IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ ジョージア リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッドの特許一覧

特表2023-542922PIV5ベースのCOVID-19ワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】PIV5ベースのCOVID-19ワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20231004BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/50
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518132
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 US2021051196
(87)【国際公開番号】W WO2022061264
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/080,862
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/217,361
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522219098
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ジョージア リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘー,ビアオ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA59
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、COVID-19に対する安全で、安定で、有効且つ費用効果的なワクチンとして使用するためのSARS-CoV-2エンベロープスパイク(S)タンパク質を発現するパラインフルエンザウイルス5型(PIV5)ウイルスの構築物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリペプチドを発現する異種ヌクレオチド配列を含むパラインフルエンザウイルス5(PIV5)ゲノムを含むウイルス発現ベクターであって、前記異種ポリペプチドが、コロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む、ウイルス発現ベクター。
【請求項2】
前記コロナウイルスSタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含む、請求項1に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項3】
前記コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部が、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている、請求項1に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項4】
前記コロナウイルスSタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含み、且つ、前記コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部が、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている、請求項1に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項5】
前記異種ポリペプチドが、アミノ酸残基W886及び/又はF888に変異を含むコロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項6】
アミノ酸残基W886におけるアミノ酸置換が、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換を含み、及び/又はアミノ酸残基W888における前記アミノ酸置換が、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換を含む、請求項5に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項7】
前記PIV5ゲノムの小型疎水性タンパク質(SH)遺伝子とヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子との間に前記異種ヌクレオチド配列が挿入されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項8】
前記異種ヌクレオチド配列でSH遺伝子のヌクレオチド配列を置換する、請求項1~6のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項9】
前記異種ヌクレオチド配列が、前記PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間に挿入されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項10】
前記異種ヌクレオチド配列が、前記PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間よりも、リーダーの近くに挿入され;前記PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子の上流に挿入され;前記PIV5ゲノムのリーダー配列のすぐ下流に挿入され;前記PIV5ゲノムの融合(F)タンパク質遺伝子とSH遺伝子との間に挿入され;前記PIV5ゲノムのVP遺伝子とマトリックスタンパク質(M)遺伝子との間に挿入され;前記PIV5ゲノムのM遺伝子とF遺伝子との間に挿入され;前記PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子とV/P遺伝子との間に挿入され;前記PIV5ゲノムのリーダー配列とヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子との間に挿入され;前記PIV5のF若しくはHN遺伝子の一部が前記異種ヌクレオチド配列で置換された場合に挿入され;前記SH遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入され、前記NP遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、前記V/P遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、前記M遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、前記F遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、前記HN遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、且つ/又は前記L遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入される、請求項1~6のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項11】
前記PIV5ゲノムがさらに1つ以上の変異を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項12】
前記1つ以上の変異が、前記V/P遺伝子の変異、前記V及びPタンパク質の共有N末端の変異、前記V及びPタンパク質の共有N末端の残基26、32、33、50、102、及び/又は157の変異、前記Vタンパク質のC末端を欠失する変異、前記小型疎水性(SH)タンパク質を欠失する変異、前記融合(F)タンパク質の変異、前記リンタンパク質(P)の変異、前記大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質の変異、イヌパラインフルエンザウイルス由来の残基を組み込む変異、アポトーシスを誘導する変異、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項13】
前記1つ以上の変異が、PIV5VΔC、PIV5ΔSH、PIV5-P-S308G、又はそれらの組合せを含む、請求項11に記載のウイルス発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクターを含むウイルス粒子。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター及び/又は請求項14に記載のウイルス粒子を含む組成物。
【請求項16】
細胞内で異種コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質を発現させる方法であって、前記方法は、請求項1~15のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物と前記細胞を接触させることを含む方法。
【請求項17】
コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質に対する免疫応答を対象に誘導する方法であって、前記方法は、請求項1~15のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
前記免疫応答が、体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対して、対象にワクチン接種をする方法であって、前記方法は、請求項1~15のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
前記ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物が、鼻腔、筋肉内、局所、又は経口投与される、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
継続出願データ
本出願は、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる、2020年9月21日に出願された米国仮特許出願第63/080,862号明細書及び2021年7月1日に出願された米国仮特許出願第63/217,361号明細書の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office)に、38キロバイトサイズの「0235-000294WO01_ST25」と題するASCIIテキストファイルとして電子的に提出され、2021年9月15日に作成された配列表を含む。配列表に含まれる情報は、本明細書に参照として組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
SARS-CoV-2は、2019年12月に中国、武漢で肺炎の原因として初めて特定され、その後世界的に蔓延し、COVID-19パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスである。このウイルスは、2021年9月8日現在、世界中で2億2千百万人超に感染し、4,574,000人超の死亡の原因となり、集団免疫がなければ、いつでも蔓延し続けることができる(ワールドワイドウェブのwho.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019を参照のこと)。ソーシャルディスタンス、PPEの使用、及び接触追跡による広範な試験、検疫措置、並びに唯一のFDA承認ワクチン及び緊急使用許可(Emergency Use Authorization)(EUA)に従うFDA承認ワクチンの限られた供給が、現在、ウイルスの拡散を制限するために利用できる唯一の手段である。死亡を防ぎ、伝播を低減するワクチンが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、異種ポリペプチドを発現する異種ヌクレオチド配列を有するパラインフルエンザウイルス5(PIV5)ゲノムを有するウイルス発現ベクターを含み、ここで、上記異種ポリペプチドは、コロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む。
【0005】
ウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、コロナウイルスSタンパク質は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含む。
【0006】
ウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部は、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている。
【0007】
ウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、コロナウイルスSタンパク質は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含み、ここで、コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部は、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている。
【0008】
ウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、異種ポリペプチドは、アミノ酸残基W886及び/又はF888に変異を有するコロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む。いくつかの態様では、アミノ酸残基W886におけるアミノ酸置換は、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換を含み、及び/又はアミノ酸残基W888におけるアミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換を含む。
【0009】
本発明のウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムの小型疎水性タンパク質(SH)遺伝子とヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子との間に挿入される。
【0010】
本発明のウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、異種ヌクレオチド配列は、SH遺伝子ヌクレオチド配列を置換する。
【0011】
本発明のウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間に挿入される。
【0012】
本発明のウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間よりもリーダーの近くに挿入され;PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子の上流に挿入され;PIV5ゲノムのリーダー配列のすぐ下流に挿入され;PIV5ゲノムの融合(F)タンパク質遺伝子とSH遺伝子との間に挿入され;PIV5ゲノムのVP遺伝子とマトリックスタンパク質(M)遺伝子との間に挿入され;PIV5ゲノムのM遺伝子とF遺伝子の間に挿入され;PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子とV/P遺伝子の間に挿入され;PIV5ゲノムのリーダー配列とヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子との間に挿入され;PIV5のF又はHN遺伝子の一部が異種ヌクレオチド配列で置換された場合に挿入され;SH遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入され、NP遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入され、V/P遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、M遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、F遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、HN遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、且つ/又はL遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入される。
【0013】
本発明のウイルス発現ベクターのいくつかの態様では、PIV5ゲノムは、1つ以上の変異をさらに含む。いくつかの態様では、1つ以上の変異は、V/P遺伝子の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の残基26、32、33、50、102、及び/又は157の変異、Vタンパク質のC末端が欠失した変異、小型疎水性(SH)タンパク質が欠失した変異、融合(F)タンパク質の変異、リンタンパク質(P)の変異、大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質の変異、イヌパラインフルエンザウイルス由来の残基を組み込む変異、アポトーシスを誘導する変異、又はこれらの組合せを含む。いくつかの態様では、1つ以上の変異は、PIV5VΔC、PIV5ΔSH、PIV5-P-S308G、又はそれらの組合せを含む。
【0014】
本発明は、本明細書に記載のウイルス発現ベクターを有するウイルス粒子を含む。
【0015】
本発明は、本明細書に記載のウイルス発現ベクター又は本明細書に記載のウイルス粒子の組成物を含む。
【0016】
本発明は、細胞において異種コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質を発現させる方法を含み、この方法は、本明細書に記載されるウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物と上記細胞を接触させることを含む。
【0017】
本発明は、コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質に対して対象に免疫応答を誘導する方法を含み、この方法は、本明細書に記載されるウイルス発現ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は本組成物を上記対象に投与することを含む。いくつかの態様では、免疫応答は、体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を含む。いくつかの態様では、ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物は、鼻腔内、筋肉内、局所、又は経口で投与される。
【0018】
本発明は、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対して対象にワクチン接種する方法を含み、この方法は、本明細書に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物は、鼻腔内、筋肉内、局所、又は経口投与される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】pDA27のプラスミドクローニングの概略を示す。
図2】pDA27から生成されたCVX-UGA1の構築物を示す。
図3】シーケンシング・フラグメントを示すプラスミドマップを示す。
図4】pAB76プラスミドを用いてCVX-UGA1ワクチンを構築する工程を示す。
図5】ウイルスレスキュー及びプラーク精製のための概略的スキームを示す。
図6】CVX-UGA1に感染し、SARS-CoV-2スパイクS1モノクローナル抗体でSARS-CoV-2 Sについて染色されたMDBK細胞の免疫蛍光アッセイ画像を示す。
図7】pDA16プラスミドのマップを示す。
図8】nCOV19-S-ヒト-Genscriptプラスミドのマップを示す。
図9】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-1】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-2】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-3】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-4】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-5】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-6】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-7】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-8】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-9】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図9-10】pDA27(CVX-UGA1)プラスミド(配列番号1)のマップ及び配列を示す。
図10】pCAGGS-NPプラスミドのマップを示す。
図11】pCAGGS-Pプラスミドのマップを示す。
図12】pCAGGS-Lプラスミドのマップを示す。
図13】pBH437-pCAGGS-T7プラスミドのマップを示す。
図14】pBH276プラスミドのマップを示す。
図15】pBH161プラスミドのマップを示す。
図16】pCH10プラスミドのマップを示す。
図17】pAB76プラスミドのマップを示す。
図18A】組織培養細胞及びマウスにおけるCVXGA1の生成及びCVXGA1の分析を示す。図18Aは、CVXGA1のスキームを示す。PIV5は、7つの遺伝子を有し、8つのタンパク質、即ち、NP、V、P、M、F、SH、HN、Lをコードする。リーダー配列及びトレーラー配列は、ウイルスRNA合成に重要である。SARS-CoV-2のSは、シグナルペプチド(SP)、受容体結合ドメイン(RBD)、融合ペプチド(FP)、膜貫通ドメイン(TM)及び細胞質尾部(CT)を含む。CVXGA1は、そのCTがPIV5のFのCTに置換され、PIV5のSHとHNの間に挿入されたSを含む。
図18B】組織培養細胞及びマウスにおけるCVXGA1の生成及びCVXGA1の分析を示す。図18Bは、S発現の検出を示す。SARS-CoV-2-S発現を検出するために、免疫蛍光アッセイを実施した。MDBK細胞を模擬感染、又はPIV5若しくはCVXGA1に1多重度感染(MOI)で感染させた。感染から2日後に、細胞を固定し、透過処理し、PIV5-V/P(抗ベクター)及びSARS-CoV-2 Sに特異的な抗体で染色した。イムノブロッティングを用いて発現を検出するために、Vero細胞をPIV5、CVXGA1に1 MOIで感染させ、感染から24時間(hpi)後に溶解させた。ライセートをSDS-PAGEゲル上で分離し、抗SARS-CoV-2 S及び抗PIV5-V/Pでイムノブロットした。
図18C-18D】組織培養細胞及びマウスにおけるCVXGA1の生成及びCVXGA1の分析を示す。図18Cは、CVXGA1による合胞体形成を示す。Vero細胞を、PIV5又はCVXGA1に0.1のMOIで感染させた。48hpiに、細胞を撮影した。図18Dは、CVXGA1で免疫したBALB/cマウスにおける抗S力価を示す。BALB/cマウス(群当たりn=5)は、10、10、及び10プラーク形成単位(PFU)の用量のCVXGA1を用いて、鼻腔内(IN)経路を介して免疫した。免疫から28日後(dpi)にマウスを採血し、ELISAを用いて抗S力価を測定した。図18DのサンプルのRBDの力価は、ELISAを用いて決定した。図18Dのサンプルの中和力価は、実施例2の材料及び方法に記載されるように決定した。
