(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】毛細管ベースの電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/23 20210101AFI20231004BHJP
H01M 8/1016 20160101ALI20231004BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20231004BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231004BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231004BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20231004BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20231004BHJP
【FI】
C25B9/23
H01M8/1016
H01M8/02
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B13/02 301
C25B1/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541850
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 AU2021051090
(87)【国際公開番号】W WO2022056606
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523103147
【氏名又は名称】ハイサタ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲールハルト・フレデリク・スウィガース
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ホッジズ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・カタジナ・ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】アン・リン・ホアン
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ヨン・リー
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H126AA02
5H126AA03
5H126BB02
5H126JJ03
(57)【要約】
開示されるのは、分子レベルの毛細管、拡散、及び/又は浸透効果を採用して、電気化学電池の巨視的外部管理の必要性を最小に抑えるゼロギャップ電気化学電池構造である。好ましくは、これらの効果は本質的に電気化学電池の状況に応答し、自己調整させる。一例では、液体電解質を含むための槽と、槽の外部に位置する第1のガス拡散電極と、槽の外部に位置する第2の電極とを含む電気合成又は電気エネルギー電池、及び動作方法が開示される。多孔性毛細管スペーサが、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置し、その多孔性毛細管スペーサは、槽内に延びる端部を有する。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質と液体接触しているとき、液体電解質でそれ自体を充填することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応を実行するための電気合成電池又は電気エネルギー電池の動作方法であって、前記電気合成電池又は電気エネルギー電池は、
液体電解質を含むための槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、前記槽内に位置し前記液体電解質と液体接触する端部を有する、多孔性毛細管スペーサと
を備え、
前記方法は、
前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を前記液体電解質と接触させるステップと、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に電圧を印加するステップ又は生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記多孔性毛細管スペーサに、少なくとも毛細管作用により前記槽からの前記液体電解質を充填することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔性毛細管スペーサの前記端部が前記槽内に位置する前、前記多孔性毛細管スペーサに前記液体電解質を充填することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体電解質が前記多孔性毛細管スペーサに沿って輸送された後、前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を前記液体電解質と接触させることを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
動作中、前記多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填されたままである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電池は電気合成電池であり、前記電気化学反応は、前記電気合成電池から離れて外部に輸送される化学産物を生成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電池のための外部筐体を更に含み、前記外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供し、前記液体電解質は、前記少なくとも1つの外部液体導管を介して前記槽内又は外に輸送される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第1のガスは、前記少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電池のための外部筐体を更に含み、前記外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供し、第1のガスは、前記少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの外部第2ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第2のガスは、前記少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
外部液体導管が存在せず、前記液体電解質並びに/又は液相反応物及び/若しくは産物が、ガス流内の蒸気の形態で前記電池内又は外に輸送されることを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記槽は、前記多孔性毛細管スペーサの一部として一体化され、前記蒸気は、前記多孔性毛細管スペーサ内の前記液体電解質において液化する又は前記多孔性毛細管スペーサ内の前記液体電解質から気化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電池は、前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を通して、1Amp以上、好ましくは1.5Amp以上、より好ましくは2Amp以上、及びより好ましくは2.5Amp以上の電流を使用して動作する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電池は少なくとも24時間連続して動作する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により前記多孔性毛細管スペーサ内に前記液体電解質を引き込み、カラム高さの前記液体電解質を維持する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも前記第1のガス拡散電極の高さに等しく、又はそれよりも高い、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電気化学反応中、前記多孔性毛細管スペーサ内の前記液体電解質は、前記多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔性毛細管スペーサの長さに沿った前記1つ又は複数の液相材料の前記移行は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の制御下にある、請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記電気化学反応は、前記電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
交差平面軸からの前記液相材料の移動は、前記槽内の前記液体電解質の組成によって自己調整される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、
(i)前記液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、
(ii)前記液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する
ように、前記多孔性毛細管スペーサ内で作用する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記電気化学反応は、窒素及び水素からアンモニアを生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記電気化学反応は、アンモニア及び酸素から電気を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記電気化学反応は、アンモニアから水素及び窒素を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記電気化学反応は、反応物としてNO
Xを使用する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記電気化学反応は、塩水から塩素、水素、及び苛性物質を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記電気化学反応は、塩水から塩素及び苛性物質を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電気化学反応は、塩酸から塩素及び水素を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電気化学反応は、水素及び酸素から電気エネルギーを生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記電気化学反応は、水から水素及び酸素を生成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電気化学反応は、水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
液体電解質を含むための槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、前記槽内に位置し前記液体電解質と液体接触する端部を有する、多孔性毛細管スペーサと
を備える、電気合成又は電気エネルギー電池であって、請求項1~32のいずれか一項に従い動作するように構成されている、電気合成又は電気エネルギー電池。
【請求項34】
請求項33に従う第1の電気合成又は電気エネルギー電池、及び
請求項33に従う第2の電気合成又は電気エネルギー電池
を備える、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体。
【請求項35】
前記第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び前記第2の電気合成又は電気エネルギー電池は、直列接続される、請求項34に記載の電気合成又は電気エネルギー電池の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範には、例えば電気合成電池又は電気エネルギー電池として使用される電気化学電池に関する。本発明の実施形態例は、より詳細には、本質的にエネルギー効率的であり、分子レベルの毛細管、拡散、及び/又は浸透効果を採用して、電気化学電池のマクロレベルの外部管理の必要性を最小に抑えるゼロギャップ電気化学電池構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギー電池とは、無限の時間期間にわたり途切れずに又は連続して、電池の外部で使用される電力を生成する電気化学電池である。電気エネルギー電池は、動作中、反応物の常時外部供給を提供する必要があり得るという点でガルバニ電池と区別される。電気化学反応の産物も一般に、動作中、そのような電池から常時除去される。バッテリと異なり、電気エネルギー電池は、化学エネルギー又は電気エネルギーを内部に貯蔵しない。
【0003】
電気合成電池も同様に、無限の時間期間にわたり途切れずに又は連続して、電池の外部で使用される1つ又は複数の化学物質を製造する電気化学電池と見なすことができる。化学物質はガス、液体、又は固体の形態であり得る。電気エネルギー電池のように、電気合成電池も、動作中、反応物の常時供給及び産物の常時除去を必要とする。電気合成電池は一般に、電気エネルギーの常時入力も更に必要とする。
【0004】
電気エネルギー電池又は電気合成電池の動作に関わる大量の電気エネルギーにより、それらの開発での主な問題は、動作中、それらを可能な限りエネルギー効率的にすることである。これは一部、電気インピーダンスを最小に抑えることによって達成し得る。インピーダンスは、電圧印加時、電流に対して電池回路が呈する抵抗である。インピーダンスを最小に抑える一方法は、電池のアノード電極及びカソード電極が互いに面するように、折衝せずに(接触は短絡回路を生じさせる)互いに可能な限り近くに配置される電池構造を採用することである。2つの電極間のギャップは、可能な限り最高のイオン伝導率を有する電解質で占められるべきでもある。
【0005】
このために、電気合成又は電気エネルギー電池に様々な「ゼロギャップ」電池構造が開発されてきた。そのような構造では、2つの電極は、本質的に高いイオン伝導率を有し得、又は高いイオン伝導率を有する液体電解質が染み込み得る薄い膜の両側に対してしっかりと狭設される。この種のゼロギャップ膜は一般に、ゼロギャップ電池では2mm厚未満である。ゼロギャップ電池構造の幾つかの例が、R.Phillips及びC.W.Dunnill著「Zero gap alkaline electrolysis cell design for renewable energy storage as hydrogen gas」,RSC Advances(2016年),第6巻,第100643-100651頁に提供されている。
【0006】
電気合成又は電気エネルギー電池の別の特徴は、典型的にそれらの動作に関わる大量の反応物及び産物である。動作中、そのような電池には常に相当量の反応物が供給され得、その間同時に、相当量の産物が電池から常に除去され得る。理想的には、反応物供給及び産物除去は、完全に別個のプロセスであるべきであり、それにより、電池から除去されている産物から独立して反応物を電池に供給することができ、これらのプロセスは互いに干渉しない。更に、電池への反応物の供給及び電池からの産物の除去は、電気化学反応に干渉するべきではなく、又は電気化学反応を制限すべきではない。
【0007】
例えば、最もよく知られているゼロギャップ電池の1つは、水素-酸素高分子電解質膜(PEM)燃料電池である。そのような電池は典型的には、2つのガス多孔性電極(「ガス拡散電極」としても知られている)間に狭設されたChemours社により供給されるNafion(登録商標)膜等のスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化ポリマー-コポリマーで形成された薄いプロトン(H+)伝導性膜を採用する。Nafion(登録商標)膜は典型的には、約0.183mm厚(例えばNafion(登録商標)117膜を使用する場合)又は約0.125mm厚(例えばNafion(登録商標)115膜を使用する場合)であり得る。そのような電池では、反応物である水素(H2)ガスは、ガス拡散電極(「水素電極」)の1つを介して導入され、ガス拡散電極においてプロトンに変換される。プロトンはNafion(登録商標)膜を通って他方の電極(「酸素電極」)に輸送される。酸素(O2)ガスは、ガス拡散「酸素」電極を介して導入され、Nafion(登録商標)膜を透過したプロトンと反応して、水(H2O)を生成する。酸素電極で形成された水は典型的には、重力又は蒸発により電池から除去される。電池での電気化学反応は、取り付けられた外部回路において電流又は電圧を生み出す。
【0008】
この電池の動作の鍵は、水素電極から酸素電極へのプロトン(H+)伝導を促進するNafion(登録商標)膜の能力である。この機能を実行するために、Nafion(登録商標)膜は水で部分的又は完全に飽和(即ち水和)されなければならない。しかしながら、必要な水和レベルを維持することは、水が酸素電極で生成される反応の産物でもあるため、難しいことがある。最も一般的に、PEM燃料電池内のNafion(登録商標)膜の水和レベルは、入力(反応物)水素ガスを加湿することにより管理される。過剰な湿気は、水に液化してガス拡散電極の1つに溜まり、入力ガスを遮断し、反応が停止することに繋がる恐れがあるため、これは入念に制御されなければならない。この現象は「フラッド(flooding)」として知られ、反応産物である水も形成される酸素電極で特に危険である。しかしながら、不十分な加湿はNafion(登録商標)膜が部分的に乾燥することに繋がり、プロトン伝導性を低下させ、反応を遅くさせる恐れがある。これは特に水素電極で危険であり、何故ならば、動作中、電気泳動ドリフトが水分子を水素電極から離れてNafion(登録商標)膜をわたり酸素電極に移行させるためである。したがって、反応物(水素)を供給するプロセスは、産物(水)を除去するプロセスと密接に関わるため、この種の燃料電池では多くの場合、応答性被監視リアルタイム電子フィードバックシステムによる入力ガスの湿度含有量の変更を含む能動的な管理が必要とされる。
【0009】
多くの電気エネルギー又は電気合成電池は、反応物の供給に関わるプロセスが産物除去プロセスと密に関わり、独立していないため、動作中、能動的管理を含む何らかの形の管理を必要とする。これは、電池自体内で、電気化学反応の活性部位に反応物を供給し、且つ/又は該部位から産物を除去する分子レベルのプロセスが別個ではなく、独立していないために生じる。更に、それらは電気化学反応によって制御されない。したがって、この分子レベルの欠陥には、(i)反応物を電極に供給し、且つ/又は(ii)電極から産物を除去し、且つ/又は(iii)電極間の極めて重要な中間体又は極めて重要なプロセスを制御する間接的な代理制御プロセスのマクロスケール管理により対処する必要がある。
【0010】
この問題は、問題を明確にするために、より概念的に述べることができる。基本的に全てのゼロギャップ電気エネルギー又は電気合成電池の内部では、反応及び分子移動は、電気化学反応の制御下で、大方、電極間膜内の電極及び電極間にある「交差平面(cross-plane)」軸において分子レベルで生じる。反応物は一般に、電気化学反応の制御下ではないことがあるプロセスで、膜の外部からこの交差平面軸に移行しなければならない。同様に、電気化学反応の産物は典型的には、電気化学反応の制御下ではないことがあるプロセスで、交差平面軸から移行しなければならない。他の全ての重要プロセス及びそれに関わる特定の材料についても同じことが言える。これらのプロセス実行への制御度が下がるにつれて、電池自体内で、反応部位への反応物供給/反応部位からの産物の除去と電気化学反応自体の速度との間に分子レベルでの分断が存在し得る。一般に、能動的管理を含む難しい外部マクロスケール管理が必要となるのは、この分子スケールでの分断によるものである。即ち、管理の必要性は、電気化学反応と、電池自体内で電気化学反応に供給又は電気化学反応から除去しなければならない大量の材料との間の分断から生じ得る。全てのそのような移動がよりよく制御されるならば、これは、電池を管理する必要性、特に電池を能動的に管理する必要性をなくし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ガスから液体又は液体からガスへの変換を含む幾つかの電気合成又は電気エネルギーゼロギャップ電池で問題なのは、交差平面軸への又は交差平面軸からの液相材料の分子レベルの移動である。例えば、上述したように、ゼロギャップPEM燃料電池では、交差平面軸内/外への水の移動は、気相反応物が電極にアクセスすることに干渉し得、それにより能動的管理を必要とする。しかしながら、他の電池では、問題になり得、能動的管理を必要とし得るのは、交差平面軸内又は外への、基礎材料の分子レベルでの移動である。例えば、ゼロギャップ水電解電池で生成される気泡は多くの場合、水反応物に電極表面へのアクセスを提供するために、電極上に液体電解質を常時圧送することにより電極から能動的に一掃されなければならない。これは、電池のコストを上げるのみならず(圧力管理機器を含め、追加の配管、タンク、他の機器に起因して)、一方の電極から他方の電極へのガスの「交差」も増大させ、それにより、電池の電気化学効率は大幅に低下し、安全性の問題となる恐れがある。
【0012】
そのような電池では、問題は、ある相の物質(例えば液体)を有する化学種が、異なる相の物質(例えばガス)を有する別の化学種の流れに逆行し打ち消す方向及び場所を流れる、電気化学電池内部の分子レベルの流れが関わるものとして要約することができる。この種の流れは「多相逆流」と呼ぶことができる。互いに干渉し互いを妨げるに当たり、そのような多相逆流は、電池の性能を低下させ、その解消にエネルギーを必要とする非効率性を生み出す恐れがある。
【0013】
電気合成又は電気エネルギー電池におけるそのような多相逆流の存在は周知である。しかしながら、多くの場合、対処しなければならない他の重要な考慮事項があるため、多相逆流をなくす又は最小に抑えることは簡単ではない。例えば、上述したように、水電解電池では、電極に向かう液相反応物(例えば水分子及びイオン)の流れは、電極から離れる気相産物(例えば気泡)の流れに抵抗する。これは多くの場合、電極間膜によって増幅される。電極間膜の主な機能は、電極間のガス交差を阻止することである。このために、電極間膜は典型的には非多孔性であり、0.125mm以上の厚さのNafion(登録商標)115膜を有する必要がある。電極間膜が全多孔性である場合、気泡が電極間膜に入って通り抜けないようにするために、孔は可能な限り小さいサイズである必要がある。そのような性質は、水分子のような大量の液相反応物の連続供給に適さない。実際に、既知の電極間膜のこれらの性質は、電極間膜内部の液相水の移動度を妨げ、最小に制限し、又は更には阻止する恐れがある。これは、膜を通るガス交差を最小に抑えるために必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
まとめると、例えば電気合成電池又は電気エネルギー電池として使用される新しい改良された電気化学電池又はゼロギャップ電気化学電池が必要とされている。代替又は追加として、新しい改良されたゼロギャップ電気エネルギー電池及び/又は電気合成電池が必要とされる。代替又は追加として、管理が必要であり得る例において、ゼロギャップ電気エネルギー電池及び/又は電気合成電池の動作を管理する新しい改良された手段も必要とされている。電気エネルギー電池及び電気合成電池のために、ガスから液体又は液体からガスへの変換を促進する新しい改良された電気化学電池又はゼロギャップ電気化学電池が特に必要とされている。
【0015】
いかなる先行公開物(若しくはそこから導出される情報)又はいかなる既知の物事への本明細書における参照も、その先行公開物(若しくはそこから導出される情報)又は既知の物事が本明細書が関連する努力分野で共通する一般知識の一部をなすことへの同意、承認、又はいかなる形の示唆でもなく、又はそのように解釈されるべきではない。
【0016】
この概要は、以下に詳細な説明において更に説明される選択された概念を簡易化された形態で紹介するために提供される。この概要は、請求項に記載される趣旨の主要な特徴又は必須の特徴を全て識別することを意図せず、また請求項に記載される趣旨の範囲の限定に使用されることを意図しない。
【0017】
種々の態様例において、実施形態は、分子レベルの毛細管作用、拡散作用、及び/又は浸透作用を電池内で採用して、電池のマクロレベルの外部管理の必要性を最小に抑えた電気化学電池構造、特にゼロギャップ電気化学電池構造に関する。好ましくは、これらの分子レベルのプロセスは本質的に、電池内の電気化学反応に応答し、自己調整させる。好ましくは、これらの分子レベルのプロセスは、電池の種々の液相及び気相反応物及び/又は産物について別個であり独立している。好ましくは、そのような各分子レベルのプロセスには、電池内の液体又はガスの個別の巨視的物体が関わる。好ましくは、新鮮な反応物又は余剰産物は、電池の動作中、これらの液体及び気体に別個に供給又はこれらの液体及び気体から別個に除去される。好ましくは、この供給又は除去は、電池内の各液体又は気体を外部貯蔵及び供給/除去システムに別個にリンクする気密/液密導管を介する。
【0018】
実施形態例は特に、ガスから液体又は液体からガスへのプロセスを促進するゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池に関する。そのような電池は、無期限の期間にわたって途切れなく又は連続して動作し、反応物を消費し、電池内に収容するには嵩張りすぎる産物を生成し、代わりに、外部貯蔵及び供給/除去システムによって供給又は除去し得る。好ましくは、実施形態例は本質的にエネルギー効率的である。
【0019】
一態様例において、第1のガス拡散電極と、第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備えた電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質と液体接触する場合、液体電解質でそれ自体を充填することが可能である。好ましくは、第1のガス拡散電極は、槽外部に位置する。好ましくは、第2の電極も槽外部に位置する。任意選択的に、電池は電気合成水電解電池である。
【0020】
一形態例において、第1のガス拡散電極は第1の気体と直接接触する。別の形態例において、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填される。別の形態例において、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である。別の形態例において、第1のガス拡散電極は第1の気体と接触し、第1の気体に隣接する。別の形態例において、第2の電極は、第2のガス拡散電極であり、第2の気体と接触し、第2の気体に隣接する。
【0021】
別の態様例において、電気合成又は電気エネルギー電池であって、液体電解質を含むための槽と、前記槽の外部に位置する第1のガス拡散電極と、前記槽の外部に位置する第2の電極と、前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、前記槽内に延出する端部を有する、多孔性毛細管スペーサとを備え、前記多孔性毛細管スペーサは、前記多孔性毛細管スペーサの前記端部が前記槽内の前記液体電解質に液体接触する場合、前記液体電解質でそれ自体を充填することが可能である、電池が提供される。
【0022】
別の態様例において、電気合成水電解電池であって、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2の電極と、液体電解質が充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である、電気合成水電解電池が提供される。
【0023】
別の態様例において、電気合成又は電気エネルギー電池であって、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と接触し隣接するように構成された第1のガス拡散電極と、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と接触し隣接するように構成された第2のガス拡散電極と、第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、液体電解質で充填され、毛細管効果により液体電解質を多孔性毛細管スペーサに閉じ込めるように構成され、それにより、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、電池が提供される。
【0024】
別の態様例において、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体であって、第1の電気合成又は電気エネルギー電池と、第1の電気合成又は電気エネルギー電池に電気的に接続された第2の電気合成又は電気エネルギー電池とを備え、各電気合成又は電気エネルギー電池は、本明細書に開示される電池の一例である、積層体が提供される。
【0025】
別の態様例において、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供され、電池は、本明細書に開示される電池の一例であり、方法は、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加すること又は第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を生成することを含む。
【0026】
別の態様例において、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の動作方法が提供され、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体は、本明細書に開示される電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の一例であり、方法は、電気合成又は電気エネルギー電池の各積層体において第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加すること又は電気合成又は電気エネルギー電池の各積層体において第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を生成することを含む。
【0027】
別の態様例において、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供され、電気合成又は電気エネルギー電池は、液体電解質を含む槽と、第1のガス拡散電極と、第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、槽内に位置し、液体電解質と液体接触する端部を有する、方法が提供される。方法は、第1のガス拡散電極及び第2の電極に液体電解質を接触させるステップと、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加又は生成するステップとを含む。
【0028】
例示的な実施形態について非限定的な例として、添付図を参照してこれより説明する。種々の実施形態例が、添付図と関連して説明される少なくとも1つの好ましいが非限定的な実施形態の、単なる例として与えられる以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】いずれの電極にも直接接触しない別個の液体槽を有する電気合成又は電気エネルギー電池の断面図を概略形態で示す。
【
図2】槽内の液体が少なくとも1つの電極と直接接触する電気合成又は電気エネルギー電池の一例の概略断面図を示す。
【
図3】槽が多孔性毛細管スペーサに組み込まれる電気合成又は電気エネルギー電池の一例の概略断面図を示す。
【
図4】電気合成又は電気エネルギー電池の一例の電極-スペーサ-電極組立体の中央部の断面の拡大図を概略形態で示す。
【
図5】6M KOH液体電解質が充填された、平均孔径(a)0.45μm、(b)1.2μm、(c)5μm、及び(d)8μmを有するポリエーテルスルホン材料フィルタで構成される多孔性毛細管スペーサの実測流量(黒色ドット)及びモデリングされた流量(中空正方形)のグラフを示す。
【
図7】電気合成又は電気エネルギー電池の一例の実施に使用し得る電極-スペーサ-電極組立体を示す。
【
図8】
図7に示されるタイプの電極-スペーサ-電極組立体を組み込んだ電気合成又は電気エネルギー電池の一例を示す。
【
図9】
図8に示される電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の一例及び使用し得る槽構造を示す。
【
図10】
図8に示される電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の一例及び使用し得る4つの個々の電池の電池積層体において4つの浸透槽を使用する槽構造を示す。
【
図11】(a)ガスハンドリング構造体が酸素生成電極に組み込まれた
図1の構造を有する水電解電池の一実施形態例、(b)上記(a)と同じであるが、酸素生成電極に組み込まれたガスハンドリング構造体がない水電解電池の一実施形態例、(c)(a)及び(b)と同じ電極及び多孔性毛細管スペーサを使用するが、電池は液体電解質で完全に充填され、ガスは液体電解質において気泡の形態で生成された同等の水電解電池、(d)データが公開されている最もエネルギー効率的な市販のアルカリ水電解電池、(d)データが公開されている最もエネルギー効率的な市販のPEM水電解電池の、80℃での分極曲線を示す。
【
図12】電池電圧が、水素の高位発熱量(HHV)による100%エネルギー効率と等しい、80℃で1.47Vに固定された場合の分極曲線(a)で
図11の電池により生成される電流を示す。
【
図13】(a)分極曲線(a)での
図11の酸素電極の電位及び(b)電極の表面に沿った電極の表面までの6M KOH液体電解質の薄膜の毛細管誘導移動を促進する、同じ触媒の薄い親水性層で被膜された酸素電極の同等の電位を示す。
【
図14】気体がない電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図15】液体電解質が気体を介して非干渉気相経路により補充/維持される電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図16】一方の電極の上のヘッドスペースは液体電解質で占められ、他方の電極の上のヘッドスペースはガスで占められる電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図17】一方の電極の上及び他方の電極の上のヘッドスペースがガスで占められる電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図18】液体電解質が気体を介して非干渉気相経路により補充/維持される電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図19】多孔性毛細管スペーサに保持された液体電解質が、気体間のガス交差を阻止する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図20】一方の電極が電極の上部のみ(ヘッドスペース内)で第1の気体と接触し、他方の電極が電極の上部のみ(ヘッドスペース内)で第2の気体と接触する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図21】多孔性毛細管スペーサに保持された液体電解質が第1の気体と第2の気体との間のガス交差を阻止する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示し、一方の電極は電極の上部のみ(ヘッドスペース内)で第1の気体と接触し、他方の電極は、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に第2の気体を形成する)が充填されたガスハンドリング構造体を組み込む。
【
図22】第1の電極は、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に第1の気体を形成する)が充填したガスハンドのリング構造体を組み込む、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図23】一方の電極は電極の上部のみ(ヘッドスペース内)で第1の気体と接触し、他方の電極は、ヘッドスペースと連続するガス(集合的に第2の気体を形成する)で充填されたガス毛細管構造体に隣接する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図24】一方の電極は、ヘッドスペースと連続するガス(集合的に第1の気体を形成する)で充填されたガス毛細管構造体に隣接する電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示し、他方の電極は、ヘッドスペースと連続するガス(集合的に第2の気体を形成する)で充填された別のガス毛細管構造体に隣接する。
【
図25】一方の電極は、電極の上の液体電解質を通してヘッドスペースに延出する、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図26】ガス毛細管又はガスハンドリング構造体が、ヘッドスペースガスと連続するガス(集合的に第1の気体を形成する)で充填され、他方の電極が上部(ヘッドスペース内)でのみ第2の気体と接触する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図27】他方の電極も、他方の電極の上の液体電解質を通してヘッドスペースに延出する、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有する電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示し、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体は、ヘッドスペースガスと連続する(集合的に第2の気体を形成する)ガスで充填される。
【
図28】一方の電極は、液体電解質を通して気泡/ガス容量をリリースする、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有し、他方の電極は、液体電解質を通して気泡ガス容量をリリースする、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図29】一方の電極は、液体電解質を通して気泡/ガス容量をリリースする、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有し、他方の電極は、液体電解質を通して気泡ガス容量をリリースする、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図30】第1の気体は体部導管及び外部ガス貯蔵システムと気体連通し、第2の気体は外部導管及び外部ガス貯蔵システムと気体連通する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図31】ガス毛細管又はガスハンドリング構造体は、外部ガス導管から第1の経路に沿って液体電解質を通して気泡/ガス容量を受け取り、別のガス毛細管又はガスハンドリング構造体は、外部ガス導管から第2の経路に沿って液体電解質を通して気泡/ガス容量を受け取る、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図32】ガス毛細管又はガスハンドリング構造体は、外部ガス導管から第1の経路に沿って液体電解質を通して気泡/ガス容量を受け取り、別のガス毛細管又はガスハンドリング構造体は、外部ガス導管から第2の経路に沿って液体電解質を通して気泡/ガス容量を受け取る、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図33】一方の電極は、外部導管及び外部ガス貯蔵システムと気体連通する第1の気体125を内部に含む、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有し、他方の電極は、外部導管及び外部ガス貯蔵システムと気体連通する第2の気体を内部に含む、取り付けられた又は組み込まれたガス毛細管又はガスハンドリング構造体を有する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図34】電極によるガス生成は、各電極と関連する気体を動的に生成し、各気体は、別個に外部導管及び外部ガス貯蔵システムと気体連通する、電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【
図35】「独立経路電池」に特有の1組の物理的属性の1つ又は複数を示す電気合成又は電気エネルギー電池の更なる一例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好ましい1つ又は複数の実施形態の趣旨のより精密な理解を提供するために、単なる例として与えられる以下の形態、特徴、又は態様について説明する。
【0031】
定義
「槽」とは、液体が保持される装置の一部である。「反応物」とは、電気化学反応中に消費される化学物質である。「産物」とは、電気化学反応中に生成される化学物質である。「液体電解質」とは、電気を通す能力を有する溶液中のイオンを含む液体である。「導管」とは、流体を運ぶためのチャネル、管、チャンバ、又はトラフである。「マニフォルド」とは、流体を運ぶための、複数の開口部を有する1つ若しくは複数のパイプ、1つ若しくは複数の管、1つ若しくは複数のチャンバ、又は1つ若しくは複数のチャネルである。「室温」とは21℃と定義される。
【0032】
「液体-ガス」電池とは、少なくとも1つの液相反応物又は産物及び少なくとも1つの気相反応物又は産物を有する電気化学電池として定義される。
【0033】
「電気エネルギー電池」とは、電池外で使用するために、無期限期間にわたって電力を途切れなく又は連続して生成する電気化学電池である。電気エネルギー電池は、動作中、反応物の外部供給を常に必要とし得る。動作中、電気化学反応の産物もそのような電池から常に除去され得る。電気エネルギー電池は、液体-ガス電池であり得る。電気エネルギー電池の一例は水素-酸素燃料電池である。この例も液体-ガス電池である。
【0034】
「電気合成」電池とは、電池外で使用するために、無期限期間にわたり1つ又は複数の化学物質を途切れなく又は連続して製造する電気化学電池である。化学物質はガス、液体、又は固体の形態であり得る。電気エネルギー電池のように、動作中、電気合成電池も、反応物を常に供給し、産物を常に除去する必要があり得る。電気合成電池は一般に、動作中、電気エネルギーの常時入力を更に必要とし得る。電気合成電池は液体-ガス電池であり得る。電気合成電池の一例は水電解電池である。この例も液体-ガス電池である。
【0035】
電気エネルギー電池及び電気合成電池は、動作するために必要な全ての/幾らかの反応物も動作中に生成する全て/幾らかの産物も電池本体内に組み込まないという点で、バッテリ、センサ等の他のタイプの電気化学電池と異なる。代わりにこれらは、動作中、常に電池に運び込まれ、又は電池外に除去することができる。例えば、電気エネルギー電池は、ガルバニ電池は反応物及び産物を電池本体内に貯蔵するという点でガルバニ電池から区別される。バッテリと異なり、電気エネルギー電池は、化学エネルギー又は電気エネルギーを内部に貯蔵しない。同様に、幾つかの電気化学センサは、検知動作中、限られた量で反応物を消費し、産物を生成するが、これらの全て/幾つかは電池本体自体内に貯蔵される。
