IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゾエティス・サービシーズ・エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特表-弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス 図1
  • 特表-弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス 図2
  • 特表-弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス 図3
  • 特表-弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20231004BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231004BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20231004BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/50 ZNA
A61P1/12 171
A61P37/04
A61K39/00 G
A61K39/215
A61P31/14
C07K14/165
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519275
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2021051807
(87)【国際公開番号】W WO2022072215
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011048314.0
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,シャオサイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,カン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ヤンホン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4B065CA46
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085CC21
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質を提供する。それを含む核酸配列及びそれを含むウイルス、並びに使用方法も提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEDVのC末端切断スパイクタンパク質であって、配列番号1(YEVFEKVHVQ)又は配列番号1を含む配列を欠き、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列又はそのC末端切断変異体を含むが、但し、PEDVの前記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1200アミノ酸長であることを条件とする、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項2】
PEDVの前記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1250アミノ酸長であることを条件とする、請求項1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項3】
PEDVの前記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1300アミノ酸長であることを条件とする、請求項1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項4】
PEDVの前記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1370アミノ酸長であることを条件とする、請求項1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項5】
配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項6】
配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項7】
配列番号2の保存的に置換された変異体である、請求項4~6のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質をコードする、核酸配列。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質、又は請求項8に記載の核酸配列を含む、ウイルス。
【請求項10】
配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むアミノ酸配列であるが、但し、前記配列番号3のC末端アミノ酸がQPLAL(配列番号4)であることを条件とする、アミノ酸配列。
【請求項11】
前記配列が、配列番号3と少なくとも95%同一である、請求項10に記載のアミノ酸配列。
【請求項12】
前記配列が、配列番号3と少なくとも99%同一である、請求項10に記載のアミノ酸配列。
【請求項13】
配列番号3の保存的に置換された変異体である、請求項10~12のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載のアミノ酸配列をコードする、核酸配列。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか一項に記載のアミノ酸配列をコードするORFを含むゲノムを有する、ウイルス。
【請求項16】
配列番号5を含む、アミノ酸配列。
【請求項17】
請求項16に記載のアミノ酸配列をコードするORFを含むゲノムを有する、ウイルス。
【請求項18】
PEDVである、請求項9、15、17のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項19】
ORF-2及びORF3を含むPEDVであるが、但し、前記ウイルスが前記ORF2/ORF3に第1の欠失を含み、前記第1の欠失が、配列番号6の欠失又は配列番号6を含む核酸配列の欠失であることを条件とし、前記ウイルスが、配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むアミノ酸配列を発現することを条件とし、更に、前記配列番号3のC末端アミノ酸がQPLAL(配列番号4)であることを条件とする、PEDV。
【請求項20】
前記ORF-3に第2の欠失を更に含み、前記第2の欠失が、配列番号7の欠失又は配列番号7を含む核酸配列の欠失である、請求項20に記載のPEDV。
【請求項21】
前記ウイルスが、E、M、及びNタンパク質をコードする野生型ORFを含む、請求項19又は20に記載のPEDV。
【請求項22】
前記第1の欠失と前記第2の欠失とが異なる、請求項19~21のいずれか一項に記載のPEDV。
【請求項23】
ORF-3によって発現される機能的タンパク質を欠く、請求項18~22のいずれか一項に記載のPEDV。
【請求項24】
配列番号10、又はそれと少なくとも90%同一である配列によるゲノムを有する、請求項18~23のいずれか一項に記載のPEDV。
【請求項25】
DJ株、AJ1102株、CH/ZJCS03/2012株、CH/JXZS03/2014株、CH/JXFX01/2014株、CH/JXJJ08/2015株、CH/JXGZ04/2015株、CH/JXJA89/2015株、CH/JXDX119/2016株、CH/JXJGS11/2016株、CH/JXWN13/2016株、CH/JXJJ18/2017株、CH/JXNC38/2017株、CH/JX/01株、CH/JX-1/2013株、CH/JX-2/2013株、AH2012株、GD-B株、BJ-2011-1株、CH/FJND-3/2011株、AJ1102株、GD-A株、CH/GDGZ/2012株、CH/ZJCX-1/2012株、CH/FJZZ-9/2012株からなる群から選択されるPEDV株に由来する、請求項18~24のいずれか一項に記載のPEDV。
【請求項26】
PED株DJに由来する、請求項18~24に記載のPEDV。
【請求項27】
請求項24に記載の親PEDVの子孫である、更に弱毒化されたPEDV。
【請求項28】
前記親PEDVが、配列番号10によるゲノムを有する、請求項27に記載の更に弱毒化されたPEDV。
【請求項29】
請求項18~26のいずれか一項に記載のPEDV、又は請求項27若しくは28に記載の更に弱毒化されたPEDVを含む、ワクチン。
【請求項30】
請求項18~26のいずれか一項に記載のPEDVが弱毒化されている、請求項29に記載のワクチン。
【請求項31】
ブタ動物をPEDV感染から予防する方法であって、請求項29又は30に記載のワクチンを前記ブタに投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記ワクチンが経口投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ブタ動物が、経産ブタであり、前記ワクチンが、分娩の約28~42日前に1回目に投与され、更に前記ワクチンが、前記分娩の約7~21日前に2回目に投与される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
子ブタをPEDV感染から防御する方法であって、請求項29又は30に記載のワクチンを予防接種された経産ブタからの初乳を前記子ブタに投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記第1のワクチン接種及び/又は前記第2のワクチン接種が、経口である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記子ブタが少なくとも3日齢である、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記子ブタが少なくとも5日齢である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記経産ブタが、分娩から約35日後にワクチン接種された、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記経産ブタが、分娩から約14日後にワクチン接種された、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ブタ流行性下痢(PED)は非常に伝染性が高く、ブタ、特に哺乳子ブタにおける脱水、下痢、及び高い死亡率が特徴である。原因となる病原体、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)は、コロナウイルス科のアルファコロナウイルス属に属する一本鎖の陽性RNAウイルスである。PEDVは、約28kbの総ゲノムサイズを有し、7つのオープンリーディングフレームを含む。PEDV感染の症状は、同じくコロナウイルス科のメンバーである伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)及びブタデルタコロナウイルス(PDCoV)によって引き起こされる症状としばしば類似する。PEDVとTGEVとの間に交差防御は一般的に観察されず、全体的なウイルスヌクレオチド配列が最大で約60%類似していることに留意されたい。
