(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】内腔に挿入可能なカプセル
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20231004BHJP
A61M 5/307 20060101ALI20231004BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M5/307
A61J3/07 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514757
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2021076891
(87)【国際公開番号】W WO2022069604
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムーリセン、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】スティッカー、ドラゴ
(72)【発明者】
【氏名】ガザル、アギアド
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ジェプセン、ジェイコブ、ピョン、ホア
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047AA40
4C047BB07
4C047CC04
4C047NN19
4C066AA01
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD03
4C066EE04
4C066EE06
4C066FF02
4C066HH02
4C066HH08
(57)【要約】
対象の消化管内腔などの内腔への挿入に好適なカプセル装置(100)。カプセル装置(100)は、カプセルハウジング(110、120)と、原薬を収容するよう構成された薬剤チャンバー(B)と、薬剤出口(190)につながる薬剤チャンバーと、-作動チャンバー(A)と、-作動チャンバーと薬剤チャンバーとの間に配設された移動可能な分離器(160)であって、移動可能な分離器の移動が、薬剤チャンバー(B)から薬剤出口(190)を通って原薬を排出する、移動可能な分離器(160)と、-作動チャンバー(A)内で、移動可能な分離器(160)に機械的負荷をかけて原薬を排出するための加圧気体を発生させるように作動可能に構成された気体発生器(140、150)と、を含む。バーストゲート(170)が、気体発生器(140、150)と移動可能な分離器(160)との間に配設され、バーストゲート(170)は、閾値圧力レベルを超える作動チャンバー(A)内の気体圧力の増加時に、移動可能な分離器(160)上に機械的負荷を放出し、それによって原薬の排出を開始するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物対象の消化管内腔などの内腔への挿入に好適なカプセル装置(100、200)であって、前記カプセル装置(100、200)が、
-カプセルハウジング(110、120、210、220)と、
-原薬を収容するように構成された薬剤チャンバー(B)であって、薬剤出口(190、290)につながる、薬剤チャンバー(B)と、
-作動チャンバー(A)と、
-前記作動チャンバー(A)と前記薬剤チャンバー(B)との間に配設された移動可能な分離器(160、260)であって、前記移動可能な分離器(160、260)の移動が、前記薬剤チャンバー(B)から前記薬剤出口(190、290)を通って原薬を排出する、移動可能な分離器(160、260)と、
-前記作動チャンバー(A)内で、前記移動可能な分離器(160、260)に負荷をかけて前記原薬を排出するための加圧気体を発生させるように作動可能に構成された気体発生器(140、150、240、250)と、を含み、
バーストゲート(70、70’、70’’、170、270)が、前記気体発生器(140、150、240、250)と前記移動可能な分離器(160、260)との間に配設され、前記バーストゲート(70、70’、70’’、170、270)が、閾値圧力レベルを超える前記作動チャンバー(A)内の気体圧力の増加時に、前記移動可能な分離器(160、260)上に負荷を放出し、それによって前記原薬の排出を開始するように構成されている、カプセル装置(100、200)。
【請求項2】
前記作動チャンバー(A)が、前記バーストゲート(70、70’、70’’、170、270)によって分離されている第1および第2の作動区画を含み、前記気体発生器(140、150、240、250)が、前記第1の作動区画に気体を供給し、前記第2の作動区画が、前記移動可能な分離器(160、260)と気体流体連通している、請求項1に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項3】
前記バーストゲート(70、70’、70’’、170、270)が、バーストディスクなどの破裂可能な膜(170、270)を含む、請求項1または2に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項4】
前記バーストゲート(70、70’、70’’、170、270)が、バースト弁配設(70、70’、70’’)を含む、請求項1または2に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項5】
前記バースト弁配設(70’、70’’)が、前記第1の作動区画内の気体圧力の増加時に、第1の安定した位置から第2の安定した位置へ移動可能である、双安定ばね要素(71’、71’’)を含み、前記双安定ばね要素(71’、71’’)が、前記第1の安定した位置から前記第2の安定した位置に向かって移動するときに、前記移動可能な分離器(160、260)上に機械的負荷を放出する、請求項4に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項6】
前記双安定ばね要素(71’、71’’)が、前記双安定要素が前記第1の安定した位置をとるとき、脆性および/または破砕性材料部分(74’’)によって閉鎖されて維持される気体ポート(73’、73’’)を含み、前記脆性および/または破砕性材料部分が、前記双安定要素(71’、71’’)が前記第2の安定した位置に向かって移動するときに破砕し、加圧気体が前記気体ポート(73’、73’’)を通って流動することを可能にする、請求項5に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項7】
前記気体発生器(140、150、240、250)が、前記気体発生器(140、150、240、250)を作動させるように構成されたトリガ配設を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項8】
