(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】改変された脂肪酸エステル分布を有するポリソルベート混合物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20231004BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231004BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K45/00
A61K39/395 M
A61K38/00
A61K38/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518393
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021051681
(87)【国際公開番号】W WO2022066858
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダブ, サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ドーシ, ニディ
(72)【発明者】
【氏名】ショバ, タマンナ
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタバ, アミット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076DD09F
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF61
4C084AA01
4C084AA17
4C084DC01
4C084MA05
4C084NA03
4C085AA13
4C085DD11
4C085EE05
(57)【要約】
本開示は、特定の脂肪酸エステル濃度を有するポリソルベート20組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、例えば、安定性を改善するために医薬製剤に使用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物。
【請求項2】
3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
14.1%以上であって、18%以下、または17%以下、または16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
7%以上であって、10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~16.9%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.7%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
5.8%以上9.8%以下のオレイン酸エステル、および2.0%以下のリノール酸エステルをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
薬物および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬製剤であって、前記薬学的に許容され得る賦形剤が、
脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物であって、前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む、脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物を含む、医薬製剤。
【請求項14】
前記ポリソルベート20組成物が、前記製剤の0.01%~0.12%(w/v)である、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記薬物が、タンパク質、抗体、抗体断片、酵素、またはペプチドである、請求項13または14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記薬物がタンパク質である、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記薬物が抗体である、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記薬物の濃度が1%~30%(w/v)である、請求項13~17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記薬物の濃度が5%~20%(w/v)である、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記ポリソルベート20組成物が、前記製剤の0.01%~0.08%、0.03%~0.1%、0.04%~0.07%(w/v)である、請求項13~19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記ポリソルベート20組成物が、前記製剤の約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、または0.12%(w/v)である、請求項13~20のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記ポリソルベート20組成物が、前記製剤の約0.06%(w/v)である、請求項13~21のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
pHが4~8、または5~7.5、または6.5~7.5、または6.8~7.2である、請求項13~22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記薬学的に許容され得る賦形剤が、水、アルコール、糖、緩衝剤、界面活性剤、安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項13~23のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸エステルを含む、請求項13~24のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む、請求項13~25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、請求項13~26のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、14.1%以上であって、18%以下、または17%以下、または16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む、請求項13~27のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、7%以上であって、10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む、請求項13~28のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む、請求項13~29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項13~30のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項13~31のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項33】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~17.0%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項13~31のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸エステルを含む、請求項13~31のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
前記ポリソルベート20組成物の前記脂肪酸エステルが、5.8%以上9.8%以下のオレイン酸エステル、および2.0%以下のリノール酸エステルをさらに含む、請求項13~34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
同一貯蔵条件に供される標準ポリソルベート20組成物を含む製剤と比較した場合、脂肪酸エステルの分解に起因する遊離脂肪酸粒子が少ない、請求項13~35のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項37】
高次エステル分解医薬品をさらに含み、遊離脂肪酸粒子の形成が観察される前に、他の点では同一の含有量を有し、同一条件下で貯蔵される標準ポリソルベート20組成物を含むHOE分解医薬品におけるよりも最大10%多くの脂肪酸エステルが遊離脂肪酸に分解され得る、請求項13~36のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項38】
遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される遊離脂肪酸粒子の数が、他の点では含有量および貯蔵条件が同一である標準ポリソルベート20組成物を含む製剤における遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される遊離脂肪酸粒子の数よりも少ない、請求項13~37のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項39】
遊離脂肪酸が、前記脂肪酸エステルの加水分解および/または酸化分解によって生成される、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物または製剤。
【請求項40】
脂肪酸エステルの分解により、標準ポリソルベート20組成物を含む組成物または製剤中の遊離脂肪酸粒子形成と比較して、遊離脂肪酸粒子形成が遅延する、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物または製剤。
【請求項41】
前記遊離脂肪酸粒子が肉眼で見える、請求項40に記載の組成物または製剤。
【請求項42】
前記遊離脂肪酸粒子が肉眼で見えない、請求項40に記載の組成物または製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月24日に出願された米国仮出願第63/082,606号;2020年9月24日に出願された米国仮出願第63/082,611号;および2021年3月31日に出願された米国仮出願第63/168,567号の優先権を主張し、これらの内容はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、特定の脂肪酸エステル濃度を有するポリソルベート20組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、例えば、安定性を改善するために医薬製剤に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリソルベート20(PS20)は、例えばタンパク質製剤において界面応力を軽減するために使用される非イオン性界面活性剤である。PS20は、ポリオキシエチレン(POE)ソルビタンモノラウレートが主成分である不均一混合物である。構造は、4つの分枝ポリオキシエチレン鎖に結合した親水性ソルビタン環を含み、その1つは疎水性ラウリン酸エステル結合を有する。両親媒性特性により、PS20が液体-空気界面および液体-固体界面と相互作用することが可能になり、輸送中または投与中に起こり得る撹拌誘導凝集からタンパク質治療薬が遮蔽される。PS20の脂肪酸エステル領域は疎水性であり、ソルビタン環またはPOE鎖よりも水溶液に溶解しにくい。
【0004】
PS20組成物は、POE鎖長およびコア糖構造に基づいて異なる脂肪酸エステルの分布を有する。さらに、PS20の4つのPOE鎖のそれぞれを脂肪酸でエステル化して、混合物中のPS20のモノエステルおよび高次エステル(HOE)(ジ-、トリ-および最大テトラエステル)バージョンを得ることが可能である。PS20の脂肪酸エステル規格は、下記表Aに示すように、種々の薬局方により設定されている。
【表A】
【0005】
PS20は、バイオ製剤中で加水分解し、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の出現を引き起こし得る。酵素(例えば、リパーゼ、エステラーゼなど。)は、エステル結合でPS20を切断して、遊離脂肪酸(FFA)および遊離頭部基またはポリオールを形成すると考えられている。FFAは、水溶液に難溶性であり、製剤の製造および貯蔵において、より頻繁に、またはより早期に、肉眼で見える粒子または肉眼で見えない粒子の形成をもたらし得、長期のタンパク質安定性および製剤の貯蔵寿命に実質的に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、特定の脂肪酸エステル分布を有するPS20製剤を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書のポリソルベート製剤は、遊離脂肪酸をもたらす分解による粒子形成の影響を受けにくい可能性がある。本開示はまた、ポリソルベートを含む製剤に関する。いくつかの実施形態では、これらは、医薬製剤の貯蔵寿命を延ばし、および/または分解された製剤および期限切れの製剤に起因する廃棄物を減らすのに役立ち得る。
【0007】
追加の目的および利点は、以下の説明に部分的に記載され、説明から部分的に明らかになるか、または実践によって習得され得る。目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成されるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0008】
本発明は、特に遊離脂肪酸をもたらす分解による粒子形成の影響を受けにくいと思われる特定の脂肪酸エステル分布を有するPS20の組成物、およびこれらのPS20組成物を含有する医薬製剤を提供する 本明細書の開示は、例えば、以下のような実施形態を含む。
【0009】
実施形態1は、1%以下のカプロン酸エステル、2.3%超10%以下のカプリル酸エステル、2.8%超10%以下のカプリン酸エステル、52.1%超60%以下のラウリン酸エステル、14%以上18.3%未満のミリスチン酸エステル、7%以上11.9%未満のパルミチン酸エステル、および6.4%未満のステアリン酸エステルを含む脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物である。
【0010】
実施形態2は、2.5%超、または3.5%超、または4%超、または4.6%以上であって、10%以下のカプリル酸エステルを含む、実施形態1に記載の組成物である。
【0011】
実施形態3は、3%超、または3.5%超、または4%超、または4.4%以上であって、10%以下のカプリン酸エステルを含む、実施形態1または2に記載の組成物である。
【0012】
実施形態4は、53%超、55%超、57%超、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載の組成物である。
【0013】
実施形態5は、14%以上18%未満、または17%未満、または16.5%未満、または16.1%以下のミリスチン酸エステルを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物である。
【0014】
実施形態6は、7%以上11%未満、または10%未満、または9.5%未満、または8.9%以下のパルミチン酸エステルを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物である。
【0015】
実施形態7は、6%未満、または5%未満、または1%未満のステアリン酸エステルを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物である。
【0016】
実施形態8は、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物である。
【0017】
実施形態9は、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.4%のカプリン酸エステル、約58%のラウリン酸エステル、約16.1%のミリスチン酸エステル、約8.9%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物である。
【0018】
