フレックス回路は、前記複数のサーミスタへのアクセスを提供する複数の導電性トレースをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記フレックス回路を支持するように構成され、前面を有する可撓性の第3の層であって、(a)前記可撓性の第3の層の前記前面の第1の部分が、人の皮膚に付着し、前記皮膚から容易に取り外し可能である接着剤で被覆され、(b)前記第1の部分は、前記第1の部分が皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、前記第1の部分における前記接着剤が前記皮膚に付着し、前記複数の第2の可撓性ポリマ領域を前記皮膚に隣接して保持するように、前記フレックス回路に対して外側に位置付けられる、可撓性の第3の層と、
前記第1の可撓性ポリマ領域の各々の前記前面、および、前記第2の可撓性ポリマ領域の各々の前記前面に配置される導電性ヒドロゲルの層であって、前記ヒドロゲルは、前記第2の可撓性ポリマ領域の各々が前記接着剤によって前記皮膚に隣接して保持されるとき、前記皮膚と接触するように位置付けられる、導電性ヒドロゲルの層と
をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記ポリマ領域の各々が5μm未満の厚さを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記第2の導電性パッドの各々が、切断可能な導電性リンクによって相互連結される複数の導電性副領域を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記フレックス回路を支持するように構成され、前面を有する可撓性の第3の層であって、(a)前記可撓性の第3の層の前記前面の第1の部分が、人の皮膚に付着し、前記皮膚から容易に取り外し可能である接着剤で被覆され、(b)前記第1の部分は、前記第1の部分が皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、前記第1の部分における前記接着剤が前記皮膚に付着し、前記複数の第2の可撓性ポリマ領域を前記皮膚に隣接して保持するように、前記フレックス回路に対して外側に位置付けられる、可撓性の第3の層と、
前記第1の可撓性ポリマ領域の各々および前記第2の可撓性ポリマ領域の各々の前記前面に配置される導電性ヒドロゲルの層であって、前記ヒドロゲルは、前記第2の可撓性ポリマ領域の各々が前記接着剤によって前記皮膚に隣接して保持されるとき、前記皮膚と接触するように位置付けられる、導電性ヒドロゲルの層と、
前記フレックス回路の後側に位置付けられ、前記複数の第2の導電性パッドのそれぞれ1つと熱接触して各々が配置される複数のサーミスタと
を備え、前記フレックス回路は、前記複数のサーミスタへのアクセスを提供する複数の導電性トレースをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記ポリマ領域の各々が5μm未満の厚さを有する、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月25日に出願された米国出願第63/083,590号の便益を主張し、その開示全体が、その全体において本明細書で参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本明細書で参照によりそれぞれ組み込まれている米国特許第7,136,699号および第7,146,210号は、特定の周波数および電場強度におけるAC電場で、腫瘍または他の分裂の速い細胞を治療することを記載している。これらのAC電場は、本明細書では「腫瘍治療電場」または「TTField」と称されている。
【0003】
米国特許第8,715,203号は、TTFieldを適用するために使用される先行技術の「複合電極」(「トランスデューサアレイ」とも称される)を記載している。’203特許のトランスデューサアレイは、
図1に示されており、直径が約2cmであるセラミック要素(例えば、セラミック円板)をそれぞれが備える9個の円形の電極要素を備える。各々のセラミック要素の一方の側面は被験者の皮膚に向き、他方の側面は(例えば、銀メッキされた)導電性のバッキングを有する。フレックス回路が、任意の所与のトランスデューサアレイにおけるセラミック要素のすべての銀メッキされた背面を単一のリード線に連結する。ヒドロゲルの層が、セラミック要素の各々と被験者の皮膚との間に配置される。
【0004】
第1のトランスデューサアレイが、人の身体の一方の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、第2のトランスデューサアレイが、人の身体の反対の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、AC電圧が第1のトランスデューサアレイのリード線と第2のトランスデューサアレイのリード線との間に適用されるとき、電流が人の身体に容量的に結合される。TTFieldが効果的となるためには、十分な大きさの電流が電極を通じて人の身体へと容量的に結合されなければならず、より高い電流は治療のより高い有効性と強く相関させられる。トランスデューサアレイの各々の静電容量を増加させることは、電流の対応する増加をもたらすため、先行技術のトランスデューサアレイは、十分に高い電流を達成するために、非常に高い誘電率(例えば、1000超)を伴う比較的薄いセラミック要素(例えば、約1mmの厚さのセラミック円板)を典型的には使用してきた。
【0005】
セラミック要素は使用中に昇温し、安全上の理由により、セラミック要素の各々における温度が特定の安全閾値(例えば、41℃)未満であることが要求される。
【0006】
任意の所与のトランスデューサアレイにおけるセラミック要素が並列に配線される場合、所与のトランスデューサアレイにおけるセラミック要素のうちのいずれか1つにおける温度が高くなりすぎると、最も高温の要素の温度が安全閾値を超えるのを防止するために、トランスデューサアレイ全体に適用される電圧が低下させられなければならない。(’203特許では、温度読取りは、複数のサーミスタを使用して得られ、それらサーミスタの各々は、それぞれのセラミック要素の中心に位置付けられる。)例えば、
図1の先行技術のシステムにおけるセラミック要素のうちの1つだけの温度が41℃に上昇するが、残りの8個のセラミック要素の温度が39℃でしかないと仮定する。この状況では、電極要素の平均温度が((8×39)+41)/9=39.2℃であるにも拘らず、トランスデューサアレイに適用される電圧は、最も高温の要素が過熱するのを防止するために低下させられなければならない。電圧のこの低下は、電流の低下をもたらし、これは治療の有効性を低下させてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7136699号明細書
【特許文献2】米国特許第7146210号明細書
