(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電子的に整流された機械、および電子的に整流された機械を有する電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20231004BHJP
B60T 8/1761 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H02K11/215
B60T8/1761
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518968
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021076026
(87)【国際公開番号】W WO2022063809
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020212192.3
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヤーヒェン,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケイル,クリストフ
【テーマコード(参考)】
3D246
5H611
【Fターム(参考)】
3D246DA01
3D246GB01
3D246LA15A
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB07
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、回転運動で操作可能な回転子軸(16)上に設けられた回転子(14)を有する、電子的に整流された機械(10)、特に電子的に整流されたモータに関する。本発明はさらに、電気的に整流された機械(10)を有する電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置に関する。
【解決手段】 前記回転子軸(16)の回転角度を検出するために信号発信器(24)が設けられており、該信号発信器(24)は、保持部材(28)と、該保持部材(28)に配置されたマグネットエレメント(26)とを有している。強磁性材料より成る保持部材(28)に前記マグネットエレメント(26)が外方から当接し、かつ磁力によって保持されているように提案される。この提案は、前記マグネットエレメント(26)と前記保持部材(28)との間の高価な接着接合を省くことを可能にする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的に整流された機械(10)、特に電子的に整流されたモータであって、回転運動で操作可能な回転子軸(16)上に設けられた回転子(14)と信号発信器(24)とを有しており、前記信号発信器(24)は、特に前記回転子(14)および/または前記回転子軸(16)の回転角度を検出するために前記回転子軸(16)に相対回動不能に固定された保持部材(28)と、該保持部材(28)に配置されたマグネットエレメント(26)とを有している形式のものにおいて、
強磁性材料より成るカップ状の保持部材(28)が設けられており、該保持部材(28)の内部に前記回転子軸(16)が部分的に突入するようになっており、前記保持部材(28)の保持部材底部(44)が、前記回転子軸(16)の端面側を少なくとも領域的に覆うようになっており、前記マグネットエレメント(26)が外側から前記保持部材底部(44)に当接し、かつ磁力によって保持されていることを特徴とする、電子的に整流された機械(10)。
【請求項2】
前記保持部材(28)が、該保持部材(28)の内径と前記回転子軸(16)の外径との間に挿入されかつ半径方向にプリロードがかけられている締付体(40)によって、前記回転子軸(16)の周面に相対回動不能に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項3】
前記保持部材(28)に、前記マグネットエレメント(26)を前記回転子軸(16)の回転方向および逆回転方向で形状締結式に固定するための少なくとも1つの固定装置(48:50~54)が形成されていることを特徴とする、請求項2記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項4】
前記固定装置(48;50~54)が前記保持部材(28)と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項3記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項5】
