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特表2023-542928慢性腎疾患(CKD)機械学習予測システム、方法、および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】慢性腎疾患(CKD)機械学習予測システム、方法、および装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20231004BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023518162
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 US2021051443
(87)【国際公開番号】W WO2022066698
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/082,017
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノシェイ, エリック デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ, アンナリーザ
(72)【発明者】
【氏名】フローレス, アンジェラ ソフィア リベラ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ユークン
(72)【発明者】
【氏名】シーバー, マイケル
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
慢性腎疾患(「CKD」)機械学習予測システムが、開示される。例示的システムは、患者がCKDの次の病期に進行し得るかどうか、および/または患者が緊急に透析を開始する必要があり得るかどうかについての予想を提供するように構成される。本明細書に開示される機械学習アルゴリズムは、腎機能に悪影響を及ぼす、臨床的、薬理学的、およびさらなる臨床学的因子を考慮するようにプログラムされる、動的多因子予測アルゴリズムを含む。機械学習システムによって提供される予測は、疾患が悪化する前に、臨床医にCKD治療を改善するための情報を伝える。いくつかの事例では、予測は、治療計画、透析治療、および/または腎代替療法(「RRT」)を選択するために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の慢性腎疾患(「CKD」)進行度を推定するためのシステムであって、前記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、前記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
CKDの次の病期への進行度と、CKDの前記次の病期の前記進行度の時間フレームとを予測するように構成されるアンサンブル機械学習アルゴリズムであって、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有する、アンサンブル機械学習アルゴリズムと、
前記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、前記分析プロセッサは、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
前記アンサンブル機械学習アルゴリズムにおいて提供される患者特性データの分類と、分析下の前記患者の前記患者特性データとを比較することによって、前記患者の前記CKD初期病期に最も近い合致予測十分位数に、前記分析を受けている患者を分類することと、
前記分析を受けている患者が、前記最も近い合致予測十分位数に基づいて、前記離散時間フレーム毎に、次の中等度または重度CKD病期に進行するであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、前記分析を受けている患者が、前記離散時間フレームにわたって、前記次の中等度または重度CKD病期に進むであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定される、請求項1または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記治験中止結果は、透析療法、腎代替療法(「RRT」)、死亡、腎臓移植、または緩和ケアのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記既知のCKD進行度データは、異なる中等度または重度CKD病期と関連付けられる推定された糸球体濾過率(「GFR」)の変化、またはこれまで既知のGFRからの前記推定されたGFRの少なくとも25%の変化に基づいて、病期進行度を識別する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者の前記CKD初期病期は、前記患者の推定されたGFRまたは前記患者がタンパク尿を被っている時間の長さのうちの少なくとも1つに基づく、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記離散時間フレームは、30日、60日、90日、120日、180日、および360日のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項10】
前記中等度または重度CKD病期は、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項11】
前記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある軽度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含み、
前記CKD初期病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1、60~89mL/分のGFRを伴う病期2、45~59mL/分のGFRを伴う病期3A、30~44mL/分のGFRを伴う病期3B、または15~29mL/分のGFRを伴う病期4のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ユーザインターフェースは、臨床医コンピュータ上に表示される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
慢性腎疾患(「CKD」)を患う患者が、緊急に透析を開始する必要があるであろう尤度を推定するためのシステムであって、前記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、前記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
前記分析を受けている患者が透析の緊急開始の必要があるであろう尤度を予測するように構成される機械学習アルゴリズムであって、前記機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始が必要とされる既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有する、機械学習アルゴリズムと、
前記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、前記分析プロセッサは、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
前記機械学習アルゴリズムにおいて提供される患者特性データの分類と、分析下の前記患者の前記患者特性データとを比較することによって、前記患者の前記CKD初期病期に最も近い合致予測群に、前記分析を受けている患者を分類することと、
前記分析を受けている患者が、最も近い合致予測十分位数に基づいて、前記離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始の必要があるであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、前記分析を受けている患者が、前記離散時間フレームにわたって、前記透析の緊急開始の必要があるであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
【請求項14】
前記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
あるCKD病期から次のCKD病期に進行した前記既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定された、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項18】
前記CKD病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1と、60~89mL/分のGFRを伴う病期2と、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析プロセッサは、
透析治療を開始するためのインジケーションを受信することと、
前記患者のために透析治療を準備させることと
を行うように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記患者に前記透析治療を実施するように構成される透析機械をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
慢性腎疾患(「CKD」)は、世界中の何百万人もの個人によって毎年被られる、重篤かつ多くの場合衰弱する、医学的状態である。腎疾患を患う個人は、個人の血液から毒素を除去するために、全くまたは少なくとも十分なレベルにおいて、血液を濾過することができない、損傷した腎臓を有する。腎疾患または腎不全を被っている個人が、水分およびミネラルの平衡を保つ、または毎日の代謝負荷を排泄することは、もはやできない。窒素代謝の毒性最終産物(尿素、クレアチニン、尿酸、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、およびその他)は、個人の血液および組織内に蓄積し得る。腎疾患または腎不全を患う一部の患者はまた、高/低血圧および赤血球数低下も被り得る。しばしば、腎疾患は、完全な腎不全(すなわち、末期腎疾患(「ESRD」)または死亡に至るまで経時的に悪化する、慢性状態である。
【0002】
世界の全住民が、その全体的生活水準を改善するにつれて、より多くの個人が、CKDにつながる、食品および飲料を消費することが可能となっており、そのような生活様式で生活している。いくつかの研究は、世界の人口の10%程度の人口が、ある形態のCKDを有することを推定している。概して、CKDの世界的負担は、腎代替療法(「RRT」)を要求する、ESRDを患う個人の数を増加させることだけではなく、CKDの発症と関連付けられる状態の有病率も増加させることによって、引き起こされる。現在、RRTを受ける個人が、CKDを治療するために、医療財源の大部分を消費している。したがって、あまり重篤ではないCKDを患う個人が、多くの場合、治療されない、またはごくわずかだけ治療され、これは、最終的には、最終的にRRTを必要とする状態に至るまで、CKDを悪化させることにつながる。CKDを患いやすい個人の素因条件を制御するための医療提供者、またはCKDの早期発症を被っている個人によって、ESRDへの進行を遅延させる、および/または回避するための努力が、成されている。
【0003】
現在、個人は、血液が個人の糸球体(腎臓内の極小濾過機能)を通して毎分通過する量に関して示す、その推定された糸球体濾過率(「GFR」)を監視することによって、CKDに関して査定される。GFRは、典型的には、個人の年齢、身体のサイズ、および性別を考慮した、血液クレアチニン検査によって計算される。概して、90mL/分未満であるGFRを有する患者が、CKDを患っていると見なされる。タンパク尿またはアルブミン尿、すなわち、正常量を上回る尿中のタンパク質(例えば、アルブミン)の存在によって特徴付けられる状態もまた、その状態が3ヶ月にわたって持続する場合、CKDの発症を示し得る。
【0004】
患者が、CKDを患っていると査定された後、医療提供者は、患者の潜在的CKD進行度タイムラインを推定し、可能性として考えられる治療を決定する。CKDの早期検出は、合併症が悪化することを通して任意のCKD憎悪が現れる前に、好適な予防的治療が処方されることを可能にするため、重大である。例えば、推定された緩徐な進行を伴う患者は、投薬療法に加え、生活様式および食事の変更を用いて治療され得る。しかしながら、推定された急速な進行を伴う患者は、RRTを開始する等のより集約的である臨床治療を受ける必要があり得る。