【特許文献3】米国特許第8715203号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、交流電場を生体被験者に適用するための第1の装置を対象とする。第1の装置は、複数の導電性領域と、誘電性材料の複数の領域と、基材と、少なくとも1つの導電体とを備える。導電性領域の各々は前面とそれぞれの範囲とを有する。誘電性材料の領域の各々は、(i)それぞれの前面と、(ii)導電性領域のそれぞれ1つの前面に対向して配置されるそれぞれの後面とを有する。基材は、誘電性材料の複数の領域の前面を被験者の身体上または身体内で保持し、複数の導電性領域を、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において支持するように構成される。少なくとも1つの導電体は複数の導電性領域と電気接触して配置される。複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と複数の第2の導電性領域とを含み、第2の導電性領域の各々は、少なくとも1つの第1の導電性領域より重心に対してより周辺に位置付けられる。第2の導電性領域の各々の範囲は、第1の導電性領域の各々の範囲より少なくとも10%は小さい。
【0009】
第1の装置のある実施形態では、誘電性材料の領域の各々はセラミック円板を備え、複数の導電性領域の各々は、セラミック円板のそれぞれ1つの後面に配置される金属の層を備える。第1の装置のある実施形態では、誘電性材料の領域の各々は平坦なセラミック材料を備え、複数の導電性領域の各々は、セラミック材料のそれぞれ1つの後面に配置される金属の層を備える。
【0010】
第1の装置のある実施形態では、複数の導電性領域の各々は印刷回路のパッドを備え、誘電性材料の領域の各々はポリマ膜を備える。第1の装置のある実施形態では、複数の導電性領域の各々は印刷回路のパッドを備え、誘電性材料の領域の各々は、単一の連続したポリマ膜の異なる区域を使用して実施される。第1の装置のある実施形態では、複数の導電性領域の各々は金属箔の層を備え、誘電性材料の領域の各々はポリマ膜を備える。第1の装置のある実施形態では、複数の導電性領域の各々は金属箔の層を備え、誘電性材料の領域の各々は、単一の連続したポリマ膜の異なる区域を使用して実施される。
【0011】
第1の装置のある実施形態は、誘電性材料の複数の領域の前面が被験者の身体に向くように、基材を人の皮膚に当てて保持するように構成される接着層をさらに備える。
【0012】
第1の装置のある実施形態では、複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と、複数の第2の導電性領域と、複数の第3の導電性領域とを備え、第3の導電性領域の各々は、複数の第2の導電性領域より重心に対してより周辺に位置付けられ、第3の導電性領域の各々の範囲は、第2の導電性領域の各々の範囲より少なくとも10%は小さく、第2の導電性領域の各々は、少なくとも1つの第1の導電性領域より重心に対してより周辺に位置付けられ、第2の導電性領域の各々の範囲は、第1の導電性領域の各々の範囲より少なくとも10%は小さい。
【0013】
本発明の別の態様は、交流電場を生体被験者に適用するための第2の装置を対象とする。第2の装置は、複数の導電性領域と、誘電性材料の複数の領域と、基材と、複数の温度センサと、少なくとも1つの導電体とを備える。導電性領域の各々は前面とそれぞれの範囲とを有する。誘電性材料の領域の各々は、(i)それぞれの前面と、(ii)導電性領域のそれぞれ1つの前面に対向して配置されるそれぞれの後面とを有する。基材は、誘電性材料の複数の領域の前面を被験者の身体上または身体内で保持し、複数の導電性領域を、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において支持するように構成される。温度センサの各々は、誘電性材料のそれぞれの領域と熱接触して配置される。少なくとも1つの導電体は複数の導電性領域と電気接触して配置される。複数の導電性領域は、少なくとも1つの第1の導電性領域と複数の第2の導電性領域とを含み、第2の導電性領域の各々は、少なくとも1つの第1の導電性領域より重心に対してより周辺に位置付けられる。第2の導電性領域の各々と関連付けられる静電容量が、第1の導電性領域の各々と関連付けられる静電容量より少なくとも10%は小さい。
【0014】
第2の装置のある実施形態では、第2の導電性領域の各々は、第1の導電性領域の各々より少なくとも10%は小さい範囲を有する。第2の装置のある実施形態では、第2の導電性領域の各々の前面に対向して配置される誘電性材料の領域は、第1の導電性領域の各々の前面に対向して配置される誘電性材料の領域より少なくとも10%は厚い。第2の装置のある実施形態では、第2の導電性領域の各々の前面に対向して配置される誘電性材料の領域は、第1の導電性領域の各々の前面に対向して配置される誘電性材料の領域より少なくとも10%は小さい誘電率を有する。
【0015】
本発明の別の態様は、交流電場を生体被験者に適用するための第3の装置を対象とする。第3の装置は、フレックス回路と、少なくとも1つの第1の可撓性ポリマ領域と、複数の第2の可撓性ポリマ領域とを備える。フレックス回路は、(a)フレックス回路の前側に位置付けられ、第1の範囲を各々が有する少なくとも1つの第1の導電性パッドと、(b)少なくとも1つの第1の導電性パッドに対して周辺にある場所において、フレックス回路の前側に位置付けられ、第1の範囲より少なくとも10%は小さいそれぞれの範囲を各々が有する複数の第2の導電性パッドと、(c)少なくとも1つの第1の導電性パッドおよび複数の第2の導電性パッドと電気接触して配置される少なくとも1つの導電性トレースとを備える。少なくとも1つの導電性トレースは、第1の導電性パッドの各々および第2の導電性パッドの各々が電気信号によって駆動され得るように配置される。第1の可撓性ポリマ領域の各々が前面を有し、少なくとも1つの第1の可撓性ポリマ領域の各々は、フレックス回路の前側において第1の導電性パッドのそれぞれ1つの上に、その前に配置される。第2の可撓性ポリマ領域の各々が、前面を有し、フレックス回路の前側において第2の導電性パッドのそれぞれ1つの上に、その前に配置される。100kHzから500kHzの間の少なくとも1つの周波数において、ポリマ領域の各々が少なくとも20の誘電率を有し、ポリマ領域の各々は、その前面に対して垂直な方向において20μm未満の厚さを有する。
【0016】
第3の装置のある実施形態は、フレックス回路の後側に位置付けられる複数のサーミスタをさらに備える。これらの実施形態では、複数のサーミスタの各々は複数の第2の導電性パッドのそれぞれ1つと熱接触して配置され、フレックス回路は、複数のサーミスタへのアクセスを提供する複数の導電性トレースをさらに含む。
【0017】
第3の装置のある実施形態は、可撓性の第3の層と導電性ヒドロゲルの層とをさらに備える。これらの実施形態では、可撓性の第3の層はフレックス回路を支持するように構成される。可撓性の第3の層は前面を有する。可撓性の第3の層の前面の第1の部分が、人の皮膚に付着し、皮膚から容易に取り外し可能である接着剤で被覆される。第1の部分は、第1の部分が皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、第1の部分における接着剤が皮膚に付着し、複数の第2の可撓性ポリマ領域を皮膚に隣接して保持するように、フレックス回路に対して外側に位置付けられる。導電性ヒドロゲルの層は、第1の可撓性ポリマ領域の各々の前面と、第2の可撓性ポリマ領域の各々の前面とに配置され、ヒドロゲルは、第2の可撓性ポリマ領域の各々が接着剤によって皮膚に隣接して保持されるとき、皮膚と接触するように位置付けられる。
【0018】
