(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】生分解性容器クロージャー及びそのための樹脂
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20231004BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20231004BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20231004BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L101/16
C08L67/02
C08K5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518985
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 US2021051695
(87)【国際公開番号】W WO2022066866
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514831
【氏名又は名称】メレディアン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】マクラナハン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】デューリー,カースン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB04Z
4J002CF033
4J002CF181
4J002CF182
4J002CF18X
4J002CF191
4J002DE108
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4J002DJ036
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4J002GG01
4J200AA04
4J200BA12
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4J200BA17
4J200BA18
4J200DA17
4J200EA10
4J200EA11
(57)【要約】
生分解性容器クロージャー及び該容器クロージャーを作製するための方法。生分解性容器クロージャーは、約40~約99重量%の、下記の構造を有するランダムモノマー反復単位から誘導されるポリマー
【化1】
(式中、R
1は、CH
3及びC
3~C
19アルキル基からなる群から選択される)を含む。R
1=CH
3を有するモノマー単位は、ポリマーの約75~約99mol%である。クロージャーの形成に適合された樹脂も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性容器クロージャーを形成するために適合された樹脂であって:
約0.1~約10重量%の少なくとも1つの核剤;及び
約40~約99重量%の、下記の構造を有するランダムモノマー反復単位から誘導されるポリマー
【化1】
(式中、R
1は、CH
3及びC
3~C
19アルキル基からなる群から選択される)を含み、R
1=CH
3を有するモノマー単位が、ポリマーの75~99mol%を構成する、樹脂。
【請求項2】
樹脂が、約40~約99重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマー及び約1~約60重量%の追加の添加物を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーがポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート(P3HB-コ-P3HHx)を含む、請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
樹脂がさらに、約25~約50モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、約1.0~約15.0重量%の少なくとも1つのポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項5】
樹脂がさらに、約75~約99.9モル%の3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、約0.1~約25モル%の3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、並びに約0.1~約25モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物からなる群から選択される第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基、から構成されるターポリマーを含む、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項6】
ポリマーが、約5万ダルトン~約250万ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の樹脂。
【請求項7】
樹脂が、約0.1重量%~約3重量%の、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、人工甘味剤、ステアレート、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノ粘土、ポリヒドロキシブチレート、窒化ホウ素、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの核剤を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項8】
樹脂がさらに、約1重量%~約40重量%の、炭酸カルシウム、タルク、澱粉、酸化亜鉛、中性アルミナ、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの充填剤を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項9】
