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特表2023-543109ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20231005BHJP
   C07C 69/68 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 69/67 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 69/675 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 69/732 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231005BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231005BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C07C67/08 CSP
C07C69/68
C07C69/67
C07C69/675
C07C69/732
A61K31/225
A61K31/22
A61P3/00
A61P25/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P1/14
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61P43/00 105
A61P25/14
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/18
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A23L33/10
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023501804
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020074890
(87)【国際公開番号】W WO2022012765
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/069707
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B018
4C206
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD07
4B018ME01
4B018ME14
4C206AA01
4C206AA03
4C206AA04
4C206DB03
4C206DB29
4C206DB43
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA36
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZA69
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZB33
4C206ZC21
4C206ZC35
4C206ZC54
4C206ZC55
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB10
4H006AB20
4H006AC48
4H006BA49
4H006BA90
4H006BB70
4H006BN10
4H006KA06
4H006KC12
4H006KC14
4H039CA66
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】 それぞれのBHB前駆体及び/又はBHB代謝物を効率的に、特に大量に、かつ有毒な副産物を大量に発生させることなく利用できるようにする。
【解決手段】 少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステルと、少なくとも1つのカルボン酸(II)とを、エステル化反応において及び/又はエステル化状態において反応させて、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステルを得る。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを製造する方法において、
ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、
少なくとも1つのカルボン酸(II)と、特に1つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、好ましくは2つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、特にエステル化反応において及び/又はエステル化状態において、反応し、
反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
一般式(I)の化合物は、ラセミ体又は(R)-エナンチオマーの形態で使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)において、ラジカルRはエチルを示すこと;及び/又は
一般式(I)の化合物として、式CH-CH(OH)-CH-C(O)OCのヒドロキシブタン酸エチル(3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル又は4-エトキシ-4-オキソ-2-ブタノール)が使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸(II)が、遊離カルボン酸の形態、カルボン酸の塩の形態、カルボン酸のエステルの形態又はカルボン酸無水物の形態で使用され、特に遊離カルボン酸の形態又はカルボン酸無水物の形態で使用されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸(II)は、一般式(IIa)
(HOOC)-X-(COOH) (IIa)
に対応すること、
一般式(IIa)において、
・Xが、有機ラジカル、特に1~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子と任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;及び
・変数mが、1~3の整数を示すこと;及び
・変数nが、0又は1の整数を示すこと;
特に、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH-基)、好ましくは2つのカルボキシル基(COOH-基)が、末端であること、及び/又は、一級カルボキシル基(COOH-基)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
一般式(IIa)において、
・Xが、飽和又は不飽和、及び、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はカルボキシルラジカルで一置換又は多置換され、2から6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mが、1の整数を示すこと;及び
・変数nが、0又は1の整数を示すこと;
特に、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH-基)、好ましくは2つ又は両方のカルボキシル基(COOH-基)が、末端であること、及び/又は、一級カルボキシル基(COOH-基)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
カルボン酸(II)が、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
カルボン酸(II)が、ヒト及び/又は動物の代謝で生じる天然由来のカルボン酸又はその無水物若しくは誘導体、特に反応生成物、特にカルボン酸又はその無水物若しくは誘導体、特に反応生成物であることを特徴とする請求項1
から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
カルボン酸(II)が、食品法で認可された成分、特に添加物であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールを製造する方法、特に請求項1~9のいずれかに記載された方法において、
ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示す一般式(1)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、
特に、エステル化反応及び/又はエステル化条件下で、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの無水物ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と反応すること、
これによって、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られることを特徴とする方法。
【請求項11】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールを製造する方法、特に請求項1~10のいずれかに記載された方法において、
ラジカルRがエチルを示す一般式(1)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、
特に、エステル化反応及び/又はエステル化条件下で、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの無水物ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と反応すること、
これによって、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記反応が、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施されること;及び/又は、
前記反応が、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されること、又は、
前記反応が、触媒、特に酵素及び/又は金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施され、特に触媒が反応の後に再利用されることを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記反応が、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施されること;及び
前記反応が、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記反応が、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されること;
特に、前記反応が、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されること;及び/又は、
特に、前記反応が、触媒の非存在下及び/又は無触媒で、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約1barの圧力で実施されること;及び/又は、
特に、前記反応が、不活性ガスの存在下で、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下で、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されることを特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記反応が、触媒としての酵素の存在下で実施されること;
特に、前記酵素が、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ及びそれらの組み合わせから選択されること;及び/又は、
特に、前記酵素が、カンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)、テルモミセス・ラヌギノーサ、カンジダルゴサ、アスペルギルス・オリゼ(ニホンコウジカビ)、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾパス・デレマール及びシュードモナス種及びそれらの組み合わせ、好ましくはカンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)及びテルモミセス・ラヌギノーサに由来すること;及び/又は、
特に、前記酵素が、前記反応後に再利用されること;及び/又は、
特に、前記酵素が、固定化された形態で、特に担体上に、好ましくは高分子担体上に、より好ましくは疎水性を有する高分子有機担体上に、さらに好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体上に固定化された形態で使用されること;及び/又は、
特に、前記反応が、触媒としての酵素の存在下で、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実施されること;及び/又は、
特に、前記酵素は、出発化合物(I)及び(II)の総量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用されること;及び/又は、
特に、前記反応が、触媒としての酵素の存在下で、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約0.5barの圧力で実施されること;及び/又は、
特に、前記反応が、不活性ガスの存在下、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下での酵素の存在下で実施されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記反応が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施されること;
特に、前記触媒が、(i)塩基性触媒、特にアルカリ又はアルカリ土類水酸化物及びアルカリ又はアルカリ土類アルコール酸塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMe及びNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、及び有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛及びアルミニウム化合物に基づくルイス酸、例えばテトラブタン酸チタン、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム及びアルミニウムトリイソプロピルなど、及び(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩及びアルミニウム酸化物、例えばゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイト及びアルミナ、及びそれらの組み合わせから選択されること;及び/又は、
特に、テトラブタン酸チタン、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム及びアルミニウムトリ-イソプロピルのようなチタン、スズ、亜鉛、アルミニウム化合物に基づくルイス酸が、触媒として使用されること;及び/又は、
特に、前記触媒は、前記反応後に再利用されること;及び/又は、
特に、前記反応が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で実施されること;及び/又は、
特に、前記酵素は、出発化合物(I)及び(II)の総量を基準にして、0.01重量%~30重量%の範囲内、特に0.05重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.2重量%~10重量%の範囲内の量で使用されること;及び/又は、
特に、前記反応が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約1barの圧力で実施されること;及び/又は、
特に、前記反応が、不活性ガスの存在下、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下での金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルが、カルボン酸(II)のカルボキシル基に基づいて、等モル量から200モル%のモル過剰の範囲内、特に等モル量から150モル%のモル過剰の範囲内、好ましくは等モル量から100モル%のモル過剰の範囲内の量において使用されること;及び/又は、
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル及びカルボン酸(II)が、1:1~10:1の範囲内、特に2:1~8:1の範囲内、好ましくは3:1~6:1の一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル/カルボン酸(II)のモル比において使用されることを特徴とする請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと遊離酸の形態のカルボン酸(II)との反応の間に、同時に水が生成されること、特に水が反応から回収されること、特に連続的に、特に蒸留又は吸着除去によって回収されること;及び/又は、
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと無水物の形態のカルボン酸(II)との反応の間に、対応する遊離カルボン酸の1モルが、使用される無水物の1モル当たり形成されること;特に、結果として生じる遊離カルボン酸(II)が、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと反応されること又は反応が行われた後、特に使用される出発化合物(I)及び(II)の量及び/又は比に応じて、除去されること及び任意に再利用されることを特徴とする請求項1~17のいいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
反応生成物の組成、特に3-ヒドロキシブタン酸(III)の種々のカルボン酸エステルの存在及び混合物の場合のそれらの割合は、反応条件によって、特に反応温度(変換温度)の選択及び/又は反応圧力(変換圧力)の選択によって及び/又は触媒の有無によって及び種類及び/又は量に関する触媒の選択及び/又は出発化合物(反応物)の量の選択によって及び/又は生成される副産物、特に水の除去によって制御及び/又は調節することができることを特徴とする請求項
~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
得られた反応生成物は、反応を行った後に分別され、特に蒸留によって分別されることを特徴とする請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
未反応の出発化合物(I)及び/又は(II)が、反応生成物から分離され、その後再利用されることを特徴とする請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記反応が行われた後に反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されること;及び/又は、
前記反応は、それに続いて、まだ存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基の部分的、特に完全な官能化、特にエステル化が実施されることを特徴とする請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記反応生成物(III)として、
一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られること及び/又は取得可能であること、
一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に1~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子且つ任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1~3の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、それぞれお互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと、ただし、ラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも2つは末端であること/及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記反応生成物(III)として、
一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られること及び/又は取得可能であること、
一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はラジカル-O-C(O)-CH-CH(OH)-CH及び/又はカルボキシルラジカル及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORで置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、それぞれお互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルであること、ただし、ラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも2つ又は両方が末端であること/及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする請求項1~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記反応生成物(III)として、
一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られること及び/又は取得可能であること、
一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるカルボン酸から生じること;
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基が、前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分的にエステル化されることを特徴とする請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記反応生成物(III)として、
