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特表2023-542989トール様受容体アゴニストを使用したがん治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】トール様受容体アゴニストを使用したがん治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20231004BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20231004BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
A61K31/711
A61P35/00 ZNA
A61K48/00
A61K45/00
A61P37/04
A61K31/7125
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K31/713
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518829
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021051384
(87)【国際公開番号】W WO2022066673
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/081,613
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】521104137
【氏名又は名称】トリサルース・ライフ・サイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・シー・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エフ・コックス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ベンジャミン・ジャロク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明の実施形態は、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び膵臓の固形腫瘍にトール様受容体(TLR)アゴニストを送達する方法を提供する。一態様では、本発明は、TLRアゴニストを膵臓に投与することを含む、膵臓がんを治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、構造:5’-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3’(配列番号1)、を有するトール様受容体9アゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記TLR9アゴニストが、膵臓逆行静脈注入(PRVI)によってデバイスを介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TLR9アゴニストが、0.5mg、2mg、4mg、8mg、又は12mgからなる群から選択され、投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TLR9アゴニストが、カテーテルデバイスを通じて投与され得る、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記カテーテルデバイスが、一時的閉塞デバイスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記TLR9アゴニストが、圧力有効化薬物送達を介して前記カテーテルデバイスを通じて投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記TLR9アゴニストが、約1mL/分~約10ml/分の注入速度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
前記TLR9アゴニストが、2~20分の期間投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TLR9アゴニストが、1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与され、前記チェックポイント阻害剤が、前記TLR9アゴニストの投与と同時に、その前、又はその後のいずれかで全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ、及びイピリムマブのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記TLR9アゴニストの前記投与が、サイクルを含む投与レジメンを含み、前記サイクルのうちの1つ以上が、膵臓逆行静脈注入(PRVI)によるカテーテルデバイスを介した前記TLR9アゴニストの投与、続いてチェックポイント阻害剤の全身投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ、及びイピリムマブのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月22日に出願され、米国仮特許出願第63/081,613号の利益を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCIIコピーは、2020年9月16日に作成され、A372-502_SL.txtという名称であり、サイズは、484バイトである。
【0003】
本開示は、概して、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び膵臓の固形腫瘍にトール様受容体(TLR)アゴニストを送達する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、皮膚、肝臓、及び膵臓などの様々な臓器における固形腫瘍の増殖をもたらし得る、細胞の抑制のない増殖を伴う壊滅的な疾患である。腫瘍は、最初に任意の数の臓器に存在し得るか、又は転移の結果であり得るか、又は他の位置からの拡散であり得る。
【0005】
膵臓がんは、米国におけるがん死亡原因の第3位であり、2018年の推定死亡者数は55,000人とされている。このタイプのがんの5年生存率は、わずか7~8%であり、これは、初期診断がしばしば起こる疾患の進行段階、転移するこのタイプのがんの傾向、化学療法及び放射線療法に対する疾患の耐性、並びに膵臓がん腫瘍の複雑な微小環境を含む様々な要因に起因する。ほとんどの患者が最初に切除不能(転移性又は局所進行性)疾患と診断されるため、原発腫瘍の外科的切除の診断対象となるのは患者のわずか15~20%である。切除不能又は転移性に対する膵臓がんの現在の標準治療は、ゲムシタビン(Gem)単剤療法、ゲムシタビン/ナブパクリタキセル、又はフォリン酸/フルオロウラシル/イリノテカン/オキサリプラチン(FOLFIRINOX)のうちのいずれかを用いた緩和的全身化学療法である。ぎりぎり切除可能な又は局所進行性疾患を有する患者の場合、併用レジメンは、いくつかのぎりぎり切除可能な腫瘍、更にはいくつかの局所進行性腫瘍を切除可能にするために使用されている。加えて、ほとんどの膵臓腺がんに見られる比較的乏血性の腫瘍微小環境は、従来の技術を使用する化学療法剤の標的化された包括的な動脈送達を困難にする。
【0006】
更に、局所進行性膵管腺がん(LA-PDAC)は、急速な進行、従来の治療への耐性、生活の質の低下、著しい罹患率、及び高い死亡率と関連している。PDAC腫瘍は、エフェクター免疫細胞の不足を伴う密な線維形成性間質を特徴とし、薬物送達及び免疫応答の刺激の両方を非常に困難にする。
【0007】
したがって、現在の技術の限界に対処することができる膵臓がんなどの固形腫瘍を治療するための、より正確でより局所的な化学療法を送達する方法に対する必要性が当該技術で残っている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、血管系を通る局所領域療法を使用して、がんを治療する方法、及び膵臓の固形腫瘍にTLRアゴニストを送達する方法に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、膵臓逆行静脈注入(PRVI)によってTLRアゴニストを、血管内デバイスを介して投与することを含む、膵臓がんを治療する方法に関する。別の実施形態によれば、膵臓がんの治療は、膵臓動脈注入(PAI)によってTLRアゴニストを、血管内デバイスを介して投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管及び/又は標的組織又は腫瘍内の流体圧力の正味の増加を生成する、引き起こす、及び/又は寄与するカテーテルデバイスなどのデバイスを介した治療薬の投与を含む、圧力有効化薬物送達(PEDD)を介して投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管圧力を上昇させるような圧力有効化デバイスを介して投与される。
【0012】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、クラスCタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-C ODN)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、膵臓への血管内デバイスを介したTLRアゴニストの投与は、膵臓がんにおけるチェックポイント阻害剤療法に対する応答性の向上をもたらす。
【0014】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、TLR9アゴニストである。
【0015】
本開示の例示的な実施形態のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の段落と併せて考慮される場合、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の更なる目的、特徴、及び利点は、本開示の例示的な実施形態を示す添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】SD-101の構造を示す。
図2図2A及び図2Bは、マウスモデルにおける全身生理食塩水注入、PRVI/PEDDを介した生理食塩水注入、全身SD-101注入、及びPRVI/PEDDを介したSD-101注入後の腫瘍体積を比較し、それぞれデータ及びチャート形式で含有する。
図3図3A及び図3Bは、マウスモデルにおける全身生理食塩水注入、PRVI/PEDDを介した生理食塩水注入、全身SD-101注入、及びPRVI/PEDDを介したSD-101注入後の腫瘍重量を比較し、それぞれデータ及びチャート形式で含有する。
図4】膵臓内の隣接する非標的組織に対するSD-101の局所濃度を比較する、PRVIを介して注入されたブタ膵臓における正規化標識されたSD-101シグナル強度を示す(全てのデータ)。
図5】膵臓内の隣接する非標的組織に対するSD-101の局所濃度を比較する、PRVIを介して注入されたブタ膵臓における正規化標識されたSD-101シグナル強度を示す(除去された外れ値あり)。
図6】ブタモデルにおけるエンドホールカテーテルと比較した場合のシールデバイスの処理された組織体積を示す(全てのデータ)。
図7】ブタモデルにおけるエンドホールカテーテルと比較した場合のシールデバイスの処理されたシグナル強度を示す(全てのデータ)。
図8】ブタモデルにおけるエンドホールカテーテルと比較した場合のシールデバイスの処理された組織体積を示す(外れ値データを除去した)。
図9】ブタモデルにおけるエンドホールカテーテルと比較した場合のシールデバイスの処理されたシグナル強度を示す(外れ値データを除去した)。
図10図10A及び図10Bは、エンドホールカテーテル及びシールデバイスによってブタ組織に送達される標識されたSD-101の分布パターンをそれぞれ示す。