【0036】
「ゼロギャップ」電気化学電池とは、電極と電極間スペーサとの間にギャップがない電池である。即ち、「ゼロギャップ」電池では、電極は電極間スペーサの両面に密に狭設され、又は両面に当接する。
【0037】
「多孔性材料」とは、固体の構造を構成する原子又は分子の主骨格によって占められないオープンスペース(「間隙」スペース)を含む固体材料である。
【0038】
多孔性材料の「多孔性」とは、間隙スペースの容積を多孔性材料の総体積で除した、パーセントとして表される比率として定義される。
【0039】
「毛細管」又は「孔」とは、液体又はガスが通過し得る多孔性材料内の微細構造である。
【0040】
多孔性材料内の孔の「孔径」とは、孔の理想的な直径である。
【0041】
多孔性材料内の孔の「平均孔径」とは、ガスポロメータを使用して型どおりに測定される、多孔性材料に存在する孔の理想的な平均直径である。
【0042】
「毛細管作用」は、重力のような外力の助けなしで又は外力に逆らって狭いスペースに液体が引き込まれ、保持され、その狭いスペースを流れるように誘導されることに関わる。図面において、絵筆の毛間、細い管、又は紙若しくは漆喰のような多孔性材料に液体が吸い上げられて保持されるのを見て取ることができる。そのような毛細管誘導作用は典型的には、液体と周囲の固体表面との間の分子間力によって駆動される。多孔性材料内で、表面張力(液体内の凝集によって生み出される)と液体と容器壁との間の引力との組合せにより、毛細管作用が生じる。引き上げられると、液体は典型的には、最大カラム高さ(maximum column height)として知られる上昇高さまで無期限に保持され得る。
【0043】
毛細管圧とは、毛細管作用を全体的に対抗するために印加する必要がある外圧である。即ち、毛細管作用によって引き上げられた液体にかかる場合、液体を、仮に毛細管作用が生じなかった場合に占めたであろう場所まで戻す圧力である。毛細管圧は、そのような液体を、毛細管作用を及ぼす材料の孔又は毛細管内に保持させる圧力として見なすこともできる。
【0044】
液体を含む多孔性材料の「毛細管圧」は、ガスポロメータを使用して測定される、多孔性材料内の平均直径毛細管から液体を押し出すのに必要なガス圧として定義される。
【0045】
液体を含む多孔性材料の「泡立ち点」は、ガスポロメータを使用して測定される、多孔性材料内の最大毛細管から液体を押し出すのに必要なガス圧として定義される。
【0046】
実施形態例の「多孔性毛細管スペーサ」とは、毛細管作用を使用して、液体電解質を多孔性毛細管スペーサ自体に引き込み、カラム高さの液体電解質を維持する多孔性材料であり、カラム高さを形成する液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの容積内に閉じ込められ、毛細管圧を示す。「多孔性毛細管スペーサ」は代替的には、「多孔性スペーサ」、「多孔性電極スペーサ」、「多孔性毛細管電極スペーサ」、「流路を有する多孔性スペーサ」、「流路を有する多孔性電極スペーサ」、「多孔性毛細管セパレータ」、「多孔性セパレータ」、「多孔性電極セパレータ」、「多孔性毛細管電極セパレータ」、「流路を有する多孔性セパレータ」、又は「流路を有する多孔性電極セパレータ」として記述することができることを理解されたい。
【0047】
「カラム高さ」は、一実施形態例の電池の動作中を含め、毛細管作用による多孔性毛細管スペーサ内に閉じ込められる液体のカラムの「高さ」として定義される。「高さ」という用語は、多孔性毛細管スペーサが浸される液体槽の表面よりも上の高さとして定義される。多孔性毛細管スペーサが液体槽に浸されない場合、これは多孔性毛細管スペーサの底端部(先端部)よりも上の高さとして定義される。
【0048】
「最大カラム高さ」は、多孔性毛細管スペーサ自体が仮説的に無限の高さを有する場合、毛細管作用により多孔性毛細管スペーサ内に維持することができる液体のカラムの最高「高さ」として定義される。「高さ」という用語は、多孔性毛細管スペーサが浸される液体槽の表面よりも上の高さとして定義される。多孔性毛細管スペーサが液体槽に浸されない場合、多孔性毛細管スペーサの底端部(先端部)よりも上の高さとして定義される。
【0049】
多孔性毛細管材料内の液体の実際の「カラム高さ」は、一実施形態例の電池の上部に達する多孔性毛細管スペーサの高さによって制限され得ることに留意されたい。即ち、「カラム高さ」は、多孔性毛細管材料自体が、「最大カラム高さ」未満の高さを有する場合、「最大カラム高さ」未満であり得る。一実施形態例の電池では、「最大カラム高さ」が電池の高さを越えることが重要であり得る。これは、多孔性毛細管スペーサが電池内の全てのポイントにおいて液体で完全に充填されることを保証するために必要であり得る。そしてこれは、その場合にガス交差を防止するために必要であり得る(「ガス交差」についての以下の定義参照)。
【0050】
「流量」は、毛細管のみの影響下で、液体が完全に染み込んだ多孔性毛細管スペーサの1cm幅条片を流れる単位時間当たりの液体の質量として定義される。重力により、「流量」は典型的には、多孔性毛細管スペーサの高さが増すにつれて低下する。特定の「高さ」での「流量」は、
図5の実測データを収集するために採用される技法を使用して測定される、多孔性毛細管スペーサが浸された液体槽の表面よりも上の高さにおける流量として定義される。多孔性毛細管スペーサが液体槽に浸されない場合、多孔性毛細管スペーサの底端部(先端部)よりも上の高さにおける「流量」として定義される。
【0051】
「拡散」とは、高濃度領域から低濃度領域への、両領域での濃度を等化する傾向を伴った液相又は気相分子の自発的な正味移動である。
【0052】
「浸透」とは、典型的には溶質自体が逆方向に移動することがそれ程自由ではない状況下(例えば2つの領域間に、溶質を透過しない又は透過性が不十分な膜がある場合)での低溶質濃度領域から高溶質濃度領域への水分子の自発的な移動である。
【0053】
電気化学電池は、反応物の供給率及び/又は電極における反応ゾーンからの産物の除去率が本質的に、電気化学反応速度に従って又はそれに応答してそれ自体を調整する場合、「自己調整」している。即ち、電気化学反応速度が速いほど、自発的に、高速の反応物供給及び産物除去に繋がり、一方、電気化学反応速度が遅いほど、反応ゾーンへの反応物の供給及び反応ゾーンからの産物の除去は遅くなる。
【0054】
「多相逆流」という用語は、物質の一相(例えば液体)を有する化学種が、物質の異なる相(例えばガス)を有する別の化学種の移動(流れ)と逆行する又は逆の方向及び場所に移動する(流れる)電気化学電池内部の分子レベルの流れを指す。互いに干渉して互いを妨げるに当たり、そのような相殺多相流は、克服するのにエネルギーを要する非効率性を生じさせる恐れがある。
【0055】
「独立経路電池」は、電池内の個々の各液相及び気相反応物及び産物の移動(流れ)とは別個であり、それから独立した少なくとも1つの経路であって、そのような経路は互いと干渉せず、又は互いを妨げない、少なくとも1つの経路を提供するガス-液体電気化学電池として定義される。
【0056】
「電極圧縮」又は「電極圧」とは、本明細書では、2つの電極を、介在する多孔性毛細管スペーサの両側に対して圧縮する圧力を指す。そのような圧縮は、電池若しくは電池積層体を圧縮するタイロッド上のばね若しくはワッシャにより又は電池内に取り付けられたばねにより送達し得る。
【0057】
「ガス毛細管構造体」とは、毛細管効果を採用して、ガスを液体から自発的に引き込み、ガス摂取に関連する測定可能な毛細管圧を示す構造体である。本明細書では、ガス毛細管構造体内の毛細管圧は、繰り返しの測定及び計算が10ミリバール超の毛細管圧を再現可能に生成する場合、「測定可能」として定義される。
【0058】
「ガスハンドリング構造体」は、ガス毛細管効果を必ずしも利用することなくガスの移動を促進する物理的性質を有する構造体である。
【0059】
ガス拡散層及び多孔性輸送層とは、電子工学の他の分野で使用されることがある用語である。「ガス拡散層」、「多孔性輸送層」、及び/又はそのようなタイプの構造体が、液体からガスを自発的に引き込み、ガス摂取と関連する測定可能な毛細管圧を示す場合、「ガス毛細管構造体」であり得ることを理解されたい。液体からガスを自発的に引き込まず、ガス摂取と関連する測定可能な毛細管圧を示さないが、電極へ又は電極からのガス移動/輸送を助ける場合、それらは「ガスハンドリング構造体」である。
【0060】
本明細書では、電極は、動作中、人間の眼を使用してその表面の少なくとも一部での泡の形成を識別することができない場合、「無泡」であると定義される。
【0061】
電気合成電池の「エネルギー効率」は、本明細書では、パーセントとして表される、化学製品の単一単位の出力内に存在する正味エネルギーを、化学製品のそれと同じ単位出力を生成するために電池が消費する正味エネルギーで除したものとして定義される。本明細書では、電気エネルギー電池の「エネルギー効率」は、パーセントとして表される、単位時間当たりで電池により生成されるエネルギーを、単位時間当たりで電池により生成し得る理論上の最大エネルギーで除したものとして定義される。
【0062】
「ガス交差」とは、液体電解質を含む多孔性毛細管スペーサの第1の側の第1の気体の一部が、多孔性毛細管スペーサの逆側の第2の気体に、多孔性毛細管スペーサを通って移行する現象である。「ベンチマークガス交差」は、パーセントとして表される、電池が室温及び大気圧で一定の150mA/cm2で動作する条件下で30分後の第2の気体中に存在する第1のガスの容量を第2の気体の容量で除したものとして定義される。
【0063】
好ましい実施形態の電気合成又は電気エネルギー電池
いずれの電極とも接触しない別個の層を有する電池の例
図1は、好ましい実施形態の電気合成又は電気エネルギー電池10の構造を概略的に示す。好ましくは、電池10はゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池である。好ましくは、電池10は、液体電解質を含むための槽140と、槽の外部に位置する第1のガス拡散電極120と、槽の外部に位置する第2の電極130と、第1のガス拡散電極120と第2の電極130との間に位置する多孔性毛細管スペーサ110であって、槽内に延出する端部を有する、多孔性毛細管スペーサ110とを有し、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサ150の端部が槽140内の液体電解質100と液体接触する場合、液体電解質100でそれ自体を充填することが可能である。第1の電極120、多孔性毛細管スペーサ110、及び第2の電極130の組立体は、電池10の「電極-スペーサ-電極」組立体139を構成する。
【0064】
多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用を使用して、それ自体内に液体電解質を引き込み、カラム高さの液体電解質を維持することが可能な多孔性材料を含み、カラム高さを形成する液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの容積内に閉じ込められ、毛細管圧を示す。「多孔性毛細管スペーサ」が代替的には、「多孔性スペーサ」、「多孔性電極スペーサ」、「多孔性毛細管電極スペーサ」、「流路を有する多孔性スペーサ」、「流路を有する多孔性電極スペーサ」、「多孔性毛細管セパレータ」、「多孔性セパレータ」、「多孔性電極セパレータ」、「多孔性毛細管電極セパレータ」、「流路を有する多孔性セパレータ」、又は「流路を有する多孔性電極セパレータ」と記述することができることを理解されたい。
【0065】
好ましくは、多孔性毛細管スペーサの端部は槽内に位置する。好ましくは、液体電解質100を含むか、又は含むことができる槽140が提供され、電解質が充填された多孔性毛細管スペーサ110の端部150、例えば先端部(又は同等に端部部分又は先端部分)は、液体電解質100を含み得る槽140内に位置し、即ち槽140内に浸される。好ましくは、槽は液体電解質で充填されるように構成され、多孔性毛細管スペーサの端部は液体電解質と接触するように構成される。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により多孔性毛細管スペーサに液体電解質を引き込み、カラム高さの液体電解質を維持する。好ましくは、液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも第1のガス拡散電極の高さに等しく、又はそれよりも高い。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、少なくとも毛細管作用により、多孔性毛細管スペーサに沿って液体電解質を輸送するように構成される。好ましくは、電池は、少なくとも毛細管作用により、槽からの液体電解質で多孔性毛細管スペーサを充填することを含むように構成される。任意選択的に、電池は、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内に位置する前、液体電解質で多孔性毛細管スペーサを充填することを含むように構成される。
【0066】
好ましくは、電池10は、槽140が液体電解質を含む場合、第1のガス拡散電極120が槽140内の液体電解質100から隔てられるように構成し得る。好ましくは、電池10は、槽140が液体電解質100を含む場合、第2の電極130が槽140内の液体電解質100から隔てられるように更に構成し得る。好ましくは、第1のガス拡散電極120及び第2の電極130は槽140から離間される。即ち、好ましくは、槽140内に含まれる液体電解質100は、第1の電極120又は第2の電極130のいずれとも直接接触しなくてよい。好ましくは、多孔性毛細管スペーサ110と第1のガス拡散電極120との間の直接接触エリアは、槽140の外部であり、多孔性毛細管スペーサ110と第2の電極130との間の直接接触エリアは、槽140の外部である。好ましくは、電池は、液体電解質が多孔性毛細管スペーサに沿って輸送された後、液体電解質との第1のガス拡散電極及び第2の電極の接触を含む。
【0067】
任意選択的にはあるが好ましくは、多孔性毛細管スペーサ110の端部150は、第1の電極120及び第2の電極130を越えて延出する。この例では、多孔性毛細管スペーサ110の端部150は、第1の電極120の端部(例えば第1の電極120の先端部)及び第2の電極130の端部(例えば第2の電極130の先端部)を越えて長さ方向に沿って延出し得、それにより、多孔性毛細管スペーサ110の端部150は、槽140内の液体電解質100中に延出する。槽140は、液体電解質100を含むのに適した本体のキャビティ、チャンバ、タンク、筐体、パイプ、導管等であることができる。1つ又は複数の槽を使用することができ、一例では、1つ又は複数の槽が液体電解質を同じ多孔性毛細管スペーサに供給することができる。
【0068】
好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、第1のガス拡散電極、第2の電極、及び槽の間に流路を提供する複数の孔を有する。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは槽に流体接続される。好ましくは、動作中、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填されたままである。
【0069】
任意選択的に、多孔性毛細管スペーサ110は、多孔性毛細管スペーサ110の端部150が槽140内に延出する前、液体電解質100で充填される。好ましくは、電池は、動作中、まず槽140から多孔性毛細管スペーサ110に沿って輸送された後でのみ、第1のガス拡散電極120及び第2の電極130と接触するように構成される。好ましくは、電池は、動作中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質によって覆われる表面積が、少なくとも、多孔性毛細管スペーサに面する第1のガス拡散電極の表面積に等しく、又はそれよりも大きいように構成される。好ましくは、第1のガス拡散電極は、第1の気体を形成する第1のガスを生成するように構成され、多孔性毛細管スペーサの第1の側面は第1のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、多孔性毛細管スペーサの第2の側面は第2の電極の第1の側面に隣接し、第1のガス拡散電極の第2の側面は第1の気体に隣接する。
【0070】
電池、例えば電池10の動作中、分子レベルで、電気化学反応によって生成又は消費される液相材料は自発的に、槽に又は槽から電極間スペーサの長さに沿って電極間スペーサ内部の液体電解質中で電極の反応ゾーンへ又は反応ゾーンから移行する。即ち、液相反応物又は産物は、槽へ又は槽から電極間スペーサの長さに沿って液体電解質中を「面内」移行する。液相材料は、毛細管、拡散、及び/又は浸透制御下でそれを行い、液体電解質に存在する濃度差により「自己調整」される。これらの自己調整移行の結果として、新鮮な液相反応物を槽に追加することにより液相反応物を電池に補充し得、槽から液相産物を除去することにより液相産物を電池から除去し得る。好ましくは、電池は、動作中、電池における電気化学反応の液相反応物又は産物が、多孔性毛細管スペーサ内部の液体電解質内の液相経路を辿るように構成される。好ましくは、電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により多孔性毛細管スペーサに沿って液体電解質を輸送するように構成される。好ましくは、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の制御下にある。好ましくは、電池は、動作中、電池が、多孔性毛細管スペーサ内で生じる毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により自己調整されるように構成される。好ましくは、電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整される。好ましくは、交差平面軸からの液相材料の移動は、槽内の液体電解質の組成によって自己調整される。好ましくは、液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、
(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、
(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する
ように、多孔性毛細管スペーサ内で作用する。
【0071】
電池10は任意選択的に、液体不透過且つガス不透過の外部筐体151で包まれ得る。外部筐体151は、槽140の1つの入口/出口又は別個の入口及び出口(図示せず)を形成する液体導管152、又は1つ若しくは複数の液体導管(即ち、外部筐体151は少なくとも1つの外部液体導管152を提供する)を組み込み、補充又は余剰液相反応物及び/又は産物及び/又は液体電解質100の電池外部からの進入又は退出を可能にし得る。即ち、液体電解質は、反応の関連する液相反応物及び/又は産物と共に、少なくとも1つの外部液体導管152を介して槽140内又は外に輸送される。液体導管152は、補充又は余剰液相反応物及び/又は産物又は液体電解質100を含み得る液体貯蔵システム153、好ましくは外部液体貯蔵システム153と直接接続し得、又は直接若しくは間接的に流通し得る。即ち、少なくとも1つの外部液体導管152は、液体電解質100及び/又は液相反応物又は産物を外部で貯蔵/供給/除去するために、外部液体貯蔵システム153と直接又は間接的に流通する。好ましくは、電池は、電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供する。好ましくは、電池は電池の外部筐体を含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供し、液体電解質は、少なくとも1つの外部液体導管を介して槽内又は槽外に輸送される。好ましくは、電池は、動作中、液体電解電池内の電気化学反応の液相反応物、及び/又は産物が少なくとも1つの外部液体導管を介して電池内又は外に輸送されるように構成され、少なくとも1つの外部液体導管は外部液体貯蔵システムと流通する。
【0072】
槽140は開口部145を更に含み得、多孔性毛細管スペーサ110は開口部145を通る。開口部145はスリット、ギャップ、オリフィス等であることができる。槽140は、一緒に当接して槽140を形成する、異なる本体における2つのキャビティ等の2つの半体で形成することができ、各本体は溝又は切り欠きを含み、多孔性毛細管スペーサ110はそこを通り、槽140内の液体電解質100と液体接触することができる。槽140の筐体又は壁は、槽140内の液体電解質100が第1の電極120又は第2の電極130と直接接触しないようにする。したがって、上述したように、液体電解質100は、液体電解質100がまず、多孔性毛細管スペーサ110に沿って槽140から輸送された後でしか、第1の電極120及び第2の電極130に接触できない。多孔性毛細管スペーサ110と第1の電極120との間の直接接触エリアは、槽140の外部であり得る。同様に、多孔性毛細管スペーサ110と第2の電極130との間の直接接触エリアは、槽140の外部であり得る。一態様では、第1の電極120及び第2の電極130は、槽140から離間される。一態様では、第1の電極120及び第2の電極130は、槽140から物理的に分離される。一態様では、第1の電極120及び第2の電極130は、槽140から離れて位置する。一態様では、第1の電極120及び第2の電極130は、は、槽140の完全に外部に位置する。
【0073】
一例では、追加のバリア層155を任意選択的に提供して、層140内の液体電解質100が第1の電極120及び第2の電極130に直接接触しないようにするのを助けることができる。バリア層155は、多孔性毛細管スペーサ110が通るギャップ又は開口部145を含む。バリア層155は、層140の一部として一体化されてもよく、又は別個の分離層として提供することもできる。バリア層155は、液体電解質100を透過しない材料で形成し得る。好ましくは、層は、多孔性毛細管スペーサが通る開口部を含む。
【0074】
(i)単一の開口部、スリット、ギャップ、又はオリフィス145等及び/又は(ii)多孔性毛細管スペーサ110で完全に充填された単一の開口部のみを含む追加のバリア層155が存在する結果として、電池は配向効果の影響を受けず、又は部分的に受けなくてよい。即ち、電極の最近傍の槽の端部に1つのみの開口部があり、その開口部が多孔性毛細管スペーサ110で充填され、槽の大半が液体電解質100で充填される場合、例えば槽が電池の上部にある状態を含め、任意の向きで電池を首尾良く動作させることが可能であり得る。
【0075】
任意選択的に、第2の電極は第2のガス拡散電極である。好ましくは、第2のガス拡散電極は、第2の気体を形成する第2のガスを生成するように構成され、第2のガス拡散電極の第2の側面は、第2の気体に隣接する。好ましくは、第2の電極は、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と直接接触するように構成される。したがって、第1の電極120及び第2の電極130の両方がガス拡散電極である事例では、2つの気体である、第1のガス(第1の電極120と関連する)を含む第1の気体125及び第2のガス(第2の電極130と関連する)を含む第2の気体135は好ましくは、電解質充填された多孔性毛細管スペーサ110の反対側に存在する。多孔性毛細管スペーサ110の第1の側面は、第1の電極120の第1の側面に隣接する。多孔性毛細管スペーサ110の第2の側面は、第2の電極130の第1の側面に隣接する。第1の電極120の第2の側面は第1の気体125に隣接する。第2の電極130の第2の側面は第2の気体135に隣接する。好ましくは、電池は、動作中、第1のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部が第1の気体と直接気相接触し、第2のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部が第2の気体と直接気相接触するように構成される。即ち、第1の電極120の第2の側面の少なくとも一部は、第1の気体125と直接気相接触する。第2の電極130の第2の側面の少なくとも一部は、第2の気体135と直接気相接触する。
【0076】
分子レベルで、電気化学反応により生成又は消費される気相材料は、液相経路とは別個であり、液相経路に干渉しない連続気相経路に沿って液相材料に対して直交(90°)方向に移行する。即ち、ガス分子又は原子は、ガス拡散電極及び電極間スペーサへ/から、即ち電極間スペーサ内部又は周囲の反応ゾーン内又は外への関連するインタフェースを通して各巨視的気体へ/から移行する。これらのインタフェースは、ガス移行速度を変更するように更に設計し得る(例えばガス毛細管又はガスハンドリング構造体を組み込むことにより)。そのような移行は好ましくは、各電極を各気体に接続する連続気相経路に沿って毛細管及び/又は拡散制御下で生じる。このため、気相材料(反応物又は産物)も自己調整を示す。各気体の移行経路は他のガスの移行経路又は液体移行経路と重ならず、又は干渉しないため、ガス移動は、液体移動の自己調整とは別に、独立して自己調整される。即ち、異なる気相及び液相反応物又は産物は各々、他の反応物又は産物の移動と干渉しないそれ自体の自己調整を受ける。
【0077】
好ましくは、ガス毛細管構造体は、気相毛細管の影響下で交差平面軸内又は外へのガスの移行を促進する。ガス毛細管構造体の例には、限定ではなく、
i.多孔性脱気板、
ii.多孔性疎水性膜、及び/又は
iii.液体からガスを自発的に引き込み、ガス摂取と関連する測定可能な毛細管圧を示す多孔性又は狭孔性疎水性構造体及び/又は他のガス毛細管構造体
がある。
【0078】
好ましくは、ガスハンドリング構造体は、交差平面軸内又は外へのガスの移行を促進する。ガスハンドリング構造体の例には、限定ではなく、
(a)低表面エネルギーを有する表面領域を有するもの等、例えば、測定可能な毛細管圧を有するガス毛細管効果が関わらずに、ガスの移動を促進又は加速させる
1.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化ポリマー、Nafion(登録商標)等のような低表面エネルギーを有する材料若しくは
2.ナノスケール超疎水性構造体等、低い表面エネルギーを有する表面構造体
を含むか、若しくは構成するもの等のガスが選択的に合体し移行する傾向がある材料若しくは構造体又は
(b)超親水性若しくは「超濡れ性」材料若しくは構造体等の合体ガスの脱離を促進する超嫌気性表面領域を有する材料若しくは構造体
がある。
【0079】
好ましくは、そのようなガス毛細管構造体又はガスハンドリング構造体内に存在する気体は、第1の気体又は第2の気体等の隣接する気体と連続し、又は連続することになる。任意選択的に、そのようなガスハンドリング構造体内に存在する気体は独立して、外部ガス導管及び/又は及び外部ガス貯蔵システムと気体連通する。
【0080】
好ましくは、電池は、少なくとも部分的に第1のガス拡散電極の第2の側面内又は第2の側面に位置するガス毛細管構造体を含む。好ましくは、電池は、少なくとも部分的に第1のガス拡散電極の第2の側面内又は第2の側面に位置するガスハンドリング構造体を含む。好ましくは、電池は、少なくとも部分的に第2のガス拡散電極の第2の側面内又は第2の側面に位置するガス毛細管構造体を含む。好ましくは、電池は、少なくとも部分的に第2のガス拡散電極の第2の側面内又は第2の側面に位置する第2のガスハンドリング構造体を含む。好ましくは、電池は、第1のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、第1のガス拡散電極内、第1のガス拡散電極又はその近傍、及び/又は第1のガス拡散電極の一部に位置するガスハンドリング構造体を含む。好ましくは、電池は、第2のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、第2のガス拡散電極内、第2のガス拡散電極又はその近傍、及び/又は第2のガス拡散電極の一部に位置する第2のガスハンドリング構造体を含む。
【0081】
好ましくは、電池は、動作中、第1の気体の第1のガスが第1のガス拡散電極への第1の気相経路を辿るように構成され、第1の気相経路は液相経路とは別個である。好ましくは、電池は、動作中、第2の気体の第2のガスが第2のガス拡散電極への第2の気相経路を辿るように構成され、第2の気相経路は液相経路とは別個である。好ましくは、交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられる。好ましくは、電池は、動作中、連続気相経路が交差平面軸における第1のガス拡散電極の活性面と第1の気体との間に存在するように構成され、それにより、第1のガスの目に見える気泡が第1のガス拡散電極の活性面の少なくとも一部で生成されない。好ましくは、電池は、動作中、気泡が第1のガス拡散電極の少なくとも一部又は第2のガス拡散電極の少なくとも一部で見えないように構成される。好ましくは、電池は、動作中、第1のガス拡散電極が、0.125mm厚未満、好ましくは0.11mm厚未満、より好ましくは0.10mm厚未満の液体電解質の薄膜で覆われるように構成される。好ましくは、電池は、動作中、連続気相経路が交差平面における第2のガス拡散電極の活性面と第2の気体との間に存在するように構成され、それにより、第2のガスの目に見える気泡が第2のガス拡散電極の活性面の少なくとも一部で生成されない。電池は、動作中、第2のガス拡散電極が、0.125mm厚未満、好ましくは0.11mm厚未満、より好ましくは0.10mm厚未満の液体電解質の薄膜で覆われるように構成される。
【0082】
したがって、第1のガス(第1の電極120と関連する)は、第1の電極120で消費される反応物又は第1の電極120により生成される産物であり得る。電池の動作中、第1の気体125は第1のガスで補充される必要があり(反応物の場合)、又は第1のガスを第1の気体125から除去する必要がある(産物の場合)。第2のガス(第2の電極130と関連する)は、第2の電極130で消費される反応物又は第2の電極130により生成される産物であり得る。電池の動作中、第2の気体135は第2のガスで補充される必要があり(反応物の場合)、又は第2のガスを第2の気体135から除去する必要がある(産物の場合)。
【0083】
第1の気体125内の第1のガスは、種々の例において、少なくとも1つの外部第1ガス導管127に接続され且つ気体連通し、その内部に含まれるか、又はその内若しくは外に輸送することができ、外部第1ガス導管127は、外部筐体151を通る1つ又は複数のパイプ、1つ又は複数の導管、共通ガスマニフォルド、チャンバ等であり得る。第2の気体135内の第2のガスは、種々の例において、少なくとも1つの外部第2ガス導管137に接続され且つ気体連通し、その内部に含まれるか、又はその内若しくは外に輸送することができ、外部第2ガス導管137は、外部筐体151を通る1つ又は複数のパイプ、1つ又は複数の導管、共通ガスマニフォルド、チャンバ等であり得る。少なくとも1つの外部第1ガス導管127及び/又は少なくとも1つの外部第2ガス導管137は、少なくとも1つの外部液体導管152に加えて提供することができ、又は少なくとも1つの外部液体導管152なしで提供することができ、又は電池10に含まれず、電池10は少なくとも1つの外部液体導管152のみを含んでもよい。外部第1ガス導管127は、第1のガス貯蔵システム128、好ましくは外部第1ガス貯蔵システム128に接続され、又は気体連通し得る。外部第2ガス導管137は、第2のガス貯蔵システム138、好ましくは外部第2ガス貯蔵システム138に接続され、又は気体連通し得る。外部第1ガス貯蔵システム128及び外部第1ガス導管127、即ち関連するパイプ、導管、マニフォルド、チャンバは、第1の気体125内の第1のガスを第1の電極120に隣接する領域に供給又は該領域から除去できるようにし得る。外部第2ガス貯蔵システム138及び外部第2ガス導管137、即ち関連するパイプ、導管、マニフォルド、チャンバは、第2の気体135内の第2のガスを第2の電極130に隣接する領域に供給又は該領域から除去できるようにし得る。即ち、外部筐体151は少なくとも1つの外部第1ガス導管127を提供し得、且つ/又は外部筐体151は少なくとも1つの外部第2ガス導管137を提供し得る。第1のガス(存在する場合)は、少なくとも1つの外部第1ガス導管127を介して第1の気体125内又は外に輸送し得、且つ/又は第2のガス(存在する場合)は、少なくとも1つの外部第2ガス導管137を介して第2の気体135内又は外に輸送し得る。換言すれば、少なくとも1つの外部第1ガス導管127は、第1のガスを外部貯蔵するために、外部第1ガス貯蔵システム128と気体連通し、且つ/又は少なくとも1つの外部第2ガス導管137は、第2のガスを外部貯蔵するために、外部第2ガス貯蔵システム138と気体連通する。
【0084】
一般に、別個の供給システム及び別個の除去システムが電池10に外部接続されて、動作中、独立して各反応物を電池に供給し、電池10から各産物を除去する。そのような各システムは好ましくは、電池内の別個の気体若しくは液体槽に反応物を供給し、又は別個の気体若しくは液体槽から産物を除去し、そして気体若しくは液体槽は、電池内の関連する電極に反応物を供給し、又は関連する電極から産物を除去する。
【0085】
好ましくは、電池は外部筐体を含み、外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供し、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される。好ましくは、外部筐体は、第1の気体と気体連通する少なくとも1つの外部ガス導管を提供する。好ましくは、少なくとも1つの外部第1ガス導管は、外部第1ガス貯蔵システムと気体連通する。好ましくは、外部筐体は、少なくとも1つの外部第1ガス導管を更に提供し、動作中、第1のガスが少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送されるように構成される。好ましくは、電池の外部筐体が更に含まれ、外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供し、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される。したがって、例えば、外部第1反応物源(即ち電池10の外部)が、1つ又は複数の第1の反応物パイプ又は導管を介して第1の電極120に第1の反応物を供給する。任意選択的に、外部筐体は、少なくとも1つの外部第2ガス導管を更に提供し、動作中、第2のガスが少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送されるように構成される。好ましくは、少なくとも1つの外部第2ガス導管は、外部第2ガス貯蔵システムと気体連通する。好ましくは、少なくとも1つの外部第2ガス導管を提供する外部筐体が更に含まれ、第2のガスは、少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送される。任意選択的に、外部第2反応物源が、1つ又は複数の第2の反応物パイプ又は導管を介して第1の電極120又は第2の電極130に第2の反応物を供給する。更に、任意選択的に、外部の更なる反応物源が、1つ又は複数の更なる反応物パイプ又は導管を介して更なる反応物を第1の電極120又は第2の電極130に供給する。更に、例えば、外部第1産物槽又は貯蔵器(電池10の外部)が、1つ又は複数の第1の産物パイプ又は導管を介して第1の電極120で生成された第1の産物を受け取る。任意選択的に、外部第2産物槽又は貯蔵器が、1つ又は複数の第2の産物パイプ又は導管を介して第1の電極120又は第2の電極130で生成された第2の産物を受け取る。更に、任意選択的に、外部の更なる産物槽又は貯蔵器が、1つ又は複数の更なる産物パイプ又は導管を介して第1の電極120又は第2の電極130で生成された更なる産物を受け取る。
【0086】
好ましくは、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100及び液体電解質100が多孔性毛細管スペーサ110内に保持する毛細管圧は、第1の気体125と第2の気体135を分離し、第1の気体125及び第2の気体135が互いに物理的に接触しないようにし、又は少なくとも、各々が他方を汚染する程度を最小に抑える。一例では、多孔性毛細管スペーサ110は、多孔性毛細管スペーサの端部150が槽140内に位置する前、液体電解質110で充填される。別の例では、液体電解質100は、まず多孔性毛細管スペーサ110に沿って槽140から輸送された後、第1の電極120及び第2の電極130に接触する。好ましくは、電池10の動作中、第1の電極120の全てに隣接する多孔性毛細管スペーサ110の少なくとも部分及び第2の電極130の全てに隣接する多孔性毛細管スペーサ110の少なくとも部分は、液体電解質100で充填されたままである。好ましくは、多孔性毛細管スペーサが液体電解質で充填される場合、多孔性毛細管スペーサは、第1の気体が第2の気体と混合するのを阻止又は妨げるように構成され、ベンチマークガス交差を2%未満に維持する。
【0087】
2つの気体125及び135の圧力並びに液体電解質100の圧力を等化するか、又は可能な限り同等に近い状態を維持するために、パイプ、導管、ウェル、又はチャンバ149は、槽140の上部に組み込まれ得る。そのようなパイプ、導管、ウェル、又はチャンバ149は、各気体125及び135と槽140内の液体電解質との間に直接インタフェースを提供し得、それにより、それらの圧力が等しいことを保証する。好ましくは、パイプ、導管、ウェル、又はチャンバ149は、槽の上部から上向きに幾らか、気体125及び135内に延出する。これは、遷移圧差により槽から一時的に変位した液体電解質が、気体125及び135によって占められるガスチャンバ内に溢れる尤度を最小に抑える。更に、幾らかの液体電解質がガスチャンバ内に溢れた場合、物理的に切断され、残りの槽内の液体電解質から分離されることになる。
【0088】
排他的ではないが好ましくは、電池は、動作中、第1の気体が3バールゲージ超、好ましくは4バールゲージ超、より好ましくは5バールゲージ超の圧力を有するように構成される。排他的ではないが好ましくは、電池は、動作中、第2の気体が3バールゲージ超の圧力を有するように構成される。
【0089】
第1の電極120及び第2の電極130の一方のみがガス拡散電極である事例では、第1の気体125(第1の電極120がGDEである場合)及び第2の気体135(第2の電極130がGDEである場合)である1つのみの気体が存在し得る。
【0090】
第1の電極120及び第2の電極130は、第1の電気接続160及び第2の電気接続170により外部電気回路180にそれぞれ接続される。第1の電気接続160、第2の電気接続170、又は外部電気回路180自体は、好ましくは、その気体不透過性及び液体不透過性を損なわずに外部筐体151に貫入する。外部電気回路180は電気エネルギーを電池10に供給し得る(例えば電気合成電池の場合)。代替的には、電池10により生成された電気エネルギーを外部電気回路180に供給し得る(例えば電気エネルギー電池の場合)。
【0091】
例えば、外部回路は、動作に当たり、電圧を第1の電極と第2の電極との間に印加する電源を含み得る。電源の多くの例が市販されており、それらの全てが、各々が第1の電極及び第2の電極に別個に接続することができる2つの端子を軽油して電圧を印加するのに使用し得る。別の例では、外部回路は、例えば電気エネルギー電池の電極に取り付けられた場合、受け取った電量を調整し、外部電圧を生成するDC/AC変換器等の受電及び変調デバイスを含み得る。受電デバイスの多くの例が市販されており、それらの全てが、それらの端子が電気エネルギー電池の第1の電極及び第2の電極に別個に接続された場合、外部電圧を生成するのに使用し得る。様々な電圧、例えば0.5V超、2V超、5V超、10V超、20V超、50V超、100V超、250V超、500V超、1000V超、5000V超、又は10,000V超をそれらの電源により印加し得、又はそのような受電デバイスにより受けとられ得る。
【0092】
好ましくは、外部回路は、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加又は生成することが可能な電源又は受電デバイスを含む。
【0093】
更なる実施形態例は、電極間スペーサとして薄い多孔性毛細管スペーサ110(0.45mm厚未満)を採用した電気合成電池又は電気エネルギー電池を包含する。好ましくは、電池はゼロギャップ電池であり、それにより、多孔性毛細管スペーサは0.45mm厚未満、好ましくは0.30mm厚未満、より好ましくは0.13mm厚未満である。そのような薄い多孔性毛細管スペーサ110の非限定的な例は、Pall Corporationにより供給される平均孔径8μmを有する薄い多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタである。薄い多孔性材料は、毛細管交換を利用して、液体電解質を電極間スペーサに引き込み保持する。2つの電極は、電極間スペーサの両側に狭設される。電極の少なくとも一方又は両方は、ガスに対して多孔性であり得、即ち、ガス拡散電極であり得る。電極間スペーサの底端部は、任意選択的に、電極から離れ得る液体電解質槽に浸さすことができ、又は槽は2つの電極のいずれか若しくは両方と接触し得、又は槽は全体的に多孔性毛細管スペーサ内に組み込まれ得る。2つの電極が両方ともガス拡散電極である場合、ガス拡散電極は、電極-スペーサ-電極組立体の片側又は両側で気体と流体接触する。気体及び/又は槽に別個に接続された、封止(液密且つ/又は気密)された外部導管及び貯蔵ボリュームは、電池の動作中、反応物を供給し、産物を除去する。他の例では、多孔性毛細管スペーサ110は0.35mm厚未満、0.2mm厚未満、0.1mm厚未満、0.05mm厚未満、又は0.025mm厚未満である。
【0094】
好ましくは、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超且つ400μm未満である。好ましくは、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は、4μm超且つ400μm未満、6μm超且つ400μm未満、8μm超且つ400μm未満、10μm超且つ400μm未満、20μm超且つ400μm未満、又は30μm超且つ400μm未満である。好ましくは、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、又は約10μmである。好ましくは、多孔性毛細管スペーサの平均孔径400μm未満である。任意選択的に、多孔性毛細管スペーサは60%超の多孔性、好ましくは70%超の多孔性、最も好ましくは80%超の多孔性である。好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、液体電解質で充填され、室温で140mΩcm2未満のイオン抵抗を有するように構成される。好ましくは、第1のガス拡散電極及び第2の電極は、多孔性毛細管スペーサに対して2バール超、好ましくは3バール超、より好ましくは4バール超で圧縮される。好ましくは、第1のガス拡散電極及び第2のガス拡散電極は、多孔性毛細管スペーサに対して2バール超、好ましくは3バール超、より好ましくは4バール超で圧縮される。好ましくは、液体電解質は水性であり、多孔性毛細管スペーサが液体電解質で充填される場合、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、8cmを越える高さで1分当たり水0.0014g超の流量で流れる。
【0095】