【0005】
現在、医療提供者は、周期的血液クレアチニン検査および尿分析を通して、個人の進行率を査定する。これは、数週間または数ヶ月毎に個人に血液検査を実施することを伴い、これは、医療提供者および個人に負担となる。いくつかの事例では、医療提供者または個人は、周期的血液検査を行い、CKD進行度を査定するための能力を有していない。これらの公知の問題点の結果として、一部の個人は、最初に推定されたものより急速に進行し得、任意の予防的治療は、個人が再び査定されるときには、手遅れである、または非効果的なものとなり得る。
【0006】
故に、個人のCKD進行度の正確な予測および/または個人が緊急に透析を始める必要があるであろう可能性を提供する、CKD臨床医診断ツールの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
慢性腎疾患(「CKD」)機械学習予測システム、方法、および装置が、開示される。例示的機械学習予測システム、方法、および装置は、患者のCKD進行度および/または患者が将来的に透析またはRRTを開始する必要があるであろう緊急性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、別個の機械学習モデルが、CKD進行度を予想し、緊急透析開始の患者の必要性を推定するために使用される。
【0008】
開示される機械学習予測システム、方法、および装置は、より多くの情報を提供し、臨床医がより多くの情報を持って患者ケア決定を行うことを可能にする。患者のGFRおよび/または尿アルブミン/クレアチニン率/レベルを把握することは、患者の現在のCKD病期を決定する際に有用であるが、データは、しばしば、CKD病期を通した進行の速さを示さない、または患者が緊急に透析を始める必要があるであろうことを示さない。代わりに、他の因子または特性が、CKDの進行の速さおよび/または透析を始める緊急の必要性について、より多く示し得る。本明細書に開示されるアルゴリズムは、分類された患者因子/特性が、患者CKD進行度予測および透析を必要とする緊急性の尤度を決定するためにモデル化および使用されるように、機械学習を使用する。分類された因子/特性は、患者の医療記録から容易に利用可能である。因子/特性は、性別、人種、年齢、肥満度指数(「BMI」)血圧、クレアチニンレベル、GFR、ヘモグロビンレベル、および/またはアルブミンレベルを含んでもよい。因子/特性はまた、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎を含む、CKDの診断された原因を含んでもよい。因子/特性はさらに、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患等の既往歴を含んでもよい。
【0009】
いくつかの事例では、開示される機械学習予測システム、方法、および装置は、利用可能な患者因子/特性から、導出される因子/特性を計算するように構成される。導出される因子/特性は、アルブミン/クレアチニン比等の因子の比率を含んでもよい。導出される因子/特性はまた、そのGFRおよび/またはアルブミンレベルに基づいて、患者の現在または過去のCKD病期の決定を含んでもよい。
【0010】
ともに、因子/特性および導出される因子/特性は、既知のCKD転帰を伴う患者の母集団に関する、CKD病期進行度に関連する正/負の転帰、CKD病期の進行の速さ、および透析を開始する緊急の必要性と関連付けられる。関連付けは、類似因子/特性を伴う患者が類似転帰を有するであろう、確率または尤度を決定するために使用される。
【0011】
本明細書に開示されるように、機械学習予測システム、方法、および装置は、予測アルゴリズム/モデルにおいて表される既知の患者の分類された因子/特性と、分析下の患者の特性を比較する。分析下の患者の特性に概ね匹敵する、分類された因子/特性の確率は、予測されるCKD転帰として報告される。臨床医は、CKD進行を遅らせ、および/または緊急透析の必要性を決定するように、治療計画目的のために報告されるCKD転帰を使用してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、開示される機械学習予測システム、方法、および装置は、CKD進行度予想アルゴリズムまたはモデルを備える。本明細書に開示されるように、CKD進行度予想アルゴリズムまたはモデルは、患者が指定される時間フレーム内でCKDの次の病期に進行し得る尤度または確率を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、CKD進行度アルゴリズムまたはモデルは、患者が新しいCKD病期に遷移するであろう可能性と、患者を新しいCKD病期に遷移させ得る時間の長さとを決定するように構成される、アンサンブル機械学習アルゴリズムを含む。モデルまたはアルゴリズムは、既知の患者CKD進行度データを使用して訓練されたモデル化された分類子と、患者の生理学的データ、人口統計データ、医療既往歴、および他の識別された特性/因子を比較するように構成される。比較に基づいて、モデルは、最も近い合致予測十分位数を決定し、その十分位数に関するパーセンテージおよび時間フレームを出力する。いくつかの代替実施形態では、CKD進行度モデルは、CKD病期進行度尤度および時間フレームを推定するための1つまたはそれを上回る十分位数に対する患者の比較の平均または加重平均を求め得る。
【0013】
加えて、または代替として、開示される機械学習予測システム、方法、および装置は、CKD緊急透析開始予想アルゴリズムまたはモデルを備える。本明細書に開示されるように、CKD進行度緊急透析開始予想アルゴリズムまたはモデルは、患者が指定される時間フレーム内に透析を必要とし得る尤度または確率を提供するように構成される。モデルまたはアルゴリズムは、既知の患者CKD緊急透析開始データを使用して訓練されたモデル化された分類子と、患者の生理学的データ、人口統計データ、医療既往歴、および他の識別された特性/因子を比較するように構成される。比較に基づいて、モデルまたはアルゴリズムは、最も近い合致予測十分位数を決定し、その十分位数に関するパーセンテージおよび時間フレームを出力する。いくつかの代替実施形態では、CKD緊急透析開始モデルは、患者がある離散時間フレーム内で透析を始める必要があるであろう尤度を推定するための1つまたはそれを上回る十分位数に対する患者の比較の平均または加重平均を求め得る。
【0014】
本開示の開示される機械学習予測システム、方法、および装置は、例えば、血漿交換、血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)、血液透析濾過(「HDF」)、および持続的腎代替療法(「CRRT」)治療のための流体送達に適用可能である。本明細書に説明される開示される機械学習予測システム、方法、および装置はまた、腹膜透析(「PD」)、静脈内薬物送達、および栄養流体送達にも適用可能である。これらのモダリティは、本明細書では、集合的に、または概して、個別に、医療流体送達または治療と称され得る。
【0015】
下記に詳細に説明されるように、本開示のCKD機械学習予測システム、方法、および装置は、多くの異なるタイプのデバイスを備える、多くの機械、患者、臨床医、医師、保守人員、電子医療記録(「EMR」)データベース、ウェブサイト、リソース計画システム、およびビジネスインテリジェンスを含み得る、包含的医療プラットフォーム内で動作してもよい。本開示のCKD機械学習予測システム、方法、および装置は、システム全体内で、そのルールおよびプロトコルに違反することなくシームレスに動作するように構成される。
【0016】
本明細書の開示に照らして、かついかようにも本開示を限定することなく、別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第1の側面では、患者の慢性腎疾患(「CKD」)進行度を推定するためのシステムは、分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶する、メモリデバイスであって、患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスを含む。本システムはまた、CKDの次の病期への進行度と、CKDの次の病期の進行度の時間フレームとを予測するように構成される、アンサンブル機械学習アルゴリズムであって、離散時間フレームにわたって、ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む、予測十分位数分類子を含有する、アンサンブル機械学習アルゴリズムを含む。本システムはさらに、メモリデバイスに通信可能に結合される、分析プロセッサを含む。アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動する、分析プロセッサは、アンサンブル機械学習アルゴリズムにおいて提供される、患者特性データの分類と、分析下の患者の患者特性データを比較することによって、患者のCKD初期病期に最も近い合致予測十分位数に、分析を受けている患者を分類し、分析を受けている患者が、最も近い合致予測十分位数に基づいて、離散時間フレーム毎に、次の中等度または重度CKD病期に進行するであろう、確率を決定し、ユーザインターフェースを介して、分析を受けている患者が、離散時間フレームにわたって、次の中等度または重度CKD病期に進むであろう、パーセンテージ尤度を表示するように構成される。
【0017】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第2の側面によると、人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第3の側面によると、CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第4の側面によると、既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第5の側面によると、ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した、既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む、患者母集団データを使用して決定される。
【0021】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第6の側面によると、治験中止結果は、透析療法、腎代替療法(「RRT」)、死亡、腎臓移植、または緩和ケアのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第7の側面によると、既知のCKD進行度データは、異なる中等度または重度CKD病期と関連付けられる、推定された糸球体濾過率(「GFR」)の変化、またはこれまで既知のGFRから推定されたGFRの少なくとも25%の変化に基づいて、病期進行度を識別する。
【0023】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第8の側面によると、患者のCKD初期病期は、患者の推定されたGFRまたは患者がタンパク尿を被っている時間の長さのうちの少なくとも1つに基づく。
【0024】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第9の側面によると、離散時間フレームは、30日、60日、90日、120日、180日、および360日のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第10の側面によると、中等度または重度CKD病期は、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む。
【0026】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第11の側面によると、アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある軽度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む、予測十分位数分類子を含み、CKD初期病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1、60~89mL/分のGFRを伴う病期2、45~59mL/分のGFRを伴う病期3A、30~44mL/分のGFRを伴う病期3B、または15~29mL/分のGFRを伴う病期4のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第12の側面によると、ユーザインターフェースは、臨床医コンピュータ上に表示される。
