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特表2023-542810脈管圧迫を軽減するための脈管間ブリッジを形成するためのカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】脈管圧迫を軽減するための脈管間ブリッジを形成するためのカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20231004BHJP
【FI】
A61M25/10 520
A61M25/10 550
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509721
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 US2020046073
(87)【国際公開番号】W WO2022035431
(87)【国際公開日】2022-02-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】キャシラロ,マット
(72)【発明者】
【氏名】ロックウッド,ケイシー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB28
4C267CC08
4C267DD01
(57)【要約】
圧迫を軽減することを目的として、脈管を接続するブリッジを形成するために脈管間スペースの中にフィラーを導入することにより、血管間の圧迫を軽減するためのカテーテル(10)が提供される。カテーテルには、シャフト(14)と、脈管内の圧迫を一時的に軽減するための、シャフトによって支持される拡大可能要素(16、18)と、拡大可能要素の間に位置する後退可能なニードル(30)とが設けられる。アクチュエータ(40)を使用することなどにより配備されると、ニードルは、カテーテルの取り出し時に圧迫を軽減するために、脈管の間にブリッジを形成するためにフィラーを脈管間スペースに送達することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを脈管間スペースの中に導入することにより血管間の圧迫を軽減するためのカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持される拡大可能要素と、
前記シャフトによって支持されるニードルであって、前記ニードルが、配備されるとき、前記フィラーを前記脈管間スペースの中に導入するために前記拡大可能要素の間に位置する先端部を含む、ニードルと
を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記シャフトが、ルーメンを含み、前記ニードルが、中空であり、前記ルーメンと連通する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記ルーメン内の後退位置から前記ニードルを配備するためのアクチュエータをさらに含む、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記シャフトが、膨張ルーメンを含み、前記拡大可能要素が、前記膨張ルーメンに流体連通する膨張可能バルーンを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シャフトが、ガイドワイヤルーメンを備える、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
複数のニードルが提供され、前記複数のニードルの各々が、前記拡大可能要素の間に位置する先端部を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記ニードルが、前記拡大可能要素の間に配備されるとき、湾曲する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記ニードルが、形状記憶物質を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記ニードルが、前記フィラーを遠隔の供給源から前記脈管間スペース内の位置に送達するように適合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
血管に隣接する脈管間スペースを有する前記血管間の圧迫を軽減するためのシステムであって、
配備されるときに前記脈管間スペースの中に延在するように適合されたニードルを含むカテーテルと、
前記血管間の圧迫を軽減するために、前記ニードルを介して前記脈管間スペースの中へ送達されるフィラーと
を備える、システム。
【請求項11】
