(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】二次電池用負極、それを製造する方法、およびそれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231005BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20231005BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512769
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 KR2022012632
(87)【国際公開番号】W WO2023027497
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0112407
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】デウン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・キョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンスン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スンビン・パク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA08
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA09
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、前記負極は下記条件1および条件2の少なくとも一つを満たして、[条件1](前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること)、[条件2](破断応力が3.6N以上であること)、前記破断応力は2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を10μm/sの速度で押して測定される値である二次電池用負極に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、
前記二次電池用負極は下記条件1および条件2のうち少なくとも一つを満たし、
[条件1]前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件2]破断応力が3.6N以上であること、
前記破断応力は2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を10μm/sの速度で押して測定される値である、二次電池用負極。
【請求項2】
前記条件1の連続接着力は前記二次電池用負極の厚さ方向における10μm当たりの活物質層間の接着力である、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項3】
前記負極活物質層は負極活物質、導電材、およびバインダを含み、
前記二次電池用負極が前記条件1を満たすとき、前記二次電池用負極の厚さ方向における10μm当たりの各活物質層に含まれる前記バインダの含有量は厚さ10μmの各活物質層の総重量を基準として2重量%以上である、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項4】
前記二次電池用負極が前記条件1を満たすとき、前記二次電池用負極の空隙率が28%以下である、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項5】
前記二次電池用負極が前記条件1を満たすとき、前記二次電池用負極の空隙率が5%~28%である、請求項4に記載の二次電池用負極。
【請求項6】
前記二次電池用負極は前記条件1および前記条件2をすべて満たす、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項7】
請求項1に記載の二次電池用負極を製造する方法であって、
(a)集電体の少なくとも一面に負極活物質スラリーを塗布する段階、
(b)前記負極活物質スラリーを乾燥して負極活物質層を形成する段階、および
(c)前記負極活物質層を圧延して二次電池用負極を製造する段階、
を含み、
下記条件1、条件3および条件4のうち少なくとも一つを満たして、下記条件3または条件4の不適合変形は下記式1で表され、
[条件1]前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件3]前記(b)の段階で乾燥時に発生する不適合変形(ε
mf)が0.1%以下であること、
[条件4]前記(c)の段階で圧延時に発生する不適合変形(ε
mf)が0.1%以下であること、
[式1]
【数1】
である、二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
乾燥応力(σ)は下記式2により求められ、
[式2]
【数2】
前記式2において、t
sは前記集電体の厚さ、t
cは乾燥された前記負極活物質層の厚さ、E
sは前記集電体の弾性係数、Lはタブの突出方向と平行な方向における前記集電体の長さ、ν
sは前記集電体のポアソン比、およびDは乾燥による前記集電体の変形度である、請求項7に記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
圧延応力(σ)は、単位面積当たりに作用する圧延荷重である、請求項7に記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
電極弾性係数(E
e)は下記式3により求められ、
[式3]
【数3】
前記式3において、E
totは前記集電体と乾燥後の前記負極活物質層または圧延後の前記負極活物質層の全体の弾性係数、E
