(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】マイクロチャネル及びメソチャネルプロセスシステムを誘導加熱するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20231004BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20231004BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B01J19/08 D
B01J19/00 321
C01B3/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541488
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021050756
(87)【国際公開番号】W WO2022061041
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523094524
【氏名又は名称】スターズ テクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェジェング、ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ、デニス
【テーマコード(参考)】
4G075
4G140
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA39
4G075BA05
4G075BA10
4G075BB02
4G075BD23
4G075BD24
4G075CA02
4G075CA43
4G075CA54
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075EC30
4G075FA12
4G075FA14
4G075FB02
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB11
4G140EB37
4G140EB44
4G140EB46
(57)【要約】
【要約】誘導加熱は、熱交換チャネルを含む特別に適合された化学処理ユニットでの熱化学プロセスに適用される。構成要素の集まりは、容易なセットアップと保守に適合されるポータブルユニットに収納されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学処理装置であって、
交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、前記上壁の反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有するプロセス層であって、
流体の流れに適したチャネルと、前記プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、前記プロセス層と、
前記プロセス層の前記底壁に隣接する伝熱層であって、
前記伝熱層は、上壁、前記上壁と反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有し、
流体の流れに適合されたチャネルと、流体が前記伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、
但し、前記プロセス層の前記出口は、流体が前記プロセス層から前記伝熱層に流れ込むことができるように、前記伝熱層の前記入口に接続され、
但し、前記プロセス層の前記底壁は、前記伝熱層の前記上壁であるか、または前記壁が熱的に接触している場所である、前記伝熱層と、
前記プロセス層の前記上壁に交流磁場を生成するように構成されたインダクタと、を備える、前記化学処理装置。
【請求項2】
前記プロセス層が複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルを含む、請求項1に記載の化学処理装置。
【請求項3】
伝熱層が複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルを含む、請求項1または2に記載の化学処理装置。
【請求項4】
動作中、前記伝熱層の流れが前記プロセス層の流れの前記方向と反対である、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項5】
動作中、流れがクロスフローであり、前記伝熱層の前記複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルが、前記プロセス層の前記複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルと重なり、前記チャネルが交差し、流れがカウンター流とクロス流の両方になるようにする、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項6】
前記インダクタがパンケーキ状誘導コイルまたはトロイダル状誘導コイルである、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項7】
誘導エンハンサーをさらに含む先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項8】
前記処理チャネルの内部に配置された誘導サセプタをさらに備える、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項9】
前記上壁が室温でフェリ磁性または強磁性である、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項10】
前記上壁が室温で常磁性である、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項11】
前記プロセス層に向かって流れる前記プロセスストリームと、前記伝熱層から離れるように流れる前記生成物ストリームとの間で熱伝達がある回復熱交換器をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項12】
前記回復熱交換器がマイクロチャネル回復熱交換器である、請求項11に記載の化学処理装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の化学処理装置を含む化学変圧器。
【請求項14】
吸熱化学プロセスを実施する方法であって、
交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、前記上壁の反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有するプロセス層であって、
流体の流れに適したチャネルと、前記プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、前記プロセス層と、
前記プロセス層の前記チャネルに流れる前記プロセスストリームと、
前記プロセス層の前記底壁に隣接する伝熱層であって、
前記伝熱層が上壁、前記上壁と反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有し、
流体の流れに適合されたチャネルと、流体が前記伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、前記伝熱層と
を備える装置にプロセスストリームを通過させること、
前記伝熱層の前記チャネルを通って流れる伝熱流体を通過させることであって、
前記プロセス層の前記底壁は、前記伝熱層の前記上壁であるか、または前記壁が熱的に接触している場所であり、
前記伝熱チャネルの前記伝熱流体と前記プロセスチャネルの前記プロセスストリームとの間で熱が伝達される、前記通過させること、及び
インダクタを介して前記プロセス層の前記上壁に交番磁場を発生させることであって、前記上壁が前記交番磁場によって加熱され、前記上壁からの熱は前記プロセスストリームに伝達される、前記発生させること、を含む、前記方法。
【請求項15】
前記プロセス層の前記出口が前記伝熱層の前記入口に接続され、
前記伝熱層は複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルを含み、前記プロセスストリームは前記プロセス層から流出し、前記伝熱層の前記複数のマイクロチャネルまたは前記複数のメソチャネルに流入する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸熱化学プロセスが化学反応である、請求項14から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記化学プロセスが触媒化学反応である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化学プロセスがメタン水蒸気改質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化学反応が、改質反応または逆水性ガスシフト反応を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記吸熱化学プロセスが前記生成物ストリームを気化させることを含む、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記プロセス層に入る前の前記プロセスストリームと、前記熱交換層を出た生成物ストリームとの間で熱を交換するステップをさらに含む、請求項14から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記吸熱化学プロセスが化学的分離を含む、請求項14から15のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
化学的分離が蒸留または収着を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記伝熱流体が、前記プロセス層における化学反応の前記反応生成物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記交番磁場が1から100kHzの間の周波数で交番する、請求項14から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記交番磁場が1から50kHzの間の周波数で交番する、請求項14から24のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
化学処理システムであって、
交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、前記上壁の反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有するプロセス層であって、
流体の流れに適したチャネルと、前記プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、前記プロセス層と、
前記プロセス層の前記チャネルに流れるプロセスストリームと、
前記プロセス層の前記底壁に隣接する伝熱層であって、
前記伝熱層が上壁、前記上壁と反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有し、
流体の流れに適合されたチャネルと、流体が前記伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、前記伝熱層と、
前記伝熱層の前記チャネルを通って流れる伝熱流体であって、
前記プロセス層の前記底壁は、前記伝熱層の前記上壁であるか、または前記壁が熱的に接触している場所であり、
前記伝熱チャネルの前記伝熱流体と前記プロセスチャネルの前記プロセスストリームとの間で熱が伝達される、前記伝熱流体と、
前記プロセス層の前記上壁に交番磁場を発生させるインダクタであって、前記上壁が前記交番磁場によって加熱され、前記上壁からの熱は前記プロセスストリームに伝達される、前記インダクタと、を含む、前記システム。
【請求項28】
前記プロセス層の前記出口が前記伝熱層の前記入口に接続され、
前記伝熱層は複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルを含み、前記プロセスストリームは前記プロセス層から流出し、前記伝熱層の前記複数のマイクロチャネルまたは前記複数のメソチャネルに流入する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記システムの熱エネルギー効率が、100%である前記消費された電気エネルギーに対する前記流体のエネルギー含有量の正味の増加の比率に基づいて、50%より大きい(いくつかの実施形態では、50から約90%)、請求項27から28のいずれかに記載のシステム。
【請求項30】
前記システムの化学的効率が、100%である前記消費された電気エネルギーに対する前記流体のより高い加熱の値の正味の増加の比率に基づいて、70%より大きい(いくつかの実施形態では、70から約90%)、請求項27から29のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
