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特表2023-542891表面反応炭酸カルシウム触媒を使用した縮合反応を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】表面反応炭酸カルシウム触媒を使用した縮合反応を行う方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/74 20060101AFI20231004BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231004BHJP
   B01J 27/232 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 255/34 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 49/794 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 205/04 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20231004BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
C07C45/74
B01J35/10 301G
B01J27/232 Z
C07C47/21
C07C255/34
C07C253/30
C07C49/794
C07C205/04
C07C201/12
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517703
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021076823
(87)【国際公開番号】W WO2022069559
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20199667.5
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル フトゥニ
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼ タルン
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル セー.アー.ブラーニンクス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA21C
4G169BA29C
4G169BA36C
4G169BA42C
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB14C
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BB16C
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC04C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC09C
4G169BC10C
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BD07B
4G169BD12C
4G169BE08C
4G169CB25
4G169CB59
4G169CB62
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169EC07Y
4G169EC08Y
4G169EC27
4G169ED10
4H006AA02
4H006AC25
4H006BA06
4H006BA32
4H006BA81
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC14
4H006BC31
4H006BC34
4H006QN30
4H039CA29
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、表面反応炭酸カルシウム触媒を使用した、不均一系触媒作用によって縮合反応を行うための方法、及び触媒としての乾燥表面反応炭酸カルシウムの使用に関する。縮合反応は、C=O二重結合を含む第1の基体と、活性化水素を含む第2の基体とを反応させ、1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得ることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、不均一系触媒作用によって縮合反応を行うための方法:
(a)C=O二重結合を含む第1の基体を提供すること;
(b)活性化水素を含む第2の基体を提供すること;
(c)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、
ここで、前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ
前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し;
(d)工程(c)の表面反応炭酸カルシウムを100~500℃の範囲の温度で活性化し、乾燥表面反応炭酸カルシウムを得ること;
(e)工程(d)の前記乾燥表面反応炭酸カルシウムの存在下で、工程(a)の前記第1の基体と工程(b)の前記第2の基体とを反応させ、1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得ること。
【請求項2】
前記第1の基体が式(1)による化合物である、請求項1に記載の方法:
【化1】
式中、
は下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、及び
(ii)オルガニル基R11
好ましくは、オルガニル基R11は、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である;かつ
Xは、下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R
好ましくは、オルガニル基Rは、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である、及び
(iii)脱離基LG、
好ましくは、脱離基LGは、ハライド基、アシルオキシ基、スルフェート基、及びスルファイト基からなる群から選択される、
好ましくは、Xは水素原子である。
【請求項3】
前記第2の基体が式(2)による化合物である、請求項1又は2に記載の方法:
【化2】
式中、
は、電子求引基であり、好ましくは、Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される;かつ
は下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R21
好ましくは、オルガニル基R21は、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である、及び
(iii)電子求引基Z
好ましくは、電子求引基Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される;
但し、Zが、アシル基、ホルミル基、アセチル基又はニトロ基以外の電子求引基であるとき、Rは電子求引基Zである。
【請求項4】
前記第1の基体が式(1)による化合物であり、かつ前記第2の基体が式(2)による化合物であり、かつ
が、水素原子又は請求項2に記載のオルガニル基R11であり、
Xが、水素原子であり、
が、水素原子又は請求項3に記載のオルガニル基R21であり、かつ
が、アシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される電子求引基である、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の基体が式(1)による化合物であり、かつ前記第2の基体が式(2)による化合物であり、かつ
が、水素原子又は請求項2に記載のオルガニル基R11であり、
Xが、水素原子であり、
が、電子求引基Zであり、かつ
及びZが、互いに独立して、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びエステル基からなる群から選択され、好ましくは、Z及びZが同じ基である、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の基体と前記第2の基体とが同じ化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)の前記表面反応炭酸カルシウムが下記を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのトップカット(d98)値、及び/又は
(iii)BET法によって測定した、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは25~160m/g、最も好ましくは30~140m/gの比表面積(BET)。
【請求項8】
工程(d)の前記乾燥表面反応炭酸カルシウムが下記を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法:
(i)前記表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(ii)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、前記表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(iii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、前記表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【請求項9】
1つ又は複数の前記Hイオン供与体が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酸性塩、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na又はKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+又はCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
最も好ましくは、1つ又は複数の前記Hイオン供与体がリン酸である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
150℃~400℃、より好ましくは150℃~300℃の温度で、及び/又は少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間の持続時間で、任意に101.3kPa未満の圧力で、活性化工程(d)を行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)溶媒の不存在下で、又は溶媒の存在下、好ましくは、アセトニトリル、ベンゼン、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、N-メチルピロリジノン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物を含む群から選択される溶媒の存在下で、
好ましくは、溶媒の不存在下で、及び/又は
(ii)液相中で、20℃~250℃、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃の範囲の反応温度で、
反応工程(e)を行う、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応工程(e)において、
(i)前記第1の基体の総重量に対して、0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~25重量%、最も好ましくは10~20重量%の量で、前記乾燥表面反応炭酸カルシウムを添加し、かつ/又は
(ii)前記第1の基体:前記第2の基体を、1:1~1:20、好ましくは1:2.5~1:15、より好ましくは1:5~1:15のモル比で添加する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
乾燥表面反応炭酸カルシウムの触媒としての使用であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ
前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し、かつ
前記表面反応炭酸カルシウムが、100~500℃の範囲の温度で加熱することによって乾燥させられている、
使用。
【請求項14】
前記乾燥表面反応炭酸カルシウムが下記を有する、請求項13に記載の使用:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのトップカット(d98)値、及び/又は
(iii)BET法によって測定した、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは25~160m/g、最も好ましくは30~140m/gの比表面積(BET)、及び/又は
(iv)前記表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(v)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(vi)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【請求項15】
縮合反応のための触媒としての、請求項13又は14に記載の乾燥表面反応炭酸カルシウムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応炭酸カルシウム触媒を使用した不均一系触媒作用によって縮合反応を行う方法、及び乾燥表面反応炭酸カルシウムの触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
縮合反応は、小分子、例えば水を形成しながら行われる有機分子の反応である。したがって、縮合反応は典型的には高い原子経済を示す。さらに、縮合反応は、制御された信頼性の高い手段で炭素-炭素結合を形成することを可能にするので、実験室規模及び大量生産用途における様々な分子の合成にとって魅力的なものとなっている。一例としては、ブチルアルデヒドのアルドール縮合反応は、2-エチルヘキセナールを産出し、2-エチルヘキセナールは、殺菌剤、殺虫剤、溶媒、湿潤剤、医薬品、香料、プラスチックのための添加剤、及びその他に使用し得るいくつかの下流生成物の重要な中間体である。同様に、クライゼン-シュミット縮合は、α,β-不飽和カルボニル化合物の入手を可能にする。クネーフェナーゲル縮合は、任意の鹸化及び脱炭酸工程との組み合わせにおいて、不飽和化合物、例えばα,β-不飽和カルボニル化合物の入手を可能にする。クネーフェナーゲル縮合によって入手可能なα,β-不飽和カルボニル化合物の工業的に重要な例は、ソルビン酸及び桂皮酸を含む。同様に、ヘンリー反応は、ニトロアルカンとカルボニル化合物との縮合がニトロアルケンを産出することを可能にする。
【0003】
縮合反応を実施するためには、通常、酸性又は塩基性の触媒が必要となる。一般的な酸性又は塩基性の触媒、例えば水酸化ナトリウム又は硫酸を反応混合物中に溶解することは、触媒の回収を困難にするか又は阻み、かつ最終生成物の純度に悪影響を及ぼす。あるいは、シアン化物系触媒が採用されているが、シアン化物系触媒は、その高い毒性ゆえ望ましくない。したがって、アルカリ金属含有ゼオライト、アルカリ土類金属酸化物、二硫化モリブデン、アミノ官能化キトサン、酸化ニオブ(V)、アルミナ上のシリカ、又はジルコニア上のマグネシアなどの化合物が、縮合反応における触媒として提案されている。あるいは、ヒドロキシアパタイト、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ベントナイト、又は二酸化チタンが、縮合反応における触媒として提案されている。
【0004】
国際公開第2019/180012 A9号には、カルボン酸エステルのエステル交換のための触媒として、焼成した表面反応炭酸カルシウムが開示されている。この文献では、エステル交換反応におけるエステルとアルコールとの反応のために、炭酸カルシウムを少なくとも部分的に焼成して酸化カルシウムにし、触媒活性を得ることが必要である。
【0005】
欧州特許出願公開第3176222号公報は、表面反応炭酸カルシウムを含む顆粒を製造する方法に言及している。この顆粒は触媒システム中に使用することができる。しかしながら、表面反応炭酸カルシウムを含む得られた顆粒は、体積メジアン粒径が0.1~6mmであり、したがって、通常の表面反応炭酸カルシウムよりも著しく大きい。
【0006】
米国特許出願公開第2016/228859号公報は、有機合成反応の実施方法であって、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有し、かつ遷移金属、半金属、及びポスト遷移金属を事実上含まない有機起源材料の触媒を伴う触媒作用を含む方法に言及している。有機起源材料は、海洋貝殻又は非海生軟体動物の殻であり、これらの殻は、有意なレベルのアルカリ又はアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム(Ca)を、好ましくは炭酸カルシウムの形態で、好ましくは80重量%を超え、より好ましくは90重量%を超える量で含有し、これらの殻は任意には粉砕及び/又は熱処理が施されている。米国特許出願公開第2016/228859号公報は、表面反応炭酸カルシウムには言及していない。
【0007】
国際公開第2013/087211 A1号は、少なくとも1つのオキソ及び/又はヒドロキシル官能基を含有する有機化合物を触媒的に縮合してCH酸性化合物にし、かつ/又は金属を備えた活性炭基材を含む触媒の存在下で、この有機化合物をCH酸性化合物にカップリングする方法に関する。
【0008】
国際公開第2008/113563 A1号は、ケトンを製造する方法に関し、より具体的には、固体塩基支持触媒としてのシリカ上のCa/Na酸化物を使用して、不飽和ケトンを製造する方法に関する。
【0009】
しかしながら、これらの材料はしばしば高価であり、かつこれらの製造の一部は実験室規模の量に限定されている。さらに、これらの材料のうちのいくつかは、材料の小さな表面積及び材料の界面化学及び表面組成に基づき、触媒的な活性があまり高くない。したがって、十分なターンオーバー(回転率)を可能にするためには、このような材料を反応混合物に大量に添加しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、触媒をさらに改善すること、すなわち種々の縮合タイプの反応において高度に触媒的に活性であり、反応混合物から容易に取り除くことができかつ再利用することができ、かつ合理的なコストで大規模に製造し得る触媒を開発することが引き続き必要となっている。好ましくは、縮合反応は、穏やかな反応条件で、かつ副反応をほとんど伴わずに実施することができ、ここで、生成物が高収率で得られ、かつ生成物は反応混合物から容易に分離することができる。