図18E-18F】組織培養細胞及びマウスにおけるCVXGA1の生成及びCVXGA1の分析を示す。図18Eは、CVXGA1で免疫されたBALB/cマウスにおける抗受容体結合ドメイン(RBD)力価を示す。図18DのサンプルのRBDの力価は、ELISAを用いて決定した。図18Fは、CVXGA1で免疫したBALB/cマウスにおける中和力価を示す。図18Dのサンプルの中和力価は、実施例2の材料及び方法に記載されるように決定した。
図19A-19C】CVXGA1による鼻腔内ワクチン接種が、SARS-CoV-2感染後のAd-hACE2感作BALB/cマウスの臨床的及び病理学的疾患を軽減することを示す。図19Aは、BALB/cマウスにおけるCVXGA1ワクチン研究のための実験プロトコルの概略図を示す。処置群(Gp)は、以下を含む:Gp1:筋肉内(IM)経路によるDMEM免疫;Gp2:鼻腔内(IN)経路でのCVXGA1免疫;Gp3:アラム(Alum)アジュバントを用い、IM経路で投与されたUV不活化SARS-CoV-2。次に、全ての動物をAd-hACE2によるSARS-CoV-2感染に対して感作させ、5日後に1×10PFUのSARS-CoV-2を接種した。他の測定値及び群当たりの動物数を表示する。予防接種後の日数はdpiで示される。図19Bは、SARS-CoV-2感染のマウスモデルにおける転帰を示す。Ad5-hACE2形質導入BALB/cマウスに、50μlのDMEM中の1×10PFUのSARS-CoV-2を鼻腔内感染させた。6~8週齢のマウスの体重変化を毎日モニターした(DMEM:n=6、CVXGA1:n=14、UV不活化SARS-CoV-2:群当たりn=6匹)。CVXGA1で免疫されたマウスは、有意に少ない体重減少を示した。*P値<0.05;**p値<0.005;マン・ホイットニー検定。図19Cは、CVXGA1ワクチンが、肺疾患の重症度を低下させることを示す。肺疾患の病理組織学的スコアリングの結果。単核細胞浸潤は全ての群に存在し、顆粒球浸潤は、UV不活化SARS-CoV-2でIM免疫した後、2回目のブースター用量を受けたマウスで増加した。n=4。
図19D】CVXGA1による鼻腔内ワクチン接種が、SARS-CoV-2感染後のAd-hACE2感作BALB/cマウスの臨床的及び病理学的疾患を軽減することを示す。図19Dは、CVXGA1ワクチンが、肺疾患を軽減することを示している。SARS-CoV-2感染の5日後、肺を摘出し、亜鉛ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。肺の代表的なH&E染色を表示する。SARS-CoV-2感染後5日目にUV不活化SARS-CoV-2群で、好酸球浸潤が認められた(下のパネル及び挿入図の矢印により示される)。好酸球浸潤は右のグラフに記録されている。バー=255及び51μm、それぞれ、上部パネル及び下部パネル。
図20A】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図20Aは、フェレット免疫及びウイルスチャレンジの概略図を示す。6匹ずつのフェレットの群を、10PFUの用量で鼻腔内に免疫(CVXGA1)又は模擬免疫(PBS)した。ワクチン排出(Vaccines shedding)のために鼻洗浄を実施し、免疫後毎週採血した。チャレンジから39日後(dpc)に、4×10PFU SARS-CoV-2をフェレットに鼻腔内チャレンジした。鼻洗浄及び直腸スワブは、1、3、5、及び7dpcに実施した。半分(n=6)のフェレットは、感染から4日後に人道的に安楽死させた。試験は7dpcに終了した。
図20B-20C】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図20Bは、IN免疫後のフェレットにおける抗RBD血清IgGを示す。ELISAにより、血清抗RBD IgG力価を評価した。28dpiの力価を示す。図20Cは、免疫後の中和力価を示す。28dpiの抗SARS-CoV-2中和力価は、VSV-CoV-SARS2-S疑似粒子を使用して測定した。+RHS(陽性回収ヒト血清)を陽性対照とし、培地のみを陰性対照とした。
図20D-20F】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図20Dは、チャレンジ後の鼻洗浄液中のウイルスRNAを示す。1、3、5及び7dpcの鼻洗浄液中のウイルスRNAの量を、材料及び方法に記載されているように、qRT-PCRを用いて決定した。図20Eは、チャレンジ後の肺におけるウイルスRNAを示す。4dpc及び7dpcの肺におけるウイルスRNAの量は、qRT-PCRを用いて決定した。図20Fは、チャレンジ後の気管中のウイルスRNAを示す。4dpc及び7dpcでの気管内のウイルスRNAの量は、qRT-PCRを用いて決定した。
図21A】ネコにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図21Aは、免疫処置及びチャレンジの概略図である。4匹ずつの群のネコをIN又は皮下(subQ)経路により10PFUの用量のPBS、CVXGA1で免疫した。subQ群の場合、ネコには、21dpiに同じ用量でブースター接種した。最初の免疫から42日後に、IN経路により4×10PFUのSARS-CoV-2でネコをチャレンジした。14dpcに実験が終了するまで1日おきに鼻洗浄液及び直腸スワブを収集した。
図21B-21D】ネコにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図21Bは、免疫後のネコにおける抗S力価を示す。抗S血清IgGの力価は、ELISA法により測定した。28dpiの血清の力価が示されている。図21Cは、免疫後のネコにおける抗RBD力価を示す。血清中の抗RBDの力価は、ELISAを用いて決定した。28dpiの血清の力価を示す。図21Dは、免疫後の鼻腔洗浄液における抗S IgA力価を示す。鼻洗浄液中の抗S IgAの力価は、ELISAを用いて決定した。28dpiの力価を示した。
図21E】ネコにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図21Eは、チャレンジ後の鼻洗浄液中のウイルス力価を示す。ネコの鼻洗浄液中で回収されたSARS-CoV-2感染性粒子は、ウイルスチャレンジ後に、フォーカス形成単位(FFU)として定量化し、log10FFU/mLとして表示される。
図22A-22C】C57Bl6マウスにおけるCVCGA1の免疫原性を示す。図22Aは、免疫処置の概略図である。C57Bl6マウス(1群当たりn=5)を、PBS、用量10プラーク形成単位(PFU)のPIV5、又は用量6×10PFUのCVXGA1で、鼻腔内(IN)経路により免疫した。免疫から28日後に、マウスを犠牲にした。ターミナル採血し、脾細胞を採取した。図22Bは、マウスにおける抗S力価を示す。抗S力価は、ELISAを用いて測定した。図22Cは、細胞性免疫応答を示す。細胞性免疫応答は、Elispotを用いて決定した。脾細胞をSARS-CoV-2 Sタンパク質ペプチドライブラリーで刺激した。結果は、106脾細胞当たりのIFN-γ分泌細胞の数として表示した。エラーバーは、平均の標準誤差である。*(P<0.05)PIV5とワクチン群の間の有意性。
図23A-23C】CVXGA1によるAd-hACE2感作マウスの防御を示す。図23Aは、BALB/cマウスにおけるPIV5ベースのSARS-CoV-2ワクチン試験のための実験プロトコルの概略図である。処置群は、以下を含んだ:群(Gp)1:DMEM免疫処置IN;Gp2:CVXGA1免疫処置5×10PFU IN;Gp3:CVXGA1免疫処置5×10PFU IN。続いて、全ての動物をAd-hACE2によるSARS-CoV-2感染に対して感作させ、5日後に1×10PFUのSARS-CoV-2を接種した。他の測定値及び群当たりの動物数が表示される。予防接種後の日数はdpiで示される。図23Bは、CVXGA1免疫処置、続いてSARS-CoV-2感染を受けたマウスの転帰を示す。Ad5-hACE2形質導入BALB/cマウスを、50μlのDMEM中の1×10PFUのSARS-CoV-2で鼻腔内感染させた。6~8週齢のマウスの体重変化を毎日モニターした(n=5匹/群)。5×10PFUのCVXGA1で免疫処置したマウスは、5×10PFUを投与したマウスよりも体重減少が少なかった(*P値<0.05;**P値<0.005;マン・ホイットニー検定)。図23Cは、CVXGA1鼻腔内免疫が、肺組織SARS-CoV-2力価を低下させることを示す。ウイルス動態を取得するために、肺を摘出し、1dpiにホモジナイズし、プラークアッセイによりウイルス力価を測定した。力価は、肺組織当たりのPFUとして表される(n=3匹/群)。5×10PFUのCVXGA1で免疫されたマウスは、肺組織力価のより大きな低下を示した(*P値<0.05;**P値<0.005;マン・ホイットニー検定)。
図24A-24B】マウスにおける不活化SARS-CoV-2の免疫原性を示す。図24Aは、不活化SARS-CoV-2によるプライムブースト免疫後のマウスの抗Sレベルを示す。図19Aに記載のように不活化SARS-CoV-2で免疫したマウスからの血清中の抗Sレベルは、ELISAを用いて決定した。図24Bは、不活化SARS-CoV-2によるプライムブースト免疫後のマウスの抗RBDレベルを示す。図19Aに記載のように不活化SARS-CoV-2で免疫したマウス由来の血清中の抗RBDレベルは、ELISAを用いて決定した。
図25A-25C】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図25Aは、免疫後の血清中の抗S IgG力価を示す。7、28dpi及び7dpcにおける血清中の抗Sレベルを、ELISAを用いて決定し、グラフ化した。図25Bは、鼻洗浄液中の抗S IgAを示す。28dpiに収集した鼻洗浄液中のIgAレベルを、ELISAを用いて測定した。図25は、5dpcの鼻洗浄液中のウイルス及びウイルスRNAの検出を示す。5dpcでの鼻洗浄液中のSARS-CoV-2の力価は、プラークアッセイ後、免疫蛍光アッセイを用いて測定し、ミリリットル当たりのFFU(蛍光フォーカス形成単位)としてグラフ化した。5dpcの鼻洗浄液のqRT-PCR結果は、図20Dと同じであった。
図25D-25E】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図25は、5dpcの鼻洗浄液中のウイルス及びウイルスRNAの検出を示す。5dpcでの鼻洗浄液中のSARS-CoV-2の力価は、プラークアッセイ後、免疫蛍光アッセイを用いて測定し、ミリリットル当たりのFFU(蛍光フォーカス形成単位)としてグラフ化した。5dpcの鼻洗浄液のqRT-PCR結果は、図20Dと同じであった。図25Dは、4dpcでの肺におけるSARS-CoV-2抗原の検出を示す。チャレンジから4日後にサンプリングされたフェレットの肺切片をホルマリン中に固定し、SARS-CoV2抗原Nの免疫組織化学のために処理した。図25Eは、チャレンジ前後の抗Sの比較である。28dpi(破線)及び7dpc(実線)のフェレットにおける抗Sのレベルは、ELISAを用いて決定した。
図26A-26B】ネコにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図26Aは、中和抗体価を示す。28dpiに収集した血清を、VSV-CoV-SARS2-S擬似粒子を用いてアッセイした。+RHS(陽性回収ヒト血清)を陽性対照として使用した。図26Bは、鼻洗浄液中のウイルスRNAの検出を示す。1、3、5、7、9、11、13、及び14dpcの鼻洗浄液中のウイルスRNAの量は、qRT-PCRを用いて決定した。
図26C-26D】ネコにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図26Aは、中和抗体価を示す。図26Cは、チャレンジ前後の抗Sの比較である。41dpi及び14dpcのフェレット中の抗Sのレベルは、ELISAを使用して決定した。図26Dは、チャレンジ前後の抗Nの比較である。41dpi及び14dpcのフェレット中の抗Nのレベルは、ELISAを使用して決定した。
図27】CVXGA1で免疫したBALB/cマウスにおける中和力価を示す。サンプルの中和力価は、材料及び方法に記載のように決定した。エラーバーは、平均の標準誤差を表し、P値は、一元配置分散分析を用いて計算した。*P値<0.05、***P値<0.001。
図28】SARS-CoV-2感染に対してK18-hACE2トランスジェニックマウスを防御するCVXGA1による鼻腔内ワクチン接種の結果を示す。マウスは、以下:鼻腔内DMEM;鼻腔内(106PFU、IN)経路でCVXGA1免疫処置;アルムアジュバントを用いてIM経路で投与されたUV不活化SARS-CoV-2(UV-SARS2)、それに続いて21dpiにブースター用量;IN経路で野生型PIV5(106 PFU)を受けた。免疫処置から5週間後、K18-hACE2マウスに、50μlのDMEM中の4×104PFUのSARS-CoV-2を鼻腔内感染させた。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。図28Aは、重量減少を示し、図26Bは、K18-hACE2トランスジェニックマウスにおける生存転帰を示す。6~8週齢のマウスの体重変化を毎日モニターした(DMEM:n=9、CVXGA1:n=8、UV不活化SARS-CoV-2:群当たりn=10匹、PIV5:n=10)。CVXGA1免疫マウスは、体重減少がなく、生存した。DMEM及びPIV5処置マウスは衰弱した。1匹のUV不活化SARS-CoV-2処置マウスが生存した。SARS-CoV-2感染後の日数は、p.i.日数により示される。図28A及び図28Bは、CVXGA1ワクチンが、肺組織力価を低下させ、脳へのウイルスの拡散を防ぐことを示す。SARS-CoV-2感染から5日後に、A及びBにおいて群から肺(n=4)及び脳(n=4)組織を取得し、滴定した。詳細については、「材料及び方法」を参照されたい。検出限界(LOD):エラーバーは、平均の標準誤差を表す。**P値<0.01;ダネットの事後検定による一元配置分散分析。
図29A-29D】CVXGA1で免疫したK18-hACE2トランスジェニックマウスにおけるSARS-CoV-2感染の組織病理学的分析を示す。図29A図29Cは、SARS-CoV-2感染から5日後の固定肺組織の組織構造を示す。DMEM、CVXGA1、UV-SARS2、又はPIV5を投与されたSARS-CoV-2感染マウスの代表的な画像。図29Aは、表示された群からの肺組織におけるウイルス抗原(Nタンパク質、褐色染色)の代表的な分布を示す(群当たりn=4)。他の群の散在する免疫染色と比較してCVXGA1群のまばらな限局性免疫染色に注目されたい。バー=220μm。図29Bは、ヘマトキシリン及びエオジン染色組織を示す(群当たりn=4)。好酸球浸潤は、UV-SARS2群でのみ認められた(挿入図内の矢印、バー=45μm)。図29Cは、ヘマトキシリン及びエオジン染色組織を示す(群当たりn=4)。間質性肺疾患は、CVXGA1において軽減した。バー=90μm。図29Dは、肺組織の組織病理学的スコアリングを示す(詳細については「方法」を参照、群当たりn=4)。4群全ての組織を、好酸球性浸潤、血管周囲浸潤、及び間質性肺疾患について順位スコアリングした。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。*P<0.05、**P<0.01、ダネットの事後検定による一元配置分散分析。
図30A-30C】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性を示す。図30Aは、フェレット免疫処置及びウイルスチャレンジの概略を示す。6匹ずつのフェレットの群を、鼻腔内に10PFUの用量で免疫(CVXGA1)又は模擬免疫(PBS)処置した。免疫処置から39日後(dpi)に、4×10PFUのSARS-CoV-2をフェレットに鼻腔内チャレンジした。鼻洗浄及び直腸スワブは、チャレンジから1、3、5、及び7日後(dpc)に実施した。半分(n=6)のフェレットを、感染から4日後に人道的に安楽死させた。試験は7dpcに終了した。図30Bは、免疫後のフェレットにおける抗RBD血清IgGを示す。ELISAにより、血清抗RBD IgG力価を評価した。28dpiの力価を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。図30Cは、免疫後の中和力価を示す。28dpiの抗SARS-CoV-2中和力価は、VSV-CoV-SARS2-Sウイルスを用いて測定した。+RHS(陽性回収ヒト血清)を陽性対照として使用し、培地のみを陰性対照として使用した。エラーバーは、平均の標準誤差を表し、P値は、一元配置分散分析を用いて計算した。*P値<0.05、***P値<0.0001。
図31A-31C】フェレットにおけるCVXGA1の有効性を示す。図31Aは、qRT-PCRによるチャレンジ後1、3、5、及び7の鼻洗浄液中のウイルスRNAの検出を示す。ウイルスRNAは、ml当たりのゲノムコピーとして定量化し、「材料及び方法」に記載されているようにlog10ゲノム/mlとして表示した。各符号は、異なるフェレット(PBSが6匹及びCVXGA1が6匹)を表す。PBSフェレットは黒い符号で、CVXGA1ワクチン接種フェレットは、赤い符号である。1pfu/PCR反応(rxn)が、感染性ウイルス粒子と非感染性ゲノムレムナントを区別するために表記されている。検出限界(LOD)を最下位の破線で示す。図31Bは、4、7dpcに採取した肺組織中のウイルスRNAのqRT-PCRによる検出を示す。ウイルスRNAを定量し、反応毎のゲノムコピー(rxn)として表した。図31Cは、4、7dpcに採取した気管組織中ウイルスRNAのqRT-PCRによる検出を示す。ウイルスRNAを定量し、反応毎のゲノムコピー(rxn)として表した。
図32A-32B】フェレットにおけるCVXGA1免疫による伝播阻止の有効性を示す。図32Aは、フェレット免疫処置、ウイルスチャレンジ、及び伝播の概略図を示す。6匹ずつのフェレットの群を、10PFUの用量で鼻腔内に、免疫(CVXGA1)、空ウイルスベクター又は模擬免疫(PBS)処置した。42dpiにフェレットを、4×10PFUのSARS-CoV-2で鼻腔内チャレンジした。1、3、5、7、9、及び11dpcに、鼻洗浄液を収集した。チャレンジから4日後に半分のフェレットを人道的に安楽死させた。試験は、11dpcに終了した。2dpcに、1匹のチャレンジしたフェレットを1匹のナイーブフェレットと混合し、混合から1、3、5、7、及び9日後に鼻洗浄液をナイーブフェレットから収集した(それぞれ、3、5、7、9、及び11dpc)。図32Bは、鼻洗浄液中の1、3、5、7、9及び11dpcにおけるSARS-CoV 2の検出を示す。生存ウイルスは、「材料及び方法」に記載されているように、フォーカス形成単位アッセイ(FFA、FFU/ml)を用いて検出した。各符号は異なるフェレットを表す。検出限界(LOD)を最下位の破線で示す。
図33A-33C】C57BL/6マウスにおけるCVXGA1の免疫原性を示す。図33Aは、免疫処置の概略図を示す。C57BL/6マウス(1群当たりn=5)を、PBS、10プラーク形成単位(PFU)用量のPIV5、又は6×10PFU用量のCVXGA1を用い、鼻腔内(IN)経路で免疫した。免疫から28日後に、マウスを犠牲にした。ターミナル血液及び脾細胞を収集した。図33Bは、マウスにおける抗S抗体価を示す。抗S力価は、ELISAを用いて測定した。エラーバーは平均の標準誤差を示す。図33Cは、細胞性免疫応答を示す。細胞性免疫応答は、Elispotアッセイを用いて決定した。SARS-CoV-2 Sタンパク質ペプチドライブラリーで脾細胞を刺激した。結果は、10脾細胞当たりのIFN-γ分泌細胞数として表した。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。*(P<0.05)PIV5及びワクチン群の間の有意性。分散分析(ANOVA)、続いてダネットの多重比較検定。
図34A-34E】CVXGA1による鼻腔内ワクチン接種が、K18-hACE2トランスジェニックマウスを致死的なSARS-CoV-2感染から防御することを示す。マウスは、以下:筋肉内(IM)経路でDMEM;鼻腔内(IN)経路でCVXGA1免疫;アルムアジュバントを用いてIM経路で投与されるUV不活化SARS-CoV-2(UV-SARS2)、続いて14dpiに2回目のブースター用量を受けた。免疫処置から4週間後、K18-hACE2マウスに、50μlのDMEM中10PFUのSARS-CoV-2を鼻腔内感染させた。図34Aは、重量減少を示し、図34Bは、K18-hACE2トランスジェニックマウスにおける生存転帰を示す。6~8週齢のマウスの体重変化を毎日モニターした(DMEM:n=5、CVXGA1:n=6、UV不活化SARS-CoV-2:群当たりn=5匹)。全てのマウスに体重減少があったが、CVXGA1免疫マウスだけが生存した。SARS-CoV-2感染後の日数は、dpiにより示される。*P値<0.05;**p値<0.005;2元配置分散分析。図34C及び図34Dは、CVXGA1ワクチンが、肺組織力価を低下させ、脳へのウイルス拡散を防ぐことを示す分析である。SARS-CoV-2感染の5日後に、肺(n=4)と脳(n=4)の組織を取得し、滴定した。(N/D:不検出)*P値<0.05;**p値<0.005;一元配置分散分析。図34Eは、SARS-CoV-2チャレンジの5日後の肺組織の組織学及びスコアリングを示す。左パネル:DMEM、CVXGA1、又はUV-SARS2群の代表的な組織学。好酸球浸潤(挿入図の矢印)がUV-SARS2群に認められた。好酸球浸潤は、右のグラフに記載されている。****P<0.0001、UV-SARS2対DMEM又はCVXGA1、一元配置分散分析。バー=387及び78μm(それぞれ上段と下段)。
図35A-35B】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図35Aは、フェレット上気道におけるCVXGA1の免疫後複製を示す。免疫後3、7、及び14日目に、フェレット鼻洗浄液を収集した。Vero細胞でプラークアッセイを実施した。鼻洗浄液CVXGA1は、mL当たりのプラーク形成単位(PFU/mL)として定量した。図35Bは、免疫後の血清中の抗S IgG力価を示す。7、14、21、28dpi、及び7dpcの血清中の抗Sレベルは、ELISAを使用して決定した。データポイントは、個々のフェレットの重複値の平均値+/-SDを表す(n=6dpi;n=3dpc)。****P<0.0001、シダックの多重比較検定を用いた二元配置分散分析。図35Cは、鼻洗浄液中の抗S IgAを示す。28dpiに収集した鼻洗浄液中のIgAレベルを、ELISAを用いて測定した。データポイントは、プールされたサンプル(n=6)を3回反復+/-SDで表す。図35Dは、SARS-CoV-2チャレンジ前後の抗S血清IgG反応の比較を示す。28dpi(破線)及び7dpc(実線)でのフェレット中の抗S IgGのレベルを、ELISAを用いて決定した。データポイントは、個々のフェレットについての2回反復値の平均値+/-SDを表す(n=6dpi;n=3dpc)。****P<0.0001、シダックの多重比較検定を用いた二元配置分散分析。
図35C-35D】フェレットにおけるCVXGA1の免疫原性及び有効性を示す。図35Cは、鼻洗浄液中の抗S IgAを示す。28dpiに収集した鼻洗浄液中のIgAレベルを、ELISAを用いて測定した。データポイントは、プールされたサンプル(n=6)を3回反復+/-SDで表す。図35Dは、SARS-CoV-2チャレンジ前後の抗S血清IgG反応の比較を示す。28dpi(破線)及び7dpc(実線)でのフェレット中の抗S IgGのレベルを、ELISAを用いて決定した。データポイントは、個々のフェレットについての2回反復値の平均値+/-SDを表す(n=6dpi;n=3dpc)。****P<0.0001、シダックの多重比較検定を用いた二元配置分散分析。
図36A-36C】フェレットSARS-CoV 2感染のためのABSL3実験室を示す。図36Aは、図31で説明した実験のための実験室レイアウトを示す。チャレンジ試験は、BSL3-Ag実験室で完了した。実験室には、単一のHEPA給気と二重HEPA排気が装備されており、外部の「クリーンな」廊下に対して負圧を維持する。頑丈なケージ底部を備える個別換気ケージ(IVC)とプラスチックケージ(Tecniplast)には、HEPA供給及び排気が供給された。図36Bは、Allentown,Incの従来のフェレットケージの代表的な画像を示す。従来のフェレットラックは各々、有孔床と取り外し可能なステンレス鋼ドアを備えるプラスチック製ケージインサート、プラスチック製排泄物パン、Jフィーダー、及びリキシット(lixit)を備える自動ウォーターマニホールドを装備した6つの個別のケージを有する。図36Cは、ケージラック内の群の場所を示す。ナイーブフェレットは、IVCに収容された後、従来の(オープン)ケージ内で、チャレンジされたフェレットと混合した。個々のケージには、ワクチン治療群、及びナイーブ接触動物を示す「C」という動物識別符号でラベルが貼られている。Gp3は、CVXGA1ほどうまく機能しなかったワクチン候補を表す:これらのフェレットは、3dpcに、鼻腔にチャレンジウイルスを受けた。