トロイダル状化学処理装置であって、
交番磁場に応答して加熱するように適合されたトロイダル形リアクタの壁によって画定され、前記トロイダル形リアクタの壁の周りに配置されたインダクタコイルを備えるトロイダル形処理装置と、
前記トロイダル形リアクタの壁の内側に配置された化学処理チャネルであって、
入口及び出口を含む前記化学処理チャネルを備える、前記トロイダル状化学処理装置。
【請求項32】
前記化学処理チャネルが、前記トロイドの前記中心軸の近くから周辺の近くまで半径方向に延びる複数のチャネルを備える、請求項31に記載のトロイダル状化学処理装置。
【請求項33】
前記化学処理チャネルに隣接する伝熱チャネルをさらに備える、請求項31から32のいずれかに記載のトロイダル状化学処理装置。
【請求項34】
パンケーキ形化学処理装置であって、順に、
前記第1のプロセス層の前記上壁に交流磁場を生成するように構成された、第1のパンケーキ形インダクタと、
交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、前記上壁の反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有する第1のプロセス層であって、
前記プロセス層が流体の流れに適したチャネルと、前記プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、前記第1のプロセス層と、
前記第1のプロセス層の前記底壁に隣接する伝熱層であって、
前記伝熱層が上壁、前記上壁と反対側の底壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有し、
流体の流れに適合されたチャネルと、流体が前記伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備え、
但し前記第1のプロセス層の前記底壁は、前記伝熱層の前記上壁であるか、または前記壁が別様には熱的に接触している場所である、
前記伝熱層と、
交番磁場に応答して加熱するように適合された底壁、前記底壁の反対側の上壁、及び前記上壁と前記底壁との間に配置された側壁を有する第2のプロセス層であって、
流体の流れに適したチャネルと、前記プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、前記第2のプロセス層と、を備え
前記第2のプロセス層の前記上壁は、前記伝熱層の前記底壁であるか、または前記壁が別様には熱的に接触している場所である、前記パンケーキ形化学処理装置。
【請求項35】
前記第2のプロセス層の前記底壁に交番磁場を生成するように構成された第2のパンケーキ形インダクタをさらに備える、請求項34に記載のパンケーキ形化学処理装置。
【請求項36】
前記第1及び第2のプロセス層が、中心軸から放射状に延びるチャネルを含む、請求項34から35のいずれかに記載のパンケーキ形化学処理装置。
【請求項37】
前記プロセス層及び前記伝熱層が、カウンター、クロス、またはカウンタークロス流の熱交換用に構成されたチャネルを含む、請求項34から36のいずれかに記載のパンケーキ形化学プロセス。
【請求項38】
誘導加熱吸熱単位操作の温度を受動的に制御する方法であって、
インダクタから交番磁場を印加することにより、化学処理装置の受入体を加熱することを含み、
前記受入体は、室温でフェリ磁性または強磁性であり、
プロセスストリームは、前記受入体によって加熱され、
前記受入体はキュリー温度を含み、
前記プロセスストリームの温度は、前記キュリー温度の少なくとも50℃以内に近づき、前記キュリー温度の少なくとも50℃以内に近づく結果として、前記受入体の隣接部分の磁化率は、前記化学反応物質が少なくとも10%または少なくとも20%削減される、前記方法。
本明細書において、磁化率は体積磁化率を指す。
【請求項39】
前記操作が、吸熱反応、分離、及び/または気化を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化学反応物質は前記キュリー温度に達し、前記キュリー温度に達した結果、前記受入体から前記化学反応物質への熱伝達が減少する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
誘導加熱化学反応の前記温度を受動的に制御する方法であって、
インダクタから交番磁場を印加することにより、化学リアクタの受入体を加熱することを含み、
前記受入体は、室温でフェリ磁性または強磁性であり、
化学反応物質は前記受入体によって加熱され、
前記受入体はキュリー温度を含み、
前記化学反応物質は前記キュリー温度に達し、前記キュリー温度に達した結果、前記受入体から前記化学反応物質への熱伝達が減少する、前記方法。
【請求項42】
化学変圧器であって、
複数の蒸気改質器、
複数の回復熱交換器を備え、
前記複数の蒸気改質器、及び前記複数の回復熱交換器は、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジングに配置される、前記化学変圧器。
この態様の文脈において、前記六角形及び前記円筒形という用語は、正確な幾何学的寸法を必要としないが、セットアップ、保守、または修理の間にアクセスするためにアセンブリを輸送及び開封できるようにする識別可能な形状である。
【請求項43】
複数の蒸気メタン改質器と、
複数の回復熱交換器と、
水性ガスシフトリアクタと、
蒸気発生器と、
水コンデンサー熱交換器と、を備え、
前記構成要素はすべて、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジング内に配置される前記構成要素を含む、請求項42に記載の化学変圧器。
【請求項44】
請求項43に記載の化学変圧器に炭化水素を通すことを含む、水素を生成する方法。
【請求項45】
化学変圧器システムであって、
触媒と、蒸気及び炭化水素を含むストリームとを含む複数の蒸気改質器と、
水素を含む複数の回復熱交換器と、を備え、
前記複数の蒸気改質器、及び前記複数の回復熱交換器は、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジングに配置される、前記化学変圧器。
この態様の文脈において、前記六角形及び前記円筒形という用語は、正確な幾何学的寸法を必要としないが、セットアップ、保守、または修理の間にアクセスするためにアセンブリを輸送及び開放できるようにする識別可能な形状である。
【請求項46】
前記化学変圧器が六角形のハウジングまたは円筒形のハウジングに配置され、
前記六角形のハウジングまたは前記円筒形のハウジングを開いて、それぞれ開放面を有する2つの半六角形のハウジングまたは2つの半円筒形のハウジングを形成し、前記ハウジングの前記開放面に達して前記化学変圧器の構成要素にアクセスすることを含む、請求項45に記載の化学変圧器を整備するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年9月16日に出願された米国仮特許出願63/107,420及び2021年1月22日に出願された63/140,745の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
過去における、熱を必要とするマイクロチャネル及びメソチャネルユニットは、予熱された流体を輸送する流体用通路を組み込むか、発熱化学反応などによって通路の内部に熱を発生させるか、またはそれがユニットの外壁から熱を受け取っていた。加熱を必要とするチャネル内部及び/またはチャネルの近接で熱を発生させるよう誘導することは、代替チャネルに必要な体積を減らし、ユニットの構造を介して熱を伝導する熱伝達の非効率性/不可逆性も減少させ、他のシステムよりもプロセス集約的で熱力学的により効率的なシステムとなるため、有利である。
【0003】
以下で説明する3つの特許文献は、本明細書で使用される用語の定義を含め、参照により完全に組み込まれる。
【0004】
「Solar thermochemical processing system and method」と題される米国特許第9,950,305号は、集中した太陽エネルギーを使用して、メタン水蒸気改質などの高温化学反応、または逆水性ガスシフト反応促進するマイクロ/メソチャネルリアクタの設計を示している。リアクタ自体はパンケーキ形のユニットで、反応物質はリアクタディスクの中心から端まで放射状チャネルを通って輸送され、その後、反応チャネルに対して逆流する方向に流れる追加の熱交換チャネルを通って、再び戻る。パラボリックディッシュ集光器から放射エネルギーを向けることにより、吸熱反応のためにシステムに熱が加えられる。
【0005】
「Reactor Assemblies and Methods of Performing Reaction」と題する米国特許出願公開第20200298197号は、改良されたマイクロ/メソチャネルリアクタの設計を提示しており、外向きに流れる反応チャネルが湾曲またはらせん配置に構成され、及び/または内向きに流れる熱交換チャネルは、カウンタークロス流の動作を実現する同様の配置で構成されている。システムの主な改善点は、チャネルが最初の特許文献のリアクタよりも実質的に効果的な方法で熱を拡散し、これにより、ディッシュ集中器からの不均一な熱が軽減され、リアクタの表面のホットスポットの大きさと、リアクタ内部の流体の流れの分布への潜在的な負の影響が減少する。
【0006】
「Enhanced Microchannel or Mesochannel Devices and Methods of Additively Manufacturing the Same」と題する米国公開特許出願第20200001265号は、3D印刷によって可能になる設計の改善を含む、付加製造とも呼ばれる、マイクロチャネル及びメソチャネルリアクタを印刷する3Dの方法を示している。3D印刷は、金属粉末の組成を変えることによって、またはユニットが印刷されるときに構造(例えば、磁束集中器)を挿入することによって、構造の磁気特性を変える機会を含む、マイクロ及びメソチャネルユニットに利点を与える。これは、構造の一部に優先的に熱が供給されるように、建設的または破壊的な干渉の使用を含む、対象のポイントに交流電磁場(EMF)を向ける及び/または集中させる構造を設計できるようにするため、特に興味深いものである。この特許出願は、第2の特許文献からのカウンタークロス流の設計と、第3の特許文献の方法とを組み合わせることを記載しており、この仮特許出願に示されているように誘導加熱を効率的に組み込むようにさらに組み合わされ、適合されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、マイクロチャネル及びメソチャネルリアクタ、熱交換器、気化器、及び分離ユニットを誘導加熱するための方法、システム、及び装置を提供する。
【0008】
方法は、マイクロチャネルまたはメソチャネルデバイスの内部に交流電磁場を誘導し、ジュール加熱によって熱を生成する渦電流を生成することを含む。加熱される材料が強磁性体の場合、磁気ヒステリシス損失によって熱がまた発生する。単純な変形例では、クッキングヒーターの誘導ヒーターに似ているが、より効果的なユニットでは、熱が必要な流体チャネルに優先的に熱を向ける。
【0009】
本発明は、化学変圧器も提供する。化学変圧器は、ガスグリッド(例えば、天然ガスグリッド)及びおそらく配電網に接続し、変換を実行して、ガスグリッドの対象である分子の伝達と分配、貯蔵、または使用を改善することができるという点で、電気的変圧器に似ている。配電網に接続すると、それはまた電気エネルギー(kWh)を化学エネルギー(kWh)に変換し、その後、燃料電池やその他の発電機で電気エネルギーに戻すことができるため、便利なエネルギー貯蔵手段をもたらす。化学変圧器は、プロセス集約型の化学プロセスプラントであり、それはマイクロチャネル及びメソチャネルリアクタ、熱交換器、及び分離器を組み込むことで、効率と生産性の利点を得て、そのため従来のエネルギー変換及び化学処理技術と比較して、体積と設置面積を削減する。また、大量生産が可能で化学的生成物が必要な場所の近くに配置できることにより利が得られる。
【0010】
本発明は、上述の構成要素、装置を製造するまたは組み立てる方法、装置を製造するために組み立てることができるキット、または方法もしくはシステムのいずれかを含む。システムは、固体の構成要素と流体、及び固体の構成要素の内部またはその周囲の任意の選択された条件(温度、圧力、電場または磁場など)の両方を含むことができる。本発明は、化学物質または化学化合物の物理的性質を変換または変更するシステムまたは方法を含むことができる。構成要素または装置は、ここに記載された構成要素の任意の組み合わせであり得る。本発明は、代替的または追加的に、例えば少なくともここに記載された値、または±10%、または±20%、または±30%以内を有する特性に関して記載され得る。
【0011】
一態様で、本発明は化学処理装置を提供し、交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、上壁と反対側の底壁、及び上壁と底壁の間に配置された側壁を有するプロセス層であって、
