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特表2023-542988トール様受容体アゴニストを使用したがん治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】トール様受容体アゴニストを使用したがん治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20231004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20231004BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
A61K31/711
A61P43/00 121
A61P37/04 ZNA
A61K48/00
A61P35/04
A61K31/7125
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K31/713
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518828
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021051378
(87)【国際公開番号】W WO2022066670
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/225,026
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/081,613
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/159,867
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/115,435
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/159,857
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/139,622
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】521104137
【氏名又は名称】トリサルース・ライフ・サイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・シー・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エフ・コックス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ベンジャミン・ジャロク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明の実施形態は、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び肝臓の固形腫瘍にトール様受容体(TLR)アゴニストを送達する方法を提供する。一態様では、本発明は、TLR9アゴニストを肝臓に投与することを含む、肝臓のブドウ膜メラノーマの転移を治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、構造:
【数1】
を有するトール様受容体9アゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記TLR9アゴニストが、肝動脈注入(HAI)によってデバイスを通じて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TLR9アゴニストが、門脈注入(PVI)によってデバイスを通じて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TLR9アゴニストの前記治療有効量が、0.5mg、1mg、2mg、4mg、又は8mgからなる群から選択され、投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TLR9アゴニストが、カテーテルデバイスを通じて投与され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カテーテルデバイスが、局所的な圧力変化に動的に応答する一方向バルブを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記TLR9アゴニストが、圧力有効化薬物送達を介して前記カテーテルデバイスを通じて投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記TLR9アゴニストが、約1cc/分~約5cc/分の注入速度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TLR9アゴニストが、約25分間の期間投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記TLR9アゴニストが、1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与され、前記チェックポイント阻害剤が、前記TLR9アゴニストの投与と同時に、その前、又はその後のいずれかで全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ、及びイピリムマブのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記TLR9アゴニストの前記投与が、サイクルを含む投与レジメンを含み、前記サイクルのうちの1つ以上が、肝動脈注入によるカテーテルデバイスを介した前記TLR9アゴニストの投与、続いてチェックポイント阻害剤の全身投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ、及びイピリムマブのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月22日に出願された米国仮特許出願第63/081,613号、2020年11月18日に出願された米国仮特許出願第63/115,435号、2021年1月20日に出願された米国仮特許出願第63/139,622号、2021年3月11日に出願された米国仮特許出願第63/159,857号、2021年3月11日に出願された米国仮特許出願第63/159,867号、及び2021年7月23日に出願された米国仮特許出願第63/225,026号の利益を主張し、これらのうちのいずれも参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCIIコピーは、2020年9月16日に作成され、A372-502_SL.txtという名称であり、サイズは、484バイトである。
【0003】
本開示は、概して、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び肝臓の固形腫瘍にトール様受容体(TLR)アゴニストを送達する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、皮膚及び肝臓などの様々な臓器における固形腫瘍の増殖をもたらし得る、細胞の抑制のない増殖を伴う壊滅的な疾患である。腫瘍は、最初に任意の数の臓器に存在し得るか、又は転移の結果であり得るか、又は他の位置からの拡散であり得る。
【0005】
メラノーマは、広範囲の亜型及び提示の特徴を含む多様な疾患である。メラノーマは、メラノサイトから発症するがんであり、皮膚及び眼などのメラノサイトが見出される任意の臓器又は組織内を含み、また肝臓などの他の臓器への転移も含む、多数の亜型及び提示を伴い得る。
【0006】
ブドウ膜メラノーマ(UM)は、最も一般的な原発性眼内悪性腫瘍であり、原発性眼内悪性腫瘍の85~95%及び全てのメラノーマ症例の3~5%を占める。これらの悪性腫瘍は、虹彩、毛様体、及び脈絡膜からなる眼球血管膜内のメラノサイトから生じる。原発性腫瘍を放射線療法又は摘出術により確定的に治療すると、局所再発率が低くなる。しかしながら、効果的な局所制御にもかかわらず、転移性疾患は、50%超の患者に起こる。転移性ブドウ膜メラノーマは、典型的には、90%超の症例に肝臓に影響を与え、血液学的広がりから生じる。肝転移(LM)に対するこの疾患の傾向は、マウス及びヒト腫瘍研究で評価されている。転移性ブドウ膜メラノーマの他の病変部位には、肺、骨、脳、リンパ節、及び皮膚が含まれる。転移性ブドウ膜メラノーマ(例えば、多巣性内臓腫瘍)から肝臓に存在する固形腫瘍は、特に治療が困難である。
【0007】
転移性疾患の場合、治療は、肝臓を標的とした療法、細胞毒性化学療法、免疫療法、分子標的療法、及びエピジェネティック修飾剤を含むいくつかのカテゴリに分類され得る。転移性疾患は、非常に予後不良であり、最初の診断から1年間の全生存率は43%である。
【0008】
更に、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びアテゾリズマブなどの特定の抗体療法は、静脈内全身注入を介した皮膚メラノーマの治療のために承認されているが、これらの治療薬は、転移性ブドウ膜メラノーマの治療のために安全又は有効であるとして承認されていない。
【0009】
したがって、転移性ブドウ膜メラノーマの治療のための安全かつ効果的な治療薬が依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び肝臓の固形腫瘍にTLRアゴニストを送達する方法に関する。
【0011】
一態様では、本発明は、肝臓のブドウ膜メラノーマの転移を治療する方法であって、肝動脈注入(HAI)によって血管内デバイスを通じてTLRアゴニストを投与することを含む、方法に関する。別の実施形態によれば、肝臓のブドウ膜メラノーマの転移の治療は、門脈注入(PVI)によってTLRアゴニストを、血管内デバイスを通じて投与することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管及び/又は標的組織又は腫瘍内の流体圧力の正味の増加を生成する、引き起こす、及び/又は寄与するカテーテルデバイスなどのデバイスを通じた治療薬の投与を含む、圧力有効化薬物送達(PEDD)を通じて投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管圧力を上昇させるデバイスなどの圧力有効化デバイスを通じて投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、クラスCタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-C ODN)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、肝臓への血管内デバイスを介したTLRアゴニストの投与は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の減少、又は免疫抑制を制限するためのMDSCの機能的変化をもたらす。
【0016】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、TLR9アゴニストである。
【0017】
本開示の例示的な実施形態のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、本明細書全体と併せて考慮される場合、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示の更なる目的、特徴、及び利点は、本開示の例示的な実施形態を示す添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】SD-101の構造を示す。
図2図2A及び図2Bは、肝転移のためのマウスモデルにおける腫瘍進行に対する例示的なTLR9アゴニストとチェックポイント阻害剤との例示的な組み合わせの効果を示す。
図3図3A図3Dは、ヒトPBMCにおけるMDSC集団、PD-L1、並びにCD4及びCD8集団及び活性化発現に対する例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図4図4A図4Dは、ヒトPMBCにおけるNFκB及びIFNα制御サイトカイン産生に対する例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図5図5A図5Dは、ヒトMDSCプログラミングに対する例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図6】マウスにおいて肝転移を発症するためのスキーマ、並びに門脈及び尾静脈投与のための対応する治療プロトコルを示す。
図7図7A及び図7Bは。腫瘍負荷に対する例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図8図8A図8Dは、MDSC集団、M-MDSC集団、及びG-MDSC集団に対するゲーティング戦略及び例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図9図9A図9Cは、肝転移におけるM1及びM2マクロファージ集団に対するゲーティング戦略及び例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図10図10A及び図10Bは、NFκB、STAT3活性化、及びIL6産生に対する例示的なTLR9アゴニストの効果を示す。
図11図11A及び図11Bは、NFκBシグナル活性に対する例示的なTLR9アゴニストの濃度の効果を示す。
図12】1cm厚の薄片に切断される、肝臓の4つの一次葉のサンプル処理方法を示す。
図13図13A及び図13Bは、それぞれ、未処理及び処理組織における画素強度値の代表的なヒストグラムを示す。
図14図14A及び図14Bは、PEDDデバイス(図14B)を使用して局所動脈ネットワークへの送達と比較した、針注射による標識されたODNの送達(図14A)を比較する近赤外線画像を示す。
図15図15A及び図15Bは、PEDDデバイス(図15B)を使用して局所動脈ネットワークへの送達と比較した、針注射による標識されたODNの送達(図15A)を比較する近赤外線画像を示す。
図16図16A及び図16Bは、針及びPEDDによって投与される、標識されたODN2395及びSD-101の個々のシグナル強度、並びに両方の化合物を組み合わせた場合のシグナル強度を示す。
図17図17A及び図17Bは、針及びPEDDによって投与される、標識されたODN2395及びSD-101の治療的カバレッジ、並びに両方の化合物を組み合わせた場合の組織量を個別に示す。
図18】標識されたオリゴヌクレオチドを用いた肝動脈注入後の肝酵素反応を示す。
図19】エンドホールカテーテル又はPEDDによる送達後にブタ肝組織に保持される標識されたODNのシグナル強度を示す。
図20図20A図20Cは、エンドホール及びPEDDデバイスと高度なシグナルオーバーラップを示すブタ肝組織を示す。
図21図21A図21Cは、エンドホール及びPEDDデバイスと低度のシグナルオーバーラップを示すブタ肝組織を示す。
図22】エンドホール平均処理組織量、PEDD平均処理組織量、及び重複した同時処理組織量のベン図を示す。
図23】本発明の一実施形態による、ブドウ膜メラノーマ肝転移を治療するための全体的な臨床研究設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面全体を通して、特に明記しない限り、同じ参照番号及び文字は、図示された実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、又は部分を示すために使用される。
【0020】
更に、本開示は、図面を参照して詳細に説明されるが、それは例示的な実施形態に関連して行われ、図面及び添付の段落に示される特定の実施形態によって限定されるものではない。
【0021】
以下の実施形態の説明は、本発明の異なる態様の特徴及び教示を特に説明するために数字を参照する非限定的な代表的な例を提供する。説明される実施形態は、実施形態の説明とは別に、又は他の実施形態と組み合わせて実施することが可能であると認識されるべきである。実施形態の説明を検討する当業者は、本発明の異なる説明された態様を理解することができるはずである。実施形態の説明は、具体的にはカバーされていないが、実施形態の説明を読んだ当業者の知識の範囲内である他の実施形態が、本発明の出願と一致すると理解される程度に、本発明の理解を容易にするべきである。
【0022】
トール様受容体アゴニスト
トール様受容体は、微生物病原体関連分子パターン(PAMP)を検出することができるパターン認識受容体である。TLR9刺激などのTLR刺激は、広範な先天性免疫刺激を提供することができるだけでなく、肝臓における免疫抑制の優勢な推進要因に特異的に対処することもできる。TLR1-10は、ヒトにおいて発現され、多様な微生物PAMPを認識する。この点で、TLR9は、微生物DNAを含む非メチル化CpG-DNAに応答することができる。CpGは、シトシン及びグアニンジヌクレオチド1のモチーフを指す。TLR9は、B細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)、活性化好中球、単球/マクロファージ、T細胞、及びMDSCで構成的に発現される。TLR9は、ケラチノサイト及び腸、頸部、及び呼吸器上皮細胞を含む非免疫細胞においても発現される。TLR9は、エンドソーム内のそのアゴニストに結合することができる。シグナル伝達は、炎症誘発性サイトカイン遺伝子発現を誘導するために、MYD88/IkB/NfκBを介して行われ得る。IRF7を通る平行シグナル伝達経路は、適応免疫反応を刺激する1型及び2型インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-γなど)を誘導する。更に、TLR9アゴニストは、抗原提示樹状細胞のサイトカイン及びIFN産生及び機能的成熟を誘導することができる。
【0023】
一実施形態によれば、TLR9アゴニストは、MDSCを低減し、再プログラムすることができる。MDSCは、肝臓における免疫抑制の主要な原動力である。MDSCはまた、T制御細胞(Treg)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、及びがん関連線維芽細胞(CAF)などの他の抑制細胞型の増殖を駆動する。MDSCは、免疫細胞を下方制御し、免疫療法薬の有効性を妨げ得る。更に、高いMDSCレベルは、一般的に、がん患者の不良な転帰を予測する。この点で、MDSCを減少、改変、又は排除することは、がんを攻撃する宿主の免疫系の能力、及びより有益な治療反応を誘発する免疫療法の能力を改善すると考えられている。一実施形態において、TLR9アゴニストは、MDSCを免疫刺激性M1マクロファージに変換し、未成熟樹状細胞を成熟樹状細胞に変換し、エフェクターT細胞を拡大して、抗腫瘍活性を促進する応答性腫瘍微小環境を作成し得る。
【0024】
