(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ある状態から別の状態への処理負荷の移行を強化するためのエネルギー及び物質流のコンバイナ
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H05B6/64 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518725
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 US2021051302
(87)【国際公開番号】W WO2022066638
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523102287
【氏名又は名称】アクセルビーム フォトニクス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ACCELBEAM PHOTONICS,LLC
【住所又は居所原語表記】111 Buck Rd., Unit 500 Suite 1 Huntingdon Valley, Pennsylvania 19006 US
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジルコフ,スタニスラフ
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AB20
3K090BB05
3K090CA01
3K090DA07
(57)【要約】
マイクロ波エネルギーを使用した、大規模なバッチ化学反応のための装置は、外壁によって画定されたチャンバと、チャンバ内に配設された容器と、を備え、容器は、内壁によって画定され、内壁は、隙間によって外壁から分離されている。容器は、負荷を受け入れて保持するように構成されている。装置は、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを更に備え、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが負荷に入る点は、マイクロ波エネルギーの放出時に、第1のアプリケータと第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギーを使用した、大規模なバッチ化学反応のための装置であって、
外壁によって画定されたチャンバと、
前記チャンバ内に配設された容器であって、前記容器は、内壁によって画定され、前記内壁は、隙間によって前記外壁から分離され、前記容器は、負荷を受け入れて保持するように構成されている、容器と、
前記負荷に向かって前記マイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータと、を備え、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが前記負荷に入る点は、前記マイクロ波エネルギーの放出時に、前記第1のアプリケータと前記第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、装置。
【請求項2】
前記第1のアプリケータの場所に対応する位置で前記内壁に形成された、第1のマイクロ波ウィンドウと、
前記第2のアプリケータの場所に対応する位置で前記内壁に形成された、第2のマイクロ波ウィンドウと、を更に備え、
前記第1のマイクロ波ウィンドウ及び前記第2のマイクロ波ウィンドウの材料が、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性であり、前記負荷中の試薬に対して化学的に耐性があり、前記第1のアプリケータが、前記第1のマイクロ波ウィンドウを通して前記マイクロ波エネルギーを前記容器内に放出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のアプリケータが、前記第1のアプリケータの第1の端部における導波路と、前記第1のアプリケータの第2の端部におけるホーンアンテナと、を含み、前記第1のアプリケータの前記第2の端部が、前記第1のマイクロ波ウィンドウの近位に配設され、前記第1のアプリケータの前記第1の端部が、前記第1のマイクロ波ウィンドウの遠位に配設され、前記導波路が、前記マイクロ波エネルギーを受信し、前記マイクロ波エネルギーを前記導波路を通して前記ホーンアンテナ内に導くように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器内に配設されるとき、前記容器内の前記第1のアプリケータの場所と前記第2のアプリケータの場所との間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも長く、
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器外に配設されるとき、前記第1のマイクロ波ウィンドウと前記第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む前記化学処理サイクルの前記全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも長い、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器内に配設されるとき、前記容器内の前記第1のアプリケータの場所と前記第2のアプリケータの場所との間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも1.5倍長く、
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器外に配設されるとき、前記第1のマイクロ波ウィンドウと前記第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む前記化学処理サイクルの前記全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも1.5倍長い、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器内に配設されるとき、前記容器内の前記第1のアプリケータの場所と前記第2のアプリケータの場所との間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも2倍長く、
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが前記容器外に配設されるとき、前記第1のマイクロ波ウィンドウと前記第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって前記マイクロ波エネルギーを前記負荷に向かって放出することを含む前記化学処理サイクルの前記全ステップの中で最長の、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも2倍長い、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータが、それぞれ、前記チャンバの前記外壁と前記容器の前記内壁との間の前記隙間内の、対応するサブ空間を占有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1の電力で第1の周波数を有する前記マイクロ波エネルギーを発生させ、前記マイクロ波エネルギーを前記第1のアプリケータに送信するように構成された、第1のマイクロ波発生器を更に備え、前記第1のマイクロ波発生器は、前記第1のアプリケータに電磁的に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のアプリケータの場所に対応する位置で前記内壁に形成された、第1のマイクロ波ウィンドウと、
前記第2のアプリケータの場所に対応する位置で前記内壁に形成された、第2のマイクロ波ウィンドウと、を更に備え、
前記第1のマイクロ波ウィンドウ及び前記第2のマイクロ波ウィンドウの材料が、前記負荷中の試薬に対して化学的に耐性があり、前記第1のアプリケータが前記容器内に配設され、前記第1のマイクロ波ウィンドウを通して前記第1のマイクロ波発生器から前記マイクロ波エネルギーを受信するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のマイクロ波発生器が、前記チャンバ外に位置し、前記隙間内に位置する前記第1のアプリケータに接続されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記容器が加圧され、前記チャンバが加圧される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
混合デバイスを更に備え、前記混合デバイスは、前記負荷中の試薬を均質化するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記負荷が、マイクロ波エネルギーを吸収可能な液状反応媒体を含み、
前記マイクロ波エネルギーの前記浸透深度が、前記反応媒体で前記マイクロ波エネルギーを放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、前記反応媒体への前記マイクロ波エネルギーの浸透深度である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記容器内の前記液状反応媒体の体積が100L以上である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記隙間内に位置し、マイクロ波エネルギーを反射するように構成された、別個の第1のマイクロ波遮蔽領域及び第2のマイクロ波遮蔽領域を更に備え、前記第1のマイクロ波遮蔽領域が、前記隙間内に位置する前記第1のアプリケータを囲み、前記第2のマイクロ波遮蔽領域が、前記隙間内に位置する前記第2のアプリケータを囲み、それにより、前記隙間内の前記第1のアプリケータが、前記隙間内の前記第2のアプリケータから遮蔽され、前記隙間内の前記第2のアプリケータが、前記隙間内の前記第1のアプリケータから遮蔽されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記隙間内の前記第1のアプリケータと、前記第1のマイクロ波遮蔽領域の壁との間の距離が、固定され、前記第1のアプリケータを取り囲む空間内のマイクロ波放射の波長Xに基づき、式
A=(1/2N+1/4)X
によって表される長さAに等しく、式中、Nは、任意の負でない整数である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータを含む複数のアプリケータを更に備え、前記複数のアプリケータによって供給される総電力がPであり、前記負荷の体積がVであり、Vに対するPの比率が、0.05kW/L~2.5kW/Lで定義された範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータを含む複数のアプリケータを更に備え、
前記複数のアプリケータのうちの少なくとも2つが、互いに異なる周波数のマイクロ波エネルギーを放出し、
前記マイクロ波エネルギーの前記浸透深度が、前記負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出する全てのアプリケータの中で最長の浸透深度である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
マイクロ波エネルギーの適用を通して、材料を処理するための方法であって、前記方法は、
チャンバ内に配設された容器に、前記材料を含む負荷を供給することと、
前記負荷に向かって前記マイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを通して、前記容器内の前記負荷にマイクロ波エネルギーを適用することと、を含み、前記第1のアプリケータ及び前記第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが前記負荷に入る点は、前記マイクロ波エネルギーの放出時に、前記第1のアプリケータと前記第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、前記マイクロ波エネルギーの前記負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法で処理された、材料。
【請求項21】
前記方法の実行後の前記材料が、前記方法の実行前の前記材料の物理的特性又は化学的特性とは異なる、物理的特性又は化学的特性を有するように、前記材料を溶解、加熱、合成、又は別様に変換する、少なくとも1つのステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
発熱反応、誘導ヒーター、電気抵抗ヒーター、加熱流体、荷電粒子のビーム、磁性粒子の流れ、プラズマヒーター、レーザーヒーター、超音波、又は、前記材料の前記物理的特性若しくは化学的特性の変化を引き起こす他のエネルギー源のうちの少なくとも1つを適用することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年9月24日に出願された米国仮出願第63/204,278号の優先権を主張し、その全体の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、高電力及び高圧での大規模な反応負荷の均一なマイクロ波処理のための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で提供される背景説明は、本開示の文脈を概して提示する目的のためのものである。本発明者らの著作物は、本背景技術節に記載されている限り、及び、出願時点で先行技術として認められない場合がある説明の態様は、本開示に対して先行技術として明示的にも暗示的にも認められていない。
【0004】