【0011】
加えて、触媒は取り扱いが容易で、かつ貯蔵時に安定であるべきであり、そして環境に優しく非毒性であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点及び他の問題点は、独立請求項に定義された主題によって解決することができる。
【0013】
したがって、本発明の第一の態様は、表面反応炭酸カルシウム触媒を使用した縮合反応を行う方法に関する。この方法は、以下の工程を含む:
(a)C=O二重結合を含む第1の基体を提供すること;
(b)活性化水素を含む第2の基体を提供すること;
(c)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、
ここで、この表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつこの二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ
この表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し;
(d)工程(c)の表面反応炭酸カルシウムを100~500℃の範囲の温度で活性化し、乾燥表面反応炭酸カルシウムを得ること;
(e)工程(d)の乾燥表面反応炭酸カルシウムの存在下で、工程(a)の第1の基体と工程(b)の第2の基体とを反応させ、1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得ること。
【0014】
発明者らは、表面反応炭酸カルシウムが、縮合タイプの反応のための高活性触媒であることを見出した。以下に詳述するように、表面反応炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム含有材料と、二酸化炭素と、1つ又は複数のHイオン供与体とを反応させることによって得られる特定のタイプの炭酸カルシウムである。表面反応炭酸カルシウムは、高い比表面積を有しており、かつ表面反応していることに起因して、触媒的に活性な酸性部位及び塩基性部位を含んでいる。さらに、発明者らは、加熱による表面反応炭酸カルシウムの活性化が、その触媒活性を大幅に向上させることを見出した。活性化工程は、貯蔵中に表面反応炭酸カルシウムに吸着したすべての水及び揮発性物質、例えば揮発性有機分子を、その表面から本質的に除去することを保証すると考えられる。しかしながら、活性化は表面反応炭酸カルシウムの焼成温度未満で行われるので、表面反応炭酸カルシウムの組成及び表面構造は、活性化工程によって変化しないということが理解されるべきである。
【0015】
本発明の別の態様は、乾燥表面反応炭酸カルシウムの触媒としての使用であって、
この表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつこの二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ
この表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し、かつ
この表面反応炭酸カルシウムが、100~500℃の範囲の温度で加熱することによって乾燥させられている、
使用に関する。
【0016】
有利な実施態様が相応の従属請求項に定義されている。
【0017】
本発明のいずれか一つの態様の一実施態様では、第1の基体が下記式(1)による化合物である:
【化1】
式中、
は下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、及び
(ii)オルガニル基R11
好ましくは、オルガニル基R11は、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である;かつ
Xは、下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R
好ましくは、オルガニル基Rは、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である、及び
(iii)脱離基LG、
好ましくは、脱離基LGは、ハライド基、アシルオキシ基、スルフェート基、及びスルファイト基からなる群から選択される、
好ましくは、Xは水素原子である。
【0018】
本発明のいずれか一つの態様の別の実施態様では、第2の基体が下記式(2)による化合物である:
【化2】
式中、
は、電子求引基であり、好ましくは、Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される;かつ
は下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R21
好ましくは、オルガニル基R21は、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である、及び
(iii)電子求引基Z
好ましくは、電子求引基Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される;
但し、Zが、アシル基、ホルミル基、アセチル基又はニトロ基以外の電子求引基であるとき、Rは電子求引基Zである。
【0019】
本発明のいずれか一つの態様のさらに別の実施態様では、第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、第2の基体が式(2)に基づく化合物であり、
ここで、
が、水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが、水素原子であり、
が、水素原子又はオルガニル基R21であり、かつ
が、アシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される電子求引基である。
【0020】
本発明のいずれか一つの態様のまた別の実施態様では、第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、第2の基体が式(2)に基づく化合物であり、
ここで、
が、水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが、水素原子であり、
が、電子求引基Zであり、かつ
及びZが、互いに独立して、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びエステル基からなる群から選択され、好ましくは、Z及びZが同じ基である。
【0021】
本発明のいずれか一つの態様の一実施態様では、第1の基体と第2の基体とが同じ化合物である。
【0022】
本発明のいずれか一つの態様の別の実施態様では、工程(c)の表面反応炭酸カルシウムが下記を有する:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのトップカット(d98)値、及び/又は
(iii)BET法によって測定した、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは25~160m/g、最も好ましくは30~140m/gの比表面積(BET)。
【0023】
本発明のいずれか一つの態様のさらに別の実施態様では、工程(d)の乾燥表面反応炭酸カルシウムが下記を有する:
(i)表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(ii)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(iii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0024】
本発明のいずれか一つの態様のまた別の実施態様では、
1つ又は複数のHイオン供与体が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酸性塩、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na又はKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+又はCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
最も好ましくは、1つ又は複数のHイオン供与体がリン酸である。
【0025】
本発明の方法の一実施態様では、150℃~400℃、より好ましくは150℃~300℃の温度で、及び/又は少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間の持続時間で、任意に101.3kPa未満の圧力で、活性化工程(d)を行う。
【0026】
本発明の方法の別の実施態様では、反応工程(e)を下記のとおり行う:
(i)溶媒の不存在下で、又は溶媒の存在下、好ましくは、アセトニトリル、ベンゼン、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、N-メチルピロリドン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物を含む群から選択される溶媒の存在下で、
好ましくは、溶媒の不存在下で、及び/又は
(ii)液相中で、20℃~250℃、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃の範囲の反応温度。
【0027】
本発明の方法のさらに別の実施態様では、反応工程(e)では、下記のとおりである:
(i)第1の基体の総重量に対して、0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~25重量%、最も好ましくは10~20重量%の量で、乾燥表面反応炭酸カルシウムを添加し、かつ/又は
(ii)第1の基体:第2の基体を、1:1~1:20、好ましくは1:2.5~1:15、より好ましくは1:5~1:15のモル比で添加する。
【0028】
なお、本発明の目的のために、下記の用語は下記の意味を有することを理解すべきである。
【0029】
IUPACによって定義された「縮合反応」とは、2つの分子又は同じ分子内の遠隔部位が、水又は何らかの他の小分子、例えばアンモニア、メタノール、エタノール、酢酸、又は硫化水素の形成を伴って主生成物を産出する反応を意味する(IUPAC Gold Book, https://doi.org/10.1351/goldbook.C01238参照)。この反応の有機主反応生成物は「縮合生成物」と呼ばれるのに対して、小分子は「縮合副生成物」と呼ばれる。なお、「エステル交換反応」は、本発明の意味においては、縮合反応を意味しない。「エステル交換反応」は、エステルのオルガニル基をアルコールのオルガニル基R’と交換するプロセスである。
【0030】
「不均一系触媒作用」は、相の間の、すなわち基体を含む液相と不均一系触媒である固相との間の界面で又は界面近くで反応が起こる触媒反応であると理解されている(IUPAC Gold Book, https://doi.org/10.1351/goldbook.C00876参照)。
【0031】
本発明の意味における「基体(substrate)」は、縮合反応における出発材料として使用される、すなわち、触媒の影響下で変換させられる有機化合物を意味する。本発明において、第1の基体と第2の基体とは、互いに反応することにより、縮合生成物と縮合副生成物とを形成することができると理解される。
【0032】
したがって、「C=O二重結合を含む基体」は、例えばカルボニル基、カルボキシル基、又はエステル基を含む有機化合物であると理解される。二酸化炭素は、本発明の意味においては、C=O二重結合を含む基体を示すものではない。
【0033】
したがって、「活性化水素を含む基体」は、「活性化水素」含む有機化合物、すなわちこの有機化合物内の水素原子であって、電子求引基を有する炭素原子に結合した水素原子を含む有機化合物であると理解される。当業者の理解に基づく「電子求引基」とは、上記炭素原子から電子を引き離す、すなわち、同じ分子と比較して上記炭素原子上の部分的正電荷を増大させる基として定義され、電子求引基は水素原子によって置換される。
【0034】
本発明の意味における「オルガニル基」は、炭素原子に1つの自由原子価を有する、官能タイプとは無関係の任意の有機置換基であり、例えばCHCH-、ClCH-、CHC(=O)-、4-ピリジルメチル-である(IUPAC Gold Book, https://doi.org/10.1351/goldbook.O04329参照)。
【0035】
本発明の意味における「脱離基」は、縮合反応における基体の残留部分であると考えられるものの中の原子から切り離されるようになる(荷電しているか又は荷電していない)原子又は基である(IUPAC Gold Book, https://doi.org/10.1351/goldbook.L03493参照)。より具体的には、式(1)に基づく化合物の脱離基は、例えば第2の基体との反応により置換され、すなわち切り離されるようになる。好ましくは、脱離基は電子求引基である。
【0036】
本発明に基づく「表面反応炭酸カルシウム」は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、二酸化炭素はHイオン供与体での処理によってその場で形成される。本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0037】
本明細書全体を通して、官能化した炭酸カルシウム又は他の材料を定義するために用いられる「比表面積」(「SSA」、m/g)という用語は、ISO 9277:2010に基づくBET法(吸着ガスとして窒素を用いる)を用いて測定された比表面積を意味する。
【0038】
本明細書における表面反応炭酸カルシウムの「粒径」は、体積基準の粒径分布d(vol)として記載される。ここで、d(vol)値は、粒子のx体積%がd(vol)未満の直径を有することに関する直径を表す。これは、例えば、d20(vol)値が、すべての粒子のうち20体積%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。したがって、d50(vol)値は体積メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子のうち50体積%がその粒径よりも小さく、かつd98(vol)値は体積基準のトップカット粒径と呼ばれ、すべての粒子のうち98体積%がその粒径よりも小さい粒径である。
【0039】
体積メジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 3000 Laser Diffraction Systemを使用して評価した。Malvern Mastersizer 3000 Laser Diffraction Systemを使用して測定されたd50又はd98値は、粒子の50体積%又は98体積%が、それぞれ、この値より小さい直径を有するような直径の値を示す。粒子屈折率1.57、吸収係数0.005として、測定により得られた生データを、Mie理論を用いて解析する。
【0040】
本発明の目的のために、「気孔率」又は「細孔容積」は、粒子内圧入比細孔容積を意味する。
【0041】
本発明の文脈において、「細孔」という用語は、粒子間及び/又は粒子内に見出される空間であり、すなわち、粉末又は成形体などのように、粒子が最近接接触下に一緒に詰め込まれる際にこれらの粒子によって形成される空間(粒子間細孔)、及び/又は多孔質粒子内の空隙によって形成される空間(粒子内細孔)であって、液体によって飽和した場合に圧力下で液体の通過を可能にし、かつ/又は表面湿潤液体の吸収を支持する空間を記載するものとして理解されるべきである。
【0042】
比細孔容積は、0.004μmのラプラス喉部直径と等価の、水銀の最大印加圧力414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを使用し、水銀圧入ポロシメトリー測定法を用いて測定する。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。試料材料を、分析のために、3cmのチャンバの粉末貫入計中に密封する。データは、ソフトウェアPore-Compを使用して、水銀の圧縮、貫入計の膨張、及び試料材料の弾性圧縮について補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,1996,35(5),pp.1753-1764)。
【0043】
積算圧入データ内に見られる全細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔をも有している場合には、この領域は二峰性であり、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細い細孔内に水銀が圧入した比細孔容積をもってして、粒子内比細孔容積が定義される。これら3つの領域の総和は、粉末の合計の総細孔容積を与えるが、もともとの試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
【0044】
積算圧入曲線の一次導関数を取り上げることにより、必然的に細孔遮へいを含めた等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔径範囲がわかれば、合計細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔の所望の細孔容積だけを得ることが可能である。当然のことながら同じ差し引きの原理は、興味ある任意のその他の細孔径領域を分離する場合にも当てはまる。
【0045】
本発明の意味における「乾燥(dry)」材料(例えば乾燥表面反応炭酸カルシウム(ドライ表面反応炭酸カルシウム))は、特に断りのない限り、乾燥した材料の総重量を基準として、5.0重量%又はこれ未満、好ましくは0.75重量%又はこれ未満、より好ましくは0.5重量%又はこれ未満、さらにより好ましくは0.2重量%又はこれ未満、最も好ましくは0.02~0.07重量%の総湿分含量又は残留湿分含量を有する。
【0046】
本明細書の意味における「焼成(calcining)」という用語は、固体材料に施される熱処理プロセスであって、湿分の損失、還元又は酸化、そしてこれに加えて炭酸塩及び他の化合物の分解を生じさせ、その結果、対応する固体材料の酸化物をもたらすプロセスを意味する。なお、本発明の表面反応炭酸カルシウムは、活性化工程(d)の前、活性化工程(d)の間、及び活性化工程(d)の後に焼成されないと理解すべきである。
【0047】
「塩基性部位の総数」は、固体材料の塩基性の尺度であり、所定量の固体材料の塩基性部位に吸着され得る二酸化炭素の総モル量によって表され、本明細書中に記載されているように、二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定される。
【0048】
「酸性部位の総数」は、固体材料の酸性の尺度であり、所定量の固体材料の酸性部位に吸着され得るアンモニアの総モル量によって表され、本明細書中に記載されているように、アンモニアを使用した昇温脱離によって測定される。
【0049】
本発明の意味における「昇温脱離(Temperature-programmed desorption)」、又は昇温脱離分光法は、当業者によく知られた分析法を指し、ガス、例えば、二酸化炭素又はアンモニアを試料に吸着させ、続いてこの試料を加熱し、かつ加熱プロセス中に放出されたガスの量を測定することを含む。
【0050】