好ましくは、第1のガス拡散電極及び第2の電極は各々、10cm2以上の幾何学的表面積を有する側面を有する。好ましくは、第1のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む。好ましくは、第2のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む。好ましくは、電池は、第1のガス拡散電極及び第2の電極を通して、1Amp以上、好ましくは1.5Amp以上、より好ましくは2Amp以上、及びより好ましくは2.5Amp以上の電流を使用して動作する。好ましくは、電池は少なくとも24時間連続して動作する。
【0096】
そのような電気合成又は電気エネルギー電池が不定時間にわたって途切れずに又は連続して動作するには、薄い多孔性毛細管スペーサ110は好ましくは、とりわけ、
i)液体電解質を引き込み、それ自体、液体電解質で完全に充填された状態を維持し、それにより、電池の上部に及ぶ多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質のカラム高さを維持し、
ii)好ましくは、常に全ての動作条件下で、電気化学反応を維持するのに十分な流体電解質の流量を多孔性毛細管スペーサ内に提供し、
iii)電極との多孔性毛細管スペーサのインタフェースにおいて、全ての動作条件下で反応するために電極を適宜濡らすのに十分な液体電解質を放出する
ことが可能である。
【0097】
好ましくは、電池は電気合成電池であり、電気化学反応は、電気合成電池から離れて外部に輸送される化学産物を生成する。好ましくは、電池は電気エネルギー電池であり、電気化学反応は、電気エネルギー電池から離れて外部に輸送されるエネルギーを生成する。
【0098】
液相及び気相移行経路は両方とも自己調整しているため、電池は、外部管理なしで連続動作し得る。これは、典型的には能動的な管理を必要とする多くの従来の電気合成又は電気エネルギー電池よりも優れた重要な利点を構成する。
【0099】
槽液体が電極と直接接触する電池の例
別の実施形態のゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池20を
図2に概略的に示す。電池20は、電極に最も近い槽の壁が存在しなくてもよく、槽と電極との間にバリア155がなくてもよいという点で、電池10と異なり得る。したがって、槽内の液体100は一方又は両方の電極120又は130と直接接触し得る。接触の程度は比較的小さい(例えば、
図2のAで示されるように、電極外面積の5~10%)か、又は比較的大きい(
図2のBで示されるように、電極外面積の50~70%)。しかしながら、液体電解質と電極との間の接触の程度は、電池の動作中、一定であってもよく、又は急速に、ゆっくりと、一時的に、若しくは永久的に変化してもよく、A及びBの具体的な値は0%~100%(0%及び100%を含む)のいずれにあってもよいことを理解されたい。
【0100】
任意選択的に、A及び/又はBの値は小さい。好ましくは、電池は、槽が液体電解質を含む場合、第1のガス拡散電極が槽の縁部において液体電解質に触れるように構成される。好ましくは、電池は、槽が液体電解質を含む場合、第2の電極が槽の縁部において液体電解質に触れるように構成される。他の点において、電池20は、
図1の電池10と同じ性質及び特性を有し得る。他の点において、電池20は、
図1の電池10の構成要素と同じ性質及び特性を有する同じ構成要素の1つ又は複数を有し得る。
【0101】
図2に示される実施形態例の電池では、気体125及び135はそれぞれ、
図2に示される実施形態よりも、電極120及び130の外面積のより小さな割合部分に隣接し、接触し得る。例えば、接触の程度は比較的小さくてもよく(例えば、
図2の気体135に示されるように、電極外面積の30~50%)、又は比較的大きくてもよい(例えば、
図2の気体125に示されるように、電極外面積の90~95%)。しかしながら、これらの値は、電池の動作中、一定であってもよく、又は急速に、ゆっくりと、一時的に、若しくは永久的に変化してもよく、具体的な値は0%~100%(0%及び100%を含む)のいずれにあってもよいことを理解されたい。
【0102】
電極120又は130と気体125及び135との間のそれぞれのより小さな接触割合が一般的であるにもかかわらず、好ましい実施形態の特徴及び利点の多くはそれにも関わらずなお、完全又は部分的に当てはまり得る。
【0103】
更に、このクラスの実施形態例の電池(即ち電池20)は、他の好ましい実施形態の電池ではあまり一般的ではない、又は観察されない特徴及び利点を提供し得る。これらは例えば、電池20内の相対液位の物理的変動能力、即ち、A及びBの相対値の変動を含む。電池内の相対液位のそのような変化は、
(i)新たなA及び/又はB値への液体の補償的な移動による、気体125及び135におけるガス圧の急速で自発的な等化、
(ii)液体電解質で常時、完全に充填される多孔性毛細管スペーサ110の維持の改善、及び/又は
(iii)動作中、完全に濡れた電極の維持の改善
を可能にし得る。
【0104】
更に、電極が液体電解質と物理的に接触し得ることは、電極における毛細管現象を採用して、多孔性毛細管スペーサ110の毛細管現象を支援し得ることを意味する。即ち、電極における毛細管現象を利用して、液体電解質を電極における反応ゾーン又は電極間の
反応ゾーンまで移動させることができる。実際には、液体電解質は、電極における毛細管まで、そして毛細管に沿って多孔性毛細管スペーサ110又は電極120若しくは130への移動を誘導し得、それにより、
(i)電池内の上方の場所を含む全ての場所で常に、液体電解質で充填された多孔性毛細管スペーサ110及び/又は
(ii)動作中、電池内の上方の場所を含む全ての場所で常に完全に濡れた電極
の維持を助け得る。
【0105】
電極表面上及び電極上方への液体電解質の毛細管誘導移動は当然ながら、典型的には、電極120又は130と気体125又は135との間のそれぞれのガス移動と干渉し得、更には阻止し得る。これは電池20のエネルギー効率を低下させ得る。しかしながら、そのような移動が、電極の表面に沿って移動する非常に薄い層の液体電解質のみが関わるように構成された場合、ガス移動との干渉はないことが発見されている。即ち、液体電解質の毛細管誘導輸送が、電極及びその孔の溢れを回避するように設計することができる場合、これもまた自己調整を受ける反応ゾーンに液体電解質を輸送する代替の有利な非干渉方法を提供し得る。
【0106】
好ましくは、電池は、動作中、第1のガス拡散電極が、0.125mm厚未満、好ましくは0.11mm厚未満、より好ましくは0.10mm厚未満の液体電解質の薄膜で覆われるように構成される。好ましくは、電池は、動作中、第2のガス拡散電極が、0.125mm厚未満、好ましくは0.11mm厚未満、より好ましくは0.10mm厚未満の液体電解質の薄膜で覆われるように構成される。
【0107】
多孔性毛細管スペーサに組み込まれた槽を有する電池の例
図3は、槽が多孔性毛細管スペーサ110自体に組み込まれ、それにより、多孔性毛細管スペーサとは明確に分離された液体槽が識別可能ではないことがある、代替の一実施形態のゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池30を示す。
【0108】
電池30は例えば、反応物及び産物が純粋に気相材料であり液体電解質が消費若しくは生成されず、又は電気化学反応により決して影響されない場合、使用し得る。例えば、希少、高価、又はエキゾチックであり、容易に気化しない液体電解質、例えば「イオン性液体」が採用され得る。そのような場合、槽のサイズを最小に抑え、槽を多孔性毛細管スペーサ110に組み込むことにより、存在する液体電解質の量を最小に抑えることが最も実際的に有価値であり得る。
【0109】
その結果生成される電池30は、現在の産業規模では実行することができない新しい電気化学反応を実行可能な状態で促進することが可能であり得る。小量の希少、高価、又はエキゾチックな液体電解質を使用して電気エネルギー又は電気合成変換を促進する能力は、現在、そのような電解質を使用してしか実行できない新しい電気化学反応を工業的製造に対して開き得る。気相反応物及び/又は産物は、第1のガス貯蔵システム128、第2のガス貯蔵システム138a、及び/又は第3のガス貯蔵システム138bへ/から外部パイプ127、137a、及び/又は137bを介して気体125及び/又は135に供給又は気体125及び/又は135から除去し得る。2つのガス貯蔵システム(第2のガス貯蔵システム138a及び第3のガス貯蔵システム138b)は
図3に示されて、反応物を導入し、且つ/又は電池から産物を除去するために、ガスが気体(この説明のための事例では135)を通して循環する状況を示す。
【0110】
希少、高価、又はエキゾチックであり、容易に気化しない、例えば「イオン性液体」の使用は、
図3に示されていない電池構造に限定されないことを理解されたい。そのような電解質は、任意の実施形態例の電池で使用することができる。
【0111】
別の実施形態例では、多孔性毛細管スペーサ110は水性液体電解質で充填され、槽は全体的に多孔性毛細管スペーサ110に組み込まれる。この場合、多孔性毛細管スペーサ110内の水性電解質は、水蒸気を気体125及び/又は135に導入又は除去することにより補充又は維持し得、この水蒸気の幾らかは、多孔性毛細管スペーサ110において液化し、又は多孔性毛細管スペーサ110から気化する。
【0112】
先に述べたように、気相蒸気を使用して、電極間セパレータ内の水のような液相材料を補充又は維持することは典型的には、電極120又は130と気体125又は135との間のそれぞれでの気相反応物又は産物の移動に干渉し得、又は阻止し得る。これは電池のエネルギー効率を低下させ得る。
【0113】
しかしながら、毛細管力によりスペーサ内に保持される液体電解質が充填された多孔性毛細管スペーサ110が、電極間セパレータとして採用される場合、状況が異なり得ることが発見されている。存在する他の(電極へ/からのガス反応物又は産物の)気相経路に干渉せずに、一方又は両方の気体(即ち第1の来た125及び/又は第2の気体135)に水蒸気を導入又は除去することにより、液体電解質を補充又は維持することが可能であり得る。動作において、電圧を第1の電極120と第2の電極130との間に印加し得、又は電圧を第1の電極120と第2の電極130との間に生成し得る。
【0114】
即ち、幾つかの状況下で、電極へ/からのガス反応物又は産物の気相経路に干渉しない又は妨げない気相経路を作成して、液相電解質を補充又は維持することができる。
【0115】
これは特に、多孔性毛細管スペーサ110が電極間セパレータとして使用される場合、可能であり得る。何故ならば、液体電解質の連続体を多孔性毛細管スペーサ内に閉じ込め得るためである。そのような連続し、閉じ込められた液体電解質は、他の電極間セパレータには存在しなくてよい。水蒸気は好ましくは、そのような液体の連続体において液化又はそのような液体の連続体から気化し得る。更に、その液体は、毛細管力によりスペーサ内に保持され、それにより、液体において液化した任意の水蒸気は、毛細管力により多孔性毛細管スペーサ110に閉じ込められ、それにより、溢れない、又はガス反応物/産物によるアクセスから電極をブロックしないことを保証する。
【0116】
好ましくは、電池は、動作中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質が、電池内に液体電解質の連続体のみを含むように構成される。好ましくは、電池は、外部液体導管を含まず、液体電解質及び/又は液相反応物及び/又は産物が、ガス流内の蒸気の形態で電池内又は外に輸送されるように構成され、蒸気は、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質において液化又は多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質から気化する。好ましくは、電池は、外部液体導管が存在せず、液体電解質、液相反応物、及び/又は産物がガス流内の蒸気の形態で電池内又は外に輸送されることを更に含む。好ましくは、槽は、多孔性毛細管スペーサの一部として一体化され、蒸気は、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質において液化又は多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質から気化する。
【0117】
他の点では、電池30は、
図1の電池10又は
図2の電池20と同じ性質及び特性を有し得る。他の点では、電池30は、
図1の電池10又は
図2の電池20の構成要素と同じ性質及び特性を有する同じ構成要素の1つ又は複数を有し得る。
【0118】
更なる実施形態例
上記実施形態例を越えて、電池構造の種々の他の実施形態例を利用することができる。これらには、限定ではなく、本明細書に記載される他の構造が含まれる。
【0119】
更なる実施形態例では、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供され、積層体は、第1の電気合成又は電気エネルギー電池と、第1の電気合成又は電気エネルギー電池に電気的に接続される第2の電気合成又は電気エネルギー電池とを備える。各電気合成又は電気エネルギー電池は、液体電解質を含むための槽と、槽の外部に位置する第1のガス拡散電極と、槽の外部に位置する第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、槽内に延出する端部を有する、多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質に液体接触する場合、液体電解質でそれ自体を充填することが可能である。
【0120】
好ましくは、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体内で、第1の電気合成又は電気エネルギー電池は、本明細書に記載される一実施形態例の電池であり、第2の電気合成又は電気エネルギー電池は、本明細書に記載される一実施形態例の電池である。好ましくは、電気合成又は電気エネルギー電池の上記積層体内で、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池は直列接続される。
【0121】
更なる態様例では、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供され、電池は、液体電解質を含むための槽と、槽の外部に位置する第1のガス拡散電極と、槽の外部に位置する第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、槽内に延出する端部を有する、多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質に液体接触する場合、液体電解質でそれ自体を充填することが可能であり、方法は、電圧を第1のガス拡散電極と第2の電極との間に印加することを含む。
【0122】
更なる態様例では、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップを含む、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供される。
【0123】
更なる態様例では、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池の各々の第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップを含む、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の動作方法が提供される。
【0124】
更なる実施形態例では、電気合成水電解電池が提供され、電池は、第1のガスを生成するように構成され、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2の電極と、液体電解質で充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である。
【0125】
更なる例では、複数の上記電池を備え、それにより、複数の電池が電気的に接続される、水電解マルチセル積層体が提供される。
【0126】
更なる実施形態例では、電気合成水電解電池の積層体が提供され、積層体は、第1の電気合成水電解電池と、第1の電気合成水電解電池に電気的に接続された第2の電気合成水電解電池とを備える。各電気合成水電解電池は、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、液体電解質で充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である。
【0127】
好ましくは、電気合成水電解電池の積層体内で、第1の電気合成水電解電池は、本明細書に記載される一実施形態例の電池であり、第2の電気合成水電解電池は、本明細書に記載される一実施形態例の電池である。好ましくは、電気合成水電解電池の積層体内で、第1の電気合成水電解電池及び第2の電気合成水電解電池は直列接続される。
【0128】
更なる態様例では、水電解を実行するための電気合成水電解電池の動作方法が提供され、電池は、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2の電極と、液体電解質で充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサであって、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である、多孔性毛細管スペーサとを備え、方法は、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加することを含む。
【0129】
更なる態様例では、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップを含む、水電解を実行するための電気合成水電解電池の動作方法が提供される。
【0130】
更なる態様例では、水電解を実行するための電気合成水電解電池の積層体の動作方法が提供され、方法は、電圧を第1の電極合成水電解電池及び第2の電気合成水電解電池の各々の第1のガス拡散電極と第2の電極との間に印加するステップを含む。
【0131】
更なる実施形態では、電気合成又は電気エネルギー電池であって、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と隣接して接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と直接接触するように構成された第2のガス拡散電極と、第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサであって、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填され、毛細管効果により多孔性毛細管スペーサに液体電解質を閉じ込めるように構成され、それにより、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、多孔性毛細管スペーサとを備える、電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。
【0132】
任意選択的に、電池は、液体電解質を含み、動作中、多孔性毛細管スペーサの下にあるように構成された槽を備え得、多孔性毛細管スペーサの少なくとも先端部は、槽内の液体電解質と接触する。好ましくは、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する。
【0133】
更なる例では、複数の電池を備え、それにより、複数の電池が電的に接続される、電気合成又は電気エネルギーマルチセル積層体が提供される。
【0134】
更なる例では、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供され、積層体は、第1の電気合成又は電気エネルギー電池と、第1の電気合成又は電気エネルギー電池と電気的に接続された第2の電気合成又は電気エネルギー電池とを備える。各電気合成又は電気エネルギー電池は、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と接触し隣接するように構成された第1のガス拡散電極と、第1のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と接触し隣接するように構成された第2のガス拡散電極と、第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填され、毛細管効果により多孔性毛細管スペーサに液体電解質を閉じ込めるように構成され、それにより、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、多孔性毛細管スペーサとを備える。
【0135】
更なる例では、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供され、第1の電気合成又は電気エネルギー電池は本明細書に記載される一実施形態例の電池であり、第2の電気合成又は電気エネルギー電池は本明細書に記載される一実施形態例の電池である。
【0136】
更なる例では、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池が直列接続される、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供される。
【0137】
更なる態様例では、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供され、電池は、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と直接接触するように構成された第2のガス拡散電極と、第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサであって、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填され、毛細管効果により多孔性毛細管スペーサに液体電解質を閉じ込めるように構成され、それにより、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、多孔性毛細管スペーサとを備え、方法は、電圧を第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に印加することを含む。
【0138】
更なる態様例では、電圧を第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に印加するステップを含む、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供される。
【0139】
更なる態様例では、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池の各々の第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に電圧を印加するステップを含む、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の積層体の動作方法が提供される。
【0140】
更なる実施形態例では、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供される。電気合成又は電気エネルギー電池は、液体電解質を含む槽と、第1のガス拡散電極と、第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、槽内に位置し、液体電解質と液体接触する端部を有する。方法は、第1のガス拡散電極及び第2の電極に液体電解質を接触させるステップと、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加又は生成するステップとを含む。
【0141】
更なる態様例では、電気化学反応は、窒素及び水素からアンモニアを生成する。更なる態様例では、電気化学反応はアンモニア及び酸素から電気を生成する。更なる態様例では、電気化学反応はアンモニアから水素及び窒素を生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、反応物としてNOXを使用する。更なる態様例では、電気化学反応は、塩水から塩素、水素、及び苛性物質を生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、塩水から塩素及び苛性物質を生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、塩酸から塩素及び水素を生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、水素及び酸素から電気エネルギーを生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、水から水素及び酸素を生成する。更なる態様例では、電気化学反応は、水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する。
【0142】
更なる例では、電気合成又は電気エネルギー電池が提供され、電池は、液体電解質を含む槽と、第1のガス拡散電極と、第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、槽内に位置し、液体電解質と液体接触する端部を有し、電気合成又は電気エネルギー電池は、本明細書に記載される任意の方法例に従って動作するように構成される。
【0143】
更なる例では、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池を含む電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供される。
【0144】
更なる態様例では、第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池が直列接続される、電気合成又は電気エネルギー電池の積層体が提供される。
【0145】
更なる態様例では、2つ以上の多孔性毛細管スペーサを含む電気合成又は電気エネルギーが提供される。排他的ではないが好ましくは、2つ以上の多孔性毛細管スペーサ(好ましくは各々0.45mm厚未満)を含むゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池は、毛細管力により、各多孔性毛細管スペーサの端部が浸される液体電解質の2つ以上の槽から多孔性毛細管スペーサに引き込まれてそこに連続して保持される液体電解質を有する。
【0146】
更なる態様例では、液体電解質を含むように構成された2つ以上の槽を含む電気合成又は電気エネルギー電池が提供され、2つ以上の多孔性毛細管スペーサの各々の先端部は、2つ以上の槽の1つ内に位置する。
【0147】
別の態様例では、槽は浸透効果を生じさせ、採用し、又は利用するように構成し得る。好ましくは、浸透効果は、多孔性毛細管スペーサにおける液体電解質の最大カラム高さを増幅し、且つ/又は電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質の成分の流量を増幅する。
【0148】
好ましくは、槽は、第1の液体を含むように構成された第1の容積と、第2の液体を含むように構成された第2の容積と、第1の容積と第2の容積とを隔てる半透過性膜とを備える。任意選択的に、多孔性毛細管スペーサの先端部は、第1の容積に位置し、動作中、第1の液体は液体電解質であり、第2の液体は第1の液体と異なるように構成される。
【0149】
別の態様例では、電気合成又は電気エネルギーマルチセル積層体が提供され、積層体は、複数の電池を含み、動作中、複数の電池の各々第2の液体が、複数の電池の各々の第2の容積に接続された共通供給又は除去パイプを介して液通するように構成される。
【0150】
更なる態様例では、電気合成又は電気エネルギー電池が提供され、多孔性毛細管スペーサは少なくとも部分的に、PVDF、PTFE、テトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ナイロン、窒素含有材料、ガラス繊維、ケイ素含有材料、ポリ塩化ビニル、塩化物含有ポリマー、酢酸セルロース、硝酸セルロース、セロハン、エチルセルロース、セルロース含有材料、ポリカーボネート、カーボネート含有材料、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、スルホン含有材料、ポリフェニレンスルフィド、スルフィド含有材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、オレフィン含有材料、アスベスト、チタン系セラミックス、ジルコニウム系セラミックス、セラミック材料、ポリ塩化ビニル、ビニル系材料、ゴム、多孔性電池セパレータ、及びクレイを含む群から選択される1つ又は複数の材料で構成される。
【0151】
追加の実施形態
別の態様例では、ゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池が提供され、電池は以下の要素で構成される:
(1)少なくとも一方はガス透過性(即ちガス拡散電極)であり、0.45mm厚未満(他の例では0.30mm厚未満又は0.13mm厚未満)の多孔性毛細管スペーサの両側に狭設される2つの電極、
(2)毛細管作用により内部に引き込まれて連続して保持される液体電解質を含む多孔性毛細管スペーサ、
(3)任意選択的に、任意選択的に上記(1)及び(2)に記載された電極-スペーサ-電極組立体から隔てられ又は離間され、液体電解質に浸され、又は液体電解質の槽と他の方法で液体接触する多孔性毛細管スペーサの端部であって、任意選択的に、多孔性毛細管スペーサはそれ自体、槽であり、又は槽を組み込む、多孔性毛細管スペーサの端部、
(4)電極-スペーサ-電極組立体の片側又は両側にある1つ又は複数の気体であって、任意選択的に、1つ又は複数の気体は液体電解質の槽から隔てられ、1つ又は複数の気体は各電極と気体連通する、1つ又は複数の気体、
(5)電池の動作中、反応物を供給し、産物を除去するために、第1の気体、第2の気体、及び/又は槽に別個に接続された封止(液密/気密)された外部導管及び貯蔵ボリューム。
【0152】
好ましくは、多孔性毛細管スペーサは、多孔性材料で形成され、又は多孔性材料を含む。好ましくは、電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により液体電解質を引き込み、多孔性毛細管スペーサ内に液体電解質の最大カラム高さを維持する。好ましくは、最大カラム高さは、多孔性毛細管スペーサに対して狭設されるいずれか一方又は両方の電極を越える。好ましくは、液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも、第1のガス拡散電極の高さ以上である。好ましくは、最大カラム高さは、電池の上部の高さを越える。好ましくは、カラム高さを形成する液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの容積内に閉じ込められる。好ましくは、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、電池の全ての縁部まで及ぶ。好ましくは、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、第1の気体が第2の気体と混合するのを阻止又は妨げる。
【0153】
好ましくは、電池における電気化学反応の液相反応物又は産物は、多孔性毛細管スペーサ内部の液体電解質内の液相経路を辿る。好ましくは、電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の影響及び制御下で、液体電解質の槽へ又は該槽からの多孔性毛細管スペーサの長さに沿った「面内」移動により液相材料の移行を促進する。任意選択的に、少なくとも1つの電極は、液相毛細管作用の影響及び制御下で、電極表面に沿って且つ/又は電極表面の上方への液体電解質の薄膜の移行を促進する。好ましくは、第1の気体の第1のガスは、第1のガス拡散電極まで第1の気相経路を辿り、第1の気相経路は液相経路とは別である。好ましくは、第2の気体の第2のガスは、第2のガス拡散電極まで第2の気相経路を辿り、第2の気相経路は液相経路とは別である。
【0154】
好ましくは、電気化学反応中、液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、電解質充填された多孔性毛細管スペーサ内で作用して、(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、又は(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去し、又は(iii)除去しなければ電気化学反応に直接又は周辺的に関わる1つ又は複数の液相材料を常時導入/除去しなければ電気化学反応に直接又は周辺的に関わる1つ又は複数の液相材料を除去する。即ち、好ましくは、電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整している。任意選択的に、電気化学反応中、電極の表面上を移行する液体電解質の薄膜が関わる液相毛細管作用は、(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、又は(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去し、又は(iii)除去しなければ電気化学反応に直接又は周辺的に関わる1つ又は複数の液相材料を常時導入/除去しなければ電気化学反応に直接又は周辺的に関わる1つ又は複数の液相材料を除去するように作用する。即ち、好ましくは、電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整している。
【0155】
好ましくは、電気化学反応中、上記液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用により多孔性毛細管スペーサ内で誘導される流量は、電気化学反応を維持するのに十分である。任意選択的に、電気化学反応中、電極の表面上を移動する液体電解質の薄膜が関わる液相毛細管作用の流量は、電気化学反応を維持するのに十分である。
【0156】
別の非限定的な態様例は、ゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池を使用して化学産物又は電力を電気生成する方法を提供し、方法は、
(1)少なくとも一方はガス多孔性(即ちガス拡散電極)である2つの電極を、
(2)多孔性毛細管スペーサ(0.45mm厚未満)の両側に対して狭設することで構成され、
(3)多孔性毛細管スペーサは内部に、液体電解質の槽から毛細管作用により引き込まれそこに常時保持される液体電解質を含み、
(4)多孔性毛細管スペーサの端部は、電解質の槽に浸され、又は代替的には、
多孔性毛細管スペーサは槽を組み込み、又は槽は存在せず、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、電池において連続液体のみを含み、
(5)気体は、電極-スペーサ-電極組立った幾つかの片側又は両側に存在し、
(6)電気化学反応に関わる液相材料は、毛細管、拡散、及び/又は浸透力の影響及び制御下で、槽/本体へ又は槽/本体からの多孔性毛細管スペーサの長さに沿った多孔性毛細管スペーサ内の「面内」移動により移行し、且つ/又は
電気化学反応に関わる液相材料は、毛細管の影響及び制御下で、槽/本体へ又は槽/本体からの少なくとも1つの電極の表面上の薄膜内で移行し、
(7)電池の動作中、第1の気体、第2の気体、及び/又は槽に別個に接続する外部導管及び貯蔵ボリュームを介して、反応物が電池外部から常時供給/補充され、産物は電池外部に常時除去される。
【0157】
特徴の組合せ
種々の非限定的な実施態様例によれば、以下のポイントが、種々の電池、マルチセル積層体、システムの例、及び/又は動作方法例を提供する特徴の組合せを開示する。
【0158】
1.第1のガス拡散電極と、第2の電極と、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサとを備えた電気合成又は電気エネルギー電池。
【0159】
2.多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質に液体接触する場合、液体電解質でそれ自体を充填することが可能である、ポイント1に記載の電池。
【0160】
3.第1のガス拡散電極は、槽の外部に位置する、ポイント1又は2に記載の電池。
【0161】
4.第2の電極は槽の外部に位置する、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0162】
5.電池は電気合成水電解電池である、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0163】
6.第1のガス拡散電極は、第1の気体と直接接触する、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0164】
7.多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填される、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0165】
8.多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0166】
9.第1のガス拡散電極は、第1の気体に接触し、第1の気体に隣接する、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0167】
10.第2のガス拡散電極は、第2の気体に接触し、第2の気体に隣接する、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0168】
11.液体電解質は、毛細管効果により多孔性毛細管スペーサに閉じ込められ、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、先行するポイントのいずれかに記載の電池。
【0169】
12.電気合成又は電気エネルギー電池であって、液体電解質を含むための槽と、槽の外部に位置する第1のガス拡散電極と、槽の外部に位置する第2の電極と、
第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、槽内に延出する端部を有する、多孔性毛細管スペーサとを備え、多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内の液体電解質に液体接触する場合、液体電解質でそれ自体を充填することが可能である、電池。
【0170】
13.電気合成水電解電池であって、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2の電極と、液体電解質で充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置するように構成された多孔性毛細管スペーサであって、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は2μm超である、多孔性毛細管スペーサとを備える、電気合成水電解電池。
【0171】
14.電気合成又は電気エネルギー電池であって、第1のガスを生成し、第1のガスを含む第1の気体と直接接触するように構成された第1のガス拡散電極と、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と接触し、第2の気体に隣接するように構成された第2のガス拡散電極と、第1のガス拡散電極と第2のガス拡散電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、液体電解質で充填され、毛細管効果により液体電解質を多孔性毛細管スペーサに閉じ込めるように構成され、それにより、液体電解質は0.4cm超の最大カラム高さを有する、多孔性毛細管スペーサとを備える、電気合成又は電気エネルギー電池。
【0172】
15.第1のガス拡散電極及び第2の電極に液体電解質を接触させるステップと、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に電圧を印加又は生成するステップとを含む、電気化学反応を実行するための先行するポイントのいずれかに記載の電池の動作方法。
【0173】
16.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0174】
17.槽が液体電解質を含む場合、第1のガス拡散電極は、槽内の液体電解質から隔てられるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0175】
18.槽が液体電解質を含む場合、第1のガス拡散電極は、槽の縁部において液体電解質に触れるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0176】
19.槽が液体電解質を含む場合、第2の電極は、槽内の液体電解質から隔てられるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0177】
20.槽が液体電解質を含む場合、第2の電極は、槽の縁部において液体電解質に触れるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0178】
21.多孔性毛細管スペーサは、多孔性毛細管スペーサの端部が槽内に延出する前、液体電解質で充填される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0179】
22.動作中、液体電解質が、まず槽から多孔性毛細管スペーサに沿って輸送された後でのみ、第1のガス拡散電極及び第2の電極に接触するように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0180】
23.第1のガス拡散電極及び第2の電極は、槽から離間される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0181】
24.多孔性毛細管スペーサと第1のガス拡散電極とが直接接触するエリアは、槽の外部であり、多孔性毛細管スペーサと第2の電極とが直接接触するエリアは、槽の外部である、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0182】
25.槽は、多孔性毛細管スペーサが通る開口部を含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0183】
26.動作中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質で覆われる表面積が、多孔性毛細管スペーサに面する第1のガス拡散電極の表面積に少なくとも等しく、又はそれを越えるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0184】
27.第1のガス拡散電極及び第2の電極は各々、10cm2以上の幾何学的表面積を有する側面を有する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0185】
28.第1のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0186】
29.第1のガス拡散電極は、第1の気体を形成する第1のガスを生成するように構成され、多孔性毛細管スペーサの第1の側面は第1のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、多孔性毛細管スペーサの第2の側面は第2の電極の第1の側面に隣接し、第1のガス拡散電極の第2の側面は第1の気体に隣接する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0187】
