(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】歯科材料を加熱するための加熱デバイス、歯科材料を適用するためのシステム、及び歯科材料の温度を制御する方法
(51)【国際特許分類】
A61C 5/55 20170101AFI20231004BHJP
【FI】
A61C5/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518950
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021058044
(87)【国際公開番号】W WO2022064300
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,クリスティアン アー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ,コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】ケルツ,ラルフ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルカー,ステファン カー.
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA17
4C052HH07
(57)【要約】
本発明は、歯科材料を加熱するための加熱デバイス10及び歯科材料の温度を制御する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料を加熱するための加熱デバイス(10)であって、
加熱される前記歯科材料を収容する容器(26、28)を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部(22、24)が内部に形成された本体(12)と、
500nm~2000nmの範囲、好ましくは800nm~1500nmの範囲の波長を有する赤外光を、前記開口部(22、24)に受け入れられた、前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の外表面(44)に放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオード(42)と、
前記本体(12)の前記開口部(22、24)に受け入れられた前記容器(26、28)の前記外表面(44)の温度を判定するように構成された少なくとも1つの温度センサ(48)と、
前記温度センサ(48)及び前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)と通信し、かつ、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射される赤外光の量を制御することにより、前記温度センサ(48)によって判定された前記容器(26、28)の前記外表面(44)の前記温度に基づいて、前記容器(26、28)の前記外表面(44)の前記温度を制御するように構成された、制御回路を有するコントローラ(49)と、
を備える、加熱デバイス(10)。
【請求項2】
長さLを有する少なくとも1つ又は少なくとも2つのアダプタ(30、32)であって、その長さLに沿って前記本体(12)の前記開口部(22、24)内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクル(38、40)を画定する壁(34、36)を有する、少なくとも1つ又は少なくとも2つのアダプタ(30、32)を更に備え、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)が、前記アダプタ(30、32)の外側に、かつ前記長さLに沿って配置され、前記アダプタ(30、32)が、少なくとも部分において、前記長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である、請求項1に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項3】
前記コントローラ(49)が、赤外光の前記放射を断続的に中断及び再作動させることによって、又は前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)に供給される電流を制御することによって、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射される赤外光の前記量を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射された前記赤外光を、前記本体(12)の前記開口部(22、24)に受け入れられた、前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の前記外表面(44)上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系(50、52)を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学系(50)が前記アダプタ(30、32)上に一体的に形成されて、前記少なくとも1つの光学系(50)と前記アダプタ(30、32)とが同じ材料で作製された一体構成要素を構成している、請求項4に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項6】
歯科材料を加熱するための加熱デバイス(10)であって、
加熱される前記歯科材料を収容する容器(26、28)を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部(22、24)が内部に形成された本体(12)と、
前記本体(12)の前記開口部(22、24)に受け入れられた、前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の外表面(44)に赤外光を放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオード(42)と、
前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射された前記赤外光を、前記本体(12)の前記開口部(22、24)に受け入れられた、前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の前記外表面(44)上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系(50、52)と、
を備える、加熱デバイス(10)。
【請求項7】
前記加熱デバイス(10)が、携帯型卓上デバイスとして構成されており、好ましくは、前記開口部(22、24)が、20cm未満、好ましくは16cm未満、より好ましくは14cm未満、より好ましくは10cm未満の長さだけ前記本体(12)内に延びている、請求項6に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項8】
長さLを有するアダプタ(30、32)であって、その長さLに沿って前記本体(12)の前記開口部(22、24)内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクル(38、40)を画定する壁(34、36)を有する、アダプタ(30、32)を更に備え、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)が、前記アダプタ(30、32)の外側に、かつ前記長さLに沿って配置され、前記アダプタ(30、32)が、少なくとも部分において、前記長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である、請求項6又は7に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)と、歯科材料を収容する容器(26、28)と、を備える、歯科材料を適用するための、システム。
【請求項10】
前記容器(26、28)が、前記歯科材料を収容するためのチャンバと、前記歯科材料を分注するために前記チャンバに接続された分注ノズル(21)と、前記歯科材料を前記分注ノズル(21)に向けて付勢するために前記チャンバ内に配置されたピストンと、を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
歯科材料の前記温度を制御する方法であって、
a)歯科材料を収容する容器(26、28)の外表面(44)に赤外光を放射する少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって、前記容器(26、28)に収容された前記歯科材料を加熱するステップと、
b)少なくとも1つの温度センサ(48)によって、前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の外表面(44)の前記温度を判定するステップと、
c)前記判定された温度を前記加熱された歯科材料の目標温度と比較するステップと、
d)前記判定された温度と前記目標温度との前記比較に基づいて、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射される赤外光の前記量を調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の前記外表面(44)の前記温度が、少なくとも1つの赤外線温度センサ(48)を用いて前記容器(26、28)によって放出される赤外線エネルギーを検出することによって、検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱された歯科材料の前記目標温度が、前記加熱された歯科材料の所定の目標粘度に基づいている、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記歯科材料を収容する前記容器(26、28)の前記外表面(44)が、総加熱時間の少なくとも一部分にわたって、前記加熱された歯科材料の前記目標温度を上回る所定の温度まで加熱される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)によって放射される赤外光の前記量が、前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)による赤外光の前記放射を断続的に中断及び再作動させることによって、又は前記少なくとも1つの発光ダイオード(42)に供給される電流を調整することによって、調整される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な種類の材料が、修復目的の歯科治療に使用されている。例えば、歯科用複合材料は、患者の歯の空洞を充填するために使用することができる。更に、歯科材料は、歯冠破折、歯の摩耗、及び先天性欠損を修復するために使用することができる。
【0002】
場合によっては、特定の目的で、例えば、患者の歯に適用する前に歯科材料の特性を変えるために、歯科材料を温めることが好都合であり得る。
【0003】
具体的には、複合材料の粘度を増加させるために、高充填複合材料を温めることができる。複合材料の粘度を増加させることにより、複合材料の取り扱い及び/又は性能特性を向上させ、これにより、患者の歯への複合材料の適用を容易にする。
【0004】
しかしながら、いくつかの複合材料は、加熱されるにつれて粘性が低くなる。これはまた、場合によっては、例えば、複合材料が流動して歯腔の複雑な細部に適合することを可能にし、かつその容器からの材料のより容易な押し出しを可能にするために有利であり得る。
【0005】
歯科材料は、多くの場合、ある量の歯科材料を保存することを可能にするパッケージ(例えば、カプセル又は他の容器)で提供される。典型的には、電気抵抗器に基づく加熱デバイスを使用して、歯科材料を収容する容器を加熱デバイス内又は加熱デバイス上に配置することによって、歯科材料を加熱する。
【0006】
米国特許出願公開第2004/234921(A1)号(Addent)は、加熱要素を収容するためのベースと、加熱要素の温度を制御するための温度制御機構と、温度制御機構を電源に電気的に接続するための電力接続と、ベースに取り外し可能に取り付けられた加熱レセプタクルとを有する、臨床使用前に歯科材料の温度を周囲温度を超えて上昇させるために歯科材料のコンパルを挿入することができる加熱デバイスに関する。
【0007】