本明細書及び特許請求の範囲において用語「含む(comprising)」を使用する場合、これは、機能的に重要な主要な又は主要でない他の不特定の要素を排除しない。本発明の目的のため、用語「からなる(consisting of)は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下において、ある群が少なくとも特定の数の実施形態を含むように定義されている場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も開示しているということが理解されるべきである。
【0051】
用語「含む(including)」又は「有する(having)」が使用される場合、これらの用語は、上記で定義される「含む(comprising)」と等価であることを意味する。
【0052】
単数名詞に言及するときに、不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」、又は「the」が使用される場合、これは特に断りのない限り、その名詞の複数形を含む。
【0053】
「得られる、得ることのできる(obtainable)」又は「定義される、定義可能な(definable)」及び「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」などの用語は、互換的に使用される。例えば、このことは、文脈上明白に他の指示がなされているのでないかぎり、「得られた」なる用語は、例えばある実施形態が、例えば「得られた」なる用語の後に続く工程の順番によって得られなければならないということを示すことを意味するものではないが、このような限定された理解は、好ましい実施形態として、「得られた」又は「定義された」なる用語の中に常に含まれる、ということを意味する。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、不均一系触媒作用によって縮合反応を行う方法が開示される。この方法は、下記の工程を含む:
(a)C=O二重結合を含む第1の基体を提供すること;
(b)活性化水素を含む第2の基体を提供すること;
(c)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、
ここで、この表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつこの二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ
この表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し;
(d)工程(c)の表面反応炭酸カルシウムを100~500℃の範囲の温度で活性化し、乾燥表面反応炭酸カルシウムを得ること;
(e)工程(d)の乾燥表面反応炭酸カルシウムの存在下で、工程(a)の第1の基体と工程(b)の第2の基体とを反応させ、1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得ること。
以下に本発明の方法の工程を詳述する。
【0055】
以下において縮合反応を行う本発明の方法の実施態様又は技術的詳細に言及するときには、これらの実施態様又は技術的な詳細はまた、触媒としての乾燥表面反応炭酸カルシウムの本発明による使用にも、適用可能な限り言及するものであることが理解されるべきである。
【0056】
工程(a)-第1の基体
方法工程(a)によれば、C=O二重結合を含む第1の基体を提供する。第1の基体は有機化合物であり、好ましくはカルボニル基を含む。したがって、二酸化炭素は本発明の意味において、C=O二重結合を含む第1の基体を意味しないことを理解すべきである。第1の基体のC=O基の炭素原子は、酸素原子の電子求引効果に起因して正に分極しており、したがって、求核攻撃を受けやすい。この求核攻撃の受けやすさは、C=O酸素原子と触媒の酸性部位との相互作用によって高めることができる。
【0057】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)による化合物である:
【化3】
式中、
は下記からなる群から選択され:
(i)水素原子、及び
(ii)オルガニル基R11
かつ
Xは、下記からなる群から選択される:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R、及び
(iii)脱離基LG。
【0058】
オルガニル基R11及びRに関しては、例えば電子効果又は立体効果によって、求核剤がC=O炭素原子を攻撃することをこれらの基が妨げない限り、具体的な制約はない。しかしながら、好ましい実施態様では、R11及びRは互いに独立して、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である。例えば、R11及び/又はRは、炭素原子数6~30のアリール基であってもよい。
【0059】
直鎖基は、各炭素原子が1つ又は2つの他の炭素原子に対する直接結合を有している基であると理解される。
【0060】
分枝基は、少なくとも1つの炭素原子が3つ又は4つの他の炭素原子に対して直接結合を有している基であると理解される。
【0061】
飽和基は、炭素-炭素多重結合、すなわち炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を含有しない基であると理解される。
【0062】
不飽和基は、少なくとも1つの炭素-炭素多重結合、すなわち炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を含有する基であると理解される。
【0063】
環式基は、少なくとも3つの炭素原子が、環を形成するように互いに結合している基であると理解される。
【0064】
非環式基は、環が存在しない基であると理解される。
【0065】
本発明の意味におけるハライド基は、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物である。
【0066】
本発明の意味におけるヒドロキシ基は、官能基-OHである。
【0067】
本発明の意味におけるオキソ基は、官能基=Oである。
【0068】
本発明の意味におけるアルキル基は、炭素原子数1~28、好ましくは8~26、より好ましくは14~22、そして最も好ましくは16~20の、炭素と水素とから構成される直鎖又は分枝の、飽和又は不飽和の有機化合物を意味する。
【0069】
本発明の意味におけるビニル基は、官能基-CH=CHである。
【0070】
本発明によるアシルオキシ基は、酸素原子に単結合したアシル基である。本発明によるアシル基は単結合でCO基に結合しているオルガニル基である。したがって、アシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-RA1を有し、RA1は、好ましくは、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0071】
本発明によれば、アシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-C(-RA2)=CHを有するアクリルオキシ基であってよく、RA2は、好ましくは、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0072】
本発明によるカルボキシル基は、1つの酸素原子に対する2つの化学結合と、2つ目の酸素原子に対する1つの化学結合とを形成する炭素原子から成る。この2つ目の酸素は、水素原子にも結合している。この配置は-C(=O)-OHと書かれる。
【0073】
本発明によるエポキシ基は、単一結合によって2つの隣接する炭素原子に結合し、したがって、3員エポキシド環を形成する酸素原子から成る。
【0074】
無水物基は、1つの酸素原子に結合した2つのアシル基を含む。本発明によれば、無水物基は、化学式:-C(=O)-O-C(=O)-RA3を有し、RA3は、好ましくは、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。別の実施態様によれば、無水物基は環式無水物基である。
【0075】
本発明によるエステル基は、化学式:-C(=O)-O-RA4を有し、RA4は、好ましくは、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0076】
本発明の意味におけるアルデヒド基は、官能基-C(=O)-Hである。
【0077】
本発明の意味におけるアミノ基は、官能基-NHであり、任意に、水素原子の一方又は両方が、互いに独立して選択された、好ましくは、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載された1つ又は2つのオルガニル基、より好ましくはアルキル基によって置換されており、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0078】
本発明の意味におけるウレイド基は、官能基-NH-C(=O)-NHである。
【0079】
本発明の意味におけるアジド基は、官能基-Nである。
【0080】
本発明によるホスホネート基は、化学式:-P(=O)(ORA5)(ORA6)を有しており、ORA5及びORA6は、互いに独立して、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基からなる群から選択され、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0081】
本発明によるホスフィン基は、化学式:-PRA7A8を有しており、RA7及びRA8は、互いに独立して、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基とからなる群から選択され、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0082】
本発明の意味におけるスルホネート基は、官能基-S(=O)(=O)-ORA9であり、RA9は、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基とからなる群から選択され、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0083】
本発明によるスルフィド基は、化学式:-SRA10を有しており、RA10は、水素、又は好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0084】
本発明によるジスルフィド基は、化学式:-S-S-RA11を有しており、RA10は、水素、又は好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基であり、より好ましくはアルキル基であり、このアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~18、例えば炭素原子数2~12であり、例えばメチル基又はエチル基である。
【0085】
本発明の意味におけるイソシアネート基は、官能基-N=C(=O)である。本発明によるマスクしたイソシアネート基は、マスキング剤によってマスキング又はブロックされたイソシアネート基を意味する。120℃を超える温度では、マスキング剤は分離し、イソシアネート基が得られる。
【0086】
本発明の意味におけるチオール基は、官能基-SHである。
【0087】
本発明の意味におけるフェニル基又はフェニル環は、式:-Cを有する環式基である。
【0088】
本発明の意味におけるベンジル基は、官能基-CHである。
【0089】
本発明の意味におけるスチリル基は、官能基-CH=CH-Cである。
【0090】
本発明の意味におけるベンゾイル基は、官能基-C(=O)Cである。
【0091】
本発明の意味におけるスルフィネート基は、官能基-S(=O)-ORA12であり、RA12は、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基とからなる群から選択される。
【0092】
本発明の意味におけるスルホニル基は、官能基-S(=O)-RA13であり、RA13は、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基とからなる群から選択される。
【0093】
本発明の意味におけるスルフィニル基は、官能基-S(=O)-RA14であり、RA14は、水素、及び好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に記載されたオルガニル基とからなる群から選択される。
【0094】
本発明の意味におけるアリール基は、フェニル基であり、このフェニル基は、任意に、1つ又は複数のオルガニル基及び/又は1つ又は複数の官能基、例えば上述した基で、さらに置換されていてもよい。
【0095】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、Xが水素原子であり(X=H)、かつRがオルガニル基R11である(R=R11)。この実施態様では、化合物(1)はアルデヒドである。本発明の意味における「アルデヒド」は化合物RC(=O)Hであり、カルボニル基は、炭素原子を介して、1つの水素原子及び1つのオルガニル基Rに結合している。
【0096】
X=H及びR=R11の式(1)に基づく化合物である第1の基体は、炭素原子数1~30、好ましくは炭素原子数1~20、より好ましくは炭素原子数1~15の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であるオルガニル基R11を含み、このオルガニル基R11は、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい。
【0097】
直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選択することができ、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアリール基のそれぞれが、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい。
【0098】
任意にさらに置換されていてもよいアルキル基である例示的なオルガニル基R11には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ノニル、クロロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、ホルミル、アセチル、及びカルボキシル基が含まれる。式(1)による相応する化合物は、それぞれ、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノナナール、クロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、グリオキサール、及びグリオキシル酸である。
【0099】
任意にさらに置換されていてもよいアルケニル基である例示的なオルガニル基R11には、ビニル、1-アリル、2-メチルブト-1-エン-1-イル、(all-E)-2,6-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)オクタ-1,3,5,7-テトラエン-1-イル、及びフェニルエチル基が含まれる。式(1)による相応する化合物は、それぞれ、アクロレイン、クロトンアルデヒド、3-メチルブト-2-エナール、レチナール及びシンナミックアルデヒドである。
【0100】
任意にさらに置換されていてもよいシクロアルキル基である例示的なオルガニル基R11には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル基が含まれる。式(1)による相応する化合物は、それぞれ、シクロプロパンカルバルデヒド、シクロブタンカルバルデヒド、シクロペンタンカルバルデヒド、及びシクロヘキサンカルバルデヒドである。
【0101】
任意にさらに置換されていてもよいアリール基又はヘテロアリール基である例示的なオルガニル基R11には、フェニル、4-メチルフェニル、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル、ピリジル、フリル、メチルフリル、ヒドロキシメチルフリル、及びチオフェニル基が含まれる。式(1)による相応する化合物は、それぞれ、ベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、バニリン、ピリジン-2-カルボキシアルデヒド、フルフラール、5-メチルフリル、5-ヒドロキシメチルフルフラール、及び2-チオフェンカルバルデヒドである。
【0102】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、Xが水素原子であり(X=H)、かつRがオルガニル基R11であり(R=R11)、R11は-(CH)-R12に等しく、ここで、R12は、炭素原子数1~29、好ましくは炭素原子数1~19、より好ましくは炭素原子数1~14の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい。
【0103】
以下で概要を述べるように、X=H及びR=R11である式(1)に基づく化合物であるアルデヒドは、アルドール縮合反応に使用することができる。このような化合物は、C=O基及び活性化水素の両方を含むことを条件として、自己アルドール縮合反応に使用することができる。自己アルドール縮合反応は、第1の基体と第2の基体とが同じ化合物であるアルドール縮合反応であると理解される。しかしながら、このようなアルデヒドを、交差アルドール縮合反応に使用することもできる。交差アルドール縮合反応は、第1の基体と第2の基体とが相異なる化合物であるアルドール縮合反応であると理解される。1つの特定の実施態様では、X=H及びR=R11である式(1)に基づく化合物は、カルボニル基のα位に水素原子を含まず、かつ好ましくは、R11はアリール基である。このような化合物はクライゼン-シュミット反応に使用することができる。
【0104】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、ここで、Xは水素原子であり(X=H)、かつRは水素原子である(R=H)。この実施態様では、第1の基体はホルムアルデヒド(HCHO)である。以下で概要を述べるように、ホルムアルデヒドは、交差アルドール縮合反応又はクネーフェナーゲル反応の基体として採用することができる。
【0105】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、ここで、Xはオルガニル基Rであり(X=R)、かつRはオルガニル基R11である(R=R11)。この実施態様では、式(1)に基づく化合物はケトンである。本発明の意味において、「ケトン」は、カルボニル基が炭素原子を介して2つの炭素原子に結合している化合物RR’C=Oであると理解され、R及びR’はオルガニル基であり、すなわちRもR’もHではない。あるいは、RとRとは、互いに結合して環式系を形成することができる。
【0106】
X=R及びR=R11である式(1)に基づく化合物である第1の基体は、炭素原子数1~30、好ましくは炭素原子数1~20、より好ましくは炭素原子数1~15の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であるオルガニル基R11を含み、オルガニル基R11は、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい。