30.第2の電極は第2のガス拡散電極である、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0188】
31.第2のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0189】
32.第2のガス拡散電極は、第2の気体を形成する第2のガスを生成するように構成され、第2のガス拡散電極の第2の側面は第2の気体に隣接する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0190】
33.動作中、第1のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部が、第1の気体と直接気相接触し、第2のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部が、第2の気体と直接気相接触するように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0191】
34.第1のガス拡散電極の第2の側面内又は上に少なくとも部分的に位置するガス毛細管構造体を含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0192】
35.第2のガス拡散電極の第2の側面内又は上に少なくとも部分的に位置する第2のガス毛細管構造体を含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0193】
36.電池はゼロギャップ電池であり、それにより、多孔性毛細管スペーサは、0.45mm未満の厚さ、好ましくは0.30mm未満の厚さ、より好ましくは0.13mm未満の厚さである、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0194】
37.多孔性毛細管スペーサの平均孔径は、2μm超且つ400μm未満である、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0195】
38.多孔性毛細管スペーサの平均孔径は、4μm超且つ400μm未満、6μm超且つ400μm未満、8μm超且つ400μm未満、10μm超且つ400μm未満、20μm超且つ400μm未満、又は30μm超且つ400μm未満である、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0196】
39.多孔性毛細管スペーサは、第1のガス拡散電極、第2の電極、及び槽の間に流路を提供する複数の孔を含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0197】
40.多孔性毛細管スペーサは、槽に流体接続される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0198】
41.多孔性毛細管スペーサは、PVDF、PTFE、テトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ナイロン、窒素含有材料、ガラス繊維、ケイ素含有材料、ポリ塩化ビニル、塩化物含有ポリマー、酢酸セルロース、硝酸セルロース、セロハン、エチルセルロース、セルロース含有材料、ポリカーボネート、カーボネート含有材料、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、スルホン含有材料、ポリフェニレンスルフィド、スルフィド含有材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、オレフィン含有材料、アスベスト、チタン系セラミックス、ジルコニウム系セラミックス、セラミック材料、ポリ塩化ビニル、ビニル系材料、ゴム、多孔性電池セパレータ、及びクレイを含む群から選択される1つ又は複数の材料で少なくとも部分的に構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0199】
42.外部筐体を更に含み、外部筐体は、液体を電池に導入し且つ/又は電池から液体を除去するための少なくとも1つの外部液体導管を提供する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0200】
43.第1の気体と気体連通する少なくとも1つの外部ガス導管を提供する外部筐体を更に含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0201】
44.液体電解質は水性であり、多孔性毛細管スペーサが液体電解質で充填される場合、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、8cm超の高さで毎分当たり水0.0014g超の流量で流れる、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0202】
45.動作中、第1の気体は、3バールゲージ超、好ましくは4バールゲージ超、より好ましくは5バールゲージ超の圧力を有するように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0203】
46.第1のガス拡散電極及び第2の電極は、多孔性毛細管スペーサに対して2バール超、好ましくは3バール超、より好ましくは4バール超で圧縮される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0204】
47.多孔性毛細管スペーサは、60%超、好ましくは70%超、最も好ましくは80%の多孔性を有する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0205】
48.動作中、連続気相路が、断面軸における第1のガス拡散電極の活性面と第1の気体との間に存在し、それにより、第1のガスの目に見える気泡が、第1のガス拡散電極の活性面の少なくとも一部で生成されないように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0206】
49.ガスハンドリング構造体であって、
第1のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、
第1のガス拡散電極内、
第1のガス拡散電極又はその近傍、及び/又は
第1のガス拡散電極の一部
に位置するガスハンドリング構造体を含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0207】
50.第2の電極は、第2のガスを生成し、第2のガスを含む第2の気体と直接接触するように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0208】
51.多孔性毛細管スペーサが液体電解質で充填される場合、多孔性毛細管スペーサは、第1の気体が第2の気体と混合するのを阻止又は防止するように構成され、ベンチマークガスクロスオーバを2%未満に維持する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0209】
52.第2のガスハンドリング構造体であって、
第2のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、
第2のガス拡散電極内、
第2のガス拡散電極又はその近傍、及び/又は
第2のガス拡散電極の一部
に位置する第2のガスハンドリング構造体を含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0210】
53.動作中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、電池内の液体電解質の連続体のみを含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0211】
54.電池は、外部液体導管を含まず、液体電解質及び/又は液相反応物及び/又は産物が、ガス流内の蒸気の形態で電池内又は外に輸送されるように構成され、蒸気は、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質に凝縮又は液体電解質から気化する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0212】
55.多孔性毛細管スペーサの端部は、槽内に位置する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0213】
56.槽は液体電解質で充填されるように構成され、多孔性毛細管スペーサの端部は、液体電解質に接触するように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0214】
57.多孔性毛細管スペーサは、少なくとも毛細管作用により液体電解質を多孔性毛細管スペーサに沿って輸送するように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0215】
58.多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により液体電解質を多孔性毛細管スペーサに沿って輸送するように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0216】
59.動作中、電池は、多孔性毛細管スペーサ内で生じる毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により自己調整される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0217】
60.多孔性毛細管スペーサは、液体電解質で充填され、室温で140mΩcm2未満のイオン抵抗を有するように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0218】
61.動作中、第1のガス拡散電極が、0.125mm厚、好ましくは0.11mm厚未満、より好ましくは0.10mm厚未満の液体電解質の薄膜で覆われるように構成される先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0219】
62.多孔性毛細管スペーサの平均孔径は400μm未満である、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0220】
63.多孔性毛細管スペーサの平均孔径は約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、又は約10μmである、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0221】
64.先行するポイントのいずれかに記載の電池を複数含み、それにより、複数の電池は電気的に接続され、好ましくは電気的に直列接続される、水電解マルチセル積層体。
【0222】
65.液体電解質を含み、動作中、多孔性毛細管スペーサの下にあるように構成された槽を更に備え、多孔性毛細管スペーサの少なくとも先端部は、槽内の液体電解質と接触する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0223】
66.外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0224】
67.動作中、電池内の液体電解質、電気化学反応の液相反応物、及び/又は電気化学反応の液相産物が、少なくとも1つの外部液体導管を介して電池内又は外に輸送され、少なくとも1つの外部液体導管が外部液体貯蔵システムと流通するように構成された先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0225】
68.動作中、電池内の電気化学反応の液相反応物又は産物は、多孔性毛細管スペーサ内部の液体電解質内の液相経路を辿るように構成された先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0226】
69.動作中、第1の気体の第1のガスが、第1のガス拡散電極まで第1の気相経路を辿り、第1の気相経路が液相経路とは別個であるように構成された先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0227】
70.動作中、第2の気体の第2のガスが、第2のガス拡散電極まで第2の気相経路を辿り、第2の気相経路が液相経路とは別個であるように構成された先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0228】
71.多孔性毛細管スペーサが液体電解質で充填される場合、多孔性毛細管スペーサは、第1の気体が第2の気体と混合するのを阻止又は妨げるように構成され、ベンチマークガス交差を2%未満に維持する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0229】
72.動作中、気泡が第1のガス拡散電極の少なくとも一部又は第2のガス拡散電極の少なくとも一部で見えないように構成された先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0230】
73.外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を更に提供し、動作中、第1のガスが少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送されるように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0231】
74.少なくとも1つの外部第1ガス導管は、外部第1ガス貯蔵システムと気体連通する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0232】
75.外部筐体は少なくとも1つの外部第2ガス導管を更に提供し、動作中、第2のガスが少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送されるように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0233】
76.少なくとも1つの外部第2ガス導管は、外部第2ガス貯蔵システムと気体連通する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0234】
77.槽は、第1の液体を含むように構成された第1の容積と、第2の液体を含むように構成された第2の容積と、第1の容積と第2の容積とを隔てる半透過性膜とを備える、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0235】
78.多孔性毛細管スペーサの先端部は、第1の容積に位置し、動作中、第1の液体は液体電解質であり、第2の液体は第1の液体と異なるように構成される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0236】
79.2つ以上の多孔性毛細管スペーサを含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0237】
80.液体電解質を含むように構成された2つ以上の槽を含み、2つ以上の多孔性毛細管スペーサの各々の先端部は、2つ以上の槽の1つ内に位置する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0238】
81.先行するポイントのいずれかに記載の電池を複数含み、動作中、複数の電池の各々の第2の液体が、複数の電池の各々の第2の容積に接続された共通の供給又は除去パイプを介して液通するように構成された電気合成又は電気エネルギーマルチセル積層体。
【0239】
82.多孔性毛細管スペーサに、少なくとも毛細管作用により層からの液体電解質を充填することを含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0240】
83.多孔性毛細管スペーサの端部が槽内に位置する前、多孔性毛細管スペーサに液体電解質を充填することを含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0241】
84.液体電解質が多孔性毛細管スペーサに沿って輸送された後、第1のガス拡散電極及び第2の電極を液体電解質と接触させることを含む先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0242】
85.動作中、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填されたままである、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0243】
86.電池は電気合成電池であり、電気化学反応は、電気合成電池から離れて外部に輸送される化学産物を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0244】
87.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供し、液体電解質は、少なくとも1つの外部液体導管を介して槽内又は外に輸送される、先行するポイントのいずれに記載の電池又は方法。
【0245】
88.少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0246】
89.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供し、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0247】
90.少なくとも1つの外部第2ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第2のガスは、少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0248】
91.外部液体導管が存在せず、液体電解質、液相反応物、及び/又は産物が、ガス流内の蒸気の形態で電池内又は外に輸送されることを更に含む、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0249】
92.槽は、多孔性毛細管スペーサの一部として一体化され、蒸気は、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質において液化又は多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質から気化する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0250】
93.電池は、第1のガス拡散電極及び第2の電極を通して、1Amp以上、好ましくは1.5Amp以上、より好ましくは2Amp以上、及びより好ましくは2.5Amp以上の電流を使用して動作する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0251】
94.電池は少なくとも24時間連続して動作する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0252】
95.多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により多孔性毛細管スペーサ内に液体電解質を引き込み、カラム高さの液体電解質を維持する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0253】
96.液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも第1のガス拡散電極の高さに等しく、又はそれよりも高い、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0254】
97.電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0255】
98.多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の制御下にある、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0256】
99.電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0257】
100.交差平面軸からの液相材料の移動は、槽内の液体電解質の組成によって自己調整される、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0258】
101.交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられる、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0259】
102.液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、
(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、
(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する
ように、多孔性毛細管スペーサ内で作用する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0260】
103.電気化学反応は、窒素及び水素からアンモニアを生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0261】
104.電気化学反応はアンモニア及び酸素から電気を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0262】
105.電気化学反応はアンモニアから水素及び窒素を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0263】
106.電気化学反応は、反応物としてNOXを使用する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0264】
107.電気化学反応は、塩水から塩素、水素、及び苛性物質を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0265】
108.電気化学反応は、塩水から塩素及び苛性物質を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0266】
109.電気化学反応は、塩酸から塩素及び水素を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0267】
110.電気化学反応は、水素及び酸素から電気エネルギーを生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0268】
111.電気化学反応は、水から水素及び酸素を生成する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0269】
112.電気化学反応は、水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する、先行するポイントのいずれかに記載の電池又は方法。
【0270】
電池例は、(1)アンモニア生成、(2)塩素アルカリプロセス及びその変形(例えば、酸素脱分極塩素アルカリプロセス及びHClリサイクル反応を含む)による塩素生成、(3)電気の燃料電池生成、(4)水電解質による水素生成、及び(5)水素精製を含め、幾つかの主な産業プロセスで使用することができる。
【0271】
電気合成又は電気エネルギー電池として産業で有用であるためには、電池例での電極125及び135は、電池の動作中、1アンペア以上の電流を流し得る。そのような電流を達成するために、電極125及び135は、10cm2以上の幾何学的表面積を有し得る。エネルギー効率的であり、動作中、低電気抵抗を維持するために、電極125及び135は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板等の低電気抵抗で高電流を伝導可能な電流キャリアを含み得る。即ち、第1のガス拡散電極120は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含み得、且つ/又は第2のガス拡散電極130は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含み得る。産業で有用であるためには、そのような電池は1回で少なくとも24時間途切れずに又は連続して動作し得る。
【0272】
好ましい実施形態の電池に存在し得る特徴
反応ゾーン/交差平面軸内及び外への別個の液相及び気相分子レベル移行
図4は、電池10等の一例の電気合成又は電気エネルギー電池内の電極-スペーサ-電極組立体139の一部の拡大を示す。電池10内の電気化学反応は、第1の電極120及び第2の電極130において又は第1の電極120と第2の電極130との間で生じる。
図4の例では、第1の電極120及び第2の電極130は両方とも、ガス拡散電極である-即ち、多孔性であり、ガスを透過する。
【0273】
多孔性毛細管スペーサ110に隣接して位置し、当接し、狭設され、又は積層される電極表面に沿った各場所で、電気化学反応は電極において生じ、電極によって交換される液相イオン、中間体、又は分子は、第1の電極120と第2の電極130との間の経路180に沿って移動、経路180内を移動、又は経路180に大方閉じ込められる。複数のそのような経路180は、2つの電極120、130の全長の下方に存在する。明確にするために、
図4は多くの経路180のうちの少数の経路180のみを示す。見て分かるように、これらの経路180は「交差平面」方向を辿る。即ち、多孔性毛細管スペーサ110の平面に直交し、大方多孔性毛細管スペーサ110内にある。このため、電池における全ての経路180の累積組合せは、「交差平面」軸(「反応ゾーン」とも呼ばれる)を構成すると言える。
【0274】
電気化学反応は典型的には、交差平面軸において反応物を消費し、産物を生成する。即ち、一般に、累積経路180内で反応物は消費され、産物は生成される。消費されると、電気化学反応を維持するために、反応物を補充する必要がある。補充を行うために、新しい反応物が交差平面軸外部から交差平面軸に移動する必要がある。この移動は、電気化学反応が維持されるべき場合、連続して行われる必要がある。同様に、電気化学反応を維持するためには、交差平面軸で生成された産物をそこから離れて移動させる必要がある。産物が交差平面軸に蓄積する場合、電気化学反応は妨げられ得、又は完全に停止し得る。
【0275】
好ましい実施形態では、液相反応物又は産物(又は同様にして電気化学反応に関わる他の液相材料)は、多孔性毛細管スペーサ110に存在する液体電解質100内の移行により、経路190を辿って交差平面軸内又は外に移動し得る。そのような移行は、槽140への移行又は槽140からの移行であり得る。即ち、液相反応物又は産物は、「面内」方向において経路190を辿り得、経路190は、多孔性毛細管スペーサ110内部の液体電解質100内にある。
【0276】
そのような移行は、毛細管、拡散、及び/又は浸透作用の影響又は制御下で自発的に生じ得る。毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は典型的には、交差平面軸内の電解質の濃度及び組成の、主に槽140内の液体電解質を構成し得る電解質の残りの部分での濃度及び組成に対する差によって駆動される。槽140は、システム内の液体電解質の圧倒的大部分を構成し得、それにより、好ましい実施形態では、その組成及び濃度は効率的に、
(i)毛細管、拡散、及び/又は浸透作用が、電気化学反応によって生じた交差平面軸における電解質の濃度及び組成への変化を打ち消す速度を制御し、
(ii)電気化学反応が停止すると、交差平面軸内を含め、電池全体を通しての液体電解質の最終的な平衡状態を決定
し得る。実際には、槽140における液体電解質100の存在及び交差平面軸への(多孔性毛細管スペーサ110を介した)連続液体接続の存在は、交差平面軸内及び外への液相材料の移動を制御し調整し得る。
【0277】
拡散及び浸透に関する重要な備考:本明細書では、「拡散」及び「浸透」という用語は、多孔性毛細管スペーサ、例えば多孔性毛細管スペーサ110内の液相材料の正味運動を生じさせるプロセスを説明するために同義で使用されてきた。この等価の理由は、多孔性材料である幾つかの例の多孔性毛細管スペーサ内で、溶質の拡散は水の拡散よりも自由度が低いことがあるためである。即ち、幾つかの多孔性毛細管スペーサ例では、水の運動は溶質の運動よりも有利に働くことがあり、これは潜在的に、拡散効果ではなくむしろ浸透である。この可能性を包含し、記述的に包含的であるために、多孔性毛細管スペーサ内の液相材料の運動を生み出す拡散作用及び/又は浸透作用を区別しなかった。逆に、溶質及び水の運動は一般に、液体電解質の槽内では常に等しい自由度を有する。
【0278】
例えば、一実施形態例による水素酸素燃料電池では、交差平面軸において産物として水が生成され得る。水は、形成されるにつれて、通常、交差平面軸における電解質を漸次希釈し、それにより、イオン抵抗が増大し、それにより、電池のエネルギー効率が低下する。しかしながら、多孔性毛細管スペーサ110に液体電極100の連続体があるため、交差平面軸を、例えば槽140と接続することで、毛細管、拡散、及び/又は浸透は希釈の影響を自発的に打ち消す。即ち、毛細管、拡散、及び/又は浸透により、交差平面軸における余剰な水は自発的に、多孔性毛細管スペーサ110から下方に槽140に向けて移行し得、その間、多孔性毛細管スペーサ110及び槽140内の溶質は上方に交差平面軸に向かって移行する。これらの作用は、交差平面軸内の電解質の濃度及び組成の、槽140の液体電解質で大半が構成される電解質の残りの部分の濃度及び組成に対する差により駆動し得る。交差平面軸で生じる希釈が大きいほど、上記作用は高速で進み得る。このようにして、交差平面軸からの液相産物の移動は、多孔性毛細管スペーサ110及び任意の関連する槽140内の液体電解質の濃度及び/又は組成によって「自己調整」し得る。
【0279】
同じように、毛細管、拡散、及び浸透は、自己調整様式で、電気化学反応に起因して、交差平面軸における電解質の組成及び濃度で生じる任意の他の変化を打ち消し得る。これは例えば、液相材料の消費及び交差平面軸における電解質中の液相材料への化学変化を含む。
【0280】
逆に、気相移動は、液体移動に対して直交方向で生じ得る。第1の電極120及び第2の電極130が両方とも多孔性ガス拡散電極である場合、気相反応物又は産物(又は電気化学反応に関わる他の気相材料)は、気体125及び135と多孔性毛細管スペーサ110との間の第1のインタフェース126及び第2のインタフェース136のそれぞれにわたる連続気体125及び135への又はからの移行のそれぞれにより、交差平面軸内又は外に移動し得る。これらの移動は経路200を辿る。電極120、130の長さを下る複数のそのような経路200があり得る。これらの移行は、第1の電極120及び第2の電極130のそれぞれを通して、気体125、135への及びからの毛細管力及び/又は拡散の影響及び制御下で自発的に生じ得る。
【0281】
ガスは、高分圧領域から低分圧領域に自発的に拡散することが周知であり、拡散速度は分圧差によって駆動される。拡散プロセスは典型的には、分圧が両方の場所で等化されるまで続き、速度は分圧差に依存する。したがって、電極反応ゾーンへのガス反応物の供給を選択電極反応ゾーンからのガス産物の除去は、液相反応物又は産物の移動とは別個に生じ得、独立して「自己調整」し得る。更に、一方の電極と関連する反応ゾーンへのガス反応物の供給又は該反応ゾーンからのガス産物の除去は、他方の電極と関連する反応ゾーンへのガス反応物の供給又は該反応ゾーンからのガス産物の除去と別個に生じ得るとともに、独立して「自己調整」することもできる。
【0282】
気相及び液相の反応物及び産物を互いに分離し、互いに干渉しないようにするために、経路を提供するに当たり、好ましい実施形態の電池は、多くの電気化学電池で生じる「多相逆流」の現象を回避又は最小に抑えることもできる。多相逆流は、電池内の気相種の流れと逆行し抵抗する液相種の分子レベル移動を含む。例えば、多くの水電解電池では、電極表面への液相反応物(水)の移動は、電極表面から離れる気相産物(例えば水素及び酸素)の移動に逆行し抵抗し得る。その結果としての多相逆流は、電池動作に深刻な複雑性を生み出し得る。例えば、ガス-液体混合の泡又は発泡体を生成し得、その物質の2相はガス-液体セパレータタンクにおいてもつれを解く必要がある。この種の多相逆流は、相殺流の強度により、例えば、電極が反応物に飢え得るか、又は産物が電極に過度に蓄積し得る限りにおいて、質量輸送制限を生み出す恐れもある。これらの種類の非効率性は、非効率的な電池動作に繋がり、解消にエネルギーを必要とし得る。
【0283】
少なくとも1つの別個の独立し非干渉の経路が、電池内の各気相及び液相反応物及び産物の分子レベル移動(流れ)に存在するガス-液体電池は、「独立経路電池」と呼ぶことができる。多相逆流を回避又は最小にするに当たり、独立経路電池は、多相逆流が生み出す非効率性を回避又は最小に抑えることもできる。実施形態例の電池は独立経路電池であり得る。
【0284】
電池動作は「自己調整」され得る
したがって、電極120又は130において消費又は生成されるガスは、経路200に沿って気体125及び135のそれぞれと直接気相接触し得る。気体125及び135は、システム内の各ガスの大半を含むため、気体125及び135の組成及び圧力は、各電極120及び130への及びからのガス輸送速度を制御し調整し得る。毛細管及び拡散は、自己調整様式で、電気化学反応に起因して、電極及び交差平面軸におけるガスの組成及び濃度で生じる変化を打ち消すように動作し得る。
【0285】
逆に、液相材料は、気相材料が交差平面軸内及び外に移動し得る経路200に直交(即ち90°傾斜)し、経路200から分離された経路190に沿って交差平面軸内及び外に移動し得る。
【0286】
更に、経路190は、液相材料の移行制御に最適な相である連続液相が関わり得、一方、経路200は、気相材料の移行制御に最適な相である連続気相が関わり得る。
【0287】
したがって、実施形態例の重要な特徴は、交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路を分離し得、別に配置し得、独立し得ることである。それらの移行経路にはまた、移行を制御し調整するのに最適な物質相が関わり得る。そうするに当たり、互いへの干渉を回避し得、その結果、独立した調整を受けることができる。
【0288】
別の重要な特徴は、経路190及び200に沿った交差平面軸内及び外の液相材料及び気相材料の移動のそれぞれが、電池内の条件変化を含め、本質的に電池内の条件に応答するプロセスにより制御し得る。即ち、毛細管、拡散、及び浸透プロセスは、存在する濃度及び分圧の差に応答して自発的に変わり得る共通の性質を有する。したがって、これらのプロセスは、「自己調整」し得、これは電池全体を自己調整にさせ得る。
【0289】
例えば、電気化学反応中に消費する必要がある反応物が不十分になる場合、これは、濃度差又は分圧差が大きくなることとして現れ得、そのようなプロセスに必要とされる反応物供給を自動的に上げさせる。逆に、十分な反応物が存在する場合、濃度差又は分圧差は低下し得、それにより反応物の供給は低下し得る。
【0290】
電解質の毛細管誘導移動は、電極に沿って上方に促進し得る
うまく分離されている間、非干渉液相経路及び気相経路は好ましい実施形態の特徴であり、厳密にそのような経路は上記多孔性毛細管スペーサ110内にある必要はなく(液相)、気体(125及び135)と対応する電極(120及び130のそれぞれ)との間のインタフェースにある必要はない(気相)ことを理解されたい。別個であり、干渉しない任意の液相経路又は気相経路は、好ましい実施形態内にあり、有利に採用し得る。そのような経路が別個であり干渉しない場合、それはなお自己調整であり得る。
【0291】
したがって、例えば、上述したように、
図2に示される構造を有する好ましい実施形態では、槽内の液体電解質は、電解質と物理的に接触し得、電極に沿って反応ゾーンまで上方に移動するように誘導され得る。
【0292】
上記タイプの毛細管作用は一般に、電極及びその孔を充填して溢れさせ、それにより、電極への又は電極からのガス移動を妨げ/干渉し、電池のエネルギー効率を多くの場合はかなり低下させる。
【0293】
しかしながら、驚くべきことに、比較的開かれた構造/大きな孔を有する多孔性電極(例えばガス拡散電極)が、電極表面上の液体電解質の薄い層のみの上方の毛細管誘導移動を促進し得ることが発見されている。そのような層は、ガス移動(反応に依存する)への衝突を回避するのに十分に薄いことができる。即ち、そのような移動は、例えば電極の濡れ性を改善し、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質の維持を助けるに当たり有利な効果を有する非干渉液相経路を構成し得る。
【0294】
更に、液体電解質の薄い層の上方の毛細管誘導移動を促進するそのような薄い親水性又は超親水性層で被膜することにより、電極表面を変更し得ることが発見されている。幾つかの場合、並外れて急速な上方流量及び最大カラム高さを達成可能なことが証明されている。これは、電極の濡れ性を改善し、電池の上方の場所に多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質を維持するのを助けるために特に有利であり得る。
【0295】
更に、そのような親水性又は超親水性層は、触媒から作製し得る。即ち、親水性層又は超親水性層は、電極の触媒層であることもできる。液体電極の薄い層でのみ覆われる場合、そのような触媒層は幾つかの有利な効果を示し得る。例えば、ガスは、気泡を生成せずに触媒層により生成し得る。これは、「無泡」ガス生成として知られており、より詳細に以下説明する。
【0296】
更に、この種の親水性又は超親水性層は、独立した非干渉経路を介して反応ゾーン内又は外へのガス移動を促進する「ガスハンドリング構造体」を組み込むように作製し得る。ガスハンドリング構造体についてより詳細に以下説明する。
【0297】
したがって、薄膜として電極内の毛細管に沿って上方に多孔性毛細管スペーサ110又は電極120若しくは130まで移動するように誘導された液体電解質は、
(i)電池内の上方の場所を含む全ての場所で常に、液体電解質で充填された多孔性毛細管スペーサ110及び/又は
(ii)動作中、電池内の上方の場所を含む全ての場所で常に完全に濡れた電極
の維持を助ける非干渉液相経路を構成し得る。
【0298】
好ましい実施形態では、液体の「薄い層」は0.125mm厚未満であり得る。他の例では、1.5mm厚未満、1.0mm厚未満、0.7mm厚未満、0.5mm厚未満、0.3mm厚未満、又は0.2mm厚未満であり得る。他の例では、0.1mm厚未満、0.05mm厚未満、0.025mm厚未満、0.01mm厚未満、0.005mm厚未満、0.001mm厚未満、0.00001mm厚未満、又は0.000001mm厚未満であり得る。
【0299】
したがって、毛細管作用による好ましくは1分当たり0.5cm超の速度での電極表面上の液体電解質100の移動を促進する電極120又は130が提供される。他の例では、移動速度は、1分当たり1cm超、1分当たり1.5cm超、1分当たり2cm超、1分当たり2.5cm超、1分当たり3cm超、1分当たり3.5cm超、1分当たり4cm超、又は1分当たり5cm超であり得る。
【0300】
多孔性毛細管スペーサ110を用いて、液体補充/維持のための非干渉気相経路が可能であり得る
これも上述したように、液体電解質を補充/維持するための気相経路は一般に、存在する他の気相経路に干渉するが、それは驚くべきことに、多孔性毛細管スペーサ110が使用される場合では干渉しない。
【0301】
したがって、
図3に示されるタイプの電池30の実施形態では、多孔性毛細管スペーサ110が電極間セパレータとして採用される場合、水蒸気を導入し、又は気体125又は135の一方又は両方から水蒸気を除去することにより、別個に且つ干渉せずに液体電解質を補充又は維持することが可能であり得ることが発見されている。
【0302】
これは、多孔性毛細管スペーサ110が多孔性毛細管スペーサ内に閉じ込められた液体電解質の連続体を含むためであり得る。他の電極間セパレータは、存在する液体電解質のそのような連続し閉じ込められた液体を有さなくてよい。水蒸気は好ましくは、連続した液体において液化又は連続した液体から気化し得る。更に、水性電解質の連続体において液化した任意の水蒸気は、毛細管力によりスペーサ110に閉じ込め得、それにより、ガス反応物/産物を溢れさせないこと又はガス反応物/産物によるアクセスから電極をブロックしないことを保証する。
【0303】
したがって、水蒸気が気体125又は135に導入/気体125又は135から除去される別個の非干渉経路を介して、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質を補充/維持することも可能である。生成された経路が真に別個であり、他の液相又は気相経路に干渉しない場合、それはなお自己調整であるべきである。
【0304】
電極を濡らすには、電極毛細管現象及び多孔性毛細管スペーサに対する電極の圧縮が関わり得る
上述したように、実施形態の電池の好ましい特徴は、電極120又は130のそれぞれとのインタフェース126a又は136aにおいて十分な液体電解質100が多孔性毛細管スペーサ110から解放されて、反応のためにその電極120又は130を濡らすことである。このために、電極120又は130は、液体電解質100に向けた多孔性毛細管スペーサ110の毛細管作用よりも強い、液体電解質100に向けた毛細管作用をインタフェース126a又は136aを示す必要があり得る。即ち、多孔性毛細管スペーサ110は、液体電解質100を引き込み、それ自体を液体電解質100で充填するために、毛細管作用を採用する。多孔性毛細管スペーサ110に対して狭設された電極120又は130は、液体電解質100を引き込み、多孔性毛細管スペーサ110内に保持された液体電解質100でそれ自体を濡らすために、インタフェース126a又は136aにおいてより強い毛細管作用を必要とし得る。
【0305】
したがって、電極120又は130も、液体電解質100に向けた毛細管作用を示すこともできる。毛細管作用は、インタフェース126a又は136aで充填された多孔性毛細管スペーサ100の毛細管圧よりも高い毛細管圧を含み得る。好ましくは、電極120又は130の毛細管圧は、インタフェース126a又は136aのそれぞれにおいて多孔性毛細管スペーサ100の毛細管圧よりも少なくとも10ミリバール大きい。他の例では、20ミリバール超大きく、50ミリバール超大きく、75ミリバール超大きく、100ミリバール超大きく、200ミリバール超大きく、500ミリバール超大きく、1バール超大きく、2バール超大きい。
【0306】
電極120及び130を多孔性毛細管スペーサ110に対して圧縮することにより、電極濡れ性を促進し得ることが更に発見されている。この種の電極圧縮は、インタフェース126a又は136aのそれぞれにおいて、電極120又は130と多孔性毛細管スペーサ110との間に緊密な接触があることを保証することにより、電極濡れ性の発生及び維持を助け得る。即ち、液相種が多孔性毛細管スペーサ110から電極120又は130にそれぞれ移動する液相経路における混乱を回避し得る。圧力の影響を受けやすい薄膜を使用した実験により、この種の電極圧縮が好ましくは8~20バールの範囲であることが示される。他の例では、電極圧縮は6~8バール、4~6バール、又は2~6バールの範囲であり得る。他の例では、電極圧縮は20~25バール、25~30バール、30~35バール、又は35~50バールの範囲であり得る。