第3の装置のある実施形態では、ポリマ領域の各々が5μm未満の厚さを有する。第3の装置のある実施形態では、第2の導電性パッドの各々が、切断可能な導電性リンクによって相互連結される複数の導電性副領域を備える。
【0019】
第3の装置のある実施形態は、可撓性の第3の層と、導電性ヒドロゲルの層と、複数のサーミスタとをさらに備える。可撓性の第3の層はフレックス回路を支持するように構成される。可撓性の第3の層は前面を有する。可撓性の第3の層の前面の第1の部分が、人の皮膚に付着し、皮膚から容易に取り外し可能である接着剤で被覆される。第1の部分は、第1の部分が皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、第1の部分における接着剤が皮膚に付着し、複数の第2の可撓性ポリマ領域を皮膚に隣接して保持するように、フレックス回路に対して外側に位置付けられる。導電性ヒドロゲルの層は、第1の可撓性ポリマ領域の各々および第2の可撓性ポリマ領域の各々の前面に配置され、ヒドロゲルは、第2の可撓性ポリマ領域の各々が接着剤によって皮膚に隣接して保持されるとき、皮膚と接触するように位置付けられる。複数のサーミスタはフレックス回路の後側に位置付けられ、複数のサーミスタの各々は、複数の第2の導電性パッドのそれぞれ1つと熱接触して配置される。フレックス回路は、複数のサーミスタへのアクセスを提供する複数の導電性トレースをさらに含む。任意選択で、これらの実施形態では、ポリマ領域の各々が5μm未満の厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】TTFieldを送達するための先行技術のトランスデューサアレイの図である。
【
図2】4個の角の要素の静電容量がより中央に位置させられた要素の静電容量より小さいトランスデューサアレイの第1の実施形態についてのレイアウトの図である。
【
図3】誘電性セラミック要素のセットの背面側における導電性金属化の範囲を変化させることで静電容量を低減させるための3つの異なる手法の図である。
【
図4】6個の端の要素の静電容量がより中央に位置させられた要素の静電容量より小さいトランスデューサアレイの第2の実施形態についてのレイアウトの図である。
【
図5A】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する一実施形態の前面図である。
【
図5B】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する一実施形態の側面(断面)図である。
【
図6A】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の前面図である。
【
図6B】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の側面(断面)図である。
【
図6C】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の分解図である。
【
図7A】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の前面図である。
【
図7B】フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の側面(断面)図である。
【
図8】コンデンサの板として供するPCBパッド(または金属)の範囲を、PCBパッド(または金属)へ空所を組み込むことによって縮小することで、静電容量を低減させるための手法の図である。
【
図9】より周辺に位置させられたパッドにより小さい静電容量を提供するPCBパッドのレイアウトの図である。
【
図10】薄い導電性リンクを切断することで、フレックス回路の特定の領域の静電容量を低減させるための代替の手法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な実施形態が、同様の符号が同様の要素を表している添付の図面を参照して、以下で詳細に記載されている。
【0022】
TTFieldを患者の身体へ送達するために使用されるトランスデューサアレイにおける電極要素は、使用中に過熱する可能性があり、温度安全閾値(約41℃)を超えるのを回避するために、電圧の低下を必要とする。これは、治療の有効性を低下させる可能性のある電流の低下をもたらす。
【0023】
任意の所与の要素の過熱の原因となり得る1つの要因は、要素と被験者の皮膚との間の接続不良であり、これは、例えば、電極要素と皮膚との間のヒドロゲルが、溶解される場合、または、テープ接着の低下の結果として皮膚から取れる場合などに起こり得る。しかし、9個の要素の3×3のトランスデューサアレイから捕らえられた温度データを精査した後、本発明者は、別の要因も働いていたことを認識した。
【0024】
より具体的には、本発明者は、80個の先行技術のトランスデューサアレイが、20人の任意で選択された人の被験者にTTFieldを適用するために使用されたとき、それらのトランスデューサアレイからの温度データを得た。各々のトランスデューサアレイは、3×3の配列で配置された9個のセラミック要素を有し、任意の所与のトランスデューサアレイにおけるすべてのセラミック要素の構造は同一であった。データは、各々のトランスデューサアレイ内の個々のセラミック要素からの温度測定値(トランスデューサアレイの中に組み込まれているサーミスタを使用して得られた)を含んでいた。温度測定データは、任意の所与のトランスデューサアレイの中のどのセラミック要素が最初に41.1℃に到達したかを決定するために分析された(この場合、電圧低下が、その要素を過熱から防止するために必要とされた)。この分析は、時間のうちの90%にわたって、41.1℃に到達する最初のセラミック要素は、4個の角の要素のうちの1つであったことを明らかにした。とりわけ、これらの場合における最も高温の要素と最も低温の要素との間の温度の差は、通常は3℃から5℃の間であった。コンピュータシミュレーションは、角の要素を通じて流れる電流が角にない要素より高いことも示唆している。
【0025】
温度測定データは、各々の円板の場所について、平均温度および標準偏差を見つけ出すためにも分析された。この分析は、4個の角の要素についての平均温度が37.84℃(標準偏差=1.32、N=639,413回の温度読取り)であった一方で、すべての角にない要素についての平均温度が37.14℃(標準偏差=1.15、N=641,708回の温度読取り)であったことを明らかにした。これは、平均で、4個の角の要素が、測定された角にない要素より0.7℃高温で動作していたことを意味する。
【0026】
本発明者は、角の要素がより高温で動作するとき、それらが、所与のトランスデューサアレイによって送達され得る最大電流を低下させる(これは、治療の有効性を制限する可能性がある)ため、角にない要素より高温で動作する配列の角/端の電極要素が問題であることを認識した。
【0027】
本明細書に記載されている実施形態は、角/端の要素の温度上昇を前もって低下させるために、各々のトランスデューサアレイの角/端の要素を通じて流れる電流を(より中央の要素を通じて流れる電流と比較して)前もって低下させることで、所与のトランスデューサアレイにおける電極要素の平均予測温度上昇を相殺する。特に、電流のこの低下は、角/端の要素のオーム抵抗を増加させることによって達成されるのではない(I2Rの加熱を引き起こすため)。代わりに、電流の低下は、角/端の要素の静電容量を(より中央に位置させられた要素の静電容量と比較して)低減させることで達成される。