流体の流れに適したチャネルと、プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、プロセス層と、プロセス層の底壁に隣接する伝熱層であって、伝熱層は、上壁、上壁と反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有し、流体の流れに適合されたチャネルと、流体が伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、伝熱層と、但し、プロセス層の出口は、流体がプロセス層から伝熱層に流れ込むことができるように、伝熱層の入口に接続され、
但し、プロセス層の底壁は、伝熱層の上壁であるか、または壁が熱的に接触している場所である、プロセス層の上壁に交流磁場を生成するように構成されたインダクタと、を備える。
【0012】
本発明は、以下の1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る:
プロセス層が複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルを含む、伝熱層が複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルを含む、動作中、伝熱層の流れがプロセス層の流れの方向と反対である、流れがクロスフローであり、伝熱層の複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルが、プロセス層の複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルと重なり、チャネルが交差し、流れがカウンター流とクロス流の両方になるようにする、インダクタがパンケーキ状誘導コイルまたはトロイダル状誘導コイルである、誘導エンハンサーをさらに含む、処理チャネルの内部に配置された誘導サセプタをさらに備える、上壁が室温でフェリ磁性または強磁性である、上壁が室温で常磁性である、プロセス層に向かって流れるプロセスストリームが、伝熱層から離れるように流れる生成物ストリームにより加熱される回復熱交換器をさらに含む、上壁は、金属ろう付けによって上壁の表面に接合された複数の誘導エンハンサーを含む、複数性は、少なくとも20個の誘導エンハンサーを含む、複数のエンハンサーを使用することにより、エンハンサーと処理装置の壁との間の膨張の不一致による損傷を防止または軽減する。本発明はまた、本明細書に記載の装置を備える化学変圧器も含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、吸熱化学プロセスを行う方法を提供し、交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、上壁の反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有するプロセス層であって、流体の流れに適したチャネルと、プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、プロセス層と、プロセス層のチャネルに流れるプロセスストリームと、プロセス層の底壁に隣接する伝熱層であって、伝熱層が上壁、上壁と反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有し、流体の流れに適合されたチャネルと、流体が伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、伝熱層とを備える装置にプロセスストリームを通過させること、伝熱層のチャネルを通って流れる伝熱流体を通過させることであって、プロセス層の底壁は、伝熱層の上壁であるか、または壁が熱的に接触している場所であり、伝熱チャネルの伝熱流体とプロセスチャネルのプロセスストリームとの間で熱が伝達される、通過させること、及びインダクタを介してプロセス層の上壁に交番磁場を発生させることであって、上壁が交番磁場によって加熱され、上壁からの熱はプロセスストリームに伝達される、発生させること、を含む。
【0014】
本発明は、以下の1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る:
プロセス層の出口が伝熱層の入口に接続され、伝熱層は複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルを含み、プロセスストリームはプロセス層から流出し、伝熱層の複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルに流入する、吸熱化学プロセスが化学反応である、化学プロセスが化学反応である、化学プロセスが触媒化学反応である、化学反応が、改質反応または逆水性ガスシフト反応を含む、吸熱化学プロセスが生成物ストリームを気化させることを含む、プロセス層に入る前のプロセスストリームと、熱交換層を出た生成物ストリームとの間で熱を交換するステップをさらに含む、吸熱化学プロセスが化学的分離を含む、化学的分離が蒸留または収着を含む、伝熱流体が、プロセス層における化学反応の反応生成物を含む、交番磁場が1から100kHzの間の周波数で交番する、及び/または交番磁場が1から50kHzの間の周波数で交番する。
【0015】
別の態様では、本発明は、化学処理システムを提供し、交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、上壁の反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有するプロセス層であって、流体の流れに適したチャネルと、プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、プロセス層と、プロセス層のチャネルに流れるプロセスストリームと、プロセス層の底壁に隣接する伝熱層であって、伝熱層が上壁、上壁と反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有し、流体の流れに適合されたチャネルと、流体が伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、伝熱層と、伝熱層のチャネルを通って流れる伝熱流体であって、プロセス層の底壁は、伝熱層の上壁であるか、または壁が熱的に接触している場所であり、伝熱チャネルの伝熱流体とプロセスチャネルのプロセスストリームとの間で熱が伝達される、伝熱流体と、プロセス層の上壁に交番磁場を発生させるインダクタであって、上壁が交番磁場によって加熱され、上壁からの熱はプロセスストリームに伝達される、インダクタと、を含む。
【0016】
本発明は、以下の1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る。プロセス層の出口が伝熱層の入口に接続され、伝熱層は複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルを含み、プロセスストリームはプロセス層から流出し、伝熱層の複数のマイクロチャネルまたは複数のメソチャネルに流入する、システムの熱エネルギー効率が、100%である消費された電気エネルギーに対する流体のエネルギー含有量の正味の増加の比率に基づいて、50%より大きい(いくつかの実施形態では、50から約90%、または50から約70%)、システムの化学的効率が、100%である消費された電気エネルギーに対する流体のより高い加熱の値の正味の増加の比率に基づいて、70%より大きい(いくつかの実施形態では、70から約90%、または70から約80%)。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、以下を含むトロイダル状化学処理装置を提供し、
交番磁場に応答して加熱するように適合されたトロイダル形リアクタの壁によって画定され、トロイダル形リアクタの壁の周りに配置されたインダクタコイルを備えるトロイダル形処理装置と、トロイダル形リアクタの壁の内側に配置された化学処理チャネルであって、入口及び出口を含む化学処理チャネルを備える。トロイダルリアクタは、誘導加熱処理装置について本明細書に記載された特徴のいずれかを含むことができる。例えば、トロイダルリアクタは、化学処理チャネルに隣接する伝熱チャネルをさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、化学処理チャネルは、トロイドの中心軸付近から周辺付近まで半径方向に延びる複数のチャネルを備える。本発明は、トロイダルリアクタで吸熱単位操作を行う方法も含む。本発明はまた、トロイダルリアクタの組成及び条件を含むシステムを含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、パンケーキ形の化学処理装置を提供し、順に、第1のプロセス層の上壁に交流磁場を生成するように構成された、第1のパンケーキ形インダクタと、交番磁場に応答して加熱するように適合された上壁、上壁の反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有する第1のプロセス層であって、プロセス層が流体の流れに適したチャネルと、プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、第1のプロセス層と、第1のプロセス層の底壁に隣接する伝熱層であって、
伝熱層が上壁、上壁と反対側の底壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有し、流体の流れに適合されたチャネルと、流体が伝熱層に出入りできるように入口と出口とを備える、伝熱層と、但し第1のプロセス層の底壁は、伝熱層の上壁であるか、または壁が熱的に接触している場所である、交番磁場に応答して加熱するように適合された底壁、底壁の反対側の上壁、及び上壁と底壁との間に配置された側壁を有する第2のプロセス層であって、流体の流れに適したチャネルと、プロセス層に出入りする流体の流れに適した入口と出口とを含む、第2のプロセス層と、但し第2のプロセス層の上壁は、伝熱層の底壁であるか、または壁が熱的に接触している場所である、第2のプロセス層の底壁に交番磁場を生成するように構成された第2のパンケーキ形インダクタとを備える。
【0019】
パンケーキ形リアクタは、誘導加熱処理装置について本明細書に記載された特徴のいずれかを含むことができる。例えば、パンケーキ形リアクタは、プロセス層及び伝熱層において、中心軸から放射状に広がるチャネルを含むこと、及び/またはプロセス層及び伝熱層がチャネルを含む場合、カウンタークロス流の熱交換用に構成されていることをさらに含むことができる。本発明は、パンケーキ形リアクタで吸熱単位操作を行う方法も含む。本発明はまた、パンケーキ形リアクタの組成及び条件を含むシステムを含む。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、誘導加熱吸熱単位操作の温度を受動的に制御する方法を提供し、インダクタから交番磁場を印加することにより、化学処理装置の受入体を加熱することを含み、受入体は、室温でフェリ磁性または強磁性であり、
プロセスストリームは、受入体によって加熱され、受入体はキュリー温度を含み、プロセスストリームの温度は、キュリー温度の少なくとも50℃以内に近づき、キュリー温度の少なくとも50℃以内に近づく結果として、受入体の磁化率は、化学反応物質が少なくとも10%または少なくとも20%削減される。本明細書において、磁化率は体積磁化率を指す。吸熱単位操作は、吸熱反応、分離、及び/または気化を含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、化学反応物質はキュリー温度に達し、キュリー温度に達した結果、受入体から化学反応物質への熱伝達が減少する。「受入体」は、フェリ磁性及び強磁性材料を意味し、サセプタ及び誘導エンハンサーを含む。いくつかの好ましい実施形態では、受入体は、プロセスチャネルに配置されたクラッドまたはインサートである。
【0021】
別の態様では、本発明は、誘導加熱された化学反応の温度を受動的に制御する方法を提供し、インダクタから交番磁場を印加することにより、化学リアクタの受入体を加熱することを含み、受入体は、室温でフェリ磁性または強磁性であり、化学反応物質は受入体によって加熱され、受入体はキュリー温度を含み、化学反応物質はキュリー温度に達し、キュリー温度に達した結果、受入体から化学反応物質への熱伝達が減少する。
【0022】
別の態様では、本発明は、化学変圧器を提供し、
複数の蒸気改質器、複数の回復熱交換器を備え、複数の蒸気改質器、及び複数の回復熱交換器は、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジングに配置される。この態様の文脈において、六角形及び円筒形という用語は、正確な幾何学的寸法を必要としないが、セットアップ、保守、または修理の間にアクセスするためにアセンブリを輸送及び開放できるようにする識別可能な形状である。好ましい実施形態では、化学変圧器は、複数の蒸気メタン改質器と、複数の回復熱交換器と、水性ガスシフトリアクタと、蒸気発生器と、水コンデンサー熱交換器とを備え、
構成要素はすべて、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジング内に配置される構成要素を含む。本発明は、炭化水素を変圧器に通すことを含む、水素を生成する方法を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、化学変圧器システムを提供し、