前記カテーテルが、互いに離間された拡大可能要素を有する遠位端を備えるシャフトを含み、前記ニードルが、配備されるとき、前記拡大可能要素の間に位置する先端部を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記拡大可能要素が、膨張可能バルーンを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ニードルが、配備されるとき、湾曲する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ニードルが、形状記憶物質を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記カテーテル内の後退位置から、前記フィラーを前記脈管間スペースに送達するための配備位置まで、前記ニードルを移動させるためのアクチュエータをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記カテーテルが、複数のニードルを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
血管間の圧迫を軽減する方法であって、
前記血管の間の脈管間スペースの中にフィラーを注入するステップ
を含む、方法。
【請求項18】
前記注入ステップが、カテーテルに接続されたニードルを使用して、前記フィラーを前記脈管間スペースの中に注入するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記注入ステップの前に、前記方法が、
前記血管のうちの1つの圧迫された血管の中に前記カテーテルを挿入するステップと、
前記圧迫を軽減するために前記カテーテル上で拡大可能要素を拡大するステップと、
脈管壁を通して前記脈管間スペースの中まで前記ニードルを挿入するステップと
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記注入ステップが、前記カテーテル内の後退位置から前記拡大可能要素の間のスペースまで前記ニードルを配備するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による援用
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも、各々の個別の刊行物または特許出願が、参照により具体的にかつ個別に組み込まれるものとして示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
メイターナー症候群として知られる状態は、右腸骨動脈RIA(right iliac artery)により左腸骨静脈LIV(left iliac vein)が圧迫される場合に生じる(これら血管の、右腸骨静脈RIV(right iliac vein)、左腸骨動脈LIA(left iliac artery)、および隣接する脊椎骨V(通常は、第5腰椎)に対する位置を示す、図1に示される断面図を参照されたい)。この状態は、深部静脈血栓症の可能性を増加させるものであり、深部静脈血栓症は、有害な結果をもたらし得るものである。
【0003】
脈管圧迫を治療するための現在の治療は、非常に侵襲的であって望ましくない外科的修復を伴うか、または、脈管内インプラント(例えば、ステント)を使用して左腸骨静脈の開存性を回復させることを試みることによるものである。血管内手技は、侵襲性の低さに起因して多くの事例において手術より好適であるが、血管内手技は、圧迫を軽減するために静脈内にインプラントを残すことを必要とする。このことが、場合によっては、血栓塞栓、不快感、またはさらには虚脱を生じさせるなどの、問題を発生させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、メイターナー症候群を治療することなどを目的とした、脈管間の圧迫を軽減する改善された手法に対しての必要が確認されている。具体的には、身体内に脈管内インプラントを残すことを回避する、脈管間の圧迫を軽減する改善された手法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、シャフトを含むカテーテルに関連する。拡大可能要素がシャフトによって支持され、拡大されるときに、関連する脈管を拡大することにより圧迫を軽減するように機能することができる。拡大可能要素の間に位置するニードルが、ブリッジを形成するように脈管間スペースにフィラーを送達するために、配備および使用され得、したがって、フィラーが脈管の間の接続部を形成することができ、拡大可能要素が収縮され脈管から取り出されるときに、圧迫をより永久的に軽減するのを支援することができる。
【0006】
一実施形態において、シャフトが、ルーメンを有し、ニードルが、中空であり、ルーメンと連通する。ニードルがルーメン内で後退可能となり得、アクチュエータによって配備され得る。シャフトが、膨張ルーメンをさらに含むことができ、拡大可能要素が、膨張ルーメンに流体連通する膨張可能バルーンを備える。
【0007】