前記固定装置(48;50~54)が、前記保持部材(28)から軸方向に突き出す舌片(48a)を有しており、前記マグネットエレメント(26)が周面に偏平部(60)を有していて、該偏平部(60)が前記舌片(48a)に対応配設されていることを特徴とする、請求項3または4記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項6】
前記保持部材(28)の前記固定装置(48)が、前記保持部材(28)のセグメントを打ち抜き成形および曲げ成形することによって形成されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項7】
前記固定装置(50~54)が、前記保持部材(28)の成形加工だけによって形成されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項8】
前記マグネットエレメント(26)が、接着剤なしで、前記保持部材(28)に半径方向不動、軸方向不動および相対回動不能に配置されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電子的に整流された機械(10)。
【請求項9】
自動車のための電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置において、圧力発生器と、この圧力発生器を駆動するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の特徴による電子的に整流された機械(10)とを有する、電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴に記載した電子的に整流された機械、並びに請求項9の前提部の特徴に記載した電子的に整流された機械を有する電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置に関する。
【0002】
電子的に整流された機械は、圧力発生器をブレーキ圧コントロールの範囲内で駆動するために、例えば自動車の電子的にスリップ制御可能なブレーキ装置に駆動ユニットとして搭載される。この場合、機械の電気制御は、ブレーキ装置の電子コントロールユニットによって必要に応じて行われる。電気制御が行われると、圧力発生器がブレーキ回路内に圧力媒体を圧送する。次いで、圧送された圧力媒体量に応じて、ブレーキ回路に接続されたホイールブレーキ内のブレーキ圧が上昇する。さらに、このブレーキ圧は、電子コントロールユニットによって制御可能なバルブ装置を用いて、車両のそれぞれ対応配設されたホイールにおいて支配的な実際のスリップ比に、ホイール個別に適合され得る。これにより、ブレーキ操作中にホイールのロックは阻止され、したがって車両の走行安定性は改善される。しかも、ブレーキ操作は、瞬間的な交通状況または走行状況に依存して、運転者とは無関係に実施される。
【0003】
圧力発生器によってブレーキ回路内に押しやられた圧力媒体量は、この制御過程において決定的な制御値を表す。この制御値は、駆動ユニットの運転パラメータから算出され得る。このために、設けられているセンサ装置が、駆動ユニットの回転子の回転角度および/または回転数を検出し、この測定された信号を、演算装置により評価するために電子コントロールユニットに転送する。さらにこのセンサ装置の主な目的は、駆動ユニットの電気制御の算出若しくは最適化である。
【0004】
公知のセンサ装置は、回転子軸と共に回転する信号発信器と、定置に配置された信号受信器とから構成されている。信号発信器は少なくとも1つのマグネットエレメントを有しており、このマグネットエレメントは、保持部材を用いて駆動ユニットの回転子軸に固定されている。
【背景技術】
【0005】
請求項1の前提部の特徴に記載した電子的に整流された機械は従来技術のものであり、例えば特許文献1に開示されている。この公知の機械は、電子的にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置の圧力発生器のための駆動ユニットであって、この駆動ユニットは、この文献の
図1に側面図で示されている。
【0006】
公知の駆動ユニット(10)は、回転運動で駆動可能な回転子(14)とこの回転子(14)に相対回動不能に結合された回転子軸(16)とを備えた電子的に整流された電動機(12)を有している。回転子(14)は、従来通りに構成されていて、鉄心と、この鉄心の円周方向に並んで配置された多数の永久磁石とを有している。
【0007】
公知の形式およびやり方で、永久磁石の磁界が固定子の電気コイルの磁界と協働する。固定子は駆動ユニット(10)のハウジング(18)内に配置されている。ハウジング(18)は、永久磁石に向き合う内側面に電気コイルを備えている。磁界間の相互作用に基づいて、回転子(14)および回転子軸(16)は、共通の回転運動を実施する。
