(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】自己免疫疾患を治療および/または予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231004BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231004BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231004BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231004BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231004BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231004BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231004BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231004BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20231004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231004BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231004BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20231004BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231004BHJP
A61K 9/68 20060101ALI20231004BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20231004BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20231004BHJP
A23C 19/084 20060101ALI20231004BHJP
A23G 4/10 20060101ALI20231004BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20231004BHJP
A23G 1/40 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
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A61P37/08
A61P37/02
A61P37/06
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A61P17/00
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A61K9/20
A61K9/14
A61K9/68
A23L33/125
A23C9/13
A23C19/084
A23G4/10
A23G3/42
A23G1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518743
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021051628
(87)【国際公開番号】W WO2022066825
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,ジェームス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハン,カイ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シンウ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B018
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
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4C206ZB07
4C206ZB08
4C206ZB13
(57)【要約】
本発明は一般に、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と関連する(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)ゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物、および自己免疫障害(例えば、大腸炎)(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)の治療のための関連方法に関する。自己免疫障害(例えば、アレルギー)に関連する免疫応答を調節するため、および/または自己免疫障害(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)に対する免疫寛容もしくは脱感作を誘導するための組成物および方法もまた、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の治療薬と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物であって、前記1つまたは複数の治療薬が、アレルゲン、免疫調節剤、および免疫抑制剤から選択される、組成物。
【請求項2】
一体化が、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、および混合の1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ゲルベースのイヌリン製剤が、20以上47以下の平均重合度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ゲルベースのイヌリン製剤が、約26の平均重合度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゲルベースのイヌリン製剤が、1つまたは複数のプレバイオティクス化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つまたは複数のプレバイオティクス化合物が、フルクトオリゴ糖、短鎖フルクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、ベータグルカン、アラブルガム加工デンプン、耐性ジャガイモデンプン、グアーガム、ビーンガム、ゼラチン、グリセロール、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシア繊維、カロブ、オート麦、およびかんきつ類繊維からなる群から独立して選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
治療有効量の前記組成物を対象へ投与した場合:
アレルギー(例えば、食物アレルギー)を治療すること、
アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の症状を減少すること、
アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の免疫応答を調節すること、
対象における制御性T細胞の増殖および/または蓄積を誘導すること、
IgE抗体(例えば、総IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)の産生を抑制すること、
1つまたは複数のTh2免疫応答を抑制すること、および
対象がアレルゲンを摂取した場合(例えば、ピーナッツアレルゲンへの不注意な曝露におけるアナフィラキシーアレルギー応答の場合)の生存を可能にすること、
の1つ以上を可能にする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つまたは複数のアレルゲンが、動物製品、植物、食品、昆虫刺傷、薬物、真菌胞子、および微生物から選択されるアレルゲン源から独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1つまたは複数のアレルゲンが、動物製品アレルゲン、植物アレルゲン、昆虫刺傷アレルゲン、薬物アレルゲン、真菌アレルゲン、微生物アレルゲンから独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つまたは複数のアレルゲンが、アワビ(perlemoen)、アセロラ、アラスカ・ポーロック、アーモンド、アニシード、リンゴ、アプリコット、アボカド、バナナ、大麦、ピーマン、ブラジルナッツ、ソバ、キャベツ、コイ、ニンジン、カシュー、キャスタービーン、セロリ、セルリアック、チェリー、栗、ヒヨコマメ(ガルバンゾー、ベンガルグラム)、ココア、ココナツ、鱈、コットン種子、ズッキーニ(zucchini)、カニ、ナツメヤシ、タマゴ、イチジク、魚、亜麻仁(アマニ)、カエル、ガーデンプラム、ニンニク、ブドウ、ヘーゼルナッツ、キウイフルーツ(チャイニーズグースベリー)、レンティル、レタス、ロブスター、ルピナス(ルピン)、ライチ、サバ、トウモロコシ(トウモロコシ)、マンゴー、メロン、ミルク、マスタード、オートオイスター、モモ、ピーナッツ(グラウンドナッツ、サルナッツ)、ナシ、ペカン、柿、マツの実、パイナップル、ザクロ、ポピーシード、じゃがいも、かぼちゃ、米、ライ麦、サーモン、ゴマ、ゴマ種子、エビ(ブラックタイガー、ヨーロッパエビジャコ、ヨシエビ、テンジククルマエビ、サチエビ、バナメイエビ)、カタツムリ、ダイズ(大豆)、イカ、イチゴ、ヒマワリ種子、トマト、マグロ、カブ、クルミ、および小麦(パン用小麦、パスタ小麦、ホラーサーンコムギ(カムート)、スペルトコムギ)から独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つまたは複数のアレルゲンが、
毛皮、フケ、ゴキブリ傘部、ウール、チリダニ排泄物、およびフェルd1(例えば、猫唾液腺および皮脂腺において産生されるタンパク質)を含む動物製品;
ライグラスなどの草由来の植物花粉;ブタクサ、イラクサ、ソラルなどの雑草;およびカバノキ、ハンノキ、ハシバミ、オーク、ニレ、およびカエデなどの樹木を含む植物由来のアレルゲン;
ハチ刺され(bee sting)、ハチ刺され(wasp sting)、および蚊刺されを含む虫刺され由来のアレルゲン;
ペニシリン、スルホンアミド、キニジン、フェニルブタゾン、チオウラシル、メチルドパ、ヒダントイン、およびサリチル酸塩を含む薬物アレルゲン;
担子胞子、例えば、ガノデルマ;キノコ胞子;アスペルギルスおよびアルテルナリア-ペニシリンファミリー由来のアレルゲン;ならびにクラドスポリウム胞子;を含む真菌アレルゲン;
ウイルスおよび細菌を含む、アレルギー反応を引き起こし得る微生物由来のアレルゲン;および
ピーナッツ、ペカンおよびアーモンドなどの木の実、卵、乳、貝、魚、小麦およびそれらの誘導体、大豆およびそれらの誘導体を含む食物アレルゲンから独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記1つまたは複数のアレルゲンが、2つ以上のアレルゲンである請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記免疫抑制剤または免疫調節剤が、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);スタチン;mTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2;ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;PI3KB阻害剤;オートファジー阻害剤;芳香族炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);酸化ATPs IDO;ビタミンD3;シクロスポリン;芳香族炭化水素受容体阻害剤;レスベラトロール;アザチオプリン(Aza);6-メルカプトプリン(6-MP);6-チオグアニン(6-TG);FK506;サングリフェリンA;サルメテロール;ミコフェノール酸モフェチル(MMF);アスピリンおよび他のCOX阻害剤;ニフルム酸;エストリオール;トリプトリド;OPN-305、OPN-401;エリトラン(E5564);TAK-242;Cpn10;NI-0101;1A6;AV411;IRS-954(DV-1079);IMO-3100;CPG-52363;CPG-52364;OPN-305;ATNC05;NI-0101;IMO-8400;ヒドロキシクロロキン;CU-CPT22;C29;オルトバニリン;SSL3タンパク質;OPN-305;5SsnB;ビザンチン;(+)-N-フェネチルノルオキシモルホン;VB3323;単糖3;(+)-ナルトレキソンおよび(+)-ナロキソン;HT52;HTB2;化合物4a;CNTO2424;TH1020;INH-ODN;E6446;AT791;CPG ODN 2088;ODN TTAGGG;COV08-0064;2R9;GpGオリゴヌクレオチド;2-アミノプリン;アンレキサノクス;Bay11-7082;BX795;CH-223191;クロロキン;CLI-095;CU-CPT9A;シクロスポリンA;CTY387;ゲフィチニブ;グリベンクラミド;H-89;H-131;イソリキリチゲニン;MCC950;MRT67307;OxPAPC;パルテノリド;Pepinh-MYD;Pepinh-TRIF;ポリミキシンB;R406;RU.521;VX-765;YM201636;Z-VAD-FMK;並びに、2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD);トリプタミン(TA);および6ホルミルインドロ[3,2b]カルバゾール(FICZ)を含むが、これらに限定されないAHR特異的リガンドを含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
治療有効量の請求項1に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、アレルギーを治療する、自己免疫障害の発症を予防する、および/または自己免疫障害の症状を改善する方法であって、前記自己免疫障害が、アレルギー性喘息、アレルギー性大腸炎、動物アレルギー、アトピー性アレルギー、花粉症、皮膚アレルギー、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、薬物または医薬アレルギー、湿疹(アトピー性皮膚炎)、食物アレルギー、真菌アレルギー、昆虫アレルギー(虫刺され/毒アレルギーを含む)、カビアレルギー、植物アレルギー、および花粉症のうちの1種類以上である、方法。
【請求項15】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、ヒト対象である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、食物アレルギーに関連する免疫応答の抑制をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、IgE抗体の産生の抑制をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、Th2免疫応答の抑制をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記食物アレルギーが、ナッツアレルギー、魚アレルギー、小麦アレルギー、牛乳アレルギー、ピーナッツアレルギー、木の実アレルギー、貝アレルギー、大豆アレルギー、種子アレルギー、ゴマ種子アレルギー、および卵アレルギーからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記食物アレルギーがピーナッツアレルギーである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が経口投与用に製剤化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、糖衣錠、ゲルカプセル、ゲル、エマルジョン、錠剤、ウエハーカプセル、ヒドロゲル、ナノファイバーゲル、エレクトロスピン繊維、食品バー、菓子、発酵乳、発酵チーズ、チューインガム、粉末または練り歯磨き粉である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
米国仮出願番号63/082,236号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦政府資金援助の研究または開発〕
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって裁定された、DK125087の下で政府の支援を受けて成されたものである。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は一般に、自己免疫障害(例えば、大腸炎)(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)を処置するための、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物、および前記処置に関連する方法に関する。自己免疫障害(例えば、アレルギー)に関連する免疫応答を調節するため、および/または自己免疫障害(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)に対する免疫寛容もしくは脱感作を誘導するための組成物および方法もまた、本明細書において提供される。
【0004】
〔発明の背景〕
食物アレルギーは世界中で蔓延している疾患である。食物アレルギーに罹患している患者はアレルゲンに気付かず曝露した後に、かゆみ、下痢、または生命を脅かす意識喪失を含むアナフィラキシー反応を示す(R. Khamsi. Food allergies: the psychological toll. Nature 2020, 588, S4-S6参照)。現在利用可能な干渉、または治療としては、アレルゲンの回避、および緊急処置に限定されている。米国食品医薬品局(FDA)は、最近、ピーナッツアレルギー治療に対して、有望な市場見込みを示している最初の薬、パルフォルジア(Palforzia)を承認した(A. Mullard. FDA approves first peanut allergy drug. Nat Rev Drug Discovery 2020, 19, 156を参照)。経口免疫療法(OIT)戦略としてのパルフォルジアは、初期用量の段階的な増大期、投与量増加期、および維持期からなる。しかし、パルフォルジアには多くの制限がある。パルフォルジアの臨床試験に参加した患者の12.9%が、有害事象のために最初の6ヵ月間で治療を中止した(T. Casale, A. Wesley Burks, J. Baker, et al. Safety of Peanut (Arachis Hypogaea) Allergen Powder-dnfp in Children and Teenagers With Peanut Allergy: Pooled Analysis From Controlled and Open-Label Phase 3 Trials. J Allergy Clin Immunol 2021,147, AB106参照。)。したがって、新しいアプローチが差し迫って必要とされている。
