(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】アミノ酸に基づくリンカーを使用したトランスグルタミナーゼコンジュゲーション方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20231004BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231004BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C07K16/00
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517980
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075831
(87)【国際公開番号】W WO2022058594
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523096827
【氏名又は名称】アラリス バイオテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】アッティンガー-トラー, イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】グラブロウスキ, ドラガン
(72)【発明者】
【氏名】スピッヒャー, フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA21
4B064DA01
4B064DA05
4C076AA95
4C076EE59
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA70
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-ペイロードコンジュゲートを生成するための方法に関する。当該方法は、構造(N→C方向に示される)Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)を含むまたは有するリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、ここで、Aaxは、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、(Sp1)は、化学スペーサーであるかまたは存在せず、(Sp2)は、化学スペーサーであるかまたは存在せず、B1は、連結部分またはペイロードである。本発明はさらに、本発明の方法を用いて生成された抗体-リンカーコンジュゲートおよびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp
1)-B
1-(Sp
2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、前記抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH
2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp
1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp
2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B
1が、連結部分またはペイロードである、
方法。
【請求項2】
Yが、構造-(CH
2)
n-を含み、nが、1から20までの整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
nが、2から20までの整数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、C
H2ドメインのN297位(EU番号付け)においてグリコシル化されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化学スペーサー(Sp
1)および(Sp
2)が、それぞれ0から12の間のアミノ酸残基を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リンカーの正味の電荷が、中性または正である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB
2を含み、特に、B
2が、前記リンカーに前記化学スペーサー(Sp
2)を介して接続している、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
B
1とB
2が、互いに同一であるかまたは異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
B
1および/またはB
2が、連結部分である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記連結部分B
1および/またはB
2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基、または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生体直交型マーカー基または前記非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N
3;
・Lys(N
3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数のペイロードを、前記連結部分B
1および/またはB
2のうちの少なくとも一方と連結する追加のステップを含む、請求項12から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは複数のペイロードを、前記連結部分B
1および/またはB
2とクリック反応によって連結する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
B
1および/またはB
2が、ペイロードである、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数のペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期増加部分;
・溶解性増加部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、請求項15から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・PNU、ドキソルビシン;
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・クリプトフィシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲部分をさらに含む、請求項15から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記切断可能または自壊牲部分が、カテプシンおよび/またはp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分によって切断可能なモチーフを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数のペイロードが、前記ペイロードを、前記リンカーに含まれる前記化学スペーサー(Sp
1)および/もしくは(Sp
2)と、または前記連結部分B
1および/もしくはB
2と連結するための反応性基をさらに含む、請求項15から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、前記その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、C
H2ドメインを含む、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、IgG抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リンカーを、前記抗体のFcドメイン内のGln残基とコンジュゲートする、または前記リンカーを、前記抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基とコンジュゲートする、請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体のFcドメイン内の前記Gln残基が、IgG抗体のC
H2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入された前記Gln残基が、(a)前記抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)前記抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記Gln残基を含む前記ペプチドが、前記抗体の重鎖のC末端と融合している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記リンカーを、前記Gln残基のアミド側鎖とコンジュゲートする、請求項1から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記リンカーが、グリコシル化抗体との、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のコンジュゲーション効率でのコンジュゲーションに適したものである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記微生物トランスグルタミナーゼが、Streptomyces種、特に、Streptomyces mobaraensisに由来するものである、請求項1から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体を、5~50モル当量の前記リンカーと接触させる、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり1~10Uにわたる濃度で添加する、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体を、コンジュゲーション反応に、1~10mg/mLにわたる濃度で添加する、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記リンカーと前記抗体のコンジュゲーションを、6から8.5までにわたるpHで実現する、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から35までのいずれか一項に記載の方法を用いて生成された抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項37】
a)抗体と、
b)構造(N→C方向で示される)
(Aax)-(Sp
1)-B
1-(Sp
2)
を含むリンカーとを含む抗体-リンカーコンジュゲートであって、
・Aaxが、構造NH
2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp
1)が、化学スペーサーであり、
・(Sp
2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B
1が、連結部分またはペイロードであり、
前記リンカーが、前記抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基のアミド側鎖と、残基Aax内の一級アミンを介してコンジュゲートしている、
抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項38】
Yが、構造-(CH
2)
n-を含み、nが、1から20までの整数である、請求項37に記載のコンジュゲート。
【請求項39】
nが、2から20までの整数である、請求項38に記載のコンジュゲート。
【請求項40】
前記抗体が、C
H2ドメインのN297位(EU番号付け)においてグリコシル化されている、請求項37から39までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
前記化学スペーサー(Sp
1)および(Sp
2)が、0から12の間のアミノ酸残基を含む、請求項37から40までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
前記リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、請求項37から41までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
前記リンカーの正味の電荷が、中性または正である、請求項37から42までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項44】
前記リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、請求項37から43までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項45】
前記リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、請求項37から44までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項46】
前記リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB
2を含み、特に、B
2が、前記リンカーに前記化学スペーサー(Sp
2)を介して接続している、請求項37から45までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項47】
B
1とB
2が、互いに同一であるかまたは異なる、請求項46に記載のコンジュゲート。
【請求項48】
B
1および/またはB
2が、連結部分である、請求項37から47までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項49】
前記連結部分B
1および/またはB
2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基、または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、請求項48に記載のコンジュゲート。
【請求項50】
前記生体直交型マーカー基または前記非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N
3;
・Lys(N
3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、請求項49に記載のコンジュゲート。
【請求項51】
前記連結部分B
1および/またはB
2のうちの少なくとも一方が、1つまたは複数のペイロードと連結している、請求項48から50までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項52】
前記1つまたは複数のペイロードが、前記連結部分B
1および/またはB
2とクリック反応によって連結している、請求項51に記載のコンジュゲート。
【請求項53】
B
1および/またはB
2が、ペイロードである、請求項37から47までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項54】
前記1つまたは複数のペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期増加部分;
・溶解性増加部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のコンジュゲート。
【請求項55】
前記毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・PNU、ドキソルビシン;
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項54に記載のコンジュゲート。
【請求項56】
前記1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲部分をさらに含む、請求項51から55までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項57】
前記切断可能または自壊牲部分が、バリン-シトルリン(VC)モチーフおよび/またはp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分を含む、請求項56に記載のコンジュゲート。
【請求項58】
前記抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、前記その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、C
H2ドメインを含む、請求項37から57までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項59】
前記抗体が、IgG抗体である、請求項58に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項60】
前記リンカーがコンジュゲートしているGln残基が、前記抗体のFcドメイン内に含まれるまたは前記抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたものである、請求項37から59までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項61】
前記抗体のFcドメイン内に含まれる前記Gln残基が、IgG抗体のCH
2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、請求項60に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項62】
前記抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入された前記Gln残基が、(a)前記抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)前記抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、請求項60に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項63】
前記Gln残基を含む前記ペプチドが、前記抗体の重鎖のC末端と融合している、請求項62に記載の抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項64】
請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物であって、特に、前記抗体-リンカーコンジュゲートが、少なくとも1種のペイロードを含む、医薬組成物。
【請求項65】
少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される成分を含む、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
治療および/または診断における使用のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している、
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者の処置における使用のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物。
【請求項68】
新生物疾患に罹患している患者の処置における使用のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物。
【請求項69】
術前、術中、または術後イメージングにおける使用のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物。
【請求項70】
術中イメージング誘導がん手術における使用のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物。
【請求項71】
新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している、
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者を処置するための医薬の製造のための、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物の使用。
【請求項72】
新生物疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、請求項37から63までのいずれか一項に記載の抗体-リンカーコンジュゲートまたは請求項64もしくは65に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法に関する。本発明は、さらに、抗体-リンカーコンジュゲート、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物およびその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんまたは炎症性疾患の標的化処置に関して、非常に強力なペイロードを抗体に結合させることへの関心が増している。結合によって得られた構築物は、抗体-リンカーコンジュゲート、または、リンカーが薬物を含む場合には抗体薬物コンジュゲート(ADC)と称される。
【0003】
現在のところ、10種のADC(アドセトリス(Adcetris)、カドサイラ(Kadcyla)、ベスポンサ(Besponsa)、マイロターグ(Mylotarg)、ポライビー(Polivy)、パドセブ(Padcev)、エンハーツ(Enhertu)、トロデルヴィ(Trodelvy)、ブレンレップ(Blenrep)およびジンロンタ(Zynlonta))がFDAの承認を得ており、これらは全て、ペイロードを抗体に非部位特異的な様式で化学的に結合させたものである。したがって、得られた生成物は、抗体とペイロードの間の化学量論的関連性(ペイロード-抗体比、または薬物対抗体の比、DAR)に関して、その上、抗体上のコンジュゲーション部位に関しても高度に不均一である。得られる種のそれぞれは、同じ薬物生成物においてであるが、広範囲の異なるin vivo薬物動態特性および活性を潜在的にもたらし得る、別個の特性を有し得る。
【0004】
以前のin vivo試験において(Lhospice et al., Site-Specific Conjugation of Monomethyl Auristatin E to Anti-Cd30 Antibodies Improves Their Pharmacokinetics and Therapeutic Index in Rodent Models, Mol Pharm 12 (6), 1863-1871. 2015)、部位特異的薬物結合により、FDAの承認を受けているADCと比較して有意に高い腫瘍への取り込み(約2倍)および非標的化組織における取り込みの減少が導もたらされ、最大耐用量も少なくとも3倍高いことが示された。これらのデータから、化学量論的に明確に規定されたADCが、化学修飾されたADCと比較して改善された薬物動態およびより良好な治療指数を示すことが示唆される。
【0005】
部位特異的技術として、酵素的コンジュゲーションに大きな関心が寄せられている。これは、酵素的コンジュゲーション反応が一般には高速であり、生理的条件下で実施することができるからである。抗体を含めた機能性部分の従来の化学的タンパク質コンジュゲーションに対する魅力的な代替として、利用可能な酵素の中でも、Streptomyces mobaraensis種由来の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)への関心が高まっている。MTGは、生理的条件下で、タンパク質またはペプチドの「反応性」グルタミンとタンパク質またはペプチドの「反応性」リシン残基の間のアミド基転移反応を触媒する。ここで、後者は、5-アミノペンチル基などの単純な低分子量一級アミンであってもよい(Jeger et al., Site-specific and stoichiometric modification of antibodies by bacterial transglutaminase. Angew Chem Int Ed Engl. 2010 Dec 17; 49 (51): 9995-7, Strop et al., Versatility of Microbial Transglutaminase. Bioconjugate Chemistry 2014, 25 (5), 855-862)。
【0006】
形成される結合はイソペプチド結合であり、これは、それぞれのポリペプチドまたはタンパク質のペプチド結合骨格の一部を形成するものではないアミド結合である。イソペプチド結合は、アシルグルタミンを含有するアミノ酸ドナー配列のグルタミル残基のγ-カルボキサミドと、アミノドナーを含む基質の第一級(1°)アミンとの間で形成される。
【0007】
本発明者の経験から、ならびに他者の経験から、一般にはごくわずかなグルタミンがMTGの標的になるようであり、したがって、MTGが部位特異的および化学量論的タンパク質修飾のための魅力的なツールになる。
【0008】
以前、低分子量一級アミン基質を用い、MTGによって特異的に標的とされる種々のIgG型の重鎖上の唯一の反応性グルタミンであるとしてグルタミン295(Q295)が同定された(Jeger et al. Site-specific and stoichiometric modification of antibodies by bacterial transglutaminase. Angew Chem Int Ed Engl. 2010 Dec 17; 49 (51):9995-7)。
【0009】
しかし、Q295との定量的コンジュゲーションは、アスパラギン残基297(N297)においてグリカン部分をPNGase Fを用いて除去することでのみ可能であり、グリコシル化抗体を効率的にコンジュゲートすることができない(コンジュゲーション効率<20%)。この発見は、Mindt et al. (Modification of different IgG1 antibodies via glutamine and lysine using bacterial and human tissue transglutaminase. Bioconjugate chemistry 2008, 19 (1), 271-8)およびJeger et al. (Site-specific and stoichiometric modification of antibodies by bacterial transglutaminase. Angew Chem Int Ed Engl. 2010 Dec 17; 49 (51): 9995-7)、Strop et al. (Location Matters: Site of Conjugation Modulates Stability and Pharmacokinetics of Antibody Drug Conjugates, 20, 161-167, 2013)およびDickgiesser et al. (Site-Specific Conjugation of Native Antibodies Using Engineered Microbial Transglutaminases. Bioconjug Chem., 2020 Mar 12. doi: 10.1021/acs.bioconjchem.0c00061)の研究によっても裏付けられる。
【0010】
脱グリコシル化の必要をなくすために、残基N297に、無グリコシル化(aglycosylation)と称されるグリコシル化の消失をもたらす点変異を挿入することも可能である。
【0011】
しかし、どちらの手法にも重大な不都合が伴う。酵素的脱グリコシル化ステップは、GMPの側面では、高純度生成物を確実にするために脱グリコシル化酵素(例えば、PNGase F)ならびに切断されたグリカンの両方を確実に培地から除去しなければならないので、望ましくない。
【0012】
N297を別のアミノ酸で置換することも、CH2ドメインの全体的な安定性、および結果としてコンジュゲート全体の有効性に影響を及ぼし得るので、望ましくない影響を及ぼす。さらに、N297に存在するグリカンは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)などを引き起こすので、重要な免疫調節効果を有する。これらの免疫調節効果は、脱グリコシル化またはN297の別のアミノ酸での置換の際に失われる。
【0013】
さらに、ペイロードを結合させるために抗体を遺伝子操作することには、配列挿入により免疫原性を増加させ、また、抗体の全体的な安定性を低下させ得るという点で、不利益がある場合がある。
Spycherらにより、事前に抗体の脱グリコシル化を必要としない、トランスグルタミナーゼに基づくコンジュゲーション手法が開示された(Spycher et al., WO2019057772)。より詳細には、Spycherらは、グリコシル化抗体のQ295への部位特異的コンジュゲーションが、リシンを含有するペプチドを使用して実際に効率的に可能であることを示すことができた。しかし、リシンを含有しないペプチドとグリコシル化抗体のMTG媒介性コンジュゲーションは当技術分野において開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Jeger et al. Site-specific and stoichiometric modification of antibodies by bacterial transglutaminase. Angew Chem Int Ed Engl. 2010 Dec 17; 49 (51):9995-7
【非特許文献2】Modification of different IgG1 antibodies via glutamine and lysine using bacterial and human tissue transglutaminase. Bioconjugate chemistry 2008, 19 (1), 271-8
【非特許文献3】Site-specific and stoichiometric modification of antibodies by bacterial transglutaminase. Angew Chem Int Ed Engl. 2010 Dec 17; 49 (51): 9995-7
【非特許文献4】Location Matters: Site of Conjugation Modulates Stability and Pharmacokinetics of Antibody Drug Conjugates, 20, 161-167, 2013
【非特許文献5】Site-Specific Conjugation of Native Antibodies Using Engineered Microbial Transglutaminases. Bioconjug Chem., 2020 Mar 12.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、トランスグルタミナーゼに基づくタンパク質コンジュゲーション手法を提供することが、本発明の目的の1つである。特に、事前に抗体の、特にN297の脱グリコシル化を必要としない、トランスグルタミナーゼに基づく抗体コンジュゲーション手法を提供することが、本発明の目的である。
【0016】
CH2ドメイン内のN297の置換または修飾を必要としない、トランスグルタミナーゼに基づく抗体コンジュゲーション手法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0017】
化学量論ならびにコンジュゲーションの部位特異性のどちらに関しても高度に均一なコンジュゲーション生成物の製造を可能にする抗体コンジュゲーション技術を提供することが本発明のさらなる目的の1つである。
【0018】
これらおよびさらなる目的から、本発明の独立請求項による方法および手段がもたらされる。従属請求項は特定の実施形態に関連する。
【0019】
発明の概要
すなわち、本発明は、以下の実施形態に関する:
【0020】
1.微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によってタンパク質-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、タンパク質に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードである、
方法。
【0021】
2.タンパク質が、抗体であり、Gln残基が、抗体の重鎖または軽鎖に含まれている、実施形態1による方法。
【0022】
3.残基Aaxが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸、またはそのアミノ酸模倣体もしくは誘導体である、実施形態1または2による方法。
【0023】
4.化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)が、それぞれ0から12の間のアミノ酸残基を含む、実施形態1から3までのいずれか1つによる方法。
【0024】
5.リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、実施形態1から4までのいずれか1つによる方法。
【0025】
6.リンカーの正味の電荷が、中性または正である、実施形態1から5までのいずれか1つによる方法。
【0026】
7.リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、実施形態1から6までのいずれか1つによる方法。
【0027】
8.リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、実施形態1から7までのいずれか1つによる方法。
【0028】
9.リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB2を含み、特に、B2がリンカーに化学スペーサー(Sp2)を介して接続している、実施形態1から8までのいずれか1つによる方法。
【0029】
10.B1とB2が、互いに同一であるかまたは異なる、実施形態9による方法。
【0030】
11.B1および/またはB2が、連結部分である、実施形態1から8までまたは9から10までのいずれか1つによる方法。
【0031】
12.連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基;または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、実施形態11による方法。
【0032】
13.生体直交型マーカー基または非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N3;
・Lys(N3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン(spirolocyclopentadiene);
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システインからなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、実施形態12による方法。
【0033】
14.1つまたは複数のペイロードを、連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方と連結する追加のステップを含む、実施形態11から13までのいずれか1つによる方法。
【0034】
15.1つまたは複数のペイロードを、連結部分B1および/またはB2とクリック反応によって連結する、実施形態14による方法。
【0035】
16.B1および/またはB2が、ペイロードである、実施形態1から8までまたは9から10までのいずれか1つによる方法。
【0036】
17.1つまたは複数のペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期増加部分;
・溶解性増加部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、実施形態14から16までのいずれか1つによる方法。
【0037】
18.毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(enediyene)(例えば、カリケアマイシン);
・PNU、ドキソルビシン;
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・クリプトフィシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態17による方法。
【0038】
19.1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲(self-immolative)部分をさらに含む、実施形態14から18までのいずれか1つによる方法。
【0039】
20.切断可能または自壊牲部分が、カテプシンおよび/またはp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分によって切断可能なモチーフを含む、実施形態19による方法。
【0040】
21.1つまたは複数のペイロードが、ペイロードをリンカーに含まれる化学スペーサー(Sp1)および/もしくは(Sp2)と、または連結部分B1および/もしくはB2と連結するための反応性基をさらに含む、実施形態14から20までのいずれか1つによる方法。
【0041】
22.抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、CH2ドメインを含む、実施形態2から21までのいずれか1つによる方法。
【0042】
23.抗体が、IgG抗体である、実施形態22による方法。
【0043】
24.抗体が、グリコシル化抗体、脱グリコシル化抗体または無グリコシル化抗体である、実施形態22または23による方法。
【0044】
25.グリコシル化抗体が、CH2ドメインの残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されているIgG抗体である、実施形態24による方法。
【0045】
26.リンカーを、抗体のFcドメイン内のGln残基とコンジュゲートする、またはリンカーを、抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基とコンジュゲートする、実施形態2から25までのいずれか1つによる方法。
【0046】
27.抗体のFcドメイン内のGln残基が、IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、実施形態26による方法。
【0047】
28.抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、無グリコシル化IgG抗体のCH2ドメインのN297Q(EU番号付け)である、実施形態26による方法。
【0048】
29.抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、(a)抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、実施形態26による方法。
【0049】
30.Gln残基を含むペプチドが、抗体の重鎖のC末端と融合している、実施形態29による方法。
【0050】
31.リンカーを、Gln残基のアミド側鎖とコンジュゲートする、実施形態1から30までのいずれか1つによる方法。
【0051】
32.リンカーが、グリコシル化抗体との、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のコンジュゲーション効率でのコンジュゲーションに適したものである、実施形態31による方法。
【0052】
33.微生物トランスグルタミナーゼが、Streptomyces種、特に、Streptomyces mobaraensisに由来するものである、実施形態1から32までのいずれか1つによる方法。
【0053】
34.実施形態1から32までのいずれか1つによる方法を用いて生成されたタンパク質-リンカーコンジュゲート。
【0054】
35.
a)タンパク質と、
b)構造(N→C方向で示される)
(Aax)-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーとを含むタンパク質-リンカーコンジュゲートであって、
・Aaxが、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであり、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
リンカーが、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基のアミド側鎖と、残基Aax内の一級アミンを介してコンジュゲートしている、
タンパク質-リンカーコンジュゲート。
【0055】
36.タンパク質が、抗体であり、Gln残基が、抗体の重鎖または軽鎖に含まれている、実施形態35によるコンジュゲート。
【0056】
37.残基Aaxが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸、またはそのアミノ酸模倣体もしくは誘導体である、実施形態35または36によるコンジュゲート。
【0057】
38.化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)が、0から12の間のアミノ酸残基を含む、実施形態35から37までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0058】
39.リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、実施形態35から38までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0059】
40.リンカーの正味の電荷が、中性または正である、実施形態35から39までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0060】
41.リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、実施形態35から40までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0061】
42.リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、実施形態35から41までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0062】
43.リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB2を含み、特に、B2が、リンカーに化学スペーサー(Sp2)を介して接続している、実施形態35から42までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0063】
44.B1とB2が、互いに同一であるかまたは異なる、実施形態43によるコンジュゲート。
【0064】
45.B1および/またはB2が、連結部分である、実施形態35から42までまたは43から44までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0065】
46.連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基、または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、実施形態45によるコンジュゲート。
【0066】
47.生体直交型マーカー基または非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N3;
・Lys(N3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、実施形態46によるコンジュゲート。
【0067】
48.連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、1つまたは複数のペイロードと連結している、実施形態45から47までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0068】
49.1つまたは複数のペイロードが、連結部分B1および/またはB2とクリック反応によって連結している、実施形態48によるコンジュゲート。
【0069】
50.B1および/またはB2が、ペイロードである、実施形態36から42までまたは43から44までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0070】
51.1つまたは複数のペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期増加部分;
・溶解性増加部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、実施形態48から50までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0071】
52.毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・PNU、ドキソルビシン;
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態51によるコンジュゲート。
【0072】
53.1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲部分をさらに含む、実施形態48から52までのいずれか1つによるコンジュゲート。
【0073】
54.切断可能または自壊牲部分が、バリン-シトルリン(VC)モチーフおよび/またはp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分を含む、実施形態53によるコンジュゲート。
【0074】
55.抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、CH2ドメインを含む、実施形態36から54までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲート。
【0075】
56.抗体が、IgG抗体である、実施形態55による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0076】
57.抗体が、グリコシル化抗体、脱グリコシル化抗体または無グリコシル化抗体である、実施形態55または56による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0077】
58.グリコシル化抗体が、CH2ドメインの残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されているIgG抗体である、実施形態57による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0078】
59.リンカーがコンジュゲートしているGln残基が、抗体のFcドメイン内に含まれるまたは抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたものである、実施形態36から58までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲート。
【0079】
60.抗体のFcドメイン内に含まれるGln残基が、IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、実施形態59による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0080】
61.抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、無グリコシル化IgG抗体のCH2ドメインのN297Q(EU番号付け)である、実施形態59による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0081】
62.抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、(a)抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、実施形態59による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0082】
63.Gln残基を含むペプチドが、抗体の重鎖のC末端と融合している、実施形態62による抗体-リンカーコンジュゲート。
【0083】
64.実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物であって、特に、抗体-リンカーコンジュゲートが、少なくとも1種のペイロードを含む、医薬組成物。
【0084】
65.少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される成分を含む、実施形態64による医薬組成物。
【0085】
66.治療および/または診断における使用のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物。
【0086】
67.