【0008】
回転子軸(16)は、具体的には転がり軸受(20)を介して駆動ユニット(10)のハウジング(18)内に回転可能に軸受けされている。
図1によれば、回転子軸(16)の縦軸線Lに対して直交する横方向に配置された、図示していない装置、例えばピストンポンプを操作するために、回転子軸(16)上に例えば複数の偏心体(22)が配置されている。
【0009】
図1の詳細IIは、回転子(14)若しくは回転子軸(16)の回転角度および/または回転数を電子的に検出および評価するためのセンサ装置の信号発信器(24)を示す。この信号発信器(24)は、回転子軸(16)の、回転子(14)とは反対側の端部に配置されている。信号発信器(24)はマグネットエレメント(26)を有しており、このマグネットエレメント(26)は保持部材(28)を介して間接的に回転子軸(16)に固定されている。保持部材(28)はカップ状に形成されていて、突き出したピン(30)を有していて、このピン(30)で以って保持部材(28)は回転子軸(16)の対応配置されたセンタリング孔(32)内に押し込まれ、このセンタリング孔(32)内に接着接合されている(接着接合は確認できない)。保持部材(28)の、ピン(30)とは反対側に外方に向かって開放する盲孔状の受け部(34)が形成されており、この受け部内にマグネットエレメント(26)が嵌め込まれている。保持部材(28)の受け部(34)内でのマグネットエレメント(26)の固定は、同様に接着接合(確認できない)によって行われる。
【0010】
この駆動ユニットの運転条件下で、回転子(14)は強く加速または減速される。この場合、接着接合は、高い動的な負荷にさらされ、それにより相応に故障しやすい。保持部材(28)におけるマグネットエレメント(26)の固定部は、接着接合に基づいて所定の弾性にさらされ、したがって、センサ位置若しくは回転角度を検出する際の測定公差は比較的大きい。そのことは別として、接着接合は大量生産時に、例えば接着剤の調量および硬化のための世話のかかる装置に多大なコストを必要とする。回転子軸に必要な保持部材およびセンタリング孔のために、さらにコストが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102017218648号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0012】
これに対して、請求項1の特徴を有する電子的に整流された機械は、マグネットエレメントを回転子軸に相対回動不能に固定するための接着接合を省くことができる、という利点を有している。したがって、結合は、前記従来技術におけるよりも堅固にかつ確実に実施されており、これによって、回転角度信号若しくは回転子回転数をより精確に検出することができ、最終的に、機械の電気的な制御の可能性の改善が得られる。これによって、実際に要求された圧力媒体量と所望の目標値との間の偏差若しくは調節されたブレーキ圧と目標ブレーキ圧との間の偏差は小さくされ得る。さらに、機械の製造プロセスは短縮される。何故ならば、接着箇所の必要な準備または接着剤の硬化を待たなくてもよいからである。さらに、接着剤のための調量装置、場合によっては必要なUV硬化装置または温度処理装置は省かれる。
【0013】
強磁性材料より成るカップ状の保持部材が使用され、この保持部材にマグネットエレメントが外方から当て付けられて磁力によって保持されるように、提案される。
【0014】
このような形式の保持部材は、好適には成形技術により製造され、それにより、費用が安価な比較的薄い壁厚で製造され得る。マグネットエレメントを保持部材に当接させることによって、この保持部材の材料内でほぼ最大の磁気飽和が発生する。これによって、マグネットエレメントに作用する機械的な力に耐えるために十分に強い磁気的な保持力が得られる。しかも保持部材は、その薄壁性若しくはその磁気飽和に基づいて、マグネットエレメントの磁界に許容できない程度の影響を与える作用を有してはいない。
【0015】
本発明のその他の利点または好適な実施態様は、従属請求項および/または以下の説明に記載されている。
【0016】
