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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】還元ガス注入システム
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
C21B7/00 309
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519409
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021076434
(87)【国際公開番号】W WO2022064022
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】LU102097
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】マギオリ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】キンゼル、クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】カス、ジル
【テーマコード(参考)】
4K015
【Fターム(参考)】
4K015AD00
4K015AD05
(57)【要約】
高炉壁(30)を備える高炉用還元ガス注入システム(10)であって、還元ガス分配管(20)と、高炉壁にシャフトレベルのところで取り付けられた1つ以上の注入装置(40)、を含み、還元ガス分配管(20)が高炉壁(30)又はその支持構造に取り付けられており、前記注入装置(40)は、少なくとも1つの注入孔(41)を備えた前部から吸入口(43)を備えた反対側の後部まで長手方向軸線に沿って延びる周壁を備えたノズル本体(42)を含み、ノズル本体は、還元ガスを前記吸入口(43)から前記注入孔(41)まで導くための内側ガスチャネルを含み、前記ノズル本体(42)は、注入孔(41)を備えた前部が前記高炉の内側(31)に位置するように前記高炉壁(30)の開口を通して取り付けられ、一方、吸入口(43)を備えた前記後部は前記高炉壁の外側にあり、前記ノズル本体(42)は、前記高炉壁の前記開口に前記注入装置を気密に接続するよう構成された周縁取付部を含み、吸入口(43)は、注入装置支持体によって還元ガス分配管(20)と流体接続されており、前記注入装置支持体は、還元ガス分配管(20)に接続された供給管(51)と、前記供給管(51)に接続された肘部(52)と、前記肘部(52)に接続された注入管(53)とを含み、前記注入管(53)は、注入装置(40)の吸入口(43)に気密にフランジ取付けされ、前記注入管(53)及び/又は少なくとも1つのカルダン補償継手(531)を含む肘部の引出口に、気密に取り付けられている、還元ガス注入システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉壁(30)を備える高炉用還元ガス注入システム(10)であって、
-還元ガス分配管(20)と、
-高炉壁にシャフトレベルのところで取り付けられた1つ以上の注入装置(40)、を含み、
還元ガス分配管(20)が高炉壁(30)又はその支持構造に取り付けられており、
前記注入装置(40)は、少なくとも1つの注入孔(41)を備えた前部から吸入口(43)を備えた反対側の後部まで、長手方向軸線に沿って延びる周壁を備えたノズル本体(42)を含み、
ノズル本体は、還元ガスを前記吸入口(43)から前記注入孔(41)まで案内するための内側ガスチャネルを含み、
前記ノズル本体(42)は、注入孔(41)を備えた前部が前記高炉の内側(31)に位置するように前記高炉壁(30)の開口を通して取り付けられ、一方、吸入口(43)を備えた前記後部は前記高炉壁の外側にあり、
前記ノズル本体(42)は、前記高炉壁の前記開口に前記注入装置を気密に接続するよう構成された周縁取付部を含み、
吸入口(43)は、注入装置支持体によって還元ガス分配管(20)と流体接続されており、前記注入装置支持体は、還元ガス分配管(20)に接続された供給管(51)と、前記供給管(51)に接続された肘部(52)と、前記肘部(52)に接続された注入管(53)とを含み、
