(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】様々な種類のがんに対する免疫療法に使用するためのHLA-A*02によって提示されるアミド化ペプチドおよびそれらの脱アミド化対応物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231004BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20231004BHJP
C07K 4/12 20060101ALI20231004BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20231004BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20231004BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231004BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231004BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231004BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20231004BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231004BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231004BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20231004BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231004BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231004BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20231004BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20231004BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231004BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231004BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231004BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/47 ZNA
C07K4/12
C07K16/30
C07K14/725
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
A61K38/02
A61K39/395 T
A61K35/76
A61K35/12
A61K35/17
A61P35/00
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P35/02
C12P21/08
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518952
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021076821
(87)【国際公開番号】W WO2022069557
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】102020125457.1
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【氏名又は名称】赤津 豪
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】フーケルマン、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シュスター、ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ハンネン、リカルダ
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ホフガールト、フランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】コヴァレフスキー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スホール、オリバー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064DA01
4B065AB01
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4C086AA01
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4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045CA40
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4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)配列番号1~配列番号102、および(ii)MHC分子に結合する能力、および/または前記変異型ペプチドと交差反応するT細胞を誘導する能力を維持するその変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチド、またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
●配列番号1~配列番号102、
●およびMHC分子に結合する、および/または当該変異ペプチドと交差反応するT細胞を誘導する能力を維持するその変異配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチド、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
●前記ペプチドが、MHCクラスI分子に結合する能力を有し、および/または
●前記ペプチドが、前記MHCに結合すると、CD4および/またはCD8T細胞によって認識され得る、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドまたはその変異型が、8~30アミノ酸の全長を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型。
【請求項4】
前記ペプチドが非ペプチド結合を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型。
【請求項5】
前記ペプチドが融合タンパク質の一部である、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、またはMHC分子に結合したときの請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型を特異的に認識するか、またはそれに結合する抗体、またはその機能的断片。
【請求項7】
MHCリガンドと反応性であるか、またはそれに結合するT細胞受容体またはその機能的断片であって、前記リガンドが、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、またはMHC分子に結合したときの請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型である、T細胞受容体またはその機能的断片。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項6に記載の抗体またはその断片、請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片をコードする核酸。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項6に記載の抗体またはその断片、請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片、または請求項8に記載の核酸または発現ベクターを含んでなる、組換え宿主細胞。
【請求項10】
前記T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり、適切な抗原提示細胞の表面または抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面に発現される抗原負荷ヒトクラスIまたはII MHC分子に、T細胞を生体外で接触させるステップを含んでなり、前記抗原が、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型である、活性化Tリンパ球を製造するためのインビトロ法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型を提示する細胞を選択的に認識する、請求項11に記載の方法によって製造される活性化Tリンパ球。
【請求項12】
●請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、
●請求項6に記載の抗体またはその断片、
●請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片、
●請求項8に記載の核酸または発現ベクター、
●請求項9に記載の宿主細胞、
●または請求項10に記載の活性化Tリンパ球
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の宿主細胞を培養するステップと、前記宿主細胞および/またはその培養液から、ペプチドまたはその変異型、抗体またはその断片、またはT細胞受容体またはその断片を単離するステップとを含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項6に記載の抗体またはその断片、または請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片を製造するための方法。
【請求項14】
薬剤に使用するため、または薬剤の製造に使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項6に記載の抗体またはその断片、請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片、請求項8に記載の核酸または発現ベクター、請求項9に記載の宿主細胞、または請求項11に記載の活性化Tリンパ球。
【請求項15】
請求項11に記載の活性化Tリンパ球の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、その標的細胞が、請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する患者における、標的細胞を死滅させる方法。
【請求項16】
a)標的細胞が請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する患者における、標的細胞の滅殺における使用のための、または
b)このような標的細胞を死滅させるための薬剤の製造における使用
のための、請求項11に記載の活性化Tリンパ球。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項に6記載の抗体またはその断片、請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片、請求項8に記載の核酸または発現ベクター、請求項9に記載の宿主細胞、または請求項11に記載の活性化Tリンパ球の有効量を患者に投与することを含んでなる、
●がんであると診断された、
●がんに罹患している、または
●がんを発症するリスクがある
患者を治療する方法。
【請求項18】
●がんであると診断された、
●がんに罹患している、または
●がんを発症するリスクがある
患者の治療に使用するための、またはこのような患者の治療のための薬剤の製造に使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異型、請求項に6記載の抗体またはその断片、請求項7に記載のT細胞受容体またはその断片、請求項8に記載の核酸または発現ベクター、請求項9に記載の宿主細胞、または請求項11に記載の活性化Tリンパ球。
【請求項19】
前記がんが、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんからなる群から選択される、請求項17に記載の方法、または請求項18に記載の使用のためのペプチド、抗体、T細胞受容体、核酸、宿主細胞または活性化Tリンパ球。
【請求項20】
(a)請求項12に記載の医薬組成物を溶液または凍結乾燥形態で含有する医薬組成物を含んでなる容器;
(b)任意選択的に、前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)任意選択的に、配列番号1~配列番号102からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド
を含んでなるキット。
【請求項21】
緩衝液、希釈剤、フィルター、針、または注射器の1つまたは複数をさらに含んでなる、請求項20に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし。
【0002】
準拠したASCIIテキストファイル(.txt)として提出された配列表への参照
EFS-Webの法的枠組み、および37CFR§1.821-825(MPEP§2442.03(a)を参照されたい)、規則30EPC、および§11 PatVに従って、ASCII準拠のテキストファイルの形式でWIPO標準ST.25に準拠した電子配列表が本出願と同時に提出され、配列表の内容全体が参照により本明細書に援用される。疑義を避けるため、明細書で言及される配列と電子配列表の間に不一致がある場合、明細書の配列が正しいものと見なされるものとする。
【0003】
本発明は、免疫療法において使用される、ペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本発明は、がんの免疫療法に関する。本発明は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子に結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【0004】
本発明は、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスI分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発のための標的として、使用され得る。
【背景技術】
【0005】
世界保健機関(WHO)によると、がんは、2012年における世界の4つの主要な非伝染性致死性疾患の1つであった。同じ年、結腸直腸がん、乳がん、および気道がんは、高所得国における10大死亡原因の1つに挙げられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
がん治療に関連する重篤な副作用および費用を考慮すると、がん治療で使用され得る要素を同定する必要性がある。
【0007】
また、より良いがんの診断、予後評価、および治療成功予測をもたらす、がんのバイオマーカーに相当する要素を特定する必要もある。
【0008】
がん免疫療法
がんの免疫療法は、がん細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する選択肢に相当する。がん免疫療法は、腫瘍関連抗原の存在を利用する。
【0009】
腫瘍関連抗原(TAA)の現行の分類は、次の主要群を含んでなる:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る、これまでに同定された最初のTAAはこのクラスに属し、当初はがん精巣(CT)抗原と称された。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織中で T細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーおよびNY-ESO-1である。
【0010】
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有される。既知の分化抗原のほとんどは、黒色腫および正常メラノサイトに見いだされる。例としては、黒色腫に対するチロシナーゼおよびMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0011】
c)過剰発現されるTAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセスされて潜在的に提示されるエピトープの多くは、T細胞認識の閾値レベル未満であり得る一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、以前確立された免疫寛容を破壊することにより、抗がん応答を始動し得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、またはWT1である。
【0012】
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行に関連している。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型を有するタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍特異的(関連)エクソンに由来する場合に生じ得る。
【0013】
e)オンコウイルスタンパク質:これらのTAAは、発がん過程で重要な役割を果たしてもよいウイルスタンパク質であり、それらは外来性である(ヒト由来でない)ため、T細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんで発現される、ヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0014】
ヒト内因性レトロウイルス(HERV)は、ヒトゲノムのかなりの部分(約8%)を占める。これらのウイルス要素は数百万年前にゲノムに統合され、それ以来、世代を超えて垂直に伝達されてきた。HERVの大多数は、変異または短縮によって機能的活性を喪失しているが、HERV-Kクレードのメンバーなどの一部の内在性レトロウイルスは、依然として機能的遺伝子をコードしており、レトロウイルス様粒子を形成することが示されているHERVプロウイルスの転写は、エピジェネティックに制御されており、正常な生理学的状態では発現停止されたままである。しかし、ウイルスタンパク質の活発な翻訳をもたらす再活性化と過剰発現は、特定の疾患、特に異なる種類のがんで記載されているこのHERV由来タンパク質の腫瘍特異的発現は、異なるタイプのがん免疫療法に利用され得る。
【0015】
f)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、腫瘍中で特異的でなく過剰発現もされないタンパク質から生じ得る が、それでもなお、主に腫瘍中で活性の翻訳後プロセスによって、腫瘍関連抗原になる。このクラスの例は、腫瘍でMUC1のような新規エピトープをもたらす改変グリコシル化パターンから、または腫瘍特異的であってもなくてもよい分解中のタンパク質スプライシング事象から生じる。
【0016】
T細胞ベースの免疫療法は、MHC分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質に由来するペプチドエピトープを標的化する。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわち、それらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それぞれの腫瘍細胞において発現され、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0017】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は、ペプチドとの非共有結合相互作用のために用いられる結合溝をもたらす。
【0018】
MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上見いだされ得る。それらは、主に、内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIPs)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見られる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される(Brossart and Bevan,1997;Rock et al.,1990)。MHCクラスII分子は、大部分はプロフェショナル抗原提示細胞(APC)上に見いだされ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外因性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0019】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を保有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを保有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0020】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答の誘導と維持に重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である腫瘍部位では、Tヘルパー細胞は、細胞傷害性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境をサポートし、例えば、CTL、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける。
【0021】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などの、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが判明している(Dengjel et al.,2006)。
【0022】
本発明の伸長された(より長い)ペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0023】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を取りまとめるのに重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド-MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0024】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかしDengjel et al.は、腫瘍からいくつかのMHCクラスIIエピトープを直接同定することに成功した(その内容全体が参照により本明細書に援用される、国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0025】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多型性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常、長さが8~12アミノ酸残基であり、通常、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する「結合モチーフ」を有する。
【0026】
MHCクラスI依存性免疫反応では、ペプチドは、腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できる必要があるだけでなく、特定のTCRを有するT細胞によって認識される必要もある。
【0027】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。ペプチドは、正常な健常組織と比較して、腫瘍細胞によって過剰に発現されることが有利であり得る。さらに、それぞれの抗原が腫瘍の一種に存在するだけでなく、高濃度で存在することが望ましい。(すなわち、細胞当たりのそれぞれのペプチドのコピー数)。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Singh-Jasuja et al.,2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列内にエピトープが存在することが必須である。
【0028】
TAAは、T細胞ベースの免疫療法の開発の出発点となってもよい。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍と正常組織との間の示差的転写プロファイルまたは示差的ペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現される、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。それは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRを有するT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。
【0029】
本発明による特異的TCR(例えば、可溶性TCR)および抗体またはその他の結合分子(スキャフォールド)によってペプチド-MHCを標的化する場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。これらの場合には、提示が決定要因である。
【0030】
腫瘍関連ペプチドを生成する脱グリコシル化とその後の脱アミド化
TAAは、腫瘍に特異的であったり、過剰発現されたりするタンパク質からのみ発生するわけではない。それはまた、腫瘍に特異的もなく過剰発現されてもいないタンパク質の異常な翻訳後修飾(PTM)から発生し得る。このようなTAAは、主に腫瘍で活性な翻訳後修飾プロセスによって、腫瘍に関連するようになり得る。
【0031】
翻訳後修飾は、免疫ペプチドームのレパートリーを変更および拡張する一方、多様な機能および帰結を有する。一部のPTMは、修飾ペプチドのHLA複合体への結合を妨げ(Andersen et al.,1999)、それは、腫瘍細胞の免疫回避ストラテジーに寄与し得る。その他の修飾は、自己免疫疾患に関連付けられているより高いHLA親和性または免疫原性の増加をもたらす(Arentz-Hansen et al.,2000;McGinty et al.,2015;Sidney et al.,2018;Raposo et al.,2018)が、悪性腫瘍の免疫療法に活用されてもよい(Zarling et al.,2006;Purcell et al.,2007;Petersen et al.,2009;Cobbold et al.,2013;Marcilla et al.,2014;Lin et al.,2019;Brentville et al.,2020)。
【0032】
以前のPTM解析では、脱アミド化がHLA I提示免疫ペプチドのかなり一般的な修飾であることが確認された(Han et al.,2011;Mei et al.,2020)。この化学反応は、アスパラギン(N)からアスパラギン酸(D)へのアミノ酸変換をもたらす(Knorre,Kudryashova,and Godovikova 2009;Mei et al.,2020)。
【0033】
N脱アミド化は、膜関連タンパク質由来のペプチドに富み、配列モチーフN[X^P][ST]と関連し、その中では、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、その後にセリン(S)またはスレオニン(T)のどちらかが続く(Han et al.,2011;Cao et al.2017;Mei et al.,2020)。このモチーフは、N-グリコシルトランスフェラーゼの確立された認識モチーフであり(Yan and Lennarz 2005;Petersen,Purcell,and Rossjohn 2009)、小胞体(ER)における新生グリコシル化へのN脱アミド化を結合する。機構的に、タンパク質またはポリペプチドは、ER内における翻訳中にグリコシル化される。細胞質内への搬出後、それらはペプチド-N-グリカナーゼ(PNGase)によって脱グリコシル化される。この加水分解プロセス中に、N残基もまたDに脱アミド化され、アミノ酸配列の末端に変化をもたらす。プロテアソーム内におけるタンパク質またはポリペプチドのがさらなる分解後、ペプチドはERに再輸送される。ここで、それらはHLA複合体に結合し、細胞膜に移行し、脱アミド化されたペプチドを細胞表面に提示する(
