IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニムの特許一覧

<>
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図1
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図2
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図3
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図4
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図5
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図6
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図7
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図8
  • 特表-脛骨-大腿骨試用インプラント 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】脛骨-大腿骨試用インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20231004BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518939
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2021058196
(87)【国際公開番号】W WO2022064310
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020000022741
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーリ,アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ネドピル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097CC01
4C097CC14
4C097CC18
4C097CC20
4C097MM10
(57)【要約】
脛骨-大腿骨試用インプラント(1)は、内側顆(2m)および外側顆(2l)を備える大腿骨試用インサート(2)と、内側板(3m)および外側板(3l)を備える脛骨試用インサート(3)とを備える。脛骨-大腿骨試用インプラント(1)はさらに、膝伸展位置を特定する第1の位置から膝屈曲位置を特定する第2の位置までの大腿骨試用インサート(2)の回転並進運動を受けて、大腿骨試用インサート(2)の内側顆(2m)を規定する球体(S)の中心(C)を通過する垂直軸(V)周りの大腿骨試用インサート(2)と脛骨試用インサート(3)との間の相対角度偏差を示すように構成された目盛り付き基準システム(8)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側顆(2m)および外側顆(2l)を備える大腿骨試用インサート(2)と、内側板(3m)および外側板(3l)を備える脛骨試用インサート(3)と、を備える脛骨-大腿骨試用インプラント(1)であって、
膝伸展位置を特定する第1の位置から膝屈曲位置を特定する第2の位置までの前記大腿骨試用インサート(2)の回転並進運動を受けて、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)を規定する球体(S)の中心(C)を通過する垂直軸(V)周りの前記大腿骨試用インサート(2)と前記脛骨試用インサート(3)との間の相対角度偏差を示すように構成された目盛り付き基準システム(8)を備える、脛骨-大腿骨試用インプラント(1)。
【請求項2】
前記脛骨試用インサート(3)は、平坦な下面(5)および脛骨板を規定する反対側の上面(6)を有し、前記垂直軸(V)は、前記脛骨試用インサート(3)の前記下面(5)に直交する、請求項1に記載の試用インプラント。
【請求項3】
前記脛骨板は、前記内側板(3m)を備え、前記内側板(3m)は、凹状であり且つ前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)の凸状関節面(4)と逆の形状である関節面(7)を有し、その結果、前記内側板(3m)は、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)を規定する前記球体(S)に接し且つ前記球体(S)を収容する、請求項2に記載の試用インプラント。