使用時、バルーンが、圧迫された脈管または狭くなった脈管(メイターナー症候群により圧迫された静脈など)を開くように膨張される。フィラーを、バルーンが膨張される間において、配備されたニードルを介して送達することができ、その後、固化することができる(例えば、3分以内)。フィラーが硬化または固化すると、バルーンが収縮され得、結果として、脈管が外側で、隣接する脈管にその弧長に沿ってシールされるので、脈管は開かれ、つまり非圧迫状態におかれる。シャフトが、フィラーの送達のために、ルーメンに加えて、ガイドワイヤルーメンをさらに備えることができ、ガイドワイヤルーメンが、ガイドワイヤを介して脈管内にカテーテルを配置するのに使用され得る。
【0008】
複数のニードルが、標的血管の異なる側面の上に物質を注入することなどを目的として、拡大可能要素の間に位置することができる。ニードルが、配備されるときに湾曲され得、温度条件の結果として、形状記憶の作動時に特定の向きをとることができる形状記憶物質を含むことができる。接着剤などのフィラーが、ニードルを介して脈管間スペース内の位置に送達されるように、遠隔の供給源からカテーテルに供給され得る。
【0009】
本開示の別の態様によると、血管に隣接する脈管間スペースを有する血管間の圧迫を軽減するためのシステムが提供される。システムが、配備時に脈管間スペースの中に延在するように適合されたニードルを含むカテーテルを備える。システムが、ニードルを介して脈管間スペースの中へ送達されるフィラーをさらに含む。
【0010】
1つの変形例では、カテーテルが、互いに離間された拡大可能要素を備え、ニードルが、配備時に拡大可能要素の間に位置する。拡大可能要素が、膨張可能バルーンを備えることができる。ニードルが、配備時に湾曲していてよく、形状記憶物質を含むことができる。ニードルが、アクチュエータを使用して配備され得、複数のニードルが、脈管間スペース内の異なる位置にフィラーを送達するために提供され得る。
【0011】
本開示は、血管間の圧迫を軽減する方法にさらに関連する。本方法は、血管の間の脈管間スペースの中にフィラーを注入するステップを含む。注入ステップが、カテーテルに接続されたニードルを使用して、フィラーを脈管間スペースに注入することを含むことができる。注入ステップの前に、本方法は、血管のうちの1つの血管の中にカテーテルを挿入するステップと、カテーテル上で拡大可能要素を拡大するステップと、脈管壁を通して脈管間スペースの中までニードルを挿入するステップと、を伴うことができる。注入ステップは、カテーテル内の後退位置から拡大可能要素の間のスペースまでニードルを配備するステップを含むことができる。
【0012】
添付図面と併せて以下の説明を参照することにより、本開示の上記のおよび別の利点がより良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒトの脈管系内における提案される本発明の使用環境の断面図である。
図2図2は、本開示の一態様を形成するカテーテルの概略側面図である。
図2A図2Aは、図2の線2A-2Aに沿った、図2のカテーテルの断面図である。
図2B図2Bは、図2の線2B-2Bに沿った、図2のカテーテルの断面図である。
図3図3は、本開示の一態様を形成するカテーテルの概略側面図である。
図3A図3Aは、図3の線3A-3Aに沿った、図3のカテーテルの断面図である。
図4】脈管間スペースに入れるためのニードルを配備するための種々のアクチュエータを示す図である。
図5】脈管間スペースに入れるためのニードルを配備するための種々のアクチュエータを示す図である。
図6】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図7】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図8】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図9】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図10】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図11】本開示の一態様によるカテーテルを使用してブリッジを作り出すことにより、脈管圧迫を治療するのに使用されるステップを示す進行図である。
図12】脈管間の圧迫を軽減するためのブリッジの位置を示す、脈管環境の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
分かり易いように、要素のうちの一部の要素の寸法が、他の要素に対して拡大される可能性があり、または、複数の物質的な要素が、1つの機能的ブロックまたは機能的要素に含まれる可能性がある。さらに、場合によっては、対応する要素または類似の要素を示すために、複数の図面の間で参照符号が繰り返され得る。さらに、図面に描かれる要素のうちの一部は、単一の機能として組み合わされ得る。
【0015】
本開示は、脈管間の圧迫を軽減するのに使用され得る、脈管間スペースの中にブリッジを形成するためのカテーテルおよび関連の方法を提供する。本開示の狙いは、脈管内デバイスを移植することの必要性または外科的介入の必要性を排除することである。カテーテルが、拡大可能要素を使用することなどにより、カテーテルが挿入された圧迫された脈管を拡大することが可能となり、次いで、拡大可能要素の間に配備された1つまたは複数のニードルを使用して脈管間スペースの中にフィラーを注入することが可能となる。ブリッジが、カテーテルが引き込まれた後でも、圧迫軽減を維持するように機能する。