図1を参照されたい)(Misaghi et al.,2004;Petersen,Purcell,and Rossjohn 2009;Mei et al.,2020)。この機序により、T細胞は、感染症だけでなく、腫瘍細胞の代謝の変化にも起因する、グリコシル化の乱れた細胞を認識し、排除できるようになる可能性がある。
【0034】
以前のPTM解析では、脱アミド化がHLA I提示免疫ペプチドのかなり一般的な修飾であることが確認された(Han et al.,2011;Mei et al.,2020)。この化学反応は、アスパラギン(N)からアスパラギン酸(D)へのアミノ酸変換をもたらす(
図2を参照されたい)(Knorre et al.,2009;Mei et al.,2020)。
【0035】
がんにおける異常なグリコシル化は、当初は免疫抑制的な役割に関連付けられたが(Liu and Rabinovich 2005;Rodriguez et al.,2018;De Bousser et al.,2020)、累積的な証明により、それはT細胞ベースの治療にも利用されてもよいことが示された。ここで、糖タンパク質それ自体(Posey et al.,2016;Maher et al.,2016;Rodriguez,Schetters,and van Kooyk 2018;De Bousser et al.,2020)またはグリコシル化依存性脱アミドペプチドのどちらかが、新抗原として機能し、標的化されてもよい。ヒト免疫不全ウイルス1型エンベロープ糖タンパク質(GP)(Behrens et al.,2017;Ferris et al.,1999)、C型肝炎GPE1(Selby et al.,1999)、およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスGP1(Hudrisier et al.,1999)病原体のペプチド、ならびに黒色腫のチロシナーゼペプチド(Mosse et al.,1998;Schaed et al.,2002;Altrich-VanLith et al.,2006;Ostankovitch et al.,2009)に関する文献には、脱アミド化ペプチドの免疫原性の役割について良く説明されている例がいくつかある。
【0036】
したがって、上記の脱アミド化ペプチドおよび抗原提示の非標準経路は、T細胞ベースの腫瘍免疫療法の興味深い標的として機能する。
【課題を解決するための手段】
【0037】
第1の態様では、本発明は、配列番号1~配列番号102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチド、およびMHC分子に結合する、および/または当該変異ペプチドと交差反応するT細胞を誘導するその変異配列、またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0038】
以下の表(表1A、1B、2A、および2B)は、本発明によるペプチド、それらのそれぞれの配列番号、およびこれらのペプチドの予想される供給源(基礎となる)遺伝子を示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
本発明は、さらに、増殖性疾患の治療において使用するための本発明によるペプチドに一般に関する。本文脈における増殖性疾患は、例えば、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんである。
【0044】
特に好ましいのは、配列番号1~配列番号102からなる群から選択される、本発明による単独のまたは組み合わされたペプチドである。
【0045】
したがって、本発明の別の態様は、増殖性疾患の(好ましくは組み合わせた)治療のための、本発明によるペプチドの使用に関する。
【0046】
本発明は、MHC分子クラスIに結合する能力を有するか、または長さ変異型などの伸長形態でMHCクラスIIに結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0047】
本発明は、投与後(例えばワクチンとして)、細胞内でプロセスされ得て、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなるか、またはそれらから本質的になる、より短いペプチドになり、それが次にHLAによって細胞表面上に提示される、伸長されたペプチドにさらに関する。
【0048】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは(それぞれ)配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になる。
【0049】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは非ペプチド結合を含む。
【0050】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体に(またはその配列中に)融合した、融合タンパク質の一部である。
【0051】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0052】
本発明は、本発明による核酸を発現でき、および/または発現する、発現ベクターにさらに関する。
【0053】
本発明は、疾患の治療においてそして医療において、特にがんの治療において使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0054】
本発明は、本発明によるペプチドに対して、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体に対して特異的な抗体と、それらを製造する方法とにさらに関する。
【0055】
本開示はまた、前記MHCクラスI分子を発現する細胞を含有する遺伝子操作された非ヒト哺乳類を、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になるペプチドと複合体形成したMHCクラスI分子の可溶型で免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリから単離するステップとを含む、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列を含んでなるか、それからなるか、またはそれから本質的になるペプチドと複合体形成した、MHCクラスI分子に特異的に結合する抗体を製造する方法にも関してもよく、その中では、前記少なくとも1つのファージは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になるペプチドと複合体形成した、前記MHCクラスI分子に特異的に結合する前記抗体を提示する。別の態様では、抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。
【0056】
一態様では、抗体は、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列 を含んでなるか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる抗原と複合体形成した、前記MHCクラスI分子に、100nM未満、より好ましくは50nM未満、より好ましくは10nM未満、より好ましくは1nM未満、より好ましくは0.1nM未満、より好ましくは0.01nM未満の結合親和力(Kd)で結合し得る。
【0057】
抗体を製造する方法は、抗体をヒト化することをさらに含んでもよい。態様では、抗体を製造する方法は、抗体を毒素とコンジュゲートさせることをさらに含んでもよい。別の態様では、抗体を製造する方法は、抗体を免疫刺激ドメインとコンジュゲートさせることをさらに含んでもよい。
【0058】
一態様では、抗体を製造する方法は、抗体を二重特異性抗体の形態に改変することをさらに含んでもよい。別の態様では、抗体を製造する方法は、抗体をキメラ性抗体の形態に改変することをさらに含んでもよい。別の態様では、抗体を製造する方法は、抗体をFvの形態に改変することをさらに含んでもよい。一態様では、抗体を製造する方法は、抗体をFabの形態に改変することをさらに含んでもよい。別の態様では、抗体を製造する方法は、抗体をFab’の形態に改変することをさらに含んでもよい。別の態様では、抗体を製造する方法は、111In、99Tc、14C、131I、3H、32P、および35Sからなる群から選択され得る放射性ヌクレオチドで抗体を標識することをさらに含んでもよい。別の態様では、非ヒト哺乳類はマウスであってもよい。
【0059】
本発明は、自己由来または同種異系T細胞に組み込まれた、TCR、特に可溶性TCR、およびクローン化TCR、そしてこれらを製造する方法、ならびに前記TCRを有するまたは前記TCRと交差反応する、NK細胞またはその他の細胞を製造する方法にさらに関する。可溶性TCRは、100nM未満、より好ましくは50nM未満、より好ましくは10nM未満、より好ましくは1nM未満、より好ましくは0.1nM未満、より好ましくは0.01nM未満の結合親和性(Kd)を有してもよい。一方クローン化された細胞ベースのTCRは、50μM未満、より好ましくは25μM未満、より好ましくは10μM未満、より好ましくは1μM未満、より好ましくは0.1μM未満の結合親和性(Kd)を有してもよい。
【0060】
抗体およびTCRは、本発明によるペプチドの免疫療法的使用の追加的な実施形態である。
【0061】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0062】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷される、本発明による前記方法にさらに関する。
【0063】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号102を含有する前記ペプチドを発現できる発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0064】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0065】
本発明は、本発明よって製造された有効数のT細胞を患者に投与することを含んでなる、標的細胞が本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者における、標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0066】
本発明は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載されている任意のペプチドの使用、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、活性化Tリンパ球、本発明による本発明によるTCRまたは抗体またはその他のペプチドおよび/またはペプチドMHC結合分子にさらに関する。好ましくは、前記薬剤は、がんに対して有効である。好ましくは、前記薬剤は、細胞療法、ワクチンまたは可溶性TCRまたは抗体に基づくタンパク質である。
【0067】
本発明は、本発明による使用にさらに関し、前記がんは、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん、および好ましくは急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん腫、および子宮内膜がん細胞である。
【0068】
本発明は、がん、好ましくは急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんの診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドをベースとするバイオマーカーにさらに関する。マーカーは、ペプチドそれ自体の過剰提示、または対応遺伝子の過剰発現であり得る。マーカーはまた、好ましくは免疫療法、最も好ましくはバイオマーカーによって同定されるのと同じ標的を標的化する免疫療法である、治療の成功確率を予測するために使用されてもよい。例えば抗体または可溶性TCRを使用して腫瘍切片が染色され、MHCと複合体形成した目的ペプチドの存在が検出され得る。
【0069】
任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0070】
本発明はまた、がん治療の文脈におけるこれらの新規標的の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識された抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を利用して腫瘍成長に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0072】
細胞性免疫応答の特異的要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特にCD8陽性T細胞は、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または血管リボソーム産物(DRIPS)に由来する通常8~12アミノ酸残基のペプチドを保有するMHCクラスI分子を認識し、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0073】
本明細書の用法では、別段の記載がない限り、全ての用語は下述のとおり定義される。
【0074】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI拘束性細胞傷害性T細胞では、エフェクター機能は、ペプチドパルスされた、ペプチド前駆体パルスされた、または天然にペプチドを提示する、標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0075】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボキシル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。
【0076】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボキシル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。本発明によるペプチドの塩は、ペプチドが生体内で塩の形態ではなく、または対イオンと会合していないため、生体内でのそれらの状態のペプチドとは、実質的に異なることに留意すべきである。
【0077】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボキシル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。オリゴペプチドの長さは、その中で正しいエピトープまたはエピトープ群が保持されれば、本発明にとって重要でない。
【0078】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは本発明にとって重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0079】
ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはこのような分子をコードするポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導できれば「免疫原性」である(したがって本発明における「免疫原」である)。本発明では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導できる分子であり、本発明では、T細胞応答を誘導できる分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるために使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0080】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC分子に結合している短いペプチドを必要とし、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC-ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子に結合しているペプチドは、典型的に8~12アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0081】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A*01、HLA-A*02、およびHLA-B*07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0082】
本発明のペプチドは、好ましくは本明細書に記載の本発明のワクチンに含まれる場合、HLA-A*02に結合する。ワクチンはまた、汎結合MHCクラスIIペプチドを含んでもよい。したがって、本発明のワクチンを使用して、HLA-A*02陽性の患者のがんが治療され得る一方、MHCクラスIIアロタイプの選択は、これらのペプチドの汎結合性により必要でない。
【0083】
本発明のHLA-A*02ペプチドを、例えばHLA-A*24などの別の対立遺伝子に結合するペプチドと組み合わせると、どちらかのMHCクラスI対立遺伝子のみで治療する場合と比較して、任意の患者集団のより高い割合を治療し得る。ほとんどの集団では、どちらかの対立遺伝子のみで治療され得る患者が50%未満である一方、HLA-A*24およびHLA-A*02エピトープを含んでなるワクチンは、あらゆる妥当な集団の患者の少なくとも60%を治療し得る。具体的には、以下の百分率の患者が様々な地域で、これらの対立遺伝子の少なくとも1つに対して陽性である:米国61%、西ヨーロッパ62%、中国75%、韓国77%、日本86%(allelefrequencies.netから計算)。
【0084】
好ましい実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0085】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNA断片は、cDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーから構築され、または一連のオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる、合成遺伝子を提供する。
【0086】
本明細書の用法では「ペプチドをコード(またはエンコード)するヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの生産に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現されるように生体系と適合した、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0087】
本明細書の用法では、核酸配列への言及は、一本鎖および二本鎖の核酸の双方を含む。したがって、例えば、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその相補鎖との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の相補鎖を指す。
【0088】
「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは普通にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の内在性発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0089】
コード領域は、非変異(「正常」)、変異または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来し得る。
【0090】
「発現産物」という用語は、天然翻訳産物であるポリペプチドまたはタンパク質、及び、遺伝コード縮重に起因し同じ同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列がコードする同等物を意味する。
【0091】
コード配列に言及する場合、「断片」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0092】
「DNAセグメント」という用語は、別々の断片の形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内在性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用する標準生化学的方法によって、セグメントおよびその構成ヌクレオチド配列を同定、操作、および回収できるようにする量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このようなセグメントは、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって中断されていない、読み取り枠の形態で提供される。非翻訳DNA配列は、それがコード領域の操作または発現を妨げない、読み取り枠下流に存在してもよい。
【0093】
「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基(典型的にその中で中性形態の薬剤が中性-NH2基を有する)から調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を使用して調製される。好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドを含んでなる。
【0094】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0095】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えばそれが天然起源であれば、天然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同一ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得て、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないと言う意味では、やはり単離されている。
【0096】
本発明によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく、むしろ、それは相対的定義であることが意図され、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁までの、出発原料または天然物質の精製が明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが明示的に包含される。
【0097】
本発明によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「濃縮形態」であってもよい。本明細書の用法では、「濃縮」という用語は、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍の物質濃度を意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の濃縮調製物もまた、検討される。本発明を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。「活性断片」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター中で、例えば、マウス、ラット、ラマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、またはウマなどのそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与されると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列の断片を意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物内でT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性断片」はまた、生体外T細胞応答を誘導するために使用されてもよい。
【0098】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「セグメント」、および「断片」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列はより大型の配列のサブセットを形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、セグメントまたは断片に相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、任意のエンドヌクレアーゼによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0099】
本発明によると、配列に言及する場合、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が、差異を構成して、
(iiii)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じるあらゆるギャップも塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0100】
比較配列と、それに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同じまたはそれを上回るアライメントが存在すれば、その中に、上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0101】
したがって、上記のように、本発明は、配列番号1~配列番号102からなる群から選択される配列を含んでなるペプチド、または前記ペプチドと交差反応するT細胞を誘導するその変異型を提供する。本発明のペプチドは、MHC分子クラスIに結合する能力、または前記ペプチドのクラスIIへの伸長バージョンに結合する能力を有する。
【0102】
本発明では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度を指す(上記の同一性百分率を参照されたい)。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他のツールが、公共データベースによって提供される。
【0103】
当業者は、特定のペプチドの変異型によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(例えば、それらの内容の全体が参照により援用される、Appay et al.,2006;Colombetti et al.,2006;Fong et al.,2001;Zaremba et al.,1997を参照されたい)。
【0104】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1~配列番号102の所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様にHLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が変化することを意味する。例えば、ペプチドは、HLA-A*02などの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善しないとしても、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにして、活性化T細胞のTCRに結合する能力を改善しないとしても、少なくとも維持する。
【0105】
これらのT細胞は、引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義される同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。学術文献およびデータベース(その全体が参照により援用される、Rammensee et al.,1999;Godkin et al.,1997)から演繹され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的にアンカー残基であり、結合溝を構成するポリペプチド鎖の極性、電気物理的、疎水性、および空間特性によって画定されるHLA分子の結合モチーフと適合する、コア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1~配列番号102に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異型がMHCクラスIまたはII分子に結合する能力を維持するかどうかを判定できるであろう。本発明の変異型は、活性化T細胞のTCRに結合する能力を維持し、それは引き続いて、本発明の態様で定義されるような同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞と交差反応して、それを殺滅し得る。