図37A】CVXGA1で免疫されたフェレットのウイルスRNAレベル及びそれらの直接接触を示す。図37Aは、鼻洗浄液中のRNAレベルを示す。qRT-PCRを介して1、3、5、7、及び9dpcに収集された鼻洗浄液中のウイルスRNAの検出。ウイルスRNAは、qRT-PCRを用いて定量した。各ポイントは、異なる動物を表し、感染性ウイルス粒子と非感染性ゲノムレムナントを区別するために1pfu/PCR反応(rxn)が表記される。最下位の破線により検出限界(LOD)を示す。
図37B】CVXGA1で免疫されたフェレットのウイルスRNAレベル及びそれらの直接接触を示す。図37Bは、チャレンジ済フェレットの肺におけるRNAレベルを示す。4日後及び10dpcに肺サンプルを収集した。ウイルスRNAは、qRT-PCRで定量し、PFU/mLは、標準曲線で計算した。各ポイントは異なる動物を表し、感染性ウイルス粒子と非感染性ゲノムレムナントを区別するために1PFU/mLが表記される。最下位の破線により検出限界(LOD)を示す。
図38】CVX-UGA2ベクター構築物の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明により、SARS-CoV-2エンベロープスパイク(S)タンパク質を発現するパラインフルエンザウイルス5型(PIV5)ウイルスの構築物を、COVIDに対するワクチンとして使用するために作製した。これらの構築物は、ワクチンとしての有効性を示しており、単回用量の鼻腔内免疫が、フェレット及びネコにおいて殺菌免疫を誘導する。
【0021】
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、現在世界中に蔓延している新たに出現した感染症である。これは、新規コロナウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる(Zhu et al.N Engl J Med 382,727-733(2020))。SARS-CoV-2は、2019年12月に中国の武漢で最初に確認され、その後、世界中に蔓延して、COVID-19パンデミックを引き起こした。このウイルスは、2021年9月8日現在、世界中で2億2,100万人超に感染し、4,574,000人超の死亡の原因となり、集団免疫がなければ、いつでも蔓延し続けることができる(ワールドワイドウェブのwho.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019を参照のこと)。ソーシャルディスタンス、並びに接触追跡による広範な試験及び検疫措置が、ウイルスの拡散を制限するために利用できる唯一の手段である。これ以上の死亡を防ぎ、感染を低減するワクチンが緊急に必要とされている。
【0022】
SARS-CoV-2は、βコロナウイルス(β coronavirus)科に属する一本鎖RNAエンベロープウイルスである(Lu et al.Lancet 395,565-574(2020))。9860アミノ酸をコードする長さ29,881ヌクレオチド(nt)(GenBank配列アクセッションMN908947)のゲノム全体を特性決定するために、RNAベースのメタゲノム次世代シーケンシングアプローチが適用された(Chen et al.Emerg Microbes Infect 9,313-319(2020))。GenBankで入手可能な全ゲノム配列決定ゲノムには、SARS-CoV-2の2019-nCoV WHU01(GenBankアクセッション番号MN988668)及びNC_045512(いずれも中国武漢からの分離株である)、並びに>99.9%同一である少なくとも7つの追加の配列(MN938384.1、MN975262.1、MN985325.1、MN988713.1、MN994467.1、MN994468.1、及びMN997409.1)がある。
【0023】
マイナス鎖RNAウイルスであるパラインフルエンザウイルス5(PIV5)は、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科のルブラウイルス(Rubulavirus)属のメンバーであり、これは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2型及び4型、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、HPIV3、麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなどの多くの重要なヒト及び動物病原体を含む。PIV5は、以前はサルウイルス-5(Simian virus-5)(SV5)として知られていた。PIV5は多くの動物やヒトに感染するウイルスであるが、PIV5と関連するヒトの症状又は疾患は知られていない。ほとんどのパラミクソウイルスとは異なり、PIV5は、細胞変性効果をほとんど伴わずに正常細胞に感染する。マイナス鎖RNAウイルスとして、PIV5のゲノムは非常に安定している。PIV5は、その生活環にDNA相がなく、細胞質内でのみ複製することから、PIV5は宿主ゲノムに組み込むことができない。そのため、PIV5をベクターとして使用することにより、宿主細胞DNAの遺伝子改変から起こり得る意図しない結果を回避する。PIV5は、WHO及びFDAによりワクチン産生のために承認されたVero細胞などの細胞内で高力価まで増殖し得る。このように、PIV5は、ワクチンベクターとして多くの利点を賦与する。
【0024】
本発明のPIV5ベースのワクチンベクターは、種々の野生型、変異型、又は組換え(rPIV5)株のいずれをベースとしてもよい。野生型株としては、限定するものではないが、以下:PIV5株W3A、WR(ATCC(登録商標)Number VR-288(商標))、イヌパラインフルエンザウイルス株78-238(ATCC番号VR-1573)(Evermann et al.,Arch Virol 68,165-172(1981);Evermann et al.J Am Vet Med Assoc 177,1132-1134(1980))、イヌパラインフルエンザウイルス株D008(ATCC番号VR-399)(Binn et al.Proc Soc Exp Biol Med 126,140-145(1967))、MIL、DEN、LN、MEL、クリプトウイルス、CPI+、CPI-、H221、78524、T1及びSERが挙げられる。例えば、(Baumgaertner et al.Intervirology 27,218-223(1987);Chatziandreou et al.J Gen Virol 85,3007-3016(2004);Choppin Virology 23,224-233(1964))を参照されたい。さらに、市販のケンネルコフ(kennel cough)ワクチンに使用されるPIV5株、例えば、BI、FD、Merck、及びMerialワクチンを使用してもよい。
【0025】
本発明のPIV5ワクチンベクターは、限定はされないが、Heら(Virology;237(2):249-60,1997)に詳細に記載される逆遺伝学系をはじめとする様々な方法のいずれかを用いて構築され得る。PIV5は8つのウイルスタンパク質をコードする。ヌクレオカプシドタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、及び大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質は、ウイルスRNAゲノムの転写及び複製に重要である。Vタンパク質は、ウイルス病原性及びウイルスRNA合成において重要な役割を果たす。融合(F)タンパク質である糖タンパク質は、細胞へのウイルスの侵入に不可欠なpH非依存的方法で、細胞同士及びウイルスと細胞の融合の両方を媒介する。Fタンパク質の構造が決定され、効率的な融合のための重要なアミノ酸残基が同定された。ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)糖タンパク質も、宿主細胞からのウイルスの侵入及び放出に関与している。マトリックス(M)タンパク質は、ウイルス構築及び出芽に重要な役割を果たす。疎水性(SH)タンパク質は、44残基の疎水性内在性膜タンパク質であり、細胞質内にそのN末端を有する膜に配向している。パラミクソウイルスの分子生物学の論文については、例えば(Lamb Fields Virology:Sixth Edition 1,957-995(2013);Whelan et al.Biology of Negative Strand RNA Viruses:The Power of Reverse Genetics,61-119(2004))を参照されたい。
【0026】
本発明のPIV5ベースのワクチンベクターでは、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質など、コロナウイルスのスパイク(S)タンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列がPIV5ゲノムに挿入される。宿主細胞へのコロナウイルスの侵入は、膜貫通S糖タンパク質によって媒介される(Tortorici et al.Adv Virus Res 105,93-116(2019))。コロナウイルスS糖タンパク質は、表面が露出しており、宿主細胞への侵入を媒介することから、感染時の中和抗体の主要な標的であり、治療及びワクチン設計の焦点となっている。SARS-CoV-2のスパイクSタンパク質は、S1とS2の2つのサブユニットから構成される。S1サブユニットは、宿主受容体アンジオテンシン変換酵素2を認識して、それに結合する受容体結合ドメインを含み、S2サブユニットは、2-ヘプタッドリピートドメインを介して6-ヘリックスバンドルを形成することによりウイルス細胞膜融合を媒介する(Huang et al.Acta Pharmacologica Sinica 41,1141-1149 2020))。
【0027】
SARS-CoV-2 Sの全長は、1273アミノ酸(aa)であり、N末端に位置するシグナルペプチド(アミノ酸1~13)、S1サブユニット(14~685残基)、及びS2サブユニット(686~1273残基)から構成され;最後の2つの領域は、それぞれ受容体結合と膜融合を担う。S1サブユニットには、N末端ドメイン(14~305残基)及び受容体結合ドメイン(RBD、319~541残基)が存在し;融合ペプチド(FP)(788~806残基)、ヘプタペプチドリピート配列1(HR1)(912~984残基)、HR2(1163~1213残基)、TMドメイン(1213~1237残基)、及び細胞質ドメイン(1237~1273残基)は、S2サブユニットを含む(Xia et al.Cell Mol Immunol 17,765-767(2020))。
【0028】
本発明のいくつかのPIV5ベースのワクチンベクターでは、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスのスパイク(S)タンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部が、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されるように修飾されている。このようなPIV5構築物の例としては、PIV5構築物CVX-GA1があり、これは、本明細書では、CVXGA1、CVX-UGA1、pDA27、又はDA27とも呼ばれる。CVX-GA1のプラスミドマップを図2及び図9に示し、図9には、構築物の配列が含まれる。
【0029】
本発明のいくつかのPIV5ベースのワクチンベクターでは、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、Sタンパク質が、アミノ酸残基W886及び/又はF888にアミノ酸置換を含むように修飾されている。いくつかの態様では、アミノ酸残基W886におけるアミノ酸置換は、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換を含み、及び/又はアミノ酸残基W888におけるアミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換を含む。
【0030】
本発明のいくつかのPIV5ベースのワクチンベクターでは、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスのスパイク(S)タンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部がPIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部に置換されるようにする修飾と、アミノ酸残基W886及び/又はF888にアミノ酸置換を含むようにする修飾の両方を含む。いくつかの態様では、アミノ酸残基W886でのアミノ酸置換は、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換を含み、且つ/又はアミノ酸残基W888でのアミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換を含む。このようなPIV5構築物の例としては、CVX-GA2のPIV5構築物があり、これは、本明細書において、CVXGA2又はCVX-UGA2とも称される。CVX-GA1のプラスミドマップを図38に示す。
【0031】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムの様々な位置のいずれかに挿入され得る。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムの小型疎水性タンパク質(SH)遺伝子とヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子との間に挿入され得る。
【0033】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子の間に挿入され得る。いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間の位置に挿入されない。いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子の間以外の位置に挿入される。
【0034】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子とV/P遺伝子との間に挿入され得る。
【0035】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのM遺伝子とF遺伝子の間に挿入され得る。
【0036】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのF遺伝子とSH遺伝子との間に挿入され得る。
【0037】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのVP遺伝子とマトリックスタンパク質(M)遺伝子との間に挿入され得る。
【0038】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのリーダー配列とヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子との間に挿入され得る。
【0039】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのリーダー配列のすぐ下流に挿入され得る。
【0040】
限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノム内のPIV5遺伝子の全部又は一部を置換するために挿入され得る。例えば、異種ヌクレオチド配列は、PIV5ゲノムのF、HN、又はSH遺伝子を置換してもよい。異種ヌクレオチド配列をIV5遺伝子内に挿入して、それにより、キメラポリペプチドの発現をもたらしてもよい。例えば、異種ヌクレオチド配列は、SH遺伝子ヌクレオチド配列内、NP遺伝子ヌクレオチド配列内、V/P遺伝子ヌクレオチド配列内、M遺伝子ヌクレオチド配列内、F遺伝子ヌクレオチド配列内、HN遺伝子ヌクレオチド配列内、及び/又はPIV5ゲノムのL遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され得る。
【0041】
本発明のPIV5ウイルスワクチンはまた、PIV5ゲノムのこれら8つのタンパク質のうちの1つ以上において突然変異、改変、又は欠失を有し得る。例えば、PIV5ウイルス発現ベクターは、限定はされないが、本明細書に記載のもののいずれかを含め、1つ以上の変異を含み得る。いくつかの態様では、2つ以上(2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれ以上)の変異の組合せが有利となり得、増強された活性を示し得る。
【0042】
変異は、限定はされないが、以下:V/P遺伝子の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の残基26、32、33、50、102、及び/又は157の変異、Vタンパク質のC末端を欠失する変異、小型疎水性(SH)タンパク質を欠失する変異、融合(F)タンパク質の変異、リンタンパク質(P)の変異、大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質の変異、イヌパラインフルエンザウイルスの残基を組み込んだ変異、及び/又は合胞体形成を増強する変異を含む。
【0043】
変異として、限定はされないが、以下:rPIV5-V/P-CPI-、rPIV5-CPI-、rPIV5-CPI+、rPIV5V ΔC、rPIV-Rev、rPIV5-RL、rPIV5-P-S157A、rPIV5-P-S308A、rPIV5-L-A1981D及びrPIV5-F-S443P、rPIV5-MDA7、rPIV5 ΔSH-CPI-、rPIV5 ΔSH-Rev、及びこれらの組合せを挙げることができる。
【0044】
PIV5は、多くの細胞型において細胞変性効果(CPE)をほとんど伴わずに生産的に細胞に感染することができる。いくつかの細胞型では、PIV5感染は、合胞体の形成、即ち、多くの細胞同士の融合を引き起こし、それが細胞死を招く。変異は、合胞体形成を促進する1つ以上の変異を含み得る(例えば(Paterson et al.Virology 270,17-30(2000))を参照)。
【0045】
PIV5のVタンパク質は、ウイルスにより誘導されるアポトーシスを阻止する上で重要な役割を果たす。Vタンパク質の保存されたシステインリッチC末端(rPIV5V ΔC)を欠失した組換えPIV5は、小胞体(ER)ストレスにより開始される可能性が高い内因性アポトーシス経路を介して様々な細胞にアポトーシスを誘導する(Sun et al.Journal of virology 78,5068-5078(2004))。rPIV5-CPI-などのV/P遺伝子産物のN末端に変異を有する変異型組換えPIV5も、アポトーシスを誘導する(Wansley et al.J Virol 76,10109-10121(2002))。変異には、限定はされないが、rPIV5 ΔSH、rPIV5-CPI-、rPIV5VΔC、及びこれらの組合せが含まれる。
【0046】
また、本発明には、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列を有するPIV5ゲノムを含むビリオン及び感染性ウイルス粒子も含まれる。
【0047】
本発明にはまた、本明細書に記載のPIV5ウイルス構築物又はビリオンのうちの1つ以上を含む組成物も含まれる。このような組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。使用される場合、薬学的に許容される担体とは、ヒト又は他の脊椎動物への投与に適した1つ以上の適合性の固体若しくは液体充填剤、希釈剤又は封入物質を指す。こうした担体は、パイロジェンフリーであり得る。本発明はまた、本明細書に記載のウイルスベクター及び組成物を作製及び使用する方法も含む。
【0048】
本開示の組成物は、選択された投与経路に適合させた様々な形態で医薬製剤に製剤化され得る。当業者は、組成物が、投与様式及び投薬単位に応じて変化し得ることを理解するであろう。
【0049】
本発明の薬剤は、限定はされないが、静脈内、局所、経口、鼻腔内、皮下、腹腔内、筋肉内、及び腫瘍内送達を含む様々な方法で投与することができる。いくつかの態様では、本発明の薬剤は、制御又は持続放出のために製剤化され得る。鼻腔内免疫の1つの利点は、粘膜免疫応答を誘導する可能性にある。
【0050】
さらに、限定はされないが、本明細書に記載のもののいずれかを含むPIV5ウイルス発現ベクターを作製及び使用する方法も本発明に含まれる。
【0051】
例えば、本発明は、細胞をPIV5ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は本明細書に記載の組成物と接触又はそれに感染させることによって、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質を上記細胞に発現する方法を含む。
【0052】
本発明は、ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は本明細書に記載の組成物を対象に投与することにより、限定はされないが、SARS-CoV-2のSタンパク質などのコロナウイルスSタンパク質に対する免疫応答を上記対象に誘導する方法を含む。免疫応答は、体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を含み得る。免疫応答は、自然免疫応答及び/又は適応免疫応答を増強し得る。
【0053】
本発明は、限定はされないが、本明細書に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を対象に投与することによって、SARS-CoV-2のSタンパク質などの異種コロナウイルスSタンパク質を上記対象に発現する方法を含む。
【0054】
本発明は、本明細書に記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を対象に投与することによって、上記対象をワクチン接種する方法を含む。
【0055】
本発明の方法と共に、多様な投与様式のいずれかを使用することができる。例えば、投与は、静脈内、局所、経口、鼻腔内、皮下、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、卵内、母体などであり得る。いくつかの態様では、投与は粘膜表面に対して行う。ワクチンは、ワクチンを飲料水に導入するか、又は動物の環境に噴霧するなどの大量投与技術によって投与してもよい。注射により投与する場合、免疫原性組成物又はワクチンは非経口的に投与され得る。非経口投与としては、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、又は腹腔内注射による投与が挙げられる。
【0056】
本開示の薬剤は、一度に投与してもよく、単回用量として、又は間隔を置いて投与される複数回用量として投与してもよい。例えば、本発明の薬剤は、反復して、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8回、又はそれ以上投与され得る。正確な投与量及び治療期間は、治療される疾患に応じて変動し、既知の試験プロトコルを使用して、又はインビボ若しくはインビトロ試験データからの外挿によって経験的に決定され得ることが理解される。濃度及び投与量の値は、緩和しようとする状態の重症度によっても変化し得ることに留意すべきである。さらに、任意の特定の対象について、個々の必要性、並びに組成物を投与するか、又は投与を監督する人の専門的判断に従って経時的に、具体的な投与レジメンを調節すべきであること、及び、本明細書に記載される任意の濃度範囲が例示的に過ぎず、特許請求の範囲に記載される組成物及び方法の範囲又は実施を制限しようとするものではないことも理解すべきである。
【0057】