【0028】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第13の側面によると、慢性腎疾患(「CKD」)を患う患者が、緊急に透析を開始する必要があるであろう尤度を推定するためのシステムは、分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶する、メモリデバイスであって、患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスを含む。本システムはまた、分析を受けている患者が、透析の緊急開始の必要があるであろう尤度を予測するように構成される、機械学習アルゴリズムであって、離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始が必要とされる既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有する、機械学習アルゴリズムを含む。本システムはさらに、メモリデバイスに通信可能に結合される、分析プロセッサを含む。アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動する、分析プロセッサは、機械学習アルゴリズムにおいて提供される、患者特性データの分類と、分析下の患者の患者特性データを比較することによって、患者のCKD初期病期に最も近い合致予測群に、分析を受けている患者を分類し、分析を受けている患者が、最も近い合致予測十分位数に基づいて、離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始の必要があるであろう、確率を決定し、ユーザインターフェースを介して、分析を受けている患者が、離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始の必要があるであろう、パーセンテージ尤度を表示するように構成される。
【0029】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第14の側面によると、人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第15の側面によると、CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第16の側面によると、既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第17の側面によると、あるCKD病期から次のCKD病期に進行した、既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む、患者母集団データを使用して決定された。
【0033】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第18の側面によると、CKD病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1と、60~89mL/分のGFRを伴う病期2と、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む。
【0034】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第19の側面によると、分析プロセッサは、透析治療を開始するためのインジケーションを受信し、患者のための透析治療を準備させるように構成される。
【0035】
別様に記載されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせて使用され得る、本開示の第20の側面によると、本システムはさらに、患者に透析治療を実施するように構成される、透析機械を含む。
【0036】
本開示の第21の側面では、図1-8に関連して開示される構造および機能性のいずれかは、図1-8に関連して開示される任意の他の構造および機能性と組み合わせられてもよい。
【0037】
本開示および上記の側面に照らして、したがって、経時的に患者のCKD進行度に関する予測を提供するように構成される、CKD機械学習アルゴリズムを提供することが、本開示の利益である。
【0038】
透析または他のRRTを緊急に開始する患者の必要性に関する予測を提供するように構成される、CKD機械学習アルゴリズムを提供することが、本開示の別の利益である
【0039】
臨床医または他の医療提供者に、臨床医診断および治療のために、経時的な患者のCKD進行度の予想および/または透析を緊急に開始する患者の必要性を示す情報を提供することが、本開示のさらなる利益である。
【0040】
疾患進行を遅らせるために、CKDの検出の始まりから改善された患者転帰を提供することが、本開示のなおもさらなる利益である。
【0041】
付加的特徴および利益が、以下の詳細な説明および図に説明され、それから明白となるであろう。本明細書に説明される特徴および利益は、包括的ではなく、特に、多くの付加的特徴および利益が、図および説明を考慮して、当業者に明白となるであろう。また、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙される利益の全てを有する必要性はなく、個々の有利な実施形態を別個に請求することが、明確に想定される。また、本明細書に使用される言語が、発明的主題の範囲を限定するためではなく、主として、可読性および教示的目的のために選択されていることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本開示のある例示的実施形態による、モデル発生器と、分析プロセッサとを含む、CKD機械学習予測システムの略図である。
【0043】
図2図2は、本開示のある例示的実施形態による、本明細書に開示されるCKD予測機械学習アルゴリズムを作成するための、例示的プロシージャのフロー図である。
【0044】
図3図3は、本開示のある例示的実施形態による、図1のモデル発生器によって受信される、例示的患者特性データの略図である。
【0045】
図4図4は、本開示のある例示的実施形態による、CKD病期進行度予測機械学習アルゴリズムの正の転帰に関連する、確率データのグラフである。
【0046】
図5図5は、本開示のある例示的実施形態による、図1の分析プロセッサによって受信される、例示的患者特性データの略図である。
【0047】
図6図6は、本開示のある例示的実施形態による、図1の分析プロセッサからの機械学習モデル出力を示す、臨床医デバイス上のアプリケーションを介して表示される、ユーザインターフェースの略図である。
【0048】
図7図7は、本開示のある例示的実施形態による、臨床医が図6の機械学習モデル出力に基づいて医療デバイスをプログラムするための治療パラメータを打ち込むためのアプリケーションを使用することに関する、プロセスフローを図示する、略図である。
【0049】
図8図8は、本開示のある例示的実施形態による、本明細書に開示されるCKD予測機械学習モデルを介して、患者の特性データを分析するための例示的プロシージャのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
CKD機械学習予測システム、方法、および装置が、本明細書に開示される。例示的CKD機械学習予測システム、方法、および装置は、患者がCKDの次の病期に進行し得るかどうか、および/または患者が緊急に透析を開始する必要があり得るかどうかについての予想を提供するように構成される。本明細書に開示される機械学習アルゴリズムは、腎機能に悪影響を及ぼす、臨床的、薬理学的、およびさらなる臨床学的因子を考慮するようにプログラムされる、動的多因子予測アルゴリズムを含む。機械学習システム、方法、および装置によって提供される予測は、疾患が悪化する前に、臨床医にCKD治療を改善するための情報を伝える。いくつかの事例では、予測は、治療計画、透析治療、および/またはRRTを選択するために使用されてもよい。
【0051】
本明細書では、機械学習アルゴリズムおよびモデルが、参照され、それらの用語は、同義的に使用される。開示されるように、機械学習アルゴリズムおよびモデルは、ある患者因子/特性を受信するように構成され、これは、正の結果の確率または尤度を決定するために処理され、かつ分類された因子/特性と比較される。アルゴリズムまたはモデルは、メモリデバイス内に記憶される、1つまたはそれを上回る機械可読命令によって定義される。アルゴリズムおよびモデルはまた、アルゴリズムまたはモデルの作成の間に作成される、因子/特性評価調整パラメータ/加重/相関指数によって定義される。調整パラメータ/加重/相関指数もまた、メモリデバイス内に記憶される。プロセッサによる1つまたはそれを上回る機械可読命令の実行は、記憶された調整パラメータ/加重/相関指数を使用して、動作を実施させる。これらの動作は、指定される患者の患者特性の分析が、予測される転帰を提供するために、例示的機械学習アルゴリズムおよびモデルを通して処理されることを可能にする。
【0052】
また、正の転帰の機械学習モデル十分位数も参照される。本明細書に開示されるように、機械学習モデル/アルゴリズムは、CKD病期毎に、10個の群に既知の患者を分類/順序付ける。モデル/アルゴリズムは、各CKD病期の十分位数毎に、CKD進行度および/またはCKD緊急透析開始に関する正の転帰の確率を決定する。確率は、CKD病期のその十分位数に関する、30日、60日、90日、120日、180日、360日以内等の正の結果を有するもの等の離散時間フレームの範囲にわたって決定される。他の実施例では、異なる範囲/分類が、使用されてもよい。例えば、分類が、既知の患者特性/因子の間の自然境界に基づいて、非均一様式で行われてもよい。例えば、本明細書に開示される十分位数8~10は、十分位数1~5と比較してより多くの転帰変動が存在する、大分解能に対してさらなる群にパーティション化され得、これは、既知の患者転帰に関する一般的転帰均一性を前提として、単一群に組み合わせられ得る。
【0053】
本明細書に提供されるように、例示的システム、方法、および装置は、CKDを治療するための公知の臨床方法と比較して、より正確な予測を提供する。例えば、国際腎臓病ガイドライン(「KDIGO」)機構は、基礎にある病因に従って、患者内のアルブミン尿のレベルによってCKDを分類することを推奨する。本定義および分類は、概して、血清クレアチニンから患者の糸球体濾過率(「GFR」)を計算するために使用される現在の方程式における公知の限界にもかかわらず、世界中で承認および実装されており、これは、特に、60mL/分(「分」)を上回るGFRを伴う患者の間で、過大推計をもたらし得る。現在の臨床診療は、患者のGFRの周期的推定を通して、CKDの患者の進行度を査定することを含み、これは、予測可能な長期的な低下傾向の仮定に基づく。しかしながら、最近の治験は、ある急性事象、投薬療法、および血圧の突然の変化が、患者のGFR軌道における変動につながり得、したがって、腎機能低下の想定される率を徐々に損なわせることを示している。
【0054】
本明細書に開示される例示的システム、方法、および装置は、CKD進行度に寄与する因子の一意の査定および患者におけるGFR低下の軌道に影響を及ぼし得る条件を提供する。本明細書では、CKDの病期が参照される。下記の表1は、CKDの異なる病期のKDIGOの定義を示し、これは、患者の推定されたGFRおよび患者がタンパク尿を被っている時間の長さに基づく。CKDの急速な進行度が、少なくともGFR<90ml/分を伴って、毎年GFR≧5ml/分の絶対年間低下として定義される。
【表1】
【0055】
本明細書に開示される例示的予測CKD機械学習アルゴリズムは、患者が現在のCKD病期から次のCKD病期まで進行する尤度を査定するように構成される。したがって、予測CKD機械学習アルゴリズムは、表1に示される病期のそれぞれの間の進行度の査定を提供する。いくつかの実施形態では、予測CKD機械学習アルゴリズムは、中等度または重度病期3A-5または5Dに対する査定のみを提供してもよい。患者が次のCKD病期に進行するであろうかどうかを決定することに加え、予測CKD機械学習アルゴリズムは、進行の速さまたは時間フレームを決定するように構成される。いくつかの事例では、速さは、30日、60日、90日、120日、180日、および/または360日等の離散時間フレーム内の進行度の尤度として定義されてもよい。本明細書に開示される予測CKD機械学習アルゴリズムはまた、緊急透析開始の患者のリスクの査定を提供し得、これは、機能的血管アクセスまたは腹膜透析(「PD」)カテーテルが事前に確立されていない状態でのESRD患者のための透析の緊急始動を指す。本明細書に開示されるように、進行度尤度および速さは、アンサンブル機械学習アルゴリズム(例えば、CKD病期進行度予測モデル)に組み合わせられ得る一方、緊急透析開始リスクは、第2の機械学習アルゴリズム(例えば、CKD緊急透析開始予測モデル)によって決定される。