「マイクロ波」(MW)という用語は、300MHz~300GHzの周波数に用いる場合があり、米国連邦通信委員会(FCC)によると、産業用に適用される6つのMW帯があり得、MW反応器の化学処理で液体を加熱するために一般的に利用される、以下の2つのMW帯を含む:915MHz及び2.45GHz(又は、より一般的には2.5GHzに丸められている)。2.5GHzでの反応負荷のマイクロ波処理は、負荷が0.01~1Lスケールの場合、関連技術において一般的に均一であり、関連技術はまた、使用される1つ又は少数のマイクロ波アプリケータを想定している。より大規模な反応負荷は、加熱の不均一性の増加をもたらす可能性がある。単一のアプリケータ又は少数のアプリケータによって大規模な反応負荷を均一に処理することは困難であり得、アプリケータ間の相互結合のために、マルチモードチャンバ内で多数のアプリケータを同時に調整することは困難であり得る。
【0005】
上記の問題に関するいくつかの解決策は、反応負荷を、反応容器(すなわち、チャンバ又は反応器)の小さな部分とみなし、解決策の一部として負荷を考慮することなく、チャンバ全体のいくつかのアプリケータから、マイクロ波の均一性に取り組むための、いくつかの解決策を提供しようとした。工業規模の生産にマイクロ波を実装するには、100Lを超える処理量が必要となり得る。例えば、そのような要件は、医薬品分野の単一バッチ生産に適用され得る。注目すべきは、制御された条件下でのマイクロ波支援加熱は、反応時間を大幅に、典型的には、数日又は数時間から数分又は数秒に短縮することが多いので、反応混合物の加熱を必要とする、任意の用途のための貴重な技術であることが示されている。したがって、大規模な反応負荷の均一なマイクロ波処理が望まれる。
【0006】
様々な医薬品有効成分(API)、医薬品製造のための構成要素(BB)、及び医薬品自体のマイクロ波支援有機合成(MAOS)は、小規模では実証されている。例えば、アセトアミノフェン、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、リン酸クロロキン、硫酸ヒドロキシクロロキン、及び類似の薬剤の製造は、従来の熱ベースの製造と比較して、同等以上の収率及び比較的速い反応時間を有するMAOSによって、部分的に置換され得る。MAOSによって、上記5つの化合物の代替物が合成され得るだけでなく、COVID-19の上位15の一次優先医薬品のリストからの追加の化合物(Office of the Assistant Secretary for Administration(HHS,Health and Human Services)Info.HHS-2020-RFI-COVID-19-2-Priority ICU Medicines COVID-19 Response Sheet.Apr 5 2020.を参照のこと。)、更に、抗がん活性、抗ウイルス薬(例えば、ゾビラックス)、抗菌物質(例えば、バクトリム)、抗真菌薬、HIVプロテアーゼ阻害剤、及び抗アルツハイマー剤を示す、既知の及び新しい化合物を含む多くの他の化合物が合成され得る。勃起不全に関する男性因子不妊症の治療に適用可能な医薬品用のAPIのMAOS生産もまた報告された。(2005.Khan et al.A facile and improved synthesis of sildenafil(Viagra)analogs through solid support microwave irradiation possessing tyrosinase inhibitory potential,their conformational analysis and molecular dynamics simulation studies.Mol Divers,2005 vol 9(1-3)p15-26)及び(2010.Richard Wagner.Efficient use of microwave-assisted steps in synthesis of the Cialis-like generic.Private communication to S.Zhilkov.)上記のAPI/BB/医薬品に加えて、MAOSの使用は、ペプチド生産において有用であり得る(2011.Ghosh.Microwave assisted peptide synthesis.32-slide presentation,Dec 8,2011を参照のこと)。
【0007】
例えば、4-ニトロフェノールの初期水素化からアセトアミノフェンの最終分離までの、アセトアミノフェンの全合成は、従来のアプローチと比較して、時間を70%短縮し、90分未満で完了した(2009,CEM ap0141,Rapid,two-step microwave-assisted synthesis of acetaminophenを参照のこと)。しかしながら、そのような合成は、反応容器として、10mLの細いガラス管を使用して行われた。
【0008】
例えば、10mLのガラス圧マイクロ波管も使用して、ベンゾトリアゾール化学を利用して、アミノ酸リンカーを有する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)アセトアミノフェン複合体を合成した(2014,Tiwari,et al.Microwave assisted synthesis and QSAR study of novel NSAID acetaminophen conjugates with amino acid linkers.Org.Biomol.Chem.,2014,v12 p7238-7249を参照のこと)。全てのビス複合体について得られた生物学的データは、(a)いくつかのビス複合体は、それぞれの親薬物よりも強力な抗炎症活性を呈すること、(b)強力なビス複合体は、高い潰瘍性の親薬物とは対照的に、胃の可視病変を示さないこと、及び、(c)強力な生体活性化合物は、適用された抗炎症投与量の5倍で、死亡率又は毒性症状を示さないことを示した。
【0009】
例えば、10mLのバイアル中でMAOSを再度行い、反応混合物を、120℃で、マイクロ波で10分未満で加熱したとき、プロパセタモール塩酸塩化合物を、98%の単離収率で得た(2016,Murie,et al.Acetaminophen prodrug:microwave-assisted synthesis and in vitro metabolism evaluation by mass spectrometry.J.Braz.Chem.Soc.,2016を参照のこと)。開発されたMAOSプロトコルはまた、触媒の不在、低溶媒量、短い反応時間などの追加の利点も有する。注目すべきは、従来の加熱方法は、50%の収率及び12時間の処理時間で、同じ化合物を生成する。
【0010】
有機合成におけるマイクロ波の使用は、新しいアセトアミド誘導体をもたらした(2020,Alsamarrai,Abdulmajeed S.H.and Abdulghani,Saba S.Microwave-assisted synthesis,structural characterization of amino pyridines,pyrrolidine,piperidine,morpholine,acetamides,and assessment of their antibacterial activity.Preprint,31p.University of Samarra,Iraq.doi:10.20944/preprints202010.0077.v1を参照のこと)。収率を増加させ、反応時間を短縮しようと、MAOSを使用して、7つの化合物を合成した。中程度から高い収率を達成し、反応時間を、2~3時間から数分まで短縮した。グラム陽性細菌種及びグラム陰性細菌種に対する適用は、使用された参照抗生物質と比較して、望ましい抗菌力を実証した。
【0011】
現在、約450個のAPIが医薬品の生産に使用されている。それらの約半分について、マイクロ波技術を使用することにより、処理ステップの低減、反応時間の短縮、生成物収率の増加、触媒の使用の節約又は排除、プロセス制御の簡素化、機器の占有スペースのコンパクト化、消費エネルギーの節約、生産性の向上、及び生産コストの全体的な低減などの面において、製造プロセスを改善することができる。
【0012】
上記で議論されたように、マイクロ波処理は、そのようなマイクロ波処理が生産規模で運転可能である場合、医薬品の生産を改善するための有望な可能性を示す。小規模の調査では、マイクロ波エネルギーを既知の化学処理に適用できることが実証されており、大規模生産が現在抱えている問題を克服する好適な装置が提供されれば、潜在的により高い純度で、所望の医薬品及び化学製品のより大きな出力につながる可能性がある。したがって、マイクロ波エネルギーを使用する、大規模な化学処理のための装置が望まれる。
【0013】
小規模なマイクロ波反応器は、創薬及びプロセス最適化研究のために研究に使用されてきた。小規模な反応器は、製薬業界にとってのMAOSの潜在的な利点の「概念実証」の実験的証拠を提示し、そのような反応器は、わずか10mL~1Lの処理量で動作する。
【0014】
例えば、小規模な反応器の技術基盤を構成する工学原理を探索することは、一般的に、高温(例えば、反応時間を延長した場合は最大260℃、短い反応時間の場合は最大300℃)及び高圧(例えば、最大200bar/200atm)だが、約1kW(又は、それ未満)の低マイクロ波電力(UltraCLAVEを参照のこと)の条件下で、周波数2.45GHzで動作するマイクロ波反応器内に最大40個の小さな負荷管(例えば、各20mL)を個別に配列することにより、約3Lの最大処理量を達成する。約1L又はそれ未満の量は、新薬候補ライブラリの発見又は所望のプロセスの最適化ステップのための研究開発には適しているが、そのような少ない量は、典型的には、認証用の単一バッチの量が100~1000L程度であることを必要とするFDA要件のため、工業規模での医薬品の製造には不十分である。
【0015】
MAOS由来の結果の、処理量1~10mL~12Lからの線形スケールアップが、最大容量12L、並びに高温(例えば、最大220℃)及び高圧(例えば、最大20~24bar)の動作条件を有する反応器を使用して、最近実証された(2010,Schmink,et al.Exploring the scope for scale-up of organic chemistry using a large batch microwave reactor.Organic Process Research & Devlpmnt,Vol 14 No 1 p 205-214,2010を参照のこと)。
【0016】
Schmink他によって試験された反応器は、内部容器(容積2~12L)が配列され、処理対象物質が装填されている、加圧(外部)チャンバに照射する3つのマイクロ波発生器(それぞれ2.45GHzで2.5kW)を利用しており、該チャンバの容積は、該内部容器の容積よりも有意に大きい。上述の反応器を可能にした技術的解決策は、米国特許第9,560,699号、米国特許出願第2017/0118807A1号、米国特許出願第2012/0305808A1号、米国特許出願第2011/0189056号、及び米国特許出願第2010/0126987号に記載されている。関連する設計は、US2012/0305808A1の
図5Bに示されている。関連する設計は、マルチモードチャンバ内に装填容器が配設された、マルチモードチャンバである。3つのパッチアンテナは、チャンバのキューポラ、又は容器からかなり離れた上部に配置され、任意のアンテナから容器までの最短距離は、約2.45GHzの周波数で約12センチメートルの自由空間波長を超える。容器とチャンバの壁/キューポラとの間には、マイクロ波が自由に伝播し、あるアンテナから別のアンテナに反射/屈折するための十分な空間があり、障害物がない。これらのアンテナは、1リットルの水などの少量の負荷の存在下で半独立であり、主に加熱のために該少量の負荷に向かって波を放射するように調整されているが、あるアンテナから別のアンテナへの波の顕著な方向転換のため、より大きな負荷が加熱されると、そのようなアンテナの調整がより困難になる場合がある。US2012/0305808A1の
図5Bの設計は、発生器(各アンテナはそれぞれの発生器によって供給される)の独立した動作を可能にし得ず、反応器の負荷への電力伝送に関して、発生器の独立した制御を支援し得ない。6つのアンテナを備えた設計は、上述と同じ制限を有し、大きな負荷が使用されるときに、調整を支援することと、十分な性能を提供することがより困難であり得る。
【0017】
したがって、負荷がマルチモードチャンバの小さな部分であり、複数の発生器によって供給(又は活性化)され、あるアンテナから別のアンテナへの波の方向転換が防止されない場合、バッチ設計は、周波数2.45GHzで最大でも10~20Lの達成可能な体積を有し得る。そのようなマルチモード設計では、複数のアンテナの相互結合の防止なしでは、(20Lを超える)より大きな体積の均一なマイクロ波処理は、ほとんど達成不可能である。このような制限は、市販されている最大規模のMAOS反応器が最大処理量20Lを有し、最大1.5barの大気圧近傍の高温で動作できるという事実によって確認されている(2020 Labotron reactor:20 L,6 kW cont wave power at 2.45 GHz.www.SAIREM.comを参照のこと)。
【0018】
医薬品とは無関係の化学分野におけるマイクロ波反応器の工業規模の使用は、食品処理、バイオ燃料製造、ポリマー及び複合材料の生産、セラミックスの焼結、ナノ材料の合成、並びにオプトエレクトロニクス及びコンピュータハードウェア用の半導体を含む様々な材料のプラズマ化学処理などの用途を含む。食品処理は化学物質を必要とせず、むしろ、一般的に、適度な加熱だけが必要である。また、高圧は考慮に入れない。したがって、これらの単純な処理条件は、医薬品指向のMAOS処理に望ましい複雑な要件と比較して、著しく異なる。
【0019】
マイクロ波を体積に伝達するために、関連するアプローチは、エネルギー伝達を実行するデバイスに対する後進波の影響を最小限に抑えた、マイクロ波エネルギーの効率的な伝達を求める。そのようなデバイスは、数ある用語の中で、「アンテナ」、「ラジエータ」及び「放射開口」と呼ぶことができる。アンテナ理論は、放射線の波長の少なくとも10倍を超えた距離を有する、アンテナからかなり遠く離れた波を考慮することを前提としている。しかしながら、典型的なマイクロ波反応器では、それぞれの寸法は、上記の波長をさほど大きく超えない。該アンテナデバイスは、本明細書で簡単に解明される。
【0020】