本発明の第1の好適な実施態様によれば、保持部材が、この保持部材の内径と回転子軸の外径との間の隙間に挿入された締付体によって、回転子軸の周面に固定されている。このために、締付体として、例えば市販されている、ばね鋼より成るトレランスリングが適している。この締付体は、一貫して一定な、つまり段付けされていない軸直径を有する安価な回転子軸の使用を可能にする。このような締付体が設けられていることによって、保持部材の半径方向寸法は増大し、したがって保持部材はマグネットエレメントのためのより大きい取り付けスペースを提供する。回転子軸の断面を越える大きいマグネットエレメントに応じて、信号受信器によって簡単に検出されかつ評価され得る、より強い均一な磁界が提供される。したがって、回転子軸の回転数若しくは進んだ回転角度の検出をより高い精度で実施できるか、若しくは大まかな公差のマグネットエレメントおよび安価な信号受信器を使用することができる。大まかな公差のマグネットエレメントによって、構成要素、例えばコントロールユニットおよび電気機械の相互の交換可能性が簡略化される。
【0017】
さらに、好適には、保持部材に、マグネットエレメントを回転子軸の回転方向および逆回転方向で保持部材に形状締結式に固定する機械的な固定装置が形成されている。これによって、保持部材に対して相対的なマグネットエレメントの回動運動若しくは回転運動は効果的に阻止される。
【0018】
必要な固定装置は、本発明の1実施態様によれば、安価に保持部材と一体的に形成されている。固定装置は、保持部材の底部に機械的に、例えば窓の打ち抜きおよび折り曲げによって、またはその代わりに成形技術的に製造することができる。
【0019】
図2および
図3に示された第1の変化実施例では、固定装置が保持部材から打ち抜き成形されていて、直角に折り曲げられた舌片を有しており、これらの舌片は、保持部材から軸方向に突き出していて、マグネットエレメントの周面に作用する。所定の舌片が、マグネットエレメントの対応するキー面若しくは当接面に当て付けるために設けられている。
【0020】
図4に示された第2の変化実施例では、固定装置は成形技術だけによって製造されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】明細書の冒頭で既に記載されている、従来技術により公知な電子的に整流された機械の主要な構成要素を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態としての
図1の詳細IIの側面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による保持部材の平面図である。
【
図4】第1実施形態に代わる本発明の第2実施例の、やはり側面図である。
【
図5】構成部分としてのマグネットエレメントの立体図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の複数の実施例を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【0023】
図面は全部で5図を有しており、これらの図面中、対応する構成部分には同じ符号が付けられている。
【0024】
図2は、電子的に整流された機械の回転子軸(16)の端部を示す。この端部は、図示していない第2の端部に向き合って位置しており、この第2の端部に、この電気機械の回転子が取り付けられている。回転子軸(16)は、一貫して一定な外径を有していて、縦軸線Lに対して直角に切り離された、つまりこの縦軸線Lに対して直角に方向付けられた軸端面側を有している。この軸端面側から軸周面への移行部は、例えば環状の面取り部として構成されている。
【0025】
回転子軸(16)の図示の端部にトレランスリングの形態の締付体(40)が取り付けられている。この締付体(40)は、円筒形のスリーブとして形成されていて、このスリーブは、周面側が閉じられているかまたは周面側にスリットが形成されていてよい。回転子軸(16)の縦軸線Lの方向で見て、締付体(40)は回転子側の第1の締付体区分から成っていて、この第1の締付体区分は、調節可能な半径方向のプリロードがかかっている状態で回転子軸(16)の外周面に同一平面状に当接している。この第1の締付体区分は中央区分に移行していて、この中央区分に例えば皿状の成形部が形成されており、この皿状の成形部は締付体(40)から半径方向外方へ突き出している。
図1には示されていないが、複数のこのような成形部が締付体(40)の全周面に沿って規則的な間隔を保って配置されている。これらの成形部は、ほぼ平らに形成された皿底部および斜めに形成された環状の側面を有する台形の断面を有していて、斜めに形成された環状の側面を介して皿底部が残りの締付体に物理的に接続されている。皿底部と回転子軸(16)の外周面との間にエアスペースが閉じ込められており、このエアスペースによって、成形部は締付体(40)に半径方向の弾性を付与する。締付体(40)の中央区分に端部区分が続いており、この端部区分は、第1の締付体区分と同様であって、やはり半径方向のプリロードがかかっている状態で回転子軸(16)の周面に当接している。
【0026】