【請求項4】
前記目盛り付き基準システム(8)は、前記脛骨試用インサート(3)の前記内側板(3m)の前記上面(6)から前面(10)まで延びる複数の基準マーク(9)を備える、請求項2に記載の試用インプラント。
【請求項5】
前記目盛り付き基準システム(8)は、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)の前方面(21)に設けられたノッチ(11)をさらに備え、前記ノッチ(11)は、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)の前記前方面(21)と、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)を規定する前記球体(S)の前記中心(C)を通過する平面であって、前記脛骨試用インサート(3)の前記下面(5)に直交する平面との間の交差によって得られる、請求項4に記載の試用インプラント。
【請求項6】
前記複数の基準マーク(9)は、前記大腿骨試用インサート(2)の前記内側顆(2m)を規定し且つ前記内側板(3m)に収容可能な前記球体(S)の前記中心(C)を通る平面に含まれる中央ノッチ(9c)を備え、前記平面は、前記脛骨試用インサート(3)の前記下面(5)に直交し且つ前記脛骨試用インサート(3)自体の矢状面に平行である、請求項4または5に記載の試用インプラント。
【請求項7】
前記複数の基準マーク(9)は、前記中央ノッチ(9c)の両側に角度的に等間隔に配置された複数の側方ノッチ(9l)を備える、請求項6に記載の試用インプラント。
【請求項8】
各側方ノッチ(9l)は、隣接する側方ノッチから5°の角度幅だけ離間しており、全体として、中央ノッチ(9c)に対して±20°の幅(α)を有する間隔を規定する、請求項7に記載の試用インプラント。
【請求項9】
前記大腿骨試用インサート(2)に設けられた前記ノッチ(11)は、前記脛骨試用インサート(3)に存在する前記複数の側方ノッチ(9l)の1つと位置合わせされて、屈曲運動後の脛骨に対する大腿骨の前記相対角度偏差の測定を提供する、請求項7に記載の試用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨-大腿骨試用インプラントに関する。
【0002】
非病的な膝の屈曲-伸展運動では、脛骨と大腿骨との間に自然な相対回転がある。特に、伸展から屈曲にかけて、大腿骨は、脛骨と大腿骨との間の内側接触点を中心に回転することにより(内側回旋(medial pivoting))、脛骨に対して外旋する。その結果、脛骨と大腿骨との間の外側接触点は、外側脛骨板の後方部に向かって移動する。
【0003】
膝の屈曲-伸展運動中の相対的な脛骨-大腿骨の回転は、膝機能の重要な側面であり、人工膝関節全置換術(TKA)手術後に変わり得る。この変化は、脛骨の内旋の減少を引き起こす可能性があり、その結果、関節の正常な機能が回復しなくなる。
【0004】
インプラントのデザイン、コンポーネントの配置または向き、厚さ、脛骨および大腿骨の切除角度などの多くのパラメータが屈曲伸展運動における脛骨の内旋および大腿骨の外旋に影響を与え得る。
【0005】
対応する人工関節との結合面を得るために脛骨および大腿骨に施される切断は不正確である可能性があり、これは大腿骨が脛骨に対して回転する能力に影響を与える可能性があり、また大腿骨が20°の正しい回転を持つことを妨げる可能性がある。このことは、腱が課された回転に対応するために伸長するので、患者に痛みを引き起こす、または、内旋または外旋が関節の2つの部分間の結合の不安定さを引き起こし得るので、膝の不安定さが生じ得る。
【背景技術】
【0006】
術中に、したがって、最終的な人工関節を配置する前に、今しがた行われた外科手術に起因する屈曲-伸展運動における大腿骨に対する脛骨の内旋を評価できることは、外科医が膝機能の制限を判断して前述の不都合が患者に影響を及ぼすのを防止するのに役立ち、人工関節コンポーネントを骨に固定する前にこの評価を実行できることは潜在的に、インプラント性能を最適化するために、今しがた行われた切除および配置を修正することを可能にする。
【0007】
骨切除後に脛骨に対する大腿骨の正確な動きを確認するために、完全にロボットを利用した器具が現在使用されている。
【0008】
術中に、試用インプラントが挿入された状態で膝の2つの部分を外側から見るナビゲーションシステムの支援を含む、ロボットを利用した手順が使用されている。すなわち、切断および試用人工関節の装着に続いて、外科医は手動で患者の脚を屈曲-伸展させる。膝の動きをとらえることにより、コンピュータは脛骨板に対して大腿骨がどれだけ回転しているかを示すことができる。