中空導波路の開放端又は同軸伝送路の開放端は、マイクロ波エネルギーを関心体積に伝達することで知られている、最も単純なデバイスである。それらは非常に単純であるため、典型的には、負荷とマイクロ波発生器との整合を提供せず、非効率である。更に重要なことには、発生器に戻る波の反射を防止しないことである。1つの空間で同時に動作する、そのような2つの単純な開放端アンテナは、波の干渉の影響を経験し、該アンテナ内のマイクロ波を起動する発生器の相互結合につながる。該発生器は互いに害を及ぼし合い、マイクロ波エネルギーは負荷に送られるだけでなく、相互結合している発生器においても著しく消散する。そのような動作は、発生器の電力の算術和を可能にせず、エネルギー供給の制御が問題となる。
【0021】
例えば、1個の発生器を有する米国特許第4,460,814号では、開放端同軸アンテナを、大きな肉片の処理のために、肉片に直接入れ込むことが提案され、該肉片及び該アンテナは、電子レンジ内に配設される。例えば、米国特許第4,795,871号は、マイクロ波チャンバの空洞内の物品を処理するために、チャンバの壁の長方形のウィンドウを通して、2~6個の発生器から該空洞内に放出する、2~6個の開放端中空導波路を記載しているが、推定直線偏波の交差偏波は、発生器の相互結合を防止することが期待されていた。誘電体ウィンドウ、ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、ホーンアンテナ、パッチアンテナ、スロット付き導波路アンテナ、及び他の種類のアンテナが、電子レンジ及び反応器に使用できる。更に、提案されたアンテナは、誘電体材料、金属、又はそれらの組み合わせを含む、様々な種類の材料で作製され得る。同時に放出するアンテナ(それぞれ主に線形偏波)の交差偏波は、最大6個の同時放出アンテナの使用を想定し、該交差偏波は、発生器の相互結合を防止することが期待されていた。米国特許出願第2003/0089707A1号のように、わずかに異なる交差偏波アンテナを「マイクロ波供給点」と呼ぶことができる。
【0022】
アンテナ間のクロストークを避けるために、米国特許出願第2006/0191926A1号は、第1のアンテナ及び第2のアンテナによる放射同士の間の時間分離を利用することを提案した。第1のアンテナがマイクロ波を放出すると、第2のアンテナは非動作状態となり、逆もまた同様である。各アンテナの動作の時間分離は、相互結合の課題を解決することができる。しかしながら、該時間分離は、複数の発生器の高電力を同時に組み合わせることを可能にせず、したがって、スケーラブルなMAOSベースの反応器に望ましい、大きな負荷の急速な加熱を提供する必要性を考えると、著しい欠点を有する。したがって、アンテナ(又は、アプリケータ)間の相互結合の課題をも排除しながら、マイクロ波エネルギーを使用した、大規模な化学処理のための装置が望まれる。
【0023】
本開示の態様は、特に特許請求の範囲に記載される解決策において、当該技術分野における上記の欠点のうちのいくつかに対処し得る。
【発明の概要】
【0024】
本開示は、多量負荷のMW処理のための方法及び装置に関する。大きな負荷を処理するために、方法及び装置は、電磁相互結合の問題を解決するために空間分離を使用し、十分な空間分離を提供するための解決策の一部として負荷を考慮する。複数のマイクロ波アプリケータを使用することが提案されており、アプリケータの各々は別個のサブ空間を占有し、サブ空間は重複しない。各アプリケータは、他のアプリケータとは独立して、負荷に結合される。負荷中のマイクロ波の吸収は、この負荷のサイズが、マイクロ波の浸透深度よりも大きい場合、負荷を分離手段の一部とする。アプリケータのサブ空間の、負荷に一致した境界を除いて、他の全ての境界は、このアプリケータのマイクロ波放射を吸収することなく、マイクロ波に対して非透過性である。そのような空間分離は、相互結合を伴わない多数のアプリケータの利用と、干渉を伴わない複数のマイクロ波発生器の電力の算術和の両方を可能にする。したがって、総供給電力を高くでき、大きな体積の負荷を高温に急速に加熱することができる。
【0025】
加えて、本開示は、MW処理の高圧を提供することに関する。本発明の別の態様は、高圧処理を提供するための空間分離の使用である。負荷は容器内に配列され、容器は圧力補償チャンバ内にある。容器は加圧され、チャンバは加圧され、容器とチャンバとの間の差圧は、容器内の圧力が、処理のために著しく高くなり得るようなものであり得る。単一バッチは、記載された方法が、高圧及び高温の条件下で関心物質を処理することができる、マイクロ波反応器の設計に適用される場合、医薬品製造要件を満たすために好適に大きな容量を有することができる。
【0026】
加えて、本開示は、マイクロ波エネルギーを使用した、大規模なバッチ化学反応のための装置であって、外壁によって画定されたチャンバと、チャンバ内に配設された容器であって、容器は、内壁によって画定され、内壁は、隙間によって外壁から分離され、容器は、負荷を受け入れて保持するように構成されている、容器と、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータと、を含み、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが負荷に入る点は、マイクロ波エネルギーの放出時に、第1のアプリケータと第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、装置に関する。
【0027】
加えて、本開示は、マイクロ波エネルギーの適用を通して、材料を処理するための方法であって、方法は、チャンバ内に配設された容器に、材料を含む負荷を供給することと、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを通して、容器内の負荷にマイクロ波エネルギーを適用することと、を含み、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが負荷に入る点は、マイクロ波エネルギーの放出時に、第1のアプリケータと第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、方法に関する。
【0028】
この発明の概要の項は、本開示又は特許請求される発明の全ての特徴及び/又は漸進的に新規な態様を特定するものではないことに留意されたい。代わりに、この発明の概要は、様々な実施形態及び対応する新規性の点についての予備的な議論のみを提供する。実施形態の更なる詳細及び/又は考えられる視点については、読者は、以下で更に論じられるように、発明を実施するための形態の項、及び本開示の対応する図に誘導される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
実施例として提案される本開示の様々な実施形態は、以下の図を参照して詳細に説明される。
【0030】
【
図1】本開示の実施形態による、正方形の幾何学的グリッドを有する、容器の底部の投影図である。
【
図2】本開示の実施形態による、正方形の幾何学的グリッドを有する、浮遊スラブの投影図である。
【
図3】本開示の実施形態による、水平配置を有する、装置100の概略図である。
【
図4A】本開示の実施形態による、マイクロ波エネルギーを使用してバッチ式化学反応を行うための装置100の概略図である。
【
図4B】本開示の実施形態による、マイクロ波エネルギーを使用してバッチ式化学反応を行うための装置100の概略図である。
【
図4C】本開示の実施形態による、マイクロ波エネルギーを使用してバッチ式化学反応を行うための装置100の概略図である。
【
図5】本開示の実施形態による、細長い形状を有する装置100の概略図である。
【
図6】本開示の実施形態による、装置100の閉ループ構成の概略図である。
【
図7A】本開示の実施形態による、アプリケータの設計の概略図である。
【
図7B】本開示の実施形態による、アプリケータの設計用に最適化された寸法の概略図である。
【
図7C】本開示の実施形態による、動作周波数の関数としての電力反射係数のグラフである。
【
図8A】本開示の実施形態による、整合導波路を有するアプリケータのレイアウト及び最適寸法の概略図である。
【
図8B】本開示の実施形態による、整合部の長さの様々な値に対する、反射係数の周波数依存性のグラフである。
【
図9A】本開示の実施形態による、間に23°の角度距離を有し、円筒形の水容器に取り付けられた、2つのホーン型アプリケータのシミュレーション概略図である。
【
図9B】本開示の実施形態による、間に180°の角度距離を有し、円筒形の水容器に取り付けられた、2つのホーン型アプリケータのシミュレーション概略図である。
【
図9C】本開示の実施形態による、
図9Aの2つのアプリケータの周波数依存性のグラフである。
【
図9D】本開示の実施形態による、
図9Bの2つのアプリケータの周波数依存性のグラフである。
【
図10A】本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、単一のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図10B】本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、単一のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図11A】本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、両方のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図11B】本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、両方のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図12A】本開示の実施形態による、130℃の水の性質に対するアプリケータの最適寸法の概略図である。
【
図12B】本開示の実施形態による、
図12Aのアプリケータの周波数依存性のグラフである。
【
図13A】本開示の実施形態による、様々な温度での水の性質の関数として、互いに近接して(実線)及び対向して(点線)取り付けられた、2つのアプリケータの反射係数依存性のグラフである。
【
図13B】本開示の実施形態による、様々な温度での水の性質の関数として、互いに近接して(実線)及び対向して(点線)取り付けられた、2つのアプリケータの透過係数依存性のグラフである。
【
図14A】本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、片方のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図14B】本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、片方のホーンアプリケータが放出している、2つのホーンアプリケータ用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【
図15A】本開示の実施形態による、誘電体で充填することによって強化された構造剛性で設計された、アプリケータの概略図である。
【
図15B】本開示の実施形態による、離散部を誘電体で充填することによって強化された構造剛性で設計された、アプリケータの概略図である。
【
図15C】本開示の実施形態による、誘電体充填及び厚いウィンドウのアプリケータにおける、反射パラメータの周波数依存性の比較のグラフである。
【
図16A】本開示の実施形態による、10kWの入力電力での誘電体充填アプリケータにおける複素電界分布の分布のシミュレーション概略図である。
【
図16B】本開示の実施形態による、10kWの入力電力での厚いレンズのアプリケータにおける複素電界分布の分布のシミュレーション概略図である。
【
図17】本開示の実施形態による、アルミナの様々な誘電率値に対する、厚いレンズのアプリケータ内の反射の周波数依存性のグラフである。
【
図18】本開示の実施形態による、アルミナの損失正接の関数としての、誘電体レンズ内のRF損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の開示は、提供された主題の様々な特徴を実施するための、多くの異なる変形例又は実施例を提供する。本開示を例示するために、構成要素及び配置の具体例を以下に記載する。当然のことながら、これらは単なる例であり、いかなる変形においても、限定的であることも、ともに動作不能であることも、意図されていない。別段の指示がない限り、本明細書に記載の特徴及び実施形態は、任意の変形において、ともに動作可能である。例えば、以下の説明において第2の特徴の上方又は上に第1の特徴を形成することは、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触して形成される実施形態を含み得、また、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触しないように、第1の特徴及び第2の特徴の間に追加の特徴が形成され得る実施形態も含み得る。更に、本開示は、様々な実施例において、参照番号及び/又は文字を繰り返し得る。この繰り返しは、単純化及び明確化の目的のためのものであり、それ自体では、様々な実施形態間及び/又は議論された構成間の関係を指示するものではない。更に、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「下(beneath)」、「下(below)」、「下位(lower)」、「上(above)」、「上位(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されるように、別の要素又は特徴との1つの要素又は特徴の関係を記述するための説明の容易さのために、使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示された配向に加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる配向を包含することが意図される。本発明の装置はそれ以外に配向されてもよく(90度回転されてもよく、又は他の配向でもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて同様に解釈され得る。
【0032】