一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られること及び/又は取得可能であること、
一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;


【化27】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項1~25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
反応生成物として、3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの混合物、特に上で定義したようなものの混合物を得ることができることを特徴とする請求項1~26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1つに記載の方法によって取得可能な、反応生成物、特に(化学的)生成物又は生成混合物、好ましくは3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのいくつかのカルボン酸エステルの混合物、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのいくつかのカルボン酸エステルの混合物。
【請求項29】
反応生成物、特に(化学的)生成物又は生成混合物、特に請求項28記載の反応生成物であって、
該反応生成物が、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有すること、
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xが、有機ラジカル、特に1~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子且つ任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1~3の整数であること;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の2つは、末端であること及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする反応生成物。
【請求項30】
前記反応生成物(III)が
一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有すること、
一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はラジカル-O-C(O)-CH-CH(OH)-CH及び/又はカルボキシルラジカル及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORで置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、それぞれお互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルであること、ただし、ラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも2つ又は両方が末端であること/及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする請求項28又は29記載の反応生成物。
【請求項31】
前記反応生成物(III)が、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有すること、
一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されたカルボン酸から生じること、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されたカルボン酸から生じること;
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基が、前記Rを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分的にエステル化されることを特徴とする請求項28~30のいずれか1つに記載の反応生成物。
【請求項32】
前記反応生成物(III)が、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有すること、
一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化28】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項28~31のいずれか1つに記載の反応生成物。
【請求項33】
前記反応生成物が、特に前述したような3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを有することを特徴とする請求項28~32のいずれか1つに記載の反応生成物。
【請求項34】
一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル(=4-オキソ-2-ブタノールのカルボン酸エステル)、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルであって。
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xが、有機ラジカル、特に1~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子且つ任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1~3の整数であること;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の2つは、末端であること及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項35】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルが、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はラジカル-O-C(O)-CH-CH(OH)-CH及び/又はカルボキシルラジカル及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORで置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び、
・R及びRは、それぞれお互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルであること、ただし、ラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とすること;
ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも2つ又は両方が末端であること/及び/又は第一級ラジカルであることを特徴とする請求項34記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項36】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されたカルボン酸から生じること、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されたカルボン酸から生じること;
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基が、前記Rを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分的にエステル化されることを特徴とする請求項34又は35記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項37】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること;
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化29】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項34~36のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項38】
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを有する混合物。
【請求項39】
請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物及び/又は請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル、4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル及び/又は請求項38に記載された混合物を含む医薬組成物、特に医薬品又は薬物。
【請求項40】
予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置に使用するための請求項39記載の医薬組成物。
【請求項41】
予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置に使用するための請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物及び/又は請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル、4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル及び/又は請求項38に記載された混合物。
【請求項42】
予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置に使用するための請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物及び/又は請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル及び/又は請求項38に記載された混合物の使用。
【請求項43】
予防的及び/又は治療的処置のための、又は、空腹、ダイエット又は低炭水化物栄養のような異化代謝状態の予防的及び/又は治療的処置のための医薬品の製造のための、又は、適用のための、請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物及び/又は請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル及び/又は請求項38記載の混合物の使用。
【請求項44】
請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物、及び/又は、請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、請求項38に記載された混合物を具備することを特徴とする食品及び/又は食品生成物。
【請求項45】
食品及び/又は食品が、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は持久力スポーツ補助食品であることを特徴とする請求項44記載の食品及び/又は食品生成物。
【請求項46】
食品及び/又は食品生成物における、請求項28~33のいずれか1つに記載の反応生成物、及び/又は、請求項34~37のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、請求項38に記載された混合物の使用。
【請求項47】
食品及び/又は食品が、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は持久力スポーツ用サプリメントであることを特徴とする請求項46記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体及び関連する代謝及び関連する疾患の治療の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの製造方法、ならびにこのようにして得られた又はこのようにして調製された反応生成物(すなわち3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル)及びそれらの使用、特に薬剤もしくは医薬品などの医薬組成物、又は食品及び/もしくは食品における使用、ならびにそのさらなる用途又は使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明方法に従って得られる又は製造される反応生成物(すなわち、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル)を含む医薬組成物、特に薬剤又は医薬品、及びそれらの用途又は使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、食品及び/もしくは食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤並びに筋力及び/もしくは持久力スポーツサプリメントであって、本発明の方法によって得られる又は製造された反応生成物(すなわち3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル)並びにそれらの用途又は使用に関する。
【背景技術】
【0005】
人間のエネルギー代謝において、グルコースは短期的に利用可能なエネルギーキャリアであり、ミトコンドリアで水と二酸化炭素を放出することによりエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵量は、夜間の睡眠時間中にすでに空っぽになっている。しかし、特に人間の中枢神経系(CNS)や心臓は、恒常的なエネルギー供給を必要とする。
【0006】
ブドウ糖に代わる生理的な物質で、主に中枢神経系で利用されるのが、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0007】
特にケト体という言葉は、主に異化代謝状態(空腹時、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシスに至る可能性がある3つの化合物の総称である。ケト体という用語は、アセト酢酸エステル(同義語的にアセタセテートともいう)及びアセトン並びに3-ヒドロキシブタン酸(以下、同義語的にベータ-ヒドロキシブタン酸又はBHB若しくは3-BHBともいう)若しくはその塩(いわゆる3-ヒドロキシブタン酸エステルもしくはベータ-ヒドロキシブタン酸エステル)の3つの化合物を有し、後者は前述の3つの化合物の中でもっともに重要な化合物である。3-ヒドロキシブタン酸又はその塩は、生理的には(R)-エナンチオマー、すなわち(R)-3-ヒドロキシブタン酸(同義語的に3位のキラリティー中心を強調するために(3R)-3-ヒドロキシブタン酸とも呼ばれるもの)又はその塩として存在する。
【0008】
このケト体は、生理的にも、空腹時や飢餓時に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から大量に供給され、エネルギー源のグルコースにほぼ完全に置き換えられる。
【0009】
ケト体は、肝臓でベータ酸化から生じるアセチルコエンザイムA(=アセチルCoA)から生成され、ヒトの体内でアセチルコエンザイムAの運搬可能な形態となるものである。しかし、ケト体を利用するためには、まず脳と筋肉がケト体をアセチルコエンザイムAに戻すために必要な酵素を発現して適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体はエネルギー生産にかなり貢献する。例えば、脳はしばらくすると1日の3分の1の量のブドウ糖だけでやっていけるようになる。
【0010】
生理的には、脂肪酸分解の通常の中間産物であるアセチルコエンザイムAの形で2分子の活性化酢酸からケト体が合成され、さらにアセチルコエンザイムAユニットと酵素HMG-CoA-シンターゼを使って中間産物3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)に拡張し、最後にHMG-CoA-リラーゼがアセト酢酸を切り離す。これら3つのステップは肝臓のミトコンドリアのみで行われ(リネンサイクル)、最終的に3-ヒドロキシブタン酸は細胞質でD-ベータ-ヒドロキシブタン酸脱水素酵素によって生成される。また、HMG-CoAはアミノ酸のロイシンが分解されてできる最終生成物であり、アセト酢酸はアミノ酸のフェニルアラニンやチロシンが分解されてできるものである。
【0011】
自然脱炭酸によりアセト酢酸はアセトンに変化し、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気から感知されることがある。これは体内でそれ以上利用されることはない。しかし、ケト体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0012】
アセト酢酸は、このように還元的に3-ヒドロキシブタン酸又は3-ヒドロキシブタン酸の生理学的に関連する形態に変換されるが、二酸化炭素の放出とともに生理学的に使用できないアセトンに分解することもでき、これは重度のケトーシス、ケトアシドーシス(例えば、インスリンが補充されていない1型糖尿病の患者)、尿及び呼気中で検出可能かつ嗅ぎ分けることが可能である。
【0013】
3-ヒドロキシブタン酸は現在、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩としてウェイトトレーニング分野で使用・販売されている。
【0014】
しかし、3-ヒドロキシブタン酸は進化論的に人間には知られていないかごく少量しかなく、また植物は3-ヒドロキシブタン酸を生成せず、動物生体内の3-ヒドロキシブタン酸はケトーシス状態の痩せた動物の死体にしか発生しないものであることから、これによって、3-ヒドロキシブタン酸が経口投与されると吐き気を催すものである。遊離酸とその塩の形の3-ヒドロキシブタン酸も非常に苦い味がして、激しい嘔吐と吐き気を催すことがある。
【0015】
さらに、これらの化合物は腎臓を損傷する作用があるため、患者、特に新生児だけでなく成人でさえも、3-ヒドロキシブタン酸の塩を大量の摂取に耐えることができない。
【0016】
また、3-ヒドロキシブタン酸及びその塩の血漿中半減期は非常に短く、数グラム摂取してもケトーシスは、3~4時間程度しか持続しないため、患者は、3-ヒドロキシブタン酸及びその塩による治療、特に夜間の治療については利益をもたらさない。代謝性疾患の場合は、生命を脅かす事態につながることもある。
【0017】
したがって、このような代謝性疾患の治療の場合、現在、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTは、ケトジェニック療法のために現在は使用され、すなわち対応するトリグリセリドからのカプロン酸、カプリル酸及びカプリン酸(すなわち飽和線形C-、C-及びC10-脂肪酸)の代謝的変換が意図される。
【0018】
しかし、基本的には、医薬・臨床的観点から、3-ヒドロキシブタン酸は、より有効な医薬・薬理学的標的分子であり、先行技術によれば、原理的には多数の疾患の治療に使用できるが、生理的適合性がないため使用できない(例えば、エネルギー代謝、特にケト体代謝の不調に関連する疾患、あるいは認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病等の神経変性疾患、脂肪代謝疾患等)。
【0019】
以下の表は、純粋に例示であり、決して限定するものではありませんが、有効成分である3-ヒドロキシブタン酸の潜在的な治療オプション又は可能な適応症を示している。

【0020】
【表1】
【0021】
したがって、特に人体又は動物の生理的代謝において、生理的に3-ヒドロキシブタン酸又はその塩に直接又は間接的にアクセスできる有効な前駆体又は代謝物を見出すことができることは、医薬及び臨床の観点から望ましい。
【0022】
その結果、先行技術では、3-ヒドロキシブタン酸又はその塩の生理学的に適した前駆体又は代謝物を見出す試みが欠落していない。しかしながら、これまでのところ、先行技術において効率的な化合物は見つかっていない。また、このような化合物へのアクセスは、従来技術によれば不可能であり、容易に可能なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシブタン酸(すなわち、β-ヒドロキシブタン酸又はBHB又は3-BHB)又はその塩の生理学的に好適又は生理学的に適合する前駆体及び/又は代謝物を製造するための効率的方法の提供である。
【0024】
このような方法は、特に、それぞれのBHB前駆体及び/又はBHB代謝物を効率的に、特に大量に、かつ有毒な副産物を大量に発生させることなく利用できるようにすることが望ましい。
【0025】
全く驚くべき方法において、本出願人は、3-ヒドロキブタン酸のカルボン酸エステル(3-ヒドロキシブタン酸エステル)が、ケト体3-ヒドロキシブタン酸又はその塩の効率的かつ生理的に有効な又は生理的に適合した前駆体及び/又は代謝物を表すこと、且つ、これに関して、これらの化合物に直接的かつ効果的に、特に経済的に、また工業的に実現可能なアクセスを可能にするこれらの化合物を製造する効率的方法を発見又は開発することが出来ることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、上述された課題を解決するために、本発明は、-本発明の第1の態様によれば-請求項1に記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの製造方法を提案する;さらに、本発明方法の特に特別及び/又は有利な実施態様は、関連した従属請求項の主題とされる。
【0027】
さらに、本発明は-本発明の第2の態様によれば-独立請求項(請求項28)による本発明方法によって得られる反応生成物、又は、それぞれの請求項(請求項34~37)による3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、又は、個別の請求項(請求項38)によってこの点において得られる少なくとも2つの3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの混合物に関連するものである;さらに、本発明のこの態様の特に特別な及び/又は有利な実施形態は、それぞれ関連する従属請求項の主題である。
【0028】
同様に、本発明は-本発明の第3の態様によれば-それぞれの独立請求項(請求項39)による医薬組成物、特に薬剤又は医薬品に関する;さらに、本発明のこの態様の特に特別及び/又は有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題とされる。
【0029】