前記トリガ配設が、トリガ部材を含む消化管環境感受性機構を含み、前記トリガ部材が、
a)前記トリガ部材が、前記消化管内のpHの変化により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、
b)前記トリガ部材が、前記消化管内のpHにより分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、
c)前記トリガ部材が、前記消化管内の酵素の存在により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、ならびに
d)前記トリガ部材が、前記消化管内の酵素の濃度の変化により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、を含む群のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項7に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項9】
前記作動チャンバー(A)が、発泡性材料(150、250)を含み、前記カプセルハウジング(110、120、210、220)が、前記発泡性材料(150、250)につながる流体入口部分(115、215)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項10】
前記流体入口部分(115、215)が最初に、前記内腔内の体液に供されたときに溶解するよう適合された腸溶性コーティングを含み、前記内腔内の体液が、前記腸溶性コーティングの溶解時に前記流体入口部分(115、215)を通って流動することが可能になり、前記体液と前記発泡性材料(150、250)との間の接触を引き起こす、請求項9に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項11】
前記流体入口部分(115、215)が、半透過性膜(140、240)を含み、前記半透過性膜(140、240)が、前記内腔内の体液が前記半透過性膜を通って移動し、前記発泡性材料(150、250)と接触することを可能にする、請求項9または10に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項12】
前記カプセル装置(100、200)が、液体で充填された液体区画を含み、前記気体発生器(140、150、240、250)が、前記液体区画からの液体と接触したときに気体を発生させるように構成された発泡性材料(150、250)を含み、前記トリガ配設の動作が、前記発泡性材料と前記液体との間の接触を可能にする、請求項1~11のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項13】
前記気体発生器(140、150、240、250)が、第1の反応物および第2の反応物を含み、前記第1の反応物および前記第2の反応物が、前記第1の反応物と前記第2の反応物との間の接触時に気体を発生させるように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項14】
前記移動可能な分離器(160)が、前記薬剤チャンバー(B)内での摺動可能な移動のために配設されたピストン(160)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【請求項15】
前記カプセル装置(100、200)が、ヒトまたは動物対象の、消化管内腔壁などの内腔壁を有する内腔への挿入のために構成されており、前記薬剤出口(190、290)が、無針ジェット送達のために構成されたジェットノズル配設を含み、前記カプセル装置(100、200)が、前記原薬が前記内腔壁の組織を貫通することを可能にする貫通速度で、前記ジェットノズル配設を通して前記原薬を排出するように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象ユーザに原薬を送達するための摂取可能なカプセルなどの内腔に挿入可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主にインスリンの送達による糖尿病治療が参照されるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
多くの人々が、糖尿病などの疾患に罹り、日常的に、および多くの場合、毎日のように薬剤の注射を受けることを必要としている。疾患を治療するために、これらの人々は、複雑であるとみなされ得る、かつ不快な経験となり得る、異なるタスクを実施する必要がある。さらに、その人々は、外出時に注射装置、針、薬剤を持参することが必要となる。したがって、治療が錠剤またはカプセルの経口摂取に基づき得る場合、そのような疾患の治療の有意な改善とみなされることになる。
【0004】
しかしながら、タンパク質ベースの薬剤は、摂取時に吸収されるのではなく、分解および消化されることになるため、そのような溶液は、実現が非常に困難である。
【0005】
経口摂取を通してインスリンを血流中に送達するための作用溶液を提供するために、薬剤は、まず消化管の内腔に送達され、さらに消化管の壁(内腔壁)内に送達されなければならない。これは、以下の数個の課題を提示する:(1)薬剤は、胃内の酸による分解または消化から保護されなければならない。(2)薬剤は、胃内、または下部消化管、すなわち、胃の後に放出されなければならず、これは、薬剤放出の絶好の機会を制限する。(3)薬剤は、胃および下部消化管内の流体の分解環境に曝される時間を制限するために、内腔壁に送達されなければならない。壁で放出されない場合、薬剤は、放出点から壁への移動中に分解され得るか、または分解流体から保護されない限り、吸収されずに下部消化管を通過し得る。
【0006】
内腔または内腔壁に原薬を送達するためのカプセル装置が提案されている。カプセル装置を対象の消化管系に嚥下することによってなど、カプセル装置の挿入後、薬剤送達は、原薬に出口を通させる気体発生器を含むアクチュエータを使用して行われてもよい。ある特定の種類の薬剤送達については、迅速送達が有益であると考えられるが、気体発生は、十分な駆動圧力を適時に提供しない場合がある。
【0007】
【特許文献1】は、動物、特にヒトの消化管における医薬の放出のためのテレメトリーカプセルを開示しており、液体および固体反応物を含む気体発生器は最初に、穿刺可能な隔膜によって単離されて維持される。遠隔トリガ信号を受信すると、隔膜は破裂して、反応物が混合されることを可能にし、それによって気体発生が開始され、それによって医薬貯蔵区画から出口に向かって医薬を強制する。
【0008】