本明細書に記載されるような異なるステップの議論の順序は、明確にするために提示されている。概して、これらのステップは、任意の適切な順序で実行され得る。加えて、本明細書の異なる特徴、技術、構成などの各々は、本開示の異なる場所で議論され得るが、概念の各々は、互いに独立して、又は互いに組み合わせて実行され得ることが意図される。したがって、本開示は、多くの異なる方法で具体化及び検討することができる。
【0033】
前述したように、複数のアンテナの動作の時間分離は、相互結合の課題を解決することができる。しかしながら、該時間分離は、複数の発生器の高電力を同時に組み合わせることを可能にし得ず、したがって、スケーラブルなマイクロ波支援有機合成(MAOS)ベースの反応器に望ましい、大きな負荷の迅速な加熱を提供する必要性を考えると、著しい欠点を有し得る。したがって、本明細書では、空間分離を提供するための解決策の一部として大きな負荷を更に考慮する、相互結合の問題を解決するための空間分離を含む装置が記載されている。
【0034】
実施形態では、装置100は、チャンバ、チャンバ内に配設された容器、及び2つ以上のマイクロ波アプリケータ111(本明細書では「アプリケータ111」と称される、
図1を参照のこと)を含み得、各アプリケータ111は、装置100の別個のサブ空間を占有し、サブ空間は重複しない。すなわち、容器は、外壁によって画定された容器(チャンバ)を取り囲む外側部分から、装置(容器)の内側部分を分離する、内壁180によって画定されてもよい(グリッド上の内壁180の断面投影を示す、
図1を参照のこと。内壁180を取り囲むチャンバを形成する外壁は図示せず)。内壁と外壁との間の隙間は、サブ空間の一部分を画定し得る。容器及びチャンバは、ともに、装置100の化学反応器と称され得るものを備え得る。アプリケータ111は、空間分離によって分離され得る(すなわち、所定の距離だけ離れて配設され、及び/又は電磁遮蔽によって境界される)。各アプリケータ111はマイクロ波発生器113(
図4を参照のこと)に接続され得、他のアプリケータから独立して容器内に配設された、負荷に結合され得る。負荷は、液状反応媒体であってもよく、媒体は、少なくとも部分的にマイクロ波エネルギーを吸収してもよい。マイクロ波発生器113は、マイクロ波発生器113に取り付けられた、それぞれのアプリケータ111によって放出される、マイクロ波エネルギーを発生させるように構成されてもよい。装置は、各アプリケータ111のためのマイクロ波ウィンドウを含み得、マイクロ波ウィンドウは、マイクロ波エネルギーに対して透過性であり、それぞれのアプリケータ111によって、マイクロ波が容器内に放出されることを可能にするように構成されてもよい。アプリケータ111はまた、内壁(すなわち、容器)に沿って配設されてもよく、マイクロ波ウィンドウは、内壁の一部として形成されてもよいことが理解され得る。アプリケータ111はまた、容器の底部に沿って配設されてもよく、マイクロ波ウィンドウは、容器の底部の一部として形成されてもよいことが理解され得る(
図1を参照のこと)。
【0035】
実施形態では、アプリケータ111、又はチャンバ外に位置するアプリケータ111の一部は、マイクロ波遮蔽、又はマイクロ波放射に対して反射性である材料のような、1つ以上の境界によって境界され得る。
【0036】
実施形態では、負荷中のアプリケータ111によって放出されたマイクロ波の吸収は、負荷サイズが、放出マイクロ波の浸透深度よりも大きい場合、分離の提供を介して、相互結合の課題を防止するのに、負荷を役立て得る。アプリケータ111の各々についての負荷に一致したサブ空間の境界領域を除いて、他の全ての境界は、マイクロ波に対して非透過性であり得、それぞれのアプリケータ111のマイクロ波放射を吸収しない場合もある。したがって、空間分離は、相互結合の課題を伴わずに、アプリケータ111のうちのいくつかを使用することを可能にし、干渉を伴わずに、複数のマイクロ波発生器113からの電力の算術和を可能にする。したがって、この総供給電力を高くでき、大きい体積の負荷を、所望の温度へ均一にかつ急速に加熱することができる。
【0037】
実施形態では、装置は、反応プロセス中に負荷を均一に混合するための混合デバイスを含み得る。例えば、混合デバイスは、とりわけ、磁気的に結合された攪拌機、ポンプ、又は機械駆動インペラであってもよい。
【0038】
実施形態では、容器と、チャンバの外壁との間の隙間は、高圧処理を容易にし得る。負荷は、容器内に配列され得、容器は、次に、より強い、かつより強化されたチャンバ内に配設される。容器及びチャンバの両方が加圧され得、容器とチャンバとの間の圧力差は、容器内の圧力よりも小さい場合があり、一方、容器内の圧力は、処理のために著しく高い場合がある。
【0039】
実施形態では、マイクロ波放射の適用は、アプリケータ111の相互結合からの空洞共鳴機構を回避するために、指向性平面波モードを介して行われる。
【0040】
実施形態では、容器の電気的寸法は、負荷の媒体内に放出されたマイクロ波放射の波長よりも大きくてもよく、容器内の共振モードは励起されない(又は、それぞれの振幅は無視できるほど小さい)。そのような動作レジームは、空間分離に加えて、多数のアプリケータ111が使用されているときに、相互結合の不在を提供するのに役立つ。
【0041】
実施形態では、それぞれのアプリケータ111のための複数の別個のサブ空間は、あるサブ空間を別のサブ空間から密閉する必要なしに、容器の外面とチャンバの内面との間に配設されてもよい。アプリケータ111は、電磁遮蔽を含み得る。各アプリケータ111を他のアプリケータから遮蔽することは、相互結合を伴わずに動作するのに十分であり得、気体雰囲気は、1つのアプリケータのサブ空間から、他のアプリケータのサブ空間に流れることができる。サブ空間同士の間の境界は、金属回折格子、又は穴付き金属スラブの形態、又は、ガス若しくは蒸気の流れを可能にするが、マイクロ波の相互結合を十分に防止する、任意の他の形態で、製造され得る。
【0042】
実施形態では、アプリケータは、負荷にマイクロ波エネルギーを適用し得る。本明細書に記載のMAOS反応器では、アプリケータ111の独立した動作が考慮され、アプリケータの各々は、別個のそれぞれのマイクロ波発生器からのマイクロ波エネルギーによって供給される。一般的に、本明細書では以下のように記載される。1)アプリケータ111は、チャンバを形成する外壁と、容器を形成する内壁(圧力補償容積とも称される)との間の隙間に配設されてもよく、2)アプリケータ111は、チャンバ外に配設された発生器113からマイクロ波エネルギーを受信し、3)アプリケータ111から、マイクロ波エネルギーが容器内に伝達される。注目すべきは、アプリケータ111は、しかしながら、空間分離の原理が、大規模な処理量を有するMAOS用の所望の反応器の設計において満たされることを前提として、元の形式又は修正された形態の(記載された文献のアンテナ、導波路の構成要素などのいずれかなどの)上記のデバイス及び構成要素のうちの1つ又はいくつかを含み得る。
【0043】
実施形態では、2つ以上の外部発生器は、マイクロ波エネルギーを1つのサブ空間に注ぎ込むことができ、容器の内壁内の単一のマイクロ波ウィンドウを通して、このエネルギーの全てが負荷内に導かれる。アプリケータ111は、アンテナ、ラジエータ、カプラ、及び当業者によって既知の他の要素を含み得る。2つ以上の交差偏波アンテナは、アプリケータ111のうちの1つのサブ空間内に含まれ得る。
【0044】
実施形態では、各アプリケータ111は、容器に取り付けられた別個の個別のハウジングに配設される。ハウジングは、例えば、金属、又は同様の特性を有する別の材料で作製され得る。各々がそれぞれのアプリケータ111を含むハウジングは、容器を取り囲んでもよい。実施形態では、ハウジングの各々の密閉シールは、チャンバ内に収容されてもよい。実施形態では、密閉シールは必要ではなく、ガスの流れは、複数のハウジングを通って循環し得る。
【0045】
実施形態では、アプリケータ111は、マイクロ波発生器113とともに、チャンバ内のハウジングに配設されてもよく、マイクロ波発生器113への電力は、同じハウジング内に含まれた電池から、又は外部電源を介してのいずれかで提供されてもよい。
【0046】
実施形態では、アプリケータ111及びマイクロ波発生器113は、ともに、容器内の媒体(すなわち、負荷)内に配設された密封コーパス内に配設されてもよく、アプリケータ111の遠隔制御は、無線通信を介して、又は容器内の過酷な環境に適したハードワイヤ接続を介して、行われてもよい。
【0047】
実施形態では、容器を形成する内壁は、様々な形状を有し得る。例えば、形状は、同様の形状を有するチャンバ内に配設された、平底及び半球形の上部を有する、垂直円筒である。例えば、容器の形状は水平円筒であり、同様の水平円筒形状及び配向を有するチャンバ内に配設される。容器内の負荷の体積は、医薬品生産要件のための単一バッチ容量とみなされ得る。例えば、容器内の負荷の体積は、40L以上、又は50L以上、又は60L以上、又は75L以上、90L以上、又は100L以上である。
【0048】
実施形態では、水平円筒形容器が中に配設された、複数の水平チャンバの配列が配置され得、処理のために使用され得る。配列は閉ループを形成し、液体媒体は、処理中に、このループを通って複数回循環し得る。閉ループでは、ループ内の全ての容器の装填量の合計は、医薬品生産要件の目的における、単一バッチ容量とみなされ得る。例えば、容器内の負荷の体積は、40L以上、又は50L以上、又は60L以上、又は75L以上、90L以上、又は100L以上である。
【0049】
実施形態では、混合、攪拌、又は均質化とともに、複数のアプリケータからのマイクロ波エネルギーの空間分布は、装填媒体の均質な処理を提供し得、効率の向上及び収率の向上をもたらし得る。閉ループ配列などの実施形態では、磁性粒子の流れは、混合を提供し得る。実施形態では、混合、攪拌、又は均質化は、音響/超音波/キャビテーションの使用によって提供され得る。複数のアプリケータからのマイクロ波エネルギーの分布でさえ、混合、攪拌、又は均質化とともに、装填媒体の均質な処理を提供し得、効率の向上及び収率の向上をもたらし得る。
【実施例】
【0050】
実施例1-
図1は、本開示の実施形態による、正方形の幾何学的グリッドを有する、容器の底部の投影図である。実施形態では、容器を形成する内壁は、平底、及び平底の反対側に半球形の上部を有する、垂直円筒形状を有し得る。容器は、垂直円筒形状を有するチャンバ内に配設されてもよい。装置100は、容器を支持するための水平バーを含み得、容器の底部は、チャンバの床上に配設され得、かつ床と接触し得ない。各々の中にそれぞれのアプリケータ111が配設されたハウジングは、容器の下に配設され得る。それぞれのハウジング内のアプリケータ111の各々は、約2.45GHzのマイクロ波周波数で動作し得る。915MHzの周波数で動作する別のアプリケータ111は、容器の上部の近位に配設され得、上部と整列され得る。
【0051】
実施例1では、容器の底部の内円の半径「r」は、4.25dm(デシメートル)に等しく、内円の面積「a」は、56.7平方dm(平方デシメートル)に等しい。「H」は、容器に装填される媒体(すなわち、負荷)の高さである。媒体は、スラリー又は液体であってもよい。負荷の体積「V」は、Hを乗じたものに等しく、Hが1.25dmの場合は70L、Hが1.75dmの場合は100Lになる。
【0052】
容器の底面側から負荷に供給され得るマイクロ波電力は、本明細書で決定される。自由空間では、容器の底部に配置されたアプリケータ111のマイクロ波放射の半波長は6.1cmである。内円上の(一辺の長さが6.1cmの)正方形のグリッドからなる、
図1の幾何学的投影図に示すように、半径4.25dmの内円内に120個のノードがあり、各ノードは、アプリケータ111のうちの1つに適し得る。各ノードは、周波数が2.45GHzのマイクロ波アプリケータ111のうちの1つを配列するのに適していると考えられる。したがって、最大120個のアプリケータ111は、容器底部に整列され得、そのため、それらは相互結合することなく動作する。各アプリケータ111が0.3kWの電力を有する場合、全てのアプリケータ111の総電力は、P=120×0.3=36kWである。そのような電力のアプリケータ111は、ハウジング内の内蔵されたマイクロ波固体発振器で構築することができる。あるいは、供給マイクロ波発生器113は、チャンバ外に位置し得、ハードライン接続を介してハウジングに接続され得る。
【0053】
容器の上部に近位に配置されたアプリケータ111の場合、915MHzの周波数は、最大120kWの連続電力の高電力発生器とともに使用されてもよい。実施例1では、アプリケータ111の電力は50kWであった。したがって、実施例1のシステムにおける総マイクロ波電力は、36kW+50kW=86kWに等しい。マイクロ波電力密度は、高さが1.25dmの負荷では、86kW/70L=1.23kW/L、又は、高さが1.75dmの負荷では、86kW/100L=0.86kW/Lに等しい。
【0054】
実施例2-実施形態では、実施例1と同様に、容器を形成する内壁は、平底、及び平底の反対側に半球形の上部を有する、円筒形状を有し得る。容器は、垂直円筒形状を有するチャンバ内に配設されてもよい。この実施形態の装置100は、容器を支持するための水平バーを含まない場合があり、代わりに、容器の底部がチャンバの床に配設され得る。すなわち、容器の底部は、チャンバの床と接触している。各々の中にそれぞれのアプリケータ111が配設されたハウジングは、容器の下に配設され得る。それぞれのハウジング内のアプリケータ111の各々は、約2.45GHzのマイクロ波周波数で動作し得る。915MHzの周波数で動作する別のアプリケータ111は、容器の上部の近位に配設され得、上部と整列され得る。したがって、アプリケータ111のうちの最大24個は、アプリケータ111が相互結合することなく動作し得るように、浮遊スラブで整列され得る。
【0055】
実施例3-
図2は、本開示の実施形態による、正方形の幾何学的グリッドを有する、浮遊スラブの投影図である。実施形態では、実施例1と同様に、容器を形成する内壁は、平底、及び平底の反対側に半球形の上部を有する、垂直円筒形状を有し得る。容器は、垂直円筒形状を有するチャンバ内に配設されてもよい。容器は、実施例2と同様に、チャンバの床に配設され得、容器及び負荷の幾何学的寸法は、実施例1及び実施例2と同様である。各々が2.45GHzで0.3kWの電力を有する120個のアプリケータ111は、容器の底部の方向から、36kWの総電力を供給し得る。
【0056】
