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特表2023-542792殺真菌剤としてのトリアルキルスルホニウムクロリド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】殺真菌剤としてのトリアルキルスルホニウムクロリド
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/02 20060101AFI20231004BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231004BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20231004BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20231004BHJP
   A01N 43/54 20060101ALI20231004BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A01N31/02
A01P3/00
A01P13/00
A01N25/00 101
A01N43/54 C
A01N43/56 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506343
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2021077115
(87)【国際公開番号】W WO2022069715
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20199746.7
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20199747.5
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521511379
【氏名又は名称】ヘルム・アクチエンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】514078210
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ エクセター
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ネス・ヴィンフリート
(72)【発明者】
【氏名】ラミンホス・ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】シュトロート・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】スタインバーグ・ゲロ
(72)【発明者】
【氏名】ガー・サラ
(72)【発明者】
【氏名】ニーンドルフ・ヨハン-クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB09
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、トリアルキルスルホニウムクロリド、トリアルキルスルホニウムクロリドを含む組成物、そのような組成物及びトリアルキルスルホニウムクロリドをそれぞれ個別に含む農業組成物、駆除剤(好ましくは、殺真菌剤)としてのトリアルキルスルホニウムクロリド及び組成物の使用、ならびにトリアルキルスルホニウムクロリド及び組成物によって有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)
【化1】
のトリアルキルスルホニウムクロリドまたはその溶媒和物を含む組成物であって、
式中、
R1が、-CH、-CHCH、-CHCHCH、または-CH(CHを表し、
R2が、-CH、-CHCH、-CHCHCH、または-CH(CHを表し、
R3が、-(CH-CHを表し、nが、17~31の範囲内の整数であり、
前記トリアルキルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して0.1重量%超である、前記組成物。
【請求項2】
-前記トリアルキルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して少なくとも10重量%であり、
-前記組成物が水性であり、8~13の範囲内のpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R3が、-(CH17-CH、-(CH19-CH、または-(CH21-CHを表す、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
R1及びR2の両方が-CHを表す、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記トリアルキルスルホニウムクロリドが、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド、好ましくは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドである、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ムース、ペースト、粉末、及び顆粒から選択される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
液体またはペーストである、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
23℃での動粘度が、
-少なくとも0.5mPa・s、好ましくは、少なくとも0.6mPa・s、好ましくは、少なくとも0.7mPa・s、好ましくは、少なくとも0.8mPa・s、好ましくは、少なくとも0.9mPa・s、好ましくは、少なくとも1.0mPa・sであり、及び/または
-高くとも10,000mPa・s、好ましくは、高くとも9,000mPa・s、好ましくは、高くとも8,000mPa・s、好ましくは、高くとも7,000mPa・s、好ましくは、高くとも6,000mPa・s、好ましくは、高くとも5,000mPa・s、好ましくは、高くとも4,000mPa・s、好ましくは、高くとも3,000mPa・s、好ましくは、高くとも2,000mPa・s、好ましくは、高くとも1,000mPa・s、好ましくは、高くとも900mPa・s、好ましくは、高くとも800mPa・s、好ましくは、高くとも700mPa・s、好ましくは、高くとも600mPa・s、好ましくは、高くとも500mPa・s、好ましくは、高くとも400mPa・s、好ましくは、高くとも300mPa・s、好ましくは、高くとも200mPa・s、好ましくは、高くとも100mPa・s、好ましくは、高くとも90mPa・s、好ましくは、高くとも80mPa・s、好ましくは、高くとも70mPa・s、好ましくは、高くとも60mPa・s、好ましくは、高くとも50mPa・s、好ましくは、高くとも40mPa・s、好ましくは、高くとも30mPa・s、好ましくは、高くとも20mPa・s、好ましくは、高くとも10mPa・sである、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
農業的に許容可能な担体を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記担体の含量が、前記組成物の総重量に対して少なくとも1.0重量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記担体の含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5.0重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも25重量%、好ましくは、少なくとも30重量%、好ましくは、少なくとも40重量%、好ましくは、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%、好ましくは、少なくとも70重量%、好ましくは、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも90重量%である、請求項9または請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記担体が、溶媒である、請求項9~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドが、前記担体に完全に溶解する、請求項9~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記担体が、
(a)水、
(b)モノアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、またはベンジルアルコールなど)、
(c)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、またはジプロピレングリコールなど)、
(d)モノアルキルグリコールエーテル(トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、
(e)ジアルキルグリコールエーテル(エチレングリコールジメチルエーテルなど)、
(f)グリコールエステル、
(g)グリセロール及びグリセロールエーテル(イソプロピリジングリセロールなど)、
(h)環式エーテル(テトラヒドロフランまたはジオキソランなど)、
(i)ケトン(アセトン、ブタノン、またはシクロヘキサノンなど)、
(j)一塩基エステル(乳酸エチル、酢酸エチル、またはガンマ-ブチロラクトンなど)、
(k)二塩基エステル(グルタル酸ジメチルエステルまたはコハク酸ジメチルエステルなど)、
(l)アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)、
(m)ジアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、
(n)アルキルスルホン(スルホランなど)、
(o)アルキルアミド(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、またはジメチルホルムアミドなど)、
(p)アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、またはジアルキルモノエタノールアミンなど)
(q)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、
(r)油(植物起源または動物起源の油、フィトブランド油(phytobland oil)、作物油、作物油濃縮物、植物油、メチル化種子油、石油、及びシリコーン油など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記担体が、水であるか、または水を含む、請求項9~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、水性であり、2~14の範囲内のpH値を有する、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記pH値が、3~13の範囲内である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
-少なくとも2.5、好ましくは、少なくとも3.0、好ましくは、少なくとも3.5、好ましくは、少なくとも4.0、好ましくは、少なくとも4.5、好ましくは、少なくとも5.0、好ましくは、少なくとも5.5、好ましくは、少なくとも6.0、好ましくは、少なくとも6.5、好ましくは、少なくとも7.0、好ましくは、少なくとも7.5、好ましくは、少なくとも8.0、好ましくは、少なくとも8.5、好ましくは、少なくとも9.0、好ましくは、少なくとも9.5、好ましくは、少なくとも10、好ましくは、少なくとも10.5、好ましくは、少なくとも11、及び/または
-高くとも14、好ましくは、高くとも13.5、好ましくは、高くとも13、好ましくは、高くとも12.5、好ましくは、高くとも12、好ましくは、高くとも11.5、好ましくは、高くとも11.0、好ましくは、高くとも11.5、好ましくは、高くとも11.0、好ましくは、高くとも10.5、好ましくは、高くとも10.0、好ましくは、高くとも9.5、好ましくは、高くとも9.0、好ましくは、高くとも8.5、好ましくは、高くとも8.0、好ましくは、高くとも7.5のpH値を有する、請求項16または請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
3.0±2.0、好ましくは、3.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
4.0±3.0、好ましくは4.0±2.0、好ましくは4.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
5.0±4.0、好ましくは、5.0±3.0、好ましくは5.0±2.0、好ましくは5.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
6.0±5.0、好ましくは、6.0±4.0、好ましくは、6.0±3.0、好ましくは、6.0±2.0、好ましくは、6.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
7.0±6.0、好ましくは、7.0±5.0、好ましくは、7.0±4.0、好ましくは、7.0±3.0、好ましくは、7.0±2.0、好ましくは、7.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
8.0±5.0、好ましくは、8.0±4.0、好ましくは、8.0±3.0、好ましくは、8.0±2.0、好ましくは、8.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
9.0±4.0、好ましくは、9.0±3.0、好ましくは、9.0±2.0、好ましくは、9.0±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
10±4.0、好ましくは、10±3.0、好ましくは、10±2.0、好ましくは、10±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
11±3.0、好ましくは、11±2.0、好ましくは、11±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
12±2.0、好ましくは、12±1.0の範囲内のpH値を有する、請求項16~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは、少なくとも1.0重量%、好ましくは、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも12.5重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも17.5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、多くとも97.5重量%、好ましくは、多くとも95重量%、好ましくは、多くとも92.5重量%、好ましくは、多くとも90重量%、好ましくは、多くとも87.5重量%、好ましくは、多くとも85重量%、好ましくは、多くとも82.5重量%、好ましくは、多くとも80重量%である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して10~80重量%の範囲内である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
固体である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
前記担体が、
(a)天然の土壌鉱物及び土類鉱物(ケイ酸塩、方解石、大理石、軽石、海泡石、タルク、カオリン、粘土、タルク、石灰石、石灰、炭酸カルシウム、チョーク、赤土、黄土、石英、パーライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ベントナイト、ドロマイト、または珪藻土(diatomaceous earth)など)、
(b)合成鉱物(シリカ、シリカゲル、アルミナ、またはケイ酸塩(ケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムなど)など)、
(c)無機塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ケイ素、酸化マグネシウムなど)、
(d)無機粉末または有機粉末の合成顆粒、
(e)有機材料(おがくず、ココナツの殻、トウモロコシの穂もしくは皮、またはタバコの茎など)の顆粒、
(f)珪藻土(kieselguhr)、
(g)リン酸三カルシウム、
(h)多糖(セルロース、セルロースエーテル、デンプン、キサンタン、プルラン、グアーなど)、
(i)植物起源の産物(例えば、穀類食品、樹皮食品、木粉、ナッツ殻食品)、
(j)穀物粉末(トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、モロコシ、キビ、オートムギ、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、またはキノアから得られる粉末など)、
(k)他の有機材料(粉末化コルク、吸着性カーボンブラック、木炭、泥炭、土壌混合物、堆肥、農工業残渣など)、水溶性ポリマー、樹脂、またはろう、
(l)固体肥料(尿素またはアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなど)など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、
-少なくとも2.5μg/g、好ましくは、少なくとも5.0μg/g、好ましくは、少なくとも7.5μg/g、好ましくは、少なくとも10μg/g、好ましくは、少なくとも15μg/g、好ましくは、少なくとも20μg/g、好ましくは、少なくとも25μg/g、好ましくは、少なくとも30μg/g、好ましくは、少なくとも40μg/g、好ましくは、少なくとも50μg/g、好ましくは、少なくとも60μg/g、好ましくは、少なくとも70μg/g、好ましくは、少なくとも80μg/g、好ましくは、少なくとも90μg/g、及び/または
-多くとも200μg/g、好ましくは、多くとも190μg/g、好ましくは、多くとも180μg/g、好ましくは、多くとも170μg/g、好ましくは、多くとも160μg/g、好ましくは、多くとも150μg/g、好ましくは、多くとも140μg/g、好ましくは、多くとも130μg/g、好ましくは、多くとも120μg/g、好ましくは、多くとも110μg/g、好ましくは、多くとも100μg/g、好ましくは、多くとも90μg/g、好ましくは、多くとも80μg/g、好ましくは、多くとも70μg/g、好ましくは、多くとも60μg/g、好ましくは、多くとも50μg/g、好ましくは、多くとも40μg/g、好ましくは、多くとも30μg/g、好ましくは、多くとも20μg/g、好ましくは、多くとも10μg/gである、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