新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している、
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者の処置における使用のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物。
【0087】
68.新生物疾患に罹患している患者の処置における使用のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物。
【0088】
69.術前、術中、または術後イメージングにおける使用のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物。
【0089】
70.術中イメージング誘導がん手術における使用のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物。
【0090】
71.新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している、
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者を処置するための医薬の製造のための、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物の使用。
【0091】
72.新生物疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、実施形態36から63までのいずれか1つによる抗体-リンカーコンジュゲートまたは実施形態64もしくは65による医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
(発明を実施するための形態)
【0092】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は記載されている特定の構成成分または方法のプロセスステップに限定されず、したがって、そのようなデバイスおよび方法は変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、単に特定の実施形態を記載するためのものであり、限定的なものではないことも理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、単数および/または複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。数値で区切られたパラメータ範囲が示されている場合、その範囲は、その制限値も包含すると見なされることもさらに理解されたい。
【0093】
本明細書に開示される実施形態は、互いに関連しない個々の実施形態として理解されるものではないこともさらに理解されるべきである。1つの実施形態で考察される特色は、本明細書に示されている他の実施形態との関連でも開示されるものとする。ある場合では、特定の特色が1つの実施形態では開示されていないが別の実施形態では開示されている場合、必ずしも、前記特色が前記他の実施形態と共に開示されるものではないことが意図されていないことが当業者には理解されよう。前記特色を他の実施形態に関しても開示することは本出願の趣旨であるが、単に明瞭にするため、および本明細書を管理しやすい量に保つために、それを行っていないことが当業者には理解されよう。
【0094】
さらに、本明細書で言及される文書の内容は参照により組み込まれる。これは、特に、標準のまたは常套的な方法を開示している文書に関する。その場合、参照による組込みの目的は、主に、十分な実現性のある開示を提供すること、および非常に長い反復を回避することである。
【0095】
特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によってタンパク質-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、タンパク質に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードである、
方法に関する。
【0096】
すなわち、本発明の方法は、微生物トランスグルタミナーゼを使用して、アミノ酸に基づくリンカーを、タンパク質のグルタミン残基と、アミノ酸に基づくリンカーのN末端アミノ酸内の一級アミンを介して効率的にコンジュゲートすることができるという驚くべき発見に基づく。ペプチドとタンパク質のグルタミン残基との効率的なMTG媒介性コンジュゲーションは、ペプチドのリシン部分のε-アミノ基を介してのみ可能であることが当技術分野において広範に認められている(WO2019/057772)。しかし、本発明者らは、本発明において、アミノ酸に基づくリンカーとタンパク質の効率的なコンジュゲーションを、アミノ酸に基づくリンカーのN末端アミノ酸残基に含まれる他の一級アミンを介しても実現することができることを予想外に見いだした。
【0097】
本発明者らは、特許請求した方法が、部位特異的抗体-リンカーコンジュゲートを非常に費用効果が高く、かつ迅速に作製する(例えば、24~48時間)ために適しており、したがって、そのような分子の大きなライブラリーの作製、およびその後のハイスループットスクリーニングシステムでのそれらのスクリーニングを可能にするものであることを示した。
【0098】
本発明の範囲内で、タンパク質は、微生物トランスグルタミナーゼによるコンジュゲーションに利用できるグルタミン残基を含む任意のタンパク質であってよい。さらに、微生物トランスグルタミナーゼによるコンジュゲーションに利用できる1つまたは複数のグルタミン残基を含むタンパク質タグは、当技術分野で公知であり、本明細書に開示される(配列番号5~38)。したがって、本発明の方法の標的タンパク質は、グルタミンを含むタグ、例えば配列番号5~38に記載のタグと融合したタンパク質を含む融合タンパク質であり得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質であり得る。「治療用タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、生物活性が実証されており、疾患または障害を処置することを必要とする患者に許容される投与経路によって送達することによって疾患または障害を処置するために使用することができるタンパク質を指す。治療用タンパク質の生物活性は、in vitroまたはin vivoにおいて実証されたものであり得、生物学的効果をもたらす、タンパク質と受容体および/または他の細胞内もしくは細胞外構成成分の相互作用の結果であり得る。治療用タンパク質の例としては、これだけに限定されないが、分子、例えば、レニン、ヒト成長ホルモンを含めた成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;トロンボポエチン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ウィルブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-アルファ;腫瘍壊死因子-ベータ;エンケファリナーゼ;血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、ベータ-ラクタマーゼ;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または神経成長因子、例えば、NGF-β;カルジオトロフィン(心肥大因子)、例えば、カルジオトロフィン-1(CT-1);血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えば、aFGFおよびbFGF;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF-アルファおよびTGF-β1、TGF-p2、TGF-p3、TGF-p4、またはTGF- 5を含めたTGF-ベータ;インスリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD-3、CD-4、CD-8、およびCD-19;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、-ベータ、および-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびGCSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-13;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;ならびに調節タンパク質などが挙げられる。
【0100】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、ワクチンにコンジュゲートすることができる担体タンパク質、例えば、担体タンパク質CRM197であり得る。
【0101】
本発明のタンパク質は、リンカーに含まれているペイロードを標的細胞または組織に送達することができる抗原結合タンパク質であり得ることが好ましい。ある特定の実施形態では、抗原結合タンパク質は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPIN)、または別の抗体模倣体、例えば、アフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、ファイノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディであり得る。
【0102】
本発明の方法に使用されるタンパク質は、抗体であることが最も好ましい。したがって、特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードである、方法に関する。
【0103】
すなわち、本発明の方法は、微生物トランスグルタミナーゼを使用して、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、アミノ酸に基づくリンカーのN末端アミノ酸内の一級アミンを介して効率的にコンジュゲートすることができるという驚くべき発見に基づく。ペプチドと抗体のグルタミン残基との効率的なMTG媒介性コンジュゲーションは、ペプチドのリシン部分のε-アミノ基を介してのみ可能である(WO2019/057772)ことが当技術分野において広範に認められている。しかし、本発明者らは、本発明において、アミノ酸に基づくリンカーと抗体の効率的なコンジュゲーションを、アミノ酸に基づくリンカーのN末端アミノ酸残基に含まれる他の一級アミンを介しても実現することができることを予想外に見いだした。
【0104】
本発明者らは、特許請求した方法が、部位特異的抗体-リンカーコンジュゲートを非常に費用効果が高く、かつ迅速に作製する(例えば、24~48時間)ために適しており、したがって、そのような分子の大きなライブラリーの作製、およびその後のハイスループットスクリーニングシステムでのそれらのスクリーニングを可能にするものであることを示した。
【0105】
それとは対照的に、ペイロードを抗体と、遺伝子操作(分子的に操作)されたCys残基を介してコンジュゲートして抗体-ペイロードコンジュゲートを作製する、Cys操作プロセスには、少なくとも約3~4週間が必要である。
【0106】
一般に、方法は、多数のペイロードを抗体とコンジュゲートすることを可能にするものである。最適な臨床的および非臨床的特徴をもたらすために、各ペイロードについて、適切なアミノ酸に基づくリンカー構造を大きなリンカープールから同定することができる。これは、リンカー構造が固定される他の方法では不可能である。さらに、本発明による方法では、2種またはそれよりも多くの異なるペイロードを含む抗体-ペイロードコンジュゲートを生成することが可能になり、ここで、各ペイロードは、抗体と部位特異的様式でコンジュゲートする。したがって、本発明による方法を使用して、新規のおよび/または優れた治療能または診断能を有する抗体を生成することができる。
【0107】
本発明の方法に使用されるアミノ酸に基づくリンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)を有する。リンカーは、抗体のグルタミン残基と、リンカーのN末端アミノ酸残基Aaxに含まれる一級アミンを介してコンジュゲートされることが理解されるべきである。
【0108】
Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり得る。アミノ酸という用語は、α-アミノ酸だけでなく、β-アミノ酸、γ-アミノ酸またはδ-アミノ酸などの他のアミノ酸も包含することが理解されるべきである。Aaxがキラルα-アミノ酸である実施形態では、Aaxは、L-形態またはD-形態で存在し得る。Aaxがキラルβ-アミノ酸、γ-アミノ酸またはδ-アミノ酸である実施形態では、Aaxは、S形態またはR形態で存在し得る。したがって、その最も広範な意味で、「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ基(-NH2)およびカルボキシル基(-COOH)を含有する任意の有機化合物を指し得る。したがって、本開示全体を通して、残基Aaxがアミノ酸残基と称される場合はいつでも、アミノ酸残基という用語はアミノ酸模倣体または誘導体も包含し得ることが理解されるべきである。
【0109】
さらに、アミノ酸という用語は、公知のタンパク質構成性のアミノ酸のセット、すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンに限定されず、非標準および非天然アミノ酸も包含することが理解されるべきである。「非標準アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、タンパク質構成性のアミノ酸のセットの一部ではないが、天然の供給源から得ることができる任意のアミノ酸であり得る。しかし、一部の非標準アミノ酸は天然に存在するペプチドおよび/またはタンパク質においても見いだされ得ることに留意しなければならない。
【0110】
「非天然アミノ酸」または「合成アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸の一般的な定義の下に入る、すなわち、アミノ基およびカルボキシル基を含むが、天然には見いだされない任意の分子であり得る。したがって、非天然アミノ酸は、化学合成によって得ることが好ましい。非標準アミノ酸と非天然アミノ酸の区別は一部の場合では不確実であり得ることが理解されるべきである。例えば、非天然アミノ酸と定義されたアミノ酸が、後の時点で、自然界で同定され、したがって、非標準アミノ酸として再分類される場合がある。
【0111】
ある特定の実施形態では、残基Aaxは、アミノ酸模倣体であり得る。「アミノ酸模倣体」という用語は、本明細書で使用される場合、特定のアミノ酸とは異なる構造を有するが、前記特定のアミノ酸と同様の様式で機能し、したがって、前記特定のアミノ酸を置き換えるために使用することができる化合物を指す。アミノ酸模倣体は、それが模倣するアミノ酸と同様の構造的および/または機能的特色が少なくともいくらかの程度まで実現される場合、特定のアミノ酸と同様の様式で機能するといえる。
【0112】
ある特定の実施形態では、残基Aaxは、アミノ酸誘導体であり得る。「アミノ酸誘導体」という用語は、本明細書で定義されているアミノ酸を指し、ここで、アミノ酸に含まれる1つまたは複数の官能基は改変または置換されている。アミノ酸誘導体は、タンパク質構成性のアミノ酸または非標準アミノ酸の誘導体であり得ることが好ましい。アミノ酸誘導体は、任意の官能基は置換または改変され得る。しかし、本発明のアミノ酸誘導体は、化学スペーサー(Sp1)またはペイロードB1との結合を可能にする遊離のカルボキシル基、および、抗体のグルタミン残基とのコンジュゲーションを可能にする遊離の一級アミン、好ましくはアミノ基を含むことが好ましい。
【0113】
アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、リンカーのN末端アミノ酸残基Aaxに含まれる任意の一級アミンを介してコンジュゲートすることができる。しかし、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、リンカーのN末端アミノ酸残基Aaxに含まれるN末端アミノ基を介してコンジュゲートすることが好ましい。すなわち、Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体がα-アミノ酸である実施形態では、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、Aaxのα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体がβ-アミノ酸である実施形態では、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、Aaxのβ-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体がγ-アミノ酸である実施形態では、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、Aaxのγ-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体がδ-アミノ酸である実施形態では、アミノ酸に基づくリンカーを、抗体のグルタミン残基と、Aaxのδ-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。
【0114】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、N末端残基Aax内の一級アミンがN末端残基AaxのN末端アミノ基である、本発明による方法に関する。
【0115】
したがって、AaxのN末端は、保護されていない、修飾されていないまたは置換されていないことが好ましい。
【0116】
しかし、ある特定の実施形態では、一級アミンであって、リンカーがそれを介して抗体のグルタミン残基とコンジュゲートするところの一級アミンは、N末端残基AaxのN末端アミノ基以外の一級アミンであり得る。例えば、ある特定の実施形態では、Aaxはアミノ酸誘導体であり得、N末端アミノ基が修飾または置換を有し 、したがって、MTGのための基質として利用不可能である。そのような実施形態では、Aaxは、追加の一級アミンであって、リンカーがそれを介して抗体のグルタミン残基とコンジュゲートすることができる追加的な一級アミンを含み得る。他の実施形態では、Aaxは、プロリン模倣体であり得る。プロリンは一級アミンを含まず、したがって、MTGによって抗体内のグルタミン残基とコンジュゲートすることができない。しかし、プロリン模倣体が一級アミンを含むという条件で、プロリン模倣体を本発明の方法に使用することができる。
【0117】
上記の通り、アミノ酸残基Aaxは、概してアミノ基(NH2)およびカルボキシル基(COOH)を含む分子と定義することができる。すなわち、アミノ酸残基Aaxは、構造NH2-Y-COOHを有すると定義することができる。
【0118】
ある特定の実施形態では、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み得る。すなわち、特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードである、
方法に関する。
【0119】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、炭素原子1~20個(例えば、炭素原子2~20個、炭素原子2~10個、または炭素原子2~6個)の分枝または直鎖(straight-chain)の一価飽和型脂肪族炭化水素ラジカルを指す。「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されるアルキル基の構成要素炭素原子の1つまたは複数が窒素、酸素、または硫黄によって置き換えられたものを指す。(ヘテロ)アルキル鎖は、直鎖(straight)(ヘテロ)アルキル鎖であっても分枝(ヘテロ)アルキル鎖であってもよい。ある特定の実施形態では、(ヘテロ)アルキル鎖は、直鎖(ヘテロ)アルキル鎖である。ある特定の実施形態では、直鎖ヘテロアルキル鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖であり得る。
【0120】
置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖は、アルキルまたはヘテロアルキルの1つまたは複数の水素原子が別の原子または原子団によって置換されたものである。例えば、アルキルまたはヘテロアルキル鎖の水素原子が、シアノ、ニトロ、フリル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、モノ-またはジ-アルキルアミノカルボニル、チオール、アルキル-C(O)S-、アミン、アルキルアミン、アミドおよびアルキルアミドからなる群から選択される1つの置換基で置換されていてよい。ある特定の実施形態では、(ヘテロ)アルキル鎖は、タンパク質構成性のアミノ酸の側鎖で置換されている。
【0121】
Yは、任意のサイズを有してよい。しかし、Yは、原子2~200個、好ましくは原子2~100個、より好ましくは原子2~40個のサイズを有することが好ましい。
【0122】
ある特定の実施形態では、Yは、上で定義されている置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。すなわち、特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードである、
方法に関する。
【0123】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-であり得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-であり得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-であり得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から6までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、2から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、2から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、2から6までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、3から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、3から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を含み得、ここで、nは、3から6までの整数である。
【0124】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、1から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、1から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、1から6までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、2から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、2から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、2から6までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、3から20までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、3から10までの整数である。ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、3から6までの整数である。
【0125】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、1である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、グリシンであり得る。
【0126】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、2である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、β-アラニンであり得る。
【0127】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、3である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、4-アミノ酪酸であり得る。
【0128】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、4である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、5-アミノペンタン酸であり得る。
【0129】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、5である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、6-アミノヘキサン酸であり得る。
【0130】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、6である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、7-アミノヘプタン酸であり得る。
【0131】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、7である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、8-アミノオクタン酸であり得る。
【0132】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、8である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、9-アミノノナン酸であり得る。
【0133】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、9である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、10-アミノデカン酸であり得る。
【0134】
ある特定の実施形態では、Yは、構造-(CH2)n-を有し得、ここで、nは、10である。すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、11-アミノウンデカン酸であり得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)n-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、0~20、0~10または0~6の整数である。
【0136】
すなわち、ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)n-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)n-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。
【0137】
ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)2-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)3-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)4-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)5-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)6-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)7-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)8-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)9-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)10-Y-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。
【0138】
ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)2-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)3-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)4-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)5-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)6-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)7-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)8-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)9-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-(CH2)10-Y-(CH2)n-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖であり、nは、1~20、1~10または1~6の整数である。
【0139】
ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)2-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)3-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)4-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)5-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)6-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)7-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)8-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)9-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。ある特定の実施形態では、Aaxは、構造NH2-Y-(CH2)10-COOHを有し得、ここで、Yは、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖である。
【0140】
好ましい実施形態では、残基Aaxは、少なくとも1つのメチレン基(CH2)を含む。少なくとも1つのメチレン基は、一級アミンに直接結合していることがより好ましい。すなわち、Aaxは、構造NH2-CH2-を含むことが好ましい。
【0141】
特定の実施形態では、本発明は、残基Aaxが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸、またはそのアミノ酸模倣体もしくは誘導体である、本発明による方法に関する。
【0142】
本発明の一実施形態では、残基Aaxは、アラニン、アラニン模倣体またはアラニン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、アラニンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、アラニン、アラニン模倣体またはアラニン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。アラニン模倣体は、アラニンとはアラニン側鎖の組成が異なり得る。すなわち、アラニン模倣体は、アラニンとはアラニン側鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、アラニン模倣体は、アラニンとはメチレン基自体が異なり得る。アラニン誘導体は、メチレン基が置換または改変されているアラニンまたはアラニン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Ala-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Alaは、アラニン、アラニン模倣体またはアラニン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、アラニン誘導体は、β-置換アラニン、例えば、β-シクロプロピルアラニン、フェニルグリシン、β-シアノアラニン、β-(3-ピリジル)-アラニン、β-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニンまたはβ-(1-ピペラジニル)-アラニンであり得る。ある特定の実施形態では、アラニン模倣体は、デヒドロアラニンであり得る。
【0143】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、アルギニンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。アルギニン模倣体は、アルギニンとはグアニジノ基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、アルギニン模倣体は、アルギニンとはグアニジノ基自体が異なり得る。すなわち、アルギニン模倣体は、グアニジノ基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。アルギニン誘導体は、グアニジノ基が置換または改変されているアルギニンまたはアルギニン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Arg-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、アルギニン模倣体は、ホモアルギニンまたはβ-ウレイドアラニンであり得る。ある特定の実施形態では、アルギニン誘導体は、ω-メチルアルギニンであり得る。
【0144】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、アスパラギン、アスパラギン模倣体またはアスパラギン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、アスパラギンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、アスパラギン、アスパラギン模倣体またはアスパラギン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。アスパラギン模倣体は、アスパラギンとはカルボキサミド基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、アスパラギン模倣体は、アスパラギンとはカルボキサミド基自体が異なり得る。すなわち、アスパラギン模倣体は、カルボキサミド基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。アスパラギン誘導体は、カルボキサミド基が置換または改変されているアスパラギンまたはアスパラギン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Asn-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Asnは、アスパラギン、アスパラギン模倣体またはアスパラギン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、アスパラギン模倣体は、L-トレオ-3-ヒドロキシアスパラギン、L-2-アミノ-2-カルボキシエタンスルホンアミドまたは5-ジアゾ-4-オキソ-L-ノルバリンであり得る。ある特定の実施形態では、アスパラギン誘導体は、N,N-ジメチル-L-アスパラギンであり得る。
【0145】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、アスパラギン酸、アスパラギン酸模倣体またはアスパラギン酸誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、アスパラギン酸であり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、アスパラギン酸、アスパラギン酸模倣体またはアスパラギン酸誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。アスパラギン酸模倣体は、アスパラギン酸とは側鎖内のカルボン酸基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、アスパラギン酸模倣体は、アスパラギン酸とはカルボン酸基自体が異なり得る。すなわち、アスパラギン酸模倣体は、カルボン酸基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。アスパラギン酸誘導体は、カルボン酸基が置換または改変されているアスパラギン酸またはアスパラギン酸模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Asp-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Aspは、アスパラギン酸、アスパラギン酸模倣体またはアスパラギン酸誘導体を表す。ある特定の実施形態では、アスパラギン酸模倣体は、α-アミノアジピン酸、DL-トレオ-β-ヒドロキシアスパラギン酸またはL-2-アミノヘプタン二酸であり得る。ある特定の実施形態では、アスパラギン酸誘導体は、L-アスパラギン酸β-メチルエステルであり得る。
【0146】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、システイン、システイン模倣体またはシステイン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、システインであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、システイン、システイン模倣体またはシステイン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。システイン模倣体は、システインとは側鎖内のチオール基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、システイン模倣体は、システインとはチオール基自体が異なり得る。すなわち、システイン模倣体は、チオール基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。システイン誘導体は、チオール基が置換または改変されているシステインまたはシステイン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Cys-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Cysは、システイン、システイン模倣体またはシステイン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、システイン模倣体は、ホモシステイン、ペニシラミンまたはセレノシステインであり得る。ある特定の実施形態では、システイン誘導体は、ブチオニン-スルホキシイミンであり得る。
【0147】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、グルタミン酸、グルタミン酸模倣体またはグルタミン酸誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、グルタミン酸であり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、グルタミン酸、グルタミン酸模倣体またはグルタミン酸誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。グルタミン酸模倣体は、グルタミン酸とは側鎖内のカルボン酸基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、グルタミン酸模倣体は、グルタミン酸とはカルボン酸基自体が異なり得る。すなわち、グルタミン酸模倣体は、カルボン酸基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。グルタミン酸誘導体は、カルボン酸基が置換または改変されているグルタミン酸またはグルタミン酸模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Glu-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Gluは、グルタミン酸、グルタミン酸模倣体またはグルタミン酸誘導体を表す。ある特定の実施形態では、グルタミン酸模倣体は、α-アミノアジピン酸、γ-メチレングルタミン酸、γ-カルボキシグルタミン酸、γ-ヒドロキシグルタミン酸または2-アミノヘプタン二酸であり得る。ある特定の実施形態では、グルタミン酸誘導体は、グルタミン酸-5-メチルエステルであり得る。
【0148】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、グルタミン、グルタミン模倣体またはグルタミン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、グルタミンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、グルタミン、グルタミン模倣体またはグルタミン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。グルタミン模倣体は、グルタミンとはカルボキサミド基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、グルタミン模倣体は、グルタミンとはカルボキサミド基自体が異なり得る。すなわち、グルタミン模倣体は、カルボキサミド基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。グルタミン誘導体は、カルボキサミド基が置換または改変されているグルタミンまたはグルタミン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Gln-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Glnは、グルタミン、グルタミン模倣体またはグルタミン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、グルタミン模倣体は、4-F-(2S,4R)-フルオログルタミンであり得る。ある特定の実施形態では、グルタミン誘導体は、γ-グルタミルメチルアミド、テアニン、L-グルタミン酸γ-モノヒドロキサメートであり得る。
【0149】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、グリシン、グリシン模倣体またはグリシン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、グリシンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、グリシン、グリシン模倣体またはグリシン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Gly-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Glyは、グリシン、グリシン模倣体またはグリシン誘導体を表す。
【0150】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、ヒスチジン、ヒスチジン模倣体またはヒスチジン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、ヒスチジンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、ヒスチジン、ヒスチジン模倣体またはヒスチジン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。ヒスチジン模倣体は、ヒスチジンとはイミダゾール環とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、ヒスチジン模倣体は、ヒスチジンとはイミダゾール環自体が異なり得る。すなわち、ヒスチジン模倣体は、イミダゾール環と同様の物理化学特性を有する代替環構造を含み得る。ヒスチジン誘導体は、イミダゾール環が置換または改変されているヒスチジンまたはヒスチジン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造His-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Hisは、ヒスチジン、ヒスチジン模倣体またはヒスチジン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、ヒスチジン誘導体は、イミダゾール環において置換されていてもよい。例えば、ヒスチジン誘導体は、2,5-ジ-ヨードヒスチジンまたは1-メチルヒスチジンであり得る。
【0151】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、イソロイシン、イソロイシン模倣体またはイソロイシン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、イソロイシンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、イソロイシン、イソロイシン模倣体またはイソロイシン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。イソロイシン模倣体は、イソロイシンとはイソロイシン側鎖の組成が異なり得る。すなわち、イソロイシン模倣体は、イソロイシン側鎖と化学組成は異なるが同様の物理化学特性を有する側鎖を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Ile-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Ileは、イソロイシン、イソロイシン模倣体またはイソロイシン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、イソロイシン模倣体は、アロイソロイシンまたは(4S)-4-ヒドロキシ-L-イソロイシンであり得る。