【0002】
PEDは、1970年頃にヨーロッパで最初に観察された可能性が高く、その後、原因ウイルスが特徴付けられた(例えば、M.Pensaert et al.Arch.Virol,v.58,pp 243-247,1978及びD.Chasey et al.,Res.Vet Sci,v.25,pp 255-256,1978を参照されたい)。PEDVは、2013年まで北米では確認されておらず、その時点で広範に及ぶ流行が始まり、養豚産業に深刻な経済的損失をもたらした。ウイルスは、数日以内に複数の広範囲に分布する経産ブタの群れに出現し、少なくとも32の州に広がった。生産者は、ナイーブな新生子ブタの最大100%の損失を予想する可能性がある。感染管理のための現在の推奨事項には、厳格なバイオセキュリティの実施及び/又は免疫を達成するための、群れ全体のPEDVへの意図的な曝露が含まれる。
【0003】
PEDVは、1970年代及び1980年代の間にヨーロッパのいくつかの国々で広域流行を引き起こしたが、1990年代以降、PEDはヨーロッパでは時折発生するものの、稀になっている。この古典的なPEDV株は、その後、日本、中国、韓国等のアジア諸国に広がった。2010年以降、中国で深刻なPEDの家畜流行性の発生が報告されており、これらの発生から回収されたPEDVは、古典的なPEDV株とは遺伝的に異なっていた。米国のブタにおける最初のPEDの流行は、中国で観察されたものと同様の臨床症状を有していた。配列解析により、元の米国PEDV(これ以降、US PEDVプロトタイプ株と称される)は、2011~2102年に中国で循環していたいくつかのPEDVと遺伝的に最も類似していることが明らかになった。2014年1月に、US PEDVプロトタイプ株と比較してスパイク遺伝子に挿入及び欠失(インデル)を有するPEDV変異株が、米国のブタ集団で同定された。この変異株は、US PEDV S-INDEL変異株と指定された。米国でのPEDの流行後、米国プロトタイプ様PEDVの検出が、カナダ、メキシコ、台湾、韓国、及び日本で報告されており、US PEDV S-INDEL変異株様PEDVの検出が、韓国、日本、ドイツ、ベルギー、フランス、及びポルトガルで報告されている。現在、PEDVは世界の養豚産業にとって大きな脅威のままとなっている。PEDVに対する弱毒化生ワクチン、特に、経口投与時に有効であり得るワクチンの重要な必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明は、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)のC末端切断スパイクタンパク質であって、配列番号1(YEVFEKVHVQ)又は配列番号1を含む配列を欠き、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列又はそのC末端切断変異体を含むが、但し、PEDVの上記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1200アミノ酸長であることを条件とする、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質を提供する。
【0005】
本態様の異なる実施形態によれば、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質は、少なくとも1250アミノ酸長、又は少なくとも1300アミノ酸長、又は少なくとも1370アミノ酸長であり得る。
【0006】
本態様の異なる実施形態によれば、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質は、配列番号2と少なくとも95%同一であり得るか、又は、配列番号2と少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一、若しくは100%同一であり得る。ある特定の実施形態において、配列番号2と、それと少なくとも90%(すなわち、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%)同一である配列との間で異なるアミノ酸は、保存的置換である。
【0007】
第2の態様において、核酸配列が開示され、上記核酸配列は、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかによるPEDVのC末端切断スパイクタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0008】
第3の態様において、本開示は、本発明の第1の態様の任意の実施形態によるPEDVのC末端切断スパイクタンパク質を含むウイルス、又は本発明の第2の態様の実施形態のいずれかによる核酸配列を含むウイルスを提供する。
【0009】
第4の態様において、本発明は、配列番号5を含むアミノ酸配列を提供する。
【0010】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様によるアミノ酸配列を含むPEDVを提供する。
【0011】
第6の態様において、本発明は、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質を提供し、上記C末端切断スパイクタンパク質は、配列番号3と少なくとも90%同一であるが、但し、PEDVのこのC末端切断スパイクタンパク質は、配列番号4を含むことを条件とする。この第5の態様の異なる実施形態において、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質は、配列番号3と少なくとも95%同一であり得るか、又は配列番号3と少なくとも96%若しくは少なくとも97%若しくは少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一、若しくは100%同一であり得る。ある特定の実施形態において、配列番号2と、それと少なくとも90%(すなわち、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%)同一である配列との間で異なるアミノ酸は、保存的置換である。
【0012】
第7の態様において、本発明は、ORF-2及びORF3を含むPEDVであるが、但し、ウイルスが上記ORF2/ORF3に第1の欠失を含み、上記第1の欠失が、配列番号6の欠失又は配列番号6を含む核酸配列の欠失であることを条件とし、上記ウイルスが、配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むアミノ酸配列を発現することを条件とし、更に、上記配列番号3のC末端アミノ酸がQPLAL(配列番号4)であることを条件とする、PEDVを提供する。
【0013】
この第7の態様のある特定の実施形態によれば、本発明のPEDVは、上記ORF-3に第2の欠失を更に含み、上記第2の欠失は、配列番号7の欠失又は配列番号7を含む核酸配列の欠失である。ある特定の実施形態において、第1の欠失と第2の欠失とは異なる。
【0014】
ある特定の実施形態において、PEDVは、E、M、及びNタンパク質をコードする野生型ORFを含む。ある特定の実施形態において、本発明のPEDVは、ORF-3によって発現される機能性タンパク質を欠いている。
【0015】
ある特定の実施形態において、ウイルスは、配列番号10、又はそれと少なくとも90%同一である配列によるゲノムを有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、PEDV株DJに由来する。
【0017】
第8の態様において、本発明は、ワクチンを提供し、ワクチンは、本発明の第3、第5及び/又は第7の態様の任意の実施形態によるウイルスを含む。
【0018】
この第8の態様のある特定の実施形態において、ウイルスは、弱毒化ウイルスである。
【0019】
第9の態様において、本発明は、ブタ動物をPEDV感染から予防する方法であって、本発明の第8の態様の任意の実施形態によるワクチンを上記ブタに投与することを含む、方法を提供する。
【0020】
ある特定の実施形態において、ワクチンは経口投与される。
【0021】
ある特定の実施形態において、ブタ動物は、経産ブタであり、上記ワクチンは、分娩の約28~42日前に投与され、更に上記ワクチンは、分娩の約17~21日前に投与される。ある特定の実施形態において、第1及び/又は第2のワクチン接種は、経口投与される。
【0022】
第10の態様において、本発明は、子ブタをPEDV感染から防御する方法であって、本発明の第8の態様の任意の実施形態によるワクチンを予防接種された経産ブタからの初乳を上記子ブタに投与することを含み、経産ブタが、分娩の約28~42日前(例えば、35日)にワクチン接種され、更に上記ワクチンが、分娩の約7~21日前(例えば、14日)に投与される、方法を提供する。ある特定の実施形態において、第1及び/又は第2のワクチン接種は、経口投与される。
【0023】
ある特定の実施形態において、上記小ブタは、少なくとも3日齢である。他の実施形態において、子ブタは、少なくとも5日齢である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】連続継代したウイルスの核酸の電気泳動マップ。
図2】5回連続継代したウイルスの核酸の電気泳動マップ。
図3】分娩時のワクチン接種された経産ブタにおける抗PEDV抗体レベルの図。
図4】ワクチン接種された経産ブタから初乳を与えられた3~5日齢の子ブタにおける抗PEDV抗体レベルの図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明をよりよく理解するために、以下の定義が提供される。
【0026】
[0029] 言及される数字に適用される「約」という用語は、該値のプラス又はマイナス10である言及される数字を指す。
【0027】
[0030] 「アジュバント」という用語は、ワクチンの有効性を向上させる化合物を指し、免疫化剤を含む製剤に添加され得る。アジュバントは、単回用量のみのワクチンの投与後であっても、免疫応答を向上させる。アジュバントとしては、例えば、ムラミルジペプチド、ピリジン、水酸化アルミニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、油、水中油型エマルジョン、サポニン、サイトカイン、及び当該技術分野で既知の他の物質を挙げることができる。好適なアジュバントの例は、米国特許出願公開第2004/0213817A1号に記載されている。「アジュバント」は、アジュバントを組み込むか、又はアジュバントと組み合わされる組成物を指す。
【0028】
[0031] 本明細書で使用される「弱毒化」PEDVは、感受性宿主に感染する及び/又は感受性宿主において複製することができるが、感受性宿主に対して非病原性であるか、又は病原性が低いPEDVを指す。例えば、弱毒化ウイルスは、関連する野外単離株と比較して、観察可能/検出可能な臨床症状、若しくはより少ない臨床症状、若しくはより重症度の低い臨床症状を引き起こさないことが可能であるか、又はウイルス複製効率及び/若しくは感染性の低下を示し得る。PEDV感染の臨床症状としては、臨床的な下痢、嘔吐、嗜眠、状態の喪失、及び脱水症を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