前記注入管(53)は、注入装置(40)の吸入口(43)に気密にフランジ取付けされ、前記注入管(53)及び/又は少なくとも1つのカルダン補償継手(531)を含む肘部の引出口に、気密にフランジ取付けされている、還元ガス注入システム。
【請求項2】
前記注入管(53)の少なくとも1つのカルダン補償継手(531)が肘部(52)に接続されている、請求項1に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項3】
注入孔(41)の前部領域が前記高炉の内側(31)に突出している、請求項1又は2に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項4】
供給管(51)は、1つ以上のさらなるカルダン補償継手(511、512)を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項5】
注入装置(40)はフランジ(46)により、ボルト又はフックで、前記高炉壁(30)の開口に気密に取り付けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項6】
注入管(53)は、前記ノズル本体の前記後部の第1の取付フランジ(44)と前記注入管(53)の第2の取付フランジ(535)との間で、注入装置(40)の吸入口(43)に、ボルト又はフックで、好ましくは、気密用の金属製及び/又はソフトシールで気密にフランジ取付けされている、請求項1から5のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項7】
前部から長手方向軸線に沿って延びる前記周壁を備え、少なくとも1つの注入孔(41)を備えた前記ノズル本体(42)を含む注入装置(40)が1部品からなる、請求項1から6のいずれか1項に記載された還元ガス注入シテム(10)。
【請求項8】
肘部(52)は、好ましくはカバー(524)、観察用ガラス(523)及び/又はカメラ(522)、より好ましくはサーマルカメラ又は光源付きカメラが着脱自在に取り付けられた、注入装置(40)の長手方向軸線に同芯の保守点検口(521)を備える、請求項1から7のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項9】
ガス流中に突出しているか又は前記注入装置支持体の耐火ライニングに一体化されているガス流量検出器又は好ましくは熱電対が、前記注入装置支持体内に取り付けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項10】
注入装置の前部は、前記高炉壁(30)の内側に取り付けられた冷却プレート(60)に開口を通して取付けるように構成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項11】
注入装置の前部には、好ましくは冷却プレート(60)の冷却システムと流体冷却接続された冷却システム(45)が設けられている、請求項10に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項12】
還元ガス分配管(20)、注入装置(40)、及び注入装置支持体(51+52+53)の内面が耐火絶縁材料層でライニングされている、請求項1から11のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項13】
20から60個の注入装置(40)を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項14】
注入装置(40)は、高炉壁(30)に対して垂直又は接線方向に指向している、請求項1から13のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項15】
還元ガス分配管(20)は、炉の周りに位置するいくつかの部分に分割され、各部分は個々の還元ガス供給管路によって供給を受ける、請求項1から14のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項16】
突出カバー(100)が注入装置より上に配置され、かつ炉内側に突出したノズル本体前部を下降する重荷材料から保護するように構成されている、請求項1から15のいずれか1項に記載された還元ガス注入システム(10)。