I.CKD機械学習予測システム
【0056】
図1は、本開示のある例示的実施形態による、CKD機械学習予測システム100の略図である。例示的システム100は、本明細書に開示される予測機械学習アルゴリズムを作成/更新し、アルゴリズムを使用して患者予測を提供するように構成される、CKD管理サーバ102を含む。CKD管理サーバ102は、本明細書に開示される予測機械学習アルゴリズムを発生させるように構成される、モデル発生器104を含む。CKD管理サーバ102はまた、1つまたはそれを上回る予測機械学習アルゴリズムに分析下の患者に関する患者特性データを適用し、患者のCKD進行度、可能性として、進行率、および緊急透析開始を必要とする確率を査定または予測するように構成される、分析プロセッサ106を含む。両方ともCKD管理サーバ102の一部であるものとして示されるが、他の実施形態では、モデル発生器104は、分析プロセッサ106と別個であってもよい。例えば、モデル発生器104は、バックエンドサーバにおいて提供され得る一方、分析プロセッサ106は、臨床医デバイスに利用可能であるクラウドベースのサービスとしてプロビジョニングされる。
【0057】
モデル発生器104および分析プロセッサ106に関連して説明される動作は、1つまたはそれを上回るコンピュータプログラムまたはコンポーネントを使用して実装され得ることを理解されたい。コンポーネントのプログラムは、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読取専用メモリ(「ROM」)、フラッシュメモリ、磁気または光ディスク、光学メモリ、または他の記憶媒体を含む、任意のコンピュータ可読媒体への一連のコンピュータ命令として提供されてもよい。命令は、管理サーバ102のプロセッサによって実行されるように構成され得、これは、一連のコンピュータ命令を実行するとき、開示される方法およびプロシージャの全部または一部を実施する、またはその実施を促進する。
【0058】
図1に示されるように、モデル発生器104は、既知の患者データソース110に通信可能に結合され、これは、モデル化のために既知の患者特性データ112を記憶する、メモリデバイスを含み得る。モデル発生器104は、本明細書に開示される予測機械学習アルゴリズムを訓練および/または作成するために、訓練データ112aに受信された特性データをパーティション化する。モデル発生器104はまた、本明細書に開示される予測機械学習アルゴリズムの正確度を試験するために、検査データ112bに受信された特性データ112をパーティション化する。受信されたデータ112はさらに、本明細書に開示される予測機械学習アルゴリズムを検証するために、検証データ112cにパーティション化される。
【0059】
モデル発生器104はまた、臨床目的ソース114に通信可能に結合され、これは、モデルのための臨床目的を記憶する、メモリデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、臨床目的ソース114は、機械学習目的116への臨床目的の変換を含んでもよい。モデル発生器104は、機械学習目的116および訓練データ112aを使用し、CKD病期進行度予測モデル118aおよびCKD緊急透析開始予測モデル118bとして示される、1つまたはそれを上回る予測機械学習アルゴリズムを作成する。図示される実施形態では、機械学習目的118は、CKD病期進行度確率または尤度を提供するための第1の目的と、CKD進行の速さを提供するための第2の目的と、緊急透析開始が定義された時間フレーム内で必要とされるであろう確率または尤度を提供するための第3の目的とを含む。CKD病期進行度予測モデル118aは、アンサンブルモデルとして進行度および速さ目的を達成する。CKD緊急透析開始予測モデル118bは、緊急透析開始目的を達成する。いくつかの実施形態では、モデル発生器104は、異なる組み合わせの目的およびモデルを試験し、規定された目的を達成するための最適なアプローチを識別する。
【0060】
図2は、本開示のある例示的実施形態による、本明細書に開示されるCKD予測機械学習アルゴリズムを作成するための、例示的プロシージャ200のフロー図である。プロシージャ200が、図2に図示されるフロー図を参照して説明されるが、プロシージャ200と関連付けられるステップを実施する多くの他の方法も、使用され得ることを理解されたい。例えば、ブロックのうちの多くの順序は、変更されてもよく、あるブロックは、他のブロックと組み合わせられてもよく、説明されるブロックのうちの多くは、随意であってもよい。ある実施形態では、ブロックの数は、データ前処理およびフィルタリングおよび/または開発された機械学習モデルのタイプに基づいて変更されてもよい。プロシージャ200において説明されるアクションは、メモリデバイス内に記憶される、1つまたはそれを上回る命令によって規定され、例えば、モデル発生器104を含む、複数のデバイス間で実施されてもよい。
【0061】
例示的プロシージャ200は、モデル発生器104が、例えば、既知の患者データソース110から既知の患者特性データ112を受信するとき、始まる(ブロック202)。既知の患者データソース110は、医院または病院に位置する1つまたはそれを上回る電子医療記録(「EMR」)データベースを含み、患者に関する電子情報を記憶してもよい。下記の表2は、モデル発生器104によって受信される既知の患者特性データ112の実施例を示す。図示される実施例において、7,131人の患者に関するデータが、受信され、本明細書に開示されるCKD機械学習モデルを作成するために使用される。既知の患者データは、患者毎に、GFR、クレアチニンレベル、ヘモグロビンレベル、および/またはアルブミンレベルを含んでもよく、これは、患者血液検査から決定または推定されてもよい。既知の患者データはまた、血圧、体温等を含んでもよい。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0062】
図3は、本開示のある例示的実施形態による、モデル発生器104によって受信される、例示的患者特性データ112の略図である。患者特性データ112は、年齢、性別、および人種等の人口統計データを含んでもよい。患者特性データ112はまた、血圧、BMI、体温、体重、GFR、クレアチニンレベル、ヘモグロビンレベル、およびアルブミンレベル等の生理学的データを含んでもよい。いくつかの事例では、患者特性データ112は、CKD病期初期を含んでもよい。そうでなければ、モデル発生器104は、GFRおよび/またはアルブミンデータから患者のCKD病期を決定してもよい。患者特性データ112はさらに、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎を含む、CKDの診断された原因を含んでもよい。さらに、患者特性データ112は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患等の既往歴を含んでもよい。図3はまた、患者特性データ112が、透析治療またはRRT、治療の終了、死亡、腎臓移植、および緩和ケアを含む、患者に関する最終の既知の結果を含み得ることを示す。より少ないまたは付加的患者特性データ112も、モデル発生器104によって使用され得ることを理解されたい。
【0063】
上記の既知の患者特性データ112は、その時点で患者が医療ケアおよび周期的監視を受けた、CKDの異なる病期における患者を表す。特性データ112は、バイタルサイン測定値と、臨床検査値と、薬理学的介入と、緊急透析開始のための入院と、予約日と、手技(血液透析および腹膜透析を含む)とを含む、臨床活動のために提供されるタイムスタンプを含む。
【0064】
図2に再び目を向けると、データを受信後、モデル発生器104は、規定された基準によって特性データ112をフィルタリングするように構成される(ブロック204)。例えば、モデル発生器104は、CKDに関する第1の治療時に18~80歳の患者、病期3または4 CKDに到達した患者、および/またはそれに関して少なくとも3ヶ月、6ヶ月、1年、または2年のデータが利用可能である患者に関するデータのみを留保し得る。いくつかの実施形態では、モデル発生器104は、病期5 CKD(ESRD)に到達し、少なくとも3ヶ月の経過観察および透析治療を受けた患者に関する患者特性データ112をフィルタリングし得る。さらに、モデル発生器104は、少なくとも3つの別個のGFR測定値を有する患者に関する患者特性データ112をフィルタリングし得る。
【0065】
フィルタリングした後、モデル発生器104は、フィルタリングされたデータ112のデータ分布を作成するように構成される(ブロック206)。GFR、血圧、体重、BMI、クレアチニンレベル、ヘモグロビンレベル、および/またはアルブミンレベル等の特性データ112の分布が、作成され、調べられ、かつそのタイプ(臨床または管理上)の変動に関する正常または予期される挙動と比較される。比較は、データ誤差、欠測データ、およびモデル化する前に対処されるべき他の異常な挙動を示すデータを明らかにし得る。モデル発生器104は、正常分布外のデータを有する患者を排除してもよい(ブロック208)。さらに、モデル発生器104は、そこから特性データ112が受信された、タイムスタンプされた医療記録を使用して、欠測データを提供してもよい。モデル発生器104はまた、可変フォーマット、変数の本質、および変数の間のデータ依存性を識別することによって、特性データ112の構造および集約を分析してもよい。例えば、モデル発生器104は、アルブミン/クレアチニン比が、CKD進行度に関する患者分類のために有用であることを決定し得る。さらに、モデル発生器104は、GFRおよび/またはアルブミンレベルに基づいて、患者に関するCKD病期(CKD初期病期を含む)を決定してもよい。
【0066】
図2に示されるように、モデル発生器104は、異なるサブセットに処理された患者特性データ112をパーティション化する(ブロック210)。例えば、サブセットは、訓練データ、検証データ、および検査データに関して含まれ、患者(およびその対応するデータ)が、3つのサブセットのうちの1つに割り当てられる。モデル発生器104はまた、患者特性データ112から派生データ(例えば、エンジニアリングされた変数)を決定する。派生データは、アルブミン/クレアチニン比等のあるデータの間の比率を計算することを含んでもよい。派生データはまた、GFRおよび/またはアルブミンレベルに基づいて、ある時点での患者のCKD病期の決定を含んでもよい。
【0067】
モデル発生器104は、次に、訓練データ(例えば、データ112a)の分布と正および負の結果を相関させる(ブロック212)。正および負の結果の分類は、機械学習目的116に基づく。CKD病期進行度に関して、正の結果は、あるCKD病期から次のCKD病期への進行度に対応する、特性データ112を備える。モデル発生器104は、CKD病期毎に、分類を作成する。いくつかの事例では、モデル発生器104は、病期3Aまたは病期3Bから病期5までの分類を作成してもよい。モデル発生器104は、GFRのみに基づいて、および/または既知の患者のGFRが以前のGFR測定値から少なくとも25%変化したとき、病期進行度に関する正の結果を識別する。
【0068】
CKD病期速さに関して、モデル発生器104は、経時的にGFRにおける変化を考慮する患者軌道チャートを(特性データ112から)作成および/または使用してもよい。正の転帰が、既知のCKD病期進行度の間の速さに基づいて決定され、これは、上記に議論されるGFR測定値に基づいて決定される。緊急透析開始転帰に関して、正の結果は、透析治療を開始する患者のインジケーションに基づく。
【0069】
正の結果に関して、モデル発生器104はまた、正の結果毎に、時間フレームを決定する(ブロック214)。これは、患者毎に、その医療既往歴の間のある時点でのサンプリング患者データを含む。サンプリングされる点までのサンプリングされた患者データが、機械学習アルゴリズムの中に打ち込まれ、予測を発生させる。患者が、正の結果を被った場合、モデル発生器104は、発生された予測および正の結果に基づいて、時間フレームを計算する。モデル発生器104は、時間フレーム毎に、正の結果の確率を計算するために、患者データを組み合わせるための時間フレームの分類を作成する。いくつかの実施例では、離散時間フレームは、30日と、60日と、90日と、120日と、180日と、360日とを含む。