さらに、本発明は-本発明の第4の態様によれば-それぞれの独立請求項(請求項41)に記載のヒト又は動物の身体の疾患の予防的及び/又は治療的処置又はそれに用いるための3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明反応生成物又はカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つのカルボン酸エステルとの本発明混合物に関連する。
【0030】
さらに、本発明は-本発明の第5の態様によれば-関連する独立請求項(請求項42)によって、ヒト又は動物の身体の疾患の予防及び/又は治療処置のための、又は医薬品の製造のための、本発明反応生成物又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明に係るカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つのカルボン酸エステルの混合物の使用に関するものである。
【0031】
さらに、本発明は-本発明の第6の態様によれば-関連する独立請求項(請求項43)による本発明反応生成物又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明カルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸の少なくとも2つのカルボン酸エステルの本発明に係る混合物の使用に関するものである。
【0032】
さらに、本発明は-本発明の第7の態様によれば-関連する独立請求項(請求項44)による食品及び/又は食品製品に関し、さらに、本発明による食品及び/又は食品の特に特別及び/又は有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題となるものである。
【0033】
最後に、本発明は-本発明の第8の態様によれば-関連する独立請求項(請求項46)による食品及び/又は食品における3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明反応生成物又は本発明に係るカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸の少なくとも2つのカルボン酸エステルの本発明に係る混合物の使用に関する;さらに、本発明に従う使用の特に特別及び/又は有利な実施態様は、使用のための関連する従属請求項の主題となるものである。
【0034】
以下、繰り返しを避ける目的で本発明の一態様に関してのみ記載する以下の特徴、実施形態、利点等は、当然、本発明の他の態様にも適宜適用され、これには別途言及する必要がないことは言うまでもない。
【0035】
さらに、本発明の個々の側面及び実施形態は、本発明の他の側面及び実施形態との任意の組み合わせにおいても開示されているとみなされ、特に、すべての特許請求の範囲の後方参照から生じる特徴及び実施形態の任意の組み合わせも、結果として生じるすべての組み合わせ可能性に関して広範に開示されているとみなされることは言うまでもない。
【0036】
以下に提供される全ての相対的又は百分率重量ベースのデータ、特に相対量又は重量データに関して、本発明の範囲内で、これらは、特に以下に定義されるように、全ての成分又は成分を含む、それぞれ100重量%又は100重量%に常に加算するように当業者によって選択されるべきであることに更に留意すべきである;しかしながら、これは当業者にとって自明なことである。
【0037】
また、当業者は、必要に応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の範囲の仕様を設定することができる。
【0038】
さらに、以下に規定するすべての値又はパラメータ等は、原則として、標準化された又は明示的に規定された決定方法、あるいは、当業者に周知の決定又は測定方法により決定又は特定できることが適用される。
【0039】
このように述べた上で、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
したがって、-本発明の第1の態様によれば-本発明の目的は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルを製造するための方法、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの製造方法を提供することであり、
ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、少なくとも1つのカルボン酸(II)と、特に1つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、好ましくは2つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、特にエステル化反応において及び/もしくはエステル化状態下において反応し、
これによって、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られる。
【0041】
本発明によれば、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルを製造する方法が提供され、3-ヒドロキシブタン酸エステルは、同義語的に3-ヒドロキシブタン酸エステル又は代替的に4-オキソ-2-ブタノールとして参照される。
【0042】
厳密には、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルは、(C-C-アルキル)-3-ヒドロキシブタン酸(=3-ヒドロキシブタン酸(C-C-アルキル)エステル)、すなわち同義語的に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールとして示されるヒドロキシブタン酸のC-C-アルキルエステルであるか、又は、(ヒドロキシ-C-C-アルキル)-3-ヒドロキシブタン酸エステル(=3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシ-C-C-アルキル)エステル)、すなわち同義語的に4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールとして示される3-ヒドロキシブタン酸のヒドロキシ-C-C-アルキルエステルのいずれかである。
【0043】
これに関連して、3-ヒドロキシブタン酸エステルは、遊離3-ヒドロキシブタン酸と対応するアルコール(例えばモノアルコール又はジオール)とのエステル化によって調製される。3-ヒドロキシブタン酸ヒドロキシブチル(すなわち、Rがヒドロキシブチルである一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル)の合成が、以下に模式的に示される。
【0044】
【0045】
さらに、3-ヒドロキシブタン酸ヒドロキシペンチル(すなわち、Rがヒドロキシペンチルである一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル)の合成が、以下に模式的に示される。
【0046】
【化2】
【0047】
さらなる3-ヒドロキシブタン酸エステルの調製又は合成は、類似の方法で行われる。
【0048】
本発明による方法において、一般式(I)の出発化合物又は反応物3-ヒドロキシブタン酸エステルが、3位の水酸基を介してエステル化アルコールとして作用し、カルボン酸(II)のカルボキシル基と反応することにより、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの対応するカルボン酸エステル、すなわち4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの対応するカルボン酸エステルが形成される。
【0049】
本願発明に関して、使用されるカルボン酸(II)は、有機カルボン酸である。すなわち、カルボン酸(II)は、カルボキシル基(-COOH)を1個以上有する有機化合物であり、酸性の性質を有するものである。
【0050】
驚くべきことに、本出願人は、3-ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を有機適合形態で提供し、しかも3-ヒドロキシブタン酸を特に動物又は人体から容易に放出させる方法を見出したのである。
【0051】
さらに、本出願人は、遅延効果存在するように;すなわち、3-ヒドロキシブタン酸が、特にヒト又は動物の身体から、長時間にわたって連続して放出されるように、3-ヒドロキシブタン酸の有機適合形態を提供することに成功した。
【0052】
さらに、他の開裂生成物(すなわち、3-ヒドロキシブタン酸と並んで又はそれに加えて放出される開裂生成物)も、体内で利用され、又は少なくとも体内で処理されうる。特に、放出される開裂生成物は、クエン酸サイクルの反応物、生成物又は中間体であり、又は、クエン酸サイクルの反応物、生成物、中間体の酸化により形成されるそれらの誘導体や塩である。したがって、3-ヒドロキシブタン酸を遊離する際に形成される更なる開裂生成物は、動物又は人体によってエネルギー源として利用することも可能である。これらの開裂生成物は、典型的には、カルボン酸(II)又はその塩もしくは誘導体である。
【0053】
少なくとも2つの遊離カルボキシル基を有するカルボン酸を用いる場合、いくつかの3-ヒドロキシブタン酸エステルが1つのカルボン酸と反応する(すなわち、いくつかのヒドロキシブタン酸エステルが、少なくとも1つのカルボン酸に付加されるか又は1つのカルボン酸がいくつかの3-ヒドロキシブタン酸エステルでエステル化される)ので、3-ヒドロキシブタン酸エステルの高い密度が、1分子内に存在し、これによって高い活性成分密度が存在する。
【0054】
上記のように、本出願人は、極めて驚くべきことに、このようにして製造された3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ―(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルが、3-ヒドロキシブタン酸又はそれらの塩の生理学的に適合性のある前駆体及び/又は代謝産物も生理学的に適合性があることから、医薬又は臨床用途に大量に使用できるので、有効であることを発見している。
【0055】
本発明による製造方法によって初めて効率的に入手可能となる上述の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、遊離3-ヒドロキシブタン酸又はその塩の生理的及び薬学的に関連した代替物をとなるものである。
【0056】
従来の有機合成による3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの製造は、3-ヒドロキシブタン酸並びにその塩及びエステルが重合及び他の望ましくない副反応(例えば脱水、分解など)を起こしやすくなることから、複雑かつ高価となる。本発明の範囲内において、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルが、望ましくない副反応なしに、特に一段階で少なくとも本質的に製造できるという効率的に働く製造方法を初めて提供できることになった。
【0057】
したがって、本願発明の方法は、既知の、商業的に入手可能な、とりわけ生理学的に無害な成分又は反応物(出発化合物)から、3-ヒドロキシブタン酸エステルの無毒なカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを初めて提供できるようにしたものである。結果として生じた3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、生理学的に、特に胃及び/又は腸において分解され、有効成分又は活性成分として、目的分子「3-ヒドロキシブタン酸」又はその塩又はエステルを放出又は生成することが可能である。
【0058】
また、前記3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、長期間にわたって多量の経口投与(例えば50g日量以上投与)をしても適合性を確保するために許容可能な味を具備するものである。
【0059】
同様に、本発明による製造方法は、有害な不純物を含まない3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの提供を可能にする。
【0060】
さらに、適切な出発物質を用いれば、本方法はエナンチオ選択的に実施することも可能である。例えば、本発明によれば、製造方法は、生物学的に関連する形態、すなわち(R)-エナンチオマーを、例えば、酵素触媒作用又は出発化合物(反応物)の特定の選択によって、経口投与した場合に患者の腎臓系に負担をかけないように(すなわち、腎臓を経由して排泄)濃縮することを可能にする。しかし、原理的には、特定の条件下での使用の下において、(S)-エナンチオマーを濃縮することも可能である。
【0061】
さらに、本発明による製造方法は、任意のさらなる処理又は精製工程を含めても、経済的に運用することができ、また大規模に実施することができる。
【0062】
特に、本発明の製造方法は、市販の出発化合物や、大規模に実施可能な簡単なプロセスで合成可能な出発化合物を使用し、さらに、大規模に実施する場合でも比較的簡単なプロセス管理を可能にする。
【0063】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、複雑な出発物質又は保護基の使用を使用せず、1つの工程のみを使用する。それにもかかわらず、本発明に従って優れた収率が達成され、そこで副生成物の形成が最小化又は回避される。
【0064】
また、本発明方法は、簡便で経済的である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下及び/又は溶媒を用いずに(すなわち、質量での反応として、又は物質での反応として、又はいわゆるバルク反応として)実施され、その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されず、方法又は反応が実施された後に、コスト及びエネルギー集約型の方法で除去及び処分又はリサイクルする必要のない溶媒が存在しない。さらに、有害な副生成物も生成しない。
【0065】
本発明による製造方法は、通常、3-ヒドロキシブタン酸エステルの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの混合物を生じるものであり、すなわち、お互いに異なる3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの混合物を生じるものである。結果として生じた生の反応生成物又は生の混合物は、公知の方法によって、特に残存する出発化合物及び/又は存在する副生成物を除去することによって、精製することができ、さらに-所望により-公知の方法によって、特に蒸留及び/又はクロマトグラフィー(例えば、3-ヒドロキシブタン酸エステルの個々のカルボン酸エステルへの分留、すなわち対応するモノエステル、ジエステル等の分離又は個体等の濃縮及び減量部分を有する画分への分留)によって分離することができる。
【0066】
前述のように、第1の態様によれば、本発明は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、の製造方法に関するものであり、
ここで、一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールであって、一般式(I)において、ラジカルRがC-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものが、少なくとも1つのカルボン酸と、特に1つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、好ましくは2つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのカルボン酸と、特にエステル反応において及び/又はエステル化状態において、反応することによって、
反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステルが、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが、得られるものである。
【0067】
本発明の特定の実施形態によれば、一般式(I)の化合物は、ラセミ形態において又は(R)エナンチオマー形態において使用することができる。(R)-配置は、一般式(I)の化合物の3位にある不斉炭素原子を指す。
【0068】
本発明によれば、一般式(I)において、ラジカルRがエチルを表す場合、好ましい。
【0069】
すなわち、本発明によれば、一般式(I)の化合物として、式CH-CH(OH)-CH-C(O)OCの3-ヒドロキシブタン酸エステル(同義語的に、3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル又は4-エトキシ-4-オキソ-2-ブタノールとも称する)を用いることが好ましい。
【0070】
これは、、特に効率的なプロセス制御及び最小限にされるか抑制された副生成物の形成によって高い収率を実現する。さらに、3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル又は4-エトキシ-4-オキソ-2-ブタノールも大量に市販されており、特に出発化合物として、例えば酢酸エチルのクライゼン縮合により大量に入手することができる。
【0071】
本発明の特定の実施形態によれば、カルボン酸(II)は、遊離カルボン酸の形態で、カルボン酸の塩の形態で、カルボン酸のエステルの形態で、又はカルボン酸無水物の形態で、特に遊離カルボン酸又はカルボン酸無水物の形態で使用されることができる。
【0072】
本発明の別の特定の実施形態によれば、カルボン酸(II)は、一般式((IIa)
(HOOC)-X-(COOH) (IIa)
に対応するものであり、
一般式(IIa)において、
・ Xが、有機ラジカル、特に1~10,好ましくは2~6個の炭素原子を有し且つ任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示し;及び
・ 変数mは、1~3の整数を示し;及び
・ 変数nは、0又は1の整数を示し;
特に、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH-基)、好ましくは2つのカルボキシル基(COOH-基)が末端であり及び/又は一級カルボキシル基(COOH-基)である。
【0073】
これに関して、ラジカルXは、さらにカルボキシル基(-COOH)を含むことができ、カルボン酸(II)は合計で最大7個のカルボキシル基を有することができる。
【0074】
これに関して、一般式(IIa)において、
・ Xは、飽和又は不飽和並びに任意に一置換又は多置換、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はカルボキシルラジカルで置換された2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示し;及び
・ 変数mは、1の整数を示し;及び
・ 変数nは、0又は1の整数を示し;
特に、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH-基)、好ましくは2つ又は両方のカルボキシル基(COOH-基)が末端であり及び/又は一級カルボキシル基(COOH-基)である。
【0075】
特に、少なくとも1つ、好ましくは2つの末端又は一級カルボキシル基を有する上記に定義されたカルボン酸を使用することにより、カルボン酸(II)と3-ヒドロキシブタン酸エステルとのエステル化反応が、特に効果的に、極端な反応条件(例えば非常に高い温度、非常に高い圧力など)を必要とせずに副生成物の形成を最小限に抑えて進行することが可能である。さらに、活性成分密度(すなわち、特に3-ヒドロキシブタン酸エステル密度)は、存在するカルボキシル基の数によって影響を受けるものである。
【0076】
本発明による方法では、カルボン酸(II)が、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにこれらの無水物ならびにこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択される場合が好ましく、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにこれらの無水物ならびにこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0077】
先に述べたカルボン酸は、3-ヒドロキシブタン酸との反応に特に適しており、また、市販されているものである。
【0078】
特に、本発明による方法では、カルボン酸(II)が、天然由来のカルボン酸又はその無水物若しくは誘導体、特に反応生成物、特にカルボン酸又はその無水物若しくは誘導体、特にヒト及び/又は動物の代謝で生じる反応生成物であることが好ましい。
【0079】
特に、これに関して、クエン酸サイクルにおいて生じる、クエン酸サイクルから生じる、又はクエン酸サイクルに関連するカルボン酸もしくは無水物又はその誘導体が使用される場合が有利である。これに関して、誘導体は、例えば、(例えば、クエン酸サイクルからの)代謝産物の酸化によって得られる塩を示すものである。
ヒト及び/又は動物の代謝の一部であるか又はヒト及び/又は動物の代謝の反応物又は生成物又は中間体であるカルボン酸又は無水物又はその誘導体を用いることによって、本発明による反応生成物を用いる場合に、(ケト体である3-ヒドロキシブタン酸又は3-ヒドロキシブタン酸エステルに加えて)さらなるエネルギー源は、ヒト及び/又は動物の身体に、提供することができるとともに、反応生成物は、医薬、医薬品又は食品及び食品生成物において又はとして使用するのに特に適している。
【0080】
さらに、本願発明による方法に関して、カルボン酸(II)が、食品法で認可された成分、特に添加物である場合に好ましいものである。
【0081】
食品法で認可された成分や添加物は、一定量の食品への使用が許可され、健康上のリスクをもたらさないものである。食品添加物のリストはEU全域で管理されており、各食品添加物には独自のラベル(いわゆるE番号)が付与されている。例えば、コハク酸(E363)、酒石酸(E334)、乳酸(E270)、クエン酸(E330)、リンゴ酸(E296)、アジピン酸(E355)及びフマル酸(E297)などのカルボン酸が食品添加物リストに含まれる。これらの酸はクエン酸サイクルの全部分であるか又はクエン酸サイクルの代謝産物の酸化によって得られるものである。クエン酸サイクルは、生体の好気性細胞の代謝において重要な役割を果たす生化学反応のサイクルであり、エネルギー生産と生合成のための中間体の提供を目的とした有機物の酸化的分解反応に主に使用される。したがって、本発明による方法から得られる反応生成物(III)を使用する場合、分解により生成する酸は、別の代替エネルギー源として体内によって使用される。
【0082】
特定の実施形態にしたがって、本発明は、本発明のこの態様によれば、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの製造方法に関するもので、特に上述の方法に関するものであり、
ラジカルRがC-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを表す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、
コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と、特にエステル化反応及び/又はエステル化条件下において反応することにより、
反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの少なくとも1つのカルボン酸エステルが、得られるものである。
【0083】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様に係る発明は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを製造するための方法、特に上述された方法に関するものであり、
ラジカルRがエチルを表す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールが、
コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と、特にエステル化反応及び/又はエステル化条件下において反応することにより、
反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの少なくとも1つのカルボン酸エステルが、得られるものである。
【0084】
本発明の特定の実施形態によれば、反応は、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施される。これは、反応が質量での反応として、又は物質での反応として、又はいわゆるバルク反応として実施されることを意味する。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法又は反応を実施した後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄又はリサイクルする必要がないという利点を有する。驚くべきことに、この方法又は反応は、それにもかかわらず、高い転化率と収率で進行し、少なくとも本質的に重大な副生成物の形成がない。
【0085】
本発明の別の特定の実施形態によれば、反応は、触媒の非存在下及び/又は触媒なしで実施されることが好ましく、あるいはその代わりに、反応は、触媒、特に酵素及び/又は金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性の触媒の存在下で実施されてもよい。特に、触媒は、反応後にリサイクルすることができる。
【0086】
本発明による方法では、反応が溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施される場合、及び、反応が触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施される場合が特に好ましい。
【0087】
溶媒や触媒を使用しないため、除去しきれなかった溶媒や除去しきれなかった触媒によって反応生成物が汚染されることがない。さらに、エネルギー集約的で費用のかかる除去又は分離工程が排除される。驚くべきことに、この好ましい実施形態に従った本発明による方法は、それにもかかわらず経済的であり、著しい副産物形成なしに高い変換をもたらす。
【0088】
先に述べたように、本発明の方法の特定の実施形態によれば、反応は、触媒の非存在下及び/又は触媒を用いずに実施することができる。
【0089】
反応は、触媒の非存在下及び/又は触媒を用いずに、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で実施されることが好ましい。
【0090】
触媒を用いない変換の場合、加えられる圧力範囲も広い範囲で変化する可能性がある。特に、反応は、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約1barの圧力で触媒の不在下及び/又は触媒を用いずに行うことができる。
【0091】
触媒の非存在下で反応させる場合、不活性ガスの存在下、特にヘリウム、アルゴン、窒素の存在下、好ましくは窒素の存在下で反応させることが好ましい。これによって、好ましくない副反応、特に酸化や加水分解による好ましくない副反応は、防止することができる。
【0092】
しかし、この特定の実施形態に代えて、例えば、触媒としての酵素の存在下で反応を実施することも可能である。
【0093】
これに関して、酵素は、特にシンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ及びそれらの組み合わせから選択することができる。本発明によれば、シンテターゼ(同義語的にリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスの酵素であり、リガーゼは、共有結合によって2つ以上の分子を連結することを触媒する酵素である。本発明でいうカタラーゼとは、特に過酸化水素を酸素と水に変換する能力を有する酵素のことである。エステラーゼという用語は、特にエステルをアルコールと酸に加水分解(ケン化)する能力を持つ酵素を指し、したがってこれらは特にヒドロラーゼであり、脂肪分解エステラーゼはリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特にグリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解する(脂肪分解)能力を有する酵素をいう。
【0094】
これに関して、触媒として使用される酵素は、特に、カンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)、テルモミセス・ラヌギノーサ、カンジダルゴサ、アスペルギルス・オリゼ(ニホンコウジカビ)、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾパス・デレマール及びシュードモナス種及びそれらの組み合わせ、好ましくはカンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)及びテルモミセス・ラヌギノーサに由来する。
【0095】
特定の実施形態によれば、酵素は、固定化した形態において使用され、特に担体上に、好ましくはポリマー担体上に、より好ましくは疎水性を有するポリマー有機担体上に、より好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体上に固定化されるものである。
【0096】
本発明においては、酵素を触媒として用いる場合、反応後に酵素を再利用することが好ましい。
【0097】
前記反応が、本発明の製造方法の枠内で、触媒としての酵素の存在下で行われる場合、前記反応は、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で行われることが好ましい。
【0098】
前記酵素を触媒として使用する場合、使用する酵素の量は広い範囲で変化させることができる。特に、前記酵素は、出発化合物(I)及び(II)の総量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用することができる。それにもかかわらず、個々の場合又は特定の用途のために、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが必要である場合がある。
【0099】
本発明の特定の実施形態によれば、反応が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、加えられる圧力の範囲も広い範囲内で変動することが可能である。
典型的には、酵素の存在下での反応は、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約0.5barの圧力で実施することが可能である。
【0100】
前記反応が触媒としての酵素の存在下で行われる本発明の特定の実施形態によれば、前記反応は、酵素の存在下で、不活性ガス、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下、好ましくは窒素の存在下で行われる場合が好ましい。触媒非存在下での反応に関連しては先に述べたように、望ましくない副反応、特に酸化又は加水分解による副反応を、不活性ガスの存在下での反応により防止することができる。
【0101】
本発明の別の代替的な実施形態によれば、この反応は、例えば、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施することができる。
【0102】
前記反応が金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で行われる本発明のこの代替実施形態によれば、触媒は、特に、(i)塩基性触媒、特にアルカリ又はアルカリ土類水酸化物及びアルカリ又はアルカリ土類アルコール塩、たとえばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMe及びNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、及び有機酸、例えば硫酸エステル酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛及びアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、たとえば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、及び(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸エステル、ゲルマン酸エステル、炭酸エステル及びアルミニウム酸化物に基づくもの、例えばゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイト及びアルミナ及びそれらの組み合わせ、から選択されるものである。
【0103】
本実施形態では、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム化合物に基づくルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピルが、触媒として使用することが好ましい。
【0104】
特に、この実施形態によれば、また、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒が、反応後にリサイクルされる場合が好ましい。
【0105】
また、金属含有及び/又は金属系、酸性又は塩基性触媒の存在下で反応を行う本発明の特定の実施形態によれば、温度は広い範囲内で変化させることが可能である。特に、前記反応は、金属含有及び/又は金属系、酸性又は塩基性触媒の存在下において、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で行われるものである。
【0106】
さらにまた、この実施形態によれば、触媒(すなわち、金属含有及び/又は金属ベース、酸性又は塩基性触媒)は、広い量範囲内で変化させることも可能である。例えば、触媒は、出発化合物(I)及び(II)の総量を基準として、0.01~30重量%の範囲内、特に0.05~15重量%の範囲内、好ましくは0.1~15重量%の範囲内、より好ましくは0.2~10重量%の範囲内の量で使用することが可能である。それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、特定の用途又は個々の場合について、上記の量から逸脱することが可能である。
【0107】
さらに、前記反応が金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施される本発明のこの特定の実施形態によれば、圧力範囲は広い範囲内で同様に変化することが可能である。特に、前記反応は、金属含有及び/又は金属系、酸性又は塩基性触媒の存在下で、0.0001bar~10barの範囲内、特に0.001bar~5barの範囲内、好ましくは0.01bar~2barの範囲内、より好ましくは0.05bar~1barの範囲内、さらに好ましくは約1barの圧力で、実施することが可能である。
【0108】
さらにまた、前記反応が金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施される本発明のこの特定の実施形態によれば、前記反応は、不活性ガスの存在下で、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下で実施される場合が好ましい。前述のように、不活性ガスの存在下で反応させることにより、好ましくない副反応、特に酸化や加水分解による副反応を防止することができる。
【0109】
出発物質又は出発化合物の総量に関しても、広い範囲で変化させることができる。
【0110】
プロセスの経済性及び方法の経過の最適化、特に副生成物の最小化に関して考慮すると、カルボン酸(II)のカルボキシル基に基づく一般式(I)のヒドロキシブタン酸エステルが、等モル量から200モル%のモル過剰までの範囲内、特に等モル量から150モル%のモル過剰までの範囲内、好ましくは等モル量から100モル%のモル過剰までの範囲内のモル量で使用される場合が有利である。
【0111】
同様に、プロセスの経済性及び方法の経過の最適化、特に副産物の最小化に関して考慮すると、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル及びカルボン酸(II))が、1:1~10:1の範囲内、特に2:1~8:1の範囲内、好ましくは3:1~6:1の範囲内の一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル/カルボン酸(II)のモル比において使用されることが有利である。
【0112】
典型的には、本発明による方法では、一般式(I)3-ヒドロキシブタン酸エステルと遊離酸の形態のカルボン酸(II)との反応の間、同時に水が生成される。特に、水が反応から回収される場合、特に連続的に回収される場合、特に好ましくは連続的に、特に蒸留又は吸着除去によって回収される場合が好ましい。
【0113】
通常、本発明による方法において、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと無水物の形態のカルボン酸(II)との反応の間、対応する遊離カルボン酸(II)の1モルが、使用される無水物のモル毎に形成される。特に、結果として生じる遊離カルボン酸(II))は、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと反応し、又はその反応が実行された後、使用された出発化合物(I)及び(II)の量及び/又は比率に応じて、除去され且つ任意に再利用されるものである。
【0114】
しかし、内部無水物や環状無水物(無水コハク酸や無水マレイン酸など)を使用すると、開環して開裂生成物ができないので、反応生成物は末端遊離酸からなる。この末端遊離酸は、その後、任意に一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと再度反応させることができる。以下、この方法を無水マレイン酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルの反応を例に挙げて説明する。
【0115】
【化3】
【0116】
本発明による方法では、反応生成物の組成、特に3-ヒドロキブタン酸エステル(III)の種々のカルボン酸エステルの存在、及び混合物の場合のそれらの割合は、反応条件によって、特に反応温度(変換温度)の選択、反応圧力(変換圧力)の選択、触媒の不在又は触媒の提供、及び種類又は量に関してかかる触媒の選択、出発物質(反応物)の量選択及び生成し得る副産物、特に水の除去の提供によって制御及び/又は調節することができる。
【0117】
したがって、用途に応じて、製品又は製品混合物の組成を調整することが可能である。特に、例えば、置換3-ヒドロキシブタン酸ラジカル(3-ヒドロキシブタン酸エステル)の数を調整することで、1分子あたりの3-ヒドロキシブタン酸エステルの形態のケト体の密度を狙い通りに調整することが可能である。
【0118】
反応後、得られた反応生成物は、さらに精製又はワークアップの工程にかけることができる。
【0119】
この際、得られた反応生成物は、反応を行った後に分画することができ、特に蒸留により分画することができる。
【0120】
また、未反応の出発化合物(I)及び/又は(II)は、反応生成物から分離され、その後リサイクルすることができる。
【0121】
本発明による製造方法の特別な実施形態によれば、反応が行われた後に反応生成物中に依然として存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化、特にエステル化されるように進めることが、特に可能である。
【0122】
すなわち、反応の後に、まだ存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を部分的に、特に完全に官能基化、特にエステル化することができる。
【0123】
本発明による方法のこの特定の実施形態では、官能化、特に依然として存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基のエステル化は、例えば、遊離ヒドロキシル基の場合にはC-C30-カルボン酸又はC-C30-脂肪酸又は遊離カルボキシル基の場合にはC-C30-脂肪アルコールのカルボン酸無水物との反応によって実施することが可能である。これらは、直鎖状又は分岐状の、飽和又はモノもしくはポリ不飽和のC-C30-カルボン酸無水物又はC-C30-脂肪酸又はC-C30-脂肪族アルコールであることが好ましい。これに関して、まだ存在するヒドロキシル基は、特にカルボン酸無水物又は脂肪酸と反応することができ、まだ存在するカルボキシル基は、特に脂肪アルコールと反応することができる。
【0124】
本発明の方法の範囲内において、反応生成物として、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが取得される及び/又は取得可能である。
一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有し且つ任意に1~6個の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1~3の整数であること;
・変数nは、0又は1の整数であること;及び
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とするものであること。
【0125】
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも2つは、末端であることが好ましく、及び/又は、第一級ラジカルであることが好ましい。
【0126】
上述したように、これに関して、ラジカルXは、さらなるカルボキシル基又はCH(CH)-CH-C(O)OR(すなわちラジカル-COO-CH(CH)-CH-C(O)OR)で置換されたカルボキシル基を有することが好ましい。
【0127】
特に、本発明の製造方法によれば、反応生成物(III)として、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが取得される及び/又は取得可能である。一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で、任意に1つ以上のヒドロキシラジカルによって又はラジカル-O-C(O)-CH-CH(OH)-CHによって及び/又はカルボキシラジカルによって及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORによって一置換され又は多置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数を示すこと;及び
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと。ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR又はRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORであることを条件とするものであること。
【0128】
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及びROOC-の2つ又は両方が、末端であることが好ましい及び/又は一次ラジカルであることが好ましい。
【0129】
先に述べたように、これに関して、ラジカルXは、さらなるカルボキシル基又はCH(CH)-CH-C(O)OR(いわゆるラジカル-COO-CH(CH)-CH-C(O)OR)で置換されたカルボキシル基を含むこともできる。
【0130】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)として、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られることができる及び/又は得られる可能性がある。一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示し;及び
・ラジカルRは、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるカルボン酸から生じ、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸、ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるカルボン酸から生じる。
【0131】
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基は、上述されたようなRを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分にエステル化されることが好ましい。
【0132】
これに関して、「から生じる」とは、ラジカルRが引用したカルボン酸から形成されること;特に、カルボキシルの水素がエステル化によりエステル化されること;すなわち、それぞれの場合に、対応する酸のカルボン酸ラジカルがラジカルRとして存在することを意味する(すなわち、ラジカルRは、コハク酸の場合にはコハク酸ラジカル、酒石酸の場合には酒石酸ラジカル、乳酸の場合には乳酸ラジカル、クエン酸の場合にはクエン酸ラジカル、リンゴ酸の場合にはリンゴ酸ラジカル、アジピン酸の場合にはアジビン酸ラジカル、フマル酸の場合にはフマル酸ラジカル及びマレイン酸の場合にはマレイン酸ラジカルである)。
【0133】
本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、反応生成物(III)として、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルキコシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルキコシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルが得られる及び/又は得られる可能性がある。ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであること、及び
