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特表2023-542830抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、置換体及びその組成物、製造方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、置換体及びその組成物、製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20231004BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
C07K14/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514140
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2021116530
(87)【国際公開番号】W WO2023029001
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523070090
【氏名又は名称】深▲セン▼千越生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】温 瞳
(72)【発明者】
【氏名】温 ▲ウェン▼
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA32
4H045BA50
4H045EA29
4H045FA33
4H045FA50
4H045FA57
(57)【要約】
本願は、以下のアミノ酸配列I及びIIのうちの少なくとも一種を含む抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、置換体及びその組成物、製造方法及び応用を提供する。
[化1]
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立して天然アミノ酸又は/及び非天然アミノ酸から選ばれる。ここで、本願の提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は細胞壁/膜の脂質構造と結合し、その物理的化学的性質を損壊し、微生物壁を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができ、また、外傷消毒、抗感染の効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、
【化1】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれる。
【請求項2】
前記Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、前記(R)はCysジスルフィド結合の保護基を表し、及び/又は
前記Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選ばれる一種であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項3】
前記Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb2、Xb3はそれぞれ独立してArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、又は/及び
a1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立してAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、又は/及び
前記Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してAsn、Gln、Ser、Thr、非天然アミノ酸から選ばれる一種であることを特徴とする請求項2に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項4】
前記Cysジスルフィド結合は、アセトアミノメチル、メチルメタンチオスルフォネート又は他のCys保護基から選ばれる一種であることを特徴とする請求項2に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項5】
前記アミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIは少なくとも一つのアミノ酸が修飾処理されたことを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項6】
前記修飾処理は、リン酸化、ハロゲン化、アセチル化、環化、エンドポイントのキャッピング反応のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項5に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項7】
前記アミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIは少なくとも一つのモチーフを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項8】
前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はアミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIを含んで形成された多量体であることを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項9】
前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項10】
少なくとも1本の前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はナノ構造に形成されることを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項11】
前記ナノ構造はミセル、ベシクル、ナノチューブ、ナノベルトのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項10に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体に含まれるアミノ酸配列I又は/及びアミノ酸配列IIにおける少なくとも一つのアミノ酸が置換されることを特徴とする抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体又は/及び請求項12に記載の置換体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体及び/又は溶媒を含む抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物。
【請求項14】
さらに、賦形剤、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項13に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物。
【請求項15】
抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と前記溶媒とを混合処理するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の製造方法。
【請求項16】
包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬における請求項14に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はペプチド又はペプチド誘導体の技術分野に属し、特に抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、置換体及びその組成物、製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界において、抗菌ペプチドは細菌、ウイルス、真菌、昆虫、両生類、動物及び植物などの生体内に広く存在し、抗菌ペプチドは細菌、真菌、寄生虫及びウイルスを殺傷することに対して非常に顕著な作用を有する。抗生物質の大量の使用に伴い、微生物が薬剤耐性を有することを招き、研究開発者の抗菌ペプチドに対する大規模な研究開発を促進駆動した。defensins(ディフェンシン)のような人体内因性抗菌ペプチドが発見され、FDA(食品医薬品監督管理局)により抗感染、抗炎症及び他の損傷治療の薬物として承認された後、抗菌ペプチドが人体先天獲得性及び適応性免疫を刺激する効果を有することがさらに発見された後、抗菌ペプチドはますますいくつかの疾患に対する潜在的な治療利点が示されている。医療用薬物に加えて、抗菌ペプチドは食品防腐、家禽畜産業、水産漁業、及び日常医療用健康促進、衛生美容、清潔消毒、農業病虫害防除などの多くの方面にも広く応用されている。
【0003】
例えば、プロピオニバクテリウムは、グラム陽性菌という、正常な人間の皮膚上の微生物コロニーが毛髪皮脂腺毛嚢に過剰に成長することにより引き起こされるものである。プロピオニバクテリウムはヒトの皮膚に影響を与える最も一般的な疾患の一つであり、約百万の中国人がこの疾患の影響を受けている。プロピオン酸菌によるニキビは異なる病態表現を有し、例えばとげ、丘疹、結核、嚢胞、及び毛嚢皮脂腺炎症等が挙げられる。従来のプロピオン酸菌によるニキビの治療には抗生物質が使用されることが多く、例えばオキシテトラサイクリンの経口投与、エリスロマイシンの外用、クリンダマイシン等が挙げられるが、このような治療は間もなく抗生物質耐性を招いてしまう。また、プロピオン酸菌によるニキビ治療は臨床的に過酸化ベンゾイル(Benzoyl Peroxide)、5%のアミノフェニルサルフォンゲルが採用されており、この二種類の薬物は低濃度で薬効が小さく、高濃度では大きな毒性や副作用を有する。
【0004】
別の例として、シュードモナスエルギノーザは、グラム陰性菌の人体及び動物体への侵入感染によるものであり、それは生体の呼吸器系、泌尿器系、消化器系、中枢神経系、及び血液、心臓及び骨格系に感染することができる。シュードモナスエルギノーザが眼及び耳に感染した時、常に成人の細菌角膜炎、強膜膿腫、眼内炎、新生児眼炎及び小児中耳炎を引き起こす。特に緑膿菌/細菌角膜炎は瞳孔眼鏡を使用する感染率を増加させ、米国は毎年約二万五千名の瞳孔眼鏡着用者がこの細菌による感染に遭遇したことがある。また、米国疾病予防管理センターの統計によれば、1000人当たりの入院患者は4人がシュードモナスエルギノーザの感染に遭遇したことがある。シュードモナスエルギノーザは治療可能であるが、抗生物質の使用に伴い、この微生物の薬剤耐性が向上し、迅速に治療の薬効を低下させ、投与組み合わせ及び治療手段を変更しなければならない。データによると、米国で集中治療室から単離されたシュードモナスエルギノーザのシプロフロキサシンに対する薬剤耐性は51.6%、ピペラシリン/タゾバクタムに対する薬剤耐性は31.4%、イミペネムに対する薬剤耐性は38%、セフタジジムに対する薬剤耐性は23.6%に達する。ヨーロッパ集中治療室で単離されたシュードモナスエルギノーザのアミノグリコシド類に対する薬剤耐性は37-70%、セフタジジムに対する薬剤耐性は57%、ピペラシリン/タゾバクタムに対する薬剤耐性は53%、シプロフロキサシンに対する薬剤耐性は56%、イミペネムに対する薬剤耐性は52%に達することができ、したがってシュードモナスエルギノーザによる深刻な薬剤耐性感染に対する治療及び制御は非常に重要になる。
【0005】
現在報告された典型的な抗菌ペプチドは一般的に10-100個のアミノ酸残基で構成され、多くの塩基性アミノ酸を含有しかつ一般的に両親媒性である。
【0006】
カエル科の分泌物から抽出された宿主防御ペプチドPGLaはヘリコバクターピロリ(グラム陰性菌)に対して優れた殺傷力を有することが報告されている。魚体内から分離された天然抗菌ペプチドTP4もあり、さらに人体から分離された天然抗菌ペプチドLL-37もヘリコバクターピロリに対して優れた殺傷力を有する。これらの発見は抗菌ペプチドのヘリコバクターピロリに対する治療効果が特に高いことが示され、さらに静菌添加剤として日常生活用品に添加することができ、それにより我々がヘリコバクターピロリから守られることを有利である。しかし、従来の抗菌ペプチドに抗菌活性が強くなく、かつ多くは広域スペクトル抗菌活性を有しない欠陥が存在する。
【0007】
また、動植物から分離して得られた抗菌ペプチドの種類が多様であり、分布が広く、昆虫、魚類、哺乳動物、両生動物及び植物などの生物においていずれも発見された。異なる由来の抗菌ペプチドの応用性については系統的な研究がまだない。特に植物抗菌ペプチドは、特に不安定であり、タンパク質分解酵素により加水分解されやすく、それによりその抗菌活性が大幅に低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の目的は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、合成方法、組成物及び応用を提供することであり、従来の技術における抗菌ペプチドの抗菌活性が強くなく、安定せず、広域スペクトル抗菌活性を有しないという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の本願目的を達成するために、本願が採用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【0010】
第1態様において、本願は、以下のアミノ酸配列のうちの少なくとも一種を含む抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を提供する。
【化1】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれる。
【0011】
本願による抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は細胞壁/膜の脂質構造と特異的に結合し、微生物壁を破壊し、さらに微生物及び癌細胞を死滅させることができる。
【0012】
第2態様において、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体に含まれるアミノ酸配列I又は/及びアミノ酸配列IIの少なくとも一つのアミノ酸が置換される、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体を提供する。
【0013】
本願が提供する置換体は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の活性を確保することができ、本願の内容に含まれ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸への置換により、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0014】
第3態様において、本願は、少なくとも上記段落のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体を含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を提供する。
【0015】
本願の第3態様が提供する抗菌組成物に関して、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの溶媒と混合して組成物に製造することができる。
【0016】
第4態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と溶媒とを混合処理するステップを含む、抗菌組成物の製造方法を提供する。
【0017】
本願の抗菌組成物の製造方法によれば、一方では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの溶媒に安定して存在することができ、溶媒と抗菌ペプチド又はペプチド誘導体とを混合することで抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を保存することができ、他方では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保する。
【0018】
第5態様において、本願は、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬における応用を提供する。
【0019】
本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体が微生物を死滅させ、腫瘍細胞を死滅させ、抗凝血及び消炎の機能を果たすことができるため、その用途が広く、主に四つの利点を有する。
【0020】
一、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は包装、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品材料と結合するか又はその中に混入することができ、それに抗菌機能を備えさせ、又は微生物により分解されやすい他の材料の保存剤とすることができる。
【0021】
二、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬に製造され、殺菌、抗感染、消炎の役割を果たすことができる。
【0022】
三、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物はコーティングに製造され、食品処理加工及び最末端に塗布され、食品処理加工の最末端表面の微生物を減少させ、食品中毒のリスクを低減することができる。