【0106】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドは、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、アミノ酸鎖の末端に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物との間で、サイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0107】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0108】
一態様では、保存的置換は、その内容全体が参照により援用される、Dayhoffによって、”The Atlas of Protein Sequence and Structure.Vol.5”,Natl.Biomedical Researchに記載されているものを含んでもよい。例えば、一態様では、以下のグループの1つに属するアミノ酸は、互いに交換され得て、したがって、保守的な交換を構成する:グループ1:アラニン(A)、プロリン(P)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、セリン(S)、スレオニン(T);グループ2:システイン(C)、セリン(S)、チロシン(Y)、スレオニン(T);グループ3:バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、フェニルアラニン(F);グループ4:リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H);グループ5:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H);およびグループ6:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)。一態様では、保存的アミノ酸置換は、T→A、G→A、A→I、T→V、A→M、T→I、A→V、T→G、および/またはT→Sから選択されてもよい。
【0109】
一態様では、保存的アミノ酸置換は、例えば、(1)非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp;(2)非荷電極性:Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;および(4)塩基性:Lys、Arg、Hisなど、同一クラスの別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を含んでもよい。その他の保存的アミノ酸置換はまた、以下のように行われてもよい:(1)芳香族:Phe、Tyr、His;(2)プロトン供与体:Asn、Gln、Lys、Arg、His、Trp;および(3)プロトン受容体:Glu、Asp、Thr、Ser、Tyr、Asn、Gln(例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許第10,106,805号明細書を参照されたい)。
【0110】
別の態様では、表3に従って保存的置換が行われてもよい。タンパク質修飾に対する耐性を予測する方法は、文献に記載されている(例えば、その内容全体が参照により援用される、Guo et al.,2004)。
【0111】
【0112】
別の態様では、置換は、表4に示されているものであってもよい。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表4で「例示的な置換」と命名される、より実質的な変化が導入され、必要に応じて生成物がスクリーニングされてもよい。
【0113】
【0114】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本発明の抗原性ペプチドに通常見いだされるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに、非標準アミノ酸(すなわち、一般的な天然タンパク質新生アミノ酸以外)もまた置換目的で使用されて、本発明による免疫原および免疫原性ポリペプチドが生産されてもよい。
【0115】
1つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等のまたはそれを超える抗原活性のあるペプチドをもたらすことが判明した場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。
【0116】
本明細書に示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較して、MHC分子クラスIまたはIIに結合する能力が実質的に変化したり、または悪影響を受けたりすることなしに、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸(アンカーモチーフについては下記を参照されたい)の交換を有し得る。別の実施形態では、本明細書に示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドにおいて、非修飾ペプチドと比較して、MHC分子クラスIまたはIIに結合する能力が実質的に変化したり、または悪影響を受けたりすることなしに、1つまたは2のアミノ酸がそれらの保存的交換パートナー(下記を参照されたい)と交換され得る。
【0117】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、その他のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異型を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0118】
より長い(伸長された)ペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は8~12アミノ酸長であるが、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質から、ペプチドプロセッシングによって生成することが可能である。実際のエピトープ側面に位置する残基は、プロセッシング中に実際のエピトープを曝露させるのに必要なタンパク質分解切断に、実質的に影響を及ぼさない残基であることが好ましい。
【0119】
本発明のペプチドは、最大4個のアミノ酸で伸長させ得て、すなわち4:0~0:4の間のあらゆる組み合わせで、どちらかの末端に1、2、3または4個のアミノ酸が付加され得る。本発明による伸長の組み合わせは、表5に見いだされ得る。
【0120】
【0121】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0122】
したがって本発明のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0123】
代案の実施形態では、ペプチドは、4つを超えるアミノ酸で、好ましくは最大30アミノ酸の全長まで、片側または両側で伸長される。これは、MHCクラスII結合ペプチドをもたらしてもよい。MHCクラスIIへの結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験される得る。
【0124】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~12、すなわち8、9、10、11、12アミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。
【0125】
もちろん、本発明によるペプチドまたは変異型は、MHC分子クラスIまたはIIに結合する能力を有する。ペプチドまたは変異型のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0126】
好ましくは、本発明によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増加の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0127】
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0128】
「から本質的になる」は、本発明によるペプチドが、配列番号1~配列番号102のいずれかに記載の配列またはその変異型に加えて、MHC分子エピトープのとして機能するペプチドの一部を必ずしも構成しない、追加的なNおよび/またはC末端に位置するアミノ酸の一連の配列を含有することを意味するものとする。
【0129】
それでもなお、これらの一連の配列は、本発明によるペプチドの細胞への効率的な導入を提供するのに重要であり得る。本発明の一実施形態では、ペプチドは、例えば、NCBI、GenBank受入番号X00497に由来する、HLA-DR抗原関連不変鎖の80個のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質(p33、以下「Ii」)である。その他の融合物においては、本発明のペプチドは、本明細書に記載されるような抗体、またはその機能的部分に、特に抗体の配列に、前記抗体によって特異的に標的化されるように融合し得て、または例えば、本明細書に記載されるような樹状細胞に対して特異的な抗体に、またはその中に融合し得る。
【0130】
さらにペプチドまたは変異型は、より強力な免疫応答を引き起こすために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するようにさらに修飾されてもよい。ペプチド配列のこのような最適化方法は当該技術分野で周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入が挙げられる。
【0131】
逆ペプチド結合中では、アミノ酸残基はペプチド(-CO-NH-)結合によって連結せず、ペプチド結合が逆転する。このようなレトロインベルソペプチド模倣薬は、例えば、Meziereと同僚によって記載された方法(参照により本明細書に援用される、Meziere et al.,1997)などの当該技術分野で既知の方法を使用して、製造されてもよい。このアプローチは、側鎖の方向でなく、主鎖に関与する変化を含有する、擬ペプチドを作成することを伴う。彼らは、MHC結合とTヘルパー細胞反応に、これらの疑似ペプチドが有用であることを示している。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロインバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかにより高い抵抗性がある(Meziereetal.、1997)。
【0132】
非ペプチド結合は、例えば、-CH2-NH、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-である。米国特許第4,897,445号明細書は、標準手順によって合成されるポリペプチド、およびNaCNBH3の存在下でアミノアルデヒドとアミノ酸を反応させることで合成される非ペプチド結合が関与する、ポリペプチド鎖中の非ペプチド結合(-CH2-NH)を固相合成する方法を提供する。
【0133】
上記の結合を含んでなるペプチドは、それらのアミノおよび/またはカルボキシ末端に存在する追加的な化学基と共に合成されて、ペプチドの安定性、生物学的利用能、および/または親和性が向上されてもよい。例えば、カルボベンゾキシル、ダンシル、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水性基が、ペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシカルボニル基が、ペプチドのアミノ末端に配置されてもよい。さらに、疎水性基、t-ブチルオキシカルボニル、またはアミド基が、ペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。
【0134】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を改変するように合成されてもよい。例えば、通常のL異性体でなく、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基のD異性体が使用されてもよい。なおもさらに、本発明のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つは、周知の非天然起源アミノ酸残基の1つで置換されてもよい。これらのような改変は、本発明のペプチドの安定性、生物学的利用能および/または結合作用の増大に役立ってもよい。
【0135】
同様に、本発明のペプチドまたは変異型は、ペプチド合成の前または後のどちらかに、特定のアミノ酸を反応させることで化学的に修飾されてもよい。このような修飾の例は、当該技術分野で周知である(参照により本明細書に援用されるLundblad,2004)。アミノ酸の化学修飾としては、これに限定されるものではないが、アシル化、アミジン化、リジンのピリドキシル化、還元アルキル化、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、システインのシステイン酸への過ギ酸酸化によるカルボキシル基のアミド修飾およびスルフヒドリル修飾、水銀誘導体形成、その他のチオール化合物との混合ジスルフィド形成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化による修飾が挙げられるが、これに限定されるものではない(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Coligan et al.,1995)。
【0136】
簡単に述べると、例えば、タンパク質中のアルギニン残基の修飾は、付加体を形成するためのフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンなどの隣接するジカルボニル化合物の反応に基づくことが多い。別の例は、メチルグリオキサールとアルギニン残基の反応である。システインは、リジンおよびヒスチジンなどのその他の求核性部位の同時の修飾なしに修飾され得る。その結果、多数の試薬がシステイン修飾のために利用可能である。Sigma-Aldrichなどの会社のウェブサイト(www.sigma-aldrich.com)が、特定の試薬に関する情報を提供している。
【0137】
タンパク質中のジスルフィド結合の選択的還元もまた、一般的である。ジスルフィド結合は、生物医薬品の加熱処理中に形成されて酸化され得る。ウッドワード試薬Kを使用して、特定のグルタミン酸残基が修飾されてもよい。N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミドを使用して、リジン残基とグルタミン酸残基の間に分子内架橋が形成され得る。例えば、ジエチルピロ炭酸は、タンパク質中のヒスチジン残基修飾のための試薬である。ヒスチジンはまた、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを使用して修飾され得る。リジン残基およびその他のα-アミノ基の反応物は、例えば、ペプチドの表面への結合またはタンパク質/ペプチド架橋で有用である。リジンはポリ(エチレン)グリコールの付着部位であり、タンパク質のグリコシル化の主要な修飾部位である。タンパク質中のメチオニン残基は、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、およびクロラミンTによって修飾され得る。
【0138】
チロシン残基の修飾には、テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾールが使用され得る。ジチロシンの形成を通じた架橋は、過酸化水素/銅イオンによって達成され得る。
【0139】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシニミド、臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルまたは3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドール(BPNS-スカトール)が使用された。
【0140】
PEGによる治療用タンパク質およびペプチドの成功裏の修飾が、循環半減期の延長にしばしば関連している一方で、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびホルムアルデヒドによるタンパク質の架橋は、ハイドロゲル調製のために使用される。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、シアン酸カリウムを用いるカルバミル化によって達成されることが多い。
【0141】
本発明の別の実施形態は、非天然ペプチドに関し、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になり、薬学的に許容可能な塩として合成的に生産される(例えば、合成される)。ペプチドを合成的に生産する方法は、当該技術分野で周知である。生体内で産生されるペプチドは塩でないため、本発明によるペプチドの塩は、ペプチドの生体内での状態と実質的に異なる。ペプチドの非天然塩形態は、特に、ペプチドを含んでなる医薬組成物、例えば、本明細書で開示されるペプチドワクチンなどの文脈で、ペプチドの溶解性を媒介する。治療される対象にペプチドを効率的に提供するためには、ペプチドの十分で少なくとも実質的な溶解性が必要である。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。本発明によるこれらの塩としては、陰イオンとしてのPO4
3、SO4
2-、CH3COO-、Cl-、Br-、NO3
-、ClO4
-、I-、SCN-、およびカチオンとしてのNH4
+、Rb+、K+、Na+、Cs+、Li+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Cu2+、およびBa2+を含んでなるホフマイスター系列の塩類などのアルカリ塩およびアルカリ土類塩類が挙げられる。特に塩類は、(NH4)3PO4、(NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4、(NH4)2SO4、NH4CH3COO、NH4Cl、NH4Br、NH4NO3、NH4CIO4、NH4I、NH4SCN、Rb3PO4、Rb2HPO4、RbH2PO4、Rb2SO4、Rb4CH3COO、Rb4Cl、Rb4Br、Rb4NO3、Rb4CIO4、Rb4I、Rb4SCN、K3PO4、K2HPO4、KH2PO4、K2SO4、KCH3COO、KCl、KBr、KNO3、KClO4、KI、KSCN、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、Na2SO4、NaCH3COO、NaCl、NaBr、NaNO3、NaCIO4、NaI、NaSCN、ZnCI2Cs3PO4、Cs2HPO4、CsH2PO4、Cs2SO4、CsCH3COO、CsCl、CsBr、CsNO3、CsCIO4、CsI、CsSCN、Li3PO4、Li2HPO4、LiH2PO4、Li2SO4、LiCH3COO、LiCl、LiBr、LiNO3、LiClO4、LiI、LiSCN、Cu2SO4、Mg3(PO4)2、Mg2HPO4、Mg(H2PO4)2、Mg2SO4、Mg(CH3COO)2、MgCl2、MgBr2、Mg(NO3)2、Mg(ClO4)2、MgI2、Mg(SCN)2、MnCl2、Ca3(PO4),、Ca2HPO4、Ca(H2PO4)2、CaSO4、Ca(CH3COO)2、CaCl2、CaBr2、Ca(NO3)2、Ca(ClO4)2、CaI2、Ca(SCN)2、Ba3(PO4)2、Ba2HPO4、Ba(H2PO4)2、BaSO4、Ba(CH3COO)2、BaCl2、BaBr2、Ba(NO3)2、Ba(ClO4)2、BaI2、およびBa(SCN)2から選択される。特に好ましいのは、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などのNH酢酸塩、MgCl2、KH2PO4、Na2SO4、KCl、NaCl、およびCaCl2である(例えば、その内容全体が参照により援用される、Berge et al.,1977)。
【0142】
通常、ペプチドおよび変異型(少なくともアミノ酸残基の間にペプチド結合を含有するもの)は、Lukas et al.(その内容全体が参照により援用される、Lukas et al.,1981)によって、およびその中で引用されている参考文献によって開示されるようなFmoc-ポリアミド型固相ペプチド合成で合成されてもよい。一時的なN-アミノ基保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の反復切断は、N、N-ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して実施される。側鎖官能基は、それらのブチルエーテル(セリン、スレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護されてもよい。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド官能基を保護するために、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル基が活用される。固相担体は、ジメチルアクリルアミド(主鎖モノマー)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(架橋剤)、およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(機能化因子)の3つのモノマーから構成される、ポリジメチル-アクリルアミドポリマーをベースとする。使用されるペプチドと樹脂との切断可能な結合剤は、酸不安定性4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介共役手順を使用して付加されるアスパラギンおよびグルタミンを除いて、全てのアミノ酸誘導体は、それらのあらかじめ形成された対称的な無水物誘導体として付加される。全ての共役および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン試験手順を使用してモニターされる。合成完了時に、ペプチドは樹脂担体から切断され、同時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸処理によって、側鎖保護基が除去される。一般に使用されるスカベンジャーとしては、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水が挙げられ、正確な選択は、合成されるペプチドの構成アミノ酸に左右される。また、ペプチド合成のための固相法と溶液相法の組み合わせも可能である(例えば、その内容全体が参照により援用される、Bruckdorfer et al.,2004およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。
【0143】
トリフルオロ酢酸は、真空蒸発によって除去され、引き続くジエチルエーテルを用いた磨砕は、粗製ペプチドをもたらす。存在するあらゆるスカベンジャーは、単純な抽出手順によって除去され、それは水相の凍結乾燥に際して、スカベンジャーを含まない粗製ペプチドを与える。ペプチド合成のための試薬は、通常、例えば、Calbiochem-Novabiochem(英国ノッティンガム)から入手できる。
【0144】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えば、アセトニトリル/水勾配分離を使用した逆相高速液体クロマトグラフィーなどの技術の任意の1つまたは組み合わせによって実施されてもよい。
【0145】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析を使用して、高速原子衝撃(FAB)質量分光分析によって、ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量分光分析によって、実施されてもよい。
【0146】
過剰提示ペプチドを選択するために、中央値サンプル提示ならびに反復試験変動を示す、提示プロファイルが計算される。プロファイルは、関心のある腫瘍実体のサンプルを正常なサンプルのベースラインに並置させる。次にこれらの各プロファイルは、線形混合効果モデルのp値を計算し(Pinheiro et al.,2015)、誤検出率によって複数試験について補正する(その内容全体が参照により援用される、Benjamini and Hochberg,1995)ことによって、過剰提示スコアに統合され得る。
【0147】
質量分析によるHLAリガンドの同定と相対定量化のために、衝撃凍結サンプルからからのHLA分子が精製されて、HLA関連ペプチドが単離された。単離ペプチドを分離して、オンラインナノエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験によって配列を同定した。得られたペプチド配列は、同一配列の対応する合成参照ペプチドの断片化パターンと、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんサンプル(N>750サンプル)から記録された天然腫瘍関連ペプチド(TUMAP)の断片化パターンとの比較によって、検証された。ペプチドは、原発性腫瘍のHLA分子のリガンドとして直接、同定されたので、これらの結果は、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん患者から入手された原発性がん組織上における、同定されたペプチドの天然プロセッシングおよび提示の直接的証拠を提供する(実施例1、
図3A~3Dを参照されたい)。
【0148】
発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.1は、いくつかの異なる非がん組織および臓器と比較した、がん組織上のHLA拘束性ペプチドレベルの直接相対定量化に基づいて、免疫療法の潜在的な標的である、過剰提示されたペプチドを同定および選択できるようにする。例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許出願公開第2013/0096016号明細書を参照されたい。これは、独自仕様のデータ解析パイプラインで処理された獲得LC-MSデータを使用して、配列同定のためのアルゴリズム、スペクトルクラスタリング、イオン計数、滞留時間アライメント、電荷状態のデコンボリューション、および正規化を組み合わせる、無標識示差定量化の開発によって達成された。
【0149】
公開リソースからの追加的な配列情報(その内容全体が参照により援用される、Olexiouk et al.,2016;Subramanian et al.,2011)がXPRESIDENT(登録商標)発見パイプラインに統合され、非標準起源からのTUMAPの同定を可能にした。各ペプチドおよびサンプルの誤差推定値を含む、提示レベルが確立された。腫瘍組織上で排他的に提示されるペプチド、および腫瘍において過剰提示されるペプチドが、非がん組織および臓器との比較で同定されている。
【0150】
急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん組織サンプルからのHLA-ペプチド複合体が精製されてHLA関連ペプチドが単離され、LC-MSによって解析された(実施例1を参照されたい)。本出願に含まれる全てのTUMAPは、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんサンプル上でこのアプローチによって同定され、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、子宮内膜がん、およびそれらの組み合わせ上のそれらの提示が確認された。
【0151】
複数の急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん、および正常組織上で確認されたTUMAPは、ラベルフリーLC-MSデータのイオンカウントを使用して定量化された。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量と相関すると仮定する。様々なLC-MS実験におけるペプチドの全ての定量的シグナルは、中心傾向に基づいて正規化され、サンプル当たりで平均化されて、提示プロファイルと称される棒グラフにマージされた。提示プロファイルは、タンパク質データベース検索、スペクトルクラスタリング、電荷状態デコンボリューション(除電)、および滞留時間アライメントおよび正規化のような、異なる解析法を統合する。
【0152】
さらに、発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)により、がんまたはその他の感染組織上のMHCペプチドレベル、好ましくはHLA拘束性ペプチドレベルの直接絶対定量化が可能になる。簡潔に述べると、総細胞数は、分析された組織サンプルの総DNA含有量から計算された。組織サンプル中のTUMAPの総ペプチド量は、ナノLC-MS/MSによって、天然のTUMAPと既知量のTUMAPの同位体標識バージョン、いわゆる内標準の比率として測定された。TUMAP単離の効率は、TUMAP単離手順手順の可能な限り早い時点で、選択された全てのTUMAPのペプチド-MHC複合体を組織溶解物にスパイクし、ペプチド単離手順の完了に続いて、ナノLC-MS/MSでそれらを検出することによって判定された。総細胞数と総ペプチド量は、組織サンプル当たりトリプリケイトでの測定から計算された。ペプチド特異的な単離効率は、それぞれトリプリケイトで測定された9回のスパイク実験の平均として計算された(実施例4および表12を参照されたい)。
【0153】