【0107】
直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択されてよく、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアリール基のそれぞれが、任意には上記に定義したようにさらに置換されていてもよい。
【0108】
X=R及びR=R11の式(1)に基づく化合物である第1の基体は、炭素原子数1~30、好ましくは炭素原子数1~20、より好ましくは炭素原子数1~15の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であるオルガニル基Rを含み、オルガニル基Rは、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい。
【0109】
直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択されてよく、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアリール基のそれぞれが、任意には上記に定義したようにさらに置換されていてもよい。
【0110】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、X=R及びR=R11であり、R11=-(CH)-R12であり、ここで、R12は、炭素原子数1~29、好ましくは炭素原子数1~19、より好ましくは炭素原子数1~14の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基であり;かつR=-(CH)-RX1であり、ここで、RX1は、炭素原子数1~29、好ましくは炭素原子数1~19、より好ましくは炭素原子数1~14の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である。
【0111】
本発明による例示的な第1の基体は、X=R及びR=R11である式(1)に基づく化合物であり、アセトン、ブタノン、ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルビニルケトン、シクロプロピルメチルケトン、イソホロン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジリデンアセトン、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン、ジアセチル、クロロアセトン、アセトイン、ジアセトンアルコール、及びエチルアセトアセテートを含む。
【0112】
本発明の別の実施態様では、第1の基体は、式(1)に基づく化合物であり、Xはオルガニル基Rであり(X=R)、かつRは水素原子である(R=H)。この実施態様における式(1)に基づく結果として生じる化合物は、R=R11及びX=Hの式(1)に基づく化合物に相当し、この化合物は既に上述している。
【0113】
本発明のさらに別の実施態様では、Xは脱離基LGであり、Rは水素原子及びオルガニル基R11からなる群から選択される。オルガニル基R11は上記に定義したとおりであることが理解される。脱離基LGは、ハライド基、アシルオキシ基、スルフェート基、及びスルファイト基からなる群から選択することができ、好ましくは、ハライド基及びアシルオキシ基からなる群から選択される。このような第1の基体はパーキン反応に採用することができる。
【0114】
したがって、本発明の一実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、R=R11及びX=LGであって、この脱離基LGは、好ましくは、ハライド基、アシルオキシ基、スルフェート基、及びスルファイト基からなる群から選択され、好ましくは、ハライド基及びアシルオキシ基からなる群から選択される。したがって、第1の基体は、それぞれ、アシルハライド(アシルハロゲン化物)、対称又は混合カルボン酸無水物、カルボン酸とスルホン酸との混合無水物、又はカルボン酸とスルフィン酸との混合無水物である。
【0115】
本発明の目的のために、「混合無水物」は、1つの水分子を放出しながら、2つの異なる酸分子の仮想の縮合反応から形成された無水物であると考えられる。同様に、「対称無水物」は、1つの水分子を放出しながら、2つの同一の酸分子の仮想の縮合反応から形成された無水物であると考えられる。LG=アシルオキシ基である事例では、提供された無水物は対称無水物であることが好ましい。
【0116】
したがって、本発明の別の実施態様では、第1の基体は、式(1)に基づく化合物であり、R=H及びX=LGであり、この脱離基LGは、好ましくは、ハライド基、スルフェート基、及びスルファイト基からなる群から選択される。したがって、第1の基体はそれぞれ、ホルミルハライド(ホルミルハロゲン化物)、ギ酸とスルホン酸との混合無水物、又はギ酸とスルフィン酸との混合無水物である。
【0117】
本発明の実施態様のいずれにおいても、ハライド基である脱離基LGは、塩化物、臭化物、及びヨウ化物からなる群から選択することができる。
【0118】
本発明の実施態様のいずれにおいても、スルフェート基である脱離基LGは、式:-O-S(=O)-RL3に基づく化合物であり、RL3は、好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述されたオルガニル基であり、より好ましくは、RL3は、メチル、トリフルオロメチル、フェニル、又は4-メチルフェニルである。
【0119】
本発明の実施態様のいずれにおいても、スルファイト基である脱離基LGは、式:-O-S(=O)-RL4に基づく化合物であり、RL4は、好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述されたオルガニル基であり、より好ましくは、RL4は、メチル、トリフルオロメチル、フェニル、又は4-メチルフェニルである。
【0120】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とは同じ化合物である。すなわち、この化合物はC=O二重結合及び活性化水素の両方を含む。したがって、この化合物の1つの分子は、分子内様式で、それ自体と反応することができ、又はこの化合物の1つの分子が、分子間様式で、この化合物の別の分子と反応することもできる。
【0121】
本発明の目的のために、「分子内(intramolecular)」という用語は、同じ分子の相異なる部分間の化学反応を意味する。同様に、「分子間(intermolecular)」という用語は、2種又はそれを超える相異なる分子間の化学反応を意味する。
【0122】
したがって、一実施態様では、第1の基体と第2の基体とは同じ化合物であり、かつ縮合反応が分子内様式で起きることで、1つ又は複数の縮合生成物を形成し、第1の基体及び第2の基体は下記式(3)による化合物である:
【化4】
式中、Yは2~7員、好ましくは3~5員を有する鎖(テザー)を表し、これにより、基体が工程(e)において反応させられると、得られた1つ又は複数の縮合生成物中に4~9員環、好ましくは5~7員環が形成され、それぞれの環員は、O、NH、NRY1、CRY2Y3、S、C(ORY4)(ORY5)及びこれに類するものからなる群から独立して選択することができ、RY1~RY5は、好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述されたオルガニル基であり、かつZは上記に定義された通りである。好ましくは、Yは、エチレン基(CH-CH)、プロピレン基(CH-CH-CH)、エチレンオキシ基(CHCH-O)、エチレンアミノ基(CHCH-NRY1)、ブチレン基、プロピレンオキシ基、プロピレンアミノ基、ペンチレン基、ブチレンオキシ基、CH-C(CH-CH基、及びCH-C(OC(=O)RY6-CH基からなる群から選択され、RY6は、好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述されたオルガニル基であり、より好ましくはメチル又はエチルである。
【0123】
好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とは同じ化合物であり、かつ縮合反応が分子内様式で起きることで、1つ又は複数の縮合生成物を形成し、第1の基体及び第2の基体は下記式(4)による化合物である:
【化5】
式中、R12及びRは上記に定義された通りであり、かつYは上記に定義された鎖(テザー)を表す。好ましくは、R12=H、R=H又はメチルであり、かつYは、エチレン基(CH-CH)、プロピレン基(CH-CH-CH)、エチレンオキシ基(CHCH-O)、エチレンアミノ基(CHCH-NRY1)、ブチレン基、プロピレンオキシ基、プロピレンアミノ基、ペンチレン基、ブチレンオキシ基、CH-C(CH-CH基、及びCH-C(OC(=O)RY6-CH基からなる群から選択され、RY6は上記に定義された通りである。特に好ましい実施態様では、式(4)に基づく化合物は、ヘキサン-2,5-ジオン又はヘプタン-2,6-ジオンである。
【0124】
別の実施態様では、第1の基体と第2の基体とは同じ化合物であり、かつ縮合反応が分子間様式で起こり、第1の基体及び第2の基体が式(1)に基づく化合物であり、R=-(CH)-R12である。第1の基体が式(1)に基づく化合物であって、X=Hであり、かつRが直鎖又は分枝の非環式アルキル基を示すことが特に好ましい。したがって、第1の基体は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ペンタナール、3-メチルブタナール、n-ヘキサナール、3-メチルペンタナール、4-メチルペンタナール、n-ヘプタナール、3-メチルヘキサナール、4-メチルヘキサナール、5-メチルヘキサナール、n-オクタナール、2-エチルヘキサナール、n-ノナナール、n-デカナール、及びn-ドデカナールからなる群から選択されることが好ましい。
【0125】
第1の基体は第2の基体にしたがって選択され、それによって、両基体が工程(e)において互いに反応させられると、所望の1つ又は複数の縮合生成物が形成されるようになっているということが理解される。
【0126】
工程(b)-第2の基体
方法工程(b)によれば、活性化水素を含む第2の基体を提供する。第2の基体は有機化合物であり、有機化合物は、電子求引基を有する炭素原子に結合した活性化水素を含む。
【0127】
第2の基体は触媒との相互作用によって活性化することができる。例えば、第2の基体は、触媒の塩基性部位と相互作用することができ、かつ活性化水素が脱プロトン化によって除去されて、第2の基体のアニオンを生じることができる。しかしながら、ある特定の第2の基体は、触媒の塩基性部位及び/又は酸性部位との相互作用によって、互変異性化することもでき、例えばエノールを生じることができる。
【0128】
本発明の一実施態様では、第2の基体の活性化水素のpKは、DMSO中で測定して28未満、好ましくは25未満、より好ましくは24未満、最も好ましくは23未満である。pKは、第2の基体の酸強度の尺度を表し、第2の基体のプロトン及び相応のアニオンを生じる第2の基体からの活性化水素の(仮想の)引き抜きに対応する。pK値は、活性化水素を有する炭素原子の置換基に主として依存しており、標準的な教科書及び/又は表から収集することができる。
【0129】
本発明の好ましい実施態様では、第2の基体は2つのジェミナル(germinal)活性化水素、すなわち、同じ炭素原子に結合した2つの活性化水素を含む。
【0130】
本発明の好ましい実施態様では、第2の基体は式(2)による化合物である:
【化6】
式中、
は電子求引基であり、
かつ
は、下記からなる群から選択される:
(i)水素原子、
(ii)オルガニル基R21、及び
(iii)電子求引基Z
但し、Zが、アシル基、ホルミル基、アセチル基又はニトロ基以外の電子求引基であるとき、Rは電子求引基Zであることを条件とする。
【0131】
好ましくは、Z及びZは、互いに独立して、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択され、かつより好ましくは、互いに独立して、アシル基、ホルミル基、エステル基、及びニトロ基からなる群から選択される。
【0132】
本発明の意味におけるホルミル基は、官能基-C(=O)-Hである。
【0133】
本発明の意味におけるニトロ基は、官能基-NOである。
【0134】
本発明の意味におけるニトリル基は、官能基-CNである。
【0135】
残りの基は、工程(a)の項で既に既に説明した。
【0136】
オルガニル基R21は、好ましくは、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式の基であって、任意に、ハライド基、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキル基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、無水物基、エステル基、アルデヒド基、アミノ基、ウレイド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基又はジスルフィド基、イソシアネート基又はマスクしたイソシアネート基、チオール基、ニトリル基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、及びベンゾイル基からなる群から選択される1つ又は複数の基によってさらに置換されていてもよい基である。好ましくは、オルガニル基R21は、オルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述した通りである。
【0137】
本発明の好ましい実施態様では、第2の基体は、式(2)に基づく化合物であり、ここで、Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される電子求引基であり、かつRは、水素原子又はオルガニル基R21である。R=Hである場合には、第2の基体は、式:Z-CHによる化合物である。好ましくは、R=R21である。
【0138】
がアシル基であり、かつR=R21である場合、第2の基体は、式:RZ1-C(=O)-CH-R21を有するケトンであり、R21は、好ましくはオルガニル基R11の文脈において本明細書中に上述したオルガニル基である。あるいは、RZ1及びR21が互いに結合して環式系を形成してもよい。好ましくは、RZ1及びR21が互いに結合する場合には、RZ1-R21の部分は、鎖(テザー)Yであり、Yは上述したとおりである。第2の基体として使用するのに適した例示的なケトンは、アセトン、ブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロプロピルメチルケトン、アセトフェノン、ベンジリデンアセトン、及びブタンジオンを含む。
【0139】
あるいは、Zがホルミル基、すなわち-C(=O)-H部分である場合、第2の基体は、式:H-C(=O)-CH-Rを有するアルデヒドである。例示的なアルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ノナナール及びフェニルアセトアルデヒドを含む。
【0140】
がアセチル基である場合、第2の基体は、式:CH-C(=O)-CH-Rを有するメチルケトンである。
【0141】
がニトロ基である場合、第2の基体は、式:ON-CH-Rに基づく化合物であり、この化合物は、好ましくは、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロペンタン、ニトロヘキサン、ニトロヘプタン、及びニトロオクタンからなる群から選択され、かつ最も好ましくは、ニトロメタン、ニトロブタン、ニトロペンタン、及びニトロヘキサンからなる群から選択される。
【0142】
がニトリル基である場合、第2の基体は、式:NC-CH-Zに基づく化合物、例えば、マロノニトリル及びシアノアセトアルデヒドである。
【0143】
がエステル基である場合、第2の基体は、式:RA4-O-C(=O)-CH-Zに基づく化合物である。
【0144】
がカルボキシル基である場合、第2の基体は、式:HO-C(=O)-CH-Zに基づくカルボン酸である。
【0145】
本発明の好ましい実施態様では、第2の基体は、式(2)に基づく化合物であり、Zは上記に定義された電子求引基であり、かつRは、好ましくは、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びエステル基からなる群から選択される電子求引基Zである。より好ましくは、Z及びZは互いに独立して、アシル基、ホルミル基、エステル基、及びニトリル基からなる群から選択される。さらにより好ましくは、Z及びZは同じ基であり、特に好ましくは、アシル基、ホルミル基、エステル基、及びニトリル基からなる群から選択される。この実施態様の例示的化合物は、マロン酸、そのモノ-及びジエステル、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、アセチルアセトン、及びマロノニトリルを含む。このような化合物は、以下で詳細に説明するように、クネーフェナーゲル縮合反応に採用することができる。
【0146】
本発明の別の好ましい実施態様では、第2の基体は式(2)に基づく化合物であって、Zがニトロ基であり、かつRが水素原子又はオルガニル基R21である。その実施態様では、第2の基体は、以下で詳細に説明するように、ヘンリー反応に採用することができる。
【0147】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とは同じ化合物である。すなわち、この化合物はC=O二重結合及び活性化水素の両方を含む。したがって、この化合物の1つの分子は、分子内様式で、それ自体で反応することができ、又はこの化合物の1つの分子は、分子間様式で、この化合物の別の分子と反応することもできる。この実施態様は、上記の工程(a)の項で説明した。
【0148】
第2の基体は第1の基体と一緒に選択され、それによって、両基体が工程(e)において互いに反応させられると、所望の1つ又は複数の縮合生成物が形成するようになっていることが理解される。
【0149】
工程(c)-表面反応炭酸カルシウム
方法工程(c)によれば、表面反応炭酸カルシウムが提供される。表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)天然又は沈降炭酸カルシウムの懸濁液を提供すること、
(b)20℃において0又はこれ未満のpK値を有するか、又は20℃において0~2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を工程(a)の懸濁液に添加すること、及び
(c)工程(b)の前、間、又は後に、工程(a)の懸濁液を二酸化炭素で処理すること。
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(A)天然又は沈降炭酸カルシウムを提供すること、
(B)少なくとも1つの水溶性酸を提供すること、
(C)COガスを提供すること、
(D)工程(A)の上記天然又は沈降炭酸カルシウムを、工程(B)の少なくとも1つの上記酸及び工程(C)の上記COと接触させること、
ここで、この方法は以下を特徴とする:
(i)工程(B)の少なくとも1つの上記酸が、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、20℃において2.5を超え、かつ7又はこれ未満のpKを有し、かつ対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を生成することができるこの第一の利用可能な水素の損失時に形成されること、及び