【0023】
四、細胞を死滅させ、増殖を制限することができ、抗腫瘍治療、局所的美容イボ・シミ除去などのために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による大腸菌抑制実験結果の統計ヒストグラムである。
図2】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による大腸菌抑制結果図である。
図3】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による野生黄色ブドウ球菌の抑制実験結果図である。
図4】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体によるシュードモナスエルギノーザのMIC抑制実験結果図である。
図5】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体によるRNAウイルス死滅実験結果図である。
図6】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による白血病リンパ球細胞(Jurkat cell line)の死滅実験結果図である。
図7】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による白血病細胞(K562 cell line)の死滅実験結果図である。
図8】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による肝癌細胞の死滅実験結果図である。
図9】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の血液中赤血球に対する効果の実験結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、ここで説明された具体的な実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0026】
本願において、「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を説明し、三種類の関係が存在してもよいことを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する、同時にA及びBが存在する、Bが単独で存在する場合を示すことができる。ここで、A、Bは単数又は複数であってもよい。文字「/」は、一般的に、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0027】
本願において、「少なくとも一つ」は一つ又は複数を意味し、「複数」は二つ又は二つ以上を意味する。「以下の少なくとも一項(個)」又はその類似表現は、これらの項の任意の組み合わせを意味し、単項(個)又は複数項(個)の任意の組み合わせを含む。例えば、「a、b、又はcのうちの少なくとも一項(個)」、又は、「a、b、及びcのうちの少なくとも一項(個)」は、いずれも、a、b、c、a-b(即ちa及びb)、a-c、b-c、又はa-b-cを表すことができ、ここでa、b、cはそれぞれ単一であってもよく、複数であってもよい。
【0028】
理解すべきことは、本願の様々な実施例において、上記各プロセスの番号の大きさは実行順序の前後を意味するものではなく、一部又は全部のステップを並列に実行するか又は前後に実行することができ、各プロセスの実行順序はその機能及び固有論理で決定されるべきであり、本願の実施例の実施プロセスが何ら限定されるものではない。
【0029】
本願の実施例において使用される用語は特定の実施例を説明する目的だけであり、本願を限定することを意図するものではない。文脈上、明らかに他の意味を示さない限り、本願の実施例及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形式の「一種」、「前記」及び「該」も複数の形式を含むことを意図する。
【0030】
明細書に言及された本願の実施例の関連成分の重量は各成分の具体的な含有量を指すだけでなく、各成分の間の重量の比例関係を表すことができ、したがって、本願の実施例の明細書に記載の関連成分の含有量に応じて比例に応じて拡大するか又は縮小すればいずれも本願の実施例の明細書に開示された範囲内にある。具体的には、本願の実施例の明細書に記載の質量はμg、mg、g、kg等の化学工業分野で公知の質量単位であってもよい。
【0031】
第一、「第二」という用語は単に対象を説明するために用いられ、対象例えば物質を互いに区別するために用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示するか又は指示された技術的特徴の数量を暗黙的に示すと理解することができない。例えば、本願の実施例の範囲から逸脱することなく、第1XXは第2XXと呼ばれてもよく、同様に、第2XXは第1XXと呼ばれてもよい。これにより、「第1」、「第2」が限定された特徴は一つ又は複数の該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0032】
第1態様において、本願の実施例は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を提供し、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化2】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、ここで、アミノ酸配列IIにおいてCaとCaとの間に環結合を形成し、アミノ酸は天然アミノ酸又は/及び非天然アミノ酸を含み、ここで、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は細胞壁/膜の脂質構造を結合し、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0033】
実施例において、上記実施例に基づいて、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を向上させるために、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれ、又は/及びBa1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれ、又は/及びUはGly(G-グリシン)、Pro(P-プロリン)、Cys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、又は/及びZa1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれ、又は/及びCa1、Ca2はそれぞれ独立してCys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる一種であり、アミノ酸配列Iにおいて、Xa1又はXa3はN末端を表し、Xa1又はXa3はC末端を表し、アミノ酸配列IIにおいて、Xb1及び/又はBはN末端を表し、Ca2はC末端を表す。本願の抗菌ペプチド及びペプチド誘導体に疎水性側鎖の残基を含んだり、陽性電荷の残基を含んだり、非極性の残基を含んだりするため、本実施例が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体鎖は典型的な両性螺旋構造を形成することができ、該抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の荷電性及び両性螺旋構造により、それを細胞壁/膜の脂質構造と結合させ、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0034】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化3】
ここで、Ba1、U、Za1、Ba2、Ba3、Za2、Ba4、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Bb3、Zb2、Bb4、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる一つであり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすい。
【0035】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化4】
ここで、Ba1、Za1、Ba2、Ba3、Za2、Ba4、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Bb3、Zb2、Bb4、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb3はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる少なくとも一種であり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすく、疎水性側鎖の残基は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の水溶性及び電荷性のバランスを確保し、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する。
【0036】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化5】
ここで、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる一つであり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすく、非極性の残基及び疎水性側鎖の残基は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の水溶性及び電荷性のバランスを確保し、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する。
【0037】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化6】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれ、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly(G-グリシン)、Pro(P-プロリン)、Cys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる少なくとも一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる少なくとも一つであり、アミノ酸配列Iにおいて、X及び/又はBはN末端を表し、B及び/又はXはC末端を表し、アミノ酸配列IIにおいて、X及び/又はBはN末端を表し、CysはC末端を表す。本願の抗菌ペプチド及びペプチド誘導体に疎水性側鎖の残基を含んだり、陽性電荷残基を含んだり、非極性の残基を含んだりするため、本実施例が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体鎖は典型的な両性螺旋構造を形成することができ、該抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の荷電性及び両性螺旋構造により、それを細胞壁/膜の脂質構造と結合させ、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0038】
実施例において、上記実施例に基づいて、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の安定性を改善するために、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3、Bb4はそれぞれ独立してArg(R-アルギニン)、His(H-ヒスチジン)、Lys(K-リジン)、Orn(オルニチン)、Har(ホモアルギニン)、Dab(2,4-ジアミノプロピオン酸)、非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、一方、Arg(R-アルギニン)、His(H-ヒスチジン)、Lys(K-リジン)、Orn(オルニチン)、Har(ホモアルギニン)、Dab(2,4-ジアミノプロピオン酸)、非天然アミノ酸は陽性電荷の残基であり、全体構造から見ると、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができる。他方、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、又は/及びBa1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3はそれぞれ独立してAla(A-アラニン)、Val(V-バリン)、Ile(I-イソロイシン)、Leu(L-ロイシン)、Met(M-メチオニン)、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種、四種であり、Ala(A-アラニン)、Val(V-バリン)、Ile(I-イソロイシン)、Leu(L-ロイシン)、Met(M-メチオニン)、非天然アミノ酸は疎水性側鎖であり、疎水性側鎖はペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況、又は/及びZa1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してAsn(N-アスパラギン酸)、Gln(Q-グルタミン)、Ser(S-セリン)、Thr(T-トレオニン)非天然アミノ酸から選ばれる一種であることを保証し、非極性の残基から選ばれ、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の非極性の残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、非極性残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況、又は/及びXa1及びBa1、Xa2及びBa2、Xa3及びBa3、Xb1及びBb1、Xb2及びBb2、Xb3及びBb3、Xb4及びBb4残基の数の和が3、4、5、6又は7であることを保証し、好ましくは3又は4であり、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の活性に対して、ペプチド鎖の長さが長いほどよいが、合成のコスト及び製造コストを考慮し、及びペプチド鎖の安定性を確保するために、Xa1及びBa1、Xa2及びBa2、Xa3及びBa3、Xb1及びBb1、Xb2及びBb2、Xb3及びBb3、Xb4及びBb4残基の数の和の好ましい個数は3及び4である。本願の抗菌ペプチドのアミノ酸配列及び/又は一部のアミノ酸配列はウイルスの8から25個のアミノ酸に由来する。
【0039】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化7】
ここで、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab、非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれる一つであり、及び/又はUはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選択される一つであり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均 衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種である。
【0040】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化8】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、又は/及びUはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれる少なくとも一種であり、又は/及びCa1、a2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選ばれる一種であり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、疎水性側鎖は、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎると不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証する。
【0041】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化9】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb32、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のAsn、Gln、Ser、Thr、非天然アミノ酸から選ばれる一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Ca1、a2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選択される一つであり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、疎水性側鎖は、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証し、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の非極性の残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、非極性残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証する。