pH緩衝剤、増粘剤、沈着剤、水質調整剤、湿潤剤、保湿剤、葉クチクラ及び/または細胞膜透過助剤、界面活性剤、植物生育増強剤、発泡剤、消泡剤、展着剤、飛散制御剤、散布物飛散低減剤、蒸発低減剤、色素、ならびにUV吸収剤から互いに独立して選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
1つ以上の追加の抗真菌剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
前記1つ以上の追加の抗真菌剤が、
(1)エルゴステロール合成の阻害剤、
(2)複合体Iまたは複合体IIでの呼吸鎖の阻害剤、
(3)複合体IIIでの呼吸鎖の阻害剤、
(4)有糸分裂及び細胞分裂の阻害剤、
(5)複数箇所に作用する能力を有する化合物、
(6)宿主防御を誘導する能力を有する化合物、
(7)アミノ酸及び/またはタンパク質生合成の阻害剤、
(8)ATP生成の阻害剤、
(9)細胞壁合成の阻害剤、
(10)脂質及び膜の合成の阻害剤、
(11)メラニン生合成の阻害剤、
(12)核酸合成の阻害剤、
(13)シグナル伝達の阻害剤、
(14)脱共役剤として作用する能力を有する化合物、ならびに
(15)他の殺真菌剤
から互いに独立して選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記1つ以上の追加の抗真菌剤が、アゾール、アミノ誘導体、ストロビルリン、特異的抗うどんこ病菌化合物、アニリン-ピリミジン、ベンズイミダゾール及び類似体、ジカルボキシイミド、ポリハロゲン化殺真菌剤、全身獲得抵抗性誘導物質、フェニルピロール、アシルアラニン、抗べと病菌化合物、ジチオカルバメート、アリールアミジン、亜リン酸及びその誘導体、殺真菌銅化合物、植物ベースの油(植物由来物質)、キトサン、硫黄ベースの殺真菌剤、殺真菌アミド、ならびに窒素ヘテロ環から互いに独立して選択される、請求項36または請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
予混合濃縮物、より好ましくは、予混合懸濁濃縮物、さらにより好ましくは、水性予混合懸濁濃縮物である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
(i)先行請求項のいずれかに記載の組成物と、(ii)希釈剤、好ましくは水と、を含む農業組成物、好ましくは、即時使用可能な水性組成物。
【請求項41】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記農業組成物の総重量に対して、
-少なくとも2.5μg/ml、好ましくは、少なくとも5.0μg/ml、好ましくは、少なくとも7.5μg/ml、好ましくは、少なくとも10μg/ml、好ましくは、少なくとも15μg/ml、好ましくは、少なくとも20μg/ml、好ましくは、少なくとも25μg/ml、好ましくは、少なくとも30μg/ml、好ましくは、少なくとも40μg/ml、好ましくは、少なくとも50μg/ml、好ましくは、少なくとも60μg/ml、好ましくは、少なくとも70μg/ml、好ましくは、少なくとも80μg/ml、好ましくは、少なくとも90μg/ml、及び/または
-多くとも200μg/ml、好ましくは、多くとも190μg/ml、好ましくは、多くとも180μg/ml、好ましくは、多くとも170μg/ml、好ましくは、多くとも160μg/ml、好ましくは、多くとも150μg/ml、好ましくは、多くとも140μg/ml、好ましくは、多くとも130μg/ml、好ましくは、多くとも120μg/ml、好ましくは、多くとも110μg/ml、好ましくは、多くとも100μg/ml、好ましくは、多くとも90μg/ml、好ましくは、多くとも80μg/ml、好ましくは、多くとも70μg/ml、好ましくは、多くとも60μg/ml、好ましくは、多くとも50μg/ml、好ましくは、多くとも40μg/ml、好ましくは、多くとも30μg/ml、好ましくは、多くとも20μg/ml、好ましくは、多くとも10μg/mlである、請求項40に記載の農業組成物。
【請求項42】
請求項1~39のいずれかに記載の組成物または請求項40もしくは請求項41に記載の農業組成物の駆除剤としての使用。
【請求項43】
前記組成物が、殺真菌剤として使用される、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法であって、前記方法が、前記有害生物、その生息場所、前記有害生物による攻撃から保護すべき物体もしくは植物、土壌、前記植物が生育している場所、前記植物が生育することになる場所、または繁殖材料と、駆除剤として有効な量の請求項1~39のいずれかに記載の組成物または請求項40もしくは請求項41に記載の農業組成物と、を接触させることを含む、前記方法。
【請求項45】
前記有害生物が、真菌、好ましくは、有害真菌、好ましくは、植物病原性有害真菌である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記真菌が、
(a)Opisthosporidia(好ましくは、Aphelidea、Rozellidea、及びMicrosporidiaから選択される)、
(b)Chytridiomycota(好ましくは、Chytridiomycetes、Monoblepharidomycetes、及びHyaloraphidiomycetesから選択される)、
(c)Neocallimastigomycota、
(d)Blastocladiomycota、
(e)Zoopagomycota(好ましくは、Zoopagomycotina、Entomophthoromycotina(例えば、Basidiobolomycetes、Neozygitomycetes、Entomophthoromycetes)、及びKickxellomycotinaから選択される)、
(f)Mucoromycota(好ましくは、Mortierellomycotina及びMucoromycotinaから選択される)、
(g)Glomeromycota(好ましくは、Paraglomerales、Archaeosporales、Diversisporales、及びGlomeralesから選択される)、
(h)Basidiomycota(好ましくは、Pucciniomycotina(例えば、Agaricostilbomycetes、Atractiellomycetes、Classiculomycetes、Cryptomycocolacomycetes、Cystobasidiomycetes、Microbotryomycetes、Mixiomycetes、Pucciniomycetes、Spiculogloeomycetes、Tritirachiomycetes)、Ustilagomycotina(例えば、Ustilaginomycetes、Exobasidiomycetes、Malasseziomycetes、Moniliellomycetes)、及びAgaricomycotina(例えば、Tremellomycetes、Dacrymycetes、Agaricomycetes)から選択される)、
(i)Ascomycota(好ましくは、Taphrinomycotina(例えば、Taphrinomycetes、Neolectomycetes、Schizosaccharomycetes、Pneumocystidomycetes、Archaeorhizomycetes)、Saccharomycotina(例えば、Saccharomycetes、Saccharomycetales)、及びPezizomycotina(例えば、Arthoniomycetes、Coniocybomycetes、Dothideomycetes、Eurotiomycetes、Geoglossomycetes、Laboulbeniomycetes、Lecanoromycetes、Leothiomycetes、Lichinomycetes、Orbiliomycetes、Pezizomycetes、Sordariomycetes、Xylonomycetes)から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記真菌が、Ascomycota門に属し、好ましくは、Dothideomycetes網に属し、より好ましくは、Capnodiales目に属し、さらにより好ましくは、Mycosphaerellaceae科に属し、さらにより好ましくは、Septoria属に属し、最も好ましくは、Septoria tritci種である、請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記真菌が、SARクレード、好ましくは、Oomycota門、より好ましくは、Peronosporales目、さらにより好ましくは、Peronosporaceae科に属する、請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記真菌が、Plasmopara属に属し、好ましくは、Plasmopara viticola種である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記真菌が、Phytophthora属に属し、好ましくは、Phytophthora infestans種である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記植物が、農作植物、園芸植物、観賞植物、及び林業植物からなる群から選択される請求項44~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記植物が、農作物である、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2020年10月2日出願の欧州特許出願第20199746.7号及び2020年10月2日出願の欧州特許出願第20199747.5号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、トリアルキルスルホニウムクロリド、トリアルキルスルホニウムクロリドを含む組成物、そのような組成物及びトリアルキルスルホニウムクロリドをそれぞれ個別に含む農業組成物、駆除剤(好ましくは、殺真菌剤)としてのトリアルキルスルホニウムクロリド及び組成物の使用、ならびにトリアルキルスルホニウムクロリド及び組成物によって有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法に関する。好ましくは、トリアルキルスルホニウムクロリドは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドである。
【背景技術】
【0003】
真菌は世界中に分布している。これまでにさまざまな真菌種が知られており、その数は約100000に上る。真菌は、作物健全性、ひいては食料安全保障に対する最も大きな生物的課題の1つとなっている。病原性真菌による感染を植物が受けている間は、通常、異なるフェーズが観察される。植物病原性真菌とその潜在的宿主植物との間での相互作用が生じる最初のフェーズは、植物が真菌による定着を受けることを決定付ける。感染の最初のステージの間、植物の表面に胞子が付着し、発芽し、真菌が植物に侵入する。これは、現存ポート(気孔または傷など)において生じ得るが、特殊な侵入構造の形成または細胞壁消化酵素の分泌も伴い得るものである。作物に対して我々が採る最も有効な真菌病原体制御方針は、真菌毒性化学物質(殺真菌剤)の使用に基づくものである。過去数十年にわたって多数の殺真菌剤が開発されており、商業的に利用可能である。
【0004】
農業行為が集中的であること(単作など)(単作の場合は、遺伝的に均一な栽培品種の圃場が広大なものとなること)、及び世代時間が短いことによって、真菌病原体に殺真菌剤耐性が生じる。この耐性は、圃場に殺真菌剤が使用されてから数年以内に生じ得る。実際、殺真菌剤耐性の出現速度は殺真菌剤の発見速度を凌ぐ。
【0005】
現在、開発中及び規制当局による承認段階にある新たな殺真菌剤は数種類のみ存在するが、こうした殺真菌剤は、一般に使用される化学物質(エルゴステロール生合成、細胞壁生合成、または特定のミトコンドリア呼吸鎖複合体を標的とするものなど)の誘導体である。一方で、先行技術の殺真菌剤はあらゆる点で満足のいくものではなく、改良型の殺真菌剤が求められている。
【0006】
作物病原体に対する処理の有効性を高めて我々の未来の食糧生産を確保することが継続的に必要とされている。マーケットリーダーの化学物質に殺真菌剤耐性が急速に生じることによって、新たな殺真菌剤を同定することが最優先事項となっている。こうした殺真菌剤は、(i)作物破壊病原体に対して活性であり、(ii)複数箇所で基本プロセスを標的として耐性発生を低減し、(iii)ヒト及び環境への毒性が低くあるべきである。
【0007】
新たな殺真菌剤の潜在的な標的の1つは真菌ミトコンドリアである。真菌ミトコンドリアはその哺乳類対応物とは呼吸酵素の組成及び機能が異なり、この差異によって真菌ミトコンドリアが新たな殺真菌剤の魅力的な標的となっている。真核生物のミトコンドリアにおける標準的な呼吸鎖では、電気化学的勾配生成及びATP合成をもたらす電子伝達及びプロトンポンプを可能にする基本タンパク質複合体が4つ存在する。動物とは対照的に、真菌は、ロテノン非感受性II型NAD(P)Hデヒドロゲナーゼまたは代替NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(NDH-2)及びシアン化合物非感受性代替オキシダーゼ(AOX)を含めて、特定の型の複合体を含み、これらの酵素はすべて、ミトコンドリアエネルギー散逸系に属する(例えば、Nina Antos-Krzeminska et al.,Protist,Vol.170,21-37,February 2019を参照のこと)。
【0008】
ミトコンドリアは幅広い範囲の細胞プロセスに関与するが、最も重要なことは、ミトコンドリアが酸化的リン酸化のための酵素を蓄えていることである。酸化的リン酸化は、ミトコンドリア内膜にわたるプロトン勾配に依存しており、このプロトン勾配は、膜に結合したミトコンドリア呼吸鎖複合体を介する電子伝達によって維持される。このプロセスの間、ミトコンドリアは活性酸素種(mROS)を生成させる。真菌では、mROSは複合体I及び複合体IIIにて生じることが示された(Murphy,M.P.How mitochondria produce reactive oxygen species.Biochem.J.417,1-13(2009))。こうしたmROSは、細胞内シグナル伝達の役割を担っているものと思われ、制御を受けなければ、ミトコンドリア内膜中のタンパク質及び脂質に損傷を与え、アポトーシス細胞死を引き起こす。真菌にはそのようなプログラム細胞死経路が存在することを示唆する証拠が積み上がっており、この経路を標的とすることは、新規の抗真菌剤を開発する上で有望な方針である(Li,D.et al.Enzymatic dysfunction of mitochondrial complex I of the Candida albicans goal mutant is associated with increased reactive oxidants and cell death.Eukaryot.Cell 10,672-682(2011))。
【0009】
呼吸鎖を介する電子伝達は、ミトコンドリア内膜を横切るプロトン輸送を引き起こす。これによってマトリックスの電荷が負に保たれ、それによってマトリックスが親油性カチオンの標的となる。こうした分子は、細胞膜を貫通する親油性部分とカチオン性頭部とが組み合わさったものであり、ミトコンドリアの内膜に蓄積し、そのカチオン性部分をマトリックスに向けて露出する。この挙動によって治療剤をミトコンドリアに送達することが可能になるが、この挙動は呼吸酵素も阻害し得るものである。ミトコンドリア機能に対するそのような作用は、薬物において親油性カチオンを使用することを難しくするものである一方で、植物殺真菌剤/抗真菌剤として親油性カチオンを使用する上では有力なものとなり得る(G.Steinberg et al.A lipophilic cation protects crops against fungal pathogens by multiple modes of action.Nature Communications 11:1608(2020))。一方で、こうした分子の両親媒性構造は、それが細胞膜に挿入されることも示唆する。実際、抗真菌親油性n-アルキル鎖カチオン(=カチオン性界面活性剤)は、細胞膜の透過性または機能を変化させることによって真菌細胞を死滅させると最近まで考えられていた。しかしながら、親油性n-アルキル鎖カチオン(すなわち、殺真菌剤ドジン(dodine)、C18-スルホニウム、及びC18-アンモニウム塩)が真菌の酸化的リン酸化を阻害することが最近の刊行物によって確信的に実証された(G.Steinberg et al.)。
【0010】
最も研究が進んでいる親油性n-アルキル鎖カチオンはドデシルグアニジウムである。ドデシルグアニジウムは正荷電を有するグアニジウム基を有しており、殺真菌剤Syllit(ドジン)として現在使用されている。
【0011】
FR1182709Aは、殺真菌剤としてのドデシルグアニジンの塩に関する。US2,867,562Aは、果樹の果実及び葉に傷害性の真菌生物の制御に高度に有効なドデシルグアニジンのモノカルボン酸塩に加えて、こうした化合物を含む殺真菌組成物に関する。US3,143,459Aは、活性な殺真菌剤(ドデシルグアニジン酢酸塩など)を含む非発泡性の湿潤性粉末組成物、及びそのような組成物の調製方法に関する。US3,157,695Aは、殺寄生虫特性、具体的には殺真菌特性を有すると言われるシクロドデシルグアニジンならびにその有機塩及び無機塩に関する。
【0012】
ドジンは、果樹園において果実の黒星病及び葉病害の制御に広く使用される保護剤としての殺真菌剤である。ドジンは、真菌細胞におけるその透過作用が結果によって裏付けられている一方で、極めて重要な代謝酵素を阻害するとの報告もあり、ドジンの作用様式は物議を醸している。最近の研究は、ドジンの主な作用様式はミトコンドリア呼吸の阻害であることを実証している(G.Steinberg et al.)。ドジンは殺真菌剤として有用である一方で、水生生物に毒性が生じるといういくつかの問題を抱えている。したがって、作物または土壌に対してドジンが殺真菌剤として使用される場合、これによって水域(例えば、湖及び川など)への水流出を招き得ることから、ドジンは環境問題を引き起こし得る。
【0013】
トリアルキルスルホニウムヨウ化物塩(n-オクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物)は、真菌病(すなわち、Septoria triticiによるコムギ葉枯病及びイネイモチ病;G.Steinberg et al.)に対する保護を向上させることが示された。このトリアルキルスルホニウムヨウ化物塩は酸化的リン酸化を遮断しただけでなく、呼吸複合体IでのmROS発生も誘導した。このことは、ひいては真菌細胞死(アポトーシス;G.Steinberg et al.)を誘導するものである。さらに、この化合物は植物自然防御系も誘導する(G.Steinberg et al.)。ほぼすべての試験局面において、n-オクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物は能力的に優れており、ドデシルグアニジウムと比較して低い毒性を示す。ヨウ化物塩以外のn-オクタデシルジメチルスルホニウム塩は開示されていない。