円筒形の保持部材軸部(42)並びにこの保持部材軸部(42)の端部を閉鎖する保持部材底部(44)を有するカップ状に形成された保持部材(28)は、その開放する端部を先にして締付体(40)に被せ嵌められている。したがって、回転子軸(16)は部分的に保持部材(28)の内部に突入する。マグネットエレメント(26)と回転子軸(16)との間で場合によっては生じ得る磁気的な相互作用を避けるために、保持部材底部(44)と回転子軸(16)の軸端面側との間に、縦軸線Lの方向で軸方向の間隔が残っている。
【0027】
保持部材(28)の内径は成形部の領域内で締付体(40)の外径に次のように合わせられている、つまり、保持部材(28)を締付体(40)に被せ嵌めることによって一方では保持部材(28)と締付体(40)との間、他方では締付体(40)と回転子軸(16)との間に、保持部材(28)を締付体(40)に軸方向不動および相対回動不能に固定し、それと同時に回転子軸(16)に軸方向不動および相対回動不能に固定するための半径方向力が発生するように、保持部材(28)の内径は成形部の領域内で締付体(40)の外径に合わせられている。効果的な半径方向力は、保持部材(28)、締付体(40)および回転子軸(16)の寸法を互いに構造的に合わせることによって、調節可能である。信号発信器(24)の最終的に組み立てられた状態で、保持部材軸部(42)は締付体(40)の周面側を覆う。
【0028】
カップ状の保持部材(28)は、強磁性材料より成っていて、比較的薄い壁厚で製造されている。保持部材(28)を製造するために、好適には成形法、有利には深絞り法が使用される。何故ならば、このような深絞り法によって、薄い壁厚を有する、一方側が開放した中空体を、特に安価に製造できるからである。保持部材底部(44)の、回転子軸(16)とは反対側の端面で、マグネットエレメント(26)が外方から保持部材(28)に当て付けられていて、ここで磁力によって保持される。したがって、その薄壁性に基づいて保持体(28)の材料内に最大磁気飽和が発生する。それにより、一方では高い磁気的な保持力が得られ、他方ではマグネットエレメント(26)の磁界に与える影響は十分にわずかである。
【0029】
このマグネットエレメント(26)は、それ自体が円柱形に形成されているが、保持部材(28)に対する相対回動不能な固定を得るために、周面に少なくとも1対の周面側の偏平部(60;
図5)、いわゆるキー面を有している。
【0030】
保持部材(28)は機械的な固定装置(48;50~54)を備えており、これらの固定装置によってマグネットエレメント(26)は保持部材(28)に半径方向不動および相対回動不能に配置されていて、保持部材(28)でセンタリングされている。例えば固定装置(48;50~54)は、このために保持部材(28)と一体的に形成された舌片(48a,b)を有していて、これらの舌片は、縦軸線Lの方向で保持部材(28)から軸方向で外方に突き出している。これらの舌片(48a,b)はその内側が、マグネットエレメント(26)の偏平部(60)に、並びに周面の対応配設された区分に形状締結式に当接している。例えば舌片(48a,b)は、保持部材底部(44)に配置されている。舌片を製造するために、窓の互いに直角を成す3つの側面が保持部材底部(44)から打ち抜き成形され、これらの側面によって取り囲まれたセグメントが打ち抜き成形されていない第4の側面に沿って外方に直角に折り曲げられる。これにより、保持部材(28)に対するマグネットエレメント(26)の固定は、追加的な接着接合なしに行われる。
【0031】
図3は、
図2の保持部材(28)を上から見た図である。保持部材底部(44)に例えば全部で4つの窓が設けられているのが分かる。これらの窓の打ち抜き成形された3つの側面によって取り囲まれた、保持部材底部(44)のセグメントが、それぞれ1つの舌片(48a,b)を形成し、この舌片は直角に折り曲げられていて、図平面から突き出している。図示されている全部で4つの舌片(48a,b)は、保持部材(28)の外周面のすぐ隣に位置しているそれぞれその第4の側面で以って、保持部材底部(44)に接続されている。それぞれ2つの舌片(48a)は、互いに面平行に位置している。これらの舌片(48a)は、マグネットエレメント(26)の偏平部(60)に当接させるために規定されている。これらの舌片(48a)のそれぞれ間に位置する舌片(48b)は、舌片(48a)とは異なり湾曲して形成されていて、保持部材(28)の周面区分に沿って延在している。これらの舌片(48b)は、マグネットエレメント(26)の同様に湾曲された周面区分に密着させるために設けられている。したがってマグネットエレメント(26)は、舌片(48a,b)の間のスペース内に閉じ込められ、その断面がこのスペースを満たすようになっている。
【0032】
図4は、本発明の第2実施例の側面図を示す。この第2実施例において、保持部材(28)は、