【0028】
本発明は、以下の詳細な記載、例、図面、および特許請求の範囲、ならびに、それらの前述または後述の記載を参照して、より容易に理解できる。しかしながら、本発明が、他に明示されていない場合、開示されている特定の装置、デバイス、システム、および/または方法に限定されず、当然ながらそれ自体変化してもよいことは、理解されるものである。
【0029】
表題は、利便性だけのために提供されており、本発明を何らかの形で限定するように解釈されるべきではない。本開示のいずれかの表題の下で、またはいずれかの部分において例示されている実施形態は、本開示の同じもしくは任意の他の表題または他の部分の下で例示されている実施形態と組み合わされてもよい。
【0030】
すべての可能な変形形態においての本明細書に記載されている要素の任意の組合せは、本明細書で他に明示されていない場合、または、文脈により明確に矛盾しない場合、本発明によって網羅される。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形「1つの(a、an)」および「その、前記(the)」は、文脈が他にはっきりと指示していない場合、複数の指示対象を含む。
【0032】
図2は、誘電性材料(例えば、セラミック要素)から作られた9個の円形の要素A1~A9が、3×3の配列で配置され、基材250によって支持されているトランスデューサアレイ200の第1の実施形態についてのレイアウトを描写している。要素A1~A9のすべての重心は「C」と付されており、基材250は、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において要素を支持している。この実施形態では、4個の角の要素(つまり、アステリスクで印付けられたA1、A3、A7、およびA9)の静電容量が、より中央に位置させられた要素A2、A4、A5、A6、およびA8の静電容量より小さい。要素A1~A9の各々の背面は導電性被覆を有し(例えば、金属化される、または銀メッキされる)、要素A1~A9の各々の前は、使用中に被験者に向くように位置付けられている。好ましくは、ヒドロゲルの層が、使用中に要素の各々の前面と被験者の皮膚との間に配置される。
【0033】
1つまたは複数の導電体(例えば、図示されていないがフレックス回路における配線またはトレース)が、要素A1~A9の各々の金属化された背面に連結する。好ましくは、この配線は、金属化された背面が単一の導電性の配線またはトレースに電気的に連結されるように構成され、これは、要素A1~A9のすべての静電容量が並列に配置されることを意味する。温度センサ(例えば、図示されていないがサーミスタ)が、好ましくは、例えば、サーミスタが先行技術で位置付けられている方法と同様に、要素A1~A9の一部または全部との熱接触で位置付けられる。温度センサと要素との間の熱接触は直接的または間接的であり得る。
【0034】
先行技術のように、第1のトランスデューサアレイ200が、人の身体の一方の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、第2のトランスデューサアレイ200が、人の身体の反対の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、AC電圧が第1のトランスデューサアレイのリード線と第2のトランスデューサアレイのリード線との間に適用されるとき、電流が人の身体に容量的に結合される。しかし、
図2の実施形態は、角の要素A1、A3、A7、およびA9(重心Cに対してより周辺に位置付けられている)の静電容量が、より中央に位置させられた要素A2、A4、A5、A6、およびA8の静電容量より小さいため、先行技術と異なる。
【0035】
任意の所与のセラミック要素の静電容量は、(a)セラミック要素の背面側における金属化/銀メッキの範囲に比例し、(b)セラミック要素の誘電率に比例し、(c)セラミック要素の厚さに反比例する。これらの3つのパラメータのいずれかが、他の要素の静電容量と比べて、角の要素の静電容量を低減するために変化させられ得る。セラミック要素は平坦で均一な表面を有し得るが、代替の実施形態では、セラミック要素は平坦ではない可能性がある。
【0036】
図3は、誘電性セラミック要素の背面側における導電性金属化の範囲を変化させることで、
図2における角の要素の静電容量を低減させるための3つの異なる手法を描写している。より具体的には、
図3における左上のパネルは、
図2における中央の要素A2、A4、A5、A6、およびA8のためのセラミック要素210の金属化パターン212の広がりを描写している。
図3における次のパネルは、金属化パターン212より小さい範囲を有する要素220における金属化パターン222を描写している。要素220の金属化パターン222が金属化パターン212より小さい直径を有するため、要素220によって提供される静電容量は、要素210の静電容量より小さくなる。金属化パターン222がより小さい場合、セラミック要素220の直径が任意選択で小さくされてもよいことに留意されたい。
【0037】
図3における次のパネルは、金属化パターン212より小さい範囲を有する要素230における異なる金属化パターン232を描写している。金属化パターン232と212との両方は同じ直径を有しているが、金属化パターン232は円形の空所235を有しているため、金属化パターン232の範囲は金属化パターン212の範囲より小さくなる。結果として、要素230によって提供される静電容量は、要素210の静電容量より小さくなる。同様に、
図3における一番下のパネルは、金属化パターン212より小さい範囲を有する要素240におけるなおも別の金属化パターン242を描写している。金属化パターン242と212との両方は同じ直径を有しているが、金属化パターン242は矩形の空所245を有しているため、金属化パターン242の範囲は金属化パターン212の範囲より小さくなる。結果として、要素240によって提供される静電容量は、要素210の静電容量より小さくなる。
【0038】
そのため、
図3に描写されているセラミック要素は、中央の要素A2、A4、A5、A6、およびA8については金属化レイアウト212を使用することと、角の要素においてより小さい静電容量を提供するために、角の要素A1、A3、A7、およびA9については金属化レイアウト222、232、242のうちのいずれか1つを使用することとによって、
図2に描写されているトランスデューサアレイを作り出すために使用できる。例えば、角の要素の静電容量を10%低減するためには、それらの要素における金属化の範囲が10%低減されるべきである。
【0039】
代替として、角の要素における静電容量は、金属化の範囲を一定に保ち、4つの角においてより厚いセラミック要素を使用することで、(中央の要素の静電容量に対して)低減されてもよい。例えば、角の要素の静電容量を10%低減するために、角におけるセラミック要素の厚さは、中央のセラミック要素の厚さより10%大きくされるべきである。
【0040】
なおも別の代替として、角の要素における静電容量は、金属化の範囲を一定に保持し、4つの角においてより小さい誘電率を伴うセラミック要素を使用することで、(中央の要素の静電容量に対して)低減されてもよい。例えば、角の要素の静電容量を10%低減するために、角におけるセラミック要素の誘電率は、中央のセラミック要素の誘電率より10%小さくされるべきである。