fは前記集電体の弾性係数、T
fは前記集電体の厚さ、およびT
eは乾燥後の前記負極活物質層または圧延後の前記負極活物質層の厚さである、請求項7に記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の二次電池用負極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2021年8月25日付韓国特許出願第10-2021-0112407号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は二次電池用負極、それを製造する方法、およびそれを含む二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加によりエネルギ源としての二次電池に対する需要が急激に増加しており、このような二次電池の中でも高いエネルギ密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長くて、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
また、最近では環境問題への関心が大きくなるにつれて大気汚染の主な原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両の代わりとなる電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く進められている。このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としては高いエネルギ密度、高い放電電圧および出力安定性のリチウム二次電池が主に研究、使用されている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は一般に、正極と負極の電極を、分離膜を間に介在して積層または巻き取って、これを電解液と共に二次電池ケースに内蔵する方式で製造される。
【0006】
この時、前記負極は金属の集電体に負極活物質を含む活物質スラリーを塗布した後、乾燥、圧延して、単位電極などでカッティング(cutting)して製造されるが、負極の物性によって、前記カッティング時に負極活物質層のクラック(crack)および/または脱離が発生する問題がある。
【0007】
しかし、このような負極の不良は後に二次電池の製造の際に電池性能を急激に低下させて安全性においても問題になる。
【0008】
したがって、これを解決できる技術の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は負極の製造により負極カッティング時に負極活物質層のクラックおよび脱離を防止できる二次電池用負極、およびその製造方法、それを含む二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による二次電池用負極は、
集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、
前記負極は下記条件1および条件2のうち少なくとも一つを満たし、
[条件1]前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件2]破断応力が3.6N以上であること、
前記破断応力は2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を10μm/sの速度で押して測定される値であることを特徴とする。
【0011】
この時、前記条件1の連続接着力は負極の厚さ方向における10μm当たりの活物質層間の接着力である。
【0012】
また、前記負極活物質層は負極活物質、導電材、およびバインダを含み、このような前記条件1の連続接着力が30gf/20mm以上であることを満たすために、前記負極の厚さ方向における10μm当たりの各活物質層に含まれる前記バインダの含有量が厚さ10μmの各活物質層の総重量を基準として2重量%以上で含まれ得る。
【0013】
さらに、前記負極が前記条件1を満たすとき、前記負極の空隙率が28%以下であり得、詳細には5%~28%であり得る。
【0014】
より詳細には、前記負極は条件1および条件2をすべて満たし得る。
【0015】
一方、前記負極は空隙率が本発明のまた他の一実施形態によれば、前記二次電池用負極を製造する方法であって、
(a)集電体の少なくとも一面に負極活物質スラリーを塗布する段階;
(b)前記負極活物質スラリーを乾燥して負極活物質層を形成する段階;および
(c)前記負極活物質層を圧延して二次電池用負極を製造する段階;
を含み、
下記条件1、条件3および条件4のうち少なくとも一つを満たして、下記条件3または条件4の不適合変形は下記式1で表される二次電池用負極の製造方法が提供される:
[条件1]前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件3]段階(b)で乾燥時に発生する不適合変形(Misfit Strain)εmfが0.1%以下であること、
[条件4]段階(c)で圧延時に発生する不適合変形(Misfit Strain)εmfが0.1%以下であること、
[式1]
【0016】
【0017】
ここで、乾燥応力(σ)は下記式2により求めることができる。
[式2]
【0018】
【0019】
前記式2において、tsは前記集電体の厚さ、tcは前記乾燥された負極活物質層の厚さ、Esは前記集電体の弾性係数(elastic modulus)、Lはタブの突出方向と平行な方向における前記集電体の長さ、νsは集電体のポアソン比(poisson’s ratio)、およびDは前記乾燥による前記集電体の変形度(deflection)である。
【0020】
圧延応力(σ)は、単位面積当たりに作用する圧延荷重であり得る。
【0021】
前記負極の電極弾性係数(Ee)は下記式3により求めることができる。
[式3]
【0022】
【0023】