・ラジカルRは、1つ以上の下記するラジカルを示すものであること。
【0134】
【化4】
【0135】
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、上記に定義されるRを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すものである。
【0136】
本発明による方法のさらに別の特定の実施形態によれば、反応生成物として、特に上記に定義されるように、3-ヒドロキシブタン酸(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノール又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルの混合物が取得されることが好ましい。
【0137】
本発明の第2の態様によれば、本発明の目的は、上記に記載された方法によって取得可能な(化学)生成物又は生成混合物、好ましくは3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルである。
【0138】
この態様の特定の実施形態によれば、本発明の目的は、反応生成物、特に(化学)生成物又は生成混合物、特に上記に定義したような反応生成物であり、
ここで、反応生成物(III)は、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有するものであり、
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含み且つ任意に1~6個の酸素原子を含む飽和又は不飽和の有機ラジカルを表すこと;
・変数mは、1~3の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数を示すこと;及び
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここでラジカルRがC-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと;
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及びROOC-の2つが、末端及び/又は一次ラジカルであること。
【0139】
これに関連して、先に述べたように、ラジカルXは、さらにカルボキシル基又はCH(CH)-CH-C(O)ORで置換されたカルボキシル基(すなわちラジカル-COO-CH(CH)-CH-C(O)OR)も含むことができる。
【0140】
本発明の別の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)は、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で、任意に、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はラジカル-O-C(O)-CH-CH(OH)-CH及び/又はカルボキシルラジカル及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORで一置換又は多置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数を示すこと;及び
・R及びRは、お互い独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここでラジカRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルを、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチルを、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチルを、より好ましくはエチルを示すこと、ただし、ラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORであること。
【0141】
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及びROOC-の2つ又は両方が、末端であることが好ましい及び/又は一次ラジカルであることが好ましい。
【0142】
これに関連して、ラジカルXはまた、さらなるカルボキシル基又はCH(CH)-CH-C(O)ORで置換されたカルボキシル基を含んでもよい。
【0143】
本発明のさらに別の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)は、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRは、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるカルボン酸から生じること。
【0144】
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基は、上記に定義されるRを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分的にエステル化されることが好ましい。
【0145】
先に述べたように、これに関連して、「から生じる」とは、ラジカルRが、言及されたカルボン酸から形成されること、特にカルボキシルの水素がエステル化によってエステル化されること;すなわち、それぞれの場合において、対応する酸のカルボン酸ラジカルがラジカルR(すなわち、ラジカルRは、コハク酸の場合にはコハク酸ラジカル、酒石酸の場合には酒石酸ラジカル、乳酸の場合には乳酸ラジカル、クエン酸の場合にはクエン酸ラジカル、リンゴ酸の場合にはリンゴ酸ラジカル、アジピン酸の場合にはアジピン酸ラジカル、フマル酸の場合にはフマル酸ラジカル及びマレイン酸の場合にはマレイン酸ラジカル)として存在することを意味するものである。
【0146】
本発明の別の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)は、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの1つ以上のカルボン酸エステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRは、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を表すこと;
【0147】
【化5】
【0148】
ここで、上記ラジカルにおいて、Rは、水素又は上記に定義されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを表すこと。
【0149】
特定の実施形態によれば、反応生成物は、特に上記に定義されるような、3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、の混合物を有することが好ましい。
【0150】
従って、本発明の目的はまた、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル(=4-オキソ-2-ブタノールのカルボン酸エステル)、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルである。
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に1~10個の、好ましくは2~6個の炭素原子を有し且つ任意に1~6の酸素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1~3の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数を示すこと;及び
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここで、ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしラジカルR及びRの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを条件とするものである。
【0151】
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及びROOC-の2つは、末端であることが好ましい及び/又は一次ラジカルであることが好ましい。
【0152】
前述のように、ラジカルXは、他のカルボキシル基又はCH(CH)-CH-C(O)OR(すなわちラジカル-COO-CH(CH)-CH-C(O)OR)で置換されたカルボキシル基も含むことが好ましい。
【0153】
特定の実施形態によれば、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、一般式(IIIa)
(ROOC)-X-(COOR (IIIa)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa)において、
・Xは、飽和又は不飽和で、任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシルラジカル及び/又はラジカル-O―C(O)-CH-CH(OH)-CH及び/又はカルボキシルラジカル及び/又はラジカル-C(O)-O-CH(CH)-CH-C(O)ORで置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すこと;
・変数mは、1の整数を示すこと;
・変数nは、0又は1の整数を示すこと;及び
・R及びRは、お互いに独立して、水素又はラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、ここでラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すものであるが、ただしR及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORであることを条件とするものである。
【0154】
特に、ラジカルROOC-及び/又はROOC-の少なくとも1つ、好ましくはラジカルROOC-及びROOC-の2つ又は両方は、末端であることが好ましい及び/又は一次ラジカルであることが好ましい。
【0155】
さらなる特定の実施形態によれば、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRは、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸ならびにそれらの組み合わせ又はそれらの混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸ならびにそれらの組み合わせ又はそれらの混合物の群から選択されるカルボン酸から生じること;
特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基が、上記に定義されるRを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORで、完全に又は部分的にエステル化されること。
【0156】
先に述べたように、「から生じる」とは、ラジカルRが、述べられたカルボン酸から形成されること、特にカルボキシルの水素がエステル化によってエステル化されること;すなわち、それぞれの場合に、対応する酸のカルボン酸ラジカルがラジカルR(すなわち、ラジカルRは、コハク酸の場合にはコハク酸ラジカル、酒石酸の場合には酒石酸ラジカル、乳酸の場合には乳酸ラジカル、クエン酸の場合にはクエン酸ラジカル、リンゴ酸の場合にはリンゴ酸ラジカル、アジピン酸の場合にはアジピン酸ラジカル、フマル酸の場合にはフマル酸ラジカル及びマレイン酸の場合にはマレイン酸ラジカル)として存在することを意味する。
【0157】
本発明の好ましい実施形態によれば、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルは、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRは、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと、及び
・ラジカルRは、1つ以上の下記するラジカルを示すものである。
【0158】
【化6】
【0159】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は上記に定義されるRを有するラジカル-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと。
【0160】
さらに、特定の実施形態によれば、本発明の別の目的は、3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステルを有する混合物である。
【0161】
本発明方法によって取得可能な反応生成物又は上記に定義される本発明の反応生成物及び/又は発明反応生成物に従って得られる3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に上記に定義するような、4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル及び/又は本発明の製造方法によって取得される混合物又はそれぞれ上記に定義される本発明の混合物は、先行技術と比較して多数の利点及び特別な特徴を有している。
【0162】
本出願人が意外にも見出したように、本発明方法に従って得られる反応生成物、又は上記にそれぞれ定義される本発明反応生成物及び/又は本発明方法に従って得ることができる3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、上記に定義する本発明の3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法に従って得られる混合物又は上記に定義される本発明の混合物は、一方では、それは、生理的に、特に消化管内において3-ヒドロキシブタン酸又はその塩に変換され、他方では、それは、同時に、特に非毒性及び許容できる有機食品特性に関して、良好な生理適合性及び許容性を有するので、3-ヒドロキシブタン酸又はその塩の先駆物質又は代謝物として適切である。
【0163】
さらに、それぞれ本明細書で定義した本発明方法又は本発明反応生成物に従って得られる3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの上記に定義されるカルボン酸エステル、又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義する本発明の混合物は、それぞれ合成ベースで、商業スケールでも大規模で、要求される医薬又は薬学的品質で容易に入手することが可能である。
【0164】
さらに本発明方法によって取得可能な反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、特に本発明製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸の本発明のカルボン酸エステル、特にそれぞれ上記に定義されるような4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような混合物が、必要に応じて、エナンチオマー的に純粋又はエナンチオマー的に富む形態で提供されるものである。
【0165】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物又はそれぞれ上記に定義されるような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に上記で定義されるような4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発の明製造方法によって取得可能な混合物又はそれぞれ上記に定義したような本発明の混合物が、これによって、ヒト又は動物の体のケト体治療に関連して効率的に薬理学上の薬物標的を表わすものである。
【0166】
以下では、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0167】
本発明のさらなる主題は、-本発明の第3の態様によれば-、医薬組成物、特に薬物又は医薬であり、それは、本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物
又はそれぞれ上記に定義されるような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの上記で定義するようなカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又はそれぞれ上記に定義される本発明の混合物、を有するものである。
【0168】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、ヒト又は動物の身体の疾患の予防的及び/又は治療的処置に用いるための医薬組成物、又はそのための医薬組成物に関する。これは、特に、エネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用に関する。
【0169】
さらに、本発明の第4の態様によれば、本発明のさらなる主題は、予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置に使用するための、本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物又はそれぞれ上記に定義されるような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、それぞれ上記に定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物である。
【0170】
さらに、本発明の第5の態様によれば、本発明のさらなる主題は、予防的及び/又は治療的処置のための、又は、人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置のための薬を製造するための、本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物又はそれぞれ上記に定義されるような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、それぞれ上記に定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0171】
同様に、本発明の第6の態様によれば、本発明のさらなる主題は、予防的及び/又は治療的処置のために、又は、空腹、ダイエット又は低炭水化物栄養のような異化代謝状態への適用のための医薬品の製造のために、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、それぞれ上記に定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物を使用することである。
【0172】
さらにまた、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、それぞれ上記に定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物を有する食品及び/又は食品生成物である。
【0173】
特定の実施形態によれば、食品及び/又は食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は耐久スポーツサプリメントであることが好ましい。
【0174】
最後に、本発明の第8の態様によれば、本発明の別の主題は、食品及び/又は食品生成物における、本発明の製造方法によって取得可能な3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、又は、それぞれ上記に定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの本発明のカルボン酸エステル、特に4-オキソ-4-(C-C-アルコキシ)-2-ブタノールの又は4-オキソ-4-(ヒドロキシ-C-C-アルコキシ)-2-ブタノールのカルボン酸エステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物の使用である。
【0175】
本発明のこの態様によれば、食品及び/又は食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は耐久スポーツ補助食品であることが好ましい。
【0176】
本発明のさらなる実施形態、修正及び変形は、本発明の範囲を離れることなく、明細書を読んだ当業者によって容易に認識又は実現可能なものである。
【0177】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではなく、単に本発明の例示的かつ非限定的な実施例及び構成を説明するためのものである。実施例は、以下の図面の説明及び図面そのものを参照してさらに特徴付けられる。これに関連して、記述され及び/又は図示されたすべての特徴は、特許請求の範囲及びそれらの後方参照におけるそれらの要約に関係なく、個別に又は任意の組み合わせで、本発明の主題を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0178】
図1図1は、コハク酸無水物と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応の変換の時間経過を示した図表である。
図2図2は、クエン酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応の変換の時間経過をしました図表である。
図3図3は、リンゴ酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応の変換時間経過を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0179】
図1は、無水コハク酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルの反応の変換-時間経過を示す図であり、X軸は反応時間(時間[h])を、Y軸はGC面積分析値(%)を示すものである。出発化合物である3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-BHB-EE)及び反応生成物である3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル(BS-BHB-EE)及び3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステル(BS-(BHB-EE)2)の経過又は量が示されている。さらにチタン(IV)触媒が添加される時間及び分子篩が水を吸着除去するために付加された時間がそれぞれ記されている。
【0180】