触媒と、蒸気及び炭化水素を含むストリームとを含む複数の蒸気改質器と、水素を含む複数の回復熱交換器とを備え、複数の蒸気改質器、及び複数の回復熱交換器は、半六角形または半円筒形のハウジング、または半六角形を形成するために開放可能な六角形のハウジング、または半円筒を形成するために開放可能な円筒形のハウジングに配置される。この態様の文脈において、六角形及び円筒形という用語は、正確な幾何学的寸法を必要としないが、セットアップ、保守、または修理の間にアクセスするためにアセンブリを輸送及び開放できるようにする識別可能な形状である。
【0024】
化学変圧器を含む装置、方法、及びシステムは、様々な実施形態において、本明細書に記載の組み合わせ、構造的特徴、及び/または条件の1つまたは任意の組み合わせを含むことができる。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、化学変圧器を整備する方法を提供し、化学変圧器が六角形のハウジングまたは円筒形のハウジングに配置され、六角形のハウジングまたは円筒形のハウジングを開いて、それぞれ開放面を有する2つの半六角形のハウジングまたは2つの半円筒形のハウジングを形成し、ハウジングの開放面に達して化学変圧器の構成要素にアクセスすることを含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、熱スイング吸着及び熱増強または圧力スイング吸着のような循環プロセスを含む。例えば、プロセス層で脱着ステップを駆動するために誘導熱が使用され、サイクルの別のステップでは、伝熱層のより低い温度の流体によってプロセス層から熱が除去される。さらに別のケースは、プロセスチャネルの金属材料に高温蒸気が導入され、金属酸化物を形成して水素を生成する熱化学的水分解であり、この発熱プロセスからの熱は、冷却流体または熱交換層の吸熱反応によって除去され、次にサイクルの別のステップで、誘導加熱によって金属酸化物の温度が十分に上昇し、酸素が追い出される。このように複数のセルを含めることで、位相はずれているが調整された方法で動作するため、より効率的な熱操作が可能になる。
【0027】
用語集
標準的な特許用語と同様に、「comprising(含む、備える)」は「including(含む)」を意味し、これらの用語はどちらも、追加または複数の構成要素の存在を排除しない。代替実施形態では、「comprising(含む、備える)」という用語は、「から本質的になる」または「からなる」というより限定的な語句に置き換えることができる。
【0028】
「マイクロチャネル」は、1mm以下で1μmより大きい(好ましくは10μmより大きい)、いくつかの実施形態では50から500μmの少なくとも1つの内部寸法(壁から壁までで、触媒を数えない)を有するチャネルである。好ましくは、マイクロチャネルは、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも10cmの長さに対して、これらの寸法に留まる。いくつかの実施形態では、長さが5から100cmの範囲であり、いくつかの実施形態では、10から60cmの範囲である。マイクロチャネルは、少なくとも1つの出口とは異なる少なくとも1つの入口の存在によっても定められる。マイクロチャネルは、ゼオライトや多孔質材料を通る単なるチャネルではない。マイクロチャネルの長さは、マイクロチャネルを通る流れの方向に対応する。マイクロチャネルの高さ及び幅は、チャネルを通る流れの方向に対して実質的に垂直である。メソチャネルは、1mmから1cmの内部寸法を有することを除いて、同様に定義される。通常、デバイスは、共通のヘッダーと共通のフッターを共有する複数のマイクロチャネルまたはメソチャネルを備えている。一部のデバイスにはヘッダーとフッターが1つずつあるが、マイクロチャネルデバイスには、複数のヘッダーと複数のフッターを含めることができる。チャネルまたはマニホールドの容積は、内部空間に基づいている。チャネルの壁は容積の計算に含まれない。
【0029】
触媒は、微粒子の形態、または反応チャネルに挿入される壁のコーティングまたは多孔質体(「触媒インサート」)などの多孔質の固体の形態であることができる。本発明において、触媒インサートの支持体は、交番磁場の存在下で加熱する材料であり得る。微粒子とは、マイクロチャネルまたはメソチャネル内に収まる触媒粒子などの粒子を指す。好ましくは、粒子(存在する場合)は、2mm以下、いくつかの実施形態では1mm以下のサイズ(最大寸法)を有する。粒子サイズは、ふるい、顕微鏡、またはその他の適切な技術によって測定できる。比較的大きな粒子の場合、ふるい分けが利用される。微粒子は、触媒、吸着剤、または不活性物質であり得る。
【0030】
いくつかの好ましい構成では、触媒(水蒸気改質または他の化学反応のいずれか)は、下にある大孔基材を含む。好ましい大孔基材の例には、市販の金属発泡体、より好ましくは金属フェルトが含まれる。いずれかのコーティングを堆積する前に、大孔基材は、少なくとも5%、より好ましくは30から99%、さらにより好ましくは70から98%の多孔度を有する。いくつかの好ましい実施形態では、大孔基材は、BETによって測定されるように、0.1μm以上、より好ましくは1から500μmの体積測定的な平均孔径を有する。多孔性基材の好ましい形態は発泡体及びフェルトであり、これらは好ましくは熱的に安定で伝導性の材料、好ましくはステンレス鋼またはFeCrAlY合金などの金属でできている。これらの多孔性基材は、0.1cmと1cmの間などのように薄くすることができる。フォームは、構造全体に細孔を画定する連続壁を備えた連続構造である。あるいは、触媒は、粉末またはペレットなどの任意の従来の形態をとることができる。
【0031】
大細孔を有する触媒は、細孔の容積が多孔質材料全体の容積の5から98%であることが好ましく、30から95%であることがより好ましい。好ましくは、材料の細孔容積の少なくとも20%(より好ましくは少なくとも50%)が、0.1から300ミクロン、より好ましくは0.3から200ミクロン、さらにより好ましくは1から100ミクロンのサイズ(直径)範囲の細孔から構成される。細孔の容積及び細孔サイズの分布は、水銀ポリシメトリー(細孔の円筒形状を想定)及び窒素吸着によって測定される。知られているように、水銀ポリシメトリーと窒素吸着は補完的な技術であり、水銀ポリシメトリーは大きな細孔サイズ(30nmより大きい)をより正確に測定し、窒素吸着は小さな細孔(50nm未満)をより正確に測定する。約0.1から300ミクロンという範囲の細孔サイズは、ほとんどの気相触媒条件下で、分子が材料全体に分子的に拡散することを可能にする。触媒インサートは、好ましくは高さが1cm以下であり、いくつかの実施形態では、高さ及び幅が0.1から1.0cmである。いくつかの実施形態では、多孔性インサートは、マイクロチャネルの断面積の少なくとも60%、いくつかの実施形態では少なくとも90%を占める。別の好ましい実施形態では、触媒は、1つまたは複数の反応チャネル内部の材料のコーティング(ウォッシュコートなど)である。
【0032】
多くの実施形態では、インダクタは、吸熱水蒸気メタン改質反応のために不均一系触媒に熱を与える。CO2によるメタンのドライリフォーミングまたは逆水性ガスシフト反応などの他の吸熱化学反応を含む他の吸熱プロセスも予想される。好ましくは、熱交換機能が、より大きな化学変換を促進する反応チャネルの長さに沿う温度の軌跡を達成する。その他の例としては、ヒートポンプの収着プロセスや化学的分離がある。例えば、ソーラーヒートポンプは、吸収(液体溶媒)または吸着(固体吸着剤)ヒートポンプサイクルを使用して、低温から高温に熱を移動させる。例は、上記発明の触媒を、太陽エネルギーを使用して低い温度及び圧力で冷媒を吸着し、相対的に高い温度及び圧力で脱着する固体吸着剤に置き換えることである。用途は、建物の暖房、換気、空調(HVAC)、及び冷蔵が含まれる。同様に、吸着剤は、熱スイング吸着(TSA)プロセスまたは熱強化圧力スイング吸着(PSA)プロセスにおける化学的分離に使用できる。1つの用途は、本明細書に記載のH2生成/水蒸気改質用途などの合成ガス生成システム、発電所の流出物、または他の潜在的な発生源から、大気からの二酸化炭素を捕捉することである。
【0033】
触媒化学反応は非常によく知られており、適切な条件と触媒は非常によく知られているため、ここで説明する必要はない。触媒を改質触媒、またはサバティエ触媒(一般にNiまたはRu/Al2O3)、アンモニア合成(一般にRu、または酸化鉄、またはCo-Mo-N)、または逆水性ガスシフト反応(一般に触媒は、鉄、クロム、及び必要に応じてマグネシウムの酸化物を含む)として特定すれば充分である。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、水蒸気または乾式改質によって、メタンまたは他のアルカンまたは炭化水素の混合物を水素に変換する。水蒸気改質プロセスは、炭化水素(または炭化水素)と水蒸気(H2O)を必要とする。反応混合物は、COなどの他の成分、または窒素または他の不活性ガスなどの非反応性希釈剤を含むことができる。いくつかの好ましいプロセスでは、反応ストリームは本質的に炭化水素と水蒸気からなる。いくつかの好ましい実施形態では、反応物ストリームでの水蒸気対炭素の比は、3対1から1対1であり、いくつかの実施形態では、1.5対1以下である。炭化水素には、アルカン、アルケン、アルコール、芳香族、及びそれらの組み合わせが含まれる。炭化水素は天然ガスであり得る。好ましいアルカンは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びイソオクタンなどのC1からC10アルカンである。水蒸気改質触媒は、好ましくは、以下の触媒活性材料、すなわちルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、及びこれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。ロジウムが特に好ましい。いくつかの好ましい実施形態では、触媒(すべての支持体材料を含む)は、0.5から10重量パーセントのRh、より好ましくは1から3wt%のRhを含有する。触媒はまた、触媒活性物質のためのアルミナ支持体を含んでもよい。「アルミナ支持体」には、酸素原子に結合したアルミニウム原子が含まれており、追加の元素が存在する場合がある。好ましくは、アルミナ支持体は、水熱条件における触媒の安定性を改善する、1つまたは複数の安定化元素を含む。安定化元素の例は、Mg、Ba、La、及びY、ならびにこれらの組み合わせである。好ましくは、触媒活性物質(Rhなど)は、アルミナ支持体の表面に小さな粒子の形態で存在する。水蒸気改質反応は、好ましくは400℃より高く、より好ましくは500から1000℃で、さらにより好ましくは650から900℃で実施される。反応は、準大気圧から非常に高いものまで幅広い圧力の範囲で実行でき、いくつかの実施形態では、プロセスは、10気圧から30気圧、より好ましくは12気圧から25気圧の圧力で実施される。H2O分圧は、好ましくは少なくとも0.2atmであり、いくつかの実施形態では少なくとも2atmであり、いくつかの実施形態では5atmから20atmの範囲である。
【0035】
触媒を含むチャネルは反応チャネルである。より一般的には、反応チャネルは、反応が起こるチャネルである。反応チャネルの壁は、鋼などの鉄ベースの合金、またはヘインズなどのNiベース、Coベース、またはFeベースの超合金でできていることが好ましい。反応チャネルの壁の材料の選択は、リアクタが意図されている反応に依存し得る。いくつかの実施形態では、反応チャンバの壁は、耐久性があり良好な熱伝導率を有するステンレス鋼またはインコネル(登録商標)から構成される。典型的には、反応チャネル(典型的にはチューブ)の壁は、マイクロチャネル装置の主要な構造的な支持をもたらす材料で形成される。
【0036】
本発明は、本明細書に記載の装置の内部で単位操作を行う方法も含む。
【0037】
「単位操作」とは、化学反応、気化、圧縮、化学的分離、蒸留、凝縮、混合、加熱、または冷却を意味する。「単位操作」とは、単に流体の輸送を意味するものではないが、輸送は単位操作に伴って発生することがよくある。いくつかの好ましい実施形態では、単位操作は混合だけではない。
【0038】
熱交換流体は、プロセスチャネル(好ましくは反応マイクロチャネルまたはメソチャネル)に隣接する熱伝達チャネル(好ましくはマイクロチャネルまたはメソチャネル)を通って流れることができ、気体または液体または二相材料であることができ、好ましい実施形態では、熱交換流体は反応チャネルで発生した熱を回収するために使用される生成物のストリームである。
【0039】
磁束集中器は、壁面とインダクタの通電領域との間の電磁結合を改善する。通常、磁束集中器は強磁性体である。
【0040】
誘導エンハンサーは、誘導によって加熱される化学処理装置(好ましくはマイクロプロセスチャネルまたはメソプロセスチャネル)の領域に付着または近接して配置される材料または材料の組み合わせである。エンハンサーは、プロセスの所望の温度で少なくとも1つの強磁性材料を含む。
【0041】