[0032] 「保存的置換」という用語は、あるアミノ酸の、類似の特性を有する別のアミノ酸による置き換えを指す。当業者は、それがコードするタンパク質のアミノ酸配列の修飾をもたらす核酸配列の変化が、結果として生じるタンパク質の三次元構造に、たとえあったとしてもほとんど影響を及ぼさないことが可能であることを更に認識するであろう。例えば、アミノ酸アラニン、疎水性アミノ酸のコドンは、グリシン等の別の疎水性がより低い残基、又はバリン、ロイシン、若しくはイソロイシン等の疎水性がより高い残基をコードするコドンによって置換され得る。同様に、ある負に帯電した残基の別の残基への(例えば、アスパラギン酸のグルタミン酸への)置換、又はある正に帯電した残基の別の残基への(例えば、リジンのアルギニンへの)置換をもたらす変化もまた、実質的に同じ機能活性を有するタンパク質を産生することが期待され得る。
【0030】
[0033] 以下の6つの群は、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含む:[1]アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);[2]アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);[3]アスパラギン(N)、グルタミン(Q);[4]アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);[5]イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び[6]フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)(例えば、米国特許公開第2010/0291549号を参照のこと)。
【0031】
[0034] 「エピトープ」は、宿主に投与されると、液性(B細胞)及び/又は細胞型(T細胞)の免疫応答を誘発することができるという意味で、免疫学的に活性である抗原性決定基である。これらは、抗原性である特定の化学基又は分子上のペプチド配列である。抗体は、ポリペプチド上の特定の抗原エピトープに特異的に結合する。動物において、ほとんどの抗原は、いくつかの、又は更には多くの抗原決定基を同時に提示する。そのようなポリペプチドは、免疫原性ポリペプチドとしても認定され得、エピトープは、更に記載されるように同定され得る。
【0032】
[0035] 本明細書で使用される場合、「免疫原性断片」という用語は、ポリペプチド又は断片がMHC分子に結合して、細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)応答、及び/又はB細胞応答(例えば、抗体産生)、及び/又はTヘルパーリンパ球応答、及び/又は免疫原性ポリペプチド若しくは免疫原性断片が由来する抗原に対する遅延型過敏症(DTH)応答を誘導するように、アレル特異的モチーフ、エピトープ又は他の配列を含む、ポリペプチド若しくはポリペプチドの断片、又はそれをコードするヌクレオチド配列を指す。DTH応答は、T細胞依存性マクロファージ活性化及び炎症が組織損傷を引き起こす免疫反応である。抗原の皮下注射に対するDTH反応は、しばしば、細胞媒介免疫のアッセイとして使用される。
【0033】
[0036] 「免疫防御応答の誘導」という用語は、健康な対照と比較して、疾患の症状、すなわち、臨床徴候、病変、細菌排泄及び感染した対象の組織における細菌複製のうちの1つ以上を軽減又は排除する(液性及び/又は細胞性)免疫応答を意味する。好ましくは、上記症状の軽減は、対照と比較して統計的に有意である。
【0034】
[0037] 「薬学的に許容される担体」とは、ワクチンの製造及び投与のために当該技術分野で使用される、任意の従来の薬学的に許容される担体、ビヒクル、又は賦形剤を意味する。薬学的に許容される担体は、典型的には、非毒性、不活性、固体又は液体の担体である。
【0035】
[0038] 「ブタ(porcine)」及び「ブタ(swine)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、例えば、ブタ等のイノシシ科のメンバーである任意の動物を指す。
【0036】
[0039] 本明細書で使用される「感受性」宿主は、PEDVに感染し得る細胞又は動物を指す。感受性動物に導入されると、弱毒化PEDVは、PEDV又はその抗原に対する免疫応答も誘導し得、それによって動物にPEDV感染に対する免疫をもたらす。
【0037】
[0040] 「治療有効量」は、ウイルス又は細菌等の病原体による感染によって引き起こされる疾患の徴候又は症状(健康への悪影響又はその合併症を含む)を予防又は軽減するのに十分な、抗原又はワクチンを受ける対象において免疫応答を誘導するであろう抗原又はワクチンの量を指す。液性免疫若しくは細胞媒介性免疫、又は液性免疫と細胞媒介性免疫の両方が誘導され得る。ワクチンに対する動物の免疫原性応答は、例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、又は野生型株とのチャレンジ後の徴候及び症状をモニタリングすることを通して直接的に評価され得る。ワクチンによって付与される防御免疫は、例えば、死亡率、罹患率、体温の数値、全体的な身体状態、並びに対象の全体的な健康及びパフォーマンス等の臨床徴候の低減を測定することによって評価することができる。治療的に有効なワクチンの量は、使用される特定のアジュバント、使用される特定の抗原、又は対象の状態に応じて変化し得、当業者によって決定され得る。
【0038】
[0041]「治療すること」は、そのような用語が適用される障害、状態、若しくは疾患を予防すること、又はそのような障害、状態、若しくは疾患の1つ以上の症状を予防若しくは軽減することを指す。
【0039】
[0042]「ワクチン」という用語は、感染の影響を予防又は緩和するために、疾患に対する免疫をもたらすために使用される抗原調製物を指す。ワクチンは、典型的には、免疫学的有効量の免疫原と、免疫原に対するワクチン接種された対象の免疫応答を増強するのに有効なアジュバントとの組み合わせを使用して調製される。
【0040】
[0043]PEDVは、5’キャップ及び3’ポリアデニル化尾部を有する、約28kbの陽性のセンス一本鎖RNAゲノムを有する包囲ウイルスである。(Pensaert and De Bouck P.1978)。ゲノムは、5’非翻訳領域(UTR)、3’UTR、及び4つの構造タンパク質(スパイク(S)、エンベロープ(E)、膜(M)、及びヌクレオカプシド(N))及び3つの非構造タンパク質(レプリカーゼ1a及び1b、並びにORF3)をコードする少なくとも7つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む;これらは、5’-レプリカーゼ(1a/1b)-ORF2(Sとしても知られる)-ORF3-E-M-N-3’(Oldham J.1972;及びBridgen et al.1993)の順序でゲノム上に配置される。特徴付けられている、最初に出現した3つの北米PEDVゲノム配列、ミネソタMN(GenBank:KF468752.1)、アイオワIA1(GenBank:KF468753.1)、及びアイオワIA2(GenBank:KF468754.1)は、28,038ヌクレオチド(nt)という同じサイズを有し、ポリアデノシン尾部を除いて、プロトタイプPEDV CV777株(GenBank:AF353511.1)とゲノム構成を共有する。これら3つの北米PEDV配列は、99.8~99.9%のヌクレオチド同一性を共有していた。特に、MN株とIA2株は、全ゲノムにわたりわずか11個のヌクレオチド差を有するのみであった。
【0041】
[0044]本出願の目的のために、配列は、DNA形式で提供される。当業者であれば、これらの配列を、ウイルスのゲノムを含むRNA配列に翻訳することは困難ではないであろう。
【0042】
[0045]本発明者らは、驚くべきことに、ORF-2/ORF-3の領域に第1の欠失を有するPEDVが、弱毒化された免疫原性のウイルスをもたらすこと、すなわち、野生型PEDに対する防御応答を引き起こすことを発見した。ある特定の実施形態において、第1の欠失は、配列番号6を含む。この配列は、ORF-2で開始し、ORF-3開始コドンを含むORF3の近位部分に及ぶ。第1の欠失は、配列番号6のみに限定されず、配列番号6の上流又は下流の配列を含むことができる。しかしながら、ORF2によってコードされるスパイクタンパク質は、PEDの主要な免疫原であるため、第1の欠失は、スパイクタンパク質を損なうほど配列番号6から離れた上流までは伸長しない場合があることに留意されたい。
【0043】
[0046]したがって、本発明は、スパイクタンパク質の断片を提供する。スパイクタンパク質の断片は、配列番号1を欠いている。断片は、更にC末端が切断されてもよいが、一般に、少なくとも1200アミノ酸長、好ましくは少なくとも1300アミノ酸長、より好ましくは少なくとも1370アミノ酸長であるべきである。ある特定の実施形態において、スパイクタンパク質の断片は、配列番号2、又はそれと少なくとも90%(又は少なくとも95%、96%、97%、98%)同一である配列を含む。配列番号2と少なくとも90%同一である配列と、配列番号2自体との間で異なるアミノ酸は、保存的置換であることが好ましい。
【0044】
[0047]当業者であれば、第1の欠失が、ORF-2のフレームシフトを引き起こし、したがって、野生型スパイクタンパク質のC末端アミノ酸配列を変化させることを理解することができる。本発明によるスパイクタンパク質断片は、配列番号1を欠いている。代わりに、最も好ましい実施形態において、スパイクタンパク質断片は、QPLAL(配列番号4)で終端する。
【0045】
[0048]最も好ましい一連の実施形態において、本明細書に記載のスパイクタンパク質断片は、配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むが、但し、配列番号4が、上記スパイクタンパク質断片又は配列番号3と少なくとも90%同一である配列のC末端に存在することを条件とする。配列同一性は、より大きくてもよく(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%)、異なるアミノ酸は保存的置換である。
【0046】
[0049] 本発明によるポリペプチドを得るための技術は、当該技術分野で周知である。例えば、遺伝子工学技術及び組換えDNA発現系が使用され得る。
【0047】