全反応時間の間、3-ヒドロキシブタン酸エチルは変換される。反応時間10時間後、第1反応段階において、無水コハク酸から3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステルへの変換は既に完了している。触媒を加えても、変換率の大幅な向上にはつながらない。触媒の新たな添加は、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステルの生成量を増加させ、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステルへのさらなる変換により形成される3-ヒドロキシブタン酸エチルモノエステルの量において若干の減少を生じる。分子篩の追加は、変換率を有意に増加させない。反応時間30時間後、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル及びコハク酸ジエステルはほぼ等量で存在する。
【0181】
図2は、クエン酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応の変換-時間経過を示す図であり、X軸は変換時間(時間[h])を、Y軸はGC面積分析値を百分率[%]で示したものである。出発化合物である3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-BHB-EE)及びクエン酸及び反応生成物である3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル(CS-BHB-EE)及び3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジエステル(CS-(BHB)-EE)2)及び3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステル(CS-(BHB-EE)3)について経過又は量が示されている。さらに、チタン(IV)-触媒が添加される時間も、それぞれ記されている。
【0182】
反応時間中、3-ヒドロキシブタン酸エチルは変換される。反応初期には、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル及びクエン酸ジエステルが顕著に生成される。反応時間の約13時間後、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステルは、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジエステルに変換される量が、新たに生成するクエン酸モノエステルより多いため、再び量が減少する。反応時間の約21時間後、クエン酸は完全に反応したので、この時点から新たに3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステルが生成されることはない。チタン(IV)-触媒の最初の添加で、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル及びクエン酸ジエステルに関して、変換率の小さな増加が達成されるが、2回目の添加では、変換率のさらなる大きな増加はもたらされない。
【0183】
図3は、リンゴ酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応の変換-時間経過を示す図であり、X軸は反応時間(時間[h])を、Y軸はGC面積分析値(%)を示している。
出発化合物である3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-BHB-EE)及びリンゴ酸及び反応生成物である3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステル(リンゴ酸BHB-EEモノエステル)及び3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステル(リンゴ酸BHB-EEジエステル)について経過又は量が示されている。さらに、チタン(IV)-触媒が添加された時間も、それぞれ記されている。
【0184】
全反応時間の間、3-ヒドロキシブタン酸エチルは変換される。反応時間の25時間後、第1反応段階のリンゴ酸から3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステルへの変換は既に完了している。触媒をそれぞれ添加しても、変換率の大幅な向上にはつながらない。
【実施例
【0185】
使用した略語
・3-BHB-EE=BHB-EE:3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)
・#-BHB=BHB: 3-ヒドロキシブタン酸
・BS: コハク酸
・CS: クエン酸
【0186】
I.触媒を使用しない本発明による方法の特定の実施形態の製造例
I.1. 3-ヒドロキシブタン酸エチルによる酒石酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた5800mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び酒石酸38gが提供される。反応混合物は、120℃且つN下で7時間攪拌しながら反応させ、得られた反応水は蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0187】
3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-酒石酸エステル又は酒石酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-酒石酸エステル又は酒石酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が取得される。
【0188】
3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸モノエステルは、4[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2,3-ジヒドロキシ-4-オキソブタン酸とも同義御的に参照することができ、3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸ジエステルは、1,4-ビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-2,3-ジヒドロキシブタン酸エステルとして又はビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-2,3-ヒドロキシコハク酸エステルとも同義語的に参照することができる。
【0189】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0190】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:

【0191】
【化7】
【0192】
I.2. 3-ヒドロキシブタン酸エチルの乳酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び57の乳酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0193】
3-ヒドロキシブタン酸エチルの乳酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-乳酸エステル又は乳酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]を得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRで行われる。
【0194】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:

【0195】
【化8】
【0196】
I.3. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸エステルの製造
選択肢1:無水コハク酸の使用
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と24gの無水コハク酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0197】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-コハク酸エステル又はコハク酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステル又はコハク酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が取得される。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0198】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステルは、4-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-4-オキソブタン酸として同義語的に参照すると同時に、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステルは、1,4-ビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-ブタン酸ジエステル又はビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-コハク酸エステルとして同義語的に参照することができる。
【0199】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0200】
【化9】
【0201】
選択肢2:遊離コハク酸の使用
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と33gのコハク酸を提供する。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0202】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-コハク酸エステル又はコハク酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-コハク酸エステル又はコハク酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-MNRによって行われる。
【0203】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステルは、4-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-4-オキソブタン酸として同義的に参照されることが好ましいともに、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステルは、1,4-ビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-ブタン酸ジエステル又はビス(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-コハク酸エステルとしても同義語的に参照することが好ましい。
【0204】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる。
【0205】
【化10】
【0206】
I.4. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と32gのクエン酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0207】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-クエン酸エステル又はクエン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-クエン酸エステル又はクエン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステル[=トリス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-クエン酸エステル又はクエン酸トリ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0208】
#-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステルは、2-{2-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2-オキソエチル}-2-ヒドロキシブタン酸として又は2-{2-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2-オキソエチル}-2-ヒドロキシスクシン酸としても、同義語的に参照することが好ましいとともに、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジエステルは、4-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2-{2-[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2-オキソエチル}-2-ヒドロキシ-4-オキソブタン酸として同義語的に参照することが好ましく、さらに、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステルは、1,2,3-トリス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸エステルとして同義的に参照することが好ましい。
【0209】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:

【0210】
【化11】
【0211】
I.5. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸エステル化について
選択肢1:無水マレイン酸の使用
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び29gのマレイン酸無水物が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌された反応し、得られた反応水は蒸留により連続的に除去される。続いて、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0212】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エステルのマレイン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0213】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0214】
【化12】
【0215】
選択肢2:遊離マレイン酸の使用
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と33gのマレイン酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0216】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エステルのマレイン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0217】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0218】
【化13】
【0219】
I.6. 3-ヒドロキシブタン酸エチルによるフマル酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と、33gのフマル酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。続いて、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0220】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのフマル酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-フマル酸エステル又はフマル酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのフマル酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-フマル酸エステル又はフマル酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0221】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0222】
【化14】
【0223】
I.7. 3-ヒドロキシブタン酸エチルによるリンゴ酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び33gのリンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)を提供する。この反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、連続的に分離される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で、2~4時間水蒸気処理される。
【0224】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-リンゴ酸エステル又はリンゴ酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル],及び、3-ヒドロキシブタン酸エステルのリンゴ酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はリンゴ酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0225】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステルは、4[(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-オキシ]-2-ヒドロキシ-4-オキソブタン酸としても同義語的に参照されることが好ましいとともに、3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステルは、1,4-ビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-2-ヒドロキシブタン酸ジエステル又はビス-(4-エトキシ-4-オキソブタン-2-イル)-2-ヒドロキシコハク酸エステルとも同義語的に参照されることが好ましい。
【0226】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0227】
【化15】
【0228】
I.8. 3-ヒドロキシブタン酸エチルによるアジピン酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エステル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び37gのアジピン酸が提供される。反応混合物は、120℃且つN下で、7時間攪拌されて反応し、得られた反応水は、蒸留により連続的に除去される。その後、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルは、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で、2~4時間水蒸気処理される。
【0229】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのアジピン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-アジピン酸エステル又はアジピン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのアジピン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-アジピン酸エステル又はアジピン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0230】
反応経過を模式的に示すと以下のようになる:
【0231】
【化16】
【0232】
I.9. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのさらなるカルボン酸エステルの製造
さらに、上記の例I.1、I.2、I.4及びI.6~I.8の合成が、それぞれ繰り返されるが、ただし、遊離カルボン酸の代わりに対応するカルボン酸無水物(すなわち、例I.1の場合、酒石酸の代わりに酒石酸無水物、例I.2の場合、乳酸の代わりに乳酸無水物、例I.4の場合、クエン酸の代わりにクエン酸無水物、例I.6の場合、フマル酸の代わりにフマル酸無水物、例I.7の場合、リンゴ酸の代わりにリンゴ酸無水物、例I.8場合、アジピン酸の代わりにアジピン酸無水物)を使用する。
【0233】
比較可能な結果が得られる。これに関して、形成された対応するカルボン酸は、反応中に連続的に除去されないが、3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルとの反応を継続することができる。反応終了後、(使用した反応物の量比に依存する)過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル又は過剰のカルボン酸無水物又は遊離カルボン酸は、蒸留により除去される。
【0234】
さらに、先に述べた例NoI.1~1.8は、他の3-ヒドロキシブタン酸エステルに関する状況(すなわち、それぞれ3-ヒドロキシブチル酸エチルエステルの代わりに、3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシブチル)エステル又は3-ヒドロキシブブタン酸(ヒドロキシペンチル)エステルによる場合)において繰り返される。3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシブチル)エステルは、ブタンジオール(例えば、1,3-ブタンジオール)による3-ヒドロキシブタン酸のエステル化によって取得されるとともに、3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシペンチル)エステルは、ペンタンジオール(例えば、1,3-ペンタンジオール)による3-ヒドロキシブタン酸のエステル化によって取得される。
【0235】
第一系列では、遊離カルボン酸を反応物として使用し、第二系列では、対応するカルボン酸無水物を使用する。