ペプチドの過剰提示に加えて、基礎遺伝子のmRNA発現が試験された。mRNAデータは、正常組織およびがん組織のRNASeq分析を通じて得られた(実施例2、
図4A~4Dを参照されたい)。正常組織データのさらなる出典は、約3000の正常組織サンプルに由来する、公的に利用可能なRNA発現データのデータベースであった(その内容全体が参照により援用される、Lonsdale、2013)。それがコードするmRNAが、がん組織では高度に発現されるが、生命維持に必要な正常組織では非常に低いかまたは存在しない、タンパク質に由来するペプチドが、好ましくは本発明に包含される。
【0154】
本発明は、本発明のペプチドを過剰にまたは排他的に提示する、がん/腫瘍、好ましくは急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんの治療に有用なペプチドを提供する。これらのペプチドは、原発性ヒト急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんサンプル上で、HLA分子によって天然に提示されることが、MSによって示された。
【0155】
ペプチドがそれに由来する、起源遺伝子/タンパク質の多く(「完全長タンパク質」または「基本的タンパク質」とも称される)は、正常組織と比較して、がんにおいて非常に過剰発現されることが示され、本発明に関連する「正常組織」は、起源遺伝子の腫瘍との高い関連性を示す、血液、脳、心臓、肝臓、肺、脂肪組織、副腎、胆管、膀胱、骨、骨髄、食道、眼、胆嚢、頭頸部、大腸、小腸、腎臓、リンパ節、中枢神経、末梢神経、膵臓、副甲状腺、腹膜、下垂体、胸膜、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、甲状腺、気管、および尿管細胞、または乳房、卵巣、胎盤、前立腺、精巣、胸腺、および子宮などの他の正常な組織細胞のいずれかの健常組織を意味するものとする(実施例2を参照されたい)。さらに、ペプチドそれ自体は、腫瘍組織上で大きく過剰提示されるが正常組織上では過剰提示されず、本発明に関して「腫瘍組織」は、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんに罹患した患者からのサンプルを意味するものとする(実施例1を参照されたい)。
【0156】
HLA結合ペプチドは、免疫系、特にTリンパ球によって認識され得る。T細胞は、例えば、誘導されたペプチドを提示する、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん細胞などの認識されたHLA/ペプチド複合体を提示する細胞を破壊し得る。
【0157】
本発明のペプチドは、正常組織と比較してがん組織で過剰提示されるので、したがって本発明によれば、抗体および/または可溶性TCRなどのTCRの製造に使用され得る(表9を参照されたい)。さらに、ペプチドは、それぞれのMHCと複合体化した場合に、本発明による抗体および/またはTCR、特に可溶性TCR製造のためにも使用され得る。それぞれの方法は当業者に良く知られており、それぞれの参考文献にもまた見いだされ得る(下記もまた参照されたい)。したがって本発明のペプチドは、それによって腫瘍細胞が破壊され得る、患者における免疫応答を生じさせるのに有用である。患者における免疫応答は、理想的には免疫原性を増強する薬剤(すなわちアジュバント)との組み合わせで、記載されるペプチド、または適切な前駆体(例えば、伸長されたペプチド、タンパク質、またはこれらのペプチドをコードする核酸)を患者に直接投与することで、誘導され得る。本発明の標的ペプチドは、正常組織上では同等のコピー数で提示されないので、このような治療的ワクチン接種から生じる免疫応答は、腫瘍細胞に対して高度に特異的であることが予測され得て、患者の正常細胞に対する望まれない自己免疫反応のリスクを防止する。
【0158】
本明細書は、α鎖およびβ鎖を含んでなるTCR(「α/βTCRs」)にさらに関するに。また、MHC分子によって提示されるとTCRおよび抗体に結合できる、本発明によるペプチドもまた提供される。
【0159】
本明細書はまた、HLA分子によって提示されると、本発明に従ったペプチド抗原に結合できる、本発明に従ったTCRの断片に関する。本用語は、特に、例えば膜貫通部分および/または定常領域が欠損しているTCRなどの可溶性TCR断片、一本鎖TCR、および例えば免疫グロブリンへのそれらの融合物などに関する。
【0160】
本明細書はまた、本明細書のTCRおよびペプチドを発現する核酸、ベクター、および宿主細胞;そしてそれを使用する方法にも関する。
【0161】
「T細胞受容体」(TCRと略記される)という用語は、αポリペプチド鎖(α鎖)およびβポリペプチド鎖(β鎖)を含んでなるヘテロ二量体分子を指し、ヘテロ二量体受容体は、HLA分子によって提示されるペプチド抗原に結合できる。本用語は、いわゆるγ/δTCRもまた含む。
【0162】
一実施形態では、本明細書は、本明細書に記載されるようなTCRを製造する方法を提供し、方法は、TCRの発現を促進するのに適した条件下でTCRを発現できる、宿主細胞を培養するステップを含んでなる。
【0163】
別の態様における説明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷され、または抗原/クラスIまたはII MHC複合体モノマーを四量体化することで、クラスIまたはII MHC四量体上に抗原が負荷される、本明細書に記載の方法に関する。
【0164】
α/βTCRのαおよびβ鎖、そしてγ/δTCRのγおよびδ鎖は、一般にそれぞれ2つの「ドメイン」、すなわち可変および定常ドメインを有すると見なされる。可変ドメインは、可変領域(V)と接合領域(J)の連結からなる。可変ドメインはまた、リーダー領域(L)を含んでもよい。βおよびδ鎖はまた、多様性領域(D)を含んでもよい。αおよびβ定常ドメインはまた、αおよびβ鎖を細胞膜に固着させるC末端膜貫通(TM)ドメインを含んでもよい。
【0165】
γ/δTCRに関して、「TCRγ可変ドメイン」という用語は、本明細書の用法ではリーダー領域(L)のないTCRγV(TRGV)領域とTCRγJ(TRGJ)領域との連結を指し、TCRγ定常ドメインという用語は、細胞外TRGC領域を指し、またはC末端切断型TRGC配列を指す。同様に、「TCRδ可変ドメイン」という用語は、リーダー領域(L)のないTCRδV(TRDV)領域とTCRδD/J(TRDD/TRDJ)領域との連結を指し、「TCRδ定常ドメイン」という用語は、細胞外TRDC領域を指し、またはC末端切断型TRDC配列を指す。
【0166】
本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、それらの定常ドメインの間に導入された、ジスルフィド結合を有してもよい。このタイプの好ましいTCRとしては、TRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とを有するものが挙げられるが、ただし、TRACのThr48およびTRBC1またはTRBC2のSer57は、システイン残基によって置換されており、前記システインは、TCRのTRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列との間に、ジスルフィド結合を形成する。
【0167】
上述の導入された鎖間結合の存在下または不在下で、本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、TRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とを有してもよく、TCRのTRAC定常ドメイン配列と、TRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とが、TRACのエクソン2のCys4と、TRBC1またはTRBC2のエクソン2のCys2との間の天然ジスルフィド結合によって連結されてもよい。
【0168】
本明細書のTCRは、放射性核種、フルオロフォア、およびビオチンからなる群から選択される、検出可能な標識を含んでなってもよい。本明細書のTCRは、放射性核種、化学療法剤、または毒素などの治療的活性薬剤にコンジュゲートされてもよい。
【0169】
検出可能標識
検出可能標識は、例えば、蛍光色素、酵素、基質、生物発光物質、放射性物質、および化学発光標識であってもよい。例示的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、b-ガラクトシダーゼ、およびルシフェラーゼが挙げられるがこれらに限定されるものではない。例示的なフルオロフォア(蛍光物質)としては、ローダミン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ウンベリフェロン、ジクロロトリアジニルアミン、フィコエリトリンおよび塩化ダンシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な化学発光標識としては、ルミノールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な生物発光物質としては、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる、これらに限定されるものではない。例示的な放射性物質としては、ビスマス-213(213Bs)、炭素-14(14C)、炭素-11(11C)、塩素-18(18Cl)、クロム-51(51Cr)、コバルト-57(57Co)、コバルト-60(60Co)、銅-64(64Cu)、銅-67(67Cu)、ジスプロシウム-165(165Dy)、エルビウム-169(169Er)、フッ素-18(18F)、ガリウム-67(67Ga)、ガリウム-68(68Ga)、ゲルマニウム-68(68Ge)、ホルミウム-166(166Ho)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-124(124I)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-131(131I)、イリジウム-192(192Ir)、鉄-59(59Fe)、クリプトン-81(81Kr)、鉛-212(212Pb)、ルテチウム-177(177Lu)、モリブデン-99(99Mo)、窒素-13(13N)、酸素-15(15O)、パラジウム-103(103Pd)、リン-32(32P)、カリウム-42(42K)、レニウム-186(186Re)、レニウム-188(188Re)、ルビジウム-81(81Rb)、ルビジウム-82(82Rb)、サマリウム-153(153Sm)、セレン-75(75Se)、ナトリウム-24(24Na)、ストロンチウム-82(82Sr)、ストロンチウム-89(89Sr)、硫黄35(35S)、テクネチウム-99m(99Tc)、タリウム-201(201Tl)、トリチウム(3H)、キセノン-133(133Xe)、イッテルビウム-169(169Yb)、イッテルビウム-177(177Yb)、およびイットリウム-90(90Y)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
放射性核種
放射性核種は、αまたはβ粒子(例えば、放射性免疫複合体など)を放出する。このような放射性同位体としては、リン-32(32P)、スカンジウム-47(47Sc)、銅-67(67Cu)、ガリウム-67(67Ga)、イットリウム-88(88Y)、イットリウム-90(90Y)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-131(131I)、サマリウム-153(153Sm)、ルテチウム-177(177Lu)、レニウム-186(186Re)、レニウム-188(188Re)などのβ放出体、およびアスタチン-211(211At)、鉛-212(212Pb)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)またはアクチニウム-225(225Ac)などのα放出体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
毒素
毒素としては、メトトレキサート、アミノプテリン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン;メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、マイトマイシンC、ロムスチン(CCNU)、1-メチルニトロソウレア、シクロホスファミド、メクロレタミン、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、シス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、およびカルボプラチン(パラプラチン)などのアルキル化剤;ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、デトルビシン、カミノマイシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、およびビサントレンをはじめとするアントラサイクリン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、カリケアマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC)をはじめとする抗生物質;およびビンカアルカロイド、ビンクリスチンおよびビンブラスチンなどの有糸分裂阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他の細胞障害剤としては、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、リシン,シュードモナス属(Pseudomonas)菌体外毒素、ゲムシタビン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、エトポシド、テニポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’-(DDD))、インターフェロン、およびこれらの細胞障害剤の混合物が挙げられる。
【0172】
治療薬としては、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、カリケアマイシン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ブレオマイシン、VEGF拮抗薬、EGFR拮抗薬、プラチン、タキソール、イリノテカン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ロイコボリン、ステロイド、シクロホスファミド、メルファラン、ビンカアルカロイド、ムスチン、チロシンキナーゼ阻害剤、放射線治療、性ホルモン拮抗薬、選択的アンドロゲン受容体調節因子、選択的エストロゲン受容体調節因子、PDGF拮抗薬、TNF拮抗薬、IL-1拮抗薬、インターロイキン(例えば、IL-12またはIL-2)、IL-12R拮抗薬、毒素共役モノクローナル抗体、腫瘍抗原特異的モノクローナル抗体、エルビタックス(登録商標)、アバスチン(登録商標)、ペルツズマブ、抗CD20抗体、リツキサン.RTM、オクレリズマブ、オファツムマブ、DXL625、ハーセプチン(登録商標)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。リシン、ジフテリア毒素、およびシュードモナス属(Pseudomonas)毒素などの植物および細菌由来の毒性酵素を使用して、細胞型特異的な滅殺試薬が製造されてもよい(Youle et al.,1980;Gilliland et al.,1980;Krolick et al.,1980)。その他の細胞障害剤としては、細胞傷害性リボヌクレアーゼが挙げられる(それらの全体が参照により援用される、米国特許第6,653,104号明細書を参照されたい)。
【0173】
一実施形態では、α鎖に少なくとも1つの変異を有し、および/またはβ鎖に少なくとも1つの変異を有する本明細書のTCRは、非変異TCRと比較して修飾されたグリコシル化を有する。
【0174】
一実施形態では、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖に少なくとも1つの変異を含んでなるTCRは、ペプチドHLA分子複合体に対して、非変異TCRα鎖および/または非変異TCRβ鎖を含んでなるTCRの少なくとも2倍の結合親和性および/または結合半減期を有する。腫瘍特異的TCRの親和性増強とその利用は、最適TCR親和性のウィンドウの存在に依存する。このようなウィンドウの存在は、例えば、HLA-A*02-拘束性病原体に特異的なTCRは、例えば、HLA-A*02-拘束性腫瘍関連自己抗原に特異的なTCRと比較して、一般に約10倍低いKd値を有するという観察に基づいている。腫瘍抗原は免疫原性である可能性を有するが、腫瘍は個人自身の細胞から生じるので、改変された翻訳プロセッシングのある変異タンパク質またはタンパク質のみが、免疫系によって異質と見なされることが今や知られている。上方制御されまたは過剰発現される抗原(いわゆる自己抗原)は、腫瘍に対する機能的免疫応答を必ずしも誘導せず;これらの抗原に対して高度に反応性のTCRを発現するT細胞は、中枢性免疫寛容として知られている過程、すなわち自己抗原に対する低親和性TCRを有するT細胞のみが残留する過程によって、胸腺において負選択される。したがって、ペプチドに対する本明細書のTCRまたは変異型の親和性は、当該技術分野で周知の方法によって高め得る。
【0175】
本明細書は、本明細書に従ってTCRを同定し単離する方法にさらに関し、前記方法は、陰性の健常ドナーからのPBMCをHLA-A*02-ペプチドモノマーと共にインキュベートするステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共にインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0176】
本明細書は、本明細書に従ってTCRを同定し単離する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補う多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)を有する、遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスをペプチドで免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)を有する遺伝子組換えマウスから得られたPBMCを培養するステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0177】
一態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、本明細書のTCR-αおよび/またはTCR-β鎖をコードする核酸が、γレトロウイルスまたはレンチウイルスなどの発現ベクターにクローン化される。組換えウイルスが生成され、次に、抗原特異性および機能的結合活性などの機能について試験される。次に、最終生成物のアリコートを使用して、標的T細胞集団(一般に患者のPBMCから精製される)が形質導入され、患者への輸液前に増殖される。
【0178】
別の態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、例えば、生体外転写システムなどの当該技術分野で既知の技術によって、TCR RNAが合成される。次に生体外で合成されたTCR RNAは、健常ドナーから得られた原発性CD8陽性T細胞内に電気穿孔によって導入され、腫瘍特異的TCR-αおよび/またはTCR-β鎖が再発現される。
【0179】
発現を増加させるために、本明細書のTCRをコードする核酸は、レトロウイルス長末端反復(LTR)、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)U3、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、β-アクチン、ユビキチン、およびシミアンウイルス40(SV40)/CD43複合プロモーター、伸長因子(EF)-1a、および脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターなどの強力なプロモーターと作動可能に連結されてもよい。好ましい実施形態では、プロモーターは、発現される核酸に対して異種である。
【0180】
強力なプロモーターに加えて、本明細書のTCR発現カセットは、レンチウイルスコンストラクトの核移行を促進する中央ポリプリントラクト(cPPT)をはじめとする、導入遺伝子発現を強化し得る追加の要素(Follenzi et al.,2000)、およびRNA安定性を増加させることで導入遺伝子発現のレベルを増加させる、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(wPRE)(その内容全体が参照により援用される、Zufferey et al.,1999)を含んでもよい。
【0181】
本発明のTCRのαおよびβ鎖は、別々のベクターにある核酸によってコードされてもよく、または同一ベクターにあるポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0182】
高レベルのTCR表面発現の達成には、導入されたTCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方が高レベルで転写される必要がある。これを行うために、本明細書のTCR-αおよびTCR-β鎖は、この障害を克服できることが示されている、単一ベクター内のバイシストロニックコンストラクトにクローン化されてもよい。TCR-αおよびTCR-β鎖は、翻訳中に2つのタンパク質に分かれて等モル比のTCR-αおよびTCR-β鎖の生成を確実にする単一転写物から生成されるので、TCR-α鎖とTCR-β鎖との間のウイルス配列内リボソーム進入部位の使用は、双方の鎖の協調発現をもたらす(その内容全体が参照により援用される、Schmitt et al.,2009)。
【0183】
本明細書のTCRをコードする核酸はコドン最適化されて、宿主細胞からの発現が増加されてもよい。遺伝コードの冗長性により、いくつかのアミノ酸は2つ以上のコドンによってコード化されるが、マッチするtRNAの相対可用性可能性およびその他の要因のために、その他のものよりも「最適」ではない(Gustafsson et al.,2004)。各アミノ酸が、哺乳類遺伝子発現のための最適コドンによってコードされるように、TCR-αおよびTCR-β遺伝子配列を修飾すること、ならびにmRNA不安定モチーフまたは潜在的なスプライス部位を除去することは、TCR-αおよびTCR-β遺伝子発現を有意に高めることが示されている(参考文献の内容全体が参照により本明細書に援用される、Scholten et al.,2006)。
【0184】
さらに、導入TCR鎖と内因性TCR鎖との間の誤対合は、重大な自己免疫リスクをもたらす特異性の獲得を引き起こすこともある。例えば、混合TCR二量体の形成は、適切に対合するTCR複合体を形成するために利用できるCD3分子の数を減少させてもよく、ひいては導入TCRを発現する細胞の機能的結合活性を有意に低下させ得る(その内容全体が参照により援用される、Kuball et al.,2007)。
【0185】
誤対合を減少させるために、鎖間親和性を高める一方で、導入鎖が内因性TCRと対形成する能力が低下するように、本明細書の導入TCR鎖のC末端領域を修飾してもよい。これらのストラテジーは、ヒトTCR-αおよびTCR-βのC末端領域をそれらのマウス対応物(マウス化C末端領域)で置換すること;導入TCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方に第2のシステイン残基を導入することによって、C末端領域に第2の鎖間ジスルフィド結合を生成すること(システイン修飾);TCR-αおよびTCR-β鎖のC末端ドメインにおける相互作用残基をスワップすること(「ノブ・イン・ホール」);そしてTCR-αおよびTCR-β鎖の可変領域をCD3ζに直接融合させる(CD3ζ融合)ことを含んでもよい(Schmitt et al.,2009)。
【0186】
一実施形態では、宿主細胞は、本細書のTCRを発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、宿主細胞は、ヒトT細胞またはT細胞前駆体である。いくつかの実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、がん患者から得られる。その他の実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、健常ドナーから得られる。本明細書の宿主細胞は、治療される患者に関して、同種異系または自己由来であり得る。一実施形態では、宿主は、α/βTCRを発現するように形質転換されたγ/δT細胞である。
【0187】
「医薬組成物」は、医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0188】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドを含んでなる(上記もまた参照されたい)。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基(典型的にその中で中性形態の薬剤が中性-NH2基を有する)から調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を使用して調製される。
【0189】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドを含んでなる。
【0190】
好ましくは、本発明の薬剤はワクチンなどの免疫療法である。それは、患者に直接、罹患臓器に、または全身的に静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)投与され、または生体外で患者またはヒト細胞株に由来する細胞に適用されて、それが引き続いて患者に投与され、または生体外で使用されて患者に由来する免疫細胞の亜集団が選択され、次にそれが患者に再投与されてもよい。核酸が、生体外で細胞に投与される場合、インターロイキン2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるように、細胞を形質転換することが有用であり得る。ペプチドは、実質的に純粋であり、または免疫刺激アジュバント(下記参照)と組み合わされ、または免疫賦活性サイトカインと組み合わせて使用され、または例えば、リポソームなどの適切な送達系によって投与されてもよい。ペプチドはまた、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはマンナンなどの適切な担体に共役されてもよい(どちらもその内容全体が参照により援用される、国際公開第95/18145号パンフレット、およびLongenecker et al.,1993を参照されたい)。ペプチドはまた、標識されてもよく、融合タンパク質であってもよく、またはハイブリッド分子であってもよい。その配列が本発明に記載されるペプチドは、CD4またはCD8 T細胞を刺激することが予測される。しかし、CD8 T細胞の刺激は、CD4 Tヘルパー細胞によって提供される援助の存在下で、より効率的である。したがって、CD8 T細胞を刺激するMHCクラスIエピトープでは、ハイブリッド分子の融合パートナーまたはセクションは、適切にはCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供する。CD4およびCD8刺激エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で同定されたものが含まれる。
【0191】
一態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチド、および少なくとも1つの追加のペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18のペプチドを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特定のTAAに由来してもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0192】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはペプチド変異型をエンコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、一本鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖を有するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本発明のなおもさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0193】
例えば、相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターとDNAセグメントが連結されて、組換えDNA分子が形成する。
【0194】
1つまたは複数の制限部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、米国コネチカット州ニューヘイブンのInternational Biotechnologies Inc.をはじめとするいくつかの供給元から商業的に入手できる。
