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特表2023-542983電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料
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  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図1
  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図2
  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図3
  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図4
  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図5
  • 特表-電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための低い熱感度を有する複合材料
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1675 20190101AFI20231004BHJP
【FI】
G02F1/1675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518770
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2020053188
(87)【国際公開番号】W WO2022071916
(87)【国際公開日】2022-04-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アムンドソン, カール レイモンド
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA05
2K101BD61
2K101BD83
2K101BD86
2K101EB61
2K101EB71
2K101EG27
2K101EG43
2K101EG45
2K101EG52
2K101EH04
2K101EH36
2K101EH61
2K101EJ21
(57)【要約】
電気光学ディスプレイは、電気光学材料の層と、少なくとも1つの導体と、電気光学材料の層と少なくとも1つの導体との間の接着材料とを含む。電気光学材料および接着材料のうちの少なくとも1つは、ポリマー相および充填剤相を含む複合材料を含み、充填剤相は、0.5×10S/mより大きいかまたはそれに等しい伝導率を有し、ポリマーに対する充填剤の熱膨張係数の比は、0.5未満であるかまたはそれに等しく、複合材料内の充填剤相の濃度は、複合材料の伝導率遷移点に対応する充填剤濃度より大きいかまたはそれに等しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
電気光学材料の層と、
少なくとも1つの導体と、
前記電気光学材料の層と前記少なくとも1つの導体との間の接着材料と
を備え、
前記電気光学材料および前記接着材料のうちの少なくとも1つは、ポリマー相および充填剤相を備える複合材料を含み、前記充填剤相は、0.5×10S/mより大きいかまたはそれに等しい伝導率を有し、前記ポリマーに対する前記充填剤の熱膨張係数の比は、0.5未満であるかまたはそれに等しく、
前記複合材料内の前記充填剤相の濃度は、前記複合材料の伝導率遷移点に対応する充填剤濃度より大きいかまたはそれに等しい、
電気光学ディスプレイ。
【請求項2】
前記複合材料は、前記ポリマー相単独の温度に伴う伝導率の変化の60%未満であるかまたはそれに等しい温度に伴う伝導率の分率変化を示す、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項3】
前記充填剤相は、10×10S/mより大きいかまたはそれに等しい伝導率を有する、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項4】
前記充填剤相は、20×10S/mより大きいかまたはそれに等しい伝導率を有する、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項5】
前記ポリマーに対する前記充填剤の熱膨張係数の比は、0.3未満であるかまたはそれに等しい、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項6】
前記ポリマーに対する前記充填剤の熱膨張係数の比は、0.1未満であるかまたはそれに等しい、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項7】
前記電気光学材料は、分散液の液滴を含む結合剤を含む、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項8】
前記液滴は、マイクロカプセル内にカプセル化されている、請求項7に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項9】
前記結合剤は、前記ポリマー相および前記充填剤相を備える、請求項7に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項10】
前記分散液は、溶媒中に分散している荷電粒子を含む、請求項7に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項11】
前記荷電粒子は、複数の着色粒子を含む、請求項10に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項12】
前記電気光学材料は、分散流体内にカプセル化されている複数の複色粒子を含む結合剤を含む、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項13】
前記結合剤は、前記ポリマー相および前記充填剤相を備える、請求項12に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項14】
前記複色粒子は、二色である、請求項12に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項15】
前記電気光学材料は、複数のマイクロセルを有するポリマーフィルムを含む、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項16】
前記ポリマーフィルムは、前記ポリマー相および前記充填剤相を備える、請求項15に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項17】
前記マイクロセルは、溶媒中に分散している荷電粒子の分散液を含む、請求項15に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項18】
前記荷電粒子は、複数の着色粒子を含む、請求項17に記載の電気光学ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、電気光学ディスプレイおよびそれにおける使用のための材料、特に、複合材料に関する。本発明は、電気的および他の性質を伴う接着剤または結合剤組成物のいずれかに含まれる複合材料に部分的に関して、その電気的および他の性質は、電気光学ディスプレイにおける使用に関してそれらを特に好適なものにする。
【背景技術】
【0002】
電気光学ディスプレイは、電気光学材料の層を備える。用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用される場合、本明細書では、結像技術分野におけるその従来の意味において、少なくとも1つの光学性質において異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すように使用され、材料は、材料への電場の印加によってその第1の表示状態からその第2の表示状態へと変化させられる。光学性質は、典型的には、人間の眼に知覚可能な色であるが、これは、光学透過率、反射率、ルミネッセンスであってもよく、または、機械読取を意図されているディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射の変化の意味における擬似色等の別の光学性質であってもよい。
【0003】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外部表面を有するという意味において固体であるが、材料は、内部液体または気体充填空間を有し得、多くの場合、有する。固体電気光学材料を使用したそのようなディスプレイは、以降、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転二色部材ディスプレイ、カプセル化電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化液晶ディスプレイを含む。