【請求項17】
高炉及び請求項1から16のいずれか1項に記載された少なくとも1つの還元ガス注入システム(10)を含み、注入装置がシャフトレベルのところに取り付けられている、銑鉄を製造するための高炉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、冶金学の分野、より具体的には、高温還元ガスが高炉シャフトに供給される高炉の運転に関する。
【背景技術】
【0002】
パリ協定及び排出量に対する行動の必要性に関するほぼ世界的なコンセンサスにより、各工業部門では、エネルギー効率の改善とCO排出の減少に向けた解決策の開発がどのようになっているか検討することが不可欠である。
【0003】
これに関連して、鉄冶金の分野の関係者は、高炉の製鉄ルート(iron making route)における環境破壊を減らすための新しい手法を開発した。実際、スクラップの溶解や電気アーク炉内での直接還元などの代替方法があるが、それにも拘わらず高炉(BF)は今日でも鉄鋼生産に最も広く使用されるプロセスを代表している。
【0004】
高炉のCO排出量を削減するために開発された手法中で、高温還元ガス、典型的には(主にCO及びHからなる)合成ガス(syngas)を高炉のシャフトに直接導入することが提案されている。これは「シャフト供給(shaft feeding)」としても知られており、熱風(hot blast)(羽口)レベルより上の、即ち朝顔部(bosh)より上で好ましくは凝集区域(cohesive zone)より上の酸化第一鉄のガス固体還元区域内に高温還元ガス(合成ガス)を、炉の外壁を通して導入/注入することを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温の還元ガスを高炉のシャフトに供給するための実行可能な還元ガス注入システムを提案することであり、これは既存の高炉で実施することができる。本発明のさらなる目的は、好ましくは、2つのシステムの相対移動を可能にする、高温の合成ガス配管と高炉のシャフト内の注入個所(injection points)の気密接続のためのコンパクトで費用・効果の高いシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を克服するために、本発明は、第1の態様において、
還元ガス注入システムは、
-還元ガス分配管と、
-高炉壁(の外側)にシャフトレベルのところで取り付けられた1つ以上の注入装置(injector)、を含み、
還元ガス分配管が高炉壁又はその支持構造に取り付けられて(構成されて)おり、
前記1つ以上の注入装置は、少なくとも1つの注入孔を備えた前部から吸入口(inlet port)を備えた反対側の後部まで長手方向軸線に沿って延びる周壁を備えたノズル本体を含み、ノズル本体は、還元ガスを前記吸入口から前記注入孔(複数可)に案内するために構成された内側ガスチャネル(inner gas channel)を含み、
前記ノズル本体は、注入孔(複数可)を備えた前部が前記高炉の内側に位置するように前記高炉壁の開口(aperture)を通して取り付けられており、吸入口を備えた前記後部は前記高炉壁の外側にあり、好ましくは、前記取付けはフランジ取付け(flange mounting)であり、
前記ノズル本体は、前記高炉壁の前記開口に前記注入装置を気密に接続するよう構成された周縁取付部を含み
吸入口は、注入装置支持体(injector stock)によって還元ガス分配管と流体接続(fluidic connection)されており、前記注入装置支持体は、還元ガス分配管に接続された供給管と、前記供給管に接続された肘部(elbow)と、前記肘部に接続された注入管(injector pipe)を含み、
前記注入管は、注入装置の吸入口及び前記注入管及び/又はカルダン継手であり得る少なくとも1つの補償システムを含む肘部の引出口(outlet port)に気密にフランジ取付けされる、高炉壁を備える高炉用還元ガス注入システムを提案する。
【0007】
高炉のシャフトへの還元ガスの注入は多くの刊行物で引用されているが、商業用高炉での工業的利用ではまだ実施されていない。
【0008】