【0016】
以下の詳細な説明では、本発明を完全に理解するのを可能にするために多数の具体的な細部が記載される。開示される実施形態は、これらの具体的な細部なしでも実施され得る。他には、本開示の態様を不明瞭にしないために、よく知られている方法、手技、構成要素、または構造が詳細には説明されない可能性もある。
【0017】
本開示は、脈管の治療のためのシステムおよび方法を対象とする。本開示のシステムおよび方法の原理および動作は、図面および添付の説明を参照することにより、より良好に理解され得る。
【0018】
本発明は、その用途に関して、以下の説明に記載されるかまたは図面に示される構成要素の構造および構成の細部のみに限定されない。本発明は他の実施形態も可能であるか、あるいは、種々の手法で実施または実行され得る。また、本明細書で採用される専門語句および専門用語は説明することを目的としており、限定するものとしてみなされるべきではない、ことが理解されよう。
【0019】
分かり易いようにするために個別の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わされても提供され得る。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で説明される本発明の種々の特徴は、個別に、または、任意適切な下位の組み合わせとして、提供されてもよい。
【0020】
図2を参照すると、カテーテル10が脈管間の使用のために提供される。カテーテルが、少なくとも2つの拡大可能要素を支持する遠位端部分14aを備えるシャフト14を備える。拡大可能要素が、縦一列に位置決めされた膨張可能バルーン16、18の形態をとることができる。バルーン16、18が経皮的血管形成術のために通常使用される種類であってよいが、このような使用では、プラークを圧迫するようには設計されておらず、むしろ、圧迫を軽減することを目的として、および可能性として、以下の説明を読むことによりさらに理解されるように、固定・配置機能を提供することを目的として、バルーンをその中に位置させている、脈管の直径と同等の直径まで単純に拡大するように設計されている。
【0021】
シャフト14の近位端部分14bが、シャフト14内にある膨張ルーメン25(バルーンの内部区画に連通するポートまたは開口部14cを含む)を介して膨張流体をバルーン16、18に送達するための膨張ポート22を含むハブ20を含むことができる。バブ20が、シャフト14内にあるガイドワイヤルーメン26に連通するガイドワイヤポート24も含むことができる。ガイドワイヤルーメン26が、圧迫されている左腸骨静脈と右腸骨動脈との接合部などの、脈管内の位置までカテーテル10を誘導するためのガイドワイヤ28を受けることができる。
【0022】
少なくとも1つのニードル30が、バルーン16、18などの拡大要素の間で後退した位置から配備されるために、シャフト14に接続され得る。ニードル30が中空であり、脈管内での膨張時のバルーン16、18の最大直径を超える程度で横方向に突出するように適合されており、それにより、バルーン16、18の間に位置するニードルの先端部によって脈管の壁に穿孔してつまり穴を開けて、脈管間スペース(つまり、脈管の外部に位置するかまたは別の脈管に隣接して位置するスペース)に入る。より具体的には、ニードル30が、最初に、シャフト14のルーメン32の中に後退させられていてよく、バルーン16、18の間の開口部またはポート14cを介してシャフト14の中から延在することができ、その結果、その遠位側先端部が脈管間スペースに入る。ニードル30を配備することが、カテーテル10が導入される身体の外部などの、遠隔の位置から行われ得る。単純な例では、ニードル30が、単純に、ルーメン32を通してハブ20に隣接するところまで通過する細長い管30aを含むことができる。次いで、管30aがハブ20に隣接するところから前進させられ得、それにより、シャフト14内で移動してニードル30を配備する(部分的には、ルーメン32の遠位端を、開口部またはポート14cの方に向けて徐々に湾曲させることにより、ニードル30が誘導され得る)。
【0023】
代替として、管30aが、シャフト14に対して管30aおよびひいてはニードル30を前進および後退させるためのアクチュエータ40に接続され得る。例えば、図4では、管30aの近位端が、摺動ブロック42に接続され得る。摺動ブロック42は、管30aに接続された横方向ポスト(換言すれば、柱状部)42bに係合されるためのスロット42aを有する。ブロック42が、ガイドワイヤルーメン26、さらには、膨張ルーメンと連通するためのポート24をさらに含むことができる。したがって、ブロック42内でポスト42bが遠位方向に移動することが、ニードル30を脈管間スペースの中に配備するように働き、反対の近位方向に移動することが、脈管から取り出すためにシャフト14内までニードルを後退させるように働く。スロット42aの長さが配備の最大距離を画定することができ、配備のこの最大距離が、バルーン16、18の最大直径に、ニードル先端部を脈管間スペースに入れるのに必要である追加の伸長長さを加えたものに対応してよい。