【0014】
トリアルキルスルホニウム塩は、さまざまな目的で先行技術からも知られている。
【0015】
ある特定のトリアルキルスルホニウム塩は繊維産業において使用されている。FR2256278A1は柔軟剤としてのトリアルキルスルホニウム塩に関する。US3,666,403及びUS3,826,609は、スルホニウム塩(ジメチルステアリルスルホニウム塩など)の存在下で織物繊維を染色する方法に関する。
【0016】
いくつかのスルホニウム塩は特定の細胞酵素を阻害し、その正常な生理学的機能の実施を阻止することが明らかになっている。トリフェニルスルホニウムクロリドは、呼吸鎖のNAD-チトクロムb領域において電子伝達系を阻害することに加えて、酸化的リン酸化及びアデノシン三リン酸活性を阻害することが明らかになっている。いくつかのアルキルスルホニウム塩及びアルキルジスルホニウム塩(デカメチレンビス(ジメチルスルホニウム)ブロミド及びn-オクタデシルジメチルスルホニウムブロミドなど)はホスホリパーゼの強力な阻害剤である。類似構造のスルホニウム化合物はコリンエステラーゼも阻害し得る(S.Mitchell,Biological Interactions of Sulfur Compounds,Taylor & Francis,1996,pp.208-210、P.R.Young et al.,Lipids,26(11),1991,957-959)。
【0017】
US3,235,356では、アルキルジメチルスルホニウム塩(オクタデシルジメチルスルホニウムメトサルフェートなど)を植物に適用することによってそうした植物の生長及び繁殖を制御する方法について開示されている。US4,475,941Aは、スルホニウム官能基を有する化合物(テトラデシルジメチルスルホニウムメトサルフェートなど)が付加されたスズの有機誘導体によって微生物の破壊または/及び増殖抑制を行うためのプロセスに関する。US4,753,961Aでは、トリアルキルスルホニウム塩(テトラデシルジメチルスルホニウムメトサルフェート(TDSM)など)を含む殺細菌組成物について開示されている。
【0018】
ある特定のトリアルキルスルホニウム塩は殺真菌活性を示すことが報告されている。FR2467547A1は、殺細菌剤、殺真菌剤、殺藻剤、及び防食剤として有用であると言われるスルホニウム化合物(テトラデシルジメチルスルホニウムハロゲン化物またはメトサルフェートなど)に関する。US4,088,781Aは、2-ヒドロキシエチル基を有する硫黄原子含有スルホニウム化合物、さらにはその有利な界面活性特性に関し、こうしたスルホニウム化合物は、植物に害を与えずに利用可能な殺真菌活性を有する。
【0019】
US4,542,023Aは、有機リン誘導体の殺真菌塩に関する。こうした塩のカチオンは、トリアルキルスルホニウムカチオンであり得る。
【0020】
US4,464,194Aは、N-ホスホノメチルグリシンのアルキルスルホニウム塩(N-ホスホノメチルグリシンのジメチルオクタデシルスルホニウム塩など)の混合物に関する。
【0021】
P.R.Young et al.,Lipids,Springer,vol.26(11),1991,957-959では、pH7.5、37℃、μ=0.15(KCl使用)でClostridium perfrigensのホスホリパーゼCによって触媒される1-S-ホスホコリン-2-O-ヘキサデカノイル-1-メルカプト-2-エタノールの加水分解をセチルトリメチルアンモニウムブロミド及びn-オクタデシルジメチルスルホニウムブロミドが阻害することについて開示されている。
【0022】
JP S4536830Bは、ジエチルステアリル-スルホニウムクロリドを1~30%含み得る酢酸セルロース繊維に関する。
【0023】
J.Feihua et al.,synthesis of new cationic surfactant containing sulfur and study on their physicochemical properties,chemical abstracts service,1994;194520,1-2では、高級脂肪アルコール(例えば、オクタデカノール)からスルフィンカチオン界面活性剤を高収率で調製したことについて開示されている。こうした生成物は、ブドウ球菌及び大腸菌に対して良好な抗細菌作用を有していた。
【0024】
FR810437は、抗微生物スルホニウム塩(オクタデシルジメチルスルホニウムメトサルフェートなど)に関する。
【0025】
WO93/17723は、生分解性表面消毒剤(ジメチルオクタデシルスルホニウムカチオンのメチルサルフェートを含む)に関する。
【0026】
K.Negoro et al.,journal of the Japan oil chemists’ society,27(1),1978,47-51は、アルキルエチルメチルスルホニウムヨウ化物の調製及びその物理化学的抗微生物特性に関する。合成種の1つはアルキル:C1837、すなわち、エチルメチルオクタデシルスルホニウムヨウ化物である。
【0027】
K.Yamanauchi et al.,J.Am.Chem.Soc.1983,105,538-545は、ミセル反応の三相モデル、及び(長鎖アルキル)ジメチルスルホニウムヨウ化物によるチミジンのメチル化に関する。
【0028】
しかしながら、先行技術の殺真菌剤はあらゆる点で満足のいくものではなく、特性が改善された改良型の殺真菌剤が求められており、特に、下記の特性のいずれか1つまたはそれらの組み合わせに関して改善された改良型の殺真菌剤が求められている:(a)駆除活性、好ましくは、殺真菌活性、(b)生物学的活性、(c)環境との適合性及び毒性、(d)耐候特性(UV照射に対する耐性など)及び流出水への溶解性、(e)農業添加剤との適合性、(f)さまざまなpH値の下での水及び水性媒体への溶解性、(g)水及び水性媒体への溶解率、(h)固体状態での挙動(結晶化度及び結晶多形など)、(i)物理特性(密度など)、(j)化学特性(分解など)、(k)スペクトル特性及び光学特性、(l)熱特性(融点及び沸点など)、(m)嗅覚特性、(n)電気特性及びイオン強度、(o)機械特性(硬度など)、(p)表面張力、(q)吸湿性、(r)pH値、(s)塩特徴、カチオンアニオン相互作用、共有結合特徴、(t)エイジング、(u)トレーサビリティ、(v)加工性、(w)保存安定性及び品質保持期限、(x)合成入手性、及び/または(y)経済的側面。
【0029】
特定の真菌または幅広い範囲の真菌に対する既知のカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物の有効性が改善されたカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物が提供されれば有利であろう。環境毒性を有するカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物がさらに提供されることも有利であろう。さらに、1つ以上の代謝経路において複数箇所で真菌の代謝を標的とする、より有効なカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物、組成物、及び処理が提供されれば有利であろう。そのような殺真菌剤では、病原性細胞における基本プロセスを標的とする新規の複数箇所作用様式が理想的に用いられることになる。
【0030】
さらに、組成物中に典型的には含まれ、生物学的活性、有効性、及び効力に関してのみでなく、適用性、放出動力学、耐候性、及び同様のものに関しても殺真菌能力全体に寄与する添加剤との適合性が良好であり、限られたコストでの調製が容易なカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物が提供されれば有利であろう。
【0031】
さらに、適切な希釈剤(水など)を使用直前に添加することによって農業製剤へと希釈可能な高度濃縮製剤の形態でカチオン性界面活性剤ベースの抗真菌化合物が提供されれば有利であろう。そうなれば、高度濃縮製剤を低コストで輸送し得る。但し、高度濃縮製剤中に高濃度で含まれる成分の安定性が十分なものであるべきである。
【0032】
本発明の目的は、駆除剤を提供すること、具体的には、先行技術と比較して有利な殺真菌剤を提供することである。そうしたものは、環境に対して無害であり、処理または阻止すべき有害生物に特異的であり、多種多様な異なる植物の処理及び多種多様な異なる有害生物(具体的には、真菌)の駆除に適するべきである。さらに、そうしたものは、処理後のある一定の期間は有害生物(具体的には、真菌)がその元の有害作用を保持しないように、根絶性の持続作用を長期的に有するべきである。
【0033】
この目的は、特許請求の範囲の主題によって達成されている。
【0034】
本発明の第1の態様は、一般式(A)
【化1】
のトリアルキルスルホニウムクロリドまたはその溶媒和物に関し、
式中、
R1は、-CH、-CHCH、-CHCHCH、または-CH(CHを表し、
R2は、-CH、-CHCH、-CHCHCH、または-CH(CHを表し、
R3は、-(CH-CHを表し、nは、17~31の範囲内の整数である。
【0035】
したがって、本発明によるトリアルキルスルホニウム塩は、上に引用したG.Steinberg et al.によるn-オクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物とは対アニオンが異なる(塩化物とヨウ化物との対比)。
【0036】
4つの代替NAD(P)Hデヒドロゲナーゼはクローン化されており、糸状菌N.crassaのミトコンドリアにおいて特徴付けられている。これらの酵素の1つはミトコンドリアマトリックスの方向を向いており(NDI1)、一方で、その他の3つは外側を向いている(NDE1~3)。これらの代替デヒドロゲナーゼの中で、NDE2は、N.crassaミトコンドリアにおけるROS生成において主要な役割を果たすことが示唆されている(例えば、Nina Antos-Krzeminska et al.,Protist,Vol.170,21-37,February 2019を参照のこと)。一方で、呼吸複合体Iが真菌における別の主要なmROS源であることがZ.triticiでの最近の研究によって示されている(G.Steinberg et al.)。
【0037】
本発明のトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、それぞれの臭化物及びヨウ化物と比較して優れており、これは予想外のことである。ミトコンドリアの脱分極及びミトコンドリアでのROS形成の誘導能力に関しては塩化物、臭化物、及びヨウ化物で顕著な差を観測することは不可能な一方で、本発明の塩化物は、それぞれの臭化物及びヨウ化物と比較してアポトーシス細胞死の誘導に関して顕著な利点をもたらす。
【0038】
さらに、驚くべきことに、R3残基のアルキル鎖長が最小(C18(オクタデシル、ステアリル))であるトリアルキルスルホニウム塩はミトコンドリア活性を抑制する能力を有する一方で、R3残基のアルキル鎖長がより短い比較用のトリアルキルスルホニウム塩は、対アニオンとは無関係に対応作用を示さないということが明らかになっている。
【0039】
トリアルキルスルホニウムのある特定の塩、具体的には、トリアルキルスルホニウムクロリドが他のものと比較して安定性が高く、特に、UV光下での安定性が高いという実験的証拠が存在する。
【0040】
トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドが溶媒和物の形態で存在する場合、そうした溶媒和物の型及び化学量論には特に制限は存在しない。好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは水和物であり、好ましくは、半水和物、一水和物、及び二水和物から選択される。他の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは無水物であり、好ましくは、無溶媒和物である。
【0041】
好ましくは、本発明のトリアルキルスルホニウムクロリドは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド、n-オクタデシルメチルエチルスルホニウムクロリド、n-オクタデシルジエチルスルホニウムクロリド、n-オクタデシルメチルプロピルスルホニウムクロリド、n-オクタデシルエチルプロピルスルホニウムクロリド、n-オクタデシルジプロピルスルホニウムクロリド;n-エイコシルジメチルスルホニウムクロリド、n-エイコシルメチルエチルスルホニウムクロリド、n-エイコシルジエチルスルホニウムクロリド、n-エイコシルメチルプロピルスルホニウムクロリド、n-エイコシルエチルプロピルスルホニウムクロリド、n-エイコシルジプロピルスルホニウムクロリド;n-ドコシルジメチルスルホニウムクロリド、n-ドコシルメチルエチルスルホニウムクロリド、n-ドコシルジエチルスルホニウムクロリド、n-ドコシルメチルプロピルスルホニウムクロリド、n-ドコシルエチルプロピルスルホニウムクロリド、及びn-ドコシルジプロピルスルホニウムクロリドから選択される。
【0042】
好ましくは、本発明のトリアルキルスルホニウムクロリドは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド:
【化2】
である。
【0043】
好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは固体であり、好ましくは、非晶質、結晶、または半結晶である。
【0044】
別の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、液体または半固体である。
【0045】
一般式(A)のトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、一般式(A)の1つ以上の他のトリアルキルスルホニウムクロリドとの混合物として存在し得ることが企図される。
【0046】
本発明の別の態様は、上記の本発明のトリアルキルスルホニウムクロリドまたはその溶媒和物を含む組成物に関する。
【0047】
本発明の組成物は、一般式(A)の2つ以上のトリアルキルスルホニウムクロリドを含み得ることが企図される。
【0048】
好ましくは、本発明の組成物は、農業的に許容可能な担体を含み、担体の含量は、組成物の総重量に対して少なくとも1.0重量%である。
【0049】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、担体の含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5.0重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも25重量%、好ましくは、少なくとも30重量%、好ましくは、少なくとも40重量%、好ましくは、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%、好ましくは、少なくとも70重量%、好ましくは、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも90重量%である。
【0050】
好ましい実施形態では、担体の含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、多くとも97.5重量%、好ましくは、多くとも95重量%、好ましくは、多くとも92.5重量%、好ましくは、多くとも90重量%、好ましくは、多くとも87.5重量%、好ましくは、多くとも85重量%、好ましくは、多くとも82.5重量%、好ましくは、多くとも80重量%である。
【0051】
好ましい実施形態では、担体の含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、10±5.0重量%、好ましくは20±15重量%、好ましくは20±10重量%、好ましくは20±5.0重量%、好ましくは30±25重量%、好ましくは30±20重量%、好ましくは30±15重量%、好ましくは30±10重量%、好ましくは30±5.0重量%、好ましくは40±35重量%、好ましくは40±30重量%、好ましくは40±25重量%、好ましくは40±20重量%、好ましくは40±15重量%、好ましくは40±10重量%、好ましくは40±5.0重量%、好ましくは50±45重量%、好ましくは50±40重量%、好ましくは50±35重量%、好ましくは50±30重量%、好ましくは50±25重量%、好ましくは50±20重量%、好ましくは50±15重量%、好ましくは50±10重量%、好ましくは50±5.0重量%、好ましくは60±35重量%、好ましくは60±30重量%、好ましくは60±25重量%、好ましくは60±20重量%、好ましくは60±15重量%、好ましくは60±10重量%、好ましくは60±5.0重量%、好ましくは70±25重量%、好ましくは70±20重量%、好ましくは70±15重量%、好ましくは70±10重量%、好ましくは70±5.0重量%、好ましくは80±15重量%、好ましくは80±10重量%、好ましくは80±5.0重量%、好ましくは90±5.0重量%の範囲内である。
【0052】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、特に組成物が液体である場合、担体は、
(a)水、
(b)モノアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、またはベンジルアルコールなど)、
(c)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、またはジプロピレングリコールなど)、
(d)モノアルキルグリコールエーテル(トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、
(e)ジアルキルグリコールエーテル(エチレングリコールジメチルエーテルなど)、
(f)グリコールエステル、
(g)グリセロール及びグリセロールエーテル(イソプロピリジングリセロールなど)、
(h)環式エーテル(テトラヒドロフランまたはジオキソランなど)、
(i)ケトン(アセトン、ブタノン、またはシクロヘキサノンなど)、
(j)一塩基エステル(乳酸エチル、酢酸エチル、またはガンマ-ブチロラクトンなど)、
(k)二塩基エステル(グルタル酸ジメチルエステルまたはコハク酸ジメチルエステルなど)、
(l)アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)、
(m)ジアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、
(n)アルキルスルホン(スルホランなど)、
(o)アルキルアミド(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、またはジメチルホルムアミドなど)、
(p)アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、またはジアルキルモノエタノールアミンなど)
(q)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、