羽口レベルのところでの既知の熱風注入と比較したとき、統合したシャフト注入(integrating shaft injection)における1つの課題(challenge)は還元ガスの特性である。羽口ではガスは単なる熱風であるが、シャフト注入の場合、ガスは還元ガスであり、典型的には可燃性の高い水素とCOを大量に含む合成ガス(シンガス)であり、しかも後者は人体に有毒でもある。
【0009】
したがって、主ガス分配管と高炉の注入個所との気密接続を維持することは最も重要である。このことは、還元ガスの高温(最大約1100℃)と高炉の内部のシャフトレベルのところの高温により、高炉壁、還元ガス分配管、注入装置、及び注入装置支持体が熱膨張と変形を生じ、還元ガス注入システム全体に無視できない相対変位と応力が発生することを知ると、ますます真実となる。したがって、注入装置支持体は、還元ガスを漏洩により逃がすことなく、これらの相対変位を補償する必要がある。
【0010】
羽口の場合、ブロー管(blowpipe)の前部は、スプリングタイロッドシステムによって、高炉の壁に組み込まれた羽口に圧接される。これにより幾分横方向の動きの補償が得られるものの、この解決策はシンガスのような還元ガスを使用する場合には、十分気密にならない。したがって、羽口支持体の羽口への取り付けとは対照的に、現在の還元ガス注入システムの注入管は、フランジ取付けによって注入装置に気密に取り付けられている。これにより気密性の問題は解決できるが、肘部と注入管の上述の相対変位を補償する能力は損なわれる。
【0011】
カルダン補償継手(Cardan compensation joints)は、羽口支持体(tuyere stocks)の技術分野において知られており、かつ米国特許3,662,696、3,766,868、4,023,832、4,027,605、4,987,838及び5,462,433に記載されており、これらは参照することで本明細書に組み込む。
別の有利なカルダン補償継手は、DE 20 2012 011 622.3に記載されており、これも参照することで本明細書に組み込む。参照特許の羽口支持体により、使用中の差動変形(differential deformations)及び羽口支持体の管状セグメント間の製造上の精度不良を、カルダン補償継手と概して非常に少数の波形を有するベローズタイプの補償器とを組み合わせて使用することで補償できる利点が得られる。
【0012】
しかしながら、従来の羽口支持体では、このようなカルダン型補償継手は、羽口支持体のダウンカマー(下降管;downcomer)部、即ちその下流部ではなく肘部の上流部で用いられている。
【0013】
本発明者らは、羽口システムにおけるスプリングタイロッドシステムによる従来の取付けによって生じる屈曲性の喪失は、肘部の屈曲部の下流側、例えば肘部の引出口(注入管への肘部の取付部の近く)及び/又は注入管内の内部にカルダン型補償継手を、気密性について妥協することなく導入することによって、有利にバランスをとることができることを見出した。
【0014】
還元ガス分配管と注入装置(複数可)との間の任意のさらなる相対移動を可能な限りさらに補償するために、供給管は、好ましくは、少なくとも1つの別のカルダン補償継手をも備える。有利な実施形態では、1つは供給管の吸入口の近く、もう1つは供給管の引出口の近くの2つのカルダン補償継手が予見される。
【0015】
メンテナンスの容易さとメンテナンス中の時間の節約は、特に注入個所の数、したがって接続の数が多い場合に非常に重要である。この目的のため、注入管のフックと共に注入管の2つの対応するフランジにクイックカップリングが予見できるであろう。実施形態では、注入管は、ボルト又はフックで注入装置の吸入口に気密状態でフランジ取付けされ、フックを使用することにより、より迅速な組み立て及び分解が可能になる。有利にも、気密性(gas tightness)は、前記ノズル本体の前記後部の第1の取付フランジと前記注入管の第2の取付フランジとの間で、金属及び/又はソフトシール(soft seal)を使用することによってさらに改善される。さらに有利なことには、注入装置支持体の全てのフランジには、金属及び/又はソフトシールが設けられている。シールは、フラット、O-リングタイプなど、さまざまな材料や形状にすることができる。
【0016】