「熱化学処理装置」は、プロセスストリームが反応(水蒸気改質など)、分離、または気化などの熱化学プロセスを受ける装置またはシステムの構成要素である。プロセスストリームの少なくとも一部は、化学反応、状態変化、または純度もしくは濃度の変化を受ける。誘導加熱が使用される本発明の実施形態では、プロセスは吸熱的であるか、または吸熱相を含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】触媒を含む複数の螺旋プロセスチャネルを含む螺旋リアクタプロセス層の上面図を示す。
【
図2A】パンケーキインダクタの上面図及び下面図を示す。
【
図2B】パンケーキインダクタの上面図及び下面図を示す。
【
図3A】補助誘導加熱を備えた太陽熱化学リアクタの概略的な側面断面図である。
【
図3B】誘導加熱を備えた熱化学処理装置の概略的な側面の断面図であり、磁場を示している。
【
図4】主要な側両方にパンケーキ状インダクタを有する熱化学処理装置の概略的な側面の断面図であり、磁場を示している。
【
図5】主要な側両方にパンケーキ状インダクタを有する熱化学処理装置の概略側断面図であり、磁場を示している。プロセスチャネルは、触媒インサート、磁束集中器、またはインサートと磁束集中器の両方であり得るインサートを含む。
【
図5A】主要な側両方にパンケーキ状インダクタを有する熱化学処理装置の概略側断面図であり、磁場を示している。プロセスチャネルは触媒インサートを含み、誘導エンハンサーがプロセスチャネルの壁に配置される。
【
図6A】トロイダルの壁の周りに導電コイルが巻き付けられたトロイダル熱化学処理装置の概略的な側面の断面図である。
【
図6B】トロイダルの壁の周りに導電コイルが巻き付けられたトロイダル熱化学処理装置の概略的な上面または下面の断面図である。
【
図7】半六角形(ハーフヘックス)に開いて示される六角形のハウジングに複数の構成要素を備える化学変圧器の概略図である。
【
図8】化学変圧器の使用を示す概略的な説明である。
【
図9】半六角形のハウジングに複数の構成要素を含む化学変圧器の概略図である。
【
図10】太陽熱で加熱される2つのメタン水蒸気改質器の本体への計算された熱プロファイルを示している。左から右へ、外面の熱、プロセス(反応)チャネル、熱回収チャネル。
【
図11】主要な側両方にパンケーキ状インダクタを有する熱化学処理装置の概略側断面図である。
【
図12A】誘導加熱メタン水蒸気改質器の本体への近似の熱プロファイルを示している。左から右へ、外面の熱、改質チャネル、熱回収チャネル。
【
図12B】両方の主な表面にパンケーキコイルインダクタを有する誘導加熱メタン水蒸気改質器の本体への計算された熱プロファイルを示す(
図11を参照)。左から右へ、外面の熱、改質チャネル内へ、熱回収チャネル。
【
図13】SMRリアクタ(下)、HTR熱交換器(上)、及び熱電対と圧力トランスミッタを含むH2製造モジュールのCAD図面。誘導コイル(図示せず)はリアクタの下に配置され、誘導コイルとリアクタの壁との間に絶縁層が配置される。
【
図14】最初のキャンペーンからの平均リアクタ温度(°C)と現在の時間50(アンペア)。
【
図15】新しい銅銀ろう材を使用した状態での、SMRリアクタの熱エネルギー効率(●)と、電力を生成ガスのより高い発熱量に変換する化学効率(●)。
【
図16】98%銅、2%銀ろう付けでろう付けされたコバルト鉄円形セグメントを備えた2層SMRリアクタ。これは、処理装置の壁に金属ろう付けを介して接合された複数の誘導エンハンサーの部分を使用する一般的な概念を代表するものである。
【
図17】銅銀ろう付け材料で取り付けられたコバルト鉄シートの円形セグメントを備えた、SMRリアクタの熱エネルギー効率(●)と、電力を生成ガスのより高い発熱量に変換する化学効率(●)。
【
図18】3層プロセスユニットの誘導サブシステムの分解図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
メタン水蒸気改質など、高温で行われる反応用の化学リアクタは、様々な温度での高温と熱膨張に耐えることができる材料で構築する必要がある。通常、これらのリアクタは、Haynes 282などの高温超合金でできている。Haynes 282は、真空の比透磁率である、1に近い比透磁率を有する、せいぜい弱常磁性であると考えられている。これは、Haynesが単独ではそれほど磁場の強化を施さないことを意味する。一部の市販のクッキングヒーターは、Haynes 282またはInconel 625でオンにならないことを本発明者らは見出していた。これは、内部センサーが許容できる受け器材料を登録していないためである。しかし、異なる電子機器と、おそらく異なる検出アルゴリズムを備えた他のいくつかのものは、オンにすることを拒まず、幾ばくかの努力により、Haynes 282で高い加熱率を得ることに成功した。一部の専門家は、Haynes 282は抵抗率が非常に低く、そのため十分なジュール熱をもたらさない、アルミニウムよりも誘導加熱が難しいと考えていた。しかし、驚くべきことに、Haynes 282は適切な交番磁場で加熱されることが見出された。さらに、誘導エンハンサーを使用することで、テストされたすべての誘導ヒーターが効果的に動作し、プロセスユニットをパンケーキインダクタからさらに移動できるようになり、したがって、パンケーキインダクタを損傷することなく、高温の反応を可能にする、という追加の結合上の利点が得られることが見出された。
【0044】
太陽熱で加熱される化学プロセスユニットに誘導加熱を追加して、そのようにして太陽電気ハイブリッドを生成することは、太陽熱または熱化学プロセスの実質的な生産性の利点をもたらし得、それは別の場合には太陽光の断続的な利用可能性により制限され得る。さらに、太陽光集光器やその他の熱源を使用せずにスタンドアロン操作が可能である。
【0045】
図1は、カウンタークロス流リアクタ(100)の触媒レベルを示す。水蒸気-メタン改質用の触媒(102)を含む反応チャネルは、特許第9,950,305号で論じられているように、ロジウムが含浸され焼成されたフェクラロイ発泡体を含む。第2の特許文献で論じられているように、反応物質はプレートの中心(101)でこのレベルに入り、周囲のスロット(反応チャネル出口103)までほぼ半径方向に通過し、次に別の湾曲スパイラルチャネルのセットの中心に戻る。これにより、反応生成ガスが触媒チャネルに熱を放出することが可能になる。
【0046】
図2は、誘導加熱ユニットの一次コアとして機能する従来のパンケーキ状コイルの両面(200及び210)の写真を提示する。誘導加熱は、一次コイルを一次、受信ユニットを二次として有する変圧器-ここではニッケル-コバルト、AlNiCo、またはコバルト-鉄、または対象の単位化学操作に適したキュリー温度特性を備えた他のフラックス集中材料などの、チャネルに配置された吸熱リアクタ、熱交換器、または吸着媒体や強磁性体材料などの分離ユニット-に似ていると考えることができる。写真のユニットには、リッツ線(201)を使用したコイルが20ターンあり、多くの絶縁された銅のストランドが一緒に編まれている。リッツ線を使用する主な利点は、水冷銅管よりも高い電流密度が可能になることである。これにより、吸熱反応が起こっているマイクロチャネル及びメソチャネルリアクタで望ましい、より大きな加熱の電力密度が可能になる。磁束集中器は211に示されている。
【0047】
誘導エネルギー伝達では、受け入れユニット-例えば、電気変圧器の二次コイルまたは加熱されるリアクタ-の内部で生成される電流は、一次側のターン数と二次側のターン数の比に等しくなる。ほとんどの場合、マイクロチャネルまたはメソチャネルユニットの有効ターン数は1と見なすことができる。この構造は、ワイヤが短絡された二次コイルのように機能する。比率(n比)は、一次のターン数と等しい。一次側の電圧、周波数、及びターン数は、反応装置に必要な所望のエネルギー伝達及び浸透深さを達成するために選択または変更される。
【0048】
リアクタ構成要素に使用される材料の比透磁率によって、システムの誘導リアクタンスが決まる。比透磁率の高い材料(強磁性体など)は、比透磁率の低い材料(常磁性体など)よりも磁束と磁気エネルギーを引き寄せ、より高い濃度を示す。受け器の母材に強磁性または常磁性材料を配置、メッキ、クラッディング、またはドーピングすること、または強磁性または常磁性材料を単に受け器内部に配置することで、誘導コイルで受け器の材料がうまく結合しない場合に、目的の加熱効果を生み出すために使用することができる。配置、クラッディング、めっき、またはドーピングの深さ、またはインサートの位置を変えることで、加熱効果を受け器の特定の領域または構成要素にさらに集中させるために使用することができる。
【0049】
ワイヤのサイズとコイル形状が異なる複数の誘導コイルを同時に(並列または直列に接続して)使用して、リアクタに所望の熱流束特性を生成することができる。コイルを積み重ねて、一次誘導コイルと二次リアクタのターン数の比を増やすことで、より高い磁束を実現できる。逆に、ワイヤの間隔を変更することにより、フラックス濃度を下げることが達成できる。フラットな誘導コイル(一次巻線)の特徴であるほぼ同心のリングは、同心リングの中心が開いていて、電流の流れる方向が反対の隣接するワイヤによって引き起こされる電磁場の干渉と相殺を最小限に抑える限り、正方形、六角形、八角形、または不規則な形状などの様々な形状に変更できる。ワイヤのサイズを変更して、ターン数を増やし、電力密度を高め、誘導周波数に対応することができる。
【0050】
コイル(320)に交流電流が流れると、受け器で熱が発生する。交流電流の周波数と受け器の特性によって、リアクタの金属構造への浸透の深さが決まる。より低い周波数は、より深い加熱を生成する。したがって、誘導コイルの周波数は、数ヘルツから数kHz、さらにはメガヘルツまでのどこかになり得る。しかし、加熱の力は周波数とn比に比例する。誘導周波数が高いほど、必要なターン数は少なくなる。しかし、以下で説明するように、周波数が低いほど、起電力(EMF)エネルギーの受け器(2次側)への多大な浸透を可能にするため、より深い加熱と低い表面温度が得られる。したがって、最適化は常により高い周波数を優先するとは限らない。
【0051】
図2の左の写真は、加熱するユニットに面する1次コイルの側面である。右側には、コイル(210)の裏側が示されており、7つの「磁束集中器」(211)を含み、コイルの裏側からの場のエネルギーのかなりの部分(または大部分)が、コイルの周りに、加熱するユニットに向かって(または中に)向けられるように、磁場を誘導する。
【0052】
図3Aは、片側に誘導加熱器が追加された太陽熱化学リアクタ(300)を示している。いくつかの好ましい実施形態では、リアクタは、第2の特許文献の方法で3D製作され、触媒構造(
図3Aには示されていない)が「構築」中またはその後に挿入される。電磁場の集中を容易にするために、常磁性、より好ましくは強磁性またはシムまたは他の構造(サセプタ)を触媒チャネルに追加するか、化学反応チャネル近くのリアクタに別々に配置することができる。リアクタ材料で生成された磁気ヒステリシスと渦電流は、局所的な加熱をもたらす。
図3Aでは、特許第9,950,305号に記載されているような太陽集光器からの放射エネルギー(312)は、開口部(310)を通って受け器ユニットに入り、キャビティに入り、そこでリアクタ(300)に遭遇し、それは放射エネルギーの一部を吸収することができる。ここに示されている誘導加熱器は、磁束集中器(211)を備えたパンケーキコイルスタイルの加熱器(320)である。
【0053】
図3Bは、パンケーキコイル(320)からの磁場の概略図を提供し、これはリアクタ(300)を遮断して通過し、したがって、ジュール加熱によって熱を生成する前述の渦電流を生成する。
図3Aに示すように、
図3Bの磁束集中器(211)は、パンケーキコイル(320)の底部のみに関連付けられている。しかし、別の実施形態(図示せず)では、磁束集中器は、最も半径方向の位置(リアクタの面に平行)からリアクタの側面(または側面に隣接する)まで延びる。このようにして、磁束集中器は、EMFをリアクタの特定の領域に向けるように設計することができる。
【0054】
リアクタ(300)内部の熱浸透の程度は、電力の周波数、ならびにリアクタ構造の比透磁率及び電気抵抗率の関数である。一般に、低い周波数ではより大きな熱浸透が可能になり、高い周波数ではより浅い熱浸透が生成される。Haynes 230や282のような、せいぜい弱い常磁性材料で強磁性ではない場合、50から60Hz付近の周波数(商用配電網の周波数)で数センチメートル(cm)の熱浸透を補助する。400Hz(一般的な民間航空機の電力エレクトロニクスの周波数)が、熱浸透が減少する。数十kHzの周波数では、熱浸透はmm単位で測定される。
【0055】
電気抵抗率の低い材料(銅やアルミニウムなど)は、誘導によって十分に加熱されない。Haynes 230または282のような材料の高周波は、表面にわずかな(または数)ミリの熱を誘導でき、作動流体を加熱する伝導または対流、化学反応、または固体吸着剤からの脱着などの分離操作によるデバイスを介した効率的な熱の伝達を補助する。これらの制限は、誘導コイルの周波数と形状を選択的に変更すること、磁束集中器を使用すること、及び/またはリアクタ構成要素をメッキ、クラッディング、及びドーピングすることによって管理される。
【0056】