樹脂がさらに、約1重量%~約50重量%の、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセビケート(sebicate))、ポリ(ブチレンスクシネート)、及びポリ(ブチレンスクシネート-コ-アジペート)、並びにそれらのコポリマー及びブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項10】
樹脂がさらに、約0.1重量%~約3重量%の脂肪酸アミドスリップ剤を含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項11】
樹脂が、ASTM E96で測定して、約20g/m
2/日以下の水蒸気透過率を有する、請求項1に記載の樹脂。
【請求項12】
樹脂が、ASTM D5511(嫌気性及び好気性環境)、ASTM 5988(土壌環境)、ASTM D5271(淡水環境)、ASTM D6691(海水環境)、ASTM D6868、又は工業及び家庭での堆肥化可能性(土壌中)についてのASTM D6400に従って分解を受ける、請求項1に記載の樹脂。
【請求項13】
樹脂がさらに、約0.05重量%~約3重量%の、多官能性エポキシド;エポキシ官能性スチレンアクリルポリマー;有機過酸化物;オキサゾリン;カルボジイミド;及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶融強度増強剤を含む、請求項1に記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性容器及びそのためのクロージャー、特に生分解性容器クロージャーを作製するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のプラスチックの危機に伴い、プラスチックは、環境に優しい代替物に継続的に置き換えられている。プラスチック問題の大きな一因は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)水ボトルである。2017年には毎分100万本のPET水ボトルが販売されたと推定されている。PETボトルが完全に分解するのに約450年かかることを考慮すると、地球はPETボトルで過度に汚染されつつある。さらに、PETはリサイクル可能であるが、米国などの一部の先進国では、使用されたPETボトルの一部しかリサイクルされておらず、他の低開発国ではリサイクルの流れが全くない。リサイクルインフラがないこれらの国々では、PETボトルは、多くの場合、海洋に行き付き、マイクロプラスチックに分解され、これらは、海洋生物がこれらを食物と間違えて食べるため、生態系にダメージを与え始める。
【0003】
ボトル、ラベル及びクロージャーを含むボトルの各部品は、この問題の一因となっている。PETボトルでは、クロージャーは、典型的にはポリ(プロピレン)又はポリ(エチレン)などのポリオレフィンから作製されている。ポリオレフィンクロージャーは、典型的には射出成形によって作製され、これらの材料のプロセス条件は長年にわたって最適化されており、生産性及びコストを最大化している。しかしながら、これらの材料は石油系であり、分解に数百年を要する。
【0004】
従来の、クロージャー材料に関連した環境問題を軽減するために、クロージャーは生体材料から作製される場合がある。クロージャーは、例えばポリ(乳酸)を使用するなど、生体材料から成功裏に作製されているが、多くの場合、これらの材料はかなりの時間分解せず、所望の程度まで分解するために、熱及び圧力などの外部刺激を必要とする。
【0005】
さらに、他の生体材料をボトルクロージャーに成形することができる場合、そのバイオポリマーは、典型的には、例えばポリ(乳酸)から作製されたボトル及びクロージャーなど、不快なバリア特性を有する。
【発明の概要】
【0006】
上記を考慮して、高度に生分解性であるポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)容器クロージャーが提供される。PHA容器クロージャーは、PHAを他のポリマー、充填剤、及び添加剤で改質した後、このポリマー配合物をクロージャーに射出成形することによって作製される。PHAの脆弱な性質により、追加の材料をPHA配合物に添加して、金型からの排出中にクロージャーの特徴を維持する必要がある。
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、生分解性容器クロージャーを提供する。生分解性容器クロージャーは、約40~約99重量%の、下記の構造を有するランダムモノマー反復単位から誘導されるポリマー
【化1】
(式中、R
1は、CH
3及び/又はC
3~C
19アルキル基からなる群から選択される)を含む。R
1=CH
3を有するモノマー単位は、ポリマーの約75~約99mol%である。
【0008】
クロージャーの本体はまた、典型的には、約0.1~約10重量%の少なくとも1つの核剤を含む。
【0009】
いくつかの態様では、生分解性容器クロージャーは、約40~約99重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマー及び約1~約60重量%の追加の添加物を含む。
【0010】
いくつかの態様では、生分解性容器クロージャーは、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)としてポリヒドロキシブチレートを含む。
【0011】
他の態様では、生分解性容器クロージャーは、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)としてポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート(P3HB-コ-P3HHx)を含む。
【0012】
いくつかの態様では、容器クロージャーはさらに、約25~約50モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物から選択されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、約1.0~約15.0重量%の少なくとも1つのポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。
【0013】
