(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】挿入装置および医療装置を挿入するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20231004BHJP
A61B 5/1459 20060101ALI20231004BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1459
A61M37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519096
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021076137
(87)【国際公開番号】W WO2022063867
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
【テーマコード(参考)】
4C038
4C267
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL07
4C038KL09
4C038KY01
4C267AA05
4C267AA72
4C267BB62
4C267CC05
(57)【要約】
医療装置(112)をユーザの体組織に挿入するための挿入装置(110)が開示される。挿入装置(110)は、i)医療装置(112)と、ii)体組織内に医療装置(112)を挿入するように構成された挿入部品(118)と、iii)挿入部品リトラクタ(120)と、iv)キャップ(122)と、v)少なくとも1つのランプ(126)を備えるガイドスリーブ(124)と、vi)挿入スリーブ(128)と、vii)弾性部材(130)とを備え、医療装置(112)を挿入するために、キャップ(122)、挿入部品リトラクタ(120)、および挿入スリーブ(128)が、ガイドスリーブ(124)に対して遠位位置(164)から近位位置(166)に移動可能であり、ガイドスリーブ(124)のランプ(126)が、キャップ(122)が自身の遠位位置(164)から自身の近位位置(166)に移動したときに挿入部品リトラクタ(120)をガイドスリーブ(124)および挿入スリーブ(128)に対してねじるように構成され、キャップ(122)が自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動可能であり、これにより挿入部品リトラクタ(120)が自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動される。さらに、医療装置(112)をユーザの体組織に挿入するための方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置(112)をユーザの体組織に挿入するための挿入装置(110)であって、
i)前記医療装置(112)と、
ii)前記体組織内に前記医療装置(112)を挿入するように構成された挿入部品(118)と、
iii)挿入部品リトラクタ(120)と、
iv)キャップ(122)と、
v)少なくとも1つのランプ(126)を備えるガイドスリーブ(124)と、
vi)挿入スリーブ(128)と、
vii)弾性部材(130)と
を備え、
前記医療装置(112)を挿入するために、前記キャップ(122)、前記挿入部品リトラクタ(120)、および前記挿入スリーブ(128)が、前記ガイドスリーブ(124)に対して遠位位置(164)から近位位置(166)に移動可能であり、前記ガイドスリーブ(124)の前記ランプ(126)が、前記キャップ(122)が自身の遠位位置(164)から自身の近位位置(166)に移動したときに前記挿入部品リトラクタ(120)を前記ガイドスリーブ(124)および前記挿入スリーブ(128)に対してねじるように構成され、前記キャップ(122)が自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動可能であり、これにより前記挿入部品リトラクタ(120)が自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動される、挿入装置(110)。
【請求項2】
前記キャップ(122)が、前記挿入部品リトラクタ(120)および前記挿入スリーブ(128)とともに、自身の遠位位置(164)から自身の近位位置(166)に移動することが、前記ユーザの動作によって開始可能である、請求項1に記載の挿入装置(110)。
【請求項3】
前記キャップ(122)が、前記挿入部品リトラクタ(120)とともに、その近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動することが、前記ユーザの前記動作を軽減することによって開始可能である、請求項1または2に記載の挿入装置(110)。
【請求項4】
前記挿入部品リトラクタ(120)の前記近位位置(166)への到達前に、前記ガイドスリーブ(124)の前記ランプ(126)が、前記挿入部品リトラクタ(120)のラッチ(136)と接触し、前記ランプ(126)が、前記ラッチ(136)をねじることによって前記挿入部品リトラクタ(120)をねじるように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の挿入装置(110)。
【請求項5】
前記挿入スリーブ(128)が、少なくとも1つの溝(140)を備え、前記溝(140)が、前記挿入部品リトラクタ(120)の前記ラッチ(136)をガイドするように構成され、前記溝(140)が、少なくとも1つの縁部(162)を備える、請求項4に記載の挿入装置(110)。
【請求項6】
前記ガイドスリーブ(124)の前記ランプ(126)が、少なくとも1つの前記ラッチ(136)を前記挿入スリーブ(128)の前記溝(140)内で移動するようにガイドすることによって、前記挿入部品リトラクタ(120)を強制的にねじらせるように構成される、請求項5に記載の挿入装置(110)。
【請求項7】
前記弾性部材(130)が、前記挿入部品リトラクタ(120)を駆動して自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動させるように構成され、前記弾性部材(130)が少なくとも1つのばね(171)を備え、前記ばね(171)が前記挿入部品リトラクタ(120)に接続され、前記ばね(171)には予張力がかけられ、前記キャップ(122)に加えられた力を解放することによって作動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の挿入装置(110)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのばね(171)が、前記挿入部品リトラクタ(120)の自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)への移動を駆動し、これにより前記キャップ(122)の自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)への移動を駆動するように構成される、請求項7に記載の挿入装置(110)。
【請求項9】
前記キャップ(122)が前記近位位置(166)にあるとき、前記ガイドスリーブ(124)の近位端(142)と位置合わせする、請求項1から8のいずれか一項に記載の挿入装置(110)。
【請求項10】
前記挿入装置(110)が、少なくとも1つの安全ロック(172)をさらに備え、前記安全ロック(172)が、自身の遠位位置(164)に移動された後の前記挿入部品リトラクタ(120)の再移動を防止するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の挿入装置(110)。
【請求項11】
前記医療装置(112)が、ユーザの体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの分析物センサ(114)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の挿入装置(110)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの分析物センサ(114)が、少なくとも1つの2電極センサを備える、請求項11に記載の挿入装置(110)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの挿入装置(110)を使用することにより、ユーザの体組織に医療装置(112)を挿入するための方法であって、
a)前記挿入装置(110)の前記キャップ(122)に力を加えることによって前記医療装置(112)を前記ユーザの前記体組織に挿入し、これにより前記挿入部品(118)、前記キャップ(122)、前記挿入部品リトラクタ(120)、および前記挿入スリーブ(128)を前記ガイドスリーブ(124)に対して遠位位置(164)から近位位置(166)に移動させ、前記挿入部品リトラクタ(120)を前記ガイドスリーブ(124)および前記挿入スリーブ(128)に対してねじることと、
b)前記キャップ(122)に加えられた力を解放することによって前記挿入部品(118)を引き込み、これにより前記キャップ(122)を自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動させ、これにより前記挿入部品リトラクタ(120)を自身の近位位置(166)から自身の遠位位置(164)に移動させることと
を含む、方法。
【請求項14】
前記方法が、以下のさらなるステップ:
a1)前記挿入装置(110)、特に前記ガイドスリーブの前記近位端をユーザの皮膚部位に接触させるステップと、
b1)センサパッチを用いて前記ユーザの前記皮膚部位に圧力を加えるステップと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記キャップ(122)が、前記挿入部品リトラクタ(120)および前記挿入スリーブ(128)とともに、自身の遠位位置(164)から自身の近位位置(166)に移動することが、前記ユーザの行動によって開始される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記キャップ(122)が、前記挿入部品リトラクタ(120)とともに、前記近位位置(166)から前記遠位位置(164)に移動することが、前記ユーザの動作を軽減することによって開始される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置をユーザの体組織に挿入するための挿入装置および方法に関する。医療装置は、具体的には、ユーザの体液中の少なくとも1つの分析物を検出するように構成されることができる。挿入装置および方法は、ユーザの体液中の分析物の連続監視の分野、特に在宅医療の分野および病院などの専門医療の分野に適用されることができる。しかしながら、他の用途も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
特定の身体機能を監視すること、より詳細には、ユーザの体液中の1つまたは複数の代謝産物濃度などの1つまたは複数の分析物濃度を監視することは、様々な疾患の予防および処置において重要な役割を果たす。そのような分析物は、例として、グルコース、ラクテート、コレステロールまたは他の種類の分析物および代謝産物を含むことができるが、これらに限定されない。さらなる可能な用途を制限することなく、本発明は、グルコース監視を参照して以下の本文において説明される。しかしながら、追加的または代替的に、本発明は、上述した分析物などの他の種類の分析物にも適用されることができる。
【0003】
一般に、ユーザの体組織中の分析物の長期監視のためのシステムならびに対応する挿入装置が知られている。例えば、米国特許第7,310,544号明細書は、ホスト中の分析物を測定するためのシステムおよび方法を開示している。より詳細には、上記発明は、宿主におけるグルコースの経皮的測定のためのシステムおよび方法に関する。
【0004】
欧州特許第1624914号明細書は、被験者の皮膚に適用するように適合された装着面を有するハウジングと、被験者の皮膚を貫通するように適合された尖端部を有する針であって、遠位端部がハウジング内に引き込まれる第1の位置と、遠位端部が装着面に対して突出する第2の位置とを有する針とを備える装置を開示している。装置は、駆動手段の起動および解放を引き起こすように作動可能な駆動手段をさらに備え、これにより針を第1の位置から第2の位置に移動させる。この構成により、針装置は、非通電状態でユーザに供給されることができ、通電は、装置がユーザによって作動されるときに行われ、これは、エネルギーが数秒から数時間または数日の期間だけ蓄積されることを意味する。
【0005】
分析物センサなどの医療装置を挿入するための装置の別の例は、欧州特許出願公開第3 542 712号明細書から知られている。
【0006】
薬物送達システムのための他の挿入装置が知られている。例えば、米国特許出願公開第2013/245604号明細書は、2つの主要な構成要素:2つの薬剤を含む自動注射装置および少なくとも1つの薬剤を含む薬剤モジュールを含むシステムを記載している。薬剤モジュールは、全ての薬剤を含む組み合わせ用量が薬剤モジュールの単一の分注インターフェースを介して送達されることができるように、自動注射装置とインターフェースする。
【0007】
体液中の分析物を監視するために、体液にセンサが接触されてもよい。一般に、これは、センサを皮下に挿入することを必要とする。例として、センサの挿入時にセンサを電子装置ユニットに接続することができるシステムがある。これらのシステムは、センサが挿入されるセンサベースプレートを備えることができる。センサの挿入後、電子装置ユニットは、ベースプレートおよびセンサに接続されてもよい。ベースプレートは、被覆領域内の露出スポットを曝露させることができ、センサは、露出スポットにおいてユーザの皮膚に挿入されることができる。センサが電子装置ユニットに固定的に接続されているシステムの場合、センサの挿入は、電子装置ユニットのユーザの皮膚への取り付けと同時に実行されてもよい。
【0008】
一般に、センサは、針などの挿入部品を使用して挿入されることができる。多くの場合、そのようなシステムは、電子装置ユニットがユーザの皮膚に取り付けられ、センサがユーザの皮膚に挿入された後に挿入部品を引き込む機構を備える。感染リスクを最小限に抑えるために、挿入部品はシステムのハウジング内に深く引き込まれることができる。挿入部品の引き込みは、皮膚内への挿入部品の挿入移動後に機械的に開始されてもよい。
【0009】