(r)油(植物起源または動物起源の油、フィトブランド油(phytobland oil)、作物油、作物油濃縮物、植物油、メチル化種子油、石油、及びシリコーン油など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される。
【0053】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、担体は、水であるか、または水を含む。
【0054】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、担体は、溶媒である。好ましくは、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、担体に完全に溶解する。
【0055】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、特に組成物が固体である場合、担体は、
(a)天然の土壌鉱物及び土類鉱物(ケイ酸塩、方解石、大理石、軽石、海泡石、タルク、カオリン、粘土、タルク、石灰石、石灰、炭酸カルシウム、チョーク、赤土、黄土、石英、パーライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ベントナイト、ドロマイト、または珪藻土(diatomaceous earth)など)、
(b)合成鉱物(シリカ、シリカゲル、アルミナ、またはケイ酸塩(ケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムなど)など)、
(c)無機塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ケイ素、酸化マグネシウムなど)、
(d)無機粉末または有機粉末の合成顆粒、
(e)有機材料(おがくず、ココナツの殻、トウモロコシの穂もしくは皮、またはタバコの茎など)の顆粒、
(f)珪藻土(kieselguhr)、
(g)リン酸三カルシウム、
(h)多糖(セルロース、セルロースエーテル、デンプン、キサンタン、プルラン、グアーなど)、
(i)植物起源の産物(例えば、穀類食品、樹皮食品、木粉、ナッツ殻食品)、
(j)穀物粉末(トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、モロコシ、キビ、オートムギ、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、またはキノアから得られる粉末など)、
(k)他の有機材料(粉末化コルク、吸着性カーボンブラック、木炭、泥炭、土壌混合物、堆肥、農工業残渣など)、水溶性ポリマー、樹脂、またはろう、
(l)固体肥料(尿素またはアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなど)など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される。
【0056】
本発明の組成物を構成する上では特に制限は存在ない。好ましくは、組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ムース、ペースト、粉末、及び顆粒から選択される。水性懸濁液が好ましい。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、液体またはペーストである。
【0058】
好ましくは、本発明の組成物の23℃での動粘度は、少なくとも0.5mPa・s、好ましくは、少なくとも0.6mPa・s、好ましくは、少なくとも0.7mPa・s、好ましくは、少なくとも0.8mPa・s、好ましくは、少なくとも0.9mPa・s、好ましくは、少なくとも1.0mPa・sである。
【0059】
好ましくは、本発明の組成物の23℃での動粘度は、高くとも10,000mPa・s、好ましくは、高くとも9,000mPa・s、好ましくは、高くとも8,000mPa・s、好ましくは、高くとも7,000mPa・s、好ましくは、高くとも6,000mPa・s、好ましくは、高くとも5,000mPa・s、好ましくは、高くとも4,000mPa・s、好ましくは、高くとも3,000mPa・s、好ましくは、高くとも2,000mPa・s、好ましくは、高くとも1,000mPa・s、好ましくは、高くとも900mPa・s、好ましくは、高くとも800mPa・s、好ましくは、高くとも700mPa・s、好ましくは、高くとも600mPa・s、好ましくは、高くとも500mPa・s、好ましくは、高くとも400mPa・s、好ましくは、高くとも300mPa・s、好ましくは、高くとも200mPa・s、好ましくは、高くとも100mPa・s、好ましくは、高くとも90mPa・s、好ましくは、高くとも80mPa・s、好ましくは、高くとも70mPa・s、好ましくは、高くとも60mPa・s、好ましくは、高くとも50mPa・s、好ましくは、高くとも40mPa・s、好ましくは、高くとも30mPa・s、好ましくは、高くとも20mPa・s、好ましくは、高くとも10mPa・sである。
【0060】
動粘度は、好ましくは、EN ISO3104またはASTM D7042に従って決定される。
【0061】
好ましくは、本発明の組成物は水性であり、トリアルキルスルホニウムクロリドの溶解性、トリアルキルスルホニウムクロリドの安定性、及び環境との適合性のバランスが良好となるpH値を有し、このpH値は、典型的には、比較的高濃度のトリアルキルスルホニウムクロリドを含む組成物を、農業目的で使用すべき(すなわち、作物と接触すべき)所望の低濃度のトリアルキルスルホニウムクロリドを含む農業組成物へと希釈した後のものである。トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの溶解性のpH依存性は重要な役割を果たし得る。一方で、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの溶解性は、それが圃場での有効使用に適した形態で提供される場合は比較的高く、他方で、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドが圃場での風化作用に後に晒される場合はその溶解性が比較的低く、それによって、それが雨及び他の流出水によって急速に取り除かれ、流し出されることが阻止されることが大抵は好ましい。
【0062】
トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの水溶性はpH7.0付近で最小となり、すなわち、その水溶性はpH値が7.0を下回ると増加し、同様に、pH値が7.0を超えても増加することが明らかになっており、これは驚くべきことである。この溶解性挙動は特に有利であり、この理由は、圃場で使用すべき高度濃縮組成物を7.0未満または7.0超のpH値で調製できることにある。そのような組成物が圃場で使用された時点で、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、(例えば、雨によって)pH値が中性pH値へと変化する環境条件にさらされる。この結果としてpHが変化すると、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの水溶性が相対的に低下し、それによってその流出傾向が低下する。
【0063】
好ましくは、本発明の組成物は水性であり、2~14、好ましくは3~13、より好ましくは8~13の範囲内のpH値を有する。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1.0、好ましくは、少なくとも1.5、好ましくは、少なくとも2.0、好ましくは、少なくとも2.5、好ましくは、少なくとも3.0、好ましくは、少なくとも3.5、好ましくは、少なくとも4.0、好ましくは、少なくとも4.5、好ましくは、少なくとも5.0、好ましくは、少なくとも5.5、好ましくは、少なくとも6.0、好ましくは、少なくとも6.5、好ましくは、少なくとも7.0、好ましくは、少なくとも7.5、好ましくは、少なくとも8.0、好ましくは、少なくとも8.5、好ましくは、少なくとも9.0、好ましくは、少なくとも9.5、好ましくは、少なくとも10、好ましくは、少なくとも10.5、好ましくは、少なくとも11のpH値を有する。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、高くとも14、好ましくは、高くとも13.5、好ましくは、高くとも13、好ましくは、高くとも12.5、好ましくは、高くとも12、好ましくは、高くとも11.5、好ましくは、高くとも11.0、好ましくは、高くとも10.5、好ましくは、高くとも10.0、好ましくは、高くとも9.5、好ましくは、高くとも9.0、好ましくは、高くとも8.5、好ましくは、高くとも8.0、好ましくは、高くとも7.5のpH値を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、2.0±1.0、好ましくは3.0±2.0、好ましくは3.0±1.0、好ましくは4.0±3.0、好ましくは4.0±2.0、好ましくは4.0±1.0、好ましくは5.0±4.0、好ましくは5.0±3.0、好ましくは5.0±2.0、好ましくは5.0±1.0、好ましくは6.0±5.0、好ましくは6.0±4.0、好ましくは6.0±3.0、好ましくは6.0±2.0、好ましくは6.0±1.0、好ましくは7.0±6.0、好ましくは7.0±5.0、好ましくは7.0±4.0、好ましくは7.0±3.0、好ましくは7.0±2.0、好ましくは7.0±1.0、好ましくは8.0±5.0、好ましくは8.0±4.0、好ましくは8.0±3.0、好ましくは8.0±2.0、好ましくは8.0±1.0、好ましくは9.0±4.0、好ましくは9.0±3.0、好ましくは9.0±2.0、好ましくは9.0±1.0、好ましくは10±3.0、好ましくは10±2.0、好ましくは10±1.0、好ましくは11±2.0、好ましくは11±1.0、好ましくは12±1.0の範囲内のpH値を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、3.0±2.5、より好ましくは3.0±2.0、さらにより好ましくは3.0±1.5、さらにより好ましくは3.0±1.0、さらにより好ましくは3.0±0.5の範囲内のpH値を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、4.0±3.5、より好ましくは4.0±3.0、さらにより好ましくは4.0±2.5、さらにより好ましくは4.0±2.0、最も好ましくは4.0±1.0の範囲内のpH値を有する。さらなる別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、5.0±4.0、より好ましくは5.0±3.0、さらにより好ましくは5.0±2.0、最も好ましくは5.0±1.0の範囲内のpH値を有する。さらなる別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、6.0±5.0、より好ましくは6.0±4.0、さらにより好ましくは6.0±3.0、さらにより好ましくは6.0±2.0、最も好ましくは6.0±1.0の範囲内のpH値を有する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、7.0±6.0、より好ましくは7.0±5.0、さらにより好ましくは7.0±4.0、さらにより好ましくは7.0±3.0、さらにより好ましくは7.0±2.0、最も好ましくは7.0±1.0の範囲内のpH値を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、8.0±5.0、より好ましくは8.0±4.0、さらにより好ましくは8.0±3.0、さらにより好ましくは7.0±2.0、最も好ましくは8.0±1.0の範囲内のpH値を有する。さらなる別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、9.0±4.0、より好ましくは9.0±3.0、さらにより好ましくは9.0±2.0、最も好ましくは9.0±1.0の範囲内のpH値を有する。さらなる別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、10±4.0、より好ましくは10±3.0、さらにより好ましくは10±2.0、最も好ましくは10±1.0の範囲内のpH値を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、11±3.0、より好ましくは11±2.0、さらにより好ましくは11±1.0の範囲内のpH値を有する。さらなる別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、12±2.0、より好ましくは12±1.0の範囲内のpH値を有する。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明の組成物のpH値は7.0未満であり、好ましくは、高くとも6.5である。
【0069】
他の好ましい実施形態では、本発明の組成物のpH値は7.0超であり、好ましくは、少なくとも7.5である。
【0070】
好ましくは、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、組成物の総重量に対して0.1重量%超である。
【0071】
好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは、少なくとも1.0重量%、好ましくは、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも12.5重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも17.5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%である。
【0072】
好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、多くとも97.5重量%、好ましくは、多くとも95重量%、好ましくは、多くとも92.5重量%、好ましくは、多くとも90重量%、好ましくは、多くとも87.5重量%、好ましくは、多くとも85重量%、好ましくは、多くとも82.5重量%、好ましくは、多くとも80重量%である。
【0073】
好ましくは、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、組成物の総重量に対して10~80重量%の範囲内である。
【0074】
好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、10±5.0重量%、好ましくは20±15重量%、好ましくは20±10重量%、好ましくは20±5.0重量%、好ましくは30±25重量%、好ましくは30±20重量%、好ましくは30±15重量%、好ましくは30±10重量%、好ましくは30±5.0重量%、好ましくは40±35重量%、好ましくは40±30重量%、好ましくは40±25重量%、好ましくは40±20重量%、好ましくは40±15重量%、好ましくは40±10重量%、好ましくは40±5.0重量%、好ましくは50±45重量%、好ましくは50±40重量%、好ましくは50±35重量%、好ましくは50±30重量%、好ましくは50±25重量%、好ましくは50±20重量%、好ましくは50±15重量%、好ましくは50±10重量%、好ましくは50±5.0重量%、好ましくは60±35重量%、好ましくは60±30重量%、好ましくは60±25重量%、好ましくは60±20重量%、好ましくは60±15重量%、好ましくは60±10重量%、好ましくは60±5.0重量%、好ましくは70±25重量%、好ましくは70±20重量%、好ましくは70±15重量%、好ましくは70±10重量%、好ましくは70±5.0重量%、好ましくは80±15重量%、好ましくは80±10重量%、好ましくは80±5.0重量%、好ましくは90±5.0重量%の範囲内である。
【0075】
他の好ましい実施形態では、本発明の組成物は固体である。
【0076】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、少なくとも2.5μg/g、好ましくは、少なくとも5.0μg/g、好ましくは、少なくとも7.5μg/g、好ましくは、少なくとも10μg/g、好ましくは、少なくとも15μg/g、好ましくは、少なくとも20μg/g、好ましくは、少なくとも25μg/g、好ましくは、少なくとも30μg/g、好ましくは、少なくとも40μg/g、好ましくは、少なくとも50μg/g、好ましくは、少なくとも60μg/g、好ましくは、少なくとも70μg/g、好ましくは、少なくとも80μg/g、好ましくは、少なくとも90μg/gである。
【0077】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、組成物の総重量に対して、多くとも200μg/g、好ましくは、多くとも190μg/g、好ましくは、多くとも180μg/g、好ましくは、多くとも170μg/g、好ましくは、多くとも160μg/g、好ましくは、多くとも150μg/g、好ましくは、多くとも140μg/g、好ましくは、多くとも130μg/g、好ましくは、多くとも120μg/g、好ましくは、多くとも110μg/g、好ましくは、多くとも100μg/g、好ましくは、多くとも90μg/g、好ましくは、多くとも80μg/g、好ましくは、多くとも70μg/g、好ましくは、多くとも60μg/g、好ましくは、多くとも50μg/g、好ましくは、多くとも40μg/g、好ましくは、多くとも30μg/g、好ましくは、多くとも20μg/g、好ましくは、多くとも10μg/gである。
【0078】
トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド、及び好ましくは存在する農業的に許容可能な担体に加えて、本発明の組成物は、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。好ましい添加剤には、限定されないが、pH緩衝剤、増粘剤、沈着剤(粘着剤)、水質調整剤、湿潤剤、展着剤、保湿剤、葉クチクラ及び/または細胞膜透過助剤、界面活性剤、植物生育増強剤、発泡剤、消泡剤、飛散制御剤、散布物飛散低減剤、蒸発低減剤、色素、UV吸収剤、ならびにそれらの組み合わせ、が含まれる。そのような添加剤は当業者に知られており、個々の化合物としてまたは混合物(マスターバッチ)として商業的に利用可能である。そうした添加剤は、通常の量で本発明の組成物に含められ得る。
【0079】
添加剤は、作物保護剤散布用の添加剤及び/または界面活性剤の形態であり得る。添加剤は、植物のクチクラ及び/または細胞膜の透過性を増加させ得る。添加剤は、非イオン性の展着助剤及び透過助剤であり得、及び/または組成物の表面張力を低減するように働き得る。
【0080】