【0024】
代替のアクチュエータ50が図5に示される。この実施形態はラチェット・ポールタイプの構成を使用し、ここでは、サムホイール52が、ばね56により線形アクチュエータまたはラック58に係合されるように付勢された爪54を含む。ラック58がさらに管30aに接続され、管30aがシャフト14のルーメン32内に位置する。したがって、ホイール52が回転することにより、ラック58およびひいては管30aが、ニードル30を脈管間スペースの中に配備する場合などの遠位方向などに、移動したり、再び後退したりするようになる。アクチュエータ50が、想像線で示されるようにハブ20の一部を形成することができるか、または分離した構造を有することができる。
【0025】
ニードル30が、随意、ニチノールなどの、形状記憶物質で製造され得る。形状記憶は製造中に付与され得、特定の温度で作動され得る(この特定の温度は、形状記憶を作動させるための温度で臨床医が流体を導入してニードルに特定の予め設定した形状または向きをとらせることにより、調節され得る)。ニードル30は、体温によって作動され、直線形態から外れてシャフト14内から前進させられると、固くなり(換言すれば、硬直化し)、その予め設定した形状をとることになる。例えば、ニードル30は予め設定した湾曲構成をとることができ、図示されるように、シャフト14から径方向外側に突出することができる。
【0026】
配備時、ニードル30が、管30aに接続されていることなどにより、身体の外部にある遠隔ポート34と連通する。この遠隔ポート34が、接着剤(例えば、トライダイン(Tridyne)(登録商標)、シアノアクリレート、または天然キトサン接着剤など)などの、フィラーの供給源36に接続される。供給源36が、ルーメン32内に位置する管30aに沿って物質を流すことと、バルーン16、18の間に配備されたニードル30の先端部から物質を外に出すことと、それにより、脈管-脈管の圧迫に対応する位置において脈管間スペースに物質を入れることと、を目的として、圧力下でフィラーをルーメン32に送達するためのシリンジまたは他の送達デバイスを備えることができる。
【0027】
図3および3Aが、配備時に異なる方向に突出するように、2つ以上のニードル30が拡大可能要素16、18の間に設けられ得る(単一のアクチュエータまたは分離したアクチュエータを使用して、上で考察した手法で行われ得る)ことを示す。2つ以上のニードル30を提供することにより、カテーテル10が挿入される圧迫された脈管の異なる側面などの、脈管間スペース内の異なる位置にフィラー物質を送達することが可能となる。ニードル30が、可能性として図3Aで最良に理解されるように、多様な径方向に延在することができ、シャフト14内で後退され得、配備時に、カテーテル10のシャフト14に沿う長手方向において離間される開口部14aから突出することができる。両方のニードル30が、単一のニードルの実施形態の場合と同様に、遠隔の供給源からフィラーを送達するために、関連付けられたルーメンに連通し得る。
【0028】
使用時、カテーテル10が、右腸骨動脈RIAによって圧迫されている図4に示されるような左腸骨静脈LIVなどの(メイターナー症候群の特徴を表している)、脈管の圧迫Cの位置Lまで、ガイドワイヤ28を介して、経路に沿って前進させられ(track)得る。カテーテル10が図5に示される位置に位置決めされると(カテーテル10上にある放射線不透過性マーカーの補助により、および、蛍光透視法を使用することにより、達成され得る)、バルーン16、18が拡大され、これが、圧迫された脈管を拡大するようにおよび定位置でカテーテルを固定するように働く(図6を参照)。この位置は、図7に示されるようなニードル30の配備時に、および形状記憶を介しての作動時に、ニードル30の先端部が脈管間スペースに入ることになるような、位置である。
【0029】
次いで、フィラー物質Mが、供給源36から、ルーメン32内に位置する管30aを介して、送達され得る。この物質がニードル30を介して脈管内スペースに入る(また、2つ以上のニードルの事例では、物質が、圧迫された脈管の異なる側面などの、2つの異なる位置に同時に送達され得る)。十分な量のフィラー物質Mが送達されると(体積により、時間により、ならびに/あるいは、ニードル30から排出される物質の量および物質の硬化または固化(非常に迅速に行われ得、例えば、注入から3分未満で行われ得る)を観察するための蛍光透視法により、行われ得る)、バルーン16、18が収縮され得、カテーテル10が引き込まれ得る。
【0030】