【0042】
いくつかの実施例において、Cysジスルフィド結合はアセトアミノメチル(Acetamidomethyl(Acm))、メチルメタンチオスルフォネート(methyl methane thiosulfonate)又は他のCys保護基を含み、Cys(R)はCysジスルフィド結合を含有する保護基を表し、ここで、Ca2は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の末端基であり、Ca1は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の中間位置に位置し、したがって抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の分子内部に環鎖構造を形成することができ、このように抗菌ペプチドの安定性を向上させ、抗菌ペプチドの殺菌時間を延長することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はより高い抗菌活性を有する。
【0043】
いくつかの実施例において、アミノ酸配列I及び/又はIIは少なくとも一つのアミノ酸が修飾処理されたことを含み、実際の応用において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の安定性及び抗菌活性は非常に重要であり、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸を修飾することによりペプチド鎖の性能を変更し、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の広域スペクトル性を向上させ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0044】
実施例において、修飾はリン酸化、ハロゲン化、アセチル化、環化、エンドポイントのキャッピング反応を含み、ここで、環化はジスルフィド結合で形成された環化、首尾環化、内部構造における側基の環化のうちの少なくとも一種を含み、アミノ酸エンドポイントのキャッピング(capping)反応はC末端アミド化、N末端アセチル化及びN末端リン脂質化のうちの少なくとも一種を含み、アミノ酸に例えば環化のような修飾処理を行うことで、ペプチド鎖の安定性を向上させることができ、また例えばアミノ酸にリン酸化処理を行うことで、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施例において、アミノ酸配列I及び/又はIIは少なくとも一つのモチーフ(motif)を含み、常に所定のアミノ酸エンドポイント配列(N末端及び/又はC末端)に接続され、所定のアミノ酸配列の中間に直接挿入されてもよく、一般的に独立してアミノ酸配列エンドポイントとせず、モチーフとペプチド鎖との接続又はアミノ酸間への挿入は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体にモチーフを挿入するとペプチド鎖の性能を変更し、ペプチド鎖の抗菌活性、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を増加させることができる。
【0046】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はアミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIを含んで形成された多量体であり、ここで、二量体(Dimer)、四量体(Tetramer)のうちの少なくとも一種は、一般的な多量体状態である。抗菌ペプチド単量体及び/又は多量体は少なくとも一種の薬物、抗体と共役結合して抗菌薬品を形成し、主に小分子化学合成薬物、大分子の抗体、生物学的組換技術で合成された大分子薬物を含み、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体で形成された多量体は薬物、抗体分子と共役結合して抗菌薬品を形成し、薬品又は抗体の改質に用いることができる。
【0047】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のナノ構造であって、一本のペプチド鎖及びそのペプチド誘導体又は複数又はポリのペプチド鎖及びペプチド誘導体はいずれもナノ構造を形成することができ、ここで、一般的なナノ構造はミセル、ベシクル、ナノチューブ、ナノベルトから選ばれる少なくとも一種である。ペプチド鎖及びそのペプチド誘導体はナノ構造を形成することで、ペプチド鎖及びそのペプチド誘導体が溶液中で安定して存在し、かつ溶液中で伝送することに役立つ。
【0049】
第2態様において、本願は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体を提供し、上記段落のいずれかのアミノ酸配列I又はIIにおけるアミノ酸を置換して置換体を得ることも本願の内容に含まれ、例えばL型アミノ酸を対応するD型アミノ酸又は非自然アミノ酸に置換することが挙げられる。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸を置換することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0050】
第3態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体又は/及び置換体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体及び/又は溶媒を含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を提供し、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの薬剤に許容可能な担体と結合して医薬組成物を形成することができ、同様に殆どの溶媒と混合して、組成物に製造することもできる。
【0051】
いくつかの実施例において、さらに、賦形剤、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーのうちの少なくとも一種を含み、これらの物質と混合することで、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を様々な抗菌薬品又は抗菌溶剤に製造することができる。
【0052】
いくつかの実施例において、賦形剤は水、塩、リン酸塩、グルコース、グリセリン、エタノールから選ばれる少なくとも一種であり、これらはいずれも一般的な医学試薬であり、抗菌ペプチド又は誘導体はこれらの試薬と混合することができ、本願の抗菌ペプチド及び誘導体の普及及び使用に役立つ。
【0053】
いくつかの実施例において、等張化剤は糖、ポリオール及び塩化ナトリウムから選ばれ、等張化剤はペプチド活性を保持することができ、抗菌ペプチドと誘導体及び等張化剤を混合することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はより生体と結合しやすくなる。
【0054】
いくつかの実施例において、ポリオールはマンニトール、ソルビトールから選ばれ、ポリオールと抗菌ペプチド又はペプチド誘導体とを混合することで、ポリオールは抗菌ペプチド又は誘導体の活性を保持することができ、抗菌ペプチド又は誘導体は生体と結合しやすくなる。
【0055】
ここで、薬学的に許容可能な担体は最小量の補助物質から選ばれ、薬学的に許容可能な担体は湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝液から選ばれ、薬学的に許容可能な担体と抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は組成物を形成し、抗菌ペプチド又は誘導体の活性を保持することができ、抗菌ペプチド又は誘導体は生体と結合しやすくなる。
【0056】
実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は基底ポリマーと結合して水相又は非水相溶液に製造され、これらの水相又は非水相溶液は物体の表面に塗布して抗菌保護層を形成することができる。
【0057】
また、上記物質は様々な形式又は様々な成分で構成されてもよい。抽出物、シート、フィルム、積層板、編物、織物、不織布、繊維、フィラメント、糸、粒子、コーティング、及び/又はフォームを含むがそれらに限定されない。本願は上記物質及び抗菌ペプチドで製造された様々な成形品も含み、射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルム、織り、編み及び織物製品等を含むがそれらに限定されない。
【0058】
第4態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と前記溶媒とを混合処理するステップを含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の製造方法を提供する。
【0059】
実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と基底ポリマーを混合物に調製する時、十分な混合を確保するために、混合温度を-10から150℃の範囲に制御し、混合時間を0.1から5760minの範囲に制御する。ここで、混合温度は25から80℃の範囲にあり、混合時間は1から1440minの範囲にあり、より優れた混合効果を有する。
【0060】
いくつかの実施例において、薬剤に許容可能な担体、賦形剤、溶媒、分散媒、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーを前処理することをさらに含み、ここで前処理は酸化、還元、加水分解、プラズマ又は放射のうちの少なくとも一種を含むがそれらに限定されず、前処理は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の前記環境を改善することができ、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を向上させる。
【0061】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と上記物質との混合の有効濃度範囲は1ugから20gwt%の間にあり、又は5pmolから2molの濃度の間にある。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を保存するために、温度を-20から25℃の範囲に制御することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する必要がある。また、温度を-4から4℃の範囲に制御すると、より低い温度に限って抗菌ペプチドの生物学的活性特性を確保することができる。
【0062】
第5態様において、本願は下記いずれかの抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用を提供する。
【0063】
包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬である。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物は薬品又は非薬品として人間、動物(野生動物、家畜、コンパニオン動物を含む)、植物(農作物を含む)、水生及び水産養殖動物、家禽類養殖動物等に広く使用することができる。以下では人間及び動植物と呼ばれる概念定義は、すなわち上記言及された人間、動物(野生動物、家畜、パートナー動物を含む)、植物(農作物を含む)、水生及び水産養殖動物、家禽類養殖動物等を含む概念定義とされ、以下は同様である。
【0064】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の包装における応用では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を包装材料と結合するか又はその中に混入することができ、又は微生物により分解されやすい他の材料の保存剤とし、ここで、包装成分は肉製品の包装フィルム、パッド、吸水パッド、トレイ、容器部品、キャップ、カバー、接着剤、アプリケータ等を含むがそれらに限定されない。このような包装は特殊な応用に適する任意の包装形式であってもよく、例えばアルミニウム製タンク、ケース、ボトル、ガラス缶、袋、化粧品包装、密閉式管などである。上記包装は射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルムなどのプロセスで製造された包装成形品を含むがそれらに限定されない。
【0065】
ここで、包装品はさらに処方/非処方薬及び健康促進衛生用品の包装に適用され、例えばカプセル、錠剤、溶液、乳化剤、洗浄剤、粉末、シャンプー、ヘアケア剤、消臭剤、制汗剤等のために製造されたボトル、先端物、アプリケータ、キャップ等の包装である。包装品は、さらに、例えば口紅、リップクリーム、艶出し油等アプリケータの包装、例えばマスカラ、アイライナー、アイシャドウの眼部化粧品包装、スプレーパウダー、入浴粉、チークレッド、ファンデーション及び乳液の包装に適用される。このアプリケータは生物体の異なる部位及び表面に用いられ、このような応用は細菌の人体表面での成長を大幅に減少させるか又は消滅させる。また、さらに他の形式の包装構成を含み、例えば液体、溶液又は懸濁液を収容する飲水ボトルネック、交換可能なカバー、交換不可能なカバー、食物又は薬品の分注システム,食物及び飲料の輸送システム,乳児用哺乳瓶、カバー、乳首等が挙げられる。包装には、ゲル滴離散剤または液滴噴射剤とすることも含まれる。
【0066】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の食品処理加工及び最末端での応用、又は食品表面のコーティングを一時的又は永久的に用意するために用いられ、例えば抗生物質に代わる食品添加物,食品加工機器、食品搬送ベルト組立及び部材であって、食品を混合、研磨、破砕、転動、造粒、押圧するための異なる機器の組立及び部材,食品を切断し、スライスするための機器組立及び部材が挙げられる。上記機器の表面が金属物質であれば、該金属表面に機能性を有するポリマーを一層塗布する必要があり、該ポリマーはすなわち本願が上記説明した抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を含有するポリマーである。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物はコーティングに調製され、食品処理加工及び最末端に塗布され、食品処理加工の最末端表面の微生物を減少させ、食品中毒のリスクを低減することができる。
【0067】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の服飾における応用であって、このような服飾は殺菌静菌の機能を有し、例えば水着、下着、靴構成部分(例えば編み又は非編みのライナー又は靴パッド)運動防護パッド、子供服装などが挙げられる。本願も防護性医療服装又は隔離用品を含み、例えば防護服、マスク、手袋、スリッパ、ブーツ、ヘッドカバー又はカーテン等が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の医療用品、機器における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は医療用品、医療材料と結合するか又はその中に混入することができ、又は医療機器の表面に抗菌ペプチド又はペプチド誘導体コーティングを一層塗布するか、又は噴霧に製造して医療用品、機器に殺菌及び消毒を行い、ここで、医療用品、機器は、人体及び動物インプラント、例えば包帯、接着剤、ガーゼ、ガーゼパッド、注射器ステント、ポリウレタン又はシリコーンゴムで構成される周囲静脈又は中央静脈カニューレ、尿道瘻造ポート、骨科矯正器、矯正針、ペースメーカ導線、除細動器導線、外耳道分流器、血管ステント、整形インプラント、耳鼻喉インプラント、埋め込み可能なポンプ、ヘルニアパッチ、及びこれに関連する皿、ねじ、血液バッグ、外用血液ポンプ、輸液システム、心肺機器、透析機器、人工皮膚、人工心臓、心室補助装置、補聴器、血管移植物、ペースメーカ構成要素、股関節インプラント、膝インプラント、歯科インプラント等を含む。
【0069】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の個人衛生用品における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は個人衛生用品材料と結合するか又は混入することができ、さらに個人衛生用品は殺菌静菌の作用を有し、例えばおむつ、不便パッド、生理用ナプキン、運動パッド、生理用タンポン及びそれらを応用する付属器具が挙げられる。衛生健康促進物の方面において、抗微生物ウェットティッシュ、乳児用ウェットティッシュ、個人拭き取りウェットティッシュ、化粧用ウェットティッシュ、おむつ、医療用ウェットティッシュ(例えば抗生物質を含有するウェットティッシュ又は綿パッド、ニキビ治療薬、痔疾治療薬、痒み止め薬、抗炎症薬及び防腐剤など)が挙げられる。