【0070】
ある実施例では、既知の患者Aが、その治療の途中の時点に対応する、ある期日においてサンプリングされる。ある期日までの患者Aの患者データは、例えば、病期3Bから病期4 CKDまで進行するための予測される確率を決定するように、機械学習アルゴリズムを通して、分析される。アルゴリズムは、45日の推定を提供し得る。モデル発生器104は、患者Aの実際の既知の結果と予測を比較し、本実施例では、病期3Bから病期4 CKDへの進行は、60日において生じた。本実施例では、モデル発生器104は、予測される45日と実際の60日との間の差異に基づいて、機械学習アルゴリズムを精緻化する。したがって、少なくとも60日の時間フレームにわたって、患者Aは、60日の時間フレームの前に、病期3Bから100%~0%の病期4 CKDへの正の進行度を有した。患者Aの確率が、他の患者と組み合わせられ、異なる時間フレームにわたって、訓練データセット全体に関する推定を提供する。
【0071】
いくつかの事例では、モデル発生器104は、複数回、訓練患者データ112aを再サンプルし、機械学習モデルを精緻化する。例えば、患者Aに関して、患者は、機械学習アルゴリズムを精緻化するための第1の日付/時間、第2の後続日付/時間、および第3の/日付時間において、サンプリングされてもよい。モデルおよび/またはアルゴリズムが、作成および/または精緻化された後、モデル発生器104は、訓練データ112aから分離された患者特性データ112のサブセット112bを使用して、検証を実施するように構成される(ブロック216)。モデル発生器104は、検証されたデータを使用して、予測を発生させるように構成され、次いで、実際の既知の転帰と予測を比較し、統計的正確度を決定する。統計は、正の予測値、因子/特性感度、F1-スコア、および/または受信者動作特性(「ROC」)曲線下面積を含んでもよい。
【0072】
モデル発生器104は、統計を分析することによって、機械学習アルゴリズムが正確かどうかを決定する(ブロック218)。アルゴリズムが、定義された正確度(例えば、95%正確)内まで正確ではない場合、例示的プロシージャ200は、ブロック202に戻り、同一および/または異なる既知の患者特性データ112を使用して、アルゴリズムを精緻化する、または新しい機械学習アルゴリズムを作成する。しかしながら、機械学習アルゴリズムが正確な場合、モデル発生器104は、機械学習アルゴリズム118を展開する(ブロック220)。これは、分析プロセッサ106にCKD病期進行度予測モデル118a(例えば、第1の機械学習アルゴリズム)および/またはCKD緊急透析開始予測モデル118b(例えば、第1の機械学習アルゴリズム)を提供するステップを含んでもよい。例示的プロシージャ200は、次いで、終了する。いくつかの事例では、モデル発生器104は、新しい訓練データが利用可能になるにつれて、機械学習アルゴリズムを更新し得ることを理解されたい。
II.CKD病期進行度予測モデル実施形態
【0073】
本節は、CKD病期進行度予測モデル118aの性質および正確度を議論する。下記の表3および4に示されるように、例示的モデル118aは、正の予測値、感度、F1-スコア、およびROC曲線下面積によって図示されるように、異なる離散時間フレーム(潜在的臨床経過観察周期に対応する)にわたって、進行のリスクを識別する際の弁別性能を実証する。
【表3-1】
【表3-2】
【0074】
表4に示されるように、モデル出力は、あるCKD病期から別の病期への進行のより高い確率を伴う患者の判別を例証し、モデルをより実行可能にするために、十分位数(異なるCKD病期の平均として)によって群化される。病期進行度予測モデルに関する十分位数分析の綿密な調査は、モデルがリスクの範囲全体を横断して、患者をセグメント化することが可能であることを示す。例えば、十分位数が増加するにつれて、病期進行度に伴う患者のパーセントもまた、増加する。より高い十分位数は、より高い病期進行率を有する傾向にあるだけではなく、より急速な病期進行度を有する傾向にもある。
【表4】
【0075】
図4は、本開示のある例示的実施形態による、表4に示される確率データのグラフ400である。グラフ400は、十分位数が増加するにつれて、CKD病期進行を伴う患者のパーセンテージが、30日、60日、90日、120日、180日、および360日の時間フレーム毎に増加することを示す。さらに、グラフ400は、十分位数毎に、病期進行の確率が時間とともに増加することを示す。しかしながら、確率における最大の増加は、最高十分位数群(十分位数7~10)内の患者において生じ、これは、最初に病期進行をより受けやすい。
【0076】
例示的CKD病期進行度予測モデル118aは、既知のKDIGO2因子モデルと比較された。KDIGOモデルは、それを用いて患者がCKDに関して査定されるべきである頻度についてのガイドラインを提供する。KDIGOモデルは、患者がGFRおよびアルブミン/クレアチニン比(「ACR」)の組み合わせに基づいて、1年あたり受けるべき診療の回数に対する、4つの異なる推奨を含む。KDIGOは、より高いリスクレベル予測により多い回数の推奨される診療を伴う患者を相関させる、リスク予測モデルを提供する。
【0077】
現在の臨床診療において、KDIGO2因子モデルは、患者のGFRレベルおよびアルブミン/クレアチニン比(ACR)の横断的調査に基づいて、現在のレベルの腎疾患を適切に治療するために、患者が査定されるべき1年の回数を出力する。2因子モデルは、いくつかの限界を提示する。2因子のみを利用するより単純なモデルだけではなく、それらの2つの因子のうちの1つであるGFRも、その独自の限界を提示する。クレアチニンベースのGFR推定方程式は、低アルブミン血症を患う患者内のネフローゼ症候群における真のGFRの過大推計と、正常値から実質的に逸脱する場合、年齢、性別、人種、およびクレアチニン産生による交絡のため、CKDが存在するかどうかに関する不確実性とを生成する傾向にある。
【0078】
CKD病期進行度予測モデル118aと2因子KDIGOモデルの比較分析は、モデル118aの強度およびそれが臨床医に提供する固有の作動可能性を実証する。検査データ内では、診療の推奨される回数を決定するための実験室測定値が、既知のサンプリングされた患者の多くに関して予測の14日以内で利用可能であった。これらのサンプルに関して、各推奨される回数の診療群が、病期進行度予測モデルから十分位数による結果を示すように分割され、表5において下記に示される。本データの調査は、診療の推奨される回数が、病期進行度のリスクと相関されて現れることを明らかにする。しかしながら、病期進行度予測モデル十分位数によって分割されるとき、各レベルの推奨される診療は、異なる病期進行の傾向を有する、異なる十分位数からの患者を含むことが示される。例えば、3回の推奨される診療カテゴリに関して、本カテゴリは、異なる十分位数の全てから、十分位数に従って、異なる病期進行率を伴う患者を含有することが、示される。
【表5】
【0079】
上記に加え、下記の表6は、推奨される診療が既知である、それらのサンプルに関するF1-スコアを比較することによって、KDIGO2因子モデルとCKD病期進行度予測モデル118aとの間のより直接的な比較を提供する。フレームが考慮される度に、CKD病期進行度予測モデル118aは、2因子モデルより有意に優れている。
【表6】
【0080】
上記の表5および6は、特に、中範囲内の値を伴う患者の間で、動的な多因子CKD病期進行度予測モデル118aが、KDIGO2因子モデル以上に有意義なリスク区別化を提供することを実証する。1年に3回の外来診療を推奨される患者に注目すると、十分位数に従って、異なる十分位数の全てから、異なる病期進行率を伴う、患者が、KDIGO2因子モデルによってともに群化された。KDIGOモデルの指針に従って、これらの患者は全て、1年間にわたって3回の査定を受けることによって、同程度に治療されているであろうことになる。しかしながら、CKD病期進行度予測モデル118aの指針に従うと、3回の診療カテゴリに該当する患者の25%は、例示的モデル118aによって非常に低リスクなものとして識別され(十分位数1~4)、患者の40%を上回るものが、病期変化進行度に対して高リスクなものとして識別された(十分位数8~10)ことが示される。
【0081】
したがって、十分位数分析は、例示的CKD病期進行度予測モデル118aが、患者毎に最良のレベルのケアに向けて医師を誘導するであろう方法で、患者をより精密に階層化することを明らかにする。リソース利用は、3回の査定を推奨された、十分位数1~4におけるそれらの患者が、より少ない診療で治療されるであろう点において、より効率的になるであろう。臨床ケアは、患者が、より高頻度で治療されるであろうため、より高い十分位数におけるそれらの患者を改善するであろう。十分位数10における患者は、KDIGO2因子モデルによって推奨されるように、1年あたり3回査定されていた場合、その次の診療前(120日以内)に、すでに病期において進行しているであろう。
III.CKD緊急透析開始予測モデル実施形態
【0082】
本節は、CKD緊急透析開始予測モデル118bの性質および正確度を議論する。CKD緊急透析開始予測モデル118bは、潜在的臨床経過観察の異なる時間フレームにわたって、緊急透析開始のリスクを予測する際に高い性能を実証し、表7において下記に示される。高感度およびPPV値は、臨床医が、30日と同程度の短い潜在的緊急透析開始候補を識別することの高確率を有し、カテーテルをPDのために留置させる、または自宅HD機械を注文する等の適切な予期ステップを行うことができることを示す。
【表7】
【0083】
CKD緊急透析開始予測モデル118に関する90日以内の有病率(正の転帰を伴うサンプルのパーセント)は、4.4%である。十分位数分析は、これらの緊急開始患者のほぼ全てが、表8において下記に示されるように、リスクの上位十分位数内で識別されることを実証する。機械学習計測値は、正の予測値およびF1-スコアが、上位十分位数内の最もリスクのある部分上に集中するとき、十分位数分析によって含意されるものよりさらに高くあり得るが、感度においてあるトレードオフに達するであろうことを示す。
【表8】
IV.CKD機械学習使用実施形態
【0084】
図1に再び目を向けると、管理サーバ102の分析プロセッサ106は、モデル発生器104から、CKD病期進行度予測モデル118aおよび/またはCKD緊急透析開始予測モデル118bを受信する。分析プロセッサ106は、臨床決定サポートをCKDを患う患者を治療する臨床医に提供するように、モデル118を使用する。分析プロセッサ106は、メモリデバイス130にモデルを記憶してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、分析プロセッサ106は、臨床医デバイス132が患者特性を提出し、予測される転帰を受信することを可能にする、アプリケーションプログラマブルインターフェース(「API」)等のウェブサイトまたは他のインターネットアクセス可能インターフェースをホストする。臨床医デバイス132は、分析プロセッサ106にアクセスするためのウェブブラウザまたは「アプリ」等のアプリケーション134を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施例では、臨床医デバイス132および分析プロセッサ106は、システムハブ(図示せず)に接続されてもよい。代替として、システムハブは、分析プロセッサ106の一部として含まれてもよく、サービスポータル、企業リソース計画システム、ウェブポータル、ビジネス知能ポータル、HIPAA準拠データベース、および電子医療記録データベースを含む。
【0087】
分析プロセッサ106によって提供されるウェブページまたはフォームが、臨床医に患者特性データ136に関してプロンプトしてもよい。他の実施例では、アプリケーション134は、臨床医が患者識別子を規定することを可能にし得、これはアプリケーション134に、患者のEMR(患者特性データ136として)から分析プロセッサ106に情報を伝送させる。
【0088】
図5は、本開示のある例示的実施形態による、分析プロセッサ106によって受信される、例示的患者特性データ136の略図である。患者特性データ136は、年齢、性別、および人種等の人口統計データを含んでもよい。患者特性データ136はまた、血圧、BMI、体温、体重、GFR、クレアチニンレベル、ヘモグロビンレベル、およびアルブミンレベル等の生理学的データを含んでもよい。いくつかの事例では、患者特性データ136は、CKD病期初期を含んでもよい。そうでなければ、分析プロセッサ106は、そのGFRおよび/またはアルブミンデータから、患者のCKD病期を決定してもよい。患者特性データ136はさらに、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎を含む、CKDの診断された原因を含んでもよい。さらに、患者特性データ136は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患等の既往歴を含んでもよい。