【0236】
比較可能な結果が得られる。精製及び分離が、同様に行われる。
【0237】
また、先に述べた例は、カルボン酸のメチルエステル及びエチルエステルによって繰り返される。同様の結果が得られる。精製及び分離も同様に行われる。
【0238】
II.金属触媒を使用する本発明による方法の代替的な特定の実施形態のための製造例
ただし、前記I項において先に述べたすべての化学合成例は、1.6gのチタンテトラブチレート(チタン(IV)-触媒)を加えて再度実施される。チタン(IV)-触媒は、他の反応物とともにフラスコに入れられる。その後、反応の経過は、上記に記載された例に対応する。同等の結果が得られる。触媒は、反応後、分離され、再利用される。
【0239】
III.酵素触媒を使用する本発明による方法の更なる代替的な特定の実施形態のための製造例
ただし、前記第I項で述べたすべての化学合成例は、触媒として酵素を加えて再び実施される。同等の結果が得られる。触媒(いわゆる酵素)は反応終了後、分離して再利用される。
【0240】
以下にいくつかの例を選んで説明するが、他の既出の合成例はすべて類似の方法で実施し、同等の結果を得ることができる。
【0241】
III.1. 3-ヒドロキシブタン酸エチルによる酒石酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)-(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と、38gの酒石酸と、1.7gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌して反応させる。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0242】
3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-酒石酸エステル又は酒石酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルの酒石酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-酒石酸エステル又は酒石酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRにより行われる。
【0243】
III.2. 3-ヒドロキシブタン酸エチルの乳酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と、57gの乳酸と、1.8gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で、2~4時間水蒸気処理される。
【0244】
3-ヒドロキシブタン酸エチルの乳酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-乳酸エステル又は乳酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]が、得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0245】
III.3. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と、33gのコハク酸と、1.6gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0246】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-コハク酸エステル又はコハク酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-コハク酸エステル又はコハク酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0247】
III.4. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、32gのクエン酸、及び、1.8gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0248】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-クエン酸エステル又はクエン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]又はクエン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステル[=トリス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-クエン酸エステル又はクエン酸トリ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0249】
III.5. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、33gのマレイン酸及び1.6gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0250】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのマレイン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-マレイン酸エステル又はマレイン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0251】
III.6. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、33gのリンゴ酸(2-ヒドロキシスクシン酸)及び1.6gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0252】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-リンゴ酸エステル又はリンゴ酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-リンゴ酸エステル又はリンゴ酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS,GPC、1H-NMRによって行われる。
【0253】
III.7. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのアジピン酸エステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、37gのアジピン酸及び1.7gの固定化酵素(ポリマー支持体上のカンジダ・アンタルクティカ由来のCALBリパーゼ、例えば、シグマ-アルドリッヒ又はメルック製のNovozym(登録商標)435又はストレム・ケミカルズ製のLipozym(登録商標)435)が提供される。反応混合物は、70℃且つ真空下(<500mbar)で、7時間撹拌されて反応する。次に、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルが、真空下で蒸留除去される。得られた残渣は、高真空中で2~4時間水蒸気処理される。
【0254】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのアジピン酸モノエステル[=モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-アジピン酸エステル又はアジピン酸モノ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]、及び、3-ヒドロキシブタン酸エチルのアジピン酸ジエステル[=ビス-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-アジピン酸エステル又はアジピン酸ジ-(4-エトキシ-4-オキソ-ブタン-2-イル)-エステル]の混合物が得られる。特性評価は、MS、GPC、1H-NMRによって行われる。
【0255】
III.8. 3-ヒドロキシブタン酸エチルのさらなるカルボン酸エステルの製造
さらに、先に述べた製造例は、他の3-ヒドロキシブタン酸エステル{すなわち、3-ヒドロキシブタン酸エチルエステルの代わりに、3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシブチル)エステル及び3-ヒドロキシブタン酸(ヒドロキシペンチル)エステル}をそれぞれ用いて繰り返される。比較可能な結果が得られる。精製及び分離も同様に行われる。
【0256】
また、先に述べた製造例は、カルボン酸のメチル及びエチルエステルで繰り返される。同様の結果が得られる。精製及び分離も同様に行われる。
【0257】
IV. キネティックスと構造解析
さらに、本発明方法のキネティクスを解析する。このため、無水コハク酸と3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-ヒドロキシブタン酸酸エチルエステル)、クエン酸と3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル)、リンゴ酸と3-ヒドロキシブタン酸エチル(3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル)の反応における変換時間経過が測定される。
【0258】
IV.1. 無水コハク酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコにおいて、525gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び133gのコハク酸無水物が、130℃及び70mbarで、13時間反応する。その後、混合物は、半分に分割される。
【0259】
最初の半分に、100℃のテトラブチル酸チタン(チタン(IV)-触媒)を3滴反応混合物に加え、徐々に圧力を40mbarに下げながら、130℃で、さらに17時間攪拌する。反応時間7時間後に、新しいテトラブチル酸チタンを加え、さらに6時間後に分子篩(Molsieve)3オングストロームを22g加え、反応水を除去する。反応時間終了後、反応混合物が濾過される。
【0260】
反応時間中、一定時間ごとにサンプルが採取され、組成が分析される。その結果、図1に示すような変換時間経過となる。
【0261】
変換時間経過から、10時間の反応時間後、第1反応段階における無水コハク酸からBS-E-BHBモノエステル(3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル)への変換は、既に完了していることがわかる。触媒を添加しても、変換率の大幅な向上にはつながらない。
【0262】
混合物の後の半分は、さらなる分析のために精製される。まず、過剰な3-BHB-EEが除去され、残渣は、カラムクロマトグラフィーによって精製される。
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸エステルの構造同定のために、個々のエステルは、カラムクロマトグラフィー精製によりそれぞれ分離される(つまり、モノエステル及びジエステルが分離する)。この目的のために、3-BHB-EE過剰分を除去し、その後、生成物混合物をシリカゲル上でカラム処理する。この目的のために、3-BHB-EEの過剰分が除去され、その後、生成物混合物は、シリカゲル上でカラム処理される。0.5%のトリエチルアミンを有する比率2/1の酢酸エチル/シクロヘキサン混合物が、ランニング媒体として使用される。その後、A及びBの2つの画分及び分画なしのサンプルが、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析され、GCの面積分析が表2に纏められる。
【0263】
【表2】
* 各種3-BHB誘導体(二量体、三量体、四量体などのオリゴマーなど)。
** 各種BS-(BHB-EE)-誘導体と同様に様々なオリゴマー及び重縮合物(例えば、それぞれ二量体、三量体、二-及びポリエステルなど)。
【0264】
画分A及びBのさらなる特性評価のため、1H-NMR及び13C-NMRスペクトル及び2D-NMRスペクトル(COSY、HSQC、HMBC)が測定される。このスペクトルは、画分Aが3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステルを有し、画分Bが、3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステルを具備することが(GC分析と同様に)判明した。
【0265】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸モノエステル(画分A由来)の構造を以下に示し、1H-NMR信号(1)及び13C-NMR信号(2)のNMRスペクトルで一意に特定できる化学シフトがラベル化される:
【0266】
【化17】
【0267】
【化18】
【0268】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのコハク酸ジエステル(画分B由来)の構造を以下に示し、1H-NMR信号(3)及び13C-NMR信号(4)のNMRスペクトルで一意に特定できる化学シフトがラベル化される;
【0269】
【化19】
【0270】
【化20】
【0271】
その後、画分A及びBは、それぞれさらに精製される(例えばクロマトグラフィー)。画分Aの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルの純粋なコハク酸モノエステル(純度>99%)が得られ、画分Bの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルの純粋なコハク酸ジエステル(純度>99%)が得られる。また、モノエステル/ジエステルの1:1の混合物は、精製したエステルの一部から調製される。
【0272】
IV.2. クエン酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、599gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び146gのクエン酸が、130℃、0mbarで反応する。反応時間26時間後、67mgのテトラブチル酸チタン(チタン(IV)-触媒)を反応混合物に加え、さらに3時間反応させた後、さらに43mgのテトラブチル酸チタン(チタン(IV)-触媒)を反応混合物に加えた。その後、反応混合物は、さらに6時間反応する。
【0273】
反応時間中、一定時間ごとに試料を採取し、組成を分析した。その結果、図2に示すような変換時間経過が得られた。
【0274】
変換時間経過から、最初に3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸モノエステル及びクエン酸ジエステルが顕著に生成していることがわかる。小さな変換率の増加は、チタン(IV)-触媒の最初の添加で得られるが、2回目の添加は、それ以上の大きな変換率の増加を生じない。
【0275】
この生成混合物は、さらに分析するために精製される。まず、過剰の3-BHB-EEが除去され、次に残渣がカラムクロマトグラフィーで精製される。3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸エステルの構造固定のため、カラムクロマトグラフィー精製により各エステルが分離される。このため、生成混合物は、シリカゲルで充填されたクロマトグラフィーカラムでクロマトグラフィーが行われ、0.7%の氷酢酸を有する比率5/3の酢酸エチル/シクロヘキサン混合液がランニング媒体として使用される。その後、画分A及びBの両方及び過剰な3-BHB-EEを除去する前後の非分画試料が、GC(ガスクロマトグラフィー)によって分析され、GC面積分析は表3にまとめられた。
【0276】
【表3】
* 各種3-BHB誘導体(例えば、2量体、3量体、4量体などのオリゴマー;アセト酢酸塩などの脱プロトン化誘導体など)。
**各種オリゴマー及び重縮合CS-(BHB-EE)-誘導体ならびにCS-誘導体(例えば、各二量体、三量体、ジ-及びポリエステルなど)。
【0277】
GC分析は、、主に3-ヒドロキシブタン酸のクエン酸のジ-及びトリ-エステルが形成されること、すなわち3-ヒドロキシブタン酸のクエン酸モノエステが、対応するジエステルにほぼ完全にさらに変換されることを示している。画分Aは、主に3-ヒドロキシブタン酸のクエン酸ジエステルを有するものであり、画分Bは、主に3-ヒドロキシブタン酸のクエン酸ジエステルを有するものである。
【0278】
画分Aの更なる特性評価のため、H-NMR、13C-NMRスペクトル及び2D-NMRスペクトル(COSY、HSQC、HMBC)が測定される。前記スペクトルは、(GC分析同様)画分Aが、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステルを有することを示している。3つの異なる立体中心は、4つのジアステレオマー化合物を結果として生じ、それに応じて各グループ内に多くの信号を生じる。異性体混合物自体が高純度である。
【0279】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸トリエステル(画分A由来)の構造が以下に示され、H-NMR信号(5)と13C-NMR信号(6)のNMRスペクトルによって一意に特定できる化学シフトが、ラベル化される。
【0280】
【化21】
【0281】
【化22】
【0282】
その後、画分A及びBは、それぞれさらに精製される(例えば、クロマトグラフィー)。画分Aの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルの純粋なクエン酸トリエステル(純度>99%)が得られ、画分Bの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルのクエン酸ジ-及びクエン酸モノエステル(純度>99%)が得られる。また、モノエステル/ジエステル/トリエステルの1:1:1混合物が、精製したエステルの一部から調製される。
【0283】
IV.3. リンゴ酸と3-ヒドロキシブタン酸エチルとの反応
デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、476gの(R)/(S)-3-ヒドロキシブタン酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブチル酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)と、121gのリンゴ酸とが、120℃及び70mbarで、10時間反応する。その後、100gが除去され、残渣が、さらに反応する。4時間の反応後、反応混合物は100℃まで冷却され、100gのテトラブタン酸チタン(チタン(IV)-触媒)が、反応混合物に添加される。その後、120℃に再加熱され、一定温度且つ60mbarで、さらに24時間撹拌され、18時間の反応時間後に、新鮮なテトラブチル酸チタン(チタン(IV)-触媒)が添加される。
【0284】
反応時間中、一定時間ごとに試料が採取され、組成が分析された。その結果としての変換時間経過が、図3に示される。
【0285】
変換時間経過から、チタン(IV)-触媒の添加は、変換率の大幅な上昇につながらないことがわかる。
【0286】
除去された100gの反応混合物は、さらなる分析のために精製される。この目的のために、まず過剰の3-BHB-EEが除去され、次にラジカルがカラムクロマトグラフィーによって精製される。このため、生成混合物は、シリカゲルで充填されたクロマトグラフィーカラムによってクロマトグラフィー分離され、1%の氷酢酸を有する2/1比率の酢酸エチル/シクロヘキサン混合物が、ランニング媒体として使用される。その後、画分A及びB並びに過剰な3-BHB-EEの除去の前後の非分画試料をが、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析され、GC面積分析が表4においてまとめられた。
【0287】
【表4】
* 各種3-BHB誘導体(二量体、三量体、四量体などのオリゴマーなど)。
** 各種オリゴマー及び重縮合リンゴ酸(BHB-EE)誘導体ならびにリンゴ酸誘導体(例えば、各二量体、三量体、ジ-及びポリエステルなど)。
【0288】
画分A及びBのさらなる特性評価のために、H-NMR及び13C-NMR並びに2D-NMRスペクトル(COSY、HSQC、HMBC)が測定される。このスペクトルは、(GC分析と同様に)画分Aが、3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステルを有し、画分Bが、3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸モノエステルを有することを示している。
【0289】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステル(画分A由来)の構造が、以下に示され、H-NMR信号(7)及び13C-NMR信号(8)のNMRスペクトルによって一意に特定できる化学シフトがラベル化される。
【0290】
【化23】
【0291】
【化24】
【0292】
3-ヒドロキシブタン酸エチルのリンゴ酸ジエステル(画分B由来)の構造が以下に示され、H-NMR信号(9)及び13C-NMR信号(10)のNMRスペクトルによって一意に特定できる化学シフトがラベル化される。
【0293】
【化25】
【0294】
【化26】
【0295】
その後、画分A及びBは、それぞれさらに精製される(クロマトグラフィーなど)。画分Aの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルの純粋なリンゴ酸ジエステル(純度>99%が得られ、画分Bの場合、3-ヒドロキシブタン酸エチルの純粋なリンゴ酸モノエステル(純度>99%)が得られる。また、モノエステル/ジエステルの1:1混合物は、精製したエステルの一部から調製される。
【0296】
V. 生理学的応用試験:体外消化試験
V.1. 3-ヒドロキシブタン酸の本発明のカルボン酸エステルの消化実験(分割又は開裂試験)。
開裂実験により、本発明によって製造された3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル又はその混合物(参照:I.,II.,及びIII.による既出の実験)は、ダイマー等の反応副産物を含めて、ヒト胃腸管で開裂できることが示される。
【0297】
いずれの場合においても、本発明の方法によって得られた精製された反応生成物が、出発混合物(すなわち3-ヒドロキシブタン酸の酒石酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸の乳酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のコハク酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のクエン酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のマレイン酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のフマル酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のリンゴ酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸のアジピン酸エステル)として使用される。