(ii)少なくとも1つの上記酸と天然又は沈降炭酸カルシウムとの接触後に、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、水素含有塩が20℃において7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる場合には、少なくとも1つの水溶性塩を追加的に提供すること。
【0151】
「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、好ましくは、大理石、チョーク、石灰石、及びそれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、さらに、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などの天然に存在する成分を含んでもよい。
【0152】
一般的に、天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式粉砕工程であってよく、例えば、粉砕が二次物体との衝撃の結果として主に得られるような条件下で、任意の従来からの粉砕装置で行うことができ、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃式ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に既知の他のこのような装置のうちの1つ又は複数において行うことができる。炭酸カルシウム含有鉱物物質が湿式粉砕炭酸カルシウム含有鉱物物質を含む場合、自生粉砕が起こるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に公知の他のこのような方法によって、粉砕工程を行うことができる。このように得られた湿式加工した粉砕炭酸カルシウム含有鉱物物質を、洗浄し、かつ周知の方法によって、例えば、乾燥前に、凝集、ろ過、又は強制蒸発によって脱水することができる。その後の乾燥工程(必要な場合)を、噴霧乾燥などの一段階工程、又は少なくとも二段階工程で行うことができる。このような鉱物物質は、選鉱工程(例えば、浮遊選鉱、ブリーチング、又は磁気選鉱工程など)を経て、不純物を除去することも一般的である。
【0153】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境での二酸化炭素と水酸化カルシウムとの反応に続く沈殿によって、又はカルシウムと炭酸イオンとの、例えば、CaClとNaCOとの、溶液からの沈殿によって一般的に得られる合成材料である。PCC製造のさらなる可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副産物となるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの一次結晶形、すなわち、カルサイト、アラゴナイト、及びバテライトの結晶形で存在し、かつこれらの結晶形の各々について多くの異なる多形(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S-PCC)、菱面体晶(R-PCC)、六方晶系角柱、卓面体、コロイド状(C-PCC)、立方晶、及び角柱体(P-PCC)などの典型的晶癖を伴う三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、双晶の六方晶系角柱状の典型的晶癖を伴う斜方晶系構造のみならず、薄く細長い角柱、曲面羽根付き、急勾配錐体、チゼル状結晶、分岐樹木形態、及びサンゴ又は蠕虫様形態の様々な取り合わせを伴う構造を有する。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリーを機械的に脱水しかつ乾燥することができる。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライト若しくはカルサイトの鉱物学的結晶形を含む沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物である。
【0155】
沈降炭酸カルシウムは、上記のような天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって、二酸化炭素及び少なくとも1つのHイオン供与体での処理の前に粉砕されてもよい。
【0156】
本発明の一実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、とりわけ0.7μmの重量メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、とりわけ4μmのトップカット粒径d98を有する粒子の形態である。
【0157】
天然及び/又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥状態で使用するか、又は水に懸濁して使用することができる。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量に基づいて、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然又は沈降炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0158】
表面反応炭酸カルシウムの調製のために使用される1つ又は複数のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する、任意の強酸、中強酸若しくは弱酸、又はそれらの混合物であってよい。本発明によれば、この少なくとも1つのHイオン供与体はまた、調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であってもよい。
【0159】
一実施形態によれば、この少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0又はこれ未満のpKを有する強酸である。
【0160】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃において0~2.5のpK値を有する中強酸である。20℃におけるpKが0又はこれ未満である場合、この酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、又はこれらの混合物から選択される。20℃におけるpKが0~2.5である場合、Hイオン供与体は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、又はこれらの混合物から選択される。また、少なくとも1つのHイオン供与体は、酸性塩、例えば、Li、Na若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHSO 若しくはHPO 、又はLi、Na、K、Mg2+若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-であり得る。少なくとも1つのHイオン供与体は、1つ又は複数の酸、及び1つ又は複数の酸性塩の混合物であってもよい。
【0161】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で測定したときに、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、2.5を超えかつ7又はこれ未満のpK値を有し、かつ水溶性のカルシウム塩を生成することができる対応するアニオンを有する弱酸である。続いて、20℃で測定したときに、その第一の利用可能な水素のイオン化と関連して、水素含有塩が7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を生成することができる場合に、少なくとも1つの水溶性塩を追加的に提供する。好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃において2.5超~5のpK値を有し、より好ましくは、この弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。上記水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、上記のカチオンは、ナトリウム又はカリウムである。上記の水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、上記のアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、上記のアニオンは、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、これらの混合物、及びこれらの水和物からなる群から選択される。滴下又は一段階で水溶性塩の添加を行うことができる。滴下添加の場合、この添加を好ましくは10分の時間内に行う。上記の塩を一段階で添加することがより好ましい。
【0162】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、酸性塩、ギ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na又はKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+又はCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-;及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1つのHイオン供与体は、リン酸である。
【0163】
1つ又は複数のHイオン供与体を、高濃度溶液又はより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然又は沈降炭酸カルシウムに対するHイオン供与体のモル比は、0.01~4であり、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
【0164】
代わりとして、天然又は沈降炭酸カルシウムを懸濁させる前に、Hイオン供与体を水に添加することも可能である。
【0165】
次の段階では、天然又は沈降炭酸カルシウムを二酸化炭素で処理する。天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体での処理のために硫酸又は塩酸などの強酸を使用する場合、二酸化炭素が自動的に生成する。あるいは又はこれに加えて、二酸化炭素を外部供給源から供給することができる。
【0166】
イオン供与体での処理及び二酸化炭素による処理を、強酸又は中強酸を使用する場合には同時に行うことができる。例えば、20℃において0~2.5の範囲のpKを有する中強酸を用いて、最初にHイオン供与体での処理を行うことも可能であり、ここで、二酸化炭素がその場で形成され、したがって、二酸化炭素での処理が、Hイオン供与体での処理と同時に自動的に行われ、次いで、外部供給源から供給された二酸化炭素で追加の処理が行われる。
【0167】
好ましい実施形態では、Hイオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程を、少なくとも1回、より好ましくは複数回反復する。一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体を、少なくとも約5分、好ましくは少なくとも約10分、典型的には約10分~約20分、より好ましくは約30分、さらにより好ましくは約45分、時には約1時間又はそれを超える時間にわたって添加する。
【0168】
イオン供与体での処理及び二酸化炭素による処理の後、20℃において測定された水性懸濁液のpHは、自然に6.0を超える値に、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、これによって、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面反応天然炭酸カルシウム又は表面反応沈降炭酸カルシウムを製造する。
【0169】
表面反応天然炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、国際公開第00/39222 A1号、国際公開第2004/083316 A1号、国際公開第2005/121257 A2号、国際公開第2009/074492 A1号、欧州特許出願公開第2 264 108 A1号公報、欧州特許出願公開第2 264 109 A1号公報、及び米国特許出願公開第2004/0020410 A1号公報に開示されており、これらの参考文献の内容は本願に援用される。
【0170】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムを得る。国際公開第2009/074492 A1号から詳細に理解することができるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、Hイオンと、及び水性媒体中で可溶化されかつ水不溶性のカルシウム塩を生成することができるアニオンと、水性媒体中で接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここで、この表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面に形成された不溶性であり少なくとも部分的に結晶性の上記アニオンのカルシウム塩を含む。
【0171】
上記の可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解によって自然に生成する可溶化されたカルシウムイオンと比較して、過剰な可溶化されたカルシウムイオンに相当し、ここで、このHイオンは、アニオンに対する対イオンの形態でもっぱら提供され、すなわち、酸又は非カルシウム酸塩の形態のアニオンの添加を介して、及び任意のさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン生成源の非存在下で、もっぱら提供される。
【0172】
上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性若しくは酸性のカルシウム塩の添加によって、又は可溶性の中性若しくは酸性のカルシウム塩をその場で生成する酸又は中性若しくは酸性の非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0173】
上記Hイオンを、上記アニオンの酸若しくは酸性塩の添加、又は上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンのすべて若しくは一部を提供するように同時に働く酸若しくは酸性塩の添加によって提供してもよい。
【0174】
表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの製造のさらなる好ましい実施形態では、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、天然又は沈降炭酸カルシウムを、1つ又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属のケイ酸塩から選択される。これらの成分を、1つ又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素の添加前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0175】
あるいは、天然又は沈降炭酸カルシウムと1つ又は複数のHイオン供与体及び二酸化炭素との反応を既に開始させながら、ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩及び/又は酸化マグネシウムの1つ又は複数の成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩の1つ又は複数の成分の少なくとも1つの存在下における表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、国際公開第2004/083316 A1号に開示されており、この参考文献の内容は本願に援用される。
【0176】
表面反応炭酸カルシウムを、懸濁液中に保持し、任意に分散剤によってさらに安定化することができる。当業者に既知の通常の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースからなる。
【0177】
あるいは、上記水性懸濁液を乾燥させ、それによって、固体の(すなわち、乾燥しているか、又は流体形態を成していない程度のわずかな水しか含まない)表面反応天然又は表面反応沈降炭酸カルシウムを、顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
【0178】
本発明の特に好ましい実施態様では、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、この二酸化炭素は上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ1つ又は複数のHイオン供与体はリン酸である。この実施態様では、表面反応炭酸カルシウムはリン酸基を含み、かつリン原子に対するカルシウム原子の原子比は、XPSによって測定して、最大3.0、より好ましくは最大2.5、最も好ましくは最大2.3である。
【0179】
表面反応炭酸カルシウムは焼成した材料ではないことを理解すべきである。
【0180】
好ましい実施態様では、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは25m/g~160m/g、さらにより好ましくは30m/g~140m/g、最も好ましくは50m/g~140m/gの比表面積を有する。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~120m/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量によって割り算した値として定義される。本明細書中に使用されているように、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:2010)を用いた吸着によって測定され、m/gで規定される。
【0181】
本発明の好ましい実施態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~165m/g、例えば約160m/gの比表面積を有する。
【0182】
表面反応炭酸カルシウム粒子が、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、さらにより好ましくは2~12μm、そして最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有することがさらに好ましい。
【0183】
さらに、表面反応炭酸カルシウム粒子が、1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、さらにより好ましくは8~25μm、そして最も好ましくは10~20μmのトップカットd98(vol)値を有することが好ましい場合がある。
