(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】内視鏡検査のための医療用ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20231004BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61B5/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515086
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 DE2021000161
(87)【国際公開番号】W WO2022068984
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】102020005990.2
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516060679
【氏名又は名称】ヴェーオーエム ワールド オブ メディスン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】グルンドマン,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】ウストラック,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C017
4C077
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA11
4C017AA12
4C017AA18
4C017AB08
4C017AC16
4C017AC27
4C017DD14
4C077DD07
4C077DD12
4C077DD16
4C077EE02
4C077EE04
4C077HH09
4C077HH13
4C077HH18
4C077JJ08
4C077JJ13
4C077JJ20
(57)【要約】
本発明は、圧力制御部を有する、内視鏡検査のための医療用ポンプに関し、この圧力制御部は、被験者の血圧変化を取入れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小の侵襲手術で腔部を洗浄するための医療デバイスであって、
(i)洗浄液のためのリザーバ(1)と、
(ii)洗浄液を腔部(10)の中に供給するための、少なくとも1本の供給ライン(2)と、
(iii)液体を前記腔部(10)に供給するための、供給ライン(2)ごとに1つの、制御されたポンプ(3)と、
(vi)少なくとも1本の吸引ライン(5)と、
(v)吸引ライン(5)ごとに1つの、制御された減圧ポンプ(4)と、
(vi)前記吸引ライン(5)に接続された廃棄物容器(11)と、
(vii)前記腔部(10)内の圧力を判断するための、少なくとも1つの圧力センサ(7)と、
(viii)前記腔部(10)内の圧力を制御するための、制御ユニット(6)と、
(ix)処置中に、前記患者(9)の血圧の、継続した非侵襲的測定のための、少なくとも1つのセンサ(8)と、
を備え、
ここで医療デバイスは、
前記制御ユニットが、前記腔部(10)内の圧力が、前記患者(9)の血圧における変動に適応されるように、前記制御されたポンプ(3)及び前記制御された減圧ポンプ(4)を制御することを特徴とする、医療デバイス。
【請求項2】
前記患者(9)に対する継続的な血圧測定のための、少なくとも1つのセンサ(8)が、パルスオキシメータまたはインピーダンスセンサから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
液体供給のための前記制御されたポンプ(3)は、ローラホイールポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記制御された減圧ポンプ(4)は、ローラホイールポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御ユニットを有する、内視鏡検査のための医療用ポンプに関し、この圧力制御ユニットは、患者の血圧変化を考慮に入れる。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査中、及び特に治療的介入中に、流体洗浄処理を実施することが公知である。これは、(例えば膀胱、子宮、または関節腔などの)体腔を、(例えば生理食塩水などの)液体を用いて洗浄することを含む。この目的のため、洗浄用流体を、リザーバから、例えばローラホイールポンプなどのポンプを介して、体腔の中に送り込むことができる。最も簡単な事例において、洗浄用流体は、開口部を通して腔部から流し出すことができる。しかし一般に、洗浄用流体を戻して送り出すために、吸引ポンプが使用される。このような最小の侵襲処置の典型的なシーケンスは、切断、切除、または硬化療法のための、別の医療デバイスの使用を含み、それらの各々は、それ自体の吸引ラインを有し得る。