【0004】
用語「双安定」および「双安定性」は、本明細書では、当技術分野におけるそれらの従来の意味において、少なくとも1つの光学性質において異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備える、その第1または第2の表示状態のいずれかを呈するための有限持続時間のアドレッシングパルスを用いて任意の所与の要素が駆動された後、アドレッシングパルスが終了した後に、表示要素の状態を変化させるために要求されたアドレッシングパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が持続するようなディスプレイを指すように使用される。米国特許第7,170,670号(特許文献1)では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイはそれらの極端な黒色および白色状態においてだけではなくそれらの中間グレー状態においても安定であり、同じことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが、示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定ではなく「複安定」と呼ばれるが、本明細書では、便宜上、用語「双安定」が、双安定および複安定ディスプレイの両方を網羅するように使用され得る。
【0005】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されているような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、上記に言及された特許のうちのいくつかでは、回転部材が球状ではないため、用語「回転二色部材」が、より正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、異なる光学特性を伴う2つまたはそれより多くの部分と、内部双極子とを有する多数の小さい物体(典型的には、球形または円筒形)を使用する。これらの物体は、マトリックス内の液体が充填された空胞内に懸濁されており、空胞は、物体が自由に回転するように液体を充填されている。ディスプレイの外観は、それに電場を印加し、それによって物体を種々の位置に回転させ、ビュー表面を通して見られる物体の部分を変えることによって変更される。このタイプの電気光学媒体は、典型的には、双安定である。
【0006】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体(例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成された電極と、電極に取り付けられた可逆的色変化が可能な複数の染色分子とを備える、ナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体)を使用する。例えば、O’Regan, B., et al, Nature1991,353,737、およびWood, D., Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照されたい。Bach, U., et al, Adv. Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号にも説明されている。このタイプの媒体も、典型的には、双安定である。
【0007】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発された、Hayes, R.A., et al,「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383-385(2003)に説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイは双安定に作製され得ることが、示されている。
【0008】
長年にわたって、精力的な研究および開発の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、ならびに低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画像品質に伴う問題が、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向にあり、これらのディスプレイに関する不適正な使用可能寿命をもたらす。
【0009】
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、気体流体を使用して生産されることができる(例えば、Kitamura, T., et al. 「Electrical toner movement for electronic paper-like display」, IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi, Y., et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4を参照)。米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのような気体ベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直平面において配置されている看板において、粒子沈降を許容する向きにおいて媒体が使用されるとき、そのような沈降に起因する、液体ベースの電気泳動媒体と同一のタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速な沈降を許容する流体の粘度と比較したときの気体懸濁流体のより低い粘度のため、液体ベースの電気泳動媒体より気体ベースの電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0010】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California, LLC、および関連する企業に譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化およびマイクロセル電気泳動ならびに他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。カプセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々自体が、電気泳動で移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を囲むカプセル壁とを備える。典型的には、カプセル自体が、ポリマー結合剤内に保持され、2つの電極の間に位置付けられたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されるのではなく、キャリア媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に留められる。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号を参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号を参照)
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号を参照)
(d)マイクロセルに充填し、それを封止するための方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号を参照)
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照)