乾燥して硬化した物質Mが、可能性として図10で最良に理解されるように、脈管LIV、RIVの外部で、脈管の間にブリッジSを形成し、さらには、隣接する脈管を互いに接続または結合するように機能することができる。いずれの場合も、カテーテル10を取り出した後でも、ブリッジSが既存の圧迫を取り除くように機能する(図9の開存左腸骨静脈LIVに留意されたい)。結果として、外科的介入を用いることなく、および、脈管内インプラントを使用することなく、メイターナー症候群の影響の軽減を実現し得るような、より開存率の高い静脈系が達成される。
【0031】
まとめると、本開示は、以下の項目に関連するものとみなされ得る。
1.フィラーを脈管間スペースの中に導入することにより血管間の圧迫を軽減するためのカテーテルであって、
シャフトと、
シャフトによって支持される拡大可能要素と、
シャフトによって支持されるニードルであって、ニードルが、配備されるとき、フィラーを脈管間スペースの中に導入するために拡大可能要素の間に位置する先端部を含む、ニードルと
を備える。
2.シャフトが、ルーメンを含み、ニードルが、中空である、項目1のカテーテル。
3.フィラーを送達するように先端部を拡大可能要素の間におよび脈管間スペースの中に配置するために、ルーメン内の後退位置からニードルを配備するためのアクチュエータをさらに含む、項目1、項目2、または、以下の項目4~9のいずれかのカテーテル。
4.シャフトが、膨張ルーメンを含み、拡大可能要素が、膨張ルーメンに流体連通する膨張可能バルーンを備える、項目1~3のいずれかのカテーテル。
5.シャフトが、ガイドワイヤルーメンを備える、項目1~4のいずれかのカテーテル。
6.複数のニードルが、配備されるとき、拡大可能要素の間に位置する先端部を有する、項目1~5のいずれかのカテーテル。
7.1つのニードル/複数のニードルが湾曲している、項目1~6のいずれかのカテーテル。
8.ニードルが、形状記憶物質を含む、項目1のカテーテル。
9.ニードルを介して脈管間スペース内の位置まで送達されるフィラーをさらに含む、項目1のカテーテル。
10.隣接する脈管間スペースを用いて血管間の圧迫を軽減するためのシステムであって:
配備されるときに脈管間スペースの中まで延在するように適合された後退可能であるニードルを含むカテーテルと、
ニードルを介して脈管間スペースの中へ送達されるフィラーと
を備える、システム。
11.カテーテルが、互いに離間された拡大可能要素を備え、ニードルが、配備されるとき、拡大可能要素の間に位置する、項目10のシステム。
12.拡大可能要素が、膨張可能バルーンを備える、項目10または項目11のシステム。
13.ニードルが、配備されるとき、湾曲する、項目11~12のいずれかのシステム。
14.ニードルが、形状記憶物質を含む、項目11~13のいずれかのシステム。
15.カテーテル内の後退位置から、フィラーを脈管間スペースに送達するための配備位置まで、ニードルを移動させるためのアクチュエータをさらに含む、項目11~14のいずれかのシステム。
16.カテーテルが、複数のニードルと、任意選択で、各ニードルを配備するためのアクチュエータとを含む、項目11~15のいずれかのシステム。
17.血管間の圧迫を軽減する方法であって、
血管の間の脈管間スペースの中にフィラーを注入すること
を含む、方法。
18.注入ステップが、カテーテルに接続されたニードルを使用して、フィラーを脈管間スペースに注入するステップを含む、請求項17の方法。
19.注入ステップの前に、本方法が、
血管のうちの1つの圧迫された血管の中にカテーテルを挿入するステップと、
圧迫を軽減するためにカテーテル上で拡大可能要素を拡大するステップと、
脈管壁を通して脈管間スペースの中までニードルを挿入するステップと
を含む、項目17または項目18の方法。
20.注入ステップが、拡大可能要素の間においてニードル上に先端部を配置するために、アクチュエータを使用することなどにより、カテーテル内の後退位置からニードルを配備するステップを含む、項目19の方法。
【0032】
本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
本明細書で使用される場合の「ある(a)」、「1つの(an)」、および「上記(the)」は、特に明記しない限り、単数の指示対象物および複数の指示対象物の両方を意味する。例えば、「1つのコンパートメント(a compartment)」は、1つのコンパートメントまたは2つ以上のコンパートメントを意味する。
【0033】
パラメータ、量、および期間などの、測定可能である値を意味する「約」、「実質的に」、または「およそ」は、開示される本発明を実施することにおいて、その変動が妥当である限りにおいて、指定する値からの、+/-20%未満、好適には+/-10%未満、より好適には+/-5%未満、さらに好適には+/-1%未満、さらに好適には+/-0.1%未満の変動を包含することを意図される。しかし、「約」という修飾語の対象となる値がそのままで明確に開示されることがあることも理解されたい。
【0034】