図11】局所進行性PDACを有する患者におけるCPIに対する応答率のために、TLR9アゴニスト、SD-101のPEDDを使用した膵臓逆行静脈注入(PRVI)の研究の全体的な設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面全体を通して、特に明記しない限り、同じ参照番号及び文字は、図示された実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、又は部分を示すために使用される。
【0018】
更に、本開示は、図面を参照して詳細に説明されるが、それは例示的な実施形態に関連して行われ、図面及び添付の段落に示される特定の実施形態によって限定されるものではない。
【0019】
以下の実施形態の説明は、本発明の異なる態様の特徴及び教示を特に説明するために数字を参照する非限定的な代表的な例を提供する。説明される実施形態は、実施形態の説明とは別に、又は他の実施形態と組み合わせて実施することが可能であると認識されるべきである。実施形態の説明を検討する当業者は、本発明の異なる説明された態様を学び、理解することができるはずである。実施形態の説明は、具体的にはカバーされていないが、実施形態の説明を読んだ当業者の知識の範囲内である他の実施形態が、本発明の出願と一致すると理解される程度に、本発明の理解を容易にするべきである。
【0020】
トール様受容体アゴニスト
トール様受容体は、微生物病原体関連分子パターン(PAMP)を検出することができるパターン認識受容体である。TLR9刺激などのTLR刺激は、広範な先天性免疫刺激を提供することができるだけでなく、肝臓及び膵臓における免疫抑制の優勢な推進要因に特異的に対処することもできる。TLR1-10は、ヒトにおいて発現され、多様な微生物PAMPを認識する。この点で、TLR9は、微生物DNAを含む非メチル化CpG-DNAに応答することができる。CpGは、リン酸骨格によって連結されたシトシン及びグアニンジヌクレオチドのモチーフを指す。TLR9は、B細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)、活性化好中球、単球/マクロファージ、T細胞、及びMDSCで構成的に発現される。TLR9は、ケラチノサイト及び腸、頸部、及び呼吸器上皮細胞を含む非免疫細胞においても発現される。TLR9は、エンドソーム内の細胞内コンパートメント内のそのアゴニストに結合することができる。シグナル伝達は、炎症促進性サイトカイン遺伝子発現を誘導するために、MyD88/IkB/NfKBを介して行われ得る。IRF7を通る平行シグナル伝達経路は、適応免疫応答を刺激する1型インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-γなど)を誘導する。更に、TLR9アゴニストは、抗原提示樹状細胞のサイトカイン及びIFN産生及び機能的成熟を誘導することができる。
【0021】
一実施形態によれば、TLR9刺激は、MDSCを低減し、再プログラムすることができる。MDSCは、肝臓における免疫抑制の主要な推進要因である。MDSCはまた、Treg、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、及びがん関連線維芽細胞(CAF)などの他の抑制細胞型の増殖を駆動する。MDSCは、免疫細胞及び免疫療法薬をシャットダウンし得る。更に、高いMDSCレベルは、一般的に、がん患者の不良な転帰を予測する。この点で、MDSCを排除することは、がんを攻撃する宿主の免疫系の能力、並びに深い応答を誘導する免疫療法の能力を改善すると考えられている。一実施形態において、TLR9は、MDSCを免疫刺激性M1マクロファージに変換し、未成熟樹状細胞を成熟樹状細胞に変換し、エフェクターT細胞を拡大して、抗腫瘍活性を促進し得る応答性腫瘍微小環境を作成し得る。
【0022】
一実施形態によれば、微生物CpG-DNAの免疫刺激性質を模倣する合成CpG-オリゴヌクレオチド(CPG-ON)を、治療用に開発することができる。一実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。いくつかの異なるCpG-ODNクラスタイプ、例えば、クラスA、クラスB、クラスC、クラスP、及びクラスSがあり、それらは、特定の構造的及び機能的特徴を共有する。この点で、クラスAタイプCPG-ODN(又はCPG-A ODN)は、B細胞及び最高度のIFNa誘導にほとんど影響を及ぼさないpDC成熟に関連しており、クラスBタイプCPG-ODN(又はCPG-B ODN)は、B細胞増殖を強く誘導し、pDC及び単球成熟、NK細胞活性化、並びに炎症性サイトカイン産生を活性化し、クラスCタイプCPG-ODN(又はCPG-C ODN)は、B細胞増殖及びIFN-α産生を誘導することができる。更に、一実施形態によれば、CPG-C ODNは、以下の属性:(i)非メチル化ジヌクレオチドCpGモチーフ、(ii)隣接ヌクレオチド(例えば、AACGTTCGAA)と並置されたCpGモチーフ、(iii)(細菌DNAに見出される天然ホスホジエステル(PO)骨格とは対照的に)ヌクレオチドを結合させる完全なホスホロチオエート(PS)骨格、及び(iv)自己相補性回文配列(例えば、AACGTT)と関連し得る。この点で、CPG-C ODNは、その回文性の性質のために自らを結合し、それによって二本鎖(double-stranded)二重鎖(duplex)又はヘアピン構造を生成し得る。
【0023】
更に、一実施形態によれば、CPG-C ODNは、5’-Tがオリゴヌクレオチドの5’末端から0、1、2、又は3塩基に位置する1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチドと、1つ以上の非メチル化CGジヌクレオチドを含む少なくとも8塩基長の少なくとも1つの回文配列とを含むことができる。1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチド配列は、回文配列の5’末端から0、1、又は2塩基を分離し得るか、又は回文配列は、1つ以上の5’-TCGトリヌクレオチド配列の全て又は一部を含有し得る。一実施形態において、CpG-C ODNは、12~100塩基長、好ましくは12~50塩基長、好ましくは12~40塩基長、又は好ましくは12~30塩基長である。一実施形態において、CpG-C ODNは、30塩基長である。一実施形態において、ODNは、少なくとも(下限)12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、50、60、70、80、又は90塩基長である。一実施形態において、ODNは、最大で(上限)100、90、80、70、60、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30塩基長である。
【0024】
一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、8~97塩基長、好ましくは8~50塩基長、又は好ましくは8~32塩基長である。一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、少なくとも(下限)8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30塩基長である。一実施形態において、少なくとも1つの回文配列は、最大で(上限)50、48、46、44、42、40、38、36、34、32、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、又は10塩基長である。
【0025】
一実施形態において、CpG-C ODNは、配列番号1の配列を含むことができる。
【0026】
一実施形態によれば、CpG-C ODNは、SD-101を含むことができる。SD-101は、30merのホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドであり、以下の配列:
5’-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3’(配列番号1)を有する。
SD-101原薬は、ナトリウム塩として単離される。SD-101の構造を、図1に示す。SD-101遊離酸の分子式は、C2933691121492929であり、SD-101遊離酸の分子量は、9.672ダルトンである。SD-101ナトリウム塩の分子式は、C2933401121492929 Na29であり、SD-101ナトリウム塩の分子量は、10,309ダルトンである。
【0027】
更に、一実施形態によれば、CPG-C ODN配列は、米国特許第9,422,564号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される配列番号172に対応することができる。
【0028】
一実施形態において、CpG-C ODNは、配列番号1などの前述のうちのいずれかと少なくとも75%の相同性を有する配列を含むことができる。
【0029】
別の実施形態によれば、CPG-C ODN配列は、米国特許第9,422,564号に記載される他の配列のうちのいずれか1つに対応することができる。更に、CPG-C ODN配列はまた、米国特許第8,372,413号(その全体が参照により本明細書にも組み込まれる)に記載される配列のうちのいずれかに対応することができる。
【0030】
一実施形態によれば、本明細書で論じられるCPG-C ODNのうちのいずれかは、それらの薬学的に許容される塩形態において存在してもよい。例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、N-Me-D-グルカミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)を有する塩、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミン、及びアルギニン、リジンなどのアミノ酸を有する塩が含まれる。一実施形態において、CpG-C ODNは、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩形態である。1つの好ましい実施形態において、CpG-C ODNは、ナトリウム塩形態である。CpG-C ODNは、薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的溶液中で提供され得る。代替的に、CpG-C ODNは、凍結乾燥固体として提供され得、凍結乾燥固体は、その後、投与前に、滅菌水、生理食塩水、又は薬学的に許容される緩衝液中で再構成される。本開示の薬学的に許容される賦形剤としては、例えば、溶媒、増量剤、緩衝剤、等張調整剤、及び防腐剤が挙げられる。一実施形態において、薬学的組成物は、溶媒、増量剤、緩衝剤、及び等張調整剤のうちの1つ以上として機能する賦形剤を含み得る(例えば、生理食塩水中の塩化ナトリウムは、水性ビヒクル及び等張調整剤の両方として機能し得る)。本開示の薬学的組成物は、非経口及び/又は経皮投与に好適である。
【0031】
一実施形態において、薬学的組成物は、溶媒としての水性ビヒクルを含む。好適なビヒクルとしては、例えば、滅菌水、食塩水溶液、リン酸緩衝食塩水、及びリンゲル溶液が挙げられる。ある実施形態において、本組成物は、等張である。
【0032】
薬学的組成物は、増量剤を含み得る。増量剤は、薬学的組成物が投与前に凍結乾燥される場合に特に有用である。一実施形態において、増量剤は、凍結又は噴霧乾燥中及び/又は保管中の活性剤の分解の安定化及び防止を助ける保護剤である。好適な増量剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビタール、グルコース、及びラフィノースなどの糖(単糖、二糖、及び多糖)である。
【0033】
薬学的組成物は、緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、pHを制御して、処理、貯蔵、及び任意選択で再構成中の活性剤の分解を阻害する。好適な緩衝液としては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩を含む塩が挙げられる。他の好適な緩衝剤としては、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、及びリジンなどのアミノ酸が挙げられる。緩衝剤は、塩酸又は水酸化ナトリウムを更に含み得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、組成物のpHを4~9の範囲内に維持する。一実施形態において、pHは、(下限)4、5、6、7、又は8よりも大きい。いくつかの実施形態において、pHは、(上限)9、8、7、6、又は5未満である。すなわち、pHは、下限が上限未満である約4~9の範囲内である。