【0195】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki et al.(その内容全体が参照により援用される、Saiki et al.,1988)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば、適切な制限部位を遺伝子操作することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0196】
次にDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を適切な宿主において発現させ、本発明のペプチドまたは変異型を含んでなるポリペプチドが製造されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本発明のペプチドまたは変異型をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および製造のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0197】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0198】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。1つの選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞における選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御要素と共に、DNA配列を発現ベクターに組み込むことを伴う。
【0199】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するために使用される、別のベクター上にあり得る。
【0200】
次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収され得る。
【0201】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、発現系は、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0202】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部を有するCMVまたはSV40プロモーター、およびネオマイシンなどの耐性マーカーを含んでなる。一例は、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmaciaから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0203】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞において構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに上昇させる。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは、典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞内で高レベルのDNA複製をもたらす。CMVベクターは、例えば、細菌細胞内のpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌におけるアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝子、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用した精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞と共に使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0204】
別の実施形態では、本発明の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトに類似する)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって共に連結または融合してもよく、またはそれらの間の任意の追加的なペプチドなしに連結してもよい。これらのコンストラクトはまた、がん療法のために使用され得て、MHC IとMHC IIの双方が関与する免疫応答を誘導してもよい。
【0205】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、米国メリーランド州ベセスダのBethesda Research Laboratories Inc.,から入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、および米国メリーランド州ロックビルの米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒトの線維芽細胞株および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、文献に見いだされ得る(Balbas and Lorence,2004)。
【0206】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに左右される周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al.またはGreen and Sambrook(Cohen et al.,1972;Green and Sambrook,2012).)を参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al.(Sherman et al.,1986)に記載されている。Beggs(Beggs,1978)の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関して、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤など、このような細胞を形質移入するのに有用な試薬は、米国郵便番号20877メリーランド州ゲイザースバーグのLife Technologies Inc.から入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するために有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。これらの各参考文献の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0207】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、抗体を使用して、上清中のタンパク質の存在が検出され得る。
【0208】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞は、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子中に負荷されてもよいように、本発明のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0209】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質が負荷されたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、米国食品医薬品局(FDA)によって2010年4月20日に認可された(シプロイセルT)(その内容全体が参照により援用される、Rini et al.,2006;Small et al.,2006)。
【0210】
本発明のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、ペプチドまたはその変異型を製造する方法を提供する。
【0211】
別の実施形態では、本発明のペプチド、核酸または発現ベクターは、医療で使用される。例えば、ペプチドまたはその変異型は、iv、sc、id、ip、im注射用に調製されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c.、i.d.、i.p.、i.m.、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに依存するであろう。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al.,2012)。
【0212】
活性ワクチン接種のために使用されるポリヌクレオチドは、実質的に純粋であってもよく、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概要は、Teufel et al.(その内容全体が参照により援用される、Teufel et al.,2005)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルスまたは2つ以上のウイルスの構成要素を含有するハイブリッドベースのシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野において周知である。「遺伝子銃」などを介した、物理的送達もまた使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチド(単数)またはペプチド(複数)は、例えば上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0213】
本発明の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答などの免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって、本発明の薬剤中で有用であると見なされる。
【0214】
適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンまたはフラジェリン由来のTLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321;IL-2、IL-13、IL-21、インターフェロン-αまたは-βなどのインターロイキン、またはそれらのPEG化誘導体;ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOMs、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS 1312、モンタニドISA 206、モンタニドISA 50V、モンタニドISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコグリコリド)[PLG]-ベースおよびデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソームおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニン由来のAquila’s QS21スティミュロン、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体;およびRibi’s Detox、Quil、またはSuperfosなどのその他の独自仕様のアジュバントが挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的な、いくつかの免疫学的アジュバント(例えばMF59)が、以前記載されている(その内容全体が参照により援用される、Allison and Krummel,1995)。
【0215】
サイトカインもまた使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への遊走に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、IL-23、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連付けられている(その内容全体が参照により援用される、Gabrilovich et al.,1996)。一態様では、サイトカインおよび免疫学的アジュバントは、T細胞の増殖または活性化のため、または生体外使用のためなどに、試験管内で使用されてもよい。
【0216】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を増強することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘導性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生きたまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防および治療ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を増強し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化の促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されるかまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの調合物または類似調合物中で、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg、2006)。その内容全体が参照により援用される、米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である、Mologen(独国ベルリン)製のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0217】
有用なアジュバントのその他の例としては、化学修飾されたCpGs(例えば、CpR、Idera)、ポリ(I:C)などのdsRNA類似体およびそれらの誘導体(例えば、AmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ-(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌性DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブなどの免疫活性小分子および抗体;イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびセミプリマブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGFトラップ、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4をはじめとする免疫チェックポイント阻害剤;治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい、免疫系の重要な構造を標的化するその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGF-β、抗TNF-α受容体)、およびSC58175が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0218】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0219】
本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、GM-CSF、サルグラモスチム、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、インターフェロンαなどのコロニー刺激因子、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0220】
本発明による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 20、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、poly-ICLC(Hiltonol(登録商標))、および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0221】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。組成物は、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、胸腔内、膀胱内、くも膜下、局所、経口投与、または経路の組み合わせを介して投与されてもよい。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、風味、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。薬学的に許容可能な担体としては、賦形剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、溶媒、希釈剤、緩衝液、ビヒクル、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。MHC分子との複合体形成した本開示のペプチドを認識するペプチドまたはT細胞は、表6に示されるサイトカインなどの免疫刺激物質と一緒に投与されてもよい。
【0222】
【0223】
例えば.、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-α、およびIFN-βなどのサイトカインは、MHC分子と複合体形成した本開示のペプチドを認識するT細胞などのT細胞の活性化および/または増殖において使用されてもよい。
【0224】
このような組成物中で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe,2000)から採用され得る。その他の適切な薬学的担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Gennaro,1997;Banker and Rhodes,2002)に記載されている。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。例示的な製剤は、例えば欧州特許第2112253号明細書にある。
【0225】
本発明によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、それぞれの腫瘍が抗原のいくつかを発現することを予期して設計され、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーする。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「出来合」で使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的なバイオマーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である(その内容全体が参照により援用される、Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0226】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチドとMHCの複合体)を有する特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導できる。別の実施形態では、スキャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を通じて、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらの断片、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。分子が標的に結合するスキャフォールドであるかどうかを評価するために、結合アッセイが実施され得る。
【0227】
「特異的」結合は、特異的標的を保有する細胞を殺滅できる活性分子を装備したスキャフォールドが、特異的標的は有しないがその他のペプチド-MHC複合体を提示する別の細胞を殺滅できない程度に、 その他の天然ペプチド-MHC-複合体よりもさらに良好に、目的ペプチド-MHC-複合体に結合することを意味する。交差反応性ペプチドMHCのペプチドが天然に存在せず、すなわち、ヒトHLAペプチドームに由来しない場合、その他のペプチドMHC複合体への結合は無関係である。標的細胞死滅を評価する試験は、当該技術分野で周知である。それらは、非改変ペプチドMHC提示を有する標的細胞(初代細胞または細胞株)、または天然に存在するペプチド-MHCレベルに達するようにペプチドを負荷された細胞を使用して、実施されるべきである。
【0228】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0229】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、および抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。
【0230】
ポリペプチドスキャフォールドに関するさらなる情報については、例えば、その内容全体が参照により援用される、国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景セクション、およびその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0231】
本発明のペプチドを使用して、MHC-ペプチド複合体に対する特異的抗体が製造され開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織の大きさと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0232】
したがって前記MHCクラスIまたはII分子を発現する細胞を含んでなる遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリから単離するステップとを含んでなる、HLA拘束性抗原(好ましくは本発明によるペプチド)と複合体化したMHCクラスIまたはII分子と特異的に結合する、組換え抗体を製造するための方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体形成した前記MHCクラスIまたはII分子に特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0233】
したがって、HLA制限抗原と複合体形成したMHCクラスIまたはII分子に特異的に結合する抗体を提供することは、本発明のさらなる態様であり、その中では、抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、それらの抗体断片、またはそれらの組み合わせである。
【0234】
二重特異性抗体
一態様では、二重特異性抗体には、2つ以上のエピトープに選択的に結合できる抗体が含まれる。二重特異性抗体は、様々な方法で製造されてもよく(その内容全体が参照により援用される、Holliger & Winter,1993)、例えば、化学的に調製され、または雑種ハイブリドーマに由来し、または上述の二重特異性抗体断片のいずれかであってもよい。全抗体ではなく、scFv二量体またはダイアボディが使用されてもよい。可変ドメインのみ(通常、起源抗体の軽鎖と重鎖の双方からの可変ドメイン構成要素を含む)を使用して、Fc領域なしでダイアボディおよびscFvが構築され得て、抗イディオタイプ反応の効果が潜在的に低下される。二重特異性抗体のその他の形態としては、Trauneckerと同僚によって記載された一本鎖「Janusins」が挙げられる(その内容全体が参照により援用される、Traunecker et al.,1991)。
【0235】
二重特異性抗体は一般に、2つの異なる結合ドメインを含み、各結合ドメインは、2つの異なる抗原上のまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープと第2のエピトープ)と選択的に結合できる場合、第1のエピトープに対する第1の結合の親和性は、一般に第2のエピトープに対する第1の結合ドメインの親和性よりも少なくとも1~2または3~4桁低く、その逆も同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じまたは異なる標的上(例えば、同じまたは異なるタンパク質上)にあリ得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する結合ドメインを組み合わせることによって生成され得る。
【0236】
いくつかの例示的な二重特異性抗体は、2本の重鎖(それぞれが3本の重鎖CDRを有し、(N末端からC末端方向に)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインがそれに続く)と、各重鎖との結合を通じて抗原結合特異性を付与する、2本の免疫グロブリン軽鎖を有する。しかしながら、軽鎖が各重鎖と結合するが抗原結合特異性には寄与しない(または最小限しか寄与しない)か、または重鎖抗原結合領域によって結合されたエピトープの1つまたは複数に結合させ得るか、または各重鎖と結合して重鎖の片方または双方を片方または双方のエピトープに結合させ得る、二重特異性抗体を含む、追加の構造が想定される。
【0237】
特定の実施形態では、二重特異性抗体は、細胞防御機序を標的疾患細胞に集中させ局在化させるように、T細胞受容体分子(例えば、CD3)などの白血球上のトリガー分子に、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)などのIgG(FcγR)Fc受容体に、結合するアームと組み合わされた抗体アームを含み得る。二重特異性抗体はまた、標的疾患細胞への細胞傷害剤の局在化のためにも使用され得る。
【0238】
二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。例えば、その内容全体が参照により援用される、国際公開第1996/016673号パンフレット;米国特許第5,837,234号明細書;国際公開第1998/002463号パンフレット;米国特許第5,821,337号明細書を参照されたい。
【0239】
二重特異性抗体は、延長された半減期を有し得る。特定の実施形態では、二重特異性抗体の半減期延長は、以下によって達成され得る:ポリエチレングリコールまたはその他の模倣親水性ポリマーなどの不活性ポリマーとカップリングさせることによって、抗体の水力学的な容量を増加させる;大きな無秩序なペプチドへの融合またはコンジュゲーション;または、抗体をリガンドに融合またはカップリングさせる。これらの改変と他の多くの改変については、他の箇所に記載される(その内容全体が参照により援用される、米国特許第7,083,784号明細書、米国特許第7,670,600号明細書、米国特許出願公開番号2010/0234575号明細書、Zwolak et al.,2017)。半減期が延長された二重特異性抗体は、例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許第8,921,528号明細書および米国特許出願公開第2014/0308285号明細書に記載されている。
【0240】
二重特異性抗体を生成するための方法は、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の製造は、2つの免疫グロブリン重鎖と軽鎖のペアの共発現に基づいており、2つの鎖は異なる特異性を有する例えば、その内容全体が参照により援用される.国際公開第1993/008829号パンフレットおよびTraunecker et al.,1991を参照されたい。
【0241】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体を生成するための方法は、当該技術分野で既知である。ポリクローナル抗体は、抗原で免疫化された動物の血清に由来する抗体分子の不均一集団である。配列番号1~配列番号102に記載のペプチド、またはその変異型もしくは断片に選択的に結合するポリクローナル抗体は、当該技術分野で周知の方法によって生成されてもよい(例えば、その内容全体が参照により援用される、Howard & Kaser(2007)を参照されたい)。
【0242】
キメラ抗体
キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するものなどその異なる部分が、異なる動物種に由来する分子であり、それは、適用時の免疫原性の低減、および生産における収量増加のために主に使用され、例えば、マウスモノクローナル抗体はハイブリドーマからのより高い収率を有するが、ヒトにおいてより高い免疫原性を有するので、ヒトマウスキメラモノクローナル抗体が使用される。キメラ抗体およびそれらの製造方法は当該技術分野で既知である(その内容全体が参照により援用される、Cabilly et al.,1984;Morrison et al.,1984; Boulianne et al.,1984;欧州特許出願第173494号明細書(1986);国際公開第86/01533(1986)号パンフレット;欧州特許出願184187(1986)号明細書;Sahagan et al.,1986;Liu et al.,1987;Sun et al.,1987;Better et al.,1988;Harlow & Lane,1998;米国特許第5,624,659号明細書)。