図4は、パンケーキ状誘導コイル(320)がリアクタの両面に配置されたリアクタ(300)を示す。矢印330は、磁場を大まかに示している。両面から加熱する利点は、リアクタをより均一に加熱できる可能性があることである。もう1つは、全体の加熱能力を向上させる、またはリアクタの容積をより生産的に利用できるようにすることである。パンケーキコイル誘導加熱器は、クッキングヒーターに一般的に使用されている。これらのデバイスの電力レベルは通常、1キロワット(kW)の加熱範囲から10kW以上の範囲である。これは、最初の2つの特許文献の太陽熱化学リアクタが最大約10から12kWの熱の太陽加熱レートで実証されているため、特に重要である。パンケーキコイルはまた、表面積が限られている場合や表面が不規則な形状の場合に、誘導システムのエネルギー密度を高めるために、積み重ねる(タイル状にする)こともできる(図には示されていない)。
【0057】
図5は、反応チャネルが、反応チャネル内部に、または反応チャネルに近接して配置された磁束集中器(510)を有する触媒を含む構成を示す。集中器は強磁性または常磁性物質であり、その中に磁場を引き込み、したがって、触媒チャネルまたはそれらのすぐ近くに、優先的な加熱をもたらす。
【0058】
磁束集中器は、3Dプリント操作中、3Dプリント後のチャネル内部、またはその他の製造ステップの間に設置できる。磁束集中器は、構造の一体部分(例えば、3Dプリントの操作中に組み込まれる場合)または非構造的(例えば、触媒材料がまた含まれるフェクラロイフォーム内部に挿入される材料として)である可能性がある。触媒が堆積したフェクラロイ材料の1つの特徴は、強磁性体であるが、キュリー温度が約600°Cであることである。したがって、その温度に近づいてそれを超えると、強磁性特性を失う(そして常磁性になる)。より高い温度を必要とする反応やその他の単位操作では、フェクラロイとは異なる材料を使用して磁束集中器を埋め込むことができる。ただし、フェクラロイは、起動時の構造の予熱を補助することができる。コバルト鉄(FeCo)やアルミニウム、ニッケル、コバルト(AlNiCo)などの合金は、約800°Cから900°C以上の高いキュリー温度を備え、強磁性特性はわずかに低い温度で低下し始める。当業者が知っているように、スチームメタン改質は、ロジウムを含む従来の触媒を用いてこれらの温度で迅速に進行する。その結果、FeCoとAlNiCoは、高温反応チャネルの誘導加熱に適した材料である。FeCrAlloy、または鉄、またはニッケルなどの他の材料は、蒸気発生、脱着、蒸留、その他の反応、または単純な加熱など、より控えめな温度を必要とする単位操作に適している場合がある。
【0059】
さらに興味深いのは、温度に敏感な磁気の特性に合わせて磁束集中器の材料を選択する機会であり、これにより、より高温のプロセスチャネル及び/またはセクションよりも、より低温のチャネルまたは低温チャネルのセクションに、多くの熱が追加される。温度が高いほど、化学(動力学的)反応速度が速くなるが、過度に温度が高いと、受け器、触媒、吸着剤などの材料が損傷し得る。また、誘導加熱を受け器のより冷たい部分に選択的に集中させることにより、反応、分離、またはその他の吸熱操作を高速化できて、マイクロチャネル及び/またはメソチャネルの全体的な生産性を高めることが達成できる。
【0060】
図5Aにおいて、磁束集中器(520)は、誘導エンハンサーとして作動し、リアクタの外壁に近接して、外壁の上に、外壁に対して、または外壁のすぐ内側に配置される。誘導エンハンサーとして、それらはインダクタからリアクタ本体へ磁場を引き寄せて強化し、それらがかなりの熱を発生する可能性があるため、好ましくはリアクタ本体と良好に熱的に接触するように配置される。誘導エンハンサー/磁束集中器材料をリアクタに固定するために熱ペースト材料を使用してもよいし、あるいはレーザー溶接またはろう付けなどの他の方法で固定してもよい。磁束集中器は、リアクタの各側面に単一のユニットでも複数のユニットでもよく、例えば磁束集中器材料の同心リングを外壁の上、外壁に対して、または外壁のすぐ内側に配置することができる。
図5Aの場合、リアクタの壁内部の磁束集中器211及び/または磁束集中器520での誘導によって熱が発生し、触媒挿入物を含むチャネル510に伝導する。場合によっては約950°Cまでの高いキュリー温度のコバルト鉄(CoFe)合金は、適切な発熱率で高い透磁率をもたらすことが示され、実験で誘導エンハンサーとして使用され、ターゲット(例えば、リアクタ)が誘導コイルから2cmほど離れて配置するのを有効にした。1から2cmの距離は、リアクタとコイルの間に適切な絶縁材料を配置できるため、特に有用である。これにより、リアクタからコイルへの熱伝導が制限され、また空気冷却、水冷、または受動的な冷却方法などを使用して、コイルを冷却しやすくなる。
【0061】
図6A及び6Bは、マイクロチャネル及び/またはメソチャネルリアクタ、熱交換器または分離器を誘導加熱するための第2の代替実施形態を示す。
図6Aは、トロイダルディスク受け器(600)の中心を通る断面を示しているが、顕著な違いがある。穴が中心またはその近くに配置されており、ワイヤコイルをユニットの周りに複数回巻いてユニットを通過させることができる。誘導コイル(620)は、受け器本体、またはより好ましくは、受け器本体を取り囲む断熱材の1つ以上の層の周りを包み、EMFを受け器に押し込み、EMFのより効果的な使用をもたらして、受け器の穴の周りにほぼ円弧を描いて移動する傾向がある渦電流を生成し、磁気ヒステリシス損失及び/またはジュール熱によって熱を発生させる。
【0062】
図6Bは、受け器(600)の周りに誘導コイル(620)が巻かれた上面(または底面)図を示す。この図では明確な72ターンしか示されていないが、ターン数はエネルギー伝達の必要性に基づいており、限定的な数ではない。ターン数は視覚化のために選択されていた。数百または数千のより多くの明らかなターンが可能である。それらは図示されていないが、磁束集中器はまた、トロイダル受け器の内部に配置され得て、触媒、吸着剤の近く、または優先的な加熱が望まれる他の場所で熱を優先的に生成するか、加熱が望ましくない受け器の領域をシールドすることができる。
【0063】
このトロイダルアプローチは、この文章で既に説明したような吸熱リアクタを加熱するために使用できる。あるいは、コイルをセグメント化し、各セグメントを個別に制御することにより、熱をセグメントごとに明確に変えることができる。これは、「セル」として協調的に動作するチャネルの個々のコレクションを使用して、熱スイングまたは熱的に強化された圧力スイング吸着システムを動作させるのに特に役立ち得るが、セルは意図的に互いに同位相または位相外れで動作する。位相外れの動作の例は、米国特許第6,974,496号に記載されているユニットのように有益であり得て、内部熱回復を伴うマルチセルマイクロチャネル及びメソチャネル吸着ユニットを含む。
【0064】
別の例として、チャネル内部での強磁性発泡体(例えば、FeCralloy)の使用は、気化が望まれる流体内部に限られた量の熱を位置付けることを支援することができる。
さらに追加の実施形態が可能である。例えば、コイルは、三角形、正方形、六角形、八角形などの非円形の形状に配置できる。コイルは、平面構造または非平面構造で一緒に「タイル張り」できる。ただし、設計者は、ユニットを並べてタイル張りするときに建設的及び破壊的な干渉を考慮する必要がある。
【0065】
断熱材を追加して、a)熱の漏れを制限し、b)リアクタを誘導コイルから熱的に分離することができる。理想的には、コイルは加熱されるユニットに近接して配置されるが、絶縁層(例えば、厚さがミリメートルからセンチメートル、つまり1から30mmまたは1から20mmまたは1から10mm)でコイルをマイクロチャネル及び/またはメソチャネルデバイスから分離する。リッツ線やアルミニウムなどの銅は、誘導コイルの優先的材料である。ただし、それらは高温では能力をそれほどよく発揮できないため、最高の性能を達成するには、高温リアクタから隔離するか、(能動的または受動的に)冷却させねばならない。
【0066】
追加の加熱チャネルを備えた誘導加熱用の基本的なハイブリッドマイクロ/メソチャネルの構造
以前の研究で、本発明者らは吸熱操作用のマイクロ/メソチャネル化学処理装置ユニット、より具体的には触媒パンケーキ状リアクタを発明した。その効率は、反応チャネルを2つの側から加熱することから、恩恵を与える。米国特許第9,950,305号に記載されているように、パンケーキ状リアクタは、触媒を備えた流出反応チャネルを備えた反対半径流れリアクタであり、反応生成物は、次いで隣接するチャネルにおいて内側に流れ、生成物から触媒反応チャネルに顕熱を供給する。このように、この熱は、反対側から供給される太陽熱エネルギーに追加される。
【0067】
内部の向流は、生成物ストリームからエネルギーを回収する特に効率的な方法であり、例えば、外部の向流マイクロチャネル熱交換器を使用して、単に生成物ストリームを使用して反応システムをさらに予熱するよりもエクセルジェティックに効率的である。本質的に、生成物ストリームの顕熱エネルギーは、その反応チャネルストリームに回収される。
【0068】
このアプローチの利点は、
図10に示すグラフに示されている。このグラフは、2つのリアクタ設計でシミュレートされた温度プロファイルを示している。内部温度プロファイルの勾配が大きいことは、表面から、及び戻りチャネルからの触媒チャネルへの熱速度のうち、太陽熱で加熱された表面がより大きな熱を供給することを示している。この場合、約8から10kWである。ただし、戻りチャネルはかなりの加熱を供給し、通常は全体で1から2kWである。グラフ化された線は、リアクタの中心(0.0cm)から外側の縁(13.3cm)までの距離の温度を示している。表面からの深さは、集中した太陽エネルギーを受け取る表面からリアクタまでの距離である。ABバンドは触媒マイクロチャネルの深さと位置を表し、CDバンドは戻りチャネルの深さと位置を表す。熱プロファイルは、熱が表面と隣接する戻りチャネルの両方から触媒マイクロチャネルに供給されることを示している。
【0069】
代替の実施形態は、例えば燃焼流体からの熱など、戻りチャネルの別の熱源を使用することができた。戻りチャネルは、他の反応チャネルに回復するように再構成できる。重要な利点は、パラボリックディッシュ及び/またはリアクタの設計の欠陥が、リアクタの「ホットスポット」を減らす方法で緩和されることである。例えば、ディッシュのパラボリックな形状の不完全性により、化学処理装置の表面にホットスポットとコールドスポットの両方が生じる可能性がある。あるいは、処理ユニットの設計のわずかな変化によってもたらされる流れの不完全性が、増幅される可能性がある。わずかに流量が減少したプロセスチャネルは、より大きな反応を生成する吸熱化学反応、また水蒸気改質のような、より高温のチャネルへの物質の流れのさらなる減少を促進する対応する体積測定的流量の増加の場合、より熱くなる傾向があり、より多くの流量を受け取るチャネルは、体積測定的流量の増加に伴う反応の割合が低くなって、より低温で動作する傾向がある。これは望ましくない正のフィードバックループであり、より高温のチャネルの温度をさらに上昇させ、ホットスポットを増幅し、より低温のチャネルの温度をさらに低下させる傾向がある。
【0070】
リアクタ構造にニッケル超合金が使用されている場合でも、ホットスポットは問題になる。なぜなら、温度が上昇されると、これらの合金の強度は、非常に高い温度(例えば、800から1000°Cの範囲)で急速に低下するためである。したがって、「最も熱い」反応チャネルを比較的低温のチャネルに回復させること、及びその逆のことは、効果的な熱拡散をもたらし、負のフィードバックループを作成して正のフィードバックループを緩和し、システムの性能の向上と合金の構造の強度の向上を可能にする。この可能性は、最もホットなスポットの温度が最大100°C低下すると予測されたシミュレーションから明らかである。
【0071】
2層及び3層のマイクロ/メソチャネル化学プロセスユニットの誘導加熱の熱浸透
誘導加熱について、本発明者らは前の発明の負のフィードバックループ-内部カウンタークロス流構造によってもたらされた-の利点を維持しようとしたが、本発明者らの基本的なリアクタの概念を効率的な誘導加熱に適合させるために、追加の改善が必要であることを見出した。
【0072】
また、弱常磁性である傾向がある(または常磁性であると理解されている)ニッケル超合金は、誘導加熱の長所と短所の両方を示すことも本発明者らは見出した。例えば、常磁性材料の誘導加熱は、ジュール加熱(誘導された渦電流による)によるものであることが知られており、ヒステリシス加熱構成要素は含まれていない。これは、加熱能力が低下することを意味するが、リアクタ表面のホットスポットを低減する能力が向上することも意味する。
【0073】
加熱が渦電流加熱によって占められている場合、処理ユニット構造への深さの関数として発生する加熱の変化を認識して利用することは有用である。多くの誘導加熱の参考文献では、「熱浸透」(δ)という用語を、加熱の86%が発生する外部加熱された材料までの距離として定義している。他方の14%はデバイスの奥深くで発生する。これを一般的に数学的に表したものが次のものである。
【数1】
式中、σはオームセンチメートル(Ω-cm)単位の材料の電気抵抗率、μは材料の比透磁率(単位なし、値μ=1の空間の真空)、fは磁場のヘルツ(Hz)単位の周波数である。この場合、δの単位はセンチメートル(cm)である。
【0074】
近い将来の用途では、誘導コイルの周波数は、通常、1から100kHzの範囲、より好ましくは1から50kHzの範囲であると予想される。これは、この周波数の範囲での用途向けに多くの誘導加熱ユニットがすでに設計されているためである。電力エレクトロニクスを含むこれらのユニットは大量生産されており、高効率で動作することが実証されている。