いくつかの治療的実施形態において、薬剤の「有効量」は、少なくとも1つの病理学的パラメータの減少をもたらす量である。従って、例えば、本開示のいくつかの態様では、有効量は、薬剤で治療されていない個体におけるパラメータの予想される減少と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の減少を達成する上で有効な量である。
【0058】
いくつかの態様では、国際公開第2013/112690号パンフレット及び国際公開第2013/112720号パンフレット(これは、本明細書によりその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているPIV5ベースの構築物及び方法のいずれかを本発明に使用してもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、例えば、哺乳動物を含む生物を表す。哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、及び他の非ヒト脊椎動物が含まれるが、これらに限定されない。対象は、「個人」、「患者」、又は「宿主」であり得る。非ヒト脊椎動物には、家畜動物(限定はされないが、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタなど)、限定はされないが、イヌ若しくはネコなどのペット又はコンパニオンアニマル、及び実験動物が含まれる。また、非ヒト対象には、非ヒト霊長類、並びに例えば、限定はされないが、ラット又はマウスなどのげっ歯類も含まれる。非ヒト対象はまた、限定するものではないが、家禽、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ミンク、及びウサギも含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、細胞培養中であり、「インビボ」は、対象の体内である。本明細書で使用される場合、「単離された」とは、その自然環境(例えば、天然に存在する場合は、天然の環境)から取り出されたか、組換え技術を用いて生産されたか、又は化学的若しくは酵素的に合成され、従って、その天然の状態から「人工的に」改変された材料を指す。
【0061】
本発明の例示的な実施形態として、限定はされないが、以下のものが挙げられる:
1.異種ポリペプチドを発現する異種ヌクレオチド配列を含むパラインフルエンザウイルス5(PIV5)ゲノムを含むウイルス発現ベクターであって、上記異種ポリペプチドが、コロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む、ウイルス発現ベクター。
2.上記コロナウイルスSタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含む、実施形態1に記載のウイルス発現ベクター。
3.上記コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部が、PIV5の融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている、実施形態1に記載のウイルス発現ベクター。
4.上記コロナウイルスSタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のコロナウイルスSタンパク質を含み、且つ、上記コロナウイルスSタンパク質の細胞質尾部が、PIV5の上記融合(F)タンパク質の細胞質尾部で置換されている、実施形態1に記載のウイルス発現ベクター。
5.上記異種ポリペプチドが、アミノ酸残基W886及び/又はF888に変異を含むコロナウイルススパイク(S)タンパク質を含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載のウイルス発現ベクター。
6.アミノ酸残基W886におけるアミノ酸置換が、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換を含み、及び/又はアミノ酸残基W888におけるアミノ酸置換が、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換を含む、実施形態5に記載のウイルス発現ベクター。
7.上記PIV5ゲノムの小型疎水性タンパク質(SH)遺伝子とヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子との間に異種ヌクレオチド配列が挿入されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター。
8.上記異種ヌクレオチド配列で上記SH遺伝子のヌクレオチド配列を置換する、実施形態1~6のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター。
9.上記異種ヌクレオチド配列が、上記PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子との間に挿入されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター。
10.上記異種ヌクレオチド配列が、上記PIV5ゲノムのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子と大型RNAポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子の間よりも、リーダーの近くに挿入され;上記PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子の上流に挿入され;上記PIV5ゲノムのリーダー配列のすぐ下流に挿入され;上記PIV5ゲノムの融合(F)タンパク質遺伝子とSH遺伝子との間に挿入され;上記PIV5ゲノムのVP遺伝子とマトリックスタンパク質(M)遺伝子との間に挿入され;上記PIV5ゲノムのM遺伝子とF遺伝子の間に挿入され;上記PIV5ゲノムのヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子とV/P遺伝子との間に挿入され;上記PIV5ゲノムのリーダー配列とヌクレオカプシドタンパク質(NP)遺伝子との間に挿入され;上記PIV5のF若しくはHN遺伝子の一部が上記異種ヌクレオチド配列で置換された場合に挿入され;SH遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入され、NP遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、V/P遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、M遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、F遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、HN遺伝子ヌクレオチド配列内に挿入され、且つ/又はL遺伝子のヌクレオチド配列内に挿入される、実施形態1~6のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター。
11.上記PIV5ゲノムがさらに1つ以上の変異を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター。
12.上記1つ以上の変異が、V/P遺伝子の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の変異、V及びPタンパク質の共有N末端の残基26、32、33、50、102、及び/又は157の変異、Vタンパク質のC末端を欠失する変異、小型疎水性(SH)タンパク質を欠失する変異、融合(F)タンパク質の変異、リンタンパク質(P)の変異、大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質の変異、イヌパラインフルエンザウイルス由来の残基を組み込む変異、アポトーシスを誘導する変異、又はこれらの組合せを含む、実施形態11に記載のウイルス発現ベクター。
13.上記1つ以上の変異が、PIV5VΔC、PIV5ΔSH、PIV5-P-S308G、又はそれらの組合せを含む、実施形態11又は12に記載のウイルス発現ベクター。
14.実施形態1~13のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクターを含むウイルス粒子。
15.実施形態1~13のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター及び/又は請求項14に記載のウイルス粒子を含む組成物。
16.細胞内で異種コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質を発現させる方法であって、上記方法は、実施形態1~15のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物と上記細胞を接触させることを含む方法。
17.コロナウイルススパイク(S)糖タンパク質に対する免疫応答を対象に誘導する方法であって、上記方法は、実施形態1~15のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を上記対象に投与することを含む方法。
18.上記免疫応答が、体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を含む、実施形態17に記載の方法。
19.コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対して、対象にワクチン接種をする方法であって、上記方法は、実施形態1~15のいずれか1つに記載のウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物を上記対象に投与することを含む方法。
20.前記ウイルス発現ベクター、ウイルス粒子、又は組成物が、鼻腔、筋肉内、局所、又は経口投与される、実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素のいずれか2つ以上の組合せを意味する。
【0063】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、他の実施形態も、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0064】
用語「含む」及びその変形は、これらの用語が、説明及び特許請求の範囲に出現する場合、限定する意味はない。
【0065】
特に指定しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「少なくとも1つ」は、置き換え可能に使用され、1つ又は2つ以上を意味する。
【0066】
特に指定しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す数値は全て、用語「約」により、全てのケースで変更されるものとして理解すべきである。従って、他に反対の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により取得しようと努められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、また、同等物の原則を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に基づき、通常の丸め法を適用して解釈されるべきである。
【0067】
本発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータは近似値ではあるものの、具体例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。但し、全ての数値は、本質的に、それぞれの試験測定値で見出された標準偏差から必然的に生じる範囲を含む。
【0068】
個別のステップを含む本明細書に開示されるいずれの方法についても、上記ステップは、任意の実行可能な順序で実施してよい。また、必要に応じて、2つ以上のステップの任意の組合せを同時に実施してもよい。
【0069】
この説明は、例示的な実施形態を示す。出願全体を通して複数の箇所で、例のリストを通してガイダンスが提供され、それらの例は様々な組合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載されるリストは、代表的群として用いられるに過ぎず、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【0070】
見出しは全て、読者の便宜のためのものであり、指定のない限り、見出しに続く本文の意味を制限するために使用すべきではない。
【0071】
本発明を以下の実施例により説明する。特定の実施例、材料、量、及び手順は、本明細書に記載される本発明の範囲及び精神に従って広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【実施例
【0072】
実施例1
CVX-UGA1の構築物
CVX-UGA1は、プラスミドpDA27(pDA27)から生成した。プラスミドpDA27は、nCOV19-S-ヒト-Genscriptプラスミド(GenScriptの高コピープラスミド)のSARS-CoV-2-S遺伝子を有し、その細胞質尾部は、遺伝子SH及びHN遺伝子の間のプラスミドpDA16(低コピープラスミド)バックボーンに挿入されたPIV5 F細胞質尾部で置換されている。S遺伝子配列は、MN908947に基づくものであり、ヒトでの発現のためにコドン最適化されている。プラスミドpDA16は、PIV5ウイルスゲノム全体及びクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む。低コピーpDA16プラスミドの配列は、十分に検証されている。
【0073】
pDA27を得るための工程を図1に示す。細胞質尾部をPIV5 F尾部で置換したSARS-CoV-2-S遺伝子を、nCOV19-S-ヒト-GenscriptプラスミドからPCRにより取得した。PCR反応に使用されるDA193-F及びDA194-Rプライマーは、pDA16プラスミドと重複する領域を有し、DA194-Rプライマーは、PIV5 F尾部配列を含む。pDA16プラスミドをバックボーンとして用いた。プラスミドをNotI及びMluI制限酵素で消化して、PIV5 SH及びHN遺伝子の間に挿入された以前の遺伝子を除去した。pDA27プラスミドは、ギブソン(Gibson)アセンブリによって構築した。SARS-CoV-2-S-F尾部PCR産物を消化pDA16及びギブソンアセンブリマスターミックスと合わせ、50℃で1時間インキュベートした。
【0074】
図2は、SARS-CoV-2のSがpDA27(CVX-UGA1)のPIV5ゲノムに挿入された位置を示す。次に、新しいpDA27プラスミドをThermo Fisher Scientificから入手したTOP10コンピテントセルに形質転換し、クロラムフェニコールを含有するLB寒天プレートに平板培養した。クロラムフェニコール及びプラスミドを含有するLB培地で単一コロニーを精製し、表1及び表2に列挙するプライマーを用いて、図3に示す5つのフラグメントのPCR増幅により配列決定した。
【0075】
プラスミドをディープシーケンシングに送り、PIV5(SH-HN)-CoV-2-S-F尾部ゲノムの部分だけでなく、プラスミド配列全体を取得し、配列を検証した。適切な配列を確認した後、ウイルスのレスキューが行われた。この工程を図5に示す。
【0076】
CVX-UGA1ワクチンを構築するための別の方法は、pAB76プラスミドの構築によるものである。このプラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子を含む高コピーバックボーン(pUC19)を有する以外は、pDA27と全く同じPIV5(SH-HN)-SARS-CoV-2-Sゲノムを含む。pAB76のための工程を図4に示す。
【0077】
pCH10プラスミドを使用して、高コピーpUC19バックボーンを取得した。プラスミドをRsrII及びAatII制限酵素で消化した。
【0078】
pDA27プラスミド(低コピー)を用いて、PIV5(SH-HN)-SARS-CoV-2-S-F尾部を取得した。プラスミドを、RsrII及びAatII制限酵素を含むpDA27プラスミドで消化した。
【0079】
消化産物(pUC19高コピーバックボーン及びPIV5(SH-HN)-SARS-CoV-2-S-F尾部)を高速ライゲーションプロトコルに従って連結して、最終プラスミドを取得した。
【0080】
図1又は図2に示す工程のいずれかを用いて、種子CVX-UGA1の生産に使用される最終プラスミドを生成することができる。pDA27とpAB76のPIV5(SH-HN)-SARS-CoV-2-S-F尾部ゲノムは同一である。唯一の違いは、pDA27が、低コピープラスミド(クロラムフェニコール耐性)であり、pAB76が高コピープラスミド(アンピシリン耐性)であることである。
【0081】
組換えベクターウイルスのレスキューのために、pDA27プラスミドを、PIV5 NP、P、Lタンパク質及びT7 RNAポリメラーゼをコードするプラスミドと一緒にBHK-21細胞(ATCCから取得)にトランスフェクトして、上清からの組換えウイルスのレスキューを可能にした。レスキュープラスミドは、CAGGS-NP、pCAGGS-P、CAGGS-L、及びpBH437-T7である。レスキュープラスミドの完全配列を確認した後、ウイルスレスキューに使用した。ウイルスレスキューに使用した培地は、TPB(BDから入手)、FBS(HyCloneから入手)、及びPenStrep(Lonzaから入手)を含むDMEM培地(Gibcoから入手)であった。
【0082】
7日間のインキュベーションの後、ベクターウイルスを含有する5mLの上清を得、10×SPGと混合し、-80℃で保存した。この凍結ストックのアリコートを段階希釈して、単一のプラークを有する6ウェルを得ることを目的として、6ウェルプレート中でVero細胞(ATCCから得られた)に対するプラークアッセイを実施した。1000uLのピペットチップを用いて、単一のプラークを突いて、FBS及びPenStrepを含有するDMEM培地中で再懸濁した。次に、再懸濁したプラークを使用して、6cm皿内のナイーブVero細胞に感染させた。7日後に、単一プラーク精製物を含む6cm皿からの上清(5mL)を10×SPGと混合した後、-80℃で保存した。上清の一部(140uL)を使用して、RNA抽出を行い、RT-PCRを用いて、配列を確認した。表1に記載のものと同じプライマーを用いて、RT-PCRを実施した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
CVX-UGA1をレスキューしてマスターシードを生成するために、DA27又はAB76プラスミドを、PIV5 NP、P、Lタンパク質及びT7 RNAポリメラーゼをコードするプラスミドと一緒に293T無血清細胞(ATCCから取得)にトランスフェクトし、上清からの組換えウイルスのレスキューを可能にする。翌日、293T無血清トランスフェクト細胞をトリプシン処理し、Vero-SF(無血清)細胞と10cm培養皿内で共培養した後、7日間インキュベートする。7日間のインキュベーションの後、ベクターウイルスを含む5mLの上清を取得し、10×SPGと混合した後、-80℃で保存する。この凍結ストックのアリコートを段階希釈して、6ウェルプレート内のVero-SF細胞に対してプラークアッセイを実施し、単一のプラークを有する6ウェルを得た。1000uLのピペットチップを使用して、単一のプラークを突いて、VP-SFM培地に再懸濁する。次に、再懸濁されたプラークを用いて、6cm培養皿内のナイーブVero-SF細胞に感染させる。7日後、単一プラーク精製物を含む6cm培養皿からの上清(5mL)を10×SPGと混合し、-80℃で保存した。単一プラーク精製物の最初のラウンドからのアリコートをプレマスターシードワクチンの製造用の種子接種材料として使用することにより、無血清培地(VP-SFM培地)中での適格GMP産生Vero-SF細胞バンクを用いて、GMP実験室でマスターシードを生成する。
【0086】
CVX-UGA1ウイルスレスキューは、pDA27及びpAB76が、厳密なPIV5(SH-HN)-SARS-CoV-2-S-F尾部ゲノムを有することから、それらのいずれかを用いて実施することができる。唯一の違いは、pDA27が低コピープラスミドであり、pAB76が高コピープラスミドであることである。
【0087】
CVX-UGA1を得るために後のレスキューに使用されるプラスミドは、動物由来フリー製品を使用して調製する。目標は、細胞以外の動物由来成分を含まないCVX-UGA1(293T-無血清、Vero-無血清、及び動物産物由来フリー)を生産することである。
【0088】
シード構築物によるSARS-CoV-2-Sタンパク質の産生は、免疫蛍光アッセイによって確認した。これを図6に示す。一次抗体:Sino Biological製のSARS-CoV-2スパイクS1ウサギモノクローナル抗体及び二次抗体:KPL製のCy3標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)。
【0089】
免疫蛍光アッセイによるCVX-UGA1感染MDBK細胞におけるSARS-CoV-2 Sの検出。SARS-CoV-2 Sは、SARS-CoV-2スパイクS1モノクローナル抗体、次に、二次抗体としてのCy3標識ヤギ抗ウサギIgGを用いて検出した。また、感染細胞は、対照としての抗PIV5-P/V(PK)抗体、続いてヤギ抗マウスIgG H&L(FITC)二次抗体で標識した。DAPI(4=,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール;青色)を核染色剤として用いた。後の実験のためには、MDBK細胞の代わりにVero-SF細胞が使用される。
【0090】
pDA16プラスミドのマップを図7に示す。このプラスミドは、PIV5ゲノムとPCDV1遺伝子を含有する。これは、クロラムフェニコール耐性遺伝子を有する低コピープラスミドである。
【0091】
nCOV19-S-ヒト-Genscriptプラスミドのマップを図8に示す。これは、アンピシリン耐性遺伝子を含む高コピープラスミドである。これは、GenScriptから入手した。
【0092】
pDA27(CVX-UGA1)プラスミドのマップ及び配列を図9に示す。このプラスミドは、低コピープラスミドであり、これは、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含有する。
【0093】
pCAGGS-NPプラスミドのマップを図10に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、これは、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。pBH276プラスミド由来のPIV5 NP DNA配列をpCAGGS発現プラスミドにサブクローニングした。詳細については、Schmitt et al.,2002,J Virol 76,3952-3964,doi:10.1128/jvi.76.8.3952-3964.2002を参照されたい。
【0094】
pCAGGS-Pプラスミドのマップを図11に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、これは、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。pBH276プラスミド由来のPIV5 P DNA配列をpCAGGS発現プラスミドにサブクローニングした。詳細については、Waning et al.,2002,J Virol;76:9284-9297,doi:10.1128/jvi.76.18.9284-9297.2002を参照されたい。
【0095】
pCAGGS-Lプラスミドのマップを図12に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、これは、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。pBH276プラスミド由来のPIV5 L DNA配列をpCAGGS発現プラスミドにサブクローニングした。詳細については、Waning et al.,2002,J Virol;76:9284-9297,doi:10.1128/jvi.76.18.9284-9297.2002を参照されたい。
【0096】