【0152】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、ロイシン、ロイシン模倣体またはロイシン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、ロイシンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、ロイシン、ロイシン模倣体またはロイシン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。ロイシン模倣体は、ロイシンとはロイシン側鎖の組成が異なり得る。すなわち、ロイシン模倣体は、ロイシン側鎖と化学組成は異なるが同様の物理化学特性を有する側鎖を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Leu-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Leuは、ロイシン、ロイシン模倣体またはロイシン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、ロイシン模倣体は、ノルロイシンまたは4,5-デヒドロロイシンであり得る。
【0153】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、リシン、リシン模倣体またはリシン誘導体であり得る。リシンは、2つの一級アミン、すなわち、α-アミノ基に含まれる一級アミンおよびリシン側鎖に含まれる一級アミンを含むことが理解されるべきである。ペプチドと抗体のグルタミン残基との、リシン側鎖に含まれる一級アミンを介したコンジュゲーションは当技術分野において報告されているので、ある特定の実施形態ではリシンを残基Aaxから除外することができる。しかし、残基Aaxはリシン模倣体であることが理解されるべきである。特に、リシン模倣体は、側鎖内に、ε-アミノ基と同様の物理化学特性を有するが、MTGが基質として認識することができない官能基を含み得る。そのような実施形態では、リシン模倣体は、もっぱらそのN末端アミノ基を介してグルタミン残基とコンジュゲートすることになる。あるいは、Aaxの位置にあるアミノ酸は、リシン誘導体である。そのような実施形態では、リシン誘導体は、ε-アミノ基が置換または改変されており、したがって、MTGが基質として認識することができないリシンまたはリシン模倣体であり得ることが好ましい。再度、そのような実施形態では、リシン誘導体は、もっぱらそのN末端アミノ基を介してグルタミン残基とコンジュゲートすることになる。したがって、本発明のある特定の実施形態では、残基Aaxは、リシン模倣体またはリシン誘導体であり、ここで、リシン模倣体またはリシン誘導体は、アミノ酸側鎖に一級アミンを含まない。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Lys-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Lysは、リシン模倣体またはリシン誘導体を表し、ここで、リシン模倣体またはリシン誘導体は、アミノ酸側鎖に一級アミンを含まないことが好ましい。ある特定の実施形態では、リシン誘導体は、(3-(3-メチル-3H-ジアジリン-3-イル)プロパミノ)カルボニル-L-リシン、Nε,Nε,Nε-トリメチルリシン、シトルリン、またはシトルリンの模倣体もしくは誘導体、例えば、チオシトルリンまたはホモシトルリンであり得る。
【0154】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、メチオニン、メチオニン模倣体またはメチオニン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、メチオニンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、メチオニン、メチオニン模倣体またはメチオニン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。メチオニン模倣体は、メチオニンとはチオエーテル基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、メチオニン模倣体は、メチオニンとはチオエーテル基自体が異なり得る。すなわち、メチオニン模倣体は、チオエーテル基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。メチオニン誘導体は、チオエーテル基が改変されているかまたはメチオニンの場合と異なって置換されているメチオニンまたはメチオニン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Met-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Metは、メチオニン、メチオニン模倣体またはメチオニン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、メチオニン模倣体は、S-メチルメチオニン、L-メチオニンスルホン、L-メチオニンスルホキシド、L-メチオニンスルホキシイミンまたはセレノメチオニンであり得る。
【0155】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、フェニルアラニン、フェニルアラニン模倣体またはフェニルアラニン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、フェニルアラニンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、フェニルアラニン、フェニルアラニン模倣体またはフェニルアラニン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。フェニルアラニン模倣体は、フェニルアラニンとはフェニル環とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、フェニルアラニン模倣体は、フェニルアラニンとはフェニル環自体が異なり得る。すなわち、フェニルアラニン模倣体は、フェニル環と同様の物理化学特性を有する代替環構造を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Phe-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Pheは、フェニルアラニン、フェニルアラニン模倣体またはフェニルアラニン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、フェニルアラニン誘導体は、フェニル環において置換されていてよい。例えば、フェニルアラニン誘導体は、4-ヨードフェニルアラニン、ペンタフルオロ-フェニルアラニン、ナフチル-アラニンまたは4-アミノフェニルアラニンであり得る。
【0156】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、プロリン、プロリン模倣体またはプロリン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、プロリンであり得る。プロリンは、一級アミンを欠くので、MTGのための基質になることができないことが理解されるべきである。したがって、ある特定の実施形態では、プロリンを残基Aaxから除外することができる。しかし、Aaxの位置にあるアミノ酸は、プロリン模倣体であり得、ここで、プロリン模倣体は一級アミンを含むことが好ましい。例えば、プロリン模倣体は、そのピロリジン環に、1つまたは複数の一級アミンを含む置換基を含み得る。したがって、本発明のある特定の実施形態では、残基Aaxは、プロリン模倣体であり得、特に、ここで、プロリン模倣体は、一級アミンを含む。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Pro-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Proは、プロリン模倣体を表し、特に、ここで、プロリン模倣体は、一級アミンを含む。ある特定の実施形態では、プロリン模倣体は、トランス-4-アミノ-L-プロリンであり得る。
【0157】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、セリン、セリン模倣体またはセリン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、セリンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、セリン、セリン模倣体またはセリン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。セリン模倣体は、セリンとは側鎖内のヒドロキシル基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、セリン模倣体は、セリンとはヒドロキシル基自体が異なり得る。すなわち、セリン模倣体は、ヒドロキシル基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。セリン誘導体は、ヒドロキシル基が置換または改変されているセリンまたはセリン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Ser-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Serは、セリン、セリン模倣体またはセリン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、セリン模倣体は、ホモセリン、β-(2-チエニル)-セリンまたはβ-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリンであり得る。ある特定の実施形態では、セリン誘導体は、O-ホスホセリンであり得る。
【0158】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、トレオニン、トレオニン模倣体またはトレオニン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、トレオニンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、トレオニン、トレオニン模倣体またはトレオニン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。トレオニン模倣体は、トレオニンとは側鎖内のヒドロキシル基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、トレオニン模倣体は、トレオニンとはヒドロキシル基自体が異なり得る。すなわち、トレオニン模倣体は、ヒドロキシル基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。トレオニン誘導体は、ヒドロキシル基が置換または改変されているトレオニンまたはトレオニン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Thr-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Thrは、トレオニン、トレオニン模倣体またはトレオニン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、トレオニン模倣体は、アロトレオニンであり得る。ある特定の実施形態では、トレオニン誘導体は、O-ホスホトレオニンであり得る。
【0159】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、トリプトファン、トリプトファン模倣体またはトリプトファン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、トリプトファンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、トリプトファン、トリプトファン模倣体またはトリプトファン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。トリプトファン模倣体は、トリプトファンとはインドール環とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、トリプトファン模倣体は、トリプトファンとはインドール環自体が異なり得る。すなわち、トリプトファン模倣体は、インドール環と同様の物理化学特性を有する代替環構造を含み得る。トリプトファン誘導体は、インドール環が置換または改変されているトリプトファンまたはトリプトファン模倣体であり得ることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Trp-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Trpは、トリプトファン、トリプトファン模倣体またはトリプトファン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、トリプトファン誘導体は、インドール環において置換されていてよい。例えば、トリプトファン誘導体は、5-ヒドロキシトリプトファンまたは1-メチルトリプトファンであり得る。
【0160】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、チロシン、チロシン模倣体またはチロシン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、チロシンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、チロシン、チロシン模倣体またはチロシン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。チロシン模倣体は、チロシンとはフェノール基とα-炭素原子を接続する脂肪族鎖の長さまたは組成が異なり得る。その代わりに、またはそれに加えて、チロシン模倣体は、チロシンとはフェノール基自体が異なり得る。すなわち、チロシン模倣体は、フェニル環と同様の物理化学特性を有する代替環構造またはフェニル環のヒドロキシル基と同様の物理化学特性を有する官能基を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Tyr-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Tyrは、チロシン、チロシン模倣体またはチロシン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、チロシン誘導体は、フェノール環において置換されていてよい。例えば、チロシン誘導体は、3-アミノチロシン、チロニン、3,5-ジニトロチロシン、3-ヒドロキシメチルチロシンまたはO-ホスホ-L-チロシンであり得る。
【0161】
本発明の別の実施形態では、残基Aaxは、バリン、バリン模倣体またはバリン誘導体であり得る。特定の実施形態では、残基Aaxは、バリンであり得る。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明のリンカーを、抗体のグルタミン残基と、バリン、バリン模倣体またはバリン誘導体のα-アミノ基を介してコンジュゲートすることができる。バリン模倣体は、バリンとはバリン側鎖の組成が異なり得る。すなわち、バリン模倣体は、バリン側鎖と化学組成は異なるが同様の物理化学特性を有する側鎖を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Val-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Valは、バリン、バリン模倣体またはバリン誘導体を表す。ある特定の実施形態では、バリン模倣体は、ノルバリンまたは4,5-デヒドロロイシンまたはγ-ヒドロキシバリンであり得る。
【0162】
ある特定の実施形態では、残基Aaxは、環状部分を含むアミノ酸、例えば、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸または1-アミノシクロペンタンカルボン酸であり得る。ある特定の実施形態では、残基Aaxは、生体直交型部分、好ましくはクリック反応に使用され得る生体直交型部分を含むアミノ酸、例えば、プロパルギルグリシン、α-アリルグリシン、L-アジド-ホモアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、p-2-フルオロアセチル-l-フェニルアラニンまたは(S)-2-アミノ-3-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)プロパン酸であり得る。
【0163】
ある特定の実施形態では、残基Aaxは、アルファ-メチルアミノ酸、例えば、α-メチルヒスチジンまたはα-アミノイソ酪酸であり得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、Aaxは、ベータアミノ酸、例えば、β-アラニン、D-3-アミノイソ酪酸もしくはL-β-ホモアラニン、またはγ-アミノ酸、例えばγ-アミノ酪酸、またはδ-アミノ酸、例えば5-アミノペンタン酸、またはε-アミノ酸、例えば6-アミノヘキサン酸であり得る。
【0165】
さらに、リンカーは、1つまたは2つの化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)を含み得る。「化学スペーサー」という用語は、本明細書で使用される場合、リンカーの2つの化学的残基の間、特に、残基Aaxと連結部分もしくはペイロードB1の間および/または連結部分もしくはペイロードB1とB2の間に共有結合により付着し、介在し、それにより、それぞれの残基間に橋様構造を形成する化学的部分を記載するものである。
【0166】
本発明では、化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、アミノ酸残基を含むまたはそれからなることが好ましい。(Sp1)および(Sp2)はそれぞれ、0から12の間のアミノ酸残基を含むまたはそれからなることがより好ましい。したがって、特定の実施形態では、本発明は、化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)が、それぞれ0から12の間のアミノ酸残基を含む、本発明による方法に関する。
【0167】
ある特定の実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は存在しなくてもよい。すなわち、ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1、Aax-B1-(Sp2)またはAax-B2を有し得る。
【0168】
化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、これだけに限定することなく、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸およびε-アミノ酸を含めた、本明細書で定義されている任意のアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体を含み得る。α-アミノ酸の場合では、化学スペーサーは、任意の天然に存在するL-アミノ酸またはD-アミノ酸を含み得る。ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、α-アミノ酸、特に、α-L-アミノ酸のみからなり得る。
【0169】
さらに、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、アミノ酸誘導体および/またはアミノ酸模倣体を含み得る。(Sp1)および/または(Sp2)が1つまたは複数のアミノ酸誘導体を含む実施形態では、アミノ酸誘導体は、遊離のアミノ基およびカルボキシル基を有し、したがって、ペプチド結合またはイソペプチド結合を形成し得ることが好ましい。(Sp1)および/または(Sp2)が1つまたは複数のアミノ酸模倣体を含む実施形態では、アミノ酸模倣体は、遊離のアミノ基およびカルボキシル基を有し得、したがって、ペプチド結合またはイソペプチド結合を形成し得る。しかし、ある特定の実施形態では、アミノ酸模倣体または誘導体は、ペプチド結合の形成を妨げない置換アミノ基を有し得る。そのようなアミノ酸模倣体または誘導体の例は、サルコシンまたはN-Me-ロイシンなどのN-メチル化アミノ酸であり得る。さらに、アミノ酸模倣体または誘導体は、誘導体化されたアミノ基を含むアミノ酸、例えば、プロリンまたは他の環状アミノ酸の模倣体または誘導体、例えば、アゼチジン-2-カルボン酸、ピペコリン酸またはスピナシンであり得る。さらに、アミノ酸模倣体は、標準アミノ酸のアミノ基および/またはカルボキシル基を置き換える他の官能基も含んでよく、それにより、アミノ酸模倣体が、隣接するアミノ酸、アミノ酸誘導体および/またはアミノ酸模倣体との代替結合の形成をおこすこと、ならびにペプチド模倣体を形成することを可能にする。
【0170】
さらに、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数の非標準アミノ酸を含み得る。非標準アミノ酸は、標準アミノ酸のアミノ酸模倣体もしくは誘導体であってもよく、いかなる標準アミノ酸とも構造的に無関係のものであってもよい。非標準アミノ酸は、これだけに限定することなく、D-アミノ酸(例えば、D-アラニン、D-メチオニン)、ホモアミノ酸(例えば、ホモセリン、ホモアルギニン、ホモシステイン、α-アミノアジピン酸)、N-メチル化アミノ酸(例えば、サルコシン、N-Me-ロイシン)、α-メチルアミノ酸(例えば、α-メチルヒスチジン、α-アミノイソ酪酸)、β-アミノ酸(例えば、β-アラニン、D-3-アミノイソ酪酸、L-β-ホモアラニン)、γ-アミノ酸(例えば、γ-アミノ酪酸)、アラニン模倣体もしくは誘導体(例えば、β-シクロプロピルアラニン、フェニルグリシン、デヒドロ-アラニン、β-シアノアラニン、β-(3-ピリジル)-アラニン、β-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン、β-(1-ピペラジニル)-アラニン)、フェニルアラニン模倣体もしくは誘導体(例えば、4-ヨードフェニルアラニン、ペンタフルオロ-フェニルアラニン、ナフチル-アラニン、4-アミノフェニルアラニン)、アルギニン模倣体もしくは誘導体(例えば、β-ウレイドアラニン、ω-メチルアルギニン)、リシン模倣体もしくは誘導体(例えば、(3-(3-メチル-3H-ジアジリン-3-イル)プロパミノ)カルボニル-l-リシン、Nε,Nε,Nε-トリメチルリシン)、ヒスチジン模倣体もしくは誘導体(例えば、2,5-ジヨードヒスチジン、1-メチルヒスチジン)、チロシン模倣体もしくは誘導体(例えば、3-アミノチロシン、チロニン、3,5-ジニトロチロシン、3-ヒドロキシメチルチロシン、O-ホスホ-L-チロシン)、トリプトファン模倣体もしくは誘導体(例えば、5-ヒドロキシトリプトファン、1-メチルトリプトファン)、セリン模倣体もしくは誘導体(例えば、β-(2-チエニル)-セリン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリン、O-ホスホセリン)、トレオニン模倣体もしくは誘導体(例えば、アロトレオニン、O-ホスホトレオニン)、プロリン模倣体もしくは誘導体(例えば、ヒドロキシプロリン、3,4-デヒドロ-プロリン、ピログルタミン酸、チアプロリン、シス-オクタヒドロインドール-2-カルボン酸)、ロイシンおよびイソロイシン模倣体もしくは誘導体(例えば、アロイソロイシン、ノルロイシン、4,5-デヒドロロイシン、(4S)-4-ヒドロキシ-L-イソロイシン)、バリン模倣体もしくは誘導体(例えば、ノルバリン、γ-ヒドロキシバリン)、シトルリン模倣体もしくは誘導体(例えば、チオシトルリン、ホモシトルリン)、システイン模倣体もしくは誘導体(例えば、ペニシラミン、セレノシステイン、ブチオニン-スルホキシイミン)、メチオニン模倣体もしくは誘導体(例えば、S-メチルメチオニン、L-メチオニンスルホン、L-メチオニンスルホキシド、L-メチオニンスルホキシイミン、セレノメチオニン)、アスパラギン酸模倣体もしくは誘導体(例えば、DL-トレオ-β-ヒドロキシアスパラギン酸、L-アスパラギン酸β-メチルエステル)、グルタミン酸模倣体もしくは誘導体(例えば、γ-メチレングルタミン酸、γ-カルボキシグルタミン酸、γ-ヒドロキシグルタミン酸、L-グルタミン酸5-メチルエステル、L-2-アミノヘプタン二酸)、アスパラギン模倣体もしくは誘導体(例えば、L-トレオ-3-ヒドロキシアスパラギン、N,N-ジメチル-L-アスパラギン、L-2-アミノ-2-カルボキシエタンスルホンアミド、5-ジアゾ-4-オキソ-L-ノルバリン)、グルタミン模倣体もしくは誘導体(例えば、4-F-(2S,4R)-フルオログルタミン、γ-グルタミルメチルアミド、テアニン、L-グルタミン酸γ-モノヒドロキサメート)、環状部分を含むアミノ酸(例えば、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、アゼチジン-2-カルボン酸、ピペコリン酸、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、スピナシン)、または生体直交型部分を含むアミノ酸(例えば、プロパルギルグリシン、α-アリルグリシン、L-アジド-ホモアラニン、p-ベンゾイル-l-フェニルアラニン、p-2-フルオロアセチル-l-フェニルアラニン、(S)-2-アミノ-3-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)プロパン酸)であり得る。
【0171】
上記のアルファアミノ酸に加えて、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数のβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸またはε-アミノ酸も含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、リンカーは、ペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体は、2つのα-アミノ酸の間で形成される古典的なペプチド結合のみを含有するだけではなく、それに加えてまたはその代わりに、アルファアミノ酸とβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸もしくはε-アミノ酸の間、または2つのβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸もしくはε-アミノ酸の間で形成される1つまたは複数のアミド結合を含み得る。したがって、リンカーがペプチドとして記載される本発明のいずれの場合においても、リンカーはペプチド模倣体であってもよく、したがって、α-アミノ酸のみからなるだけではなく、その代わりに、1つまたは複数のβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸もしくはε-アミノ酸またはアミノ酸に分類されない分子を含み得ることが理解されるべきである。本発明のリンカーに含めることができるβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸またはε-アミノ酸の例としては、これだけに限定されないが、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニル酸ペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、6-アミノヘキサン酸およびスタチンが挙げられる。
【0172】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、0~12の、アミノ酸誘導体およびアミノ酸模倣体を含めたアミノ酸残基を含み得る。すなわち、ある特定の実施形態では、(Sp1)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12アミノ酸残基を含み得、(Sp2)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12アミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、(Sp1)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12アミノ酸残基を含み得、(Sp2)は存在しなくてもよい。特に、B1がペイロードである場合、(Sp2)は存在しないことが好ましい。B1が連結部分である実施形態では、(Sp2)は、存在していてよく、必要に応じて、追加のペイロードまたは連結部分(B2)と接続されていてよい。
【0173】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体のみからなるものでなくてよい。すなわち、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、非アミノ酸構成成分を含んでもよく、非アミノ酸構成成分のみからなるものであってもよい。ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、アミノ酸および非アミノ酸構成成分を含み得る。例えば、これだけに限定されないが、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、例えば、1~200原子の、炭素を含むフレームワーク、必要に応じて、少なくとも10原子、例えば、10~100原子または20~100原子の、1つまたは複数の原子が置換された、炭素を含むフレームワークを含み得、必要に応じて、炭素を含むフレームワークは、任意の鎖成長または段階的成長重合プロセスの結果得られた、鎖状炭化水素であるか、または環状基、対称にもしくは非対称に分枝した炭化水素、単糖、二糖、鎖状もしくは分枝オリゴ糖(非対称に分枝したもしくは対称に分枝したもの)、他の天然の鎖状または分枝オリゴマー(非対称に分枝したもしくは対称に分枝したもの)、またはより一般的には任意の二量体、三量体、またはより高次のオリゴマー(鎖状、非対称に分枝したものもしくは対称に分枝したもの)を含む。
【0174】
すなわち(Sp1)および/または(Sp2)は、任意の直鎖、分枝および/または環状C2~30アルキル、C2~30アルケニル、C2~30アルキニル、C2~30ヘテロアルキル、C2~30ヘテロアルケニル、C2~30ヘテロアルキニルであり得るまたはそれを含み得、必要に応じて、1つまたは複数の同素環芳香族化合物ラジカルまたは複素環化合物ラジカルが挿入されていてよい;とりわけ、任意の直鎖または分枝C2~5アルキル、C5~10アルキル、C11~20アルキル、-O-C1~5アルキル、-O-C5~10アルキル、-O-C11~20アルキル、または(CH2-CH2-O-)1~24または(CH2)×1-(CH2-O-CH2)1~24-(CH2)×2基(式中、×1および×2は、独立に、0から20までの範囲の中で選択される整数である)、アミノ酸、オリゴペプチド、グリカン、サルフェート、ホスフェート、またはカルボキシレート。一部の実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は、C2~6アルキル基を含み得る。
【0175】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)部分または同等の縮合ポリマー、例えば、ポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(pCBMA)、ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリビニルピロリドンまたはポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)を含み得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、工業生産から薬まで多く適用されているポリエーテル化合物である。PEGは、その分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても公知である。PEGの構造は、一般に、H-(O-CH2-CH2)n-OHと表される。
【0176】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、デキストランを含み得る。「デキストラン」という用語は、本明細書で使用される場合、様々な長さの鎖で構成される複雑な分枝グルカンを指し、3kDaから2000kDaまでにわたる重量を有し得る。直鎖は、一般には、グルコース分子間のアルファ-1,6グリコシド結合からなり、一方、分枝は、アルファ-1,3結合から始まる。デキストランは、スクロースから、例えば、乳酸菌によって合成され得る。本発明に関しては、担体として使用するデキストランは、約15~1500kDaの分子量を有することが好ましい場合がある。
【0177】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、オリゴヌクレオチドを含み得る。「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のいずれかのオリゴマーまたはポリマー、ならびに天然に存在しないオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、DNAのポリマーであることが好ましく、これは、安定性がより高いからである。
【0178】
本発明の方法に使用するリンカーは、化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)を含有し得る。これらの化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、同じ場合もあり、同じでない場合もある。一部の実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数の自壊牲部分を含む自己脱離スペーサーであり得る。(Sp1)および/または(Sp2)は、分枝または非分枝であり得、B1および/またはB2に対する1つまたは複数の結合部位を含み得る。本発明によると、単一の部分のみを放出することができる自己脱離スペーサーは、「単一放出スペーサー」と称される。2つまたはそれよりも多くの部分を放出することができる自己脱離スペーサーは、「多重放出スペーサー」と称される。スペーサーは、分枝または非分枝のいずれであってもよく、1,2+2n-脱離(n≧1)によって自己脱離し、「電子カスケードスペーサー」と称される。スペーサーは、「ω-アミノアミノカルボニル環化スペーサー」と称される環状尿素誘導体の形成下での環化プロセスによって脱離し得る。
【0179】
化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、自己脱離性であっても非自己脱離性であってもよい。「自己脱離性」スペーサー単位により、別の加水分解ステップを伴わずにペイロードを放出させることが可能になる。自己脱離性スペーサーを使用する場合、固有の誘発系(例えば、p-アミノベンジル単位を有する切断可能配列)の切断または変換後、これにより、最終的に1つまたは複数の部分B1および/またはB2をリンカーから放出する。自己脱離スペーサーは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2002/083180およびWO2004/043493に記載されているもの、ならびに当業者に公知の他の自己脱離スペーサーであり得る。ある特定の実施形態では、リンカーのスペーサー単位は、p-アミノベンジル単位を含み得る。そのような一実施形態では、p-アミノベンジルアルコールをアミノ酸単位にアミド結合によって結合させることができ、ベンジルアルコールとペイロードの間でカルバメート、メチルカルバメート、またはカーボネートが生成される。一実施形態では、スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)であり得る。自己脱離性スペーサーの例として、さらに、これだけに限定されないが、p-アミノベンジルアルコールと電子的に類似した芳香族化合物(例えば、US2005/0256030A1を参照されたい)、例えば、2-アミノイミダゾール-5-メタノール(methanoi)誘導体(Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9: 2237)およびオルト-またはパラ-アミノベンジルアセタールが挙げられる。スペーサーは、アミド結合が加水分解されると環化するもの、例えば、置換および非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al.. Chemistry Biology, 1995, 2, 223)および2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry, et al., J. Org. Chem., 1990, 55.5867)であり得る。グリシンのα位(a-position)に置換を有するアミン含有薬物の脱離(Kingsbury, et al., J. Med. Chem., 1984, 27, 1447)も自壊牲スペーサーの例である。
【0180】
さらに、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数の自壊牲基を含み得る。「自壊牲基」という用語は、間隔が置かれた2つの化学的部分(すなわち、Aaxと(Sp1)、(Sp1)とB1、B1と(Sp2)、(Sp2)とB2または(Sp1)および/もしくは(Sp2)内の2つのアミノ酸残基)を共有結合により連結して安定な分子にすることが可能な二官能性化学的部分を指す。自壊牲基の例は本明細書に提供されている。
【0181】
化学スペーサー(Sp1)は、Aaxと共有結合により連結することができる。Aaxと(Sp1)をAaxに含まれるカルボキシル基を介して接続することができることが好ましい。Aaxを(Sp1)に含まれるアミノ酸残基とペプチド結合またはイソペプチド結合によって接続することができることがより好ましく、ここで、Aaxは、形成されたペプチドのN末端アミノ酸である。
【0182】
さらに、化学スペーサー(Sp1)またはAaxをB1と共有結合により連結することができる。ある特定の実施形態では、(Sp1)またはAaxをB1とカルボキシル基を介して接続することができ、ここで、カルボキシル基は、(Sp1)のC末端アミノ酸に含まれるものであることが好ましい。B1がアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣体である実施形態では、B1を(Sp1)またはAaxにAaxまたは(Sp1)に含まれるカルボキシル基とB1に含まれるアミノ基の間で形成されるペプチド結合またはイソペプチド結合を介して接続することができる。ある特定の実施形態では、Aaxまたは(Sp1)に含まれるカルボキシル基はα-アミノ酸のα-カルボキシル基であり得、かつ/または、B1に含まれるアミノ基はα-アミノ酸のα-アミノ基であり得る。他の実施形態では、B1を(Sp1)に含まれるアミノ酸側鎖と接続することができる。すなわち、B1を(Sp1)に含まれるアミノ酸側鎖の官能基に適合する官能基を介して接続することができる。
【0183】
さらに、化学スペーサー(Sp2)をB1に共有結合により連結することができる。ある特定の実施形態では、(Sp2)をB1にアミノ基を介して接続することができ、ここで、アミノ基は、(Sp2)のN末端アミノ酸に含まれるものであることが好ましい。B1がアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣体である実施形態では、B1を(Sp2)にB1に含まれるカルボキシル基と(Sp2)に含まれるアミノ基間で形成されるペプチド結合またはイソペプチド結合によって接続することができる。ある特定の実施形態では、B1に含まれるカルボキシル基は、α-アミノ酸のα-カルボキシル基であり得、かつ/または、(Sp2)に含まれるアミノ基は(Sp2)に含まれるN末端α-アミノ酸のα-アミノ基であり得る。
【0184】
(Sp1)および/または(Sp2)がアミノ酸、アミノ酸模倣体および/またはアミノ酸誘導体を含むまたはそれからなる実施形態では、C末端残基は、保護されたC末端カルボキシル基を含み得る。
【0185】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、本発明による方法に関する。
【0186】
すなわち、ある特定の実施形態では、リンカーは、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1のアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体を含む。アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含む、リンカーに含まれるアミノ酸残基は、Aaxに含まれるアミノ酸残基、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)に含まれるアミノ酸残基、ならびにある特定の実施形態では、B1に含まれるアミノ酸残基であることが好ましく、ここで、B1は、アミノ酸に基づく連結部分またはペイロードであることが理解されるべきである。リンカーが単一のアミノ酸残基のみを含み得る実施形態では、単一のアミノ酸残基は、Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であることが好ましい。そのような実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は、存在しない、または、いかなるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体も含まないかのいずれかである。ある特定の実施形態では、単一のアミノ酸残基を含むリンカーは、構造Aax-B1を有し得る。
【0187】
ある特定の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から25の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から20の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から15の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から10の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた3から10の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた3から8の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含むリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた4から8の間のアミノ酸残基を含み得る。
【0188】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーの正味の電荷が中性または正である、本発明による方法に関する。
【0189】
ある特定の実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカー(または本明細書に開示されるペプチド模倣体)である。すなわち、部分Aax、(Sp1)および(Sp2)は、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体のみからなる。ペプチドの正味の電荷は、通常、中性pH(7.0)で算出される。最も単純な手法では、正味の電荷は、正に荷電したアミノ酸残基(ArgおよびLysおよび必要に応じてHis)の数と負に荷電したアミノ酸残基(AspおよびGlu)の数を足し算し、2つの群の差異を算出することによって決定される。リンカーが、荷電した官能基が改変または置換されている非標準アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む場合、非標準アミノ酸またはアミノ酸誘導体の中性pHにおける電荷を決定するための方法が当業者には知られている。
【0190】
ある特定の実施形態では、ペイロードまたは連結部分B1および/またはB2ならびに(Sp1)および(Sp2)に含まれる任意の非アミノ酸部分もリンカーの正味の電荷に寄与し得る。しかし、好ましくは中性pH(7.0)における、任意の非アミノ酸部分を含むリンカー全体の正味の電荷を算出するための方法が当業者には知られている。
【0191】
ある特定の実施形態では、リンカーの正味の電荷を、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含む、リンカーに含まれるアミノ酸残基のみに基づいて算出する。したがって、特定の実施形態では、本発明は、リンカーに含まれるアミノ酸残基の正味の電荷が中性または正である、本発明による方法に関する。
【0192】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、本発明による方法に関する。
【0193】
すなわち、リンカーは、負に荷電したアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体を含まないものであり得る。負に荷電したアミノ酸残基は、中性pH(7.0)で負電荷を帯びているアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である。負に荷電した標準アミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸である。しかし、負に荷電した非標準アミノ酸、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体が当技術分野で公知である。ある特定の実施形態では、リンカーは、Aaxの位置に、グルタミン酸、アスパラギン酸または別の負に荷電したアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体を含み得る。そのような実施形態では、本発明は、リンカーに含まれる化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)が、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、本発明による方法に関する。
【0194】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、本発明による方法に関する。
【0195】
すなわち、リンカーは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つの正に荷電したアミノ酸残基を、好ましくは部分Aax、(Sp1)および/または(Sp2)のうちの少なくとも1つに含み得る。正に荷電したアミノ酸残基は、中性pH(7.0)で正電荷を帯びているアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である。正に荷電した標準アミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンである。しかし、正に荷電した非標準アミノ酸、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体も当技術分野で公知である。