実施形態10は、1%以下のカプロン酸エステル、4.2%~5.1%のカプリル酸エステル、4.0%~4.8%のカプリン酸エステル、52%~60%のラウリン酸エステル、14.5%~17.7%のミリスチン酸エステル、8.0%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物である。
【0019】
実施形態11は、1%以下のカプロン酸エステル、4.4%~4.8%のカプリル酸エステル、4.2%~4.6%のカプリン酸エステル、55%~60%のラウリン酸エステル、15.3%~16.9%のミリスチン酸エステル、8.5%~9.3%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物である。
【0020】
実施形態12は、1%以下のカプロン酸エステル、4.5%~4.7%のカプリル酸エステル、4.3%~4.5%のカプリン酸エステル、56.8%~59.1%のラウリン酸エステル、15.8%~16.4%のミリスチン酸エステル、8.7%~9.1%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物である。
【0021】
実施形態13は、薬物および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬製剤であり、薬学的に許容される賦形剤が、
脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物であって、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、2.3%超10%以下のカプリル酸エステル、2.8%超10%以下のカプリン酸エステル、52.1%超60%以下のラウリン酸エステル、14%以上18.3%未満のミリスチン酸エステル、7%以上11.9%未満のパルミチン酸エステル、および6.4%未満のステアリン酸エステルを含む、脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物を含む、医薬製剤である。
【0022】
実施形態14は、ポリソルベート20組成物が製剤の0.01%~0.2%(w/v)である、実施形態13に記載の医薬製剤である。
【0023】
実施形態15は、薬物がタンパク質、抗体、抗体断片、酵素、またはペプチドである、実施形態13または14に記載の医薬製剤である。
【0024】
実施形態16は、薬物がタンパク質である、実施形態15に記載の医薬製剤である。
【0025】
実施形態17は、薬物が抗体である実施形態15に記載の医薬製剤である。
【0026】
実施形態18は、薬物濃度が0.1%~30%(w/v)である、実施形態13~17のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0027】
実施形態19は、薬物濃度が5%~20%(w/v)である、実施形態18に記載の医薬製剤である。
【0028】
実施形態20は、ポリソルベート20組成物が、製剤の0.01%~0.12%、0.01%~0.08%、0.03%~0.1%、または0.04%~0.07%(w/v)である、実施形態13~19のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0029】
実施形態21は、ポリソルベート20組成物が、製剤の約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、または0.12%(w/v)である、実施形態13~20のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0030】
実施形態22は、ポリソルベート20組成物が製剤の約0.06%(w/v)である、実施形態13~21のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0031】
実施形態23は、pHが4~8、または5~7.5、または6.5~7.5、または6.8~7.2である、実施形態13~22のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0032】
実施形態24は、薬学的に許容され得る賦形剤が、水、アルコール、糖、緩衝剤、界面活性剤、安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、実施形態13~23のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0033】
実施形態25は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、2.5%超、または3.5%超、または4%超、または4.6%超であって、10%以下のカプリル酸エステルを含む、実施形態13~24のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0034】
実施形態26は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、3%超、または3.5%超、または4%超、または4.4%以上であって、10%以下のカプリン酸エステルを含む、実施形態13~25のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0035】
実施形態27は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、53%超、55%超、57%超、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、実施形態13~26のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0036】
実施形態28は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、14%以上であって、18%未満、または17%未満、または16.5%未満、または16.1%以下のミリスチン酸エステルを含む、実施形態13~27のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0037】
実施形態29は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、7%以上であって、11%未満、または10%未満、または9.5%未満、または8.9%以下のパルミチン酸エステルを含む、実施形態13~28のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0038】
実施形態30は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、6%未満、または5%未満、または1%未満のステアリン酸エステルを含む、実施形態13~29のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0039】
実施形態31は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態13~30のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0040】
実施形態32は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.4%のカプリン酸エステル、約58%のラウリン酸エステル、約16.1%のミリスチン酸エステル、約8.9%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸を含まない、実施形態13~31のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0041】
実施形態33は、1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物である。
【0042】
実施形態34は、3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸エステルを含む、実施形態33に記載の組成物である。
【0043】
実施形態35は、2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む、実施形態33または34に記載の組成物である。
【0044】
実施形態36は、56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、実施形態33~35のいずれか1つに記載の組成物である。
【0045】
実施形態37は、14.1%以上であって、18%以下、17%以下、16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む、実施形態33~36のいずれか1つに記載の組成物である。
【0046】
実施形態38は、7%以上10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む、実施形態33~37のいずれか1つに記載の組成物である。
【0047】
実施形態39は、2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む、実施形態33~38のいずれか1つに記載の組成物である。
【0048】
実施形態40は、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態33~39のいずれか1つに記載の組成物である。
【0049】
実施形態41は、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態33に記載の組成物である。
【0050】
実施形態42は、1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~16.9%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.7%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態33に記載の組成物である。
【0051】
実施形態43は、1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸エステルを含む、実施形態33に記載の組成物である。
【0052】
実施形態44は、5.8%以上9.8%以下のオレイン酸、および2.0%以下のリノール酸エステルをさらに含む、実施形態33~43のいずれか1つに記載の組成物である。
【0053】
実施形態45は、薬物および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬製剤であり、薬学的に許容される賦形剤が、
脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物であって、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む、脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物を含む、医薬製剤である。
【0054】
実施形態46は、ポリソルベート20組成物が製剤の0.01%~0.2%(w/v)である、実施形態45に記載の医薬製剤である。
【0055】
実施形態47は、薬物がタンパク質、抗体、抗体断片、酵素、またはペプチドである、実施形態45または46に記載の医薬製剤である。
【0056】
実施形態48は、薬物がタンパク質である、実施形態47に記載の医薬製剤である。
【0057】
実施形態49は、薬物が抗体である実施形態47に記載の医薬製剤である。
【0058】
実施形態50は、薬物濃度が0.1%~30%(w/v)である、実施形態45~49のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0059】
実施形態51は、薬物濃度が5%~20%(w/v)である、実施形態50に記載の医薬製剤である。
【0060】
実施形態52は、ポリソルベート20組成物が、製剤の0.01%~0.12%、0.01%~0.08%、0.03%~0.1%、または0.04%~0.07%(w/v)である、実施形態45~51のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0061】
実施形態53は、ポリソルベート20組成物が、製剤の約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、または0.12%(w/v)である、実施形態45~52のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0062】
実施形態54は、ポリソルベート20組成物が製剤の約0.06%(w/v)である、実施形態45~53のいずれか一つに記載の医薬製剤である。
【0063】
実施形態55は、pHが4~8、または5~7.5、または6.5~7.5、または6.8~7.2である、実施形態45~54のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0064】
実施形態56は、薬学的に許容され得る賦形剤が、水、アルコール、糖、緩衝剤、界面活性剤、安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、実施形態45~55のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0065】
実施形態57は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸を含む、実施形態45~56のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0066】
実施形態58は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む、実施形態45~57のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0067】
実施形態59は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む、実施形態45~58のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0068】
実施形態60は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、14.1%以上であって、18%以下、または17%以下、または16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む、実施形態45~59のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0069】
実施形態61は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、7%以上10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む、実施形態45~60のいずれか1つに記載の組成物である。
【0070】
実施形態62は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む、実施形態45~61のいずれか1つに記載の組成物である。
【0071】
実施形態63は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態45~62のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0072】
実施形態64は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸を含まない、実施形態45~63のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0073】
実施形態65は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~17.0%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、実施形態45~63のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0074】
実施形態66は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸を含む、実施形態45~63のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0075】