【特許文献2】は、様々な摂取可能な装置を開示しており、これらのうちのいくつかは、ジェットノズルとして提供される出口を通して送達するためのジェット送達機構を含み、気体発生セルは、ピストンを推進して、ノズルに向かって移動し、それにより分注可能な物質が気体圧力下で押し込まれて、ジェットノズルから上流に配設されたバーストディスクを破砕することができる。摂取可能な装置のさらなる関連する開示は、
【特許文献3】および
【特許文献4】に提供される。
【0009】
上記に関して、本発明の目的は、動作の信頼性に関して改善され、かつ安全な様式で加圧気体が原薬の排出を開始するための放出機構を動作させることを可能にする、内腔挿入可能なカプセル装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第92/21,307A1号
【特許文献2】国際公開第2018/049,133A1号
【特許文献3】国際公開第2020/106,750A1号
【特許文献4】国際公開第2018/213,600A1号
【発明の概要】
【0011】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明からも明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0012】
したがって、本発明の一態様では、ヒトまたは動物対象の消化管内腔などの内腔への挿入に好適なカプセル装置が提供される。カプセル装置は、
カプセルハウジングと、
-原薬を収容するように構成された薬剤チャンバーであって、薬剤出口につながる、薬剤チャンバーと、
-作動チャンバーと、
-作動チャンバーと薬剤チャンバーとの間に配設された移動可能な分離器であって、移動可能な分離器の移動が、薬剤チャンバーから薬剤出口を通って原薬を排出する、移動可能な分離器と、
-作動チャンバー内で、移動可能な分離器に機械的負荷をかけて原薬を排出するための加圧気体を発生させるように作動可能に構成された気体発生器と、を含み、
バーストゲートは、気体発生器と移動可能な分離器との間に配設され、バーストゲートは、閾値圧力レベルを超える作動チャンバー内の気体圧力の増加時に、移動可能な分離器上に機械的負荷を放出し、それによって原薬の排出を開始するように構成されている。
【0013】
駆動機構から下流に配設されたバーストゲートを含む先行技術で提案されている溶液では、バーストゲートは、薬剤出口を通しての排出と干渉することからバーストゲートの潜在的な遮断構造を最小化するために、薬剤出口に対して十分に間隔を置いている必要がある場合がある。
【0014】
本発明によれば、気体発生器と移動可能な分離器との間に配設されたバーストゲートを含むことにより、制御された安全な様式で加圧気体の放出が可能になる。バーストゲートが、例えば、薬剤出口の近傍など、排出システムの出力側に配設されているシステムと比較して、排出を開始するためのバーストゲートの動作に関連する潜在的な破片に関連するリスクは低減される。さらに、気体発生器と移動可能な分離器との間に配置されるバーストゲートを配設することは、システムが特定の省スペース様式で構築され得ることを確実にする。さらに、バーストゲートは、原薬とバーストゲートの構成要素との間の長期貯蔵中の潜在的な相互作用の問題を回避または低減する薬剤保持構成要素から単離される。
【0015】
いくつかの実施形態では、作動チャンバーは、バーストゲートによって分離されている第1および第2の作動区画を含み、気体発生器は、第1の作動区画に気体を供給し、第2の作動区画は、移動可能な分離器と気体流体連通している。
【0016】
いくつかの形態では、バーストゲートは、バーストディスクなどの破裂可能な膜を含むか、または破裂可能な膜として提供される。
【0017】
他の形態では、バーストゲートは、バースト弁配設を含むように形成されてもよい。
【0018】
いくつかの変形では、バースト弁配設は、第1の作動区画内の気体圧力の増加時に、第1の安定した位置から第2の安定した位置へ移動可能である、双安定ばね要素を含み、双安定ばね要素は、第1の安定した位置から第2の安定した位置に移動するときに、移動可能な分離器上に機械的負荷を放出する。
【0019】
さらにさらなる変形では、双安定ばね要素は、双安定要素が第1の安定した位置をとるとき、脆性および/または破砕性材料部分によって閉鎖されて維持される気体ポートを含み、脆性および/または破砕性材料部分は、双安定要素が第2の安定した位置に向かって移動するときに破砕し、加圧気体が気体ポートを通って流動することを可能にする。
【0020】
いくつかの実施形態では、トリガ配設は、カプセル装置と構成され、トリガ配設は、気体発生器を作動させるように構成されている。
【0021】
いくつかの変形では、トリガ配設は、環境感受性機構を含む。
【0022】
いくつかの形態では、カプセル装置は、それぞれ、患者による嚥下、および胃、小腸、または大腸などの患者の消化管の内腔内への移動のために構成されている。
【0023】
環境感受性機構は、ある特定の実施形態では、消化管環境感受性機構であってもよい。消化管環境感受性機構は、トリガ部材を含んでもよく、トリガ部材は、
a)トリガ部材が、消化管内のpHの変化により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、
b)トリガ部材が、消化管内のpHにより分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、
c)トリガ部材が、消化管内の酵素の存在により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、ならびに
d)トリガ部材が、消化管内の酵素の濃度の変化により分解、腐食、および/または溶解する材料を含むこと、を含む群のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0024】
さらなる実施形態では、作動チャンバーに関連付けられた気体発生器は、発泡性材料を含み、カプセルハウジングは、発泡性材料につながる流体入口部分を含む。
【0025】
カプセル装置のいくつかの形態では、流体入口部分は最初に、内腔内の体液に供されたときに溶解するよう適合された腸溶性コーティングを含み、内腔内の体液は、腸溶性コーティングの溶解時に流体入口部分を通って流動することが可能になり、体液と発泡性材料との間の接触を引き起こす。
【0026】
さらなる実施形態では、体入口部分は、内腔内の体液が半透過性膜を通って移動し、発泡性材料と接触することを可能にする半透過性膜を含む。
【0027】
代替的な実施形態では、カプセル装置は、液体で充填された液体区画を含み、気体発生器は、液体区画からの液体と接触したときに気体を発生させるように構成された発泡性材料を含み、トリガ配設の動作は、発泡性材料と液体との間の接触を可能にする。
【0028】
さらに他の実施形態では、気体発生器は、第1の反応物と第2の反応物との間の接触時に気体を発生させるように構成された少なくとも第1の反応物および第2の反応物を含む。
【0029】