【0075】
ここでは、ニッケル超合金Haynes 282で構成されたマイクロ/メソチャネルデバイスを加熱する場合を考える。それは、ガスタービンなどの高温用途向けに開発された合金であり、他の多くの合金と比較して、高温化学処理ユニットの寿命を延ばす好ましい特性を示す。開発作業も進んでおり、マイクロ/メソチャネル構成要素の付加製造に対するHaynes 282の適合性が実証されている。例えば、米国特許第10,981,141B2号を参照されたい。これは、付加的に製造されたパンケーキ状リアクタの設計及び製造方法を記載している。
【0076】
Haynes 282の電気抵抗率は、温度によって実質的に増加しない。その結果、Haynes 282合金の熱浸透距離は、周波数によってより大きく変化し、その結果、例えば25kHzの代表的な周波数でのHaynes 282の熱浸透(δ)は、3.61ミリメートル(mm)、または、誘導システムの10から40kHzのさらに狭い動作範囲を想定すると、約2.85から5.71mmに計算できる。これにより、誘導加熱の大部分が発生する化学処理装置へのおおよその深さを最初に確認できる。
【0077】
あるいは、誘導加熱を、受け取った磁気エネルギー(E)の半分が熱に変換されるリアクタへのエネルギー半減距離(d
1/2)で考えることは有用であり得る。この用語は数学的に放射性崩壊に似ており、物理学者は放射性同位体サンプルの半分が別の種に崩壊するのにかかる時間を議論している。半分の厚さ2つ(2d
1/2)分では、エネルギーの3/4が熱に変換される。半分の厚さ3つ(3d
1/2)分では、7/8で、4
1/2では、15/16などである。
したがって、マイクロ/メソチャネル受け器内部の熱へのエネルギー変換の関係は次のようになる。
【数2】
式中、Eoは化学処理装置に入る磁気エネルギー、Eは材料全体で熱に変換されなかった磁気エネルギーを表し、λは材料の特性に基づく「減衰定数」であり、実際には2/δに等しく、変数としてのtは、Eの値が必要な材料への厚さを表す。したがって、半エネルギー距離は次のようになる。
【数3】
25kHzでのHaynes 282の場合、約1.25mmである。
【0078】
図10では、本発明者らは2つのケースの温度プロファイルを比較しており、1つは、熱がマイクロ/メソチャネル化学処理装置の外側に追加された場合で(例えば、パラボラディッシュ集中器を使用して太陽エネルギーを触媒メソチャネルリアクタの表面に反射させることによる)、他方は同じ化学処理装置のカバー内部で加熱するために25kHzの交番磁場が使用される場合である。この場合、カバーの厚さは5mmである。つまり、触媒メソチャネルは、リアクタ内に5mmの位置にある。各半エネルギー距離は1.25mmであるため、カバーの厚さは4つの半エネルギー距離であり、カバー内で熱に変換された入射磁気エネルギーの割合は15/16であり、プロセスチャネルに入る磁気エネルギーの割合は1/16に低下した。これはまた、戻りチャネルからプロセスチャネルに追加の(回復)加熱を供給したいため、望ましいことである。
【0079】
図11は、生成物ガスからの内部再生を伴う誘導加熱水蒸気メタン改質の場合の代表的な設計を示している。これは、3層の触媒パンケーキ状リアクタの一部の断面を示しており、カウンタークロス流回復熱交換を備え、2つの反応チャネルと1つの戻りチャネルが強調されている。
【0080】
流れはカウンタークロス流であるが、流れが一般的にページに対して垂直に移動しているかのように例を考えると便利である。
【0081】
断面は、戻りチャネルと反応チャネルが互いに重なるリアクタの位置に合わせて選択された。インダクタ、各パンケーキコイルは、渦電流によって熱を生成し(ジュール加熱として)、直接表面金属のヒステリシス加熱によってもまた熱を生成できる(上側では、これは「上壁」として示され、誘導エンハンサーを含む場合がある)。
【0082】
上壁とインダクタの間のギャップが、断熱材を配置することを可能にし、コイルへ熱が伝達するのを制限し、これは、受動的または能動的な冷却を必要とする場合がある。誘導エンハンサーが望ましい用途では、1つのオプションは、非常に高い比透磁率と高いキュリー温度(約970°C)を有するコバルト鉄(CoFe)の薄い層を配置することである。ここで、誘導エンハンサーは、ジュール加熱とヒステリシス加熱の両方によって発熱する。
【0083】
図11は、三層触媒パンケーキ状リアクタの断面を示す。インダクタとリアクタの間の「結合」の程度を高めるために、基本的なリアクタの概念に誘導エンハンサーを追加することができる。これにより、誘導コイルとリアクタの間の絶縁にセンチメートル単位のギャップを許容する距離で、より大きなエネルギー伝達が促進され、コイルを受動的または能動的に冷却する必要性が減り、より高い電力レベルでの動作が可能になり、電気から化学へのエネルギー効率が向上する。
【0084】
図12は、2層及び3層のパンケーキ状リアクタの熱プロファイルのグラフを示している。図は、前の図と比較して横向きになっており、本発明者らの設計の誘導加熱リアクタ内部の温度勾配を論じるのを容易にする。この図は、誘導エンハンサーを使用しないことを想定しており、誘導加熱の場合と、熱が別の手段(例えば、太陽集光器)によってリアクタの表面に導入される場合とを比較している。
【0085】
図12Aは、コンピュータシミュレーション及び計算に基づくおおよその温度プロファイルを示し、左チャネルでの水蒸気メタン改質を実行する2層パンケーキ状リアクタの温度プロファイルを表しており、2層パンケーキ状リアクタが左チャネルで水蒸気メタン改質を実行し、反応の化学生成物が、右側のチャネルの反応チャネルにカウンタークロス流を流す。断面は、反応チャネルの出口温度に近く、2つのチャネルが互いに直接隣接する点で選択された。この画像の右側は断熱材を示している。図示されていないインダクタは、ユニットの左側にある。
【0086】
図12Bは、3層パンケーキ状リアクタの温度プロファイルを表す、コンピュータシミュレーション及び計算に基づく温度プロファイルを示す。最も外側の2つのチャネルは、スチームリフォーミングが実行される反応チャネルであり、最も内側のチャネルは反応の生成物を含み、反応チャネルに反対方向の熱の回復をもたらす。断面は、反応チャネルの出口の箇所に近く、3つのチャネルが互いに直接隣接する箇所で選択された。図示されていないインダクタは、ユニットの左右にある。どちらの図でも、温度は摂氏で表されている。破線は、表面に直接熱が加えられた場合の最外壁の温度プロファイルを表している。対照的に、実線は、誘導加熱の場合、表面だけでなく壁の内部で熱が発生することを示している。いずれの場合も、本発明者らは誘導加熱された壁の厚さを半エネルギー距離(d
1/2)の数(n)として表す。d
1/2=4の場合、磁気エネルギーによって生成される熱の15/16が壁の内部で熱に変換される。熱の発生の機会の残り、つまり1/16は、触媒反応チャネルの内部で発生する可能性がある。エクセルジェティックに有利な回復による効率の向上は、周波数の選択や反応構造の設計を含む、誘導システムの適切な設計によって保証され、そのため反応チャネルを通過した後(または右端の図では2つの反応チャネルの間の空間)では、実質的に誘導加熱は発生しない。
【0087】
化学変圧器
化学変圧器は、マイクロ及びメソチャネルリアクタ、セパレーター、熱交換器、気化器、及びコンデンサーを組み込むことで、経済的利点及び生産性の利点を得るプロセス集約型の化学プロセスシステムである。これらの大量生産可能なユニットのコンパクトなサイズに加えて、その高いプロセス強度により、電気的変圧器に類似した方法で、比較的小さなシステムで使用できる。
【0088】
一実施形態では、化学変圧器は、水蒸気改質及び水性ガスシフト反応を実行し、電気エネルギーを使用して、炭化水素(例えば、メタン)の水蒸気改質、蒸気発生、流体の予熱などの吸熱操作に熱を供給し、もちろん、駆動ポンプ、コンプレッサー、バルブ、制御装置などの古典的な機械的または電気的操作にエネルギーを供給する。電気化学操作もまた、補助され得る。
水素及びその他の化学物質は、メタン改質、水性ガスシフト、熱交換、及びその他の単位操作を使用して、化学変圧器で生成できる。次のスライドに示されているユニットのような、約2平方メートルの設置面積を有する小さな化学変圧器を配置すると、1日あたり約150から200kg、またはそれより多い量、またはそれより少ない量のH2を生成する機会が得られる。
【0089】
図7は、組み立て、出荷、及び保守のために、2つの半六角サブシステムに引き離すことができる六角形の化学変圧器を示している。この図には、5つのパンケーキ形のマイクロチャネルスチームメタン改質器があり、各々のそれぞれの側に誘導加熱コイルがあり、各改質器からの生成物を処理する1つの水性ガスシフトリアクタがある。また、制御値を加えた様々なマイクロチャネル熱交換器及びセンサー(熱電対や圧力変換器など)も含まれる。配電網からのAC電力を誘導コイル用の高周波電力に変換する発電機は、システムの最下部セクションにコンパクトなボックスとして配置されている。この設計では、ポンプやコンプレッサーはないが、これらの機械ユニットは化学変圧器に含めることができる。
【0090】
図示された5つのパンケーキ形のマイクロチャネル改質器(
図7)は、好ましくは、リアクタ内のカウンタークロス流のチャネルに加えて追加の熱交換器に基づいており、吸熱水蒸気メタン改質操作のための熱源として誘導加熱を伴い、700℃超、より好ましくは800℃超の温度で実施することが好ましい。現在、世界のほとんどで好まれている低コストの水素製造方法は、水蒸気メタン改質に基づいており、この吸熱操作に必要なエネルギーの一部は、最終的には、蒸気メタン改質装置と水性ガスシフトリアクタの下流で圧力スイング吸着システムを操作することによって生成される「排ガス」を燃焼させるなどによって入ってくるメタンの供給に由来する。
【0091】
吸熱操作を駆動するために太陽エネルギーまたは他のエネルギーを使用すると、必要な熱のためにメタンを使用する必要性が減少する。これにより、システム全体に関連する化石炭素排出量が最大で約40%削減される可能性があり、代替エネルギーがソーラーサーマル熱、または風力発電機や太陽光発電からの電力などの再生可能エネルギー源に由来する限り、少なくとも化学生成物のエネルギーの一部は、少なくとも一部が再生可能エネルギーであることを確信させる。さらに、非化石メタン源が原料である場合、システムの化石炭素排出量をゼロにすることができる。
【0092】
六角形は、配管、制御装置(バルブなど)、及び圧力変換器、熱電対、及び化学的センサーなどのセンサーを含む内部構造を構成する効率的な方法として選択された。
図7に示すように、形状が「規則的」または「不規則」であり得る六角形を使用すると、2つの「半六角」セクションに分割でき、六角構造内部の構成要素の組み立てをさらに強化し、六角システムを開いて、保守や交換の目的で構成要素に簡単にアクセスできるようにする。
【0093】
吸熱操作の電気加熱には、カートリッジヒーターや輻射ヒーターなどの電気抵抗ヒーターを含む、誘導ヒーター以外の方法を使用できる。
【0094】
図8を参照すると、再生可能な天然ガスを炭化水素原料として使用することにより、その炭素含有量は大気中のCO
2として開始され、結果として得られるH
2生成物には関連する炭素排出がない。いくつかの好ましい実施形態では、例えば強い太陽光または風のある期間に生成される過剰な再生可能エネルギーを使用してH
2を生成することができ、それはすぐに使用するか、または後で使用するために貯蔵することができる。第2に、メタノール及び/またはジメチルエーテルなどの化学物質、炭素生成物を水素と一緒に製造することができる。この追加の製造は、追加の反応と分離で達成できる。
【0095】
本発明者らはまた、6つのスチームメタン改質器(SMR)、6つの高温再生(HTR)熱交換器、中間熱交換器を間に備えた2つの断熱水性ガスシフトリアクタ、さらに蒸気発生器、及び水コンデンサー熱交換器の使用に基づいて、シフトされた合成ガス(リフォーメート)を供給するための化学変圧器を設計した。システムは、CO2、未反応のCH4、H2、及び少量の追加の成分(例えば、CO、H2Oなど)を含むPSAからの排ガスにより、H2分離器/精製器(圧力スイング吸着ユニット[PSA]など)の下流の組み込み(図示せず)に基づいて、1日あたり最大200kgのH2の生成を補助するように設計されている。
【0096】
図9は、不規則なHEX構造の半分を示すコンピューター支援設計(CAD)からの部分レンダリングである。完全なHEXを達成するために、2つ目のHEXが追加され、6面のシステムが生成される。HEXの上半分は、それぞれの上方にHTRを備えた3つの放射状に設計されたSMRを含み、加えてシステムの他の要素は、バルブ、センサー、配管/チューブなどを含む。半HEXの右側には、H
2の分離及び精製用のPSAシステムなど、HEXの外側の下流の処理に送られる前に、シフト合成ガス生成物から水を気液分離する垂直タンクがある。この実施形態では、蒸気は、PSA排ガスの触媒燃焼によって生成される。別の実施形態(図示せず)では、蒸気は電気加熱を使用して生成される。
【0097】