(f)ディスプレイにおいて使用されるバックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびに方法(例えば、米国特許第D485,294号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,252,564号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,376,828号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,506,438号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,535,197号、第6,545,291号、第6,639,578号、第6,657,772号、第6,664,944号、第6,680,725号、第6,683,333号、第6,724,519号、第6,750,473号、第6,816,147号、第6,819,471号、第6,825,068号、第6,831,769号、第6,842,167号、第6,842,279号、第6,842,657号、第6,865,010号、第6,873,452号、第6,909,532号、第6,967,640号、第6,980,196号、第7,012,735号、第7,030,412号、第7,075,703号、第7,106,296号、第7,110,163号、第7,116,318号、第7,148,128号、第7,167,155号、第7,173,752号、第7,176,880号、第7,190,008号、第7,206,119号、第7,223,672号、第7,230,751号、第7,256,766号、第7,259,744号、第7,280,094号、第7,301,693号、第7,304,780号、第7,327,511号、第7,347,957号、第7,349,148号、第7,352,353号、第7,365,394号、第7,365,733号、第7,382,363号、第7,388,572号、第7,401,758号、第7,442,587号、第7,492,497号、第7,535,624号、第7,551,346号、第7,554,712号、第7,583,427号、第7,598,173号、第7,605,799号、第7,636,191号、第7,649,674号、第7,667,886号、第7,672,040号、第7,688,497号、第7,733,335号、第7,785,988号、第7,830,592号、第7,843,626号、第7,859,637号、第7,880,958号、第7,893,435号、第7,898,717号、第7,905,977号、第7,957,053号、第7,986,450号、第8,009,344号、第8,027,081号、第8,049,947号、第8,072,675号、第8,077,141号、第8,089,453号、第8,120,836号、第8,159,636号、第8,208,193号、第8,237,892号、第8,238,021号、第8,362,488号、第8,373,211号、第8,389,381号、第8,395,836号、第8,437,069号、第8,441,414号、第8,456,589号、第8,498,042号、第8,514,168号、第8,547,628号、第8,576,162号、第8,610,988号、第8,714,780号、第8,728,266号、第8,743,077号、第8,754,859号、第8,797,258号、第8,797,633号、第8,797,636号、第8,830,560号、第8,891,155号、第8,969,886号、第9,147,364号、第9,025,234号、第9,025,238号、第9,030,374号、第9,140,952号、第9,152,003号、第9,152,004号、第9,201,279号、第9,223,164号、第9,285,648号、および第9,310,661号、ならびに米国特許出願公開第2002/0060321号、第2004/0008179号、第2004/0085619号、第2004/0105036号、第2004/0112525号、第2005/0122306号、第2005/0122563号、第2006/0215106号、第2006/0255322号、第2007/0052757号、第2007/0097489号、第2007/0109219号、第2008/0061300号、第2008/0149271号、第2009/0122389号、第2009/0315044号、第2010/0177396号、第2011/0140744号、第2011/0187683号、第2011/0187689号、第2011/0292319号、第2013/0250397号、第2013/0278900号、第2014/0078024号、第2014/0139501号、第2014/0192000号、第2014/0210701号、第2014/0300837号、第2014/0368753号、第2014/0376164号、第2015/0171112号、第2015/0205178号、第2015/0226986号、第2015/0227018号、第2015/0228666号、第2015/0261057号、第2015/0356927号、第2015/0378235号、第2016/077375号、第2016/0103380号、および第2016/0187759号、ならびに国際出願公開第WO00/38000号、欧州特許第1,099,207B1号、および1,145,072B1号を参照)
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号を参照)
(h)ディスプレイを駆動するための方法(例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号を参照)
(i)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号を参照)
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に説明されているような非電気泳動ディスプレイ、ならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用(例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号を参照)
【0011】
前述の特許および出願のうちの多くは、カプセル化電気泳動媒体中の離散マイクロカプセルを囲む壁が連続相によって置き換えられ得、それによって、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の離散液滴とポリマー材料の連続相とを備える、いわゆる「ポリマー分散電気泳動ディスプレイ」を生産することと、いかなる離散カプセル膜も各個々の液滴と関連付けられない場合でも、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散液滴がカプセルまたはマイクロカプセルと見做され得ることとを認識している。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的に関して、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見做される。
【0012】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透過性を有し(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通した可視光の透過を大幅に遮断するため)、反射モードにおいて動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透過性を有し、1つが光透過性である、いわゆる「シャッター」モードにおいて動作するように作製されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似しているが電場強度の変動に依拠する誘電泳動ディスプレイが、類似のモードにおいて動作することができる(米国特許第4,418,346号を参照)。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッターモードにおいて動作することが可能であり得る。シャッターモードにおいて動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得、そのような構造において、ディスプレイのビュー表面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッターモードにおいて動作し、ビュー表面からより遠くにある第2の層を暴露させること、または隠すことを行う。
【0013】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに苛まれることがなく、多種多様な可撓性および剛性基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する(単語「印刷」の使用は、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング、ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照)、ならびに他の類似の技法を含む全ての形態の印刷およびコーティングを含むことを意図されている)。したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性を有し得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷されることができるため、ディスプレイ自体は、安価に作製されることができる。
【0014】