【0243】
抗体断片
完全な免疫グロブリン(またはそれらの組換え対応物)に加えて、エピトープ結合部位を含んでなる免疫グロブリン断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、またはその他の断片)もまたを合成され得る。「断片」または最小限の免疫グロブリンは、組換え免疫グロブリン技術を利用して設計されてもよい。例えば、本発明で使用するための「Fv」免疫グロブリンは、融合した可変軽鎖領域および可変重鎖領域を合成することによって製造されてもよい。例えば、2つの異なるFv特異性を含んでなるダイアボディなどの抗体の組み合わせもまた興味深い。免疫グロブリンの抗原結合断片としては、SMIP(小分子免疫医薬品)、キャメルボディ、ナノボディ、およびIgNARが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0244】
このような抗体および一本鎖MHCクラスI複合体を生成するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を生成するためのその他のツールは、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、および出版物(本発明の目的で、その内容全体が参照により援用される、Cohen et al.,2003a;Cohen et al.,2003b;Denkberg et al.,2003)で開示される。
【0245】
好ましくは、抗体は、100nM未満、より好ましくは50nM未満、より好ましくは10nM未満、より好ましくは1nM未満、より好ましくは0.1nM未満、より好ましくは0.01nM未満の結合親和性で複合化に結合し、これはまた、本発明の文脈において「特異的」と見なされる。
【0246】
本発明は、
●配列番号1~配列番号102、
●およびMHC分子に結合する、および/または当該変異ペプチドと交差反応するT細胞を誘導する能力を維持するその変異配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその薬学的に許容可能な塩を含んでなるペプチドに関する。
【0247】
開示されたペプチドは、HLA-A*02アロタイプMHC分子に結合する。同様に、MHC分子に結合するペプチド変異型の能力は、HLA-A*02アロタイプMHC分子に関連する。
【0248】
一実施形態では、上記の意味で請求項記載されるペプチドの変異配列は、それらのいわゆる「固定位置」に置換を有する配列である。
【0249】
MHC拘束性ペプチド中のこれらの固着位置は、MHC中のペプチド結合溝へのペプチドの結合を媒介するアミノ酸残基を含んでなることに留意されたい。
【0250】
それらは、結合ポリペプチドとペプチド-MHC複合体との間の結合反応において軽微な役割しか果たさず、これらの位置での置換は、そのように修飾されたペプチドの免疫原性またはTCR/抗体結合に有意な影響を及ぼさないことを意味する。
それぞれのHLA-A*02では、固着位置はそれぞれのMHC拘束性ペプチドの2位(P2)および9位(P9)である(表7を参照されたい)。P2では、好ましいアミノ酸残基はロイシン(L)またはメチオニン(M)であることが最も多いが、P9では好ましいアミノ酸残基はロイシン(L)またはバリン(V)である。
【0251】
【0252】
さらに、本発明は、それらがMHC分子に結合し、および/または前記変異型ペプチドとのT細胞交差反応を誘導するという条件で、配列番号1~配列番号102と少なくとも88%相同であるその変異型に関する。
【0253】
一実施形態では、上記の意味で特許請求されるペプチドの変異配列は、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換によって改変された配列である。「保存的アミノ酸置換」という用語の定義および範囲は、表3および4、ならびにそれに関連する説明で開示されている。
【0254】
一実施形態では、前記ペプチドは、MHCクラスI分子に結合する能力を有し、前記MHCに結合すると、CD4および/またはCD8T細胞によって認識されることができる。
【0255】
一実施形態では、HLA-A*02アロタイプMHC分子である。
【0256】
本発明は、配列番号1~配列番号102、または配列番号1~配列番号102と少なくとも88%相同(好ましくは同一)であるその変異型からなる群から選択される配列を含んでなるペプチドにさらに関し、その中では前記ペプチドまたは変異型は、選択されたペプチドが9アミノ酸長を有する場合は、8~30、および好ましくは8~12アミノ酸、または9~30、好ましくは9~12アミノ酸、または選択されたペプチドが10アミノ酸長を有する場合は、10~30、好ましくは10~12アミノ酸の全長を有する。
【0257】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、それぞれの配列のC末端および/またはN末端に、1~4個の追加のアミノ酸を含んでなる。より詳しくは、表5を参照されたい。
【0258】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長30アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長16アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長12アミノ酸の長さを有する。
【0259】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長8~30アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長8~16アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長8~12アミノ酸の長さを有する。
【0260】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長9~30アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長9~16アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長9~12アミノ酸の長さを有する。
【0261】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長10~30アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長10~16アミノ酸の長さを有する。一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、最長10~12アミノ酸の長さを有する。
【0262】
一実施形態では、前記ペプチドまたはその変異型は、それぞれの配列番号1~配列番号102による長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になる。
【0263】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは非ペプチド結合を含む。
【0264】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなり、またはペプチドは、例えば樹状細胞特異的抗体などの抗体に(またその中に)融合する。
【0265】
本発明は、本発明によるペプチドまたはその変異型、またはMHC分子に結合したときの本発明によるペプチドまたはその変異型を特異的に認識するか、またはそれに結合する、抗体またはその機能的断片にさらに関する。
【0266】
一実施形態では、MHC分子は、HLA-A*02アロタイプMHC分子である。
【0267】
さらなる実施形態では、このような抗体は、可溶性または膜結合型である。さらなる実施形態では、このような抗体は、モノクローナル抗体またはその断片である。さらなる実施形態では、このような抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0268】
本発明は、MHCリガンドと反応性であるか、またはそれに結合する、T細胞受容体またはその機能的断片にさらに関し、前記リガンドは、本発明によるペプチドまたはその変異型、またはMHC分子に結合したときの本発明によるペプチドまたはその変異型である。
【0269】
一実施形態では、MHC分子は、HLA-A*02アロタイプMHC分子である。
【0270】
さらなる実施形態では、前記T細胞受容体は、可溶性分子として提供される。さらなる実施形態では、前記T細胞受容体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0271】
本発明は、本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、または本発明によるT細胞受容体またはその断片、をコードする核酸にさらに関する。
【0272】
本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0273】
一実施形態では、前記核酸は、異種プロモーター配列に連結される。一実施形態では、前記核酸は、前記核酸を発現する、および/またはそれを含んでなる、発現ベクターとして提供される。
【0274】
本発明は、本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、本発明によるT細胞受容体またはその断片、または本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、組換え宿主細胞にさらに関する。
【0275】
本発明は、T細胞を、抗原特異的様式で前記T細胞を活性化するのに十分な時間にわたり、適切な抗原提示細胞または抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面上で発現される、抗原負荷ヒトクラスIまたはIIMHC分子と、生体外で接触させるステップを含んでなる、活性化Tリンパ球を製造するためのインビトロ法にさらに関し、その中では、前記抗原は、それぞれの説明によるペプチドまたはその変異型である。
【0276】
一実施形態では、抗原提示細胞は、配列番号1~配列番号102または前記変異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現できる発現ベクターを含んでなる。
【0277】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造するインビトロ法にさらに関する。
【0278】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化Tリンパ球にさらに関し、その中では前記Tリンパ球は、本発明によるペプチドまたはその変異型提示する細胞を選択的に認識する。前記提示は、異常な提示または異常な発現であり得る。
【0279】
本発明は、
●本発明によるペプチドまたはその変異型、
●本発明による抗体またはその断片、
●本発明によるT細胞受容体またはその断片、
●本発明による核酸または発現ベクター、
●本発明による宿主細胞,
●または本発明による活性化Tリンパ球
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる医薬組成物にさらに関する。
【0280】
一実施形態では、このような医薬組成物は、個々の患者のための個別化医薬品組成物である。一実施形態では、医薬組成物はワクチンである。方法はまた、TCR単離などの下流用途、または可溶性抗体、およびその他の治療選択肢のためのT細胞クローンを製造するためにも適応され得る。
【0281】
「個別化医薬品」は、積極的個別化がんワクチンおよび自己由来患者組織を使用した養子細胞療法をはじめとするこのような個々の患者の治療のためにのみ使用される、一個人の患者のために特に調整された治療法を意味するものとする。
【0282】
本発明は、本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、または本発明によるT細胞受容体またはその断片を製造し、前記宿主細胞および/またはその培養培地から、ペプチドまたはその変異型、抗体またはその断片、またはT細胞受容体またはその断片を単離するための方法にさらに関する。
【0283】
本発明は、薬剤に使用するため、または薬剤の製造に使用するための、本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、本発明によるT細胞受容体またはその断片、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による活性化Tリンパ球にさらに関する。
【0284】
本発明は、患者における標的細胞死滅させる方法にさらに関し、その標的細胞は、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する。前記方法は、本発明による有効数の活性化Tリンパ球を患者に投与することを含んでなる。
【0285】
同様に、本発明は、その標的細胞が本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する患者における、標的細胞の殺滅に使用するための本発明による活性化Tリンパ球、またはそのような標的細胞の殺滅に使用するための薬剤の製造に使用するための本発明による活性化Tリンパ球に関する。
【0286】
本発明は、
●がんであると診断された、
●がんに罹患している、または
●がんを発症するリスクがある
患者を治療する方法にさらに関し、
方法は、患者に本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、本発明によるT細胞受容体またはその断片、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による活性化Tリンパ球の有効量を投与するステップを含んでなる。
【0287】
同様に本発明は、
●がんであると診断された、
●がんに罹患している、または
●がんを発症するリスクがある
患者の治療に使用するための、またはこのような患者の治療のための薬剤の製造に使用するための、本発明によるペプチドまたはその変異型、本発明による抗体またはその断片、本発明によるT細胞受容体またはその断片、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による活性化Tリンパ球、にさらに関する。
【0288】
本発明は、薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。
【0289】
本発明は、方法、または本発明に従って使用するための、ペプチド、抗体、T細胞受容体、核酸、宿主細胞または活性化Tリンパ球にさらに関し、その中では、前記がんは、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんからなる群から選択される。
【0290】
本発明は、
(a)溶液中または凍結乾燥形態の本発明による医薬組成物を含有する医薬組成物を含んでなる容器;
(b)任意選択的に、前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)任意選択的に、配列番号1~配列番号102からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド
を含んでなるキットにさらに関する。
【0291】
さらなる実施形態では、キットは、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、または注射器の1つまたは複数を含んでなる。
【0292】
本発明は、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんの少なくとも1つの診断および/または予後診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質およびバイオマーカーにさらに関する。
【0293】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。そのままのまたは「完全な」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、本発明に従って所望の特性(例えば、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんマーカーポリペプチドへの特異的結合)のいずれかを示す限り、それらの免疫グロブリン分子の断片(例えば、CDR、Fv、Fab、およびFc断片)またはポリマー、および免疫グロブリン分子のヒト化バージョンも含まれる。
【0294】
可能ならばいつでも、本発明の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本発明の抗体は、周知の方法を使用して製造されてもよい。当業者は、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんマーカーポリペプチドの全長またはそれらの断片のどちらかが使用されて、本発明の抗体が生成されてもよいことを理解するであろう。本発明の抗体を製造するために使用されるポリペプチドは、天然原料から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して製造されてもよい。
【0295】
例えば、配列番号1~配列番号102ポリペプチドに記載のペプチドなどの本発明によるペプチドをコードするcDNA、またはその変異型もしくは断片が、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞)で発現され得て、その後、組換えタンパク質が精製されて、本発明による抗体を生成するために使用される、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんマーカーポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体製剤を生成するために使用され得る。
【0296】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの作成が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性がある抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、抗体が使用される目的に応じて、既知の方法(例えば、ELISA、免疫組織化学、免疫療法など)により、所望の活性について試験される(その内容全体が参照により援用される、Greenfield、2014)。例えば、抗体は、ELISAアッセイ、またはウエスタンブロット、ホルマリン固定がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色で試験されてもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0297】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体集団から入手される抗体を指し、すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、微量で存在してもよい可能な自然発生的変異を除き同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を特に含む(その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0298】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法においては、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫剤によって典型的に免疫化されて、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0299】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されているものなどの組換えDNA法によって生産されるものであってもよい。本明細書のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。
【0300】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。それらの抗体断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、その内容全体が参照により援用される、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載されている。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位を有するFab断片と称される2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片とを典型的に生じる。ペプシン処理は、F(ab’)2断片およびpFc’断片をもたらす。
【0301】
抗体断片は、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、断片の活性が非修飾抗体または抗体断片と比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合できるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれの場合も、抗体断片は、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現および発現ポリペプチドの試験によって、同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体断片をエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0302】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見られない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中ではCDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域である、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0303】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、それは典型的に「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯類CDR(複数)またはCDR(単数)配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(その内容全体が参照により援用される、米国特許第4,816,567号明細書)、その中では、実質的に無傷でないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中では、いくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換されている。
【0304】
免疫化に際して、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を用い得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内在性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリ中でも生成され得る。
【0305】
一態様では、本開示の抗体はまた、ファージディスプレイ、またはリボソームディスプレイ、または酵母ディスプレイ、または細菌ディスプレイ、またはバキュロウイルスディスプレイ、または哺乳類細胞ディスプレイ、またはmRNAディスプレイを通じて得られ得る。これらの方法は全て当該技術分野における従来の技術であり、その特定の操作は、対応する教科書または操作手順書でにある(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Mondon et al.,2008)。一例としてファージディスプレイを使用すると、抗原に結合し得る抗体分子上の可変領域がファージのカプシドタンパク質に結合されるように、別個の抗体遺伝子がファージのDNAに挿入されてもよい。ファージが大腸菌(E.coli)に感染した後、一本鎖DNAが大腸菌(E.coli)内で複製され、ファージが再構築されて培養培地内に分泌されてもよいが、大腸菌(E.coli)は溶解されない。ファージは標的抗原と同時インキュベートされてもよく;結合したファージを単離した後、次に大量のクローンがスクリーニングされ得るように、増幅および精製されてもよい。ファージディスプレイ技術は文献に見いだされ得る(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Liu,et al.,2004)。
【0306】
別の態様では、本開示は、ファージディスプレイ法を使用して、モノクローナル抗体を生産するための方法を含んでもよい。具体的には、mRNAは、例えば、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ヒツジ、およびラクダ科動物(例えば、ラマ)などの動物を免疫する方法によって免疫された動物から調製されてもよく、そこで抗体可変領域のみをコードする単鎖抗体(scFv)遺伝子が調製されるように、このmRNAを鋳型として使用してcDNAが調製されてもよい。遺伝子は、ファージミドベクターにクローン化されてもよい。その中にファージミドベクターを形質導入された大腸菌(E.coli)にファージを感染させ、ファージカプシド上にscFV抗体を発現させる。このように発現されたscFvを抗原タンパク質またはペプチド-MHC複合体に対してスクリーニングすることによって、抗原タンパク質またはペプチド-MHC複合体に特異的なモノクローナルscFV抗体が調製されてもよい。ここで、mRNAの調製、cDNAの調製、ファージミドへのサブクローニングまたは大腸菌への形質導入、ファージ感染、および抗原タンパク質またはペプチド-MHC複合体に特異的なモノクローナルscFV抗体のスクリーニングは、それぞれ既知の方法によって実施されてもよい。例えば、リーダー配列(シグナル配列)とファージカプシドタンパク質IIIをコードする遺伝子フラグメントと、M13の複製起点とからなる2つの要素を含有するファージミドベクターにscFV遺伝子をサブクローニングし、ファージとしてM13ファージを用いることによって、M13ファージ上にscFV抗体を発現させ得る。さらに、スクリーニングにより得られたファージは、抗原タンパク質に特異的なモノクローナル抗体もまた、培養物から大量に回収されてもよいように、特定の細菌に感染されて培養されてもよい。本開示のモノクローナル抗体を製造するための方法によれば、scFV抗体だけでなく、Fab抗体断片などの定常領域を持たない抗体断片が調製されてもよい。
【0307】
別の態様では、本開示は、ファージディスプレイライブラリを含んでもよく、その中では、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域は、ほぼすべての可能な特異性を含むように合成されてもよい。
【0308】
別の態様では、本開示は、M13以外のファージを含有するファージディスプレイライブラリの作成を含んでもよい。λファージなどのその他のバクテリオファージもまた、本開示の方法で有用であってもよい。λファージディスプレイライブラリが作成され、それは異種DNAによってコードカされたペプチドを表面に提示する(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Sternberg et al.,1995)。さらに、本開示の方法は拡張されて、真核生物ウイルスなどのバクテリオファージ以外のウイルスを含んでもよい。哺乳類への送達に適した遺伝子をコードする、遺伝子がその中に送達される特定の細胞型または組織を標的化できる抗体をコードし提示する、真核生物ウイルスが生成されてもよい。例えば、機能的な抗体断片を提示するレトロウイルスベクターが生成されている(その内容全体が参照により本明細書に援用される、Russell et al.,1993)。
【0309】
別の態様では、本開示は、HLA拘束性抗原(好ましくは、配列番号1~配列番号102に記載のアミノ酸配列からなる、またはそれから本質的になるペプチド)と複合体形成したMHCクラスIまたはIIに特異的に結合する、組換え抗体を製造するための方法を提供し、方法は、前記MHCクラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリから単離するステップとを含んでもよく、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体形成した前記MHCクラスIまたはIIに特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0310】