歯科技工士によって使用される高融点材料を溶融するための、又は分析目的のためのデバイスは、欧州特許出願公開第1464904(A1)号(Barget)に記載されている。これらの溶融デバイスは、1,600℃の温度までの材料の溶融を可能にし、石英ガラス溶融るつぼを備えており、石英ガラス溶融るつぼは、溶融るつぼに向かって延びる少なくとも1つの放射シャフトを有する断熱ブロックによって囲まれ、放射熱源として短波長石英赤外線放射器を含む。
【0008】
しかしながら、既存のアプローチは、特定の欠点をもたらす。したがって、簡便に使用することができ、かつエネルギー効率が高い加熱デバイスが依然として必要とされている。
【0009】
更に、歯科材料を加熱するとき、加熱される歯科材料の特定の目標温度範囲が望ましい。例えば、歯科材料を所望の目標温度範囲未満の温度に加熱するとき、所望の歯科材料特性が達成されない、又は部分的にしか達成されない場合がある。
【0010】
更に、歯科材料を所望の温度範囲を超える温度まで、及び/又は長時間にわたって過熱することにより、歯科材料及び/又は歯科材料を収容する容器を損なう及び/又は劣化させる可能性がある。
【0011】
更に、必要とされるより、かつ/又は所望されるよりも高い温度まで歯科材料を加熱することにより、加熱のために消費されるエネルギーの浪費をもたらす。
【0012】
したがって、本発明の目的は、改善された加熱効率で歯科材料を加熱するための加熱デバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0013】
この目的は、歯科材料を加熱するための加熱デバイスによって達成される。加熱デバイスは、加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部が内部に形成された本体を備える。
【0014】
加熱される歯科材料は、具体的には、歯科用修復物(例えば、空洞を充填するための材料、修復材料)に使用される歯科用複合材料を含む。
【0015】
加熱デバイスの本体は、電子機器、電池、制御要素などの加熱デバイスの構成要素を収容するように構成されたハウジングを含むことができる。ハウジングは、加熱デバイスの組み立てを容易にするために、一体構造又は例えば二体構造などの多体構造とすることができる。
【0016】
本体に形成された開口部は、加熱デバイスを取り囲む環境に対して開いていてもよい。しかしながら、開口部は、加熱デバイスが使用されていないときに環境からの開口部内の汚染を防止する又は少なくとも最小限に抑えるために、例えば蓋又は他の閉鎖構造によって、環境に対して少なくとも選択的に、かつ/又は少なくとも部分的に閉鎖することもできる。開口部は、25cm、20cm、15cm、又は10cmの長さだけなど、特定の距離だけ本体内に延びていることができる。
【0017】
開口部は、カプセル及び/又はシリンジなどの異なるタイプの容器を受け入れるように構成することができる。したがって、本体に形成された開口部の形状及び/又は幾何学形状は、具体的には、開口部に少なくとも部分的に受け入れられる、歯科材料を収容する容器に対応するように構成することができる。したがって、例えば、開口部の長さは、内部に少なくとも部分的に受け入れられる容器の長さに従って構成することができる。
【0018】
本体はまた、開口部に又は開口部内に配置され、かつ、開口部内に容器を固定するために、例えば容器を担持する外部アプリケータ及び/又は容器自体に設けられた雄ねじと係合するように構成された、雌ねじを含むことができる。
【0019】
追加的に又は代替的に、本体は、容器が開口部に受け入れられたときに容器及び/又はアプリケータを定位置にロックするように構成された少なくとも1つのロック要素を含むことができる。例えば、本体は、容器上及び/又はアプリケータ上に配置された突起を受け入れるように構成されたスロットを含むことができる。代替的又は追加的に、本体は、容器及び/又はアプリケータ上に配置されたスロット又は溝と協働するように構成された戻り止めを含むことができる。しかしながら、戻り止めはまた、容器上、及び/又はアプリケータ上に配置することができ、スロット又は溝は、本体上、例えば開口部に配置することができる。
【0020】
したがって、ロック要素を設けることにより、開口部からの容器の望ましくない取り外しを防止することができる。例えば、加熱デバイスは、歯科材料の所定の温度及び/又は所定の加熱時間が達成されるまで、開口部からの容器の取り外しを防止するように構成することができる。歯科材料の所定の温度及び/又は所定の加熱時間が達成されると、加熱デバイスは、ユーザが容器を開口部から引き出すことを可能にするために、例えばアクチュエータ及びコントローラによってロック要素を作動させることができる。
【0021】
加熱デバイスはまた、本体の開口部内の容器の存在を検出するように構成された検出手段を、例えば、近接センサ、光電バリア、又は温度センサなどの接触スイッチ又は非接触スイッチの形態で備えることができる。検出手段は、加熱デバイスを制御するように構成されたコントローラと通信するように構成することもできる。したがって、容器が加熱デバイスの開口部から取り外されたとき、加熱デバイスは、容器の取り外しを検出することができ、停止する、又は待機モードに切り替えることができ、検出手段及びコントローラによって加熱要素が停止される。したがって、加熱デバイスによる望ましくない加熱を防止することによって、加熱デバイスの安全性を高めることができる。
【0022】
加熱デバイスはまた、容器が所定の時間にわたって開口部内にあったことを検出手段が検出した後に、加熱デバイスを停止するように、又は加熱デバイスを、加熱要素が停止される待機モードに切り替えるように構成された検出手段を備えることができ、これは、上述したものと同じ検出手段又は異なる検出手段であってもよい。したがって、加熱デバイスによる長時間の、かつ望ましくない加熱を防止することによって、加熱デバイスの安全性が高められる。更に、歯科材料及び/又は容器の劣化及び/又は損傷を防止することができる。
【0023】
同様に、上述の検出手段は、容器が本体の開口部に挿入されるとデバイスのスイッチを入れるために使用することができる。デバイスのスイッチを入れる又はスイッチを切る検出手段を使用することにより、更なるボタンを押す必要がないので、使用中のデバイスの動作を容易にすることができる。
【0024】
本体はまた、内部に形成された複数の開口部を備えることができ、各開口部は、加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成されている。開口部のうちの少なくとも2つはそれぞれ、例えば、異なるサイズ及び/若しくは異なる形状の、並びに/又はそれらの組成及び/若しくは物理的特性に関して異なる歯科材料を収容する、異なる容器に対応するために、異なる幾何学形状及び/又は形状を有することができる。
【0025】
例えば、1つの開口部は、歯科材料を収容するシリンジを受け入れるように構成することができ、第2の開口部は、歯科材料を収容するカプセルを受け入れるように構成することができる。少なくとも2つの異なる容器は、好ましくは異なる特性及び/又は異なる目標温度を有する、異なる歯科材料を収容するように構成することができる。例えば、第1の容器内に収容された1つの歯科材料は、第1の温度まで加熱されなければならない場合があり、第2の容器内の第2の歯科材料は、第1の温度とは異なる第2の温度まで加熱されなければならない場合がある。
【0026】
加熱される歯科材料は、患者の歯を修復するために使用される任意の歯科材料であってもよく、具体的には、空洞を充填するため、並びに歯冠破折、歯の摩耗、及び先天性欠損を修復するために使用される任意の歯科材料であってもよい。歯科材料は、例えば、材料が患者の歯に適用された後に歯科材料に光を当てることによって硬化されることが多いので、好ましくは硬化性材料とすることができる。具体的には、歯科材料は、マトリックスと、フィラーガラス及びガラスセラミックなどの少なくとも1つのフィラーとを含む樹脂ベースの複合材料を含むことができる。更に、歯科材料はまた、例えば、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement、GIC)を含むこともできる。
【0027】
加熱デバイスはまた、開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオードを備える。
【0028】
発光ダイオードは、800~1500nmの範囲の波長を有する光を放射するように構成することができる。好ましくは、発光ダイオードは、実質的に950nmの波長を有する光を放射するように構成することができる。発光ダイオードは、好ましくは、加熱デバイスの本体内に配置することができ、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の外壁などの外表面に近接して配置することができる。好ましくは、発光ダイオードは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられたときに、容器の外表面から5cm以内、好ましくは4cm以内、より好ましくは3cm以内、より好ましくは2cm以内、最も好ましくは1cm以内に配置することができる。
【0029】
加熱デバイスはまた、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の外表面の近接を検出するように構成された近接センサを含むことができる。したがって、近接センサは、コントローラ、及び発光ダイオードを変位させるように構成されたアクチュエータと通信するように構成することができる。したがって、近接センサは、容器を開口部内に配置するときに発光ダイオードが容器によって損傷されないことを確実にすることができる。また、近接センサ及びアクチュエータは、歯科材料の加熱の効率を高めるために、容器の外表面への発光ダイオードの近接を確実にすることができる。これにより、好ましくは異なる形状及び/又は異なるサイズを有する異なる容器を、容器の外表面への発光ダイオードの近接を維持しながら、開口部内に配置することができる。
【0030】
好ましくは、加熱デバイスは、複数の発光ダイオードを備えることができ、複数の発光ダイオードは、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の周囲の周りに、かつ/又は容器の長手方向軸に沿って分布している。
【0031】
加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた容器の外表面の温度を判定するように構成された少なくとも1つの温度センサを更に備える。
【0032】
温度センサは、好ましくは、容器の外表面の温度を判定するために容器の外表面に接触する必要がない非接触温度センサ、例えば、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出するように構成された赤外線温度センサ、例えば、焦電センサ又はサーモパイル検出器又はボロメータ焦点面アレイ(bolometer focal plane array、FPA)とすることができる。
【0033】
しかしながら、温度センサはまた、容器の外表面の温度を判定するために容器の外表面に接触するように構成された接触温度センサ、例えば、熱電対又は抵抗温度計、例えばPT100であってもよい。この場合、加熱デバイスは、温度センサが容器の外表面に十分に接触することを確実にするために、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、温度センサを容器に向かって、又は容器から離れるように変位させる変位手段も備えることができる。
【0034】
上述した両方の場合において、加熱デバイスは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、温度センサと容器の外表面との間の距離を検出するための近接センサも備えることができる。
【0035】
更に、加熱デバイスは、複数の温度センサを備えることができる。少なくとも2つの温度センサはそれぞれ、異なるタイプのものとすることができ、例えば、第1の温度センサは、赤外線温度センサなどの非接触温度センサであり、第2の温度センサは、熱電対又は抵抗温度計などの接触温度センサである。
【0036】
温度センサ又は複数の温度センサによって容器の外表面の温度を判定することにより、歯科材料の加熱不足及び/又は過熱を判定することができ、例えば、温度センサによって測定された所定の温度に達すると加熱デバイスの加熱プロセスを停止することにより、歯科材料の加熱不足及び/又は過熱を防止することができる。したがって、歯科材料及び/又は歯科材料を収容する容器の劣化及び/又は損傷を防止又は少なくとも低減することができる。
【0037】
加熱デバイスはまた、温度センサ及び少なくとも1つの発光ダイオードと通信し、かつ、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を制御することにより、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて、容器の外表面の温度を制御するように構成された、制御回路を有するコントローラを備える。