上述した装置によって達成される利点にもかかわらず、いくつかの技術的課題が残っている。挿入部品は、挿入移動の最深点の近くであるがまだその前に引き込まれなければならない。これは、センサが皮膚を十分に貫通されるかまたは全く貫通されない前に、挿入部品を引き込ませることができる。針は、センサが挿入されるべき皮膚に力を及ぼすことができる。皮膚は、この力の作用下で内側に隆起することができる。一般的に知られている装置では、挿入移動の終わり近くで、挿入針は引き込まれる。皮膚の内側への隆起のために、針が急速に消失し始めたときにセンサが完全に挿入されない場合がある。結果として、センサは挿入されていないまたは部分的に挿入され得る。この場合、センサは、挿入部品が引き込まれたときにそれ自体でユーザの皮膚を貫通しなければならない。しかしながら、一般に、センサは、ユーザの皮膚の刺激を最小限に抑えるために柔らかく可撓性とすることができ、その結果、完全な挿入を達成することなく挿入部品が引き込まれたときにセンサがユーザの皮膚に突き刺して前進することができない可能性がある。これは、センサがユーザの皮膚の皮下に完全に挿入されず、挿入時に潜在的に屈曲される可能性をもたらすことがある。したがって、センサは、その機能を実行することができない場合がある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、上述した技術的課題に少なくとも部分的に対処する方法および挿入装置を提供することが望ましい。具体的には、ユーザの体組織への医療装置の確実な挿入を保証しながら、挿入装置の安全で使いやすい取り扱いを可能にする挿入装置が望ましい。
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴を有するユーザの体組織に医療装置を挿入するための方法および挿入装置によって対処される。単独で、あるいは任意の組み合わせで実現されることができる有利な実施形態が、従属請求項ならびに明細書全体に挙げられる。
【0012】
以下において使用される場合、用語「有する(have)」、「備える(comprise)」もしくは「含む(include)」またはこれらの任意の文法的変化形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で、且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つまたは複数のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0013】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在することができることを示す「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回を超えて存在することができるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されない。
【0014】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関していかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関していかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の任意の特徴または任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関していかなる制限も伴わない任意の特徴であるように意図される。
【0015】
本発明の第1の態様では、医療装置をユーザの体組織に挿入するための挿入装置が開示される。
【0016】
本明細書で使用される「医療装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、医療技術の分野、特に医療分析または医療診断の分野で使用するために構成されている任意の要素または物品を指すことができる。医療装置は、少なくとも1つの医療機能を実行するように、および/または治療プロセス、診断プロセス、または別の医療プロセスのうちの1つまたは複数などの少なくとも1つの医療プロセスにおいて使用されるように構成されることができる。
【0017】
例えば、医療装置は、ユーザの体組織に含まれる体液などのユーザの体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの分析物センサとすることができるか、またはそれを含むことができる。分析物センサは、少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に検出する際に使用されるように構成されてもよい。本明細書で使用される「分析物」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ユーザの身体の代謝に関与する化学物質および/または生物学的物質を指すことができる。具体的には、分析物は、代謝産物または2つ以上の代謝産物の組み合わせとすることができる。例として、分析物は、グルコース、ラクテート、トリグリセリド、コレステロールからなる群から選択されることができる。さらに、他の分析物または2つ以上の分析物の組み合わせが検出されることができる。体組織は、具体的には、脂肪組織および/または間質とすることができるか、またはそれらを含むことができる。しかしながら、他の種類の体組織も実現可能である。
【0018】
本明細書で使用される「分析物センサ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの分析物の存在および/または濃度を定性的または定量的に検出することができるセンサを指すことができる。
【0019】
分析物センサは、電気化学分析物センサとすることができる。分析物センサは、少なくとも2つの電極を備えることができる。具体的には、分析物センサは、少なくとも1つの2電極センサを備えることができる。2電極センサは、作用電極などの正確に2つの電極と、対向電極、特に作用電極および複合対向電極/参照電極などの少なくとも1つのさらなる電極とを備えることができる。作用電極は、作用電極パッドと、場合により、その上に配置された少なくとも1つの試験化学物質とを含むことができる。対向電極は、導電性電極パッドを含むことができる。さらに、場合により、1つまたは複数のレドックス材料がその上に配置されてもよい。分析物センサは、電極に電気的に接触するための1つまたは複数のリードをさらに備えることができる。リードは、挿入中または後の時点で、1つまたは複数のポテンショスタットなどの、電流および/または電圧を測定するように適合された1つまたは複数の測定装置などの電子装置ユニットに接続されることができる。好ましくは、リードは、分析物センサの挿入前に電子装置ユニットに既に接続されている。
【0020】
具体的には、分析物センサは、可撓性基板およびその上に配置された電極を有するストリップ形状の分析物センサとすることができる。例として、分析物センサは、5mmから50mmの全長、具体的には7mmから30mmの全長を有することができる。本発明の文脈内の「全長」という用語は、挿入される分析物センサの部分および電子装置ユニットに接続される分析物センサの部分を意味する分析物センサの全長に関する。分析物センサの挿入される部分は、生体内部分とも呼ばれ、分析物センサの電子装置ユニットに接続される部分は、生体外部分とも呼ばれる。好ましくは、生体内部分は、3mmから12mmの範囲の長さを有する。
【0021】
分析物センサは、分析物センサを完全にまたは部分的に覆い、試験化学物質が体組織に移動するのを防ぎ、体液および/または分析物の電極への拡散を可能にする生体適合性膜などの生体適合性カバーをさらに備えてもよい。
【0022】
3電極センサなどの電気化学分析物センサの他の実施形態が実現可能であり得る。例えば、3電極センサは、作用電極および対向電極に加えて、参照電極を備えることができる。
【0023】
別の実施形態では、分析物センサは、光学分析物センサであってもよい。例えば、分析物センサは、その端部にグルコース感受性コーティングを有する可撓性ライトガイドおよび/または内壁もしくは外壁に機能要素を有するチューブ状担体を含んでもよい。分析物センサの他の実施形態も可能であり得る。分析物センサの潜在的な実施形態については、上述した先行技術文献を参照することができる。
【0024】
例えば、医療装置は、少なくとも1つの注入カニューレとすることができるか、またはそれを含むことができる。本明細書で使用される「点滴カニューレ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ユーザの体組織内に薬剤を送達および/または注入するように、特にユーザの体組織内にインスリンを送達および/または注入するように構成された中空管を指すことができる。
【0025】
本明細書で使用される「ユーザ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、人の体組織内のグルコース値などの分析物値を監視すること、および/またはインスリンなどの薬剤を人の体組織内に送達することを意図する人に関する。実施形態では、この用語は、限定されないが、挿入装置を使用する人を特に指すことができる。しかしながら、実施形態では、挿入装置を使用する人は、ユーザとは異なる。例えば、医療装置は、ユーザとは異なる人によってユーザの体組織に挿入されてもよい。例えば、ユーザは、糖尿病などの疾患に罹患している患者であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される「挿入する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ユーザの体組織内に医療装置を経皮的または皮下的に埋め込むおよび/または位置決めする1つまたは複数の動作またはプロセスを指すことができる。分析物センサなどの医療装置は、体組織に完全にまたは部分的に挿入されることができる。医療装置の挿入は、挿入装置を使用することによって実行されることができる。挿入後、医療装置または医療装置の少なくとも一部は、数時間、具体的には1日以上、より具体的には最大1週間、さらにより具体的には最大2週間またはそれ以上などの所定の期間、ユーザの体組織内に留まることができる。医療装置は、ユーザの体液中の分析物を連続的に監視および/または検出するように構成されることができる。
【0027】
本明細書で使用される「挿入装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、医療装置を体組織に挿入するように構成された装置を指すことができる。挿入装置は、例えば、ユーザの皮膚に切開または穿刺を行い、医療装置を体組織内に完全にまたは部分的に移すことによって、体組織内に経皮的または皮下的に医療装置を挿入するように構成されることができる。
【0028】
挿入装置は、
i) 医療装置と、
ii) 医療装置を体組織内に挿入するように構成された挿入部品と、
iii) 挿入部品リトラクタと、
iv) キャップと、
v) 少なくとも1つのランプを備えるガイドスリーブと、
vi) 挿入スリーブと、
vii) 弾性部材と
を備える。
【0029】
医療装置を挿入するために、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブは、遠位位置から近位位置までガイドスリーブに対して移動可能である。ガイドスリーブのランプは、キャップが自身の遠位位置から自身の近位位置に移動するときに、挿入部品リトラクタをガイドスリーブおよび挿入スリーブに対してねじるように構成される。キャップは、自身の近位位置から自身の遠位位置に移動可能であり、これにより、挿入部品リトラクタは、自身の近位位置から自身の遠位位置に移動される。
【0030】
本明細書で使用される「挿入部品」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特にさらなる要素を送達または移送するために、体組織に少なくとも部分的に挿入可能とすることができる任意の要素を指すことができる。挿入部品は、医療装置の挿入を支持するように構成されることができる。挿入部品は、医療装置を体組織に挿入するための先端または鋭利な端部を備えることができる。挿入部品は、挿入カニューレまたは挿入針とすることができるか、またはそれを含むことができる。本明細書で使用される「挿入カニューレ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも部分的にスロット付きとすることができる中空針を指すことができる。医療装置は、挿入カニューレの管腔内など、挿入カニューレ内に受け入れられることができる。本明細書で使用される「挿入針」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、コンパクトな針、具体的にはスロットおよび中空部分を含まない針を指すことができる。医療装置は、挿入針の外面に受け入れられることができる。
【0031】
挿入後、医療装置は、ユーザの体組織内に留まることができる。しかしながら、挿入部品は、医療装置を挿入した後に、ユーザの体組織から挿入装置内に引き込まれることができる。挿入部品を引き込むために、挿入装置は、挿入部品リトラクタを備えることができる。
【0032】
本明細書で使用される「挿入部品リトラクタ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入部品を引き込むように構成された挿入装置の少なくとも1つの要素を指すことができる。挿入部品リトラクタは、挿入移動中に挿入部品を吊り下げ、引き込み移動中にユーザの皮膚から引き抜くように構成されることができる。
【0033】
挿入部品リトラクタと挿入部品との間の係合は緩くてもよい。挿入部品リトラクタと挿入部品との間の係合は、製造プロセス中に確立されてもよい。挿入部品リトラクタは、挿入部品を引き込むように構成された少なくとも1つのフィンガ、グリッパ、フック、ペンチなどを備えることができる。フィンガ、グリッパ、フック、ペンチなどは、挿入部品リトラクタの近位端に配置されることができ、挿入装置が使用されているとき、挿入部品リトラクタの近位端は、ユーザの体組織の方を向くことができる。例えば、挿入部品リトラクタは、挿入部品の周りに対称的に配置された2つ以上のフィンガ、グリッパ、フックまたはペンチを備えてもよい。例えば、挿入装置は、挿入部品に接続された少なくとも1つのプランジャまたはプルロッドを備えてもよい。挿入部品リトラクタは、プランジャまたはプッシュロッドに接続されてもよく、および/または挿入部品を駆動して挿入移動および/または引き込み移動を実行するためにプランジャまたはプルロッドを把持するように構成されてもよい。
【0034】