【0034】
薬学的組成物は、等張調整剤を含み得る。好適な等張調整剤としては、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン、及びマンニトールが挙げられる。
【0035】
薬学的組成物は、防腐剤を含み得る。好適な防腐剤としては、例えば、酸化防止剤及び抗菌剤が挙げられる。しかしながら、一実施形態において、薬学的組成物は、滅菌条件下で調製され、単回使用容器内にあり、したがって、防腐剤の含有を必要としない。
【0036】
表1は、SD-101医薬品16g/Lのバッチ式を説明する:
【表1】
【0037】
いくつかの実施形態において、単位用量強度は、約0.1mg/mL~約20mg/mLを含み得る。一実施形態において、SD-101の単位用量強度は、13.4mg/mLである。
【0038】
CpG-C ODNは、修飾を含有し得る。好適な修飾は、3’OH又は5’OH基の修飾、ヌクレオチド塩基の修飾、糖成分の修飾、及びリン酸基の修飾を含むことができるが、これらに限定されない。修飾塩基は、修飾塩基が、ワトソン-クリック塩基対合を介してその天然相補体に対して同じ特異性を維持する限り、回文配列に含まれ得る(例えば、CpG-C ODNの回文部分は、自己相補的なままである)。
【0039】
CpG-C ODNは、直線的であってもよく、円形であってもよく、又は円形部分及び/若しくはヘアピンループを含むことができる。CpG-C ODNは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。CpG-C ODNは、DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドであってもよい。
【0040】
CpG-C ODNは、天然に存在する塩基又は修飾された非天然に存在する塩基を含有してもよく、修飾された糖、リン酸塩、及び/又は末端を含有してもよい。例えば、ホスホジエステル結合に加えて、ホスフェート修飾には、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホラミデート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル及びホスホロジチオエートが含まれるが、これらに限定されず、任意の組み合わせで使用され得る。一実施形態において、CpG-C ODNは、ホスホロチオエート結合のみ、ホスホジエステル結合のみ、又はホスホジエステルとホスホロチオエート結合の組み合わせを有する。
【0041】
2’-アルコキシ-RNAアナログ、2’-アミノ-RNAアナログ、2’-フルオロ-DNA、及び2’-アルコキシ-又はアミノ-RNA/DNAキメラなどの、本分野で知られている糖修飾も、作製して、任意のリン酸修飾と組み合わせてもよい。塩基修飾の例としては、CpG-C ODNのシトシン(例えば、5-ブロモシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ヨードシトシン)のC-5及び/又はC-6、並びにCpG-C ODNのウラシル(例えば、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ヨードウラシル)のC-5及び/又はC-6への電子求引性部分の添加が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、CpG-C ODNの回文配列における塩基修飾の使用は、ワトソン-クリック塩基対合に関与する塩基の自己相補性を妨げるべきではない。しかしながら、回文配列の外では、修飾塩基は、この制限なしに使用することができる。例えば、2’-O-メチル-ウリジン及び2’-O-メチル-シチジンは、回文配列の外側で使用されてもよく、一方、5-ブロモ-2’-デオキシシチジンは、回文配列の内側及び外側の両方で使用されてもよい。回文配列の内側及び外側の両方で用いられ得る他の修飾ヌクレオチドとしては、7-デアザ-8-アザ-dG、2-アミノ-dA、及び2-チオ-dTが挙げられる。
【0042】
ほとんどのODNの二重鎖(すなわち、二本鎖)及びヘアピン形態は、多くの場合、動的平衡状態にあり、ヘアピン形態は、低オリゴヌクレオチド濃度及び高温で一般的に好まれる。共有結合鎖間又は鎖内架橋は、それぞれ、熱、イオン、pH、及び濃度誘導構造変化に向かって、二重鎖又はヘアピンの安定性を増加させる。化学的架橋は、ポリヌクレオチドを二重鎖又はヘアピン形態のいずれかにロックして、物理化学的及び生物学的特性評価を行うために使用することができる。構造的に均質であり、最も活性な形態(二重鎖又はヘアピン形態のいずれか)で「ロック」されている架橋ODNは、架橋されていない対応物よりも潜在的により活性であり得る。したがって、本開示のいくつかのCpG-C ODNは、共有結合鎖間及び/又は鎖間架橋を含有することができる。
【0043】
ポリヌクレオチド及び修飾ポリヌクレオチドを作製するための技術は、当該技術分野において既知である。ホスホジエステル結合を含有する天然に存在するDNA又はRNAは、一般に、適切なヌクレオシドホスホラミダイトを3’末端で固体支持体に結合した成長ODNの5’ヒドロキシ基に順次結合させ、続いて中間ホスファイトトリエステルをリン酸トリエステルに酸化することによって合成され得る。この方法を使用して、所望のポリヌクレオチド配列が合成されると、ポリヌクレオチドが支持体から除去され、リン酸トリエステル基がリン酸ジエステルに脱保護され、ヌクレオシド塩基が水性アンモニア又は他の塩基を使用して脱保護される。
【0044】
CpG-C ODNは、リン酸修飾オリゴヌクレオチドを含有してもよく、そのうちのいくつかは、ODNを安定化することが知られている。したがって、いくつかの実施形態は、安定化CpG-C ODNを含む。ODN中の糖又は糖アナログ部分に結合され得るリン誘導体(又は修飾リン酸基)は、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミデートなどであり得る。
【0045】
CpG-C ODNは、1つ以上のリボヌクレオチド(唯一又は主糖成分としてリボースを含む)、デオキシリボヌクレオチド(主糖成分としてデオキシリボースを含む)、修飾糖又は糖アナログを含むことができる。したがって、リボース及びデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖アナログシクロペンチル基であり得る。糖は、ピラノシル又はフラノシル形態であり得る。CpG-Cオリゴヌクレオチドにおいて、糖部分は、好ましくは、リボース、デオキシリボース、アラビノース、又は2′-0-アルキルリボースのフラノシドであり、糖は、いずれかのアノマー配置でそれぞれの複素環式塩基に結合することができる。これらの糖又は糖アナログ、及びそのような糖又はアナログが複素環式塩基(核酸塩基)自体に結合しているそれぞれのヌクレオシドの調製は既知であるため、本明細書に記載する必要はない。糖修飾はまた、CpG-C ODNの調製において、作製して、任意のリン酸修飾と組み合わせてもよい。
【0046】
CpG-C ODNに組み込まれる複素環式塩基又は核酸塩基は、天然に存在する主プリン及びピリミジン塩基(すなわち、上記のようなウラシル、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニン)、並びに当該主塩基の天然に存在する修飾及び合成修飾であり得る。したがって、CpG-C ODNは、イノシン、2’-デオキシウリジン、及び2-アミノ-2’-デオキシアデノシンのうちの1つ以上を含み得る。
【0047】
別の実施形態によれば、CPG-ODNは、クラスAタイプのCPG-ODN(CPGP-A ODN)、クラスBタイプのCPG-ODN(CPG-B ODN)、クラスPタイプのCPG-ODN(CPG-P ODN)、及びクラスSタイプのCPG-ODN(CPG-S ODN)のうちの1つである。この点で、CPG-A ODNは、CMP-001であり得る。
【0048】
別の実施形態において、CPG-ODNは、チルソトリモド(IMO-2125)であり得る。
【0049】
チェックポイント阻害剤
一実施形態によれば、チェックポイント阻害剤は、プログラム死1受容体(PD-1)アンタゴニストを含むことができる。PD-1アンタゴニストは、がん細胞上で発現したプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の、免疫細胞(T細胞、B細胞、又はNKT細胞)上で発現したPD-1への結合を遮断し、好ましくは、がん細胞上で発現したPD-L2プログラム細胞死1リガンド2(PD-L2)の、免疫細胞発現PD-1への結合を遮断する任意の化学化合物又は生体分子であり得る。PD-1及びそのリガンドの代替名又は同義語には、PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279、及びSLEB2、PD-L1についてはPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274、及びB7-H、並びにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc、及びCD273が含まれる。ヒト個体が治療されている本発明の治療方法、医薬、及び使用のうちのいずれかにおいて、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断し、好ましくは、ヒトPD-L1及びPD-L2の両方のヒトPD-1への結合を遮断する。
【0050】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくは、ヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)、又はその抗原結合断片を含むことができる。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であり得、ヒト定常領域を含み得る。いくつかの実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましい実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’-SH、F(ab’)、scFv及びFv断片からなる群から選択される。
【0051】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくは、ヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合する免疫アドヘシン、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合されたPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含む融合タンパク質を含むことができる。
【0052】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害することができ、好ましくは、PD-L2のPD-1への結合も阻害する。上記の治療方法、薬剤、及び使用のいくつかの実施形態において、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、PD-L1のPD-1への結合を遮断するモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片である。一実施形態において、PD-1アンタゴニストは、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1抗体である。
【0053】
一実施形態によれば、PD-1アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブのうちの1つであり得る。
【0054】