【0038】
したがって、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて容器の外表面の温度を制御することにより、歯科材料が所望の特性を有する所定の温度まで歯科材料を加熱することができる。したがって、歯科材料の特性(例えば、その粘度)は、加熱プロセス中により正確に制御することができ、その結果、歯科材料は、その意図された使用(例えば、患者の歯の空洞の充填)のためにより正確に調製することができる。
【0039】
更に、加熱エネルギーの浪費を引き起こす過熱を回避することができるので、歯科材料はより効率的に加熱される。更に、材料が加熱不足であると、歯科材料が使用できなくなることがあることが多く、これにより、歯科材料の必要な温度を達成するために更なる加熱プロセスを必要とする。したがって、歯科材料の加熱不足を回避することによって、歯科材料の再加熱プロセスも回避することができ、したがって、歯科材料を加熱するために消費される総加熱エネルギーも低減することができる。
【0040】
少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量は、発光ダイオードによって放射される赤外光の強度を調整するために発光ダイオードに供給される電流を調整することによって、制御することができる。電流は、例えば、判定された温度を、例えばルックアップテーブルによって提供される所定の電流値と比較するコントローラによって、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて所定の設定値に調整することができる。しかしながら、電流は、例えば、温度センサによって判定された温度に基づいて電流を計算する所定のアルゴリズムによって、無段階に調整することもできる。
【0041】
代替的に又は追加的に、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量は、発光ダイオードを、好ましくは断続的に、停止する、かつ/又は作動させることによって、制御することができる。
【0042】
好ましくは、加熱デバイスは、携帯型卓上デバイスとして構成することができる。好ましくは、開口部は、20cm未満、好ましくは16cm未満、より好ましくは14cm未満、より好ましくは10cm未満の長さだけ本体内に延びている。
【0043】
好ましくは、温度センサは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出するように構成された赤外線温度センサであってもよい。好ましくは、赤外線温度センサは、焦電センサ又はサーモパイル検出器又はボロメータ焦点面アレイ(FPA)とすることができる。
【0044】
一実施形態では、加熱デバイスは、長さLを有するアダプタであって、その長さLに沿って本体の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられるアダプタを更に備えることができる。アダプタは、好ましくは、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。好ましくは、少なくとも1つの発光ダイオードは、アダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置することができる。アダプタは、少なくとも部分において、長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性であってもよい。
【0045】
アダプタは、より直接的な、したがって効率的な歯科材料の加熱を可能にするために、発光ダイオードによって放射された赤外光が開口部を通過することを可能にするように、その壁に画定された開口部を備えることができる。開口部は、好ましくは赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料によって覆うことができる。
【0046】
追加的に又は代替的に、アダプタの材料は、赤外光に対して、好ましくは800~1500nmの放射赤外光の波長範囲において、少なくとも部分的に透過性であるように構成することができる。代替的に又は追加的に、アダプタは、異なる材料で作製することができ、これらの材料は、好ましくはアダプタの異なる部分に配置することができる。したがって、赤外光に対してより高い透過率を有する第1の材料を第1の部分(単数又は複数)に配置することができ、赤外光に対してより低い透過率を有する第2の材料を第2の部分(単数又は複数)に配置することができる。好ましくは、赤外光に対してより高い透過率を有する材料は、少なくとも発光ダイオードに近接している部分において赤外光に対してより高い透過率を可能にし、したがってより効率的な歯科材料の加熱を可能にするために、発光ダイオード又は複数の発光ダイオードに近接させて配置することができる。
【0047】
アダプタは、実質的に円筒形とすることができる。更に、アダプタは、2つの端部を備えることができ、そのうちの少なくとも1つの端部は、好ましくは、歯科材料を収容する容器を受け入れることを可能にする開口部を備える。しかしながら、アダプタの両端部が開口部を備えることもできる。
【0048】
アダプタは、一体構造とすることができ、アダプタは、単一の一体部品である。しかしながら、アダプタは、アダプタの洗浄及び/又は消毒を容易にするために、組み立て及び分解することができる複数の部品、例えば2つのハーフシェルから構成することもできる。
【0049】
アダプタは、好ましくは、例えば、イソプロピルアルコールなどの臨床消毒剤を使用することによって、洗浄及び消毒が容易な材料から作製することができる。例えば、アダプタは、ポリカーボネートで作製することができる。好ましくは、アダプタは、射出成形などの低コストかつ時間効率のよい製造プロセスによって製造することができる。したがって、アダプタは、低コスト部品として費用効率よく製造することができ、したがって、加熱デバイスの中及び周囲に衛生的な環境を提供するのを助けるために、アダプタを各使用後又は複数回の使用後に処分することができるように、単回使用又は少なくとも低使用部品とすることもできる。更に改善された消毒を可能にするために、アダプタは、オートクレーブ処理可能な材料から作製することができる。オートクレーブ処理可能とは、例えば加圧水蒸気(例えば110~150℃又は120~140℃の温度を有する)を使用してアダプタを滅菌することができることを意味する。好適な材料としては、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどのプラスチック材料、及びステンレス鋼などの金属材料が挙げられる。
【0050】
少なくとも1つの発光ダイオードをアダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置することによって、発光ダイオードは、歯科材料を収容する容器に付着することがある任意の望ましくない物質(例えば、残留歯科材料、細菌及び/又は汚れ)によって汚染されることが防止される。
【0051】
一実施形態では、加熱デバイスは、好ましくは、その長さLに沿って本体の開口部内に、又は本体の第2の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられる第2のアダプタを備えることができる。第2のアダプタは、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。
【0052】
あるいは、第2のアダプタは、加熱される歯科材料を収容する第2のタイプの容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。第2のタイプの容器は、好ましくはシリンジとすることができる。
【0053】
したがって、加熱デバイスは、2つ以上の容器、好ましくは2つ以上のタイプの容器及び/又は2つ以上のタイプの歯科材料を同時に又は順次加熱するように構成することができる。これによりまた、歯科材料の加熱の効率を向上させる。加熱デバイスは、各々が容器のうちの1つを加熱するように構成された、2つの別個の発光ダイオード又は発光ダイオードの2つの別個の組を備えることができる。しかしながら、加熱デバイスは、両方の容器を加熱するための、1つの発光ダイオード又は発光ダイオードの1つの組を備えることができる。
【0054】
加熱デバイスはまた、歯科材料を収容する多数の容器を受け入れて加熱するために、2つより多い開口部、したがって2つより多いアダプタ、例えば3つ、4つ、5つ、又は6つの開口部及びアダプタを備えることができる。この場合、加熱デバイスは、各々が容器のうちの1つを加熱するように構成された、複数の別個の発光ダイオード又は発光ダイオードの複数の組を備えることができる。
【0055】
好ましくは、コントローラは、少なくとも1つの発光ダイオードによる赤外光の放射を断続的に中断及び再作動させることによって、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を制御するように構成することができる。
【0056】
代替的又は追加的に、コントローラは、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の強度を調整することによって、放射される赤外光の量を制御するように構成することができる。少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の強度を調整することは、好ましくは、少なくとも1つの発光ダイオードに供給される電流を制御することによって行うことができる。
【0057】
好ましくは、コントローラは、歯科材料の温度を70℃以下、好ましくは65℃以下に制限するように構成することができる。
【0058】
したがって、70℃若しくは65℃を超える温度でそれぞれ、劣化する及び/若しくは損なわれる及び/若しくは望ましくない若しくは少なくともあまり望ましくない特性を獲得する温度感受性歯科材料の場合、又は劣化及び/若しくは損なわれる歯科材料を収容する容器の場合、歯科材料の劣化及び/若しくは損傷及び/若しくは望ましくない若しくは少なくともあまり望ましくない特性が生じるのを防止するため、又はこれらの影響を少なくとも最小限に抑えるために、加熱プロセスを中断する、又は加熱強度を少なくとも低減することができる。
【0059】
好ましくは、コントローラは、歯科材料の温度を60℃~70℃、好ましくは62℃~68℃に維持するように構成することができる。
【0060】
したがって、歯科材料は、歯科材料が患者の歯の空洞の充填及び/又は歯冠損傷の修復などの意図した目的に望ましい、かつ/又は特に有利な特性を有する、60℃~70℃、好ましくは62℃~68℃の所定の温度に加熱されて、その温度内に維持されることができる。これにより、その意図された目的に関して、より標的化され、信頼性があり、かつ効果的な歯科材料の加熱を可能にする。
【0061】
一実施形態では、加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の温度センサを備えることができる。
【0062】
したがって、複数の温度センサは、容器の異なる部分の温度を検出することができる。したがって、容器の外表面の温度のより正確な判定を達成することができる。更に、容器が均一に加熱されていない場合、他の部分よりも高い温度に加熱された容器の部分を検出することができる。したがって、容器及び/又は歯科材料の損傷及び/又は劣化をより正確に防止することができる。
【0063】
一実施形態では、加熱デバイスは、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の外表面上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系を更に含むことができる。
【0064】
少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を容器の外表面上に集束させることによって、容器上で受け取られた赤外光が強められることにより、歯科材料は、より効率的に加熱される。したがって、歯科材料は、より迅速に、かつ/又はより少ないエネルギーを発光ダイオードに供給しながら、かつ/又はより少ない発光ダイオードを提供することによって、加熱することができる。更に、赤外光を容器の外表面上に集束させることによって、例えば、発光ダイオードによって放射される、拡散によって容器の外表面に到達しない赤外光の量が低減され、それによって発光ダイオードの無駄な光放射の量が低減される。したがって、歯科材料を加熱するのに必要なエネルギー消費が低減される。
【0065】
加熱デバイスは、好ましくは電池式デバイスとすることができる。したがって、電池からの加熱デバイスのエネルギー消費を低減することによって、同じ電池(単数又は複数)を有するデバイスの電池寿命及びランタイムを延長することができる。