電気光学デバイスは、通常、電気泳動材料層と、電気泳動材料の反対側上に配置されている、少なくとも2つの他の層とを備え、これらの2つの層のうちの一方は、電極層である。殆どのそのようなディスプレイでは、両方の層が、電極層であり、電極層のうちの一方または両方は、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化されている。例えば、一方の電極層は、伸長行電極へとパターン化され得、他方は、行電極に対して直角に延設されている伸長列電極へとパターン化され得、ピクセルは、行電極および列電極の交点によって画定される。代替として、およびより一般的には、一方の電極層は、単一連続電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極のマトリックスへとパターン化され、それらの各々が、ディスプレイの1つのピクセルを画定する。ディスプレイと別個のスタイラス、印刷ヘッド、または類似の移動可能電極との使用を意図されている別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気泳動層に隣接する層のうちの1つのみが、電極を備え、電気泳動層の反対側の層は、典型的には、移動可能電極が電気泳動層に損傷を与えることを防止することを意図されている保護層である。
【0015】
3層電気泳動ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層動作を伴う。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のうちのいくつかでは、カプセル化電気泳動ディスプレイを製造するためのプロセスが、説明されており、結合剤内にカプセルを備えるカプセル化電気泳動媒体が、プラスチックフィルム上に酸化インジウムスズ(ITO)または類似伝導性コーティング(最終的なディスプレイの1つの電極として作用する)を備える可撓性基板上にコーティングされ、カプセル/結合剤コーティングが、基板にしっかりと接着された電気泳動媒体のコヒーレント層を形成するように乾燥させられる。別個に、ピクセル電極を駆動回路網に接続するための、ピクセル電極のアレイおよび導体の適切な配列を含むバックプレーンが、用意される。最終的なディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層をその上に有する基板は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される(それにわたってスタイラスまたは他の移動可能電極が摺動し得るプラスチックフィルム等の単純な保護層にバックプレーンを置き換えることによって、非常に類似のプロセスが、スタイラスまたは類似の移動可能電極とともに使用可能である電気泳動ディスプレイを用意するために使用されることができる)。そのようなプロセスの1つの好ましい形態では、バックプレーン自体が、可撓性を有し、プラスチックフィルムまたは他の可撓性基板上にピクセル電極および導体を印刷することによって用意される。このプロセスによるディスプレイの大量生産のための明白な積層技法は、積層接着剤を使用したロール積層である。
【0016】
前述のフロントプレーンラミネートまたは二重剥離フィルムを使用して製造された電気光学ディスプレイは、通常、電気光学層自体とバックプレーンとの間に積層接着剤層を有し、この積層接着剤層の存在は、ディスプレイの電気光学特性に影響を及ぼす。特に、積層接着剤層の導電率は、低温性能およびディスプレイの分解能の両方に影響を及ぼす。ディスプレイの低温性能は、例えば、前述の米国特許第7,012,735号および第7,173,752号に説明されているようなテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩または他の材料を層にドープすることによって、積層接着剤層の伝導率を増加させることによって向上させられ得る(経験的に見出されている)。しかしながら、この様式において積層接着剤層の伝導率を増加させることは、ピクセルブルーミング(ピクセル電極における電圧の変化に応答して光学状態を変更する電気光学層の面積がピクセル電極自体より大きくなる現象)を増加させる傾向にあり、このブルーミングは、ディスプレイの分解能を低減させる傾向にある。故に、このタイプのディスプレイは、明らかに本質的に、低温性能とディスプレイ分解能との間の妥協を要求し、実践では、通常、低温性能が、犠牲にされる。さらに、積層接着剤の伝導率は温度依存性を有するため、ディスプレイが容認可能に機能することが可能である温度範囲は、狭い範囲の温度に限定され得る。これは、ディスプレイの潜在的な用途を広範な温度スイングを被らない環境に限定する。
【0017】
したがって、より広範囲の周囲温度にわたって向上した性能を伴う電気泳動ディスプレイを提供する向上した積層接着剤組成物および他の複合材料に関する必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7170670号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の概要)
本発明の第1の実施形態によると、電気光学材料の層と、少なくとも1つの導体と、電気光学材料の層と少なくとも1つの導体との間の接着材料とを備える電気光学ディスプレイが、提供される。電気光学材料および接着材料のうちの少なくとも1つは、充填剤相の体積分率が約浸透閾値であるようにポリマー相および充填剤相を備える複合材料を含む。さらに、充填剤相は、0.5×10S/mより大きいかまたはそれに等しい伝導率を有し得、ポリマーに対する充填剤の熱膨張係数の比は、0.5未満であるかまたはそれに等しくあり得、複合材料内の充填剤相の濃度は、複合材料の伝導率遷移点に対応する充填剤濃度より大きいかまたはそれに等しくあり得る。
【0020】
本発明の種々の実施形態による複合材料は、粒子ベースの電気泳動ディスプレイに関して非常に好適である。しかしながら、複合材料は、ポリマー分散液晶を利用したディスプレイ等の他のタイプの電気光学ディスプレイにおいても使用され得る。
【0021】
本発明のこれらのおよび他の局面は、以下の説明の観点から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面は、限定としてではなく単なる実施例として、本概念による1つまたはそれより多くの実装を描写している。図において、同様の参照番号は、同一のまたは類似の要素を指す。
【0023】
図1図1は、本発明のフロントプレーンラミネートを通した概略断面図である。
【0024】
図2図2は、本発明の二重剥離フィルムを通した概略断面図である。
【0025】
図3図3Aおよび図3Bは、本発明のプロセスの2つの連続段階における接着剤層を通した概略断面図である。
【0026】
図4図4は、本発明のプロセスを行うために使用され得る装置の概略側面立面図である。
【0027】
図5図5は、ポリマー複合体に関する体積分率対伝導率のプロットである。
【0028】
図6図6は、線y1および線y2を伴う図5のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
以下の詳細な説明では、関連する教示の徹底的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が、実施例として述べられる。しかしながら、本教示が、そのような詳細を伴わずに実践され得ることは、当業者には明白であるべきである。
【0030】
電気光学ディスプレイを製造するための典型的なプロセスでは、2つのサブアセンブリが最初に製造され、1つのサブアセンブリは、電気光学層と、第1の基板とを備え、第2のサブアセンブリは、第2の基板を備え、サブアセンブリのうちの少なくとも1つ、典型的には、両方が、電極を備える。また、アクティブマトリックスディスプレイを製造するために使用されるそのようなプロセスの1つの一般的な形態では、1つのサブアセンブリが基板と、複数のピクセル、典型的には、ディスプレイ全体にわたって延在する単一の連続(「共通」)電極と、電気光学層とを備える一方、(通常、「バックプレーン」と称される)第2のアセンブリは、ディスプレイの個々のピクセルを画定するピクセル電極のマトリックスと、非線形デバイス(典型的には、薄膜トランジスタ)と、ディスプレイを駆動するために必要とされる電位をピクセル電極上に生み出すために(すなわち、種々のピクセルを必要な光学状態に切り替え、ディスプレイ上に所望の画像を提供するために)使用される他の回路網とを保有する基板を備える。積層接着剤は、第1のサブアセンブリと第2のサブアセンブリとの間に提供され、最終的なディスプレイを形成するようにそれらをともに接着する。
【0031】
本発明のプロセスにおいて使用される1つのサブアセンブリ(フロントプレーンラミネートまたはFPL)を通した概略断面図である付随の図面の図1を参照して、例証としてのみであるが、本発明の好ましい積層プロセスが、ここで説明され、このサブアセンブリは、基板と、伝導層と、電気光学層と、接着剤層とを備え、サブアセンブリは、このサブアセンブリが第2のサブアセンブリに積層される前のプロセスの中間段階において図示されている。
【0032】
図1に示されている(概して、100として指定される)フロントプレーンラミネートは、光透過性基板110と、光透過性電極層120(これは、最終的な電気光学ディスプレイにおける電気光学層からの積層接着剤の反対側にある電極ではないことに留意されたい)と、電気光学層130と、積層接着剤層180と、剥離シート190とを備え、剥離シートは、バックプレーンに対するFPL100の積層の準備として、接着剤層180から除去されるプロセスにおいて図示されている。