挿入部品リトラクタは、少なくとも1つのラッチを備えることができる。本明細書で使用される「ラッチ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特に挿入方向に対して垂直に、挿入部品リトラクタの外側に突出する少なくとも1つの要素を指すことができる。ラッチは、挿入部品リトラクタのねじれをガイドするように構成されることができる。ラッチは、挿入スリーブ、ガイドスリーブおよび/またはキャップと相互作用するガイドウイングとして機能することができる。ねじれのガイドは、挿入スリーブ内の挿入部品リトラクタおよびその円筒状の対応物の円筒形状を使用することによって実行されることができる長手方向ガイドとは区別されることができる。具体的には、ラッチは、挿入部品リトラクタのねじれをガイドするために挿入スリーブの溝内を摺動するように構成されることができる。ラッチは、ガイドスリーブのランプなどの挿入装置の他の構成要素と相互作用するように構成されることができる。ラッチは、挿入部品リトラクタの外側から外側に突出することができる。例えば、挿入部品リトラクタは、円筒形本体を形成することができる。ラッチは、挿入部品リトラクタの、特に円筒形本体の側面から突出することができる。一実施形態では、挿入部品リトラクタは、少なくとも2つのラッチを備えることができる。2つのラッチは、挿入部品リトラクタの外側で互いに対向して配置されることができる。ラッチと挿入装置の他の構成要素との相互作用、具体的には、ラッチと挿入スリーブの溝および/またはガイドスリーブのランプとの相互作用は、以下にさらに詳細に概説される。
【0035】
本明細書で使用される「キャップ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入装置の1つまたは複数の構成要素を完全にまたは部分的に囲むように、および/またはこれらの1つまたは複数の構成要素を機械的影響および/または湿度などから保護するように構成された任意の形状の要素を指すことができる。キャップは、挿入部品リトラクタ、ガイドスリーブおよび/または挿入スリーブなどの1つまたは複数のさらなる部品を完全にまたは部分的に囲むおよび/または包囲することができる。本明細書で使用される「少なくとも部分的に包囲する」とも呼ばれる「少なくとも部分的に囲む」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、キャップが挿入装置の1つまたは複数のさらなる構成要素を完全に囲む実施形態、およびキャップが1つまたは複数のさらなる構成要素の少なくとも一部を囲むことができる実施形態を指すことができる。例えば、挿入装置のキャップは、挿入スリーブおよび挿入部品リトラクタを完全に囲むことができる。キャップはまた、ガイドスリーブを少なくとも部分的に囲んでもよく、したがって、ガイドスリーブの近位端を除いてガイドスリーブを完全に覆ってもよい。キャップは、挿入装置のさらなる構成要素を囲むおよび/または包囲するように配置されてもよく、挿入装置の近位側は、キャップによって少なくとも部分的に覆われていなくてもよく、ユーザの皮膚をガイドスリーブに接触させ、挿入装置から挿入部品を移動させることを可能にする。キャップは、近位位置にあるとき、ガイドスリーブの近位端と位置合わせすることができる。近位側は、ユーザの皮膚との接触エリアまたは領域を提供する挿入装置の側とすることができる。遠位側は、近位側の反対側の挿入装置の側とすることができる。
【0036】
キャップは、プラスチック材料、金属材料または厚紙材料のうちの1つまたは複数から作られた剛性キャップなどの剛性キャップとすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0037】
キャップは、具体的には、例えば、円筒軸または延長軸などの軸を中心とした軸方向回転対称性を有することによって、本質的に回転対称とすることができる。本明細書で使用される「本質的に回転対称」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、キャップが完全に回転対称であってもよく、または回転対称である少なくとも1つの部分を含んでもよいが、一方でキャップの他の部分は回転対称性から逸脱する形態を呈してもよいという事実を指すことができる。キャップは、円筒、半球、またはドームとして設計されることができる。キャップは、回転対称でなくてもよい内部構造を備えることができる。キャップの外形はまた、非対称であってもよく、例えば、ユーザの手によって保持されるように人間工学的に成形されてもよい。キャップの内部構造は、挿入スリーブの構造に対応する円筒状または角柱状であってもよい。
【0038】
キャップは、具体的にはキャップの内部構造に少なくとも1つのラッチ要素をさらに備えることができる。ラッチ要素は、挿入装置の構成要素を一緒に保持するように構成されることができる。具体的には、ラッチ要素は、キャップを、ガイドスリーブ、挿入スリーブおよび挿入部品リトラクタ、特に挿入スリーブなどの他の部品のうちの少なくとも1つと連動させることができる。
【0039】
本明細書で使用される「ガイドスリーブ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、囲まれた構成要素の少なくとも1つの移動をガイドするように構成された1つまたは複数の構成要素のエンクロージャを指すことができる。ガイドスリーブは、挿入部品リトラクタおよび/または挿入スリーブを完全にまたは部分的に囲むことができる。ガイドスリーブは、キャップによって部分的に囲まれてもよい。
【0040】
ガイドスリーブは、特に挿入装置のキャップ、特に挿入装置のキャップの内部構造の対称性にしたがって、本質的に回転対称であってもよい。例えば、キャップが円筒軸または延長軸などの軸を中心とした軸方向回転対称性を有することができる場合、ガイドスリーブは、同様の軸方向回転対称性を有することができる。
【0041】
ガイドスリーブは、挿入装置のキャップに対して移動可能であってもよい。例えば、挿入装置を使用する場合、ガイドスリーブは、挿入装置のキャップ内に摺動するように構成されてもよい。ガイドスリーブ、特にガイドスリーブの近位端は、挿入装置が使用されるときにユーザの皮膚と接触することができる。
【0042】
本明細書で使用される「ランプ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの傾斜面を備えるガイドスリーブの要素を指すことができる。ランプは、ガイドスリーブの内側に配置されることができる。具体的には、ランプは、ガイドスリーブによって囲まれた構成要素に面するように配置されることができる。ランプは、ガイドスリーブからガイドスリーブの内部に突出してもよい。ランプは、少なくとも1つのくさび形ランプとすることができるか、またはそれを含むことができる。例えば、ランプは、互いに接触する2つの傾斜面を含むことができ、第1の傾斜面は、第2の傾斜面に対してある角度だけ傾斜されることができる。ランプは、挿入装置の他の構成要素、具体的には挿入部品リトラクタの少なくとも1つのラッチと相互作用するように構成されてもよい。ランプは、ガイドスリーブによって囲まれた構成要素、具体的には、挿入スリーブの溝によって受け入れられてもよい。好ましい一実施形態では、ガイドスリーブは、ガイドスリーブからガイドスリーブの内部に突出する2つのランプを備えてもよい。ガイドスリーブの2つのランプは、具体的には、ガイドスリーブの内部で互いに対向して配置されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「挿入スリーブ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入部品リトラクタを少なくとも部分的に囲むように構成された要素を指すことができる。挿入スリーブ自体は、挿入装置のガイドスリーブおよびキャップによって完全にまたは部分的に包囲されてもよい。
【0044】
挿入スリーブは、角柱状であってもよい。挿入スリーブは、特にキャップおよびガイドスリーブの対称性にしたがって、本質的に回転対称であってもよい。例えば、キャップおよびガイドスリーブは、円筒軸または延長軸などの軸を中心とした軸方向回転対称性を有することができ、挿入スリーブは、同様の軸方向回転対称性を有することができる。挿入スリーブは、挿入部品リトラクタをガイドするように構成されてもよい。例えば、円筒形状の挿入部品リトラクタをガイドするために、挿入スリーブは、回転対称中空中心を備えてもよい。挿入スリーブの残りの部分は、不規則な断面を有してもよい。
【0045】
挿入スリーブは、少なくとも1つのレセプタクルを備えることができる。レセプタクルは、挿入スリーブの遠位端に配置されることができる。挿入スリーブの遠位端は、ユーザの皮膚に対して遠位にある挿入スリーブの一部を指すことができる。レセプタクルは、少なくとも1つの開口部を有することができる。挿入部品および/または挿入部品リトラクタは、少なくとも部分的に開口部を通って延在することができる。本明細書で使用される「少なくとも部分的に延在する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入部品リトラクタおよび/または挿入部品がレセプタクルの開口部を完全に通って延在してもよく、あるいは、挿入部品リトラクタおよび/または挿入部品の一部がレセプタクルの開口部を通って延在してもよいという事実を指すことができる。具体的には、挿入部品、特に挿入部品に固定的に接続されたプランジャは、挿入部品の少なくとも一部が開口部の下方に配置されることができるように、少なくとも部分的に開口部を通って延在してもよく、少なくとも1つの他の部分が開口部の上方に配置されてもよい。この文脈における「開口部の下方」は近位位置を意味し、この文脈における「開口部の上方」は遠位位置を意味し、近位位置および遠位位置は、挿入装置が使用されているときのユーザの皮膚に対して定義される。これは、以下により詳細に定義される。例えば、挿入部品に固定的に接続されたプランジャは、挿入スリーブの開口部を通って延在してもよく、挿入部品の他の部分、具体的には挿入カニューレまたは挿入針は、開口部の下方に配置されてもよく、挿入スリーブによって囲まれてもよい。挿入スリーブは、挿入スリーブの遠位端に開口することができる挿入部品リトラクタ用の1つのレセプタクル、および挿入スリーブの近位端に開口することができる医療装置用の1つのさらなるレセプタクルなどの2つのレセプタクルを備えることができる。近位端は、挿入スリーブの遠位端とは反対側にあることができる。特に、挿入部品リトラクタ用のレセプタクルは、開口部によって医療装置用のさらなるレセプタクルに接続されることができる。
【0046】
挿入スリーブは、少なくとも1つの溝を備えることができる。溝は、挿入部品リトラクタのラッチを、具体的には、挿入部品リトラクタをねじるための回転方式でガイドするように構成されることができる。溝は、ラッチの移動方向を制限することによって挿入部品リトラクタの移動をガイドするように構成されてもよい。本明細書で使用される「溝」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入スリーブのスロット、トレンチカット、および/または開口部のうちの1つまたは複数を指すことができる。溝は、溝が挿入スリーブ内に部分的にのみ切り込まれることができるように、挿入スリーブ内に切り込まれたトレンチであってもよい。代替的および/または追加的に、溝は、溝が挿入スリーブを完全に切断することができるように、挿入スリーブの開口部であってもよい。挿入スリーブの溝は、挿入スリーブの延長軸に本質的に平行に延在することができる。本明細書で使用される「本質的に平行」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、溝が挿入スリーブの延長軸に平行に延在してもよく、あるいは、延長軸から広がる方向に延在してもよいという事実を指すことができる。具体的には、溝は、延長軸に平行に延在してもよく、延長軸に平行な方向から1つまたは複数の位置において変化してもよい。例えば、溝は、少なくとも1つの縁部を含むことができ、したがって、縁部の位置において延長軸から分岐することができる。縁部は、z字形の縁部であってもよい。追加的および/または代替的に、溝は、挿入スリーブの延長軸に対してある角度を中心に傾斜していてもよい。
【0047】
医療装置を挿入するために、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブは、遠位位置から近位位置までガイドスリーブに対して移動可能である。ガイドスリーブは、ユーザの皮膚上に配置されているため、ガイドスリーブは、挿入装置の固定または非移動構成要素と見なすことができる。医療装置、挿入部品、挿入部品リトラクタ、挿入スリーブ、およびキャップなどの他の構成要素は、ガイドスリーブに対してユーザの皮膚に対して近位方向に移動することができる。
【0048】
本明細書で使用される「遠位位置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入部品および/またはキャップが挿入装置の近位側から最も遠い、ユーザに対する挿入装置および/またはその任意の部分の位置を示す位置仕様を指すことができる。具体的には、医療装置を挿入するために、挿入装置は、ユーザの皮膚部位に接触されることができる。遠位位置は、ユーザの皮膚部位に対して距離を置いた位置を指すことができる。遠位位置は、挿入装置および/またはその任意の部分の挿入移動前の初期位置とすることができる。挿入装置の各構成要素は、それ自体のおよび/または個々の遠位位置を有することができる。例えば、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブは、それぞれ独自のおよび/または個々の遠位位置を有することができる。挿入前に、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブは、それらの遠位位置にあってもよく、医療装置をユーザの体組織に挿入する準備ができていてもよい。挿入後、キャップおよび挿入部品リトラクタは、それぞれそれらの遠位位置に戻されてもよく、挿入部品リトラクタが自身の遠位位置に戻されてもよいときに、挿入部品は、体組織から引き込まれてもよい。
【0049】