一実施形態によれば、微生物CpG-DNAの免疫刺激性質を模倣する合成CpG-オリゴヌクレオチド(CPG-ON)を、治療用に開発することができる。一実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。いくつかの異なるCpG-ODNクラスタイプ、例えば、クラスA、クラスB、クラスC、クラスP、及びクラスSがあり、それらは、特定の構造的及び機能的特徴を共有する。この点で、クラスAタイプCPG-ODN(又はCPG-A ODN)は、B細胞及び最高度のIFNα誘導にほとんど影響を及ぼさないpDC成熟に関連しており、クラスBタイプCPG-ODN(又はCPG-B ODN)は、B細胞増殖を強く誘導し、pDC及び単球成熟、NK細胞活性化、並びに炎症性サイトカイン産生を活性化し、クラスCタイプCPG-ODN(又はCPG-C ODN)は、B細胞増殖及びIFN-α産生を誘導することができる。更に、一実施形態によれば、CPG-C ODNは、以下の属性:(i)非メチル化ジヌクレオチドCpGモチーフ、(ii)隣接ヌクレオチド(例えば、AACGTTCGAA)と並置されたCpGモチーフ、(iii)(細菌DNAに見出される天然ホスホジエステル(PO)骨格とは対照的に)ヌクレオチドを結合させる完全なホスホロチオエート(PS)骨格、及び(iv)自己相補性回文配列(例えば、AACGTT)と関連し得る。この点で、CPG-C ODNは、その回文性の性質のために自らを結合し、それによって二本鎖(double-stranded)二重鎖(duplex)又はヘアピン構造を生成し得る。
【0025】
更に、一実施形態によれば、CPG-C ODNは、5’-Tがオリゴヌクレオチドの5’末端から0、1、2、又は3塩基に位置する1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチドと、1つ以上の非メチル化CGジヌクレオチドを含む少なくとも8塩基長の少なくとも1つの回文配列とを含むことができる。1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチド配列は、回文配列の5’末端から0、1、又は2塩基を分離し得るか、又は回文配列は、1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチド配列の全て又は一部を含有し得る。一実施形態において、CpG-C ODNは、12~100塩基長、好ましくは12~50塩基長、好ましくは12~40塩基長、又は好ましくは12~30塩基長である。一実施形態において、CpG-C ODNは、30塩基長である。一実施形態において、ODNは、少なくとも(下限)12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、50、60、70、80、又は90塩基長である。一実施形態において、ODNは、最大で(上限)100、90、80、70、60、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30塩基長である。
【0026】
一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、8~97塩基長、好ましくは8~50塩基長、又は好ましくは8~32塩基長である。一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、少なくとも(下限)8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30塩基長である。一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、最大で(上限)50、48、46、44、42、40、38、36、34、32、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、又は10塩基長である。
【0027】
一実施形態において、CpG-C ODNは、配列番号1の配列を含むことができる。
【0028】
一実施形態によれば、CpG-C ODNは、SD-101を含むことができる。SD-101は、30merのホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドであり、以下の配列を有する:
【数1】
【0029】
SD-101原薬は、ナトリウム塩として単離される。SD-101の構造を、図1に示す。
【0030】
SD-101遊離酸の分子式は、C2933691121492929であり、SD-101遊離酸の分子量は、9.672ダルトンである。SD-101ナトリウム塩の分子式は、C2933401121492929 Na29であり、SD-101ナトリウム塩の分子量は、10,309ダルトンである。
【0031】
更に、一実施形態によれば、CPG-C ODN配列は、米国特許第9,422,564号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される配列番号172に対応することができる。
【0032】
一実施形態において、CpG-C ODNは、配列番号1などの前述のうちのいずれかと少なくとも75%の相同性を有する配列を含むことができる。
【0033】
別の実施形態によれば、CPG-C ODN配列は、米国特許第9,422,564号に記載される他の配列のうちのいずれか1つに対応することができる。更に、CPG-C ODN配列はまた、米国特許第8,372,413号(その全体が参照により本明細書にも組み込まれる)に記載される配列のうちのいずれかに対応することができる。
【0034】
一実施形態によれば、本明細書で論じられるCPG-C ODNのうちのいずれかは、それらの薬学的に許容される塩形態において存在してもよい。例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、N-Me-D-グルカミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)を有する塩、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミン、及びアルギニン、リジンなどのアミノ酸を有する塩が含まれる。一実施形態において、CpG-C ODNは、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩形態である。1つの好ましい実施形態において、CpG-C ODNは、ナトリウム塩形態である。CpG-C ODNは、薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的溶液中で提供され得る。代替的に、CpG-C ODNは、凍結乾燥固体として提供され得、凍結乾燥固体は、その後、投与前に、滅菌水、生理食塩水、又は薬学的に許容される緩衝液中で再構成される。本開示の薬学的に許容される賦形剤としては、例えば、溶媒、増量剤、緩衝剤、等張調整剤、及び防腐剤が挙げられる。一実施形態において、薬学的組成物は、溶媒、増量剤、緩衝剤、及び等張調整剤のうちの1つ以上として機能する賦形剤を含み得る(例えば、生理食塩水中の塩化ナトリウムは、水性ビヒクル及び等張調整剤の両方として機能し得る)。本開示の薬学的組成物は、非経口及び/又は経皮投与に好適である。
【0035】
一実施形態において、薬学的組成物は、溶媒としての水性ビヒクルを含む。好適なビヒクルとしては、例えば、滅菌水、食塩水溶液、リン酸緩衝食塩水、及びリンゲル溶液が挙げられる。ある実施形態において、本組成物は、等張である。
【0036】
薬学的組成物は、増量剤を含み得る。増量剤は、薬学的組成物が投与前に凍結乾燥される場合に特に有用である。一実施形態において、増量剤は、凍結又は噴霧乾燥中及び/又は保管中の活性剤の分解の安定化及び防止を助ける保護剤である。好適な増量剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビタール、グルコース、及びラフィノースなどの糖(単糖、二糖、及び多糖)である。
【0037】
薬学的組成物は、緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、pHを制御して、処理、貯蔵、及び任意選択で再構成中の活性剤の分解を阻害する。好適な緩衝液としては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩を含む塩が挙げられる。他の好適な緩衝剤としては、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、及びリジンなどのアミノ酸が挙げられる。緩衝剤は、塩酸又は水酸化ナトリウムを更に含み得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、組成物のpHを4~9の範囲内に維持する。一実施形態において、pHは、(下限)4、5、6、7、又は8よりも大きい。いくつかの実施形態において、pHは、(上限)9、8、7、6、又は5未満である。すなわち、pHは、下限が上限未満である約4~9の範囲内である。
【0038】
薬学的組成物は、等張調整剤を含み得る。好適な等張調整剤としては、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン、及びマンニトールが挙げられる。
【0039】
薬学的組成物は、防腐剤を含み得る。好適な防腐剤としては、例えば、酸化防止剤及び抗菌剤が挙げられる。しかしながら、一実施形態において、薬学的組成物は、滅菌条件下で調製され、単回使用容器内にあり、したがって、防腐剤の含有を必要としない。
【0040】
表1は、SD-101医薬品16g/Lのバッチ式を説明する:
【表1】
【0041】
いくつかの実施形態において、単位用量強度は、約0.1mg/mL~約20mg/mLを含み得る。一実施形態において、SD-101の単位用量強度は、13.4mg/mLである。
【0042】
CpG-C ODNは、修飾を含有し得る。好適な修飾は、3’OH又は5’OH基の修飾、ヌクレオチド塩基の修飾、糖成分の修飾、及びリン酸基の修飾を含むことができるが、これらに限定されない。修飾塩基は、修飾塩基が、ワトソン-クリック塩基対合を介してその天然相補体に対して同じ特異性を維持する限り、回文配列に含まれ得る(例えば、CpG-C ODNの回文部分は、自己相補的なままである)。
【0043】
CpG-C ODNは、直線的であってもよく、円形であってもよく、又は円形部分及び/若しくはヘアピンループを含むことができる。CpG-C ODNは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。CpG-C ODNは、DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドであってもよい。
【0044】
CpG-C ODNは、天然に存在する塩基又は修飾された非天然に存在する塩基を含有してもよく、修飾された糖、リン酸塩、及び/又は末端を含有してもよい。例えば、ホスホジエステル結合に加えて、ホスフェート修飾には、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホラミデート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル及びホスホロジチオエートが含まれるが、これらに限定されず、任意の組み合わせで使用され得る。一実施形態において、CpG-C ODNは、ホスホロチオエート結合のみ、ホスホジエステル結合のみ、又はホスホジエステルとホスホロチオエート結合の組み合わせを有する。
【0045】
2’-アルコキシ-RNAアナログ、2’-アミノ-RNAアナログ、2’-フルオロ-DNA、及び2’-アルコキシ-又はアミノ-RNA/DNAキメラなどの、本分野で知られている糖修飾も、作製して、任意のリン酸修飾と組み合わせてもよい。塩基修飾の例としては、CpG-C ODNのシトシン(例えば、5-ブロモシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ヨードシトシン)のC-5及び/又はC-6、並びにCpG-C ODNのウラシル(例えば、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ヨードウラシル)のC-5及び/又はC-6への電子求引性部分の添加が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、CpG-C ODNの回文配列における塩基修飾の使用は、ワトソン-クリック塩基対合に関与する塩基の自己相補性を妨げるべきではない。しかしながら、回文配列の外では、修飾塩基は、この制限なしに使用することができる。例えば、2’-O-メチル-ウリジン及び2’-O-メチル-シチジンは、回文配列の外側で使用されてもよく、一方、5-ブロモ-2’-デオキシシチジンは、回文配列の内側及び外側の両方で使用されてもよい。回文配列の内側及び外側の両方で用いられ得る他の修飾ヌクレオチドとしては、7-デアザ-8-アザ-dG、2-アミノ-dA、及び2-チオ-dTが挙げられる。
【0046】
ほとんどのODNの二重鎖(すなわち、二本鎖)及びヘアピン形態は、多くの場合、動的平衡状態にあり、ヘアピン形態は、低オリゴヌクレオチド濃度及び高温で一般的に好まれる。共有結合鎖間又は鎖内架橋は、それぞれ、熱、イオン、pH、及び濃度誘導構造変化に向かって、二重鎖又はヘアピンの安定性を増加させる。化学的架橋は、ポリヌクレオチドを二重鎖又はヘアピン形態のいずれかにロックして、物理化学的及び生物学的特性評価を行うために使用することができる。構造的に均質であり、最も活性な形態(二重鎖又はヘアピン形態のいずれか)で「ロック」されている架橋ODNは、架橋されていない対応物よりも潜在的により活性であり得る。したがって、本開示のいくつかのCpG-C ODNは、共有結合鎖間及び/又は鎖間架橋を含有することができる。
【0047】
ポリヌクレオチド及び修飾ポリヌクレオチドを作製するための技術は、当該技術分野において既知である。ホスホジエステル結合を含有する天然に存在するDNA又はRNAは、一般に、適切なヌクレオシドホスホラミダイトを3’末端で固体支持体に結合した成長ODNの5’ヒドロキシ基に順次結合させ、続いて中間ホスファイトトリエステルをリン酸トリエステルに酸化することによって合成され得る。この方法を使用して、所望のポリヌクレオチド配列が合成されると、ポリヌクレオチドが支持体から除去され、リン酸トリエステル基がリン酸ジエステルに脱保護され、ヌクレオシド塩基が水性アンモニア又は他の塩基を使用して脱保護される。
【0048】
CpG-C ODNは、リン酸修飾オリゴヌクレオチドを含有してもよく、そのうちのいくつかは、ODNを安定化することが知られている。したがって、いくつかの実施形態は、安定化CpG-C ODNを含む。ODN中の糖又は糖アナログ部分に結合され得るリン誘導体(又は修飾リン酸基)は、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミデートなどであり得る。
【0049】
CpG-C ODNは、1つ以上のリボヌクレオチド(唯一又は主糖成分としてリボースを含む)、デオキシリボヌクレオチド(主糖成分としてデオキシリボースを含む)、修飾糖又は糖アナログを含むことができる。したがって、リボース及びデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖アナログシクロペンチル基であり得る。糖は、ピラノシル又はフラノシル形態であり得る。CpG-Cオリゴヌクレオチドにおいて、糖部分は、好ましくは、リボース、デオキシリボース、アラビノース、又は2′-0-アルキルリボースのフラノシドであり、糖は、いずれかのアノマー配置でそれぞれの複素環式塩基に結合することができる。これらの糖又は糖アナログ、及びそのような糖又はアナログが複素環式塩基(核酸塩基)自体に結合しているそれぞれのヌクレオシドの調製は既知であるため、本明細書に記載する必要はない。糖修飾はまた、CpG-C ODNの調製において、作製して、任意のリン酸修飾と組み合わせてもよい。
【0050】
CpG-C ODNに組み込まれる複素環式塩基又は核酸塩基は、天然に存在する主プリン及びピリミジン塩基(すなわち、上記のようなウラシル、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニン)、並びに当該主塩基の天然に存在する修飾及び合成修飾であり得る。したがって、CpG-C ODNは、イノシン、2’-デオキシウリジン、及び2-アミノ-2’-デオキシアデノシンのうちの1つ以上を含み得る。
【0051】
別の実施形態によれば、CPG-ODNは、クラスAタイプのCPG-ODN(CPGP-A ODN)、クラスBタイプのCPG-ODN(CPG-B ODN)、クラスPタイプのCPG-ODN(CPG-P ODN)、及びクラスSタイプのCPG-ODN(CPG-S ODN)のうちの1つである。この点で、CPG-A ODNは、CMP-001であり得る。
【0052】
別の実施形態において、CPG-ODNは、チルソトリモド(IMO-2125)であり得る。
【0053】
チェックポイント阻害剤
一実施形態によれば、本発明のTLRアゴニストは、チェックポイント阻害剤(CPI)と併用してもよい。チェックポイント阻害剤は、プログラム死1受容体(PD-1)アンタゴニストを含むことができる。PD-1アンタゴニストは、がん細胞上で発現したプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の、免疫細胞(T細胞、B細胞、又はNKT細胞)上で発現したPD-1への結合を遮断し、好ましくは、がん細胞上で発現したPD-L2プログラム細胞死1リガンド2(PD-L2)の、免疫細胞発現PD-1への結合を遮断する任意の化学化合物又は生体分子であり得る。PD-1及びそのリガンドの代替名又は同義語には、PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279、及びSLEB2、PD-L1についてはPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274、及びB7-H、並びにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc、及びCD273が含まれる。ヒト個体が治療されている本発明の治療方法、医薬、及び使用のうちのいずれかにおいて、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断し、好ましくは、ヒトPD-L1及びPD-L2の両方のヒトPD-1への結合を遮断する。
【0054】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくは、ヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)、又はその抗原結合断片を含むことができる。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であり得、ヒト定常領域を含み得る。いくつかの実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましい実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’-SH、F(ab’)、scFv及びFv断片からなる群から選択される。
【0055】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくは、ヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合する免疫アドヘシン、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合されたPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含む融合タンパク質を含むことができる。