さらに、このフランジ取付部(flange mounting)は、メンテナンス中に、後部フランジ(rear flange)の塞がった(blocked)注入装置を開放するためのドリルを接続するために、開くこともでき、したがって、そのような場合には、それに関わる力に耐えるように構築されることになる。
【0017】
代替的には、少なくとも注入装置の閉塞(obstruction of)が軽度の場合、又は単に検査のために、肘部は、好ましくは、注入装置の長手方向軸線と同芯の保守及び検査口を備え、これには、好ましくはカバー、観察用ガラス(view glass)及び/又はカメラが取り外し可能に取り付けられる。カメラと観察用ガラスは、例えば適切に配置されたビームスプリッタを使用することで同時に使用することができる。シャフトレベルのところでは、羽口レベルのところとは対照的に、高炉の内部は暗いので、カメラは好ましくはサーマル及び/又は赤外線カメラであり、及び/又は追加の光源を設けることができる。
【0018】
特に有利な実施形態においては、注入装置の部分的又は増大する目詰まりは、ガス流中に突出しているか又は耐火ライニングに一体化されている、注入装置支持体の任意の位置における流量検出器又は好ましくは表皮流(skin flow)又は熱電対を統合することによっても検出できる。実際、ガス流が大幅に減少又は停止した場合、熱電対の温度測定値が減少し、検査とメンテナンスが必要であることを示す。
【0019】
注入装置の前部領域、即ち注入孔を含む領域は、その凹部又は前記高炉の内側に突出する部分において、内側高炉壁と面一にすることができる。冷却プレートが高炉壁の内側に取り付けられている場合には、注入装置の前部領域は、その凹部内で又は前記高炉の内側に突出させて前記冷却プレートの内側と面一にすることができる。
【0020】
この後者の場合、注入装置の前部は、前記高炉壁の内側に取り付けられた冷却プレート内の対応する開口を通して取り付けるように構成される。
【0021】
なお、注入装置の前部領域が高炉の内側に突出している場合には、注入装置の突出部分内に複数の注入孔があるのが予見でき、前記注入孔は、有利にも(注入装置の長手方向軸線に沿った)直線状、注入装置の長手方向軸線に対して垂直又は任意の適切な角度で下向き及び/又は一側又は両側方向など、異なる方向を向いている。
【0022】
突出型注入装置の場合、高炉内側に突出するノズル本体前部を下降する重荷材料(burden material)から保護するように構成され、注入装置の上方に配置される突出カバーを設けることが必要又は望ましいであろう。
【0023】
さらに、注入装置の前部には冷却システムを設けることが好ましい。代替的には、高炉内の注入装置の突出部分(全体又は一部)の周りに別の冷却ノーズ(鼻状部)を取り付けることができ、これにより、この冷却ノーズは熱保護を提供するだけでなく、摩耗からの保護も提供する。こうした事情から、注入装置及び/又は別の冷却ノーズは(加圧された)水で冷却され得ると共に、一般に、銅、銅/ニッケル合金の様な銅合金、鋳鉄、鋳鋼などの材料でできている。
【0024】
注入装置は複数の部品(pieces)から造ることができるが、前部から長手方向軸線に沿って延びる前記周壁を備え、少なくとも1つの注入孔を備えた前記ノズル本体を含む注入装置は、1部品から作られていることが好ましい。こうした事情から、実施形態では、注入装置は、高炉内側に突出するか又は突出しない1部品となる。
【0025】
さらに、注入装置は、高炉壁に対して垂直(高炉の中心に向かって)又は接線方向(即ち、90°未満の任意の角度、好ましくは注入装置の位置における高炉壁に対して10°を超える角度)に向けることができる。還元ガス注入システムは、15から60個の注入装置、好ましくは20から40個の注入装置を含み得る。
【0026】
また、分配管は、概して従来のバッスル管に関するように閉じた周縁回収機である必要はないことに留意することも重要である。しかしながら、シャフトのこの領域は、一般に冷却プレート及び/又は支持構造用の冷却材分配管によってごちゃごちゃした状態になる。したがって、所与の高炉環境で十分なスペースが確保できない場合には、還元ガス分配管を、高炉の周りに位置するいくつかの部分(例えば、4象限)に分割することができ、各部分は、還元ガス供給源からの個々の還元ガス供給管路によって供給を受ける。
【0027】