【0307】
電極内、電極、又は電極近傍でのガス毛細管又はガスハンドリング構造体
あまりよく知られていないが、毛細管現象は気相材料でも観測し得る。そのような場合、ガスは、通常は液体で充填されることが予期される狭いスペースに自発的に流入するように誘導され得る。これは例えば、毛細管が水銀プールに浸された場合、見ることができる。管内部の液体水銀のメニスカスは典型的には、管外部の水銀の高さよりも低い高さに移動する。より実用的な用途では、例えば、脱気板又は多孔性疎水性膜による溶液からのガスの自発的な抽出において見ることもできる。ガスを液体から自発的に引き込み、ガス摂取と関連する測定可能な毛細管圧を示す任意の構造体をガス毛細管構造体と呼ぶことができる。
【0308】
ガス毛細管構造体は、電池内の他の分子レベルの液相移動又は気相移動に干渉せず、それらの移動から独立した経路に沿って、交差平面軸内又は外へのガス移動を促進し得る。交差平面軸内又は外へのガス移動を促進するガス毛細管構造体は、第1の電極120内若しくは少なくとも部分的に第1の電極120に組み込まれてもよく、且つ/又は第2の電極130内若しくは少なくとも部分的に第2の電極130に組み込まれてもよく、第1の電極120若しくは第2の電極130に隣接して/その近傍に、第1の電極120若しくは第2の電極130において、若しくは第1の電極120若しくは第2の電極130へ組み込まれてもよく、又は例えば電極-ガス(液体-ガス)境界126b若しくは136b若しくは電極-スペーサ境界126a若しくは136aにおいて、その近傍に、若しくは電極-ガス(液体-ガス)境界126b若しくは136b若しくは電極-スペーサ境界126a若しくは136aへ組み込まれてもよい。電池は、任意選択的に、第1のガス拡散電極内又は第1のガス拡散電極に位置するガス毛細管構造体及び任意選択的に、第2のガス拡散電極内又は第2のガス拡散電極に位置するガス毛細管構造体を含み得る。ガス毛細管構造体は、限定ではなく、ガス摂取のための毛細管圧を示す場合、以下のいずれかを含み得る。
- 狭い間隔で離間された疎水性面、
- 穿孔間隔が狭い疎水性体、
- 脱気板、又は
- 多孔性疎水性膜。
例は、限定ではなく、Sustainable Energy and Fuels、2021年、第5巻、第1280頁に公開されている「The prospects of developing a highly energy efficient water electrolyser by eliminating or mitigating bubble effects」と題する化学公開物における「Breathable(bubble-free)electrodes」と題するセクションに記載されるものを含み得、これは参照により本明細書に援用される。
【0309】
ガス毛細管構造体の特徴は、ガスへの親和性により、それ自体内に1つ又は複数の気体を含み得ることである。そのようなガスは、ガス毛細管構造体が液体電解質に完全に浸漬された場合であっても、バルクガスの別個体として存続し得る。
【0310】
実施形態例では、ガス毛細管構造体内部のそのような気体は、隣接する気体であり得、又は隣接する気体と連続することになり得る。例えば、電極120内の、少なくとも部分的に電極120における、電極120に隣接する、電極120における、又は電極120近傍のガス毛細管構造体は、気体125であるか、又は気体125と連続することなる気体を含み得る。同様に、電極130内の、少なくとも部分的に電極130における、電極130に隣接する、電極130における、又は電極130近傍のガス毛細管構造体は、気体135であるか、又は気体135と連続することなる気体を含み得る。そのような場合、ガス毛細管構造体内の気体は、より大きな気体の一部を形成し得る。例えば、気体125であるか、又は気体125と連続することになるガス毛細管構造体内の気体は、気体125の一部を形成し得る。気体125は、外部ガス導管(例えば127)及び/又はガス貯蔵システム128と気体連通し得る。同様に、気体135であるか、又は気体135と連続することになるガス毛細管構造体内の気体は、気体135の一部を形成し得る。気体135は、外部ガス導管(例えば137)及び/又はガス貯蔵システム(例えば138)と気体連通し得る。一例では、多孔性毛細管スペーサの第1の側面は、第1のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、多孔性毛細管スペーサの第2の側面は、第2のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、第1のガス拡散電極の第2の側面は第1の気体に隣接し、第2のガス拡散電極の第2の側面は第2の気体に隣接する。ガス毛細管構造体は、少なくとも部分的に第1のガス拡散電極内に又は第1のガス拡散電極の第2の側面に位置する。第2のガス毛細管構造体は、少なくとも部分的に第2のガス拡散電極内に又は第2のガス拡散電極の第2の側面に位置し得る。
【0311】
代替的には、ガス毛細管構造体内部の気体はそれ自体、外部ガス導管又は貯蔵システムと独立して気体連通するバルク気体であり得る。例えば、電極120内の、電極120に隣接する、又は電極120の近傍のガス毛細管構造体は、気体125であり、外部ガス導管(例えば127)又は貯蔵システム(例えば128)と直接気体連通する内部気体を含み得る。同様に、電極130内の、電極130に隣接する、又は電極130の近傍のガス毛細管構造体は、気体135であり、外部ガス導管(例えば137)又は貯蔵システム(例えば138)と直接気体連通する内部気体を含み得る。
【0312】
電極内又は電極近傍のガス毛細管構造体の使用への代替は、ガス毛細管効果を必ずしも利用せずにガスの移動を促進する物理的性質を有する「ガスハンドリング」構造体を組み込むことである。ガスハンドリング構造体におけるガス移動の経路も、電池内の他の分子レベルの液相及び気相移動に干渉せず、それらから独立し得る。
【0313】
任意選択的に、第1のガス拡散電極120は、第1のガス拡散電極120内、第1のガス拡散電極120に、又は第1のガス拡散電極120の近傍に、例えば境界126a又は126bに又はその近傍に位置するガスハンドリング構造体を含み得る。また任意選択的に、第2のガス拡散電極130は、境界136a若しくは136b内にガスハンドリング構造体を含み得、又は境界136a若しくは136b若しくはその近傍に位置するガスハンドリング構造体を含み得る。ガスハンドリング構造体の例には、限定ではなく、
(a)低表面エネルギーを有する表面領域を有するもの等、例えば、測定可能な毛細管圧を有するガス毛細管効果が関わらずに、ガスの移動を促進又は加速させる
1.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化ポリマー、Nafion(登録商標)等のような低表面エネルギーを有する材料若しくは
2.ナノスケール超疎水性構造体等を有する表面構造体
を含むか、若しくは構成するもの等のガスが選択的に合体し移行する傾向がある材料若しくは構造体
がある。
例は、限定ではなく、Sustainable Energy and Fuels、2021年、第5巻、第1280頁に公開されている「The prospects of developing a highly energy efficient water electrolyser by eliminating or mitigating bubble effects」と題する化学公開物における「Hydrophobic islands」と題するセクションに記載されるものを含み得、これは参照により本明細書に援用される。又はガスハンドリング構造体の例には、限定ではなく、
(b)超親水性若しくは「超濡れ性」材料若しくは構造体等の合体ガスの脱離を促進する超嫌気性表面領域を有する材料若しくは構造体
がある。例は、限定ではなく、Sustainable Energy and Fuels、2021年、第5巻、第1280頁に公開されている「The prospects of developing a highly energy efficient water electrolyser by eliminating or mitigating bubble effects」と題する化学公開物における「Superwetting electrodes」と題するセクションに記載されるものを含み得、これは参照により本明細書に援用される。
【0314】
ガスハンドリング構造体の特徴は、ガスへの親和性により、それ自体内に1つ又は複数の気体を含み得ることである。そのようなガスは、ガス毛細管構造体が液体電解質に完全に浸漬された場合であっても、バルクガスの別個体として存続し得る。
【0315】
実施形態例では、ガスハンドリング構造体内部のそのような気体は、隣接する気体であり得、又は隣接する気体と連続することになり得る。例えば、電極120内の、電極120に隣接する、又は電極120近傍のガスハンドリング構造体は、気体125であるか、又は気体125と連続することなる気体を含み得る。同様に、電極130内の、電極130に隣接する、又は電極130近傍のガスハンドリング構造体は、気体135であるか、又は気体135と連続することなる気体を含み得る。そのような場合、ガスハンドリング構造体内の気体は、より大きな気体の一部を形成し得る。例えば、気体125であるか、又は気体125と連続することになるガスハンドリング構造体内の気体は、気体125の一部を形成し得る。気体125は、外部ガス導管(例えば127)及び/又はガス貯蔵システム128と気体連通し得る。同様に、気体135であるか、又は気体135と連続することになるガスハンドリング構造体内の気体は、気体135の一部を形成し得る。気体135は、外部ガス導管(例えば137)及び/又はガス貯蔵システム(例えば138)と気体連通し得る。
【0316】
代替的には、ガスハンドリング構造体内部の気体はそれ自体、外部ガス導管又は貯蔵システムと独立して気体連通するバルク気体であり得る。例えば、電極120内の、電極120に隣接する、又は電極120の近傍のガスハンドリング構造体は、気体125であり、外部ガス導管(例えば外部ガス導管127)又は貯蔵システム(例えば貯蔵システム128)と直接気体連通する内部気体を含み得る。同様に、電極130内の、電極130に隣接する、又は電極130の近傍のガスハンドリング構造体は、気体135であり、外部ガス導管(例えば外部ガス導管137)又は貯蔵システム(例えば貯蔵システム138)と直接気体連通する内部気体を含み得る。
【0317】
「無泡」電極
電極の1つ又は複数においてガスを生成する電池例の特徴は、電解質中に目に見える気泡を形成せずに液体電開始値得から直接、バルクガスを生成し得ることである。そのような「無泡」ガス生成は、液体電解質内で気泡の形態でガスを生成する従来のガス生成電池よりも優れた重要な利点を提供し得る。これらの利点には、気泡を形成するために必要なエネルギーを回避することに起因したより高いエネルギー効率及び電極表面を泡がなく、電気化学反応に利用できる状態を維持し得ることがあり得る。特に、気泡が最初に形成される場所であり、気泡が最も強固に付着するにもかかわらず、一般に最も活性が高い触媒部位である表面上の割れ目、ひび、及び欠陥がなく、触媒反応に利用可能な状態を維持し得る。電極活性表面が泡で覆われると、そのような妨害によりガス生成電池のエネルギー効率は低下し得る。
【0318】
したがって、例えば、水電解電池では、液体である水が、カソード電極の活性表面において水素ガスに電気化学的に変換され、アノード電極の活性表面において酸素ガスに電気化学的に変換される。従来の電解電池では、これらのガスは、液体電解質によって囲まれた気泡の形態で生成される。しかしながら、好ましい実施形態の水電解電池では、第1の電極120及び第2の電極130が両方ともガス拡散電極である場合、ガスはそれぞれ、目に見える気泡を形成することなく、関連する気体125及び135と直接合流し得る。即ち、連続気相経路が、交差平面軸における電極120及び130の活性表面と気体125及び135との間にそれぞれ存在し得る。電極活性表面上に新たに形成されたガスは、気泡を決して形成せずにこの連続気相経路に合流し得る。
【0319】
歴史的に、多孔性疎水性膜等のガス毛細管構造体を使用してのみ、電極で無泡ガス生成を達成することが可能であった。
【0320】
しかしながら、実施形態例の特徴は、ガス毛細管構造体のマイクロ構造体及びナノ構造体の存在に頼らない又はその存在を必要としない他の方法で無泡ガス生成を生み出し得ることである。例えば、実施形態例の電池の構造は、電極により無泡でガスを生成し得る。これは幾つかの方法で行うことができる。
【0321】
幾つかの例では、ガス拡散電極(例えばガス拡散電極120又は第2のガス拡散電極130)の表面は、電池動作中、液体電解質の薄い層でのみ覆われ得る。電極表面で生成されたガスは、電解質中に溶解し得、薄い層を通してその表面に移行し得、そこで、隣接する気体(第1の気体125又は第2の気体135)と相互作用する。次いで、ガスは気体(第1の気体125又は第2の気体135)に移り得、それにより泡の形成を回避する。
【0322】
そうするに当たり、ガスは、電極の表面上の水及び液相イオンの移動に干渉しないように、電極から離れて移動し得る。即ち、気泡形成を回避するに当たり、水は常に、電極の表面への妨げのないアクセス及び経路を有し得る。電極から離れて移動する気泡が、電極への水の移動に逆行し打ち消す多相逆流は存在しなくてよい。
【0323】
ガスはまた、気泡の核となるために必要な分圧が非常に低い状態で放出され得、それにより、過剰な分圧を生み出すために必要な高電圧を回避する。
【0324】
電極に又はその近傍にガスハンドリング構造体を組み込むことは、電極活性表面からそれぞれの気体125及び/又は135への直接の無泡気相経路を生み出すことを助けることもできる。そのような経路は、電極表面上の水及び液相イオンの移動とは別個であり得、独立し得、該移動に干渉しない。そのような場合、新たに形成されたガスは電解質中に溶解し得、次いでガスハンドリング構造体の低エネルギー表面と合体して除去され得る。そのようなガスは、泡を形成せずに、これらの低エネルギー表面に沿って電極から離れて各気体125及び135に更に移行し得る。この種の無泡動作は、溶解ガスから気泡の核となるために必要な高分圧を上げることにより泡形成を阻止し得る多孔性毛細管スペーサ110の毛細管圧により促進し得る。即ち、多孔性毛細管スペーサ110において、核となる気泡は、それ自体を押し上げる必要があるのみならず、著しい毛細管圧でそこに保持される液体を毛細管内で押しやる必要もある。
【0325】
当然ながら、無泡ガス生成は、多孔性疎水性膜等のガス毛細管構造体を電極又はその近傍に組み込むことにより達成することもできる。そのような場合、新たに形成されたガスは、泡が形成される前、ガス毛細管作用により自発的に液体電解質から引き出され、ガス毛細管構造体を通り得る。それにより、電極表面上の水及び液相イオンの移動とは別個であり、独立し、干渉しない気相の移動を生み出し得る。
【0326】
有効であるが、電極又はその近傍でのガス毛細管構造体の使用には、そのような構造体が一般に導電性ではないという欠点がある。したがって、電極への電気接続は、ガス毛細管構造体を迂回する必要がある。その結果としての電気接続経路を長くする必要性により、商業的な構成で電池が積層される場合、更に蓄積する追加の電気抵抗が生まれる。追加の抵抗は典型的には、無泡動作の利点に逆行し打ち消す。この問題は、Sustainable Energy and Fuels、2021年、第5巻、第1280頁に公開されている「The prospects of developing a highly energy efficient water electrolyser by eliminating or mitigating bubble effects」と題する化学公開物における
図17に関連するセクションに記載されており、これは参照により本明細書に援用される。
【0327】
逆に、この問題は、ガス毛細管構造体を使用せずに無泡動作を達成する実施形態例では存在しない。そのような例では、電気接続は、直接、電極の(全)面への可能な限り最短の経路により行うことができる。そうするに当たり、無泡動作の利点に逆行する追加の抵抗の制限を引き上げることができ、無泡動作の利点の完全利用が可能になる。その結果生成される電池は、大幅にエネルギー効率的であり得る。
【0328】
無泡である実施形態例は、好ましくは、有泡類似物よりも0.5%超高いエネルギー効率を示し得る。他の例では、エネルギー効率の改善は1%超、2%超、5%超、10%超、15%超、又は20%超であり得る。
【0329】
好ましい実施形態の電池は、エネルギー効率の増大を示す「独立経路電池」を構成し得る
好ましい実施形態の電池における特徴の多くが、電池内の気相種又は液相種の移動(流れ)に別個の独立した非干渉分子レベル経路を提供することが理解されよう。そうするに当たり、好ましい実施形態の電池は「独立経路電池」であり得る。
【0330】
「独立経路電池」は、電池内の個々の液相及び気相反応物及び産物の各々の移動(流れ)に別個の独立した少なくとも1つの経路を提供する気相電気化学電池であって、そのような経路は互いに干渉せず又は互いを妨げない、気相電気化学電池として定義される。
【0331】
経路は、これに関連して、十分な反応物が電池外部から提供される場合且つ十分な産物が電池外部に除去される場合、電気化学反応を無期限で維持することが可能な、電池内の分子レベルでのルート又は1組のルートとして定義される。
【0332】
互いに干渉せず又は互いを妨げないことにおいて、別個の独立した液相を選択気相反応物及び産物のこの種の流れは本質的に効率的である。その結果、独立経路電池は、気相及び液相反応物及び産物の流れの全てが別個で独立しているわけではない同等の電気化学電池と比べて高いエネルギー効率を示し得る。そのようなより高いエネルギー効率は、気相及び液相反応物及び産物の流れの全てが別個で独立しているわけではない電池と比べて、均等条件下で、電気合成電池では必要とされる電圧(第1の電極と第2の電極との間に印加される)がより低いこと又は電気エネルギー電池では生成される電圧(第1の電極と第2の電極との間で生成される)がより高いこととして現れ得る。
【0333】
独立経路電池は、より高いエネルギー効率を実現するために以下の特徴の全て又は幾つかを利用し得る:(1)反応ゾーン/交差平面軸内及び外への別個の独立した液相又は気相分子レベル移行、(2)電極に沿った又は電極の上方への非干渉毛細管誘導移動、(3)電池内の液体補充/維持のための非干渉気相経路、(4)非干渉経路が関わる毛細管誘導電極濡れ性、(5)多孔性毛細管スペーサに対する電極の圧縮により生み出される非干渉経路が関わる毛細管誘導電極濡れ性、(6)ガスハンドリング又はガス毛細管構造体を介した非干渉気相移動、及び/又は(7)無泡電極上の非干渉気相及び液相移動。エネルギー効率の増大は、累積的に、これらの効果の幾つか又は全てに起因し得る。
【0334】
実施形態例の「独立経路電池」は、好ましくは、少なくとも1つの反応物又は産物の流れが干渉する同等の類似する電池よりも0.5%超高いエネルギー効率を示し得る。他の例では、エネルギー効率の改善は1%超、2%超、5%超、10%超、15%超、又は20%超であり得る。
【0335】
多孔性毛細管スペーサ110の毛細管関連特徴
好ましい実施形態の更なる特徴は、多孔性スペーサ110における毛細管現象である。即ち、多孔性毛細管スペーサ110は液体電解質を含み、この液体電解質は、毛細管力により多孔性毛細管スペーサ内にしっかりと保持される。例えば、多孔性毛細管スペーサ110の先に述べた例、即ちPall Corporationにより供給される平均孔径8μmを有するポリエーテルスルホン材料フィルタは、毛細管力により、液体電解質、例えば水溶液電解質を引き込み、その電解質を材料内に保持し得る。
【0336】
無期限期間にわたって途切れずに又は連続して動作するために、多孔性毛細管スペーサ110は、それ自体が液体電解質100で途切れずに又は連続して充填された状態を保つのに十分な毛細管現象を必要とし得る。
【0337】
そのような多孔性毛細管スペーサ110は、以下を含む他の性質を示す必要もあり得る。
(1)毛細管圧及び「泡立ち点」:多孔性毛細管スペーサ110の毛細管圧、より具体的には「泡立ち点」は適宜大きい必要があり得る(理に適った範囲内で且つ本明細書で論考される他の要件を考慮して)。毛細管圧は、多孔性毛細管スペーサ110内の平均毛細管から液体電解質100を押し出すために必要なガス圧を表す。泡立ち点は、多孔性毛細管スペーサ110内の最大毛細管から液体電解質100を押し出すために必要なガス圧を表す。これらの圧力は、気体125及び135における小さな又は一時的な圧力差が液体電解質100を多孔性毛細管スペーサ110から押し出し又は押し下げることができないことを保証するのを助けるために十分に高い必要があり得る。例えば、
図1~
図3に示されるタイプの電池のいずれのポイントにおける多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質の損失も、電気化学反応を遅らせるか、又は停止させ(電極間の任意のポイントに液体電解質がない場合)、且つ/又はガス交差に繋がる(スペーサの任意のポイントで、存在する気体間にバリアとして作用する液体がない場合)恐れがある。
(2)最大カラム高さ:上述したように、多孔性毛細管スペーサ110は、それ自体内でカラム高さの液体電解質100を無期限で維持する必要があり得る。このカラム高さは、一実施形態例の電池の上部まで及ぶ必要があり得、それにより、多孔性毛細管スペーサ110が電池内の全てのポイントにおいて液体電解質で充填されることを保証する。これは、最大電池高さが、仮説的に無限の高さを有する場合、多孔性毛細管スペーサ110によって維持することができる液体電解質100の最高カラム高さである多孔性毛細管スペーサ110の最大カラム高さ以下である場合のみ保証することができる。即ち、電極-スペーサ-電極組立体139の全ての場所で、電極間に液体電解質100が常に存在するためには、多孔性毛細管スペーサ110における液体電解質100の最大カラム高さは、電池の最高点以上、即ち多孔性毛細管スペーサの場所での電池の高さ以上である必要があり得る。実施形態例の電池では、多孔性毛細管スペーサ110及びスペーサ内の液体電解質100は、気体、例えば
図1~
図3の気体125と135との間にあり得る。その場合、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100は、例えば
図1~
図3の気体125からのガスが気体135内のガスと交差し混合しないようにし、且つ逆の場合も同様にするために必要であり得る。電気化学電池では、この現象は「ガス交差」として知られており、エネルギー効率の損失、不純ガスの生成又は消費、及び/又は安全上の問題に繋がる恐れがある。最大カラム高さは、第1の電極120及び第2の電極130よりも高い高さである必要もある。
(3)流量:液体電解質100が、毛細管の影響下で、充填された多孔性毛細管スペーサ110内部を移動する上方流量は、電池動作中を含め、多孔性毛細管スペーサが液体電解質100で充填された状態を常に保つのに十分である必要があり得る。例えば、電気化学反応が反応物として水を消費する
図1又は
図2に示される構造を有する電池では、多孔性毛細管スペーサ内の全ての高さでの毛細管駆動流量は、電池が最大率で動作しているときに消費される水を補充可能でなければならない。
【0338】
多孔性毛細管スペーサ110の特定の毛細管特徴-毛細管圧及び泡立ち点
毛細管圧は、毛細管内のメニスカスにわたる圧力差として定義される。即ち、毛細管から液体電解質を押し出すために必要な圧力である。毛細管圧の最も一般的な数式はヤング・ラプラスの式であり:
【数1】
式中、ΔPは圧力降下であり、ηは液体の表面張力であり、θは液体と固体との間の接触角であり、rは孔半径である。
【0339】
この式を使用して、一連の多孔性毛細管スペーサ110の例、即ち平均孔径0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μmを有するPall Corporationにより供給される多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタでの6M KOH電解質の毛細管圧は、1.66atm(0.45μm平均孔径の場合)、1.08atm(1.2μm平均孔径の場合)、0.27atm(5μm平均孔径の場合)、及び0.22atm(8μm平均孔径の場合)であると計算された。
【0340】
式(2)は、孔半径/孔径が大きいほど、孔内部で液体を変位するために必要な圧力が低くなることを示す。したがって、多孔性毛細管スペーサにおける最も重要なタイプの毛細管圧は「泡立ち点」である。これは、多孔性毛細管スペーサの最大孔から液体を変位させるために必要な圧力である。上記一連の多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタの泡立ち点は、毛細管フローポロメータを使用して測定し、0.91atm(0.45μm平均孔径の場合)、0.48atm(1.2μm平均孔径の場合)、0.13atm(5μm平均孔径の場合)、及び0.11atm(8μm平均孔径の場合)であることが判明した。
【0341】
上述したように、泡立ち点が高いと、気体、例えば
図1~
図3の気体125又は135における小さな又は一時的な圧力差が、液体電解質を多孔性毛細管スペーサから押し出し又は押し下げることができないことを保証するのに役立つ。したがって、仮に、
図1に示される構造の電池で液体電解質100として6M KOHを使用するとともに、指定平均孔径約8μmを有する多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、電池10は、気体125又は135のいずれも、動作中、液圧又は他の気体の圧力よりも0.11atm以上の圧力を決して有さない(そうでなければ、液体電解質が最大孔から押し出されることになるため)ことを保証するように設計される必要がある。しかしながら、指定平均孔径0.45μmを有する多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、多孔性毛細管スペーサ110からの液体電解質100の押し出しが開始されずに、0.91atmまでの圧力差を維持することができる。
【0342】
泡立ち点における上記傾向は、べき法則としてモデリングし得、大きな平均孔径での泡立ち点は0.5086×(平均孔径)-0.772として計算し得る。この測定により、ポリエーテルスルホン材料の多孔性毛細管スペーサ110での平均孔径400μmが、0.005atm(5ミリバール)の泡立ち点を生成すると予期し得、これは、電池内の独立性を保証することが実際に困難である閾値を提供すると見なすことができる気体125と135との間の低圧力差である。
【0343】
ポリエーテルスルホン材料の多孔性毛細管スペーサ110での平均孔径400μmは、毛細管圧の上記傾向の外挿により毛細管圧0.011atm(11ミリバール)に対応する。
【0344】
したがって、液体電解質で充填された場合、多孔性毛細管スペーサ110の実施形態例は、好ましくは、11ミリバールを越える毛細管圧を有する。他の例では、多孔性毛細管スペーサ110は、15ミリバール超、20ミリバール超、30ミリバール超、50ミリバール超、80ミリバール超、100ミリバール超、500ミリバール超、1バール超、又は2バール超の毛細管圧を有し得る。
【0345】
したがって、液体電解質で充填された場合、多孔性毛細管スペーサ110の実施形態例は、好ましくは、5ミリバール超の泡立ち点を有し得る。他の例では、多孔性毛細管スペーサ110は、10ミリバール超、15ミリバール超、20ミリバール超、50ミリバール超、100ミリバール超、250ミリバール超、500ミリバール超、1バール超、又は2バール超の泡立ち点を有し得る。
【0346】
多孔性毛細管スペーサ110の特定の毛細管特徴-最大カラム高さ
理論による拘束を望まずに、仮説的に無限の高さの毛細管により維持することができる液体電解質の最大カラム高さはジュランの法則により与えられ得:
【数2】
式中、hはカラム高さであり、ηは液体-空気表面張力(力/単位長さ)であり、θは多孔性毛細管スペーサ材料自体との液体電解質の接触角であり、ρは液体電解質の密度(質量/体積)であり、gは重力に起因した局所加速度であり(長さ/時間の二乗)、rは毛細管の平均半径である。ジュランの法則が特に毛細管に関連し、多孔性毛細管材料に関連しないことに留意されたい。しかしながら、多孔性毛細管材料の最大カラム高さの傾向を外挿するための係数の提供に合理的に使用し得る。
【0347】
見て取ることができるように、ジュランの法則は、孔径が小さく、液体電解質との多孔性毛細管スペーサとの接触角が低いほど、液体電解質100の高いカラム高さを多孔性毛細管スペーサ110内で維持し得ることを示す。
【0348】
上記一連の多孔性毛細管スペーサ110の例、即ち、Pall Corporationにより供給される平均孔径0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μmを有する多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタにより維持することができる最大カラム高さを測定した。フィルタは親水性であり、クラスII脱イオン水と66.6°の接触角及び6M KOHアルカリ溶液と70.3°の接触角を示した。測定値は、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタが、上記フィルタの最も低い最大カラム高さを維持したことを示し、これは、クラスII脱イオン水で19.6cm及び6M KOHで16.6cmであった。平均孔径が小さなフィルタほど、はるかに高い最大カラム高さを含め、高い最大カラム高さを維持した。
【0349】
したがって、平均孔径約8μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが、
図1に示される構造を有する電池例において多孔性毛細管スペーサ110として使用され、それと共に6M KOHが液体電解質100として使用された場合、電池は、第1の電極120及び第2の電極130を含め、約16.4~16.5cmまで高さを安全にのばすことができた。即ち、多孔性毛細管スペーサは、16.4~16.5cmまでの高さにおいてガス交差へのバリアとして安全に採用することができた。孔が小さな材料ほど、はるかに高い最大カラム高さを含め、高い最大カラム高さを提供する。多孔性毛細管スペーサ及び電極の幅についての制限は、幅に沿った全てのポイントで多孔性毛細管スペーサ、即ちポリエーテルスルホン多孔性毛細管スペーサが6M KOHへのアクセスを有する限り、存在しない。
【0350】
前のセクションで記したように、ポリエーテルスルホン材料の多孔性毛細管スペーサ110での平均孔径約400μmは、0.005atm(5ミリバール)の泡立ち点を生成すると予期し得、これは、実際に電池で不定期に保証することが困難である閾値を提供し得る気体125と気体135との間の低圧力差である。
【0351】
そのような平均孔径400μmに対応し得る最大カラム高さを特定するために、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタの最大カラム高さをジュランの法則によって予測される差異係数でスケーリングした。この測定により、6M KOHで充填された、平均孔径約400μmのポリエーテルスルホン材料の多孔性毛細管スペーサ110は、その端部150の上0.4cmのところに最大カラム高さを有すると予期し得る。これは非常に小さな毛細管効果に相当する。
【0352】
したがって、実施形態例では、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質の最大カラム高さは、好ましくは、0.4cm超であり得る。他の例では、液体電解質の最大カラム高さは、1cm超、3cm超、6cm超、8cm超、10cm超、12cm超、14cm超、16cm超、18cm超、20cm超、25cm超、30cm超、50cm超、又は100cm超、であり得る。
【0353】
多孔性毛細管スペーサ110の特定の毛細管特徴-流量
液体電解質が、毛細管現象の影響下で、既に充填された多孔性毛細管スペーサ内部を上方に流れる速度は、ダルシーの法則により与えられ:
【数3】
式中、Qは単位時間当たりの流量であり、kは多孔性毛細管スペーサの透過性であり、Aは多孔性毛細管スペーサの断面積であり、ηは液体電解質の粘度であり、Lは、流量が求められる液体槽よりも上の高さ又は槽が存在しない場合には多孔性毛細管スペーサの底端部よりも上の高さであり、ΔPは高さLにわたる圧力降下である。
【0354】
L.J.KlinkenbergerによるAmerican Petroleum Institute,Drilling and Production Practice、第200-213頁、1941年1月、ニューヨークにおける「The Permeability of Porous Media to Liquids and Gases」と題する広く許容されている研究により、多孔性媒体中の液体の流量を記述するポアズイユの式は、
【数4】
により与えられ得、式中、Qは単位時間当たりの全体流量であり、1/mは液体を輸送可能な孔の割合(「屈曲係数」と呼ぶことができる)であり、nは毛細管数であり、rは平均孔半径であり、μは液体電解質の粘度であり、Lは、流量が求められる液体槽よりも上方の高さであり、ΔPは高さLにわたる圧力降下である。
【0355】
すると、多孔性材料の透過性(k)及びその有孔率(φ)は以下のように表され得:
【数5】
式中、kは多孔性材料の透過性であり、φは有孔率であり、1/mは液体を輸送可能な孔の割合(屈曲係数)であり、nは毛細管数であり、rは平均孔半径であり、Aは多孔性材料の断面積である。
【0356】
【0357】
更に、メニスカスにわたる圧力差はヤング・ラプラスの式:
【数7】
により与えられ、式中、ΔPは圧力降下であり、ηは液体の表面張力であり、θは液体と固体との間の接触角であり、rは孔半径である。
【0358】
ダルシーの式に代入すると、
【数8】
が与えられ、式中、Qは単位時間当たりの流量であり、1/mは液体を輸送可能な孔の割合(屈曲係数)であり、Aは多孔性毛細管スペーサの断面積であり、φは有孔率であり、rは平均孔半径であり、ηは液体の表面張力であり、θは液体と固体との間の接触角であり、ηは液体電解質の粘度であり、Lは液体槽よりも上の高さである。
【0359】
孔径0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μmの上記ポリエーテルスルホン材料フィルタを含み、液体電解質として6M KOHが充填された多孔性毛細管スペーサ110の場合:
- 多孔性毛細管スペーサ110の断面積(A)は、顕微鏡を使用して測定し得、
- 多孔性毛細管スペーサ110の有孔率(φ)は以下のように測定し得る。空の多孔性毛細管スペーサ110の重量を測定し、次いで液体電解質を充填し、再び重量を測定する。差は、多孔性毛細管スペーサ110の間隙容積を埋める液体の重量を提供する。その重量は体積に変換され、次いで、顕微鏡で測定された多孔性毛細管スペーサの正味体積と比較される。
- 多孔性毛細管スペーサ110の平均孔半径(r)は、毛細管フローポロメータを使用して測定し得る。
- 関連温度での6M KOH電解質の表面張力は、公開データから取得し得る(Bull.Soc.Chem.France、Part 1.1980年、第9-10巻、第I386-I39頁におけるP.Ripoche及びM.Rolinによる科学論文参照、これは参照により本明細書に援用される)。
- 多孔性毛細管スペーサ110のポリエーテルスルホン材料との6M KOH電解質の接触角(θ)は、標準研究室ゴニオメータ機器を使用して測定し得る。
- 関連温度での6M KOH電解質の粘度(μ)は、公開データから取得し得る(米国のOccidental Chemical CorporationによるCaustic Potash Handbook、2018年3月におけるグラフ7参照、これは参照により本明細書に援用される)。
- 槽よりも上(又は槽がない場合には多孔性毛細管スペーサの底端部よりも上)の高さ(L)を測定し得る。
【0360】
したがって、予測流量を実測流量と比較することによって決定される、流れに参加する孔の割合を記述する屈曲係数1/mと共に式(8)を使用して、特定の高さでの多孔性毛細管スペーサ110内の毛細管流量をモデリングすることが可能である。
【0361】
特定の高さでの上記ポリエーテルスルホン材料フィルタの1つの流量を測定するために、1cm幅のフィルタの乾燥試料を選択された長さにカットし、吊された物体の重量変化を測定することが可能なはかりから吊した。吸収パッドをフィルタの上部に取り付け、はかりに固定した。次いで、フィルタ及び吸収パッドをパラフィルムで巻き、実験中のいかなる液体蒸発も阻止した。その後、フィルタの底端部を6M KOHの槽に浸し、毛細管作用によりフィルタを充填させた。時間に伴う重量変化のデータを収集した。フィルタが完全に充填された時点から、流量についてデータを分析し、フィルタが完全に充填された後、重量vs時間データは線形になった。流量は、単位時間当たりの重量変化であった。
【0362】
図5は、孔径0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタで構成された多孔性毛細管スペーサ110内の室温の6M KOH液体電解質でのこのように測定された流量(黒点)及びモデリングされた流量(中空正方形)のグラフを示す。係数1/m=1/1.7=58.8%が、試験された全試料で最良適合を提供することが判明した。見て分かるように、モデリングされた結果は、多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタで構成された多孔性毛細管スペーサ110の各々で、測定結果との良好な一致を提供する。
【0363】
先に記したように、多孔性毛細管スペーサ110内の毛細管流量は、動作中を含め、無期限で多孔性毛細管スペーサ110が液体電解質100で充填された状態を保つのに十分である必要があり得る限りにおいて、重要である。例えば、電気化学反応が反応物として水を消費する場合、毛細管駆動流量は、電池が最大率で動作するとき、消費される水を補充することが可能である必要があり得る。そうすることができない場合、電池は無期限で動作することが可能ではないことがある。
【0364】
しかしながら、
図5のグラフで分かるように、多孔性毛細管スペーサ110内の流量は一般に、高さの増大に伴って低下する。したがって、電気化学反応(及び蒸発等の外部要因)により必要とされる流量が、電極の最大高さを決め得る。
【0365】
これは以下の例に示すことができる。
図1又は
図2に示される構造を有するゼロギャップアルカリ水電解電池等の、電気化学反応中に水を消費するゼロギャップ電池では、総電流10Aは、1分当たり水0.056gの全体消費に対応する。多孔性毛細管スペーサ及び関連する電極が40cm
2サイズであるべき(即ち、電池は電流密度0.25A/cm
2で動作する)場合、多孔性毛細管スペーサは、電極-スペーサ-電極組立体139の1cm
2毎に、1分当たり水0.056/40=0.0014gを供給可能である必要がある。これは、電極の最大高さの1cm
2まで含む。
【0366】
図5(d)のグラフを参照すると、6M KOHで充填された平均孔径8μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが、多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、1分当たり水0.0014gの供給速度は、約20cmの最大電極高さまでしか維持できない。したがって、高さ20cmの電極-スペーサ-電極組立体139は、無期限で動作すると予期し得る。そのような電池は高さ20cm且つ幅2cm(全体面積40cm
2)であり得る。高さ20cm未満であり、より幅広の組立体139も無期限で動作可能である。
【0367】
しかしながら、6M KOHで充填された平均孔径5μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが、多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、1分当たり水0.0014gの供給速度は、約15cmの最大電極高さまでしか無期限で維持できない(
図5(c)に示されるように)。即ち、この種の電池内の電極は、無期限で動作するためには、15cm以下の高さである必要がある。
【0368】
更に、6M KOHで充填された平均孔径1.5μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが、多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、1分当たり水0.0014gの供給速度は、約6cmの最大電極高さまでしか無期限で維持できない(
図5(d)に示されるように)。その場合、電極の最大高さは、電池が無期限で動作すべき場合、約6cmでしかあり得ない。
【0369】
更に、6M KOHで充填された平均孔径0.45μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタが、多孔性毛細管スペーサ110として使用された場合、1分当たり水0.0014gの供給速度は、約4cmの最大電極高さまでしか無期限で維持できない(
図5(d)に示されるように)。その場合、電極の最大高さは約4cmである。4cmを越える高さの電極は、最大電極高さで1分当たり水0.0014gの所要流量を無期限で維持することができない。
【0370】
したがって、多孔性毛細管スペーサ110内の毛細管流量が高いと、好ましい実施形態の電池の直径に対する影響は潜在的に限られ得る。高流量の多孔性毛細管スペーサ110は、電池設計に関してより大きな自由度を提供し得る。
【0371】
実用的な産業の視点から、8cmよりも高い電極が好ましい。したがって、8cmを越える高さで1分当たり水0.0014gの流量を提供可能な多孔性毛細管スペーサ110が好ましい。
【0372】
そのような多孔性毛細管スペーサ110の平均孔径は、上記平均孔径の関数として上記最大高さをプロットすることにより決定し得る。そのようなプロットは、平均孔径が2μm超である必要があることを示す。即ち、8cm超の高さで1分当たり水0.0014gの流量を提供可能な多孔性毛細管スペーサ110は、2μm超の平均孔径有するように計算される。
【0373】
したがって、多孔性毛細管スペーサ110の好ましい実施形態は、好ましくは、2μm超の平均孔径を有する。別の例では、平均孔径は400μm未満である。別の例では、平均孔径は2μm超且つ400μm未満であり得る。他の例では、平均孔径は、4μm超、6μm超、8μm超、10μm超、20μm超、又は30μm超であり得る。他の例では、平均孔径は4μm超且つ400μm未満、6μm超且つ400μm未満、8μm超且つ400μm未満、10μm超且つ400μm未満、20μm超且つ400μm未満、又は30μm超且つ400μm未満であり得る。他の例では、多孔性毛細管スペーサの平均孔径は、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、又は約10μmであり得る。
【0374】
上記測定及び計算グラフが、室温での毛細管現象のみの影響下の流量を記述することに留意されたい。したがって、両方とも流量が高くなることに寄与し得る拡散又は浸透の影響は含まない。更に、式(8)は、表面張力及び接触角との直接関係を示すが、粘度とは逆の関係を示す。粘度は通常、温度が高くなるにつれて急激に低下し、一方、表面張力及び接触角ははるかに小さな変化を示すため、流量はより高い温度ではるかに高くなり得る。したがって、これらの流量は、室温よりも高い温度での動作で、電池を設計する目的で最小値であると妥当に見なすことができる。
【0375】
毛細管現象は、非常に低いイオン抵抗/以上に高いイオン伝導率を有する多孔性毛細管スペーサ110に影響し得る