【0298】
身体に近い条件下での切断実験では、2つの媒体が検討される:
・胃を模倣したFaSSGF
・腸管を模倣したFaSSIF
どちらの培地もイギリスのBiorelevant(登録商標)社製のものである。さらに、実験によってはブタの膵臓(Panzyrat(登録商標)40,000 Fa.アラガン社)が追加される。
【0299】
Panzytrat(登録商標)有りの場合及びなしの場合(いずれも35℃、24時間)のFaSSGF又はFaSSIF培地での切断実験の結果は、サンプルがPanzytrat(登録商標)有り及びなしの場合のFaSSGF条件下で加水分解することを示す;これは主に培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用する低い変換が行われる。
【0300】
例えば3-ヒドロキシブタン酸エステルのクエン酸トリエステルの開裂実験では、3-ヒドロキシブタン酸エステルの開裂がカスケードで進行することが分かる(すなわち、クエン酸トリエステルはクエン酸ジエステルとなり、クエン酸ジエステルはクエン酸モノエステルとなり、クエン酸モノエステルは最終的に遊離クエン酸となる。ここで、各段階において対応する3-ヒドロキシブタン酸が放出され、その後さらに切断されて遊離3-ヒドロキシブタン酸及びエタノールになる)。
【0301】
従って、3-ヒドロキシブタン酸エステルのジカルボン酸エステルの開裂実験もカスケードで進行する。これによって、全体として遅延効果が存在する。
【0302】
V.2. 3-ヒドロキシブタン酸の本発明のカルボン酸のさらなる消化実験(開裂実験)
パンクレアチンによる開裂実験
2gの上述されたように調製した3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステル又はその混合物(例えば、3-ヒドロキシブタン酸の対応するモノ-及びジ-、又は、モノ-、ジ-及びトリカルボン酸エステルの混合物)が、50gの水に溶解され、さらに0.5g(1重量%)のパンクレアチンが添加される。このパンクレアチンは、アラガン社から市販されているPanzytrat(登録商標)40,000の形で使用される。混合物全体は、50℃のホットプレート上で攪拌される。反応の経過は、酸価を経時的に連続記録することで測定される。観察期間中に酸価が上昇する(3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステルから遊離3-ヒドロキシブタン酸に開裂する)。本発明によるパンクレアチンによる3-ヒドロキシブタン酸のカルボン酸エステルの水性開裂の変換-時間経過は、時間経過に伴う酸価の増加を含み、反応混合物の遊離カルボン酸及び遊離3-ヒドロキシブタン酸への所望の分解を証明するものである。これは適切な分析によって確認される。この実験は、本発明による出発混合物が、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシブタン酸又はそのエステル(3-ヒドロキシブタン酸エステル)の適切な生理学的前駆体であることを証明するものである。
【0303】
この試験は、純粋な形態のそれぞれのエステルに基づいて繰り返し検証される。比較結果は、それぞれの場合において得られる。すなわち、それぞれの場合において、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、それぞれパンクレアチンによって遊離カルボン酸及び3-ヒドロキシブタン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸に開裂される。
【0304】
V.3. 結論
先に述べた開裂実験は、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、遊離ヒドロキシブタン酸又はそのエステル(ここでは、エチルエステル、ヒドロキシブチルエステル及びヒドロキシペンチルエステル)の効率的な前駆体又は代謝産物であり、、特にその意図する効果に関して、生理的に許容できる又は生理的に適合する形態で存在することを証明するものである。同様に、自然の代謝(例えばクエン酸サイクル)で生じる代謝的に利用可能な又は変換可能なカルボン酸又はその誘導体、特に塩が形成される(例えば、クエン酸又はクエン酸エステル、リンゴ酸又はリンゴ酸エステル、酒石酸又は酒石酸エステルなど)。
【0305】
VI. さらなる試験(有機食品、毒性試験)
本発明による3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの有機物性及び毒性に関して、さらなる一連の実験及び試験が実施される。
これは、本発明による3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルは、有機的に受け入れられ且つ適合性があり、特に純粋な3-ヒドロキシブタン酸及びその塩及びエステルと比較して著しく向上した有機物特性を示し、また適用に反する毒性も示さないことを示している。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-広戸キシブタン酸エステルのカルボン酸エステルを製造する方法において、
ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシブタン酸エステルが、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と反応すること、
前記反応が、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施されること;及び
前記反応が、触媒の非存在下及び/又は無触媒で実施されること、又は、
前記反応が、触媒としての酵素の存在下で実施されること、
これによって、反応生成物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステルが得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
カルボン酸(II)が、遊離カルボン酸の形態で、カルボン酸の塩の形態で、カルボン酸のエステルの形態で又はカルボン酸無水物の形態で、特に遊離カルボン酸又はカルボン酸無水物の形態で使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)のヒドロキシブタン酸エステルが、等モル量から200モル%のモル過剰までの範囲内、特に等モル量から150モル%のモル過剰までの範囲内、好ましくは等モル量から100モル%のモル過剰までの範囲内のモル量で使用されること;及び/又は、
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル及びカルボン酸(II)が、1:1~10:1の範囲内、特に2:1~8:1の範囲内、好ましくは3:1~6:1の範囲内の一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル/カルボン酸(II)のモル比において使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと遊離酸の形態のカルボン酸(II)との反応の間に、同時に水が生成されること、特に水が反応から回収されること、特に連続的に、特に蒸留又は吸着除去によって回収されること;及び/又は、
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと無水物の形態のカルボン酸(II)との反応の間に、対応する遊離カルボン酸の1モルが、使用される無水物の1モル当たり形成されること;特に、結果として生じる遊離カルボン酸(II)が、一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステルと反応されること又は反応が行われた後、特に使用される出発化合物(I)及び(II)の量及び/又は比に応じて、除去されること及び任意に再利用されること請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記反応が行われた後の反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されること;及び/又は、
前記反応は、それに続いて、まだ存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基の部分的、特に完全な官能化、特にエステル化が実施されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルであって、
該3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、一般式(IIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸ならびにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されるカルボン酸から生じること;
特に酒石酸、クエン酸、リンゴ酸およびフマル酸の場合、存在するさらなるカルボキシル基が、前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORで完全に又は部分的にエステル化されることを特徴とする3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項7】
3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステルが、
一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上を示すこと;
【化1】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項6記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項8】
上記定義されるような3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルを有する混合物。
【請求項9】
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物を有する医薬組成物、特に医薬品又は薬物において、
該3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化2】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項6記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルの医薬組成物。
【請求項10】
予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置に使用するための請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物において、3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること;
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化3】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置への使用のための3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項12】
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステル、3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物において、
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること;
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化4】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、予防的及び/又は治療的処置のための又は人体又は動物の疾患、特にエネルギー代謝、特に脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用の予防的及び/又は治療的処置のための医薬組成物の製造への3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルの使用。
【請求項13】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物の使用において、
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること;
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化5】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すこと、
予防的及び/又は治療的処置のための、又は、空腹、ダイエット又は低炭水化物栄養のような異化代謝状態の予防的及び/又は治療的処置のための医薬品の製造のための、又は、適用のための、3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物の使用。
【請求項14】
3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステル又は3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)の少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルの混合物を有する食品及び/又は食品生成物において、
該3-ヒドロキシブタン酸エステル(III)のカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキル、特にエチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、好ましくはエチル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチル、より好ましくはエチルを示すこと;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ又は複数を示すこと;
【化6】
上記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素又は前記Rを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする食品及び/又は食品生成物。
【請求項15】
食品及び/又は食品生成物が、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は持久力スポーツ補助食品であることを特徴とする請求項14記載の食品及び/又は食品生成物。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルを製造する方法において、
ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択される一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
が、エステル化反応において、コハク酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにこれらの無水物及びこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのカルボン酸(II)と反応すること;
前記反応が、無溶媒で実施されること、及び、
前記反応が、触媒の非存在下で又は触媒としての酵素の存在下で実施されること;
これによって、反応製紙絵物(III)として、3-ヒドロキシブタン酸エステルの1つ以上のカルボン酸エステルが得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
カルボン酸(II)が、遊離カルボン酸の形態で、カルボン酸の塩の形態で、カルボン酸のエステルの形態で又はカルボン酸無水物の形態で使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
カルボン酸エステル(II)のカルボキシル基に基づく一般式(I)のヒドロキシブタン酸エステルが、等モル量から200モル%のモル過剰までの範囲内のモル量で使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)の3-ヒドロキシブタン酸エステル及びカルボン酸(II))が、1:1~10:1の範囲内の3-ヒドロキシブタン酸エステル/カルボン酸(II)のモル比において使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記反応が行われた後の反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基及びカルボキシル基が、少なくとも部分的にエステル化されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルにおいて、
該3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、
一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されること;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上選択されること;
【化1】
前記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項7】
前記3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、
一般式(IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、エチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル及びヒドロキシペンチルから選択されること;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上選択されること;
【化2】
前記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、エチル、ブチル、ペンチル、ヒドロキシブチル及びヒドロキシペンチルから選択されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする請求項6記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステル。
【請求項8】
請求項6記載の3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも2つの異なるカルボン酸エステルを有することを特徴とする混合物。
【請求項9】
3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも1つのカルボン酸エステルを有する医薬組成物において、
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されること;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上選択されること;
【化3】
前記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項9記載の医薬組成物において、
一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、エチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチルから選択されること;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上選択されること;
【化4】
前記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、エチル、ブチル、ペンチル。ヒドロキシブチル又はヒドロキシペンチルから選択されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
薬物又は医薬品であることを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
人体又は動物の疾患、人又は動物のエネルギー代謝の疾患に関連する病気からから選択される疾患を治療するための、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
ヒトまたは動物の身体の疾患を治療するための、該疾患は、脳外傷、脳梗塞、低酸素症などケト体代謝の異常を伴う疾患、心筋梗塞などの心血管系疾患、給餌症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAOD(超長鎖脂肪酸代謝異常症)などの脂肪代謝性疾患及びミトコンドリアチオラーゼ欠損症などのミトコンドリア異常症、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、アストロサイトーマ、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病、スフィンゴ糖脂質変性症などのライソゾーム蓄積性疾患、特に、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用から選択される疾患の治療するための請求項9記載の医薬組成物。
【請求項14】
3-ヒドロキシブタン酸エステルの少なくとも1つのカルボン酸エステルを有する食品生成物において、
3-ヒドロキシブタン酸エステルのカルボン酸エステルが、一般式(IIIb)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (IIIb)
に対応すること、
ここで、一般式(IIIb)において、
・ラジカルRが、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されること;及び
・ラジカルRが、以下のラジカルのうちの1つ以上選択されること;
【化5】
前記ラジカルにおいて、ラジカルRは、水素、又は、C-C-アルキル又はヒドロキシ-C-C-アルキルから選択されるRを有する-CH(CH)-CH-C(O)ORを示すことを特徴とする食品生成物。
【請求項15】
栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、筋力スポーツ補助食品及び持久力スポーツ補助食品から選択されることを特徴とする請求項14記載の食品及び/又は食品生成物。
【国際調査報告】