【0041】
なおも別の代替として、角の要素における静電容量は、その静電容量が要素の元の製造の日付の後にカスタマイズ可能である要素を使用することで、(中央の要素の静電容量に対して)低減されてもよい。この手法では、各々の要素は、薄い切断可能な導電性リンク268によって主領域262に連結される1つまたは複数の副領域266を伴って最初に製造される。要素の初期の状態において、要素の金属化の範囲は、主領域262および副領域266の範囲の合計である。
【0042】
要素の初期の製造の後のある時点において、角の要素の静電容量は導電性リンク268を切断することで低減される。リンク268の切断は、例えば、リンク268をレーザで破壊すること、または、(フューズを飛ばすのと同様に)十分に高い電流をリンク268に通過させることといった、様々な代替の手法を用いて遂行され得る。それらのリンクの切断の後、角の要素における対応する副領域266は回路から事実上連結解除され、これは、角の要素の活動範囲を縮小する。また、中央の要素のための導電性リンク268は切断されないため、中央の要素は、角の要素より大きい活動範囲(および、対応するより大きい静電容量)を有することになる。
【0043】
図2に戻って、第1のトランスデューサアレイ200が、人の身体の一方の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、第2のトランスデューサアレイ200が、人の身体の反対の側において人の皮膚に当てて位置付けられ、AC電圧が第1のトランスデューサアレイのリード線と第2のトランスデューサアレイのリード線との間に適用されると仮定する。さらに、角の要素A1、A3、A7、およびA9の静電容量が、中央の要素A2、A4、A5、A6、およびA8の静電容量より10%小さいと仮定する。(静電容量の低減は、先に記載されている手法のいずれかを用いて達成され得る。)この状況において、角の要素を通じて結合される電流は、角の要素の静電容量が中央の要素の静電容量と同じである場合の電流よりおおよそ10%小さくなる。また、角の要素における電流のこの低下は、角の要素の温度を低下させることになる。
【0044】
ここで、角の要素の静電容量を低減することから導かれる便益を分析する。比較の目的のために、すべての要素が振幅Xを伴うAC電圧によって駆動され、トランスデューサアレイにおけるすべての要素の静電容量が同じである先行技術の状況を見ることから始める。動作中、先行技術のトランスデューサアレイの角の要素の温度は41℃に到達するが、角にない要素の温度は39℃でしかないと仮定する。これらの状況の下で、角の要素は、過熱を回避する最も高い可能な電流を取り扱う。しかし、角にない要素は、41℃未満で動作しているため、過熱することなく安全に取り扱うことができる電流よりも小さい電流を必ず取り扱う。
【0045】
ここで、すべての要素が同じ振幅Xを伴うAC電圧によって駆動されているが、トランスデューサアレイにおける角の要素の静電容量が、角の要素の温度を2℃低くするために必要であるどんなパーセントでも低減されている状況を仮定する。これらの状況の下で、トランスデューサアレイ200における要素のすべてが39℃で動作し、これは、要素のすべてが過熱することなく安全に取り扱うことができる電流より小さい電流を取り扱うことを意味する。
【0046】
要素のすべてが、安全に取り扱うことができる電流より小さい電流を取り扱うため、電圧の振幅は、Xを越えて、角の要素の温度を41℃へと上昇させるどんな振幅へも増加させることができる。この時点において、角の要素は、先に記載されている先行技術の状況において取り扱っていたのと同じ電流を取り扱うことになる。しかし、
図2の実施形態における角にない要素は、ここではより高い電圧によって駆動されているため、先行技術の状況における角にない要素より大きな電流を取り扱うことになる。これは、
図2のトランスデューサアレイによって取り扱われる全電流(つまり、角の要素と角にない要素とによって取り扱われている電流の合計)が、先行技術の状況において取り扱われた全電流より大きいことになることを意味する。また、電流のこの増加は、治療の有効性を向上させることができる。
【0047】
図4は、誘電性材料(例えば、セラミック要素)から作られた13個の円形の要素B1~B13が、3列で配置され、基材250によって支持されている第2の実施形態のトランスデューサアレイ200’についてのレイアウトを描写している。要素B1~B13のすべての重心は「C」と付されており、基材250は、重心の周りに分布されたそれぞれの位置において要素を支持している。
図4の実施形態の構造および使用は、
図4の実施形態では、6個の端の要素(つまり、アステリスクで印付けられたB1、B4、B5、B9、B10、およびB13)の静電容量が、より中央に位置させられた要素B2、B3、B6~B8、B11、およびB12の静電容量より小さいことを除いて、先に記載されている
図2の実施形態の構造および使用と同様である。
図2および
図3の実施形態において角の要素の制限容量を低減するために先に記載されている手法のいずれかが、
図4の実施形態において、所与の列における端の要素の静電容量を低減するために使用され得る。これらの手法の各々について、電流は、各々の電極要素の静電容量を制御することで、または、所与の配列の中の電極要素のグループの静電容量を変化させることで、平衡させることができ、これは、電極要素の2つ、3つ、または4つ以上の異なるグループを用いて達成されてもよい。
【0048】
任意の所与の列における端の要素の静電容量の低減は、電流の対応する低下をもたらし、これは、(すべての要素の静電容量が同じであるトランスデューサアレイと比較して)端の要素の温度を低下させることになる。この
図4の実施形態における端の要素の静電容量を低減することから導かれる便益は、
図2の実施形態における角の要素の静電容量を低減することから導かれる便益と同様である。
【0049】
金属の層がその後面に配置されている円形のセラミック誘電性材料は、先に記載されている
図2~
図4の実施形態において電極要素として供するが、電極要素は円形である必要はなく、代替の形(例えば、平坦な正方形または六角形のセラミック誘電性材料)が使用されてもよいことに留意されたい。
【0050】
さらに、トランスデューサアレイ(例えば、
図2参照)の角における電極要素の静電容量を低減する、または、トランスデューサアレイ(例えば、
図4参照)の各々の列の両端における電極要素の静電容量を低減する、先に記載されている技術は、金属の層がその後面に配置されているセラミック誘電性材料を使用して構築された電極要素に限定されない。それとは反対に、トランスデューサアレイの角またはトランスデューサアレイの各々の列の端における電極要素の静電容量を低減する技術は、様々な代替の構造を用いて作られたトランスデューサアレイに適用され得る。
【0051】
ここで、トランスデューサアレイを構築するための代替の手法のいくつかの例が、
図5~
図7に関連して説明され、続いて、それらの変形形態のトランスデューサアレイが使用されるとき、角/端の要素の静電容量をどのように変化させることができるかが説明される。
【0052】
図5~
