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特表2023-542967オート麦由来β-(1-3)-(1-4)-グルカン製剤および癌治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】オート麦由来β-(1-3)-(1-4)-グルカン製剤および癌治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20231004BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C08B37/00 C
A61K31/716
A61K9/08
A61K47/02
A61P35/00
A61P19/08
A61K36/899
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518503
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021052213
(87)【国際公開番号】W WO2022067188
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/083,283
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チャン,メイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C090
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD26
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB26
4C088AB75
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA12
4C088CA16
4C088MA17
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZA96
4C088ZB26
4C090AA01
4C090AA04
4C090BA23
4C090BA24
4C090BB12
4C090BB35
4C090BB36
4C090BB52
4C090BC10
4C090CA14
4C090DA23
(57)【要約】
約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物。
【請求項2】
少なくとも約92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、98重量%、99重量%以上の前記オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約2重量%未満のタンパク質および0.001重量%未満の脂肪を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンが、THP1細胞培養物への適用時に、THP1細胞を、活性化マーカーCD80、CD86、MHC II、およびCD11cの発現上昇、炎症性サイトカインTNFαおよびIL-12の産生増大、ならびに食作用の強化を特徴とするDC様表現型を有する細胞へ変える、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
約5EU/kg未満のエンドトキシンレベルを有する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容可能な担体が、PBSを含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
約1mg/ml~約5mg/mlの前記オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む注入可能溶液を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの産生方法であって、
β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を用意すること、
前記水性懸濁液の水性抽出物を、少なくとも1種の塩沈殿剤で分別沈殿させて、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを得ること、を含む、方法。
【請求項10】
前記β-グルカンオート麦ぬか濃縮物が、少なくとも60重量%のグルカン濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の塩沈殿剤が、塩の混合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記塩の混合物が、硫酸アンモニウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水性抽出物が、前記水性懸濁液を、前記水性懸濁液中の可溶性β-グルカンを溶解するのに効果的な時間にわたり、約75℃~約90℃に加熱すること、前記水性懸濁液を冷却すること、および前記冷却した水性懸濁液から前記β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性抽出物を収集することにより得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記分別沈殿が、2つ以上の分別ステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記分別沈殿が第1の分別ステップを含み、前記第1の分別ステップが、第1の沈殿物および第1の上清を形成するのに効果的な濃度の第1の塩沈殿剤を前記水性懸濁液の前記水性抽出物に加えること、および前記第1の上清および前記第1の沈殿物を分離することを含み、前記第1の上清が約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記分別沈殿が第2の分別ステップを含み、前記第2の分別ステップが、第2の沈殿物および第2の上清を形成するのに効果的な濃度の第2の塩沈殿剤を前記分離した第1の上清に加えること、および前記第2の沈殿物および前記第2の上清を分離することを含み、前記第2の上清が約175kDa未満、約180kDa未満、約185kDa未満、または約190kDa未満の最大β-グルカン分子量を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の沈殿物の水溶液を形成すること、および前記第2の沈殿物の水溶液を透析して残留している第1の塩沈殿剤および第2の塩沈殿剤を前記第2の沈殿物の水溶液から除去すること、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アルコールを前記透析した水溶液に添加し、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有する前記オート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを沈殿させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の塩沈殿剤が、前記第2の塩沈殿剤と同じ組成を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の塩沈殿剤および前記第2の塩沈殿剤が、塩の混合物を含み、前記混合物中の少なくとも1種の塩が、硫酸アンモニウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の塩沈殿剤が、前記第2の塩沈殿剤が前記第2の上清に添加されるw/w%とは異なるw/w%で前記第1の上清に添加される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項9~21のいずれかに記載の方法により産生されるオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン。
【請求項23】
癌を治療するための薬物の製造におけるオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの使用。
【請求項24】
前記オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンが、請求項9~21のいずれかに記載の方法により製造される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
治療を必要としている対象の癌を治療する方法であって、
請求項1~8のいずれかに記載の治療有効量の医薬組成物または請求項9~21のいずれかに記載の方法により産生されたオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを前記対象に投与すること、を含む方法。
【請求項26】
前記医薬組成物またはオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンと組み合わせて、放射線療法を投与することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記放射線療法が低線量または分割放射線療法を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が骨肉腫である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月25日に出願された米国特許仮出願第63/083,283号からの優先権を主張する。この仮出願の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
癌免疫療法は、腫瘍反応性T細胞応答を開始することにより、腫瘍増殖および転移の免疫介在制御を達成する。免疫療法は癌治療に対しかなり有望であるが、臨床的成果はこれまで限定的であった。研究は、以前にも増して、癌細胞が複数の機序を利用して免疫による攻撃からの回避を可能にする免疫抑制環境を作りだすようになってきていることを示した。従って、新規免疫調節剤を用いた免疫抑制機序の克服および長続きする抗腫瘍免疫の誘導は、癌免疫療法の不可欠の目標である。
【0003】
β-グルカン分子が抗腫瘍免疫応答を生成するための免疫調節剤として活用でき、これは、自然および獲得免疫成分を一体化するためのそれらの能力に基づいていることは、以前に実証されている。β-グルカン(または多糖類)は、微生物の主要な細胞壁成分である。それらの炭水化物構造は、C型レクチンおよび炭水化物パターン認識受容体(PRR)であるデクチン-1およびCR3などのPRRにより病原体関連分子パターン(PMAP)として認識され得る。トール様受容体(TLR)、炭水化物PRRなどの他のPRRと同様に、感染症に対する宿主防御機構にも関与する。しかし、リポ多糖類、プロテオグリカン、DNAおよびRNAなどの種々のPAMPを認識するTLRとは異なり、C型レクチンは、より特異的であるように見え、主に、炭水化物構造を認識する。特異的認識のために、一部のβ-グルカンは、デクチン-1および/または補体受容体3(CR3)を介したマクロファージ、好中球および顆粒球の刺激を介してホスト免疫応答を刺激する能力を示す。これらの受容体に対する作用を媒介するβ-グルカンは、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞(DC)およびT細胞の腫瘍標的に対する応答をさらに誘発できる。グルカン分子媒介免疫調節は、病原体認識および抗原提示中のその効率的調節機能に帰されている。より重要なことは、可溶性β-グルカンに対する研究は、β-グルカン結合単球および好中球が、これらの細胞の、iC3b結合腫瘍細胞などの相補体3オプソニン化標的への結合を直接媒介でき、これが標的腫瘍環境に対するβ-グルカンの細胞機序を提供することを示したことである。従って、新規グルカン型免疫調節剤を用いた腫瘍環境の調節は、腫瘍の免疫原性を高める場合があり得る。
【0004】
新たに出現したデータは、異なる不純物、グリコシド結合、分子量、溶解度、および投与経路を有する異なる供給源由来のβ-グルカンは全て、異なる作用機序および抗腫瘍作用効力を示すことを示している。β-グルカンに伴う研究での現在の制約には、特定の分子量および分岐を有する利用可能なβ-グルカンのコントロールスタンダードの欠如が挙げられる。ほとんどの現在までのβ-グルカン研究は、ザイモサンを使用し、これは、キトサン、β-グルカンおよび細胞壁粒子の混合物であり、β-グルカンによる正確な免疫学的作用およびシグナル伝達経路は、未だ不明確であり、さらに明確にされる必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で記載の実施形態は、具体的に定義された純度、構造、Mw、Mw分布、D3/D4および効能を有する有機オート麦ぬかからのβ-グルカン濃縮物の、塩ベース沈殿剤を含む、規模拡大可能生産を可能とする技術を用いた調製方法に関し、より具体的には、具体的に定義された純度、構造、Mw、Mw分布、D3/D4および治療を必要としている対象の癌の治療における効能を有するβ-グルカン濃縮物の使用に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、オート麦由来β-(1,3)-(1,4)グルカンは、塩沈殿させることができ、β-(1,3)-(1,4)グルカンは、約150kDa~約250kDa(例えば、約200kDa±15kDa)の分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有する。β-(1,3)-(1,4)グルカン組成物は、少なくとも約92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、98重量%、99重量%以上のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン、約2重量%未満のタンパク質および0.001重量%未満の脂肪、および/または約5EU/kg未満のエンドトキシンレベルを含み得る。