本明細書で使用される場合の「comprise」、「comprising」、「comprises」、および「comprised of」は、「include」、「including」、「includes」、または、「contain」、「containing」、「contains」と同義であり、例えば構成要素などの、後ろに続くものの存在を明示する包含的な用語または非限定的な用語であり、当技術分野で既知であるかまたは当技術分野で開示されている、追加の非言及の構成要素、特徴、要素、部材、ステップ、の存在を排除または除外しない。
【0035】
特定の実施形態と併せて本発明を説明してきたが、多くの代替形態、変形形態、およびバリエーションが当業者には明らかとなろう。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に収まるこのようなすべての代替形態、変形形態、およびバリエーションが包含される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも、各々の個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により具体的にかつ個別に組み込まれるものとして示されている場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、本出願でのいかなる参考文献の明示も、この参考文献が従来技術として本開示で利用可能であることを認めるものとして解釈されない。
図1
図2
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを脈管間スペースの中に導入することにより血管間の圧迫を軽減するためのカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持される拡大可能要素と、
前記シャフトによって支持されるニードルであって、前記ニードルが、配備されるとき、前記フィラーを前記脈管間スペースの中に導入するために前記拡大可能要素の間に位置する先端部を含む、ニードルと
を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記シャフトが、ルーメンを含み、前記ニードルが、中空であり、前記ルーメンと連通する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記ルーメン内の後退位置から前記ニードルを配備するためのアクチュエータをさらに含む、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記シャフトが、膨張ルーメンを含み、前記拡大可能要素が、前記膨張ルーメンに流体連通する膨張可能バルーンを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シャフトが、ガイドワイヤルーメンを備える、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
複数のニードルが提供され、前記複数のニードルの各々が、前記拡大可能要素の間に位置する先端部を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記ニードルが、前記拡大可能要素の間に配備されるとき、湾曲する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記ニードルが、形状記憶物質を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記ニードルが、前記フィラーを遠隔の供給源から前記脈管間スペース内の位置に送達するように適合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
血管に隣接する脈管間スペースを有する前記血管間の圧迫を軽減するためのシステムであって、
配備されるときに前記脈管間スペースの中に延在するように適合されたニードルを含むカテーテルと、
前記血管間の圧迫を軽減するために、前記ニードルを介して前記脈管間スペースの中へ送達されるフィラーと
を備える、システム。
【請求項11】
前記カテーテルが、互いに離間された拡大可能要素を有する遠位端を備えるシャフトを含み、前記ニードルが、配備されるとき、前記拡大可能要素の間に位置する先端部を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記拡大可能要素が、膨張可能バルーンを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ニードルが、配備されるとき、湾曲する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ニードルが、形状記憶物質を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記カテーテル内の後退位置から、前記フィラーを前記脈管間スペースに送達するための配備位置まで、前記ニードルを移動させるためのアクチュエータをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記カテーテルが、複数のニードルを含む、請求項11に記載のシステム。
【国際調査報告】