ここで、装置100は、容器内の負荷の表面上に浮かぶスラブを含んでもよく、負荷は液体状態であってもよい。スラブは75cmの直径を有し得、915MHzで動作するマイクロ波アプリケータ111(実施例1及び実施例2の上部に向かって配置されたものと同様)は、スラブ上に配設され得、各アプリケータ111は、それぞれのハウジング内に配設され得る。
【0057】
浮遊スラブから負荷に供給され得るマイクロ波電力は、本明細書で決定される。自由空間では、スラブの近位に配置されたアプリケータ111のマイクロ波放射の半波長は約15cmである。(一辺の長さが15cmの)正方形のグリッドからなる、
図2の幾何学的投影図に示すように、直径75cmの円内に24個のノードがある。各ノードは、周波数が915MHzの1つのマイクロ波アプリケータ111を配列するのに適していると考えられる。したがって、アプリケータ111のうちの最大24個は、容器底部に整列され得、そのため、それらは相互結合することなく動作する。各アプリケータが0.3kWの電力を有する場合、浮遊スラブの近位の全アプリケータ111の総電力は、24kWである。そのような電力のアプリケータ111は、ハウジング内の内蔵されたマイクロ波固体発振器で構築することができる。あるいは、供給マイクロ波発生器113は、チャンバ外に位置し得、ハードライン接続を介してハウジングに接続され得る。
【0058】
実施例3のシステムにおける総マイクロ波電力は、36kW+24kW=60kWに等しい。マイクロ波電力密度は、高さが1.25dmの負荷では、60kW/70L=0.86kW/L、又は、高さが1.75dmの負荷では、60kW/100L=0.60kW/Lに等しい。
【0059】
実施例4-実施形態では、実施例1と同様に、容器を形成する内壁は、平底、及び平底の反対側に半球形の上部を有する、垂直円筒形状を有し得る。容器は、垂直円筒形状を有するチャンバ内に配設されてもよい。装置100は、容器を支持するための水平バーを含み得、容器の底部は、チャンバの床上に配設され得、かつ床と接触し得ない。容器及び負荷の幾何学的寸法は、実施例1、実施例2、及び実施例3と同様である。
【0060】
各々が2.45GHzで0.3kWの電力を有する120個のアプリケータ111は、容器の底部の方向から、36kWの総電力を供給し得る。ここで、915MHzで50kWの単一のアプリケータ111は、容器の上部から、負荷にマイクロ波電力を供給する。マイクロ波に加えて、超音波が、容器内の液体負荷の処理に関与する。超音波発生器(少なくとも1つの超音波発生器)は、容器を形成する円筒壁に配置され得、負荷に向けられ得る。実施例4では、超音波発生器からの音響波は、最初は水平方向に伝播し、一方、上部アプリケータ111及び下部アプリケータ111両方からのマイクロ波は、最初は垂直に伝播する(装置100が、円筒形状が直立している方向に沿って垂直に整列されるとき)。したがって、超音波発生器は、容器の床から3~6cmの高さで配置され得る。
【0061】
実施例5-
図3は、本開示の実施形態による、水平配置を有する、装置100の概略図である。実施形態では、容器を形成する内壁は、第1の端部が平坦な、水平円筒形状を有し得る。平坦な第1の端部の反対側の第2の端部は、やはり平坦な形状であってもよいし、半球形状であってもよい。容器は、同様の水平円筒形状を有するチャンバ内に配設されてもよい。示されるように、アプリケータ111は、水平円筒形チャンバ内、及び円筒形容器の壁上に配設され得る。この壁上で、各アプリケータ111は、一辺の長さが半波長にほぼ等しい、小さな正方形内の領域を占有する。容器の長さ当たりのアプリケータ111の数は、容器の長さに線形に比例し得る(長さは、前述の実施例の高さと同様)。
【0062】
実施形態では、容器の内径が2つの波長に等しく、各アプリケータ111が電力Pを有する場合、容器の容積におけるマイクロ波電力密度は、波長の3乗で8Pを除算したものに等しくてもよい。推定のために、各アプリケータ111は、2.45GHzで0.3kW、又は915MHzで1kWを出力すると仮定することができる。ここで、上述したような電力仮定及び幾何学的構成で、体積100L及び1000Lの液体負荷を処理するための反応器の規模が決定され得、
【数1】
及び2.45GHzのとき、体積は100Lであり、12個のアプリケータ111が円形断面に沿っている。容器の長さに沿って、
【数2】
個のアプリケータ111が存在し得る。その結果、総数Nは、24*(22/1.2)=440であり得る。容器の容積は、シリンダの長さ
【数3】
が、915MHzで35dm、又は2.45GHzで220dmの場合、1000Lに等しくなり得る。超音波発生器は平坦な両端に位置決めされ得、エネルギーを混合し、及びエネルギーを加えるために使用され得る。1000L容器の場合、マイクロ波アプリケータの数は、915MHzで280個、又は2.45GHzで4400個であり得る。閉ループで1000Lの反応器は、915MHzで半径0.55m、又は2.45GHzで半径3.35mのトロイドであってもよい。磁性粒子の環状の流れは、負荷の混合、攪拌、又は均質化のために使用され得る。
【0063】
実施例6-実施形態では、実施例5のように、容器の容積は100Lであってよく、2.45GHzで0.3kWを出力する440個のアプリケータ111を有する。容器の壁アプリケータ111に加えて、内部アプリケータ111(周波数915MHz)は、容器内から照射し得る。容器軸に沿って、例えば、1メートル当たり4つの内部アプリケータ111があってもよく、又は全長22dm当たり合計9つのアプリケータ111があってもよい。
【0064】
実施例7-前述したように、バッチ式化学反応を行うための装置100は、マイクロ波エネルギー(マイクロ波放射)を使用する。装置100は、化学反応器(容器としても知られる)を含み得る。容器は、外壁によって画定された周囲のチャンバから、反応器の内側部分を分離する、内壁によって画定されてもよい。バッチ式化学反応を行うために、反応媒体(すなわち、負荷)は、反応器の内側部分、又は容器に装填され得る。反応媒体の少なくとも1つの成分は、液体である。混合デバイス(例えば、磁気的に結合された攪拌機)は、反応媒体の均一性を支持するために、装置100の一部として提供されてもよい。内壁は、容器の内側部分へのマイクロ波エネルギー導入のために設計された、マイクロ波ウィンドウを含み得る。マイクロ波エネルギーを使用して化学反応を制御するために、反応媒体の少なくとも1つの成分がマイクロ波エネルギーを吸収し得、したがって、マイクロ波エネルギーが反応媒体によって吸収され得、反応媒体がマイクロ波放射の分散負荷として機能する。
【0065】
媒体のマイクロ波吸収特性は、材料内部の放射線強度が、表面における元の値の1/e(0.37)に減少する深さとして定義される、マイクロ波放射浸透深度によって特徴付けられ得る。マイクロ波浸透深度は、反応時間、媒体の調製(例えば、加熱)時間、及び後処理(例えば、冷却)時間を含む、化学処理サイクル中に変化し得る。マイクロ波エネルギーによるプロセス制御の時間中で最長の浸透深度があり得る。マイクロ波エネルギーは、マイクロ波発生器113に接続されたマイクロ波アプリケータ111によって提供されてもよく、各アプリケータ111は、少なくとも1つのマイクロ波発生器113を動力源とする。
【0066】
マイクロ波エネルギーは、マイクロ波透過ウィンドウを通して、マイクロ波アプリケータ111によって負荷に提供されてもよく、又は、アプリケータ111は、容器内に少なくとも部分的に配設されてもよく、アプリケータは、反応器外に位置するマイクロ波発生器113に接続されてもよい。2個ずつのアプリケータ111同士の間の、又はアプリケータ111が反応器外に位置するときの、対応するウィンドウ同士の間の負荷(媒体)を通る最小距離は、マイクロ波放射の最長浸透深度によって決まる、固定距離よりも長くてもよい。最小距離は、外部マイクロ波放射に対するマイクロ波発生器113の感度に応じて選択され得、最長浸透深度の1倍、1.5倍、又は2倍の長さに達し得る。最大距離は、容器の物理的寸法によって制限され得る。実際の距離は、容器内の必要なマイクロ波電力レベルを確保するために選択され得、その値は、最小距離と最大距離との間の範囲内であり得る。
【0067】
すなわち、実施形態では、アプリケータ111が容器内に配設されるとき、容器内のアプリケータ111の場所間の距離は、例えば、アプリケータ111によってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも1倍、又は1.5倍、又は2倍長い。実施形態では、アプリケータ111が容器外に配設されるとき、マイクロ波ウィンドウ間の距離は、例えば、アプリケータ111によってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも1倍、又は1.5倍、又は2倍長い。
【0068】
実施形態では、異なる周波数のマイクロ波放射用のアプリケータ111を、例えば、2.45GHz及び0.915GHzに使用してもよく、互いに近位に設置してもよい。例えば、アプリケータ111は、全てが2.45GHzで放出するように構成されてもよい。例えば、アプリケータ111は、全てが915MHzで放出するように構成されてもよい。例えば、アプリケータ111の一部分は、2.45GHzで放出するように構成されてもよく、一方、アプリケータ111の残りの部分は、915MHzで放出するように構成されてもよい。浸透深度はマイクロ波周波数に依存するため、両方の周波数を考慮した上で、最長浸透深度を決定する必要がある。これら2つのアプリケータ111同士の間の、又はアプリケータ111が反応器外に位置するときの、対応するウィンドウ同士の間の負荷(媒体)を通る固定距離及び最小距離は、両方の周波数を考慮した上で決定された最長の浸透深度を考慮して、上述のように選択され得る。
【0069】
実施形態では、マイクロ波アプリケータ111、又は容器外に位置するそれぞれの部品は、マイクロ波に対して非透過性であり得る、1つ以上のマイクロ波反射境界(例えば、マイクロ波遮蔽)によって、境界され(取り囲まれ)得る。
【0070】
実施形態では、反応器外のアプリケータ111とマイクロ波遮蔽との間の距離は、固定されてもよく、マイクロ波アプリケータ111を取り囲む空間内のマイクロ波放射の波長Xによって決定される、長さAと等しくてもよい。AとXとの間の依存関係は、次式によって表される。
A=(1/2N+1/4)X
式中、Nは、任意の負でない整数である。分散負荷及びマイクロ波遮蔽によるアプリケータ111の分離は、アプリケータ111同士の間の電磁相互結合のほぼ完全な不在を確保する。アプリケータ111同士の間に電磁相互結合がほぼ完全に存在しないため、アプリケータ111及び/又はマイクロ波発生器の独立した自動調整を利用して、マイクロ波発生器へのマイクロ波電力反射を最小限に抑えることが可能である。各マイクロ波発生器と分散負荷との間の不完全な結合、並びにアプリケータ111内の、及びアプリケータ111とマイクロ波発生器との間の導波路内の損失のため、マイクロ波エネルギーの損失が存在し得るが、アプリケータ111同士の間の電磁相互結合のほぼ完全な不在は、アプリケータ111から分散負荷(媒体)に供給される電力の算術和を可能にする。全てのアプリケータ111から負荷に供給される総マイクロ波電力はPに等しく、負荷の体積はVに等しく、P/Vの比率は0.05kW/L~2.5kW/Lの範囲内である。
【0071】
実施形態では、圧力補償チャンバは、容器を取り囲んでもよく、マイクロ波アプリケータ111は、マイクロ波発生器がチャンバ外に位置する一方、チャンバ内に配設されてもよい。容器及びチャンバは、加圧され得る。チャンバは、外部環境からの容器の断熱も提供する。
【0072】
実施形態では、マイクロ波に加えて、負荷の処理は、とりわけ、以下の様式のうちの少なくとも1つを更に含む:誘導ヒーター、又は電気抵抗ヒーター、又は、加熱流体を有する熱交換器を使用した加熱、放射性物質、又は荷電高エネルギー粒子若しくは中性高エネルギー粒子のビームからの放射線を使用した照射、レーザーによる照射、及び超音波適用。
【0073】
図4A~4Cは、本開示の実施形態による、マイクロ波エネルギーを使用してバッチ式化学反応を行うための装置100の概略図である。実施形態では、装置100のチャンバは図示されていない。球形状容器101は、容器101の容積を画定する壁102を含み得、容器101は、液状反応媒体103を保持するように構成され、媒体103は、マイクロ波エネルギーを吸収する特性を有する。壁102は、蓋108で覆われ得る、積卸し動作のための開口部を含み得る。液状反応媒体103の均一性を支持するために、容器101はまた、磁気カップリング107を通してモータ106によって回転され得るシャフト105に固定された、攪拌機104を含み得る。壁102は、容器101の内側部分へのマイクロ波エネルギー導入のために設計された、マイクロ波ウィンドウ109、122、123、及び124を含み得る。マイクロ波エネルギーは、マイクロ波発生器113、114に接続され、かつ、容器101内の媒体103を照射するように整列された、マイクロ波アプリケータ111a、111b、111c、及び111dによって提供されてもよい。
【0074】
実施形態では、マイクロ波アプリケータ111は、マイクロ波発生器114の異なる波長に対応する異なるサイズのホーンアンテナとして形成され得る。ホーンアンテナアプリケータ111aは、マイクロ波ウィンドウ109に向けられ得、マイクロ波ウィンドウ109で終端され得る。ホーンアンテナアプリケータ111dは、マイクロ波ウィンドウ124に向けられ得るが、マイクロ波ウィンドウ124に到達し得ない。ホーンアンテナアプリケータ111bは、マイクロ波ウィンドウ122によって「塞がれ」得る。マイクロ波アプリケータ111cは、容器101内に設置されたパッチアンテナとして作製され得る。
【0075】
実施形態では、マイクロ波発生器113、114は、適切なサイズの導波路115、116、126を通して、ホーンアンテナアプリケータ111a、111b、111dにマイクロ波エネルギーを提供し得る。ウィンドウ109(122、124)とホーンアンテナアプリケータ111a(111b、111c)との間の境界、及びウィンドウ109(122、124)と媒体103との間の境界から反射されたマイクロ波電力の影響を低減するために、導波路115、116、126は、チューナ119(
図4Bを参照のこと)、又は非反射負荷120を有するYサーキュレータ(
図4Cを参照のこと)を備えることができる。
【0076】