【0070】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の口腔に直接接触する物品における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体が人体に無毒であり、かつ消毒することができ、したがって口腔に直接接触し、口腔殺菌及び静菌の目的を達成することができ、ここで、口腔に直接接触する物品は、乳幼児の皮膚感染等を防止し、例えば乳児用哺乳瓶、乳首、歯科機器、ストレッチテープ、義歯、カップ、水カップ、歯磨剤及び歯固め玩具等が挙げられる。幼児物品が微生物感染を防止することを主な目的とする応用もこの保護範囲にあり、例えば乳児用瓶、幼児書籍、プラスチックはさみ、玩具、おむつバケツ、及び清潔なウェットティッシュを収容する容器が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の家庭用品での使用であって、菌が口から入ることを防止するために、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は家庭用品材料と結合するか又は混入することができ、ここで、家庭用品は電話、携帯電話、繊維充填物、ベッド用品、窓処理、カーペット床面洗浄処理、フットパッド又はカーペットパッドの裏面の発泡パッド、室内装飾品(例えば発泡パッド)、非編み乾燥紙、柔軟剤を含む紙、自動車拭きウェットティッシュ、家庭用洗浄ウェットティッシュ、テーブルウェットティッシュ、バスカーテン、バスカーテン布、タオル、フェイスタオル、雑巾、モップ、テーブルクロス、壁、及びカウンタートップなどを含む。
【0072】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の消毒剤における応用であって、交差感染を回避するために、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を消毒剤に調製することができ、消毒剤が使用する環境は閉鎖空間、航空機、列車、映画館、劇場などの空気消毒を含む。例えば、医療用内視鏡等の消毒が挙げられる。抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は独立膜の表面にバイオフィルム(biofilm)が形成されることを減少させるか又は防止することができ、これらの独立膜は浸透蒸発膜、透析膜、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の洗浄剤における応用であって、このような洗浄剤が殺菌の作用を有し、使用後に水で洗浄する必要がある。好ましくは脱イオン水で洗浄する。選択的に、洗浄された物品を乾燥することができ、乾燥方法は環境空気乾燥、オーブン乾燥、及び空気強制乾燥を選択することができる。乾燥温度は50℃から120℃であり、好ましくは乾燥温度は50℃から100℃であり、乾燥時間は約15minから24hである。
【0074】
また、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド組成物の上記全ての物品に対する処理は、工業化生産の前、工業化生産の後、及び工業化生産中の全過程を含む。例えば、抗菌バスカーテンを製造する際に、まず抗菌ペプチドを基底ポリマーと結合し、次に混合物でバスカーテンを処理する。製造プロセスは射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルムのうちの少なくとも一種を含むがそれらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の抗感染薬、消炎薬における応用であって、殺菌して感染を防止し、感染は細菌、ウイルス、真菌によるものを含み、例えば、酵母、病原体、グラム陰性菌及び/又はグラム陽性菌、単細胞又は多細胞生体によるものを含み、共生生物又は非共生生物、病原体生物、コロニー又は非コロニーの細菌によるものであってもよい。具体的には、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は細菌、ウイルス、真菌の皮膚での感染を治療するか又は減少させることができ、このような感染は人間又は動物外皮系に関連する任意の部分であってもよく、例えば表皮、真皮、皮下組織、一つ又は複数の毛髪毛嚢、一つ又は複数の皮質腺、又は皮膚に関連する他の部位である。換言すれば、上記感染は皮膚に関連し、さらに、感染は視力の一部に関連するか又は聴力の一部に関連し、例えば耳の一部、例えば鼓室又は鼓室を含む聴力システムの一部であってもよい。
【0076】
実施例において、抗感染薬はヒト又は動物のいずれか一種又は複数種の細菌による感染を治療するために用いられ、抗菌ペプチドは一種又は複数種の共生生物が過度に増加することを治療することができ、このような共生生物が非病原体又は人体又は動物に有益な共生生物であってもよい。そのうちのいくつかの共生生物は、ブドウ球菌、マイコバクテリア、及びプロピオン酸菌に由来する可能性がある。また他の細菌感染は既知の病原体に由来する可能性があり、例えばシュードモナス属が挙げられる。
【0077】
実施例において、抗感染薬は非細菌微生物による感染を治療することに用いることができ、例えば一種又は複数種の真菌(例えば酵母)による感染を治療する。例えば、抗菌ペプチドは、癜風菌による感染を治療することができる。癜風菌は共生生物であり、その過度な成長はフケ、脂漏性皮膚炎、白癬及び毛嚢炎等を招き、その治療について常に成長制御、関連炎症除去、及び二回目の感染の制御等を採用する。癜風菌の成長は頑固で治療しにくく、また治療周期が長く、多くの薬物の共同作用を必要とするため、現行の市場で使用された薬物は毒性や副作用が大きいだけでなく極めて高価である。本願の抗菌ペプチドは有効な治療濃度範囲内で癜風菌等の真菌による感染を治療することができる。
【0078】
実施例において、消炎薬は感染及び非感染さらに物理的創傷による炎症を治療するために用いられ、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は実験において炎症を減少、緩和及び治療する作用を有することが示されている。例えば細胞、細菌及び動物において、上記組み合わせペプチドは炎症因子、例えば細胞質分裂(cytokinesis)、ケモカイン(chemokines)及びその類似物の放出を減少させることが示されている。
【0079】
また、このような炎症は生理的に定義された炎症反応であり、発赤、腫れ、細胞分子転写及び翻訳レベルでの一つ又は複数の炎症性サイトカインの誘導反応,炎症に関連する一つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の誘導反応,細胞膜に存在する受容体の誘導反応,血管化組織内に存在する細胞浸潤、及び本分野の技術的範囲内で炎症に関連する他の表現症状を含む。
【0080】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の細胞の無限増殖抑制薬剤における応用、抗腫瘍の作用であって、ここでの非無限増殖の細胞(細胞系内In Vitro及び生体内In vivo)はヒトが構築した細胞、疾患状態の細胞、例えば癌細胞などを含む。このような非永生細胞は初代培養細胞、例えば角質細胞、微細血管内皮細胞、角膜上皮細胞及び真皮線維芽細胞なども含む。抗菌ペプチド組成物は細胞膜受容体-細菌特異的結合のパターン認識受容体(pattern-recognition receptors)の減少をもたらす。上記反応の結果として、動物及び動物の一部は明らかな炎症緩和作用が示され、例えば組織の腫れが減少するか又は消失し、細胞浸透が減少するか又は消失する等である。
【0081】
いくつかの実施例において、上記炎症性サイトカインは炎症に関連するサイトカインを含み、腫瘍壊死因子、インターロイキン8、インターロイキン1及びインターロイキン6を含むがそれらに限定されない。また、細胞内信号伝達経路は炎症に関連する伝達信号経路を含み、NFkB、AP-1を含むがそれらに限定されない。「細胞膜関連受容体」はパターン認識受容体、TLR受容体ファミリー、(TLR-2及びTLR4を含む)を含むがそれらに限定されない。
【0082】
実施例において、抗菌ペプチドの治療濃度及び治療時間は多くの因子、例えば病状、年齢、性別、体重及び個人体調に依存し、抗菌ペプチドは幹細胞治療に適用され、その有効濃度は0.01ug/mlより大きい。
【0083】
実施例において、有効濃度は0.2ug/ml以上である。
【0084】
実施例において、抗感染薬、消炎薬及び細胞の無限増殖抑制薬は液体、半固形化液体、クリーム状固体、軟膏、ゲルのうちの少なくとも一種を含み、例えば、外用剤形は皮膚、髪、及び他の外用部分に用いることができ、さらに、一定の条件下で、外用剤形は単眼又は両眼に用いることができ、点眼液に調製することもできる。
【0085】
実施例において、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は静脈注射剤形に調製されてもよく、又は鼓室内/鼓室間投与剤形であり、溶媒は滅菌された等張水溶液であってもよい。
【0086】
また、医薬に使用される抗菌ペプチド剤形は投与経路と一致し、該投与経路は胃腸投与、静脈注射、皮下、皮内、口腔、鼻内(吸入)、膣、肛門、表皮、粘膜投与、鼓室間、鼓室内、直腸投与及び他の許容可能な投与方式を含む。抗菌ペプチド製剤は薬学的構成成分に合わせた投与経路と一致し、例えば静脈注射、皮下、筋肉内、神経節間、経口、鼻、内、耳内及び表皮下等の投与方式で人間及び/又は動物、例えば家畜、及びパートナー動物等に投与し、水生類、家禽類等にも適用することができる。
【0087】
また、出願において一つのアルファベットが代表するアミノ酸の定義は、国際アミノ酸コード及び代表的な配列標準と一致し(IUPAC-IYUB)、表1に示すとおりである。
【0088】
【表1】
【実施例
【0089】
以下に具体的な実施例を参照しながら説明する。
実施例1-39
実施例1-39は、標準的な国際公知のポリペプチド固相合成(solid-phase synthesis)、液相合成(solution-phase synthesis)、又は生物学的組換え合成(recombinant biosynthesis)により合成され、合成結果は表2に示すアミノ酸配列表に示すとおりである。
【0090】
【表2-1】
【表2-2】
【0091】
性能試験及び結果分析
(1)大腸菌抑制実験
ポリペプチド合成実施例1-39における39種類の抗菌ペプチドに対して大腸菌抑制実験を行い、等量の大腸菌液体30ulを取り、様々な30ulの抗菌ペプチド(濃度200ug/ml)を添加し、対照管は30ulのPBS等張液を用いて、室温で15min反応させ、次にアガロースプレートに塗布し、均一に塗布した後に温度37℃で、12h培養し、各プレートの大腸菌の個数を統計し記録する。実験結果は、図1に示すとおりである。実験結果によると、抗菌ペプチドSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:39は大腸菌に対していずれも抑制効果を有し、中でもSEQ ID NO:8の効果が最も顕著である。
実験結果をより明確にするために、6個の実験サンプルを選択して対照分析を行い、図2に示すように、Aは対照管であり、251個の大腸菌クローンである。BはSEQ ID NO:5であり、236個の大腸菌クローンである。DはSEQ ID NO:6であり、226個の大腸菌クローンである。FはSEQ ID NO:7であり、216個の大腸菌クローンである。CはSEQ ID NO:8であり、1個の大腸菌クローンである。EはSEQ ID NO:35であり、95個である。複数のポリペプチドがグラム陰性菌を死滅させる作用を有することが示されており、また、SEQ ID NO:8が1個であり、最適な抗菌ペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:8であることが示され、大腸菌のMICは32ug/mlである。
【0092】
(2)野生黄色ブドウ球菌抑制リング実験
臨床的に分離された野生黄色ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌はグラム陽性菌である)液体を取ってアガロースプレートに塗布し、接種用オックスフォードカップに入れ、SEQ ID NO:8の抗菌ペプチド(濃度はそれぞれ1/4:375ug/ml、1/16:93.7ug/ml、1/64:23.34ug/mlである)200ulを添加し、37℃で、18h培養し、静菌リングの大きさを測定する。実験結果は以下のとおりである。1/4:静菌リングは3.95cmである。1/16:静菌リングは3.5cmである。1/64:静菌リングは3.1cmである。図3を参照する。実験結果によると、抗菌ペプチドの濃度が減少するにつれて、静菌リングが小さくなり、また、大腸菌に比べて、抗菌ペプチドは黄色ブドウ球菌に対してより敏感であり、本願の抗菌ペプチドは優れた抗グラム陽性菌性を有する。
【0093】
(3)シュードモナスエルギノーザ(緑膿菌ATCC27853)のMIC測定
濃度が1024ug/ml、512ug/ml、256ug/ml、128ug/ml、64ug/ml、32ug/ml、16ug/ml、8ug/ml、4ug/ml、2ug/mのSEQ ID NO:8の抗菌ペプチドを取り、かつ陽性対照、陰性対照を設定し、それぞれ標準緑膿菌と混合した後、それぞれ培養プレートの12個のウェルに添加し、かつ培養プレートの12個のウェルに番号を付け、そのうち、図4に示すように、1は1024ug/mlに対応し、2は512ug/mlに対応し、3は256ug/mlに対応し、4は128ug/mlに対応し、5は64ug/mlに対応し、6は32ug/mlに対応し、7は16ug/mlに対応し、8は8ug/mlに対応し、9は4ug/mlに対応し、10は2ug/mに対応し、11は陽性対照に対応し、12は陰性対照に対応し、37℃で、2日間培養した後、培養プレートの濁り程度を観察する。実験結果は、図4に示すとおりである。実験結果によると、抗菌ペプチドは緑膿菌に対して高い抑制効果を有することが示され、緑膿菌に対するMICは64ug/mlである。
【0094】
(4)口腔内細菌の抑制作用
老人の洗口水を取り、等量の4部に分け、かつそれぞれ異なる量の2mg/mlのSEQ ID NO:8と30min混合した後にアガロース羊血を含有するプレートに均一に塗布し、ここで、A:PBS(対照)、B:2ul、C:10ul、D:20ulで混合する。37℃で、4日間嫌気性培養した後、プレートのコロニー数を観察する。実験結果は、図5に示すとおりである。
具体的には、対照プレートにカンジダアルビカンス及び嫌気性菌の成長があり、B:2ulの抗菌ペプチドプレートに少量の菌の成長があり、C:10ulの抗菌ペプチドにいずれかの口腔細菌の成長が見られず、D:20ulの菌に同様に口腔細菌の成長が見られない。
【0095】
(5)抗菌ペプチドでRNAウイルスを死滅させる実験
プラスミドpNL4.3Δ、pVSV-G、p-enhancerとlipo2000で293Tトランスフェクトし、37℃で、二日間培養した後、培養上清を取り、遠心分離して細胞小器官不純物を除去する。細胞上清500ulを等量の200ug/mlのSEQ ID NO:8と混合して15min反応させた後、対照群は等量のPBSでSEQ ID NO:8を代替する。遠心分離法(Millipore Amicon Ultra-15)で、抗菌ペプチドを除去することにより、抗菌ペプチド自体による細胞の殺傷作用を除去する。測定対象のサンプルを293T cell lineに感染させ、37℃で、12h培養し、293T cell lineを回収し、RT-PCR法で感染可能な細胞の生ウイルスの差異を測定し、ここで、対照群と実験群の様々な実験環境が同じであり、異なるのは実験群に本願のSEQ ID NO:8配列のアミノ酸を添加することである。
結果により、対照群の活性ウイルス遺伝子のコピーは1.7×10であり、実験群の抗菌ペプチド群の活性ウイルスのコピーは5×10であり、本願の抗菌ペプチドは明らかなウイルスを死滅させる作用を有することが表明された。
【0096】
(6)抗菌ペプチドで腫瘍細胞を死滅させる実験
K562細胞を培養し、等量のK562細胞をそれぞれ10ng、20ng、40ngのSEQ ID NO:8と反応させた後、フローサイトメトリーPIキットでアポトーシス細胞を測定し、細胞死が抗菌ペプチド含有量と正比例することを発見し、抗菌ペプチドがK562細胞を効果的に死滅させることができることが示された。
【0097】
(7)抗菌ペプチドで白血病リンパ球を死滅させる実験
Jurkat cell line:白血病リンパ球、SEQ ID NO:10のポリペプチド1ug/m 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで、3min遠心分離した後、図6に示すように、実験結果により、白血病リンパ球が凝集して塊になり、かつ細胞破砕を伴うことが示されている。
【0098】
(8)抗菌ペプチドで白血病細胞を死滅させる実験
K562 cell line:白血病細胞、SEQ ID NO:17の抗菌ペプチド1ug/ml 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、図7に示すように、結果により、白血病細胞が凝集して塊になることことが示されている。
【0099】
(9)抗菌ペプチドで肝癌細胞を死滅させる実験
HypG2 cell line:肝癌細胞、SEQ ID NO:15のポリペプチド1ug/ml 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、図8に示すように、結果により、肝癌細胞が凝集して塊になり、かつ破砕して変形することが示されている。
【0100】
(10)抗菌ペプチドの血液中赤血球に対する効果の実験
ヒト血液中赤血球、SEQ ID NO:27の抗菌ペプチド1ug/ml 20ulを2%RBCと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、実験結果は、図9に示すように、結果により、ヒト血液中赤血球が凝集して塊になり、明らかな溶血が見られないことが示されている。
【0101】