【0056】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害することができ、好ましくは、PD-L2のPD-1への結合も阻害する。上記の治療方法、薬剤、及び使用のいくつかの実施形態において、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、PD-L1のPD-1への結合を遮断するモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片である。一実施形態において、PD-1アンタゴニストは、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1抗体である。
【0057】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブのうちの1つであり得る。別の実施形態によれば、ニボルマブは、4週間毎(「Q4W」)に480mgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。別の実施形態によれば、ニボルマブは、3週間毎(「Q3W」)に1mg/kgのニボルマブの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。更に別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与後、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は毎月投与される。
【0058】
別の実施形態によれば、CPIは、PD-L1アンタゴニストを含むことができる。この点で、PD-L1アンタゴニストは、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブのうちの1つであり得る。
【0059】
別の実施形態によれば、CPIは、CTLA-4アンタゴニストを含むことができる。この点で、CTLA-4アンタゴニストは、イピリムマブであり得る。別の実施形態によれば、イピリムマブは、3週間毎に3mg/kgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。更に別の実施形態において、イピリムマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与後、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は毎月投与される。
【0060】
局所領域送達を達成するためのデバイス
一実施形態によれば、上記のデバイスのうちのいずれかは、カテーテル自体を含む、腫瘍への局所領域送達を達成するのに有用な任意のデバイスを含み得るか、又はカテーテルと組み合わせて使用され得る他の構成要素(例えば、フィルタバルブ、バルーン、圧力センサシステム、ポンプシステム、注射器、外側送達カテーテルなど)とともにカテーテルを含み得る。ある特定の実施形態において、カテーテルは、マイクロカテーテルである。
【0061】
いくつかの実施形態において、デバイスは、血管の下流分岐ネットワークにおける治療法の均一な分布を提供することができるセルフセンタリング能力、TLRアゴニストの逆行流を遮断又は阻害することができる逆流防止能力(例えば、バルブ及びフィルタ、及び/又はバルーンの使用による)、血管内の圧力を測定するシステム、並びに配置時及び2cc/分注入中に圧力の低下、及び生理食塩水ボーラス中の圧力の増加を引き起こすことによって、血管内の圧力を調節する手段、例えば、を含むが、これらに限定されない、1つ以上の属性を有し得る。いくつかの実施形態において、システムは、手順全体を通してリアルタイム圧力を継続的にモニタリングするように設計される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の方法を実行するために使用され得るデバイスは、米国特許第8,500,775号、米国特許第8,696,698号、米国特許第8,696,699号、米国特許第9,539,081号、米国特許第9,808,332号、米国特許第9,770,319号、米国特許第9,968,740号、米国特許第10,813,739号、米国特許第10,588,636号、米国特許第11,090,460号、米国特許公開第2018/0193591号、米国特許公開第2018/0250469号、米国特許公開第2019/0298983号、米国特許公開第2020/0038586号、及び米国特許公開第2020-0383688号に開示されるデバイスであり、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、デバイスは、米国特許第9,770,319号に開示されるデバイスである。ある特定の実施形態において、デバイスは、Surefire注入システムとして知られているデバイスであってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、デバイスは、使用中の血管内圧の測定を支援する。いくつかの実施形態において、デバイスは、米国特許第2020-0383688号に開示されるデバイスである。ある特定の実施形態において、デバイスは、TriSalus注入システムとして知られているデバイスであってもよい。ある特定の実施形態において、デバイスは、TriNav(登録商標)注入システムとして知られているデバイスであってもよい。TriNav(登録商標)は、心臓サイクルから生じる、又は注入によって生成されるような局所的な圧力変化に応答する一方向バルブを備える単腔カテーテルである。バルブ構造は、遠位血管圧及び血流を調節する。同様に、これは、血管系内の接触時間の増加に起因して、治療分布及び初回通過吸収を変化させ得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、PEDDによってデバイスを通じて投与され得る。いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管内の圧力をモニタリングしながら投与され得、これは、注入部位におけるデバイスの位置を調整及び修正するために、並びに/又は注入速度を調整するために使用され得る。圧力は、例えば、1つ以上の圧力センサを含む圧力センサシステムによってモニタリングされ得る。
【0066】
注入速度は、血管圧力を変化させるように調整され得、これは、標的組織又は腫瘍へのTLRアゴニストの浸透を促進し得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、送達システムの一部としてシリンジポンプを使用して調整及び/又は制御され得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、ポンプシステムを使用して調整及び/又は制御され得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、約0.1cc/分~約40cc/分、又は約0.1cc/分~約30cc/分、又は約0.5cc/分~約25cc/分、又は約0.5cc/分~約20cc/分、又は約1cc/分~約15cc/分、又は約1cc/分~約10cc/分、又は約1cc/分~約8cc/分、又は約1cc/分~約5cc/分であり得る。更に、ボーラス注入を使用する注入速度は、約30cc/分~約360cc/分、又は約120cc/分~約240cc/分であり得る。一実施形態において、SD-101注入手順は、約30~60分続く。追加の実施形態において、SD-101は、約25分間の期間投与される。
【0067】
肝臓への投与を含む方法
一実施形態において、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマなどのメラノーマの転移である腫瘍などの肝臓の固形腫瘍を治療する方法を含み、当該方法は、それを必要とする患者に、トール様受容体アゴニストを投与することを含み、トール様受容体アゴニストは、HAIによってデバイスを通じて肝臓のそのような固形腫瘍に投与される。HAIは、肝臓の肝動脈への治療薬の注入を指す。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイスなどの肝動脈の分岐へのデバイスの経皮的導入を通じて導入される。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、TLR9アゴニストであり、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、SD-101である。一実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0068】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマなどのメラノーマの転移である腫瘍などの肝臓の固形腫瘍を治療する方法を含み、当該方法は、それを必要とする患者に、トール様受容体アゴニストを投与することを含み、トール様受容体アゴニストは、PVIによってデバイスを通じて肝臓のそのような固形腫瘍に投与される。PVIは、肝門脈静脈系への治療薬の注入を指す。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイスなどの肝門脈静脈系の分岐へのデバイスの経皮的導入を通じて導入される。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、TLR9アゴニストであり、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、SD-101である。一実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0069】
一実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、対象は、肝臓のみの疾患又は肝臓優性疾患を有する組織学的又は細胞学的に確認された転移性UMを有する。肝臓優性疾患は、他の臓器と比較して疾患の最大部分を表す肝内転移を伴って存在し得、許容される肝外部位は、肺、皮膚、又は皮下組織、及び骨である。肝臓優性疾患はまた、他の臓器と比較して疾患の最大部分を表す、又はLMの進行が患者の生命に対する多大なる脅威を表す場合、肝内転移を伴って存在し得る。別の実施形態によれば、本方法は、男性又は女性であり、18歳以上である対象への投与を含む。
【0070】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、対象は、登録前14日以内に、事前に細胞傷害性化学療法、標的療法、又は外部放射線療法を受けていない。別の実施形態によれば、本発明の方法は、研究介入の最初の投与の30日前までに、事前の免疫チェックポイント阻害による治療を受けたことがなく、進行中の免疫媒介性AEグレード2以上を有しない対象への投与を含む。更に別の実施形態によれば、本発明の方法は、事前の免疫学的チェックポイント阻害による治療を受けたことがない対象に投与される。本発明の一実施形態によれば、方法はまた、永久的な塞栓材料を用いて以前に塞栓性HAI療法を受けたことがない対象への投与を含む。別の実施形態において、本発明の方法は、オリゴ転移性肝疾患の手術切除又は高周波アブレーションをこれまでに受けたことがある対象を含む。
【0071】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、対象は、悪性腫瘍が臨床的に有意でない限り、悪性腫瘍の病歴又は他の同時の悪性腫瘍を有しない。別の実施形態において、本発明の方法に従って治療される対象は、進行中の治療を有し得ない。更に別の実施形態において、対象は、臨床的に安定している。
【0072】
別の実施形態において、本発明の方法は、RECIST v.1.1基準に従って肝臓に測定可能な疾患を有する対象への投与を含み得る。追加の実施形態において、本発明の方法は、スクリーニング時に、0~1のEastern Cooperative Oncology Group(「ECOG」)パフォーマンススコア(「PS」)を示す対象への投与を含み得る。別の実施形態において、本発明の方法に従って治療を投与される対象は、治験責任医師によって推定されるように、スクリーニング時に、3カ月を超える平均余命を有する。更に別の実施形態において、対象は、480msec以下のQTc間隔を有する。
【0073】
別の実施形態において、以前のがん治療からの全ての関連する臨床的に有意な薬物関連毒性は、治療の前に分解される。この実施形態において、分解能は、1以下のグレード又は患者の前処置レベルである。追加の実施形態において、対象は、置換療法で制御されたグレード2の脱毛症及び内分泌異常を有し得る。
【0074】
別の実施形態において、本発明の方法は、スクリーニング時に適切な臓器機能を有する対象への投与を含み得る。一実施形態において、適切な臓器機能を有する対象は、以下のもののうちの1つ以上を示し得る:(i)血小板数>100,000/μL、(2)ヘモグロビン≧8.0g/dL、(3)白血球数(WBC)>2,000/μL(4)測定されたクレアチニンクリアランスが>40mL/分/1.73mでない限り、血清クレアチニン≦2.0mg/dL、(5)合計及び直接ビリルビン≦2.0×正常上限(ULN)及びアルカリホスファターゼ≦5×ULN、(6)文書化されたギルバート病を有する患者においては、合計ビリルビン最大3.0mg/dL、(7)ALT及びAST≦5×ULN、並びに(8)スクリーニング時のプロトロンビン時間/国際標準化比(INR)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験結果≦1.5×ULN(これは、治療的抗凝固療法を受けていない患者のみに適用される。治療的抗凝固療法を受けている患者は、研究介入の最初の投与前に少なくとも4週間安定した用量を投与しなければならない)。
【0075】
別の実施形態によれば、本発明の方法を使用して、他のがん、例えば、結腸直腸がん(すなわち、結腸直腸がん肝転移)、膵管腺がんなどの膵臓がん(すなわち、膵管腺がん肝転移)の結果として肝転移を治療することもできる。
【0076】
別の実施形態によれば、腫瘍は、切除不能である。
【0077】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、免疫調節剤、腫瘍殺傷剤、及び/又は他の標的化治療薬などの他のがん治療薬とともに投与され得る。
【0078】
一実施形態によれば、TLR9療法は、細胞療法と組み合わせて投与してもよく、それによって免疫系の調節による細胞療法を可能にする。
【0079】
一実施形態において、肝臓への投与の上記の方法は、固形腫瘍全体、臓器全体、又は実質的に腫瘍全体にわたって、トール様受容体アゴニストの浸透をもたらすことを意図している。一実施形態において、そのような方法は、腫瘍の間質液圧及び固体応力を克服することを含む、トール様受容体アゴニストの灌流の強化を必要とする患者へのトール様受容体アゴニストの灌流を強化する。別の実施形態において、臓器全体又はその一部全体にわたる灌流は、腫瘍を治療剤に完全に曝露することによって、疾患の治療のための利益をもたらし得る。一実施形態において、そのような方法は、全身循環へのアクセスが不十分な腫瘍の領域へのトール様受容体の送達をより良く得ることができる。別の実施形態において、そのような方法は、末梢静脈を介して、又は腫瘍間直接注射を介して従来の全身送達と比較して、非標的組織に送達されるより少ないトール様受容体アゴニストを有する、より高い濃度のトール様受容体アゴニストをそのような腫瘍に送達する。一実施形態において、そのような方法は、サイズの縮小、成長速度の縮小、又は固形腫瘍の収縮若しくは除去をもたらす。
【0080】
本発明の方法はまた、HAI又は特定のセクタ若しくはセグメントへの選択的注入を実施する前に肝臓の右葉及び左葉につながる血管をマッピングすること、及び必要に応じて、肝臓につながらない、又はそうでなければ標的ではない血管を閉塞することを含み得る。いくつかの実施形態において、注入の前に、患者は、例えば、一般的な大腿動脈アプローチを介して、マッピング血管造影を受けることができる。
【0081】
体内の血管をマッピングし、治療薬の送達のための方法は、当業者に周知である。閉塞は、例えば、治験責任医師がオフターゲット動脈又は血管を遮断することを可能にし、それによって修飾細胞の肝臓への送達を最適化する、マイクロコイル塞栓術の使用によって達成され得る。マイクロコイル塞栓術は、必要に応じて、例えば、TLR9アゴニストを含む薬学的組成物の最適な注入を促進するために、第1の用量のTLR9アゴニストを投与する前に行うことができる。別の実施形態において、滅菌スポンジ(例えば、GELFOAM)を使用することができる。この点で、滅菌スポンジを切断して、カテーテルに押し込むことができる。別の実施形態において、滅菌スポンジは、顆粒として提供され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約0.01mg、約0.03mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、又は約8mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101は、12mg、16mg、及び20mgの用量で投与される。ミリグラム量のSD-101(例えば、約2mg)の投与は、図1に例示される組成物の約2mgの投与を記載する。例えば、そのような量のSD-101(例えば、約2mgの量)は、そのような量のSD-101に加えて、他の関連化合物及び非関連化合物などの材料を含有する組成物内にも存在し得る。等価モル量の他の薬学的に許容される塩もまた、企図される。
【0083】
いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約0.01mg~約10mg、約0.01mg~約8mg、及び約0.01mg~約4mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約2mg~約10mg、約2mg~約8mg、及び約2mg~約4mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約10mg未満、約8mg未満、約4mg未満、又は約2mg未満であり得る。そのような用量は、毎日、毎週、又は隔週投与され得る。一実施形態において、SD-101の用量は、例えば、約2mg、続いて約4mg、続いて約8mgの投与によって徐々に増加する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、サイクルを含む投与レジメンを投与することを含み得、サイクルのうちの1つ以上は、HAI及びPEDDによってSD-101を投与することを含む。本明細書で使用される場合、「サイクル」は、投与配列の繰り返しである。一実施形態において、1つのサイクルは、1サイクル当たり3回の週1回投与(すなわち、3週連続で週1回SD-101を投与すること)を含む。一実施形態において、本発明による治療のサイクルは、SD-101投与の期間、続いて「オフ」期間又は休止期間を含み得る。別の実施形態において、1サイクル当たり3回の週1回投与に加えて、サイクルは、SD-101の週1回の投与後の休止期間として1週間、2週間、3週間、又は4週間を更に含む。更に別の実施形態において、1サイクル当たり3回の週1回投与に加えて、サイクルは、SD-101の毎週の投与後の休止期間として約38日を更に含む。別の実施形態において、サイクル全体は、約52日を含む。別の実施形態において、投与レジメンは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又はそれ以上のサイクルを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、本発明は、肝臓における固形腫瘍(例えば、ブドウ膜メラノーマなどのメラノーマの転移である腫瘍)を治療するための薬剤の製造におけるTLR9アゴニストの使用に関し、当該方法は、TLR9アゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含み、TLR9アゴニストは、肝臓のそのような固形腫瘍にHAIによってデバイスを通じて投与される。