本明細書で使用される「近位位置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、挿入部品および/またはキャップが挿入装置の近位側に最も近い、ユーザに対する挿入装置および/またはその任意の部分の位置を示す位置仕様を指すことができる。具体的には、医療装置を挿入するために、挿入装置は、ユーザの皮膚部位に接触されることができる。近位位置は、ユーザの皮膚部位に近接している位置を指すことができる。挿入装置の各構成要素は、それ自体のおよび/または個々の近位位置を有することができる。例えば、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブは、それぞれ独自のおよび/または個々の近位位置を有することができる。キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブがそれらの近位位置にある場合、医療装置は、ユーザの体組織に挿入されることができる。医療装置の挿入中、ガイドスリーブは、ユーザの皮膚部位と接触していてもよく、したがって、挿入中、自身の近位位置にあってもよい。
【0050】
挿入部品リトラクタおよび挿入スリーブとともにキャップを自身の遠位位置から自身の近位位置に移動させることは、ユーザの動作によって開始可能であってもよい。具体的には、ユーザの動作は、キャップを近位位置まで、特にユーザの皮膚まで、手動で下向きに押圧することおよび/または押すことなどによって、ユーザがキャップに力を加えることとすることができるか、またはそれを含むことができる。挿入装置は、好ましくは電気的または電気機械的アクチュエータを必要とせずに、好ましくは手で操作されることができる機械的挿入装置であってもよい。しかしながら、他の実施形態も同様に実現可能である。
【0051】
ガイドスリーブのランプは、キャップが自身の遠位位置から自身の近位位置に移動するときに、挿入部品リトラクタをガイドスリーブおよび挿入スリーブに対してねじるように構成される。本明細書で使用される「ねじる」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、回転軸に対する挿入部品リトラクタの回転運動を指すことができる。ねじれは、挿入部品リトラクタ自体の回転運動、例えば、挿入部品リトラクタの円筒形本体の延長軸と一致する回転軸を中心とした回転運動とすることができる。具体的には、挿入部品リトラクタは、本質的に回転対称であってもよく、ねじれは、挿入部品リトラクタの対称軸を中心とした回転運動であってもよい。ねじれは、90°未満、具体的には45°未満、より具体的には15°未満の角度のねじれであってもよい。ねじれが約90°を超える、またはさらには180°を超える角度とすることができる他の実施形態も実現可能である。
【0052】
挿入中、挿入部品リトラクタの自身の近位位置から自身の遠位位置への移動は、キャップの内部構造およびユーザによってキャップに加えられる力によって防止されることができる。内部構造は、挿入部品リトラクタのラッチを受け入れ、挿入中に挿入部品リトラクタの近位位置から遠位位置への移動を防止するように、特にラッチの移動を阻止することによって構成された停止および/または阻止要素とすることができるか、またはそれを含むことができる。挿入中、挿入装置の構成要素は、互いに向かって移動する。挿入部品リトラクタの近位位置への到達前に閉じると、ガイドスリーブのランプは、挿入部品リトラクタのラッチと接触することができる。この状況では、ランプは、ラッチをねじるように構成され、これにより挿入部品リトラクタをねじることができる。具体的には、ガイドスリーブのランプは、ラッチを挿入スリーブの溝内で移動するようにガイドすることによって、挿入部品リトラクタをねじらせるように力を加えるように構成されてもよい。
【0053】
挿入移動は、キャップが自身の近位位置にあるときに完了することができる。キャップは、近位位置にあるとき、ガイドスリーブの近位端と位置合わせすることができる。
【0054】
キャップが、挿入部品リトラクタとともに、自身の近位位置から自身の遠位位置に移動することは、ユーザの動作を軽減することによって開始可能であってもよい。具体的には、ユーザは、キャップに力を加えることを減らすか、または止めることができ、これにより、挿入部品リトラクタとともにキャップの自身の近位位置から自身の遠位位置への移動を開始することができる。本明細書で使用される「軽減する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、動作の適用を完全に停止するプロセス、および力を低減または減少させることなどによって作用の適用を部分的に停止するプロセスを指すことができる。
【0055】
弾性部材は、挿入部品リトラクタを駆動して自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させるように構成されることができる。具体的には、弾性部材は、医療装置の挿入後に挿入部品リトラクタを引き込むように構成されることができる。本明細書で使用される「弾性部材」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、その静止位置から圧縮または伸張されると、圧縮または伸張に対抗する力を加えることができる要素を指すことができる。弾性部材は、挿入装置の1つまたは複数のさらなる要素に力を加えるように構成されてもよい。具体的には、弾性部材は、医療装置が体組織に挿入されるときに圧縮または伸張されてもよく、あるいは、弾性部材は、挿入装置の使用前に、予張力がかけられた状態など、既に圧縮または伸張状態にあってもよい。弾性部材は、少なくとも1つのばねとすることができるか、またはそれを含むことができる。ばねは、挿入部品リトラクタに接続されてもよい。ばねは、特に挿入スリーブと挿入部品リトラクタとの間で予張力がかけられてもよい。特に、弾性部材、好ましくはばねは、挿入スリーブの遠位レセプタクル内に配置される。ユーザがキャップに力を加える限り、ばねは、挿入部品リトラクタおよびキャップをそれぞれそれらの近位位置からそれらの遠位位置に移動させることができない。ばねは、キャップに加えられた力を解放することによって作動可能であってもよい。具体的には、ばねは、挿入装置に加えられる力が減少したときに、挿入部品リトラクタのラッチが少なくとも1つの溝の少なくとも1つの縁部を越えて、すなわち挿入部品リトラクタの近位位置に移動した状況で、挿入部品リトラクタおよびキャップの近位位置から遠位位置への移動を駆動するように構成されてもよい。遠位位置では、ラッチは、挿入スリーブの溝から解放されてもよく、挿入部品リトラクタは、キャップの内部構造によって受け入れられるようにさらにねじってもよい。挿入部品は、体組織から完全に引き込まれてもよい。
【0056】
上述したように、挿入装置は、挿入部品に固定的に接続された少なくとも1つのプランジャを備えてもよい。プランジャは、針ヘッドとも称されることがある。挿入部品リトラクタは、プランジャに接続されてもよい。挿入部品リトラクタは、自身の近位位置から自身の遠位位置に移動されるときにプランジャと係合するように構成されてもよい。具体的には、挿入部品リトラクタは、フィンガ、グリッパ、フック、ペンチなどを使用することによってプランジャと係合することができる。引き込み中、挿入部品リトラクタは、自身の近位位置から自身の遠位位置に移動することができ、これによりプランジャに係合し、プランジャは、プランジャと固定的に係合した挿入部品とともに近位位置から遠位位置に移動することができる。したがって、挿入部品は、挿入部品リトラクタが自身の近位位置から自身の遠位位置に移動することによって引き込まれることができる。
【0057】
挿入部品の挿入後且つ挿入部品の引き込みが開始される前に、少なくとも100msの短い時間遅延が発生することがある。特に、挿入装置がユーザの皮膚部位に適用されると、皮膚は、通常、挿入装置の内部に向かって隆起する。挿入装置、特に挿入部品が近位位置にあるときと、挿入装置、特に挿入部品が遠位位置に戻されるときと、の間の短い時間遅延は、隆起した皮膚に圧力を加えることを可能にする。これにより、医療装置とともに挿入部品を皮膚内に摺動させることが容易になり、ユーザの皮膚を挿入部品および医療装置の全長にわたって摺動させることが可能になる。
【0058】
本発明にかかる挿入装置は、従来技術から知られている挿入装置と比較して皮膚をより緊張させることを可能にする。これは、ユーザの体組織への医療装置の挿入がより確実になり得るという効果を有する。したがって、本発明にかかる挿入装置は、医療装置の安全で使いやすい挿入を保証することができる。
【0059】
挿入装置は、少なくとも1つの安全ロックをさらに備えてもよい。本明細書で使用される用語「安全ロック」は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの安全機能を実行するように構成された装置または装置の組み合わせを指すことができる。安全ロックは、特に医療装置の挿入および挿入部品の引き込み後に、挿入装置の再使用を防止するように構成されることができる。安全ロックは、挿入装置の望ましくない再作動を防止するように構成されてもよい。安全ロックは、挿入装置をロックするように構成されてもよく、ロックされた挿入装置では、望ましくない再使用が防止されてもよい。
【0060】
安全ロックは、挿入装置の異なる構成要素に取り付けられる1つまたは複数の構成要素を備えることができる。例えば、少なくとも1つの安全ノッチが挿入スリーブに配置され、挿入部品リトラクタのラッチを受け入れるように構成されてもよい。安全ノッチは、溝がラッチおよび挿入部品リトラクタを自身の近位位置から自身の遠位位置にガイドするときにラッチが安全ノッチ内に受け入れられることができるように、挿入スリーブの溝に隣接して配置されてもよい。ラッチは、その再移動が防止されることができるように安全ノッチによって受け入れられてもよい。具体的には、安全ノッチは、ユーザが挿入装置のキャップにもう一度力を加えると、ラッチおよび挿入部品リトラクタの再移動を阻止することができる。挿入部品リトラクタの再移動を防止することにより、同時に挿入部品の再移動が防止される。したがって、意図しない傷害のリスクが最小限に抑えられることができる。
【0061】
挿入装置は、センサパッチを受け入れ、センサパッチをユーザの皮膚部位に取り付けるようにさらに構成されてもよい。挿入装置は、特にユーザの体組織への挿入部品の挿入と同時に、センサパッチをユーザの皮膚部位に取り付けるおよび/または配置するように構成されてもよい。特に、センサパッチは、挿入スリーブのレセプタクル、特に挿入スリーブの近位に配置されたレセプタクルに含まれてもよい。したがって、センサパッチは、挿入スリーブとともに移動し、挿入スリーブが自身の近位位置にあるときに挿入スリーブから解放されるように構成されてもよい。本明細書で使用される「センサパッチ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ユーザの皮膚部位に取り付けられるように構成された要素を指すことができる。特に、センサパッチは、ユーザの皮膚部位に取り付けられるように構成された平坦なベースを有することができる。センサパッチは、医療装置、特に分析物センサに接続されるように構成されることができる電子装置ユニットを備えることができる。電子装置ユニットは、分析物センサおよび挿入部品と比較して大きな寸法を有することができる。挿入部品の直径は、1mmと大きくてもよく、センサパッチは、最大2から4cmまで延在してもよい。センサパッチは、プラスタなどのユーザの皮膚部位に取り付けるための少なくとも1つの接着手段を備えることができる。センサパッチは、医療装置がユーザの体組織に挿入された後、ユーザの皮膚部位に取り付けられたままであってもよい。挿入部品は、挿入装置によって受け入れられたセンサパッチを通って突出してもよい。挿入部品リトラクタは、医療装置の挿入前にセンサパッチ内の挿入部品を把持するように構成されてもよい。
【0062】
特に、挿入装置がセンサパッチを備える場合、医療装置の挿入は容易になり、より信頼性が高くなる。挿入装置が皮膚に適用されると、皮膚は、典型的には、挿入装置の内部に向かって隆起する。挿入装置、特に挿入部品が近位位置にあるときと、挿入装置、特に挿入部品が遠位位置に戻されるときと、の間の短い時間遅延は、センサパッチによって隆起した皮膚に圧力を加えることを可能にする。これは、皮膚の内側への隆起、ならびに挿入部品による内側への隆起を補償する。したがって、医療装置とともに挿入部品を皮膚内に摺動させることが容易になる。
【0063】
本発明のさらなる態様では、上記で開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つにかかる少なくとも1つの挿入装置を使用することによって、医療装置をユーザの体組織に挿入するための方法が開示される。したがって、可能な定義および選択肢については、本発明にかかる挿入装置の開示を参照することができる。本方法は、具体的には所与の順序で実行されることができる以下のステップを含む。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含むことができる。
【0064】
本方法は、
a 挿入装置のキャップに力を加えることによって医療装置をユーザの体組織に挿入し、これにより挿入部品、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブをガイドスリーブに対して遠位位置から近位位置に移動させることと、
b) キャップに加えられた力を解放することによって挿入部品を引き込み、これによりキャップを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させ、これにより挿入部品リトラクタを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させることと
を含む。
【0065】
挿入部品リトラクタおよび挿入スリーブとともにキャップを自身の遠位位置から自身の近位位置に移動させることは、ユーザの動作によって、具体的には挿入装置のキャップに力を加えることによって開始されることができる。力は、医療装置の挿入前および挿入中に挿入装置のユーザによって加えられることができる。医療装置の挿入は、ガイドスリーブ、特にガイドスリーブの近位端をユーザの皮膚、特に挿入部位に接触させることによって開始されることができる。したがって、本方法のステップa)は、挿入装置をユーザの皮膚部位に適用すること、特に、挿入装置のガイドスリーブをユーザの皮膚部位に適用することを含むことができる。
【0066】
挿入前に、挿入スリーブは、自身の遠位位置にあってもよく、自身の遠位位置においてガイドスリーブによって少なくとも部分的に包囲されてもよい。キャップは、挿入スリーブに、具体的には挿入スリーブの遠位端に接触していてもよい。挿入前に、挿入部品リトラクタは、その開始位置にあってもよく、挿入スリーブによって少なくとも部分的に包囲されてもよい。挿入部品リトラクタの開始位置は、挿入スリーブに対して近位位置にある。弾性部材は、挿入部品リトラクタと挿入スリーブとの間にあってもよく、最大張力であってもよい。挿入部品リトラクタは、挿入スリーブの溝内の縁部によって受け入れられることができる少なくとも1つのラッチによってこの位置にロックされてもよい。