【0196】
本発明の一実施形態によると、リンカー、特に化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、
・リシン、
・アルギニン、
・ヒスチジン、および/または
・任意の正に荷電したその模倣体または誘導体
からなる群から選択されるアミノ酸残基を少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ含む。
【0197】
リシンのアミノ酸側鎖には一級アミンが含まれるので、リンカーは、リシンを含まず、その代わりに、一級アミンを含まない、一級アミンが例えばアセチル化されたものであり得る、リシン誘導体またはリシン模倣体を含むことが好ましい。
【0198】
したがって、ある特定の実施形態では、リンカー、特に化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、
・アルギニン、
・ヒスチジン、および/または
・任意の正に荷電したその模倣体または誘導体
からなる群から選択されるアミノ酸残基を少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ含む。
【0199】
ある特定の実施形態では、リンカー、特に化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、アルギニン残基および/またはその正に荷電したアミノ酸模倣体または誘導体を少なくとも1つ含む。
【0200】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、正味の電荷が中性または正である。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、正味の電荷が中性または正であり、アルギニンおよび/またはヒスチジン残基を少なくとも1つ含む。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、正味の電荷が中性または正であり、アルギニン残基を少なくとも1つ含む。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、リシン残基を含まない。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、正味の電荷が中性または正であり、リシン残基を含まない。
【0201】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得、ここで、CONHは、残基NH2-(CH2)n-COOHのカルボキシル基とN末端Aax残基のアミノ基の間で形成されたアミド結合であり、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端アミノ酸残基NH2-(CH2)n-COOHに含まれる一級アミンを介してコンジュゲートすることができる。
【0202】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。
すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0203】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。
【0204】
すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0205】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。
【0206】
すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0207】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-Thr-Arg-B1、NH2-(CH2)nCONH-Ile-Arg-B1、NH2-(CH2)n-CONH-Asp-Arg-B1、またはNH2-(CH2)n-CONH-Trp-Arg-B1を有し得る。
【0208】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。
【0209】
すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)nCONH-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0210】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0211】
すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0212】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0213】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0214】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0215】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-Ala-Arg-Lys(N3)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0216】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0217】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0218】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0219】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、ここで、nは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0220】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-Gly-Arg-Lys(N3)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0221】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
NH2-(CH2)n-CONH-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0222】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-Val-Cit-B1を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0223】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造NH2-(CH2)n-CONH-Val-Arg-B1を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0224】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Gly-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、そのN末端グリシン残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0225】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0226】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0227】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0228】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造Gly-Thr-Arg-B1(配列番号63)、Gly-Ile-Arg-B1(配列番号64)、Gly-Asp-Arg-B1(配列番号65)またはGly-Trp-Arg-B1(配列番号66)を有し得る。
【0229】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0230】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0231】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0232】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0233】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0234】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0235】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:Gly-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号39)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0236】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、ここで、nは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0237】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0238】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0239】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0240】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:Gly-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号40)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0241】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
Gly-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0242】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造Gly-Val-Cit-B1(配列番号51)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0243】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造Gly-Val-Arg-B1(配列番号52)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0244】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造β-Ala-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端β-アラニン残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0245】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0246】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0247】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0248】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造β-Ala-Thr-Arg-B1(配列番号67)、β-Ala-Ile-Arg-B1(配列番号68)、β-Ala-Asp-Arg-B1(配列番号69)またはβ-Ala-Trp-Arg-B1(配列番号70)を有し得る。
【0249】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0250】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0251】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0252】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0253】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0254】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0255】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:β-Ala-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号41)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0256】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0257】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0258】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0259】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0260】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:β-Ala-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号42)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0261】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
β-Ala-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0262】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造β-Ala-Val-Cit-B1(配列番号53)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0263】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造β-Ala-Val-Arg-B1(配列番号54)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0264】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造GABA-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端γ-アミノ酪酸(GABA)残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0265】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0266】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0267】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0268】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造GABA-Thr-Arg-B1(配列番号71)、GABA-Ile-Arg-B1(配列番号72)、GABA-Asp-Arg-B1(配列番号73)またはGABA-Trp-Arg-B1(配列番号74)を有し得る。
【0269】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0270】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0271】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0272】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0273】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0274】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0275】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:GABA-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号43)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0276】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0277】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0278】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0279】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0280】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:GABA-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号44)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0281】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
GABA-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0282】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造GABA-Val-Cit-B1(配列番号55)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0283】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造GABA-Val-Arg-B1(配列番号56)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0284】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造5-AVA-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端5-アミノペンタン酸(5-アミノ吉草酸(5-AVA))残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0285】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0286】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0287】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0288】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造5-AVA-Thr-Arg-B1(配列番号75)、5-AVA-Ile-Arg-B1(配列番号76)、5-AVA-Asp-Arg-B1(配列番号77)または5-AVA-Trp-Arg-B1(配列番号78)を有し得る。
【0289】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0290】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0291】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0292】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0293】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0294】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0295】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:5-AVA-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号45)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0296】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0297】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0298】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0299】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0300】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:5-AVA-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号46)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0301】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
5-AVA-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0302】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造5-AVA-Val-Cit-B1(配列番号57)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0303】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造5-AVA-Val-Arg-B1(配列番号58)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0304】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造EACA-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸(EACA))残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0305】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0306】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0307】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0308】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造EACA-Thr-Arg-B1(配列番号79)、EACA-Ile-Arg-B1(配列番号80)、EACA-Asp-Arg-B1(配列番号81)またはEACA-Trp-Arg-B1(配列番号82)を有し得る。
【0309】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0310】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0311】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0312】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0313】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0314】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0315】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:EACA-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号47)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0316】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0317】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0318】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0319】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0320】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:EACA-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号48)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0321】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
EACA-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0322】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造EACA-Val-Cit-B1(配列番号59)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0323】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造EACA-Val-Arg-B1(配列番号60)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0324】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造7-AHA-(Sp1)-B1を有し得るまたはそれを含み得る。すなわち、リンカーを、抗体と、N末端7-アミノヘプタン酸残基を介してコンジュゲートすることができる。
【0325】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、アミノ酸からなり得るまたはそれを含み得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0326】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、正に荷電したアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、アルギニン、アルギニン誘導体またはアルギニン模倣体であり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0327】
ある特定の実施形態では、アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、化学スペーサー(Sp1)に含まれるC末端アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、C末端アルギニン残基(または模倣体もしくは誘導体)は、ペイロードB1に共有結合していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0328】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造7-AHA-Thr-Arg-B1(配列番号83)、7-AHA-Ile-Arg-B1(配列番号84)、7-AHA-Asp-Arg-B1(配列番号85)または7-AHA-Trp-Arg-B1(配列番号86)を有し得る。
【0329】
ある特定の実施形態では、B1は、連結部分6-アジド-L-リシン(Lys(N3))であり得る。ある特定の実施形態では、Lys(N3)は、(Sp1)のC末端Arg残基に共有結合により連結していてよい。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0330】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)に含まれるN末端アミノ酸は、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0331】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0332】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Ala-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0333】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Ala-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0334】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Ala-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0335】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:7-AHA-Ala-Arg-Lys(N3)(配列番号49)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0336】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0337】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Gly-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、少なくとも1つのAaxは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0338】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Gly-(Aax)o-Arg-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である。
【0339】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Gly-(Aax)o-Arg-Lys(N3)
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数であり、Argは、アルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体であり、Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンである。
【0340】
ある特定の実施形態では、リンカーは、構造:7-AHA-Gly-Arg-Lys(N3)(配列番号50)を有し得るまたはそれを含み得る。
【0341】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)は、Val-Aaxモチーフを含み得るまたはそれからなり得る。すなわち、本発明によるリンカーは、構造:
7-AHA-Val-(Aax)o-B1
を有し得るまたはそれを含み得、
ここで、Aaxは、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、oは、24、20、15、10、9、8、7、6、5より小さい整数である。
【0342】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造7-AHA-Val-Cit-B1(配列番号61)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0343】
ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、構造7-AHA-Val-Arg-B1(配列番号62)を有し得るまたはそれを含み得、ここで、nは、1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から6までの整数である。
【0344】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB2を含み、特に、B2が、リンカーに化学スペーサー(Sp2)を介して接続している、本発明による方法に関する。
【0345】
すなわち、本発明のリンカーは、第2のペイロードまたは連結部分B2を含み得る。ペイロードまたは連結部分B2は、化学スペーサー(Sp2)と接続していてもよく、ペイロードまたは連結部分B1と直接接続していてもよい。したがって、本発明による方法に使用されるリンカーは、構造:Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)-B2、Aax-B1-(Sp2)-B2、Aax-(Sp1)-B1-B2またはAax-B1-B2を含み得る。ペイロードまたは連結部分B2は、B2を(Sp2)またはB1に含まれる官能基と接続するために適した任意の官能基を含み得る。ペイロードまたは連結部分B2は、B2と(Sp2)またはB1との接続に用いられるアミノ基を含むことが好ましい。すなわち、B2を(Sp2)またはB1に含まれるカルボキシル基と前記アミノ基を介して接続することができる。ある特定の実施形態では、(Sp2)に含まれるカルボキシル基は、化学スペーサー(Sp2)のC末端アミノ酸残基に含まれるカルボキシル基であり得る。ある特定の実施形態では、B2に含まれるカルボキシル基は、アミノ酸に基づくペイロードまたは連結部分のα-カルボキシル基であり得る。ある特定の実施形態では、ペイロードまたは連結部分B2を(Sp2)に含まれるアミノ酸側鎖と接続することができる。すなわち、B2を(Sp2)に含まれるアミノ酸側鎖の官能基と、適合する官能基を介して接続することができる。
【0346】
ある特定の実施形態では、Aax、(Sp1)および(Sp2)は、アミノ酸、アミノ酸模倣体および/またはアミノ酸誘導体のみからなる。ある特定の実施形態では、B1および/またはB2もアミノ酸構造を含む。そのような実施形態では、リンカーは、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。B1がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1を有し得、ここで、Aax-(Sp1)-B1は、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体を形成する。B1がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)は、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体を形成する。B1およびB2がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)-B2を有し得、ここで、Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)-B2は、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体を形成する。B1がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体ではない実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1を有し得、ここで、Aax-(Sp1)は、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体を形成し、B1は、(Sp1)に含まれるC末端カルボキシル基と接続している。B1がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり、B2がアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体ではない実施形態では、リンカーは、構造Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)-B2を有し得、ここで、Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)は、鎖状ペプチドまたはペプチド模倣体を形成し、B2は、(Sp2)に含まれるC末端カルボキシル基と接続している。
【0347】
そのような実施形態では、抗体-ペイロードコンジュゲートを、例えば、2または4の抗体対ペイロード比で、例えば、各Q295残基にコンジュゲートした1つまたは2つのペイロードで生成することができる。
【0348】
特定の実施形態では、本発明は、B1とB2が互いに同一であるかまたは異なる、本発明による方法に関する。
【0349】
すなわち、ペイロードまたは連結部分であるB1とB2は、同一である、すなわち、同じ化学構造を有する場合もあり、構造的に異なる場合もある。ある特定の実施形態では、B1とB2は、どちらもペイロードである、またはどちらも連結部分である。B1とB2がどちらもペイロードである実施形態では、B1およびB2の位置にあるペイロードは、同一のペイロードまたは異なるペイロードであり得る。B1とB2がどちらも連結部分である実施形態では、B1およびB2の位置にある連結部分は、同一の連結部分または異なる連結部分であり得る。ある特定の実施形態では、B1は連結部分であり得、B2はペイロードであり得る、または逆に、B1はペイロードであり得、B2は連結部分であり得る。
【0350】
全てのペイロードまたは連結部分がB1位において鎖内ペイロードまたは連結部分として機能し得るとは限らず、これは、例えば、ペイロードまたは連結部分が一方の側の(Sp1)またはAaxと、および他方の側の(Sp2)またはB2と共有結合を形成するための官能基を有さないからであることが理解されるべきである。したがって、B1が鎖内ペイロードまたは連結部分である実施形態では、B1は、二価または多価分子であることが好ましい。例えば、B1は、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であり得る。そのような実施形態では、B1は、アミノ基を介してAaxまたは(Sp1)のC末端カルボキシル基と接続し、カルボキシル基を介して(Sp2)またはB2のN末端アミノ基と接続していてよい。
【0351】
本発明の方法を、抗体-リンカーコンジュゲートまたはADCを一段階コンジュゲーションプロセスでまたは二段階コンジュゲーションプロセスで生成するために使用することができる。以下の表1は本明細書で使用される2つの用語を明確にするものである:
表1:一段階および二段階コンジュゲーション
【表1】
【0352】
特定の実施形態では、本発明は、B1および/またはB2が連結部分である、本発明による方法に関する。
【0353】
すなわち、本発明のリンカーに含まれる部分B1とB2のうちの少なくとも一方が連結部分であり得る。「連結部分」とは、本明細書で使用される場合、一般に、少なくとも二官能性の分子を指す。本発明の範囲内で、連結部分は、連結部分と本発明のリンカーのカップリングを可能にする第1の官能基と、リンカーを抗体とコンジュゲートする前、またはその後に追加の分子をリンカーとカップリングするために使用することができる第2の官能基とを含む。ある特定の実施形態では、本発明の連結部分は、アミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体である。そのような実施形態では、連結部分は、アミノ基を介してリンカーと接続しており、一方、アミノ酸側鎖に含まれる官能基が追加の分子をリンカーとカップリングするために使用され得ることが好ましい。
【0354】
特定の実施形態では、本発明は、連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基、または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、本発明による方法に関する。
【0355】
「生体直交型マーカー基」という用語は、生物系の内部で、ネイティブな生化学的プロセスに干渉することなく化学反応が起こるよう導くことができる反応性基を示すために、Sletten and Bertozzi (A Bioorthogonal Quadricyclane Ligation. J Am Chem Soc 2011, 133 (44), 17570-17573)によって確立された。「架橋のための非生体直交型実体」は、適合する第2の官能基を含むペイロードに化学的にまたは酵素的に架橋することができる第1の官能基を含むまたはそれからなる任意の分子であり得る。架橋反応が非生体直交型反応である場合であっても、反応により、ペイロードとリンカーの架橋以外の追加の改変が抗体に導入されないことが好ましい。上記を考慮して、連結部分B1および/またはB2は、「生体直交型マーカー基」もしくは「非生体直交型実体」のいずれかからなり得る、または、「生体直交型マーカー基」もしくは「非生体直交型実体」を含み得る。例えば、連結部分Lys(N3)の場合、Lys(N3)全体およびアジド基単独のどちらも、本発明の範囲内の生体直交型マーカー基として考えることができる。Lys(N3)は、6-アジド-L-リシンを指し、K(N3)とも省略され得る。
【0356】
特定の実施形態では、本発明は、生体直交型マーカー基または非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N3;
・Lys(N3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、本発明による方法に関する。
【0357】
これらの基は、例えば、表2に示す結合反応のいずれかに関与する:
表2
【表2-1】
【表2-2】
【0358】
連結部分B1および/またはB2は、表2において「結合パートナー1」または「結合パートナー2」と称されるものであり得るまたはそれを含み得る。
【0359】
ある特定の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、遊離のスルフヒドリル基を有するシステイン、システイン模倣体またはシステイン誘導体である。
【0360】
そのようなCys残基(または模倣体もしくは誘導体)の遊離のスルフヒドリル基を、マレイミドなどのチオ選択的求電子剤を含む毒素構築物とコンジュゲートすることができる。マレイミド部分を含む毒素構築物は頻繁に使用されており、アドセトリス(Adcetris)のように医薬当局による承認を受けたものもある。したがって、MMAE毒素を含む毒素構築物を本発明のリンカー内のCys残基の遊離のスルフヒドリル基と結合させることができる。
【0361】
3-アリールプロピオニトリル(APN)またはホスホンアミデートなどの他のチオ選択的求電子剤をマレイミドの代わりに本発明の方法に使用することができることにも留意する必要がある。
【0362】
したがって、本発明によるリンカー内にCys残基をもたらすことには、既製の毒素-マレイミド構築物を使用して抗体-ペイロードコンジュゲートを創出することが可能になるという、または、より一般的には、Cys-マレイミド結合化学の利点を存分に活用することができるという利点がある。同時に、脱グリコシル化する必要がない既製の抗体を使用することができる。特定の実施形態では、Cys残基は、アミノ酸に基づくリンカーのC末端または鎖内に存在し得る。
【0363】
別の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、アジド基を含む。本発明によるリンカーに組み入れることができるアジド基を含む分子、例えば、6-アジド-リシン(Lys(N3))または4-アジド-ホモアラニン(Xaa(N3))が当業者には知られている。アジド基を含む連結部分を、ひずみ促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)、銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC)またはシュタウディンガーライゲーションなどの種々の生体直交型反応において基質として使用することができる。例えば、ある特定の実施形態では、DBCO、DIBO、BCNまたはBARACなどのシクロオクチン誘導体を含むペイロードを、アジド基を含むリンカーとSPAACによって結合させることができる。
【0364】
さらに別の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、テトラジン基を含む。本発明によるリンカーに組み入れることができるテトラジンを含む分子、好ましくはテトラジン基を含むアミノ酸誘導体が当業者には知られている。テトラジンを含む連結部分を生体直交型テトラジンライゲーションにおいて基質として使用することができる。例えば、ある特定の実施形態では、シクロプロペン、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体またはシクロオクチン基、例えばビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)を含むペイロードを、テトラジン基を含むリンカーと結合させることができる。
【0365】