pBH437-pCAGGS-T7プラスミドのマップを図13に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、これは、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。pBH161プラスミド由来のT7ポリメラーゼDNA配列をpCAGGS発現プラスミドにサブクローニングした。
【0097】
pBH276プラスミドのマップを図14に示す。このプラスミドは、PIV5ゲノムを含有する。これは、アンピシリン耐性遺伝子を含む高コピープラスミドである。詳細については、He et al.,1997,Virology;237:249-260,doi:10.1006/viro.1997.8801を参照されたい。
【0098】
pBH161プラスミドのマップを図15に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。詳細については、He et al.,1997,Protein Expression and Purification;9:142-151,doi:10.1006/prep.1996.0663を参照されたい。
【0099】
pCH10プラスミドのマップを図16に示す。このプラスミドは、PIV5ゲノムを含有する。これは、アンピシリン耐性遺伝子を有する高コピープラスミドである。
【0100】
pAB76プラスミドのマップを図17に示す。このプラスミドは、高コピープラスミドであり、これは、アンピシリン耐性遺伝子を含有する。
【0101】
プロトコル
Vero-SFの継代培養手順
このプロトコルで使用される体積は、75cmフラスコ用である。
パスツールピペット及び真空ポンプを用いて培地を取り出し、廃棄する。
細胞層を10mLのCa++/Mg++フリーダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で短時間すすぐ。
5mLのTrypLEをフラスコに添加する。細胞が剥離するまで37℃でインキュベートする。倒立顕微鏡を用いて細胞単層を観察し、フラスコの表面からの完全な細胞の剥離を確認する。
細胞が剥離するのを待っている間、凝集を防止するためにフラスコを叩いたり振ったりして細胞を攪拌しないこと。剥離しにくい細胞は、37℃で配置して、分散を促進してもよい。
10mLの予熱したVP-SFM培地をフラスコに添加し、10mLのセロロジカルピペットで穏やかにピペット操作することにより、細胞を吸引する。フラスコをあらゆる方向に傾けて、フラスコを入念にすすぐ。
細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、125gで10分スピンする。
上清を廃棄し、細胞を新鮮なVP-SFMに再懸濁させる。細胞懸濁液の適切なアリコートを新しい培養容器に添加する。
培養物を37℃でインキュベートする。
細胞は、最初の継代培養後に最もよく増殖する。
継代培養比:1:4希釈。
培地交換:週2回。
【0102】
293T-SFの継代培養手順
このプロトコルで使用される体積は、75cmフラスコ用である。
パスツールピペット及び真空ポンプを用いて培地を取り出し、廃棄する。
細胞層を10mLのCa++/Mg++フリーダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で短時間すすぐ。
10mLの予熱したBalanCD HEK293培地をフラスコに添加し、10mLのセロロジカルピペットで穏やかにピペット操作することにより細胞を再懸濁する。
細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、125gで10分スピンする。
上清を廃棄し、細胞を新鮮なBalanCD HEK293培地に再懸濁させる。細胞懸濁液の適切なアリコートを新しい培養容器に添加する。
培養物を37℃でインキュベートする。
細胞は最初の継代培養後に最もよく増殖する。
継代培養比:1:4希釈。
培地交換:週2回。
【0103】
BHK-21及びVero細胞の継代培養手順
このプロトコルで使用される体積は、75cmフラスコ用である。
パスツールピペット及び真空ポンプ(IV-18)を用いて培地を取り出し、廃棄する。
細胞層を10mLのCa++/Mg++フリーダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で短時間すすぐ。
5mLのトリプシン/EDTAをフラスコに添加する。フラスコを傾けて表面を覆い、余剰物を除去する。
細胞が剥離するまで37℃でインキュベートする。倒立顕微鏡を用いて細胞単層を観察し、フラスコの表面からの完全な細胞の剥離を確認する。
細胞が剥離するのを待っている間、凝集を防止するためにフラスコを叩いたり振ったりして細胞を攪拌しないこと。剥離しにくい細胞は、37℃で配置して、分散を促進してもよい。
20mLの予熱したそれぞれの培地をフラスコに添加し、10mLのセロロジカルピペットを用いて、細胞を再懸濁させる。フラスコをあらゆる方向に傾けて、フラスコを入念にすすぐ。細胞懸濁液の適切なアリコートを新しい培養容器に添加する。
培養物を37℃でインキュベートする。
BHKの培地は、DMEM+TPB+FBS+PenStrep、Veroの培地は、DMEM+FBS+PenStrepである。
【0104】
PIV5レスキュー(トランスフェクション)
1日前:
BHK-21細胞を60mm組織培養皿に1:8希釈で平板培養する(翌日、75%コンフルエント)。
当日:
生物学的安全キャビネット内の1.6mLマイクロ遠心チューブ中で、プラスミドDNA、pCAGGs-NP、pCAGGs-P、pCAGGs-L、及びpBH437(pCAGGS-T7)を混合する。
添加と添加の間にピペット操作により混合する。
JetPRIMEバッファーとJetPRIMEトランスフェクション試薬を添加する。
室温で15分間インキュベートする。
トランスフェクション混合物を細胞に滴下する。
続く7日間、EVOSを用い、合胞体について細胞をモニターする。
合胞体が存在したら、クライオチューブ中に1mLの培地の収集を開始し、10×SPGと混合する。
-80℃で保存する。
【0105】
PIV5レスキュー共培養物(トランスフェクション)
1日前:
293T-SF細胞を6ウェル組織培養皿に1:6(約75%コンフルエント)希釈で平板培養する。
Vero-SF細胞を1:20(約50%コンフルエント)希釈で10cm皿に平板培養する。
【0106】
当日:
生物学的安全キャビネットにおいて、無血清Opti-MEMを含有する1.6mLマイクロ遠心チューブ中で、プラスミドDNA、pCAGGs-NP、pCAGGs-P、pCAGGs-L、及びpBH437(pCAGGS-T7)を混合する。
添加と添加の間にピペット操作により混合する。
P3000試薬を添加する。
無血清Opti-MEMを含有する別の1.6mLマイクロ遠心チューブに、リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬を添加する。
室温で20分インキュベートする。
トランスフェクション混合物を細胞に滴下する。
翌日:
293T-SFをトリプシン処理し、1mLのVP-SFM中によく再懸濁させ、別の15mLコニカルチューブに移す。
10cmVero-SFをトリプシン処理し、3mLのVP-SFMに再懸濁させ、15mLコニカルチューブに移す。
6mLのVP-SFMを15mLコニカルチューブに添加する。
よく混合し、15mLコニカルチューブから10mL全部を新しい10cm皿に添加する。
続く7日間、EVOSを用い、合胞体について細胞をモニターする。
合胞体が存在したら、クライオチューブで1mLの培地の収集を開始し、10×SPGと混合する。
-80℃で保管する。
【0107】
ウイルスプラーク精製
1mLの凍結レスキューアリコートを取り出し、プラークアッセイを実施する。
7日後、1000uLのピペットチップを用いて個別のプラークを突き、Appendix IV-1のプロトコルに従う前日に90%のコンフルエントで平板培養したVero-SF細胞の6cm皿に添加する。VP-SFM培地を使用する。
7日目に、140uLの培地サンプルを収集し、QIAampウイルスRNAミニキットを用いて、RNA抽出のために使用する。
残りの培地(4.8mL)をクライオチューブ(Cryo Tube)に集め、10×SPGと混合する。
-80℃で保存する。
【0108】
PIV5プラークアッセイ
全てのステップは、生物学的安全キャビネットで実施する。
1日前:
Vero-SF細胞を6ウェル培養プレートに1:3希釈(翌日95%コンフルエント)で平板培養する。
当日:
インキュベーター内でPIV5ウイルスを37℃で解凍し、解凍後は氷上に保持する。
以下のように、ウイルスが解凍する間に、マルチチャンネルピペットを用い、未希釈サンプルから出発して、10~5希釈で終わる10倍希釈の96ウェルプレートを調製し、ウイルスの名称、継代番号、収集日、希釈係数を記したラベルを6ウェルプレートに貼る。
200uLの未希釈サンプルを第1のウェルに添加する
180uLの感染培地をウェル2~6に添加する
第1のウェルから20uLを取り出し、第2のウェルに移し、マルチチャンネルピペットのピペット操作+混合機能を使用して、入念に混合する。チップを廃棄する。
前ステップをさらに5回繰り返す。
パスツールピペットと真空ポンプを用いて細胞から培地を吸引する。900uLのVP-SFM培地を6ウェル培養プレートの各ウェルに添加する。
6ウェル培養プレートを1ウェルあたり100uLのウイルス希釈液で感染させる。濃度の最も低いものから最も高いものまで移動する同じチップを使用し、1時間インキュベートする。
感染の1時間後に培地を吸引する。
各ウェルに4mLのオーバーレイを添加する。オーバーレイ:1つの6ウェル培養プレートにつき、13mLの2%LMP寒天培地と13mLの2X VP-SFM培地を混合する。
37℃で7日間インキュベートする。
【0109】
PIV5ウイルスの増殖
1日前:
Vero-SF細胞を175cmフラスコに1:3希釈で平板培養する(翌日は95%コンフルエント)。
当日:
接種材料を調製する。20mLのVP-SFM培地中MOI=0.01のウイルス。
パスツールピペットと真空ポンプを用いて、細胞から維持培地を吸引する
Vero-SF細胞を37℃で2時間感染させる。15分毎にプレートを揺動。
接種材料を吸引し、40mLのVP-SFM培地を添加する。
37℃で7日間インキュベートする。
7日目:
回収した培地を50mLコニカルチューブに入れ、1500rpm、4℃で10分遠心分離し、細胞残屑を除去する。
38mLの上清を新しい50mLコニカルチューブに移す。
3.8mLの10×SPGを添加し、1mLのアリコートをクライオチューブ中に作製する。
チューブは、次のようにラベル付けする。
ウイルス名プラーク#
細胞継代
日付イニシャル
ウイルスアリコートを-80℃で保存する。
【0110】
実施例2
パラインフルエンザウイルス5ベースのCOVID-19ワクチンによる単回用量鼻腔内免疫は、フェレット及びネコの鼻腔に殺菌免疫を生成する
SARS-CoV-2は、新型ベータコロナウイルスであり、COVID-19パンデミックの原因である。SARS-CoV-2感染から防御するためのワクチンが、拡散を減らし、これ以上の死亡率を制限するために緊急に必要とされる。パンデミックに対抗するための有効な手段を見出すために、多数のワクチン候補が評価されている。上気道は、SARS-CoV-2感染の初期部位であり、多くの感染者にとって、依然としてウイルス複製の主要部位である。高いウイルス負荷とこの領域からの排出は、症状の発症の数日前に開始し、発症後数日間続く可能性がある。これらの部位での感染を制御することは、パンデミックに対抗するために重要である。今日まで、大型動物モデルの鼻腔など、上気道に殺菌免疫を賦与するワクチンはなかった。この実施例は、マウスモデルにおけるワクチン候補を最適化し、その後、SARS-CoV-2のSタンパク質を発現するパラインフルエンザウイルス5(PIV5)による単回用量鼻腔内免疫が、フェレット及びネコにおいて殺菌免疫を誘導したことを実証した。この粘膜ワクチン戦略は、上気道でのSARS-CoV-2複製を阻害し、下気道への感染の進行を予防した。最も重要なことは、上気道で殺菌免疫を誘導するワクチン候補は、伝播を制限するため、集団におけるSARS-CoV-2感染を低減する可能性が高い。
【0111】
上気道の副鼻腔上皮は、SARS-CoV-2感染の初期部位であり、多くの個体にとって、依然としてウイルス複製の主要部位である。高レベルのウイルス複製は、上気道で起こり(Woelfel et al.Nature 581,465-469(2020))、鼻咽頭からの排出は、初期症状の後数日間継続し得る(Li et al.Journal of Medical Virology 92,2286-2287(2020))。肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び呼吸不全の進行性下気道症状は、COVID-19の罹患率及び死亡率の多くに寄与しており、肺以外の他の臓器系の関与のエビデンスが増えている。上気道及び下気道は、COVID-19の病因の極めて重要な部位であるため、肺に進行する前に上気道でのウイルス複製を停止させることは、予防ワクチンの重要な目標である。これまでの主要なワクチンは、免疫動物及びヒト臨床試験で頑健な抗体反応を生み出し、非ヒト霊長類モデルにおける下気道でのSARS-CoV-2複製を低減した(Corbett et al.N Engl J Med 383、1544-1555(2020);Gao et al.Science 369,77-81(2020);Mercado et al.Nature,(2020);van Doremalen et al.bioRxiv,(2020);Wang et al.Cell 182,713-721 e719(2020))。しかし、SARS-CoV-2の感染を防止する上で重要な上気道の完全な防御を達成することは困難であった。現時点で、これらのワクチン候補が、伝播を阻止できるかどうかについての報告はない。
【0112】
パラインフルエンザウイルス5型(PIV5)は、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、狂犬病、及び他の多様な病原体に対するワクチンベクターとして評価されているパラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科のマイナス鎖RNAウイルスである(Chen et al.J Virol 87、2986-2993(2013);Li et al.mBio 11,(2020);Mooney et al.J Virol 87, 363-371(2013);Phan et al.Vaccine 32、3050-3057(2014);Phan et al.J Virol 91,(2017))。動物モデルにおいて、PIV5は安全であり、イヌのケンネルコフを除いて、どの疾患とも関連していない(Cornwell et al.Vet Rec 98,301-302(1976))。鼻腔内投与される生存PIV5含有ケンネルコフワクチンは、40年以上にわたって使用されて、優れた安全性記録を残している。ケンネルコフワクチンで免疫処置されたイヌは、PIV5を最大5日間排出することができ、免疫処置された動物と密接に接触しているヒトに対し安全であった(Kontor et al.American journal of veterinary research 42,1694-1698(1981);Chen et al.PLoS One 7,e50144(2012))。PIV5は、鼻腔内投与されると、気道における局所的な防御IgA応答、並びに全身性の自然及び適応免疫応答を誘発するため、呼吸器疾患のワクチンベクターとして特に適している(Wang et al.J Virol 91,(2017))。近年、PIV5ベースのMERSワクチンの単回鼻腔内用量は、中和抗体及び細胞性免疫応答を誘導し、MERSのマウスモデルにおけるMERS-CoVによる致死的チャレンジに対して100%防御された(Li et al.mBio 11,(2020))。この実施例は、SARS-CoV-2に対する防御のための有望なワクチン候補を提供する。
【0113】
PIV5ベースのMERS-CoVワクチン開発に使用したのと類似の戦略を用いて、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を発現するPIV5(CVXGA1と称する)を作製し(図18A)、免疫蛍光法及びウエスタンブロットによりそのS糖タンパク質発現を確認した(図18B)。CVXGA1感染細胞中には、完全長S以外に、切断産物S1も検出され、これは、Sがプロセシングされたことを示している(図18B)。Sは、細胞同士の融合及びウイルスと細胞の融合を促進して、ウイルスの侵入を容易にするため、Sによる免疫は、SARS-CoV-2に対する防御免疫を生成する。Sのネイティブ(融合前)立体配座は、最適な防御のための望ましい免疫を誘導すると考えられる。CVXGA1によって発現されるSが機能的であるかどうかを調べるために、ACE2受容体を発現するVero細胞をCVXGA1に感染させた。CVXGA1感染細胞にのみ、合胞体形成(細胞同士の融合)が観察され、これは、CVXGA1によって発現されるSタンパク質が機能的であることを示している(図18C)。CVXGA1の免疫原性を検証するために、免疫したマウスに、様々な用量のCVXGA1を鼻腔内免疫した。抗S抗体の用量依存的な増加が、単回鼻腔内投与後のBALB/cマウスに検出された(図18D)。同様に、Sの受容体結合ドメイン(RBD)を認識する抗体が、CVXGA1で免疫されたBALB/cマウスにおいて用量依存的に検出された(図18E)。さらには、SARS-CoV-2に対する中和抗体が、免疫処置したBALB/cマウスに、用量依存的に検出された(図18F)。C57BL/6マウスでは、6×10プラーク形成単位(PFU)という低用量で単回鼻腔内(IN)免疫処置した後、有意な抗体産生及び細胞応答が観察された(図22)。これらの結果は、CVXGA1による鼻腔内単回用量免疫処置がマウスで頑健な免疫応答を生み出したことを示している。
【0114】
CVXGA1の有効性を決定するために、3つの補完的動物モデルを使用した。BALB/cマウスは、SARS-CoV-2に対して機能的なACE2受容体を欠失しているため、感染に対して抵抗性である。SARS-CoV-2感染に対するアデノウイルスベクター形質導入(Ad5-hACE2)感作マウスによるヒトACE2の導入は、一過性の肺炎感染を引き起こした。このマウスモデルを用いて、CVXGA1の有効性を評価した。CVXGA1による鼻腔内ワクチン接種は、体重減少からマウスを保護する(図23)と共に、肺組織力価、及び組織組織病理学的変化も低減した。マウスの完全な防御がないのは、これらの実験で使用した低用量(マウス当たり最大5×10PFU)によるものと考えられる。或いは、Ad5-hACE2形質導入が、このモデルにおける殺菌免疫の欠如の主な要因である可能性もある。UV不活化SARS-CoV-2による免疫は、より高い抗S抗体価を生み出したが、中和抗体は検出されず(図24)、不活化SARS-CoV-2免疫は、SARS-CoV-2チャレンジに対してマウスを防御しなかった(図19B)。CVXGA1は、不活化SARS-CoV-2よりも低い抗S力価を生成したが、不活化SARS-CoV-2よりも良好にマウスを防御しており、これは、CVXGA1によって生成された細胞性免疫が、この結果に一定の役割を果たした可能性が高いことを示唆している。これは、Ad5-ACE2で感作し、SARS-CoV-2でチャレンジしたCVXGA1免疫マウスの肺における殺菌免疫の欠如と一致するものである。
【0115】
以前、PIV5ベースのMERSワクチンと不活化MERS-CoVワクチンをマウスで比較したところ、不活化MERS-CoVによる免疫が過敏性免疫応答を引き起こしたことが判明したが、これは、ウイルスチャレンジ後の肺への好酸球の流入によって示された。この観察と同様に、UV不活化SARS-CoV-2による免疫は、好酸球浸潤と関連していたが、CVXGA1免疫マウスは、チャレンジ後にそのような浸潤がなく、これは、CVXGA1が過敏性応答を誘発しなかったことを示唆している(図19C、D)。対照的に、全ての処置群は、同様の程度の単核細胞浸潤を有した(図19C)。
【0116】
フェレットは、広く使用されているヒト呼吸器感染症のモデルであり、SARS-CoV-2感染に対して感受性が高く、直接接触及びエアロゾルを介してウイルスを他の動物に伝播し得る(Kim et al.Cell Host Microbe,(2020);Shi et al.Science,(2020);Richard et al.Nat Commun 11,3496(2020))。フェレットにおけるCVXGA1有効性を検証するために、動物をPBS又はCVXGA1で鼻腔内免疫した(図20A)。CVXGA1免疫は、抗S IgG(図25A)、抗RBD IgG(図20B)及び図20Cの中和抗体の高力価によって明らかなように、頑健な抗体応答を生成した。低レベルの抗S IgAが鼻洗浄液中に検出された(図25B)。鼻腔内にSARS-CoV-2をチャレンジしたところ、CVXGA1免疫フェレットからの鼻洗浄液中にウイルスRNAは検出されなかった(図20D)。対照的に、全ての模擬免疫フェレットに、ウイルスRNAが検出された(図20D及び表3)。ウイルスRNA検出を感染性フォーカス形成アッセイと比較するために、チャレンジ後5日目(dpc)からの鼻洗浄液中の感染性ウイルスを、感染性フォーカス形成アッセイを用いて決定した。
【0117】
【表3】
【0118】
qRT-PCRによるウイルスRNAゲノムの検出は、感染性フォーカス形成アッセイと同等であった(図25C)。SARS-CoV-2 Nタンパク質は、PBS免疫された、SARS-COV-2チャレンジフェレットの気道及び実質において4dpcで検出された(図25D)。ウイルスRNAは、模擬免疫フェレットの気管及び肺でも検出されたが、CVXGA1免疫フェレットの気管及び肺では検出されなかった(図20E及び20F)。フェレットにおけるSARS-CoV-2曝露を評価するために、実験終了時(7dpc)に抗S抗体レベルを定量化した。CVXGA1免疫群における抗Sレベルは、チャレンジ後に増加し(図25E)、S抗原に対する記憶応答及び曝露を示している。これらの結果は、CVXGA1免疫が、SARS-CoV2によるチャレンジ後の殺菌免疫を誘導し、最も重要なことには、SARS-CoV2の複製及び伝播の重要な部位である鼻腔で誘導されたことを示している。
【0119】
ネコは、自然にSARS-CoV-2に感染しやすく、実験室において、設定によっては、ウイルスを伝播し得る。CVXGA1免疫が上気道感染を阻止するかどうかを判断するために、ネコをアジュバントなしで鼻腔内(IN)及び皮下(subQ)経路によりCVXGA1で免疫した(図21A)。免疫応答を増強するために、subQ経路により免疫した群にブースター接種した(図21A)。subQ(プライムブースト)及びIN免疫の両方が、同様の抗体応答を生じた(図21B及び21C並びに図26A)。注目すべきことに、IN免疫は、鼻洗浄液中に検出可能な抗S IgAを産生した(図21D)。チャレンジ後、模擬免疫群(PBS)のネコは全て、チャレンジ後1日目に鼻洗浄液中に高いSARS-CoV-2力価を有した(平均6.27×10FFU/ml超)。驚くことに、IN免疫群では、4匹中2匹(50%)に検出可能なウイルスがなく、4匹中2匹でSARS-CoV-2力価が230倍低下した(平均2.7×10FFU/ml)。興味深いことに、subQ免疫はIN免疫と同様の血清抗体価を生成したが、1dpcに鼻腔の感染を防御しなかった(6.16×10FFU/ml)。しかし、subQ免疫されたネコは、模擬免疫されたネコよりも早く感染を排除した:5dpcまでに、4匹のネコのうち3匹はウイルスが検出されなかったが、模擬免疫動物は全て感染したままであった(図21E)。7dpcまでに、全てのネコの鼻洗浄液にウイルスは検出されなかった。これらの結果は、ウイルスRNAについてqRT-PCRを用いて確認した(図26B)。7dpcの鼻洗浄液には生存ウイルスは検出されなかったが、PBS群には11dpcまでウイルスゲノムが検出されたことは注目に値し、以前の報告と一致している。
【0120】
SARS-CoV-2複製に対する動物の曝露を決定するために、実験終了時に抗N抗体レベルを測定した(14dpc)。14dpcに、全てのネコに抗N抗体が検出され;PBS-及びsubQ免疫ネコは、IN免疫動物よりも高い抗Nレベルを有した(図26C)。SARS-CoV-2に対する曝露と一致して、IN免疫動物には、チャレンジ後に抗S力価の増加があった(図26D)。subQ免疫は、IN免疫に匹敵する抗S応答を生成したが、鼻腔における感染を予防しなかったという知見は、高い血清抗体応答が鼻腔の感染を予防しないという観察結果と一致している。個々の動物の免疫応答を評価すると、血清抗体価と鼻腔の防御との間に相関は観察されず、抗S抗体価が副鼻腔における防御の予測因子ではないことがさらに確認された(表4)。