【0005】
代替の方法として、プロバイオティックの経口投与、または糞便微生物相移植(FMT)が、アレルギー治療のために研究されてきており、これは部分的には、消化管(GI)における免疫寛容細胞の生成を誘導する、有益な共生微生物に起因する(A. Abdel-Gadir, E. Stephen-Victor, G. K. Gerber, et al. Microbiota therapy acts via a regulatory T cell MyD88/RORγt pathway to suppress food allergy. Nat Med 2019, 25,1164-1174を参照。)。しかしながら、アレルギー患者に有益な共生微生物の正確な定義は知られておらず、FMTにおいては日和見感染の懸念がある。
【0006】
したがって、ピーナッツアレルギーおよび他の食物アレルギーのような自己免疫疾患を長期制御するための新しい治療薬の開発が、差し迫って必要とされている。
【0007】
本発明は、この差し迫った必要性に対処するものである。
【0008】
〔概要〕
本発明の実施形態を開発する過程で説明された実験において、効率的な腸内微生物叢の調節、アレルゲン特異的IgEのレベルの減少、および制御性T(Treg)細胞の誘導のための食物繊維ヒドロゲルベースのOIT戦略が報告されており、これによって、複数の食物アレルギーモデルにおける防御効果が実現される。
【0009】
したがって、本発明は一般に、自己免疫障害(例えば、大腸炎)(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)を治療するための、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)した、ゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物、および前記処置に関連する方法に関する。本明細書ではまた、自己免疫障害(例えば、アレルギー)に関連する免疫応答を調節するため、および/または自己免疫障害(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)に対する免疫寛容もしくは脱感作を誘導するための組成物および方法も提供される。
【0010】
特定の実施形態では、本発明が1つまたは複数の治療薬と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物を提供する。そのような組成物は、関連する特定の意味に限定されない。いくつかの実施形態では、一体化が例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合のうちの1つ以上を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ゲルベースのイヌリン製剤が20以上47以下の平均重合度を有する。いくつかの実施形態において、前記ゲルベースのイヌリン製剤は約26の平均重合度(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32)を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ゲルベースのイヌリン製剤がフルクトオリゴ糖、短鎖フルクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、ベータグルカン、アラブルガム加工デンプン、耐性ジャガイモデンプン、グアーガム、ビーンガム、ゼラチン、グリセロール、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシア繊維、カロブ、オート麦、およびかんきつ類繊維から選択される1つまたは複数のプレバイオティクス化合物をさらに含む。
【0013】
上述のような組成物は、特定の種類または分類の治療薬に限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記治療薬は、1つまたは複数のアレルゲンである。
【0015】
いくつかの実施形態では、アレルゲンが動物製品、植物、食品、昆虫刺傷、薬物、真菌胞子、および微生物から選択されるアレルゲン源から独立して選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記1つまたは複数のアレルゲンが独立して、動物製品アレルゲン、植物アレルゲン、昆虫刺傷アレルゲン、薬物アレルゲン、真菌アレルゲン、微生物アレルゲンから選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記1つまたは複数のアレルゲンがアワビ(perlemoen)、アセロラ、アラスカ・ポーロック、アーモンド、アニシード、リンゴ、アプリコット、アボカド、バナナ、大麦、ピーマン、ブラジルナッツ、ソバ、キャベツ、コイ、ニンジン、カシュー、キャスタービーン、セロリ、セルリアック、チェリー、栗、ヒヨコマメ(ガルバンゾー、ベンガルグラム)、ココア、ココナツ、鱈、コットン種子、ズッキーニ(zucchini)、カニ、ナツメヤシ、タマゴ、イチジク、魚、亜麻仁(アマニ)、カエル、ガーデンプラム、ニンニク、ブドウ、ヘーゼルナッツ、キウイフルーツ(チャイニーズグースベリー)、レンティル、レタス、ロブスター、ルピナス(ルピン)、ライチ、サバ、トウモロコシ(トウモロコシ)、マンゴー、メロン、ミルク、マスタード、オートオイスター、モモ、ピーナッツ(グラウンドナッツ、サルナッツ)、ナシ、ペカン、柿、マツの実、パイナップル、ザクロ、ポピーシード、じゃがいも、かぼちゃ、米、ライ麦、サーモン、ゴマ、ゴマ種子、エビ(ブラックタイガー、ヨーロッパエビジャコ、ヨシエビ、テンジククルマエビ、サチエビ、バナメイエビ)、カタツムリ、ダイズ(大豆)、イカ、イチゴ、ヒマワリ種子、トマト、マグロ、カブ、クルミ、および小麦(パン用小麦、パスタ小麦、ホラーサーンコムギ(カムート)、スペルトコムギ)から独立して選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記1つまたは複数のアレルゲンが
毛皮、フケ、ゴキブリ傘部、ウール、チリダニ排泄物、およびフェルd1(例えば、猫唾液腺および皮脂腺において産生されるタンパク質)を含む動物製品;
ライグラスなどの草由来の植物花粉;ブタクサ、イラクサ、ソラルなどの雑草;およびカバノキ、ハンノキ、ハシバミ、オーク、ニレ、およびカエデなどの樹木が含まれる植物由来のアレルゲン;
ハチ刺され(bee stings)、ハチ刺され(wasp stings)、および蚊刺されを含む虫刺され由来のアレルゲン;
ペニシリン、スルホンアミド、キニジン、フェニルブタゾン、チオウラシル、メチルドパ、ヒダントイン、およびサリチル酸塩を含む薬物アレルゲン;
担子胞子、例えば、ガノデルマ;キノコ胞子;アスペルギルスおよびアルテルナリア-ペニシリンファミリー由来のアレルゲン;ならびにクラドスポリウム胞子;を含む真菌アレルゲン;
ウイルスおよび細菌を含む、アレルギー反応を引き起こし得る微生物由来のアレルゲン;ならびに
ピーナッツ、ペカンおよびアーモンドなどの木の実、卵、乳、貝、魚、小麦およびそれらの誘導体、大豆およびそれらの誘導体を含む食物アレルゲンから独立して選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のアレルゲンは2つ以上のアレルゲン(例えば、2、3、4、5、10、20、50、100、1,000)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記治療薬はアレルゲンであり、対象への治療有効量の前記組成物を投与した場合、前記組成物は下記の1つ以上を可能とする:
アレルギー(例えば、食物アレルギー)を治療すること、
アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の症状を軽減すること、
アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の免疫応答を調節すること、
対象における制御性T細胞の増殖および/または蓄積を誘導すること、
IgE抗体(例えば、総IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)の産生を抑制すること、
1つまたは複数のTh2免疫応答を抑制すること、および
対象がアレルゲンを摂取した場合(例えば、ピーナッツアレルゲンへの不注意な曝露におけるアナフィラキシーアレルギー応答の場合)の生存を可能にすること。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記治療薬は、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);スタチン;mTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2;ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;PI3KB阻害剤;オートファジー阻害剤;芳香族炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);酸化ATPs IDO;ビタミンD3;シクロスポリン;芳香族炭化水素受容体阻害剤;レスベラトロール;アザチオプリン(Aza);6-メルカプトプリン(6-MP);6-チオグアニン(6-TG);FK506;サングリフェリンA;サルメテロール;ミコフェノール酸モフェチル(MMF);アスピリンおよび他のCOX阻害剤;ニフルム酸;エストリオールトリプトリド;OPN-305、OPN-401;エリトラン(E5564);TAK-242;Cpn10;NI-0101;1A6;AV411;IRS-954(DV-1079);IMO-3100;CPG-52363;CPG-52364;OPN-305;ATNC05;NI-0101;IMO-8400;ヒドロキシクロロキン;CU-CPT22;C29;オルトバニリン;SSL3タンパク質;OPN-305;5SsnB;ビザンチン;(+)-N-フェネチルノルオキシモルホン;VB323;単糖3;(+)-ナルトレキソンおよび(+)-ナロキソン;HT52;HTB2;化合物4a;CNTO2424;TH1020;INH-ODN;E6446;AT791;CPG ODN 2088;ODN TTAGGG;COV08-0064;2R9;GpGオリゴヌクレオチド;2-アミノプリン;アンレキサノクス;Bay11-7082;BX795;CH-223191;クロロキン;CLI-095;CU-CPT9A;シクロスポリンA;CTY387;ゲフィチニブ;グリベンクラミド;H-89;H-131;イソリキリチゲニン;MCC950;MRT67307;OxPAPC;パルテノリド;Pepinh-MYD;Pepinh-TRIF;ポリミキシンB;R406;RU.521;VX-765;YM201636;Z-VAD-FMK;並びに、2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD);トリプタミン(TA);および6ホルミルインドロ[3,2b]カルバゾール(FICZ)を含むが、これらに限定されないAHR特異的リガンドから選択される少なくとも1種類の免疫調製剤である。
【0022】
特定の実施形態では、前記治療薬が、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;および/またはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)から選択される免疫抑制剤である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記ゲルベースのイヌリン製剤はさらにアジュバントと混合されていてもよい(アジュバントとしては例えば、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジキモド、3M-052、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 stimulon、バジメザン、AsA404(DMXAA)、およびアジュバントの任意の誘導体)。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含まない。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、自己免疫障害の症状を治療、予防および/または改善する方法であって、治療有効量のそのような組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)(例えば、1つまたは複数の治療薬と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)を、必要とする対象(例えば、ヒト対象)(例えば、哺乳動物対象)に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性大腸炎、動物アレルギー、アトピー性アレルギー、花粉症、皮膚アレルギー、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、薬物または医薬アレルギー、湿疹(アトピー性皮膚炎)、食物アレルギー、真菌アレルギー、昆虫アレルギー(虫刺され/毒アレルギーを含む)、カビアレルギー、植物アレルギー、および花粉症のうちの1種類以上である。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記投与は、食物アレルギーに関連する免疫応答の抑制をもたらす。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記投与は、IgE抗体の産生の抑制をもたらす。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記投与は、Th2免疫応答の抑制をもたらす。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記アレルギーは、ナッツアレルギー、魚アレルギー、小麦アレルギー、乳アレルギー、ピーナッツアレルギー、木の実アレルギー、貝アレルギー、大豆アレルギー、種子アレルギー、ゴマ種子アレルギー、および卵アレルギーからなる群から選択される良性のアレルギーである。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記アレルギーはピーナッツアレルギーである。
【0031】
特定の実施形態では、本発明がそのような組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)およびそのような組成物を対象に投与するための説明書を含むキットを提供する。
【0032】
〔図面の簡単な説明〕
図1A~G:イヌリンゲルとOVAの併用療法は、OVAアレルギーを防ぐ。a.イヌリンヒドロゲルの画像。b.治療レジメン。BABL/cマウスを0日目および14日目にOVA/Alumで感作させた。29日目から、マウスにPBS、OVA(1回の投与ごとに1mg)、およびイヌリンゲル(1回の投与ごとに55mg)+OVA(1回の投与ごとに1mg)をそれぞれ経口強制投与した。49日目から、マウスに、OVA(50mg/投与)を別の日に6回経口投与した。c.6回目の投与時の体温低下。d.投与中のアナフィラキシー症状スコア。e.1回目の投与から6回目の投与までの体重低下。f.それぞれ、48日目、55日目、61日目の血清中のOVA特異的IgE濃度。g.肥満細胞の数、および空腸からのトルイジンブルー染色組織切片から得られた代表的な顕微鏡像。矢印は肥満細胞を示す。データは、平均±s.e.m.、
*P<0.01、
**P<0.01、
****P<0.0001で表される。データは、二元配置ANOVA(c-e)または一元配置ANOVA(f,h)、または独立スチューデントt検定(g)を用いて分析した。cにおける#は、イヌリンゲル/OVA対OVAの間の統計的有意差を示す。
【0033】
図2A~G:イヌリンゲルとOVA(漸増投与)との併用療法が、OVAアレルギーを防ぐ。a.治療レジメン。BABL/cマウスをOVA/Alumで2回感作させた。29日目から、各々、OVA(漸増投与する方法)およびイヌリンゲル(55mg/投与)+OVA(漸増投与する方法)で経口強制投与した。49日目から、マウスに、OVA(50mg/投与)を別の日に6回経口投与した。b.下痢の発症およびスコア。c.3回目の投与前後の体重減少。d.アナフィラキシー症状スコア。e.MMCP-1。f.肥満細胞数、および62日目の空腸からのトルイジンブルー染色組織切片の代表的な顕微鏡画像。矢印は肥満細胞を示す。g.脾細胞は、62日目に250μg/mLのOVAで再刺激した。72時間のインキュベーション後、サイトカイン分析のために上清を回収した。データは、平均±s.e.m.
*P<0.01、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001で表される。データは、二元配置ANOVA(b,d)または独立スチューデントt検定(c,e-g)を用いて分析した。
【0034】
図3A~C:イヌリンゲルOVA併用療法は、OVAアレルギーを防ぐ。BALB/cマウスを
図1bに示すように処置した。(a)回腸におけるFoxp3
+CD4
+Tregの数、および代表的なフローサイトメトリープロット。b.脾臓におけるCD103
+DC細胞の数。c.61日目の脾臓および腸間膜リンパ節におけるLAG3
+CD49b
+Tr1細胞の頻度を示す。データは平均±s.e.m.、
*P<0.01で表される。データは、二元配置ANOVAを用いて分析した。
【0035】
図4A~D:イヌリンゲルとPEとの併用療法は、ピーナッツアレルギーを防ぐ。a.治療レジメン。C3H/HeJマウスを通常の固形飼料で飼育し、PE/CTで4週間感作させた。36日目から、マウスにPBS、PE(1回の投与ごとに1.2mg)、イヌリンゲル(1回の投与ごとに45mg)、およびイヌリンゲル(1回の投与ごとに45mg)+PE(1回の投与ごとに1.2mg)をそれぞれ強制経口投与した。マウスは、週4回、4週間にわたってOIT処置を受けた。続いて、73日目にPE(125μg/投与)をマウスの腹腔内に注入した。b~d.平均体温低下(b)、個々の体温低下(c)およびアナフィラキシー症状スコア(d)。データは、平均±s.e.m.