【0066】
光学系は、好ましくは少なくとも1つのレンズを備えることができる。好ましくは、光学系は、赤外光の光路に対して順に配置された複数のレンズを含むことができ、好ましくは、それぞれが異なる屈折率及び/又は分散値及び/又は厚さ及び/又は直径を有する。しかしながら、複数のレンズはまた、同じ屈折率及び/又は分散値及び/又は厚さ及び/又は直径を有することもできる。
【0067】
光学系は、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、光学系が発光ダイオードによって放射された赤外光を容器の長手方向軸と交差する光路に沿って集束させるように配向することができる。このようにして、歯科材料をより直接的かつ均一に加熱することができる。
【0068】
好ましくは、少なくとも1つの光学系は、アダプタ上に一体的に形成されて、少なくとも1つの光学系とアダプタとが同じ材料で作製された一体構成要素を構成することができる。
【0069】
したがって、1つの光学系及びアダプタを単一のプロセスで製造することができる。アダプタ及び光学系は、好ましくは、同じ材料、好ましくはポリカーボネートで作製することができる。好ましくは、拡散添加剤をポリカーボネートに、少なくとも光学系の一部分に添加して、光学系の特性を向上させ、例えば、グレアを軽減することができる。
【0070】
アダプタ上に少なくとも1つの光学系を一体的に形成することにより、アダプタ上又は加熱デバイスの異なる部分に光学系を組み立てる必要をなくすことができ、それにより、アダプタ及び光学系の製造時間及び/又は製造コストを低減することができる。
【0071】
しかしながら、少なくとも1つの光学系はまた、アダプタに解放可能に取り付けられてもよい。好ましくは、アダプタ及び少なくとも1つの光学系は、一体的な構成要素として加熱デバイスから取り外し可能とすることができる。
【0072】
したがって、光学系及びアダプタは、別々に製造することができ、その後、光学系がアダプタに取り付け可能であるように組み立てることができる。したがって、例えば、アダプタ及び光学系はまた、例えば、異なるサイズ及び/又は形状を有する異なるアダプタを光学系とともに使用するために、分解することもできる。したがって、例えば、アダプタを1回又は複数回使用した後に廃棄することができ、光学系を別のアダプタと共に再使用することができる。
【0073】
これによりまた、光学系及びアダプタを異なる製造プロセス及び/又は異なる材料を使用して製造することができるので、使用される光学系の選択におけるより大きな柔軟性を可能にする。したがって、例えば、様々な屈折率及び/又は分散値及び/又は直径及び/又は厚さを有するレンズを製造することができる。したがって、レンズの構成は、容器を加熱するための所望の、かつ/又は必要な効果に合わせてより正確に調整することができる。例えば、内部全反射(total internal reflection、TIR)光学系を使用することができる。TIR光学系は、反射器の内側に配置された屈折レンズを備えることができる。TIRレンズは、発光ダイオードから放射された光を従来の光学系よりも多く捕捉して、方向転換することができる。
【0074】
一実施形態では、少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードは、加熱デバイス自体から取り外し可能な一体的な構成要素を構成することができる。
【0075】
したがって、少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードは、それらを加熱デバイスに配置する前に、一体的な構成要素として互いに予め組み立てることができる。したがって、発光ダイオード及び/又は光学系は、発光ダイオード及び光学系を互いに固定的に取り付けることができるように構成された取り付け手段を備えることができる。これにより、加熱デバイスにおける光学系及び/又は発光ダイオードの組み立て及び/又は分解及び/又は交換が容易になる。
【0076】
好ましくは、加熱デバイスは、開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の発光ダイオードを備えることができる。
【0077】
したがって、複数の発光ダイオードを容器の周りの周囲に分布させることによって、容器をより均一に加熱することができる。これにより、歯科材料の加熱時間を更に短縮することができ、かつ/又は歯科材料を加熱するのに必要な加熱エネルギーの量を低減することができる。
【0078】
一実施形態では、加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の光学系及び複数の発光ダイオードを備えることができる。
【0079】
一実施形態では、アダプタは、赤外光、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800~1,500nmの波長を有する赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料から作製することができる。好ましくは、アダプタは、ポリカーボネートで作製することができる。あるいは、アダプタは、以下の材料:シリコーン、ポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)、及び環状オレフィンポリマーのうちのいずれかから作製することができる。
【0080】
加熱デバイスは、好ましくは、歯科材料を少なくとも65℃の温度まで15秒以下、好ましくは12秒以下、より好ましくは10秒以下の加熱時間内に加熱するように構成することができる。
【0081】
したがって、歯科材料を上述の時間内に少なくとも65℃の温度に加熱することによって、加熱時間は、既知の加熱デバイス及び/又は加熱プロセスと比較して著しく短縮することができる。したがって、患者の歯(単数又は複数)に歯科材料を適用するために歯科材料を調製するのに必要な時間を短縮することができ、それによって待ち時間及び/又は治療時間を短縮することができる。
【0082】
冒頭に述べた目的は、歯科材料を加熱するための更なる加熱デバイスによっても達成される。
【0083】
加熱デバイスは、加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部が内部に形成された本体を備える。
【0084】
加熱デバイスの本体は、電子機器、電池、制御要素などの加熱デバイスの構成要素を収容するように構成されたハウジングを含むことができる。ハウジングは、加熱デバイスの組み立てを容易にするために、一体構造又は例えば二体構造などの多体構造とすることができる。
【0085】
本体に形成された開口部は、加熱デバイスを取り囲む環境に対して開いていてもよい。しかしながら、開口部は、加熱デバイスが使用されていないときに開口部内の汚染を防止する又は少なくとも最小限に抑えるために、例えば蓋又は他の閉鎖構造によって、環境に対して少なくとも選択的に、かつ少なくとも部分的に閉鎖することもできる。開口部は、15cmの長さだけなど、特定の距離だけ本体内に延びることができる。
【0086】
開口部は、カプセル及び/又はシリンジなどの異なるタイプの容器を受け入れるように構成することができる。したがって、本体に形成された開口部の形状及び/又は幾何学形状は、具体的には、開口部に少なくとも部分的に受け入れられる、歯科材料を収容する容器に対応するように構成することができる。したがって、例えば、開口部の長さは、少なくとも部分的に受け入れられる容器の長さに従って構成することができる。
【0087】
本体はまた、開口部に又は開口部内に配置され、かつ、例えば容器を担持する外部アプリケータ及び/又は容器自体に設けられた雄ねじと係合するように構成された、雌ねじを含むことができる。
【0088】
追加的に又は代替的に、本体は、容器及び/又はアプリケータを定位置にロックするように構成された少なくとも1つのロック要素を含むことができる。例えば、本体は、容器上及び/又はアプリケータ上に配置された突起を受け入れるように構成されたスロットを含むことができる。代替的又は追加的に、本体は、容器及び/又はアプリケータ上に配置されたスロット又は溝と協働するように構成された戻り止めを含むことができる。しかしながら、戻り止めは、容器及び/又はアプリケータ上に配置することもでき、スロット又は溝は、本体上、例えば開口部に配置することができる。
【0089】
したがって、ロック要素を設けることにより、開口部からの容器の望ましくない取り外しを防止することができる。例えば、加熱デバイスは、歯科材料の所定の温度及び/又は所定の加熱時間が達成されるまで、開口部からの容器の取り外しを防止するように構成することができる。歯科材料の所定の温度及び/又は所定の加熱時間が達成されると、加熱デバイスは、ユーザが容器を開口部から引き出すことを可能にするために、例えばアクチュエータ及びコントローラによってロック要素を作動させることができる。
【0090】
加熱デバイスはまた、本体の開口部内の容器の存在を検出するように構成された検出手段を、例えば、近接センサ、光電バリア、又は温度センサなどの接触スイッチ又は非接触スイッチの形態で備えることができる。検出手段は、加熱デバイスを制御するように構成されたコントローラと通信するように構成することもできる。したがって、容器が加熱デバイスの開口部から取り外されたとき、加熱デバイスは、容器の取り外しを検出することができ、停止する、又は待機モードに切り替えることができ、検出手段及びコントローラによって加熱要素が停止される。したがって、加熱デバイスによる望ましくない加熱を防止することによって、加熱デバイスの安全性を高めることができる。
【0091】
加熱デバイスはまた、容器が所定の時間にわたって開口部内にあったことを検出手段が検出した後に、加熱デバイスを停止するように、又は加熱デバイスを、加熱要素が停止される待機モードに切り替えるように構成された検出手段を備えることができ、これは、上述したものと同じ検出手段又は異なる検出手段であってもよい。したがって、加熱デバイスによる長時間の、かつ望ましくない加熱を防止することによって、加熱デバイスの安全性が高められる。更に、歯科材料及び/又は容器の劣化及び/又は損傷を防止することができる。
【0092】
本体はまた、内部に形成された複数の開口部を備えることができ、各開口部は、加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成されている。開口部のうちの少なくとも2つはそれぞれ、例えば、異なるサイズ及び/若しくは異なる形状の、並びに/又はそれらの組成及び/若しくは物理的特性に関して異なる歯科材料を収容する、異なる容器に対応するために、異なる幾何学形状及び/又は形状を有することができる。
【0093】
例えば、1つの開口部は、歯科材料を収容するシリンジを受け入れるように構成することができ、第2の開口部は、歯科材料を収容するカプセルを受け入れるように構成することができる。少なくとも2つの異なる容器は、好ましくは異なる特性を有する、異なる歯科材料を収容するように構成することができる。例えば、第1の容器内に収容された1つの歯科材料は、第1の温度まで加熱されなければならない場合があり、第2の容器内の第2の歯科材料は、第1の温度とは異なる第2の温度まで加熱されなければならない場合がある。
【0094】
加熱される歯科材料は、患者の歯を修復するために使用される任意の歯科材料であってもよく、具体的には、空洞を充填するため、並びに歯冠破折、歯の摩耗、及び先天性欠損を修復するために使用される任意の歯科材料であってもよい。歯科材料は、例えば、材料が患者の歯に適用された後に歯科材料に光を当てることによって硬化されることが多いので、好ましくは硬化性材料とすることができる。具体的には、歯科材料は、マトリックスと、フィラーガラス及びガラスセラミックなどの少なくとも1つのフィラーとを含む樹脂ベースの複合材料を含むことができる。更に、歯科材料はまた、例えば、グラスアイオノマーセメントを含むこともできる。
【0095】
加熱デバイスは、開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオードを更に備える。
【0096】
発光ダイオードは、800~1500nmの範囲の波長を有する光を放射するように構成することができる。好ましくは、発光ダイオードは、実質的に950nmの波長を有する光を放射するように構成することができる。発光ダイオードは、好ましくは、加熱デバイスの本体内に配置することができ、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の外壁などの外表面に近接して配置することができる。好ましくは、発光ダイオードは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられたときに、容器の外表面から5cm以内、好ましくは4cm以内、より好ましくは3cm以内、より好ましくは2cm以内、最も好ましくは1cm以内に配置することができる。