いくつかの態様では、生分解性容器クロージャーはさらに、約75~約99.9モル%の3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、約0.1~約25モル%の3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、並びに約0.1~約25モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物から選択される第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されるターポリマーを含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む場合がある。
【0014】
他の態様では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ポリマーは、約5万ダルトン~約250万ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
【0015】
いくつかの態様では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ポリマーは、約0.1重量%~約3重量%の、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、人工甘味剤、ステアレート、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノ粘土、ポリヒドロキシブチレート、窒化ホウ素、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの核剤を含む。
【0016】
いくつかの態様では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ポリマーはさらに、約1重量%~約40重量%の、炭酸カルシウム、タルク、澱粉、酸化亜鉛、中性アルミナ、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの充填剤を含む。
【0017】
いくつかの態様では、容器クロージャーはさらに、約1重量%~約50重量%の、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセビケート(sebicate))、ポリ(ブチレンスクシネート)、及びポリ(ブチレンスクシネート-コ-アジペート)、並びにそれらのコポリマー及びブレンドから選択されるポリマーを含む。
【0018】
他の態様では、容器クロージャーはさらに、約0.1重量%~約3重量%の脂肪酸アミドスリップ剤を含む。
【0019】
いくつかの態様では、容器クロージャーは、ASTM E96で測定して、約20g/m2/日未満の水蒸気透過率を有する。
【0020】
他の態様では、射出成形及び圧縮成形から選択されるプロセスで容器クロージャーを形成することを含む、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ポリマーから生分解性容器クロージャーを作製する方法が提供される。
【0021】
特定の態様によれば、容器クロージャーはまた、約0.05重量%~約3重量%の、多官能性エポキシド;エポキシ官能性スチレンアクリルポリマー;有機過酸化物;オキサゾリン;カルボジイミド;及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶融強度増強剤を含む。
【0022】
別の局面では、本開示はまた、上述の生分解性容器クロージャーを形成するために適合された樹脂を提供する。樹脂は、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び任意的に他のポリマー、並びに生分解性容器クロージャーに関連して上述したような他の添加物から構成される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、プラスチック容器クロージャーに容易に加工することができる生分解性材料を使用して、生分解性容器クロージャーを有する生分解性容器の必要性に答える。生分解性材料及びそれから作製される容器クロージャーは、増大した生分解性及び/又は堆肥化可能性を有する使い捨て容器の必要性に答える。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ASTM」は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖;及び(一又は多)置換又は非置換の場合がある飽和炭素含有鎖を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、一不飽和(即ち、鎖中に1つの二重結合)又は多価不飽和(即ち、鎖中に2つ以上の二重結合);直鎖又は分枝鎖;及び(一又は多)置換又は非置換の場合がある炭素含有鎖を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「PHA」は、下記の式のランダムモノマー反復単位を有する、本明細書に記載されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)を意味する
【化2】
(式中、R
1は、CH
3及びC
3~C
19アルキル基からなる群から選択される)。R
1がCH
3であるモノマー単位は、ポリマーの約75~約99mol%である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「P3HB」は、ポリ-(3-ヒドロキシブチレート)を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「P3HHx」は、ポリ(3-ヒドロキシヘキサノエート)を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「生分解性」は、化合物が、ASTM D5511(嫌気性及び好気性環境)、ASTM 5988(土壌環境)、ASTM D5271(淡水環境)、又はASTM D6691(海水環境)に従って、微生物及び/又は天然環境因子によって最終的に完全にCO2及び水又はバイオマスに分解される能力を意味する。生分解性はまた、ASTM D6868及びEuropean EN 13432を用いて決定される場合がある。