移動可能な分離器は、いくつかの実施形態では、薬剤チャンバー内で摺動可能であるように配設されたピストンとして提供されるか、またはそれを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、小腸などの内腔は、内腔壁を画定し、薬剤出口は、無針ジェット送達のために構成されたジェットノズル配設を含む。このように、摂取可能なカプセル装置は、鋭い針点を含まず、針を作動および格納する機構も必要とされない。例えば、破裂可能な膜として提供されるバーストゲートを含めることによって、好適なジェット注射を実施するために、移動可能な分離器に作用する十分な気体圧力があるときにのみ、薬剤排出が開始されることを確実にする。
【0031】
ジェット送達のための既存のジェット注射器システムは、当該技術分野で公知である。当業者であれば、例えば、公開第2020/106,750号(PROGENITY INC)から、治療物質を内腔壁内に送達するための正しいジェット力を提供する適切なジェット注射器を選択する方法を理解するであろう。さらなる詳細および例は、本出願にさらに提供される。
【0032】
無針ジェット注射の実施形態について、カプセル装置は、原薬が内腔壁の組織を貫通することを可能にする貫通速度で、ノズル配設を通して原薬を排出するように構成されてもよい。
【0033】
カプセル装置の他の形態では、薬剤出口は、注射針を含み、原薬は、注射針を通して排出可能である。
【0034】
さらなる変形では、バーストゲートは、第1の作動区画内の加圧された気体が第2の作動区画に移動されない第1の閉鎖状態、および加圧気体が第2の作動区画に流動する第2の開状態から動作可能である。
【0035】
いくつかの形態では、移動可能な分離器は、カプセルハウジングの空洞内の軸方向の摺動可能な移動のために配設されたピストンを画定する。ピストンは、作動チャンバーと薬剤チャンバーとの間のピストンの近位端と遠位端との間で軸方向に密封するための少なくとも1つのシールを含み得る。
【0036】
他の形態では、移動可能な分離器は、作動チャンバー内の高圧気体および薬剤チャンバー内に収容された原薬を分離している、可撓性膜を含む。いくつかの形態では、可撓性膜は、薬剤出口を通した流体連通のために薬剤出口に単一の開口部を有する、バッグまたは類似のエンクロージャとして提供され得る。
【0037】
例示的な実施形態では、カプセル装置は、それぞれ、患者による嚥下、および胃、小腸、または大腸などの患者の消化管の内腔内への移動のために構成されている。カプセル装置は、ヒトなどの対象によって嚥下されることを可能にするように形状決定およびサイズ設定され得る。
【0038】
上記の配設によって、経口投与された原薬は、生存哺乳動物対象者の胃壁または腸壁内に安全に、かつ確実に送達され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬剤」、「原薬」、「製剤」、または「ペイロード」という用語は、指定された標的部位内またはその上に送達されることができる任意の薬剤製剤を包含することを意味する。薬剤は、単一の薬剤化合物、予混合されたもしくは共製剤化された複数の薬剤化合物、または2つ以上の別個の薬剤成分によって混合される製剤でさえあってもよく、混合は、排出の前または最中のいずれかに実施される。代表的な薬剤としては、固体、粉末または液体の両方の形態における、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤ならびにその誘導体)、タンパク質、およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養製剤、ならびに他の物質が挙げられる。具体的には、薬剤は、インスリンまたはGLP-1含有薬剤であってもよく、これは、その類似体、および1つ以上の他の薬剤との組み合わせを含む。
【0040】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による摂取可能なカプセル装置100の外部斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による摂取可能なカプセル装置100の断面側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態による摂取可能なカプセル装置200の断面側面図である。
【
図4】
図4は、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な破裂可能ディスクとして提供される第2の例示的なバーストゲート70の上面図および断面側面図を提供する。
【
図5a】
図5aは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第3の例示的なバーストゲート70’を概略的に図示する。
【
図5b】
図5bは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第3の例示的なバーストゲート70’を概略的に図示する。
【
図5c】
図5cは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第3の例示的なバーストゲート70’を概略的に図示する。
【
図6a】
図6aは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第4の例示的なバーストゲート70’’を概略的に図示する。
【
図6b】
図6bは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第4の例示的なバーストゲート70’’を概略的に図示する。
【
図6c】
図6cは、本発明による気体発生器および放出配設での使用に好適な第4の例示的なバーストゲート70’’を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【0043】
以下で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用されるとき、これらは、添付の図に言及するだけであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成、およびそれらの相対寸法は、例示的な目的のみを果たすことが意図される。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを示すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を備えてもよい。「組立品」および「サブ組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に単一の、または機能組立品またはサブ組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとしてともに分類される構成要素を説明するために使用されるに過ぎない。