*P<0.01,
**P<0.01,
****P<0.0001で表される。データは、Bonferroniの多重比較検定(d)を用いて、二元配置分散分析(b)または一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて分析した。
【0036】
図5A~E:C57BL/6マウスに3%DSS含有水を6日間与えた。0日から7日まで、マウスにPBS、1mgの遊離IALD、または60mgのイヌリンゲル内に混合した1mgのIALDを経口投与した。B.9日間の各群の毎日の体重変化。C~E.9日目に、動物を安楽死させ、結腸を採取し(C)、結腸の長さ(D)および盲腸重量(E)を測定した。
【0037】
〔定義〕
本明細書で使用される用語「約」は、列挙された値の±10%である値を意味するために、本明細書において使用される。
【0038】
本明細書で使用される用語「吸収」は、ゲルベースのイヌリン製剤の内部、すなわち外表面の内側に取り込まれ、安定して保持されるアレルゲンを指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「投与」は、本明細書に記載される組成物(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤、およびプレバイオティクス化合物および治療薬の一方または両方)の適量を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法において利用される組成物は、例えば、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋肉内)、経鼻、直腸、局所、または口腔を含む、任意の適切な経路によって投与することができる。本明細書に記載される方法において利用される組成物は、局所的または全身的に投与することもできる。好ましい投与方法は、様々な因子(例えば、投与される組成物の成分、および治療される状態の重症度)に応じて変動し得る。
【0040】
本明細書で使用される用語「混合」は、ゲルベースのイヌリン製剤中に溶解、分散、または懸濁されたアレルゲンを指す。いくつかの場合において、アレルゲンは、ゲルベースのイヌリン製剤中に均一に混合され得る。
【0041】
本明細書で使用される用語「吸着」は、ゲルベースのイヌリン製剤の外表面へのアレルゲンの付着を指す。このような吸着は、好ましくは静電引力によって起こる。静電引力は、2つ以上の反対に帯電した又はイオン性の化学基の間に生じる引力または結合である。一般に、吸着は、典型的には可逆的である。
【0042】
本明細書で使用される用語「アレルゲン」は、対象において免疫反応(例えば、アレルギー反応)を引き起こす、誘発する(elicits)、または誘発する(triggers)化合物、物質、または組成物を指す。したがって、アレルゲンは、典型的には抗原と称される。アレルゲンは、典型的にはタンパク質またはポリペプチドである。
【0043】
本明細書で使用される用語「アレルギー」は、しばしばアトピーとも呼ばれる免疫系の疾患(または不適切な反応)を指す。アレルギー反応は通常、アレルゲンとして知られる無害な環境物質に対して起こり、これらの反応は後天性であり、予測可能であり、迅速である。厳密に言えば、アレルギーは過敏症の4つのタイプのうちの1つであり、Iタイプ(または即時タイプ)過敏症と呼ばれる。これは、IgEとして知られている一種の抗体による、肥満細胞および好塩基球と呼ばれる特定の白血球の過剰な活性化によって特徴付けられており、極度の炎症反応をもたらす。一般的なアレルギー反応には、湿疹、蕁麻疹、花粉症、喘息、食物アレルギー、ならびにスズメバチおよびハチなどの刺痛性昆虫の毒に対する反応が含まれる。花粉症のような軽度のアレルギーはヒト集団において非常に一般的であり、アレルギー性結膜炎、かゆみ、および鼻水のような症状を引き起こす。
【0044】
本明細書で使用される用語「自己免疫障害」および「自己免疫疾患」は、本明細書で互換的に使用され、対象の免疫系が対象自身の身体を誤って攻撃する病状を指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「組み合わせ治療」または「組み合わせ投与」は、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の様々な薬剤または処置が、特定の疾病または状態(例えば、自己免疫障害)のために決定された処置計画の一部として対象に投与されることを意味する。前記処置レジメンは、対象に対する別々の薬剤の効果が重複するように、各薬剤の投与の用量および周期を決定する。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤が同時(simultaneous)または同時(concurrent)に送達されて、薬剤は合剤化(co-formulated)され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤が合剤化されず、処置レジメンの一部として逐次的に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または処置の組み合わせ投与は、症状の減少、または障害に関連する他のパラメータが、単独で、または他の薬剤の非存在下で送達される1つの薬剤または治療を用いて観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの処置の効果は、部分的に相加的であり得、完全に相加的であり得、または、相加的よりも大きく(例えば、相乗的に)成り得る。各治療薬の連続的、または実質的に同時である投与は、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋肉内)、経口、経鼻、経直腸、局所、口腔内、または粘膜組織を介する直接吸収を含むが、これらに限定されない任意の適切な経路によって影響され得る。前記治療薬は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、組合せの第1の治療薬は静脈内注射によって投与することができ、一方、組合せの第2の治療薬は経口投与することができる。
【0046】
本明細書で使用される用語「複合体化」は、本明細書で使用される場合、アレルゲンとゲルベースのイヌリン製剤との非共有結合的相互作用に関する。
【0047】
本明細書で使用される用語「複合化」は、本明細書で使用される場合、アレルゲンとゲルベースのイヌリン製剤との間の共有結合的な一体化を示す。
【0048】
本明細書で使用される用語「薬物」または「治療薬」は、診断または治療目的で生物に投与される任意の分子、分子複合体、または物質を含むことを意味する。
【0049】
本明細書で使用される用語「免疫調節剤(immunomodulatory agent)」は、免疫系を刺激または抑制する化合物を指す。本明細書で使用される用語「免疫抑制剤(immunosuppressant)」は、抗原提示細胞(APC)に免疫抑制(例えば、寛容原性効果)をもたらす化合物を指す。免疫抑制効果は一般的に、望ましくない免疫応答を減少させ、阻害し、もしくは予防するか、または所望の免疫応答を促進する、APCによるサイトカインまたは他の因子の生産または発現を指す。APCが、APCによって提示された抗原を認識する免疫細胞に対して免疫抑制効果をもたらすと、その免疫抑制効果は、提示された抗原に特異的であると言われる。このような効果は、本明細書では寛容原性効果とも呼ばれる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、免疫抑制または寛容原性効果は、好ましくは抗原(例えば、投与された抗原またはすでにインビボで存在する抗原)の存在下で、APCに送達される免疫抑制剤の結果であると考えられる。したがって、免疫抑制剤は、同一の組成物または異なる組成物中に提供されてもよい抗原、または提供されなくてもよい抗原に対する寛容原性免疫応答を提供する化合物を含む。一実施形態において、免疫抑制剤は、APCに1つまたは複数の免疫エフェクター細胞における調節表現型を促進させるものである。例えば、前記調節表現型は、抗原特異的CD8+ T細胞の生産、誘導、刺激または動員、Treg細胞の生産、誘導、刺激または動員、等の阻害によって特徴付けられ得る。これは、CD8+ T細胞またはB細胞が調節表現型へ変換された結果であり得る。これはまた、CD4+ T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果であり得る。一実施形態では、免疫抑制剤は、抗原を処理した後のAPCの応答に影響を及ぼすものである。別の実施形態では、免疫抑制剤は、抗原のプロセシングを妨害するものではない。さらなる実施形態では、免疫抑制剤はアポトーシスシグナル伝達分子ではない。別の実施形態では、免疫抑制剤はリン脂質ではない。
【0050】
免疫調節剤には、スタチン;mTOR阻害剤(例えばラパマイシンまたはラパマイシン類似体);TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えばトリコスタチンA);コルチコステロイド;ミトコンドリア機能阻害剤(例えばロテノン);NF-κβ阻害剤(例えば6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VII);アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2)(例えばミソプロストール);ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばロリプラム等のホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4));プロテアソーム阻害剤;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;PI3 KB阻害剤(例えば、TGX-221);オートファジー阻害剤(例えば、3-メチルアデニン);芳香族炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);および酸化ATPs(例えば、P2X受容体遮断薬)が含まれるが、これらに限定されない。免疫抑制剤にはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、芳香族炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルム酸、エストリオール、トリプトリド;OPN-305、OPN-401;エリトラン(E5564);TAK-242;Cpn10;NI-0101;1A6;AV411;IRS-954(DV-1079);IMO-3100;CPG-52363;CPG-52364;OPN-305;ATNC05;NI-0101;IMO-8400;ヒドロキシクロロキン;CU-CPT22;C29;オルトバニリン;SSL3タンパク質;OPN-305;5 SsnB;ビザンチン;(+)-N-フェネチルノルオキシモルホン((+)-N-phenethylnoroxymorphone);VB3323;単糖3;(+)-ナルトレキソンおよび(+)-ナロキソン;HT52;HTB2;化合物4a;CNTO2424;TH1020;INH-ODN;E6446;AT791;CpG ODN 2088;ODN TTAGGG;COV08-0064;2R9;GpGオリゴヌクレオチド;2-アミノプリン;アンレキサノクス;Bay11-7082;BX795;CH-223191;クロロキン;CLI-095;CU-CPT9a;シクロスポリンA;CTY387;ゲフィチニブ;グリベンクラミド(Glybenclamide);H-89;H-131;イソリキリチゲニン;MCC950;MRT67307;OxPAPC;パルテノリド;Pepinh-MYD;Pepinh-TRIF;ポリミキシンB;R406;RU.521;VX-765;YM201636;Z-VAD-FMK;およびAHR特異的リガンド(2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD);トリプタミン(TA);6ホルミルインドロ[3,2b]カルバゾール(FICZ)が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、前記免疫抑制剤は、FTY720(フィンゴリモドとしても知られる)(Chung and Harung, Clinneuropharmacol 33:91-101, 2010)、2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンドによるAhR活性化(Yeste A, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109: 11270-11275, 2012; Quintana F.J., et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107: 20768-20773, 2010)、トリコスタチンA(TSA)(Reilly C.M. et al. J. Autoimmun 31: 123-130. 2008)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、(Lucas J.L., et al. Cell Immunol 257: 97-104, 2009)、および/またはラパマイシン(Rapa)(Maldonado, R.A., et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA 112:E156-165, 2015)である。実施形態において、前記免疫抑制剤は、本明細書において提供される薬剤のいずれかを含んでいてもよい。
【0051】
前記免疫抑制剤は、APCに対して免疫抑制効果(例えば、寛容原性効果)を直接提供する化合物であり得るか、または免疫抑制効果(例えば、寛容原性効果)を間接的に(すなわち、投与後に何らかの方法で処理された後に)提供する化合物であり得る。したがって、免疫抑制剤は、本明細書において提供される化合物のいずれかのプロドラッグ形態を含む。
【0052】
免疫抑制剤はまた、免疫抑制(例えば、寛容原性)免疫応答をもたらす、本明細書において提供されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を含む。したがって、実施形態では、前記免疫抑制剤は、免疫抑制(例えば、寛容原性)免疫応答をもたらすペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸であり、それは前記ゲルベースのイヌリン製剤にカップリングされる核酸である。
【0053】
前記核酸は、DNAまたはRNA、例えばmRNAであってもよい。実施形態において、前記組成物は、本明細書で提供される核酸のいずれかの、全長相補体などの相補体、または縮重体(遺伝暗号の縮重による)を含む。実施形態において、前記核酸は、細胞株にトランスフェクトされたときに転写され得る発現ベクターである。実施形態において、前記発現ベクターは、とりわけ、プラスミド、レトロウイルス、またはアデノウイルスを含んでいてもよい。核酸は、標準の分子生物学的アプローチを使用して、単離または合成され得る。例えば、核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、核酸断片を生成し、次いで、これを精製し、発現ベクターにクローニングすることによって単離または合成され得る。本発明の実施に有用なさらなる技術は、Current Protocols in Molecular Biology 2007 by John Wiley and Sons, Inc.; Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third Edition) Joseph Sambrook, Peter MacCallum Cancer Institute, Melbourne, Australia; David Russell, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, Cold Spring Harborから見出してもよい。
【0054】
他の例示的な免疫抑制剤としては、小分子薬物、天然産物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬物、炭水化物ベースの薬物、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)などが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる免疫抑制剤は当業者に公知であり、本発明は、この点において限定されない。
【0055】
本明細書に用いられる場合、用語「インビトロ(in vitro)」とは、人工的環境、および人工的環境内に生じるプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は限定されるわけではないが、試験管および細胞培養からなりうる。
【0056】
用語「インビボ(in vivo)」は自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で起こるプロセスまたは反応を指す。
【0057】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸(例えば、天然に存在するアミノ酸および非天然アミノ酸)のポリマーを指す。この用語はまた、修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、脂質化、または標識成分との結合。