前記式3において、Etotは前記集電体と乾燥後の負極活物質層または圧延後の負極活物質層の全体の弾性係数、Efは前記集電体の弾性係数、Tfは前記集電体の厚さ、およびTeは乾燥後の負極活物質層または圧延後の負極活物質層の厚さである。
【0024】
本発明のまた他の一実施形態によれば、本発明はまた、二次電池用負極を含む二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】比較例1により製造された負極の連続接着力グラフである。
【
図2】実施例1により製造された負極の連続接着力グラフである。
【
図3】実施例2により製造された負極の連続接着力グラフである。
【
図4】実施例3により製造された負極の連続接着力グラフである。
【
図5】実験例5による比較例1の負極の顕微鏡写真である。
【
図6】実験例5による実施例1の負極の顕微鏡写真である。
【
図7】実験例5による実施例2の負極の顕微鏡写真である。
【
図8】実験例5による実施例3の負極の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的、かつ辞書的な意味で解釈されるべきではなく、発明者らはその発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に適う意味と概念とに解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示す構成は本発明の好ましい実施形態に過ぎなく、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらの代わりとなる多様な均等物と変形例があり得、本発明の範囲が次に記述する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明は一実施形態によれば、
集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、
前記負極は下記条件1および条件2の少なくとも一つを満たして、
[条件1]
前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件2]破断応力が3.6N以上であること、
前記破断応力は2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を10μm/sの速度で押して測定される値である、二次電池用負極が提供される。
【0028】
具体的には、前記条件1の連続接着力は負極の厚さ方向における10μm当たりの活物質層間の接着力を意味する。すなわち、10μm当たりの活物質層間の接着力を測定した時、いずれの区間でも接着力が30gf/20mm未満の場合、前記条件1を満たさないものと見る。
【0029】
このような連続接着力は製造された負極の接着力を測定する方法と類似する。具体的には、スライドガラスに両面テープを貼ってその上に30mm×125mmで打ち抜いた負極を載せた後負極上面に20mmの幅のスコッチマジックテープ(登録商標)を貼る。そして、負極とスライドガラス、負極とスコッチマジックテープ(登録商標)を均一に付着するために常温でラミネータに通過させた後、前記スコッチマジックテープ(登録商標)をUTM(TA社)機器を用いて100mm/minで引っ張って負極から剥離される力を測定する。この時、スライドガラスと負極の測定角度は90°である。その後、剥離された上層の活物質層を除去した状態でスコッチマジックテープ(登録商標)を付着した後、UTM(TA社)機器を用いて100mm/minで引っ張って負極から剥離される力を測定し、このような方式で引き続き剥離された活物質層を除去して接着力テストを実施して測定した値を意味する。
【0030】
このように測定された値のうちいずれか一つの区間でも接着力が30gf/20mm未満の場合、前記条件1を満たさないと判断する。
【0031】
すなわち、本出願の発明者らは前記条件1を満たす場合には負極のカッティング時に負極活物質層のクラックや脱離が発生しないことを確認した。
【0032】
このような条件1を満たすための方法は多様であり、方法と関係なく、前記条件1を満たす場合、負極活物質層のクラックや脱離が発生しない。ただし、一つの例として、前記条件1を満たすために、前記負極活物質層は負極活物質、導電材、およびバインダを含み、前記負極の厚さ方向における10μm当たりの各活物質層に含まれる前記バインダの含有量は厚さ10μmの各活物質層の総重量を基準として2重量%以上で含まれ得る。
【0033】
すなわち、厚さ10μm当たりの活物質層中にバインダが2重量%以上で含まれていなければならず、これはどこでもバインダが2重量%以上均一に分布しなければならないことと類似の意味を有する。このようにバインダがいずれの区間でも2重量%以上で含まれる場合、連続接着力が前記条件1を満たすことができる。
【0034】
また、前記負極が前記条件1を満たすとき、前記負極の空隙率が28%以下、詳細には5%~28%以下、より詳細には10%~25%であり得る。
【0035】
前記空隙率は走査型電子顕微鏡(FE‐SEM)(Hitachi S‐4800 Scanning Electron Microscope)を用いて負極表面を2,500倍拡大して測定した後、測定された写真内の任意にサンプリングした範囲(横10um以上、縦15um以上)で確認される表面空隙の面積比を全面積に対して求めて体積に変換して求めることができる。
【0036】
前記範囲を外れて、空隙率が過度に大きい場合は前記負極の接着力が低下し得るので、好ましくない。
【0037】
一方、条件1を満たさない場合でも、本出願の発明者らが確認したことによれば、前記で説明したように負極の条件2の破断応力が3.6N以上である場合、負極活物質層のクラックや脱離が発生しない。
【0038】
詳細には破断応力が3.6N以上~5N以下であり得る。
【0039】