[0050] 別の態様において、本発明は、上述の実施形態のいずれかによるスパイクタンパク質断片をコードする核酸配列を提供する。本発明の第1の態様の任意の実施形態によるアミノ酸配列をコードする核酸分子はまた、1つ以上の非ウイルス及び/又はウイルスベクター等のベクター(例えば、組換えベクター)に挿入され得る。非ウイルスベクターは、例えば、プラスミドベクター(例えば、細菌、昆虫、及び/又は哺乳動物宿主細胞と適合性)を含み得る。例示的なベクターとしては、例えば、PCR-ii、PCR3、及びpcDNA3.1(Invitrogen、San Diego,Calif.)、pBSii(Stratagene、La Jolla,Calif.)、pet15(Novagen、Madison,Wis.)、pGEX(Pharmacia Biotech、Piscataway,N.J.)、pEGFp-n2(Clontech、Palo Alto,Calif.)、pET1(Bluebacii、Invitrogen)、pDSR-alpha(PCT pub.WO90/14363号)及びpFASTBACdual(Gibco-BRL、Grand island,NY)、並びにBluescriptプラスミド誘導体(高コピー数COLe1に基づくファージミド、Stratagene Clonining Systems,La Jolla,Calif.)、TAQ増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標)TA Cloning(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen,Carlsbad,Calif.)を挙げることができる。また、細菌ベクターとしては、例えば、Shigella、Vibrio cholerae、Lactobacillus、Bacille Calmette Guerin(BCG)、及びStreptococcusを挙げることができる(例えば、WO88/6626、WO90/0594、WO91/13157、WO92/1796、及びWO92/21376を参照のこと)。ベクターは、当業者に広く利用可能な標準的な組換え技術を使用して構築され得る。多くの他の非ウイルスプラスミド発現ベクター及び系が、当該技術分野で既知であり、使用され得る。
【0048】
[0051] 第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様による核酸配列を含むベクターを提供する。核酸を宿主に導入するために成功裏に利用されている様々なウイルスベクターとしては、とりわけ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、及びポックスウイルスが挙げられる。ウイルスベクターは、当業者に広く利用可能な標準的な組換え技術を使用して構築され得る。例えば、Molecular cloning:a laboratory manual(Sambrook&Russell:2000,Cold Spring Harbor Laboratory Press;ISBN:0879695773)、及びCurrent protocols in molecular biology(Ausubel et al.,1988+updates,Greene Publishing Assoc.,New York;ISBN:0471625949)を参照されたい。
【0049】
[0052] ある特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、ウイルスはPEDVである。
【0050】
[0053] したがって、本発明は、上述の第1の欠失及び/又はスパイクタンパク質断片を含むPEDVを提供する。第1の欠失は、ORF-3上の開始コドンを含み、それによって上記ORFを除去することが理解され得よう。したがって、本発明のPEDVは、野生型ORF-3によって発現される機能的タンパク質を欠いている。
【0051】
[0054] しかしながら、この欠失により、「新しいORF」又は「新たに形成されたORF」等と称される、新しいORFが形成される。NCBIのウェブサイトから公的に入手可能なORF Finderソフトウェアによる、この新しいORF(配列番号9)の概念的翻訳によって、配列番号5がこの新しいORFの発現の産物であることが明らかになっている。したがって、別の態様において、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列を発現し、また、ある特定の実施形態において、配列番号9のORFを含むPEDVを提供する。
【0052】
[0055] 上述のタンパク質及び/又は核酸配列同一性の方法は、本明細書に記載の全てのタンパク質及び/又は核酸に適用可能である。配列同一性及び/又は類似性を評価するための多重配列比較アルゴリズム及びプログラムは、当該技術分野で既知である。配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列(例えば、本明細書に開示される配列)として機能し、これに対して試験配列が比較される。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0053】
[0056] 2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセントは、例えば、コンピュータプログラムGAP、すなわち、Genetics Computer Group(GCG;Madison,WI)Wisconsinのパッケージバージョン10.0プログラム、GAPを使用して配列情報を比較することによって決定することができる(Devereux et al.(1984),Nucleic Acids Res.12:387-95)。パーセント同一性を計算する際、比較される配列は、典型的には、配列間で最大の一致が得られるような方法で整列される。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータは以下の通りである:(1)ヌクレオチドについての一元比較マトリックス(同一性については1、非同一性については0の値を含む)のGCG実装、及びAtlas of Polypeptide Sequence and Structure,Schwartz and Dayhoff,eds.,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)に記載されるような、Gribskov and Burgess,((1986)Nucleic Acids Res.14:6745)の重み付きアミノ酸比較マトリックス、又は他の同等の比較マトリックス;(2)アミノ酸配列の場合、各ギャップに8のペナルティ、及び各ギャップ中の各記号に2の追加ペナルティ、又は、ヌクレオチド配列の場合、各ギャップに50のペナルティ、及び各ギャップ中の各記号に3の追加ペナルティ;(3)エンドギャップにはペナルティなし;並びに(4)長いギャップには最大ペナルティなし。
【0054】
[0057] 配列同一性及び/又は類似性は、Smith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所的配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443の配列同一性アライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman,1988,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.85:2444の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.のBESTFIT、FASTA、及びTFASTA)を使用することにより決定されてもよい。
【0055】
[0058] 有用なアルゴリズムの別の例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブ・ペアワイズアラインメントを使用して、一群の関連配列から多重配列アラインメントを作成する。これにより、アライメントを作成するために使用したクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng&Doolittle,1987,J.Mol.Evol.35:351-360のプログレッシブ・アライメント法を簡素化したものを使用する;この方法は、Higgins and Sharp,1989,CABIOS 5:151-153に記載されているものと同様である。有用なPILEUPパラメータは、デフォルトのギャップ重み3.00、デフォルトのギャップ長重み0.10、及び重み付きエンドギャップを含む。
【0056】
[0059] 有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410;Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402;及びKarin et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873-5787に記載されているBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al.,1996,Methods in Enzymology 266:460-480から入手されるWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメータを使用し、そのほとんどがデフォルト値に設定される。調整可能なパラメータは以下の値に設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップ分数=0.125、ワード閾値(T)=II。HSPS及びHSPS2パラメータは、動的な値であり、特定の配列の組成、及びどの対象配列が検索されているかに対する特定のデータベースの組成に応じて、プログラム自体によって確立される;しかしながら、感度を高めるために値を調整してもよい。
【0057】
[0060] 更なる有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,1993,Nucl.Acids Res.25:3389-3402によって報告されているギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTは、BLOSUM-62置換スコア;9に設定された閾値Tパラメータ;ギャップなしの伸長を開始するための2ヒット法、ギャップ長kに10+kのコストを負荷、16に設定されたX、並びにデータベース検索段階で40に、及びアルゴリズムの出力段階で67に設定されたXを使用する。ギャップ付きアラインメントは、約22ビットに対応するスコアによって開始される。
【0058】
[0061] ある特定の実施形態において、本発明によるウイルスは、野生型ORF3の一部である配列に第2の欠失も含む。好ましくは、この第2の欠失は、配列番号7を含む(又はそれからなる)。
【0059】