別の実施形態では、シャフトレベルのところのスペースが制限されている場合、還元ガス分配管は、熱風バッスル管より上、しかし注入装置のレベルより下に取付けできる(それに取り付けるか或いは好ましくは高炉又はその支持構造のいずれかに取り付ける)。したがって、注入装置支持体の供給管は還元ガス分配管の上側に接続され、かつ注入装置支持体は上向きになる。
【0028】
還元ガスの温度上昇を考慮して、還元ガス分配管の内面、注入装置支持体、及びオプションで注入装置は、還元ガス注入システムを保護するために耐火絶縁材料層でライニングされる。
【0029】
本発明は、第2の態様において、ここで説明する高炉及び少なくとも1つの還元ガス注入システムを含み、注入装置(複数可)がシャフトレベルのところに取り付けられている、銑鉄を製造するための高炉設備を提案する。本発明の別の利点は、還元ガス分配管を、例えば十分なスペースの利用可能性に応じて、注入装置のレベルより上又は下に取付けできることである。還元ガス分配管が高炉の周りに位置するいくつかの部分に分割されている場合であっても、還元ガス分配管部分の一部を注入装置レベルより上及び下に配置することが可能である。
【0030】
「流体接続」という表現は、流体、例えば気体が1つの装置から別の装置へ流動し得るように、2つの装置が導管(conducts)又は管によって接続されていることを意味する。この表現には、この流れを変えるための手段、例えば質量流量(mass flow)を調整するためのバルブ又はファン、圧力を調整するためのコンプレッサなど、及び高炉全体の運転又は高炉設備内の各要素の運転を適切に制御するために必要又は望ましいセンサ、アクチュエータなどの制御要素が含まれる。
【0031】
本明細書で用いられている「シャフトレベルのところで」及び「高炉のシャフト内へ」という表現は、熱風(羽口)レベルのところより上、即ち朝顔部より上、好ましくは凝集区域より上の酸化第一鉄のガス固体還元区域内での材料の注入を意味する。
【0032】
本文脈における「約」は、所与の数値が、前記数値の-10%から+10%の値の範囲、好ましくは、前記数値の-5%から+5%の値の範囲をカバーすることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、次に、例として、添付の図面を参照して説明する:
図1】高炉のシャフトに取付けられた還元ガス注入システムの1実施形態を示す三次元概略図である。
図2】還元ガス分配管と注入装置との間に取り付けられる注入装置支持体の1実施形態の一部断面図である。
図3】還元ガス注入システムの一部の別の実施形態の詳細図であり、より詳細には、肘部に至るまでの注入装置の別の実施形態を示す。
図4】還元ガス注入システムの一部のさらに他の実施形態の詳細図であり、より詳細には、図3のそれに対して肘部に至るまでの注入装置の代替実施形態を示す。
図5】注入装置用保護カバーをa)側面図及びb)正面図で示した原理図である。
【0034】
本発明のさらなる細部及び利点は、添付図面を参照する以下の幾つかの非限定的な実施形態についての詳細な説明から明らかとなろう。
【好ましい実施形態の説明】
【0035】
高炉のシャフトでの高温還元ガスの注入については多くの出版物で言及されているが、工業的利用は商業用高炉においてはまだ実施されていない。
【0036】
羽口での熱風注入と比較して、統合したシャフト注入の1つの課題は、ガスの特性である。羽口ではガスは単なる熱風であるが、シャフト注入の場合、ガスは通常、可燃性の高い水素とCOを大量に含む合成ガスであり、後者は人に有毒である。
【0037】
したがって、主ガス分配管と高炉での注入個所との気密接続を維持することが最重要である。
【0038】
注入装置の引出口は、単純な開口や羽口状開口から、例えば、特定の交換可能なインサート、注入装置の引出口の上の保護カバー、別個の冷却されたノーズ(鼻状部)などを有し、好ましくは異なる方向を向いた複数の注入個所を備えた注入装置に至るまでの、異なる設計を有し得る。
【0039】
羽口エリアにおいて、高温ガス配管、特にバッスル管と羽口間の接続は、羽口支持体で実現される。羽口支持体は主に2つの任務を持っている。
-熱風配管と羽口レベルの高炉の殻に組み込まれた羽口との間のガス接続であること、
-高炉殻に組み込まれた羽口と、高炉設備の独立した鋼構造に接続された熱風配管との間の相対的移動の補償を可能にすること、の2つの任務を持っている。
相対的移動は、システムに異なる温度が存在するという事実によるもので比較的重要である。