別の実施形態によれば、ペムブロリズマブは、3週間毎(「Q3W」)に200mgの用量で末梢静脈を介して静脈内に(IV)投与される。更に別の実施形態において、ペムブロリズマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の実施形態において、ペムブロリズマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与後、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は毎月投与される。別の実施形態において、ペムブロリズマブは、最大6カ月の期間投与される。
【0055】
別の実施形態によれば、ニボルマブは、2週間毎(「Q2W」)に240mgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。更に別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与後、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は毎月投与される。
【0056】
別の実施形態によれば、チェックポイント阻害剤は、PD-L1アンタゴニストを含むことができる。この点において、PD-L1アンタゴニストは、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブのうちの1つであり得る。
【0057】
別の実施形態によれば、CPIは、CTLA-4アンタゴニストを含むことができる。この点で、CTLA-4アンタゴニストは、イピリムマブであり得る。別の実施形態によれば、イピリムマブは、3週間毎に3mg/kgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。更に別の実施形態において、イピリムマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の実施形態において、ニボルマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与後、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は毎月投与される。
【0058】
局所領域送達を達成するためのデバイス
一実施形態によれば、上記のデバイスのうちのいずれかは、カテーテル自体を含む、腫瘍への局所領域送達を達成するのに有用な任意のデバイスを含み得るか、又はカテーテルと組み合わせて使用され得る他の構成要素(例えば、フィルタバルブ、バルーン、圧力センサシステム、ポンプシステム、注射器、外側送達カテーテルなど)とともにカテーテルを含み得る。ある特定の実施形態において、カテーテルは、マイクロカテーテルである。
【0059】
いくつかの実施形態において、デバイスは、血管の下流分岐ネットワークにおける治療法の均一な分布を提供することができるセルフセンタリング能力、TLRアゴニストの逆行流を遮断又は阻害することができる逆流防止能力(例えば、バルブ及びフィルタ、及び/又はバルーンの使用による)、血管内の圧力を測定するシステム、並びに血管内の圧力を調節する手段を含むが、これらに限定されない、1つ以上の属性を有し得る。逆行静脈注入では、血管内の圧力がデバイス展開後に上昇し、逆行流を妨げる。注入は、注入の速度に正比例して、血管圧力を更に増加させる。動脈注入では、デバイスの展開は、血管圧力及び流量を減少させる。次いで、注入は、注入の速度に正比例して、血管圧力を増加させる。いくつかの実施形態において、システムは、手順全体を通してリアルタイム圧力を継続的にモニタリングするように設計される。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の方法を実行するために使用され得るデバイスは、米国特許第8,500,775号、米国特許第8,696,698号、米国特許第8,696,699号、米国特許第9,539,081号、米国特許第9,808,332号、米国特許第9,770,319号、米国特許第9,968,740号、米国特許第10,813,739号、米国特許第10,588,636号、米国特許第11,090,460号、米国特許公開第2018/0193591号、米国特許公開第2018/0250469号、米国特許公開第2019/0298983号、米国特許公開第2020/0038586号、及び米国特許公開第2020-0383688号に開示されるデバイスであり、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、デバイスは、米国特許第9,770,319号に開示されるデバイスである。ある特定の実施形態において、デバイスは、Surefire注入システムとして知られているデバイスであってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、デバイスは、使用中の血管内圧の測定を支援する。いくつかの実施形態において、デバイスは、米国特許出願第16/431,547号に開示されるデバイスである。ある特定の実施形態において、デバイスは、TriSalus注入システムとして知られている(時にはシールデバイスとしても知られている)デバイスであってもよい。ある特定の実施形態において、デバイスは、TriNav(登録商標)注入システムとして知られているデバイスであってもよい。ある特定の実施形態において、デバイスは、シールデバイスとして知られているデバイスであってもよい。ある特定の実施形態において、カテーテルデバイスは、TriSalus Life Sciencesによって製造された逆流防止マイクロカテーテル(TIS-21120-60)について記載され得る。ある特定の実施形態において、デバイスは、シールデバイスなどの一時的な閉塞デバイスであってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、シールデバイスは、逆行静脈注入(RVI)手順において血流を可逆的に閉塞するように作用する、デバイスの遠位端に構造を備えた二重カテーテル機械的に作動した注入システムであり得る。一実施形態によれば、デバイスの遠位端の構造は、編組構造の近位部分にわたって提供される流体不透過性膜と、編組構造の遠位部分にわたって流体透過性コーティング(又はカバー)とを有する編組フィラメント構造であり得る。デバイスジオメトリは、治療的送達中にデバイス注入ルーメンより遠位の血管系の直接的な連続圧力測定を更に可能にし得る。デバイス展開及び治療薬の注入は、RVI処置中に遠位血管圧力を調節し得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、PEDDによってデバイスを介して投与され得る。いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、血管内の圧力をモニタリングしながら投与され得、これは、注入部位におけるデバイスの位置を調整及び修正するために、並びに/又は注入速度を調整するために使用され得る。圧力は、例えば、1つ以上の圧力センサを含む圧力センサシステムによってモニタリングされ得る。
【0065】
注入速度は、血管圧力を変化させるように調整され得、これは、標的組織又は腫瘍へのTLRアゴニストの浸透を促進し得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、送達システムの一部としてシリンジポンプを使用して調整及び/又は制御され得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、ポンプシステムを使用して調整及び/又は制御され得る。いくつかの実施形態において、注入速度は、約0.1cc/分~約40cc/分、又は約0.1cc/分~約30cc/分、又は約0.5cc/分~約25cc/分、又は約0.5cc/分~約20cc/分、又は約1cc/分~約15cc/分、又は約1cc/分~約10cc/分、又は約1cc/分~約8cc/分、又は約1cc/分~約5cc/分であり得る。
【0066】
本発明は、以下の実施例で更に例示及び/又は実証され、これは、例示/実証のみを目的として示され、いずれにせよ本発明を限定することを意図するものではない。
【0067】
膵臓への投与を含む方法
一実施形態において、本発明の方法は、膵臓がんを治療する方法を含み、当該方法は、それを必要とする患者に、トール様受容体アゴニストを投与することを含み、トール様受容体アゴニストは、PRVIによってデバイスを介して膵臓の固形腫瘍に投与される。PRVIは、膵臓静脈ドレナージシステムの分岐(複数可)によって膵臓内の固形腫瘍に治療薬を注入することを指す。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイスなどの膵臓静脈ドレナージシステムの分岐へのデバイスの経皮的経肝導入を通して挿入される。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、TLR9アゴニストであり、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、SD-101である。一実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0068】
一実施形態において、PRVIによる治療の送達は、TLR9アゴニストを膵臓腫瘍に提供するより効果的な経路であり得る。特に、全身静脈内及び局所的動脈内療法とは対照的に、PRVIは、腫瘍への動脈供給に依存することなく腫瘍に治療を提供するために使用することができ、したがって、TLR9アゴニストを送達し、膵臓がんを治療するより効果的な手段であり得る。例えば、PRVIでは、TLR9アゴニストは、標的膵臓腫瘍の排出静脈を利用したサブ選択的、カテーテル指向アプローチによって腫瘍に送達され得る。例えば、TLR9アゴニストは、膵臓静脈ドレナージシステムの分岐(複数可)内の腫瘍に送達することができる。この点で、コンピュータ断層撮影(CT)を用いたデジタルサブトラクション血管撮影法は、逆行様式でTLR9アゴニストを送達するために、送達デバイス(例えば、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイス)を用いて膵臓腫瘍を排出する静脈にカテーテルを挿入するために使用することができる。
【0069】
一実施形態において、本発明の方法は、膵臓がんを治療する方法を含み、当該方法は、それを必要とする患者に、トール様受容体アゴニストを投与することを含み、トール様受容体アゴニストは、膵臓動脈系によって膵臓の固形腫瘍に注入することによってデバイスを介して投与される。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイスなどの膵臓動脈系へのデバイスの経皮的導入を通して挿入される。例えば、膵臓動脈系は、脾臓動脈、胃十二指腸動脈、又は下膵十二指腸動脈によってアクセスすることができる。この点で、頭部は、胃十二指腸動脈によって前後の膵十二指腸動脈にアクセスすることができ、体及び尾部は、脾動脈から後膵動脈、大膵動脈、又は膵尾動脈にアクセスすることができる。これらの血管から、標的組織の治療のために必要に応じて、より小さな供給血管を選択することができる。一実施形態によれば、トール様受容体アゴニストは、TLR9アゴニストであり、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、SD-101である。一実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0070】
膵臓がんは、膵臓内の固形腫瘍、例えば、外分泌腫瘍、例えば、膵臓腺がん、又は内分泌腫瘍、例えば、神経内分泌がんを含み得る。例としては、導管腺がん(膵管腺がん及び局所進行性膵管腺がんを含む)並びに及び腺房腺がんが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、腫瘍は、切除不能であるか、又は切除は、進行疾患の存在のために合理的な事業ではない。更に、一実施形態において、腫瘍は、転移性膵臓腺がんである。
【0071】