添加剤は、トリアルキルスルホニウムクロリドの殺真菌活性を増強し得、この増強は、例えば、クチクラ及び/または細胞膜の透過性を増加させることによって生じる。添加剤は、トリアルキルスルホニウムクロリドの殺真菌活性を増強し得、この増強は、例えば、植物のクチクラ及び/または細胞膜の透過性を増加させることによって生じる。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本発明のトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(それ自体がカチオン性界面活性剤と見なされ得る)に加えて界面活性剤をさらに含む。界面活性剤は、組成物が物体(表面、植物の葉など)に適用されたときに組成物の散布液滴の表面張力を低減し、これによって、組成物を広げ、標的物体を薄膜で覆うことを支援することで、物体への組成物の吸収の効率性または迅速性を向上させる。界面活性剤は、植物の茎または葉に散布されたときに、トリアルキルスルホニウムクロリドが葉または茎の表面をより容易に透過するように葉または茎の表面上のろうの粘度及び結晶構造を変化させることによって組成物の吸収にも影響を与え得る。界面活性剤は、組成物の抗真菌特性が増強されるように選択することができ、この増強は、下記のことのうちのいずれか1つまたは複数によって生じる。
a)組成物が適用される物体上に組成物をより均一に広げること、
b)物体上での組成物の保持(もしくは「粘着」)を増加させること、
c)植物もしくは作物の保護用途については、毛、鱗片、もしくは他の植物葉表面構造を介する組成物の透過性を増加させること、
d)組成物の結晶化を阻止すること、及び/または
e)組成物の乾燥を遅延させること。
【0082】
本発明の組成物は、トリアルキルスルホニウムクロリドに加えて、単一の界面活性剤を含むこと、または2つ以上の界面活性剤の組み合わせを含むことが企図される。各界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及びそれらの組み合わせから独立して選択され得る。
【0083】
非イオン性界面活性剤は一般に生分解性であり、多くの肥料と適合する。非イオン性界面活性剤によってはろう様固体であり、溶解させて液体にするには液体担体(共溶媒(アルコールまたはグリコールなど))を必要とする。グリコール担体は、一般に、アルコールよりも好ましく、この理由は、アルコールは可燃性であり、急速に蒸発し、微細な散布液滴の数を増やし得る(これによって散布時に製剤が飛散する可能性が生じる)ことによるものである。好ましい非イオン性界面活性剤には、シリコーン界面活性剤(シロキサン及びオルガノシロキサンなど)が含まれる。シリコーン界面活性剤は組成物の表面張力を顕著に低減することで、使用中の組成物が植物の葉または茎の表面上に薄層を形成することを可能にする。シリコーン界面活性剤は表面張力を低減し、組成物が植物の葉の気孔を透過することも可能にし得る。シリコーン界面活性剤は、その適用後に組成物が洗い流されることを非常に困難にすることによって本発明の組成物に保護作用も付与する。シリコーン界面活性剤は、葉のクチクラを介してトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの吸収の量/速度にも影響を与え得る。好ましい非イオン性界面活性剤には、カルバミド界面活性剤(尿素界面活性剤)がさらに含まれる。カルバミド界面活性剤は、例えば、モノカルバミド二水素硫酸塩を含み得る。
【0084】
適切なイオン性界面活性剤は、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選択され得る。好ましいカチオン性界面活性剤には、獣脂アミンエトキシレート(tallow amine ethoxylate)が含まれる。好ましいアニオン性界面活性剤には、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホネートを含めて、親油性炭化水素に結合したサルフェート、カルボキシレート、及びホスフェートが含まれる。
【0085】
両性界面活性剤は、典型的には、非イオン性界面活性剤と同様に機能する。好ましい両性界面活性剤には、例えば、レシチン(ホスファチジルコリン)及びアミドプロピルアミンが含まれる。
【0086】
湿潤剤または展着剤は組成物の表面張力を低下させ、組成物が標的植物の葉及び茎の上に大きな薄層を形成することを可能にする。好ましい湿潤剤または展着剤には、非イオン性界面活性剤(好ましくは、水、アルコール、またはグリコールで希釈されたもの)、ポリグリセロール脂肪酸エステル、及びポリグリコールが含まれる。
【0087】
飛散制御剤または散布物飛散制御剤は、好ましくは、(例えば、組成物が植物に散布されるときに)組成物の散布物飛散を低減するために使用され、この散布物飛散は、微小な散布液滴(直径150μm未満)が気流によって標的領域から飛ばされる場合に生じることが最も多い。飛散制御剤は散布溶液の粘弾特性を変化させることで、平均液滴サイズ及び平均重量を大きくした粗い散布物を生成させ、小さくて容易に浮遊する液滴の数を最小化する。適切な飛散制御剤には、ポリマー(ポリアクリルアミド、多糖、及びガムなど)が含まれる。
【0088】
好ましい沈着剤(粘着剤)には、例えば、膜形成植物ゲル、乳化可能な樹脂、乳化可能な鉱物油、ろう、及び水溶性ポリマーが含まれる。沈着剤を使用することで、標的表面からの組成物の蒸発または組成物の液滴形成及び脱落に起因する標的植物からの組成物の喪失が低減され得る。沈着剤は、乾燥(湿潤性)粉末製剤及び顆粒製剤の形態の本発明の組成物に特に適する。
【0089】
消泡剤及び泡立ち防止剤は、本発明の組成物が含められ得る容器中での泡沫の形成を低減、抑制、または破壊する。好ましい消泡剤には、例えば、油、ポリジメチルシロキサン及び他のシリコーン、アルコール、ステアレート、ならびにグリコールが含まれる。
【0090】
本発明の組成物は、1つ以上の追加の抗真菌剤を含み得る。
【0091】
好ましい追加の抗真菌剤は、下記のものから互いに独立して選択される。
(1)エルゴステロール合成の阻害剤、
(2)複合体Iまたは複合体IIでの呼吸鎖の阻害剤、
(3)複合体IIIでの呼吸鎖の阻害剤、
(4)有糸分裂及び細胞分裂の阻害剤、
(5)複数箇所に作用する能力を有する化合物、
(6)宿主防御を誘導する能力を有する化合物、
(7)アミノ酸及び/またはタンパク質生合成の阻害剤、
(8)ATP生成の阻害剤、
(9)細胞壁合成の阻害剤、
(10)脂質及び膜の合成の阻害剤、
(11)メラニン生合成の阻害剤、
(12)核酸合成の阻害剤、
(13)シグナル伝達の阻害剤、
(14)脱共役剤として作用する能力を有する化合物、ならびに
(15)他の殺真菌剤。
【0092】
好ましい追加の抗真菌剤は、アゾール、アミノ誘導体、ストロビルリン、特異的抗うどんこ病菌化合物(specific anti-oidium compound)、アニリン-ピリミジン、ベンズイミダゾール及び類似体、ジカルボキシイミド、ポリハロゲン化殺真菌剤、全身獲得抵抗性(SAR)誘導物質、フェニルピロール、アシルアラニン、抗べと病菌化合物(anti-peronosporic compound)、ジチオカルバメート、アリールアミジン、亜リン酸及びその誘導体、殺真菌銅化合物、植物ベースの油(植物由来物質)、キトサン、硫黄ベースの殺真菌剤、殺真菌アミド、ならびに窒素ヘテロ環、またはそれらの任意の組み合わせ、から互いに独立して選択される。
【0093】
上記の本発明の組成物は、好ましくは、予混合濃縮物であり、より好ましくは、予混合懸濁濃縮物であり、さらにより好ましくは、水性予混合懸濁濃縮物である。
【0094】
本発明の予混合濃縮物は、好ましくは、使用前に希釈され、この希釈は、好ましくは、水で行われ、その倍率は、2~500倍(10倍、好ましくは20倍、好ましくは50倍、好ましくは100倍、好ましくは200倍、好ましくは250倍など)である。
【0095】
本発明の別の態様は、農業組成物、好ましくは、即時使用可能な水性組成物に関し、こうした組成物は、
(i)上記の本発明の組成物と、
(ii)希釈剤、好ましくは、水と、
を含む。
【0096】
したがって、担体及び希釈剤は共に水であり得る。本明細書の目的では、異なる用語が使用され、農業組成物は個々の状況に応じてそのように調製されるが、そうした農業組成物においては、希釈剤と担体とを区別することはもはや不可能であり得る。
【0097】
本発明の別の態様は、農業組成物、好ましくは、即時使用可能な水性組成物を調製するための方法に関し、この方法は、希釈剤(好ましくは水)を上記の本発明の組成物に添加することを含む。
【0098】
上記の本発明の組成物の好ましい実施形態はすべて、本発明の農業組成物に類似的に適用される。一方の上記の本発明の組成物、すなわち、好ましくは、予混合濃縮物、より好ましくは、予混合懸濁濃縮物、さらにより好ましくは、水性予混合懸濁濃縮物と、他方の本発明の農業組成物と、の間の本質的な差異は、組成物の総重量に対する成分の含量、及び農業組成物の総重量に対する成分の含量である。希釈剤を添加すると農業組成物の総重量が増加する一方で、農業組成物の成分の含量は相対的に減少する。希釈剤が担体と同一または担体の構成成分の1つと同一である場合、担体の含量は、担体(すなわち、希釈剤)を追加で添加することによって相対的に増加する。
【0099】
本発明の農業組成物の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、農業組成物の総重量に対して、少なくとも2.5μg/ml、好ましくは、少なくとも5.0μg/ml、好ましくは、少なくとも7.5μg/ml、好ましくは、少なくとも10μg/ml、好ましくは、少なくとも15μg/ml、好ましくは、少なくとも20μg/ml、好ましくは、少なくとも25μg/ml、好ましくは、少なくとも30μg/ml、好ましくは、少なくとも40μg/ml、好ましくは、少なくとも50μg/ml、好ましくは、少なくとも60μg/ml、好ましくは、少なくとも70μg/ml、好ましくは、少なくとも80μg/ml、好ましくは、少なくとも90μg/mlである。
【0100】
本発明の農業組成物の好ましい実施形態では、トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量は、各場合において、農業組成物の総重量に対して、多くとも200μg/ml、好ましくは、多くとも190μg/ml、好ましくは、多くとも180μg/ml、好ましくは、多くとも170μg/ml、好ましくは、多くとも160μg/ml、好ましくは、多くとも150μg/ml、好ましくは、多くとも140μg/ml、好ましくは、多くとも130μg/ml、好ましくは、多くとも120μg/ml、好ましくは、多くとも110μg/ml、好ましくは、多くとも100μg/ml、好ましくは、多くとも90μg/ml、好ましくは、多くとも80μg/ml、好ましくは、多くとも70μg/ml、好ましくは、多くとも60μg/ml、好ましくは、多くとも50μg/ml、好ましくは、多くとも40μg/ml、好ましくは、多くとも30μg/ml、好ましくは、多くとも20μg/ml、好ましくは、多くとも10μg/mlである。
【0101】
本発明の別の態様は、駆除剤、好ましくは、殺真菌剤としての上記の本発明の組成物の使用に関する。本発明の使用は、有害生物、その生息場所、有害生物による攻撃から保護すべき物体もしくは植物、土壌、植物が生育している場所、植物が生育することになる場所、または繁殖材料と、駆除剤として有効な量の本発明の組成物と、を接触させることを含むことが好ましい。
【0102】
本発明の別の態様は、有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法に関し、この方法は、有害生物、その生息場所、有害生物による攻撃から保護すべき物体もしくは植物、土壌、植物が生育している場所、植物が生育することになる場所、または繁殖材料と、駆除剤として有効な量の上記の本発明の組成物と、を接触させることを含む。
【0103】
好ましくは、有害生物は真菌であり、好ましくは、有害真菌であり、好ましくは、植物病原性有害真菌である。
【0104】
好ましい実施形態では、真菌は、下記のものからなる群から選択される。
(a)Opisthosporidia(好ましくは、Aphelidea、Rozellidea、及びMicrosporidiaから選択される)、
(b)Chytridiomycota(好ましくは、Chytridiomycetes、Monoblepharidomycetes、及びHyaloraphidiomycetesから選択される)、
(c)Neocallimastigomycota、
(d)Blastocladiomycota、
(e)Zoopagomycota(好ましくは、Zoopagomycotina、Entomophthoromycotina(例えば、Basidiobolomycetes、Neozygitomycetes、Entomophthoromycetes)、及びKickxellomycotinaから選択される)、
(f)Mucoromycota(好ましくは、Mortierellomycotina及びMucoromycotinaから選択される)、
(g)Glomeromycota(好ましくは、Paraglomerales、Archaeosporales、Diversisporales、及びGlomeralesから選択される)、
(h)Basidiomycota(好ましくは、Pucciniomycotina(例えば、Agaricostilbomycetes、Atractiellomycetes、Classiculomycetes、Cryptomycocolacomycetes、Cystobasidiomycetes、Microbotryomycetes、Mixiomycetes、Pucciniomycetes、Spiculogloeomycetes、Tritirachiomycetes)、Ustilagomycotina(例えば、Ustilaginomycetes、Exobasidiomycetes、Malasseziomycetes、Moniliellomycetes)、及びAgaricomycotina(例えば、Tremellomycetes、Dacrymycetes、Agaricomycetes)から選択される)、
(i)Ascomycota(好ましくは、Taphrinomycotina(例えば、Taphrinomycetes、Neolectomycetes、Schizosaccharomycetes、Pneumocystidomycetes、Archaeorhizomycetes)、Saccharomycotina(例えば、Saccharomycetes、Saccharomycetales)、及びPezizomycotina(例えば、Arthoniomycetes、Coniocybomycetes、Dothideomycetes、Eurotiomycetes、Geoglossomycetes、Laboulbeniomycetes、Lecanoromycetes、Leothiomycetes、Lichinomycetes、Orbiliomycetes、Pezizomycetes、Sordariomycetes、Xylonomycetes)から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせ。
【0105】
本発明の組成物の使用対象となり得る好ましい植物病原性真菌及び卵菌種には、Basidiomycetes、Ascomycetes、Deuteromycetesまたは不完全真菌、Chytridiomycetes、Zygomycetes、Microspolidia、及びOomycetesが含まれる。これらの中から特に例を挙げるとすると、限定されないが、Puccinia属種、Ustilago属種、Tilletia属種、Uromyces属種、Phakopsora属種、Rhizoctonia属種、Erysiphe属種、Sphaerotheca属種、Podosphaera属種、Uncinula属種、Helminthosporium属種、Rhynchosporium属種、Pyrenophora属種、Monilinia属種、Sclerotinia属種、Septoria属種(Mycosphaerella属種、Zymoseptoria属種)、Venturia属種、Botrytis属種.Alternaria属種、Fusarium属種、Cercospora属種、Cercosporella herpotrichoides、Colletotrichum属種、Pyricularia oryzae、Sclerotium属種、Phytophthora属種、Pythium属種、Plasmopara viticola、Peronospora属種、Pseudoperonospora cubensis、Bremia lactucaeである。
【0106】
好ましい実施形態では、真菌は、Ascomycota門に属し、好ましくは、Dothideomycetes網に属し、より好ましくは、Capnodiales目に属し、さらにより好ましくは、Mycosphaerellaceae科に属し、さらにより好ましくは、Septoria属に属し、最も好ましくは、Septoria tritci種である。
【0107】
好ましい実施形態では、真菌は、SARクレード、好ましくは、Oomycota門、より好ましくは、Peronosporales目、さらにより好ましくは、Peronosporaceae科に属する。好ましくは、真菌は、Plasmopara属に属し、好ましくは、Plasmopara viticola種である。好ましくは、真菌は、Phytophthora属に属し、好ましくは、Phytophthora infestans種である。
【0108】
本発明の組成物の使用対象となり得る特定の真菌種感染体には、穀類でのEnsiphe graminis、穀類(特に、コムギ)でのZymoseptoria tritici、穀類(特に、イネ)でのMagnaporthe oryzae、ウリ科植物でのErysiphe cichoracearum及びSphaerotheca fuliginea、リンゴでのPodosphaera leucotricha、つる植物でのUncinula necator、リンゴでのVenturia inaequalis(黒星病)、穀類でのHelminthosporium種、コムギでのSeptoria nodorum、イチゴ及びブドウでのBotrytis cinerea(灰色かび病)、アメリカホドイモでのCercospora arachidicola、コムギ及びオオムギでのPseudocercosporella herpotrichoides、イネでのPyricularia oryzae、さまざまな植物でのFusarium属種及びVerticillium属種、ならびに果実及び野菜でのAlternaria属種が含まれる。
【0109】
本発明の組成物の使用対象となり得る植物真菌病の例としては、限定されないが、葉枯病(具体的には、コムギ葉枯病)、腐病、Fusarium属種による萎凋病、かいよう病(canker rot)、黒根腐病、Thielaviopsis属種による根腐病、イモチ病(具体的には、イネイモチ病)、ワタ腐病(cottony rot)、黒穂病、ダイズさび病、穀類さび病、ジャガイモ胴枯病、うどんこ病、根こぶ病、炭疽病、立枯病、Rhizictonia属による腐病、尻腐病、しみ腐病(cavity spot)、褐色輪紋病(target spot)、黒葉枯病、septoria属による斑点病(septoria spot)、リングスポット(ling spot)、根朽病、茎枯病、黒こぶ病(black knot)、麦角病、リーフブリスター(leaf blister)、黒星病、雪腐病、すす病、及びバーティシリウム萎凋病が挙げられる。
【0110】