【0067】
ユーザがキャップに力を加えると、キャップに力を加えるユーザの腕は、近位方向に、特にユーザの皮膚に向かって加速することができる。実施形態では、近位位置において加速するために、初期力に打ち勝つことが必要な場合がある。初期力に打ち勝った後、挿入部品、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブをガイドスリーブに対して移動させるのに必要な力は、初期力よりも低くてもよい。挿入スリーブが自身の近位位置に到達する直前に、挿入部品リトラクタのラッチは、ガイドスリーブの少なくとも1つのランプと接触することができ、ランプは、特にガイドスリーブの内側に特に突出することができる。挿入部品リトラクタは、ランプとラッチとの相互作用によってねじられてもよい。ラッチは、挿入スリーブの溝内の縁部から緩く落下し、キャップの内部構造に接触することができる。ユーザの腕は、挿入スリーブ、特に実施形態では挿入装置に含まれるセンサパッチとユーザの皮膚との間の接触によって停止されることができる。腕の質量の運動エネルギーのために、この停止は、挿入スリーブ、特に、実施形態では挿入装置に含まれるセンサパッチの、ユーザの皮膚に対する圧力を引き起こす可能性がある。
【0068】
ステップb)は、キャップに加えられる力を軽減することを含んでもよい。キャップに加えられた力を解放することによってトリガされて、挿入部品は、ユーザの皮膚部位から戻されることができる。ユーザが力を解放すると、弾性要素、特にばねは、挿入部品リトラクタ、ひいてはキャップを遠位位置に移動させることができる。ラッチは、挿入部品がユーザの体組織から完全に引き込まれるまで、挿入スリーブの溝に沿って摺動することができる。ラッチは、キャップの内部構造によって強制されてもよく、ばねは、ラッチがそれ以上移動することができない位置に、具体的には挿入部品リトラクタがそれ以上近位方向に移動することができない位置に、挿入部品リトラクタをさらにねじるように力を加えてもよい。ラッチが安全ロック、より具体的には挿入スリーブの安全ノッチによって受け入れられることができるため、挿入部品リトラクタは、それ以上近位方向に移動することができない。したがって、医療装置の挿入後、挿入部品は、挿入装置の安全ロックによって安全にロックされることができる。
【0069】
本発明にかかる挿入装置は、既知の挿入装置と比較して移動の順序を変更することができる。既知の挿入装置では、挿入部品は、医療装置が挿入される皮膚に力を加えることができる。皮膚は、この力を受けて内側に隆起する。挿入移動の端部付近の既知の挿入装置では、挿入部品が引き込まれる。しかしながら、挿入部品の攻撃下での皮膚の内側への隆起および皮膚の凹みのために、挿入部品が急速に消失し始めると、医療装置は、完全に挿入されない可能性がある。したがって、結果は、非挿入または部分的に挿入されただけの医療装置とすることができる。本発明にかかる挿入装置は、挿入要素が挿入装置から皮膚内に全長にわたって依然として突出している間に、特にセンサパッチによって皮膚に圧力を加えることによって皮膚のこの凹みを補償する。これは、ユーザの体組織への医療装置の確実な挿入を保証することができる。この後、挿入部品は、引き込まれることができる。
【0070】
実施形態では、センサパッチを備える本発明の挿入装置を使用することによって医療装置をユーザの体組織に挿入するための方法は、以下のステップを含む:
a1)挿入装置、特にガイドスリーブの近位端をユーザの皮膚部位に接触させるステップ、
a)挿入装置のキャップに力を加えることによって医療装置をユーザの体組織に挿入し、これにより挿入部品、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブをガイドスリーブに対して遠位位置から近位位置に移動させるステップ、
b1)センサパッチを用いてユーザの皮膚部位に圧力を加えるステップ、
b)キャップに加えられた力を解放することによって挿入部品を引き込み、これによりキャップを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させ、これにより挿入部品リトラクタを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させるステップ。
【0071】
本発明にかかる方法および装置は、既知の方法および装置を超える多数の利点を提供する。具体的には、本発明にかかる挿入装置は、ユーザがユーザの体組織からの挿入部品の引き込みを起動させることを可能にすることができ、したがって、ユーザの体組織への医療装置の挿入の信頼性を高めることができる。
【0072】
要約すると、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態を想定することができる。
【0073】
実施形態1 医療装置をユーザの体組織内に挿入するための挿入装置であって、
i) 医療装置と、
ii) 医療装置を体組織内に挿入するように構成された挿入部品と、
iii) 挿入部品リトラクタと、
iv) キャップと、
v) 少なくとも1つのランプを備えるガイドスリーブと、
vi) 挿入スリーブと、
vii) 弾性部材と
を備え、
医療装置を挿入するために、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブが、ガイドスリーブに対して遠位位置から近位位置に移動可能であり、ガイドスリーブのランプが、キャップが自身の遠位位置から自身の近位位置に移動するときに挿入部品リトラクタをガイドスリーブおよび挿入スリーブに対してねじるように構成され、キャップが自身の近位位置から自身の遠位位置に移動可能であり、これにより挿入部品リトラクタが自身の近位位置から自身の遠位位置に移動される、挿入装置。
【0074】
実施形態2 キャップが、挿入部品リトラクタおよび挿入スリーブとともに、自身の遠位位置から自身の近位位置に移動することが、ユーザの動作によって開始可能である、実施形態1に記載の挿入装置。
【0075】
実施形態3 キャップが、挿入部品リトラクタとともに、キャップの近位位置から遠位位置に移動することが、ユーザの動作を軽減することによって開始可能である、実施形態1または2のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0076】
実施形態4 挿入部品リトラクタの近位位置への到達前に、ガイドスリーブのランプが挿入部品リトラクタのラッチと接触し、ランプがラッチをねじるように構成され、これにより挿入部品リトラクタをねじる、実施形態1から3のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0077】
実施形態5 挿入スリーブが少なくとも1つの溝を備え、溝が挿入部品リトラクタのラッチをガイドするように構成され、溝が少なくとも1つの縁部を備える、実施形態4に記載の挿入装置。
【0078】
実施形態6 ガイドスリーブのランプが、少なくとも1つのラッチをガイドして挿入スリーブの溝内で移動させることによって、挿入部品リトラクタを強制的にねじらせるように構成される、実施形態5に記載の挿入装置。
【0079】
実施形態7 弾性部材が、挿入部品リトラクタを駆動して自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させるように構成され、弾性部材が少なくとも1つのばねを備え、ばねが挿入部品リトラクタに接続され、ばねに予張力がかけられ、キャップに加えられた力を解放することによって作動可能である、実施形態1から6のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0080】
実施形態8 少なくとも1つのばねが、挿入部品リトラクタの自身の近位位置から自身の遠位位置への移動を駆動し、これによりキャップの自身の近位位置から自身の遠位位置への移動を駆動するように構成される、実施形態7に記載の挿入装置。
【0081】
実施形態9 キャップが近位位置にあるとき、ガイドスリーブの近位端と位置合わせする、実施形態1から8のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0082】
実施形態10 挿入装置が、少なくとも1つの安全ロックをさらに備え、安全ロックが、自身の遠位位置に移動された後の挿入部品リトラクタの再移動を防止するように構成される、実施形態1から9のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0083】
実施形態11 医療装置が、ユーザの体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの分析物センサを備える、実施形態1から10のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0084】
実施形態12 少なくとも1つの分析物センサが、少なくとも1つの2電極センサを備える、実施形態11に記載の挿入装置。
【0085】
実施形態13 挿入装置が、センサパッチを備える、実施形態1から12のいずれか一つに記載の挿入装置。
【0086】
実施形態14 センサパッチが、ユーザの皮膚部位に取り付けられるように構成された平坦なベースを備える、実施形態13に記載の挿入装置。
【0087】
実施形態15 挿入装置が、センサパッチによってユーザの皮膚部位に圧力を加えるように構成される、実施形態13または14に記載の挿入装置。
【0088】
実施形態16 実施形態1から15のいずれか一つに記載の少なくとも1つの挿入装置を使用することにより、ユーザの体組織に医療装置を挿入するための方法であって、
a) 挿入装置のキャップに力を加えることによって医療装置をユーザの体組織に挿入し、これにより挿入部品、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブをガイドスリーブに対して遠位位置から近位位置に移動させることと、
b) キャップに加えられた力を解放することによって挿入部品を引き込み、これによりキャップを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させ、これにより挿入部品リトラクタを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させることと
を含む、方法。
【0089】
実施形態17 実施形態1から12のいずれか一つに記載の少なくとも1つの挿入装置を使用することにより、ユーザの体組織に医療装置を挿入するための方法であって、挿入装置がセンサパッチを備え、方法が、以下のステップ:
a1)挿入装置、特にガイドスリーブの近位端をユーザの皮膚部位に接触させるステップと、
a)挿入装置のキャップに力を加えることによって医療装置をユーザの体組織に挿入し、これにより挿入部品、キャップ、挿入部品リトラクタ、および挿入スリーブをガイドスリーブに対して遠位位置から近位位置に移動させるステップと、
b1)センサパッチを用いてユーザの皮膚部位に圧力を加えるステップと、
b)キャップに加えられた力を解放することによって挿入部品を引き込み、これによりキャップを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させ、これにより挿入部品リトラクタを自身の近位位置から自身の遠位位置に移動させるステップと
を含む、方法。
【0090】
実施形態18 挿入部品リトラクタおよび挿入スリーブとともにキャップを自身の遠位位置から自身の近位位置に移動させることが、ユーザの動作によって開始される、実施形態16または17に記載の方法。
【0091】
実施形態19 キャップが、挿入部品リトラクタとともに、キャップの近位位置から遠位位置に移動することが、ユーザの動作を軽減することによって開始される、実施形態16から18のいずれか一つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0092】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。ここで、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方式で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。ここで、これらの図面における同一の参照符号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
図では以下のとおりである:
【0093】
【
図1A】本発明にかかる挿入装置の実施形態の長手方向断面図を示している。
【
図1B】本発明にかかる挿入装置の実施形態の断面図を示している。
【
図1C】本発明にかかる挿入装置の実施形態の長手方向断面図を示している。
【
図2】挿入部品リトラクタの例示的な実施形態を斜視図で示している。
【
図3】キャップの例示的な実施形態を斜視図で示している。
【
図4】ガイドスリーブの例示的な実施形態を斜視図で示している。
【
図5】挿入スリーブの例示的な実施形態を斜視図で示している。
【
図6A】医療装置の挿入中の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図6B】医療装置の挿入中の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図6C】医療装置の挿入中の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図7A】挿入部品の引き込み後の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図7B】挿入部品の引き込み後の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図7C】挿入部品の引き込み後の挿入装置の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【
図8】医療装置をユーザの体組織に挿入するための方法の実施形態のフローチャートを示している。
【
図9A】医療装置の挿入中の挿入装置の正中面における長手方向断面図を示している。
【
図9B】医療装置の挿入中の挿入装置の正中面における長手方向断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0094】
図1Aから
図1Cは、医療装置112をユーザの体組織に挿入するための本発明にかかる挿入装置110の例示的な実施形態を示している。
図1Aにおいて、挿入装置110は、長手方向断面図で示されており、長手方向断面図は、挿入装置110の正中面を通過する。