ある特定の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、シクロペンタジエン誘導体などの環状ジエンを含み得る。マレイミドを含むペイロード分子と連結することができる潜在的なシクロペンタジエン誘導体は、Amant et al., Tuning the Diels-Alder Reaction for Bioconjugation to Maleimide Drug-Linkers;Bioconjugate Chem. 2018, 29, 7, 2406-2414およびAmant et al., A Reactive Antibody Platform for One-Step Production of Antibody-Drug Conjugates through a Diels-Alder Reaction with Maleimide; Bioconjugate Chem. 2019, 30, 9, 2340-2348に記載されている。
【0366】
ある特定の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、光反応性基を含み得る。「光反応性基」という用語は、本明細書で使用される場合、活性種を生成するために印加された外部エネルギー源に応答し、その結果、隣接する化学構造物(例えば、取り出すことが可能な水素(abstractable hydrogen))との共有結合をもたらす化学基を指す。光反応性基の例は、これだけに限定することなく、アリールアジド、例えば、フェニルアジド、o-ヒドロキシフェニルアジド、m-ヒドロキシフェニルアジド、テトラフルオロフェニルアジド、o-ニトロフェニルアジド、m-ニトロフェニルアジド、もしくはアジド-メチルクマリン、ジアジリン、ソラレンまたはベンゾフェノンである。
【0367】
本発明は、2つの異なる生体直交型マーカー基および/または非生体直交型実体を含むリンカーをさらに包含する。例えば、本発明によるリンカーは、アジドを含む連結部分、例えばLys(N3)またはXaa(N3)と、スルフヒドリルを含む連結部分、例えばシステインとを含み得る。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、アジドを含む連結部分、例えばLys(N3)またはXaa(N3)と、テトラジンを含む連結部分、例えばテトラジン修飾アミノ酸とを含み得る。ある特定の実施形態では、本発明によるリンカーは、スルフヒドリルを含む連結部分、例えばシステインと、テトラジンを含む連結部分、例えばテトラジン修飾アミノ酸とを含み得る。2つの異なる生体直交型マーカー基および/または非生体直交型実体を含むリンカーには、2種の別個のペイロードを受容することができ、したがって、1種よりも多くのペイロードを含む抗体-ペイロードコンジュゲートをもたらすことができるという利点がある。
【0368】
そのように、2+2という抗体ペイロード比を得ることができる。第2のペイロードを使用することにより、有効性および効力に関して現行の治療手法を超える完全に新しいクラスの抗体ペイロードコンジュゲートを開発することが可能になり得る。
【0369】
そのような実施形態により、とりわけ、例えばDNAと微小管のような、細胞内の2つの異なる構造を標的とすることが可能になり得る。一部のがんは例えば微小管毒素のような1つの薬物に対して耐性を有し得るので、さらにDNA-毒素によりがん細胞を死滅させることができる。
【0370】
別の実施形態によると、同時にかつ同じ組織内に放出された場合にのみ十分に強力である2種の薬物を使用することができる。これにより、抗体が健康な組織において部分的に分解された場合または1つの薬物が尚早に消失した場合のオフターゲットの毒性の低減をもたらすことができる。
【0371】
さらに、非侵襲性イメージングおよび治療または術中/術後イメージング/外科手術のために、二重標識プローブを使用することができる。そのような実施形態では、腫瘍患者を非侵襲性イメージングによって選択することができる。次いで、外科医またはロボットが外科手術中に全てのがん性組織を同定するのに役立つ他のイメージング剤(例えば、蛍光色素)を使用して腫瘍を外科的に除去することができる。
【0372】
ペイロードを連結部分と共有結合によって連結することが好ましい。しかし、ある特定の実施形態では、ペイロードを連結部分と強力な非共有結合性の結合によって連結することができる。すなわち、ある特定の実施形態では、連結部分B1および/またはB2は、これだけに限定することなく、リシン誘導体ビオシチンなどのビオチン部分を含み得る。そのような実施形態では、ストレプトアビジン部分を含むペイロードを、ビオチン部分を含むリンカーと連結することができる。
【0373】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードを、連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方と連結する追加のステップを含む、本発明による方法に関する。
【0374】
1つまたは複数のペイロードを含むリンカーを抗体と一段階プロセスで直接コンジュゲートする代わりに、本発明は、ある特定の実施形態では、第1のステップにおいて連結部分を含むリンカーB1および/またはB2を抗体とコンジュゲートし、続いて第2のステップにおいて1つまたは複数のペイロードをリンカーの連結部分B1および/またはB2と結合させることができる、二段階プロセスも指す。
【0375】
「ペイロード」という用語は、本明細書で使用される場合、化学的に合成することができる低分子量の分子または化学実体、および、宿主細胞による発酵によって産生させる必要があるもしくは化学的に合成することもでき、抗体に新規の機能性を付与するより大きな分子または生物学的実体を含めた、任意の天然に存在するまたは合成的に生成された分子を表す。ペイロードは、ペイロードとリンカーに含まれる連結部分との、または、化学スペーサー(Sp1)および/もしくは(Sp2)などのリンカーの他の部分との、または、ある特定の実施形態では、AaxまたはB1とのカップリングを可能にするさらなる構造または官能基を含み得ることが理解されるべきである。
【0376】
二段階コンジュゲーションプロセスでは、ペイロードを連結部分B1および/またはB2と当技術分野で公知の任意の適切な方法によって連結することができる。本明細書に開示されたペイロードを生体直交型マーカー基または架橋のための非生体直交型実体のいずれかと連結することができることが好ましい。すなわち、ペイロードは、連結部分B1および/またはB2に含まれる架橋のための生体直交型マーカー基または架橋非生体直交型実体と適合する官能基を含むことが好ましい。
【0377】
ペイロードを連結部分B1および/またはB2に含まれる生体直交型マーカー基と連結するために使用することができるいくつかの生体直交型反応が当技術分野で公知である。例えば、アジドとシクロオクチンの間の1,3-双極性付加環化(銅フリークリックケミストリーとも称される、Baskin et al ("Copper-free click chemistry for dynamic in vivo imaging". Proceedings of the National Academy of Sciences. 104 (43): 16793-7))、ニトロンとシクロオクチンの間の1,3-双極性付加環化(Ning et al ("Protein Modification by Strain-Promoted Alkyne-Nitrone Cycloaddition". Angewandte Chemie International Edition. 49(17): 3065))、アルデヒドおよびケトンからのオキシム/ヒドラゾン形成(Yarema, et al ("Metabolic Delivery of Ketone Groups to Sialic Acid Residues. Application To Cell Surface Glycoform Engineering". Journal of Biological Chemistry. 273(47): 31168-79))、テトラジンライゲーション(Blackman et al ("The Tetrazine Ligation: Fast Bioconjugation based on Inverse-electron-demand Diels-Alder Reactivity". Journal of the American Chemical Society. 130 (41): 13518-9))、イソニトリルに基づくクリック反応(Stoeckmann et al ("Exploring isonitrile-based click chemistry for ligation with biomolecules". Organic & Biomolecular Chemistry. 9(21): 7303))、およびごく最近では、クアドリシクランライゲーション(Sletten & Bertozzi (JACS, A Bioorthogonal Quadricyclane Ligation. J Am Chem Soc 2011, 133 (44), 17570-17573))銅(I)触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC、Kolb & Sharpless ("The growing impact of click chemistry on drug discovery". Drug Discov Today. 8 (24): 1128-1137))、ひずみ促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC、Agard et al ("A Comparative Study of Bioorthogonal Reactions with Azides". ACS Chem. Biol. 1: 644-648))、または、ひずみ促進型アルキン-ニトロン付加環化(SPANC、MacKenzie et al ("Strain-promoted cycloadditions involving nitrones and alkynes-rapid tunable reactions for bioorthogonal labeling". Curr Opin Chem Biol. 21: 81-8))を含めた、生体直交性の要件を満たす多数の化学的ライゲーション戦略が開発されている。これらの文書は全て、十分な実現性のある開示を提供するため、および非常に長い反復を回避するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0378】
本発明によるリンカーを抗体のGln残基に微生物トランスグルタミナーゼによってコンジュゲートした後、ペイロードを、前記リンカーに含まれる架橋のための生体直交型マーカー基または非生体直交型実体に結合させることが好ましいことが理解されるべきである。しかし、本発明は、第1のステップにおいて1つまたは複数のペイロードと連結部分を含むリンカーB1および/またはB2を結合させ、得られたリンカー-ペイロード構築物を第2のステップにおいて抗体と微生物トランスグルタミナーゼによってコンジュゲートしたものである、抗体-リンカーコンジュゲートも包含する。
【0379】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードを、連結部分B1および/またはB2とクリック反応によって連結する、本発明による方法に関する。
【0380】
すなわち、1つまたは複数のペイロードを、連結部分B1および/またはB2と、クリック反応、特に、本明細書に開示されるクリック反応のいずれかで連結することができる。
【0381】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のペイロードを、リンカーに含まれる連結部分B1および/またはB2と、チオール-マレイミドコンジュゲーションによってコンジュゲートすることができる。すなわち、ある特定の実施形態では、ペイロードは、マレイミド基を含むものであり得、連結部分B1および/またはB2は、これだけに限定することなく、システイン残基またはホモシステインなどのシステイン模倣体などの、チオール基を含む分子であり得る。しかし、B1および/またはB2は、遊離のチオール基を含む非アミノ酸分子であってもよい。別の実施形態では、ペイロードは、遊離のチオール基を含むものであり得、連結部分B1および/またはB2は、マレイミド基を含むものであってよい。
【0382】
別の特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のペイロードを、リンカーに含まれる連結部分B1および/またはB2と、ひずみ促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)によってコンジュゲートすることができる。すなわち、ある特定の実施形態では、ペイロードは、これだけに限定することなく、シクロオクチン基などのアルキン基を含むものであり得、連結部分B1および/またはB2は、これだけに限定することなく、本明細書に開示されるリシン誘導体Lys(N3)などの、アジド基を含む分子であり得る。しかし、B1および/またはB2は、遊離のアジド基を含む非アミノ酸分子であってもよい。別の実施形態では、ペイロードは、シクロオクチン基などのアルキン基を含むものであり得、連結部分B1および/またはB2は、アジド基を含むものであり得る。
【0383】
ある特定の実施形態では、B1とB2のうちの一方は、システインなどのチオール基を含む連結部分であり得、B1とB2のうちの他方は、Lys(N3)などのアジド部分を含む連結部分であり得る。そのような実施形態では、2種の別個のペイロードを、リンカーに、一方はチオール-マレイミドコンジュゲーションによって結合させ、他方はSPAAC反応によって結合させることができる。
【0384】
リンカー内の連結部分とペイロードの間のクリック反応に加えて、ペイロードをリンカーと当技術分野で公知の任意の酵素反応または非酵素反応によって共有結合させることができる。そのために、ペイロードを、例えば、リンカーのC末端とまたはリンカーのアミノ酸側鎖と結合させることができる。
【0385】
ある特定の実施形態では、ペイロードをリンカーと化学合成によって結合させることができる。ペイロードをアミノ酸に基づくリンカーと化学合成によって結合させるための方法は当業者には知られている。例えば、アミンを含むペイロード、またはチオールを含むペイロード(例えば、マイタンシン類似体について)、またはヒドロキシルを含有するペイロード(例えば、SN-38類似体について)を、アミノ酸に基づくリンカーのC末端に化学合成によって結合させることができる。しかし、ペイロードをアミノ酸またはアミノ酸誘導体のC末端または側鎖と化学合成によってカップリングするために利用することができる別の反応および反応性基が当業者には知られている。ペイロードをアミノ酸に基づくリンカーと化学合成によって結合させるために使用することができる典型的な反応としては、限定することなく、ペプチドカップリング、活性化エステルカップリング(NHSエステル、PFPエステル)、クリック反応(CuAAC、SPAAC)、マイケル付加(チオールマレイミドコンジュゲーション)が挙げられる。ペイロードとペプチドのカップリングは、先行技術において、例えば、Costoplus et al. (Peptide-Cleavable Self-immolative Maytansinoid Antibody-Drug Conjugates Designed To Provide Improved Bystander Killing. ACS Med Chem Lett. 2019 Sep 27 ;10 (10): 1393-1399)、Sonzini et al. (Improved Physical Stability of an Antibody-Drug Conjugate Using Host-Guest Chemistry. Bioconjug Chem. 2020 Jan 15 ;31 (1): 123-129)、Bodero et al. (Synthesis and biological evaluation of RGD and isoDGR peptidomimetic-α-amanitin conjugates for tumor-targeting. Beilstein J. Org. Chem. 2018, 14, 407-415)、Nunes et al. (Use of a next generation maleimide in combination with THIOMABTM antibody technology delivers a highly stable, potent and near homogeneous THIOMABTM antibody-drug conjugate (TDC). RSC Adv., 2017,7, 24828-24832)、Doronina et al. (Enhanced activity of monomethylauristatin F through monoclonal antibody delivery: effects of linker technology on efficacy and toxicity. Bioconjug Chem. 2006 Jan-Feb; 17 (1): 114-24)、Nakada et al. (Novel antibody drug conjugates containing exatecan derivative-based cytotoxic payloads. Bioorg Med Chem Lett. 2016 Mar 15 ;26 (6): 1542-1545)およびDickgiesser et al. (Site-Specific Conjugation of Native Antibodies Using Engineered Microbial Transglutaminases. Bioconjug Chem. 2020 Mar 12.doi: 10.1021/acs.bioconjchem.0c00061)により、広範囲にわたって記載されている。
【0386】
特定の実施形態では、本発明は、B1および/またはB2がペイロードである、本発明による方法に関する。
【0387】
ある特定の実施形態では、リンカーは、単一のペイロードB1のみを含み、追加の連結部分を含まない場合がある。すなわち、リンカーは、構造Aax-B1、Aax-(Sp1)-B1またはAax-(Sp1)-B1-(Sp2)を有し得、ここで、B1は、ペイロードである。他の実施形態では、リンカーは、2種のペイロードB1およびB2を含むが、追加の連結部分を有さない場合があり、リンカーは、構造Aax-B1-B2、Aax-(Sp1)-B1-B2、Aax-B1-(Sp2)-B2またはAax-(Sp1)-B1-(Sp2)-B2、Aax-B1-B2-(Sp1)を有し得、ここで、B1およびB2は、ペイロードである。ペイロードのみを含むリンカーを抗体と一段階プロセスでコンジュゲートすることができる。
【0388】
B1とB2がどちらもペイロードである実施形態では、B1とB2は構造が同一の場合もあり、異なる場合もあることが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のペイロードを含むリンカー全体を化学的に合成することができる。あるいは、1つまたは複数のペイロードをリンカーに含まれる連結部分と本明細書に開示される方法のいずれかによって結合させた後に、リンカーを抗体とコンジュゲートすることができる。
【0389】
ある特定の実施形態では、本発明のリンカーにより、2種の異なるペイロードを抗体のCH2ドメインの残基Q295とコンジュゲートすることが可能になり得る。第2のペイロードを使用することにより、有効性および効力に関して現行の治療手法を超える完全に新しいクラスの抗体-ペイロードコンジュゲートを開発することが可能になる。新しい適用分野、例えば、イメージングと治療または術中/術後外科手術のための二重型イメージングも構想される(Azhdarinia A. et al., Dual-Labeling Strategies for Nuclear and Fluorescence Molecular Imaging: A Review and Analysis. Mol Imaging Biol. 2012 Jun; 14 (3): 261-276参照)。例えば、術前陽電子放出断層撮影法(PET)のための分子イメージング剤と、切除縁の誘導描写のための近赤外蛍光(NIRF)色素とを包含する二重標識抗体により、がんの診断、病期分類、および切除を著しく増強することができた(Houghton JL. et al., Site-specifically labeled CA19.9-targeted immunoconjugates for the PET, NIRF, and multimodal PET/NIRF imaging of pancreatic cancer. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Dec 29 ;112 (52): 15850-5参照)。PETおよびNIRF光学イメージングにより、それぞれ、外科手術中に疾患の場所を特定するため、および腫瘍縁を同定するための、非侵襲性全身イメージングを可能にする補完的な臨床的適用がもたらされる。しかし、そのような二重標識プローブの生成は、現在に至るまで、適切な部位特異的方法がないことに起因して困難である;2種の異なるプローブを化学的手段によって結合させることで、プローブのランダムなコンジュゲーションに起因して、解析および再現性がほぼ不可能になる。さらに、Levengood M. et al., (Orthogonal Cysteine Protection Enables Homogeneous Multi-Drug Antibody-Drug Conjugates. Angewandte Chemie, Volume56, Issue 3, January 16, 2017)の試験では、2種の異なるアウリスタチン毒素(異なる生理化学的特性を有し、相補的な抗がん活性を発揮する)を結合させた二重薬物標識抗体により、個々のアウリスタチン構成成分で構成されるADCに対しては不応性であった細胞株および異種移植モデルに活性が付与された。これにより、二重標識ADCにより、がんの不均一性および抵抗性に対して、単一の従来のADC単独よりも有効に対処することができることが示唆される。ADCに対する1つの抵抗性機構は、がん細胞からの細胞傷害性部分の能動的汲み出しを含むので、別の二重薬物適用には、細胞傷害性薬物の排出機構を特異的に遮断する薬物の追加のおよび同時の送達を含めることができる。したがって、そのような二重標識ADCは、ADCに対するがんの抵抗性を従来のADCよりも有効に克服するのに役立ち得る。
【0390】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、
・毒素
・サイトカイン
・成長因子
・放射性核種
・ホルモン
・抗ウイルス剤
・抗菌剤
・蛍光色素
・免疫調節/免疫賦活剤
・半減期増加部分
・溶解性増加部分
・ポリマー-毒素コンジュゲート
・核酸
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分
・ビタミン
・タンパク質分解剤(「PROTAC」)
・標的結合部分、および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、本発明による方法に関する。
【0391】
本明細書に開示されるペイロードの任意の1つを、本明細書に開示される一段階コンジュゲーションプロセスにおける使用のためのリンカーと直接結合させることもでき、本明細書に開示される二段階プロセスで生成された抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる連結部分と連結することもできる。
【0392】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、サイトカインであり得る。「サイトカイン」という用語は、本明細書で使用される場合、他の細胞の機能に影響を及ぼし、免疫または炎症反応における細胞間の相互作用をモジュレートする任意の分泌型ポリペプチドを意味する。サイトカインとしては、これだけに限定されないが、いずれの細胞により産生されたものかにかかわらず、モノカイン、リンフォカイン、およびケモカインが挙げられる。例えば、モノカインは、一般に単球によって産生および分泌されるといわれるが、ナチュラルキラー細胞、線維芽細胞、好塩基球、好中球、内皮細胞、脳アストロサイト、骨髄間質細胞、表皮ケラチノサイト、およびBリンパ球などの多くの他の細胞もモノカインを産生する。リンフォカインは、一般にリンパ球によって産生されるといわれる。サイトカインの例としては、これだけに限定されないが、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、および腫瘍壊死因子ベータ(TNFβ)が挙げられる。
【0393】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、抗炎症剤であり得る。本明細書で使用される場合、「抗炎症剤」という用語は、主要な作用様式および使用が炎症の処置の領域内に入る薬剤クラスを意味し、また、有用な抗炎症効果を有する別の治療クラスの任意の他の薬剤も意味する。そのような抗炎症剤には、これだけに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、マクロライド抗生物質およびスタチンが含まれる。NSAIDには、これだけに限定されないが、サリチラート(例えば、アスピリン)、アリールプロピオン酸(例えば、イブプロフェン)、アンスラニル酸(例えば、メフェナム酸)、ピラゾール(例えば、フェニルブタゾン)、環状酢酸(インドメタシン)およびオキシカム(例えば、ピロキシカム)が含まれることが好ましい。本発明の方法における使用のための抗炎症剤には、スリンダク、ジクロフェナク、テノキシカム、ケトロラク、ナプロキセン、ナブメトン、ジフルニサル(diflunasal)、ケトプロフェン、アリールプロピオン酸(arlypropionic acid)、テニダップ、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブ、バルデコキシブ、メトトレキサート、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、エリスロマイシン、イブプロフェン、デキシブプロフェン(dexibuprofen)、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、デクスケトプロフェン、トルフェナム酸、ニメスリドおよびオキサプロジンが含まれることが好ましい。
【0394】
ある特定の実施形態では、抗炎症剤は、抗炎症性サイトカインであり得、これは、標的特異的抗体とコンジュゲートすると、例えば自己免疫疾患によって引き起こされた炎症を好転させることができるものである。抗炎症活性を有するサイトカインは、これだけに限定することなく、IL-1RA、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13またはTGF-βであり得る。
【0395】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、成長因子であり得る。「成長因子」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の成長、増殖、細胞分化、および/または細胞の成熟化を刺激することが可能な天然に存在する物質を指す。成長因子は、タンパク質またはステロイドホルモンのいずれかの形態で存在する。成長因子は、種々の細胞プロセスを調節するために重要である。成長因子は、一般には、細胞間のシグナル伝達分子として作用する。しかし、細胞の成長、増殖、細胞分化、および細胞の成熟化を促進するそれらの能力は、成長因子間で変動する。成長因子の例の非限定的な一覧としては、塩基性線維芽細胞成長因子、アドレノメデュリン、アンジオポエチン、自己分泌型運動因子、骨形成タンパク質、脳由来神経栄養因子、上皮成長因子(epidermal growth factor)、上皮成長因子(epithelial growth factor)、線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、増殖分化因子-9、肝細胞成長因子、ヘパトーマ由来成長因子、インスリン成長因子、インスリン様成長因子、遊走刺激因子、ミオスタチン、神経成長因子、および他のニューロトロフィン、血小板由来成長因子、トランスフォーミング成長因子アルファ、トランスフォーミング成長因子ベータ、腫瘍壊死因子アルファ、血管内皮成長因子、胎盤成長因子、ウシ胎仔ソマトトロピン、およびサイトカイン(例えば、IL-3およびIL-6に対するIL-1補助因子、IL-2-t細胞成長因子、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7)が挙げられる。
【0396】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、ホルモンであり得る。「ホルモン」という用語は、本明細書で使用される場合、体の一部分において細胞または腺によって放出され、生物体の他の部分の細胞に影響を及ぼすメッセージを送る化学物質を指す。本発明において有用であるホルモンの例は、これだけに限定することなく、メラトニン(MT)、セロトニン(5-HT)、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)、エピネフリンまたはアドレナリン(EPI)、ノルエピネフリンまたはノルアドレナリン(NRE)、ドーパミン(DPMまたはDA)、抗ミュラー管ホルモンまたはミュラー阻害ホルモン(AMH)、アディポネクチン(Acrp30)、副腎皮質刺激ホルモンまたはコルチコトロピン(ACTH)、アンジオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン(AGT)、抗利尿ホルモンまたはバソプレシン(ADH)、心房性ナトリウム利尿性ペプチドまたはアトリオペプチン(ANP)、カルシトニン(CT)、コレシストキニン(CCK)、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン(GRP)、グレリン、グルカゴン(GCG)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、成長ホルモン(GHまたはhGH)、インヒビン、インスリン(INS)、インスリン様成長因子またはソマトメジン(IGF)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSHまたはα-MSH)、オレキシン、オキシトシン(OXT)、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、リラキシン(RLN)、セクレチン(SCT)、ソマトスタチン(SRIF)、トロンボポエチン(TPO)、甲状腺刺激ホルモンまたはチロトロピン(TSH)、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン(DHT)、エストロン、エストリオール(E3)、プロゲステロン、カルシトリオール、カルシジオール、プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)、プロスタサイクリン(PGI2)、トロンボキサン(TXA2)、プロラクチン放出ホルモン(PRH)、リポトロピン(PRH)、脳性ナトリウム利尿性ペプチド(BNP)、神経ペプチドY(NPY)、ヒスタミン、エンドセリン、膵ポリペプチド、レニンおよびエンケファリンである。
【0397】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、抗ウイルス剤であり得る。「抗ウイルス剤」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物におけるウイルスの形成および/または複製の阻害に効果的な薬剤(化合物または生物学的製剤)を意味する。これには、哺乳動物におけるウイルスの形成および/または複製のために必要な宿主機構またはウイルス機構のいずれかに干渉する薬剤が含まれる。抗ウイルス剤としては、例えば、リバビリン、アマンタジン、VX-497(メリメポディブ、Vertex Pharmaceuticals)、VX-498(Vertex Pharmaceuticals)、レボビリン(Levovirin)、ビラミジン(Viramidine)、セプレン(Ceplene)(マキサミン)、XTL-001およびXTL-002(XTL Biopharmaceutical)が挙げられる。
【0398】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、抗菌剤であり得る。「抗菌剤」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)細菌の成長を阻害する、低減させるもしくは防止すること;(ii)対象において感染を引き起こす細菌の能力を阻害するもしくは低下させること;または(iii)環境中で感染性を増すもしくは維持する細菌の能力を阻害するもしくは低下させることが可能な任意の物質、化合物、物質の組合せ、または化合物の組合せを指す。「抗菌剤」という用語は、細菌の感染力または毒力を低下させることが可能な化合物も指す。
【0399】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、免疫調節剤であり得る。「免疫調節剤」という用語は、併用療法に関して本明細書で使用される場合、宿主の免疫系を抑制する、遮蔽する、または増強するように作用する物質を指す。免疫モジュレート剤の例としては、これだけに限定されないが、サイトカイン、ペプチド模倣体、および抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、FabまたはF(ab)2断片またはエピトープ結合断片)などのタンパク質性薬剤、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子、iRNAおよび三重へリックス)、小分子、有機化合物、ならびに無機化合物が挙げられる。特に、免疫モジュレート剤としては、これだけに限定されないが、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、シトキサン、イムラン(Immuran)、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスパガリン、ブレキナル、マロノニトリロアミンド(malononitriloaminde)(例えば、レフルナミド(leflunamide))、T細胞受容体モジュレーター、およびサイトカイン受容体モジュレーターが挙げられる。
【0400】
ある特定の実施形態では、免疫調節剤は、免疫賦活剤であり得る。「免疫賦活剤」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫応答(例えば、特定の病原体に対する免疫応答)を誘発するすることができる任意の物質または物質を指すことが好ましい。免疫細胞を活性化する化合物としては、Toll様受容体(TLR)アゴニストが挙げられる。そのようなアゴニストとしては、病原体関連分子パターン(PAMP)、例えば、感染模倣組成物、例えば、細菌由来免疫モジュレーター(別名、危険信号)および損傷関連分子パターン(DAMP)、例えば、ストレスまたは損傷を受けた細胞を模倣する組成物が挙げられる。TLRアゴニストとしては、核酸または脂質組成物(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA))が挙げられる。一実施例では、TLRアゴニストは、TLR9アゴニスト、例えば、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、PEI-CpG-ODNなどのポリ(エチレンイミン)(PEI)凝縮オリゴヌクレオチド(ODN)、または二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)を含む。別の例では、TLRアゴニストは、TLR3アゴニスト、例えば、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、PEI-ポリ(I:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、PEI-ポリ(A:U)、または二本鎖リボ核酸(RNA)を含む。他の例示的なワクチン免疫賦活化合物としては、リポ多糖(LPS)、ケモカイン/サイトカイン、真菌ベータ-グルカン(例えば、レンチナン)、イミキモド、CRX-527、およびOM-174が挙げられる。
【0401】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、半減期増加部分または溶解性増加部分であり得る。半減期増加部分は、例えば、PEG部分(ポリエチレングリコール部分;PEG化)、他のポリマー部分、PAS部分(プロリン、アラニンおよびセリンを含むオリゴペプチド(oliogopeptide);PAS化)、または血清アルブミン結合物質である。溶解性増加部分は、例えば、PEG部分(PEG化)またはPAS部分(PAS化)である。
【0402】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、ポリマー-毒素コンジュゲートであり得る。ポリマー-毒素コンジュゲートは、多くのペイロード分子を保持することが可能なポリマーである。そのようなコンジュゲートは、例えば、Mersana therapeuticsによって販売されているように、時には、フレキシマーとも称される。ポリマー-毒素コンジュゲートは、本明細書に開示される毒素のいずれかを含み得る。
【0403】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、ヌクレオチドであり得る。核酸ペイロードの1つの例は、MultiCell Technologies,Incによって開発されたMCT-485であり、これは、腫瘍溶解性および免疫活性化特性を有する非常に小さな非コード二本鎖RNAである。
【0404】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、蛍光色素であり得る。「蛍光色素」という用語は、本明細書で使用される場合、第1の波長の光を吸収し、第1の波長よりも長い第2の波長を放出する色素を指す。ある特定の実施形態では、蛍光色素は、650nmから900nmの間の波長の光を放出する近赤外蛍光色素である。この領域では、組織自家蛍光は低度であり、また、蛍光減衰が低いことにより、最小のバックグラウンド干渉で深部組織透過が増強される。したがって、近赤外蛍光イメージングを使用して、本発明の抗体-ペイロードコンジュゲートが結合した組織を外科手術中に可視化することができる。「近赤外蛍光色素」は当技術分野で公知であり、市販されている。ある特定の実施形態では、近赤外蛍光色素は、IRDye 800CW、Cy7、Cy7.5、NIR CF750/770/790、DyLight 800またはAlexa Fluor 750であり得る。
【0405】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、放射性核種を含み得る。「放射性核種」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、Y、In、Tb、Ac、Cu、Lu、Tc、Re、Co、Feなどのような放射性金属の正に荷電したイオン、例えば、90Y、111In、67Cu、77Lu、99Tc、161Tb、225Acなどを含めた、医学的に有用な放射性核種に関する。放射性核種をDOTAまたはNODA-GAなどのキレート剤に含めることができる。さらに、放射性核種は、以下に考察するように、イメージング技法において造影剤として使用することができる治療用放射性核種または放射性核種であり得る。放射性核種を含む放射性核種または分子は当技術分野で公知であり、市販されている。
【0406】
ある特定の実施形態では、ペイロードは、ビタミンであり得る。ビタミンは、葉酸を含めたフォレート、フォラシン、およびビタミンB9からなる群から選択することができる。
【0407】
特定の実施形態では、本発明は、毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD)
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF)
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21)
・デュオカルマイシン
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤
・ツブリシン
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン)
・PNU、ドキソルビシン
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤
・クリプトフィシン
・薬物排出ポンプ阻害剤
・サンドラマイシン
・アマトキシン(例えば、α-アマニチン)および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、本発明による方法に関する。
【0408】
すなわち、本発明の方法を用いて調製される抗体-リンカーコンジュゲートは、毒素ペイロードを含むことが好ましい。「毒素」という用語は、本明細書で使用される場合、生細胞または生物体によって産生され、細胞または生物体に対して有毒である任意の化合物に関する。したがって、毒素は、例えば、小分子、ペプチド、またはタンパク質であり得る。特定の例は、神経毒、壊死毒、血液毒および細胞毒である。ある特定の実施形態では、毒素は、新生物疾患の処置に使用される毒素である。すなわち、毒素を、本発明の方法を用いて抗体とコンジュゲートし、抗体が標的特異性であることにより、悪性細胞にまたは悪性細胞中に送達することができる。
【0409】
ある特定の実施形態では、毒素は、アウリスタチンであり得る。本明細書で使用される場合、「アウリスタチン」という用語は、抗有糸分裂薬のファミリーを指す。アウリスタチン誘導体も「アウリスタチン」という用語の定義に包含される。アウリスタチンの例としては、これだけに限定されないが、アウリスタチンE(AE)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)およびドラスタチンの合成類似体が挙げられる。
【0410】
ある特定の実施形態では、毒素は、メイタンシノイドであり得る。本発明に関しては、「メイタンシノイド」という用語は、元々アフリカの低木Maytenus ovatusから単離された、高度に細胞傷害性である薬物のクラス、および別のマイタンシノール(Maytansinol)および天然マイタンシノールのC-3エステル(米国特許第4,151,042号);合成マイタンシノールのC-3エステル類似体(Kupchan et al., J. Med. Chem. 21: 31-37, 1978;Higashide et al., Nature 270: 721-722, 1977;Kawai et al., Chem. Farm. Bull. 32: 3441-3451;および米国特許第5,416,064号);単純なカルボン酸のC-3エステル(米国特許第4,248,870号;同第4,265,814号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;および同第4,331,598号);ならびにN-メチル-L-アラニンの誘導体とのC-3エステル(米国特許第4,137,230号;同第4,260,608号;およびKawai et al., Chem. Pharm Bull. 12: 3441, 1984)を指す。本発明の方法に使用することができるまたは本発明の抗体-ペイロードコンジュゲートに含めることができる例示的なメイタンシノイドは、DM1、DM3、DM4および/またはDM21である。
【0411】
ある特定の実施形態では、毒素は、デュオカルマイシンであり得る。適切なデュオカルマイシンは、例えば、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンCI、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、デュオカルマイシンMA、およびCC-1065であり得る。「デュオカルマイシン」という用語は、デュオカルマイシンの合成類似体、例えば、アドゼレシン、ビゼレシン、カルゼレシン、KW-2189およびCBI-TMIも指すと理解されるべきである。
【0412】
ある特定の実施形態では、毒素は、NAMPT阻害剤であり得る。本明細書で使用される場合、「NAMPT阻害剤」および「ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ阻害剤」という用語は、NAMPTの活性を低下させる阻害剤を指す。「NAMPT阻害剤」という用語は、NAMPT阻害剤のプロドラッグも含み得る。NAMPT阻害剤の例としては、限定することなく、FK866(APO866とも称される)、GPP78塩酸塩、ST118804、STF31、ピリジルシアノグアニジン(CH-828とも称される)、GMX-1778、およびP7C3が挙げられる。追加のNAMPT阻害剤が当技術分野で公知であり、本明細書に記載の組成物および方法における使用に適し得る。例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2015/054060号、米国特許第8,211,912号、および同第9,676,721号を参照されたい。一部の実施形態では、NAMPT阻害剤は、FK866である。一部の実施形態では、NAMPT阻害剤は、GMX-1778である。
【0413】
ある特定の実施形態では、毒素は、ツブリシン(tubulysin)であり得る。ツブリシンは、細胞傷害性ペプチドであり、9種のメンバー(A~I)が含まれる。ツブリシンAには、抗がん剤としての潜在的な適用がある。ツブリシンAは、細胞をG2/M期で静止させる。ツブリシンAは、単離された微小管の重合をビンブラスチンよりも効率的に阻害し、解重合を誘導する。ツブリシンAは、種々の腫瘍細胞株に対してピコモル濃度範囲のIC50の強力な細胞増殖抑制効果を有する。本発明の方法に使用することができる他のツブリシンは、ツブリシンEであり得る。
【0414】
ある特定の実施形態では、毒素は、エンジインであり得る。「エンジイン」という用語は、本明細書で使用される場合、二重結合によって隔てられた2つの三重結合を含有する9員環および10員環を特徴とする細菌天然物のクラスを指す(例えば、K. C. Nicolaou; A. L. Smith; E. W. Yue (1993). "Chemistry and biology of natural and designed enediynes". PNAS 90 (13): 5881-5888を参照されたい;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一部のエンジインは、バーグマン環化を受けることが可能であり、得られるジラジカル、1,4-デヒドロベンゼン誘導体は、DNAの糖骨格から水素原子を引き抜くことが可能であり、それにより、DNA鎖切断がもたらされる(例えば、S. Walker; R. Landovitz; W. D. Ding; G. A. Ellestad; D. Kahne (1992). "Cleavage behavior of calicheamicin gamma 1 and calicheamicin T". Proc Natl Acad Sci U.S.A. 89 (10): 4608-12を参照されたい;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。DNAとの反応性により、多くのエンジインに抗生物質の特徴が付与され、一部のエンジインは、抗がん性抗生物質として臨床的に調査されている。エンジインの非限定的な例は、ダイネマイシン、ネオカルジノスタチン、カリケアマイシン、エスペラミシンである(例えば、Adrian L. Smith and K. C. Bicolaou, "The Enediyne Antibiotics" J. Med. Chem., 1996, 39 (11), pp 2103-2117;およびDonald Borders, "Enediyne antibiotics as antitumor agents," Informa Healthcare; 1st edition (Nov. 23, 1994, ISBN-10: 0824789385を参照されたい;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、毒素は、カリケアマイシンであり得る。