【0007】
好都合にも、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、THP1細胞培養物への適用時に、THP1細胞を、活性化マーカーCD80、CD86、MHCII、およびCD11cの発現上昇、炎症性サイトカインTNFαおよびIL-12の産生増大、ならびに食作用の強化を特徴とする樹状細胞(DC)様表現型を有する細胞へ変えることができる。
【0008】
他の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、薬学的に許容可能な担体と共に医薬組成物に入れて提供され得る。医薬組成物は、約0.001mg/ml~約5mg/mlのオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む注入可能または静脈内溶液であり得る。
【0009】
本明細書で記載の他の実施形態は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを産生する方法に関する。該方法は、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を用意すること、および少なくとも1種の塩沈殿剤を用いて水性懸濁液の水性抽出物を分別沈殿させて約150kDa~約250kDa(例えば、約200kDa±15kDa)の分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを得ることを含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物は、少なくとも60重量%のグルカン濃度を有し得る。
【0011】
他の実施形態では、少なくとも1種の塩沈殿剤は、塩の混合物を含む。いくつかの実施形態では、塩の混合物は、硫酸アンモニウムを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、水性抽出物は、β-グルカン濃縮物の水性懸濁液を、水性懸濁液中の可溶性β-グルカンを溶解するのに効果的な時間にわたり、約75℃~約90℃に加熱すること、水性懸濁液を冷却すること、および冷却した水性懸濁液からβ-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性抽出物を収集することにより得られる。
【0013】
いくつかの実施形態では、分別沈殿は、2つ以上の分別沈殿ステップを含む。第1の分別沈殿ステップは、第1の沈殿物および第1の上清を形成するのに効果的な濃度の第1の塩沈殿剤を水性懸濁液の水性抽出物に加え、その後、第1の上清および第1の沈殿物を分離することを含み得る。第1の上清は、約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の分別沈殿ステップは、第2の沈殿物および第2の上清を形成するのに効果的な濃度の第2の塩沈殿剤を分離された第1の上清に加え、その後、第2の沈殿物および第2の上清を分離することを含み得る。第2の上清は、約175kDa未満、約180kDa未満、約185kDa未満、または約190kDa未満の最大β-グルカン分子量を有し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の塩沈殿剤は、第2の塩沈殿剤と同じ組成を有する。第1の塩沈殿剤および第2の塩沈殿剤は、塩の混合物を含み得、混合物中の少なくとも1種の塩は、硫酸アンモニウムである。第1の塩沈殿剤は、第2の塩沈殿剤が第2の上清に添加されるw/w%とは異なるw/w%で第1の上清に添加され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の沈殿物の水溶液を形成すること、および第2の沈殿物の水溶液を透析して残留している第1の塩沈殿剤および第2の塩沈殿剤を第2の沈殿物の水溶液から除去すること、をさらに含み得る。その後、アルコールを透析した水溶液に添加し、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンを沈殿させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】β-(1,3)-(1,4)グルカンの化学構造の概略図である。
図2】本明細書で記載の実施形態によるオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの調製ステップを示すフローチャートである。
図3】出発物質(有機オート麦ぬか)の調製ステップを示すフローチャートである。
図4】出発物質からのβ-グルカン濃縮物の調製ステップを示すフローチャートである。
図5】塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの調製ステップを示すフローチャートである。
図6】(A)20kDa、200kDa、および500kDaのMwを有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンの13NMRスペクトル;ならびに(B)10kDa、200kDaおよび500kDaの分子量を有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンのGPC-LSスペクトル、を示す。
図7】200kDaのMwを有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンのDP3/DP4キャラクタリゼーションを示す。(A)結合の加水分解によるDP3およびDP4の生成を示す、β-グルカンに対するリケナーゼの作用モードの図である。(B)リケナーゼ加水分解後の200kDaのMwを有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンから得られたオリゴ糖のHPAEC-PADクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次の用語は、当業者により十分に理解されると考えられるが、次の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0019】
冠詞の「a」および「an」は、1つの、または1つを超える(すなわち、少なくとも1つの)、その冠詞の文法的対象を意味するものとして本明細書で使用される。例えば、「an element」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0020】
「含む(comprise)」「含む(comprising)」「含有する(include)」「含有する(including)」「有する(have)」および「有する(having)」という用語は追加の要素が含まれ得ることを意味する包括的な、非限定的な意味で使用される。本明細書で使用される場合、「など(such as)」、「例えば(e.g.)」という用語は非限定的であり、例示を目的としているにすぎない。「含む(including)」および「含むが、それらに限定はされない(including but not limited to)」は同じ意味で使用される。本発明は、特許請求の範囲に記載のステップ、要素、および/または試薬を適宜「含み(comprise)」、「からなり(consist of)」、または「から基本的になり(consist essentially of)」得る。
【0021】
さらに、特許請求の範囲は、いずれか任意の要素を除外するように記載されてもよいことに留意されたい。したがって、この記述は、請求要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独」、「唯一」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することが意図される。
【0022】
「または(or)」という用語は、本明細書では、文脈により明確に別義が示されない限り、「および/または(and/or)」を意味すると理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、基準の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さに対する15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%程度変動する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さを意味する。一実施形態では、「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、基準の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さに関して±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の範囲の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さを意味する。
【0024】
さらに、特許請求の範囲は、いずれか任意の要素を除外するように記載されてもよいことに留意されたい。したがって、この記述は、請求要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独」、「唯一」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することが意図される。
【0025】
「薬学的に許容可能な」という用語は、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応などもなく、合理的利益/リスク比に見合って、健全な医学判断の範囲内で目的の使用に効果的であり、人間および動物の組織との接触下での使用に適することを意味する。
【0026】
「治療(treating)」という用語は当該分野で認められており、対象において疾患、障害または状態を抑制する、例えば、その進行を妨害する;および疾患、障害または状態を軽減する、例えば、疾患、障害および/または状態の退行を引き起こすことを含む。疾患または状態を治療することは、根底にある病態生理が影響を受けなくても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を回復させることを含む。
【0027】
「予防(preventing)」という用語は当該技術分野において承認されており、疾患、障害および/または状態に罹る可能性があるが、まだ、それに罹患していると診断されていない疾患、障害または状態が対象において起こるのを停止させることを含む。疾患に関連する状態を予防することは、疾患が診断された後、状態が診断される前に、その状態が起こらないようにすることを含む。
【0028】
当該方法により治療される「患者」、「対象」、または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類のいずれかの意味であってよい。したがって、本明細書で開示される方法の対象はヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であってよい。この用語は特定の年齢または性を表すものではない。したがって、雄であれ雌であれ、成体および新生対象、ならびに胎児(胎仔)を包含することが意図されている。一態様では、対象は哺乳類である。患者は、疾患または障害に苦しむ対象を意味する。
【0029】
「治療的有効量」または「薬学的有効量」という語句は当該分野で認められている用語である。特定の実施形態では、これらの用語は、任意の医学的処理に適用可能な妥当な利益/リスク比である程度の所望の効果を生じる治療薬の量を意味する。特定の実施形態では、これらの用語は、特定の治療法の標的を排除、低減または維持するのに必要なまたは十分なその量を意味する。有効量は、治療される疾患または状態、投与される特定の標的化構築物、対象のサイズあるいは疾患または状態の重症度などの因子によって変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することができる。
【0030】
治療の有効性は、例えば、抗癌剤の投与に反応して、対象の腫瘍量の低減または腫瘍増殖の減少を評価することにより測定し得る。腫瘍量の低減は、質量の直接の減少であり得るか、またはそれは、腫瘍増殖遅延の観点から測定し得、これは、治療した腫瘍が同じ体積に増殖するのに要する時間から、対照腫瘍が特定の体積を超えて増殖する平均時間を減算することにより計算される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、良性または悪性(癌性)に関係なく、また、原発性部位病変または転移に関係なく、任意の腫瘍性成長、増殖または細胞集団を意味する。
【0032】
「任意の」または「任意選択で」は、その後に記載される状況が起きても起こらなくてもよく、したがって、その記載はその状況が起きた場合および起きなかった場合を含む。例えば、「任意に置換されてもよい」という句は、非水素置換基が所定の原子上に存在してもしなくてもよいことを意味し、したがって、その記載は非水素置換基が存在する構造および非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0033】
記載全体を通して、組成物が特定の構成成分を有する、含有する、または含むものとして記載される場合、組成物はまた、記載された構成成分から本質的になる、または、これらからなることが意図されている。同様に、方法または工程が、特定の工程ステップを有する、含有する、または含むとして記載される場合、工程はまた、記載された工程ステップから本質的になる、またはこれらからなる。さらに、ステップの順序またはある特定の動作を実施する順序は、本明細書で記載される組成物および方法が操作可能である限り重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上のステップまたは動作は同時に実施することができる。