図2に示した第1実施例による保持部材(28)と同様にカップ状に形成されていて、強磁性材料より製造されている。さらに、マグネットエレメント(26)は外側から保持部材底部(44)に当接していて、磁力によって保持されている。
【0033】
図4に示した保持部材(28)は
図2に示した保持部材とは異なり、マグネットエレメント(26)を保持する固定装置(50~54)は成形技術だけによって製造可能である。したがって、好適な形式で保持部材(28)を製造するために打ち抜き作業工程および曲げ作業工程を省略することができる。
【0034】
この第2の実施例において、固定装置(50~54)は、保持部材(28)の壁部を内側に一回だけ折り返すか若しくは折り畳むことによって製造されている。したがって、固定装置(50~54)の領域内で壁部が二重になっているので、固定装置(50~54)は、外側に位置する第1の脚(50)、内側に位置する第2の脚(52)、およびこれらの脚の間の接続区分(54a,b)を有している。この接続区分(54a,b)は、縦軸線Lの方向で軸方向に突き出す、固定装置(50~54)の端部に位置していて、
図4の左半部に示されているように丸味を付けられているか若しくは曲率半径として構成されているか、または選択的に
図4の右半部に示されているように尖って形成されているか若しくは角縁として形成されていてよい。丸味を付けられた接続区分(54a)の領域で、固定装置(46)は、尖って形成された接続区分(54b)の領域よりも縦軸線Lの方向でさらに軸方向に長く延びている。丸味を付けられた接続区分(54a)は、マグネットエレメント(26)の偏平部(60)若しくはキー面の1つと同一平面状に当接するために設けられており、これに対して尖って形成された接続区分(54b)は、マグネットエレメント(26)の丸味を付けられた周面区分に位置している。尖った若しくは丸味を付けられた接続区分(54a,b)は、交互に位置していて、それぞれ保持部材(28)の周面に沿って複数設けられている。
【0035】
保持部材(28)の保持部材底部(44)は、この第2実施例では、底部が丸味を付けられ、かつ保持部材の周囲に向かって開放する環状の溝(56)を形成しながら、固定装置(46)の内側に位置する第2の脚(52)に接続されている。固定装置(46)によって、相対回動不能かつセンタリングされて保持されているマグネットエレメント(26)は、その断面で以って溝(56)の開口を覆うように寸法設計されているか若しくは成形されている。
【0036】
その他の点では、
図2に示した実施例においてもそうであるように、保持部材(28)とは反対側の、マグネットエレメント(26)の端面側は、保持部材(28)の固定装置(48;50~54)に対して縦軸線Lの方向で軸方向に突き出している。それ以外は、
図4の説明に関連して詳しく記載されていない構成部分は、
図2に記載した実施例の構成部分と同様に形成されている。
【0037】
最後に
図5には、念のために、構成部分としてのマグネットエレメント(26)が立体図で示されている。既に述べたように、このマグネットエレメント(26)は、互いに向き合い、かつ互いに平行な複数の端面を備えた円柱形の形状を有している。マグネットエレメント(26)はその周面に、互いに平行に延在する2つの偏平部(60)を有している。
【0038】
前記本発明の基本的な考え方から逸脱することなしに、以上説明した実施例において、この開示を越える変更または補足が考えられることは自明である。本発明の基本的な考え方は、特に信号発信器(24)のマグネットエレメント(26)が接着接合なしに回転子軸(16)に半径方向不動かつ相対回動不能に配置可能である物品を提供するという点にある。
【0039】
前記実施例は、このために強磁性の保持部材(28)を有しており、この強磁性の保持部材(28)は、1実施態様によれば、様々に構成可能若しくは製造可能な固定装置を備えている。保持部材における図示されかつ説明された固定装置の他に、選択的に別の構造型式も使用することができる。例えば、固定装置は、例えば摩擦締結を形成しながら、このためにマグネットエレメントに設けられた切欠内に係合する、軸方向に突き出す突起またはウエブを保持部材に有していてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 電子的に整流された機械、駆動ユニット
12 電動機
14 回転子
16 回転子軸
18 ハウジング
20 転がり軸受
22 偏心体
24 信号発信器
26 マグネットエレメント
28 保持部材、保持体
30 ピン
40 締付体
42 保持部材軸部
44 保持部材底部
48,50,51,52,53,54 機械的な固定装置
50 第1の脚
52 第2の脚
48a,48b 舌片
54a,54b 接続区分
56 溝
60 偏平部
L 縦軸線
II 詳細
【国際調査報告】