[0062] ある特定の好ましい実施形態において、PEDVが提供され、上記ウイルスは、配列番号6からなる第1の欠失、及び配列番号7からなる第2の欠失を含む。より好ましい一連の実施形態において、ウイルスのゲノム配列は、配列番号10、又はそれと90%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.5%以上)同一である配列を含む。好ましくは、異なるヌクレオチドは、発現したアミノ酸配列に著しい(又は任意の)変化をもたらさず、それはコドン最適化の結果である。本発明のPEDVのE、M、及びNタンパク質のアミノ酸配列は、好ましくは、遺伝子型1又は遺伝子型2に属し得る野生型ウイルスと比較して変化していない。PEDV遺伝子型1の非限定的な例は、CV777(GenBank受託番号AF353511)であり、遺伝子型2の非限定的な例は、DJ株及びAJ1102株(GenBank受託番号JX188454)である。遺伝子型2株の更なる非限定的な例としては、CH/ZJCS03/2012株、CH/JXZS03/2014株、CH/JXFX01/2014株、CH/JXJJ08/2015株、CH/JXGZ04/2015株、CH/JXJA89/2015株、CH/JXDX119/2016株、CH/JXJGS11/2016株、CH/JXWN13/2016株、CH/JXJJ18/2017株、CH/JXNC38/2017株、CH/JX/01株、CH/JX-1/2013株、CH/JX-2/2013株、AH2012株、GD-B株、BJ-2011-1株、CH/FJND-3/2011株、AJ1102株、GD-A株、CH/GDGZ/2012株、CH/ZJCX-1/2012株、CH/FJZZ-9/2012株が挙げられる。遺伝子型2は、2010年~2020年まで、中国及び近隣諸国における主要な遺伝子型である。本発明によるウイルスは、培養の継代によって、又は遺伝子工学技術を用いて上述の突然変異を導入することによって、これら及び他の親株に由来し得る。他の実施形態において、上述のウイルスは、細胞培養の継代によって更に弱毒化され得る。したがって、他の実施形態において、上記の更に弱毒化されたウイルスは、配列番号10又はそれと90%同一である配列を含むゲノム配列を有するウイルスの子孫である。
【0060】
[0063] 本発明は、好ましくは、本発明の変異型弱毒化生PEDVと、薬学的に許容される担体と、を含むワクチン組成物を含む。本明細書で使用される場合、「本発明の弱毒化生PEDV」という表現は、本明細書に記載される変形例のうちの1つ以上を含む、任意の弱毒化生PEDV株を包含する。薬学的に許容される担体は、例えば、水、安定剤、防腐剤、培地、又は緩衝液であり得る。本発明の弱毒化PEDVを含むワクチン製剤は、懸濁液の形態又は凍結乾燥形態で、又は代替として、凍結形態で調製され得る。凍結している場合、グリセロール又は他の同様の薬剤を添加して、凍結時の安定性を向上させることができる。弱毒化生ワクチンの利点は、一般に、天然形態にある感染病原体の全ての関連免疫原決定基が宿主の免疫系に提示されること、及びワクチン接種された宿主内で増殖する薬剤の能力に起因して、比較的少量の免疫化剤が必要であることを含む。
【0061】
[0064] 生ワクチン用のウイルスの弱毒化は、ワクチン接種された標的動物に実質的に害を及ぼすには不十分な病原性であるように、好ましくは連続継代を含む既知の手順によって達成され得る。以下の参考文献は、コロナウイルスの弱毒化のための様々な一般的な方法を提供しており、本発明の実施において有用な株のいずれかの弱毒化又は更なる弱毒化に好適である。B.Neuman et al.,Journal of Virology,vol.79,No.15,pp.9665-9676,2005;J.Netland et al.,Virology,v 399(1),pp.120-128,2010;Y-P Huang et al.,”Sequence changes of infectious bronchitis virus isolates in the 3’7.3kb of the genome after attenuating passage in embryonated eggs,Avian Pathology,v.36(1),(Abstract),2007;及びS.Hingley et al.,Virology,v.200(1)1994,pp.1-10;米国特許第3,914,408号を参照されたい;並びにOrtego et al.,Virology,vol.308(1),pp.13-22,2003。
【0062】
[0065] 本発明において望ましい追加の遺伝子改変ワクチンは、当該技術分野で既知の技術によって生成される。そのような技術は、限定されないが、組換えDNAの更なる操作、組換えタンパク質のアミノ酸配列の修飾又は置換等を含む。
【0063】
[0066] 組換えDNA技術に基づく遺伝子改変ワクチンは、例えば、ブタにおいてより強い免疫応答又は防御応答を誘導する役割を果たすタンパク質(例えば、M、GP2、GP3、GP4、又はGP5等に由来するタンパク質)をコードするウイルス遺伝子の代替部分を同定することによって作製される。ウイルスタンパク質遺伝子の様々なサブタイプ又は単離株を、DNAシャフリング法に供することができる。得られた異種キメラウイルスタンパク質は、広範に防御するサブユニットワクチンに使用することができる。代替として、そのようなキメラウイルス遺伝子又は免疫優性断片を、バキュロウイルスベクター等の標準的なタンパク質発現ベクターにクローニングして、適切な宿主細胞を感染させるために使用することができる(例えば、O’Reilly et al.,”Baculovirus Expression Vectors:A Lab Manual,”Freeman&Co.,1992を参照されたい)。宿主細胞が培養され、したがって所望のワクチンタンパク質を発現し、これが所望の程度まで精製されて、好適なワクチン製品に製剤化され得る。
【0064】
[0067] クローンが、疾患を引き起こす任意の望ましくない天然の能力を保持する場合、任意の残留する病原性に関与するウイルスゲノム内のヌクレオチド配列を特定し、例えば、部位特異的変異誘発によってウイルスを非病原性になるように遺伝子操作することも可能である。部位特異的変異誘発は、1つ以上のヌクレオチドを付加、欠失、又は変更することができる(例えば、Zoller et al.,DNA 3:479-488,1984を参照のこと)。所望の突然変異を含むオリゴヌクレオチドを合成し、一本鎖ウイルスDNAの一部分にアニーリングする。その手順から生じるハイブリッド分子は、細菌を形質転換するために使用される。次いで、適切な突然変異を含む単離された二本鎖DNAを使用して、後に好適な細胞培養にトランスフェクトされる後者の制限酵素断片とライゲーションすることにより、全長DNAを作製する。移入のための好適な転移ベクターへのゲノムのライゲーションは、当業者に既知の任意の標準的な技術によって達成され得る。ウイルス子孫の産生のための宿主細胞へのベクターのトランスフェクションは、リン酸カルシウム又はDEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、及び他の周知の技術等の従来の方法のいずれかを使用して行うことができる(例えば、Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual,”Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。次いで、クロー二ングされたウイルスは、所望の突然変異を示す。代替として、適切な突然変異を含む2つのオリゴヌクレオチドを合成することができる。これらをアニーリングして、全長DNAを生成するためにウイルスDNAに挿入され得る二本鎖DNAを形成することができる。
【0065】
[0068] 免疫学的有効量の本発明のワクチンは、ウイルス感染に対する防御を必要とするブタに投与される。ブタに接種する免疫学的有効量又は免疫原性量は、日常的な試験によって難なく決定され得るか又は容易に用量設定され得る。有効量は、PEDVに曝露されるブタを防御するために、ワクチンに対する十分な免疫学的応答が獲得される量である。好ましくは、ブタは、ウイルス性疾患の有害な生理学的症状又は影響のうちの1つから全てが有意に軽減されるか、改善されるか、又は完全に予防される程度まで防御される。
【0066】
[0069] 本発明のワクチンは、標準的な緩衝剤、安定剤、希釈剤、防腐剤、及び/又は可溶化剤等の動物にとって許容される担体を含むように、許容される慣習に従って製剤化され得、また徐放を容易にするようにも製剤化され得る。希釈剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロール等が挙げられる。等張性のための添加剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが挙げられる。安定剤としては、とりわけアルブミンが挙げられる。修飾生ワクチンの製剤化において特に有用なものを含む、他の好適なワクチンビヒクル及び添加剤は、当業者に既知であるか、又は明らかになるであろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Science,18th ed.,1990,Mack Publishingを参照されたい。
【0067】
[0070] 本発明によるワクチンは、限定されないが、経口、皮下、筋肉内、皮内、静脈内等を含む様々な方法で投与され得る。
【0068】
[0071] 粘膜投与(経口、経鼻、直腸)のために製剤化された本発明のワクチンは、キトサン等の粘膜接着剤と共に製剤化されてもよい。
【0069】
[0072] 注射又は注入による投与のために製剤化された本発明のワクチンは、とりわけ、例えば、アジュバント又はサイトカイン等の1つ以上の追加の免疫調節成分を更に含み得る。本発明のワクチンに使用され得るアジュバントの非限定的な例としては、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.,Hamilton,Mont.)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル等の鉱物ゲル、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、例えば、フロイントの完全及び不完全アジュバント、ブロックコポリマー(CytRx、AtlantaGa.)、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge Mass.)、SAF-M(Chiron、Emeryville Calif.)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A又は他のサポニン画分、モノホスホリル脂質A、イオン性多糖類、並びにアブリジン脂質-アミンアジュバントが挙げられる。本発明のワクチンにおいて有用な水中油型エマルジョンの非限定的な例としては、修飾SEAM(登録商標)62及びSEAM(登録商標)1/2製剤が挙げられる。修飾SEAM(登録商標)62は、5%(v/v)のスクアレン(Sigma)、1%(v/v)のSPAN(登録商標)85洗浄剤(ICI界面活性剤)、0.7%(v/v)のTWEEN(登録商標)80洗浄剤(ICI界面活性剤)、2.5%(v/v)のエタノール、200g/mlのQuil A、100μg/mlのコレステロール、μ及び0.5%(v/v)のレシチンを含有する水中油型エマルジョンである。修飾SEAM(登録商標)1/2は、5%(v/v)のスクアレン、1%(v/v)のSPAN(登録商標)85洗浄剤、0.7%(v/v)のTWEEN(登録商標)80洗浄剤、2.5%(v/v)のエタノール、100μg/mlのQuil A、及び50g/mlのコレステロールをμ含有する水中油型エマルジョンである。ワクチンに含まれ得る他の免疫調節剤としては、例えば、1つ以上のインターロイキン、インターフェロン、又は他の既知のサイトカインが挙げられる。
【0070】
[0073] 追加のアジュバントシステムは、Tヘルパー細胞及びB細胞の両方のエピトープの組み合わせを可能にし、結果として1つ以上の種類の共有結合したT-Bエピトープ結合構造をもたらし、WO2006/084319、WO2004/014957、及びWO2004/014956に記載されるもののように更に脂質付加され得る。