図1Bには、断面図が示されている。
図1Cには、挿入装置110の正中面の前方の長手方向断面図が示されている。
図1Aから
図1Cは、医療装置112の挿入前の挿入装置110を示している。
【0095】
医療装置112は、医療技術の分野、特に医療分析または医療診断の分野で使用するように構成されている任意の要素または物品とすることができる。医療装置112は、少なくとも1つの医療機能を実行するように、および/または治療プロセス、診断プロセス、または別の医療プロセスのうちの1つまたは複数などの少なくとも1つの医療プロセスにおいて使用されるように構成されることができる。
【0096】
例えば、医療装置112は、ユーザの体組織に含まれる体液などのユーザの体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの分析物センサ114とすることができるか、またはそれを含むことができる。分析物センサ114は、少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に検出する際に使用されるように構成されてもよい。分析物は、ユーザの身体の代謝に関与する化学物質および/または生物学的物質とすることができる。具体的には、分析物は、代謝産物または2つ以上の代謝産物の組み合わせとすることができる。例として、分析物は、グルコース、ラクテート、トリグリセリド、コレステロールからなる群から選択されることができる。さらに、他の分析物または2つ以上の分析物の組み合わせが検出されることができる。体組織は、具体的には、脂肪組織および/または間質とすることができるか、またはそれらを含むことができる。しかしながら、他の種類の体組織も実現可能である。
【0097】
分析物センサ114は、少なくとも1つの分析物の存在および/または濃度を定性的または定量的に検出することができるセンサであってもよい。例えば、分析物センサ114は、電気化学分析物センサであってもよい。分析物センサ114は、少なくとも2つの電極を備えてもよい。具体的には、分析物センサ114は、少なくとも1つの2電極センサを備えてもよい。2電極センサは、作用電極などの正確に2つの電極と、対向電極、特に作用電極および複合対向電極/参照電極などの少なくとも1つのさらなる電極とを備えることができる。作用電極は、作用電極パッドと、場合により、その上に配置された少なくとも1つの試験化学物質とを含むことができる。対向電極は、導電性電極パッドを含むことができる。さらに、場合により、1つまたは複数のレドックス材料がその上に配置されてもよい。分析物センサ114は、電極に電気的に接触するための1つまたは複数のリードをさらに備えることができる。リードは、挿入中または後の時点で、1つまたは複数のポテンショスタットなどの、電流および/または電圧を測定するように適合された1つまたは複数の測定装置などの電子装置ユニット116に接続されることができる。好ましくは、リードは、分析物センサ114の挿入前に電子装置ユニット116に既に接続されている。
【0098】
具体的には、分析物センサ114は、可撓性基板およびその上に配置された電極を有するストリップ形状の分析物センサとすることができる。例として、分析物センサ114は、5mmから50mmの全長、具体的には7mmから30mmの全長を有することができる。
【0099】
分析物センサ114は、分析物センサ114を完全にまたは部分的に覆い、試験化学物質が体組織に移動するのを防ぎ、体液および/または分析物の電極への拡散を可能にする生体適合性膜などの生体適合性カバーをさらに備えてもよい。
【0100】
3電極センサなどの電気化学分析物センサ114の他の実施形態が実現可能であり得る。例えば、3電極センサは、作用電極および対向電極に加えて、参照電極を備えることができる。
【0101】
別の実施形態では、分析物センサ114は、光学分析物センサであってもよい。例えば、分析物センサ114は、その端部にグルコース感受性コーティングを有する可撓性ライトガイドおよび/または内壁もしくは外壁に機能要素を有するチューブ状担体を含んでもよい。分析物センサ114の他の実施形態も可能であり得る。分析物センサ114の潜在的な実施形態については、上述した先行技術文献を参照することができる。
【0102】
ここに示されていない別の実施形態では、例えば、医療装置112は、少なくとも1つの注入カニューレとすることができるか、またはそれを含むことができる。注入カニューレは、ユーザの体組織内に薬剤、特にインスリンを送達および/または注入するように、特にユーザの体組織内にインスリンを送達および/または注入するように構成された中空管とすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0103】
ユーザは、挿入装置110を使用する人とすることができる。ユーザは、人の体組織内のグルコース値などの分析物値を監視すること、および/またはインスリンなどの薬剤を人の体組織に送達することを意図している人であってもよい。例えば、ユーザは、糖尿病などの疾患に罹患している患者であってもよい。
【0104】
医療装置112の挿入は、医療装置112をユーザの体組織内に経皮的または皮下的に埋め込むことおよび/または位置決めすることのうちの1つまたは複数を含むことができる。分析物センサ114などの医療装置112は、体組織に完全にまたは部分的に挿入されることができる。医療装置112の挿入は、挿入装置110を使用することによって実行されることができる。挿入装置110は、医療装置112を体組織に挿入するように構成されることができる。挿入装置110は、例えば、ユーザの皮膚に切開または穿刺を行い、医療装置112を体組織内に完全にまたは部分的に移動させることによって、医療装置112を体組織内に経皮的または皮下的に挿入するように構成されることができる。挿入後、医療装置112または医療装置112の少なくとも一部は、数時間、具体的には1日以上、より具体的には最大1週間、さらにより具体的には最大2週間またはそれ以上などの所定の期間、ユーザの体組織内に留まることができる。医療装置112は、ユーザの体液中の分析物を連続的に監視および/または検出するように構成されることができる。
【0105】
挿入装置110は、挿入部品118と、挿入部品リトラクタ120と、キャップ122と、少なくとも1つのランプ126を備えるガイドスリーブ124と、挿入スリーブ128と、弾性部材130とを備える。
【0106】
挿入部品118は、医療装置112を体組織に挿入するように構成される。挿入部品118は、特にさらなる要素を送達または移送するために、体組織内に少なくとも部分的に挿入可能であってもよい。挿入部品118は、医療装置112の挿入を支持するように構成されてもよい。挿入部品118は、医療装置112を体組織に挿入するための先端または鋭利な端部を備えることができる。挿入部品118は、挿入カニューレまたは挿入針とすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0107】
上記で概説したように、挿入後、医療装置112は、ユーザの体組織内に留まることができる。しかしながら、挿入部品118は、医療装置112を挿入した後に、ユーザの体組織から挿入装置110内に引き込まれることができる。挿入部品118を引き込むために、挿入装置110は、挿入部品リトラクタ120を備えることができる。挿入部品リトラクタ120は、挿入移動中に挿入部品118を吊り下げ、引き込み移動中にユーザの皮膚からそれを引き抜くように構成されることができる。挿入部品リトラクタ120と挿入部品118との間の係合は緩くてもよい。挿入部品リトラクタ120と挿入部品118との間の係合は、製造プロセス中に確立されてもよい。
【0108】
図2は、挿入部品リトラクタ120の例示的な実施形態を斜視図で示している。
【0109】
挿入部品リトラクタ120は、挿入部品118を引き込むように構成された少なくとも1つのフィンガ、グリッパ、フック、ペンチなどを備えることができる。例えば、挿入部品リトラクタ120は、挿入部品118の周りに対称的に配置された2つ以上のフィンガ、グリッパ、フックまたはペンチを備えてもよい。フィンガ、グリッパ、フック、ペンチなどは、挿入部品リトラクタ120の近位端に配置されることができ、挿入装置110が使用されているとき、挿入部品リトラクタ120の近位端は、ユーザの体組織の方を向くことができる。例えば、
図2に示す例示的な実施形態では、挿入部品リトラクタ120は、3つのグリッパ132を備えることができる。グリッパ132は、挿入部品リトラクタ120の近位端134に配置されてもよい。グリッパ132は、挿入部品118の周りに対称的に配置されてもよい。例えば、挿入装置110は、挿入部品118に接続された少なくとも1つのプランジャ119を備えてもよい。挿入部品リトラクタ120は、プランジャ119に接続されてもよく、および/または挿入部品118を駆動して挿入移動および/または引き込み移動を実行するためにプランジャ119を把持するように構成されてもよい。具体的には、グリッパ132は、以下にさらに詳細に概説されるように、特に接続されることによって、および/またはプランジャ119を把持することによって、挿入部品118を引き込むように構成されることができる。
【0110】
挿入部品リトラクタ120は、少なくとも1つのラッチ136をさらに備えることができる。ラッチ136は、特に挿入方向138に対して垂直に、挿入部品リトラクタ120の外側に突出する少なくとも1つの要素とすることができる。挿入部品リトラクタ120は、円筒形本体を形成することができる。円筒形本体は、延長軸160に対して同心円状に配置されることができる。ラッチ116は、円筒形本体の側面から外側に突出することができる。具体的には、ラッチ116は、挿入方向138に対して垂直に突出してもよく、挿入方向は、延長軸160と本質的に平行であってもよい。
【0111】
ラッチ136は、挿入部品リトラクタ120のねじれをガイドするように構成されることができる。ラッチ136は、挿入スリーブ128、ガイドスリーブ124および/またはキャップ122と相互作用するガイドウイングとして機能することができる。ねじれのガイドは、挿入スリーブ128内の挿入部品リトラクタ120およびその円筒状の対応物の円筒形状を使用することによって実行されることができる長手方向ガイドとは区別されることができる。具体的には、ラッチ138は、挿入部品リトラクタ120のねじれをガイドするために挿入スリーブ128の溝140内を摺動するように構成されることができる。ラッチ138は、ガイドスリーブ124のランプ126などの挿入装置110の他の構成要素と相互作用するように構成されることができる。
図2の実施形態では、挿入部品リトラクタ120は、少なくとも2つのラッチ136を備えることができる。2つのラッチ136は、挿入部品リトラクタ120の外側で互いに対向して配置されることができる。ラッチ136と挿入装置110の他の構成要素との相互作用、具体的には、ラッチ136と挿入スリーブ128の溝140および/またはガイドスリーブ124のランプ126との相互作用は、以下にさらに詳細に概説される。
【0112】
図1Aから
図1Cに示すように、キャップ122は、挿入装置110の1つまたは複数の構成要素を完全にまたは部分的に囲むように、および/または機械的影響および/または湿度などからこれらの1つまたは複数の構成要素を保護するように構成された任意の形状の要素とすることができる。
図3は、キャップ122の例示的な実施形態を斜視図で示している。キャップ122は、挿入部品リトラクタ120、ガイドスリーブ124、および/または挿入スリーブ128などの1つまたは複数のさらなる部品を完全にまたは部分的に囲むおよび/または包囲することができる。例えば、キャップ122は、挿入スリーブ128および挿入部品リトラクタ120を完全に囲むことができる。キャップ122はまた、ガイドスリーブ124を少なくとも部分的に囲んでもよく、したがって、ガイドスリーブ124の近位端142を除いてガイドスリーブ124を完全に覆ってもよい。キャップ122は、挿入装置110のさらなる構成要素を囲むおよび/または包囲するように配置されてもよく、挿入装置110の近位側144は、キャップ122によって少なくとも部分的に覆われなくてもよく、ユーザの皮膚をガイドスリーブ124に接触させ、挿入装置110の外側で挿入部品118を移動させることを可能にする。キャップ122は、自身の近位位置146にあるとき、ガイドスリーブ124の近位端142と位置合わせすることができる。近位側144は、ユーザの皮膚との接触エリアまたは領域を提供する挿入装置110の側とすることができる。遠位側148は、近位側144の反対側の挿入装置110の側とすることができる。
【0113】
キャップ122は、プラスチック材料、金属材料または厚紙材料のうちの1つまたは複数から作られた剛性キャップなどの剛性キャップとすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0114】
キャップ122は、具体的には、例えば、円筒軸または延長軸160などの軸を中心とした軸方向回転対称性を有することによって、本質的に回転対称とすることができる。キャップ122は、円筒、半球、またはドームとして設計されることができる。キャップ122は、回転対称でなくてもよい内部構造150を備えることができる。キャップ122の外形はまた、非対称であってもよく、例えば、ユーザの手によって保持されるように人間工学的に成形されてもよい。キャップ122の内部構造150は、挿入スリーブ128の構造に対応する円筒状または角柱状であってもよい。
【0115】
キャップ122は、具体的にはキャップ122の内部構造150に少なくとも1つのラッチ要素152をさらに備えることができる。ラッチ要素152は、挿入装置110の構成要素を一緒に保持するように構成されることができる。具体的には、ラッチ要素152は、キャップ122を、ガイドスリーブ124、挿入スリーブ128、および挿入部品リトラクタ120、特に挿入スリーブ128などの他の部品の少なくとも一方と連動させることができる。
【0116】
図1Aから
図1Cに示すように、ガイドスリーブ124は、囲まれた構成要素の少なくとも1つの移動をガイドするように構成された1つまたは複数の構成要素のエンクロージャとすることができる。ガイドスリーブ124は、挿入部品リトラクタ120および/または挿入スリーブ128を完全にまたは部分的に囲むことができる。ガイドスリーブ124は、キャップ122によって部分的に囲まれてもよい。
【0117】
図4は、ガイドスリーブ124の例示的な実施形態を斜視図で示している。ガイドスリーブ124は、具体的にはキャップ122の、特にキャップ122の内部構造の対称性にしたがって、本質的に回転対称であってもよい。例えば、キャップ122が円筒軸または延長軸160などの軸の周りに軸方向回転対称性を有することができる場合、ガイドスリーブ124は、同様の軸方向回転対称性を有することができる。