【0033】
基板110は、典型的には、7ミル(177μm)ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)シート等の透明なプラスチックフィルムである。最終的なディスプレイのビュー表面を形成する基板110の(図1の)下側表面は、1つまたはそれより多くの付加的な層(図示せず)を有し得、例えば、紫外線放射線を吸収するための保護層と、最終的なディスプレイへの酸素または水分の侵入を防止するための障壁層と、ディスプレイの光学性質を向上させるための反射防止コーティングとを有し得る。薄い光透過性導電層120、好ましくは、ITOが、基板110の上側表面の上にコーティングされており、これは、最終的なディスプレイ内の共通フロント電極として作用する。ITOでコーティングされたPETフィルムは、市販されている。
【0034】
電気光学層130は、典型的には、スロットコーティングによって、伝導層120上に堆積させられ得、2つの層は、電気的に接触している。図1に示されている電気光学層130は、カプセル化電気泳動媒体であり、マイクロカプセル140を備え、それらの各々が、炭化水素ベースの流体165中に負荷電白色粒子150および正荷電黒色粒子160を備える。マイクロカプセル140は、ポリマー結合剤170内に留められて保持される。電気光学層130を横切る電場の印加時、バックプレーン内の隣接するピクセル電極に対して伝導層120が正であるか、または負であるかに応じて、基板110を通してディスプレイを目視する観察者にとって電気光学層130が白色または黒色に見えるように、白色粒子150が、正極に移動し、黒色粒子160が、負極に移動する。当業者によって理解されるように、荷電粒子(150、160)は、白色および黒色に限定されず、任意の色であり得る。
【0035】
FPL100は、望ましくは、便宜上、スロットコーティングによって、液体形態における積層接着剤180を剥離シート190上にコーティングし、接着剤を乾燥(または別様に硬化)させ、固体層を形成し、次いで、伝導層120を支える基板110上に先にコーティングされている電気光学層130に接着剤および剥離シートを積層することによって用意され、この積層は、便宜上、熱間圧延積層を使用して達成され得る(代替として、あまり望ましくないが、積層接着剤が、電気光学層130にわたって塗布され、剥離シート190で被覆される前に、そこで乾燥または別様に硬化させられてもよい)。剥離シート190は、便宜上、7ミル(177μm)のフィルムであり、使用される電気光学媒体の性質に応じて、このフィルムを剥離剤で、例えば、シリコーンでコーティングすることが望ましくあり得る。図1に図示されているように、剥離シート190は、FPL100がバックプレーン(図示せず)に積層され、最終的なディスプレイを形成する前に、積層接着剤180から剥離または別様に除去される。
【0036】
フロントプレーンラミネート100は、本発明の全エリアにおいて使用され得る一般的な形態において図1に図示されている。FPL100内に組み込まれる接着剤層180は、下記により詳細に説明されるように、低い熱感度を有する複合材料を備え得る。
【0037】
フロントプレーンラミネートと、その用意および使用のためのプロセスとに関するさらなる詳細が、前述の米国特許第6,982,178号、および米国特許出願公開第2009/0225397号に説明されている(これらの内容は、参照によってそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0038】
本発明の別の実施形態による二重剥離シート(概して、300として指定される)が、付随の図面の図2に示されている。二重剥離シート300は、電気光学材料の中心層302、具体的には、図2におけるポリマー結合剤306内にカプセル304を備える層を備える。カプセル304は、図1を参照して上記に説明されたものに類似し得る。シート300は、第1の接着剤層308と、第1の接着剤層308を被覆している第1の剥離シート310と、第1の接着剤層308からの層302の反対側に配置されている第2の接着剤層312と、第2の接着剤層312を被覆している第2の剥離シート314とをさらに備える。
【0039】
シート300は、最初に、剥離シート310を接着剤の層でコーティングすることによって形成され、接着剤は、次いで、第1の接着剤層308を形成するように乾燥または別様に硬化させられる。次に、カプセル304と結合剤306との混合物が、第1の接着剤層308上に印刷されるか、または別様に堆積させられ、次いで、混合物は、コヒーレント層302を形成するように乾燥または硬化させられる。最後に、接着剤の層は、層302にわたって堆積させられ、第2の接着剤層312を形成するように乾燥または硬化させられ、第2の剥離シート314によって被覆される。
【0040】
シート300を形成するために使用される動作のこのシーケンスが連続生産に関して十分に適合されること、ならびに、材料およびプロセスの条件の慎重な選定によって、従来のロールツーロールコーティング装置を通した単一通過において動作のシーケンス全体を行うことが可能であり得ることは、コーティング技術における当業者にとって、明白であろう。
【0041】
フィルム300等の二重剥離フィルムを使用したディスプレイを組み立てるために、(典型的には、その上に電気光学材料がコーティングされた)1枚の剥離シートが、剥離され、二重剥離フィルムの残りの層が、例えば、熱、放射線、または化学ベースの積層プロセスを使用してフロント基板に取り付けられる。典型的には、フロント基板は、最終的なディスプレイのフロント電極を形成する伝導層を含む。フロント基板は、伝導層を機械的損傷から保護することを意図されている紫外線フィルタまたは保護層等の付加的な層を含み得る。その後、他方の剥離シートが、剥離され、それによって、電気光学材料コーティングアセンブリをバックプレーンに取り付けるために使用される第2の接着剤層を露出させる。再び、熱、放射線、または化学ベースの積層プロセスが、使用され得る。説明された2つの積層の順序は、本質的に恣意的であり、逆にされ得るが、実践では、最初に、二重剥離フィルムをフロント基板に積層し、その後、結果として生じるフロントサブアセンブリをバックプレーンに積層することが、殆どの場合、より便利である。
【0042】
二重剥離フィルムと、その用意および使用のためのプロセスとに関するさらなる詳細が、米国特許出願公開第2004/0155857号に開示されている(その内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)。
【0043】
接着剤層308および312のいずれかまたは両方は、ポリマー相および充填剤相を含む複合材料を含んでもよい。充填剤相の濃度は、表示動作に関連する温度範囲にわたって複合システムがその伝導率のより低い温度依存性を呈するように選択される。
【0044】
複合システムのポリマー相に添加される充填剤相は、好ましくは、ポリマー相より大きい伝導率を有し、ポリマー相により多くの充填剤を添加することは、複合体の伝導率を増加させる。さらに、充填剤は、ポリマー複合体のものより大幅に小さい熱膨張係数(CTE)を有することが好ましい。例えば、ポリマー相に関するポリウレタンと、アルミニウムまたはニッケル等の金属針または薄片とを含む複合材料が、提供され得る。ポリウレタンのCTEは、60~200ppm/Kの範囲であり得る。アルミニウムのCTEは、約22ppm/Kである。ニッケルは、約13ppm/KのCTEを有する。ポリマー相のCTEに対する充填剤相のCTEの比は、好ましくは、0.5またはそれ未満、より好ましくは、0.3またはそれ未満、最も好ましくは、0.1またはそれ未満である。
【0045】
複合体の伝導率に対する温度影響を抑えるために、充填剤は、約浸透閾値量において複合体に添加される。明細書および特許請求の範囲の全体を通して、本明細書で使用される場合、「浸透閾値」は、ポリマー相および充填剤相を含む複合材料内の充填剤の体積分率を意味し、これを下回る複合材料は、その対数が充填剤相よりポリマー相の伝導率の対数に近い伝導率を呈し、これを上回る複合材料は、その対数がポリマー相より充填剤相の伝導率の対数に近い伝導率を呈する。
【0046】
ポリマーマトリックス内の充填剤の体積分率が約浸透閾値であることを確実にすることによって、複合体の伝導率は、大きい温度スイングにもかかわらず抑制される。図5を参照すると、ポリマー複合体の伝導率(y軸)対ポリマー複合体内の充填剤の体積分率(x軸)の代表的なプロットが、提供されている。プロット上の点400が、浸透閾値である。
【0047】
複合体内のポリマー相の熱膨張係数が充填剤の熱膨張係数よりはるかに大きい場合、複合材料内の充填剤相の体積分率は、温度の上昇とともに減少する。例えば、複合体内の充填剤の開始体積分率φが約浸透閾値(400)である場合、複合体の伝導率は、充填剤濃度が低下するため、温度の上昇とともに大幅に減少する。これは、未充填ポリマーマトリックスの高くなった温度における伝導の自然な増加傾向に対抗することができる。温度が冷えると、ポリマー相は、充填剤より収縮し、充填剤の体積分率を増加させる。故に、複合体内の充填剤の開始体積分率が約浸透閾値(400)である場合、複合材料の伝導率は、温度の低下とともに増加する。