【0097】
加熱デバイスはまた、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の外表面の近接を検出するように構成された近接センサを含むことができる。したがって、近接センサは、コントローラ、及び発光ダイオードを変位させるように構成されたアクチュエータと通信するように構成することができる。したがって、近接センサは、容器を開口部内に配置するときに発光ダイオードが容器によって損傷されないことを確実にすることができる。また、近接センサ及びアクチュエータは、歯科材料の加熱の効率を高めるために、容器の外表面への発光の近接を確実にすることができる。これにより、好ましくは異なる形状及び/又は異なるサイズを有する異なる容器を、容器の外表面への発光ダイオードの近接を維持しながら、開口部内に配置することができる。
【0098】
好ましくは、加熱デバイスは、複数の発光ダイオードを備えることができ、複数の発光ダイオードは、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、容器の周囲の周りに、かつ/又は容器の長手方向軸に沿って分布している。
【0099】
加熱デバイスはまた、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系も備えることができる。
【0100】
少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を容器ハウジングの外表面上に集束させることによって、容器上への赤外光が強められることにより、歯科材料は、より効率的に加熱される。したがって、歯科材料は、より迅速に、かつ/又はより少ないエネルギーを発光ダイオードに供給しながら、加熱することができる。更に、赤外光を容器の外表面上に集束させることによって、例えば、発光ダイオードによって放射される、拡散によって容器の外表面に到達しない赤外光の量が低減され、それによって発光ダイオードの無駄な光放射の量が低減される。したがって、歯科材料を加熱するのに必要なエネルギー消費が低減される。
【0101】
加熱デバイスは、好ましくは電池式デバイスとすることができる。したがって、電池からの加熱デバイスのエネルギー消費を低減することによって、同じ電池(単数又は複数)を有するデバイスの電池寿命及びランタイムを延長することができる。
【0102】
光学系は、好ましくは少なくとも1つのレンズを備えることができる。好ましくは、光学系は、赤外光の光路に対して順に配置された複数のレンズを含むことができ、好ましくは、それぞれが異なる屈折率及び/又は分散値及び/又は厚さ及び/又は直径を有する。しかしながら、複数のレンズはまた、同じ屈折率及び/又は分散値及び/又は厚さ及び/又は直径を有することもできる。
【0103】
光学系は、好ましくは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、光学系が発光ダイオードによって放射された赤外光を容器の長手方向軸と交差する光路に沿って集束させるように配向することができる。このようにして、歯科材料は、より均一に加熱される。
【0104】
好ましくは、加熱デバイスは、携帯型卓上デバイスとして構成することができる。好ましくは、開口部は、20cm未満、好ましくは16cm未満、より好ましくは14cm未満、より好ましくは10cm未満の長さだけ本体内に延びている。
【0105】
一実施形態では、加熱デバイスは、長さLを有するアダプタであって、その長さLに沿って本体の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられるアダプタを更に備えることができる。アダプタは、好ましくは、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。好ましくは、少なくとも1つの発光ダイオードは、アダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置することができる。アダプタは、少なくとも部分において、長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性であってもよい。
【0106】
アダプタは、より直接的な、したがって効率的な歯科材料の加熱を可能にするために、発光ダイオードによって放射された赤外光が開口部を通過することを可能にするように、その壁に画定された開口部を備えることができる。開口部は、好ましくは赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料によって覆うことができる。
【0107】
追加的に又は代替的に、アダプタの材料は、赤外光に対して、好ましくは800~1500nmの放射赤外光の波長範囲において、少なくとも部分的に透過性であるように構成することができる。代替的に又は追加的に、アダプタは、異なる材料で作製することができ、これらの材料は、好ましくはアダプタの異なる部分に配置することができる。したがって、赤外光に対してより高い透過率を有する第1の材料を第1の部分(単数又は複数)に配置することができ、赤外光に対してより低い透過率を有する第2の材料を第2の部分(単数又は複数)に配置することができる。好ましくは、赤外光に対してより高い透過率を有する材料は、より効率的な歯科材料の加熱を可能にするために、発光ダイオード又は複数の発光ダイオードに近接させて配置することができる。
【0108】
アダプタは、実質的に円筒形とすることができる。更に、アダプタは、2つの端部を備えることができ、そのうちの少なくとも端部は、好ましくは、歯科材料を収容する容器を受け入れることを可能にする開口部を備える。しかしながら、アダプタの両端部が開口部を備えることもできる。
【0109】
アダプタは、一体構造とすることができ、アダプタは、単一の一体部品である。しかしながら、アダプタは、アダプタの洗浄及び/又は消毒を容易にするために、組み立て及び分解することができる複数の部品、例えば2つのハーフシェルから構成することもできる。
【0110】
アダプタは、好ましくは、例えば、イソプロピルアルコールなどの臨床消毒剤を使用することによって、洗浄及び消毒が容易な材料から作製することができる。例えば、アダプタは、ポリカーボネートとすることができる。好ましくは、アダプタは、射出成形などの低コストかつ時間効率のよい製造プロセスによって製造することができる。したがって、アダプタは、低コスト部品として費用効率よく製造することができ、したがって、加熱デバイスの中及び周囲に衛生的な環境を提供するのを助けるために、アダプタを各使用後又は複数回の使用後に処分することができるように、単回使用又は少なくとも低使用部品とすることもできる。
【0111】
少なくとも1つの発光ダイオードをアダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置することによって、発光ダイオードは、歯科材料を収容する容器に付着することがある任意の望ましくない物質(例えば、残留歯科材料、細菌及び/又は汚れ)から汚染されることが防止される。
【0112】
一実施形態では、加熱デバイスは、好ましくは、その長さLに沿って本体の開口部内に、又は本体の第2の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられる第2のアダプタを備えることができる。第2のアダプタは、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。
【0113】
あるいは、第2のアダプタは、加熱される歯科材料を収容する第2のタイプの容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有することができる。第2のタイプの容器は、好ましくはシリンジである。
【0114】
したがって、加熱デバイスは、2つ以上の容器、好ましくは2つ以上のタイプの容器を同時に又は順次加熱するように構成することができる。これによりまた、歯科材料の加熱の効率を向上させる。加熱デバイスは、各々が容器のうちの1つを加熱するように構成された、2つの別個の発光ダイオード又は発光ダイオードの2つの別個の組を備えることができる。しかしながら、加熱デバイスは、両方の容器を加熱するための、1つの発光ダイオード又は発光ダイオードの1つの組を備えることができる。
【0115】
加熱デバイスはまた、歯科材料を収容する多数の容器を受け入れて加熱するために、2つより多い開口部、したがって2つより多いアダプタ、例えば3つ、4つ、5つ、又は6つの開口部及びアダプタを備えることができる。この場合、加熱デバイスは、各々が容器のうちの1つを加熱するように構成された、複数の別個の発光ダイオード又は発光ダイオードの複数の組を備えることができる。
【0116】
好ましくは、少なくとも1つの光学系は、アダプタ上に一体的に形成されて、少なくとも1つの光学系とアダプタとが同じ材料で作製された一体構成要素を構成することができる。
【0117】
したがって、1つの光学系及びアダプタを単一のプロセスで製造することができる。アダプタ及び光学系は、好ましくは、同じ材料、好ましくはポリカーボネートで作製することができる。好ましくは、拡散添加剤をポリカーボネートに、少なくとも光学系の一部分に添加して、光学系の特性を向上させ、例えば、グレアを軽減することができる。
【0118】
アダプタ上に少なくとも1つの光学系を一体的に形成することにより、アダプタ上又は加熱デバイスの異なる部分に光学系を組み立てる必要をなくすことができ、それにより、アダプタ及び光学系の製造時間及び/又は製造コストを低減することができる。
【0119】
しかしながら、少なくとも1つの光学系はまた、アダプタに解放可能に取り付けられてもよい。好ましくは、アダプタ及び少なくとも1つの光学系は、一体的な構成要素として加熱デバイスから取り外し可能とすることができる。
【0120】
したがって、光学系及びアダプタは、別々に製造することができ、その後、光学系がアダプタに取り付け可能であるように組み立てることができる。したがって、例えば、アダプタ及び光学系はまた、例えば、異なるサイズ及び/又は形状を有する異なるアダプタを光学系とともに使用するために、分解することもできる。したがって、例えば、アダプタを1回又は複数回使用した後に廃棄することができ、光学系を別のアダプタと共に再使用することができる。
【0121】
これによりまた、光学系及びアダプタを異なる製造プロセス及び/又は異なる材料を使用して製造することができるので、使用される光学系の選択におけるより大きな柔軟性を可能にする。したがって、例えば、異なる屈折率及び/又は分散値及び/又は直径及び/又は厚さを有するレンズから選択するために、例えば、より精巧なレンズを選択することができる。したがって、レンズの構成は、容器を加熱するための所望の、かつ/又は必要な効果に合わせてより正確に調整することができる。例えば、内部全反射(TIR)光学系を使用することができる。TIR光学系は、反射器の内側に配置された屈折レンズを備えることができる。TIR光学系は、発光ダイオードから放射された光を従来の光学系よりも多く捕捉して、方向転換することができる。
【0122】
一実施形態では、少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードは、加熱デバイス自体から取り外し可能な一体的な構成要素を構成することができる。
【0123】
したがって、少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードは、それらを加熱デバイスに配置する前に、一体的な構成要素として互いに予め組み立てることができる。したがって、発光ダイオード及び/又は光学系は、発光ダイオード及び光学系を互いに固定的に取り付けることができるように構成された取り付け手段を備えることができる。これにより、加熱デバイスの光学系及び/又は発光ダイオードの組み立て及び/又は分解及び/又は交換が容易になる。
【0124】
好ましくは、加熱デバイスは、開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の発光ダイオードを備えることができる。
【0125】
したがって、複数の発光ダイオードを容器の周りの周囲に分布させることによって、容器をより均一に加熱することができる。これにより、歯科材料の加熱プロセスを更に速めることができ、かつ/又は歯科材料を加熱するのに必要な加熱エネルギーの量を低減することができる。
【0126】
一実施形態では、加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の光学系及び複数の発光ダイオードを備えることができる。
【0127】