【0003】
体腔(例えば膀胱、子宮、または関節腔(膝、肩、腰など))における診断処置の間、血管損傷及びそれに伴う腔部の中への出血が発生し得る。治療処置の間は、このような出血は通常避けがたい。しかし、このような出血は、血液が体腔内の視認性を損なうので、望ましくない。このような事例において、さらなる血液が体腔に入らなくなるまで、体腔内の圧力を増加させることが公知である。このような手動の制御において、一旦設定された圧力は、通常はさらに低下されることはない。しかし、このような手術中に、患者は血圧の変動を被り得る。例えば、ストレスが血圧を上昇させる場合があり、緩和または抗高血圧症薬も、血圧を大幅に低下させる場合がある。血圧が上昇する事象において、再び出血が生じて、さらなる圧力の再調整が必要となる。他方で血圧の低下は、通常は手術要員に気付かれず、そのため体腔内の流体圧に対する調整は行われない。しかし過剰な圧力は、洗浄液を、開いた血管の中、または組織(間質)の中に無理に押しやる場合があり、それは術後に合併症を生じさせる場合がある。したがって、血圧に対して、体腔内の流体の圧力を自動的に調整するような、医療用ポンプの制御を提供することが望ましい。
【0004】
従来の血圧測定用カフによって血圧を判断すること、及びこのように判断された血圧を使用してポンプを制御することが、先行技術で既に知られている(欧州特許第3065617号明細書を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この欠点は、このタイプの血圧測定が断続的であることである。このような血圧測定用カフが、血圧測定中に身体部分(通常は腕)の循環を完全に中断させるので、不十分な血流による組織の損傷を防止するために、測定の休止が、2回の測定間で必然的に遵守されなければならない。血管内に位置されたカテーテルを介して、代替的に説明された侵襲的な血圧測定は、外科的アクセスを必要とするという欠点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つのセンサによって血圧を測定することで、上記の課題を解決する。このセンサは、身体部分への血流を阻害することなしに、かつ外科的侵襲を必要とせず、継続した非侵襲的な血圧監視を可能にする。
【0008】
このように本発明は、請求項1による医療デバイス、すなわち最小の侵襲的手術で体腔を洗浄するための、医療デバイスに関し、
(i)洗浄液のためのリザーバ(1)と、
(ii)洗浄液を腔部(10)の中に供給するための、少なくとも1本の供給ライン(2)と、
(iii)液体を腔部(10)に供給するための、供給ライン(2)ごとに1つの、制御されたポンプ(3)と、
(vi)少なくとも1本の吸引ライン(5)と、
(v)吸引ライン(5)ごとに1つの、制御された減圧ポンプ(4)と、
(vi)吸引ライン(5)に接続された廃棄物容器(11)と、
(vii)腔部(10)内の圧力を判断するための、少なくとも1つの圧力センサ(7)と、
(viii)腔部(10)内の圧力を制御するための、制御ユニット(6)と、
(ix)処置中に、患者(9)の血圧を、継続して非侵襲的な測定をするための、少なくとも1つのセンサ(8)と、
を備え、
この医療デバイスは、腔部(10)内の圧力が、患者(9)の血圧における変動に適応されるように、制御ユニットが、制御されたポンプ(3)及び制御された減圧ポンプ(4)を制御することを特徴とする。
【0009】
発明の実施形態は、従属請求項で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々なタイプのポンプを、液体供給のためのポンプとして使用することができ、それらは汎用的デバイスで使用される。本発明による好ましいものは、先行技術で無数の変形で説明されるように、ローラホイールポンプである。本発明によるデバイスとして、2.5リットル/分の流体フローで送達することができ、かつ300mmHgの圧力を作り出すことができるポンプが使用される。代替として、同じ流体フロー及び圧力を実現できるなら、隔壁ポンプまたはインペラポンプなど、別の容積式ポンプを、流体送達目的に使用することができる。
【0012】
ローラホイールポンプ、代替としてベンチュリポンプまたは隔壁ポンプも、吸引デバイスとして使用することができる。他のタイプのポンプも使用することができる。吸引のために使用されるポンプは、450mmHgの減圧、及び1.5リットル/分の液体フローを生成できなければならない。ローラインペラポンプ及び隔壁ポンプは、非常に精確に制御可能であるという利点を有する。対照的に、ベンチュリポンプは精確な制御性が劣る。制御性の改善は、弁制御によって実現することができる。
【0013】