【0089】
より少ないまたは付加的患者特性データ136も、分析プロセッサ106によって使用され得ることを理解されたい。例えば、分析プロセッサ106は、機械学習モデル118に提出するための少量のデータのみを有する患者の特性データ136を分析するように構成されてもよい。分析プロセッサ106は、十分な量の患者特性データ136が、提供されていない(例えば、欠測GFRデータ)場合、臨床医デバイス132にエラーメッセージを伝送させ得る。
【0090】
データ136を受信後、分析プロセッサ106は、CKD病期進行度予測モデル118aおよび/またはCKD緊急透析開始予測モデル118bを使用して、CKD予測分析を実施する。分析を実施するために、分析プロセッサ106は、患者のCKD初期病期に関して、最も近い合致予測に分析を受けている患者を分類してもよい。本動作を実施するために、分析プロセッサ106は、個別のモデル118内に提供される患者特性データの分類112と、分析下の患者の患者特性データ136を比較する。これは、モデル118に関する開始点として、現在のCKD病期を識別するステップを含む。本識別は、同一CKD病期において、患者の因子/特性毎に、モデル化された因子/特性(派生因子/特性を含む)に比較を実施するステップを含んでもよい。モデル118は、例えば、比較に基づいて、1つまたはそれを上回る十分位数に患者を割り当ててもよい。分析プロセッサ106は、モデル118毎に、正の転帰の確率を使用し、分析を受けている患者が、例えば、最も近い合致予測十分位数に基づいて、離散時間フレームにわたって、次のCKD病期(または緊急に透析を開始する必要がある)に進行するであろうパーセンテージ尤度(または確率)を決定する。
【0091】
分析プロセッサ106は、モデル化された離散時間フレームのために分析下の患者に関する予測される正の転帰を提供する、報告138を作成する。分析プロセッサ106は、臨床医デバイス132のアプリケーション134のウェブページまたはインターフェース等のユーザインターフェースにおいて、報告138からの情報を表示してもよい。図6は、本開示のある例示的実施形態による、報告138からの情報を示す、臨床医デバイス132上のアプリケーション134を介して表示される、ユーザインターフェース600の略図である。いくつかの実施形態では、臨床医がまた、分析プロセッサ106を介して、患者識別子を規定する、または報告138を発生させるための患者の特性データを提供するためのインターフェース600を使用してもよい。
【0092】
例示的ユーザインターフェース600は、患者識別子と、GFRおよびアルブミンレベルを含む、少なくとも一部の患者特性データ136とを含む。ユーザインターフェース600はまた、推定されたCKD病期および予測十分位数を含む、モデル118内の患者の特性データの処理に関連する、少なくとも一部の情報を含む。ユーザインターフェース600はさらに、機械学習モデル118からの出力の概要を含む。第1の出力602が、離散時間フレームにわたって、CKD病期3AからCKD病期3Bまでの進行の速さおよび確率を提供する。第2の出力604が、分析下の患者が規定された時間フレーム内で緊急に透析を開始する必要があるであろう、確率を提供する。臨床医が、第1の出力602および第2の出力604を精査し、患者のCKDの進行度を遅らせるために、患者に対する潜在的治療を決定する。
【0093】
いくつかの実施形態では、分析プロセッサ106は、治療を処方するためのオプション606をユーザインターフェース600に表示してもよい。ある実施例では、分析プロセッサ106は、患者のCKD病期、CKD進行度の確率、CKD進行度の推定された率、および緊急透析開始を必要とする確率に基づく選択に関する推奨される治療を決定してもよい。例えば、分析プロセッサ106は、25%未満の進行度確率および10%未満の透析の緊急開始の必要性を伴う、CKD病期3Aまたは3Bにおける患者に、投薬療法および/または生活様式変更のためのオプションを提供してもよい。比較によって、分析プロセッサ106は、患者が、CKD病期5にある、180日以内に病期5に進行する50%を上回る確率にある、および/または90日以内に緊急透析を必要とする、35%を上回る変化を有する場合、PD治療または重症管理(「CC」)治療に関する推奨を提供するように構成されてもよい。
【0094】
例証目的のために(出力602および604におけるデータに関連しない)、ユーザインターフェース600は、患者にPD治療および/またはCC治療を処方するためのオプション606を含む。PD治療の選択は、例えば、ブドウ糖レベル、治療期間、治療頻度、治療透析量、除去することが予期されるUF等を含む、PD処方箋パラメータを打ち込むためのアプリケーション134を介して、分析プロセッサ106にフォームまたはウェブページを表示させる。いくつかの事例では、PD治療オプションの選択はまた、臨床医が患者の中にカテーテルを挿入するための医療手技をスケジュールすることを可能にし得る。
【0095】
図7は、臨床医が、分析プロセッサ106に伝送される、治療パラメータ702を打ち込むためのアプリケーション134を使用する、略図を示す。治療パラメータ702の受信は、分析プロセッサ106に、医療デバイス706のための療法プログラム704を遠隔でプログラムまたは作成させ得る。分析プロセッサ106は、医療デバイス706が、分析下の患者に関して識別および/または構成された後、療法プログラム704を提供してもよい。
【0096】
処方される治療、処方箋、または療法プログラム704は、医療デバイス706が患者に治療を施行するように動作するべき方法を定義する、1つまたはそれを上回るパラメータに対応する。腹膜透析療法に関して、パラメータは、患者の腹膜腔の中に圧送されるべき新鮮な透析流体の量(または率)、流体が患者の腹膜腔内に留まるべき時間の量(すなわち、滞留時間)、および滞留周期が終了した後に患者から圧送または排出されるべき使用済み透析流体および限界濾過(「UF」)の量(または率)を規定してもよい。複数のサイクルを伴う治療に関して、パラメータは、サイクル毎の充填、滞留、および排出量および治療の過程の間に実施されるべきサイクルの合計回数(1回の治療が、1日毎に提供される、または別個の治療が、日中および夜間に提供される)を規定してもよい。加えて、パラメータは、治療が医療流体送達機械によって施行されるべき日付/時刻/曜日(例えば、スケジュール)を規定してもよい。さらに、処方療法のパラメータは、ブドウ糖レベル等の透析流体の濃度レベルに加えて、治療毎に投与されるべき透析流体の合計体積を規定してもよい。
【0097】
図7の医療デバイス706は、腎不全または低下した腎機能を治療するための腎不全療法機械を含んでもよい。透析を通して、腎不全機械は、患者から、正常に機能している腎臓がそうでなければ除去するであろう老廃物、毒素、および過剰な水分を除去する。腹膜透析のために、医療デバイス706は、透析流体とも呼ばれる透析液をカテーテルを介して患者の腹膜腔の中に注入する。透析流体は、腹膜腔の腹膜に接触する。老廃物、毒素、および過剰な水分が、拡散および浸透に起因して、患者の血流から、腹膜を通して、透析流体の中に通過し、すなわち、浸透勾配が、膜を横断して起こる。透析流体における浸透剤が、浸透勾配を提供する。使用済みまたは消耗済み透析流体は、患者から排出され、患者から老廃物、毒素、および過剰な水分を除去する。本サイクルは、例えば、複数回繰り返される。
【0098】
持続的外来腹膜透析(「CAPD」)、自動化腹膜透析(「APD」)、および潮汐流透析、および持続的流動腹膜透析(「CFPD」)を含む、種々のタイプの腹膜透析療法が、存在する。CAPDは、手動透析治療である。ここでは、患者は、使用済みまたは消耗済み透析液流体が患者の腹膜腔から排出することを可能にするために、埋込されたカテーテルをドレインに手動で接続する。患者は、次いで、カテーテルを通して患者の中に新鮮な透析流体を注入するために、新鮮な透析流体のバッグにカテーテルを接続する。患者は、カテーテルを新鮮な透析流体バッグから接続解除し、透析流体が腹膜腔内で滞留することを可能にし、そこで、老廃物、毒素、および過剰な水分の移送が、起こる。ある滞留周期後、患者は、例えば、1日あたり4回手動透析手技を繰り返し、各治療は、約1時間続く。手動腹膜透析は、患者から有意な量の時間および努力を要求し、改良の余地がある。
【0099】
自動化腹膜透析(「APD」)は、透析治療が排出、充填、および滞留サイクルを含む点においてCAPDに類似する。しかしながら、APD機械は、典型的には、患者が眠っている間に自動的にサイクルを実施する。APD機械は、治療サイクルを手動で実施する必要性から、かつ日中に供給物を運搬する必要性から患者を解放する。APD機械は、埋込されたカテーテルに、新鮮な透析流体の源またはバッグに、および流体ドレインに流体的に接続する。APD機械は、新鮮な透析流体を透析流体源から、カテーテルを通して、患者の腹膜腔の中に圧送する。APD機械はまた、透析流体が腔内で滞留することを可能にし、老廃物、毒素、および過剰な水分の移送が起こることを可能にする。源は、複数の無菌透析流体バッグを含み得る。
【0100】
APD機械は、使用済みまたは消耗済み透析液を腹膜腔から、カテーテルを通して、ドレインに圧送する。手動プロセスのように、いくつかの排出、充填、および滞留サイクルは、透析の間に起こる。「最後の充填」は、APDの終わりに起こり、次の治療まで患者の腹膜腔内に留まる。
【0101】
医療デバイス706によって実施され得る、別のタイプの腎不全療法は、一般に、患者の血液から老廃物を除去するために拡散を使用する、血液透析(「HD」)である。拡散勾配が、拡散を引き起こすために、血液と透析液または透析流体と呼ばれる電解質溶液との間の半浸透性透析装置を横断して起こる。
【0102】
血液濾過(「HF」)は、患者の血液からの毒素の対流輸送に依拠する代替腎代替療法である。HFは、治療の間に体外回路に代替液または補液(典型的には、10~90リットルのそのような流体)を添加することによって遂行される。代替液および治療の合間に患者によって蓄積される流体は、HF治療の過程にわたって限外濾過され、中および大分子を除去する際に特に有益である対流輸送機構を提供する(血液透析では、透析セッションの間に得られる流体とともに、少量の老廃物が除去されるが、しかしながら、その限外濾過液の除去からの溶質牽引は、対流クリアランスを提供するために十分ではない)。
【0103】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流および拡散クリアランスを組み合わせる治療モダリティである。HDFは、拡散クリアランスを提供するために、標準的血液透析と同様に、透析器を通して流動する透析流体を使用する。加えて、代替液が、体外回路に直接提供され、対流クリアランスを提供する。
【0104】
大部分のHD(HF、HDF)治療は、センターで行われる。在宅血液透析(「HHD」)に向かう傾向が、一部には、HHDが毎日実施され得、典型的には、週に2回または3回行われるセンター内血液透析治療に優る療法利益を提供するため、今日存在する。研究によって、頻繁な治療が、より頻度が低いが、おそらく、より長い治療を受ける患者よりも多くの毒素および老廃物を除去することが示されている。より頻繁に治療を受ける患者は、治療に先立って2日または3日分の毒素を蓄積しているセンター内患者と比較して多くのダウンサイクルを被らない。ある地域では、最も近い透析センターは、患者の自宅から何マイルも離れ、全行程を含めた治療時間として1日の大部分を費やす場合がある。HHDは、1晩にわたって、または患者が寛いでいる、働いている、または別様に生産的である間の日中に行われ得る。
【0105】
医療デバイス706に関連して説明される実施例は、血液、透析流体、代替液、または静脈内薬物(「IV」)等の医療流体を送達する、任意の医療流体送達システムに適用可能である。実施例は、特に、本明細書では、集合的に、または概して、個別に、処方療法またはプログラムと称される、あらゆる形態の血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)、血液透析濾過(「HDF」)、持続的腎代替療法(「CRRT」)、および腹膜透析(「PD」)等の腎臓不全療法のために非常に適している。医療流体送達機械は、代替として、大容量蠕動タイプポンプまたはシリンジポンプ等の薬物送達または栄養流体送達デバイスであってもよい。本明細書に説明される機械は、在宅設定において使用されてもよい。