【0031】
本明細書で使用される場合、「堆肥化可能」は、以下の3つの要件を満たす材料を意味する:(1)材料は、固体廃棄物のための堆肥化施設で処理することができる;(2)そのように処理された場合、材料は最終的な堆肥となる;及び(3)堆肥が土壌中で使用される場合、材料は、工業及び家庭での堆肥化可能性についてのASTM D6400に従って、最終的に土壌中で生分解する。
【0032】
特に明記しない限り、本明細書で参照される全ての分子量は、ASTM D5296に従って決定される重量平均分子量である。
【0033】
本明細書に列挙される全てのコポリマー組成比は、特に詳細に示されない限りモル比を指す。
【0034】
本発明の一態様では、少なくとも約50mol%であるが100%未満、より好ましくは少なくとも約60mol%;より好ましくは少なくとも約70mol%;より好ましくは少なくとも約75~99mol%のモノマー反復単位が、R1としてCH3を有する。
【0035】
別の態様では、モノマー反復単位の小部分は、3~19個の炭素原子を含むアルキル基から選択されるR1を有する。従って、コポリマーは、約0~約30mol%、好ましくは約1~約25mol%、及びより特には約2~約10mol%の、R1としてC3~C19アルキル基を含むモノマー反復単位を含む場合がある。
【0036】
いくつかの態様では、本開示での使用のための好ましいPHAコポリマーは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート(P3HB-コ-P3HHx)である。特定の態様では、このPHAコポリマーは、好ましくは、約94~約98モル%の3-ヒドロキシブチレートの反復単位及び約2~約6モル%の3-ヒドロキシヘキサノエートの反復単位を含む。
【0037】
生分解性PHAの合成
本発明において有用な生分解性PHAの生物学的合成は、適切な原料(単一又は多成分)を用いて、適切な生物(天然又は遺伝子操作された)による発酵によって行われる場合がある。生物学的合成はまた、目的のコポリマーを発現するように遺伝子操作された細菌種を用いて行われる場合がある(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,650,555号参照)。
【0038】
結晶化度
半結晶性ポリマー(又はコポリマー)の体積%結晶化度(Φc)は、多くの場合、ポリマーがどのタイプの最終用途特性を有するかを決定する。例えば、高度に(50%超)結晶性のポリエチレンポリマーは、強くかつ堅く、プラスチック牛乳容器などの製品に適している。一方、低結晶性ポリエチレンは、柔軟かつ強靭であり、食品ラップ及びゴミ袋などの製品に適している。結晶化度は、x線回折、示差走査熱量測定(DSC)、密度測定、及び赤外線吸収を含む多数の方法で決定することができる。最も適切な方法は、試験される材料に依存する。
【0039】
PHAコポリマーの体積%結晶化度(Φc)は、PHAコポリマー中のP3HHxのモル百分率に応じて変動する場合がある。P3HHxの添加は、PHAコポリマーの体積%結晶化度、結晶化速度、及び融点を効果的に低下させると共に、コポリマーの柔軟性及び分解性の増加をもたらす。本明細書に記載される核剤は、PHAコポリマーの結晶化プロセスを加速させるために使用される場合がある。
【0040】
一般に、本発明のPHAは、好ましくは、x線回折により測定して、約0.1%~約99%;より好ましくは約2%~約80%;尚より好ましくは約20%~約70%の結晶化度を有する。
【0041】
本発明のPHAが成形品に加工される場合、そのようなPHA中の結晶化度の量は、x線回折により測定して、より好ましくは約10%~約80%;より好ましくは約20%~約70%;尚より好ましくは約30%~約60%である。
【0042】
融点
好ましくは、本発明の生分解性PHAは、約30℃~約170℃、より好ましくは約90℃~約165℃、尚より好ましくは約130℃~約160℃の融点(Tm)を有する。
【0043】
成形品
本開示によれば、ポリマー容器クロージャーは、射出又は圧縮成形されるポリマー又はコポリマー材料(例えば、PHA)を含む樹脂から形成される。特に、成形品は、炭酸液体及び非炭酸液体、並びに粉末、ペレット、カプセルなどを含むがこれらに限定されない乾燥材料を保持するプラスチックボトル用のプラスチックスクリュー型及びスナップ式ボトルクロージャーの場合がある。
【0044】
熱可塑性樹脂の射出成形は、多工程プロセスであり、このプロセスにより、本発明のPHA配合物は、それが溶融するまで加熱され、次いでそれが成形される閉鎖金型内に押し込まれ、最終的に冷却により固化される。
【0045】
熱可塑性樹脂の圧縮成形は、ある量の本明細書に記載される組成物を、開放ダイの下半分に入れることからなる。ダイの上及び底半分を加圧下で合わせると、溶融組成物はダイの形状と一致する。次いで、金型を冷却して材料を硬化させる。
【0046】
サイクル時間は、保持時間+冷却時間として本明細書に定義される。プロセス条件が特
定の金型に最適化されると、サイクル時間は、コポリマーブレンド組成物の関数となる。実質的に最適化されるプロセス条件は、成形装置のバレル、ノズル及び金型の温度設定、ショットサイズ、射出圧、並びに保持圧である。環境分解性ポリマーとブレンドされたPHAコポリマーブレンドの本明細書に提供されるサイクル時間は、ブレンドを含まないPHAコポリマーのそのような時間よりも少なくとも10秒短い。
【0047】
成形中の収縮は、成形設計を通じて考慮される。約1.5%~5%、約1.0%~2.5%、又は1.2%~2.0%の収縮が起こる場合がある。
【0048】
ポリマーブレンド材料の熱分解を避けるのに十分低いが、成形のための材料の自由な流動を可能にするのに十分高く設定された加工温度が用いられる。PHAコポリマーブレンドは、熱分解を最小限にするために、約180℃未満、又は、より典型的には約160℃未満の溶融温度で溶融加工される。一般に、ポリマーは、溶融後に、ある時間の間、分解温度を超える温度に暴露された場合に熱分解し得る。本開示に照らして当業者が理解するように、熱分解を引き起こすのに必要な特定の時間は、特定の材料、融点(Tm)を超える時間の長さ、及びTmを超える度数に依存するであろう。温度は、熱分解のリスクを最小限にするために、ポリマー溶融物の自由な流動を可能にするように合理的に可能な限り低くし得る。押出中、押出機の高せん断が押出機内の温度を設定温度よりも高くする。従って、設定温度は、材料の融点よりも低い場合がある。