図7に関連して以下に記載されている実施形態は、従来のポリマより相当により高い誘電率を有する最近発見されたポリマ組成に依存している。より具体的には、これらの最近発見されたポリマ組成の誘電率は、ポリマ絶縁層を通じて人の身体へとAC信号を効果的かつ容量的に結合することができるトランスデューサアレイを作るのに十分な大きさである。本明細書に記載されているすべての実施形態では、電極またはトランスデューサアレイの前が人の身体に向く側であり、電極またはトランスデューサアレイの後が反対側であることに留意されたい。
【0053】
図5Aおよび
図5Bは、フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する実施形態の前面図および側面(断面)図を描写している。この実施形態は、TTFieldを生体被験者に適用するために使用される。この
図5の実施形態は、フレックス回路25の前側に位置付けられる複数の導電性パッド20(例えば、銅パッド)を備えるフレックス回路を有する。導電性パッド20の各々は範囲を有する。少なくとも1つの導電性トレース(図示されていない)が、複数の導電性パッド20と電気接触して配置されている。少なくとも1つの導電性トレースは、導電性パッド20の各々が電気信号によって駆動され得るように配置されている。
【0054】
この実施形態は複数の可撓性ポリマ領域30も有する。これらの可撓性ポリマ領域30は、
図5Aに描写されているように、ポリマ材料の単一の連続したシートの中の領域であり得る。代替として、これらの領域30は、隙間によって分離される可撓性ポリマの別々の区域(または「島」)であり得る。可撓性ポリマ領域30の各々が、前面を有し、フレックス回路25の前側において導電性パッド20のそれぞれ1つの上に、その前に配置される。
【0055】
この実施形態におけるポリマ領域30についての仕様は、以下の通りであり、(1)100kHzから500kHzの間の少なくとも1つの周波数において、ポリマ領域30の各々が少なくとも20の誘電率を有し、(2)ポリマ領域30の各々は、その前面に対して垂直な方向において20μm未満の厚さを有する。ある実施形態では、ポリマ領域30の各々の厚さがその誘電強度によって乗じられた値は少なくとも50Vであり、ある実施形態では、この値は少なくとも200Vである。例えば、厚さが10μmであり、誘電強度が30MV/mである場合、この値は300Vになる。
【0056】
ある好ましい実施形態では、ポリマ領域30は、ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン)および/またはポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-1-クロロフルオロエチレン)を含む。それらの2つのポリマは、本明細書では、それぞれ「ポリ(VDF-TrFE-CtFE)」および「ポリ(VDF-TrFE-CFE)」と省略される。これらの実施形態は、これらの材料の誘電率が40の程度であるため、特に有利である。TTFieldが電極10を通じて容量的に結合されるため、および、静電容量が誘電性の層の厚さに反比例するため、ポリマ領域30は、好ましくはできるだけ薄くされる(例えば、10μm未満または5μm未満)。他方で、ポリマ領域30は、そのことが製造可能性を損なう可能性があるため薄すぎるべきではなく、層の構造的な完全性に妥協すべきではなく、また、AC信号が適用されるときに誘電破壊の危険性があるべきではない。ある実施形態では、ポリマ領域30は、少なくとも1μmである厚さを有する。ある実施形態では、ポリマ領域30は、1~5μmの間の厚さ、または1~3μmの間の厚さ(例えば、約2μm)であり、これは、先に記されているパラメータ同士の間に良好なバランスを提供する。ある実施形態では、ポリマ領域30の厚さは均一である。しかし、(例えば、後で記載されているような)代替の実施形態では、厚さは不均一であり得る。
【0057】
任意選択で、セラミックナノ粒子が、「ナノ複合材料」を形成するために、ポリ(VDF-TrFE-CtFE)および/またはポリ(VDF-TrFE-CFE)へと混合されてもよい。任意選択で、これらのセラミックナノ粒子は、強誘電体金属酸化物(例えば、チタン酸バリウムおよびチタン酸バリウムストロンチウム)を含み得る。
【0058】
代替の実施形態では、ポリ(VDF-TrFE-CtFE)および/またはポリ(VDF-TrFE-CFE)からポリマ領域30を形成する代わりに、高いレベルの静電容量を提供する異なるポリマが使用されてもよい。これらの異なるポリマについての要件は、以下の通りであり、(1)100kHzから500kHzの間の少なくとも1つの周波数において、ポリマ層が少なくとも20の誘電率を有し、(2)ポリマ層が、ポリマ層の前面に対して垂直な方向において20μm未満の厚さを有する。ある実施形態では、ポリマ層の厚さがその誘電強度によって乗じられた値は少なくとも50Vであり、ある実施形態では、この値は少なくとも200Vである。本明細書に明示されている誘電率および絶縁破壊電圧についての値は、30~42℃の温度範囲内で明示されており、その温度範囲外でのそれらのパラメータの値はより関連性がないことに留意されたい。
【0059】
ポリ(VDF-TrFE-CtFE)および/またはポリ(VDF-TrFE-CFE)の代わりに使用され得る代替のポリマの例には、以下のもの、すなわち、(1)ポリ(VDF-TrFE)、P(VDF-HFP)、PVDF、または他のポリマのうちの少なくとも1つへと混合されたセラミックナノ粒子、ならびに、(2)ポリ(VDF-TrFE)、P(VDF-HFP)、PVDFのうちの少なくとも1つへと混合されたチタン酸バリウムおよび/またはチタン酸バリウムストロンチウムのセラミックナノ粒子がある(ここで、ポリ(VDF-TrFE)、P(VDF-HFP)、およびPVDFは、それぞれ、ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、およびポリフッ化ビニリデンである)。他の実施形態では、ポリマ領域30は、セラミックナノ粒子を少なくとも1つの他のポリマ(つまり、この段落において先に列記されていないポリマ)へと混合することで形成される。
【0060】
この
図5の実施形態では、複数のポリマ領域30が複数の導電性パッド20に直接的に印刷、噴霧、または鋳造され得、これは、非常に薄いポリマ層を得るのを非常に容易にする。ある実施形態(例えば、ポリマ領域30が導電性パッド20に直接的に印刷、噴霧、または鋳造される実施形態)では、ポリマ領域は5μm未満の厚さを有する。
【0061】
導電性パッド20によって覆われる範囲全体を増加させることは、デバイス全体の静電容量を増加させることになる。ある実施形態では、複数の導電性パッド20の範囲は、合計で少なくとも25cm2になる。
【0062】
図5の実施形態は、包帯に似た可撓性の第3の層を使用して、人の皮膚に固定され得る。これらの実施形態では、可撓性の第3の層40がフレックス回路25の背後に位置付けられる。可撓性の第3の層40は前面を有する。第3の層40の前面の少なくとも一部分は接着剤で被覆される。接着剤の第1の領域は、フレックス回路25の背後に直接的に位置付けられ、フレックス回路25を支持し、接着剤の第2の領域は第1の領域に対して外側に位置付けられる。(これは、
図5Aにおけるフレックス回路によって覆われない部分である。)この第2の領域は、皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、皮膚に付着し、複数のポリマ領域30を皮膚に隣接して保持するように構成されている。第2の領域で使用される接着剤は、皮膚から容易に取り外し可能でもなくてはならない。可撓性の第3の層40は複数のポリマ領域30を皮膚に隣接して保持するが、導電性ヒドロゲル50の層がポリマ領域30と皮膚との間に介在されてもよく、それでもなお、ポリマ領域30と皮膚との間の関係は「隣接」と見なされる。(これは、