本発明の使用及び本発明の方法は、好ましくは、植物病原性疾患の処理を含み、こうした植物病原性疾患は、好ましくは、真菌病によって引き起こされる。植物病原性疾患は、植物またはその種子の真菌病であり得、こうした植物またはその種子は、例えば、穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、モロコシなど)、果樹(リンゴ、セイヨウナシ、セイヨウスモモ、モモ、アーモンド、サクランボ、バナナ、ブドウ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリーなど)、柑橘類(オレンジ、レモン、マンダリン、ブドウ果実など)、マメ科植物(マメ、エンドウ、レンズマメ、ダイズなど)、野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ナス、コショウなど)、ウリ科植物(カボチャ(pumpkin)、ズッキーニ、キュウリ、メロン、スイカなど)、油性植物(ヒマワリ、セイヨウアブラナ、ピーナッツ、カスター、ココナツなど)、タバコ、コーヒー、チャ、ココヤシ、サトウダイコン、サトウキビ、ワタ、または園芸植物などである。
【0111】
好ましくは、植物は、農作植物、園芸植物、観賞植物、及び林業植物からなる群から選択される。好ましくは、植物は、農作物である。
【0112】
本明細書の目的では、「植物」という用語は、経済的に重要な植物及び/または人工栽培植物として理解されることになる「作物」という用語と同義である。本明細書で使用される「植物」という用語には、植物のすべての部分(発芽種子、実生、草本植生など)ならびに確立された木本植物(すべての地下部分(根など)及び地上部分を含む)を含む。
【0113】
好ましい実施形態では、植物は、農作植物である。本明細書の目的では、「農作植物」は、一部(例えば、種子)もしくはすべてが商業規模で収穫もしくは栽培される植物、または飼料、食物、繊維(例えば、ワタ、リネン)、可燃物(例えば、木材、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオマス)、もしくは他の化合物の重要な資源となる植物である。好ましい農作植物は、例えば、a)穀類(例えば、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、オートムギ、モロコシ、またはイネ)、ビート(例えば、サトウダイコンまたは飼料用ビート)、b)果実(ナシ状果、核果、またはソフトフルーツなど(例えば、リンゴ、セイヨウナシ、セイヨウスモモ、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、またはスグリ)、マメ科植物(レンズマメ、エンドウ、アルファルファ、またはダイズなど)、c)油脂植物(セイヨウアブラナ、アブラナ、キャノーラ、アマニ、カラシナ、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、カカオマメ、トウゴマ、アブラヤシ、アメリカホドイモ、またはダイズなど)、d)ウリ科植物(カボチャ(squash)、キュウリ、またはメロンなど)、e)繊維植物(ワタ、アマ、アサ、またはジュートなど)、f)柑橘類果実(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、またはマンダリンなど)、g)野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ウリ科植物、またはパプリカなど)、h)クスノキ科植物(アボカド、ニッケイ、またはショウノウなど)、i)エネルギー植物及び原料植物(トウモロコシ、ダイズ、セイヨウアブラナ、キャノーラ、サトウキビ、またはアブラヤシなど)、j)タバコ、k)ナッツ、l)コーヒー、m)チャ、n)バナナ、o)つる植物(食用ブドウ及びグレープジュース用ブドウ)、p)ホップ、q)芝生、ならびにr)天然のゴムの木である。
【0114】
好ましい農作植物は、農作物(ジャガイモ、サトウダイコン、穀類(コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、モロコシ、イネ、トウモロコシ(corn)、ワタ、セイヨウアブラナ、アブラナ、及びキャノーラなど)、マメ科植物(ダイズ、エンドウ、及びソラマメなど)、ヒマワリ、サトウキビ、野菜(キュウリ、トマト、タマネギ、セイヨウネギ、レタス、及びカボチャ(squash)など))である。好ましい農作植物は、ダイズ、ヒマワリ、トウモロコシ(corn)、ワタ、キャノーラ、サトウキビ、サトウダイコン、ナシ状果果実、オオムギ、オートムギ、モロコシ、イネ、及びコムギから選択される。好ましい農作植物は、ダイズ、ヒマワリ、トウモロコシ(corn)、ワタ、キャノーラ、サトウキビ、サトウダイコン、ナシ状果果実、オオムギ、オートムギ、モロコシ、イネ、及びコムギから選択される。好ましい農作植物は、コムギ、オオムギ、トウモロコシ(corn)、ダイズ、イネ、キャノーラ、及びヒマワリから選択される。好ましい農作植物は、コムギ、オオムギ、オートムギ、イネ、モロコシ、オオバコ、トウモロコシ(maize)、ジャガイモ、野菜、及び果実から選択される。
【0115】
好ましい実施形態では、植物は、園芸植物である。本明細書の目的では、「園芸植物」は、園芸(例えば、観賞植物、野菜、及び/または果実の栽培)で一般に使用される植物である。観賞植物の例は、芝生、ゼラニウム、ペラゴニア(pelargonia)、ペチュニア、ベゴニア、及びフクシアである。野菜の例は、ジャガイモ、トマト、コショウ、ウリ科植物、キュウリ、メロン、スイカ、ニンニク、タマネギ、ニンジン、キャベツ、マメ、エンドウ、及びレタスであり、より好ましくは、トマト、タマネギ、エンドウ、及びレタスである。果実の例は、リンゴ、セイヨウナシ、サクランボ、イチゴ、柑橘類、モモ、アンズ、及びブルーベリーである。
【0116】
好ましい実施形態では、植物は、観賞植物である。本明細書の目的では、「観賞植物」は、造園(例えば、公園、庭園、及びバルコニー)で一般に使用される植物である。例は、芝生、ゼラニウム、ペラゴニア(pelargonia)、ペチュニア、ベゴニア、及びフクシアである。
【0117】
好ましい実施形態では、植物は、林業植物である。本明細書の目的では、「林業植物」は木であり、より具体的には、森林再生または産業的プランテーションで使用される木である。産業的プランテーションは、一般に、林産物(木材、パルプ、紙、ゴムノキ、クリスマスツリー、または造園目的の若木など)の商業的生産に役立つ。林業植物の例は、針葉樹(マツのようなもの、具体的には、Pinus属種、モミ、及びトウヒ)、ユーカリ、熱帯の木(チーク、ゴムノキ、アブラヤシのようなもの)、ヤナギ(Salix)、具体的には、Salix属種、ポプラ(ハコヤナギ)、具体的には、Populus属種、ブナ、具体的には、Fagus属種、カバノキ、アブラヤシ、及びオークである。
【0118】
本発明のトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、文献に記載のスルホニウム化合物の標準的な合成経路に沿って合成され得る。例えば、R3残基が所望の鎖長を有する脂肪アルコール(C18-32-アルキル-OH)は、例えば、SOClまたはSOClとの反応によって、対応するアルキル塩化物C18-32-アルキル-Clへと変換され得る。このようにして得られたアルキル塩化物をアルキルチオール(C1-3-アルキル-SH)と反応させることで、チオエーテルC18-32-アルキル-S-C1-4-アルキルを得ることができる。次に、このようにして得られたチオエーテルを、適切なアルキル化剤(C1-3-アルキル-Iなど)と反応させることによってアルキル化することで、スルホニウムヨウ化物C18-32-アルキル-S(C1-4-アルキル)を得ることができる。対応する塩化物塩は、過剰量の適切な塩(NaClなど)を用いるメタセシスによって得ることができる。
【実施例
【0119】
本発明は、下記の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例を、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0120】
実施例1:-Septoria tritciによるコムギ葉枯病
Septoria tritci(Zymoseptoria tritici(Z.tritici))によるコムギ葉枯病に対する本発明のオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)の保護能力を調べ、G.Steinberg et al.A lipophilic cation protects crops against fungal pathogens by multiple modes of action.Nature Communications 11:1608(2020)に知見が存在する比較用のオクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物(ODS-I)の保護能力と比較した。
【0121】
Septoria tritci種は、真菌界Ascomycota門Dothideomycetes網Capnodiales目Mycosphaerellaceae科Septoria属に属する。
【0122】
UVによる変異誘発を使用する下記の手順に従って殺真菌剤耐性変異体を生成させた。18℃で5日間増殖させたZ.tritici IPO323細胞を酵母エキスペプトンデキストロース(YPD)寒天プレートから収集し、分生子細胞を滅菌水に浮遊させた。Cellometer Auto 1000セルカウンター(Nexcelom Biosciences,Lawrence,USA)を使用して細胞数を決定し、細胞密度を1・10個/mlに調整した。殺真菌剤(各殺真菌剤につき、5×IC100、10×IC100、50×IC100、100×IC100)を含めたYPD寒天プレート上にプレート当たり2百万個の細胞(200μl(1・10個/ml))を広げ、UV波長254nm、50mJcm-2でUvitecクロスリンカーCL-508(Uvitec,Cambridge,UK)を使用して変異誘発に供してその致死率を約50%とした。暗所、18℃で選択プレートを14日間インキュベートした。視認可能なコロニーを選択プレートからピックアップし、殺真菌剤(アゾキシストロビン:5×IC100:1.5μg/ml;フルキサピロキサド:5×IC100:3.0μg/ml)を含めたプレートで確認した。実験ごとに全部で4百万個の細胞を播種し(実験当たりのプレート枚数2枚)、各実験を5回繰り返した。DMSO(最終濃度0.8%)及びメタノール(最終濃度0.3%)を含む対照については、プレート当たり1000個のZ.tritici細胞を広げ(実験当たりのプレート枚数2枚、実験回数5回)、上記のようにプレートをインキュベートした。
【0123】
視認可能なコロニーの数を数え、生存率を決定した。プロトコールは、G.Scalliet et al.2012,PLoS ONE 7(4):e35429のものを改変した。本発明のオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)は、プレート上での増殖を効率的に抑制し、比較用のオクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物(ODS-I)よりも約2.5倍良好なものであることが明らかになった。
【0124】
したがって、塩化物対アニオンを有する塩として存在する本発明のスルホニウム化合物の抗真菌作用は、ヨウ素対アニオンを有する塩を形成するそれぞれの化合物と比較して優れたものである。この優れた抗真菌活性は、Septoria tritciによるコムギ葉枯病に対して実証されている一方で、他の真菌に関しても同様に存在することになる。
【0125】
図1には、Z.triticiに対するIC100値の決定に関する実験結果が示される。
【0126】
実施例2-Plasmopara viticolaによって引き起こされるブドウべと病
ブドウの切り離した葉に対するP.viticolaに対して、本発明のオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)が、2つの参照殺真菌剤(すなわち、フォルペット80WG及びドジン(Technical product))と比較して顕著なレベルの保護を与え得るかどうかを調べた。この目的では、用量効果曲線及びED50を決定した。
【0127】
Plasmopara viticola種は、SARクレードOomycota門Peronosporales目Peronosporaceae科Plasmopara属に属する。
【0128】
材料及び方法:真菌株(病原体)として、Plasmopara viticola(株名PvS)を使用した。この株は、フランスの非処理つる植物葉から2007年に単離されたものである。この株は、ブドウべと病に使用されるすべての殺真菌剤に感受性であることが知られている。
【0129】
下記の殺真菌剤製剤を使用した。
【0130】
【表1】
【0131】
300L/haに相当する体積の水で製剤を調製した。葉上での保持を改善する界面活性剤(Tweenなど)またはその他の化合物は使用しなかった。
【0132】
インプランタ実験の時系列は下記の通りであった。
(a)0日目:切り離した葉に対する携帯用散布器での予防的処理(100L/ha);葉の背軸面に対する処理を行った。
(b)処理後1日目:葉片を使用した。調整した胞子嚢懸濁液を用いて葉の背軸面に対するP.viticolaの接種を実施した。
(c)接種後7日目:病気の重症度及び強度を観察した。
【0133】
ステップ(a)-予防的処理:若い植物からブドウの葉(var.Chardonnay)を取り、表面を消毒した。300L/haの送達用に調整した携帯用散布器(2バール)を用いて殺真菌剤調製物または蒸留水(対照)で各葉の背軸面を処理した。試験条件ごとに2枚または3枚の葉を処理した。処理後1日目に、非処理または処理済のブドウ葉を切断して葉片にした(3回反復実施し、それぞれが少なくとも7枚の葉片を含むようにした)。背軸面を上にして葉片をペトリ皿に移した。
【0134】
ステップ(b)-ブドウ葉片へのP.viticolaの接種:各葉片の背軸面にP.viticola株PvSの調整胞子嚢懸濁液を接種した。接種後、ペトリ皿を気候室に置いた:日中温度20℃/夜間温度16℃-光周期:明期16時間/暗期8時間、相対湿度(RH)制御実施。
【0135】
ステップ(c)-病気評価:感染強度及び分析:下記の任意病気評点を使用することによって7dpiの時点で病気の評価を実施した。
-0:真菌の増殖なし
-1:胞子形成を伴う非常に小さな病斑
-2:液滴よりも小さい胞子形成病斑
-3:元の液滴と同じサイズの胞子形成病斑
-4:液滴のサイズを超える胞子形成病斑
【0136】
下記の式を使用して病気重症度指数(DSI)を決定した。
【数1】
【0137】
下記の式を使用することによってDSIを観測効力(OE)へと変換した。
OE=((β-α)/β)×100
式中、αは処理植物のDSI(%)に対応し、βは、非処理(対照)植物のDSI(%)に対応する。Xlstat統計的検定ソフトウェア(閾値α=5%)を使用して適切な統計的検定を使用することによって値を比較した。
【0138】
葉片の分布を使用して病気重症度指数(DSI)を決定し、試験物ごとにDSI値を観測効力(OE)へと変換した。制御条件下でブドウ葉片に対してP.viticola株PvSを接種する1日前に予防的に処理を適用した。殺真菌剤のDSI%の比較については、ODS-ClのDSI評価において活性成分1mg/L(ppm)~1000ppmの間で6つの散布量を試験した。参照殺真菌剤フォルペット80WGは3333ppmで試験し、参照殺真菌剤ドジンは2267ppmの圃場承認散布量で試験した。ブドウ葉片に対するP.viticola株PvSに対してすべての殺真菌剤を24時間予防的に直接使用した。フィッシャーLSDパラメトリック検定(a=5%)を統計的検定として使用した。
【0139】
結果は図2に示される。
【0140】
示されるように、この試験において直接試験したオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)ベースの殺真菌剤は、べと病からブドウの葉を保護する上で有効なものであった(EC50=70ppmまたは活性成分21g/ha)。Plasmopara viticolaに対して強固な用量効果が観察された。圃場推奨散布量で使用した2つの参照もまた、P.viticola症状の発症に対する完全な保護を示した。フォルペット80WG(3333ppm)及びドジン(2267ppm)は両方共、べと病に対する完全な制御を示したが、それらの用量は顕著に高いものであった。
【0141】
実施例3-Phytophthora infestansによって引き起こされるジャガイモ葉枯病
他の卵菌、すなわち、ジャガイモ(及びトマト)の葉枯病の病原体であるPhytophthora infestansもまた、ODS-Clによって制御され得るかどうかをさらに調べた。
【0142】
Phytophthora infestans種は、SARクレードOomycota門Peronosporales目Peronosporaceae科Phytophthora属に属する。
【0143】
P.infestansは卵菌(真菌属とはクレードが異なる)であり、その胞子は風及び水によって拡散し得る。無性生殖サイクル内では感染組織から胞子嚢が放出され、この胞子嚢は、ある特定の状況の下で発芽し、植物組織に感染し得る(間接発芽と称される)。胞子嚢は、そこに含まれる遊走子も放出し得、この遊走子は発芽し、組織に感染することになる(直接発芽と称される)。遊走子は鞭毛を有しており、この鞭毛は、葉表面または土壌中のいずれかの水分条件の下で移動性を高めることを可能にする。無性生殖生活環から生じる胞子は高い移動性を有するが、生存能は低い。一方で、有性生殖では、独力での移動性は有さないが、潜在性の生理学的状況の下では土壌中で最大数年間存続し得る卵胞子が生じる。季節の終了時点で感染残存植物物質は寒気によって除去されることになるが、卵胞子は依然として生存可能であり、環境条件がより好ましくなった時点で新たな疫学サイクルの出発点となる。
【0144】
組織内に入った時点で、数日後に最初の症状が葉レベルで現れ始める。症状は葉レベルで明らかに視認可能なことが多いが、他の器官(茎、果実(トマト)、または塊茎など)も感染を受ける可能性がある。塊茎への感染の場合、病気は収穫時には潜在性を留め、後の保存中に表面化することもあり得る。感染を受けた葉は高湿度条件の下で遊走子を放出し、放出された遊走子は、一区画の至る所に急速に広がり得る。
【0145】
殺真菌剤を使用することは、P.infestansの拡散を抑制するための主要方針であることから、この病原体は、特有の細胞標的に作用様式が限られた何らかの活性成分(いわゆる、単一箇所活性成分)に耐性を獲得している。多箇所活性成分を使用することは、その作用様式が耐性出現を可能にしにくいと考えられるため、大きな利点を与え得る。
【0146】
材料及び方法:真菌株(病原体)として、Phytophthora infestans(株名Pi96)を使用した。この株は、欧州の非処理ジャガイモ試料から単離されたものである。この株は、すべての殺真菌剤に感受性であることが知られている。
【0147】
下記の殺真菌剤製剤を使用した。
【0148】
【表2】
【0149】
インプランタ実験の時系列は下記の通りであった。
(a)(-1)dpi:300L/ha相当体積の送達用に調整した携帯用散布器を用いてジャガイモの葉に対して予防的処理を実施した。
(b)0dpi:切り離したジャガイモの葉(5枚の小葉)に対して、調整した胞子嚢懸濁液を用いてP.infestansの接種を実施した。