【0106】
図8は、本開示のある例示的実施形態による、本明細書に開示されるCKD予測機械学習モデル118を介して、患者の特性データ136を分析するための例示的プロシージャ800のフロー図である。プロシージャ800は、図8に図示されるフロー図を参照して説明されるが、プロシージャ800と関連付けられるステップを実施する多くの他の方法も、使用され得ることを理解されたい。例えば、ブロックのうちの多くの順序は、変更されてもよく、あるブロックは、他のブロックと組み合わせられてもよく、説明されるブロックのうちの多くは、随意であってもよい。ある実施形態では、ブロックの数は、データ前処理およびフィルタリングおよび/または開発された機械学習モデルのタイプに基づいて変更されてもよい。プロシージャ800において説明されるアクションは、メモリデバイス内に記憶される、1つまたはそれを上回る命令によって規定され、例えば、分析プロセッサ106を含む、複数のデバイス間で実施されてもよい。
【0107】
例示的プロシージャ800は、分析プロセッサ106が、臨床医デバイス132上でアプリケーション134を介して、患者特性データ136を受信するとき、始まる(ブロック802)。データ136は、CKD病期進行度予測モデル118aおよび/またはCKD緊急透析開始予測モデル118bの入力にリンクされる、分析プロセッサ106の1つまたはそれを上回るAPIを介して、受信されてもよい。いくつかの実施形態では、分析プロセッサ106は、患者のCKD病期および/またはアルブミン/クレアチニン比等の患者特性データから派生特性データを決定する(ブロック804)。分析プロセッサ106は、患者の現在のCKD病期を識別し、これは、同一CKD病期において分類されたデータとの比較のために、CKD病期進行度予測モデル118aおよび/またはCKD緊急透析開始予測モデル118bへの入力として使用される(ブロック806)。
【0108】
例示的分析プロセッサ106は、次いで、CKD病期進行度予測モデル118aおよび/またはCKD緊急透析開始予測モデル118bにおける、患者特性データ136、派生データ、および/または患者のCKD病期を処理し、最も近い合致分類カテゴリまたは十分位数を識別する(ブロック808)。比較の一部として、分析プロセッサ106は、同一の分類された特性に各患者特性を合致させ、1つまたはそれを上回る最良適合分析を使用し、分析下の患者に関する分類を決定する。例えば、患者の血圧、GFR、BMI、性別、年齢、およびアルブミン値は、異なる分類に対する分布と比較され、正規分布または平均値からの距離を決定する。差異が、特性または因子毎に総和されてもよく、最低差異に対応するカテゴリまたは十分位数が、患者のために選択される。他の事例では、分析プロセッサ106は、確率転帰が、患者の特性評価データまたは因子に対する近似度に基づく、異なる分類カテゴリの組み合わせられた混合物であるように、加重平均ルーチンを使用し、因子毎に異なる分類カテゴリからの確率をコンパイルする。
【0109】
分析プロセッサ106は、合致および/または比較を使用し、分析下の患者に関する転帰確率を決定する(ブロック810)。これは、CKD病期進行度予測モデル118aからの速さおよび病期進行確率および/または患者がCKD緊急透析開始予測モデル118bから透析を必要とするであろう確率を決定するステップを含む。モデル118aおよび118bは、例えば、30日、60日、90日、120日、180日、360日等を含む、規定された離散時間フレームにわたって、確率を発生させる。
【0110】
分析プロセッサ106は、次いで、モデル118aおよび118bからの出力を使用して、報告138を発生させる(ブロック812)。分析プロセッサ106は、報告138を、臨床医デバイス132上で、アプリケーション134のユーザインターフェース内に表示させる(ブロック814)。分析プロセッサ106は、次に、治療処方箋が受信されるかどうかを決定し得る(ブロック816)。治療処方箋が、受信されない場合、例示的プロシージャ800は、CKD分析が、別の患者のために、または再び同一患者のために必要とされるまで、終了する。しかしながら、治療処方箋が、受信される場合、分析プロセッサ106は、治療を指示させる(ブロック818)。これは、透析機械または他の医療デバイスに関する指示、カテーテルの留置に関する指示、投薬療法指示、および/または患者の生活様式を変更させる際に患者を補助するためのアプリケーションに関する指示を伝送するステップを含んでもよい。指示はまた、透析機械または他の医療デバイスに治療を始めさせるメッセージを含んでもよい。例示的プロシージャ800は、CKD分析が、別の患者のために、または再び同一患者のために必要とされるまで、終了する。

V.予測CKD機械学習モデル性能
【0111】
上記に示されるように、多因子機械学習モデル118aおよび118bは、優れた予測能力を呈する。モデル118aおよび118bは、経時的に変化する実験室値等の時間依存データを利用することが可能であるだけではなく、データセットが患者リスクを査定するために提示するものと同程度の多くの特徴特性を考慮することも可能である。多数の因子および患者特性が、アルゴリズムを生成する際に、モデル118によって考慮される。異なる因子が、モデル毎に患者リスクを決定する際に最も有力となるものとして現れた。例えば、最上位入力の中でもとりわけ、GFR、クレアチニン、血圧、およびBMIが、CKD病期進行度予測モデル118に関する患者のリスクを識別する際に考慮された。一方、ヘモグロビン、アルブミン、およびクレアチニン等の因子が、CKD緊急透析開始予測モデル118bに関するリストの上位に現れた。
【0112】
CKD病期進行度予測モデル118の出力は、患者が次のCKD病期へのその進行を遅らせることから最大の利益を得るであろうケアのレベルに臨床医を誘導するように、分析プロセッサ106によって使用されることができる。表4に見られるように、モデルが予測されるリスクのより高い十分位数に位置付ける、患者が、より急速に病期において進行した。120日以内に病期において進行することが予測される、患者の88パーセントが、実際に進行した。したがって、CKD病期進行度予測モデル118を使用する臨床医は、そのリスクレベルに基づいて患者を治療する際に、高レベルの信頼度を有する。これらの患者は、可能な限り、その症状に対処し、疾患進行度を遅らせるために、より早くより頻繁な外来診療を要求する。
【0113】
さらに、CKD病期進行度予測モデル118aが、多くの因子に基づくため、欠測または不完全なデータを非常にロバストに取り扱っていることが決定されている。推奨される診療データが、欠測ACR値に起因して、不明であるときでも、CKD病期進行度予測モデル118aは、リスクを効果的に区別化し続ける。表5および6に関連して議論される、上記の十分位数分析は、より正確度を伴って、予測されるCKD病期進行率を実証し、医師が、より積極的により高いリスク患者を治療し、より低リスク患者を査定するために必要以上にリソースを使用することを控えることを可能にする。
【0114】
CKD緊急透析開始予測モデル118bは、緊急開始の高リスクにある患者を正確に識別することを証明する。表8における上記の図から分かるように、患者の41%が、30~90日以内に緊急透析開始(十分位数10)を早急に受けた者に対して高リスクにあることが予測される。モデルは、高感度およびPPVを呈するため、ケア提供者が、30日と同程度の短い日数で、潜在的緊急透析開始候補を識別することの高確率を有し、適切な予期ステップを講じることができる。緊急のスケジュールされていない透析治療は、定期的にスケジュールされた治療より最大20倍コストがかかり得る。したがって、緊急治療の数の減少が、患者ケアにおける改善とともに、コスト節約をもたらす。
VI.結論
【0115】
本明細書に説明される本好ましい実施形態の種々の変更および修正が、当業者に明白となるであろうことを理解されたい。そのような変更および修正は、本主題の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図される利益を減少させることなく行われることができる。したがって、そのような変更および修正は、添付される請求項によって網羅されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の慢性腎疾患(「CKD」)進行度を推定するためのシステムであって、前記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、前記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
CKDの次の病期への進行度と、CKDの前記次の病期の前記進行度の時間フレームとを予測するように構成されるアンサンブル機械学習アルゴリズムであって、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、(i)離散時間フレームにわたって、ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージと、(ii)前記既知の患者に対応する既知の患者特性データであって、前記既知の患者特性データは、前記既知の患者に関する人口統計/生理学的データ、CKDの診断された原因、既往歴、およびCKD病期進行度に関連する正および負の結果の分類を含む、既知の患者特性データとをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有し、
異なるCKD病期に関する各予測十分位数は、(i)を使用して、前記離散時間フレームのそれぞれにわたって、CKD進行度に関する正の転帰の確率が割り当てられる、アンサンブル機械学習アルゴリズムと、
前記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、前記分析プロセッサは、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
前記アンサンブル機械学習アルゴリズムにおいて提供される前記既知の患者特性データの分類と、分析下の前記患者の前記患者特性データとを比較することによって、前記患者の前記CKD初期病期に最も近い合致予測十分位数に、前記分析を受けている患者を分類することと、
前記分析を受けている患者が、前記最も近い合致予測十分位数の前記割り当てられた確率を使用して、前記離散時間フレーム毎に、次の中等度または重度CKD病期に進行するであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、前記分析を受けている患者が、前記離散時間フレームにわたって、前記次の中等度または重度CKD病期に進むであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定される、請求項1または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記治験中止結果は、透析療法、腎代替療法(「RRT」)、死亡、腎臓移植、または緩和ケアのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記既知のCKD進行度データは、異なる中等度または重度CKD病期と関連付けられる推定された糸球体濾過率(「GFR」)の変化、またはこれまで既知のGFRからの前記推定されたGFRの少なくとも25%の変化に基づいて、病期進行度を識別する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者の前記CKD初期病期は、前記患者の推定されたGFRまたは前記患者がタンパク尿を被っている時間の長さのうちの少なくとも1つに基づく、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記離散時間フレームは、30日、60日、90日、120日、180日、および360日のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項10】
前記中等度または重度CKD病期は、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、請求項1または7に記載のシステム。
【請求項11】
前記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある軽度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含み、