実施形態67は、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、5.8%以上9.8%以下のオレイン酸、および2.0%以下のリノール酸塩をさらに含む、実施形態45~66のいずれか1つに記載の医薬製剤である。
【0076】
実施形態68は、同一貯蔵条件に供される標準ポリソルベート20組成物を含む製剤と比較した場合、脂肪酸エステルの分解に起因する遊離脂肪酸粒子が少ない、実施形態45~67のいずれか1つに記載の製剤である。
【0077】
実施形態69は、高次エステル分解医薬品をさらに含み、遊離脂肪酸粒子の形成が観察される前に、他の点では同一の含有量を有し、同一条件下で貯蔵される標準ポリソルベート20組成物を含むHOE分解医薬品におけるよりも最大10%多くの脂肪酸エステルが遊離脂肪酸に分解され得る、実施形態45~68のいずれか1つに記載の製剤である。
【0078】
実施形態70は、遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される遊離脂肪酸粒子の数が、他の点では含有量および貯蔵条件が同一である標準ポリソルベート20組成物を含む製剤における遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される遊離脂肪酸粒子の数よりも少ない、実施形態45~69のいずれか1つに記載の製剤である。
【0079】
実施形態71は、遊離脂肪酸が、脂肪酸エステルの加水分解および/または酸化分解によって生成される、実施形態33~70のいずれか1つに記載の製剤である。
【0080】
実施形態72は、脂肪酸エステルの分解により、標準ポリソルベート20組成物を含む組成物または製剤中の遊離脂肪酸粒子形成と比較して、遊離脂肪酸粒子形成が遅延する、実施形態33~70のいずれか1つに記載の製剤である。
【0081】
実施形態73は、遊離脂肪酸粒子が肉眼で見える、実施形態72に記載の製剤である。
【0082】
実施形態74は、遊離脂肪酸粒子が肉眼で見えない、実施形態72に記載の製剤である。
【0083】
追加の目的および利点は、以下の説明に部分的に記載され、説明から部分的に明らかになるか、または実践によって習得され得る。目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成されるであろう。
【0084】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、いくつかの例示的な実施形態を示し、説明と共に、本明細書に記載の特定の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】
図1は、修飾HP PS20の脂肪酸エステル(FAE)仕様(点線の長方形の領域)をUSPのサブセットとして示す。修飾HP PS20のFAE目標レベルはドット付きの円で示し、HP PS20対照ロットのFAEレベルは白丸で示す。
【0086】
【
図2】
図2は、逆相UHPLCによって測定した適切なPS20のエステル分布を示す。モノエステルは5~15分の間で早期に溶出し、高次(ジ-およびトリ-)エステル(HOE)は15~20分の間に溶出する。
【0087】
【
図3A】
図3Aは、逆相MSによって測定した、修飾HP PS20ロット1~3および対照ロットHP PS20(w/v)由来の1% PS20中の未結合遊離脂肪酸の濃度(μg/mL)を示す。
【0088】
【
図3B】
図3Bは、ICP-MSによって測定した、修飾HP PS20ロット1~3および対照ロットHP PS20(w/v)由来の10% PS20中の金属Al、Cr、Fe、およびNi(ppb)の微量金属分析結果を示す。微量金属を10% PS20溶液中で測定した。Al、Cr、FeおよびNiのレベルは1ppbの定量限界(LOQ)を上回ったが、銅などの他の金属はLOQを下回った。
【0089】
【
図4】
図4A~
図4Dは、非固定化酵素カンジダ・アンタルクティカ(Candidaantarctica)のリパーゼB(CALB)およびシュードモナス・セパシア(Pseudomonascepacia)のリパーゼ(PCL)によって分解された修飾HP PS20ロット1および対照ロットHP PS20由来のPS20の逆相UHPLCによるエステル分布を示す。
図4Aは、修飾HP PS20ロット1に対するCALBの効果を示す。
図4Bは、修飾HP PS20ロット1に対するPCLの効果を示す。
図4Cは、HP PS20対照に対するCALBの効果を示す。
図4Dは、HP PS20対象に対するPCLの効果を示す。モノエステルは5~15分の間に早期に溶出し、高次(ジ-およびトリ-)エステルは15~20分の間に溶出する。CALBはモノエステルを優先的に分解し、PCLはPS20の高次エステルを主に標的とする。
【0090】
【
図5】
図5A~Bは、酵素を含有する酢酸ヒスチジン緩衝液中の非固定化酵素によるPS20の分解を示す。PS20濃度(%w/v)を混合モードHPLCELSDによって測定し、肉眼で見えない(2μm以上)粒子カウントを光遮蔽によって測定した。
図5Aは、CALB分解された修飾HP PS20およびHP PS20を示す。
図5Bは、PCLを分解した修飾HP PS20を示す。
【0091】
【
図6】
図6は、mAb-B、CおよびDの急速分解医薬品中の修飾HP PS20およびHP PS20のFFA粒子形成を比較するリアルタイム5℃安定性試験を示す。PS20濃度を混合モードHPLC ELSDによって経時的に測定した。ステアリン酸、パルミチン酸およびミリスチン酸の生成を逆相MSによって測定した。肉眼で見えない(2μm以上)粒子の測定をフローイメージング顕微鏡法によって行った。目視検査および強化目視検査の両方を毎週行った。肉眼で見える粒子の存在は矢印で示されている。VP=白黒背景下での目視検査による肉眼で見える粒子;EVI=強化された目視検査。
【0092】
【
図7】
図7A~
図7Fは、修飾HP PS20ロット1および対照ロットHP PS20由来のPS20を分解するためのmAb-B、CおよびDの高速分解DP製剤を使用したリアルタイム5℃安定性試験究の開始時(T0)および終了時(12週間)のエステル分布の逆相UHPLCによる測定を示す。
図7Aは、修飾HP PS20ロット1に対するmAb-Bの効果を示す;
図7Bは、修飾HP PS20ロット1に対するmAb-Cの効果を示す;
図7Cは、修飾HP PS20ロット1に対するmAb-Dの効果を示す;
図7Dは、対照ロットHP PS20に対するmAb-Bの効果を示す;
図7Eは、対照ロットHP PS20に対するmAb-Cの効果を示す;
図7Fは、対象ロットHP PS20に対するmAb-Dの効果を示す。モノエステルは12~22分の間に早期に溶出し、高次エステル(ジエステルおよびトリエステル)は22~30分の間に溶出する。
【0093】
【
図8】
図8A~Cは、14週で測定したリアルタイム5℃安定性試験のmAb-Bアーム由来の、遊離脂肪酸として同定された、肉眼で見える粒子および肉眼で見えないスラリーを示す。
図8Aは、mAb-B修飾HP PS20ロット1からの粒子の画像を示し、
図8Bは、mAb-B修飾HP PS20からの粒子の画像を示す。
図8Cは、FT-IR分光法を使用した濾過粒子の正規化吸光度スペクトル(任意の単位)を示す。mAb-CおよびmAb-Dについても同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0094】
【
図9】
図9は、5℃での薬物製品安定性試験の14週の時点で測定した粒子(不溶性画分)中の遊離脂肪酸(FFA)分布における、修飾HP PS20とHP PS20との間のFFA粒子形成の比較を示す。サンプルをフィルタにかけ、再懸濁し、逆相MSによって分析した。3つの製剤のうち、mAb-Dは、FFA粒子の発生の開始が最も遅かった。したがって、14週目において、mAb-D製剤中の粒子のFFA分布は、mAb-BおよびC製剤と比較して、粒子発生時の初期FFA分布の最も代表的なものである。FFA測定を2連で行い、範囲をエラーバーで示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
A.定義
特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0096】
本出願では、「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。多数項従属請求項の文脈では、「または」の使用は、1つよりも多くの先行する独立請求項または従属請求項のいずれかのみを指す。また、「要素」または「構成成分」などの用語は、特に明記しない限り、1つの単位を含む要素および構成成分と、1つよりも多くのサブユニットを含む要素および構成成分の両方を包含する。
【0097】
本明細書に記載の場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率の範囲、または整数範囲は、別段示されない限り、列挙された範囲内のあらゆる整数、および適切な場合、それらの分数(整数の10分の1および100分の1など)の値を含むと理解されるべきである。
【0098】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)で受け入れられている形式で示されている。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。測定値は、有効数字および測定に関連する誤差を考慮して、近似値であると理解される。
【0099】
本明細書で使用される場合、製剤中のPS20のパーセンテージ(「%」)は、特に明記しない限り、重量対体積(「w/v」)パーセンテージである。また、PS20組成物中の個々の脂肪酸のパーセンテージ(「%」)は、特に明記しない限り、PS20組成物中の脂肪酸の組成を測定するためのUSP/EP法を使用して測定されるガスクロマトグラムにおけるピーク面積パーセンテージである。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ポリソルベート20」または「PS20」は、ラウリン酸の添加前にソルビタンのエトキシル化によって形成されるポリソルベート型非イオン性界面活性剤を指す。ポリソルベート20(PS20)は、例えば、医薬製剤または他の種類の製剤中における生物製剤の凝集を防ぐために使用し得る。PS20は、種々の脂肪酸エステルの構造的に可変な混合物または分布であり、各脂肪酸エステルはモノエステルまたは高次エステル、HOEであり得る。「標準PS20組成物」は、薬局方の規格(例えば、上記の表Aを参照されたい)を満たすが、例えば本明細書の
図1に示されるような本明細書に開示される仕様を満たさないポリソルベート20のロットである。HP PS20は、標準PS20の一例である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸エステル」は、脂肪酸とアルコールとの組み合わせから生じるエステルのタイプを指し、脂肪酸は、飽和または不飽和のいずれかである長脂肪族鎖を有するカルボン酸である。脂肪酸は、偶数個、例えば4~28個の炭素原子の非分枝鎖を有し得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「遊離脂肪酸」または「FFA」は、脂肪酸エステルの長脂肪族鎖部分を指す。FFAは、例えば、脂肪酸エステルの分解によって生成される。遊離脂肪酸は可溶化されたままであってもよく、または凝集して凝集体または粒子を形成してもよい。
【0103】
本明細書で使用される場合、ヘキサン酸としても知られている「カプロン酸」は、化学式CH3(CH2)4COOHを有するヘキサンから誘導されるカルボン酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが6である(C6)。デカン酸の塩およびエステルは「カプロン酸エステル」と呼ばれる。
【0104】
本明細書で使用される場合、オクタン酸としても知られている「カプリル酸」は、構造式CH3(CH2)6COOHを有する飽和脂肪酸およびカルボン酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが8である(C8)。デカン酸の塩およびエステルは「カプリル酸エステル」と呼ばれる。
【0105】
本明細書で使用される場合、デカン酸またはデシル酸としても知られている「カプリン酸」は、式CH3(CH2)8COOHを有する飽和脂肪酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが10である(C10)。デカン酸の塩およびエステルは、「デカン酸エステル」または「カプリン酸エステル」と呼ばれる。
【0106】
本明細書で使用される場合、ドデカン酸としても知られている「ラウリン酸」は、式CH3(CH2)10COOHを有する飽和脂肪酸を指す。この酸は炭素数の長さが12である(C12)。ラウリン酸の塩およびエステルは「ラウリン酸エステル」として知られている。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ミリスチン酸」は、分子式CH3(CH2)12COOHを有する飽和脂肪酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが14である(C14)。その塩およびエステルは、一般に「ミリスチン酸エステル」または「テトラデカン酸エステル」と呼ばれる。
【0108】
本明細書で使用される場合、ヘキサデカン酸としても知られている「パルミチン酸」は、化学式CH3(CH2)14COOHを有する飽和脂肪酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが16である(C16)。デカン酸の塩およびエステルは「パルミチン酸エステル」と呼ばれる。
【0109】
本明細書で使用される場合、オクタデカン酸としても知られている「ステアリン酸」は、化学式CH3(CH2)16COOHを有する飽和脂肪酸を指す。この酸は炭素鎖の長さが18である(C18)。ステアリン酸の塩およびエステルは「ステアリン酸エステル」と呼ばれる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「オレイン酸」は、化学式CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOHを有する脂肪酸を指す。この酸の炭素長は18であり、不飽和度は1点である(C18:1)。ステアリン酸の塩およびエステルは「オレイン酸エステル」と呼ばれる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「リノール酸」は、化学式COOH(CH2)7CH=CHCH2CH=CH(CH2)4CH3を有する飽和脂肪酸を指す。この酸の炭素長は18であり、不飽和点は2点である(C18:2)。ステアリン酸の塩およびエステルは「リノール酸塩」と呼ばれる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「高次エステル」は、ポリソルベート20のポリオキシエチレン鎖のジ-、トリ-および最大テトラ-エステル型を指し、これは「モノエステル」型を有するものとは対照的である。ポリソルベート20の4つのポリオキシエチレン鎖の各々を脂肪酸でエステル化することで、混合物中にモノエステルおよび高次エステルをもたらし得る。高次エステル(HOE)ポリソルベート20の種は、脂肪酸エステルの任意の組み合わせを有し得、分子当たり1種類のみの脂肪酸エステルに限定されない。各ソルビタン環は、約20モル当量でエトキシル化され得る。さらに、ポリソルベート20頭部基は、ソルビタン環またはイソソルビド環のいずれかであってもよく、後者は、脂肪酸でエステル化され得る2つのポリオキシエチレン鎖のみを生ずる。PS20組成物のHOE含有量は、ポリソルベートエステル分布アッセイを使用して定量し得る。(例えば、
図2を参照されたい。)
【0113】
本明細書で使用される場合、「高次エステル分解医薬品」または「HOE分解医薬品」は、ポリソルベートエステル分布アッセイを使用して特定されるように、超高速逆相液体クロマトグラフィーアッセイにおいてPS20のHOEピーク面積をモノエステルピーク面積に対して経時的に減少させる任意の医薬品を指す(例えば、
図2および
図7A~
図7Fを参照されたい。)。
【0114】
本明細書で使用される場合、「凝集体」および「凝集」は、一緒になること、または例えば遊離脂肪酸鎖の凝集のように塊または全体として集まることを意味する。凝集した遊離脂肪酸鎖は、本明細書では粒子またはFFA粒子とも呼ばれ得る。凝集体は、自己凝集性であり得、または他の因子、例えば、凝集剤、沈殿剤、撹拌、または遊離脂肪酸鎖を一緒にする他の手段および方法の存在に起因して凝集し得る。「凝集しやすい」化合物は、特に撹拌によって他の分子と凝集することが観察されている化合物である。凝集は、溶液中の以前は透明であった製剤が濁った場合または沈殿物を含む場合など、または分子をサイズによって分離するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの方法によって視覚的に観察され得る。凝集は、肉眼で見えないFFA粒子をもたらし得、これは、光遮蔽またはフローイメージング顕微鏡を使用して定量化され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「薬物」は、医薬製剤に使用される任意の種類の活性成分を指す。薬物は、例えば、抗体、抗体断片、酵素、またはペプチドなどのタンパク質を含み得る。