以上の記載は本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神及び原則内で行われたいかなる修正、同等置換及び改善等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023542830000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はペプチド又はペプチド誘導体の技術分野に属し、特に抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、置換体及びその組成物、製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界において、抗菌ペプチドは細菌、ウイルス、真菌、昆虫、両生類、動物及び植物などの生体内に広く存在し、抗菌ペプチドは細菌、真菌、寄生虫及びウイルスを殺傷することに対して非常に顕著な作用を有する。抗生物質の大量の使用に伴い、微生物が薬剤耐性を有することを招き、研究開発者の抗菌ペプチドに対する大規模な研究開発を促進駆動した。defensins(ディフェンシン)のような人体内因性抗菌ペプチドが発見され、FDA(食品医薬品監督管理局)により抗感染、抗炎症及び他の損傷治療の薬物として承認された後、抗菌ペプチドが人体先天獲得性及び適応性免疫を刺激する効果を有することがさらに発見された後、抗菌ペプチドはますますいくつかの疾患に対する潜在的な治療利点が示されている。医療用薬物に加えて、抗菌ペプチドは食品防腐、家禽畜産業、水産漁業、及び日常医療用健康促進、衛生美容、清潔消毒、農業病虫害防除などの多くの方面にも広く応用されている。
【0003】
例えば、プロピオニバクテリウムは、グラム陽性菌という、正常な人間の皮膚上の微生物コロニーが毛髪皮脂腺毛嚢に過剰に成長することにより引き起こされるものである。プロピオニバクテリウムはヒトの皮膚に影響を与える最も一般的な疾患の一つであり、約百万の中国人がこの疾患の影響を受けている。プロピオン酸菌によるニキビは異なる病態表現を有し、例えばとげ、丘疹、結核、嚢胞、及び毛嚢皮脂腺炎症等が挙げられる。従来のプロピオン酸菌によるニキビの治療には抗生物質が使用されることが多く、例えばオキシテトラサイクリンの経口投与、エリスロマイシンの外用、クリンダマイシン等が挙げられるが、このような治療は間もなく抗生物質耐性を招いてしまう。また、プロピオン酸菌によるニキビ治療は臨床的に過酸化ベンゾイル(Benzoyl Peroxide)、5%のアミノフェニルサルフォンゲルが採用されており、この二種類の薬物は低濃度で薬効が小さく、高濃度では大きな毒性や副作用を有する。
【0004】
別の例として、シュードモナスエルギノーザは、グラム陰性菌の人体及び動物体への侵入感染によるものであり、それは生体の呼吸器系、泌尿器系、消化器系、中枢神経系、及び血液、心臓及び骨格系に感染することができる。シュードモナスエルギノーザが眼及び耳に感染した時、常に成人の細菌角膜炎、強膜膿腫、眼内炎、新生児眼炎及び小児中耳炎を引き起こす。特に緑膿菌/細菌角膜炎は瞳孔眼鏡を使用する感染率を増加させ、米国は毎年約二万五千名の瞳孔眼鏡着用者がこの細菌による感染に遭遇したことがある。また、米国疾病予防管理センターの統計によれば、1000人当たりの入院患者は4人がシュードモナスエルギノーザの感染に遭遇したことがある。シュードモナスエルギノーザは治療可能であるが、抗生物質の使用に伴い、この微生物の薬剤耐性が向上し、迅速に治療の薬効を低下させ、投与組み合わせ及び治療手段を変更しなければならない。データによると、米国で集中治療室から単離されたシュードモナスエルギノーザのシプロフロキサシンに対する薬剤耐性は51.6%、ピペラシリン/タゾバクタムに対する薬剤耐性は31.4%、イミペネムに対する薬剤耐性は38%、セフタジジムに対する薬剤耐性は23.6%に達する。ヨーロッパ集中治療室で単離されたシュードモナスエルギノーザのアミノグリコシド類に対する薬剤耐性は37-70%、セフタジジムに対する薬剤耐性は57%、ピペラシリン/タゾバクタムに対する薬剤耐性は53%、シプロフロキサシンに対する薬剤耐性は56%、イミペネムに対する薬剤耐性は52%に達することができ、したがってシュードモナスエルギノーザによる深刻な薬剤耐性感染に対する治療及び制御は非常に重要になる。
【0005】
現在報告された典型的な抗菌ペプチドは一般的に10-100個のアミノ酸残基で構成され、多くの塩基性アミノ酸を含有しかつ一般的に両親媒性である。
【0006】
カエル科の分泌物から抽出された宿主防御ペプチドPGLaはヘリコバクターピロリ(グラム陰性菌)に対して優れた殺傷力を有することが報告されている。魚体内から分離された天然抗菌ペプチドTP4もあり、さらに人体から分離された天然抗菌ペプチドLL-37もヘリコバクターピロリに対して優れた殺傷力を有する。これらの発見は抗菌ペプチドのヘリコバクターピロリに対する治療効果が特に高いことが示され、さらに静菌添加剤として日常生活用品に添加することができ、それにより我々がヘリコバクターピロリから守られることを有利である。しかし、従来の抗菌ペプチドに抗菌活性が強くなく、かつ多くは広域スペクトル抗菌活性を有しない欠陥が存在する。
【0007】
また、動植物から分離して得られた抗菌ペプチドの種類が多様であり、分布が広く、昆虫、魚類、哺乳動物、両生動物及び植物などの生物においていずれも発見された。異なる由来の抗菌ペプチドの応用性については系統的な研究がまだない。特に植物抗菌ペプチドは、特に不安定であり、タンパク質分解酵素により加水分解されやすく、それによりその抗菌活性が大幅に低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の目的は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、合成方法、組成物及び応用を提供することであり、従来の技術における抗菌ペプチドの抗菌活性が強くなく、安定せず、広域スペクトル抗菌活性を有しないという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の本願目的を達成するために、本願が採用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【0010】
第1態様において、本願は、以下のアミノ酸配列のうちの少なくとも一種を含む抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を提供する。
【化1】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれる。
【0011】
本願による抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は細胞壁/膜の脂質構造と特異的に結合し、微生物壁を破壊し、さらに微生物及び癌細胞を死滅させることができる。
【0012】
第2態様において、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体に含まれるアミノ酸配列I又は/及びアミノ酸配列IIの少なくとも一つのアミノ酸が置換される、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体を提供する。
【0013】
本願が提供する置換体は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の活性を確保することができ、本願の内容に含まれ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸への置換により、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0014】
第3態様において、本願は、少なくとも上記段落のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体を含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を提供する。
【0015】
本願の第3態様が提供する抗菌組成物に関して、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの溶媒と混合して組成物に製造することができる。
【0016】
第4態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と溶媒とを混合処理するステップを含む、抗菌組成物の製造方法を提供する。
【0017】
本願の抗菌組成物の製造方法によれば、一方では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの溶媒に安定して存在することができ、溶媒と抗菌ペプチド又はペプチド誘導体とを混合することで抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を保存することができ、他方では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保する。
【0018】
第5態様において、本願は、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬における応用を提供する。
【0019】
本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体が微生物を死滅させ、腫瘍細胞を死滅させ、抗凝血及び消炎の機能を果たすことができるため、その用途が広く、主に四つの利点を有する。
【0020】
一、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は包装、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品材料と結合するか又はその中に混入することができ、それに抗菌機能を備えさせ、又は微生物により分解されやすい他の材料の保存剤とすることができる。
【0021】
二、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬に製造され、殺菌、抗感染、消炎の役割を果たすことができる。
【0022】
三、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物はコーティングに製造され、食品処理加工及び最末端に塗布され、食品処理加工の最末端表面の微生物を減少させ、食品中毒のリスクを低減することができる。
【0023】
四、細胞を死滅させ、増殖を制限することができ、抗腫瘍治療、局所的美容イボ・シミ除去などのために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による大腸菌抑制実験結果の統計ヒストグラムである。
図2】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による大腸菌抑制結果図である。
図3】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による野生黄色ブドウ球菌の抑制実験結果図である。
図4】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体によるシュードモナスエルギノーザのMIC抑制実験結果図である。
図5】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体によるRNAウイルス死滅実験結果図である。
図6】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による白血病リンパ球細胞(Jurkat cell line)の死滅実験結果図である。
図7】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による白血病細胞(K562 cell line)の死滅実験結果図である。
図8】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体による肝癌細胞の死滅実験結果図である。
図9】本願の実施例における抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の血液中赤血球に対する効果の実験結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、ここで説明された具体的な実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0026】
本願において、「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を説明し、三種類の関係が存在してもよいことを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する、同時にA及びBが存在する、Bが単独で存在する場合を示すことができる。ここで、A、Bは単数又は複数であってもよい。文字「/」は、一般的に、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0027】
本願において、「少なくとも一つ」は一つ又は複数を意味し、「複数」は二つ又は二つ以上を意味する。「以下の少なくとも一項(個)」又はその類似表現は、これらの項の任意の組み合わせを意味し、単項(個)又は複数項(個)の任意の組み合わせを含む。例えば、「a、b、又はcのうちの少なくとも一項(個)」、又は、「a、b、及びcのうちの少なくとも一項(個)」は、いずれも、a、b、c、a-b(即ちa及びb)、a-c、b-c、又はa-b-cを表すことができ、ここでa、b、cはそれぞれ単一であってもよく、複数であってもよい。
【0028】
理解すべきことは、本願の様々な実施例において、上記各プロセスの番号の大きさは実行順序の前後を意味するものではなく、一部又は全部のステップを並列に実行するか又は前後に実行することができ、各プロセスの実行順序はその機能及び固有論理で決定されるべきであり、本願の実施例の実施プロセスが何ら限定されるものではない。
【0029】
本願の実施例において使用される用語は特定の実施例を説明する目的だけであり、本願を限定することを意図するものではない。文脈上、明らかに他の意味を示さない限り、本願の実施例及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形式の「一種」、「前記」及び「該」も複数の形式を含むことを意図する。
【0030】
明細書に言及された本願の実施例の関連成分の重量は各成分の具体的な含有量を指すだけでなく、各成分の間の重量の比例関係を表すことができ、したがって、本願の実施例の明細書に記載の関連成分の含有量に応じて比例に応じて拡大するか又は縮小すればいずれも本願の実施例の明細書に開示された範囲内にある。具体的には、本願の実施例の明細書に記載の質量はμg、mg、g、kg等の化学工業分野で公知の質量単位であってもよい。
【0031】
第一、「第二」という用語は単に対象を説明するために用いられ、対象例えば物質を互いに区別するために用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示するか又は指示された技術的特徴の数量を暗黙的に示すと理解することができない。例えば、本願の実施例の範囲から逸脱することなく、第1XXは第2XXと呼ばれてもよく、同様に、第2XXは第1XXと呼ばれてもよい。これにより、「第1」、「第2」が限定された特徴は一つ又は複数の該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0032】
第1態様において、本願の実施例は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を提供し、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化2】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、ここで、アミノ酸配列IIにおいてCaとCaとの間に環結合を形成し、アミノ酸は天然アミノ酸又は/及び非天然アミノ酸を含み、ここで、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は細胞壁/膜の脂質構造を結合し、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0033】
実施例において、上記実施例に基づいて、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を向上させるために、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれ、又は/及びBa1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれ、又は/及びUはGly(G-グリシン)、Pro(P-プロリン)、Cys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、又は/及びZa1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれ、又は/及びCa1、Ca2はそれぞれ独立してCys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる一種であり、アミノ酸配列Iにおいて、Xa1又はXa3はN末端を表し、Xa1又はXa3はC末端を表し、アミノ酸配列IIにおいて、Xb1及び/又はBはN末端を表し、Ca2はC末端を表す。本願の抗菌ペプチド及びペプチド誘導体に疎水性側鎖の残基を含んだり、陽性電荷の残基を含んだり、非極性の残基を含んだりするため、本実施例が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体鎖は典型的な両性螺旋構造を形成することができ、該抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の荷電性及び両性螺旋構造により、それを細胞壁/膜の脂質構造と結合させ、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0034】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化3】