本発明の特定の実施形態は、蠕動ポンプという意味で管を搾る、少なくとも1つのローラホイールポンプと、流体を体腔から送り出すよう、負圧を発生させるためのローラホイールポンプと、を有する。両方のローラホイールポンプは、回転数のためのセンサを有し、それによって流体フローを精確に制御することができる。ポンプデバイスは、体腔内の圧力を判断するための、圧力センサを有する。これは、体腔における、または体腔内における直接的なセンサであってよい。代替として、センサは、送達ライン内もしくは送達ライン上に、または吸引ライン内もしくは吸引ライン上に、位置付けられ得る。可能な限り精確に圧力を測定することが重要である。これは、例えば数学上の状態空間(例えばカルマンフィルタまたはルーエンバーガフィルタ)を使用して判断することができる。
【0014】
実際の使用に必須なのは、継続して患者の血圧を判断することである。本発明で意味する継続は、可能であれば全ての脈を評価することを意味する。したがって血圧の測定は、可能であれば各脈で成されるが、少なくとも毎分数回、例えば5、10、15、または20回/分である。
【0015】
本発明の第1の実施形態において、パルスオキシメータが、この目的のために使用され得る。このようなセンサは、先行技術で説明されている。それらは、光の透過によって、酸素飽和ヘモグロビンを測定することに基づく。通常このようなセンサは、一方の側における、1つまたは複数のLEDを有するブラケットと、他方の側における感光性素子と、から構成される。通常このようなパルスオキシメータは、前述のブラケットを指または耳たぶに装着して、患者の酸素飽和度を測定するために使用される。脈動血流は、脈動痕跡を生成し、そこから血圧の変化を得ることができる。血圧は、脈を伴う減衰によって判断され、それは血管の拡張に依拠して、より大きく、またはより小さくなる。この血管の拡張は、血管弾性を介して血圧に結び付けられるので、測定期間における血管弾性は、変化がないものと見做される。酸素飽和度を評価するために、測定は2つ以上の波長で成され(ここではさらに説明しない)、脈減衰曲線の経過は、平均値に正常化される。本発明による評価方法では、この平均化または正常化は省略され、生の測定データが評価される。この評価は、(例えば平均化された曲線を使用して)脈曲線のベースラインが判断され、その変化が腔圧の変化を制御するように実施することができる。各脈波の平均値の変化、最小値対最小値の変化、最大値対最大値の変化、上昇側及び下降側における片振幅値の経過((最小値+最大値)/2の値)、曲線セクション下の領域の評価、曲線セクションの急こう配の評価、曲線セクションの期間長の評価、曲線セクションの急こう配の評価などの、血圧に結び付けられた曲線の経過における変化を判断するための、当技術分野に従った他の数学的方法も考えられる。測定の方法及び評価の詳細は、2001年の、独国における、Elter、Peter、Dissertation、U Karlsruheにおいて説明されている。
【0016】
代替として、血圧はインピーダンスセンサを使用して測定することができる。このセンサは、基本的に皮膚(例えば指、腕、耳たぶ)に固定された2つの電極で構成される。電気インピーダンス、すなわち高周波数の交流電流に対する抵抗が、測定される。ここでも、血液の脈拍、及び電極間の組織における関連の変化は、インピーダンスの変化によって判断される。パルスオキシメトリからの生データを評価することと類似の方法で、インピーダンスの変動を使用して血圧を計算することができる。測定の方法及び評価の詳細は、2001年の、独国における、Elter、Peter、Dissertation、U Karlsruheにおいて説明されている。
【0017】
小血管(例えば子宮または膀胱の壁)における局所血圧が、一般的に心臓レベルで腕において(例えば血圧測定用カフを使用して)測定されるような動脈圧と、同じである必要がないことを理解することは重要である。しかし通常、小血管の局所血圧は、より大きい動脈における血圧と同じ(相対的)変動を受ける。例えば、より大きい上腕の動脈(上腕動脈)における血圧が、10%低下した場合、手術する領域における局所血圧は、通常は同様に10%低下する。したがって、パルスオキシメトリまたはインピーダンスによる測定のために使用されるセンサは、必ずしも処置の開始時に較正を行う必要はない。
【0018】
明白な要因はむしろ、パルスオキシメトリ及びインピーダンスの測定が継続的に実施されること、ならびに、パルスオキシメトリ及びインピーダンスの測定における(相対的)変化が、体腔内の圧力を調整するために使用されること、である。上記の例を守るために:測定された血圧が10%低下した場合、体腔内の圧力も、概ね10%減少する。
【0019】
尿検査及び子宮鏡検査で使用するために、体腔内の流体圧を、血圧よりも5~20%高く調整することが、最適な結果をもたらすことが判っている。好ましくは、この圧力は、血圧よりも約10%高く設定される。
【符号の説明】
【0020】
1 洗浄液のリザーバ
2 洗浄液を腔部内に供給するための供給ライン
3 洗浄液を腔部内に供給するための、制御されたポンプ
4 洗浄液を腔部から排出するための、制御された減圧ポンプ
5 洗浄液を腔部から排出するための吸引ライン
6 制御ユニット
7 腔部内の圧力を判断するための圧力センサ
8 継続的な血圧測定のための血圧センサ
9 患者
10 腔部(体腔)
11 廃棄物容器
【国際調査報告】