【0116】
「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、線状または分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、また非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、自然に、または介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、もしくは任意の他の操作または改変、例えば、標識成分とのコンジュゲートにより改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類似体を含むタンパク質、ならびに当該技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、および一本鎖分子、ならびに抗体結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を含む。「抗体」という用語は、「抗体断片」および「抗原結合断片」を含む。「抗体断片」または「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の抗原結合部分および/または可変領域を含み、抗原に特異的に結合するインタクトな抗体の部分を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ:直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062[1995]):一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「酵素」は、化学反応を触媒する任意のタンパク質を指す。酵素の触媒機能は、その活性または酵素活性を構成する。酵素は、通常、それが行う触媒機能の種類、例えばペプチド結合の加水分解に従って分類される。
【0119】
「製剤」は、他の成分の中でもPS20を含み得る成分、例えばタンパク質、緩衝液、安定剤などの混合物を指す。場合によっては、製剤は水溶液などの液体溶液であるが、他の場合では凍結乾燥されていてもよい。「医薬製剤」または「治療用製剤」または「治療用調製物」などの用語は、少なくとも1つの活性成分および少なくとも1つの追加の成分または賦形剤を含み、活性成分の生物学的活性が哺乳動物対象において有効であることを可能にするような形態であり、「治療用途に適している」または「医薬用途に適している」調製物または組成物を指し、製剤全体が哺乳動物対象に対して許容できないほど毒性ではなく、製剤が投与される哺乳動物対象に対して許容できないほど毒性であるか、またはそれらを対象に対して許容できないほど毒性にする濃度である成分を含まないことを意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「安定な」製剤は、貯蔵時にその物理的および/または化学的安定性を保持する製剤である。安定性は、選択された温度にて選択された期間測定し得る。貯蔵中の粒子形成の程度、例えば肉眼で見える粒子製剤/または肉眼で見えない粒子製剤、または凝集の程度、または分解生成物の形成の程度、またはこれらの要因の任意の組み合わせを、例えば安定性の指標として使用し得る。
【0121】
薬物含有製剤の「安定性」を高めることは、(未改変の薬物含有製剤と比較して)その製剤中の凝集体の形成を減少させること、または防止することを含み得、またはその製剤中の肉眼で見える粒子および/または肉眼で見えない粒子の形成を低減または防止し;他の成分が薬物の安定性を維持するように作用し続け得るように、製剤の成分の分解生成物を低減または防止することを含む。
【0122】
「安定剤」という用語は、タンパク質および抗体などの大きく帯電した生体分子を安定化する薬剤を指す。場合によっては、界面活性剤または等張化剤が安定剤として作用し得る。
【0123】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」とは、表面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20およびポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグルコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウムまたはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)等が挙げられる。
【0124】
「等張化剤」という用語は、溶液の相対濃度を調整または維持するために使用される薬剤を指す。等張化剤の例としては、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの三価以上の糖アルコールなどの多価糖アルコールが挙げられる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」は、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によるpHの変化に抵抗する溶液を指す。
【0126】
「無菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物およびそれらの胞子を含まないか、またはそれらを本質的に含まない。
【0127】
B.PS20組成物
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、PS20中のより高濃度のミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、およびステアリン酸(C18:0)のより長鎖の脂肪酸エステルを含むPS20組成物は、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の形成をより受けやすくなる可能性がある。脂肪酸エステルの分解は、遊離脂肪酸(FFA)の形成をもたらす。したがって、より長鎖の脂肪酸エステルを含むPS20組成物は、肉眼で見えるFFA粒子、および肉眼で見えないFFA粒子の形成の影響を受けにくい可能性がある。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるPS20組成物は、USP/EP/JP仕様内に留まりながら、より低濃度のステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、およびミリスチン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、ステアリン酸エステルレベルは、市販の製剤中の約5~6%から約0%に低下する可能性がある。いくつかの実施形態では、短鎖脂肪酸エステル(すなわち、炭素鎖長C6、C8、C10およびC12の脂肪酸エステル)の濃度を濃縮する一方で、長鎖脂肪酸エステル(すなわち、炭素鎖長C14、C16およびC18の脂肪酸エステル)を最小化させ、または希釈する。
【0129】
本明細書では、1%以下のカプロン酸エステル、2.3%超10%以下のカプリル酸エステル、2.8%超10%以下のカプリン酸エステル、52.1%超60%以下のラウリン酸エステル、14%以上18.3%未満のミリスチン酸エステル、7%以上11.9%未満のパルミチン酸エステル、および6.4%未満のステアリン酸エステルを含むポリソルベート20組成物が提供される。
【0130】
いくつかの実施形態では、組成物は、2.5%超、または3.5%超、または4%超、または4.6%以上であって、10%以下のカプリル酸エステルを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、組成物は、3%超、または3.5%超、または4%超、または4.4%以上であって、10%以下のカプリン酸エステルを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、組成物は、53%超、55%超、57%超、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、組成物は、14%以上であって、18%未満、または17%未満、または16.5%未満、または16.1%以下のミリスチン酸エステルを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、組成物は、7%以上11%未満、または10%未満、または9.5%未満、または8.9%以下のパルミチン酸エステルを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、組成物は、6%未満、または5%未満、または1%未満のステアリン酸エステルを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、組成物は、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書では、1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物が提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、組成物は、3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸エステルを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、組成物は、2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、組成物は、56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、組成物は、14.1%以上であって、18%以下、または17%以下、または16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、組成物は、7%以上であって、10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、組成物は、2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない、請求項1に記載の組成物。
【0144】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~17.0%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0145】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸エステルを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、組成物は、5.8%以上9.8%以下のオレイン酸、および2.0%以下のリノール酸エステルをさらに含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.4%のカプリン酸エステル、約58%のラウリン酸エステル、約16.1%のミリスチン酸エステル、約8.9%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0148】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、4.2%~5.1%のカプリル酸エステル、4.0%~4.8%のカプリン酸エステル、52%~60%のラウリン酸エステル、14.5%~17.7%のミリスチン酸エステル、8.0%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステル塩を含まない。
【0149】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、4.4%~4.8%のカプリル酸エステル、4.2%~4.6%のカプリン酸エステル、55%~60%のラウリン酸エステル、15.3%~16.9%のミリスチン酸エステル、8.5%~9.3%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステル塩を含まない。
【0150】
いくつかの実施形態では、組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、4.5%~4.7%のカプリル酸エステル、4.3%~4.5%のカプリン酸エステル、56.8%~59.1%のラウリン酸エステル、15.8%~16.4%のミリスチン酸エステル、8.7%~9.1%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステル塩を含まない。
【0151】
C.製剤
少なくとも一種の薬物と少なくとも一種の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤も本明細書で提供され、薬学的に許容され得る賦形剤は、上記の脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物を含む。したがって、いくつかの製剤では、製剤は、脂肪酸エステルエステルがポリソルベート20組成物の1%以下のカプロン酸エステル、2.3%超10%以下のカプリル酸エステル、2.8%超10%以下のカプリン酸エステル、52.1%超60%以下のラウリン酸エステル、14%以上18.3%未満のミリスチン酸エステル、7%以上11.9%未満のパルミチン酸エステルおよび6.4%未満のステアリン酸エステルを含むポリソルベート20組成物を含む。別の製剤では、製剤は、脂肪酸エステルを含むポリソルベート20組成物であって、ポリソルベート20組成物の脂肪酸エステルが、1.0%以下のカプロン酸エステル、2.6%以上6.6%以下のカプリル酸エステル、2.4%以上6.4%以下のカプリン酸エステル、55.0%以上60.0%以下のラウリン酸エステル、14.1%以上18.1%以下のミリスチン酸エステル、7.0%以上10.9%以下のパルミチン酸エステル、および2.0%以下のステアリン酸エステルを含む脂肪酸エステルを含む、製剤である。
【0152】
いくつかの実施形態では、1種以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤が含まれる。他の実施形態では、製剤は、少なくとも一つの薬物およびポリソルベート20組成物から本質的になる。
【0153】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬物は、抗体、抗体断片、酵素、またはペプチドなどのタンパク質を含む。
【0154】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、薬物の濃度は、製剤の0.1%~30%(w/v)、例えば1%~30%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~10%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、または15%~25%である。
【0155】
本明細書の医薬製剤では、総界面活性剤濃度は、0.001%~1%、0.001%~0.5%、0.005%~0.2%、0.01%~0.1%、または0.02%~0.06%、または0.03%~0.05%であり得る。いくつかの実施形態では、総界面活性剤濃度は、製剤の0.01%~1%(w/v)、例えば0.01%~0.5%、0.01%~0.25%、0.01%~0.12%、または0.01%~0.2%である。本明細書の医薬製剤では、ポリソルベート20濃度は、0.001%~1%、0.005%~0.2%、0.01%~0.1%、または0.02%~0.06%、または0.03%~0.05%であり得る。いくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、製剤の0.01%~1%(w/v)、例えば0.01%~0.5%、0.01%~0.25%、0.01%~0.12%、または0.01%~0.2%である。
【0156】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、製剤の0.01%~0.2%、0.01%~0.12%、0.01%~0.08%、0.03%~0.1%、または0.04%~0.07%(w/v)を含む。
【0157】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、製剤の約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、または0.12%(w/v)を含む。