【0034】
本明細書で使用される全てのパーセンテージおよび比率は、別段の指示がない限り、重量基準である。
【0035】
本明細書で記載の実施形態は、具体的に定義された純度、構造、Mw、Mw分布、D3/D4および効能を有する有機オート麦ぬかからのβ-グルカン濃縮物の、塩ベース沈殿剤を含み、規模拡大可能生産を可能とする技術を用いた調製方法に関し、より具体的には、具体的に定義された純度、構造、Mw、Mw分布、D3/D4および治療を必要としている対象の癌の治療における効能を有するβ-グルカン濃縮物の使用に関する。
【0036】
β-(1,3)-(1,4)グルカンの化学構造を図1に示す。β-グルカンがそれらの免疫調節性効果を作用させる機序は、その粒子状または可溶性性質、三次構造、主鎖の長さ、側鎖の長さ、および側鎖の出現頻度などの異なる形態のβ-グルカン間の構造的差異により影響され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、オート麦由来β-(1,3)-(1,4)グルカンは、塩沈殿させることができ、β-(1,3)-(1,4)グルカンは、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有する。いくつかの実施形態では、β-(1,3)-(1,4)グルカンは、約175~225kDa、約190~210kDa、または約200kDaの分子量を有する。
【0038】
β-(1,3)-(1,4)グルカンは、高度に精製でき、98%を超える炭水化物含量を有し、エンドトキシンは実質的に不含である。例えば、β-(1,3)-(1,4)グルカン組成物は、少なくとも約92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、98重量%、99重量%以上のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン、約2重量%未満のタンパク質および約0.001重量%未満の脂肪、および/または約5EU/kg未満のエンドトキシンレベルを含み得る。
【0039】
好都合にも、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、THP1細胞培養物への投与時に、THP1細胞を、活性化マーカーCD80、CD86、MHC II、およびCD11cの発現上昇、炎症性サイトカインTNFαおよびIL-12の産生増大、ならびに食作用の強化を特徴とするDC様表現型を有する細胞へ変えることができる。
【0040】
図2は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの産生の方法10のステップを示すフローチャートを示す。ステップ20では、方法10は、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を用意することを含む。
【0041】
図4は、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物を形成する方法を示すフローダイヤグラムを示す。β-グルカンオート麦ぬか濃縮物は、有機オート麦ぬかを透明な高圧滅菌ビーカー中の蒸留水に加え、オート麦ぬかスラリーを形成することにより形成できる。その後、ビーカーを水浴中で、一定速度で撹拌させながら約75℃~約90℃で、可溶性β-グルカンを水性懸濁液中に溶解するのに効果的な時間加熱した後、一定速度で撹拌させながら室温に冷却し得る。スラリーを遠心分離し、上清を形成し、遠心分離後に、上清を収集し、細菌性α-アミラーゼと共に室温でインキュベートし得る。インキュベーション後、スラリーを遠心分離し、形成された上清を収集し得る。β-グルカンは、イソプロパノールなどのアルコールの添加により、上清から沈殿させることができる。沈殿物を含むβ-グルカンは、上清をデカントし、β-グルカン沈殿物をオーブン乾燥することにより収集できる。いくつかの実施形態では、乾燥沈殿物は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%のβ-グルカン濃度を有する。
【0042】
β-グルカン沈殿物はまたは濃縮物はその後、蒸留水中に懸濁させて、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を形成できる。
【0043】
図2を再度参照すると、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を用意するステップ20の後の、ステップ30で、水性懸濁液の水性抽出物が少なくとも1種の塩沈殿剤で分別沈殿されて、約150kDa~約250kDa、例えば、約175kDa~約225kDa、約190kDa~約210kDa、または約200kDの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンが得られる。水性抽出物は、β-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性懸濁液を、水性懸濁液中の可溶性β-グルカンを溶解するのに効果的な時間にわたり、一定速度で撹拌させながら約75℃~約90℃に加熱すること、水性懸濁液を冷却すること、および冷却した水性懸濁液からβ-グルカンオート麦ぬか濃縮物の水性抽出物を収集することにより得ることができる。
【0044】
その後、水性抽出物を、少なくとも1種の塩沈殿剤で分別沈殿させて、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを得ることができる。
【0045】
他の実施形態では、少なくとも1種の塩沈殿剤は、塩の混合物を含み得る。水性抽出物を分別沈殿させて、オート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを得るために使用できる塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムマグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、塩の混合物は、硫酸アンモニウムおよび少なくとも1種、2種、3種、4種以上の本明細書で記載の塩を含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するオート麦由来沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを得るために使用される分別沈殿は、2つ以上の分別沈殿ステップを含む。
【0047】
図5は、水性抽出物を分別沈殿させる方法のステップを示すフローチャートを示す。この方法は、第1の分別沈殿ステップおよび第2の分別沈殿ステップを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1の分別沈殿ステップは、第1のβ-グルカン沈殿物および第1のβ-グルカン含有上清を形成するのに効果的な濃度の第1の塩沈殿剤を水性懸濁液の水性抽出物に加えることを含み得る。第1の塩沈殿剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムマグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種または複数の塩の混合物などの塩の混合物を含み得る。塩は、少なくとも約5%(w/w%)、少なくとも約10%(w/w%)、少なくとも約15%(w/w%)、少なくとも約20%(w/w%)、少なくとも約25%(w/w%)以上の濃度で一定の撹拌下で水性抽出物に添加され得る。
【0049】
その後、水性抽出物は、室温でインキュベートおよび遠心分離され、第1のβ-グルカン含有上清および第1のβ-グルカン沈殿物を形成し得る。第1の上清は、第1の沈殿物から分離され、第1の上清中のβ-グルカンの分子量が測定され得る。第1の上清が、約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有さない場合、第1の上清が、約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有するまで、追加の塩沈殿剤が第1の上清に添加され得る。約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有する第1の上清は、収集され、その後、第2の分別沈殿ステップに供され得る。
【0050】
第2の分別沈殿ステップは、約230kDa未満、約225kDa未満、約220kDa未満、または約215kDa未満の最大β-グルカン分子量を有する収集された第1の上清に、第2のβ-グルカン沈殿物および第2の含有上清を形成するのに効果的な濃度の第2の塩沈殿剤を加えることを含み得る。第2の塩沈殿剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムマグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種または複数の塩の混合物などの塩の混合物を含み得る。塩は、少なくとも約5%(w/w%)、少なくとも約10%(w/w%)、少なくとも約15%(w/w%)、少なくとも約20%(w/w%)、少なくとも約25%(w/w%)以上の濃度で一定の撹拌下で第1の上清に添加され得る。
【0051】
その後、第1の上清は、室温でインキュベートおよび遠心分離され、第2のβ-グルカン含有上清および第2のβ-グルカン沈殿物を形成し得る。第2の上清は、第2の沈殿物から分離され、第2の上清中のβ-グルカンの分子量が測定され得る。第2の上清が、約175kDa未満、約180kDa未満、約185kDa未満、または約190kDa未満の最大β-グルカン分子量を有さない場合、第2の上清が、約175kDa未満、約180kDa未満、約185kDa未満、または約190kDa未満の最大β-グルカン分子量を有するまで、追加の塩沈殿剤が第2の上清に添加され得る。
【0052】
第2のβ-グルカン沈殿物は、約150kDa~約250kDa、例えば、約175kDa~約225kDa、約190kDa~約210kDa、または約200kDaの分子量を有し、収集した後、脱塩して、分別沈殿工程から不純物を除去できる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の塩沈殿剤は、第2の塩沈殿剤と同じ組成を有する。第1の塩沈殿剤および第2の塩沈殿剤は、塩の混合物を含み、混合物中の少なくとも1種の塩は、硫酸アンモニウムであり、少なくとも1種、2種、3種、4種以上の本明細書で記載の塩を含む。第1の塩沈殿剤は、第2の塩沈殿剤が第2の上清に添加されるw/w%とは異なるw/w%で第1の上清に添加され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、方法は、第2のβ-グルカン沈殿物の水溶液を形成すること、および第2の沈殿物の水溶液を透析して残留している第1の塩沈殿剤および第2の塩沈殿剤を第2の沈殿物の水溶液から除去すること、をさらに含み得る。その後、アルコールを水溶液に添加し、約150kDa~約250kDaの分子量、約1.0~約1.25のMw/Mn比率、および約1.5~約2.0未満のD3/D4比率を有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンを沈殿させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、治療有効量の本明細書で記載のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを対象に投与することにより、それを必要としている対象の癌を治療する方法に使用できる。用語「癌」は、正常な増殖制御に対する感受性を失った細胞の増殖が原因である、またはそれを特徴とする増殖性障害を意味する。同じ組織型の癌は通常、同じ組織に起源を持ち、それらの生物学的特性に基づいて異なるサブタイプに分類され得る。癌の4つの一般的分類は、癌腫(上皮細胞由来)、肉腫(結合組織または中胚葉由来)、白血病(血液形成組織由来)およびリンパ腫(リンパ組織由来)である。200を超える異なる種類の癌が既知であり、身体のすべての臓器および組織が影響を受け得る。癌の定義を限定しない癌の具体例としては、黒色腫、白血病、星状細胞腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、および慢性リンパ性白血病を挙げることができる。種々の癌により影響を受け得る臓器および組織の例には、膵臓、乳房、甲状腺、卵巣、子宮、精巣、前立腺、脳下垂体、副腎、腎臓、胃、食道、直腸、小腸、結腸、肝臓、胆嚢 、頭頸部、舌、口、目と眼窩、骨、関節、脳、神経系、皮膚、血液、鼻咽頭組織、肺、喉頭、尿路、子宮頸部、膣、外分泌腺、および内分泌腺が挙げられる。あるいは、癌は、多中心性癌または原発部位不明(CUPS)癌であり得る。いくつかの実施形態では、方法は、黒色腫または骨肉腫の対象を治療するために使用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物が、転移性癌を治療するために、対象に投与され得る。本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、対象の他の部位(すなわち、標的臓器)に移され、このような位置で新しい腫瘍を樹立する癌細胞(例えば、原発腫瘍、または転移腫瘍)の能力を意味する。転移が始まる最も良くある場所は、原発性癌と呼ばれ、肺、乳房、皮膚、結腸、腎臓、前立腺、膵臓、肝臓、および子宮頸部が含まれる。特定の腫瘍は、特定の臓器に播種する傾向がある。例えば、前立腺癌は通常、骨に転移する。類似の方法で、結腸癌は、肝臓に転移する傾向がある。胃癌は女性の卵巣に転移することが多い。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、乳癌、前立腺癌、または肺癌原発性腫瘍が起源の転移を治療するために使用される。転移性癌を形成できる細胞は、固形腫瘍などの固定部位に存在する癌細胞と違って、血流中を循環する癌細胞であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、免疫寛容を生じた癌を治療するために使用される。免疫寛容は、癌細胞が、腫瘍微小環境中で、免疫原性の低減または免疫抑制状態の確立を示し、それにより、免疫系の癌細胞を攻撃する能力が漸減している状態である。免疫寛容は、癌治療において高頻度で起こる問題であり、理由の一部は、癌細胞が多数の自己抗原を有し、そのために、免疫寛容が必要となるためである。