ここで、Ba1、U、Za1、Ba2、Ba3、Za2、Ba4、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Bb3、Zb2、Bb4、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる一つであり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすい。
【0035】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化4】
ここで、Ba1、Za1、Ba2、Ba3、Za2、Ba4、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Bb3、Zb2、Bb4、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb3はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる少なくとも一種であり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすく、疎水性側鎖の残基は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の水溶性及び電荷性のバランスを確保し、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する。
【0036】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化5】
ここで、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる一つであり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、陽極電荷を持つペプチド鎖は負電荷を持つ細胞膜と結合しやすく、非極性の残基及び疎水性側鎖の残基は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の水溶性及び電荷性のバランスを確保し、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する。
【0037】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化6】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれ、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、UはGly(G-グリシン)、Pro(P-プロリン)、Cys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる少なくとも一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一種であり、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys(C-システイン)、Cys(R)から選ばれる少なくとも一つであり、アミノ酸配列Iにおいて、X及び/又はBはN末端を表し、B及び/又はXはC末端を表し、アミノ酸配列IIにおいて、X及び/又はBはN末端を表し、CysはC末端を表す。本願の抗菌ペプチド及びペプチド誘導体に疎水性側鎖の残基を含んだり、陽性電荷残基を含んだり、非極性の残基を含んだりするため、本実施例が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体鎖は典型的な両性螺旋構造を形成することができ、該抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の荷電性及び両性螺旋構造により、それを細胞壁/膜の脂質構造と結合させ、微生物壁又は細胞膜を破壊し、さらに微生物及び腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0038】
実施例において、上記実施例に基づいて、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の安定性を改善するために、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3、Bb4はそれぞれ独立してArg(R-アルギニン)、His(H-ヒスチジン)、Lys(K-リジン)、Orn(オルニチン)、Har(ホモアルギニン)、Dab(2,4-ジアミノプロピオン酸)、非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、一方、Arg(R-アルギニン)、His(H-ヒスチジン)、Lys(K-リジン)、Orn(オルニチン)、Har(ホモアルギニン)、Dab(2,4-ジアミノプロピオン酸)、非天然アミノ酸は陽性電荷の残基であり、全体構造から見ると、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができる。他方、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、又は/及びBa1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3はそれぞれ独立してAla(A-アラニン)、Val(V-バリン)、Ile(I-イソロイシン)、Leu(L-ロイシン)、Met(M-メチオニン)、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種、四種であり、Ala(A-アラニン)、Val(V-バリン)、Ile(I-イソロイシン)、Leu(L-ロイシン)、Met(M-メチオニン)、非天然アミノ酸は疎水性側鎖であり、疎水性側鎖はペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況、又は/及びZa1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してAsn(N-アスパラギン酸)、Gln(Q-グルタミン)、Ser(S-セリン)、Thr(T-トレオニン)非天然アミノ酸から選ばれる一種であることを保証し、非極性の残基から選ばれ、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の非極性の残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、非極性残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況、又は/及びXa1及びBa1、Xa2及びBa2、Xa3及びBa3、Xb1及びBb1、Xb2及びBb2、Xb3及びBb3、Xb4及びBb4残基の数の和が3、4、5、6又は7であることを保証し、好ましくは3又は4であり、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の活性に対して、ペプチド鎖の長さが長いほどよいが、合成のコスト及び製造コストを考慮し、及びペプチド鎖の安定性を確保するために、Xa1及びBa1、Xa2及びBa2、Xa3及びBa3、Xb1及びBb1、Xb2及びBb2、Xb3及びBb3、Xb4及びBb4残基の数の和の好ましい個数は3及び4である。本願の抗菌ペプチドのアミノ酸配列及び/又は一部のアミノ酸配列はウイルスの8から25個のアミノ酸に由来する。
【0039】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化7】
ここで、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれ、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2 、X b3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab、非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれる一つであり、及び/又はUはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選択される一つであり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均 衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種である。
【0040】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化8】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2 、X b3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、又は/及びUはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれる少なくとも一種であり、又は/及びCa1、a2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選ばれる一種であり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、疎水性側鎖は、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎると不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証する。
【0041】
実施例において、そのアミノ酸配列の一般的な表現は以下のとおりである。
【化9】
ここで、Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2 、X b3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、B b4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性のAsn、Gln、Ser、Thr、非天然アミノ酸から選ばれる一種であり、UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、RはCysジスルフィド結合の保護基を表し、Ca1、a2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選択される一つであり、陽性電荷の残基は、他の残基と合わせて両性螺旋構造を形成することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を増加させることができ、また、抗菌ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の陽性電荷の残基が長すぎると、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の電荷が不均衡になり、不安定になりやすく、したがって、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、陽性電荷の残基の数は一種、二種又は三種であり、疎水性側鎖は、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の疎水性側鎖残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、ペプチド鎖のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、疎水性側鎖残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証し、ペプチド鎖の水溶性及び電荷性をバランスすることができ、すなわち、ペプチド鎖又はペプチド誘導体中の非極性の残基が長すぎるとペプチド鎖が不安定になりやすく、したがって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を確保するために、非極性残基の数は二種、三種、四種のうちの一つの状況であることを保証する。
【0042】
いくつかの実施例において、Cysジスルフィド結合はアセトアミノメチル(Acetamidomethyl(Acm))、メチルメタンチオスルフォネート(methyl methane thiosulfonate)又は他のCys保護基を含み、Cys(R)はCysジスルフィド結合を含有する保護基を表し、ここで、Ca2は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の末端基であり、Ca1は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の中間位置に位置し、したがって抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の分子内部に環鎖構造を形成することができ、このように抗菌ペプチドの安定性を向上させ、抗菌ペプチドの殺菌時間を延長することができ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はより高い抗菌活性を有する。
【0043】
いくつかの実施例において、アミノ酸配列I及び/又はIIは少なくとも一つのアミノ酸が修飾処理されたことを含み、実際の応用において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の安定性及び抗菌活性は非常に重要であり、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸を修飾することによりペプチド鎖の性能を変更し、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の広域スペクトル性を向上させ、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0044】
実施例において、修飾はリン酸化、ハロゲン化、アセチル化、環化、エンドポイントのキャッピング反応を含み、ここで、環化はジスルフィド結合で形成された環化、首尾環化、内部構造における側基の環化のうちの少なくとも一種を含み、アミノ酸エンドポイントのキャッピング(capping)反応はC末端アミド化、N末端アセチル化及びN末端リン脂質化のうちの少なくとも一種を含み、アミノ酸に例えば環化のような修飾処理を行うことで、ペプチド鎖の安定性を向上させることができ、また例えばアミノ酸にリン酸化処理を行うことで、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施例において、アミノ酸配列I及び/又はIIは少なくとも一つのモチーフ(motif)を含み、常に所定のアミノ酸エンドポイント配列(N末端及び/又はC末端)に接続され、所定のアミノ酸配列の中間に直接挿入されてもよく、一般的に独立してアミノ酸配列エンドポイントとせず、モチーフとペプチド鎖との接続又はアミノ酸間への挿入は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体にモチーフを挿入するとペプチド鎖の性能を変更し、ペプチド鎖の抗菌活性、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を増加させることができる。
【0046】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はアミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIを含んで形成された多量体であり、ここで、二量体(Dimer)、四量体(Tetramer)のうちの少なくとも一種は、一般的な多量体状態である。抗菌ペプチド単量体及び/又は多量体は少なくとも一種の薬物、抗体と共役結合して抗菌薬品を形成し、主に小分子化学合成薬物、大分子の抗体、生物学的組換技術で合成された大分子薬物を含み、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体で形成された多量体は薬物、抗体分子と共役結合して抗菌薬品を形成し、薬品又は抗体の改質に用いることができる。
【0047】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のナノ構造であって、一本のペプチド鎖及びそのペプチド誘導体又は複数又はポリのペプチド鎖及びペプチド誘導体はいずれもナノ構造を形成することができ、ここで、一般的なナノ構造はミセル、ベシクル、ナノチューブ、ナノベルトから選ばれる少なくとも一種である。ペプチド鎖及びそのペプチド誘導体はナノ構造を形成することで、ペプチド鎖及びそのペプチド誘導体が溶液中で安定して存在し、かつ溶液中で伝送することに役立つ。
【0049】
第2態様において、本願は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体を提供し、上記段落のいずれかのアミノ酸配列I又はIIにおけるアミノ酸を置換して置換体を得ることも本願の内容に含まれ、例えばL型アミノ酸を対応するD型アミノ酸又は非自然アミノ酸に置換することが挙げられる。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体上のアミノ酸を置換することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を改善し、その広域スペクトル抗菌活性を増加させることができる。