一実施形態によれば、本発明の方法は、膵臓腺がんを治療するための方法を含み、対象は18歳以上であり、RECIST v1.1基準に従って組織学的又は細胞学的に確認された評価可能又は測定可能な局所進行性の切除不能なPDACを示す。別の実施形態において、NCCNによって定義されるような切除不能な疾患の画像が中央で確認される。追加の実施形態において、本発明の方法は、0~1のEastern Cooperative Oncology Group(「ECOG」)パフォーマンススコア(「PS」)を示す対象への投与を含み得る。別の実施形態において、本発明の方法は、門脈、脾臓、又は上腸間膜静脈の完全な閉塞の不在によって定義されるように、CT静脈造影図で好適な静脈の解剖を示す対象への投与を含み得る。
【0072】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、膵臓腺がんを治療するための方法を含み、対象は、完全な放射線学的応答なしに標準ケア化学放射線療法又は全身化学療法レジメンを受けている。標準ケア化学療法の例としては、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル、又はFOLFIRINOXが挙げられる。加えて、同時化学療法の有無にかかわらず、放射線療法は、標準ケアレジメンとしても許容される。別の実施形態において、対象は、スクリーニング前の14日以内に、事前に細胞傷害性化学療法、標的療法、又は外部放射線療法を受けていない。
【0073】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、対象が適切な血液学的及び臓器機能を有する、膵臓腺がんを治療するための方法を含む。別の実施形態において、対象は、悪性腫瘍が臨床的に有意ではなく、進行中の治療が必要ではなく、対象が臨床的に安定している場合を除き、以前の病歴又は他の同時の悪性腫瘍を有しない。別の実施形態において、対象は、RECIST v.1.1基準に従って肝臓に測定可能な疾患を有する。
【0074】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、膵臓腺がんを治療するための方法を含み、対象は、治験責任医師によって推定されるように、3カ月を超える平均余命を有する。更に別の実施形態によれば、対象は、480ミリ秒以下のQTc間隔を有する。
【0075】
別の実施形態において、以前のがん治療からの全ての関連する臨床的に有意な薬物関連毒性は、治療の前に分解される。この実施形態において、分解能は、1以下のグレード又は患者の前処理レベルである。追加の実施形態において、対象は、置換療法で制御されたグレード2の脱毛症及び内分泌異常を有し得る。
【0076】
別の実施形態において、本発明の方法は、スクリーニング時に適切な臓器機能を有する対象への投与を含み得る。一実施形態において、適切な臓器機能を有する対象は、以下のもののうちの1つ以上を示し得る:(i)血小板数>100,000/μL、(2)ヘモグロビン≧8.0g/dL、(3)白血球数(WBC)>2,000/μL(4)測定されたクレアチニンクリアランスがCockcroft-Gault式によって計算された>30mL/分でない限り、血清クレアチニン≦2.0mg/dL、(5)合計及び直接ビリルビン≦2.0×正常上限(ULN)及びアルカリホスファターゼ≦5×ULN、(6)文書化されたギルバート病を有する患者においては、合計ビリルビン3.0mg/dL、(7)ALT及びAST≦5×ULN、(8)アミラーゼ及びリパーゼ3×ULN、並びに(8)スクリーニング時のプロトロンビン時間/国際標準化比(INR)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験結果≦1.5×ULN(これは、治療的抗凝固療法を受けていない患者のみに適用される。治療的抗凝固療法を受けている患者は、研究介入の最初の投与前に少なくとも4週間安定した用量を投与しなければならない)。
【0077】
別の実施形態によれば、腫瘍は、切除不能である。
【0078】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、免疫調節因子、腫瘍殺傷剤、及び/又は他の標的化治療薬などの他のがん治療薬と併せて投与することができる。
【0079】
一実施形態によれば、TLR9療法は、免疫系の調節によって細胞療法を可能にすることができる。
【0080】
一実施形態において、上記の膵臓への投与方法は、固形腫瘍全体、腫瘍全体、又は実質的な腫瘍の全体を通して、トール様受容体アゴニストの浸透をもたらす。一実施形態において、そのような方法は、間質性流体圧力及び固体応力を克服することを含む、トール様受容体アゴニストの、それを必要とする患者への灌流を強化する。一実施形態において、そのような方法は、全身循環にアクセスできない腫瘍の領域へのトール様受容体の送達を可能にする。別の実施形態において、そのような方法は、末梢静脈を介した、又は腫瘍間直接注射を介した従来の全身送達などの他の療法と比較して、非標的組織に送達されるより少ないトール様受容体アゴニストで、より高い濃度のトール様受容体アゴニストをそのような腫瘍に送達する。一実施形態において、そのような方法は、固形腫瘍のサイズ、成長率、又は排除の縮小をもたらす。
【0081】
いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約0.01mg、約0.03mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約8.5mg、約9mg、約9.5mg、約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、及び約12mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101は、16mg及び20mgの用量で投与される。ミリグラム量のSD-101(例えば、約2mg)の投与は、図1に例示される約2mgの組成物の投与を記載する。例えば、そのような量のSD-101(例えば、約2mgの量)は、そのような量のSD-101に加えて、他の関連化合物及び非関連化合物などの材料を含有する組成物内にも存在し得る。等価モル量の他の薬学的に許容される塩もまた、企図される。
【0082】
いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約0.01mg~約12mg、約0.01mg~約10mg、約0.01mg~約8mg、及び約0.01mg~約4mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約2mg~約12mg、2mg~約10mg、約2mg~約8mg、及び約2mg~約4mgであり得る。いくつかの実施形態において、SD-101などのTLR9アゴニストの用量は、約12mg未満、約10mg未満、約8mg未満、約4mg未満、又は約2mg未満であり得る。そのような用量は、毎日、毎週、又は隔週投与され得る。一実施形態において、SD-101の用量は、例えば、約0.5mg、続いて約2mg、続いて約4mg、続いて約8mg、続いて約12mgの投与によって徐々に増加する。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、サイクルを含む投与レジメンを投与することを含み得、サイクルのうちの1つ以上は、PRVI及びPEDDによってSD-101を投与することを含む。本明細書で使用される場合、「サイクル」は、投与配列の繰り返しである。一実施形態において、1つのサイクルは、1サイクル当たり1回の用量を含む。一実施形態において、本発明による治療のサイクルは、SD-101投与の期間、続いて「オフ」期間又は休止期間を含み得る。別の実施形態において、サイクル当たりの単回用量に加えて、サイクルは、SD-101の週1回の投与後の休止期間として1週間、2週間、3週間、4週間、又は28日を更に含む。別の実施形態において、投与レジメンは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又はそれ以上のサイクルを含む。別の実施形態において、治療は、2サイクルにわたる投与を含み、1サイクル当たり1回の用量であり、各サイクルは、1カ月間隔である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明は、局所進行性膵管腺がんなどの膵臓における固形腫瘍を治療するための医薬の製造におけるTLR9アゴニストの使用に関し、当該方法は、TLR9アゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含み、TLR9アゴニストは、PRVIによってデバイスを介して膵臓のそのような固形腫瘍に投与される。
【0085】
いくつかの実施形態において、SD-101は、局所進行性膵管腺がんの治療のためにPRVIによって0.5mgの用量で投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を介して更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって0.5mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって0.5mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって0.5mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、PRVIによって0.5mgの用量で、並びにペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを介して投与される。
【0086】
いくつかの実施形態において、SD-101は、局所進行性膵管腺がんの治療のためにPRVIによって2mgの用量で投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を介して更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって2mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって2mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって2mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、PRVIによって2mgの用量で、並びにペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを介して投与される。
【0087】
いくつかの実施形態において、SD-101は、局所進行性膵管腺がんの治療のためにPRVIによって4mgの用量で投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を介して更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって4mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって4mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって4mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、PRVIによって4mgの用量で、並びにペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを介して投与される。
【0088】
いくつかの実施形態において、SD-101は、局所進行性膵管腺がんの治療のためにPRVIによって8mgの用量で投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を介して更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって8mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって8mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって8mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、PRVIによって8mgの用量で、並びにペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを介して投与される。