【0049】
PHA容器及び容器用のクロージャーは、PHAを溶融強度増強剤、鎖延長剤、及び他の加工助剤で改質することにより作製される。本開示による配合物は、約40~99重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマー及び約1~約60重量%のポリマー改質剤を含む場合がある。いくつかの態様では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート(P3HB-コ-P3HHx)である。他の態様では、PHA組成物は、約25~約50モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、約1.0~約15.0重量%の少なくとも1つのポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。
【0050】
いくつかの態様では、生分解性容器クロージャーの作製に使用されるPHA配合物は、約0.5重量%~約15重量%の、セバケート、シトレート、アジピン酸、コハク酸、及びグルカル酸の脂肪エステル、ラクテート、アルキルジエステル、シトレート、アルキルメチルエステル、ジベンゾエート、炭酸プロピレン、200~10,000g/molの数平均分子量を有するカプロラクトンジオール、400~10,000g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコール、植物油のエステル、長鎖アルキル酸、アジペート、グリセロール、イソソルビド誘導体又はその混合物からなる群から選択される少なくとも1つの可塑剤を含む場合がある。
【0051】
他の態様では、PHA配合物はまた、好ましくは、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.1~約20重量%の、硫黄、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、イノシトール、ステアレート、ソルビトール、マンニトール、ポリエステルワックス、2:1;2:1結晶構造化学物質を有する化合物、窒化ホウ素、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの核剤を含む。
【0052】
特定の好ましい態様では、PHA配合物は、約0.1~約3重量%の、窒化ホウ素又はペンタエリトリトールから選択される核剤、より好ましくは約0.3~約1.5重量%の窒化ホウ素又はペンタエリトリトールを含む場合がある。さらに、核剤として窒化ホウ素が使用される場合、PHA配合物は、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーに加
えて、約1~約5重量%のポリ(ヒドロキシブチレート)ホモポリマーも含む場合がある。
【0053】
いくつかの態様では、PHA配合物は、好ましくは、約0~約1重量%、例えば約1~約0.5重量%の溶融強度増強剤/レオロジー調整剤を含む。この溶融強度増強剤は、例えば、多官能性エポキシド;エポキシ官能性スチレンアクリルポリマー;ジ-t-ブチル過酸化物などの有機過酸化物;オキサゾリン;カルボジイミド;及びそれらの混合物からなる群から選択される場合がある。
【0054】
理論に束縛されるものではないが、この添加物は、PHA配合物の溶融強度を増加させる架橋剤として作用すると考えられる。代替的に、場合によっては、溶融強度増強剤の量は、約0.05~約3重量%である。より好ましい溶融強度増強剤は、好ましくはPHA配合物の約0.05~約0.2重量%の量の、有機過酸化物、エポキシド、及びカルボジイミドを含む。
【0055】
いくつかの態様では、PHA配合物は、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセビケート(sebicate))、ポリ(ブチレンスクシネート)、及びポリ(ブチレンスクシネート-コ-アジペート)(PBSA)、並びにそれらのコポリマー及びブレンドから選択される1つ以上の性能向上ポリマーを含む場合がある。性能向上ポリマーは、約1~約60重量%の範囲で配合物中に存在する場合がある。
【0056】
いくつかの態様では、ポリマー配合物は、スリップ剤を含む。最も一般的なスリップ剤は、エルカミド及びオレアミドなどの長鎖脂肪酸アミドである。1つ以上のスリップ剤、例えばステアリン酸カルシウム又は脂肪酸アミドが、典型的には、ポリマー配合物中に含まれる。配合物中に含まれる場合、スリップ剤の量は、ポリマー配合物の総重量の約0.5~約3重量%の範囲の場合がある。
【0057】
本開示による生分解性容器クロージャーの作製に使用される場合がある例示的な配合物は、以下の表に示される。
【表1】
【0058】
提供される配合物では、PHAは急速に分解するはずであるが、分解速度は容器クロージャーのデザインに依存し、より厚い壁の容器は、完全に分解するのに長くかかる。容器クロージャーは、TUV Austria Program OK 12に従って分解を受け、少なくとも24ヶ月の保存寿命を有し、ASTM E96で決定して約20g/m2/日未満の水蒸気透過率を有することが好ましい。
【0059】
2つのボトルクロージャー、スクリュー・オン(screw on)30/25及びPCO-1810ボトルキャップを、2つの異なるタイプの金型から作製し、異なるタイプのクロージャーの製造に使用するための本明細書に記載したPHA配合物の多用途性を示した。さらに、PHA配合物は射出成形されたが、証拠は開示されたPHA配合物が圧縮成形による製造においても卓越した候補であることを示唆している。本明細書に提示した配合物に基づいて、クロージャーは迅速な分解速度を提供し、今日使用されているポリ(オレフィン)クロージャーの代替物としての役割を果たすはずである。前述のPHAベースのクロージャーは、PHAベースのラベルが貼付されたPHAベースの容器上に配置されることが意図され、従って容器全体が生分解性である。
【0060】
本開示はまた、以下の態様によってさらに例示される:
【0061】
態様1. 生分解性容器クロージャーであって:
約0.1~約10重量%の少なくとも1つの核剤;及び
約40~約99重量%の、下記の構造を有するランダムモノマー反復単位から誘導され
るポリマー
【化3】