前記破断応力は、前記で説明したように、2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を10μm/sの速度で押して測定される値であり得、より具体的には、DHR(TA社)を用いて負極の90度方向の上から垂直に押して測定した値である。
【0040】
前記破断応力が本発明による条件を満たせば、負極活物質層のクラックまたは脱離が発生しない。
【0041】
前記破断応力が本発明の範囲を外れて、過度に小さい場合、負極活物質層のクラックまたは脱離が発生し得、過度に大きい場合は柔軟性が過度に低下するので好ましくない。
前記破断応力を調節することは、以下に説明するように、負極の製造段階で、乾燥および圧延時の不適合変形を調節することによって得られることができる。
【0042】
したがって、より詳細には前記負極が条件1および条件2をすべて満たすことができる。
【0043】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記二次電池用負極を製造する方法であって、
(a)集電体の少なくとも一面に負極活物質スラリーを塗布する段階;
(b)前記負極活物質スラリーを乾燥して負極活物質層を形成する段階;および
(c)前記負極活物質層を圧延して二次電池用負極を製造する段階;
を含み、
下記条件1、条件3および条件4の少なくとも一つを満たして、下記条件3または条件4の不適合変形は下記式1で表される二次電池用負極の製造方法が提供される。
[条件1]前記二次電池用負極の厚さ方向における連続接着力が30gf/20mm以上であること、
[条件3]段階(b)で乾燥時に発生する不適合変形(Misfit Strain)が0.1%以下であること、
[条件4]段階(c)で圧延時に発生する不適合変形(Misfit Strain)が0.1%以下であること、
[式1]
【0044】
【0045】
本出願の発明者らが鋭意研究を重ねた結果、前記で説明したように、二次電池用負極の破断応力が前記値を有するためには製造過程中に発生する不適合変形が前記条件3および4の少なくとも一つ以上を満たすことを確認した。
【0046】
したがって、前記条件3および4を満たすように負極を製造する場合、本願による効果を満たすことができる。
【0047】
前記条件を満たす場合は、本発明が意図した効果として負極クラックまたは脱離が発生しない。
【0048】
前記条件1は上で説明したとおりである。
【0049】
前記条件3および4の不適合変形は前記式1により求められ、この時、前記乾燥または圧延応力と、負極の弾性係数を求める方法は以下に説明するとおりである。
【0050】
具体的には、前記乾燥応力(σ)は下記式2により求められる値であり得る。
[式2]
【0051】
【0052】
前記式2において、tsは前記集電体の厚さ、tcは前記乾燥された負極活物質層の厚さ、Esは前記集電体の弾性係数(elastic modulus)、Lはタブの突出方向と平行な方向における前記集電体の長さ、νsは集電体のポアソン比(poisson’s ratio)、およびDは前記乾燥による前記集電体の変形度(deflection)である。
【0053】
ここで、前記集電体と前記負極活物質層の厚さと前記集電体の長さは肉眼により求めることができ、前記集電体の弾性係数とポアソン比は前記集電体をなす金属が有する値を意味し、これは定められた値である。例えば、Alの弾性係数は7.19×102であり、ポアソン比は0.34であり得、Cuの弾性係数は1.25×103であり、ポアソン比は0.34であり得る。また、前記集電体の変形度はレーザおよび位置センサを用いて負極の曲がった程度を測定することができる。曲がった程度は平らなホルダに乾燥された負極を嵌め、側面から見たとき負極が下または上に反ったZ軸の高さで測定された値である。
【0054】
また、前記圧延応力(σ)は、乾燥応力とは異なり、単位面積当たりに作用する圧延荷重を意味する。
【0055】
圧延荷重は圧延時負極に加えられる圧延であって作業者によって選択されることができる。
【0056】
また、前記負極弾性係数(Ee)は下記式3により求められる値であり得る。
[式3]
【0057】
【0058】
前記式3において、Etotは前記集電体と乾燥後の負極活物質層または圧延後の負極活物質層の全体の弾性係数、Efは前記集電体の弾性係数、Tfは前記集電体の厚さ、およびTeは乾燥後の負極活物質層または圧延後の負極活物質層の厚さである。
【0059】
前記Efの集電体弾性係数、集電体の厚さ、負極活物質層の厚さは前記で説明したとおりであり、Etotの全体の弾性係数はDMA装備(粘弾性測定装備)を用いて測定した値である。
【0060】
このように求めた乾燥または圧延応力と負極弾性係数を前記式1に代入して不適合変形がいずれか一つでも0.1%以下の条件を満たす場合、前記負極の破断応力が3.6N以上になって、本発明が意図した効果を発揮することができる。
【0061】
したがって、製造段階から本発明の条件を満たすかどうかを判断することができ、不良を迅速に検出し、負極活物質層のクラックおよび/または脱離を防止できるため、それを含む二次電池性能の低下および安全性の低下を防止することができる。
【0062】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、本発明はまた、前記二次電池用負極を含む二次電池を提供する。
【0063】
前記二次電池のそれ他の製造方法や、構成要素は当業界に知られているため、本明細書ではこれに係る説明を省略して、本発明の範疇に含まれる。
【0064】
以下、実施例、比較例および添付する図面を参照して本発明の好ましい実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0065】
<比較例1>(負極連続接着力が30gf以下であり、乾燥/圧延不適合変形(Misfit strain)が0.1%以上である場合)
人造黒鉛を活物質として、バインダ(SBRおよびCMCは2:1重量比で混合)、導電材としてカーボンブラックを重量比96:2.5:1.5で混合した混合物と、分散媒として水を使用して混合物と分散媒の重量比を1:2で混合した活物質層用スラリーを準備した。