【0158】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、ポリソルベート20組成物は、製剤の約0.06%(w/v)である。
【0159】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、pHは4~8、または5~7.5、または6.5~7.5、または6.8~7.2である。
【0160】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、2.5%超、または3.5%超、または4%超、または4.6%以上であって、10%以下のカプリル酸エステルを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.6%以上であって、6.6%以下のカプリル酸エステルを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、3%超、または3.5%超、または4%超、または4.4%以上であって、10%以下のカプリン酸エステルを含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、2.6%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4%以上、または4.4%以上であって、6.4%以下のカプリン酸エステルを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、53%超、55%超、57%超、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、56%以上、57%以上、58%以上であって、60%以下のラウリン酸エステルを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、14%以上であって、18%未満、または17%未満、または16.5%未満、または16.1%以下のミリスチン酸エステルを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、14.1%以上であって、18%以下、または17%以下、または16%以下、または15%以下のミリスチン酸エステルを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、7%以上であって、11%未満、または10%未満、または9.5%未満、または8.9%以下のパルミチン酸エステルを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、7%以上であって、10.9%未満、または10%以下、または9%以下、または8%以下のパルミチン酸エステルを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、6%未満、または5%未満、または1%未満のステアリン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、2%以下、または1.5%以下、または1%以下のステアリン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0171】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.4%のカプリン酸エステル、約58%のラウリン酸エステル、約16.1%のミリスチン酸エステル、約8.9%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0172】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、約4.6%のカプリル酸エステル、約4.8%のカプリン酸エステル、約57.0%のラウリン酸エステル、約16.2%のミリスチン酸エステル、約9.4%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルエステルを含まない。
【0173】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、3.7%~5.2%のカプリル酸エステル、3.7%~5.2%のカプリン酸エステル、56.3%~57.2%のラウリン酸エステル、15.9%~17.0%のミリスチン酸エステル、8.8%~9.8%のパルミチン酸エステルを含み、検出可能なステアリン酸エステルを含まない。
【0174】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、1%以下のカプロン酸エステル、3.5%~5.5%のカプリル酸エステル、3.5%~5.5%のカプリン酸エステル、55%~58%のラウリン酸エステル、15%~17.5%のミリスチン酸エステル、8.5%~10%のパルミチン酸エステル、および約0.1%以下のステアリン酸エステルを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、医薬製剤中のポリソルベート20組成物は、5.8%以上9.8%以下のオレイン酸エステル、および2.0%以下のリノール酸エステルをさらに含む。
【0176】
医薬製剤のいくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る賦形剤は、水、アルコール、糖、緩衝剤、界面活性剤、安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPS20組成物を含む水性製剤は、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、および等張化剤から選択される1種以上の賦形剤をさらに含み得る。本発明の水性製剤は、pH緩衝溶液中で調製し得る。本明細書に開示される製剤に有用な緩衝液は、約pH4.5~約9.0の範囲のpHを有し得る。特定の実施形態では、pHは、約pH4.5~約7.0の範囲、約pH4.5~約6.5の範囲、約pH4.5~約6.0の範囲、約pH4.5~約5.5の範囲、約pH4.5~約5.0の範囲、約pH5.0~約7.0の範囲、約pH5.5~約7.0の範囲、約pH5.7~約6.8の範囲、約pH5.8~約6.5の範囲、約pH5.9~約6.5の範囲、約pH6.0~約6.5の範囲、または約pH6.2~約6.5の範囲である。特定の実施形態では、液体製剤は、約4.7~約5.2の範囲、約5.0~6.0の範囲、または約5.2~約5.8の範囲のpHを有する。
【0177】
pHをこの範囲内に制御し得る緩衝剤の例としては、有機酸および無機酸ならびにそれらの塩が挙げられる。例えば、酢酸塩(例えば、酢酸ヒスチジン、酢酸アルギニン、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ヒスチジン、コハク酸アルギニン、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、およびそれらの組み合わせ。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液および製剤の所望の等張性に応じて、約1mM~約600mMであり得る。
【0178】
場合により、追加の界面活性剤を医薬製剤に添加し得る。例示的な追加の界面活性剤としては、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188など)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の総量は、例えば、製剤化された薬物の凝集を減少させ得、および/または製剤中の微粒子の形成を最小化し、および/または吸着を減少させるように添加し得る。
【0179】
等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1重量%~25重量%、または1重量%~5重量%の任意の量で存在し得る。例示的な等張化剤としては、多価糖アルコール、例えば3価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0180】
いくつかの実施形態では、製剤は、インビボ投与のための医薬製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、無菌である。いくつかの実施形態では、製剤は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、製剤は、液体、溶液形態で保存される。いくつかの実施形態では、製剤を濃縮形態で保存し、使用前に希釈する。製剤は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって無菌にし得る。本明細書の治療製剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルなどの滅菌容器に入れることが可能である。
【0181】
D.PS20組成物およびPS20含有製剤の作製および試験方法
市販のPS20の特定の組成物は、貯蔵期間の初期(例えば、T<400日)に分解することが見出されており、場合によっては、PS20を含む製剤中に望ましくない肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子をもたらす。
【0182】
本明細書に記載され、USP/EP/JP仕様内にある濃度のステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびミリスチン酸エステルを含むポリソルベート20組成物は、当技術分野で公知のプロセスを使用して製造し得る。
【0183】
脂肪酸エステルの分布を決定する方法は、例えば、European Pharmacopeia 10.0 rev 01/2017:0426:Polysorbate 20,第3589-3590頁に見出され得る。その文献には、例えば、PS20(2.4.22、方法C)中の脂肪酸の組成を決定する方法が記載されている。方法は、Fats and Fixed Oils(401),Fatty Acid Compositionを参照して、USP(2014年9月1日付け)Polysorbate 20のInterim Revision Announcementの章にも見出され得る。
【0184】
遊離脂肪酸濃度を測定するための方法は、例えば、Tomlinson Aら,Molecular pharmaceutics.2015;12(11):3805-15)に見出され得る。
【0185】
PS20含有組成物の安定性は、例えば、市販の粒子計数器を用いる、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の可視化および/または画像化を含む既知の方法を用いて測定し得る。例えば、凝集は、サイズ排除クロマトグラフィーによって評価され得る。また、数時間にわたる撹拌などの試験を行い、続いてサイズ排除クロマトグラフィーまたは目視検査を行い得る。例えば、いくつかの実施形態では、100rpmで数時間、例えば24時間の撹拌を使用して、製剤中の凝集体または微粒子の程度を決定し得る。
【0186】
場合によっては、本明細書で提供される組成物は、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の存在についてアッセイをし得る。一実施形態では、サンプルをガラスバイアルに入れ、チンダル光の存在下でサンプルを回転させることによって、可視粒子を観察し得る。一実施形態では、肉眼で見えない粒子は、高精度(HIAC)粒子カウンタを使用して分析される。いくつかの実施形態では、HIAC装置は、10mL/分の流量、0.1mLの風袋容量、および0.4mLのサンプル容量に設定され得る。特定の実施形態では、サンプルのキャリーオーバーによる測定誤差を防ぐために、各サンプルの最初のランを破棄し、0.4mLの一部の4回のランをしようしてサンプルを分析し得る。2、5、10、15、および25ミクロンのフィルタサイズを分析に使用し得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、PS20組成物は、例えば、脂肪酸エステル分布、酸価、ヒドロキシル価、けん化価、含水量割合を測定することによって分析し得る。次いで、これらの値を、関連する米国薬局方および/または欧州薬局方および/または日本薬局方の仕様と比較し得る。シャローグラジエントアッセイを行って、モノ-、ジ-およびトリ-エステル含有量を測定し得る。PS20組成物中の遊離脂肪酸(FFA)のレベルは、脂肪酸質量分析法によって測定される。金属イオン含有量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって試験し得る。アルミニウムおよびカルシウムなどの金属イオンは、遊離脂肪酸核形成を引き起こし、PS20の酸化電位を上昇させる可能性がある。
【0188】
PS20ロットについて、以下の機能的および安定性の試験を行ってもよい。
【0189】
バイアル撹拌試験は、バイアル内で撹拌ストレスにさらされたときにPS20がタンパク質を保護する能力を示し得る。1つの方法では、緩衝液中の試験タンパク質は、空気-水界面で凝集しやすい撹拌感受性分子として使用される。PS20組成物は、濃度を0.02%~0.08%などに上昇させて添加される。サンプルをアームシェーカー上で室温にて70rpmで24時間撹拌する。この時間に、器具の横に静的制御装置を配置する。サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)によって各サンプルを分析して、撹拌サンプルおよび対照サンプルにおけるタンパク質凝集および粒子の形成を調べる。
【0190】
小規模のIVバッグ撹拌試験も実施し得る。この試験の目的は、製剤をバイアルから取り出し、注入前にIVバッグで希釈した後に製品を保護するために必要なPS20の濃度をモデル化することである。この試験では、試験タンパク質を様々な濃度のPS20を含む生理食塩水で希釈し、例えば、180RPMで5℃で2時間、静的対照を5℃で2時間、オービタルシェーカーで攪拌する。バイアル撹拌試験と同じ指標(肉眼で見えない/肉眼で見える形成および凝集)を、生理食塩水中で撹拌した後に分析する。それ未満で凝集および/または粒子が観察されるPS20の濃度を決定して、IVバッグの界面保護性能の比較または改善を確立し得る。例えば、凝集は、SE-UHPLCを使用して上記のように評価し得る。
【0191】
PS20材料の酸化傾向についても試験し得る。0.2%w/vのPS20を配合したヒスチジンアセテートプラセボを、例えば40℃で1ヶ月間試験し得る。この試験におけるPS20の分解の主な機構は酸化的であると予想される。過酸化物をクエンチするタンパク質が存在しないので、40℃のストレス温度でプラセボ製剤ではPS20の酸化分解が加速される。PS20の酸化分解がプラットフォーム安定剤によって緩和されることを確実にするために、10mMのメチオニンアームを試験に追加し得る。混合モード蒸発光散乱検出器(ELSD)で測定されたPS20の損失は、酸化分解の尺度として使用される。
【0192】
PS20を分解することが知られている薬剤の存在下で、例えば、5℃、で3ヶ月間の安定性試験を使用し、PS20含有製剤のPS20分解、FFA生成および粒子形成傾向を推測することも可能である。PS20を分解することが示されており、5℃で3ヶ月以内にFFA粒子を形成させることが予想される分子を添加してもよい。FFA濃度ならびに凝集および粒子形成を、上記の技術によって、12週間にわたって毎週など、試験中に評価し得る。酵素ベースのPS20分解試験を行って、FFAおよび関連粒子を形成するPS20組成物の傾向を評価し得る。例えば、カンジダ・アンタルクティカのリパーゼB(CALB)はモノエステルを特異的に分解するが、シュードモナス・セパシアのリパーゼ(PCL)は高次エステルを特異的に分解する。
【0193】
これらの各酵素をPS20組成物に別々に添加し、PS20濃度、および肉眼で見えない粒子の形成を経時的に分析することによって、FFA粒子の形成をモニターし得る。
【0194】
CALBおよびPCLの酵素作業溶液は、例えば、遊離酵素を20mM酢酸ヒスチジン緩衝液にそれぞれ約0.01U/mLおよび12.5U/mLで溶解して、粒子の形成が約3時間以内に確実に起こるように調製し得る。次いで、10% PS20をこれらの酵素溶液に添加して、最終濃度を0.1%w/vにする。溶液を、10mLの充填体積を有する複数の15ccバイアルに分割する。混合モードELSDによるPS20濃度およびHIACによる肉眼で見える粒子を、時間0およびその後30分ごとに合計180分間測定する。
【0195】