【0058】
「医薬組成物」とは、対象への投与に適した任意の組成物(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤、ならびにプレバイオティクス化合物および治療薬の一方または両方)を意味する。
【0059】
「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバント」とは、投与される医薬組成物の治療特性を保持しつつ、対象に生理学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを意味する。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「試料」は、その最も広範な意味で使用される。1つの意味では、それは任意の供給源から得られた標本または培養物、ならびに生物学的および環境的試料を含むことを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から採取されてもよく、液体、固体、組織、および気体を包含している。生物学的試料は、血漿、血清などのような血液産物を含む。環境試料には、表面物質、土壌、水、結晶、および工業試料などの環境材料が含まれる。しかしながら、そのような実施例は、本発明に適用可能なサンプルタイプを限定するものと解釈されるべきではない。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は特定の処置のレシピエントとなる、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳類)を指す。典型的には、用語「対象」および「患者」は、本明細書においてはヒト対象に互換的に使用される。
【0062】
「治療有効量」とは、臨床的に関連する態様で、対象の状態、または障害もしくは疾患の症状(例えばアレルギー)を改善、阻害、もしくは改善するために投与される組成物(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤、ならびにプレバイオティクス化合物および治療薬の一方または両方)の量を意味する。対象におけるいかなる改善も、処置を達成するのに十分であると考えられる。好ましくは、処置するのに十分な量は、疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状を減少、阻害、もしくは予防する量であるか、または、対象が疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状に罹患している期間の、重症度もしくは長さを減少させる量である(例えば、本明細書に記載の組成物で処置されていない対照対象と比較して、少なくとも約10%、約20%、もしくは約30%、より好ましくは少なくとも約50%、約60%、もしくは約70%、最も好ましくは少なくとも約80%、約90%、約95%、約99%、もしくはそれ以上。本明細書に記載される方法(例えば、アレルギー(例えば、食物アレルギー)の処置、予防、および/または改善)を実施するために使用される医薬組成物の有効量は、投与態様、ならびに処置される対象の年齢、体重、および全体的な健康状態に依存して変化する。医師または研究者は、適正量および投薬レジメンを決定することができる。
【0063】
〔発明の詳細な説明〕
アレルギーは免疫系の疾患であり、通常は無害な環境物質に対するアレルギー反応の発生を特徴とする。アレルギーは花粉または他の植物成分、粉塵、かびまたは真菌、食品、添加物、ラテックス、輸血反応、動物または鳥のフケ、昆虫毒、放射線造影剤、薬剤または化学物質を含むが、これらに限定されない、多種多様な原因に存在し得るアレルゲンによって引き起こされる。一般的なアレルギー反応としては、湿疹、蕁麻疹、花粉症、喘息、および毒物に対する反応が含まれる。花粉症のような軽度のアレルギーはヒト集団において非常に一般的であり、アレルギー性結膜炎、かゆみ、および鼻水のような症状を引き起こす。人によっては、環境アレルゲンまたは食事アレルゲンまたは薬物に対する重度のアレルギーは、治療せずに放置すると、生命を脅かすアナフィラキシー反応を起こし、死に至る可能性がある。
【0064】
アレルギー反応は、以下の3つの異なるパターンで起こり得る:a)初期反応または急性反応、b)後期反応、およびc)潜在的慢性のアレルギー性炎症。アレルギー反応の初期段階は、典型的には最初のアレルゲン曝露後、数分以内、または数秒以内に生じるが、この初期段階は一般に、即時アレルギー反応とも呼ばれる。アレルギーの初期段階では、初めて接触したアレルゲンに対する過敏反応が起こり、サイトカインインターロイキン-4(IL-4)を産生するT細胞のサブセットであるTh2細胞の応答を引き起こす。Th2細胞はB細胞(抗原に対する抗体を産生するリンパ球)と相互作用し、IL-4の作用と相まって、B細胞を刺激して免疫グロブリンE(IgE)の産生および分泌を開始する。
【0065】
IgEは、アレルギーおよびアレルギー反応において重要な役割を果たす。アレルゲンの導入に際して、それぞれの対象のB細胞は、大量のIgEを産生する。IgEは、好塩基球および肥満細胞上に見出される受容体に結合することによって免疫応答を誘発する。活性化されると、これらの細胞は、アレルギーの特徴的な症状を引き起こすヒスタミンおよびサイトカインなどの化学メディエーターを放出する。
【0066】
食物アレルギーは食物アレルゲン(例えば、食物タンパク質)に対する有害な免疫応答である。一般的な食物アレルゲンは、甲殻類、ピーナッツ、木の実、魚類、乳、卵、大豆および新鮮な果物(例えばイチゴ、マンゴー、バナナおよびリンゴ)において見受けられ、イムノグロブリンE(IgE)媒介性食物アレルギーは、I型即時型過敏症反応として分類される。これらのアレルギー反応は急性発症(数秒から1時間)し、付随する症状は、血管浮腫(眼瞼、顔、口唇、舌、喉頭および気管の軟部組織腫脹);蕁麻疹;口、喉、眼または皮膚の掻痒;悪心、嘔吐、下痢、胃痙攣、または腹痛などの胃腸症状;鼻汁または鼻づまり;喘鳴、息切れ、または嚥下困難;ならびに死に至り得る、アナフィラキシー、重症の全身アレルギー反応でさえも含み得る。21歳未満の小児において、12人に1人が食物アレルギーであると医師に診断されている(Gupta, et al., JAMA Pediatrics, November 2013, Vol. 167, No. 11を参照)。この病は、ある種のナッツについては10年ごとに倍増することが報告されている(CDC 2009)。さらに、致死的な食物アレルギーによる死亡が依然として毎年発生する。重要なことに、食物アレルギー反応のための健康医療/医療費用に毎年240億ドル超が費やされる(Gupta, et al., JAMA Pediatrics, November 2013, Vol. 167, No. 11参照)。この費用は主に、米国における、食品誘発性アナフィラキシー症状に起因する、年間約90,000回のERへの訪問が原因である。
【0067】
アレルギーに関する世界保健機関の統計によれば、アレルギーの発生率は過去50年間に先進工業国で増加しており、世界中の学齢児童のほぼ40~50%が少なくとも1つの一般的なアレルゲンに感受性である(Pawankar R, et al. The WAO White Book on Allergy (Update 2013)参照)。アレルギーは小児期に発症し得るが、アレルギーは生涯にわたって患う、または発症する可能性もある。
【0068】
アレルゲンへの曝露時のアレルギー反応の重症度は、軽度の症状から、ときに致死的な反応まで広範囲に及び得る。アレルギーの症状および重症度は、関与する免疫応答の種類、免疫応答の持続時間および規模、アレルゲンの量、ならびにアレルゲンへの接触/曝露部位などの因子に依存し得る。アレルギー症状の例は、皮膚発疹、皮膚の発赤、蕁麻疹、皮膚の隆起/発疹/蕁麻疹、目のかゆみ/涙目、頭痛、くしゃみ、喘鳴、息切れ、胸部圧迫感、咳、鼻水、咽頭痛、腫れ、悪心、嘔吐、下痢、およびアナフィラキシーを含むがこれらに限定されない。
【0069】
対象は、当技術分野で公知の任意の経路(例えば、摂取、吸入、注射、または直接接触)を介して、アレルギー反応を誘導するアレルゲンに接触するか、または曝露され得る。アレルギー反応に関連する症状は、アレルゲンへ接触または曝露した部位(例えば、皮膚、気道、もしくは胃腸管の領域、末梢部位)に局在化していてもよいし、または、アナフィラキシーの場合のように全身性であってもよい。
【0070】
アレルゲンへの接触または曝露に応答して刺激される免疫応答は、アレルギー反応と称され得る。一般に、アレルギー反応は、アレルゲンへの接触もしくは曝露の直後、または接触もしくは曝露後約30分以内もしくはそれ以上後に起こり得る。
【0071】
本発明の実施形態を開発する過程で行われた実験は、アレルギー(例えば、食物アレルギー(例えば、ピーナッツアレルギー))に対する経口免疫療法のためのプラットフォーム技術の開発をもたらした。特に、このような実験は、人々が広く消費している食物天然繊維に基づく新しい経口繊維-ゲル製剤の開発をもたらした。実際に、イヌリンは新しい経口イヌリン-ゲルへと製剤化されて、ピーナッツ抽出物を含む経口イヌリン-ゲルが開発された。経口投与した場合の結果は、マウスにアナフィラキシーショック、体重減少、または体温低下の徴候がないことによって示されるように、イヌリンゲル含有ピーナッツ抽出物は、ピーナッツアレルゲン投与からマウスを効果的に保護することを実証した。このような結果は、イヌリン-ゲルが腸内のミクロビオームを調節して、制御性T細胞(例えば、食物アレルゲンおよび他の自己抗原に対する免疫寛容にとって重要であることが知られているCD4 T細胞のサブセット)の誘導を促進することを示す。
【0072】
したがって、本発明は一般に、自己免疫疾患(例えば、大腸炎)(例えば、食物アレルギーのようなアレルギー)を治療するための、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)するゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物、および関連する方法に関する。自己免疫疾患(例えば、アレルギー)に関連する免疫応答を調節するため、および/または自己免疫疾患(例えば、アレルギー、例えば、食物アレルギー)に対する免疫寛容もしくは脱感作を誘導するための組成物および方法もまた、本明細書において提供される。
【0073】
特定の実施形態では、本発明が1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化した(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)ゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ゲルベースイヌリン製剤が20以上47以下の平均重合度を有する。いくつかの実施形態では、ゲルベースのイヌリン製剤が約26(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32)の平均重合度を有する。
【0074】
イヌリンは、フルクタン群に属する多糖類である。イヌリンはフルクトース分子のβ-2-1結合鎖からなり、この鎖はその末端に、還元末端にα-D-グルコース単位を有する。イヌリンは例えば、チコリー根およびダリア塊茎などの様々な植物において経済的に回収可能な量で存在する。さらに、イヌリンは例えば、エルサレム・アーティチョークおよびアーティチョークから入手される。種々のイヌリンの平均鎖長およびそれらの物理化学的性質は、植物種ごとに異なる。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記ゲルベースのイヌリン製剤は、フルクトオリゴ糖、短鎖フルクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、βグルカン、アラブルガム加工デンプン、難消化性ジャガイモデンプン、グアーガム、ビーンガム、ゼラチン、グリセロール、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシア繊維、カロブ、オート麦、およびかんきつ類繊維から選択される1つまたは複数のプレバイオティクス化合物をさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記治療薬は、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);スタチン;mTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2;ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;PI3KB阻害剤;オートファジー阻害剤;芳香族炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);酸化ATPs IDO;ビタミンD3;シクロスポリン;芳香族炭化水素受容体阻害剤;レスベラトロール;アザチオプリン(Aza);6-メルカプトプリン(6-MP);6-チオグアニン(6-TG);FK506;サングリフェリンA;サルメテロール;ミコフェノール酸モフェチル(MMF);アスピリンおよび他のCOX阻害剤;ニフルム酸;エストリオール;トリプトリド;OPN-305、OPN-401;エリトラン(E5564);TAK-242;Cpn10;NI-0101;1A6;AV411;IRS-954(DV-1079);IMO-3100;CPG-52363;CPG-52364;OPN-305;ATNC05;NI-0101;IMO-8400;ヒドロキシクロロキン;CU-CPT22;C29;オルトバニリン;SSL3タンパク質;OPN-305;5SsnB;ビザンチン;(+)-N-フェネチルノルオキシモルホン;VB3323;単糖3;(+)-ナルトレキソンおよび(+)-ナロキソン;HT52;HTB2;化合物4a;CNTO2424;TH1020;INH-ODN;E6446;AT791;CPG ODN 2088;ODN TTAGGG;COV08-0064;2R9;GpGオリゴヌクレオチド;2-アミノプリン;アンレキサノクス;Bay11-7082;BX795;CH-223191;クロロキン;CLI-095;CU-CPT9A;シクロスポリンA;CTY387;ゲフィチニブ;グリベンクラミド;H-89;H-131;イソリキリチゲニン;MCC950;MRT67307;OxPAPC;パルテノリド;Pepinh-MYD;Pepinh-TRIF;ポリミキシンB;R406;RU.521;VX-765;YM201636;Z-VAD-FMK;並びに、AHR特異的リガンド(2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD);トリプタミン(TA);および6ホルミルインドロ[3,2b]カルバゾール(FICZ)を含むが、これらに限定されない)から選択される。
【0077】
特定の実施形態では、前記治療薬は、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;および/またはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)から選択される免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの前記治療薬が、前記ゲルベースのイヌリン製剤内に含まれる。いくつかの実施形態において、前記ゲルベースのイヌリン製剤は、さらにアジュバントと混合されていてもよい(アジュバントとしては例えば、CPG、ポリIC、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、アンプリバックス、AS15、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタニドIMS 1312、モンタニドISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジキモド、3M-052、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 stimulon、バジメザン、AsA404(DMXAA)、およびアジュバントの任意の誘導体)。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記組成物はアジュバントを含まない。
【0079】
前記治療薬がアレルゲンであるような組成物は、対象(例えば、ヒト対象)への治療有効量の投与時に、アレルギー(例えば、食物アレルギー)を1つ以上治療すること、アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の症状を減少させること、アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連する1つまたは複数の免疫応答を調節すること、対象における制御性T細胞の増殖および/または蓄積を誘導すること、IgE抗体(例えば、総IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)の産生を抑制すること、1つまたは複数のTh2免疫応答を抑制することができ、対象がアレルゲンを摂取した場合(例えば、ピーナッツアレルゲンへの不注意な曝露におけるアナフィラキシーアレルギー応答の場合)の生存を可能にする。