【0086】
いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて0.5mgの用量で転移性ブドウ膜メラノーマの治療のために投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を通じて更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを通じて、0.5mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。他の実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、0.5mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブ及びニボルマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、0.5mgの用量で投与される。
【0087】
いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて2mgの用量で転移性ブドウ膜メラノーマの治療のために投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を通じて更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを通じて、2mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。他の実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、2mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブ及びニボルマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、2mgの用量で投与される。
【0088】
いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて4mgの用量で転移性ブドウ膜メラノーマの治療のために投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を通じて更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを通じて、4mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。他の実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、4mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブ及びニボルマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、4mgの用量で投与される。
【0089】
いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて8mgの用量で転移性ブドウ膜メラノーマの治療のために投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を通じて更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを通じて、8mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。他の実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、8mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、HAIを通じて、かつイピリムマブ及びニボルマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを通じて、8mgの用量で投与される。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、標的病変の治療をもたらす。この実施形態において、本発明の方法は、全ての標的病変の消失を含む完全奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ベースラインの合計最長径を基準として、標的病変の最長径の合計の少なくとも30%の減少を含む部分奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、治療開始以降の最小の合計最長径を基準として、部分奏効を認めるのに十分な縮小も、進行性疾患を認めるのに十分な増加もない、標的病変の安定疾患をもたらし得る。そのような実施形態において、進行性疾患は、治療開始以降の記録された最小の合計最長径又は1つ以上の新たな病変の出現を基準として、標的病変の合計最長径の少なくとも20%の増加を特徴とする。この合計は、5mmの絶対的な増加を示す必要がある。
【0091】
別の実施形態において、本発明の方法は、非標的病変の治療をもたらす。この実施形態において、本発明の方法は、全ての非標的病変の消失を含む完全奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1つ以上の非標的病変の持続性をもたらすが、完全奏効又は進行性疾患をもたらさない。そのような実施形態において、進行性疾患は、既存の非標的病変の明確な進行、及び/又は1つ以上の新たな病変の出現を特徴とする。
【0092】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、RECIST v.1.1による全奏効率などの有益な全奏効率をもたらす。これらの実施形態において、本発明の方法は、完全奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の完全奏効、非標的病変の完全奏効を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する完全奏効、非標的病変に対する非完全奏効及び非進行性疾患を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する部分奏効、非標的病変に対する非進行性疾患を示し、新たな病変を示さない。別の実施形態において、本発明の方法は、安定した疾患である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の安定した疾患、非標的病変の非進行性病変を示し、新たな病変を示さない。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、全奏効期間の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、全奏効期間は、完全奏効又は部分奏効について測定基準が満たされる時間(いずれか最初に記録される)から、再発又は進行性疾患が客観的に文書化された最初の日まで(治療開始以降記録された最小の測定値を進行性疾患の基準として)測定される。全体的な完全奏効期間は、完全奏効の測定基準が最初に満たされた時点から、進行性疾患が客観的に文書化された最初の日まで測定することができる。いくつかの実施形態において、安定疾患期間は、ベースライン測定値を含む治療開始以降記録された最小の測定値を基準として、治療の開始から進行の基準が満たされるまで測定される。
【0094】
更に他の実施形態において、本発明の方法は、改善された全生存率をもたらす。例えば、全生存期間は、登録日から死亡時まで計算することができる。最終有効性分析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、最後に生存が確認された日で打ち切られる。
【0095】
他の実施形態において、本発明の方法は、無増悪生存をもたらす。例えば、無増悪生存期間は、再発(又は疾患発症の他の明確な指標)を文書化した日、又は死亡日のいずれか先に発生した日から算出することができる。再発が文書化されておらず、最終有効性解析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、再発がないことを文書化する最後の放射線学的証拠の日で打ち切られる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、mRECISTによる全奏効率などの有益な全奏効率をもたらす。これらの実施形態において、本発明の方法は、完全奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の完全奏効、非標的病変の完全奏効を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する完全奏効、非標的病変に対する非完全奏効及び不完全奏効を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全体奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する部分奏効、非標的病変に対する非進行性疾患を示し、新たな病変を示さない。別の実施形態において、本発明の方法は、安定した疾患である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の安定した疾患、非標的病変の非進行性病変を示し、新たな病変を示さない。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、iRECISTによる全奏効率などの有益な全奏効率をもたらす。
【0098】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、SD-101の投与は、腫瘍負荷の低減をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍負荷は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%減少する。
【0099】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、SD-101の投与は、腫瘍進行の低減をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍進行は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%減少する。
【0100】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、SD-101の投与は、肝臓MDSCコンパートメントを再プログラムして、肝転移の免疫制御を可能にし、及び/又はMDSCの排除によって全身抗PD-1療法への応答性を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、MDSCの制御において優れている。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ブドウ膜メラノーマの肝転移を治療するための方法を含み、SD-101の投与は、MDSC細胞(CD11b+Gr1+)、単球性MDSC(M-MDSC;CD11b+Ly6C+)細胞、又は顆粒球性MDSC(G-MDSC;CD11b+LY6G+)細胞の頻度を低減させる。別の実施形態によれば、本発明の方法は、M1マクロファージを増強する。更に別の実施形態によれば、本発明の方法は、M2マクロファージを減少させる。
【0101】
別の実施形態において、本発明の方法は、NFκBリン酸化を増加させる。更に追加の実施形態において、本発明の方法は、IL-6を増加させる。別の実施形態において、本発明の方法は、IL10を増加させる。更に追加の実施形態において、本発明の方法は、IL-29を増加させる。別の実施形態において、本発明の方法は、IFNαを増加させる。更なる実施形態として、本発明の方法は、STAT3リン酸化を減少させる。
【実施例
【0102】
本発明は、以下の実施例で更に例示及び/又は実証され、これは、例示/実証のみを目的として示され、いずれにせよ本発明を限定することを意図するものではない。
【0103】
実施例1
本実施例では、例示的なTRL9アゴニストの局所的な血管内注入は、全身的に注入されたCPIに対する応答性を高め得ると仮定した。
【0104】
この点で、確立されたMC38-CEA-Luc LMを有するマウスを、CPI、例えば、抗PD-1抗体(250μg/マウス)の腹腔内送達を伴って又は伴わずに、TLR9アゴニスト、すなわち、ODN-2395(30μg/マウス)の局所送達で処置した。8~12週の雄C57/BL6マウスに、0.5e6のMC38-CEA-Luc細胞で脾臓内に1週間チャレンジした。生物発光をIVISによって測定し、D0、D+3、及びD+6のIPを介した250μg/マウスの抗PD1抗体を伴って又は伴わずに、PVを介して30μg/マウスODN2395で処置する前に、D0にマウスを無作為化した。PVを介してPBS処置したマウスを、対照として使用した。腫瘍進行は、D+2、D+4、D+7、D+10、及びD+12にモニタリングした。
【0105】
図2A~2Bは、腫瘍進行に対する例示的なTLR9アゴニストとCPIとの組み合わせの効果を示す。図に示されるように、LM増殖の対照は、抗PD-1(p<0.01)又は対照(例えば、PBS)処置と比較して、組み合わせ処置で有意に高かった(p<0.05)。図2Aにおいて、PBS(PV)、ODN 30μg(PV)、抗PD-1 250μg(IP)+PBS(PV)、及び抗PD-1 250μg(IP)+ODN 30μg(PV)を、グラフ(左から右、Y軸に最も近いPBS)に示す。図2Bにおいて、腫瘍増殖を、D+2、D+4、D+7、D+10、及びD+12にIVIS画像によってモニタリングした。腫瘍進行を、二元配置ANOVAによって分析し、続いてTukey事後検定によって分析した。グラフでは、経時的に、Ctrl、抗PD-1、ODN、及び抗PD-1+ODNのD0に対する倍率変化が示され、Ctrlは、D0に対する最大の倍率変化を示し、抗PD-1+ODNは、最小を示す。
【0106】
ヒトMDSC(hu-MDSC)に対するTLR9活性化の影響を研究するために、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)をODN-2395又はSD-101で処理した。図3A~3Dに示されるように、両方が、フローサイトメトリー(FC)分析によって決定されるように、PD-L1発現の増加とともに、非線形用量依存的な様式でhu-MDSC(CD11b+CD33+HLADR-)集団を減少させることが見出された。この研究では、ヒトPBMCを、Leukoreduction Reservoir System(LRS)チャンバから単離した。1e6/mlのPBMCを、増加する濃度(0.04~10μM)のSD-101、ODN2395、及びctrl ODN5328(1μM)で48時間処理した。図3Aにおいて、MDSC及びPD-L1発現の表現型分析のためのゲーティング戦略を示す。図3B~3Cにおいて、MDSC集団及びそれらの対応するPD-L1発現を評価した。3回の複製を有する4人のドナーを使用し、データを、平均値±SEMで表した。図3Dにおいて、(a)CD4、(b)、CD8(c)、及びCD69を、FCによって評価した。3回の複製を有する3人のドナーを使用した。これらの図は、ODN2395又はSD-101によるTLR9刺激が、PBMCからのMDSC生成を阻害することを示す。
【0107】
更に、Luminexを使用することにより、ODN-2395及びSD-101が、下流サイトカインIL-6及びIL-10とともに、IL-29、IFNα、及びNFκBの発現を増強したことを示された。図4A~4Dにおいて、ヒトPBMCを、増加する用量(0.04~10μM)のSD-101(左ボックス)、(0.04~3μM)のODN2395(右ボックス)、及びctrl ODN5328(1μM)で48時間処理した。Luminex分析を用いて、IL-29(図4A)、IFNα(図4B)、IL-6(図4C)、及びIL-10(図4D)について細胞上清を分析した。2人のドナー及び2つの複製物を、使用した。NT、Ctrl ODN、及び増加する用量(0.04~3μM)を、各群のX軸上に、左から右に開始して示す。図3A~3Dは、ODN2395又はSD-101によるTLR9刺激が、NFκB及びIFNα制御サイトカイン産生を増強することを示す。
【0108】
更に、ヒトPBMCからのhu-MDSCの分化を調節する際のSD-101の効果を調査するために、ヒトPBMCを、図5A~5Dに示すように、SD-101の存在下又は不在下で、IL6+GM-CSFで処理した。この研究では、ヒトPBMCを、断続的に又は1回、48時間、0.3μMのSD-101を伴う/伴わない、20ng/mlのIL6及びGM-CSFで7日間処理した。図5Aにおいて、MDSC(CD11b+CD33+HLADR-)の表現型分析のためのゲーティング戦略を示す。図5Bにおいて、治療プロトコルを示す。図5Cにおいて、MDSC及びそのサブ集団におけるTLR9Aの効果を示す。図5Dにおいて、PBMCをIL6及びGM-CSFの存在下でMDSCに分化させ、0.3μMのSD-101を用いて/用いずに48時間1回処理し、7日後、FCを実施して、MDSC集団(8人のドナー)をモニタリングした。データを、平均値±SEMで表した。この点で、FC分析を用いることによって、SD-101は、IL6+GM-CSFによって誘導されるhu-MDSCの発達を遮断し、より免疫抑制性の高い単球性MDSCサブタイプを優先的に制限し、また、M1マクロファージ分極を駆動することが見出された。更に、SD-101を48時間1回のみ処置するだけで、hu-MDSC分化を2週間阻害するのに十分であった。したがって、SD-101によるTLR9刺激が、ヒトMDSCプログラミングを阻害することが示された。
【0109】
要約すると、TLR9刺激は、マウスモデルにおける肝転移を制御するチェックポイント療法の能力を増強する。TLR9アゴニストは、T細胞集団に影響を与えることなく、PBMC由来のMDSCを阻害し、MDSC PD-L1発現を増強する。ODN2395及びSD-101は、二相性様式で、IFNα、IL29(IFNα依存性サイトカイン)、IL6及びIL10(NFκB依存性サイトカイン)の産生を調節する。SD-101は、MDSCプログラミングを阻害し、単一処理は、この抑制効果を誘発するのに十分である。