上記の分析のいずれにおいても、本明細書の開示によるPS20組成物は、例えば、より広範な薬局方の基準(例えば、上記の表Aを参照されたい)を満たすが、本明細書に開示される仕様(「基準PS20」)を満たさないPS20組成物と比較され得る。修飾HP PS20は、本開示によるPS20組成物の一例である。HP PS20は、標準PS20の一例である。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPS20組成物またはPS20組成物を含有する製剤において、脂肪酸エステルの分解は、他の点では含有量および保存条件が同一であるが標準ポリソルベート20組成物を含む組成物または製剤中の遊離脂肪酸粒子形成と比較して、遊離脂肪酸粒子の形成が遅延する。
【0197】
いくつかの実施形態では、PS20を含む製剤が提供され、この製剤は、標準ポリソルベート20組成物を含むが他の点では含有量が同一であり、同じ貯蔵条件に供される製剤と比較した場合、脂肪酸エステルの分解に起因する遊離脂肪酸粒子がより少ない。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤は、高次エステル(HOE)分解医薬品をさらに含む。HOE分解医薬品を含むいくつかの実施形態では、特許請求の範囲に記載のPS20組成物を使用する場合、遊離脂肪酸粒子の形成が観察される前に、他の点では同一の含有量を有し、同じ貯蔵条件下である標準ポリソルベート20組成物を含むHOE分解医薬品におけるよりも最大10%多くのエステル化脂肪酸が遊離脂肪酸に分解され得る。HOE分解医薬品は、ポリソルベートエステル分布アッセイを使用して同定されるように、PS20のHOEピーク面積を経時的に減少させる製剤である。
【0199】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPS20組成物またはPS20組成物を含有する製剤において、遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される粒子の数は、標準ポリソルベート20の組成物または他の点では含有量および貯蔵条件が同一である標準ポリソルベート20組成物を含む製剤における遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される粒子の数よりも少ない。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPS20組成物またはPS20組成物を含有する製剤は、標準ポリソルベート20の組成物または他の点では含有量および貯蔵条件が同一である標準ポリソルベート20組成物を含む製剤における遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される粒子の数よりも、遊離脂肪酸の金属核生成によって生成される粒子が少ない。
E.キット
本発明の別の実施形態では、ポリソルベート分解を低減するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるPS20組成物のいずれかを含むキットが提供される。一実施形態では、そのようなキットは、本明細書で提供される少なくとも1つのPS20組成物、薬物、および少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、ならびに本明細書で提供される薬学的に許容される製剤を調製するための説明書を含む。
【0201】
F.モデル
PS20の4つのPOE鎖の各々を脂肪酸でエステル化して、混合物中のPS20のモノエステルおよび高次エステル(HOE)(ジ-、トリ-および最大テトラエステル)バージョンを得ることが可能である。高次エステル(HOE)PS20種は、脂肪酸エステルの任意の組み合わせを有し得る。1分子当たり1種類の脂肪酸エステルに限定されない。各ソルビタン環は、約20モル当量でエトキシル化される。さらに、PS20頭部基はソルビタン環またはイソソルビド環のいずれかであってもよく、後者は脂肪酸14、30、31でエステル化され得る2本のPOE鎖のみをもたらす。
【0202】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、より低濃度の高次エステルを含むPS20組成物は、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の形成に対して感受性が高い可能性がある。脂肪酸エステルの分解は、遊離脂肪酸(FFA)の形成をもたらす。より高次のエステルは、PS20を含む製剤中のFFAの溶解を促進し得る。
【0203】
一態様では、本開示はまた、例えば、ポリソルベート20(PS20)を含む組成物中の遊離脂肪酸粒子の形成を予測するために使用し得る方法を提供する。そのような方法は、例えば、
a.組成物のpHを測定し;
b.組成物中のPS20濃度を測定し;
c.PS20の全ピーク面積分率に対する高次エステルを測定し;
d.以下の式を使用して組成物中の遊離脂肪酸エステルの溶解度を計算することを含む。
(式中、β
1は非イオン化脂肪酸の溶解度であり、β
2は実験的に決定されたpKaであり、[PS20]は組成物中のPS20濃度であり、HOEはPS20の総ピーク面積に対する高次エステル分率である。
【0204】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるであろう。本明細書に記載の実施例および実施態様が例示のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修正または変更が当業者に提案され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることは理解されよう。
【実施例】
【0205】
実施例1.PS20組成物の特徴付けおよび試験
以下の実験により、遊離脂肪酸の形成に対する、以下の2種類のPS20組成物の感受性を比較した:標準薬局方仕様を満たす標準PS20である1ロットのHP PS20;、本明細書に記載のより狭い仕様セットを満たすPS20組成物である3ロットの修飾HP PS20。以下の表1および
図1を参照されたい。実験には、遊離脂肪酸(FFA)および関連FFA粒子の形成のためのPS20組成物を含む試験配合物が含まれていた。
【0206】
A.材料および方法
試薬および材料
モノクローナル抗体(mAb)A、B、CおよびDは、GenentechInc.(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)から入手したCHO由来モノクローナル抗体である。MAb-BおよびCはIgG1サブクラスのものであり、一方、mAb-DはIgG4サブクラスのものである。mAbを、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む一連のクロマトグラフィー工程によって精製した。MAb-AおよびBは、低イオン強度ヒスチジン塩酸塩緩衝液中で30mg/mLで製剤化され、一方、mAb-CおよびDは、特に明記しない限り、界面活性剤または他の賦形剤を含まない高イオン強度アルギニンコハク酸緩衝液中でそれぞれ150および180mg/mLで製剤化された。mAb製剤のpHは5.5~6.0の範囲であった。Tween(商標)20高純度(HP PS20)およびTween(商標)20修飾高純度(修飾HP PS20)は、Croda(エジソン、ニュージャージー州)から購入した。L-ヒスチジン、L-アルギニンおよびヒスチジン塩酸塩はAjinomoto(ローリー、ノースカロライナ州)から入手した。酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび氷酢酸はJT Baker(フィリップスバーグ、ニュージャージー州)から購入した。ダンシル-L-メチオニンシクロヘキシルアンモニウム塩は、Santa Cruz Biotechnology(ダラス、テキサス州)から購入した。酵素ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)リパーゼ(MML)、カンジダ・アンタルクティカ(Candida(antarctica)リパーゼ(CAL)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ(PCL)およびカンジダ・アンタルクティカリパーゼB(CALB)、ならびにL-メチオニン、塩化アルミニウム六水和物およびグルタルアルデヒドは、Sigma Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。ReliZyme(商標)HA403/Mビーズは、ResindionS.r.l.(ビナスコ、イタリア)から入手した。Elga PURELAB(登録商標)(ウッドリッジ、イリノイ州)システムからの超純水を水溶液の調製に使用した。安定性試験で使用した種々のサイズのホウケイ酸ガラスバイアルは、Schott AG(マインツ、ドイツ)から、West Pharmaceutical Services(Lionville,Pennsylvania)からの対応するサイズのDaikyo D777-1ストッパーと共に購入した。種々のサイズのポリエチレンテレフタレートコポリエステル(PETG)スクリュートップバイアルは、Thermo Fisher Scientific(ウォルサム、マサチューセッツ州)から購入した。
【0207】
B.アッセイ
ポリソルベート20濃度
PS20は、Hewittら(1)に記載の方法から適合させた蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えた混合モード高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量した。使用した装置パラメータ、カラム、勾配および移動相は、本発明者らの以前の試験(2)に記載されたものと同一であった。
【0208】
ポリソルベート20のエステル分布
タンパク質を含有するサンプル中のPS20エステル分布を、Liら(3)によって使用されたものと同様の二次元液体クロマトグラフィー(2DLC)システム設定を使用して評価した。Agilent 1290 Infinity 2DLCシステムを、35psiの窒素圧力で作動するCoronaUltra帯電エアロゾル検出器(CAD)と連結した。混合モード法(一次元目)を使用して逆相法(二次元目)と組み合わせてタンパク質を除去し、PS20エステルの組成を試験した。混合モードカラムから溶出したPS20エステルを500μLのステンレス鋼ループに捕捉し、次いでエステル亜種のさらなる分離のために二次元に送った。一次元はOasis MAXカラム(20mm×2.1mm、30μm)を使用し、二次元はAcquity BEH C18カラム(150mm×2.1mm、1.7μm)を使用した。一次元に使用した移動相AおよびBは、それぞれ2%酢酸水溶液およびアセトニトリル中2%酢酸であった。一次元の勾配は以下の通りであった:0~1分、2%B;1~1.1分、2~20%B;1.1~5分、20%B;5~5.1分、20~90%B;5.1~9分、90%B;9-9.1分、90~2%B;9.1~13分、2%B。二次元に使用した移動相AおよびBは、それぞれ水および80/20(v/v)アセトニトリル/イソプロパノールであった。二次元の勾配は以下の通りであった:0~2.4分、5.0%B;2.4~2.5分、5~45%B;2.5~20分、45~100%B;20~25分、100%B;25~25.1分、100~5%B;25.1~30分、5%B。
【0209】
タンパク質を含まないサンプル中のPS20エステル分布を、Thermo Corona Ultra CADを備えた一次元Waters Acquity超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)H-クラスシステムを用いた逆相クロマトグラフィーによって評価した。カラム、勾配および移動相は、上記の2DLC CAD法の二次元に使用したものと同一であった。
遊離脂肪酸の定量
総(可溶性+不溶性画分)遊離脂肪酸
【0210】
Honemannら(5)に記載されているように、質量検出器に連結された逆相クロマトグラフィー法を使用して、DPおよびPS20原料中の総FFAを検出した。簡潔に説明すると、80:20アセトン:メタノールに溶解した1μg/mLの標識FFA内部標準を含む200μLの沈殿溶液を50μLのサンプルに添加した。サンプルを室温で1時間インキュベートし、続いて15,000×gで15分間、25℃で2回遠心分離した。100μLの上清を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)バイアルに分注した。タンパク質の有無にかかわらず、サンプル中のFFAレベルを分析する場合にも同様の手順を使用した。分析は、Waters Qda(商標)質量分析計に連結されたWaters Acquity H-Class UHPLCで行った。カラム、移動相、勾配およびMS装置の設定は、Honemannら(5)によって記載されたものに基づいた。各FFAのモノアイソトピックピークおよびアイソトピックピークの両方を合計し、定量のためにそれぞれの内部標準と比較した。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸を定量した。
【0211】
不溶性画分中の遊離脂肪酸
DPで観察された粒子のFFA分布を分析するために、粒子を濾過によって単離し、再懸濁し、逆相質量分析によって分析した。内径(ID)10mmのガラス漏斗を利用して、孔径0.8μmの金コーティングポリカーボネートフィルターで濾過を行った。2.0mLの氷冷サンプルを漏斗に添加し、400トルの穏やかな真空圧力を加えた。均質性を確保するためにサンプリング前にサンプルを旋回させた。各フィルター上に単離した粒子を、分析のために直ちに500μLのメタノールに再懸濁した。製剤緩衝液対照も各DPに含めた。各サンプルおよび対照を二重濾過で試験した。次いで、「総FFA」定量化セクションに記載されたものと同じ勾配およびLC-MS条件を使用してサンプルを適切に分析したが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の外部標準曲線に対して定量した。緩衝液対照のFFAレベルを、対応するDPサンプルのFFAレベルから差し引いた。
【0212】
目視検査
目視検査は、USP<790>(8)およびPh.Eurに従って、検査点で2000ルクス~3750ルクスの白色蛍光を使用して、黒色背景および白色背景に対して行った。2.9.20(9)。バイアルを穏やかに旋回させ、各バックグラウンドに対して約5秒間検査した。2人の無関係の分析者が肉眼で見える粒子を観察したとき、陽性結果が記録された。
【0213】
強化された目視検査
Bosch(登録商標)卓上型APK-51型を用いて、光強度および拡大率を高めて目視検査を行った。バイアルを回転させた後、10倍の高解像度カメラおよび底部LEDライトを使用して目視検査を行った。2人の無関係の分析者が粒子を観察したとき、陽性結果が記録された。
【0214】
光遮蔽による肉眼で見えない粒子
Hachから入手した3000AサンプラーおよびHRLD-150センサを備えたHIAC9703+液体粒子計数システムを使用した光遮蔽によって、累積的な肉眼で見えない粒子を計数した。Thermo Fisher Scientificから購入した5μmポリスチレンCount-CALビーズ標準を使用して、装置の性能を検証した。実験サンプル中の、2μm以上、5μm以上、10μm以上、および25μm以上の累積的な肉眼で見えない粒子数を測定した。4つの1 mLアリコートを各測定のためにサンプリングし、最後の3つのアリコートの結果を最初の1つを廃棄した後に平均した。
【0215】
フローイメージング顕微鏡法による、肉眼で見えない粒子
フローイメージング顕微鏡法によって、累積的な肉眼で見えない粒子数および形態を測定した。測定は、Fluid Imaging Technologies,Inc.から入手した10倍対物レンズ、80×700μmフローセル、および1mLシリンジポンプを備えたFlowCam(登録商標)8100システムを使用して実施した。各測定のために、700uLのサンプルを200uL/分の流量でフローセルを通してポンプ輸送した。捕捉された画像は、粒子分類のためのガイドとしてSiskaら(6)およびWerkら(7)による以前の試験を使用して、サイズおよび形態に基づいて粒子タイプ(FFA、シリコーン油、タンパク質性、気泡、または種々雑多)によって分類された。気泡として分類された全ての画像を分析から除外した。
【0216】
可溶性モノクローナル抗体の凝集
可溶性mAb凝集を、Waters Acquity UHPLC H-Class BioシステムでTosoh TSKgel UP-SW 3000カラム、2μm、4.6mm×300mmを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、全ての高分子量形態(HMWF)の総和%として定量した。サンプルを室温で0.2Mリン酸カリウム、0.25M塩化カリウム、およびpH 6.2で0.3mL/分の定組成流量で溶出した。溶出ピークを紫外線(UV)ダイオードアレイ検出器によって280nmでモニターした。
【0217】
ICP-MSによる金属分析