【0118】
ガイドスリーブ124は、キャップ122に対して移動可能であってもよい。例えば、挿入装置110を使用する場合、ガイドスリーブ124は、キャップ122内に摺動するように構成されてもよい。ガイドスリーブ124、特にガイドスリーブ124の近位端142は、挿入装置110が使用されるときにユーザの皮膚と接触することができる。
【0119】
ガイドスリーブ124のランプ126は、少なくとも1つの傾斜面を備えることができる。ランプ126は、ガイドスリーブ124の内側に配置されることができる。具体的には、ランプ126は、ガイドスリーブ124によって囲まれた構成要素に面するように配置されることができる。ランプ126は、ガイドスリーブ124からガイドスリーブ124の内部に突出してもよい。ランプ126は、少なくとも1つの楔形ランプとすることができるか、またはそれを含むことができる。例えば、ランプ126は、互いに接触する2つの傾斜面を含むことができ、第1の傾斜面は、第2の傾斜面に対してある角度だけ傾斜されることができる。ランプ126は、挿入装置110の他の構成要素、具体的には挿入部品リトラクタ120の少なくとも1つのラッチ136と相互作用するように構成されてもよい。ランプ126は、ガイドスリーブ124によって囲まれた構成要素、具体的には、挿入スリーブ128の溝140によって受け入れられてもよい。
図4において、ガイドスリーブ124は、2つのランプ126を備えることができる。ランプ126の数は、ラッチ136の数に対応することができる。ランプ126は、ガイドスリーブ124の内部に互いに対向して配置されてもよい。
【0120】
図1Aから
図1Cに示すように、挿入スリーブ128は、挿入部品リトラクタ120を少なくとも部分的に囲むように構成されてもよい。挿入スリーブ128自体は、挿入装置110のガイドスリーブ124およびキャップ122によって完全にまたは部分的に包囲されてもよい。
【0121】
図5は、挿入スリーブ128の例示的な実施形態を斜視図で示している。挿入スリーブ128は、角柱状であってもよい。挿入スリーブ128は、特にキャップ122およびガイドスリーブ124の対称性にしたがって、本質的に回転対称であってもよい。例えば、キャップ122およびガイドスリーブ124は、円筒軸または延長軸160などの軸を中心とした軸方向回転対称性を有することができ、挿入スリーブ128は、同様の軸方向回転対称性を有することができる。挿入スリーブ128は、挿入部品リトラクタ120をガイドするように構成されてもよい。例えば、円筒形状の挿入部品リトラクタ120をガイドするために、挿入スリーブ128は、回転対称中空中心を備えてもよい。挿入スリーブ128の残りの部分は、不規則な断面を有してもよい。
【0122】
挿入スリーブ128は、少なくとも1つのレセプタクル154を備えることができる。レセプタクル154は、挿入スリーブ128の遠位端156に配置されることができる。挿入スリーブ128の遠位端156は、ユーザの皮膚に対して遠位にある挿入スリーブ128の一部を指すことができる。レセプタクル154は、少なくとも1つの開口部182を有することができる。挿入部品118および/または挿入部品リトラクタ120は、少なくとも部分的に開口部182を通って延在することができる。具体的には、挿入部品118は、挿入部品118の少なくとも一部が開口部182の下方に配置されることができるように、開口部182を通って少なくとも部分的に延在してもよく、少なくとも1つの他の部分が開口部182の上方に配置されてもよい。例えば、挿入部品118に固定的に接続されたプランジャ119は、挿入スリーブ128の開口部182を通って延在してもよく、挿入部品118の他の部分、具体的には挿入カニューレまたは挿入針は、開口部182の下方に配置されてもよく、挿入スリーブ128によって囲まれてもよい。
図5に示すように、挿入スリーブ128は、挿入スリーブ128の遠位端156に開口することができる挿入部品リトラクタ120用の1つのレセプタクル154、および挿入スリーブ128の近位端158に開口することができる医療装置112用の1つのさらなるレセプタクル155などの2つのレセプタクル154を備えることができる。近位端158は、挿入スリーブ128の遠位端156の反対側にあることができる。
【0123】
挿入スリーブ128は、少なくとも1つの溝140を備えることができる。溝140は、挿入部品リトラクタ120のラッチ136を、具体的には、挿入部品リトラクタ120をねじるための回転方式でガイドするように構成されることができる。溝140は、ラッチ136の移動方向を制限することによって挿入部品リトラクタ120の移動をガイドするように構成されてもよい。溝140は、挿入スリーブ128のスロット、トレンチカット、および/または開口部のうちの1つまたは複数を含むことができるか、またはそれらとすることができる。溝140は、溝140が挿入スリーブ128内に部分的にのみ切り込まれることができるように、挿入スリーブ128内に切り込まれたトレンチであってもよい。代替的および/または追加的に、溝140は、溝140が挿入スリーブ128を完全に切断することができるように、挿入スリーブ128の開口部であってもよい。溝140は、挿入スリーブ128の延長軸160に本質的に平行に延在することができる。具体的には、溝140は、延長軸160に平行に延在してもよく、延長軸160に平行な方向から1つまたは複数の位置において変化してもよい。例えば、溝140は、少なくとも1つの縁部162を含むことができ、したがって、縁部162の位置において延長軸160から分岐することができる。縁部162は、z字形の縁部であってもよい。追加的および/または代替的に、溝140は、延長軸160に対してある角度だけ傾斜していてもよい。
【0124】
図1Bの断面図は、挿入装置110の構成要素が互いに嵌合または連動する方法を示している。挿入装置110の中心には、挿入部品リトラクタ120が配置されている。挿入部品リトラクタ120は、キャップ122の内部構造150によって囲まれた挿入スリーブ128によってガイドされる。キャップ122内であるが、内部構造150の周りでは、ガイドスリーブ124が作動している。ガイドスリーブ124は、内側に面する2つのランプ126を有する。
【0125】
図1Cの長手方向断面図では、挿入部品リトラクタ120のラッチ136が、挿入スリーブ128およびキャップ122の内部構造150とともにどのように作動および機能するかが視覚化されている。上記で概説したように、
図1Aから
図1Cでは、医療装置112の挿入前の挿入装置110が示されている。この位置では、ラッチ136は、挿入スリーブ128のz字形の縁部162に捕捉されてもよい。弾性部材130は、下方から押すが、ラッチ136は、上方に移動することができない。
【0126】
図6Aから
図6Cは、医療装置112の挿入中の挿入装置110の正中面の前方の様々な長手方向断面図を示している。具体的には、
図6Aから
図6Cは、挿入装置110の挿入移動および引き込み移動を示している。
【0127】
医療装置112を挿入するために、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128は、ガイドスリーブ124に対して遠位位置164から近位位置166まで移動可能である。ガイドスリーブ124は、ユーザの皮膚上に配置されているため、ガイドスリーブ124は、挿入装置110の固定または非移動構成要素と見なすことができる。医療装置112、挿入部品118、挿入部品リトラクタ120、挿入スリーブ128、およびキャップ122などの他の構成要素は、ガイドスリーブ124に対して、ユーザの皮膚に対して近位方向に移動することができる。
【0128】
遠位位置164は、ユーザの皮膚部位に対して距離を置いた位置を指すことができる。遠位位置164は、挿入装置110および/またはその任意の部分の挿入移動前の初期位置とすることができる。挿入装置110の各構成要素は、それ自体および/または個々の遠位位置164を有することができる。例えば、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128は、それぞれ独自のおよび/または個々の遠位位置164を有することができる。挿入前に、
図1に示すように、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128は、それらの遠位位置164にあってもよく、医療装置112をユーザの体組織に挿入する準備ができていてもよい。挿入後、キャップ122および挿入部品リトラクタ120は、それぞれそれらの遠位位置164に戻ってもよく、挿入部品リトラクタ120が自身の遠位位置164に戻ってもよいときに、挿入部品118を体組織から引き込まれてもよい。
【0129】
近位位置166は、挿入部品118および/またはキャップ122が挿入装置110の近位側144に最も近い、ユーザに対する挿入装置110および/またはその任意の部分の位置とすることができる。具体的には、医療装置112を挿入するために、挿入装置110は、ユーザの皮膚部位に接触されることができる。近位位置166は、ユーザの皮膚部位に近接している位置を指すことができる。挿入装置110の各構成要素は、それ自体のおよび/または個々の近位位置166を有することができる。例えば、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128は、それぞれ独自のおよび/または個々の近位位置166を有することができる。キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128がそれらの近位位置166にある場合、医療装置112は、ユーザの体組織に挿入されることができる。医療装置112の挿入中、ガイドスリーブ124は、ユーザの皮膚部位と接触してもよく、したがって、挿入中、自身の近位位置166にあってもよい。
【0130】
挿入部品リトラクタ120および挿入スリーブ128とともにキャップ122を自身の遠位位置164から自身の近位位置166に移動させることは、ユーザの動作によって開始可能であってもよい。具体的には、ユーザの動作は、キャップ122を近位位置まで、特にユーザの皮膚まで、手動で下向きに押圧することおよび/または押すことなどによって、ユーザがキャップ122に力を加えることとすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0131】
図6Aは、ユーザの皮膚への挿入の開始を示している。ガイドスリーブ124は、自身の近位端142においてユーザの皮膚上に配置される。ユーザは、キャップ122を押し、これにより好ましくは挿入装置110の構成要素が一緒に移動するように初期力に打ち勝つ。ランプ126は、ラッチ126に接近する。同時に、挿入部品118は、ガイドスリーブ124から出て、皮膚を貫通し始める。
【0132】
図6Bでは、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128は、それらの近位位置166への到達前に閉じて示されている。ランプ126は、ラッチ136と接触することができる。この状況では、ガイドスリーブ124のランプ126は、挿入部品リトラクタ120をガイドスリーブ124および挿入スリーブ128に対してねじるように構成される。
【0133】
ねじれは、回転軸168に対する挿入部品リトラクタ120の回転運動とすることができるか、またはそれを含むことができる。ねじれは、挿入部品リトラクタ120自体の回転運動、例えば、挿入部品リトラクタ120の円筒形本体の延長軸と一致する回転軸168を中心とした回転運動とすることができる。具体的には、挿入部品リトラクタ120は、本質的に回転対称であってもよく、ねじれは、挿入部品リトラクタ120の対称軸を中心とした回転運動であってもよい。ねじれは、90°未満、具体的には45°未満、より具体的には15°未満の角度のねじれであってもよい。ねじれが約90°を超える、またはさらには180°を超える角度とすることができる他の実施形態も実現可能である。
【0134】
挿入中、挿入部品リトラクタ120の自身の近位位置166から自身の遠位位置164への移動は、キャップ122の内部構造150およびユーザによってキャップ122に加えられる力によって防止されることができる。内部構造150は、挿入部品リトラクタ120のラッチ136を受け入れ、挿入中に挿入部品リトラクタ120が自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動するのを防止するように、特にラッチ136の移動を阻止するように構成された停止および/または阻止要素170とすることができるか、またはそれを含むことができる。
図6Bの状況では、ガイドスリーブ124のランプ126は、ラッチ136をガイドして挿入スリーブ128の溝140内で移動させることによって、挿入部品リトラクタ120を強制的にねじらせるように構成されてもよい。
【0135】
図6Cは、それらの近位位置166にあるキャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128を示している。挿入移動は、キャップ122が近位位置166にあるときに完了することができる。キャップ122は、近位位置166にあるとき、ガイドスリーブ124の近位端142と位置合わせすることができる。この状況では、ランプ126は、ラッチ136を溝140の縁部162を越えて移動させるように構成されてもよい。弾性部材130は、ラッチ136がキャップ122の内部構造150によって受け入れられることができるように、ラッチ136および挿入部品リトラクタ120をさらにねじらせることができる。この状況では、ユーザは、弾性部材130が近位位置166から遠位位置164への挿入部品リトラクタ120の移動を駆動することができないように、キャップ122に依然として力を加えることができる。挿入部品118は、ユーザの皮膚を完全に貫通することができ、これにより医療装置112をユーザの体組織に挿入することができる。
【0136】