図9に示す装置では、上半分の中の半HEXの内部には、両側に誘導ヒーターを備えた3つのSMR、SMRの上方の3つのHTR、中間熱交換器を備えた2つの断熱WGSリアクタ、及び様々な配管、センサーなどがある。下半分には、排ガスの触媒燃焼用の空気を供給し、蒸気生成用の熱を生成する送風機と、ウォーターポンプと、水及びメタン用の物質の流れのコントローラーを含むその他の構成要素がある。最上部には燃焼ガスの排気塔がある。サイドパネルと断熱材は表示されていない。この実施形態では、設置面積は不規則な六角形であり、長軸は約5.6フィートであり、第2の半HEXを含む短軸は約4フィートであり、完全なHEXの総フットプリントは約20平方フィートである。システムを2つの半HEXに分割することで、例えば、組立ラインを含む大量生産方法を使用した組立、及び操作のための現場への輸送が容易になる。さらに、2つの半HEXは操作する現場で引き離すことができるため、保守や起動テストのためのアクセスが容易になる。
【0098】
このシステムは、上から見ると不規則な六角形に見えるスキッド構造に組み立てられるように設計されている。ただし、任意の構造を使用できる。SMRは、業界で一般的に行われているように、排ガスやその他の可燃性物質を燃焼させるのではなく、誘導ヒーターを使用することなどにより、電気的に加熱するように設計されている。これにより、太陽電池が優れた太陽資源である世界の一部で、太陽光発電パネルを使用して、本発明者らのSMRSを加熱することができる。あるいは、配電網からの電力を含む、他のいずれかの電源を使用することもできる。
【0099】
この構成により、過剰な電気エネルギーを水素に変換する能力が生まれ、配電網に余分なエネルギーが必要な場合、水素を使用して、燃料電池、または熱機関(ガスタービン、スターリング、またはオットーサイクルエンジンなど)を含む別の発電機に電力を供給することができる。このようにして、本発明者らは、メタンのエネルギーを増幅する電気化学変圧器を作成した。例えば、メタンは1キログラムあたり50メガジュールの燃料エネルギーを有している。120メガジュールの水素を含む1kgの水素を作るには、2kgのメタンが必要である。つまり、燃料エネルギー含有量が20%増加する。これが可能になるのは、電気を追加して高温を加熱することによって供給されるエネルギー、吸熱メタン改質反応が、反応ストリームの燃料エネルギーを増加させるからである。
【0100】
このシステムは、電気エネルギーの増幅器と見なすこともできる。1キログラムの水素を作るには、約15キロワット時の電力が必要である。その水素が燃料電池を使用して変換される場合、約55%の効率を仮定すると、約17キロワット時の電力が生成される。最後に、このシステムは、消費するよりも多くの水を生成するため、必要な場所で水を生成するために使用できる。水素を生成するためにSMRで使用される各18キログラムの水に対して、燃料電池は36kgの水蒸気を放出する。これにより、SMR/燃料電池プロセスは水増幅器にもなる。
【0101】
水素生成産業は、生産コストを削減するために大規模な経済学に依存してきた。ハードウェアの大量生産の経済性により、化学変圧器によって生成される水素のコストが削減される。1日あたり200kgのSMRスキッド(コントロールパネル、脱硫、脱イオン水、及び圧力スイング吸着を除く)の設置面積は約2メートルである。別の方法として、化学変圧器の内部にSMRをさらに積み重ねると、約1平方の領域での設計されたSMRのうちの9つが有効になり、1日あたり300kgを超える水素を生成できる。設計のモジュール性により、メタン、水、及び電気のインフラストラクチャがあれば、どこでもオンサイトで水素を生成できるようになる。
【0102】
プロセス集約型マイクロチャネル及びメソチャネルSMR
リアクタの試験
水蒸気メタン改質器(SMR)リアクタは、選択的レーザー溶融(SLM)またはレーザー粉末床核融合(LPBF)と呼ばれる付加製造プロセスを使用して製造された。直径は約11インチ、厚さは1インチ未満である。上部中央の構造には2つの開口部があり、1つは反応物質、メタン、及び水蒸気をリアクタ内に流すためのチャネルで、1つは生成物改質ガスがリアクタから流出するためのチャネルである。周囲の溝は、放電加工(EDM)で外輪を除去するために使用される。SMR触媒でコーティングされた金属フォーム構造が触媒チャネルに挿入される。リングは周囲で取り替えられ、上部の入口及び出口チャネルを除いてリアクタを密封するために所定の位置に溶接される。このタイプのリアクタは、米国特許第9,950,305号に記載されており、反応チャネルは直線であり、戻りチャネル(熱伝達チャネル)は湾曲しており、したがって、戻りチャネルから反応チャネルの裏側へのカウンタークロス流の熱交換をもたらす。水素生成モジュールは、
図13に示すように、高温の回復熱交換器を入口チャネルと出口チャネルに取り付けることによって完成する。回復熱交換器は、よりエネルギー効率が高く生産的な水素生成モジュールを作るために、高温の生成物ガスストリームから、入ってくる低温の反応物質反応ガスストリームに熱を伝達する。
【0103】
リアクタは、パンケーキ状誘導コイルから下側から加熱される。インダクタを通過する交流電流は、隣接するリアクタにミラー電流を誘導する磁場を生成する。リアクタは、定格5kwの商用誘導コイルの上に置かれた。
【0104】
SMRリアクタは、750°Cを超える、または800°C以上、または750から900または950°Cのプロセスチャネルの出口付近の温度で動作する。典型的なSMR温度ではコイルが損傷するため、誘導コイルとリアクタの間に絶縁が配置される。コイルは、リアクタとは反対側のコイルの側面を横切って対流的に空気を流すことによって、または代わりに、コイルに対してコールドプレートを配置することによって、冷却することができる。コールドプレートの一例は、冷水がアルミニウムに埋め込まれたチャネルまたはチューブを通って流れるアルミニウムブロックである。この構成では、コイルとリアクタの間に1.2cmの断熱材を使用し、コイルを空気の流れで冷却した。
【0105】
これらの試験結果は、キュリー温度に近づくにつれて帯磁率が低下するCoFeの温度調節器として、リアクタ本体を使用することの重要性を示している。CoFeとリアクタとの間の良好な熱的接触を得ることによって、CoFeの温度はリアクタの表面よりもわずかに高い温度付近に制限され、それはリアクタのすべての領域で900℃未満であるべきである。
【0106】
誘導コイルとリアクタの間の誘導結合を促進するための革新は、コイルとリアクタの間で強磁性の誘導エンハンサーとして機能する材料の別の層を追加することであった。シート状の厚さ約0.35mmのコバルト鉄(FeCo)シートを断熱材とSMRリアクタの間に挿入し、リアクタの温度に適合するセラミック材料に硬化するサーマルペーストで、リアクタに付着させた。コバルト鉄材料のキュリー温度は約950°Cで、それは相変化を受け、強磁性から常磁性に遷移する。
【0107】
最初のキャンペーンでは、9SLPMのメタン流量、132psigの圧力、及び3:1の蒸気と炭素の比率を維持しながら、様々な温度でリアクタをテストした。リアクタの周囲に配置された12個の熱電対の平均であるリアクタの温度の関数としてのメタン変換は、リアクタが平衡に制限されており、潜在的な生産能力がより高いことを示す平衡変換(3%以内)を厳密に追跡した。これは、このテストの流量がリアクタの設計流量の約3分の1であったため、予想される。完全な設計の流れでのテストは、上で説明したように、テストユニットの誘導加熱能力によって制限される。同様に、CO2に変換されたメタンの割合と平衡モル分率はまた、これらのテスト条件で制限された平衡であった。誘導プロセスの熱エネルギー効率は、1.85から2.45kWの誘導ヒーター出力で50から52%であった。熱エネルギー効率は、電力を化学エネルギーに変換する効率であり、誘導加熱システムによって消費される電力で割ったSMR入口と出口の流れの間のエンタルピーの変化として定められる。誘導電力で割ったストリームの高位発熱量(HHV)の変化である化学効率と呼ばれる同様のメトリックは、1.85から2.45kWの誘導ヒーター電力で58%から62%であると測定された。このテストでは、熱エネルギー効率は一貫して50%を超えており、より高い発熱量への変換は約60%であった。熱エネルギー効率は、Amind et al., Catalysis Today, pp. 13-20(Feb 2020)によって報告された10または23%の以前に報告されたエネルギー効率と比較できる。
【0108】
周囲の平均温度は、
図4の誘導電流とともにプロットされている。リアクタの温度は、誘導電力のパルス幅変調によって制御される。これは、誘導電力がオン/オフされることを意味し、したがって、特定の時間パルスの一部だけオンになる。したがって、
図14の電流は、電流データの上部に沿ってゼロと最大消費電力の間で揺れる。データは、これらの条件でリアクタを800°Cに加熱するために、誘導システムが完全にオンになっており、最大約13アンペアの電力のうち約7アンペアしか踵腓していないことを示している。リアクタの温度が750°Cまで段階的に低下するにつれて、最大消費電力が増加する。コバルト鉄(Co-Fe)シートのキュリー温度は950°Cであるため、シートがSMRリアクタの周囲よりもはるかに高温であることを意味する。これは、Co-Feシートとリアクタの間に空隙があり、一方から他方への熱伝達の熱抵抗が生じる場合に予想される。試験後、リアクタからのCo-Feシートの剥離が観察された。考えられる原因は、Co-Feシートのみの以前の加熱テストで観察されたように、材料が加熱されると反りを引き起こすCo-Feシートの残留応力を含み、またはCo-Fe材料とHaynesリアクタの壁の間の熱膨張係数(CTE)の不一致による。
【0109】
硬質セラミック材料を形成するサーマルペーストは、98%の銅と2%の銀からなるろう付けに置き換えられ、ろう付け接合部の延性とコンプライアンスを向上させ、CTEの不一致に対応する。新しいろう材を使用してリアクタを実行すると、
図15に示す結果が得られた。SMRの熱効率は、最初のテストでわずかに50%を超えていたのが60%超に増加した。システムからのエネルギー損失を最小限に抑えるために、メタンの流量を可能な限り低くした。新しい銅銀のろう付けにより効率が改善されたが、テスト後に観察されたように、Co-Feの一部は動作中にまだリアクタから剥がれていた。
【0110】
次の試みは、
図16に示すように、コバルト鉄シートを再構成して、改良された設計された誘導エンハンサーにし、銅銀のろう付けでリアクタの壁にそのときろう付けされた円形セグメントを生成することであった。さらに、コバルト鉄を空気中での酸化から保護するために、高温塗料が表面に塗布された。より小さなコバルト鉄片を取り付けると、材料の全体的な横方向の膨張が、減少し、それによって熱膨張の間のコバルト鉄とHaynesリアクタの相対的な動きを支えるろう付けの能力が向上する。
図17は、図面のリアクタを操作して得られた効率を示している。達成可能な電力レベルは約2.7kWからほぼ3.6kWに増加し、熱エネルギー効率は最大60%から66%に増加した。テスト後のリアクタ表面の検査では、一部の円形セグメントが剥がれ、残りは緩く付着していたことが見出された。
【0111】
誘導加熱、3層SMR
このセクションでは、誘導加熱される3層SMRの全体的なパッケージ設計について説明する。SMR内の3つの層は、伝熱層を挟む2つのプロセス層である。いくつかの単位プロセスは誘導エンハンサーを必要としない場合があり、誘導エンハンサーは含まれても含まれなくてもよい。例えば、適度な高温(例えば、200℃以下)での蒸気発生は、プロセスユニットが強磁性合金(例えば、磁性ステンレス鋼)で作られている温度で容易に行うことができ、動作温度は、リアクタ本体と誘導サブシステムの間の絶縁を必要としない場合がある。
【0112】
図18は、3層プロセスユニットの誘導サブシステムの分解図を示し、プロセスユニットが高い比透磁率を有していない材料(例えば、常磁性、フェリ磁性または非磁性物質)で作られているので、必要とされた可能性がある誘導エンハンサーと共に示している。または、プロセスユニットが、プロセスユニットと誘導コイルの間に断熱材を備えたギャップを必要とする温度で動作するために必要になる場合がある。上から下に、この画像の誘導エンハンサーは、適切な材料(例えば、インコネル)で作られたスペーサープレート、高い比透磁率を有する材料(好ましくは、CoFeなどの強磁性材料)、及びこの画像では誘導エンハンサーサンドイッチのラジアルユニットとして構成されているCoFeに合わせて機械加工されているもう1つのスペーサープレートからなる。あるいは、強磁性材料は、同心リング、セグメント化された同心リング、タイル状ユニットなどを含む多数の可能な形状で構成することができ、それらは互いに近接または重なり合うことができる。誘導エンハンサーサンドイッチは、プロセスユニットに近接していても、直接接触していてもよく、例えば、それはサーマルペースト、ろう材、スポット溶接、または他のいずれかの適切な材料を使用して、貼り付けられ、良好な熱的接触を有し得る。この場合、誘導エンハンサーサンドイッチは、強磁性材料を空気から隔離して酸化を防止するようにさらに作用することができる。サンドイッチの構成要素を接合する際には、異なる熱膨張係数に関連する問題を防ぐために注意を払わなければならないことに留意されたい。したがって、誘導エンハンサーサンドイッチの設計及び組み立てには、伸縮継手及び他の伸縮軽減手段を含めることができる。また、誘導サンドイッチは、サンドイッチから突出するか、または処理ユニット内に突出する構成要素をさらに含み得ることにも留意されたい。
【国際調査報告】