【0415】
ある特定の実施形態では、毒素は、ドキソルビシンであり得る。「ドキソルビシン」は、本明細書で使用される場合、Streptomyces細菌Streptomyces peucetius var.caesiusに由来するアントラサイクリンのファミリーのメンバーを指し、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンおよびイダルビシンを含む。
【0416】
ある特定の実施形態では、毒素は、キネシン紡錘体タンパク質阻害剤であり得る。「キネシン紡錘体タンパク質阻害剤」という用語は、細胞分裂の間の双極紡錘体のアセンブリに関与するキネシン紡錘体タンパク質を阻害する化合物を指す。キネシン紡錘体タンパク質阻害剤は、がんの処置に関して調査されている。キネシン紡錘体タンパク質阻害剤の例としては、イスピネシブが挙げられる。さらに、「キネシン紡錘体タンパク質阻害剤」という用語は、GlaxoSmithKlineのSB715992またはSB743921およびCombinatoRxのペンタミジン/クロルプロマジン(chlorpromarine)を包含する。
【0417】
ある特定の実施形態では、毒素は、参照により組み込まれるUS20180078656A1に記載されているクリプトフィシンであり得る。
【0418】
ある特定の実施形態では、毒素は、サンドラマイシンであり得る。サンドラマイシンは、最初にNocardioides sp.から単離されたデプシペプチド(ATCC 39419)であり、細胞傷害活性および抗腫瘍活性を有することが示されている。
【0419】
ある特定の実施形態では、毒素は、アマトキシンであり得る。アマトキシン(アルファ-アマニチン、ベータ-アマニチンおよびアマニンを含む)は、8アミノ酸で構成される環状ペプチドである。アマトキシンは、Amanita phalloidesというキノコから単離することもでき、基本要素(building block)から合成によって調製することもできる。アマトキシンは、哺乳動物細胞のDNA依存性RNAポリメラーゼIIを特異的に阻害し、それにより、細胞の転写およびタンパク質生合成が影響を受ける。細胞における転写の阻害により、成長および増殖の停止が引き起こされる。アマニチンとRNA-ポリメラーゼIIの間の複合体は、共有結合はしていないが、非常にタイトである(KD=3nM)。酵素からのアマニチンの解離は、非常に緩徐なプロセスであり、影響を受けた細胞の回復の可能性を低くするものである。細胞において転写の阻害があまりにも長く続くと、その細胞はプログラム細胞死(アポトーシス)を受ける。好ましい一実施形態では、「アマトキシン」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、WO2010/115630、WO2010/115629、WO2012/119787、WO2012/041504、およびWO2014/135282に記載されているアルファ-アマニチンまたはそのバリアントを指す。
【0420】
ある特定の実施形態では、毒素は、カンプトテシンであり得る。「カンプトテシン」という用語は、本明細書で使用される場合、トポイソメラーゼI阻害剤として機能するカンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体を意味するものとする。例示的なカンプトテシンとしては、例えば、トポテカン、エキサテカン、デルクステカン、イリノテカン、DX-8951f、SN38、BN80915、ラルトテカン、9-ニトロカンプトテシンおよびアミノカンプトテシンが挙げられる。ヒトがん患者を処置するために使用されるカンプトテシンを含めた種々のカンプトテシンが記載されている。いくつかのカンプトテシンが、例えば、Kehrer et al., Anticancer Drugs, 12 (2): 89-105, (2001)に記載されている。
【0421】
毒素は、本発明の意味では、薬物流出輸送体の阻害剤であってもよい。毒素および薬物流出輸送体の阻害剤を含む抗体-ペイロードコンジュゲートには、細胞に内部移行した際に、薬物流出輸送体の阻害剤により、毒素が細胞外に流出することが防止されるという利点があり得る。本発明の範囲内で、薬物流出輸送体は、P-糖タンパク質であり得る。いくつかの一般的なP-糖タンパク質の薬理学的阻害剤としては、:アミオダロン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、コルヒチン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フェロジピン、ケトコナゾール、ランソプラゾール、オメプラゾールおよび他のプロトン-ポンプ阻害剤、ニフェジピン、パロキセチン、レセルピン、サキナビル、セルトラリン、キニジン、タモキシフェン、ベラパミル、およびデュロキセチンが挙げられる。エラクリダールおよびCP100356が他の一般的なP-gp阻害剤である。これを考慮してゾスキダルおよびタリキダルも開発された。最後に、そのような薬剤の他の例はバルスポダル(valspodar)およびリバーサンである。
【0422】
ある特定の実施形態では、実際のペイロードは、本発明のリンカーと連結したペイロード分子に含まれていてよい。ペイロード分子は、構造:
X-(スペーサー)-ペイロード
を有し得、ここで、ペイロードは、実際のペイロード、例えば、本明細書に開示される化合物の1つを表し、Xは、ペイロード分子を連結部分内(二段階プロセス)またはリンカーの残基Aax、(Sp1)、B1もしくは(Sp2)内(一段階プロセス)の適合する官能基に結合させるために適した反応性基を表し、(スペーサー)は、実際のペイロードと反応性基Xを空間的に隔てる化学スペーサーを表す。しかし、ある特定の実施形態では、反応性基Xは、スペーサーまたは実際のペイロードの一部であってもよいことが理解されるべきである。例えば、スペーサーは、ペプチドまたはアミノ酸残基を含んでよく、ここで、反応性基Xは、スペーサーに含まれるN末端アミノ酸残基のアミノ基であってよい。他の実施形態では、スペーサーは存在しなくてもよい。スペーサーが存在しない実施形態では、官能基は、実際のペイロードに含まれていてよい。ある特定の実施形態では、スペーサーを使用して、目的の官能基、すなわち、連結部分に含まれる官能基と適合する官能基を、実際のペイロードに結合させることができる。ある特定の実施形態では、反応性基Xは、これだけに限定することなく、DBCOまたはBCN基などのマレイミド基またはシクロオクチン基であり得る。
【0423】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲部分をさらに含む、本発明による方法に関する。
【0424】
すなわち、ある特定の実施形態では、ペイロード分子、および、より詳細には、ペイロード分子に含まれるスペーサーは、抗体-リンカーコンジュゲートからのペイロードの効率的な放出を可能にする切断可能または自壊牲部分を含み得る。
【0425】
本明細書に開示されるリンカーの多くはペプチドに基づくものであるので、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートが標的細胞に内部移行したら、宿主細胞ペプチダーゼによって加水分解される可能性がある。しかし、ある特定の実施形態では、ペイロード分子の一部であるスペーサーは、切断可能部分を含み得る。「切断可能部分」は、本明細書で使用される場合、酵素的または非酵素的加水分解によって実際のペイロードから分離することができる化学的単位である。
【0426】
ある特定の実施形態では、切断可能部分は、ペプチダーゼ切断部位であり得る。したがって、切断可能部分は、特定のペプチダーゼまたはプロテアーゼによって認識され、切断され得る任意のアミノ酸モチーフであり得る。ある特定の実施形態では、切断可能部分は、カテプシンによって切断可能なモチーフであり得る。「カテプシン」という用語は、本明細書で使用される場合、プロテアーゼのファミリーを指す。カテプシンという用語は、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンF、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンWおよびカテプシンZを含む。特定の実施形態では、切断可能部分は、カテプシンBによって特異的に加水分解されるモチーフ、例えば、バリン-アラニン、バリン-シトルリンまたはアラニン-アラニンであり得る。ペプチダーゼによって特異的に加水分解され得るさらなるモチーフは、Salomon et al., Optimizing Lysosomal Activation of Antibody-Drug Conjugates (ADCs) by Incorporation of Novel Cleavable Dipeptide Linkers、Mol Pharm. 2019, 16(12), p.4817-4825に開示されている。
【0427】
ADCリンカーに使用される典型的なジペプチド構造の1つは、例えば、ブレンツキシマブベドチン中にもたらされ、Dubowchik and Firestone; Cathepsin B-labile dipeptide linkers for lysosomal release of doxorubicin from internalizing immunoconjugates: model studies of enzymatic drug release and antigen-specific in vitro anticancer activity; Bioconjug Chem; 2002; 13 (4); p.855-69において考察されているバリン-シトルリンモチーフである。このリンカーを疾患部位においてカテプシンBによって切断して、実際のペイロードを遊離させることができる。例えばSGN-CD33A中にもたらされるバリン-アラニンモチーフにも同じことが当てはまる。
【0428】
その代わりに、またはそれに加えて、ペイロード分子に含まれるスペーサーは、自壊牲部分を含み得る。「自壊牲部分」という用語は、2つの化学的部分を共有結合により連結して通常は安定な3部分からなる分子にすることが可能な二官能性化学的部分を指す。自壊牲スペーサーは、第1の部分との結合が切断されると第2の部分から自然発生的に分離することが可能である。ある特定の実施形態では、ペイロード分子は、自壊牲パラ-アミノベンジルオキシカルボニル基を含み得る。
【0429】
特定の実施形態では、本発明は、切断可能または自壊牲部分が、カテプシンおよび/またはp-アミノベンジルオキシカルバモイル(PABC)部分によって切断可能なモチーフを含む、本発明による方法に関する。
【0430】
特定の実施形態では、本発明は、切断可能または自壊牲部分が、バリン-シトルリン(VC)モチーフおよび/またはp-アミノベンジルオキシカルバモイル(PABC)部分を含む、本発明による方法に関する。
【0431】
すなわち、ペイロード分子に含まれるスペーサーは、カテプシンBにより切断可能なモチーフであるバリン-シトルリン、自壊牲部分であるPABC、またはその両方を含み得る。すなわち、ある特定の実施形態では、ペイロード分子は、構造X-Val-Cit-PABCを含み得、ここで、Xは、反応性基を含む分子である。ある特定の実施形態では、Xは、マレイミド基(例えば、マレイミドカプロイル)またはアルキン(例えば、DBCOまたはBCN)を含み得る。ある特定の実施形態では、PABC部分は、実際のペイロードに直接結合していてもよく、これだけに限定することなく、p-ニトロフェノール(PNP)基などの追加のリンカーを介して実際のペイロードに結合していてもよい。したがって、ある特定の実施形態では、ペイロード分子は、構造X-Val-Cit-PABC-PNP-ペイロードを有し得る。ある特定の実施形態では、ペイロード分子は、構造X-Val-Cit-PABC-PNP-MMAE、X-Val-Cit-PABC-PNP-MMAFまたはX-Val-Cit-PABC-PNP-α-アマニチンを有し得る。
【0432】
切断可能部分は、カスパーゼ3、レグマインまたは好中球エラスターゼまたはDal Corso et al., Innovative Linker Strategies for Tumor-Targeted Drug Conjugates; Chemistry; 25 (65); p.14740-14757に記載されているものなどの他のペプチダーゼによって切断可能なモチーフであってもよいことに留意する必要がある。
【0433】
他の実施形態では、ペイロード分子に含まれるスペーサーは、炭水化物部分を含み得る。そのような実施形態では、切断可能部分は、グルコシダーゼによって切断可能なモチーフであり得る。したがって、ある特定の実施形態では、切断可能部分は、ベータグルクロニダーゼまたはベータガラクトシダーゼによって切断可能なモチーフであり得る。
【0434】
他の実施形態では、ペイロード分子に含まれるスペーサーは、1つまたは複数のリン酸部分を含み得る。そのような実施形態では、切断可能部分は、ホスファターゼによって切断可能なモチーフであり得る。したがって、ある特定の実施形態では、切断可能部分は、ベータリソソーム酸ピロホスファターゼまたは酸性ホスファターゼによって切断可能なモチーフであり得る。
【0435】
リンカー分子からペイロードを遊離させるために使用することができるさらなる切断可能部分の例はBargh et al., Cleavable linkers in antibody-drug conjugates; Chem Soc Rev. 2019 Aug 12 ;48 (16): 4361-4374に記載されている。
【0436】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、ペイロードをリンカーに含まれる化学スペーサー(Sp1)および/もしくは(Sp2)と、または連結部分B1および/もしくはB2と連結するための反応性基をさらに含む、本発明による方法に関する。
【0437】
上に開示されている通り、本発明のペイロード分子は、ペイロード分子とリンカーをカップリングするための反応性基Xを含み得る。ある特定の実施形態では、ペイロード分子を、リンカー、例えば、残基Aax、(Sp1)、B1、または(Sp2)、特に、化学スペーサー(Sp1)または(Sp2)に含まれるC末端カルボキシル基と接続することができる。そのような実施形態では、ペイロード分子を、リンカーのC末端カルボキシル基とアミド結合またはペプチド結合によって接続することができる。したがって、ペイロード分子は、ペイロード分子とリンカーのC末端カルボキシル基と接続するためのアミン基を含み得る。ある特定の実施形態では、アミン基は、スペーサー Val-Cit、Val-AlaまたはAla-Alaのα-アミノ基であり得る。
【0438】
他の実施形態では、ペイロード分子を、連結部分B1および/またはB2に含まれる官能基と接続することができる。そのような実施形態では、ペイロード分子は、B1および/またはB2に含まれる官能基と適合する反応性基Xを含み得る。例えば、ペイロード分子に含まれる反応性基XとB1および/またはB2に含まれる適合する官能基は、表2に開示されている結合パートナー対のいずれかであり得る。ペイロード分子に含まれる反応性基Xがマレイミド基を含み得、したがって、ペイロード分子を、チオールを含有する連結部分B1および/もしくはB2と連結することができるか、またはペイロード分子に含まれる反応性基Xがアルキン基を含み得、したがって、ペイロード分子を、アジドを含有する連結部分B1および/またはB2と連結することができることが好ましい。
【0439】
特定の実施形態では、本発明は、抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、CH2ドメインを含む、本発明による方法に関する。
【0440】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広範な意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す限りは抗体断片、を包含する。「抗体」(antibody)および「抗体」(antibodies)という用語は、天然に存在する形態の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)を広く包含する。
【0441】
抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。抗体は、ヒト起源のものであり得るが、同様にマウス、ラット、ヤギ、ロバ、ハムスター、またはウサギ起源のものであってもよい。コンジュゲートが治療用のものである場合、マウスまたはウサギ抗体を必要に応じてキメラ化またはヒト化することができる。
【0442】
CH2ドメインを含む抗体の断片または組換えバリアントは、例えば、
・単に重鎖ドメインを含む抗体フォーマット(サメ抗体/IgNAR(VH-CH1-CH2-CH3-CH4-CH5)2またはラクダ科動物抗体/hcIgG(VH-CH2-CH3)2)
・scFv-Fc(VH-VL-CH2-CH3)2
・Fcドメインと1つまたは複数の受容体ドメインとを含むFc融合ペプチド
であり得る。
【0443】
抗体は、二重特異性(例えば、DVD-IgG、crossMab、付加IgG-HC融合物)またはバイパラトピックであってもよい。概要についてはBrinkmann and Kontermann; Bispecific antibodies; Drug Discov Today; 2015; 20 (7); p.838-47を参照されたい。
【0444】
特定の実施形態では、本発明は、抗体がIgG抗体である、本発明による方法に関する。
【0445】
「IgG」は、本明細書で使用される場合、一般に認められている免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトでは、IgGは、サブクラスまたはアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。マウスでは、IgGは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。全長IgGは、2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなり、各対が軽鎖1本と重鎖1本とを有し、各軽鎖が免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖が免疫グロブリンドメインVH、Cγ1(CH1とも称される)、Cγ2(CH2とも称される)、およびOγ3(CH3とも称される)を含む。ヒトIgG1に関しては、KabatのようなEU指標によると、「CH1」は118~215位を指し、CH2ドメインは231~340位を指し、CH3ドメインは341~447位を指す。IgG1は、ヒンジドメインも含み、これは、IgG1の場合では216~230位を指す。
【0446】
本発明の方法または抗体-ペイロードコンジュゲートの抗体は、任意の抗体、好ましくは任意のIgG型抗体であってよい。例えば、抗体は、これだけに限定することなく、ブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、ポラツズマブまたはエンホルツマブであってよい。
【0447】
特定の実施形態では、本発明は、抗体が、グリコシル化抗体、脱グリコシル化抗体または無グリコシル化抗体である、本発明による方法に関する。
【0448】
すなわち、抗体は、好ましくは残基N297において、グリコシル化されたIgG抗体であり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、グリコシル化抗体が、CH2ドメインの残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されているIgG抗体である、本発明による方法に関する。
【0449】
本明細書で考察されている通り、残基N297においてグリコシル化されたIgG抗体には、グリコシル化されていない抗体に対していくつかの有利な点がある。
【0450】
あるいは、抗体は、好ましくは残基N297のグリカンが酵素PNGase Fで切断された、脱グリコシル化抗体であり得る。さらに、抗体は、好ましくは残基N297が非アスパラギン残基で置き換えられた、無グリコシル化抗体であり得る。抗体を脱グリコシル化するための方法、および無グリコシル化抗体を生成するための方法は、当技術分野で公知である。
【0451】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーを、抗体のFcドメイン内のGln残基とコンジュゲートする、または、リンカーを、抗体の重鎖もしくは軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基とコンジュゲートする、本発明による方法に関する。
【0452】
すなわち、本発明のリンカーを、抗体のFcドメイン内の内因性Gln残基、または分子操作によって抗体に導入されたGln残基とコンジュゲートすることができる。
【0453】
本発明のリンカーを、微生物トランスグルタミナーゼの基質としての機能を果し得る、抗体のFcドメイン内の任意のGln残基とコンジュゲートすることができる。一般には、Fcドメインという用語は、本明細書で使用される場合、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン(CH2およびCH3)ならびにIgE、IgYおよびIgMの最後の3つの定常領域ドメイン(CH2、CH3およびCH4)を指す。すなわち、本発明によるリンカーを、抗体のCH2、CH3、および適用可能な場合CH4ドメインとコンジュゲートすることができる。
【0454】
ある特定の実施形態では、内因性Gln残基は、IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)であり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、抗体のFcドメイン内のGln残基が、IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、本発明による方法に関する。
【0455】
Q295がIgG型抗体において極めて保存されたアミノ酸残基であることを理解することが重要である。Q295は、とりわけ、ヒトIgG1、2、3、4において、ならびにウサギおよびラット抗体において保存されている。したがって、Q295を使用することができることは、治療用抗体-ペイロードコンジュゲート、または診断用コンジュゲートの作出に関して、抗体が非ヒト起源であることも多い場合に相当な利点である。したがって、本発明による方法は、非常に多用途であり、かつ広範に適用可能なツールを提供する。残基Q295はIgG型抗体の間で極めて保存されているにもかかわらず、マウスおよびラットIgG2a抗体などの一部のIgG型抗体はこの残基を有さない。したがって、本発明の方法に使用される抗体は、CH2ドメインの残基Q295(EU番号付け)を含むIgG型抗体であることが好ましいことが理解されるべきである。
【0456】
さらに、ペイロード結合のためにQ295を使用して操作されたコンジュゲートは、良好な薬物動態および有効性を示し(Lhospice et al., Site-Specific Conjugation of Monomethyl Auristatin E to Anti-Cd30 Antibodies Improves Their Pharmacokinetics and Therapeutic Index in Rodent Models, Mol Pharm; 2015; 12 (6), p.1863-1871)、また、分解しやすい不安定な毒素であっても保持することが可能である(Dorywalska et al.; Site-Dependent Degradation of a Non-Cleavable Auristatin-Based Linker-Payload in Rodent Plasma and Its Effect on ADC Efficacy. PLoS ONE ; 2015; 10 (7): e0132282)ことが示されている。したがって、グリコシル化抗体であっても同じ残基が修飾されるので、この部位特異的方法を用いて、同様の効果が見られることが予測される。グリコシル化は、さらにADC全体の安定性にも寄与し得、言及した手法を用いた場合と同様にグリカン部分を除去すると、より安定性が低い抗体がもたらされることが示されている(Zheng et al.; The impact of glycosylation on monoclonal antibody conformation and stability. Mabs-Austin;2011, 3 (6), p.568-576)。
【0457】
特定の実施形態では、本発明は、抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、無グリコシル化IgG抗体のCH2ドメインのN297Q(EU番号付け)である、本発明による方法に関する。
【0458】
「分子操作」という用語は、本明細書で使用される場合、分子生物学的方法を使用して核酸配列を操作することを指す。本発明の範囲内で、分子操作を使用して、Gln残基を抗体の重鎖または軽鎖に導入することができる。一般に、Gln残基を抗体の重鎖または軽鎖に導入するための2つの異なる戦略が本発明の範囲内で構想される。第1に、抗体の重鎖または軽鎖の単一の残基をGln残基で置換することができる。第2に、2つまたはそれよりも多くのアミノ酸残基からなるGln含有ペプチドタグを抗体の重鎖または軽鎖に組み込むことができる。そのために、ペプチドタグを重鎖または軽鎖の内部の位置、すなわち、重鎖または軽鎖の2つの既存のアミノ酸残基の間に組み込むかまたはそれらを置き換えることもでき、ペプチドタグを抗体の重鎖または軽鎖のN末端またはC末端に融合(付加)することもできる。
【0459】
リンカーとCH2 Gln残基のトランスグルタミナーゼを用いたコンジュゲーションが考察されている文献では、小さな、低分子量の基質に焦点が当てられている。しかし、先行技術文献では、そのようなコンジュゲーションを実現するために、N297位の脱グリコシル化ステップ、または無グリコシル化抗体の使用が常に必要に応じて記載されている(WO2015/015448;WO2017/025179;WO2013/092998)。
【0460】
しかし、実に驚くべきことに、そして予期に反して、上で考察したリンカー構造を使用することにより、グリコシル化抗体のQ295への部位特異的コンジュゲーションが実際に効率的に可能である。
【0461】
Q295は、ネイティブな状態ではグリコシル化されているN297の極めて近くにあるが、本発明による方法は、それにもかかわらず、特定のリンカーを使用して、リンカーまたはペイロードのQ295とのコンジュゲーションを可能にするものである。
【0462】
しかし、示されている通り、本発明による方法では、前もってN297の酵素的脱グリコシル化を行う必要もなく、無グリコシル化抗体を使用する必要もなく、N297を別のアミノ酸に対して置換する必要もなく、グリコシル化を防止するためにT299A変異を導入する必要もない。
【0463】
これらの2点により、製造の側面で重要な利点がもたらされる。酵素的脱グリコシル化ステップは、GMPの側面では、脱グリコシル化酵素(例えば、PNGase F)ならびに切断されたグリカンの両方を確実に培地から除去しなければならないので、望ましくない。
【0464】
さらに、ペイロードを結合させるために抗体を遺伝子操作する必要がなく、したがって、抗体の免疫原性を増大させ、全体的な安定性を低下させる配列挿入を回避することができる。
【0465】
N297の別のアミノ酸に対する置換は、また、それがFcドメイン全体の全体的な安定性(Subedi et al, The Structural Role of Antibody N-Glycosylation in Receptor Interactions. Structure 2015, 23 (9), 1573-1583)およびコンジュゲート全体の有効性に影響を及ぼす可能性があり、結果として、特にPBDなどの疎水性ペイロードについて重要になる、抗体凝集の増加および溶解性の低下(Zheng et al.; The impact of glycosylation on monoclonal antibody conformation and stability. Mabs-Austin 2011, 3 (6), 568-576)をもたらし得るので、望ましくない影響を有する。さらに、N297に存在するグリカンは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)などを誘発するので、重要な免疫調節効果を有する。これらの免疫調節効果は、脱グリコシル化または無グリコシル化抗体を得るための上記の他の手法のいずれかの際に失われる。さらに、確立された抗体の何らかの配列改変でも調節の問題をもたらし得、これは、認められ、臨床的に検証された抗体がADCコンジュゲーションのための出発点として使用されることも多いので、問題となる。
【0466】
したがって、本発明による方法により、部位特異的ペイロード結合を用いて化学量論的に明確に規定されたADCを容易にかつ不都合を伴わずに作出することが可能になる。
【0467】
上記を考慮して、CH2ドメインの残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されているIgG抗体の、当該抗体のCH2ドメインの残基Q295(EU番号付け)におけるコンジュゲーションのために本発明の方法が好ましく使用されることが示される。しかし、本発明の方法は、抗体の残基Q295または任意の他の適切なGln残基において脱グリコシル化または無グリコシル化された抗体のコンジュゲーションも包含し、ここで、Gln残基は内因性Gln残基であっても分子操作によって導入されたGln残基であってもよいことがはっきりと示される。
【0468】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、(a)抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、本発明による方法に関する。
【0469】
第1の場合では、得られる抗体が本発明のリンカーと微生物トランスグルタミナーゼによってコンジュゲートすることができるものであるという条件で、抗体の重鎖または軽鎖の任意のアミノ残基をGln残基で置換することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、IgG抗体のCH2ドメインのアミノ酸残基N297(EU番号付け)が置換されており、特に、置換がN297Q置換である、抗体である。N297Q変異を含む抗体を抗体の重鎖当たり1つよりも多くのリンカーとコンジュゲートすることができる。例えば、N297Q変異を含む抗体を4つのリンカーとコンジュゲートすることができ、ここで、リンカーのうちの1つは抗体の第1の重鎖の残基Q295とコンジュゲートし、リンカーのうちの1つは抗体の第1の重鎖の残基N297Qとコンジュゲートし、リンカーのうちの1つは抗体の第2の重鎖の残基Q295とコンジュゲートし、リンカーのうちの1つは抗体の第2の重鎖の残基N297Qとコンジュゲートする。IgG抗体の残基N297をGln残基で置き換えることにより、無グリコシル化抗体がもたらされることが当業者には知られている。
【0470】
抗体の単一のアミノ酸残基を置換する代わりに、トランスグルタミナーゼが利用できるGln残基を含むペプチドタグを抗体の重鎖または軽鎖に導入することができる。そのようなペプチドタグを抗体の重鎖または軽鎖のN末端またはC末端と融合することができる。トランスグルタミナーゼが利用できるGln残基を含むペプチドタグを抗体の重鎖のC末端と融合することが好ましい。トランスグルタミナーゼが利用できるGln残基を含むペプチドタグをIgG抗体の重鎖のC末端と融合することがなおより好ましい。抗体の重鎖のC末端と融合することができ、微生物トランスグルタミナーゼの基質としての役割を果たすいくつかのペプチドタグがWO2012/059882およびWO2016/144608に記載されている。
【0471】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、Gln残基を含むペプチドを抗体の重鎖のC末端と融合する、本発明による方法に関する。
【0472】
抗体の重鎖または軽鎖に導入すること、特に、抗体の重鎖のC末端と融合することができる例示的なペプチドタグは、LLQGG(配列番号5)、LLQG(配列番号6)、LSLSQG(配列番号7)、GGGLLQGG(配列番号8)、GLLQG(配列番号9)、LLQ(配列番号10)、GSPLAQSHGG(配列番号11)、GLLQGGG(配列番号12)、GLLQGG(配列番号13)、GLLQ(配列番号14)、LLQLLQGA(配列番号15)、LLQGA(配列番号16)、LLQYQGA(配列番号17)、LLQGSG(配列番号18)、LLQYQG(配列番号19)、LLQLLQG(配列番号20)、SLLQG(配列番号21)、LLQLQ(配列番号22)、LLQLLQ(配列番号23)、LLQGR(配列番号24)、EEQYASTY(配列番号25)、EEQYQSTY(配列番号26)、EEQYNSTY(配列番号27)、EEQYQS(配列番号28)、EEQYQST(配列番号29)、EQYQSTY(配列番号30)、QYQS(配列番号31)、QYQSTY(配列番号32)、YRYRQ(配列番号33)、DYALQ(配列番号34)、FGLQRPY(配列番号35)、EQKLISEEDL(配列番号36)、LQR(配列番号37)およびYQR(配列番号38)である。
【0473】
例えば、Sambrook, Joseph. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual. Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている分子クローニングの方法によって抗体のアミノ酸残基を置換するためまたはペプチドタグを抗体に導入するための方法が当業者には知られている。
【0474】
一般に、リンカーをコンジュゲートする抗体の位置を決定するための方法は当業者には知られている。例えば、コンジュゲーション部位は、抗体-ペイロードコンジュゲートのタンパク質消化および得られた断片のLC-MS分析によって決定することができる。例えば、試料を、GlyciNATOR(Genovis)を用い、指示マニュアルに従って脱グリコシル化し、続いて、それぞれトリプシンゴールド(質量分析グレード、Promega)を用いて消化することができる。したがって、タンパク質1μgをトリプシン50ngと一緒に37℃で一晩インキュベートすることができる。Synapt-G2質量分析計(Waters)に接続したnanoAcquity HPLC systemを使用してLC-MS分析を実施することができる。そのために、ペプチド溶液100ngをAcquity UPXevo G2-XS QTOF(Waters)をLC Symmetry C18トラップカラム(Waters、品番186006527)にローディングし、1%緩衝液A(水、0.1%ギ酸)および99%緩衝液B(アセトニトリル、0.1%ギ酸)、毎分5μLの流速で3分間にわたって捕捉を行うことができる。次いで、25分以内に緩衝液B3%から65%までの直線勾配でペプチドを溶出させることができる。正極性の分解能モードで、ならびに50m/zから2000m/zまでの質量範囲でデータを取得することができる。他の計器設定は以下の通りとすることができる:キャピラリー電圧3,2kV、サンプリングコーン40V、抽出コーン4.0V、ソース温度130℃、コーンガス35L/h、ナノフローガス0.1bar、およびパージガス150L/h。質量分析計を[Glu1]-フィブリノペプチドで較正することができる。
【0475】
さらに、抗体-ペイロード構築物の薬物対抗体(DAR)比またはペイロード対抗体比を決定するための方法が当業者には知られている。例えば、DARは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)またはLC-MSによって決定することができる。
【0476】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に関しては、試料を0.5Mの硫酸アンモニウムに調整し、MAB PAK HIC Butylカラム(5μm、4.6×100mm、Thermo Scientific)により、A(1.5Mの硫酸アンモニウム、25mMのTris HCl、pH7.5)からB(20%イソプロパノール、25mMのTris HCl、pH7.5)までの20分間にわたる毎分1mLおよび30℃での完全勾配を使用して評価することができる。一般には、試料40μgを使用することができ、280nmにおけるシグナルを記録することができる。相対的なHIC保持時間(HIC-RRT)を、ADC DAR2種の絶対的な保持時間をそれぞれのコンジュゲートしていないmAbの保持時間で割ることによって算出することができる。
【0477】
LC-MS DAR決定のために、ADCをNH4HCO3で最終濃度0.025mg/mLまで希釈することができる。続いて、この溶液40μLを、TCEP(500mM)1μLを用いて室温で5分間にわたって還元し、次いで、クロロアセトアミド(200mM)10μLを添加し、その後、37℃、暗所中で一晩インキュベートすることにより、アルキル化することができる。逆相クロマトグラフィーのために、Dionex U3000システムをChromeleonソフトウェアと組み合わせて使用することができる。システムは、70℃まで加熱したRP-1000カラム(1000Å、5μm、1.0×100mm、Sepax)、および波長214nmに設定したUV検出器を備えたものであってよい。溶媒Aは、水と0.1%ギ酸からなるものであってよく、溶媒Bは、85%アセトニトリルと0.1%ギ酸を含むものであってよい。還元し、アルキル化した試料をカラムにローディングし、30~55%溶媒Bからの勾配によって14分間の経過にわたって分離することができる。DAR種を同定するために液体クロマトグラフィーシステムをSynapt-G2質量分析計に接続することができる。質量分析計のキャピラリー電圧を3kVに設定することができ、サンプリングコーンを30Vに設定することができ、抽出コーンを合計5Vの値にすることができる。ソース温度を150℃、脱溶媒和温度を500℃、コーンガスを20l/h、脱溶媒和ガスを600l/hに設定することができ、ポジティブモード、600~5000Daの質量範囲、走査時間1秒でデータ取得を行うことができる。ヨウ化ナトリウムを用いて計器を較正することができる。スペクトルのデコンボリューションを、MassLynxのMaxEnt1アルゴリズムを用いて収束するまで実施することができる。DAR種をクロマトグラフィーのピークに割り当てた後、逆相クロマトグラムの積分されたピーク面積に基づいてDARを算出することができる。
【0478】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーをGln残基のアミド側鎖とコンジュゲートする、本発明による方法に関する。
【0479】
すなわち、本発明によるリンカーを、抗体に含まれるGln残基、好ましくは本明細書に開示される任意の1つのGln残基の側鎖のアミド基にコンジュゲートすることが好ましい。
【0480】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、グリコシル化抗体との、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のコンジュゲーション効率でのコンジュゲーションに適したものである、本発明による方法に関する。
【0481】
すなわち、ある特定の実施形態では、リンカーは、グリコシル化抗体と少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の効率でコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。グリコシル化抗体は、グリコシル化IgG抗体、より好ましくは残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されたIgG抗体であることが好ましい。
【0482】
抗体と特定のリンカーのグリコシル化効率を決定するための方法は当業者には知られている。例えば、コンジュゲーション効率を本明細書に記載の通り決定することができる。すなわち、抗体、特にIgG1抗体を、1~5mg/mLの濃度で、5~20eqモル当量のリンカーおよび抗体1mg当たり3~6Uの微生物トランスグルタミナーゼと一緒に、適切な緩衝液中、37℃で20~48時間インキュベートすることができる。インキュベーション期間後、コンジュゲーション効率を、還元条件下でのLC-MS分析によって決定することができる。微生物トランスグルタミナーゼは、Zedira(Germany)から入手可能なStreptomyces mobaraensis由来のMTGであってよい。適切な緩衝液は、Tris、MOPS、HEPES、PBSまたはBisTris緩衝液であり得る。しかし、緩衝液系の選択は変動し得、リンカーの化学的特性に大きく依存することが理解されるべきである。しかし、当業者は、最適な緩衝液条件を本発明の開示に基づいて同定することができる。あるいは、コンジュゲーション効率をSpycher et al. (Dual、Site-Specific Modification of Antibodies by Using Solid-Phase Immobilized Microbial Transglutaminase、ChemBioChem 2019 18 (19): 1923-1927)に記載されている通り決定することができ、Benjamin et al. (Thiolation of Q295: Site-Specific Conjugation of Hydrophobic Payloads without the Need for Genetic Engineering, Mol. Pharmaceutics 2019, 16: 2795-2807)と同様に解析することができる。
【0483】
特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼが、Streptomyces種、特に、Streptomyces mobaraensisに由来するものである、本発明による方法に関する。
【0484】
すなわち、本発明の方法に使用する微生物トランスグルタミナーゼは、Streptomyces種、特にStreptomyces mobaraensisに由来し、優先的にはネイティブな酵素に対して80%の配列同一性を有するものであってよい。したがって、MTGは、ネイティブな酵素であってもよく、ネイティブな酵素の操作されたバリアントであってもよい。
【0485】
そのような微生物トランスグルタミナーゼの1つがZedira(Germany)から市販されている。当該微生物トランスグルタミナーゼは、E.coliにおいて組換えによって産生される。Streptomyces mobaraensisトランスグルタミナーゼは、配列番号1に開示されるアミノ酸配列を有する。他のアミノ酸配列を有するS.mobaraensis MTGバリアントが報告されており、それらも本発明に包含される(配列番号2および3)。
【0486】
別の実施形態では、Streptomyces ladakanum(以前はStreptoverticillium ladakanumとして公知であった)に由来する微生物トランスグルタミナーゼを使用することができる。Streptomyces ladakanumトランスグルタミナーゼ(米国特許第US6,660,510B2号)は、配列番号4に開示されるアミノ酸配列を有する。
【0487】
上記のトランスグルタミナーゼのどちらも、配列が改変されたものであってよい。いくつかの実施形態では、配列番号1~4に対して80%、85%、90%または95%またはそれよりも大きな配列同一性を有するトランスグルタミナーゼを使用することができる。
【0488】
別の適切な微生物トランスグルタミナーゼがAjinomotoから市販されており、ACTIVA TGと称される。Zediraのトランスグルタミナーゼと比較して、ACTIVA TGは4つのN末端アミノ酸を欠くが、同様の活性を有する。
【0489】
本発明の状況で使用することができるさらなる微生物トランスグルタミナーゼが、その内容が参照により本明細書に完全に組み込まれるKieliszek and Misiewicz (Folia Microbiol (Praha). 2014; 59 (3): 241-250)、WO2015/191883 A1、WO2008/102007 A1およびUS2010/0143970に開示される。
【0490】
ある特定の実施形態では、微生物トランスグルタミナーゼの変異体バリアントをリンカーと抗体のコンジュゲーションのために使用することができる。すなわち、本発明の方法に使用する微生物トランスグルタミナーゼは、配列番号1または2に記載のS.mobaraensisトランスグルタミナーゼのバリアントであってよい。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異G254Dを含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異G254DおよびE304Dを含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異D4EおよびG254Dを含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異E124AおよびG254Dを含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異A216DおよびG254Dを含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1に記載の組換えS.morabaensisトランスグルタミナーゼは、変異G254DおよびK331Tを含み得る。
【0491】
微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体とリンカーの効率的なコンジュゲーションを可能にする任意の濃度で添加することができる。ある特定の実施形態では、コンジュゲーション反応における微生物トランスグルタミナーゼの濃度は、同じ反応に使用される抗体の量に依存し得る。例えば、微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり100U未満、抗体1mg当たり90U未満、抗体1mg当たり80U未満、抗体1mg当たり70U未満、抗体1mg当たり60U未満、抗体1mg当たり50U未満、抗体1mg当たり40U未満、抗体1mg当たり30U未満、抗体1mg当たり20U未満、抗体1mg当たり10U未満または抗体1mg当たり6U未満の濃度で添加することができる。ある特定の実施形態では、微生物トランスグルタミナーゼをコンジュゲーション反応に抗体1mg当たり1U、3U、5Uまたは6Uの濃度で添加することができる。
【0492】