【0050】
第3態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体又は/及び置換体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体及び/又は溶媒を含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を提供し、本願が提供する抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は殆どの薬剤に許容可能な担体と結合して医薬組成物を形成することができ、同様に殆どの溶媒と混合して、組成物に製造することもできる。
【0051】
いくつかの実施例において、さらに、賦形剤、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーのうちの少なくとも一種を含み、これらの物質と混合することで、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を様々な抗菌薬品又は抗菌溶剤に製造することができる。
【0052】
いくつかの実施例において、賦形剤は水、塩、リン酸塩、グルコース、グリセリン、エタノールから選ばれる少なくとも一種であり、これらはいずれも一般的な医学試薬であり、抗菌ペプチド又は誘導体はこれらの試薬と混合することができ、本願の抗菌ペプチド及び誘導体の普及及び使用に役立つ。
【0053】
いくつかの実施例において、等張化剤は糖、ポリオール及び塩化ナトリウムから選ばれ、等張化剤はペプチド活性を保持することができ、抗菌ペプチドと誘導体及び等張化剤を混合することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はより生体と結合しやすくなる。
【0054】
いくつかの実施例において、ポリオールはマンニトール、ソルビトールから選ばれ、ポリオールと抗菌ペプチド又はペプチド誘導体とを混合することで、ポリオールは抗菌ペプチド又は誘導体の活性を保持することができ、抗菌ペプチド又は誘導体は生体と結合しやすくなる。
【0055】
ここで、薬学的に許容可能な担体は最小量の補助物質から選ばれ、薬学的に許容可能な担体は湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝液から選ばれ、薬学的に許容可能な担体と抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は組成物を形成し、抗菌ペプチド又は誘導体の活性を保持することができ、抗菌ペプチド又は誘導体は生体と結合しやすくなる。
【0056】
実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は基底ポリマーと結合して水相又は非水相溶液に製造され、これらの水相又は非水相溶液は物体の表面に塗布して抗菌保護層を形成することができる。
【0057】
また、上記物質は様々な形式又は様々な成分で構成されてもよい。抽出物、シート、フィルム、積層板、編物、織物、不織布、繊維、フィラメント、糸、粒子、コーティング、及び/又はフォームを含むがそれらに限定されない。本願は上記物質及び抗菌ペプチドで製造された様々な成形品も含み、射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルム、織り、編み及び織物製品等を含むがそれらに限定されない。
【0058】
第4態様において、本願は、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と前記溶媒とを混合処理するステップを含む、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の製造方法を提供する。
【0059】
実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と基底ポリマーを混合物に調製する時、十分な混合を確保するために、混合温度を-10から150℃の範囲に制御し、混合時間を0.1から5760minの範囲に制御する。ここで、混合温度は25から80℃の範囲にあり、混合時間は1から1440minの範囲にあり、より優れた混合効果を有する。
【0060】
いくつかの実施例において、薬剤に許容可能な担体、賦形剤、溶媒、分散媒、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーを前処理することをさらに含み、ここで前処理は酸化、還元、加水分解、プラズマ又は放射のうちの少なくとも一種を含むがそれらに限定されず、前処理は抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の前記環境を改善することができ、さらに抗菌ペプチド又はペプチド誘導体のペプチダーゼ又はタンパク質分解に対する安定性を向上させる。
【0061】
いくつかの実施例において、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と上記物質との混合の有効濃度範囲は1ugから20gwt%の間にあり、又は5pmolから2molの濃度の間にある。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物を保存するために、温度を-20から25℃の範囲に制御することにより、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の抗菌活性を確保する必要がある。また、温度を-4から4℃の範囲に制御すると、より低い温度に限って抗菌ペプチドの生物学的活性特性を確保することができる。
【0062】
第5態様において、本願は下記いずれかの抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用を提供する。
【0063】
包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬である。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物は薬品又は非薬品として人間、動物(野生動物、家畜、コンパニオン動物を含む)、植物(農作物を含む)、水生及び水産養殖動物、家禽類養殖動物等に広く使用することができる。以下では人間及び動植物と呼ばれる概念定義は、すなわち上記言及された人間、動物(野生動物、家畜、パートナー動物を含む)、植物(農作物を含む)、水生及び水産養殖動物、家禽類養殖動物等を含む概念定義とされ、以下は同様である。
【0064】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の包装における応用では、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を包装材料と結合するか又はその中に混入することができ、又は微生物により分解されやすい他の材料の保存剤とし、ここで、包装成分は肉製品の包装フィルム、パッド、吸水パッド、トレイ、容器部品、キャップ、カバー、接着剤、アプリケータ等を含むがそれらに限定されない。このような包装は特殊な応用に適する任意の包装形式であってもよく、例えばアルミニウム製タンク、ケース、ボトル、ガラス缶、袋、化粧品包装、密閉式管などである。上記包装は射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルムなどのプロセスで製造された包装成形品を含むがそれらに限定されない。
【0065】
ここで、包装品はさらに処方/非処方薬及び健康促進衛生用品の包装に適用され、例えばカプセル、錠剤、溶液、乳化剤、洗浄剤、粉末、シャンプー、ヘアケア剤、消臭剤、制汗剤等のために製造されたボトル、先端物、アプリケータ、キャップ等の包装である。包装品は、さらに、例えば口紅、リップクリーム、艶出し油等アプリケータの包装、例えばマスカラ、アイライナー、アイシャドウの眼部化粧品包装、スプレーパウダー、入浴粉、チークレッド、ファンデーション及び乳液の包装に適用される。このアプリケータは生物体の異なる部位及び表面に用いられ、このような応用は細菌の人体表面での成長を大幅に減少させるか又は消滅させる。また、さらに他の形式の包装構成を含み、例えば液体、溶液又は懸濁液を収容する飲水ボトルネック、交換可能なカバー、交換不可能なカバー、食物又は薬品の分注システム,食物及び飲料の輸送システム,乳児用哺乳瓶、カバー、乳首等が挙げられる。包装には、ゲル滴離散剤または液滴噴射剤とすることも含まれる。
【0066】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の食品処理加工及び最末端での応用、又は食品表面のコーティングを一時的又は永久的に用意するために用いられ、例えば抗生物質に代わる食品添加物,食品加工機器、食品搬送ベルト組立及び部材であって、食品を混合、研磨、破砕、転動、造粒、押圧するための異なる機器の組立及び部材,食品を切断し、スライスするための機器組立及び部材が挙げられる。上記機器の表面が金属物質であれば、該金属表面に機能性を有するポリマーを一層塗布する必要があり、該ポリマーはすなわち本願が上記説明した抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を含有するポリマーである。抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物はコーティングに調製され、食品処理加工及び最末端に塗布され、食品処理加工の最末端表面の微生物を減少させ、食品中毒のリスクを低減することができる。
【0067】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の服飾における応用であって、このような服飾は殺菌静菌の機能を有し、例えば水着、下着、靴構成部分(例えば編み又は非編みのライナー又は靴パッド)運動防護パッド、子供服装などが挙げられる。本願も防護性医療服装又は隔離用品を含み、例えば防護服、マスク、手袋、スリッパ、ブーツ、ヘッドカバー又はカーテン等が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の医療用品、機器における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は医療用品、医療材料と結合するか又はその中に混入することができ、又は医療機器の表面に抗菌ペプチド又はペプチド誘導体コーティングを一層塗布するか、又は噴霧に製造して医療用品、機器に殺菌及び消毒を行い、ここで、医療用品、機器は、人体及び動物インプラント、例えば包帯、接着剤、ガーゼ、ガーゼパッド、注射器ステント、ポリウレタン又はシリコーンゴムで構成される周囲静脈又は中央静脈カニューレ、尿道瘻造ポート、骨科矯正器、矯正針、ペースメーカ導線、除細動器導線、外耳道分流器、血管ステント、整形インプラント、耳鼻喉インプラント、埋め込み可能なポンプ、ヘルニアパッチ、及びこれに関連する皿、ねじ、血液バッグ、外用血液ポンプ、輸液システム、心肺機器、透析機器、人工皮膚、人工心臓、心室補助装置、補聴器、血管移植物、ペースメーカ構成要素、股関節インプラント、膝インプラント、歯科インプラント等を含む。
【0069】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の個人衛生用品における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は個人衛生用品材料と結合するか又は混入することができ、さらに個人衛生用品は殺菌静菌の作用を有し、例えばおむつ、不便パッド、生理用ナプキン、運動パッド、生理用タンポン及びそれらを応用する付属器具が挙げられる。衛生健康促進物の方面において、抗微生物ウェットティッシュ、乳児用ウェットティッシュ、個人拭き取りウェットティッシュ、化粧用ウェットティッシュ、おむつ、医療用ウェットティッシュ(例えば抗生物質を含有するウェットティッシュ又は綿パッド、ニキビ治療薬、痔疾治療薬、痒み止め薬、抗炎症薬及び防腐剤など)が挙げられる。
【0070】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の口腔に直接接触する物品における応用であって、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体が人体に無毒であり、かつ消毒することができ、したがって口腔に直接接触し、口腔殺菌及び静菌の目的を達成することができ、ここで、口腔に直接接触する物品は、乳幼児の皮膚感染等を防止し、例えば乳児用哺乳瓶、乳首、歯科機器、ストレッチテープ、義歯、カップ、水カップ、歯磨剤及び歯固め玩具等が挙げられる。幼児物品が微生物感染を防止することを主な目的とする応用もこの保護範囲にあり、例えば乳児用瓶、幼児書籍、プラスチックはさみ、玩具、おむつバケツ、及び清潔なウェットティッシュを収容する容器が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の家庭用品での使用であって、菌が口から入ることを防止するために、抗菌ペプチド又はペプチド誘導体は家庭用品材料と結合するか又は混入することができ、ここで、家庭用品は電話、携帯電話、繊維充填物、ベッド用品、窓処理、カーペット床面洗浄処理、フットパッド又はカーペットパッドの裏面の発泡パッド、室内装飾品(例えば発泡パッド)、非編み乾燥紙、柔軟剤を含む紙、自動車拭きウェットティッシュ、家庭用洗浄ウェットティッシュ、テーブルウェットティッシュ、バスカーテン、バスカーテン布、タオル、フェイスタオル、雑巾、モップ、テーブルクロス、壁、及びカウンタートップなどを含む。
【0072】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の消毒剤における応用であって、交差感染を回避するために、本願の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体を消毒剤に調製することができ、消毒剤が使用する環境は閉鎖空間、航空機、列車、映画館、劇場などの空気消毒を含む。例えば、医療用内視鏡等の消毒が挙げられる。抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は独立膜の表面にバイオフィルム(biofilm)が形成されることを減少させるか又は防止することができ、これらの独立膜は浸透蒸発膜、透析膜、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の洗浄剤における応用であって、このような洗浄剤が殺菌の作用を有し、使用後に水で洗浄する必要がある。好ましくは脱イオン水で洗浄する。選択的に、洗浄された物品を乾燥することができ、乾燥方法は環境空気乾燥、オーブン乾燥、及び空気強制乾燥を選択することができる。乾燥温度は50℃から120℃であり、好ましくは乾燥温度は50℃から100℃であり、乾燥時間は約15minから24hである。
【0074】
また、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド組成物の上記全ての物品に対する処理は、工業化生産の前、工業化生産の後、及び工業化生産中の全過程を含む。例えば、抗菌バスカーテンを製造する際に、まず抗菌ペプチドを基底ポリマーと結合し、次に混合物でバスカーテンを処理する。製造プロセスは射出成形、押出成形、ブロー成形、熱成形、溶液コーティング、ブローフィルムのうちの少なくとも一種を含むがそれらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の抗感染薬、消炎薬における応用であって、殺菌して感染を防止し、感染は細菌、ウイルス、真菌によるものを含み、例えば、酵母、病原体、グラム陰性菌及び/又はグラム陽性菌、単細胞又は多細胞生体によるものを含み、共生生物又は非共生生物、病原体生物、コロニー又は非コロニーの細菌によるものであってもよい。具体的には、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は細菌、ウイルス、真菌の皮膚での感染を治療するか又は減少させることができ、このような感染は人間又は動物外皮系に関連する任意の部分であってもよく、例えば表皮、真皮、皮下組織、一つ又は複数の毛髪毛嚢、一つ又は複数の皮質腺、又は皮膚に関連する他の部位である。換言すれば、上記感染は皮膚に関連し、さらに、感染は視力の一部に関連するか又は聴力の一部に関連し、例えば耳の一部、例えば鼓室又は鼓室を含む聴力システムの一部であってもよい。
【0076】
実施例において、抗感染薬はヒト又は動物のいずれか一種又は複数種の細菌による感染を治療するために用いられ、抗菌ペプチドは一種又は複数種の共生生物が過度に増加することを治療することができ、このような共生生物が非病原体又は人体又は動物に有益な共生生物であってもよい。そのうちのいくつかの共生生物は、ブドウ球菌、マイコバクテリア、及びプロピオン酸菌に由来する可能性がある。また他の細菌感染は既知の病原体に由来する可能性があり、例えばシュードモナス属が挙げられる。
【0077】
実施例において、抗感染薬は非細菌微生物による感染を治療することに用いることができ、例えば一種又は複数種の真菌(例えば酵母)による感染を治療する。例えば、抗菌ペプチドは、癜風菌による感染を治療することができる。癜風菌は共生生物であり、その過度な成長はフケ、脂漏性皮膚炎、白癬及び毛嚢炎等を招き、その治療について常に成長制御、関連炎症除去、及び二回目の感染の制御等を採用する。癜風菌の成長は頑固で治療しにくく、また治療周期が長く、多くの薬物の共同作用を必要とするため、現行の市場で使用された薬物は毒性や副作用が大きいだけでなく極めて高価である。本願の抗菌ペプチドは有効な治療濃度範囲内で癜風菌等の真菌による感染を治療することができる。
【0078】