【0184】
したがって、表面反応炭酸カルシウム粒子は実に小さく、少なくとも0.1mmの体積メジアン粒径d50(vol)を通常有する顆粒とは異なる。
【0185】
値dは、粒子のx%がd未満の直径を有することに関する直径を表す。このことは、d98値が、すべての粒子の98%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。d98値は「トップカット」と呼ばれる。d値は体積パーセント又は重量パーセントで与えられてよい。したがって、d50(wt)値は重量メジアン粒径であり、すなわちすべての粒子の50重量%がこの粒径よりも小さく、かつd50(vol)値は体積メジアン粒径であり、すなわちすべての粒子の50体積%がこの粒径よりも小さい。
【0186】
体積メジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 3000 Laser Diffraction Systemを用いて評価した。Malvern Mastersizer 3000 Laser Diffraction Systemを用いて測定したd50又はd98値は、粒子の50体積%又は98体積%が、それぞれ、この値より小さい直径を有するような直径の値を示す。粒子屈折率1.57、吸収係数0.005として、測定により得られた生データは、Mie理論を用いて解析する。
【0187】
重量メジアン粒径は、重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって決定される。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(登録商標)5120を用いて行う。この方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。0.1重量%のNaの水溶液中で測定を行う。高速撹拌機を用いて試料を分散し、かつ超音波処理した。
【0188】
この方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。
【0189】
比細孔容積は、0.004μm(~nm)のラプラス喉部直径と等価の、水銀の最大印加圧力414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを使用し、水銀圧入ポロシメトリー測定法を用いて測定する。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。試料材料を、分析のために、5cmのチャンバの粉末貫入計中に密封する。データは、ソフトウェアPore-Compを使用して、水銀の圧縮、貫入計の膨張、及び試料材料の圧縮について補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,pp.1753-1764)。
【0190】
積算圧入データ内に見られる全細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔をも有している場合には、この領域は二峰性であり、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細い細孔内に水銀が圧入した比細孔容積をもってして、粒子内比細孔容積が定義される。これら3つの領域の総和は、粉末の合計の総細孔容積を与えるが、もともとの試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
【0191】
積算圧入曲線の一次導関数を取り上げることにより、必然的に細孔遮へいを含めた等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔径範囲がわかれば、合計細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔の所望の細孔容積だけを得ることが可能である。当然のことながら同じ差し引きの原理は、興味ある任意のその他の細孔径領域を分離する場合にも当てはまる。
【0192】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算して、0.1~2.3cm/g、より好ましくは0.2~2.0cm/g、とりわけ好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/gの粒子内圧入比細孔容積を有する。
【0193】
表面反応炭酸カルシウムの粒子内細孔径は、水銀ポロシメトリー測定により決定して、好ましくは0.004~1.6μm、より好ましくは0.005~1.3μm、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μmの範囲である。
【0194】
本発明の好ましい実施態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、さらにより好ましくは2~12μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有し、かつ窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~165m/g、例えば約160m/gの比表面積を有する。
【0195】
本発明の好ましい実施態様によれば、工程(c)において、表面反応炭酸カルシウムを提供し、ここで、この表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、この表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、75m/g~165m/gの比表面積を有する。
【0196】
本発明の好ましい実施態様によれば、工程(c)において、表面反応炭酸カルシウムを提供し、ここで、この表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、この二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、この表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、75m/g~165m/gの比表面積を有し、かつ0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、さらにより好ましくは2~12μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有する。
【0197】
工程(d)-活性化
方法工程(d)によれば、表面反応炭酸カルシウムを100~500℃の範囲の温度で活性化して乾燥表面反応炭酸カルシウムを得る。活性化工程(d)は、不純物、例えば、水、及び揮発性有機化合物、例えばアルコールを除去するのに役立つ。これらの不純物は、製造プロセス及び/又は貯蔵に起因して表面反応炭酸カルシウムの表面に吸着することがある。このような不純物は、表面反応炭酸カルシウムの酸性部位及び/又は塩基性部位のいくつか又はすべてに吸着することがあり、このことはその触媒活性を低減するおそれがある。
【0198】
しかしながら、活性化工程は表面反応炭酸カルシウムの化学組成に影響を及ぼさないこと、すなわち、表面反応炭酸カルシウムの分解、例えば二酸化炭素の放出による分解が生じないことを理解すべきである。したがって、表面反応炭酸カルシウムの物理特性と、乾燥表面反応炭酸カルシウムの物理特性とは本質的に同じであり、すなわち、乾燥表面反応炭酸カルシウムの体積メジアン粒径(d50)及び/又はトップカット(d98)値及び/又は比表面積(BET)、好ましくは比表面積(BET)の、表面反応炭酸カルシウムの対応する特性に対する差は、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0199】
したがって、好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは25m/g~160m/g、さらにより好ましくは30m/g~140m/g、最も好ましくは50m/g~140m/gの比表面積を有する。例えば、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~120m/gの比表面積を有する。あるいは乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは25m/g~175m/g、さらにより好ましくは30m/g~170m/g、そして最も好ましくは50m/g~165m/gの比表面積を有する。例えば、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~165m/g、例えば約160m/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量によって割り算した値として定義される。本明細書中で使用されているように、比表面積はBET等温線(ISO 9277:2010)を用いた吸着によって測定され、m/gで規定される。
【0200】
本発明の好ましい実施態様によれば、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~165m/g、例えば約160m/gの比表面積を有する。
【0201】
乾燥表面反応炭酸カルシウム粒子が、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、さらにより好ましくは2~12μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有することがさらに好ましい。
【0202】
乾燥表面反応炭酸カルシウム粒子が、1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、さらにより好ましくは8~25μm、最も好ましくは10~20μmのトップカットd98(vol)値を有することが好ましい場合がある。
【0203】
本発明の好ましい実施態様によれば、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、さらにより好ましくは2~12μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有し、かつ窒素及びBET法を用いて測定して、75m/g~165m/g、例えば約160m/gの比表面積を有する。
【0204】
したがって、工程(d)の乾燥表面反応炭酸カルシウムは、下記を有する:
(i)表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(ii)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(iii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0205】
本発明の好ましい実施態様では、活性化工程(d)は、150℃~400℃、より好ましくは150℃~300℃の温度で実施される。これに加えて又はこれの代わりに、活性化工程(d)は、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、そしてより好ましくは少なくとも2時間、例えば少なくとも4時間の持続時間で、任意に101.3kPa未満の圧力で実施される。
【0206】
活性化工程(d)は、当業者に知られた任意の方法によって、任意の適切な加熱設備を使用して行うことができ、こうした設備は、例えば、蒸発器;フラッシュ乾燥機;オーブン、好ましくは、重力対流式オーブン、機械的対流式オーブン、真空オーブン、及びマッフルオーブンから選択されたオーブン;任意に加熱ブロックを備えたホットプレート;噴霧乾燥機(例えばNiro及び/又はNaraによって市販されている噴霧乾燥機)などを含むことができる。これに加えて又はこれの代わりに、活性化工程(d)は、熱風乾燥、IR放射乾燥、又はUV放射乾燥によって行うことができる。好ましくは、活性化工程(d)は、オーブン、例えばマッフルオーブン内で、又は任意に加熱ブロックを備えたホットプレート上で実施される。
【0207】
本発明の好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは75m/g~165m/gの比表面積を有し、かつ下記を有する:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0208】
本発明の特に好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、20m/g~180m/g、好ましくは25m/g~160m/g、より好ましくは75m/g~165m/gの比表面積を有し、かつ下記を有する:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0209】
本発明のより好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは75m/g~165m/gの比表面積を有し、かつ150℃~400℃、より好ましくは150℃~300℃の温度で活性化することによって、工程(d)で得られる。
【0210】
本発明の別の好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10m/g~200m/g、好ましくは20m/g~180m/g、より好ましくは75m/g~165m/gの比表面積を有し、かつ
下記を有し:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数;かつ
150℃~400℃、より好ましくは150℃~300℃の温度で活性化することによって、工程(d)で得られる。
【0211】
工程(e)-第1の基体と第2の基体との反応
本発明の方法工程(e)によれば、工程(d)の乾燥表面反応炭酸カルシウムの存在下で、工程(a)の第1の基体と工程(b)の第2の基体とを反応させ、1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得る。
【0212】
工程(e)の間に、縮合反応において第1基体と第2基体とが互いに反応して1つ又は複数の縮合生成物及び1つ又は複数の縮合副生成物を形成する。縮合生成物の数及び相対量は、第1の基体及び/又は第2の基体内のいくつかの反応部位の存在に起因して形成され得る異なる構造異性体(例えば位置異性体)、ジアステレオマー(例えば(E)-及び(Z)-アルケン)、及びエナンチオマー(例えば(R)-及び(S)-異性体)、第1の基体及び/又は第2の基体の1つ又は2つの分子の自己反応に由来する縮合生成物、並びに1つ又は複数の縮合生成物がC=O基及び/又は活性化水素を有する化合物を示す場合に生じ得る重縮合反応に依存する。
【0213】
本発明の目的のために、「重縮合反応」は逐次縮合反応であり、第1基体及び/又は第2基体の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも10の個々の分子が互いに結合する。しかしながら、重縮合が起こらないか、又は小さな規模でしか起こらないことが好ましく、例えば、1つ又は複数の縮合生成物の5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満が重縮合生成物であるようになっている。当業者であれば、大量の重縮合生成物の形成をどのように回避するかを知っており、例えば、第1の基体及び第2の基体の適切な相対量を選択することによって、かつ/又は、第1の基体の低い転化率、例えば10mol%の転化率、好ましくは30mol%の転化率、又は50mol%の転化率で反応を停止することによって、回避することを知っている。
【0214】
第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、X=H又はX=Rである場合、少なくとも1つの縮合副生成物は水である。第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、Xが脱離基LGである場合、1つ又は複数の縮合副生成物は、この脱離基LGと水素原子とを含み、すなわち、脱離基LGがハライド基、アシルオキシ基、スルフェート基、及びスルファイト基である場合、この少なくとも1つの縮合副生成物はそれぞれ、ハロゲン化水素、カルボン酸、ハイドロスルフェート、又はハイドロスルファイトである。したがって、本発明の好ましい実施態様では、縮合副生成物は水である。
【0215】
工程(d)で得られる1つ又は複数の縮合生成物、及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物の組成は、工程(a)で提供された第1の基体と工程(b)で提供された第2の基体との選択に依存するということが理解される。
【0216】
本発明の好ましい実施態様では、式(1)に基づく化合物である第1の基体を、式(2)に基づく化合物である第2の基体と反応させて、1つ又は複数の縮合生成物と、1つ又は複数の縮合副生成物とを含む反応混合物を得る。
【0217】
本発明の好ましい実施態様では、式(1)に基づく化合物である第1の基体を、式(2)に基づく化合物である第2の基体と反応させ、ここで、X=H又はRである。この実施態様では、反応は概ね下記スキーム(A)に従って進行する:
【化7】
【0218】
スキーム(A)において、波線は、得られた1つ又は複数の縮合生成物が式(5)に基づく化合物であり、かつその(E)-異性体、その(Z)-異性体、又はこれらの混合物として存在し得ることを示している。1つ又は複数の縮合副生成物は水である。
【0219】
本発明の一実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、かつ第2の基体は式(2)に基づく化合物であり、かつ
ここで、
が水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが水素原子又はオルガニル基Rであり、
が水素原子又はオルガニル基R21であり、かつ
が、アシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される電子求引基である。
【0220】
この実施態様では、反応工程(e)で得られた1つ又は複数の縮合生成物は、式(5)に基づく化合物であり、R=H又はR11であり、X=H又はRであり、R=H又はR21であり、かつZはアシル基、ホルミル基、アセチル基、又はニトロ基である。
【0221】
したがって、第1の基体と第2の基体とは、アルドール縮合反応において互いに反応することができる。本発明の目的のために、アルドール縮合反応は、スキーム(A)に基づく反応として定義され、ここで、R=H又はR11であり、X=H又はR、好ましくはHであり、Zはアシル基、ホルミル基、及びアセチル基からなる群から選択され、かつR=H又はR21である。
【0222】
1つの具体的な実施態様では、第1の基体と第2の基体とは、クライゼン-シュミット反応において互いに反応することができる。本発明の目的のために、クライゼン-シュミット反応は、スキーム(A)に基づく反応として定義され、ここで、R=R11、好ましくはアリール基であり、X=Hであり、R=H又はR21であり、かつZはアシル基、ホルミル基、及びアセチル基からなる群から選択され、ここで、式(1)に基づく化合物は、カルボニル基のα位に水素原子を含まない。
【0223】