【0110】
したがって、インビトロ及びインビボの所見は両方とも、LMモデルにおける局所TLR9刺激がMDSCの排除によって全身抗PD-1療法への応答性を改善し、血液hu-MDSCへの効果がインビトロで確認されることを示唆している。更に、MDSC間のTLR9刺激に応答して増加したPD-L1発現は、抗PD-1効果を更に増強した。したがって、TLR9アゴニストの局所注入を全身性抗PD-1薬剤と組み合わせることは、MDSCプログラミングを抑制することによって抗PD-1療法への応答性を改善することを使用して、肝臓腫瘍を治療し、肝内免疫抑制を提供し得る。
【0111】
実施例2
本実施例では、TRL9アゴニストの局所的な血管内注入は、肝転移(LM)の免疫制御を可能にするために肝臓MDSC区画を再プログラムし得ると仮定した。クラスCのTLR9アゴニスト、例えば、ODN-2395の効果は、LM進行及び肝臓MDSC集団に対するその影響を阻害することにおいて評価された。特に、LM進行の制御及び肝臓MDSC集団サイズへの影響に関して、ODN-2395の局所的な血管内注入をODN-2395の全身送達と比較した。
【0112】
C57/BL6マウスに、脾臓内経路を介して、2.5e6 MC38-CEA-Luc細胞でチャレンジした。1週間後、マウスを、門脈(PV:局所)を介して1、3、10、若しくは30μgのODN-2395、又は尾静脈(TV)を通じて30μgの静脈内(全身)で処置した。マウス門脈を通じた薬剤の投与は、動物肝臓への局所投与をもたらす。腫瘍負荷を、生物発光を評価することによって、ODN投与から24時間及び48時間後に測定した。CD45+細胞を単離し、FACS分析を行って、TLR9の下流のシグナル伝達事象とともに、MDSC、単球性MDSC(M-MDSC)、及びM1マクロファージサブセットを定量化した。
【0113】
図6は、LMを開発するためのスキーマ/方法及び治療プロトコルを示す。8~12週齢の雄C57/BL6マウスに、2.5e6 MC38-CEA-Luc細胞を用いた脾臓内経路を介してチャレンジし、1週間増殖させた。生物発光値を、IVISによって決定し、マウスを、それに応じて無作為化し、PVを介して1、3、10、30μg/マウスのODN-2395、及びTVを介して30μg/マウスのODN-2395で処置した。D+2処置後に関するその後の研究では、マウスを殺処分し、肝臓を採取して、CD45細胞を単離した。次いで、単離したCD45 NPCを、MDSC及びマクロファージについて評価した。
【0114】
図7A~7Bは、腫瘍進行へのODN-2395の効果を示す。特に、図7Aは、PVを介した1、3、10、30μg/マウスのODN-2395、及びTVを介した30μg/マウスのODN-2395の、処置当日(D0)、D1、及びD2の腫瘍成長/負荷を示す。腫瘍進行を、二元配置ANOVAによって分析し、続いてTukey事後検定によって分析した(*p<0.05)。更に、図7Bは、PV及びTVを介して30μgのODN2395によって処置された腫瘍負荷の生物発光及びP値を示す。図7A~7Bに示されるように、(TVと比較して)PVを介して投与された30μgのODN-2395は、腫瘍負荷を著しく低減させた(p<0.01)。
【0115】
図8A~8Dは、LMにおけるMDSC集団へのODN-2395の効果を示す。この点で、図8Aは、FACSによってLMから単離されたCD45細胞を分析するためのゲーティング戦略を示す。更に、図8B、8C、及び8Dは、それぞれ、PVを介した1、3、10、30μg/マウスのODN-2395、及びTVを介した30μg/マウスのODN-2395について、測定されたMDSC細胞(CD11b+Gr1+)、単球性MDSC(M-MDSC;CD11b+Ly6C+)細胞、及び顆粒球性MDSC(G-MDSC;CD11b+LY6G+)細胞を示す。図8B及び8Cに示されるように、PVを介した30μgのODN-2395は、TVを介して30μgのODN-2395を受けたマウスと比較して、MDSC及びM-MDSCの制御において優れており、特に、PVを介して30μgのODN-2395で送達された場合に、ODN-2395によって好ましく再プログラムされ得る増加した腫瘍抑制性TMEを示唆している。
【0116】
図9A~9Cは、LMにおけるM1及びM2マクロファージ集団へのODN-2395の効果を示す。この点で、図9Aは、M1及びM2マクロファージについて、LMから単離されたCD45+細胞を分析するためのゲーティング戦略を示す。特に、表現型分析が、示される。図9B及び9Cは、PVを介して1、3、10、30μg/マウスのODN-2395、及びTVを介して30μg/マウスのODN-2395について、測定されたM1マクロファージ細胞集団(F4/80CD38EGR2)及びM2マクロファージ細胞集団(F4/80CD38EGR2)を示す。この点で、PVを介してODN-2395を受けたマウスは、TVを介して30μgと比較して、M1マクロファージ集団を有意に増加させ、M2集団を減少させた。このデータは、特に、PVを介した30μgのODN-2395が、CD11b+F4/80+単球細胞を炎症誘発性/抗腫瘍性のM1マクロファージに偏向させ、MDSCに加えて、血管新生促進のM2集団も減少させることを示唆している。
【0117】
図10A~10Bは、NFκBシグナル伝達へのODN-2395の効果を示す。特に、図10Aは、PV及びTVによる30μgODN2395のpNFκB(p65S536)、総NFκB、pSTAT3Y705、STAT3、及びIL-6のウェスタンブロッティングを示し、GAPDHをタンパク質対照として使用する。更に、図10Bは、PV及びTVによる30μgのODN-2395の密度測定分析を示す。この点で、PVを介して注入した場合、30μgのODN-2395は、NFκBリン酸化を増加させ、IL-6の同時増加を伴い、TV注入と比較して、LMにおけるSTAT3リン酸化を低減させた。
【0118】
図11A~11Bは、NFκBシグナル活性へのODN-2395濃度の効果を示し、レポーターベースのアッセイにおいて、HEK293-ブルー細胞を、ODN-2395及びSD-101で増加する用量(0.004~10μM)で21時間処理した。TLR9を介したNFκBシグナル伝達の活性化におけるODN-2395の用量依存的効果を評価するために、これを行った。この点で、図11Aの放出分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)は、650nmでの吸光度を測定することによって決定した。更に、図11Bは、NFκBシグナル活性へのクロロキン(Chq)の効果を示す。この点で、細胞をクロロキン(1μg/ml)で45分間前処理した後、ODN-2395を増加する濃度(0.012~3μM)で21時間添加し、650nmでの吸光度を測定した。Chq前処理を伴って又は伴わずにTNFαで処理した細胞の650nmにおける吸光度を、図11Bに示す。図11Bに示されるように、クロロキンは、TLR9アゴニストが媒介するNFκBの活性化を阻害し、ODN-2395が、TLR9と相互作用することによってNFκB経路を活性化することを示した。
【0119】
上記を考慮して、30μgのODN-2395のインビボPV送達が腫瘍負荷を減少させ、MDSC(主に免疫抑制性の高いM-MDSC亜集団)の頻度を低減させ、炎症誘発性/抗腫瘍性M1マクロファージを増強し、免疫抑制性M2マクロファージを同時に減少させることが判定された。更に、分子レベルでは、ODN-2395は、IL6発現とともにNFκBのリン酸化を増加させ、STAT3のリン酸化を減少させた。加えて、インビトロSEAPアッセイは、ODN-2395媒介性NFκB活性化がTLR9依存性であることを確認した。
【0120】
要言すれば、PVを介して投与された30μgのODN-2395は、24時間での腫瘍負荷の低減において(TVと比較して)より効率的であり、48時間まで持続した。ODN-2395の局所送達はまた、MDSCの頻度を低減させ、主にLMにおけるより免疫抑制性の高いM-MDSC亜集団を低減させた。更に、ODN-2395の局所送達はまた、炎症誘発性/抗腫瘍性M1マクロファージを増強した。加えて、NFκB依存性可溶性アルカリホスファターゼアッセイ(例えば、SEAP)を使用して、ODN-2395が、NFκB転写因子活性を用量依存的に増強したことが判定された(p<0.001)。更に、腫瘍溶解物のウエスタンブロットデータは、PVによるODN送達が、IVと比較して、NFκB(pP65)活性及びIL-6の産生を有意に増加させ、STAT3活性を低減させることを示した。
【0121】
実施例3
この実施例では、SD-101 HAI/PEDD一般毒性研究を、家畜ブタに対して実施した。この研究は、10mL/kg/日の体積を使用して0(ビヒクル)の投薬量で肝動脈内に直接投与するためのTriNav(登録商標)カテーテルを使用して実施した。評価されるべき投薬量は、0(ビヒクル)、2、4、及び8mgのSD-101であった。0日目、7日目、及び14日目に2匹のブタ/群に、3回のSD-101投与を行い、15日目に剖検を行った。臨床観察、体重、及び食物摂取を含む、標準的な評価が、研究全体を通して行われた。完全な獣医学的身体検査は、薬物投与期間の前並びにSD-101の2回目及び3回目の投与後に行われた。
【0122】
毒物動態(TK)分析のための連続血液サンプル(及び最大2つの代謝産物)を、0日目及び14日目に、SD-101の曝露及び処分の計算のために収集した。抗薬物抗体(ADA)分析の可能性についても、サンプルを、これらの同日に採取した。血清サンプルを、サイトカイン分析のために、処置前、並びに0日目(投与前)及び14日目に収集した。徹底した血液学、臨床化学、及び凝固パネルは、処置前及び剖検直前に行われた。以下の臓器重量が、測定され、顕微鏡的組織病理学検査が、肝臓(4つの葉)、肺、脾臓、胸腺、腎臓、心臓、リンパ節(ドレイン及び非ドレイン)、腸関連リンパ組織、骨髄、脳、並びに肉眼的病変において行われた。SD-101及び最大2つの代謝産物の組織レベルが、肝臓(4つの葉)、肺、脾臓、胸腺、腎臓、心臓、リンパ節(ドレイン及び非ドレイン)、腸関連リンパ組織、骨髄、脳、並びに肉眼的病変において行われた。研究の全てのブタにおいて、SD-101を肝動脈に注入した後の肝毒性の証拠はなかった。
【0123】
上記に加えて、動物が0、0.5、4、又は8mgの用量でSD-101の単回投与を受けた反復研究が行われた。以前の研究と同様に、治療関連の副作用は、観察されなかった。重要なことに、血清薬物動態分析は、ブタにおけるHAI後のSD-101の全身レベルが、皮下注射後の霊長類研究で観察されたものより100倍低いことを示した。
【0124】
実施例4
この実施例では、例えば、TriNav(登録商標)注入システムを用いた、PEDD/HAIを介したTLR9アゴニストの投与と、針注射を介したTLR9アゴニストの投与との比較を、研究した。特に、この研究は、蛍光タグ付きトール様受容体9(TLR9)クラスCアゴニストSD-101(Cy5.5-SD-101)及びツール分子オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)2395 Oligo(IRD800-ODN2395)の肝内局在化に対する投与経路(局所領域PEDD注入に対して針注射を介した肝組織への直接注射)に焦点を当てた。
【0125】
治療分布に対するPEDDデバイスの影響を評価するために、ブタモデルは、ヒト肝臓と比較して、肝血管系、細胞構造、及び内臓構造の類似性に基づいて選択された。ブタモデルは、治療薬の局所投与の調査で広く使用されている。肝血管の解剖学的構造は、PEDD TriNav(登録商標)デバイスのサイズ範囲表示(直径1.5~3.5mm)に適合する。
【0126】
この研究は、45~65kgの体重である8~11週齢の雌Yorkshire Crossブタで実施された。
【0127】
TLR9アゴニストSD-101配列オリゴを合成し、Cy5.5(ex.685nm、em.706nm)のフルオロフォアにコンジュゲートした。
【0128】
TLR9アゴニストODN2395配列オリゴを合成し、IRDye800(ex.791nm、em.809nm)のフルオロフォアにコンジュゲートした。
【0129】
研究設計
合計8頭の健康な雌ブタが、本研究のために選択された。最初のコホート動物(n=4)は、PEDDデバイス(TriNav(登録商標)、カタログ番号TNV-21120-35)を用いたHAIを介してIRD800-ODN2395を受容し、続いてCy5.5-SD-101の針注射を用いて受容した。第2のコホート動物(n=4)は、PEDDデバイスを用いたHAIを介してCy5.5-SD-101を受容し、続いてIRD800-ODN2395の針注射を用いて受容した。
【0130】
針注射
21ゲージ、15cmの長さの経皮アクセス針を、超音波ガイダンスの下、肝臓の右側葉又は右中葉に挿入した。次いで、3mLの量のオリゴ溶液を、0.3~0.6mL/秒の速度で、手動で注射した。この速度及び量は、腫瘍への治療薬の針注射を使用する臨床実践と一致する。
【0131】
HAI
HAIは、TriNav(登録商標)注入システムを使用して実施した。TriNav(登録商標)は、心臓サイクルから生じる、又は注入によって生成されるような局所的な圧力変化に応答する一方向バルブを備える単腔カテーテルである。バルブ構造は、遠位血管圧及び血流を調節する。同様に、これは、血管系内の接触時間の増加に起因して、治療分布及び初回通過吸収を変化させ得る。
【0132】
Seldinger技術を使用して、大腿動脈からアクセスした。5Fイントロデューサシースを、部位に固定した。5F血管造影カテーテルを使用して、血管造影を行い、肝動脈解剖学的構造を特定した。次いで、左中葉及び/又は左側葉に供給する直径1.5~3.5mmの血管(平均2.59mm±0.21mm SE)が、選択された。TriNav(登録商標)注入システムを、標的血管の位置に追跡した。Quantien圧力モニタに接続された侵襲性血圧(IBP)トランスデューサを使用して、注入システムの管腔(マイクロバルブの遠位)を通る及び血管造影カテーテルの管腔(マイクロバルブの近位)を通る圧力を測定した。次いで、10mLの治療用シリンジをシリンジポンプに入れ、溶液をTriNav(登録商標)デバイスを通じて2ml/分の速度で合計5分間注入した。
【0133】
血液サンプル収集
肝酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])に対する手順及び治療効果を評価した。介入前、標的血管内のデバイス配置後、HAIの直後(t=0)、及びその後の合計90分間、10分毎に血液を採血した。
【0134】
組織調製
注入後に動物を殺処分し、血液サンプルを収集し、肝臓を除去した。肝臓の各葉を分離し、薬物取り込みのパターンを特定するために、Pearl Trilogy Imaging Systemを用いた近赤外線画像を行った。次いで、各葉を1cmの厚さの切片(図12)に切断し、Pearlシステムを使用して両組織面上で別々に画像化した(85μm分解能、700nm、800nm、及び白色光チャネル)。組織内のODNツール化合物の存在について、肝臓の全体積を分析した。
【0135】
治療的シグナル定量化
Pearl画像システムによって生成された組織の画像は、別々の700nm及び800nmの蛍光チャネルで構成された。画像内で、バックグラウンドサンプル調製プレート、正常な未処理肝組織、及び治療された肝組織について、異なる発光強度レベルが観察された。特注設計されたMATLABグラフィカルユーザインタフェース(GUI)は、シグナルのこれらの別個の領域を特定するために開発された(図13A及び13B)。各動物の肝臓の未処理領域から採取した切片(n=3)を画像化して、ピクセル光度値のヒストグラムを生成した。「低」強度(I)値限界を、サンプル調製プレートに関連するピクセル強度について特定した。「高」強度値限界を、未処理の非標的組織で測定された最大ピクセル強度で決定した。低(n=3)及び高(n=3)測定値の各々について平均を得て、組織閾値を決定した。次いで、組織切片は、閾値に基づいて処理した。
【0136】
700nm(Cy5.5-SD-101)及び800nm(IRD800-ODN2395)ツール化合物について、「高」閾値のピクセル強度よりも大きいピクセル強度によって特定される、処理された標的組織から生じるシグナルを確立した。発光単位(lu)の総シグナル強度は、これらの基準を満たすピクセルのluの合計によって計算された。これにより、針注射(IRD800-ODN2395の場合はn=4、Cy5.5-SD-101の場合はn=4、n=8の総測定値)及びHA注入(IRD800-ODN2395の場合はn=4、Cy5.5-SD-101の場合はn=4、n=8の総測定値)について観察されたシグナルに相関するデータが得られた。各切片の両側の平均luを決定した。次いで、全ての切片についてのこれらの測定値の合計を、各対象について計算し、次いで、2つの注入方法のluの合計を、95%信頼区間での2サンプル等価検定を使用して比較した。
【0137】
カバレッジ体積は、各切片の両側の「高」閾値よりも大きい強度を表示するピクセル数の平均を取ることによって計算された。次いで、この値を、全ての組織切片(針注射(IRD800-ODN2395の場合はn=4、Cy5.5-SD-101の場合はn=4、n=8の総測定値)及びHAI(IRD800-ODN2395の場合はn=4、Cy5.5-SD-101の場合はn=4、n=8の総測定値)について組織量(85μm×85μm ピクセル×1cm 切片深さ)に変換した。次いで、2つの注入方法の組織量を、95%信頼区間での2サンプル等価検定を使用して比較した。
【0138】
結果
組織画像
針注射(図14A及び図15A)と比較して、PEDDデバイス(図14B及び図15B)を使用して局所動脈ネットワーク内で治療が送達された場合、肝組織の近赤外線画像は、標識されたODN分布のパターンにおいて明確な差を示した。
【0139】
治療的送達
ODNの各々について、肝組織に記録された総シグナルの分析が、行われた。標識されたODN2395について測定されたシグナル強度は、PEDDデバイス(n=4、46483±4285lu SE)を使用して注入した場合、針による注射(n=4、16438±4793lu SE)よりも有意に大きかった(p=0.003)(図16A)。標識されたSD-101のシグナル強度(n=4、51511±21267lu SE)は、動物間の変動性がより高いため、針注射(n=4、22112±12648lu SE)と有意差はなかった(p=0.15)(図16A)。PEDD(n=8、48997±10088 lu SE)によって送達された両方のODNの複合シグナル強度は、針注射(n=8、19275±6352 lu SE)(p=0.015)によって送達された場合よりも有意に大きかった(図16B)。
【0140】
治療的カバレッジ
ODNの各々について、肝組織に記録された総シグナルの分析が、行われた。標識されたODN2395について測定された組織カバレッジは、針による注射(n=4、15.7±3.3cmSE)よりも、PEDDデバイス(n=4、159.2±36.6cmSE)を使用して注入した場合に有意に大きかった(p=0.015)(図17A)。標識されたSD-101(n=4、38.8±10.9cmSE)の組織カバレッジもまた、針注射(n=4、11.3±4.7cmSE)よりも有意に大きかった(p=0.04)(図17A)。PEDD(n=8、99.0±28.8cmSE)によって送達された両方の化合物の複合シグナル強度は、針注射(n=8、13.5±2.9cmSE)によって送達された場合よりも有意に大きかった(p=0.011)(図17B)。