【0066】
スロットダイを用いて、厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の一面に前記活物質層用スラリーをコートして、130℃真空下で1時間の間乾燥して活物質層を形成した。このように形成された活物質層をロールプレス(roll pressing)方式で圧延して厚さ80μmの活物質層を備えた負極を製造した。
【0067】
前記製造された負極の空隙率は30%であった。前記空隙率は走査型電子顕微鏡(FE‐SEM)(Hitachi S‐4800 Scanning Electron Microscope)を用いて負極表面を2,500倍拡大して測定した後、測定された写真内の任意にサンプリングした範囲(横10um以上、縦15um以上)で確認される表面空隙の面積比を全面積に対して求めて体積に変換して求めた値である。
【0068】
<実施例1>(負極連続接着力が30gf以上であり、乾燥/圧延不適合変形(Misfit strain)が0.1%以上である場合)
前記比較例1で、活物質:バインダ:導電材の重量比を96:2.8:1.2で混合して、圧延時の活物質層が厚さ75μmになるように圧延したことを除いては比較例1と同一に負極を製造した。前記製造された負極の空隙率は25%であった。
【0069】
<実施例2>(負極連続接着力が30gf以下であり、乾燥不適合変形(Misfit strain)が0.1%以下であり、/圧延不適合変形(Misfit strain)が0.1%以上である場合)
前記比較例1で、前記活物質層用スラリーを100℃真空下で30分乾燥した後、110℃真空下で30分間乾燥して、再び130℃真空下で30分乾燥して活物質層を形成したことを除いては比較例1と同一に負極を製造した。前記製造された負極の空隙率は30%であった。
【0070】
<実施例3>(負極連続接着力が30gf以下であり、乾燥不適合変形(Misfit strain)が0.1%以上であり/圧延不適合変形(Misfit strain)が0.1%以下である場合)
前記比較例1で、圧延時の活物質層が厚さ90μmになるように1次圧延し、再び厚さ80μmになるように2次圧延したことを除いては比較例1と同一に負極を製造した。前記製造された負極の空隙率は30%であった。
【0071】
<実験例1>
前記比較例1および実施例1~3で製造された負極の連続接着力を測定して下記
図1~
図4に図示した。
【0072】
前記負極連続接着力はスライドガラスに両面テープを貼ってその上に30mm×125mmで打ち抜いた負極を載せた後負極上面に20mmの幅のスコッチマジックテープ(登録商標)を貼る。そして、負極とスライドガラス、負極とスコッチマジックテープ(登録商標)を均一に付着するために常温でラミネータ(Supernex‐synC325,速度9段階)に通過させた後、前記スコッチマジックテープ(登録商標)をUTM(TA社)機器を用いて100mm/minで引っ張って負極から剥離される力を測定する。この時、スライドガラスと負極の測定角度は90°である。その後、剥離された上層の活物質層を除去した状態でスコッチマジックテープ(登録商標)を付着した後、UTM(TA社)機器を用いて100mm/minで引っ張って負極から剥離される力を測定し、このような方式で引き続き剥離された活物質層を除去して接着力テストを実施して測定した値を意味する。
【0073】
下記
図1~
図4を検討すると、比較例1、実施例2および3の負極連続接着力は一部の区間で30gf/20mm以下であることに対して、実施例1の負極連続接着力は全ての区間で30gf/20mm以上であることを確認することができる。
【0074】
<実験例2>
前記前記比較例1および実施例1~3で製造された負極の乾燥および圧延工程での不適合変形(Misfit strain)を計算して下記表1に示した。
【0075】
【0076】
前記表1を参照すると、比較例1および実施例1は乾燥、圧延不適合変形(Misfit strain)がいずれも0.1%以上であることに対して、実施例2および3は少なくともいずれか一つが0.1%以下であることを確認することができる。
【0077】
前記応力と弾性係数は、前記式2、圧延荷重および式3により求められ、前記不適合変形(Misfit strain)は前記値に基づいて前記式1から求められる。
【0078】
<実験例3>
前記前記比較例1および実施例1~3で製造された負極の破断応力を測定して下記表2に示した。
【0079】
前記破断応力はDHR(TA社)機器を用いて2.5mmの幅を有する一端が鋭い一字型チップで前記負極活物質層を90度方向の上から垂直に10μm/sの速度で押して測定される値である。
【0080】
【0081】
前記表2を検討すると、前記実験例2とともに比較するとき、乾燥工程または圧延工程のMisfit strainの少なくともいずれか一つが0.1%以下である場合、破断応力が3.6N以上になることを確認することができる。
【0082】
<実験例4>
前記比較例1および実施例1~3で製造された負極を半分にノッチングしてクラックの有無を検討した。
【0083】
クラックの有無は負極の上部を垂直方向に顕微鏡写真を撮って肉眼で確認し、その結果を下記
図5~
図8に図示した。
【0084】
図5~
図8を検討すると、条件1および条件2、または条件1、条件3および条件4をすべて満たさない比較例1にのみクラックが発生したことを確認することができる。
【0085】
したがって、本発明の前記条件1~4のいずれか一つを満たす場合、本発明が意図した効果を得ることができることがわかる。
【0086】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明による二次電池用負極は、特定条件を満たすので、負極カッティング時に負極活物質層のクラックおよび脱離の問題が発生せず、そのため、このような負極を含む二次電池の性能低下または安全性低下の問題を解消できる効果がある。
【国際調査報告】