【0058】
本明細書記載の方法は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン単独での投与、または、対象が、手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法またはレーザー療法の内の少なくとも1種から選択される1種または複数の癌療法も受けている、併用療法での投与を含む。併用療法は通常、化学療法剤、標的化抗体;免疫細胞の養子移入(すなわち、養子免疫療法);炎症促進性サイトカイン、などの1種または複数による治療を含み得る。併用療法はまた、限定されないが、抗体投与、ワクチン投与、細胞傷害薬投与、熱焼灼、クライオアブレーション、および放射線アブレーションを含む従来療法も含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、癌に罹患しており、放射線療法に曝露された、それで治療された、またはそれを受けている対象に投与される。オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンと、放射線療法との組み合わせは、対象の抗癌免疫応答を顕著に高め得る。いくつかの実施形態では、放射線療法は、低線量(例えば、30グレイ(Gy)または電離放射線量が約1.5~30グレイ(Gy)、例えば、約1.5~約20グレイ(Gy)、典型的には、約1.5~約15グレイ(Gy)の範囲である、少なくとも1つの照射ステップを含む分割放射線療法を含み得る。
【0060】
分割放射線療法の場合、電離放射線の総線量は、数日間にわたり、いくつかのより小さい線量に分割される。これは、癌に対する放射線の効果を最大化し、健康な細胞に対するマイナスの副作用を最小化する。典型的分割スキームは、総線量を毎平日に、6週間にわたり送達される30ユニット/分割量に分割するが、現在の研究は、加速分割照射(1日2回送達および/または毎終末にも送達)のメリットを考慮している。
【0061】
用語「電離放射線」は、原子または分子をイオン化できる高エネルギー粒子または高エネルギー波を意味する。電離能力は、個別の粒子または波のエネルギーに依存し、それらの数には依存しない。大量の粒子または波は、最もよくある状況では、個別の粒子または波が不十分なエネルギーである場合、イオン化を起こさない。典型的電離放射線は、放射線であり、そのエネルギーは、少なくとも1.8KeVである。
【0062】
いくつかの実施形態では、照射ステップ当りの電離放射線量は、分割治療当り、1.8、2、2.2、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、20、25および30Gyから選択される。電離放射線量は同様に、分割治療当り、1.8、2、2.4、2.5、3、3.2、3.6、4、4.5、5、5.5、6、7、8、10、15、20、25および30Gyから、例えば、2、3、5、6、7、8、10、15、20、25および30Gyから選択できる。
【0063】
他の実施形態では、分割放射線療法は、2Gyの25分割(合計:50Gy)、2Gyの30分割(合計:60Gy)、2Gyの35分割(合計:70Gy)、2Gyの40分割(合計:80Gy)、3Gyの5分割(合計:15Gy)、3Gyの10分割(合計:30Gy)、3Gyの15分割(合計:45Gy)、3Gyの20分割(合計:60Gy)、3Gyの25分割(合計:75Gy)、4Gyの3分割(合計:12Gy)、4Gyの5分割(合計:20Gy)、4Gyの8分割(合計:32Gy)、4Gyの10分割(合計:40Gy)、4Gyの15分割(合計:60Gy)、4Gyの20分割(合計:80Gy)、5Gyの2分割(合計:10Gy)、5Gyの3分割(合計:15Gy)、5Gyの4分割(合計:20Gy)、5Gyの5分割(合計:25Gy)、5Gyの6分割(合計:30Gy)、5Gyの8分割(合計:40Gy)、5Gyの10分割(合計:50Gy)、6Gyの1分割(合計:6Gy)、6Gyの2分割(合計:12Gy)、6Gyの3分割(合計:18Gy)、6Gyの4分割(合計:24Gy)、6Gyの5分割(合計:30Gy)、6Gyの6分割(合計:36Gy)、6Gyの10分割(合計:60Gy)、7Gyの1分割(合計:7Gy)、7Gyの2分割(合計:14Gy)、7Gyの3分割(合計:21Gy)、7Gyの4分割(合計:28Gy)、7Gyの5分割(合計:35Gy)、8Gyの1分割(合計:8Gy)、8Gyの2分割(合計:16Gy)、8Gyの3分割(合計:24Gy)、8Gyの4分割(合計:32Gy)、8Gyの5分割(合計:40Gy)、9Gyの1分割(合計:9Gy)、9Gyの2分割(合計:18Gy)、9Gyの3分割(合計:27Gy)、9Gyの4分割(合計:36Gy)、9Gyの5分割(合計:45Gy)、10Gyの1分割(合計:10Gy)、10Gyの2分割(合計:20Gy)、10Gyの3分割(合計:30Gy)、10Gyの4分割(合計:40Gy)、15Gyの1分割(合計:15Gy)、15Gyの2分割(合計:30Gy)、15Gyの3分割(合計:45Gy)、15Gyの4分割(合計:60Gy)、20Gyの1分割(合計:20Gy)、20Gyの2分割(合計:40Gy)、20Gyの3分割(合計:60Gy)、25Gyの1分割(合計:25Gy)、25Gyの2分割(合計:50Gy)、25Gyの3分割(合計:75Gy)、30Gyの1分割(合計:30Gy)、および30Gyの2分割(合計:60Gy)から選択できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、対象は、転移性癌に罹患し、対症療法的放射線療法を受けている対象、放射線療法が断念された転移性癌を罹患している対象、または放射線療法により治療されなかった癌を罹患している対象であってよく、分割放射線療法は、6Gyの1分割(合計:6Gy)、6Gyの2分割(合計:12Gy)、6Gyの3分割(合計:18Gy)、6Gyの4分割(合計:24Gy)、6Gyの5分割(合計:30Gy)、7Gyの1分割(合計:7Gy)、7Gyの2分割(合計:14Gy)、7Gyの3分割(合計:21Gy)、7Gyの4分割(合計:28Gy)、8Gyの1分割(合計:8Gy)、8Gyの2分割(合計:16Gy)、8Gyの3分割(合計:24Gy)、8Gyの4分割(合計:32Gy)、9Gyの1分割(合計:9Gy)、9Gyの2分割(合計:18Gy)、9Gyの3分割(合計:27Gy)、10Gyの1分割(合計:10Gy)、10Gyの2分割(合計:20Gy)、10Gyの3分割(合計:30Gy)、15Gyの1分割(合計:15Gy)、15Gyの2分割(合計:30Gy)、20Gyの1分割(合計:20Gy)、20Gyの2分割(合計:40Gy)、25Gyの1分割(合計:25Gy)、および30Gyの1分割(合計:30Gy)から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、別の医薬品と同時投与され得る。2つの成分は、同時または順次に投与され得る。同時に投与される同時投与成分は、1種または複数の医薬組成物で提供され得る。2つ以上の成分の逐次同時投与は、両方が投与後に同時に生物学的に利用能になるように投与される場合を含む。成分が同時にまたは逐次に同時投与されるかどうかに関わらず、成分は、1つの部位または異なる部位で同時投与され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンと同時投与される医薬品には、化学療法剤が含まれ得る。癌治療のために、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンと同時投与され得る化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然産物、ホルモンおよび拮抗薬、ならびにその他の種々の薬剤が挙げられる。アルキル化剤の例には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ヘキサメチルメラミンおよびチオテパなどのエチレンイミンおよびメチルメラミン;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ロムスチン(CCNU)およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア;リン酸エストラムスチンなどのDNA合成拮抗薬;およびダカルバジン(DTIC、ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)およびテモゾロミドなどのトリアジンが挙げられる。代謝拮抗薬の例には、メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU、5FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)およびゲムシタビンなどのピリミジン類似体;メルカプトプリン(6-ニエルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)およびペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビンおよびフルダラビンなどのプリン類似体;およびアムサクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。天然産物の例には、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;パクリタキセル(アブラキサン)およびドセタキセル(タキソテール)などのタキサン;エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;トポテカンおよびイリノテカンなどのカンプトテシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシンなどの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;およびインターフェロンαおよびインターロイキン2などの生物学的応答調節物質が挙げられる。ホルモンおよび拮抗薬の例には、ブセレリンなどの黄体形成放出ホルモン作動薬;プレドニゾンおよび関連製剤などの副腎皮質ステロイド;ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールおよび関連製剤などのエストロゲン;タモキシフェンおよびアナストロゾールなどのエストロゲン拮抗薬;プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロンおよび関連製剤などのアンドロゲン;フルタミドおよびビカルタミドなどのアンドロゲン拮抗薬;およびロイプロリドなどのゴナドトロピン放出ホルモン類似体が挙げられる。その他の種々の薬剤の例には、サリドマイド;シスプラチン(czs-DDP)、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位化合物;ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素などの置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(お、p’-DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;ベキサロテンなどのRXR作動薬;およびイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、癌は、養子免疫療法でさらに治療できる。養子免疫療法は、患者から採取されたリンパ球を大量に増殖させ、刺激し、活性化して、患者に輸注して戻す免疫療法の一形態である。養子免疫療法は、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、およびなTリンパ球(例えば、サイトカイン活性化T細胞)などの免疫エフェクター細胞を含む種々の異なる免疫細胞を使用できる。Ruella M,Kalos M.,Immunol Rev.,257(1):14-38(2014)を参照されたい。例えば、いくつかの実施形態では、β-グルカンを用いた癌治療は、Tリンパ球(例えば、腫瘍所属リンパ節Tリンパ球)の養子移入と組み合わせることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与は、T細胞を活性化する物質、または炎症性サイトカインと組み合わされる。T細胞を活性化する物質の例には、IL-2、オプジーボ(ニボルマブ、PD-1阻害剤、Bristol-Myersによる);キイトルーダ(ペムブロリズマブ、PD-1阻害剤、Merck & Co.による)、テセントリク(アテゾリズマブ、PD-L1阻害剤、Genentechによる)、イミフィンジ(デュルバルマブ、PD-L1阻害剤、AstraZenecaによる)、またはバベンチオ(アベルマブ、PD-L1阻害剤、EMD Serono Incによる)が挙げられる。炎症性サイトカインの例には、CCL3、CCl4、TNFα、およびインターフェロンγが挙げられる。TGFβ 1型受容体の種々の小分子阻害剤は、炎症を刺激するためにも使用できる。
【0069】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび任意選択で、放射線療法などの1種または複数の他の本明細書で記載の治療法で治療された対象は、いずれかのタイプの癌を有する小児対象であり得る。例えば、小児対象は、その誕生日(例えば、0日齢)~約21年齢までの対象である。いくつかの実施形態では、小児対象は、その誕生日(例えば、0日齢)~約18年齢までの対象である。いくつかの実施形態では、小児対象は、約1日齢~約21年齢までの対象である。いくつかの実施形態では、小児対象は、約1日齢~約18年齢までの対象である。