(c)3dpiならびに接種後10日目:ジャガイモの小葉に対して病気の評価を実施した。
【0150】
ステップ(a)-予防的処理:若い植物からジャガイモの葉(var.Bintje)を取り、表面を消毒した。300L/haの送達用に調整した携帯用散布器(2バール)を用いて殺真菌剤調製物または蒸留水(対照)で、切り離した葉のそれぞれの向軸面を処理した(予防的処理)。試験条件ごとに、少なくとも3枚の葉または少なくとも18枚の接種済小葉を処理した。予防的処理24時間:処理後1日目に、非処理または処理済のジャガイモ葉を切断して小葉にした(3回反復実施し、それぞれが少なくとも5~7枚の小葉を含むようにした)。背軸面を下にして小葉をペトリ皿に移した。
【0151】
ステップ(b)-ジャガイモの小葉へのP.infestansの接種:切り離した処理済小葉または非処理小葉に対して、P.infestans株Pi96の調整胞子嚢懸濁液の液滴で接種を施した。接種後、下記の条件の下にある気候室内の飽和湿度雰囲気下にジャガイモの葉を移した:日中18℃-14時間/夜間15℃-10時間。
【0152】
ステップ(c)-病気の評価:感染強度及び分析:実施例2に従って病気の評価を実施した。
【0153】
病気の重症度(DSI)の評価及び処理の有効性に関して、予防的に処理し、処理から24時間後にP.infestansを接種したジャガイモ葉から得られたDSI(病気重症度指数)の変化を決定した。DSIは、病気を有する小葉の表面に対するものである。以下の表に結果のまとめが示される。
【0154】
【表3】
【0155】
結果は図3にも示される。
【0156】
殺真菌剤のDSI%の比較については、予防的に処理し、処理から24時間後にP.infestansを接種したジャガイモ葉から得られた殺真菌剤の有効性は、最終的な評価タイミングの時点(10dpi)でのDSIから計算した。
【0157】
結果は図4にも示される。
【0158】
示されるように、この試験で直接試験したオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)ベースの殺真菌剤は、100ppmから始まる用量で葉枯病からジャガイモの葉を保護する上で有効である。1000ppmで使用した場合、これと同じ用量で使用されるDithan Neotec(マンコゼブ)及びSYLLIT MAX(ドジン)の両参照から得られるものと同様にODS-Clは病気を完全に制御することができる。
【0159】
実施例4-異なるpH値での水溶性
本発明のオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)の水溶性及びオクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物(ODS-I)の水溶性を、異なるpH値で決定した。
以下の表に結果のまとめが示される。
【0160】
【表4】
【0161】
結果は図5に示される。
【0162】
示されるように、オクタデシルジメチルスルホニウムヨウ化物(ODS-I)と比較してオクタデシルジメチルスルホニウムクロリド(ODS-Cl)は水への溶解性が高い。さらに、ODS-Clの溶解性はpH値に依存する:pH7では0.28g/LのODS-Clが水に溶解するにすぎないが、pH値が上昇しても、pH値が低下しても、ODS-Clの溶解性は顕著に上昇する(pH10では0.94g/Lであり、pH2.2では1.65g/L)。
【図面の簡単な説明】
【0163】
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
本発明のトリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドは、文献に記載のスルホニウム化合物の標準的な合成経路に沿って合成され得る。例えば、R3残基が所望の鎖長を有する脂肪アルコール(C18-32-アルキル-OH)は、例えば、SOClまたはSOClとの反応によって、対応するアルキル塩化物C18-32-アルキル-Clへと変換され得る。このようにして得られたアルキル塩化物をアルキルチオール(C1-3-アルキル-SH)と反応させることで、チオエーテルC18-32-アルキル-S-C1-4-アルキルを得ることができる。次に、このようにして得られたチオエーテルを、適切なアルキル化剤(C1-3-アルキル-Iなど)と反応させることによってアルキル化することで、スルホニウムヨウ化物C18-32-アルキル-S(C1-4-アルキル)を得ることができる。対応する塩化物塩は、過剰量の適切な塩(NaClなど)を用いるメタセシスによって得ることができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.一般式(A)
【化3】
のトリアルキルスルホニウムクロリドまたはその溶媒和物を含む組成物であって、
式中、
R1が、-CH 、-CH CH 、-CH CH CH 、または-CH(CH を表し、
R2が、-CH 、-CH CH 、-CH CH CH 、または-CH(CH を表し、
R3が、-(CH -CH を表し、nが、17~31の範囲内の整数であり、
前記トリアルキルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して0.1重量%超である、前記組成物。
2.-前記トリアルキルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して少なくとも10重量%であり、
-前記組成物が水性であり、8~13の範囲内のpH値を有する、上記1に記載の組成物。
3.R3が、-(CH 17 -CH 、-(CH 19 -CH 、または-(CH 21 -CH を表す、上記1または上記2に記載の組成物。
4.R1及びR2の両方が-CH を表す、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
5.前記トリアルキルスルホニウムクロリドが、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド、好ましくは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドである、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
6.溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ムース、ペースト、粉末、及び顆粒から選択される、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
7.液体またはペーストである、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
8.23℃での動粘度が、
-少なくとも0.5mPa・s、好ましくは、少なくとも0.6mPa・s、好ましくは、少なくとも0.7mPa・s、好ましくは、少なくとも0.8mPa・s、好ましくは、少なくとも0.9mPa・s、好ましくは、少なくとも1.0mPa・sであり、及び/または
-高くとも10,000mPa・s、好ましくは、高くとも9,000mPa・s、好ましくは、高くとも8,000mPa・s、好ましくは、高くとも7,000mPa・s、好ましくは、高くとも6,000mPa・s、好ましくは、高くとも5,000mPa・s、好ましくは、高くとも4,000mPa・s、好ましくは、高くとも3,000mPa・s、好ましくは、高くとも2,000mPa・s、好ましくは、高くとも1,000mPa・s、好ましくは、高くとも900mPa・s、好ましくは、高くとも800mPa・s、好ましくは、高くとも700mPa・s、好ましくは、高くとも600mPa・s、好ましくは、高くとも500mPa・s、好ましくは、高くとも400mPa・s、好ましくは、高くとも300mPa・s、好ましくは、高くとも200mPa・s、好ましくは、高くとも100mPa・s、好ましくは、高くとも90mPa・s、好ましくは、高くとも80mPa・s、好ましくは、高くとも70mPa・s、好ましくは、高くとも60mPa・s、好ましくは、高くとも50mPa・s、好ましくは、高くとも40mPa・s、好ましくは、高くとも30mPa・s、好ましくは、高くとも20mPa・s、好ましくは、高くとも10mPa・sである、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
9.農業的に許容可能な担体を含む、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
10.前記担体の含量が、前記組成物の総重量に対して少なくとも1.0重量%である、上記9に記載の組成物。
11.前記担体の含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5.0重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも25重量%、好ましくは、少なくとも30重量%、好ましくは、少なくとも40重量%、好ましくは、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%、好ましくは、少なくとも70重量%、好ましくは、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも90重量%である、上記9または上記10に記載の組成物。
12.前記担体が、溶媒である、上記9~11のいずれかに記載の組成物。
13.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドが、前記担体に完全に溶解する、上記9~12のいずれかに記載の組成物。
14.前記担体が、
(a)水、
(b)モノアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、またはベンジルアルコールなど)、
(c)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、またはジプロピレングリコールなど)、
(d)モノアルキルグリコールエーテル(トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、
(e)ジアルキルグリコールエーテル(エチレングリコールジメチルエーテルなど)、
(f)グリコールエステル、
(g)グリセロール及びグリセロールエーテル(イソプロピリジングリセロールなど)、(h)環式エーテル(テトラヒドロフランまたはジオキソランなど)、
(i)ケトン(アセトン、ブタノン、またはシクロヘキサノンなど)、
(j)一塩基エステル(乳酸エチル、酢酸エチル、またはガンマ-ブチロラクトンなど)、
(k)二塩基エステル(グルタル酸ジメチルエステルまたはコハク酸ジメチルエステルなど)、
(l)アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)、
(m)ジアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、
(n)アルキルスルホン(スルホランなど)、
(o)アルキルアミド(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、またはジメチルホルムアミドなど)、
(p)アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、またはジアルキルモノエタノールアミンなど)(q)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、
(r)油(植物起源または動物起源の油、フィトブランド油(phytobland oil)、作物油、作物油濃縮物、植物油、メチル化種子油、石油、及びシリコーン油など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、上記9~13のいずれかに記載の組成物。
15.前記担体が、水であるか、または水を含む、上記9~14のいずれかに記載の組成物。
16.前記組成物が、水性であり、2~14の範囲内のpH値を有する、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
17.前記pH値が、3~13の範囲内である、上記16に記載の組成物。
18.-少なくとも2.5、好ましくは、少なくとも3.0、好ましくは、少なくとも3.5、好ましくは、少なくとも4.0、好ましくは、少なくとも4.5、好ましくは、少なくとも5.0、好ましくは、少なくとも5.5、好ましくは、少なくとも6.0、好ましくは、少なくとも6.5、好ましくは、少なくとも7.0、好ましくは、少なくとも7.5、好ましくは、少なくとも8.0、好ましくは、少なくとも8.5、好ましくは、少なくとも9.0、好ましくは、少なくとも9.5、好ましくは、少なくとも10、好ましくは、少なくとも10.5、好ましくは、少なくとも11、及び/または
-高くとも14、好ましくは、高くとも13.5、好ましくは、高くとも13、好ましくは、高くとも12.5、好ましくは、高くとも12、好ましくは、高くとも11.5、好ましくは、高くとも11.0、好ましくは、高くとも11.5、好ましくは、高くとも11.0、好ましくは、高くとも10.5、好ましくは、高くとも10.0、好ましくは、高くとも9.5、好ましくは、高くとも9.0、好ましくは、高くとも8.5、好ましくは、高くとも8.0、好ましくは、高くとも7.5のpH値を有する、上記16または上記17に記載の組成物。
19.3.0±2.0、好ましくは、3.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
20.4.0±3.0、好ましくは4.0±2.0、好ましくは4.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
21.5.0±4.0、好ましくは、5.0±3.0、好ましくは5.0±2.0、好ましくは5.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
22.6.0±5.0、好ましくは、6.0±4.0、好ましくは、6.0±3.0、好ましくは、6.0±2.0、好ましくは、6.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
23.7.0±6.0、好ましくは、7.0±5.0、好ましくは、7.0±4.0、好ましくは、7.0±3.0、好ましくは、7.0±2.0、好ましくは、7.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
24.8.0±5.0、好ましくは、8.0±4.0、好ましくは、8.0±3.0、好ましくは、8.0±2.0、好ましくは、8.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
25.9.0±4.0、好ましくは、9.0±3.0、好ましくは、9.0±2.0、好ましくは、9.0±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
26.10±4.0、好ましくは、10±3.0、好ましくは、10±2.0、好ましくは、10±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
27.11±3.0、好ましくは、11±2.0、好ましくは、11±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
28.12±2.0、好ましくは、12±1.0の範囲内のpH値を有する、上記16~18のいずれかに記載の組成物。
29.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは、少なくとも1.0重量%、好ましくは、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも12.5重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも17.5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%である、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
30.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、多くとも97.5重量%、好ましくは、多くとも95重量%、好ましくは、多くとも92.5重量%、好ましくは、多くとも90重量%、好ましくは、多くとも87.5重量%、好ましくは、多くとも85重量%、好ましくは、多くとも82.5重量%、好ましくは、多くとも80重量%である、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
31.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して10~80重量%の範囲内である、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
32.固体である、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
33.前記担体が、
(a)天然の土壌鉱物及び土類鉱物(ケイ酸塩、方解石、大理石、軽石、海泡石、タルク、カオリン、粘土、タルク、石灰石、石灰、炭酸カルシウム、チョーク、赤土、黄土、石英、パーライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ベントナイト、ドロマイト、または珪藻土(diatomaceous earth)など)、
(b)合成鉱物(シリカ、シリカゲル、アルミナ、またはケイ酸塩(ケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムなど)など)、
(c)無機塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ケイ素、酸化マグネシウムなど)、
(d)無機粉末または有機粉末の合成顆粒、
(e)有機材料(おがくず、ココナツの殻、トウモロコシの穂もしくは皮、またはタバコの茎など)の顆粒、
(f)珪藻土(kieselguhr)、
(g)リン酸三カルシウム、
(h)多糖(セルロース、セルロースエーテル、デンプン、キサンタン、プルラン、グアーなど)、
(i)植物起源の産物(例えば、穀類食品、樹皮食品、木粉、ナッツ殻食品)、
(j)穀物粉末(トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、モロコシ、キビ、オートムギ、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、またはキノアから得られる粉末など)、
(k)他の有機材料(粉末化コルク、吸着性カーボンブラック、木炭、泥炭、土壌混合物、堆肥、農工業残渣など)、水溶性ポリマー、樹脂、またはろう、
(l)固体肥料(尿素またはアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなど)など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
34.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、