実施形態では、反応器外に位置するマイクロ波アプリケータ111a、111dは、マイクロ波放射に対して非透過性である非吸収境界(すなわち、マイクロ波遮蔽)117及び127によって境界され得る。また、反応器外に位置するマイクロ波アプリケータ111bは、マイクロ波発生器114と反応器壁102とを接続する、金属壁199も有し得る。この壁199は、マイクロ波に対して非透過性であり得る、非吸収境界(マイクロ波遮蔽)の役割を果たす。パッチアンテナアプリケータ111cは、同軸線118によってマイクロ波発生器114に接続され得、この線の外筒導体は、マイクロ波遮蔽を提供し得る。媒体103のマイクロ波吸収特性は、化学処理サイクル中に変化する、マイクロ波放射浸透深度によって決定され得る。マイクロ波エネルギーによって制御される化学処理の時間中で最長の浸透深度(マイクロ波周波数に応じてR
1又はR
2)があり得る。
図4Aに示される境界121は、最長浸透深度R
1及びR
2内の領域を囲むことができる。固定距離は、外部マイクロ波放射に対するマイクロ波発生器113、114の感度に応じて選択され得、最長浸透深度の1倍、1.5倍、又は2倍の長さに達し得る。マイクロ波ウィンドウ109同士の間の媒体「d」を通る最小距離は、固定距離よりも長く設定されてもよい。
【0077】
各マイクロ波発生器113、114と媒体103との間の不完全な結合のため、マイクロ波エネルギーの損失が存在し得るが、媒体103及びマイクロ波遮蔽によるマイクロ波アプリケータ111の分離は、アプリケータ111同士の間の電磁相互結合のほぼ完全な不在を確実にし、媒体103に供給される、アプリケータ111からの電力の算術和を可能にするだけでなく、アプリケータ111及び/又はマイクロ波発生器113、114の単純な独立した自動調整を可能にして、発生器113、114へのマイクロ波電力反射を最小限に抑える。すなわち、マイクロ波遮蔽は、各マイクロ波アプリケータ111が他のものから遮蔽されるように、隙間内に配設された、それぞれのマイクロ波アプリケータ111を囲むことができる。
【0078】
図5は、本開示の実施形態による、細長い形状を有する装置100の概略図である。実施形態では、容器201は、化学処理のサイクル全体の間に加えられる高圧に耐えるのに十分な厚さの蓋205を含み得る。容器201の壁202は薄く、化学処理のサイクル全体の間、高圧に耐えることができない場合がある。したがって、圧力補償チャンバ203は、薄壁容器201を取り囲み、チャンバ203の壁204は、化学処理のサイクル全体の間、高圧に耐えるのに十分な厚さで形成され得る。すなわち、チャンバ203は、容器201内の圧力に対して均一にするため、例えば、ガス、液体、又は他の流体を介して加圧され得る。壁204は、化学処理に曝され得ないため、壁204は、より安価な合金から製造され得、より厚いものであり得る。容器201が処理のために閉じられているとき、蓋205は、化学処理のサイクル全体の間、圧力に耐えることができる複数のロック206によって、チャンバ203の壁204に接続され得る。チャンバ203内の圧力は、化学処理のサイクル全体の間、容器201とチャンバ203との間の差圧が、容器201の薄壁202及びマイクロ波ウィンドウ207に対して十分に小さくかつ安全であるように、圧縮ガス、例えば、窒素によって調節され得る。マイクロ波アプリケータ111は、チャンバ203内に配設されてもよく、一方、マイクロ波発生器211は、チャンバ203外に配設されてもよい。マイクロ波発生器211は、導波路210を通して、ホーンアンテナとして作製されたマイクロ波アプリケータ111に、マイクロ波エネルギーを提供し得る。容器201外に配設されたマイクロ波アプリケータ111及び導波路210は、マイクロ波に対して非透過性でマイクロ波放射を吸収しない、境界(マイクロ波遮蔽)209によって境界され得る。反応器壁202は、マイクロ波エネルギーを吸収する特性を有する液状反応媒体212で、容器201の内側部分を取り囲んでもよい。
【0079】
実施形態では、反応媒体212の均一性を支持するために、化学反応器201は、蓋205上に固定された磁気カップリング259を通してモータ258によって回転される、シャフト257上に固定された複数のインペラ256を有する、攪拌機を含み得る。
【0080】
実施形態では、装置100はまた、容器201の下部の壁202と熱接触し得る、ヒーター213(例えば、とりわけ、抵抗性電気ヒーター、誘導ヒーター、又は蒸気ヒーター)も含み得る。ヒーター213を使用して媒体212を予熱することは、マイクロ波アプリケータ111の動作が必要なときに、温度範囲を減少させることを可能にし得、したがって、調整することなく、媒体212とマイクロ波発生器211との間のより良い結合を提供し得る。加えて、装置100は、蓋205に取り付けられたアーム215に固定された、放射性物質214を含み得る。放射性物質214からの放射線は、反応媒体212内の化学ラジカルの一定の発生速度を提供し得る。マイクロ波エネルギー及び攪拌機によって提供される、正確で均一な温度制御と併せて、装置100は、化学反応速度の正確な制御を可能にする。
【0081】
実施形態では、装置100は、蓋205に取り付けられたアーム217に固定された、円筒形状を有する超音波変換器216を含み得る。超音波変換器216は、超音波発生器218を動力源としてもよい。マイクロ波電力と超音波振動との組み合わせは、いくつかの化学処理の制御に有益である。
【0082】
図6は、本開示の実施形態による、装置100の閉ループ構成の概略図である。実施形態では、装置100は、二重容器化学反応器を含み得る。すなわち、装置100は、同じ水平面に沿って位置する、2つ以上の内部容器302を含み得る。容器302は、管303を使用して、容器302内の液状媒体314の循環、及び油圧の接続を提供する、ポンプ304と流体接続され得る。前述の装置100と同様に、容器302の壁305は薄くてもよく、化学処理のサイクル全体の間、圧力に耐えることができない。したがって、圧力補償チャンバ306は、薄壁容器302を取り囲むことができ、チャンバ306の壁313は、化学処理のサイクル全体の間、圧力に耐えるのに十分な厚さに形成され得る。壁313は、化学処理に曝されないため、より安価な合金から製造され得、より厚いものであり得る。チャンバ306内の圧力は、化学処理のサイクル全体の間、容器302とチャンバ306との間の差圧が、反応器の薄壁305及びマイクロ波ウィンドウ308に対して十分に小さくかつ安全であるように、圧縮ガス、例えば、窒素によって調節される。
【0083】
実施形態では、装置100は、マイクロ波関連デバイス及び部品のいくつかのセット307を含み得る。各セット307は、容器壁305内のマイクロ波ウィンドウ308と、マイクロ波アプリケータ111と、導波路311と、マイクロ波発生器312と、マイクロ波に対して非透過性であり得、マイクロ波放射を吸収しない、境界(マイクロ波遮蔽)310と、を含み得る。アプリケータ111、導波路素子311、及び境界310は、チャンバ306内に位置してもよく、一方、マイクロ波発生器312は、チャンバ306外に位置してもよい。マイクロ波発生器312は、導波路311を通して、ホーンアンテナとして作製されたマイクロ波アプリケータ111に、マイクロ波エネルギーを提供し得る。反応器壁305は、マイクロ波エネルギーを吸収する特性を有し得る液状反応媒体314で、容器302の内側部分を取り囲んでもよい。反応媒体314の均一性を支持するために、装置100は、ポンプ304を含み得る。
【0084】
性能シミュレーション
装置100は、水性液体試薬を装填した半径35cmの容器を含み、化学反応は、強い高周波(RF)場の存在下で行われる。このようなRF場は、(横電気(TE)モードが伝播している)円形導波路と、電磁波が平面波に変換される液体媒体とを整合するRFカプラを介して、容器に供給される。RFカプラの別の機能は、空気充填/加圧/真空導波路界面からの液体媒体の物理的分離である。以下の電磁シミュレーションは、容器に取り付けられた複数のRFカプラの電磁(EM)分離のプロセスを示す。RF及びマイクロ波は、互換的に使用され得、特定の周波数帯域を規定するのではなく、むしろ、信号の波長がシステムのサイズと同程度であり、システムは、エネルギーの不可逆的な消散のない理想的なシステムではないため、古典的な集中素子理論は適用できない。
【0085】
液相マイクロ波化学のための典型的な溶媒
MAOSに関連するほとんどの反応は、液相において、又は液体及び気相(液体の蒸気を含む)が圧力下で共存する場合、又は液体と気体が高圧で平衡状態にある場合に起こる。反応開始前に、MAOSを開始する試薬を溶媒中に溶解し、該溶媒中の試薬濃度は、典型的な場合、10%をずっと下回る。この溶媒の誘電特性は、溶媒がマイクロ波をよく吸収するほど、液体がより速く加熱され、反応がより速く完了するため、MAOS時間に影響を及ぼす。
【0086】
誘電率、双極モーメント、誘電損失、タンジェントデルタ、及び誘電緩和時間は全て、マイクロ波放射周波数範囲における個々の溶媒の吸収特性に寄与する。誘電率(ε)は、比誘電率としても知られている。物質が、所与の周波数及び温度で電磁エネルギーを熱に変換する能力は、tanδ=ε”/εで決まる。タンジェントデルタ(δ)、すなわち損失正接は、試料の誘電正接、又はマイクロ波エネルギーが熱エネルギーに変換される効率である。これは、誘電率(ε)に対する誘電損失、又は複素誘電率(ε”)の比として定義される。誘電損失は、熱として消散されることによって試料中で失われる、入力マイクロ波エネルギーの量である。マイクロ波結合効率に基づいて、有機化学的な特定の溶媒の選択のための、決定的な基準を提供するのは、この値ε”である。
【0087】
照射された液体試料の誘電特性は、温度及びマイクロ波周波数の両方に依存し得る。
【0088】
MAOSには、一般的に使用される溶媒があり、30個の一般的な溶媒のタンジェントデルタ、誘電率、及び誘電損失値のデータをマイクロ波合成のための溶媒選択を表1に示す。溶媒は、3つの異なるグループ、高吸収性溶媒、中吸収性溶媒、及び低吸収性溶媒に分類される。8つの高吸収性溶媒は、14(2-プロパノール)~50(エチレングリコール)の範囲の誘電損失ε”を有する。中吸収性グループは、1~10の範囲内のε”を有する。クロロホルム及び他の7つの溶媒などの低吸収性溶媒については、ε”の値は0.5未満である。上記の全データは、室温及び圧力での2.45GHzのマイクロ波周波数に対するものである。室温及び大気圧での純水は、中吸収性グループ(ε”=10)に属する。
【表1】
【0089】
場合によっては、化学処理を行うために、最初の試薬を、添加剤を含まない低吸収性溶媒である溶媒中に入れ、追加の小ボール(高マイクロ波吸収特性を有する、いわゆる「サセプタ」)もこの溶媒中に導入する。該ボールは、化学反応のいずれにも関与しないが、マイクロ波エネルギーを吸収することによって、試薬が該化学処理に関与する媒体全体に容積加熱を提供する。
【0090】
一般的で、有機合成に適用可能な水は、その誘電特性に関して特に研究された。工業的に使用された915MHz及び2.45GHzのマイクロ波周波数について、氷(固体)、液体、液体との氷スラリー、蒸気、気液混合物、及び他の相間混合物などの、水の様々な物理状態を分析した。混合物中の液体の割合、温度、圧力、及び、海水中の塩から生物流体中の代謝物までの添加剤の存在に基づいて、複素誘電率に対する依存性が見出された。「環境に優しい化学」におけるMAOSに関しては、超臨界水が効率的な溶媒であり得、反応媒体が、触媒の使用を最小限に抑えて、又はそれらを全く含まない、所望の有機化合物の加速合成を提供することが特に重要である。
【0091】
更なる数値実験では、添加物のない純水は、マイクロ波照射下での液体負荷とみなされ、ある状況では、水蒸気は該液体と共存する。そのような仮定は、大きな負荷のマルチ発生器照射時の空間分離を研究し、複雑な場合(相間混合物、溶媒の混合物、添加剤の使用など)を予測するのに十分である。
【0092】
カプラアンテナ
RFカプラは、容器内の水にEM波を送信する、アンテナとして機能する。前述のように、設計基準は次の通りである。システムは、水と空気との間の物理的分離、最小限の内部反射、及び円形空気充填導波路と水との間の良好な結合を有する。動作周波数2.45GHzは、産業用周波数帯の現行基準を満たし、容易に利用可能な電源の利用可能性を確保するために、選択された。
【0093】
図7Aは、本開示の実施形態による、アプリケータ111の設計の概略図である。実施形態では、アプリケータ111は、直径8cmの円形導波路705(そのような直径は、装置100の動作周波数を下回る、導波路705のカットオフ周波数、すなわち2.2GHzを維持する)と、水媒体及び他の結合要素からの電力反射を補償する、整合アルミナウィンドウ710と、導波路705モードを平面波に変換し、放射信号の指向性を改善するホーンアンテナ715と、放射信号を集束し、空気充填導波路705と(水などの)液体媒体725との間に物理的分離を作り出す、誘電体球レンズ720と、を含む。導波路705は、アプリケータ111の第1の端部に配設され得、レンズ720は、アプリケータ111の第2の端部に配設され得る。間に、アルミナウィンドウ710は、導波路705の近位に配設され得、ホーンアンテナ715は、レンズ720の近位に配設され、それにより、ホーンアンテナ715は、レンズ720とアルミナウィンドウ710とを分離し(ただし、それらと接触し)、アルミナウィンドウ710は、ホーンアンテナ715と導波路705とを分離する(ただし、それらと接触している)。前述したように、アプリケータ111の第2の端部は、容器に向けられ得る。導波路705は、マイクロ波エネルギーを、アプリケータ111を通して、アプリケータ111の第2の端部から第1の端部に導くように構成されてもよい。
【0094】
アルミナは、一般的に、加速器用の高電力カプラで使用される。しかしながら、PTFEのレキソライトなど、同様の特性を有する他の材料を使用することができる。シミュレーションで使用された材料の特定の特性を、表1に示す。本開示の利点のうちの1つは、導波路705、すなわち、レンズ720及びウィンドウ710から液体媒体725を分離するために、2つ以上のバリアが提供されることであり、液体媒体725が導波路705に漏れないことを確実にする。ウィンドウ710の代わりに、隙間を加圧空気で満たして、水圧を補償することもできる。ウィンドウ710は、有益には、導波路705にろう付けされてもよい。
【0095】