【0141】
肝臓酵素レベル
Minitabソフトウェア(Minitab LLC,Chicago,IL)を使用して、AST又はALTレベルが手順前ベースラインレベルと比較して有意な変化を経験したかどうかを判断するために、一対t検定を実施した。採血の経過中、AST又はALTのいずれにおいても有意な変化は、観察されなかった(表2及び図18)。
【表2】
【0142】
この研究の結果は、直接注射の限界を更に強化する。肝臓内に注射された治療薬は、組織内で比較的限られた拡散を示し、しばしば肝臓の1~2の1cmの厚さの部分に限定された。この分布パターンは、多発性びまん性疾患を治療するには不十分であろう。
【0143】
PEDDは、治療的送達の代替モードを提供する。PEDDは、一方向のマイクロバルブ構造を備えたカテーテルシステムを使用して実施される。血流の中に配置される場合、この管は、血流及び血圧を物理的に調節する。前方血流は、デバイスの配置後に保持され、標的血管ネットワークへの治療薬の下流への移行を可能にする。注入中、圧力は、非標的組織への逆流のリスクなしに、動脈ネットワーク内で局所的に生成され得る。
【0144】
この研究では、正常なブタ肝組織を、標識ODN配列の分布及び組織取り込みを定量化する目的で、PEDDデバイスを使用して処置した。肝組織の1cm切片の定量的近赤外線画像を使用して、標識化合物に曝露して保持する組織の全体積を定量化した。PEDD注入後にODNに曝露した組織の体積は、針注射によって曝露した組織の7倍以上であった(それぞれ、99.0±28.8cm3 SE対13.5±2.9cm3)。予想外に、治療取り込みの尺度である総光度は、同様にPEDD処置組織において有意に高かった(48997±10088 lu SE PEDD対19275±6352 lu SE針注射、2.5倍増加)。
【0145】
直接針注射は、標的組織に全体積の治療薬を送達することが期待され、高い送達効率をもたらした。しかしながら、PEDDと比較して有意に低い光度が観察された。これは、逆流として知られる現象と関連してもよく、逆流は、注入物が針の周りに移動し、針路から流出する場合に生じる。針の挿入速度、挿入角度、注入速度、針の直径、及び組織圧力など、いくつかの要因がこの現象の大きさに影響を及ぼす。逆流は、腫瘍に注射された治療薬の有効性の低下に関与している。注入されたODN体積のかなりの部分が針路を通って腹部に逆流し、より低い組織保持をもたらしたと仮定する。
【0146】
PEDDデバイスは、血流及び局所血管圧を物理的に調節し、研究で観察された高レベルのODN保持に寄与し得る。初期配置時、デバイスは、バルブの近位にある96.8mmHg±6.2mmHg SEからバルブの遠位にある57.6mmHg±8.3mmHg SEまでの圧力勾配を誘導した(n=8測定値)。圧力の低減はまた、より低い血流速度をもたらす。注入中、治療薬は、組織との接触時間が長くなり、堅牢な吸収をもたらす可能性が高い。
【0147】
PEDDデバイスの使用は、従来のカテーテルシステムと比較して正常な組織への送達を有意に減少させながら、腫瘍組織内のMAA沈着を有意に更に増加させた。この研究で処置した正常なブタ肝臓は、PEDDデバイスによって誘発された圧力勾配に応答し、ある程度の流量再配分をもたらす可能性が高い。
【0148】
しかしながら、現在のモデルには腫瘍組織が存在しなかったため、病変組織状態への差動は、観察されなかった。
【0149】
AST及びALT測定は、標識されたODNの注入後90分間にわたって実施した。この持続期間は、四塩化炭素などの既知の肝毒素の投与後に酵素レベルの有意な上昇を識別するのに十分であると文書化されている。本研究で投与される標識されたオリゴヌクレオチドの用量は、前臨床モデルにおいて治療量以下であると予測されるが、これらの結果は、PEDDによる投与経路が肝酵素の有意な上昇をもたらさなかったことを更に示す。肝毒性の徴候は、研究期間中に観察されなかった。
【0150】
要言すれば、本研究は、TriNav(登録商標)カテーテルシステムを使用したPEDD技術による注入と比較して、従来の直接針注射を介した近赤外線で標識されたODNの送達を比較するように設計された。この目的は、シグナルの強度及びシグナルの体積を、薬物保持及び組織分布の指標として定量化することであった。この点で、PEDD/TriNav(登録商標)を用いた薬物送達は、シグナル強度(薬物保持の指標)及び薬物に曝露された組織量(薬物分布の指標)の両方を有意に改善した。治療範囲のこの有意な増加は、びまん性疾患の治療における重要な因子となり得る。そのような方法論は、治療薬が、従来の針注射を使用して治療することが実用的でないか、又は不可能であろうマクロ転移及び微小転移の両方に達することを可能にし得る。
【0151】
実施例5
この研究の目的は、蛍光タグ付きトール様受容体9(TLR9)クラスCアゴニストSD-101(Cy5.5-SD-101及びIRDye800CW-SD-101)の肝内局在化に対する投与経路(エンドホールカテーテル対局所的なPEDD注入を介した)を評価することであった。
【0152】
調査化合物の送達後、2つの送達様式を比較するために、near InfraRed(近赤外線)画像を使用して、肝組織を分析した。近赤外線画像は、相対的な組織透明性のスペクトルウィンドウを利用し、がん組織の解剖学的マッピング及び同定のために広範囲に臨床的に使用されている。治療分布及び濃度の定量的全臓器分析が、達成された。
【0153】
材料及び方法
試験動物
この研究は、45~60kgの体重である8~11週齢の雌Yorkshire Crossブタ(Oak Hill Genetics、Ewing、IL)に行われた。
【0154】
オリゴヌクレオチド(ODN)被験物質
TLR9アゴニストSD-101配列オリゴを合成し、Cy5.5(ex.685nm、em.706nm)のフルオロフォアにコンジュゲートした。
【0155】
TLR9アゴニストSD-101配列オリゴを合成し、IRDye800CW(ex.767nm、em.791)にコンジュゲートした。
【0156】
研究設計
合計8頭の健康な雌ブタが、本研究のために選択された。全ての動物に2回の治療用注入を受け、最初の注入は、最初の注入の完了の15分後に、エンドホールカテーテルを使用し、続いてPEDDデバイス(TriNav(登録商標)、カタログ番号TNV-21120-35、TriSalus Life Science、Westminster CO)による2回目の注入を実施した。被験物質の注入順序を交互にし、4匹の動物はそれぞれ、最初の注入のためにエンドホールカテーテルを通じてCy5.5-SD-101又はIRD800CW-SD-101による注入を受け、4匹の動物はそれぞれ、第2の注入のためにPEDDカテーテルを通じてCy5.5-SD-101又はIRD800CW-SD-101による注入を受けた。
【0157】
この研究設計の一部として、デバイスの順序は切り替えられなかった。これは、PEDD注入がエンドホールカテーテルに関連する血行動態パターンを混乱させる可能性があるためであり、血管生理学の短期的(15~30分)変化の可能性があり、第2の注入が適時に行われるのを妨げる血管けいれんの可能性を最小限に抑えるためである。
【0158】
試験物質の調製
凍結乾燥した被験物質ペレットを、純粋なDNase遊離水中に2.5nmol/mlの濃度で再懸濁した。次いで、ODN濃縮物を1ccチューブに等分し、使用前に-60~-80℃で保管した。
【0159】
投与時に、それぞれの凍結ODN濃縮物を解凍した。ODN濃縮物を、9mLの滅菌生理食塩水で希釈して、2.5nmolの化合物を含有する10mLの総体積を生成し、注入前に10mLのポリプロピレンシリンジ(BD Bioscience,San Jose,CA)に保存した。投与量は、最適な画像シグナルを提供するために選択され、治療量以下であることが予測される。ODNを含有するシリンジを、Pearl Trilogy Imaging System(Li-Cor,Lincoln NE)を使用して画像化し、投与前に注入物の初期光度を定量化し、サンプル群間の投与量の一貫性を確保した。
【0160】
局所肝動脈注入
Seldinger技術を使用して、大腿動脈からアクセスした。5Fイントロデューサシース(Pinnacle, Terumo Medical Corporation,Somerset,NJ)を、部位に固定した。5F血管造影カテーテル(Glidecath,Terumo Medical Corporation,Somerset,NJ)を使用して、血管造影を行い、肝動脈解剖学的構造を特定した。次いで、左中葉及び/又は左側葉に供給する直径1.5~3.5mmの血管(平均2.98mm±0.13mm SE)が、選択された。次いで、エンドホールカテーテルを、標的位置まで追跡した(種々、0.018”~0.021” ID、(Direxion,Rebar-18,Renegade,Boston Scientific,Marlborough,MA)、(Excelsior 1018,Stryker Neurovascular,Fremont CA)、及び(Transit,Cordis,Miami Lakes,FL))。
【0161】
Quantien圧力モニタ(Abbott.Abbott Park,IL)に接続された侵襲性血圧(IBP)トランスデューサ(TruWave PX600,Edwards Lifesciences Corp.,Irvine CA)を使用して、注入システムの管腔(遠位端)を通る及び血管造影カテーテルの管腔(注入管腔の近位)を通る圧力を測定した。次いで、10mLの治療用シリンジをシリンジポンプ(NE-1000,New Era Pump Systems Inc.Farmingdale,NY)に入れ、第1の被験物質溶液を、エンドホールカテーテルを通じて2mL/分の速度で合計5分間注入した。この速度及び体積は、HA注入の臨床実践と一致する。注入後、デバイスを、5分間適切な位置に保ち、次いで抜去した。
【0162】
次いで、TriNav(登録商標)注入システムを、血管造影によって確認された標的血管内の全く同じ位置に追跡した。第2の注入は、代替カラーチャネルODNと同一の方法で実施した。PEDDを、注入完了後5分間、適切な位置に保った。
【0163】
組織調製
次いで、デバイス除去後に動物を殺処分し、肝臓を除去した。肝臓の各葉を分離し、薬物取り込みのパターンを特定するために、Pearl Trilogy Imaging Systemを用いた近赤外線画像を行った。次いで、実施例4(図12)に記載されるように、各葉を1cmの厚さの切片に切断し、Pearlシステムを使用して両組織面上で別々に画像化した(85μm分解能、700nm、800nm、及び白色光チャネル)。組織内のODNツール化合物の存在について、肝臓の全体積を分析した。
【0164】
治療的シグナル定量化
治療的シグナル定量化を、実施例4(図13A~13B)に記載されるプロセスに従って実施した。注入ゾーン内で処理された組織の重複を、画像内の各ピクセルに座標を割り当てることによって評価した。赤色チャネル及び緑色チャネルの両方で「高」閾値を超えるシグナルを表示するピクセルを、両方の処置が重複する領域とみなした。ピクセルを、緑色チャネルシグナル存在、赤色チャネルシグナル存在、並びに緑色及び赤色シグナル存在を重複する領域について定量化した。
【0165】
結果
被験物質の組織取り込み
肝臓の近赤外線画像を使用して、エンドホール及びPEDDデバイスによって送達された吸収されたODN被験物質のシグナル強度及び分布を定量化した(デバイス/標的されたODN当たりn=4)。データを、MiniTabソフトウェア(Minitab LLC,Chicago,IL)の2サンプルのスチューデントt検定を使用して分析した。両方のODN物質は、PEDDによって送達された場合に増加するシグナルの同じ傾向を示した(表3)。両方のODN物品(デバイス当たりn=8)のシグナル強度測定値をプールすることは、PEDDによって送達された場合のシグナル強度の有意な増加を示した(図1.p=0.033)。
【表3】
【0166】
図19は、エンドホールカテーテル又はPEDDによる送達後に肝組織に保持される標識されたODNのシグナル強度を示す。
【0167】
加えて、エンドホールデバイス対PEDDデバイスを用いて正常なブタ肝臓を処置する場合、組織カバレッジに有意差は、観察されなかった(表4)。
【表4】
【0168】
送達デバイスは、処置された組織の全量に有意な影響を与えなかったが、標識されたODNの分布は、注入間で完全に一致しなかった(表5)。いくつかの動物は、2つの注入間の分布パターンにおいて高度な相同性を示したが(図20A~20C)、他のサンプルは、不均一分布を示した(図21A~21C)。例えば、図20A~20Cは、エンドホール及びPEDDデバイスを用いた注入からの高度なシグナル重複を示す組織を示す。(a)図20Aは、エンドホールカテーテルを使用して送達されるIRD800CW-SD-101の800nmの緑色チャネル分布を示す。(b)図20Bは、PEDDによって送達されるCy5.5-SD-101の700nmの赤色チャネル分布を示す。(c)図20Cは、注入デバイスとの分布の重複を示す複合画像を示す。図21A~20Cは、エンドホール及びPEDDデバイスを用いた注入からの低度なシグナル重複を示す組織を示す。(a)図21Aは、エンドホールカテーテルを使用して送達されたCy5.5-SD-101の700nmの赤色チャネル分布を示す。(b)図21Bは、PEDDによって送達されるIRD800CW-SD-101の800nmの緑色チャネル分布を示す。(c)図21Cは、注入デバイスとの分布の重複を示す複合画像を示す。図22は、エンドホール平均処理組織量、PEDD平均処理組織量、及び重複した同時処理組織量を比較するベン図を示す。
【表5】
【0169】
圧力調節
TriNav(登録商標)デバイスに装備された拡大可能なマイクロバルブは、局所的な血管圧力を調節するように作用する。一方向のバルブは、バルブの遠位に対してバルブの近位に存在するより高い圧力を有する局所的な圧力勾配を生成する。バルブの近位の平均圧力(ベースカテーテルを通じて測定)は、87±4mmHgであったが、遠位血管圧力は、50±7mmHgで有意に低く(p=0.0001)、血管圧力が43%低下したことを表した。エンドホールは、93±6mmHgとして測定された近位圧力及び88±9mmHgの遠位圧力では血管圧力に有意には影響しなかった。
【0170】
この研究では、エンドホール注入が最初に起こり、PEDD注入が2番目に起こるため、デバイスの順序は変更されなかったことに留意すべきである。血液中に存在する任意の標識されたODNが臓器中を循環することを可能にするために5分間を指定し、その後、PEDDデバイスを第2の注入のために血管内に配置した。この手順は、通常、両方の注入が互いに15分以内に実施されることになった。より長い循環期間が組織からいくつかの標識されたSD-101を洗浄し得、その結果、エンドホール注入と比較してPEDD注入のシグナル強度がより高くなり得る。しかしながら、この効果は、実験設計のウォッシュアウト期間に考慮された血管内からの材料の急速なウォッシュアウトよりも長い期間にわたって起こると予想され得る。以前の研究では、TriNav(登録商標)デバイスを使用して、同一の方法(n=4)でCy5.5-SD-101を注入したが、臓器分析の前に血液を最低90分間循環させた。90分間の長い循環期間を経験した対象のシグナル強度は、この研究の対象が経験した5分間と比較して有意差はなかった(それぞれ、51,511±21267 lu SE対85,272±16,523(p=0.265))。
【0171】
結論
本研究は、TriNav(登録商標)カテーテルシステムを使用したPEDD技術による注入と比較して、従来のエンドホールカテーテル注入を介した近赤外線で標識されたODNの送達を比較するように設計された。この目的は、シグナルの強度及びシグナルの量を、薬物保持及び組織分布の指標として定量化することであった。
【0172】
PEDD/TriNav(登録商標)を用いた薬物送達は、エンドホールデバイスと比較した場合、シグナル強度(薬物保持の指標)を有意に増加させた。これは、TriNav(登録商標)の配置によって誘発される血管系内の圧力及び流れの調節に関連し、結果として被験物質のより高い組織吸収をもたらし得る。エンドホールカテーテルとTriNav(登録商標)との間の組織カバレッジパターンも、同じ位置に注入されたにもかかわらず分岐した。血流は、局所圧の変化及び血管内の注入管腔の位置に対して感受性がある。TriNav(登録商標)デバイスに取り付けられたマイクロバルブは、血圧及び流量の局所的な低下を引き起こしながら、血管内のデバイスの注入管腔を自立させる傾向がある。TriNav(登録商標)デバイスのこれらの物理的特性は、この研究で観察された血流の再分配及び関連する治療的堆積をもたらした可能性が高い。
【0173】
実施例6
この実施例では、TLR9アゴニストSD-101の肝臓を標的とした注入を、ステージ4 UMを用いたCPI療法への奏効率を向上させ、UM転移性腫瘍、例えば肝転移(LM)を改善することを目的として投与した。この点で、SD-101は、全てのUM LM病変の治療に使用することができる。更に、CPI系注入と組み合わせたSD-101の遠位効果を通じて、肝外病変も同様に免疫応答性の向上から利益を得ることができる。
【0174】
研究は、2つのフェーズ、すなわち、フェーズ1及び1bを有する。この点で、フェーズ1の主な目的は、SD-101単独のPEDD/HAIの最大耐量(MTD)又は最適用量、ニボルマブと組み合わせたSD-101のMTD又は最適用量、並びにイピリムマブ及びニボルマブの両方と組み合わせたSD-101のMTD又は最適用量の安全性を決定し、それを特定することである。更に、副次的な目的は、単剤又は二重剤のCPIを研究のフェーズ1bの部分で利用すべきかどうかを判定することである。フェーズ1bに関して、主な目的は、全身性、すなわち、静脈内(IV)、免疫学的チェックポイント遮断と組み合わせた、PEDD/HAI SD-101への固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)v1.1全奏効率(ORR)及び12カ月全成功率(OS)(共同主要評価項目)を評価することである。更に、副次的な目的は、(i)免疫療法(iRECIST)ORR、mRECIST ORR、RECIST 1.1肝特異的奏効率(HRR)、奏効期間(DOR)、全般的無増悪生存期間PFS、及び臨床的利益率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR]+SD)に対するRECISTの観点からの有効性を評価すること、並びに(ii)CPIと組み合わせたSD-101の選択されたMTD又は最適用量の安全性/毒性を評価することである。更に、以下の予備的な目的もある:(i)RECIST v1.1肝特異的無増悪生存期間(HPFS)を評価すること、(ii)全身IV CPI注入を伴う又は伴わない、SD 101のPEDD/HAI後のLMにおける病理学的反応、及び画像反応スコアとの相関を評価すること、(iii)PEDD/HAI後のSD 101の肝臓腫瘍及び血漿中濃度を評価すること、(iv)対を成したベースラインと治療中の肝腫瘍及び正常肝の生検を使用して、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、リンパ球、及びサイトカインプロファイルに対する治療の腫瘍内免疫学的影響を評価すること、(v)CTC、循環サイトカイン、及び他の免疫学的相関について連続採血を用いて、治療の末梢免疫薬力学的効果を評価すること、(vi)PEDD/HAIを介した単剤SD 101の未照射部位への効果を評価すること、(vii)経時的にECOG PSにおけるベースラインからの変化を評価すること、(viii)EORTC-QLQ-C30装置を用いて生活の質におけるベースラインからの変化を評価すること。