前記CKD初期病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1、60~89mL/分のGFRを伴う病期2、45~59mL/分のGFRを伴う病期3A、30~44mL/分のGFRを伴う病期3B、または15~29mL/分のGFRを伴う病期4のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ユーザインターフェースは、臨床医コンピュータ上に表示される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
慢性腎疾患(「CKD」)を患う患者が、緊急に透析を開始する必要があるであろう尤度を推定するためのシステムであって、前記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、前記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
前記分析を受けている患者が透析の緊急開始の必要があるであろう尤度を予測するように構成される機械学習アルゴリズムであって、前記機械学習アルゴリズムは、(i)離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始が必要とされる既知の患者のパーセンテージと、(ii)前記既知の患者に対応する既知の患者特性データであって、前記既知の患者特性データは、前記既知の患者に関する人口統計/生理学的データ、CKDの診断された原因、既往歴、および透析の緊急開始に関連する正および負の結果の分類を含む、既知の患者特性データとをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有し、
異なるCKD病期に関する各予測十分位数は、(i)を使用して、前記離散時間フレームのそれぞれにわたって、透析の緊急開始に関する正の転帰の確率が割り当てられる、機械学習アルゴリズムと、
前記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、前記分析プロセッサは、前記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
前記機械学習アルゴリズムにおいて提供される患者特性データの分類と、分析下の前記患者の前記患者特性データとを比較することによって、前記患者の前記CKD初期病期に最も近い合致予測群に、前記分析を受けている患者を分類することと、
前記分析を受けている患者が、最も近い合致予測十分位数の前記割り当てられた確率を使用して、前記離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始の必要があるであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、前記分析を受けている患者が、前記離散時間フレームにわたって、前記透析の緊急開始の必要があるであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
【請求項14】
前記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
あるCKD病期から次のCKD病期に進行した前記既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定された、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項18】
前記CKD病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1と、60~89mL/分のGFRを伴う病期2と、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析プロセッサは、
透析治療を開始するためのインジケーションを受信することと、
前記患者のために透析治療を準備させることと
を行うように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記患者に前記透析治療を実施するように構成される透析機械をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
付加的特徴および利益が、以下の詳細な説明および図に説明され、それから明白となるであろう。本明細書に説明される特徴および利益は、包括的ではなく、特に、多くの付加的特徴および利益が、図および説明を考慮して、当業者に明白となるであろう。また、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙される利益の全てを有する必要性はなく、個々の有利な実施形態を別個に請求することが、明確に想定される。また、本明細書に使用される言語が、発明的主題の範囲を限定するためではなく、主として、可読性および教示的目的のために選択されていることに留意されたい。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
患者の慢性腎疾患(「CKD」)進行度を推定するためのシステムであって、上記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、上記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
CKDの次の病期への進行度と、CKDの上記次の病期の上記進行度の時間フレームとを予測するように構成されるアンサンブル機械学習アルゴリズムであって、上記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有する、アンサンブル機械学習アルゴリズムと、
上記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、上記分析プロセッサは、上記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
上記アンサンブル機械学習アルゴリズムにおいて提供される患者特性データの分類と、分析下の上記患者の上記患者特性データとを比較することによって、上記患者の上記CKD初期病期に最も近い合致予測十分位数に、上記分析を受けている患者を分類することと、
上記分析を受けている患者が、上記最も近い合致予測十分位数に基づいて、上記離散時間フレーム毎に、次の中等度または重度CKD病期に進行するであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、上記分析を受けている患者が、上記離散時間フレームにわたって、上記次の中等度または重度CKD病期に進むであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
(項目2)
上記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
上記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、項目1または2に記載のシステム。
(項目4)
上記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、項目1または2に記載のシステム。
(項目5)
ある中等度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定される、項目1または4に記載のシステム。
(項目6)
上記治験中止結果は、透析療法、腎代替療法(「RRT」)、死亡、腎臓移植、または緩和ケアのうちの少なくとも1つを含む、項目5に記載のシステム。
(項目7)
上記既知のCKD進行度データは、異なる中等度または重度CKD病期と関連付けられる推定された糸球体濾過率(「GFR」)の変化、またはこれまで既知のGFRからの上記推定されたGFRの少なくとも25%の変化に基づいて、病期進行度を識別する、項目5に記載のシステム。
(項目8)
上記患者の上記CKD初期病期は、上記患者の推定されたGFRまたは上記患者がタンパク尿を被っている時間の長さのうちの少なくとも1つに基づく、項目1または7に記載のシステム。
(項目9)
上記離散時間フレームは、30日、60日、90日、120日、180日、および360日のうちの少なくとも1つを含む、項目1または7に記載のシステム。
(項目10)
上記中等度または重度CKD病期は、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、項目1または7に記載のシステム。
(項目11)
上記アンサンブル機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、ある軽度CKD病期から次の中等度または重度CKD病期に進行した既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含み、
上記CKD初期病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1、60~89mL/分のGFRを伴う病期2、45~59mL/分のGFRを伴う病期3A、30~44mL/分のGFRを伴う病期3B、または15~29mL/分のGFRを伴う病期4のうちの少なくとも1つを含む、
項目1に記載のシステム。
(項目12)
上記ユーザインターフェースは、臨床医コンピュータ上に表示される、項目1に記載のシステム。
(項目13)
慢性腎疾患(「CKD」)を患う患者が、緊急に透析を開始する必要があるであろう尤度を推定するためのシステムであって、上記システムは、
分析を受けている患者に関する患者特性データを記憶するメモリデバイスであって、上記患者特性データは、人口統計/生理学的データ、CKD初期病期、CKDの診断された原因、および既往歴を含む、メモリデバイスと、
上記分析を受けている患者が透析の緊急開始の必要があるであろう尤度を予測するように構成される機械学習アルゴリズムであって、上記機械学習アルゴリズムは、離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始が必要とされる既知の患者のパーセンテージをそれぞれ含む予測十分位数分類子を含有する、機械学習アルゴリズムと、
上記メモリデバイスに通信可能に結合される分析プロセッサであって、上記分析プロセッサは、上記アンサンブル機械学習アルゴリズムと連動し、
上記機械学習アルゴリズムにおいて提供される患者特性データの分類と、分析下の上記患者の上記患者特性データとを比較することによって、上記患者の上記CKD初期病期に最も近い合致予測群に、上記分析を受けている患者を分類することと、
上記分析を受けている患者が、最も近い合致予測十分位数に基づいて、上記離散時間フレームにわたって、透析の緊急開始の必要があるであろう確率を決定することと、
ユーザインターフェースを介して、上記分析を受けている患者が、上記離散時間フレームにわたって、上記透析の緊急開始の必要があるであろうパーセンテージ尤度を表示することと
を行うように構成される、分析プロセッサと
を備える、システム。
(項目14)
上記人口統計/生理学的データは、性別、人種、年齢、肥満度指数、血圧、クレアチニンレベル、糸球体濾過率(「GFR」)、ヘモグロビンレベル、またはアルブミンレベルのうちの少なくとも1つを含む、項目13に記載のシステム。
(項目15)
上記CKDの診断された原因は、高血圧症、糖尿病、閉塞性尿路疾患、糸球体腎炎/自己免疫疾患、多発性嚢胞腎、慢性尿細管間質性腎炎、または慢性腎盂腎炎のうちの少なくとも1つを含む、項目14に記載のシステム。
(項目16)
上記既往歴は、高血圧症、糖尿病、心虚血、鬱血性心不全、または脳血管疾患のうちの少なくとも1つを含む、項目14または15に記載のシステム。
(項目17)
あるCKD病期から次のCKD病期に進行した上記既知の患者のパーセンテージは、患者特性データ、既知のCKD進行度データ、および治験中止結果を含む患者母集団データを使用して決定された、項目14または15に記載のシステム。
(項目18)
上記CKD病期は、90mL/分を上回るGFRを伴う病期1と、60~89mL/分のGFRを伴う病期2と、45~59mL/分のGFRを伴う病期3Aと、30~44mL/分のGFRを伴う病期3Bと、15~29mL/分のGFRを伴う病期4と、15mL/分未満のGFRを伴う病期5とを含む、項目14または15に記載のシステム。
(項目19)
上記分析プロセッサは、
透析治療を開始するためのインジケーションを受信することと、
上記患者のために透析治療を準備させることと
を行うように構成される、項目14に記載のシステム。
(項目20)
上記患者に上記透析治療を実施するように構成される透析機械をさらに備える、項目19に記載のシステム。
【国際調査報告】