【0121】
【表4】
【0122】
この試験は、PIV5ベースの鼻腔内COVID-19ワクチンが、動物の殺菌免疫を生成し得ることを実証するものである。このワクチン候補のさらなる開発によって、SARS-CoV-2伝播を阻止することができるCOVID-19ワクチンが提供され得る。ケンネルコフワクチンは、数十年にわたって安価で製造されてきた。PIV5ベクターに基づく安全、効果的且つ安価なCOVID-19ワクチンは、COVID-19パンデミックの制御に寄与し得る。
【0123】
材料及び方法
ウイルス及び細胞
細胞質尾部がPIV5のFの尾部で置換され、PIV5のSHとHNの間に挿入されているSARS-CoV-2-Sを有するPIV5の完全長ゲノムをコードする、CVXGA1プラスミド。以前記載されているように、ウイルスレスキューを実施した(Li et al.,2013,J Virol;87:354-362,doi:10.1128/JVI.02321-12)。簡単に説明すると、CVXGA1プラスミド、並びにNP、P、Lタンパク質及びT7 RNAポリメラーゼをそれぞれコードする4つのヘルパープラスミド、pPIV5-NP、pPIV5-P、pPIV5-L、及びpT7-ポリメラーゼを、リポフェクタミン3000(Invitrogen)と一緒に、6cmプレートにおいて90%コンフルエントのBHK21細胞に共トランスフェクトした。培地に放出されたウイルスをVero細胞で増幅した。ウイルスの回収は、Vero細胞中の合胞体形成によって示される。次に、Vero細胞からの単一プラークとしてウイルスをプラーク精製した。CVXGA1ウイルスのプラーク精製単一クローンの完全長ゲノムを、記載される通りに配列決定した(Li et al.,2013J Virol;87:354-362,doi:10.1128/JVI.02321-12)。2%FBS含有DMEMを用いて5~7日間ベロ細胞中でウイルスを増殖させた。培地を回収し、3000rpmでペレット化し、Sorvall卓上遠心分離機を用いて10分間細胞残渣を除去した。ウイルス上清に10%スクロースリン酸グルタミン酸(SPG)バッファーを添加し、液体窒素中で急速凍結し、回収後すぐに-80℃で保存した。
【0124】
SARS-CoV-2ウイルス又は組織ホモジネート上清をDMEMで段階希釈した。VeroE6細胞の12ウェルプレートを5%CO、37℃で1時間接種し、15分毎に穏やかに揺り動かした。接種材料を除去した後、4%FBSを含む1.2%アガロースでプレートを覆った。3日後、オーバーレイを除去し、0.1%クリスタルバイオレット染色を用いてプラークを可視化した。ウイルス力価をPFU/mL組織として定量した。SARS-CoV-2は、4,016μW/cmのワット数を使用して1時間紫外線に曝露することによって不活性化した。
【0125】
全ての細胞株を5%CO、37℃でインキュベートした。ベロ細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)、100IU/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。BHK21細胞は、10%トリプトースリン酸ブロス(TPB)、5%ウシ胎児血清(FBS)、100IU/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEMで増殖させた。
【0126】
免疫蛍光及びイムノブロッティング
CVXGA1又はPIV5に1のMOIで感染させた24ウェルプレート内のMDBK細胞で、SARS-CoV-2-S発現の免疫蛍光を実施した。感染から2日後(dpi)に、細胞をPBSで洗浄してから、2%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を0.1%PBS-サポニン溶液中で透過処理し、抗SARS-CoV-2-S(Sino Biological、カタログ番号40150-R007)及び抗PIV5-V/Pを1:200希釈で1hpiインキュベートした後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ヤギ抗ウサギ(KPL、カタログ番号02-15-16)及びCy3標識ヤギ抗マウス(KPL、カタログ番号072-01-18-06)二次抗体を細胞に添加した。細胞を30分間インキュベートし、蛍光顕微鏡(Advanced Microscopy Group)を用いて、検査及び写真撮影を行った。
【0127】
CVXGA1又はPIV5に1のMOIで感染させた12ウェルプレート内のVero細胞に対して、イムノブロッティングを実施した。24hpiに、5%β-メルカプトエタノールを含むLaemmliサンプルバッファー(Bio-Rad、カタログ番号1610737)を用いて細胞を溶解させた。ライセートをSDS-PAGEゲル上に泳動させ、抗SARS-CoV-2-S(Sigma、カタログ番号ZHU1076)及び抗PIV5-V/P抗体でイムノブロットした。
【0128】
S及びSのRBDの精製
融合前安定化SARS-CoV-2スパイク細胞外ドメインのcDNAをコードするプラスミド(Wrapp et al.2020,Science;367:1260-1263,doi:10.1126/science.abb2507)を合成し(Twist Bioscience)、pTwist CMV Hygroベクターにクローニングした。単量体スパイク受容体結合ドメインをコードするプラスミドをBEI Resources(NR-52309)から入手した。プラスミドは、選択に使用した100μg/mLのアンピシリン(Thermo Fisher Scientific)を用いて大腸菌DH5α細胞に形質転換することによって増殖した。製造者のプロトコルに従い、EZNAプラスミドマキシキット(Omega Biotek)を使用して、プラスミドを精製した。トランスフェクション1リットルにつき、1mgのプラスミドDNAを、66mlのOpti-MEM細胞培地(Gibco)中4mgの25,000分子量ポリエチレンイミン(PEI;PolySciences Inc.)と混合した。30分後、DNA-PEI混合物をFreestyle 293培地(Gibco)中のHEK293F細胞(100万細胞/ml)に添加した。5~7日後、培養物を遠心分離して、細胞をペレット化し、上清を0.45μm滅菌フィルターで濾過した。HisTrap Excelカラム(GE Healthcare Life Sciences)を用いて、濾過済培養上清から組換えタンパク質を精製した。各カラムを20%エタノール中に保存し、5カラム容量(CV)の洗浄バッファー(20mM Tris pH7.5、500mM NaCl、及び20mMイミダゾール)で洗浄した後、サンプルをカラムにロードした。サンプルの適用後、カラムを10CVの洗浄バッファーで洗浄した。6CVの溶出バッファー(20mM Tris pH7.5、500mM NaCl、及び250mMイミダゾール)を用いて、タンパク質をカラムから溶出した。タンパク質を濃縮し、30kDaカットオフ(ミリポアシグマ)のAmicon Ultra-15遠心フィルターユニットを用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にバッファー交換した。
【0129】
ELISA
プライム後及びブースト後の抗SARS-CoV-2-S体液性反応を定量化するために、マウス血清をELISAで分析した。IMMULON(登録商標)2HB 96ウェルマイクロプレートを、100uLの精製SARS-CoV-2-S(1ug/mL)でコーティングした。血清を2倍に段階希釈し、プレート上で2時間インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体(Southern Biotech,Birmingham,Alabama)を1:2500に希釈し、ウェル上で1時間インキュベートした。KPL SureBlue Reserve TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(SeraCare Life Sciences,Inc.,Milford,Massachusetts)を用いて、プレートを進行させ、BioTek Epochマイクロプレート分光光度計(BioTek,Winooski,Vermont)を用いて、OD450値を検出した。抗体エンドポイントは、最高血清希釈のlog10として計算され、そこで、OD450は、ナイーブ血清の平均OD450を2標準偏差上回った。
【0130】
Ferret IgGを検出するために、培地結合96ウェルELISAマイクロプレート(Greiner Bio-One 655001)を、滅菌1×リン酸緩衝生理食塩水(Corning,21-040-CV)中の完全長SARS-Cov-2全スパイクタンパク質又はSARS-Cov-2受容体結合ドメイン(RBD)(Amana et al.2020、Nat Med;26:1033-1036、doi:10.1038/s41591-020-0913-15)のいずれか20ugで、4℃にて一晩コーティングした。自動プレート洗浄機(BioTek 405 TS Washer)を用いて、300uLの0.05%PBS-Tでプレートを3回洗浄した。洗浄は全て、同じ技術を用いて行った。ウェルを200uLのブロッキングバッファー(0.5%ウシ血清アルブミン+0.05%PBS-T中の3%脱脂粉乳)で遮断し、室温で2時間インキュベートした後、洗浄した。熱不活性化血清をブロッキングバッファーで希釈し、適切なウェルに100ulを添加し、室温で2時間インキュベートした後、洗浄ステップに付した。ブロッキングバッファーで1:5000~1:10000に希釈したヤギ抗フェレットIgG HRP共役抗体(Bethyl Laboratories、A140-108P)を1ウェルあたり100uLで添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、排液して、残留溶液を除去した。ペルオキシダーゼ活性を検出するためのSIGMAFAST(商標)OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩)錠剤(Sigma-Aldrich,P9187)を20mLのDIH20中に調製し、ウェル当たり100uLで添加した。8分の進行時間後、50uLの1N HSOを添加して反応を停止した。直ちに、プレートを490nmの吸光度で読み取った(BioTek、Cytation7 machine)。バックグラウンドシグナルは、ヤギ抗フェレットIgG HRP抗体を受けた捕捉タンパク質コートウェルから得られた平均吸光度値から算出した。
【0131】
ネコIgGを検出するために、フェレットIgGアッセイの場合と同様に、96ウェルELISAマイクロプレートをコーティング及び遮断した。熱不活化血清をブロッキングバッファーで希釈し、適切なウェルに100ulを添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ブロッキングバッファーで1:10000に希釈したヤギ抗ネコIgG HRP結合抗体(Bethyl Laboratories、A20-120P)をウェル当たり100uLで添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、排液して、残留溶液を除去した。プレートを進行させ、フェレットIgG ELISAと同様に読み取った。バックグラウンドシグナルは、ヤギ抗ネコIgG HRP抗体を受けた捕捉タンパク質コートウェルから得られた平均吸光度値から算出した。
【0132】
ネコIgAを検出するために、フェレットIgG検出と同様に、ELISAマイクロプレートをコーティング、遮断、及び洗浄した。各鼻洗浄液サンプル(PBS中に収集)の2倍段階希釈をブロッキングバッファーで行い、100ulを適切なウェルに添加した。鼻洗浄希釈液を室温で2時間インキュベートし、洗浄し、ブロッキングバッファーで1:10000に希釈したヤギ抗ネコIgA HRP共役抗体(Bethyl Laboratories、A20-101P)を1ウェル当たり100uLで添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、排液して、残留溶液を除去した。プレートを進行させた後、フェレットIgG ELISAと同様に読み取った。バックグラウンドシグナルは、スパイクコートヤギ抗ネコIgA HRPのみの対照ウェルから得られた吸光度値の平均から算出した。
【0133】
フェレットIgAを検出するために、ELISAマイクロプレートをコーティングし、遮断し、フェレットIgG検出の場合と同様に洗浄した。プールされた熱不活性化鼻洗浄サンプル(PBSで収集)の2倍段階希釈をブロッキングバッファーで実施し、100ulを適切なウェルに添加した。鼻洗浄希釈液を室温で2時間インキュベートし、洗浄し、ブロッキングバッファーで1:2000に希釈したヤギ抗フェレットIgA AP結合抗体(Rockland、618-105-006)を1ウェル当たり100uLで添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、排液して、残留溶液を除去した。アルカリホスファターゼ活性を検出するためのSIGMAFAST(商標)p-ニトロフェニルリン酸錠剤(Sigma-Aldrich,N1891)を5mLのDI H0で調製し、ウェル当たり200uLで添加した。プレートを光から保護するためにホイルで包んでから、室温で30~45分間インキュベートした。8分の進行時間後、50uLの1N HSOを添加して、反応を停止した。直ちに、プレートを405nmの吸光度で読み取った(BioTek、Cytation7 machine)。バックグラウンドシグナルは、ヤギ抗フェレットIgA AP抗体を受けた捕捉タンパク質コートウェルから得られた平均吸光度値から算出した。
【0134】
インターフェロンγ(IFN-γ)ELISPOTアッセイ
BD(商標)ELISPOTマウスIFN-γセット(BD Biosciences,San Jose,CA)を細胞性免疫応答の分析に使用した。アッセイを実施する24時間前に、BD(商標)ELISPOTプレートを精製済抗マウスIFN-γ抗体でコーティングした。マウスの脾臓(n=5、群当たり)を免疫処置から28日後に採取し、5mLのHBSSを含有する15mLコニカルチューブに添加した。脾臓を、70μM細胞ストレーナーを通して押し出し、それをACK溶解バッファーと一緒にインキュベートした後、HBSSで洗浄し、完全腫瘍培地(CTM)に5×106細胞/mLの濃度まで再懸濁することによって、脾細胞を調製した。捕捉抗体溶液をプレートから除去し、次に、プレートをPBSで5~6回洗浄した。続いて、プレートをCTMで90分間遮断した。ブロッキング溶液を廃棄し、50μLのCTMで全タンパク質を覆う0.1μgのSARS-CoV-2 Sペプチドをウェルに添加した。50μLの脾細胞をプレートに添加し(2.5×10細胞/ウェル)に添加し、37℃、5%COで48時間インキュベートした。BD(商標)ELISPOT Set説明書に従って、スポットを免疫染色し、IMMUNOSPOT(登録商標)分析装置(Cellular Technology Limited,CTL)を用いて計数した。結果は、106脾細胞当たりのIFN-γ分泌細胞の数として表示した。
【0135】
SARS-CoV 2によるマウスの免疫処置及び感染
免疫処置。この試験では、6~8週齢の雌マウス(Envigo)を使用した。マウスを、tert-アミルアルコール(Avertin)中250uLの2,2,2-トリブロモエタノールの腹腔内注射によって麻酔し、50uLのPBS又は10、10、10のPFU CVXGA1を鼻腔内接種した。免疫から28日後に、マウスを安楽死させ、心臓胸部採血により血清を採取し、脾臓を摘出した。マウスは、HEPAフィルター付きアイソレータにおいて強化バイオセーフティレベル2実験室に収容され、免疫処置を受けた。実験は全て、ジョージア大学(University of Georgia)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されたプロトコルに従って実施した。
【0136】
10個のPFU紫外線不活化SARS-CoV-2を、アルムアジュバント(Thermo,カタログ番号77161)と200μlの容量で1:1(vol/vol)混合し、マウスに筋肉内に送達した。Ad5-ACE2によるマウスの感作。Ad5-hACE2ベクターについては、以前記載されている(Jia et al.,2005,J Virol;79:14614-14621,doi:10.1128/JVI.79.23.14614-14621.2005;及びSun et al.2020,Cell,doi:10.1016/j.cell.2020.06.010)。ウイルスベクター構築は、RAPAD(商標)システムVVCを用いて実施する(Anderson et al.,2000,Gene Ther;7:1034-1038,doi:10.1038/sj.gt.3301197)。マウスをケタミン/キシラジン(87.5mg/kgケタミン/12.5mg/kgキシラジン)で麻酔し、75μlのDMEM中2.5×10PFUのAd5-hACE2で鼻腔内に形質導入した。
【0137】
マウスの感染。マウスをケタミン/キシラジンで軽度に麻酔してから、総量50μlのDMEM中表示量のSARS-CoV-2で鼻腔内接種した。動物の体重と健康状態を毎日モニターした。SARS-CoV-2を使用した実験は全て、バイオセーフティレベル3(BSL3)実験室で実施した。形質導入の5日後、ケタミン/キシラジン(87.5mg/kgのケタミン/12.5mg/kgのキシラジン)でマウスを麻酔し、50μlのDMEM中105PFUのSARS-CoV-2(分離株USA-WA1/2020 BEI#NR-52281)で鼻腔内感染させた。マウスを毎日モニターし、計量した。
【0138】
SARS-CoV2によるフェレットの免疫処置及び感染
生後8~9か月の雄及び雌(700~2000g)フェレット12匹をTriple F Farmから受け取り、UGA動物実験室において順応させた。到着前に、フェレットは殺菌及び体臭腺の除去を受けた。少なくとも7日間の順応期間の後、肩甲骨の間に熱トランスポンダーを皮下配置するためにフェレットを麻酔した。埋込型のプログラム可能な温度トランスポンダー(Bio Medic Data Systems,USA)を移植部位の組織にしっかりと固定し、華氏90~110度の範囲の温度の読取りを可能にする。同時に、ベースライン血清検査のために全血を採取し、ウイルス排出の分析のために糞便スワブを実施した。
【0139】
全ての実験手順は、ジョージア大学バイオサイエンス動物実験室(University of Georgia Biosciences Animal Facility)で実施した。動物はペアで飼育し、自由給餌及び給水とした。実験は全て、ジョージア大学獣医学部(University of Georgia College of Veterinary Medicine)のIACUCにより承認された。鼻洗浄及び採血を含む全ての手順は、短時間イソフルランガス麻酔下で行われた。
【0140】
感染性Sars-CoV-2チャレンジのために、動物をジョージア大学動物衛生リサーチセンター(University of Georgia Animal Health Research Center)動物バイオセーフティレベル-3(ABSL3)実験室に移した。実験は全て、ジョージア大学獣医学部(University of Georgia College of Veterinary Medicine)のIACUCにより承認された。
【0141】
6匹ずつのフェレットの群に、鼻孔当たり500uLとして分配される1.0mL滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中5×10PFUのCVXGA1を鼻腔内(IN)ワクチン接種した。ワクチン接種後、鼻汁、くしゃみ、下痢、無気力、呼吸数及び労力(うっ血)の増加、チアノーゼ、神経学的変化、及び外部刺激に対する反応などの臨床徴候について、動物を毎日モニターした。体温は、埋め込まれた温度プローブを使用して追跡した。免疫処置から3、7、14、21、及び28日後(dpi)に鼻洗浄液及び糞便スワブを収集して、ワクチン排出を評価した。免疫処置後毎週全血を採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、後の分析のために凍結保存した。SARS-Cov-2による感染チャレンジのために、4×10PFUをIN経路で送達した。ここでも、身体観察、計量、検温を毎日実施した。チャレンジ後4日目に、6匹ずつのサブセットを人道的に安楽死させて剖検し、残りの動物(n=6)はチャレンジ後7日目に人道的に安楽死させた。剖検は全て、委員会認定の獣医学病理学者の指導の下で実施した。病理及びウイルス負荷について組織サンプル(気管及び肺)を収集した。血清及びPBMC単離のためにターミナル採血を行った。
【0142】
SARS-CoV2によるネコの免疫処置及び感染
12匹の亜成体(生後7~9か月)、インタクトなペット用雄ショートヘア(DSH)ネコをMBR Wavery LLCから受け取った。順応期間の後、委員会認定獣医によって雄ネコを外科的に去勢した。滅菌済の雄は全て、委員会認定の実験動物獣医によって決定される完全な外科的回復を待つ間、単独で収容された。免疫処置の前に、肩甲骨の間に埋込型のプログラム可能な温度トランスポンダー、IPTT 300(Bio Medic Data Systems,USA)を皮下配置するために、注射麻酔薬を用いてネコを麻酔した。同時に、全血及び糞便サンプルを収集した。個々の血清をELISAによりSARS-CoV-2タンパク質反応性IgG抗体の存在についてスクリーニングした。ネコ腸内コロナウイルスの存在についてqRT-PCRにより糞便スワブを評価した。
【0143】
感染チャレンジの前に行われたネコの手順は全て、ジョージア大学ライフサイエンス動物実験室(University of Georgia Lifesciences Animal Facility)で実施した。性別及び気質に基づいてネコを群又はペア別に収容した。ネコには市販のドライフードを給餌し、自由給水とした。
【0144】
ネコの群(n=4/群)は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させた1×10PFUのCVXGA1を鼻腔内(IN)又は皮下(SQ)のいずれかでワクチン接種した。鼻腔内ワクチン接種は、鼻孔当たり250uLとして配分される0.5mLの量で完了した。皮下送達は、総量1.0mLを用いて実施した。皮下ワクチン接種した動物は、一次注射の21日後にブースター接種した。ワクチン接種後、動物は、鼻汁、くしゃみ、下痢、無気力、呼吸数及び労力(うっ血)の増加、チアノーゼ、神経学的変化、及び外部刺激に対する反応などの臨床徴候について毎日モニターした。埋め込まれた温度プローブを用いて、体温を追跡した。ワクチン接種から1、3、7、14、21、及び28日後(dpv)に鼻洗浄液及び糞便スワブを収集して、ワクチン排出を評価した。免疫処置後毎週全血を採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、後の分析のために凍結保存した。感染チャレンジのために、1.0mL容量中4×10PFUの用量でSARS-Cov-2を、IN経路で送達した。全ての動物(n=12)を、チャレンジの14日後に人道的に安楽死させた。委員会認定獣医病理学者の指導の下、剖検を実施した。組織に加えて、血清及びPBMC単離のためにターミナル採血を実施した。
【0145】
組織学及び免疫組織化学
動物を麻酔し、PBSで経心的に灌流した。肺組織を採取し、固定(10%中性緩衝ホルマリン)し、一連のアルコール及びキシレン浴により脱水し、パラフィン包埋し、切片化(約4μm)し、ヘマトキシリン及びエオジン(HE)染色で染色した。組織は、盲検的に、且つ再現可能な組織スコアの原則(Meyerholz and Beck、2018、Invest;98:844-855、doi:10.1038/s41374-018-0057-0)に従い、委員会認定病理学者によって検査された。血管周囲好酸球浸潤を以前記載されている通りに評価した(Fuentes et al.,2015,J Virol;89:8193-8205,doi:10.1128/JVI.00133-15)。簡単に説明すると、細胞浸潤のある血管周囲領域を、盲検的に病理学者がランダムに選択し(n=20/肺)、好酸球の数を記録し、各肺の最終スコアについて平均した。単核浸潤について肺をスコアリングし、スコア0は正常パラメータ内の値を表し、1は気管支周囲及び血管周囲領域の小さな凝集体を表し、2は血管周囲空間を満たす血管周囲及び気道凝集体を表し、3は、スコア2に加えて、肺の領域の中隔及び硬化病変への浸潤葉の拡大を表す。肺を顆粒球浸潤についてスコアリングするが、スコアは以下の通りである:0、正常なパラメータ内;1、中隔内に隔離された散在するPMN;2、1のスコアに加えて、気室中に漏出した孤立性PMN;3、スコア2に加えて、血管及び気室各々における微小な凝集体。