【0080】
このような組成物は、特定のタイプまたは種類のアレルゲンに限定されない。アレルゲンの源には、動物製品、植物、食品、昆虫刺傷、薬物、真菌胞子、および微生物が含まれる。
【0081】
動物性生成物由来のアレルゲンの例には、毛皮、フケ、ゴキブリ傘部、ウール、カビ、チリダニ排泄物、およびフェルd1(例えば、猫唾液腺および皮脂腺において産生されるタンパク質)が含まれる。植物由来のアレルゲンの例には、ライグラスなどの草由来の植物花粉;ブタクサ、イラクサ、ソラルなどの雑草;およびカバノキ、ハンノキ、ハシバミ、オーク、ニレ、およびカエデなどの樹木が含まれる。ウルシオールもまた、皮膚の発疹を引き起こすアレルゲンであり、ツタウルシおよびポイズンオークによって生産される樹脂である。食物アレルゲンの例には、ピーナッツ、ペカンおよびアーモンドなどの木の実、卵、乳、貝、魚、小麦およびそれらの派生物、大豆およびそれらの派生物が含まれる。虫刺され由来のアレルゲンの例は、ハチ刺され(bee sting)、ハチ刺され(wasp sting)、および蚊刺されを含む。薬物アレルゲンの例は、ペニシリン、スルホンアミド、キニジン、フェニルブタゾン、チオウラシル、メチルドパ、ヒダントイン、およびサリチル酸塩を含む。真菌アレルゲンの例は、担子胞子(例えば、ガノデルマ);キノコ胞子;アスペルギルスおよびアルテルナリア-ペニシリンファミリー由来のアレルゲン;ならびにクラドスポリウム胞子を含む。アレルギー反応を引き起こし得る微生物の例には、ウイルスおよび細菌が含まれる。他のアレルゲンは、ラテックス、金属、木材、化学物質、化粧品、色素、ワクチン、ホルモン、野菜、果物、糖類、動物、および本質的に日光の下の任意のもの(日光自体を含む)が含まれる。アレルゲンの別の実施例は精液であり得る。不妊症は、パートナーの精液に対する女性の感作によって引き起こされ得る。これは真のアレルギーであり、通常の方法における受精を妨げ、医療費の増加につながる可能性がある。
【0082】
いくつかの実施形態において、2以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態において、3以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態において、4以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態において、5以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態では、6以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態では、7以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態では、8以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)。いくつかの実施形態では、9以上のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)される。いくつかの実施形態では、10以上(例えば、10、11、12、15、20、25、50、75、100、1000、10,000など)のアレルゲンが、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化(例えば、複合体化、複合化、カプセル化、吸収、吸着、混合)される。上述したような実施形態では、前記ゲルベースのイヌリン製剤と一体化される(例えば、複合体化、複合体化、カプセル化、吸収、吸着、混合)アレルゲンは、同一のアレルゲンまたは異なるアレルゲンであり得る。アレルゲンが異なるような実施形態では、前記ゲルベースのイヌリン製剤を、前記組成物内の異なる種類のアレルゲンの任意の所望の比または割合に適合させることができる。
【0083】
前記組成物は、対象への所望の投与方法のために構成される。いくつかの実施形態では、前記薬剤が経口投与(例えば、強制経口投与)される。いくつかの実施形態では、前記薬剤が鍼治療を介して投与される。いくつかの実施形態では、口腔、歯、子宮頸管内、筋肉内、吸入、頭蓋内、リンパ管内、筋肉内、眼内、腹腔内、胸膜内、髄腔内、気管内、子宮内、血管内、静脈内、膀胱内、鼻腔内、眼、耳、胆汁潅流、心臓潅流、プリオドンタル(priodontal)、直腸、脊髄皮下、舌下、局所、膣内、トランザーマル(transermal)、尿管、または尿道を含む、任意の適切な投与経路によって投与されてもよい。
【0084】
前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物))(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)、および本明細書に提供される方法に従って治療することができる、自己免疫疾患の例としては限定するものではないが、アレルギー性喘息、アレルギー性大腸炎、動物アレルギー、アトピー性アレルギー、花粉症、皮膚アレルギー、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、薬物または薬用アレルギー、湿疹(アトピー性皮膚炎)、食物アレルギー、真菌アレルギー、昆虫アレルギー(虫刺され/毒アレルギーを含む)、カビアレルギー、植物アレルギー、および花粉症が含まれる。いくつかの実施形態では、アレルギーは食物アレルギーである。
【0085】
本開示の態様は、対象における食物アレルギーを治療すること、および/または食物アレルギーに関連する免疫応答を調節することに関する。食物アレルギーに対する免疫寛容または脱感作を誘導する方法もまた、本明細書において提供される。本明細書で使用される用語、「食物アレルギー」は、食物に対する、または具体的には食物中に存在するアレルゲンに対する望ましくないアレルギー性免疫応答を指す。いくつかの実施形態では、食物アレルギーに関連するアレルギー反応が、同じまたは類似のアレルゲンを含有する食物または食品の、接触(例えば摂取)後に誘発される。当業者に公知のように、食物アレルギーに関連する症状は例えば、アレルゲンを含有する食物を摂取した後に、対象の胃腸管において現れ得る;しかしながら、アレルギー反応は、気道または皮膚などの他の部位に影響を及ぼし得る。
【0086】
食物アレルギーは一般に、IgE媒介性免疫反応であると考えられるが、非IgE媒介性食物アレルギーならびに混合IgE媒介性/非IgE媒介性食物アレルギーが存在する。IgE媒介性食品アレルギーは、アレルゲンとの接触の直後または約2時間以内に起こる傾向があり、蕁麻疹(急性蕁麻疹)、血管浮腫、腫れ、アナフィラキシー、食品関連運動誘発性アナフィラキシー、口腔アレルギー症候群、ならびに/または嘔吐および疼痛を伴う即時型胃腸過敏症が挙げられる。食物アレルギーに関与する非IgE媒介性免疫応答は細胞媒介性応答とも呼ばれ、遅延型過敏反応であり、食物タンパク質誘発性腸炎症候群、食物タンパク質誘発性アレルギー性直腸結腸炎、アレルギー性接触皮膚炎、およびハイナー症候群を含み得る。食物アレルギーに関与する混合または結合IgE媒介性/非IgE媒介性免疫応答は、IgEおよびT細胞媒介性効果の両方と関連しており、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、および/または好酸球性胃腸炎を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)は、IgE媒介性食物アレルギーを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法は、IgE媒介性食物アレルギーに関連する免疫応答を調節するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法は、IgE媒介性食物アレルギーに対する免疫寛容または脱感作を誘導するために使用される。本明細書に記載される前記組成物および方法はまた、非IgE媒介性食品アレルギーおよび/または混合もしくは組み合わせたIgE媒介性/非IgE媒介性食品アレルギーの文脈において使用され得る。
【0088】
食物アレルギーの例には、ピーナッツアレルギー、木の実アレルギー、卵アレルギー、トウモロコシアレルギー、果実アレルギー、乳アレルギー、ニンニクアレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー、海産物アレルギー、魚アレルギー(例えば、貝アレルギー)、および種子アレルギー(例えば、ゴマ種子アレルギー)が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
食物アレルギーを引き起こし得るアレルゲンを含む食品の非限定的な例には、アワビ(perlemoen)、アセロラ、アラスカ・ポーロック、アーモンド、アニシード、リンゴ、アプリコット、アボカド、バナナ、大麦、ピーマン、ブラジルナッツ、ソバ、キャベツ、コイ、ニンジン、カシュー、キャスタービーン、セロリ、セルリアック、チェリー、栗、ヒヨコマメ(ガルバンゾー、ベンガルグラム)、ココア、ココナツ、鱈、コットン種子、ズッキーニ(zucchini)、カニ、ナツメヤシ、タマゴ、イチジク、魚、亜麻仁(アマニ)、カエル、ガーデンプラム、ニンニク、ブドウ、ヘーゼルナッツ、キウイフルーツ(チャイニーズグースベリー)、レンティル、レタス、ロブスター、ルピナス(ルピン)、ライチ、サバ、トウモロコシ(トウモロコシ)、マンゴー、メロン、ミルク、マスタード、オートオイスター、モモ、ピーナッツ(グラウンドナッツ、サルナッツ)、ナシ、ペカン、柿、マツの実、パイナップル、ザクロ、ポピーシード、じゃがいも、かぼちゃ、米、ライ麦、サーモン、ゴマ、ゴマ種子、エビ(ブラックタイガー、ヨーロッパエビジャコ、ヨシエビ、テンジククルマエビ、サチエビ、バナメイエビ)、カタツムリ、ダイズ(大豆)、イカ、イチゴ、ヒマワリ種子、トマト、マグロ、カブ、クルミ、および小麦(パン用小麦、パスタ小麦、ホラーサーンコムギ(カムート)、スペルトコムギ)が含まれる。
【0090】
一態様では、本開示は、対象におけるアレルギー(例えば、食物アレルギー)などの疾患または障害を処置するための組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤を含む組成物)、および処置するための方法を提供する。本明細書において使用される場合、「対象」、「個体」、および「患者」は、互換的に使用され、脊椎動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物を指す。哺乳動物にはヒト霊長類、非ヒト霊長類またはマウス、ウシ、ウマ、イヌまたはネコ種が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、ヒト対象が新生児対象、小児対象、青年対象、成人対象、または老人対象である。いくつかの実施形態では、対象は食物アレルギーなどのアレルギーを有するか、または有するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象はアレルゲンを含有する特定の食品または食品群への接触または曝露後に、1つまたはアレルギー反応を有している。いくつかの実施形態では、対象が食物アレルギーなどのアレルギーに関連する病歴を有している。いくつかの実施形態では、対象がアレルギーまたは特定のアレルゲンに対するアレルギーの家系を有する。例えば、家系は、その対象が食物アレルギーなどのアレルギーを有するかまたは発症する可能性に影響を及ぼし得る。さらに、特定の食品に対する食品アレルギーを有する対象(例えば、食品中の特定のアレルゲン)はまた、その対象に、異なる食品に対する食品アレルギー(例えば、食品中の異なる特定のアレルゲン)を有させる、または発症させやすくする可能性がある。
【0091】
いくつかの実施形態では、対象はアレルギーの発症に関連する危険因子を有する。食物アレルギーの発症に関連する危険因子の例は、未成熟な粘膜免疫系、固形食物の早期摂取、粘膜透過性の遺伝的な増加、IgA欠乏またはIgA産生遅延、共生微生物叢による腸免疫システムの攻撃が不十分であること、Th2免疫応答に対する遺伝的に決定された偏り、Th2サイトカインまたはIgE受容体遺伝子の多型、腸神経システムの障害、免疫改変(例えば、低レベルのTGF-β)を含むが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書に記載される前記組成物のいずれか(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)は、疾患または障害(例えば、食物アレルギー)を治療または予防するために、治療有効量、または治療有効量の投与量で対象に投与され得る。「処置する」または「処置」という用語は、疾患に関連する症状(例えば、食物アレルギーなどのアレルギー)の1つまたは複数を減少または緩和することを指す。用語「予防する」または「予防」は予防的投与を包含し、疾患または障害(例えば、食物アレルギー)の発生の発生率または可能性を減少させ得る。いくつかの実施形態では、前記組成物は、食品または食品アレルゲンに関連するアレルギー反応などの、アレルギー反応の発生率または発生の可能性を低下させる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される前記組成物の投与が、アレルギー反応の発生率または可能性を低下させる効果を対象に提供する、対象における改変されたミクロビオームをもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される前記組成物の投与が、アレルギー反応の発生率または可能性を低下させる効果を対象に提供する、対象における健常なマイクロ生物相をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される前記組成物の投与が、アレルギー反応に関連する症状などのアレルギーに関連する1つまたは複数の症状の低減または緩和をもたらす。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)を使用して、アレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連するアレルゲンに対する免疫寛容を誘導するか、またはアレルギー(例えば、食物アレルギー)に関連するアレルゲンに対する免疫応答を脱感作する。本明細書で使用される場合、アレルギーの文脈における「寛容」および「免疫寛容」という用語は、アレルギーに関連するアレルゲンなどの1つまたは複数の刺激に対する免疫応答における、応答性または非応答性の低下を指す。特に、寛容または免疫寛容は、持続的または長期間にわたる1つまたは複数の刺激に対する免疫応答の応答性または非応答性の低下を指す。対照的に、アレルギーの文脈における「脱感作」という用語は、例えば脱感作レジメンの経過中の、1つまたは複数の刺激に対する免疫応答の低下した応答性または非応答性が可逆的な状態であることを指す。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)は、アレルギー(例えば、食物アレルギー)と関連する免疫応答を調節するために使用される。当業者に公知のように、本明細書に記載の前記組成物および方法は、アレルギーに関連する1つまたは複数の免疫応答を増強してもよく、アレルギーに関連する1つまたは複数の他の免疫応答を減少または抑制してもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)は、制御性T細胞の増殖および/または蓄積を誘導する。制御性T細胞は一般に、FoxP3、CD25、およびCD4の発現によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される前記組成物の投与は、前記組成物を投与する前の対象における制御性T細胞の量と比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上の、対象における制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的T細胞)の増殖および/または蓄積の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)における制御性T細胞の量と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の増殖および/または蓄積の増加をもたらす。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティック化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象(または対象の特定の部位)における制御性T細胞の量と比較した場合、少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、総調節T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の増殖および/または蓄積の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)における制御性T細胞の量と比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の増殖および/または蓄積の増加をもたらす。
【0097】