【0044】
図1を参照すると、本発明による薬剤送達装置の第1の実施形態が説明され、実施形態は、患者が摂取するようにサイズ設定および形状決定され、その後、患者の標的内腔内にあるときに展開して、ある用量の液体薬剤がカプセル装置100の外部部分に提供された薬剤出口を通して排出されるように構成された、摂取可能なカプセル装置100を提供するように設計されている。以下で単に「カプセル」と呼ばれる開示された摂取可能なカプセル装置100は、例示に過ぎず、本発明に従って、異なるカプセル外形を有する他の形態で提供され得ることに留意されたい。また、示される出口は、出口を通して物質を直接排出するための出口ノズル開口部を提供するが、出口は、注射針に関連付けられた出口開口部を有するなど、代替の形態で提供されてもよい。開示された実施形態は、カプセルが、消化管、より具体的には小腸の内腔に入り、その後、内腔の内側または内腔を包囲する内腔壁の組織内のいずれかの標的位置で、原薬などのペイロードの液体用量を放出することを可能にするために、患者によって摂取されるのに好適なカプセル100に関する。他の実施形態では、カプセルは、胃などの消化器系の他の位置、大腸、または対象の他の内腔部分においてさえ、物質を排出するように構成され得る。
【0045】
示される実施形態のカプセル100では、原薬は、単一製剤から調製されるか、または単一製剤として提供されることが意図される。あるいは、物質は、少なくとも2つの製剤から調製され得る。物質が2つの製剤によって調製されるとき、第1の生成物が、第1の貯蔵部内に貯蔵され得る一方で、第2の生成物は、第2の貯蔵部内に貯蔵され得、排出前に混合され得るか、または出口を通した排出中であっても混合され得る。いくつかの実施形態では、第1の薬剤構成要素が、粉末などの凍結乾燥原薬として最初に提供される一方で、第2の薬剤構成要素は、希釈剤などの再構成液体である。他の実施形態では、2つ以上の製剤は各々、薬剤排出の前または最中に互いと混合される液体として最初に提供される。
【0046】
図1および
図2を参照すると、カプセル100は、以下で「長手方向軸」とも呼ばれる軸に沿って延在する細長い形状を有する複数部品ハウジングを含む。細長いハウジングは、円筒形セクションを含み、円形端部分、すなわち、近位端部分および遠位端部分をさらに含む。示される実施形態では、出口190は、円筒形セクションの側壁部分、カプセル100の遠位端に配設されている。したがって、出口は、内腔壁の組織に近接するように配設された表面から放射状に外側を向く。示される実施形態では、カプセルは、00細長いカプセルにほぼ対応する形状およびサイズで形状決定されている。
【0047】
示される実施形態では、カプセル100は、長手方向軸に対して横方向に位置付けられる薬剤出口190を含む。出口190は、ジェット注射の発生を可能にする開口であってもよい。
【0048】
ジェット薬剤送達のための既存のジェット注射器システムは、当該技術分野で公知である。当業者であれば、例えば、国際公開第2020/106,750A1号(PROGENITY INC)から、治療物質を内腔壁24内に送達するための正しいジェット力を提供する適切なジェット注射器を選択する方法を理解するであろう。
【0049】
具体的に、当業者であれば、ジェット注射を使用した患者の消化管内への薬剤送達中、ジェット注射器によって生成されたジェット流が、消化管の内腔および内腔に面する消化管の表面を結合することを理解するであろう。最終的に、原薬は、噴霧へと最小限に分解する安定した流体のジェット流として、消化管の粘膜層(例えば、上皮層、および上皮層上に存在し得る任意の粘液)に影響を及ぼす物質によって、粘膜下組織および/または粘膜組織に堆積する。
【0050】
原薬の流体の体積は、ジェット注射器をピークジェット速度で出るジェット流を発生させるピーク流体圧力を経験する。ジェット流は、ピークジェット電力、ピークジェット圧力、およびピークジェット力で、消化管の内腔および内腔に面する消化管の表面の界面に影響を及ぼす。当業者であれば、これら3つのパラメータが相互接続されていることを認識するであろう。
【0051】
当業者であれば、記載されるタイプのジェット注射での使用の適合性について、様々なジェット注射器の特徴を評価および測定する方法を理解するであろう。例えば、ジェット電力を評価する1つの方法は、ジェットの力を測定する力センサ上にジェットを放出することである。力を読み取り、ノズルの面積およびジェット液体の密度を知ることに基づいて、ジェット速度は、方程式1を使用して決定され得る。計算された速度に基づいて、電力(ワット)は、方程式2を使用して計算され得る。ジェット圧力(すなわち、ジェット流が排出される圧力)を評価するために、方程式3が使用され得る。
F=ρAV
2(方程式1)
【数1】
【数2】
F=力(N)
ρ=密度(kg/m3)
A=ノズルの面積(m2)
V=速度(m/s)
P=電力(W)
P
bar=圧力(バール)
C=ノズル損失係数(通常0.95)
【0052】
図2を参照すると、示される複数部品ハウジングは、第1のハウジング部分、すなわち、近位端に配設された近位ハウジング部分110、略円形の端部表面を有する遠位端で終わる略円筒形のスリーブ形状の遠位ハウジング部分120を含む。示される実施形態では、近位ハウジング部分および遠位ハウジング部分は、ねじ込み係合によって互いに対して固定して載置されている。他の実施形態で、他の取り付け手段または接合手段を使用してもよい。近位ハウジング部分110の近位端壁119は、消化管内に存在する要素液の、カプセル100の内部への侵入を可能にする流体入口としての役割を一緒に果たす多数の開口部またはチャネル115を含む。
【0053】
図2は、カプセルが患者によって摂取される準備ができている初期状態のカプセル100の断面側面図を示す。カプセル100の内側では、その遠位端において、中空の第1の円筒形セクション124が、長手方向軸に沿って延在して配設されており、このセクションは、第1の直径を有する半径方向内向き表面を有する。第1の円筒形セクション124は、遠位に配設された端面123によって遠位端で終端する。第1の円筒形セクション124は、第1の円筒形セクション124と同軸に配設されており、第1の円筒形セクション124の直径よりも大きな直径を有する半径方向内向き表面を有する、中空の第2の円筒形セクション126に向かって近位に延在する。中空の第3の円筒形セクション118は、第1および第2の円筒形セクション124および126と同軸に、第2の円筒形セクションからカプセル100の最近位端に延在し、第3の円筒形セクション118は、近位端壁119によって終端する。示される実施形態では、近位端壁119は、中央平面部分を有する。
【0054】