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によってPS20原料中の微量金属を定量した。HP PS20および修飾HP PS20を、PS20の酸性加水分解を回避するために分析の直前に5%硝酸で10%(w/v)に希釈した。測定は、Thermo Fisher Scientific XシリーズII ICP-MS装置を用いて行った。少量の各サンプルをアルゴンプラズマトーチを使用してその元素成分に解離させ、これによりサンプルをイオン化元素成分に解離させ、続いて従来の質量分析を使用して質量によって同定する。使用されるICP-MS法の検出範囲は、1~100ppbにサンプル希釈係数を乗じたものである。
【0218】
粒子の同定
DPの穏やかな濾過によって粒子を単離した。孔径0.8μmの金コーティングポリカーボネートフィルターを用いて、内径4mmの濾過漏斗を組み立てた。0.5mlのサンプルを軽度の真空(600トール)下でフィルタにかけることによって、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子スラリーを単離した。捕捉された粒子を0.1mLのMilli-Q水ですすぎ、NicoletiN10-MX赤外線顕微鏡を使用してFT-IR顕微鏡によって分析した。単離された粒子/スラリーを含有する濾過領域全体を約5mm×5mmの視野モザイクで捕捉した。長さが100μmを超える、肉眼で見える粒子、および150μm×150μmの開口部を有する、肉眼で見えない粒子スラリー領域を識別のために選択した。特注のデータベースとの60%スペクトル一致を使用して、粒子を同定した。
【0219】
C.試験設計
非固定化酵素を用いたPS20分解
修飾HP PS20ロット1、2および3ならびにHP PS20対照ロットをそれぞれ水中に、10%w/vに希釈した。酵素作業溶液は、pH5.5の低イオン強度酢酸ヒスチジン緩衝液に、非固定化CALBおよびPCLをそれぞれ0.01U/mLおよび12.5U/mLの濃度で溶解することによって調製した。PS20加水分解反応を開始するために、10%w/vのPS20ストック溶液を0.1%w/vの最終濃度まで酵素作業溶液中に、別個に添加した。次いで、5℃でサンプルを50ccガラスバイアルに入れた。混合モードHPLC ELSDによるPS20濃度、および光遮蔽による肉眼で見えない粒子を、選択した5℃の時点で測定した。試験時間が短く室温平衡化できなかったため、氷冷したサンプルで肉眼で見えない粒子を測定した。HP PS20対照ロットを分解し、それぞれの修飾HP PS20ロットと共に分析して、日ごとの変動性を説明した。
【0220】
製剤中のPS20分解
低イオン強度mAb-B製剤を、修飾HP PS20ロット1、2および3ならびにHP PS20対照ロットで別個にスパイクして、0.02%w/vの最終濃度にした。高イオン強度mAb-CおよびmAb-D製剤を、修飾HP PS20ロット1およびHP PS20対照ロットのみでスパイクして、0.02%w/vの最終濃度にした。PS20の酸化分解を最小限に抑えるために、メチオニンを抗酸化剤として全ての製剤に10mMで添加した。5mL容量の各製剤を6ccのガラスバイアルに充填し、5℃で12週間安定させた。各製剤の5つの専用バイアルを、黒色および白色の背景の下での目視検査および増大した光強度および10倍の倍率の下での増強された目視検査によって、肉眼で見える粒子の存在について毎週繰り返しモニターした。肉眼で見えない粒子についても、フローイメージング顕微鏡法によって毎週モニターした。サンプルを、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の測定の前に室温に平衡化した。LC-MSによる不溶性画分のFT-IRおよびFFA濃度測定による粒子同定を、5℃で14週間後に各製剤について行った。各製剤の材料を追加で毎週抜き取り、-70℃で凍結させた。凍結アリコートを解凍し、全ての条件および時点について、混合モードHPLC ELSDによるPS20濃度、逆相UHPLC CADによるPS20エステル分布およびLC-MSによる総(不溶性および可溶性画分)FFA濃度測定について試験した。
【0221】
遊離脂肪酸の金属核生成
酵素ムコール・ミエヘイのリパーゼ(MML)およびカンジダ・アンタルクティカのリパーゼ(CAL)を、Grafら(10)に記載の手順に基づいてReliZyme(商標)HA403/Mビーズに固定化した。修飾HP PS20ロット1~3およびHP PS20対照ロットのストック溶液(水中5%w/v)は、各酵素を使用して部分的に10%が分解した(混合モードELSDによって確認)。部分的に分解したPS20ストック溶液を、0~250ppbのアルミニウム(Al)を含むpH5.5の低イオン強度酢酸ヒスチジン緩衝液に、公称0.04%w/vのPS20濃度(0.036%w/vの非分解PS20および0.004%w/vの分解PS20)まで別々にスパイクした。バイアルを5℃で保存し、最大21日間の光遮蔽を使用して、白黒の背景および肉眼で見えない粒子の下での目視検査によって、肉眼で見える粒子の形成について評価した。目視検査の前に、バイアルを室温に少なくとも4時間平衡化させた。肉眼で見えない粒子については、粒子数の初期変化を捕捉するために冷却サンプル溶液を使用して測定を行った。非分解PS20を含有するサンプルを対照として含めた。
【0222】
D.結果および考察
分析的および機能的比較可能性を評価するために、3ロットの修飾HP PS20および1ロットのHP PS20(対照)を並列試験で評価した。外部金属核生成因子の存在下および非存在下でPS20加水分解試験および金属核生成試験を行うことによって、ポリソルベートについて、FFA粒子レベルを互いに対して比較した。
【0223】
表1に示すように、3ロットの修飾HP PS20は、HP PS20と比較して、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびミリスチン酸エステルのレベルは低かった。例えば、HP PS20対照ロットは、3ロットの修飾HP PS20の0~0.1、8.8~9.7、および15.9~16.9と比較して、それぞれ6、12、および18%で比較的高レベルのステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、およびミリスチン酸エステルを含んでいた。
【表1】
【0224】
高次エステル画分
高次エステル(HOE)画分は、酵素分解速度、FFA可溶化能および表面活性に影響を及ぼし得るPS20の属性である。DP製剤中に存在するヒドロラーゼは、PS20のモノエステルおよびHOEに対して様々な特異性を有し得る。Zhangら(4)によって使用されたDPのようにモノエステルを優先的に分解するものもあれば、Liら(3)によって使用されたDPのようにHOEを標的とするものもある。HOE画分の変化は、観察された分解の特異性に応じて、DPのPS20分解速度に影響を及ぼし得る。例えば、HOE画分の増加は、加水分解酵素によって切断される基質の開始レベルが高いため、HOE分解DPにおけるPS20分解速度を増加させ得る。分解速度に加えて、HOE分率はPS20(2)のFFA可溶化能に直接影響する。PS20のHOEは、同量のモノエステルよりもFFAを良好に可溶化する。修飾HP PS20ロット1、2および3のHOEピーク面積分率は、HP PS20の4%以内であった。例えば、Doshiら(11)で使用されたHP PS20ロットは、HOEピーク面積分率が42%であったのに対して、Fishら(12)で使用されたロットは36%であった。以前に公開されたFFA溶解度モデルは、5%未満のHOEピーク面積分率の差が、FFA溶解度において、ごくわずかの変化(3%未満)をもたらすと予測している(2)。その後の実験で、HOEピーク面積割合のわずかな違いが材料特性に大きな影響を与えないことを確認した。
【0225】
PS20原材料中の遊離脂肪酸レベル
HP PS20原料は、PS20合成中にポリオキシエチレン(POE)鎖へのエステル化反応を受けなかった低レベルの未結合FFAを含有することが知られている。修飾HP PS20およびHP PS20の間の残留FFAレベルを比較することは、それらが各グレードの全体的なFFA粒子感受性に寄与し得るので重要である。ステアリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸のレベルは、1%w/vのHP PS20と比較して、1%w/vの修飾HP PS20では低く、ラウリン酸はそれに対応して高かった(
図3A)。修飾HP PS20の合成に使用されるFFAブレンドはまた、HP PS20と比較して、長鎖FFAのレベルが低く、短鎖FFAのレベルが高かった。修飾HP PS20およびHP PS20の両方について、原料からの全体的なFFAの寄与は、各FFAの水溶解限界に対して低い。例えば、以前に公開されたFFA溶解度モデルは、pH5.5で0.02%w/vのPS20製剤中でパルミチン酸溶解度は約1ug/mLであると予測されている(2)。これらの結果に基づいて、PS20原料は、両方のポリソルベートについて同じ製剤中で約パルミチン酸に0.1ug/mL寄与している。
【0226】
PS20原料の微量金属含有量
アルミニウム(Al
3+)のような微量金属イオンは、FFAと相互作用してFFA金属錯体を形成する可能性があり、これは錯体を形成していないFFAの溶解限界未満で水性配合物から析出し得る(13)。Al含有量は、両ポリソルベートについて10%w/vのPS20で60ppb未満であり(
図3B)、これは、0.02~0.06%w/vのPS20濃度を有する典型的なDP配合物で0.4ppb未満のAlに変換される。FFAの金属誘起核生成は、10ppbを超えるレベルのAl
3+で起こることが以前に示されている(13)。したがって、修飾HP PS20およびHP PS20原料の両方で観察された微量のAlは無視できると考えられ、いずれかのPS20グレードのFFA金属核生成傾向に影響を及ぼす可能性は低い。鉄(Fe
3+)、銅(Cu
2+)、クロム(Cr
3+)およびニッケル(Ni
2+)のような微量の遷移金属イオンが、ポリソルベートの自己酸化を触媒することが知られている(14,15,16,17)。10%w/vの修飾HP PS20およびHP PS20の間で、明確な傾向はなく、Fe、Ni、およびCrのいくらかの差が観察された(
図3B)。例えば、Feレベルは、修飾HP PS20ロット3で最も高く、続いてHP PS20対照ロット、次いで修飾HP PS20ロット1および2であった。これらの差の有意性を理解するために、40℃プラセボ安定性試験およびメチオニン代用(ダンシル-メチオニン)酸化試験において、修飾HP PS20の酸化傾向をHP PS20と比較した(データは示さず)。酸化試験の結果は、修飾HP PS20およびHP PS20が酸化分解に対して同様の感受性を有することを実証しており、これは、微量のFe、NiおよびCrレベルで観察された差が酸化に対する感受性に影響を及ぼすようには見えないことを示している。
【0227】
酵素的PS20分解およびFFA粒子形成
外部核形成因子の非存在下で溶液中でFFA粒子を形成するリスクに関して、修飾HP PS20がHP PS20とどのように比較するかを評価するために、PS20を非固定化酵素によって加水分解するか、または迅速なPS20分解を伴う製剤(DP)製剤中で加水分解する2組の実験を行った。さらに、金属核生成因子の存在下でのFFA粒子リスクを評価する実験も、事前に分解させたPS20を用いて行った;本試験では、修飾HP PS20およびHP PS20の両方が固定化酵素によって分解された。
【0228】
非固定化酵素を用いたPS20分解
市販の非固定化カルボン酸エステルヒドロラーゼカンジダ・アンタルクティカのリパーゼ(CALB)およびポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)を使用して、修飾HP PS20およびHP PS20を人工的に加水分解した。次いで、加水分解されたサンプルにおいてPS20分解、および肉眼で見えない粒子をモニターした。肉眼で見える粒子は、HP PS20を使用した同様の試験設定(18,11)において、同時にまたは肉眼で見えない粒子の発生と同時または後に発生することが以前に示されているので、この試験ではモニターしなかった。CALBおよびPCLは、PS20分解に対して特異性が異なり、これにより、CALBおよびPCLを、異なるポリソルベート間のFFA粒子形成を比較するための効率的なモデル系として使用することが可能になる。CALBはモノエステルを優先的に分解するのに対して、PCLは修飾HP PS20およびHP PS20の両方において高次エステル(HOE)を標的とする(
図4)(11,19)。
【0229】
CALBは、修飾HP PS20の3つのロット、およびHP PS20対照ロットを同様の速度で分解した(
図5A)。CALBによって分解されると、修飾HP PS20およびHP PS20サンプルは、約40%が分解された後に、肉眼で見えない(2μm以上)粒子が1000粒子超/mLの急激な増加を示した。PCL試験では、修飾HP PS20の3つのロット全てがHP PS20よりもわずかに速く分解した(
図5B)。特定のFAE鎖長に対する酵素特異性が異なることに起因して、修飾HP PS20およびHP PS20の間では分解速度の小さな差が予想されることに留意することが重要である(21,21)。修飾HP PS20のFAE仕様は、HP PS20に適用されるUSP/EP/ChP仕様のサブセットであるため、HP PS20の異なるバッチ間に分解速度の同様の変動が既に存在する(表1および
図1)。
【0230】
HP PS20と比較して修飾HP PS20は、わずかに分解が速いにもかかわらず、肉眼で見えない(2μm以上)粒子の発生は遅延していた。HP PS20の3つのロット全てにおいて、HP PS20が30%分解した後、より早い段階で肉眼で見えない粒子(2μm以上)が増加したのとは異なり、40%が分解した後に肉眼で見えない粒子(2μm以上)が1000粒子以上/mLと急激に増加した。CALBおよびPCL試験についての5、10および25μm以上の肉眼で見えない粒子についても、2μm以上の粒径の場合と同じ傾向が観察された(データは示さず)。
【0231】
PCL試験において、HP PS20と比較して、CALB試験でHP PS20の肉眼で見えない粒子の発生の遅延は、モノエステルと比較し、HOEのステアリン酸エステル含有量が高い可能性を示している。修飾HP PS20は、ステアリン酸エステル含有量が6%であるHP PS20対照ロットと比較して、0%に近く、ステアリン酸エステル含有量は非常に低い(表1)。したがって、ステアリン酸は、HOEが標的化される場合の修飾HP PS20と比較して、HP PS20におけるFFA粒子の早期発生の根本原因である可能性がある。しかし、モノエステルが標的化される場合、パルミチン酸は、両方のポリソルベートの粒子発生の根本原因である可能性がある。修飾HP PS20およびHP PS20の間のパルミチン酸エステルの差は3%未満である
【0232】
以前に実証されたように、HOE分解DPは、HOEと比較してモノエステルのFFA可溶化能力が低下しているため、モノエステル分解DPよりもFFA粒子形成のリスクが実質的に高い(2)。PCL試験の結果により、HP PS20を修正HP PS20で置き換えることで、FFA粒子発生前に少なくとも10%のさらなる分解を可能となって、HOE分解DPにおいて実質的な利益を有すると予想されることが示されている。修飾HP PS20によって得られる利点は、本発明者らの試験で使用されたものよりも、HP PS20の粒子が発生しやすいロット(例えば、おけるステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびミリスチン酸エステルの濃度が薬局方で許容される仕様の上限であるロット)と比較して大きい可能性がある。
【0233】
製剤中のPS20分解
PS20が5℃で急速に分解するモノクローナル抗体(mAb)製剤(DP)製剤バッチ(mAb-A、mAb-B、mAb-CおよびmAb-D)を使用して、修飾HP PS20およびHP PS20の間でFFA粒子形成を比較した。試験したmAbについて、修飾HP PS20およびHP PS20の間で分解速度は同様であった。5℃で12週間後、両方のポリソルベートは、mAb-B製剤で約60%、mAb-C製剤で50%、mAb-D製剤で30%分解した(
図6)。分解パターンは、mAbおよび2つのポリソルベートにわたって同様であり、モノエステルおよびHOEの両方を標的とした(
図7)。ステアリン酸、パルミチン酸およびミリスチン酸は、3つ全てのmAb製剤における修飾HP PS20と比較して、HP PS20においてより速い速度で生成された。mAb-A製剤では、両方のポリソルベートについて、肉眼で見える粒子(目視検査および増強された目視検査の両方による)および肉眼で見えない(2μm以上)粒子の発生が4週間の時点で起こった。修飾HP PS20ロット2および3のmAb-B試験では、ロット1と同じ傾向が観察された(データは示さず)。mAbs-CおよびDでは、それぞれのHP PS20製剤の2週間後に、修飾HP PS20製剤で強化目視検査によって粒子が観察された(