制御性T細胞の誘導および対応するアレルギーの処置は、複雑に関連している。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアレルギーの処置において、1つまたは複数のアレルギーの処置効果に関連する範囲の、制御性T細胞の誘導を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、特定のアレルギーの処置レジメンについて、所望のアレルギー処置効果を誘導するために、有意に強い制御性T細胞の応答を有することが望ましい。しかしながら、T細胞の応答は、望ましくない免疫学的事象をもたらすほど強くはない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与する前の対象(または対象の特定の部位)における制御性T細胞の量と比較して、1%~20%、2%~19%、3%~17%、4%~16%、4%~15%、5%~15%、6%~14%、7%~13%、8%~12%、5%~10%、5%~15%、10%~15%、または8%~15%の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の増殖および/または蓄積をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)における制御性T細胞の量と比較して、1%~20%、2%~19%、3%~17%、4%~16%、4%~15%、5%~15%、6%~14%、7%~13%、8%~12%、5%~10%、5%~15%、10%~15%、または8%~15%の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の増殖および/または蓄積をもたらす。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、対象の特定の部位における制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の活性の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与する前の対象における制御性T細胞の活性と比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上、の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の活性の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)における制御性T細胞の活性と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の活性の増大をもたらす。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象における制御性T細胞の活性と比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の活性の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)における制御性T細胞の活性と比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%またはそれ以上の制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の活性の増大をもたらす。
【0100】
制御性T細胞(例えば、全制御性T細胞またはアレルゲン特異的制御性T細胞)の存在量は、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、制御性T細胞を示す細胞マーカー(例えば、FoxP3)の検出、制御性T細胞の直接的または間接的活性の評価、および/または制御性T細胞によって産生される1つまたは複数のサイトカイン(例えば、IL-10)の産生の測定によって評価することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)は、IgE抗体の産生を抑制する。いくつかの実施形態では、前記組成物および方法は、対象における全IgE抗体の産生を抑制する。いくつかの実施形態では、前記組成物および方法は、アレルギーに関連するアレルゲン、例えば、食物アレルギーに関連する食物アレルゲンに特異的なIgE抗体(例えば、アレルゲン特異的IgE抗体)の産生を抑制する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される前記組成物の投与は、前記組成物を投与する前の、対象(またはその試料)におけるIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルと比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)におけるIgE抗体のレベルと比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象(またはその試料)におけるIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルと比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)におけるIgE抗体のレベルと比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象(またはその試料)におけるIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルと比較して、30%~50%、30%~45%、35%~45%、30%~45%、35%~45%、30%~40%、35%~40%、40%~50%、40%~45%、45%~50%のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)におけるIgE抗体のレベルと比較して、30%~50%、30%~45%、35%~45%、30%~40%、35%~40%、40%~50%、40%~45%、45%~50%のIgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)のレベルの減少をもたらす。
【0104】
アレルゲン特異的IgE抗体の存在および/または量を含む、対象におけるIgE抗体の存在および/または量は、当技術分野で公知の方法によって評価することができる。例えば、血液または血漿試料などの試料は対象から得ることができ、分析(例えば、イムノアッセイ(例えば、放射線アレルギー吸着試験(RAST)、蛍光アレルギー吸着試験(FAST)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))およびタンパク質アレイ)に供され得る。アレルゲン特異的IgE抗体の存在は、追加的または代替的に、皮膚試験(例えば、皮膚プリックテスト)によって評価され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)は、1つまたは複数のTh2免疫応答を抑制する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物および方法は、Th2細胞(2型ヘルパーT細胞とも呼ばれる)の発生または分化を抑制する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の前記組成物および方法は、Th2細胞の活性を抑制する。当業者に公知のように、Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、および/またはIL-13を産生するCD4+細胞の対象であり、IgE抗体応答および/または好酸球活性の促進に関与し得る。CD4+細胞のTh2細胞への分化は、IL-4および/またはIL-12の存在、ならびに転写因子STAT6およびGATA3の活性化によって促進される。いくつかの実施形態において、IgE抗体の量は、対象におけるTh2免疫応答のマーカーとして評価され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象(またはその試料)におけるTh2免疫応答と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上減少したTh2免疫応答のレベルをもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)におけるTh2免疫応答と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍またはそれ以上減少した、Th2免疫応答をもたらす。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)の投与は、前記組成物を投与する前の対象(またはその試料)におけるTh2免疫応答と比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少したTh2免疫応答のレベルをもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物の投与は、前記組成物を投与されなかった別の対象(例えば、参照対象)におけるTh2免疫応答と比較して、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少したTh2免疫応答をもたらす。
【0108】
Th2免疫応答の存在またはレベルは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して評価することができる。Th2免疫応答の存在またはレベルは、例えば、Th2細胞を示す細胞マーカーを検出すること;Th2細胞に関連する転写プロファイルを評価すること;Th2細胞の直接的または間接的な活性を評価すること;および/またはTh2細胞によって産生される1つまたは複数のサイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13)の産生を測定することなどによって、対象から得られた試料中のTh2細胞の数を検出および/または定量することによって評価され得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書により提供される前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤、およびプレバイオティクス化合物)の投与は、対象におけるアレルギー(例えば、食物アレルギー)と関連する免疫応答を調節する健常ミクロビオームをもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書により提供される前記組成物の投与は、対象におけるアレルギー(例えば、食物アレルギー)と関連する免疫応答を調節する健常ミクロビオームをもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書により提供される前記組成物の投与は、対象における制御性T細胞の蓄積および/または増殖を誘導する健常ミクロビオームをもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書により提供される前記組成物の投与は、対象におけるIgE抗体の産生を抑制する健常ミクロビオームをもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される組成物の投与は、対象におけるTh2免疫応答を抑制する健常ミクロビオームをもたらす。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)のいずれかの治療有効量は、アレルギーを治療するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物のいずれかの治療有効量は、アレルギーに関連する1つまたは複数の症状を軽減するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物のいずれかの治療有効量は、食物アレルギーなどのアレルギーに関連する1つまたは複数の免疫応答を調節するのに十分な量である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物のいずれかの治療有効量は、被験者における制御性T細胞の増殖および/または蓄積を誘導するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物のいずれかの治療有効量は、IgE抗体(例えば、全IgE抗体またはアレルゲン特異的IgE抗体)の産生を抑制するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物のいずれかの治療有効量は、1つまたは複数のTh2免疫応答を抑制するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物のいずれかの治療有効量は、対象がアレルゲンを摂取した場合(例えば、ピーナッツアレルゲンへの不注意な曝露におけるアナフィラキシーアレルギー反応の場合)の生存を可能にするのに十分な量である。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物および方法(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤、およびプレバイオティクス化合物)は、自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病など)を治療するために使用される。そのような状態の例は、これらに限定されないが、関節リウマチ、多発性硬化症糖尿病(例えば、1型糖尿病)、甲状腺の自己免疫疾患(例えば、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病)、甲状腺関連眼症および真皮症、副甲状腺機能低下症、アジソン病、早発性卵巣不全、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性下垂体疾患、免疫性胃炎(immunogastritis)、悪性アンゲミス(pernicious angemis)、セリアック病、白斑、重症筋無力症、尋常性天疱瘡およびバリアント、水疱性類天疱瘡、ジューリング疱疹状皮膚炎、後天性表皮水疱症、全身性硬化症、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、リウマチ性心疾患、自己免疫性多腺性症候群1型、アイカルディ-ゴーティエール症候群、急性膵炎加齢黄斑変性症、アルコール性肝疾患、肝線維症、転移、心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、パーキンソン病、多発性関節炎/胎児性および新生児性貧血、敗血症、ならびに炎症性腸疾患を含む。
【0112】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、用語「有効量」と互換的に使用され得る。本明細書に記載されている、医薬組成物などの組成物の治療有効量または有効量は、本明細書に記載の方法を使用して治療される疾患(例えば、アレルギー)の発現の遅延、進行の停止、軽減または少なくとも1つの症状の緩和を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載されているような、対象において所望の応答または転帰をもたらす任意の量である。
【0113】
本明細書に記載の方法のいずれかは、対象におけるアレルギーの処置のためのものであり得る。本明細書で使用される場合、アレルギーを処置する方法は、アレルギーに関連する少なくとも1つの症状を減少させ、もしくは緩和すること、またはアレルゲンとの接触もしくは曝露時のアレルギー反応の発症を遅延もしくは予防することを含む。
【0114】
また、対象がアレルギーを有するか、またはアレルゲンに応答してアレルギー反応を有するリスクがあるかどうかを決定することを含む方法も、本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、対象がアレルギーを有するか、またはアレルゲンに応答してアレルギー反応を有するリスクがあると決定される場合、対象は、本明細書に記載される前記組成物のいずれか(例えば、1つまたは複数のアレルゲンと一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数のアレルゲン、ならびにプレバイオティクス化合物および治療薬の一方または両方と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)を投与される。対象がアレルギーを有するか、もしくはそのリスクがあるか、またはアレルゲンに応答してアレルギー反応を有するかどうかを決定する方法は当技術分野において公知であり、例えば、IgE抗体(例えば、全IgE抗体、アレルゲン特異的IgE抗体)の存在もしくはレベルを検出すること、1つもしくは複数のTh2免疫応答の存在もしくはレベルを検出すること、またはアレルギー皮膚試験を実施することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、対象が食物アレルギーを有するか、または有するリスクがあるかどうかを評価することを含む。いくつかの実施形態では、対象が食物アレルギーを有すると決定されるか、または食物アレルゲンに応答してアレルギー反応を有するリスクがある場合、対象には、本明細書に記載される細菌株を含有する前記組成物のいずれかが投与される。
【0115】