【0071】
[0074] 本発明のある特定の実施形態において、ORFI PEDVタンパク質、又は他のPEDVタンパク質若しくはその断片は、後述するように、5%AMPHIGEN(登録商標)と共に製剤化される。
【0072】
[0075] 好ましいアジュバントは、約5%(v/v)のREHYDRAGEL(登録商標)(水酸化アルミニウムゲル)及び「20%AMPHIGEN(登録商標)」を約25%の最終(v/v)で更に含む緩衝液中に、2ML用量として提供されてもよい。AMPHIGEN(登録商標)は、米国特許第5,084,269号に一般的に記載されており、軽油に溶解され、次いで、水中油型エマルジョンとして抗原の水溶液又は懸濁液に分散される、脱油レシチン(好ましくは大豆)を提供する。AMPHIGENは、米国特許第6,814,971号(その8~9欄を参照)のプロトコルに従って改善されており、本発明の最終的なアジュバントワクチン組成物で使用するための、いわゆる「20%AMPHIGEN」成分を提供する。したがって、10%レシチン及び90%担体油(DRAKEOL(登録商標)、Penreco,Karns City,Pa.)のストック混合物を、0.63%のリン酸緩衝生理食塩水溶液で1:4に希釈し、それによってレシチン及びDRAKEOL(登録商標)成分をそれぞれ2%及び18%(すなわち、それらの元の濃度の20%)に減少させる。TWEEN(登録商標)80及びSPAN(登録商標)80界面活性剤を組成物に添加し、代表的かつ好ましい最終量を、5.6%(v/v)TWEEN(登録商標)80及び2.4%(v/v)SPAN(登録商標)80とし、この場合、Spanが最初にストックDRAKEOL(登録商標)成分中に提供され、SPAN(登録商標)が最初に緩衝生理食塩水成分から提供されるため、生理食塩水及びDRAKEOL(登録商標)成分の混合物は、最終的に所望の界面活性剤濃度をもたらす。DRAKEOL(登録商標)/レシチンと生理食塩水溶液との混合物は、In-Line Slim Emulsifier装置、モデル405(Charle Ross and Son、Hauppauge、N.Y.,USA)を使用して得ることができる。
【0073】
[0076] ワクチン組成物はまた、追加のアジュバント成分として、REHYDRAGEL(登録商標)LV(ストック材料中に約2%の水酸化アルミニウム含有量)を含んでもよい(Reheis,N.J.,USA、及びChemTrade Logistics,USAから入手可能)。0.63%PBSを使用して更に希釈すると、最終ワクチン組成物は、2ML用量当たり以下の組成物量を含有する:5%(v/v)REHYDRAGEL(登録商標)LV;25%(v/v)の「20%AMPHIGEN」、すなわち、更に4倍希釈される)、及び0.01%(w/v)のメルチオレート。
【0074】
[0077] 当該技術分野で理解されるように、同等の最終ワクチン組成物を提供するために成分の添加順序が異なってもよい。例えば、緩衝液中にウイルスの適切な希釈物を調製することができる。次いで、実際の最終生成物中に所望の5%(v/v)濃度のREHYDRAGEL(登録商標)LVを可能にするために、適切な量のREHYDRAGEL(登録商標)LV(約2%の水酸化アルミニウム含有量)ストック溶液をブレンドしながら添加することができる。一旦調製されると、この中間体ストック材料を適切な量の「20%AMPHIGEN」ストック(上に概説したように、TWEEN(登録商標)80及びSPAN(登録商標)80の必要量を既に含有している)と組み合わせて、再び25%(v/v)の「20%AMPHIGEN」を有する最終生成物を得る。適切な量のメルチオレート10%を最終的に添加することができる。
【0075】
[0078] 本発明のワクチン組成物は、抗原の総用量を、前述の抗原用量と比較して好ましくは100倍変化させ得る(増加又は減少する)ように、最も好ましくは10倍以下に変化させ得る(増加又は減少する)ように、全ての成分の変動を許容する。同様に、界面活性剤の濃度(Tween又はSpanのいずれか)は、互いに独立して最大10倍まで変化させることができるか、又は、当該技術分野で十分に理解されている適切な濃度の類似の材料によって置き換えられ、完全に除去されてもよい。
【0076】
[0079] 最終製品中のREHYDRAGEL(登録商標)の濃度は、最初に他の多くの製造業者から入手可能な同等の材料(すなわち、ALHYDROGEL(登録商標)、Brenntag;Denmark)の使用によって、又は、CG、HPA、又はHS等の、REHYDRAGEL(登録商標)製品種目の更なるバリエーションを使用することによって、変化させることができる。一例としてLVを使用すると、0%~20%を含むその最終有効濃度は、2~12%がより好ましく、4~8%が最も好ましい。同様に、AMPHIGEN(登録商標)の最終濃度(「20%AMPHIGEN」の%として表される)は、好ましくは25%であり、この量は、5~50%、好ましくは20~30%と異なってもよく、最も好ましくは約24~26%である。
【0077】
[0080] 本発明の免疫原性組成物及びワクチン組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/又は安定剤を更に含むことができる(例えば、Remington:The Science and practice of Pharmacy,2005,Lippincott Williamsを参照のこと)。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、投薬量及び濃度でレシピエントにとって無毒であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;防腐剤(例えば((o-カルボキシフェニル)チオ)エチル水銀ナトリウム塩(THIOMERSAL(登録商標))、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)、TWEEN(登録商標)、若しくはPLURONICS(登録商標)等の非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0078】
[0081] 本発明のワクチンは、注射による投与のために、又は粘液表面(経口、経鼻、直腸等)への投与のために製剤化されるかどうかにかかわらず、本発明のウイルス、感染性DNA分子、プラスミド、又はウイルスベクターの徐放のために任意選択的に製剤化され得る。そのような徐放製剤の例は、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲン等の生体適合性ポリマーの複合体と組み合わせた、ウイルス、感染性DNA分子、プラスミド、又はウイルスベクターを含む。薬物送達ビヒクルにおける分解性ポリマーの構造、選択及び使用は、参照により本明細書に組み込まれるA.Domb et al.,1992,Polymers for Advanced Technologies 3:279-292に概説されている。医薬製剤中のポリマーの選択及び使用に関する更なるガイダンスは、当該技術分野で既知のテキスト、例えば、M.Chasin and R.Langer(eds),1990,”Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems”in:Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol.45,M.Dekker,NYに見出すことができ、同様に参照により本明細書に組み込まれる。代替として又は追加として、ウイルス、プラスミド、又はウイルスベクターは、投与及び有効性を改善するためにマイクロカプセル化され得る。抗原をマイクロカプセル化するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第3,137,631号、米国特許第3,959,457号、米国特許第4,205,060号、米国特許第4,606,940号、米国特許第4,744,933号、米国特許第5,132,117号、及び国際特許公開第95/28227号に記載されている技術を含み、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
[0082] リポソームも、ウイルス、プラスミド、ウイルスタンパク質、又はウイルスベクターの徐放を提供するために使用され得る。リポソーム製剤の作製及び使用方法に関する詳細は、とりわけ、米国特許第4,016,100号、米国特許第4,452,747号、米国特許第4,921,706号、米国特許第4,927,637号、米国特許第4,944,948号、米国特許第5,008,050号、及び米国特許第5,009,956号に見出すことができ、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
[0083] 上述のワクチンのいずれの有効量も、低用量のウイルス、ウイルスタンパク質プラスミド、又はウイルスベクターから開始して、その後、効果をモニタリングしながら投薬量を増加させるという、従来の手段によって決定することができる。有効量は、ワクチンの単回投与後、又はワクチンの複数回投与後に得ることができる。動物当たりの最適な用量を決定する場合、既知の要因を考慮に入れることができる。これらには、動物の種、サイズ、年齢、及び全身の状態、動物における他の薬物の存在等が含まれる。実際の投薬量は、好ましくは、他の動物実験の結果を考慮した後に選択される。
【0081】
[0084] 十分な免疫応答が達成されたかどうかを検出する1つの方法は、ワクチン接種後の動物における血清転換及び抗体力価を決定することである。ワクチン接種のタイミング、及び存在する場合はブースターの回数は、好ましくは、全ての関連因子(それらのいくつかは上述されている)の分析に基づいて医師又は獣医師によって決定される。
【0082】
[0085] 本発明のウイルス、タンパク質、感染性ヌクレオチド分子、プラスミド、又はウイルスベクターの有効用量は、ワクチン接種される動物の体重等の当業者によって決定され得る要因を考慮に入れて、既知の技術を使用して決定され得る。本発明のワクチンにおける本発明のウイルスの投与量は、好ましくは、約10~約10pfu(プラーク形成単位)、より好ましくは約10~約10pfu、最も好ましくは約10~約10pfuの範囲である。本発明のワクチンにおける本発明のプラスミドの投与量は、好ましくは、約0.1μg~約100mg、より好ましくは約1μg~約10mg、更により好ましくは約10μg~約1mgの範囲である。本発明のワクチンにおける本発明の感染性DNA分子の投与量は、好ましくは、約0.1μg~約100mg、より好ましくは約1μg~約10mg、更により好ましくは約10μg~約1mgの範囲である。本発明のワクチンにおける本発明のウイルスベクターの投与量は、好ましくは、約10pfu~約10pfu、より好ましくは約10pfu~約10pfu、更により好ましくは約10~約10pfuの範囲である。好適な投薬量サイズは、約0.5ml~約10ml、より好ましくは約1ml~約5mlの範囲である。
【0083】
[0086] 本発明の実践によるウイルスタンパク質又はペプチドワクチン(例えば、上述のスパイクタンパク質断片)の好適な用量は、一般に、用量当たり1~50マイクログラムの範囲であるか、又は標準的な方法によって決定され得るそれより多い量の範囲であり、アジュバントの量は、各そのような物質に関して認識されている方法によって決定される。ブタのワクチン接種に関連する本発明の好ましい例において、動物に最適な年齢標的は、離乳前の約1~21日であり、これはMycoplasma hyopneumoniaeに対するワクチン等の他の予定されているワクチン接種にも対応し得る。加えて、交配用の経産ブタに好ましいワクチン接種スケジュールには、毎年の再ワクチン接種スケジュールによる同様の用量が含まれる。