【0089】
いくつかの実施形態において、SD-101は、局所進行性膵管腺がんの治療のためにPRVIによって12mgの用量で投与され、いくつかの実施形態において、SD-101は、圧力を調節するデバイス(すなわちPEDD)を介して更に投与される。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって12mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって12mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて血管圧力を調節するデバイスを介してPRVIによって12mgの用量で投与され、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。いくつかの実施形態において、SD-101は、PRVIによって12mgの用量で、並びにペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブと組み合わせて圧力を調節するデバイスを介して投与される。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、注入を膵臓などの罹患組織に様々な量の時間にわたって滞留させるステップを含む。例えば、本発明の方法は、約0~約20分の滞留時間を含む。別の実施形態において、本発明の方法は、約5~約10分の滞留時間を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、標的病変の治療をもたらす。この実施形態において、本発明の方法は、全ての標的病変の消失を含む完全奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ベースラインの合計最長径を基準として、標的病変の最長径の合計の少なくとも30%の減少を含む部分奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、治療開始以降の最小の合計最長径を基準として、部分奏効を得るのに十分な縮小でも、進行性疾患を与えるのに十分な増加でもない。そのような実施形態において、進行性疾患は、治療開始以降の記録された最小の合計最長径又は1つ以上の新たな病変の出現を基準として、標的病変の合計最長径の少なくとも20%の増加を特徴とする。合計は、5mmで絶対的な増加を示す必要がある。
【0092】
別の実施形態において、本発明の方法は、非標的病変の治療をもたらす。この実施形態において、本発明の方法は、全ての非標的病変の消失を含む完全奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1つ以上の非標的病変の持続性をもたらす。そのような実施形態において、進行性疾患は、既存の非標的病変の明確な進行、及び/又は1つ以上の新たな病変の出現を特徴とする。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、RECIST v.1.1による全奏効率などの有益な全奏効率をもたらす。これらの実施形態において、本発明の方法は、完全奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の完全奏効、非標的病変の完全奏効を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する完全奏効、非標的病変に対する非完全奏効及び非進行性疾患を示し、新たな病変を示さない。他の実施形態において、本発明の方法は、部分奏効である全奏効をもたらし、対象は、標的病変に対する部分奏効、非標的病変に対する非進行性疾患を示し、新たな病変を示さない。別の実施形態において、本発明の方法は、安定した疾患である全奏効をもたらし、対象は、標的病変の安定した病変、非標的病変の非進行性病変を示し、新たな病変を示さない。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、全奏効の持続時間の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、全奏効の持続時間は、再発又は進行性疾患が客観的に文書化された最初の日まで(治療開始以来記録された最小の測定値を進行性疾患の基準として)、完全奏効又は部分奏効について測定基準が満たされる時間(いずれか最初に記録される)から測定される。完全奏効の全奏効の持続時間は、完全奏効の測定基準が最初に満たされた時点から、進行性疾患が客観的に文書化された最初の日まで測定することができる。いくつかの実施形態において、安定した疾患の持続時間は、ベースライン測定値を含む治療開始以来記録された最小の測定値を基準として、治療の開始から進行の基準が満たされるまで測定される。
【0095】
更に他の実施形態において、本発明の方法は、改善された全生存率をもたらす。例えば、全生存期間は、登録日から死亡時まで計算することができる。最終有効性分析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、最後に生存が確認された日で打ち切られる。
【0096】
他の実施形態において、本発明の方法は、無増悪生存をもたらす。例えば、無増悪生存期間は、再発(又は疾患発症の他の明確な指標)を文書化した日、又は死亡日のいずれか先に発生した日から算出することができる。再発が文書化されておらず、最終有効性解析のためのデータカットオフ前に生存している患者、又は研究終了前に脱落した患者は、再発がないことを文書化する最後の放射線学的証拠の日で打ち切られる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、iRECISTによる全奏効率などの有益な全奏効率をもたらす。別の実施形態において、本方法は、臨床的利益(例えば、完全奏効+部分奏効+安定した疾患)をもたらす。別の実施形態において、本発明の方法は、経時的にベースラインと比較して、米国東海岸がん臨床試験グループパフォーマンスステータス(ECOG PS)の改善をもたらす。更に別の実施形態において、本発明の方法は、欧州がん研究治療機関の生活の質に関する質問票(EORTC-QLQ-C30)器具を使用して生活の質の改善をもたらす。
【0098】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、局所進行性膵管腺がんとして治療するための方法を含み、SD-101の投与は、腫瘍負荷の低減をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍負荷は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%減少する。
【0099】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、局所進行性膵管腺がんを治療するための方法を含み、SD-101の投与は、腫瘍進行の低減をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍進行は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%減少する。
【0100】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、局所進行性膵管腺がんを治療するための方法を含み、SD-101の投与は、肝臓MDSCコンパートメントを再プログラムして、肝転移の免疫制御を可能にし、及び/又はMDSCの排除によって全身抗PD-1療法への応答性を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、MDSCの制御において優れている。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、局所進行性膵管腺がんのための方法を含み、SD-101の投与は、MDSC細胞(CD11b+Gr1+)、単球性MDSC(M-MDSC;CD11b+Ly6C+)細胞、又は顆粒球性MDSC(G-MDSC;CD11b+LY6G+)細胞の頻度を低減させる。別の実施形態によれば、本発明の方法は、M1マクロファージを増強する。更に別の実施形態によれば、本発明の方法は、M2マクロファージを減少させる。
【0101】
別の実施形態において、本発明の方法は、NFκBリン酸化を増加させる。なお別の実施形態において、本発明の方法は、IL-6を増加させる。別の実施形態において、本発明の方法は、IL10を増加させる。なお別の実施形態において、本発明の方法は、IL-29を増加させる。別の実施形態において、本発明の方法は、IFNαを増加させる。更なる実施形態として、本発明の方法は、STAT3リン酸化を減少させる。
【実施例
【0102】
実施例1
この実施例では、マウスモデルにおける全身生理食塩水注入、PRVI/PEDDを介した生理食塩水注入、全身SD-101注入、及びPRVI/PEDDを介したSD-101注入における腫瘍体積及び腫瘍重量を比較した。図2Aは、腫瘍体積のデータを示すが、図2Bは、腫瘍体積の平均及び平均の標準誤差(SEM)を示すチャートを示す。図3Aは、腫瘍重量のデータを示すが、図3Bは、腫瘍重量の平均及びSEMを示すチャートを示す。
【0103】
データ及び対応する図面で見ることができるように、改善の傾向がある。
【0104】
実施例2
本実施例では、SD-101配列オリゴヌクレオチドを合成し、IRDye800CW(例えば、767nm、em.791nm)のフルオロフォアにコンジュゲートした。
/5IRD800CW/T*C*G*A*A*C*G*T*T*C*G*A*A*C*G*T*T*C*G*A*A*C*G*T*T*C*G*A*A*T
【0105】
次いで、標識されたSD-101を生理食塩水中に溶解し、PEDDデバイス(すなわち、シールデバイス)を介して、2ml/分の速度でブタモデルに投与した。動物を安楽死させ、膵臓組織を採取する前に、血液を60分間循環させた。シグナル強度(組織中の標識されたSD-101濃度の尺度)及び処理された組織分布を定量するために、NearIR画像を用いた。未処置のブタ膵臓を、シグナル強度を正規化するための参照として使用した。
【0106】
3つの異なる実験アームが実施された:
・0分間滞留、吸引しながら2cc/分で10cc注入
・20分間滞留、吸引しながら2cc/分で10cc注入
・0分間滞留、吸引せずに2cc/分で20cc注入
【0107】
この分析では、蛍光透視上で静脈の明確な穿孔及び/又は流体の血管外漏出を示した任意のブタを除外した。データシートにはそのような出来事が5件あった。各検体は、処置群、処置の日付、及び除外状態を含む表2(PRVI研究におけるブタ検体)で特定される。
【表2】
【0108】
処置1から2つの除外があり、処置2からは1つ、処置3からは2つの除外があった。結果として、この解析には、処置1の6つのサンプル、処置2の4つのサンプル、及び処置3の5つのサンプルが、含まれた。
【0109】
MATLAB及びOne-Channel-解析V2 toolpakを使用して、これらの研究からのNear IR画像のデータ解析を完了した。体積は、ピクセル数から計算された。シグナルは、シリンジから測定した元の用量に調整された。
【0110】
データ出力の概要を、表3(分析からのデータ出力)に示す。これには、Edwards Lifesciences圧力センサ及びQuantien圧力モニターから得られた圧力測定値が含まれている。
【表3】
【0111】
全ての統計は、Minitabを使用して行った。
【表4】
【0112】
P=0.889で有意差は見られなかった。
【0113】
3つの処置群を事後Tukey対比較と比較して、Signalに対して一方向ANOVAを実施した。
【表5】
【0114】
P=0.521で有意差は見られなかった。
【0115】
処置群を固定変数として、圧力を連続変数(崩壊、展開、及び/又はピーク)として使用して、体積及びシグナルの両方に対して線形回帰を実行し、圧力が体積又はシグナルのいずれかに影響を及ぼしたかどうかを確認した。
【表6】
【表7】
【0116】
有意な変数は見つからなかった。
【0117】
表8は、記述統計のいくつかを要約する。
【表8】