キャップ122が、挿入部品リトラクタ120とともに、自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動することは、ユーザの動作を軽減することによって開始可能であってもよい。具体的には、ユーザは、キャップ122に力を加えることを減らすか、または止めることができ、これにより、位位置166から自身の遠位位置164への移動を開始することができる。弾性部材130は、挿入部品リトラクタ120を駆動して自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動させるように構成されることができる。具体的には、弾性部材130は、医療装置112の挿入後に挿入部品リトラクタ120を引き込むように構成されることができる。弾性部材130は、少なくとも1つのばね171とすることができるか、またはそれを含むことができる。ばね171は、挿入部品リトラクタ120に接続されてもよい。ばね171は、特に挿入スリーブ128と挿入部品リトラクタ120との間で予張力がかけられてもよい。ユーザがキャップ122に力を加える限り、ばね171は、挿入部品リトラクタ120およびキャップ122をそれぞれそれらの近位位置166からそれらの遠位位置164に移動させることができない。ばね171は、キャップ122に加えられた力を解放することによって作動可能であってもよい。
【0137】
上述したように、挿入装置110は、挿入部品118に固定的に接続された少なくとも1つのプランジャ119を備えてもよい。挿入部品リトラクタ120は、プランジャ119に接続されてもよい。挿入部品リトラクタ120は、自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動されるときにプランジャ119と係合するように構成されてもよい。具体的には、挿入部品リトラクタ120は、グリッパ132を使用することによってプランジャ119と係合することができる。引き込み中、挿入部品リトラクタ120は、自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動することができ、これによりプランジャ119に係合し、プランジャ119は、プランジャ119と固定的に係合した挿入部品120とともに近位位置166から遠位位置164に移動することができる。したがって、挿入部品118は、挿入部品リトラクタ120が自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動することによって引き込まれることができる。
【0138】
挿入部品118の挿入後且つ挿入部品118の引き込みが開始される前に、少なくとも100msの短い時間遅延が発生することがある。特に、挿入装置110がユーザの皮膚部位に適用されると、皮膚は、通常、挿入装置110の内部に向かって隆起する。挿入装置、特に挿入部品が近位位置にあるときと、挿入装置、特に挿入部品が遠位位置に戻されるときとの間の短い時間遅延は、隆起した皮膚に圧力を加えることを可能にする。これにより、医療装置112とともに挿入部品118を皮膚内に摺動させることが容易になり、ユーザの皮膚を挿入部品118および医療装置112の全長にわたって摺動させることが可能になる。
【0139】
図7Aから
図7Cは、挿入部品118の引き込み後、すなわち遠位位置164に戻った後の挿入装置110の正中面の前方の長手方向断面図を示している。
【0140】
図7Aに示すように、遠位位置164では、ラッチ136は、溝140から解放されてもよく、挿入部品リトラクタ120は、キャップ122の内部構造150に受け入れられるようにねじることができる。挿入部品118は、体組織から完全に引き込まれてもよい。
図7Bは、キャップ122を挿入装置110の他の構成要素と連動させたラッチ要素152の機能を示している。
【0141】
挿入装置110は、
図7Cに示すように、少なくとも1つの安全ロック172をさらに備えてもよい。安全ロック172は、特に医療装置112の挿入および挿入部品118の引き込み後に、挿入装置110の再移動、特に再使用を防止するように構成されることができる。安全ロック172は、挿入装置110の望ましくない再作動を防止するように構成されてもよい。安全ロック172は、挿入装置110をロックするように構成されてもよく、ロックされた挿入装置110では、望ましくない再使用が防止されてもよい。
【0142】
安全ロック172は、挿入装置110の異なる構成要素に取り付けられる1つまたは複数の構成要素を備えることができる。例えば、少なくとも1つの安全ノッチ174は、挿入スリーブ128に配置され、挿入部品リトラクタ120のラッチ136を受け入れるように構成されてもよい。安全ノッチ174は、溝140がラッチ136および挿入部品リトラクタ120を自身の近位位置166から自身の遠位位置164にガイドするときにラッチ136が安全ノッチ174内に受け入れられることができるように、挿入スリーブ128の溝140に隣接して配置されてもよい。ラッチ136は、その再移動が防止されることができるように安全ノッチ174によって受け入れられてもよい。具体的には、安全ノッチ174は、ユーザがキャップ122にもう一度力を加えると、ラッチ136および挿入部品リトラクタ120の再移動を阻止することができる。したがって、意図しない傷害のリスクが最小限に抑えられることができる。
【0143】
例えば、
図1Aに見られるように、挿入装置110は、センサパッチ176を受け入れ、センサパッチ176をユーザの皮膚部位に取り付けるようにさらに構成されてもよい。挿入装置110は、特にユーザの体組織への挿入部品118の挿入と同時に、センサパッチ176をユーザの皮膚部位に取り付けおよび/または配置するように構成されてもよい。センサパッチ176は、医療装置112、特に分析物センサ114に接続されるように構成されることができる電子装置ユニット116を備えることができる。センサパッチ176は、プラスタなどのユーザの皮膚部位に取り付けるための少なくとも1つの接着手段を備えることができる。センサパッチ176は、医療装置112がユーザの体組織に挿入された後、ユーザの皮膚部位に取り付けられたままであってもよい。挿入部品118は、挿入装置110によって受け入れられたセンサパッチ176を通って突出してもよい。挿入部品リトラクタ120は、医療装置112の挿入前にセンサパッチ176内の挿入部品118を把持するように構成されてもよい。
【0144】
図8は、医療装置112をユーザの体組織に挿入するための方法の例示的な実施形態のフローチャートを示している。本方法は、例えば、上記で開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つにかかる、本発明にかかる挿入装置110を使用することを含む。したがって、
図1から
図7Cの説明を参照することができる。本方法は、具体的には所与の順序で実行されることができる以下のステップを含む。本方法は、列挙されていないさらなるステップを含んでもよい。
【0145】
本方法は、
a) (参照符号178によって示される)挿入装置110のキャップ122に力を加えることによって医療装置112をユーザの体組織に挿入し、これにより挿入部品118、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128をガイドスリーブ124に対して遠位位置164から近位位置166に移動させることと、
b) (参照符号180によって示される)キャップ122に加えられた力を解放することによって挿入部品118を引き込み、これによりキャップ122を自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動させ、これにより挿入部品リトラクタ120を自身の近位位置166から自身の遠位位置164に移動させることと
を含む。
【0146】
挿入部品リトラクタ120および挿入スリーブ128とともにキャップ122を自身の遠位位置164から自身の近位位置166に移動させることは、ユーザの動作によって、具体的には挿入装置110のキャップ122に力を加えることによって開始されることができる。力は、医療装置112の挿入前および挿入中に挿入装置110のユーザによって加えられることができる。医療装置112の挿入は、ガイドスリーブ124、特にガイドスリーブ124の近位端142をユーザの皮膚、特に挿入部位に接触させることによって開始されることができる。したがって、本方法のステップa)は、挿入装置110をユーザの皮膚部位に適用すること、特に、挿入装置110のガイドスリーブ124をユーザの皮膚部位に適用することを含むことができる。
【0147】
挿入前に、挿入スリーブ128は、自身の遠位位置164にあってもよく、自身の遠位位置164においてガイドスリーブ124によって少なくとも部分的に包囲されてもよい。キャップ122は、挿入スリーブ128、具体的には挿入スリーブ128の遠位端156に接触していてもよい。挿入前に、挿入部品リトラクタ120は、その開始位置にあってもよく、挿入スリーブ128によって少なくとも部分的に包囲されてもよい。弾性部材130は、挿入部品リトラクタ120と挿入スリーブ128との間にあってもよく、最大張力であってもよい。挿入部品リトラクタ120は、挿入スリーブ128の溝140内の縁部162によって受け入れられることができる少なくとも1つのラッチ136によってこの位置にロックされてもよい。
【0148】
ユーザがキャップ122に力を加えると、キャップ122に力を加えるユーザの腕は、近位方向に、特にユーザの皮膚に向かって加速することができる。挿入スリーブ128が自身の近位位置166に到達する直前に、挿入部品リトラクタ120のラッチ136は、ガイドスリーブ124の少なくとも1つのランプ126と接触することができ、ランプ126は、特にガイドスリーブ124の内側に突出することができる。挿入部品リトラクタ120は、ランプ126とラッチ136との相互作用によってねじられてもよい。ラッチ136は、挿入スリーブ128の溝140内の縁部162から緩く落下することができ、キャップ122の内部構造150に接触することができる。ユーザの腕は、挿入スリーブ128、特に一実施形態では挿入装置に含まれるセンサパッチ176とユーザの皮膚との間の接触によって停止されることができる。腕の質量の運動エネルギーのために、この停止は、挿入スリーブ128、特に、実施形態では挿入装置に含まれるセンサパッチ176の、ユーザの皮膚に対する圧力を引き起こす可能性がある。
【0149】
ステップb)は、キャップ122に加えられる力を軽減することを含んでもよい。キャップ122に加えられた力を解放することによってトリガされて、挿入部品118は、ユーザの皮膚部位から戻されることができる。ユーザが力を解放すると、ばね171は、挿入部品リトラクタ120、ひいてはキャップ122を遠位位置164に移動させることができる。ラッチ136は、挿入部品118がユーザの体組織から完全に引き込まれるまで、挿入スリーブ128の溝140に沿って摺動することができる。ラッチ136は、キャップ122の内部構造150によって強制されてもよく、ばね171は、ラッチ136がそれ以上移動することができない位置に、具体的には挿入部品リトラクタ120がそれ以上近位方向に移動することができない位置に、挿入部品リトラクタ120をさらにねじるように力を加えてもよい。ラッチ136が安全ロック172、より具体的には挿入スリーブ128の安全ノッチ174によって受け入れられることができるため、挿入部品リトラクタ120は、それ以上近位方向に移動することができない。したがって、医療装置112の挿入後、挿入部品118は、挿入装置110の安全ロック172によって安全にロックされることができる。
【0150】
本発明にかかる挿入装置110は、既知の挿入装置と比較して移動の順序を変更することができる。既知の挿入装置では、挿入部品は、医療装置が挿入される皮膚に力を加えることができる。皮膚は、この力を受けて内側に隆起する。挿入移動の端部付近の既知の挿入装置では、挿入部品が引き込まれる。しかしながら、挿入部品118の攻撃下での皮膚の内側への隆起および皮膚の凹みのために、挿入部品が急速に消失し始めると、医療装置は、完全に挿入されない可能性がある。したがって、結果は、非挿入または部分的に挿入されただけの医療装置とすることができる。本発明にかかる挿入装置110は、挿入要素118が挿入装置110から皮膚内にその全長にわたって依然として突出している間に、特にセンサパッチ176によって皮膚に圧力を加えることによって皮膚の凹みを補償する。これは、ユーザの体組織への医療装置112の確実な挿入を保証することができる。この後、挿入部品118は、引き込まれることができる。
【0151】
図9Aおよび
図9Bは、センサパッチ176による隆起した皮膚への圧力の適用の効果を可視化し、具体的には、皮膚の内側への隆起の補償を可能にする。
図9Aおよび
図9Bは、医療装置112の挿入中の挿入装置110の正中面における長手方向断面図を示している。
図9Aおよび
図9Bに示す挿入装置110の説明に関して、
図1から
図7Cの説明を参照する。
図9Aおよび
図9Bに示す例示的な実施形態では、挿入装置110は、センサパッチ176を備える。
【0152】
図9Aでは、挿入部品118がユーザの皮膚を貫通し始めるときの医療装置112の挿入中の挿入装置110が示されている。挿入装置110、具体的にはガイドスリーブ124の近位端142がユーザの皮膚に適用されると、皮膚は、通常、挿入装置110の内部に向かって隆起する。皮膚の隆起は、
図9Aに参照符号184によって示されている。ユーザの皮膚を通る挿入部品118の貫通は、
図9Aに参照符号186によって示されているように、皮膚の凹みを引き起こす可能性がある。医療装置112の挿入中、キャップ122、挿入部品リトラクタ120、および挿入スリーブ128がそれらの近位位置166に到達する前に、センサパッチ176は、ユーザの皮膚に押し付けられることができる(
図9Bを参照)。挿入装置、特に挿入部品が近位位置にあるときと、挿入装置、特に挿入部品が遠位位置に戻されるときとの間の短い時間遅延は、矢印188によって示されるように、センサパッチ176によって隆起した皮膚に圧力を加えることを可能にする。この圧力は、皮膚の内側への隆起、ならびに挿入部品118による内側への隆起を補償することを可能にする。したがって、上述したように、医療装置112とともに挿入部品118を皮膚内に摺動させることが容易になる。
【符号の説明】
【0153】
110 挿入装置
112 医療装置
114 分析物センサ
116 電子装置ユニット
118 挿入部品
119 プランジャ
120 挿入部品リトラクタ
122 キャップ
124 ガイドスリーブ
126 ランプ
128 挿入スリーブ
130 弾性部材
132 グリッパ
134 挿入部品リトラクタの近位端
136 ラッチ
138 挿入方向
140 溝
142 ガイドスリーブの近位端
144 挿入装置の近位側
146 キャップの近位位置
148 挿入装置の遠位側
150 内部構造
152 ラッチ要素
154 レセプタクル
155 医療装置用レセプタクル
156 挿入スリーブの遠位端
158 挿入スリーブの近位端
160 延長軸
162 縁部
164 遠位位置
166 近位位置
168 回転軸
170 阻止要素
171 ばね
172 安全ロック
174 安全ノッチ
176 センサパッチ
178 医療装置の挿入
180 挿入部品の引き込み
182 開口部
184 皮膚の隆起
186 皮膚の凹み
188 圧力
【国際調査報告】