本明細書に記載の前記組成物(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)(例えば、1つまたは複数の治療薬(例えば、免疫調節剤、免疫抑制剤、アレルゲン)およびプレバイオティクス化合物と一体化したゲルベースのイヌリン製剤)のいずれも、任意の形態(例えば、溶液または懸濁液などの水性形態、半固体形態、粉末形態、または凍結乾燥形態)で提供される。いくつかの実施形態では、前記組成物は凍結乾燥される。前記組成物を凍結乾燥する方法は、当技術分野において公知である。
【0116】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、許容される賦形剤をさらに含む。「許容される」賦形剤は、活性成分と適合していなければならず、それが投与される対象に有害であってはならない賦形剤を指す。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、前記組成物の意図される投与経路に基づいて選択される。例えば、経口または経鼻投与のための組成物は、直腸投与のための組成物とは異なる薬学的に許容される賦形剤を含み得る。賦形剤の例には、滅菌水、生理食塩水、溶媒、基材、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、安定剤、風味剤、芳香剤、賦形剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、鎮静剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、増粘剤、および可溶化剤が含まれる。
【0117】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知かつ通常実施される方法に従って調製することができる。本明細書に記載の前記医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の任意の担体または安定剤をさらに含み得る。許容される賦形剤、担体、または安定剤としては、例えば、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、ポリマー、キレート化試薬、および/または界面活性剤を含んでもよい。医薬組成物は、好ましくはGMP状態で製造される。前記医薬組成物は、経口、経鼻、または非経口で、例えば、カプセル、錠剤、丸剤、サシェ(sachet)、液体、粉末、顆粒、微細顆粒、膜コーティング製剤、ペレット、トローチ、舌下製剤、チュアブル、バッカル剤(buccal preparation)、ペースト、シロップ、懸濁液、エリキシル、エマルジョン、リニメント、軟膏、プラスター、パップ剤、経皮吸収システム、ローション、吸入、エアロゾル、注射、座薬、およびその他の形態で使用できる。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、または皮内投与などの注射によって使用することができる。
【0118】
また、本開示の範囲内には、追加のまたは代替の経路で投与される医薬組成物がある。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、舌下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、注射による投与のために製剤化される。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、アレルギーの処置に利益を提供することに関連しているアジュバントを含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、経口免疫療法剤、経皮免疫療法剤、または舌下免疫療法剤の1つまたは複数の成分を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記組成物は、当業者に公知の従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、予防的または治療的効果)を提供するように調整される。いくつかの実施形態では、前記組成物の剤形は、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、顆粒剤、液体、または座薬である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、直腸投与のために、例えば、座薬として製剤化される。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、適切にコーティング(例えば、pH特異的コーティング、標的領域特異的酵素によって分解され得るコーティング、または標的領域に存在する受容体に結合し得るコーティング)されることによって、腸、または腸の特定領域(例えば、結腸)へ送達されるために製剤化される。いくつかの実施形態では、前記組成物は、糖衣錠、ゲルカプセル、ゲル、エマルジョン、錠剤、ウエハーカプセル、ヒドロゲル、ナノファイバーゲル、エレクトロスピン繊維、食品バー、菓子、発酵乳、発酵チーズ、チューインガム、粉末または練り歯磨き粉である。
【0121】
本発明の医薬組成中の活性成分の用量は、特定の対象、組成物、および投与様式に対して、毒性ではなく、または対象に対して有害作用を有することなく、所望の薬学的応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変更することができる。用量レベルの選択は、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、処置期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または原料、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および以前の病歴、ならびに同様の因子を含む様々な因子に依存する。
【0122】
医師、獣医師または他の訓練された実行者は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで前記医薬組成物の投与を開始し、所望の効果(例えば、アレルギーの処置、アレルギーに関連する1つまたは複数の免疫応答の調節)が達成されるまで、用量を徐々に増加させることができる。一般に、本明細書に記載されるような生物のグループに予防的な処置をするための、本発明の組成物の有効用量は、投与経路、対象の生理学的状態、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物、および所望の治療効果を含む多くの異なる因子に応じて変化する。用量は、安全性および有効性を最適化するために滴定される必要がある。
【0123】
いくつかの実施形態では、投与レジメンは、本明細書に記載の組成物の、いずれかの用量の経口投与を伴う。いくつかの実施形態では、投与レジメンは本明細書に記載の前記組成物のいずれかの、複数用量の経口投与を伴う。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の前記組成物のいずれかは、対象に、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または少なくとも10回、またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の前記組成物のいずれかは、2週間ごと、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、またはそれ以上などの規則的な間隔で、複数用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物のいずれかの1用量が投与され、前記組成物の第2の用量が翌日(例えば、連続した日)に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される前記組成物のいずれかの1用量が投与され、前記組成物のさらなる用量のそれぞれが、連続した日に投与される(例えば、1日目に第1の用量、2日目に第2の用量、3日目に第3の用量など)。
【0124】
一態様では、本開示は、前記医薬組成物の複数の1日ごとの用量の投与を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月またはそれ以上、毎日投与される。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象が1以上の用量の前記医薬組成物の投与に応答しているかどうかを(例えば、T制御細胞、IgE細胞のレベルを測定することによって、または皮膚試験を行うことによって)決定し、応答が所望の効果(例えば、不十分なレベルのT制御細胞、または皮膚試験に対する強い応答)と関連していない場合、追加の用量の前記医薬組成物を投与する、対象への1以上の用量の前記医薬組成物の投与を含む方法を、本開示は提供する。
【0126】
本開示の態様はまた、本明細書において提供される前記組成物のいずれかと、栄養素とを含む食品を提供する。また、本明細書に記載される細菌株のいずれかと、栄養素とを含む食品も、本開示の範囲に含まれる。食品は一般に、ヒトまたは動物による消費を目的とする。本明細書に記載されている前記組成物のいずれも、食品として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、細菌株は、胞子形態で食品として製剤化される。いくつかの実施形態では、細菌株は、栄養型の食品として製剤化される。いくつかの実施形態では、食品は、栄養細菌および胞子形態の細菌の両方を含む。本明細書に開示される前記組成物は、健康食品もしくは飲料、乳児用の食品もしくは飲料、妊婦、運動選手、高齢者もしくは他の特定のグループ用の食品もしくは飲料、機能性食品、飲料、特定の健康用途のための食品もしくは飲料、栄養補助食品、患者用の食品もしくは飲料、または動物用飼料などの食品もしくは飲料に使用することができる。
【0127】
食品および飲料の非限定的な例には、ジュース、清凉飲料、茶、飲料調製物、ゼリー飲料、および機能性飲料などの様々な飲料;ビールなどのアルコール飲料;米食品、麺類、パン類、およびパスタなどの炭水化物含有食品;魚肉ハム、ソーセージ、シーフードのペースト製品のようなペースト製品;カレー、餡かけ餡(thick starchy sauces)、スープなどのなどのレトルトパウチ製品;乳、乳飲料、アイスクリーム、チーズ、およびヨーグルトなどの乳製品;発酵大豆ペースト、ヨーグルト、発酵飲料、およびピクルス等の発酵製品;豆製品;ビスケット、クッキーなどを含む西洋菓子製品、饅頭、ヨウカンなどを含む和菓子製品、ゼリー、クリームキャラメル、および氷菓子を含む冷菓、キャンディー、チューインガム、グミ、などのような様々な菓子類;インスタントスープ、インスタント大豆スープ、電子レンジ食品などのインスタント食品などが含まれる。さらに、この例には、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、液体、ペースト、およびゼリーの形態に調製された健康食品および飲料も含まれる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている前記方法のいずれかは、追加の治療薬を(例えば、同時にまたは異なる時間に)投与することをさらに含み得る。そのような追加の治療薬の例には、疾患修飾性抗リウマチ薬(例えば、レフルノミド、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン)、生物学的製剤(例えば、リツキシマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク)、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン、トラマドール)、免疫調節薬(例えば、アナキンラ、アバタセプト)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、IL-1阻害薬、およびメタロプロテアーゼ阻害薬が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬としてはインフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、または非経口金もしくは経口金が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、治療薬は、免疫調節剤または免疫抑制剤(例えば、スタチン;mTOR阻害剤(例えばラパマイシンまたはラパマイシン類似体);TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えばトリコスタチンA);コルチコステロイド;ミトコンドリア機能の阻害剤(例えばロテノン);P38阻害剤;NF-κβ阻害剤(例えば6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VII);アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2)(例えばミソプロストール);ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばロリプラム等のホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4));プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;PI3 KB阻害剤(例えば、TGX-221);オートファジー阻害剤(例えば、3-メチルアデニン);芳香族炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);および酸化ATP(例えば、P2X受容体遮断薬)が含まれるが、これらに限定されない。免疫抑制剤には、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、芳香族炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルム酸、エストリオール、トリプトリド;OPN-305、OPN-401;エリトラン(E5564);TAK-242;Cpn10;NI-0101;1A6;AV411;IRS-954(DV-1079);IMO-3100;CPG-52363;CPG-52364;OPN-305;ATNC05;NI-0101;IMO-8400;ヒドロキシクロロキン;CU-CPT22;C29;オルトバニリン;SSL3タンパク質;OPN-305;5 SsnB;ビザンチン;(+)-N-フェネチルノルオキシモルホン((+)-N-phenethylnoroxymorphone);VB3323;単糖3;(+)-ナルトレキソンおよび(+)-ナロキソン;HT52;HTB2;化合物4a;CNTO2424;TH1020;INH-ODN;E6446;AT791;CPG ODN 2088;ODN TTAGGG;COV08-0064;2R9;GpGオリゴヌクレオチド;2-アミノプリン;アンレキサノクス;Bay11-7082;BX795;CH-223191;クロロキン;CLI-095;CU-CPT9A;シクロスポリンA;CTY387;ゲフィチニブ;グリベンクラミド(Glybenclamide);H-89;H-131;イソリキリチゲニン;MCC950;MRT67307;OxPAPC;パルテノリド;Pepinh-MYD;Pepinh-TRIF;ポリミキシンB;R406;RU.521;VX-765;YM201636;Z-VAD-FMK;およびAHR特異的リガンド(2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD);トリプタミン(TA);および6ホルミルインドロ[3,2b]カルバゾール(FICZ)が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、免疫抑制剤は、フィンゴリモド;2-(1’H-インドール-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または関連リガンド;トリコスタチンA;および/またはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である。
【0129】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を実証し、かつ、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。使用される用語「発明者ら(we)」、「発明者(I)」および「発明者らの(our)」は、本発明者を指す。
【0130】
実施例1
加熱冷却法によりイヌリンゲルを調製した(
図1a)。アルブミン(OVA)およびAlumをマウス腹腔内(i.p.)に注射することによりマウスを感作させ、続いてOIT処置、およびOVAタンパク質の反復経口投与を行った(
図1b)。6回目のOVA投与後、イヌリンゲルとOVAとの併用で処置したマウスは、PBSまたは遊離OVAで処置したマウスと比較して、顕著に低下した中心部の体温低下を示した(
図1c)。さらに、イヌリンゲルとOVAとの併用は、アナフィラキシー反応を効果的に減少させた(
図1d)。全体として、イヌリンゲルとOVAとの併用は、下痢による体重減少を効果的に軽減した(