すなわち、ある特定の実施形態では、微生物トランスグルタミナーゼをコンジュゲーション反応に抗体1mg当たり1~20Uにわたる濃度、好ましくは抗体1mg当たり1~10U、より好ましくは抗体1mg当たり1~7.5U、なおより好ましくは抗体1mg当たり2~6U、なおより好ましくは抗体1mg当たり2~4U、最も好ましくは抗体1mg当たり3Uの濃度で添加することができる。
【0493】
本発明による方法は、微生物トランスグルタミナーゼの使用を含む。しかし、非微生物起源のトランスグルタミナーゼ活性を含む酵素によって同等の反応を行うことができることに留意すべきである。したがって、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートも、非微生物起源のトランスグルタミナーゼ活性を含む酵素を用いて生成することができる。
【0494】
抗体をコンジュゲーション反応に任意の濃度で添加することができる。しかし、抗体をコンジュゲーション反応に0.1~20mg/mlにわたる濃度で添加することが好ましい。すなわち、特定の実施形態では、本発明は、抗体をコンジュゲーション反応に0.1~20mg/mL、好ましくは0.25~15mg/mL、より好ましくは0.5~12.5mg/mL、なおより好ましくは1~10mg/mL、なおより好ましくは2~7.5mg/mL、最も好ましくは約5mg/mLの濃度で添加する、本発明による方法に関する。
【0495】
効率的なコンジュゲーションを得るために、リンカーを抗体にモル過剰で添加することが好ましい。すなわち、ある特定の実施形態では、抗体を、少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90または100モル当量のリンカーと混合する。
【0496】
すなわち、特定の実施形態では、本発明は、抗体を、2~100モル当量のリンカー、好ましくは2~80モル当量のリンカー、より好ましくは2~70モル当量のリンカー、なおより好ましくは2~60モル当量のリンカー、なおより好ましくは2~50モル当量のリンカー、なおより好ましくは2~40モル当量のリンカー、なおより好ましくは2~30モル当量のリンカー、なおより好ましくは5~30モル当量のリンカー、最も好ましくは5~20モル当量のリンカーと接触させる、本発明による方法に関する。
【0497】
あるいは、抗体を5~100モル当量のリンカー、好ましくは5~80モル当量のリンカー、より好ましくは5~70モル当量のリンカー、なおより好ましくは5~60モル当量のリンカー、なおより好ましくは5~50モル当量のリンカー、なおより好ましくは5~40モル当量のリンカー、なおより好ましくは5~30モル当量のリンカー、最も好ましくは5~20モル当量のリンカーと接触させることができる。
【0498】
本発明による方法は、6から9までにわたるpHで実施することが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、リンカーと抗体のコンジュゲーションが6から8.5までにわたるpHで、より好ましくは7から8までにわたるpHで実現される、本発明による方法に関する。最も好ましい実施形態では、本発明は、リンカーと抗体のコンジュゲーションがpH7.6で実現される、本発明による方法に関する。
【0499】
本発明の方法は、ペイロードとリンカーのコンジュゲーションに適した任意の緩衝液中で実施することができる。本発明の方法に適した緩衝液としては、限定することなく、Tris、MOPS、HEPES、PBSまたはBisTris緩衝液が挙げられる。緩衝液の濃度は、とりわけ、抗体および/またはリンカーの濃度に依存し、10mMから1000mMまで、10mMから500mMまで、10mMから400mMまで、10mMから250mMまで、10mMから150mMまたは10mMから100mMまでにわたり得る。さらに、緩衝液は、本発明の方法の実施に適した任意の塩濃度を含み得る。例えば、本発明の方法に使用する緩衝液は、≦150mM、≦140mM、≦130mM、≦120mM、≦110mM、≦100mM、≦90mM、≦80mM、≦70mM、≦60mM、≦50mM、≦40mM、≦30mM、≦20mMまたは≦10mMの塩濃度を有し得るまたは塩を含まない。好ましい実施形態では、緩衝液は、塩を伴わない50mMのTris、pH7.6である。
【0500】
最適な反応条件(例えば、pH、緩衝液、塩濃度)はペイロード間で変動し得、いくらかの程度まで、リンカーおよび/またはペイロードの物理化学特性に依存し得ることに留意する必要がある。しかし、当業者が本発明の方法の実施に適した反応条件を特定するために過度な実験を行う必要はない。
【0501】
本出願は、上に開示されるリンカー、抗体、MTGおよび/または緩衝液の濃度の任意の組合せを包含することが理解されるべきである。
【0502】
好ましい実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
抗体を2~80モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼをコンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり1~20Uにわたる濃度で添加し、必要に応じて、抗体をコンジュゲーション反応に、0.1~20mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0503】
より好ましい実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
抗体を、2~50モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり1~10Uにわたる濃度で添加し、必要に応じて、抗体を、コンジュゲーション反応に、1~10mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0504】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
抗体を、2~30モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり2~6Uにわたる濃度で添加し、必要に応じて、抗体をコンジュゲーション反応に、2~7.5mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0505】
最も好ましい実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、N末端残基Aax内の一級アミンを介して、抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
抗体を、約5~20モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼをコンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり約3Uの濃度で添加し、必要に応じて、抗体をコンジュゲーション反応に、約5mg/mLの濃度で添加する、
方法に関する。
【0506】
コンジュゲーション反応におけるリンカー対抗体の比を調整することによってグリコシル化抗体のコンジュゲーション効率を改善することができることを本発明者らはさらに確認した。特に、驚くべきことに、リンカー対抗体比が小さいほどグリコシル化抗体との高いコンジュゲーション効率がもたらされることが本発明者らによって見いだされた。
【0507】
ある特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造
NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、一級アミンNH2を介して、グリコシル化抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
グリコシル化抗体を、2~80モル当量、好ましくは2~70モル当量、より好ましくは2~60モル当量、なおより好ましくは2~50モル当量、なおより好ましくは2~40モル当量、なおより好ましくは2~30モル当量、なおより好ましくは5~30モル当量、最も好ましくは5~20モル当量のリンカーと接触させる、
方法に関する。
【0508】
あるいは、グリコシル化抗体を、5~80モル当量、好ましくは5~70モル当量、より好ましくは5~60モル当量、なおより好ましくは5~50モル当量、なおより好ましくは5~40モル当量、なおより好ましくは5~30モル当量、最も好ましくは5~20モル当量のリンカーと接触させることができる。
【0509】
ある特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造
NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、一級アミンNH2を介して、グリコシル化抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
グリコシル化抗体を、2~80モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり1~20Uにわたる濃度で添加し、
必要に応じて、グリコシル化抗体をコンジュゲーション反応に、0.1~20mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0510】
ある特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造
NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、一級アミンNH2を介して、グリコシル化抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
グリコシル化抗体を、2~50モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり1~10Uにわたる濃度で添加し、
必要に応じて、グリコシル化抗体を、コンジュゲーション反応に、1~10mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0511】
ある特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造
NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、一級アミンNH2を介して、グリコシル化抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
グリコシル化抗体を、2~30モル当量のリンカーと接触させ、および/または
微生物トランスグルタミナーゼを、コンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり2~6Uにわたる濃度で添加し、
必要に応じて、グリコシル化抗体をコンジュゲーション反応に、2~7.5mg/mLにわたる濃度で添加する、
方法に関する。
【0512】
ある特定の実施形態では、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)によって抗体-リンカーコンジュゲートを生成するための方法であって、構造
NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーを、一級アミンNH2を介して、グリコシル化抗体に含まれるグルタミン(Gln)残基とコンジュゲートするステップを含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
グリコシル化抗体を、約5~20モル当量のリンカーと接触させ、かつ/または
微生物トランスグルタミナーゼをコンジュゲーション反応に、抗体1mg当たり約3Uの濃度で添加し、
必要に応じて、グリコシル化抗体をコンジュゲーション反応に、約5mg/mLの濃度で添加する、
方法に関する。
【0513】
リンカーが構造NH2-(Sp1)-B1-(Sp2)を有する実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、本明細書の他の箇所で定義されている構造を有し得るまたはそれを含み得る。
【0514】
特に、(Sp1)および/または(Sp2)は、必要に応じて1つまたは複数の同素環芳香族化合物ラジカルまたは複素環化合物ラジカルが挿入されていてもよい任意の直鎖、分枝および/または環状C2~30アルキル、C2~30アルケニル、C2~30アルキニル、C2~30ヘテロアルキル、C2~30ヘテロアルケニル、C2~30ヘテロアルキニル;とりわけ、任意の直鎖または分枝C2~5アルキル、C5~10アルキル、C11~20アルキル、-O-C1~5アルキル、-O-C5~10アルキル、-O-C11~20アルキル、または(CH2-CH2-O-)1~24または(CH2)X1-(CH2-O-CH2)1~24-(CH2)X2基(式中、X1およびX2は、独立に、0から20までの範囲の中で選択される整数である)、アミノ酸、オリゴペプチド、グリカン、サルフェート、ホスフェート、またはカルボキシレートであり得るまたはそれを含み得る。一部の実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は、C2~6アルキル基を含み得る。
【0515】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)部分または同等の縮合ポリマー、例えば、ポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(pCBMA)、ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリビニルピロリドンまたはポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)を含み得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、工業生産から薬まで多く適用されているポリエーテル化合物である。PEGは、その分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても公知である。PEGの構造は、一般に、H-(O-CH2-CH2)n-OHと表される。
【0516】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、デキストランを含み得る。「デキストラン」という用語は、本明細書で使用される場合、様々な長さの鎖で構成される複雑な分枝グルカンを指し、3kDaから2000kDaまでにわたる重量を有し得る。直鎖は、一般にはグルコース分子間のアルファ-1,6グリコシド結合からなり、一方、分枝は、アルファ-1,3結合で始まる。デキストランは、スクロースから、例えば、乳酸菌によって合成され得る。本発明に関しては、担体として使用するデキストランは、約15kDaから1500kDaまでの分子量を有することが好ましい場合がある。
【0517】
ある特定の実施形態では、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)は、オリゴヌクレオチドを含み得る。「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のいずれかのオリゴマーまたはポリマー、ならびに天然に存在しないオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、DNAのポリマーであることが好ましく、これは、安定性がより高いからである。
【0518】
ある特定の実施形態では、構造NH2-(SP1)は、構造NH2-(CH2CH2O)n-Zを有するPEG-アミンであり得、ここで、nは、1から20までの整数であり、Zは、PEG-アミンとペイロードB1のカップリングに適した官能基を含む分子であり得る。ある特定の実施形態では、構造NH2-(Sp1)は、構造NH2-(CH2CH2O)n-NH2を有するPEGジアミンであり得る。
【0519】
ある特定の実施形態では、構造NH2-(SP1)は、ジアミンであり得るまたはそれを含み得、ここで、第1のアミンはグリコシル化抗体内のグルタミン残基とコンジュゲートし、第2のアミンはジアミンとペイロードB1のカップリングに適したものである。ある特定の実施形態では、ジアミンは、構造NH2-(CH2)nNH2を有し得、ここで、nは、0から20まで、好ましくは0から10までにわたる整数である。ある特定の実施形態では、ジアミンは、カダベリン(NH2-(CH2)5-NH2)であり得る。ある特定の実施形態では、ジアミンは、プトレシン(NH2-(CH2)4-NH2)であり得る。
【0520】
リンカーNH2-(SP1)-B1に含まれる連結部分またはペイロードであるB1は、本明細書に開示される任意の連結部分またはペイロードであってよいことが理解されるべきである。さらに、B1は、本明細書に開示される切断可能および/または自壊牲部分の任意の1つを含み得る。
【0521】
リンカーNH2-(SP1)-B1を第2の連結部分またはペイロードB2と直接または化学スペーサー(Sp2)によって結合させることができる。B2および(Sp2)は、本明細書の他の箇所でより詳細に定義されている。
【0522】
本明細書で提供されるリンカーの定義は、本発明による方法および本発明による抗体-リンカーコンジュゲートにも当てはまることもさらに理解されるべきである。
【0523】
特定の実施形態では、本発明は、上述のステップのいずれかを用いて生成された抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0524】
特定の実施形態では、本発明は、
a)タンパク質と、
b)構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーと
を含むタンパク質-リンカーコンジュゲートであって、
・Aaxが、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
リンカーが、タンパク質に含まれるグルタミン(Gln)残基のアミド側鎖と、残基Aax内の一級アミンを介してコンジュゲートしている、
タンパク質-リンカーコンジュゲートに関する。
【0525】
タンパク質-リンカーコンジュゲートに含まれるタンパク質は、本明細書に開示されるタンパク質の任意の1つであってよい。しかし、タンパク質は抗体であることが好ましい。
【0526】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、
a)抗体と、
b)構造(N→C方向で示される)
Aax-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーと
を含む抗体-リンカーコンジュゲートであって、
・Aaxが、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、
・(Sp1)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
リンカーが、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基のアミド側鎖と、残基Aax内の一級アミンを介してコンジュゲートしている、
抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0527】
すなわち、本発明は、さらに、本発明の方法を用いて生成された抗体-リンカーコンジュゲートに関する。特に、本発明は、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン残基において本明細書に開示されるリンカーの任意の1つとコンジュゲートした抗体を指す。本発明のリンカーを抗体内のグルタミン残基と、抗体に含まれるグルタミン残基のアミド側鎖とリンカーの残基Aaxに含まれる一級アミンの間で形成されるアミド結合を介してコンジュゲートすることが好ましい。ある特定の実施形態では、残基Aaxに含まれる一級アミンは、Aaxのアミノ基、特に、Aaxのα-アミノ基である。
【0528】
特定の実施形態では、本発明は、残基Aaxが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン、またはそのアミノ酸模倣体もしくは誘導体からなる群から選択されるアミノ酸である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0529】
リンカーに含まれる残基Aaxであって、リンカーがそれを介して抗体とコンジュゲートする該残基Aaxは、本明細書に開示される残基の任意の1つであってよい。すなわち、本発明による抗体-ペイロードコンジュゲート内の残基Aaxは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリン残基、またはこれらの残基の任意の1つのアミノ酸模倣体もしくは誘導体であり得る。
【0530】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるアラニン、アラニン模倣体またはアラニン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0531】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるアルギニン、アルギニン模倣体またはアルギニン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0532】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるアスパラギン、アスパラギン模倣体またはアスパラギン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0533】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるアスパラギン酸、アスパラギン酸模倣体またはアスパラギン酸誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0534】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるシステイン、システイン模倣体またはシステイン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0535】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるグルタミン酸、グルタミン酸模倣体またはグルタミン酸誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0536】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるグルタミン、グルタミン模倣体またはグルタミン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0537】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるグリシン、グリシン模倣体またはグリシン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0538】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるヒスチジン、ヒスチジン模倣体またはヒスチジン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0539】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるイソロイシン、イソロイシン模倣体またはイソロイシン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0540】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるロイシン、ロイシン模倣体またはロイシン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0541】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるリシン模倣体またはリシン誘導体、特に、アミノ酸側鎖内の一級アミンが置換または改変されているリシン模倣体またはリシン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0542】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるメチオニン、メチオニン模倣体またはメチオニン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0543】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるフェニルアラニン、フェニルアラニン模倣体またはフェニルアラニン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0544】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるプロリン模倣体またはプロリン誘導体、特に、一級アミンを含むプロリン誘導体または模倣体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0545】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるセリン、セリン模倣体またはセリン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0546】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるトレオニン、トレオニン模倣体またはトレオニン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0547】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるトリプトファン、トリプトファン模倣体またはトリプトファン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0548】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるチロシン、チロシン模倣体またはチロシン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0549】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示されるバリン、バリン模倣体またはバリン誘導体である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0550】
他の実施形態では、本発明は、Aaxが、本明細書に開示される環状部分を含むアミノ酸、生体直交型部分を含むアミノ酸、アルファ-メチルアミノ酸、ベータ-アミノ酸またはガンマ-アミノ酸である、抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0551】
特定の実施形態では、本発明は、
a)抗体と、
b)構造(N→C方向で示される)
(Aax)-(Sp1)-B1-(Sp2)
を含むリンカーと
を含む抗体-リンカーコンジュゲートであって、
・Aaxが、構造NH2-Y-COOHを有するアミノ酸であり、Yが、置換または非置換アルキルまたはヘテロアルキル鎖を含み、
・(Sp1)が、化学スペーサーであり、
・(Sp2)が、化学スペーサーであるかまたは存在せず、
・B1が、連結部分またはペイロードであり、
リンカーが、抗体の重鎖または軽鎖に含まれるグルタミン(Gln)残基のアミド側鎖と、残基Aax内の一級アミンを介してコンジュゲートしている、
抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0552】
特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、1から20までの整数である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、nが、1から10まで、1から6まで、2から20まで、2から10まで、2から6まで、3から20まで、3から10までまたは3から6までの整数である、本発明によるコンジュゲートに関する。
【0553】
特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、1である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、2である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、3である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、4である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、5である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、6である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、7である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、8である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、9である、本発明によるコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本発明は、Yが、構造-(CH2)n-を含み、nが、10である、本発明によるコンジュゲートに関する。
【0554】
特定の実施形態では、本発明は、化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)が、それぞれ0から12の間のアミノ酸残基を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0555】
本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、本発明の方法に使用されるリンカーに含まれる化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)と同じ特徴を有し得る。
【0556】
ある特定の実施形態では、抗体-リンカーペイロードに含まれる化学スペーサー(Sp1)および(Sp2)は、0~12の、アミノ酸誘導体およびアミノ酸模倣体を含めたアミノ酸残基を含み得る。すなわち、ある特定の実施形態では、(Sp1)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のアミノ酸残基を含み得、(Sp2)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のアミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、(Sp1)は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のアミノ酸残基を含み得、(Sp2)は存在しなくてもよい。特に、B1がペイロードである場合、(Sp2)は存在しないことが好ましい。B1が連結部分である実施形態では、(Sp2)は、存在していてよく、必要に応じて、追加のペイロードまたは連結部分(B2)と接続されていてよい。
【0557】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下のアミノ酸残基を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0558】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれるリンカーは、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、7、6、5、4、3、2または1のアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体を含み得る。アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含む、リンカーに含まれるアミノ酸残基は、Aaxに含まれるアミノ酸残基、化学スペーサー(Sp1)および/または(Sp2)に含まれるアミノ酸残基、ならびにある特定の実施形態では、B1および/またはB2に含まれるアミノ酸残基であり、B1および/またはBは、アミノ酸に基づく連結部分またはペイロードであることが理解されるべきである。リンカーが単一のアミノ酸残基のみを含み得る実施形態では、単一のアミノ酸残基は、Aaxの位置にあるアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体であることが好ましい。そのような実施形態では、(Sp1)および/または(Sp2)は、いずれかが存在しない、またはいずれのアミノ酸、アミノ酸模倣体またはアミノ酸誘導体も含まない。ある特定の実施形態では、単一のアミノ酸残基を含むリンカーは、構造Aax-B1を有し得る。
【0559】
ある特定の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から25の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から20の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から15の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた2から10の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた3から10の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた3から8の間のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態では、Aax、(Sp1)、B1および(Sp2)、および必要に応じてB2を含む抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれるリンカーは、アミノ酸模倣体およびアミノ酸誘導体を含めた4から8の間のアミノ酸残基を含み得る。
【0560】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーの正味の電荷が、中性または正である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0561】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0562】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、正に荷電したアミノ酸残基を少なくとも1つ含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0563】
すなわち、抗体-リンカーコンジュゲートに含まれるリンカーは、本発明による方法に使用されるリンカーに関して開示された任意の物理化学特性またはアミノ酸残基を含み得る。
【0564】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーが、第2の連結部分またはペイロードB2を含み、特に、B2が、リンカーに化学スペーサー(Sp2)を介して接続している、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0565】
特定の実施形態では、本発明は、B1とB2が、互いに同一であるかまたは異なる、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0566】
すなわち、抗体-リンカーコンジュゲートは、2つの連結部分またはペイロードを含み得、ここで、2つの連結部分および/またはペイロードは、同一の場合もあり、異なる場合もある。どちらの連結部分およびペイロードも、本発明の方法に関して本明細書に開示される連結部分またはペイロードの任意の1つであってよい。
【0567】
特定の実施形態では、本発明は、B1および/またはB2が、連結部分である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0568】
特定の実施形態では、本発明は、連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、
・生体直交型マーカー基、または
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0569】
特定の実施形態では、本発明は、生体直交型マーカー基または非生体直交型実体が、
・-N-N≡N、または-N3;
・Lys(N3);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・-RCOH(アルデヒド);
・アシルトリフルオロボレート;
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;および
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子または部分からなるまたはそれを含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0570】
すなわち、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる1つまたは複数の連結部分は、本発明の方法に使用されるリンカーに含まれる連結部分と同じ特徴を有し得る。
【0571】
特定の実施形態では、本発明は、連結部分B1および/またはB2のうちの少なくとも一方が、1つまたは複数のペイロードと連結している、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0572】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、連結部分B1および/またはB2とクリック反応によって連結している、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0573】
すなわち、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、本発明による方法に関して本明細書に開示される反応のいずれかによって1つまたは複数のリンカーに含まれる連結部分に連結された1つまたは複数のペイロードを含み得る。
【0574】
特定の実施形態では、本発明は、B1および/またはB2が、ペイロードである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0575】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、
・毒素
・サイトカイン
・成長因子
・放射性核種
・ホルモン
・抗ウイルス剤
・抗菌剤
・蛍光色素
・免疫調節/免疫賦活剤
・半減期増加部分
・溶解性増加部分
・ポリマー-毒素コンジュゲート
・核酸
・ビオチンもしくはストレプトアビジン部分
・ビタミン
・タンパク質分解剤(「PROTAC」)
・標的結合部分、および/または
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0576】
特定の実施形態では、本発明は、毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・メイタンシノイド(マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・PNU、ドキソルビシン;
・ピロールに基づくキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);および
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0577】
すなわち、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる1つまたは複数のペイロードは、本発明の方法に関して本明細書に開示されるペイロードの任意の1つであってよい。
【0578】
特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のペイロードが、切断可能または自壊牲部分をさらに含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0579】
特定の実施形態では、本発明は、切断可能または自壊牲部分が、バリン-シトルリン(VC)モチーフおよび/またはp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0580】
さらに、抗体-リンカーコンジュゲートに含まれるリンカーは、本発明による方法における使用に関して開示される切断可能または自壊牲部分の任意の1つを含み得る。あるいは、リンカーと連結したまたはリンカーに含まれるペイロード分子は、本発明による方法における使用に関して開示される切断可能または自壊牲部分の任意の1つを含み得る。
【0581】
特定の実施形態では、本発明は、抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAまたはIgY抗体、またはその断片もしくは組換えバリアントであり、その断片もしくは組換えバリアントが、標的結合特性を保持し、CH2ドメインを含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0582】
特定の実施形態では、本発明は、抗体が、IgG抗体である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0583】
特定の実施形態では、本発明は、抗体が、グリコシル化抗体、脱グリコシル化抗体または無グリコシル化抗体である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0584】
特定の実施形態では、本発明は、グリコシル化抗体が、CH2ドメインの残基N297(EU番号付け)においてグリコシル化されているIgG抗体である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0585】
特定の実施形態では、本発明は、リンカーがコンジュゲートしているGln残基が、抗体のFcドメイン内に含まれるまたは抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたものである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0586】
特定の実施形態では、本発明は、抗体のFcドメイン内に含まれるGln残基が、IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU番号付け)である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0587】
特定の実施形態では、本発明は、抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、無グリコシル化IgG抗体のCH2ドメインのN297Q(EU番号付け)である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0588】
特定の実施形態では、本発明は、抗体の重鎖または軽鎖に分子操作によって導入されたGln残基が、(a)抗体の重鎖もしくは軽鎖に組み込まれたかまたは(b)抗体の重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端と融合したペプチドに含まれる、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0589】
特定の実施形態では、本発明は、Gln残基を含むペプチドが、抗体の重鎖のC末端と融合している、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0590】
すなわち、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、本明細書に開示される抗体の任意の1つ、特に、本発明の方法に関して開示される抗体の任意の1つを含み得る。しかし、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる抗体は、IgG抗体、より好ましくはヒトIgG抗体およびなおより好ましくはヒトIgG1抗体であることが好ましい。
【0591】
したがって、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる抗体は、任意の抗体、好ましくは任意のIgG型抗体であってよい。例えば、抗体は、これだけに限定することなく、ブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、ポラツズマブまたはエンホルツマブであり得る。
【0592】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明は、抗体が、ブレンツキシマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、トラスツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ゲムツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、イノツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、アベルマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、セツキシマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、リツキシマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ダラツムマブ(Daratumumbab)である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ペルツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ベドリズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、オクレリズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、トシリズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ウステキヌマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ゴリムマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、オビヌツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、ポラツズマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。さらなる実施形態では、本発明は、抗体が、エンホルツマブである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0593】