【0146】
SARS-COV2-S中和
以前記載されているSARS-CoV2(VSV-S)で偽型化されたVSV(Nie et al.,2020,Emerg Microbes Infect;9:680-686,oi:10.1080/22221751.2020.1743767)を中和アッセイに使用した。VSV-S粒子をVero細胞の96ウェルプレート中のTCID50により滴定して、中和に最適な粒子数を決定した。それらを、2%FBS、DMEM培地中1%P/Sで希釈した。力価は、Promegaによるホタルルシフェラーゼ検出Bio-Glo Luciferase Assay Systemを用いて決定した。1:1比の希釈粒子及び滅菌PBS(血清なし)から成る各プレートに粒子対照を使用した。バックグラウンドを構成するために、滅菌PBSと2%FBS、DMEM培地中1%P/Sから成る各プレートに陰性対照も使用した。
【0147】
中和アッセイの前に56℃で45分間血清を熱不活性化した。次いでこれを、細胞非含有の96ウェル未処理プレートにおいて1:50(ネコ)又は1:100(フェレット)から出発する1:2希釈を用いて、滅菌PBSで段階希釈した。回収したヒト血清サンプル(+RHS)を各アッセイの陽性対照として使用し、1:100から出発して1:2に段階希釈した。サンプル及び対照は4回反復で実施した。
【0148】
50ulの希釈VSV-S粒子を、50ulの希釈血清を含む96ウェルプレートに添加し、5%CO、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、90~100%コンフルエントでVero細胞を含む白色96ウェルプレートから培地を吸引し、粒子-血清混合物(100ul)を細胞に添加した。5%CO、37℃で18~24時間プレートをインキュベートした。翌日、室温で10~20分間サンプルを平衡させ、50ulのBio-Glo試薬を各ウェルに添加した。プレートは、PromegaによるGloMaxルミノメーター上でBio-Gloプロトコルを用いて直ちに読み取った。
【0149】
SARS-CoV-2による中和のために、血清サンプルを中和アッセイの前に56℃で30分間熱不活性化した。次に、それらを滅菌DMEMで段階希釈し、約20 PFUのSARS-CoV-2を含有する等量のDMEMと混合した。37℃で1時間インキュベートした後、アリコートを12ウェルプレートのVero E6細胞に添加し、5%CO、37℃で1時間インキュベートした。接種材料の除去後、4%FBSを含む1.2%アガロースでプレートを覆った。5%CO、37℃で2日間さらにインキュベートした後、オーバーレイを除去し、0.1%クリスタルバイオレットでの染色によりプラークを可視化した。
【0150】
SARS-CoV-2鼻腔排出qPCR
標準曲線の作成。標準曲線に使用したウイルスを増殖させるために、Vero E6細胞をSARS-CoV-2 USA-WA01/2020(BEI Resource、cat#NR52281)継代1に約0.001のMOIで感染させ、37℃+5%COでインキュベートした。感染から48時間後にウイルスを収集し、1.2%Avicel+0.5×DMEM+1%FBS+0.5×抗生物質/抗真菌剤のアビセルオーバーレイを有するVero E6細胞に対するプラークアッセイにより滴定した。遺伝物質を不活化して保存するために、フェレット及びネコのサンプルについてそれぞれ1.1×10PFU/mL又は1.44×10PFU/mLの濃度のウイルスを、TRIzol試薬(ThermoFisher Scientific)と1:1で混合した。クイックRNAウイルスキット(Zymo Research)を用いて、RNAを600uLから抽出し、50uLのTRIzolに溶出した。RNAを1:10に段階希釈した。10uLの各ウイルス希釈液を、10uLのTaqPath 1-Step RT-qPCRマスターミックス(ThermoFisher Scientific)及びEUA CDC SARS-2キット(Integrated DNA Technologies)からの3uLのnCov N1プライマー/プローブを用いた40uLのqPCR反応に使用した。qPCR反応物は全て、Agilent Mx3000Pを用いて分析した。
【0151】
フェレット鼻洗浄液qPCR。500uLの回収された鼻洗浄サンプルをDNA/RNA Shield(Zymo Research)と1:1で混合した。クイックRNAウイルスキット(Zymo Research)を用いて、600uLからRNAを抽出し、15uLのDNA/RNA Shieldに溶出した。2ngの各鼻洗浄液サンプルを、10uLのTaqPath 1-Step RT-qPCR Master Mix(ThermoFisher Scientific)及びEUA CDC SARS-2キット(Integrated DNA Technologies)からの3uLのnCov N1プライマー/プローブを用いた40uLのqPCR反応に使用した。qPCR反応当たりのゲノムコピーは、標準曲線を用いて計算した。qPCR反応に用いたRNAの比は、2ngをサンプル当たりの総RNA ng数で割ることによって計算した。各サンプルのゲノムコピーを計算するために、qPCR反応当たりのゲノムコピーに、反応に使用したRNAの比を掛け、記載される希釈量と抽出量を用いて、mL当たりのゲノムコピーを逆算した。CT値が37を超えるサンプルは、PCR陰性とみなした。各qPCR実験について、標準曲線を用いて1FFU/反応(rxn)CT値カットオフを設定し、CT値が37未満であるが、1FFU/rxnカットオフを超えるサンプルには、グラフ作成の目的で0.5のゲノムコピー/mL値を割り当てた。1FFU/mL及びPCR陽性のカットオフラインは、それぞれy=1及びy=0.1にプロットした。
【0152】
ネコ鼻洗浄液qPCR
500uLの回収鼻洗浄液サンプルをDNA/RNA Shield(Zymo Research)と1:1で混合した。クイックRNAウイルスキット(Zymo Research)を用いて、600uLからRNAを抽出し、15uLのDNA/RNA Shieldに溶出した。1uLの各鼻洗浄サンプルを、10uLのTaqPath 1-Step RT-qPCR Master Mix(ThermoFisher Scientific)及びEUA CDC SARS-2キット(Integrated DNA Technologies)からの3uLのnCov N1プライマー/プローブを用いた40uLのqPCR反応に使用した。
【0153】
qPCR反応当たりのゲノムコピーは、標準曲線を用いて計算した。記載される希釈量と抽出量を用いて、mL当たりのゲノムコピーを逆算した。CT値が37を超えるサンプルは、PCR陰性とみなした。各qPCR実験について、標準曲線を用いて1FFU/反応(rxn)CT値カットオフを設定し、CT値が37未満であるが、1FFU/rxnカットオフを超えるサンプルには、グラフ作成の目的で0.5のゲノムコピー/mL値を割り当てた。1FFU/mL及びPCR陽性のカットオフラインは、それぞれy=1及びy=0.1にプロットした。
【0154】
フォーカス形成ユニットアッセイ
感染性SARS-Cov-2の定量化は、Vero E6細胞上のフォーカス形成単位(FFU)により実施し完了した。簡単に説明すると、96ウェル細胞培養プレートを3.2×10細胞/ウェルで播種し、一晩インキュベートした。コンフルエント単層は、2%FBS及び1×抗生物質/抗真菌剤培地を含むDMEMの培地中で、接種材料の10倍段階希釈物と一緒にインキュベートした。培養プレートからの増殖培地、50uL接種材料を、37℃、加湿5%COで1時間インキュベートした。オーバーレイ培地、即ち、培地中0.8%メチルセルロースを150uL/ウェルで適用し、プレートを37℃、加湿5%COに20~24時間かけて戻した。フォーカス形成ユニット(FFU)の比色分析展開のために、メチルセルロースオーバーレイをデカントし、プレートを1×PBSで3回洗浄した。固定液(80%メタノール、20%アセトン)を100uL添加し、室温で少なくとも10分間インキュベートした後、固定液に浸し、BSL3実験室から取り出した。一次抗体(HRP共役1CO、1.4μg/ml)を、75uL/ウェルのブロッキングバッファー(0.1%Tween 20、5%NFDM、5%BSA)で1:1000に希釈し、室温で45分間インキュベートした。次に、一次溶液をデカントし、プレートを0.1%PBS-Tで2回洗浄した。追加の洗浄ステップをdH0、75uL/ウェルTMB現像溶液で完了し、室温で1時間インキュベートした。最終dH0洗浄ステップを完了し、プレートを風乾して、手動FFU定量用のBioTek Cytation7 machineで画像を取得した。
【0155】
実施例3
パラインフルエンザウイルス5ベースのCOVID-19ワクチンによる単回用量粘膜免疫処置によるSARS-CoV-2チャレンジに対するK18-hACE2マウス及びフェレットの防御
本実施例では、SARS-CoV-2の完全長スパイク(その細胞質尾部がPIV5 Fタンパク質の細胞質尾部で置換されている)を含む組換えPIV5(CVXGA1)を作製し、マウス及びフェレットのワクチンとしての有効性を検証した。
【0156】
SARS-CoV2のSタンパク質を発現するPIV5(CVXGA1)の作製及び解析
PIV5ベースのMERS-CoVワクチン開発で使用されたのと同様の戦略を使用して、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を発現するPIV5(CVXGA1と称する)を作製した(図18A)。RT-PCRシークエンシングによるウイルスゲノム配列でも、免疫蛍光法及びウエスタンブロットを用いたCVXGA1感染細胞におけるS糖タンパク質の発現が確認された(図18B)。完全長Sの他に、切断産物であるS1も、CVXGA1感染細胞に検出され、Sがプロセシングされたことを示している(図18B)。Sタンパク質は、細胞同士の融合及びウイルスと細胞の融合を媒介して、ウイルスの侵入を促進し、Sによる免疫が、SARS-CoV-2に対する防御免疫を生成する(Corbett et al.N Engl J Med,(2020))。Sの天然(融合前を含む)立体配座は、最適な防御のための望ましい免疫を誘導すると考えられている(Corbett et al.N Engl J Med,(2020))。PIV5ベクターにより発現するSタンパク質が機能性であるかどうかを調べるために、ACE2受容体を発現するVero細胞に、CVXGA1を感染させた。合胞体形成(細胞同士の融合)は、CVXGA1感染細胞にしか観察されず、Sタンパク質の機能性発現を示している(図18C)。
【0157】
CVXGA1は、マウスにおいて体液性及び細胞性免疫応答を生成した
CVXGA1抗原性を検証するために、マウスを、様々なCVXGA1接種材料で鼻腔内免疫した。抗S抗体の用量依存的な増加が、単回鼻腔内投与後のBALB/cマウスに検出された(図18D)。同様に、Sの受容体結合ドメイン(RBD)を認識する抗体が、CVXGA1で免疫されたBALB/cマウスにおいて用量依存的に検出された(図18E)。さらに、SARS-CoV-2に対する中和抗体が、用量依存的に免疫されたBALB/cマウスに検出された(図27)。CVXGA1の6×10プラーク形成単位(PFU)という低い用量での単回鼻腔内(IN)免疫後のC57BL/6マウスにおいて、有意な抗体生成及び細胞応答が観察された(図33)。これらの結果は、CVXGA1による単回鼻腔内用量免疫処置が、マウスにおいて頑健な免疫応答を生み出したことを示している。
【0158】
CVXGA1は、SARS-CoV2致死的チャレンジに対してヒトACE2受容体を有するマウスを防御した
CVXGA1の有効性を判断するために、次の2つの相補的な動物モデルを使用した:トランスジェニックマウスを用いる重篤な疾患モデルと、フェレットを用いる上気道感染症モデル。マウスは、SARS-CoV-2の機能性ACE2受容体を欠失しているため、感染に対して抵抗性である。非常にストリンジェントなモデルであるヒトACE2(hACE2)におけるワクチン有効性を調べるために、トランスジェニックマウスを使用した。本来、SARS-CoV感染を研究するために開発されたサイトケラチン18プロモーター(K18)の制御下でhACE2を発現するマウス(McCray et al.J Virol 81、813-821(2007))は、近年、SARS-CoV-2感染に応答して重度の肺疾患を発症することが実証された(Jiang et al.Cell 182、50-58 e58(2020);Zheng et al.Nature,(2020))。K18-hACE2マウスに10PFUのSARS-CoV-2を接種すると、100%の死亡率、びまん性肺胞損傷の兆候を伴う肺疾患、及びCNSへの多様な拡散が起こる。致死量、50%(LD50)は、10PFUであると推定される(Jiang et al.Cell 182,50-58 e58(2020);Zheng et al.Nature,(2020))。K18-hACE2マウスを、単回用量のCVXGA1(10PFU)で鼻腔内免疫し、その4週間後に4×10PFUのSARS-CoV-2でチャレンジした。別の群のK18-ACE2マウスを、V不活化SARS-CoV-2で筋肉内免疫処置し、その2週間後に追加免疫した。ワクチン未接種マウスは、筋肉内DMEMを受けた。第2の対照群は、単回用量のPIV5ベクター(10PFU)を鼻腔内に免疫した。SARS-CoV-2チャレンジに応答して、DMEM対照群は、チャレンジから7日後(dpc)までに体重が減少し、感染で衰弱した(図28A、28B)。UV不活化SARS-CoV-2又はPIV5で免疫処置されたマウスは、DMEM群と同じくらい体重が減少した。全てのPIV5免疫マウスは7dpcまでに衰弱し、6匹のUV不活化SARS-CoV-2免疫マウスのうち4匹が死亡した(図28A、28B)。CVXGA1免疫マウスは、体重の減少がなく、全て生存した(図28A、28B)。
【0159】
5dpcでは、DMEM、UV不活化SARS-CoV-2、又はPIV5で免疫処置されたマウスの肺組織におけるウイルス力価は類似しており(図28C)、3つの群全てが脳感染のエビデンスを示した(図28D)。対照的に、CVXGA1免疫マウスは、肺組織中に検出可能なSARS-CoV-2がなく、ウイルス力価の約5対数減少を示した(図28C)。注目すべきことに、CVXGA1免疫マウス4匹のうち4匹が、SARS-CoV-2チャレンジ後に脳組織中にウイルスが検出されなかった(図28D)。
【0160】
SARS-CoV-2チャレンジの5日後、肺組織中のウイルス抗原(Nタンパク質)が局在化した。対照DMEM処置動物は、気道及び肺実質上皮細胞全体に散在する抗原染色を有した(図29A)。対照的に、CVXGA1免疫マウスは、Nタンパク質陽性細胞の稀有な小さい病巣のみを示し、進行しなかった初期感染部位を示すと推定される(図29A)。UV不活化SARS-CoV-2及びPIV5処置群からの肺組織はいずれも、散在性抗原陽性細胞を示した(図29A)。
【0161】
SARS-CoV-2に感染した動物の肺組織切片を調べ、血管周囲好酸球浸潤の存在についてスコアリングした。感染後5日目に、好酸球の流入が、UV不活化SARS-CoV-2で免疫処置したマウスで明瞭であり、他の群には存在しなかった(図29B、挿入矢印)。血管周囲炎症性細胞浸潤の存在についても、肺組織をスコアリングした。血管周囲肺浸潤は、大部分がリンパ系細胞から成る場合、事前の抗原曝露及び有効なワクチン接種の好ましい兆候となり得る。図29Bに示すように、DMEM対照群と比較して、CVXGA1免疫マウスは、血管周囲リンパ系細胞浸潤の有意な増加を有していた。
【0162】
間質性疾患の存在は、多くの場合、重症ウイルス性肺炎の特徴である。肺組織を検査し、肺胞中隔浸潤の存在、気室への拡大、及び関連する肺拡張不全及び浮腫によって定義される間質性疾患(Hスコア)の存在についてスコアリングした。他の処置群と比較して、CVXGA1免疫マウスは、SARS-CoV-2チャレンジ後5日目に間質性疾患のエビデンスが最も少なかった(図29C)。好酸球浸潤物、血管周囲浸潤物、及び間質性肺疾患の重症度についての組織学的スコアを図29Dに示す。さらに、高チャレンジ用量(マウス当たり10PFUのSARS-CoV-2)に対するCVXGA1免疫の有効性を検査し、及びCVXGA1免疫がこの致死的チャレンジからマウスを100%防御したことを見出した(図34)。
【0163】
CVXGA1は、SARS-CoV 2感染からフェレットを防御した
フェレットは、広く使用されているヒト呼吸器感染症のモデルであり、SARS-CoV-2感染に対して感受性が高く、直接接触及びエアロゾルを介してウイルスを他の動物に伝播し得る(Kim et al.Cell Host Microbe,(2020);Shi et al.Science,(2020);Richard et al.Nat Commun 11,3496(2020))。フェレットにおけるCVXGA1有効性を検証するために、動物をPBS又はCVXGA1で鼻腔内免疫した(図30A)。免疫後3日目及び7日目にフェレットの鼻腔内でCVXGA1が複製し、鼻洗浄液中に10PFU/mlを超えるピーク力価を示し、CVXGA1は、免疫から14日後までに排除された(図35A)。CVXGA1免疫は、高力価の抗S IgG(図35B)、抗RBD IgG(図30B)、及び図30Cの中和抗体によって明らかなように、頑健な抗体応答を生成した。低レベルの抗S IgAが鼻洗浄液中に検出された(図35C)。鼻腔内でSARS-CoV-2にチャレンジした場合、CVXGA1免疫フェレットからの鼻洗浄液中にウイルスゲノムRNAは検出されなかった(図31A)。対照的に、全ての模擬免疫フェレットに、ウイルスRNAが経時的に検出された(図31A)。ウイルスRNAはまた、模擬免疫フェレットの気管及び肺にも検出されたが、CVXGA1免疫フェレットの気管及び肺では検出されなかった(図31B、C)。フェレットにおけるSARS-CoV-2曝露を評価するために、実験終了時(7dpc)に抗S抗体レベルを定量化した。CVXGA1免疫群における抗S IgGレベルは、チャレンジ後に増加し(図35D)、S抗原に対する記憶応答及び曝露を示す。これらの結果は、CVXGA1免疫が、SARS-CoV-2の発症に極めて重要な部位である上気道におけるSARS-CoV-2複製を顕著に低減したことを示している。
【0164】
CVXGA1免疫が感染を阻止できるかどうかを判断するために、以前と同様に単回用量のCVXGA1でフェレットを免疫処置した。対照動物は、PBS又は空のPIV5ウイルスベクターで免疫処置した(図32A)。IN免疫の42日後、フェレットをSARS-CoV-2でチャレンジし、1、3、5、7、9、及び11dpcに鼻洗浄液を収集した(図32A)。ナイーブフェレットを、チャレンジフェレットと1ナイーブ:1感染の比で、2dpcから共収容した(ケージ当たり2匹のフェレット)。動物福祉法により、全てのフェレットをBSL3実験室内のオープンケージに収容した(図36)。PBS及び空のPIV5ベクター群における全てのフェレットは、鼻汁中の生存SARS-CoV-2の検出により示される通り、感染し、3dpcにピークに達した(図32B)。感染PBS文及び空PIV5ベクター群と一緒に共収容されたナイーブフェレットは全て、SARS-CoV-2に感染し、共収容から約5日後にピーク力価が検出された。曝露されたナイーブ動物における力価は、直接感染した動物と同様のレベルに達し、100%伝播と一致した(図32B)。前(図32B)と同様に、チャレンジ後のCVXGA1免疫フェレットの鼻腔内にウイルスは検出されなかった。CVXGA1免疫及びSARS-CoV-2チャレンジフェレットと共収容されたナイーブフェレットでは、共収容後の最初の5日間はウイルスが検出されず(図32B)、CVXGA1免疫及びチャレンジフェレットとの直接接触は、ナイーブフェレットへのSARS-CoV-2の伝播を引き起こさなかったことを示唆している。混合の7日後から、CVXGA1免疫動物と混合されたフェレットは、恐らく隣接するケージ内の感染フェレットを含む環境から感染を獲得した(図36)。
【0165】
今回の研究は、PIV5ベースの粘膜COVID-19ワクチンが、マウスモデルで致死性疾患を予防し、また、フェレットでは、上気道ウイルスの複製を顕著に低減して、感染を阻害できることを実証した。動物モデルが、ヒトにおける重症SARS-CoV-2感染の全ての特徴を完全に再現するわけではないが、K18-hACE2マウスは、頑健なウイルス複製を裏付け、用量依存的な重症疾患を発生するが、現在まで、このモデルにおいて伝播は研究されていない(Jiang et al.Cell 182、50-58 e58(2020);Zheng et al.Nature,(2020))。K18-hACE2マウスにおいて、致死量、即ち、50%(LD50)は、10PFUであると推定される(Zheng et al.Nature,(2020);Winkler et al.Nat Immunol 21,1327-1335(2020))。UV不活化SARS-CoV-2によるK18-hACE2マウスのプライムブーストは、致死的チャレンジからマウスの100%を防御することができなかった。注目すべきは、推定100 LD50を使用した場合、不活化ウイルスで免疫したチャレンジ(10PFU)マウスが、PBS対照群よりも体重を減少したことである(図34)。UV不活化MERS-CoVワクチンによる以前の観察と同様に、UV不活化SARS-CoV-2による免疫と、それに続く10PFU SARS-CoV-2チャレンジは、過敏症型反応と一致する好酸球の流入を引き起こした(図34E)。致死量以下のSARS-CoV-2接種を受けたK18-hACE2マウスは、その後の致死量のチャレンジに耐えて生存したが、5dpcに、生存マウスの肺組織中にウイルスが検出された(Jiang et al.Cell 182,0-58 e58(2020))。単回用量のCVXGA1で免疫されたマウスは全て、脳内に検出可能なウイルスがなく、推定100 LD50チャレンジ(10PFU)に耐えて生存したが、最も重要なことには、マウスの75%が5dpcの肺組織にウイルスが検出されず、これは、CVXGA1の強力な防御効果を実証するものである。
【0166】
ウイルス糖タンパク質の天然の立体配置を抗原として生成することは、防御免疫応答を最大化するために望ましいが、困難となり得る。ウイルスの不活化は、往々にして、抗原立体構造に望ましくない変化を引き起こす。精製されたウイルス糖タンパク質の最適な構造を得るために、変異が導入されることが多い(Wrapp et al.Science 367,1260-1263(2020))。これまでに、PIV5は、RSV Fタンパク質を展示する優れたベクターであることが実証された。Fを含む組換えPIV5への感染後に、Fを発現する細胞は、RSV感染細胞における天然Fタンパク質と同じ立体構造を保持し(Wang et al.J Virol 91,(2017))、PIV5生存ウイルスベクターが天然ウイルス糖タンパク質を適切に発現できることを実証している。CVXGA1感染細胞における全長SARS-CoV-2 Sタンパク質の発現は、合胞体形成を起こし(図18C)、天然の融合コンピテントSタンパク質の展示と一致した。PIV5は、F及びHN媒介性膜融合を介して宿主細胞に侵入する:HNは、細胞表面タンパク質上のシアル酸残基に結合し、Fは膜融合を促進する。シアル酸残基は遍在性であるため、PIV5は、ほぼ全ての哺乳類細胞に感染することがわかっている。従って、SARS-CoV2の機能性Sを発現しても、CVXGA1は、F及びHNと同様にSを発現するので、CVXGA1の細胞指向性は拡大しない(図18A)。さらに、CVXGA1によって促進される合胞体形成の加速(PIV5は、速度は遅いが、Vero E6細胞でも合胞体を生じさせる)は、単層培養で増殖させた細胞に合胞体がより一般的に観察され、典型的に高分化及び分極した初代上皮細胞ではめったに発生しないため、損傷を引き起こす可能性は低い。
【0167】