【0084】
投薬
[0087] 好ましい臨床的適応は、交配用の経産ブタ及び分娩前の未経産ブタの両方における治療、管理及び予防、それに続く子ブタのワクチン接種である。代表的な例(経産ブタ及び未経産ブタの両方に適用可能)では、2回の2ML用量のワクチンが使用されるが、当然、用量の実際の体積は、動物のサイズも考慮に入れた、ワクチンがどのように製剤化されるかの関数であり、0.1~5MLの範囲の実際の投与量である。単回用量のワクチン接種も適切である。
【0085】
[0088] 第1の用量は、早ければ交配前から分娩前5週間に投与されてもよく、第2の用量は、好ましくは分娩前約1~3週間に投与され得る。ワクチンの用量は、好ましくは、約10~10、より好ましくは約10~107.5のTCID50(組織培養感染量)に対応するウイルス材料の量を提供し、当該技術分野で認識されるように、更に変化させることができる。ブースター用量は、任意の後続の分娩の2~4週間前に投与することができる。筋肉内ワクチン接種(全ての用量)が好ましいが、用量のうちの1回以上は皮下投与されてもよい。経口投与も好ましい。ワクチン接種は、計画感染又は自然感染によって達成される場合、ナイーブ動物及び非ナイーブ動物にも有効であり得る。
【0086】
[0089] 更なる好ましい例では、経産ブタ及び未経産ブタは、分娩前約8週間、次いで分娩前2週間に、筋肉内又は経口的にワクチン接種される。これらの条件下で、PEDV陰性のワクチン接種された経産ブタが中和活性を有する抗体(血清試料からの中和力価を蛍光焦点により測定)を生じ、これらの抗体がそれらの子ブタに受動的に移行されたことから、防御免疫応答を実証することができる。本発明のプロトコルは、既に血清陽性である経産ブタ及び未経産ブタ、並びに子ブタ及び種ブタの処置にも適用可能である。また、ブースターワクチン接種が行われてもよく、これらは、同じ又は異なる投与経路を介してもよい。任意の後続の分娩に先立って経産母ブタに再度ワクチン接種することが好ましいが、経産母ブタが前回の分娩と関連してワクチン接種されたのみの場合であっても、本発明のワクチン組成物は、それでもなお、抗体の継続的な受動的移行により子ブタに防御を提供することができる。
【0087】
[0090] 子ブタは、その後、早ければ生後1日目にワクチン接種されてもよいことに留意されたい。例えば、特に、経産親ブタが交配前にワクチン接種されたが、分娩前にはワクチン接種されなかった場合、1日目に子ブタにワクチン接種することができ、3週齢でブースター投与を行っても行わなくてもよい。子ブタのワクチン接種は、自然感染又は計画感染のいずれかに起因して、経産親ブタが以前はナイーブではなかった場合にも有効であり得る。子ブタのワクチン接種は、母ブタが以前にウイルスに曝露されたことがない場合、又は分娩前にワクチン接種されていない場合にも、有効であり得る。種ブタ(典型的には交配目的で飼育される)は、6ヶ月ごとに1回ワクチン接種されるべきである。投与量の変動は、十分に当該技術分野の実施の範囲内である。本発明のワクチンは、妊娠中の動物(全ての妊娠期間)及び新生ブタにおける使用に安全であることに留意されたい。本発明のワクチンは、新生ブタを含む最も感受性の高い動物であっても許容される安全性のレベル(すなわち、死亡が見られず、新生ブタにとって正常である一過性の軽度の単数又は複数の臨床徴候のみ)まで弱毒化される。当然のことながら、PEDVの流行と持続的な低レベルのPEDVの発生の両方からブタの群れを防御するという観点からは、継続的な経産ブタのワクチン接種プログラムが非常に重要である。PEDV MLVで免疫された経産ブタ又は未経産ブタは、PEDV特異的IgAを含む免疫を子ブタに受動的に移行させ、PEDV関連疾患及び死亡から子ブタを防御することを理解されたい。加えて、一般に、PEDV MLVで免疫されたブタは、その糞便中に排出されるPEDVの量及び/若しくは持続時間が少なくなるか、又はPEDVから防御され、更に、PEDV MLVで免疫されたブタは、PEDVに起因する体重減少及び体重増加の失敗から防御され、更に、PEDV MLVは、PEDV伝播サイクルの停止又は制御に役立つ。
【0088】
[0091] また、本発明のワクチンを予防接種された動物は、21日以下等の任意の長期にわたる屠殺保留期間もなく、直ちに食用として安全であることに留意されたい。
【0089】
[0092] 治療的に提供される場合、ワクチンは、実際の感染の徴候が検出されてから有効量で提供される。既存の感染症の治療に好適な投与量としては、用量当たり約10~約10TCID50以上のウイルス(ワクチン放出に対する最小免疫量)が挙げられる。組成物は、レシピエントがその投与に耐容性を示し得る場合、「薬理学的に許容される」と言われる。そのような組成物は、投与される量が生理学的に有意である場合、「治療的又は予防的有効量」で投与されると言われる。
【0090】
[0093] 本発明の少なくとも1つのワクチン又は免疫原性組成物が、本明細書に記載の医薬組成物を使用して、意図される目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、そのような組成物の投与経路は、非経口、経口、口腔鼻、鼻腔内、気管内、局所、皮下、筋肉内、経皮、皮内、腹腔内、眼内、及び静脈内投与によるものであり得る。本発明の一実施形態において、組成物は、筋肉内に投与される。非経口投与は、ボーラス注射によって、又は経時的に段階的灌流によって行うことができる。注射器、点滴器、無針注射デバイス、パッチ等を含む任意の好適なデバイスが、組成物を投与するために使用され得る。使用のために選択される経路及びデバイスは、アジュバントの組成、抗原、及び対象に依存し、それらは当業者に周知である。経口投与、又は代替として皮下投与が好ましい。経口投与は、水を介して、又は飼料(固形又は液体飼料)を介して直接的であってもよい。液体形態で提供される場合、飼料に直接添加する(ミックスイン又はトップドレス)ために、又は別様に水若しくは液体飼料に添加するように、ワクチンは、凍結乾燥されて再構成されるか、又はペーストとして提供され得る。
【0091】
[0094] 更に別の態様において、本発明のタンパク質、核酸配列、及びウイルスは、当業者が、以前に感染した動物と、上述のワクチンを予防接種された動物とを区別することを可能にするであろう。例えば、本発明による切断されたSタンパク質断片に結合する(例えば、配列番号4を標的とすることによって)が、野生型Sタンパク質には結合しない抗体を作製することができる。抗体はまた、新しいORF(配列番号5)によって発現されるアミノ酸配列に対して作製することができる。抗体を作製する方法は、当該技術分野で周知であり、当業者は、本発明に好適なポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を調製するために過度の実験に従事する必要はない。本発明による単離されたタンパク質も調製することができる。例えば、試験動物の血液試料からの抗体と配列番号5との反応は、動物がワクチン接種されたことを示唆するであろう。
【0092】
[0095] 他の実施形態において、試験動物由来の試料中の本発明によるウイルスの存在は、第1又は第2の欠失を標的とするプライマーを使用して検出することができる。例えば、プライマーが第1の欠失内の領域を増幅するように設計されている場合、PCR反応産物の不在は、試料中の本発明によるウイルスの存在を示し得る。
【0093】
[0096] 本開示はまた、以下の項目を提供する:
【0094】
[0097] 項目1.ブタ流行性下痢(PED)ウイルスのC末端切断スパイクタンパク質であって、配列番号1(YEVFEKVHVQ)又は配列番号1を含む配列を欠き、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列又はそのC末端切断変異体を含むが、但し、PEDVの上記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1200アミノ酸長であることを条件とする、PEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【0095】
[0098] 項目2.PEDVの上記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1250アミノ酸長であることを条件とする、項目1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【0096】
[0099] 項目3.PEDVの上記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1300アミノ酸長であることを条件とする、項目1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【0097】
[00100] 項目4.PEDVの上記C末端切断スパイクタンパク質が少なくとも1370アミノ酸長であることを条件とする、項目1に記載のPEDVのC末端切断スパイクタンパク質。
【0098】
[00101] 項目5.配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1~4のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【0099】
[00102] 項目6.配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1~4のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【0100】
[00103] 項目7.配列番号2の保存的に置換された変異体である、項目4~6のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質。
【0101】
[00104] 項目8.項目1~7のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質をコードする、核酸配列。
【0102】
[00105] 項目9.項目1~7のいずれか一項に記載のC末端切断スパイクタンパク質、又は項目8に記載の核酸配列を含む、ウイルス。
【0103】
[00106] 項目10.配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むアミノ酸配列であるが、但し、上記配列番号3のC末端アミノ酸がQPLAL(配列番号4)であることを条件とする、アミノ酸配列。
【0104】
[00107] 項目11.配列が、配列番号3と少なくとも95%同一である、項目10に記載のアミノ酸配列。
【0105】
[00108] 項目12.配列が、配列番号3と少なくとも99%同一である、項目10に記載のアミノ酸配列。
【0106】
[00109] 項目13.配列番号3の保存的に置換された変異体である、項目10~12のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【0107】
[00110] 項目14.項目10~13のいずれか一項に記載のアミノ酸配列をコードする、核酸配列。