【0040】
従来の羽口支持体は、いくつかの部分から構成され、主要部分は、ダウンカマー(下降管)、肘部及びブロー管(blow pipe)である。ブロー管の半球前部は、スプリングタイロッドシステムにより、高炉の壁に組み込まれた羽口に押し付けられる。羽口支持体の要素は、ダウンカマーのカルダン型の補償継手に接続されており、2方向の移動が可能である。これらの2次元の移動は、ブロー管の半球を羽口のノーズの座部に保持しておくのに十分である。この可動式の金属製シート接続(movable metallic seat connection)は、高炉に熱風を伝導する場合に十分なものである。
【0041】
従来の羽口自体も、羽口本体と羽口鼻状部から構成された比較的複雑なシステムである。後者は高炉、より具体的には高炉のレースウエイ(raceway)に突出している。このエリアは、非常に高い温度レベル、典型的には2000から2500°C及び非常に高いガス速度によって特徴付けられる。また、溶融スラグと鉄粒子は高炉のこのレベルで見つかるので、羽口の鼻状部が損傷を受け、定期的に交換する必要があることが明らかである。
【0042】
通常、高炉では多数の羽口が採用されており、高炉の製造によるが、典型的には10から40である。
【0043】
本発明者は、本還元ガス注入システムにおいて、以下の主な理由から、注入装置自体を羽口エリア内の羽口と比較して単純化できる可能性があり得ることを同定した:
-厚い耐火ライニングはなく、冷却プレート及び/又は冷却ボックス及び/又は外部水膜冷却による冷却を可能にする、より低い温度レベルの炉のシャフトエリア、
-還元ガスの900から1100°Cの典型的な温度レベル、
-より低い流量、したがって配管が必要とするより小さな直径、
-より低い圧力レベル。
【0044】
それの有利な効果の1つは、注入装置の直径が小さいことにより、注入装置間のスペースが増え、高炉殻への金属及び/又はソフトシールを含むフランジ付きボルト締結部との接続が容易になることである。注入装置の直径が小さいことによるさらなる利点は、これにより、高炉壁及び冷却プレートの開口を小さく保つことができることである。これは、次に冷却プレートを交換することなく、既存の高炉でこの解決策を容易に後付けで実施することを保証する。
【0045】
より詳細には、注入装置支持体の注入装置への取付けにフランジ取付けを使用することに関し、フランジのボルトを締め付けるときに、一定のトルクを加えることによって気密性をさらに制御することができる。石鹸水などの気密性の検証のための典型的な手段を使用することができる。
【0046】
しかしながら、還元ガス分配管への注入装置のフランジ取付けを使用することによって、注入装置支持体は、注入装置に対する注入装置支持体及び還元ガス分配管の全ての相対的な移動を補償できるようにしなければならない。したがって本発明は、注入装置と肘部の引出口との間のフランジ取付けとカルダン型補償継手の組み合わせを提案する。
【0047】
ここで、図面を見ると、図1はシンガスなどの還元ガスを高炉のシャフトに注入する本発明の還元ガス注入システム10の1実施形態の概略三次元部分切欠図を示し、前記システムは高炉壁30又はその支持構造(図示せず)にシャフトレベルのところで取り付けられている。還元ガス注入システムの還元ガス分配管20は、ここでは高炉の全周をシャフトレベルのところで覆い、還元ガス供給管路22から供給を受け、冷却プレート60の対応する開口を通して高炉31の内側に僅かに突出し注入装置毎に単一の注入孔41を備えた、複数の注入装置40に接続されている。
【0048】
還元ガス分配管20は、肘部52に取り付けられた供給管51を含む注入装置支持体を介して注入装置40に気密に接続され、肘部52は注入管53に止着され、それは次にフランジ535によって注入装置40の対応するフランジ44に接続される。本実施形態では、注入管53内にカルダン補償継手531が設けられている。
【0049】
なお、図1から4において、供給管51は、還元ガス分配管の下側に取り付けられ、かつ下方を向いている、即ち注入装置レベルは還元ガス分配管レベルより下方にある。しかしながら、還元ガス注入システムの「上下が逆の」実施形態、ここでは注入装置レベルが還元ガス分配管レベルより上にあり、即ち供給管が還元ガス分配管の上側に接続されかつ上方に延びるものも明示的に提供している。