【0009】
CAOS(コンピュータ支援整形外科手術)の場合、ナビゲーションシステムまたはロボットを使用して、脛骨に対する大腿骨の内旋-外旋の程度を、術中に、特に試行段階において、評価することが可能である。したがって、最終的なインプラントを配置する前に、試用インプラントまたはインサートが患者に使用され、脚の屈曲位置と伸展位置の両方で大腿骨と脛骨の間の相対位置を評価するために脚が動かされる。そのような動きは特別なカメラで撮影され、コンピュータで分析される。
【0010】
必要なデータを取得するために使用されるその他の技術は、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴またはX線撮影である。
【0011】
膝関節形成術で使用するための脛骨コンポーネントの配置に関するガイドは、WO2015/160852に記載されている。
【0012】
ロボットを利用した機器を使用するためには、手術室内でナビゲーションに従うための適切な手段(コンピュータ、カメラ、断層撮影装置、磁気共鳴装置、専任スタッフ)が必要であるので、前述のすべての手順に問題がないわけではない。
【0013】
そのようなシステムはかさばる高価な装置や機器を伴うので、外科医は当該システムをしばしば利用できない。
【0014】
さらに、膝の屈曲-伸展運動中の大腿骨の内旋/外旋を測定するためだけに、そのようなシステムの使用は長時間の操作手順を伴う、または当該システムは大きすぎる。
【0015】
コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)を使用して大腿骨-脛骨の正しい位置合わせを確認すると、術前に複数回のCTまたはMRIスキャンを実行する必要が生じ、その結果、手術および術前の時間が長くなり得る。
【0016】
X線照射中には医療チーム全員が手術室を離れる、または十分に保護される必要があり、さらに患者は十分な保護を受けられるが、患者も放射線にさらされるので、X線写真の使用にも欠点がある。
【0017】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、従来技術に記載された欠点を解決する脛骨-大腿骨試用インプラントを提案することであり、これにより、脛骨に対する大腿骨の20°の外旋を確実にするために、術中に脛骨に対して大腿骨が正しく且つ正確に動くことを検証することを可能にする。
【0018】
本発明のさらなる目的は、脛骨に対する大腿骨の正しい回転を、即座に簡単に迅速に且つコストのさらなる増加、時間の延長および外科手術の複雑化なしに、検証することを可能にする脛骨-大腿骨試用インプラントを提案することである。
【0019】
最後に、本発明の目的は、専門スタッフを必要とするロボット構造または他のかさばる機器の助けを借りずに、脛骨に対する大腿骨の正しい回転を検証することを可能にする脛骨-大腿骨試用インプラントを提供することである。
【0020】
これらの目的および他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載されている脛骨-大腿骨試用インプラントによって達成される。
【発明の概要】
【0021】
特に、本発明は、脛骨試用インサートおよび大腿骨試用インサートを備える脛骨-大腿骨試用インプラントに関する。脛骨試用インサートは内側板と外側板を備え、大腿骨試用インサートは内側顆と外側顆を備える。試用インプラントは、膝伸展位置を特定する第1の位置から膝屈曲位置を特定する第2の位置への大腿骨試用インサートの回転並進運動を受けて、大腿骨試用インサートの内側顆を規定する球体の中心を通る垂直軸周りの大腿骨試用インサートと脛骨試用インサートとの間の相対角度偏差を示すように構成された目盛り付き基準システムを備える。
【0022】
脛骨試用インサートは、平坦な下面および脛骨板を規定する反対側の上面を有する。前記脛骨板は、凹状であり且つ大腿骨試用インサートの内側顆の(下面に対応する)凸状関節面と逆の形状である(上面に対応する)関節面を有する内側板を備え、その結果、内側板は、大腿骨試用インサートの内側顆を規定する球体に接し且つ球体を収容する。
【0023】
垂直軸であって、その軸周りに大腿骨試用インサートの、脛骨試用インサートに対する回転が生じる垂直軸は、脛骨試用インサートの下面に直交する。
【0024】
目盛り付き基準システムは、脛骨試用インサートの内側板の上面から前面まで延びる複数の基準マークを備える。
【0025】