フェレットは、SARS-CoV-2感染に対して感受性が高く、直接接触及びエアロゾルを介してウイルスを容易に伝播する(Kim et al.Cell Host Microbe,(2020);Shi et al.Science,(2020);Richard et al.Nat Commun 11,3496(2020))。直接接触は、間接(エアロゾル)経路よりも効率的な伝播手段である。公開された研究では、直接接触伝播を試験するために、1匹の感染したフェレットが1匹又は2匹のナイーブ動物と共収容された(Kim et al.Cell Host Microbe,(2020);Richard et al.Nat Commun 11,3496(2020))。頑健な伝播モデルでワクチンを試験するために、1匹のナイーブフェレットを1匹の感染フェレットと共収容した(図32A及び図36)。単回用量のCVXGA1免疫は、SARS-CoV-2感染から完全に防御した:免疫動物の鼻腔にウイルスRNAは検出されなかった(図31A)。重要なことに、単回用量CVXGA1の免疫処置は、SARS-CoV-2の直接伝播を阻害した(図32)。フェレットはオープンケージに収容されていたため、CVXGA1免疫フェレットと共収容された動物は、おそらく他のケージからの環境感染により、混合から7日と9日後に感染した。CVXGA1免疫フェレットと共収容したナイーブフェレットの遅発性感染は、CVXGA1免疫フェレット及びSARS-CoV-2チャレンジフェレットによる伝播の結果であり、従って、CVXGA1はSARS-CoV-2の伝播をただ遅らせた可能性もある。
【0168】
しかし、CVXGA1免疫フェレットの鼻洗浄液又は肺にウイルスは検出されず(図37)、これは、共収容されたフェレットのウイルス源が、隣接するオープンケージに収容された感染フェレット由来のものである可能性が高いことを示唆している。チャレンジ後のCVXGA1免疫フェレットにウイルスRNAがないことは、CVXGA1免疫フェレットと共収容されたフェレットの遅発性感染が、他の感染フェレットに由来することを裏付けている(図37)。CVXGA1免疫/SARS-CoV-2チャレンジフェレットと共収容されたナイーブフェレットが、遅い時点で感染する2つ経路が考えられた。1つは、フェレットがオープンケージに収容されていたため、隣接するケージ内の感染フェレットからのエアロゾル伝播を介して感染を獲得したというものである(図36)。もう1つの可能性は、飼育及び設備からの汚染であった:IACUCにより義務付けられた手順は、7日毎に動物のケージ交換が必要である。これらのケージ交換中に、共収容されたフェレットが汚染された設備との直接接触を通じて感染を獲得した可能性がある。PBS群におけるウイルスRNAレベルと生存ウイルスとの間の切断が観察された(図32B及び図37):生存ウイルス力価は、3日目にピークに達し、7日目には検出できなかったが、ウイルスRNAは3日目に最初にピークに達し、7日目に高レベルであった。ウイルスRNAのこうしたクリアランスの遅延は、qRT-PCRが残留ウイルスRNAを検出できる方法の違いを反映している可能性がある。鼻腔内CVXGA1免疫は、マウス及びフェレットにおいて頑健な血清抗体応答を生成した。重要なことに、IN CVXGA1免疫はフェレットの呼吸器粘膜IgAを誘導したが、これは、PIV5がインフルエンザウイルス及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含む呼吸器感染症のワクチン開発のための強力なベクターであるという以前の報告と一致している(Wang et al.J Virol 91,(2017);Mooney et al.J Virol 91,(2017))。粘膜IgAは、RSV Fを発現するPIV5で鼻腔内免疫したサルにおいても検出された(Wang et al.J Virol 91,(2017))。生存ウイルスベクターとして、CVXGA1が頑健な細胞性免疫応答を生成すると仮定され、図33に観察されるように、細胞性免疫応答がマウスに検出された。ケンネルコフワクチンは何十年にもわたって安価且つ安全に製造されており、PIV5の製造能力及びワクチン送達システムは十分に確立されている。PIV5ベクターベースのワクチンのさらなる開発は、SARS-CoV-2感染を阻止し、COVID-19パンデミックを制御する上で役立ち得る。
【0169】
材料及び方法
ウイルス及び細胞調製物、イムノブロッティング法、S及びSのRBDの精製、ELISAプロトコル並びにフォーカス形成単位アッセイプロトコルは、実施例2と同様である。
【0170】
免疫蛍光
SARS-CoV-2-Sタンパク質発現の免疫蛍光局在は、1のMOIでCVXGA1又はPIV5を感染させた24ウェルプレートのMDBK細胞で実施した。感染後2日目に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次に2%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を0.1%PBS-サポニン溶液中で透過処理し、抗SARS-CoV-2 S(Sino Biological、カタログ番号40150-R007)及び抗PIV5-V/Pと一緒に1:200希釈で1時間インキュベートした後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ヤギ抗ウサギ(KPL、カタログ番号02-15-16)及びCy3標識ヤギ抗マウス(KPL、カタログ番号072-01-18-06)二次抗体を2滴/mlの4’6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(NucBlue Live Cell Stain ReadyProbes reagent,Life technologies Corporation,Eugene,Oregon,USA)と共に細胞に添加した。細胞を30分間インキュベートし、Nikon Eclipse Ti共焦点蛍光顕微鏡を用いて検査し、撮影した。
【0171】
SARS-CoV 2によるマウスの免疫処置及び感染
これらの試験では、6~8週齢の雌マウス(Envigo)又はK18-hACE2マウス(B6.Cg.Tg(K18-hACE2)2Prlmn/J,Jackson Laboratory)を使用した。マウスを、tert-アミルアルコール(Avertin)中250μlの2,2,2-トリブロモエタノールの腹腔内注射によって麻酔し、50μlのPBS(又はDMEM)又は10、10、10PFU CVXGA1若しくは10PFU PIV5ベクターを鼻腔内接種した。免疫処置から28日後に、マウスを安楽死させ、心臓胸部採血により血清を採取し、脾臓を摘出した。マウスは、HEPAフィルター付きアイソレータにおける強化バイオセーフティレベル2実験室に収容され、免疫処置を受けた。実験は全て、ジョージア大学(University of Georgia)及びアイオワ大学(University of Iowa)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されたプロトコルに従って実施した。
【0172】
10個のPFU紫外線不活化SARS-CoV-2を、アルムアジュバント(Thermo,カタログ番号77161)と200μlの容量で1:1(vol/vol)混合し、マウスに筋肉内に送達した。
【0173】
マウスの感染。マウスをケタミン/キシラジンで軽度に麻酔し、表示量のSARS-CoV-2を50μl総容量のDMEMで鼻腔内接種した。動物の体重と健康状態を毎日モニターした。SARS-CoV-2を使用した実験は全て、バイオセーフティレベル3(BSL3)実験室で実施した。
【0174】
SARS-CoV-2によるフェレットの免疫処置及び感染
生後8~9か月の雄及び雌(700~2000g)フェレット12匹をTriple F Farmから受け取り、UGA動物施設において順応させた。到着前に、フェレットは殺菌及び体臭腺の除去を受けた。少なくとも7日間の順応期間の後、肩甲骨の間に熱トランスポンダーを皮下配置するためにフェレットを麻酔した。埋込型のプログラム可能な温度トランスポンダー(Bio Medic Data Systems,USA)を移植部位の組織にしっかりと固定し、華氏90~110度の範囲の温度の読取りを可能にする。同時に、ベースライン血清検査のために全血を採取し、ウイルス排出の分析のために糞便スワブを実施した。
【0175】
前チャレンジ処置は、ジョージア大学バイオサイエンス動物施設(University of Georgia Biosciences Animal Facility)で実施した。動物はペアで収容し、自由給餌及び給水とした。ワクチン接種の後、鼻腔洗浄及び採血を含む手順は、IM送達されるケタミン/キシラジン(15~20mg/kg/1~2mg/kgキシラジン)を用いて麻酔した動物に対して実施した。臨床徴候についてフェレットを毎日モニターした。少なくとも鎮静状態での各処置の間に、体重及び体温を記録した。
【0176】
フェレットのウイルスチャレンジ
SARS-CoV-2チャレンジのために、動物をジョージア大学動物衛生リサーチセンター(University of Georgia Animal Health Research Center)動物バイオセーフティレベル-3(ABSL3)実験室に移した。ウイルスチャレンジ後に行われた処置は、短期間のイソフルランガス麻酔下で実施した。
【0177】
6匹ずつのフェレットの群に、鼻孔当たり500μLとして分配される1.0ml滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1×10PFU CVXGA1を鼻腔内(IN)ワクチン接種した。ワクチン接種後、鼻汁、くしゃみ、下痢、無気力、呼吸数及び労力(うっ血)の増加、チアノーゼ、神経学的変化、及び外部刺激に対する反応の変化などの臨床徴候について、動物を毎日モニターした。体温は、埋め込まれた温度プローブを使用して追跡した。免疫処置から3、7、14、21、及び28日後(dpi)に鼻洗浄液及び糞便スワブを収集して、ワクチン排出を評価した。免疫処置後毎週全血を採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、後の分析のために凍結保存した。SARS-CoV-2による感染チャレンジのために、1×10PFUをIN経路で送達した。ここでも、身体観察、計量、及び検温を毎日実施した。チャレンジ後4日目に、6匹ずつのサブセットを人道的に安楽死させて剖検し、残りの動物(n=6)はチャレンジ後7日目に人道的に安楽死させた。全ての剖検は、委員会認定の獣医学病理学者の指導の下で実施した。病理及びウイルス負荷のために組織サンプル(気管及び肺)を収集した。血清及びPBMC単離のためにターミナル採血を行った。伝播試験のために、チャレンジから2日後(dpc)に、2匹のチャレンジフェレットを1匹のナイーブフェレットと混合した。
【0178】
フェレットの共収容
SARS-CoV-2チャレンジの2日後、ナイーブフェレットと1匹のチャレンジフェレットをペアにした。2回目のチャレンジを受けたフェレットは、チャレンジの4日後の剖検まで隔離ケージに移した。
【0179】
全ての実験は、ジョージア大学獣医学部(University of Georgia College of Veterinary Medicine)のIACUCによって承認された。
【0180】
組織学及び免疫組織化学
マウスを麻酔し、PBSで経心的に灌流した。肺組織を採取し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、一連のアルコール浴及びキシレン浴で脱水し、パラフィン包埋し、約4μmに切断し、ヘマトキシリン及びエオジン(HE)染色で染色した。組織は、盲検的に、且つ再現可能な組織スコアの原則(Meyerholz et al.Lab Invest 98,844-855(2018))に従い、委員会認定病理学者によって検査された。血管周囲好酸球浸潤を以前記載されている通りに評価した(Li et al.mBio 11,(2020))。簡単に説明すると、細胞浸潤のある血管周囲領域を、盲検的にランダムに選択し(n=20/肺)、好酸球の数を記録し、各肺の最終スコアについて平均した。血管周囲リンパ系凝集体を順位スコアリングした:0-なし、1-わずかな孤立細胞、2-軽度から中度の凝集体、又は3-隣接する実質の圧迫を伴う周辺血管周囲浸潤を形成する頑健な凝集体。間質性疾患は、修正されたHスコアを用いて、順位スコアリングした:0-なし、1-中隔にわずかに散在する細胞、2-中度の中隔内の浸潤及び内腔に広がる浸潤、又は3-中隔及び内腔内に中度から重度の浸潤があり、関連する硬変/無気肺及び/又は浮腫を伴う。これら階層の各々について、罹患した肺の%を記録した。各肺の最終的な修正Hスコアは、罹患%×各階層スコアを合計し、100で割って0~3のスコアを取得することにより算出した。
【0181】
免疫組織化学を、以前記載されているように実施した(Zheng et al.Nature 589,603-607(2021))。簡単に説明すると、一次抗SARS-CoV-2 Nタンパク質抗体(1:20,000希釈×60分、40143-R019,SinoBiological)、その後、色原体としてのRabbit Envision(Dako)及びジアミノベンジジン(DAB、Dako)と、対比染色としてのヘマトキシリンが続いた。免疫染色の順位スコアリングは、分布に基づく方式で実施した:0-なし、1-0~25%、2-26~50%、3-51~75%及び4->75%の肺野(組織切片中)。
【0182】
SARS-CoV-2 S中和
以前記載されているSARS-CoV-2(VSV-S)で偽型化されたVSVを中和アッセイに使用した(Havranek et al.Viruses 12,(2020))。VSV-S粒子をVero細胞の96ウェルプレート中のTCID50により滴定して、中和に最適な粒子数を決定した。それらを、2%FBS、DMEM培地中1%P/Sで希釈した。力価は、Promegaによるホタルルシフェラーゼ検出Bio-Glo Luciferase Assay Systemを用いて決定した。1:1比の希釈粒子及び滅菌PBS(血清なし)から成る各プレート上で粒子対照を使用した。バックグラウンドを構成するために、滅菌PBSと2%FBS、DMEM培地中1%P/Sから成る各プレート上に陰性対照も使用した。
【0183】
中和アッセイの前に56℃で45分間血清を熱不活性化した。次に、細胞を含まない96ウェル未処理プレートにおいて1:100(フェレット)から出発する1:2希釈を用いて、滅菌PBSで段階希釈した。回収したヒト血清サンプル(+RHS)を各アッセイの陽性対照として使用し、1:100から出発して1:2に段階希釈した。サンプル及び対照は4回反復で実施した。
【0184】
50μlの希釈VSV-S粒子を、50μlの希釈血清を含む96ウェルプレートに添加し、5%CO、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、90~100%コンフルエントでVero細胞を含む白色96ウェルプレートから培地を吸引し、粒子-血清混合物(100μl)を細胞に添加した。5%CO、37℃で18~24時間プレートをインキュベートした。翌日、培地を吸引してから、50ulのNano-Glo試薬を各ウェルに添加した。プレートを攪拌した後、PromegaによるGloMaxルミノメーター上でRenilla-Luciferaseプロトコルを使用して直ちに読み取った。
【0185】
SARS-CoV-2による中和のために、血清サンプルを中和アッセイの前に56℃で30分間熱不活性化した。次に、それらを滅菌DMEMで段階希釈し、約20 PFUのSARS-CoV-2を含有する等量のDMEMと混合した。37℃で1時間インキュベートした後、アリコートを12ウェルプレートのVero E6細胞に添加し、5%CO、37℃で1時間インキュベートした。接種材料の除去後、4%FBSを含む1.2%アガロースでプレートを覆った。5%CO、37℃で2日間さらにインキュベートした後、オーバーレイを除去し、0.1%クリスタルバイオレットでの染色によりプラークを可視化した。
【0186】
SARS-CoV-2鼻腔排出qPCR
SARS-CoV-2 RNAゲノム標準曲線のために、フェレット及びネコ標準についてそれぞれ1.1×10PFU/ml又は1.44×10PFU/mlを、不活化プロトコルに従って、TRIzol試薬(ThermoFisher Scientific)で1:1(vol/vol)に希釈することによって不活化した。Direct-zol RNA Miniprep Plusキット(Zymo Research)を用いて600μlの希釈ウイルスからRNAを抽出し、プロトコルに従って50μlのDNA/RNA非含有水中に溶出した。DeNovix DS-11 FX+分光光度計/蛍光光度計(DeNovix)を用いて、RNA純度(A260/A280)及び濃度を評価した。RNAを-80℃で保存した。標準曲線のために、RNAを10倍希釈した後、10μlの各RNA希釈液を、10μLのTaqPath 1-Step RT-qPCR Master Mix(ThermoFisher Scientific)及びEUA CDC SARS-2キット(Integrated DNA Technologies)からの3μlのnCov N1プライマー/プローブを用いた40μlqPCR反応に使用した。鼻洗浄サンプルの場合、500μlの回収した鼻洗浄液又は直腸スワブサンプルを2×DNA/RNA Shield(Zymo Research)を用いた希釈1:1により不活化し、抽出まで-20℃で保存した。クイックRNAウイルスキット(Zymo Research)を用いて、600μlの希釈サンプルからRNAを抽出し、プロトコルに従って15μlのDNA/RNA非含有水中に溶出した。DeNovix DS-11 FX+分光光度計/蛍光光度計(DeNovix)を用いて、RNA純度(A260/A280)及び濃度を評価した。RNAを-80℃で保存した。qPCR反応は全て、Agilent Mx3000Pを用いて分析した。
【0187】
フェレット鼻洗浄液qPCR。qPCRは、Agilent Mx3000P qPCRシステム上でTaqPath 1-Step RT-qPCR Master Mix(ThermoFisher Scientific)を用いて実施した。各鼻洗浄反応は、10μlのTaqPath、3μlのプライマー/プローブミックス、17μlの水、及び10μlの2ngに希釈されたサンプルで構成され、最終反応量は1ウェル当たり40μlであった。nCoV N遺伝子特異的プライマーは、以下:
フォワード、5’-GACCCCAAAATCAGCGAAAT-3’(配列番号14);
リバース、5’-TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG-3’(配列番号15)及び
プローブ(5’-(FAM)ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC(BHQ1)-3’(配列番号16)であり、RUO CDC SARS-2キットの一部としてIntegrated DNA Technologiesから購入した。温度プロファイルは、25℃で2分の1サイクル、50℃で15分の1サイクル、95℃で2分の1サイクル、及び95℃で3秒の50サイクル、続いて55℃で30秒から構成された。各プレートのqPCRランは、以下:RNA標準物質(10倍希釈、反応当たり10μl、2回反復)、テンプレートなし対照、ポリメラーゼなし対照、及び陽性対照のためのウイルスRNAをスパイクしたサンプルを含んだ。各サンプルのPFU/ml濃度は、RNA標準曲線に用いたウイルスストックの初期PFU/ml濃度を用いて決定した。qPCR反応に用いたRNAの比は、サンプル当たりの総RNA濃度で2ngを割ることにより算出した。標準曲線からのPFU/mlアウトプットに、反応に用いたRNAの比を掛けた後、記載される希釈量と抽出量を用いて逆算することにより、サンプルの総PFU/ml含量を決定した。CT値が37を超えるサンプルは、PCR陰性とみなした。各qPCRプレートについて、標準曲線から1PFU/PCR反応(rxn)Ct値を確立し、y=0として設定し、検出限界を、37のCt値の標準曲線濃度に設定し、チャレンジ用量を参照のために含めた。1PFU/rxnから検出限界までのサンプルは、非感染性のゲノム物質を有するものを除き全てPCR陽性と見なされる。
【0188】
フェレット組織qPCR
組織サンプルは、100mgの組織当たり1mlのShield比の1×DNA/RNA Shieldで不活性化した。振動数30で1.5分間組織をビーズホモジナイズし(TissueLyser II、Qiagen)、ホモジネートを抽出まで-20℃で保存した。抽出工程は、鼻洗浄の場合と同じであった。フェレット組織は、下記の例外と共に、前述したプロトコルを用いてアッセイした。各反応は、ウェル当たり30μlの最終反応容量につき、6.66μlのTaqPath、2μlのプライマー/プローブミックス、20.34μlの水、及び1μlのサンプルで構成された。ウイルスRNAの非存在下で、組織RNAの存在を確実にするためのハウスキーピング遺伝子として、HPRTを使用した。
【0189】
HPRT遺伝子特異的プライマー(フォワード、5’-CACTGGGAAAACAATGCAGA-3’(配列番号17);及びリバース、5’-ACAAAGTCAGGTTTATAGCCAACA-3’(配列番号18))は、Integrated DNA Technologiesにより合成された。遺伝子特異的TaqMan MGBプローブ5’-NED-TGCTGGTGAAgAGGACCCCTCG-MGBNFQ-3’(配列番号19)は、Applied Biosystemsにより合成された。HEX吸収及び発光スペクトルを用いて、HPRT蛍光を読み取った。各サンプルのPFU/ml濃度は、RNA標準曲線に用いたウイルスストックの初期PFU/ml濃度を用いて決定した。サンプルの総PFU/ml含有量は、記載される希釈及び抽出量を用いたホモジネートのPFU/mlへの逆算によって決定した。Ct値が37を超えるサンプルはPCR陰性とみなした。各qPCRプレートについて、標準曲線から1PFU/ml Ct値を確立し、y=0として設定し、検出限界を、37のCt値の標準曲線濃度に設定した。1PFU/mlから検出限界までのサンプルは、非感染性のゲノム物質を有するものを除き全てPCR陽性と見なされる。グラフ作成の目的で、37未満であるが、1PFU/rxnカットオフを超えるCT値に、0.5のゲノムコピー/mL値を割り当てた。
【0190】
実施例4
アミノ酸残基W886及び/又はF888の変異
先の実施例で詳述した手順に従って、コロナウイルスSタンパク質がアミノ酸残基W886及び/又はF888に変異をさらに含む構築物を作製した。この構築物の概略図を図38に示す。例えば、アミノ酸残基W886におけるアミノ酸置換は、トリプトファン(W)のアルギニン(R)への置換であってよく、及び/又はアミノ酸残基W888におけるアミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)のアルギニン(R)への置換であってよい。
【0191】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に入手可能な物質(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列提出物、並びに例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDB、並びにGenBank及びRefSeqにおけるアノテーション付きコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる文献の開示内容との間に矛盾が存在する場合、本出願の開示が優先されるものとする。上文の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を明確にする目的で付与されている。そこから不必要な制限は理解すべきではない。本発明は、明示及び記載された正確な詳細に限定されるわけではなく、当業者に自明な変形例については、特許請求の範囲によって定義される本発明に含まれることになる。
【0192】
配列表フリーテキスト
配列番号1 pDA27(CVX-UGA1)プラスミドの配列
配列番号2~19 人工オリゴヌクレオチドプライマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図9-6】
図9-7】
図9-8】
図9-9】
図9-10】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C-18D】
図18E-18F】
図19A-19C】
図19D
図20A
図20B-20C】
図20D-20F】
図21A
図21B-21D】
図21E
図22A-22C】
図23A-23C】
図24A-24B】
図25A-25C】
図25D-25E】
図26A-26B】
図26C-26D】
図27
図28
図29A-29D】
図30A-30C】
図31A-31C】
図32A-32B】
図33A-33C】
図34A-34E】
図35A-35B】
図35C-35D】
図36A-36C】
図37A
図37B
図38
【配列表】
2023542922000001.app
【国際調査報告】