【0118】
一般的なヒトの膵臓は、通常約75ccである。50kgのブタが同様であるか、又は多分少し小さいと予想され得る。MATLABによる解析で、総標的面積と総非標的面積を合計して、体積を計算する場合、これは総臓器体積と等しくなるはずである。これが行われたとき、この研究の全てのブタの平均は、73.62ccである。したがって、この方法は、総膵臓体積を正確に決定する方法であると思われる。表9は、計算された臓器体積を要約する。
【表9】
【0119】
投与された用量は、投与前にNear IRカメラによっても定量化された。これは、用量が生理食塩水と混合された後にシリンジの画像を撮影し、シグナルを定量化することによって行われた。表10は、送達された総用量を要約する。
【表10】
【0120】
組織被覆及び送達される用量のパーセンテージは、表11の通りである。
【表11】
【0121】
これら2つの計算は、標識されたSD-101の総用量の平均0.6%が、膵臓容積の7.5%を含む組織によって吸収されたことを示した。これは総用量のわずかな部分を表すが、標的組織中のSD-101の局所濃度は、全身治療的送達のために組織が通常受け得るものと比較して濃縮された。したがって、PRVIを使用して、低用量のSD-101は、全身注入で行うことができる同様の取り込み/応答を達成するために使用することができる。
【0122】
更なる分析は、穿孔後にデバイスを位置決めすることができなかったためにPRVI注入を受けなかったP21116及びP21117を除き、データセットから手技的除外なしで実施された。全てのコホートからのデータを分析のためにプールした(n=18)。
【0123】
PRVIは、注入中に局所血管圧力を14±2mmHg上昇させ、膵臓内の隣接する非標的組織と比較してSD-101の局所濃度を12.6倍上昇させることが判定された(17.12±2.39の標的組織対1.40±0.05の非標的組織、p=0.000)(図4、表12)。PRVIによる組織標的化は、高度に選択的であることを見出し、組織体積の平均7.66%を標識されたSD-101に曝露した。
【表12】
【0124】
外れ値試験は、MiniTabソフトウェアを使用して実施された。P21093(9471 lu)からのシグナルデータがデータセットからの外れ値であることが判定された。P21093からのデータを除いて解析を再解析した。
【0125】
外れ値の除去後、PRVIは、注入中に局所血管圧力を13±2mmHg上昇させ、膵臓内の隣接する非標的組織と比較してSD-101の局所濃度を11.3倍上昇させることが判定された(16.01±1.78の標的組織対1.41±0.06の非標的組織、p=0.000)(図5、表13)。PRVIによる組織標的化は、高度に選択的であることを見出し、組織体積の平均7.33%を標識されたSD-101に曝露した。
【表13】
【0126】
実施例3
この実施例では、IDR800CW標識されたSD-101を使用して、ブタモデル内のPEDDデバイス及びエンドホールカテーテルのシグナル強度(治療吸収)及び処理された体積を比較した。
【0127】
この点で、以下の要約には2つの異なる実験アームが含まれた:(i)シールデバイス:0分間滞留、吸引しながら2cc/分で10cc注入、及び(ii)エンドホールカテーテル:0分滞留、吸引せずに2cc/分で10cc注入。
【0128】
シールデバイスから生成されたデータ(0分間滞留、吸引しながら2cc/分で10cc注入)を、表14に示す。
【表14】
【0129】
エンドホールカテーテルから生成されたデータ(0分間滞留、吸引せずに2cc/分で10cc注入)を、表15に示す。
【表15】
【0130】
図6は、エンドホールカテーテルと比較したシールデバイスの処理された体積を示す。この点で、シールデバイスを使用すると、処理された組織体積において6.8倍の増加をもたらした。
【0131】
図7は、エンドホールカテーテルと比較したシールデバイスの処理されたシグナル強度を示す。この点で、シールデバイスを使用すると、シグナル強度によって測定されるように、組織に送達される標識されたSD-101において12倍の増加をもたらした。
【0132】
同様の試験を、外れ値を除去した状態で実施した。この点で、Minitabソフトウェアを使用して、外れ値がシールデバイス及びエンドホール注入データセットの両方に存在するかどうかを判定した。この解析により、エンドホールシグナルデータセットに外れ値があることが判定された(P21148、1122.88luのシグナル強度)。P21148からのデータを除いて、データを再解析した。
【0133】
表16は、外れ値を除去したエンドホールカテーテルデータを示す。
【表16】
【0134】
図8は、外れ値データを除去したエンドホールカテーテルと比較したシールデバイスの処理された体積を示す。この点で、シールデバイスを使用すると、処理された組織体積において10.6倍の増加をもたらした。
【0135】
図9は、外れ値データを除去したエンドホールカテーテルと比較したシールデバイスの処理されたシグナル強度を示す。この点で、シールデバイスを使用すると、シグナル強度によって測定されるように、組織に送達される標識されたSD-101において46倍の増加をもたらした。
【0136】
図10Aは、エンドホールカテーテルによって送達される標識されたSD-101の分布パターンを示すが、図10Bは、シールデバイスによって送達される標識されたSD-101の分布パターンを示す。この点で、エンドホールカテーテルを注入すると、標識されたSD-101が静脈に沿って堆積し、組織への浸透が最小限に抑えられた。しかしながら、シールデバイスを使用した治療送達は、一次排出静脈の外側の組織への浸透をもたらした。
【0137】
実施例4
本実施例では、TLR9アゴニスト、SD-101のPEDD、例えば、シールデバイスを使用した膵臓逆行静脈注入(PRVI)は、局所進行性PDACを有する患者におけるCPIに対する奏効率を高めることができると仮定した。更に、CPI全身注入を受けている患者におけるSD-101 PEDD/PRVIの遠位効果により、膵外病変も免疫応答性の向上から利益を得ることができる。そのため、免疫療法に対する局所進行性PDACの応答性を、全身的な抗腫瘍免疫を可能にしながら最適化することができる。したがって、PDAC腫瘍へのSD-101のより効果的な送達及びMDSCなどの抑制性免疫細胞の排除により、局所進行性PDACを有する患者においてより高いCPI応答性が可能であり得る。
【0138】
組み合わせアプローチは、2つのフェーズ、すなわち、フェーズ1及び1bで実施され得る。この点で、フェーズ1の主な目的は、PEDD/PRVIによって、SD101単独の最大耐量(MTD)を決定することである。更に、副次的な目的は、固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)v1.1全奏効率(ORR)を評価することである。フェーズ1bに関して、主な目的は、ペムブロリズマブと組み合わせたPEDD/PRVIを介したSD-101の安全性を決定し、固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)v1.1全奏効率(ORR)及び12カ月無増悪生存期間(PFS)(共同主要評価項目)を評価することである。更に、副次的な目的は、静脈内(IV)免疫学的チェックポイント遮断と組み合わせたSD-101のPEDD/PRVIへの12カ月全生存期間(OS)及び無増悪生存期間を評価することである。更に、別の副次的な目的は、免疫ベースの治療(iRECIST)ORR、RECIST 1.1膵臓特異的奏効率(PRR)、奏効期間(DOR)、及び臨床的利益(完全奏効[CR]+部分奏効[PR]+安定した疾患[SD])に対するRECISTの観点から予備的な有効性を評価することである。
【0139】
本研究の全体的な設計は、図11に見られ得る。
【0140】
フェーズ1では、増量するSD-101の用量は、局所進行性腫瘍を含む膵臓の局所血管にPEDD/PRVIによって単独で投与される。PEDD/PRVIに対して推奨されたMTD又はSD-101の最適用量の決定後、本研究は、併用SD-101及びCPI使用の安全性を予備的有効性とともに評価するためにフェーズ1bに進ませることができる。フェーズ1bの患者は、全身抗PD-1チェックポイント遮断の存在下で、フェーズ1から選択されるSD-101用量を受けることができる。SD-101は、2サイクルにわたって投与することができ、1サイクル当たり1回の用量を有し、各サイクルは、1カ月間隔である。
【0141】
フェーズ1の各患者に対するSD-101注入の後、一晩の入院中の観察又は入院が必要とされ得る。フェーズ1におけるSD-101 PEDD/PRVIの安全性が確立された場合、フェーズ1bでの一晩の観察は、その後のSD-101注入のための治療医師の裁量に任される。注入が外来ベースで行われる場合、臨床的に安定している場合、患者は、注入後最低6時間、退院前に観察され得る。SD-101 PEDD/PRVIに関連して、最初の注入後に入院治療を必要とする任意のグレード2超の事象がある場合、患者は、その後の各SD-101注入後に一晩の観察又は入院のために隔離され得る。
【0142】
試験対象患者基準
一実施形態によれば、本研究に含めるためには、患者は以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.患者は18歳以上であり、RECIST v1.1基準に従って組織学的又は細胞学的に確認された評価可能又は測定可能な局所進行性の切除不能PDACを有する。NCCNが定義する切除不能な病変を画像の中央で確認することが必要である。
2.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スケールのパフォーマンスステータススコアが0又は1(スコアは0~5の範囲であり、数字が高いほど障害が大きいことを示す)
3.門脈、脾臓、又は上腸間膜静脈の完全な閉塞の不在によって定義されるCT静脈造影に好適な静脈解剖学的構造。
4.完全な放射線学的応答なしに標準ケア化学放射線療法又は全身化学療法レジメンを受けている。標準ケア化学療法には、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル、又はFOLFIRINOXが含まれ、他の療法については医療モニターと話し合うこと。同時化学療法の有無にかかわらず、放射線療法は、標準ケアレジメンとしても許容される。
5.適切な血液学的及び臓器機能。
6.研究を理解し、任意の研究の手順前に書面によるインフォームドコンセントを提供できる
7.スクリーニング前の14日以内に、事前に細胞傷害性化学療法、標的療法、又は外部放射線療法を受けていない
8.悪性腫瘍が臨床的に有意ではなく、進行中の治療が必要ではなく、患者が臨床的に安定している場合を除き、以前の病歴又は他の同時の悪性腫瘍を有しない。
9.RECIST v.1.1基準に従って肝臓に測定可能な疾患を有する
10.治験責任医師によって推定されるように、スクリーニング時の平均余命が>3カ月である
11.≦480msecのQTc間隔を有する
12.以前のがん治療からの全ての関連する臨床的に有意な(治験責任医師の判断では)薬物関連毒性は、研究治療投与前に(グレード≦1又は患者の治療前レベルまで)解決されなければならない(グレード2の脱毛症及び置換療法で制御される内分泌障害は許可される)。
13.以下によって証明されるような、スクリーニング時に適切な臓器機能を有している:
・血小板数>100,000/μL
・ヘモグロビン≧8.0g/dL
・白血球数(WBC)>2,000/μL
・測定されたクレアチニンクリアランスが≧30mL/分でない限り、血清クレアチニン≦2.0mg/dLは、Cockcroft-Gault式によって計算された。
・総直接ビリルビン≦2.0×正常上限(ULN)及びアルカリホスファターゼ≦5×ULN。文書化されたギルバート病の患者では、最大3.0mg/dLの総ビリルビンが、許容される。
・ALT及びAST≦5×ULN
・アミラーゼ及びリパーゼ≦3×ULN
・スクリーニング時のプロトロンビン時間/国際標準化比(INR)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験結果≦1.5×ULN(これは、治療的抗凝固療法を受けていない患者のみに適用される。治療的抗凝固療法を受けている患者は、研究介入の最初の投与前に少なくとも4週間安定した用量を投与しなければならない)。