【0070】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび任意選択で、1種または複数の他の本明細書で記載の治療法で治療された対象は、小児癌を有し得る。小児癌の例には、副腎皮質癌、星状細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、脳腫瘍、軟骨芽細胞腫、脈絡叢腫瘍、頭蓋咽頭腫、類腱腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍(DNT)、上衣腫、線維肉腫、脳の胚細胞性腫瘍、多形神経膠芽腫、びまん性橋膠腫、低悪性度神経膠腫、大脳神経膠腫症、肝芽腫、組織球症、腎臓腫瘍、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、脂肪肉腫、肝臓癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、悪性線維性組織球種、黒色腫、骨髄異形成症候群、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維肉腫、骨肉腫、毛様細胞性星状細胞腫、網膜芽細胞腫、腎臓のラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、軟部肉腫、滑膜肉腫、脊髄腫瘍およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、癌は、ユーイング肉腫、骨肉腫、胎児性横紋筋肉腫(ERS)、CNS腫瘍、または神経芽腫などの横紋筋肉腫(RMS)である。いくつかの実施形態では、癌はCNS腫瘍である。
【0072】
いくつかの実施形態では、癌は、ユーイング肉腫(ES)、骨肉腫(OS)、横紋筋肉腫(RMS)、神経芽腫(NB)、髄芽腫(MB)、高悪性度神経膠腫(HGG)、または副腎皮質癌(ACC)である。
【0073】
疾病が確立され、治療プロトコルが開始されると、癌細胞が対象中で療法に対し耐性を示し始めるかどうかを評価するために、癌の評価が定期的に反復され得る。連続的アッセイから得られた結果は、数日から数ヶ月の期間にわたって、治療の有効性を示すために使用され得る。従って、本明細書で記載の他の実施形態は、癌の患者をオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン投与により治療するために、治療薬投与計画を監視する方法に関する。総細胞数(および/または血球数)の治療前と治療中の比較は、治療の有効性を示す。同様に、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン療法の前と後の化学療法または放射線療法の副作用の重症度の比較は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン療法の有効性を示す。従って、当業者は、治療手法を必要に応じて認識および調節できる。
【0074】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルはまた、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの対象への、経路および/または間隔を含む、投与を決定するための因子として使用し得る。バイオマーカーレベルは、癌の性質、重症度および対象の状態の程度などの他の因子と組み合わせて使用し、および/または適切な治療計画を特定し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、対象は、バイオマーカーの状態に関係なく、治療を受ける。いくつかの実施形態では、対象は、バイオマーカーの状態を測定せずに、治療を受ける。いくつかの実施形態では、対象は、バイオマーカーの状態の測定の前に、治療を受ける。
【0076】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」または「マーカー」は、限定されないが、遺伝子、mRNA、タンパク質、または細胞表現型を含み、これらは、変えることができ、前記変化は、癌に関連する。変化は、正常な、または健康な組織または細胞(例えば、対照)での、その量、構造、および/または活性と比較した、癌組織または癌細胞の量、構造、および/または活性であり得、癌などの病状に関連している。例えば、癌に関連するマーカー、または抗癌治療薬に対する応答性を予測するマーカーは、正常で健康な組織または細胞に比べて、癌組織または癌細胞における、変化したヌクレオチド配列、アミノ酸配列、染色体転座、染色体内逆位、コピー数、発現レベル、タンパク質レベル、タンパク質活性、エピジェネティック修飾(例えば、メチル化またはアセチル化状態、または翻訳後修飾)を有し得る。さらに、癌に関連する組織または細胞中に存在する場合、「マーカー」は、構造が変化した分子、例えば、変異した(変異を含む)、例えば、野性型配列とはヌクレオチドまたはアミノ酸レベルが、例えば、置換、欠失、または挿入により、異なる分子を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、癌の対象のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンによる治療により誘導された抗腫瘍効力に関連するバイオマーカーは、対照レベルに比べて、腫瘍関連因子の測定レベルの増大を含み得る。腫瘍関連因子の測定レベルの増大は、対照レベルまたはオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与の前の対象の生体試料由来の腫瘍関連因子の測定レベルに比べて、IFNγ発現、TNFα発現、またはPD-L1発現の少なくとも1種の測定レベルの増大を含み得る。
【0078】
他の実施形態では、癌の対象のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンによる治療により誘導された抗腫瘍効力に関連するバイオマーカーは、腫瘍微小環境内の変化を含み得る。抗腫瘍効力に関連する腫瘍微小環境内の変化は、炎症および/または腫瘍微小環境の免疫ランドスケープの変化を示す遺伝子発現シグネチャーを含む。免疫ランドスケープの変化は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与前の対象の腫瘍微小環境中の細胞の、対照数もしくは対象出現頻度または測定出現頻度もしくは測定数に比べて、CD3/CD4/CD8細胞の出現頻度の数の増大、CD11bC11c細胞の増大、またはM1マクロファージの数または出現頻度の増大を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンによる治療により誘導された抗腫瘍効力に関連するバイオマーカーは、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与前の対象の対照レベルもしくは対象出現頻度または測定出現頻度または循環中の測定レベルに比べて、IFNγ、TNFα、CD11bCCR2炎症性単球、または循環白血球によるMHC II発現の少なくとも1種の循環濃度の測定された増大を含み得る。
【0080】
他の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンによる治療により誘導された抗腫瘍効力に関連するバイオマーカーは、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与前の対象の骨髄中の対照レベルもしくは出現頻度または測定出現頻度もしくは測定レベルに比べて、対象の骨髄中のマクロファージ/樹状前駆細胞および共通樹状前駆細胞の測定された増大を含み得る。
【0081】
オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与により誘導された抗腫瘍効力のためのバイオマーカーの要約を表1に示す。
【表1】
【0082】
他の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物は、有効量のオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを対象へ投与することを含む、免疫活性化法で使用できる。本明細書で使用される場合、「免疫活性化」という用語は、その成分のいずれかの活性化の誘導または活性の増大による免疫系の刺激を意味する。いくつかの実施形態では、免疫活性化は、炎症反応の刺激を含む。他の実施形態では、免疫活性化は、細胞免疫系の刺激を含む。例えば、いくつかの実施形態では、免疫活性化は、マクロファージ活性化を含み、一方、さらなる実施形態では、免疫活性化はT細胞活性化を含む。
【0083】
免疫活性化は、免疫が抑制されている対象に有益であり得る。免疫系の主要な成分(T細胞、B細胞貪食細胞、補体)のいずれかの障害は、免疫抑制を生じ得る。免疫不全は、リンパ性成分の固有のまたは遺伝的欠陥、正常細胞分化の傷害、癌またはウイルス感染症などの疾患、または他の後天性原因から生じ得る。免疫の臨床障害は、制御が困難な日和見主義的および病原性生物に対する顕著な感受性として、および悪性腫瘍、アレルギーおよび自己免疫疾患のリスクにより表される。いくつかの実施形態では、免疫活性化方法は、癌の対象の免疫系を刺激するために使用され、さらなる実施形態では、対象は免疫寛容を発生した癌を有する。免疫活性化方法は、いずれかのタイプのオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの投与を含み得る。
【0084】
オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン、および任意の追加の医薬品(例えば、抗癌剤)、またはそれらの組み合わせを医薬組成物に処方し得る。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび医薬品は、単一製剤として提供され得る。他の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび医薬品は、別々の製剤として提供され得る。医薬組成物は、1種または複数の好ましい投与経路に適合された種々のおよび/または複数の形態で処方され得る。従って、医薬組成物は、例えば、経口、非経口(皮内、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、など)、または局所(鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮、直腸内、など)を含む、1種または複数の既知の経路を介して投与できる。医薬組成物、またはその一部はまた、持続または遅延放出により投与できる。
【0085】
オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン、医薬品、および/または両成分の組み合わせは、限定されないが、溶液、懸濁液、乳剤、噴霧、エアロゾル、またはいずれかの混合物の形態を含む任意の好適な形態で提供され得る。オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン、医薬品、および/または両成分の組み合わせを含む医薬組成物は、任意の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、またはビークルを含む製剤として送達され得る。対象に投与するための、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを処方するために有用な薬学的に許容可能な担体は当該技術分野において周知であり、例えば、水もしくは緩衝生理食塩水などの水溶液またはその他の溶媒またはグリコール、グリセロール、オリーブ油または注入可能有機エステルなどの油などのビークルが挙げられる。薬学的に許容可能な担体は、例えば、安定化する、またはオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの吸収を高める作用をする生理学的に許容可能な化合物を含み得る。このような生理学的に許容可能な化合物としては、例えば、ブドウ糖、スクロースまたはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンなどの酸化防止剤、キレート化剤、低分子量タンパク質またはその他の安定剤もしくは賦形剤が挙げられる。当業者なら、生理学的に許容可能な化合物を含む薬学的に許容可能な担体は、例えば、治療薬の物理化学的特性、ならびに、例えば、経口または静脈内などの非経口、および注入、挿管、または当該技術分野において既知の他のこのような方法であり得る、組成物の投与経路に依存することを解るであろう。医薬組成物はまた、第2の(またはそれを超える)化合物、例えば、診断薬、栄養物質、毒素、または治療薬、例えば、癌化学療法剤および/またはビタミンなどを含み得る。
【0086】
好都合にも、製剤は単位剤形として提供され、薬学の分野でよく知られた方法により調製され得る。薬学的に許容可能な担体を含む組成物を調製する方法は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンおよび/または医薬品を1種または複数の補助成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物と、液体担体、微粉化固体担体、または両方とを均一に、および/または完全に混合し、その後、必要に応じ、生成物を所望の製剤の剤形に成形することにより調製され得る。
【0087】
医薬組成物は、上記のように様々な剤形に処方した後、経口、吸入、経皮、皮下、静脈内または筋肉内経路を含む様々な経路を介して投与し得る。投与量は薬学的または治療有効量であり得る。
【0088】
オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの治療有効投与量は、種々の実施形態において、様々な量で存在してよい。例えば、いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの治療有効量は、約10~1000mg(例えば、約20mg~1,000mg、30mg~1,000mg、40mg~1,000mg、50mg~1,000mg、60mg~1,000mg、70mg~1,000mg、80mg~1,000mg、90mg~1,000mg、約10~900mg、10~800mg、10~700mg、10~600mg、10~500mg、100~1000mg、100~900mg、100~800mg、100~700mg、100~600mg、100~500mg、100~400mg、100~300mg、200~1000mg、200~900mg、200~800mg、200~700mg、200~600mg、200~500mg、200~400mg、300~1000mg、300~900mg、300~800mg、300~700mg、300~600mg、300~500mg、400mg~1,000mg、500mg~1,000mg、100mg~900mg、200mg~800mg、300mg~700mg、400mg~700mg、および500mg~600mg)の範囲の量であってよい。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、約10mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg以上の量で存在する。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、約1000mg、950mg、900mg、850mg、800mg、750mg、700mg、650mg、600mg、550mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mgまたは100mg以上の量で存在する。
【0089】
他の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約0.001mg/kg体重~500mg/kg体重、例えば、約0.001mg/kg体重~400mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~300mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~200mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~100mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~90mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~80mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~70mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~60mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~50mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~40mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~30mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~25mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~20mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~15mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~10mg/kg体重であってよい。
【0090】
さらにその他の実施形態では、治療有効投与量は、例えば、約0.0001mg/kg体重~0.1mg/kg体重、例えば、約0.0001mg/kg体重~0.09mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.08mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.07mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.06mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.05mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~約0.04mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.03mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.02mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.019mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.018mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.017mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.016mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.015mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.014mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.013mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.012mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.011mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.01mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.009mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.008mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.007mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.006mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.005mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.004mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.003mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.002mg/kg体重であってよい。いくつかの実施形態では、治療有効量は、0.0001mg/kg体重、0.0002mg/kg体重、0.0003mg/kg体重、0.0004mg/kg体重、0.0005mg/kg体重、0.0006mg/kg体重、0.0007mg/kg体重、0.0008mg/kg体重、0.0009mg/kg体重、0.001mg/kg体重、0.002mg/kg体重、0.003mg/kg体重、0.004mg/kg体重、0.005mg/kg体重、0.006mg/kg体重、0.007mg/kg体重、0.008mg/kg体重、0.009mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.02mg/kg体重、0.03mg/kg体重、0.04mg/kg体重、0.05mg/kg体重、0.06mg/kg体重、0.07mg/kg体重、0.08mg/kg体重、0.09mg/kg体重、または0.1mg/kg体重であってよい。特定の個体に対する有効量は、その個体の必要性に応じて、経時的に変える(例えば、増やすまたは減らす)ことができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、治療有効投与量は、10μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、250μg/kg/日、500μg/kg/日、1000μg/kg/日またはそれを超える投与量であってよい。種々の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの量は、患者に0.01μg/kg~10μg/kg;0.1μg/kg~5μg/kg;0.1μg/kg~1000μg/kg;0.1μg/kg~900μg/kg;0.1μg/kg~900μg/kg;0.1μg/kg~800μg/kg;0.1μg/kg~700μg/kg;0.1μg/kg~600μg/kg;0.1μg/kg~500μg/kg;または0.1μg/kg~400μg/kgの投与量を与えるのに十分な量である。
【0092】
投与される特定の用量または量は、例えば、所望の転帰の性質および/または程度、投与経路および/またはタイミングの詳細、および/または1種または複数の特性(例えば、体重、年齢、個人歴、遺伝特性、生活習慣パラメーター、心臓欠陥の重症度および/または心臓欠陥のリスクのレベル、など、またはこれらの組み合わせ)に応じて変わってもよい。このような用量または量は、当業者によって決定できる。いくつかの実施形態では、適切な用量または量は、標準的臨床技術に従って決定される。例えば、いくつかの実施形態では、適切な用量または量は、癌体積を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%またはそれを超える%値だけ小さくするのに十分な用量または量である。あるいはまたは追加で、いくつかの実施形態では、適切な用量または量は、投与される望ましいまたは最適用量範囲または量の特定を支援するための1種もしくは複数のインビトロまたはインビボアッセイの使用により決定される。
【0093】
あるいは、容量は、治療方針の開始の直前に得られた実際の体重を用いて計算してもよい。このように計算される投与量の場合、体表面積(m)は、Dubois法:m=(体重kg0.425x身長cm0.725)x0.007184、を用いて、治療方針の開始の前に計算される。従って、いくつかの実施形態では、方法は、例えば、約0.01mg/m~約10mg/mの用量を得るために、十分なオート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを投与することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物または製剤が、それを必要としている対象に1回投与され得る。他の実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物または製剤が、それを必要としている対象に2回以上投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の組成物の第1の投与に続いて本明細書で開示の組成物の第2の投与が行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の組成物の第1の投与に続いて本明細書で開示の組成物の第2および第3の投与が行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の組成物の第1の投与に続いて本明細書で開示の組成物の第2、第3、および第4の投与が行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の組成物の第1の投与に続いて本明細書で開示の組成物の第2、第3、第4、および第5の投与が行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の組成物の第1の投与に続いて休薬が行われる。
【0095】
組成物がそれを必要としている対象に投与される回数は、医療従事者の判断、障害、障害の重症度、および対象の製剤に対する応答に依存する。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は、長期間にわたり、所定の時間間隔で投与される。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物は、毎日1回投与され得る。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物は、1日おきに投与され得る。いくつかの実施形態では、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンを含む組成物は、1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、11年間、または12~15年間にわたり投与され得る。
【0097】
本発明は、以下の実施例により例示される。特定の実施例、材料、量、および手順は、本明細書において以下に記述する本発明の趣旨および範囲に従って広く解釈されるものと解されるべきである。
【0098】
実施例