図6)。目視検査により、両方のポリソルベートについて同じ時点;mAb-Cについては11週間およびmAb-Dについては12週間で肉眼で見える粒子が発生した。肉眼で見えない(2μm以上)粒子も同様に発生したが、mAb-C製剤およびD製剤の両方において、修飾HP PS20と比較してHP PS20のカウントが高かった。5μm以上、10μm以上および25μm以上の肉眼で見えない粒子について、全ての配合物における2μm以上の粒径について同じ傾向が観察された(データは示さず)。さらに、肉眼で見えない粒子形態は、3つのmAbおよび2つのポリソルベートにおいて類似しており、先に記載されたような特徴的なFFAフレーク状および針状粒子が観察された(20)。mAb-B、CおよびD製剤中の粒子を0.8μmの金ポリカーボネートフィルターで14週間フィルタにかけた。粒子を単離しようとした結果、少数の別個の粒子を含むスラリーが得られ、その全てがFT-IR分光法によってFFAと同定された(
図8A~C)。
【0234】
全体として、5℃のDP安定性試験の結果により、HP PS20グレードと比較して、修正HP PS20グレードのFFA粒子のわずかな遅延が実証されている。3つ全てのmAb製剤の分解パターンは、モノエステルおよびHOEの両方を標的とした。この試験では、CALB試験と同様に、パルミチン酸が両方のポリソルベートの粒子発生の根本原因であると仮定された。この仮説は、14週目に3つのmAb製剤の粒子中のFFA含有量を測定することによって確認された。3つの製剤のうち、mAb-Dは、FFA粒子の発生の開始が最も遅かった。したがって、14週目において、mAb-D製剤中の粒子のFFA分布は、mAb-BおよびC製剤とは異なり、粒子発生時の初期FFA分布の最も代表的なものである。mAb-D製剤中の粒子は、修飾HP PS20およびHP PS20において、ステアリン酸、ミリスチン酸またはラウリン酸に対して最も高い割合のパルミチン酸を含有し(
図9)、パルミチン酸が最初に沈殿したことが示された。mAb-BおよびC製剤中の粒子(不溶性画分)は、両方のポリソルベートについて、他の長鎖FFAに対して最も高い割合のミリスチン酸を含有していた。PS20は分解し続けるが、初期発生粒子では分解しないが、劣化したFFA粒子(20)では高いミリスチン酸レベルが以前に観察されている。したがって、mAb-BおよびC製剤の粒子中の高いミリスチン酸含有量は、それらが劣化しており、早期発生粒子を代表するものではないことをさらに示す。興味深いことに、ステアリン酸は、HP PS20製剤よりも低いレベルではあるが、修飾HP PS20 mAb-B製剤の粒子中に存在していた。これは、CoAがステアリン酸エステル含有量が0%を示すが、修飾HP PS20には依然としていくらかのステアリン酸エステルが存在し得ることを示している。しかし、ステアリン酸は、mAb-D製剤中の粒子のFFA分布によって実証されるように、修飾HP PS20中の粒子のトリガー因子である可能性は低い。
【0235】
加水分解時にFFA粒子を形成する傾向は、標準PS20と比較して、修飾HP PS20ではより低かった。PS20の分解パターンがHOEを特異的に標的とした場合、効果はより顕著であった。HOE分解DPにおいてHP PS20を修飾HP PS20で置き換えることにより、FFA粒子の発生前に少なくとも10%のさらなる分解が可能になり得る。さらに、修飾HP PS20は、標準PS20と比較して、分解時に核生成してFFA金属塩を形成する傾向が低いことが示された。修飾HP PS20によって得られる利点は、本発明者らの試験で使用されたものよりも粒子が発生しやすいロットのHP PS20(ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびミリスチン酸エステルの上端で製造される)と比較して、さらに大きくなる可能性がある。全体として、データは、PS20中に長鎖FAEが存在すると、分解時にFFA粒子を形成しやすくなることを示している。PS20原料中のFAEレベルに対するより厳しい制御することにより、FFA粒子形成の発生が低減し、一貫性を改善することによって、PS20劣化に対する他の緩和努力を強化し得る。
【0236】
遊離脂肪酸の金属核生成
DPガラスバイアルから浸出するNaAlO2およびCaCl2などの外部核生成因子の存在下では、FFAの溶解度が低下する(13)。負に荷電したFFAは、Al3+などの多価陽イオンと相互作用して不溶性FFA錯体を形成し得、これは錯体を形成していないFFAの水溶解限界をはるかに下回る濃度で水溶液中に沈殿する(13)。FFA鎖長が長くなることにより、肉眼で見えるFFA金属塩の開始を加速すると予想され、これは、修飾HP PS20がHP PS20と比較してFFA金属核生成のリスクが低い可能性があることを示唆している(13)。修飾HP PS20およびHP PS20が金属FFA錯体を形成する傾向を、10%分解PS20中で0~250ppbのAl3+を含有する緩衝水溶液にスパイクすることによって比較した。修飾HP PS20およびHP PS20の両方を、HOEおよびCALを標的とし、モノエステルおよびHOEの両方を分解する固定化酵素MMLを使用して分解した(10)。添加溶液中の公称PS20濃度は0.04%w/vであった。その後、サンプルを5℃に置き、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子の形成についてモニターした。
【0237】
CAL試験では、Al
3+レベルがHP PS20で増加したため、肉眼で見える粒子の発生が早くなることが観察された(表2)。3ロットの修飾HP PS20は、全てのAl
3+レベルにおいて、HP PS20と比較して、肉眼で見える粒子の発生が遅く、容器あたりの粒子が少なかった。さらに、修飾HP PS20では、100ppbのAl
3+を含むサンプルでのみ肉眼で見える粒子が観察されたが、50または250ppbのAl
3+サンプルでは観察されなかった。これらの結果は、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などの長鎖FFAが、HP PS20で観察されるFFAの早期核形成に役割を果たすことを示している。修飾HP PS20は、HP PS20と比較して10%酵素分解後に長鎖FFAのレベルが低くなると予想される。その結果、50ppbのAl
3+は、修飾HP PS20で凝集して肉眼で見えるサイズまで粒子の成長を誘発するのに十分な完全錯体かFFAを生成するには不十分であり得る。対照的に、250ppbのAl
3+サンプルは、あまりにも多くの核形成部位を有する可能性があり、したがって、完全に錯体化した3:1FFA:Al塩よりも可視粒子に合体する可能性が低い比較的多数の部分的に錯体化した(FFA:Al比1:1または2:1)FFAを有する可能性がある。
【表2】
【0238】
MML試験では、CAL試験と同様に、HP PS20のAl
3+レベルの上昇と共に肉眼で見える粒子がより早く発生することが観察された(表3)。修飾HP PS20のロット1および2は、50ppbおよび100ppbのAl
3+含有サンプルのHP PS20と同様に粒子が発生した。修飾HP PS20ロット1および2の250ppbのAl
3+群には、おそらく核形成部位が多すぎ、部分的に錯化しているため、肉眼で見える粒子は観察されなかった。修飾HP PS20ロット3は、Alを含まない対照中に肉眼で見える粒子が含まれており、FT-IRによるタンパク質の汚染として同定された。したがって、このサンプルサブセットは試験から除外した。
【表3】
【0239】
MML試験においてHP PS20および修飾HP PS20で、50および100ppb Al3+で同様の肉眼で見える粒子の発生が確認されたのは、CALと比較してMMLによる10%分解PS20溶液中のFFA濃度が高いことに起因し得る。MMLは、モノエステルおよびHOEの両方を分解するCALとは異なり、HOE(ジエステルおよびトリエステル)を主に分解する。したがって、MMLは、劣化したPS20 1マイクログラム当たり、化学量論的により多量のFFAを生成する可能性がある。HP PS20および修飾HP PS20の両方のMMLサンプル中のFFA濃度は、50および100ppbのAl3+でのそれらの核生成傾向の間の差を解決するには高すぎる可能性がある。
【0240】
5℃で21日間の光遮蔽による累積的な肉眼で見えない(2μm以上)粒子数は、両酵素の修飾HP PS20と比較して、250ppbのAl3+含有HP PS20サンプルで高かった(表2および3)。50ppbおよび100ppbのAl3+サンプルでは、2つのポリソルベート間で肉眼で見えない粒子数は同程度であった。これらの結果は、HP PS20と比較して修飾HP PS20におけるFFA金属塩粒子の発生が遅延することを裏付ける証拠を提供する。しかし、全てのサンプルについて肉眼で見えない(2μm以上)粒子数が1000粒子/mL未満であったことを考慮すると、ポリソルベート間で観察された差は有意ではないと考えられる。全体として、結果は、PS20分解時のFFAの金属核生成およびその後の可視粒子の形成のリスクが、HP PS20と比較して改良HP PS20では低減されることを示唆している。
【0241】
機能的特徴づけ
修飾HP PS20グレードは、上記の例に示すように、劣化時のFFA粒子形成を減少させる。さらに、修飾HP PS20グレードは、HP PS20と比較して材料の機能損失を示さなかった。例えば、修飾HP PS20およびHP PS20の酸化傾向は、PS20酸化分解およびメチオニン酸化の両方に関して同等であった。10mM濃度のメチオニンにより、両方のPS20グレードの酸化分解が緩和し得た。さらに、バイアルおよびi.v.バッグによる撹拌試験では、より低いレベルおよび長鎖FAEのより良好な制御を含む改変HP PS20グレードが、mAbを気液界面応力から保護する点でHP PS20と比較して同等の機能性を実証したことが示された。
【0242】
結論
修飾HP PS20は、HP PS20と比較してFFA粒子を形成する傾向が低いが、これは、おそらくFFAがより可溶性の高い組成のためである。PS20の分解パターンがHOEを特異的に標的とした場合、効果はより顕著であった。HOE分解医薬品を含む製剤では、修飾HP PS20は、FFA粒子発生前のHP PS20と比較して少なくとも10%のさらなる分解を可能にし、FFA粒子の形成を遅延し得る。さらに、修飾HP PS20は、HP PS20と比較して、加水分解によるFFA金属塩の発生開始が遅延することを示した。データは全体的に、改変HP PS20が、全体的な製剤安定性を維持しながらFFA粒子形成リスクを低減することによって、バイオ医薬品のためのHP PS20と比較して、目的の界面活性剤により適していることを示唆している。
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【0243】
実施例2.バイオ医薬品における遊離脂肪酸粒子形成の予測の改善:ポリソルベート20分解中のエステル分布の組み込み
PS20中の脂肪酸エステルは遊離脂肪酸(FFA)を形成する可能性があり、これはPS20含有製剤中に肉眼で見える粒子または肉眼で見えない粒子の形成をもたらし得る。より高次のエステルは、PS20を含む製剤中のFFAの溶解を促進し得る。PS20の分解生成物は、HOEの分解から生じるモノエステルを含み得;例えば、脂肪酸エステルの1つが切断された場合、ジエステルの分解はモノエステルをもたらし得る。したがって、PS20の分解により、出発原料と比較して、分解後に溶液中に残存するPS20のエステル分布が変化する可能性がある。
【0244】
本開示はまた、例えば、PS20を含む製剤のためのモデルであって、pHおよびPS20濃度、ならびにPS20エステル分布およびFFA溶解度に対するそれらの影響を考慮に入れたモデルを提供する。このモデルは、製剤のpHを特定のFFAのpKaより高くすると、FFAのイオン化形態が非イオン化形態よりも著しく可溶性であるため、指数関数的にその溶解度が増加すると予測する。また、このモデルにより、FFAの溶解度がPS20濃度の増加と共に増加することが予測される。このモデルはまた、精度を改善するための追加の要因として、酵素分解による変化するエステル分布の寄与を組み込んでいる。
【0245】
モデルを作成するために、最初に、一定のPS20濃度で種々の製剤pHでFFA溶解度を測定した。この関係をHenderson-Hasselbalchの式を変形したものに当てはめて、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸のそれぞれのpKaおよび非イオン化FFAの溶解度を実験的に決定した。FFAの溶解度は、それぞれのFFAのpKaに近づき、それを超えるにつれて、pHの増加と共に増加する。pH依存性は、pHがより高い溶液中ではイオン化FFA(非イオン化画分よりも著しく可溶性)の割合が高いことに起因するものであった。第二に、一定のpHで種々のPS20濃度でFFAの溶解度を測定した。このデータを経験的に導出された関数に当てはめた。最後に、pHおよびPS20濃度の関数としてFFA溶解度を記述する個々の式を、式1に要約された1つの半経験的関係に組み合わせた。
式中、β
1は非イオン化脂肪酸の溶解度であり、β
2は実験的に決定されたpKaである。ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸についてのβ
1およびβ
2の値を表4に列挙する。
【表4】
【0246】
モデルをさらに更新するために、PS20をモノエステルおよびHOEに分画し、それらを異なる質量比で混合することによって、「模擬劣化」したPS20(MDPS20)を生成した。MD PS20sは、加水分解されたPS20の潜在的なエステル分布を模倣するために、%HOE質量分率の範囲に及ぶ。FFA溶解度およびその後の粒子リスクのより正確なモデルを生成するために、種々の濃度のMD PS20溶液でFFA溶解度を測定した。第二に、溶解度モデルの更新において、式1の「PS20項」を、FFA溶解度に影響を与える第三の変数として、全PS20含有量に加えてPS20エステル分布を含むように修正した。PS20濃度が低下するにつれて、FFA溶解度も低下することがわかった。式1からのpH項を式2と組み合わせることにより、pH、PS20濃度およびHOEピーク面積分率の任意の組み合わせでのFFA溶解度の推定が可能になる。式2は以下の通りである。
【0247】
式中、HOEは、PS20の全ピーク面積分率に対する高次エステルである。
【0248】
式1および式2を橋渡しするために、まず、式2を用いて係数Rを算出した。Rは、所望のPS20濃度およびHOEピーク面積分率(分子)でのFFA溶解度対0.04%(w/v)PS20およびHOEピーク面積分率0.41(分母)でのFFA溶解度の比として式3aによって定義される。式3aおよび式3bは以下の通りである。
これは以下のように単純化される。
RはpHに依存しないと予想され、式1のpH項と掛け合わせて、式4で表わされる精密化モデルのFFA溶解度の最終式が得られる。式4は以下の通りである。
式中、β
1は非イオン化脂肪酸の溶解度であり、β
2は実験的に決定されたpKaであり、HOEはPS20の総ピーク面積に対する高次エステルである。
【0249】
式4に示されるこの半経験的関係を利用して、そのpH、PS20濃度およびHOEピーク面積分率に基づいて、5℃における所与の製剤緩衝液中のラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の溶解度を予測し得る。このモデルの1つの仮定は、ミリスチン酸およびパルミチン酸の溶解度がPS20濃度およびHOEピーク面積分率の関数としてラウリン酸の溶解度と同様に変化するというものである。本発明者らは、種々のpHおよびPS20濃度で測定および予測されたFFA溶解度を比較することによってこの仮定を以前に検証しており、新しいモデル36でも当てはまると予想される。
【0250】
最終モデルは、pHおよびPS20分解速度が同様の製剤が、PS20のモノまたはHOEのいずれかに対する分解の特異性に応じて、粒子形成に対して非常に異なる傾向を有し得る理由を説明するのに役立つ。また、HOEを分解する製剤、特に低pHで製剤化された製剤は、加水分解PS20分解によるFFA粒子形成のリスクが最も高いことも示唆される。
【0251】
このモデルを貯蔵寿命にわたるバイオ医薬品中の粒子予測のためのツールとして利用するために、5℃の安定時点で以下の測定を推奨する。1)製剤pH2)総PS20濃度(混合モードHPLCELSDを使用)および3)HOEピーク面積分率(浅い勾配UHPLCCADを使用)。これらの測定により、モデルを使用して、各安定時期でのラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の溶解度限界を予測することが可能になる。FFA溶解度限界値を経時的に測定されたFFA量の測定値と比較し、交点を見つけるために外挿することは、FFAがいつ沈殿して肉眼で見える粒子または肉眼で見えない粒子を形成すると予想されるかを予測するのに役立ち得る。
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【国際調査報告】