【0175】
本研究の全体的な設計は、図23に見られ得る。本研究は、非盲検、多施設、及び非無作為化である。
【0176】
以下に更に詳述されるように、フェーズ1において、センチネルコホートを登録して、2用量の患者内用量漸増を伴うPEDD/HAIを介して送達されるSD-101の安全性を判定する。センチネルコホート患者は、試験のコホートのうちの1つに進行する前に、最初の注入は、第1の用量レベル(0.5mg)を含み、2回目の注入は、第2の用量レベル(2mg)を含み、毒性の評価を伴う2回の注入(2週間間隔)を受ける。センチネルコホートへの患者登録は、7日間ずれている。用量制限毒性(DLT)が存在しない場合、各患者は、用量レベル1(すなわち、コホートA、8日目の用量)の第2の注入時点でコホートAに移行することができる。センチネルコホートの完了後、SD-101の増量投与は、単独で(コホートA)、ニボルマブと一緒に(コホートB)、イピリムマブ及びニボルマブを組み合わせて(コホートC)投与される。コホートB及びCは、SD-101にCPIを添加するときの安全性を最適化するために、コホートAからMTD又は最適用量を下回る1つの用量レベルを開始する。コホートCは、コホートBの完了後に開始する。標準的な3+3用量漸増設計を採用して、MTDを判定する。
【0177】
PEDD/HAIに対するSD-101のMTD又は最適用量、及びどのCPIレジメンが許容されるかを決定した後、アプローチは、フェーズ1bに進ませる。フェーズ1bの患者は、単剤又は二重薬剤のチェックポイント遮断と組み合わせて、フェーズ1から選択されるSD-101用量を受ける。フェーズ1bでは、SD-101と組み合わせた単一又は二重CPI療法の選択は、フェーズ1のコホートB及びCからの奏効率に加えて、安全性データを考慮することができる。SD-101は、2サイクルにわたって投与され、フェーズ1のコホートA、B、及びC、並びにフェーズ1bについて、サイクル毎に週1回で3回投与される。センチネルコホートでは、SD-101は、1ミニサイクルにわたって投与され、2週間間隔で送達された2回の注入で構成される。各患者に対する第1のSD-101注入の後、一晩の入院中の観察又は入院が必要とされる。第1のSD-101用量が良好に許容される場合、更なる一晩の観察又は入院は、その後のSD-101注入のための治療医師の裁量に任される。その後の注入が外来ベースで行われる場合、臨床的に安定している場合は、患者は、注入後最低6時間、退院前に観察される。SD-101 PEDD/HAIに関連して、最初の注入後に入院治療を必要とする任意のグレード2の事象がある場合、患者は、その後の各SD-101注入後に一晩の観察又は入院のために隔離され得る。
【0178】
試験対象患者基準
一実施形態によれば、本研究に含めるためには、患者は以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.スクリーニング時に18歳以上の男女
2.研究を理解し、任意の研究の手順前に書面によるインフォームドコンセントを提供できる
3.肝臓のみ又は肝臓優性疾患を伴う組織学的又は細胞学的に確認された転移性UMを有する。肝臓優性疾患は、以下のように定義される:
a.フェーズ1、コホートA-他の臓器と比較して疾患の最大部分を表す肝内転移であり、許容される肝外部位は、肺、皮膚、又は皮下組織、及び骨である。
b.フェーズ1、コホートB及びC、並びにフェーズ1b-他の臓器と比較して疾患の最大割合を表す肝内転移、又はLMの進行が患者の生命に対する多大なる脅威を表す場合。
4.登録前14日以内に、事前に細胞傷害性化学療法、標的療法、又は外部放射線療法を受けていない
5.フェーズ1のみ:研究介入の最初の投与の30日前までに、事前の免疫チェックポイント阻害による治療を受けたことがなく、進行中の免疫媒介性AEグレード2以上を有しない
フェーズ1bのみ:事前の免疫学的チェックポイント阻害による治療を受けたことがない
6.永久的な塞栓材料を用いて以前に塞栓性HAI療法を受けたことがない。注意:この研究のフェーズ1及びフェーズ1bの両方の一部で、オリゴ転移性肝疾患の手術切除又は高周波アブレーションをこれまでに許容されている。切除療法を受けた肝臓病変は、治療後に明らかに進行していない限り、標的病変とみなすべきではない。
7.悪性腫瘍が臨床的に有意ではなく、進行中の治療が必要ではなく、患者が臨床的に安定している場合を除き、以前の病歴又は他の同時の悪性腫瘍を有しない
8.RECIST v.1.1基準に従って肝臓に測定可能な疾患を有する
9.スクリーニング時のECOG PSが0~1を有する
10.治験責任医師によって推定されるように、スクリーニング時の平均余命が>3カ月である
11.≦480msecのQTc間隔を有する
12.以前のがん治療からの全ての関連する臨床的に有意な(治験責任医師の判断では)薬物関連毒性は、研究治療投与前に(グレード≦1又は患者の治療前レベルまで)解決されなければならない(グレード2の脱毛症及び置換療法で制御される内分泌障害は許可される)。
13.以下によって証明されるような、スクリーニング時に適切な臓器機能を有している:
・血小板数>100,000/μL
・ヘモグロビン≧8.0g/dL
・白血球数(WBC)>2,000/μL
・測定されたクレアチニンクリアランスが>40mL/分/1.73mでない限り、血清クレアチニン≦2.0mg/dL
・総直接ビリルビン≦2.0×正常上限(ULN)及びアルカリホスファターゼ≦5×ULN。文書化されたギルバート病の患者では、最大3.0mg/dLの総ビリルビンが、許容される。
・ALT及びAST≦5×ULN
・スクリーニング時のプロトロンビン時間/国際標準化比(INR)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験結果≦1.5×ULN(これは、治療的抗凝固療法を受けていない患者のみに適用される。治療的抗凝固療法を受けている患者は、研究介入の最初の投与前に少なくとも4週間安定した用量を投与しなければならない)
注意:治験責任医師が患者の臨床状態と互換性がないと判断した除外結果を有する実験室試験は、適格性のために1回繰り返すことができる。
14.妊娠可能性のある女性は、スクリーニング時及び治験介入の最初の投与前に、非妊娠及び非授乳、又は閉経後でなければならず、血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)妊娠検査結果が陰性でなければならない。
・妊娠可能性のある女性は、避妊治療を受けていない男性パートナーとの性行為を控えることに同意しなければならないか、又は避妊治療を受けていない男性パートナーと性的に活発な場合は、スクリーニングから研究期間中、非常に効果的な避妊方法を使用することに同意しなければならず、研究介入の最終投与後100日間そのような予防措置を継続することに同意しなければならない。
・妊娠可能性のある女性と性的に活発な避妊治療を受けていない男性は、効果的な避妊方法を使用し、研究期間中の1日目から研究介入の最終投与後30日間、精子の提供を避けることに同意しなければならない。
【0179】
フェーズ1
別個のフェーズ1患者コホートは、以下の通りである。
【0180】
センチネルコホート-標準3+3設計を使用したSD-101単独療法のPEDD/HAIの患者内用量漸増コホート、続いてDLTの不在下でコホートAへの移行(下記参照):
・1回目の注入(センチネル1日目):0.5mg(n=3~6)
・2回目の注入(センチネル15日目):2mg(n=3~6)
【0181】
センチネルコホートへの患者登録は、7日間ずれている。新規患者は、前の患者におけるSD-101の最初の注入が完了してから7日以内に登録されることはない。
【0182】
各患者の1回目の注入後、安全性評価委員会(SRC)は、11日目まで臨床データをレビューし、2回目の注入への用量漸増が起こり得るかどうかを判定するために会合することができる。各患者の2回目の注入の後、SRCは、18日目まで臨床データをレビューするために会合することができ、DLTがない場合、SRCによる確認後、患者は、2mgの用量レベルでコホートAに移行する資格がある。安全性の解釈に関して意見の相違がある場合、独立したレビュアの決定が結果を決定することができる。
【0183】
コホートA-SD-101単剤療法のPEDD/HAIの用量漸増コホート(2サイクル、1週間に1用量×3週間、1サイクル当たり)。標準3+3設計に続いて任意の拡大群を使用して、SD-101単独の最大耐量(MTD)又は最適用量を特定し、単剤療法の奏効率を推定する:
・用量レベル1:2mg(n=3~6)
・用量レベル2:4mg(n=3~6)
・用量レベル3:8mg(n=3~6)
【0184】
各用量レベルでの最初の2人の患者の登録は、少なくとも48時間ずらすことができる。更に、SD-101(2、4、及び8mg)の最大3用量レベルの調査を仮定すると、コホートAでは、最低19人及び最大28人の患者を使用することができる。安全性及び反応データに基づいて、追加の増分用量レベル(4mgの増分)を追加し得る。SD-101単剤療法MTD又は最適用量の10人の患者の拡大群は、コホートBと同時に進行し得る。
【0185】
コホートB-SD-101のPEDD/HAIの標準3+3設計用量再漸増コホート(2サイクル、1週間に1用量×3週間、1サイクル当たり)と静脈内(IV)ニボルマブ480mgを4週間毎(Q4W)に併用して、単剤ニボルマブとともにSD-101のMTD又は最適用量を特定する:
・用量レベル1:この組み合わせで肝毒性が高まる可能性があるため、SD-101のPEDD/HAIと組み合わせたニボルマブの用量漸増は、コホートA(n=3~6)からのMTD又は最適用量を下回る1用量レベル(すなわち、MTD-1又は最適用量-1)で開始する
・用量レベル2:コホートA(n=3~6)からのMTD又は最適用量で、又はMTD-1又は最適用量-1が許容されない場合、SD-101のPEDD/HAIと組み合わせたニボルマブは、MTD-2又は最適用量-2に段階的に縮小することができる
【0186】
各用量レベルでの最初の2人の患者の登録は、少なくとも48時間ずらすことができる。コホートBでニボルマブと組み合わせたSD-101の最大2用量レベルの調査を仮定すると、コホートBでは、最低6人、最大12人の患者が必要となり得る。ニボルマブと組み合わせたSD-101を受けた最大10人の患者の任意の拡大群は、コホートCと同時に進行し得る。コホートA(n=3~6)からのMTD又は最適用量で、SD-101のPEDD/HAIと組み合わせた単剤イピリムマブを試験するための10人の患者の任意のコホートB1、又は、コホートBでMTD-1又は最適用量-1が許容されない場合、コホートB1は、MTD-2又は最適用量-2に段階的に縮小する。ニボルマブ及びイピリムマブは異なる作用機序(PD-1対CTLA-4を標的とする)を有することを考えると、ニボルマブの生物学的活性が低い場合、コホートCに進む前に、単剤イピリムマブの研究が所望であり得る。
【0187】
コホートC-全身IVイピリムマブ3mg/kg及び全身IVニボルマブ1mg/kgを組み合わせたSD-101のPEDD/HAIの標準3+3設計用量再漸増研究(2サイクル、1週間に1用量×3週間、1サイクル当たり)を3週間毎(Q3W)にそれぞれ4回投与し、その後、ニボルマブ480mgの全身IVをQ4W、二重薬剤CPIとともにSD-101のMTD又は最適用量を特定する:
・用量レベル1:コホートB(n=3~6)からのMTD又は最適用量を下回る1用量レベルで、SD-101のPEDD/HAIと組み合わせたイピリムマブ及びニボルマブ
・用量レベル2:コホートB(n=3~6)からのSD-101のMTD又は最適用量で、又はMTD-1又は最適用量-1が許容されない場合、SD-101のPEDD/HAIと組み合わせたイピリムマブ及びニボルマブは、MTD-2又は最適用量-2に段階的に縮小することができる。
【0188】
SD-101の最大2用量レベル(最初にMTD-1又は最適用量-1、次いでコホートBからのMTD又は最適用量、又はMTD-1/最適用量-1が許容されなかった場合のMTD-2/最適用量-2)の調査を仮定すると、コホートCでは最低6人、最大12人の患者を必要とすることができる。各用量レベルでの最初の2人の患者の登録は、少なくとも48時間ずらすことができる。フェーズ1bでPEDD/HAIを介してSD-101と組み合わせた単剤及び二重薬剤CPIの間で決定するために追加のデータが必要な場合、10人の患者の任意の拡大コホートを登録してもよい。
【0189】
フェーズ1b
フェーズ1bは、コホートB又はコホートCの完了し、SRCによるデータのレビューが行われた後に、進めることができる。このフェーズは、SD-101用量及びCPIレジメンに関する決定に従って実施される。フェーズ1bでは、SD-101 MTD又は最適用量+単剤又は二重薬剤CPIでの奏効割合が、更なる試験を正当化するのに十分高いかどうかを確認するために、2段階設計が使用される。
【0190】
研究のフェーズ1bの部分は、最大40人の参加者を企図する。総サンプル数が最も少ない2段階設計(Minimax設計と呼ばれる、Simon 1989)が、使用される。第1段階では、22人の患者が登録され、3人以上の奏効が観察された場合、フェーズ1bコホートは、有効性を更に評価するために合計40人の患者に拡大される。このコホートへの登録は、第1段階で2人以下の奏効が観察された場合に停止される。奏効の総数が>7である場合、治療は、更なる検査を必要とする。全奏効率(ORR)を評価するために、50人の患者を治療した後に中間分析を行うことができる。
【0191】
投与期間
SD-101投与期間(フェーズ1及びフェーズ1bの全ての参加者):
センチネルコホート-最大7用量のSD-101(コホートAへの移行後に投与される用量を含む)
【0192】
コホートA、B、C、及びフェーズ1b-最大6用量(SD-101の最大2サイクル、1サイクル当たり3回の週1回の投与)。SD-101のより少ない用量又はサイクルは、毒性又は忍容性に基づいて投与され得る。SD-101の少なくとも1回のPEDD/HAI用量を受容している全ての患者は、評価可能であるとみなされる。
【0193】
CPI投与期間
フェーズ1、センチネルコホート及びコホートA:該当なし
【0194】
フェーズ1、コホートB、及び任意の拡大コホート:ニボルマブ480mg Q4Wで最大12カ月
【0195】
フェーズ1、任意のコホートB1:全身IVイピリムマブ3mg/kg Q3Wで、4回投与
【0196】
フェーズ1、コホートC及び任意の拡大コホート:(i)全身IVニボルマブ1mg/kgをQ3Wで4回投与、次いで480mg/kgをQ4Wで最大12カ月投与、及び(ii)全身IVイピリムマブ3mg/kgをQ3Wで4回投与。
【0197】
フェーズ1b:フェーズ1のデータによって決定された最大12カ月間のCPIレジメン
【0198】
投与された介入
介入及び計画された用量レベルを、以下の表6に要約する。
【表6】
【0199】
SD-101の注入
SD-101溶液は、肝動脈系を介して、任意にTriNav(登録商標)Infusion Systemを使用して注入される。大腿骨又は上腕/橈骨神経アクセスが、使用され得る。治療的送達を妨げ得る肝臓の血管腫、シャント血管、又は他の血管病変は、治療する介入放射線専門医の裁量で塞栓される。SD-101注入手順のために、薬物を、50mLのシリンジ(治療用量)及び治療用フラッシュ(10mL)に必要な量を含有する100mLのバイアルで、両方とも治療的濃度で調製及び送達し、以下の表7に記載されるように提供され得る。
【表7】
【0200】
一実施形態によれば、SD-101治療セッションの手順ワークフローは、以下を含むことができる:(i)大腿動脈に通じるSeldinger技術を介して患者の血管系にアクセスすること、(ii)圧力バッグを使用してヘパリン化生理食塩水フラッシュを準備すること(患者にとって禁忌でなければ)、(iii)ヘパリン化生理食塩水ラインをベースカテーテルに取り付け、処置中、継続的にフラッシュすること、(iv)侵襲性血圧トランスデューサ(IBP)を患者モニタに接続すること、(v)デバイスを標的治療位置に追跡すること、(vi)高圧チューブラインを取り付け、トランスデューサ及びラインをフラッシングし、気泡がないことを確認すること、(vii)TriNav(登録商標)注入システムのハブに高圧チューブラインを取り付けること、(viii)圧力測定値を安定させ、平均遠位血管圧を記録すること、(ix)TriNav(登録商標)注入システムから高圧チューブラインを外し、その後の圧力測定用にラインを滅菌領域内に維持すること、(x)10mLのプライミングシリンジをストップコックに接続し、高圧チューブが治療薬で完全に満たされ、溶液がチューブの端から出るまでフラッシングすること、(xi)50mLのシリンジを高圧チューブに接続する、(xii)50mLのシリンジをシリンジポンプに入れること、(xiii)注入前に、10mLのプライミングシリンジでストップコックの遠位端を流体がストップコックから出るまでフラッシングすること、(xiv)TriNav(登録商標)注入システムのハブをストップコックに接続し、ストップコックを50mLの治療用シリンジから注入する位置に回転させること、(xv)10mLのプライミングシリンジを1mLの生理食塩水ボーラスシリンジに交換すること、(xvi)50mLのシリンジから計算上の治療量(50mL/部位数)を2mL/分の速さで2分間(例えば、4mLの量)、シリンジポンプを用いて注入すること、(xvii)1mLのシリンジのストップコックを回転させ、1mLの生理食塩水アリコートを2mL/秒(例えば、0.5秒の持続時間)の速度で、手動で注入し、これにより、肝動脈注入に陽圧を発生させ、腫瘍への治療薬の取り込みを促進すること、(xviii)ボーラス注入後、ストップコックを回転させて、50mLのシリンジからの注入を継続すること、(xix)残りの計算された量の治療薬を2mL/分の速度で注入すること、(xx)所望の量の注入を完了した後(ポンプに表示)、更なる注入を停止し、高圧チューブをTriNav(登録商標)注入システムから外すこと、(xxi)次の注入に備え、登録した量をクリアすること、並びに(xxii)残りの選択的注入についてステップ(iv)~(xxi)を繰り返し実施すること。
【0201】
一実施形態において、投与される50.0mLの量は、肝臓のセグメント又はセクタ毎に割り当てられる。一実施形態において、セグメント又はセクタ毎の注入量の計算は、SD-101注入手順の前(前処置MRI若しくはCTスキャンに基づいて)、又はSD-101注入と同じセッション中(前述の血管造影に基づいて)に行われ得る。一実施形態において、50mLの治療用量は、以下のように割り当てることができる:右肝葉の標的血管への3×10mL注入、左肝葉の標的血管への2×10mL注入。更に、10mLのアリコートの分布は、測定可能な疾患及び標的血管直径の位置に基づいて調整され得る。別の実施形態において、セグメント又はセクタ毎の注入量は、以下のように計算される:(灌流肝体積/総肝体積)×40+(灌流セグメントの推定腫瘍体積/肝臓の推定総腫瘍体積)×10)。一実施形態において、最初のSD-101注入手順のために決定されたセグメント又はセクタ毎の計画されたSD-101の量は、その後の各SD-101注入手順の計画された量として使用されるべきである。