図1e)。発明者らは、イヌリンゲルとOVAとの併用が、OVA投与後の空腸における、OVA特異的IgEならびに肥満細胞を実質的に減少させることも観察した(
図1f、g)。
【0131】
臨床において広く使用されている治療計画をシミュレートするために、発明者らは次に、OIT処置においてOVAの漸増投与を実施した(
図2a)。OVAグループの一部のマウスは、3回目OVA投与後に死亡したため、3回目のOVA投与後の下痢およびアナフィラキシー反応のみを記録した。OITにおける低用量のOVAを使用した結果と一致して(
図1)、イヌリンゲルと漸増用量OVAとの併用は、OVAのみと比較して、下痢の発生および重症度、アナフィラキシースコア、および体重減少を劇的に減少させた(
図2b-d)。これらの結果は、このモデルにおいてイヌリンゲルが、製剤化されていないOVAアレルゲンに関連する潜在的な有害事象を回避し得ることを示している。イヌリンゲルはまた、空腸の肥満細胞である粘膜肥満細胞プロテアーゼ-1(MMCP-1)を減少させ、かつ生存者のTh2サイトカインをTh1/Th17サイトカインへと歪めた(
図2e-g)。
【0132】
次に、回腸、脾臓、および腸間膜リンパ節(MLN)を分析し、イヌリンゲルとOVAとの併用が、回腸におけるFoxp3
+CD4
+Treg、脾臓におけるCD103
+DC細胞、並びに、脾臓およびMLNにおけるLAG3
+CD49b
+Tr1細胞のより高い頻度を誘導することを観察した(
図3)。これらの細胞は免疫寛容に関連するため、これらの結果は、イヌリンゲルがアレルゲン(または自己抗原)を送達し、免疫寛容を誘導するためのプラットフォームとして働くことを示唆している。
【0133】
最後に、コレラ毒素(CT)およびピーナッツ抽出物(PE)の経口投与を介して、ピーナッツアレルギーモデルを確立した。イヌリンゲルおよびPEを用いたOITは、無視できる程度の体温低下、およびアナフィラキシー反応の減少によって示されるように、PE投与に対して、マウスを効果的に保護した(
図4)。これらの結果は、複数のアレルギーモデルにおけるアレルゲン(または自己抗原)を送達するイヌリンゲルの有用性を実証している。
【0134】
〔材料および方法〕
イヌリンゲル、PEまたはOVAを担持したイヌリンゲルの調製及び特性。OVAに関連する試験のために、チコリー(Sigma-Aldrich)由来の495mgのイヌリンを1.35mLのPBSに溶解し、5分間加熱した。OVA(Sigma-Aldrich)を、イヌリンの冷却直後に添加した。PEに関連する試験のために、チコリー(Sigma-Aldrich)由来の300mgのイヌリンを0.9mLの脱イオン水に溶解し、5分間加熱した後、冷却直後に8mgのPEを添加した。試料を4℃で24時間保持した。ピーナッツ抽出物調製は、40gの生ピーナッツ粉末を500mLの脱イオン水に添加し、室温で2時間撹拌し、続いて15分間超音波処理した。懸濁液を3000xgで30分間遠心分離した。次いで、上清を注意深く収集し、8000xgで60分間さらに遠心分離した。タンパク質を含有する上清を等分し、凍結乾燥した。ピーナッツ抽出物中のタンパク質含量(約20%)を、BCAアッセイによって決定した。
【0135】
In vivo経口感作、免疫療法、および投与。動物は、連邦、州、および地方のガイドラインに従って飼育された。動物に対して行われた全ての作業は施設動物管理使用委員会(IACUC)に従い、承認された。ジャクソン研究所の雌C3H/HeJマウスまたはBABL/c(5~6週齢)を、通常のマウス固形飼料(PicoLab(登録商標)研究室げっ歯類飼料5L0D*)で飼育した。マウスを実験前に1週間順応させた。alum/OVAモデルについて、BABL/cマウスを、PBS(偽感作、非投薬グループ)またはOVA(50μg/投与)およびalum(1mg/投与、Sigma-Aldrich)を含む150μLのPBSで、1日目および14日目に腹腔内(i.p.)感作させた。29日目から、これらの感作マウスに、PBS、OVA(1mg/投与)、イヌリンゲル(55mg/投与)またはイヌリンゲル(55mg/投与)およびOVA(1mg/投与)を経口投与した。OVAセットの漸増投与においては、まず0.25、0.5、1、2、4、8、12、16mgの加熱OVA(70℃で2分間加熱)を用いてOVA、またはイヌリンゲルおよびOVAを経口投与し、続いて20mgの加熱OVAを6日間投与した。49日目から、250μLのPBS中の50mgのOVAを1日おきに、マウス胃内(i.g.)投与し、合計6回強制経口投与した。i.g.投与前に、マウスは4時間絶食させた。全てのi.g.投与前に体重を記録し、最後のi.g.投与の時の体温を測定した。PE/CT感作モデルのために、マウスを無作為に割りふり、マウスを、1、7、14、21、および28日目に200μLのPBS中の、PBS(偽感作、未投薬グループ)、またはPE(6mg/投与)およびコレラ毒素(アジュバントとしてのCT、10μg/投与)によりi.g.感作した。36日目から、これらのマウスに、PBS、PE、イヌリンゲル(45mg/投与)またはイヌリンゲル(45mg/投与)およびPE(1.2mg/投与)をそれぞれ週4回経口投与した。対照として、未処置マウスにはPBSを経口投与した。73日目に、マウスに125μgのPEを腹腔内注射し、直腸温度プローブを介して事前に設定した時間に体温を記録した。
【0136】
過敏症反応および下痢の評価。アナフィラキシー症状は、PEのi.p.投与(125μg/投与)またはOVAのi.g.投与(50mg/投与)の30~50分後に評価した。アナフィラキシー症状は目視によりスコア化した:0、無症状;1、鼻と頭の周りの引っ掻きと擦り;2、眼と口の周りの腫脹、毛様体の勃起、活動の減少、および/または呼吸数の増加に伴う活動の減少;3、喘鳴、努力性呼吸、および口と尾の周りのチアノーゼ;4、刺激、または振動および痙攣後の活動なし;5、死亡または30℃未満の体温。OVA試験では、i.g.投与後1時間までに大量の液状便をしたマウスを下痢陽性動物として記録した。臨床的下痢スコアは、目視観察により評価した:0、正常;1、軟性;2、下痢;3、液体;4、血性。
【0137】
OVA特異的抗体検出。OIT治療を終えた日、i.g.投与から1週間後、および最後の50mgOVAをi.g.投与してから24時間後に、それぞれ血清試料を採取した。血清中のOVA特異的抗体をELISA法により検出した。簡単に述べれば、96ウェルELISAプレートをウェル当たり10μgのOVAでコーティングしてから、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄し、1%BSA PBSバッファで2時間ブロックした。あらかじめ倍に希釈した血清試料、または標準マウス抗オボアルブミン(IgEアイソタイプ、Bio-rad、USA)を96ウェルプレート中で1時間インキュベートした。繰り返し洗浄した後、HRP結合ヤギ抗マウスIgE(1:4000希釈、SouthernBiotech)を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。プレートを完全に洗浄し、100μLのTMB溶液を各ウェルに添加した。10分後、終止溶液(1M H2SO4)を加え、マイクロプレートリーダーを介して450nmの光学密度(OD)を検出した。
【0138】
サイトカイン発現。最後のi.g投与から24時間後、様々なグループの脾臓を無菌的に得た。脾細胞を96ウェルプレート(1ウェルあたり1×106細胞)で培養し、OVA(250μg/mL)で再刺激した。72時間インキュベートした後、上清を得て、LEGENDplex(商標)MU Th Cytokine Panel(12-plex)w/ VbP V03(Biolegend、米国)を介してサイトカインをテストし、データをLEGENDplex(商標)Clound-Basedソフトウェアによって分析した。
【0139】
腸組織および脾臓のIn vivo免疫学的分析。最後のi.g投与から24時間後、脾臓、MLN、および回腸(盲腸から1cm遠位)の試料を採取した。MLNを単離し、粉砕し、70μmストレーナーを通して濾過した。脾臓を粉砕し、ACK溶解と共にインキュベートし、次いで70μmストレーナーを通して濾過した。回腸組織については、組織を1cmピースに切断し、2%FACS緩衝液、1.5mM DTT、および10mM EDTAを含むPBSを使用して、37℃で30分間攪拌しながら処理し、粘膜および上皮細胞を除去した。次いで、組織を細かく刻んで、コラゲナーゼ、DNアーゼI(100mg/ml)、5mM MgCl2、5mM CaCl2、5mM HEPES、および10%FBSと共に、37℃で45分間、一定に攪拌しながらインキュベートした。次いで、細胞懸濁液を70μmの濾過器を通して濾過した。細胞を最初に、生/死細胞固定可能蛍光色素(LIVE/DEAD fixable efluor)450で染色した。細胞を抗CD16/CD32(クローン2.4G2、BDBiosciences)と共にインキュベートし、次いで蛍光標識抗体で染色し、測定まで保存した(暗所で4℃)。
【0140】
腸肥満細胞の定量。OVAの最後のi.g.投与から24時間後、胃から7~10cm遠位の空腸組織を採取し、4%ホルマリンで固定した。前記組織を、ミシガン大学のIn-Vivo動物核を介してトルイジンブルーで染色した。マウス1匹当たり少なくとも3つの無作為な部位を分析し、トルイジンブルー陽性の染色細胞を、約3.5mm長の組織(倍率20倍)から計数した。
【0141】
〔実施例2〕
免疫寛容化薬を担持したイヌリンゲルの経口投与が、大腸炎に対して治療効果を発揮できるかどうかを検討した。急性大腸炎を誘発するために、3%DSSを含む飲料水をマウスに6日間与えた。0日目から、マウスに、PBS、Ahrリガンド、インドール-3-アルデヒド(IALD)、またはIALDを配合したイヌリンゲル(イヌリンゲルとIALDとの併用)のいずれかを強制経口投与した(
図5A)。イヌリンゲルとIALDとの併用による治療は、重度の体重減少および結腸長の短縮からマウスを保護した(
図5B、C)。対照的に、PBSまたはIALDで処置したマウスは、有意な体重減少および結腸長の短縮を示した。特に、イヌリンゲルとIALDとを併用して処置したマウスは、最も高い盲腸の重量を有していた。これは、イヌリンゲルの微生物叢正常化作用、およびAhrリガンドの免疫調節作用に起因し得る(K. Han, J. Nam, J. Xu, X. Sun, X. Huang, O. Animasahun, A. Achreja, J.H. Jeon, B. Pursley, N. Kamada, G.Y. Chen, D. Nagrath, J.J. Moon, Generation of systemic antitumour immunity via the in situ modulation of the gut microbiome by an orally administered inulin gel, Nature Biomedical Engineering, (2021); B. Stockinger, K. Shah, E. Wincent, AHR in the intestinal microenvironment: safeguarding barrier function, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 18 (2021) 559-570参照)。これらの結果は、イヌリンゲルは、免疫寛容化剤を送達するために使用することができ、大腸炎および他の炎症性腸疾患を改善することができることを示す。
【0142】
方法:6週齢雌C57BL/6マウスを、試験開始前に2週間順応させた。大腸炎を誘発するために、3%DSS(40kDa; Alfa Aesar)を含む飲料水をマウスに6日間与え、その後、通常の水を与えた。イヌリンゲルおよびIALD、IALD、またはPBSを、所定の日に、マウスに経口強制投与した。イヌリンゲルとIALDとの併用は、チコリー(Sigma-Aldrich)由来のイヌリン300mgを0.9mlの脱イオン水および0.1mlのIALD溶液(50mg/ml、DMSO)に溶解することによって調製した。イヌリン溶液をボルテックスによりIALD溶液と完全に混合し、70℃で5分間加熱した。製剤をゲル化させるために、室温で12時間保持した。IALDは、イヌリンを添加せずに同様に調製した。体重を実験期間の間毎日測定した。9日目に、マウスを屠殺し、結腸全体を切除した。結腸の長さおよび盲腸の重量を測定した。
【0143】
〔参照による組み込み〕
本明細書で言及される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0144】
〔均等物〕
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよい。それ故、上述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するものよりもむしろ、あらゆる点で例示的なものであると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の明細書よりはむしろ添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る全ての変更がその中に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【
図1】
図1A~G:イヌリンゲルとOVAの併用療法は、OVAアレルギーを防ぐ。a.イヌリンヒドロゲルの画像。b.治療レジメン。BABL/cマウスを0日目および14日目にOVA/Alumで感作させた。29日目から、マウスにPBS、OVA(1回の投与ごとに1mg)、およびイヌリンゲル(1回の投与ごとに55mg)+OVA(1回の投与ごとに1mg)をそれぞれ経口強制投与した。49日目から、マウスに、OVA(50mg/投与)を別の日に6回経口投与した。c.6回目の投与時の体温低下。d.投与中のアナフィラキシー症状スコア。e.1回目から6回目までの体重低下。f.それぞれ、48日目、55日目、61日目の血清中のOVA特異的IgE濃度。g.肥満細胞の数、および空腸からのトルイジンブルー染色組織切片から得られた代表的な顕微鏡像。矢印は肥満細胞を示す。データは、平均±s.e.m.、
*P<0.01、
**P<0.01、
****P<0.0001で表される。データは、二元配置ANOVA(c-e)または一元配置ANOVA(f,h)、または独立スチューデントt検定(g)を用いて分析した。cにおける#は、イヌリンゲル/OVA対OVAの間の統計的有意差を示す。
【
図2】
図2A~G:イヌリンゲルとOVA(漸増投与)との併用療法が、OVAアレルギーを防ぐ。a.治療レジメン。BABL/cマウスをOVA/Alumで2回感作させた。29日目から、各々、OVA(漸増投与する方法)およびイヌリンゲル(55mg/投与)+OVA(漸増投与する方法)を経口強制投与した。49日目から、マウスに、OVA(50mg/投与)を別の日に6回経口投与した。b.下痢の発症およびスコア。c.3回目の投与前後の体重減少。d.アナフィラキシー症状スコア。e.MMCP-1。f.肥満細胞数、および62日目の空腸からのトルイジンブルー染色組織切片の代表的な顕微鏡画像。矢印は肥満細胞を示す。g.脾細胞は、62日目に250μg/mLのOVAで再刺激した。72時間のインキュベーション後、サイトカイン分析のために上清を回収した。データは、平均±s.e.m.
*P<0.01、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001で表される。データは、二元配置ANOVA(b,d)または独立スチューデントt検定(c,e-g)を用いて分析した。
【
図3】
図3A~C:イヌリンゲルOVA併用療法は、OVAアレルギーを防ぐ。BALB/cマウスを
図1bに示すように処置した。(a)回腸におけるFoxp3
+CD4
+Tregの数、および代表的なフローサイトメトリープロット。b.脾臓におけるCD103
+DC細胞の数。c.61日目の脾臓および腸間膜リンパ節におけるLAG3
+CD49b
+Tr1細胞の頻度を示す。データは平均±s.e.m.、
*P<0.01で表される。データは、二元配置ANOVAを用いて分析した。
【
図4】
図4A~D:イヌリンゲルとPEとの併用療法は、ピーナッツアレルギーを防ぐ。a.治療レジメン。C3H/HeJマウスを通常の固形飼料で飼育し、PE/CTで4週間感作させた。36日目から、マウスにPBS、PE(1回の投与ごとに1.2mg)、イヌリンゲル(1回の投与ごとに45mg)、およびイヌリンゲル(1回の投与ごとに45mg)+PE(1回の投与ごとに1.2mg)をそれぞれ強制経口投与した。マウスは、週4回、4週間にわたってOIT処置を受けた。続いて、73日目にPE(125μg/投与)をマウスの腹腔内に注入した。b~d.平均体温低下(b)、個々の体温低下(c)およびアナフィラキシー症状スコア(d)。データは、平均±s.e.m.
*P<0.01,
**P<0.01,
****P<0.0001で表される。データは、Bonferroniの多重比較検定(d)を用いて、二元配置分散分析(b)または一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて分析した。
【
図5】
図5A~E:C57BL/6マウスに3%DSSを含む水を6日間与えた。0日から7日まで、マウスにPBS、1mgの遊離IALD、または60mgのイヌリンゲル内に混合した1mgのIALDを経口投与した。B.9日間の各群の毎日の体重変化。C~E.9日目に、動物を安楽死させ、結腸を採取し(C)、結腸の長さ(D)および盲腸重量(E)を測定した。
【国際調査報告】