実施例において、消炎薬は感染及び非感染さらに物理的創傷による炎症を治療するために用いられ、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は実験において炎症を減少、緩和及び治療する作用を有することが示されている。例えば細胞、細菌及び動物において、上記組み合わせペプチドは炎症因子、例えば細胞質分裂(cytokinesis)、ケモカイン(chemokines)及びその類似物の放出を減少させることが示されている。
【0079】
また、このような炎症は生理的に定義された炎症反応であり、発赤、腫れ、細胞分子転写及び翻訳レベルでの一つ又は複数の炎症性サイトカインの誘導反応,炎症に関連する一つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の誘導反応,細胞膜に存在する受容体の誘導反応,血管化組織内に存在する細胞浸潤、及び本分野の技術的範囲内で炎症に関連する他の表現症状を含む。
【0080】
いくつかの実施例において、上記段落に記載の組成物の細胞の無限増殖抑制薬剤における応用、抗腫瘍の作用であって、ここでの非無限増殖の細胞(細胞系内In Vitro及び生体内In vivo)はヒトが構築した細胞、疾患状態の細胞、例えば癌細胞などを含む。このような非永生細胞は初代培養細胞、例えば角質細胞、微細血管内皮細胞、角膜上皮細胞及び真皮線維芽細胞なども含む。抗菌ペプチド組成物は細胞膜受容体-細菌特異的結合のパターン認識受容体(pattern-recognition receptors)の減少をもたらす。上記反応の結果として、動物及び動物の一部は明らかな炎症緩和作用が示され、例えば組織の腫れが減少するか又は消失し、細胞浸透が減少するか又は消失する等である。
【0081】
いくつかの実施例において、上記炎症性サイトカインは炎症に関連するサイトカインを含み、腫瘍壊死因子、インターロイキン8、インターロイキン1及びインターロイキン6を含むがそれらに限定されない。また、細胞内信号伝達経路は炎症に関連する伝達信号経路を含み、NFkB、AP-1を含むがそれらに限定されない。「細胞膜関連受容体」はパターン認識受容体、TLR受容体ファミリー、(TLR-2及びTLR4を含む)を含むがそれらに限定されない。
【0082】
実施例において、抗菌ペプチドの治療濃度及び治療時間は多くの因子、例えば病状、年齢、性別、体重及び個人体調に依存し、抗菌ペプチドは幹細胞治療に適用され、その有効濃度は0.01ug/mlより大きい。
【0083】
実施例において、有効濃度は0.2ug/ml以上である。
【0084】
実施例において、抗感染薬、消炎薬及び細胞の無限増殖抑制薬は液体、半固形化液体、クリーム状固体、軟膏、ゲルのうちの少なくとも一種を含み、例えば、外用剤形は皮膚、髪、及び他の外用部分に用いることができ、さらに、一定の条件下で、外用剤形は単眼又は両眼に用いることができ、点眼液に調製することもできる。
【0085】
実施例において、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド誘導体は静脈注射剤形に調製されてもよく、又は鼓室内/鼓室間投与剤形であり、溶媒は滅菌された等張水溶液であってもよい。
【0086】
また、医薬に使用される抗菌ペプチド剤形は投与経路と一致し、該投与経路は胃腸投与、静脈注射、皮下、皮内、口腔、鼻内(吸入)、膣、肛門、表皮、粘膜投与、鼓室間、鼓室内、直腸投与及び他の許容可能な投与方式を含む。抗菌ペプチド製剤は薬学的構成成分に合わせた投与経路と一致し、例えば静脈注射、皮下、筋肉内、神経節間、経口、鼻、内、耳内及び表皮下等の投与方式で人間及び/又は動物、例えば家畜、及びパートナー動物等に投与し、水生類、家禽類等にも適用することができる。
【0087】
また、出願において一つのアルファベットが代表するアミノ酸の定義は、国際アミノ酸コード及び代表的な配列標準と一致し(IUPAC-IYUB)、表1に示すとおりである。
【0088】
【表1】
【実施例
【0089】
以下に具体的な実施例を参照しながら説明する。
実施例1-39
実施例1-39は、標準的な国際公知のポリペプチド固相合成(solid-phase synthesis)、液相合成(solution-phase synthesis)、又は生物学的組換え合成(recombinant biosynthesis)により合成され、合成結果は表2に示すアミノ酸配列表に示すとおりである。
【0090】
【表2-1】
【表2-2】
【0091】
性能試験及び結果分析
(1)大腸菌抑制実験
ポリペプチド合成実施例1-39における39種類の抗菌ペプチドに対して大腸菌抑制実験を行い、等量の大腸菌液体30ulを取り、様々な30ulの抗菌ペプチド(濃度200ug/ml)を添加し、対照管は30ulのPBS等張液を用いて、室温で15min反応させ、次にアガロースプレートに塗布し、均一に塗布した後に温度37℃で、12h培養し、各プレートの大腸菌の個数を統計し記録する。実験結果は、図1に示すとおりである。実験結果によると、抗菌ペプチドSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:39は大腸菌に対していずれも抑制効果を有し、中でもSEQ ID NO:8の効果が最も顕著である。
実験結果をより明確にするために、6個の実験サンプルを選択して対照分析を行い、図2に示すように、Aは対照管であり、251個の大腸菌クローンである。BはSEQ ID NO:5であり、236個の大腸菌クローンである。DはSEQ ID NO:6であり、226個の大腸菌クローンである。FはSEQ ID NO:7であり、216個の大腸菌クローンである。CはSEQ ID NO:8であり、1個の大腸菌クローンである。EはSEQ ID NO:35であり、95個である。複数のポリペプチドがグラム陰性菌を死滅させる作用を有することが示されており、また、SEQ ID NO:8が1個であり、最適な抗菌ペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:8であることが示され、大腸菌のMICは32ug/mlである。
【0092】
(2)野生黄色ブドウ球菌抑制リング実験
臨床的に分離された野生黄色ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌はグラム陽性菌である)液体を取ってアガロースプレートに塗布し、接種用オックスフォードカップに入れ、SEQ ID NO:8の抗菌ペプチド(濃度はそれぞれ1/4:375ug/ml、1/16:93.7ug/ml、1/64:23.34ug/mlである)200ulを添加し、37℃で、18h培養し、静菌リングの大きさを測定する。実験結果は以下のとおりである。1/4:静菌リングは3.95cmである。1/16:静菌リングは3.5cmである。1/64:静菌リングは3.1cmである。図3を参照する。実験結果によると、抗菌ペプチドの濃度が減少するにつれて、静菌リングが小さくなり、また、大腸菌に比べて、抗菌ペプチドは黄色ブドウ球菌に対してより敏感であり、本願の抗菌ペプチドは優れた抗グラム陽性菌性を有する。
【0093】
(3)シュードモナスエルギノーザ(緑膿菌ATCC27853)のMIC測定
濃度が1024ug/ml、512ug/ml、256ug/ml、128ug/ml、64ug/ml、32ug/ml、16ug/ml、8ug/ml、4ug/ml、2ug/mのSEQ ID NO:8の抗菌ペプチドを取り、かつ陽性対照、陰性対照を設定し、それぞれ標準緑膿菌と混合した後、それぞれ培養プレートの12個のウェルに添加し、かつ培養プレートの12個のウェルに番号を付け、そのうち、図4に示すように、1は1024ug/mlに対応し、2は512ug/mlに対応し、3は256ug/mlに対応し、4は128ug/mlに対応し、5は64ug/mlに対応し、6は32ug/mlに対応し、7は16ug/mlに対応し、8は8ug/mlに対応し、9は4ug/mlに対応し、10は2ug/mに対応し、11は陽性対照に対応し、12は陰性対照に対応し、37℃で、2日間培養した後、培養プレートの濁り程度を観察する。実験結果は、図4に示すとおりである。実験結果によると、抗菌ペプチドは緑膿菌に対して高い抑制効果を有することが示され、緑膿菌に対するMICは64ug/mlである。
【0094】
(4)口腔内細菌の抑制作用
老人の洗口水を取り、等量の4部に分け、かつそれぞれ異なる量の2mg/mlのSEQ ID NO:8と30min混合した後にアガロース羊血を含有するプレートに均一に塗布し、ここで、A:PBS(対照)、B:2ul、C:10ul、D:20ulで混合する。37℃で、4日間嫌気性培養した後、プレートのコロニー数を観察する。実験結果は、図5に示すとおりである。
具体的には、対照プレートにカンジダアルビカンス及び嫌気性菌の成長があり、B:2ulの抗菌ペプチドプレートに少量の菌の成長があり、C:10ulの抗菌ペプチドにいずれかの口腔細菌の成長が見られず、D:20ulの菌に同様に口腔細菌の成長が見られない。
【0095】
(5)抗菌ペプチドでRNAウイルスを死滅させる実験
プラスミドpNL4.3Δ、pVSV-G、p-enhancerとlipo2000で293Tトランスフェクトし、37℃で、二日間培養した後、培養上清を取り、遠心分離して細胞小器官不純物を除去する。細胞上清500ulを等量の200ug/mlのSEQ ID NO:8と混合して15min反応させた後、対照群は等量のPBSでSEQ ID NO:8を代替する。遠心分離法(Millipore Amicon Ultra-15)で、抗菌ペプチドを除去することにより、抗菌ペプチド自体による細胞の殺傷作用を除去する。測定対象のサンプルを293T cell lineに感染させ、37℃で、12h培養し、293T cell lineを回収し、RT-PCR法で感染可能な細胞の生ウイルスの差異を測定し、ここで、対照群と実験群の様々な実験環境が同じであり、異なるのは実験群に本願のSEQ ID NO:8配列のアミノ酸を添加することである。
結果により、対照群の活性ウイルス遺伝子のコピーは1.7×10であり、実験群の抗菌ペプチド群の活性ウイルスのコピーは5×10であり、本願の抗菌ペプチドは明らかなウイルスを死滅させる作用を有することが表明された。
【0096】
(6)抗菌ペプチドで腫瘍細胞を死滅させる実験
K562細胞を培養し、等量のK562細胞をそれぞれ10ng、20ng、40ngのSEQ ID NO:8と反応させた後、フローサイトメトリーPIキットでアポトーシス細胞を測定し、細胞死が抗菌ペプチド含有量と正比例することを発見し、抗菌ペプチドがK562細胞を効果的に死滅させることができることが示された。
【0097】
(7)抗菌ペプチドで白血病リンパ球を死滅させる実験
Jurkat cell line:白血病リンパ球、SEQ ID NO:10のポリペプチド1ug/m 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで、3min遠心分離した後、図6に示すように、実験結果により、白血病リンパ球が凝集して塊になり、かつ細胞破砕を伴うことが示されている。
【0098】
(8)抗菌ペプチドで白血病細胞を死滅させる実験
K562 cell line:白血病細胞、SEQ ID NO:17の抗菌ペプチド1ug/ml 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、図7に示すように、結果により、白血病細胞が凝集して塊になることことが示されている。
【0099】
(9)抗菌ペプチドで肝癌細胞を死滅させる実験
HypG2 cell line:肝癌細胞、SEQ ID NO:15のポリペプチド1ug/ml 20ulを10cellと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、図8に示すように、結果により、肝癌細胞が凝集して塊になり、かつ破砕して変形することが示されている。
【0100】
(10)抗菌ペプチドの血液中赤血球に対する効果の実験
ヒト血液中赤血球、SEQ ID NO:27の抗菌ペプチド1ug/ml 20ulを2%RBCと10min反応させ、1000rpmで3min遠心分離した後、実験結果は、図9に示すように、結果により、ヒト血液中赤血球が凝集して塊になり、明らかな溶血が見られないことが示されている。
【0101】
以上の記載は本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神及び原則内で行われたいかなる修正、同等置換及び改善等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする抗菌ペプチド又はペプチド誘導体、
【化1】
ここで、Xa1、Ba1、U、Za1、Ba2、Xa2、Ba3、Za2、Ba4、Xa3、Xb1、Bb1、Ca1、Zb1、Bb2、Xb2、Bb3、Zb2、Bb4、Xb3、Ca2はそれぞれ独立してアミノ酸から選ばれる。
【請求項2】
前記Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2、Xb3はそれぞれ独立して陽性電荷を持つ残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立して疎水性側鎖を持つ残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記UはGly、Pro、Cys、Cys(R)から選ばれる一種であり、ここで、前記(R)はCysジスルフィド結合の保護基を表し、及び/又は
前記Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立して非極性残基から選ばれる少なくとも一種であり、及び/又は
前記Ca1、Ca2はそれぞれ独立してCys、Cys(R)から選ばれる一種であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項3】
前記Xa1、Xa2、Xa3、Xb1、Xb2 、X b3はそれぞれ独立してArg、His、Lys、Orn、Har、Dab非天然アミノ酸から選ばれる一種、二種又は三種であり、又は/及び
a1、Ba2、Ba3、Ba4、Bb1、Bb2、Bb3、Bb4はそれぞれ独立してAla、Val、Ile、Leu、Met、非天然アミノ酸から選ばれる二種、三種又は四種であり、又は/及び
前記Za1、Za2、Zb1、Zb2はそれぞれ独立してAsn、Gln、Ser、Thr、非天然アミノ酸から選ばれる一種であることを特徴とする請求項2に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項4】
前記Cysジスルフィド結合は、アセトアミノメチル、メチルメタンチオスルフォネート又は他のCys保護基から選ばれる一種であることを特徴とする請求項2に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項5】
前記アミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIは少なくとも一つのアミノ酸が修飾処理されたことを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項6】
前記修飾処理は、リン酸化、ハロゲン化、アセチル化、環化、エンドポイントのキャッピング反応のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項5に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項7】
前記アミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIは少なくとも一つのモチーフを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項8】
前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はアミノ酸配列I及び/又はアミノ酸配列IIを含んで形成された多量体であることを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項9】
前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項10】
少なくとも1本の前記抗菌ペプチド又はペプチド誘導体はナノ構造に形成されることを特徴とする請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項11】
前記ナノ構造はミセル、ベシクル、ナノチューブ、ナノベルトのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項10に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体に含まれるアミノ酸配列I又は/及びアミノ酸配列IIにおける少なくとも一つのアミノ酸が置換されることを特徴とする抗菌ペプチド又はペプチド誘導体の置換体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体又は/及び請求項12に記載の置換体及び少なくとも一種の薬剤に許容可能な担体及び/又は溶媒を含む抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物。
【請求項14】
さらに、賦形剤、等張化剤、吸収遅延剤又は基底ポリマーのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項13に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物。
【請求項15】
抗菌ペプチド又はペプチド誘導体と前記溶媒とを混合処理するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の製造方法。
【請求項16】
包装、食品加工の最末端、服飾、医療用品、医療機器、個人衛生用品、消毒剤、洗浄剤、抗感染薬、消炎薬、細胞の無限増殖抑制薬における請求項14に記載の抗菌ペプチド又はペプチド誘導体組成物の応用。
【国際調査報告】