-少なくとも2.5μg/g、好ましくは、少なくとも5.0μg/g、好ましくは、少なくとも7.5μg/g、好ましくは、少なくとも10μg/g、好ましくは、少なくとも15μg/g、好ましくは、少なくとも20μg/g、好ましくは、少なくとも25μg/g、好ましくは、少なくとも30μg/g、好ましくは、少なくとも40μg/g、好ましくは、少なくとも50μg/g、好ましくは、少なくとも60μg/g、好ましくは、少なくとも70μg/g、好ましくは、少なくとも80μg/g、好ましくは、少なくとも90μg/g、及び/または
-多くとも200μg/g、好ましくは、多くとも190μg/g、好ましくは、多くとも180μg/g、好ましくは、多くとも170μg/g、好ましくは、多くとも160μg/g、好ましくは、多くとも150μg/g、好ましくは、多くとも140μg/g、好ましくは、多くとも130μg/g、好ましくは、多くとも120μg/g、好ましくは、多くとも110μg/g、好ましくは、多くとも100μg/g、好ましくは、多くとも90μg/g、好ましくは、多くとも80μg/g、好ましくは、多くとも70μg/g、好ましくは、多くとも60μg/g、好ましくは、多くとも50μg/g、好ましくは、多くとも40μg/g、好ましくは、多くとも30μg/g、好ましくは、多くとも20μg/g、好ましくは、多くとも10μg/gである、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
35.pH緩衝剤、増粘剤、沈着剤、水質調整剤、湿潤剤、保湿剤、葉クチクラ及び/または細胞膜透過助剤、界面活性剤、植物生育増強剤、発泡剤、消泡剤、展着剤、飛散制御剤、散布物飛散低減剤、蒸発低減剤、色素、ならびにUV吸収剤から互いに独立して選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
36.1つ以上の追加の抗真菌剤をさらに含む、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
37.前記1つ以上の追加の抗真菌剤が、
(1)エルゴステロール合成の阻害剤、
(2)複合体Iまたは複合体IIでの呼吸鎖の阻害剤、
(3)複合体IIIでの呼吸鎖の阻害剤、
(4)有糸分裂及び細胞分裂の阻害剤、
(5)複数箇所に作用する能力を有する化合物、
(6)宿主防御を誘導する能力を有する化合物、
(7)アミノ酸及び/またはタンパク質生合成の阻害剤、
(8)ATP生成の阻害剤、
(9)細胞壁合成の阻害剤、
(10)脂質及び膜の合成の阻害剤、
(11)メラニン生合成の阻害剤、
(12)核酸合成の阻害剤、
(13)シグナル伝達の阻害剤、
(14)脱共役剤として作用する能力を有する化合物、ならびに
(15)他の殺真菌剤
から互いに独立して選択される、上記36に記載の組成物。
38.前記1つ以上の追加の抗真菌剤が、アゾール、アミノ誘導体、ストロビルリン、特異的抗うどんこ病菌化合物、アニリン-ピリミジン、ベンズイミダゾール及び類似体、ジカルボキシイミド、ポリハロゲン化殺真菌剤、全身獲得抵抗性誘導物質、フェニルピロール、アシルアラニン、抗べと病菌化合物、ジチオカルバメート、アリールアミジン、亜リン酸及びその誘導体、殺真菌銅化合物、植物ベースの油(植物由来物質)、キトサン、硫黄ベースの殺真菌剤、殺真菌アミド、ならびに窒素ヘテロ環から互いに独立して選択される、上記36または上記37に記載の組成物。
39.予混合濃縮物、より好ましくは、予混合懸濁濃縮物、さらにより好ましくは、水性予混合懸濁濃縮物である、先行する番号のいずれかに記載の組成物。
40.(i)先行する番号のいずれかに記載の組成物と、(ii)希釈剤、好ましくは水と、を含む農業組成物、好ましくは、即時使用可能な水性組成物。
41.前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記農業組成物の総重量に対して、
-少なくとも2.5μg/ml、好ましくは、少なくとも5.0μg/ml、好ましくは、少なくとも7.5μg/ml、好ましくは、少なくとも10μg/ml、好ましくは、少なくとも15μg/ml、好ましくは、少なくとも20μg/ml、好ましくは、少なくとも25μg/ml、好ましくは、少なくとも30μg/ml、好ましくは、少なくとも40μg/ml、好ましくは、少なくとも50μg/ml、好ましくは、少なくとも60μg/ml、好ましくは、少なくとも70μg/ml、好ましくは、少なくとも80μg/ml、好ましくは、少なくとも90μg/ml、及び/または
-多くとも200μg/ml、好ましくは、多くとも190μg/ml、好ましくは、多くとも180μg/ml、好ましくは、多くとも170μg/ml、好ましくは、多くとも160μg/ml、好ましくは、多くとも150μg/ml、好ましくは、多くとも140μg/ml、好ましくは、多くとも130μg/ml、好ましくは、多くとも120μg/ml、好ましくは、多くとも110μg/ml、好ましくは、多くとも100μg/ml、好ましくは、多くとも90μg/ml、好ましくは、多くとも80μg/ml、好ましくは、多くとも70μg/ml、好ましくは、多くとも60μg/ml、好ましくは、多くとも50μg/ml、好ましくは、多くとも40μg/ml、好ましくは、多くとも30μg/ml、好ましくは、多くとも20μg/ml、好ましくは、多くとも10μg/mlである、上記40に記載の農業組成物。
42.上記1~39のいずれかに記載の組成物または上記40もしくは上記41に記載の農業組成物の駆除剤としての使用。
43.前記組成物が、殺真菌剤として使用される、上記42に記載の使用。
44.有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法であって、前記方法が、前記有害生物、その生息場所、前記有害生物による攻撃から保護すべき物体もしくは植物、土壌、前記植物が生育している場所、前記植物が生育することになる場所、または繁殖材料と、駆除剤として有効な量の上記1~39のいずれかに記載の組成物または上記40もしくは上記41に記載の農業組成物と、を接触させることを含む、前記方法。
45.前記有害生物が、真菌、好ましくは、有害真菌、好ましくは、植物病原性有害真菌である、上記44に記載の方法。
46.前記真菌が、
(a)Opisthosporidia(好ましくは、Aphelidea、Rozellidea、及びMicrosporidiaから選択される)、
(b)Chytridiomycota(好ましくは、Chytridiomycetes、Monoblepharidomycetes、及びHyaloraphidiomycetesから選択される)、
(c)Neocallimastigomycota、
(d)Blastocladiomycota、
(e)Zoopagomycota(好ましくは、Zoopagomycotina、Entomophthoromycotina(例えば、Basidiobolomycetes、Neozygitomycetes、Entomophthoromycetes)、及びKickxellomycotinaから選択される)、
(f)Mucoromycota(好ましくは、Mortierellomycotina及びMucoromycotinaから選択される)、
(g)Glomeromycota(好ましくは、Paraglomerales、Archaeosporales、Diversisporales、及びGlomeralesから選択される)、
(h)Basidiomycota(好ましくは、Pucciniomycotina(例えば、Agaricostilbomycetes、Atractiellomycetes、Classiculomycetes、Cryptomycocolacomycetes、Cystobasidiomycetes、Microbotryomycetes、Mixiomycetes、Pucciniomycetes、Spiculogloeomycetes、Tritirachiomycetes)、Ustilagomycotina(例えば、Ustilaginomycetes、Exobasidiomycetes、Malasseziomycetes、Moniliellomycetes)、及びAgaricomycotina(例えば、Tremellomycetes、Dacrymycetes、Agaricomycetes)から選択される)、
(i)Ascomycota(好ましくは、Taphrinomycotina(例えば、Taphrinomycetes、Neolectomycetes、Schizosaccharomycetes、Pneumocystidomycetes、Archaeorhizomycetes)、Saccharomycotina(例えば、Saccharomycetes、Saccharomycetales)、及びPezizomycotina(例えば、Arthoniomycetes、Coniocybomycetes、Dothideomycetes、Eurotiomycetes、Geoglossomycetes、Laboulbeniomycetes、Lecanoromycetes、Leothiomycetes、Lichinomycetes、Orbiliomycetes、Pezizomycetes、Sordariomycetes、Xylonomycetes)から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、上記45に記載の方法。
47.前記真菌が、Ascomycota門に属し、好ましくは、Dothideomycetes網に属し、より好ましくは、Capnodiales目に属し、さらにより好ましくは、Mycosphaerellaceae科に属し、さらにより好ましくは、Septoria属に属し、最も好ましくは、Septoria tritci種である、上記45または上記46に記載の方法。
48.前記真菌が、SARクレード、好ましくは、Oomycota門、より好ましくは、Peronosporales目、さらにより好ましくは、Peronosporaceae科に属する、上記45または上記46に記載の方法。
49.前記真菌が、Plasmopara属に属し、好ましくは、Plasmopara viticola種である、上記48に記載の方法。
50.前記真菌が、Phytophthora属に属し、好ましくは、Phytophthora infestans種である、上記48に記載の方法。
51.前記植物が、農作植物、園芸植物、観賞植物、及び林業植物からなる群から選択される上記44~50のいずれかに記載の方法。
52.前記植物が、農作物である、上記51に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)
【化1】
のトリアルキルスルホニウムクロリドまたはその溶媒和物を含む組成物であって、
式中、
R1が、-CH を表し、
R2が、-CH を表し、
R3が、-(CH-CHを表し、nが、17~31の範囲内の整数であり、
前記トリアルキルスルホニウムクロリドの含量が、前記組成物の総重量に対して0.1重量%超である、前記組成物。
【請求項2】
R3が、-(CH17-CH、-(CH19-CH、または-(CH21-CHを表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記トリアルキルスルホニウムクロリドが、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリド、好ましくは、n-オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドである、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
農業的に許容可能な担体を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記担体が、
(a)水、
(b)モノアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、またはベンジルアルコールなど)、
(c)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、またはジプロピレングリコールなど)、
(d)モノアルキルグリコールエーテル(トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、
(e)ジアルキルグリコールエーテル(エチレングリコールジメチルエーテルなど)、
(f)グリコールエステル、
(g)グリセロール及びグリセロールエーテル(イソプロピリジングリセロールなど)、(h)環式エーテル(テトラヒドロフランまたはジオキソランなど)、
(i)ケトン(アセトン、ブタノン、またはシクロヘキサノンなど)、
(j)一塩基エステル(乳酸エチル、酢酸エチル、またはガンマ-ブチロラクトンなど)、
(k)二塩基エステル(グルタル酸ジメチルエステルまたはコハク酸ジメチルエステルなど)、
(l)アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)、
(m)ジアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、
(n)アルキルスルホン(スルホランなど)、
(o)アルキルアミド(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、またはジメチルホルムアミドなど)、
(p)アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、またはジアルキルモノエタノールアミンなど)(q)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、
(r)油(植物起源または動物起源の油、フィトブランド油(phytobland oil)、作物油、作物油濃縮物、植物油、メチル化種子油、石油、及びシリコーン油など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、水性であり、2~14の範囲内のpH値を有する、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記トリアルキルスルホニウムクロリド、好ましくは、オクタデシルジメチルスルホニウムクロリドの含量が、各場合において、前記組成物の総重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは、少なくとも1.0重量%、好ましくは、少なくとも2.5重量%、好ましくは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも7.5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも12.5重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも17.5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記担体が、
(a)天然の土壌鉱物及び土類鉱物(ケイ酸塩、方解石、大理石、軽石、海泡石、タルク、カオリン、粘土、タルク、石灰石、石灰、炭酸カルシウム、チョーク、赤土、黄土、石英、パーライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ベントナイト、ドロマイト、または珪藻土(diatomaceous earth)など)、
(b)合成鉱物(シリカ、シリカゲル、アルミナ、またはケイ酸塩(ケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムなど)など)、
(c)無機塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ケイ素、酸化マグネシウムなど)、
(d)無機粉末または有機粉末の合成顆粒、
(e)有機材料(おがくず、ココナツの殻、トウモロコシの穂もしくは皮、またはタバコの茎など)の顆粒、
(f)珪藻土(kieselguhr)、
(g)リン酸三カルシウム、
(h)多糖(セルロース、セルロースエーテル、デンプン、キサンタン、プルラン、グアーなど)、
(i)植物起源の産物(例えば、穀類食品、樹皮食品、木粉、ナッツ殻食品)、
(j)穀物粉末(トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、モロコシ、キビ、オートムギ、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、またはキノアから得られる粉末など)、
(k)他の有機材料(粉末化コルク、吸着性カーボンブラック、木炭、泥炭、土壌混合物、堆肥、農工業残渣など)、水溶性ポリマー、樹脂、またはろう、
(l)固体肥料(尿素またはアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなど)など)、
ならびにそれらの組み合わせ
からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
pH緩衝剤、増粘剤、沈着剤、水質調整剤、湿潤剤、保湿剤、葉クチクラ及び/または細胞膜透過助剤、界面活性剤、植物生育増強剤、発泡剤、消泡剤、展着剤、飛散制御剤、散布物飛散低減剤、蒸発低減剤、色素、ならびにUV吸収剤から互いに独立して選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
1つ以上の追加の抗真菌剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ以上の追加の抗真菌剤が、
(1)エルゴステロール合成の阻害剤、
(2)複合体Iまたは複合体IIでの呼吸鎖の阻害剤、
(3)複合体IIIでの呼吸鎖の阻害剤、
(4)有糸分裂及び細胞分裂の阻害剤、
(5)複数箇所に作用する能力を有する化合物、
(6)宿主防御を誘導する能力を有する化合物、
(7)アミノ酸及び/またはタンパク質生合成の阻害剤、
(8)ATP生成の阻害剤、
(9)細胞壁合成の阻害剤、
(10)脂質及び膜の合成の阻害剤、
(11)メラニン生合成の阻害剤、
(12)核酸合成の阻害剤、
(13)シグナル伝達の阻害剤、
(14)脱共役剤として作用する能力を有する化合物、ならびに
(15)他の殺真菌剤
から互いに独立して選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
予混合濃縮物、より好ましくは、予混合懸濁濃縮物、さらにより好ましくは、水性予混合懸濁濃縮物である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
(i)先行請求項のいずれかに記載の組成物と、(ii)希釈剤、好ましくは水と、を含む農業組成物、好ましくは、即時使用可能な水性組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の組成物または請求項13に記載の農業組成物の駆除剤としての使用。
【請求項15】
有害生物を制御もしくは駆除する、及び/または植物健全性を改善するための方法であって、前記方法が、前記有害生物、その生息場所、前記有害生物による攻撃から保護すべき物体もしくは植物、土壌、前記植物が生育している場所、前記植物が生育することになる場所、または繁殖材料と、駆除剤として有効な量の請求項1~12のいずれかに記載の組成物または請求項13に記載の農業組成物と、を接触させることを含む、前記方法。
【国際調査報告】