一実施形態では、加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出して、容器の外表面の温度を判定するように構成された少なくとも1つの赤外線温度センサを備える。
【0128】
温度センサは、好ましくは、容器の外表面の温度を判定するために容器の外表面に接触する必要がない非接触温度センサ、例えば、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出するように構成された赤外線温度センサ、例えば、焦電センサ又はサーモパイル検出器又はボロメータ焦点面アレイ(FPA)とすることができる。しかしながら、温度センサはまた、PT100などの熱電対又は抵抗温度計など、容器の外表面の温度を判定するために容器の外表面に接触するように構成することができる。この場合、加熱デバイスは、温度センサが容器の外表面に接触することを確実にするために、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、温度センサを容器に向かって、又は容器から離れるように変位させる変位手段も備えることができる。
【0129】
上述した両方の場合において、加熱デバイスは、容器が開口部に少なくとも部分的に受け入れられると、温度センサと容器の外表面との間の距離を検出するための近接センサも備えることができる。
【0130】
更に、加熱デバイスは、複数の温度センサを備えることができる。少なくとも2つの温度センサはそれぞれ、異なるタイプのものとすることができ、例えば、第1の温度センサは、赤外線温度センサなどの非接触温度センサであり、第2の温度センサは、熱電対又は抵抗温度計などの接触温度センサである。
【0131】
温度センサ又は複数の温度センサによって容器の外表面の温度を判定することにより、歯科材料の加熱不足及び/又は過熱を判定することができ、例えば、温度センサによって測定された所定の温度に達すると加熱デバイスの加熱プロセスを停止することにより、歯科材料の加熱不足及び/又は過熱を防止することができる。したがって、歯科材料及び/又は歯科材料を収容する容器の劣化及び/又は損傷を防止又は少なくとも低減することができる。
【0132】
加熱デバイスはまた、温度センサ及び少なくとも1つの発光ダイオードと通信し、かつ、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を制御することにより、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて、容器の外表面の温度を制御するように構成された、制御回路を有するコントローラを備える。
【0133】
したがって、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて容器の外表面の温度を制御することにより、歯科材料が所望の特性を有する所定の温度まで歯科材料を加熱することができる。したがって、歯科材料の特性(例えば、その粘度)は、加熱プロセス中により正確に制御することができ、その結果、歯科材料は、その意図された使用(例えば、患者の歯の空洞の充填)のためにより正確に調製することができる。
【0134】
更に、加熱エネルギーの浪費を引き起こす過熱を回避することができるので、歯科材料はより効率的に加熱される。更に、材料が加熱不足であると、歯科材料が使用できなくなることがあることが多く、これにより、歯科材料の必要な温度を達成するために更なる加熱プロセスを必要とする。したがって、歯科材料の加熱不足を回避することによって、歯科材料の再加熱も回避することができ、したがって、歯科材料を加熱するために消費される総加熱エネルギーも低減することができる。
【0135】
少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量は、発光ダイオードによって放射される赤外光の強度を調整するために発光ダイオードに供給する電流を調整することによって、制御することができる。電流は、例えば、判定された温度を、例えばルックアップテーブルによって提供される所定の電流値と比較するコントローラによって、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて所定の値に調整することができる。しかしながら、電流は、例えば、温度センサによって判定された温度に基づいて電流を計算する所定のアルゴリズムによって、無段階に調整することもできる。
【0136】
代替的に又は追加的に、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量は、発光ダイオードを、好ましくは断続的に、停止する、かつ/又は作動させることによって、制御することができる。
【0137】
一実施形態では、加熱デバイスは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の赤外線温度センサを備えることができる。
【0138】
したがって、複数の温度センサは、容器の異なる部分の温度を検出することができる。したがって、容器の外表面の温度のより正確な判定を達成することができる。更に、容器が均一に加熱されていない場合、他の部分よりも高い温度に加熱された容器の部分を検出することができる。したがって、容器及び/又は歯科材料の損傷及び/又は劣化をより正確に防止することができる。
【0139】
好ましくは、アダプタは、赤外光、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800~1,500nmの波長を有する赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料から作製することができる。
【0140】
代替的に又は追加的に、アダプタは、異なる材料で作製することができ、これらの材料は、好ましくはアダプタの異なる部分に配置することができる。したがって、赤外光に対してより高い透過率を有する第1の材料を第1の部分(単数又は複数)に配置することができ、赤外光に対してより低い透過率を有する第2の材料を第2の部分(単数又は複数)に配置することができる。好ましくは、赤外光に対してより高い透過率を有する材料は、より効率的な歯科材料の加熱を可能にするために、発光ダイオード又は複数の発光ダイオードに近接させて配置することができる。
【0141】
冒頭に述べた目的はまた、本明細書に開示される加熱デバイスのいずれかを備え、歯科材料を収容する容器を更に備える、歯科材料を適用するためのシステムによって解決される。
【0142】
容器は、好ましくは、歯科材料を収容するためのチャンバを含むことができる。容器はまた、歯科材料を分注するためにチャンバに接続された分注ノズルを含むことができる。更に、容器は、歯科材料を分注ノズルに向けて付勢するためにチャンバ内に配置されたピストンを含んでもよい。
【0143】
一実施形態では、システムは、容器を解放可能に受け入れるように構成された分注ガンを更に備えることができる。分注ガンはまた、容器のピストンを前進させるように構成することができる。更に、分注ガンはまた、歯科材料を収容する容器が本体の開口部に少なくとも部分的に受け入れられるように、その少なくとも一部分が本体の開口部内に挿入されるように構成することができる。
【0144】
また、本発明の目的は、改善された加熱効率で歯科材料を加熱することを可能にする方法を提供することである。
【0145】
この目的は、歯科材料の温度を制御する方法によって達成される。したがって、本明細書に開示される加熱デバイスに関連して説明される利点及び特徴は、以下に説明される方法に適用される。
【0146】
方法は、
a)歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射する少なくとも1つの発光ダイオードによって、容器に収容された歯科材料を加熱するステップと、
b)少なくとも1つの温度センサによって、歯科材料を収容する容器の外表面の温度を判定するステップと、
c)判定された温度を加熱された歯科材料の目標温度と比較するステップと、
d)判定された温度と目標温度との比較に基づいて、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を調整するステップと、
を含む。
【0147】
一実施形態では、歯科材料を収容する容器の外表面の温度は、少なくとも1つの赤外線温度センサを用いて容器によって放出される赤外線エネルギーを検出することによって、検出することができる。
【0148】
好ましくは、加熱された歯科材料の目標温度は、加熱された歯科材料の所定の目標粘度に基づくことができる。歯科材料の目標温度は、典型的には40~70℃又は50~65℃の範囲内である。
【0149】
一実施形態では、歯科材料を収容する容器の外表面を、総加熱時間の少なくとも一部分にわたって、加熱された歯科材料の目標温度を上回る所定の温度まで加熱することができる。
【0150】
したがって、歯科材料は、好ましくは実質的に68℃であるその目標温度まで、可能な限り迅速に加熱することができる。歯科材料は容器に収容されているので、歯科材料が加熱されている間、又は放射された赤外光によって歯科材料の温度が上昇する前であっても、容器自体が加熱される。したがって、歯科材料を収容する容器の材料が特定の熱容量を有するため、容器は、熱を吸収する熱質量を呈し、熱は次いで歯科材料に伝達される。したがって、歯科材料を所望の、かつ/又は所定の温度に加熱するのに必要な時間は、容器の熱質量のために延長される。
【0151】
歯科材料を収容する容器の外表面を、総加熱時間の少なくとも一部分にわたって、加熱された歯科材料の目標温度を上回る所定の温度まで加熱することによって、容器を所定の温度までより速く予熱することができ、その結果、歯科材料の加熱時間を短縮するために、容器によって吸収された熱を歯科材料に迅速に放散させることができる。
【0152】
所定の温度に達すると、デバイスの目標温度を歯科材料の目標温度に設定することができる。次いで、この目標温度は、特定の、好ましくは所定の時間にわたって維持することができる。
【0153】
したがって、容器を一時的に過熱することができ、したがって、歯科材料を過熱することなく、歯科材料の目標温度に達するまでの全体的な加熱時間を短縮することができる。
【0154】
歯科材料を収容する容器の外表面を加熱することができる所定の温度は、好ましくは、容器の材料に依存し得、好ましくは、容器の材料の熱容量及び/又は容器の壁の厚さに依存し得る。
【0155】
加熱された歯科材料の目標温度を上回る所定の温度は、好ましくは、容器の最大使用温度よりも低くすることができる。好ましくは、容器を予熱することができる所定の温度は、特にポリブチレンテレフタレート(PBT)製の容器については165℃未満、特にポリプロピレン(PP)製の容器については好ましくは110℃未満とすることができる。しかしながら、この温度限界は、使用される材料に依存する。したがって、上述したものとは異なる材料の容器が使用される場合、容器を予熱することができる所定の温度は、上述した温度限界より高くてもよく、又は低くてもよい。
【0156】
容器の外表面の所定の予熱温度及び歯科材料の目標温度は、例えば、比例-積分-微分(proportional-integral-derivative、PID)コントローラによって制御することができる。
【0157】
一実施形態では、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量は、少なくとも1つの発光ダイオードによる赤外光の放射を断続的に中断及び再作動させることによって、又は少なくとも1つの発光ダイオードに供給される電流を調整することによって、調整することができる。
【0158】
好ましくは、ステップc)及びd)は、所定の間隔で実行することができる。したがって、ユーザは、どの時間間隔でステップc)及びd)が実行されるかを予め決定することができる。代替的又は追加的に、加熱デバイスの製造業者が工場から間隔を予め決定することができる。
【0159】
好ましくは、ステップc)及びd)は、可変間隔で実行することができる。間隔は、好ましくは、容器の外表面の以前に判定された温度に基づいて変化させることができる。
【0160】
したがって、コントローラは、例えば、所定のアルゴリズム又はルックアップテーブルに基づいて、容器の外表面の以前に判定された温度に基づいて、ステップc)及びd)の複数の連続的な実行の間にどれだけの時間が経過すべきかを決定することができる。
【0161】
したがって、例えば、より高い温度が以前に判定された場合、時間間隔は、より低い温度が以前に判定された場合よりも大きく設定することができる。
【0162】
好ましくは、ステップc)及びd)は、パルス幅変調によって連続的に実行することができる。
【0163】
好ましくは、歯科材料の温度は、70℃以下、好ましくは65℃以下に制限することができる。
【0164】