図7Bは、本開示の実施形態による、アプリケータ111の設計用に最適化された寸法の概略図である。
【0096】
図7Cは、本開示の実施形態による、動作周波数の関数としての電力反射係数のグラフである。
図7Cは、
図7Bからのアンテナ内の電力反射の周波数依存性を示す。グラフは、誘電体ウィンドウの導入及び誘電体レンズ寸法の最適化によって、アプリケータ111が効果的に整合され得ることを示す。
図7Cは、整合誘電体ウィンドウを有するシステムと、整合誘電体ウィンドウを有しないシステムとの、電力反射係数の比較を示す。円形ホーンアンテナ715の寸法(開口の半径及び厚さ、ホーンの長さ及び角度、並びにレンズ720の半径を含む)は、反射電力の1%未満を有するように最適化された。最適化基準として、反射係数(
【数4】
として定義される散乱行列のS
11パラメータ)を使用した。この最適化中に得られた寸法は
図7Bに提示され、S
11の周波数依存性は
図7Cに提示される。
【0097】
図7Cは、(
図7Bのような)最適化された寸法を有することによって、反射を-20dB(1%)未満に低減することが可能であることを示す。特に、周波数2.45GHzでは、反射率は-24dB、すなわち0.4%である。全反射は、次式のように、様々な位相での液体、レンズ、及びウィンドウからの反射の合計である。P_reflected=P_ref_ liquid*e
i*φ_liquid+P_ref_lens*e
i*φ_lens+P_ref_window*e
i*φ_window液体からの反射は、液体の特性によって規定され得る。レンズは、EM波に集束するように設計されている。その結果、このバランスを補うために、(
図7Aのような)ウィンドウなどの別の整合要素、又は
図8Aのような整合部が必要である。それぞれの寸法(半径及び厚さ)を調整することによって、振幅(P_ref_window)及び位相(φ_window)を調整し得、整合ウィンドウ又は整合部から反映され、水からの反射(P_ref_liquid、φ_liquid)及びレンズからの反射(P_ref_lens、φ_lens)と合計し、それらを無効に、すなわち、P_reflected<-20dBにし得る。ウィンドウが取り外された場合、レンズだけが液体からの反射を補償し得、これは、(例えば、非物理的な寸法のため)十分な整合を得るのに十分ではない場合がある。
【0098】
整合部の共振性のため、-10dB未満の整合は、±40MHzの帯域幅内で見られ、-20dBの整合は、動作周波数付近の±10MHz内でのみ達成することができる。整合周波数での反射は-28dBであり、これは、入力電力の約0.16%に相当する。
【0099】
図8Aは、本開示の実施形態による、整合導波路805を有するアプリケータ111のレイアウト及び最適寸法の概略図である。
【0100】
図8Bは、本開示の実施形態による、整合部の長さの様々な値に対する、反射係数の周波数依存性のグラフである。グラフは、整合部の長さを約6.7MHz/mmの感度で調整することによって、周波数が整合され得ることを示す。上記の問題を解決するために、アプリケータ111は、
図8Aに示すように、液体媒体825からの反射、ホーンアンテナ815からの反射、及びレンズ820からの反射を補償するために、インピーダンスが調整可能な導波路805に整合され得る。示されている設計では、整合部導波路の長さ及び半径は、整合ウィンドウと同様の役割を果たす。したがって、周波数は、これらの寸法のいずれかを調整することによって、整合され得る。例えば、伸縮整合部810は、
図8Bに示すように、約8MHz/mmの感度で、中心周波数(最小のS
11に対応するもの)を調整することができる。最適な性能は、
図8Aに示す寸法で見られ、S
11-=-38dB(反射電力の0.016%)に対応し、動作周波数に対する帯域幅は、整合ウィンドウ710の設計と同様である。
【0101】
水充填容器を介した、2つのホーンアプリケータの相互作用
図9Aは、本開示の実施形態による、間に23°の角度距離を有し、円筒形の水容器に取り付けられた、2つのホーン型アプリケータ111のシミュレーション概略図である。
【0102】
図9Bは、本開示の実施形態による、間に180°の角度距離を有し、円筒形の水容器に取り付けられた、2つのホーン型アプリケータ111のシミュレーション概略図である。実施形態では、設計されたホーンアンテナシステム同士の相互作用は、同じ液体媒体に接触した状態で推定され得る。この場合、
図9A及び9Bに示すように、円筒形の水充填容器は、半径35cmを有し、高さは、円形ホーンアプリケータ111の直径に等しい(1cmのマージンが両側に追加された)と考えられた。導波路の整合部を有するアプリケータ111は、容器の曲面に取り付けられた。以下の2つの場合が考えられ、図示された。1)アプリケータ111が、放射電力が水中であまり減衰しないように、(それぞれの対称軸間の角度23°で)可能な限り互いに近接して配列される場合、及び、2)アプリケータ111が、(それぞれの対称軸間の角度180°で)互いに対向して配列される場合。後者の場合、空間分離は最大だが、良好な指向性のため、信号は、一方のアンテナから他方のアンテナに直接照射される。他の角度位置については、クロストークは、これら2つの場合の間になる。
【0103】
実施形態では、シミュレーションは同様に行われたが、性能基準は、S
21パラメータ(すなわち、透過係数)が、
【数5】
として定義されたことであった。ここで、P
1は、ポート1(第1のカプラの円形導波路)で利用可能なRF電力であり、P
2は、ポート2(第2のカプラの円形導波路)に送信される電力である。
【0104】
図9Cは、本開示の実施形態による、
図9Aの2つのアプリケータ111の周波数依存性のグラフである。
【0105】
図9Dは、本開示の実施形態による、
図9Bの2つのアプリケータ111の周波数依存性のグラフである。これらのグラフは、広い周波数範囲でカプラが整合されており、2つのカプラの間には、それぞれの取り付け場所とは関わりなく、クロストークが存在しないことを示す。シミュレーションの結果は、近接位置(
図9Aを参照のこと)の場合及び対向位置(
図9Bを参照のこと)の場合、それぞれ電力のわずか10
-7未満及び10
-14未満のみが、他方のカプラに到達することを示す。
【0106】
図10Aは、本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、単一のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【0107】
図10Bは、本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、単一のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
図10A及び10Bは、2つのアプリケータ111システムの電界マップ、及び電界漏れの量を示す。実施形態では、シミュレーションは、ホーンアプリケータ111のうちの2つの間のクロストークが無視できることを示す。
【0108】
図11Aは、本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、両方のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【0109】
図11Bは、本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、両方のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。同時に励起される2つのアンテナからの信号の相互作用を推定することが重要である。実施形態では、
図11A及び11Bに提示された、結果として生じる電界の複素振幅(任意の時点での所与の点における最大電界振幅)は、信号が干渉しないことを示す。水中で信号が速やかに減衰することを強調することが重要である。
【0110】
温度依存性
表2は、Oree et al.Microwave complex permittivity of hot compressed water in equilibrium with its vapor.2017.IEEE Radio and Antenna Days of the Indian Ocean,Sep 2017の
図2から得られたもので、周波数2.42GHzで、異なる温度と圧力条件で測定された、水の誘電率パラメータの依存性を示す。今後、温度を参照すると、対応する圧力値が該表から得られることが示唆される。また、水は、蒸気と平衡状態にあると仮定される。
【表2】
【0111】
図12Aは、本開示の実施形態による、130℃の水の性質に対するアプリケータ111の最適寸法の概略図である。
【0112】
図12Bは、本開示の実施形態による、
図12Aのアプリケータ111の周波数依存性のグラフである。実施形態では、水の誘電率の実数部は、20~80と変化し、アプリケータ111(カプラ)の整合特性を決定する、一次パラメータとして機能する。したがって、カプラ寸法(
図12Aを参照のこと)を、水の性質の変化によるシステムの周波数離調が、20℃及び300℃の両方でほぼ等しくなるように、130℃(ε=48)の水に対して再計算して中間点とした。
【0113】
図13Aは、本開示の実施形態による、様々な温度での水の性質の関数として、互いに近接して(実線)及び対向して(点線)取り付けられた、2つのアプリケータ111の反射係数依存性のグラフである。
【0114】
図13Bは、本開示の実施形態による、様々な温度での水の性質の関数として、互いに近接して(実線)及び対向して(点線)取り付けられた、2つのアプリケータ111の透過係数依存性のグラフである。実施形態では、これらのグラフは、アンテナが、水温の全範囲に対して十分に整合されており、この範囲内の2つのアプリケータ111同士の間には、実質的にクロストークがないことを示す。
図9A及び9Bに提示されたモデルのRFシミュレーションは、130℃の水に対して最適化された寸法を有するカプラに対して行われ、2つのカプラ間の反射(S
11)及びクロストーク(S
21)の両方が、近接した場所及び対向した場所の両方について、許容範囲(それぞれ、-15dB未満及び-50dB未満)内にとどまることを示す。
【0115】
図14Aは、本開示の実施形態による、互いに近接して配置され、片方のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。
【0116】
図14Bは、本開示の実施形態による、互いに対向して配置され、片方のホーンアプリケータ111が放出している、2つのホーンアプリケータ111用の容器内の瞬時電界マップのシミュレーション概略図である。実施形態では、これらのシミュレーションは、水中における電界の消散が、室温でより低い場合でも、2つのカプラ間のクロストークが無視できることを示す。室温の非加圧水について得られた結果と同様に、
図14A及び14Bは、水が蒸気と平衡状態にあり、システム内の圧力が最大65バールに近づくとき、20℃~280℃の温度範囲内の可変パラメータを有する水に対してシステムが再最適化される場合、あるアプリケータ111から別のアプリケータへの無視できる電界漏れを示す。k=1-|S1,1|-|S2,1|として定義される、装置100のエネルギー効率は、ホーンアンテナ/誘電体などの最適化された設計を利用した全ての場合で、98%を上回る。装置100は、互いに独立して動作する複数の発生器から大きな負荷への、非常に効率的なエネルギー伝達を可能にする。
【0117】
システムの機械的特性
図15Aは、本開示の実施形態による、誘電体でアプリケータ111の一部を充填することによって強化された構造剛性で設計された、アプリケータ111の概略図である。
【0118】
図15Bは、本開示の実施形態による、アプリケータ111の一部を離散部の誘電体で充填することによって強化された構造剛性で設計された、アプリケータ111の概略図である。実質的であり得、アプリケータ111内への水漏れをもたらし得るか、又はレンズを破損さえし得る、液体の体積によって生成された誘電体レンズへの機械的圧力が明らかにされ得る。実施形態では、圧力に対抗するために、以下の2つの解決策が記載される。1)アプリケータ111を誘電体で完全に満たすこと、及び、2)アルミナスラブをより厚くすること(少なくとも2cm)。第1の場合では、移行部は、
図15Aに示すようにカプラと整合し、第2の場合では、
図15Bに示すように、この機能は、より厚いウィンドウによって果たされる。残りの寸法は、(室温で)水媒体にアンテナを整合させるように最適化された。これらのシミュレーションでは、表1にリストされたパラメータとともに、純度96%のアルミナの特性を、保守的なアプローチとして使用した。
【0119】
図15Cは、本開示の実施形態による、誘電体充填及びウィンドウの厚いアプリケータ111における、反射パラメータの周波数依存性の比較のグラフである。実施形態では、
図15A及び15Bに示す両方のモデルについて、反射パラメータS
11の周波数依存性が
図15Cに提示されており、これら両方の場合において、良好な(-30dB未満の)整合が可能であることを示すが、誘電体アンテナは、より広帯域のようである(30MHz(-20dBレベル)対10MHz(厚いウィンドウ/レンズアンテナの場合))。
【0120】
両方の設計オプションは、RF電力の反射最適化の観点から実現可能であるが、それらが合理的であり、適切に扱われ得ることを確認するために、各アプリケータ111の設計において、RF電力損失の現象を考慮することが重要である。この場合、RF損失には、以下の2つのメカニズムがある。磁界による銅部分の渦電流損失、及び電界による誘電体内の損失。損失は、誘電体媒体の体積に比例する。表3は、両方のオプションの損失量をまとめており、誘電体充填アンテナの電力損失(誘電体及び銅の両方)が、厚いレンズにおける電力損失の2倍であることを示す。
【表3】
表3-最適化されたアプリケータアンテナにおけるRF損失
【0121】
損失の保守的な概算用に、より安価な96%アルミナ(表1)を使用し、結果が表3に提示された。
【0122】
図16Aは、本開示の実施形態による、10kWの入力電力での誘電体充填アプリケータ111における複素電界分布の分布のシミュレーション概略図である。
【0123】