ピストン160は、第1の円筒形セクション124および第2の円筒形セクション126によって提供される中空空間内の軸方向の摺動可能な移動のために配設されている。ピストン160は、第1の円筒形セクション124の半径方向内向き表面に対して密封する円周方向シール164を有する小さい直径のセクションを含む。ピストン160は、第2の円筒形セクション124の半径方向内向き表面に対して密封する円周方向シール166を有する大きい直径のセクションをさらに含む。ピストンは、第1の円筒形セクション124の直径よりもわずかに小さく作られた直径を有する遠位向き円形端部表面を含む。ピストン160の近位端では、ピストンは、第2の円筒形セクション126の直径よりもわずかに小さい直径を有する近位向き円形端部表面を含む。
【0055】
カプセル100が初期状態をとるとき、すなわち、投与前に、ピストン160は、遠位に配設された端面123から離れた開始位置に配置付けられている。この初期状態では、ピストン160の円形遠位端面、第1の円筒形セクション124の半径方向内向き表面、および遠位に配設された端面123は組み合わせて、貯蔵部または薬剤チャンバーBを画定する。液体原薬は、薬剤チャンバーB内に収容される。薬剤チャンバーBの遠位端に配設された出口190は、貯蔵部からカプセル100の外部への流体出口通路を画定する。示される実施形態では、出口190は、薬剤が出口を通って押し出されるときに、薬剤の液体ジェット流を生成するように寸法決定および形状決定されたジェットノズル192を含む。貯蔵部は、液体薬剤の高圧で破れるように設計されたシール(示されず)で出口において密封されている。
【0056】
カプセル100の内側では、その近位端で、駆動システムは、駆動システムのトリガ時、すなわち、所定の状態によるトリガ時に、出口190に向かってピストン160を駆動するように構成され配設されている。駆動システムは、気体発生器からの高気体圧力が所定の閾値を超えるときに、ピストン160を前方に駆動するための気体を生成することができる気体発生器を含む。示される実施形態では、気体発生器は、作動チャンバーAの一部を形成する中空の第3の円筒形セクション118内に配設されている。
【0057】
気体は、化学反応によって発生されてもよく、その結果、気体発生器が作動すると、気体が生成されて、カプセル100の作動チャンバーA内に加圧気体が形成される。例えば、水素セル、エアバッグインフレータ、相変化を利用する気体発生器、または重炭酸ナトリウムと酸を混合するなど、反応物を混合し、化学的に反応させて気体を形成することを組み込む発生器などの気体生成セルを使用することによって、作動チャンバーA内に気体発生を提供するために、異なる原理を使用してもよい。反応物を混合することを使用する気体発生については、全ての反応物は、作動前にカプセル上に保存されてもよく、または少なくとも1つの反応物は、カプセル上に保存された反応物と混合するためにカプセル内に導入されてもよい。
【0058】
以下は、二酸化炭素CO2を生成し、かつ作動チャンバーA内の加圧気体を発生させるための構成要素として使用され得る、化学反応の例である。
[実施例1(塩酸を有する炭酸カルシウム):CaCo3+2HCl→CaCl2+H2O+CO2]
[実施例2(重炭酸ナトリウムを含むクエン酸):C6H8O7+3NaHCO3→3H2O+CO2+Na3C6H5O7]
[実施例3(重炭酸ナトリウムを含む酒石酸):H2C4H4O6+2NaHCO3→Na2C4H4O6+2H2O+2CO2]
発泡性反応のための酸の例:
-クエン酸
-酢酸
-塩酸
-酒石酸
-リンゴ酸
-アジピン酸
-アスコルビン酸
-フマル酸
発泡性反応のための炭酸塩の例:
-重炭酸ナトリウム
-炭酸ナトリウム
-炭酸カルシウム
-重炭酸カリウム
【0059】
他の実施形態では、発泡性反応は、1つ以上の固体状態の構成要素が濡れている(例えば、腸液またはカプセル100に貯蔵された他の流体に曝されている)ことによって発生してもよく、これが発泡性反応を引き起こす。
【0060】
図2に示されるカプセル100では、気体は、作動チャンバー内に配設された内部配設された発泡性材料150によって、および消化管流体を作動チャンバーA内に導入して発泡性材料部分150と反応するのに役立つ半透過性膜140によって、作動チャンバーA内で発生する。
【0061】
その後ブロック形状に圧縮される粉末成分から形成される発泡性材料部分150は、少なくとも1つの酸性材料と、重炭酸ナトリウムおよびクエン酸などの1つの塩基性材料とから成る発泡性結合を含む。発泡性材料150のブロックは、半透過性膜140に接着され、膜との近接を確実にしながら、気体発生に利用可能な作動チャンバーAの容積を残す。
【0062】
上に記述されるように、近位ハウジング部分110、およびより具体的には、近位端壁119の中央平面部分は、作動チャンバーAへの要素液の侵入を可能にする近位端面に配設された多数の開口部またはチャネル115を含む。半透過性膜145は、近位端壁119の中央平面部分の遠位向き表面と緊密に接触して、その近位向き表面と配設される。したがって、カプセル100に入る要素液は、開口部115および半透過性膜145を通過する必要がある。近位端壁119の中央平面部分は、圧力が作動チャンバーA内で高まるときに、半透過性膜145の裏打ちまたは支持体としての役割を果たすのに十分な剛性を提供する。
【0063】
示される実施形態については、半透過性膜140用のカプセル100の例示的な材料は、標準グレードの再生セルロース(RC)から作製されてもよい。半透過性膜140用の材料は、体液に供されたときに生分解性であるように選択され得る。
【0064】
バーストゲートとして役割を果たすバースト部材は、作動チャンバーAとピストン160との間に軸方向に配設されている。バースト部材は、加圧気体によって提供される機械的負荷をピストン160上に放出するためのゲートとして機能するが、作動チャンバーA内の気体圧力が所定の閾値圧力レベルを超えて増加した場合のみである。所定の閾値圧力レベルを下回る気体圧力については、バースト部材は、実質的に気密シールを形成し、ピストンが気体から機械的負荷を受けるのを妨げ、そうでなければピストン160を出口に向かって移動させる。
【0065】
示される実施形態では、カプセル100は、その初期位置、すなわちその開始位置においてピストン160に隣接する軸位置に軸方向に固定される破裂可能な膜170の形態でバーストゲートを含む。ハウジング部分に対して接着されること、または1つ以上のハウジング部分に対して固定して取り付けられた剛性な構造間のバースト膜の締付によってなど、異なる取り付け方法が、カプセル100内に破裂可能な膜170を取り付けるために使用され得る。
【0066】
図2の実施形態では、破裂可能な膜170は、薄い平面ディスク形状の膜として形成される。破裂可能な膜用の例示的な材料は、アルミニウムなどの金属材料、ポリマー材料、または所定の閾値圧力レベルでバーストする明確に定義された能力を呈する他の好適な材料から選択され得る。平面ディスクとして破裂可能な膜を形成する代わりに、バーストゲートは、初期状態で1つ以上の凸状および/または凹状部分を呈し得るか、またはこれを含み得る、薄い層状の材料の形態を含み得る。