好ましくは、歯科材料の温度は、60℃~70℃、好ましくは62℃~68℃に維持することができる。
【0165】
好ましくは、歯科材料の温度は、15秒以下、好ましくは12秒以下、より好ましくは10秒以下の加熱時間内に少なくとも65℃まで加熱することができる。
【0166】
以下の態様のリストは、本発明の代替の、かつ/又は更なる特徴を提供する。
1.歯科材料を加熱するための加熱デバイスであって、
加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部が内部に形成された本体と、
開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオードと、
本体の開口部に受け入れられた容器の外表面の温度を判定するように構成された少なくとも1つの温度センサと、
を備え、
任意選択的に、温度センサ及び少なくとも1つの発光ダイオードと通信し、かつ、好ましくは、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を制御することにより、温度センサによって判定された容器の外表面の温度に基づいて、容器の外表面の温度を制御するように構成された、制御回路を有するコントローラを備える、加熱デバイス。
2.加熱デバイスが、携帯型卓上デバイスとして構成されており、好ましくは、開口部が、20cm未満、好ましくは16cm未満、より好ましくは14cm未満、より好ましくは10cm未満の長さだけ本体内に延びている、態様1に記載の加熱デバイス。
3.温度センサが、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出するように構成された赤外線温度センサである、態様1又は2に記載の加熱デバイス。
4.長さLを有するアダプタであって、その長さLに沿って本体の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有するアダプタを更に備え、少なくとも1つの発光ダイオードが、好ましくは、アダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置され、アダプタが、少なくとも部分において、長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
5.その長さLに沿って本体の開口部内に、又は本体の第2の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される歯科材料を収容する容器又は加熱される歯科材料を収容する第2のタイプの容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有する第2のアダプタを更に備え、第2のタイプの容器が、好ましくはシリンジである、態様4に記載の加熱デバイス。
6.コントローラが、少なくとも1つの発光ダイオードによる赤外光の放射を断続的に中断及び再作動させることによって、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を制御するように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
7.コントローラが、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の強度を調整することによって、好ましくは少なくとも1つの発光ダイオードに供給される電流を制御することによって、放射される赤外光の量を制御するように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
8.コントローラが、歯科材料の温度を70℃以下、好ましくは65℃以下に制限するように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
9.コントローラが、歯科材料の温度を60℃~70℃、好ましくは62℃~68℃に維持するように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
10.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の温度センサを備える、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
11.外表面少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系を更に含む、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
12.少なくとも1つの光学系がアダプタ上に一体的に形成されて、少なくとも1つの光学系とアダプタとが同じ材料で作製された一体構成要素を構成している、態様11に記載の加熱デバイス。
13.少なくとも1つの光学系が、アダプタに解放可能に取り付けられており、アダプタ及び少なくとも1つの光学系が、一体的な構成要素として加熱デバイスから取り外し可能である、態様11に記載の加熱デバイス。
14.少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードが、加熱デバイス自体から取り外し可能な一体的な構成要素を構成する、態様11又は13に記載の加熱デバイス。
15.複数の発光ダイオードを備え、複数の発光ダイオードが、好ましくは、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布している、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
16.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の光学系及び複数の発光ダイオードを備える、態様11~15のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
17.アダプタが、赤外光、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800~1,500nmの波長を有する赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料から作製されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
18.加熱デバイスが、歯科材料を少なくとも65℃の温度まで30秒以下、より好ましくは25秒以下、より好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下、より好ましくは12秒以下、より好ましくは10秒以下の加熱時間内に加熱するように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
19.本体の開口部内の容器の存在を検出する検出手段を更に備え、検出手段が、歯科材料を収容する容器が加熱デバイスの開口部から取り外されたことを検出手段が検出したとき、及び/又は容器が加熱デバイスの開口部内で所定の時間にわたって加熱されたことを検出手段が検出したときに、コントローラと通信して、加熱デバイスを停止する、又は少なくとも1つの発光ダイオードが停止される待機モードに加熱デバイスを切り替えるように構成されている、前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
20.歯科材料を加熱するための加熱デバイスであって、
加熱される歯科材料を収容する容器を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部が内部に形成された本体と、
本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射するように構成された少なくとも1つの発光ダイオードと、
外表面少なくとも1つの発光ダイオードによって放射された赤外光を、本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の上に集束させるように構成及び配置された少なくとも1つの光学系と、
を備える、加熱デバイス。
21.加熱デバイスが、携帯型卓上デバイスとして構成されており、好ましくは、開口部が、20cm未満、好ましくは16cm未満、より好ましくは14cm未満、より好ましくは10cm未満の長さだけ本体内に延びている、態様20に記載の加熱デバイス。
22.長さLを有するアダプタであって、その長さLに沿って本体の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される歯科材料を収容する容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有するアダプタを更に備え、少なくとも1つの発光ダイオードが、好ましくは、アダプタの外側に、かつその長さLに沿って配置され、アダプタが、少なくとも部分において、長さLに沿って赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である、態様20又は21に記載の加熱デバイス。
23.その長さLに沿って本体の開口部内に、又は本体の第2の開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、加熱される歯科材料を収容する容器又は加熱される歯科材料を収容する第2のタイプの容器を取り外し可能に受け入れるように構成されたレセプタクルを画定する壁を有する第2のアダプタを更に備え、第2のタイプの容器が、好ましくはシリンジである、態様22に記載の加熱デバイス。
24.少なくとも1つの光学系がアダプタ上に一体的に形成されて、少なくとも1つの光学系とアダプタとが同じ材料で作製された一体構成要素を構成している、態様22又は23に記載の加熱デバイス。
25.少なくとも1つの光学系が、アダプタに解放可能に取り付けられており、アダプタ及び少なくとも1つの光学系が、一体的な構成要素として加熱デバイスから取り外し可能である、態様22又は23に記載の加熱デバイス。
26.少なくとも1つの光学系及び少なくとも1つの発光ダイオードが、加熱デバイス自体から取り外し可能な一体的な構成要素を構成する、態様22又は25に記載の加熱デバイス。
27.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の発光ダイオードを備える、態様20~26のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
28.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の光学系及び複数の発光ダイオードを備える、態様20~27のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
29.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器によって放出される赤外線エネルギーを検出して、容器の外表面の温度を判定するように構成された少なくとも1つの赤外線温度センサを備える、態様20~28のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
30.本体の開口部に受け入れられた、歯科材料を収容する容器の周りの周囲に分布した複数の赤外線温度センサを備える、態様29に記載の加熱デバイス。
31.アダプタが、赤外光、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800~1,500nmの波長を有する赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である材料から作製されている、態様22~30のいずれか一項に記載の加熱デバイス。
32.前述の態様のいずれか一項に記載の加熱デバイスと、歯科材料を収容する容器と、を備える、歯科材料を適用するための、システム。
33.容器が、歯科材料を収容するためのチャンバと、歯科材料を分注するためにチャンバに接続された分注ノズルと、歯科材料を分注ノズルに向けて付勢するためにチャンバ内に配置されたピストンと、を含む、態様32に記載のシステム。
34.容器を解放可能に受け入れ、容器のピストンを前進させるように構成され、歯科材料を収容する容器が本体の開口部に少なくとも部分的に受け入れられるように、その少なくとも一部分が本体の開口部内に挿入されるように更に構成された分注ガンを更に備える、態様32又は33に記載のシステム。
35.歯科材料の温度を制御する方法であって、
a)歯科材料を収容する容器の外表面に赤外光を放射する少なくとも1つの発光ダイオードによって、容器に収容された歯科材料を加熱するステップと、
b)少なくとも1つの温度センサによって、歯科材料を収容する容器の外表面の温度を判定するステップと、