上述したタイプのポリエーテルスルホン材料フィルタで構成された多孔性毛細管スペーサ110は、約145μmの均一な厚さを有した。測定値により、6M KOH電解質で充填された場合、2つの密に狭設された電極間のそのような多孔性毛細管スペーサのイオン抵抗は、室温で33~53mΩcm2であることが示された。これらの値は、従来の市販の電極間膜セパレータのイオン抵抗の1/4から1/8である。電気合成又は電気エネルギー電池での一般的な動作温度である80℃では、これ15~23mΩcm2と同程度に低下した。
【0376】
これらのポリエーテルスルホン材料フィルタのイオン抵抗が低い原因は、75~85%である有孔率及び孔(空)容積が、毛細管現象によりスペーサ内にしっかりと保持される高導電率の6MKOH電解質で占められることから導出されることは判明した。6M KOHの145μm厚層のイオン抵抗は、室温でわずか約22mΩcm2であり、80℃で約10mΩcm2である。したがって、毛細管力により多孔性毛細管材料に引き込まれてそこに保持された場合、6M KOH電解質は、非常に低いイオン抵抗を多孔性毛細管材料に付与した。多孔性毛細管材料の有孔率が高いほど、6M KOHによって占められる割合は大きくなり、その全体イオン抵抗は低下した。したがって、最大有孔率(84.6%)を有する多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタは、6M KOH電解質が染み込んだ場合、最も低いイオン抵抗を示した(室温で33mΩcm2及び80℃で15mΩcm2)。
【0377】
それと比較して、AgfaのZirfon PERL(登録商標)膜ははるかに低い有孔率を有し、したがって、はるかに高いイオン抵抗を有する。ChemoursのNafion(登録商標)115及び117膜セパレータは本質的に、イオン伝導性であり、全く多孔性ではない。それらのイオン抵抗は、膜を通る移行を促進するイオン性基を含むポリマー構造の関数である。
【0378】
したがって、実施形態例の電池は、従来のゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池と比較して、はるかに低いイオン抵抗を提供し得、ひいてははるかに高いエネルギー効率を提供し得る。これらの改善は、電解質の低イオン抵抗を利用する多孔性毛細管スペーサ110の毛細管現象から導出し得る。
【0379】
実施形態例では、多孔性毛細管スペーサは、好ましくは、60%超の有孔率を有し得る。他の例では、多孔性毛細管スペーサは、70%超、80%超、又は90%超の有孔率を有し得る。
【0380】
液体電解質100が充填された好ましい実施形態の多孔性毛細管スペーサ110は、室温で140mΩcm2未満のイオン抵抗を示し得る。他の例では、イオン抵抗は、270mΩcm2未満、200mΩcm2未満、180mΩcm2未満、160mΩcm2未満、又は150mΩcm2未満であり得る。他の例では、イオン抵抗は、室温で130mΩcm2未満、120mΩcm2未満、110mΩcm2未満、100mΩcm2未満、90mΩcm2未満、80mΩcm2未満、70mΩcm2未満、60mΩcm2未満、50mΩcm2未満、40mΩcm2未満、を選択30mΩcm2未満であり得る。
【0381】
多孔性毛細管スペーサ110内の毛細管現象は、非常に低いガス交差に繋がり得る
多くの電気化学反応では、一方の電極(例えば
図1~
図3における第1の気体125)と関連するガスが多孔性毛細管スペーサをわたって多孔性毛細管スペーサの逆側に移動し、そこで他方の電極(例えば
図1~3における第2の気体135)と関連するガスと混合すること及び逆のことを最小に抑えることが極めて重要である。先に記したように、この現象は「ガス交差」として知られており、その発生の程度に比例して電池のエネルギー効率は低下する。特定の電池では潜在的な安全性の問題も呈する。
【0382】
例えば、
図1~
図3に示される構造を有するゼロギャップ水電解電池では、カソードで生成された水素ガスは、好ましくは、アノードで生成された酸素ガスによる汚染が可能な限りない状態を保ち、逆も同様である。これは、>4.6%を含む水素又は>3.8%を有する水素が爆発性混合物である(そのような電解電池の通常の動作温度である80℃で)ためである。
【0383】
従来のゼロギャップ水電解電池では、ガスは、電極間セパレータ膜の両側で液体電解質中(即ち陽極液及び陰極液中)の気泡として生成される。そのようなシステムでは、ガス交差は2つの生じ得るメカニズムによって生じ得る:(A)電極間セパレータ膜を通り逆側に行く液体電解質に溶解したガスの拡散(「拡散ベースの交差」と呼ばれる)及び(B)両側間のガス及び気泡を含む液体の物理的移動(「交差透過ベースの交差」と呼ばれる)。交差透過ベースの交差は、泡の形成及び解放から生じるものを含め、セパレータにわたる一時的な変動する圧力差により生じ得る。
【0384】
典型的にはZirfon PERL(登録商標)電極間セパレータを採用する市販のアルカリ電解電池では、交差透過ベースの交差が圧倒的に優勢なメカニズムである。両側(即ち陽極液と陰極液との)間の極めて小さな圧力差であっても、従来のゼロギャップアルカリ電解電池内の交差は大方、交差透過ベースの交差に起因する。例えば、薄いZirfon PERL(登録商標)膜の両側間の圧力差をわずか1%に制限することができる場合、6バールの全体圧と共に200mA/cm2で動作する場合、酸素産物流への水素の交差透過ベースの交差は~2%であり、一方、付随する拡散ベースの交差はわずか~0.3%である。Zirfon PERL(登録商標)セパレータが、平均孔径わずか~0.14μmという比較的小さな孔を有するのはこのためである。この種の小さな孔は、ガス交差を最小に抑えるために、膜内及び膜を通る、典型的には水性6M KOHである液体電解質の移動度を最小に抑える(H.I.Leeら著、The Synthesis of a Zirfon PERL(登録商標)-type Porous Separator with Reduced Gas Crossover for Alkaline Electrolyzer、Int J.Energy Res.2020年、第44巻、第1875-1885頁に教示されているように)。拡散ベースの交差のレベルは非常に低い。何故ならば、6M KOH中の高レベルのK+及びOH-イオンが、溶解ガスを「塩析」するためである。即ち、6M KOHは、水素及び酸素のような溶解ガスに対して非常に低い溶解性を有する。6M KOH中の溶解酸素及び水素の拡散率も非常に低い。
【0385】
逆に、市販のPEM電解電池では、典型的に採用されるChemoursのNafion(登録商標)は非多孔性である。これは、ガス交差のメカニズムとして交差透過の交差をなくす。何故ならば、そのような電池で使用される脱イオン水は、膜を自在に透過することが全くできないためである。しかしながら、拡散ベースの交差はなお可能であり、水素及び酸素のようなガスの溶解率及び拡散率の組合せは、80℃の脱イオン水では約40~120倍であるため、拡散ベースの交差は高レベルのガスを膜にわたって輸送する。したがって、市販のPEM電解電池は一般に、市販のアルカリ幕よりも高いガス交差を有する。
【0386】
図1に示される等の実施形態例の電池は、アルカリ電解電池及びPEM電解電池の両方の利点を、これらのいずれの欠点も有することなく享受する。したがって、交差透過ベースの交差は、実施形態例の電池では基本的に不可能である。何故ならば、電極外部に自由液体電解質体がないためである:それらの容積はそれぞれ気体125及び135で占められる。代わりに液体電解質は、多孔性毛細管スペーサ110に沿って下から供給される。即ち、実施形態例の電池には陽極液又は陰極液が存在せず、したがって、多孔性毛細管スペーサ110を通って一方の側から他方の側に自由に透過する液体電解質体は存在しない。実際に、高有孔率の多孔性毛細管スペーサの使用を可能にするのは、この特徴である。
【0387】
さらに、高イオン濃度を有する電解質を使用するに当たり、実施形態例の電池は、酸素及び水素のようなガスの6M KOH中の非常に低い溶解率及び拡散率からも恩恵を受ける。したがって、生じる拡散ベースの交差は低い。
【0388】
したがって、実施形態例の電池は、同等の条件下で同等の市販のアルカリ又はPEM電解電池よりもはるかに低いガス交差を示す。
【0389】
それにより、ガス交差により電極間セパレータの選択及び設計に対して課される制約は大方なくなる。したがって、実施形態例の電池は、大きなガス交差なしで多孔性毛細管スペーサ110内において高い流量を生み出す大きな孔径を採用し得る。先に記したように、実施形態の多孔性毛細管スペーサ110は好ましくは、2μm超の平均孔径を有し、一方、Zirfon PERL(登録商標)での平均孔径はわずか0.14μmである。これは考えられないことであり、従来の電極間セパレータ(先に記したような)の分野での教示とは正反対である。しかし、独自の電池構造により、実施形態例の電池では可能である。
【0390】
実施形態例の電池の電池構造は、多孔性毛細管スペーサ110で大きな平均孔径の使用を可能にするのみならず、先のセクションに記したように、非常に低いイオン抵抗にも繋がる。
【0391】
さらに、多孔性毛細管スペーサ内部の液相水の移動度を最大化もする。そうするに当たり、従来の電極間セパレータが一般に、ガス交差を最小に抑えるために、セパレータ内の電解質の移動度を強く制限する恐れがあるという背景セクションに記した課題を解消する。これを理由として、ゼロギャップ水電解電池内の電極は、水反応物を電極外部から引き込む必要があり得、それにより、電極に向かって移動する液相水が電極から離れて移動する気相泡に逆行する多相逆流を生じさせる。実施形態例では、多孔性毛細管スペーサ110は、特に、必要とされる水及びイオン反応物をセパレータ内部から供給できるようにされ、それにより、そのような多相逆流を回避し、目立ったガス交差なしでそうする。即ち、独自の電池構造により、実施形態例の多孔性毛細管スペーサは、従来のゼロギャップ水電解装置で生じ得る多相逆流を回避することが可能である。これは、本発明及び本発明の新規性の本質である。
【0392】
低ガス交差の別の利点は、従来のアルカリ電解電池で可能であり得るよりも高い全体絶対圧での首尾良い動作を可能にし得ることである。これは、安全限度に達するまでに、絶対圧力が増大するにつれて、同等の従来の電池の場合よりもはるかに高い交差増大の余地があり得るためである。
【0393】
「ベンチマークガス交差」とは、電池が室温、大気圧、固定200mA/cm2で動作するという特定の条件下での30分後のガス交差の程度である。
【0394】
実施形態の多孔性毛細管スペーサ110では、好ましくは、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、第1の気体125が第2の気体135と混合するのを阻止又は妨げ、2%未満のベンチマークガス交差を維持する。他の例では、ベンチマークガス交差は、1%未満、0.8%未満、0.6%未満、0.4%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満であり得る。
【0395】
多孔性毛細管スペーサ110における毛細管現象により、多孔性毛細管スペーサ110は非常に良好な泡バリアになり得る
幾つかの好ましい実施形態の電池は、目に見える気泡を有さないが、目に見えない小さなマイクロ泡又はナノ泡がなお存在し得る。他の実施形態では、目に見える気泡が形成されることもある。泡は、当然ながら、非導電間隙であり、電極間スペーサ内に存在すると、電極間の電気抵抗(即ちインピーダンス)が増大し、電池のエネルギー効率は低下する。さらに、時間の経過に伴い、泡の数が増えると、スペーサ内に漸次的に留まるようになり得、そしてついには、多孔性毛細管スペーサを橋渡し又は部分的に橋渡しする1つの連続ガス経路を形成する。そのようなブリッジは典型的には、過度に高レベルのガス交差を生じさせ、電池のエネルギー効率を大きく損なう。この種の問題は、幾つかの従来の電極間スペーサで生じ得る。
【0396】
多孔性毛細管スペーサ110の毛細管現象は、多孔性毛細管スペーサ110が、従来の電極間セパレータよりも、マイクロ泡又はナノ泡を含む気泡への、特にマイクロ泡又はナノ泡へのよりよいバリアとして作用するように促し得る。
【0397】
先に記したように、気泡は、電極における新たに形成されたガスが、多孔性毛細管スペーサ110内の毛細管圧に打ち勝つ内圧を有する泡を生み出す場合のみ、多孔性毛細管スペーサ110内部で核となる。第1の電極120及び第2の電極130はそれぞれ、関連する第1の気体125及び135と直接接触し得、打ち勝つための追加の毛細管圧がないため、実施形態例でこれが生じる可能性は低い。したがって、気泡形成は、多孔性毛細管スペーサ110から離れ、且つ気体125又は135とのインタフェース又はその近くの電極場所に優先的に向けられ得る。そのような場合、多孔性毛細管スペーサ110が利用されて、ゼロギャップ電池の従来の電極間スペーサを用いる場合よりも泡バリアとしてはるかに有効になっているであろう。
【0398】
好ましい実施形態では、多孔性毛細管スペーサ110は、直径1μm超の気泡の電極間の輸送を阻止し得る。他の例では、直径2μm超、直径5μm超、直径10μm超、直径25μm超、直径50μm超、又は直径100μm超の泡を阻止し得る。
【0399】
多孔性毛細管スペーサ110における毛細管現象により、「乾電池」構造の利点を付与し得る
多孔性スペーサの毛細管現象及び外部環境が乾燥しており、液体がない間に液体電解質を引き込み内部に保持するその能力により、実施形態例の電池は、電極間スペーサが典型的には固体状態導電材料であるいわゆる「乾電池」構造の利点を有し得る。同時に、実施形態例の電池は、固体状態導電材料よりもはるかに高い導電性であり得る液体電解質の利点を享受することもできる。したがって、好ましい実施形態は、乾電池構造の利点を液体電解質構造の利点と、各々の欠点を回避しながら組み合わせ得る。そうするに当たり、電池は、通常、ゼロギャップ電気合成又は電気エネルギー電池の能動的管理を含め、管理のために必要であり得る外部工学システムの必要性を回避し得る。
【0400】
多孔性毛細管スペーサ110における毛細管現象により、高価/エキゾチック/希少な電解質の使用が可能になり得る
更なる態様例では、多用途であり、電気化学反応を促進するために有用な性質を有するクラスの液体電解質を採用する電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。そのような電解質は、高価、希少、且つ/又はエキゾチックであり得、単なる例として、イオン性液体であり得る。そのような液体電解質を採用した一実施形態例の電池は、多孔性毛細管スペーサ及び槽において必要とされる電解質が小量であることにより、実際に実行可能であり得る。そのような液体電解質を採用した一実施形態例の電池は、これまでは商業的に実行可能ではなかった電気化学反応の産業化を可能にし得る。
【0401】
電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法
別の態様例では、電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法が提供される。方法は、多孔性毛細管スペーサ110に液体電解質100を充填するステップと、液体電解質100を第1の電極120、例えば第1のガス拡散電極及び第2の電極130、例えば第2のガス拡散電極に接触させるステップとを含む。別の代替例では、方法は、少なくとも毛細管作用により、槽140から多孔性毛細管スペーサ110に沿って液体電解質100を輸送するステップと、多孔性毛細管スペーサ110に沿って輸送された後、液体電解質100を第1のガス拡散電極120及びこれもまたガス拡散電極であり得る第2の電極130に接触させるステップとを含む。別の例では、方法は、少なくとも毛細管作用により、槽140からの液体電解質100で多孔性毛細管スペーサ110を充填することを含む。別の例では、方法は、多孔性毛細管スペーサ110の端部150が槽140内に位置する前、多孔性毛細管スペーサ110に液体電解質100を充填するステップを含む。別の例では、方法は、動作中、多孔性毛細管スペーサ110が液体電解質100で充填された状態を保つことを含む。別の例では、方法は、動作中、槽140からの毛細管/拡散/浸透下での液体電解質100の移行により、多孔性毛細管スペーサ110が液体電解質100で充填された状態を保つことを含む。別の例では、方法は、槽140からの電極表面120及び/又は130に沿った上方への薄膜での液体電解質の移行により、動作中、多孔性毛細管スペーサ110が液体電解質100で充填された状態を保つことを含む。別の例では、方法は、電池10が電気合成電池であり、電気化学反応が、電気合成電池10から離れて電気合成電池10の外部に輸送される化学産物を生成することを提供する。別の例では、方法は、動作中、多孔性毛細管スペーサ110において気体125及び/又は135中の蒸気が液体電解質100において液化又は液体電解質100から気化することに起因して、多孔性毛細管スペーサ110が液体電解質100で充填された状態を保つことを含む。別の例では、方法は、電池10が電気エネルギー電池であり、電気化学反応が、電気合成電池10の外部に仕事を提供するのに使用される電力を生成することを提供する。別の例では、方法は、動作中、反応物を電池の外部から供給/補充し、且つ/又は産物を電池外部に除去するステップを含み、これらの移動は、第1の気体、第2の気体、及び/又は槽の各々に別個に接続された、封止(液密且つ/又は気密)された外部導管及び筐体内で生じる。
【0402】
一例では、多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により、液体電解質を引き込み、多孔性毛細管スペーサ内で液体電解質のカラム高さを維持する。別の例では、液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも第1のガス拡散電極の高さと等しいか、又はそれを越える。別の例では、液体電解質の最大カラム高さは、電池の上部及び電池の全ての縁部に及ぶ。別の例では、電極は、電極の表面に沿って又は電極の表面を上方に液体電解質の薄膜を引き込む。別の例では、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、気相経路に存在するその液体の蒸気が、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質において液化又は多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質から気化することによって補充/維持される。
【0403】
好ましくは、電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する。代替的には、電気化学反応中、液体電解質は、電極の表面に沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する。また好ましくは、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の制御下である。別の例では、電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整している。更に別の例では、交差平面軸外への液相材料の移動は、槽内の液体電解質の組成により自己調整される。
【0404】
好ましくは、交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられ、別個である。別の例では、液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、又は(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去するように、多孔性毛細管スペーサ内で作用する。別の例では、これは、気相経路に干渉しない電極表面に沿った液相毛細管運動により達成される。
【0405】
例えば、好ましい実施形態の電池は、PEM燃料電池では典型的に必要とされるガス加湿システムの必要性を、それに関連する全ての工学構成要素及び電子制御回路の必要性と共に回避し得る。別の例では、好ましい実施形態の電池は、水電解装置で必要とされ得る液体電解質循環システムの必要性を、それに関連する全てのパイプ、ポンプ、及び他の工学構成要素及び電子構成要素の必要性と共に回避し得る。
【0406】
別の例では、気体に存在する蒸気は、多孔性毛細管スペーサ中の液体電解質において液化又は該液体電解質から気化して、(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、又は(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する。別の例では、これは非干渉気相経路により達成される。
【0407】
多孔性毛細管スペーサ中の液体電解質の最大カラム高さ及び流量を増幅し、その動作を自動化し得る浸透槽構成
多孔性毛細管スペーサ110の毛細管現象が、多孔性毛細管スペーサ110中の液体電解質100の不十分な最大カラム高さ及び/又は流量を提供する場合、槽140及び多孔性毛細管スペーサ110は、最大カラム高さ及び/又は流量を増幅するために、浸透システムとして構成し得る。
図6は、槽141のそのような代替の浸透構成の一例を示す。
【0408】
槽141は、
図6に示されるように、多孔性毛細管スペーサ110が内部に位置する固定容積のキャビティ内に閉じ込められ得、好ましくは封止され得る。槽141は、槽141にわたり封止された膜145を有し得、それにより、槽141を2つの固定され、閉じ込められた容積、即ち第1の容積142及び第2の容積143に分離を選択分割し得る。膜145は、水は透過するがイオンは透過しない膜であり得、即ち、膜145は、浸透システムで一般的なタイプの「半透過性」膜であり得る。多孔性毛細管スペーサ110は、第1の容積142に含まれる液体電解質100(即ち第1の液体)内に位置し、浸され、又は他の方法で液通し得、一方、膜145の逆側の第2の容積143は、例えば純水(即ち第2の液体146)を含む。即ち、多孔性毛細管スペーサ110は、第1の容積142内に位置し得、第1の液体は液体電解質100であり得、第2の液体146は第1の液体と異なり得る。
【0409】
そのような構成は、第2の容積143から半透過性膜145を通って第1の容積142に伝達される浸透圧を生み出し得る。浸透圧は、液体電解質100を、多孔性毛細管スペーサ110の毛細管現象のみに起因するよりも多孔性毛細管スペーサ110の上方に駆動させ得る。浸透圧は、液体電解質100及びその成分が多孔性毛細管スペーサ110に沿って上方に流れ得る速度を増幅することもできる。
【0410】
浸透効果に起因した液体電解質100のカラムの最大高さ及び多孔性毛細管スペーサ110内でのその流量は典型的には、純水(即ち第2の液体146)に対する液体電解質100の組成及び純水146の総量に対する液体電解質100の総量に依存し得る。即ち、容積142のチャンバサイズ及び多孔性毛細管スペーサ110中の液体電解質100の容量に対する容積143のチャンバサイズを調整し、純水(即ち第2の液体146)に対する電解質100の組成を考慮に入れることにより、生み出される浸透圧により付与される多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100の追加の最大カラム高さ及び追加の流量を制御し調整することが可能であり得る。
【0411】
したがって、浸透効果を採用して、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100の最大カラム高さ及び流量を増幅するのを助け得る代替の実施形態の槽構成141が提供される。
【0412】
この構成は、水が電気化学反応により生成される単独の産物又は電気化学反応により消費される単独の反応物である電池例の自動化を助けることもできる。即ち、構成141の槽は、実施形態例の水素-酸素燃料電池(水が単独の反応産物)又は実施形態例の水電解電池(水が、消費される単独の反応物)において水の除去又は追加をそれぞれ自動化するために採用されることもできる。
【0413】
そのような実施形態例の電池では、浸透平衡が、第2の容積143内の純水(即ち第2の液体146)と第1の容積142及び多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100との間に存在し得る。実施形態例の水素-酸素燃料電池内での電気化学反応による追加の新たな水の形成は、液体電解質100を希釈し得る。これは上記平衡をシフトさせ得、平衡が回復されるまで、追加の純水が第1の容積142から半透過性膜145を通って第2の容積143に移る。第2の容積143に流入する追加の純水は、第2の容積143と第2の容積143に取り付けられた純水のパイプとの間の弁を周期的に開くことにより除去し得る。弁は、第2の容積143内の純水の量が特定量を超えるときは常に、自動的に開くように構成し得る。このようにして、槽管理は自動化し得、それにより、人間の介入なしで、実施形態例の水素-酸素燃料電池内で単独の産物として生成される水は、浸透システムを提供する槽141を介して自動的に除去し得る。
【0414】
一実施形態例の水電解電池では、水は、電気化学反応により消費される単独の反応物である。水を消費する効果により、液体電解質100はより濃縮することになり、上記平衡をシフトさせるが、逆方向にシフトさせる。即ち、純水は、平衡が回復されるまで、第2の容積143から半透過性膜145を通って第1の容積142及び多孔性毛細管スペーサ110に流れるように誘導され得る。第2の容積143から流出した追加の純水は、第2の容積143と第2の容積143に取り付けられた純水のパイプとの間の弁を周期的に開くことにより補充し得る。弁は、第2の容積143内の純水の量が特定量を下回ったときは常に、自動的に開くように構成し得る。このようにして、槽管理は自動化し得、それにより、人間の介入なしで、実施形態例の水電解装置内で単独の反応物として消費される水は、浸透システムを提供する槽141を介して自動的に補充し得る。
【0415】
多孔性毛細管スペーサ例及び液体電解質例
上記例は、Pall Corporationにより供給される平均孔径0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μmを有する多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタで構成される多孔性毛細管スペーサ110を採用したが、液体電解質を内部に組み込むことが可能な広範囲の他の多孔性の薄い材料が、多孔性毛細管スペーサ110として採用し得ることを理解されたい。これには、限定ではなく、
PVDF、PTFE、テトラフルオロエチレン、種々のタイプのフッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ナイロン、種々のタイプの窒素含有材料、ガラス繊維、種々のタイプのケイ素含有材料、ポリ塩化ビニル、種々のタイプの塩化物含有ポリマー、酢酸セルロース、硝酸セルロース、セロハン、エチルセルロース、種々のタイプのセルロース含有材料、ポリカーボネート、種々のタイプのカーボネート含有材料、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、種々のタイプのスルホン含有材料、ポリフェニレンスルフィド、種々のタイプのスルフィド含有材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、種々のタイプのオレフィン含有材料、アスベスト、チタン系セラミックス、ジルコニウム系セラミックス、種々のタイプのセラミック材料、ポリ塩化ビニル、種々のタイプのビニル系材料、種々のタイプのゴム、種々のタイプの多孔性電池セパレータ、及び種々のタイプのクレイ
を含め、限定ではなく、種々のタイプ、タイプの組合せ、又は異なるタイプのハイブリッドの薄膜が含まれる。
【0416】
上記例は6M KOH溶液を液体電解質100として採用したが、限定ではなく、
- 限定ではなく、0.001~14M濃度のNa+、K+、Ca2+、Mg2+、OH-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、NO3
-、ClO4
-、リン酸塩(HPO4
-を含む)、炭酸塩(HCO3
-を含む)、PF6
-、BF4
-、(CF3SO2)2N-、又は官能基を有するポリマーを含む多価電解質、限定ではなく例としてポリスチレンスルホン酸、DNA、ポリペプチド等の1つ又は複数の溶解イオンを含む水、
- 溶質を含む非水液体、限定ではなく例として、溶質、限定ではなく例としてLiClO4若しくはBu4NPF6等を含むプロピレンカーボネート液、ジメトキシエタン液、又はプロピオニトリル液、
- 導電性液体、限定ではなく例として、常温溶融塩又は適したアニオンと対になったアルキル置換アンモニウム、イミダゾリウム、又はピリジニウムカチオンで構成されるイオン性液体、
- 導電性であり、電解質として作用することが可能なゲル
を含め、広範囲の他の液体又はゲルを電解質100として採用し得ることを理解されたい。
【0417】
特に適切なのは、電気化学反応を促進するに当たり多用途又は有用であるが、高価且つ/又は希少であり得る電解質である。薄い多孔性毛細管スペーサ(及び槽)に存在し得る電解質は非常に小量であることにより、好ましい実施形態の電池は、電気合成又は電気エネルギー電池内のそのような電解質の使用普及を可能にし得る。これに関する例には、限定ではなく、多くの場合、特に有用であるが、現在、実用が実現不可能な電気化学反応を促進することが判明しているイオン性液体がある。それらの電気化学反応での大きな技術的多用途性及び有用性にも拘わらず、多くのイオン性液体は、高コスト及び入手希少性により、今日まで、電気合成又は電気エネルギー電池内の電解質として広く用いられてこなかった。
【0418】
簡単な工学設計の電池の例
以下、多様な異なる電気化学反応を促進し、
図1に示される構造を有する電池例について説明する。再現性のある説明を提供するために、簡単且つ容易に再現される工学設計を有する電池例を使用している。この設計が、実施形態例の電池に採用し得る多くの設計のうちの1つであり、多様な電池例が本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0419】
図5及び
図6は電池例の作製を説明している。文具店ラミネータを通ることによる熱処理後に硬化する特別にカットされたプラスチック積層体内部に組立体を取り付けることにより、電極-スペーサ-電極組立体139を準備した。
【0420】
図7に示されるように、レーザカッタを使用して、透明プラスチック積層体をカットアウト500の設計にカットした。カットアウト500は、2つの3.2cm×3.2cm電極窓501及び幅5cm×高さ2cm寸法の2つの槽窓502を組み込んだ。多孔性毛細管スペーサ110を寸法6.5×6.5cmにカットした。寸法3.3×3.3cmの、ガス拡散電極として組み込まれる第1の電極120内又は上に、寸法3.25×3.25cmのガス多孔性細目金属メッシュ電流キャリア320を組み込み、電極-電流キャリア組立体420を形成した。寸法3.3×3.3cmの、ガス拡散電極として組み込まれる第2の電極130内又は上に、寸法3.25×3.25cmの第2のガス多孔性細目金属メッシュ電流キャリア330を組み込み、第2の電極-電流キャリア組立体430を形成した。
【0421】
カットアウト500は、透明積層体であり、折り畳まれたカットアウト510として示されるように2つに折り畳まれた。折り畳み内に、電極-電流キャリア組立体420が前側、電極-電流キャリア組立体430が後側の状態で多孔性毛細管スペーサ110を挿入した。電極-電流キャリア組立体420及び電極-電流キャリア組立体430の各々はそれぞれ、多孔性毛細管スペーサ110から離れる外向きの電流キャリア320及び330を有した。電極-電流キャリア組立体420及び電極-電流キャリア組立体430の各々はそれぞれ、多孔性毛細管スペーサ110と直接接触する、内向きの第1の電極120及び第2の電極130を有した。多孔性毛細管スペーサは、窓501の全体及び窓502の全体の両方を覆うように配置された。電極-電流キャリア組立体420、430は、各側で窓501を覆うだけであるように配置された。次いで、そうして生成された組立体を文具店ラミネータに通し、折り畳まれたカットアウト510の2つの内面を互いに付着、硬化させ、それにより、電流キャリア-電極-スペーサ-電極-電流キャリア組立体520を形成した。
【0422】
図7の右下に組立体520の分解組立図を示し、組立体520内部の構成要素が各側の窓501及び502といかに見当合わせされるかを示す。積層体の前面511は、組立体520の前部を形成した。積層体の後面512は、組立体520の後部を形成した。積層体の前面511と後面512との間に、多孔性毛細管スペーサ110が配置された。多孔性毛細管スペーサ110は、積層体の前面511及び後面512の各々における上部窓及び下部窓の両方と見当合わせされ覆われた(
図7の右下の多孔性毛細管スペーサ110上の破線として示されている)。多孔性毛細管スペーサ110の前面には、電極-電流キャリア組立体430が配置され、その電極側は多孔性毛細管スペーサ110に面し、電流キャリア側は前面511の積層体カバーに面する。組立体430は、積層体の前面511上の上部窓と見当合わせされた。電極-電流キャリア組立体430における電流キャリア330は、積層体の前面511における上部窓全体を覆った。多孔性毛細管スペーサ110の後面には、電極-電流キャリア組立体420が配置され、その電極側は多孔性毛細管スペーサ110に面し、電流キャリア側320は積層体の後面512に面する。組立体420は、512において上部窓と見当合わせされた。電流キャリアは、420において積層体の後面512における上部窓全体を覆った。
【0423】
図7から分かるように、多孔性毛細管スペーサ110の高さは、第1の電極120の高さ及び第2の電極130の高さと少なくとも等しいか、又はそれよりも高かった。同様に、多孔性毛細管スペーサ110の表面積は、第1の電極120の表面積及び第2の電極130の表面積と重なり、少なくともそれらと等しいか、又はそれらよりも大きかった。したがって、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100の最大カラム高さは、第1の電極120の高さ及び第2の電極130の高さを超える。好ましくは、液体電解質の最大カラム高さは、第1のガス拡散電極の高さと少なくとも等しいか、又はそれよりも高い。最大カラム高さは、電池の上部の高さも超える。同様に、これにより、多孔性毛細管スペーサ110内の液体電解質100により覆われた表面積は、多孔性毛細管スペーサに面する第1の電極120の表面積及び多孔性毛細管スペーサに面する第2の電極130の表面積と少なくとも等しいか、又はそれらよりも高いことができる。
【0424】
図8は、電流キャリア-電極-スペーサ-電極-電流キャリア組立体520を使用して組み立てられた電池の分解組立図を示す。
【0425】
2つの電池半体600は、ステンレス鋼から機械加工された。各半電池600は、半電池600の上部から出るパイプ611に接続された段付き窓610を含んだ。各半電池600は、幅5cm×高さ2cm×奥行き1cm寸法の溝付き矩形ウェル615も含んだ。この溝615は、両方とも半電池600の上部から出る2つのパイプ621に接続された。
【0426】
導電性金属流場620、630が、各半電池600の上部窓610の特に設計された溝に配置された。各流場620、630は、寸法3.2cm×3.2cmの多孔性中央エリアを含んだ。種々の設計を流場620、630の多孔性セクションに使用することができる。
図8に示される例では、流場620、630は、前から後ろに通る円柱形空隙が密に詰められている。可能な場合、触媒を組み込む前に、電極120及び130はそれぞれの電流キャリア320及び330及び/又はそれぞれの流場620及び630に溶接された。
【0427】
図8に示されるように、次いで組立体520は、組立体520の外部の電流キャリアが、各半電池600における導電性流場620、630と密に接触する状態で、2つの半電池600間に狭設された。2つの半電池600は、組立体全体の厚さにわたって延びる7つの縁部に配列した穴を通る非導電性ポリマーボルトを使用して互いにしっかりとねじ留めされ、全体電池700を生成し、これは、斜視図(左)及び断面図(右)で
図8の右下に示されている。
【0428】
その後、液体電解質は、燃料電池700内の各半電池600上の管621の1つを流れ落ちて、各半電池600内の槽キャビティ615を充填する。それらの槽615内の液体は、組立体520のいずれかの側の窓502を通り、第1の電極120及び第2の電極130が両方ともガス拡散電極である場合、多孔性毛細管スペーサ110内の第1の電極120と第2の電極130との間に引き上げられる。
【0429】
電極120、130との電気接続するために、導電性バスバー640が各半電池600における窓610を通り、導電性流場620、630に対して圧縮された。そしてこれらは、第1の電極120及び第2の電極130にそれぞれ組み込まれた導電性電流キャリア320、330に対して圧縮された。圧縮は、バスバーに対して捻られて好ましい電極圧縮を送達する2本のボルトにより提供された。幾つかの実施形態では、バスバー640は、同じ場所(即ち610)で筐体600を通るようにねじ留めされたステンレス鋼ボルトで置換され、ボルトは捻られて、好ましい電極圧縮を提供した。ボルトを捻ることにより送達される印加圧は、感圧薄膜を使用してチェックすることができる。バスバー640の2つの端部641、642は、外部電気回路との接続点として機能した。バスバー640(又は上記ステンレス鋼ボルト)は、各半電池600における流場320、330とパイプ611との間に流れを準備できるようにするように構築された。
【0430】
電池へのガス接続は、半電池600の各々の上部のパイプ611を介して行われた。それらのパイプ611内又は外に流れるガスはそれぞれ、流場620、630及びガス多孔性電流キャリア320、330を介して第1の電極120及び第2の電極130と接続された。
【0431】
上記電池は、積層体500(
図7参照)における空隙501と502との間のポリマーを単に除去し、電池600(
図8参照)におけるチャンバ615と610との間の金属バリアを除去し、次いで槽615内の液体が、電極120又は130の少なくとも一方に触れるのに十分に高いレベルを有することを保証することにより、
図2に示される構造を有するように適合することができる。
【0432】
上記電池は、単に積層体500(
図7参照)に空隙502をカットせず、半電池600(
図8参照)にチャンバ615をカットしないことにより、
図3に示される構造を有するように適合することもできる。その場合、電池内に槽はない。
【0433】
マルチセル積層体例
図9を参照すると、少なくとも第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池を提供する複数の個々の電池700は積層され、ある電池の外部バスバー640の一端部642を次の電池の外部バスバー640のもう一方の端部641に電気的に接続することにより、マルチセル積層体としての二極電池積層体750(電気的に直列接続される)になり得る。
図9はそのような積層体750を示し、積層体750は、例として、8つの個々の電池700(即ち、第1の電池、第2の電池、第3の電池、第4の電池、第5の電池、第6の電池、第7の電池、第8の電池)で構成されて示されており、電池間に7つの電気接続710がある。各電気接続710は、ある電池700のバスバー640の端部642が、次の電池700のバスバー640の端部641と接触することを含む。次いで、外部電気回路が、
図9の左側の開端部642及び
図9の右側の開端部641にわたって接続された。
【0434】
多くの従来のゼロギャップ電気化学電池と比較したこのマルチセル構成の利点には、限定ではなく、以下がある。
【0435】
(1)分流がなくなる:「分」流(「寄生」電流又は「バイパス」電流とも呼ばれる)は、電気的に直列接続された電気化学電池積層体において問題であり得る。分流は、電池積層体内の全て又は複数の電池を接続に接続し、それらに共通する導電性液体電解質が存在する場合、生じる。そのような共通の電解質の存在により、不要な電流が積層体内の異なる個々の電池内の電極間に流れる。そのような「分」流は、望ましい電流経路を妨げ、大きな効率損失並びに腐食及び非均一電池性能を生じさせる恐れがある。分流は、積層体内の個々の各電池が、電池積層体内の任意の他の個々の電池の液体電解質と導電的、物理的に接触しないことを保証することによってでしか全体的に回避することはできない。
【0436】
例としての電池積層体750はその要件に適う。即ち、少なくとも第1の電気合成又は電気エネルギー電池及び第2の電気合成又は電気エネルギー電池を提供する個々の各電池700は、それ自体の多孔性毛細管スペーサ110及びそれ自体の槽140内にそれ自体の個々の液体電解質100を有し、個々の液体電解質100は、電池積層体750内のいかなる他の個々の電池700における液体電解質100とも物理的に接触しない。したがって、電池積層体750内の全て又は複数の電池700に接続し、それらに共通する共通の導電性液体電解質は、電池積層体750に存在しない。
【0437】
(2)分流を生じさせずに単一の水供給/除去システムを使用して複数の個々の槽を維持し得、システムは自動化し得る:これは、単一の共通する水供給又は除去システムを介して、分流を生じさせずに電池積層体750内の複数の個々の槽の維持を自動化することが可能であるか否か及び実際に実行可能であるか否かについて疑問を生じさせる。即ち、単一の水供給又は除去システムから複数の個々の槽を管理し、それでもなお分流を回避することが実現可能であるか?(
図6及び関連する文章に記されたように、タイプ141の槽の使用により、水が電気化学反応により生成される単独の産物であり(例えば水素-酸素燃料電池)、又は消費される単独の反応物である(例えば水電解電池)個々の実施形態の電池における槽維持を自動化することが可能であり得る)。
【0438】
その疑問に答えるために、
図10は、例として、4つの個々の電池700で構成された電池積層体750内のタイプ141の4つの槽を概略的且つ例示的に示す。各槽内で、純水146を含む第2の容積143は、それらを、純水146を含む単一の共通水供給又は除去パイプ147に接続する圧力又は容量感受性弁148を有する。動作中、弁は個々に自動的に開閉して、(水素-酸素燃料電池で)生成された水を除去し、又は(水電解装置で)消費された水を補充し得る。したがって、複数の各電池の第2の液体146、この例では純水は、複数の各電池の第2の容積143に接続された共通の供給又は除去パイプ147を介して液通し得る。弁は、独立して動作するため、2つの弁が随時同時に開き得る可能性が存在することは自明である。そのようなとき、2つの個々の電池内の電極間に単一の共通の水体がある。しかしながら、パイプ147内の純水及び2つの一時的に開かれた第2の容積143内の純水は、純水146であり、純水は非導電性であるため、分流の発生は可能ではない。即ち、個々の槽と共通の水供給/除去システムとの間の接続は非導電性の純水を介して行われるため、分流は可能ではない。
【0439】
したがって、タイプ141の槽を有する実施形態例の電池は電池積層体750において配列し得、各槽は、分流の可能性を生じさせずに、単一の共通する水供給/除去システム147に接続される。即ち、一実施形態例は、分流及び分流が電池積層体750にもたらす深刻な問題の全てを完全になくすことができる。
【0440】
(3)積層体内の電池数への制約をなくす:分流がなければ、単一の高電圧積層体に実行可能に組み込むことができる電池数に関する、多くの従来の電気化学電池に存在する制約をなくすことができる。即ち、実施形態例は、積層体内の電池数を、利用可能な最も効率的且つ/又は最低コストの電源の電圧出力に合わせることができる。これは現在、比較的非効率的でコストがかかり得る特注電源を使用しなければならないことが多い多くの従来の電気化学電池で可能ではない。
【0441】