本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる抗体は、抗体の重鎖のアミノ酸残基Q295(EU番号付け)を含み、リンカーと前記アミノ酸残基を介してコンジュゲートしていることがさらに好ましい。さらに、抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる抗体は、好ましくは抗体の重鎖のN297位(EU番号付け)において、グリコシル化されていることが好ましい。
【0594】
特定の実施形態では、本発明は、本発明による抗体-リンカーコンジュゲート、特に、少なくとも1つのペイロードを含む抗体-リンカーコンジュゲートを含む、医薬組成物に関する。
【0595】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、少なくとも1つの毒素を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0596】
すなわち、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、少なくとも1つのリンカーとコンジュゲートした抗体を含み、リンカーのうちの1つは、少なくとも1つの毒素を含む。ある特定の実施形態では、抗体-リンカーコンジュゲートは、2つのリンカーを含み、抗体の各重鎖がそれぞれリンカーのうちの1つとコンジュゲートしている。ある特定の実施形態では、抗体-リンカーコンジュゲートは、4つのリンカーを含み、抗体の各重鎖がそれぞれ2つのリンカーとコンジュゲートしている。そのような場合では、各リンカーは、1つまたは複数のペイロード、例えば、毒素を含有し得る。
【0597】
ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、2つのリンカーを含み、各リンカーが1つのペイロード、例えば、毒素を含む。他の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、2つのリンカーを含み、各リンカーが2つのペイロード、例えば、1つの毒素と1つの他のペイロード、または2つの同一のもしくは異なる毒素を含む。抗体-リンカーコンジュゲートが2つのリンカーを含む実施形態では、リンカーがIgG抗体の2つの重鎖の残基Q295とコンジュゲートしていることが好ましい。抗体が残基N297においてグリコシル化されたIgG抗体であることがなおより好ましい。
【0598】
ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは4つのリンカーを含み、各リンカーが1つのペイロード、例えば、毒素を含む。他の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは4つのリンカーを含み、各リンカーが2つのペイロード、例えば、1つの毒素と1つ他のペイロード、または2つの同一のもしくは異なる毒素を含む。抗体-リンカーコンジュゲートが4つのリンカーを含む実施形態では、リンカーがIgG抗体の2つの重鎖の残基Q295およびN297Qとコンジュゲートしていることが好ましい。
【0599】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが2つの異なる毒素を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0600】
ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、2つの異なる毒素を含む。すなわち、ある特定の実施形態では、抗体-リンカーコンジュゲートは、2つのリンカーを含んでよく、各リンカーが2つの異なる毒素を含む。2つの異なる毒素を含む抗体-リンカーコンジュゲートには、それらが、細胞傷害活性の増加を有し得るという利点がある。そのような細胞傷害活性の増加は、2つの異なる細胞機構を標的とする2つの毒素を組み合わせることによって実現することができる。例えば、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、細胞分裂を阻害する第1の毒素を含んでよく、第2の毒素は、DNAの複製および/または転写に干渉する毒素である。
【0601】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、第1の毒素が、細胞分裂を阻害する毒素であり、第2の毒素が、DNAの複製および/または転写に干渉する毒素である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0602】
細胞分裂を阻害する毒素、例えば、抗有糸分裂薬または紡錘体毒は、細胞の有糸分裂を阻害または防止する潜在性を有する薬剤である。紡錘体毒は、染色体のセントロメア領域を接続する、紡錘体として公知のタンパク質の糸(protein thread)に影響を及ぼすことによって細胞分裂を妨害する毒物である。紡錘体毒は、紡錘体集合チェックポイント(SAC)において細胞分裂の有糸分裂期を中断させることにより、新しい細胞の産生を有効に止める。有糸分裂紡錘体は微小管(重合したチューブリン)で構成され、これは、調節タンパク質と一緒になって、互いに、複製された染色体を適正に分離する活性を助ける。有糸分裂紡錘体に影響を及ぼすある特定の化合物が、固形腫瘍および血液悪性腫瘍に対して高度に有効であることが証明されている。
【0603】
抗有糸分裂薬の2つの特定のファミリーであるビンカアルカロイドおよびタキサンは、微小管の動力学的特性をかき乱すことによって細胞の分裂を中断させる。ビンカアルカロイドは、チューブリンの微小管への重合の阻害を引き起こし、それにより、細胞周期内のG2/Mでの停止、および最終的に細胞死をもたらすことによって機能する。対照的に、タキサンは、微小管を脱重合に対して安定化させることによって有糸分裂細胞周期を停止させる。新規の化学療法薬の標的になり得る多数の他の紡錘体タンパク質が存在するにもかかわらず、チューブリン結合薬剤が臨床使用されている唯一の型である。モータータンパク質であるキネシンに影響を及ぼす薬剤が臨床試験に入り始めている。別の型であるパクリタキセルは、既存の微小管内のチューブリンに結合することによって作用する。本発明の範囲に入る、好ましい細胞分裂を阻害する毒素は、アウリスタチン、例えば、MMAEおよびMMAF、ならびにメイタンシノイド、例えば、DM1、DM3、DM4および/またはDM21である。
【0604】
特定の実施形態では、本発明は、毒素の少なくとも1つが、アウリスタチンまたはメイタンシノイドである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0605】
DNA分子の正確な複製および/または転写を妨げるものであり、がん処置に適することが示されているいくつかの薬剤が当業者に公知である。例えば、新たに形成されたDNAおよび/またはRNA分子に誤って組み入れられるヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体などの代謝拮抗薬が当技術分野で公知であり、Tsesmetzis et al, Cancers (Basel), 2018, 10 (7): 240によって要約されている。DNAの複製および/または転写に干渉することが公知の他の毒素はデュオロマイシン(duoromycin)である。
【0606】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、2つの異なる毒素を含み、第1の毒素はデュオロマイシンであり、第2のペイロードはアウリスタチンまたはメイタンシノイドである。
【0607】
ある特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、2つの異なるアウリスタチンを含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0608】
2つの異なる毒素を含む抗体-リンカーコンジュゲート主要な利点の1つは、抗体-リンカーコンジュゲートが、一方の毒素の作用機序を逃れた標的細胞に対してもなお作用し得ること、および/または、抗体-ペイロードコンジュゲートが、不均一な腫瘍に対して、より高い有効性を有し得ることである。
【0609】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、毒素および薬物流出輸送体の阻害剤を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0610】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、毒素および溶解性増加部分を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0611】
すなわち、抗体-リンカーコンジュゲートは、2つのペイロードを含み得、第1のペイロードは毒素であり、第2のペイロードは溶解性増加部分である。あるいは、抗体-リンカーコンジュゲートを、毒素とリンカーのアジドを含む連結部分をクリック反応させること(clicking)により、およびマレイミドを含む溶解性増加部分と、同じリンカーのシステイン側鎖をクリック反応させることにより、得ることができる。あるいは、毒素および/または溶解性増加部分をリンカーに化学合成によって結合させることができる。
【0612】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、毒素および免疫賦活剤を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0613】
本明細書で使用される場合および文脈に応じて、「免疫賦活剤」という用語は、抗原に対する対象の免疫応答を増加させる化合物を包含する。免疫賦活剤の例としては、免疫賦活剤および免疫細胞活性化化合物が挙げられる。本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、免疫細胞がリガンドを認識するようにプログラムし、抗原提示を増強するのに役立つ免疫賦活剤を含有し得る。免疫細胞活性化化合物としては、Toll様受容体(TLR)アゴニストが挙げられる。そのようなアゴニストとしては、病原体関連分子パターン(PAMP)、例えば、感染模倣組成物、例えば、細菌由来免疫モジュレーター(別名、危険信号)および損傷関連分子パターン(DAMP)、例えば、ストレスまたは損傷を受けた細胞を模倣する組成物が挙げられる。TLRアゴニストとしては、核酸または脂質組成物(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA))が挙げられる。一実施例では、TLRアゴニストは、TLR9アゴニスト、例えば、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、PEI-CpG-ODNなどのポリ(エチレンイミン)(PEI)凝縮オリゴヌクレオチド(ODN)、または二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)を含む。別の例では、TLRアゴニストは、TLR3アゴニスト、例えば、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、PEI-ポリ(I:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、PEI-ポリ(A:U)、または二本鎖リボ核酸(RNA)を含む。他の例示的なワクチン免疫賦活化合物としては、リポ多糖(LPS)、ケモカイン/サイトカイン、真菌ベータ-グルカン(例えば、レンチナン)、イミキモド、CRX-527、およびOM-174が挙げられる。
【0614】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、2つの異なる免疫賦活剤を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0615】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの免疫賦活剤が、TLRアゴニストである、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0616】
「TLRアゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、直接的なリガンドとしてか、または内因性または外因性の生成を通じて間接的に、TLRシグナル伝達経路を通じたシグナル伝達応答を引き起こすことが可能な分子を指す。TLR受容体のアゴニストリガンドは、(i)実際のTLR受容体の天然リガンド、もしくは、TLR受容体に結合し、それに対する共刺激シグナルを誘導する能力が保存されたその機能的に等価のバリアント、または(ii)TLR受容体、より詳細には前記受容体の細胞外ドメインに特異的に結合し、この受容体および関連タンパク質によって制御される免疫シグナルのいくつかを誘導することが可能な、TLR受容体に対するアゴニスト抗体、もしくはその機能的に等価のバリアントである。結合特異性は、ヒトTLR受容体に対するものまたは異なる種のヒトTLR受容体と相同なTLR受容体に対するものであり得る。
【0617】
特定の実施形態では、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートが、放射性核種および蛍光色素を含む、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0618】
特定の実施形態では、本発明は、放射性核種が、断層撮影法、特に、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)または陽電子放出断層撮影法(PET)における使用に適した放射性核種であり、蛍光色素が、近赤外蛍光色素である、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0619】
「放射性核種(radionuclide)」という用語は、本明細書で使用される場合、放射性核種(radioactive nuclide)、放射性同位元素(radioisotope)または放射性同位元素(radioactive isotope)と同じ意味を有する。
【0620】
放射性核種は、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、SPECTおよび/もしくはPETのハイブリッド、またはこれらの組合せなどの核医学・分子イメージング技法(複数可)によって検出可能なものであることが好ましい。本明細書における単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)は、平面シンチグラフィー(PS)を包含する。
【0621】
SPECTおよび/またはPETのハイブリッドは、例えば、SPECT/CT、PET/CT、PET/IRMまたはSPECT/IRMである。
【0622】
SPECTおよびPETでは、対象の体内に導入された放射性核種の濃度(または取り込み)に関する情報を取得する。PETでは、陽電子放出放射性核種によって間接的に放出されたガンマ線の対を検出することによって画像を生成する。PET分析の結果、関心領域(例えば、脳、乳房、肝臓など)にわたって体の一連の薄いスライス画像がもたらされる。これらの薄いスライス画像を検査領域の三次元表示にアセンブリすることができる。SPECTは、PETと同様であるが、SPECTに使用される放射性物質は、PETに使用されるものよりも減衰時間が長く、また、2本のガンマ線ではなく単一のガンマ線を放出する。SPECT画像は、PET画像よりも感度が低く、詳細でないが、SPECT技法は、PETよりもはるかに低費用であり、粒子加速器が近くにある必要がないという利点がもたらされる。実際の臨床的PETでは、SPECTよりも高感度で良好な空間解像度がもたらされ、光子のエネルギーが高いことに起因して、正確な減衰補正という利点がもたらされる。したがって、PETではSPECTよりも正確な定量的データがもたらされる。平面シンチグラフィー(PS)は、同じ放射性核種を使用するという点でSPECTと同様である。しかし、PSでは2D情報しか生成されない。
【0623】
SPECTでは、局所的な放射性トレーサー取り込みのコンピュータにより生成された画像がもたらされ、一方、CTでは、ヒトの体のX線密度の3D解剖学的画像がもたらされる。複合SPECT/CTイメージングでは、単一の検査の間に得られたSPECTからの機能的情報およびCTからの解剖学的情報が逐次的にもたらされる。CTデータは、単一の光子放射データを迅速かつ最適に減衰補正するためにも使用される。SPECT/CTでは、異常なおよび/または生理的トレーサー取り込みの領域を精密に特定することにより、感度および特異度が改善されるだけでなく、正確な線量推定の実現に、ならびに介入手順の誘導に、または体外放射線治療のための標的体積のより良好な規定にも役立ち得る。手順の大半が単一光子放出放射性トレーサーを用いたガンマカメライメージングが手順の大半を代表する。
【0624】
放射性核種は、テクネチウム99m(99mTc)、ガリウム67(67Ga)、ガリウム68(68Ga)イットリウム90(90Y)、インジウム111(111In)、レニウム186(186Re)、フッ素18(18F)、銅64(64Cu)、テルビウム149(149Tb)またはタリウム201(201TI)からなる群から選択することができる。放射性核種を分子に含めることもでき、キレート剤と結合させることもできる。
【0625】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される成分を含む、本発明による医薬組成物に関する。
【0626】
すなわち、本発明は、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートを含み、抗体-リンカーコンジュゲートが、ペイロードを含むことが好ましい、医薬組成物に関する。
【0627】
薬学的に許容される成分は、対象に対して非毒性である、医薬製剤中の、活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される成分としては、これだけに限定されないが、バッファー、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられる。
【0628】
本明細書に記載の抗体-リンカーコンジュゲートの医薬製剤は、所望の程度の純度を有するコンジュゲートと1つまたは複数の必要に応じた薬学的に許容される成分を混合することにより、凍結乾燥製剤または水性液剤の形態に調製される(Flemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition、Oslo, A. Ed. (1980))。薬学的に許容される成分は、一般に、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性のものであり、それらとして、これだけに限定されないが、バッファー、例えば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた単糖、二糖、および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Znタンパク質複合体);ならびに/または非イオン界面活性物質、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本発明における例示的な薬学的に許容される成分には、可溶性、中性の活性なヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質性薬物分散剤(insterstitial drug dispersion agent)がさらに含まれる。rHuPH20を含めたある特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、US特許公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPをコンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせる。
【0629】
特定の実施形態では、本発明は、治療および/または診断における使用のための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0630】
すなわち、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートを、対象の処置または対象における疾患もしくは状態の診断に使用することができる。個体または対象は、哺乳動物である。哺乳動物としては、これだけに限定されないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびマカクなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0631】
特定の実施形態では、本発明は、
新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者の処置における使用のための、またはそのような状態を予防するための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0632】
特定の実施形態では、本発明は新生物疾患に罹患している患者の処置における使用のための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0633】
「新生物疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の制御されない異常な成長を特徴とする状態を指す。新生物疾患にはがんが含まれる。がんの例としては、これだけに限定されないが、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。そのようながんのより詳細な例としては、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、頸がん(cervical cancer)、胃腸がん、膵がん、神経膠芽腫、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、結腸直腸がん、子宮頸がん(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、皮膚がん、黒色腫、脳がん、卵巣がん、神経芽細胞腫、骨髄腫、種々の型の頭頸部がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫および末梢神経上皮腫が挙げられる。好ましいがんとしては、肝がん、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫および末梢神経上皮腫が挙げられる。
【0634】
すなわち、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、がんの処置に使用されることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、抗体-リンカーコンジュゲートは、腫瘍細胞上に提示される抗原に特異的に結合する抗体を含む。ある特定の実施形態では、抗原は、腫瘍細胞の表面上の抗原であり得る。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞の表面上の抗原は、抗体-リンカーコンジュゲートが抗原と結合すると、抗体-リンカーコンジュゲートと共に細胞に内部移行し得る。
【0635】
抗体-リンカーコンジュゲートをがんの処置に使用する場合、抗体-リンカーコンジュゲートは、抗体-リンカーコンジュゲートが結合した腫瘍細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害する潜在性を有する少なくとも1つのペイロードを含むことが好ましい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのペイロードは、抗体-リンカーコンジュゲートが腫瘍細胞に内部移行した後に細胞傷害活性を示す。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのペイロードは、毒素である。
【0636】
本発明の別の態様によると、新生物疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、上記による抗体-リンカーコンジュゲート、上記による医薬組成物、または上記による製品を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0637】
炎症性疾患は、自己免疫疾患であり得る。感染性疾患は、細菌感染またはウイルス感染であり得る。
【0638】
特定の実施形態では、本発明は、術前、術中、または術後イメージングにおける使用のための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0639】
すなわち、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートをイメージングに使用することができる。そのために、抗体-リンカーコンジュゲートを、特定の標的分子、細胞または組織に結合している間、可視化することができる。特定のペイロードを可視化するための種々の技法が当技術分野で公知である。例えば、ペイロードが放射性核種である場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞、または組織をPETまたはSPECTによって可視化することができる。ペイロードが蛍光色素である場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞、または組織を蛍光イメージングによって可視化することができる。ある特定の実施形態では、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートは、2つの異なるペイロード、例えば、放射性核種および蛍光色素を含む。この場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞または組織を、2つの異なるおよび/または相補的なイメージング技法、例えば、PET/SPECTおよび蛍光イメージングを使用して可視化することができる。
【0640】
抗体-リンカーコンジュゲートを術前 術中および/または術後イメージングのために使用することができる。
【0641】
術前イメージングは、ある特定の疾患または状態を診断するときに特定の標的分子、細胞または組織を可視化するために、および、必要に応じて、外科手術のための手引きを提供するために、外科手術前に実施することができる全てのイメージング技法を包含する。術前イメージングは、腫瘍上の抗原に特異的に結合する抗体を含み、放射性核種を含むペイロードとコンジュゲートした抗体-リンカーコンジュゲートを使用することにより、外科手術を実施する前にPETまたはSPECTによって腫瘍を可視化するステップを含み得る。
【0642】
術中イメージングは、特定の標的分子、細胞または組織を可視化し、したがって、外科手術のための手引きを提供するために、外科手術中に実施することができる全てのイメージング技法を包含する。ある特定の実施形態では、近赤外蛍光色素を含む抗体-リンカーコンジュゲートを使用して、外科手術中に近赤外蛍光イメージングによって腫瘍を可視化することができる。術中イメージングにより、外科医が外科手術中に特定の組織、例えば、腫瘍組織を特定することが可能になり、したがって、腫瘍組織の完全な除去が可能になり得る。
【0643】
術後イメージングは、特定の標的分子、細胞または組織を可視化するため、および外科手術の結果を評価するために、外科手術後に実施することができる全てのイメージング技法を包含する。術後イメージングは術前外科手術と同様に実施することができる。
【0644】
ある特定の実施形態では、本発明は、2つまたはそれよりも多くの異なるペイロードを含む抗体-リンカーコンジュゲートに関する。例えば、抗体-リンカーコンジュゲートは、放射性核種および近赤外蛍光色素を含み得る。そのような抗体-ペイロードコンジュゲートは、PET/SPECTおよび近赤外蛍光イメージングによるイメージングのために使用することができる。そのような抗体の利点は、標的組織、例えば腫瘍を外科手術の前後にPETまたはSPECTによって可視化するために使用することができることである。同時に、腫瘍を外科手術中に近赤外蛍光イメージングによって可視化することができる。
【0645】
特定の実施形態では、本発明は、術中イメージング誘導がん手術における使用のための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0646】
上記の通り、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートを、標的分子、細胞または組織を可視化するため、および外科手術中に外科医またはロボットをガイドするために使用することができる。すなわち、抗体-リンカーコンジュゲートを、外科手術中に、例えば、近赤外イメージングによって腫瘍組織を可視化するため、および腫瘍組織の完全な除去を可能にするために使用することができる。
【0647】
特定の実施形態では、本発明は、
新生物疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患
・に罹患している
・それが発症するリスクがある、および/または
・その診断を受けている
患者を処置するための医薬の製造のための、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0648】
特定の実施形態では、本発明は、新生物疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、本発明による抗体-リンカーコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物を投与するステップを含む、方法に関する。
【0649】
前記コンジュゲートまたは製品を、ヒト対象または動物対象に、疾患が効率的に処置される量または投与量で投与する。あるいは、対応する処置の方法を提供する。
【0650】
本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに所望であれば局所処置のための病巣内投与、子宮内投与または膀胱内投与を含めた、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期のものであるか長期にわたるものであるかに一部依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によるものであり得る。これだけに限定されないが、単回または種々の時点にわたる複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含めた種々の投与スケジュールが本発明において意図されている。
【0651】
本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、適正診療規範と合致する様式で製剤化され、適量に分けられ、投与されるであろう(Antibody-linker conjugates of the invention would be formulated, dosed, and administered in a fashion consistent of the invention would be formulated, dosed, and administered in a fashion consistent with good medical practice)。これに関連して考慮される因子としては、処置される特定の障害、処置を受ける特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医療従事者に公知の他の因子が挙げられる。抗体-リンカーコンジュゲートは、必ずしもではないが、必要に応じて、問題の障害を予防または処置するために現在使用されている1つまたは複数の薬剤と共に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体-リンカーコンジュゲートの量、障害または処置の型、および上記の他の因子に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投与量および投与経路で、または本明細書に記載の投与量の約1%から約99%までで、または適正であると経験的/臨床的に決定された任意の投与量で任意の経路によって使用される。
【0652】
疾患の予防または処置に関して、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートの適正な投与量(単独で、または1つもしくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用する場合)は、処置される疾患の型、抗体-ペイロードコンジュゲートの型、重症度および疾患の経過、抗体-リンカーコンジュゲートが予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の臨床歴および抗体-リンカーコンジュゲートに対する応答、ならびに担当医の自由裁量に依存する。抗体-リンカーコンジュゲートを、患者に1回または一連の処置にわたって適切に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0653】
【
図1】
図1は、本発明の一態様の図を示す。MTG=微生物トランスグルタミナーゼ。星印は、ペイロードまたは連結部分Bを例示する。ペプチドのN末端にあるAax残基はMTGのための基質である。このプロセスにより、N297におけるグリコシル化を維持することが可能になることに留意されたい。B/星印が連結部分である場合、実際のペイロードはこの部分になおコンジュゲートしていなければならないことに留意されたい。
【0654】
【
図2】
図2は、実施例2~5においてグリコシル化抗体とコンジュゲートしたリンカーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0655】
図および上記の説明において本発明を例示し、詳細に記載したが、そのような図表および説明は、例示的または典型的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。本発明は、本開示の実施形態に限定されない。特許請求された発明の実施に関して、図、本開示、および添付の特許請求の範囲の教示から当業者は本開示の実施形態の他の変形形態を理解し、実行することができる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つの(a)」または「1つの(an)」という不定冠詞は複数を排除するものではない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0656】
(実施例1)
コンジュゲーション効率
リンカーが得られ次第使用し、製造者の指示に従って適切なストック濃度(例えば、25mM)に溶解させ、一定分量を調製し、-20℃で保管する。IgGサブクラスの抗体2種(抗体1:抗Her2 IgG1、抗体2:抗CD38 IgG1)を以下の通り改変する:5mg/mLの非脱グリコシル化抗体(約33.33μM)を20モル当量のアミノ酸に基づくリンカー(すなわち、約667μM)、3U/mgの抗体および適切な緩衝液と混合する。反応混合物を37℃で20時間インキュベートし、次いで、還元条件下のLC-MS分析に供する。他の反応条件は対応する実施例に示されている通り使用した。
(実施例2)
ペプチドリンカーとネイティブな操作されていないグリコシル化抗体(抗Her2 IgG)のN末端(改変)アミノ酸の一級アミンを介したコンジュゲーション
【0657】
配列の最初(N末端)に種々のアミノ酸誘導体を有するリンカーをコンジュゲーションのために使用した。
方法
【0658】
抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、薬局で購入した)、ならびに全てのペプチドリンカー(LifeTein LLCから購入した)は市販のものであった。
【0659】
ペプチドリンカー(構造については
図2を参照されたい)のコンジュゲーションのために、50mMのTris、pH7.6中5mg/mLのネイティブなグリコシル化モノクローナル抗体、50mMのTris、pH7.6または水中3U/mgの濃度の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)、および20モル当量の示されているペプチドリンカーを使用し、回転サーモミキサー中、37℃で24時間インキュベートした。コンジュゲーション効率をLC-MSによってDTT還元条件下で評価した。試料の還元を、抗体-リンカー-コンジュゲート(ALC)を50mMのDTT(最終)および50mMのTris緩衝液中、37℃で15分間インキュベートすることによって実現した。Acquity UPLC H-Class System(Waters)およびACQUITY UPLC BEH C18 Columnに接続したXevo G2-XS QTOF(Waters)でプローブを分析した。コンジュゲーション効率(CE)をデコンボリューションしたスペクトルから算出し、%で示した。両方のグリコフォーム(G1FおよびG0F)から得られた強度を、次式に従って算出のために計算に入れた:
【数1】
cj=コンジュゲートされた、およびncj=コンジュゲートされていない
結果
【0660】
驚くべきことに、一級アミンと最初のアミノ酸(すなわち、N末端アミノ酸)のカルボキシル基の間にアルキル(例えば、メチル)スペーサーを有するペプチドの全てで、有意なコンジュゲーション効率がもたらされた。メチル基の長さもペプチドの次の(2番目の)アミノ酸の性質もコンジュゲーション効率には有意な影響を及ぼさなかったことに注目すべきである。したがって、驚くべきことに、一級アミンと最初の(N末端)アミノ酸のカルボキシ基の間にアルキルスペーサーを有するペプチドはいずれも、ネイティブなグリコシル化抗体とのコンジュゲーションに使用することができることが見いだされた(表3)。一級アミンとC-アルファおよび/またはカルボキシ基の間にアルキル(例えば、メチル)スペーサーを有さないペプチドはグリコシル化抗体とコンジュゲートすることができなかった。
表3.ペプチドリンカーのコンジュゲーション効率
【表3-1】
【表3-2】
【0661】
使用した名称C1、C2、C3、C4、C5またはC6において、数字(1~6)は、一級アミンとカルボキシル基の間のスペーサーのメチレン単位の数を示す。すなわち、C1はグリシンであるスペーサーに対応し、C2はβ-アラニンであるスペーサーに対応し、C3は4-アミノ酪酸であるスペーサーに対応し、C4は5-アミノプロピオン酸であるスペーサーに対応し、C5は6-アミノヘキサン酸であるスペーサーに対応し、C6は7-アミノヘプタン酸であるスペーサーに対応する。
(実施例3)
ペプチドリンカーとネイティブな操作されていないグリコシル化抗体(抗CD38 IgG)のN末端(改変)アミノ酸の一級アミンを介したコンジュゲーション
【0662】
配列の最初(N末端)に種々のアミノ酸誘導体を有するリンカーをコンジュゲーションに使用した。
方法
【0663】
抗体ダラツムマブ(Darzalex(登録商標)、Janssen、薬局で購入した)、ならびに全てのペプチドリンカー(LifeTein LLCから購入した)は市販のものであった。
【0664】
ペプチドリンカー(構造については
図2を参照されたい)のコンジュゲーションのために、50mMのTris、pH7.6中5mg/mLのネイティブなグリコシル化モノクローナル抗体、50mMのTris、pH7.6または水中3U/mgの濃度の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)、および20モル当量の示されているペプチドリンカーを使用し、回転サーモミキサー中、37℃で24時間インキュベートした。コンジュゲーション効率をLC-MSによってDTT還元条件下で評価した。試料の還元を、抗体-リンカー-コンジュゲート(ALC)を50mMのDTT(最終)および50mMのTris緩衝液中、37℃で15分間インキュベートすることによって実現した。Acquity UPLC H-Class System(Waters)およびACQUITY UPLC BEH C18 Columnに接続したXevo G2-XS QTOF(Waters)でプローブを分析した。コンジュゲーション効率(CE)をデコンボリューションしたスペクトルから算出し、%で示した。両方のグリコフォーム(G1FおよびG0F)から得られた強度を、次式に従って算出のために計算に入れた:
【数2】
cj=コンジュゲートされた、およびncj=コンジュゲートされていない
結果
【0665】
驚くべきことに、一級アミンと最初のアミノ酸(すなわち、N末端アミノ酸)のカルボキシル基の間にアルキル(例えば、メチル)スペーサーを有するペプチドの全てで、有意なコンジュゲーション効率がもたらされた。メチル基の長さもペプチドの次の(2番目の)アミノ酸の性質もコンジュゲーション効率には有意な影響を及ぼさなかったことに注目すべきである。したがって、驚くべきことに、一級アミンと最初の(N末端)アミノ酸のカルボキシ基の間にアルキルスペーサーを有するペプチドはいずれも、ネイティブなグリコシル化抗体とのコンジュゲーションに使用することができることが見いだされた(表4)。
表4.ペプチドリンカーのコンジュゲーション効率
【表4】
【0666】
使用した名称C1、C2、C3、C4、C5またはC6において、数字(1~6)は、一級アミンとカルボキシル基の間のスペーサーのメチレン単位の数を示す。すなわち、C1はグリシンであるスペーサーに対応し、C2はβ-アラニンであるスペーサーに対応し、C3は4-アミノ酪酸であるスペーサーに対応し、C4は5-アミノプロピオン酸であるスペーサーに対応し、C5は6-アミノヘキサン酸であるスペーサーに対応し、C6は7-アミノヘプタン酸であるスペーサーに対応する。
(実施例4)
他の反応条件(条件2)を使用したペプチドリンカーのコンジュゲーション
【0667】
リンカーとのコンジュゲーションが反応条件の変動を許容するものであることを実証するために、いくつかのパラメータを変化させた(リンカー当量、MTG量、抗体濃度、反応時間)。
方法
【0668】
抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、薬局で購入した)、ならびに全てのペプチドリンカー(LifeTein LLCから購入した)は市販のものであった。
【0669】
ペプチドリンカー(構造については
図2を参照されたい)のコンジュゲーションのために、50mMのTris、pH7.6中1mg/mLのネイティブなグリコシル化モノクローナル抗体、50mMのTris、pH7.6または水中6U/mgの濃度の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)、および80モル当量の示されているペプチドリンカーを使用し、回転サーモミキサー中、37℃で20時間インキュベートした。これらを「条件2」と定義する。コンジュゲーション効率をLC-MSによってDTT還元条件下で評価した。試料の還元を、抗体-リンカー-コンジュゲート(ALC)を50mMのDTT(最終)および50mMのTris緩衝液中、37℃で15分間インキュベートすることによって実現した。Acquity UPLC H-Class System(Waters)およびACQUITY UPLC BEH C18 Columnに接続したXevo G2-XS QTOF(Waters)でプローブを分析した。コンジュゲーション効率(CE)をデコンボリューションしたスペクトルから算出し、%で示した。両方のグリコフォーム(G1FおよびG0F)から得られた強度を、次式に従って算出のために計算に入れた:
【数3】
cj=コンジュゲートされた、およびncj=コンジュゲートされていない
結果
【0670】
全てのペプチドリンカーが有意なコンジュゲーション効率でコンジュゲートされ(表5)、これにより、リンカーが広範囲の反応条件を許容することが示される。全体的に、実施例3の条件では、より高いコンジュゲーション効率が得られた(すなわち、6U/mg未満の酵素、1mg/mlよりも高い抗体濃度および80モル当量未満のペプチドリンカーを使用することにより、より良好な結果が得られる)。
表5.条件2を使用したペプチドリンカーのコンジュゲーション効率
【表5-1】
【表5-2】
【0671】
使用した名称C1、C2、C3、C4、C5またはC6において、数字(1~6)は、一級アミンとカルボキシル基の間のスペーサーのメチレン単位の数を示す。すなわち、C1はグリシンであるスペーサーに対応し、C2はβ-アラニンであるスペーサーに対応し、C3は4-アミノ酪酸であるスペーサーに対応し、C4は5-アミノプロピオン酸であるスペーサーに対応し、C5は6-アミノヘキサン酸であるスペーサーに対応し、C6は7-アミノヘプタン酸であるスペーサーに対応する。
(実施例5)
他の反応条件(条件3)を使用したペプチドリンカーのコンジュゲーション
【0672】
リンカーとのコンジュゲーションが反応条件の変動を許容するものであることを実証するために、いくつかのパラメータを変化させた(リンカー当量、MTG量、抗体濃度、反応時間)。
方法
【0673】
抗体トラスツズマブおよびダラツムマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、およびDarzalex(登録商標)、Janssen、薬局で購入した)、ならびに全てのペプチドリンカー(LifeTein LLCから購入した)は市販のものであった。
【0674】
ペプチドリンカー(構造については
図2を参照されたい)のコンジュゲーションのために、50mMのTris、pH7.6中5mg/mLのネイティブなグリコシル化モノクローナル抗体、50mMのTris、pH7.6または水中3U/mgの濃度の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)、および5モル当量の示されているペプチドリンカーを使用し、回転サーモミキサー中、37℃で24時間インキュベートした。これらを「条件3」と定義する。コンジュゲーション効率をLC-MSによってDTT還元条件下で評価した。試料の還元を、抗体-リンカー-コンジュゲート(ALC)を50mMのDTT(最終)および50mMのTris緩衝液中、37℃で15分間インキュベートすることによって実現した。Acquity UPLC H-Class System(Waters)およびACQUITY UPLC BEH C18 Columnに接続したXevo G2-XS QTOF(Waters)でプローブを分析した。コンジュゲーション効率(CE)をデコンボリューションしたスペクトルから算出し、%で示した。両方のグリコフォーム(G1FおよびG0F)から得られた強度を、次式に従って算出のために計算に入れた:
【数4】
cj=コンジュゲートされた、およびncj=コンジュゲートされていない
結果
【0675】
5eqという少なさのペプチドリンカーのみを使用した場合であっても、全てのペプチドリンカーが有意なコンジュゲーション効率でコンジュゲートされた(表6)。
表6.条件3を使用したペプチドリンカーのコンジュゲーション効率
【表6】
【0676】
使用した名称C1、C2、C3、C4、C5またはC6において、数字(1~6)は、一級アミンとカルボキシル基の間のスペーサーのメチレン単位の数を示す。すなわち、C1はグリシンであるスペーサーに対応し、C2はβ-アラニンであるスペーサーに対応し、C3は4-アミノ酪酸であるスペーサーに対応し、C4は5-アミノプロピオン酸であるスペーサーに対応し、C5は6-アミノヘキサン酸であるスペーサーに対応し、C6は7-アミノヘプタン酸であるスペーサーに対応する。
【配列表】
【国際調査報告】