【0067】
図1および
図2に示される例示的なカプセル100では、ジェット送達は、薬剤チャンバーBの18バール程の液体圧力で動作するように寸法設定されてもよい。示される例では、半透過性膜140は、漏出する前に8バールをわずかに上回る最大気体圧力に耐えることができるであろう。これに従い、バーストディスク170は、気体圧力レベルが8バールを超えるとき、ピストンに向かって気体の放出を提供するように設計されてもよい。しかしながら、この実施形態で使用されるピストン160については、ピストン160の遠位端の円形端部表面の断面積に対する近位向き円形端部表面の断面積の差により、作動チャンバー内の液体圧力は、薬剤チャンバーB内で約18バールに拡大され、すなわち、薬剤チャンバーB内の標的流体圧力を満たす。
【0068】
破裂可能な膜170は、異なる実施形態では、気体圧力が所定の閾値圧力レベルを超えると、破裂可能な膜が破砕し始める場所を画定する、スコアリング線または他の弱まった部分を含み得る。
【0069】
カプセル装置100について、
図1および
図2では見えないが、開口部115は、最初に開口部115を通した流体の侵入を遮断するpH感受性腸溶性コーティングによって被覆されている。当該技術分野で公知のように、腸溶性コーティングは、胃から小腸に移動するときにカプセル100が経験するpHレベルの顕著なシフトを利用するように構成され得る。特定の期間にわたって要素液に曝された後、腸溶性コーティングは、要素液が半透過性膜140と接触し、かつ発泡性材料部分150に向かって膜を通る流体の移動を開始することを可能にする程度まで分解される。
【0070】
図2の示される実施形態について、腸溶性コーティングは、半透過性膜140および発泡性材料部分150によって形成される気体発生器を作動させるためのトリガ配設を形成する。
【0071】
次に、カプセル100の動作について説明する。患者またはユーザがカプセル100を嚥下した後、小腸に入ると、カプセル100の腸溶性コーティングは、溶解し始め、胃液は直後に、開口部115を通して利用可能になって、半透過性膜145にわたる流体輸送を可能にする。
【0072】
流体が発泡性材料部分150と接触すると、作動チャンバーA内で加圧気体が形成され始め、それによって気体圧力が徐々に増加し、破裂可能な膜170上に増加する機械的負荷を提供する。ある特定の期間の経過後、作動チャンバーA内の気体圧力レベルは、破裂可能な膜170をバーストさせる所定の閾値圧力レベルを超える。したがって、加圧気体は、ピストン160の近位向き端部表面に向かって流動し、それによって、ピストンを出口に向かって遠位に移動させるために機械的負荷がかけられる。ピストン160の近位向き円形端部表面の断面積および遠位向き円形端部表面の断面積の差により、作動チャンバー内の圧力は、薬剤チャンバーB内の油圧に拡大され、原薬は、ジェットノズル192を通して押し出される。
【0073】
最終的に、ピストン160は、遠位に配設された端面123に対して底部に達し、ジェットノズル192を通る薬剤のジェット流は終了する。原薬の送達後、カプセル100は、消化管を通過し、その後、排泄されることが可能である。
【0074】
示される破裂可能な膜170の代替として、平面ではない第2の例示的なバーストゲート70を
図4に示す。この実施形態では、薄いアルミニウムシートから作製された略ディスク形状の弁部材は、作動チャンバーに面する中央に位置する凹部71aで形成される。凹型中央部分71aは、鋭利に曲がった領域を介して円形接続部分71bに接続される。弁部材の周辺部分71cは、接続部分71bの半径方向外向き部分に接続され、2つのリング形状取付構造72a/72bの間に締付される環状締付領域を形成する。取付構造72a/72bは、カプセルのハウジング部分に対してバーストゲート70を取り付けることを意図している。示されるバーストゲート70は、所定のバースト圧力レベルを超えて過度な差圧にかけられるとき、環状バンド71cと環状接続部分71bとの間の円形界面に沿って、すなわち、締付領域に半径方向内向きに引き裂かれるように構成されている。
【0075】
また、さらなる実施形態では、カプセル装置のバーストゲートは、所定の閾値圧力差がバーストゲートにわたって達するまで、バーストゲートにわたる気体輸送を実質的に妨げるように構成されたバースト弁として提供されてもよい。
図5a~
図5cを参照すると、第3の例のバーストゲート70’は、成形された双安定ドーム71’、例えば、その遠位側に、中央に位置するノッチ領域73’で成形された双安定ばね要素を含む弁部材として形成され、ノッチ領域は、下流側から見たとき、すなわち、カプセル装置100に取り付けられたときに、バーストゲート70’の遠位向き表面上に十字を形成する。双安定ドーム71’が第1の安定状態(
図5bの左側に示される)をとるとき、ノッチ領域は、密封された開口部または非密封の開口部のいずれかを画定し得る。
図5bの右側に示される第2の安定状態に移動すると、ノッチ領域73’は、密封されたままであるか、または密封されるかのいずれかである。
図5cを参照すると、バーストゲート70’にわたる過度な圧力差があると、双安定ドーム71’は第1の安定状態に戻り、それによってノッチ領域73、すなわち、気体ポートに流れ開口部が生じ、バースト弁にわたる気体輸送が確立される。
【0076】
図6a~
図6bを参照すると、第4の例のバーストゲート70’’は、成形された双安定ドーム71’’を再び含む弁部材として形成される。双安定ドーム71’’は、その近位側に、中央に位置するノッチ領域73’で成形され、ノッチ領域は、上流側から見たとき、すなわち、カプセル装置100に取り付けられたとき、バーストゲート70’’の近位向き表面上で、十字を形成する。双安定ドーム71’’が第1の安定状態(
図6bに示される)をとるとき、ノッチ領域73’’は、十字に沿った開口部を画定する。しかしながら、密封化合物74’’は、ノッチ領域73’’内に、およびノッチ領域73’’に隣接する領域とオーバーラップする関係で配設されており、それにより密封化合物は効果的にシールを提供する。異なる実施形態では、密封化合物は、脆性材料または弾性変形可能な材料としてのいずれかで提供されてもよい。
図6cを参照すると、バーストゲート70’にわたる過度な圧力差があると、双安定ドーム71’’は、第2の安定状態に移動し、それによってノッチ領域73’’で化合物74’’を密封することによって提供されるシールを突然破壊し、気体ポートを通る気体輸送が確立される。
【0077】
ここで
図3を参照すると、カプセル200の第2の実施形態についてここで説明する。カプセル200は、多くの態様ではカプセル100に対応するが、薬剤チャンバーBおよび排出機構は異なる。カプセル100が、作動チャンバーと薬剤チャンバーとの間の移動可能な分離器に依存し、摺動可能なピストン160として提供されている一方、カプセル200は、作動チャンバーAおよび薬剤チャンバーまたは貯蔵部Bを分離する可撓性膜260を利用し、それによって可撓性膜260は移動可能な分離器として役割を果たす。