(4)ガス供給又は除去は、単一の共通ガスマニフォルドを使用して直接行い得る:実施形態例の電池積層体750の別の特徴は、電池積層体750内の電池700の各々内の気体125を単一の共通ガスマニフォルドに接続し得ることであり、それにより、単一の外部フィッティングを介して気体125中のガスを電池積層体750に供給又は電池積層体750から除去することができる。同様に、電池積層体750内の各電池700内の各気体135は単一の共通ガスマニフォルドに接続し得、気体135中のガスを単一の外部フィッティングから電池積層体750に供給又は電池積層体750から除去することができる。さらに、各気体125、135のそれぞれに単一のガスマニフォルドを使用することで、これらのマニフォルド内のガスを加圧することができ、槽を含め、実際に電池全体で加圧することができる(
図1の149のようなアパーチャが存在する場合)。気体125、135は、同じ圧力又は動作中の電解質注入された多孔性毛細管スペーサ110の泡立ち点未満の異なる圧力に加圧し得る。さらに、そのような単一のガスマニフォルドを介して供給又は除去されるガスは、各電池の交差平面軸と直接気相接触し、制御を改善し、制御の自己調整を可能にする。
【0442】
(5)泡管理システムの必要性をなくす:多くの従来の電気化学電池では、ガスは泡の形態で生成される。そのような電池は多くの場合、泡管理システムを有する。例えば、多くの電池は、泡が形成されるにつれて、電極にわたって電解質を常時圧送循環させて、泡を除去する。泡管理システムは、電池積層体内の電池数が増えるにつれてますます複雑且つ高価になり得る(例えば、大量の泡を収集し、ガス-液体セパレータで分離しなければならない場合であっても、そのようなシステムの全てのポイントでの一時的な圧力差を回避する必要があるため)。タイプ750の実施形態例の電池積層体は、生成されたガスはいずれも気相経路200に沿って気体125、135に直接移動するため、泡管理システムの必要性及び泡管理システムがもたらす全ての複雑性を回避し得る。
【0443】
種々の反応での実施形態例の電池
以下の例は、実施形態のより詳細な考察を提供する。例は例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0444】
材料:以下の材料を採用した(供給業者):多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタ(0.03μm、0.45μm、1.2μm、5μm、及び8μm孔径;Pall Corporationにより供給される)、カーボンブラック(AkzoNobel)、Vulcan XC-72(Premetek Co.#P10A100)上の10%Pt、Vulcan XC-72(Premetek Co.#P13A200)上の20%Pt-Pd、ナノ粒子Ni(平均直径20nm)(American Elements;SDC Materials,Inc.アリゾナ州タンパ)、PTFE分散(バインダ又はガスハンドリング構造体として)(アルコール/H2O中に60wt%分散;Sigma-Aldrich#665800)、PTFE微粉末(Alfa Aesar,A12613,15~25μm粒径)、Nafion(登録商標)分散(アルコール/水中に5%;Sigma-Aldrich#527084)、Sigracet(商標)カーボン紙(Fuel Cell Store,29BC)、KOH90%、フレーク(Sigma-Aldrich#484016)、H2SO495~98%(Sigma-Aldrich#320501)、Niメッシュ、200LPI(Century Woven,Beijing)(使用前にイソプロピルアルコールを使用して清掃した)、Ni発泡体(Goodfellows;TMax Battery Equipment,1mm厚、97%有孔率、密度:350±20g/m2)、General Electric Energy製の平均孔径0.2μmのポリプロピレン系Preveil(商標)延伸PTFE(ePTFE)Gortex膜、及びTiメッシュ(Goodfellows)。
【0445】
1.窒素及び水素からアンモニアを生成するため、アンモニアを水素及び窒素に分解するため、NO
Xクリーンアップのための電気合成窒素還元電池の例.アンモニアから電気を生成するためのアンモニア燃料電池の例
多孔性毛細管スペーサ110として平均孔径1.2μmの多孔性ポリエーテルスルホン材料フィルタを使用して、
図1~
図3に示される構造を有する実施形態例の窒素還元電池を作製した。液体電解質100はイオン性液体トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート([P6,6,6,14][eFAP])又はイオン性液体1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート([C4mpyr][eFAP])であった。イオン性液体電解質100は酸性化された。電極-電流キャリア組立体420は、Zhou,F.ら(2017)著、Electro-Synthesis of ammonia from nitrogen at ambient temperature and pressure in ionic liquids,Energy&Environmental Science,10(12),2516-2520に記載されているステンレス鋼布上に堆積したFe触媒を含み、これは参照により本明細書に援用される。ステンレス鋼布は電流キャリア320として機能した。対電極130は、バインダとしてPTFE(PTFE分散からの)を用いてVulcan XC-72上の10%Ptの薄い触媒層がマイクロ穴側に噴霧されたSgracet(商標)カーボン紙基板を含んだ。電極130は、電流キャリア330として機能するNiメッシュに対して圧縮され、それにより、電極-電流キャリア組立体430を提供した。燃料電池内の流場620及び630はNi発泡体であった。導電性バスバー640はNi被覆されたステンレス鋼であった。窒素の流れは、気体125として電池を通った。電池が動作中である間に窒素が電池を通過する間、窒素の流れはアンモニア及び水素も含むようになり、したがって、電池から出る気体125中のガスはアンモニア及び水素も含んだ。純粋な水素が、気体135として電池に導入された。代替の一実施形態では、酸素又は空気-酸素が気体135として電池に導入された(関連する電極に適した触媒を用いて)。生成されたアンモニアは、当技術分野で既知の手段により、出ていく気体125から除去された。
【0446】
電池で必要とされる液体電解質の総量が非常に少ないことにより、イオン性液体を電解質として使用することが実際に可能であった。従来の電気合成又は電気エネルギー電池では、入手希少性及び高コストにより電解質としてイオン性液体を使用することは一般に実行可能ではない。
【0447】
代替の一実施形態では、電池の動作を逆にし得、アンモニアが電池に導入されて、水素及び窒素に分解され、即ち水素及び窒素を生成し得る。同じ触媒及び適した印加電圧を用いて、電池はアンモニアから水素を生成した。
【0448】
代替の一実施形態では、電池は、NOXクリーンアップに利用され得、即ち、NOXを反応物として使用し、通過時、NOX含有ガスが除去される。代替の一実施形態では、電池の動作は逆にし得、気体の1つとしてアンモニアが電池に導入され、酸素又は空気-酸素が他の気体として電池に導入され、電池は電気を生成する。
【0449】
2.塩水から塩素、水素、及び苛性物質を生成する電気合成塩素アルカリ電池の例
電池全体内に一緒に密に圧縮され、片側から逆側に順に、(i)層1:pH3に酸性化された280g/L NaCl(塩水)の水溶液を内部に含み、それを含む液体槽に浸された一端部を有する、平均孔径5μmのGLA-5000ポリ塩化ビニル(PVC)材料フィルタ(Pall Corp)、(ii)層2:業界標準ペルフルオロナトリウム(perfluorinated sodium)交換膜、及び(iii)層3:35%NaOHの水溶液を内部に含み、それを含む第2の別個の液体槽に浸された一端部を有する、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタで構成された三層多孔性毛細管スペーサ110を使用して、
図1~
図2に示される構造を有する、塩水から塩素、苛性物質、及び水素を製造する実施形態例の塩素アルカリ電池を作製した。塩素生成電極120は、市販の寸法安定性のあるアノード(Permascand)で構成され、電極-電流キャリア組立体420としても機能した。水素生成電極130は、バインダとしてPTFE(PTFE分散からの)を用いてVulcan XC-72上の10%Ptの薄い触媒層がマイクロ穴側に噴霧されたSgracet(商標)カーボン紙基板を含んだ。電流キャリア330として機能するNiメッシュに対して電極130を圧縮し、それにより、電極-電流キャリア組立体430を提供した。全体電池における流場620及び630はそれぞれTiメッシュ及びNi発泡体であった。導電性バスバー640はそれぞれTi被覆及びNi被覆のステンレス鋼であった。塩素は気体125として電池により生成され、一方、水素は気体135として電池により生成された。塩化ナトリウム(塩水)は、酸性化されたNaClを含む槽から消費され、一方、苛性物質(水酸化ナトリウム)はNaOHを含む槽において生成された。各槽からのこれらの材料の連続補充及び除去は、当業者に既知の手段により行うことができた。
【0450】
3.塩水から塩素及び苛性物質を生成する電気合成酸素脱分極塩素アルカリ電池の例
電池全体内に一緒に密に圧縮され、片側から逆側に順に、(i)層1:pH3に酸性化された280g/L NaCl(塩水)の水溶液を内部に含み、それを含む液体槽に浸された一端部を有する、平均孔径5μmのGLA-5000ポリ塩化ビニル(PVC)材料フィルタ(Pall Corp)、(ii)層2:業界標準ペルフルオロナトリウム交換膜、及び(iii)層3:35%NOHの水溶液を内部に含み、それを含む第2の別個の液体槽に浸された一端部を有する、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタで構成された三層多孔性毛細管スペーサ110を使用して、
図1~
図2に示される構造を有する、塩水から塩素及び苛性物質を製造する実施形態例の酸素脱分極塩素アルカリ電池を作製した。塩素生成電極120は、市販の寸法安定性のあるアノード(Permascand)で構成され、電極-電流キャリア組立体420としても機能した。酸素脱分極対電極130は、バインダとしてPTFE(PTFE分散からの)を用いてVulcan XC-72上の10%Ptの薄い触媒層がマイクロ穴側に噴霧されたSgracet(商標)カーボン紙基板を含んだ。電流キャリア330として機能するNiメッシュに対して電極130を圧縮し、それにより、電極-電流キャリア組立体430を提供した。全体電池における流場620及び630はそれぞれTiメッシュ及びNi発泡体であった。導電性バスバー640はそれぞれTi被覆及びNi被覆のステンレス鋼であった。塩素は気体125として電池により生成され、一方、酸素は気体135として電池に渡された。塩化ナトリウム(塩水)は、酸性化されたNaClを含む槽から消費され、一方、苛性物質(水酸化ナトリウム)はNaOHを含む槽において生成された。各槽からのこれらの材料の連続補充及び除去は、当業者に既知の手段により行うことができた。
【0451】
4.塩酸を再利用して、塩素及び水素を生成する電気合成電池の例
平均孔径5μmのGLA-5000ポリ塩化ビニル(PVC)材料フィルタ(Pall Corp)を多孔性毛細管スペーサ110として使用して、
図1又は
図2に示される構造を有する、塩酸から塩素及び水素を生成する実施形態例の電池を作製した。液体電解質100は水性1M HClであった。塩素生成電極120は、市販の寸法安定性のあるアノード(Permascand)で構成され、電極-電流キャリア組立体420としても機能した。水素生成電極130は、バインダとしてPTFE(PTFE分散からの)を用いてVulcan XC-72上の10%Ptの薄い触媒層がマイクロ穴側に噴霧されたSgracet(商標)カーボン紙基板を含んだ。電流キャリア330として機能するNiメッシュに対して電極130を圧縮し、それにより、電極-電流キャリア組立体430を提供した。全体電池における流場620及び630はそれぞれTiメッシュ及びNi発泡体であった。導電性バスバー640はそれぞれTi被覆及びNi被覆のステンレス鋼であった。塩素は気体125として電池により生成され、一方、水素は気体135として電池により生成された。塩酸は槽140から消費された。槽140には、当業者に既知の手段により塩酸を常時補充し得る。
【0452】
5.水素及び酸素から電気エネルギーを生成する電気エネルギー燃料電池の例
図1又は
図2に示される構造を有する実施形態例の水素-酸素燃料電池は、多孔性毛細管スペース110として、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタを使用して作製された。液体電極100は水性6M KOHであった。第1の電極120及び第2の電極130は両方とも、電流キャリア320及び330としてそれぞれ機能するNiメッシュ上に堆積し、Niメッシュに圧縮され、それにより電極-電流キャリア組立体420及び430をそれぞれ提供するVulcan XC-72上の20%Pd/Pt、カーボンブラック、及びPTFE(60%PTFE分散からの)の混合物で構成される。完全な電池内の流場620及び630はNi発泡体であった。導電性バスバー640はNi被覆ステンレス鋼であった。酸素は気体125として電池に導入され、一方、水素は気体135として電池に導入された。
【0453】
代替の一例では、Wagner,K.,Tiwari,P.,Swiegers,G.F.&Wallace,G.G.著「Alkaline Fuel Cells with Novel Gortex-Based Electrodes are Powered Remarkably Efficiently by Methane Containing 5% Hydrogen」,Advanced Energy Materials,8(7),1702285-1-1702285-10に記載のように、電極-電流キャリア組立体420及び430を作製し、これは参照により本明細書に援用される。その結果生成された電極-電流キャリア組立体420及び430は、裏当てである非導電性Gortex膜を有したため、流場620及び630は、電極に面する側で鋭い突出部を有するようにカットされた。これらの突出部は420及び430上のGortex裏当てを切り開き、それにより、第1の電極120及び第2の電極130とそれぞれの流場420及び430との間に電気接続を確立した。
【0454】
これらの例は、
図4を参照して説明したように、液相材料が経路200に沿って移動する毛細管及び/又は拡散プロセスを変更、よりよく制御、又は加速させるための電極-スペーサ境界面126及び136におけるバリエーションを表す。
【0455】
燃料電池は、上記引用した科学論文に記載のように動作する。槽140内で反応産物として水が生成された。水は、当業者に既知の種々の手段により槽140から連続して除去することができた。
【0456】
図3に示される構造を有する電池も同じプロセスにより作製することができ、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、水を気化させ、水素及び/又は酸素ガス流を加湿させることにより非干渉的に維持された。加湿された水素及び/又は酸素は、電池を循環し、電池の外部で乾いて、気化した水分を除去した。
【0457】
6.水から水素及び酸素を生成する電気合成水電解電池の例
図1又は
図2に示される構造を有する実施形態例の水電解電池は、多孔性毛細管スペース110として、平均孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタを使用して作製された。液体電極100は水性6M KOHであった。
【0458】
水素生成電極130は、Z.Liu,S.D.Sajjad,Yan Gao,J.J.Kaczur,及びR.I.Masel著「An Alkaline Water Electrolyzer with SustainionTM Membranes:1A/cm2 at 1.9V with Base Metal Catalysts」,ECS Transactions(2017)77(9),71-73と題する科学論文で教示されたように作製され、これは参照により本明細書に援用される。この手順は、バインダ(26重量%)として5%Nafion(登録商標)を用いてVulcan XC-72上の10%Pt(Pt0.5mg/cm2)の薄い触媒層がマイクロ穴側に噴霧されたSgracet(商標)カーボン紙基板を含んだ。電極130は、電流キャリア330として機能するNiメッシュに対して圧縮され、それにより、電極-電流キャリア組立体430を提供した。
【0459】
酸素生成電極120は、A.M.P.Sakita,E.valles,R.Della,及びA.V.Benedetti著「Novel NiFe/NiFe-LDH composites as competitive catalysts for clean energy purposes」,Applied Surface Science 447(2018)107-116と題する科学論文で教示されたようにNiFe触媒が電着した細目ニッケルメッシュ(200LPI)で構成され、これは参照により本明細書に援用される。ニッケルメッシュは、1M KCl支持電解質(上記論文の
図8(b)に従う)と共に、NiCl
2(0.075M)及びFeCl
2(0.025M)の3:1混合物(上記論文の
図8(c)及び
図1(a)に従う)で構成された電着溶液中に配置された。電着溶液に浸漬したニッケルメッシュに、10mV/sでの-1.0Vと-0.2Vとの間のサイクリックボルタンメトリを使用して循環を繰り返すことによりNiFeを被覆した(上記論文の
図1に従う)。低電圧-1.0Vは、次段落で説明するように、沈殿物を形成せずにガスハンドリング材料の包含を可能にするため、選ばれた。高電圧-0.2Vは、最良性能の、結果として生成される触媒を提供した。被覆は、16.6Cの電荷が堆積するまで(幾何学的面積1cm
2を有する電極の場合)続けられた。Niメッシュ自体が電流キャリア320として機能し、それにより、電極-電流キャリア組立体420を提供した。全体電池内の流場620及び630はNi発泡体であった。導電性バスバー640はニッケルであった。酸素は気体125として電池により生成され、一方、水素は気体135として電池により生成された。
【0460】
図3に示される構造を有する電池も同じプロセスにより作製することができ、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、水素及び/又は酸素ガス流の加湿から水を液化させることにより非干渉的に維持された。水素及び/又は酸素は、電池を循環し、電池外で加湿されて、多孔性毛細管スペーサにける蒸気の液化を促進する。
【0461】
6.1 例:電極へのガスハンドリング構造体の導入
上記電極120は、低表面エネルギー材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されたガスハンドリング構造体を含むように変更された。上述したように、PTFEは、溶解ガスを捕捉して表面上に合体させる性質を有する。ガスは、液体電解質中に泡を形成せずに、表面に沿って気体125に更に移行し得る。PTFEガスハンドリング構造体は、上記電着溶液へのPTFE分散(アルコール/H2O中の60wt%分散)により、電極120に組み込まれた。作製手順のその他の点については上述した。
【0462】
6.2 例:フルフラテッド(fully flooded)電池との比較
比較を目的として、上記電極-スペーサ-電極組立体(139)を液体電解質で溢れさせた電池も作製した。そのような電池は
図2に示される構造に対応し、A及びBは両方とも電池の上部にあり、即ち、電極は全体的に液体電解質で覆われ、気体125及び135は何であれ存在しなかった。これは、水電解電池の従来の電池構成であり、ガスは、液体電解質において気泡の形態で生成される。ガスは気泡として電池内で形成され、気泡は電池の上部に上昇する。
【0463】
6.3 実施形態の電池によるエネルギー効率改善の実証
図11(a)及び
図11(b)は、
図1の電池構造を有する、結果として生成された水電解装置の80℃での分極曲線を示す。これらの曲線は内部抵抗について補正されていないこと、即ち、バスバー640及び導電性流場620、630により付与される抵抗を含むことに留意されたい。
【0464】
図11の曲線(a)は、上述した酸素生成電極(120/320/420)が上記PTFEガスハンドリング構造体を組み込んだ電池の分極曲線を示す。この電池は、内部抵抗について補正されない、118.2Ωcm
2と低い全体電池抵抗を示し、これは、任意の試験したもの又は実際に本発明者らが認識するものの中で最も低かった。
図11の曲線(b)は、同じ電池であるが、上述した酸素生成電極(120/320/420)が上述したPTFEガスハンドリング構造体を組み込まなかった電池の分極曲線を示す。
【0465】
図11の曲線(c)は、上述したものと同じ多孔性毛細管スペーサ及び同じ電極を採用するが、電池は液体電解質で完全に充填される同等の水電解電池の分極曲線を示す。これは、水電解電池の従来の電池構成であり、ガスは、液体電解質において気泡の形態で生成される。
図11は、データが公開されている最良の市販のアルカリ水電解装置及びPEM水電解質装置のそれぞれの電池の80℃での同等の分極曲線(d)~(e)を示す。
【0466】
図11の曲線(a)及び(b)において、同じ電極及び多孔性毛細管スペーサを使用するが、ガスは液体電解質において気泡の形態で生成される、曲線(c)における同等のフルフラテッド電池からの著しい改善を見て取ることができる。これは、従来の電池構造と比較して改善された、実施形態例の電池構造のエネルギー効率を示した。
【0467】
図11の曲線(a)及び(b)は、最良の市販のアルカリ水電解電池(
図11の曲線(d))及び市販のPEM水電解電池(
図11の曲線(e))から大きく改善もした。これは、特に、
図11(a)及び
図11(b)の電池が、特に、
図11(e)に示されたタイプのPEM水電解電池よりも著しく安価、高耐久性、且つはるかに長い寿命を有するアルカリ水電解電池であることを考慮する場合、実施形態例の電池構造がエネルギー効率を改善することを示した。
【0468】
アルカリ電解電池が関わる
図11の曲線(c)が、最良の市販のアルカリ水電解電池(
図11の曲線(d))から劇的に改善することも注目に値する。これは、同等の条件下で、A及びBが両方とも電池の上部に延びる
図2に示される構造も、
図11(a)及び
図11(b)の電池よりも改善の程度が低くはあるが、効率改善を提供することを示した。その理由は、
図11(c)の電池が「独立経路電池」であるためである。
【0469】
したがって、例えば、電流密度0.7A/cm
2で水素を生成する能力において電池を比較すると、
-
図11の曲線(a)の電池ではわずか1.536V(点A)だけでよく、これは、水素の高位発熱量(HHV)の96%のエネルギー効率に等しい。
-
図11の曲線(b)の電池ではわずか1.568V(点B)だけでよく、これは、水素の高位発熱量(HHV)の94%のエネルギー効率に等しい。
-
図11の曲線(c)の電池は1.655V(点C)を必要とし、これは、水素の高位発熱量(HHV)の89%のエネルギー効率に等しい。
-
図11の曲線(d)の最良の市販のアルカリ水電解電池は1.84V(点D)を必要とし、これは、水素の高位発熱量(HHV)の80%のエネルギー効率に等しい。
-
図11の曲線(e)の最良の市販のPEM水電解電池は1.61V(点E)を必要とし、これは、水素の高位発熱量(HHV)の91%のエネルギー効率に等しい。
【0470】
エネルギー効率を改善する能力は
図12により更に示され、
図12は、100%エネルギー効率(HHV)を表す80℃で1.47Vの一定の電池電圧に保持された場合の
図11の曲線(a)の電池の経時性能を示す。見て分かるように、電池は、100%エネルギー効率(HHV)において一定の300mA/cm
2(=0.3A/cm
2)を生成した。逆に、市販のアルカリ電解電池による80℃、1.47Vでの公に報告されている最良の電流は、約0.1A/cm
2であり、市販のPEM電解電池によるものは約0.2mA/cm
2である。
【0471】
6.4 例:低電極間抵抗の実証
図11の曲線(a)の電池のエネルギー効率の改善には幾つかの原因があった。これらには、
図11の曲線(a)の多孔性毛細管スペーサの抵抗が低いことがあり、これは、
図11の曲線(d)のZirfon PERL(登録商標)セパレータ膜での80℃で約130mΩcm
2及び
図11の曲線(e)のNafion(登録商標)115セパレータ膜での80℃で約74mΩcm
2と比較して、80℃で22mΩcm
2であった。その効果は、
図11の曲線(d)の電池と比べて約0.108Vだけ及び
図11の曲線(e)の電池と比べて約0.052Vだけ、
図11の曲線(a)の電池で1A/cm
2において必要とされる電圧を下げることであった。
【0472】
6.5 例:ガス交差低下の実証
図11の曲線(a)の電池は低ベンチマークガス交差を有し、酸素中の水素濃度%は0.04~0.14%であり、水素中の酸素濃度%は0.00%であった。これと比較して、Zirfon PERL(登録商標)は、同等のフルフラテッドアルカリ水電解電池で使用された場合、0.22%以上のベンチマークガス交差を示すと考えられる。
【0473】
6.6 例:ガスハンドリング構造体を電極に包含することに起因したエネルギー効率改善の実証
見て分かるように、
図11の曲線(a)は
図11の曲線(b)から改善し、PTFEガスハンドリング構造体を酸素生成電極に包含することが有利な効果を有することを示した。ガスハンドリング構造体は、新たに形成されたガスが、目に見える気泡を形成せずに電極から出ることを助ける。ガスハンドリング構造体は、ガスが離れる経路の表面エネルギーを下げることによりそれを行った。
【0474】
6.7 例:電極が「無泡」であることに起因したエネルギー効率改善の実証
したがって、
図11の曲線(a)のエネルギー効率改善の別の主な一因は、いずれの電極にも目に見える気泡がないことであった。これは、
図11の曲線(c)との比較により示されるように、電解質のエネルギー効率を著しく改善し、電解質に必要とされる電圧を低下させた。
【0475】
この例では、液体電解質の薄い層(0.125mm厚未満)は、多孔性毛細管スペーサ110から電極の触媒表面上に引き寄せるように見える。次いでガスが電極により生成されると、ガスは電解質の薄い層からその近傍の外面に移行し、その境界面を渡って各気体125及び135と結合した。代替的に又は任意選択的に、酸素生成電極120内で、新たに形成された酸素ガスは、電極に存在するPTFE表面上に合体し、PTFE表面に沿って移行して酸素気体125と結合した。
【0476】
したがって、電極表面上又は近傍で気泡を形成することによりガスを放出する必要はなかった。その結果、電極は、従来の有泡システムであり得るように気泡でマスクされなかった。さらに、電極表面近傍の液体電解質は、気泡形成の核となるためにガスで過飽和される必要がなかった。そうするに当たり、そのような過飽和を生み出すために必要であり得る追加の電圧が回避された。さらに、泡は、最も触媒的に活性な部位も存在する電極表面上の割れ目、ひび割れ、及び欠陥に形成される傾向がある(そして多くの場合割れ目に強く付着する)が、そのような部位は大方、影響を受けず、気泡形成がない場合に最高触媒活性で動作した。したがって、電極の触媒表面は随時、より完全に使用された。
【0477】
6.8 例:水電解電池は、エネルギー効率の改善を示す「独立経路電池」であった
ガス産物が液相移動を補う方向で電極から離れて移動しながら、多孔性毛細管スペーサ110が、電極120及び130が反応を維持するために必要な液相反応物を無限に供給することが可能なことは、多相逆流が回避され、少なくとも1つの別個の独立した非干渉経路が電池内の個々の各液相及び気相反応物及び産物の移動(流れ)に提供されたことを示した。
【0478】
したがって、
図11(a)及び
図11(b)の電池は「独立経路電池」であり、これは、基本的に、エネルギー効率がより高いことの理由であった。
図11(c)の電池も独立経路電池であったが、気泡形成によりエネルギー効率はより低かった。即ち、多相逆流と関連する非効率性を解消するために必要なエネルギーは回避したが、気泡形成と関連する非効率性を解消するために必要なエネルギーは回避されなかった。
【0479】
図11(a)及び
図11(b)の電池の無泡動作は、無泡電極からガスを除去する経路の効率を高めた。ガスハンドリング構造体を酸素電極に包含することは、その電極からガスを除去する、特に改善された経路を提供した。その効果は、電池内の分子レベルの運動の効率を改善し、それにより電池のエネルギー効率を上げたことであった。
【0480】
したがって、この例は、独立経路電池が他の電池よりも高いエネルギー効率を達成し得ることを示した。エネルギー効率の改善が相当なものであり得ることも示す。
【0481】
6.9 例:電極を上る電解質の毛細管誘導移動を促進するように電極表面を変更した後の高エネルギー効率の実証
上述したように、電極に沿って電極を上る液体電解質の毛細管誘導移動は典型的には、電極間及びそれに関連する気体間のガス移動に干渉し得、更には阻止し得る。これは、多くの場合は相当に、電池のエネルギー効率を低下させ得る。
【0482】
しかしながら、そのような移動が、電極表面上を移動する液体電解質の非常に薄い層に制限されるように設計される場合、ガス移動への干渉又は妨げはなくなり得、ひいてはエネルギー効率への有害な影響もなくなり得る。
【0483】
液体電解質の薄膜のそのような毛細管誘導輸送は、後述するように電極表面上に薄い疎水性層を堆積させ、
図2に示されるような電池設計を採用することによって設計し得る。
【0484】
上記水電解装置における代替の酸素電極として、ニッケル発泡体が使用された。ニッケル発泡体は、エタノール中で10分間、超音波処理されて、いかなる有機残渣も除去し、次いで水で濯がれてから、3M HCl中で20分間、更に超音波洗浄され、次いで水で濯がれて乾燥された。Ni発泡体は次いで、43mMのNiNO3及び14.3mMのFeNO3、そして0.28Mの尿素の水溶液を含んだオートクレーブで浸漬され、120℃で12時間加熱された。生成された電極を水で洗い、空気中で乾燥させた。
【0485】
この方法を使用して堆積したNiFe層状複水酸化物(LDH)の薄い層は、強親水性であるとともに、水から酸素を生成するための良好な触媒であった。その高い親水性は、5cm/分を越える率の電極表面上の6M KOH液体電解質の薄い層の上方への毛細管ベースの移動を促進するように見えた。これは、孔径8μmのポリエーテルスルホン材料フィルタを含む多孔性毛細管スペーサ110により示されるものよりも著しく高速での移動であった。
【0486】
触媒による酸素生成中、上記NiFe被覆Ni発泡体は、
図11の曲線(a)の酸素電極と同等の高いエネルギー効率も示した。
図13は、
(a)
図11の曲線(a)の電池における酸素電極及び
(b)
図11の曲線(a)の電池における酸素電極として使用された場合の上記NiFe被覆Ni発泡体
の酸素電極の電極電位vs電流密度の比較を示す。見て分かるように、2つの電極の性能は非常に似ており、NiFe被覆Ni発泡体電極の表面上の毛細管誘導移動がエネルギー効率をあまり低下させなかったことを示す。
【0487】
6.10 例:表面変更電極へのガスハンドリング構造体の組み込み
上述したNi発泡体電極は、表面変更中、PTFEガスハンドリング構造体を組み込むように変更することもできる。
【0488】
これは以下のように達成された:43mMのNiNO3及び14.3mMのFeNO3、そして0.28Mの尿素の水溶液をオートクレーブにおいて120℃で12時間、加熱した。得られたNiFe-LDH触媒を収集し、脱イオン水で3回、遠心分離洗浄し、それから真空オーブンにおいて室温で乾燥させた。得られたNiFe粉末の分散をイソプロパノール及び水(4:1vol%)を含む溶液で、Nafion(登録商標)(10g/L)を添加して準備した。NiFe-LDH分散を継いで、予め清掃したNi発泡体又はNiメッシュ上にエアブラシで吹き付けて、所望の重量/厚さのNiFe-LDH被覆電極を得た。
【0489】
6.11 例:電極へのガス毛細管構造体の包含
代替の一例では、電極-電流キャリア組立体420及び430はガス毛細管構造体、この場合は疎水性Gore-Tex(商標)膜(即ち延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む疎水性膜)を組み込むように作製され、そのPTFE側面は電極-電流キャリア組立体420及び430の外側に対して引き締めて配置された。最終的に組み立てられた電池において、Gore-Tex(商標)膜を含む電極の外側は次いで各流場620及び630と接触した。Gore-Tex(商標)膜のジェネリック版は「Gortex」膜として既知である。
【0490】
Gore-Tex(商標)又はGortex膜は、新たに形成されたガスをそのような密に隣接したガス生成電極から自発的に抽出するガス毛細管構造体を含む。
【0491】
生成された電極-電流組立体は、裏当てする非導電性Gortex膜を有するため、流場620及び630は、電極に面する側に鋭い突出部を作成するようにカットされた。これらの突出部は420及び430上のGortex裏当てを切り開き、それにより、第1の電極120及び第2の電極130とそれぞれの流場420及び430との間に電気接続を確立した。
【0492】
これらの例はそれぞれ、
図4を参照して説明したように、液相材料が経路200に沿って移動する毛細管及び/又は拡散プロセスを変更、よりよく制御、又は加速させるための電極-スペーサ境界面126及び136におけるバリエーションを表す。
【0493】
水電解電池は、上記引用した科学論文に記載のように動作する。反応物である水は、槽140から連続して除去された。水は、当業者に既知の種々の手段により槽140に連続して補充することができた。
【0494】
7.例:水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する電気合成抽出電池
図1~
図3に示される構造を有する実施形態例の水素抽出電池は、多孔性毛細管スペース110として、平均孔径1.2μmのポリエーテルスルホン材料フィルタを使用して作製された。液体電極100は水性1M硫酸であった。第1の電極120及び第2の電極130は両方とも、Vulcan XC-32上の10%Pt、カーボンブラック、20%PTFE分散の混合物を含み、混合物は電流キャリア320及び330として機能するNiメッシュ上にそれぞれ堆積し圧縮され、それにより、電極-電流キャリア組立体420及び430をそれぞれ提供した。完全な電池における流場620及び630はNi発泡体であった。導電性バスバー640はNi被覆ステンレス鋼であった。メタン及び水素の混合物(例えば5~10容量%)が、気体125として電池に渡され、一方、純粋な水素が気体135として電池により生成された。
【0495】
代替の一例では、電極-電流キャリア組立体420及び430は、K.Wagnerら著「An electrochemical cell with Gortex-based electrodes capable of extracting pure hydrogen from highly dilute hydrogen-methane mixtures」,Energy and Environmental Science,2018年、第11巻、第172頁に記載のように作製され、これは参照により本明細書に援用される。生成された電極-電流組立体は非導電性Gortex膜裏当てを有するため、流場620及び630は、電極に面する側に鋭い突出部を作成するようにカットされた。これらの突出部は420及び430上のGortex裏当てを切り開き、それにより、第1の電極120及び第2の電極130とそれぞれの流場420及び430との間に電気接続を確立した。
【0496】
これらの例は、
図4を参照して説明したように、液相材料が経路200に沿って移動する毛細管及び/又は拡散プロセスを変更、よりよく制御、又は加速させるための電極-スペーサ境界面126及び136におけるバリエーションを表す。
【0497】
更なる電池構造例
多様な他の電池構造が本明細書の範囲内に入り得ることを理解されたい。個々に又は部品、要素、若しくは特徴の2つ以上の任意の若しくは全ての組合せで集合的に本明細書において参照され、又は本明細書において示された実施形態の部品、要素、及び特徴を組み込んだ構造、本発明が関連する技術分野で既知の均等物を有する特定の完全体が本明細書において述べられ、そのような均等物は、まるで個々に記載されるかのように本明細書に援用されると見なされる。
【0498】
例示であるが非限定的な、選択された他の構造例を
図14~
図33に提供する。
【0499】
図14は、気体135がない更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池40の概略断面図を示す。電極130が生成又は消費するガスはあったとしてもわずかであり、電極120上方への非干渉の毛細管ベースの電解質の移行がある。
【0500】
図15は、気体125がない更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池41の概略断面図を示す。電極120が生成又は消費するガスはあったとしてもわずかであり、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質の移行がある。液体電解質は、気体135を介して非干渉気相経路により補充/維持される。
【0501】
図16は、気体135がない更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池42の概略断面図を示す。電極130が生成又は消費するガスはあったとしてもわずかであり、電極120上方への非干渉の毛細管ベースの電解質の移行がある。両電極の上にヘッドスペースが提供される。ヘッドスペースは、電極130の上は液体電解質で占められ、電極120の上はガスで占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、ガス交差を阻止する。
【0502】
図17は、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行があり、電極120上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行がある、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池43の概略断面図を示す。両電極の上にヘッドスペースが提供される。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。
【0503】
図18は、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行があり、電極120上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行がある、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池44の概略断面図を示す。両電極の上にヘッドスペースが提供される。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。液体電解質は、気体125を介して非干渉気相経路により補充/維持される。
【0504】
図19は、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行がある、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池45の概略断面図を示す。両電極の上にヘッドスペースが提供される。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120は、電極の上部でのみ(ヘッドスペース内)気体125に接触する。
【0505】
図20は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池46の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120は、電極の上部でのみ(ヘッドスペース内)気体125に接触する。電極130は、電極の上部でのみ(ヘッドスペース内)気体135に接触する。
【0506】
図21は、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行がある、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池47の概略断面図を示す。両電極の上にヘッドスペースが提供される。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120は、電極の上部でのみ(ヘッドスペース内)気体125に接触する。電極130はガスハンドリング構造体900を組み込み、ガスハンドリング構造体900には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体135を形成する)が充填される。
【0507】
図22は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池48の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120はガスハンドリング構造体901を組み込み、ガスハンドリング構造体901には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体125を形成する)が充填される。電極130はガスハンドリング構造体900を組み込み、ガスハンドリング構造体900には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体135を形成する)が充填される。
【0508】
図23は、電極130上方への非干渉の毛細管ベースの電解質移行がある、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池49の概略断面図を示す。両電極の上にヘッドスペースが提供される。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120は、電極の上部でのみ(ヘッドスペース内)気体125に接触する。電極130はガス毛細管構造体1000に隣接し、ガス毛細管構造体1000には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体135を形成する)が充填される。
【0509】
図24は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池50の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは気体125で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120はガス毛細管構造体1001に隣接し、ガス毛細管構造体1001には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体125を形成する)が充填される。電極130はガス毛細管構造体1000に隣接し、ガス毛細管構造体1000には、ヘッドスペースと連続したガス(集合的に気体135を形成する)が充填される。
【0510】
図25は、電極130が生成又は消費するガスはあったとしてもわずかである、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池51の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは、一部は気体135で占められ、一部は液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、電極上方の液体電解質100を通ってヘッドスペースに延びる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100には、ヘッドスペースガスと連続する(集合的に気体125を形成する)ガスが充填される。