【0050】
図2は、注入装置40の吸入口43に止着され、その供給管51、その肘部52及びその注入管を備えた注入装置支持体に接続され、その耐火ライニング21を備えた還元ガス分配管20を有する本還元ガス注入システムの別の実施形態をより詳細に示している。本実施形態では、注入管53の内部にもカルダン補償継手531が設けられている。なお、注入装置支持体の各要素も耐火ライニングを備えることが好ましいが、このライニングは、簡略化のために図面から省略されている。
【0051】
好ましくは、供給管51は肘部52に対する還元ガス分配管の相対移動をさらに補償するために、2つのカルダン補償継手511、512を備えている。注入装置支持体の全ての部分は、好ましくは、対応するフランジと一緒に取り付けられ、所望により対応するシール(図示せず)が設けられる。
【0052】
注入装置40は、高炉壁30の開口に気密に止着されている。冷却プレート60がある場合には、これらの冷却プレート60には対応した開口が設けられている。有利にも、注入装置40又はそのノズル本体42は、特に注入孔41(複数可)を囲む部分が高炉の内側31に突出している場合には、冷却水循環システムに接続された冷却チャネルの様な冷却システム45を含む。
【0053】
保守点検口521は肘部の後部内に設けられ、肘部の長手方向中心軸線は注入装置40の中心長手方向軸線に対応している。
【0054】
図3は、還元ガス注入システムの供給管(図示せず)の下流側の部分のみを示すさらに他の実施形態の詳細図である。同じ又は同等の特徴には、上記及び以下の符号の説明と同じ番号が付されている。
【0055】
この図面においてより詳細に示すように、注入装置は、高炉壁30への取付フランジ46により気密状態で取り付けられている。
【0056】
保守点検口521は、注入装置40の中心長手方向軸線と整列した、その中心に開口を備える取り外し可能なカバー524を備えている。前記開口には、観察用ガラス(view glass)523とカメラ522を組み合わせた検査システムを備えた遮断弁525が取り付けられている。
【0057】
本実施形態では、カルダン補償継手531は、注入管53内に設けられている。
【0058】
図4は、図3においてカルダン補償継手531が肘部52の引出口部分内に設けられていることを除いて図3と同様である。
【0059】
実施形態においては、突出カバーを、注入装置(複数可)の上方に配置しかつ炉の内側に突出するノズル本体前部を下降する重荷材料から保護するように構成することができる。注入装置ノズル本体のそのような下降する重荷材料(焼結/ペレット及びコークス)による摩耗に対する保護は、例えば、平滑又は波形の鋼製の殻によって行うことができる。この突出カバー100の原理は図5に示されており、注入装置の長手方向Lに延びる一種のキャップを形成している。それは注入装置の突出長さ(破線で示す)を覆う。図から明らかなように、カバー100は、湾曲した鋼横断面であり、より詳細には、丸みを帯びた逆V字型を有する。Vの頂点100.1は注入装置40の上方にあり、2つの分岐100.2は注入装置40の両側、任意で、さらに注入装置の下方にまでも延びている。カバー100は、直接的又は間接的に液冷可能である。冷却材チャネルは、例えば殻の下側に配置することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 還元ガス注入システム
20 還元ガス分配管
21 耐火ライニング
22 還元ガス供給管路
30 高炉壁
31 前記高炉の内側
40 注入装置(複数可)
41 注入孔(複数可)
42 ノズル本体
43 吸入口
44 第1の取付フランジ(ノズル本体の後部の)
45 冷却システム
46 取付フランジ(高炉殻に対する注入装置の取付用)
51 供給管
511 , 512 更なるカルダン補償継手
52 肘部
521 保守点検口
522 カメラ
523 観察用ガラス
524 カバー
525 弁
53 注入管
531 カルダン補償継手
535 更なる取付フランジ(前記注入管上の)
60 冷却プレート
51+52+53 注入装置支持体
100 カバー
100.1 頂点
100.2 二つの分岐
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
【国際調査報告】