目盛り付き基準システムは、大腿骨試用インサートの内側顆の前方面に設けられたノッチをさらに備える。前記ノッチは、大腿骨試用インサートの内側顆の前方面と、大腿骨試用インサートの内側顆を規定する球体の中心を通過する平面であって、脛骨試用インサートの下面に直交する平面との間の交差によって得られる。
【0026】
複数の基準マークは、大腿骨試用インサートの内側顆を規定し且つ内側板に収容可能である球体の中心を通る平面に含まれる中央ノッチを備える。球体の中心を通る平面は、脛骨試用インサートの下面に直交し且つ脛骨試用インサート自体の矢状面に平行である。
【0027】
複数の基準マークは、中央ノッチの両側に角度的に等間隔に配置された複数の側方ノッチを備える。
【0028】
各側方ノッチは、隣接する側方ノッチから5°の角度幅だけ離間しており、全体として、中央ノッチに対して±20°の幅を有する間隔を規定する。
【0029】
大腿骨試用インサートに設けられたノッチは、脛骨試用インサートの側方ノッチの1つと位置合わせされて屈曲運動後の脛骨に対する大腿骨の角度偏差の測定を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、単に例として提供される添付の図面を参照して以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
図1】第1の動作位置における、患者の右膝に移植された、本発明による試用インプラントの斜視図を示す。
図2】第2の動作位置における、患者の右膝に移植された、本発明による試用インプラントの斜視図を示す。
図3】第1の動作位置における、患者の右膝に移植された、本発明の試用インプラントの側面図を示す。
図4】第2の動作位置における、患者の右膝に移植された、本発明の試用インプラントの側面図を示す。
図5】本発明の試用インプラントの一部を形成する脛骨試用インサートの正面図である。
図6図5に示される脛骨試用インサートの正面斜視図である。
図7図5に示される脛骨試用インサートの後方斜視図である。
図8】本発明の試用インプラントの一部を形成する大腿骨試用インサートの正面斜視図である。
図9図8に示される大腿骨試用インサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
前述の図において、参照番号1は、本発明による脛骨-大腿骨試用インプラント全体を示す。
【0032】
本発明の試用インプラント1は、脚の屈曲-伸展運動中の脛骨Tと大腿骨Fとの間の正しい相対運動を検証するために、その結果として、最終的なインプラントが移植される脛骨および大腿骨の表面の切断が正しく行われたかを検証するために、術中に使用される。
【0033】
非病的な膝の屈曲-伸展運動では、脛骨Tと大腿骨Fの間に相対的な回転がある。特に、伸展から屈曲にかけて、大腿骨Fは、脛骨と大腿骨との間の内側接触点を中心に回転することにより(いわゆる内側回旋)、脛骨Tに対して外旋する。その結果、脛骨と大腿骨との間の外側接触点は、外側脛骨板の後方部に向かって移動する。
【0034】
したがって、膝の屈曲-伸展運動中の脛骨と大腿骨の相対回転は回転並進運動である。
【0035】
直立姿勢の人の膝を正面から観察すると、脚が伸ばされると、脛骨と大腿骨は両方とも、人の体の正面に平行な(または人の横断面に直交する)平面に沿って垂直に整列し、代わりに脚が屈曲していると、脛骨は実質的に垂直のままである一方、大腿骨は90°曲がって水平に向き、したがって、人の体の横断面(または人の正面と直交する面)に平行な位置に移動する。
【0036】
この運動の間、矢状面に直交する水平軸周りの大腿骨の回転だけでなく、横断面に直交する垂直軸V周りの回転も生じる。そのような垂直軸Vの規定は、膝の解剖学的構造を説明した後に以下に説明される。
【0037】
膝は、大腿骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨からなる複雑な関節である。大腿骨の遠位部分は内側顆と外側顆からなり、それらの両方が軟骨で覆われている。内側顆は最も内側で矢状面に最も近く、外側顆は体の矢状面に対して遠位の位置にある。前方では、2つの顆が大腿骨滑車と呼ばれる溝を形成し、この溝は、膝の屈曲-伸展中に膝蓋骨を受け入れる役割を果たす。脛骨の近位部分は、その関節部分において、脛骨板と呼ばれ、軟骨で覆われた内側と外側の2つの半板に分割されており、それぞれ内側と外側の大腿顆と関節でつながる。2つの脛骨の半板は、脛骨棘を規定する2つの骨隆起によって離間している。
【0038】
2つの大腿顆は、大腿骨の遠位端に配置された丸みを帯びた隆起であり、大腿骨の遠位端が脛骨板に設けられた対向する凹面と関節でつながることを可能にする。
【0039】
したがって、側方から見ると、各顆は曲線形状を有し、具体的には、内側大腿顆の関節面は球体に近似できる。関節面は、脛骨板と結合する大腿顆の外部表面部分として意図されている。