【0511】
図26は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池52の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、電極上方の液体電解質100を通ってヘッドスペースに延びる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100には、ヘッドスペースガスと連続する(集合的に気体125を形成する)ガスが充填される。電極130は、その上部でのみ(ヘッドスペース内)気体135に接触する。
【0512】
図27は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池53の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、電極上方の液体電解質100を通ってヘッドスペースに延びる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100には、ヘッドスペースガスと連続する(集合的に気体125を形成する)ガスが充填される。電極130にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101は、電極上方の液体電解質100を通ってヘッドスペースに延びる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100には、ヘッドスペースガスと連続する(集合的に気体135を形成する)ガスが充填される。
【0513】
図28は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池54の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを生成する。電極120にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、経路2100に沿って液体電解質100を通してガスの泡/容量を解放し、経路2100は多くの場合又は習慣的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100内の気体とヘッドスペースガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体125を形成する)。電極130にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101は、経路1210に沿って液体電解質100を通してガスの泡/容量を解放し、経路2110は多くの場合又は習慣的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101内の気体とヘッドスペースガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体135を形成する)。
【0514】
図29は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池55の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは気体135で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、気体125と気体135との間のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを生成する。電極120にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、経路2200に沿って液体電解質100を通してガスの泡/容量を解放し、経路2200は時には又は不規則的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100内の気体とヘッドスペースガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体125を形成する)。電極130にはガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれ、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101は、経路2210に沿って液体電解質100を通してガスの泡/容量を解放し、経路2210は時には又は不規則的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101内の気体とヘッドスペースガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体135を形成する)。
【0515】
図30は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池56の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は導管127と関連する気体で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは、一部は導管137と関連する気体で占められ、一部は液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、導管127と関連する気体と導管137と関連する気体との間のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを生成する。電極120には、内部に気体125を含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれる。気体125は、液体電解質100を通して経路2300を介して外部導管127及び外部ガス貯蔵システム128と気体連通する。気体125は、経路2300に沿って液体電解質を通してガスの泡/容量をヘッドスペースに解放し、そこでガスは外部導管127及び外部ガス貯蔵システム128に入り得る。電極130には、内部に気体135を含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれる。気体135は、液体電解質100を通して経路2310を介して外部導管137及び外部ガス貯蔵システム138と気体連通する。気体135は、経路2310に沿って液体電解質を通してガスの泡/容量をヘッドスペースに解放し、そこでガスは外部導管137及び外部ガス貯蔵システム138に入り得る。
【0516】
図31は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池57の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、ヘッドスペース内のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを消費する。電極120には、大量のガスを含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、外部ガス導管127から経路2400に沿って、液体電解質100を通してガスの泡/容量を受け取る。経路2400は多くの場合又は習慣的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100内の気体とガス導管127内のガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体125を形成する)。電極130には、大量のガスを含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101は、外部ガス導管137から経路2410に沿って、液体電解質100を通してガスの泡/容量を受け取る。経路2410は多くの場合又は習慣的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101内の気体とガス導管137内のガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体135を形成する)。
【0517】
図32は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池58の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、ヘッドスペース内のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを消費する。電極120には、大量のガスを含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100は、外部ガス導管127から経路2500に沿って、液体電解質100を通してガスの泡/容量を受け取る。経路2500は時に又は不規則的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100内の気体とガス導管127内のガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体125を形成する)。電極130には、大量のガスを含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれる。ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101は、外部ガス導管137から経路2510に沿って、液体電解質100を通してガスの泡/容量を受け取る。経路2510は時に又は不規則的に、ガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101内の気体とガス導管137内のガスとの間に連続接続を生み出す(集合的に気体135を形成する)。
【0518】
図33は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池59の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、ヘッドスペース内のガス交差を阻止する。電極120及び130は各々ガスを消費する。電極120には、内部に気体125を含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1100が取り付けられるか、又は組み込まれる。気体125は、液体電解質100を通して経路2600を介して外部導管127及び外部ガス貯蔵システム128と気体連通する。気体125は、経路2600に沿って液体電解質を通して導管127からガスの泡/容量を受け取り、そこでガスは外部導管127及び外部ガス貯蔵システム128に入り得る。電極130には、内部に気体135を含むガス毛細管又はガスハンドリング構造体1101が取り付けられるか、又は組み込まれる。気体135は、液体電解質100を通して経路2610を介して外部導管137及び外部ガス貯蔵システム138と気体連通する。気体135は、経路2610に沿って液体電解質を通して導管137からガスの泡/容量を受け取り、そこでガスは外部導管137及び外部ガス貯蔵システム138に入り得る。
【0519】
図34は、両電極の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池60の概略断面図を示す。電極120の上のヘッドスペースは、一部は導管127と関連する気体で占められ、一部は液体電解質100で占められる。電極130の上のヘッドスペースは、一部は導管137と関連する気体で占められ、一部は液体電解質100で占められる。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、導管127と関連する気体と導管137と関連する気体との間のガス交差を阻止する。電池60は水電解電池であり、電極120及び130は各々ガスを生成する。動作中、電極120は、容積2700を埋める大量のガスを泡の形態で生成する。そうするに当たり、容積2700内の気泡は習慣的に、多くの場合、又は時には、導管127と関連する気体と連続することなり、それにより、全体気体125を形成する(容積2700の周囲及び近傍の破線により示される)。多孔性毛細管スペーサ110は、反応を維持するために電極120により必要とされる水及び/又は液相イオンを供給することが可能であるため、反応は続く。動作前又は動作後、液体電解質100は容積2700を充填する。したがって、
図34において容積2700の周囲及び近傍の破線により示される全体気体125は、電池動作時、動的に作成される。動作中、電極130は小量のガスを気泡の形態で生成する。気泡は、固体又は多孔性バリア2720を電極130の外面近くに配置することにより作成されたより小さな容積2710を充填する。そうするに当たり、容積2710内の気泡は習慣的に、多くの場合、又は時には、導管137と関連する気体と連続することなり、それにより、全体気体135を形成する(電極130近傍の破線により示される)。多孔性毛細管スペーサ110は、反応を維持するために電極130により必要とされる水及び/又は液相イオンを供給することが可能であるため、反応は電極130において続く。動作前又は動作後、液体電解質100は容積2710を充填する。したがって、
図34における電極130近くの破線により示される全体気体135は、電池の動作時、動的に作成される。電池60は独立経路電池であり、その理由は、電池が、液相水反応物が反応ゾーンに進入するために別個の独立した非干渉経路を提供しながら、ガス125を電極120から排出し、ガス135を電極130から排出するために別個の独立した非干渉経路も提供するためである。
【0520】
図35は、一部は気体125で占められ、一部は液体電解質100で示された、電極120の上にヘッドスペースが提供される、更なる一例の電気合成又は電気エネルギー電池61の概略断面図を示す。容積2810内の電極130周囲の液体電解質100は、導管2811及び2815を介して、一部は連続気相135で占められ、一部は液体電解質100で占められる気相セパレータタンク2812と流通する。多孔性毛細管スペーサ110に保持される液体電解質は、電極120と関連する半電池と電極130と関連する半電池との間のガス交差を阻止する。電池61は水電解電池であり、電極120及び130は各々ガスを生成する。動作中、電極120は、容積2800内で生じて気体125と合体する大量のガスを泡の形態で生成する。即ち、電極120により生成されたガスは、外部導管127と流体接触する。動作中、電極130は、容積2810内で生じて導管2811に入り、セパレータタンク2812に流れる大量のガスを泡の形態で生成し、セパレータタンク2812において、ガスは、外部導管137と気体連通する連続気体135に分離する。ガス-液体セパレータタンク2812の底部における分離された液体電解質は次いで、導管2813に沿って導管2815を通って流れ、容積2810に戻る。この循環流は、電極130と関連する半電池において矢印2814及びその他の矢印により示される方向で生じ、気泡の自然な浮力により駆動され得、又はポンプにより駆動され得る。即ち、電極130により生成されたガスは、導管137と流体接触する。以下の条件の1つ又は組合せが電池61に関連する。
- 多孔性毛細管スペーサ110は、反応を維持するために電極120及び130により必要とされる液相水及び/又はイオン反応物を電極間から供給するのに十分に高い流量を有する。これは、電池61が、(a)電極120及び130により必要とされる水及びイオン反応物の液相移動、(b)電極120の気相産物125、並びに(c)電極130の気相産物135に別個の独立した非干渉経路を提供するため、「独立経路電池」であることを意味する。
- 多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、8cm超の高さで1分当たり水0.0014g超の流量で流れる。
- 多孔性毛細管スペーサは、2μm超且つ400μm未満の平均孔径を有する。
- 多孔性毛細管スペーサは、0.4cm超の最大カラム高さを有する。
- 多孔性毛細管スペーサ110は、60%超の有孔率を有する。
- 電極は、2バール超の圧力で多孔性毛細管スペーサ110に対して圧縮される。
- 多孔性毛細管スペーサ110は0.45mm厚未満である。
- 多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、第1の気体125が第2の気体135と混合するのを阻止又は妨げ、2%未満のベンチマークガス交差を維持する。
- 多孔性毛細管スペーサ110は、室温で140mΩcm
2未満のイオン抵抗を有する。
- 電池61は、電極間から、反応を維持するために電極120又は電極130のいずれかにより必要とされる液相水及び/又はイオンを供給するのに不十分な流量を有する多孔性毛細管スペーサ110が備えられた同一の電池よりも0.5%超高いエネルギー効率を示す。反応を維持するために電極120又は電極130のいずれかにより必要とされる液相水及び/又はイオン反応物は、代わりに容積2800又は2810からそれぞれ供給されなければならない。そのような電池は、電極120及び130により必要とされる水及びイオン反応物の液相移動に別個の独立した非干渉経路を提供しないため、独立経路電池ではないであろう。
【0521】
図35の例では、多孔性毛細管スペーサが平均孔径2μm超且つ400μm未満、有孔率60%超、電極圧縮2バール超を有し、電解質が水酸化物塩を含み、少なくとも10のPHを有する電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。
【0522】
図35の例では、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質が、高さ8cm超で1分当たり水0.0014g超の流量、厚さ0.45mm未満、有孔率60%超、電極圧縮2バール超で流れ、電解質が水酸化物塩を含み、少なくとも10のPHを有する電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。
【0523】
図35の例では、多孔性毛細管スペーサが、最大カラム高さ0.4cm超、有孔率60%超、電極圧縮2バール超を有し、電解質が水酸化物塩を含み、少なくとも10のPHを有する電気合成又は電気エネルギー電池が提供される。
【0524】
更なる実施形態例
更なる非限定的な実施形態例によれば、以下のポイントは、更なる電池例及び電池の更なる動作方法例を開示する。
1.電気合成又は電気エネルギー電池であって、
液体電解質を含む槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
液体電解質で充填され、第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、槽内に位置し、液体電解質と液体接触する先端部を有する、多孔性毛細管スペーサと、
を備える、電池。
2.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供する、ポイント1に記載の電池。
3.液体電解質、液相反応物、及び/又は産物は、少なくとも1つの外部導管を介して槽内又は外に輸送される、ポイント2に記載の電池。
4.少なくとも1つの外部液体導管は、液体電解質、液相反応物、及び/又は産物を外部貯蔵、外部供給、又は外部除去するために、外部液体貯蔵システムと流通する、ポイント3に記載の電池。
5.外部液体導管は存在せず、液体電解質、液相反応物、及び/又は産物は、ガス流内の上記の形態で電池内又は外に輸送される、ポイント1~4のいずれか1つに記載の電池。
6.蒸気は優先的に、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質において液化又は液体電解質から気化する、ポイント1~5のいずれか1つに記載の電池。
7.第1のガス拡散電極は、槽内の液体電解質の部分とは別個である、ポイント1~6のいずれか1つに記載の電池。
8.第1のガス拡散電極は、槽内の液体電解質の部分に接触する、ポイント1~6のいずれか1つに記載の電池。
9.第2の電極は、槽内の液体電解質の部分とは別個である、ポイント1~8のいずれか1つに記載の電池。
10.第2の電極は、槽内の液体電解質の部分に接触する、ポイント1~8のいずれか1つに記載の電池。
11.多孔性毛細管スペーサの先端部は、第1のガス拡散電極及び第2の電極を越えて延びる、ポイント1~10のいずれか1つに記載の電池。
12.多孔性毛細管スペーサの先端部が槽内に位置する前、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填される、ポイント1~11のいずれか1つに記載の電池。
13.液体電解質は、まず多孔性毛細管スペーサに沿って槽から輸送された後、第1のガス拡散電極及び第2の電極に接触する、ポイント1~11のいずれか1つに記載の電池。
14.動作中、全ての第1のガス拡散電極に隣接する多孔性毛細管スペーサの少なくとも部分及び全ての第2の電極に隣接する多孔性毛細管スペーサの少なくとも部分は、液体電解質で充填されたままである、ポイント1~13のいずれか1つに記載の電池。
15.槽は存在せず、又は槽は多孔性毛細管スペーサに組み込まれ、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、電池内の液体電解質の連続体のみを含む、ポイント1~14のいずれか1つに記載の電池。
16.第2の電極は第2のガス拡散電極である、ポイント1~15のいずれか1つに記載の電池。
17.第1のガス拡散電極及び第2の電極は、槽から離間される、ポイント1~16のいずれか1つに記載の電池。
18.多孔性毛細管スペーサと第1のガス拡散電極とが直接接触するエリアは、槽の外部であり、多孔性毛細管スペーサと第2の電極とが直接接触するエリアは、槽の外部である、ポイント1~17のいずれか1つに記載の電池。
19.電池内の電気化学反応の液相反応物又は産物は、多孔性毛細管スペーサ内部の液体電解質内の液相経路を辿る、ポイント1~18のいずれか1つに記載の電池。
20.槽は、多孔性毛細管スペーサが通る開口部を含む、ポイント1~19のいずれか1つに記載の電池。
21.多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質で覆われる表面積は、少なくとも、多孔性毛細管スペーサに面する第1のガス拡散電極の表面積以上であるポイント1~20のいずれか1つに記載の電池。
22.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供する、ポイント1~21のいずれか1つに記載の電池。
23.外部筐体は、少なくとも1つの外部第1ガス導管を更に提供する、ポイント1~22のいずれか1つに記載の電池。
24.第1のガス拡散電極に隣接する第1のガスで構成された第1の気体を更に含み、第1のガスは、動作中、電池に供給される反応物又は電池から除去される産物である、ポイント1~23のいずれか1つに記載の電池。
25.第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、ポイント22又は23及び24に記載の電池。
26.少なくとも1つの外部第1ガス導管は、第1のガスを外部貯蔵、外部供給、又は外部除去する外部第1ガス貯蔵システムと気体連通する、ポイント25に記載の電池。
27.第2のガス拡散電極に隣接する第2のガスで構成される第2の気体を更に含み、第2のガスは、動作中、電池に供給される反応物又は電池から除去される産物である、ポイント16に記載の電池。
28.外部筐体は、少なくとも1つの外部第2ガス導管を提供する、ポイント22又は23に記載の電池。
29.第2のガスは、少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送される、ポイント27及び28に記載の電池。
30.少なくとも1つの外部第2ガス導管は、第2のガスを外部貯蔵、外部供給、又は外部除去する外部第2ガス貯蔵システムと気体連通する、ポイント29に記載の電池。
31.第1のガス拡散電極及び第2の電極は各々、10cm2以上の幾何学的表面積を有する側面を有する、ポイント1~30のいずれか1つに記載の電池。
32.第1のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む、ポイント1~31のいずれか1つに記載の電池。
33.第2のガス拡散電極は、金属メッシュ、金属発泡体、及び/又は金属有孔板を含む、ポイント16に記載の電池。
34.多孔性毛細管スペーサの第1の側面は、第1のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、多孔性毛細管スペーサの第2の側面は、第2のガス拡散電極の第1の側面に隣接し、第1のガス拡散電極の第2の側面は、第1の気体に隣接し、第2のガス拡散電極の第2の側面は第2の気体に隣接する、ポイント16に記載の電池。
35.第1のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部は、第1の気体と直接気相接触し、第2のガス拡散電極の第2の側面の少なくとも一部は、第2の気体と直接気相接触する、ポイント34に記載の電池。
36.ガスハンドリング構造体を含み、ガスハンドリング構造体は、
第1のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、
第1のガス拡散電極内、
第1のガス拡散電極又はその近傍、又は
第1のガス拡散電極の一部
に位置する、ポイント1~35のいずれか1つに記載の電池。
37.第2のガスハンドリング構造体を含み、第2のガスハンドリング構造体は、
第2のガス拡散電極と多孔性毛細管スペーサとの間、
第2のガス拡散電極内、
第2のガス拡散電極又はその近傍、又は
第2のガス拡散電極の一部
に位置する、ポイント1~36のいずれか1つ及びポイント16に記載の電池。
38.第1のガス拡散電極内又は第1のガス拡散電極に位置するガス毛細管構造体を含むポイント1~37のいずれか1つに記載の電池。
39.第2のガス拡散電極内又は第2のガス拡散電極に位置する第2のガス毛細管構造体を含む、ポイント38及びポイント16に記載の電池。
40.液体電解質は、少なくとも毛細管作用により多孔性毛細管スペーサに沿って輸送される、ポイント1~39のいずれか1つに記載の電池。
41.液体電解質は、毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により多孔性毛細管スペーサに沿って輸送される、ポイント1~39のいずれか1つに記載の電池。
42.電池は、多孔性毛細管スペーサ内で生じる毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用により自己調整される、ポイント1~39のいずれか1つに記載の電池。
43.多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、第1の気体が第2の気体と混合するのを阻止又は妨げる、ポイント1~42のいずれか1つに記載の電池。
44.電池はゼロギャップ電池であり、それにより、多孔性毛細管スペーサは2mm厚未満である、ポイント1~43のいずれか1つに記載の電池。
45.2つ以上の多孔性毛細管スペーサを含むポイント1~44のいずれか1つに記載の電池。
46.2つ以上の多孔性毛細管スペーサを含み、2つ以上の多孔性毛細管スペーサの各々の端部は、2つ以上の槽の1つの位置する、ポイント45に記載の電池。
47.多孔性毛細管スペーサは少なくとも部分的にポリエーテルスルホン材料で構成される、ポイント1~46のいずれか1つに記載の電池。
48.多孔性毛細管スペーサは約5μm又は約8μmの平均孔サイズを有する、ポイント1~47のいずれか1つに記載の電池。
49.多孔性毛細管スペーサは、PVDF、PTFE、テトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ナイロン、窒素含有材料、ガラス繊維、ケイ素含有材料、ポリ塩化ビニル、塩化物含有ポリマー、酢酸セルロース、硝酸セルロース、セロハン、エチルセルロース、セルロース含有材料、ポリカーボネート、カーボネート含有材料、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、スルホン含有材料、ポリフェニレンスルフィド、スルフィド含有材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、オレフィン含有材料、アスベスト、チタン系セラミックス、ジルコニウム系セラミックス、セラミック材料、ポリ塩化ビニル、ビニル系材料、ゴム、多孔性電池セパレータ、及びクレイを含む群から選択される1つ又は複数の材料で少なくとも部分的に構成される、ポイント1~48のいずれか1つに記載の電池。
50.槽は、第1の液体を含む第1の容積と、第2の液体を含む第2の容積と、第1の容積と第2の容積とを隔てる半透過性膜とを備える、ポイント1~49のいずれか1つに記載の電池。
51.多孔性毛細管スペーサは第1の容積に位置し、第1の液体は液体電解質であり、第2の液体は第1の液体と異なる、ポイント50に記載の電池。
52.複数の電池は、マルチセル積層体として電気的に接続される、ポイント1~51のいずれか1つに記載の電池。
53.複数の電池の各々の第2の液体は、複数の電池の各々の第2の容積に接続された共通供給又は除去パイプを介して液通する、ポイント51又は52に記載の電池。
54.第2の液体は純水である、ポイント51に記載の電池。
55.液体電解質は、0.001~14M濃度のNa+、K+、Ca2+、Mg2+、OH-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、NO3
-、ClO4
-、リン酸塩、HPO4
-、炭酸塩、HCO3
-、PF6
-、BF4
-、(CF3SO2)2N-、官能基を有するポリマーを含む多価電解質、ポリスチレンスルホン酸、DNA、及びポリペプチド等からなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む水を含む、ポイント1~54のいずれか1つに記載の電池。
56.液体電解質は、プロピレンカーボネート液、ジメトキシエタン液、又はプロピオニトリル液、LiClO4溶質、及びBu4NPF6溶質を含む群から選択される溶質を含む非水液体を含む、ポイント1~54のいずれか1つに記載の電池。
57.液体電解質は、常温溶融塩並びにアルキル置換アンモニウム、イミダゾリウム、及びピリジニウムカチオンで構成されるイオン性液体を含む群から選択される導電性液体である、ポイント1~54のいずれか1つに記載の電池。
58.液体電解質は導電性ゲルである、ポイント1~54のいずれか1つに記載の電池。
59.電気化学反応を実行するための電気合成又は電気エネルギー電池の動作方法であって、電気合成又は電気エネルギー電池は、
液体電解質を含む槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
第1のガス拡散電極と第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、槽内に位置し、液体電解質と液体接触する先端部を有する、多孔性毛細管スペーサと、
を備え、
方法は、
多孔性毛細管スペーサを液体電解質で充填するステップと、
液体電解質に第1のガス拡散電極及び第2の電極で接触するステップと、
を含む、方法。
60.少なくも毛細管作用により槽からの液体電解質で多孔性毛細管スペーサを充填することを含むポイント59に記載の方法。
61.多孔性毛細管スペーサの先端部が槽内に位置する前、多孔性毛細管スペーサを液体電解質で充填することを含むポイント59に記載の方法。
62.液体電解質を多孔性毛細管スペーサに沿って輸送した後、液体電解質を第1のガス拡散電極及び第2の電極に接触させることを含むポイント60に記載の方法。
63.動作中、多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填されたままである、ポイント59~62のいずれか1つに記載の方法。
64.電池は電気合成電池であり、電気化学反応は、電気合成電池から離れて外部に輸送される化学産物を生成する、ポイント59~63のいずれか1つに記載の方法。
65.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供し、液体電解質は、少なくとも1つの外部液体導管を介して槽内又は外に輸送される、ポイント59~64のいずれか1つに記載の方法。
66.少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、ポイント65に記載の方法。
67.電池の外部筐体を更に含み、外部筐体は少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供し、第1のガスは、少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は外に輸送される、ポイント59~64のいずれか1つに記載の方法。
68.少なくとも1つの外部第2ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第2のガスは、少なくとも1つの外部第2ガス導管を介して第2の気体内又は外に輸送される、ポイント65~67のいずれか1つに記載の方法。
69.電池は、1Amp以上の第1のガス拡散電極及び第2の電極を通る電流を使用して動作する、ポイント59~68のいずれか1つに記載の方法。
70.電池は少なくとも24時間連続して動作する、ポイント59~69のいずれか1つに記載の方法。
71.多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により多孔性毛細管スペーサ内に液体電解質を引き込み、カラム高さの液体電解質を維持する、ポイント59~70のいずれか1つに記載の方法。
72.液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも第1のガス拡散電極の高さに等しく、又はそれよりも高い、ポイント59~71のいずれか1つに記載の方法。
73.電気化学反応中、多孔性毛細管スペーサ内の液体電解質は、多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行を促進する、ポイント59~72のいずれか1つに記載の方法。
74.多孔性毛細管スペーサの長さに沿った1つ又は複数の液相材料の移行は、液相毛細管作用、拡散、及び/又は浸透作用の制御下にある、ポイント59~73のいずれか1つに記載の方法。
75.電気化学反応は、電気合成又は電気エネルギー電池において自己調整される、ポイント59~74のいずれか1つに記載の方法。
76.交差平面軸からの液相材料の移動は、槽内の液体電解質の組成によって自己調整される、ポイント59~75のいずれか1つに記載の電池。
77.交差平面軸内及び外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられる、ポイント59~76のいずれか1つに記載の電池。
78.液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、
(i)液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、
(ii)液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する
ように、多孔性毛細管スペーサ内で作用する、ポイント59~77のいずれか1つに記載の電池。
79.電気化学反応は、窒素及び水素又は酸素からアンモニアを生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
80.電気化学反応はアンモニア及び酸素から電気を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
81.電気化学反応はアンモニアから水素及び窒素を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
82.電気化学反応は、反応物としてNOXを使用する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
83.電気化学反応は、塩水から塩素、水素、及び苛性物質を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
84.電気化学反応は、塩水から塩素及び苛性物質を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
85.電気化学反応は、塩酸から塩素及び水素を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
86.電気化学反応は、水素及び酸素から電気エネルギーを生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
87.電気化学反応は、水から水素及び酸素を生成する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
88.電気化学反応は、水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する、ポイント59~78のいずれか1つに記載の電池。
【0525】
好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱せずに、多くの修正、変更、置換、又は代替が当業者には明らかになることを理解されたい。
【0526】
実施形態及び動作形態は、個々に又は部品、要素、若しくは特徴の2つ以上の任意の若しくは全ての組合せで集合的に本明細書において参照され、又は本明細書において示された実施形態の部品、要素、及び特徴を広く含むと言え、本発明が関連する技術分野で既知の均等物を有する特定の完全体が本明細書において述べられ、そのような既知の均等物は、まるで個々に記載されるかのように本明細書に援用されると見なされる。
【0527】
本明細書及び以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈により他のことが求められる場合を除き、「含む(comprise)」という用語及び「含む(comprises)」又は「含んで(comprising)」等の変形は、述べられた完全体、ステップ、完全体群、又はステップ群の包含を暗示するが、任意の他の完全体、ステップ、完全体群、又はステップ群の除外を暗示しないことが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応を実行するための
電気化学電池の動作方法であって、前記
電気化学電池は、
液体電解質を含む槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、前記槽内に位置し前記液体電解質と液体接触する端部を有する、多孔性毛細管スペーサと、
を備え、
前記電気化学電池は電気合成電池であり、
前記
動作方法は、
前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を前記液体電解質と接触させるステップと、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に電圧を印加するステッ
プと、
を含む、
動作方法。
【請求項2】
前記多孔性毛細管スペーサに、少なくとも毛細管作用により前記槽からの前記液体電解質を充填することを含む請求項1に記載の
動作方法。
【請求項3】
前記多孔性毛細管スペーサの前記端部が前記槽内に位置する前、前記多孔性毛細管スペーサに前記液体電解質を充填することを含む請求項2に記載の
動作方法。
【請求項4】
前記液体電解質が前記多孔性毛細管スペーサに沿って輸送された後、前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を前記液体電解質と接触させることを含む請求項3に記載の
動作方法。
【請求項5】
動作中、前記多孔性毛細管スペーサは液体電解質で充填されたままである、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項6】
前記電池のための外部筐体を更に含み、前記外部筐体は少なくとも1つの外部液体導管を提供し、前記液体電解質は、前記少なくとも1つの外部液体導管を介して前記槽内又は前記槽外に輸送される、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項7】
少なくとも1つの外部第1ガス導管を提供する外部筐体を更に含み、第1のガスは、前記少なくとも1つの外部第1ガス導管を介して第1の気体内又は第1の気体外に輸送される、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項8】
前記電池は、前記第1のガス拡散電極及び前記第2の電極を通して、1Amp以上、好ましくは1.5Amp以上、より好ましくは2Amp以上、及びより好ましくは2.5Amp以上の電流を使用して動作する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項9】
前記多孔性毛細管スペーサは、毛細管作用により前記多孔性毛細管スペーサ内にカラム高さの前記液体電解質を引き込み、カラム高さの前記液体電解質を維持する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項10】
前記液体電解質の最大カラム高さは、少なくとも前記第1のガス拡散電極の高さに等しく、又はそれよりも高い、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学反応は、前記電気合成電
池において自己調整される、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項12】
交差平面軸内及び交差平面軸外への液相材料及び気相材料の移行経路は、別様に向けられる、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項13】
液相毛細管、拡散、及び/又は浸透作用は、
(i)前記液体電解質内で消費される1つ又は複数の液相材料を常時補充し、
(ii)前記液体電解質内で生成された1つ又は複数の液相材料を常時除去する
ように、前記多孔性毛細管スペーサ内で作用する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項14】
前記電気化学反応は、窒素及び水素からアンモニアを生成する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項15】
前記電気化学反応は、アンモニアから水素及び窒素を生成する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項16】
前記電気化学反応は、塩水から塩素、水素、及び/又は苛性物質を生成する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項17】
前記電気化学反応は、水から水素及び酸素を生成する、請求項
1に記載の
動作方法。
【請求項18】
前記電気化学反応は、水素を含むガス混合物から純粋な水素を抽出する、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
電気化学電池であって、
液体電解質を含む槽と、
第1のガス拡散電極と、
第2の電極と、
前記第1のガス拡散電極と前記第2の電極との間に位置する多孔性毛細管スペーサであって、前記槽内に位置し前記液体電解質と液体接触する端部を有する、多孔性毛細管スペーサと、
を備え、
前記電気化学電池は電気合成電池であり、
前記電気化学電池は、請求項
1に記載の
動作方法に従って動作するように構成される、
電気化学電池。
【請求項20】
電気化学電池の積層体であって、
請求項
19に
記載の第1の電気化学電池と、
請求項
19に
記載の第2の電気化学電池と、
を含む、
電気化学電池の積層体。
【国際調査報告】