【0048】
したがって、ポリマー相より大幅に小さい熱膨張係数を有する充填剤を複合材料に組み込み、複合体に約浸透閾値の充填剤を装填することによって、未充填ポリマー材料によって表される温度効果に伴う伝導率の分率変化を低減させ得る。換言すると、温度の上昇とともに導電率が増加し、温度の下降とともに伝導率が減少する傾向が、低減される。本発明の種々の実施形態による複合材料は、着目温度範囲にわたる導電率の分率変化において、未充填ポリマーを使用することから見出され得るものよりはるかに少ない変動を有する材料を提供し得る。
【0049】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して、本明細書で使用される場合、語句「約浸透閾値」は、伝導率遷移点における、またはそれを上回る充填剤濃度(体積パーセント)を意味する。伝導率遷移点は、図5および図6に提供されているプロット等の複合材料の伝導率曲線から計算され得る。図6を参照すると、第1の線y1は、ゼロの充填剤濃度における複合材料に対する伝導率曲線上の点を通して描かれ、線y1は、ゼロの充填剤濃度における伝導率曲線の傾きに等しい傾きm1を有する。第2の線y2は、浸透閾値に対応する伝導率曲線上の点を通して描かれ、線y2は、浸透閾値における伝導率曲線の傾きに等しい傾きm2を有する。2本の線、すなわち、y1およびy2の図6上の交点402は、伝導率遷移点を提供する。伝導率遷移点における充填剤濃度は、例えば、y1およびy2に関して、下記の式(1)および式(2)を使用して算出され得る。
y1=m1*(φ)+b1 式1
y2=m2*(φ)+b2 式2
伝導率遷移点において、y1は、y2に等しく、したがって、
m1*(φ)+b1=m2*(φ)+b2
「φ」について解くと、式(3)が、提供される。
φ=(b2-b1)/(m1-m2) 式3
したがって、伝導率遷移点における充填剤濃度は、y1とy2との間の傾きの差に対するy2とy1との間のy切片の差の比に等しい。
【0050】
本発明の種々の実施形態において使用される複合材料は、温度に伴う伝導率の変化、すなわち、(1/s)*ds/dTを呈し、これは、充填されないポリマーの温度に伴う伝導率の変化の60%未満であるかまたはそれに等しく、より好ましくは、30%未満であるかまたはそれに等しく、最も好ましくは、10%未満であるかまたはそれに等しい。
【0051】
電気光学ディスプレイの接着剤層に複合体を組み込むとき、本発明の種々の実施形態による複合材料のポリマー相は、好ましくは、電極から電気光学材料に向かう方向において、この層の平面における伝導率より大きい伝導率を有する異方性積層接着剤である。そのような異方性接着剤は、電極と電気光学材料との間にわずかな電圧降下のみを生み出す(故に、電気光学材料の層を横切る可能な限り大きい電場を可能にする)一方、隣接する電極間の電流の流動に対して高い抵抗を提示し、したがって、ディスプレイの隣接するピクセル間のクロストークを最小限にする。
【0052】
積層接着剤は、熱溶解性接着剤であり得るが、熱硬化性接着剤、放射線硬化性接着剤、または感圧接着剤であることもできる。接着剤は、エチレンビニルアセテート、アクリル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、ポリビニルブチレート、ポリスチレンブタジエン、またはビニルモノマーもしくはオリゴマーをベースとしてもよい。必要な異方伝導率を提供するために、接着剤は、伝導性粒子、例えば、炭素粒子、銀粒子、めっきポリマー球、めっきガラス球、酸化インジウムスズ粒子、またはナノ相酸化インジウムスズ粒子を装填されてもよい。代替として、ポリマーをドープし、z軸方向(接着剤の層の厚さに対して垂直)においては十分に伝導させるがこの層の平面内には伝導させないために、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、またはポリチオフェン等の伝導性ポリマーが、使用されることができる。これらのフィルムを作製するために、接着剤シートは、注型され、次いで、必要な異方伝導率を導入するように片方または両方の軸ににおいて伸展され得る。種々のタイプの異方性接着剤が、米国特許第6,365,949号、第5,213,715号、および第4,613,351号に説明されており、異方性接着剤は、例えば、Minnesota Mining and Manufacturing Corporation(「3M」)、Henkel Loctite Corporation,1001 Trout Brook Crossing,Rocky Hill CT 06067、Btech Corporation,8395 Greenwood Drive,Longmont CO 80503、および、Dana Enterprises International,43006 Osgood Road,Fremont CA 94539から市販されている。
【0053】
本発明の種々の実施形態において使用される異方性接着剤は、接着剤層の平面において約10-10S/cm未満の伝導率、および、z軸方向において約10-9S/cmより大きい伝導率を有することが、一般に好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態による複合材料を形成するためのプロセスも、提供される。複合材料は、平行方向より層の平面に対して垂直に大きい伝導率を有する異方性接着剤層の形態において提供されてもよい。プロセスは、複数の伝導性充填剤粒子を接着剤マトリックス内に分散させることであって、粒子は、マトリックスのものとは異なる伝導率を有する、ことと、粒子が層の平面に対して実質的に垂直に延びる伝導性鎖を形成することを引き起こすために有効な電場または磁場を粒子/マトリックス混合物に印加することと、粒子が鎖から移動することを防止するために(典型的には、マトリックスをゲル化するかまたは硬化させることによって)マトリックスの粘度を増加させることとを含む。
【0055】
本発明のプロセスによって異方伝導性フィルムを製造するためのエレクトロレオロジーおよびマグネトレオロジー効果の使用が、付随の図面の図3Aおよび図3Bにおいて、高度に概略的な様式において図示されている。エレクトロレオロジー(ER)効果は、微粒子分散液、例えば、平行平板電極間に含まれる分散液を横断する電場の印加が、分散液を構成する粒子が鎖または針状凝集体を形成することを引き起こす効果である。図3Aに示されているように、プロセスは、積層接着剤14のマトリックス(連続相)内に分散している伝導性粒子12の層を形成することによって開始される。電場または磁場が、層の平面に垂直に印加され、それによって、図3Bに図示されているような層の厚さを通して延びる鎖16を粒子12が形成することを引き起こす。最後に、マトリックス14の粘度が、典型的には、マトリックスをゲル化するかまたは硬化させることによって大きく増加させられ、マトリックス14を通した粒子12のさらなる移動を防止し、そのようにして鎖16を定位置に固定する。
【0056】
電場力線に対して平行な鎖の形成は、粒子の複素伝導率(k*)がマトリックスのものより有意に高いときに生じる。本発明の好ましいプロセスでは、(図3Aに示されているような)前駆体接着剤は、k>10-9S/cmの比較的高い伝導性粒子から成り、K<10-11S/cmの低伝導性マトリックス内に分散している。粒子は、分散液を横切る電場の印加によってz軸方向に整合させられ、その結果として生じるz軸鎖は、マトリックスを硬化またはゲル化することによって定位置に係止される。このとき、鎖は側方方向において離され、したがって、低伝導性マトリックスによって分離されるため、最終的な接着フィルムは、z軸方向においてのみ広がる、または浸透する伝導性鎖を含む。Z軸伝導は鎖の伝導率によって支配され、したがって、粒子伝導率によって支配されるが、側方伝導率は、連続的な低伝導性マトリックスの伝導率によって支配される。
【0057】
この方法は、特に、z軸積層接着剤の連続薄膜を用意することに関して非常に好適である。例えば、連続薄膜z軸伝導性接着剤は、低伝導性接着剤マトリックス内の伝導性粒子の十分に混合された分散液をコーティング染料内へと送給し、典型的には、10~100μm厚の薄膜の中に分散液をコーティングし、続いて、電場を印加し、硬化またはゲル化することによって用意されることができる。
【0058】
z軸伝導性接着剤を製造するためのマグネトレオロジープロセスは、エレクトロレオロジープロセスに類似しており、磁性粒子は、非磁性接着剤マトリックス内に分散しており、粒子は、磁場の印加によってz軸方向における鎖において整合させられ、鎖は、マトリックスの硬化またはゲル化によって定位置に係止される。この場合、粒子は、両方とも磁気的に分極可能であり、上記に説明された範囲内の、典型的には、10-9S/cmより大きい伝導率を有する必要がある。マグネトレオロジープロセスに対するこれらの要件を満たす粒子の範囲は、おそらく、エレクトロレオロジープロセスに関して好適である粒子の範囲より限定されるが、層を横切る磁場の印加は層の表面と電気的に接触することを要求せず、したがって、水性ベースの接着剤マトリックスが使用され得るため、マグネトレオロジープロセスが、好ましく、これは、典型的には、エレクトロレオロジープロセスに当てはまらない。