あるいは、第1の基体と第2の基体とは、ヘンリー反応において互いに反応することができる。本発明の目的のために、ヘンリー反応は、スキーム(A)に基づく反応として定義され、ここで、R=H又はR11であり、X=H又はR、好ましくはHであり、Zはニトロ基であり、かつR=H又はR21、好ましくはHである。
【0224】
本発明の特に好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、かつ第2の基体は式(2)に基づく化合物であり、かつ
ここで、
が水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが水素原子であり、
が水素原子又はオルガニル基R21であり、かつ
が、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、及びニトリル基からなる群から選択される。
【0225】
この実施態様では、第1の基体はアルデヒドであり、かつ反応工程(e)で得られた1つ又は複数の縮合生成物は、式(5)に基づく化合物であり、R=H又はR11であり、X=Hであり、R=H又はR21であり、かつZはアシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、又はニトリル基である。
【0226】
したがって、本発明の特に好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とが、アルドール縮合反応において互いに反応することができ、ここで、第1の基体はアルデヒドであり、かつ第2の基体はアルデヒド又はケトンであり、より正確に述べるならば、R=H又はR11であり、X=Hであり、Zはアシル基、ホルミル基、及びアセチル基からなる群から選択され、かつR=H又はR21である。
【0227】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とが、ヘンリー反応において互いに反応することができ、ここで、第1の基体はアルデヒドであり、かつ第2の基体はニトロアルカン誘導体であり、より正確に述べるならば、R=H又はR11であり、X=Hであり、Zはニトロ基であり、かつR=H又はR21、好ましくはHである。
【0228】
本発明の別の実施態様では、第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、第2の基体が式(2)に基づく化合物であり、かつ
ここで、
が水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが水素原子又はオルガニル基Rであり、
が電子求引基Zであり、かつ
及びZが互いに独立して、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びアシルオキシ基からなる群から選択され、好ましくはZ及びZは同じ基である。
【0229】
この実施態様では、反応工程(e)で得られた1つ又は複数の縮合生成物は、式(5)に基づく化合物であり、ここで、R=H又はR11であり、X=H又はRであり、R=Zであり、かつZ及びZは上記に定義した通りである。
【0230】
したがって、第1の基体と第2の基体とは、クネーフェナーゲル反応において互いに反応することができる。本発明の目的のために、クネーフェナーゲル反応は、スキーム(A)に基づく反応として定義され、ここで、R=H又はR11であり、X=H又はR、好ましくはHであり、Zはアシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びアシルオキシ基からなる群から選択され、かつR=Zであり、ここで、Zはアシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びアシルオキシ基からなる群から選択される。
【0231】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、第2の基体は式(2)に基づく化合物であり、かつ
ここで、
が水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xが水素原子であり、
が電子求引基Zであり、かつ
及びZが互いに独立して、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びアシルオキシ基からなる群から選択され、好ましくはZ及びZは同じ基である。
【0232】
この実施態様では、反応工程(e)で得られた1つ又は複数の縮合生成物は、式(5)に基づく化合物であり、ここで、R=H又はR11であり、X=Hであり、R=Zであり、かつZ及びZは上記に定義した通りである。
【0233】
本発明の特に好ましい実施態様では、第1の基体はホルムアルデヒド(すなわち、式(1)に基づく化合物、R=X=H)であり、かつ第2の基体は式(2)に基づく化合物であり、R=Zであり、そしてZ及びZは互いに独立して、アシル基、ホルミル基、ニトロ基、ニトリル基、及びアシルオキシ基からなる群から選択され、好ましくはZ及びZは同じ基である。
【0234】
本発明の別の実施態様では、式(1)に基づく化合物である第1の基体を、式(2)に基づく化合物である第2の基体と反応させ、ここで、X=LGである。この実施態様では、反応は概ね下記スキーム(B)に従って進行する:
【化8】
【0235】
スキーム(B)において、波線は、得られた1つ又は複数の縮合生成物が式(6)に基づく化合物であり、かつその(R)-異性体、その(S)-異性体、又はこれらの混合物、好ましくはラセミ酸塩とも呼ばれる(R)-異性体と(S)-異性体との1:1混合物として存在し得ることを示している。1つ又は複数の縮合副生成物は、脱離基LGと水素原子とを含む(「HLG」)。
【0236】
本発明の好ましい実施態様では、第1の基体は式(1)に基づく化合物であり、かつ第2の基体は式(2)に基づく化合物であり、かつR=R11であり、X=LGであり、Zは、アシル基、ホルミル基、アセチル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィネート基、スルホニル基、スルフィニル基、及びイソシアネート基からなる群から選択され、かつR=Zである。
【0237】
本発明の別の好ましい実施態様では、第1の基体と第2の基体とが同じ化合物であり、すなわち単一の化合物を工程(e)で反応させて、1つ又は複数の縮合生成物、及び1つ又は複数の縮合副生成物を含む反応混合物を得る。反応は、分子内様式及び/又は分子間様式で行うことができる。
【0238】
本発明の一実施態様では、式(3)に基づく化合物である第1の基体が分子内様式で反応し、ここで、X=H又はRである。この実施態様では、反応は概ね下記スキーム(C)に従って進行する:
【化9】
【0239】
本発明の一実施態様では、第1の基体は式(3)に基づく化合物であり、ここで、Yは上記に定義したとおりであり、X=H又はR、好ましくはHであり、かつZはアシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される。
【0240】
本発明の別の実施態様では、式(4)に基づく化合物である第1の基体が分子内様式で反応する。この実施態様では、反応は概ね下記スキーム(D)に従って進行する:
【化10】
【0241】
したがって、第1の基体と第2の基体とは、分子内アルドール縮合反応において互いに反応することができる。この実施態様では、R12、R、及びYは上記に定義したとおりであり、かつ好ましくは、Yは、プロピレン基(CH-CH-CH)、エチレンオキシ基(CHCH-O)、ブチレン基、プロピレンオキシ基、ペンチレン基、ブチレンオキシ基、CH-C(CH-CH基、及びCH-C(OC(=O)RY6-CH基からなる群から選択され、RY6はメチル又はエチルである。
【0242】
本発明の一実施態様では、R=-(CH)-R12の式(1)に基づく化合物である第1の基体は、分子間様式で反応し、ここで、X=H又はRである。この実施態様では、反応は概ね下記スキーム(E)に従って進行する:
【化11】
【0243】
本発明の特に好ましい実施態様では、R=-(CH)-R12の式(1)に基づく化合物である第1の基体は、分子間様式で反応し、X=Hである。したがって、本発明の例示的な実施態様では、第1の基体がアセトアルデヒドであり、かつ1つ又は複数の縮合生成物がクロトンアルデヒドであるか、あるいは第1の基体がブチルアルデヒドであり、かつ1つ又は複数の縮合生成物が2-エチルヘキセ-2-エナールであり、あるいは第1の基体がフェニルアセトアルデヒドであり、かつ1つ又は複数の縮合生成物が2,4-ジフェニルブト-2-エナールである。
【0244】
反応工程(e)は溶媒の不在下で、又は溶媒の存在下で実施することができる。
【0245】
反応が溶媒の存在下で実施される場合、溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、ベンゼン、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエチレン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、N-メチルピロリジノン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物を含む群から選択される。反応工程(e)で使用され得るさらなる溶媒は、最新の増補版のGSK Solvent Sustainability Guide(C.M. Alder et al.,「Updating and Expanding GSK’s Solvent Sustainability Guide(GSKの溶媒持続可能性ガイドの最新増補版)」,Green Chemistry 2016,18,3879-3890)に挙げられているものを含む。これらのうち、「問題点がほとんど知られていない」又は「いくつかの問題点が既知である」とラベリングされた溶媒、特に「問題点がほとんど知られていない」でラベリングされた溶媒が好ましい。
【0246】
本発明の好ましい実施態様では、反応工程(e)は溶媒の不在下で実施される。
【0247】
これに加えて又はこれの代わりに、工程(e)を、液相中で、20℃~250℃、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは100~150℃の範囲の反応温度で行うことが好ましい。好ましくは、工程(e)は、液相中で、第1の基体及び/又は第2の基体及び/又は溶媒、好ましくは溶媒の標準沸点で、又は標準沸点を僅かに下回る反応温度で実施される。反応が第1の基体及び/又は第2の基体及び/又は溶媒の標準沸点を上回る温度で実施される場合には、自生圧力下及び/又は還流下で、密閉容器内で反応を行うことが好ましい。本発明の方法を周囲圧力下で実施するのがより好都合ではあるものの、圧力が増大すれば、反応温度を高くし、かつ反応速度を高速にすることが可能になる。
【0248】
本発明の目的のために、物質の標準沸点とは、標準圧力101.325kPaにおける本質的に純粋な物質の沸点を意味し、ここで、本質的に純粋とは、その物質が含む不純物が5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0249】
本発明に基づくさらに別の実施態様では、工程(e)は不活性ガス雰囲気下で実施され、好ましい不活性ガスは窒素、アルゴン、及びこれらの混合物である。
【0250】
本発明の工程(e)の好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、第1の基体の総重量を基準として、0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~25重量%、最も好ましくは10~20重量%の量で添加される。
【0251】
したがって、本発明の特に好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、第1の基体の総重量を基準として、0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~25重量%、最も好ましくは10~20重量%の量で添加され、ここで、この乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは75~165m/gの比表面積を有し、かつ
任意に、下記を有する:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0252】
したがって、本発明の別の好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、第1の基体の総重量を基準として、5~25重量%、好ましくは10~20重量%の量で添加され、ここで、この乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは75~165m/gの比表面積を有し、かつ
任意に、下記を有する:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0253】
本発明のさらに別の実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、第1の基体の総重量を基準として、5~25重量%、好ましくは10~20重量%の量で添加され、ここで、この乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは75~165m/gの比表面積を有し、かつ
任意に、下記を有する:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0254】
本発明のさらに別の実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、第1の基体の総重量を基準として、5~25重量%、好ましくは10~20重量%の量で添加され、ここで、この乾燥表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に基づくBET法を用いて測定して、20~180m/g、好ましくは75~165m/gの比表面積を有し、かつ
任意に、下記を有し:
(i)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(ii)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数;かつ
第1の基体が式(1)に基づく化合物であり、かつ第2の基体が式(2)に基づく化合物であり、かつ
ここで、
は水素原子又はオルガニル基R11であり、
Xは水素原子であり、
は水素原子又はオルガニル基R21であり、かつ
は、アシル基、ホルミル基、アセチル基、及びニトロ基からなる群から選択される。
【0255】
これに加えて又はこれの代わりに、第1の基体:第2の基体は、工程(e)において、1:1~1:20、好ましくは1:2.5~1:15、より好ましくは1:5~1:15のモル比で添加される。過剰量の第2の基体は第1の基体を所期生成物へ転化する転化率全体を高めることができ、かつ第1の基体をそれ自体で反応させることができる場合には、第1の基体と第2の基体との反応を促進することができる。例えば、過剰な第2の基体は、自己アルドール反応よりも交差アルドール反応を促進することができる。一例としては、第1の基体がブチルアルデヒドであり、かつ第2の基体がアセトンである場合、ブチルアルデヒドは自己アルドール縮合を経て2-エチルヘキセナールをもたらし、又は交差アルドール縮合を経てヘプト-3-エン-2-オンをもたらすことができる。ブチルアルデヒドに対するアセトンの量を増大させると、2-エチルヘキセナールを上回って、ヘプト-3-エン-2-オンの相対量が増大する。
【0256】
さらに、反応混合物は、さらなる添加剤を含むことができ、好ましくは、さらなる基体、共触媒、促進剤、活性化剤、及び支持材料からなる群から選択されるさらなる添加剤を含むことができる。一実施態様では、C=O二重結合及び/又は活性化水素を含むさらなる基体を添加することにより、三成分反応を実施することができる。別の実施態様では、表面反応炭酸カルシウムを支持材料、例えば、活性炭、アルミナ、又はシリカ上に固定することができる。さらに別の実施態様では、促進剤を添加することができ、これにより、例えば、表面反応炭酸カルシウム及び/又は支持材料の焼結を阻止又は遅延させることによって、触媒の失活を回避することができる。
【0257】
反応工程(e)において、工程(a)で提供された第1の基体と、工程(b)で提供された第2の基体と、工程(c)で提供された表面反応炭酸カルシウムと、任意に溶媒及び/又はさらなる添加剤とを任意の順序で互いに接触させる。
【0258】
当業者に知られた任意の手段によって反応工程(e)を実施することができる。例えば、反応工程(e)は、例えば不連続プロセスで、例えば貯蔵タンクと撹拌機、例えば丸底フラスコとからなるバッチ反応器;圧力反応器、例えば標準的なガラス圧力反応器;フィッシャーポーター管;金属圧力反応器;又はマイクロ波合成装置で実施することができる。反応が溶媒及び/又は第1の基体及び/又は第2の基体の沸点を上回る反応温度で実施される場合には、圧力反応器の使用が特に好ましい。
【0259】
任意に、工程(e)の1つ又は複数の縮合副生成物は、好ましくは共沸蒸留又は反応蒸留によって、反応工程(e)中に反応混合物から連続的に除去することができる。
【0260】
あるいは、反応工程(e)は連続プロセスで、例えば、連続撹拌タンク反応器、半バッチ反応器、層流反応器、マイクロ反応器、又は連続振動バッフル反応器内で実施することができる。
【0261】
本発明のさらに別の実施態様では、表面反応炭酸カルシウムは不均一系触媒反応器、好ましくは固定床反応器、トリクルベッド反応器、移動床反応器、回転床反応器、流動床反応器、スラリー反応器、又は沸騰床反応器内のベッドとして提供される。
【0262】
任意に、本発明の方法は、反応混合物を分離する工程(f)を含む。反応混合物は当業者に知られた任意の手段によって分離することができる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、固液分離によって、例えば、濾過、重力沈降、遠心分離、デカンテーション、サイクロニング、又は分級によって反応混合物から除去することができる。表面反応炭酸カルシウムは、例えば、溶媒、例えばメタノール又はジエチルエーテルによって洗浄することによりさらに精製され、任意に、活性化工程(d)による方法工程で再活性化され、そして反応工程(e)において再使用することができる。縮合生成物は、溶媒抽出、蒸発、蒸留、分留、及び/又はクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィー、及び高性能液体クロマトグラフィーのうちの1つ、好ましくはそれらの組み合わせによって反応混合物から分離することができる。
【0263】
本発明の使用
本発明の第二の態様は、乾燥表面反応炭酸カルシウムの触媒としての使用であって、
この表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつこの二酸化炭素が上記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、
この表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を使用して測定して、少なくとも10m/gの比表面積を有し、かつ
この表面反応炭酸カルシウムが、100~500℃の範囲の温度で加熱することによって乾燥させられている、
使用に関する。
【0264】
乾燥表面反応炭酸カルシウムは、上記に定義したとおりであり、上記で概要を示した方法によって得ることができることが理解される。