図5の実施形態と、本明細書に記載されている他の実施形態とに当てはまる)。この状況において、ヒドロゲル50の層はポリマ領域30の各々の前面に配置される。ヒドロゲル50は、ポリマ領域30の各々が接着剤の第2の領域によって皮膚に隣接して保持されるとき、皮膚と接触するように位置付けられる。
【0063】
図5の実施形態の変形形態では、可撓性の第3の層を用いてポリマ領域を皮膚に隣接して保持するために、異なる手法が用いられる。これらの実施形態では、可撓性の第3の層はフレックス回路を支持するように構成される。可撓性の第3の層は、前面を有し、任意選択で、導電性パッド20の位置に対応する複数の切り取られた開放領域を含み得る。可撓性の第3の層の前面の第1の部分が、人の皮膚に付着し、皮膚から容易に取り外し可能である接着剤で被覆される。第1の部分は、第1の部分が皮膚の領域に当てて押し付けられるとき、第1の部分における接着剤が皮膚に付着し、複数のポリマ領域30を皮膚に隣接して保持するように、フレックス回路25に対して外側に位置付けられる。先の実施形態のように、導電性ヒドロゲル50の層がポリマ領域30の各々の前面に配置されてもよい。ヒドロゲル50は、ポリマ領域30の各々が接着剤によって皮膚に隣接して保持されるとき、皮膚と接触するように位置付けられる。
【0064】
複数のサーミスタをこの
図5の実施形態に組み込むことができる。これを遂行するための1つの方法は、複数のサーミスタ60を、複数のサーミスタ60の各々が複数の導電性パッド20のそれぞれ1つと熱接触して位置付けられる状態で、フレックス回路25の後側(つまり、フレックス回路25と可撓性の第3の層40との間)に位置付けることである。これらの実施形態では、フレックス回路25は、複数のサーミスタ60へのアクセスを提供する複数の導電性トレースをさらに含む。代替の実施形態では(図示されていない)、サーミスタ60は、導電性パッド20同士の間に位置付けられ得る。しかしながら、この場合、追加の絶縁がサーミスタの前に設けられるべきである。
【0065】
図6A、
図6B、および
図6Cは、フレックス回路を使用してトランスデューサアレイを実施する別の実施形態の前面図、側面(断面)図、および分解図である。この実施形態も、TTFieldを生体被験者に適用するために使用される。しかし、(先に記載されている
図5の実施形態のように)フレックス回路に組み込まれる導電性パッドを使用する代わりに、
図6の実施形態は、フレックス回路の前に位置付けられ、フレックス回路のそれぞれのパッドに電気的に連結される複数の金属箔に依存する。
【0066】
図6の実施形態は、(a)フレックス回路145の前側に位置付けられた複数の導電性パッド140と、(b)複数の導電性パッド140と電気接触して配置される少なくとも1つの導電性トレース(図示されていない)とを有する。少なくとも1つの導電性トレースは、導電性パッド140の各々が電気信号によって駆動され得るように配置される。複数の金属箔120はフレックス回路145の前に位置付けられ、それら金属箔120の各々は、範囲を有する前面を有する。金属箔120の各々は、導電性パッド140のそれぞれ1つに電気的に連結される。
【0067】
金属箔120の各々と導電性パッド140のそれぞれ1つとの間の電気的連結は、絶縁層130を金属箔120の各々と対応する導電性パッド140との間に位置決めすることで、
図6Bに描写されているように実施され得る。この
図6Bの実施形態における絶縁層130は、複数の金属箔120の各々の背後に開口を有し、導電性経路(例えば、金属、半田など)がこの開口を通じて提供される。
【0068】
図6の実施形態のすべての変形形態も複数の可撓性ポリマ領域30を有し、可撓性ポリマ領域30の各々は、前面を有し、複数の金属箔120のそれぞれ1つの上に、その前に配置される。この実施形態におけるポリマ領域30についての仕様は、以下の通りであり、(1)100kHzから500kHzの間の少なくとも1つの周波数において、ポリマ領域30の各々が少なくとも20の誘電率を有し、(2)ポリマ領域30の各々は、その前面に対して垂直な方向において20μm未満の厚さを有する。ある実施形態では、ポリマ領域30の各々の厚さがその誘電強度によって乗じられた値は少なくとも50Vであり、ある実施形態では、この値は少なくとも200Vである。
図5の実施形態との関連で先に詳述されているポリマ材料のいずれかは、この
図6の実施形態におけるポリマ領域30を実施するために使用されてもよい。
【0069】
この
図6の実施形態では、複数のポリマ領域30が複数の金属箔の金属箔120に直接的に印刷、噴霧、または鋳造され得、これは、非常に薄いポリマ層を得るのを非常に容易にする。ある実施形態(例えば、ポリマ領域30が金属箔の金属箔120に直接的に印刷、噴霧、または鋳造される実施形態)では、ポリマ領域は5μm未満の厚さを有する。
【0070】
金属箔の金属箔120によって覆われる範囲全体を増加させることは、デバイス全体の静電容量を増加させることになる。ある実施形態では、複数の金属箔の範囲は、合計で少なくとも25cm2になる。
【0071】
図6の実施形態は、可撓性の第3の層40を使用して人の皮膚に固定されてもよく、可撓性の第3の層40の性質は、
図5の実施形態との関連で先に記載されている可撓性の第3の層と同様である。追加して、導電性ヒドロゲル50の層が、
図5の実施形態との関連で先に記載されているように、ポリマ領域の各々の前面に配置されてもよい。
【0072】
複数のサーミスタを、
図5の実施形態との関連で先に記載されているように、この
図6の実施形態に組み込むこともできる。
【0073】
図7Aおよび
図7Bは、金属箔の金属箔120の各々と導電性パッド140のそれぞれ1つとの間に電気的連結を実施するために代替の手法を使用することを除いて、先に記載されている
図6の実施形態と同様である一実施形態を示している。
図6の手法のように、絶縁層130は、金属箔120の各々と対応する導電性パッド140との間に位置付けられる。しかし、この
図7の実施形態における絶縁層130は、複数の金属箔120の各々の背後に開口を有していない。代わりに、この
図7の実施形態における絶縁層130は連続的である。金属箔の金属箔120の各々とフレックス回路の導電性パッド140との間の電気的連結は、導電性パッド140と金属箔の金属箔120との間での辺または縁の電気的連結160を使用して行われる。
【0074】
図5~
図7のいずれかに描写されているトランスデューサアレイを使用するために、トランスデューサアレイの対が人の身体における標的領域の両側において人の皮膚に固定され、AC電圧がそれら2つのトランスデューサアレイの間に適用される。(
図5の実施形態における)導電性パッド20または(
図6~
図7の実施形態における)金属箔の金属箔120の各々が、個々のコンデンサの板として作用し、対応するポリマ領域30の各々がそのコンデンサの絶縁層として作用する。そのため、AC電場がそれらのコンデンサを通じて人の身体に容量的に結合される。
【0075】
それらコンデンサのすべてが同じ静電容量を有する場合、
図1に描写されている先行技術のトランスデューサアレイと同じ理由のため、角/端パッド20(または金属箔の金属箔120)の温度が、より中央に位置させられたパッド/金属箔より頻繁に過熱すると思われる。しかし、