【0059】
ポリマーマトリックスとして積層接着剤組成物を含む複合材料を生産するためのエレクトロレオロジープロセスでは、充填剤として使用される伝導性粒子は、好ましくは、少なくとも0.5×10-9S/cm、0.5×10-7S/m、0.5×10-5S/m、0.5×10-3S/m、0.5×10-1S/m、5S/m、0.5×10S/m、0.5×10S/m、0.5×10S/m、10×10S/m、および20×10S/mの伝導率を有し、好ましさは、所与の順序において増し、直径は、最終フィルムの厚さの約1/10より大きくない(用語「直径」は、本明細書では、非球状粒子の「相当直径」として、通常、公知であるもの、すなわち、非球状粒子と同一体積を有する球状粒子の直径を含むように使用される)。粒子は、半導体ポリマー、例えば、酸性ドープポリアニリン、ポリチオフェン、および熱分解ポリアクリロニトリルから形成されることができる。粒子は、代替として、主に粒子の表面上に吸収される微量の極性材料、例えば、水またはエチレングリコールの添加によって、(マトリックスのものと比較して)より高いk*まで「活性化される」(上昇させられる)低k*材料から形成されてもよい。好適な低k*材料は、セルロース系材料、ならびに種々のアルミナ、ケイ酸塩、およびゼオライトを含む。マトリックス(連続相)は、粒子のものに対して相対的に低い伝導率を有するべきであり、この低伝導率は、好ましくは、10-10S/cm未満である。多くのカプセル化電気泳動媒体内の流体として使用される炭化水素等の多くの低伝導性低粘度油が好適であり得るが、マトリックスは、接着剤としても機能しなければならず、プロセスにおいて形成されるz軸鎖を係止するためにゲル化可能または硬化可能でなければならない。例えば、Kraton(登録商標)ゴム(ブロック共重合体)またはポリウレタン等の熱可逆性ゲル化材料が、特に、コーティングおよび粒子の整合のための粘度を低下させるために、単独でまたは希釈剤との組み合わせにおいて、連続相として有利であり得る。ポリアクリレート溶液、またはコハク酸エステル官能化炭化水素ポリマーのような典型的な非水性感圧接着剤、例えば、エチレンプロピレン共重合体、またはシリコーンゴムタイプの接着剤も、使用され得る。ゲル化型マトリックスに関して、コーティングおよび粒子の整合は、材料がゲル化しない条件下で生じ、次いで、鎖の形成後、マトリックスは、例えば、温度を低下させることによって、または、化学成分もしくは反応物質の添加もしくは除去、もしくは紫外線光源への暴露によってマトリックスを架橋することによってゲル化される。溶剤ベースの非水性接着剤に関して、鎖は、溶剤を急速に蒸発させることによって定位置に係止されることができる。
【0060】
本発明のマグネトレオロジープロセスは、マグネトレオロジープロセスが電場の整合ではなく磁場の整合によって鎖が形成される点においてのみエレクトロレオロジープロセスと異なるため、上記に議論されたマトリックスのタイプのいずれを使用してもよい。しかしながら、マグネトレオロジープロセスは水性マトリックスおよび非水性マトリックスを利用することができるため、ポリウレタン接着剤、ゼラチン、または他の水性連続相も使用され得る。マグネトレオロジープロセスにおける使用に対して好適である粒子は、鉄、ならびにニッケルおよびカルボニル鉄等の他の磁化可能材料を含み、これらの材料は、一般には、1~10μmより大きい粒子サイズにおいて供給され、これは、接着剤の薄膜を用意することに対して最適ではない場合があるが、本プロセスにおける使用のためにより小さなサイズに粉砕され得る。磁気記録産業において使用されるγ-Fe材料等の酸化鉄は、典型的には、約10~100nmのはるかに小さい粒子サイズにおいて供給され、したがって、薄膜の用意において供給されるものとして使用され得る。
【0061】
本発明のマグネトレオロジープロセスにおいて使用されるべき粒子の基準は、マグネトレオロジー粒子の殆どの他の用途とは幾分か異なる。本プロセスは、強い飽和磁化、すなわち、マグネトレオロジー流体のための粒子を選定することに関して典型的な基準を要求しないが、本プロセスでは、粒子は、上記で概説されたz軸伝導率範囲を満たすために十分に伝導性を有するべきである。
【0062】
上記に説明された複合材料を含む積層接着フィルムは積層プロセス中に(鎖長に対して相対的に)大規模な流動を決して受けないため、フィルムは、次いで、接着剤の異方伝導率が維持される条件下で電気光学材料に積層されることができ、最終的には、アクティブマトリックスバックプレーンに積層されることができる。
【0063】
本質的に非伝導性のマトリックス内の伝導性鎖または類似の伝導性領域に基づく任意の異方性z軸伝導性接着剤は、接着剤がそのエリア全体にわたって実質的に一様または均質な電場を被らせるために使用されるか、または望ましくない光学効果が生じ得る電気光学材料のピクセル毎に、単位面積あたり十分な鎖または伝導性領域を有するべきである。単位面積あたりの鎖密度は、例えば、伝導性粒子のサイズ、伝導性粒子の体積分率、ならびに整合させられる場の強度および持続時間を変え、それによって、異方性接着剤の精緻な構造が変えられることを可能にすることによって調節され得る。
【0064】
バッチ処理ユニット動作を含む電気泳動デバイスの加工において、いくつかのタイプの積層プロセスが、あり得る。このタイプの好ましいプロセスは、付随の図面の図4において、高度に概略的な様式において、側面立面図において図示されている。この図に示されているように、プロセスは、2つのウェブ202および204の収斂によってディスプレイを形成する。ウェブ202は可撓性基板上に後部電極アセンブリを備えるが、個々の構成要素は、図4に示されていない。同様に、ウェブ204は可撓性基板と、透明な電極層(例えば、ITO層)と、カプセルおよび結合剤の乾燥膜とを含むが、ここでも、個々の構成要素は、図4に示されていない。図4に示されているように、ウェブ202は、送給スプール206から巻き付きを解かれ、電極側を上にし、放射線硬化性積層接着剤210の薄層でコーティングするための染料208の真下にもたらされる。接着剤210は、例えば、可視放射線、紫外線放射線、または電子ビーム放射線によって硬化可能であり得る。接着剤210を保有するウェブ202は、放射線源212を通過し、その強度は、接着剤210の触媒濃度(したがって、硬化速度)およびウェブ202の速度の両方を考慮しながら調節される(異方性接着剤が使用されている場合、マトリックスが放射線源212によって硬化またはゲル化される前に伝導性粒子の所望の鎖を形成するために、電気または磁気ヘッドが、染料208と放射線源212との間に提供されてもよい)。
【0065】
ウェブ204は、送給スプール214から巻き付きを解かれ、乾燥カプセルを含む層を収斂点216まで運搬し、ウェブ202、204は、そこで一緒にされる。本収斂点216において、放射線硬化性樹脂210は、依然として液体の形態であり、カプセルを含む層の表面上の空所に容易に充填される。ウェブ速度、触媒濃度、および放射強度の連携は、2つのウェブ202および204がローラ218を用いて保持されながら固化が収斂点216の後に起こるような硬化速度を提供するように調節される。最後に、製造された積層ウェブ220は、巻取スプール222a上に巻き付けられる。
【0066】
前述のプロセスは、積層プロセスが、インラインで動作することを可能にし、したがって、先に議論されたバッチ処理ユニットプロセスより高い生産率を可能にする。
【0067】
本発明の別の実施形態では、複合材料は、ディスプレイの電気光学材料の層に組み込まれてもよい。具体的には、複合材料は、マイクロセルを形成するために使用されるカプセル化媒体の結合剤またはポリマーフィルムのいずれかに組み込まれてもよい。いくつかの結合剤またはポリマーフィルム材料は、その環境の温度および湿度が10~50℃および10~90%相対湿度(RH)の範囲内で変動するとき、2桁超の体積抵抗率の変化を呈する。満足な性能のためには、結合剤/フィルム材料の体積抵抗率は約10倍を超えて変動するべきではなく、10~90%のRHおよび10~50℃の範囲内であるか、またはディスプレイが動作することを意図されているより広範囲なRHおよび温度範囲内であるべきであることが、見出されている。望ましくは、体積抵抗率は、約3倍を超えて変化せず、好ましくは、約2倍を超えて変化せず、規定のRHおよび温度範囲内である。
【0068】
温度およびRHに対する結合剤/フィルム材料の熱感度を限定するために、充填剤が、上記に説明された複合材料に類似した複合体を提供するために結合剤/フィルム材料に組み込まれてもよい。充填剤より大きい熱膨張係数を有するポリマーマトリックス内に約浸透閾値の伝導性充填剤を組み込むことは、結合剤/フィルムの抵抗率への温度効果を同様に限定する。例えば、温度の上昇とともに、ポリマー相は、充填剤相より高い率で膨張する。充填剤相の体積分率が約浸透閾値である場合、複合材料の抵抗率は、温度の上昇とともに減少する。温度が低下するとき、ポリマー相は、より高い率で収縮し、充填剤の体積分率の増加、ひいては、複合体の抵抗率の低下を引き起こす。したがって、本発明の種々の実施形態による複合材料は、いかなる充填剤も含まない結合剤/フィルムと比較して低減された熱感度を有する結合剤/フィルムを提供し得る。