【0040】
横断面に直交する垂直軸Vであって、当該軸V周りに第1の膝伸展位置から第2の膝屈曲位置への移行時に大腿骨が回転する垂直軸Vは、大腿骨の内側顆に得られると想像でき且つ内側顆の関節面に外接する球体の中心を通過する。
【0041】
関節面の幾何学的形状は、屈曲-伸展運動中に、大腿顆の内側関節面によって規定される球体の中心を通る垂直軸V周りに、大腿骨の外旋(外旋とは、体の外側に向かう外回転、したがって、右膝の場合は右への回転、左膝の場合は左への回転を意味する)を可能にするようなものであり、伸展位置から屈曲位置への移行時における大腿骨の同時の90°の回転は、屈曲角度が大きくなるにつれて、外側脛骨板と大腿骨外側顆との間の接触点の結果として生じる後方並進(したがって、脚の後ろに向かう)を伴う。
【0042】
垂直軸V周りの大腿骨の回転角度を正確に示すことが重要である。そのような回転の解剖学的幅は、文献では20°と規定されている。
【0043】
言い換えれば、伸展した脚に対応する第1の位置であって、当該位置において0°の角度値を与えることができる第1の位置に対して、脚の屈曲位置では、大腿骨は、前述の垂直軸V周りに外側に20°回転する。
【0044】
本発明の脛骨-大腿骨試用インプラント1(図1~4)は、互いに完全に関節接合するように、大腿骨試用インサート2(図8および9)および脛骨試用インサート3(図5~7)を備える。
【0045】
説明を読みやすくし、以下で検討される基準面の理解を簡素化するために、単一の大腿骨および脛骨コンポーネント(したがって、単一の大腿骨および脛骨試用インサート)についても、矢状面、前頭面および横断面が人体の平面と同様の態様で規定されている、したがって、基準面は、伸展した脚を正面から見た状態での試用インサートの使用を考慮して名付けられている。
【0046】
脛骨試用インサート3は、脛骨に直接拘束される、または脛骨試用ベース3pによって脛骨に拘束される。どちらの場合も、脛骨試用インサート3と脛骨の間に相対的な動きはない。脛骨の近位端は、(試用または最終的なインプラントのどちらかを使用するかによって、試用または最終的である)脛骨ベースが関連付けられる切断面に沿って切断される。
【0047】
同様に、大腿骨試用インサート2は、大腿骨の遠位端に多角形の構造を与える破断した切断線に沿って好適に成形されて、大腿骨と直接関連付けられる。大腿骨試用インサート2は、圧力または骨接続ピンによって関連付けられる。
【0048】
大腿骨試用インサート2は、側面図(図9)において、シェルまたはC字形構造であって、適切に成形された大腿骨Fの遠位端をその凹面の内側に取り囲んで収容するシェルまたはC字形構造を有する。
【0049】
したがって、大腿骨試用インサート2は、凸状の前方面21および凹状の後方面22を有する。
【0050】
凹状の後方面22は、大腿骨の遠位端と結合し且つそれが規定する凹面に大腿顆を収容するように構成される。
【0051】
代わりに、前方面21は、脛骨試用インサート3と結合する大腿骨試用インサート2の外面である関節面4を備える。
【0052】
大腿骨試用インサート2および脛骨試用インサート3は、大腿骨の遠位端と脛骨の近位端の幾何学的形状をそれぞれ再現する。
【0053】
大腿骨試用インサート2は、内側顆2mおよび外側顆2lを備え、両方とも関節面4で曲線且つ少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する。
【0054】
大腿骨試用インサート2の内側顆2mの関節面4は球形である。言い換えれば、内側顆2mは、球形状によって、または大腿骨試用インサート2の残部を大腿骨2の解剖学的構造に適合させるために適切に切断される球体Sの部分(図8)によって規定される。
【0055】
代わりに、外側顆2lの関節面4は、円筒形の包絡線であり、内側顆の曲線プロファイルよりも曲率が強調されていない曲線プロファイルを有する。
【0056】
脛骨インサート3(図5~7)は、平坦な下面5と、脛骨板を規定し且つ関節面7を備える反対側の上面6とを有する。脛骨板は、凹状の上面を有する内側板3mと、内側板3mよりも曲率が小さい上面を有する外側板3lとを備える。
【0057】
脛骨試用インサート3の内側板3mの上面は、大腿骨試用インサート2の内側顆2mの関節面4と逆の形状であり、その結果、内側板3mは、大腿骨試用インサート2の内側顆2mを規定する球体Sを収容する。
【0058】
球体Sの中心Cを通る垂直軸Vは、脛骨試用インサート3の下面5に直交する。
【0059】