図5~
図7の実施形態における角/端パッド20(または金属箔120)の静電容量が、より中央に位置させられたパッド/金属箔に対して低減される場合、任意の所与のトランスデューサアレイのすべてのパッド20(または金属箔120)の間での温度は、先に記載されている
図2~
図4の実施形態と同じ理由で均一にされ得る。
【0076】
図8は、(トランスデューサアレイのより中央に位置させられた部分と比較して)トランスデューサアレイの角/端においてより小さい範囲を有するパッド(または金属箔)を使用することで、
図5~
図7の実施形態における角/端パッド20(または金属箔120)の静電容量を低減するための1つの手法を描写している。より具体的には、より中央に位置させられたパッド20(または金属箔120)が、上方の領域310に似た範囲を有し、より周辺に位置させられたパッド20(または金属箔120)が、領域320(領域310より小さい)、領域330(円形の空所335を有する)、または下方の領域340(矩形の空所345を有する)に似た範囲を有する場合、より周辺に位置させられたパッド20(または金属箔120)の範囲は、より中央に位置させられたパッド20(または金属箔120)の範囲より小さくなる。パッド20(または金属箔120)がコンデンサの板として動作するため、範囲の縮小は、より中央に位置させられたパッド20(または金属箔120)に対して、より周辺に位置させられたパッド20(または金属箔120)の静電容量の低減をもたらすことになる。これは、より周辺に位置させられたパッド20(または金属箔120)を通じて流れる電流を低下させ、これはそれらのパッド20(または金属箔120)における温度を低下させることになる。
【0077】
図9は、
図5~
図7の実施形態におけるPCBパッドについての適切なレイアウトの一例を描写しており、印刷回路パッドのパターンをカスタマイズすることで、より大きな静電容量をより中央に位置させられたパッドに提供し、より小さい静電容量をより周辺に位置させられたパッドに提供する。より具体的には、この例では、中央パッド410は、最大量の静電容量を提供するために、100%のカバー範囲を有し、上、下、右、および左のパッド420は、より小さいレベルの静電容量を提供するために、より小さいパーセントのカバー範囲を有し、角のパッド430は、さらにより小さいレベルの静電容量を提供するために、さらにより小さいパーセントのカバー範囲を有する。任意選択で、任意の所与の患者についての電場の分布は、各々の印刷回路パッドについてのカバー範囲のパターン、ならびに/または、フレックス回路が製造されるときの印刷回路パッドのレイアウトおよび大きさをカスタム設計することで、制御することができる。したがって、電流は、所与の配列の中のカバー範囲を変化させるパッドを使用することで平衡させることができ、これは、2つ、3つ、または4つ以上の異なる範囲の大きさを用いて達成されてもよい。
【0078】
図10は、フレックス回路の元の製造の日時の後に、フレックス回路の任意の所与のパッドによって提供されるカバー範囲のパターンを変更するための代替の手法を描写している。この手法では、フレックス回路は複数の領域500で最初に製造され、領域500の各々は、切断可能な導電性リンク520(
図10において詳細iに描写されている)によって相互連結されている複数の副領域510を有し、AC電圧が、リード線530によってそれらの副領域510のうちの1つだけに適用される。
図10に描写されている例では3×3の配列550で配置されている9個の領域500があるが、領域500の数は、それらの領域500の配置ができるように変化してもよい(例えば、9個から30個の間)ことに留意されたい。
【0079】
フレックス回路の最初の製造の後のある時点において、選択された数の副領域510が、それらの副領域510につながる導電性リンク520を切断することで連結解除される。例えば、詳細iiにおいて、GおよびNと付された副領域510につながるリンクのすべてが切断されている。また、詳細iiiでは、G、I、L、およびNと付された副領域510につながるリンクのすべてが切断されている。リンク520の切断は、例えば、リンク520をレーザで破壊すること、または、(フューズを飛ばすのと同様に)十分に高い電流をリンク520に通過させることといった、様々な代替の手法を用いて遂行され得る。それらのリンクの切断の後、対応する副領域510は回路から事実上連結解除され、これは、活動範囲を縮小し、対応する領域500の静電容量を低減する。
【0080】
この手法は、配列550全体の角に位置付けられた領域500内の特定のリンク520を切断することで、(先に記載されているように)任意の所与の配列の角に位置付けられた領域の静電容量を低減するために使用され得る。有利には、この手法は、(例えば、個々の患者のニーズに合わせるために、配列550全体の一部分の静電容量をカスタマイズするために)フレックス回路の最初の製造の後のあるときに使用され得る。
【0081】
対応するポリマ領域30の厚さを増加させること、または誘電率を低下させることによって、パッドまたは金属箔の静電容量を低減することを含め、角/端パッド20(または金属箔120)の静電容量を低減するための他の手法が使用されてもよい。各々の場合で、この手法は、所与の配列の中のポリマ領域の厚さを変化させることを有するパッドを使用することで、または、所与の配列の中のポリマ領域の誘電率を変化させることを有するパッドを使用することで、電流を平衡させるために使用でき、それらの変化は、それぞれの厚さまたは誘電率における2つ、3つ、または4つ以上の異なる変化を用いて達成され得る。
【0082】
本発明は特定の実施形態を参照して開示されているが、記載されている実施形態への数々の改良、修正、および変更が、添付の特許請求の範囲に定められているような本発明の領域および範囲から逸脱することなく可能である。したがって、本発明は、記載されている実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の文言、およびその均等物によって定められる全体の範囲を有することが、意図されている。
【符号の説明】
【0083】
10 電極
20 導電性パッド
25 フレックス回路
30 可撓性ポリマ領域
40 可撓性の第3の層
50 導電性ヒドロゲル
60 サーミスタ
120 複数の金属箔
130 絶縁層
140 導電性パッド
145 フレックス回路
160 辺または縁の電気的連結
200 トランスデューサアレイ
210 セラミック要素、要素
212 金属化パターン、金属化レイアウト
220 セラミック要素、要素
222 金属化パターン、金属化レイアウト
230 要素
232 金属化パターン、金属化レイアウト
235 円形の空所
240 要素
242 金属化パターン、金属化レイアウト
245 矩形の空所
250 基材
262 主領域
266 副領域
268 導電性リンク、リンク
310 上方の領域、領域
320、330、340 領域
335 円形の空所
345 矩形の空所
410 中央パッド
420 上、下、右、および左のパッド
430 角のパッド
500 領域
510 副領域
520 導電性リンク、リンク
530 リード線
550 配列
A1、A3、A7、A9 角の要素、要素
A2、A4、A5、A6、A8 より中央に位置させられた要素、要素
C 重心
【国際調査報告】