【0069】
容認可能な結合剤材料の実施例は、限定ではないが、ネオレジンR9630、ネオレジンR9330、ネオレジンR9314、ネオレジンR9314、ネオレジン9621、およびその混合物等の芳香族材料を含まない脂肪族ポリウレタンを含む。結合剤は、10℃で測定されるとして、1,000時間にわたって25℃および45%の相対湿度で保持された後に約3倍を超えて変化しない体積抵抗率を有することが好ましい。語句「保持されている(being held)」は、結合剤が本発明のこの局面の要件に適合しているかどうかを決定するために結合剤を試験する際に、結合剤材料が合理的な時間内に規定の雰囲気と平衡化することを確実にするために注意が払われるべきであることを強調するために意図的に使用される。結合剤材料が厚い層内で試験される場合、非常に長い期間にわたって規定の雰囲気と平衡化し得ず、判断を誤らせる結果が、得られ得る。そのような判断を誤らせる結果は、結合剤材料のより薄い層を連続的に試験し、その結果が一貫していることを点検することによって回避されることができる。十分に薄い層に関しては、規定の期間にわたって規定の条件下で結合剤材料を単に保管すれば事足りる。
【0070】
RHおよび温度に伴う体積抵抗率の変化に関して、材料を試験するとき、体積抵抗率が測定される前に試験されるサンプルが所望のRHおよび温度において雰囲気と真に平衡状態にあることを確実にするために、上記に議論されたものと同一の予防措置が、遵守されるべきである。
【0071】
マイクロセルを形成するために使用され得るポリマー材料は、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、またはその前駆体を含む。熱可塑性または熱硬化性前駆体の実施例は、限定ではないが、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、多官能性ビニルエーテル、多官能性エポキシド、およびそれらのオリゴマーまたはポリマーを含む。エンボス加工されたマイクロセルの屈曲抵抗を向上させるために、ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレート等の柔軟性を付与する架橋性オリゴマーが、添加されてもよい。
【0072】
マイクロセルのためのさらなるエンボス加工可能組成物は、極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んでもよい。そのような極性オリゴマーまたはポリマー材料は、ニトロ(--NO)、ヒドロキシル(--OH)、カルボキシル(--COO)、アルコキシ(--OR、Rはアルキル基)、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)、シアノ(--CN)、スルホン酸塩(--SO)、および同等物等の基のうちの少なくとも1つを有するオリゴマーまたはポリマーから成るグループから選択され得る。極性ポリマー材料のガラス遷移温度は、好ましくは、約100℃を下回り、より好ましくは、約60℃を下回る。好適な極性オリゴマーまたはポリマー材料の具体的な実施例は、限定ではないが、ポリヒドロキシ官能化ポリエステルアクリレート(BDE 1025、Bomar Specialties Co、Winsted, CT等)、またはアルコキシル化アクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(例えば、SR504, Sartomer Company)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、SR9035, Sartomer Company)、またはエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、SR494, Sartomer Company)を含んでもよい。
【0073】
マイクロセルを形成するための別のタイプのエンボス加工可能組成物は、(a)少なくとも1つの二官能性UV硬化性成分と、(b)少なくとも1つの光開始剤と、(c)少なくとも1つの剥離剤とを含む。好適な二官能性成分は、約200より高い分子量を有し得る。二官能性アクリレートが、好ましく、ウレタンまたはエトキシル化主鎖を有する二官能性アクリレートが、特に好ましい。より具体的には、好適な二官能性成分は、限定ではないが、ジエチレングリコールジアクリレート(例えば、SartomerからのSR230)と、トリエチレングリコールジアクリレート(例えば、SartomerからのSR272)と、テトラエチレングリコールジアクリレート(例えば、SartomerからのSR268)と、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、SartomerからのSR295、SR344、またはSR610)と、ポリエチレングリコールジメタクリレート(例えば、SartomerからのSR603、SR644、SR252、またはSR740)と、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(例えば、SartomerからのCD9038、SR349、SR601、またはSR602)と、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(例えば、SartomerからのCD540、CD542、SR101、SR150、SR348、SR480、またはSR541)と、ウレタンジアクリレート(例えば、SartomerからのCN959、CN961、CN964、CN965、CN980、またはCN981、およびCytecからのEbecryl230、Ebecryl270、Ebecryl8402、Ebecryl8804、Ebecryl8807、またはEbecryl8808)とを含んでもよい。好適な光開始剤は、限定ではないが、ビス-アシル-ホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、または2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンを含んでもよい。好適な剥離剤は、限定ではないが、シリコーンアクリレート(例えば、CytecからのEbercryl1360またはEbercyl350)等の有機変性シリコーン共重合体と、シリコーンポリエーテル(例えば、MomentiveからのSilwet7200、Silwet7210、Silwet7220、Silwet7230、Silwet7500、Silwet7600、またはSilwet7607)とを含んでもよい。組成物は、随意に、以下の成分、すなわち、共開始剤、単官能性UV硬化性成分、多官能性UV硬化性成分、または安定剤のうちの1つまたはそれより多くをさらに含んでもよい。
【0074】
結合剤材料内の充填相として使用される材料は、上記に説明された積層接着剤組成物に組み込まれる複合体に関して、先に列挙されたものと同一であってもよい。
【0075】
本発明の種々の実施形態に従って作製されたディスプレイ内に存在する電気光学媒体は、先に議論されたタイプのいずれであってもよい。したがって、結合剤内の電気光学媒体は、例えば、マイクロカプセルもしくはマイクロセル内に随意にカプセル化される着色荷電粒子の分散液の液滴、分散流体内にカプセル化される回転複色もしくは二色粒子を含む液滴、またはエレクトロクロミック媒体を含み得る。しかしながら、電気光学媒体は複数のカプセルを備える電気泳動媒体であり、各カプセルはカプセル壁と、流体中に荷電粒子を備える内相とを備え、電気泳動媒体への電場の印加に応じて、流体を通して移動可能であり、電気泳動媒体は、その中にカプセルが保持されるポリマー結合剤をさらに含むことが、一般には好ましい。
【0076】
本発明の複合材料を含むことを除くと、本発明の電気泳動媒体およびディスプレイは、前述のE InkおよびMITの特許および出願の場合と同一の成分および製造技法を採用し得る。読者は、カプセル化電気泳動ディスプレイの製造のための好ましい材料およびプロセスの詳細に関して、これらの特許および出願、特に、前述の米国特許第6,831,769号を参照されたい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態は実施例としてのみ提供されていることを理解されたい。本発明の精神から逸脱することなく、多数の変形例、変更例、および代用例が当業者に想起されるであろう。故に、付属の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に該当するものとして全てのそのような変形例を網羅することを意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】