本発明の抗体は、好ましくは薬学的に許容可能な担体中で、対象に投与される。典型的に、適当量の薬理的に許容可能な塩が製剤中で使用され、製剤を等張にする。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路と濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0311】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0312】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような判定をすることは、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与すべき抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日当たり約1μg/kg体重から最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。好ましくは急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんを治療するためである、抗体の投与後に、治療用抗体の有効性が、熟練した実務家に良く知られている様々な方法で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象におけるがんの大きさ、数、および/または分布がモニターされてもよい。抗体投与不在下で起こるであろう疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発生を予防する、治療的に投与された抗体は、がん治療のための有効な抗体である。
【0313】
特異的ペプチドMHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体を製造するための方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は、相補性決定領域を標的化する変異誘発によって増加され得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(その内容全体が参照により援用される、米国特許出願公開第2010/0113300号明細書、Liddy et al.,2012)。ファージディスプレイにおいて、および薬剤としての実用において、T細胞受容体を安定化する目的で、例えば非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(その内容全体が参照により援用される、Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞に対して特定の機能を果たすために、毒素、薬物、サイトカイン(例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許出願公開第2013/0115191号明細書を参照されたい)、および抗CD3ドメインなどのエフェクター細胞を動員するドメインに連結され得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞において発現され得た。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットに見いだされ得る。可溶性TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載されている。さらなる製造法は、その内容全体が参照により援用される、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0314】
さらに本発明のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断を確認し得る。
【0315】
抗体またはTCRはまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、腫瘍が位置確認され得るように、免疫シンチグラフィーを使用して、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、3H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらの断片は、上記のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、結合親和性(Kd)は、100nM未満、より好ましくは50nM未満、より好ましくは10nM未満、より好ましくは1nM未満、より好ましくは0.1nM未満、より好ましくは0.01nM未満である。
【0316】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、およびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウムおよびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価であってもよく、列挙される方法の2つ以上によって検出可能であってもよい。これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に十分に技術分野で承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されていてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【0317】
本発明の別の態様は、活性化T細胞を製造するためのインビトロ法を含み、方法は、T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり、適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトMHC分子に、T細胞を生体外で接触させるステップを含んでなり、抗原は本発明によるペプチドである。好ましくは、抗原提示細胞と共に、十分な量の抗原が使用される。
【0318】
好ましくは、哺乳類細胞は、TAPペプチド輸送体のレベルまたは機能が皆無でありまたは低下している。TAPペプチド輸送体が欠如している適切な細胞としては、T2、RMA-S、およびショウジョウバエ細胞が挙げられる。TAPは、抗原プロセシングに関連する輸送体である。
【0319】
ヒトペプチド負荷欠乏細胞系T2は、カタログ番号CRL1992の下に、米国郵便番号20852メリーランド州ロックビル市パークロウンドライブ12301番地の米国微生物系統保存機関から入手でき;ショウジョウバエ細胞株Schneider株2は、カタログ番号CRL19863の下にATCCから入手でき;マウスRMA-S細胞株は、Ljunggren et al.(その内容全体が参照により援用される、Ljunggren and Karre,1985)に記載されている。
【0320】
好ましくは、形質導入前に、宿主細胞はMHCクラスI分子を実質的に発現しない。刺激因子細胞が、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA3のいずれかなどのT細胞のための共刺激シグナルを提供するのに重要な分子を発現することもまた好ましい。多数のMHCクラスI分子および共刺激因子分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLデータベースから公的に入手可能である。
【0321】
MHCクラスIエピトープが抗原として使用される場合、T細胞はCD8陽性T細胞である。
【0322】
抗原提示細胞が、このようなエピトープを発現するために形質導入 される場合、好ましくは、細胞は、配列番号1~配列番号102、またはその変異アミノ酸配列を含有するペプチドを発現する能力がある発現ベクターを含んでなる。
【0323】
生体外でT細胞を生成するために、その他のいくつかの方法が使用されてもよい。例えば、自己由来腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLの生成において使用され得る。Plebanski et al.(Plebanski et al.,1995)は、T細胞の調製において、自己由来末梢血リンパ球(PLB)を利用した。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自己由来T細胞の生成も可能である。B細胞もまた、自己由来T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己CTLの調製において使用されてもよい。S.Walter et al.(その内容全体が参照により援用される、Walter et al.,2003)は、これもまた選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法である、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用した、T細胞の生体外プライミングを記載する。本発明では、ビオチン:ストレプトアビジン生化学によって、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体を表面ポリスチレン粒子(ミクロビーズ)に共役することで、aAPCが生成される。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答を選択的に引き起こすことを可能にする。MHC-ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性を有するその他のタンパク質を保有すべきである。さらに、このようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0324】
同種異系細胞もまたT細胞の調製に使用されてもよく、方法は、その内容全体が参照により本明細書に援用される、国際公開第97/26328号パンフレットに詳細に記載されている。例えば、ショウジョウバエ細胞およびT2細胞に加えて、その他の細胞を使用して、CHO細胞、バキュロウイルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、およびワクシニア感染標的細胞などの抗原が提示されてもよい。さらに植物ウイルスが使用されてもよく、例えば、外来性ペプチド提示のための高収率系としてのササゲモザイクウイルスの開発が記載される、Porta et al.(その内容全体が参照により援用される、Porta et al.,1994)を参照されたい。
【0325】
本発明のペプチドに向けられた活性化T細胞は、治療法において有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、前述の本発明の方法によって入手可能な活性化T細胞を提供する。
【0326】
上記方法によって製造される活性化T細胞は、配列番号1~配列番号102のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0327】
好ましくは、T細胞は、そのTCRを通じた、HLA-ペプチド複合体(例えば結合)との相互作用によって、細胞を認識する。T細胞は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者における、標的細胞を死滅させる方法で有用であり、その中では患者に有効数の活性化T細胞が投与される。患者に投与されるT細胞は、患者に由来して、上記のように活性化されてもよい(すなわちそれらは自己T細胞である)。代案としては、T細胞は、患者でなく別の個人に由来する。もちろん、個人が健常人であれば、それが好ましい。「健常人」によって、本発明者らは、個人が概して健康良好であり、好ましくは有能な免疫系を有して、より好ましくは容易に検査され検出され得るいかなる疾患にも罹患していないことを意味する。
【0328】
生体内で、本発明によるCD8陽性T細胞の標的細胞は、(時にMHCクラスIIを発現する)腫瘍細胞であり得て、および/または腫瘍周囲の間質細胞であり得る(時にMHCクラスIIもまた発現する)(Dengjel et al.,2006)。
【0329】
本発明のT細胞は、治療用組成物の活性成分として使用されてもよい。したがって、本発明は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者における、標的細胞を死滅させる方法もまた提供し、方法は、上で定義されるようなT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる。
【0330】
「異常に発現される」によって、本発明者らは、正常組織における発現レベルと比較して、ポリペプチドが過剰発現されされること、または腫瘍がそれに由来する組織においては遺伝子がサイレントであるが、腫瘍においてはそれが発現されることもまた意味する。「過剰発現」によって、本発明者らは、ポリペプチドが、正常組織に存在するレベルの少なくとも1.2倍のレベルで;好ましくは正常組織に存在するレベルの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意味する。
【0331】
T細胞は、例えば上に記載されているものなどの当該技術分野で既知の方法によって得られてもよい。
【0332】
このいわゆるT細胞の養子免疫伝達のためのプロトコルは、当該技術分野で周知である。いくつかのレビューが見いだされ得る(その内容全体が参照により援用される、Gattinoni et al.,2006;Morgan et al.,2006)。
【0333】
本発明の別の態様は、その核酸がクローン化されて、好ましくはT細胞である宿主細胞に導入されるT細胞受容体を生成するための、MHCと複合体形成するペプチドの使用を含む。次に、この遺伝子操作T細胞は、がん治療のために患者に移入され得る。
【0334】
本発明の任意の分子、すなわちペプチド、核酸、抗体、発現ベクター、細胞、活性化T細胞、T細胞受容体またはそれをエンコードする核酸は、免疫応答を逃れた細胞によって特徴付けられる障害の治療に有用である。したがって、本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において使用されてもよい。分子は、単独で、または本発明のその他の分子または既知の分子との組み合わせで、使用されてもよい。
【0335】
本発明のキットは、好ましくは、適切な容器内の本発明の凍結乾燥製剤と、その再構成および/または使用のための取扱い説明書とを含んでなる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。好ましくは、キットおよび/または容器は、容器上の、または容器に付随する、取扱説明を含み、それは再構成および/または使用上の指示を示す。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が、上記のようなペプチド濃度に再構成されることを表示してもよい。ラベルは、製剤が皮下投与のために有用であり、または皮下投与用であることをさらに表示してもよい。
【0336】
製剤を収容する容器は、多回使用バイアルであってもよく、それは再構成製剤の反復投与(例えば2~6回の投与)を可能にする。キットは、適切な希釈剤(例えば、炭酸水素ナトリウム溶液)を含んでなる、第2の容器をさらに含んでなってもよい。
【0337】
希釈剤と凍結乾燥製剤の混合時に、再構成製剤中の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)であり、好ましくは3mg/mL/ペプチド(=1500μg)以下である。キットは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明が掲載されるパッケージインサートをはじめとする、商業的および使用者観点から望ましい、その他の材料をさらに含んでもよい。
【0338】
本発明のキットは、その他の構成要素(例えば、その他の化合物またはこれらのその他の化合物の医薬組成物)が添加されたまたは添加されない、本発明による医薬組成物製剤を含有する単回容器を有してもよく、または各構成要素のための別個の容器を有してもよい。
【0339】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(例えばGM-CSF)、化学療法剤、天然物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管新生剤または阻害剤、アポトーシス誘導剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の同時投与と合わせて使用するためにパッケージされた、本発明の製剤を含む。キットの構成要素は、あらかじめ混合されてもよく、または各構成要素は、患者への投与前に別個の異なる容器内にあってもよい。キットの構成要素は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは無菌水溶液中で、提供されてもよい。またキットの構成要素は、固体として提供されてもよく、それは、好ましくは別の異なる容器内に提供される、適切な溶媒の添加によって液体に変換されてもよい。
【0340】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体または液体を封入するその他のあらゆる手段であってもよい。通常、2つ以上の構成要素がある場合、キットは、第2のバイアルまたは別の容器を含有して、別々の投薬を可能にする。キットは、薬学的に許容可能な液体のための別の容器もまた含有してもよい。好ましくは、治療用キットは、装置(例えば、1本または複数本の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有して、本キットの構成要素である本発明の作用物質の投与を可能にする。
【0341】
本製剤は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内または経皮などの任意の許容できる手段によるペプチド投与に適するものである。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくは輸液ポンプによるi.d.投与である。
【0342】
本発明のペプチドは、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんから単離されたので、本発明の薬剤は、好ましくは、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんを治療するのに使用される。
【0343】
例示的な一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0344】
ひとたび個別化ペプチドベースのワクチンのためのペプチドを選択したら、ワクチンを製造する。ワクチンは、好ましくは、約33%DMSOなどの20~40%DMSO、好ましくは約30~35%DMSOに溶解された、個々のペプチドからなる液体製剤である。
【0345】
製品に包含される各ペプチドをDMSOに溶解する。単一ペプチド溶液の濃度は、製品に包含されるペプチドの数に応じて選択されなくてはならない。単一ペプチドDMSO溶液を等量で混合し、約2.5mg/ml/ペプチドの濃度で、製品に包含される全てのペプチドを含有する溶液を得る。次に、混合溶液を注射用水で1:3に希釈して、33%DMSO中で0.826mg/ml/ペプチドの濃度を得る。希釈溶液を0.22μmの無菌フィルターを通して濾過する。最終バルク溶液を得る。
【0346】
最終バルク溶液はバイアルに充填されて、使用時まで-20℃で保存される。1本のバイアルは、0.578mgの各ペプチドを含有する700μLの溶液を含有する。このうち、500μL(ペプチド当たりおよそ400μg)を皮内注射のために適用する。
【0347】
がんを治療するために有用であるのに加えて、本発明のペプチドは、診断薬としてもまた有用である。ペプチドは急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がん細胞から生成されたので、そしてこれらのペプチドは正常組織中に存在せず、またはより低いレベルで存在すると判定されたので、これらのペプチドは、がんの存在を診断するために使用され得る。
【0348】
特許請求されるペプチドの血液サンプル中の組織生検上の存在は、がん診断において病理学者を補佐し得る。抗体、質量分析法またはその他の当該技術分野で既知の方法の手段による特定のペプチドの検出は、組織サンプルが悪性、または炎症性または概して病的であり、または急性骨髄性白血病、乳がん、胆管細胞がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、胃がん、胃食道接合部がん、肝細胞がん、頭頸部扁上皮がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮内膜がんのためのバイオマーカーとして利用され得ることを病理学者に告げ得る。ペプチド基の存在は、病的組織の分類または下位分類を可能にし得る。
【0349】
患部組織検体上のペプチドの検出は、特にTリンパ球が作用機序に関与することが知られておりまたは予測される場合に、免疫系が関与する治療法の利点を判定できるようにする。MHC発現の喪失は、それによって感染細胞または悪性細胞が免疫監視を逃れる、十分に説明された機序である。したがってペプチドの存在は、この機序が、分析した細胞によって活用されていないことを示す。
【0350】
本発明のペプチドは、ペプチドまたはMHC分子と複合体化したペプチドに対するT細胞応答または抗体応答などの、これらのペプチドに対するリンパ球応答を分析するのに使用されるかもしれない。これらのリンパ球応答は、さらなる治療ステップを決定するための予後マーカーとして使用され得る。これらの応答はまた、例えば、タンパク質、核酸、自己材料のワクチン接種や、リンパ球の養子免疫伝達などの異なる手段によるリンパ球応答の誘導を目指す、免疫療法アプローチにおける代理応答マーカーとして使用され得る。遺伝子治療の設定では、副作用の評価において、ペプチドに対するリンパ球応答が考慮され得る。リンパ球応答のモニタリングはまた、例えば移植片対宿主病および宿主対移植片病の検出など、移植治療の経過観察検査のための有益な手段かもしれない。
【0351】
本発明をここで、その好ましい実施形態を描写する以下の実施例において、添付図面を参照して説明するが、それでもなお、それらには限定されないものとする。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体を参照によって援用する。
【0352】
さらに、実験データおよび図は、特許請求されたペプチドの選択されたセットについてのみ本明細書に開示されてもよいことに留意されたい。本明細書で開示され、特許請求された全てのペプチドについて、完全なデータセットが作成され、要求に応じて利用できるようになっているが、出願人らは、本出願文の管理可能な範囲を超えることから、これらの完全なデータセットを本明細書に全て組み込まないことを決定した。
【図面の簡単な説明】
【0353】
【
図1】脱アミド化ペプチドの抗原プロセシング経路、およびHLAクラスIによるそれらの提示を示す。翻訳中、グリコシル化モチーフN[X^P][ST]を有するタンパク質は、ER中でそれらのN残基でグリコシル化される(1)。それらの搬出後、細胞質ゾルアミダーゼPNGaseはN結合型オリゴ糖を除去し、アスパラギン酸(D)への脱アミド化をもたらす(2)。プロテアソームにおけるさらなる分解(3)とER内へのペプチドの再輸送後(4)、それらはHLAI複合体に結合する(5)。次に、ペプチド-HLAI複合体は、古典的な抗原提示経路に従って、細胞膜に移行し、細胞表面に脱アミド化ペプチドを提示する(6)。
【
図2】アスパラギン(N)からアスパラギン酸(D)への脱アミド反応を示す(
図2)。
【
図3】
図3A-3Dは、正常組織と比較して、異なるながん組織における様々なペプチドの過剰提示を示す。上部:技術的反復測定からの中央値MS信号強度は、単一HLA-A
*02陽性正常(灰色ドット、図の左側)、およびその上でペプチドが検出された腫瘍サンプル(黒色ドット、図の右側)のドットとしてプロットされる。箱が、正規化された信号強度の中央値、25および75パーセンタイル数を提示する一方で、ひげは、下位四分位数の1.5四分位範囲(IQR)内にある最も低いデータ点、および上位四分位数の1.5IQR内にある最も高いデータ点まで伸びる。下部:各臓器中の相対ペプチド検出頻度が、棒グラフとして示される。パネルの下の数字は、各臓器について分析されたサンプルの総数のうち、ペプチドが検出されたサンプルの数を示す(正常サンプルではN>750、腫瘍サンプルではN>675)。ペプチドがサンプル上で検出されたが、技術的理由で定量化され得なかった場合、サンプルは、この検出頻度表示に含まれるが、図の上部に点は示されない。組織(左から右へ):正常サンプル:脂肪(脂肪組織);adrenal gl(副腎);胆管;膀胱;血球;bloodvess(血管);骨髄;脳;乳房;esoph(食道);眼;gall bl(胆嚢);頭頸部;心臓;intest.la(大腸);intest.sm(小腸);腎臓;肝臓;肺;リンパ節;nerve cent(中枢神経);神経periph(末梢神経);卵巣;膵臓;parathyr(副甲状腺);perit(腹膜);pituit(下垂体);胎盤;胸膜;前立腺;skel.mus(骨格筋);皮膚;脊髄;脾臓;胃;精巣;胸腺;甲状腺;気管;尿管;子宮。腫瘍サンプル:AML(急性骨髄性白血病);BRCA(乳がん);CCC(胆管細胞がん);CLL(慢性リンパ球性白血病);CRC(結腸直腸がん);GBC(胆嚢がん);GBM(神経膠芽腫);GC(胃がん);GEJC(胃食道接合部がん);HCC(肝細胞がん);HNSCC(頭頸部扁上皮がん);MEL(黒色腫);NHL(非ホジキンリンパ腫);NSCLC腺がん(非小細胞肺がん腺がん);NSCLCその他(NSCLC腺がんまたはNSCLC扁平上皮NSCLCに明確に割り当てることができなかったサンプル);NSCLC扁平上皮(扁平上皮細胞非小細胞肺がん);OC(卵巣がん);OSCAR(食道がん);PACA(膵臓がん);PRCA(前立腺がん);RCC(腎細胞がん);SCLC(小細胞肺がん);UBC(膀胱がん);UEC(子宮内膜がん)。
図3A)ペプチド:ILDSTTIEI(配列番号1)、
図3B)ペプチド:RLLEGDFSL(配列番号2)、
図3C)ペプチド:YMDGTMSQV(配列番号3)、
図3D)ペプチド:YVWDRTELL(配列番号4)。
【
図4】
図4A-4Dは、異なるがんサンプルにおいて過剰発現される、本発明の起源遺伝子の例示的発現プロファイルを示す。腫瘍(黒色ドット)および正常(灰色ドット)サンプルは、起源臓器によってグループ分けされる。箱ひげ図は、中央値FPKM値、25および75パーセンタイル数(ボックス)に加えて、下側四分位数のなおも1.5四分位間範囲(IQR)内にある最低データ点、および上側四分位数のなおも1.5IQR内にある最高データ点まで伸びるひげに相当する。FPKM:100万個のマッピングされた読み取り当たりキロベース当たりのフラグメント数。組織(左から右へ):正常サンプル:脂肪(脂肪組織);adrenal gl(副腎);胆管;膀胱;血球;bloodvess(血管);骨髄;脳;乳房;esoph(食道);眼;gall bl(胆嚢);頭頸部;心臓;intest.la(大腸);intest.sm(小腸);腎臓;肝臓;肺;リンパ節;nerve cent(中枢神経);nerve periph(末梢神経);卵巣;膵臓;parathyr(副甲状腺);perit(腹膜);pituit(下垂体);胎盤;胸膜;前立腺;skel.mus(骨格筋);皮膚;脊髄;脾臓;胃;精巣;胸腺;甲状腺;気管;尿管;子宮。腫瘍サンプル:AML(急性骨髄性白血病);BRCA(乳がん);CCC(胆管細胞がん);CLL(慢性リンパ球性白血病);CRC(結腸直腸がん);GBC(胆嚢がん);GBM(神経膠芽腫);GC(胃がん);GEJC(胃食道接合部がん);HCC(肝細胞がん);HNSCC(頭頸部扁上皮がん);MEL(黒色腫);NHL(非ホジキンリンパ腫);NSCLC腺がん(非小細胞肺がん腺がん);NSCLCその他(NSCLC腺がんまたはNSCLC扁平上皮NSCLCに明確に割り当てることができなかったサンプル);NSCLC扁平上皮(扁平上皮細胞非小細胞肺がん);OC(卵巣がん);OSCAR(食道がん);PACA(膵臓がん);PRCA(前立腺がん);RCC(腎細胞がん);SCLC(小細胞肺がん);UBC(膀胱がん);UEC(子宮内膜がん)。
図4A)Ensembl ID:ENST00000263321p369、ペプチド:YMNGTMSQV(配列番号105);
図4B)Ensembl ID:ENST00000244763p188、ペプチド:SQTNLSPAL(配列番号161);
図4C)Ensembl ID:ENST00000254508p924、ペプチド:FISNFTMTI(配列番号163);
図4D)Ensembl ID:ENST00000314191p3305、ペプチド:KMLNETVLV(配列番号186)。
【
図5】1つの例示的なペプチドAIYHDITGISV(配列番号48)についてのIdentControl実験の結果を示す。ペプチドは、データ依存取得(DDA)モードで安定同位体標識(SIL)標準の断片化を比較する、IdentControlによって確認された。同一性は、社内で決定されたスペクトル相関閾値を使用して確認された。
【
図6】ペプチドYMDGTMSQV(配列番号3)についてのCoElution実験の1つの例示的な結果を示す。ペプチドは、安定同位体標識(SIL)内標準および標的MS(sPRMまたはIS-PRM)を使用するCoElutionによって確認された。SILペプチドと天然ペプチドについて重複しない、MS2分離ウィンドウが使用された。マトリックスとして非HLAペプチドサンプル(例えば、トリプシン消化物または5%FA)を使用した対照実験を実施して、SIL内標準の同位体純度を確認する。ペプチドの同一性は、専門家による手動レビューで、客観的な事前に定義された基準に基づいて確認される。
【
図7】
図7A-