【0108】
[00111] 項目15.項目10~13のいずれか一項に記載のアミノ酸配列をコードするORFを含むゲノムを有する、ウイルス。
【0109】
[00112] 項目16.配列番号5を含む、アミノ酸配列。
【0110】
[00113] 項目17.項目16に記載のアミノ酸配列をコードするORFを含むゲノムを有する、ウイルス。
【0111】
[00114] 項目18.PEDVである、項目9、15、17のいずれか一項に記載のウイルス。
【0112】
[00115] 項目19.ORF-2及びORF3を含むPEDVであるが、但し、ウイルスが上記ORF2/ORF3に第1の欠失を含み、上記第1の欠失が、配列番号6の欠失又は配列番号6を含む核酸配列の欠失であることを条件とし、上記ウイルスが、配列番号3、又はそれと少なくとも90%同一である配列を含むアミノ酸配列を発現することを条件とし、更に、上記配列番号3のC末端アミノ酸がQPLAL(配列番号4)であることを条件とする、PEDV。
【0113】
[00116] 項目20.上記ORF-3に第2の欠失を更に含み、上記第2の欠失が、配列番号7の欠失又は配列番号7を含む核酸配列の欠失である、項目20に記載のPEDV。
【0114】
[00117] 項目21.上記ウイルスが、E、M、及びNタンパク質をコードする野生型ORFを含む、項目19又は20に記載のPEDV。
【0115】
[00118] 項目22.第1の欠失と第2の欠失とが異なる、項目19~21のいずれか一項に記載のPEDV。
【0116】
[00119] 項目23.ORF-3によって発現される機能的タンパク質を欠く、項目18~22のいずれか一項に記載のPEDV。
【0117】
[00120] 項目24.配列番号10、又はそれと少なくとも90%同一である配列によるゲノムを有する、項目18~23のいずれか一項に記載のPEDV。
【0118】
[00121] 項目25.DJ株、AJ1102株、CH/ZJCS03/2012株、CH/JXZS03/2014株、CH/JXFX01/2014株、CH/JXJJ08/2015株、CH/JXGZ04/2015株、CH/JXJA89/2015株、CH/JXDX119/2016株、CH/JXJGS11/2016株、CH/JXWN13/2016株、CH/JXJJ18/2017株、CH/JXNC38/2017株、CH/JX/01株、CH/JX-1/2013株、CH/JX-2/2013株、AH2012株、GD-B株、BJ-2011-1株、CH/FJND-3/2011株、AJ1102株、GD-A株、CH/GDGZ/2012株、CH/ZJCX-1/2012株、CH/FJZZ-9/2012株からなる群から選択されるPEDV株に由来する、項目18~24のいずれか一項に記載のPEDV。
【0119】
[00122] 項目26.PEDV株DJに由来する、項目18~24に記載のPEDV。
【0120】
[00123] 項目27.請求項24に記載の親PEDVの子孫である、更に弱毒化されたPEDV。
【0121】
[00124] 項目28.上記親PEDVが、配列番号10によるゲノムを有する、請求項27に記載の更に弱毒化されたPEDV。
【0122】
[00125] 項目29.項目18~26のいずれか一項に記載のPEDV、又は項目27若しくは項目28に記載の更に弱毒化されたPEDVを含む、ワクチン。
【0123】
[00126] 項目30.項目18~26のいずれか一項に記載のPEDVが弱毒化されている、項目29に記載のワクチン。
【0124】
[00127] 項目31.ブタ動物をPEDV感染から予防する方法であって、項目29又は30に記載のワクチンを上記ブタに投与することを含む、方法。
【0125】
[00128] 項目32.上記ワクチンが経口投与される、項目31に記載の方法。
【0126】
[00129] 項目33.上記ブタ動物が、経産ブタであり、上記ワクチンが、分娩の約28~42日前に1回目に投与され、更に上記ワクチンが、分娩の約7~21日前に2回目に投与される、項目31又は32に記載の方法。
【0127】
[00130] 項目34.子ブタをPEDV感染から防御する方法であって、項目29に記載のワクチンを予防接種された経産ブタからの初乳を上記子ブタに投与することを含む、方法。
【0128】
[00131] 項目35.上記第1のワクチン接種及び/又は上記第2のワクチン接種が、経口である、項目34に記載の方法。
【0129】
[00132] 項目36.上記子ブタが少なくとも3日齢である、項目34又は35に記載の方法。
【0130】
[00133] 項目37.上記子ブタが少なくとも5日齢である、項目36に記載の方法。
【0131】
[00134] 項目38.上記経産ブタが、分娩から約35日後にワクチン接種された、項目34~37のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
[00135] 項目39.上記経産ブタが、分娩から約14日後にワクチン接種された、項目34~38のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
[00136] 以下の実施例は、例示的な実施形態として提示されるが、本発明の範囲を限定するものとしてとられるべきではない。本発明の多くの変更例、変形例、修正例、並びに他の使用及び用途は、当業者には明らかであろう。
【実施例
【0134】
実施例1-PEDVワクチンの安全性
[00137] 中国南部からの伝染性の高い流行性PEDV株であり、G2a群に属するPEDV-DJを、最大57回の継代のためにVero細胞内で連続的に増殖させた。異なる継代のウイルスのORF2-ORF3領域を配列決定して、病原性関連突然変異及び遺伝的安定性をモニタリングした。配列決定に使用したプライマーは以下の通りであった:
ORF3 24655-F:5’-TCA TTA CTA GTG TTC TGC TGC ATT TC-3’(配列番号11)、
ORF3 25541-R:5’-CAC AGA TTA ACC AAT TGG ACG AAG GT-3’(配列番号12)
【0135】
[00138] 連続継代ウイルスの電気泳動マップを図1に提供する。細胞適応PEDV株の異なる継代のORF2-ORF3領域。ORF2-ORF3領域に大きな断片欠失を有する変異体を、P49で同定した(矢印)。
【0136】
[00139] ワクチン株の安全性を検証するために、5~7日齢の哺乳子ブタにPEDVワクチン株(10TCID50/ブタ)を経口接種した。臨床徴候(全体的な行動、食欲)、特に消化器系の臨床症状を評価した。糞便形態をスコア化し、接種後の死亡/生存子ブタの数を数えた。
【0137】
[00140] 両方の群の子ブタが生存していた。本発明によるPEDVをワクチン接種された子ブタ及びワクチン接種されなかった子ブタの小腸において、顕著な目に見える違いは認められなかった。対照的に、PEDVの病原性株を接種された子ブタの小腸は、貯留した黄色の液体で膨張し、絨毛萎縮の結果として薄い透明な壁を有していた。
【0138】
[00141] 糞便の一貫性スコアは、以下の基準に従って評価した:1-正常な糞便(固体);2-ペースト状;半固体;3-黄色がかり、水様性。ワクチン接種されなかった子ブタと、本発明のPEDV株でワクチン接種された子ブタの糞便一貫性スコア間に差は見られなかった。
【0139】
実施例2-病原性は復帰しない
[00142] 5~7日齢の哺乳子ブタに、10TCID50のPEDVワクチン株を経口接種した。臨床徴候(全体的な精神状態、食欲)、特に消化器系の臨床症状を評価した。糞便形態をスコア化し、死亡/生存動物の数を数えて、株の安全性を総合的に評価した。接種後3日目に、感染した子ブタを安楽死させた。小腸及び小腸の内容物を採取し、次のラウンドの子ブタに接種するための抗原として使用した。この接種パターンを5回繰り返し、病原性復帰試験を完了した。各ラウンドの接種からの臨床試料をワクチン株の単離のために使用し、ワクチン株の遺伝子マーカーの領域を各ラウンドの接種について配列決定した。2つの基準、すなわち子ブタの遺伝的安定性及び罹患率を使用して、ワクチン株の病原性を評価した。
【0140】
[00143] 図2は、5回連続継代したウイルスの核酸の電気泳動マップであり、ウイルスが遺伝的に安定であることを示している。実験終了時には、全ての子ブタが生存していた。
【0141】
[00144] これらの動物試験から、各継代の臨床徴候及び子ブタの生存率に基づいて、ワクチン株の病原性が著しく低下した一方で、ORF2-ORF3領域の遺伝子マーカーは、子ブタにおける5回の継代後も安定したままであることが明らかになった。結論として、PEDVワクチン株は、表現型及び遺伝子型の両方において安定である。
【0142】
実施例3-免疫原性
[00145] 6頭のナイーブ経産ブタを経口免疫し、分娩の60日前及び14日前にそれぞれブーストした。各用量のワクチンは、実施例1に記載の1×10TCID50/mlのウイルスを含有していた。経産ブタからの子ブタを、PEDV TM株、10TCID50/mlを用いて5~7日齢で経口チャレンジし、チャレンジ後10日間、臨床症状及び死亡/生存を観察した。
【0143】
[00146] 加えて、経産ブタ(最初の免疫日及び分娩時)及び哺乳子ブタ(5~7日齢及びチャレンジ後10日)から血清試料を採取し、ELISA(IDEXX PEDV-IgA ELISAキット)及びSNアッセイ(自己確立型のアッセイ、検証済み)によって評価した。
【0144】
[00147] 免疫された経産ブタからの子ブタの生存率は100%であったが、陰性対照からの子ブタはいずれもチャレンジ後に生存していなかった。免疫された経産ブタ及びチャレンジ後の子ブタは、清潔かつ活動的であり、積極的に乳を飲み、下痢の臨床徴候を示さなかった。
【0145】
[00148] 図3は、予備免疫日及び分娩日(2回目の免疫の14日後)の経産ブタのPEDV抗体レベルを示す。経産ブタCは、免疫失敗のために更なる分析から除外され、経産ブタDは、PEDV抗原の代わりにPBSのみで経口免疫された対照経産ブタである。残りの6頭の経産ブタにおいて、抗体レベルが防御力価に達した。
【0146】
[00149] 図4は、3~5日齢の哺乳ブタにおける抗体レベルを示す。これらは、上述のように、以前にワクチン接種された母ブタの初乳によって子ブタに移行される母体抗体である。
【0147】
[00150] 総合すると、これらのデータは、分娩前の経産ブタへの本発明によるウイルスの経口投与が、防御免疫を哺乳子ブタに移行させるのに十分であり、上記子ブタを病原性株PEDVによるチャレンジから防護することを示す。
【0148】
[00151] 本明細書に引用される全ての刊行物、特許刊行物及び非特許刊行物の両方は、本発明が関連する当業者の技能のレベルを示す。これらの全ての刊行物は、各々の個々の刊行物が参照によって組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、参照によって完全に本明細書に組み込まれる。
【0149】
[00152] 本明細書の本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、例示的な実施形態に多数の修正が加えられ得、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の構成が考案され得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023543033000001.app
【国際調査報告】