図16Bは、本開示の実施形態による、10kWの入力電力でのレンズの厚いアプリケータ111における複素電界分布の分布のシミュレーション概略図である。放電が起こらないように、アプリケータ111内のピーク電界が小さいことを確実にすることが重要である。空気の電気強度は30kV/cm=3000kV/mであり、アルミナの電気強度は約10kV/mm=10000kV/mであり、周波数が増加するにつれて約f
1/2として向上する。
図16A及び16Bに提示された10kWの電界に対し、シミュレートされたピーク値は、両方の場合において、故障とは全く無縁であることを示す。
【0124】
周波数感度
図17は、本開示の実施形態による、アルミナの様々な誘電率値に対する、レンズの厚いアプリケータ111内の反射の周波数依存性のグラフである。実施形態では、パラメータの変化を伴う誘電体材料のパラメータに対する、カプラ性能の安定性を推定することができる。推定のために、アルミナの誘電率及び損失正接は±10%だけ変化し、シミュレーションは、そのような変化が、±40MHz(-40MHz/[誘電率の単位])の最適な周波数シフトをもたらすことを示す。したがって、誘電パラメータの変動は、(カプラごとの)周波数調整、又は機械的調整機構のいずれかによって制御され得る。これらの動作は独立しているため、自動制御を容易に実施できる。
【0125】
図18は、本開示の実施形態による、アルミナの損失正接の関数としての、誘電体レンズ内のRF損失のグラフである。実施形態では、損失正接の変化は、EM波伝搬の観点から、他のいかなるRF特性にも影響を及ぼさないので、アルミナ内のRF損失の変化のみを引き起こすことができる。示されたシミュレーション結果は、損失正接からの損失電力の線形依存性を示す。
【0126】
結論
要約すると、数値実験の結果は、空間分離の原理が機能し、放射要素(すなわち、アプリケータ111)間の干渉を伴わずに、かつ該マイクロ波発生器の各々の効果的で制御可能な独立した調整を伴う、50L超、又は100L超などの大きな負荷を照射するための、複数のマイクロ波発生器の組み合わせを可能にし得ることを示している。混合/回転などのための方法及びデバイスは、実施例1~7に記載の装置100又は同様の装置に追加することができ、該負荷の均質な加熱/処理を提供することができる。
【0127】
市販されている、2.45GHzで0.5kWのマイクロ波電力トランジスタ及び915MHzで1.5kWのマイクロ波電力トランジスタは、マイクロ波処理の線形スケールアップが実証されている一方で、医薬品分野及びそれを超えた態様が、以前に小規模なプロセスで示されているため、かなり安価であり、そのような多くのトランジスタを有する工業規模の反応器を、そのような態様で、経済的に実行可能かつ効率的にする。
【0128】
実施形態の例は、実施形態のシミュレーション及び実験の結果とともに、開示された装置100が、医薬品成分の製造のための工業規模のプロセスの実践を可能にし、プロセス全体又はプロセスのステップは、マイクロ波放射を使用して行われることを証明している。最終的には、発明のマイクロ波反応器に基づいた処理を利用する製造は、非常にタイムリーかつ効率的に、医薬品成分を供給することができる。
【0129】
前述の説明では、処理システムの特定の幾何学的形状、及びそこで使用される様々な構成要素及びプロセスの説明などの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本明細書の技術は、これらの特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施され得ること、及びそのような詳細は、限定ではなく、説明を目的としていることを理解されたい。本明細書に開示された実施形態は、添付の図面を参照して説明されている。同様に、説明のために、徹底的な理解を提供するために、特定の数字、材料、及び構成が記載されている。それにもかかわらず、実施形態は、そのような具体的な詳細なしに実施されてもよい。実質的に同じ機能構造を有する構成要素は、同様の参照文字で示され、したがって、任意の冗長な説明は省略され得る。
【0130】
様々な技術は、様々な実施形態を理解するのを助けるために、複数の個別の動作として説明されてきた。記述の順序は、これらの動作が必然的に順序依存であることを示唆するように解釈されるべきではない。実際、これらの動作は、提示した順序で行われる必要はない。説明された動作は、別途明示的に示されない限り、具体的に説明された順序とは異なる順序で行われ得る。様々な追加の動作が行われてもよく、及び/又は説明された動作が省略されてもよい。
【0131】
当業者はまた、本開示の同じ目的を達成しながら、上記の技術の動作に多くの変形がなされ得ることも理解するであろう。そのような変形は、本開示の範囲によって網羅されることが意図される。したがって、実施形態の前述の説明は、限定することを意図するものではない。むしろ、実施形態に対する任意の限定は、以下の特許請求の範囲に提示される。
【0132】
本開示の実施形態はまた、以下の括弧内に記載されているようなものであってもよい。
(1)マイクロ波エネルギーを使用した、大規模なバッチ化学反応のための装置であって、外壁によって画定されたチャンバと、チャンバ内に配設された容器であって、容器は、内壁によって画定され、内壁は、隙間によって外壁から分離され、容器は、負荷を受け入れて保持するように構成されている、容器と、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータと、を備え、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが負荷に入る点は、マイクロ波エネルギーの放出時に、第1のアプリケータと第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、装置。
(2)第1のアプリケータの場所に対応する位置で内壁に形成された、第1のマイクロ波ウィンドウと、第2のアプリケータの場所に対応する位置で内壁に形成された、第2のマイクロ波ウィンドウと、を更に備え、第1のマイクロ波ウィンドウ及び第2のマイクロ波ウィンドウの材料が、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性であり、負荷中の試薬に対して化学的に耐性があり、第1のアプリケータが、第1のマイクロ波ウィンドウを通してマイクロ波エネルギーを容器内に放出するように構成されている、(1)に記載の装置。
(3)第1のアプリケータが、第1のアプリケータの第1の端部における導波路と、第1のアプリケータの第2の端部におけるホーンアンテナと、を含み、第1のアプリケータの第2の端部が、第1のマイクロ波ウィンドウの近位に配設され、第1のアプリケータの第1の端部が、第1のマイクロ波ウィンドウの遠位に配設され、導波路が、マイクロ波エネルギーを受信し、マイクロ波エネルギーを導波路を通してホーンアンテナ内に導くように構成されている、(1)又は(2)に記載の装置。
(4)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器内に配設されるとき、容器内の第1のアプリケータの場所と第2のアプリケータの場所との間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長く、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器外に配設されるとき、第1のマイクロ波ウィンドウと第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い、(1)~(3)のいずれか一項に記載の装置。
(5)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器内に配設されるとき、容器内の第1のアプリケータの場所と第2のアプリケータの場所との間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも1.5倍長く、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器外に配設されるとき、第1のマイクロ波ウィンドウと第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも1.5倍長い、(1)~(4)のいずれか一項に記載の装置。
(6)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器内に配設されるとき、容器内の第1のアプリケータの場所と第2のアプリケータの場所との間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも2倍長く、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが容器外に配設されるとき、第1のマイクロ波ウィンドウと第2のマイクロ波ウィンドウとの間の距離が、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによってマイクロ波エネルギーを負荷に向かって放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも2倍長い、(1)~(5)のいずれか一項に記載の装置。
(7)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータが、それぞれ、チャンバの外壁と容器の内壁との間の隙間内の、対応するサブ空間を占有する、(1)~(6)のいずれか一項に記載の装置。
(8)第1の電力で第1の周波数を有するマイクロ波エネルギーを発生させ、マイクロ波エネルギーを第1のアプリケータに送信するように構成された、第1のマイクロ波発生器を更に備え、第1のマイクロ波発生器は、第1のアプリケータに電磁的に接続されている、(1)~(7)のいずれか一項に記載の装置。
(9)第1のアプリケータの場所に対応する位置で内壁に形成された、第1のマイクロ波ウィンドウと、第2のアプリケータの場所に対応する位置で内壁に形成された、第2のマイクロ波ウィンドウと、を更に備え、第1のマイクロ波ウィンドウ及び第2のマイクロ波ウィンドウの材料が、負荷中の試薬に対して化学的に耐性があり、第1のアプリケータが容器内に配設され、第1のマイクロ波ウィンドウを通して第1のマイクロ波発生器からマイクロ波エネルギーを受信するように構成されている、(8)に記載の装置。
(10)第1のマイクロ波発生器が、チャンバ外に位置し、隙間内に位置する第1のアプリケータに接続された、(8)又は(9)に記載の装置。
(11)容器が加圧され、チャンバが加圧される、(1)~(10)のいずれか一項に記載の装置。
(12)混合デバイスを更に備え、混合デバイスは、負荷中の試薬を均質化するように構成されている、(1)~(11)のいずれか一項に記載の装置。
(13)負荷が、マイクロ波エネルギーを吸収可能な液状反応媒体を含み、マイクロ波エネルギーの浸透深度が、反応媒体でマイクロ波エネルギーを放出することを含む化学処理サイクルの全ステップの中で最長の、反応媒体へのマイクロ波エネルギーの浸透深度である、(1)~(12)のいずれか一項に記載の装置。
(14)容器内の媒体の体積が、40L以上、又は50L以上、又は60L以上、又は75L以上、90L以上、又は100L以上である、(1)~(13)のいずれか一項に記載の装置。
(15)隙間内に位置し、マイクロ波エネルギーを反射するように構成された、別個の第1のマイクロ波遮蔽領域及び第2のマイクロ波遮蔽領域を更に備え、第1のマイクロ波遮蔽領域が、隙間内に位置する第1のアプリケータを囲み、第2のマイクロ波遮蔽領域が、隙間内に位置する第2のアプリケータを囲み、それにより、隙間内の第1のアプリケータが、隙間内の第2のアプリケータから遮蔽され、隙間内の第2のアプリケータが、隙間内の第1のアプリケータから遮蔽されている、(1)~(14)のいずれか一項に記載の装置。
(16)隙間内の第1のアプリケータと、第1のマイクロ波遮蔽領域の壁との間の距離が、固定され、第1のアプリケータを取り囲む空間内のマイクロ波放射の波長Xに基づき、式A=(1/2N+1/4)Xによって表される長さAに等しく、式中、Nは、任意の負でない整数である、(15)に記載の装置。
(17)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを含む複数のアプリケータを更に含み、複数のアプリケータによって供給される総電力がPであり、負荷の体積がVであり、Vに対するPとの比率が、0.05kW/L~2.5kW/Lで定義された範囲内である、(1)~(16)のいずれか一項に記載の装置。
(18)第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを含む複数のアプリケータを更に含み、複数のアプリケータのうちの少なくとも2つが、互いに異なる周波数のマイクロ波エネルギーを放出し、マイクロ波エネルギーの浸透深度が、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出する全てのアプリケータの中で最長の浸透深度である、(1)~(17)のいずれか一項に記載の装置。
(19)マイクロ波エネルギーの適用を通して、材料を処理するための方法であって、方法は、チャンバ内に配設された容器に、材料を含む負荷を供給することと、負荷に向かってマイクロ波エネルギーを放出するように構成された、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータを通して、容器内の負荷にマイクロ波エネルギーを適用することと、を含み、第1のアプリケータ及び第2のアプリケータによって放出されたマイクロ波エネルギーが負荷に入る点は、マイクロ波エネルギーの放出時に、第1のアプリケータと第2のアプリケータとの間に電磁相互結合が発生しないように、マイクロ波エネルギーの負荷への浸透深度よりも長い距離で、互いに離間している、方法。
(20)(19)に記載の方法で処理された、材料。
(21)方法の実行後の材料が、方法の実行前の材料の物理的特性又は化学的特性とは異なる、物理的特性又は化学的特性を有するように、材料を溶解、加熱、合成、又は別様に変換する、少なくとも1つのステップを更に含む、(19)に記載の方法。
(22)発熱反応、誘導ヒーター、電気抵抗ヒーター、加熱流体、荷電粒子のビーム、磁性粒子の流れ、プラズマヒーター、レーザーヒーター、超音波、又は、材料の物理的特性若しくは化学的特性の変化を引き起こす他のエネルギー源のうちの少なくとも1つを適用することを更に含む、(19)又は(21)に記載の方法。
【国際調査報告】