【0265】
本発明の好ましい実施態様では、乾燥表面反応型炭酸カルシウムは、下記を有する:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのトップカット(d98)値、及び/又は
(iii)BET法によって測定した、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは25~160m/g、最も好ましくは30~140m/gの比表面積(BET)、及び/又は
(iv)表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(v)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(vi)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0266】
本発明の別の好ましい実施態様では、乾燥表面反応炭酸カルシウムは、下記を有する:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのトップカット(d98)値、及び/又は
(iii)BET法によって測定した、10~200m/g、好ましくは20~180m/g、より好ましくは75~165m/gの比表面積(BET)、及び/又は
(iv)表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に対して、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の総残留水分含量、及び/又は
(v)二酸化炭素を使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの塩基性部位の総数、及び/又は
(vi)アンモニアを使用した昇温脱離によって測定した、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの酸性部位の総数。
【0267】
本発明の本態様の特に好ましい実施態様は、この表面反応炭酸カルシウムを縮合反応のための触媒として使用することである。好ましくは、縮合反応は、上記に定義したような、第1の基体と第2の基体との反応を指す。したがって、縮合反応はアルドール縮合、クネーフェナーゲル縮合、及びヘンリー反応、又はクライゼン-シュミット反応であってよいことが理解される。
【0268】
縮合反応における触媒としての乾燥表面反応炭酸カルシウムの使用は、可溶性触媒、例えば硫酸又は水酸化ナトリウムの使用と比較して、縮合反応の収量及び/又はターンオーバー数及び/又はターンオーバー頻度を改善し、かつ/又は縮合反応の生成物の純度を改善することができる。
【0269】
下記実施例は本発明をさらに説明することを意図したものである。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでは決してない。
【実施例
【0270】
1.測定方法
以下に、実施例で実施した測定方法について説明する。
【0271】
粒径分布
体積測定メジアン粒径d50(vol)及び体積測定トップカット粒径d98(vol)は、Malvern Mastersizer 3000 Laser Diffraction System(Malvern Instruments Plc.、英国)を使用して評価した。d50(vol)又はd98(vol)値は、粒子の50体積%又は98体積%が、それぞれ、この値未満の直径を有するような直径の値を示す。粒子屈折率1.57、吸収係数0.005として、測定により得られた生データを、Mie理論を用いて解析した。この方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。前処理なしで、乾燥状態で試料を測定した。
【0272】
重量測定メジアン粒径d50(wt)は、重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって測定した。測定は、米国、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(登録商標)5120を用いて行った。この方法及び器具は、当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。0.1重量%のNaの水溶液中で測定を行った。高速撹拌機を用いて試料を分散し、かつ超音波処理した。
【0273】
比表面積(SSA)
試料を250℃で30分間加熱することによって調製した後に、窒素を使用し、ISO 9277:2010に準拠したBET法によって比表面積を測定した。このような測定の前に、試料をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水ですすぎ、かつ少なくとも12時間、オーブン中110℃で乾燥させた。
【0274】
粒子内圧入比細孔容積(cm /g)
比細孔容積は、0.004μm(~nm)のラプラス喉部直径と等価の、水銀の最大印加圧力414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを使用し、水銀圧入ポロシメトリー測定法を用いて測定した。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒であった。試料材料を、分析のために、5cmのチャンバの粉末貫入計中に密封した。データは、ソフトウェアPore-Compを使用して、水銀の圧縮、貫入計の膨張、及び試料材料の圧縮について補正した(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,pp.1753-1764)。
【0275】
積算圧入データ内に見られる全細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔をも有している場合には、この領域は二峰性であり、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細い細孔内に水銀が圧入した比細孔容積をもってして、粒子内比細孔容積が定義される。これら3つの領域の総和は、粉末の合計の総細孔容積を与えるが、もともとの試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
【0276】
積算圧入曲線の一次導関数を取り上げることにより、必然的に細孔遮へいを含めた等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔径範囲がわかれば、合計細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔の所望の細孔容積だけを得ることが可能である。当然のことながら同じ差し引きの原理は、興味ある任意のその他の細孔径領域を分離する場合にも当てはまる。
【0277】
走査電子顕微鏡法(SEM)
50~150μLのスラリー試料を5mLの水で希釈することによって試料を調製した。スラリー試料の量は、固形分含有量、粒径の平均値、及び粒径分布に依存する。希釈した試料を、0.8μmメンブレンフィルタを使用して濾過した。濾液が不透明である場合には、より微細なフィルタを使用した。両面導電接着テープをSEMスタブ上に取り付けた。次いで、このSEMスタブを、フィルタ上のまだ湿っている濾過ケーキに僅かに押圧した。次いでSEMスタブを8nm Auでスパッタリングした。続いて、Sigma VP電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)(Carl Zeiss AG、ドイツ)、及び可変圧力二次電子検出器(VPSE)、及び/又は約50Paのチャンバ圧力を有する二次電子検出器(SE)によって、調製した試料を分析した。FESEM(Zeiss Sigma VP)下の調査は5kV(Au)で行った。
【0278】
X線回折(XRD)、X線光電子分光法(XPS)、熱重量分析(TGA)
Co放射線源、CoKα=1.789Åを用い、Bruker D2 Phaser 粉末X線回折装置を使用してX線回折(XRD)パターンを記録した。ステップ当たり0.5秒の走査速度を用い、10~70°の2θの間で測定を実施した。熱重量分析(TGA)は、Mettler Toledo TGA/DSC 3+を使用して行った。80mL/分の空気流量、25℃から600℃まで25℃の昇温、105℃及び500℃で10分の保持で、試料を加熱した。225W(15mA、15kV)で動作する単色のAl Kα放射線(hv=1486.6eV)を用いて、Kratos AXIS Ultra DLD分析計でX線光電子分光(XPS)実験を行った。
【0279】
さらなる実験法
王水(水中、1体積部の硝酸(水中70重量%)と3体積部の塩酸(水中35重量%)との混合物)中にSRCCを溶解し、得られた溶液を、体積が約4倍に増加するまで水で希釈し、そして、Perkin Elmer Avio 500装置を使用した誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)によって希釈溶液を分析することにより、SRCC固形物のCa及びPの含有量を調製した。Ca及びPの含有量は、校正曲線を用いて測定した。SRCCの炭素含有量は、EAから得て、かつFisons NA1500 NCS分析器を使用して実施した。Perkin Elmer Spectrum Two FT-IR分光計を使用して、赤外スペクトルを記録した。
【0280】
吸着アンモニア及び吸着二酸化炭素の昇温脱離(NH -TPD及びCO -TPD)
Micromeritics ASAP2920装置を使用して測定を実施した。1分当たり5℃から400℃までの温度勾配で、He流下で0.1gの試料をその場で乾燥させた。
【0281】
NH-TPD測定のために、試料を100℃まで冷却した。この時点で、He中10体積%のNHの5cmを20パルス分、試料に投与した(1分当たり25.3cmのNH流に相当する)。次いで、1分当たり5℃の勾配で試料を600℃まで加熱することにより、NHの脱着を誘導した。経時的に脱着したNHの量を、熱伝導度検出器(TCD)を使用して測定した。TCD濃度を、定量的評価のために時間に対してプロットし、かつ温度に対してプロットして脱着ピークの温度位置を決定した。両方の場合について、ピーク解析を実施した。脱着したNHの総量を得るために、基線の減算及び脱着特性の完全積算を実施した。ソフトウェアFitykを使用して、ピーク解析を実施した。
【0282】
曲線下の面積(AUC,A)(Fitykから)を得た後で、下記式を用いて、AUCを定量化可能なNH量(nNH3,mmol/g)に変換する:
【数1】
【0283】
CO-TPD測定のために、試料を50℃まで冷却し、かつNH-TPDに関して記載したものと同様の手順を採用した。ρCO2=1.98kg/m及びMCO2=44.01g/molの値を使用して、上記計算に基づいて塩基性部位の数を決定した。酸性又は塩基性部位の数を計算するために、NH又はCOのただ1つの分子が、単一の部位に吸着し得ると仮定した。
【0284】
2.使用した材料
表面反応炭酸カルシウム(SRCC)
SRCC1
SRCC1は、Omya International AGから商業的に入手可能であり、d50(vol)=2.4μm、d98(vol)=9μm、及びSSA=21m/gである。粒子内圧入比細孔容積は0.442cm/gである(0.004~0.34μmの細孔径範囲に対して)。
【0285】
SRCC2
SRCC2は、d50(vol)=6.6μm、d98(vol)=13.7μm、SSA=56.7m/gであり、かつ粒子内圧入比細孔容積が0.939cm/gである(0.004~0.51μmの細孔径範囲に対して)。
【0286】
SRCC2を得るために、沈降により測定した1.3μmの重量基準のメジアン粒径d50(wt)を有するOmya SAS、Orgonからの粉砕石灰石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に対して10重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器において粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液350Lを調製した。
【0287】
スラリーを6.2m/sの速度で混合しながら、11.2kgのリン酸を、30重量%のリン酸を含有する水溶液の形態で、70℃の温度で20分間にわたって上記懸濁液に添加した。酸を添加した後、スラリーをさらに5分間撹拌し、その後容器から取り出し、かつジェット乾燥機を使用して乾燥させた。
【0288】
SRCC3
SRCC3は、d50(vol)=5.8μm、d98(vol)=15.4μm、SSA=156.2m/gであり、かつ粒子内圧入比細孔容積が1.070cm/gである(0.004~0.34μmの細孔径範囲に対して)。
【0289】
SRCC3を得るために、Hustadmarmor、ノルウェーからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に対して10重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器において粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10Lを調製した。粉砕炭酸カルシウムは、沈降により測定して、90%が2μm未満である重量基準の粒径分布を有していた。加えて、リン酸溶液を調製して、溶液の総重量を基準として30%のリン酸を含有するようにした。
【0290】
スラリーを混合しながら、1.8kgのリン酸溶液を10分間にわたって添加した。総酸性溶液の20%を添加した後、53gのクエン酸無水物粉末をスラリーに添加した。試験全体を通して、懸濁液の温度は70℃±1℃に維持した。最後に、酸の添加後に、懸濁液をさらに5分間にわたって撹拌し、その後これを容器から取り出し、冷ましておいた。
【0291】
SRCC4
SRCC4は、d50(vol)=3.8μm、d98(vol)=47.2μm、SSA=86.7m/gであり、かつ粒子内圧入比細孔容積が0.286cm/gである(0.004~0.11μmの細孔径範囲に対して)。
【0292】
SRCC4を得るために、Karabiga、トルコからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に対して15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器において粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10Lを調製した。粉砕炭酸カルシウムは、沈降により測定して、90%が1μm未満である重量基準の粒径分布を有していた。加えて、リン酸溶液を調製して、溶液の総重量を基準として30%のリン酸を含有するようにした。
【0293】
スラリーを混合しながら、1.3kgのリン酸溶液を10分間にわたって添加した。試験全体を通して、懸濁液の温度は70℃±1℃に維持した。最後に、酸の添加後に、懸濁液をさらに5分間にわたって撹拌し、その後これを容器から取り出し、冷ましておいた。
【0294】
SRCC5
SRCC5は、d50(vol)=8.3μm、d98(vol)=18.7μm、SSA=105.5m/gであり、かつ粒子内圧入比細孔容積が1.565cm/gである(0.004~0.66μmの細孔径範囲に対して)。
【0295】
SRCC5を得るために、Karabiga、トルコからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に対して15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器において粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10Lを調製した。粉砕炭酸カルシウムは、沈降により測定して、1.4μmの重量基準のメジアン粒径d50(wt)を有していた。加えて、リン酸溶液を調製して、溶液の総重量を基準として30%のリン酸を含有するようにした。
【0296】
スラリーを混合しながら、2.8kgのリン酸溶液を15分間にわたって添加した。試験全体を通して、懸濁液の温度は70℃±1℃に維持した。最後に、酸の添加後に、懸濁液をさらに5分間にわたって撹拌し、その後これを容器から取り出し、冷ましておいた。
【0297】
他の試薬
すべての市販の試薬をさらなる精製なしに入手したままで使用した。ブチルアルデヒド(≧99.5%)、マロノニトリル(≧99%)、ニトロメタン(≧99%)、メシチレン(98%)、HAP-Lナノ粉末(<200nm粒径、≧97%)、HAP-H(5μm粒径)、及びTiOナノ粉末(<100nm粒径、99.5%)をSigma-Aldrichから購入した。ベンズアルデヒド(>98%)、アセトフェノン(98%)、炭酸カルシウム(CaCO)(>98%)、及びMgO(98%)をAcros organicsから得た。
【0298】
静的空気下の実験室オーブンで、4時間にわたって200℃まで加熱することにより、SRCCを活性化した。表面反応炭酸カルシウム(「活性化前」として記載)及び乾燥表面反応炭酸カルシウム(「活性化後」として記載)の特性を表1~3に示す。いくつかの商業的に入手可能な触媒の特性も表1に示す。
【0299】
【表1】
【0300】
【表2】
【0301】
【表3】
【0302】
3.有機縮合反応
アルドール縮合
強力な磁気撹拌及び窒素雰囲気下で、ブチルアルデヒドのアルドール縮合をバッチ反応システムで実施した。反応前にすべてのSRCC固体を200℃で4時間にわたって熱的に活性化した。典型的な試験では、還流凝縮器に接続した50mL二首フラスコに、55.6mmolのブチルアルデヒド、3mol%の触媒、及び内部標準としての36mmolのメシチレンを充填した。Nを反応システムの上部空間に通じ、かつ一定の強力撹拌速度を設定した後、反応混合物を130℃の温度まで加熱した。異なる時間間隔(2~22時間)で反応媒体から試料を取り出すことにより、反応の進行をモニタリングした。ブチルアルデヒドの転化率をH NMR(CDCl)によって決定した。Agilent MRF400又は Varian AS400分光計で25℃において、Hスペクトル(400MHz)を記録した。MeSi(δ=0ppm)に対して相対的に判定して、溶媒の残留ピークを参照して、ppmの標準的δ表記で化学シフトを報告する。
【0303】
無溶媒条件下で22時間にわたって130℃で、触媒性能を評価した。結果を表4に示す。触媒の不存在下では、2時間又は6時間後に転化はみられなかったが、限定的な活性が22時間後にみられた(エントリー1)。エントリー2~6は、それぞれ、MgO、TiO、CaCO、及びHAPなどの商業的に入手可能な固体塩基触媒である。市販の既存の固体塩基触媒と比較して、SRCC触媒であるSRCC3、SRCC4、及びSRCC5(エントリー9~11)は優れた触媒活性を示した。ほとんどの事例において22時間後に完全な転化が達成された。炭酸カルシウム触媒とHAP触媒との混合物も試験した(エントリー12)が、これは、上述のSRCC触媒によって得られた触媒活性を達成しなかった。
【0304】
【表4】
【0305】
他の縮合反応
C-Cカップリング反応に使用されるSRCC触媒の範囲をさらに実証するために、最も高い活性の触媒SRCC3を他の典型的な縮合反応において試験した。反応条件を自己アルドール縮合反応と同様に最適化し、かつ最良の結果を表5に示す。
【0306】
【表5】
【国際調査報告】