【0202】
腫瘍反応評価
全ての患者は、肝臓及び他の部位における疾患の程度、並びに肝生検及び循環腫瘍細胞(CTC)、及び循環サイトカイン、及び他の免疫学的相関物のアッセイを評価するために、磁気共鳴画像法(MRI)及び陽電子放射断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影(CT)による画像診断を受けることができる。腫瘍反応は、固形腫瘍における標準的な応答評価基準(RECIST)v1.1基準を使用して放射線写真的に測定することができる。公式の奏効スコア(RECIST v1.1)は、84日目までに評価可能である。LM奏効は、腹部CT又はMRIで評価され、一方、肝外病変は、全身PET/CTスキャンで評価される。最終奏効スコアは、168日目に判定され、擬似進行が除外され、初期奏効が確認されることを保証することができる。その後、90日毎に画像診断を行うことができる。Eovist(登録商標)造影剤を用いたMRIを使用した肝臓画像は、可能な限り評価に使用する必要がある
【0203】
4つの肝生検を行うことができる:
・フェーズ1のセンチネルコホート-SD-101の2mg注入前の15日目に最初の生検を行い、15日目に注入後に行う(腫瘍組織のSD-101レベルについて)
・フェーズ1のコホートA、B、及びC、並びにフェーズ1b:ベースライン生検は、SD-101の最初の注入前の1日目及び注入後の1日目(腫瘍組織におけるSD-101レベルについて)、SD-101の2回目のサイクルの開始時(SD-101の4回目の注入前)、及び100日目に得られる。・病理学的奏効は、腫瘍サンプル内の壊死及び線維化のスコアリングを伴う局所部位の病理学者によるレビューに基づいて評価される。
【0204】
薬物動態
血液サンプルを採取して、PEDD/HAI後のSD-101全身曝露を特徴付けることができる。ニボルマブ又はイピリムマブ濃度については、サンプリング又は試験を行うことはできない。
【0205】
SD-101の腫瘍レベルは、腫瘍反応評価のために得られたLMの注入後の生検標本、及びセンチネルコホートについて15日目及びコホートA、B、及びCについて1日目の追加の注入後の生検から測定することができる。
【0206】
薬物力学
血液サンプルは、CTC、循環サイトカイン、並びにIFN-α及びIFN-γ関連遺伝子シグネチャを含む他の免疫学的相関物の測定のために収集することができ、これらは、このクラスの治療薬についての薬物動態評価よりも有益であり得る。
【0207】
安全性
安全性評価には、有害事象(AE)、臨床検査室検査、バイタルサイン、身体検査、心電図(ECG)が含まれる。
【0208】
以下は、SD-101サイクル中、又はサイクル1の最後のSD-101投与後4週間以内に観察された場合にDLTとみなされ、研究介入(SD-101若しくはCPI療法)及び/又はPEDDデバイスに起因するとみなされる:
・グレード4以上のサイトカイン放出症候群(CRS)
・7日以内にグレード2以下に回復しない
・国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE)に基づく
・7日以内にグレード2以下に回復しないNCI CTCAE当たりのグレード3 CRS
・NCI CTCAEに基づく自己免疫AE≧グレード3
・NCI CTCAEに基づくアレルギー反応AE≧グレード3
・7日以内に≦グレード2に回復しないグレード4の血液学的AE
・あらゆる臓器系におけるNCI CTCAEに基づく任意のグレード4のAE
【0209】
SD-101のいずれかのサイクル中にDLTを発症した患者は、特定のDLTを考慮した代替アプローチ(例えば、用量修正を伴い臨床的に示されるように)が合理的に安全であると予想されるという十分な正当性が提供されない限り、研究介入を永久的に中止することができる。患者は、臨床診療に従って治療され、毒性の解消を監視され得る。
【0210】
SD-101及び/又はCPI療法は、重度又は生命を脅かす注入関連の反応に対して永久に中止することができる。患者がグレード3以上の免疫媒介反応を有する場合、SD-101及び/又はCPI療法の投与中断、遅延、又は中止が必要である。異常な肝臓検査のためのSD-101及び/又はCPI療法の中止は、患者が以下に概説される状態のうちの1つを満たす場合、又は治験責任医師が患者の最善の利益であると考えている場合、プロトコルに規定された停止規則を満たさない異常な肝臓化学物質の存在下で必要とされる。
・患者は、臨床的に黄疸がある
・患者は、凝固障害の証拠を有する
・患者は、腹水又は静脈瘤出血を含むがこれらに限定されない門脈圧高進症の臨床的証拠を有する
【0211】
全ての患者は、治療開始後少なくとも1年間、安全性のためにこの研究にフォローアップすることができる。本試験に登録された全ての患者は、別の長期フォローアッププロトコルで1年を超える全生存期間(OS)を評価することができる。
【0212】
疾患の進行(例えば、毒性、同意の撤回)以外の理由で研究治療を中止した患者は、患者が死亡するまで、疾患の進行(肝内又は肝外)を経験するまで、又は更なる全身がん治療を開始するまでのいずれか最初に発生した方で、90日毎に予定されている腫瘍評価を継続して受けることができる。
【0213】
レスキュー薬及び治療
研究施設は、局所的に入手される免疫調節レスキュー薬を提供する。以下のレスキュー薬を使用することができる:
医薬
1.CRSのために60分間にわたって、IL6受容体抗体トシリズマブ4~8mg/kgの全身IVは、臨床的に示されるように繰り返すことができる。
2.CRSグレードが2超、又は神経機能障害においては、メチルプレドニゾロン2mg/kgの全身IVボーラス、続いて6~12時間毎に0.5mg/kgのIV。最初の用量は、治験責任医師又は治験実施者と相談することなく投与することができるが、その後の用量は、治験責任医師又は治験実施者と相談した後に投与する必要がある。
3.1~2用量の抗TNFα剤(インフリキシマブ又はエタネルセプト)を検討する。効用は不明であるが、TNFαは急激に上昇する可能性があるため、疾患プロセスの初期に検討する価値はある。
4.2用量においては、エタネルセプト25mgのSCを週に2回、3~4日間隔で投与する(0.4mg/kgを週に2回、1用量当たり最大25mg
5.インフリキシマブ用量10mg/kgの全身IVを週1回×2用量
介入
1.内視鏡的胆管造影及びステント留置
2.経皮的胆管造影及びステント留置
【0214】
研究中はいつでもレスキュー薬の使用が許容可能であるが、可能であれば、臨床的に適切な場合は、研究介入の投与後少なくとも6時間はレスキュー医薬の使用を延期する必要がある。レスキュー医薬の投与の日時、並びにレスキュー医薬の名称及び投薬レジメンを記録しなければならない。
【0215】
明らかに疾患の進行に起因する有害事象、治験薬とは無関係の有害事象、又は治験の適格患者集団に予想される有害事象は、DLTとはみなされない。
【0216】
サイトカイン放出症候群の評価
治験責任医師又は治験実施者は、重度のCRSの存在について各患者を評価する。CRSグレーディングは、NCI CTCAE v5.0に基づいて決定する。
【0217】
画像
疾患の程度は、センチネルコホート、コホートA、コホートB、及びコホートCの時点で放射線学的に測定する。スクリーニング評価には、腹部及び骨盤のMRI(禁忌でない限り、経口/全身IV Eovist造影剤を用いる)及び脳スキャン(全身IV造影剤又はMRIを用いるCT)を含める必要がある。腹部及び骨盤のMRIに加えて、胸部のスパイラルCTスキャンを取得する必要がある。MRIが医学的に禁忌である場合、又は医師の裁量である場合、胸部、腹部、及び骨盤のCTスキャンは、三相全身IV造影剤を使用して実施され得る。PET/CTスキャンを実施する場合、研究のCT部分は、全造影CTスキャンの標準と一致していなければならない。Eovist造影剤を用いたMRIを用いた肝臓画像は、肝臓外の疾患の評価のためのPET/CTとともに、可能な限りLMの評価に使用する必要がある。スクリーニング時に使用されたのと同じ画像方法が、研究全体を通して使用する必要がある。
【0218】
任意の評価可能又は測定可能な疾患は、スクリーニング時に文書化し、その後の各腫瘍評価時に再評価する必要がある。測定可能な疾患を有する患者については、奏効は、RECIST v1.1に従って評価される。局所画像の読み出しは、フェーズ1中の奏効評価に利用される。奏効評価のための独立した中央レビュー(ICR)は、フェーズ1bの間に実施することができる。
【0219】
治験責任医師の裁量により、PDが疑われる場合はいつでも画像化が実施され得る。加えて、mRECIST及びiRECIST評価は、副次的エンドポイントデータ収集のために実施されるが、公式の奏効スコアには組み込まれない。
【0220】
ECOGパフォーマンスステータス
ECOG PSスケールを使用して、疾患が患者の日常生活活動及び自分自身の世話をする能力にどのように影響しているかを評価する。各指定された時点で、資格を有する施設職員が以下の尺度に従って患者を評価する:
0.十分に活動的、制限なしで全ての病気にかかる前の動作を行うことができる
1.身体的に激しい運動が制限されているが、歩行が可能で、軽い又は座って行う性質の作業(例えば、軽い家事、事務作業)を行うことができる
2.歩行が可能であり、全てのセルフケアが可能であるが、いかなる作業活動も行うことができない。起床時間の約50%以上
3.限られたセルフケアのみ可能、起床時間の50%以上がベッド又は椅子に限られている
4.完全に身体が不自由で、いかなるセルフケアも行うことができず、ベッド又は椅子に完全に限られている
5.死
【0221】
変更、すなわち悪化は、AEに対する非指示的な質問中に報告されない限り、AEとして記録されない。
【0222】
RECIST v1.1の定義
測定可能な疾患-少なくとも1つの測定可能な病変の存在。測定可能な疾患が孤立性病変に限定されている場合、その腫瘍性の性質は、細胞学/組織学によって確認されるべきである。
【0223】
測定可能な病変-最長直径≧10mm(CTスキャン切片厚≦5mm)で少なくとも1次元で正確に測定することができる病変。
【0224】
測定不可能な病変-小さな病変(最長直径<10mm)を含む全ての他の病変、並びに真に測定不可能な病変(軟膜疾患、腹水、胸膜/心外膜液、炎症性乳房疾患、皮膚又は肺のリンパ管関与、再現性画像技術によって測定できない腹部腫瘤など)。
【0225】
ベースライン文書化
1臓器当たり最大2病変、合計5病変までの全ての測定可能な病変を標的病変として特定し、ベースラインで記録及び測定する必要がある。
【0226】
標的病変は、そのサイズ(最長直径の病変)と、一貫した画像技術による正確な繰り返し測定への適合性に基づいて選択する必要がある。
【0227】
全ての標的病変(非結節性)の最長直径(LD)の合計を計算し、ベースライン合計LDとして報告する。ベースライン合計LDは、疾患の測定可能な寸法における客観的腫瘍応答を特徴付けるための参照として使用される。
【0228】
全ての他の病変(又は疾患部位)は、非標的病変として特定されるべきであり、ベースラインでも記録されるべきである。これらの病変の測定は、必要とされないが、それぞれの有無は、フォローアップ中に留意する必要がある。
【0229】
標的病変の評価
完全奏効(CR):全ての標的病変の消失
【0230】
部分奏効(PR):ベースライン合計LDを基準として、標的病変のLDの合計が少なくとも30%減少する。
【0231】
進行性疾患(PD):治療開始以降の記録された最小の合計LD又は1つ以上の新たな病変の出現を基準として、標的病変のLDの合計の少なくとも20%増加。この合計は、5mmで絶対的な増加を示す必要がある。
【0232】
安定疾患(SD):治療開始以降の最小の合計LDを基準として、PRを認めるのに十分な縮小も、PDを認めるのに十分な増加もない。
【0233】
非標的病変の評価
完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失
【0234】
非CR/非PD:1つ以上の非標的病変の持続性
【0235】
進行性疾患(PD):既存の非標的病変の明確な進行、及び/又は1つ以上の新たな病変の出現。
【0236】
RECIST 1.1における完全奏効、部分奏効、及び安定疾患の観点からの全生存率は、以下に従って評価される:
【表8】
【0237】
全奏効期間
全奏効期間は、CR又はPRについて測定基準が満たされる時間(いずれか最初に記録される)から、再発又はPDが客観的に文書化された最初の日まで(治療開始以降記録された最小の測定値をPDの基準として)測定される。全体的なCR期間は、CRの測定基準が最初に満たされた時点から、PDが客観的に文書化された最初の日まで測定することができる。SD期間:安定疾患は、ベースライン測定値を含む治療開始以降記録された最小の測定値の合計を基準として、治療の開始から進行の基準が満たされるまで測定される。
【0238】
全生存率
全ての患者について、OSは、登録日から死亡時まで計算することができる。最終有効性分析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、最後に生存が確認された日で打ち切られる。
【0239】
無増悪生存率
全ての患者について、PFSは、登録日から再発(又は疾患発症の他の明確な指標)を文書化したCTスキャンの時点、又は死亡日(いずれか早い方)まで計算される。再発が文書化されておらず、最終有効性解析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、再発がないことを文書化する最後の放射線学的証拠の日で打ち切られる。
【0240】
修飾RECIST(mRECIST)
肝細胞がんのmRECISTの定義は、以下の通りである:
【0241】
完全奏効(CR)=全ての標的病変における任意の腫瘍内動脈増強の消失
【0242】
部分奏効(PR)=標的病変の直径のベースライン合計を基準として、生存可能な(動脈相における増強)標的病変の直径の合計が少なくとも30%減少する
【0243】
安定疾患(SD)=PR又は進行性疾患のいずれにも該当しない症例
【0244】
進行性疾患(PD)=治療開始以降記録された生存可能な(増強する)標的病変の直径の最小合計を基準として、生存可能な(増強する)標的病変の直径の合計が少なくとも20%増加する
【0245】
mRECISTにおける完全奏効、部分奏効、及び安定疾患の観点からの全生存率を、以下に従って評価する:
【表9】
【0246】
免疫ベースの療法のためのRECIST 1.1(iRECIST)
奏効はまた、iRECISTによっても評価される。要言すれば、RECISTとiRECISTの主な違いは、Seymour et al 2017で以下のように説明されている:「客観的な腫瘍反応を決定するために使用される原則は、RECIST 1.1とほぼ変わらないが、iRECISTの大きな変更は、腫瘍縮小による次の評価でRECIST 1.1の進行が続く場合に「バーをリセットする」という概念である。iRECISTは、RECIST 1.1の原則に基づいてiUPDを定義するが、iUPDには確認が必要である。確認は、進行が最初に特定された病変カテゴリ(すなわち、標的、非標的疾患)のサイズ(又は新たな病変の数)の更なる増加、又はRECIST 1.1進行基準をこれまでに満たさなかった病変カテゴリ(RECIST 1.1によって定義される)の進行のいずれかを観察することに基づいている。しかしながら、上記のように進行が確認されないが、その代わりにiCR、iPR、又はiSDの基準を満たす腫瘍縮小(ベースラインと比較して)が確認された場合、バーはリセットされ、iUPDは再び発生しなければならず(最低値と比較して)、次いでiCPDが割り当てられるための次の評価で(更なる成長によって)確認されなければならない。iUPDからの腫瘍サイズ/範囲の変化がない場合、時点の応答は、再びiUPDとなり得る。このアプローチにより、擬似進行後に生じる遅延応答などの非定型応答を特定し、更に理解し、より良く特徴付けることができる。」
【表10A】
【表10B】
【0247】
この実施例では、SD-101を、HAI/PEDDを介して2人のヒト患者に投与した。SD-101を、TriNav(登録商標)注入システムを用いてヒト患者に投与した。この点に関して、第1の患者に、0.5mgのSD-101の用量を投与し、第2の患者に、2.0mgのSD-101の用量を投与した。患者からの生物検体を、以下のように得た:
・1日目-注入前のサイトカイン、PK、ADA、免疫学的相関物
・1日目-注入後のPK(15、30分、1、2、4、6時間)
・8日目-サイトカイン、免疫学的相関物
・15日目-注入前のサイトカイン、PK、免疫学的相関物
・15日目-注入後のPK(15、30分、1、2、4、6時間)
・15日目-注入前の肝生検
・15日目-注入後の肝生検
【0248】
TS-PERIO-01治療の概要
患者101-001は、センチネルコホート(0.5mg及び2mgのSD-101用量)を完了し、PEDD/HAIを介してSD-101を投与された最初の患者となった。加えて、SD-101の注入前後の肝生検を、センチネル15日目に実施した。サイトカインを含む相関の血液検体、MDSCレベルを含む免疫学的相関物、PK、及びADA検体は、複数の時点で収集されている。この患者は、安全性審査委員会により、2mgの用量でコホートAに移行するための許可を得ている。患者は、SD-101 PEDD HAIに関連するいかなるSAEも経験していない。
【0249】
患者101-002は、センチネルコホート(PEDD/HAIを介した0.5mg及び2mgのSD-101用量)を完了している。加えて、SD-101の注入前後の肝生検を、センチネル15日目に実施した。サイトカインを含む相関の血液検体、MDSCレベルを含む免疫学的相関物、PK、及びADA検体は、複数の時点で収集されている。安全性審査委員会会議は、患者が2mgの用量でコホートAに移行できるかどうかを決定するために予定されている。患者は、SD-101に関連するいかなるSAEも経験していない。
【0250】
上記は、本開示の原理を単に例示するに過ぎない。本明細書の教示を考慮して、説明される実施形態に対する様々な修正及び変更は、当業者には明白であろう。したがって、当業者は、本明細書に明示的には示され又は説明されていないが、本開示の原理を具現化し、したがって本開示の精神及び範囲内であり得る多数のシステム、配置、及び手順を考案することができることが理解されるであろう。様々な異なる例示的な実施形態は、当業者によって理解されるべきであるように、互いに一緒に、並びにそれと互換的に使用され得る。加えて、本明細書を含む本開示で使用される特定の用語は、例えば、データ及び情報を含むがこれらに限定されない、特定の例において同義的に使用され得る。本明細書では、これらの単語、及び/又は互いに同義であり得る他の単語は、本明細書で同義的に使用され得るが、そのような単語が同義的に使用されないように意図され得る場合があり得ることを理解されたい。更に、先行技術の知識が上記の本明細書において参照により明示的に組み込まれていない範囲において、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。参照した全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
図22
図23
【配列表】
2023542988000001.app
【国際調査報告】