【0078】
カプセル200は同様に、近位ハウジング部分210および遠位ハウジング部分220を含む。カプセル200では、腸溶性コーティングによって形成されるトリガ配設は、半透過性膜240および発泡性材料部分250によって形成される気体発生器を作動させるために再びトリガ可能である。
【0079】
ジェットノズル292を含む出口290は、カプセル200の遠位端と近位端との間のほぼ中間に配設された、カプセル200の円筒形スリーブの側面部分に位置している。
【0080】
遠位ハウジング部分220の大部分は、「排出円筒形セクション」と呼ばれ得る中空円筒形セクション226を含み、これは、薬剤貯蔵部/チャンバーBを収容するための空間としての役割を果たす。可撓性気密および液密膜260は、円筒形セクション226内に配設されている。膜は、薬剤貯蔵部/チャンバーBを形成し、すなわち、バッグとして構成されており、出口290に単一の開口部が配設された原薬のためのエンクロージャを形成する。
【0081】
分割壁230は、第3の円筒形セクション218および第2の円筒形セクション226を分離し、分割壁は、加圧気体が第3の円筒形セクション218から第2の円筒形セクション226に流動することを可能にする、複数の貫通開口235を含む。
【0082】
カプセルが患者によって摂取される準備ができている初期状態のカプセル200を示す
図3中、膜260は、膜によって画定されたバッグが円筒形セクション226の大部分を占める膨張構成をとる。
【0083】
患者またはユーザがカプセル200を嚥下した後、小腸に入ると、カプセル200の腸溶性コーティングは、溶解し始め、要素液は直後に、開口部215を通して利用可能になって、半透過性膜240にわたる流体輸送が可能になる。
【0084】
流体が発泡性材料部分250と接触すると、作動チャンバーA内で加圧気体が形成され始め、それによって気体圧力が徐々に増加し、破裂可能な膜270上に増加する機械的負荷を提供する。ある特定の期間が経過すると、作動チャンバーA内の気体圧力レベルは、破裂可能な膜270をバーストさせる所定の閾値圧力レベルを超える。
【0085】
以後、作動チャンバーA内の加圧気体は、分割壁230の開口235を通って漏れ出し、それによって、加圧気体は、入力円筒形セクション218から出力円筒形セクション226へ流動する。破裂可能な膜270の穿刺は、排出円筒形セクション226の気体圧力を急速に増加させ、これは、膜260上に機械的負荷をかけ、膜260、すなわち、薬剤チャンバーBの体積をより小さくさせる。膜バッグ260内の体積の低減により、薬剤貯蔵部/チャンバーB内に収容された原薬は、ジェットノズル292を通して押し出される。
【0086】
最終的に、膜260は、加圧気体が薬剤チャンバーB内に収容された原薬の実質的に全てを排出し、ジェットノズル292を通る薬剤のジェット流が終了するときに、崩壊構成をとる。原薬の送達後、カプセル200は、消化管を通過し、その後、排泄されることが可能である。
【0087】
上述の実施形態に記載されたように、嚥下後、カプセル装置は最初に胃を通って移動し、その後小腸に入る。腸溶性コーティングは、小腸に入ると溶解するため、カプセル100および200への液体の侵入は、流体入口/半透過性膜を通した流体の侵入が可能になるために腸溶性コーティングが十分に溶解したときにのみ開始される。
【0088】
腸溶性コーティングは、コーティングされた物体が腸内での放出のために活性化されることを可能にする任意の好適なコーティングであり得る。場合によっては、腸溶性コーティングは、胃と比較して小腸で優先的に溶解し得る。他の実施形態では、腸溶性コーティングは、胃と比較して小腸で優先的に加水分解し得る。腸溶性コーティングとして使用される材料の非限定的な例としては、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(すなわち、酢酸コハク酸ヒプロメロース)、酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、およびアルギン酸ナトリウム、およびステアリン酸が挙げられる。追加の実施例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS2018/0193621に開示されている。所与の物体(ここではカプセル)、または流体入口のみは、腸溶性コーティングでコーティングされ得る。腸溶性コーティングは、所与のpHで、または所与のpH範囲内で、例えば、5.5超のpHで、6.5超のpHで、約5.6~6の範囲内で、または約5.6~6.5もしくは7の範囲内で可溶性であるように構成され得る。腸内pHでの溶解時間は、腸溶性コーティングの組成によって制御または調整され得る。例えば、腸内pHでの溶解時間は、腸溶性コーティングの厚さによって制御または調整され得る。
【0089】
他の実施形態では、トリガが起こるときを制御するための条件は、他の原理によって提供され得る。例えば、溶解可能な層は、最初にカプセルの流体入口を遮断して配置されてもよく、溶解可能な層の溶解は、要素への第1の曝露で開始され、溶解可能な層のタイミングは、カプセルが展開する位置にとって決定的である。また、胃で展開可能なカプセルなどについて、コーティングは存在しなくてもよく、これにより、十分な液体が半透過性膜を通して移されるとすぐに気体発生器のトリガが起こる。さらに他のトリガ原理は、流体入口を通した、かつカプセル気体発生器への、温度変化によって誘導された胃液の通過に依存し得る。
【0090】
例示的な実施形態の上記説明は、主に小腸における送達のための摂取可能なカプセルに関するものであるが、本発明は概して、カプセル装置が製剤の送達のために身体内腔内に位置付け可能である、内腔挿入のためのカプセル装置に一般的な有用性を見出す。カプセル装置の非限定的な例としては、胃内への送達または胃壁の組織内への送達のためのカプセル装置が挙げられる。例えば、国際公開第2018/213,600A1号に記載される様々な自己復元または自己配向構造および/または方法が、本開示によるカプセル装置によって用いられ得る。国際公開第2018/213,600A1号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
本明細書に記載される気体発生および放出配設を利用するカプセルの様々な実施形態では、薬剤送達は、針などの送達部材を使用して、粘膜内層への無針液体ジェット貫通を提供するための液体のジェット流を介して、または内腔内の噴霧を介して実施され得る。さらに他の実施形態では、本開示に記載される本発明の気体発生放出配設を使用して、内腔壁に挿入される固体薬剤ペレットの送達をトリガしてもよい。
【0092】
例示的な実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
【国際調査報告】