(式中、R
1は、CH
3及びC
3~C
19アルキル基からなる群から選択される)を含み、R
1=CH
3を有するモノマー単位が、ポリマーの75~99mol%を構成する、生分解性容器クロージャー。
【0062】
態様2. 生分解性容器クロージャーが、約40~約99重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマー及び約1~約60重量%の追加の添加物を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0063】
態様3. ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーがポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート(P3HB-コ-P3HHx)を含む、態様2の生分解性容器クロージャー。
【0064】
態様4. 容器クロージャーさらに、約25~約50モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、約1.0~約15.0重量%の少なくとも1つのポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0065】
態様5. 容器クロージャーがさらに、約75~約99.9モル%の3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、約0.1~約25モル%の3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、並びに約0.1~約25モル%の、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ヒドロキシオクエタノエート)、ポリ(ヒドロキシデカノエート)、及びそれらの混合物からなる群から選択される第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基、から構成されるターポリマーを含む、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0066】
態様6. ポリマーが、約5万ダルトン~約250万ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0067】
態様7. ポリマーが、約0.1重量%~約3重量%の、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、人工甘味剤、ステアレート、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノ粘土、ポリヒドロキシブチレート、窒化ホウ素、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの核剤を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0068】
態様8. ポリマーがさらに、約1重量%~約40重量%の、炭酸カルシウム、タルク、澱粉、酸化亜鉛、中性アルミナ、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの充填剤を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0069】
態様9. 容器クロージャーがさらに、約1重量%~約50重量%の、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセビケート(sebicate))、ポリ(ブチレンスクシネート)、及びポリ(ブチレンスクシネート-コ-アジペート)、並びにそ
れらのコポリマー及びブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0070】
態様10. 容器クロージャーがさらに、約0.1重量%~約3重量%の脂肪酸アミドスリップ剤を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0071】
態様11. 容器クロージャーが、ASTM E96で測定して、約20g/m2/日未満の水蒸気透過率を有する、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0072】
態様12. 生分解性容器クロージャーが、ASTM D5511(嫌気性及び好気性環境)、ASTM 5988(土壌環境)、ASTM D5271(淡水環境)、ASTM D6691(海水環境)、ASTM D6868、又は工業及び家庭での堆肥化可能性(土壌中)についてのASTM D6400に従って分解を受ける、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0073】
態様13. 態様1のポリマーから生分解性容器クロージャーを作製する方法であって、射出成形及び圧縮成形からなる群から選択されるプロセスで容器クロージャーを形成することを含む、方法。
【0074】
態様14. 容器クロージャーがさらに、約0.05重量%~約3重量%の、多官能性エポキシド;エポキシ官能性スチレンアクリルポリマー;有機過酸化物;オキサゾリン;カルボジイミド;及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶融強度増強剤を含む、態様1の生分解性容器クロージャー。
【0075】
この開示のための好ましい態様の前述の説明は、例示及び説明のために提示されている。これは、網羅的であるか又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして明らかな修正又は変更が可能である。態様は、本開示の原理及びその実践的な適用の最良の例示を提供し、それにより当業者が本開示を様々な態様で、及び企図される特定の使用に適するように様々な修正を用いて使用できるようにするために選択及び説明されている。そのような修正又は変更の全ては、それらが適正に、合法的に、及び公平に権威を付与される広さに従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本開示の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】