図7Cは、健康なHLA-A
*02+ドナーのペプチド特異的生体外CD8+T細胞応答の例示的な結果を示す。CD8+T細胞は、抗CD28mAbで被覆された人工APCと、配列番号3(A、左パネル)、配列番号72(B、左パネル)、配列番号91(C、左パネル)、配列番号92(D、左パネル)または配列番号98(E、左パネル)と複合体形成したHLA-A
*02とを使用してプライミングされた。3サイクルの刺激の後、A
*02/配列番号3(A)、A
*02/配列番号6(B)、A
*02/配列番号7(C)、A
*02/配列番号47(D)またはA
*02/配列番号96(E)による2D多量体染色によって、ペプチド反応性細胞の検出が実施された。右パネル(A、B、C、D、およびE)は、無関係なA
*02/ペプチド複合体で刺激された細胞の対照染色を示す。生存単一細胞は、CD8+リンパ球についてゲートされた。ブーリアンゲートは、異なるペプチドに対して特異的な多量体によって検出された、擬陽性事象の排除を助けた。CD8+リンパ球の中の特異的多量体+細胞の頻度が示される。
【実施例】
【0354】
実施例1
細胞表面に提示された腫瘍関連ペプチドの同定および定量
組織サンプル
患者の組織は以下から入手した:
BioIVT(米国ミシガン州デトロイトおよび英国ハートフォードシャー州ロイストン);Bio-Options Inc.(米国カリフォルニア州ブレア);BioServe(米国メリーランド州ベルツビル);Capital BioScience Inc.(米国メリーランド州ロックビル);Conversant Bio(米国アラバマ州ハンツビル);Cureline Inc.(米国カリフォルニア州ブリズベーン);DxBiosamples(米国カリフォルニア州サンディエゴ);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデールA);Indivumed GmbH(独国、ハンブルク);京都府立医科大学(KPUM)(日本国京都);大阪市立大学(OCU)(日本国大阪);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ);Tissue Solutions Ltd(英国グラスゴー);ボン大学(独国、ボン);Asklepios Clinic St.Georg(独国、ハンブルク);Val d’Hebron大学病院(スペイン国、バルセロナ);Herlev病院がん免疫療法センター(CCIT)(デンマーク国ヘアレウ)。ライデン大学医学センター(LUMC)(オランダ国ライデン);Istituto Nazionale Tumori ”Pascale”(分子生物学・ウイルス腫瘍学ユニット、イタリア国ナポリ);スタンフォードがんセンター(米国カリフォルニア州パロアルト);ジュネーブ大学病院(スイス国ジュネーブ);ハイデルベルク大学病院(独国ハイデルベルク);ミュンヘン大学病院(独国ミュンヘン);テュービンゲン大学病院(独国テュービンゲン)。
【0355】
外科手術または検死解剖前に、全ての患者の告知に基づく同意書が与えられていた。組織は切除の直後に衝撃凍結し、TUMAPの単離まで-70℃未満で保存した。
【0356】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチドプールは、HLA-A*02-特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体W6/32、HLA-DR特異的抗体L243およびHLAーDP特異的抗体B7/21、CNBr活性化セファロース、酸処理、および限外濾過を用いて、わずかに修正されたプロトコル(Falk et al.,1991;Seeger et al.,1999)に従って固体組織からの免疫沈降によって得た。
【0357】
本発明による全てのペプチドは、HLA-A*02に結合する。しかしながら、例えば固着位置などの結合パターンの類似性により、ペプチドはまた、HLA-B*08、HLA-B*13、およびHLA-B*15はじめとするがこれらに限定されるものではない、その他のHLA対立遺伝子に結合してもよい。
【0358】
さらに、HLA-A*02という用語は、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:08、HLA-A*02:09、HLA-A*02:10、HLA-A*02:11をはじめとするがこれらに限定されるものではない、HLA-A*02の全てのサブタイプを指す。
【0359】
質量分析
得られたHLAペプチド貯留は、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquity UPL C system,Waters)によってそれらの疎水性に従って分離し、ESI源を装着したLTQ-velosおよびfusion hybrid質量分光計(ThermoElectron)内で溶出ペプチドを分析した。ペプチド貯留は、毎分400nLの流速を適用して、1.7μm C18逆相材料(Waters)で充填された分析用融合シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)上に直接挿入した。引き続いて、毎分300nLの流速で10%から33%へのBの二段階180分間二成分勾配を用いて、ペプチドを分離した。勾配は、溶媒A(水中の0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から構成された。nanoESI源への導入には、金被覆ガラス毛管(PicoTip,New Objective)を使用した。LTQ-Orbitrap質量分光計は、TOP5ストラテジーを使用してデータ依存モードで操作した。手短に述べると、Orbitrap(R=30000)内の高質量精度の完全スキャンでスキャンサイクルを開始し、これもまたOrbitrap(R=7500)内の5種の最も豊富な前駆イオンのMS/MSスキャンがそれに続き、以前選択されたイオンを動的に排除した。タンデム質量スペクトルは、固定偽検出率(q≦0.05)および追加的な手動制御で、またはSEQUESTによって解釈した。同定されたペプチド配列が不確実である場合には、生成された天然ペプチド断片化パターンと合成配列同一参照ペプチドの断片化パターンとの比較によって、それをさらに検証した。
【0360】
イオン計数によって、すなわちLC-MS特性の抽出と解析によって、無標識相対LC-MS定量化を実施した(Mueller et al.,2007)。この方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積がサンプル中のその存在量と相関すると仮定する。抽出された特性は、電荷状態デコンボリューションと滞留時間アライメントによってさらに処理した(Mueller et al.,2008;Sturm et al.,2008)。最終的に、全てのLC-MS特性を配列同定結果と相互参照して、異なるサンプルの定量的データと、組織からペプチドへの提示プロファイルとを組み合わせた。定量的データは、技術的および生物学的反復試験内の変動を考慮した中心傾向に従って、二段法で正規化された。このようにして、それぞの同定されたペプチドが定量的データに関連付けられ得て、サンプルと組織との間の相対定量化ができるようになる。さらに、ペプチド候補について得られた全ての定量的データを手動で検査し、データ整合性を保証して自動解析の確度を確認した。各ペプチドについて提示プロファイルを計算し、平均サンプル提示ならびに反復試験変動を示した。プロファイルは、AML(急性骨髄性白血病);BRCA(乳がん);CCC(胆管細胞がん);CLL(慢性リンパ球性白血病);CRC(結腸直腸がん);GBC(胆嚢がん);GBM(神経膠芽腫);GC(胃がん);GEJC(胃食道接合部がん);HCC(肝細胞がん);HNSCC(頭頸部扁上皮がん);MEL(黒色腫);NHL(非ホジキンリンパ腫);NSCLC腺がん(非小細胞肺がん腺がん);NSCLCその他(NSCLC腺がんまたはNSCLC扁平上皮NSCLCに明確に割り当てることができなかったサンプル);NSCLC扁平上皮(扁平上皮細胞非小細胞肺がん);OC(卵巣がん);OSCAR(食道がん);PACA(膵臓がん);PRCA(前立腺がん);RCC(腎細胞がん);SCLC(小細胞肺がん);UBC(膀胱がん);UEC(子宮内膜がん)サンプルを正常組織サンプルのベースラインに並置する。例示的な過剰提示されたペプチドの提示プロファイルを
図3A~3Dに示す。プロットは、HLA-A
*02特異的抗体を使用して処理されたHLA-A
*02陽性組織サンプル上で生成されたドットとしてのペプチドの同定のみを示す。
【0361】
全てのペプチド(配列番号1~配列番号102)についての様々な適応症に関するペプチド提示を表8に示す。この表は、サンプルのHLAタイピングまたは前記サンプルを処理するために使用された抗体とは無関係に、それぞれのペプチドが少なくとも1回同定された、全ての適応症を列挙する。
【0362】
【0363】
実施例2
本発明のペプチドをコードする遺伝子発現プロファイリング
正常細胞と比較した腫瘍細胞上のペプチドの過剰提示または特異的提示は、免疫療法におけるその有用性にとって十分であり、いくつかのペプチドは、それらの起源タンパク質が正常組織にもまた存在するにもかかわらず、腫瘍特異的である。それでもなお、mRNA発現プロファイリングは、免疫療法のためのペプチド標的の選択において、安全性のレベルを高めることができる。特に、アフィニティ成熟TCRなどの安全性リスクが高い治療選択肢では、理想的な標的ペプチドは、腫瘍に特有で正常組織上には見いだされないタンパク質に由来するであろう。
【0364】
RNA起源および調製
外科的に除去された組織標本は、告知に基づく同意書が各患者から入手された後に、上述の通り提供された(実施例1を参照されたい)。腫瘍組織標本を手術直後にスナップ凍結し、その後、液体窒素下で乳鉢と乳棒を用いて均質化した。TRI試薬(独国ダルムシュタットのAmbion)を使用して、これらのサンプルから全RNAを調製し、RNeasy(独国ヒルデンのQIAGEN)による精製がそれに続き;どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って実施された。
【0365】
RNASeq実験のための健常ヒト組織からの全RNAは、以下から入手した:Asterand(米国ミシガン州デトロイトおよび英国ハートフォードシャー州ロイストン);Bio-Options Inc.(米国カリフォルニア州ブレア);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデールA);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ);Tissue Solutions Ltd(英国グラスゴー)。
【0366】
RNASeq実験のための腫瘍組織からの全RNAは、以下から入手した:Asterand(米国ミシガン州デトロイトおよび英国ハートフォードシャー州ロイストン);BioCat GmbH(独国ハイデルベルク);BioServe(米国メリーランド州ベルツビル);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデール);Istituto Nazionale Tumori”Pascale”(イタリア国ナポリ);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ);ハイデルベルク大学病院(独国ハイデルベルク)。
【0367】
全てのRNAサンプルの品質および量は、RNA 6000 Pico LabChipキット(独国バルトブロンのAgilent)を使用して、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent)上で評価した。
【0368】
RNAseq実験
腫瘍および正常組織RNAサンプルの遺伝子発現解析は、CeGaT(Tubingen,Germany)によって、次世代配列決定(RNAseq)によって実施された。簡単に述べると、RNA断片化、cDNA転換、および配列決定アダプターの付加を含むIllumina HiSeq v4試薬キットを使用して、販売業者(米国カリフォルニア州サンディエゴのIllumina Inc.)のプロトコルに従って、配列決定ライブラリーを作成する。複数のサンプルに由来するライブラリーを等モル混合し、Illumina HiSeq 2500配列決定装置上で製造会社の取扱い説明書に従って配列決定し、50bpのシングルエンドリードを生成する。処理された読み取りをSTARソフトウェアを使用して、ヒトゲノム(GRCh38)にマッピングする。がん発現データは、Ensembl配列データベース(Ensembl77)の注釈に基づいて、RPKM(Reads Per Kilobase per Million mapped reads:100万個のマッピングされた読み取り当たりキロベース当たり読み取り、ソフトウェアCufflinksによって作成される)として転写物レベルで、そしてエクソンレベルで(全読み取り、ソフトウェアBedtoolsによって作成される)提供される。エクソン読み取りをエクソン長さおよびアライメントサイズについて正規化し、RPKM値を得る。
【0369】
AML(急性骨髄性白血病);BRCA(乳がん);CCC(胆管細胞がん);CLL(慢性リンパ球性白血病);CRC(結腸直腸がん);GBC(胆嚢がん);GBM(神経膠芽腫);GC(胃がん);GEJC(胃食道接合部がん);HCC(肝細胞がん);HNSCC(頭頸部扁上皮がん);MEL(黒色腫);NHL(非ホジキンリンパ腫);NSCLC腺がん(非小細胞肺がん腺がん);NSCLCその他(NSCLC腺がんまたはNSCLC扁平上皮NSCLCに明確に割り当てることができなかったサンプル);NSCLC扁平上皮(扁平上皮細胞非小細胞肺がん);OC(卵巣がん);OSCAR(食道がん);PACA(膵臓がん);PRCA(前立腺がん);RCC(腎細胞がん);SCLC(小細胞肺がん);UBC(膀胱がん);UEC(子宮内膜がん)で高度に過剰発現されるか、または排他的に発現される、本発明の起源遺伝子の例示的な発現プロファイルを
図4A~4Dに示す。さらなる例示的遺伝子の発現スコアは、表9に示される。
【0370】
【0371】
実施例3
IdentControlおよびCoElutionによるペプチドの検証
本発明によるペプチドを検証するために、Fmocストラテジーを使用した標準的な十分に確立された固相ペプチド合成を使用して、全てのペプチドを合成した。必要に応じて、安定同位体標識(SIL-)アミノ酸を使用して識別可能な質量シフトを導入し、これらの標識ペプチドを内標準として使用できるようにした(例えば、CoElution実験で同一性確認のためにペプチドが選択された場合)。個々のペプチドの同一性および純度は、質量分析および分析用RP-HPLCによって判定された。ペプチドは、純度>50%の白色から灰白色の凍結乾燥物(トリフルオロ酢酸塩)として得た。全てのTUMAPは、好ましくはトリフルオロ酢酸塩または酢酸塩として投与され、その他の塩形態もまた可能である。
【0372】
ペプチドの最初の検証は、スペクトル比較を介したIdentControlによって達成された。このために、天然スペクトルの取得と同じように、一致させた断片化モードと衝突エネルギーを使用して、高分解能参照MS2スペクトルの取得によって、合成ペプチドをプチド同定の検証に使用した。自動スペクトル比較は、10,000を超える手動で検証されたスペクトルを含んでなるベンチマークデータセットに基づいて、1%未満のFDRで90%の感度がもたらされると判断されたカットオフスコアとのスペクトル相関の高感度メトリックを使用して実施した。曖昧な同定は、CoElution実験でさらなる検証に供した。
【0373】
【0374】
さらなる検証のために、ペプチドをSIL内標準ペプチドを使用したCoElution実験に供した。この目的を達成するために、SILペプチドをサンプルからのHLAペプチドーム抽出物にスパイクし、液体クロマトグラフィー-標的化質量分析法(LC-MS)に供して、スペクトルの類似性ならびに保持時間次元のCoElutionに基づいてペプチドの同一性を確認した。必要に応じて、スパイクされたSIL-ペプチドの量をペプチド固有のイオン化係数(検量線で判定された)に合わせて調整した。LC-MSは、SIL-ペプチドと天然ペプチド種の共断片化を避けるために、事前に定義された標的化MS2スキャン事象を用いて、重複しない分離ウィンドウで実施した。同位体純度、およびSILペプチドと天然ペプチドの共断片化がないことを確認するために、トリプシンマトリックスを含含有する非HLAペプチドで非HLAペプチドを含有するトリプシンマトリックスで対照実験を実施し、未標識のシグナルがないことを確認した。CoElutionによるペプチドの検出と検証は、未標識ペプチドMS2トレースと比較したSILペプチドの内積(dotP)、複数の連続スキャンにおける最も強い遷移の存在、整列したピーク頂点をはじめとする、複数の事前に定義された客観的基準に基づく、専門家による手動のレビューによって判定された。CoElutionによって検証されたペプチドの一覧は、表11に見いだされ得る。
【0375】
【0376】
実施例4
細胞表面上に存在する腫瘍関連ペプチドの絶対定量化
抗体および/またはTCRなどのバインダーの生成は手間のかかる工程であり、選択されたいくつかの標的に対してのみ実施されてもよい。腫瘍関連ペプチドおよび特異的ペプチドの場合、選択基準としては、提示の排他性および細胞表面に提示されるペプチドの密度が挙げられるが、これらに限定されない。実施例1に記載のペプチドの単離および相対定量化に加えて、本発明者らは、国際公開第2016/107740号パンフレットに記載されるように、細胞当たりの絶対ペプチドコピー数を分析した。固形腫瘍サンプルにおける細胞当たりのTUMAPコピー数の定量化には、単離TUMAPの絶対定量化、TUMAP単離工程の効率化、および分析された組織サンプルの細胞数が必要である。
【0377】
ナノLC-MS/MSによるペプチド定量化
質量分析によるペプチドの正確な定量化のために、2つの異なる同位体標識ペプチド変異型を使用して、各個別ペプチド毎に検量線を作成した(TUMAP合成中に1つまたは2つの同位体標識アミノ酸が含まれる)。これらの同位体で標識された変異型は、腫瘍関連ペプチドとは質量のみが異なるが、その他の物理化学的特性には違いがない(Anderson et al.,2012)。ペプチド検量線については、一連のナノLC-MS/MS測定を実行して、滴定(単一同位体標識ペプチド)のMS/MSシグナルと、一定(二重同位体標識ペプチド)同位体標識ペプチドとの比率を判定した。
【0378】
内標準とも称される二重同位体標識ペプチドを各MSサンプルにさらにスパイクし、全てのMSシグナルを内標準のMSシグナルに対して正規化し、MS実験間の潜在的な技術的変動を正規化した。
【0379】
検量線は、少なくとも3つの異なるマトリックスで、すなわちルーチンMSサンプルと同様に、天然サンプルからのHLAペプチド溶出液で調製し、各調製物は二連のMSランで測定した。評価のために、MSシグナルを内標準のシグナルに対して正規化し、ロジスティック回帰によって検量線を計算した。
【0380】
組織サンプルからの腫瘍関連ペプチドの定量化のために、それぞれのサンプルにも内標準をスパイクし;MSシグナルを内標準に対して正規化して、ペプチド検量線を使用して定量化した。
【0381】
ペプチド-MHC分離の効率
あらゆるタンパク質精製工程では、組織サンプルからのタンパク質の単離は、目的のタンパク質のいくらかの損失を伴う。TUMAP単離の効率を判定するために、絶対定量化のために選択した全てのTUMAPについて、ペプチド-MHC複合体を生成した。天然のペプチド-MHC複合体から、スパイクされたものを区別できるようにするために、TUMAPの単一同位体標識バージョンが使用され、すなわち、1つの同位体標識アミノ酸がTUMAP合成に含まれていた。これらの複合体は新たに調製した組織溶解物に、すなわちTUMAP単離手順の可能な限り早い時点でスパイクされ、続くアフィニティ精製で天然ペプチド-MHC複合体と同様に捕捉された。したがって、単一標識TUMAPの回収率を測定することで、個々の天然TUMAPの単離効率に関する結論を得ることができるようになる。
【0382】
単離の効率はサンプルの小さなセットで解析され、これらの組織サンプル間で同等であった。対照的に、単離効率は個々のペプチド間で異なった。このことは、限られた数の組織サンプルで判定されたとはいえ、単離効率が、その他のあらゆる組織調製に外挿されてもよいことを示唆する。しかしながら、1つのペプチドからその他のペプチドへの単離効率が外挿できない可能性もあるので、各TUMAPを個別に解析する必要がある。
【0383】
固体凍結組織中の細胞数の判定
絶対ペプチド定量化に供した組織サンプルの細胞数を判定するために、本発明者らはDNA含有量分析を適用した。この方法は、異なる起源の幅広いサンプルに適用でき、最も重要なことに、凍結サンプルにも適用できる(Alcoser et al.,2011;Forsey and Chaudhuri,2009;Silva et al.,2013)。ペプチド単離プロトコルでは、組織サンプルを均質な溶解物に処理し、それから少量の溶解物アリコートを採取する。アリコートを3つの部分に分け、それからDNAを単離する(QiaAmp DNAミニキット、独国ヒルデンのQiagen)。各DNA単離からの総DNA含有量は、蛍光ベースのDNA定量化アッセイ(Qubit dsDNA HSアッセイキット、独国ダルムシュタットのLife Technologies)を使用して、少なくとも2つの反復試験で定量化する。
【0384】
細胞数を計算するために、定義された細胞数の範囲で、幾人かのドナーからの単離された健康的な血球のアリコートから、DNA標準曲線を作成した。標準曲線はを使用して、各DNA単離からの総DNA含有量から、総細胞含有量を計算する。次に、既知の溶解物アリコートの容積と溶解物総容積を考慮して、ペプチド単離に使用される組織サンプルの平均総細胞数を外挿する。
【0385】
細胞あたりのペプチドコピー数
前述の実験のデータを使用して、本発明者らは、総ペプチド量をサンプルの総細胞数で除して、続いて単離効率で除することによって、細胞当たりのTUMAPコピー数を計算した。選択したペプチドのコピー細胞数を表12に示す。
【0386】
ペプチドを絶対定量化する方法について、どちらもその内容が参照により本明細書に援用される、国際公開第2016107740A1号パンフレットおよび米国特許出願第14/969,423号明細書で、より精緻な開示が開示されている。
【0387】
【0388】
実施例5
MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて研究を実施した。このようにして、本発明者らは、本発明のHLA-A*02拘束性TUMAPに対する免疫原性を示すことができ、これらのペプチドがヒトに存在するCD8+前駆体T細胞に対するT細胞エピトープであることを実証した(表13)。
【0389】
CD8+T細胞の生体外プライミング
ペプチド-MHC複合体(pMHC)と抗CD28抗体とを負荷した人工抗原提示細胞による生体外刺激を行うために、本発明者らは、インフォームドコンセントの後、独国のマンハイム大学クリニックから得た健常ドナーのCD8マイクロビーズ(独国ベルギッシュグラッドバッハのMiltenyi Biotec)を使用した正の選択によって、新鮮なHLA-A*02白血球アフェレーシス産物からCD8+T細胞を最初に単離した。
【0390】
PBMCおよび単離CD8+リンパ球は、10%熱不活性化ヒトAB血清(独国アイデンバッハのPAN-Biotech)、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(独国ケルンのCambrex)、1mMのピルビン酸ナトリウム(独国オーバードルラのCC Pro)、20μg/mlのゲンタマイシン(Cambrex)で補充した、RPMI-Glutamax(独国カールスルーエのInvitrogen)からなるT細胞培地(TCM)中で、使用時まで培養した。2.5ng/mlのIL-7(独国ハイデルベルクのPromoCell)および10U/mlのIL-2(独国ニュルンベルクのNovartis Pharma)もまた、この段階でTCMに添加した。
【0391】
pMHC/抗CD28被覆ビーズの生成、T細胞刺激、および読み取りは、高度に定義された生体外システム内で、刺激条件当たり4種の異なるpMHC分子と、読み取り条件当たり8種の異なるpMHC分子を使用して実施した。
【0392】
製造会社(独国ボンのPerbio)が推奨する通りにスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3(Jung et al.,1987)を化学的にビオチン化した。使用されたビーズは、直径5.6μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(米国イリノイ州のBangs Laboratories)であった。
【0393】
陽性および陰性対照刺激のために使用されたpMHCは、それぞれ、A*02:01/MLA-001(修飾Melan-A/MART-1に由来するペプチドELAGIGILTV(配列番号205))およびA*02:01/DDX5-001(DDX5に由来するYLLPAIVHI、配列番号206)であった。
【0394】
4×12.5ngの異なるビオチンpMHCの存在下で、800,000個のビーズ/200μlを96ウェルプレート内で被覆し、洗浄して、引き続いて200μlの容量中で600ngのビオチン抗CD28を添加した。5ng/mlのIL-12(PromoCell)を添加した200μlのTCM中で、1×106個のCD8+T細胞を2×105個の洗浄被覆ビーズと、37℃で3日間にわたり共インキュベートすることによって、96ウェルプレート内で刺激を開始した。次に80U/mlのIL-2を添加した新鮮TCMで培地の半分を交換し、37℃で4日間にわたりインキュベートを継続した。この刺激サイクルを合計3回実施した。条件あたり8個の異なるpMHC分子を使用したpMHC多量体読み取りでは、5つの異なる蛍光色素との共役を包含するわずかな修正を加えて、以前記載されたような二次元コンビナトリアルコーディングアプローチ(Andersen et al.,2012)を使用した。最後に、Live/dead近赤外染料(独国カールスルーエのInvitrogen)、CD8-FITC抗体クローンSK1(独国ハイデルベルクのBD)、および蛍光性pMHC多量体による細胞の染色によって多量体解析を実施した。解析では、適切なレーザーおよびフィルターを装着したBD LSRII SORP血球計数器を使用した。ペプチド特異的細胞を全CD8+細胞の百分率として計算した。FlowJoソフトウェア(米国オレゴン州のTree Star)を使用して、多量体解析の評価を実施した。陰性対照刺激と比較することで、特異的多量体+CD8+リンパ球の生体外初回刺激を検出した。1人の健常ドナーの少なくとも1つの評価可能生体外刺激ウェルが、生体外刺激後に特異的CD8+T細胞株を含有することが判明したら、所与の抗原の免疫原性が検出された(すなわちこのウェルは、CD8+T細胞内に少なくとも1%の特異的多量体+を含有し、特異的多量体+細胞の百分率は、陰性対照刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0395】
がんペプチドに対する生体外免疫原性
試験されたHLAクラスIペプチドでは、ペプチド特異的T細胞株の生成によって、生体外免疫原性を実証し得た。本発明の5種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の例示的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に
図7に示される。本発明からの12個のペプチドの結果を表13に要約する。
【0396】
【0397】
実施例6
MHC結合アッセイ
本発明によるT細胞ベースの治療法のための候補ペプチドをそれらのMHC結合能力(親和性)についてさらに試験した。個々のペプチド-MHC複合体をUVリガンド交換によって生成し、UV感受性ペプチドはUV照射に際して切断されて、分析される目的ペプチドで交換された。ペプチド受容性MHC分子と効果的に結合して安定化し得るペプチド候補のみが、MHC複合体の分離を防止する。交換反応の収率を判定するために、安定化MHC複合体の軽鎖(β2m)の検出に基づくELISAを実施した。アッセイは、Rodenko et al.(Rodenko et al.,2006)に一般的に記載されているようにして実施した。
【0398】
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)をPBS中の2μg/mlストレプトアビジンにより室温で一晩被覆して4回洗浄し、ブロック緩衝液を含有する2%BSA中で37℃で1時間ブロックした。再折り畳みされたHLA-A*02:01/MLA-001モノマーが、15~500ng/mlの範囲をカバーする標準物質の役割を果たした。UV交換反応のペプチド-MHCモノマーをブロック緩衝液で100倍に希釈した。サンプルを37℃で1時間インキュベートして4回洗浄し、2μg/mlのHRP共役結合抗β2mと共に37℃で1時間インキュベートし、再度洗浄してTMB溶液で検出し、NH2SO4で停止させた。吸光度を450nmで測定した。抗体またはそれらの断片、および/またはT細胞受容体またはそれらの断片の生成および製造のためには、高い交換収率(好ましくは50%より高い、最も好ましくは75%より高い)を示す候補ペプチドが一般に好ましいが、これはそれらがMHC分子に対する十分な結合活性を示し、MHC複合体の分離を防止するためである。
【0399】
本発明からの102個のペプチドに対するMHC-ペプチド結合の結果を表14に要約する。
【0400】
【0401】
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【配列表】
【国際調査報告】