c)判定された温度を加熱された歯科材料の目標温度と比較するステップと、
d)判定された温度と目標温度との比較に基づいて、少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量を調整するステップと、
を含む、方法。
36.歯科材料を収容する容器の外表面の温度が、少なくとも1つの赤外線温度センサを用いて容器によって放出される赤外線エネルギーを検出することによって、検出される、態様35に記載の方法。
37.加熱された歯科材料の目標温度が、加熱された歯科材料の所定の目標粘度に基づいている、態様35又は36に記載の方法。
38.歯科材料を収容する容器の外表面が、総加熱時間の少なくとも一部分にわたって、加熱された歯科材料の目標温度を上回る所定の温度まで加熱される、態様35~37のいずれか一項に記載の方法。
39.少なくとも1つの発光ダイオードによって放射される赤外光の量が、少なくとも1つの発光ダイオードによる赤外光の放射を断続的に中断及び再作動させることによって、又は少なくとも1つの発光ダイオードに供給される電流を調整することによって、調整される、態様35~38のいずれか一項に記載の方法。
40.ステップc)及びd)が、所定の間隔で実行される、態様35~39のいずれか一項に記載の方法。
41.ステップc)及びd)が、可変間隔で実行され、間隔が、容器の外表面の以前に判定された温度に基づいて変更される、態様35~39のいずれか一項に記載の方法。
42.ステップc)及びd)が、パルス幅変調によって連続的に実行される、態様35~39のいずれか一項に記載の方法。
43.歯科材料の温度が、70℃以下、好ましくは65℃以下に制限される、態様35~42のいずれか一項に記載の方法デバイス。
44.歯科材料の温度が、60℃~70℃、好ましくは62℃~68℃に維持される、態様35~43のいずれか一項に記載の方法。
45.歯科材料の温度が、少なくとも65℃まで30秒以下、より好ましくは25秒以下、より好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下、より好ましくは12秒以下、より好ましくは10秒以下の加熱時間内に加熱される、態様35~44のいずれか一項に記載の方法。
46.少なくとも1つの発光ダイオードが、歯科材料を収容する容器が加熱デバイスの開口部から取り外されたとき、及び/又は容器が所定の時間にわたって加熱された後に、自動的に停止される、態様35~45のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0167】
以下、図を参照して、本発明の好適な実施形態について更に説明する。
【
図2】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
【
図4】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
【
図5】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0168】
図1は、歯科材料を加熱するための加熱デバイス10の斜視図を示し、加熱デバイス10は、好ましくは携帯型卓上デバイスとして構成されている。加熱デバイス10は、好ましくは電池式デバイスである。したがって、加熱デバイス10は、治療環境内の異なる場所に容易に移動させることができ、歯科材料の適用点の近くに配置することができる。
【0169】
加熱デバイス10は、本体12を備える。本体12は、多体部品として構築されており、加熱デバイス10を制御するように構成された2つの制御ボタン14、16を含む。制御ボタン14、16は、加熱デバイス12の加熱プロセスを作動させることなく、加熱デバイス10を待機モードに切り替えるように構成することができる。
【0170】
制御ボタン14、16は、加熱デバイス10の加熱プロセスを作動させるように更に構成することができる。更に、制御ボタン14、16は、所定の閾値よりも短い期間にわたって、ボタン14、16のうちの1つを作動させることによって、例えば、ボタン14、16のうちの1つに触れる又は押すことによって、加熱デバイスを待機モードに切り替えることができるように構成することができる。制御ボタン14、16は、所定の閾値よりも長い期間にわたってボタン14、16のうちの1つを作動させることによって、加熱デバイス10の加熱プロセスを作動させることができるように更に構成することができる。
【0171】
更に、ボタン14、16は、ボタン14、16のうちの1つが作動される持続時間が加熱デバイス10の加熱プロセスのモード及び/又は持続時間を決定することができるように構成することができる。代替的に又は追加的に、ボタン14、16のうちの1つの順次作動の量は、加熱デバイス10の加熱プロセスのモード及び/又は持続時間を決定することができる。加熱デバイス10の異なるモードは、例えば、異なる加熱温度プロファイル、歯科材料の異なる目標温度、及び異なる加熱強度のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0172】
本体12は、ボタン14、16の周りに円形に配置された表示灯18、20を更に含み、表示灯18、20は、加熱デバイスが入っているモード、すなわち待機モード、加熱モードなどを示すことができる。表示灯18、20はまた、加熱デバイス10の不良などの警告、及び/又は、例えば歯科材料の目標加熱時間及び/又は目標温度に達したときなど、歯科材料が加熱デバイス10から取り外されるべきときをユーザに示すこともできる。
【0173】
本体12は、本体12にそれぞれ形成された2つの開口部22、24を更に含む。両方の開口部22、24は、加熱される歯科材料を収容する容器26、28を少なくとも部分的に受け入れるように構成されている。
【0174】
したがって、制御ボタン14は、開口部24における加熱プロセスを制御するように構成され、制御ボタン16は、開口部22における加熱プロセスを制御するように構成されている。しかしながら、本体12はまた、両方の開口部22、24における加熱プロセスを制御するための単一のボタンを備えることもできる。
【0175】
図1に示すように、開口部24によって受け入れられる容器26は、例えば患者の歯の空洞を充填するために患者の口腔内に適用される歯科材料を収容するカプセルである。開口部22によって受け入れられる容器28は、歯冠損傷を修復するためなど、患者の口腔内に適用される歯科材料もまた収容するシリンジである。
【0176】
カプセル26は、カプセル26から歯科材料を分注するための分注ノズル21を備え、カプセル26は、分注ガン31のマウスピース29に解放可能に取り付けられている。分注ガン31は、ユーザが作動ハンドル33に力を加えることによって、カプセル26から歯科材料を分注するように構成されている。
【0177】
一方、シリンジ28はピストン35を備え、ピストン35をシリンジ28のハウジング37に対して軸方向に変位させることによって、シリンジ28から歯科材料を分注するように構成されている。
【0178】
したがって、開口部22、24は、
図1に示すように、異なるサイズ及び/又は異なる形状などの異なるタイプの容器26、28を受け入れるように構成することができる。しかしながら、開口部22、24は、実質的に同じサイズ及び形状であってもよく、同じタイプの容器を受け入れるように構成することができる。本体12はまた、多数の歯科材料を同時に又は順次のいずれかで加熱するために、2つより多くの、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又はそれより多くの開口部を備えることができる。
【0179】
加熱デバイス10は、歯科材料を収容する容器26、28のうちの1つを受け入れるように構成されたレセプタクル38、40を画定する壁34、36をそれぞれ有する2つのアダプタ30、32を更に備える。レセプタクル38、40はそれぞれ、対応する容器26、28を受け入れるようなサイズ及び形状にされている。開口部22、24に対して格納位置で示されているアダプタ30、32は、開口部22、24に少なくとも部分的に受け入れられるものである。
【0180】
図2は、本体12の開口部24に受け入れられた容器26を示す。
図2に更に見ることができるように、加熱デバイス10は、容器26の外表面44に赤外光を放射するように構成された発光ダイオード42を更に備える。発光ダイオード42は、本体12内に取り付けられるように構成された取付構造体46上に取り付けられている。更に、取付構造体46及び発光ダイオード42は、容器26に収容された歯科材料を均一に加熱するために、容器26の周りの周囲に分布している。
【0181】
加熱デバイス10は、本体12の開口部24に受け入れられた容器26の外表面44の温度を判定するように構成された温度センサ48を更に備える。
図2に示す実施形態では、温度センサ48は、容器26によって放出される赤外線エネルギーを検出するように構成された赤外線温度センサである。しかしながら、温度センサ48は、代替的に、PT100などの熱電対又は抵抗温度計など、容器26の外表面48の温度を判定するために容器26の外表面44に接触するように構成することができる。
【0182】
加熱デバイス10はまた、好ましくは容器26の周りの周囲に分布した複数の温度センサ48を備えることができる。好ましくは、シリンジ28を受け入れるように構成された開口部22はまた、
図2に示すものなどの温度センサ48を備える。しかしながら、開口部22に配置された温度センサ48は、PT100などの熱電対又は抵抗温度計など、容器26の外表面48の温度を判定するために容器26の外表面44に接触するように構成された温度センサなどの、
図2に示すように開口部24に配置された温度センサ48とは異なるタイプのものであってもよい。
【0183】
加熱デバイス10は更に、温度センサ48及び発光ダイオード42と通信し、かつ、発光ダイオード42によって放射される赤外光の量を制御することにより、温度センサ48によって判定された容器26の外表面44の温度に基づいて、容器26の外表面44の温度を制御するように構成された、制御回路を有するコントローラ49を備える。
【0184】
コントローラ49は、発光ダイオード42による赤外光の放射を断続的に中断及び再作動させることによって、発光ダイオード42によって放射される赤外光の量を制御するように構成することができる。
【0185】
代替的に又は追加的に、コントローラ49は、発光ダイオード42によって放射される赤外光の強度を調整することによって、放射される赤外光の量を制御するように構成することができる。発光ダイオード42によって放射される赤外光の強度を調整することは、好ましくは、発光ダイオード42に供給される電流を制御することによって行うことができる。
【0186】
好ましくは、アダプタ30はまた、開口24内に配置され、発光ダイオード42は、好ましくはアダプタ30の外側に配置されている。したがって、アダプタ30は、好ましくは、少なくとも部分において、赤外光に対して少なくとも部分的に透過性である。明確にするために、アダプタ30は、
図2に示されていない。
【0187】
図3は、
図2に示す配置を実質的に示す。
図3は、
図1に示すように、マウスピース29によって受け入れられた容器26を有する分注ガン31を更に示す。明確にするために、コントローラ49は、
図3では省略されている。
【0188】
図4は、
図1に示すアダプタ30を示す。アダプタ30は、壁34によって形成されたレセプタクル38の両端部で開いている。アダプタ30は、発光ダイオード42によって放射された赤外光を、本体12の開口部24に受け入れられた、歯科材料を収容する容器26の外表面44上に集束させるように構成及び配置された4つの光学系50を備える。
【0189】
光学系50は、アダプタ30上に一体的に形成されており、光学系50とアダプタ30とは、同じ材料で作製された一体構成要素を構成する。好ましくは、アダプタ30は、ポリカーボネートで作製されている。したがって、この場合、光学系50もまた、ポリカーボネートで作製することができる。
【0190】
発光ダイオード42によって放射された赤外光を容器26の外表面44上に集束させることによって、容器26上への赤外光が強められることにより、歯科材料は、より効率的に加熱される。
【0191】
図1に示すように、開口部22に受け入れられたアダプタ32は、
図4に示すアダプタ30と同じ構成を有することができる。
【0192】
図5は、アダプタが発光ダイオード42に取り付けられた光学系52を備える代替実施形態を示す。各光学系52及びその対応する発光ダイオード42は、アダプタ30に解放可能に取り付けられた一体的な構成要素を構成する。光学系52は、例えば、内部全反射(TIR)光学系を含むことができる。
【0193】
図1に示すように、開口部22に受け入れられたアダプタ32は、
図5に示すアダプタ30と同じ構成を有することができる。
【国際調査報告】