14.妊娠可能性のある女性は、スクリーニング時及び治験介入の最初の投与前に、非妊娠及び非授乳、又は閉経後でなければならず、血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)妊娠検査結果が陰性でなければならない。
・妊娠可能性のある女性は、避妊治療を受けていない男性パートナーとの性行為を控えることに同意しなければならないか、又は避妊治療を受けていない男性パートナーと性的に活発な場合は、スクリーニングから研究期間中、非常に効果的な避妊方法を使用することに同意しなければならず、研究介入の最終投与後100日間そのような予防措置を継続することに同意しなければならない。
・妊娠可能性のある女性と性的に活発な避妊治療を受けていない男性は、効果的な避妊方法を使用し、研究期間中の1日目から研究介入の最終投与後30日間、精子の提供を避けることに同意しなければならない。
【0143】
フェーズ1
標準3+3設計を用いたSD 101単剤療法のPEDD/PRVIの用量漸増コホート(2サイクル、1カ月間隔):
・用量レベル1:0.5mg(n=3~6)
・用量レベル2:2mg(n=3~6)
・用量レベル3:4mg(n=3~6)
・用量レベル4*:8mg(n=3~6)
・用量レベル5* 12mg(n=3~6)
【0144】
*用量レベル4及び5は、任意である。PEDD/PRVI処置及び用量レベル1~3が、良好な忍容性であったが、臨床及び/又は免疫活性が最小限であった場合、追加の用量レベルが登録され得る。臨床活性は、用量レベルにわたる2つ以上のRECIST 1.1 CR又はPR、FDG-PETスキャンでSUVレベルが20%未満低下した少なくとも2人の患者、又は血清CA-19-9レベルが20%超低下した少なくとも2人の患者として定義される。最小の免疫学的応答性は、腫瘍内MDSCの減少、腫瘍内CD8+T細胞の増加、又はIFNα/IFNγ関連遺伝子シグネチャの増加の不在として定義される。
【0145】
各用量レベルでの最初の2人の患者の登録は、少なくとも72時間ずらすことができる。より高い用量レベルへの進行は、前の用量レベルでの最後の対象の最終注入後7日遅らせることができる。次の投与コホートへの進行は、安全性データのレビュー及びSRCによる確認後に起こり得る。SD-101単剤療法MTD又は最適用量で10人の患者からなる任意の拡大群は、フェーズ1bと同時に進行し得る。
【0146】
フェーズ1b
SD-101のPEDD/PRVIの標準3+3設計用量再漸増(2サイクル、サイクル間に1カ月間を有する1サイクル当たり1つの用量)と静脈内(IV)ペムブロリズマブ200mgを3週間毎(Q3W)に併用して、全身CPIを伴うPEDD/PRVIによってMTD又はSD-101の最適用量を同定する:
・用量レベル1:フェーズ1(すなわち、MTD-1又は最適用量-1)(n=3~6)からのMTD又は最適用量を下回る1用量レベルで、SD-101のPEDD/PRVIとともにペムブロリズマブ
・用量レベル2:MTD又はフェーズ1(n=3~6)からの最適用量でSD-101のPEDD/PRVIとともに、又はMTD-1又は最適用量-1が許容されない場合、ペムブロリズマブは、MTD-2又は最適用量-2に徐々に減少させる。
【0147】
各用量レベルでの最初の2人の患者の登録は、少なくとも48時間ずらすことができる。より高い用量レベルへの進行は、前の用量レベルでの最後の対象の最終注入後7日遅らせることができる。次の投与コホートへの進行は、安全性データのレビュー及びSRCによる確認後に起こり得る。MTD又は最適用量で10~20人の患者から任意の拡大群は、進行し得る。
【0148】
ペムブロリズマブと組み合わせたSD-101のRP2D又はニボルマブ+イピリムマブと組み合わせたSD-101のRP2Dで任意の拡大コホートが存在する。
【表17】
【0149】
SD-101投与
SD-101は、シールデバイスを使用して投与することができる。シールデバイスは、医師が指定する薬剤の導管として機能する遠位端に拡張可能なバルブを備えた0.021インチの内腔を有する5.0F~3.1Fの先細型同軸注入カテーテルである。バルブは、直径2~6mmの範囲の容器内で可変的に拡張するように設計されており、逆行流の存在下で流体不浸透性バリアを形成する。このデバイスは、治療薬の注入中にバルブに遠位な血管系で連続的な圧力モニタリングを可能にするように、標準的な侵襲性血圧(IBP)トランスデューサとインターフェースするように更に適合される。注入中、デバイスは、全ての逆行流を遮断し、血管内に圧力を発生させ、その結果、デバイスによって隔離された静脈及び毛細血管ネットワークの灌流が生じる。
【0150】
CPI投与
ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブは、表12に指定される用量レベルで別個のIV注入として投与することができる。
【0151】
SD-101投与期間(フェーズ1及びフェーズ1bの全ての参加者)
最大2回の投与(サイクル間の1カ月で2サイクル以上)。SD-101の第2のサイクルは、毒性又は忍容性に基づいて省略され得る。少なくとも1回のPEDD/PRVI用量のSD-101を受容している全ての患者は、評価可能であるとみなされる。
【0152】
CPI投与期間
ペムブロリズマブ200mg Q3Wの最大6カ月。
【0153】
SD-101のPEDD/PRVI
SD 101溶液は、シールデバイスを使用して膵静脈系によって注入することができる。要言すれば、この手順は、腫瘍を含有する腺の領域への選択的薬物送達を可能にし得る標的排出膵静脈を定義するための性能又は経肝若しくは経頸静脈造影を含む。場合によっては、1つの静脈が十分であり得るが、他の場合には、2つ以上の分岐を介した薬物送達が必要であり得る。オフターゲット分岐は、塞栓性閉塞を必要とし得る。
・SD-101治療体積:10mL
・SD-101治療用量:0.5mg、2mg、4mg
・SD-101希釈液:市販の、防腐剤不使用、0.9%塩化ナトリウム、USP(滅菌等張食塩水)。
【0154】
腫瘍応答評価
全ての患者は、膵臓の疾患の範囲及び代謝活性を評価するために、並びに任意の膵外病変、膵生検、並びにCTC、循環サイトカイン、及び他の免疫学的相関物のアッセイを評価するために、磁気共鳴画像法(MRI)又はコンピュータ断層撮影(CT)による画像診断を受けることができる。腫瘍反応は、標準的なRECIST v1.1基準を使用して放射線学的に測定することができる。公式の奏効スコア(RECIST v1.1に準拠)は、各注入から21日後に予備的に評価することができる。最終奏効スコアは、2回目の注入から42日後に判定され、擬似進行が除外され、初期奏効が確認されることを保証することができる。その後、90日毎に画像診断を行うことができる。局所画像の読み出しは、フェーズ1中の反応評価に利用することができる。奏効評価のための独立した中央レビューは、フェーズ1bの間に実施することができる。
【0155】
最大2回のPDAC腫瘍コアニードル生検セッションは、内視鏡超音波(EUS)によって行われる。
・SD-101の最初の注入の1週間前にベースライン生検を取得する
・2回目の生検は、SD-101の2回目のサイクルの1週間後(SD-101注入#2の前)に実施される。
・各生検セッション中に、EUSの指導の下、PDAC腫瘍から3本のコアニードルサンプルを採取する。
・病理学的奏効は、腫瘍サンプル内の壊死及び線維化のスコアリングを伴うサイト病理学者によるレビューに基づいて評価される。複数の施設が参加している場合、病理学的レビューは、単一の施設に集中させる。
・プロトコルに従って免疫学的相関研究を実施する
・各注入セッション中に血管内圧記録が得られる。
【0156】
薬物動態
血液サンプルを採取して、PEDD/PRVI後のSD-101全身曝露を特徴付けることができる。CPI濃度のサンプリング又は試験は行われない。SD-101の腫瘍レベルは、注入後の生検検体で測定することができる。
【0157】
薬物力学
血液サンプルは、CTC、循環サイトカイン、並びにインターフェロンα(IFN-α)及びインターフェロンγ(IFN-γ)関連遺伝子シグネチャを含む他の免疫学的相関物の測定のために収集することができ、これらは、このクラスの治療薬についての薬物動態(PK)評価よりも有益であり得る。
【0158】
安全性
フェーズ1及びフェーズ1bでは、治験責任医師で構成されたSRCを使用して、患者の安全性を確保し、用量コホートの移行を決定し、研究を継続するか早期に終了するかを決定し、研究実施及びデータの妥当性及び完全性を監視することができる。研究のフェーズに基づいて、メンバーを変更する場合がある。研究のフェーズ1bの部分では、統計学者が含まれる場合がある。
【0159】
安全性評価には、有害事象(AE)、臨床検査室検査、バイタルサイン、身体検査、及び臨床的に指示される心電図(ECG)が含まれる。
【0160】
以下は、SD-101サイクル中、又はサイクル2の最後のSD-101投与後2週間以内に観察された場合にDLTとみなされ、研究介入(SD-101若しくはCPI療法)及び/又はPEDDデバイスに起因するとみなされる:
・国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE)に基づく≧グレード3のサイトカイン放出症候群(CRS)
・NCI CTCAEに基づく自己免疫AE≧グレード3
・NCI CTCAEに基づくアレルギー反応AE≧グレード3
・7日以内に≦グレード2に回復しないNCI CTCAEに基づくグレード4の血液学的AE
・膵炎を含むあらゆる臓器系におけるNCI CTCAEに基づくグレード4のAE
【0161】
SD101のいずれかのサイクル中にDLTを発症した患者は、特定のDLTを考慮した代替アプローチ(例えば、用量修正を伴う)が合理的に安全であると予想されるという十分な正当性が提供されない限り、研究介入を永久的に中止することができる。患者は、臨床診療に従って治療され、毒性の解消を監視され得る。
【0162】
SD-101及び/又はCPI療法は、重度又は生命を脅かす注入関連の反応に対して永久に中止することができる。患者がグレード3以上の免疫媒介反応を有する場合、SD-101及び/又はCPI療法の投与中断、遅延、又は中止が必要である。SD-101及び/又はCPI療法の中止は、患者が以下に概説する条件のうちの1つを満たす場合に必要である。
・患者は、重度の膵炎の臨床的又は放射線学的証拠を有する
・患者は、中等度又は重度の腹水を含むがこれらに限定されない門脈圧高進症の臨床的証拠を有し、これは臨床的に有意であるか、又は静脈瘤出血である。
【0163】
いくつかの実施形態において、本発明は、膵臓における固形腫瘍を治療するための医薬の製造におけるTLR9アゴニストの使用に関し、当該方法は、TLR9アゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含み、TLR9アゴニストは、PRVIによってデバイスを介して膵臓のそのような固形腫瘍に投与される。
【0164】
上記は、本開示の原理を単に例示するに過ぎない。本明細書の教示を考慮して、説明される実施形態に対する様々な修正及び変更は、当業者には明白であろう。したがって、当業者は、本明細書に明示的には示され又は説明されていないが、本開示の原理を具現化し、したがって本開示の精神及び範囲内であり得る多数のシステム、配置、及び手順を考案することができることが理解されるであろう。様々な異なる例示的な実施形態は、当業者によって理解されるべきであるように、互いに一緒に、並びにそれと互換的に使用され得る。加えて、本明細書を含む本開示で使用される特定の用語は、例えば、データ及び情報を含むがこれらに限定されない、特定の例において同義的に使用され得る。本明細書では、これらの単語、及び/又は互いに同義であり得る他の単語は、本明細書で同義的に使用され得るが、そのような単語が同義的に使用されないように意図され得る場合があり得ることを理解されたい。更に、先行技術の知識が上記の本明細書において参照により明示的に組み込まれていない範囲において、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。参照した全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
【配列表】
2023542989000001.app
【国際調査報告】