この実施例は、オート麦由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの製造およびキャラクタリゼーションのための技術について記載する。簡単に説明すると、具体的に定義されたMw範囲を有するオート麦ぬか由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン画分は、塩ベース沈殿剤を含み、10リットル規模の産生を可能とする技術を用いて、β-グルカン濃縮物から得ることができる。約200kDaのMwを有するオート麦ぬか由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン(すなわち、200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン)が得られ、純度、構造、効能および無菌性が検査された。結果は、オート麦ぬか由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、高度に精製され(>95%)、(1,3)および(1,4)-β-グリコシド結合からなる非修飾炭水化物高分子であることを示した。オート麦ぬか由来塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンは、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に完全に可溶性であり、約200kDaの分子量(Mw)(約1.2のMw/Mn)を有し、約1.5~約2.0のDP3/DP4比率を特徴とする。
【0099】
オート麦ぬか由来塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンは、細菌、真菌およびエンドトキシン不含で有ることが明らかになった。試験は、ペプチド/タンパク質不純物、エンドトキシン混入および広範なMw分布は、β-グルカンより媒介される生物活性に顕著に影響を与え得ることを示したので、200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの固有の特徴は、それらを臨床適用および規制認可のための優秀な免疫調節剤候補にする。
【0100】
下記は、200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの有機オート麦ぬかを用いた、調製、製造、キャラクタリゼーションおよび調節に関する考察である。
【0101】
出発物質の調製(有機オート麦ぬか)
出発物質としての有機オート麦ぬかの使用
β-(1,3-(1,4)グルカンは、胚乳細胞壁中およびオート麦、オオムギ、小麦およびライ麦を含む穀類のサブアリューロン(subaleurone)層中に見出される。オオムギおよびオート麦ぬかは、2.8~15%のβ-グルカンを含み、一方、小麦およびライ麦中には、可溶性食物繊維の主要成分は、アラビノキシランであり、β-グルカンの量は少ない。可溶性β-グルカンレベルは、オオムギ中よりオート麦中で50%高いことが報告されている。可溶性β-グルカンは、複数の健康上の利益を媒介する食物繊維の主要成分であることが報告されているので、我々は、有機オート麦ぬかを塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンを産生するための出発物質として選択した。
【0102】
出発物質としての追跡可能オート麦ぬかの使用
我々は、200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン製造のために、食品市場から購入した有機オート麦ぬかを使用した。200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンβ-(1,3)-(1,4)グルカンの臨床供給を行うために、我々は、Spectrum laboratory Products Incからのオート麦ぬかフレークの使用を提案する。Spectrum labは、それらのオート麦ぬか製品のための、カタログ番号(O103)、追跡可能ロット番号および分析試験成績書を提供する。特定のロットに対して追跡できる情報は、下記を含む:
・タンパク質含量(約17%)
・水分(約12%)
・脂肪(9%)
・微生物限界値:総平板菌数(約10,000/g)
・酵母およびかび(500/g)
・大腸菌(なし)
・サルモネラ(なし)
【0103】
出発物質の調製、標識および貯蔵
図3を参照すると、追跡可能ロット番号を有する有機オート麦ぬかが納入されると、我々は、1gをサンプリングして、温水抽出物が300kDaより大きい最大Mwを有する可溶性画分を含むかどうかを検査するために迅速試験を行うことができる。O103オート麦ぬかの1gを高圧滅菌した500mLのガラスビーカー中の200mLの再蒸留水中に秤取および懸濁させ得る。懸濁液を加熱プレート上で一定の撹拌下で30分間煮沸した後、スラリーが室温(r.t.)(例えば、約25℃)に冷却されるまで撹拌し得る。これに続けて、8,000rpmで20分間の遠心分離を行い、上清を集めて、PBで5x希釈した後、GPC-RI分析に供し、試料中に含まれるMwの最小および最大値を測定し得る。300kDaより大きい最大Mwを有する可溶性画分を含む出発物質は、適切に標識した臨床容器中に貯蔵され得る。容器は、室温で研究室に貯蔵できる。出発物質は、納入の30日以内の間、200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン製造のために使用できる。
【0104】
β-グルカン濃縮物の調製、標識および貯蔵
β-グルカン濃縮物の調製
図4を参照すると、250gの適格出発物質が、清浄な高圧滅菌ビーカー中の5リットルの無菌再蒸留水中に秤取および懸濁され得る。ビーカーは、水浴により69℃で一定速度で撹拌させながら30分間の加熱の後、スラリーが室温に冷却されるまで撹拌され得る。続けて、8,000rpmで30分の遠心分離を行い、上清が収集され、細菌α-アミラーゼと共に室温で2時間インキュベートされ得る。インキュベーション後、スラリーは、8,000rpmで30分間遠心分離され、上清が収集される。上清は、60%のイソプロパノールにより沈殿させ得る。上清をデカントすることにより、沈殿物を収集できる。沈殿物は、60℃でオーブン乾燥し得る。
【0105】
総β-グルカン含量分析およびMw測定
オーブン乾燥生成物の5mgをサンプリングし、AOAC法を用いてβ-グルカンの総含量を測定し得る。さらに、オーブン乾燥生成物の5mgをサンプリングし、GPC-RI分析を用いてMwを測定し得る。試験方法および対照については、セクション7.3.4を参照されたい。総β-グルカン含量の重量パーセントは、60%を超えるべきであり、可溶性生成物は、300kDaより大きい最大Mwを有する画分を含むべきである。
【0106】
標識および貯蔵
同じロットの出発物質から調製したβ-グルカン濃縮物は、適切に標識された臨床グレード容器中で混合および貯蔵され得る。容器は、研究室の冷蔵庫中、4℃で貯蔵できる。合わせたβ-グルカン濃縮物は、第1のログ日付の90日以内の間、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン製造のために使用できる。
【0107】
塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン製造
図5を参照すると、250gのβ-グルカン濃縮物が、15リットル反応器中の10リットルの無菌再蒸留水中に秤取および懸濁され得る。懸濁液は、80℃に加熱され、一定速度で撹拌しながら80℃で60分間抽出され、スラリーが室温に冷却されるまで撹拌され得る。続けて、8,000rpmで30分の遠心分離を行い、上清が収集され得る。塩沈殿剤の混合物が、15%(w/w%)の最終濃度まで一定速度で撹拌させながら上清に添加され得る。添加後、スラリーは、室温で、撹拌せずに45~60分間インキュベートされ得る。スラリーを8,000rpmで30分間遠心分離し、上清および沈殿物を収集する。10mlの上清が、QC Mw分析のためにサンプリングされ得る。次のステップに移動するためには、上清中に含まれる最大Mwは、約220kDa未満であるべきである。上清中に含まれる最大Mwが220kDaより大きい場合は、追加の沈殿剤を約0.5%(w/w%)の濃度まで、一定の撹拌下で上清に加える。添加後、スラリーは、室温で、撹拌せずに45~60分間インキュベートされ得る。スラリーを8,000rpmで30分間遠心分離し、上清および沈殿物を収集する。10mlの上清が、QC Mw分析のためにサンプリングされ得る。最大Mwが、まだ220kDaより大きい場合は、上清中に含まれる最大Mwが200kDa未満になるまで、この工程を繰り返す。
【0108】
この工程の完了後、上清を収集し、塩沈殿剤の混合物を20%(w/w%)の最終濃度まで一定の撹拌下で上清に加える。添加後、スラリーは、室温で、撹拌せずに45~60分間インキュベートされ得る。スラリーを8,000rpmで30分間遠心分離し、上清および沈殿物を収集する。10mlの上清が、QC Mw分析のためにサンプリングされ得る。次のステップに移動するためには、上清中に含まれる最大Mwは、約180kDa未満であるべきである。上清中に含まれる最大Mwが180kDaより大きい場合は、追加の沈殿剤を約0.5%(w/w%)の濃度まで、一定の撹拌下で上清に加え、室温下に45~60分間置き、遠心分離し、QC Mw分析用に上清を収集する。上清中に含まれる最大Mwが180kDa未満になるまで、この工程を繰り返す。この工程の完了後、沈殿物を集め、沈殿物を無菌再蒸留水中に溶解し、この溶液を無菌再蒸留水に対して一晩透析する。透析した溶液に、約50%(v/v%)の最終濃度でイソプロパノールを加えて、グルカンを沈殿させる。上清をデカントすることにより、沈殿物を収集する。沈殿物を、60%、75%、および95%を用いてそれぞれ、2回、順次洗浄し得る。95%のイソプロパノール中の沈殿物を遠心分離し、上清を除去できる。このようにして得られた沈殿物は、60℃でオーブン乾燥し得る。
【0109】
塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンのキャラクタリゼーション
1gのオーブン乾燥生成物を、適切な対照を用いたキャラクタリゼーションのためにサンプリングし得る。キャラクタリゼーションは下記を含む:
・化学構造、MwおよびMw/Mn(分子量分布)を決定するためのGPC-NMR分析
・構造差異の指標としてのDP3/DP4比率
・炭水化物グルカン、タンパク質、脂肪/油、水分および灰分の総含量を決定するためのAOAC法を用いた純度分析
・細菌または真菌混入があるかどうかを調べる無菌検査
・エンドトキシンアッセイ
・細胞ベース試験を用いた効力アッセイ
【0110】
試験方法の説明
純度アッセイ
塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン生成物の純度をβ-グルカン、デンプン、タンパク質、脂肪/油、水分および灰分の総含量を分析することにより、決定した。これらの分析の方法および標準プロトコルは、食品産業界で十分に確立されている。これらのアッセイ手順は、既知の成分含量を有する2種の標準試料(Megazyme,Ireland)からの標準グルカン試料)を処理し、測定することにより検証された。結果は、我々の製造により産生した塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンは、95%を超える含量のβ-グルカンを含む高度に精製された生成物であることを示した(表2)。
【表2】
【0111】
化学構造、MwおよびMw/Mn(分子量分布)の決定
我々は、3種の異なる分子量の塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンの高解像度13C NMR分析を実施した。シグナルは、80℃で稼働するburker AM500 NMR分光計を用いて、DMSO中、500.13MHzで記録した。化学シフトは、DMSO-d13Cの約39ppmを基準にし、TMSに比較して報告した。13C分光法および実験は、標準Brukerパルスシーケンスを用いて実施した。穀類由来β-(1,3)-(1,4)グルカンの13C NMR分析は、文献による十分な裏づけがある。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの我々のスペクトルは、オート麦またはオオムギから単離したβ-(1,3)-(1,4)グルカンのものと同一に見えた。約103.6ppm、86.7~89.7ppmおよび76.1~76.9ppmの化学シフトは、炭素1(C-1)、C-3およびC-4に割り付けられ、β-(1-3)-およびβ-(1-4)グリコシル結合を示す(図6A)。
【0112】
塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンのMwおよびMw/Mnは、2つのカラムを直列に使用して(Shodex Ohpak KB-806M,Showa Denko K.K.,Tokyo,Japan;Ultrahydrogel linear,Waters,Milford,USA)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により決定された。GPCシステムは、MwおよびMw/Mnの測定を可能にする、屈折率(RI)検出器と連結された。PBS中の約1mg/mlの塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン試料を濾過し(0.45μm)、100μLをシステムに注入した。システムを37℃で、0.1MのNaNO(0.6ml/分)で溶出した。MwおよびMw/Mnの測定は、7種の異なる分子量を有するβ-(1,3)-(1,4)グルカンを含むβ-グルカンMw標準(Megazyme、カタログ番号:P-MWBG)を使った較正を用いることにより実施した。結果は、生成物に対し、200kDaのMw/MnのピークMwおよびMw/Mn<1.2を示す(図6B)。
【0113】
DP3/DP4比率