脛骨-大腿骨試用インプラント1は、内側顆2mを規定する球体Sの中心Cを通る前述の垂直軸V周りの大腿骨試用インサート2と脛骨試用インサート3との間の回転または相対角度偏差を示すように構成された目盛り付き基準システム8をさらに備える。垂直軸V周りのそのような回転は、膝伸展位置(図1および図3)を特定する第1の位置から膝屈曲位置(図3および図4)を特定する第2の位置への移行中の大腿骨試用インサート2の回転並進運動によって引き起こされる。
【0060】
目盛り付き基準システム8は、脛骨試用インサート3の内側板3mの上面6から前面10まで延びる複数の基準マーク9を備える。それにより、脛骨試用インサート3上に配置された目盛り付き基準システム8は、脚を伸ばした状態でも屈曲させた状態でも外科医に見える。
【0061】
複数の基準マーク9は、大腿骨試用インサート2の内側顆2mを規定し且つ内側板3mに収容可能である球体の中心を通る平面に含まれる中央ノッチ9cをさらに備える。前記平面(through plane)は、脛骨試用インサート3の下面5に直交し且つ脛骨試用インサート3自体の矢状面に平行である。
【0062】
複数の基準マーク9は、中央ノッチ9cの両側に等間隔に配置された複数の側方ノッチ9lをさらに備える。
【0063】
各側方ノッチ9lは、5°の角度を特定するように隣接するノッチから離間しており、全体として、中央ノッチ9cに対して±20°の幅αを有する間隔を規定し、したがって、中央ノッチ9c周りに±20°の角度間隔を特定する。
【0064】
目盛り付き基準システム8はさらに、大腿骨試用インサート2の内側顆2mの外部正面前方面21上に前後方向の展開全体に沿って延在し且つ関節面4上にも少なくとも部分的に延在するノッチ11を備え、その結果、大腿骨試用インサート2が屈曲-伸展可動範囲全体にわたって脛骨試用インサート3と関節接合するときに、正面から見ることができる。
【0065】
ノッチ11は、大腿骨試用インサート2の内側顆2mの前方面21と、大腿骨試用インサート2の内側顆2mを規定する球体Sの中心Cを通る平面との間の交差から得られ、当該平面は脛骨試用インサート3の下面5に直交する。
【0066】
したがって、使用時、すなわち、2つのインサートがそれぞれ対応する大腿骨および脛骨部分に関連付けられ、互いに関節接合するとき、大腿骨試用インサート2のノッチ11と脛骨試用インサート3に設けられた基準マーク9との間の相対位置を比較すると、0°(完全に伸ばした脚)から90°(屈曲した状態の脚)の間の屈曲角度範囲内の任意の二つの屈曲角度間で脛骨に対する大腿骨の外旋角を評価することが可能である。
【0067】
脛骨試用インサート3に対する大腿骨試用インサート2の角度偏差は、脛骨試用インサート3の下面5に直交し且つ球体Sの中心を通過する垂直軸V周りの第1の回転によって与えられ、それは、大腿骨試用インサート2の前方面21に設けられたノッチ11と脛骨試用インサート3に設けられた複数のマーク9の側方ノッチ9lのうちの1つが一致することによって示されている。膝の伸展位置から屈曲位置への移行中に大腿骨が脛骨に対してとる屈曲角度に応じて、脛骨に対する大腿骨の外旋は、0°から20°まで変化する位置をとる。試用インプラントに焦点を移し、脚を屈曲させて完全伸展状態から90°屈曲状態にすることにより、大腿骨試用インサート2のノッチ11は、膝の屈曲角度が大きくなるにつれて、複数の基準マークをスライドして中央ノッチ9cから中間の側方ノッチ9lを通り過ぎて最外側の側方ノッチ9lに移動する。
【0068】
上記の目盛り付き基準システム8を備えた試用インプラントは、シンプルで直感的で簡単に達成できる装置を使用して、低コストで、すべての人工膝関節の屈曲-伸展運動における大腿骨コンポーネントの外旋を評価できるため、革新的である。
【0069】
自然な運動特性を取り戻し且つ人工膝関節の機能を最適化する観点から、試用インプラントによる外旋の評価は、最終的なインプラント装着前に脛骨と大腿骨の切除の妥当性やコンポーネントの位置決めを検証するためにも役立つ。
【0070】
言い換えれば、試用インプラントによる外旋の評価は、実施される外科的処置を制御するステップを表すことができ、これは、インプラントコンポーネントを固定する前にすでに実施された外科的ステップに関して修正切除を計画するのに役立つ。
【0071】
これはすべて、非常にシンプルで絶対に安価な態様で得られ、術中の試用インプラントとして通常使用される通常の脛骨および大腿骨試用インサートに実装でき、高価でかさばる複雑なロボットシステムを使用する必要はなく、大腿骨と脛骨の間の回転の程度を即座にフィードバックすることができるため、外科医が簡単に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】WO2015/160852
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】