DP3/DP4は、穀類由来β-(1,3)-(1,4)グルカンのよく使われる構造差異の指標である。穀類由来β-グルカンは、β-D-グルコピラノシル単位のみからなる直鎖多糖類であることは文献で報告されている。これらの単位は、(1,3)-または(1,4)-β-D結合により連結される。構造配列解析は、酵素リケナーゼ(EC3.2.1.73)を用いて還元末端で(1,3)結合に隣接する(1,4)結合の切断により実行されることが多い。この結果、還元末端の末端基として(1,3)結合グルコース単位を有する(1,4)結合オリゴ糖が生成する。3(DP3)の重合度を有するオリゴ糖、すなわち、3-O-β-セロビオシル-D-グルコース、が主要産物であり、オリゴ糖DP4、すなわち、3-O-β-セロトリオシル-D-グルコース、が2番目に来る。これらの2つの構成単位、DP3およびDP4は、分子の90%超を構成する。残りのオリゴ糖は、より長い配列を含む。最大DP13のオリゴ糖は、穀類由来可溶性β-グルカン中で見つかっており、最大DP20のオリゴ糖が不溶性のβ-グルカン中で報告されている(図7)。
【0114】
重要なのは、DP3/DP4比率が溶解度の指標として使用されることである。この比率は、可溶性β-グルカンの場合より、不溶性の場合により高い。研究では、分子中の(1,3)結合が多いほど、連続したセロトリオシル単位(DP3)の可能性がより高くなることが示された。これらのDP3単位は、ヘリックスを形成し、凝集により不溶性を生じ、従って、生物活性に影響を与える。Woodらは、可溶性オート麦β-グルカンに対し、値2.1~2.4、オオムギβ-グルカンに対し、2.8~3.3、およびライ麦β-グルカンに対し、3.0~3.2を報告した。Izydorczykらは、40℃および65℃で抽出した可溶性オオムギβ-グルカンに対し、それぞれ、値1.76および2.13を得ており、および不溶性のβ-グルカンに対しては、値2.07~2.43を報告した。小麦β-グルカンの場合には、比率は、3.1~4.5である。
【0115】
我々は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの加水分解後に、リケナーゼを用いて、AOAC法(AOAC995.15)によりDP3/DP4比率を決定するために、HPAEC-PAD分析を実施した。リケナーゼ処理後、処理により産生したオリゴ糖を0.2μmフィルターを通して濾過し、HPAEC-PAD分析にロードした。システムを勾配溶出液で溶出した。溶出液は、A(150mMのNaOH)およびB(500mMの酢酸ナトリウム)を含み、勾配を85%Aおよび15%Bから100%Bまで20分で変化させた。DP3~12を有するマルトオリゴ糖(Sigma)を用いて、定量分析を実施した。HPAEC-PAD分析の結果は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンに対し、DP3/DP4が約1.5~約2.0であることを示した。
【0116】
効力アッセイ
我々は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの生物活性をインビトロで試験する細胞アッセイを実施した。THP1細胞モデルを用いたインビトロ試験はまた、生物活性が、塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンのMw特性により顕著に影響されることを明らかにした。THP1細胞は、培養中に外部刺激に反応して、M1活性化またはM2活性化マクロファージまたはDCに分化および成熟できる不死化ヒト単球細胞株である。異なるMwの塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカン分子の非存在下および存在下でのTHP1細胞培養物は、100~300kDaの範囲の塩沈殿β-(1,3)-(1,4)グルカンが、DC様表現型および機能を有する細胞へのTHP1の分化を効果的に調節できることを示した。
【0117】
ヒト単球THP-1細胞株を用いた細胞試験は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン曝露が、顕著に発現上昇した活性化マーカー(CD80、CD86、MHC II、およびCD11c)、炎症性サイトカイン(TNFαおよびIL-12)の産生増大および食作用の強化を有する、DC様表現型および機能を有する細胞への単球の分化を調節し得る。
【0118】
これらの結果に基づいて、我々は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの臨床供給の効力アッセイのために、THP1細胞モデルおよび分析の使用を提案する。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン処理時のTHP1細胞の表現型および機能変化は、TNFαおよびIL-12の細胞内作製を定量的ELISAを用いて測定することにより、およびMHC IIの細胞表面発現をFACS分析を用いて定量化することにより、特徴付けることができる。
【0119】
無菌検査-USP
我々は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンがマウスに投与される前に、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液の無菌検査を実施した。無菌検査は、塩沈殿200kDaβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液が生存可能細菌および真菌混入物不含であるかどうかを判定することであった。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンを1mg/mLで無菌PBS溶液に溶解し、0.45μmフィルターを通して濾過した。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液を大豆カゼイン消化培地(SCDM)および液状チオグリコール酸培地(FTM)に無菌で移した。これらのブロスを14日間インキュベートし、細菌および真菌増殖の証拠を検査した。結果は、細菌および真菌は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン試料中に検出されないことを示した(データは示さず)。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの無菌検査は、UHCMC微生物学研究室で実施した。
【0120】
BET/LAL Kinetic/ChromI/Eアッセイ-USP/FDA
我々は、エンドトキシン検出のために、LALゲルクロットまたは動力学的発色法の使用を検証するこのアッセイを実施した。検証には、少なくとも3つの製品ロットで、阻害/強化(I/E)試験およびエンドトキシンレベルの測定が必要である。試験は、無希釈製品または最終製品の適切な希釈物に対し実施して、結果は、規定されたエンドトキシン限界値以内でなければならない。試験製品により干渉の可能性は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液(1mg/mL)+特定のレベルのエンドトキシンを含むLAL試薬を添加することにより試験された。阻害/強化試験後、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンのエンドトキシン含量が測定された。結果は、エンドトキシンレベルが、マウスの総製品投与量に対し、5EU/kg未満であることを示した(データは示さず)。このアッセイは、CWRU/UHCMC細胞療法実験室のcGMP施設で行われた。
【0121】
IV注入バッグの調製
最終塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン薬物製剤は、臨床グレード無菌薬物バイアル中の10ml/バイアルの無菌の注入可能PBS中に、2±0.1mg/mLの濃度で懸濁された塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン分子からなる。グラム染色(細菌)、マイコプラズマ(qPCR)および最終薬物製剤の放出基準管理として使用できるエンドトキシン試験(リムラスアッセイ)を用いて、液体医薬組成物の無菌性を試験し得る。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの液体医薬組成物を含む薬物バイアルは、上記無菌検査の間、室温で貯蔵できる。最終放出基準に適合する塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液は、特定の体積の注入可能PBSを含むIV注入バッグに直接加えることができる。IV溶液バッグ中の最終製剤は、注入可能PBS中の0.2±0.01mg/mLの塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンからなり得る。注入バッグに添加される総量は、患者体重に基づいて計算される。無菌IV溶液注入バッグ内に収容された最終製剤は、室温で貯蔵できる。各注入バッグは、適切に標識して、注入前に患者の本人確認を可能にする。
【0122】
無菌検査-USP
この方法は、試験品が生存可能細菌および真菌混入不含であるかどうかを判定するために使用される。試験品を大豆カゼイン消化培地(SCDM)および液状チオグリコール酸培地(FTM)に無菌で移した。これらのブロスを14日間インキュベートし、細菌および真菌増殖の証拠を検査した。
【0123】
静菌/静真菌(B/F)-USP
B/F試験は、無菌検査の検証であり、生存可能細菌または真菌が存在する場合、それらが明らかであることを確実にするために実施される。試験品を含む無菌検査ブロスは、低レベルの特定の微生物を播種され、その後、微生物の増殖の証拠が検査される。増殖は、静菌活性または静真菌活性がないことを示し、無菌検査パラメーターが妥当であることを示す。
【0124】
グラム染色
グラム染色は、無菌検査の検証であり、最終注入製品中の生存可能細菌または真菌の存在を可視化するために実施される。
【0125】
マイコプラズマ検出-迅速
注入日の前にマイコプラズマ混入の存在を特定するために、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液の試料は、PCRまたはELISAベース法を用いて迅速試験を受け得る。
【0126】
マイコプラズマ検出-培養
このアッセイは、間接的(細胞培養)および直接的(ブロスおよび寒天)アッセイの両方により、マイコプラズマの存在を検出するために使用される。試験品をサル腎培養細胞と共にインキュベートし、その後、固定し、DNA結合蛍光色素で染色(ヘキスト染色)し、落射蛍光によりマイコプラズマの存在を顕微鏡的に評価した。寒天プレートおよびブロスフラスコに試験品を接種し、それぞれ、嫌気的におよび好気的にインキュベートされる。ブロスフラスコ由来の試料は、3、7および14日目に、寒天プレート上で継代培養され、接種後14日になると直ぐに全てのプレートが検査される。これらの種のマイコプラズマは、陽性対照として機能する。
【0127】
薬物製剤貯蔵、追跡および標識
製品特異化に適合する薬物製剤は、特定の体積の注入可能PBSを含むIV注入溶液バッグに直接加えることができる。IV溶液バッグ中の最終製剤は、0.2±0.01mg/mLの塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンからなり得る。注入バッグに添加される総量の溶液は、患者体重に基づいて計算される。無菌IV溶液注入バッグ内に収容された最終製剤は、室温で貯蔵できる。
【0128】
安定性試験
可溶性オート麦由来β-(1,3)-(1,4)グルカンがPBS溶液中で、凝集体、組織構造またはパターンを自然発生的に形成しないことは、文献により十分に裏づけされている。それらは、pH、光、温度、機械的な力、電界および磁界に対し感受性が高くない。そのために、我々は、PBS溶液中での6か月間にわたるMwを測定することにより、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンの安定性を試験することを選択した。塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンを1mg/mLでPBSに溶解し、0.45μmフィルターを通して濾過した。この濾過は、無菌フード中で実施した。このように調製した塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液を無菌薬物バイアル中に貯蔵し、室温に置いた。種々の時点での、100μLの塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン溶液をMw測定のために、ピペットにより無菌で採取した。我々の実験室で製造した3種の独立した塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン試料の安定性試験の結果を表3に示す。試料のMwおよびMw/Mnは、GPC-RIにより決定した。これらの3種の塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカン試料の効力を、0日目および180日目に測定した。効力は、塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンへの72時間の曝露時のTNFαのTHP1細胞産生を、PBSを対照として用いて定量化することにより決定した。これらの結果は、最終生成物のMwおよびMw/Mnが6か月間にわたり、何ら顕著な変化を受けないことを示した;塩沈殿200kDaのβ-(1,3)-(1,4)グルカンは、活性(TNFαの細胞産生)を誘導し、この活性は、室温貯蔵の6か月後に90%超が残存した。
【表3】
【0129】
本発明をその好ましい実施形態に言及しながら具体的に示し、記載してきたが、請求項に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態や詳細を様々に変更してよいことを当業者なら理解できる。前記明細書において引用された全ての特許、刊行物および参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A-B】
図7A-B】
【国際調査報告】